2011年05月の記事一覧

王印防御の完全理解(89)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の …Nxe4

 白が f2-f3 突きを省いている時、白が Nc5 を b2-b4 突きにより追い払おうとするときに生じる対角斜筋の弱点に基づいた戦術の主題(複数の戦法と複数の手法で)が現れることがある(図124)。

 図124 

 白が b4? と突くと …Ncxe4、Nxe4 Nxe4、Qxe4 Bf5、Qf3 e4(図125)

 図125 

となって、黒が利子付きで戦力を取り戻す。明らかにこの種の手筋が成立するためには、白駒がe2の地点にいて Qf3-d1 で駒を守りながら退却する手をなくしていなければならない。

(この章続く)

2011年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[63]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット(続き)

オーソドックス防御

1.d4 d5 2.c4 e6(図96)

 図96(白番)

 この手はdポーンをしっかりと守っている。2…Nf6 による「防御」は幻想である。3.cxd5 Nxd5 4.e4 となって白のポーン中原は危険で動ける多数派ポーンになる。しかし 2…c6(スラブ防御)はよく指される。もっとも 3.cxd5 cxd5 4.Nf3 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bf4 Bf5 または 6…e6 となってだいぶ無味乾燥ではある。

3.Nc3 Nf6 4.Bg5

 この手は狙いを持ちながら展開し、黒のキング翼ナイトを釘付けにすることによりdポーンへの襲撃を続けている。この手に対して 4…h6 と突くのは黒が破綻する。5.Bxf6! gxf6(5…Qxf6 は 6.cxd5 でポーンのただ損)6.cxd5 exd5 となって、黒はあらゆる弱点の中で最も忌み嫌われる弱点の一つの孤立二重ポーンにより不自由をかこつ。それゆえにf5の地点は黒陣を脅かす白駒の理想的な拠点となることがある(例えば Bd3/Ne2-g3)。またe列とg列に黒ポーンがないためにf5に陣取った白駒が決して追い払われることがない。

 交換戦法も非常に人気がある。4.cxd5 exd5 5.Bg5 Be7 6.e3 c6 7.Bd3 O-O 8.Nf3 Nbd7 9.O-O Re8 10.Qc2 Nf8 のあと白は 11.Rab1 で b4-b5 と突く少数派攻撃にでるのが普通である。

4…Be7

 黒は釘付けをはずした。

5.Nf3 O-O 6.e3

 この戦型では白のキング翼ビショップをd3に展開するのが最善である。6.g3 と Bg2 でフィアンケット展開するのは黒のdポーンが厳重に守られているのでここでは的外れである。d3ならキング翼ビショップは黒キングをにらみ攻撃に加われる。

6…Nbd7

 この手はキング翼ナイトを補強している。もっと自然な手の 6…Nc6 は自分のcポーンの邪魔になるので間違いである。繰り返すがdポーン布局ではこのような妨害行為は避けるべきであることを強調しておく。代わりに 6…h6 7.Bh4 b6(タルタコワ戦法)は当然ある手で、ナイジェル・ショートとボリス・スパスキーによって数多く指されてきた。

7.Rc1

 ルークがあとで cxd5 によって素通しにできる列を占めた。あとでこれがいかに有効であるかをまのあたりにする。

7…c6

 この手はdポーンをさらに守っている。黒はゆっくりだが確実に駒交換によって陣形を解放していく準備を進めている。

8.Bd3 dxc4!

 ここで中原を放棄することによって白にキング翼ビショップをまた動かすことを強いている。これにより黒は偉大なキューバの世界チャンピオンカパブランカによって考案された交換の捌きを実行に移す機会が得られる。黒は狭小な陣形では交換によって陣形を解放することに努めよという原則に従っている。

9.Bxc4 Nd5!

 これで白のビショップは引き場所がない。だから・・・

10.Bxe7 Qxe7 11.O-O

 白は展開を完了した。

11…Nxc3 12.Rxc3

 12.bxc3 なら中原を強化するがルークを閉じ込めることにもなる。

12…e5

 これは解放の捌きの総仕上げである。この局面はマスターの実戦に数多く現われている。13.dxe5 Nxe5 14.Nxe5 Qxe5 15.f4 Qe4 16.Bb3(Bc2 と引く意図)16…Bf5 のあといい勝負である。主導権を維持するためには白は次のように指さなければならない。

13.Qc2

 これで白のビショップが伝統的にもろい黒のf7の地点をにらみ、同様にクイーンがh7の地点をにらんでいる。白は黒キングに対して強襲をかける素地がある。

13…exd4 14.exd4(図97)

 図97(黒番)

 この局面は中原の要所と駒の利き筋の支配を保持するために孤立dポーンを自ら受け入れるべき状況の明白な事例になっている。白はわずかに優勢で、特にe列の支配からそれが言える。

 勉強のためになる鮮やかな手筋が現れる進行をお目にかける。

14…Nf6 15.Re1 Qd6 16.Ng5 Bg4

 16…Qxd4 には 17.Rf3 で 18.Rxf6 から 19.Qxh7# と 18.Nxf7 Rxf7 19.Re7 の二つの狙いがある。

17.Rg3 Bh5 18.Rh3 Bg6?

 18…Qb4! と指さなければならず、それなら黒がまだ十分戦えた。

19.Qxg6!! hxg6 20.Bxf7+ Rxf7 21.Rh8+ Kxh8 22.Nxf7+ Kg8 23.Nxd6 Rd8 24.Re6

 この電光石火の手筋のあとの収局は白の勝勢になっている。

(この章終わり)

2011年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(88)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所

 この型の中原の試合の早い段階では戦術的に非常にもろいのは白陣の方である。戦術の主題は白が f2-f3 と突いたかどうかによって分類できる。

(この章続く)

2011年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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JCAの間違い捜し(13)

 もう1週間以上前にJCAのホームページに「第23回全日本快速選手権」の案内の見出しが出ました。

 しかしそこをクリックしてもエラーメッセージしか出ません。

 がせねたのようです。

2011年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(87)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリング時のキング翼での黒の反撃

 両陣営がキング翼にキャッスリングした時は黒は白の自然なクイーン翼での主導権に対抗するためにキング翼で反撃を行なおうとするのが理にかなっている。普通は黒の反撃の核心は …f7-f5 突きである。このポーン突きは Nf6 をe8かh5に動かすことにより可能となる(図121)。

 図121 

 …f7-f5 突きのあと黒は …f5-f4 でキング翼でのポーン暴風を意図するか、必要ならばポーンを犠牲にしてもナイトでf4の地点を占拠する態勢になる。白はほとんど常に exf5 gxf5 で中央を開放することにより黒の側面での策動を無害にし、その結果次のようなポーン形が生まれる(図122)。

 図122 

 これで黒には動的な中原ポーン、片素通しのg列、それに白の弱体化したdポーンに圧力を加える可能性がある。代わりに白はもう …f5-f4 突きを恐れる必要がない。黒がそのようにポーンを突けば白はe4の要所を完全に支配することになる。そして戦略的にこう突けないことにより白はb1-h7の斜筋を占拠しナイトをg3に配置することによりキング翼の白枡(特にf5とh5)に圧力をかけることができる。また白は前章で検討したのと同様の構想(第2章の「f2-f4 突き」を参照)の f3-f4 突きを決行する時もある。

 黒がキング翼での反撃を行なう別の方法はhポーンを突いていくことである。この手段は白が早く Ng1-e2-g3 と指しているとき特に適している(図123)。

 図123 

 この図で示される作戦(図102で既に見たのと非常に似た捌きを用いる)は両キングが同翼にキャッスリングしたとき有効な攻撃になる。白が …h5 突き誘い(図108を参照)c列の開放のあとキング翼にキャッスリングしたとき、黒は Ng3 がいなくてもこの作戦を実行することができる。

(この章続く)

2011年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(86)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b5ポーンに対する攻撃

 黒がポーンをa6とb5に進ませているとき白は a2-a4 突きでこのポーン構造に圧力をかけるのが有利となるのが普通である(図120)。

 図120 

 白は一般にこの攻撃の前に b2-b4 突きでb5のポーンを固定する。その目的は黒に …b5xa4 と取らせることで、Ra1xa4 のあと黒のaポーンは極度に弱くなる。

 aポーンを突く準備は b2-b3 突きでもかまわない。その場合の着想は …b5-b4 突きを誘うことで、白は Nc3-d1-b2-c4 の捌きで黒のクイーン翼に強力な圧力をかけることができるようになる。

(この章続く)

2011年05月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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残念な人の将棋教室

「河北新報」2011年5月27日付け夕刊広告

「定石」->「定跡」
「実践」->「実戦」

 「定跡」を「定石」と書くぐらいだから案外この講師は「将棋を指す」を「将棋を打つ」と言っているのかもしれない。

2011年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(218)

「Schach-Magazin 64」2011年3月号(3/9)

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一大センセーションの小さな日記(続き)

電撃スタート(続き)

ルイロペス C78
H・ナカムラ – A・シロフ
ベイクアーンゼー Aグループ 第3回戦、2011年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bc5 7.c3 d6 8.a4 Rb8 9.d4 Bb6 10.axb5 axb5 11.Na3 O-O 12.Nxb5 Bg4 13.d5 Ne7 14.Bc2 Qd7

15.Na3!?

 これはこの戦型での新手で(普通は 15.c4)、彼はこれで指せると確信していた。しかし注目に値するのは別のところにあり、ナカムラは相手の棋風を熟知することができて、このあとの乱戦を予期し相手の捨て駒への対策を立てていた。「この試合は特に自慢できる。」

15…Nexd5!?

 シロフらしい捨て駒である。

16.h3 Bh5 17.exd5

17…e4

 黒の読みは 18.g4 Nxg4 19.Ng5 Nf6 20.Qe1 Rfe8 から …h6 で、黒の攻撃が強まる。

18.Bg5!

 白の意図は 18…exf3 19.Bxf6 fxg2 20.Bxh7+! Kxh7 21.Qxh5+ Kg8 22.Qg5 g6 23.Qh6 から詰ませることである。

18…Bxf3

 ここで白が 19.gxf3 と取るのは 19…Qxh3 20.fxe4 Qg3+ 21.Kh1 Qxg5 で良くないが・・・

19.Qd2!

 ナカムラはすべてを見通していた。黒の攻撃は完全に終わっていて(例えば 19…Bh5 20.Bxf6 gxf6 21.Bxe4 +-)、すぐに白の明らかに有利な収局になる。

19…e3 20.Bxe3 Bxe3 21.fxe3!

21…Be4

 21…Bxd5 には 22.Rxf6! がある。

22.Rxf6! Bxc2 23.Rf4 Bg6 24.Nc4 Ra8 25.Na5

 そして白は非常に手数がかかったが(かかり過ぎ?)この収局を勝ちきった。

25…Rfe8 26.Ra3 Be4 27.c4 g5 28.Rf1 g4 29.h4 Qe7 30.Qf2 Bg6 31.b4 h5 32.Rc3 Qe5 33.Rb3 Qe4 34.Rc3 Qe5 35.Rfc1 Be4 36.Qf4 g3 37.Qxe5 Rxe5 38.Ra3 Kg7 39.Rf1 Ree8 40.Rfa1 Re5 41.Nb3 Rxa3 42.Rxa3 Bxd5 43.Nd2 Be6 44.e4 Bg4 45.Rxg3 f5 46.Re3 Re8 47.Kf2 Ra8 48.exf5 Ra2 49.Rd3 Bxf5 50.Rd5 Be6 51.Rg5+ Kh6 52.Ke3 Ra3+ 53.Kd4 Ra1 54.g3 Rd1 55.Kc3 Rg1 56.b5 Rc1+ 57.Kd3 Bf7 58.Nb3 Rd1+ 59.Ke2 Rb1 60.Nd4 Bxc4+ 61.Kd2 d5 62.Nf5+ Kh7 63.Rxh5+ Kg6 64.Rg5+ Kf6 65.Ne3 Rb2+ 66.Kd1 Be2+ 67.Kc1 Rxb5 68.Kd2 Rb2+ 69.Kc3 Rb5 70.Nxd5+ Kf7 71.Re5 Bg4 72.Re7+ Kf8 73.Re4 Bf5 74.Nxc7 Rc5+ 75.Rc4 Re5 76.Rf4 Ke7 77.Kd4 Ra5 78.Nd5+ Ke6 79.Nc3 Ra8 80.g4 Bh7 81.Ke3 Rc8 82.Ne2 Ke5 83.Ra4 Rb8 84.Nd4 Rb1 85.Ra5+ Kf6 86.Kf4 Rf1+ 87.Nf3 Bc2 88.Kg3 Rb1 89.Ra6+ Kg7 90.Nd4 Bd3 91.Rd6 Kf7 92.Kf4 Ra1 93.h5 1-0

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(この号続く)

2011年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(85)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b6の地点の占拠

 黒が既にc列を素通しにしていることを考慮すれば …a7-a6 と突いてくれるだけで白はaポーンをa5まで突き進めることにより(b2-b4 突きによって支援されることがよくある)弱くなったb6の地点を固定する立場になれる。ここを占拠する意図は Nc3-a4-b6 と捌くことである(図119)。

