2012年01月の記事一覧

謎のチェス指し人形「ターク」 

朝日新聞電子版2012年1月31日づけ
名士も熱狂、18世紀の自動機械

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フィッシャーのチェス(100)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーが進んで自分のキングに背負い込む危険性を考えれば、そしてこれが彼の弱点であることがおいおい出てくるが、相手を1手違いで詰ませる差でしか滅多に自分のキングに対する攻撃に屈しないということは注目に値する。しかし年少の頃には自分のキングに自衛させる危険性を学ぶ機会が若干あった。

オッテソン対フィッシャー
ミルウォーキー、1957年
 32…Rf8

33.Rxe6! fxe6 34.Qxe6+ Kg7 35.Qe5+ Kf7 36.f4!

 この手は黒クイーンを自分のキングの守りから締め出した。白はすべてを見通している。

36…Rc8 37.Nh6+ Kf8 38.Qh8+ Ke7 39.Qxh7+ Kd6 40.Qxg6+

 このあと49手目で白が勝った。

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(10)

「Chess Life」2003年2月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法

 今月はクイーン翼ギャンビット拒否のタルタコワ戦法を取り上げる。スパスキー、ペトロシアン、カルポフ、それにカスパロフのような世界チャンピオンを含む一流選手の多くがこの布局を常用定跡の重要な一部に含めている。現在最も頻繁に用いている中で最強はGMナイジェル・ショートである。この戦法は最も攻撃的な選択肢ではないかもしれないが、非常に堅固な定跡で、白が無理やりやっつけようとすると痛い目にあうことがある。7…b6 と突く意図は何だろうか。クイーン翼ギャンビットの他の戦型のようにc8の黒ビショップは展開に苦労するときがある。しかし 7…b6 なら自由にb7の地点に展開できる。さらにb6のポーンはいつかは突くことになる …c7(c6)-c5 の狙いを強固なものにすることができる。

 白の作戦は何だろうか。それはc列に圧力をかけてc7のポーンの潜在的な弱点を攻撃することである。そして黒がc7のポーンをc5に突けば、白は中央に孤立ポーンまたは浮きポーンを作らせることができる。しかし基本的に白の作戦は中央を中心に展開し有利なポーン陣形を作ろうとすることである。

 それでは判決はどうなるだろうか。この布局では双方とも十分落ち着いて大局的に指し進めることができる。黒としては優秀で堅実な布局である。考えてみる価値がある。

1.d4 d5 2.c4 e6

 これがクイーン翼ギャンビット拒否である。

2.Nc3 Nf6

 ここでは白に主要な選択肢が三つある。 1) 4.cxd5 これは交換戦法で、ポーン構造をすぐに変える。2) 4.Nf3 Be7 3.Bf4 これは1980年代から非常に流行した。そして最後に 3) 4.Bg5 これは従来から最も指されている手で、今月の主題である。

4.Bg5

 これで白はナイトを釘付けにした。

4…Be7

 これが最も理にかなった手だが 9…Nbd7 でもまったくかまわない。この手は一見 5.cxd5 exd5 のあと 6.Nxd5(ナイトの釘付けを利用)で白のポーン得になりそうだが、実際は白のはまりで、6…Nxd5 7.Bxd8 Bb4+ で黒の勝勢になる。

5.e3 O-O 6.Nf3 h6 7.Bh4 b6

 これが著名なGMにちなんで名づけられたタルタコワ戦法である。ここで白にはいろいろな手がある。そのうちのいくつかを見ていこう(7…Ne4 は終了したばかりのフリッツ対クラムニク戦で指されたが別の機会にゆずる)。

 白の8手目として次の四つを考察する。

 a)8.cxd5
 b)8.Be2
 c)8.Rc1
 d)8.Bd3

a)8.cxd5

 (1972年レイキャビクでのフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦第6局より)

8…Nxd5

 代わりに 8…exd5 も当然の手で 9.Bd3 Bb7 10.Rc1 Nbd7 11.O-O Ne4 となる。ここで白は 12.Bxe7 Qxe7 13.Nxe4 dxe4 14.Rxc7 でポーン得することはできない。14…Bc8 15.Bb5 Qd8 で黒の優勢になる。

9.Bxe7 Qxe7 10.Nxd5 exd5 11.Rc1 Be6

12.Qa4

 たぶん 12.Bd3 c5 13.dxc5 bxc5 14.O-O Nd7 15.e4 と指す方が良い。以下は 15…dxe4 16.Bxe4 Rad8 17.Bb1 Ne5 18.Qe2 となればポーン陣形の優位のために白がほんのわずか優勢である。

12…c5 13.Qa3 Rc8 14.Bb5 a6

 これは悪手だった。今の定跡では 14…Qb7 15.dxc5 bxc5 16.Rxc5 Rxc5 17.Qxc5 Na6 でポーンの犠牲の代わりに反撃が有望で黒が良い。

15.dxc5 bxc5 16.O-O Ra7 17.Be2 Nd7 18.Nd4!

 白は二重釘付けを利用して黒のe6のビショップの交換を強要する。

18…Qf8 19.Nxe6 fxe6 20.e4! d4 21.f4

 局面は明らかに白が優勢である。このあとフィッシャーはキング翼の白枡の斜筋の弱点を利用して勝利を収めた。

 これはたぶんこの戦法の最も有名な試合である。主たる理由はフィッシャーが初手にいつもの 1.e4 でなく 1.c4 を指した衝撃の影響のせいである(このあと 1…e6 2.Nf3 d5 3.d4 Nf6 4.Nc3 Be7 5.Bg5 O-O 6.e3 でクイーン翼ギャンビット拒否に移行した)。

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フィッシャーのチェス(099)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーが(あるいは攻撃にたけた選手なら誰でも)どこからともなく詰みの狙いをひねり出す素早さは初心者だけでなくマスターにとってもチェスの不思議の一つである。1972年のフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦では目をみはる例がいくつも生まれた。その中でも次の試合は2年間の局後検討をものともしなかった。

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦24番勝負第10局、レイキャビク、1972年
 25…Qxa5

 コルチノイもボトビニクも黒の(c3から)クイーンを引いた手を酷評した。たぶん二人とも 25…c4 なら負けをまぬがれたとまだ信じているだろう。しかし 26.e5! と突けば Bxh7+ からクイーンを素抜く狙いのためにやはり 26…Qxa5 と取らされただろう(26…g6 でも 27.Re3 で)。そのあとは 27.Ng5 h6 28.Nxf7 Kxf7 29.e6+ で実戦よりも白が優勢である。

26.Bb3!

 また白枡ビショップが適所を得た。白の駒はキング翼のお決まりの弱点であるf7の地点に集中していく。

26…axb5 27.Qf4 Rd7 28.Ne5 Qc7

 黒は攻撃の駒が新たに投入されるたびにしっかり受けてきたように見える。しかしここで詰みの狙いで白が交換得になる。

29.Rbd1! Re7

 この水準の戦いでは詰みは解説の中でだけ起こる。黒のルークは過負荷になっていた。なぜなら 29…Rxd1 と取ると 30.Bxf7+ Kh8 31.Nxg6+ hxg6 32.Qh4# で型どおりの詰みになるからである。フィッシャーはここから長い収局を勝つことを余儀なくされたが黒の手助けもあって成し遂げた。それにしても図の局面から6手で白に詰ませる可能性が出てくるとはなかなか信じられない。

(この章続く)

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危なかった

産経新聞電子版2012年1月29日付け
「日本海」「東海」併記 米州法案1票差で否決

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名著の残念訳(31)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 183ページ
『しかし、この不毛の荒野では、黒が回り道で勝利をもぎ取れるとするのが適切だ。』

「回り道」があるなら「本道」があるはずだが、その文章や手順はどこに書いてあるのだろうか?

英文『However, it is precisely here, in this barren wilderness, that Black can wend his way to a win.』

wend one’s way to … は「・・・へ向かう」という意味。ちなみに The American Heritage Dictionary によると wend の意味は To proceed on or along (one’s way) と出ている。proceed は「(特に停止した状態から)進みだす」という意味。

試訳『しかし黒が勝利に向かって踏み出せるのはまさに不毛の荒野のここである。』

40 ザ・ナイドルフ変化 186ページ
『序盤戦術の遅れを取りもどすにはおそすぎた。』

英文『it is too late to compensate for his earlier dilatory tactics.』

dilatory tactics は「引き延ばし戦術」という意味。7.Nd5 に対してすぐに 7…Nxe4! と取らずに3手後に不都合な状況になってから 10…Bxe4 と取ったことを言っている。

試訳「以前の引き延ばし戦術を埋め合わせるには遅すぎた。」

44 ショック療法 202ページ
『エバンズ大佐』

エバンズギャンビットの創始者のエバンズは14歳で船乗りになりのちに船長になった。

英文『Captain Evans』

試訳「エバンズ船長」

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フィッシャーのチェス(098)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 キングに対する戦力の集中は簡単に戦力得をもたらすことがある。詰みである必要はない。次の局面はちょっと見るだけで白の大駒がまた働いていないことが分かる。b1のルークは実は標的以外の何物でもない(28.g3 がうまくいかないのはそのためで、28…fxg3 29.fxg3 Nf3+ から …Nd2 でルークとナイトの両当たりになる)。

ラルセン対フィッシャー
10番勝負第4局、デンバー、1971年
 27…Nh4

28.Qd3 Bf5

 白は自軍を引き戻そうとし黒はそれらをそぎ落としていく。

29.Kh1 f3!

 ルークの筋を通し、防御の連係を乱し、空所(f3とh3の地点)を作り出すこの手はチェス選手の理想とするところである。

30.Ng3 fxg2+ 31.Kg1 Bxe4 32.Qxe4 Nf3+ 33.Kxg2 Nd2 白投了

 やはり両当たりになった。黒はf2のポーンも取れる。

(この章続く)

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フィッシャーのチェス(097)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の局面で白のビショップが黒ポーンの城壁の眼前に飛んでいき4手ほどでそれらを瓦礫の山にしてしまうとはほとんど想像できないだろう。

フィッシャー対パンノ
ブエノスアイレス、1970年
 26…Qd8

27.Ng5 Nf8 28.Be4!

