2011年01月の記事一覧

チェス布局の指し方[49]

eポーン布局

第7章 フランス防御(続き)

古典戦法

1.e4 e6 2.d4

 これは明らかに 1…e6 に対する最も攻撃的で自然な応手である。白はこの手で中原における態勢を強化し、自分の駒のために陣地を広げ展開のためにより多くの筋を開けている。

2…d5(図71)

 図71(白番)

 黒の希望はd5の地点に「橋頭堡」を確立することと白の中原ポーンを固定することである。自由に動ける中原は閉鎖的な中原よりも攻撃の道具としてはるかに強力である。

3.Nc3

 白は駒を展開しながらeポーンを守った。これは白の最も自然な3手目だが、3.Nd2 と 3.e5 もよく指されている。この二つの手は別の節で取り上げる。3.exd5 はあまり勧められない。なぜなら 3…exd5 のあと黒のクイーン翼ビショップが自由に動けるようになるからである。ガリー・カスパロフはこの退屈そうな交換戦法でも面白い試合を指していた。このことはチェスがいかに深遠で可能性に富み魅力的かを示している。

3…Nf6

 黒も駒を展開し白のeポーンに圧力をかけ続けている。これに代わる重要な手は 3…Bb4(ビナベル戦法)で、次節で取り上げる。

4.Bg5

 これも自然な手で、駒を展開し黒のナイトを釘付けにしてeポーンへの攻撃を緩和している。本譜の手で白は 5.e5 を狙っている。すぐに 4.e5 Nfd7 5.f4 と指すのもよく指されていて、本譜の戦法と似た戦いになる。

4…Be7

 これは黒のキング翼ナイトへの釘付けをはずす最良の手段である。代わりに 4…Bb4(マクカチオン戦法)は 5.e5 h6 6.Bd2 Bxc3 7.bxc3 Ne4 8.Qg4 と進み難解な局面になる。

5.e5

 eポーンをe4の地点に維持する適当な方法はない。例えば 5.Bd3 は 5…Nxe4 6.Nxe4 dxe4 7.Bxe4[訳注 Bxe7 が抜けているようです]となって、一組のナイトが交換になって黒陣が楽になる。一般的な原則として窮屈な陣形の側は駒の交換に努めれば残りの戦力を捌く空間が広がる。

 本譜の手のあと白のポーンは固定され攻撃の標的になり易い。しかし代償として白は陣形の広さの優位を得る。

5…Nfd7

 当たりのナイトは下がったが、その地点は …c5 突きを助けることができ、あとで白のeポーンが弱体化すればそれを狙うこともできる。

6.Bxe7

 この交換は白と黒のどちらに有利だろうか。読者は前述の解説から駒交換は黒陣を解放するのに役立つだけだと思うかもしれない。その解説とは対照的に、ビショップはその占める枡の色と同色の枡に固定された連鎖ポーンにより働きがひどく狭められることも強調してきた。だからここでは白は自分の「不良」ビショップを黒の「優良」ビショップと交換したことになる。いずれにしても白がビショップを引くのは手損になり黒に …c5 と突く隙を与える。白は 6.h4 と突くこともでき(アリョーヒン=シャタール攻撃)、ポーンを与えて列を素通しにし迅速な展開を図る。

6…Qxe7 7.f4

 これは白の最も積極的な手である。中原が閉鎖されている局面では展開の速さはポーンと駒の適切な配置ほど重要でない。だから白はまずfポーンを突くまでキング翼ナイトを動かすのを遅らせることができる。

 f4のポーンは白のe5の支配を増している。これはあとで分かるように非常に重要である。

7…O-O

 黒は急いでキングを安全地帯に移した。これでルークもf列で働ける。黒は白の増大する圧力を迎え撃つためにすぐにfポーンを突くことになる。

8.Nf3

 これは自然な展開の手である。ナイトを進めるにはf3が最良の地点である。そこからは要所のd4とe5の地点に利かすことができる。

8…c5

 黒は中央で打って出て、白の連鎖ポーンの根元に攻撃を加えた。

9.Bd3

 白はビショップを展開し、h7に切る恐ろしい狙いを抱いている。戦術の主題の研究は布局戦略についての本よりも中盤戦についての本がふさわしいが、実戦でよく生じるので読者はこの手筋を熟知していた方が良い。主たる狙い筋は (9.Bd3) a6 10.Bxh7+ Kxh7 11.Ng5+ Kg8 12.Qh5 で、黒は詰みを逃れることができない。例えば 12…Rd8(キングのためにf8の地点を空けた)13.Qh7+ Kf8 14.Qh8# で詰む。黒は次のようにキングが広いほうに逃げても運命を避けられない。11…Kg6 12.Qd3+ f5(12…Kh6 または 12…Kh5 なら 13.Qh3+ Kg6 14.Qh7#)13.Qh3[訳注 13…Nf6 で受かるので正着は 13.Qg3 です]これで黒は 14.Qh7# を避けるために駒をいくつか捨てなければならない。

9…f5

 白の直前の手により黒はキング翼で即刻の対処を迫られた。黒はこの手でポーンの配置をさらに固定し白が進展を図るのをもっと難しくすることを狙っている。

10.exf6e.p.

 白は展開に優っているので局面を開放することを望んでいる。本譜の手のあと黒のeポーンは正面から攻撃を受けてついには弱体化する。

10…Rxf6 11.Qd2

 白は当たりのfポーンを守らなければならない。本譜の手はクイーン翼ルークを容易に戦いに投入できるので 11.g3 より優っている。

11…Nc6

 黒は遅れている展開をおもんぱかった。すぐに 11…cxd4 と取るのは局面をさらに開放的にして黒の利益にならないが、本譜の手の後は 12…cxd4 が狙いになっている。

12.dxc5 Nxc5

 12…Qxc5 と取れば白の 13.O-O を防ぐが、12…Nxc5 と取る方が良い。理由は白の働いているビショップと交換できるし、クイーン翼ビショップのためにd7の地点を空けてクイーン翼の展開を速めるからである。

13.O-O Nxd3 14.cxd3(図72)

 図72(黒番)

 白のキング翼ビショップが消えて黒キングに対する攻撃の成功の可能性が減少した。陣形的には黒は全然喜べない。黒のeポーンが出遅れになっていることと、クイーン翼ビショップがまだ働いていない(つまり典型的な「フランスビショップ」)ので白が優勢である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(287)

第10章 バード中原(続き)

10.1 戦略の着眼点(続き)

c2-c3 突き

 d4ポーンの存在は白のdポーンの動きを制限しクイーン翼の戦力の自然な展開の邪魔になるので、黒の早くできた二重ポーンは白にとって実際の攻撃目標というよりも当惑の理由になるかもしれない。だから白がこの問題に c2-c3 突きの直接手段で対処しようとするのは当然考えられる(図351)。

 図351

 c3とd4ポーンがなくなれば明らかにd2ポーンと白のクイーン翼の戦力が完全に動きを回復する。黒はd4の地点の支配を緩めないことを目標に努力を傾けるのが一般的なので、…d4xc3 と取る可能性を考慮に入れることができるのは例外的な状況だけである。黒はこの目的のためにキング翼ビショップ(…Bc5、時には …g6 から …Bg7)、ナイト(…Ne7-c6)および/または …c6 と突いてあるかどうかによって違うがクイーン(…Qf6 または …c6 からの …Qb6)を用いることができる。d4ポーンの過剰防御は白が c2-c3 と突いていない時でも c3 突きに対する先受けとしておよび …d5 と突いたあとd4ポーンを守る手段としても適切な考えである。さらに付け加えればd4ポーンを …c5 突きによって守るのはまれにしか黒の価値にならない。というのはa4-e8とa2-g8の斜筋をひどく弱めることになり、後に …d5 突きで捌くのが難しくなるからである。

 図351の状況に戻ると白はd4の地点の所有をめぐる戦いを続けなければ目的の達成に成功しないことは明らかである。白は時には d2-d3 突きのあと Nd2-b3 または Na3-c2 のような捌きで …d4xc3 と取らせようとすることがある。しかしもっと多いのは自分から c3xd4 と取ることである(図352)。

 図352

 従って長期的には白がd4をめぐる戦いに勝つはずである。しかしこれは d4 突きの手段で中原を勝ち取る作戦の意義を低下させる単純化をさらに伴うことがよくある。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(286)

第10章 バード中原(続き)

10.1 戦略の着眼点(続き)

…d5 突き

 d列の二重ポーンは本当の弱点とみなすことはできない(実際d4ポーンはかなり攻撃しづらく、あまり苦労しないで守ることができる)。しかしd列のポーンを交換することができれば、それは黒にとって有利である。…d7-d5 突きは白の中原に殴りかかり、二重ポーンを解消する準備となる。その準備は …c7-c6 および/または …Ng8-e7 が普通である。ナイトは …Ng8-f6 よりもこれが良い。…Ng8-f6 は Bc1-g5 の釘付けおよび/または e4-e5 突きの当たりにさらされる(図346)。

 図346

 二重ポーンの解消にナイトが関わるのは図から容易に分かるように基本的に当然である。しかし白は Re1、Bg5、Qe2、Qf3、Qh5 のような多くの手段で相手の意図を防いだりくじいたりできる。

 白がd5にかける直接または間接の圧力に応じて、黒は二重ポーンを解消する目的の達成で満足するか(この図なら …d5、exd5 Nxd5)、それを我慢するが(この図なら …d5、exd5 cxd5)中央の枡のほとんどをしっかり支配することにするかが決まってくる。

 前の場合(Bb5 が …c7-c6 と当たりにされてa4に下がった時により多く生じる)、黒は広さで優位に立つが、白は自分の駒の捌きがより速くなることを当てにすることができる(図347)。

 図347

 図344の分析ではキャッスリングすると白の大駒はe列で黒の大駒よりもずっと速く活動できることがはっきり分かっている。これに加えてキング翼にキャッスリングした黒キングの囲いは Qh5 のあと状況により Ne4-g5 および/または Bb3 のような捌きで弱体化が露呈する可能性もある。

 逆に後の場合(Bb5 が …c7-c6 と当たりにされてc4に下がった時により多く生じる。理由は …c6xd5 と取る手が当たりになって黒がさらに手得するから)、結果として生じるポーン形は表面的には孤立二重ポーンにより黒が劣っているが、実際には広さの優位が大きくて駒を捌く余地が非常に多い(図348)。

 図348

 ここでは黒が反撃の基礎とすることのできる主要な着想をまとめた。aポーン突きは Bb3 の捕獲を狙っている。c列での大駒の介入はc2の出遅れポーンの弱点を強調することになる。白キングは黒軍が標的にできる速度を考えれば安泰とみなすことはできない。

 白の方は黒キングが真ん中にいる限りe列にいる露出した状態を利用できると言ってもさしつかえない。一方試合のもっと進んだ段階では、ビショップのために攻撃の斜筋を開けようとするならば c2-c3 突きや c2-c4 突きを断行しなければならなくなる。もっとも相手が二重ポーンを解放できるという代価は払うことになる(図349)。

 図349

 しかし重要なことは陣形における白の主要な目的は孤立二重ポーンに圧力をかける(特にd4の方)ということである。図349のような状況では Qf3 または Qh5-h4 という手段で画策することができる。しかし特定の状況では他の色々な手段もある(図350)。

 図350

 ここに示されたやり方以外にも、Nd2-b3(b2-b3 突きは当然控える)や …a7-a5 と a2-a4 の突き合いのあと可能になることがある Na3-b5 も選択肢として考えられることを述べておく。

(この章続く)

2011年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(285)

第10章 バード中原(続き)

10.1 戦略の着眼点

 バード中原を特徴づけるポーンの形を観察すると、ポーンの動きに関する両者の主要な作戦計画の概要を識別することができる(図345)。

 図345

 黒が単純に …d7-d6 と突かない時は、…d7-d5 突きのあとe4とd5のポーンを交換することによってd列の二重ポーンを解消しようと努めるのが一般的である。この目的は白の白枡ビショップが …c7-c6 突きによって当たりになる(図344を参照)ことで促進され、このポーン突きはd7ポーンを突くのにも役立つ。一方白は中原の争いに二つの異なった方法で取り組むことができる。一つは前の方のd4ポーンを c2-c3 突きで交換することができ、d2ポーンを完全に動けるようにすることである。もう一つはd4ポーンに触らないようにし、黒がf4の地点を支配していないことを利用して f2-f4 と突き、中央とキング翼での盛り上がりの基礎を作ることである。

 この手短で一般的な分析から、図345に示されるポーン形は大きな変化をすることが既に明らかである。この変化は両者の作戦がどのように絡み合うかによって様々な形を取り得る。そこで図345から派生するかもしれない主要なポーン形を簡単に検討していくことにする。

(この章続く)

2011年01月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(204)

「Chess Life」2010年11月号(3/4)

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海外の米国選手

アムステルダムNHで若者が勝利(続き)

 ナカムラがオランダの最強選手に圧勝した次の試合はわずか90分しかかからず、面白い後日譚までついた。

シチリア防御ナイドルフ戦法 (B94)
□GMヒカル・ナカムラ (FIDE2729)
■GMローク・ファン・ベリー (FIDE2677)
2010年アムステルダムNH

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 Nbd7!?