 図119 

 この捌きの目的は明らかにc8の地点を支配するためにb6の地点を占拠することで、それによって白に素通し列の鉄壁な支配が保証される。

(この章続く)

2011年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

2011年タイ・オープン

 「British Chess Magazine」2011年5月号の「News from Abroad」のところに、タイ・オープンに日本から選手が3人参加したことが触れられていました。

2011年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

王印防御の完全理解(84)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

Nc5 の追放

 黒がナイトをc5に置き …a7-a5 突きで支援しているとき、白がクイーン翼で圧力を強める典型的な一つの方法は b2-b4 突きでこのナイトを追い立てることである(図118)。

 図118 

 このポーン突きはc列を空けるのに役立つだけでなく、a列の開通ももたらす。開通すれば白の小駒が黒のクイーン翼の弱点(例えばb6の地点)につけ込むのを助けることになる。

(この章続く)

2011年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(123)

「Schach」2011年4月号(1/1)

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アジアの神秘

チャンスを逃がす

XVII 馬場雅裕 – アル・サイェド、ドレスデン、2008年

XVII  おかしなことに日本はこれまでアジアチェス界の最近の2、30年の大躍進に加わっていなかった。日出ずる国では何よりも柔道と空手のような武道が愛好され、それと同時に野球とサッカーも好まれている。頭脳スポーツとしては千年以上前から囲碁が根を下ろしている。ドレスデンオリンピアードで日本のチェス選手たちを見かけた。今回のオリンピアードから参考になる収局をここでお目にかける。馬場雅裕選手は(恐らく団体戦という理由から)何度も引き分けを避けてきた。それは立派なことだったが、最後には報われなかった。彼は 1.Ra5+?! と指し、それによってますます正しい道からそれてしまった。代わりにどう指せば引き分けにできただろうか。

解答
Rd3 が無防備なので白は 1.h4+! と指すことができ、次のように永久チェックがかかる。1…Kg6(1…Kxh4? 2.Qe4+)2.Qe4+ Qf5 3.Qe8+ Kf6 4.Qf8+ 1.Ra5+!? b5 2.Qxf6+ 2.h4+ の方が良かった。2…gxf6 3.axb5 cxb5 4.Rxb5+ Kf4 5.Rb8 Rd1 6.b4 d3 7.b5 Rb1 8.b6 d2 0-1

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 この試合は「Behind the Scene」の「Dresden Dream(2)」で解説されています。

(この号終わり)

2011年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(83)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリング時のクイーン翼での白の指し方

 黒が局面の早い段階でc列を素通しにすることにより反撃を始めるとき、白は既に見たように(図93を参照)作戦を根本的に変更してキング翼にキャッスリングし素通し列を利用してクイーン翼で侵入を図ることができる。クイーン翼での圧力を増すために白の用いる手法は、黒がaポーンとbポーンをどう扱うかと白キングが中央に居座る期間とにより変わってくる。

(この章続く)

2011年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(82)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

単純化の …Nc5-a4

 黒は …Nc5-a4 によって Nc3 との交換を求めるときがある。それは単に局面を単純化するためのときもあれば色々な戦略の目的を追求するためのときもある(図117)。

 図117 

 この例では …Na4、Nxa4 Bxa4 のあと黒には単純な清算に加えて二つの戦略上のボーナスがある。即ちクイーン翼キャッスリングの防止と …f4 突きによるキング翼での封鎖の可能性である。すぐに …f4 と突くと Bxc5 dxc5、Ne4 となって白がe4の地点を支配するところだがここでの …f4 突きはその支配を許さない。

(この章続く)

2011年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[62]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット(続き)

タラシュ防御

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3

 この展開の手は黒のdポーンに圧力をかけているので最善である。

3…c5(図94)

 図94(白番)

 これがタラシュ防御の眼目の手である。黒はどんな犠牲を払っても中央で駒を活躍させようとしている。20世紀初頭にはドイツの偉大なマスターのジークベルト・タラシュ博士の影響を受けて、これがクイーン翼ギャンビットに対する唯一の「正しい」防御であるとみなされていた。しかしチェスの定跡が進歩するにつれてタラシュ防御は評判が悪くなっていった。タラシュ防御では黒はほとんど常に孤立dポーンを背負わされる(早い活動に対して払わなければならない代価)。そして1920年代からはマスターたちは黒陣のこの弱点を大きすぎる負債とみなしてきた。それでも世界チャンピオンのカスパロフとスパスキーによって時々用いられた。

4.cxd5

 黒のdポーンに対する攻撃はこの布局を通しての主題である。だからこの手も最善である。4.Nf3 による単純な展開はここではぴったりせず不十分である。一方 4.dxc5? とこちらを取るのは黒に中原での重要なポーン突きを許すことになる。即ち 4…d4 突きで白の展開したばかりのナイトが追い払われる。4.Na4 と逃げると黒は 5…Bxc5 6.Nxc5 Qa5+ 7.Bd2 Qxc5 というちょっとした仕掛けでポーンを簡単に取り返すことができる。黒は中原の支配(前進したdポーン)により相応の展望がある。黒のクイーン出がかなり早いことは認めなければならないが、白がこれにつけ込むには展開が不十分である。実際c5にいる黒のクイーンは白のcポーンに当たっていて、白はこのポーンを守るために1手費やさなければならない。

4…exd5 5.Nf3

 5.dxc5 d4 6.Na4 で中原のd4の地点を明け渡すのはやはり薦められない。白が今いる黒のdポーンを攻撃したいのなら、d4の地点をしっかり支配して黒のdポーンが前進できないようにしなければならない。白の作戦は黒がすぐに …d4 と突き返せない時に dxc5 と取ることである。それから白はdポーンをせき止め(普通はナイトをd4の地点に据えることにより)、自分の駒でよってたかって黒のdポーンを攻撃することにする。

 弱いポーンを攻撃したい状況のためにニムゾビッチによって作られた役に立つ原則は、まず弱いポーンを制止し、次にそれをせき止め(無事に前進できることのないように)、それから撃滅することである。

5…Nc6

 5…cxd4? 6.Nxd4 は白のキング翼ナイトをただでd4の地点に来させて白を利することになる。

6.g3!

 これにより白のキング翼ビショップが非常に効果的な地点に展開できる。g2の地点から黒のdポーンに対して最も効果的な方法で狙いをつけることができる。

6…Nf6

 タラシュ防御における黒の布局の指し方は、駒を適切かつ迅速に最も効果的な中央の地点に動員することがそのほとんどである。即ちビショップを側面のg2の地点におく白の「現代的」展開に対する「古典的」展開である。

7.Bg2 Be7 8.O-O O-O 9.Be3(図95)

 図95(黒番)

 白は9手目でいくつかの代わりの手がある。9.dxc5 はまだ時期尚早である。9…d4! 10.Na4 で黒のdポーンがせき止めをまぬがれ、白のクイーン翼ナイトがまたも盤端に追いやられる。白は得したcポーンを保持する可能性がいくらかあるけれでも、白を持つほとんどのマスターの選手はこの戦型を避ける。理由は黒駒の働きが増しdポーンも強力だからである。このdポーンは白陣に近づくほど威力が強くなる。黒は 10…Bf5 で …d3 突きを狙って恐るべき主導権を維持する。

 9.Bg5 は1969年世界選手権戦のスパスキー戦でペトロシアンの指した手だった。しかし 9…Be6 10.dxc5 Bxc5 11.Bxf6 Qxf6 12.Nxd5 Qxb2 となって黒が形勢を互角にできた。

 本譜の手(9.Be3)は1970年世界チーム選手権戦のソ連対カナダ戦で第1席のスパスキーが指した。黒はヤノフスキーだった。

 白は 9.Be3 で黒のcポーンを攻撃する駒を二つにすると共に、d4の地点の支配も強めた。この試合の以降の進行により孤立dポーンの潜在的な弱さが驚くべき方法で明らかになる。

9…cxd4

 これは白の作戦にはまってしまう。黒の最善手はたぶん1987年ブリュッセルでのラルセン対カスパロフ戦のように 9…c4 10.Ne5 h6! で、ほぼ互角の形勢である。

10.Nxd4

 これは急所のd4の地点でせき止めを行なうので非常に重要である。これで戦闘の半分は白の勝利に帰した。

10…h6

 黒は孤立dポーンを支えているキング翼ナイトを Bg5 で攻撃されるのを恐れた。

11.Rc1 Na5 12.b3!

 黒のc4とe4の地点に対する支配は、孤立dポーンに対する代償の主要な表れの一つである。白は 12.b3! で黒が占拠を狙っていた地点の一つを使えなくした。

12…Nc6 13.Qd3

 白は Rfd1 でナイトの背後から陣形を強化する意図である。

13…Ne5 14.Qc2

 白は素通し列に集中している。

14…Qa5 15.Ncb5 Bd7 16.Qc7!

 7段目をクイーンまたはルークで占拠するのはほとんどいつも有利である。

16…Qxc7 17.Nxc7 Rad8 18.Nxd5 Nxd5 19.Bxd5 Bh3 20.Bg2

 白は黒の孤立dポーンをそのまま取った。黒には代償がまったくなく(20…Bxg2 21.Kxg2 Ng4 22.Nf5! Nxe3+ 23.Nxe3 Rd2 24.Rc2!)42手目で負けた。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(81)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

黒のaポーン突きによる銃剣攻撃

 従って上記のことを考慮すれば黒がナイトをc5の地点に据えたときその位置を …a7-a5 突きで安全にするのは理にかなっている。時にはこのポーン突きが銃剣攻撃になることがある(図116)。

 図116 

 黒の考えは明らかに敵キングの囲いをゆるめることである。…a3 突きのあと b3 と突くと …c6 から …Qa5 と …Rc8 とによりa5-e1の斜筋とc列につけ込まれ、b4 と突くと …Na4、Nxa4 Rxa4 と応じられ、キャッスリングした囲いが弱体化する。

(この章続く)

2011年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(80)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 黒がナイトをc5に置いてbポーンを突いていこうとする時には(図114の例を参照)白は b2-b4 と突く機会に恵まれる時がある。その意図は一般に一種のせき止めを構築することである(図115)。

 図115 

 ここの例では白が自分の戦力を結集して(Bf1-d3-c2、Ng1-e2-c1)、自分から b2-b4 と突くことにより相手の機先を制することができる。その結果として …Nb7、Bd3(…a5 突きを Nxb5 により防ぐ)から Nb3 または …Na4、Nxa4 bxa4、a3 でキングがa2に避難できるようにしたあと十分に堅固で満足できる態勢が得られる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(79)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

bポーンの犠牲

 c列が素通しでないときは黒がもっと積極的にクイーン翼での反撃に努めなければならないことは明らかである。その中でも最も精力的なやり方はbポーンを犠牲にして列を素通しにすることである(図114)。

 図114 

 このよく見かけるポーン捨ては …b5、cxb5 a6、bxa6 Nxa6 でa列とb列を素通しにすることが目的である。もちろん …b7-b5 突きはその前に必要な支援(…a7-a6、…Qd8-e8)をして犠牲を避けることもできる。

(この章続く)

2011年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(217)

「Schach-Magazin 64」2011年3月号(2/9)

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一大センセーションの小さな日記(続き)

電撃スタート

 ナカムラは最初の3回戦で早くも優勝コースに乗った。レイティング最上位クラスのアロニアンとの黒番での引き分けと白番での2勝。その2勝では受けにも強いことを示し、無理な捨て駒を咎めた。

クイーン翼ギャンビット D38
H・ナカムラ – A・グリシュク
ベイクアーンゼー Aグループ 第1回戦、2011年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Nf3 d5 5.cxd5 exd5 6.Bg5 Nbd7

7.e3 c5 8.dxc5 Qa5 9.Rc1 Bxc3+ 10.bxc3 O-O 11.Nd4 Qxc5

12.Bd3 Ne4 13.Bf4 Nb6 14.Qc2 h6 15.f3 Nf6 16.g4 Re8

17.Kf2 Nc4 18.h4 Bxg4 19.Bxc4 dxc4 20.fxg4 Nxg4+ 21.Kf3 Ne5+

22.Bxe5 Rxe5 23.Kf2 Rae8 24.Rh3 b5 25.Rg1 Re4 26.Qd1 b4 27.Qf3

 グリシュクは18手目で駒を犠牲にして敵キングの「風通しのいい」状態に賭けた。しかしここでは積極的な指し方を保持したまま例えば 27…Kh8 28.Nf5 bxc3 と指すべきだっただろう。代わりに彼の指した手は・・・

27…Rxe3?

 この手は 28.Qxe3 Rxe3 29.Rxe3 bxc3 30.Ne2 c2 なら黒の満足のいく局面になる。しかしナカムラは返し技を見つけた。

28.Rxg7+!

