2010年11月の記事一覧

ルイロペスの完全理解(225)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例(続き)

 図244(再掲)

 この局面は開放ルイロペスの戦型における最初の重要な岐路である。基本的に白には3通りの方針がある。

 (1)9.Qe2 のあとキング翼ルークをd1に回して早く c2-c4 と突くことを目指す。

 (2)d4の地点の支配と白枡ビショップとを失う犠牲を払っても中央のナイトを 9.Nbd2 ですぐにどかせる。

 (3)d4の地点の掌握を強め、より手数のかかる 9.c3 で白枡ビショップを引く用意をする。

 第3の方針から生じる状況は本章と次章で検討する。ここで最初の二つの方針に見られる戦型のいくつかを紹介する。他には 9.Be3 と 9.a4 も可能であることを付け加えておく。

 (1)9.Qe2 Be7 10.Rd1 O-O(10…Nc5 は 11.c4-d列でのルーク対クイーンの対峙を利用しようとして 11.Bxd5 Bxd5 12.Nc3 と指すのは 12…Bc4 13.Rxd8+ Rxd8 と応じられ実戦で黒のクイーンの代償が十分であることが示されている-11…d4 12.cxb5 d3 13.Qf1 Nxb3 14.axb3 Nb4 15.Bd2 Nc2 16.Rxa6 Rxa6 17.bxa6 Bxb3 となり、定跡では白が正しく指せばわずかな優勢を維持できると考えられている)11.c4 bxc4 12.Bxc4 ここから黒は 12…Qd7 でも 12…Bc5 でも、通常はfポーンを典型的に動員する反撃の可能性を強めて均衡のとれた展望を持ち続けることに成功している。

 (2)9.Nbd2 Nc5(黒はe4に対する攻撃を無視できない。例えば 9…Be7 10.Nxe4 dxe4 11.Bxe6 fxe6 12.Ng5 となれば白が優勢である)10.c3 d4 11.Bxe6(Nc6 の浮き駒状態に付け込もうとする意表の 11.Ng5!? は面白い手である。以下は例えば 11…Qxg5 12.Qf3 Bd7 13.Bxf7+ Ke7 14.Bd5 Nxe5 15.Qe2 d3 16.Qe1 c6 17.f4 Qh6 18.Bf3! で白が駒を取り返し優勢である)11…Nxe6 12.cxd4 Ncxd4 これは詳細に研究されている局面で、実戦例を2局紹介する。

 (2a)13.Ne4 Be7 14.Be3 Nf5 15.Qc2 O-O 16.Rad1 Nxe3 17.fxe3 Qc8 18.h3!? Rd8 19.Nh2

 (2b)13.a4 Be7 14.Nxd4 Qxd4 15.axb5 Qxe5 16.bxa6 O-O 17.Qa4

 どちらも白がわずかに優勢である。

9.c3 Be7

 9…Nc5 はベルリン防御になる。黒はこの中央のナイトがいずれこの拠点を放棄させられることを認識しているので、今のうちにこのナイトを用いて Bb3 をc2に下がらせて自分の白枡ビショップをd5のポーンの守りから解放し主眼のg4の地点に移動できるようにする。本局でも黒はこの陣形を目指しているが手順は異なっている。重要で攻撃的な 9…Bc5 から生じる展開については第11局を参照されたい。

10.Nbd2

 ここでは様々な手が試みられたが本譜の戦型は最近最もよく見かける。他の手に対しては黒はそれぞれの状況に応じて自分の戦略を立てる用意をしなければならない。例えば

 (1)10.Bc2 O-O 11.Qe2 Nc5 12.Nd4 Qd7 13.Nd2(13.f4?! Nxd4 14.cxd4 Ne4 は黒が優勢)13…f6(13…Bg4 14.f3 Bh5 で受けに回るのは積極性で劣るが指せる手で、…Ne6 と …Bg6 とでキング翼の防御の責務に応じる用意である。これに対して 13…Nxd4 14.cxd4 Nb7 は 15.Qh5! g6 16.Qh6 で黒が守勢になる)14.exf6 Bxf6 15.Nxe6 Nxe6 これで黒が双ビショップを与えた代償に展開で優位に立っている。

 (2)10.Be3 Nc5 11.Bc2 Bg4 12.Nbd2 Ne6 13.Qb1 Bh5 14.a4 b4 15.Bf5 Bg6 16.Rd1 O-O 展望は大体均衡がとれている。

