2011年03月の記事一覧

放射能の影響をどうとらえたらよいのか?

河北新報3月21日付け朝刊に東北大加齢医学研究所の川島隆太教授の文章が掲載されました。
放射能の影響をどうとらえたらよいのか?

以下はその一部の抜粋です。

 「外国人たちが大勢、日本からの脱出を試みていますが、飛行機で米国や欧州に逃げ帰ると空気の薄い高高度の場所を飛行するため、地上にいるときよりも大量の放射線(宇宙線)を浴びます。
 その強さは80マイクロシーベルト。10日間、現在の放射能を浴び続けるのと一緒です。しかも現在心配されている放射能はほとんどが服や靴に付いています。自宅に帰り、服や靴を脱ぐと、24時間被ばくし続けることは難しいのです。この程度の放射能を気にする人は、飛行機に乗るとかえって大量に被ばくするので、船で逃げだすことを科学者として推奨します。」

 「ですので、正確にどの程度の悪影響があるかを正確に計算することは誰にもできませんが、同じ確率論で言えば、現在のレベルの放射能を1カ月間浴び続けるよりも、たばこを一箱吸う方が皆さんの寿命を縮めます。」

 「個人的な話をすると、茨城や福島でホウレンソウ、牛乳から放射能が検出されたと報道されています。ここ仙台では生鮮食品がとても入手しにくく、捨てるのであればぜひわけていただきたいです。私は50歳をすぎましたが、これらのホウレンソウをばくばく食べ、牛乳をごくごく飲んでも、私の寿命に影響がないことを知っていますので。」

2011年03月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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現況

 昨日の夜どういうわけか市の発表より圧倒的に早く水が出るようになりました。残るはガスだけですが何ヶ月か先のようです。風呂が沸かせないのでこじきのような臭いがするかもしれませんが、不潔で死んだ人はいないのでまあいいでしょう。

 避難所から出勤している人が何人もいます。ある若い女性は21時半の消灯少し前に戻ってきて配給の夕食を食べ、朝は配給の朝食をもらって出勤しています(配給の食事といってもおにぎり1個、バナナ1本、ミカン1個のようなものです)。着替えもお化粧もありません。一人暮らしだと日中並んで食料を買い求める時間がありません。一人暮らしで働いていると圧倒的に不利なようです。ある若い男性は朝の3時半ころ起きて配給を受け取って出勤していきました。たぶん交通手段がなくて職場まで長時間歩いていくのでしょう。頭が下がる思いです。

2011年03月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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更新を休止します

 怪我もなく家も無事ですが部屋の中がめちゃくちゃになりました。電気は二日後の日曜夜に復旧しましたが、水道の復旧予定は25日、ガスの復旧予定は3月中はないそうです。

 毎日がサバイバル生活になっています。近くのスーパーは品目を限定して店内販売をしていますが、2時間待ちです。一定人数ずつ客を店内に入れています。一人10分以内、20品までです。

 町内会役員の一人として避難所になっている小学校に時々行っています。今日は徹夜明けでした。

 いつ部屋の片づけが済みサバイバル生活から抜け出せるか見当がつきません。休止はしばらくや当分の間でなく、相当長期間に渡るかもしれません。

「ヒカルのチェス」(210)

「Chess」2011年1月号(1/4)

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ロンドン・チェスクラシック

第2回ロンドン・チェスクラシック オリンピア 12月8日-15日

選手名 国名 棋力 1 2 3 4 5 6 7 8 実効
マグヌス・カールセン ノルウェー 2802 * 0 0 3 1 3 3 3 13 2816
ビスワーナターン・アーナンド インド 2804 3 * 1 1 1 1 1 3 11 2815
ルーク・マクシェーン イギリス 2645 3 1 * 1 1 1 1 3 11 2838
ヒカル・ナカムラ 米国 2741 0 1 1 * 3 1 1 3 10 2772
ウラジーミル・クラムニク ロシア 2791 1 1 1 0 * 1 3 3 10 2765
マイケル・アダムズ イギリス 2723 0 1 1 1 1 * 3 1 8 2725
デイビド・ハウエル イギリス 2611 0 1 1 1 0 0 * 1 4 2583
ナイジェル・ショート イギリス 2680 0 0 0 0 0 1 1 * 2 2422

 くじ引きの結果はナカムラにとって厳しくて、最上位3人に対して黒番だった。しかし出だしは好調で、アーナンドとクラムニクに対してそれぞれ引き分けと勝ちだった。残念ながら第4回戦のカールセン戦が大きな障害になった。ヒカルはイギリスの若手2選手に対して優勢の局面を絶対にものにする必要があったが、どちらも勝利に逃げられた。もっとも全般的には若い米国選手にとって良い成績で期待を抱かせる大会だった。英国には彼のファンが多く、今回の成果で世界レイティング一覧の十傑に名前を連ねることになる。

第1回戦(12月8日)
アーナンド ½ – ½ ナカムラ

 ヒカル・ナカムラも「ベルリンの壁」を用いた。この防御はガリー・カスパロフをてなずけるためにクラムニクが用いた定番の処方せんである。ビシーは16年ぶりに英国でチェスの試合を指したが、収局での勝ちをもぎ取ることに乗り出した時には非常に落ち着いているように見えた。英国のGMのジョン・スピールマンとジョン・ナンは長期戦の収局の見込みによだれを流さんばかりだった。ビシーは収局が本当に収局だった頃を思い出すことができる(指しかけ、封じ手、再開と呼ばれる奇妙な儀式のことで、マグヌス、ヒカルらは幸いにも知らない)。しかし結局アーナンドはヒカルの頑強な抵抗を打ち砕くことができなかった。前日ヒカルはくじ引きの結果-アーナンド、クラムニク、それにカールセンに黒番-にあまり喜べなかった。しかし初戦の結果は良かった。