28…Kxg7

 28…Kh8 とよけるのは 29.Qxf7! でうまくいかない。チェックの千日手狙いも 29…Re2+ 30.Kg1! Re1+ 31.Kg2! R1e2+ 32.Nxe2 Rxe2+ 33.Kf1

で続かず白の勝ちになる。

29.Qg4+ Kf8 30.Rxe3 Rxe3 31.Kxe3 bxc3 32.Ke2

 32.Ke4 がずっと強い手だった。

32…Qe5+

ナカムラは 32…Qb4 を少し心配していた。しかしその場合でも 33.Qc8+ Kg7 34.Nf5+ Kf6 35.Ne3

で白が明らかに優勢を保持している。例えば 35…Qb2+ でも 36.Kf3 でc4のポーンが落ちc3のポーンも止まる。36…Qxa2? は 37.Qc6+ で詰みになる。

33.Kd1 Qh2 34.Ne2

 そしてナカムラはまだわずかに残っている黒の反撃をしだいに削いでいった。

34…Qd6+ 35.Qd4 Qxd4+ 36.Nxd4 Kg7 37.Nc6 a6 38.Nb8 a5 39.a4 Kf6 40.Nc6 Ke6 41.Nxa5 Kd5 42.Kc2 1-0

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(この号続く)

2011年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(78)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c4の地点と Nc3 への脅かし

 c列が素通しのとき黒は一般に守りの Nc3 をbポーン突きでどかすことにより素通しc列の利用を図ろうとする。この作戦は往々にして …Nb8-d7-b6 の捌きと共に行なわれる。その意図は必要があればc4の地点の弱点につけ込もうということである(図113)。

 図113 

 黒が …b4 と突くと(だが …Nc4 はだめで、Bxc4 と取られて白がクイーン翼ビショップを保持しそのことによりキング翼攻撃の機会がすべて残される)相手は黒枡ビショップと黒のクイーン翼ナイトとの交換を避けることができない。Bxb6(Ne2 は …Nc4 と跳ねられるし Nb1 は白キングがc列で野ざらしになる)のあと黒は …bxc3、Qf2 cxb2+ と応じることもできるし、単に …Qxb6 と取り返しても白はクイーン翼をせき止めることができない(Na4 Qa5、b3 Bd7)。このような局面では白がc4の地点を b2-b3 突きで守るのは非常に危険である。その理由は …b5-b4 突きから …a6-a5-a4 突きのポーン暴風による敵陣突破があるからである。

 従ってこのような問題を避けるために白は適当な時にクイーン翼ナイトをd1の地点に引けるようにしなければならない。これは適当な時に Kc1-b1 および Rd1-c1 と指すことにより準備できることがある。これにより白キングが露出した状態から避難し白がc列を争うことができる。b2-b3 突きは実際問題としては白がまだクイーン翼にキャッスリングしていない時にだけ可能である。それはd1の地点がすぐに使え、キングがクイーン翼の弱体化によっても全然危険にさらされないからである。

(この章続く)

2011年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(77)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

黒のクイーン翼での反撃

 黒がクイーン翼での反撃を推し進める手段は様々で、それらは白の選ぶ攻撃システムやc列が素通しかどうかによって変わり、また黒のaポーンとbポーンの果たす攻撃の役割によっても変わってくる。

 ここからは最もありふれた反撃の方法を検討していくが、それらは既に検討してきた防御策とはほとんど切り離せないことを忘れてはいけない。

(この章続く)

2011年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(122)

「Chess」2010年11月号(21/21)

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勝つ手を見つけろ

レイティング1500-1800 中級程度


第11題 南條亮介 – F・バンダ
日本対マラウイ、2010年
白の手番

解答
11.南條亮介 – F・バンダ
1.Rxa7+! Kxa7 2.Qc7+ Ka8 3.Qxa5+ Kb7 4.Qb6+ Kc8 4…Ka8 5.Qa6# 5.Qc7#

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(この号終わり)

2011年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(76)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-a5 による釘付けはずし

 …Nb8-d7-c5 と指したあと黒はほとんど常に …a7-a5 突きでこのナイトの居場所を安全にしなければならない。このような状況で …Qd8-a5 でクイーンを釘付けからはずすには、クイーンを動かす前に …c7-c6 突きと …a5-a4 突きを指す必要があるのである程度の手数がかかる。この作戦の遂行で黒はキング翼での守りをどれも放棄することになり、従って白は最も基本的な態勢で攻撃を展開することができる(図112)。

 図112 

 ここで両者の主要な構想を概説すると次のようになるある。黒はc列を占拠しbポーンを突き進め、あるいはc3とd4の地点に対して …Nc5-a6-c7-b5 のような手の込んだ捌きまで行なうことにより、クイーン翼での反撃を強化しようとする。一方白は Nc3-d1 を指すことによりわずかに有利な収局(d6のポーンの弱点と黒の不良ビショップによる)に持ち込むか、攻撃を続行しその場合必要によっては Ke1-f1-g2 により自分のキングを安全な所に送るかを決めなければならない。

 黒が …Rf8-c8 でc列を占拠すれば、白は hxg6 fxg6、Bxf6 Bxf6、Qh6 によって一気に決めようとすることができる。しかし黒は冷静にhポーンを犠牲にすることができる。…Be8、Qxh7+ Kf8 のあと白は決め手がなく、激しい局面ですべてはこれからにかかっている。

(この章続く)

2011年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

おっほん

 河北新報2011年5月16日付朝刊の「3.11大震災 応援メッセージ」欄に投稿が掲載されました。

 実際の投稿の歌詞の部分は次のとおりでした。
「きょうがだめならあしたがあるさ、あしたがだめならあさってがあるさ、あさってがだめならしあさってがあるさ、どこまでいってもあすがある」
漢字混じりになったのはまあいいですが、「があるさ」が「にしまちょ」に変えられたのは著作権の関係でしょう。しかし楽天的というより単に幼稚っぽくなった感じです。このように変えられるのなら投稿しなかったかもしれません。

 なお、この歌はユーチューブで聴くことができます。

2011年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(75)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-e8 による釘付けはずし

 …Qd8-e8 による釘付けはずしでは黒は白が直接的なキング翼攻撃を続けた場合またしても …h7-h5 突きによる防御に頼るつもりである(図111)。

 図111 

 …h5 突きは白がまだキャッスリングしていないことに基づいた戦術の着想のおかげで Bxf6 から gxh5 を心配することなく指すことができる。即ち Bxf6 Bxf6、gxh5 Qe7! のあと黒はキング翼で一種の要塞を築くことができる。例えば hxg6 Bxh4+、Kd1 fxg6、Qh6 g5 という具合である。…h5 突きのあとの局面は図109に現れた局面と非常に似ているように思われる。しかしここでのhポーン突きは白のgポーンに当たっているのでより積極性がある。

(この章続く)

2011年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

中国尖閣占領のシナリオ

産経新聞電子版5月15日付

白昼堂々「尖閣占領」 極秘有事シナリオの重大欠陥

 防衛省が作成した対中有事極秘シナリオが明らかになった。尖閣諸島(沖縄県)が白昼堂々と占領されて幕を開け、宮古・石垣両島も武力侵攻され、自衛隊が奪還作戦に入る・・・

1/3
2/3
3/3

2011年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[61]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット(続き)

チゴーリン防御

1.d4 d5 2.c4 Nc6(図92)

 図92(白番)

 この防御は19世紀の偉大なロシアのマスターのチゴーリンによって開拓された。黒は駒を駆使することによって白の中原に対する素早い反撃をもくろんでいる。2…Nc6 はdポーン布局ではナイトによってcポーンの動きを止めてはいけないという重要な原則をあざ笑っている。この過失はeポーン布局で Bd3 によってdポーンを止めることになぞらえることができるが、その場合は決して言語道断というわけではない。チゴーリン防御は指せる戦法には違いないが、ここでは白が正確に指せば黒は互角にできないことを示唆する分析を示すことにする。

3.Nc3

 黒のdポーンに対する圧力を増すのは正確な対応である。黒はcポーンで自分のdポーンを支えることができないので、中原の支配は今や放棄せざるを得ない。すぐに 3.Nf3 と指すのは 3…Bg4 で黒の注文にはまる。

3…dxc4

 黒は 3…e6 によってdポーンを維持することもできたが、クイーン翼ビショップを閉じ込める形がひど過ぎるし、ナイトも既にc6に跳ねてしまっている。黒は …c5 突きで狭小な陣形を解放するのにひどい困難をかかえている。

4.Nf3

 このナイトはこのように中央に向かって展開するのが最善である。白は犠牲にしたポーンを取り返すのを急ぐ必要はない。この展開の手は黒の2手目によって間接的に脅かされている自分のdポーンの補強にもなっている。

4…Bg4

 黒は白のdポーンを駒で攻撃するという自分の主題を追求している。4…Nf6 は 5.d5 Na5 6.Qa4+ c6 7.dxc6 Nxc6 8.e4 から Bxc4 で、展開の優位により白の優勢が保証される。

5.d5!

 ここで初めて白は黒の可愛そうなクイーン翼ナイトを追い立てる。これで 2…Nc6 の欠点がさらに明らかになった。

5…Bxf3

 これは一貫性のある手だが役に立たない。黒が白のキング翼ナイトを取ったのは、自分のクイーン翼ナイトが中央の地点を占めるようにするためである。

6.exf3

 普通は側面のポーンで中央に向かって取り返すのが推奨されるが、ここでは exf3 と取るのが正しい。というのは白のキング翼ビショップの利き筋が通って、黒のまだキャッスリングしていないキングに対する猛攻に加わることができるようになるからである。

6…Ne5 7.Bf4!

 哀れなナイトのいじめがまだまだ続く。これに対して 7…Ng6 と引けば 8.Bxc4! Nxf4 9.Bb5+ c6 10.dxc6 で白の攻撃が決まる。

7…Nd7 8.Bxc4

 Nb5 を狙っているので黒はそれを防ぐ。

8…a6 9.O-O

 白は展開を完了した。

9…Ngf6 10.Re1(図93)

 図93(黒番)

 ルークが黒キングに通じる素通し列を自動的に占めた。これで白の優勢は明らかである。理由は開放的な局面で双ビショップを保有していること、展開で大きくリードしていること、一方黒キングは恐ろしい攻撃にさらされていることによる。以下は考えられる進行である。10…Nh5 11.Be3 g6 12.d6!(攻撃の筋を開ける)12…cxd6 13.Qb3 e6 14.Bd4 Bg7 15.Bxe6! fxe6(15…Bxd4 16.Bxd7+ Kxd7 17.Qxb7+ Qc7 18.Re7+)16.Qxe6+ Kf8 17.Rad1 これで白が勝つ。

 結論 クイーン翼ギャンビットのチゴーリン防御に投げかけた我々の疑問は重要な原則を明らかにしてくれた。それは長期的な戦略の必要性はdポーン布局における迅速な展開よりもはるかに重要であるということである。

(この章続く)

2011年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

王印防御の完全理解(74)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

クイーンを釘付けからはずす

 黒がすぐに …h7-h6 と突いて釘付けをはずさない時、白は Qd1-d2 と指すことによりその手を防ぐことができる(図110)。

 図110 

 しかし …Nb8-d7-c5 の捌きによりeポーンが当たりになっているので普通は f2-f3 突きで守ることが必要である。そのあと黒は、単にクイーンを動かして釘付けをはずすまったく異なった作戦がとれるだけでなく、(戦術の狙い所に出てくるように …h7-h6 突きで釘付けをはずす戦術を用いることにより)前項で検討した局面に再び持ち込むこともできる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(73)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h6 突きによる釘付けはずし

 黒が Qd1-d2 を予期して早く …h7-h6 と突いて釘付けから逃れ白がビショップをe3に引いた時は、黒は …Nb8-d7-c5 と捌いて白に f2-f3 と突かせようとするのが普通である(図106)。

 図106 

 その主要な目的はキング翼で白が単純明快なポーンの暴風の成果をすべて得るのを防ぐことである。例えばここでは g2-g4 突きから h2-h4 突きのあと g5 hxg5、hxg5 Nh7、Bg4 というようなことが起こり得る。

 eポーンを不自然な Be2-f3 で守ることは考えられないから、白は作戦を変更して別の作戦になる Qd1-c2 か f2-f3 と指すのが普通である。

 最初の場合d1-h5の斜筋が開いていることから白は h2-h4-h5 と銃剣攻撃を仕掛けて、通常の応手の …g6-g5 突きのあとキング翼でせき止めの態勢になる可能性を作り出す(図107)。

 図107 

 このような状況では黒がクイーン翼で反撃しようとするのが普通なのでc列が素通しになっているのが一般的であるが、白はキング翼のせき止めを(f2-f3 突きから g2-g4 突きによって)強固にし、キングを(キング翼にキャッスリングして)安全地帯に移し、自然なクイーン翼の広さの優位およびf5の地点と黒の不良キング翼ビショップの弱点とを利用しようとする。