10…Nc5

 この手はベルリン防御に移行する。代わりに黒は単純に 10…O-O と指すこともできる。このあと白には二つの主要な選択肢があるが、それらの例を紹介する。

 (1)11.Bc2 f5(もちろん 11…Nc5 または 11…Bf5 と指すこともできる)12.Nb3(白は展開が遅れているので 12.exf6e.p. は不適切である。例えば 12…Nxf6 13.Nb3 Bg4 14.Qd3 Ne4 15.Nbd4 Nxd4 16.Nxd4 Bd6 となれば相手の狙いに対処する手段を見つけなければならないのは白の方である)12…Qd7 13.Nfd4 Nxd4 14.Nxd4(14.cxd4 は 14…a5! で白はc5の地点を固定しておくためには 15.f3 a4 16.fxe4 axb3 17.Bxb3 fxe4 18.Be3 と指すしかなく、この局面は陣形のわずかな優位を生かすのが極めて難しい)14…c5 15.Nxe6 Qxe6 16.f3 Ng5 17.a4 白がb5のポーンに圧力をかければ(Qe2)黒のクイーン翼の密集ポーンが動けなくなるので、白が少し優勢を保っている。

 (2)11.Qe2 Nc5(いつもの 11…Bf5 も考えられる。11…Nxd2 も可能だがb1-h7の斜筋をかなり早く明け渡してしまう。定跡ではこのあと 12.Qxd2 Na5 13.Bc2 Nc4 14.Qd3 g6 15.Bh6 で白が有望である)12.Nd4(白は …d4 突きによる攻勢を決して過小評価してはならない。例えば 12.Bc2?! d4! 13.cxd4 Nxd4 14.Nxd4 Qxd4 で黒が優勢になる)12…Nxb3 13.Nxc6 Nxc1 14.Raxc1 Qd7 15.Nxe7+ Qxe7 16.f4 これで白が少し優勢である。

11.Bc2 Bg4

 これでe5のポーンを取れるようにし同時に古典的な防御法(…Ne6、…Bh5-g6)に道を開いた。

12.Re1

 この局面は他の手順からも生じる。最も多いのは 9…Nc5 10.Bc2 Bg4 11.Re1 Be7 12.Nbd2 である。

12…Qd7

 他には 12…O-O と 12…Bh5 も指されている。これらは本局と似たような展開になる。12…d4 は独自の戦略構想を追求する。以下は例えば 13.h3 Bh5 14.Nb3 d3(これは白がくさびを打ち込まれるのを許容する数少ない例の一つである)15.Bb1 Nxb3 16.axb3 Bg6 17.Be3 O-O 18.Bd4 となって白がd3ポーンを包囲し展望で少し優っている。

13.Nf1

 現在のところこの手は 13.Nb3 Ne6 14.h3 Bh5 と 13.h3 Bh5 14.Nf1 Rd8 15.Ng3 Bg6 よりも正確だと考えられている。後の方の手順は本当のことを言えば黒が陣形を改善して理想の防御態勢を築くことができる。

13…Rd8

 黒は Ne3 を予期してd5のポーンを守り同時に将来 …d4 と突く選択肢を残した。

14.Ne3 Bh5

 この白の手に暗黙のうちに含まれたポーンの犠牲を受け入れるのは危険すぎる。14…Bxf3?! 15.Qxf3 Nxe5 16.Qg3 Ng6 17.Nf5 となって驚くなかれ白が優勢である。しかし次のもっと簡単な手順は考慮に値した。14…O-O 15.Nxg4 Qxg4 16.Be3(16.Bxh7+? は 16…Kxh7 17.Ng5+ Qxg5 18.Bxg5 Bxg5 で黒がはっきり優勢である)16…Ne6 もっともこのあと 17.a4 で白陣のほうが少し優っているようである。

15.b4!

 一見したところではこの手は黒の防御策を助けるだけのように思われる。しかし黒は …Ne6 と引くことが必要で黒のクイーンの動きの邪魔になり、白のキング翼攻撃の作戦に手を貸す形になる。さらに本譜の手はクイーン翼での黒の反撃の要である将来の …c5 突きを妨げ、b5ポーンを固定して主眼の a4 突きから axb5 で弱体化させることができる。要するに 15.b4 は広範囲な戦略目的の手で、白は盤の両翼で主導権を得るために戦うことができる。

15…Ne6

 明らかに 15…Ne4? は 16.Nxd5 でだめである。

16.Nf5

 もっと強く 16.g4 で前手の意志を継承することもできただろう。以下は例えば 16…Bg6 17.Nf5 O-O 18.a4 という具合である。本譜の手はキング翼でのいかなる策動も許さない手だが、落とし穴が含まれていて黒はそれにはまった。

16…d4?

