2011年04月の記事一覧

まさかの友は真の友

2011年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

王印防御の完全理解(58)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図84(再掲) 白の手番 

 黒が釘付けはずしの作戦を完了したのに対し、白はまだ意図を明確にしていない。この時点で白はまったく正反対の二通りの作戦を選択することができる。それはキング翼にキャッスリングしてクイーン翼での敵陣突破に努めることと(標準的な作戦)、クイーン翼キャッスリングの余地を残しながら 11.g4 でキング翼で主導権を握ろうとすることである。

11.O-O Nh7

 擬似捨て駒の 11…Nxe4? はここではうまくいかない。なぜなら 12.Ndxe4 f5 13.Nd2 g5 14.Bg3 f4 15.Bh5 Qd7 16.Nde4 となって、e4の地点の支配により白が明らかに優勢になるからである。

12.a3

 白はa4の地点を支配している時にだけこの手を指すことができる。もし黒が前の手で 11…Bd7 と指していたら、白は a3 と突く前に 12.b3 と突かなければならないところである。

12…f5?!

 黒はこの手がもたらすe4の地点の放棄の重大性を軽視していた。普通の進行は 12…Bd7 13.b3 h5(ここで 13…f5!? と突くことはできるが、14.exf5 gxf5 15.Bh5 Qb8 16.Be7 Rc8 となって、まったくわけの分からない局面になる)14.f3 Bh6 で、白はここで 15.Rb1 または 15.Kh1 と指すのが最善である。15.Bf2 では黒が 15…Qe7 と応じて、…h5-h4 突きから …Qe7-g5 でキング翼での圧力の強化をもくろむことができる。

13.exf5! Bxf5

 黒は 13…gxf5? と取り返すことができない。というのは 14.Bh5! Qd7 15.b4! となって展開で遅れたままで非常に窮屈な陣形になるからである。

14.g4!

 白は例えば 14.Nde4 Nf6[訳注 14…Bxe4 15.Nxe4 Rf4 という手があるようです]で起こる過度の単純化を避けながらe4の地点を支配することを望んでいる。

14…Bd7 15.Nde4 a4(図85)

 図85 白の手番 

(この章続く)

2011年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(214)

「Chess」2010年12月号(1/2)

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ロンドンは招く

ジョン・ソーンダーズが近づくロンドン・チェスクラシックを予想


ヒカル・ナカムラ - レイティング2741

 ヒカル・ナカムラは2010年は数多く対局し着実にレイティングの階段を昇っている。去年ロンドンで対局した時は2715だったが、それから2741に上がり15位になっている。生の順位によれば10位に上がったかもしれない。最近のモスクワでのタリ記念大会では優勝者からわずか半点差だった。ロンドンでは優勝できるだろうか?もちろんだ!賭ける価値がある・・・

決め手を見つけろ


(1)G・サガルチク対H・ナカムラ
ブエノスアイレス、2003年
黒の手番

解答 1…Qxa3+! 機敏な仕上げ 2.bxa3 2.Kxa3 Ra1# 2…Ra1#


(13)M・クラセンコフ対H・ナカムラ
バルセロナ、2007年
黒の手番

解答 1…Qxf2+!! 2.Kxf2 Bc5+ 3.Kf3 3.Kf1 c3+ 4.Re2 c2 で黒の勝ち。3.Bd4!? Bxd4+ 4.Kf3 Rf6+ 5.Kg4 Ne5+ 6.Kh4 Bc8! このあとの華麗な仕上げは 7.Qh5 Rf4+!! 8.gxf4 Bf2+ 9.Kg5 f6# 3…Rxf6+ 4.Kg4 Ne5+ 5.Kg5 Rg6+ 6.Kh5 f6 7.Rxe5 7.Bd5+ Kh8 8.Kh4 Rh6+ 9.Qh5 g5+ で黒の勝ち 7…Rxe5+ 8.Kh4 Bc8 0-1


(21)B・ゲルファンド対H・ナカムラ
トルコ、2010年
黒の手番

解答 21…Qd3!! 22.Nxe5 2.Bxd3 Bg2#。2.Bxh3 Qxf3+ で次の手で詰み 2…Bxf1! 3.Qxf1 Qxc3 4.Rc1 4.Nd3 Qxc7 で黒のルーク得 4…Qxe5 5.c8=Q Rxc8 6.Rxc8 Qe6 0-1

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(この号続く)

2011年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(57)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例

第3局
ベインゴルト対カスパロフ
ソ連、1979年
ペトロシアンシステム

1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 d6 5.e4 O-O 6.Be2

 こんなに早い段階でも白が …e7-e5 突きに対して中原を閉鎖してしまうつもりならば、将来の …f7-f5 突きに対して 6.h3 と突いて g2-g4 突きを用意することによってすぐに反撃を始めることができる。黒が …e7-e5 と突かなければならないというわけではないけれども、6…e5 7.d5 の後どのように展開していくのかを少し見ておこう。(1)7…Nbd7 8.Be3 Nc5 9.Nd2 a5 10.g4 Ne8 11.h4 白がクイーン翼キャッスリングの可能性を当然残しながらキング翼で主導権をつかみ始めている。(2)7…c6 8.Be3 cxd5 9.cxd5 Nbd7 10.Be2 Nc5 11.Nd2 a5 12.a3 この場合白はいつものクイーン翼での優位を生かしていくつもりである。(3)7…Na6 8.Be3 Nh5 9.Nh2 Qe8(…f7-f5 突きの狙いに役立つ手)10.Be2 Nf4 11.Bf3 f5 邪魔なナイトを追い払うために白は h3-h4 突きから g2-g3 と突かなければならない。

6…e5

 黒は早く …f5 と突くために 6…Bg4 7.Be3 Nfd7 と指すことができる。例えば 8.Rc1(この手はルークをa1-h8の斜筋からそらし、状況により b2-b3 と突いてcポーンを守れるようにしている。このポーン突きは例えば 8.h3 Bxf3 9.Bxf3 Nc6 10.d5 Na5 となってからでは指せない)8…e5 9.d5 a5 10.h3 Bxf3 11.Bxf3 Na6 12.h4 f5 13.h5 この手は黒のクイーン翼ビショップの交換によって生じた白枡の弱点を際立たせるためである。

7.d5

 白はこの手によってのみペトロシアン中原を形成することができる。中原の争点を維持したままだと黒にオーソドックス中原(第6章を参照)を作る可能性を与える。ほかに白は 7.O-O により中原の争点を維持することもできるし(この手のあとの成り行きについては第4局を参照)、7.Be3 で黒のキング翼ナイトをg4に誘い出すこともできる。7.Be3 が第1章(例えば 7…Nc6 8.d5 Ne7)にも第6章(例えば 7…exd4)にも移行しない時は、この型の中原になる。例えば 7…Qe7 8,d5 Ng4 9.Bg5 f6 10.Bh4 のあと(1)10…h5 11.Nd2 a5 12.h3 Nh6 13.f3 Na6 14.a3 白の陣形はまだある程度融通性を保持している。(2)10…Qe8 11.h3 Nh6 12.g4 a5 13.g5 fxg5 14.Bxg5 Na6 15.Qd2 白はクイーン翼にキャッスリングして逆翼攻撃を始めるつもりである。

 Be3 がキング翼キャッスリングと連動して指された場合については第4局の白の8手目の解説を参照されたい。

7….a5

 これは最も融通性のある手で、今日では最も普通である。黒はc5の地点を確保し、…Na6 と指して b4 突きを遅らせ …Qd8-e8 によって釘付けをはずす用意をする意図である。他にも色々な手があるが(7…c5、7…Nh5、7…h6、7…Na6 など)、最も重要な手は 7…Nbd7 である。この手のあとの可能な展開を示すと 8.Bg5 h6 9.Bh4 g5 10.Bg3 Nh5 11.h4 のあと(1)11…Nxg3 12.fxg3 gxh4 13.Nxh4 Qg5 14.Bg4 キャッスリングできなくなりgポーンを取られても白が優勢である。例えば 14…Qe3+ 15.Qe2 Qxg3+ 16.Kd1(2)11…Nf4 12,hxg5 hxg5 13.Qc2 f5(13…Nxg2+ は 14.Kd2 で、クイーン翼ルークをキング翼に回すことができるので白がかなり優勢である)14.exf5 Nc5 難解な局面である。(3)11…g4 12.Nd2(12.Nh2 は 12…Nxg3 13.fxg3 h5 14.O-O で、f5の地点の支配が物をいう)12…f5 13.exf5 Ndf6 14.Bxg4 Nxg3 15.fxg3 Nxg4 16.Qxg4 Bxf5 双ビショップが犠牲にしたポーンに見合った代償になっているかは定かでない。

8.Bg5

 白はキングの位置についての選択肢を保持しながら黒のキング翼ナイトを釘付けにした。別の面白い着想は 8.Be3 と指すことにより黒のキング翼ナイトにこのビショップを攻撃させるよう誘うことである。例えば 8…Ng4 9.Bg5 f6 10.Bh4 で、白の7手目の解説中の手順と似た展開になる。

8…h6

 この手はキング翼ナイトのためにh7の地点を空けるために必要である。

9.Bh4 Na6 10.Nd2 Qe8(図84)

 図84 白の手番 

(この章続く)

2011年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(56)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の …Nxe4

 逆に白はe4でのナイトの擬似捨て駒に基づいた手筋にいつも気をつけなければならない(図80)。

 図80 

 例えばここでは黒は …Nfxe4 と取ることができる。なぜなら Nxe4 Nxe4、Qxe4 Bf5(図81)

 図81 

のあと、犠牲にした戦力を利子付きで取り戻すことになるからである。

 今度はh8-a1の斜筋の開通に基づいたこの種の捨て駒は、白のクイーン翼ルークがまだa1にいる時にも成立する。e4での捨て駒のあと黒は …f7-f5 から …e5-e4 と突いて Nf3 と Ra1 を両当たりにして駒を取り戻す。

 しかしこの種の手筋は逆効果になることもある(図82)

 図82 

 例えばここでは黒は擬似捨て駒の …Nxe4 を決行することができる。なぜなら Nxe4 f5 で駒を取り返すことができるからである。しかし白は Nc3 g5、Bg3 f4、Ne4 fxg3、hxg3 でビショップを犠牲にすることができ(図83)

 図83 

e4の地点の支配と黒の不良ビショップのひどさのために戦略的に優位に立つ。

(この章続く)

2011年04月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(119)

「Chess」2010年11月号(18/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第10回戦 10月1日

 ウクライナは最終戦を残すこの回の前にロシア1とフランスに勝ち点1差をつけていた。そしてフランスに 3½-½ と大勝して優勝に大きく近づいた。ロシア1は中国に辛勝したが、最終戦で勝ってもウクライナが引き分ければ逆転優勝できないと知った(数学に高等知識を持った人だけがオリンピアードで用いられる順位判定方式を本当に理解できるので、これは絶対確かというわけではない)。3位に上がったのは米国に 3-1 で勝ったイスラエルだった。

 イングランドの相手は同じくらいの平均レイティングのオランダだった。試合は熱戦になってイングランドチームの各選手が異なった時点で勝つ可能性が本当にありそうだった。しかし最後には4試合とも引き分けになった。

 世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンは悲惨だった大会を終えた(最終戦には出なかった)。この第10回戦ではロシア4のサナン・シュギロフに負けて大会3敗目を喫した。レイティング順位でアーナンドより下に落ちただけでなく、この試合には別の意味もあった。それは大きな大会の試合で自分より年下の選手に初めて負けたということだった。シュギロフは1993年1月31日生まれで、カールセンより2歳以上若かった。ノルウェーのスターは絶不調のようで惨敗した。

 最終戦を前にした順位は次のようになった。1位 ウクライナ 勝ち点18、2位 ロシア1 勝ち点17、3位 イスラエル 勝ち点16、4-8位 ポーランド、ハンガリー、アルメニア、スペイン、フランス 勝ち点15、・・・21位 イングランド 勝ち点13、・・・76位 アイルランド 勝ち点10、・・・93位 スコットランド 勝ち点9、・・・113位 ウェールズ 勝ち点8

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(この号続く)

2011年04月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

王印防御の完全理解(55)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

h5-e8の斜筋の弱点

 黒がクイーン翼ナイトのd7への展開と …Qd8-e8 による釘付けはずしとを組み合わせた時、駒の混雑の結果として罠にはまることがある(図78)。

 図78 

 もし黒が …f5? と突くと exf5 gxf5(…Rxf5 なら戦力損にならないが陣形的に希望の持てない局面になる)、Bh5(図79)

 図79 

となって、クイーンを助けるために交換損を受け入れなければならない。黒はh5の地点(…g6xf5 の取り返しのあとかなり弱くなる)にも十分注意を払う必要がある。というのは例えばh5の地点をポーンまたはナイトが占めている時、f3のナイトが移動して背後の駒の利きが直射するという非常に似た主題が発生するからである。

(この章続く)

2011年04月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(54)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所

 著しく戦術に偏った少数の特別な戦法を別にすると、ペトロシアン中原には布局の時期に頻出する戦術の着想は多くない。そこで最も重要で最もありふれたものについて触れることにする。

(この章続く)

2011年04月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[58]

dポーン布局と側面布局

初めに

 白は初手に 1.e4 と指すことによって中原に領有権を主張するだけでなく(これは普通は従うべき有利な原則である)、クイーンとキング翼ビショップのために斜筋を開けることにより迅速な展開を準備する。1.e4 のあと白は素早い展開の可能性に基づいた攻撃を始められることがよくある。黒が 1…e5 で断固対抗すれば白は黒のeポーンが守られていないことを利用して(ルイロペスのように絶えずeポーンを狙って)自駒を迅速に展開することができる。

 1.d4 は見た目は 1.e4 に似ているがまったく異なった構想の布局の指し方になる。もちろん白はやはり中原に領有権を主張するが、1.d4 は白が 1.e4 の場合ほど迅速に駒を展開できない。さらに、もし黒が 1…d5 と応じればこのdポーンは黒のクイーンによって自動的に守られているので、単純に 2.Nc3 と展開しても何も成さず白のcポーンの邪魔になるばかりである。クイーン翼の布局ではcポーンは通常相手のdポーンを攻撃する主要なてことして必要なのでこういうやり方は良くない。