 二番目の場合白は f2-f3 突きのあと Qd1-d2 と指すことを意図し、それで眼目の …h5 突きの応手を引き出す(図108)。

 図108 

 …h5 突きは当然の防御手段であるが、ここでの状況は白がhポーン突きにより圧力にさらされた既出の似たような局面(図101を参照)とはかなり異なっている。ここでの要点はg4で白ポーンが攻撃されていないということである。そのためまず h2-h4 突きで相手のhポーンを固定し、それから Ng1-h3-f2 と捌いて g2-g4 突きを準備する余裕があり、敵陣突破が図れる(図109)。

 図109 

 明らかに …h5 と突いた手はその防御の価値のほとんどを失っている。なぜなら g2-g4 突きから Be3-g5 のあと白に gxh5 で局面を開放する狙いがあるからである。クイーン翼でできるだけ速く反撃を図ることを別にしても、黒は好機の …f7-f5 突きで反撃することもできる。その意図は …f5-f4 突きで白の動きを封じ込めることか、キング翼で十分な広さを確保して(例えば gxf5 gxf5、exf5 Bxf5 の一連の交換のあと)直接の対決に耐えることである。

(この章続く)

2011年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(72)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

キング翼ビショップをe2に置いてのキング翼攻撃の作戦

 白は図92での攻撃法を、Bc1-g5 で Nf6 を釘付けにし f2-f3 突きの代わりに Bf1-e2 でキング翼のポーン暴風を準備することにより、改良を追求した(図105)。

 図105 

 h4-h5 突きからh列が素通しになったあと白の攻撃がすぐに手がつけられなくなるなることは容易に分かる。さらに白駒の配置は主として …f7-f5 突きまたは …h7-h5 突きによるキング翼での黒の主眼の反撃を防ぐことに向けられている。従って黒はこれらの防御の可能性を早く再開させることによりこのような態勢を避けなければならないことは明らかである。本質的にこのためには二つのことを成し遂げることが必要である。それは釘付けをはずしてナイトが動けるようにし …f7-f5 と突けるようにすることと、白に f2-f3 と突かせてビショップの利きがh5の地点に及ばないようにすることである。黒が釘付けをはずすには二通りの手段がある。(1)クイーンをe8かa5に動かす(あとの手の場合常に役に立つ …c7-c6 突きを伴うことがある)。(2)白が Qd1-d2 と指す前に …h7-h6 と指す。後者の場合白がgポーンとhポーンを突いていく攻撃作戦を続けたいのならばビショップをe3に引かなければならない。ビショップをh4に引いてキング翼ナイトをf3に展開するのは前章で分析した中原の型に移行してしまう。

 f2-f3 と突かせるために黒は …Nb8-d7-c5 という捌きの手段を用いる。これは上記の釘付けはずしの方法とよく適合している。この捌きは白が f2-f3 突きを省いてキング翼を襲撃しようという戦法すべて(例えば白が h2-h3 と突いておいて g2-g4 と突こうとする時)においても役に立つ。

(この章続く)

2011年05月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(216)

「Schach-Magazin 64」2011年3月号(1/9)


ヒカル・ナカムラがベイク・アーン・ゼーの超弩級大会で優勝
世界の頂点に立つ

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 写真 キャシー・ロジャーズ
表紙写真
ヒカル・ナカムラ。ベイク・アーン・ゼーの超弩級大会での彼の優勝は一大センセーションを巻き起こした。やる気満々の指しっぷりと機知に富んだ試合解説は観衆に好評だった。

一大センセーションの小さな日記
ヒカル・ナカムラがベイク・アーン・ゼーの超弩級大会で優勝
解説 GMイアン・ロジャーズ

 かつてヒカル・ナカムラはオランダのベイク・アーン・ゼーで開催される有名なチェスの祭典への招待状を受け取ったことがある。その主催者は彼にBグループの参加枠を用意していた。彼はそれを辞退した。米国チャンピオンとしてAグループが当然と考えたからだった。

 そうこうしているうちに世界ランキングで二桁台から一桁台に上昇した。そして昨年末にベイクから新たに招待状が家に届いた。今度はAグループへの招待だった。ナカムラは小躍りして喜んだ。彼は受諾し「来た、見た、勝った」!

 それは誰も予想していなかったし、彼自身も予期していなかった。予想は世界チャンピオンのアーナンドと「チェス界のプリンス」カールセンとの優勝争いになるというのが一般的だった。あるいは世界ランキング第3位のアロニアンと元世界チャンピオンのクラムニクもからんでくるかもしれなかった。しかし考えられるのはもうそこまでだった。

 ナカムラのことは誰も勘定に入れていなかった。彼の名前は「弾丸」試合と分かちがたく結びついていた。弾丸試合はインターネットでの「脳みそを破壊する」(GMのヒューブナー博士)1分ブリッツで、個人的には感じのいいこの米国のティーンエージャーがかっとなったり半狂乱になって対局していた。時にはチャットでひどく下品な言葉をはいていた。それに 1.e4 e5 2.Qh5 のような布局での乱行もまだ記憶に新しい。要するに(極端な言い方をすれば)チェスのギャンブラーという評判が彼にはこびりついている(あるいはもう少し良く言えばこびりついていた)。

 しかし彼は変わっていた。「去年から真剣にチェスに打ち込み始めた。以前は今のカールセンのように気楽なティーンエージャーとしてやっていた。あるレベルまでは無鉄砲な指し方が通用する。しかし非常に強い相手と当たるようになるといいかげんな布局は胴体着陸になりがちだ。今でもまだ自分の指し方は攻撃的だと思っているが、以前ほど危険を冒さなくなっている。それに以前ほど対局中にかっとしないで冷静さを保つようになった。生き方が楽になった。」

 ほとんどすべての超一流選手が集まった中でナカムラが番狂わせの優勝をしたことはこの祭典の一つの事件で、それゆえにこの記事の中心となっている。彼は至る所で評価されたし、権威者からもそう言われることがある。ガリー・カスパロフはニューヨークタイムズ紙の「ギャンビット」というブログで次のように引用されている。「フィッシャーは世界チャンピオンの参加した大会で優勝したことがなかった。・・・それどころかナカムラと比較できる米国人の大会優勝を見つけようとすると、ピルズベリーがヘースティングズ[当時の世界チャンピオンのラスカーが参加していた]で優勝した1895年までさかのぼらなければならないと思う。」カスパロフの比較は-米国人にとってはしてやったりだが-いささか誇張しすぎのように思われる。それでもナカムラの優勝はとりわけ彼にとって既に過去の偉業である。優勝者自身は浮わついたことを考えていなかった。「今年の目標は[レイティングで]2800を突破することです。今はまだその途中です。」

 それではベイク・アーン・ゼーで彼のたどった道のりをもっと詳しく見ていこう。

 写真 キャシー・ロジャーズ
ヒカル・ナカムラ
1987年 日本の枚方(ひらかた)市に生まれる
1989年 一家で米国に移住
1998年 11歳の時レイティング大会の試合でグランドマスターに勝った最年少米国選手となる
2003年 1958年からボビー・フィッシャーの保持していた記録を破って米国チェス史上最年少のグランドマスターとなる
2004年 米国選手権戦で優勝
2006年「弾丸」戦(インターネットでの持ち時間1分のブリッツ)で世界ランキングの1位となる
2006年 トリノでのチェスオリンピアードで米国チームの一員として銅メダルを獲得
2009年 米国選手権戦で二度目の優勝
2009年 サンセバスティアンでの第18水準大会でスビドレルとカルポフを抑えて優勝
2010年 トルコのブルサでの世界団体選手権戦で第1席での個人最優秀選手となる
2011年 ベイク・アーン・ゼーでの超弩級大会で世界ランキング最上位4人を抑えて優勝

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(この号続く)

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王印防御の完全理解(71)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h5 突き

 時には、それも黒がc列を早く素通しにする時には特に、白はクイーン翼にキャッスリングする前に g2-g4 と突くことによりすぐに攻撃を続けるかもしれない。この場合h4-e1の斜筋の弱点のために黒は強く …h7-h5 と突いてgポーンを脅かすことができる(図101)。

 図101 

 この手は白のキング翼ナイトがg3に来ないうちに指さなければならないが、(前記の …f7-f5 突きの場合のように)二つの異なる構想、即ちせき止めと交換がある。

 …h7-h5 突きのあと白は守り方を決めなければならない。基本的に三通りの応手が可能である。(1)gポーンを h2-h3 突きで守る。(2)g4-g5 と突く。(3)Bg5 で Nf6 を釘付けにすることにより間接的にgポーンを守る。

 最初の場合はせき止めに発展する。即ち h2-h3 突きのあと黒は …Nh7 と引き(すぐに …h4 と突くと Bg5 と釘付けにされる)、…h5-h4 と突いてから …Bg7-f6-g5 によって不良ビショップの交換を狙う(図102)

 図102 

 このせき止めの捌きは h2-h3 突きのあとh4-e1の斜筋がさらに弱まって白が gxh5 によってg列を素通しにできないことが基礎になっている。なぜなら …Qh4+ に対してナイトがg3に行けず、さらに Bf2 Qxh5 となれば黒が自分に有利なように白の作戦を邪魔したことになるからである。これによりなぜ白がクイーン翼にキャッスリングする前に g2-g4 と突いた時だけ …h7-h5 突きの戦略が効果があるのかということと、なぜ白が g2-g4 と突く前にキャッスリングした時に黒が …f7-f5 突きで応じるのが普通なのかということとがはっきりと示される。要は黒クイーンがh4に出た時にチェックにならなければならないということである。

 二番目の場合白が g4-g5 と突くと Nf6 はh7に下がる(図103)。

 図103 

 ここで黒はキング翼でせき止めを果たしたことに満足して全精力をクイーン翼での反撃に傾けるかもしれないし、…f7-f6 突きによって、例えば h4 f6、gxf6 Rxf6 で、キング翼の全戦力を活性化しようとするかもしれない。

 最後に三番目の場合、Be3-g5 のあと(gxh5 によってg列を素通しにする狙いを持っている)黒は …h7-h5 突きの交換の着想を実現に移すかもしれない。そうなれば黒は白のeポーンとgポーンを弱めそれらを同時に攻撃できるようになる。…hxg4、fxg4 のあと(図104)

 図104 

黒は …Nc5 と指し、白はgポーンを犠牲にしなければならない。なぜなら h2-h3 と突いて守ると …Ncxe4!、Nxe4 Nxe4、Bxd8 Nxd2、Be7 Re8、Bxd6 Nc4 という単純化の手筋で黒が良くなるからである。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(70)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

中央での反撃の …f7-f5 突き

 白のキング翼攻撃に対して黒が採用する通常の反撃策は中央での …f7-f5 突きである。このポーン突きはキング翼ナイトをh5に跳ねて準備するのが普通である(図95)。

 図95 

 この戦略は一般に白がクイーン翼キャッスリングのあともくろむ g2-g4 突きを予期して計画される。

 そのあと黒は相手の攻撃の通常の進展を、…f4、Bf2 Bf6(図96)

 図96 

で局面を閉鎖することにより g4 Ng7、h4 Be7 のあと白が列を素通しにできないようにして防ぐか(特に黒が …h6 突きでせき止めの態勢を万全にする時間があるならば)、特に白がfポーンで取り返さなければならないならば中央で交換(…fxe4)することにより防ぐ(図97)。

 図97 

 ここで g2-g4 突きにはf3のポーンによる自然な支援がなくなっている。黒はこの戦略を実行する際に Nh5 が g2-g4 突きによっていじめられるのをほとんど恐れる必要がない。実際このナイトがf4に跳んでポーンを損することを少しも気にする必要がないのが普通である(図98)。

 図98 

 Bxf4 exf4、Qxf4 f5 のあと黒の得る動的代償は、ことに対角斜筋のビショップが解放されることからくる代償は、犠牲にしたポーンをしのぐのが普通である。同様のポーン捨ては白がナイトをe2に配置し双ビショップを譲る必要のない時でも考慮に値する。

 基本的に白には …f7-f5 突きの構想に対処する二つの手段がある。それは exf5 gxf5 と交換したあとキング翼攻撃の方針を継続することと、…f5-f4 と突いてせき止めてきた場合には戦場をクイーン翼に移すことである。

 最初の場合 exf5 gxf5 の交換のあと局面の戦略的様相はかなり変化する(図99)。

 図99 

 白が …f5-f4 と応じられるのを恐れない時は、h2-h3 と突いてすぐに g2-g4 突きを用意することができる。そうでない場合は最初に g2-g3 と突いてから h2-h3 と突くことができる。時には f3-f4 と突くことによりもっと中央での戦略を追求して、前章で検討したのとあまり違わない戦略を意図することもできる(第2章の「f2-f4 突き」を参照)。

 黒の方は …e5-e4 と突いて対角斜筋を開けe5の地点を使えるようにする可能性から、中央でかなりの機動性が得られる。

 二番目の場合黒の …f5-f4 突きにより生じるキング翼のせき止めは、一般に白に注意をクイーン翼に向けさせる。白はクイーン翼に自分のキングがいるにもかかわらず列を素通しにしようとする。結果としてこのせき止め戦略の実行はc列の開放とはほとんど組み合わされないことになる。なぜなら白が素通し列と、黒のaポーンおよびbポーン突きの結果として生じる可能性のある他の弱点につけ込むことができるからである(図100)。