 この主眼の応手は時期が悪くて、白がその欠陥に戦術的につけ込むことができた。黒は辛抱して、相手が意図をもっと明らかにするまで 16…O-O または 17…Bg6 と指すべきだった。

17.Be4!(図245)。

 図245

(この章続く)

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チェス布局の指し方[40]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)(続き)

開放防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4(図55)

 図55(白番)

 白は最後の手(5.O-O)でeポーンの守りを放棄したように見える。この節では黒がこのポーンを取ったらどうなるかを調べる。

6.d4

 白はもちろん 6.Re1 または 6.Qe2 ですぐにポーンを取り返すことができる。しかしどちらの場合も黒は 6…Nc5 と応じて白のキング翼ビショップをナイトと交換させることができ、互角の形勢になる。6.d4 の方が白にとって良い作戦である。即ち局面を開放的にして展開の優位を生かすわけである。黒は結局白のeポーンを取るのにかけた手が無駄になる。

6…b5

 …d5 と突くとクイーン翼ナイトが釘付けになるのでその可能性をなくした。

7.Bb3 d5 8.dxe5

 これで戦力が互角に戻った。黒の陣形はあまり悪いようには見えないが、これから分かるようにまだ対処しなければならない困難がある。

8…Be6

 2駒で当たりにされているdポーンを守った。

9.Qe2

 ルークのためにd1の地点を空け、d列に圧力をかけられるようにした。

9…Be7

 この段階では黒にいくつもの手がある。しかしキング翼ビショップを展開するこの単純な手は通常は黒の最も堅実な手と考えられている。

10.Rd1 O-O

 非常に複雑な局面になるが 10…Nc5 11.Bxd5 Bxd5 12.Nc3 Bc4! という指し方もある。

11.c4!

 dポーンに対する釘付けを利用して局面をさらに開放的にした。次に白から cxd5 で駒得する狙いがある。

11…bxc4 12.Bxc4 Qd7

 この手に代わる改良手順は 12…Bc5 13.Be3 Bxe3 14.Qxe3 Qb8 15.Bb3 Na5 16.Nbd2 Qa7 17.Nd4 Nxd2 18.Qxd2 Qb6 19.Bc2 c5 20.Nf5 Bxf5 21.Bxf5 Rad8 22.Re1 Nc6 で、どちらも指せる。1979年モントリオールでのカバレク対タリ戦ではここで合意の引き分けになった。

13.Nc3

 13.Bxa6 は 13…Nc5! で黒の願ってもない態勢になる。

13…Nxc3 14.bxc3 f6

 白のeポーンが消えれば黒のキング翼ビショップが対角斜筋で力を発揮するようになると考えられる。

15.exf6 Bxf6(図56)

 図56(白番)

 この局面はかつて両者に同等のチャンスがあると考えられていた。しかしその評価はたぶん正しくない。白には 16.Bg5 という強手がある。以下は例えば 16…Bxc3(16…Na5? は 17.Qxe6+ Qxe6 18.Bxd5 でポーン損になる)17.Rac1 Bf6 18.Bb3!(Ba4 でナイトを取る狙い)18…Nd8 19.Bxf6 Rxf6 20.Qc2 で、白が優勢である。あるいは 16…Kh8(Qxe6+ のような狙いの防ぎ)17.Bxf6 Rxf6 18.Ng5(狙いは Nxe6 で、dポーンがどうしても落ちる)18…Bg8 19.Bxa6 で、白は少なくとも1ポーン得になる(19…h6 なら 20.Nf3 Rxa6!? 21.Qxa6 Nd4 22.Ne5 で白が勝つ)。

 旧来の手は・・・

16.Ng5

 やはり白が有望である。これは1970年ジーゲンでのシュミット対クリスティンソン戦の手で、以下のように進んだ。

16…Bxg5 17.Bxg5 h6 18.Be3 Qd6

 これは …Ne5 の準備である。

19.Bb3 Ne5 20.Rd4!

 21.Bf4 を狙っている。

20…c5 21.Rf4!

 Bxc5 から Qxe5 の可能性を開いた。

21…Kh8

 ビショップを引くためにg8の地点を空けた。

22.Rd1 Nd7 23.Qf3!

 黒のdポーンにさらに圧力をかけた。本局は様々な釘付けとその狙いで面白い効果が見ものになっている。

23…Nf6 24.c4! Rac8

 24…d4? は 25.Rxf6 のあと 25…Rxf6 26.Qxa8+ または 25…gxf6 26.Bxh6 で白が勝つ。

25.cxd5 Bg8

 こう受けるしかない。

26.Bc4!

 黒のパスcポーンによる反撃は何もさせない。

26…Nd7 27.Qg3 Ne5 28.Bb3!

 28.Bxa6 Qxa6 29.Rxf8 Rxf8 30.Qxe5 Qxa2 31.Bxc5 Qc2! 32.Qd4 Rf4! 33.Qd2 Qxd2 34.Rxd2 Rc4 という変化は黒がdポーンを取ったあと引き分けにしかならない[訳注 35.Ba3 という手があるようです]。

28…c4 29.Rxf8 Rxf8 30.Bc2 Re8 31.Bd4!

