2011年02月の記事一覧

チェス布局の指し方[53]

eポーン布局

第8章 カロカン防御

1.e4 c6(図79)

 図79(白番)

 カロカン防御の戦略構想はフランス防御(1.e4 e6)の発想と似かよったところがある。どちらの布局でも白は 2.d4 で完全なポーン中原を築くことができ、黒はd5にポーンを進めてその影響を妨害しようとする。元世界チャンピオンのボトビニクとペトロシアンを含むいく人かの強豪選手たちは棋歴のなかで何度かこの二つの布局を代わる代わる用いてきた。

 どちらの布局がより「棋理」に合っているかという問題は答えるのが難しい。フランス防御の信奉者は、カロカン防御の本手順では 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 のあと黒はd5のポーンを維持する良い手段がなく 3…dxe4 と取ることにより中原を放棄しなければならないと指摘する。カロカン防御の支持者はフランス防御の 1…e6 は不必要にクイーン翼ビショップを閉じ込めこの駒を受け身の役割に運命づけると反論するだろう。

 カロカン防御のポーン構造の主要な利点は白の中原ポーンの一つがすぐに交換されてフランス防御のように永続する押し込めを白が発揮できないことにある。また黒の駒は展開に問題がない。しかしそれらの駒の占める位置は活動的というより防御的であることがよくある。カロカン防御の最も目に付く欠点は黒が守勢に陥るのが通常で、勝つ可能性は自分の積極的な作戦の成功によることよりも白の間違いよることが多いことである。

 歴史的にはカロカン防御はフランス防御よりもずっと最近になってから発展してきた。定跡の名前の由来になっているH・カロとM・カンの二人のマスターは共に1890年代に活躍した。しかし重要な定跡のほとんどはボトビニクが世界チャンピオンとして君臨した1950年代から始まる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(18)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 黒がしばしばとことん激しく指すことを強いられる事情の一つは、不良ビショップのために気軽に収局に入れないことである。だから不良ビショップを交換することは戦略要素の一つを成していて、白の指し方に応じて色々な実現手段がある。

 白が Nf3-d2 と引いて b2-b4、c4-c5 から Nd2-c4 を目指す時は、黒は …Bg7-h6 と覗いて不良ビショップを始末することができる(図25)。

 図25 

 その際黒はいつも自分の不良ビショップを相手の優良ビショップと交換することを目指す。それは …Bh6xd2、Bc1xd2 のあと f2-f4 突きで局面を開放的にして黒枡の弱点につけ込む隙を白に与えないようにするためである。

 白が Nf3-e1-d3 と捌く時には、不良ビショップの消去にはもっと複雑な捌きが必要である(図26)。

 図26 

 黒は …f5-f4 で局面を閉鎖する前に …Kg8-h8 と準備することができる。この手にはc4-d5の連鎖ポーンへの攻撃を助けること(「連鎖ポーンのc4-d5に対する攻撃」の項を参照)ができるようにすることに加えて、…Ne7-g8 から …Bg7-h6 で不良ビショップを消去する着想もある。

 さらにまた別の手段は主眼の …Rf8-f7 であらかじめf8の地点をクイーンのために空けておくことである(図27)。

 図27 

 まれにではあるがこのようにしても黒は不良ビショップの交換を達成することができる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(17)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

f4の地点の弱点

 図1の局面で白はすぐに b2-b4 と突くこともできるし、まずナイトをd2の地点に移してから b2-b4 と突くこともできる。前準備のナイト引き(d2かe1へ)によりクイーンとビショップの利きがd1-h5の斜筋にとおり、黒が迅速に …Nf6-h5-f4 としてf4の弱点を利用するのを防ぐことができる。白はすぐに b2-b4 と突いてもこの捌きを実行することができる(図21)。

 図21 

 ここで白はキングの囲いを薄くしても g2-g3 と突いてf4の地点を守るか、c4-c5 と突いて …Nh5-f4 と来れば迷惑なナイトを Bc1xf4 と取ることにしてクイーン翼での作戦を続けるかを選択しなければならない。

 最初の場合黒の典型的な …f7-f5 突きの応手に対して、白は b2-b4 と突きその後ナイトを Nf3-d2-c4 と転送することができる。しかし白のキング翼の弱体化により黒のキング翼での反撃はもっと迅速に進むことになる。黒のクイーン翼ビショップが当然h3の地点に来れば特にそうである(図22)。

 図22 

 黒は …h7-h5 突きのあと …Nf6-g4 によってf列での圧迫を増し、もう一つのナイトをd6の地点の守りに回すことができる(…Ne7-c8)。

 また、白は …f7-f5 突きによって生じたe6の地点の弱点に Nf3-g5(-e6) の捌きでつけ入ることもできる(図23)。

 図23 

 このような局面ではe6の地点への侵入は …Bc8xe6、d5xe6 の後ポーンを犠牲にすることがよくある。しかし白は敵陣の白枡全般の弱さに戦略的そしてとりわけ戦術的な代償を求めることができる。例えばd5の地点は明らかに占拠できるし、d列が素通しであることを利用して c4-c5 突きと Nc3-b5 でc7とd6の地点に強い圧力をかけることができる。

 白が g2-g3 突きでキングの囲いを弱めることを嫌い、c4-c5 突きでクイーン翼での作戦を続け …Nh5-f4 には Bc1xf4 で応じれば、次のような戦略の概要が生じる(図24)。

 図24 

 …e5xf4 と取り返したあと黒は不良ビショップを解放することができ、キング翼での通常のポーンによる攻撃(…h7-h6 から …g6-g5-g4)に加えて半素通しのe列で敵のむき出しのeポーンを攻撃することができる。Ne7 は e4-e5 突きの殺到を防ぐためにg6の地点に行く必要がある。白の方はc列とd6の地点にいつもの圧力をかけ(Nc3-b5)、新たに獲得したd4の基地も利用する。d4の地点の占拠は黒が …g6-g5 と突けばナイトがf5の地点に跳ねるのに利用できることもある。

(この章続く)

2011年02月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(16)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 図1の局面に戻って考えると、Nf3-e1-d3 の捌きの代わりに白は明らかに b2-b4 突きによって c5 突きを準備することもできる。この構想の基本的な目的は、c4の地点をキング翼ナイトのために用意し(Nf3-d2-c4)クイーン翼ビショップを(a2-a4 突きの後で)a3の地点に配置して、d6のポーンに協力して圧力をかけることである(図20)。

 図20 

 黒が通常の戦略どおり突き進めば、白は c5xd6 と交換するつもりはない。代わりに b4-b5 と突いてd6の地点への圧力を強め、さらに a4-a5 および/または b5-b6 と突いて黒のクイーン翼のポーン構造を破壊するつもりである。

(この章続く)

2011年02月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(208)

「Chess Life」2011年1月号(2/3)

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2010年オリンピアード(続き)


GMヒカル・ナカムラ(右)は第4回戦で元世界チャンピオンのGMウラジーミル・クラムニクと対戦し引き分けた


ホテルの部屋で一心不乱に研究するGMユーリ・シュールマン(左)、GMヒカル・ナカムラ(右奥)、GMバルージャン・アコビアン

キング翼インディアン防御/古典主流戦法 (E97)
□GMウラジーミル・クラムニク(FIDE2780、ロシア)
■GMヒカル・ナカムラ(FIDE2733、米国)
第39回オリンピアード男子、2010年9月24日、第4回戦

 スーパースターがチェスの試合を指すのをまじかで観戦するのはどのようなものなんだろうと思っている人たちは私の警告に耳を傾けて欲しい。試合のすぐそばに立っていてはいけない!私が序盤の手を見ていようとしていたところ完璧な顔の表情や手の動きを撮ろうとしていた何十人もの写真家やジャーナリストに手荒く扱われた。

 そのような経験は素晴らしいことだったとは認めるが、それ以来私はホテルで自分のラップトップPCから試合を観戦するだけで完全に満足してきた。それではお待ちかねの試合である。

1.Nf3

 早くもちょっとした驚きの手である。クラムニクは初手に 1.d4 と指す傾向がある。この二人が1月にコーラスで対局した時もそうだった。クラムニクはこのクイーンポーンの手を選びオランダ防御を打ち破った。ここではその繰り返しにはならなかった。代わりにキング翼インディアン防御になった。この布局はナカムラが世界最高の使い手の一人であることは間違いない。

1…Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.d4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.Nd2

 ここでクラムニクの選択した手は3番目によく指されている手である(もっとも彼は 9.Ne1 と 9.b4 もよく指している)。一般的にはもっとよく指されているのは 9.Ne1 で、その構想はキング翼での守りの選択肢は決めないまま Nd3、f2-f3、b2-b4、c4-c5 と指し進めてクイーン翼で攻撃をかけることである。

9…Ne8

 9…a5 の方が安全な手だが、ヒカルは自分の棋風に忠実にすぐに直接攻撃に向かった。

10.b4 f5 11.c5 Nf6

12.a4

 12.a4 は最もよく指される手というわけではない。しかしクラムニクは深く研究してきた。この手の構想はクイーン翼に襲撃をかけ続けて、ポーンの暴風を止める面倒な …a5 を指させずに Ba3 を可能にすることである。またこの手は f2-f3 突きを省略する選択肢を白に与える。そうなれば黒の攻撃は実現がより困難になる。実戦の手より 12.f3 f4 13.Nc4 g5 の方が普通で、難解な戦いになる。

12…f4 13.Nc4 g5 14.Ba3 g4 15.cxd6 cxd6 16.b5

 この手のあと白はポーン得になる。黒はdポーンを放棄すれば自陣が崩壊するのでそうするわけにはいかない。そこでヒカルはgポーンを捨てる方を選んだ。

16…Ne8

 16…f3 は 17.gxf3(17.Nxd6!? fxe2 18.Nxe2 Rb8 19.Ng3 はまったく形勢不明である。白は白枡ビショップの代わりに2ポーン、広い陣地、安全なキング、それにはるかに優る駒の働きを得ている。黒の方は白の攻撃をかわしながら自分の駒を効果的に配置する必要がある)17…gxf3 18.Bxf3 Ne8 19.Ne3 Ng6 20.Kh1 Qh4

で白キングがだいぶ危険な状況になる。もっとも白はまだポーン得で受けの手段に事欠かない。このような局面はたった一度の間違いで白がたちまち負けてしまうので受けがとてつもなく難しい。だからクラムニクよりもナカムラの方が得意とする。21.Ra2 Bh6 22.Rg1 Bf4 23.Nf1 Bd7 24.Ng3 Rc8 25.Rc2 Kh8

というようなことになればヒカルの方にチャンスがあると思う。

17.Bxg4 Qc7 18.Be2 f3

19.b6!

 19.gxf3 は 19…Bh3 20.Re1 Ng6 21.b6 Qe7 -これは 19.b6 と指さずにf3ポーンを取ったことにより可能になっている- 22.Kh1 Nf4 23.Rg1 a6 24.Bf1 Rc8

となって、白は2ポーン得だが絶えず攻撃の脅威にさらされているので形勢不明である。しかし前の 16…f3 の方がわずか1ポーンの犠牲で有望な主導権が取れていただろう。

19…axb6

 19…fxe2 は 20.bxc7 exd1=Q 21.Rfxd1 Ng6 22.Nb5 Rf6 23.Ncxd6 Nxd6 24.Bxd6

となって、白がビショップの代わりに3ポーンを得て盤上を完全に席巻している。cポーンとdポーンがパスポーンになっているので白が危なげなく勝つだろう。

20.Nb5?!

 クラムニクは極度に慎重で、ナカムラに攻撃の筋を開けさせなかった。しかし gxf3 と取ることもできてその方が強い手だった(「最善手」と言うことは控えておこう。なぜなら簡単に指せる手ではなく、特に 20.Nb5 が首尾一貫した有望な手に見える時はそうである)。20.gxf3 Bh3 21.Re1 Ng6 22.Nb5 Qd8 23.Kh1 Nf4 24.Rg1

となれば 19.gxf3 で分析した局面よりも黒駒が守勢で白の攻撃目標が多いので白陣が良くなっている。

20…fxe2 21.Qxe2 Qd8 22.Nbxd6 Nxd6 23.Bxd6

23…Rf7!