 Nxh7 のあと hxg6 から Bxg6 を止めることはできない。このビショップを取ることはできない。なぜならナイトにf6へ行く道筋を与えるからである。ジークベルト・タラシュ博士はこのような離れ業をほめちぎったことだろう。このような局面に言及しているのかどうかは分からないが冗談半分に次のように言っていた。「ルソーが脇に猫がいなければ創作できなかったのとちょうど同じように、私はキング翼ビショップがなければうまくチェスを指すことができない。キング翼ビショップがなければチェスは無味乾燥に近く、攻撃の作戦を全然考えることができない。」

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(253)

「Chess Life」2011年9月号(5/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 2005年以降の対戦成績は2-2でまったく互角である。2007年には3回対戦し3回とも黒が勝った。そのうちの2勝はシャバロフである。その2局をちょっと見てみよう。

 最初の対戦は4月のフォックスウッズ・オープンだった。この大会の優勝者はGMガータ・カームスキーだった。彼は9戦して7点をあげた4人のうちの一人で、GMズビアド・イゾリアとのブリッツによる優勝決定戦を制した。この大会で印象深いのは米国のジェシー・クラーイがナカムラとシャバロフに勝ち最後のグランドマスター基準を達成したことである。

 シャバロフが黒番の第4回戦で26手目でクイーンなしの面白い中盤戦になった。白の手番である。2007年7月号でシャバロフが全局を解説している。ここでは引用した彼の解説の部分を(シャ)で示してある。

 白の手番

 黒は双ビショップを持っているがすぐにはキャッスリングできない。白は次の手で正しく黒のビショップをg4の地点に来させないようにした。

27.f5!

 黒は白にe列を素通しにさせるf5でのポーン交換はしないで次のように指した。

27…Bd7

 ここでナカムラは単刀直入に 28.fxg6 fxg6 29.Rd6 でgポーンを当たりにしてポーン得することができた。29…Rg8 なら参考になる戦術があり 30.Nf4 Bc7 31.Rxg6 Rxg6 32.Nxg6 Kf7(ナイトを捕まえたようだが)に 33.Nf4! Bxf4 34.Rf1

でビショップを釘付けにしてポーン得のままになる。しかし黒は単に 29…Bg4 30.Rxg6 Rd8 で強い圧力をかけることができた。だから白が誘惑をこらえたのは賢明だった。そして次のように進んだ。

28.Nf4

 ここでは 28.Na4 という強手があった。28…Bf2 なら 29.Rh1 gxf5 30.Rdf1 で問題ないし 28…Bc7 でも 29.Nc5 でよい。

28…Bc7 29.Nce2

 ここは 29.Rf1 の方が優った。実戦のナイトの配置変えは黒に余裕を与えた。

29…Rg8 30.Nd3 b6

 この手はナイトをc5の地点に来させないようにしている。形勢は黒が優勢である。

31.Nef4 O-O-O 32.b4 Kb7 33.a3

 g6の地点でポーン同士を交換する方が一貫性がある。

33…Bc8 34.Kc2 gxf5 35.e5 Rd4!

 (シャ)『今や主導権は完全に黒の方にある。』

36.Re3 Rgd8 37.Rh1 a5!?

 (シャ)『白がポカも出さずあっさり負けもしないことにいらだって黒は少しポーンを与えて自分のビショップの動きを良くすることにした。』これはGMシャバロフによる洞察力の鋭い解説で、たぶん白の時間切迫によって影響された決断である。代わりに危険性の少ない強手は 37…Rc4+ から …Re4 である。

38.bxa5 b5

 38…c5 の方が強制力がある。

39.Nxh5 f4

 39…Bxa5 の方が簡明だった。

40.Ndxf4?

 (シャ)『どちらのナイトでポーンを取るかを決める時にヒカルは40秒ほど残っていた。そして今回は直感が誤っていた。正しい受けは直感とは相容れない 40.Nhxf4! だった。』シャバロフはさらにフリッツの分析によると 40…Bf5 41.Rf1 c5 42.Kc1! Bxd3 43.Rxd3 Rxd3 44.Nxd3 Rxd3 45.Rxf7

で互角であると言っている。そしてこうも付け加えている。(シャ)『対局中は Kc1 に気がつかなかった。これは典型的なコンピュータの手である。』しかし 42.Kc1 のあと黒はd3のナイトを取る必要はない。42…Rc4+ 43.Kb2 Bxa5 と指すことができまだ黒が優勢である。実戦は次のようにして終わった。

40…Bf5+ 41.Kb3 c5 42.Rc1 c4+ 43.Kb2 Bxa5 44.Ne2 Rd2+ 白投了

 (シャ)『45.Ka1 Bb6 の後白は大きな駒損をきっする。』

「近年はチェスだけに集中している。ずっと真剣になり始めたのは2007年で、それから成績の上昇傾向が始まった。」-ヒカル・ナカムラ

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(096)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーはまだ棋歴の浅い頃じっくりと攻撃態勢を構築するのを特に好んでいた。それはポーンをe5の地点に進ませ(f6にいる防御の黒ナイトをどかすため)、キング翼ビショップをフィアンケットしてあとで攻撃に加わらせ、クイーンをh5またはh6に置くものだった。次の2局にはフィッシャーがこのぎこちなさそうな方法で敵キングに立ち向かいどのように成功を収めたかがよく表われている。これらの局面はフランス防御またはシチリア防御で白が「キング翼インディアン」を指すときに生じるのが普通である。

フィッシャー対イフコフ
サンタモニカ、1966年
 16…Ne7

17.g4!

 アリョーヒンはかつて自分の似たようなポーン突きについて次のように言ったことがある。「このささやかなポーンはさらに進むことにより敵キングの住居に火をつけることを狙っている。そしてその邪悪なたくらみは止めようがない。」

17…Bxe4 18.Bxe4 g6 19.Qh6 Nd5 20.f5!

 ついに来た。黒は 20…Re8 と指したが fxg6 から Nxg6 で受からなかった。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(095)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の均衡のとれた局面も参考になることでは劣らず、両者が詰みを見据えている。フィッシャーはたとえポーンであっても非常に重要な戦力の優位を得る。

フィッシャー対カルドーソ
番勝負、ニューヨーク、1957年
 22…b4

23.Bxg7+

 23.Qh5 で g6 を狙う方が良いという指摘もあった。23…f6 24.g6 h6 25.Be3 となれば紛れる余地がない。

23…Kxg7 24.Qh6+ Kh8 25.g6 fxg6 26.fxg6 Qc5+

 26…Rf7! でも 27.gxf7 Rf8 28.Qe6 で白の攻撃は途切れないが、攻撃力を削ごうとする面白い着想ではある。

27.R1f2 Qg5+ 28.Qxg5 Bxg5 29.Rxf8+ Rxf8 30.Rxf8+ Kg7 31.gxh7! 黒投了

 これは手荒な襲撃の最後の小節(こぶし)で、ナイトが当たりから逃げられるように必要でもある。

(この章続く)

2012年01月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(158)

「Chess」2011年11月号(1/1)

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欧州クラブ杯

解説 サム・コリンズ

2011年欧州クラブ杯
A.ギリ – B.トールフィンソン
対称イギリス布局

1.Nf3 Nf6 2.c4 c5 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.O-O e6 6.Nc3 Be7 7.d4 cxd4 8.Qxd4 d6 9.Bg5 a6 10.Bxf6 Bxf6 11.Qf4

 これはちょっと苦い思い出のある戦型である。2009年日本での「新潟親善大会」で小島慎也選手にこの手を指されて意表をつかれたことがあった。なんとか序盤をうまく切り抜けて勝ちを収めた。優勝賞品は自転車だった。トールフィンソンの防御陣形はかなり危なっかしい。

11…Qc7 12.Rfd1 Ke7

 キングがこの位置で落ち着いていられるほど局面は単純化していない。

13.Ng5 Bxg2 14.Kxg2 Nc6 15.Nce4 Rad8 16.Nxf6 gxf6 17.Ne4 f5 18.Qh4+ Ke8 19.Nf6+ Kf8 20.e4!

 もちろん白は缶切りを持ち出して黒陣を切り崩す。

20…Ne5 21.exf5 Qxc4??

 このポカはh6でのチェックでもっとひどくとっちめることができた(ギリのやり方でも十分であるが)。しかし黒はいずれにしても局面に満足なところはほとんどなかった。

22.Rd4 Qe2 23.Nxh7+ Ke8 24.Nf6+ Ke7 25.Nd5+ 1-0

 25…Kd7 26.Qe7+ Kc6 27.Qc7+ Kb5 28.Qxb6#

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(この号終わり)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(094)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 ここでもやはり白駒は自分のキングの守りに戻れない。

ビズガイアー対フィッシャー
西部オープン、1963年
 34.Qxc7

34…Nxh2! 35.Kxh2

 この手のあと黒のクイーンとビショップが白キングの頭上に殺到する。ねばり強い選手なら 35.Qf4 Qxf4 36.gxf4 Nxf1 37.Rxf1 Ba6 38.Rfb1 と指すだろう。アリョーヒンが言っていたように「詰まされるの本当に好きでない」。

35…Qxf2+ 36.Kh1 Bg4 白投了

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(093)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の局面でも黒キングが勝手気ままなことをしている。黒の大駒はすべてありもしない攻撃のために結集している。一方白は裏戸口から押し入る。

フィッシャー対メドニス
ニューヨーク、1957-58年
 31…fxe6

32.Rxe6! Bxa3

 黒は白ルークがチェックで参戦しないように(32…Kxe6 33.Qg4+ Kf7 34.Rf2+)e7の地点を空けた。

33.Nxa3 Kxe6 34.Qg4+ Ke7 35.Rf2 Re8

 黒はルークを盾にしようとしている。しかし7段目での白のクイーンとルークの整列は致命的だった(第12章「連結」を参照)。

36.Qg5+ Kd7 37.Rf7+ Kc8 38.Qf5+ Kb8 39.Qd7 黒投了

(この章続く)

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ポルガーの定跡指南(9)

「Chess Life」2003年1月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

カロカン防御 [B14]
白 IMブラッド・トメスク
黒 GMイゴール・ヘンキン
パドバ、1998年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Bb4 7.cxd5 Nxd5 8.Bd2 Nc6 9.Bd3 Be7 10.O-O O-O