 これでナイトがまた詰み狙いの釘付けをかけられた。だから黒は 32.f4 を防がなければならない。

31…Bh7 32.Bxh7 Kxh7 33.Bc3 1-0

 黒は最後の釘付けの 34.Re1 に対して受けがないので投了した。

(この章続く)

2010年11月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(224)

第6章 開放型中原(続き)

6.3 実戦例

第10局
ヒャルタルソン対コルチノイ
セントジョン(番勝負第1局)、1988年
開放戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4

 「閉鎖」防御では布局の初期の段階における黒の主要な関心事がe5のポーンを守り中原の防御を維持することに対し、開放防御では黒の態度は根本的に異なる。黒はe4のポーンを取ることにより中原ポーンの交換に応じ、いくらか構造的な弱点の犠牲を払っても攻撃的な展開を成し遂げる。

6.d4 b5

 6…exd4 によりポーン得にしがみつこうとするのは次のように定跡から棚上げにされている。7.Re1 d5 8.Nxd4(Nxc6 と f3 の両狙い)8…Bd6 9.Nxc6 Bxh2+ 10.Kh1 Qh4 11.Rxe4+ dxe4 12.Qd8+ Qxd8 13.Nxd8+ Kxd8 14.Kxh2 これで白に少し有利な収局になる。

7.Bb3 d5

 この時点で同じくポーン得にしがみつこうとするのは次のようにさらに信頼性が劣る。7…exd4 8.Re1 d5 9.Nc3 Be6(9…dxc3 なら 10.Bxd5 Bb7 11.Bxe4! Be7-11…Qxd1? 12. Bxc6+-12.Qe2 で明らかに白が優勢である)10.Nxe4 dxe4 11.Rxe4 Be7 12.Bxe6 fxe6 13.Nxd4 O-O 14.Qg4 白がさらに有利な陣形になる。

8.dxe5 Be6(図244)。

 図244

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(223)

第6章 開放型中原(続き)

6.2 戦術の狙い所(続き)

Ne4 を利用した戦術

 黒については序盤の早い段階では黒に有利となる戦術の要素はほとんどない。あるとすればその戦術は大体はe4に陣取った強力なナイトの活用に基づいている。この点については既にこのナイトをf2の地点で犠牲にする可能性について述べている(図224と225を参照)。ある程度の頻度で現れる別の場面を見てみよう(図242)。

 図242

 この図は実戦で多くの形で現れる主題の要点を示している。その複雑さは他の兵力の関わり具合と駒の特定の配置とに依存している。

 この図の場合白は f2-f3 突きでナイトを中央の位置から追い出したがっている。しかし黒はf4のポーンの存在と敵の駒の不運な配置とを利用して …Ng3+! と応じることができる。なぜなら hxg3 fxg3 のあと(図243)

 図243

 白は …Qh4+ から …Qh2# の狙いが受からないからである。

 状況によってはこのナイトはe4の地点に置いたままにして-fxe4 dxe4 のあと-中央に強力な並列ポーンを作り出すために犠牲にすることができる。これは十分以上の代償になることもある。

(この章続く)

2010年11月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(222)

第6章 開放型中原(続き)

6.2 戦術の狙い所(続き)

f6の地点でのナイト捨て

 この主題を実行に移すためには白はまずその前提に成功しなければならない。即ちナイトをe4の地点に置かなければならない。黒が …d5-d4 と突いた時はより簡単にこの条件を満たすことができる。しかし時には黒のdポーンの一時的な釘付けを利用することもできる(図241)。

 図241

 この局面で白はナイトを犠牲にする用意ができている。Nf6+! gxf6、Qg4+ Kh8、Qf5 これで黒は詰まされるかクイーンを取らせるかを選ばなければならない。

(この章続く)

2010年11月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(195)

「Chess」2010年10月号(1/6)

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マグヌス・カールセン
世界を征服

 マグヌス・カールセンのファッションモデルとしての経歴が本当に始動した。仕事に向かう途中のキングズクロス駅の巨大な壁面ポスターから彼がこちらを見つめるのはなんとも私を落ち着かなくさせる。ニューヨークのバスにはG-Starの衣服のための宣伝ポスターが目立っている。ニューヨーク市はマグヌスが「RAWチェスチャレンジ」で世界を相手にする舞台になった。これはこれまでの同様の催しと同じオンラインでの競技で、インターネットサーバーに極度の負荷をかけた。それでも大成功を収めた。

 試合はなかなかの好局で、TWIC((www.chess.co.uk/twic)でビデオを見ることをお勧めする。「世界」の助言者はフランスの元世界ジュニア選手権者マクシム・バシエ=ラグラーブ、米国最強者のヒカル・ナカムラ、それに史上最強の女性選手ユディット・ポルガーだった。ユディットは「世界」のジレンマを次のように言い表した。「キッチンに料理人が多すぎた。」


世界チームの助言者(左から)ヒカル・ナカムラ、ユディット・ポルガー、マクシム・バシエ=ラグラーブ


キッチンの3人の料理人 世界チームの3人は個別に一般人に推奨手を示した


勝利者に賞品授与 意気揚々のマグヌスがRAW世界チャレンジトロフィーを高く掲げる

マグヌス・カールセン対世界
RAW世界チェスチャレンジ、ニューヨーク
キング翼インディアン防御/ウールマン戦法

1.d4 Nf6 2.c4 g6

 この手は投票で 2…e6 をわずかに抑えた。

3.Nf3 Bg7 4.g3 O-O 5.Bg2 d6 6.Nc3 Nc6 7.O-O

7…e5

 これがウールマン戦法である。7…a6 ならパンノ戦法になる。

8.d5 Ne7 9.e4 c6

 クイーン翼を開放的にするのは白を利する。私なら …Nd7 か …Ne8 と指す。

10.a4 Bg4 11.a5

11…cxd5?