 ヒカルはルークをg7に寄せてg2の地点に利かせるつもりである。代わりの手はたぶん「もっと安全」だろうが黒がはるかに反撃の機会がない局面でもある。23…Re8 24.Bxe5 Bxe5 25.Nxe5 Ng6 26.Nxg6(26.Nc4 は 26…b5! 27.axb5 Rxa1 28.Rxa1 Qxd5 29.exd5 Rxe2 30.h3 Bd7

で互角である)26…hxg6 27.Qd3 Qd6

は黒が受けきる可能性は十分あっても明らかに引き分けを目指しての話である。

24.Bxe5 Ng6 25.Bxg7

25…Nf4?!

 これがもっとも働いた手のように見えるが、黒よりも白の方に資するようである。25…Rxg7 26.g3 Nh4 27.f4(27.Qe3 は 27…Bh3 28.Nxb6 Rb8 29.Rfd1 Qf6

となって黒の勝つ可能性が大きい)27…Bh3 28.Rfc1(28.Rf2 は 28…b5 で反撃される)28…Qf6

となればどうやって黒の反撃を抑えるかはっきりしない。たとえば 29.Kf2 Ng2! 30.Qd2 Rf8 で何がなんだか私には分からない。

26.Qe3 Qg5 27.g3 Qxg7 28.Nxb6

28…Bg4

 28…Rb8 は 29.Nxc8 Rxc8 30.Rac1(30.Rad1? は大悪手で 30…Rc3 31.Qb6 Qg4 で黒の攻撃を受けきれない)30…Re8 31.Rcd1 Qg6 32.f3 h5 33.Kh1 Nh3 34.d6

となって、白のポーンが黒の駒得をものともしないだろう。

29.Nxa8 Ne2+ 30.Kg2 Bf3+ 31.Qxf3 Rxf3 32.Kxf3 Nd4+ 33.Kg2 Qf8

 ここから少しの間の指し手は最善ではないが、驚くほど難解な局面なので両対局者を批判するわけにはいかない。コンピュータを用いても完全に解明するのは困難である。時計を用いた実戦では気にすることはない。

34.Rfe1?

 この手は制限時間近くで指された。だから正しく応じられたら勝つ可能性が全然なくなるとしても「?」を二つ付けるわけにはいかない。34.h4!(白キングをくつろげた)34…Qxa8 35.Rfd1 Nc2 36.Rac1 Qxa4 37.d6 Qxe4+ 38.Kh2 Nd4 39.d7 Nf3+ 40.Kh3

これで白の勝ちになる。もっとも本当に終わる前に数多くのチェックをかわさなければならない。例えば 40…Qf5+ 41.Kg2(41.g4? は 41…Ng5+! 42.hxg5 Qf3+ で永久チェックになる)41…Nxh4+ 42.gxh4 Qg4+ 43.Kf1 Qh3+ 44.Ke2

44…Qe6+(44…Qg4+ は 45.f3 Qe6+ 46.Kf2 でチェックが尽きる)45.Kf3 Qf5+(45…Qh3+ は 46.Ke4 Qe6+ 47.Kf4 Qf6+ 48.Kg3 Qe5+ で主手順に戻る)46.Kg3 Qe5+ 47.f4 Qe3+ 48.Kg4

48…Qe6+(48…Kf7 なら 49.d8=N+)49.f5 Qe4+ 50.Kg5 Kg7 51.f6+ Kf7 52.d8=N+! Kg8 53.f7+

53…Kf8(53…Kg7 なら 54.Rg1!+-)54.Rg1! Qg6+ 55.Kf4 Qf6+ 56.Ke4 Qxh4+ 57.Ke5 Qh2+ 58.Ke6 Qa2+ 59.Kd7 Qa4+

60.Kc8 Qa8+ 61.Kc7 Qa5+ 62.Kb8! Qxd8+ 63.Rc8 Qxc8+ 64.Kxc8 Kxf7 65.Kxb7 Kf6 66.Kc6

これで白キングがゆっくり戻って間に合う。

34…Qxa8?!

 34…Nc2 35.Nc7(35.Nb6 は 35…Nxe1+ 36.Rxe1 Qb4 37.Rc1 Qxb6 で白の方だけ負ける可能性がある)35…Qb4! 36.Reb1 Qxe4+ 37.Kg1 Ne3 38.fxe3 Qxe3+ 39.Kf1 Qf3+

で永久チェックによる引き分けである。

35.Red1?!

 この手のあとは否応なしに引き分けになる。勝つには 35.Rac1 しかないが状況は暗中模索である。35.Rac1 Qxa4 36.Rc8+ Kg7 37.Rec1(37.d6 は 37…Nc6 38.Rc7+ Kg6 39.Rxb7 Qd4

で反撃される)37…b5 38.R1c7+ Kf6 39.Rxh7

35…Nc2 36.Rac1 Qxa4

37.d6

 37.Kf3 Qb3+ 38.Kg4 Qb4 39.Kf3 Qb3+ も互角である。

37…Qxe4+ 38.Kg1

 ここではもう勝ちにいくことはできない。38.Kh3?? は 38…Nd4 39.Rc3 Qe6+ 40.Kg2 Qxd6

で負ける。

38…Nd4 39.d7 Nf3+ 40.Kf1 Nxh2+ 41.Kg1 Nf3+ 合意の引き分け

最終成績 10試合6点
実効レイティング 2741

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス2

王印防御の完全理解(15)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

連鎖ポーンのc4-d5に対する攻撃

 黒が用いることのできる別の着想は …c7-c6 と …b7-b5 の二つのポーン突きで連鎖ポーンのc4-d5をばらばらにすることである(図18)。

 図18 

 この着想が成立するのはc4のポーンが守られていないことによる。黒はナイトの力を利用して d5xc6 には …b5xc4、c4xb5 には …c6xd5 と応じ、敵の中原を破壊する。このような反撃を実行するためにはa2-g8の斜筋に沿った問題を避けるためにほとんど常に先受けの …Kg8-h8 を指しておく必要がある。

 一般にこのような局面では白は Nd3-b4 または d5xc6 b5xc4、Nd3-f2 の後 Be2xc4 でd5の地点の所有権を争う(図19)。

 図19 

 白がd5の地点を支配できれば、d6の出遅れポーンとクイーン翼の多数派ポーンにより白陣の方が明らかに良い態勢になる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(14)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

d4の地点の弱点

 図5に示された状況で黒は …Nd7-f6 によって f3 と突かせる代わりに、…f5xe4 と取ることによってもっと単純化された展開を選択するかもしれない。Nc3xe4 の取り返しのあと次のようなポーンの形が出来上がる(図14)。

 図14 

 この形は …f7-f5 突きのあと白がf5のポーンを取り黒が駒で取り返した時にも生じる。しかしポーン交換をする方が手を損し敵駒の中央進出を助けるので白としては待った方が明らかに得策である。

 …f5xe4 の交換のあと戦いは本質的にd4とe4の地点をめぐって行なわれる。黒は弱点のd4の地点への道が開ける(例えば …Ne7-f5-d4)。一方白はe4の地点を強力な基地として使え、d4の地点は Bc1-d2-c3 の捌きによってある程度支配することができる(図15)。

 図15 

 黒は …Nh4、Nxf6+ Qxf6、Be4 Bf5、Qe2 Bxe4、Qxe4 でいくらか単純化することができ、さらに …Qf5 でクイーン交換を挑むかもしれない。しかし白はe4の地点の所有、中央に陣取った強力な Nd3、それに黒のかなり柔軟性のない構造に対するクイーン翼でのポーンによる襲撃の可能性により、収局で少しではあるが永続する優位を維持することになる。しかも白のキング翼が全然弱体化していないので、黒がキング翼で何か意味のある作戦を行うことは難しい。

 最近黒は主眼の …f5-f4 突きと c4-c5 突きのあと、…c7-c6 突きでd5のポーンを攻撃することによってd4への別の道を開こうとしてきた(図16)。

 図16 

 d5の地点の守りが不十分なので白は c5xd6 と d5xc6 の二重の交換をしなければならない。黒は …Ne7xc6 と取ったあとd4の地点の占拠に期待することができる(図17)。

 図17 

 しかし中央をずたずたにすることは攻撃的な …f5-f4 突きと調和せず黒クイーンも露出するので、このような戦略にはそれなりの欠点もある。

(この章続く)

2011年02月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

世界のチェス雑誌から(113)

「Chess」2010年11月号(12/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日(続き)

 首位争いについてはこのくらいにしておこう。英国の観点からはこの回戦の、実際には大会を通じての、最大の出来事は、ミッキー・アダムズが世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンを破ったことだった。この英国選手はこれまでに数多くの頂上付近の首を取ってきたが、血に飢えた若きバイキングには何度も苦杯を喫してきた。だからこれはちょうどよく士気を高める契機になった。

 試合の結果については実に皮肉だった。他の3人の英国選手は楽に相手のレイティングを上回っていた。しかし皆引き分けに終わり、二つの取れる勝ち点のうち2番目を確保するのは英国の「負け犬」主将に委ねられた。カールセンの布局(「北海防御」としても知られる)は明らかに異様で、元々はオランダ選手のへーラルト・ウェリングによって考案されトーニー・マイルズによって短い期間採用された。マルコム・ペインは「デイリー・テレグラフ」紙に次のように書いていた。「マイルズは主に相手を挑発するためにこれを指したと私に言っていた。カールセンの指し方は少し違っていたが、ミッキーをミッキーマウスのように少しからかおうとしているようだった。結局は若いノルウェー選手の方がからかわれることになった。12月の第2回ロンドン・チェスクラシックでの対決に向けミッキーに有利な材料になるだろう。」

 「北海防御」について - 2010年は英国の北海沿岸での追い詰められた防衛の70周年である。だからカールセンが眠れるライオンの尻尾をつまんで引っ張ったのはたぶん賢明でなかった。本当にこれは英国の最高の時間だった。失礼。夢中になってしまった。チェスに戻ろう。


ミッキー・アダムズが世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンに勝ったことは、ちょうど50年前のライプチヒ・オリンピアードでジョナサン・ペンローズが当時世界チャンピオンのミハイル・タリに勝ったことを思い起こさせる。

解説 ミッキー・アダムズ

第6回戦 イングランド対ノルウェー
M・アダムズ - M・カールセン
現代(北海)防御

 ノルウェーは最近英国チームの常連の対戦相手になっているようである。もっとも昨年のヨーロッパ・チーム戦ではマグヌスが不参加だったので私の相手はヨン=ルドビッヒ・ハマーだった。

1.e4 g6 2.d4 Nf6

 この手はまったく予想していなかった。

3.e5

 この局面は全然研究したことがなかったが、強豪選手の中には研究したことがある人がいるみたいである。3.Nc3 d6 のあと普通のピルツ防御になるので、何人もの人がマグヌスの手順は何のためか分からないと私に言った。リブカは 3.Nc3 には 3…d5 が最善手だと考えているようだが、私には意外である。

3…Nh5 4.Be2

4…d6

 モロゼビッチやマイルズたちはここで 4…Ng7 と指したが、中原に挑むほうが的を射ている。

5.Nf3

 重要な変化はもちろん 5.Bxh5 gxh5 6.Qxh5 dxe5 7.dxe5 Qd5 または 7…Rg8 だが、なんの研究もしていないのに相手の注文にはまる気がした。

5…Nc6

 変種のアリョーヒン防御になったがここで布局の優位があまり大きくないようだと気づいた。たぶんh5のナイトを取るつもりがないならば 4.Be2 があまりたいした手でなかったということなのだろう。

6.exd6

 黒のナイトめがけて 6.h3 と指すことも考えたが、ゆっくりしすぎていて黒は 6…dxe5 7.dxe5 Qxd1+ 8.Bxd1 Ng7 という具合にこのナイトを再生することができる。

6…exd6 7.d5

 局面が完全に互角になってしまう前に陣地を広げた。

7…Ne7 8.c4 Bg7 9.Nc3 O-O

10.O-O

 黒の次の手を防ぐために 10.h3 も考えられた。

10…Bg4

 両者とも展開を続けている。黒が白枡ビショップを交換するのは他の駒の活動の余地を作るためである。

11.Re1 Re8 12.h3 Bxf3 13.Bxf3 Nf6 14.Bf4 Nd7 15.Rc1 Ne5 16.b3

 この手は理にかなっている。黒のナイトが再編成で中央の拠点に進出してきたので、こちらは神経を使う黒枡の対角斜筋から駒を避難させて陣容を固めた。

16…a6

 16…Nxf3+ 17.Qxf3 Nf5 18.Ne4 は黒が少し不満かもしれない。

17.g3

 私のこの手と次の手はあまり正確でなかった。ここでまたは次の手で 17.Be4 と指して双ビショップを維持すべきだった。

17…Nf5 18.Bg2 g5

 これは良い決断だった。マグヌスは好機をとらえて私に黒枡ビショップを手放させた。19.Bd2 には 19…Nd3 がある。

19.Bxe5 Bxe5

 どういうわけか 19…Rxe5 はまともに考えなかったが賢明な選択肢だったかもしれない。

20.Ne4 Ng7

 ナイトを「フィアンケットする」とは奇妙な後退である。しかしg5のポーンが浮いているので黒駒の形を整えるのは簡単でない。

21.Qd2 h6 22.f4

 黒が陣容を立て直す前に局面の開放を図った。

22…gxf4 23.gxf4 Bf6 24.Kh2

24…Nh5?