 白駒の方が動きが自在である。黒はまだ白枡ビショップを展開しなければならない。しかし白には孤立d4ポーンがある。
 評価 白は主導権を維持するために攻撃的に指す必要がある。さもないとこの試合に見られるように黒が陣形の優位のせいで優勢になる。

11.a3 Nf6 12.Be3 b6

 黒はやっと白枡ビショップを展開しようとする。

13.Rc1 Bb7 14.h3 Rc8

 この局面で形勢が互角になった。

15.Bb1 Na5 16.Ne5 Nc4 17.Nxc4 Rxc4 18.Qd3

 ビショップとクイーンをb1-h7とc1-h6の斜筋に据えて黒のキング翼を攻撃するのが白の作戦である。

18…Rc8 19.Rfd1 Qd7 20.Bg5

 この手は 21.Bxf6 から 22.Qxh7# を狙っている。

20…g6

 黒はその狙いを止めた。

21.Qg3 Rfd8

 黒はキング翼がいくらか安全になったのを機会に自分の作戦に沿って孤立d4ポーンに圧力をかけた。

22.Qh4 Nd5 23.Ne4 Bxg5 24.Nxg5

24…Nf6 25.Ba2

 代わりに 25.Rxc8 Rxc8 26.Ne4 Nxe4 27.Bxe4 Bxe4 28.Qxe4 と指せば、たとえ白の孤立d4ポーンのせいで黒の収局の態勢が優っていても白が引き分けにできる可能性が高かっただろう。

25…Kg7

 白は攻撃の具体策を立てることができない。一方黒はクイーン翼で反撃を策する余裕がある。白の孤立d4ポーンは弱点のままである。この局面は明らかに黒が優勢である。

26.Rxc8 Rxc8 27.Qf4 Rc2

28.Qe5

 ここは 28.Re1 とした方がe6のポーンに直接圧力がかかり少なくとも反撃の可能性がいくらかあるので少し優った。28.Rd2 と指すのは 28…Rxd2 29.Qxd2 h6 30.Nf3 Bxf3 31.gxf3 e5 32.d5 Qxh3 で黒が勝勢の局面になる。

28…h6 29.h4

 29.Nh7 は 29…Qd8 30.Nxf6 Qxf6 で黒がずっと有利な収局になる。

29…Bd5

 29…Rxb2 も非常に良い手である。黒は単にポーンを取ることができ白はそれでも全然反撃ができない。黒が圧倒的に優勢な局面である。

30.Bb1 Rxb2

 黒が勝つのはもう時間の問題である。

31.Rc1?

 31.Bd3 でも助からないが本譜の手よりはましである。黒は 31…Ra2 と応じてaポーンを取る。

31…Qb5! 32.Bc2??

 白はどう指しても負けだがこれはビショップをただであげてしまう。

32…Rxc2! 白投了

 33.Rxc2 なら 33…Qb1+ でルークが落ちる。

最終結論

 カロカンは黒の非常に堅固な防御法である。パノフ=ボトビニク攻撃では弱い孤立d4ポーンを補うために白はa2-g8、b1-h7それにc1-h6の斜筋を利用してキング翼への積極的な攻撃を維持しなければならない。

 e5の地点は白にとって重要で、白は好機をとらえてd4のポーンをd5へ突かなければならない。黒の作戦はキング翼を注意深く守りながら白のd4ポーンに圧力をかけることである。ポーンの形に優る黒は機会があれば駒を交換して自分に有利な収局に持って行くのが普通である。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(092)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 戦力をひたすら集中させた効果は次の普通の局面によく現れている。白の優位はキング翼ルークを敵キングをにらむ位置に持ってくることができたことのみにある。

フィッシャー対クッパー
チューリヒ、1959年
 19…Bf6

20.Bxh6! gxh6 21.Qe3 Bg7 22.f6 Rh8 23.Rf1!

 白はビショップを取る手を急がない。なぜならここで …Bf8 と逃げるとキングの逃げ道をふさぎ Qe4+ とされるからである。まもなく黒は詰みが避けられなくなった。

(この章続く)

2012年01月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(30)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 183ページ
『その後も、ボトビニクは以下のように分析を修正し続けたが、不十分だ。』

英文『Botvinnik then went on to give a corrected analysis which, as we shall see, also falls short.』

go on to do は「続いて次に(・・・)する」という意味である。例えば He started as a clerk and went on to be a movie star. は「彼は事務員から始めて映画スターにまで登りつめた」という意味になる(「映画スターを続けた」のではない)。念のため書くと go on doing なら「・・・し続ける」という意味である。例えば He went on working till late at night. は「彼は夜遅くまで仕事を続けた」という意味である(He went on to work … だと「他のことをしていたが、次に仕事に取りかかった」の意味)。give a corrected analysis は動詞に give を使った英語特有の表現で、「修正された分析を示す」という意味である。
51…b5? の解説の文章は1ページ半にわたる長さであるがきちんと読めばストーリーがあることが分かる。まず、2番目の段落でボトビニクは「黒の最善の変化 51…Kd4! に対してもドローにできると最終的には結論した。」と言っておいて長い変化の終わりでその結論に反して「黒勝ち」と言っている。次の短い段落で「私は間違っていたのか?」と嘆いてみせている。そして次の段落で本命の修正された分析を示してやはりドローになると言っている。

試訳『ボトビニクは続いて修正版の分析を示したが、このあと分かるようにやはり不十分である。』

39 対決 183ページ
『ここでボトビニクと先を急いでも、次の局面図に至るだけだ。』

先を急いでも急がなくても次の局面図に至るが、何を言っているのだろうか?

英文『Here I break camp with Botvinnik, only to meet at the next diagram.』

break camp は「キャンプをたたむ」、with Botvinnik が加わって「ボトビニクと(一緒)のキャンプ(共同の分析)をたたむ」、そしてそれぞれの道(分析)を行っても、同じ所(次の局面図)で落ち合うことになるだけである。
ここまではボトビニクの解説にフィッシャー自身の解説をさしはさむときは[]でくくって示していたが、このあとはフィッシャーの解説だけなので必要なくなる。

試訳「ここでボトビニクの分析とは別れる。それでも次の局面図でまた出会うことになるだけである。」

39 対決 183ページ
『彼は 56…Kb4 が白にすぐドローにされることを示した。』

ボトビニクの分析とは別れたのだからドローにされる手順はフィッシャーの分析のはずである。

英文『He gives 56…Kb4 overlooking that White can obtain an immediate draw with 57.Rg7! ・・・』

overlooking の主語は He すなわちボトビニクである。だからボトビニクはドローにされる手順を示していない。

試訳「ボトビニクは 56…Kb4 を示したが白が 57.Rg7! ・・・ですぐにドローにできることを見落としていた。」

2012年01月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 名著の残念訳

フィッシャーのチェス(091)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 相手の受けを予想して筋の開通を準備するときは、その結果はたいてい意想外の手となる。次の局面では e5 突きが攻撃の鍵となることは明らかである。受けも …f5 突きの一手なのでこれまた明らかである。これらを考え合わせてフィッシャーは高等な「防御予知」の手を指した。専門用語を持ち出すまでもなくフィッシャーなら単に「一発」と呼んだだろうし、それで十分だった。

フィッシャー対ベンコー
ニューヨーク、1963-64年
 18…exd4

19.Rf6! Kg8 20.e5 h6 21.Ne2!

 白は黒のナイトを当たりにしたままキング攻撃の途中で一呼吸おいた。その眼目はナイトが逃げれば Qf5 で次に詰みになるということである。黒はここで投了した。フィッシャーが11-0で完全勝利した全米選手権戦の最終戦の前の回でこれは起こった。この痛快な試合は特に甘美な思い出だったに違いない。

(この章続く)

2012年01月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(090)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 攻撃の筋を開(あ)けるにはしばしばX線透視が必要となる。即ち邪魔しているナイトとポーンを透かして見ることができなければならないし、邪魔物を強制的に取り除くことができればどうなるかを見通すことができなければならない。次の局面での缶切りはビショップとf8のルークの焦点にいるナイトが務めることになった。それでもたった4手でこのビショップとルークが白キングを脅かすようになるとはありえないことのように思われた。

タリ対フィッシャー
キュラソー、1962年
 21.g4

21…Ng3!

 どの「捨て駒」の場合でも差し出された駒を取らなければ「ならない」のか確認することが常に大切である。ここでは疑問の余地はない。ルークが当たりになっているしe2の地点での「家族チェック」の狙いもある。

22.fxg3 Qxg3+ 23.Kf1 f5

 これはルークのためにf列を開けようとしている。

24.g5 f4!

 これでビショップの斜筋が開いた。この捌きでフィッシャーは難局を引き分けにすることができた。

(この章続く)

2012年01月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(252)

「Chess Life」2011年9月号(4/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 次の試合はシャバロフ戦でのナカムラの最もみごとな勝利である。舞台は2005年フォックスウッズオープンで、ナカムラが9戦し7½点で優勝した。

 白番のナカムラが21手目を指すところである。

 20…g5

 ナカムラは驚愕の 21.f4! を指した。黒にg列の開通をけしかけて白クイーンがキング翼に転回できるようにし、e1-h4の斜筋にビショップの引き場所も用意している。21…gxh4 と取ってくれば 22.Rxg8+ Nxg8 23.Qg2 Ng6 24.Bxf7

で決まる。シャバロフは 21…Ng6 と指し白は 22.Be1 と引いて黒クイーンへの直射攻撃と単に 23.fxg5 と取る手を狙った。試合は次のように進んで終わった。

22…Nxf4 23.Nd5! Qxe1+ 24.Rxe1 cxd5 25.exd5 Bb4 26.Rf1 Rge8 27.a3 Bd6 28.Qf5 N6h5 29.Rgg1 Kg7 30.h4 黒投了

「ヒカルはコンピュータのようだ・・・彼の読みには誤りがほとんどない。」-アレグザンダー・シャバロフ

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(この号続く)

2012年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(089)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 実戦で最も人気のある攻撃の手は Qh5 である。「マスターたち」がその威力を過小評価することの多さは信じられないほどである。

フィッシャー対ウンツィカー
ライプツィヒ、1960年
 46…Qb8

47.Qh5

 黒のhポーンが受からないので、白が読まなければならないのは(Qxh7+、Qh8+、Qxg7 のあと)g6 突きがビショップを見捨てるのに値するかということだけだった。そしてその価値があった。

(この章続く)

2012年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(088)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入

 優勢な戦力を集中させることにより大抵のことにけりがつくというのはチェスの棋理である。だから攻撃側の「やり方」は防御側の戦力を減少させるか攻撃のためにもっと駒を結集させることになる。多くの場合単にあるたけの開(あ)き筋を利用して敵キングを追いかける問題になる。

フィッシャー対フォリントス
モナコ、1967年
 28…Rd4

29.Re3!