 クイーン翼を開けてはいけない!c4の地点が白の手中に落ちる。試合後カールセンとナカムラはこれが大きな間違いで …Qd7 が良かったと言っていた。

12.cxd5 Qd7 13.Be3 Rfc8

 公式サイトの解説が伝わらなくなりモーリス・アシュリーが一人語りをしていた。しかし長くは続かなかった。このようなことは1997年のディープブルー以来大きなチェスインターネット試合ではいつも起こっていた。ディープブルーの時はウェブ室にいたのでよく覚えている。

14.Qa4 Ne8 15.Nd2 Qd8 16.Qb4 Nc7

17.Nc4

 どういうわけかマグヌスは決定的な 17.f3! Bd7 18.Qxd6 を指さなかった。このクイーンは 18…Nf5 19.exf5 Bf8 20.Qxe5 のように捕まらない。

17…Na6 18.Qxb7 Rxc4 19.Qxa6 Rb4 20.f3 Bc8

21.Qe2 f5 22.Qd2 Ba6 23.Rfc1 Qb8 24.Na4 Rb3 25.Rc3 Rb4

26.Rca3!

 狙いは Nb6! からの交換得である。

26…f4 27.Bf2

 27.gxf4 exf4 28.Bxf4 は黒にいくらか反撃の機会を与えるかもしれない。

27…Bh6

28.Nb6!?

 ここは面白い瞬間で、カスパロフがマグヌスと考えが一致しなかった唯一の場面だった。ガリーは 28.g4 で全面的に押さえ込む方が良いと考えていて「それで試合終了だった」。

28…fxg3 29.Qxb4 gxf2+ 30.Kxf2

30…Bc8?

 この手では 30…Bf4 がマグヌスの推奨した手で、白キングに対していくらか狙いが持てる。30…axb6 は 31.axb6 Bb7 32.Rxa8 Bxa8 33.Bh3 で白が勝つ。

31.Rb3 axb6 32.Qxb6 Qa7 33.a6 Kf7 34.Qxa7 Rxa7 35.Rb6

 収局になれば白はパスポーンの威力で勝てる。

35…Ke8 36.Rxd6 Bf8 37.Rb6 Nxd5 38.Rb8! Bc5+ 39.Kg3 Ne7 40.Bh3 Kd8 41.Bxc8 Nxc8 42.Rc1

 カスパロフは「黒はもう投了しろ」と言ったが、それは試合が何手まで続くかモーリス・アシュリーと賭けをしていたためだった。

42…Rc7 43.Rxc5! Rxc5 44.a7 1-0

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(221)

第6章 開放型中原(続き)

6.2 戦術の狙い所(続き)

Nc6 に対する戦術的策略

 Nc6 は浮き駒になることがあり …d5-d4 突きのあと白枡の対角斜筋が素通しの状態になっている時は特にそうである。これは既に図234で見てきている。しかし白はこのナイトの守られていない状態をa4-e8の斜筋を開けることにより利用することもできる(図239)。

 図239

 例えばここでは白は c4! と突き …dxc4、Nxc4 bxc4、Ba4 のあと(図240)。

 図240

 どう進んでも駒を取り返すことができ(例えば …Qd7、Qxd7+ Kxd7、Rd1+)、ポーンの形も優位を保ったままである。

(この章続く)

2010年11月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(220)

第6章 開放型中原(続き)

6.2 戦術の狙い所(続き)

白のeポーンの間接的守り

 白は通常は自然な守り駒の Nf3 を動かしてe5ポーンを一見守られていない状態にすることができることがよくある。この主題はいろいろな形で現れる。その一つは既に図204で現れた。非常によく似ているがはるかに単純な例は次の図である(図237)。

 図237

 ここでは白は落ち着き払って Nd4 と指すことができる。なぜなら黒が …Nxe5? とeポーンを取ると f3 とポーンを突かれてどちらかのナイトが落ちるからである。

 もう少し複雑な例は黒のe6ビショップが取られるためにeポーンが取られない時に見られる(図238)。

 図238

 ここでも白は Nd4 と指すことができる。というのは黒が …Nxe5? と取ると f4 と突かれ、ナイトを助ければさらに f5 と突かれてビショップが取られるからである。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(100)