7.f4

 この試合と並行してゲルファンドはギリ戦で同じ激しいナイドルフの戦型を指していた。ゲルファンドは 7.Bc4 と指したが引き分けにしかならなかった。

7…Qb6 8.Qd2 Qxb2 9.Rb1 Qa3 10.Bxf6! Nxf6 11.e5! dxe5 12.fxe5

12…Nd7??!

 NH大会の始まる少し前にファン・ベリーは「New in Chess」誌にワールドオープンの記事を書いていた。その中で彼はビクトル・ラズニツカがブライアン・スミスに勝った試合を解説していた。その試合では 12…Ng4 13.Nd5 Qc5 14.Nb3 Qc6 15.Na5 Qd7 16.Nc4!?

と進み、白が Nb6 で交換得したが勝負は最後に負けた。

 ナカムラは「これはもちろん研究していた」と語った。「それでも …Ng4 は黒にとってかなり危なっかしい。13.Nd5 Qc5 14.Nb3 Qc6 のあと 15.Na5 と指すか 15.Qa5 と指すか決めかねていた。」

13.Nd5! Qc5 14.Nb3! Qc6 15.Na5 Qc5

 ファン・ベリーは「『New in Chess』誌でスミス対ラズニツカ戦を解説していた」と説明した。「白が Na5-c4-b6 と指したことは覚えていた。そこで考え始めた。『黒のナイトがd7にいてb6に利いているのにどうしてこれが可能なんだろう。』しかしそれでも黒のナイトがd7でなくg4にいたことを思い出せなかった。」

16.Nxb7!

 「相手がb7のポーンを取ってやっと思い出し始めた。しかしもう手遅れだった」とファン・ベリーは打ち明けた。あとでばつの悪いことにファン・ベリーは自分の解説のコピーを見せられた。それには次のように書いてあった。「12…Nd7 は良くない。なぜなら 13.Nd5! Qc5 14.Nb3! Qc6 15.Na5 Qc5 16.Nxb7 で黒が負けるからである。」

16…Qc6

 16…Bxb7 は 17.Rxb7 Rc8 18.Bxa6 Qc6 19.Qa5! ではやり見込みがない。

17.Rb6!! 黒投了

 17…Nxb6 と取るしかないが 18.Nf6+! exf6 19.Qd8# で詰みになる。

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(この号続く)

2011年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス2

ルイロペスの完全理解(284)

第10章 バード中原

主手順 - バード戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nd4 4.Nxd4 exd4(図344)

 図344

 ナイト同士の交換のあとd列に早々と黒の二重ポーンができるのが特徴のこの型の中原は、ほとんどもっぱらバード戦法から生じる。わずかな例外の中で特筆すべきものは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 反マーシャルシステム
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 Bb7 9.d3 d6 10.Bd2 Nd4 11.Nxd4 exd4

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nd4 5.Nxd4 exd4
 - 3…g6 4.Nc3 Nd4 5.Nxd4 exd4

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(283)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.3 実戦例(続き)

 図343(再掲)

 このポーン突きは戦略上の大きな誤りだった。なぜなら局面を閉鎖的にするのを助けて白の白枡ビショップの障害になるだけだからである。ここは 19.Rhf1 h6 20.Bf4! Bxf4 21.Rxf4 と指す方が良く、ほぼ互角の形勢だった。黒のeポーンは孤立しているけれどもよく守られていて真価を発揮するかもしれない。

19…c5 20.Rhf1 Kb8 21.Bf4?!

 21.Bb5 から 22.c4 と指す方が良かった。

21…Rd8

 もちろん 21…Bxf4+? と取るのは悪手で、22.Rxf4 のあと d6 突きで白のビショップが完全に息を吹き返す。

22.Bg5

 もし白が黒枡ビショップ同士を交換すれば、ナイトの優越とd5ポーンの弱さを際立たせるだけであることは明らかである。そこでティマンは暗に引き分けを提案したが、相手はもちろん目もくれなかった。

22…a6! 23.Bxf6?!

 23…b5 突きの狙いを突きつけられて白は異色ビショップの局面に望みをつないだ。しかし白の問題は神が言ったように収局の前に「中盤戦がある」ことである。中盤では異色ビショップは不安定化要因であり、局面を落ち着かせる要因ではない。ここではたぶん 23.Bb3 と引いておいて 23…b5 には 24.c4 と応じる方がましだった。

23…gxf6 24.Qxe4 Qxh2 25.Rh1

 25.Rf3 ならまだクイーン翼での反撃(例えば Rb3)に一縷の望みがあったかもしれないが、いずれにしても白は劣勢の局面だっただろう。

25…Qxg3 26.Rxh7 Rfe8 27.Qf5?

 これは終局を早めてしまう悪手だった。しょせん黒は次のように何の代償もないポーン損の局面に持ち込むしかなかった。27.Qh4(27.Qh1? なら 27…Qf4+ から …Qxc4)27…b5(27…Qe3+ は 28.Kb1 Re4 29.Qxf6 Be7 30.Qg7 で良くない)28.Bd3 c4 のあと …Bf4+ から …Rxd5

27…b5 28.Bf1

 28.Bd3 は 28…c4 29.Be4 Qe3+ でビショップを取られる。

28…Re1 29.Qh5

 29.Qd3 は 29…Bf4+ 30.Kb1 Qxd3 で処置なしである。

29…Qf4+ 30.Kb1 Qxf1 0-1

(この章終わり)

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世界のチェス雑誌から(109)

「Chess」2010年11月号(8/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第5回戦 9月25日

 首位のロシア2は現チャンピオンのアルメニアと対戦し、結果は後者が1勝をあげて勝った。パシキアンがティモフェーエフをベルリン防御の黒番で破った。開催国にとっては憂鬱な日で、ロシア1もハンガリーに負けた。第1席でレーコーがグリシュクに勝った(クラムニクは休み)。もっともロシア3はイスラエルに首尾よく勝った。ベトナムに3½-½で勝ったグルジアが新たに首位に立った。ウクライナは3-1でボスニアに勝った。イワンチュクがソコロフを屈辱的な目に会わせた。


左からアルメニアのグリゴリヤン、パシキアン、サルギシアン、アコピアン。2006年と2008年は金メダルだったが2010年は7位に終わった。写真にいないのは主将のレボン・アロニアンで、チームの中で最高成績だった。

第5回戦 ボスニア対ウクライナ
I・ソコロフ - V・イワンチュク
ベンコーギャンビット

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.Qc2

 マイルズ、そしてさらに最近はマメジャロフがこの手を得意にしていた。

4…bxc4 5.e4 d6 6.Bxc4 g6 7.b3?!

 ウクライナの若手のドロズドフスキーがこの手で仲間のGMに2局勝っている。しかし意表手としての賞味期限は切れているかもしれない・・・

7…Nxe4!

 この戦型でのこれまでの試合はすべてもっと控えめに 7…Bg7 8.Bb2 O-O と進み、今まで誰もどうして黒はeポーンを取るべきでないのかという疑問を発しなかった。しかしイワンチュクはそれほど簡単に引き下がらない。

8.Bb2

 8.Qxe4? は 8…Bg7 でa1のルークが落ちる。

8…Qa5+

 フリッツはチェックの代わりに 8…Nf6 と指す方を好んでいる。その方が本手のように思われる。

9.Kf1 Nf6

10.Nc3

 10.Bxf6 exf6 でe列を素通しにしてから 11.Nc3 と指すこともできる。

10…Bg7 11.Re1

11…Qd8

 黒は 11…O-O!? 12.Rxe7 Bf5 と指しても良さそうである。しかしイワンチュクは無敵の受けの技術に物を言わせてあからさまな実利主義に打って出た。

12.Qe2 Nbd7 13.h4 Ne5 14.Bb5+ Bd7

15.f4?

 白はキング翼の陣形に物騒な空所を作っても構わないと考えたに違いない。しかしそれは無理なことが後で判明し深手を負った。指すなら 15.Rh3 だが、15…Nh5 16.Bc1 O-O で黒がだいぶ良さそうである。

15…Nh5! 16.Bxd7+ Qxd7 17.Qe3 Qf5

 白はここらが投げ時だろう。しかしハンティ・マンシースクでは暇になってもそれほど魅力的な出かける場所がない。

18.Nh3 Qd3+ 19.Kg1 Qxe3+ 20.Rxe3 Ng4 21.Rf3 Bd4+ 22.Kf1 Ne3+ 23.Ke2 Nxg2 24.Ng5 h6 25.Nge4 Ngxf4+ 0-1

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(282)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.3 実戦例(続き)

 図342(再掲)

 白はa4-e8の斜筋での開きチェックを利用してポーン得しようとしたこともある。例えば 10.Nxa7+ Bd7 11.Bxd7+ Nxd7 12.Nb5 O-O-O 13.d4 Qf6 14.Be3 c6 15.Nc3 Bb4 または 10.d4 Qh4+ 11.g3 Qh3 12.Nxa7+ Bd7 13.Bxd7+ Qxd7 14.Nb5 c6 15.Nc3 Bb4(15…Qxd4 と取ることもできる)16.Be3 O-O という手順がそれだが、いずれも黒は展開の優位と白の黒枡ビショップの無力という適切な代償を得ている。

 本譜の手で白は最も論理的な大局的作戦を追求している。即ち d4 と突いてe5の地点に安定した拠点を確保し、同時にあとで Bc4 と引いて急所のf7の地点に小駒の利きを集中させることを期待している。

10…c6 11.d4 Qh4+ 12.g3 Qh3 13.Bc4 Be6

 13…Bd6?! は 14.Bf7+ でキャッスリングの機会を意味もなく放棄する。

14.Bg5 O-O-O 15.O-O-O Bd6

 ここは 7…Qg5 の戦型の定跡評価にとって非常に重要な局面である。黒は展開の課題を解決しf7の地点への圧力をかわしている。布局が終わった時点で唯一白が有利と考えられる要因はe4の黒ポーンが比較的弱いことだったが、それも事なきを得た。今までのところ白が実際に優勢であることを証明しようとしたこと(16.g4、16.Kb1、16.Qf1)はすべて正確な受けの前に勢いを失ってきた。

16.Nf7

 白は最も直接的な手段である双ビショップを得ることによりもっと具体的な優勢を得ようとしている。

16…Bxf7 17.Bxf7 Rhf8 18.Bc4 Rde8 19.d5?(図343)

 図343

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(281)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.3 実戦例(続き)

 図341(再掲)

 この局面はシュリーマン中原に特有な特徴がはっきり見てとれる。黒は3手目で目指した中原での優位を達成している。一方白は展開での明らかな優勢を誇っている。もっとも小駒が後陣の役割に留まっていれば簡単に優勢が失われる。状況は均衡がとれていないので、両者はたとえこれまで得たものを放棄する代価を払っても均衡のとれた路線に戻すようにしなければならないということになる。言い換えれば黒は中原での基盤を失うことになっても展開の遅れを取り戻さなければならない。一方白は黒が陣容を固める前にその中原を破壊するようにしなければならない。この主題は代わりの手の 5…Nf6 でも見られる。例えば 6.Nxf6+(6.Qe2 については図327の例を参照)6…Qxf6 7.Qe2 Be7 8.Bxc6 dxc6 と進んだところで、9.Qxe5 Bg4 10.Qxf6 Bxf6 でも 9.Nxe5 Bf5 10.d3 O-O-O でもe5ポーンの犠牲は双ビショップと黒の展開の優位によって補われている。

6.Nxe5

 白は主眼のa4-e8とh5-e8の斜筋の弱点を利用して、前述したように敵の中原をばらばらにするきっかけをつかんだ。もちろん 6.Ng3 はより守勢の手である。例えば 6…Bg4 7.h3 Bxf3 8.Qxf3 Nf6 9.Nh5 Qd6 10.Nxf6+ gxf6 11.Qh5+ Kd7 12.O-O Rd8 13.d4 Kc8 となって、黒が一時的なキングの彷徨から態勢を立て直して悪くない局面に至る。

6…dxe4 7.Nxc6

 h5-e8の斜筋の弱点に 7.Qh5+?! でつけ込もうとするのはこの場合は白のはまりになる。即ち 7…g6 8.Nxg6 hxg6 9.Qxh8 Qf6! 10.Qxg8 Be6 となって、展開の優位が戦力の得よりもはるかに重要になる。

7…Qg5

 7…Qd5 も同様に良い手で、8.c4(必然)8…Qd6 のあと定跡でまだ盛んに研究されている局面になる。例えば 9.Nxa7+(9.Qh5+ は 9…g6 10.Qe5+ Qxe5 11.Nxe5+ c6 12.Ba4 Bg7 13.d4 exd3 14.Bf4 Be6 15.O-O-O O-O-O でどちらも指せる)9…Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.Qh5+ g6 12.Qe5+ Kf7 13.Nb5(13.Qxh8 は 13…Nf6 14.Nb5 Rd8 となって、白はすぐにクイーンを Rd8 と交換させられ非常に難解な局面になる。白の2ポーン得は黒駒の配置の良さによって補われている)13…c6 となれば、黒には犠牲にした戦力の代償がある。