 1.d4 のあと白の主要な目的は駒を迅速に展開することではなく、中原にポーンの厚みを築くように努めることである。白はその厚みの内側で黒陣に対する襲撃を準備することができる。この白の戦略に対する黒の3種類の応手を分析すると次のようになる。

 (1)黒が自分もポーンで中原を占拠することにより白のポーン中原の形成と戦う(クイーン翼ギャンビット)。

 (2)黒が駒で中原の要所を支配することにより白のポーン中原の形成と戦う(ニムゾインディアン防御)。

 (3)最も現代的なやり方は、黒が白のポーン中原の形成を積極的に助長し、そのような構造が延びすぎとなり弱点を抱えやすくなることを期待する(キング翼インディアン防御と、現代防御の1戦型)。

 具体的な戦法の検討に移る前に、まず 1.d4 で始まる試合を1局見てみよう。白が理想的な戦略を実行するこの試合は、次のような段階に分けることができる。

 (1)白が強力なポーン中原を築く。

 (2)白がポーンの内側で攻撃準備のために駒を集結させる。

 (3)白がポーンをぶつけて集結した駒のために攻撃の筋を開ける。

 (4)白の解放された駒が黒キングの周りに集まり詰みに討ち取る。

 注意してほしいのは本局で中原を支配した白がどのように攻撃目標を選ぶことができたのかということである。黒の駒は盤の端の方に追いやられ、効果的な抵抗ができなかった。

 この番勝負の試合は1962年に有名なソ連のグランドマスターのケレス(白番)とゲレル(黒番)との間で戦われた。

 第1段階:1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.Nc3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 Nc6 7.Bc4 Nxc3? この手は薦められない。黒に何の反撃や切り崩しの手段も与えることなく側面ポーンで中央に向かって取り返し(bxc3)白の中原を強化させてしまう。

 第2段階:8.bxc3 Be7 9.O-O O-O 10.e4 b6 11.Bb2 Bb7 12.Qe2 Na5 13.Bd3 Rc8 14.Rad1(図88)

 図88(黒番)

 第3段階:14…cxd4 15.cxd4 Bb4 16.d5! 急に白の駒のすべてが黒の不幸なキングを狙い始めた。16…exd5 17.exd5 Qe7(17…Qxd5? は 18.Bxh7+ でクイーンを取られる。一方 17…Bxd5 も 18.Qe5 f6 19.Qh5 でキングに対する狙いをかわすことができず黒が破滅する。例えば 19…g6 20.Bxg6 hxg6 21.Qxg6+ Kh8 22.Ng5 Qd7 23.Rxd5! となる)18.Ne5 f6 19.Qh5

 第4段階:19…g6 20.Nxg6 これはキングを守るポーンの柵を破壊する非常にありふれた種類の捨て駒である。17手目の解説でこれに似たものを既に見ている。20…hxg6 21.Bxg6 Qg7

 ケレス自身はこの局面について次のように書いている。「黒の受けは極度に難しい。白は既に捨てた駒の代わりに2ポーンを得ていて、さらにほとんどすべての駒が弱体化した敵のキングを攻撃する用意を整えている。一般的に言っても黒は絶望的な局面から無事に抜け出すとはほとんど期待できそうにない。」22.Rd3 Bd6 23.f4 Qh8 24.Qg4 Bc5+ 25.Kh1 Rc7 26.Bh7+ Kf7(26…Kxh7 27.Rh3#)27.Qe6+ Kg7 28.Rg3+ 28…Kxh7 29.Qh3#

 圧倒的な攻撃に結びついた中原の支配の見事な例のあとは、クイーン翼ギャンビットの具体的な分析に入っていく。

(この章終わり)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

王印防御の完全理解(53)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

単純化の捌きの …Bc8-g4xf3

 この型の中原は黒が …Bg4 とかかってから …Nfd7 と …e5 と指した時にも現れることがある。このような場合白は必要ならば h3 と突いて双ビショップ態勢になるのが普通である。…Bg4xf3 と交換したあと次のような戦略的な特徴が現れる(図77)。

 図77 

 黒の構想は二つのナイトでc5の地点をせき止め、その間に …f7-f5 突きをできるだけ速く準備することである。

 陣形に関する考え方は大部分が同じままであるが、黒の白枡ビショップの交換のあと白は全般的には白枡で、…f5-f4 と突いてくるならば特にh3-c8の斜筋で、有利さを得ることに努めることができる。

 白がまだキャッスリングしていない時には、hポーンを突いていくことにより(h3-h4-h5xg6)黒の白枡の弱点を拡大しキング翼で主導権の確保に努めることができる。

(この章続く)

2011年04月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(52)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e6の要所

 …f5 突きのあとできるe6の地点の弱点は、通常は Bc8 によって守られていてc5のナイトによって守られていることもよくあり、白がつけ込むことはできない。しかし数は少ないが場合によってはたとえポーンを損することになっても Nf3-g5-e6 の捌きでいくらかの成果を得ようとすることができる。この着想がうまくいく最も有利な状況は、黒が …c5 突きで中原を封鎖しクイーン翼ナイトでクイーン翼ビショップの利きをふさいでいる時である(図76)。

 図76 

 これは例外的な場合で、白がe6の弱点につけ込むことができる。即ち黒は Ng5 に …Nc7 と応じることができない。なぜなら Ne6 Nxe6、dxe6 Nb8、exf5 gxf5、Be3 e4、Nxe4 となって、黒のクイーン翼ルークの位置が悪いために白が戦力得になるからである。だから黒は Ng5 に …Ndf6 と応じるしかないが、Ne6 Bxe6、dxe6 となって、白の駒がf5のポーンへの攻撃によって、黒の白枡の全般的な弱さとも相まって、非常に危険な機動性を得てくる。

(この章続く)

2011年04月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(51)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 前章のようにここでも黒は不良ビショップを抱えているために収局に持ち込めないことがある。既に不良ビショップの問題については折にふれて取り上げてきた(図58、68、73の解説を参照)。黒は一般にh6-c1の斜筋でこのビショップを交換することによりこの問題を解決しようとする。もちろん白が f2-f4 と突いて中原を開放する時はこの問題は存在しない(「f2-f4 突き」の項を参照)。

 例えば白がc4の地点を占拠するつもりでキング翼ナイトをクイーン翼に移送する時には典型的な場合が生じる(図75)。

 図75 

 もちろん黒は自分のビショップを白の黒枡ビショップと交換することに努める。さもないと白が黒枡の弱点につけ込むことができるかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

「ヒカルのチェス」(213)

「Chess」2011年1月号(4/4)

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ロンドン・チェスクラシック(続き)

第6回戦(12月14日)
マクシェーン ½ – ½ ナカムラ

 ルーク・マクシェーンはヒカル・ナカムラと激闘を演じた。マクシェーンは第4回戦で試した 1.g3 をまた用いた。そのあとイギリス4ナイト戦法に移行した。マクシェーンは18手目あたりで Qa4 と指せばもっと良くなっていたかもしれない。40手の制限時間に近づく頃には局面は非常に複雑になり両者とも時間に追われた。

 ナカムラはたぶんもっとうまく指して勝ちに近づくことができたかもしれない。しかしマクシェーンは黒キングの近くにクイーンを寄せることができ、永久チェックの可能性をこしらえた。ヒカルは駒得する手段を見つけたが、マクシェーンのクイーンは単独で引き分けをもぎ取った。

第6回戦
L・マクシェーン-H・ナカムラ
イギリス布局

1.g3 e5 2.c4 Nf6 3.Bg2 d5 4.cxd5 Nxd5 5.Nc3 Nb6 6.Nf3 Nc6 7.O-O Be7 8.a3 O-O 9.b4 Re8 10.d3 Bf8 11.Bb2 a5 12.b5 Nd4 13.Nd2 c6 14.bxc6 Nxc6

15.Nc4!?

 ここでは 15.Nb5、15.Rb1 や他の手もいくつか指されているが、これは新手である。

15…Be6

 15…Nxc4 16.dxc4 で白はcポーンが孤立ポーンになるが、代償としてd5の地点がしっかり支配できる。

16.Nxb6 Qxb6 17.Rb1 Qa6 18.Bc1 Rac8

19.Re1?

 19.Qa4 と出て黒のbポーン突きを防ぎ、そのポーンを列と対角斜筋上とで標的のままにしておいた方が良かった。実戦の手のあと優勢は黒に移った。

19…b6 20.Bd2

 ここで 20.Qa4 と出ると黒は単に 20…Nd4 と応じて楽である。

20…Red8

 20…Bxa3?? は 21.Bxc6 Rxc6 22.Qa4 で両当たりになる。

21.a4 Nd4 22.Nb5

22…Bc5

 22…Bb4!? という手もあり、23.Bxb4 axb4 となれば 24.Rxb4? には 24…Nc2 でルークの両取りがかかるので非常に有望である。

23.Nxd4 Bxd4 24.Be3

24…Rc5

 24…Bxe3 25.fxe3 Rc5 は黒がほんの少ししか優勢にならない。

25.Bxd4 exd4 26.Rc1 Qc8 27.Rxc5 Qxc5 28.Qa1 Rc8 29.h4 Qc3 30.Bb7 Rc7 31.Be4 f5 32.Bf3 Bb3 33.Kf1

33…Kf8

 a4のポーンは取られそうだが、33…Qb4 には 34.Rb1 で黒がa4のポーンを取れば白は代わりにb6のポーンが取れる。

34.e3?!

 お互い時間が少ない状況で非常に危険を伴う手である。

34.Qxd3+

 34…dxe3 と取った方が良かった。35.Qa3+ Qb4 36.Qxb4+ axb4 37.Rxe3 Rc1+ 38.Re1 Rxe1+ 39.Kxe1 Bxa4

で黒がはっきりポーン得になる。もっとも白はまだまだ指す余地がある。

35.Kg2 Qc3 36.Qa3+

36…Ke8

 36…Qb4 37.Qxb4 axb4 38.Rb1 Rc3 39.exd4 Ke7 は指してみても良かったかもしれない。もっとも黒がどのように駒を解きほぐして進展を図るかははっきりしない。

37.Qd6

 この時点で白はあと4手に1分ほど、黒は3分ほど残っていた。37.exd4+!? Qxe1 38.Qxb3 も相当良さそうである。白キングは安全だが黒キングはチェックの砲火を逃げ切れそうにない。

37…Rd7 38.Qe5+ Re7 39.Qb5+ Kf8 40.Qxf5+ Rf7

41.Qe5

 Qd8 の1手詰み狙いの 41.Qg5?! に食指が動くが、黒は実戦と同じように応じて勝てるかもしれない。いくつかの分析エンジンは 41.Qb1 を強力に推すが、人間選手には 41…Rxf3 42.Kxf3 Bd5+ 43.Kf4 d3 が心配である。露出している白キングに対するいろいろな狙いを簡単に見落とすことがある。

41…Rxf3

 すぐに 41…Qxe1 と取るのは盤上に白ビショップが「生きて」いるのであまりに危険である。例えば 42.Qb8+ Ke7 43.Qc7+ Kf6 44.Qd6+ Be6 45.Bd5 Re7 46.Qf4+ Bf5 47.g4

となる。

42.Kxf3 Qxe1 43.Qb8+ Ke7 44.Qc7+ Kf6

45.Qd8+

 45.Qxb6+?! は 45…Be6 46.Qxd4+ Kf7 となって、黒が勝つ可能性がわずかながらある。

45…Kf7 46.Qd7+ Kf8 47.Qd8+ Kf7 48.Qc7+ Kf6 49.Qd8+ Kf7 50.Qc7+ ½ – ½

第7回戦(12月15日)
ナカムラ ½ – ½ アダムズ

 ヒカル・ナカムラとミッキー・アダムズとの試合はすぐさまキングを巻き込む戦いになった。これは戦う大会の締めくくりに非常にふさわしかった。ミッキーは得意のマーシャル攻撃を用い、ヒカルは 17.a4 と指して「定跡書」からはずれた。ヒカルは21手目でクイーンに直射攻撃を受ける手を指したが、実際はもっと良い手があった。クイーン同士が盤上から消え、アダムズは犠牲にしたポーンの代わりに双ビショップとナカムラの浮きポーンに対する圧力という形で代償を保持した。最終的には戦力を互角にすることができて引き分けになった。

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(この号終わり)

2011年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス2

王印防御の完全理解(50)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通

 一般にc列の開通は白が有利である(一つの具体的な例外は例えば白がクイーン翼にキャッスリングして逆翼攻撃をしている時である)。これは特に黒のクイーン翼がさらに弱体化し(d6の地点)、白のキング翼ナイトがc4の地点に行ける(Nf3-d2-c4)からである。しかし黒が作戦を根本的に変えてc列を素通しにしクイーン翼で白と正面対決することもあり得る。このやり方で黒は …a7-a5 突きと特に …b7-b5 突きによりクイーン翼で自陣を広げることに成功すれば、ほぼ均衡のとれた展望が得られることになる(図74)。

 図74 

 黒はeポーンにかけている圧力のおかげで …b7-b5 と突いて自陣を広げ白がc4の地点を占拠するのを防ぐことができる。それでも白は b4 axb4、Rxb4 と指すことにより黒のbポーンに対する圧力を増すことができる。

 この種の条件は白が長い間中原の争点を維持し(図49を参照)、中原を解放する可能性を見ながら相手が …f7-f5 と突くのをくじく時に生じる。

(この章続く)

2011年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(49)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Bg5-d2(または -c1)引き

 黒がすでに …c7-c6 と突いているとき、白がクイーン翼にキャッスリングすることにより反対翼の攻撃を選ぶのは、c列がすぐに素通しになるので明らかに危険である。だからこの場合白は …Ng4、Bg5 f6 のあとビショップをd2に引くのが普通である(図73)。

 図73 

 ここで黒が …f5 と突けば、白の着想は exf5 gxf5、Ng5 でe4の地点を支配し、そのあと Bxg4 と取って黒のfポーンの利きをそらすことである。また、白は dxc6 bxc6 と交換してクイーン翼での危険な多数派ポーンを得ることもできる。白はこの多数派ポーンをすぐに b2-b4-b5 と進攻させることができ、同時にd5の地点の支配も目指すことができる。さらに、この図に示された状況では黒は軽々しくd5のポーンを取ることができない。なぜなら …cxd5、Nxd5 となると白がd5の地点を支配するからである。