 Rg3+ から Bxf6+ で詰みに討ち取る狙いのちょっとした可能性のために黒はビショップでe4のポーンを取ってg6の地点に割って入るようにすることを強いられた。黒の大きな譲歩というほどではないが白が勝つには十分である。もし黒が 29…Rxe4 と取れるなら異色ビショップの収局になって引き分けが約束されるところだった。

(この章続く)

2012年01月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(157)

「Chess」2011年7月号(11/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747(続き)

 それでは決着のついた第6局に専念しよう。

決勝戦第6局
B・ゲルファンド - A・グリシュク
グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.g3 d5 5.cxd5 Nxd5 6.Bg2 Nb6 7.Nc3 Nc6 8.e3 O-O 9.O-O

9…Re8

 9…e5 は流行らなくなった。そして本譜の手の方が白の建設的な応手が尽きることがあるということで優ると考えられている。9…e5 10.d5 Na5 11.e4 c6 12.Bg5 f6 は白が少し優勢と考えられていて、カスパロフは先に 9…Re8 と指すことにしていた。

10.Re1 a5

 流行しているのは 10…e5 11.d5 Na5 12.e4 c6 13.Bg5 f6 で、1988年オプティブールスでのカルポフ対カスパロフ戦でも指された。

11.Qe2 Bg4

 どういうわけかグリシュクは次の最も楽と思われる手順を避けた。11…e5 12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 Bxe5 14.f4(14.e4 Be6 15.f4 Bd4+ 16.Be3 Nc4 17.Bf2 c6 18.Red1 Bxf2+ 19.Qxf2 Qb6

は白がわずかしか優勢でない)14…Bxc3 15.bxc3 Bf5

は黒が指せる。実戦は白がどのみち h2-h3 と突くようになるので黒がそれを誘うのに1手費やすのは奇異に思われる。

12.h3 Be6

13.b3!

 この新手はうまい手だった。ゲルファンドは明らかに局面をより深く研究していた。13.Rd1 は 13…Bc4 14.Qe1 a4 で黒に反撃される。

13…a4 14.Rb1! axb3 15.axb3 Qc8

 黒は理想的にはd5とe4の地点を支配して白のポーンを押さえこみたいところである。この試合は黒がそうできるかどうかをめぐってずっと進んでいく。グリシュクは戦術的な狙いを持ち続けようとするがゲルファンドの断固たる方針は揺るがず、狙いが尽きたときに戦略的な勝利を収めた。

16.Kh2 Ra5 17.Rd1 Rh5 18.Nh4 Bf6 19.f4!!

 グリシュクは黒の作戦をくつがえすこの妙手を見落としていたと認めた。

19…Rd8

 黒は e3-e4 突きを邪魔するためにd4の地点に圧力をかけた。19…Bxh4 は 20.gxh4 Rxh4 21.Kg3 Rxh3+ 22.Bxh3 Bxh3 23.d5 Nb4 24.Ba3 c5 25.Bxb4 cxb4 26.Ne4

で白が優勢になる。

20.Qf2 Bxh4?

 これは長い目で見れば陣形的に負けになる。黒には他にもっとましな手があったが、20…Nb4 21.Bd2(21.e4 は 21…c5! で互角になる)21…c5 22.Ne4 Bxh4 23.Nxc5! Bf5 24.Bxb4 Bxb1 25.Rxb1 Bf6 26.Nxb7

は白がどのように駒配置の優位を生かして優勢を勝ち取れるかを示すほんの見本手順である。

21.gxh4 Nd5 22.Nxd5

22…Rhxd5!

 最善手。22…Bxd5? は 23.e4 で白が戦力得になる。

23.Bb2!

 この手は e4 突きを狙っている。23.Bxd5?! は 23…Bxd5 から …Qf5 で黒が豊富な代償を得る。白はキングが弱く不良ビショップを抱えポーンは進む所がない。

23…Rb5?

 この手は負けになるが白は既に戦略的な戦いに勝っている。23…f5!? は 24.h5 Rb5(24…Bf7 は 25.hxg6 hxg6 26.Rg1

となって白が攻勢に立ちここで交換得することもできる)25.Qe2 Rxb3?(25…Rbd5 の方が良いがそれなら白は前述の作戦を追求することができる)26.d5

で白の勝ちになる。

24.Qe2

 24.e4 Bxb3 25.Rdc1 Ba2 26.Ra1 でも良いが実戦の手の方がもっと良い。

24…Rh5 25.e4! Bxb3 26.Rdc1

 白のポーンがころがり進む。一方黒は離れ駒があり黒枡の対角斜筋が大きな弱点になっている。もう受けがない。

26…Na5

 26…e6 27.Ba1! Na5 28.Qe1 Ba2 29.Rb2 Nb3 30.Rxa2 Nxc1 31.Qxc1

も黒の形勢がもっと悪くなり白のビショップがますます強くなる変化である。

27.d5 b6 28.Be5 c5

 28…Rd7 は 29.Qb5 で黒ビショップが包囲され、ルークと2小駒の白に有利な交換になる。

29.dxc6e.p.

 29.Qb5 でも白の勝勢だった。

29…f6

 29…Rxe5!? ならしばらく持ちこたえるが 30.fxe5 Qe6 31.c7 Rc8 32.Qd3 Qxe5+ 33.Kg1 Kg7 34.Qc3

で白が楽に勝つはずである。

30.Ba1

 30.c7 は 30…Rd7 31.Rxb3 Nxb3 32.Qc4+ Kg7 33.Qxb3 fxe5 34.Qxb6 exf4 35.Qb8 Rxc7 36.Qxc7 Qxc7 37.Rxc7 Kf6 38.Rc6+

で勝つはずではあっても技術的に難しいところがあるが、本譜の手はその困難を避けた。

30…Rc5

 30…Bf7 は 31.e5 Qc7 32.Qb5 Rd2 33.Kg1(33.Qxb6? は 33…Bd5!!

で黒が引き分けにできる)33…fxe5 34.Bxe5 Qc8 35.Qxb6

で白の勝ちになる。30…b5!? はやってみる価値があったかもしれないが、31.e5 Bc4 32.Rxc4! bxc4(32…Nxc4 は 33.Rxb5 で白の勝ち)33.Bc3!

で勝勢になることを白が読めないことを期待するしかない。ここで例えば 33…Nxc6 なら(33…Qc7 は 34.Bxa5 Qxa5 35.Qxc4+ Kg7 36.exf6+ Kxf6 37.c7 Rc8 38.Rb8

で白の勝ち)34.Qxc4+ Kf8 35.exf6! で黒キングが四方八方から攻撃にさらされる。

31.Rxc5 bxc5

32.Qb5

 次のようにもっと速く勝つ手段があったがゲルファンドはここでとても速く指していても何もだめにしたわけではなかった。32.e5 Bd5 33.Bxd5+ Rxd5 34.exf6! Nxc6(34…exf6 は 派手な35.Rb8!! から 35…Qxb8 36.Qe6+ Kg7 37.Qxf6+ Kh6 38.Qg7+ Kh5 39.Qxh7#

で詰みになる)35.fxe7 Kf7 36.Re1 Ke8 37.Qa2

で黒は何かを差し出さなければならない。

32…Qc7

 唯一のチャンスはまず 32…Ba2! と指すことで、33.Rb2 なら 33…Qc7 で狙いが本物になる。その意図は 34.Rxa2?? なら 34…Qxf4+ 35.Kg1 Rd1+ 36.Bf1 Qg3+ 37.Rg2 Qe3+ 38.Rf2 Rxa1

で黒の勝ちになってしまう。しかし 34.e5! Be6 35.Qb6 Qxb6 36.Rxb6 Kf7 37.exf6 exf6 38.Bc3 Nc4 39.Rb7+ Kf8 40.f5 gxf5 41.Bxf6

なら白の勝ちになる。

33.Rxb3 Nxc6

 33…Qxf4+ は 34.Rg3 で簡単な勝ちになる。

34.e5

 eポーン突きは本局を通しての基調だった。

34…Nd4 35.Qc4+ 1-0

 正規チェスの名局だった。深遠な戦略とゆるみのない戦術が合体していた。


カザンで最後まで立っていた男(もちろん着席しているが)。2012年ビシー・アーナンドとの世界選手権戦を心待ちにしている。命がけの彼はあなどれない・・・

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(この号終わり)

2012年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(087)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 年を経るにつれてフィッシャーはますますカパブランカ流に危険な「におい」を嗅ぎ取るようになってきたようである。近年で彼が最もキングの敗走に近くなったのは、元世界チャンピオンのペトロシアンとの世界選手権戦の試合だった。

ペトロシアン対フィッシャー
12番勝負第2局、ブエノスアイレス、1971年
 17…Qa5

 フィッシャーはしばらくの間キングの落ち着き先を先延ばしにしてきた。f5のポーンは消える運命なので今ではキングが落ち着くことは絶望的になっている。それでも白軍が得点をあげるのには精力的な指し回しを要する。

18.Qc2 f4 19.c4 fxe3 20.c5!

 ここはポーン突きがクイーン昇格の目的のためでもなければキング翼での襲撃のためでもない極めてまれな局面の一つである。目的はただ局面をほぐし敵キングを揺さぶることである。

20…Qd2 21.Qa4+ Kf8 22.Rcd1 Qe2

 22…e2 23.Rxd2 Bxh2+ 24.Kxh2 exf1=Q としても望みがない。なぜなら 25.d6 から始まる白ポーンの進攻が速すぎるからである。

23.d6! Qh5

 これでフィッシャーは自分の名高い「クイーンの転回」を完了してクイーンをキングの守りにつけた。しかし今回は役に立たなかった。

24.f4 e2?