第2回戦(12月9日)
クラムニク 0 – 1 ナカムラ

 ヒカル・ナカムラは第2回戦の日に23歳の誕生日を祝い、大会からの「贈り物」はきつい対戦のウラジーミル・クラムニクに対する黒番だった。クラムニクからの誕生祝いの贈り物ははるかに寛大な捨て駒だった。クラムニクはカタロニア模様からすぐにニムゾインディアンに転じ、広さで優位に立っているようだった。しかし12手目で突然駒を切ってきた。

 ポカかそれとも捨て駒か?捨て駒なら何を期待したのだろうか。ヒカルはキングの安全を危うくしなければならなかったが、それでもかなり有利な取引のようだった。時間切迫に近づくにつれて少し戦術の応酬があり、ナカムラのキングは上方に逃げなければならなかった。しかしなんとかすべて無事におさまり、ついに黒でクラムニクに勝つという申し分のない誕生日祝いの贈り物を得た。1回戦でアーナンド相手の頑強な引き分けと相まってこの上ない出だしとなった。


23歳の誕生日にうれしそうなヒカル・ナカムラ。元世界チャンピオンのウラジーミル・クラムニクに黒で勝ってその晩はもっと幸せだった。

第3回戦(12月10日)
ナカムラ ½ – ½ ハウエル

 デイビド・ハウエルはまたしても盤上と時間で瀬戸際政策の才能を発揮した。ヒカル・ナカムラ相手にフィアンケット・グリューンフェルト防御を用いたが、その戦型は2009年にカルポフとカスパロフの郷愁対局で指されたものだった。デイビドはその布局を予期していなくて、12手目あたりでどう指そうかと考えて大量に時間を使った。一方ヒカルはオンラインで弾丸試合を指していると考えているようだった。これは冗談だが、彼の早指しの真の理由はある程度深くこの戦型を研究していたためだった。25手目でデイビドはわずかに5分ほどしか時間が残っていなかった。これに対しヒカルは12-15分ほどしか使っていなかった。しかしデイビドは巧妙な「要塞」計画を考え出して窮地を脱した。ルーク、ナイトそれにキングが寄り集まって身の安全を図り、それと共に2個の重要なポーンを守りヒカルのキングが小競り合いに加わるのを防いだ。ヒカルのクイーンはつついたり押したりし、キングは息を吹いたりはいたりしたが、英国選手の家を吹き飛ばすことはできなかった。

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(この号続く)

王印防御の完全理解(29)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

第2局
フタチュニク対ナン
ウィーン、1986年
マルデルプラタ戦法

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.d4 O-O 5.e4 d6 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.Ne1

 白は 9.Nd2、9.b4 または 9.Bd2 と指すこともできるので、ここはどの戦法を選ぶかの最初の重要な岐路である。このナイト引きの主要な目的はf4の地点の占拠を目指す …Nf6-h5 を防ぐことである。それが実現すれば白は g2-g3 と突いてキング翼を弱めるか、ナイトがf4に来たらすぐ Bc1xf4 と交換に応じなければならない。例えば 9.b4 Nh5 10.c5 Nf4 11.Bxf4 exf4 12.Rc1 h6 あるいは 9.Bd2 Nh5 10.g3 f5 11.exf5 Nxf5 12.Ne4 Nf6 という具合である。それに対して 9.Nd2 と指したとき白は …Nh5 を防ぎながら、b2-b4 突きと c4-c5 突きでクイーン翼の開放を目指しc4の地点を Nd2 のために取っておく。この作戦に対抗する黒の最も直接的な手段は …c7-c5 と突いて先に受けておくことである。例えば 9.Nd2 c5 10.Rb1(または 10.dxc6e.p. bxc6 11.b4 d5 12.b5)10…Ne8 11.b4 b6 となる。

9…Nd7(図42)

 図42 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(28)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図41(再掲) 白の手番 

 ここは本局の勝負どころで、この複雑で激しい変化の得失を明快に表わしている。g4での複数の駒交換にもかかわらず、黒のキング翼での圧力は非常に強いままである。逆に黒のクイーン翼は風前の灯火で、不良ビショップがあるせいで(ポーン損は全然別にしても)ほとんどどんな種類の収局に行くこともできない。

30.Rf2?

 これが敗着になった。白は 30.Be1! と指さなければならず、30…f3!(30…Rxg2+ は 31.Kh1 f3 32.Rxf3 Nxf3 33.Qxf3 Rxb2 34.Nxa8 Qxa8 35.Qh3+ Kg8 36.Rc8 で白の勝ちになる)31.Rxf3(31.Nxa8? は 31…Rxg2+ 32.Kh1 Qg5 33.Rc2 Qf4 で黒が勝つ)31…Qg5 で複雑きわまりない局面になる。

30…Qg5 31.Qh3

 白はポーンを守らなければならない。31.Nxa8 は 31…Rxg2+ 32.Kf1(32.Kh1 なら 32…Rxf2 33.Rg1 Nf3! で黒の勝ちになる)32…Rxf2+ 33.Kxf2 Qg2+ 34.Ke1 Nf3+ と応じられる。