 これらの着想を無効にするための黒の最良の方策は二つの異なる段階を経る。(1)Nf6 を動かす前にc列を素通しにしd5の地点の支配を失わないようにする。(2)(…Ng4、Bg5 f6、Bd2 と指したあと)…f5 と突く前にナイトをh6に引き、g5の地点を支配する必要性があればさらにf7に引く。…f5 と突かない黒の別のやり方は、ナイトをf7に引き …Bg7-h6 から …Nf7-g5 と指して不良ビショップを処分しキング翼での反撃をまた活性化させることである。

 この間に白は前項で見たように素通しのc列を利用しようとする。

(この章続く)

2011年04月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(118)

「Chess」2010年11月号(17/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第9回戦 9月30日

 ウクライナには良い出来事と悪い出来事があった。悪い出来事はイワンチュクが負けたことだった。しかし良い出来事はそれでもアゼルバイジャンに勝ったので大したことがなかったことだった。シャフリヤル・マメジャロフがイワンチュクの 6½/7 の疾走を止めた男だが、この愛想のよいウクライナ選手のとてつもない実効レイティングを3000台のどこかからそれより少し下に落としただけだった。ザハル・エフィメンコのこれまた素晴らしい指し回しがチームに勝利をもたらした。ウクライナに続く上位5戦はすべて1勝で決着がついた。ロシア1、フランス、イスラエル、中国、米国がそれぞれアルメニア、グルジア、ハンガリー、キューバ、ブルガリアに勝った。
 イングランドの相手はロシア3だった。どちらも同じくらいの強さだから2-2の結果は意外でなかった。しかし戦いは激しかった。最上位2局が引き分けに終わり、デイビド・ハウエルが経験豊富なルブレフスキーに負けた。それでガーウェインが1点を取るために奮闘することになった。彼がそれを成し遂げたのは偉大だった。その試合は非常に長手数だが大変参考になる。

解説 ガーウェイン・ジョーンズ
第9回戦 イングランド対ロシア3
G・ジョーンズ - N・カバノフ
スコットランド試合

 ヤコベンコ(2726)、モティレフ(2694)、ルブレフスキー(2683)が最上位3席だったので、弱いつながりになっているたった2500のGMを破壊するのが自分の役目になった・・・

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Bc5 5.Nxc6 Qf6 6.Qf3

 変な戦型だがここ6年ほど非常に流行するようになった。白の期待は二重fポーンが中原の支配とg列での活動に大きく役立つようになることである。一方二重cポーンは黒にとって大きな問題になり、弱いaポーンとc5の地点は特にそうである。

6…bxc6

 このごろは黒がクイーンを交換するのを遅らせるようになった。この戦型の前例は 6…Qxf3 7.gxf3 bxc6 8.Be3 Bxe3 9.fxe3 Ne7 10.Nc3 d6 11.Rg1 O-O 12.f4 f5 13.Bc4+ Kh8

14.e5!-この着想を実際に本局で使う場面が見られる-14…dxe5 15.O-O-O Ng6 16.Rd3

で、2006年サンセバスティアンでのバルマナ・カント(2284)対ハリクリシュナ(2682)ではここでレイティングがはるか上のインドのGM(黒)が 16…exf4?? とポカを指し 17.Rxg6! とただ取りされた。17…hxg6 と取ると 18.exf4 で Rd3-h3# の詰みが防げない。

7.Nd2 d6 8.Nb3 Bb6 9.Bd2

 定常的にこれを用いる有力選手はセルゲイ・ルブレフスキーで、その彼が私の対戦相手の隣に座って興味深そうに見ているのはかなり気持ちが悪かった。

9…Qxf3

 黒はキング翼の展開を図るためにはクイーンを交換しなければならない。9…Qxb2? は 10.Bc3 Qxc2 11.Bxg7 で良くない。

10.gxf3 Ne7 11.a4

 ビショップを捕獲する狙いで …a7-a5 突きを誘っている。そうなれば黒はa5の地点に恒久的な弱点を抱える。

11…a5 12.Be3

 この手は相手の研究範囲に入っていなかったが、状況は別にどうということもない。ビショップ同士を交換する方が黒枡を標的にしやすくなるので都合がよい。最近の実戦ではほとんど常に 12.Rg1 が指されているが、黒はしょせんキャッスリングしたいのでその方が良いとは思えない。12…O-O 13.Be3 の局面はルブレフスキーが今年非常に強い相手に3回指している。イナルキエフには勝ち、ナイディッチュとは長手数の末2局引き分けているが、どの試合でも相応に優勢だった。

12…Bxe3 13.fxe3 O-O 14.O-O-O

 これがこの戦型の典型的な局面で、私なら白の方を持ちたい。黒は駒を働かせるのに苦労し、a5のポーンをいつまでも守ることを強いられる。一方白はg列をルークで占拠し f3-f4 から e4-e5 と指すことができる。これはチーム戦としては良いやり方だと思う。白は負ける可能性がほとんどなく長い間黒を悩ませることができ、他の試合の進み具合を見ることができる。

14…f6

 この手はe6の地点を弱めるので私は好まない。もっとも他に良い応手を見つけるのはそう容易でない。14…f5 は 15.e5! dxe5 16.Bc4+ で実戦よりこちらが1手早くなる。

15.Nd4

 e6の地点を標的にしている。

15…f5 16.e5!

 これはこの戦型の重要な手段である。白は1ポーンの犠牲で非常に重要なc5の拠点と素通しのd列を得る。黒は白枡ビショップをどう展開させるのかという大きな問題も抱えている。

16…dxe5 17.Bc4+ Kh8 18.Nb3

 この局面は前述のハリクリシュナの試合に非常に似ている。こちらのナイトはb3の好所にいるが、黒は少し手得している。黒が何もしなければ、白は f3-f4 と突いてc8のビショップを閉じ込める。だから黒は次のように指さなければならない。

18…f4 19.exf4 exf4 20.Rhe1

 しかしポーンの犠牲の代償はここで明らかである。中央を完全に制圧し、ポーンの形に優り、たぶんa5のポーンを取り返せる。

20…Nf5

 20…Ng6 ならa5のポーンを守れるだろうが、21.Nd4 Bd7 22.Be6 Be8 23.Bg4 Rf7 24.Ne6

となって、白が局面を完全に制する。黒は駒の協調に本当に苦労することになる。

21.Re5 Nd6

 このナイトはe3が好所のように見えるが、21…Ne3 22.Rd4 となると空を切り、黒は最下段の詰みに用心しなければならない。

22.Bd3

 22.Rd4 も強そうな手である。

22…g6

23.Nxa5

 私のe5のルークの方がa8のルークより強力だと判断したが、23.Rxa5 Rxa5 24.Nxa5 c5 25.Re1 Bf5 26.Re5 と指す方が分かりやすかった。

23…Bh3 24.Kd2

 f3のポーンを守るためにキングの移動を始めた。

24…Rfe8 25.Rde1 Bg2 26.Rxe8+ Nxe8 27.Nxc6

27…Nd6

 27…Bxf3 は 28.Be4 Bxe4 29.Rxe4 g5 30.b3 となって、aポーンがなかなか止めにくいのと白駒の方がはるかに動きが良いので、白が勝つはずである。

28.Bb5?!

 時間が少なくなってきて、これがa4ポーンとナイトの両方を守りルークを働かせる余裕を得るうまい手段だと考えた。しかし 28.a5 の方がずっと簡単だった。28…Bxf3 なら 29.Nd4 Bd5 30.b4 で、白の駒の連係が完璧でパスaポーンを突いていく単純な狙いがあり白が勝つはずである。

28…Bxf3 29.Re7 Bg2 30.Ne5 Rf8 31.Ke1 f3

32.Ng4?!

 30手ほどの間積み重ねてきた優位のほとんどがこれで吹き飛んだ。代わりに 32.Kf2! が危険そうに見えても黒には進展を図る手段がない。例えば 32…Ne4+ 33.Kg1 Bh3 34.Nxf3 は白が明らかに優勢である。

32…c6!

 カバノフはa4のポーンを守っているビショップを押し返して反攻に出てきた。

33.Bd3 Rf4 34.Re6

 34.a5 Rxg4 35.a6 でも指せるだろうが、時間切迫の時に読むべき手ではないであろう。

34…Nf7

 34…Rxg4 35.Rxd6 Rxa4 36.Kf2 なら黒が1ポーン得になるが、g2のビショップが閉じ込められているような状態でキング翼のどこかに行くのには手数がかかるので、まだ白が有望である。その間にクイーン翼の白ポーンが駆け抜けるだろう。面白いことにここではコンピュータも白の方を良しとしている。

35.Nf2 Rxa4 36.Rxc6 Ne5 37.Rc5 Nxd3+ 38.Nxd3 Rh4 34.b4

39…Bh3

 カバノフは突然h2ポーンの毒に気づいた。39…Rxh2 なら 40.Nf2! Rh4 41.c4 となって黒はクイーン翼のポーンの突進を防ぐことができない。

40.b5 Bf5

 指定手数に達して明白な優勢も回復することができた。もっとも黒は引き分けをもぎ取ることができるはずである。周りの対局を見回すと上位2局は引き分けに終わっていて、デイビドはルブレフスキーに屈していた。だからチーム戦を引き分けるためには私が勝たなければならなかった。プレッシャーがかかっていた。

41.Nf2

 41.Rc3!? という手もあるが、41…Rxh2 42.b6 Re2+ 43.Kf1 Be4 44.Nf2 Bb7 45.Rc7 Ba6 46.Nd3 Re8 47.Kf2 Re6 48.b7 Bxb7 49.Rxb7 Re2+ 50.Kxf3 Rxc2

で引き分けに終わそうである。

41…Rb4 42.Kd2 Kg7 43.Ke3 Kf6 44.Kxf3

 一時的にまたポーン得になった。

44…Ke7 45.c3 Rb3 46.Kf4 Rb2

47.Nd1

 47.Ke3 は 47…Kd6 48.Rc6+ Ke5 49.c4 Rb3+ となって、黒の駒がよく働きh2ポーンをまた犠牲にしなければならないので、良い手だとは思えなかった。

47…Rxh2 48.b6

 たぶん 48.c4 の方が客観的に見て良かったのだろうが、黒が最善手を指していけばたぶん引き分けにできる感じがする。

48…Rh4+ 49.Kf3!?

 我々はまた時間切迫に陥った。40手目で追加された30分は長持ちしなかった。そしてここでf3がこちらのキングにとって最も紛らわしい地点だと判断した。そしてそれが図に当たった。

49…Kd6??

 これは私の次の手を見落とした。黒は 49…Rh3+ と指すべきで次のように引き分けに持ち込める。50.Kf2(50.Kf4 は 50…Rh4+ 51.Ke5 Re4+ 52.Kd5 Re6 53.Rc7+ Kd8 54.Rxh7 Rxb6

となって、白はまだしばらく指し続けることができるが黒はあまり苦労なく守れるはずである)50…Rh2+ 51.Kg1 Rd2 52.Ne3 Rb2 53.Nd5+ Kd6 54.Nb4 Be4

白キングが働いていない状態ということは勝つ可能性が事実上ないということである。

50.Nf2!!

 この手を見つけたときは、特に時間に追われていた時だっただけに、本当に嬉しかった。相手の顔が曇った。ビショップもルークもbポーンのクイーン昇格を止めるのに間に合わない。

50…Kxc5 51.b7 Rc4 52.b8=Q Rxc3+ 53.Kf4 h5

 というわけで局面は技術的な段階に至った。黒はクイーンの代わりにルークと2ポーンを得ているが駒割として十分ではない。しかし白はポーンがないので勝つのは大変である。

54.Ne4+

 黒は長い目で見ればキング翼のポーンを保つことができないだろうからこれが一番簡単に勝つ手段だと考えた。しかしコンピュータは 54.Qc7+ でナイトを盤上に残す方がずっと強い手だと指摘した。例えば 54…Kb4 55.Qb6+ Kc4 56.Nd1 Rb3 57.Qa6+ Kb4 58.Ne3 Bd3 59.Nd5+ Kc5 60.Qa7+ Kxd5 61.Qf7+

でルークが素抜きにあう。コンピュータなら見つけるのは簡単だが、時間が少なくて勝たなければならない時はこのような手順は見つけるのは難しい。

54…Bxe4 55.Kxe4 Rc4+ 56.Ke5 Rg4

 黒はルークとポーンがお互い守りあって要塞を作ろうとしている。そこでこちらの勝つための作戦は黒を手詰まりに陥れることで、そうなれば黒はキング翼の戦力の一つを守られていない状態にしなければならなくなる。第一段階は黒キングを盤端に追いやることである。唯一の心配は50手規則だった。

57.Qb2

 黒キングをルークとキング翼ポーンに合流させれば要塞が完成するのでそうさせるわけにはいかない。

57…Kc4 58.Qc2+ Kb4 59.Kd5 Rg5+ 60.Kc6 Rg4 61.Kb6 Ka3 62.Kc5 Rg5+ 63.Kc6 Rg4 64.Qb1

 目標1の完了。

64…Rc4+ 65.Kd5 Rg4

 キングがチェックされない地点を見つけなければならない。それで白キングはキング翼へ急ぐ。

66.Ke5 Rg5+ 67.Ke6 Rg4 68.Kf6

 黒の手詰まりである。黒は態勢を悪くしなければならない。

68…Rg3

 これでルークが守られていないことを利用してg6ポーンを取ることができる。68…Ka4 も筋が通っているが、このキングをa8の地点まで押し込めることができる。黒キングが盤の中央を越せば黒は4段目に沿ってチェックすることができないので詰みの狙いを作り出すことができる。見本の手順は 69.Qb2 Ka5 70.Qb3 Ka6 71.Ke5 Ka5 72.Kd5 Ka6 73.Kc6

