2010年12月の記事一覧

「ヒカルのチェス」(200)

「Chess」2010年10月号(6/6)

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ヒカル・ナカムラ

ジャニス・ニシイが8月のNHアムステルダム大会で米国最強者にインタビュー


第1回ロンドン・チェスクラシックでのナカムラ。12月の第2回で「H爆弾」が再登場

 ヒカル・ナカムラは多くの点で、少なくともヨーロッパの観点からは「典型的なチェス選手」ではない。彼は1987年に日本で生まれ、2年後に両親と共に米国に移住した。そこはボビー・フィッシャーを輩出したにもかかわらず本物のチェス学校を創立したことがなければ、東ヨーロッパや旧ソ連圏の国々から移住してきた多くのGMたちを除くと一流の選手を生んだこともなかった。

 ヒカルは米国選手権者に2度なりFIDEの世界ランキングでは現在15位だが、世界の最強のブリッツおよび弾丸チェス選手の一人として有名である。彼は切磋琢磨する他の強豪選手の少なさや広範なチェス文化の足りなさをテクノロジーとWebを基盤とするチェスクラブで補った。実際「ニューヨークに住んでいたことで本当に助かりました。そこには非常にいっぱいチェスの活動があり、やりたければほとんど毎週チェスを指すことができました」と語っているけれどもすぐに次のようにも付け加えた。「インターネットがなければ今ほど強くなっていたかは疑問です。インターネットがあれば本を読むのに時間をかけるよりもずっと試合をしていることができます。自分はただ新世紀の申し子だと思っています。最強者にはまだ東ヨーロッパ人やロシア人が多いけれど、オランダにすんでいるアニシュ・ギリのような非常に強い選手たちがいるのも事実ですし、もちろんノルウェーにはマグヌスがいます。」

- インターネットは自分の試合にどのような影響を与えていますか。

 インターネットがなければ同じようにはなっていなかったでしょう。インターネットでは強豪選手を相手に指す機会があります。自分の身の回りにそのような機会がなければ、速く強くなることはとてもできません。今ではインターネットはみんなの役に立つと思っています。あらゆる色々な国の強い子どもたちは皆-少なくともある程度は-テクノロジーを利用できることの申し子だと思っています。

- あなたはかつてスミスロフの試合を退屈だと思うと言って非常に物議をかもしたことがありました。あなたの発言の一部に対して、あるいは盤上での指し方でも一流相手のチェスの試合で 1.e4 e5 2.Qh5 のように指したことに対して、一般に強く批判されてきました。それに対してどのように対処していますか。そして考え方の一部が変わりましたか。

 それはどこで発言したかによります。例えばインターネット・チェスクラブで言ったようなことならば、絶対あまり真剣に受け取らないで欲しいです。物事は変わりますから。そのようなことを言った時はたぶんクラムニクも退屈だと考えていた頃です。でも今は十分対局してきて、最強の選手たちとも対局しました。だから自分とは棋風が違うだけだということです。

- ということは今ではスミスロフの試合を評価しているということですか。

 スミスロフの試合を評価するとは言っていないしそうすることもありえないでしょう。でも同時に多くの人が非常に退屈だとみなしているクラムニクの試合を見るのは本当に楽しみになったということは言えます。

- あなたがインターネットについて先のように言った後ではこれは愚問かもしれませんが、あなたに影響を与えたチェスの本、あるいは特に好きなチェスの本がありますか。

 いいえ、ありません。チェスをたくさん指してきただけですし、本を読む代わりにチェスのプログラムを使ってきただけです。人生では十分本を読んできました。今さらチェスの本を読み始める必要があるとは思いません。

- 刺激を受けたチェス選手はいますか。

 もちろんフィッシャーです。フィッシャーがいなかったら米国のチェスもなかったでしょう。そういうことです。カスパロフについても同じことがある程度言えます。彼が世界チャンピオンだった時の振る舞いやどの大会でも優勝しようとする時の指し方や世界最強であることを証明しようとする時の指し方が好きです。そういう点で彼には本当に感嘆しています。

- いつプロのチェス選手になることを決めましたか。私の記憶が正しければそのために大学を中退したと思いますが確かにそうですか。

 いや、大学を中退することにした時にはもうある程度プロでした。この決断はたぶん16歳か17歳の時にして、やってみようと思いました。1年半ほどはうまくいっていましたが興味を失いほかの事をやってみたくなりました。それで半年チェスを止めていましたが戻ってきました。それからは非常にうまくいっていると思います。

- あなたのファンの中にはヨーロッパに住んでいたら今頃はもう世界チャンピオンに挑戦していると考える人がいます。米国での一流の大会の不足と、一般的にチェスの対局、トレーニングと勝負の機会、支援や人気に関して自国とヨーロッパの間の格差があなたのこれまでの棋歴にマイナスに作用していると思いますか。

 この議論はこれ以上しても仕方ないと思います。今はほとんどヨーロッパでだけ試合しています。アーナンド、カールセンそれにクラムニクと大会で対局しています。これ以上何か言うことがありますか。

- 例えばそれらの超一流の選手たちともっと経験を積むといったようなことです。彼らはあなたよりももっと一流の大会で試合をしています。

 1月にコーラスの大会に出ました。クラムニクとの試合はひどかったですが、アーナンドとカールセンとの試合は内容が良かったです。不満は何もありません。彼らと勝負になると思っています。

- トレーニングのためのチームはありますか。

 いいえ、米国に住んでいてそこにはそのような文化はありません。今の協力者との研究で満足しています。

- それは誰ですか。

 テキサス出身のマスターで、名前はクリス・リトルジョンです。

- 代わりにGMの協力者が欲しくありませんか。

 良い着想を出すのに必ずしもGMである必要はないと考えています。1500でも良い着想を持っていることはあり得ます。それからあとに私のようなはるかに強い者がいつでも試合で使えます。着想が問題なのであって棋力ではありません。

- 昨年の11月にノルウェーでのBNBankブリッツで4試合中3試合に勝ってカールセンを倒しましたね。二人のレイティング差は現在の棋力の差を正確に表わしていると思いますか。

 カールセンは通常では考えられないようなポカを他の人たちにやらせることができるようです。現在の私にはそんな才能はないと思っています。いつでも2700の選手なら彼を負かせると思いますが、今のところ現役の選手では彼が最強です。

- あなたと彼に本当に差があるとしたらそれは何だと思いますか。

 彼と真っ向勝負すれば勝てることがあると思います。それと同時に、私がゲルファンドやスビドレルと対局すればたぶん倒せないけれどカールセンなら勝てます。だから要するに三すくみなんです。カスパロフ、クラムニク、アーナンドと同じことです。アーナンドはカスパロフを倒したことは全然ないけれどクラムニクよりは上です。でもカスパロフを倒したのはクラムニクです。だから奇妙な関係になっていて、人は特定の相手にひどく分が悪いことがあるんです。

- よく変な布局を指していたことがあり、最近でも指すことがありますね。ベークアーンゼーでクラムニク相手にオランダ防御を指したのは彼の研究を避けるためですか、それとも自分の棋風に合っているからですか、あるいは良い手を見つけていたからですか。

 オランダ防御は今まで何度も指してきました。良い布局ではないと考える人もいるのは確かですが、それを指すのは私であって、これまで十分チェスを指してきてどれが戦えてどれが戦えないかは分かっています。

- 一流の大会で指すことが多くなったことを考えると、研究や得意戦法で何か変える予定ですか。

 いいえ、今のところそういうことは考えていません。よく指せていると思っています。例えば今回の大会では2点勝ち越しでなく4点勝ち越せるはずでした。でも2試合で非常に軽率なことをやってもうちょっと堅実にやるべきでした。布局や研究全般については今でもうまくやっていると思っています。何も変えるつもりはありません。

- 新星チームの中で最年長で最高レイティングであることはこの大会で何か余計なプレッシャーとなりましたか。

 そんなことはなかったと思います。そう言えるのは昨年勝てなかったのは病気がひどかったからで、今年は本当に勝ちたかったです。だからそのためにプレッシャーがあったかもしれません。でも他の選手たちと2歳や4歳年上だということは何でもないです。

- メロディー・アンバーへの出場権を争うのでなく招待されてしかるべきだと思いませんか。

 彼らはこの大会で出場権を得るチャンスをくれました。与えられたチャンスは最大限に生かさなければなりません。確かに資格でなく私を招待することもできたでしょうが、そういうことだったので状況にあわせなければなりません。

- コーラス大会でも同じようなことがあったから聞いたのですが・・・

 うーん、BグループではやりたくなくてAグループでやりたかったんです。[前の答えは彼らしくもなくそつがなかった。ここで口ごもったのは今言ったことがコーラスについて以前に言ったこととあまり一致していないことに気がついたからだった。]与えられた機会はちゃんと生かさないといけないです。・・・世界ブリッツに招待されなかったことについては不満があります。招待されるべきだったのに招待されなかったベークアーンゼーのような大会はいっぱいあります。それでもいくらかやる気が与えられました。というのは招待されない時は何とかして人にそれが間違いだと証明してみせたくなります。諸刃の剣で、できる限りのことはやるつもりでいます。

- 最終局のゲルファンドとの黒番でキング翼インディアン防御を指したのはなんとしても勝たなければならないと思っていたからですか。

 ギリは負けないと思ったので勝たなければなりませんでした。今日は勝つか負けるかだと予想していました。どういうわけか引き分けに終わりましたが結局は願ってもないことになりました。[訳注 ギリがまさかの負け]

- カスパロフはかつてチェスの未来はカールセン、カリャーキンそれにナカムラにあると言ったことがありますが・・・

 そう、2003年リナレスの後ですね。我々は皆非常に強くなりました。カリャーキンにはだいぶ勝ち越しています。でも彼はカールセンを負かすことができます。2、3回勝っていると思います。だから心理的に優位に立っていると思います。私は明らかにカリャーキンに対してそうです。マグヌスは長いことそういうことになるのは確かだと思います。カリャーキンと私もそうだと思います。どうなるかは誰にもわかりません。時間がたてば分かるでしょう。

- 目標は何ですか。いつか世界チャンピオンになってみたいですか。

 そのとおりです。そうでなければ2700のレイティングでチェスを指す理由がないでしょう。

- 非常に強いにもかかわらず世界チャンピオンになれなかったチェス選手がいく人もいます。タイトルを取るには何が必要か考えてみたことがありますか。

 いいえ、そのようなことは考えないことにしています。つまりやるしかないのです。定跡を研究し自分の試合を検討しそれでどうなっていくかです。うまくいかなければチェックし全部考え直し始めればよいのです。うまくいっている時は・・・わざわざ他のことは何も考えません。

- 一流選手の中に友人はいますか。盤上でつぶしてやろうと考えている人たちと友人になることはできると思いますか。

 一流選手はみなお互い友人のようにみえます。私はそんなことはまったく好きでないです。つまり、私の接し方はとても違います。ただ彼らを倒したいんです。もっと若かった時でも戦う相手が友人だと対局する気持ちになかなかなれないと分かっていました。

- 私にそういうふうに告白してくれたのはあなたが初めてです。多くの選手に同じ質問をしてきましたが皆友人と気楽に対局するようだし、対局相手と仲のよい間柄です。ひょっとしてたぶん率直なのはあなたぐらいです。女性と対局するのはどうですか。

 女性との対局ですか?[私が何を言いたいのか分かっているようで彼はこのように質問して笑った。]

- 男子選手の中には女性に負けると不愉快になる人がいるようです。

 もちろん不愉快になりますよ。だって女性は男性の一流選手ほど強くはないですから。だからちょうど格下の相手に負けるようなものです。

- 私が聞きたかったのは同じレイティングでも男性に負けるのと女性に負けるのとではあなたにとって違いがあるのかということです。

 もちろんもっと不愉快ですよ。精神的にずっと悪いです。

- なぜでしょうか。

 上手であるはずのない女性と対局するからです。

- でも私が聞いているのは同じ棋力の女性と・・・

 [さえぎって]いや、あなたの聞きたいことはちゃんと分かっています。でも私の言っているのはそれでも不愉快だということです。要するに女性は男性ほど強くないんです。たとえ同じレイティングだとしても同じ強さであるはずはないんです。

- そうですか。それではそれはなぜだと考えていますか。

 たぶんチェスを指す女性があまり多くないからでしょう。男性の1/5か1/10くらいじゃないですか。

- ということは生物学的なものではない?

 はい、そうではないと思います。

- 米国でチェスが盛んになると思いますか。もっと普及するようにあなたが何かできると思いますか。

 今それをやっています。セントルイス[ナカムラは最近そこに引っ越した]のチェスクラブと教育センターで活動しています。セントルイスはジュニア選手権戦と米国女子選手権戦を主催したばかりです。そこは国内の抜群のチェスクラブで、そこの既にある施設でやれることをやろうとしています。私が世界選手権戦に登場するようなことになれば事態は変わるでしょう。でも米国でチェスをはやらせようとするのはいつもやや苦戦することになります。

- でもあなたはそれでも米国に住みたがっていますね。

 そうですとも。そこが私の出身地ですから。ある場所で育てばそこから離れがたいものです。

- 生まれは日本ですね。二つの文化に属していると感じたことはありますか。

 私は米国人だと感じています。米国に来たのは2歳の時で、ここで育ちました。だからどうみても私は米国人です。確かに私は普通のコーカサス系米国人には見えませんが、自分では米国人だと思っています。

- NH「新星」の中でトップとなってメロディー・アンバーで指す権利を得ました。目隠しチェスの経験はありますか。いつもの訓練の一部ですか。そうでないならどのように準備する予定ですか。

 以前に公開の目隠しチェスをいくらかやったことがあります。具体的には初めて目隠しチェスをしたのは野口美術館で6人を相手にした時で何の問題もありませんでした。ノースカロライナでのチェス合宿での同時対局では15人の子どもを相手にしこれも全部勝ちました。しかしこれは単に15の局面を覚えているというだけで、人が非常に質の高い目隠しチェスを指せるとは必ずしも考えていません。一般に私はあまり目隠しチェスをやっていませんし、私のトレーニング法の一部ではありません。メロディー・アンバー大会の前に公開の目隠しチェスのトレーニングをする予定はありません。

- メロディー・アンバーに観戦者として行ったことがあると言っているそうですね。雰囲気全般についてどのような印象を受けましたか。

 フランス・リーグで対局していた時、まったく偶然ですが2007年のメロディー・アンバー大会に実際に立ち寄ったことがあります。そこにいたのはほんの短い時間で、快速チェス1局しか見られませんでした。でもほとんどの選手が楽しんでいるようでお祭りのような雰囲気を感じました。

- あの大会を催しのようなものとして新しく変なこと(例えばカールセンが今年指したような 1.a3)をやってみますか、それとも真剣に指す予定ですか。

 大会では好成績をあげることに努めるつもりです。でも1手目で 1.a3、b3、d3、e3、g3、h3 を指す可能性は排除しません。

- それではチェスの政治についてちょっと。FIDE会長にはイリュームジノフとカルポフのどちらを望みますか、その理由は。

 一般に私は政治のことについてはあまり意見を持っていません。でもこの質問については一家言あります。どちらの候補にも異なった持ち味がありいます。キルサンは確かに大きな大会を開催してきたし、FIDEグランプリ巡回の成功に努力しました。それでもその巡回は今破綻しているみたいで、スポンサーが不足しているのは現在のFIDE執行部の責任であることはほとんど確実でしょう。最強のプロ選手がみな傷つけられたのは確かで、チェスのスポーツとしての信用も傷ついています。それはそれとして、彼がチェスを普及させようとしたのは確かで、チェスが大好きであることは疑う余地がないでしょう。一方カルポフはFIDEのような大きな組織はもちろん、どんな組織の運営についても全然経験がありません。誰かが多くの経験がないのに組織の指導者になればいつか多くの新しい問題が発生しやすいと思います。オバマが大統領に選ばれて以来米国で問題が起こっているのを見ています。彼は立派に仕事をやっているけれども、官僚主義のせいで手に負えないような課題がたくさんあります。それと共に、もっと多くの票を得ようとせずに法的な根拠でこの選挙に勝とうとするカルポフの選挙活動にはどうしても賛成できません。

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(この号終わり)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(256)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

白のeポーンへの圧力と …f5 突き

 白の多数派ポーンを抑えこむ捌きはe4ポーンへの圧力を伴うこともある。その目的は白におとなしく f3 と突かせて守らせることである(図300)。

 図300

 e4に圧力をかける指し方は白がfポーンをf4に突いてしまっている状況でもっとよく現れる。その場合eポーンは弱体化していて、黒はそれを目標に反撃することができる。

 eポーンが圧力にさらされる別の状況は黒がクイーン翼にキャッスリングした時に起こる。そのような方針はクイーン翼の多数派ポーンの素早い進攻作戦と好対照を成す。クイーンが盤上に残っている時は特にそうである(なぜなら黒はキングの囲いを薄くしてはならないから)。そしてその論理的な帰結は双ビショップにできるだけ広い活動範囲を与え、…f5 突きの手段で中央を開放的にすることである(図301)。

 図301

 言うまでもないがキング翼での1組のポーンの交換は白の多数派ポーンに何の悪影響もない。それでも白のeポーンが消えたことにより黒のビショップの活動範囲がより大きく広がる。この要素は中盤戦と収局の両方で役に立つ。黒がキング翼にキャッスリングした時はこの戦略は例外的な状況でしか適用できない。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(255)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

白の多数派ポーンの進攻と押さえ込み

 白は自分のキングを過度に露出させるわけにはいかないので、自由に多数派ポーンを進攻させるようになるには収局を待たなければならないのが普通である。それでもこのことが-黒がキング翼にキャッスリングし盤上にクイーンがまだ残っている時は特にそうであるが-敵キングに対する攻撃を仕掛ける武器として白が中盤戦で事実上の余分のポーンを活用しようとすることの障害にはならない。この点で白がクイーン翼ビショップをフィアンケットする戦型は特に重要である(図293)。