31…Rg3 32.Qh1

 32.Ne6 には 32…Qh5 33.Qh1 Bh6 から …Rag8 がある。

32…Rc8 33.Be1

 33.Ne6 は 33…Rxc1+ 34.Bxc1 Qg4 35.Nxf8 Rxg2+! 36.Rxg2 Qd1+ 37.Kh2 Nf3+ で黒の勝ちになるのでまだ成立しない。本譜の手はその狙いを可能にした。例えば 34.Ne6 Rxc1 35.Nxg5 Rxe1+ 36.Rf1 Rxg2+ 37.Qxg2 Nxg2 38.Kxg2 という具合である。

33…Bh6 34.a6

 ここでも 34.Ne6 は 34…Rxc1 35.Nxg5 Rxe1+ 36.Rf1 Rxf1+(36…Rxg2+ は 37.Qxg2 Nxg2 38.Rxe1 Nxe1 39.Nf7+ で、駒損でも白の反撃が危険である)37.Kxf1 Bxg5 で黒の勝勢である。

34…bxa6 35.Rc6 Rg8

 クイーン翼ルークがキング翼に回ってたちまち決着がついた。

36.Rxd6 f3 37.Rxa6 Rxg2+ 38.Rxg2 Qe3+! 39.Bf2 Rxg2+ 40.Qxg2 fxg2 0-1

(この章続く)

2011年03月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(115)

「Chess」2010年11月号(14/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日(続き)

 ウクライナはこの回グルジアに辛勝して勝ち点1の差で首位に立った。予測どおり勝ち点をもたらしたのはバードゥル・ジョババにファンタスティックな指し回しで勝ったワシリー・イワンチュクだった。この形容詞は意識的に選んだ。彼はグルジア選手のカロカン防御に対してファンタジー戦法を用い、その戦法名に見事にこたえた。

第7回戦 ウクライナ対グルジア
V・イワンチュク - B・ジョババ
カロカンア防御ファンタジー戦法

1.e4 c6 2.d4 d5 3.f3

 これがファンタジー戦法の印となる手である。この手が指されることは主手順よりはるかに少ないが実戦では非常に好成績で、用心深い典型的なカロカン選手を翻弄させることがよくある。

3…Qb6

 どういうわけかいく人かのグルジア選手に人気のある手である。

4.a3

 4手目で前例のない局面になった。白はこのあと 5.Nc3 から 6.Be3 と指すつもりで、その時 6…Qxb2?? と取ってくれば 7.Na4 でクイーンの逃げ場がない。

4…e5

 ジョババは明らかに研究をはずされ、最も精力的な手を見つけた。これはフリッツの推奨する手だが、もちろん必ずしも最善手とは限らない。

5.exd5 Nf6 6.dxe5 Bc5!?

 6…Nxd5 ならポーン損でも黒が指し易い。しかし黒はそれ以上を望むことにした。カールセン相手に殊勲の報酬をもたらした彼のやる気は賞賛しなければならないが、たぶんこれはやり過ぎだろう。

7.exf6 Bf2+ 8.Ke2

8…O-O

 8…Bxg1? は 9.Rxg1! Qxg1 10.fxg7 Rg8 11.Bh6 Qxh2 12.Qd2

で悪い。白には十分戦力の代償があり、二つの君主のうち黒キングの方が露出がひどい。

9.Qd2 Re8+

 ここでの 9…Bxg1!? ははるかにまともで、10.Kd1 Bd4 11.fxg7 Bxg7 12.Nc3 で形勢不明である。

10.Kd1 Re1+ 11.Qxe1 Bxe1 12.Kxe1

 白は失ったクイーンの代わりに多くの戦力を得ているが、中央のキングはまだ多くの苦難に耐えなければならない。他の多くのGMはこんな危なっかしい進路に怖じ気づくかもしれないが、イワンチュクはこの種のことにかけては並のGMでない。

12…Bf5 13.Be2 Nd7 14.dxc6 bxc6 15.Bd1!?

 白は陣形を整えられれば戦力得がものをいって勝勢になる。そしてイワンチュクはこれを独創的なやり方でやってのける。

15…Re8+ 16.Ne2 Nxf6 17.Nbc3 Bc8 18.a4! a5 19.Rf1! Ba6 20.Rf2 h5 21.Ra3!

 誰が指しているか知らずに少し前からの白の手を見た人は誰でも、二つのルークのぎこちない動きを見て初心者に近い者が指していると思うだろう。白はルークを自由に動かせるようにできれば勝勢になる。

21…h4 22.g3 h3 23.g4

23…Rd8

 黒は束縛をゆるめた。しかしここはじっと 23…Bc4 と指している方が良かった。もっとも白は 24.Ne4 Nxe4 25.fxe4 Bxe2 26.Kxe2 Qd4!? 27.Re3

と指すことができ、ほどなく拘束服から抜け出せそうである。

24.Nf4 Nd7 25.Rb3 Qd4 26.Nfe2 Re8 27.Ne4! Qxa4 28.Bd2

28…Qa1

 黒は自分から白のクモの巣におびき寄せられた。ここは 28…c5 の方が良かった。

29.Bc3!