「Schach Magazin 64」2010年9月号(4/4)

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ロシアとスロベニアが金メダル(続き)

 女子のジュニア選手権者の試合も載せないわけにはいかない。

シチリア防御 [B22]
A・ムジチュク(スロベニア、2527)
E・パブリドゥ(ギリシャ、2182)

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.c3 d5 4.exd5 Qxd5 5.d4 Nf6

6.Na3 Qd8 7.Nc2 cxd4 8.Ncxd4 Be7 9.Bd3 h6 10.O-O O-O

11.Qe2 a6 12.Bf4 Bd7 13.Rad1 Qc8 14.Ne5 Ba4 15.b3 Be8

 黒は …Ba4-e8 の捌きで白陣に弱点(c3)を作らせた。あいにく白はそれを全然気にする必要がなかった。

16.Ng4!

 16…Qxc3 に対しては 17.Be5 Nbd7(17…Nxg4 なら 18.Qxg4 Bg5 19.f4 Nd7 20.Bxg7 Kxg7 21.fxg5 h5 22.Qe4! Rh8 23.g6)

で白の攻撃が決まる)18.Nf5 Qb4 19.Nxe7+ Qxe7 20.Bd6

で白の交換得になる(20…Qxd6 は 21.Bh7+ でクイーンが取られる)。

16…Nxg4 17.Qxg4 f5 18.Qe2 Rf6 19.Nxf5! Bf8 20.Nd6 Bxd6 21.Bxd6

21…Nc6

 21…Qxc3 には 22.Be5 があるのでc3のポーンは相変わらずタブーである。

22.Rfe1 Bf7 23.Be5

 白は1ポーン得で陣形もはっきり優っている。だからムジチュクほどの棋力の選手でなくても勝てる。

23…Nxe5 24.Qxe5 Qc6 25.Be4 Qb6 26.Qd4 Qc7 27.c4 Rf8

28.Rd2 Qa5 29.Bxb7 Bh5 30.f3 Qg5 31.Re5 Qg6 32.Be4 Rxf3 33.Bxf3 Bxf3

34.Re1 Qg5 35.Rf2 Rf4 36.Qd2 Qg4 37.h3 Qg3 38.Re3 1-0

******************************

(この号終わり)

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ルイロペスの完全理解(219)

第6章 開放型中原(続き)

6.2 戦術の狙い所

 開放型中原では黒の小駒が素早く活動的な位置につく。それらには大きな機動力の可能性があるが少し散漫な感じがすることもよくある。

 布局の段階でよく現れる戦術の企てに目を向けると、なんといっても白の方が黒駒の比較的露出した状態につけ込むことができる。ここでは戦略の着眼点の解説で既に示唆されたものに関連付けながら最もよく現れる戦術の要素を見ていくことにする。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(218)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

黒のdポーンに対する圧力と c2-c4 突き

 クイーン翼の戦いは白が早くからdポーンに圧力をかけることにしたとき特に重要になる。この方針は既に見たように(図207を参照)布局の早い段階ではこのポーンがかなりむき出しになっていることに基づいている。白は早々とキング翼ルークでd列を占め(Qe2 としてから Rd1) c2-c4 突きを用意することによりこの目標を追求することができる(図235)。

 図235

 しかしこの方針を実行に移すためには白はもちろん Ne4 をどかせる行為をやめなければならない。この場合黒は c2-c4 突きを落ち着いて待ち …bxc4、Bxc4 の交換を受け入れることができる。そしてこの間に Ne4 の攻撃的な態勢を支援するために他の戦力を白のキング翼に向けるよう努める(図236)。

 図236

 圧力は必ずしもdポーンにかけられないし、および/または c2-c4 突きは図とちょうど同じようには必ずしもできないので、読者は他のいくつかのよく起こる可能性にも留意して欲しい。

 (1)白は c2-c4 突きの前または後でクイーン翼ナイトをc3に展開してdポーンに対する圧力を強めることがあるかもしれない。

 (2)黒はd列に大駒を …Qd7 と …Rad8 で重ねることにより、そして時にはクイーン翼ナイトをどけて(例えば …Ne7)…c7-c6 と突けるようにすることにより、d5のポーンを守ることを選択するかもしれない。

 (3)白はd列での都合のよいルークとクイーンの対峙を利用して、恐らくクイーン翼ナイトをd2を経由してe4の地点に置くかもしれない。

 (4)そのようなことが起こるのを邪魔するために黒は一般にはクイーンをd列からどかせるのを間に合わせなければならない。そのために必要ならば …Qc8 や …Qb8 のような手を指す。

 (5)事態を楽にする捌きの …Ne4-c5xb3 は(図235で例えば …Nc5、c4 Nxb3、axb3 を想定すればよい)、aポーンの弱さとc4の地点の強化により一般に白に有利なポーンの形になる。

 (6)時には黒は c4 突きに …d4 と突く可能性を考えるかもしれない。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[39]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)(続き)

閉鎖防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5(図53)

 図53(黒番)

 この陣形では白の3手目の中で最も理にかなった手である。白は素早くキング翼を展開し、黒のeポーンを守っているナイトを攻撃してこのポーンに間接的に圧力をかけた。

3…a6!