 図293

 白のeポーンがe4でなくe5にある中原についても同じことである(図294)。

 図294

 このような場合黒がeポーンの進攻に特に注意を払わなければならないことはきわめて明らかである。このことを念頭に入れると黒が進んで …f7-f6 と突くようにすべきであることは当然である。それもしばしばフィッシャー中原がまだ形成されつつある段階(即ち白がまだポーンをd4に突いていない時)においてである。

 …f7-f6 突きは白のeポーン-そして広い意味で白の多数派ポーン-を押さえ込む戦略の開始を告げることがよくある。その際大きな役割を果たすのはd6のキング翼ビショップと、d7またはf7のこともあるが(それぞれf6とh6を経由)多くはe7を経由したg6のキング翼ナイトである。(図295)。

 図295

 黒はたとえ双ビショップでなくなることがあっても黒枡ビショップの交換を恐れる必要はない。というのは …cxd6 のあとポーンの形の不利がかなり改善されるからである。e5の地点でのせき止めが必要になった場合(…Ne5)黒はfポーンで取って(Nfxe5 fxe5)キング翼ポーンが割れることさえ恐れる必要がない。なぜならこの場合でもポーンの形の不利が改善されると考えられるからである(図296)。

 図296

 ここではeポーンが孤立しているにもかかわらず黒がf4の地点をしっかりと支配しているため、白が多数派ポーンを進攻させるのは極度に困難になっている。

 しかし …f7-f6 突きには欠点もある。第一に白のeポーンに仕掛けの接点を与え、黒に絶えずe5の地点を見張らせる。一方でこれは白の多数派ポーンを抑えたいという黒の願望と一致するかもしれないが、他方では反対翼で自分の多数派ポーンを進攻させることから目をそらせ、後に見られるやり方で白にクイーン翼で主導権を握られる可能性がある。第二にe6の地点を弱め、白が好機に一見棋理に反するような f4-f5 突きでそこを固定できる(図297)。

 図297

 一見このような行為はe5の地点を黒に譲ることからキング翼の多数派ポーンの形をひどく傷つけるため、重大な戦略上の誤りに思える。しかし実際は黒駒の動きを大きく制約することがよくある(Ne7 の動きを制約し、Bc8 をe6の地点を監視するよう強制しその力を削ぐ)。そのあと f4-f5 突きのせいで局面は閉鎖性が増し、白が少ない危険性で多数派ポーンを進攻(g2-g4 により)させることができる。その進攻が目指すのはキング翼で相手を閉じ込めることであったり(g4-g5)、中原で進攻することにより(Nc4、Bf4 そして e4-e5)自分のポーンの形の欠陥を補修することである。

 もちろんこのような戦略には危険がないわけではない。その成否は黒の戦力がどのように効果的に封じ込められるかということと、作戦の以降の段階で白の可能性が実際どのように実現されるのかということに密接に関わっている。

 黒が白の多数派ポーンの進攻を邪魔することができる別の手段はビショップを …Bg4 と展開して Nf3 を釘付けにすることである(図298)。

 図298

 白が …Bxf3 の狙いに適切に対処できない時は、gxf3 と取り返すと多数派ポーンを活用する機会がひどく傷つけられることは明らかである。

 この束縛の方法は明らかに …f7-f6 突きと組み合わせられる。一方白のeポーンがe5にあるような局面では、黒の白枡ビショップはすぐにe6でのせき止めとして使われるのが普通である(図299)。

 図299

 これに関して黒が双ビショップを放棄しないつもりならば、敵のキング翼ナイトの侵入の可能性(Ng5 または Nd4)に対して備えを施しておくのが良い。もっとも白はクイーン翼ナイトを使って e2-f4 経由で侵入の目的を果たすことができる。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(105)

「Chess」2010年11月号(4/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第2回戦 9月22日

 スコットランドは第1回戦でアフリカのそこそこの国を相手に気晴らしを楽しんだあと第1卓で強力なウクライナと対戦した。結果はかなり納得の0-4による完敗だった。コリン・マクナブはまともな局面になったがその後すぐ駄目にしてしまった。

第2回戦 ウクライナ対スコットランド
V・イワンチュク - C・マクナブ
キング翼インディアン防御

1.d4 d6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 Nd7 5.e4 e5 6.Be2 Ngf6 7.Be3 O-O 8.O-O b6

9.Re1

 別の指し方は 9.Qc2 exd4 10.Nxd4 Bb7 11.Rad1 Re8 12.f3 c6 13.Bg5 Qe7 14.Kh1 Nc5

で、2007年クールスドンでのラドバノビッチ対マクナブ戦ではここで白(結局負けた)はたぶん本局の似たような局面でイワンチュクが指したように 15.b4 と指すべきだった。

9…exd4 10.Nxd4 Bb7 11.f3 Re8 12.Qd2 c6

 白枡ビショップを封じ込めd6のポーンを弱めるのは少し奇妙な感じがする。しかし黒の指し方を批判するのは早すぎる。

13.Rad1 Qc7 14.b4 Rad8 15.Bf1 Ne5 16.Bg5 a6

 コリン・マクナブは頑強な受けに定評があり、その本領を発揮して白が何をぶつけてこようと持ちこたえる強力なポーンの壁をこしらえた。

17.b5

 他に考えられるポーン突きは 17.f4!? だが、黒は必ずしも当たりのナイトをどうにかする必要はない。例えば 17…b5!? と指すことができ、18.fxe5 と取られても 18…dxe5 で駒を取り返すことができる。

17…axb5 18.cxb5 c5 19.Nc2 c4!

 黒は広さをいくらか取り戻し …h6!? をちらつかせている。この手はポーンを犠牲にして黒枡ビショップを消去し、その後たぶん …d5 突きの反撃で主導権を握る。

20.Kh1

20…Nd3?

 あいにくこのちょっとした戦術には見落としがあった。代わりに 20…Rd7!? ならf6のナイトの釘付けをはずし一触即発を維持した。たとえば 21.Nb4 には 21…Qc5 と応じる。もっとも実際にはb4のナイトを取ることはない。白は 22.h4!? と指すことができ、22…Qxb4? と取ると 23.Bxf6 Bxf6? 24.Nd5! で黒が 24…Qxd2 と取ったあとf6で両取りがかかり黒が壊滅的な被害をこうむる。

21.Bxd3 cxd3

22.Nb4!

 22.Qxd3? は 22…Rc8 で、黒がc列を席巻する。

22…Qc5 23.Bxf6

23…Bxf6

 23…Qxb4 の方が少し優る。しかし 24.Bxg7 Kxg7 25.Qxd3 となって白がやはり完全なポーン得である。

24.Ncd5 Bg7 25.Qxd3 Rc8 26.a4 h5 27.Na6!

 一見二重ポーンができるのは望ましくないように思われるが、白ははっきり優勢になるために具体的な変化に沿って指している。

27…Bxa6 28.bxa6 Qa5 29.Qb5 Be5

30.f4

 白が単純に 30.Nxb6 Qxb5 31.axb5 Rb8 32.Nd5 と指してもどうしても止めることができず、パスポーンの勝ちになる。

30…Bc3 31.Re2 Kg7 32.g3 h4 33.gxh4 Rh8

34.Rc2 Be1 35.Qb2+ Kh6 36.Rxc8 Rxc8 37.Qg2 Bxh4 38.Qh3 1-0

 面白くないことにイングランドは足をすくわれた。すべての席でレイティングが上回っていたにもかかわらずボスニアに負けを喫した。マイケル・アダムズはイワン・ソコロフを相手にニムゾでポーンの相応な代償を得ているようだったが、相手は戦力得を守りきり最後には勝ちを収めた。チームの残りは堅実なボスニア選手に対してつけ入ることができず、勝ち点2を献上した。スイス式大会では早い段階での番狂わせは最終順位の観点からはあまり損害にはならないが(最後の追い込みの方がはるかに重要である)、上位争いの相手とぶつかる可能性を奪われることがある。


スコットランド対優勝したウクライナ戦で対局中のジョン・ショー(左)とケテバン・アラハミア=グラント。試合は0-4で負けた。ジョン・ショーはエフィメンコと、ケテバンはエリャーノフとそれぞれ対戦した。スコットランドは83位に終わった。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

ルイロペスの完全理解(254)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

クイーン交換の問題と黒キングの位置

 この型の中原では素通しのd列の存在により早い段階でクイーン同士が交換になる絶好の環境が出来上がっている。大ざっぱに言えばこの交換は陣形的に収局で有利となる白に好都合である。それにもかかわらずクイーンが消えても局面が収局に移行したことにならないことに注意すべきである(黒がまだ相手と反対の翼にキャッスリングできる時は特にそうである)。そして前項で述べたように収局になっても白にとって思いがけない嫌な手があることにも注意しなければならない。

 両者がクイーンを交換するか残すかを決めることができるし(それぞれが収局での自分の優劣をどう判断するかによる)、白がほとんど例外なくキング翼にキャッスリングするのに対し黒は白と反対翼にキャッスリングできるので、可能性は広範多岐に渡る(図292)。

 図292

 それゆえに黒はこの図の状況で …c5 突きから …Qxd1 でクイーンを交換することもできるし、…Bd6 や …Qd6 のような手でクイーンを残しキング翼とクイーン翼のどちらにもキャッスリングできるようにしておくこともできる。同様に白はクイーンをd1に置いておいて交換に応じることができるようにしておくこともできるし、Be3 から Qe2 のように展開することによって交換を避けることができる。

 収局でそれぞれの翼での主導権が当然発揮されるとしても(白ならキング翼、黒ならクイーン翼)、中盤戦では同様のことが言えない。なぜなら黒キングの位置が両者の戦略方針に影響するからである。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(253)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点(続き)

白に有利な収局と双ビショップ

 図290を観察すると両者の多数派ポーンの構造が違うことが分かる。白の方は健全で(即ちパスポーンを作ることができる)、黒の方は障害を抱えている(即ちパスポーンを作ることができない)。これは両者が多数派ポーンを突き進めたところを想像してみればすぐに確かめることができる。黒のキング翼の3ポーンは白のパスポーンの生成を遅らせることしかできないのに対し、クイーン翼の白ポーンは-a2、b3、c4、または「V」字形のa3、b2、c3(a4、b3、c4)のような正しい形を取るものとして-敵の進攻を止めることができる。この点において図290の局面で考えられる手順は f4 h5、g3 c5、e5 g6、c4 b5、b3 c6、h3 a5、g4 a4 である(図291)。

 図291

 黒がどうやっても駄目なことは明らかである。

 これから得られる結論は白の陣形の方が明らかに優っているということである。しかし白の優位は盤上の駒数に反比例している。つまり布局や中盤ではほとんど認識できないが、局面が単純化するにつれて優位が拡大し、キングとポーンだけの収局では決定的になる。

 駒が介在してくると当然状況ががらりと変わることがある。だから白はだんだんと単純化を目指す戦略を推し進める際に(素通しd列によって促進される)、ポーンの形に合った駒交換(特に小駒を残す)を選ぶように注意しなければならない。そのような単純化の過程の理想的な結果は、白にナイト1個が残り、黒に白のクイーン翼のポーンのいる枡と反対色の枡のビショップ1個が残る収局である。

 しかし白が何の問題もなく意図を達成できると信じてはいけない。その理由は以下のとおりである。

 (1)両者がキング翼にキャッスリングした時は、白のキング翼ポーンは自分の君主を守らなければならず、そのために黒のクイーン翼ポーンよりも動きにくい。だから白の多数派ポーンの前進は相手の多数派ポーンよりもはるかに気を使わなければならない。

 (2)白があまりに早くクイーン翼ポーンの形についての意図を明らかにすると、敵に貴重な情報を与えd列に弱点を作り、中盤戦の悪いまえぶれの要因となる。

 (3)黒には二重ポーンの代償として双ビショップがある。双ビショップは白が中盤で局面を過剰に開放的にすることを防ぐ。また収局でも重要な働きをし、駒交換の結果両翼にポーンのあるビショップ対ナイトの収局になれば特にそうである。実際黒がクイーン翼でポーンの形を破壊すれば、または白のクイーン翼ポーンのいる枡の色と同じ色の枡上のビショップを保持すれば、収局で予定されている白の優位は負けの原因となることがある。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス布局の指し方[44]

eポーン布局

第6章 シチリア防御(続き)

レーベンタール戦法

1.e4 c5 2.Nf3

 これは最も自然な展開の手である。白の2手目についてはゆうに1冊の本が書ける。

2…Nc6

 これも自然な手で、局面の機軸となってきそうなd4の地点にさらに利かしている。

3.d4

 この手は局面を開放的にし、駒の展開の可能性を高め、中原に地歩を築いている。

3…cxd4

 取らないと 4.d5 で白に黒陣を乱される。

4.Nxd4 e5(図62)

 図62(白番)

 この手でレーベンタール戦法になる。黒が主導権を握っているが、d5の地点を恒久的に弱めるという犠牲を払っている。この戦法の解説では黒が早期に …e5 と突いたシチリア防御の陣形の重要な側面の多くを明らかにしていく。

5.Nb5

 積極性のあるのはこの手だけである。5.Nf5? は 5…d5! 6.Qxd5 Qxd5 7.exd5 Bxf5 8.dxc6 で黒が良い。シチリア防御の局面のほとんどすべてで白は Nxc6 とナイトを交換するのを差し控えた方が良い。というのは黒がポーンで取り返すとd5の地点がよく守られた状態になるからである。この局面も例外でない。5.Nxc6 bxc6 6.Bc4 Ba6 で互角の形勢になる。7.Bxa6? は 7…Qa5+ から 8…Qxa6 で、白のキング翼キャッスリングが当面妨げられる。

5…a6

 これは黒の作戦の論理的な継続手である。黒は手得をしながら役に立つ …a6 突きを指し主導権を維持している。

6.Nd6+ Bxd6 7.Qxd6 Qf6

 黒は主導権を利用してクイーンの交換を迫った。

8.Qd1!

 これまで展開についてさんざん言ってきた後では逆説的だが、この「反展開」の手はたぶん白に永続的な優勢をもたらす唯一の手である。

8…Qg6

 この手は白のeポーンを当たりにし、白のgポーンに圧力をかけて白のキング翼ビショップが展開できなくしている。

9.Nc3 Nge7

 もっと自然そうな 9…Nf6 は 10.Qd6 で黒がキャッスリングできなくなるのでだめである。

10.h4!

 この例外的な手は黒クイーンの位置につけ込んでさらに黒枡に弱点を作らせようとしている。ここで白が主導権を握った。

10…h5

 10…h6 は次のように主導権を維持しながら陣形を広げる機会を白に与えてしまう。11.h5 Qf6 12.Be3 O-O 13.Qd2 b5 14.O-O-O b4 15.Na4 これで黒陣に弱点がいっぱいあるので白が明らかに優勢である。

11.Bg5

 黒の弱い黒枡につけ入った。

11…d5

 黒は捌きに出なければならないのだが他に良い手がない。11…f6 12.Be3 d5 なら白はポーンでなくナイトで取った方が良い。なぜなら 13.Nxd5 Nxd5 14.Qxd5 と取ったとき黒が …Be6 と指せないからである。

12.exd5 Nb4

 12…Nd4 は 13.Bd3 Bf5 14.O-O で黒に犠牲にしたポーンの代償がない。

13.Bxe7 Kxe7

 13…Nxc2+? は 14.Kd2 Nxa1 15.Bg5 となって白がナイトを取り返した時ルークとポーンの代わりに2駒を得ることになるので黒が駄目である。

14.Bd3!(図63)

 図63(黒番)

 黒は白に二重孤立ポーンを作らせることができる。しかしそれでも白はポーン得で、白駒は次のように収局でよく連係を保つことができる。14…Nxd3+ 15.Qxd3 Qxd3 16.cxd3 b5(こうしておかないと黒はクイーン翼で動きが不自由になる)17.O-O-O! Rd8 18.Rhe1 これで白は 19.d4 を狙い(二重ポーンを解消する)優勢である。図の局面で黒はもちろん 14…Qxg2?? とは指せない。そう指すと 15.Be4! から a3 と突かれる。他には 14…Nxd3+ 15.Qxd3 Qxg2 だが 16.d6+ から O-O-O で白に猛攻を浴びる。

(この章続く)

2010年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(252)

第8章 フィッシャー中原(続き)

8.1 戦略の着眼点

 上記の戦法に共通するポーンの形を観察すると、この型の中原のあるはっきりした特徴を指摘することができる(図290)。

 図290

 素通しのd列で盤がキング翼とクイーン翼にはっきりと分けられていて、両陣営はそれぞれ可動多数派ポーンを擁している。これに加えて白は双ビショップを放棄している。その代償に黒はc列に二重ポーンをかかえている。

 戦法によっては同じポーンの形で白のeポーンがe4でなくe5に進んでいることもある。このわずかな違いは両陣営の広い意味での戦略を変えることはないが、以降の論議の過程で見られるように試合の成り行きに小さな差異をもたらす。

(この章続く)

2010年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(251)

第8章 フィッシャー中原

主手順 - 交換戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6 5.d4 exd4 6.Qxd4(図289)

 図289

 戦略的に似た状況は他の戦法でも出現する。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 ベルリン戦法
 - 3…Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Nd6(または 5…Be7 6.Qe2-または 6.Re1-6…Nd6 7.Bxc6 dxc6 8.dxe5)6.Bxc6 dxc6 7.dxe5

 交換戦法
 - 3…a6 4.Bxc6 dxc6 5.O-O f6(または 5…Qd6 6.d4 exd4 7.Nxd4、あるいは 5…Bd6 6.d4 exd4 7.Qxd4)6.d4 exd4 7.Nxd4

 遅延交換戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Bxc6 dxc6 7.Qe1 Nd7 8.d4 exd4 9.Nxd4

 開放戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.Qe2 Nc5 7.Bxc6 dxc6 8.d4 Ne6 9.dxe5

(この章続く)

2010年12月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(250)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.3 実戦例(続き)

 図288(再掲)

 白はb8-h2の斜筋をふさぐもくろみを達成できた。しかし黒がfポーンをさらに突くのを妨げることはできず、このポーン突きによって黒の攻撃は活気づく。

22…Bxe5 23.dxe5 f4 24.Bc1

 24.Bc5?(24.Bd4? でも 24…c5! 25.Bxc5[訳注 24…fxg3 で決まっているようです])は 24…fxg3 25.hxg3 Nf4! となり 26.Bxf8 なら Rh6、26.Be7 なら 26…Nh3+ でどちらも白の勝ちになる。

24…Rh6

 24…fxg3 は 25.hxg3 Rxg3+ 26.fxg3 Rxf1+ 27.Rxf1 Qxe5 となって勝つまでには至らない。

25.Qg2 f3 26.Qh1

 26.g4?! は 26…Rg6 27.h3(27.Rd4? は 27…Nf4! 28.gxh5 Nh3+ で黒の勝ち)27…Qh4 28.Qh2 h5 でよけい悪くするだけである。

26…Re6 27.h4 Rxe5?!