 逆に 7…bxc6? 8.Bxc6+ Bd7 ははっきりした悪手で、9.Qh5+ Ke7 10.Qe5+ Be6 11.f4 exf3 12.O-O で白が明らかに優勢である。

8.Qe2 Nf6

 この手は要所のe4とh5を守るために必要である。8…Bd7? 9.Qxe4+ も 8…Qxg2? 9.Qh5+ も白の優勢が決定的になる。

9.f4

 白はg2の地点に対する攻撃を無視することができない。このポーンがなくなれば自分のキングに深刻な問題が発生しかねない。例えば 9.Nxa7+?! Bd7 10.Bxd7+ Nxd7 11.Qxe4+ Kd8 12.Qxb7?(12.d3 と突く必要があるが、12…Qa5+ から …Qxa7 となって局面のこの段階ではポーン3個は駒損の代償として十分でない)12…Rxa7! 13.Qxa7 Qxg2 14.Rf1 Bc5 で一方的な攻撃になる。

9…Qxf4

 すぐに 9…Qh4+ とチェックするのは、白がfポーンを利用してナイトをe5の地点に帰還させ、dポーンを利用して中原の破壊作業を完了することができる。例えば 10.g3 Qh3 11.Ne5+ c6 12.Bc4 Bc5 13.d3 exd3 14.Nxd3+ Be7 15.Ne5 となれば白がはっきり優勢である。

10.Ne5+(図342)

 図342

(この章続く)

2011年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[48]

eポーン布局

第7章 フランス防御

1.e4 e6 2.d4 d5(図70)

 図70(白番)

 これは 1.e4 に対し非常に古くからの非常に堅固な防御法である。黒は自分の連鎖ポーンにより直接攻撃にも比較的安全になるのと引き換えに中原の形で劣ることになるのを甘受することを表明している。さらには収局ではポーンの形で優位に立つことを見越している。シチリア防御では動的な試合になるのが一般的なのに対し、フランス防御の試合はしばしば塹壕戦のようになる。手が少し進んだだけで中原は閉鎖されるのが普通で、かみ合った連鎖ポーン(白ポーンはd4とe5、黒ポーンはd5とe6)が出来上がる。

 戦いはそれからc/f列に移り、お互いに相手の連鎖ポーンの土台を崩し側面から攻めようとする。突き越し戦法のところで見られるように、白は早くも3手目で主眼の e5 突きを指すことができる。しかしこのように早すぎる突き越しは主導権を放棄することになる。ほとんどの場合白は黒が …Nf6 と指すのを待ち、e5 突きがf6のナイトに当たって先手になるようにする。

 中原の閉鎖ポーンの形に何らかの変化が起こるのは、黒が …c5 および/または …f6 突きで土台を崩そうとすることによるものである。側面の …c5 の突っ掛けは白のナイトがc3にいる時に最も効果的で、白はポーンをc3に突いて中原のポーンを支えることができない。黒からの …f6 突きはそれほど効果的でないのが普通である。なぜなら白は黒に …fxe5 と取らせて自分のキング翼ナイトで(f3から)取り返したり、eポーンを支えるためによくf4に進んでいるfポーンで取り返したりできるからである。いくつかの戦法を詳しく検討する前に、「フランスビショップ」について少し話しておく。これは黒のクイーン翼ビショップのことで、e6のポーンにさえぎられて布局で閉じ込められる不遇をかこつことが多い。この駒をどのように働かせる(または交換する)のが一番良いかという問題は、いつもフランス防御を指す者の心を離れない。一般的にビショップはナイトより少し強力であるが、味方のポーンによってさえぎられた守勢の不良ビショップは活動的なナイトよりはるかに劣る。

(この章続く)

2011年01月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(280)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.3 実戦例

第14局
ティマン対スピールマン
ロンドン(番勝負第7局)、1989年
シュリーマン逆ギャンビット

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5

 シュリーマン中原は早突きの …f5 から現れるが、ルイロペスの他の戦法でも見られる。

 古典戦法では 3…Bc5 4.c3 f5 からこの中原が生じることがある。例えば 5.d4(5.exf5 はすぐにうるさい 5…e4 突きを指す機会を黒に与える)5…fxe4 6.Nxe5(6.Bxc6 dxc6 7.Nfd2 または Nxe5 の方が普通だが、そのあとに続く局面は厳密にはシュリーマン中原の結果とはならない)6…Nxe5 7.Qh5+ となれば白は駒を取り返して一時的な主導権を保持する。

 遅延シュタイニッツでは一般に 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 f5(シエスタ戦法)という手順でシュリーマン中原に特有な主題に到達する。例えば 6.exf5 Bxf5 7.d4(または 7.O-O Bd3 8.Re1 Be7 9.Bc2 Bxc2 10.Qxc2 Nf6 11.d4 O-O-eポーンを犠牲にするのは動的な主導権争いで優位に立とうとする時の古典的な手段である-12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 dxe5 で、白はe5ポーンを孤立させことで満足しなければならない。なぜなら 14.Rxe5?! と取ると 14…Ng4! とされて展開の優位とf列での圧力で黒が明らかに優勢になるからである)7…e4 8.Ng5 d5 9.f3 これで陣形上の主導権をめぐる戦いに突入する。

 最後にシュリーマン中原はシュリーマン逆ギャンビットの遅延版の 3…a6 4.Ba4 f5 でも発生することがある。例えば 5.d4(5.Nc3 fxe4 6.Nxe4 も可能だが、本譜で現れる似た局面と比較するとここでは黒がすぐに 6…b5 突きを入れることができる。7.Bb3 d5 のあと白が相手の中央拡張に手をこまぬいていたくなければ 8.Nxe5 Nxe5 9.Qh5+ と駒を犠牲にせざるを得ない)5…fxe4(5…exd4 6.e5 Bc5 はこの章の範囲外である)6.Nxe5 Nf6 7.O-O Bd6 8.Nc3 Nxe5 9.dxe5 Bxe5 10.Nxe4 主眼の狙い筋の 10…Nxe4 11.Qh5+ のおかげで白がポーンを取り戻すことができ有利な陣形になる。

4.Nc3

 白は挑戦を受けて立った。e4とf5のポーンを交換させ自分の小駒を相手のポーンの脅威にさらすことになるが、代償として展開で明白な優位に立つ。

 もっと穏やかな手ならば 4.d3 である。4.d4 は 4…fxe4 5.Nxe5 Nxe5 6.dxe5 c6 のあと白がeポーンを助けるために(7.Bc4 は 7…Qa5+)ビショップを見捨てて 7.Nc3 と指さなければならないので指しづらいかもしれない。例えば 7…cxb5 8.Nxe4 d5 9.exd6e.p. Nf6 10.Qd4 となれば陣形的に十分代償がある。

 白がギャンビットを受諾しても黒にそれほど多くの問題を生じさせない。例えば 4.exf5 e4 5.Qe2 Qe7 6.Bxc6 dxc6 7.Nd4 Qe5 となる。

4…fxe4

 これは普通の手で、中央の拡張の条件を作っている。他の手はシュリーマン中原の趣旨と少しそぐわない。

 (1)4…Nf6 5.exf5(5.Qe2 Bc5 6.exf5 Qe7 の場合e5ポーン取りは一時的なことにすぎない。なぜなら 7.Bxc6 dxc6 8.Qxe5 Qxe5 9.Nxe5 Bxf5 10.d3 O-O 11.O-O Rae8 12.Nc4 Ng4 となって、白は相手の強い主導権を静めるために戦利品を返さざるを得ない)5…Bc5(5…e4 は 6.Nh4 d5 7.d4 となってf5ポーンに支援があることと黒の中原の柔軟性のなさにより明らかに白が優勢である)6.O-O O-O ここで白は主眼の戦術の 7.Nxe5 Nxe5 8.d4 により優勢になる。

 (2)4…Nd4 5.exf5(他には 5.Ba4 c6 6.Nxe5 Qf6 7.Nf3 fxe4 8.Nxd4 Qxd4 9.O-O Nf6 10.d3 exd3 11.Re1+ と 5.Bc4 c6 6.Bxg8 Rxg8 7.O-O Qf6 8.exf5 Nxf3+ 9.Qxf3 Be7 10.d4 も良い手で、どちらも黒キングが中央で露出しているので白が優勢である)5…Nxb5 6.Nxb5 d6 7.d4 e4 8.Ng5 Bxf5 9.f3 白が陣形的にも動的にも主導権を持っている。

5.Nxe4 d5(図341)

 図341

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(279)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.2 戦術の狙い所(続き)

e列上の釘付け

 この主題は白が多くの戦型で展開の優位を生かし攻撃的な作戦にはずみをつける意図でキャッスリングを遅らせるのでいくらか頻繁に見られる。次の例はこの主題の要点を示しているが、実戦では状況ははるかに複雑である(図339)。

 図339

 黒はeポーンを守るために …Bd6 と指すが、白は Nxe5?(または Bxc6+ bxc6、Nxe5?)…Bxe5、Qh5+ でポーン得できると思い違いをするかもしれない。しかし …Kd7! のあと(図340)

 図340

駒損の憂き目に会う。というのは Qxe5? が …Re8 で釘付けになるためにできないからである。Qf7+ または Qf5+ も単に …Kd6 と応じられるので何の慰めにもならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(278)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.2 戦術の狙い所(続き)

h5-e8とa4-e8の斜筋の弱点と Rh8 が取れない場合

 前の例で既に述べたように白のクイーンはh5-e8の斜筋につけこめることが非常に多い(図333)。

 図333

 例えばここでは黒がeポーンを …Bd6? で守ると Nxe5! Bxe5、Qh5+ とされて(図334)

 図334

白が駒を取り返しポーン得になる。例えば …Kf8 と逃げれば(…g6? は Qxe5+ で Rh8 を取られてしまう)Bxc6 bxc6、Qxe5 である。

 しかし白が分別なく安易な戦力得に目がくらみ捕獲される危険性を慎重に判断しなければこのようなクイーンの早い襲撃は破滅の元となることがある。図333の局面で黒がeポーンに対する白からの狙いを …e4 突きによってくじこうとしたとして、白は Ne5 と跳ねても大丈夫だと間違って考えるかもしれない(図335)。

 図335

 そう考えるのはa4-e8とh5-e8の斜筋の組み合わさった圧力のせいである。例えば …Nge7?、Qh5+ g6、Nxc6 bxc6(…gxh5 と取る方が良いが Nxd8+ Kxd8 で黒はキャッスリングできなくなりポーンの形も乱れる)、Qe5!(図336)

 図336

となり白に Bxc6+ と Qxh8 の決定的な狙いがある。

 実際には Ne5 に対する正しい受けは …Qd6! であるが、ここで白が Qh5+? g6、Nxg6? Qxg6、Qe5+ でRh8 狩りに行くのは重大な誤りで、…Kf7! と応じられ(図337)

 図337

駒損の代わりにポーンを少しかき集めるだけである。Rh8 が取れないのは Qxh8? Bg7 で白クイーンが捕まってしまうことによる。

 読者に知っておいて欲しいのはこの捕獲の主題は実戦で他の形でも起こることである。その一つは図333の局面から …e4、Nd4 Qd6、Nxc6?! bxc6、Qh5+? g6、Bxc6+ Qxc6、Qe5+ Kf7!、Qxh8 Nf6 と進めば生じる(図338)。

 図338

白クイーンは次に …Bg7 で容赦なく陥落させられる。

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(203)

「Chess Life」2010年11月号(2/4)

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海外の米国選手

アムステルダムNHで若者が勝利

2010年アンバーにナカムラが進出

記 イアン・ロジャーズ
写真 キャシー・ロジャーズ

 レイティング世界一が19歳で世界チャンピオンが40歳超の時代には、たった1回の新鋭対熟練戦でも最高に興味深いことだろう。それでもアムステルダムでの第5回そして最後のNH新鋭対熟練競技会はお楽しみ企画を超えたものになった。

 NH大会は世界の最強新鋭5選手が一流グランドマスター(30歳以上)5選手と戦う方式で、世界の新星たちにとって真剣勝負の場である。

 伝説的選手との対局はアムステルダムの最高級ホテルの一つのグランドホテル・クラスナポルスキーで少数だが博識の観戦者の前で行なわれ、検討は飲み物とオードブルの置かれたVIP室で行なわれる。これはほとんどの若い選手たちにとって夢のような待遇だが、NH主催者の設定はそれだけに留まらなかった。若手選手それぞれのトレーナーの経費を負担し、服装規定を課し、名誉賓客にジョン・ナンを任命して収局の評価には神託が得られるようにした。

 2010年はアレクサンドル・ベリヤフスキーをボリス・ゲルファンドに代えてベテランチームが強化された。しかし不屈のゲルファンドの大活躍をもってしても若者チームの5年間で4回目の勝利を阻むことはできなかった。アダルトの中でゲルファンドとピョートル・スビドレルだけが勝率50%を超えた。

 シニアの中でゲルファンドだけが若者を完全に鎮圧することができた。42歳のイスラエル選手は10戦して負けなしの7点を挙げ、負けそうになったことがなかった。

 しかし残念ながら主催者はチーム戦を優先して、最優秀若手選手のためにことのほか名誉で豪華な賞を設けた。

 若者のトップ賞に2011年アンバー公演大会への切符がかかっているので、若者選手たちは自分の試合に勝つ動機を与えられただけでなく、皮肉にも仲間が苦戦するのを期待することにもなった。