29…Ne5

 これはポカだった。しかし 29…Qa2 30.Ra3 Qd5 31.Rxa5 でもしょせん見込みがなさそうである。

30.Ra3 Qb1 31.Nd2 Qc1

32.Rxa5

 32.Nxc1?? Nxf3# にはまるのはまったくの初心者だけである。

32…Ng6 33.Rxa6 Nf4 34.Ra8! 1-0

 相手がどんな手でも指すことができそれでも勝てるということを見せつける時が投げ時である。

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(この号続く)

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王印防御の完全理解(27)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図40(再掲) 黒の手番 

 この手にはg4の地点に利かせることとg1-a7の斜筋をふさいで Nxa7 の狙いを復活させることの二つの目的がある。

 この古典的な局面は詳細に研究されてきた。黒には基本的に Nxa7 の「狙い」に対処する三とおりの手段がある。(1)白に Nxa7 と取らせても …Rc7 の反撃による単純化を信頼する。例えば 19…Bf8 20.Nxa7 Rc7 21.Ba5 Rxc2 22.Bxd8 Rxe2 23.Nxc8 Rxa4 24.Nd3 g4 で現在互角と考えられている局面になる。(2)本局に見られるようにキング翼攻撃のための手数をかせぐためにポーンを犠牲にする。(3)…Bc8-d7 と指してaポーンが取られるのを防ぎ、…a7-a6 から …b7-b5 と突くことによりクイーン翼で自由を得ることを期待する。例えば 19…Bd7 20.Qb3 Bf8 21.Rc2 a6 22.Na3 Rg7 23.h3 Nh4 24.Rfc1 Rb8 25.Nc4 g4 26.fxg4 b5 で複雑きわまりない局面になる。

19…Bf8

 今度は岐路に立っているのは白である。a7と取るべきか取らざるべきか?

20.h3 Rg7

 この主眼の2手は白の決断を延期しているにすぎない。

21.Nxa7

 …Rc7 と逆襲されるのを別にすると、この手にはナイトを戦いに引き戻す手数がかかる危険性が伴っている。代わりに 21.a5 または 21.Qb3 も指されてきた。

21…Bd7

 黒は 21…Rc7 からの単純化をしないことにした。20手目で h3 突きを入れたので 21…Bxh3!? 22.gxh3 Rxa7 の可能性もあるが、まだ実戦で指されたことはない。

22.Nb5 Nh4 23.Qb3

 白は3段目で守る用意をした。

23…Kh8

 …g4 突きを助けるためにいずれ Ne8 をf6の地点に据える必要性を考えれば、このキング寄りは白ナイトの Nb5-c7-e6 の侵入から起こるかもしれないa2-g8の斜筋の危険性をなくすのに役立つ。例えば 23…Nf6 24.Nc7 g4 25.fxg4 hxg4 26.Ne6 Bxe6 27.dxe6 d5 28.hxg4 となれば白が優勢になる。本局以後の試合では 23…g4 24.fxg4 hxg4 25.hxg4 Nf6 も指され、どちらとも言えない結果になっている。

24.a5

 いずれ …Nf6、Nc7 という手が入るのでaポーンを黒駒の利き筋からはずした。

24…g4!

 これは当時の新手で、マイルズを驚かせた。黒は一時的にポーンを犠牲にして主眼の敵陣突破を図ろうとしている。

25.fxg4 hxg4 26.hxg4

 黒の23手目の巧妙さはここで明らかになる。26.Nxg4 に 26…Nf6! と応じf6で取られてもチェックにならないので …Rxg2+ と指すことができる。

26…Nf6 27.Nc7

 白は論理的に指している。gポーンを 27.Qh3?! で守るのは非常に危険である。なぜなら黒には 27…Nh7 と引き …Ng5 から …Rh7 と指すこともできるし、27…Rh7 から …Nh5 と指すこともできるからである。

27…Nxg4!

 黒は巧妙な着想の戦術でgポーンを取り除き、ルークの縦筋を開いた。これに対して 28.Nxa8? は 28…Ne3 29.Bxe3 Rxg2+ 30.Kh1 Qg5 で黒の攻撃が決まり勝ちになる。

28.Bxg4 Bxg4 29.Nxg4

 29.Nxa8? は 29…Nf3+ で黒が勝つ。

29…Rxg4(図41)

 図41 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(26)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図39(再掲) 黒の手番 

 ここで黒は作戦を選択しなければならない。基本的に三とおりの可能性がある。(1)本局のように …f5-f4 突きでキング翼での反撃を続ける。これは古典的でもっとも指されている手順である。(2)今すぐか …Kg8-h8 と寄った後で …c7-c5 と突いてクイーン翼での先受けの手段を講ずる。例えば 12…c5 13.Rb1 f4 14.b4 b6 または 12…Kh8 13.Rc1 c5 という具合で、第2局で見られる。(3)…f5-f4 突きで中原を閉鎖しないで(…Kg8-h8 と寄ってから)c4-c5の連鎖ポーンを攻撃する。例えば 12…Kh8 13.Rc1 c6 14.b4 b5 という具合である(図18と19の解説を参照)。

12…f4 13.c5 g5

 ここは 13…c6 突きでd4の地点への経路を切り開こうとすることにより「先着競争」から外れる黒の最後の機会である。以下は例えば 14.cxd6 Qxd6 15.dxc6 Nxc6 16.Nb5 Qe7 17.Nb4 でねじり合いの局面になる。

14.Rc1

 本局は実際は 10.Bd2 f5 11.Rc1 Nf6 12.f3 f4 13.Nd3 g5 14.c5 という手順でこの局面になった。このような手順の違いはこの戦法では非常によく起こる。しかし本譜の手順は最も論理的で実戦で最も普通に指されるものである。本譜の手はc列での主眼の圧力を開始する白の最も直接的な手段である。もっともいくらかひねった別策は次のようにキング翼ルークをc1に持ってくることである。14.cxd6 cxd6 15.Nf2(…g5-g4 突きを防ぐため)のあと Qd1-c2 から Rf1-c1