 黒は戦力を早く互角にしたくて白のクイーンをまた働かせてしまった。勝つ可能性を残すためには 27…Qf5! で白の28手目を防ぎ、その後 …Rfe8 から …Rxe5 でeポーンを取るべきだった。

28.Qh3 Rxe1+?1

 黒はまだ敵ビショップに対する中央に陣取ったナイトの優位の活用に希望を抱いている。しかしこの正確さを欠いた手により白はビショップを戦いに引き入れて形勢を持ち直すことができた。勝利の可能性を残すためには黒は 28…Rfe8! と指し、e列を制圧し続けると共に Bc1 を働かせないままにしておくべきだった。

29.Rxe1 Re8 30.Re6!

 黒は27手目と28手目を指したとき明らかにこの手を見落としていた。

30…h6

 30…Qf7? は悪手で、31.Rxc6! で最下段に弱点を抱えるのは黒の方になる。

31.Be3 Nxe3

 31…Qf7 は 32.Rxe8+ Qxe8 33.Bd4 で白駒の働きが良いので引き分けが確実である。

32.Rxe3 Rxe3 33.fxe3 ½-½

 この章を終えるにあたり一言注意を述べておく。マーシャル攻撃についてのこの概要説明が示すように、犠牲にしたポーンの代わりの黒の主導権は白が正確に応じたとしても長く続く。白はこの戦法の広範な定跡を詳しく知っていないとあっさり負けてしまうことがある。だからこの戦法に飛びつく前に十分に研究しておかないといけない。

 個人的なことを言えば、私(ダニエル・キング)はいつもマーシャルに恐れおののいていたものである!それになりそうな時は 8.a4(「反マーシャル」システム)で避けるのが通常だった。この手は実績が示す堅実な手である。

(この章終わり)

2010年12月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(199)

「Chess」2010年10月号(5/6)

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NH新星対老練(続き)

第7回戦
□H・ナカムラ
■L・ファン・ベリー

シチリア防御

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5

 これは常にナイドルフ戦法の最も激しい戦型とみなされているが近年は少し流行に陰りがでてきている。ナカムラは最も危険な戦型を指すことを恐れない。

6…Nbd7

 6…e6 7.f4 Qb6 8.Qd2 が毒入りポーンの主手順だがファン・ベリーは眼目の戦法を指した。

7.f4 Qb6 8.Qd2 Qxb2 9.Rb1 Qa3

10.Bxf6!

 これは毒入りポーンの主手順でも指される手だがここではほとんどこの一手である。10.Be2 は次のようにそれほど有力でない。10…g6 11.Bxf6 Nxf6 12.e5 dxe5 13.fxe5 Bh6!

14.Qd3 Ng4 15.e6? Ne3 16.exf7+ Kxf7 17.Rb3 Qc5 18.Rf1+ Kg7!

19.Ne4 Qa5+ 20.c3 Rd8 0-1 これは2009年ラスベガスでのD・フェルナンデス対L・ファン・ベリー戦で、オリンダ選手にとっては気持ちのよい思い出だが、このアムステルダムでは立場が逆転し短手数負けになる。

10…Nxf6 11.e5 dxe5 12.fxe5

12…Nd7?

 ここでは 12…Ng4 が最善手だが、白はそれでも黒クイーンをナイトで追いかけ回すことができる。例えば 13.Nd5 Qc5 14.Nb3 Qc6 15.Na5 Qd7 16.Nc4

である。しかしここで 16…e6! という手があり 17.Ndb6 Qxd2+ 18.Kxd2 Rb8 19.Be2 Nf2 20.Rhf1 Ne4+ 21.Kd3

で、白はポーン損でもいろいろ手があるけれども黒がまだ戦える。

13.Nd5!

13…Qc5

 13…Qxa2 は 14.Rb3 Kd8 15.e6! で終点となる。13…Rb8 は 14.Nc6! bxc6 15.Rxb8 できれいに咎められ、ルークとナイトのどちらを取っても1手詰みである。

14.Nb3 Qc6 15.Na5

 この実戦の局面が前の解説の局面と違うところは黒がもう 15…Qd7 と指せないことである。

15…Qc5 16.Nxb7

16…Qc6

 16…Bxb7 は 17.Rxb7 Rc8 18.Bxa6 のあと 19.Bb5 でも 19.Rxd7 でも致命的である。

17.Rb6!! 1-0

 気持ちのよい終わり方である。17…Qa4 は 18.Nc7# の1手詰みだし、17…Nxb6 は 18.Nf6+! から 19.Qd8# で詰む。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(249)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.3 実戦例(続き)

 図287(再掲)

 戦いの第1段階は終了した。白はついにクイーン翼の駒を戦いにつかせることができた。そして Qd3-f1 と引いて黒のクイーンをh3からどかせることができる。しかし黒の方も敵キングに対して第二波攻撃を仕掛ける用意ができている。

17…Re6

 17…f5 は重要な変化である。その意図は明らかで、g2-g3 突きによって生じた弱点を …f5-f4 突きで利用することである。 例えば 18.Qf1 Qh5 19.f4 Kh8 20.Bxd5 cxd5 21.a4(または 21.Qg2 g5-21…Re4!? もある-22.Qxd5 Rd8 23.Qc6 gxf4 24.Bxf4 Bxf4 25.gxf4 Be2 26.Kh1 Rde8 となれば、黒はもっと戦力損をこうむるけれども代償としての攻撃の見通しはそれでも十分だろう)21…bxa4 22.Rxa4 g5 23.Raa1(23.fxg5? は 23…Rxe3! 24.Rxe3 f4 25.gxf4 Bxf4 26.Rg3 Qe8! で黒が優勢である。23.Rxa6? も 23…gxf4 24.Bxf4 Bh3 25.Qf2 Rxe1+ 26.Qxe1 Bxf4 27.gxf4 Qg4+ で黒の勝ちになる)23…Re6 24.fxg5 Rfe8 25.Qf2 f4!? となれば黒には犠牲にした戦力の代償が十分にある。

18.Bd1?!

 これは定跡をはずそうという手である。定跡の論議は 18.a4 が中心となっていた。この手はクイーン翼を開放しクイーン翼ルークを働けるようにしようというものである。この十分に検証された手の成り行きをいくらか見てみよう。

 (1)18…f5(18…Bf4? は 19.Bxd5 Rh6 20.Bg2 Qxh2+ 21.Kf1 Bh3 22.Qe4 でうまくいかない[訳注 22…Bxe3 23.Rxe3 f5 で黒が優勢のようです]。しかし 18…bxa4 は 19.Rxa4 f5 で成立する。これに対して白は機械的に 20.f4?-正着は 20.Qf1-と指さないよう注意しなければならない。なぜならこの手は次のように前出に似た戦術的策略に道を開くからである。20…Bxf4! 21.Bf2-21.gxf4 なら 21…Rg6 22.Bxd5+ Kh8!-21…Rxe1+ 22.Bxe1 Re8 この攻撃で黒が勝勢になる)19.Qf1 Qh5 20.f4 bxa4 21.Rxa4(21.Bxd5 cxd5 22.Qg2 も非常によく指される)21…Rb8(黒は 22…Rxb3 23.Nxb3 Rxe3 の狙いで相手がd5のナイトを取るように誘い、ナイトの釘付けをはずすために …Kh8 と手をかけなくて済むようになることを期待している。他に定跡の精査の対象になった面白い手は 21…Rfe8 と 21…g5 である)22.Bxd5 cxd5 23.Rxa6(23.Qg2 も徹底的に試された)23…Qe8 この局面は現在定跡の論議の中心になっている。

 (2)18…Qh5 19.axb5 axb5 20.Nf1 Bf5(20…Rfe8 も良い手である)21.Qd2 Rfe8 22.Bxd5 cxd5 23.Bf4(白は戦闘が主に行なわれた筋で効果的に抵抗できたように見える。しかし黒の手段はまだ尽きていない)23…Rxe1 24.Rxe1 Rxe1 25.Qxe1 Be4!(e8で詰まされる手を防ぎ …Qf3 を狙っている)26.Nd2 Bxf4 27.Nxe4 dxe4 28.gxf4 Qg4+ 互角の形勢である。

 18.c4?! は 18…Bf4! で咎められることを指摘しておこう。というのは白は次のように少し不利な収局に入るしかないからである。19.Qf1(19.gxf4? は 19…Rh6 20.Qe4 Qxh2+ 21.Kf1 Re6 で悪い。19.Bxf4? としても 19…Nxf4 20.Qf1 Ne2+ 21.Kh1 Qh6 でやはり駄目である)19…Nxe3 20.Qxh3 Bxh3 21.cxb5 Nc2 22.Bxe6 fxe6 23.gxf4 Nxa1 24.Rxa1 Rxf4

 白は本譜の手で、ビショップをナイトと交換するよりも白枡ビショップ同士を交換することにより白枡での締め付けを緩和しようとした。それでも実戦のようにこの方針はいくらか不満足な結果になった。つまり中央に陣取った強力なナイトに対して、無力な不良黒枡ビショップで収局を迎える危険性をかかえている。

18…Bxd1

 黒は Re1 の無防備状態に 18…Nf4 でつけ込むことは 19.Qf1 という単純な応手のためにできない。また 18…Bf5 でクイーンの交換をさせることもできない。なぜなら 19.Qf1 Rfe8 20.Qxh3 Bxh3 21.Bb3! で白が Nd5 を釘付けにし、後で Nf1 から Bd2 でe列で効果的に対抗することを狙い無用な結果を招かずにポーンの優位を維持するからである。

19.Raxd1 f5!

 白枡ビショップが交換されたにもかかわらず黒の攻撃はちっとも衰えない。白は 20…f4 という大きな脅威に直面して寸分たがわぬ正確さで受けなければならない。

20.Nf3!

 正しい受けはこれしかない。20.c4? は失敗で 20…bxc4 21.Nxc4 f4 22.Bd2 Rh6 で黒の攻撃が決まる。20.f4? も 20…Rfe8 21.Nf1 Bxf4 で黒が明らかに優勢である。20.Qf1? でも 20…Qh5 21.Qe2 Qg6 から必然の …f4 で圧力が非常にきつい。

 白は本譜の手で Ng5 を狙っているが、それと同時にナイトをe5に進めて危険なb8-h2の斜筋を止める可能性も用意している。

20…Rg6

 これは攻撃を追求する最も精力的な手段である。他の手は不十分である。20…f4? は 21.Ng5 で白が勝つ。また 20…h6? は 21.Ne5! Bxe5 22.Bf4! Nxf4 23.gxf4 で白が駒を取り返しポーンが好形で優位に立つ[訳注 23…Rg6+ で黒の勝ちなので単に 22.dxe5 と取るところのようです]。最後に 20…Nxe3? は 21.Rxe3 Rxe3 22.Qxe3 f4 23.Ng5! Qxh2+(23…Qh5 は 24.Qe6+ Kh8 25.Re1 fxg3 26.hxg3 Bxg3? 27.Nf7+ で白の勝ち)24.Kxh2 fxe3 25.f4 でe3のポーンが落ちる。

21.Qf1

 これも唯一の受けである。21.Ng5? は 21…Qh5 22.f4 h6 でナイトが取られる。21.Bg5? は 21…f4 22.Bh4 fxg3 23.fxg3 Bxg3 で黒の攻撃が決まる。

21…Qh5 22.Ne5(図288)。

 図288

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(248)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.3 実戦例(続き)

 図286(再掲)

 ここは重大な岐路である。…Bd6 から …Qh4 を目前に白はキャッスリングした囲いの防御体勢をどのようにするかを決めなければならない。本線(その 12.d4 は本譜で見ていく)を別にして、他の二つの可能な陣形は特に興味深い。

 (1)12.d3(この手の意味は後で明らかになるようにナイトまたはルークを適切に支援するためにe4の地点の支配を保持することである)12…Bd6 13.Re1 Qh4(たぶん 13…Bf5 の方が本手である。そうすれば白は展開の問題を解決するためにポーンを返すかどうか決めなければならない。例えば 14.Nd2 Nf4!-14…Bxd3 は 15.Nf3 Bg6 16.Bg5 Qd7 17.Ne5 となって黒が双ビショップを放棄させられる-15.Ne4 Nxd3 はどちらも指せる。あるいはもっと厳しく 14.Qf3 で戦力得にしがみつくかどうか決めなければならない。例えば 14…Re8 15.Rxe8+ Qxe8 16.Nd2 Qe1+ 17.Nf1 という進行が考えられる)14.g3 Qh3 15.Re4(d3 とポーンを突いた手がどのように役立っているかがここで分かる。白は …Bg4 による急襲を防ぎ、ルークをh4に回して敵のクイーンをh3の地点から追い払う準備ができている。もしdポーンがd4にあったらこの捌きは図279で示したように …g5! で邪魔されるところである)15…Qf5 16.Nd2 Qg6 これで白は目障りなh3の敵クイーンを追い払うことができたけれども、黒の攻撃はまだ潜在的な力を持っている。

 (2)12.Bxd5(この手の意味はルークがe3の地点に来れるようにして h2-h3 突きを適切に支援することである。このポーン突きは g2-g3 と突くよりも白のキャッスリングした囲いを弱めない。別の面は双ビショップを放棄するだけでなく …cxd5 のあと黒のポーンが図260の解説にあるように好形になる)12…cxd5 13.d4 Bd6 14.Re3 Qh4 15.h3 g5(代わりに 15…f5 や 15…Qf4 も可能である)16.Qf3 Be6 17.Qf6 これで白は黒のキング翼ポーンに一時的にブレーキをかけることに成功した。しかしクイーン翼の展開が遅れているので黒は攻撃を再編成する余裕がある。

12.d4 Bd6 13.Re1

 13.Re2 と引く手も試みられている(この手の意味は本譜と比較して1手得することである。というのはここで白はクイーンをd3を経由せずに直接f1に行かせる態勢になっているからである)。例えば 13…Qh4(13…Bg4 も良い手で、14.f3 Bh5 15.Bxd5 cxd5 16.Nd2 f5 となれば黒にはポーンの代償が十分にある。これに対して 13…Bc7!? は-この手の狙いは 14…Qd6 15.g3? Bg4 である-14.Nd2 でも 14.Bc2 でも白が良い)14.g3 Qh5(14…Qh3 は 15.Nd2 Bf5 16.a4 で非常に難解な局面になる)15.Nd2 Bh3(15…Bg4 は 16.f3! Bxf3 17.Nxf3 Qxf3 18.Rf2 で白の方が良い)16.f3 となれば白は時には c3-c4 突きで、時にはe4の地点をg5またはf2への中継点として用いて、ナイトを効果的に活躍させることができる。

13…Qh4 14.g3 Qh3 15.Be3

 ここで 15.Re4!? は 15…g5 と応じられる(周知の 16.Bxg5? Qf5 による)。それでもこの手は時々試されている。例えば 16.Qf3(16.Qf1 は 16…Qh5 17.f3 Bf5 から …Rae8 でポーン損の適切な代償がある)16…Bf5 17.Bxd5 cxd5 18.Re3 Be4 19.Rxe4 dxe4 20.Qf6 となって非常に難解な局面である。

 定跡では当たり障りのない手と評価されている他の可能な手は 15.Bxd5 と 15.Qd3 である。

15…Bg4 16.Qd3 Rae8

 e列での圧力は黒の攻撃があとで発展する上で状況がどう変わろうと根本的に重要である。この観点からこの準備を省略して 16…f5 ですぐに全面攻撃を仕掛けるのは危険を伴うかもしれない。例えば 17.f4 Kh8 18.Bxd5 cxd5 19.Nd2 g5?!(19…Rae8 20.Qf1 Qh5 は実戦に戻る)20.Qf1 Qh5 21.a4 bxa4 22.fxg5 f4 23.Bxf4 Rxf4 24.gxf4 Rf8 25.Re5(一連の交換損は攻撃筋を開放/閉鎖する両者の対立する論理に沿っている)25…Bxe5 26.dxe5 h6 27.Qxa6! hxg5 28.Qd6! Rxf4 29.Rf1 となれば白が乱闘から決定的なポーン得になる。

 逆に 16…Nxe3 は圧力を解消するのが早すぎる。例えば 17.Rxe3 c5 18.Qf1 Qh6 19.Nd2 Rad8 20.Nf3 Bxf3 21.Rxf3 cxd4 22.cxd4 Qd2 23.Rd3! となれば黒はポーンを取り返せない[訳注 途中 20…Rxe3 という手があるので 20.Ne4 が正着のようです]。なぜなら 23…Qxb2? 24.Rb1 Qa3 25.Bxf7+ でクイーンを取られるからである[訳注 24…Qe2 と戻って互角です]。

17.Nd2(図287)。

 図287

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(104)

「Chess」2010年11月号(3/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第1回戦 9月21日

 試合に入る。第1回戦は雑魚(ざこ)がサメと一緒に泳ぐ機会となっている。その楽しみはどの雑魚がサメの口から逃れることができるか、あるいは逆に噛み付くことができるかを見ることである。アイルランドはロシア1と対戦したが、結果表示板に0-4と張り出されずに済みほっとしたことだろう。サム・コリンズは最近GM基準を2度達成しているが、アレクサンドル・グリシュクを引き分けに抑えて零封を回避した。イングランドもマレーシアを全滅させることができなかった。ミッキー・アダムズは猛攻に対して「分別は勇気の大切な部分である」ことを決断した。