 若者たちの競争は確かに見ものだった。最初はヒカル・ナカムラが首位に立っていたが、そのあと2連敗して地元の期待の星の16歳アニシュ・ギリに追い越された。ギリは最終2戦でつまづくまで首位に立っていた。それでナカムラが最終局で追いついた。

 それで来年3月のアンバーへの金の切符をどちらが得るかを決める決定戦が必要になった。全手3分で毎手2秒加算の持ち時間はナカムラにとってはおあつらえ向きで、やっぱりギリが2-0で粉砕された。

 これでナカムラは最後になりそうなアンバー大会でアーナンド、トパロフ、クラムニクらを相手に自分の技量を試す機会を得た。

 ナカムラは昨年の新鋭対熟練大会では病気のために悪夢のような結果に終わっていた。衝撃的な1勝のほかは本来の調子でなかった。

 22歳のナカムラは若者チームの中ではっきり最年長で、標準的なチェスでは既に最上位20人に入りつつあり、全力を尽くして二度目のチャンスに臨んでいた。それなのにオランダのスターが大会の最後で息切れするまでギリの後塵を拝することを観念していたと認めた。

 ナカムラは少なくともアンバーでの目隠し対局では好結果を出せるはずだと思っている。快速戦(持ち時間1時間)はナカムラの好みよりも少し長い。しかしお好み対局といえどチェス界の達人たちと対戦するのはナカムラにとって刺激となるに違いない。

アムステルダムNH 最終成績

新鋭チーム
=1位 ナカムラ(米国)、ギリ(オランダ)6点
3位 カルアナ(イタリア)5点
=4位 ハウエル(イングランド)、ソー(フィリピン)4½点
合計26点

熟練チーム
1位 ゲルファンド(イスラエル)7点
2位 スビドレル(ロシア)5½点
=3位 ニールセン(デンマーク)、ファン・ベリー(オランダ)4点
5位 リュボエビッチ(セルビア)3½点
合計24点

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス2

ルイロペスの完全理解(277)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の Nxe5

 これは最も変化に富んだ形で現れる非常に出現頻度の高い主題である。そのうちの一部を次の例にまとめてみた(図331)。

 図331

 白は Nxe5 と取り …Nxe5 のあと駒の取り返し方が基本的に三通りある、即ち d4 突きでの両当たり、Qe2 から f4 突きによる釘付け、それにh5でのチェックである(図332)。

 図332

 この場合白は Qh5+ Nf7 のあと Bc5 が取れる。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(276)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.2 戦術の狙い所

 既にそれとなく言ってきたようにシュリーマン中原での純粋に戦略的な要素よりも動的な要因の方が重要であることがしばしばある。ここでは典型的な戦術の題材をいくつか取り上げる。

(この章続く)

2011年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(108)

「Chess」2010年11月号(7/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第4回戦 9月24日

 ロシア2の若いピストルはインドを3-1で破って、順位判定でグルジアとベトナム(そして同じ最大勝ち点の他の4チームも)を抑えて首位を保った。一方ロシア1は同じ結果で米国を破って追撃の手を緩めなかった。ナカムラはキング翼インディアン防御でクラムニクの得意な戦型を相手に非凡な戦術で引き分けをもぎ取った。ロシア3はロシア成功物語のハットトリックを達成できず、現行のチャンピオンのアルメニアに惜敗した。ウクライナはスロベニアを2½-1½でかわした。いつも頼りになるイワンチュクはベリヤフスキーから決定的な勝ちを得た。

 イングランドはトルコに楽勝した。デイビド・ハウエルが早々と勝ったので、試合の早い段階で仲間からプレッシャーを解放した。さらにルーク・マクシェーンも勝って3-1という結果になった。この日の衝撃的な話題はマグヌス・カールセンがグルジアのバードゥル・ジョババに負けたことだった。


マグヌス・カールセンにとってはつらい公務の日で、グルジアのバードゥル・ジョババにもうすぐ負けるところである。これは1月以来重要な試合で初めての敗戦になった。

第4回戦 グルジア対ノルウェー
B・ジョババ - M・カールセン
ニムゾインディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.a3 Bxc3+ 5.bxc3 Nc6 6.e4!?

 超一流の試合では意表の新手である(一握りのアマチュア選手によってしか指されていなかった)。

6…Nxe4 7.Qg4

7…f5

 2000年のウクライナのジュニアの試合では 7…d5!? 8.Qxg7 Qf6 9.Qxf6 Nxf6 10.Bf4 と進んで白が勝った。7…Nf6 がフリッツの選択で、8.Qxg7 Rg8 9.Qh6 d6 10.Nf3 e5 となり、黒がわずかに良いと判断している。

8.Qxg7 Qf6 9.Qxf6 Nxf6 10.Nf3 b6 11.d5!?

 ジョババは断固としてカールセンに息をつかせない。

11…Na5

 11…exd5 12.cxd5 Nxd5 13.Bc4 はポーンを犠牲に双ビショップの活躍に期待する。

12.Nd4 Kf7 13.dxe6+ dxe6 14.Bf4 Ba6 15.Nf3 Ne4 16.Ne5+ Kf6 17.f3 Nd6 18.O-O-O

18…Rhd8?

 黒の苦戦はここから始まった。18…Naxc4 19.Bxc4 Nxc4 20.Rhe1 Nd6 21.Nc6 はポーンの犠牲の代わりに白が主導権を握る。しかし 18…Rhg8 なら黒が堅実そうである。

19.h4 Nf7 20.Nd7+

20…Kg7

 20…Ke7 は 21.Bg5+! Nxg5 22.hxg5 で黒が指しように困る。

21.Rh3!?

21…Kh8

 21…Bxc4 は次のように長い一本道の変化になる。22.Rg3+ Kh8 23.Ne5 Rxd1+ 24.Kxd1 Nd6 25.Bg5 Rf8 26.Nd7

ここで黒は次の手順を見つけなければならない。26…f4!? 27.Rg4 h5 28.Nxf8 hxg4 29.Bxc4 Naxc4 30.Nxe6

それでも最悪の事態になるかもしれない。

22.Bg5 Nxg5 23.hxg5 Kg7 24.Rh6 Bxc4 25.Bxc4 Nxc4 26.Rdh1 Rh8

27.f4?!

 単純に 27.Rxe6 と取る方が良かった。

27…c5?

 27…Rad8! 28.Nf6 c5 29.Rxh7+ Rxh7 30.Rxh7+ Kg6 なら黒がしのげそうである。

28.Rxe6 Rae8

 これでは白が戦術でポーン得することができる。そうは言っても黒はfポーンが守れないので他に良い手がない。

29.Rxh7+ Rxh7

 29…Kxh7 は 30.Nf6+! Kg7 31.Nxe8+ Kf7 32.Nc7 で実戦と似た進行になりやはり白が非常に良い。

30.Rxe8 Kf7 31.Ra8 Rh1+ 32.Kc2

32…a5

 32…Rg1 は次の手順で負ける。33.Rxa7 Ke6 34.Kd3 Nb2+ 35.Ke3 Rxg2 36.Nxb6 Rg3+ 37.Ke2 Rxc3 38.Re7+! Kxe7 39.Nd5+

このナイト収局は白が楽に勝てる。

33.Ra7 Nxa3+ 34.Kd2

34…Rh2

 34…Nb5!? は 35.Rb7 Nd6 36.Ne5+ Kf8 37.Rxb6 Ne4+ 38.Kd3

となって、たぶん白がまだ大いに優勢だろうがはっきりした勝ち手順を見つけるのはより難しくなっている。

35.Nxb6+ Kg6 36.Rxa5 Rxg2+ 37.Kd1 Nb1 38.Rxc5 Nd2 39.Nd5 Ne4 40.Rc6+ Kf7 41.Ne3 Rg3 42.Ke2

 実際のところこれ以上指す余地はない。しかしオリンピアードで採用されているせかせかした持ち時間のせいで、通常よりももう少し長く指すことにも一理ある。

42…Ke8 43.Re6+ Kf7 44.Re5 Nxc3+ 45.Kf2 Rh3 46.Rxf5+ Kg6 47.Rf6+ Kg7 48.Nf5+ Kg8 49.Kg2 Rd3 50.Rd6 Ne2!

 うまそうなはめ手だが大したことはない。

51.Rg6+

 もちろん 51.Rxd3? は 51…Nxf4+ 52.Kf3 Nxd3 で引き分けになる。

51…Kh8 52.Rh6+ Kg8 53.Ne7+ Kf7 54.Ng6 Kg7 55.Kf2

 「絶対手」の連続のあと駒の配置は少しぎこちないが白がまだ勝勢である。

55…Nc3 56.Ne7 Ne4+ 57.Ke2 Ra3 58.Nf5+ Kg8 59.Re6 Nc3+ 60.Kf3 Nd5+ 61.Kg4 Ra1 62.Re5 Rg1+ 63.Kf3 Rf1+ 64.Kg2 1-0

 64…Rd1 65.Rxd5! で一巻の終わりである。1月以来大きな長い(長引いた)試合でカールセンの初めての負けとなった。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(275)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

eポーンの犠牲とf列の圧力

 黒の場合は布局で主として成すべきことは、機会があればできるだけ早くキャッスリングすることによってキングを安全地帯に移す可能性にとりわけ注意を払いながら、できるだけ迅速に展開を完了することである。この目的を追求する際に黒は自分のポーン中原が壊れるかもしれないことをあまり気にすべきでない。なぜならシュリーマン中原では動的な要素の方が純粋に戦略的な考慮点よりも重要だからである。要するに陣形上の主導権争いに勝つ者が勝負に負けるかもしれず、逆に動的な主導権争いに勝った者が勝負に負けることは非常にまれだからである。

 もし黒が自分の目的を達成できれば敵陣に圧力をかけることができる。それはとりわけf列上の要所、つまりf4、f3およびf2に対して大駒と小駒の協同作戦により行なわれる。

 次の例は前の例と同様に純粋に説明のために用意したもので、黒が反撃の基礎とすることができる主要な動的主題を表わしている(図327)。

 図327

 ここで …d5 突きのあと白には異なる三つの候補(Nxf6+、Neg5 それに Ng3)が考えられ、非常に異なった状況に至るが共通点もある。それは黒がキャッスリングして展開を完了するためにeポーンを犠牲にするということである。

 最初の例は Nxf6+ gxf6、d4 Bg7、dxe5 O-O である(図328)。

 図328
 
 黒の展開の速さはポーン形の紛れもない損傷を補って余りある。

 二番目の可能性は図327から …d5、Neg5 Bd6、Nxe5 O-O と続く(図329)。

 図329

 黒に同様の代償がある。

 最後に三番目の可能性は非常にためになるもので、図327から Ng3 e4、Nd4 Bd7、Bxc6 bxc6、d3 Bc5、Nb3 Bd6、dxe4 O-O、exd5 Nxd5 と続く(図330)。

 図330

 ここでは前に解説したことに加えて黒がf4の地点を攻撃のために用いることができるかもしれない。

 完璧を期せば、黒のキング翼ナイトはh5を経由してf4の地点に行ける時があるし、f列での圧力は …Bg4 および/または単刀直入に …Bc5 と展開して Nf3 に対する圧力を増すことがあるかもしれない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(274)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

黒キングの露出した状態

 白の攻撃の主要な標的は敵キングである。それは単純な理由で、この君主がキャッスリングするまでa4-e8とh5-e8の斜筋上と半素通しのe列上で白駒の砲火にさらされているからである。

 f7の地点の弱点も見くびるべきでなく、白駒は急速にここをめがけて集中砲火を浴びせることができる。

 次の例はこれらの要素を大まかに図示したものである(図324)。

 図324

 a4-e8とh5-e8の斜筋の弱点は …d5、Nxe5 dxe4 と進めばすぐに目にとまる(図325)。

 図325
 
 一方図324に戻って …Nf6、Qe2 d5、Neg5 e4、Ne5 というような手順を想定してみると、e列とf7の地点の弱さは歴然としている(図326)。

 図326

 くもの巣のように張り巡らされた白の攻勢を成立させる主要な動的要素を簡単に見てきたが、完璧さのために白枡ビショップはh5-e8の斜筋(Be2-h5)だけでなくb1-g8の斜筋(Bc4)からもf7の地点を攻撃することがあることを付け加えておこう。一方e列で圧力をかけるためには O-O から Re1 で素早くキング翼ルークをそれに使えることもある。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[47]

eポーン布局

第6章 シチリア防御(続き)

カン/タイマノフ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 e6(図68)

 図68(白番)

 一度ならず黒のd5の地点の重要性を述べてきて、今度はその地点の支配をめぐって黒のポーンの形が作られる戦法に注意を向ける。

 本譜の手は黒のキング翼ビショップの筋を開けてd6またはc5の地点(戦法によってはb4もある)に出られるようにしている。このビショップは一箇所以上の地点で良い働きをするので、読者はその役に立つ捌きを注意深く観察するのがよい。