14…Ng6

 …Kg8-h8 と b2-b4 が指されてこの局面になる時があるが、そのとき黒はこのナイトと(g8-h6 を経由する)…h7-h5 突きとを組み合わせて …g5-g4 突きの仕掛けを支援することができる。本譜の手も同様に …Rf8-f7、…Bg7-f8、…Rf7-g7 の攻防両用の捌きのために7段目を空け、ナイトをg6からh4に送って Rg7 と協力してg2の地点に圧力をかけるのに役立つ。

15.cxd6

 15.Nb5 a6 16.cxd6 axb5 17.dxc7 Qd7 18.Qb3 の捨て駒戦術はこれまで解説にしか現れたことがない。

15…cxd6 16.Nb5

 Nc7 の侵入を狙っている。

16…Rf7 17.Qc2

 白は Nc7 の狙いを新たにすることによりb5のナイトを支えた。さもないと黒のクイーン翼のポーンにより追い払われるかもしれない。例えば 17.Nf2 a6 18.Na3 b5 という具合である。本譜の手で Nb5xa7 は …Qd8-b6+ があるためにまだ狙いになっていない。

17…Ne8

 黒はナイトをc7とe6へ侵入させることもできた。例えば 17…g4 18.Nc7 gxf3 19.gxh3 Bh3 20.Ne6 となる。しかし堅実な本譜の手が今日では最もよく指されている。

18.a4

 この手は …a7-a6 から …b7-b5 を防ぐために必要である。

18…h5 19.Nf2(図40)

 図40 黒の手番 

(この章続く)

2011年03月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[54]

eポーン布局

第8章 カロカン防御(続き)

4…Bf5 の古典システム

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3(図80)

 図80(黒番)

 これは最も分かり易い手で、展開しながらeポーンを守っている。

3…dxe4

 黒はこう取るより他に良い手がない。3…e6 で中原をさらに守るのは一種のフランス防御になってしまい、黒があとで一手かけて …c5 と突くのはほとんど確実なので白が手得になっている。単に 3…Nf6 と展開するのも、白からすぐに 4.e5 と突かれてナイトを追い払われるので感心しない。4…Nfd7 と引けば白は 5.e6! fxe6 6.Nf3 と面白いポーン捨てを行なうことができ、黒陣を恒久的に締め付けることができる(黒は駒を展開するのが困難になる)。

4.Nxe4 Bf5

 黒は 3…dxe4 で中原を放棄しなければならなかったが、展開しながら白のクイーン翼ナイトを当たりにすることによりその浮き駒状態から利益が得られることに期待している。ここで白がナイトをc3に引けば黒は明らかに手得であるが、白がナイトをg3に引けば黒は手得にならない。代わりに …Nf6 は別の節で取り上げる。

5.Ng3

 これが白の最善手である。

5…Bg6

 他の引き場所はあまり考える必要がない。5…Be6 はeポーンの邪魔になり、黒がキング翼ビショップを展開するのが難しくなる。5…Bd7 はクイーン翼ナイトの邪魔になり、黒があとで …e6 と突いたあと閉じ込められる。5…e6 6.Nxf5 Qa5+ から 7…Qxf5 は黒が双ビショップを放棄することになる。

6.h4

 7.h5 と突いてのビショップ取りが狙いになっている。通常このような手は白キングの上部に弱点を作り出すので注意して指さなければならない。しかしこの局面では白はクイーン翼にキャッスリングするつもりなので、そのような弱点は生じない。

6…h6

 代わりに 6…h5?! は白が Nh3-f4 と捌くことができるので非常に疑問である。この手は黒のクイーン翼ビショップをこのナイトと交換させるか、またはhポーンを取らせることになる。

7.Nf3

 展開し Ne5 と跳ねる手を狙っている。

7…Nd7 8.h5

 これは黒のキング翼を完全に動けなくする作戦の始まりである。

8…Bh7 9.Bd3

 白の立場から見ると黒のクイーン翼ビショップは白のhポーンの標的としても役割を果たした。論理的な次の手順は、このビショップがまだ好位置にいてg3の白ナイトの動きを制限しているの、それを交換して取り去ることである。

9…Bxd3 10.Qxd3 Qc7

 この手は 10…e6 や 10…Nf6 よりも正確である。それらの手なら白のクイーン翼ビショップがもっと活動的なf4の地点を占める。

11.Bd2 e6 12.Qe2

 白の作戦の次の手順は Ne5 跳ねを準備することである。

12…Ngf6 13.O-O-O O-O-O

 13…Bd6 でe5の地点に利かせるのは 14.Nf5! で駄目である。そのあと黒が 14…Bf4 と指せば 15.Nxg7+ Kf8 16.Nxe6+ fxe6 17.Qxe6 という犠牲で1個の駒の代わりに3ポーンを得て激しい攻撃が続く。

14.Ne5

 中央の強力な地点に陣取ってf7の地点を攻撃している。

14…Nxe5

 このナイトはまったく強力すぎるので生かしておけない。fポーンを守る他の方法はあまり薦められない。例えば 14…Nb6 は 15.Ba5 と応じられる。

15.dxe5 Nd7

 15…Nd5 の方が良いかもしれないが、いずれ c4 突きで追い払われる。

16.f4(図81)

 図81(黒番)

 白はeポーンを支えてキング翼で厳しく締め付けている。黒は絞め殺されないように注意深く指さなければならない。ここまでの手順は1966年のスパスキー対ペトロシアンの世界選手権戦第13局である。長い戦いの末に白が勝ったが、それでも黒の陣形は打ち破るのが非常に困難である。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(25)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例