 ここが勝負どころだった。このポカのあと黒は反撃の可能性のない惨めな防御に直面することになった。私の予想は 24…Bh4 25.Rg1 f5 でこの方が良い。この先は 26.Ng3 Bxg3+ 27.Kxg3 Nh5+ 28.Kh2 Qh4 29.Bf3+ Kh7 30.Bxh5 Qxh5 31.Rg2 Rg8 32.Rcg1

で引き分けになるようである。

25.Rg1!

 戦術の争いはこちらにとって有利なので大駒を戦闘地域に持っていった。

25…Kh7

 25…Nxf4 が彼の直前手の狙い筋だったが 26.Nxf6+ Qxf6 27.Rcf1 で簡単に咎めることができる。だがキングは 25…Kh8 と黒枡に行くものと考えていた。

26.Rcf1 Rg8 27.Qe2

 ナイトはもと来た所に追い返される。

27…Ng7

28.Qd3

 28.Nxf6+ Qxf6 29.Be4+ Kh8 30.Bb1 Qd4 31.Qg4 Qf6 32.Qf3

でクイーンとビショップのバッテリー作りを目指すのも良い手だった。

28…Kh8 29.Bf3 b5

 すぐに 29…Bh4 と来るものと予想していた。

30.Bd1

 ビショップを働かせればきしむキング翼のゆがみがひどくなる。

30…bxc4 31.bxc4 Bh4 32.Bc2 f5 33.Rg6 Kh7 34.Rfg1

 ルークが危険な地点に配備されたがすぐの狙いはない。

34…Qe7

35.Ng3?!

 強手を見逃した。主眼の 35.c5! で中央のポーン構造を崩すのが正着だった。ナイトは取られない。35…Qxe4 36.Qxe4 fxe4 37.Bxe4 で次の開きチェックがひどい。また 35…dxc5 36.d6 cxd6 37.Nxd6 Raf8 38.Qxa6 Rf6 39.Nxf5

は特にすごい。35…Rad8 と受けるのはもっともだが 36.cxd6 cxd6 37.Qe2 で何かがすぐに落ちる。

35…Bxg3+?

 この手が敗着になった。35…Raf8 36.Nxf5 Nxf5 37.Rxg8 Rxg8 38.Qxf5+ Kh8

なら異色ビショップなのでまだ希望が持てた。

36.Qxg3

36…Qf7

 もう逃れる術がない。36…Nh5 なら 37.Qf3 Rxg6 38.Bxf5 Nxf4 39.Qxf4 Rag8 40.Bd3

となって釘付けがはずせない。ここで 40…Qe5 なら単純に 41.Qxe5 dxe5 42.c5 で白が勝つ。

37.Bd1!

 決定打を見舞うためにビショップが元の位置に戻った。黒の戦力が守勢に位置しているため受けがない。

37…Rae8 38.Rxh6+ 1-0

 38…Kxh6 39.Qg5+ Kh7 40.Qh4+ Nh5 41.Bxh5 で致命的な開きチェックの態勢になるので黒は投了した。この時点で我々が楽に勝ち点をあげられそうだった。しかし結局他の試合は全部引き分けに終わったのでこの試合が決勝点になった。

******************************

(この号続く)

2011年02月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(13)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

2段目と3段目に沿った大駒による防御

 g4の地点の支配をめぐる戦いを考えると(図10を参照)黒が …g5-g4 と指したとき一連の交換が行なわれ白の3段目が素通しになる。このような状況では白はこのことを利用して大駒を迅速にh列に転送することがよくある。黒キングは通常はh8の地点にいるので特にそうである(図12)。

 図12 

 Qh3 と指す白の目的はキング翼での立場を逆転させることである。…Rxg2+ と指しても Kh1 で二つの駒が当たりになったままなので駄目である。この3段目の開通はあらかじめc3またはa3に上がっていたルークによって利用されることもある。

 前図に示されるgポーンに対する攻撃を受ける別の手段は、先受けの Rc2(この手はルークをc列で重ねるのにも役立つ)を Bd2-e1 による2段目の開通と組み合わせることである(図13)。

 図13 

 Bd2-e1 によって白はg2の地点を守るだけでなくh4の危険なナイトを除去することも可能になる。

 この二つの防御手段は組み合わせることもあり、その場合白はキング翼で立場を逆転する目的を達成することも決して不可能ではなくなる。

(この章続く)

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日米同盟の真価

朝日新聞
北方領土問題で米大使呼び出し ロシア外務省2011年2月22日1時6分

. 【モスクワ=星井麻紀】ロシア外務省は21日、北方領土問題に絡んで駐ロシアの米国大使を同省に呼んだ。米国務省と在ロシア米大使館が、ロシアに対する日本の要求を支持する見解を発表したためだという。

 ボロダフキン外務次官が米大使と会い、北方領土(南クリル)におけるロシアの主権に関する「原則的で不変の立場」を表明したという。
.

読売新聞
北方領日本支持発言、米大使呼び協議…露外務省

. 【モスクワ=貞広貴志】ロシア外務省は21日、米国のジョン・ベイル駐露大使を呼び、日本の北方領土問題について協議したと発表した。

 協議は「米国務省とモスクワの米大使館の代表が最近、日本の領有権主張を支持する発言を行った」のを受けたもので、ボロダフキン外務次官が「南クリル(北方領土)の主権に関するロシアの一貫した立場」を説明したとしている。

(2011年2月22日01時18分 読売新聞)

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王印防御の完全理解(12)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…g4 の突っ掛け

 キング翼での黒の希望は …g4 の突っ掛けと密接に結びついている。g列の開通(…g4xf3)は明らかに白キングの安全を大きく脅かす。だから白が h2-h3 および Nd3-f2 のような手でできる限りg4の地点を支配しようとするのは理にかなっている。もちろんキング翼の敵陣突破の重要性を考えれば黒の方はためらわずhポーンを増援に繰り出す(図10)。

 図10 

 ここでは黒は …g5-g4 突きを成立させるのにg4の地点の支配がまだ十分でない。だから …Ne8-f6 と指すことができないならば、…Ne7-g8-h6 の捌きに頼ることがある。しかし通常は Ne7 はg6を通ってh4の地点に行き、…g4 の突っ掛けは特にd8-h4の斜筋の開通でクイーンが戦闘に参加できるのでポーン損の犠牲を払ってもとにかく実行される。…g5-g4 の防ぎに役立つように白が用いることがある一つの防御手段はクイーンをd1に引くことである。

 白が Be3-f2 と指せば …g4 突きを防ぐことがもっと難しくなることは容易に理解できる(図11)。

 図11 

 このような局面では黒は …g4-g3 とポーンを犠牲にする手段によって決定的な攻撃の筋の開通を達成することが非常によくある。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[52]

eポーン布局

第7章 フランス防御(続き)

突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5(図77)

 図77(黒番)

 この強制されない白の二度目のeポーン突きは「突き越し」戦法と名づけられている。3手目でもう白の戦略の全貌が明らかになりつつある。白は先着の優位を広さの優位に変えることを選び、より長続きすることを期待している。この作戦自体は理にかなっているが、手数をかけたため主導権が黒の手に渡り相当続く。そのためこの戦型は棋理に合っていると考えられているが、布局の指し方に機動性をより好む現代のマスターたちからはあまり高く評価されていない。

3…c5

 これは自然な(かつ最善の)応手である。黒はクイーン翼で陣地を広げ、白の連鎖ポーンの根元にすぐに突っ掛けた。

4.c3

 いつかは黒が白の中原を …cxd4 で侵食しようとするので、白はこの手に対しポーンで取り返し進攻した連鎖ポーンを確実に維持できるように方策を講じた。

4…Nc6

 黒の迎撃戦略は全力を挙げて白のdポーンを攻撃することである。このポーンが本当に取れるとは予想していないが、白駒のほとんどをその守りに縛り付けることは期待している。

5.Nf3

 白は駒を展開しd4のポーンの守りにまた護衛を付けた。

5…Qb6

 これはクイーンを試合の早い段階で動かすなという原則への重要な例外である。黒のクイーンはb6なら攻撃を受けることがなく、好所でもある。なぜなら白のdポーンへの攻撃に加わり、白のクイーン翼ビショップが動けばbポーンが取れるのでその動きを制限しているからである。

6.Be2

 このビショップをe2とd3のどちらに進めるかの選択は、白がこの布局でしなければならないもっとも重要な決断の一つである。最初にこの戦法の定跡を発展させたニムゾビッチは Bd3 より Be2 の方がd4のポーンを完全に「守っている」との立場をとった。彼の意味するところは Be2 なら白クイーンのdポーンを守る働きを阻害しないということである。6.Bd3 のあと黒は 6…cxd4 7.cxd4 Nxd4? 8.Nxd4 Qxd4?? でポーンを取ることができない。それは 9.Bb5+ でクイーンを取られてしまうからだが、7…Bd7 と指すことによりdポーンに対する狙いを新たにすることができる。

6…cxd4

 この交換は黒の作戦の自然な一部である。黒が少しでも遅らせれば白の方が dxc5 と取ろうとするかもしれない。

7.cxd4 Nge7

 黒はキング翼ナイトをf5の地点に捌いて白のdポーンに対する圧力を強めるつもりである。

8.Na3

 白は包囲されたかわいそうなポーンに急いでさらに守り駒を駆けつけさせた。このナイトはc2の地点を目指している。

8…Nf5 9.Nc2 Bb4+

 これは面白い着想である。白の駒はd4とb2の地点を守らなければならないので過負荷になっている。そのためここではキングを動かしてキャッスリングの権利を失わなければならない。

10.Kf1

 白は 10.Nxb4 でも 10.Bd2 でも弱いポーンを守ることができなくなる。だからこのキングは歩いて難を避けなければならない。しかし本譜の手のあと白の方にも狙いがある。機会があれば a3 から b4 と突いて広さの優位を拡大し、ポーンの弱点の一つを解消する。

10…Be7

 11.a3 突きに 11…a5 と応じられるようにビショップをどけた。

11.g3

 白はキングのために少し空間を作り、キング翼ルークが隅から出て働けるようにした。

11…Bd7

 黒はまだクイーン翼ビショップをどのように働かせるかという問題を解決していない。これはいつもフランス防御の悩みの種である。当面はd7に置いてルークのためにc8の地点を空けてこの列が素通しになれば好所になるようにした。

12.Kg2(図78)

 図78(黒番)

 この局面はマスターの実戦に何回か現れた。黒のあらゆる努力にもかかわらず広さの優位を維持してきた白がたぶん少し優勢だろう。しかし黒は悲観することはない。すこし窮屈なことを除いて黒陣には弱点がない。黒は白の駒をいくらか守勢の立場に追いやり、将来は …f6 突きを準備して白の中原ポーンに眼目の襲撃を続けることができる。

(この章終わり)

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王印防御の完全理解(11)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

受けの捌きの …Nf6-e8、…Rf8-f7、…Bg7-f8

 そうはいうものの黒は白の二つの主要な目的がd6の地点への圧力とc7の地点への侵入であることを考えれば、明らかにaポーンおよび/またはb6の地点にだけ没頭していることはできない。これらの二箇所の弱点を守るために黒は通常は Nf6 をe8に引き、ルークをf7に上げ、…Bf8 によってd6ポーンの守りを完了させる(図9)。

 図9 

 このようにしてc7とd6の地点が三重に守られ、同時にキング翼ルークがg7の地点を使うことができるようになる。この地点はルークがgポーンの進攻を支援する理想的な位置になる。

(この章続く)

2011年02月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(10)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

a2-a4 突き

 白が a2-a4 と突くのは(図6を参照)まさに前項の最後の理由のためである。この手により Nb5 の位置を確保し、…a7-a6 突きに対し Nb5-a3-c4 と捌き、あとで a4-a5 と突くことによりb6の弱点を固定できるようにするのである(図7)。