で、黒は詰みが防げない。

69.Qa1+ Kb3 70.Qd1+ Kc4 71.Qe2+ Kb3 72.Qd1+ Kc4 73.Qe2+

 30秒でも非常に貴重な時間を増やすために手を繰り返した。

73…Kb3 74.Qb5+ Kc2 75.Qc6+ Kd2 76.Qd6+ Rd3 77.Qf4+ Kc3 78.Kxg6

 これでポーンが落ちた。23手で済んだ。

78…Rd5

 黒はh5のポーンも長く持たせられない。

79.Kf6 Kd3 80.Ke6 Rd4 81.Qf3+ Kc4 82,Qxh5

 ここからの黒の防御は最強ではなかったが、いずれにしてもこの収局をつい最近勉強していたのは幸いだった。

82…Kd3 83.Qc5 Ke4 84.Qf5+ Ke3 85.Ke5

 これで黒の駒は後退を強いられる。

85…Rd3 86.Qf4+ Ke2 87.Ke4 Rd2 88.Qf3+ Ke1

89.Qh5

 89.Ke3?? は言語道断で、89…Rd3+! とされるとこれまでの粒々辛苦が水の泡になってしまう。

89…Kf2 90.Qh1 Re2+ 91.Kf4 Rd2

 ここからの手順は非常に面白い。白は単に黒の駒をクイーン翼に追い立てていき、黒は枡がなくなる。

92.Qh2+ Ke1 93.Qg1+ Ke2 94.Ke4 Rc2 95.Qg2+ Kd1 96.Qf1+ Kd2 97.Kd4 Rb2 98.Qf2+ Kc1 99.Qe1+ Kc2 100.Kc4 Ra2 101.Qe2+ Kb1 102.Qd1+ Kb2 103.Kb4 Ra8 104.Qe2+ 1-0

 105.Qf1+ から 106.Qg2+ でルークが取られるのでカバノフは投了した。これでチームは引き分けになった。


イングランドチームで最も活躍したガーウェイン・ジョーンズは2回の持ち時間延長まで試合をした。彼は最高の試合だったと思っている。非常に長手数になったが布局、中盤、収局とも参考になる。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

王印防御の完全理解(48)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Bg5-h4 引き

 黒のキング翼ナイトを誘い出す着想の最も純粋な形は、c列がまだ閉じていて白が …f7-f6 突きを誘ってビショップをh4に引いた時に見られる(図72)。

 図72 

 白はキング翼で黒が常套の反撃を展開させるのを防ぎ、まだキャッスリングしていないことを利用して h2-h3 突きから g2-g4 突きでキング翼で主導権を握り、自分のキングはクイーン翼の安全地帯に避難させることを狙っている。この型の局面では黒は三通りの異なった作戦を選べる。

 (1)g2-g4 突きを …h7-h5 と突くことによって(この手には白のクイーン翼ビショップをからめ取る狙いがある)防ごうとする。この場合白は Nf3-d2 引きから f2-f3 突きによってビショップの逃げ道を作ることができるが、ただし(黒がまだ自発的にナイトを引いていなければ)まず h2-h3 と突いてナイトを追い払ってからで、さもないと f2-f3 と突いた時にe3に跳び込まれる。結果としてできる局面は白にとって融通性があり、キング翼で作戦を続けることもできれば再び注意をクイーン翼に転じて c4-c5 と突いていくこともできる。

 (2)反対翼で攻撃することに同意し、…c7-c6xd5 でc列を開ける。

 (3)…g6-g5 突きでfポーンの釘付けをはずし、ナイトをh6に引いて …f6-f5 突きを準備する。このようにして黒は e4xf5 Nh6xf5 のポーン交換のあとe4の地点を白に支配させることになるが、代わりにd4の地点を用いる可能性ができてくる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(47)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の誘い出し(Be3 Ng4)

 白が黒の定例的なキング翼攻撃を邪魔しようとする別の方法は、何の準備もなしに Bc1-e3 と出て …Nf6-g4 と跳ねるように誘うことである(図71)。

 図71 

 Be3-g5 の当たりに対する当然の …f7-f6 突きのあと、白の主要な構想は Bg5-h4 によってf6の地点への釘付けを維持すること、および/または黒のキング翼ナイトの露出した状態につけ込むことである。

 ビショップのe3の地点への展開はグリゴリッチシステムの特徴で、中原の争点を解消する前に指されるのが一般的である。そして黒がc列を素通しにするかどうかと白がどちらにキャッスリングするかによって多様な作戦が生まれる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[57]

eポーン布局

第8章 カロカン防御(続き)

突き越し戦法

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5(図86)

 図86(黒番)

 突き越し戦法は英国最強のグランドマスターで世界選手権挑戦者のナイジェル・ショートが非常に得意にしている戦法である。彼はリュボエビッチ、セイラワン、ティマンそれにカルポフのような一流の相手に対してこの戦法を用いてきた。

 読者はこの局面をフランス防御の突き越し戦法(1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5)の局面と比較してみるとよい。そこには大きな違いが二つある。

 (a)フランス防御では黒は通常cポーンをc5に突いて白の連鎖ポーンの根元を攻撃する。カロカン防御ではこのポーン突きはcポーンを既にc6に突いているので1手損することになる。

 (b)フランス防御では黒のクイーン翼ビショップはe6ポーンの内側に閉じ込められていて、局面が閉鎖的なためにかなりの間働かないままであることが普通である。対照的にカロカン防御での 3.e5 突きは黒が自由に攻撃的な地点のf5にこの駒を展開できる。チェスの理論によれば白の観点からは(a)の長所より(b)の短所の方が優っていると考えられている。そのためこの戦型はあまり高く評価されていない。

3…Bf5

 黒は早く …e6 と突いて白のポーンを固定し自分の中原を強化したいので、このビショップをすぐに出すのが最善である。

4.c4!?

 これは積極性のある面白い手で、独特の戦法になっている。一見したところ黒が 4…dxc4 と取ってから …e6 と突き、白にはっきりとした代償のない弱い出遅れポーンを作らせることができそうである。しかしそれが話のすべてというわけではない。白の突き越しeポーンは白陣に広さをもたらし続け、さらに重要なことはもし黒のポーンがd5からいなくなれば白はe4の地点を使えるようになりナイトの絶好の拠点として用いることができる。ナイジェル・ショート自身は単に 4.Nf3 と展開しそのあと Be2 から O-O と指している。本譜の手はもっと激しい手である。

4…dxc4

 黒は挑戦を受けて立った。

5.Bxc4 e6

 恒久的に d5 突きを防ぐことにより白のdポーンを動けなくした。

6.Nc3 Nd7 7.Nge2

 この手は 7.Nf3 よりもはるかに理にかなっている。というのはこの戦法では白のキング翼ナイトはg3にいるべきもので、そこならe4の地点を監視できたぶんfポーン突き(白の長期的な大局的狙いの一つは f4-f5 の仕掛けである)も支援できるからである。

7…Ne7

 キング翼ビショップを 7…Bb4 と展開するのはあまり意味がない。なぜなら黒は本気でこのビショップを白のナイトと交換しようと狙っているわけではまったくないからである。もし黒が …Bxc3 と指せば白は bxc3 と応じ、結果として白の弱いdポーンが強化され、黒のd6の地点に空所ができそこを白の残りのナイトが占拠することになる。だから 7…Bb4 のあと白は単にポーンを突いてこのビショップを追い払うことができ、クイーン翼の陣地も広がる。

8.O-O Nb6

 白の駒がe4の地点を支配しようと奮闘している間に、黒のナイトの一方がd5の地点の占拠を目指している。

9.Bb3 Qd7

 この手はクイーン翼キャッスリングの準備である。そうなれば白の出遅れポーンに対するd列での圧力が増すことになる。

10.a4!

 この手は 10…O-O-O を思いとどまらせるためである。例えば 11.a5 Nbd5 12.Na4 となってクイーン翼に圧力がかかる。

10…a5

 面倒なことになる白のaポーン突きを止めた。もちろんここで …O-O-O とキャッスリングするのは黒のクイーン翼のポーンの形が崩されるので大変危険である。しかし本譜の手の代償として黒はb4の地点がナイトのもう一つの拠点として使えるようになった。

11.Ng3 Bg6

 黒は双ビショップの優位を手放したくない。このビショップ引きのあとでも 12…Nf5 でdポーンに対する圧力を増すことを狙っている。

12.Bc2!

 …Nf5 を防ぎ白枡ビショップの交換を迫った。交換になれば白は文句なくe4の地点を支配することになる。もちろんこの手にはポーンの犠牲の可能性があり、次の解説でさらに説明する。

12…Bxc2 13.Qxc2 Ned5

 13…Qxd4?! とポーンの犠牲を受け入れるのは非常に危険である。例えば 14.Be3 Qb4(14…Qd8 なら 15.Qb3)15.Ra3(ナイトを取りに行く狙い)15…Ned5 16.Rb3 Nxe3 17.fxe3 Qc5 18.Qf2 となれば黒はナイトとf7の弱点を同時に守ることができない。

14.Nce4 Nb4 15.Qe2 N6d5(図87)

 図87(白番)

 15…Qxd4?! は 16.Be3 Qd8 17.Qg4 で 18.Nh5 を狙われるのでまだ危ない。しかし本譜の手のあと黒はナイトがよく働いていて、それほど不利とは感じられない。ここまでの手順は1958年ミュンヘンオリンピアードのタリ対ゴロンベク戦である。

(この章終わり)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

王印防御の完全理解(46)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

g2-g3 突きから Nf3-h4 跳ねの捌き

 白は時には黒がf4の地点を占拠するのを防ぐためと、Nf3-h4 と跳ねる可能性で …f5 突きを遅らせるか防ぐために、g2-g3 と突くこともある(図70)。

 図70 

 この捌きを実行するための理想的な(しかし必須ではない)条件は黒が …h7-h6 と突き …Nf6-h5 と跳ねている時である。この場合 Nf3-h4 と跳ねるとd1-h5の斜筋が通り Be2xh5 の狙いが生じ、さらに …f5 突きはgポーンを取られるだけとなる。白は必要ならば Be2-d3 によってf5に対する圧力を増すこともできる。

 白は中原の争点を維持しながらこの着想を用いることもできる(図49を参照)。その際白はビショップをf1の地点に配置して g2-g3 突きによって生じる弱点がほとんど問題なくなるようにし、たとえ黒が …f7-f5 と突くことができてもビショップがh3で働ける。Nh4 はほとんど常にg2の地点に戻って活動し、その好所から前述した黒の …f7-f5 突きに呼応して f2-f4 突きを助ける。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(45)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f4の要所

 一般的に言うとf4の地点の占拠が黒の最も重要な目的の一つとなる主要な状況は二つある。それは白が h2-h3 と突いている時、または白が既にキャッスリングしている時である。

 最初の場合次の図はf4の占拠が白のキング翼キャッスリングには依存しないことを強く裏付けている(図68)。

 図68 

 白は g2-g3 突きによってキング翼のポーンをさらに弱くするわけにはいかない。というのはまず第一に h2-h3 突きの攻撃的な目的(次に g2-g4 と突く)が無効になり、第二に黒が …f7-f5 突きのあと …f5-f4 と突撃する危険な可能性が出てくるからである。従ってf4の地点を守るために、白は不自然に見える捌きの Nh2 Nf4、Bf3 f5 に頼らなければならない。そしてここでhポーンをただ取りされないようにまず h4 と突いてから g3 と突かなければならない。図から容易に分かることは、Bc1xf4 と交換するのは不良ビショップが解放されるのと黒枡で強く指せるので黒の戦略的成功となることである。

 二番目の場合の例(図54の解説で既に一見している)は …h7-h6 突きのあと白がビショップをe3に引いたとき生じる(図69)。

 図69 

 このような状況では黒は …Nf6-h7(または -d7)と引いて …f7-f5 と突くかまたはf4の地点を占拠するかを選択して反撃の基盤とすることができる。後の方の作戦は白がキング翼にキャッスリングすると重要性を増し、黒は三通りの手段で進展を図ることができる。(1)白のキング翼ナイトがまだf3の地点にいればすぐに …Nf6-h5 と跳ねる。(2)白のキング翼ナイトがd2の地点にいれば …Bc8-g4 と出て、f2-f3 Bg4-d7 のあとh5の地点の支配を狙う。(3)白のキング翼ナイトがf3の地点から移動していてもすぐに …Nf6-h5 と跳ね、双ビショップを放棄して黒のhポーンを二重ポーンにするよう相手に迫る。

 f4の地点を占拠する着想は …f7-f5 突きの作戦とはまったく別個の別策と見るべきでないことは明らかである。この二つの手段はよく組み合わされる。

(この章続く)

2011年04月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(44)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

h2-h3 突きに関連した着想

 時には白は布局の適当な時点で h2-h3 と突くことがある。このささやかな手には Bc1-g5 の釘付けと組み合わされているかどうかに従って色々な着想が含まれている。黒が釘付けに全然かまわない時は、h2-h3 突きは Nf3-h2-g4 の準備に役立つ(図66)。

 図66 

 白の狙いは Nh2-g4 によって圧力を強めることである。黒が …h7-h6 と突くことにすればビショップはe3に下がり、白はあとで h3-h4-h5 と突いてf5の地点とそれによる …f7-f5 突きの弱体化を生じさせることができる。

 しかし h2-h3 と突く手はあとで(特に布局の初期で指された時) g2-g4 と突くことを意図して指されることの方がずっと多い(図67)。

 図67 

 これは実戦でかなりよく指される別のシステムで、…f7-f5 突きの厳しさを和らげるのが目的である。g2-g4 突きは時にはhポーンの支援がなくてもキング翼ナイトをd2に引きクイーンとキング翼ビショップの支援で指すこともできる。明らかにこの作戦はほとんど常に白がキャッスリングの意図を明らかにする前に実行される。なぜならこのような場合にだけ、…f7-f5 突きのあとg列が素通しになる可能性から利益を得ることが期待できるからである。白はクイーン翼キャッスリングの選択肢を残すことによって、逆翼キャッスリングで局面を激化させる可能性を維持する。

 黒の観点からは正しい作戦を選択するのはいつも簡単なわけではない。三通りの可能性の是非を概説する。(1)相手がクイーン翼にキャッスリングするかもしれないことからすれば、黒は …c7-c6xd5 でc列を素通しにして対処する。しかしこれは白がg4にポーンを突いている場合にだけ奉公することである。そうでなければ白はキング翼にキャッスリングし、邪魔されることなくc列の開通から利益を得ることになる。(2)黒は …a5 突きから …Nc5 によってc5の地点を確保し占拠するか、…c5 突きでポーンを固定することにより対処する。この作戦は実際には白がクイーン翼にキャッスリングしている時だけ効果がある。なぜなら白キングは閉鎖中原によって守られているので中央にい続けることができ、g4 突きと h4 突きによりキング翼で主導権を得るか a3 突きから b4 突きでクイーン翼で主導権を得、相手には明確な反撃の目標を与えないからである。(3)黒は迅速な …Nf6-h5-f4 で弱いf4の地点(h2-h3 突きにより目立っている)につけ込むことにより対処する。

(この章続く)

2011年04月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(212)

「Chess」2011年1月号(3/4)

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ロンドン・チェスクラシック(続き)

第5回戦(12月12日)
ナカムラ 1 – 0 ショート

 ナイジェル・ショートにはまたついてない日になった。彼はやけから出た向こう見ず精神でマーシャル攻撃の捨て駒の傍流戦型(9…e4)を試した。ヒカル・ナカムラはそれをほとんど研究していなかったが、11.g3 に基づいた信頼できる手順を見つけることができた。この戦型はスーパーGMレベルには通用しないのかもしれない。ショートの陣形は 20.Qf5 のあと望みがないように見え、実際そうだった。ショートは解説室ではいつものように快活で、終わりには突然短い歌を歌って楽しませてくれた。

第5回戦
H・ナカムラ-N・ショート
ルイロペス/マーシャル攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d5

 マーシャル攻撃。ショートは長年の間にちょっと指しているが、ナカムラはたぶん予想していなかった。

9.exd5 e4!?