 ルーク・マクシェーンは初手にラルセンの専売特許の 1.b3 を指して故人に敬意を表した。31手目で f4 で投了させたが、この手も惜しまれる故人の象徴だった。ラルセンもチェスの殿堂で微笑んでいたことだろう。


「ルーク・マクシェーンは故ベント・ラルセンへの賛辞として 1.b3! を見舞った。」

解説 ルーク・マクシェーン

第1回戦 イングランド対マレーシア
L・マクシェーン - モク・ツェ・メン
ラルセン布局

1.b3 e5 2.Bb2 d6 3.e3 Nf6 4.g3 Be7 5.Bg2 O-O 6.c4 Nc6 7.Nc3

7…d5

 7…Be6 8.Nf3(8.e4!? Nd4 9.Nge2 Bg4 10.h3 もある)8…d5 9.cxd5 Nxd5 10.Nxd5 Bxd5 11.O-O は互角である。

8.Nxd5 Nxd5 9.cxd5 Nb4 10.Qb1 Nxd5

11.Nf3

 11.Bxe5 Nb4 という指し方もあるだろうが、安全で快適な 11.Nf3 という手に比べればあまりにも危なっかしい。そのあと 12.d4 は 12…f6 と応じられるが代わりに 12.Bc3! が良い手である。

11…f6 12.O-O c5 13.d4 exd4 14.exd4 Be6

15.Qe4

 15.dxc5!? Bxc5 16.Nd4 が客観的に見て最善かもしれないが、黒がナイトを取ってくれば白が勝つのは困難になるだろう。

15…Qb6

 15…Bf7 16.dxc5 Bxc5 17.Rad1 は白が少し良い。17.Ne5 fxe5 18.Qxe5 Qf6 19.Bxd5 Qxe5 20.Bxf7+ Rxf7 21.Bxe5 Re8 もそうである。

16.Rae1

 もう一つのルークがf2を守り …Rxe1 が決してチェックにならないのでこれが正しいルークの位置だと思った。

16…Bf7 17.Nh4 Rfe8 18.Nf5 Bf8 19.Qg4

19…g6

 19…Kh8 20.dxc5 Qxc5 21.Nh6

が私の読み筋だった。しかしコンピュータは次のような受けを見つけた。21…Bg6(21…gxh6?? は 22.Bxd5 Qxd5 23.Bxf6+ で白の勝ち)22.Rxe8(すぐに 22.Qd7 は 22…Nb6! 23.Nf7+ Kg8 で Qxe8 と指せないので白がうまくいかない)22…Rxe8 23.Qd7

23…Ne7!(23…Nb6 24.Nf7+ Bxf7 25.Qxf7 は白が良い。23…Re2 24.Nf7+ Bxf7 25.Qxf7 も白が少し良い)ここで 24.Qe6?(明らかに 24.Rc1!? の方が有望である)と指すつもりだった。これは黒がナイトを取れば非常に危険そうだが、24…Qh5! が気づきにくい手である(24…gxh6? 25.Qxf6+ Kg8 26.Rd1!? が対局中の読み筋の一つだった。対局後の簡単な検討では確かな結論は出なかった)。

20.dxc5 Qxc5

21.Rc1

 21.Qh4 が2、3手前からの当初の読み筋だったが 21…gxf5 22.Bxd5 Qxd5 23.Qxf6 Bg6 で白は千日手にするしかない。

21…Qa5?

 21…Qb6! ならf6を守り互角になるようである。不思議なことに対局中はこの手が可能だと思っていなかった。以下は 22.Rfd1 Rad8 でも 22.Bd4 Qa6 23.Ne3 Rad8 でも形勢互角である。

22.Qh4!

22…gxf5

 22…Re2 をきちんと読んでいなかったのはちょっと軽率だった。23.Bxd5 Qxd5 24.Qxf6 Rxb2 25.Ne3 Bg7 26.Nxd5 Bxf6 27.Nxf6+ Kg7 28.Ne4

となれば白はルークをc7に侵入させて優勢になる。

23.Bxd5

23…Bxd5

 23…Qxd5 は 24.Qxf6 Bg6 25.Rc7 で幕となる。これが 21.Rc1 の意味だった。

24.Qxf6

 彼は最初この局面は受かると思ったと言っていたようだった。しかし白の攻撃は厳しすぎた。

24…Re6

 24…Re7 もあったが白は基本的に実戦と同じようにやっていける。

25.Qh8+ Kf7

26.Qxh7+

 26.Rc7+ も魅力的だが次のように完全に明白というわけでもない。26…Ke8 27.Qxh7 Re7 28.Rxe7+ Bxe7 29.Qh8+

29…Bf8(29…Kf7 30.Qxa8 Qb4 このような着想があるのではないかと漠然と思っていたが実際に信じていたわけではない。しかし私は神経質になるほど愚かではない。なにしろ白が勝つには絶対手を見つけなければならない。それが次の非常に奇妙な手順である。31.Qc8!

31…Qe4 32.f3 Qe3+ 33.Rf2 Qe1+ 34.Kg2 Bxf3+ 35.Rxf3 Qe2+ 36.Rf2 Qe4+

37.Kf1 Qh1+ 38.Ke2 Qe4+ 39.Kd1 Qd3+ 40.Rd2 Qf3+ 41.Kc1 Qh1+ 42.Rd1 Bg5+

43.Kc2 Qe4+ 44.Rd3 Qe2+ 45.Kc3 Bf6+ 46.Kc4 b5+ 47.Kb4 Qxd3 48.Bxf6

これで白が勝つはずである。しかしそれほど簡単ではない)30.Qe5+ Kd7 31.Rd1 Kc6

ここまで読んで決め手が分からなかった。この変化には確信が持てなかった。本譜の Qxh7+ から Qxf5 で黒陣は相当ひどい。だからあとは相手に問題をまかせることにした。

26…Ke8

27.Qxf5

 これで十分だと思っていた。27.Qh5+ Ke7(27…Kd7 は 28.Rfd1 で白がd列にルークを重ねてビショップを取る)28.Qxf5 なら黒の連係が実戦(キングがe8にいる)より少し悪いので黒が破綻する。

27…Rd8 28.Qh5+

28…Ke7

 28…Kd7 29.Rfd1 Rd6 は考えるだけでも身の毛がよだつ。白がどうやっても勝つと思う。

29.Qh7+

 29.Rc7+ は 27…Kd6! でそれほどはっきりしない。

29…Kd6?

 次のように 29…Ke8! の方がはるかに頑強な受けだった(残り時間が約10分だったので 31.Be5 を指す前に手を繰り返すつもりだった)。30.Qh5+(30.Rc7 Rh6! 私には見えていたが彼はこの意表の受けを見落としていた。これで 31.Qc2 が余儀なく攻撃はそれほどはかどらない)30…Ke7 31.Be5!?

狙いは Bc7 で、Be5-f6+ があるので黒は Bd5 を動かせない(私のチェスエンジンは 31.Bc3 が好みである)。31…Rc6! この手が見えていたかは定かでない。白が勝勢だがまだすべて終わったわけではない。32.Bc3! この手は気づきにくい。32…Rxc3 33.Qe5+ Kf7 34.Rxc3 黒は …Kg6 で戦い続けられるが見通しは暗い。34…Kg6 35.h4

30.Ba3+ Ke5

 30…Qxa3 は 31.Qc7# で1手詰みである。

31.f4+ 1-0

 31…Kd4 は 32.Rfd1+ Ke3 33.Qd3# で詰む。31…Kf6 は 32.Bb2+ で白が勝つ。

 上位対局のほとんどは 4-0 か 3½-½ で終わった。だから優勝候補は勝ち点2を確実に得た。しかし1、2の弱小国はもう少しで番狂わせを起こすところだった。ジャマイカはノルウェー相手に 1½-2½ と健闘した。もっとも世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンは初戦で対局しなかった。

 ウェールズ対インド戦ではティム・ケットがはるかにレイティングが上のペンタラ・ハリクリシュナを一蹴したようになっていて外の世界で誤った興奮が起きていた。これは真実としては話がうますぎた。そして悲しいかなそのとおりだった。何時間か後に試合の放送システムに配線の誤りがあったことが判明した。手順が全然別物で、ウェールズが予期しないわけではない 0-4 の負けを喫していたことが分かった。世界チャンピオンのビシー・アーナンドは自国のチームに加わっていなかった。ヨロ・ジョーンズは12年間の中断の後ウェールズのために15回目のオリンピアードに復帰した。しかし彼の伝説的な受けの根性をもってしても半点をもぎ取ることはできなかった。スコットランドはブルンジとの試合では巨人みたいなもので、おなじ成績で勝った。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

ルイロペスの完全理解(247)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.3 実戦例

第12局
リュボエビッチ対ナン
アムステルダム、1988年
マーシャル攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1

 マーシャル中原が出来上がるための条件は次のウォーラル戦法でも発生する。6.Qe2 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d5 9.exd5 しかし黒は 9…Nxd5 と指す代わりに-この手はたぶんギャンビットを正当化するには不十分である(例えば 10.Nxe5 Nf4 11.Qe4 Nxe5 12.d4 Bb7 13.Qxf4 Nd3 14.Qf5 Nxc1 15.Rxc1)-もっと積極的に 9…Bg4 と指すことができる。例えば 10.dxc6 e4 11.d4 exf3 12.gxf3 Bh5 で犠牲にした戦力と引き換えに攻撃が有望になる。白は堅実な 9.d3 を選べばこのような乱戦を避けることができる。

6…b5 7.Bb3 O-O

 マーシャル中原は次のトライコビッチ戦法でも現れることがある。7…Bb7 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 しかし黒キングがずっと元の位置にいることは不利で、g2の地点に圧力をかける機会はあっても完全に正当化されるとは考えられない。例えば 11…Nf4 12.d4 Nxg2 13.Qe2 となれば主導権は白の手に渡る。

 dポーンの運命の決定を先延ばしにする本譜の手はマーシャル攻撃への前触れとなるかもしれない。一方もっと普通の 7…d6 は黒が閉鎖ルイロペスを指そうとしていることが確実である。

8.c3

 この時点で、マーシャル攻撃の使用をくじくと共に深く研究されている定跡手順をはずすために、白はいろいろな他の手を試してきた。それらは一般に「反マーシャルシステム」と総称されている。しかしこれらの戦型をもってしてもマーシャル中原の形成を防ぐには十分でない。そこでこの機会にそれらの例を調べてみよう。

 (1)8.a4 Rb8(黒がギャンビットの精神でやりたければこの応手が最善である。なぜなら主手順の 8…b4 はc4の地点を放棄するのが早すぎてマーシャル中原に不向きである。例えば 9.c3 d5 10.exd5 Nxd5-10…e4 11.dxc6 exf3 12.d4 でも白が優勢である-11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 c6 13.d4 Bd6 14.Re1 Qh4 15.g3 Qh3 16.Bc4 で 17.Bf1 と指すことができる。一方 8…Bb7 の後マーシャル中原の形成を防ぐために白は 9.d3 と指すことができ 9…d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 でf4の地点に利きがあるために黒が眼目の …Nf4 でg2の地点への圧力を増すのを防いでいる。この …Nf4 は 9.c3 d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5?! Nxe5 12.Rxe5 Nf4 で生じ黒が優勢である)9.axb5 axb5 10.c3 d5 11.exd5 Nxd5 12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5 Nf6 14.d4 Bd6 局面の構図はこれまで考えてきたのとまったく同じである。しかし白にとって非常に有利なのはクイーン翼ルークが既に働いていることである。

 (2)8.d3 Bb7 9.Nbd2 d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 Nf4 13.Nf3 白はキャッスリングした囲いを難なく守れる。

 (3)8.h3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 Nf4 12.d4 Ng6 これも本章で検討しているのと同じ構図である。

8…d5

 これがマーシャル攻撃の開始を告げる手である。

9.exd5 Nxd5

 9…e4 はスタイナー戦法で、非常に難解な手だが 10.dxc6 exf3 11.d4(この手は 11.Qxf3 Bg4 よりも良い)11…fxg2 12.Qf3 Be6 13.Bf4 と進めば白が優勢のようである。

10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5

 Nd5 が当たりになっているので黒はそれをどう受けるのが最善かということと、敵のキャッスリングした囲いに対して仕掛ける攻撃方法の観点とから決断をしなければならない。11…c6 と守るのは(本局でこの手が指されるし、実戦でも最も普通に指される手である)あとで …Bd6 から …Qh4 と指すつもりである。一方 11…Bb7 は …Qd7-c6 および/または …Nf4 のような手でg2の地点に圧力をかける考えを追求する。これに対して 11…Nf6 と引くのは後で …Bd6 から …Ng4 と指す前提である。これらの変化がどうなるかを少し見てみよう。

 (1)11…Nf6 はマーシャルの当初の着想であるが今日ではほとんど指されない。それでも白は細心の注意を払って守らなければならない。例えば 12.d4 Bd6 13.Re1 Ng4 14.h3(14.g3?! は 14…Qf6 で明らかに黒が優勢である。例えば 15.Be3 Re8 16.Qd2 Nxh2! である。しかしすぐに 14…Nxh2?! は不十分で、15.Qh5! Ng4 16.Bg5 でわけのわからない戦いになる)14…Qh4 15.Qf3(15.hxg4? は 15…Qh2+ 16.Kf1 Qh1+ 17.Ke2 Bxg4+ 18.Kd3 Qxg2 19.Rg1-19.Qd2 なら 19…Bf5+ 20.Ke2 Re8+ 21.Kd1 Qf3+ 22.Re2 Bd3-19…Bf5+ 20.Ke2 Re8+ 21.Be3 Rxe3+ 22.Kxe3 Qe4+ 23.Kd2 Bf4# で悪い[訳注 19.Bd5 で受かるようです])15…h5(果敢な 15…Nxf2 は単刀直入な 16.Re2 で咎められる。例えば 16…Ng4 17.g3! Qxh3 18.Qxa8 Bxg3 19.Qg2 である。しかし 16.Qxf2? ですぐにナイトを取るのは致命的な悪手である。なぜなら 16…Bh2+! の後-これは白キングをf列に行かせるための基本的な挿入手である-17.Kf1 Bg3 18.Qe2-キングがまだg1にいれば眼目の切り返し戦術の Qxf7+ で勝てる-18…Bxh3 19.gxh3 Rae8 で黒の勝ちになる)16.Be3 で、定跡では白の方が少し有望とされている。

 (2)11…Bb7 も散発的ではあるがかなり指されている。白は白枡の対角斜筋で自然な手ではない 12.Qf3 を指すことにより形勢を自分の有利に変えようとすることができる(12.d4 では同じことにならない。例えば 12…Qd7 13.Nd2 Nf4 14.Ne4 Nxg2!? 15.Kxg2 Bf6 16.f3 Bxe5 17.dxe5 Qf5 となって、犠牲にした戦力に対し黒に十分な代償がある)。例えば 12…Bd6 13.Bxd5(13.Rxd5 は 13…Re8 で黒が優勢である)13…c6 14.Re2 cxd5 15.d4 で黒の攻勢がほぼ抑えられてしまう。

11…c6(図286)。

 図286

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(246)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所(続き)

a2-g8の斜筋

 既に前の例でそれとなしに指摘したように、白はa2-g8の斜筋上にいる白枡ビショップを利用して戦術的手段に恵まれることがある。特に …f7-f5 突きによってこの斜筋が弱体化している時はそうである(図284)。

 図284

 この非常に単純化した例では黒は Nd5 の間接的な守り(即ち Bxd5 cxd5、Rxd5? Bxh2+)に頼ることはできない。なぜなら白は Rxd5 cxd5(…Bxh2+、Kxh2 cxd5 も白に有利な交換である)Bxd5+ から Bxa8 でポーンを得することができるからである。

 他にもa4とb5のポーンが消えたあと黒がa2-g8の斜筋の潜在的な危険性にさらされることがある(図285)。

 図285

 ここでは白は単刀直入に c3-c4 と突き、ナイトが逃げたあとさらに c4-c5+ と突いて駒得することができる。

(この章続く)

2010年12月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[43]

eポーン布局

第6章 シチリア防御

1.e4 c5(図61)

 図61(白番)

 シチリア防御はチェスの他のどんな定跡よりも研究されてきた。おびただしい本や冊子がこの特定の戦法について出版されている。マスターの全ての試合のうち25%以上がシチリア防御である。なぜこのように人気があるのだろうか。

 黒は1手目で戦いの意図を宣言する。中原をc列から攻撃することによって黒は不均衡な状況を作り出す。そしてそれは激しい局面になり両陣営に多くの面白い可能性をもたらす。この章で議論する四つの戦法は一つの点で基本的に異なっている。それは黒のポーンの形である。

 黒の選ぶことのできるポーンの形の可能性は数多いがそれぞれ長所と短所がある。ポーンがe5にあると(例えばレーベンタール戦法)d5の地点が弱くて白がいつか駒でそこを占拠できる。そして黒がd5の地点をほとんどまたはまったく支配できなければもちろん主眼のdポーン突きを行なうこともできない。黒のポーンがe5にある利点は白のキング翼ナイトから自然な居場所のd4を奪うことにある。そして自分はあとで …Nd4 と進出する可能性を作り出している。

 カン/タイマノフの陣形では黒のポーンはa6(白のナイトがb5に侵入するのを防ぎ自分の …b5 突きを用意する)とe6(キング翼ビショップと戦法によってはキング翼ナイトの展開に役立ち、後の …d5 突きを支援する)とにある。黒のdポーンは白の狙いの e5 突きを防ぐためにd6に進むこともある。このようなポーンの形は黒の黒枡を少し弱めることになりがちである。

 黒がキング翼ビショップをフィアンケットすると(例えばドラゴン戦法)キング翼にいくらか弱点を抱え込むが、ポーンの形は全然弱くない。

 シチリア防御での黒には展開が完了したあと二つの主要な目標がある。これらのうち最も重要なのは白のeポーンに対する攻撃で、通常はf6のナイトと時にはb7のビショップによっても行なわれる。この攻撃は時には捌きの …d5 突きによって完了することがある。黒がこれを無事にやり遂げることができれば必ず満足のいく局面になる。