 図7 

 黒はクイーン翼の展開を …Bc8-d7-b5 の捌きによって解決を試みることができるけれども、白がb6の地点を占拠してしまえばc列を完全に制圧することになることは明らかである。

 この麻痺させる捌きは、白が a4-a5 突きでb6の地点を固定できる前に黒が …b7-b5 と突くことができれば、部分的に止めることができる(図8)。

 図8 

 このような局面では白の攻撃は十分に遅くなり、黒は戦いの重点を反対翼に移すことができるだろう。

(この章続く)

2011年02月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(9)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通とd6ポーンの弱点

 c4-c5 突きの主要な目的は c5xd6 と取って …c7xd6 の取り返しのあとc列を制圧し、クイーン翼での作戦の基盤としてd6のポーンを弱めることである(図6)。

 図6 

 c列での圧力は大駒を重ねることにより強化することができ、d6ポーンに対しては Bb4 および/または Qb3-a3 によって強化できる。他の二つの着眼点は Nc7-e6 の突っ込みによるかく乱(Qb3 と連係しているのが普通で、…Bxe6 と取られるのは恐れない。なぜならd列の素通し、敵陣の白枡の弱体化、a2-g8の斜筋の活動性の向上がすべて白の有利に働くからである)と、Qc2 のあと Nxa7 とそらす手段で(…Rxa7 と取るとc8のビショップの守りが不足する)aポーンを取ることである。黒はaポーンを運命にまかせて捨てることを選び、Nxa7 のあと …Bc8-d7 とすることに甘んじ、白が手を費やしている間に自分の攻撃が進むことに期待するかもしれない。あるいは単に …a6 と突いてポーンを取られるのを防ぐかもしれない。

(この章続く)

2011年02月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(207)

「Chess Life」2011年1月号(1/3)

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世界に挑むヒカル

 米国の最高レイティング選手のヒカル・ナカムラがベイクアーンゼー(2011年1月14日ー30日)でのタタ鉄鋼チェス大会でカールセンとアーナンドを含む世界の最強選手たちに挑戦する。GMイアン・ロジャーズからの速報を含むチェスライフオンラインでの報道をお楽しみに。

2010年オリンピアード

GMロバート・ヘス

ヒカル・ナカムラ レイティング2733、主将

 ヒカルはほとんどのファンにはまばゆいばかりの攻撃型選手と戦術の天才として知られている。これはほとんど真実であるが、彼のチェスにはそれだけに留まらないものがたくさんある。ヒカルは恐れ知らずで引き分けの提案を嫌っている。ブルガリアと対戦することになった時ヒカルはそれまで一度もべセリン・トパロフと対局したことがなかったので喜び試合を楽しみにした。ヒカルは偉大な戦士なので前2局を白で負けても士気はくじけていなかった。オリンピアードをとおして彼は準備のほとんどを別個に行なったが意見を求めることは決して躊躇しなかった。コーチのバルージャン・アコビアンと私は必要ならば彼を支援し彼は喜んで受け入れた。彼はチーム選手で、そのことはポーランドとの第7回戦で証明された。ヒカルは最初の方で勝つ手を逃がしたが、望むならいつでも引き分けにしてしまうことができた。しかしカームスキーの試合を覗くと形勢が悪かった。そこでチームの勝ち点のために全力を尽くすことにした。そして指し過ぎて負けてしまった。彼は第1席で立派な主将であることを立証した。

 ヒカルの出だしは4½/5で、世界チーム戦でのときのように第1席賞のメダルへの道を邁進した。もっとも結果は彼のチェスを反映したものにはならなかった。それでは彼の第2回戦の試合を途中から見てみよう。


□バヤルサイハーン・グンダバー(FIDE2460、モンゴル)
■GMヒカル・ナカムラ(FIDE2733、米国)
第39回オリンピアード男子、2010年9月22日、第2回戦

 34…a4 の局面

 ここでは完全に白の勝ちである。しかし区切りの40手目が迫っていて白は勝ち筋を読みきれなかった。実際区切りの手数に達した時ヒカルは既に勝つ手段を追求していた。

35.Qe5

 簡単な勝ち筋は 35.Qh7+ Kf8 36.Ka2 Nd6 37.Rxc7 Rd8(37…Nc4 は 38.Rd7 Rc8 39.c7 で良くない)38.b6 Nc4 39.Rd7

である。黒は 39…Nxb6 と取るよりないので 40.Ne4 Nxd7 41.Nxf6 Nxf6 42.Qg6 で決まっている。

35…Qg6 36.Qe4

 クイーンなし収局は完全に望みがないので黒は手を繰り返すしかない。

36…Qf6 37.Qe5 Qg6 38.f5 exf5 39.Rd3 f4 40.Rd2 f3

以下57手目で白投了

 両選手とも区切りの手数に達し黒にはもう負けようがなくなった。局面は互角に近いがヒカルは段違いの実力を見せつけてはるか格下の相手を下した。

 第5回戦のアルゼンチンのGMディエゴ・フローレス戦もそうだがこの試合は苦戦の局面で盛り返す彼の比類ない実力が現れている(編集部注 「収局研究室」を参照)。しかし元世界選手権者ウラジーミル・クラムニクとの試合はまさしくこのオリンピアードでの彼の最高の試合である。

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(この号続く)

2011年02月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(8)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…Nf6-d7-f6 の捌き

 黒の方はfポーンの通り道を自由にしなければならない。だからナイトをd7に引き、それと同時に c5 突きを抑えるのは当然である(図5)。

 図5 

 しかし白が f3 と突くことによりキング翼の陣形を弱めキング翼での接触地点を作り出すことを嫌うならば、Nd7 は f6 の地点に戻ってe4の地点の守りのために f2-f3 と突かせなければならない。黒は …f5-f4 と突くことができるようにするためにも f2-f3 と突かせることが大切である。これは上図で白が Be2-g4 により不良ビショップを解消することができないようにする前提条件である。

 黒はナイトをf6の地点に戻す他に …f5xe4 と取る策もある。その意図はあとで出てくるが自分の駒のためにf5の地点を用いd4の地点を占拠することである。

 …Nf6、f3 のあと黒は …f5xe4 の交換からは何も得られないので、代わりに …f5-f4 と突いてキング翼での広さの優位を主張しgポーン突きに期待をかけることになる。

(この章続く)

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(7)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3-e1-d3 の捌き

 白はクイーン翼で広さで優位に立っているので、その方面で攻撃を画策しようとするのは明らかである。しかし黒のポーンの形は非常に堅固なので、進展を図るには列を開け弱点を生じさせることが必要である。これらの目標はどちらもc7-d6-e5の連鎖ポーンを c4-c5 突きで攻撃することにより達成することができる。そしてその準備に最適の捌きは攻守兼用の Nf3-e1-d3 である(図4)。

 図4 

 時には白はこの捌きをクイーン翼ビショップのe3への展開(…f5-f4 と突かれたらf2へ下がる)と関連させることにより、c5の地点の支配を強めようとする。

(この章続く)

2011年02月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

ソ連がやってきた

2011年02月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(112)

「Chess」2010年11月号(11/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日(続き)

第6回戦 ウクライナ対ハンガリー
P・エリャーノフ - J・ポルガー

 ユディット・ポルガーはパーベル・エリャーノフ戦で長い戦いの末に不利なルーク+ポーンの収局を持ちこたえているように見える。

64…f6??

 64…Ke6 で黒がほとんど安全だろう。白キングは動くと黒ルークにチェックされるので進展が図れない。

65.Kc7 Rc2+ 66.Kb6

66…fxe5

 ポルガーはここらあたりで 66…Rb2+ 67.Kc6 Rc2+ 68.Kd5! Rb2 に 69.Rxh2!!

と応じられることに気づいて背筋が寒くなったのではないかと思う。…f7-f6 突きで7段目が素通しになっているので 69…Rxb7 に 70.Rh7+ でルークを取られてしまう。

67.Rb1

 67.b8=Q Rb2+ 68.Kc7 Rxb8 69.Kxb8 exf4 70.Rxh2

でも勝ちである。即ち 70…Ke6 に 71.Rh5! で黒キングを遮断し白キングがゆっくり回って黒ポーンを取ることができる。

67…h1=Q

 67…Rb2+ 68.Rxb2 h1=Q 69.b8=Q Qg1+ は非常に多くのチェックがかかるが永久チェックにはならない。

68.Rxh1 Rb2+ 69.Kc6 exf4 70.Rh8 Kf6 71.b8=Q Rxb8 72.Rxb8 Ke5

 すべてうまくいかず負けに直面している時は相手に「絶対手」のパズルを解かせるのが良い。ここでユディット・ポルガーは3手連続の問題をこしらえた。

73.Kc5!

 あまり強くない選手は 73.Re8+? にひかれて 73…Kd4! で引き分けにしてしまう。

73…Ke4 74.Kc4!

 この手が見つけられなかったら半点減点である。

74…Ke3 75.Re8+ Kd2

76.Rf8!

 疲れている時にはキングをd4に寄せて「敵キングを遮断」することを考えやすい。しかし 76.Kd4? f3 で引き分けになる。

76…Ke3 77.Kc3 1-0

 もう「絶対手」のまやかしは残っていないのであきらめる時である。正直なところレイティング2761の相手をはめるなどほとんどあり得ない話である。

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(この号続く)

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王印防御の完全理解(6)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリングの閉鎖型中原

 中原が閉鎖されキングが同翼にキャッスリングしている時はそれぞれが側面攻撃を仕掛けやすくなることは明らかである。白はクイーン翼での陣地の広さの優位を利用し、黒はキング翼で自然な …f7-f5 突きで仕掛けていくことになる(図3)。

 図3 

 側面のポーンをお互い動員することは Ne7 と Nf3 の位置によっても示される。つまり黒のクイーン翼ナイトは …f7-f5 突きを助けるのに理想的な位置にいて、その後はg6かg8を経由して攻撃に参加する。逆に白は通常は黒の攻撃に呼応して f2-f3 突きによってe4の地点を支えようとし、そのためにこのナイトは Nf3-e1-d3 または Nf3-d2-c4 によってクイーン翼に移動するのが自然である。

 攻め合いの局面では黒は …f5、f3 と突き合った後、e4でのポーンの交換は白の防御の空間を広げるので避けるのが通常である。そして代わりに …f5-f4 と突いて相手のキングを締め付け、あとでgポーンの進攻に期待することになる。

(この章続く)

2011年02月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

王印防御の完全理解(5)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点

 主要な戦略の構想はポーンの形とキングの位置とから導き出すことができる(図2)。

 図2 

 (1)同翼にキャッスリングした閉鎖型中原

 (2)クイーン翼での白陣の広さ

 (3)中央の連鎖ポーン

 (4)白のd4とf4の地点の弱点

(この章続く)

2011年02月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 王印防御の完全理解

チェス布局の指し方[51]

eポーン布局

第7章 フランス防御(続き)

タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2(図75)

 図75(黒番)

 一見したところではこの手は奇妙に思える。なぜならd2はナイトにとってc3よりも働きの劣る地点であるのは確かだし、さらには白のクイーン翼ビショップとクイーンの利き筋をふさいでいるからである。他方では 3.Nd2 はビナベルを回避し(3…Bb4? は 4.c3 と応じられる)、戦型によっては突き越し戦法のように白が c3 と突いてdポーンを支えることができる。

3…c5

 この手と 3…Nf6 は大会の実戦で同じくらいの頻度で現れる(3…Nc6 もよく見かける)。3…Nf6 は白が 4.e5 と突いていつものフランス防御の連鎖ポーンを形成するよう誘っている。そして黒はあとでそれを攻撃する。本譜の手はすぐに白のdポーンに当たりをかけることによって e5 突きを防いでいる。だから白は他の方法で優勢を確保するよう努めなければならない。

4.exd5

 白は中原ですぐに交換して黒に孤立ポーンを作らせることに期待した。(孤立ポーンの側は二つの不利に直面する。一つ目はそのポーンを別のポーンで守ることができないので、それが攻撃された時は駒を使って守らなければならない。二つ目は孤立ポーンの直前の地点が非常に弱くなることがあり、敵の駒の拠点として使われるかもしれない。孤立ポーンの目の前の地点の駒は両隣の列にポーンがもうないのでポーンを突いてどかすことができない。)