 ここで 24…Bf6 ならまだ戦えただろう。白は狙うは敵キングであることを見せつける。敵キングは命からがら逃げなければならない。

25.fxe5 exd1=Q 26.Rxd1 Qxe5 27.Rf1! f6 28.Qb3 Kg7 29.Qf7+ Kh6 30.dxe7 f5 31.Rxf5 Qd4+ 32.Kh1 黒投了

 この試合を見るとフィッシャーが闘牛士の役割を演じ、しぶる闘牛をつついて最後には角で突かれてしまった感じがする。

(この章終わり)

2012年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(086)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 世界選手権への最初の番勝負でフィッシャーはキング翼のポーンを進めたために難しい防御に立たされた。

タイマノフ対フィッシャー
10番勝負第3局、バンクーバー、1971年
 19…Kh8

 タイマノフはこの勝負所でひるみ、安全に 20.Nf3 と指した。それに対してフィッシャーは 20…Bb7 21.Rg6 Nf4 で敵の攻撃を追い払った。本当はソ連のコンサートピアニストは元気よく指すことができたはずだった。

20.Qh3

 Rxh6+ の狙いが受けにくい。20…Nf6 なら 21.Bb4 で白のすべての駒が攻撃態勢に入る[訳注 21…Qd4+ でこのビショップがただ取りされるので 21.Bc3 が正しいようです]。

(この章続く)

2012年01月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(8)

「Chess Life」2003年1月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

 実戦例を2局紹介する。1局目は白がカロカン防御に対する正しい対処の仕方を見せつけた。2局目は白の攻撃に対する黒の受けが成功し、反撃して勝ちを収めた。

カロカン防御 [B14]
白 GMアルトゥール・ユスーポフ
黒 GMエーリク・ロブロン
ヌスロッホ、1996年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Bd3 d5 6.Nf3 c5 7.O-O cxd4 8.exd4 dxc4 9.Bxc4

9…b6 10.Re1 Bb7 11.Bd3 Nc6 12.a3 Be7

 これでカロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃に移行した。

13.Bc2 Re8 14.Qd3

14…g6

 黒はb1-h7の斜筋でのいかなる攻撃の可能性も止めた。黒が斜筋の攻撃を無視して 14…Rc8? とのん気に指せば、15.d5 exd5 16.Bg5 Ne4 17.Nxe4 dxe4 18.Qxe4 g6 19.Qh4 で白が優勢になる。

15.h4 Qd6

 おそらく黒は 15…Rc8 と指した方が良く 16.Bg5 Nd5 17.Rad1 Bxg5 18.Nxg5 Nxc3 19.bxc3 Ne7 20.c4 Nf5 となればいい勝負である。

16.Bg5 Rad8 17.Rad1 Qb8

 17…Qc7 とここへ引くのは 18.Bb3 Nd5 19.Nxd5 で白が良い。

18.Bb3

18…a6?

 この手のせいで白は d4-d5 と突くことができ優勢になり勝つ可能性もある。ここは 18…Kg7 と指す方が良かった。以下 19.d5 h6(19…Nxd5 なら 20.Nxd5 exd5 21.Qc3+ で白が勝勢、19…exd5 も 20.Nxd5 Nxd5 21.Bxd5 で白の攻撃態勢が非常に強力である)20.Be3 で白が少し良い。

19.d5!

 この好手により局面が開放的になり、中央と黒のキング翼への白の攻撃が強力になる。
19…Na5

 代わりに 19…exd5 は 20.Rxe7! で白の勝勢になる。

20.dxe6!!

 これは非常に鮮やかな手筋である。

20…Nxb3

 黒が 20…Rxd3 とクイーンを取ると 21.exf7+ Kg7 22.fxe8=N+ Qxe8 23.Rxd3 Nxb3 24.Rde3 Kf7 25.Bxf6 Kxf6 26.Re6+ Kf7 27.Ng5+ Kf8 28.Nxh7+ Kf7 26.Ng5+ となって白が勝ちの収局になる。

21.exf7+

 21.Qc4! の方がずっと正確だった。そのあとは 21…fxe6 22.Qxe6+ Kg7 23.Ne5 となって白が攻めて勝つ。

21…Kxf7 22.Qc4+ Kg7 23.Ne5 Ng8?

 23…Nd5 でも 24.Bh6+ Kxh6 25.Nf7+ Kg7 26.Nxd8 で白が優勢である。

24.Rxd8

 24.Qf7+! の方がはるかに良い手で、24…Kh8 25.Rd7! Rxd7 26.Nxd7 Qd8 27.Nf6 となれば白が完全に勝勢である。

24…Qxd8 25.Qf7+

25…Kh8 26.Qxb3 Qd4 27.Re3 Rf8 28.Bxe7 黒投了

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2012年01月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(085)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーの世界選手権に至る前の大会における唯一の敗戦はキングが危ない位置にいたためだった。チェス界は無名選手によってあっけなく負けたニュースに驚愕した。

フィッシャー対コバチェビッチ
ザグレブ、1970年
 18.f3

 フィッシャーは危険をもてあそんでいる。黒の重火器はキング翼に結集しクイーンは策略で潮の流れを押さえ込もうとしている。

18…e3!

 これが策略の仕上げである。19…Nd5 が非常に速い手になるので白クイーンは 19.Qxe3 と取れない。そして代わりの手でも・・・

19.Bxe3 Nf8!

 これで白クイーンはキング翼をあとにして 19…Nd5 を許さなければならない。30手目でフィッシャーの投了となった。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(29)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 177ページ
『ここまでは、分析を覚えているだけでよかったが、』

英文『Up to here I had only had to remember my analysis,』

試訳『ここまでは分析を思い出すだけでよかったが、』

39 対決 182ページ
『この封じ手は読みを誤っている。』

英文『This is a mistake in analysis.』

試訳「この手は分析の誤りである。」

39 対決 182ページ
『59…Qe5! の方が狡猾。』

英文『59…Qe5! seems to do the trick:』

do the trick で「目的を達する、うまくいく」という意味。このあと「68.Ra5 seems to hold here」というフィッシャーの解説が現れるので、ここで 59…Qe5! という手が意味を持っている。

試訳「59…Qe5! が良い手のようである。」

2012年01月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(084)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 次の局面では両軍とも互角の展開なので黒陣には何も悪い所がないはずである。それでも黒キングの周りにはわずかな弱点がある。それはe7とh6の地点に敵駒の侵入する隙があるということである。

ベンコー対フィッシャー
ブエノスアイレス、1960年
 20…Nxc4

21.Nd5! Qf7

 このめざわりなナイトは取れない。取ると斜筋でキングとナイトの両当たりになる。

22.Bh6!

 このあと白は単純にg7で駒を交換し、c7の地点か …Rc8 ならe7の地点で両当たりをかける。

(この章続く)

2012年01月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(083)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 王印防御では黒はキング翼で攻撃をしかけて白の反対翼での活動とのバランスを取るのが普通である。しかし次の局面では白は吹きさらしの黒キングの状態を点検して機敏にキング翼に目を向け直した。

タリ対フィッシャー
ブレッド、1959年
 18…gxf5

19.f4

 戦術的に問題ないことが保証されるならばこれが連結ポーン横隊を無力にする手段である。ここでの戦術的な保証は 19…e4 なら黒に狙いが何もなくなりビショップが自軍のポーンによって閉じ込められるということである。

19…exf4 20.Qxf4!

 白は裸の黒キングを追っている。

20…dxc5 21.Bd3 cxb4 22.Rae1 Qf6 23.Re6!

 白は一見良さそうな 23.Bxf5+ に飛びつかなかった。それはc3のナイトがまだ当たりになっているので、黒は駒交換に応じてもよいからである。本譜は白がまたたくまに勝勢になった。

23…Qxc3 24.Bxf5+ Rxf5 25.Qxf5+ Kh8 26.Rf3!

 そして白が勝ち切った。

(この章続く)

2012年01月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(251)

「Chess Life」2011年9月号(3/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 次も2004年でワールドオープンでの面白い収局である。白番のナカムラが45手目を指すところである。

 44…b3

 二つの交換得にもかかわらず中央の黒駒が強力で黒ポーンも進攻しているので白が守勢である。まもなく白は陣形を改善する機会を逃し結局かろうじて引き分けに持ち込むことができた。

46.g4 hxg3e.p. 47.Kxg3

 46.h4! とパスポーンを突き進め黒に心配の種を与える方が強手だった。46…Nf5 なら 47.Kg4 で白の展望の方が少し良い。

46…Nd5 47.Kf3 Kb4 48.Ke4 c3! 49.bxc3+ Nxc3+ 50.Kd3 Nxa4 51.Rc4+ Ka3

52.Rxd4

 代わりに 52.Rxa4+ と取っても互角の局面である。

52…exd4 53.Kxd4 b2 54.Rxb2 合意の引き分け

 このあとの想定手順は 54…Nxb2 55.h4 Kb4 56.h5 Nc4 57.h6 Nd6 58.h7 Nf7 59.Ke3 Kb3 60.Kf4 a5 61.Kf5 a4 62.Kf6 Nh8 63.Kg7 a3 64.Kxh8 a2 65.Kg8

 2004年終わりの時点でシャバロフが3試合中唯一の勝ち星をあげ2点だった。それ以来引き分けはない!

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(この号続く)

2012年01月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(082)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーはいつもそんなに運のいい側にいるわけではなかった。「神童」を広く紹介するために設けられた特別試合で元世界チャンピオンのマックス・エーべ博士は敵を自陣に招き入れるのは危険な場合があることを実演した。

エーべ対フィッシャー
番勝負、ニューヨーク、1957年
 13.Nf4

13…Qb6 14.Bxf6 Bxf6 15.Qd3 Rfd8

 黒はキングを逃がさなければならない。15…g6 は 16.Nxg6 と切ってこられる。

16.Rae1! Nb4

 黒は白のわなにまんまとはまった。実際に現れるように白は注意深くe7の地点に逃げられないようにしていた。

17.Qh7+ Kf8

エーべ対フィッシャー
 17…Kf8

18.a3! Nxc2

 白は黒が 16…Nb4 と指した手をさかてにとった。

19.Ncxd5! Rxd5 20.Nxd5 黒投了

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(081)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーのキングは次の局面で住居をなくしていた。相手は時間に追われて、勝利を決定づけることができたかもしれない単純な狙いに気づかなかった。

ビレク対フィッシャー
ストックホルム、1962年
 24…Qxc2

25.Rg8?