 スタイナー戦法。GMたちが詳しく本局を研究したあとは感嘆符と疑問符が入れ替わるかもしれない。「これは成績が ½/4 のとき起こるたぐいの無鉄砲さである。」(ショート)「ショートが何かちょっと変わったことをしてくるのではないかと思っていた。」(ナカムラ)ショートはマルコム・ペインがこの戦型を指すと指摘し、冗談めかして彼の名誉のために指したようなことを言った。

10.dxc6 exf3

11.g3

 単に序盤からポーン得を図るこの論理的な手は、文字どおりナカムラが盤上で考え出した。以前に指されたことはあるが本にはこの戦型についてほとんど記載されていない。「本の推奨手は 11.d4 だが、本局のあと新しく本の推奨手になるかもしれない。」(ショート)11.Qxf3 と取る手もあり、ボビー・フィッシャーが2回ほど指している。

11…Re8

12.d4

 黒のさりげない手には実際には毒が含まれていた。もし 12.Qxf3? と取ると 12…Bc5! で白は急にルークと最下段に対する策略に引っかかり易くなる。例えば 13.Rf1 なら 13…Bg4! 14.Qg2 Qc8 という具合である。

12…Bg4 13.Bg5

13…h6

 13…Qd6 は 14.Qd3 h6 15.Bxf6 Bxf6 16.Nd2 Qxc6 17.Qg6!? Be6 18.Qh5

となって、f3ポーンをからめ取り白に1ポーン得の優勢が約束される。

14.Bxf6 Bxf6

 黒の残った黒枡ビショップは黒枡にある白の圧倒的なポーンに対してあまり影響がないので、自分の黒枡ビショップをなくすという白の方針にはあまり問題がなかった。

15.Nd2 Qd6 16.h3!

16…Bh5

 16…Rxe1+ は 17.Qxe1 Bxh3 18.Qe4 で白がすぐにまた1ポーン得になり陣形の優位も増す。

17.Qc2!

 Qf5 の狙いでh5のビショップをまごつかせている。

17…Bg5 18.Ne4

18…Qxc6

 18…Qg6 なら白は 19.Qd3 から 20.Bc2 で圧力を強めることができる。一方黒はキング翼で自分の駒を封じ込めるのに成功しただけである。

19.Nxg5 hxg5 20.Qf5

 逆説的になるが、ショートはポーン損の間はまだ形勢に自信があったと我々に語った。しかし戦力が互角になった今彼は完全にあきらめた。

20…Rxe1+

 20…Qg6 は 21.Qxg6 Bxg6 22.Bd5 でf3のポーンが取られ、白が技術的に楽に勝つ。

21.Rxe1 Re8

22.Re5

 22.Rxe8+ は 22…Qxe8 で最下段の狙いに備えて 23.Qe5 Qxe5 24.dxe5 と指す必要があり白の勝ちが怪しくなる。

22…Rxe5 23.dxe5

23…Bg6

 やはり 23…Qg6 は 24.Qxg6 Bxg6 25.Bd5 でf3のポーンが落ちる。

24.Qxg5 Qe4 25.Qd8+ Kh7 26.Qh4+ Qxh4 27.gxh4

27…f6

 黒にとっては具合の悪いことに二重hポーンは白の大義をほとんど助けているに近い。もし黒が 27…Bh5 でfポーンを守れば、白キングはh2からg3を通ってそのポーンを攻撃しに行き Bd1 と指して取ってしまうことができる。

28.exf6 gxf6 29.Bd5 a5 30.b4 axb4 31.cxb4 Bd3 32.Kh2 Bc4

33.Be4+

 33.Bxc4?? は考えるまでもない。33.Bxf3? も最善ではなく、33…Bxa2 のあと黒がbポーンを突っ走らせる狙いで引っ掻き回しにくるかもしれない(あわよくばの話である)。

33…Kh6 34.a3 1-0

 ちょうど投げ時である。この後の想定手順は 34…Be6 35.Bxf3 Kg6 36.Kg3 f5 37.Kf4 Bd7 38.h5+ Kf6 39.Be2 Bc6 40.Bd3 Bd7 41.h6

で見込みがない。解説室での質疑の終わりにショートは歌の一片を歌って締めくくった。その第1節は「ポーンを捨てるとどうなるのか」で、曲は1960年代にヒットしたボビー・ジェントリーの「I’ll Never Fall in Love Again」(訳注 邦題『恋よさようなら』)だった。彼の歌は大会ウェブサイトのビデオの5.3で聴くことができる。ショートは丁重にも元英国チャンピオンで並みはずれた冗談好きのGMジョナサン・メステルが歌詞を作ったと言った。

訳注 ショートの替え歌の歌詞は次のとおりです。
What do you get when you sac a pawn? (ポーンを捨てるとどうなるのか)
Several hours of grim defending, (何時間もの気の滅入る受け)
And then you lose the ending, (そして収局で負ける)
I’ll never sac a pawn again. (もう二度とポーンは捨てないぞ)

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス2

王印防御の完全理解(43)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f2-f4 突き

 …f7-f5 突き(特にその後の …f5-f4 突き)に対抗する別の手段は e4xf5、g6xf5 の交換の前か後に f2-f4 と突くことである。この種の作戦の基本的な考え方は、中原を開放することによりキング翼での黒の攻撃を弱め、それと同時に黒キングのやや露出した状態につけ込む機会を得ることである。そのような戦略はクイーン翼ビショップのe3の地点への展開に先行するのがほとんど常で、黒がcポーンをc5に突いたかどうかにより微妙な違いが出てくる(図62)。

 図62 

 黒がc5の地点を駒で占拠している時には、白は中原を開放しおよび/または e4xf5 g6xf5、f2-f4 突きによってd4の地点の支配を目指すことができる(図63)。

 図63 

 一般に …e5-e4 突きによる局面の閉鎖は、Be3 が既にポーンをせき止める位置にあり、d4の地点は(例えば Nd2-b3 または Nc3-b5 により)すぐに白の手中に落ち、e4-f5の連鎖ポーンはのちに g2-g4 突きによっていつでも破壊できるので、白を困らせることにはなりそうもない。

 黒の最善の対処法はf4の地点で交換し、駒を中央に集結させてポーン形の劣勢の適切な代償を求めることである。

 一方黒が …c5 と突いている時には、白は前図のように Nf3-d2 と捌かずに、キング翼ナイトをe1からd3に捌くのが普通である(b2-b4 突きと f2-f4 突きを支援するため)。しかしナイトがd3にいる場合は、白が e4xf5 と取りその後 f2-f4 と突くと、黒は先手で …e5-e4 と突くことができるようになる(図64)。

 図64 

 このような局面では黒は …e5-e4 と突き Nd3-f2 のあと …Bg7xc3 と交換し、白のポーンを動けなくすることができる。そのあとの g2-g4 突きは …Nd7-f6 で防ぎ、必要ならば …h7-h5 と突く。このように黒は双ビショップでなくなったにもかかわらず(特にフィアンケットされたキング翼ビショップ)、局面の閉鎖性と白のポーンの仕掛けのないことのおかげで、均衡した局面になる。

 結果として黒が …c5 と突いた時には白は e4xf5 の交換を延期して、すぐに f2-f4 と突きいくらかの優勢を維持しようとすることがよくある(図65)。

 図65 

 このポーン突きの主要な目的は変わらない。即ち中原を開放し黒キングの露出した状態につけ込もうとすることである。この局面で黒は …g5 と突くことによりキング翼での攻撃を再開しようとしてきた。しかし fxe5 Nxe5(…f4、e6 fxe3、exd7 Bxd7、e5 dxe5、Ne4 は戦略的に白が優勢である)Nxe5 Bxe5、exf5 Bxf5、g4 のあと、gポーンに対する速攻(Qd2 h6、h4)のおかげで白が主導権を保持している。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

谷川浩司九段の義援金

 将棋の谷川浩司九段が300万円の義援金を河北新報の募金口座に寄託しました。集まった募金は日本赤十字社を通じて被災者に届けられます。ウェブにも掲載されています

 なお、谷川九段は2008年にも岩手・宮城内陸地震の被災地への義援金100万円を河北新報社に寄託しています。

2011年04月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 我楽多

王印防御の完全理解(42)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-c7 による釘付けはずし

 既に述べた手段だけでなく黒には …c7-c5 と突いた時にd8-a5の斜筋からクイーンを移動させて釘付けをはずすこともできる(図61)。

 図61 

 黒のクイーンの最良の位置は一般にc7の地点である。他の地点(…Qb6 や …Qa5)はb列を素通しにする白の自然な作戦(Ra1-b1 から b2-b4)によって容易に邪魔される。この場合でも …h7-h6 突きは …Nf6-h7 と引くのに役立っている。なぜならe8に引くのは Bh4-e7 で交換得する手があるためにクイーン翼ナイトがd7の地点に自然に展開するのに障害となるからである。

(この章続く)

2011年04月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(117)

「Chess」2010年11月号(16/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第8回戦 9月29日

 最上位2シードの対決となったロシア1対ウクライナはこの回の重大な対戦だった。もっとも本誌の別のページで報じられているイリュームジノフ対カルポフのずっと重大な対決によっていくらか影が薄くなっていた。この対戦はセルゲイ・カリャーキンが元の母国を相手にするという辛辣な瞬間だった。試合はカリャーキンが難なく勝ったが、エフィメンコがマラーホフを下して勝ち点を分けた。

第8回戦 ロシア1対ウクライナ
S・カリャーキン - P・エリャーノフ
カロカン防御

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2 c5 6.Be3 Qb6 7.Nc3 Qxb2

 まるでカロカン防御がシチリア防御の派手な毒入りポーン戦法に嫉妬して同様の風変わりな独自の戦型をやりたがっているようである。しかしこれはナイドルフ戦法の生霊(いきりょう)よりもうさんくさい。もっともいく人かのGMがこれに息吹を吹き込もうとしてきた。

8.Qb1! Qxb1+

 たぶんこれが最善である。8…Qxc3+? は 9.Bd2 Qxc2 10.Qxb7 で黒が壊滅する。8…Qxc2? も 9.Qb5+! Nd7 10.Rc1 a6 11.Qxb7 Rb8 12.Qxa6 Qb2 13.Bb5 で黒が非常にまずそうである。2007年のヨーロッパチーム選手権戦のパラツ対バリェホ・ポンス戦では 8…Qb6!? 9.dxc5 Bxc5 で合意の引き分けになったが、このあと指し続ければ 10.Bb5+ Kd8 11.Na4 Qa5+ 12.Bd2 Qc7 13.Nxc5 Qxc5 14.O-O

となって白が布局から優勢になることができただろう。

9.Rxb1

9…c4

 9…b6 10.dxc5 bxc5 11.Rb7 は本譜と非常に似ていて、これまで2局指されどちらも白が勝っている。

10.Rxb7 Nc6 11.Nb5

11…Nd8

 11…Rb8 12.Rxb8+ Nxb8 13.Kd2 は2003年スカンデルボルクでのボローガン対パロ戦で、白が勝った。

12.Rc7

12…Rb8

 これは新手である。2008年ロシアでのラスティン対コロブコフ戦では 12…Bxc2 13.Nd6+ Bxd6 14.exd6 と進み白が短手数で勝った。

13.Nd6+ Bxd6 14.exd6 Rb1+ 15.Bd1 Bxc2 16.Kd2 Bxd1 17.Rxd1

17…Rb6

 17…Rb2+!? で白のaポーンを取る手もあるが 18.Kc3 Rxa2 19.Rb1 Ra6 20.Bf4 となって、駒が展開していない黒陣はまだかなり不安を抱えていて白の2ルークが威力を発揮する危険性もある。

18.Bf4 Nf6

 18…a6 19.Kc2 はつらすぎて考えられない。

19.Re7+

 これは黒をキャッスリングできなくしh8のルークを出させなくするだけの手である。

19…Kf8 20.Rxa7 Ne4+ 21.Kc2 f6 22.h4 Nxf2 23.Rb1 Rxb1 24.Kxb1 Ne4 25.a4

25…Rg8

 25…h6 26.h5 Kg8 27.Re7 Kh7 はルークを戦いに参加させるための死にもの狂いの手だが、白に 28.d7 Nc6 29.Re8 Nc3+ 30.Kc2 Nxa4 31.Bc7

と応じられると黒はポーンのクイーン昇格を防ぐために駒損が必至である。

26.a5 Nc6 27.Ra6 Nb8 28.Ra7 Nc6 29.d7!

 白は27手目でこの手を指すことができたが、持ち時間を増やすために手を繰り返していた。

29…Nd8 30.Kc2 Ke7 31.a6

31…e5

 黒の悔しいことに、キングを最下段から上げたのにまだナイトをどかせてルークを自由にすることができない。例えば 31…Nc6? なら 32.d8=Q+ Kxd8 33.Ra8+ でルークがおちる。

32.Bc1!?