 図100 

 ここではキング翼のせき止めとc列の素通しの二つの戦略はうまくかみ合っていない。黒は第1章で検討した種類の状況にいる。しかしクイーン翼のポーンの形はいっそう弱く、キング翼では反撃の適当な接点がない。

(この章続く)

2011年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(121)

「Chess」2010年11月号(20/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

 総括するとウクライナにとってまた偉大な優勝となった大会だった。イワンチュクが主将としてチームを率い、下位席のザハル・エフィメンコが素晴らしい活躍で大きな手助けになった。もっともエフィメンコは元ウクライナのセルゲイ・カリャーキンに第4席の金メダルをさらわれた。奇妙なことにウクライナ軍団の他の3選手はレイティングをわずかに下回る成績だった。とはいってもチームの活躍に対する彼らの貴重な貢献を否定するものではない。ロシア1は「母なるロシア」の地でオリンピアードのタイトルを奪還できなかったことに失望したことだろう。新入りのカリャーキン少年は第4席で飛び抜けた成績を残し、クラムニクとグリシュクは堅実に戦った。スビドレルは最終戦で突然崩れるまでは好調だった。マラーホフは実力が出せず8回戦を過ぎてからは起用されなかった。ウクライナの最下位席のモイセエンコは不調でたった4回戦が終わったところで見捨てられた。イスラエルは銅メダルに滑り込んだ。彼らの上出来は第2席のエミル・ストフスキーの絶大な活躍(実効レイティング2895)によるところが大きい。彼は第2席の金メダルを獲得した。他の個人メダルの獲得者はベラルーシのビターリ・テタレフ(第3席)とフランスのセバスチャン・フェレル(第5席)だった。テタレフはショートに勝って勢いづいて、第8回戦と9回戦ではガグナシビリとマルコスを血祭りにあげ、最後の2回戦は抜け番に回った。実はフェレルはミハレフスキーとオーストリアのレイティング2376のIMに負けているが、ハウエル、ティモフェーエフ、ゲラシビリそれにマルクスが彼の犠牲者になった。

 イングランドは残念な結果の回戦が二つほとあったが、全体的には非常に立派な成績だった。ガーウェイン・ジョーンズは5人のうちで1番の成績をあげ席メダルにもう少しだった。他の面々は少しレイティングを失ったがそれほど多くではなかった。そして皆少なくとも1局は記憶に残したい見事な勝ちがあった。ガーウェイン・ジョーンズはこのオリンピアードについて次のような感想を語ってくれた。「予想していたより断然良かった。ホテルはほぼ完璧で、国際スタイルのビュッフェは良かったが個人的には大会の終わりまでには食事に飽きてしまった。もっとロシア料理があれば良かった。イングランドのために再び戦うのは本当に楽しかった。チームの仲はうまくいっていた。不運なことに流行していた風邪に我々のほとんどがかかってしまい、私はロシア製のレムシップを飲みながら4局対局した。もっともそれが私にとって幸運だったようでそれらの試合の結果は 3/4 だった。」

 他の英国のチームについて言えば、惜しくも称号基準獲得のチャンスを逃がした2選手に同情の気持ちを禁じ得ない。アイルランドのサム・コリンズは初戦でグリシュクと引き分けて絶好のスタートをきった。そのあと4連勝とGMとの引き分けが続いた。最終戦でシンガポールのGMチャン・チョンと引き分ければ3度目で最終のGM基準獲得となるところだった。しかし残念ながらそうならなかった。称号基準獲得を逃がした別の選手はウェールズのヨロ・ジョーンズで、FM称号を得るためには最終戦で勝つことが必要だったが引き分けに終わった。63歳のヨロは1998年からオリンピアードに出場していなかったが、その時まではウェールズの14回のオリンピアードすべてに参加していた。彼の実効レイティング2303はウェールズ選手の中で最高の成績で、平均手数-驚くなかれ71手-は大会をとおしての記録に違いない。

 というわけでまたオリンピアードが終了し強い思い出となった。これで報告の終わりではない。12月号では女子の部の報告を掲載する。

第39回チェスオリンピアードの結果
ハンティ・マンシースク、2010年

2010年チェスオリンピアードはロシアのハンティ・マンシースクで9月21日から10月3日にかけて開催された。試合は11回戦のスイス式チーム戦で、各チームは4人の選手と1人の補欠選手とから編成される。

持ち時間 90分/40手 + 30分 + 1手目から毎手30秒加算

順位 シード チーム 勝ち点
ウクライナ 19
ロシア1 18
11 イスラエル 17
ハンガリー 17
中国 16
ロシア2 16
アルメニア 16
16 スペイン 16
米国 16
10 10 フランス 16
11 15 ポーランド 15
12 アゼルバイジャン 15
13 14 ロシア3 15
14 35 ベラルーシ 15
15 13 オランダ 15
16 22 スロバキア 15
17 24 ブラジル 15
18 19 インド 15
19 44 デンマーク 15
20 17 チェコ共和国 14
21 30 イタリア 14
22 25 ギリシャ 14
23 18 キューバ 14
24 12 イングランド 14
25 26 アルゼンチン 14
26 48 エストニア 14
27 41 カザフスタン 14
28 31 モルドバ 14
29 38 イラン 14
30 20 グルジア 13
31 ブルガリア 13
32 28 クロアチア 13
33 21 セルビア 13
34 34 スウェーデン 13
35 39 リトアニア 13
36 29 スロベニア 13
37 53 カナダ 13
38 45 オーストリア 13
39 52 ロシア4 13
40 54 アイスランド 13
41 40 エジプト 13
42 56 モンテネグロ 13
43 55 カタール 13
44 46 ペルー 13
45 50 トルコ 13
46 74 ウルグアイ 13
47 121 ザンビア 13
48 72 ICSC 13
49 33 ウズベキスタン 12
50 37 フィリピン 12
51 23 ノルウェー 12
52 27 ベトナム 12
53 51 チリ 12
54 57 コロンビア 12
55 49 オーストラリア 12
56 43 マケドニア共和国 12
57 68 アルバニア 12
58 73 シンガポール 12
59 60 フィンランド 12
60 71 ベルギー 12
61 88 アラブ首長国連邦 12
62 123 パキスタン 12
63 70 IPCA 12
64 42 ドイツ 11
65 47 スイス 11
66 32 ボスニアヘルツェゴビナ 11
67 67 インドネシア 11
68 77 キルギスタン 11
69 58 ラトビア 11
70 61 ロシア5 11
71 66 モンゴル 11
72 36 メキシコ 11
73 82 バングラデシュ 11
74 81 南アフリカ 11
75 59 ポルトガル 11
76 69 トルクメニスタン 11
77 79 ヨルダン 11
78 105 リビア 11
79 84 パラグアイ 11
80 83 フェロー諸島 11
81 64 ベネズエラ 11
82 80 コスタリカ 11
83 63 スコットランド 11
84 85 イエメン 11
85 65 エクアドル 10
86 62 タジキスタン 10
87 89 アンドラ 10
88 75 アイルランド 10
89 91 アルジェリア 10
90 87 ドミニカ共和国 10
91 92 ニュージーランド 10
92 86 マレーシア 10
93 94 タイ 10
94 107 パナマ 10
95 96 バルバドス 10
96 101 日本 10
97 90 ルクセンブルク 10
98 109 キプロス 10
99 103 グアテマラ 10
100 106 マルタ 10
101 139 ナイジェリア 10
102 78 IBCA 10
103 76 イラク
104 115 スリランカ
105 97 ジャマイカ
106 127 ウガンダ
107 114 ネパール
108 100 プエルトリコ
109 99 レバノン
110 95 モナコ
111 125 ホンジュラス
112 134 パレスチナ
113 116 韓国
114 104 ボリビア
115 108 トリニダードトバゴ
116 102 ボツワナ
117 112 バーレーン
118 110 モーリシャス
119 131 中国台湾
120 133 ケニア
121 120 アルバ
122 93 ウェールズ
123 113 ジャージー
124 98 アンゴラ
125 145 マリ
126 129 ナミビア
127 141 マラウィ
128 132 エチオピア
129 124 香港
130 128 ガーンジー
131 146 モーリタニア
132 111 スリナム
133 122 マカオ
134 130 モザンビーク
135 140 マダガスカル
136 118 オランダ領アンティル諸島
137 144 カメルーン
138 138 サントメ=プリンシペ
139 135 ハイチ
140 137 ガーナ
141 126 バーミューダ
142 148 シエラレオネ
143 117 パプアニューギニア
144 119 サンマリノ
145 143 ブルンジ
146 142 ルワンダ
147 149 米領バージン諸島
148 136 セイシェル 10
149 147 セネガル

ICSC = International Committee of Silent Chess(国際黙音チェス委員会)
IPCA = International Physically Disabled Chess Association(国際身障者チェス協会)
IBCA = International Braille Chess Association(国際点字チェス協会)

第1席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 ワシリー・イワンチュク 2754 ウクライナ 80.0 10 2650 8 2890
2 レボン・アロニアン 2783 アルメニア 75.0 10 2695 7.5 2888
3 ヤン・ネポムニャシチ 2706 ロシア2 72.2 9 2655 6.5 2821
4 イワン・ソコロフ 2641 ボスニアヘルツェゴビナ 75.0 8 2605 6 2798
5 ウラジーミル・クラムニク 2780 ロシア1 61.1 9 2714 5.5 2794
第2席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 エミル・ストフスキー 2665 イスラエル 81.3 8 2644 6.5 2895
2 ゾルタン・アルマーシ 2707 ハンガリー 70.0 10 2652 7 2801
3 ワン・ハオ 2724 中国 75.0 10 2590 7.5 2783
4 アレクサンドル・グリシュク 2760 ロシア1 66.7 9 2651 6 2776
5 ガータ・カームスキー 2705 米国 70.0 10 2607 7 2756
第3席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 ビターリ・テタレフ 2511 ベラルーシ 87.5 8 2517 7 2853
2 パベル・エリャーノフ 2761 ウクライナ 70.0 10 2588 7 2737
3 セルゲイ・ルブレフスキー 2683 ロシア3 72.7 11 2552 8 2727
4 ユディット・ポルガー 2682 ハンガリー 60.0 10 2631 6 2703
5 ニコライ・ビチュゴフ 2709 ロシア2 66.7 9 2575 6 2700
第4席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 セルゲイ・カリャーキン 2747 ロシア1 80.0 10 2619 8 2859
2 ザハル・エフィメンコ 2683 ウクライナ 77.3 11 2572 8.5 2783
3 アニッシュ・ギリ 2677 オランダ 72.7 11 2555 8 2730
4 カミル・ミトン 2629 ポーランド 75.0 10 2521 7.5 2714
5 フェレンツ・ベルケス 2678 ハンガリー 65.0 10 2576 6.5 2686
第5席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 セバスチャン・フェレル 2649 フランス 66.7 9 2583 6 2708
2 マテウシュ・バルテル 2599 ポーランド 77.8 9 2486 7 2706
3 ブラスティミル・バブラ 2515 チェコ共和国 77.8 9 2448 7 2668
4 キリル・ストゥパク 2502 ベラルーシ 70.0 10 2511 7 2660
5 ガーウェイン・ジョーンズ 2576 イングランド 75.0 8 2454 6 2647
イングランド・オープンチーム 個人別成績
名前 棋力 得点 試合数 実効棋力 棋力変動
マイケル・アダムズ 2728 6.5 11 2690 -4.1
ナイジェル・ショート 2690 4.0 2587 -10.3
ルーク・マクシェーン 2657 5.0 2573 -9.2
デイビド・ハウエル 2616 4.5 2551 -4.6
ガーウェイン・ジョーンズ 2576 6.0 2647 +7.6

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王印防御の完全理解(69)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

逆翼キャッスリングでの黒のキング翼の先受け

 白が逆翼キャッスリングをしようとするならば、特にc列が素通しの時は、技術的な問題に直面する(図94)。

 図94 

 白はどのくらい長くキングを中央にとどめるかということと、クイーン翼にキャッスリングしてから g2-g4 と突くかそれともキングがまだ中央にいる間に g2-g4 と突くかということとを決めなければならない。

 黒のキング翼の先受け(もちろん必須のクイーン翼の逆襲と並行して行なわれる)は白の用いる手順によってある程度影響されるかもしれない。一般的にいうと、白が g2-g4 と突く前にクイーン翼キャッスリングする時は、黒は …f7-f5 突きの反撃で白の攻撃作戦を邪魔するのが最善であることがよくある。逆に白がキングを中央に残したまま g2-g4 と突く時は、黒は …h7-h5 突きでキング翼で反撃するのが普通である。

 この手っ取り早い指針は実戦で厳格に従うべきものではないが、それでも理にかなった根拠を持ち(あとで解説する)、理解と方針の良い道しるべとなる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(68)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通と白の作戦の融通性