 薄いキングに対する中心となる考え方は自分のチェックの可能性を増すことである。この理由だけでも 25.Qe7 が浮かび上がる。f7の地点での壊滅的なチェックを避けるために黒は 25…Qc4 と受けなければならない。それならば 26.Rf3! で次に致命的な Rg3+ を狙う[訳注 27…Kh7 28.Rg3 Qg8 で黒勝ちのようなので、26.h3 が良くまったくの互角のようです]。実戦では狙いがなくなった。

25…Qf2 26.Rf8 Qxa2 27.Rf3 Kh7 黒投了

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(156)

「Chess」2011年7月号(10/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747

 ということで決勝戦に残ったのは意外な二人だった。レイティング上では競技会開始時の8選手中の第5位と第7位である。しかし最高と最低の選手のレイティング差がわずか76点では眉をしかめる者は多くないはずである。願わくばこの競技会での良いこととしてレイティング表への懐疑が大きくなることを望む。多くのチェス選手が絶対的なものと思っている。

 以下はインタビューでのボリス・ゲルファンドの試合の感想である。

質問 あとでサーシャ・グリシュクは「ボリスの素晴しい指し回しに翻弄された。6試合で彼の指した悪手はたった1手だった」と言ったとされる。あなたの発言では「我々の試合は激闘だった。3回負けの瀬戸際に立たされた」と言ったとされる。あなたとサーシャは友人でたぶんお互いに儀礼的すぎるか寛大すぎるようだ。この何週間かで試合内容を振り返ったことがあるか?もしそうならもっと別の結論に至ったか?

 「面白い。あなたの言うことはまったく正しい。しかしある意味で我々二人は正しい。第2局で私はとんでもない手、22.Bxh8を指した。そして苦戦に陥った。他の2回は布局でうまく対処しなかったために苦戦した。布局が過ぎてしまえば非常にうまく指せた。だから彼の言うことは合っている。」

 「しかし第1局と第5局の布局の指し方に満足しているわけではない。第1局では私の知識は古くなっていて嫌な局面になって受けに回らなければならなかった。しかしこの試合ではうまく守れたと思う。本当に不快な試合で、私が対処しなければならない多くの可能性が彼の方にはあった。第5局はかなり守勢の局面だった。彼には多くの作戦があったが正しいものを選んでこなかった。こちらが駒をうまく配置できたと思うし、22…e5 でほとんど互角にして局面がそれまでより苦しくなくなった。」

 「我々はお互い準備する時間が多くなかった。私は前の番勝負でグリューンフェルトに対処しなければならなかった。だからそれを繰り返した。そして私はクイーン翼ギャンビットに対処しなければならなかった。それで彼はそれを繰り返さなければならなかった。だから我々は同じ布局でやっていかなければならなかった。」

 試合は6番勝負で最初の5局は引き分けだった。それぞれ内容のある試合だった。例外は第4局で少し退屈だった。第3局は14手だったが非常に面白かった。ゲルファンドが9手目でかなり印象的な …b7-b5 突きの犠牲を繰り出し、相手の気力を削いで早々と引き分けにさせた。


グリシュク戦の開始を待ちながらぼんやり考えている様子のゲルファンド

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(080)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング

 キングが死ぬのはどんな原因よりもまず薄さからのことの方が多い。薄さの基本的な意味の中には、キングが通常の居住地を離れ異国に避難先を求めなければならない状況がある。ボビー・フィッシャーはアリョーヒンのように詰まされるのが好きでない。しかし彼は純粋に局面を考慮して自分のキングを進んで危険にさらすことが他のどんな世界チャンピオンよりも多かった。

 最初はフィッシャーが勝つ側だった有名な実戦例である。

フィッシャー対ベンコー
ブレッド、1959年
 32…Rg8

 黒キングは裸に近い。白のやらなければならないことは黒キングに迫る方法を見つけることがすべてで、次のように行なっている。

33.a4! bxa4 34.Rb1 e5

 黒はハッチを締めようとしたがわずかに1手の差で手遅れだった。

35.Rb7+ Kd6 36.Rxg7 exf4 37.Rxg8

 黒はクイーンにひもが付いていない方が良かった。

37…f3+ 38.Kh1 Kc5 39.Rb8! 黒投了

 これは「ルークの間合い」と手詰まりの好例である。黒のキングかポーンのどちらかが他方を見捨てなければならない。[訳注 39…a3 40.Rb3 a2 41.Ra3]

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(079)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 局面がますます複雑になるにつれて狙いと受けをより正確に読みきることのできる選手の方がずっと有利になる。次の局面でフィッシャーは典型的なシチリア防御のポーンの嵐に見舞われているが、自分の駒による攻撃の方が先に行き着くことを正確に見通していた。

ミニッチ対フィッシャー
ザグレブ、1970年
 16…O-O

17.Nf5

 代わりに 17.Nxe6 は 17…fxe6 18.Bxe6+ Kh8 19.Nd5 Qc4 となって黒が優勢である。黒の防御の骨子は(1)白のeポーンを攻撃し取ってしまうこと、その際(2)白キングの守り駒の一つと交換すること、そして(3)両方のルークでクイーン翼で圧迫を加えることである。以下の手順は白が攻撃を緩めることができないのでこれらの観点からきわめて分かりやすい。

17…Nc5 18.Nxe7+ Qxe7 19.h5 Bb7 20.h6 Bxe4 21.Nxe4 Nxe4 22.hxg7 Rc8!

 そして黒の攻撃で白陣がすぐに粉砕された。

 フィッシャーの初期から最近までの試合の実例で、キングに対する攻撃は思慮深く直接的だった。どこからともなく生じるような攻撃、あるいは他の目的への呼びかけとしてやって来る攻撃ははるかに痛烈であることがよくある。世界中の偉大な攻撃型選手たちが異彩を放つのはともすれば穏やかな局面でキングのよろいにきずをかぎとるこの状況である。以降の章にはフィッシャーが試合の中心人物から決して目をそらさない選りすぐった実例がある。少なくともロシア語では「王手詰み」が競技の名前である

(この章終わり)

2012年01月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(7)

「Chess Life」2003年1月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

 今月はカロカン防御を取り上げる。カルポフ、コルチノイ、カスパロフ、アーナンド、イワンチュク、レーコー、ハリフマン、セイラワンのような世界の一流選手たちの多くがこの定跡を黒番での得意戦法に選んでいる。これは黒の堅実な布局で、相当の反撃力があるがシチリア防御ほど強烈ではない。

 本稿ではパノフ=ボトビニク攻撃を調べることにする。この定跡に特有なことは初めの手順は違っても多くの異なった布局から生じることである。ちょっと名前を挙げただけでもニムゾインディアン、クイーン翼ギャンビット受諾、あるいは準タラシュがある。白と黒の主要な構想は何だろうか。それは単純である。

 ●白の作戦は中央を攻撃し黒がキャッスリングしたあとはキング翼を攻撃することである。

 ●黒の作戦は白のキング翼攻撃を撃退しながら白の孤立dポーンにつけ込んでいくことである。

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4

 これがパノフ=ボトビニク攻撃の陣形である。

4…Nf6 5.Nc3 e6

 黒が 5…g6 と応じれば 6.Qb3

6…Bg7 7.cxd5 で白がわずかな優勢を維持する。

 また黒が 5…Nc6 と指せば 6.Nf3 Bg4

7.cxd5 Nxd5 8.Qb3 Bxf3 9.gxf3 e6 10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ で収局になる。そして 11…Nxb5 12.Qc6+ Ke7 13.Qxb5 Qd7 14.Nxd5+ Qxd5 15.Qxd5 exd5 16.O-O Ke6 17.Re1+ Kf5 18.Rd1 Rd8 19.Be3 Rd7 20.Rac1 Be7 21.Rd4 となれば白がわずかに有利である。

6.Nf3

 ここで黒の6手目には主要な手が二つある。

Ⅰ)6…Bb4

 この手の意図はナイトを釘付けにして白の駒の連係を乱すことである。

7.cxd5

 白は 7.Bd3 dxc4 8.Bxc4 O-O 9.O-O と指すこともできる。

 この局面は通常は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Nf3 d5 6.Bd3 c5 7.O-O dxc4 8.Bxc4 cxd4 9.exd4 という手順から生じ 9…Nc6(9…b6 は 10.Qe2 Bb7 11.Bg5 Nbd7 12.Ne5 となって白に主導権がある)10.a3 Be7 で複雑な展開になる。

7…Nxd5 8.Bd2

 白は 8.Qc2 と指すこともでき 8…Nc6 9.Bd3 Be7 10.a3 Nf6 と進む。

8…Nc6 9.Bd3 Be7

 黒はビショップをb4に出してからe7に引いて1手損をしているように見える。しかしこの場合はそれに当たらない。黒の着想は白に Bd2 とさせることで、そうなれば白はd4のポーンを守るのがもっと難しくなる。

10.O-O O-O 11.Qe2 Nf6 12.Ne4 Qb6 13.a3 Bd7

 これはカームスキー対カルポフ戦(世界選手権戦第4局、1996年、エリスタ)である。黒は陣形に何の問題もない。

Ⅱ)6…Be7 7.cxd5 Nxd5 8.Bd3 Nc6 9.O-O O-O

 驚くべきことにこの局面はいくつかの異なった手順から生じる。一例をあげると 1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 Nc6 7.Bd3 Be7 8.O-O cxd4 9.exd4 O-O である。

10.Re1

 10.a3 もよく指される手で黒が 10…Nb4 と指すのを防いでいる。

10…Bf6

 ここでは黒は 10…Nf6 や 10…Qd6 と指すこともできる。しかし 10…b6? は悪手で 11.Nxd5 で白が優勢になる。

11.Be4 Nce7 12.Ne5

 白にいくらか主導権がある。

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2012年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(078)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 どちらが先に行き着くかという場合になることも多い。フィッシャーは時には自分の取り出した刃にかかって死ぬこともあった。ただし超一流の才能を持っている者に対してだけである。

フィッシャー対ゲレル
スコピエ、1967年
 19…Nxe4

20.a3?