 厳密にはこの手は必要ないが、白は相手が(32.dxe5 のあと)32…Nc5 と指すのを嫌った。そうなっても 33.Bd2 Nxd7 34.Ra8! fxe5 35.a7 で黒が良くなるわけではない。

32…Kd6

 32…Nd6 は 33.Ba3 Ke6 34.Bxd6 Kxd6 35.Ra8 で実戦と似た進行になる。

33.Ba3+ Kc6 34.Ra8 1-0

 34…Kxd7 35.a7 でこのポーンがすぐにクイーンに昇格する。

 他の重要な対戦はハンガリー対アゼルバイジャンで、同じく引き分けだった。その結果3回戦を残してウクライナが勝ち点1の差で首位を保った。

 イングランドの相手はドイツだった。オンラインチェス愛好家の中のサッカー好きたちは2-2で終わってドイツがペナルティーで勝つと冗談を言っていたが、スポーツの迷信は本当に同一視できなかった。より重大なことはドイツのいく人かの一流GMがオリンピアードでの対局報酬について連盟と争いになってチームに参加していないことだった。ナイジェル・ショートはFIDE会長選運動がらみで対局しなかったが、英国チームは経験に劣るドイツの陣容にとっては強すぎて3½-½で勝った。


アナトリー・カルポフのために選挙応援活動をするナイジェル・ショート。英国の花形選手は出だしは良かったが、オリンピアードの後半は残念な選挙結果が成績に影響したようだった。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

王印防御の完全理解(41)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

a4の要所

 既に見たように黒は最終的にはキング翼での反撃を組織することに成功するかもしれないけれでも、釘付けが速度を遅らせることは確かである。従って黒がクイーン翼で予防手段を強化して壊滅させられるのを防ごうとするのは理にかなっている。

 …Qd8-e8 による釘付けはずしを …Bc8-d7 の展開と組み合わせれば、黒には白が b4 と突くことができたとたん …Nc5-a4 の捌きで単純化する選択肢が増える(図60)。

 図60 

 黒はナイトをa6に引いて戦闘から身を引かせることに応じる代わりに、b4でポーンを交換してもしなくても …Nc5-a4 によってクイーン翼ナイトの交換を持ちかけることができる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(40)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-e8 による釘付けはずし

 クイーン翼ナイトがd7に展開していないとき、黒には釘付けをはずすためのもう少し妥協しない手段がある(図57)。

 図57 

 …a7-a5 と突いたあと黒は単に …Qd8-e8 と寄るだけで釘付けをはずすことができる。Nc3-b5 には主眼の …Nb8-a6 跳ねで応じることができる。この場合 …h7-h6 突きは …g6-g5 と突く意図でなくキング翼ナイトのためにh7の地点を空けるために指される。…Qd8-e8 のあと …f7-f5 と突けるようにキング翼ナイトを動かすのは自然で、d7の地点は次の図のようにクイーン翼ビショップの展開のために空けておくのが最良である。(図58)。

 図58 

 釘付けをはずしたあと黒は …f7-f5 と突く前に、しばしば …h6-h5 と突いて不良ビショップをh6の地点に覗かせて戦いに加えようとする。…h6-h5 突きは白のクイーン翼ビショップを捕獲する狙いもあり、白は f2-f3 と突かされる(図59)。

 図59 

 このような状況では白はキング翼にキャッスリングしたとき、ビショップをf2に引く手に注意しなければならない。そう引くと黒に …Qe8-e7、…h5-h4 から …Qe7-Qg5 によってあまりにも速くキング翼に圧力をかけられてしまう。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[56]

eポーン布局

第8章 カロカン防御(続き)

パーノフ攻撃

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5

 3…Qxd5? なら 4.Nc3 と展開しながらクイーンを当たりにして白が手得する。

4.c4(図84)

 図84(黒番)

 白のこの手でパーノフ攻撃になる。このシステムは1930年代にカロカンに対する必勝法であると信じられた。しかしそれ以降防御法が十分に改良されて定跡の均衡が回復した。黒がここで 4…dxc4 と取ると白のdポーンは孤立ポーンになるがそれは恐れる必要がない。例えば 5.Bxc4 e6 6.Nf3 となればクイーン翼ギャンビット受諾の布局に転移したことになる。このような局面では孤立ポーンは攻撃の可能性を生み出すので弱点というよりも強みであることが知られている。

4…Nf6

 黒は展開しながらdポーンを守った。4…Nc6?! は正確さで劣る。というのは 5.cxd5 Qxd5 のあと黒クイーンがかなり露出した状態になり、白が(dポーンを守ってから)Nc3 と指して手得できるからである。

5.Nc3

 グンデラムの 5.c5 は魅力的な着想で、黒は 5…e5 と応じることができ大乱戦になる。これは「An Opening Repertoire for the Attackingu Player」で詳しく解説されている。

5…e6

 これは最も堅実な防御の手で、黒がd5にポーンを維持できる。5…g6 は 6.Qb3! Bg7 7.cxd5 O-O 8.Be2 Nbd7 9.Bf3 となって、黒が楽にポーンを取り返すことができないので互角にできない。

6.Nf3 Be7 7.c5!?

 7.Bg5 は 7…O-O または 7…Ne4 と応じられどちらも互角になる。だから白はクイーン翼のポーンを迅速に突いて優勢を目指す。

7…O-O 8.Bd3

 この手は黒のナイトをe4に来させないようにしている。すぐに 8.b4 と突くのは 8…Ne4! 9.Qc2(9.Nxe4 は 9…dxe4 10.Ne5 f6 11.Nc4 Nc6 で白のポーン損になる)9…Nc6 10.a3 e5! で黒が優勢である。例えば 11.dxe5 Nxc3 12.Qxc3 Bg4 で白のキングがまだ安全な所に退避していないので攻撃が非常にきつくなる。

8…b6!

 白が陣容を整える余裕が持てないように白のcポーンに対して反撃を仕掛けた。

9.b4 a5 10.Na4

 白はナイトでbポーンを攻撃した。すぐに 10.a3? と突くのは 10…axb4 でaポーンが釘付けにされるので白の連鎖ポーンを維持するのに役立たない。

10…Nbd7

 10…bxc5? は 11.bxc5 で白の保護パスcポーンが黒とって厄介になる。本譜の手は 10…Nfd7 よりも少し改良されている。10…Nfd7 に対して白は 11.b5 と応じることができ(12.c6 の狙い)、11…bxc5 12.dxc5 e5!(12…Nxc5? は 13.Nxc5 Bxc5 14.Bxh7+ で良くない)13.c6 e4 14.cxd7 Nxd7 15.O-O で白がまだわずかに優勢である。

11.a3

 白の連鎖ポーンはまだ威容を誇っているように見える。しかし実際には黒が単純な手筋で互角にできる。これは根元が浮き上がれば連鎖ポーンは弱体化するという金言の好例である。

11…axb4 12.axb4 bxc5 13.bxc5

 13.dxc5 は 13…e5 で黒の中原のポーンの方が白のクイーン翼のポーンよりも良くなる。

13…e5! 14.Nxe5

 他の手はこの手よりも悪い。例えば 14.dxe5 なら 14…Nxc5! 15.exf6(15.Nxc5 は 15…Rxa1)15…Nxd3+ 16.Qxd3 Bxf6 17.Nd4 Qe8+ 18.Be3 Rxa4 だし 14.c6 なら 14…e4 15.cxd7 Bxd7 である。

14…Bxc5! 15.O-O

 15.Nxd7 は 15…Bb4+ 16.Bd2 Bxd2+ 17.Qxd2 Bxd7 となって白がa4のナイトを救うことができないので黒の勝ちである。

15…Nxe5

 15…Bxd4 は 16.Bxh7+ と応じられる。

16.dxe5

 16.dxc5? は悪手で、16…Nxd3 17.Qxd3 Ba6 で交換損になる。

16…Ne4(図85)

 図85(白番)

 思い切った 16…Ng4!? も可能である。例えば 17.Bf4(駒を展開しながらeポーンを守った)17…Bxf2+ 18.Rxf2 Nxf2 19.Kxf2 Qh4+ 20.Bg3(20.g3 なら 20…Qxh2+)20…Qd4+ 21.Kf1 Kh8(22.Bxh7+ からのクイーン素抜きを防ぐため)となればa4の悪形のナイトと白キングの露出のため黒に勝つチャンスがある。本譜の手のあとは完全に互角の形勢である。白の最善の手順は 17.Bxe4 dxe4 18.Qxd8(18.Nxc5? にはやはり 18…Rxa1 がある)18…Rxd8 19.Bg5 Rd5(白のナイトが釘付けでなくなったのでビショップを守るため)20.Nxc5(20.Rfc1? は 20…Bd4 と応じられる)20…Rxa1 21.Rxa1 Rxc5 ですぐに引き分けになる。

(この章続く)

2011年04月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(39)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4の要所

 …h7-h6 突きから …g6-g5 突きのあと …f7-f5 突きが攻撃の威力のほとんどを失う大きな理由は、e4xf5 のあとせき止めのための強力なe4の地点が白のものになるからである(図56)。

 図56 

 白はe4の地点を占拠して、キング翼の白枡全般の弱点につけ込むことができる。この戦略的な劣勢と戦うための黒の唯一の可能性は …e5-e4 と突きそのポーンをしっかり守ることができることにかかっている。黒が …f7-f5 と突きg6ポーンの支援があっても何らかの戦術的理由で駒でf5の地点で取り返さなければならない時にも似たような状況になる。

(この章続く)

2011年04月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(38)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h6 から …g6-g5 による釘付けはずし

 黒のクイーン翼ナイトがd7に跳ねると次のような局面になる(図53)。

 図53 

 このような局面では白は Qd1-d2 と指して …h7-h6 突きを防ごうとしない。なぜなら …Nd7-c5 のあとどちらにしても面白くない Be2-d3 か Qd2-e3 の選択をしなければならないからである。いずれにしてもどちらも黒の …h7-h6 突きを防ぐことはできない。従ってこの着想(Qd1-d2)は黒が …c7-c5 突きの陣形を採用した時だけ成立する。

 実際にはここでの白の意図はキング翼ナイトをd2に引いてd1-h5の斜筋を支配し、それにより …h7-h6 から …g6-g5 突きで釘付けをはずしたあとの …Nf6-h5xg3 による単純化を避けることである。従って …Qd8-e8 による釘付けはずしが Nc3-b5 と強く応じられることを考えれば、黒がすぐにポーンを突いて …Nf6-h5 と跳ねるのが最善であることが容易に分かる(図54)。

 図54 

 このような局面では白が既にキャッスリングしている場合にだけf4の地点の占拠(…Nh5-f4)が効果的であることが簡単に理解できる。…Nf6-h5 のあと白がキャッスリングしていなければ、白は h2-h4 と突くことにより敵の弱体化したキング翼につけ込もうとすることができる。そのような変化はしばしば戦術的に非常に複雑になり、通常は …g5-g4 突きから …Nh5-g3 の交換のあと次のようなポーン構造に至る(図55)。

 図55 

 ここでは戦いは主としてf5の地点の支配をめぐって行なわれる。白が支配すれば戦略的に優位に立つことにもなる。だから黒としては …f7-f5 突きが本来の反撃の意義を失い、ゆっくり締め上げられる危険を避けるための必要な解放策となったとしても、このポーン突きをやり遂げなければならない。しかし黒がこのポーン突きを達成できれば、e4とf5のポーンの交換のあと実際上1ポーン得の収局を期待することができる。もっとも黒キングは中盤戦で攻撃にさらされることにはなる。

(この章続く)

2011年04月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(37)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の釘付け

 同翼キャッスリングのとき明らかに白は単純に純粋な攻撃/反撃のやり方をとることはできない。というのは黒が駒でc5の地点を支配しようとcポーンでせき止めようと、どちらの場合も白はこのあとの見通しで劣ることが容易に分かるからである。だから今度は白が黒のキング翼での動きを遅らせる手段を求めるのは理にかなっているし、特に黒のfポーン突きを防ぐ、遅らせる、または弱めるようにする。この戦略を決めるにあたり黒のクイーン翼ナイトの位置の影響がまた見られる。前章で検討した変化とは対照的に、黒のナイトは …f7-f5 突きを助ける位置にはいない。それにd7にいるために Bc8 の動きを邪魔している。

 fポーン突きを妨害する最も直接的な手段は Bc1-g5 でナイトを釘付けにすることである(図52)。

 図52 

 この釘付けの主要な目的は …h7-h6 から …g6-g5 突きにより釘付けを解消することを誘い、f5の地点の支配を弱めさせてfポーン突きの威力を削ぐことである。そうすれば e4xf5 のあと黒のポーンが比較的無害な二つの集団に分かれることになる。

 以降の展開は黒がクイーン翼ナイトをa6またはd7に置くか(図47を参照)、あるいは …c7-c5 と突くかによって決まってくる。

(この章続く)

2011年04月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(211)

「Chess」2011年1月号(2/4)

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ロンドン・チェスクラシック(続き)

第4回戦(12月11日)
カールセン 1 – 0 ナカムラ

 ヒカル・ナカムラはカールセンのイギリス布局に一種のオランダ防御で応じた。しかしノルウェー選手は布局からしっかり優勢に立った。一つ面白かった場面はカールセンがビショップをナイトと交換した時だった(23.Bd4 と 24.Bxb6)。ヒカルが双ビショップになって問題ないように思えたが、時間が切迫したときカールセンの圧力がものをいった。ヒカルは 33…Rd8!? の方が良いかもしれないと考えたが読みきる時間がなかった。相手の特攻の 36.Rxg6+ を見落としていて収局でポーン損になった。カールセンの技術は完璧で、すぐに勝負がついた。

第4回戦
M・カールセン-H・ナカムラ
イギリス布局

1.c4

 カールセンは白の布局の選択ではいまや確固とした「イギリスびいき」になった。

1…f5

 一方ナカムラは黒ではオランダが好きである。もちろん白はずっと d4 と突かないので純正オランダ防御ではない。

2.g3 Nf6 3.Bg2 d6 4.Nc3 g6 5.e3 Bg7 6.Nge2 O-O 7.O-O e5 8.b3 Nbd7 9.d3 c6 10.Ba3 Qc7 11.Qd2 Re8 12.Rae1 Nc5 13.h3 e4

14.dxe4

 14.d4 はまったく候補外である。14…Nd3 と跳び込まれ厄介な存在になる。

14…Nfxe4 15.Qc2 Nxc3 16.Nxc3 Be6 17.Rd1 Rad8 18.Bb2 Bf7 19.Rd2 a5 20.Rfd1 Be5 21.Ne2

 ここまで有利さを求めて慎重な位置取りがずっと続いてきたが、ナカムラはここで形を決めてきた。

21…a4 22.b4 Nd7

23.Bd4

 すぐに 23.Qxa4 とaポーンを取るのは非常にまずい考えである。23…Nb6! 24.Qb3 Nxc4 で白の方が戦力損になる。しかしaポーンは守りづらいので長期的には負担になる。

23…Nb6

 23…Bxd4 はd6ポーンの大切な守り駒をなくすので良い考えではない。

24.Bxb6! Qxb6 25.Rb1 Qc7 26.Nd4 Rc8 27.Rc1 Qe7

28.Rd3

 aポーンはまだ間接的に守られている。28.Qxa4? なら 28…Bxg3! で黒が良い。

28…c5 29.bxc5 Rxc5 30.Qxa4 Rec8 31.Rb1 Rxc4 32.Qd1!