 黒のもう一つの主題はc列での攻撃で、通常はクイーン翼ルークをc8に展開することによって行なわれる。時にはこのルークは白のクイーン翼ナイト(このナイトはeポーンを守っている)と刺し違えて、白のクイーン翼ポーンを乱しeポーンの土台を崩す。

(この章続く)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(245)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所(続き)

最下段の弱点

 両陣営が狙う戦術の主題の一つは最下段の弱点の可能性につけ込むである。この主題の実行においては唯一の素通し列の支配が大きな役割を果たしていることは明らかである(図281)。

 図281

 これは典型的な状況である。黒は …Rxe2、Qxe2 Re8、Qd1 と指し(図282)

 図282

ここで白の最下段の弱点につけ込んで、劇的な …Qxf3! で一気に勝負を決める。

 白も同様の手筋を決めることがある(図283)。

 図283

 例えばここでは黒の二つのルークが最下段を守っているけれども Qxf7+! でたちどころにその弱点につけ込まれてしまう。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(244)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所(続き)

Be3 の守りの不備

 Be3 は危険な手筋の標的になることがあり、白のfポーンがついてある時は特にそうなりやすい。その一例は既に図273の解説で紹介している。ここでは初歩的ではあるがかなりの頻度で出現する別の例をあげる(図280)。

 図280

 これは黒が …bxa4 でa4のポーンを取ったところだが白は機械的に Rxa4? と取り返さないように注意しなければならない。なぜなら …Qe8 とされてe3とa4の両当たりになって駒損になるからである。

(この章続く)

2010年12月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(243)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所(続き)

Re4 の無防備の状態

 白が Re1(e2)-e4-h4 の典型的な捌きでh3の敵クイーンをどけようとすると Re4 が浮き駒のためにうまくいかないことがある(図279)。

 図279

 黒はこの状態を利用して …g5 突きの犠牲で白がルークをh4に転回できなくさせることがある。白はこの犠牲を受け入れることができないのが普通である。なぜなら Bxg5? と取ると …Qf5 でルークとビショップの両当たりになるからである。

(この章続く)

2010年12月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(198)

「Chess」2010年10月号(4/6)

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NH新星対老練(続き)

第4回戦
□P・スビドレル
■H・ナカムラ

カロカン防御

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.h4

 これはカロカンと断固対決する手段の一つである。データベースでの頻度はかなり高いが 3.Nc3 や 3.Nf3 より多くないのは意外とすべきか。

4…h5 5.c4 e6 6.Nc3 Ne7

7.Nge2

 7.Bg5 の方がはるかに多く指されている。

7…dxc4 8.Ng3 Bg6 9.Bg5 Qb6 10.Qd2

10…Qb4

 この手は以前に伝説的選手が指したことがあるが最善手ではないようだ。この戦型を復活指せるためには黒は 10…Nd7!? のような手を考える必要があるかもしれない。

11.a3 Qb3

12.Nge4

 12.Rc1 Nd5 13.Nce4 b5 14.Be2 Nd7 15.O-O が1996年ティルブルフでのアダムズ対カルポフ戦の手順で、引き分けに終わった。スビドレルの新手の方がきつそうである。

12…Nd5

 12…Bxe4!? なら 13.Nxe4 Nd5 14.Rh3 Qa4 15.Rc1 b5 でcポーンが守れるが、白にも例えば 16.Rf3!? のようなキング翼攻撃で代償がある。

13.Rh3 Qb6 14.Bxc4 Qa5 15.Nd6+!?

 白は展開でリードしているのでこのように一気にやっていく必要はない。しかし黒枡で締め付ける方が良いと見た。

15…Bxd6 16.exd6 Nd7 17.Rc1 Nxc3 18.Rcxc3

18…Nf6

 18…O-O?1 とは指せない。例えば 19.Be7 Rfe8 20.Rhg3 となって、白には Bxe6 から Rxg6 のような強烈な狙いがある。

19.b4 Qd8?

 19…Qf5!? の方が戦えそうである。20.Rhf3 には 20…Ne4!? がある。本譜の手のあと黒は防戦一方になった。

20.Qf4

20…Kd7?

 20…Bf5 の方が良かったかもしれない。しかし 21.Rhe3 O-O 22.Rg3! で白のキング翼攻撃が厳しい。

21.Rhe3 Re8 22.b5 Qa5 23.Bxf6 gxf6 24.Kf1 Bf5 25.Be2 Rac8 26.Rc5

 ここからは一方的である。

26…Qa4 27.Rec3 a6 28.b6

 黒クイーンは敵陣で捕虜になった。

28…Bg6 29.Qxf6 e5 30.Rxe5 Rxe5 31.dxe5 Re8 32.Re3 Re6 33.Qg5 Qd4 34.Kg1

34…Be4

 白の狙いは Bxh5 で、34…Qxb6 では 35.Bc4 で決まる。

35.Qxh5 Rxe5 36.Qxf7+ Kxd6 37.Qxb7 1-0

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(この号続く)

2010年12月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(242)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所(続き)

c1-h6の斜筋の妨害

 典型的な …Re8-e6-h6 の捌きを実行しようとすると白の黒枡ビショップがh6に利いているのが邪魔になるということが非常によくある。黒は戦術を用いてこの目標を実現できることがある(図278)。

 図278

 例えばここでは黒は …Bf4! で …Nxe3 と …Rh6 とを狙って妨害することができる。白は Bxf4 と取れば …Be2、Qc2 Nxf4、gxf4 Rh6 だし、gxf4 と取っても …Rh6 で例えば Nf1 なら …Bf3 から詰みになる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(241)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.2 戦術の狙い所

 マーシャルでは白のキャッスリングした囲いが試合開始早々から敵駒の厳しい圧力にさらされるので、戦術的そして動的な側面が試合の展開にかなりの影響を持つ。だから白は図255と図256の解説に示されているような多くの落とし穴のどれかにはまることを避けようとするなら目を見開いて警戒しなければならない。試合がもっと後の段階でも両陣営の戦略上の必要性に応じて戦術が効果をあげることがしばしばある。それは例えば図272、273それに276に出てくるような典型的な戦力の犠牲を行使するような時である

 ここでははっきりと戦術の目的を強調しそれゆえに戦略の原則の解説中に触れなかった繰り返し出てくる主題のみを取り上げることにする。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(103)

「Chess」2010年11月号(2/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

優勝候補の国々

 ロシアはいつもどおり競技開始時点でレイティングの最も高いチームだった。しかしロシアはもちろん旧ソ連と同義語ではなく、チェス界はソ連帝国の旧構成国が元専制国から優勝杯をかっさらうようになった。ロシアが最後に優勝してから8年がたった(ブレッドでの時でカスパロフがチームにいた)。そしてウクライナが2004年に金メダルをとり、アルメニアが2006年、2008年と連覇した。ロシアは強力なチームを編成してきた。どういうわけか本命と目されるチームにモロゼビッチを欠いていたが、2004年にウクライナチームで金メダルを獲得したセルゲイ・カリャーキンが加わっていた。このチームはクラムニク、グリシュク、スビドレル、カリャーキン、それにマラホフから成っていた。

 ロシアは開催国としてもう一つのチームを出す権利があった。このチームは開始順位4位で、ネポムニアシチ、アレクセーエフ、ビチュゴフ、トマシェフスキー、それにティモフェーエフがメンバーだった。しかしロシアはこれに留まらず、オープン部門に全部で5チームを繰り出した。その中で地域を代表していると目されるチームも強くて、開始順位14位だった。残りの2チームは将来有望な選手たちが主だった。ロシア軍団の数の多さには眉をひそめる者もいたが、不当に全体の結果をゆがめなかったのは幸いだった。

 カリャーキンの「亡命」にもかかわらずウクライナはイワンチュク、ポノマリョフ、エリャーノフ、エフィメンコ、それにモイセエンコを擁し開始順位2位だった。イワンチュクは他の超一流選手たちよりもオリンピアードで傍若無人ぶりを発揮するようだし、ポノマリョフはFIDEの勝ち抜き方式世界選手権を獲得したときの調子に戻っているようだったので、期待は高かった。

 中国は第3本命で、ワン・ユエ、ワン・ハオ、プー・シャンチー、チョウ・チャンチャオ、それにリー・チャオから成り、団体チェスでは評価が高まっていた。ハンガリーは開始順位5位で、第3席にユディット・ポルガーを置く贅沢さだった(レコとアルマーシより下位席)。3連覇を狙うアルメニアは開始順位6位で、アロニアン、アコピアン、それにサルギシアンが先鋒だった。アゼルバイジャンは開始順位7位だったが、内輪もめでガシモフをチームに欠いていなければもっと上だったろう。開始順位8位はブルガリアで、世界選手権挑戦敗退のトパロフが主将だった。

イギリスの期待

 イングランドがオリンピアードでメダルを獲得(1990年)して以来長い年月が過ぎ、あの時以来国家的野心は少し減退しているようだ。それでも国の代表として最強と目される布陣-マイケル・アダムズ、ナイジェル・ショート、ルーク・マクシェーン、デイビド・ハウエル、それにガーウェイン・ジョーンズ-を編成するのは嬉しいものである。開始順位は12位につけていて、優勝候補と互角に渡り合いメダル争いにからむことができるのではないかという希望があった。スコットランドはジョナサン・ラウソンとポール・モトワーニを欠いていて開始順位62位、アイルランドは75位、ウェールズは91位だった。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(240)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

a2-a4 突きと黒のbポーンに対する圧力

 この型の中原では白の唯一の反撃目標は …a7-a6 と …b7-b5 突きとによって生じる黒のクイーン翼のいつもの弱点である。b5のポーンは a2-a4 突きと白のクイーン翼の戦力の直接または間接の関与とによって標的にされる(図277)。

 図277

 クイーンはf1-a6の斜筋に沿ってb5の地点への圧力に直接関与できる。これに対して白枡ビショップとクイーン翼ルークは間接的に参加する。即ち必要ならばビショップは Bxd5 と交換することにより黒のcポーンをそらし、ルークはひそかに黒のaポーンを釘付けにしている。axb5 axb5 でa列を素通しにする可能性はたとえ Ra8 にひもが付いていても通常は大きな脅威になると考えられる。なぜなら単に白の遊んでいるクイーン翼ルークを交換するだけでも、黒の攻撃の元を大きく減少させる限り白の成功と考えられるからである。黒は通常は三つの異なった手段のうちの一つで対処することができる。以下にそれらの成り行きを手短に説明する。

 (1)…b5xa4 と取る。この方針はあとでa6のポーンも取らせることがよくある。白がそれに応じればもう少し手を費やすことになり、クイーン翼ルークが最下段を放棄することになる。黒はこれらの要因を念頭に置いて、キング翼での反撃により大きなエネルギーを注ぎ、時にはb列にしつこく圧力をかけなければならない。白の方はcポーンをc4に突いて Nd5 を追い払ったり、c4の地点を利用して Nd2-c4-e5(または e3)と捌き列をふさぐ可能性が出てくる。

 (2)…b5-b4 と突く。c4の地点との関連では結果は同じである。しかしこのポーン突きはa列が素通しになるのを防いで2個目のポーンを捨てなければならない危険性を減らす。一方白のクイーン翼ルークは最下段の守りを放棄させられることがない。

 (3)…Ra8-b8 と守る。これは状況をできるだけ変えないようにする方針である。もっとも白がb5とd5でポーンを交換すればa列が素通しになることとb5のポーンの弱体化は防げない。

 明らかにこれが絶対的に好ましいという手は存在しない。だから黒は局面の具体的な特徴を考慮に入れてその時々の状況をよく吟味しなければならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(239)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

キング翼列を閉鎖しておくための捌き

 黒のキング翼での活動を抑止する白の意図は、素通し列をふさぐ目的の捌きによって効果があがることがある。この戦略は早く Be3 と上がってe列をふさぐのがその典型である。このような決断は単に黒のe列への侵入を防ぐ治療とみなすべきでなく、-クイーン翼の展開の問題を解決したあと-素通し列とh2-b8の斜筋で積極的に対抗する前兆と見るべきである(図275)。

 図275

 これは白が相手の意図を単刀直入の Be3-f4 で迎え撃つことのできる場合である。この手はh2-b8の斜筋の圧力を減少させ、より都合のよい時に再びe列を開ける。

 時には f2-f4 突きで推し進めるせき止めの考えを、駒でe5の地点を占めて完璧にすることもある(図276)。

 図276

 この役割はナイトが一番適しているが、黒は相手の Re5 による交換損の可能性を軽視してはならない。この交換損が特に危険なのは、黒のキング翼の活動がさらに戦力の放出を伴っている時、あるいは黒のクイーン翼ポーンの形が a2-a4 突きと …b5-a4 取りのあと危うい状態になっていてそのつけとしてクイーン翼のポーンが1、2個落ちる時である。

(この章続く)

2010年12月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[42]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)(続き)

シュリーマン防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5?!

 ルイロペスのシュリーマン防御における戦略はいくつかの点でキング翼ギャンビットの動機に似たところがある。その動機とはポーンを捨てて駒を積極果敢に展開し素通しのf列で敵キングに対し直接攻撃をかける可能性を得ることである。しかしここではポーンを与えようとしているのは白ではなく黒で、しかも1手遅れているのである。

4.Nc3(図59)

 図59(黒番)

 白にとって最も賢明な方針はすばやく展開することである。4.exf5 と取るのは 4…e4 と突かれて紛れる。例えば 5.Qe2 Qe7 6.Bxc6 bxc6 7.Nd4 Nf6 8.O-O c5 となると強力な中原のポーンが黒の代償となる。うまくいかない別の方針は 4.Bxc6?! dxc6 5.Nxe5 Qd4 6.Qh5+? g6 7.Nxg6 hxg6 8.Qxg6+ Kd8 で、白の早まった攻撃が終わり黒が優勢になる。しかし単純な 4.d3 は完全に成立し、主手順の大乱戦を避けることができる。

4…fxe4

 黒はf列を素通しにした。さもなければ 4…Nf6 5.exf5 Bc5 で白のf2の地点に狙いをつけたいところだがあいにく白には両当たり狙いの 6.Nxe5 がある。

5.Nxe4 d5

 この手は白のクイーン翼ナイトを当たりにしてその浮いている状態に付け込もうとしている。

6.Nxe5!

 この手は黒のナイトの釘付けにつけ込んでいる。6.Ng3 は弱気の手で 6…Bg4 7.h3 Bxf3 8.Qxf3 Nf6 となって、黒の中原の強力なポーンが白の双ビショップに対する代償となっているので白は優勢にならない。この手順中 6…Bd6? なら 7.Nxe5 Bxe5 8.Qh5+ で白が駒を取り返してポーン得になる[訳注 8…Kf8 9.Bxc6 Bxg3 で黒が優勢なので先に 8.Bxc6+ と取るのが正しい手順のようです]。

6…dxe4

 6…Qe7 は単純に 7.d4 と応じられる。

7.Nxc6 bxc6

 黒はこの手よりも良い手が二つあるがどちらも非常に難解になる。この局面をどちらを持っても指したいならば定跡手順を覚えておかなければならない。さもないと簡単に負かされてしまう。本譜の代わりの手は 7…Qd5 8.c4 Qd6 9.Nxa7+ Bd7 と 7…Qg5 8.Qe2 Nf6 9.f4 Qh4+ 10.g3 Qh3 で、悪夢のような乱戦になる。

9.Bxc6+ Bd7 10.Qh5+

 この手は 9.Bxa8 よりも正確である。これで黒キングが中央に引きずり出されて立ち往生する。

9…Ke7

 9…g6 なら 10.Qe5+ で白が少なくとも交換得になる。

10.Qe5+ Be6(図60)

 図60(白番)

 10…Kf7 は 11.Bd5+ で黒がたちまち負けになる。

 白は勝勢である。このあと 11.Bxa8 Qxa8 12.Qxc7+ で2個の駒の代わりにルークと3ポーンを得、黒キングは野ざらしになっている。

(この章続く)

2010年12月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(238)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

e列とキング翼の列の開通

 黒の攻撃はクイーンと小駒の活動だけには頼れない。ある時点でルークの力も必要となる。だから素通しのe列に目を向けるのはごく自然である。この列は試合の初めの段階では白によって占拠されているが、黒は単に白のクイーン翼ビショップがe3にいることを利用したり、白のルークの結合の困難さを利用したりして、この列の支配に成功することがよくある(図269)。

 図269

 しかしこのような直接的な戦略が敵のキャッスリングした囲いの防御を打ち破るのに決め手となるのは例外的な状況だけである。例えば白の1段目または2段目の弱点に狙いをつけて直接素通し列に侵入できるのはそのような場合である。

 通常黒はキング翼のポーンを突いてルークのために列を素通しにしようとする(図270)。

 図270

 実戦では黒の最も普通の作戦はg3の地点めがけてfポーンを突いていくことである。この地点はすぐに想像がつくように白キングの安全にとって致命的な結果をもたらすことがある。もっとまれなことではあるけれども黒はhポーンを突いていくことによってg3の地点の破壊を目指すこともできる。

 明らかに白はこの図に示されるような作戦を許すのはもってのほかである。そこでその阻止に努め、通常は …f7-f5 突きに対してそれを押さえる f2-f4 突きで応じる(図271)。

 図271

 それでも黒はe3の地点を弱めることに成功している。これはe列の支配をめぐる戦いに決定的な要因となるかもしれない。そして黒は …g7-g5 と突くか単純に …Kg8-h8 と釘付けをはずすことによりナイトを解放して攻撃を再開することがある。

 このような捌きの目的はf4および/またはe3の地点に対する圧力を増し、白に f4xg5 と取らせて …f5-f4 突きに基づいた敵陣突破のもくろみを再開することである(図272)。

 図272

 この図のような局面では黒は …h7-h6 と突くことによりg列を素通しにすることを狙うことも時おりある。

 キング翼に対する襲撃を行なう際に黒は犠牲にするポーンの数と、自分のキャッスリングした囲いが必然的に弱体化することにほとんど注意を払わない。犠牲にするポーンの数は実のところ敵キングに対する攻撃用列を素通しにする代価としては決して高すぎない。そして弱体化の方は展開の優位のためにキング翼でしっかり主導権を握っている限りちっとも危険でない。