3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6

 黒のここまでの指し方は迅速な展開の重要性について述べてきたことすべてに当てはまっていない。この「ポーン先行」戦略にひそむ論理は、難攻不落のポーンの形を築いておいて、白が駒を動かすのを見ながら自分の駒を最適な地点に配置しようというものである。

5.Nc3

 既に白は展開で2手先行している。代わりに 5.c4 は 5…Nf6 6.Nc3 Bb4 と応じられる。

5…Qc7

 5…b5 もマスターの試合に時おり見られる。しかし 6.Bd3 Bb7 7.O-O となると白が展開でリードしていて積極性のある好形になるようである。

6.Bd3 Nc6

 これは自然な展開の手で、白のd4のナイトに当たりになっている。

7.Be3

 7.Nxc6 はシチリア防御では当然ながら黒のd5の地点の支配を強めるのに役だつだけである。7…bxc6 8.O-O Nf6 となればほぼ互角の形勢である。

7…Nf6

 この型(…e6 と突いている)の戦法では黒は …Nxd4 と争点を解消したあと …Ne7 から …Nc6 と指すことがある。しかしこのような戦術には黒のキング翼の守りが薄いという欠点がある。例えば 7…Nxd4 8.Bxd4 Ne7 9.O-O Nc6 10.Be3 b5 11.f4 Bb7 12.Qh5 となれば白はキング翼で主導権があり攻撃を仕掛ける可能性がある。

8.O-O

 8.Qe2 は 8…Bd6 でビショップの働きが強いので黒にも等分の可能性がある。このあと白は 9.g3(9…Bf4 から 9…Bxe3 という駒を交換するための捌きを防ぐため)9…Be5! 10.Nb3 Bxc3+ 11.bxc3 d5 12.exd5 Nxd5 13.Bd2 と指すのがよく、どちらも指せる分かれである。

 本譜の手はもっと自然な手で、白がいくらかの優勢を保持する可能性が高い。

8…Bd6

 この手はhポーンを当たりにしながら重要なe5とf4の地点を押さえている。白が最初にしなければいけないことは当たりのポーンを救うことである。

9.h3

 9.f4? は 9…Nxd4 10.Bxd4 Bxf4 でポーンを損する。また、9.Kh1 は 9…Bf4 10.Bxf4 Qxf4 11.Nde2 Qc7 で互角の形勢で黒の満足である(ただし 9…Bxh2? は 10.g3 Bxg3 11.fxg3 Qxg3 12.Qf3 となって、黒のポーン3個より白の駒得の方が優る)。

9…b5

 これは最も積極的な手で、クイーン翼ビショップをb7に展開して白のeポーンに対する圧力を増す準備をしている。

10.Nxc6

 黒がビショップを対角斜筋(a8-h1)に配置するつもりなので、黒からナイトを交換させるよりも自分からc6で交換して手を稼ぐことにした。黒がナイトを取り返すとクイーンが自分のビショップの利きの邪魔になる。ビショップの利きを通すためには黒はあとで1手かけてクイーンをどけなければならない。

10…Qxc6 11.Bd4

 白はビショップをもっと攻撃的な地点に進めて 12.e5 から 13.Be4 を狙った。

11…Bb7

 黒は当然 12.e5 を防いだ。

12.a3

 黒のポーンがb5にある局面ではこの手は役に立つ用心となることがよくある。これで黒はもう …b4 と突いてナイトを追い払いeポーンを取ることができなくなった。

12…e5!

 一見したところこの手は黒のd5とf5の地点を弱めるので意外な感じがする。しかし実際には白がこれらの弱点につけ込む手段はない。なぜなら白にはf5に行くべきナイトがd4にいないし、白がナイトをd5に行かせようとしても黒のナイトがそこを見張っているからである。本譜の手は白が e5 と突く可能性も完全になくした。

13.Be3 Bc5(図69)

 図69(白番)

 この手はビショップ同士を交換するためである。14.Qf3 Bxe3 15.Qxe3 O-O 16.Rad1 d6 となればどちらも指せる局面である。

(この章終わり)

2011年01月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(273)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

動的な主導権をめぐる争い

 通常シュリーマン中原に固有な状況(白が展開で優勢なのに対し黒は中原で事実上優勢)により明らかに両者は布局から精力的に動かなければならない。消極的にしていると相手の攻勢の可能性を増大させるだけである。

 だから両者はほぼ最初の手からあらゆる手段を駆使して動的な主導権を握ることに努めることになる。それは多種多様な戦力の犠牲を伴うこともある。そのような犠牲の例は多彩すぎて特定の局面に関係しないパターンを定めることはできない。実戦ではそのようなことは害こそあれ役に立つことはないので明らかに勧められない。

 この点に関して注意すべきは-純粋に一般化すると-白は露出している小駒の一つをよく犠牲にするのに対し黒は中原のポーンの一つを犠牲にすることをためらわないということである。さらに両者はどちらの翼にもキャッスリングすることがあり、黒がキャッスリングしなかったり手動でキャッスリングする例にも事欠かない。

 それでも色々な犠牲を含んだ非常に広範な変化から、一般性のある動的な主題を少し拡張して示すことは常に可能である。ここでの検討はそういうものに限定する。

(この章続く)

2011年01月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(272)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

黒のeポーンおよび Nc6 に対する圧力

 白の目標は明らかに正反対で、その鉾先は相手の中原を固まらせこちらのポーン突きで動揺させて弱体化させることに向けられる。この作戦を遂行するに当たり白は二つの密接に関連する要素を用いることができる。それはeポーンに対する圧力(黒に控えめに …d7-d6 と突かせるため)と Nc6 に対する圧力(実際は既に Bb5 で圧力をかけられているが …d7-d6 突きでさらにそれが強まる)である。

 次の図で黒の中原を凍結させる作戦の理想的な結果が見られる(図322)。

 図322

 もちろんこのような状況は図321での白黒逆の場合に述べておいたように黒の消極的な指し方の結果でもある。だから実戦ではどちらの場合も見かけるのはそれほどあることではない。

 代わりに実戦でもっと普通に見られるのは、白が例えば d2-d4 突きで相手に …e5-e4 と突き越させた中原の配置で、このポーンは前にせよ後にせよ …d7-d5 突きで支えられる(図323)。

 図323

 この場合でも黒の中原は固定されていて、側面から f2-f3 突きで揺さぶられるのでもろくなっている。eポーンとfポーンが交換になれば完全に対称なポーン形になるが、その結果まったく均衡のとれた状況になると考えてはいけない。このような場合駒の配置によって形勢の優劣が決まる。だから白は最初から展開でかなり優位に立っているのでほとんど常に動的に優勢な局面に落ち着くのが普通である。

(この章続く)

2011年01月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(271)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

白の小駒の無防備状態

 黒は強力なポーン中原を構築しようという過程で、図318からすぐに明らかで前述の戦型一覧の大部分に共通する要因を利用することができる。それは白のナイトと Bb5 の無防備の状態である(図320)。

 図320

 注意すべきはクイーン翼ナイトがc6に展開してあっても必ずしも黒が …c6 と突くのを妨げることにはならないということである。先の戦型のいくつかから分かるようにこのナイトはd4に跳ぶことができる。それに Bxc6 bxc6 という交換が行なわれたとしても黒のポーン中原をさらに強化する効果がある。

 そのような中原の伸張の理想的な目的は、次の図に示されるような安定した可動ポーン中原の形成によって代表される(図321)。

 図321

 もちろんこのような結果は白が消極的に指した時にだけ起こり得る。

(この章続く)

2011年01月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(202)

「Chess Life」2010年11月号(1/4)

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2218のピラミッド!この数字はカリフォルニア州アービンでのここにいる米国オープン出席者の平均レイティングである。一番下の列の左から二人目がGMヒカル・ナカムラ

米国オープンのおまけ


米国チャンピオンのヒカル・ナカムラは米国チェス連盟の年間最優秀GM賞の受賞のために街に来ていたが浮き浮きしていた。あまつさえ高校チャンピオンが同時対局を行なうデンカー大会の盤の一つに着席し、同時対局をしていたデンカーチャンピオンのスティーブン・ジールクを当惑させた。

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2011年01月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(270)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点(続き)

ポーン形の主導権をめぐる戦い

 表面的には黒のポーン中原は強力そうに見えるが、白はe列に圧力をかけ d4 突きで切り崩していける。端的に言えば状況はきわめて不安定なのである。

 だからシュリーマン中原では両者は中原の支配のために文字どおり殴り合いの試合を演じることになる。これからいくつかの特徴的な戦略の主題を見ていくが、実戦ではこれから出てくるような純粋な形で現れることは滅多にないことに注意されたい。

(この章続く)

2011年01月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(269)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原(続き)

9.1 戦略の着眼点

 この型の中原は白のeポーンと黒のfポーンとの交換から生じるのが一般的である。しかしこの戦型から生じるすべての展開が必ずしも同じポーンの形になるわけではなく、例えば黒がf5のポーンを取り返さないということもあり得る。前述の戦法を共通のポーン形の主題にまとめることは難しいので、参照する手がかりとして最も単純なポーン形を選ぶことにした。他の考慮点を除けばこの形が最もよく生じるものであり、不安定なポーン形に突然起こるかもしれない変化を説明するためはこの形の基本的に動的な性質が最良の出発点となる。(図319)

 図319

 この型の中原に本質的な戦略的および動的要素はすぐに次のように確認できる。

 (1)中央列で黒に2個の可動ポーンがあるのに対し白は1個なので黒のポーン形が実際上優っている。

 (2)黒のキングの位置が弱体化している。これはポーン形で優位に立った代価である。

 忘れてはならないことは通常は白が展開でいくらか優位に立っているということである。これは一部は先手番であることによるし、一部は多くの場合黒がe4のポーンを除去するのに多くの手数がかかっているということによるものである。

(この章続く)

2011年01月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(107)

「Chess」2010年11月号(6/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第3回戦 9月23日(続き)

 イングランドはIM二人とFM一人を擁する南アフリカと組み合わされた。総合的な勝利は疑いなかったが、精彩を欠いたルーク・マクシェーンがレイティング2300台のFMヘンリー・スティールに屈した。ミッキー・アダムズはケニー・ソロモンを相手に横綱相撲を見せた。

第3回戦 イングランド対南アフリカ
M・アダムズ - K・ソロモン
シチリア防御モスクワ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 e6 4.O-O Nge7 5.c3 d5 6.exd5 Qxd5 7.Re1

7…a6

 1992年パリでのカスパロフ対クラムニクの快速戦では 7…g6 8.b4!? Bg7 9.Bb2 と進み、白がかなり早めに勝利を収めた。

8.Ba4 b5 9.Bc2 Bb7 10.a4

10…b4

 以前はここで 10…Ng6 が指されていた。これに対して白は 11.axb5 axb5 12.Rxa8+ Bxa8 13.Na3 で主導権を握る。実戦の手のあと白は積極的な指し回しで展開でかなり優位に立った。

11.d4 Rd8 12.c4!

12…Qh5

 12…Qxc4?? は 13.Bb3 でクイーン(または少なくとも多くの戦力)を失う。

13.d5 exd5

 黒はしょせんアダムズのポーン捨てを受け入れなければならない。そして素通しのe列が弱くなり、e7のナイトもf8のビショップもほとんど動ける見通しが立たなくなった。

14.Nbd2 dxc4

 フリッツは 14…f6!? を推奨するが、15.cxd5 Nd4 16.Nxd4 Qxd1 17.Bxd1 cxd4 18.d6 Rxd6 19.Nc4 Rd5 20.f4

となって形勢はまだ黒が難しそうである。それにe列の問題もまだ解決していない。

15.Qe2 Na5

16.Ne4!

 Nxc4 でも良さそうである。

16…Nb3

17.Bxb3

 すぐに 17.Bg5! と出るのも非常に強い手である。17…Nxa1 なら 18.Bxe7 Bxe7 19.Nf6+! で次の手で詰みになる。

17…cxb3 18.Bg5!

18…f6?