 キングの防御における一般的な原則は、強いられない限りキングを保護しているポーンに決してふれるなということである。この手はb3の地点を弱めるが、先を見通すことは難しかった。

20…Qb7 21.Qf4

 フィッシャーの類まれな分析によれば、1手前にこの手を指せば勝っていたそうである。その手の狙いは Rh5 で、ありとあらゆる詰みの可能性がある(21…d5 なら 22.Qe5 で、黒はf6の地点に駒をさしはさんでも白に2回取られて詰みになるだけである)。

21…Ba4!

 違いは 22.Rh5 Bxb3 23.Bxg7+ Kxg7 24.Qh6+ Kxf7 というように、白の白枡ビショップを消すことにより黒キングがf7の地点に逃げることができ白の狙いを粉砕することができることである。それに白が白枡ビショップの支えを減らしたので 23.cxb3 には 23…Qxb3 が不吉の前兆になる。

22.Qg4 Bf6 23.Rxf6 Bxb3! 白投了

 黒の …Ba2+ からの詰みの狙いが受からない。

(この章続く)

2012年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(28)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

38 推理小説 171ページ
『初期の攻撃的だった頃から、ケレスは戦略的かつ受けの棋風に切り替えてきた。それにしても、この局面は度が過ぎるというものだ。』

ケレスはここまで特に受け過ぎの手を指してきたわけではない。

英文『…But this type of position is too much even for him.』

いくら彼でも(even for him)荷が重い、手に負えないと言っている。

試訳『・・・それにしても、この局面はいくら彼でも受け切るのは大変である。』

38 推理小説 172ページ
『このナイトを隊形へ参加させる試み。』

英文『An attempt to bring this Knight toward the embattled sector.』

embattled には「戦闘隊形をとった」という意味のほかに「要塞化した」という意味もある。

試訳「黒はこのナイトを要塞化した方面に参戦させようとした。」

39 対決 175ページ
『緊張のあまり、彼のいまだ屈強な陣形が衰退し始める。』

緊張すると陣形が衰退するものだろうか?ボトビニクのような百戦錬磨の世界チャンピオンでもフィッシャーのような若造相手にそんなことになるのだろうか?

英文『Nervously, he proceeds to run his still tenable position downhill.』

ここでの run は他動詞で「・・・を(ある状態に)追いやる」という意味である。position が「・・・を」、downhill が「ある状態に」に対応する。

試訳「いらいらした彼はまだ防御可能な局面を悪化させていく。」

2012年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 名著の残念訳

フィッシャーのチェス(077)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 フィアンケットビショップはどかすのが難しいやつだが、手段はある。

フィッシャー対プレブジャフ
バルナ、1962年
 17…e5

18.Nf5!

 18…gxf5 には単純に Bxg7 から Qg3+ とされるので黒はビショップ交換を余儀なくされた。18…Bxf5 と取るのは白のポーンが攻撃に加わってくる。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

国を背負う指導者の気概

毎日新聞電子版2012年1月7日
田中の野人外交

2012年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(076)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 白の白枡ビショップの利きが止められている場合はh列に殺到する単純な狙いが決め手になることが多い。

フィッシャー対グリゴリッチ
ブレッド、1959年
 25…Nh5

26.Rxh5! gxh5 27.Qxh5 Be8 28.Qh6!

 これはよくある策略である。Rh1 または g6 で攻撃を続ける前に黒キングが逃げられないようにした。ほどなく白が勝った。

(この章続く)

2012年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(250)

「Chess Life」2011年9月号(2/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)

 重要な大会で戦いを繰り広げることは宿敵となることの基盤で、この二人の一流グランドマスター同士の勝負は確かにこれまで火花を散らしてきた。これらの抗争で特に目立つのは6勝のうちの5勝で勝った方が大会に優勝したことである。

 初めて勝負のついた試合は2004年シカゴオープンでの最終戦だった。27手目のあと白番シャバロフの手番で次の局面になった。

 27…Rxd5

 白は 28.Rc6 ですぐに黒のaポーンに対し包囲攻撃を始めることができる。しかし代わりにビショップを5手連続動かす方を選んだ。

28.Bc3 Rd8

 黒はこれに代わる手が 28…Rc5 29.Rxc5 Nxc5 30.Bd4 と 28…f5 の二つある。どちらも手段は異なるがポーンを取られる。28…f5 が一番てごわい抵抗だった。

29.Bf6 Re8 30.Bd4 Nb8 31.Bxa7 Nd7 32.Bd4 Ra8 33.Rc7 Nf8 34.Ra7

 白のよどみない技法が勝利を引き寄せる。

34…Rd8 35.Be3 Kg7 36.a4 Ne6 37.a5 Rd3 38.Kf2 Ra3 39.Bb6 Rb3 40.Ke2 Kf8 41.Kd2 Ke8 42.Kc2 Rb4 43.Kc3 Rb1 44.Be3 Ra1 45.Kb2 Ra4 46.a6 Kd8 47.Ra8+ Kd7 48.a7 h5 49.Rb8 Nc7 50.Kb3 Ra1 51.h4 Ra6 52.Bf2 Ra1 53.Bb6 Kc6 54.Bxc7 Rxa7

 黒はようやく白のaポーンを取ったが敗勢であることには変わりない。

55.Bf4 Kd7 56.Rb6 Ra1 57.Kc3 Rg1 58.Rb2 f6 59.Kd3 Rh1 60.g3 Ke6 61.Rb6+ Kf5 62.Bd2 Rd1 63.Ke2 黒投了

 シャバロフはこの勝利でGMヤーン・エールベストと共に優勝することができた。

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(この号続く)

2012年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス2

フィッシャーのチェス(075)

第3部 競技の名前

第9章 標的はキング

 キングに対する直接攻撃はおかしなことに並のチェス選手たちの間ではそうであるべきなのに一般的でない。わずかな優位の積み重ねが詰みの逃れられない現実感を鈍らせてしまう洗練されたレベルに達してしまう選手が多すぎる。レシェフスキーはかつて挑戦者決定競技会のある試合で2手連続して1手詰みを見逃したことがある。フィッシャーの場合は似たようなチェスの盲目の例がない。たぶんめったに時間に追われないためだろう。それよりもはるかに顕著なことは自分のキングの安全を犠牲にしてもフィッシャーがキングへの直接攻撃をたえず追求することである。この点で彼はスパスキーに似ていて、ボトビニク、アリョーヒンそれにカパブランカには似ていない。

 シチリア防御がはやっているのは現代のキング翼での攻撃的な指し方の原因ないしは効果かもしれない。フィッシャーはこの不均衡な布局のどちら側も好んでいるようなので、攻撃にたけているのは当然である。棋歴の初めの頃フィッシャーはドラゴン戦法に特有なフィアンケットされた黒キングの囲いを攻めつぶしたことにより「ドラゴン殺し」の評判をとった。

フィッシャー対ラルセン
ポルトロジュ、1958年
 21…Nh5

22.Rxh5!

 これは h4 -、h5 Nxh5 へのよくある追撃手段である。

22…gxh5 23.g6

 白枡ビショップの威力で白が攻め切った。

(この章続く)

2012年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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フィッシャーのチェス(074)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 プロブレム作家がチェスの一部であるユーモアとへそ曲がりを再現できてこなかったとは思わない。サム・ロイドはたぶんもっとすごいトリックのなかでそれをやった。彼と同時代でコンサートピアニストのビルマースは、詰み筋の探求への締めくくりにふさわしい小品を作った。この作品の主眼は私にすれば正確さではなく、モデル詰みを例示することでもなく、経済的であることでもなく、解くのが難しいことでもない。非常に愉快な点は白が「友よ、好むと好まざるとにかかわらず君の回りに詰みの網をかけるぞ」と言っていることである。

R.ビルマース、1959年
 4手詰み

 初手はやはり見つけるのが難しく巧妙である。

1.Ra7! h2

 奇妙なことに黒が何をしようと-ポーンを突こうがキングをあれこれ動かそうが-白は以下の手順を指す。

2.Na5(+) – 3.Rb7(+) – 4.b4#

 詰みの網を張るかぎはルークを7段目にやって、黒キングが1手目にその方面へ逃げようとするのに備えてa7とc7の地点を守ることである。思うに実戦派の選手のための教訓は、一意専心こそが、特に敵キングを詰みの網に入れる目的のときに役立つということである。

(この章・部終わり)

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世界のチェス雑誌から(155)

「Chess」2011年7月号(9/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第2組
グリシュク 2747 5½-4½ クラムニク 2785(続き)

 快速戦になってもロシアの2選手には決着のついた試合がまだなかった。グリシュクが白の試合はいっそうおざなりの行事になっていた。クラムニクは白番ではかなり激しく押しまくっていたがグリシュクは頑強な受けの達人であることをみせつけた。だから残念ながらブリッツ戦にならざるをえなかった。

準決勝第2組、ブリッツ戦第1局
V・クラムニク - A・グリシュク
シチリア防御マローツィ縛り

1.Nf3 c5 2.c4 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 d6 6.e4 g6 7.Be2 Bg7 8.Be3 O-O 9.O-O Bd7 10.Qd2 Nxd4 11.Bxd4 Bc6 12.Bd3 a5 13.Rfe1 a4

14.Nd5

 14.Rad1 で堅実策を続ける方が良さそうである。駒の交換は黒陣をくつろげさせる。

14…Nd7 15.Bxg7 Kxg7 16.Re3 e5

 黒枡ビショップ同士が消えてしまえばこれがよくある一撃になる。この先を見れば分かるように出遅れd6ポーンは弱点にならない。

17.Rh3 h5 18.Ne3

 ここで初めて前例と別れたが、あまり感心しなかった。

18…Rh8

19.Rg3?