第1局
マイルズ対サクス
ロンドン、1980年
マルデルプラタ戦法

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4

 この手順はグリューンフェルト防御を避けるためである。

4…d6 5.d4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O

 白はキングの位置を明らかにし黒の …Nb8-c6 の展開を許した。主要な変化は 7.d5(第2章のペトロシアン・システムを参照)と 7.Be3(グリゴリッチ・システム)である。7.Be3 はここの中原の型に移行しない時は2章、5章または6章で考察する中原になる。

7…Nc6 8.d5 Ne7 9.Ne1

 これはもっともよく指される手で、白はナイトのd3への典型的な移送によって c5 突きを支援する。他の手は第2局の白および黒の9手目で解説する。

9…Nd7

 この手はfポーンの進路を空けc5の地点に利かせるだけでなく、e5の地点の支配の維持にも役立っている。これは黒が通常の …Nf6-d7、…f7-f5 から …Nd7-f6-e8 の捌きの代わりに 9…Ne8 によって2手得しようとする時に明らかになる。この場合白はすぐに作戦を変更して f2-f4 突きでe5の地点に挑んでくる。例えば 10.Nd3 f5 11.f4 exf4 12.Nxf4 でe6の地点に跳ねる狙いで白がやや優勢になる。

10.Nd3 f5 11.Bd2

 白は c4-c5 突きが容易になるように、f2-f3 と突く前に相手のナイトがf6の地点に戻るのを待っている。旧来の 11.exf5 は 11…Nxf5 で黒が急所のd4の地点を使うのを助けるので指されなくなった。

11…Nf6

 黒は白に f3 と突かせる前に …f4 と突いてはいけない。なぜなら白に 12.Bg4 で不良ビショップを始末させてしまうからである。さらに、キング翼で攻撃の筋を開くことができるようにするために黒は白のポーン構造に突破点を作る必要がある。このことからも …f5-f4 突きのあと …g6-g5-g4 突きで側面での進展が図れるようにするために白に f3 と突かせる必要がある。別策は 11…f5xe4 で単純化することで、その意図はあとで …Ne7-f5-d4 の捌きでd4の地点の弱点を利用することである。しかしこの場合白は前述の旧戦型と比較して2手得する(Bd2 と Nxe4)のが大きく、少しだが永続する優勢が保証される。例えば 11…fxe4 12.Nxe4 Nf5 13.Bc3 Nf6 14.Bf3 Nh4 15.Nxf6+ Qxf6 16.Be4 Bf5 17.Qe2 Bxe4 18.Qxe4 である(図15の解説を参照)。

12.f3(図39)

 図39 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(24)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

黒のキング翼ナイトに対する直射攻撃とg4の擬似両当たり

 白が相手に …Nh5 と跳ねさせf4の地点を g2-g3 突きで守ると次のような局面ができあがる(図37)。

 図37 白の手番 

 ここで白は exf5 と取り黒に駒で取り返させることができる(…gxf5 は Nxe5 による直射攻撃で白が優勢になるから)。それでも …Nxf5 のあと白は擬似両取りの落とし穴にはまらないようにしなければならない。g4? と突くと …Nd4! と跳ねられて、Nxd4 exd4 でも gxh5 Nxe2+、Qxe2 Bg4(図38)でも黒の方が良くなる。

 図38 白の手番 

 黒は駒を取り返して明らかに優勢である。

(この章続く)

2011年03月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(23)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

2ポーンと引き換えのナイト捨て

 …Rc7 の逆襲の有効性は白が b2-b4 と突いてあってa7のポーンを取ることができるならば非常に問題視される(図35)。

 図35 白の手番 

 白は Nxa7 と取り …Rc7 の逆襲に対して Nc6 という捨て駒で応じることができる。なぜなら …bxc6、dxc6 のあと連結3ポーンになるからである(図36)。

 図36 黒の手番 

 b4ポーンが進めばc6のポーンは取られる恐れがまったくなくなり、白の脅威がより間近なものになる。

(この章続く)

2011年03月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(209)

「Chess Life」2011年1月号(3/3)

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収局研究室

外側パスポーン

GMパル・ベンコー

 外側パスポーンは収局での決め手になることがよくある。今回はシベリアのハンティ・マンシースクで開催された2010年オリンピアードに出場した米国の一流男女選手たちからいくつかの例を取った。

ヒカル
□GMヒカル・ナカムラ(FIDE2733、米国)
■GMディエゴ・フローレス(FIDE2615、アルゼンチン)
第39回チェスオリンピアード、2010年

 白の手番

 ここでは白が有望だが、見かけほど容易ではない。b2ポーンが攻撃されていて守り切ることはできない。だから思いつくのは 19.a4! Nc4 20.a5 である。

19.Nc6!? Na4 20.Bh6 Nxb2 21.Rdc1 Rxc1+ 22.Rxc1 Re8 23.g4 e5

24.Be2

 黒ポーンをあまりにも速く進攻させないように 24.Re1 が用心深い手だった。

24…e4 25.Rb1 Nd3 26.a4 Bh4 27.Be3 f5 28.gxf5 gxf5 29.Bd4 f4 30.a5 e3!

31.fxe3

 31.Bxd3 と取ると 31…Bxf2+ 32.Kh1 f3 で黒の勝ちになるのでこう指すところである。

31…Bf2+ 32.Kh1 Ne1 33.Rxe1 Bxe1

 黒は交換得したが局面はまだ混沌としている。

34.a6

 白は 34.Bh5 Ra8 35.Bf3 Kf8 36.exf4 Bxa5 も 34.e4 Rxe4 35.Bf3 Rxd4 36.Nxd4 Bxa5 も単なる引き分けしか望めないと読んで賭けに出た。

34…Be6?