4…exd5

 黒は将来dポーンが孤立化する可能性を受け入れ、活発な展開と駒の活動によりこの弱点の代償が得られることを期待した。特に黒のクイーン翼ビショップの展開はもうたいした問題ではなくなっている。グランドマスター級の試合では 4…Qxd5 も流行している。もっとも白はクイーンを攻撃して手得をするかもしれず、黒のクイーン翼ビショップは問題をかかえたままである。

5.Ngf3

 5.dxc5 で黒のdポーンをすぐに孤立させるのは、黒が展開の手で応じて(5…Bxc5)手得するので正しくない。白はできるならば黒がキング翼ビショップを動かすまで dxc5 を遅らせるべきである。それまではキング翼を迅速に展開するのが白のもっとも理にかなった方針である。

5…Nc6

 黒も早く自分の駒を働かせたい。この手は 5…Nf6 より正確である。というのは白がキング翼ビショップをb5に出せば黒のキング翼ナイトはe7が良い位置になるかもしれないからである。

6.Bb5

 この展開の手は良い手で、黒のクイーン翼ナイトを釘付けにして、d4ポーンに対する圧力を取り去っている。

6…Bd6

 黒は釘付けを(例えば)6…a6 ではずしている余裕はない。なぜなら必然の応手の 7.Bxc6+(7.Ba4?? は 7…b5 8.Bb3 c4 でビショップを取られるので不可である)のあと、白が 8.O-O から 9.Re1 と指しe列での新たな釘付けが前の釘付けよりももっと面倒になるからである。同じ理由で 6…Nf6 と 6…Be7 も良くない。例えば 6…Nf6 なら 7.O-O(8.Re1+ の狙い)7…Be7 8.dxc5 となってこの時黒は 8…Bxc5 と取り返すことができない。なぜなら 9.Re1+ Be7 10.Qe2 で黒はキャッスリングすると駒をとられるからである。

7.O-O

 白はキング翼の展開を完了し 8.Re1+ を狙っている。

7…Nge7

 この手はほとんど絶対である。他のどんな手も黒はかなり不利になる。

8.dxc5

 白はようやく黒のdポーンを孤立させるという基本的な陣形上の主題に戻った。

8…Bxc5 9.Nb3

 このナイトはもちろん絶好の拠点のd4を目指している。そのかたわら黒のビショップを攻撃している。

9…Bd6

 このビショップはb8-h2の斜筋上にいるのが一番良い。

10.Nbd4 O-O 11.Be3

 このビショップはd4とc5の地点の支配を助けるためにここにいるのが理にかなっている。

11…Bg4(図76)

 図76(白番)

 孤立dポーンにもかかわらず黒は布局から互角になった。それは駒が活動的な地点にいるし他に弱点もないからである。1961年ブレッドでのパッハマン対ポルティッシュ戦は次のように進んだ。

12.h3 Bh5 13.Qd2 Rc8 14.Be2 Bb8

 黒の次の手と共にこの手は素通しc列と白キングに対し圧力をかける態勢を作っている。

15.c3 Qc7

 この手は 16…Nxd4 のあと 17…Bxf3 から 18…Qh2# を狙っている。

16.g3 Qd7 17.Kg2

 どちらも進展が図れないようである。

(この章続く)

2011年02月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(4)

第1章 マルデルプラタ中原

主手順 - マルデルプラタ戦法
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7(図1)

 図1(白の手番) 

 同様の構造は他の戦型からも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 の後

 グリゴリッチシステム
 - 7.Be3 Ng4(または 7…Nc6 8.d5 Ne7)8.Bg5 f6 9.Bh4 Nc6 10.d5 Ne7
 - 7.O-O Nc6 8.Be3 Ng4 9.Bg5 f6 10.Bc1 Kh8 11.d5 Ne7

(この章続く)

2011年02月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(3)

序章(続き)

どの戦法を指すべきか

 どの戦法が自分の棋風に最も合っているか決めるのに役立つように戦法一覧をまとめた(巻末を参照)。そこに戦法ごとの戦略と戦術の複雑さの度合いが示されている。さらに、水準7以上のFIDE大会で指された約2000局の調査を用いて、危険度の概観に役立つように各戦法の頻度と結果の割合の統計データを求めた。これにより必要に応じて最も適切な選択に役立つ情報がすべて得られる。

(この章終わり)

2011年02月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(2)

序章

 キング翼インディアン防御は基本的なdポーン布局(1.d4 に続けて c2-c4 と突く)に対して …Nf6、…g6、…Bg7 および …d6 と指す手を特徴とするシステムである。黒の戦略はほとんどいつもキング翼にキャッスリングし …e5 または …c5 と突くことになる。大ざっぱに言って白の対応はキング翼ビショップを本来のf1-a6の斜筋に展開するかフィアンケットするかによって分類することができる。

 題材を従来のように戦法に分類しないで「中原の型」の概念を導入したことから、読者の便に供するために本書の10章の内容の要約を掲げる。

 最初の3章は黒が …e5 と指した時生じる色々な閉鎖的中原を取り上げる。

第1章
マルデルプラタ中原 - 白のキング翼ナイトがf3に展開し …Nc6 のあと中原が閉鎖される。黒のクイーン翼ナイトはe7に落ち着く。両者ともほとんど常にキング翼にキャッスリングする。
 図Ⅰ 

第2章
ペトロシアン中原 - 白のキング翼ナイトがf3に展開し、中原が閉鎖され、黒のクイーン翼ナイトがd7かa6に行く。両者ともキング翼にキャッスリングすることが多いが、白は第1章の時よりも融通性がある。
 図Ⅱ 

第3章
ゼーミッシュ中原 - 白のキング翼ナイトはf3に展開しない(fポーンの邪魔にならないようにするため)。中原は閉鎖される。白はキャッスリングについて最大限の融通性を持っている。
 図Ⅲ 

 第4章は黒が …c5 と突いた時に生じる閉鎖型中原を取り上げる。

第4章
アベルバッハ中原 - 黒が …c5 と突き中原が閉鎖される。
 図Ⅳ 

 第5章と第6章は黒が …e5 と突いたあとの中原ポーンの交換を取り上げる。

第5章
単純化中原 - dxe5 dxe5 によってd列が素通しになる。
 図Ⅴ 

第6章
オーソドックス中原 - 黒が …exd4 と取る。
 図Ⅵ 

 第7章は第3章で取り上げられなかったゼーミッシュに対する黒の他の選択肢である。

第7章
ゼーミッシュ戦法対現代中原 - 黒が中原での意図を表明する前にクイーン翼で行動を開始する。
 図Ⅶ 

 最後の3章は白が g2-g3 と突く場合の中原を取り上げる。

第8章
g2-g3 突きに対するオーソドックス中原 - 黒が …e5 突きから …exd4 と取る。
 図Ⅷ 

第9章
ユーゴスラビア中原 - 黒が …c5 と突き中原が閉鎖される。
 図Ⅸ 

第10章
パンノ中原 - 黒が中原での柔軟性を残したままクイーン翼での活動を追求する。
 図Ⅹ 
カバレク中原 - d4-d5 突きのあとc列が素通しになる。中原が固定される。
 図XI 

(この章続く)

2011年02月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(206)

「The British Chess Magazine」2010年12月号(1/1)

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タリ記念大会

 一方ナカムラは悲劇に見舞われた。同点優勝にからむためにはどうしても勝つことが必要で、グリシュクとの黒番で大胆にもオランダ防御レニングラード戦法を採用した。そしてそれが報われて相手を圧倒しはっきり勝ちの収局になった。しかし長い対局の終わりで、明らかに大会全般の疲労から、大きな戦力得の局面を勝ちきることができなかった。


最終戦で勝ちをふいにしたことに気づいた憔悴のナカムラ


□アレクサンドル・グリシュク
■ヒカル・ナカムラ

タリ記念大会
モスクワ、2010年
オランダ防御 (A81)

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nf3 Bg7 5.O-O O-O 6.b3 d6 7.Bb2 c6 8.Nbd2 a5 9.c4 Na6 10.Qc2 Qc7 11.a3 Re8 12.e4 fxe4 13.Nxe4 Bf5 14.Nh4 Bxe4 15.Bxe4 Nxe4 16.Qxe4 e5 17.dxe5 Qb6 18.Qc2 dxe5 19.Bc1 Nc5 20.Rb1 Ne6 21.Be3 Nd4 22.Qe4 Qc5 23.a4 Qb4 24.Kg2 Re7 25.Nf3 Nf5 26.Rfd1 Nxe3+ 27.fxe3 Rf8 28.Rf1 Qa3 29.h4 Ref7 30.Qc2 Qc5 31.Rbe1 Bh6 32.Qe4 Qb4 33.Rb1 Qc3 34.Rbd1 Qxb3 35.Rd3 Qc2+ 36.Rf2 Qb1 37.Rf1 Qc2+ 38.Rf2 Qxa4 39.h5 gxh5 40.Rd6 Bg7 41.Kh3 h6 42.Rg6 Qb4 43.Nh4 Qe7 44.Rd2 Rf6 45.c5 Qe6+ 46.Kg2 Rxg6 47.Nxg6 Ra8

 3ポーン得の黒が楽に勝つと思うだろう。しかしここからおかしな展開が始まる。

48.Qb1 Qf7 49.Rf2 Qd7 50.Kh2

50…Qe6?!

 bポーンを見捨てるのは控え目に言っても直感に反するように思われる。しかし白の直前の手には巧妙な罠が仕組まれていた。当然の 50…a4(「パスポーンは突き進めなければならない」)は 21.Qa2+ Kh7(白の直前の手の意味はここで 51…Qd5?? がチェックにならないことである)52.Qb1 のあと黒は 52…Kg8 と手を繰り返すよりなく引き分けになってしまう。

51.Qxb7 Re8 52.Nh4 Rf8 53.Rxf8+ Bxf8 54.Qa8 Qa2+ 55.Ng2 Qd5 56.Qxa5 Qxc5 57.Qa8 Kg7

 まだ2ポーン得だが、クイーン・ナイト組のために黒が勝つのはもっと困難になっている。

58.Nh4 Qc2+ 59.Kh3 Qe4 60.Qb7+ Kf6 61.Kh2 Be7 62.Qa8 Kf7 63.Qb7 Qc4 64.Qc7 Qe2+ 65.Ng2 Qb5 66.Nh4 Qb2+ 67.Kh3 Qc1 68.Kh2 Qd2+ 69.Kh3 Qd6 70.Qb7 Ke6 71.Nf3 Bf6 72.e4 Qd7 73.Qb8 Kf7+ 74.Kg2 Qe6 75.Kh2 Kg7 76.Qc7+ Kg6 77.Qb8 c5 78.Qf8 c4 79.Qc5 h4 80.Nd2 Qg4 81.Nxc4

81…Qe2+

 まだ完全に勝っているが、どうしてチェックでg3のポーンを取らなかったのだろうか。

82.Kh3 Qxe4 83.Kh2 Qe2+

 84…Qe1 でもg3のポーンを取っても黒がまだ勝っていた。しかしナカムラはついにポカを出し勝ちを逃がした。

84…Qf3?? 85.Nxe5+ Bxe5 86.Qxe5 Qh1+ 87.Kg4 Qd1+ 88.Kh3 Qh1+ 89.Kg4 Qd1+ 90.Kh3 Qh1+ ½-½

 信じられない負けからの復活だった。何年か前ナカムラはスミスロフの試合の分析から得るものがあるという説を一笑に付して多くの伝統主義者の怒りを買った。彼は今違う考え方になっているだろうか。もっとも偉大なワシリー・ワシリエビッチは1手30秒で収局を指す野蛮な実戦に関与しなかったことは確かである・・・

******************************

(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス2

王印防御の完全理解(1)

はしがき

 本書で我々は非常に明確な目標を掲げた。それは戦法をカタログのように紹介するのではなく、それぞれの側の構想や作戦を簡潔かつ分かり易く説明することによって「読んで試す」方式で布局を理解することを教えることである。さらにそのようなやり方で読者は本書の大部分を盤駒を用いずに理解することができる。

 この意欲的な目標を達成するために、中原のポーンが安定した構造になれば、異なったポーン構造になる同じ戦法の異なる戦型同士よりも同じポーン構造になる色々な戦法同士の方が戦略的および戦術的な相似性が強いという原理に従った。この単純なやり方でどんな局面でもその基本的な構想をすぐに理解することができる。これは布局定跡の通常の本の場合と際立った対照を成している。それらの本では体系化が必要なために理解の過程が非常に困難になっている。