 白が24手目でビショップでナイトを取ったのは勇断だった。白の大局的な作戦はb7とd6の浮いているポーンを標的にすることのようである。

32…b6

 この手のあと白が局面をしっかり支配した。たぶん 32…R4c5!? はやってみる価値があるだろう。例えば 33.Rxb7 R8c7 34.Rxc7 Qxc7 35.Qd2 Rc1+ 36.Kh2 Bxd4 37.Rxd4 Rc2

という具合である。

33.Nb5

33…R4c5

 ナカムラは持ち時間が少なくなっていた。33…Rd8 34.f4 Bf6 35.Nxd6 Rc3 36.Rxb6 Qc7 37.Rxc3 Qxc3 38.Qe2 Bd4!?

を読んだが、形勢まで検討する時間がなかった。

34.Nxd6 Bxd6 35.Rxd6 Bxa2 36.Ra1 Rc1 37.Rxc1 Rxc1 38.Rxg6+

 この突撃で白のポーン得になった。

38…hxg6 39.Qxc1 Qd6 40.h4 Bf7 41.h5

41…Kh7

 41…gxh5 は 42.Qc8+ Kg7 43.Qxf5 でもっと悪い。

42.hxg6+ Kxg6 43.Qc2 b5 44.g4

44…Qe5

 44…Be6? は 45.gxf5+ Bxf5 46.e4! で駒損になる。しかし 44…b4!? はやってみる価値があったかもしれない。白がこのbポーンを抑えるのは非常に難しいし黒のfポーンはどうせ取られるのだから。

45.gxf5+ Kg7

 45…Kf6 は 46.Qc6+! Kxf5? 47.Bh3+ Kg5 48.f4+ でクイーンを取られる。

46.Qe4 Qd6

 クイーン交換はすぐにそうなるが白の勝ちになる。

47.Qh4 Bc4 48.Bf3 Qf6 49.Qxf6+ Kxf6 50.Be4

50…Ba2

 50…b4 は 51.f4 b3 52.Kf2 b2 53.Bb1 で白が勝つ。

51.f4 b4 52.Kf2 b3 53.Bd5 Kxf5 54.Kf3 Kf6 55.e4 Kg6

56.Ke3

 これで一直線の技術的な勝ちである。もっとも我々のような技量の低い者は簡単にだめにしてしまうことがある。例えば 56.Kg4? なら Bb1! で引き分けにしてしまう。

56…Kh5 57.Kd4 Kg4 58.f5 Kg5 59.Ke5 1-0

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(この号続く)

2011年04月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(36)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

閉鎖中原

 ペトロシアン型中原では黒のc5の支配が強まっているために白の攻撃が当然遅くなることを考えれば、黒は …c7-c5 の先受けで白のクイーン翼の動きを迎え撃つ必要はさらさらない。しかし同時に黒がc5の地点を余分に支配するだけなら相手の攻撃を抑えるだけであるが、もっと根本的な …c7-c5 突きは白に別の攻撃法を強いることも確かである。だから図46のような状況では黒は …c7-c5 と突こうと突くまいと閉鎖中原の生成を選ぶかもしれない。

 閉鎖陣形の対峙(c5-d6-e5対c4-d5-e4)は次のような状況から最もよく生じる。(1)手順の逆転から、つまり黒がまず …c7-c5 と突き d4-d5 突きのあと …e7-e5 突きで中原の閉鎖を決める。(2)白が何手かの間中原の争点を維持し、黒の …c7-c6 突きのあと中原を固定した時(図49)。

 図49 

 このような局面で黒がよく行なう論理的な作戦は、…e5xd4 の交換(この手の前か後に …Rf8-e8 と寄る)と …Nd7-c5 跳ねによって白のeポーンに圧力をかけることである。必要があれば …d6-d5 突きで捌きに出る可能性もある(第6章を参照)。

 白はこれらの構想に d4-d5 突きで中原を閉鎖することにより対抗でき、dポーンを取ることがよく狙いになる。この戦略方針はすぐに採用されるかもしれないし中原の争点を維持している間いつでも採用されるかもしれない。時には白は中原を閉鎖する前に …Rf8-e8 でルークがfポーンの自然な支援からそれるのを待つこともある。

 d4-d5 突きのあと黒はc列の開通(…c6xd5 でそうなる)が白の有利になるのが普通なので …c6-c5 突きによって中原を固定することがよくある。c列の開通は c4-c5 突きの仕掛けの目的の一つなのでこのようなことは意外ではない。しかしこれから出てくるように、黒はクイーン翼で白に挑戦する意図でc列を素通しにすることがある。

 どの段階でポーンがc5に進もうと、白はクイーン翼での攻撃のやり方の変更を迫られる(図50)。

 図50 

 両者ともキング翼にキャッスリングして、白はb列を素通しにすることによりクイーン翼で敵陣突破を図り、黒は反対翼で通常の反撃を追い求める。しかし黒は …a7-a6 突きから … b7-b5 突きで敵と正面対決することがある。この場合白は a2-a4-a5 突きと Nc3-a4 から b2-b4 突きの押さえ込みの捌きで応じるかもしれない。

 黒が本当にクイーン翼で主導権を握れる唯一の状況は、白がクイーン翼にキャッスリングすることにより通常の道筋からはずれる時である(図51)。

 図51 

このような場合反対翼にキャッスリングしているせいで通常の戦略はまったく逆になる。

(この章続く)

2011年04月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(35)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

c5の要所

 黒はc5の地点を強く支配しているだけでなく、…a7-a5 突きでそこを確保することによりクイーン翼ナイトのための強力な拠点にすることができる(図47)。

 図47 

 この種の中原では明らかに前章で見られたような通常の手段で c4-c5 突きを準備することはできない。特に黒のクイーン翼ナイトがc5の地点に向けられれば、その仲間によって簡単に補強することができる(…Nf6-d7)ことからも分かる。

 白は c4-c5 突きを準備するためにクイーン翼ポーンを活用する必要がある。しかし単純に a2-a3 から b2-b4 と突くことはほとんどできない。なぜならすぐに a2-a3 と突くと黒は …a5-a4 と突いて白のbポーンを固定しc5の地点を永久に支配するからである。だからc5の地点をめぐる戦いはまず b2-b3 と突き、そのあとで a2-a3 から b3-b4 と突いていかなければならない(図48)。

 図48 

 若干の手数を費やすことによってのみ(その中にはほとんど常に Ra1-b1 と寄って b4 突きを助ける手も含まれる)、白はポーンをb4に進ませることができ、それはc5の地点での仕掛けの重要な前提になる。

(この章続く)

2011年04月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(116)

「Chess」2010年11月号(15/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日(続き)

 カールセンは今大会でひどい目にあっていたけれども、レイティング首位を争う主要な相手の一人が同様に不振だと考えることに少なくとも慰めを見い出すことができた。トパロフはハンティ・マンシースクでいつもの調子をはるかに下回っていて、マルク・ブルフシュテイン戦で彼らしくないとんでもない見損じをした。

第7回戦 カナダ対ブルガリア
M・ブルフシュテイン - V・トパロフ
キング翼インディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.h3 Na6 7.Bg5 c6 8.Be2 e5 9.d5 h6 10.Be3

10…Nh5

 この手は少し変わっている。ほとんどの選手はこの手の前に 10…cxd5 と指す。

11.dxc6 bxc6 12.Qd2 Nf4

13.O-O

 13.Bxf4?! は 13…exf4 14.Qxf4 Rb8 で白のクイーン翼が攻撃に非常に弱くなる。

13…f5 14.Bxf4 exf4 15.exf5 Bxf5 16.Rad1 Rb8 17.Nd4 Bd7 18.Bf3 Qb6 19.Nb3 Be5 20.Ne4 Rbd8 21.Qe2 c5

 形を大きく乱される c4-c5 突きを狙われていた。

22.Rd2 Rfe8 23.Rfd1

 ここまですべて整然と進行して、どちらも優勢を主張することはできない。しかしここでトパロフは致命的な悪手を出した。

23…Bf5? 24.Nxd6!

 カナダの22歳のGM(ロシアで生まれ小学生までほとんどイスラエルで暮らした)は絶好の機会を逃がさなかった。

24…Bxd6 25.Rxd6

25…Rxe2

 25…Rxd6? は 26.Qxe8+ から 27.Qe7+ で浮いているルークを取られる。

26.Rxd8+ Kf7 27.Bxe2 Ke7

 クイーンの代わりに2ルークを取るべきか(またはその逆)決めるのは主観的な判断になりがちである。それは判断に関係する全ての駒の働きを考慮に入れなければならないからだが、ここでは2ルークが覇権を握っているのはかなり明らかである。

28.Bg4!? Bxg4 29.hxg4

29…Qxd8

 黒は実際のところクイーンを2ルークと交換するほか望みがない。それに白は例えば 29…Qe6 30.R1d7+ で強制的にそうすることができるだろう。

30.Rxd8 Kxd8 31.Kf1

31…Ke7

 黒はすぐにナイトを働かせることができない。例えば 31…Nb4? は 32.Nxc5 Nxa2 33.Ne6+ で2個目のポーンが落ちる。

32.Ke2 Kd6 33.a3 Nb8 34.Kf3

34…Ke5

 34…g5 は 35.Ke4 で白キングがf5からg6に侵入する。

35.Nxc5

35…g5

 35…Kd4 は 36.Ne6+ Kxc4 37.Kxf4 Kb3 38.g5! hxg5+ 39.Kxg5 Kxb2 40.Kxg6 Kxa3 41.g4 Kb4 42.g5 a5 43.Nd4!

で、白の明らかな勝ちである。もっとも時間切迫の時あるいはシリコンの助けがない時には読みきるのはそう簡単でない。

36.Nb3 Nd7 37.Ke2 Kd6 38.f3 Ne5 39.Na5 Kc5 40.b4+ Kd4 41.c5 Kd5 42.Kd2 1-0

 以下は 42…a6 43.a4 Ng6 44.Kd3 Nh4 45.Kc3 Nxg2 46.c6 Kd6 47.b5 axb5 48.axb5 Ne1 49.Nc4+ Kc7 50.Kd4 Nxf3+ 51.Kc5

で、2個のパスポーンですぐに勝ちが決まる。

 政治的に遺恨のあるアルメニアとアゼルバイジャンの対決は、アルマン・パシキアンのキングがガディル・グセイノフによって詰みの網に捕らえられてアゼルバイジャンが勝った。ロシア1は末席でカリャーキンがトマシェフスキーに勝って二軍チームを下した。第7回戦終了時の順位はウクライナが勝ち点13/14、ロシア1・ハンガリー・アゼルバイジャンが勝ち点12だった。イングランドとアイルランドは勝ち点9、スコットランドは勝ち点7、ウェールズは勝ち点6だった。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

王印防御の完全理解(34)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点

 前章と対比してこれらの戦法に共通する最も重要な特徴は黒のクイーン翼ナイトの位置である。この一見大したことがないような細部が実際は両者の戦略に深い影響を及ぼしている。さらに通常はキング翼にキャッスリングするけれども戦法によっては白がまだキャッスリングしていないことが、あとで指摘されるように重要な違いをもたらすことがある。

 だから一般にこれから検討する中原の型は次のような特色を持っている(図46)。

 図46 

 一見したところではここでの戦略の要素は以前に図2の観察で列挙したものに非常に似かよっている。実際試合は同じ翼にキャッスリングして攻撃と反撃が行なわれるのが普通である。その際それぞれ c4-c5 突きと …f7-f5 突きによる攻勢が主要な役割を果たす。しかし黒はまだ …c7-c5 突きで先受けをするかもしれないが、クイーン翼ナイトの位置のおかげでこのナイトがe7にいた前章で検討した局面よりもはるかに容易にc5の地点を支配することができる。

(この章続く)

2011年04月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(33)

第2章 ペトロシアン中原

主手順 - ペトロシアンシステム
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.d5(図45)

 図45(黒の手番) 

 同様の構造は他の戦型からも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O の後

 ペトロシアンシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O Nbd7 8.d5

 グリゴリッチシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O(または 7.Be3 Qe7 8.d5)7…Nbd7 8.Be3 c6 9.d5

 オーソドックスシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O Nbd7 8.Re1(または 8.Qc2 c6 9.Rd1[あるいは 9.d5]9…Qe7 10.d5)8…c6 9.Bf1(または 9.d5)9…a5 10.Rb1 Re8 11.d5

 h3 突きのシステム
 - 6.h3 e5(6…c5 7.d5 e5)7.d5

 その他の戦型
 - 6.Be2 Bg4 7.Be3 Nfd7 8.Rc1 e5 9.d5

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[55]

eポーン布局

第8章 カロカン防御(続き)

4…Nf6 の古典システム

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6(図82)

 図82(白番)

 4…Bf5 に代わる手は本譜の手と 4…Nd7 の2手がある。4…Nd7 のあと白の通常の手順は 5.Bc4 Ngf6 6.Ng5 e6 7.Qe2(8.Nxf7! の狙い)7…Nb6 で、ここで 8.Bd3 または 8.Bb3 で白が優勢になる可能性が大きい。

5.Nxf6+

 手損をしないのとすぐに黒にどのように取り返すのかという問題を突きつけるのでこの交換が最善である。5.Ng3 は黒がすぐに 5…c5! で中原を解体することができる。

5…gxf6!?