 図271と同様の局面で黒は典型的な交換損の犠牲を払って攻撃用列の開通を図ることがある(図273)

 図273

 例えばここで黒は …Rxe3、Qxe3 gxf4 によって敵のせき止めを打ち破ることができる。そしてg列が素通しになるか、…Re4、Nxe4 fxe4 によってf列でのルークの利きがとおりf4のポーンに対する圧力が厳しくなる。

 一方白が g2-g3 でなく h2-h3(または f2-f3)と突いていた場合は黒はgポーンを突いていくことができる(図274)

 図274

 このような突破作戦を防ぐために白は f3 突きから Ne4-f2 のような捌きを用いてg4の地点でせき止めることができ、黒が自分の作戦にこだわるならばg4の地点で起こる単純化のために相手の意図をくじくことに期待する。

(この章続く)

2010年12月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(237)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

白枡を守るための捌き

 黒が白枡の弱点につけ込もうとしている間に白はこの方面での主要な目標を補わなければならない。それは通常は黒クイーンを邪魔なh3の地点からどかせることである。既に述べたように通常は白枡ビショップがクイーン翼に追いやられているかナイトと交換になっているので、他の戦力が白枡の守りにかけつける役割を担わなければならない。この役割は通常はクイーンがd3-f1の経路を通って務める(図264)。

 図264

 この経路は類似のe2-f1やf3-g2よりも実用的である。というのはe列でのルークやh5-d1の斜筋での白枡ビショップの干渉のように敵駒に邪魔されにくいからである。

 白は Re5 をe2に引くことによりこの手法にさらに勢いをつけてクイーンを1段目で直接f1に移送することも行なってきた。しかしこの解決策は欠点もあわせ持っていて、ルークがh5-d1の斜筋でいじめを受けやすくf3の地点への利きも弱める。

 黒クイーンを追い払うことに成功したあと白クイーンは Qg2 と入ることによりh1-a8の斜筋を支配することができ、Bxd5 cxd5 の交換から生じる孤立ポーンの弱みを標的にすることが望める。

 白が黒クイーンをh3の地点からどけるのに用いることのできる別の手法はキング翼ルークを e4-h4 と動かして邪魔に入らせることである(図265)。

 図265

 このやり方は白が d2-d3 と突く方を選択した時には特にやりやすいだろう。なぜならこの場合ルークは守られていて(後出の戦術の着眼点の「Re4 も無防備の状態」を参照)、もし必要ならばd4の地点も使ってd5の地点にナイトがいようとポーンがいようとそれに圧力をかけるのに役立つからである。最後に、白がときどき試みる別のもっと手間のかかる捌きは、fポーンを f2-f3 と突いてf2の地点を空けてからナイトをそこに(d2-e4 経由で)移送することである(図266)。

 図266

 この捌きは黒クイーンをh3の地点から追い出す観点からだけとらえるべきではなく、白枡の全般的な強化というもっと広い戦略的視点から見るべきである。もっとも f2-f3 突きはe3とg3の地点をひどく弱体化させるのは事実である。この「治療」は都合のよい状況で用いられなければ状況を悪化させることにつながる。例えば黒が …Bxg3 と駒を犠牲にして効果をあげることができるときがそうである。

 黒がクイーンをh3から退去させられる時は白枡に対する襲撃を撃退することに成功したと信じ込むべきでない。実はh3の地点は黒の白枡ビショップの標的になるかもしれず、一方黒クイーンは普通はh5-d1の斜筋に沿って白枡に影響を及ぼし続けることができる。白はときどき可能なのだが得したポーンを返す犠牲を払ってもナイトを敵の白枡ビショップと交換することによって単純化することができれば、もっと具体的な成果をあげることができる(図267)。

 図267

 例えばここでは白は …Bh3、Qe1 Bg4 を恐れる理由は特にない。なぜなら f3! Bxf3、Nxf3 Qxf3、Rf2 のあと(図268)

 図268

黒の攻撃は主役の一つをなくし、一方長期的には白の双ビショップが重要な役割を果たすようになるかもしれない。

(この章続く)

2010年12月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(236)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

g2-g3 突きと白枡の弱体化

 通常白は d2-d4 突きと g2-g3 突きの陣形にするので、白陣の白枡は全般的に弱くなるのがかなり普通の状況である(図259)。

 図259

 実際 d3、f3 および h3 の個所はもうポーンによって守ることができず、e2、e4 および g4 の地点さえ黒駒の侵入の目標になるかもしれない。これらの地点は白枡ビショップがクイーン翼に追いやられ黒が主導権を維持するならばキング翼の守りのために戻ってくる余裕はめったにないのでことのほか弱くなっている。

 白が相手に双ビショップを与え自分の白枡をさらに弱める犠牲を払っても、しばしば白枡ビショップをナイトと交換して単純化を図り相手の攻撃能力を減らすことにするのはこれが理由である。反面この交換は黒陣にも恒久的な弱点をもたらす。即ち孤立dポーンは黒の白枡支配をさらに強固なものにするが、白が例えば Nd2-f1-e3 の捌きや単調直入の Qf3 で攻撃しやすくなる(図260)。

 図260

 それでも黒はこの陣形の変化により収局に際して危険性が減少する。…c6xd5 と取り返したあと黒の少数派ポーンは白の多数派ポーンの意図をくじくように最適に配置されていて、…b5-b4 突きに基づいた少数派攻撃を始める悪意さえ持っている。

 白が d2-d3 突きを選んだ場合でも(d2-d4 突きの代わり)、白枡の乱れの部分的な手当てにしかならず、キングの回りの状況を改善することには何もつながらない。一般的に黒はクイーンを難なくもぐり込ませることができ-…Qh4 からすぐにそうなる-この侵入を利用してh2に対する攻撃を再開することになる(図261)。

 図261

 ルークの介入(e6-h6 を経由)またはナイトの介入(f6-g4 を経由)はクイーンの略奪行為を支援する最も迅速な手段である。しかし白は黒の白枡ビショップが …Bg4-f3 により直接的に(この捌きは致命的な効果になることがよくある)、または …Bb7 から …c6-c5 でもっとさりげなく、a8-h1の対角斜筋を支配する可能性も考慮に入れておかなければいけない。

 d3の地点の占拠もよく黒の作戦の一部となる。黒はたいていビショップをそこに置き、h3またはf3の占拠ほどには直接的でない目的を追求する。しかしそうだからといって効果が劣るわけではない。実際d3の地点からはこのビショップは既に捌きの余地の乏しい白駒の動きを邪魔するだけでなく、例えばキャッスリングした囲いを守るためにf1に来たナイトと刺し違えたり、唯一の素通し列の支配をめぐる戦いに決定的な役割を果たすこともある(図262)。

 図262

 例えばここでは黒は Re1 が黒のルークを重ねるのを防いでいるためにe列をしっかり支配することができない。それでもまず …Be2 と指せば(図263)

 図263

自由に …Re6 から …Rfe8 と指すことができる。これは白のe2の地点も弱いことにつけ入っている。

(この章続く)

2010年12月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(197)

「Chess」2010年10月号(3/6)

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NH新星対老練(続き)

第1回戦
□H・ナカムラ
■L・リュボエビッチ

シチリア防御

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Nb3 Bg7

7.Be2 O-O 8.O-O b6 9.f4 Bb7 10.Bf3 Qc8 11.Be3 Rd8

12.Rf2 d5 13.exd5 e6 14.d6 Nb4 15.Rd2 Bxf3 16.Qxf3 Nbd5

17.Nxd5 exd5 18.c3 Rxd6 19.a4 Qc4 20.Nd4 Re8 21.Kh1 Rd7

22.Rdd1 Rde7 23.Bg1 a6 24.Qd3 Qc8 25.Nf3 Re4 26.Bxb6

 リュボエビッチは初め敗因をbポーンが取られたせいにしていたが、局後の検討でこのあたりではまだ大丈夫だということになった。真の問題は持ち時間が非常に少なくなっていたことだった。

26…Rxf4 27.Bg1 Rfe4 28.a5 Bh6 29.Rf1

 ナカムラは黒が押し気味のこの嫌な局面から勝って第1回戦のチームの成績を互角にすることができた。

29…Qb7

 これはまったく当然の手のように見えるが、たぶん 29…Re2!? として白にb2のポーンを何とかさせる方が良かっただろう。

30.b4 Ng4 31.b5!

 白の構想には特段ひねったところは何もない。bポーンを犠牲にしてaポーンを突き進める意図である。

31…Qxb5 32.Qxb5 axb5 33.Rfb1 Be3 34.Bxe3 Nxe3 35.a6

35…Kg7

 黒はちょっとしたわなを仕掛けようとしている。しかしその前に 35…Ra8 と指す方が良かっただろう。そうすれば 36.Nd4 b4!? 37.a7!(37.Rxb4 に対して 37…Rxd4!? から 38…Nc2 が黒の狙い)37…Re7 38.Nc6 Rc7 39.Rxb4! Rxc6 40.Rb8+ Rc8 41.Rxc8+ Rxc8 42.a8=Q Rxa8 43.Rxa8+ Kg7

となった時ルークの代わりにナイトとポーンを得ているのでいくらか望みがあっただろう。

36.Nd4 b4

 わなは不発である。

37.a7!

 37.Rxb4 は 37…Nd1! 38.h3 Nxc3 39.a7 Ra8 でたぶん黒がしのげる。

37…bxc3

 37…Ra8 は 38.Rxb4 Nf5 39.Nxf5+ gxf5 40.Rb7 Kf6 41.g3 Ree8 42.Kg2 で白が急がなくても勝ちになる。

38.Rb8

38…R8e7

 これははったりである。しかし 38…c2 としても 39.Ne2 で何もひょんなことは起こらない。

39.a8=Q Ng4 40.Nf3 c2 41.h3 1-0

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(235)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

白の囲いを弱体化させる手段

 白が上記の基準に従ってクイーン翼の戦力を展開するつもりの間に、黒は相手のキャッスリングした囲いに直接狙いをつけて防護のポーンの一つを突かせることにより、囲いに恒久的な弱体化を生じさせることができる。

 黒駒の迅速な攻撃にもっともさらされるのは白のhポーンである(図253)。

 図253

 既に述べたように黒枡ビショップは Re5 に当てて先手で急所のb8-h2の斜筋につくことができ、そのh2の地点に対する利きはクイーンおよび/またはナイトの素早い介入により重大な脅威となることがある。Nd5 への当たりに対処するための黒の前述の手段はこのビショップを支援するのに用いられる駒の選択に影響してくる。…c7-c6 突きは …Qh4 に密接に関連しているが、…Nd5-f6 引きはあとでの …Nf6-g4 に関連している。

 攻撃目標となるかもしれない別の個所は白のgポーンで、通常はクイーン翼ビショップとナイトおよび/またはクイーンとの協同作戦の対象となる(図254)。

 図254

 この手段も前述の Nd5 を守る問題と密接に関連している。展開の …Bb7 はg2の地点に圧力をかける自然な手始めとなる。

 一般に白がこのような狙いに対処する唯一の手段は、白駒がまだクイーン翼にあるので、キャッスリングした囲いの3個のポーンの一つを突くことである。黒の画策する攻撃の種類に応じて白は最も効果的なポーン突きを見つけ、さらに防御が必要なのでクイーン翼の駒を招集する。だから例えばビショップとナイトによるh2への攻撃を撃退するために(図255)

 図255

g3? と突くのは痛烈な捨て駒の …Nxh2! を誘発するために不適切である。以下は例えば Kxh2 Qh4+、Kg1 Bxg3、fxg3 Qxg3+、Kh1 Bg4 となる。正着は h3 突きで、さらに …Qh4 と襲ってきても(図256)

 図256

Qf3 で撃退する。そこでの …Nxf2 は恐れる必要がない。なぜなら Re2 でナイトが逃げられず、黒はこれ以上攻撃を続行する手段がないからである。

 h2-h3 突きが良い場合の別の陣形は、白枡ビショップをナイトと交換しe3の地点にルークを引けるようにすることである(図257)。

 図257

 このルークは3段目から白のキャッスリングした囲いを強固にしている。さもないと痛烈なビショップ切りの …Bxh3 で破壊される可能性がある。

 対照的に図254に示されるような攻撃からg2の地点を守るためには、f2-f3 突きはたとえ後で …Nxg2 または …Nh3+ のような捨て駒で破壊される可能性があっても必要である。

 実戦では最もよく生じる形の弱点は g2-g3 突きによって引き起こされる(図258)。

 図258

 これについてはもっと紙数を費やさなければならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(234)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点(続き)

クイーン翼の動員

 相手の攻撃が差し迫っていることを考えれば白はクイーン翼の戦力をキャッスリングした囲いの手薄な守りに移送してそれらをできるだけ早く戦いに投入するように努めなければならない。

 この点に関して最も普通の駒の配置は d2-d4 と突き、ルークを中央の不安定な位置から引き(通常はe1だがe2の時もある)、クイーン翼ビショップをe3にそしてナイトをd2に置くことである(図251)。

 図251

 この後の構想はナイトをf3かf1に移送してキャッスリングしたキングの防護壁となっているポーンを最大限に守ることである。この間にクイーンは必要に応じてd3またはf3に行ってルークが結合できるようにする。

 クイーン翼の戦力の動員を図るにあたり白はビショップ、ナイトそれにクイーンのどれでも最初に動かすことができるので具体的な状況に合うように最適な手順を選ぶ。状況に最も適した手順は必ずしも明らかではなく、キャッスリングした囲いにすぐに必要な受けを絶えず考えることによって見い出さなければならない。

 それから指摘しておくべきことは白のdポーンも …c5 突きにより攻撃にさらされる可能性があるということである。それに対して白は dxc5 と応じることはほとんど考えられない。なぜなら局面をさらに開放することは、より活動的で迅速な展開を行なうことのできる黒にだけ有利に作用するからである。

 時にはまれではあるが白が d2-d3 と突く陣形を選ぶことがある(図252)。

 図252

 前の場合と比べると白はクイーンがd3に行くことはできないが、クイーン翼を上記の …c5 突きにさらすことはなく、e4の地点をルークまたはナイトのために安全に使うことができる。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(102)

「Chess」2010年11月号(1/21)

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ハンティ・マンシースク

ウクライナがシベリアでのオリンピアードで優勝

マイケル・アダムズ、ルーク・マクシェーン、ガーウェインが解説


優勝したウクライナチーム (左から)ザハル・エフィメンコ、ワシリー・イワンチュク、アレクサンドル・モイセエンコ、ルスラン・ポノマリョフ、ウラジーミル・トゥクマコフ(監督)、パベル・エリャーノフ

 かつては時計をほとんど世界選手権戦の周期に合わせることができた。3年目ごとに何事があろうとも選手権者と挑戦者の番勝負があり、勝負がつき、チェス界は一人の真のチェス王者を歓迎したものだった。

 1990年代に入って車はきしむようになり、つまづき、衝突し、車輪はそれぞれ勝手な方角にはずれていった。20年後の今日になってようやく当初の原動力が復活してきたようだ。しかしかつての揺るぎない信頼はまだ取り戻せていない。

 それ以来チェスオリンピアードはもっと信頼でき確かな乗り物として取って代わった。この周りでそれ以外のチェスが回転している。これも油の不足とちょっとした賢明な修繕のために時々少しきしむことがあるのは確かだが、奇跡的に車輪はしっかりはまっていて1950年から2年目ごとの開催が中断することなく31回続いてきた。

 しかしいつもオリンピアードの開催が近づくと気がかりなことが出てくる。会場はふさわしいものだろうか、それよりもそもそも存在するのだろうか。膨大な数の参加者のための宿泊施設と料理は大丈夫だろうか。現地に安全にきちんとたどり着けるのだろうか。このような疑問は今年はいつもにまして恐怖と震えで問いかけられた。なにしろオリンピアードが開かれるのは高い教育を受けた地理学者でもなかなか地図で見つけられない場所で、見つけてもたぶんつづることができない。ハンティマンシースクはシベリアにある。そこは西欧人にとって良くも悪くも雪、寒さ、それにスターリンの強制収容所と結びつけてしまう所である。何でも見え何でも知ることのできるグーグルの地図でもモスクワからの行き方をたずねられると諦めてできないと認めてしまう。

 だからそこへ旅するように選ばれた人々にとってはオリンピアードへの集結は不安の時間というべきものである。いろいろな困難に加えて、ビザ取得やヨーロッパの中から予想される雪原への直行チャーター便との接続をどうするかという兵站上の問題もある。しかしこれらは明るいニュースに変わった。オリンピアード人たちが目的地に着くやいなやフェースブック上に(他のソーシャルネットワーキングのウェブサイトも利用できた)、無事に着いた、宿泊所は大体快適で、雪どころか(めっそうもない)寒くないという幸せなメッセージが出始めた。メッセージが宛先に届いたということはインターネット接続が完全に機能しているあかしでもあった。

 嬉しいことに大会の運営面については何も言うべきことがなかった。一般的に言えば物事は順調でそれもかなり快調だった。10回も参加したある非常にオリンピアードの経験豊富なチームマネージャーは3本の指に入る立派なオリンピアードだと言った。もっとレジャーの楽しめるどこか大都市で開催されていたら紛れもなく1位だとも言った(シベリアにはない問題は観戦者で、ここにはほとんどいなかった)。このチームマネージャーは賞賛の大部分は誰に聞いてもとてももてなしがよくててきばきとした地元シベリアの主催者に帰すると感じていた。遠くから追っていた我々も初めの方の回戦のトラブルが解消された後は順調なサービスが受けられ、棋譜や結果がタイムリーに正確に届き始めた。ということでシベリアの主催者へのあいさつには「よくやった」と言おう。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(233)

第7章 マーシャル中原(続き)

7.1 戦略の着眼点

 黒がポーンを犠牲にした後に得る代償を正しく判断するためには図250の局面ですぐに認識できるいくつかの要因-前記の戦型のほとんどに共通する-に触れなければならない。それらは