 この出発点を定めれば以降は論理的に運ぶ。布局は戦法でなく「中原の型」に従って分類した(型の名前は通常は主要な戦法から取った)。これは同じ戦法の異なる戦型を、遅かれ早かれ決まってくる中原のポーンの形によってある中原の型または他の中原の型で調べられるようにするためである。そしてそれぞれの中原の型の考察は三つに分けて行なわれる。それらは戦略の着眼点の深い分析(最も現代的なものに特に注意を払う)、繰り返し現れる戦術の主題の概説、そして最後にいくつかの実戦例である。実戦例は特に布局を詳細に解説するので(読者はここでは盤駒を用いなければならない)、二つの理論的な節との実戦的な対応だけでなくいくつかの代表的な戦法をまのあたりにするだろう。実戦例を注意深く読むことは以前に詳述された戦略の着眼点を完全に理解するために欠かせない。

 もちろんすべての布局の戦法から生じる可能性のある中原の型を全部考えることは不可能である。考察する中原の構造は最も重要かつ普通に見かけるもので、考えられるもののうち少なくとも85%を含んでいる。考察の対象とならないもの(それらはすべて重要でない変化である)については従来の参考書を参照されたい。

 執筆に際してはどちらかの側に偏することなくできるだけ客観的な観点を維持するように努めた。それにより中原の型のそれぞれの構想を公平に解説できたものと期待している。中原の型の構想を知ることは白を持つにせよ黒を持つにせよ必要不可欠である。

 この「作品」は広範な棋力の選手が利用できる。初心者は布局の基礎を学ぶために利用できる。熟達者は戦法の幅を迅速に広げる必要性のために、またはまったく新たに布局のレパートリーに取り入れるために利用できる。もちろん強豪選手は戦法や最新の考え方のもっと深い知識が必須なので、本書を体系的な教科書と共に用いなければならない。

 我々の希望は読者が我々の解説を明快であると思い学び楽しみそして棋力を速やかに向上させることである。その時初めて「読んで試す」方法は成功したと言える。

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カテゴリ: 王印防御の完全理解

ルイロペスの完全理解(297)

戦法一覧

 これはかなり特殊な戦法一覧なので説明した方が役立つだろう。左側には従来の分類による戦法(Variations and illustrative lines)と枝分かれした細かい戦法を掲載した。これらの細かい戦法は一つの主戦法にまとめられているが、同じような中原の型によって別の章にもよく現れる。

 最初のパーセントの列は白の勝率、引き分け率、黒の勝率の順に並んでいる。(これらの統計は関連した戦法も加えて集計している場合もあるので参考程度の意味しかない。)次の列は戦略(Strategy)と戦術(Tactics)の順でそれらの観点から戦法の難解さの程度を表わしている。程度は1から5までの5段階である。その次の列は戦法の出現頻度(frequency)である。

(クリックすると全体が表示されます)

(完)

世界のチェス雑誌から(111)

「Chess」2010年11月号(10/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日

 休日のあとの回戦は出来事が多かった。グルジアとアルメニアの首位決戦は2-2の引き分けだった。ガブリエル・サルギシアンがアルメニアの前回のオリンピアード優勝の立役者だったが、グルジアの24歳のGMレバン・パンツライアに小駒収局でいいところなく負かされた。これでこのアルメニア選手のオリンピアード28戦連続負けなし記録が途絶えた。前回負けたのは2004年カルビアでの早い回戦にさかのぼる。アルマン・パシキアンがガグナシビリに勝ってまたチームの危機を救った。この対戦の引き分けでウクライナが漁夫の利を得て首位を奪うことができ、ハンガリーの善戦も押しのけた。雑誌としてはハンティ・マンシースクでのイワンチュクのほぼ全局を掲載したいところである。しかし次の1局だけは絶対欠かせない。なにしろ盤の両翼で緩急自在に指し回して超一流の相手を負かしたのである。

第6回戦 ウクライナ対ハンガリー
V・イワンチュク - P・レーコー
準スラブ防御

1.Nf3 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.d4 c6 5.e3 Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.Bd3 O-O 8.O-O dxc4 9.Bxc4 a6 10.Rd1 b5 11.Bd3

 この手は少し変わっている。このビショップは普通はe2に下がる。

11…Qc7 12.Bd2 c5 13.dxc5 Qxc5

14.a4

 2008年アムステルダムNHでのユスーポフ対ステルワヘン戦では 14.Ne4 Qxc2 15.Bxc2 と進んだところで引き分けが合意された。本局は未知の領域に入った。

14…bxa4

 代わりに 14…b4 15.Ne4 Qxc2 16.Bxc2 Be7 も理にかなった手だろう。

15.Rxa4 Bb7 16.Rc4!?

16…Qa7?!

 この手のあと白が優位に立った。フリッツの好みは 16…Bxf3!? 17.Rxc5(17.gxf3? Qh5 は白が非常にまずそうである)17…Bxd1 18.Nxd1 Nxc5 で、黒がクイーンの代わりに2ルークとしっかりした陣形を得ている。実戦はイワンチュクのはったりが通ったようである。

17.Ne4 Nxe4 18.Bxe4 Bxe4 19.Qxe4

19…Rac8

 この手は不正確かもしれない。代わりに 19…Rfc8 ならクイーンがa8のルークで守られているので黒は 20.Qd4 に 20…Rxc4 と応じることができる。

20.Qd4! Bc5

 20…Qxd4?? は 21.Rxd4 でd列の黒駒の一つが落ちるのでたちまち負けになる。

21.Qc3

21…Rcd8

 22.b4 の狙いを許すとすぐに試合が終わってしまうが、21…Rc7 の方が頑強な受けだったかもしれない。

22.Qc2!

 このクイーンの動きも絶妙である。キング翼で詰ますぞの Ng5 とd列を脅かす Ba5 の狙いがある。

22…Rfe8

 ナイトをg5に来させない 22…h6 が同じキング翼の弱体化でもまだましのようである。もっとも白にはまだ主導権がある。

23.Ng5

23…g6

 d7のナイトはc5のビショップを守っていなければならないので、キング翼の守りに駆けつけることはできない。他の手は 23…f5 しかないが、白は 24.Ba5 Bb6 25.Bxb6 Nxb6 26.Rc6 と指すことができ、e6のポーンが浮き草になる。

24.Ba5 Bb6

 ルークが逃げれば Rxd7 から Rxc5 で白が戦力得になるのでこう指す必要がある。しかしビショップがb6にいることによる障害はこれがもうキング翼の助けに行けないことである。

25.Bc3!

 黒のビショップがいないので白はキング翼の黒枡を支配することができる。

25…e5

 25…Bxe3 は期待薄だが(25.fxe3? Qxe3+ から 26…Qxg5 が望み)、白には仕返しのはるかに強力な妙技がある。26.Nxh7! で決まっている。黒は Rh4+ から Rh8# があるので取れないし、Rxd7 から Nf6+ の狙いにも対処のしようがない。

26.Ne4 Re6

 この手は 27.Rxd7+ から 28.Nf6+ の狙いに備えた。

27.Bb4 Kg7 28.Rc6 Nf6 29.Rxe6

29…fxe6

 29…Rxd1+? はよけいな手で、30.Qxd1 fxe6 31.Qd6 で白に狙いがありすぎる。

30.Nxf6 Kxf6

31.Ra1?!

 31.Rxd8 Bxd8 32.Qe4 の方が適切のようである。

31…Qb7

 31…Qd7 の方が積極的な指し方のようである。

32.Bc3 a5 33.Qa4

33…g5?

 これで白がキング翼を開放的にすることができる。コンピュータの絶妙な受けは 33…Qd5 34.Qf4+ Ke7 35.Qh4+ Kf8 36.Qf6+ Kg8 37.h4 Bc7 で、驚くほどつぶれにくい。

34.h4 h6 35.Qg4 Qh7 36.Qh5

36…Qg6

 これはポカだが、36…Rd7 37.Bxa5 Bxa5 38.Rxa5 Qb1+ 39.Kh2 Qg6 40.Qxg6+ Kxg6 41.hxg5 hxg5 42.Rxe5 Kf6 43.Rb5

で、しょせん終わりである。

37.Bxe5+ Kf7 38.Qf3+ Kg8 39.Qc6 1-0

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(296)

第10章 バード中原(続き)

10.3 実戦例(続き)

 図363(再掲)

 白の追求してきた目的はここで明白になった。黒は弱体化したd4ポーンを適切に支援することができなくなっている。白は b3、Bb2 から Qf3-f2 でこのポーンを容易に攻撃することができる。

19.b3 Kh7 20.Bb2 Qb6 21.Qf3 Re8 22.Qf2!?

 白はd4ポーンを飲み込む作戦を続けている。それから生じる収局はポーン得で陣形も圧倒的に優っているので白にとってかなり楽な勝ちになるはずである。白はd5ポーンを取ってしまうこともできた。22.Qxd5 Rd8 23.Qf7 となれば黒は非常に身動きが不自由である。

22…Bxe5 23.Rxe5 Rxe5 24.Bxd4

 この挿入手は必要である。24.fxe5? は白駒の利き筋を閉ざし黒の受けを助けてしまう。

24…Re2

 この手はクイーン交換を強制している。

25.Bxb6 Rxf2 26.Bxf2 Kg7

 この手は白ルークがe列から侵入してくるのを防ぐために必要である。盤上にまだルークが残っているので異色ビショップになっても黒の望む引き分けになりそうもない。

27.a4!

 この手からクイーン翼の黒ポーンを封じ込め、g1-a7の斜筋上で自分のキングの介入経路を容易にする的確な作戦が始まる。

27…Be6 28.a5 a6

 ルークを動かすためには明らかにこう突かざるを得ない。

29.Bd4+ Kf7 30.Kf2 Rc8 31.Ra2 g5 32.Be5 Kg6 33.Ke3 Kh5

 黒は Kd4 から c4 の狙いに直面してかしこまってはいられない。

34.Kd2?!

 この手は少し不正確である。すぐさまd4の地点に行った方が良かっただろう。

34…Rg8 35.g3 Kg4 36.Ke3 Kh3 37.c3

 ここで 37.c4 Rd8 は白キングがg1-a7の斜筋に沿って前進を続けるのが1手遅すぎる。例えば 38.fxg5 hxg5 39.Bf6 Re8 40.Kd4 dxc4 41.bxc4 f4 である。

37…d4+?

 キング翼での反撃が阻止されたのを見て黒はh2のポーンを包囲攻撃する最後のあがきを続けようとしている。しかし 37…Rc8(38.Kd4 Rd8 39.Kc5 Rd7)による消極的な受けでは少し長持ちするだけだろう。

38.Kxd4 Rd8+ 39.Ke3 Bxb3 40.Rb2 Bd5 41.c4 Bg2 42.Rb6 Bf1

 42…Kxh2 なら 43.Rxh6+ Kxg3 44.fxg5+ Kg4 45.g6 Kg5 46.Rh2 のあと g7 から Rh8 である。

43.Rxh6+

 43.Kf2! なら即勝ちだった。例えば 43…Bxd3 44.Rxh6+ Kg4 45.h3# である。

43…Kg2 44.d4 g4 45.c5 Bc4 46.Rf6 1-0

 46…Kxh2 のあと 47.Kf2 Rh8 48.Rxf5 Rh3 49.Rg5 Be6 50.f5 で白の簡単な勝ちである。

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(295)

第10章 バード中原(続き)

10.3 実戦例(続き)

 図362(再掲)

 黒は陣形的に最高の結果を達成することができた。しかしキングが非常に露出しているので相手の絶え間ない主導権に耐え忍ばなければならない。10…cxd5 11.Qh5+ g6 12.Qh6 Ng8 13.Qg7 Qf6 14.Re1+ Kd8 も考慮してみる価値があった。

11.Re1+ Kf8

 白は 11…Kf7 12.Nd2 Re8 のあと 13.Qh5+ Kf8 14.Rxe8+ Qxe8 15.Qxe8+ Kxe8 16.Bxd5 cxd5 と局面を単純化してから 17.Nf3 Bd7 18.b3 Rc8 19.Bb2 でd4ポーンの弱さを浮き彫りにすることもできた。

12.Qh5 g6

 他のどの手でも白がd5の地点での交換によって黒陣に修復できない被害を与えることができる。例えば 12…Bd7 13.Bxd5 cxd5 14.Nd2(14.Re5 Bd6 15.Rxd5 Be6 は形勢不明である)14…Qf6 15.Nf3 となれば、Rh8 の悪形と、d4ポーンそれにe5の地点の弱点のせいで黒陣がもたない。