 黒は正しい道筋を逃がした。34…Bf2 35.e4 Be3 と指すべきで、変化によっては詰みの可能性が残っていた。

35.Bf3 fxe3 36.Bxe3

36…Bc8

 他の手も良くならない。例えば 36…Bg4 なら 37.Bd5+ である。

37.a7 Bb7 38.Ne7+ Rxe7 39.Bxb7 Re8 40.a8=R Rxa8 41.Bxa8 Bc3 42.Kg2 Bb2 43.Kf3 Bc3 44.Ke4 Bb2

45.Kf5

 黒枡ビショップ同士を交換すると誤色ビショップしか残らず引き分けになるので交換できないことに気づけば、これは容易に勝てる局面である。

45…Bc3 46.Ke6 Bb2 47.Kf5 Bc3 48.Kg5 Bb2 49.Kh5 Bc3 50.h4 Bb2 51.Kh6 Bc3 52.Be4 Kh8

 これは最後のお願いである(53.Bxh7? なら 53…Bd2 で引き分け)。

53.Kg5 Bb2 54.h5 Kg8 55.Bd5+ Kh8 56.Kf5 Bc3 57.h6 Bb2 58.Ke6 Kg8 59.Ke7+ Kh8 60.Kf7 Bc3 61.Bc5 黒投了

 Bf8-Bg7+ から hxg7# で詰みになる。

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(この号終わり)

2011年03月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(22)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

aポーン取りと …Rc7 の逆襲

 次の局面はよく知られた定跡手順の一つの19手目で生じる(図33)。

 図33 白の手番 

 ここで白は Bc8 に対する圧力を利用して Nxa7 と取ることができる。もっとも黒は …Rc7 と逆襲することができる(黒はポーン損を無視して単に …Bd7 と応じることもできる)。そしておそらく Ba5 Rxc2、Bxd8 Rxe2、Nxc8 Rxa4 で互角になる単純化が行なわれる(図34)。

 図34 白の手番 

 今日ではこの局面はほぼ互角と考えられている。

(この章続く)

2011年03月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(21)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所

 これまで検討してきた戦型に一般的な特徴は閉鎖中原が存在することだが、それは少なくとも布局の段階では頻出する戦術の着想を減らす作用がある。もちろんお互いの攻撃が最高潮に達しその結果それぞれの防御がいくらか限界を迎える中盤では戦術の着想が豊富になる。しかしそれは多様すぎて分類できない。白が g2-g3 突きでキングの囲いを弱めた戦型でも頻出する戦術の着想の主題は多くない。

(この章続く)

2011年03月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(114)

「Chess」2010年11月号(13/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日

 「さて、これは終わりでもなければ終わりの始まりでさえもない。しかしおそらく始まりの終わりなのだろう」とはエル・アラメインの戦いに際してのチャーチルの言葉だが、同じことがスイス式大会についても言える。そこでは結果は出だしがどのようだったかよりも、どのように終わるかにはるかにかかっている。この回戦はいくつか激闘があり、政治的対決さえあった[訳注 イリュームジノフとカルポフのFIDE会長選]。しかしこの回戦が終了してもまだ4回戦が残っていて、首位争いはまだせっていた。

 しかしイングランドはノルウェーに勝って順位を上げたのに、ベラルーシに負けて急速に下げてしまった。ナイジェル・ショートの相手はビタリ・テテレフという無名の若いGMだったが、チームの勝ち点をすべてたたき出す意気込みのようだった。この27歳はこれまでチェスの棋歴にほとんど何も注目されるようなことがなかったが、ハンティ・マンシースクでは2853の実効レイティングを挙げ、エリャーノフ、ユディット・ポルガーらを軽く抑えて第3席の金メダルを獲得した。レイティング上位の選手にとってさえまったくもって迷惑な組み合わせだった。

第7回戦 イングランド対ベラルーシ
N・ショート - V・テテレフ
シチリア防御スヘーファニンゲン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 e6 4.d4 cxd4 5.Nxd4 Qc7 6.Be2 a6 7.O-O Nf6 8.Kh1 Be7 9.f4 d6 10.Nxc6 bxc6 11.Qd3 O-O

12.b3

 この局面ではほぼ誰でもこの手を指すが、不思議なことに故ベント・ラルセンは何年も前のケテバン・アラハミア=グラント戦で 12.Qg3 と指した(もっとも直後の手で b3 と突いた)。

12…a5 13.Qg3 d5 14.e5 Nd7 15.Bb2 Nc5

16.Rae1

 2002年欧州ジュニア選手権戦のヤクボウスキー対アロシゼ戦では 16.a4 Na6 17.Rae1 Nb4 と進行して白の勝ちに終わった。

16…a4

 黒は白が a2-a4 と突かなかったことにすぐにつけ込んできた。

17.Bg4

 フリッツは 17.b4 a3 18.Bc1 Na4 19.Nxa4 Rxa4 20.c3 という手順を示したが、たぶんそれでほぼ互角だろう。実戦の手は黒の白枡ビショップが好所に展開するのを助けた。

17…axb3 18.axb3 Ba6 19.Rf3 d4!

 黒の反撃で白は陣形と作戦を大きく乱されている。

20.Nd1

 20.Ne4 は 20…Nxe4 21.Rxe4 c5 となって、白駒が散乱しa8-h1の斜筋が危険にさらされる。

20…Qd8!