 黒は自刃した。18…Bxe4 19.Qxe4 Qg6 20.Qc4 の方が良い受けだったが、アダムズは2ポーン損の代わりに十分すぎる陣形上の代償を得ているのでほぼ彼の典型的な押しつぶしの展開になっていたことだろう。

19.Bxf6 Kf7 20.Ne5+ 1-0

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(268)

第9章 シュリーマン(イェーニッシュ)中原

主手順 - シュリーマン(イェーニッシュ)逆ギャンビット

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5 4.Nc3 fxe4 5.Nxe4(図318)

 図318

 同様のポーンの形は他の戦法でも …f5xe4 または e4xf5 と取ることにより現れることがある。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 シュリーマン逆ギャンビット
 - 3…f5 4.d4 fxe4 5.Nxe5
 - 3…f5 4.Nc3 Nf6 5.Qe2(または 5.exf5)5…Bc5 6.exf5
 - 3…f5 4.Nc3 Nd4 5,Bc4(または 5.exf5 あるいは 5.Ba4 c6 6.Nxe5 Qf6 7.Nf3 fxe4)5…c6 6.Bxg8 Rxg8 7.O-O Qf6 8.exf5

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 f5 5.d4(または 5.exf5)5…fxe4 6.Nxe5

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 f5 6.exf5

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 f5 5.d4(または 5.Nc3 fxe4 6.Nxe4)5…fxe4 6.Nxe5

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(267)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.3 実戦例(続き)

 図317(再掲)

 白はポーン得も同然で、収局ではポーンの優位は通常勝つのに十分である。

27.g5 c6 28.f4

 この手は 29.Kf3 のあと 30.f5 Bg8 31.e5 fxe5 32.Ke4 を狙っている。

28…fxg5 29.hxg5 Kc7 30.f5 Bg8 31.Kf3 b5 32.e5

 白の多数派ポーンの前進が止められないことと黒の多数派ポーンの無能さの対照的なことは非常に参考になる。

32…g6 33.e6 Bxe6

 34.e7 突きの狙いを目前にして黒は駒を捨てることを余儀なくされた。33…Kd6 は 34.Ne4+ Ke7 35.Nf6 で悪い。

34.fxe6 Nxe6

 まだすべてのポーンをなくしてしまう希望がある。

35.Ne4

 黒の多数派ポーンからの最後のあがき(無駄だったが)を防ぐ 35.Kg4 の方が正確だった。

35…c3! 36.bxc3 bxa4 37.Nc4 c5 38.Kg4 Kc6 39.Nf6 Nc7 40.Nxh7 Nd5

 40…Nb5 は 41.Nf8 Nd6(41…a3 なら 42.Nxg6 a2 43.Na5+ から Nb3 で白が勝つ)42.Nd2 c4 43.Nb1 Nb5 44.Nxg6 a3 45.Nxa3 Nxa3 46.Ne5+ Kd6 47.g6 で白の勝ちになる。

41.Nf8 Nxc3

 鬼手の 41…Ne3+ でも次のように起死回生にならない。42.Nxe3 a3(42…Kb5 は 43.c4+ Kb4 44.Nd5+ Kxc4 45.Nb6+ Kb4 46.Nxa4)43.Nc4 a2 44.Na5+ Kb5 45.Nb3 Kc4 46.Nxg6! Kxc3 47.Nf4! Kxc2 48.Na1+ Kb2 49.Ne2 Kxa1 50.Nc1 これで白が勝つ。

42.Nxg6 Kd5 43.Na3 Ne4 44.Nf4+ Ke5 45.Nd3+ 1-0

 健全なキング翼多数派ポーンの真価を発揮した勝利だった。

(この章終わり)

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チェス布局の指し方[46]

eポーン布局

第6章 シチリア防御(続き)

ドラゴン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6

 この手は黒のクイーン翼ビショップの筋を開け、白からの早期の e5 突きを防いでいる。

3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6

 この手は黒の布局戦略の重要な一部で、白から次の手を引き出すためにeポーンを当たりにして白のcポーンを突かせないようにしている。この手の代わりに黒が 4…g6 と突くと白は 5.c4 と突くことができていわゆるマローツィ縛り(1920年代の有名なハンガリー人マスターにちなむ)を構築することができる。この縛りの主眼は黒の狙いとする …d5 突きによる捌きを防ぐことである(願わくばずっと)。もし実際に黒の主眼の捌きの手が抑えられることになれば、黒はたちまち守勢に追い込まれて反撃がほとんどまたは全然できなくなってしまう。

5.Nc3 g6(図66)

 図66(白番)

 この手でドラゴン戦法に入る。そう名付けられたわけは黒のポーンの形がドラゴンの輪郭に似ていることによる。黒はキング翼ビショップをフィアンケットして対角斜筋(h8-a1)に圧力をかけ自分のキングに安全地帯を設ける。

6.Be3 Bg7

 6…Ng4? は 7.Bb5+ Bd7 8.Qxg4 で駒損になる。しかし本譜の手のあとは 7…Ng4 が狙いとなる。

7.Be2

 代わりに 7.f3 は 7…Nc6 8.Qd2 O-O となってチェスの最も難解な局面になる。白はこのあと 9.O-O-O または 9.Bc4 と指すことができる。この戦型のどちら側を持つにせよ大会や決定戦で勝負をかける前に専門書で研究しておくべきである。

7…Nc6 8.O-O O-O

 両者とも普通の展開の手を指している。

9.Nb3

 白はd4の駒をどけて黒が …d5 突きの可能性に基づいた手を作るのをより難しくさせた。この白の手は 10.f4 と突く準備でもある(すぐに 9.f4 と突くと強く 9…Qb6 と応じられる)。

 穏やかな手は 9.Qd2 だが黒はほとんど痛痒を感じない。自然な応手の 9…Ng4 10.Bxg4 Bxg4 でやや味気ない局面になる。

9…Be6

 ここはこのビショップにとって最も働きのある地点で、いつかこのビショップまたはクイーン翼ナイトでc4の地点を占拠する準備である。9…Bd7 は消極的すぎる。

10.f4

 白も強気で応じた。黒が何もしなければ白からの f5、g4 から g5 で激しいキング翼攻撃に直面することになる。

10…Qc8!

 この手には三つの目的がある。11.f5 を防ぐこと、11….Ng4 と捌いて交換をねらうこと、そしてルークのためにd8の地点を空けることである。

11.h3

 白は 11…Ng4 を防いだ。

11…a5!

 黒は快調に飛ばしている。次の狙いは 12…a4 13.Nd4 a3 で白の対角斜筋を弱めることである。

12.a4 Nb4

 黒の完全に満足できる局面になった。黒のクイーン、クイーン翼ナイト、クイーン翼ビショップおよびキング翼ビショップが全部クイーン翼を向いている。クイーン翼では白のわずかに優る中原支配を埋め合わせる十分な可能性がある。黒のとりあえずの狙いは 13…Nxe4! 14.Nxe4 Nxc2 である。

13.Bd4 Bc4(図67)

 図67(白番)

 この活発な局面では両者の勝ち目はほぼ互角である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(266)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.3 実戦例(続き)

 図316(再掲)

 同様に考慮に値する手は 12.Nc3 Bd6 13.Nd5(13.a4 なら黒は 13…Kf7 14.a5 c4 15.Nd4 b5 16.Nxe6 Kxe6 17.Nd5 Ne7 で互角の収局にすることもできるし、13…O-O-O 14.a5 Kb7 で次の解説中の戦型に戻すこともできる)である。もっとも 13…O-O-O で黒が展開の課題をすべて解決しているように見える。

 本譜の手は主眼の手で、c5のポーンに対する以前からの圧力と呼応している。白は黒が双ビショップを放棄して白のクイーン翼の少数派ポーンの形を崩すように挑発している。別のところで述べたように 12…Bxb3 13.cxb3 のあと白の少数派ポーンは駒が盤上からなくなってもクイーン翼で敵がパスポーンを作るのを完全に防ぐことができる。

12…Ne7

 自然な展開の 12…Bd6 は 13.a5 と突かれる。もっとも 13…O-O-O のあとa6のポーンは戦術的に守られているので(14.axb6? Bxh2+)黒は 14.Nc3 に対して 14…Kb7 と応じる余裕があり、黒陣はたぶん相手の襲撃に十分持ちこたえられる 。例えば 15.e5!? Be7!(15…fxe5? は 16.axb6 cxb6 17.Ne4 Bc7 18.Nbxc5+ で良くない。15…Bxb3? は 16.exd6 Bxc2 17.Rdc1 Bg6 18.dxc7 で駄目である)16.Rxd8 Bxd8 17.axb6 cxb6 18.Bxc5 Nh6(18…bxc5? は 19.Nxc5+、18…Bxb3 は 19.Bf8! で良くない)となれば受け切れる局面である。

 本譜の手は定跡では無視されているけれども我々の考えでは重要な改良手である。

13.Bf4 c4 14.Nd4 O-O-O 15.Nc3

 白は攻撃の鉾先を黒が主眼の戦術的手段で守るcポーンに転じた。

15…Bf7?!

 黒はきっと 15…Rxd4 16.Rxd4 Ng6 17.Be3 Bc5 で局面を単純化できると読んでいたのだろうが、そのあと例えば 18.Kf2 Bxd4 19.Bxd4 となればまだずっと守勢に立たされると気がついたのだろう。盤上の駒が異色ビショップだけならばこの局面は引き分けである。しかしルークとビショップと共にキング翼に白の可動多数派ポーンがあるのでこの局面にはまだ多くの手段が残っている。それでもこの方が実戦の進行よりも優っていたかもしれない。

 本譜の手(無意味な手損)のあと白は確固とした主導権を確立した。

16.Bg3! Ng6

 16…g6 は遅すぎるように見える。白は 17.a5 で黒陣に対しかなり圧力を強めることができる。これに対して 17…Kb7 は 18.Bxc7! Kxc7 19.Ndb5+ axb5 20.axb6+ で良くない[訳注 この後 20…Kxb6 21.Rxd8 Nc6 で黒が優勢のようです]。17…b5? も 18.Ncxb5! でうまくいかず白がはっきり優勢になる。例えば 18…axb5 19.a6 Kb8 20.Bxc7+! Kxc7 21.Nxb5+ という具合である。

17.Nf5 Rxd1+ 18.Rxd1 Ne7

 これは苦渋の決断である。しかし黒はキング翼の戦力を参戦させるためには Nf5 を追い払ってg7に対する圧力を取り払わなければならない。

19.Ne3

 白はd5の地点を利用する用意をした。

19…Nc6 20.Ned5 Bc5+?!

 長い間圧力に耐えたあと黒は展開を完了し白の黒枡ビショップを盤上からなくす機会を与えられてほっとしたのだろう。しかしこの型の局面では交換はすべて収局における自分の陣形の不利を増すだけだということを忘れていたのだろう。正しい受けは 20…Ne5 だった。逆に 20…Bd6? は 21.Nxb6+ のために悪手となる。

21.Bf2! Bxf2+?!

 ここで黒は自分の誤りに気づき、21…Bf8 と指して …Nb4 と指す機会をうかがうべきだった。しかし黒は Rh8 を戦いに参加させることに気を取られていたのだろう。

22.Kxf2 Re8 23.h4

 白は無傷の多数派ポーンを動員し始めた。一方黒は積極的な作戦がないことに気がついた。

23…Kb7 24.Ne3 Be6

 黒は 24…h5 と突いてキング翼の多数派ポーンを少しでも長く制止した方が良かった。

25.g4 Rd8?

 黒は素通し列を争うが単純化は白を利するだけである。ここは 25…h6 と指して白の多数派ポーンの進攻を抑えるようにした方が良かった。しかしそれでも白が非常に有望である。

26.Rxd8 Nxd8(図317)

 図317

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(265)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.3 実戦例(続き)

 図315(再掲)

 旧来の手順の 5.d4 exd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 と比べると5手目の改良の意味は一目瞭然である。二つの戦型から生じる局面は似ているがこちらの方は白が明らかに2手得している。即ち白はキャッスリングを済ませていてd列を占拠している。一方 …f6 突きと …c5 突きは展開の手とは考えられない。

9…Bg4

 この手の目的は f3 と突かせてa7-g1の斜筋の弱体化に期待するためである。考えられる他の手の進行は次のとおりである。

 (1)9…Bd6 10.Na5! b5(ここで Rd1 の無防備の状態を利用して 10…Bg4? 11.f3 O-O-O? と指すことはできない。12.e5 と突かれて白の駒得になる)11.c4! Ne7 12.Be3 白がはっきり有望である。

 (2)9…Be6 10.Bf4(10.Be3 b6 11.a4 も考えられる)10…c4 11.Nd4 O-O-O 12.Nc3(12.Bxc7? は 12…Rxd4! で駄目である)12…Bf7 13.Nf5 Re8 14.Rd2 Ne7 15.Nxe7+ Bxe7 16.Rad1 Rd8 17.Nd5 Bxd5 18.Rxd5 b5 19.Rxd8+ Rxd8 20.Rxd8+ Kxd8 白にクイーン翼ポーンをもう白枡に置かせることがきないので黒に相応の反撃の可能性があっても、この収局は白の方が有望である。

 (3)9…Bd7 10.Bf4 O-O-O 11.Nc3 Be6 12.Rxd8+ Kxd8 13.a4 Bxb3(ここではついやりがちな間違いの可能性がある。13…b6? 14.a5 b5 15.Nxb5! axb5 16.a6 で、ポーンが昇格する)14.cxb3 白がわずかに優勢である。駒がなくなってもクイーン翼の白ポーンはこの配置で敵のパスポーン生成を完全に防ぐことができることに注意されたい。

10.f3 Be6

 前述の解説の(2)の戦型と比較すると白は f3 の手を「得」している。しかし以下に見られるようにこの違いは黒が有利である。

11.Be3

 ここで 11.Bf4 c4 12.Nd4(12.Na5? は 12…Bc5+ 13.Kf1 Bb6 14.Nxb7? Rb8 でナイトが取られる)12…O-O-O 13.Nc3 は黒がa7-g1の弱体化を利用して 13…Rxd4 14.Rxd4 Bc5 15.Be3 Bxd4 16.Bxd4 Ne7 と単純化することができ、黒の陣形の劣勢による不利が異色ビショップのために大きく割引きされる収局になる。

11…b6 12.a4(図316)

 図316

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(264)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.3 実戦例