13.Qh6+ Kg8 14.Nd2 Bf8 15.Qh3 Bg7 16.Nf3 h6 17.Ne5 Qf6 18.Bxd5+! cxd5(図363)

 図363

(この章続く)

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チェス布局の指し方[50]

eポーン布局

第7章 フランス防御(続き)

ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4(図73)

 図73(白番)

 この手からビナベル戦法が始まる。この戦法はフランス防御群の中で黒の最も人気のあるシステムになっている。黒の戦略はクイーン翼で厳しい攻撃を仕掛けることである。白はたいていキング翼で活動する。そこなら黒の守られていないgポーンを攻撃することによって黒のキング翼ビショップがいなくなったことにつけ込もうとするかもしれない。戦いはフランス防御の他のほとんどの戦法よりもはるかに複雑になる可能性がある。両者のキングはしばしば真ん中で立ち往生することがある。

 白のクイーン翼ナイトを釘付けにした本譜の手は白のeポーンに対する攻撃を再開し、ルビーンシュタイン戦法の 3…dxe4 よりはるかに積極的である。ルビーンシュタイン戦法は 4.Nxe4 Nd7 5.Nf3 Ngf6 6.Nxf6+ Nxf6 7.Bd3 で白が有望になる。

4.e5 c5

 白は中原で進攻し、黒は新たにできた連鎖ポーンの根元を攻撃することによって迅速に応じている。

5.a3

 釘付けが非常に厄介になってきたので白は非展開の手を指す代価を払ってもそれを終わらせることにした。釘付けをはずす別の方法は 5.Bd2 だが、この控えめな手は黒に問題を突きつけない。5.Bd2 のあと黒の最善手はキング翼をすみやかに展開する 5…Ne7 である。5…cxd4 と応じるのは 6.Nb5 という手があるので悪い。これで黒ビショップは適当な引き場所がなく(6…Be7 はキング翼ナイトの邪魔になり、6…Bc5 は 7.b4 と調子よく突かれる)、ビショップ同士を交換すればd6の地点が弱くなる。

5…Bxc3+

 黒は 5…Ba5 で釘付けを維持することはできない。なぜなら 6.b4! cxb4 7.Nb5 bxa3+ 8.c3 Bc7(9.Nd6+ を防ぐため)9.Bxa3 となって、白が展開で優位に立ち、犠牲にしたポーンの代わりに攻撃が強力になるからである。

6.bxc3 7.Ne7

 黒は白クイーンがやって来て対処しにくくなる前にキング翼の展開を図った。

7.Qg4

 これは白の最も激しい手である。7.Nf3 なら黒は普通に展開し陣容を固めることができる。そのあとは白のクイーン翼のポーン形が弱点になっているので黒が適切な反撃を行なうことができる。

7…cxd4

 7…O-O なら白は単純な展開で強力な攻撃態勢になる。例えば 8.Nf3 Nbc6 9.Bd3(h7で切る狙い)9…f5 10.Qg3! という具合である。

 本譜の手は黒の迅速な反撃の作戦に論理的によく合っている。

8.Qxg7 Rg8 9.Qxh7

 これで白は黒のキング翼の破壊を完了した。しかし盤の反対側の状況は白が展開で遅れているせいではなはだ不透明である。

9…Qc7

 これで黒は …Qxc3+ と …Qxe5+ という強力な狙いができた。

10.Kd1

 これは面白い受けである。10…Qxe5 11.Nf3 と 10…Qxc3 11.Rb1 は白の展開を助けるので良くない。しかし現在もっと人気のある選択肢は 10.Ne2 Nbc6 11.f4 Bd7 12.Qd3 dxc3 で、非常に難解である。

10…Nbc6

 別の駒を戦いに投入し白のeポーンをさらに狙っている。

11.Nf3

 白は急いで別の駒を攻撃に参加させ、12.Ng5 でf7の地点を狙う作戦に出た。

11…dxc3

 犠牲にしたポーンを取り戻した。

12.Ng5 Nxe5 13.f4

 この手は守りのナイトを追い返そうとしている。黒の次の手はほとんど必然である。

13…Rxg5 14.fxg5 N5g6(図74)

 図74(白番)

 黒は白のクイーンを閉じ込め 15.Qh8+ を防いだ。ここまでケレスの分析を追ってきて非常に興味深い局面に至った。黒は交換損に対してかなりの代償を得ている。即ちポーンを得し、中原の可動ポーン群は堂々たるものである。両者のキングはいくらか露出しているが白の方が程度が大きい(黒キングは …Bd7 から …O-O-O で比較的安全になる)。さらに白のクイーンは働いていない。この局面は非常に難解で、各自の研究の余地が非常に大きい。

(この章続く)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(294)

第10章 バード中原(続き)

10.3 実戦例(続き)

 図361(再掲)

 すぐに 5…c6 と突くと白が展開の優位を生かすのがかなり容易になる。例えば

 (1)6.Ba4 Nf6(もっとゆっくりした作戦は白が目障りなd4のポーンを c3 突きによって交換し易くなる。例えば 6…Ne7 7.Re1 g6 8.c3 Bg7 9.cxd4 O-O 10.d3 d5 11.Nc3 または 6…d6 7.d3 Be7 8.Nd2 Nf6 9.c3 dxc3 10.bxc3 O-O 11.Bc2 あるいは 6…g6 7.c3 Bg7 8.cxd4 d5 9.exd5 でどれも白が優勢である)7.d3(白にはe4のポーンを 7.Re1 で守りながら c3 と突く構想もある)7…d5 8.Bg5 dxe4 9.dxe4 Be7 10.e5 Nd5 11.Bxe7 Nxe7 12.Bb3 O-O 13.Nd2 で白が指し易い。

 (2)6.Bc4 Nf6(6…d5 はたぶん時期尚早である。例えば 7.exd5 cxd5 8.Re1+ Ne7-8…Be7 9.Bb5+ Bd7 10.Qg4 は白が良い-9.Bf1 Be6 10.c3 Qd7 11.Na3 Nc6 12.Qa4 Be7 13.Nc2 で白が優勢である)7.Re1 d6 8.c3 Ng4 9.h3 Ne5 10.d3 Nxc4 11.dxc4 dxc3 12.Nxc3 で白がいくらか優勢である。

 本譜の手で黒はd4のポーンをしっかり支持し、白の c3 突きに基づく作戦を思いとどまらせている。同時に …c6 から …d5 と突く中原拡張作戦をやめることなくキャッスリングする準備を始めた。白の方は c3 突きにすべてを賭け続けるか、d3 と突いて中原をしっかりさせてからキング翼で f4 突きで攻勢をかけるかを選択できる。

6.d3

 白はまだ c3 突きの作戦を選ぶことができるので、この手自体は白が f4 と突いていく意図について何も語っていない。

 白には他の可能性もある。

 (1)6.Qh5 Qe7(6…Bb6 なら 7.Qe5+)7.d3 Nf6 8.Qh4 c6 9.Bc4(9.Ba4 も考えられる)9…d5 10.exd5 Nxd5 11.Bg5 f6 12.Bd2 Be6 展望は両者ともほぼ互角である。

 (2)6.Bc4 d6 7.d3(7.c3 には 8.cxd4 Bxd4 9.Qa4+ Bd7 10.Bxf7+ という危険な狙い筋があるが、たぶん単刀直入の 7…c6 のあと …Ne7 から …O-O が本筋だろう)7…Nf6 8.Bg5 h6 9.Bh4 Be6 活発な戦いが予想される。

6…c6

 6…Ne7 は 7.Qh5 で黒は Bc5 に対する攻撃を …d6 でも …d5 でもかわすことができず、7…Bb6 で手損しなければならないだろう。これにより白の主導権はずっと効果的になる。例えば 8.f4 c6 9.Ba4 O-O 10.f5 で確実に優勢である。

7.Ba4

 代わりに中原で黒に孤立二重ポーンを作ることを誘う 7.Bc4 もよく指されている。例えば 7…d5(もちろん 7…d6 も可能である)8.exd5 cxd5 9.Bb3(または 9.Bb5+ Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.Nd2 Ne7 13.Nb3 Bb6 でどちらも指せる)9…Ne7 で、実戦では陣形の優位を実証するのにかなりの問題に出会うことが分かっている。例えば

 (1)10.Qh5 O-O 11.Nd2 a5 12.a3 a4 13.Ba2 Ra6 14.Nf3 Rg6 どちらも指せる。

 (2)10.Re1 O-O 11.Qh5 Be6 12.Nd2 a5 13.a4 Bb4 14.Re2 Qd7 15.Nf3 Bg4 16.Qg5 Bxf3 17.gxf3 Ra6 黒が優勢である。

 (3)10.c4 O-O(10…dxc3e.p. は 11.Nxc3 O-O 12.Re1 h6 13.Bf4 Be6 14.d4 Bb4 15.Re3 で白が少し優勢である)11.cxd5 Nxd5 12.Nd2 Ne3 13.fxe3 dxe3 14.Qh5 exd2+ 15.Qxc5 dxc1=Q 16.Raxc1 Be6 互角の形勢である。

7…Ne7 8.f4

 白は目的を明らかにした。しかしこの方針は6手目と7手目の必然の結果ではない。白はまだ c3 突きを伴う別の作戦を選ぶ余裕があった。例えば 8.Qh5 d5(または 8…d6 9.Nd2 Be6 10.Nf3 O-O 11.Ng5 h6 12.Nxe6 fxe6 13.Bd2 で白が少し優勢)9.Nd2 O-O 10.Nf3 a5 11.c3 dxc3 12.bxc3 f6 13.Re1 Bd6 でどちらも指せる。

8…f5?

 この手は白の膨張策を押さえる主眼の対抗策である。しかしこの場合は間違いであることが分かってくる。というのはa2-g8の斜筋を早く弱めると黒はキャッスリングを放棄させられるからである。黒はたぶん中原で迅速に 8…d5 と応じて捌く余地を作るよう努めるべきだった。例えば 9.f5 dxe4(9…g6? は 10.f6 で、9…f6? は 10.Qh5+ で悪い)10.dxe4 d3+ 11.Kh1 dxc2 12.Qxc2 Bd4 13.Rd1 Qb6 ならクイーン翼キャッスリングの選択が残っている。

9.Bb3!

 単純な手だが非常に効果的である。衝動的な 9.Qh5+ は 9…g6 10.Qh6 Ng8! 11.Qg7 Qf6 で互角以外の何ももたらさない。

9…d5

 これは明らかに仕方がない。なぜなら前の解説の変化が現実の狙いとなっているからである。例えば 9…d6? ならば 10.Qh5+ g6 11.Qh6 Ng8 12.Bxg8 Rxg8 13.Qxh7 である。

10.exd5 Nxd5(図362)

 図362

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(293)

第10章 バード中原(続き)

10.3 実戦例

第15局
カームスキー対イワンチュク
ティルブルフ、1990年
バード戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nd4

 これがバード戦法を識別する手だが、同じ名前の中原は他の戦型からも生じることがある。

 例えば反マーシャルシステムでは 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 Bb7 9.d3 d6 10.Bd2 Nd4 11.Nxd4 exd4 から生じる。ここで白は c3 突きでd4のポーンに対し速攻をかけることにより優勢を勝ち取ることができる。なぜなら黒はこのポーンに有効な支援をする手段がないからである。だから黒はおとなしく …dxc3 で折り合いをつけなければならない。

 3…g6 の戦法ではこの中原は 4.Nc3 Nd4 5.Nxd4(5.Nxe5? は 5…Qg5 で良くない)5…exd4 から生じる。このあと 6.Ne2 に黒が単刀直入の 6…Bg7 を選べば、本章で概説した戦略の規準に沿って展開が行なわれる。6…Qg5 なら 7.Nxd4 Bg7 8.e5 で独自の進行をたどる。

 最後に、次のようなバード戦法の遅延版もある。3…a6 4.Ba4 Nd4 5.Nxd4(5.Nxe5?! b5 6.Bb3 Nxb3 7.axb3 Qg5 は第1局の黒の4手目の解説で言及したタイマノフ戦法の1戦型に移行する)5…exd4 しかし …a6 と Ba4 の挿入はたぶん白がかなり有利だろう。というのは白の白枡ビショップがもう …c6 突きで当たりにならないし、黒陣には同じような利点が見当たらないからである。