 狙いは 21…Bh4 と 21…d3 突きである。

21.Qf2 d3 22.Rh3 dxc2 23.Qxc2 Bd3

 白の計画にまた邪魔が入った。このビショップはうまくキングの守りに回れる。

24.Qc3 Bg6 25.Nf2 Rb8

26.Rd1

 26.Bd1 ならb3のポーンを守れるが、黒には意地の悪い 26…Na4! がある。27.bxa4? と取ると 27…Bb4 でe1のルークへの串刺しを食らう。

26…Qb6 27.Ba3 Nd3 28.Nxd3 Bxa3

29.Ra1

 白に問題が積み重なっていくので 29.b4!? Bxb4 30.Nxb4 Qxb4 31.Qxb4 Rxb4 32.Rc3 Be4 33.Bf3

を推奨したくなるところである。もっとも(ロシアだけでなく)ベラルーシの生徒なら皆この局面から勝てるだろう。

29…Be7 30.Nb2 Bb4 31.Qc1 Qd4 32.Nc4 Ra8

 この手はうまい圧迫である。白には選択肢が一つしかない。

33.Ra4 Rfb8

34.Qe3

 フリッツが推奨する最善手は 34.f5!? exf5 35.Be2 Rxa4 36.bxa4 Be7 37.Rd3

だが、それでも絶望的な形勢のようである。

34…c5 35.Be2 Bc3!

 黒はうまく白の最下段の弱みにつけ入っている。

36.Nb6

 ショートは黒自身の最下段の弱みを利用して機転を利かせてやり返した。代わりに 36.Qxc3 は 36…Rxa4 37.Qxd4 cxd4 38.bxa4 Rb1+ で詰みになる。

36…Rxa4 37.Nxa4 Rxb3! 38.Nxc3

 黒はきれいな決め手を見つけた。

38…Qxc3 39.Qg1

 もちろん 39.Qxc3 は 39…Rb1+ で頓死する。

39…Qxh3! 0-1

 40.gxh3 は 40…Be4+ で詰みになる。40.Qa1 でも 40…Be4 で黒が勝つ。

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(この号続く)

2011年03月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

王印防御の完全理解(20)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

先受けの g2-g4 突き

 白の方も黒のキング翼での作戦に対して先受けの手段を取ることができる。この手段の動機は …f5-f4 と突かれたあと白のキング翼での防御陣地が慢性的に狭いことにある。そこで白は防御を容易にするために、黒が …f5-f4 突きで圧迫してくる前に f2-f3 突きの支援の下に g2-g4 と突く(図31)。

 図31 

 この戦略をとることにより白はキング翼で十分な防御の広さが得られる。もし黒がすぐに …f5-f4 突きで局面を閉鎖してくれば(…g6-g5 と突き、あとで …h7-h5 突きで敵陣突破を図るもくろみ)、白は h2-h4 と突くことによりどの列の開通も防ぐことができる。この場合h4のポーンは Ne1-g2 または Kg1-g2 の後の Rf1-h1 で守ることができる。また、黒が …f5xg4 と取ってくれば、f3xg4 と取り返して明らかに白のキング翼が少しも狭くなっていない。

 この先受けの戦略には別の着想もある。図26で見たように黒が不良ビショップを消去しようとしてくれば、白は g4-g5 とさらに突いてビショップの交換を防ぐ。

 図31のような局面では通常黒はキング翼での攻撃のもくろみをいくらかくじかれた後、攻撃の鉾先を図18で見たように再びc4-d5の連鎖ポーンに向けてくる。しかし白は Nd3-b4 の効果でd5の地点の支配が現実化する(図32)。

 図32 

 この局面で白の関心は自分の作戦を推し進めることよりも、両翼で相手の作戦を封じ込めることにある。

(この章続く)

2011年03月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(19)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

先受けの …c7-c5 突き

 白の攻撃がほとんど例外なく c4-c5 突きに基づいていることを考えれば、黒は自分から …c7-c5 と突くことによって先受けの戦略を実行することができる(図28)。

 図28 

 一般的に言うとこの作戦は白が Nf3-d2 と指した時に用いるのが普通である。というのはそのナイトから重要なc4の拠点を奪うからなのだが、黒は時には白が普通に Nf3-e1-d3 と捌いてきた時にもこの先受けの構想を用いることがある。

 いったん黒が …c7-c5 と突いてしまえば、白はアンパッサンでそのポーンを取るか、クイーン翼の開放の方針を貫いて Ra1-b1 から b2-b4 と突くかを選択しなければならない。最初の場合 dxc6e.p. b7xc6 のあと局面の戦略的な構図はかなり変化する(図29)。

 図29 

 中原の支配を弱めた白はクイーン翼で展開を図り、その方面で素早く b2-b4-b5 と突いて多数派ポーンを活用しようとする。一方黒は …d6-d5 突きの手段で中原での反撃を行なおうとする。

 二番目の場合白のクイーン翼での活動はb列の開通に基づくことになる(図30)。

 図30 

 Rb1 から b4 突き(黒が …a7-a5 突きで邪魔する場合は a2-a3 突きで準備する)のあと黒の最良の戦略は、…b7-b6 と突いてbポーンでc5の白ポーンを取り返すことができるようにすることである。dポーンで取り返すと白に保護パスポーンができ、…b7-b6 突きのあと(黒はc5のポーンを守るためにいずれこの手を指さなければならない)a2-a4-a5 突きによって側面の攻撃にさらされる。黒が …c5xb4 とbポーンを取っても、c5の地点に利かせるために …b7-b6 と突かなければならないのですぐに同様の攻撃に見舞われることになる。

 b列の開通のあと黒がキング翼で典型的な反撃を行なっている間に、白は Nd2-b3-a5-c6 の捌きによってc6の地点を占拠し素通し列でルークを重ねて敵陣に侵入することを目指す。

(この章続く)

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