 (1)黒の展開の優位。それは三つの理由で明らかである。

 - 展開済みの駒数と、展開の完了のたやすさ

 - 白のクイーン翼での全面的な展開の遅れ

 - 中央の白ルークが追い払われることによる黒のさらなる手得

 (2)白枡ビショップの不在とキング翼ナイトの交換による白キングの守りの薄さ。

 (3)局面の開放状態。これにより黒はe列に加えてd8-h4とb8-h2の斜筋、時にはa8-h1の斜筋の素通しの筋を利用して迅速に攻撃を仕掛けることができる。

 ところで、黒はまず Nd5 を守る問題に取りかからなければならない。基本的に三通りの方法で対処できる。それはとりもなおさず将来の攻撃法の問題につながる三つの異なる方針を示唆することになる。それらは …c7-c6 突きでナイトを守ること、ビショップがb7に上がってナイトを守ること、そしてナイトを引くことである。

 上述の解説に基づけば通常このような局面を特徴づける戦いの型を大まかに述べることはかなりたやすい。黒は陣形に弱点を生じさせる目的で敵のキャッスリングした囲いに対してできるだけ迅速に具体的な狙いを向けて、展開のリードを攻撃に転換しなければならない。逆に白は黒の主導権を無効にし最終的には得した中央のポーンを活用するように努める。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(232)

第7章 マーシャル中原

主手順 - マーシャル攻撃
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5(図250)

 図250

 マーシャル中原は本来はこの手順から生じるが、他の戦型でも戦略的に似かよった状況が生じることがある。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O の後

 マーシャル攻撃
 - 8.c3 d5 9.exd5 e4 10.dxc6 exf3

 反マーシャルシステム
 - 8.a4 Rb8(または 8…b4 9.c3 d5 10.exd5 e4 11.dxc6 exf3)9.axb5 axb5 10.c3 d5 11.exd5 Nxd5 12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5
 - 8.d3 Bb7 9.Nbd2 d5 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5
 - 8.h3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 の後

 ワーラル戦法
 - 6.Qe2 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5

 トライコビッチ戦法
 - 6.Re1 b5 7.Bb3 Bb7 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5

(この章続く)

2010年12月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[41]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)(続き)

交換戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6 dxc6(図57)

 図57(白番)

 初心者にとって 4.Bxc6 という手は少し理屈に合わないように思えるのが常である。なぜなら白が自分から双ビショップの優位を相手に与えているからである。この手の真意は早くも4手目で白が収局での優位を得ようとしていることにある。このあと白が d4 と突き黒のeポーンと交換することになれば白に有利なポーンの形になる。白はキング翼で4対3の多数派ポーンになり、収局でこの優位を用いてパスポーンを作りクイーン昇格を目指すことができる。もちろん黒もクイーン翼で4対3の多数派ポーンになる。しかし黒のポーンはc列に二重ポーンがあるという障害を抱えていて、白が正しく指せば黒は自分のパスポーンを作ることができない。

 試しに読者は盤上から白のdポーンと黒のeポーン、それにすべての駒を取り除いて、キングとポーンだけによる収局を指してみればよい。そうすればすぐに白がこの収局に勝つ可能性が非常に高いことに納得するだろう。しかしある著名なチェスの賢者が述べたように「布局と収局の間に神は中盤を作った」。黒のよりどころは中盤戦にある。黒は駒を積極的に働かせて(双ビショップがその助けになる)ポーンの弱点を補うべきである。以前は交換戦法は非常に引き分けになり易いという評価があった。そしてフィッシャーの改良にもかかわらず黒はこのシステムを恐れる理由がない。

 4…dxc6 と取り返すのは黒のクイーン翼ビショップの筋を開け 4…bxc6 よりも優っている。4…bxc6 なら白は 5.d4 exd4 6.Qxd4 で優勢になる。以前に別の個所で本譜の手のあと 5.Nxe5?! でポーン得しようとするのは誤りであることを既に指摘した。5…Qd4 で簡単に互角の形勢になってしまうからである。

5.O-O

 この旧来の手はオランダのマスターのバレンドレヒトが現代の実戦によみがえらせ、1966年にボビー・フィッシャーによって採用された。それ以前は 5.Nc3 と 5.d4(5…exd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 というようにクイーン交換を目指す)の方が普通の手だった。しかしどちらの手も互角にしかならないようである。白は 5.O-O でキング翼の展開を完了し、黒のeポーンに対する狙いを復活させた。

5…f6

 ここではeポーンは守る必要がある。クイーンで 5…Qf6 と守るのは白が 6.d4 exd4 7.Bg5 Qg6 8.Qxd4 というようにこのクイーンを攻撃することにより手得する。ビショップで 5…Bd6 と守るのも劣った手だと考えられる。即ち 6.d4 exd4(6…f6 は 7.dxe5 fxe5 8.Nxe5! で白には駒を取り返す Qh5+ がある)7.Qxd4(gポーンに当たっている)7…f6 8.Nbd2! から 9.Nc4 で黒陣に圧力がかかる。最後に最も攻撃的な 5…Bg4 6.h3 h5!? には白は無視して 7.d3 と指すのが最善である。

6.d4 Bg4

 6…exd4 は中原を放棄し白に好き勝手にさせてしまう。例えば白は 7.Nxd4 Bd6 8.Qh5+ g6 9.Qf3 で黒のキング翼を弱体化させることができる。9…Bxh2+ なら 10.Kxh2 Qxd4 11.Rd1 で黒が早くつぶされるのを免れるために苦労する。1992年ベオグラードでのフィッシャー対スパスキー戦第9局ではこの評価が裏付けられた。即ち 6…exd4 7.Nxd4 c5 8.Nb3 Qxd1 9.Rxd1 Bg4 10.f3 Be6 11.Nc3 Bd6 12.Be3 b6 13.a4! で白が主導権を手にした。白のキング翼ナイトを釘付けにする本譜の手はずっと積極的な防御法である。

7.c3

 白はこの手でdポーンを支えて完全なポーン中原を作ることを期待している。この手はポーンの犠牲の可能性を含みにしているが、黒は危険すぎてとても受け入れられないだろう。7…exd4 8.cxd4 Bxf3 9.Qxf3 のあと 9…Qxd4 と取ると白は 10.Rd1 と指すことができ、黒はクイーンをまともな地点に捌くためにかなり手数を費やさなければならないだろう。例えば 10…Qc4 11.Bf4(cポーンに当たっている)11…Qf7 となれば白には明らかにポーン損の代償がある。

7…exd4

 黒は局面を少し開放的にした。この手は上記の危険なポーンの犠牲を受け入れるために指されたものではなく、…Qd7 から …O-O-O で白の中原に圧力をかける意図である。黒の堅実な別策は 7…Bd6 8.h3 Bh5 で、互角にできる可能性が高い。

8.cxd4 Qd7 9.h3

 釘付けが手に負えなくなる前にビショップを当たりにして追い払おうとしている。

9…Be6

 ビショップを引くならここだが、9…Bh5! で釘付けを維持した方が良かったかもしれない。9…Bh5 10.Ne5 Bxd1 11.Nxd7 Kxd7 12.Rxd1 なら白が有利の収局になるが、勝つには十分でないだろう。欲張りの 9…Bxf3 10.Qxf3 Qxd4 は 11.Rd1 でやはり白が良い。

10.Nc3 O-O-O 11.Bf4!(図58)

 図58(黒番)

 黒キングの頭上の地点のc7に狙いをつけた。白は次に 12.d5! を狙っている。例えば 12…cxd5 13.Rc1 dxe4 14.Na4! Qxd1 15.Rxc7+ Kb8 16.Rc8+ Kxc8 17.Nb6# で詰みになる(途中 16…Ka7 なら 17.Bb8+ Ka8 18.Nb6#)。黒の最善手は 11…Bd6 12.Bxd6 Qxd6 で、困難さがいくらか取り除かれるがそれでも白がまだ優勢を保持している。というのは白のポーン中原が黒を押さえ込んでいるし、クイーン翼ナイトのために絶好のc5の地点を拠点として使えるからである。1966年ハバナ・オリンピアードでのフィッシャー対グリゴリッチ戦では黒の手は少し正確さに欠けていた。

11…Ne7

 そして以下のようにまもなく黒が投了した。

12.Rc1 Ng6 13.Bg3 Bd6 14.Na4!

 このナイトはc5の地点を目指している。

14…Bxg3 15.fxg3 Kb8

 黒は 15…b6 でナイトを来させないようにすることができない。そう指すと 16.d5 cxd5 17.Nxb6+ でクイーンが取られる。

16.Nc5 Qd6 17.Qa4!

 白は厳しく攻めたてている。

17…Ka7?

 このポカで終わりが早まった。比較的良い手は白の次の手を防ぐ 17…Bc8 だった。

18.Nxa6! Bxh3

 この手は 19.gxh3 Qxg3+ でキング翼に騒動を起こすことを期待している。18…bxa6 は 19.Rxc6 で、詰みを避ければクイーンを取られるのでだめである。

19.e5 Nxe5

 もうどんな手も望みがない。

20.dxe5 fxe5 21.Nc5+ Kb8 22.gxh3 e4 23.Nxe4 Qe7 24.Rc3

 この手は 25.Ra3 を狙っている。

24…b5 25.Qc2 1-0

 黒は駒を2個損しているので投了することにした。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(231)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図249(再掲)

 白は首尾一貫して …c5 突きを防ぐように指している。しかし Ra1 が閉じ込められているので黒はポーンを犠牲にして主導権を握る機会を得た。正着は 23.Nd3! Nxd3 24.Bxd3 で、そのあと陣形の優位が持続するので白が少し優勢である。

23…c5! 24.dxc5

 24.Bxe4? Qxe4 25.Qxc5 は悪手で、25…Nc2 26.Rac1 Rac8! 27.Qxb5 Nxe3 28.Rxc8 Rxc8 29.fxe3 Qxe3+ 30.Kh1 Rc1 で黒がはっきり優勢になる。

24…Qf6 25.Bxe4

 白は Ra1 を 25.Qd1 または 25.Ne2 で間接的に守ることができた(どちらも 25…Qa1 には 26.Bd4 がある)。しかし本譜の手はもっと直接的で、ポーン得を守りきる目的である。

25…Rxe4

 黒駒の働きの良さはポーン損を十分に補っている。そしてdポーンが前進する可能性は不快な狙いなので白はその狙いをはねつけなければならない。

26.Ne2?!

 圧力をやわらげ陣形を強化するために白はナイトをg3に行かせるのが良い手だと考えた。しかしこの後の進行からわかるようにこの捌きはナイトの位置を悪くさせただけだった。26.Qd2 の方が良かったのは確かだが(26…d4? には 27.Qxb4 と応じる)、我々の考えでは例えば 26…Qb2 で黒が依然として有望である。

26…d4 27.Ng3 Ree8 28.Qd2 Nc6

 28…dxe3? は悪手で、 29.fxe3 Qh4 30.Rf4 で白が駒を取り返し戦力の優位を保つ。

29.Bg5 Qe5 30.Rac1 d3 31.Rfd1 Bg6

 この局面はとりわけ大きな意味を持っている。というのは黒が開放戦法で主要な反撃の目標の多くを達成するとどうなるかを物語っているからである。e5のポーンが姿を消し、d5のポーンが束縛を脱して敵陣深く侵入し、黒の駒が盤の中央を席巻し白の駒よりも活発に働いている。最後に、異色ビショップの存在が中盤では白キングに対する攻撃をより危険なものにし、収局では黒が目的を達するために甘受しなければならない戦力の劣勢の重要性を弱めている。終局に至る段階ではいくつかの残念な悪手があったが(両選手とも時間に追われていた)、このことにより全体的な試合の力動感と戦略の内容の深みが失われるものではない。

32.Be3 Re6 33.Bf4 Qf6 34.Re1 Rae8 35.Rxe6 Rxe6 36.Rb1 h5! 37.h3?!

 白は …h4 を防ぐために 37.Bg5 と指すべきだった。

37…h4 38.Bg5 Qd4 39.Be3 Qd5??

 これは白が致命的な40手目のためにもう何秒かあったら負けをきっしかねない見損じだった。正しい手順は 39…Qe5 40.Nf1 Qd5 で、このあと黒は …Ne5、…Bf5 および …Rg6 のような手でキング翼で圧迫を一層加える時間はいくらでもあった。

40.Nf1??

 これはお返しの悪手だった。40.Ne2 ならd3のポーンが助からないので黒が一巻の終わりだった。例えば 40…Rf6 としても 41.Nf4 Qf5 42.Rd1 である。

40…Be4 41.Bf4

 41.f3 は 41…Bxf3 42.gxf3 Ne5 43.Nh2 Nxf3+ 44.Nxf3 Qxf3 で白に受けがない。

41…Bxg2 0-1

 白は 42.Ne3 Qf3 43.Nxg2 Re2 を読んで投了した。

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(230)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図248(再掲)

 代わりに 14.Nxd4 は 14…Nxd4(ここはe5のポーンが間接的に守られている場合の例で、14…Nxe5? なら 15.f4 で白の勝勢になる)15.cxd4 c5 16.f3 cxd4 17.Qxd4(17.fxe4 は 17…dxe4 で中原の強力なポーン対が駒損の適切な代償になっている)17…Ng3 18.Rf2 となって白が少し優勢である。

 白はc5の地点を押さえつけることによって重要なポイントをかせいだ。黒は白の Be3、f3、Rc1 からc5の地点の占拠とc列の活用という作戦により窒息させられることを避けたければそのポイントを無視するわけにいかない。

14…a5

 Ne4 がc5の地点に利いている限り黒には敵駒の動きを妨害し潜在的な侵入者をよせつけない余裕がある。それは 15.Bxe4 なら 15…dxe4! で黒にクイーンのためにd5の好所、そしてナイトのためにd3の橋頭堡がもたらされるということを利用している。

15.Be3

 15.f4?! は 15…f5 で自分のe4の地点を恒久的に弱めるという効果しかない。そしてc5の弱点の適切な代償にもなる。さらに 15.f3 は 15…a4、15.a4 は 15…Nb4 で何ももたらさない。

15…a4

 15…Nb4?! は 16.Bb1 a4 17.Nd2 a3 18.Qc1! でb4のナイトの使命が損なわれる。

16.Nc1

 他には 16.Nd2 もある。例えば 16…a3 17.Nxe4 axb2 18.Rb1 Bxe4 19.Rxb2 Qd7 20.Bd3(20.Bxe4?! は 20…dxe4 21.Rxb5 Nxd4 となって黒が残りの欠陥を解消してしまう)20…Bxd3 21.Qxd3 Rfb8 22.Rfb1(22.Rxb5?! Rxb5 23.Qxb5 Nxe5 24.Qb7 Qc6)22…b4 となれば、黒は形の欠陥を完全には一掃できていないが、敵の不良ビショップの可能性と比較してナイトが優位に立つ可能性によって弱点が補われると考えることができる。

16…a3

 このaポーン突きの目的は敵のクイーン翼全般、特にb4とc3の地点を弱めることである。すぐに 16…f6 と突くのも面白い。17.f3 fxe5 18.fxe4 Rxf1+ 19.Qxf1 exd4 というように駒を犠牲にすることになるが、黒は十分反撃が期待できるようである。

17.b3

 17.bxa3 は 17…Rxa3 でクイーン翼で圧力をかけられるのでそれを避けた。

17…f6

 黒はc5の地点の支配を争うために 17…Nb4 18.Bb1 c5(18…Nc3? は 19.Qd2! で悪い)と指すこともできたが、本譜の手はキング翼の戦力も働かせるのでより機動力がある。

18.exf6

 18.f3 なら黒は 18…fxe5 とナイトを犠牲にすることもできるし(黒の16手目の解説とちょうど同じである)、もっと簡明な 18…Nc3 19.Qd2 b4 で両者共に有望な手を選ぶこともできる。

18…Qxf6 19.Ne2 Nb4

 たぶんすぐに 19…Qe7 と指す方が正確だった。

20.Bb1 Qe7

 すぐに 20…c5!? は次の手順で永久チェックによる引き分けになるだろう。21.Bxe4(21.dxc5? は悪手で 21…Qxa1 22.Bd4 Nxf2 で黒の勝ちになる)21…Bxe4 22.dxc5 Nc2! 23.Rc1 Bxg2! 24.Kxg2(24.Rxc2 は 24…Bf3 で黒が優勢)24…Qf3+ 25.Kg1 Nxe3 26.fxe3 Qxe3+

 黒はもちろん形の急所(…c5 突きの達成)を解決しなければならないことがまだ残っていることを忘れたわけではないが、本譜の手で勝ちを目指している。17手目で手がけた戦略の結果を利用しながら二つの前線で圧迫を加え、f3 突きを防ぐ目的でe列に圧力をかけている。

21.Qe1!