 どの程度の優勢だろうとこれで消えてしまった。ここでは 19.Nd1 と引いて遊んでいるルークをe3の地点でまた働かせる方が良かっただろう。

19…Nc5 20.Rd1

 白はe4のポーンが落ちるのを避けることができた。しかしたぶん 20.Nd5 Bxd5 21.cxd5 Qa5 22.Qxa5 Rxa5 で不良ビショップ対優良ナイトの収局で守勢になるのが面白くなかったのだろう。

20…h4 21.Rh3 Bxe4 22.Bf1 Bc6

23.Nd5

 恐らく白は 23.Qxd6 と取れることを当てにしていたのだろうが、23…Qxd6 24.Rxd6 Ne4 25.Rd1 Ng5 で交換損になることに気づいた。

23…Bxd5 24.Qxd5 Ra6 25.Re3 Qf6 26.b4 axb3e.p. 27.axb3 Rb6 28.h3 Rxb3 29.Rxb3 Nxb3

30.Qxd6

 たぶん 30.Qxb7 Nc5 31.Qc7 Rd8 32.Be2 の方が隙が少なくてしのげる希望があっただろう。

30…Qxd6 31.Rxd6 Rc8

32.Rd5?

 クラムニクはルークの無駄手を指し始めた。このブリッツ試合での手損が彼の世界選手権の可能性をつぶしたことはほぼ間違いない。代わりにすぐ 32.g3 と突けばまだ戦えた。例えば 32…Rc6 33.Rd5 hxg3 34.fxg3 Kf6 35.Kf2

となれば、片側だけにポーンのあるルーク+2ポーン対ルーク+3ポーンの収局が望めた。

32…Kf6 33.Rd6+ Ke7 34.Rb6 Nc5 35.g3 hxg3 36.fxg3 Rc6 37.Rb5 f5!

38.Kf2

 白は 38.Bg2 と指したいのだが黒は単純に 38…e4 でビショップを亡き者にする。

38…b6 39.Ke3 Rd6 40.h4 Kf6 41.Be2 g5 42.hxg5+ Kxg5 43.Kf3 Rh6 44.Rb1 Ne6 45.Kg2 Nd4 46.Bd1 Rc6

47.Rb5?

 これはポカだが、47.Rb4 でも 47…e4 48.Ba4 Rh6 49.Kf2 f4 50.gxf4+ Kxf4 で見込みがない。

47…Nxb5 0-1

 本当のところ偉大な選手がこんなつまらない試合で消えていくのを見るのは残念だった。しかしそれが番勝負による勝ち抜き戦のやり方である。第4局はもっと悪かった。黒で勝たなければならないクラムニクは危険を冒して現代防御の支線型を指し不利に陥った。グリシュクは圧倒的に勝勢の局面になったがわざと簡単な引き分けの収局にもっていった。決勝戦に進みさえすればよいので任務は完了した。

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(この号続く)>

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(073)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 詰み筋は最も予想されず他の手筋の方がありそうなときにも見つかることがある。次の局面は1969年カリフォルニア州での南北対抗戦というちょっとありそうもない「催し」の一つで(も)現れた。この年はこの恒例行事の最後の年で、米国での他の伝統ある対抗戦同様にしだいに消えていった。これらの大会を特徴づけた友好と大学生の奮闘によるチェスはしばしば熱戦を生んだ。南北対抗戦での本大会への非公式予選は「侮辱」試合だった。その規則は「カリフォルニア・チェス・リポーター」誌からの引用によってもっともよく伝えられる。

リビセ、アルムグレン(南)対バーガー、グロース(北)
ピズモビーチ、1969年
 31.Rc1

 『ルークを床に落としてそれがg4の地点に停止するのをうまく防いだ北の選手は、今度は相手選手、観衆、そして自分の相棒さえこれ見よがしに笑う中で長考に入った。スリボビッツがまた供される間に、そして今度はルークを手に持ったまま、その北の選手はルークを動かして勝てるに「違いない」しそれを見つけるつもりだと宣言した。これは100%信じる者がいなかったし、それ以上にあざけりがあった。ところが彼が奇妙でまれな詰みを見つけると不信は確信に変わりあざけりは拍手に変わった。

31…Rg3!! 32.Rxc7+ Kd8 33.白投了

 なぜなら 33…Bg2+ 34.Nxg2 Rh3# という詰みが防げない。』

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(072)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 敵キングが自身の駒によりうまい具合に囲まれているという条件で、独力で詰めることのできる駒はクイーンだけでない。

タリ対アベルキン
全ソ連選手権戦、1973年
 69.Rxa4

 ここでの唯一の問題はどちらのキングが詰まされることになるのかということである。明らかにタリは指す手に窮していた。この試合は大会の最終戦で、引き分けは翌1974年の全ソ連選手権戦の「予選免除」の権利を失うことを意味していた。確かに元世界チャンピオンにとっては考えただけでも屈辱的である。しかしカイッサ(チェスの女神)は公正さの詩的感覚を持っていた。

69…Rc4?? 70.Nd5! 黒投了

 黒は Ne7# を避けるにはルークを捨てるしかない。タリは健在なり!

(この章続く)

2012年01月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

朝鮮学校を無償化対象にしてはならない

2012年01月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

ポルガーの定跡指南(6)

「Chess Life」2002年11月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御(続き)

カナル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4

6.Re1

 ぎょっとさせる 6.Nc3 は非常に面食らうが、単純に 6…Nxc3 と取れば(ただし 6…dxc3? と取るのは 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qd5+ Ke8 9.Re1 Be7 10.Rxe4 d6 11.Bg5 cxb2 12.Rae1 となって白の猛攻が続く)7.bxc3 d5 8.Bb5 Be7 9.Nxd4 Bd7 で黒の確実な1ポーン得になる。

6…d5 7.Bxd5

 7.Nc3 は 7…dxc4(7…dxc3 なら 8.Bxd5)8.Rxe4+ Be6 9.Nxd4 Nxd4 10.Rxd4 Qf6 11.Nb5 Rc8 12.Nxa7 Bc5 13.Rf4 Rd8 となって黒が優勢である。

7…Qxd5 8.Nc3

8…Qa5

 他に良い手は 8…Qh5 9.Nxe4 Be6 10.Bg5(10.Neg5 なら 10…O-O-O 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6)10…Bd6 11.Nxd6+ cxd6 12.Bf4 Qd5 13.c3 Rc8 で互角の局面になる。

9.Nxe4

 9.Rxe4+ Be6 10.Nxd4 O-O-O は黒が良い。

9…Be6 10.Bd2

 10.Neg5 には(10.Bg5 なら 10…h6 11.Bh4 Bb4 12.Re2 g5 13.Bg3 O-O-O)ポーンを返す 10…O-O-O が黒の最善の応手で、11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6 となって黒に何の問題もない。

10…Bb4

 代わりに黒がクイーンを動かせば白は 11.Bg5 で黒にクイーン翼キャッスリングをさせない。例えば 10…Qd5 なら 11.Bg5 h6 12.Bf6!、10…Qh5 なら 11.Bg5 で 8…Qh5 からの変化に移行する。

11.Nxd4 Nxd4 12.c3

 この両当たりで白が駒を取り返す。

12…O-O-O 13.cxb4

 13.cxd4 なら 13…Bxd2 14.Qxd2 Qxd2 15.Nxd2 Rxd4 で黒が1ポーン得になりかなり
優勢である。

13…Qf5

 駒の配置とポーンの形とが良いので形勢は黒が優勢である。

最終結論

 白の観点からは 4.Ng5 が最善の選択である。しかし局面は複雑で主手順でも黒にポーンの代償が十分ある。

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フィッシャーのチェス(071)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 クイーンは1枡離れた距離からでも非常に手際のよいことができる。この局面はフィッシャーがちょうど 38…Qh1# を狙ったところである。

メドニス対フィッシャー
ニューヨーク、1958-59年
 37…Qg1

 この詰みの狙いがなければ白はそう悪くない。しかしここでは投了しなければならない。なぜなら・・・

38.g4 fxg4#

 プロブレムの用語ではこれは「モデル」詰みということになる。キングの利き枡への監視は最後の枡にまで能率的だった。

(この章続く)

2012年01月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(27)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

37 ドローにしか 163ページ
『5.O-O
 無難だ。5.c3 Nc6 6.d4 で強い中央を築くのが正しい。』

「無難」とは「特にすぐれてもいないが欠点もないこと。また、間違いのないこと」という意味で、例えば「無難な出来」、「無難にやり終えた」というように使われる。だから 5.O-O は問題のない手のはずだが、それに対してなぜ 5.c3 の方が正しいと言うのだろうか。

英文『5.O-O
Harmless. Correct is 5.c3 Nc6 6.d4 with a powerful center.』

試訳『5.O-O
 当たり障りのない手。正着は 5.c3 Nc6 6.d4 で、中央が強力になる。』

37 ドローにしか 163ページ
『白は、d4 マスへ対抗するには再編成しなければならなくなった。』

英文『Now White has to regroup in order to get in d4.』

get in は他動詞で、get in d4 で「d4 と突く」ことである。5.O-O のせいで 6.c3 と突くのが1手遅れたために黒に 6…e5! と突かれたのですぐに d4 と突くことができず、d3 のあと Be3 と出してから d4 と突かなければならなくなっている。そのことを regroup と言っている。

試訳「白は d4 と突くためには陣容を再編成しなければならなくなっている。」

37 ドローにしか 164ページ
『疑問手だが、白はすでに互角を目指さなければならない状況にある。』

「疑問手」を指して互角を目指せるのだろうか?

英文『A lemon, but already White must fight for equality.』

ここでの A lemon は「欠陥品」というような意味である。本当は 7.d3 の意志をついで 8.Be3 から 9.d4 と指したいのだが変化に書かれているようにうまくいかないので泣く泣く 8.a3 と指したということである。

試訳「不本意だが、白はすでに互角を目指さなければならない状況にある。」

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フィッシャーのチェス(070)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 作局家でも次のフィッシャー戦の局面より基本的なものを作るのはほとんど不可能だろう。この試合は世界選手権への道における初めての大会で前途を明るくした。

ケレス対フィッシャー
ブレッド、1959年
 52…g4

53.Rc4

 ケレスのために言うとこれに代わる良い手もない。チェス選手の楽天主義には限りがない。

53…Qe5#

 クイーンが横から接触させてチェックするとキングには「逃げ」場所が2箇所しかない。ここではその2箇所が自分自身の残りの駒でふさがれている。キング対クイーンの図形配置は実戦派の選手が精通しておくべき速記文字の一つである。

(この章続く)

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カテゴリ: フィッシャーのチェス