 クイーン翼での黒の最も理にかなった反攻は、できるだけ迅速にc列を素通しにする(…c7-c6 突きから …c6xd5 と取る)ことである(図93)。

 図93 

 しかしその場合白は当初の攻撃策にとらわれる必要はさらさらない。代わりに元々優勢な方面で列を素通しにさせたことに満足して、キング翼にキャッスリングしてクイーン翼で圧力をかけることに集中するかもしれない。黒が時としてc列を開けずにクイーン翼で反撃を図るのはこのような理由による。

 従って逆翼キャッスリングはc列が素通しの時もあればそうでない時もあり、同翼キャッスリングは素通しc列を伴う。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[60]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット(続き)

クイーン翼ギャンビット受諾

1.d4 d5 2.c4 dxc4(図90)

 図90(白番)

 この手は表面的には白の注文どおりのように見える。即ち黒は中原の足場を放棄し、白に中央で多数派ポーンをこしらえさせている。さらに白はキング翼ビショップで、もし必要ならばクイーン翼ナイトとクイーンで、c4のポーンを攻撃して簡単にポーンを取り返すことができる。ここで 3.e4 は 3…e5 と中原で逆襲される恐れがあるので白は普通は最初に次の手を指す。

3.Nf3

 この手の目的は黒の …e5 突きを防ぐことである。しかしここで黒はこの間隙を縫って反撃を策することができる。それでもクイーン翼ギャンビット受諾は黒にとって非常に危険の多い防御法となっている。白には 3.Qa4+ としてポーンを取り戻す手段もあるが、試合のこんなに早い段階でクイーンをc4に進出させるよりもキング翼ビショップを展開させた方が良い。

3…Nf6

 展開は黒にとって本質的に重要である。この手も 4.e4 を防いでいる。

4.e3

 この手はポーンを取り返す用意をしながら同時にキング翼ビショップを要所につかせようとしている。

4…e6

 黒の指したい手は白のdポーンを攻撃する …c5 突きである。本譜の手で黒のキング翼ビショップの利きがc5の地点に達する。代わりに 4…Bg4 とかかると白は単刀直入に 5.Bxc4(6.Bxf7+ という狙いがある)5…e6 6.Nc3 Nbd7 7.O-O Bd6 8.h3 Bh5 9.e4 e5 10.Be2 と展開することができ危なげなく優勢になる。

5.Bxc4 c5 6.O-O

 6.dxc5 と取るのはクイーンを交換され白の中原での多数派ポーンが解消してしまうので明らかに価値がない。しかし白が引き分けで満足の時にはよく指される。

6…a6

 このポーン突きは必要のない手のように思われる。しかし黒の狙いは …b5 突きから …Bb7 で手得をしながらクイーン翼ビショップを絶好の斜筋につけることにある。もちろん白はこれを阻止する。

7.a4!

 これで白は一種の盾として働く中原ポーンの内側で駒を攻撃のために集める用意ができた。

7…Nc6 8.Qe2 cxd4 9.Rd1 Be7

 9…e5? は 10.exd4 でeポーンが釘付けになる。展開しポーンを守る 9…Bc5 は良さそうな手に見えるが、10.exd4 Nxd4 11.Nxd4 Bxd4 12.Be3 となって釘付けがきつすぎる。

10.exd4 O-O 11.Nc3

 白は十分に展開し d5 と突いて黒陣を乱す準備ができた。従って黒は定評のあるやり方で孤立dポーンをせき止める。

11…Nd5 12.Bd3!(図91)

 図91(黒番)

 この手は黒キングに攻撃の狙いをつけている。これはクイーン翼ギャンビット受諾から生じる典型的な局面である。これに似た局面は大会の実戦で何千回も現れている。この局面は孤立dポーンが白に優位をもたらしている場面である。というのは白が中原をしっかりと掌握しているのに対し、黒は展開が十分でなく駒がdポーンの弱点につけ込むのに効果的に配置されていないからである。白が先着の利で駒を理想的に連係させて黒の孤立dポーンにつけ込むことのできるタラシュ防御の節(後出)と比較してみるとよい。1971年ユーゴスラビア対ハンガリーの主将戦のグリゴリッチ対ポルティッシュ戦は次のように進んだ。

12…Ncb4 13.Bb1

 ビショップを絶好の斜筋上に置いておくならばルークを閉じ込めてもかまわない。

13…b6 14.a5! Bd7 15.Ne5

 ナイトが孤立dポーンの利いている地点に陣取った。

15…bxa5 16.Ra3

 この手は 17.Nxd5 のあと 18.Bxh7+ Kxh7 19.Rh3+ から 20.Qh5 という典型的な詰み手順を狙っている。黒はこの脅威をかわすためにポーンの囲いを弱めなければならない。そこに Bb1 の価値がある。

16…f5 17.Nxd5 Nxd5 18.Nxd7 Qxd7

 18…Bxa3?? は 19.Qxe6+ Rf7 20.Ne5 で壊滅する。

19.Rxa5

 黒のaポーンとキング翼ビショップに対し白には双ビショップと素通し列があり非常に有利な態勢である。また、e5が駒の絶好の地点となるのに対し、黒には孤立dポーンに対し特に圧力となるようなものはない。

(この章続く)

2011年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

王印防御の完全理解(67)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

e2のナイトを用いたキング翼攻撃の作戦

 白は次のような非常に単純な作戦によって相手のキングに対して迅速に強力な攻撃の狙いを作り出すことができる。クイーン翼ビショップとクイーンをc1-h6の斜筋に重ね(例えば Be3、Qd2)、g2-g4 突きのあとg3に跳ねる意図でキング翼ナイトをe2に展開し、hポーンをh5まで突いてクイーンをh列に転回させる(図92)。

 図92 

 明らかにこのような攻撃作戦はクイーン翼にキャッスリングすることにより展開を完了することをもくろんでいる。逆翼キャッスリングから生じる局面の激しさを考慮すれば、黒ができるだけ速くクイーン翼での反撃を促進させ、キング翼でも白の攻撃作戦の進行を邪魔するために対抗策を取らなければならないことは明らかである。

(この章続く)

2011年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(66)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点

 これらの戦法すべてを貫いている考え方は単純である。それは白が中原を閉鎖するがキング翼ナイトをf3の地点に展開せず、それによってhポーンおよび/またはgポーンを突いてキング翼で強力な攻撃を仕掛ける可能性を保持するということである。だからこの型の中原では次のような特徴が現れる(図91)。

 図91 

 白はまだキャッスリングしていないので非常に融通性のある陣形になっている。即ち黒の応手に応じてクイーン翼にキャッスリングしてキング翼で攻撃することもできるし、キング翼にキャッスリングしてクイーン翼での広さの優位を自然に生かすこともできる。

(この章続く)

2011年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(65)

第3章 ゼーミッシュ中原

主手順 - ゼーミッシュ戦法
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 O-O 6.Be3 e5 7.d5(図90)

 図90(黒の手番) 

 同様の戦略的条件は白が他の戦法で f2-f3 突きを遅らせたり省略しようとしたりする時にも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 の後

 アベルバッハ戦法
 - 5.Be2 O-O 6.Bg5 h6(または 6…Nbd7 7.Qd2 e5 8.d5)7.Be3 e5 8.d5

 h2-h3 突きシステム
 - 5.h3 O-O 6.Be3 e5 7.d5

 その他の戦法
 - 5.Nge2 O-O 6.Ng3 e5 7.d5

(この章続く)

2011年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(215)

「Chess」2010年12月号(2/2)

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ニュース総ざらい

フランス – カップ・ダグド国際大会(10月23日-26日)は8人総当たりの2グループの1位同士が快速の2試合で優勝を決める形式で行なわれた。

Aグループ 1位 ヒカル・ナカムラ(米国)6½/7、2位 プー・シャンチー(中国)5½、3位 ニュエン・ニョク・トゥルオン・ソン(ベトナム)4、4位 ユディット・ポルガー(ハンガリー)3½、5位 ロマン・エドゥワール(フランス)3、6-7位 アナトリー・カルポフ(ロシア)、ナデジダ・コシンツェバ(ロシア)2½、8位 ソフィー・ミリェ(フランス)½

Bグループ 1-2位 ワシリー・イワンチュク(ウクライナ、順位判定で1位)、レ・クワン・リーム(ベトナム)5½/7、3-4位 ヤニック・ペルティエ(スイス)、ヨン・ルドビグ・ハンメル(ノルウェー)4、5-6位 ティグラン・ガラミアン(フランス)、カテリナ・ラーノ(ウクライナ)3、7位 チュー・チェン(カタール)2、8位 タチアナ・コシンツェバ(ロシア)1

これでナカムラ対イワンチュクの「夢の決勝戦」になった。2試合ともキング翼ギャンビットになった。ナカムラは第1局に負けたあと自分も採用したが引き分けにしかできず王座をイワンチュクに譲った。

2010年カップ・ダグド決勝第1局
V・イワンチュク – H・ナカムラ
キング翼ギャンビット

1.e4 e5 2.f4 Nc6
 第2局のナカムラ対イワンチュク戦では 2…exf4 3.Nf3 g5 4.Bc4 Bg7 5.h4 h6 6.d4 d6 7.c3 Nc6 8.O-O g4 9.Ne1 Qxh4

と進んだ。イワンチュクはこの第2局について「h4 と O-O が疑問で白がいいわけがない」とコメントした。
3.Nf3 f5 4.d3 d6 5.Nc3 Nf6 6.g3 g6 7.Bg2 Bg7

8.fxe5 dxe5 9.Bg5 h6 10.Be3 O-O 11.O-O fxe4 12.dxe4 Be6

13.a3 Kh7 14.Kh1 a6 15.Bg1 Rf7 16.Qe2 Nd4 17.Qd3 Nxf3 18.Qxf3 Rd7

19.Rad1 Bg4 20.Rxd7 Bxf3 21.Rxd8 Bxg2+ 22.Kxg2 Rxd8 23.Be3 g5

24.h3 Kg6 25.g4 c6 26.Rf2 b5 27.Rd2 Rxd2+ 28.Bxd2 Bf8

29.Kf3 h5 30.Ne2 hxg4+ 31.hxg4 Nd7 32.Nc1 c5 33.Na2 Nb8

34.c4! bxc4 35.Nc3 Nc6 36.Nd5 Nd4+ 37.Ke3 Kf7

38.Nb6 Ke6 39.Nxc4 Be7 40.Ba5 Nb5 41.Kd3

41…Nd6?? 42.Nxd6
cポーンがすぐに落ちてそれで勝負も決まる。
1-0

ロシア – タリ記念大会(モスクワ、11月4日-18日)はレボン・アロニアン、セルゲイ・カリャーキン、シャフリヤル・マメディヤロフの三人が 5½/9 で同点に並び、順位判定で前の二人が優勝した。順位 1-3位 L・アロニアン(アルメニア)、S・カリャーキン(ロシア)、S・マメディヤロフ(アゼルバイジャン)5½、4-6位 A・グリシュク(ロシア)、H・ナカムラ(米国)、ワン・ハオ(中国)5、7位 V・クラムニク(ロシア)4½、8位 B・ゲルファンド(イスラエル)3½、9位 A・シロフ(スペイン)3、10位 P・エリャーノフ(ウクライナ)2½。すぐに引き続いて同所で第6回世界ブリッツ選手権戦が開催され、参加選手が20人に増えて38回戦が行なわれた(11月18日-20日)。レボン・アロニアンが 24½/38 で危なげなく優勝し、テイムール・ラジャーボフ(アゼルバイジャン)24 と2009年のチャンピオンのマグヌス・カールセン 23½ が続いた。また、モスクワではマグヌス・カールセンが2009年チェス「オスカー」(世界のチェスジャーナリストの投票による年間最優秀選手)の受賞トロフィーを授与された。

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(この号終わり)

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王印防御の完全理解(64)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図89(再掲)黒の手番 

 この度肝を抜かれるルーク捨てを黒は受け入れるべきでなかった。白の狙いは 48.Qxg4 Rxg4 49.Rhxh6+ Bxh6 50.Rxh6+ Kg7 51.Nf5+ Kf8 52.Rh8 Rg8 53.Rxg8# である。

47…Bxf6?

 この手は負ければ敗着で、以下の手も同じである。47…Qe2? なら 48.Rhxh6+ Bxh6 49.Rxh6+ Kg7 50.Nf5+ Kf8 51.Rh8#、47…d5? は 48.Qxe5 で白の圧倒的優勢、47…Kh7? も 48.Nf5!! Rxb3 49.Rhxh6+! Kg8 50.Ne7#

 黒が相手の狙いをかわすには 47…Bc8! か 47…Rf8! でf5の地点を守るしかなく、それでどちらも互角の形勢である[訳注 47…Bc8 だと 48.Qc2 で白の勝ちのようです]。

48.Rxh6+ Kg7 49.Qxg4+ Rxg4 50.Nf5+ Kf8 51.Rxf6+ Ke8 52.Nxd6+?