 モーフィーの時代からこれが黒の最善の応手であることが知られている。この手が正当な理由は黒がdポーンを突くことになれば(eポーンを守りクイーン翼ビショップの展開のためにいずれそうしなければならない)、黒のクイーン翼ナイトが釘付けの形になるからである。3…a6 はこの釘付けの効果を前もって緩和させる。

4.Ba4

 交換戦法(4.Bxc6)は別の節で詳しく説明する。しかし 4.Bxc6 で白がポーン得しないことは指摘しておく。なぜなら 4…dxc6 5.Nxe5 のあと 5…Qd4 で黒が楽にポーンを取り返すからである。

4…Nf6

 これは逆に白のeポーンを標的にして駒を展開するそつのない手である。黒のこれからの作戦は …b5 と突いて白のビショップを追い払いクイーン翼で陣形を広げるつもりである。しかしすぐに 4…b5 と突くのは誤りである。なぜなら白から例えばすぐに a4 突きでクイーン翼のポーンに攻撃されると展開の立ち遅れが明らかだからである。

5.O-O

 白はキングを安全地帯に移し中央にポーンを突けるようにした。eポーンを捨てるのは開放防御の節で見られるように見かけだけにすぎない。

5…Be7

 5…Nxe4 から始まる開放防御は別の節で解説する。黒は 5…Be7 でもっと人気のある閉鎖防御を選択した。この戦法では黒はe5のポーンを維持することに努め、白の中原が強大化しすぎないようにする。この目標を念頭におけば黒のキング翼ビショップは(例えば)c5よりもe7にいる方がよい。というのはc5では白が適当な準備のあと d4 と突くとこのビショップが当たりになるからである。

6.Re1

 白の作戦は有利な状況で d4 と突くことである。できることならば白は完全なポーン中原(e4とd4にポーンが並んだ形)を作りたい。だから d4 と突くための自然な手順は Re1 と寄せ(eポーンの守り)c3 と突く(d4 突きに …exd4 と取られた時にポーンで取り返すため)ことである。

6…b5

 黒はキング翼を展開したので今度は白のキング翼ビショップを追い払う番である。黒がこれを遅らせて最初に 6…d6 と突くと、白は 7.c3 と突いて 7…b5 に 8.Bc2 と応じることができ手を節約できる。

7.Bb3 d6

 黒はクイーン翼ビショップの筋を開けeポーンを支えた。代わりに 7…O-O 8.c3 d5 は人気のあるマーシャル攻撃で、一流グランドマスターたちによって深く研究されている。

8.c3 O-O

 8…Bg4 は正確さで劣る。なぜなら白には釘付けをはずし自分の陣形の優位を増す効果的な手段があるからである。即ち 9.d3 のあと Nbd2-f1-e3 と指す手順である。このナイトはe3に到達すると黒の弱点のd5とf5の地点を攻撃することになるので好位置になる。白がdポーンを既にd4まで突いている場合はこの捌きは無理である。というのはe3のナイトが、黒に狙われているeポーンを守っている白のキング翼ルークの利きをさえぎってしまうからである。だから黒の最良の方針は白が d4 と指すまでクイーン翼ビショップの展開を遅らせることである。

9.h3

 読者は上述の解説から気づいただろうが、この手の代わりに 9.d4 と突くと 9…Bg4! と指されて白のキング翼ナイトに強力な釘付けをかけられる。本譜の手はこの手を防ぐ目的である。しかし 9.h3 は本質的に展開と関係のない先受けの手なので、黒はクイーン翼で行動を開始する余裕を与えられたことになる。

9…Na5

 黒の希望は …c5 と突いてクイーン翼で勢力を拡張することである。だから黒はまずcポーンの進む道をふさいでいるナイトを動かさなければならない。a5の地点を選んだのは白の大切なキング翼ビショップとの交換を狙える位置だからである。しかし 9…Nb8(…Nbd7 の意図)、9…Bb7、9…h6 および 9…Nd7 も同様に良い手である。

10.Bc2

 もちろん白は双ビショップの優位をむざむざ手放したくはない。一見すると白は Bc2 でまたビショップに手を費やしたように見える。しかしこの場合はそうではない。というのは白のビショップが当たりから逃れれば、黒のナイトは盤の端の働きのない位置にいることになるからである。黒は早急に1手かけてこのナイトを盤の中央に戻さなければならない。

10…c5 11.d4

 長いこと待ち望んだ中原へのポーン突きが実現した。これで白は黒のeポーンを脅かしている。

11…Qc7(図54)