 21.f3? は 21…Nc3 で駄目だし 21.Nf4? も 21…Nxf2 で駄目で、21.Qc1? も 21…Nxf2! 22.Rxf2 Bxb1 23.Rxf8+ Rxf8 24.Rxb1 Re8 25.Bd2 Nd3 で成立しない。

 本譜の手は敵の勢力を追い払う唯一の手段である。次の狙いは 22.f3 Nf6 23.Bd2! Nd3 24.Bxd3 Bxd3 25.Nf4! Qxe1 26.Rfxe1 Bf5 27.Ne6 で、陣形的に圧倒的に有利になる。だから黒はこれに対抗する手段をとらなければならない。

21…Rfe8 22.Nf4

 もちろん 22.f3? は駄目で 22…Nf6 23.Bd2 Nd3 で黒の勝勢になる。

22…Bf7 23.Qc1?!(図249)

 図249

(この章続く)

2010年12月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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JCAのやっつけ仕事

 「CHESS通信」の「第39回チェスオリンピアード」記事の1625ページと1627ページにそれぞれ次のような文章がある。

 「だ・である」調と「です・ます」調とがほどよく入り混じっている。どこでこんなことを習ったのであろうか。小学生がよくこのような文章を書く。

 コーチのGMストヤノビッチ氏を「Stoyanovich」と書いている(正しくは「Stojanovich」)。前回のオリンピアードからコーチをしてもらっているのになんということだろう。

 もともとの原稿はストヤノビッチ氏が書いているはずだが訳された日本文は大変素朴である。

2010年12月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(229)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図247(再掲)

 この局面は黒が Ne4 の進退について決断を迫られているので重大な岐路である。

 本譜の手は 11…Bf5 だが他の手の成り行きについて簡単に見ていこう。

 (1)11…Nxd2 12.Qxd2(12.Bxd2 は 12…d4 で乱戦になる)12…f6 13.exf6 Rxf6 14.b4 Bb6 15.a4 Rb8 16.Qe2 h6 17.Bf4 Bg4 18.Bg3 定跡ではこの局面は白がやや優勢と考えられている。

 (2)11…Nxf2!?(このディルワース戦法は黒が駒の攻撃的な配置をできるだけ生かそうとする)12.Rxf2 f6 13.exf6 Bxf2+ 14.Kxf2 Qxf6 15.Nf1(15.Kg1 は黒が 15…Rae8 でも 15…g5 でも素晴らしく有望である)15…Ne5 非常に難解な局面だが、黒の駒の活動性が収局での不利の可能性を十分に補っているようである。

 (3)11…f5 12.Nb3 Bb6 13.Nfd4 Nxd4 14.Nxd4(14.cxd4 は 14…f4 15.f3 Ng3! 16.hxg3 fxg3 となって白はキング翼での黒の狙いをしのぐために 17.Qd3 Bf5 18.Qxf5 でクイーンを捨てなければならない-17.Be3? は 17…Qh4 18.Re1 Qh2+ 19.Kf1 Bh3! 20.Qe2 Qh1+ 21.Bg1 Bxg2+ 22.Qxg2 Rxf3+ で黒の勝ちになる-しかし 18…Rxf5 19.Bxf5 Qh4 20.Bh3 Bxd4+ 21.Nxd4 Qxd4+ 22.Kh1 Qxe5 となって、たぶん黒の方が有望である)14…Qd7 15.f3 Nc5 白が優勢である。

11…Bf5

 黒はこの手で Ne4 の支援とb1-h7の斜筋での対抗という二重の目的を達成した。

12…Nb3 Bg6

 かつては 12…Bg4 が主流だったが現在では 13.h3 Bh5 14.g4 Bg6 15.Bxe4 dxe4 16.Nxc5 exf3 17.Bf4 で白が優勢になることが実戦で明らかになったためにほとんど指されなくなった。

 補足すれば前の手と同様にここでも黒は 12…Bxf2+!? 13.Rxf2 Nxf2 14.Kxf2 Bxc2 15.Qxc2 f6 と指すことができる。この局面は実戦例が不足していて、ディルワース戦法と比較すると優劣が定まっていない。

13.Nfd4

 この手は Nxc6 と Bxe4 から Nxc5 の両方の狙いがあるので黒はd4で交換しなければならない。

13…Bxd4

 13…Nxd4 は 14.cxd4 Bb6 15.f3 Ng5 16.Bxg5 Qxg5 17.f4 で明らかに白が優勢である。

14.cxd4(図248)

 図248

(この章続く)

2010年12月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(196)

「Chess」2010年10月号(2/6)

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NH新星対老練

「新星」が「少しだけ若くない」に勝利
ボリス・ゲルファンドがトップの成績
ナカムラがメロディー・アンバーに進出

 8月12日から22日までアムステルダムで開催されたNHチェスチャレンジはたぶん「新星対老練」大会の方がよく知られている。この呼び名は「青年対老年」と単純に考えるべきでない。理由は単純で「老練」チームは実際には老人でないからである。5人編成の最年長選手であるリュボミル・リュボエビッチでさえ60歳の誕生日まで何ヶ月かある。他の選手は年齢の高い順からボリス・ゲルファンド(42歳)、ルーク・ファン・ベリー(38歳)、ペーテル・ハイネ・ニールセン(37歳)、それにピョートル・スビドレル(34歳)だった。スポンサー兼主催者のヨープ・ファン・オーステロムがもっと年齢の高いチームを望んでいたら、ずっとレイティングが下の方から選ばなければならなかっただろう。世界100傑で現在最年長はイングランドのナイジェル・ショートであるが、老年とはほど遠い45歳である。だらか50歳あたりのチームはかなりレイティングが低くなる。

 「新星」については主催者は選択に困らなかった。選抜されたのは20歳以下の世界第5位のファビアノ・カルアナ(18歳)、同第7位のウェズリー・ソー(17歳)、同第8位のアニシュ・ギリ(16歳)、それに同15位のデイビド・ハウエル(20歳)だった。これに比較的ベテランのヒカル・ナカムラ(23歳)が加わった。これで若年チームは2700超の選手が一人入って、同等の選手3人(ゲルファンド、スビドレル、ニールセン)相手に戦うことになった。主催者は世界最高レイティングのマグヌス・カールセンを召集しなかった。たぶん核攻撃のチェス版と考えたか、「新星」とはとても考えられない(彼がもっと高く上がれば視界から完全に消えてしまう恐れがある)からだろう。全体的にはうまくバランスのとれた大会になった。対戦は10回戦のスヘーベニンゲン方式で、それぞれのチームの選手が相手チームの選手と2回ずつ当たる。チームとしての結果は新星チームが2700超の選手が足りないにもかかわらず実力で少し上回り、3回戦が終わったところで早くも4点リードした。老練チームは10回戦のうち3回戦で勝つ健闘を見せて巻き返したが、差を挽回することができず結局24-26で負けた。老練チームの慰めは主将のボリス・ゲルファンドの大活躍で、彼は楽々と圧倒し勝った。イスラエルのスーパー・グランドマスターは40代に入っても棋力を維持していて、高い水準のチェス長寿の世界的選手としていつかコルチノイに取って代わる良い祝儀となるかもしれない。

 これで大会の終わりではなく、「新星」チームの最高得点選手には次のメロディー・アンバー大会への参加権がかかっていた。アニシュ・ギリは最終戦に入るまで若者チームの最高得点を突っ走っていたがニールセンに負けてナカムラに追いつかれブリッツによる決定戦に持ち込まれた。元気一杯の米国選手はオンラインでのブリッツ名人としての評価が揺るぎなく、速さで決着をつける時に世界で最も対戦したくない相手だろう。オランダ選手は当然0-2で負かされた。来年のざん新な快速/目隠し大会でナカムラがどのような成績を残すか興味津々である。悲しいことにNH新星対老練大会はこの第5回で最後となることが発表された。これから見るように面白い試合をたくさん生んできただけに残念である。


ヒカル・ナカムラ - たぶん誰もが快速またはブリッツによる決定戦で世界一当たりたくない選手。来年のメロディー・アンバーで彼が目隠しチェスでどれくらいの強さを発揮するかが見ものである。

2010年NHチェス大会 オランダ

称号 選手 レイテ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 結果

GM ボリス・ゲルファンド イスラエル 2739 * * ½ ½ 1 ½ ½ 1 ½ ½ 1 1 7.0/10

GM アニシュ・ギリ オランダ 2672 ½ ½ * * ½ ½ 1 0 1 ½ ½ 1 6.0/10

GM ヒカル・ナカムラ 米国 2729 0 ½ * * 0 ½ 1 ½ ½ 1 1 1 6.0/10

GM ピョートル・スビドレル ロシア 2734 ½ ½ 1 ½ * * 0 ½ ½ ½ ½ 1 5.5/10

GM ファビアノ・カルアナ イタリア 2697 ½ 0 1 ½ * * ½ 1 ½ 0 ½ ½ 5.0/10

GM ウェズリー・ソー フィリピン 2674 ½ ½ ½ ½ * * ½ ½ ½ ½ 0 ½ 4.5/10

GM デイビド・ハウエル イングランド 2616 0 0 ½ 0 * * 0 1 1 ½ 1 ½ 4.5/10

GM ペーテル・ハイネ・ニールセン デンマーク 2700 0 1 0 ½ ½ 0 ½ ½ 1 0 * * 4.0/10

GM ルーク・ファン・ベリー オランダ 2677 0 ½ ½ 0 ½ 1 ½ ½ 0 ½ * * 4.0/10

GM リュボミル・リュボエビッチ セルビア 2572 ½ 0 0 0 ½ ½ 1 ½ 0 ½ * * 3.5/10

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(228)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

第11局
カルポフ対コルチノイ
メラーノ(世界選手権番勝負第6局)、1981年
開放戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 ここで取り上げている中原はほとんどが開放戦法から生じるが、他の戦型から生じることもある。そのような場合以前に述べた戦略の考え方はやはり同じであるが、異なったポーンの形および/または異なった駒の展開に合わせなければならないのはもちろんである。

 古典戦法を例にとろう。3…Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 Ne4(ここでの開放中原のでき方は開放戦法でのでき方とは大分異なることに注意されたい)7.O-O d5 8.Nxd4(この手はc6への圧力を増しているが、何はともあれ中原のナイトを主眼の f3 突きでどけさせる用意をしている。8.exd6e.p. という手もあるがここでの主題とは関係ない。また、8.cxd4 と取り返す手は薦められない。理由は黒が …a6 から …b5 突きでc5の地点を弱めていず、8…Be7 9.Bxc6+ bxc6 となっても白がc5の地点を支配できないからである)8…O-O 9.f3 Ng5 10.Be3 迅速に黒のナイトをe4の地点から追い払って白が好調である。

 開放中原は 3…Nf6 の戦型の一部の戦法でも現れることがある。例えば 4.O-O Nxe4(この戦型は開放戦法の 9…Nc5 からの手順と同じく-前局の黒の9手目の解説を参照-ベルリン戦法として知られている)5.d4 Be7(5…a6 は 6.Ba4 なら開放戦法に戻るし、6.Bxc6 dxc6 7.Qe2 Bf5 8.Rd1 Be7 9.dxe5 ならフィッシャー中原になる。5…exd4?! でポーン得にしがみつこうとするのは不適切で、6.Re1 d5 7.Qxd4 となって白の陣形の方がはるかに良い。以下は例えば 7…Qd7 8.Bxc6 Qxc6 9.c4 である)6.dxe5 d5 7.c4(開放中原では黒が …a6 から …b5 突きを省略している時には Ne4 の安定がすぐに揺らぐのでこの手がより厳しくなる)7…a6(7…dxc4 は 8.Nd4 Bd7 9.Nxc6 bxc6 10.Bxc4 で白が優勢である)8.Ba4 dxc4 9.Nd4 Nc5 10.Bxc6+ bxc6 11.Be3 これで白がはっきり優勢である。

4.Ba4 Nf6 5.O-O

 5.d4 の戦型からは普通でない形の開放中原ができることがある。白はよくある進行にしたくない時にそれを用いることができる。5…exd4 のあとは 6.O-O Be7(この局面は 5.O-O Be7 6.d4 exd4 という手順から生じる方が多い)7.e5 Ne4 8.Nxd4 O-O 9.Nf5 d5 と進む。開放戦法の戦型と比較すると明らかに違うにもかかわらず、見たことのある中原の典型的な主題のいくつかがここでも認められる。例えば 10.Bxc6(10.Nxe7+ は 10…Nxe7 11.c3 c6 12.Nd2 Nc5 13.Bc2 Bf5 となってほぼ互角の形勢である)10…bxc6 11.Nxe7+ Qxe7 12.Re1 Re8 13.f3 Nd6 14.b3 f6 となればどちらも指せる分かれである。

5…Nxe4

 開放戦法以外の戦型での開放中原の概説を終えるにあたり、閉鎖型ルイロペスの主要戦法のいくつかでも開放中原が時おり現れることに触れておかなければいけない。5…Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 のあといくつかの例をあげる。

 (1)…Na5 のチゴーリン戦法 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Bb7 12.Nbd2 cxd4 13.cxd4 Rc8 14.Nf1 d5 15.dxe5 Nxe4 ここでは形の違いは白にとって有利である。というのはcポーンがないのでd5のポーンが孤立ポーンになっているしd4の地点が永久に白の手中に落ちているからである。以下は例えば 16.N1d2 Nc4 17.Nxc4 Rxc4 18.Bb3 Rc8 19.Nd4 で白がはっきり優勢である。

 (2)ブレイェル戦法 9…Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 d5!?(中原の争点を根本的に解決しようという手)14.Nxe5 Nxe5(14…Nxe4? は 15.Nxf7! Kxf7 16.Rxe4! dxe4 17.Bb3+ で白が攻め勝ちになる)15.dxe5 Nxe4 ここでは駒の配置の違いが白に有利に作用しているようである。白は 16.f3 Ng5 17.Ng3 ですぐに中原のナイトを追い払い主導権を握ることができる。

6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5 Be6 9.c3 Bc5

 黒はキング翼ビショップを攻撃的に展開させて、Ne4 を攻撃面で利用しようとしている。それはf列の開通、または …f5 突きによってさらに強力になるかもしれない。本譜の手は 9…Nc5 や 9…Be7 よりも積極性のある手である。この2手については前局を参照されたい。

10.Nbd2

 白は Ne4 を追い出すためにそれに対して駒を集中させ始めた。10.Qd3 も時おり指されている。

10…O-O 11.Bc2(図247)

 図247

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(227)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図246(再掲)

 白は15手目から始めた多様な戦略と相手の16手目の悪手とから利得を得た。黒は両翼で追い詰められて反撃に移れる可能性がない。

23…Nb8

 23…dxc3 は 24.Bxc6 Rxd1 25.Rxd1 から Ra8 でクイーンを取り返して白の駒得になる。

24.Rxe6!

 黒の最も重要な守り駒の消去は黒をあの世に送る手始めである。

24…fxe6 25.Nxe7 Bxe4 26.Rxe4 dxc3

 ナイトを取ると Bg5 で白が交換損を取り戻しd4のポーンを取ることができる。

27.Ng6+ Kg8 28.Rd4 Rxd4 29.Qxd4 Rh3

 29…Qxg6 は 30.Qd8+ Kh7 31.Ng5+ で黒がクイーンを捨てなければならなくなる。

30.Ng5?!

 白は形勢に自信を持ちすぎて試合を台無しにするところだった。代わりに 30.Ngh4!(30.Kg2? は 30…Rxf3 31.Kxf3 Qxg6 32.Qd8+-32.Qxc3 は実戦と同様の収局になる-32…Kh7 33.Qxb8 Qd3+ 34.Be3 Qd5+ で黒も希望が持てる)30…Nc6 31.Qxc3 Qd8 32.Qd2 Qxd2 33.Bxd2 Nxe5 34.Kg2 Nxf3 35.Nxf3 Rh7 36.Nd4 と指すべきで、勝ちの収局になっていた。

30…Rh6 31.Nf4 Nc6?

 黒は 31…Qd7! と指せばまだ相手を苦しめることができた。例えば 32.Nfxe6(32.Qxc3?? Qd1+ 33.Kg2 Qh1+ 34.Kg3 Qh4+)32…Qxd4 33.Nxd4 Ra6 で、白が勝つはずでもまだ紛らわしいところがある。しかし本譜は白が盤面の支配を取り戻した。

32.Qxc3 Qd8 33.Nf3 Nxb4

 33…Qd1+ は 34.Kg2 Qh1+ 35.Kg3 g5(35…Nxb4 は 36.Qxc7 で白の狙いが受からない)36.Qxc6 gxf4+ 37.Kxf4 でだめである。

34.Bd2 Qa8 35.Kg2 Nc6 36.g5 b4 37.Qc5 Rh7 38.Nxe6 g6 39.Qd5 Kh8 40.Ned4

 40.Nfd4? は 40…Qa1 で無防備のキングへの反撃を狙われるので良くない。

40…Qc8

 ここで 40…Qa1 としても 41.Qxc6 で黒は少しチェックをかけることができるだけである。

41.e6

 41.Qxc6?? はもちろん 41…Qh3+ で頓死である。

41…Nxd4 42.Nxd4 c5 43.Bf4 Ra7

 43…cxd4 なら 44.Be5+ Kg8 45.e7+ Rf7 46.Qd8+ でお仕舞いである。

44.Nc6 1-0

 黒はもがきをこれ以上延ばす手段がない。例えば 44…Rb7 なら 45.e7、44…Ra6 なら 45.Be5+ Kh7 46.Qd7+ である。

(この章続く)

2010年12月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(101)

「Chess」2010年10月号(1/1)

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勝つ手を見つけろ

(16)中村尚広-G・レーン
2010年マレーシア・オープン
黒の手番 難易度 5段階中易しい方から2番目

解答 1…Rxg2! 2.bxc6 2.Kxg2 なら 2…Rg6+ 3.Kf1 Qxf3 4.Qc2 Rg3 で黒の勝ち 2…Qxf3 3.cxb7 3.Qe2 なら 3…Qxh3 で黒の勝ち 3…Rh2 0-1

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(この号終わり)

2010年12月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

ルイロペスの完全理解(226)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図245(再掲)

 黒は急に苦境に陥った。17…O-O? は 18.Bxc6 で負けてしまうし、17…g6 18.Nh6 でも 17…d3 18.Re3 Bxf3(18…Nxe5 は 19.Nxe5 Bxd1 20.Nxd7 Kxd7 21.Rxd3+ Ke8 22.Nxg7+ Nxg7 23.Bh6 で白が駒を取り返しポーン得になる)19.Bxf3 でも白がはっきり優勢になる。

17…Bg6

 他に適当な手がない。言うまでもないが 17…dxc3? も 18.Qxd7+ Kxd7 19.Bxc6+ Kxc6 20.Nxe7+ でだめである。

18.g4

 白が締め付けを強化する方を選んだのはまったく当然である。18.Bxc6?! でポーン得に走り締め付けを緩めるのは 18…Qxc6 19.Nxe7 Kxe7 20.cxd4 Bh5 で黒駒の働きがぐんと良くなり適切な代償を与えてしまう。

18…h5

 必死の反撃策だが何の足しにもならない。

19.h3 Kf8

 黒はキャッスリングする考えをあきらめ …Qe8 の退却を用意してなんとか苦境をしのごうとした。しかしもう手遅れである。

20.a4 hxg4 21.hxg4 Qe8 22.axb5 axb5

 22…dxc3? は 23.Bxc6 Rxd1 24.Bxe8 Rxe1+ 25.Nxe1 Kxe8 26.bxa6 で白が簡単に勝つ。

23.Ra6(図246)。

 図246

(この章続く)

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