 これはお返しの悪手だった。勝ちの手順は 52.h3!! Rxg2(52…Bxg2+ なら 53.Kh2 Rg5 54.Ba4+ Rd7 55.Rxd6 で白の勝ち)53.Ba4+ Rd7 54.Bxd7+ Kxd7 55.Rf7+ Ke6 56.Rxb7 Rxa2 57.Ng3 で、白勝ちの収局になる。

52…Rxd6 53.Rxd6 Bxg2+ 54.Kg1 Bd5+ 55.Kf2 Bxb3 56.axb3 Rb4 57.Rd3 Ke7 ½-½

 この大激闘にふさわしい終局だった。

(この章終わり)

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読売新聞「ありがとう台湾」

2011年05月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(63)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図88(再掲)黒の手番 

 この局面では黒の攻勢を迎え撃つ白の標準的な手法の一つ(他の戦法でも見られる)が実行されている。ここで黒が 14…e4 で中原を閉鎖すると、白陣の方が明らかに優っている。なぜなら白には g2-g4 突きで黒の中原を破壊する潜在的な狙いがあるし、例えば 15.Nb3 a4 16.Nd4 でd4の地点を支配し優勢になる可能性があるからである。

 実戦の手の意図は中原を開放して黒の不安定なキングの囲いにつけ込もうとすることである。

14…exf4

 黒の最善の方針は陣形の不利を受け入れて、駒の活動性と中央集結に適切な動的代償を得ることを期待することである。

15.Bxf4 Ne5 16.Nf3

 16.Nb3 という手もあった。

16…Bd7

 16…Ng6 は 17.Be3 Qe7 18.Qd2 f4 19.Bf2 Ne5 でいい勝負である。

17.Rae1 Qe7 18.Nxe5!

 この決断は熟慮の末だった。白は相手のポーンを再結合させても中原での機動力の可能性を向上させることにした。

18…dxe5 19.Be3

 両対局者は新しいポーン構造に適合するように、自分の駒の最良の位置を見つけようとしている。

19…b6 20.Kh1 Kh8 21.Qd2 Qd6 22.Bd1! Rf7!?

 黒はh6、f5およびd6の地点を安全に保護しながら、白の守られていないcポーンに反撃を加えるという、面白い作戦を始めた。

23.Bc2 Qf8 24.Ne2

 ここでの白の狙いは 25.Ng3(h5に跳ねる意図)で、それに対して 25…f4 と突いてくれば 26.Bxc5 Qxc5 27.Qd3 で攻撃が厳しくなる。

24…Nb7!

 これが黒の作戦の核心である。このナイトはせき止めのためにd6に来て、そこからf5の地点を守りc4のポーンを攻撃する。

25.b3 a4

 黒は 25…Nd6 で自陣の引き締めに満足することなしにあくまでも反撃に努め、白は挑戦を受けて立った。

26.b4 Nd6 27.c5 Nc4 28.Qc3 Nxe3 29.Qxe3 bxc5 30.bxc5 Ra5!? 31.c6 Bc8 32.Qd2! Rc5

 黒はルークを活動的な地点においておくためにaポーンを犠牲にした。

33.Bxa4 Qd6

 双ビショップの保持とd5とc6のポーンに対する圧力とが犠牲にしたポーンの代償になっているはずである。白はやみくもに戦力得にしがみつく代わりに、ここで非常に面白い複雑な戦術を始めた。

34.Bb3!? Rxc6 35.Nc3 Rb6 36.Ne4! Qf8 37.d6 Rd7 38.Qc2 cxd6 39.Rxf5! Qd8!

 39…Qxf5? は 40.Qxc8+ Kh7 41.Ng3 で白の勝ちになる。

40.Rc1

 40.Rh5 なら黒は 40…d5! を見つけなければならず 41.Ng5 Qg8 で形勢不明である。

40…Bb7 41.Qe2 Qh4!?

 両選手とも危険を顧みず勝ちを目指している。41…Bxe4 は 42.Qxe4 d5 で互角の勝負だろう。

42.Ng3 Rb4 43.Rh5 Qf6 44.Rf5 Qh4 45.Rcf1

 白は暗黙のうちに引き分けを拒否した。

45…Rd8 46.Rh5 Qg4 47.Rf6!?(図89)

 図89 黒の手番 

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(120)

「Chess」2010年11月号(19/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第11回戦 10月3日

 よくあることだが、オリンピアードの最終戦では慎重は勇気の大半を占める。確かにウクライナはイスラエルと対戦中にロシア1対スペイン戦を注視していた。そして2-2の引き分けでも金メダルが確実となったとき全局で平和条約を締結した。開催国チームは4オリンピアード連続で金メダルを逃がすことを受け入れなければならなかったが、少なくとも銀メダルは確保した(2006年と2008年はキルサン・イリュームジノフの記念のコーヒーマグを除いて輝くものは何も持ち帰らなかったはずだ)。


キルサンのコーヒーマグが気に入らなかったらカルポフのウォッカがある

 クラムニクはシロフに勝って最終戦を終えたが、スビドレルはイバン・サルガド・ロペスに負けてここまで無敗の大会に味噌を付けた。彼は試合の終わりには取り乱していたと報道されているが、本当のところは19歳のスペイン選手の出来があまりにも良かったのだろう。彼はいつの日か大きく才能を開花させる可能性がある。

第11回戦 ロシア1対スペイン
P・スビドレル - I・サルガド・ロペス
不規則eポーン布局

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 e5

 黒のこの戦型がモロゼビッチ、スビドレル自身、ラジャーボフ、エリャーノフそれにアズマイパラシビリらのいく人もの有名選手によって指されてきたことを考えると、まだ名前が付けられていないのは意外である。最も近い親戚はフィリドール防御だが、白が(本局のように)ナイトをf3に跳ねていない時はフィリドールにならない。

4.Nge2 Nbd7 5.g3 Be7 6.Bg2 c6 7.a4 b6

 カジガレエフとペルティエは共にこの手を指しているが、若いスペイン選手は偶然にも本局の隣に座っていた同国人のホルディ・マヘム・バダルスのレパートリーから採用したのかもしれない。

8.O-O a6 9.h3 h5

 これもラルセンへの敬意だろうか。黒は g3-g4 突きを警戒した。

10.Be3 Bb7

11.Nc1

 2008年スペインチーム選手権戦のネギ対マヘム・バダルス戦では 11.f4 O-O 12.dxe5 dxe5 13.f5?! b5 14.axb5 axb5 15.Rxa8 Qxa8 16.g4 hxg4 17.hxg4

と進んだ。ここで黒は 17…b4 と指したが、まず 17…Rd8! と指してg4のポーン取りを狙うのが本筋のように思える。勝勢とまではいかなくても黒が申し分のない態勢だろう。また2009年フランスでのアピセラ対ペルティエ戦では 11.Qd2 O-O 12.Rad1 b5 と進み引き分けに終わった。

11…O-O 12.Nd3 Qc7 13.f4 b5

14.Nf2

 14.axb5 axb5 15.Qf3 または 15.Qe2 が白の穏当な作戦に思える。g3-g4 突きの構想は諸刃の剣である。

14…Rfe8 15.g4 hxg4 16.hxg4 b4 17.Ne2 exd4

18.Qxd4

 18.Nxd4 なら 18…c5 19.Nf5 Bf8 20.Ng3 d5 21.e5 d4 という活気ある戦いになりいい勝負である。

18…c5 19.Qd3 d5!

20.e5

 20.exd5 は 20…c4 21.Qd2 Nb6 で黒が有望のようである。

20…Ne4!?

 黒は布局の重苦しいような態勢から抜け出して今度は白に多くの問題を突きつけている。

21.Nxe4

 たぶん白はここで 21.c4!? を考えてみるべきだろう。

21…dxe4

22.Qd1

 22.Bxe4?? は 22…c4 23.Bh7+ Kh8 24.Qf5 Qc6!

となって、白は詰みを逃れるために駒損しなければならない。

22…Rad8 23.Qc1

 フリッツの選択はスビドレルの手と同じである。しかしロシアの著名な解説者のセルゲイ・シポフはこの手は明らかに悪手で、23.Qe1 の方がキングを守るのに好位置なので良いと考えていた。しかしスビドレルは 23…Nb6 24.Ng3 Bh4 でナイトを釘付けにされるのを気にしたのかもしれない。

23…f6

24.e6

 24.Ng3 は 24…fxe5 25.Nxe4 c4 となって、駒の連係が良いのと攻撃の選択肢があるので黒の方が良い。

24…Nb6 25.f5

25…Nd5

 25…Nc4 が魅力的だが白は 26.Bf4 Bd6 27.b3 Ne5 28.Qe3!? Nxg4 29.Qh3

で、ポーンを犠牲に攻撃の機会が得られそうである。

26.Nf4

26…c4

 ここでe3のビショップに食いつくのは思慮のない選手だけである。26…Nxe3? 27.Qxe3 c4 28.Qh3 Bc5+ 29.Kh1 となれば白がキング翼での狙いで勝つだろう。

27.Nxd5

 27.Kh1 でも 27…c3 28.b3 Nxf4 29.Bxf4 Bd6 で恐らく黒が少し優勢だろう。

27…Rxd5 28.Bf4

 解説者の中には 28.Qe1 の方が良いと考える者もいたが、それでも黒には …c3 と突いて …Red8 から …Rd2 と指す強力な作戦がある。

28…Qb6+!

29.Kh2

 29.Be3 Bc5 30.Re1 の方が堅実なようだが、黒はここで 30…b3!? と指すことができ 31.cxb3(31.Kf1 は 31…c3! で白が多くの問題を抱える)31…Rd3! 32.Bxc5 Qxc5+ 33.Kf1 Qd6! 34.Qxc4 Bd5

となれば、黒には …Qg3 と侵入して白ポーンを斜めに掃除していくというのも一つの作戦になる。

29…g5!!

 この手の破壊力は凄まじい。

30.fxg6e.p.

 これはまったく不甲斐ない手だが、他の手はもっと悪い。30.Be3 は 30…Qc7+ 31.Kg1 Qg3! となって白はキング翼のポーンに別れを告げる。30.Bg3? は 30…Kg7!! で白はh8でのルークによるチェックと他の色々な狙いに無力である。

30…Qxe6

31.Kg3

 31.Bh3 なら 31…e3! 32.Qxe3 Qxe3 33.Bxe3 Bd6+ 34.Bf4

となり、ここで 34…Re3!! がきれいな決め手である。

31…Rg5! 32.Bxg5

 32.Qd1 なら 32…Rxg6 とポーンを取り、さらにg4のポーンを攻撃する態勢になる。

32…fxg5 33.Rf5 Bd6+

34.Kf2

 34.Kh3 なら 34…Kg7 で黒の楽勝である。

34…e3+ 35.Kg1 Bxg2 36.Kxg2 Qe4+ 0-1

 37.Kf1 Qh1+ 38.Ke2 Qg2+ ですぐに詰む。

 イングランドは3回連続引き分けになった、ショートは運悪くチェコ共和国のやはり好調なビクトル・ラズニツカと対戦した(そして負けた)。この選手は最近いくつかの大会で優勝している。しかしデイビド・ハウエルがフラーチェクに勝って埋め合わせをした。


三人の微笑むイギリス人。奥のミッキー・アダムズはリラックスした感じで駒の位置を直し、デイビド・ハウエルはナイジェル・ショートの大げさな手振りを面白がっているようである。

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(この号続く)

2011年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(62)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図87(再掲)黒の手番 

 釘付けがキャッスリングの前か後かによって白の作戦構想にかなりの違いが生じる。白がまだキャッスリングしていない時、釘付けの主要な目的は …h7-h6 突きから …g6-g5 突きの応手を誘って(ビショップをh4に引くのはこのためである)、結果として生じる弱点につけ込んで h2-h4 突きによりキング翼での攻撃を始めることである(第3局の黒の7手目の解説を参照)。同様の構想はキャッスリングの前に …Nf6-g4 を誘う際にも存在する。この場合にもビショップはh4に下がりキング翼で攻撃を始めることができる(第3局の白の7手目の解説を参照)。

 白がキャッスリングした後でこれらのいずれかの構想を実行する場合、もちろん側面で全面攻撃を仕掛けるのは不可能である。このような場合代わりに白はビショップをc1-h6の斜筋に沿って引き(…h7-h6 または …f7-f6 と突かれてから)、クイーン翼攻撃を助けることになる(本局の白の8手目の解説と、このあとの指し手を参照)。

 もちろんこの戦法の紆余曲折の過程では色々な構想や定跡の新手が登場し、必ずしもこれらの方針が尊重されたわけではなかった。しかしそれでもほとんどの状況を理解するための有効で価値ある指針となっている。

10…h6 11.Be3

 前に説明したようにビショップをh4に引くのは、白が既にキング翼にキャッスリングしていることから非常に効果が劣る。そして黒は危険を伴わずにf4の弱点につけ込むことができる。例えば 11.Bh4 g5 12.Bg3 Nh5 13.Nd2 Nf4 という具合である。白がキャッスリングする前に似たような捌きをしようとする時と比較して、その違いに注意して欲しい(第3局の黒の7手目の解説にある2番目の参考手順を参照)。本譜でこのビショップは正しい位置を占め、黒の …f5 突きの反撃には exf5 gxf5 と交換してから f2-f4 と突いて応じる。