第13局
ティマン対マタノビッチ
ユーゴスラビア、1978年
交換戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 フィッシャー中原はベルリン防御のいくつかの戦型でも現れる。例えば 3…Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 のあと

 (1)5…a6 6.Bxc6 dxc6 7.Qe2 Bf5 8.Rd1 Be7 9.dxe5 Qc8 黒は相手の展開の優位に対してe6の地点をしっかり支配し Ne4 の存在も相手にとって脅威となっている。

 (2)5…Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5(7…Ne4 8.Qe2 Bf5 は前の戦型で見られたのとほとんど同じ局面になる)8.Qxd8+ Kxd8 黒はキャッスリングができなくなっても形勢が悪いわけではなく、白のポーンがe4でなくe5にある局面ではキング翼多数派ポーンの封じ込めの行動はクイーンがないので特に容易になるはずだと期待している。それでも白は相手の双ビショップをなくさせる狙いを用いてせき止めの意図を邪魔することができる。例えば 9.Nc3 h6 10.b3(または 10.h3 Be6 11.g4 Ne7 12.Nd4 Bd7 13.Bf4 c5 14.Nde2 Kc8 15.Rad1)10…Be6 11.Bb2 Kc8 12.Ne2 Bd5 13.Nd2 c5 14.Nf4 Bc6 15.Nc4 Be7 16.Rad1 でどちらも白がわずかに優勢である。

 (3)5…Be7 6.Qe2(または 6.Re1 Nd6 7.Bxc6 dxc6 8.dxe5 Nf5 9.Nbd2 Be6 10.b3 Qd5 11.Bb2 O-O-O 12.Qe2 Nh4 13.h3 c5 14.Rad1 Nxf3+ 15.Nxf3 Qc6 16.c4 で相互に相手の多数派ポーンを封じ込めているが、白陣の方が捌く空間が広い)6…Nd6 7.Bxc6 dxc6(7…bxc6 の方が普通で、このあと 8.dxe5 Nb7 となって定跡でかなり詳しく研究されている変化になる。しかしその戦略の着眼点はフィッシャー中原でなく一種の小中原と開放中原の混合の結果である)8.dxe5 Nf5 9.Rd1 Bd7 10.Nc3(白は 10.e6!? fxe6 11.Ne5 で敵陣を乱すことも試みたが 11…Bd6 で互角より良くはならないようである。例えば 12.Qh5+ g6 13.Nxg6 Ng7 14.Qh6 Nf5 15.Qh3 Rg8 16.Qxh7 Rg7 17.Qh5 Qf6 18.Ne5+ Ke7 19.Ng4 Qg6 20.Qxg6 Rxg6 21.h3 e5 22.Nc3 Nd4 で黒がポーンを取り返す)10…O-O 11.Ne4 白がいくらか優勢である。

4.Bxc6

 黒が …Nf6 と …Be7 を指すまでこの交換を延ばす考え方は面白い。白の期待は黒がそのように駒を展開するとキング翼の多数派ポーンを封じ込める主眼の活動(…f6、…Bd6、…Ne7-g6)と整合しなくなることである。この戦型は「遅延交換戦法」として知られているが、その例を二、三紹介しよう。4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Bxc6 dxc6 7.Qe1(この手は …Bg4 による釘付けを避けながらe4のポーンを守りe5のポーンを攻撃している。この手と代わりの 7.d3 は-しかし 7.d3 はフィッシャー中原の形にはしないつもりであるのが普通である-最も定跡で注目を浴びた。もっとも 7.Nc3 や 7.Re1 のような他の戦型も試みられてきた)7…Nd7(7…Be6 は 8.b3 Nd7 9.Bb2 f6 10.d4 Bd6 11.Nbd2 O-O 12.Qe2 c5 13.dxe5 fxe5 でお互いに指せる)8.d4 exd4 9.Nxd4 Nc5 10.Qe3 O-O 11.Nc3 Re8 12.Rd1 Bd6 13.b4 Nd7 14.Nf5 Ne5 15.Nxd6 cxd6 黒は互角の形勢にした。

 フィッシャー中原は開放戦法から生じることがある。4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.Qe2(まさしく二流の戦型)6…Nc5 7.Bxc6 dxc6 8.d4 Ne6 9.dxe5 Nd4 10.Nxd4 Qxd4 11.h3 Be7 動的に互角である。

4…dxc6 5.O-O

 e5のポーンは間接的に守られている。つまり 5.Nxe5 には 5…Qd4 で黒がe4のポーンを取り返し双ビショップの態勢になる。

 一時は 5.d4 exd4 6.Qxd4 が指されていた。しかし実戦でこの戦型は黒が正しく指せば十分に適切な展開ができる可能性が非常に高いことが実証された。黒はどちら側にキャッスリングするかも選択することができる。例えば 6…Qxd4 7.Nxd4 Bd6(7…Bd7 から …O-O-O もある)8.Nc3 Ne7 9.Be3 f6 10.O-O Bd7 となれば動的に互角である。

 フィッシャーが復活させた実戦の手は旧来の戦法の改良である。というのはこの先現れるように白が事実上1手得するからである。ここではe5のポーンに対する狙いは現実になっている(6.Nxe5 Qd4 7.Nf3 Qxe4?? 8.Re1)。

5…f6

 この手は確かに最も多い応手であるが多くの他の手も指されている。例えば

 (1)5…Qe7 6.d4 exd4 7.Qxd4 Bg4 8.Bf4 Bxf3 9.gxf3 Nf6 10.Nc3 Nh5 11.Bg3 Rd8 12.Qe3 Nxg3 13.hxg3 黒は白の多数派ポーンに損傷を与えたが無害になったというほどのものではない。

 (2)5…Bd6 6.d4 exd4 7.Qxd4 f6 8.b3 Be6 9.Ba3 Nh6 10.Bxd6 cxd6 11.c4 O-O 12.Nc3 白はd5の地点をしっかりと支配しているおかげで、出遅れ気味のdポーンに対して圧力をかける展望が開けている。

 (3)5…Qd6 6.d4 exd4 7.Nxd4 Bd7 8.Be3 O-O-O 9.Nd2 Nh6 10.h3 Qg6 11.Qf3 f5 12.Rad1 fxe4 13.Qxe4 Qxe4 14.Nxe4 キング翼でポーンが2個消えても白の陣形上の優位という特徴は変わっていない。

 (4)5…Bg4 6.h3 h5(これは非常に難解な戦法で、戦略よりも戦術的要素の方がしばしばものをいう。しかし例としてここであげる戦型は嵐が過ぎたあと戦略が再登場するかもしれないことを示している)7.d3 Qf6 8.Nbd2 Ne7 9.Re1 Ng6 10.d4 Bd6 11.hxg4 hxg4 12.Nh2 Rxh2(12…exd4? 13.e5! Nxe5 14.Ne4 Qh4 15.Nxd6+ cxd6 16.Bf4)13.Qxg4(13.Kxh2? Qh4+ 14.Kg1 O-O-O[訳注 途中 13…Qxf2 で黒の勝勢です])13…Qh4 14.Qxh4 Rxh4 15.Nf3 Rh5 16.dxe5 Nxe5 17.Nxe5 Bxe5 18.c3 この収局は白が有利である。

6.d4 exd4

 代わりに 6…Bg4 はフィッシャー中原とは少し異なった中原になることがある。例えば 7.dxe5(または 7.c3 Bd6 8.dxe5 fxe5)7…Qxd1 8.Rxd1 fxe5(または 8…Bxf3 9.gxf3 fxe5)といった具合である。このような状況では白の陣形的な優位はそれほど明白でない(あるいは gxf3 と取り返さなければならない場合は優位が実際に消滅する)。それでもe5のポーンが弱体化すれば(白は Nbd2-c4 および/または b3 から Bb2 のような捌きでこのポーンを標的にすることができる)黒はキング翼ビショップをかなり守勢のd6の地点に配置せざるをえないのが普通である。一般的なことを言えばこの黒の指し方は実戦よりは少し安全であると言えるが守勢に傾いているとも言える。状況を具体的に示すために少し手順を見てみよう。

 (1)7.c3(この手は局面の争点をもっと保つ)7…Bd6 8.Be3 Ne7 9.Nbd2 Qd7 10.dxe5 fxe5 11.h3 Be6 12.c4 Ng6 13.c5 Be7 14.Qc2 O-O 15.Rfd1 白にとってかなり活動しやすい局面である。

 (2)7.dxe5 Qxd1 8.Rxd1 fxe5(または 8…Bxf3 9.gxf3 fxe5 10.Be3 Bd6 11.Nd2 Ne7 12.Nc4 O-O-O 13.Rd3 b5 14.Na5 Bb4 15.Nb3 で白が少し優勢である)9.Rd3 Bd6 10.Nbd2 b5 11.b3 Ne7 12.Bb2 Ng6 13.g3 O-O 14.Kg2 Rf6 お互い指せる分かれである。

7.Nxd4 c5

 白が展開でかなり優位に立っていることを考えればクイーン交換の方針は実戦的にもっとも理にかなっている。クイーンを盤上に残そうとすると防御側の困難さが増すことになる。例えば 7…Bd6 8.Qh5+ g6 9.Qf3 Bxh2+ 10.Kxh2 Qxd4 11.Rd1 Qc4 12.Bf4 Qf7 13.Qb3 または 7…Ne7 8.Be3 Ng6 9.Nd2 Bd6 10.Nc4 O-O 11.Qd3 Ne5 12.Nxe5 Bxe5 13.f4 Bd6 14.f5 でどちらも白がはっきり優勢である。

8.Nb3

 8.Ne2 も可能で、…Bd6 と展開してくれば Bf4 と対抗する意図である。しかし実戦の手はもっともよく指されている手である。

8…Qxd1 9.Rxd1(図315)

 図315

(この章続く)

2011年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(201)

「L’Italia Scacchistica」2010年7-8月号(1/1)

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決定的瞬間

第3119問 ナカムラ対シュールマン(2010年米国選手権戦、セントルイス)

 黒先黒勝ち

解答 25…Qd4+! 26.Kh1 Qe3! 0-1 (27.Qh4 Rc1)

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(この号終わり)

2011年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(263)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.2 戦術の狙い所(続き)

クイーン翼キャッスリングへの主眼の攻撃

 既に見たように黒がクイーン翼にキャッスリングした時には、クイーン翼ポーンに対する白の急襲が必殺攻撃になることがある。次の図は作った例だがこの急襲が黒キングに対する他の戦術の狙いと組み合わされるかもしれないことを示している(図313)。

 図313

 ここで白が Ndb5! と指すとc7のポーンに対する攻撃によって黒はてんやわんやのめにあう。例えば …axb5(どんな手に対しても白は攻撃が続き大きな戦力および/または陣形の優位を得る。…c6? なら Na7# で詰み。…Bxb5、axb5 Rxd1+、Rxd1 Ng6、bxa6! ここで …Nxf4? なら a7 で白の勝ち。最後に …Ng6 なら Bxc7 axb5、Bxd8 Kxd8、axb5)には axb5 で(図314)

 図314

ここで黒には Ra8# による詰みがあるが …b6、Ra7 Kb8、Rda1 または …Kb8、b6 でも早々と終結を迎える。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(262)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.2 戦術の狙い所(続き)

偽装の捨て駒の Nxc5

 これは初歩的な主題で、黒は …f7-f6 と突いてありクイーンがまだ盤上に残っている時には気をつけなければいけない(図312)。

 図312

 ここでは白は単純に Nxc5 Bxc5、Qh5+ から Qxc5 という手順でポーンを得することができる。この主題は黒キングがg8にいる時でも可能である。その場合は Nxc5 Bxc5、Qd5+ という手順になる。

(この章続く)

2011年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(106)

「Chess」2010年11月号(5/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第3回戦 9月23日

 バルカン諸国との対戦で苦戦したのはイングランドだけではなかった。ウクライナは第3回戦で開始順位28位のクロアチアに勝ち点を半分もぎ取られた。主将のイワンチュクは抜け番だったが、ポノマリョフとエリャーノフはレイティング2600台を相手に覇気のない引き分けにしかできなかった。そしてアレクサンドル・モイセエンコは39歳のムラーデン・パラツにへまで負けた。残されたエフィメンコは勝ち点を分けるために黒で勝たなければならなかった。それでもかなりの苦労の末になんとか勝った。これで第3回戦が終わったところでロシア1がウクライナに1点差をつけることができた。もっともそのロシア1もこの時点ではロシア2に頭はねされていた。イタリアは手ひどくあしらわれた。カリャーキンは自分とずっと先を行くノルウェーの同期とのレイティング差を詰めるのに役立つような格調高い指し回しを見せた。

第3回戦 ロシア1対イタリア
S・カリャーキン - D・ロンバルドーニ
シチリア防御リヒター攻撃

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 e6 7.Qd2 a6 8.O-O-O Nxd4 9.Qxd4 Be7 10.f4 b5 11.Bxf6 gxf6

12.f5

 カスパロフは1996年エレバン・オリンピアードのフラーチェク戦で 12.e5!? と突いていった。12…d5 13.Kb1 となった時フラーチェクは 13…b4 と指したが、後にイワンチュクは 13…Bb7 と改良を試みた。それに対してカスパロフは 14.f5!? と応じた。白はこれで高い勝率を誇ったが、黒はそれ以来 13…Rg8 と改良していくらか良い結果を得ている。

12…Bd7

 実戦では 12…Qc7 でも 12…Qa5 でも黒が好成績を収めている。

13.Kb1 Qc7

 このあとの2、3手の白駒の配置は非常に参考になる。

14.Qd2

 この手はc2を見張っているが、c1-h6の斜筋に沿った進出も暗示している。

14…Qc5 15.fxe6

 これは黒の二重ポーンを解消させるが、黒のキング翼の囲いを薄くしてもいる。

15…fxe6 16.Ne2!