4.Nxd4 exd4 5.O-O

 白が展開で優位に立とうとするこの手は最も理にかなった手で、一番好まれている手でもある。それでも …c6 突きで当たりにならないうちに白枡ビショップを引いておくことはできる。例えば 5.Bc4 Nf6(ここでは主眼の 5…Bc5? は 6.Bxf7+ Kxf7 7.Qh5+ という戦術にひっかかるため悪手となる)6.O-O(6.Qe2 なら黒は白のクイーンとキングが同じ列上にいることに戦術的につけ込んで次のように展開を完了することができ好形になる。6…Bc5! 7.e5 O-O 8.O-O d5)6…Nxe4 7.Bxf7+(主眼の戦術手段)7…Kxf7 8.Qh5+ g6 9.Qd5+ Kg7 10.Qxe4 Qf6 11.d3 Bc5 12.Bd2 これで c3 と突く狙いで白がわずかに優勢である。

5…Bc5(図361)

 図361

(この章続く)

2011年02月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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JCAの間違い捜し(12)

第116回チェスネット競技会 2月号

http://www.jca-chess.com/web-kyougikai116.html

「ヒント:黒が先手なら1.Rh8#です。」 自分で自分のキングを詰めるなら「ヘルプメイト」の問題です。

そもそも白先で勝つのに3手も要しません。1.Ra8# の一発詰です。それをちょうど3手で勝てと言われると急に難問になってしまいます。

2011年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(292)

第10章 バード中原(続き)

10.2 戦術の狙い所(続き)

白のビショップの捕獲

 白はこの単純な状況でもキング翼ビショップに注意していなければならない(図360)。

 図360

 ここでは白は …c6 に対して Bc4 と応じなければならない。Ba4 は …Qa5+ でビショップを取られる。

(この章続く)

2011年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(205)

「Chess Life」2010年11月号(4/4)

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海外の米国選手

アムステルダムNHで若者が勝利(続き)

 ブリッツ戦はドタバタのポカ合戦になるのが普通だが、ナカムラが決定戦最終局でギリに勝った試合は非常に見ごたえのある内容だった。

クイーン翼インディアン防御 (E15)
□GMアニシュ・ギリ (FIDE2672)
■GMヒカル・ナカムラ (FIDE2729)
2010年アムステルダムNH決定戦第2局

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.g3 d5 4.Nf3 Bb4+ 5.Bd2 Be7 6.Bg2 c6 7.O-O O-O

8.Qc2

 8.Bf4 dxc4 9.Ne5 b5! 10.Nxc6 Nxc6 11.Bxc6 Bd7!

は今年前半のアーナンドとの世界選手権戦の一局でトパロフが作戦勝ちを収めた。

8…b6 9.Rd1 Ba6 10.b3 Nbd7 11.Bf4 Rc8 12.Nc3 c5

13.dxc5?!

 13.cxd5! cxd4 14.Nxd4 Nxd5 15.Bxd5 exd5 16.Qb2

がわずかな優勢を確保する最善の機会だった。

13…Bxc5 14.a3?! b5! 15.b4?!

 これは明らかに黒を押し返そうという手だが、ギリは突然ショックに見舞われた。

15…Bxf2+!! 16.Kxf2 Rxc4!

17.Rd3

 どうと倒れていく手だが、17…Rxc3! の狙いは致命的で、白キングが逃げるのは 17…Ne4 18.Rd3 Qf6 で圧力に耐えられない。

17…e5!

18.Bg5

 18.Bxe5 も 18…Ng4+ でやはり悪い。

18…e4 19.Rxd5 Qb6+ 20.Kf1

20…Nxd5

 ここからの清算で勝ちが決まったが、20…Rxc3 も同様に強手だった。

21.Nxd5 Rxc2 22.Nxb6 exf3 23.Nxd7 fxg2+ 24.Kf2 Re8 25.Be3 Bc8 26.Nc5 Bg4 白投了

 27.Re1 には 27.Rxe2+ が決め手である。

 このみごとな指し回しにナカムラは1手平均5秒未満しか要しなかった。

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(この号終わり)>

2011年02月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(291)

第10章 バード中原(続き)

10.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の …Nxe4

 キング翼ビショップの露出に注意していなければならないのが白の時もある(図359)。

 図359

 例えばこのような状況では単純な狙いの …Nxe4、Rxe4 d5 で黒が駒を取り返しはっきり優勢になる。

(この章続く)

2011年02月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(290)

第10章 バード中原(続き)

10.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の Bxf7+

 既に目にする機会があったが黒のキング翼ビショップはd4のポーンを守るためにしばしばc5の地点に展開する。白のキング翼ビショップがa2-g8の斜筋上にいるとき危険な状況が生じる可能性がある(図355)。

 図355

 この図は一番単純な場合である。白は Bxf7+ Kxf7、Qh5+ から Qxc5 と指すだけでポーンを得すると共に黒キングをキャッスリングできなくさせる。

 同じ主題はもっと複雑な形から起こることがある(図356)。

 図356

 ここでは Bc5 が守られている(だから図355の戦術は通用しない)。それでも白は次のようにもっと露出した状態にすることができる。cxd4 Bxd4、Qa4+ c6、Bxf7+ から Qxd4 で前例と同じ結果になる。

 時には黒のナイトも攻撃にさらされる(図357)。

 図357

 ここでは e5 突きのあと …dxe5?(fxe5 に …Nd5 と応じるつもり)で中央突破を無効にできると信じるのは間違いである。なぜなら Bxf7+ Kxf7、fxe5 で白が駒を取り返し黒キングを露出させるからである。

 最後に次の例ではf7への擬似捨て駒がe4ポーンの間接的守りとして働いている(図358)。

 図358

…Nxe4?、Bxf7+ Kxf7、Qh5+ のあと黒は …Ke7、Qe5+ から Qxe4 によって駒を返さざるを得ない。なぜなら他の手はなおさら悪いからである。…Kg8? は Qd5# で頓死するし、…Ke6、Qg4+ Ke5 のような冒険は布局では薦められない。

(この章続く)

2011年02月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(110)

「Chess」2010年11月号(9/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第5回戦 9月25日(続き)

 イングランドはフランスと引き分けた。これは両チームにとって満足すべき結果である。デイビド・ハウエルは指し方がかなり消極的で、相手のきれいな手筋にしてやられた。しかしフレシネと対戦したナイジェル・ショートは絶好調だった。フレシネは 1.e4 に 1…e5 と応じたがたぶんこれが間違いの元で、19世紀のロマン主義への門戸を開いた。

第5回戦 イングランド対フランス
N・ショート - L・フレシネ
2ナイト防御マックス・ランゲ攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6

 これは元世界選手権挑戦者に好みの「ロマン主義」布局をやってこいという招待状である。ショートは舌なめずりして受けた。

3.Bc4 Bc5 4.O-O

 ショートは最強の相手にも 4.b4 と指すことを恐れたためしがなく、しばしば目を見張らせるような勝ちを収めてきた。しかし最後に指した2009年フィリッポフ戦では負けている。

4…Nf6 5.d4

5…exd4

 黒はマックス・ランゲ攻撃への移行の誘いを受け入れた。これは 3…Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 という手順から生じる方が普通である(扇動者の名字と名前が付けられているのも普通ではないかもしれない)。代わりに 5…Bxd4 6.Nxd4 Nxd4 という手順もあり、2009年コーラス大会でのモブセシアン対アダムズ戦ではここから 7.f4 d6 8.fxe5 dxe5 9.Bg5 Qe7 10.c3 Be6 11.Na3 と進み、結局白がこの意表の古風な布局に勝ちを収めた。

6.e5 d5 7.exf6 dxc4

8.fxg7

 ここでは 8.Re1+ の方がよく指されている。タルタコワは本譜の手を「時期尚早」として退けた。残念ながら彼の時代は布局データベースなどなかった。それによると本譜の手の方が 8.Re1+ よりもかなり良い成績を収めている。

8…Rg8 9.Bg5

 これは「新手」だが、本当に骨董的な他の手と比較しての話である。この手は96歳にしかすぎない。初めて用いたのは1914年にバーデンバーデンでタルタコワと対戦したファールニである。

9…f6

 1909年サンクトペテルブルクでのミーゼス対タイヒマン戦では 9…Be7 10.Re1 Be6 11.Bxe7 Kxe7(他の取り方なら白がd4のポーンを取れる)12.Nbd2 と進んだ。結果はミーゼスの負けだったが、この戦型の最近の結果は白が非常に良い。

10.Re1+ Kf7 11.Bh6

11…Kg6

 これまで三種類の手が指されてきたがどれもぱっとしない。11…Bf5 12.Nh4 Bg6 13.Qf3 は白が良さそうである。11…Ne7?! 12.Nh4 Ng6 13.Qh5 は白がもっと良い。11…Qd5 12.Nc3! Qf5 13.Ne4 Qh5 14.Qd2 は白がはっきり良い。フリッツの推す手は本譜の手と 11…Rxg7!? である。たぶん 11…Re8!? がもっともまともな手かもしれない。

12.Qc1 Qd5 13.Nh4+

13…Kf7

 13…Kh5 をあからさまに咎める手はない。しかし盤上にこんなに駒が残っているのにキングがのこのこ出てくるのは身の毛もよだつ。14.Qd2!? Kxh4 15.Nc3 Qd8 16.Qe2 となれば 16…Bg4 17.Qxc4 Kh5

と指すしかなく、ここから 18.Bd2 Kg6 19.Qxc5 dxc3 20.Bxc3 となって白に駒損の代償が豊富にある。

14.Nd2 Qh5 15.Ne4 Qxh4 16.Nxc5

16…Kg6

 16…Bf5 の方が良いかもしれない。

17.Bf4 Rxg7 18.c3 d3 19.b3

 フリッツはここで黒の手として 19…Na5 や 19…Qh5 を推している。しかし実のところ局面は黒にとって悲観的である。

19…b6?

 これはナイトの宿舎のc6を弱め、白が主導権を握った。

20.Ne6 Bxe6 21.Rxe6

21…Ne7?

 21…Nd8 は 22.Re8 で、白の攻勢に黒が受け一方になるが、実戦はもっと悪そうである。

22.Qe3 Re8

 22…Nf5 は 23.Qe4 で白クイーンが盤上を席巻する。

23.Qe4+ Kf7 24.g3 d2

25.Qxc4

 25.Bxd2? は 25…Qxe4 26.Rxe4 cxb3 27.axb3 となって白の優位はほんのわずかしかない。白はクイーンを残すことが勝利への手がかりである。

25…Kf8

 25…b5 で白クイーンをそらすのは 26.Rxf6+! Kxf6 27.Be5+! Kxe5 28.Qxh4 となって白の楽勝になる。

26.Rd1 b5 27.Qe4 Rd8

 黒はどうやっても負けなので破れかぶれでかなり見え見えのはったりをかけた。

28.Rxe7! Qh5

 28…Rxe7 29.Qxe7+ Kxe7 30.gxh4 は簡単に読めるが、実戦の手は正確な応手が必要である。しかしこれも見つけるのは難しくない。

29.Qe2 1-0

 29…Rxe7 30.Qxh5 Re1+ 31.Kg2 で何事も起こらない。

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(289)

第10章 バード中原(続き)

10.2 戦術の狙い所

 この型の中原ではいくつかの単純で再現性のある戦術の手段が生じる。そのほとんどは(両陣営の)キング翼ビショップが守られていないことに基づいている。

(この章続く)

2011年02月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(288)

第10章 バード中原(続き)

10.1 戦略の着眼点(続き)

f2-f4 突き

 既に述べてきたように白はd4ポーンの存在を無視して、f2-f4 突きに基づく中原からキング翼にかけての盛り上がりの作戦を実行に移すことができる(図353)。

 図353

 f2-f4 突きはさらに f4-f5-f6 と突いていく先触れになるかもしれない(必要ならばeポーンで支援することができる)。そして3段目でのキング翼ルークの介入に道を開く。これはd1-h5の斜筋に沿ったクイーンの襲撃に強力な援軍となる。

 キング翼の守りの手薄さを考えれば黒は敵の攻撃を座視することができないことは明らかである。黒はクイーン翼にキャッスリングしてキングの安全を確保できない時は、…f7-f6 突きまたは …f7-f5 突きの手段で敵の攻撃の意図を封じ込めようとする(図354)。

 図354

 そのような戦略を適用するに際して黒はa2-g8とh5-e8の斜筋の弱体化の帰結を慎重に推し量らなければならない。とりわけ中原からクイーン翼にかけて盛り上がる自分の意図を忘れてはならない。

(この章続く)

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