11…Nfd7

 もし黒が 11…Ng4 に誘われてしまうと、白は次のような一本道の手順で優勢になる。12.Bxc5 dxc5 13.h3 Nf6 14.Nxe5 Nxd5 15.cxd5(15.Nxf7? は 15…Nb4 16.Nxd8 Nxc2 17.Rac1 Nd4 で白のナイトが逃げられない)15…Bxe5 16.f4 Bd4+ 17.Kh2(17.Kh1?! は黒に 17…Qh4 から反撃される)このあと白には 18.Nb5 から Rad1 で優勢になる狙いと、18.e5 と突いて黒の弱体化したキング翼につけ込む手段に道を開く狙いとがある。

 実戦の手は黒の展開に差し支えるけれでも、c5のナイトを強化し …f7-f5 突きの準備となる利点もある。黒は 11…Nh5 と指すこともできる。例えば 12.g3 b6 13.Nh4 Bh3 14.Rfe1 Qd7 となれば混戦である。または 11…b6(最も普通の手)12.Nd2 と指すこともでき、ここで黒は色々な手を試してきた。12…Ng4 13.Bxg4 Bxg4 14.a3 Na6 15.Rab1 Bd7、または 12…Nh5 13.Bxh5 gxh5、または 12…Bg4 13.f3 Bd7 14.b3 Nh5、または 12…Nh7 や 12…Nfd7 もある。

12.Nd2

 この手は f2-f4 突きの準備である。

12…f5 13.exf5

 これは黒のポーンを弱めるための必須の予防手段である。白はすぐに 13.f4?! と突いてはいけない。なぜなら 13…exf4 14.Bxf4 g5 15.Be3 f4 となって、黒がe5の地点を支配し、ポーンによる攻撃の可能性も保持するからである。

13…gxf5 14.f4(図88)

 図88 黒の手番 

(この章続く)

2011年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「まさかの友は真の友」その後

2011年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(61)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

第4局
プラスケット対ナン
イギリス、1982年
ペトロシアンシステム

1.c4 g6 2.Nc3 Bg7 3.Nf3 Nf6 4.e4 d6 5.d4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O

 白は中原の争点を維持して、黒が望めばクイーン翼ナイトをc6に展開できるようにした。

7…Nbd7

 黒は攻撃的な 7…Nc6 よりも陣形の観点から手を選んだ。

8.d5

 dポーンを突いてペトロシアン中原を作るより先にキャッスリングすることにより白陣はいくらか融通性を失っている。一方 …Nbd7 と指した黒は …Na6 の可能性がなくなり …Nc5 と指して展開を完了するしかないので、白に b2-b4 突きの明白な標的を与えることにもなっている。

 実戦の手の代わりに白は 8.Be3、8.Qc2 または 8.Re1 によって中原の争点を維持し続けることができる。キャッスリングしてから 8.Be3 と指すと白はまたしても、前の手でビショップを展開するのに比べてグリゴリッチシステムの典型的な融通性を少し失うことになる(第3局の白の7手目の解説を参照)。

 8.Be3 c6 9.d5 のあとの進行を少し見てみよう。(1)9…Ng4 10.Bg5 f6 11.Bd2(11.Bh4 は 11…Qe7 12.Qc2 Nh6 13.Rad1 g5 14.Bg3 f5 15.exf5 Nxf5 で混戦になる)11…Qe7 12.b4 f5 13.Ng5 Ndf6 14.f3 Nh6 15.dxc6 bxc6 16.b5 c5 17.Nd5 白が優勢である。(2)9…cxd5 10.cxd5 Ng4 11.Bg5 f6 12.Bd2 Nh6(12…Nc5 は 13.b4 Na6 14.a3 f5 15.Ng5 Nc7 16.exf5 gxf5 17.Bxg4 fxg4 18.f3 gxf3 19.Rxf3 となってe4の地点を支配している白が優勢である)13.Qc2 第1章で分析した局面と基本的に同じである。

 黒は 9…c5 と突くことにより中原を完全に閉鎖することを選択するかもしれない。例えば 10.Ne1 Ne8 11.Nd3 f5 12.f4 となったあと、色々な手があるが 12…g5 という手も指されてきた。

 8.Qc2 の簡単な例は 8…c6 9.d5 c5 10.a3 Ne8 11.b4 b6 12.Rb1 である。

 白は 8.Re1 c6 9.Bf1 によって中原の争点を少し長く維持することを選択することもできる。例えば(1)9…Re8 10.d5 c5 11.g3 Rf8 12.a3 Ne8 13.Rb1 f5 14.Ng5 Ndf6 15.exf5 gxf5 16.Ne6 Bxe6 17.dxe6 Nc7 18.Bh3 黒の白枡が弱いので白が優勢である。(2)9…a5 10.Rb1 Re8 11.d5 Nc5 12.b3 Bd7 13.Nd2 Bh6 14.a3 cxd5 15.cxd5 b5 16.b4 axb4 17.Rxb4 Rb8 18.Qc2 Qa5 白が少し優勢である。

8…Nc5

 eポーンが当たりになっているので黒はあらかじめ ,,.a7-a5 と突かずにこの手を指すことができる。

9.Qc2 a5 10.Bg5(図87)

 図87 黒の手番 

(この章続く)

2011年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[59]

dポーン布局と側面布局

第9章 クイーン翼ギャンビット

1.d4 d5 2.c4(図89)

 図89(黒番)

 19世紀の最後の四半世紀まで国際大会では初手に 1.e4 と指すのが普通だった(もちろん他の手は知られていなかった)。しかしチェスの進歩におけるこの時期に 1.d4 も盛んになり、黒は決まって …d5 と応じてクイーン翼ギャンビットになった。ギャンビット受諾は100年ほどの間散発的に現れたが、あまり熱心に用いられることはなかった。当初最もはやった防御はオーソドックス防御(黒は塹壕戦に徹する)とタラシュ防御(ポーンの弱点を犠牲に駒の働きを良くする)だった。どちらも1920年代に超現代の発想(例えばニムゾインディアン防御)の勃興で人気が落ちたが、今日まで多くの信奉者がいる。タラシュは19世紀の終わり頃にクイーン翼ギャンビットの自分の防御に専心したが、ロシアの偉大なマスターのミハイル・チゴーリンは自分の高度に独自のやり方を開拓していた。チゴーリンの考え方は広く受け入れられることはなかったが、クイーン翼ギャンビットの防御でなお魅力的な未踏の道となっている。

 1.d4 のあと猿まねの 1…d5 は、白が 2.e4 でポーン中原の見通しを広げるのを防ぐ最も明白な方法である。1.d4 d5 2.Nc3 が的外れであることは、黒のdポーンがクイーンによって自動的に守られていることから分かる。従って白はこの段階では 2.c4 でギャンビットに出るのが普通で、黒のdポーンをそらして中原を平和裏に構築できることを期待する。

 クイーン翼ギャンビットに対する黒の応手の3方式をこれから調べていくことにする。

 (a)クイーン翼ギャンビット受諾。黒はポーンを取り、白が戦力を取り戻すことに手を費やさなければならないことに頼って反撃にかける。白は中原を支配することになるのが普通なので、これは黒にとって非常に危ない方針である。もっとも白はこれを成し遂げるためにdポーンの孤立化を受け入れなければならないかもしれない。

 (b)黒が白のdポーンに対して、駒で(チゴーリン防御)またはポーンで(タラシュ防御)迅速に反撃を図る。

 (c)黒が白のどのような襲撃に対しても頑強に自分のdポーンを守る(オーソドックス防御)。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(60)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図86(再掲) 白の手番 

 黒のクイーン交換強要は正解である。さもないとb1-h7の斜筋に沿った狙いが急速に手に負えなくなってくる。例えば 28…Qf6? なら 29.f4 exf4 30.Qc2 Rf7 31.Rxf4! で白が勝つ。

29.Qxf4 Rxf4

 29…exf4 と取ると黒はキング翼の陣形の弱さに対してわずかな活動性の代償さえも得られない。

30.Rxe5 Raf8

 30…Rxc4? と取ると黒キングは詰みの包囲網に陥る。例えば 31.Re7+ Kf6(31…Kf8 なら 32.Rh7 で白が優勢)32.Rh7 Kg5 33.Rg7+ Kf4(33…Kf6 なら 34.Rg6+)34.Rf7+ Ke3(他の手も悲惨な結果になる。例えば 34…Kg3 なら 35.Ne2+ Kh3 36.Rf2、34…Kg5 なら 35.f4+ Kxg4 36.Rg7+ Kh3 37.Rf3#、34…Ke5 でも 35.Re1+ Kd6 36.Rf6+)35.Re1+ Kd2(35…Kd4 なら 36.Rf4+)36.Re2+ Kc1 37.Rc2# である。

31.Re7+ R8f7?

 黒は時間に追われて間違えた。31…Kg8 でf3の地点への圧力を維持していればもっと望みがあっただろう。

32.Rxf7+ Kxf7 33.Ne4?!

 白も時間切迫で、33.Be4 でナイトを残した方がずっと良いことが分からなかった。黒キングは黒枡に進めないので白が圧倒的に有利になる。例えば 33…Kf6? なら 34.Ne2 で白の勝ちになる。

33…Nb3?

 黒もお返しの悪手を指した。33…Nxe4 34.Bxe4 Kf6 と正しく応じていれば、白が黒枡での封鎖を打ち破ることは容易でなかっただろう。例えば 35.Kf2 なら 35…Bxg4 36.Ke3 Ke5 37.Rg1 Bh5! 38.Rg7 Rf7 である。実戦の手はたちまち終局を迎えた。

34.Kf2 Bxg4 35.Ke3 Rf5 36.Rf2 Bh5 37.Nd6+ cxd6 38.Bxf5 Kf6 39.Bc2 Nc5 40.Rh2 Kg5 41.Bd1 1-0

(この章続く)

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王印防御の完全理解(59)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図85(再掲) 白の手番 

 黒は恐らくクイーン翼の封鎖はe4の地点を奪われても適切な代償となると期待したのであろう。しかしクイーン翼の封鎖にもかかわらず白陣はe4の地点の獲得とb1-h7の斜筋の開通によって好形になっている。この開通で白にはキング翼攻撃の可能性ができているのに対し、黒にはもういつもの反撃策がなくなっている。

16.f3 b6 17.Bd3 Bf6

 17…Nc5? は 18.Nxc5 bxc5 19.Qc2 と応じられるのですぐには指せない。

18.Nxf6+!

 フィアンケットビショップがいなくなると黒のキング翼の弱点が目立ってくる。

18…Nxf6 19.Qd2 Nc5 20.Bc2 Kg7

 この試合の解説でカスパロフはこのキングを動かした手は悪手だったとして、代わりに危なそうな 20…g5 21.Bf2 Kf7 22.h4 Rg8 23.hxg5 hxg5 24.Be3 Ke7 25.Bxg5 Qf7 という変化を推奨し、ポーンの犠牲に対して黒に十分な代償があると評価していた。しかし 26.f4! のあと黒陣は控え目に言っても防御が容易でないように見える。従って実戦の手は実際は仕方がないようである。

21.Rae1 Nb3

 21…Qf7 なら 22.f4 exf4 23.Qxf4 g5 24.Bxg5 hxg5 25.Qxg5+ Kh8 26.Rxf6 となって白の勝ちになる。

22.Qd3

 カスパロフはこの手を間違いだと考え、代わりに 22.Bxb3 axb3 23.f4! という手順を薦めた。確かにこの手は強手である。例えば 23…Nxg4 24.h3 g5 25.hxg4(25.fxg5?! は 25…Qh5! で混戦になる)25…gxh4 26.f5 となれば、ほとんど勝勢と言ってもよい形勢である。しかし実戦の手も明らかに優勢を保っているようである。

22…g5

 満足できる手を見つけられない黒は思い切った手段で白からの f4 突きを防ぐことにした。22…Nc5 で千日手を期待しても 23.Qe3 で g4-g5 突きを狙われてうまくいかない。

23.Bg3?!

 白は疑問の攻撃策を始めた。この手では 23.Bf2! と引き、h2-h4 突きから Bf2-e3 と出てg5の地点に不気味な圧力をかける方が良かった。そうなれば白は陣形的に明らかに優勢になるのに対し、実戦の手はこれまでの正確な指し回しの成果を手放す危険性を抱えている。

23…Nc5 24.Qd2 Qf7

 24…Nb3 なら 25.Qe3 で h2-h4 突きの狙いが残る。

25.h4 Nh7

 25…gxh4 は 26.Bxh4 で明らかに黒の陣形がどうしようもないほど崩れる。

26.Bxh7

 f3の地点に黒から圧力をかけられているために、白はもうクイーン翼ビショップの位置を修正することができず前からの作戦を続けるしかない。

26…gxh4 27.Bxe5+ dxe5

 27…Kxh7 なら 28.Bd4 で白が明らかに優勢である。

28.Bb1 Qf4(図86)

 図86 白の手番 

(この章続く)

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