 白はこの駒をf4に配置転換させる作戦である。そこからはh3-c8の斜筋上のビショップの助けと相まってe6のポーンに手をつけることができる。

16…Rc8 17.Nf4

17…O-O

 あとからあれこれ言うのはたやすいが、キング翼でキングの安全の幻想を追い求めようとするよりも、17…a5 でクイーン翼での逆襲を続ける方が賢明だったのかもしれない。例えば 18.Be2 b4 19.Bh5+ Kd8 となれば黒キングは中住まいで相応に安全である。

18.Be2 a5 19.Rhf1 b4 20.Bh5

20…Kh8

 黒は何か受けておかなければならない。20…a4? は 21.Rf3 で黒キングに向けられた駒の臨界質量で大変なことになる。代わりに 20…f5!? は 21.exf5 Rxf5 22.Bg4 Rf6 23.Rde1! で受け切ることはできそうにない。

21.Rf3

 白は次に 22.Ng6+! で相手をつぶすことを狙っている。だから黒はまた受けの手を指さなければならない。

21…Rg8

 21…Ba4 は単純に 22.Rc1 と応じられやはり本譜と同じ問題に対処しなければならない。

22.Bf7

 これでe6のポーンが落ちる。

22…Rg4 23.Bxe6 Rxf4 24.Bxd7 Rxf3 25.gxf3 Rg8 26.Bg4

26…Qg5?

 黒クイーンはg5で不遇をかこつことになる。黒は見込みはなくても 26…a4 と指しクイーン翼で活動する作戦を維持した方が良かった。

27.Qf2 h5

 ここは恥を忍んで前手の誤りを認め 27…Qc5 と指すのが最善の局面の一つである。

28.Rd5 Qf4 29.Rf5 1-0

 29…Qh6 30.Rxh5 でクイーンが取られる。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(261)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.2 戦術の狙い所(続き)

a7-g1の斜筋の弱点

 白はキング翼にキャッスリングしたあとfポーンをf3またはf4に突いた時は、そのために弱くなるa7-g1の斜筋に気をつけなければならない(図311)。

 図311

 例えばここでは黒はこの主題を利用して、単純化の手筋を駆使し有利に事を運ぶことができる。…c4 と突き Nd4 と跳ねて来た時に …Rxd4!、Rxd4 Bc5 で駒を取り戻しながら、異色ビショップによる安全な収局に持ち込むことができる。…c4 突きに対して切り返しの Na5? は主眼の手だがうまくいかない。なぜなら黒枡ビショップがa7-g1の斜筋で介入できるのでbポーンに対する当たりがはねつけられるからである。つまり …Bc5+、Kf1 Bb6、Nxb7? Rb8 でナイトが捕まってしまう。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(260)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.2 戦術の狙い所(続き)

Rd1 の無防備状態

 これはたぶん最も高い頻度で出現する主題で、黒の用いることのできるやり方は一通りでない(図308)。

 図308

 ここに示したのと同様の状況は黒の方からクイーンを交換したときしばしば発生する。このような状況でc7のポーンを守りクイーン翼の戦力の展開を完了する自然な方法はクイーン翼にキャッスリングすることである。しかしここではもちろん不正な手である。代わりに黒は Rd1 が無防備状態であることを利用して …c4、Nd4 O-O-O と指すことができる(図309)。

 図309

 一見 Bxc7 と取られそうだが(…Kxc7? なら Nxe6+)それは恐れる必要がない。というのは …Rxd4! で、白がルークとポーンを取る代わりに小駒2個を与える不利な交換に応じざるを得ないからである。

 同じ主題による危険性の潜む状況はd列がd6の黒のビショップによってふさがれているようなときにも白を待ち受けている。(図310)。

 図310

 ここでの狙いは …c5 と突きナイトが逃げたとき …Bxh2+ と取るという単純なものである。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[45]

eポーン布局

第6章 シチリア防御(続き)

ラウゼル戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6(図64)

 図64(白番)

 黒は最初に中原へさらに圧力をかけて、白がキング翼の展開を完了する前に形を決めるように誘った。

6.Bg5

 白はある段階で Bxf6 と取る可能性を作って黒のdポーンに間接的に圧力をかけた。例えば 6…g6 7.Bxf6 exf6 となればdポーンが孤立化し弱体化する。8.f4 のあと黒が通常の展開の方針で手を進めれば、次のようにすぐに中央で強い圧力にさらされる。8…Bg7 9.Ndb5 O-O 10.Qxd6 f5 11.O-O-O これで白が優勢になる。

 6.Be3 は単純に 6…Ng4 から 7…Nxe3 と応じられる。

6…Bd7

 これは最も現代的な手である。黒は …Rc8 から …Qa5 で素早くクイーン翼を展開する作戦である。その後は紹介のところで述べたように多くの場合 …Rxc3 と交換損の犠牲を決行する。別の一般的で本筋の手は 6…e6 である。以下は 7.Qd2 Be7 8.O-O-O O-O 9.f4 Nxd4 10.Qxd4 Qa5 11.Bc4 Bd7 12.e5 dxe5 13.fxe5 で、1992年リナレスでのイワンチュク対アーナンドの番勝負第7局ではここで戦力損を避ける 13…Bc6! が指された。

7.Qd2 Rc8 8.O-O-O

 黒のクイーン翼攻撃の襲来を考えればこれは「飛んで火に入る夏の虫」のように危険に思われるかもしれない。しかし他の手も研究されたが白はこれより良い手がないようである。

8…Nxd4

 黒はルークのためにc列を空けた。

9…Qxd4 Qa5

 黒の作戦の第一部が成し遂げられた。黒のクイーン翼は完全に展開し終わり、眼目の …Rxc3 切りの用意が整っている。ここで白は当たりになっているクイーン翼ビショップを何とかしなければならない。

10.f4

 これはビショップを守る最も自然な手段である。それと同時に中原の支配も強化している。

10…Rxc3!? 11.bxc3

 11.Bxf6? は 11…Rc7 12.Bxg7(12.Bh4 Qxa2 は白に望みがない)12…e5! で白の戦力損になる。同様に良くないのは 11.Qxc3 Qxc3 12.bxc3 Nxe4 で、黒は交換損の代わりに1ポーンを得ていろいろなうるさい狙いも持っている。

11…e5!

 これは黒キングがまだ最初の位置にいることを考えれば大胆な手である。しかし黒としては積極的に動かなければならない。

12.Qb4

 クイーンが他に逃げると 12…Ng4 とされ、13…h6 から 14…exf4 を狙われる。

12…Qxb4 13.cxb4 Nxe4(図65)

 図65(白番)

 黒は交換損の代わりに1ポーンを得ているが、他にも代償となる要素が数多くある。黒の狙いには 14…Nf2 で白のルークを両当たりにする手や、14…Nc3 のあと 15…Nxa2+ から 16…Nxb4 とする手がある。実戦では黒が完全に不満のない局面であることが実証されている。1969年リュブリャナでのウンツィカー対ゲオルギウ戦は次のように進んだ。

14.Bh4 g5! 15.fxg5

 15.Bxg5? は 15…Nf2 で黒に交換損を回復される。

15…Be7 16.Re1 d5 17.Bd3 h6 18.c4 hxg5 19.cxd5 Rxh4 20.Rxe4 Rxe4 21.Bxe4 f5

 このあとまもなく合意の引き分けになった。ソ連の故GMボレスラフスキーの研究によるとわずかではあるが白の改良手順は 18.Bxe4 dxe4 19.Rxe4 hxg5 20.Bg3 f6 21.c3 である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(259)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.2 戦術の狙い所

 フィッシャー中原の単純化された性格は戦術よりも戦略要素が指し手の進行にはるかに影響を与える局面を生じさせるけれども、戦術的策略は繰り返し生じ白も黒もそれを念頭におく必要がある。以下に示す落とし穴のいくつかは本当に初歩的であるが、危険の潜む局面に費やす言葉は決して無駄にはならないであろう。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(258)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

c5、c7およびb7のポーンに対する圧力

 黒のクイーン翼ポーンを制止するのは明らかに白の意図するところである。白は特に a2-a4 と突いての制止をc5のポーンに対する圧力と絡めるかもしれない。この捌きは一般に Nd4 をb3に引きクイーン翼ビショップをe3に進出させることにより画策される(図305)。

 図305

 そのあからさまな目的はクイーン翼のぎこちないポーンに対して a4-a5 突きによって攻撃を仕掛ける前に黒の …b7-b6 突きを誘うことである。

 黒のbポーンも攻撃目標になり得る歩兵である(図306)。

 図306

 一見したところではナイトがa5に跳ねるのは意味もなくそっぽへ行くように思われるが、非常に油断のならない手であることを強調しておく。それは自然な応手の …b6 や …b5 がしばしば Nc6 または Nb7 ともぐり込まれて厄介なことになるからである。一方bポーンを駒で単純に守るとこのナイトが単にa5に居続けることができたり、c4に行って例えばe3に移動したりd6の駒と有利な交換を行なったりできる。

 最後に、c7のポーンも一般にはビショップとナイトの協力攻撃という形で敵の注意を引きつけるかもしれない(図307)。

 図307

 c7の受けはちょっと見た感じよりも大事(おおごと)になるかもしれない。この例では Nd5 のあと黒は …c6? と突いたりすると Nb6# で詰まされてしまう。しかし仕方なく …Bd6 と受けても、Bxd6 cxd6 となって前述のように陣形に不満が残る結果となる。

 この最後の例は黒がクイーン翼にキャッスリングしたとき、ここで述べたようなクイーン翼ポーンに対する主眼の圧力がずっと危険なものになるかもしれないことを強く示唆している。もっともb7とc7のポーンが黒キングによって守られていることにより危険が一部避けられている面もある。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(257)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

黒の多数派ポーンの進攻と制止

 前図の場合を除けば黒の反撃の主要な目標がクイーン翼の多数派ポーンの迅速な進攻にあることは明らかである。これは白のキング翼ナイトがd4にいることではかどることがよくある。というのは …c6-c5 突きでこのナイトがすぐに当たりになるからである。黒ポーンの進攻は二重ポーンを解消しクイーン翼のポーンの形を修復することだけが目的ではない。より一般的な目標としてしばしば追求するのは相手のポーンの形を乱すことおよび/または駒がつけ込むことができる弱点を敵陣に生じさせることなどである(図302)。

 図302

 例えばここで …Be6 と指しても(次に …c4 と突く狙い)c4 b5、Nf4 Bf7、Nd5 で白陣が崩れないのでうまくいかない。しかし …c4! でポーンを犠牲に白の形を乱せば黒は一見守勢のような陣形から急に攻勢に立つ。例えば bxc4 Ba4!、Nd4 Bc5 となれば黒は双ビショップの働きが強く、…Bxd4 から …Bxc2 で少なくともポーンを取り返す狙いがある。単純な bxc4 Be6 もあり、ビショップの利きが大きく広がる。

 従って白の観点からは前述のポーンの態勢(「白に有利な収局と双ビショップ」を参照)を用いるだけでなく駒の助けも借りて黒の多数派ポーンを制止する戦略を適用するのが理にかなっている。

 この点について白は、特に既に …c6-c5 突きが指されている時にはたとえ黒枡ビショップの交換が相手の二重cポーンを解消させることになってもその交換を目指すことができる(図303)。

 図303

 実際 Bf4xd6 cxd6 のあと黒のポーンの形の利益はどちらかといえば見かけだけのものである。なぜならdポーンは素通し列上で出遅れポーンとして固定され、d5の地点は弱点で白のナイトによって簡単に占拠される。そのあと白がaポーンをa5に突き進めて制止作戦を完了できれば、クイーン翼の黒ポーンの剛直さはほとんど絶対的なものになる。ここで検討した作戦と図295でのd6における交換の可能性との違い(…c6-c5 突きのある無しによる)に注目されたい。

 黒の多数派ポーンを制止する別の手法は a2-a4 と突いて …b7-b5 突きを阻止(クイーン翼ナイトをc3に展開して支援する)することである。(図304)。

 図304

 前述の手法のようにこれも黒が進攻作戦でほぼ必然の …c6-c5 突きを指したあとは効果的である。黒が …b7-b5 と突く準備とd5の地点の弱点を一時的に補強するために …c7-c6 と突けば、白は a4-a5 と突いて応じ黒ポーンから柔軟性を奪いb6の地点を固定して Na4 または Nd2-c4 という捌きで制止作戦を完了させることができる。進攻の目的を達成するために黒はまず …b7-b6 と突かなければならず、あとで出てくるように白が時々c5のポーンに圧力をかけることによって誘導しようとするポーンの形が生じる。
(この章続く)

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