 5…exf6 と取る方が危険が少ないが、ポーンの形に優る白が永続的に優勢になる(なぜこのようなポーンの形だと白の方が有利なのかという議論については、ルイロペスの交換戦法の節を参照されたい)。

 本譜の手のあと局面は急戦調になる。黒のキング翼はひどく乱れていて、キングはそちらに避難するわけにはいかない。黒のこれからの作戦はクイーン翼をすばやく展開し、…O-O-O とキャッスリングし、素通しのg列で攻撃の機会をつかむようにすることである。

6.c3

 白の最善手を決めるのは簡単でない。本譜の手は最もよく指されている。この手はdポーンを保護し、中原を強化し、戦型によっては …Qa5+ を介して黒クイーンが迅速にキング翼に移動することによる戦術の可能性を防いでいる。

6…Bf5 7.Ne2

 このナイトはg3に行って黒のビショップをいじめキング翼を守る。ためになる間違いは 7.Qb3?! Qc7 8.Bf4? で、白はビショップを犠牲にして黒のクイーン翼ルークを取ろうとする。しかし 8…Qxf4 9.Qxb7 Bh6(10…Qd2# の狙い)10.Nf3 O-O 11.Qxa8 Qc7 で白クイーンが捕まる。12.d5 としても 12…Qb6 13.Bc4(他に適当な手がない)13…Bc8(…Bb7 の狙い)14.dxc6 Nxc6 のあと …Bb7 が防げないので逃げられない。

7…h5

 この手はナイトからg3の地点を奪うか、白枡ビショップの交換を容易にする意図である。7…Nd7 のような展開では黒のビショップは働きのない地点に追いやられてしまう。例えば 8.Ng3 Bg6 9.h4 h6 10.h5 Bh7 11.Bc4 で白が主導権をつかむ。

8.h4

 白はナイトがずっとg3の地点にいられるようにした。8.Ng3 は正確さで少し劣り、8…Bg4 9.Be2 Bxe2 10.Qxe2 Qd5! 11.O-O h4 12.Ne4 Nd7 13.Bf4 O-O-O 14.h3 Rg8 で黒がg列で反撃できる。

8…Nd7 9.Ng3 Bg4 10.Be2

 10.f3 は白のキング翼を弱める。

10…Bxe2 11.Qxe2 Qa5 12.O-O O-O-O

 黒は作戦の第一段を完了したが、ゆっくりしすぎていて白の攻撃が始まってしまう。

13.c4 e6(図83)

 図83(白番)

 この局面は第18回全ソ連選手権戦のアベルバッハ対ソコルスキー戦に現れた。その試合では白は次のように指した。

14.a3

 この手はクイーン翼でポーンの暴風を見舞う意図である。しかし黒にビショップを戦いに参加させる余裕を与えた。

14…Bd6!

 ボレスラフスキーは代わりに 14.Bf4 を推奨した。こう指せば白は連係に優るので攻撃が非常に有望になる。例えば 14…Bh6? 15.Bxh6 Rxh6 16.d5! cxd5 17.cxd5 Qxd5 18.Qe3 でキング翼のルークとaポーンの両当たりになる。

(この章続く)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

王印防御の完全理解(32)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図44(再掲) 黒の手番 

 これが白の捌きの核心で、明らかに黒は軽視していた。

25…Rg7

 25…Rc7 は 26.Bxg6 でつぶされるのでこれは仕方がない。同様に 25…Qxe8 も 26.Qxg5 Rh7 27.Bc3 で決め手の Nxe5 の狙いが残る。

26.Bxg6 Rxg6

 26…Bh4 は 27.Be1! Ng3+ 28.Bxg3 Rxg6 29.Rxh4+ で白の勝ちになる。キングが白枡に逃れている重要性に注目してほしい。

27.Rxh5+ Kg7

 27…Nh6 なら 28.Nexf4! exf4 29.Bxf4 Bxf4 30.Qxg6 で白が勝つ。

28.Bc3

 これが白のすべての駒を働かせるための急所の手である。ここから終局まで黒は Rc1 がc2の地点を通って戦いに参加する可能性だけでなく、f4とe5の地点での捨て駒の悪夢と絶えず付き合っていかなければならない。

28…Qe7

 28…Bd7 なら 29.Bxe5+! dxe5 30.Nxe5 で圧倒的な結果になる。また 28…Bf6 なら 29.Qh2 Nh6 30.Nexf4 exf4 31.Nxf4 Bxc3 32.Nxg6 で白の勝勢になる。比較的最善の手はたぶん 28…Bh6 だがそれでも 29.Qh1 Nf6 30.Rh2 となって、Rc1-c2 のあと Ne2xf4 の強攻の意図を黒が防ぐのは容易でない。

29.Rc2

 これはf4での決め手の捨て駒を準備している。

29…Bh6

 またしても黒にはクイーン翼の駒を戦いに投入する余裕がない。例えば 29…Bd7 なら 30.Nexf4! Bxf4 31.Rg2 Rxg2 32.Qxg2+ Kf8 33.Nxf4 exf4 34.Rh8 Qf7 35.Qg5(e4-e5 突きの狙い)35…Re8 36.Rxg8+ Qxg8 37.Qh6+ で次の手で詰む。

30.Qh2 Kh7

 黒はf4での捨て駒を防ごうとしているが・・・

31.Nexf4! exf4 32.Nxf4

 捨て駒で2個のポーンを取り決定的な筋が開通した。これで白の駒がすべて活発に攻撃に加わっている。

32…Qf7

 黒の最後の望みはf3の地点への攻撃にあり、特に 33.Nxg6 の変化にある。33…Bg4 または 33…Qxf3+ 34.Rf2 Qd3+! 35.Kg1 Qd1+ となれば局面はさらに混迷の度を増す。本譜の手の代わりに 32…Rg5 なら 33.Rxh6+ Nxh6 34.Qxh6+! で鮮やかな白の勝ちとなる。

33.Rf2! Rf6

 33…Bd7 は 34.Nxg6 Qxg6 35.Rg2 Qf7 36.Rg7+ Qxg7 37.Bxg7 Kxg7 38.Qxd6 で白が圧倒的に優勢になる。

34.Bxf6 Qxf6 35.Rg2 Qd4

 35…Bd7 なら 36.Rg6 Qxg6 37.Nxg6 Kxg6 38.Rxh6+ Nxh6 39.Qxd6+ で白の勝ちになる。

36.Qg3 Qd1+ 37.Kf2 Qd4+ 38.Ke1 Bf5

 38…Qe3+ 39.Ne2 Qd2+ 40.Kf1 Qd1+ 41.Kf2 のあとはもうチェックがかからないのでこの手は観念した手である。

39.Rxf5 Qe3+ 40.Re2 1-0 

(この章終わり)

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王印防御の完全理解(31)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図43(再掲) 黒の手番 

 黒が …c7-c5 と突いた時は白は Ra1-b1 から b2-b4 突きでb列を素通しにするのが普通である。しかしこの局面に限っては既に Rc1 と指してしまっているのでそうするのは手損になる。これで本譜の手が説明できる。この手は黒の不良ビショップの交換を防ぐためでもある。

 攻撃と反撃の自然な作戦の代わりに、先受けと逆先受けによる非常に巧妙な戦略の戦いになっている。

14…Neg8

 黒は …Nf6-e8 から …Bg7h6 と指すつもりであることを明らかにした。キング翼で無理やり進展を図るのは無益である。例えば 14…f4 15.h4! または 14…h6 15.h4 fxg4 16.fxg4 g5 17.h5! ですべて押さえ込まれる。

15.Kg2!

 白はhポーンを(h4に進んだ時)Rf1-h1 で守る準備をした。それと同時に巧妙に大駒をキング翼に移送する用意をしている。

15…Ne8

 黒は相変わらず自分の作戦を続けている。それは …Bg7-h6 でビショップの交換をできると確信しているからでなく、相手に g4-g5 と突かせてキング翼を開く(…h7-h6)可能性を得るためである。代わりに 15…f4 16.h4 Nxg4?! と乱暴にいくのは次のように駒の代償が十分に得られない。17.fxg4 Qxh4 18.Be1 Qg5 19.Nf2 h5(19…Nh6 は 20.Nh3 Qf6? 21.g5! Bxh3+ 22.Kxh3 Qxg5 23.Bh4 で白の勝ちになる)20.Nh3 Qf6 21.gxh5 g5 22.Nf2

16.g5 f4

 白がキング翼を開放することができないという黒の過信は誤っていることが次の手順で簡単に示される。16…Rf7 17.h4 Bf8 18.exf5 Bxf5 19.f4 これで主導権は白にある。

17.h4 Rf7

 17…h6 なら 18.Rh1 である。

18.Rh1 Bf8 19.Qg1

 白は15手目の効果を最大限に利用した。

19…Ng7

 黒は駒の位置を改善し、…h7-h6 と突く前にg3の地点を目指している。

20.Bd1!

 これは局面を開放的にしようとする黒の作戦をくじくための非常に的確な捌きの始まりである。そのもっとも鮮明な要点は、クイーン翼ナイトのためにe2の地点を空けてg3の地点の占拠を防ぐことである。同じようでも 20.Bf1 は白のキングが危険な黒枡に引き出されるので良くない。例えば 20…Nh5 21.Ne2 Be7 22.Kf2 h6 で黒の攻撃が強力になる。

20…Nh5 21.Ne2 h6?!

 今から考えれば黒はキング翼攻撃の構想を放棄して反対翼の陣形を固めた方が良かった。例えば 21…Bg7 22.Ba4 Ne7 23.b4 b6 なら黒が優勢である。

22.Kf1

 白キングが白枡に引っ込んだ。

22…Be7 23.Ba4

 23.gxh6 なら 23…Kh7 である。

23…hxg5

 ここでもあとから考えれば黒は 23…Kh7 と指した方が良かった。例えば 24.b4 b6 25.Bc6 Rb8 26.Rb1 Ba6 27.b5 Bb7 28.Bc3 hxg5 29.hxg5 Bxg5 30.Be8 Rg7 31.Nxe5 dxe5 32.Bxe5 で白の攻撃が強力だがそれでも本譜よりはましだった。

24.hxg5 Bxg5 25.Be8!!(図44)

 図44 黒の手番 

(この章続く)

2011年04月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(30)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図42(再掲) 白の手番 

 この典型的な局面で白には黒の意図するキング翼攻撃に対処するのに基本的に二通りの手段がある。それはお互いにポーンの暴風を用いてそれぞれの翼に攻撃をかけることと、相手の攻撃を凍結させるためにキング翼で予防手段を講ずることである。

 一つ目の場合 c5 突きは二通りの手段で準備できる。(1)Bc1-e3 と指し、黒からのfポーン突きには f2-f3 から Be3-f2 と応じる。b2-b4 突きと Ne1-d3 でc5の地点への利きをさらに増やすことができる。今日ではこの戦型はかなり珍しくなっている。理由は 10.Be3 f5 11.f3 f4 12.Bf2 g5 となると Bf2 の位置が中盤で …g4-g3 の侵攻にさらされるからである。そうなればたぶんポーンの犠牲を伴うけれども白キングに対する攻撃の筋が開いて危険になる。(2)前局で見たように Ne1-d3 と指す。

 もう一つの手段では白は 10.f3 f5 11.g4 と指すことによりキング翼での先受けを講ずることができる。ここで黒は 11…fxg4 12.fxg4 と指しても攻撃が続かず白は問題がない。11…f4 と突くのも(…g5 からあとで …h5 突きで侵攻する意図)12.h4 突きでキング翼の筋の開通を防がれるので攻撃が続かない。だから黒はクイーン翼でc4-d5の連鎖ポーンに対する攻撃に転じるのが普通である。例えば 11…Nf6 12.Nd3 Kh8 13.Be3 c6 で …b7-b5 突きをもくろむ。

10.Nd3 f5 11.Bd2 Nf6 12.f3 Kh8

 この手は前局で見た旧来の 12…f4 に代わる現代的な手である。黒は本譜の手を三通りに解釈することができる。(1)c4-d5の連鎖ポーンを …c7-c6 から …b7-b5 突きの手段で攻撃する場合、このキング寄りはa2-g8の斜筋の問題を避けるのに役立つ。(2)不良ビショップを …Ne7-g8 から …Bg7-h6 で始末する。(3)まず白のルークをb1の自然な地点からc1に誘い出してから先受けの …c7-c5 突きを指す。

13.Rc1

 ここで 13.c5 と突いてくるなら、13…c6 による反撃が 12…Kh8 でなく 12…f4 と突いていた場合よりも効果的になる。その意味は黒キングが駒筋の通るa2-g8の斜筋から既によけていて、黒のfポーンがeポーンにかける面倒な圧力がc3のナイトを縛り付けるということである。

13…c5

 黒は前述の三番目を選択した。代わりの手は 13…c6 14.b4 b5 と 13…Neg8 14.c5(14.g4 は 14…fxg4 15.fxg4 h6 16.h4 Nxg4! 17.Bxg4 Qxh4 で永久チェックによる引き分けになりそうなので白はなかなかそう指せない)14…Bh6 である。

14.g4(図43)

 図43 黒の手番 

(この章続く)

2011年04月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

明日から更新を再開します

 明日(4月2日)から更新を再開します。

 2階の自室が崩れた本の津波に襲われました。

 隣の自室も同じです。

 玄関の時計が地震発生時刻で止まっていました(元々1分ほど進んでいました)。裏側の単三乾電池1本を入れるボックスから電池が少しはずれたためでした。

 地震から約1週間したころ応急危険度判定士がこのような貼り紙を各建物に貼っていきました。他に「危険」「要注意」があり町内を見て回ってみたところ約3割が「危険」または「要注意」でした。

 河北新報の「3.11大震災義援金」に100万円を振り込みました。集まった募金は日本赤十字社を通じて被災者に届けられます。

2011年04月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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