 図54(白番)

 黒はeポーンを守り、ルークがあとで来れるようにd8の地点を空けた。

 この局面はマスターたちの実戦に何千局も現われた。そしてこの戦型を白番でも黒番でも指すグランドマスターたちもいる。ここからの中盤戦は優れた大局観や巧妙な戦術の戦いとなることがよくある。黒はまだ完全な互角は達成していないが、序盤の形勢の差を広げられてもいない。白は中原ですこし優勢だが黒がポーンをe5に維持する限り白がこの方面で突破口を開くのは難しい。白の展望は明らかにキング翼で有望で、注意深く指せば強力な攻撃を仕掛けることができるだろう。白はこの攻撃を支援するためにクイーン翼ナイトをd2からf1を経てe3かg3に展開させるべきである。

 対照的に黒はクイーン翼で有望である。しかし性急な攻撃はしないように注意しなければならない。なぜならそれは恐らく自分の突き進めたポーンを弱めることにしかならないからである(a4への反撃はルイロペスにおける白の主眼点の一つである)。

 1959年マルデルプラタでのフィッシャー対ショクロン戦は以下のように続いた。

12.Nbd2 Bd7 13.Nf1 Rfe8

 黒は好機を待ちながら陣形を強化している。そして白の作戦が分かるまで積極的に動かないようにしている。

14.Ne3 g6

 黒は白のナイトがf5の地点から侵入してくるのを防いだ。また局面の進行によってはビショップをf8からh6またはg7に展開し直す用意もしている。

15.dxe5

 白は黒陣の「空所」にあたるd5の地点に対する圧力を増すために中原の争点を解消した。

15…dxe5 16.Nh2

 これは重要な防御用の駒である黒のキング翼ナイトと交換するための準備である。

16…Rad8 17.Qf3

 17…Bxh3 でクイーン当たりとなる黒の攻撃をかわした。

17…Be6

 17…h5 は 18.Nd5! Nxd5 19.exd5 で黒のキング翼がだいぶ弱体化する。

18.Nhg4 Nxg4 19.hxg4

 白はh列を開け後でこの列を攻撃に用いることに期待した。

19…Qc6 20.g5!?

 ナイトのためにg4の地点を空けた。

20…Nc4

 黒はナイトを中央に近い所に戻した。もっと手ごわい手は 20…Bxg5 だが 21.Nd5 Bxc1(21…Bxd5? は 22.Bxg5 で黒が戦力損する)22.Nf6+ で乱戦になり白が優勢かもしれない。

21.Ng4 Bxg4

 Nf6+ は許せないのでこの一手である。

22.Qxg4 Nb6

 23.a4 を防いだ。

23.g3

 キングを動かしてルークをh列に回す準備である。

23…c4!

 黒はクイーン翼ナイトをキング翼の守りに回したいのだが、まずこの手でg8-a2の斜筋をふさがなければならない。すぐに 23…Nd7? と指すのは 24.a4 b4 25.cxb4 cxb4 26.Bb3 で白のキング翼ビショップの位置が絶好である。

24.Kg2 Nd7 25.Rh1 Nf8 26.b4

 攻撃の鉾先をクイーン翼に向けた。

26…Qe6

 黒はクイーン交換を期待している。

27.Qe2 a5 28.bxa5 Qa6 29.Be3 Qxa5 30.a4 Ra8

 実戦の手よりも 30…Qxc3 31.axb5 の方が黒にとって良いかもしれない。

31.axb5 Qxb5 32.Rhb1 Qc6 33.Rb6!

 黒のクイーンが追い回されて白がa列を制圧する。

33…Qc7 34.Rba6 Rxa6 35.Rxa6 Rc8

 白に狙いの 36.Ra7 を指されると黒のクイーンはビショップとcポーンを両方守ることができない。

36.Qg4

 狙いは 37.Ra7 のあと 38.Rxe7 から 39.Qxc8 である。

36…Ne6 37.Ba4 Rb8 38.Rc6 Qd8?

 これは悪手だった。38…Qd7 なら勝負はまだ分からなかった。

39.Rxe6! Qc8

 39…fxe6 なら 40.Qxe6+ Kf8 41.Qxe5 で白が勝つ。

40.Bd7! 1-0

 40…Qxd7 と取ると 41.Rxg6+ でクイーンを取られるので黒は投了した。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(217)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

…d5-d4 突き

 …d5-d4 突きでは事情が異なってくる。このポーン突きは …c5 突きに続いて指されるかもしれないし単独で指されるかもしれない。黒は好条件下で …d5-d4 と突ければ効果的に素早く自分の兵力を連係させることができる立場になる。Nc6 による支援行動はd列に大駒を重ねることを伴うことがある(図230)。

 図230

 付け加えれば黒はこの目的のためにキング翼ビショップをc5に展開して利用することがあるかもしれない。ここの例では分かり易さのために早期の中央進攻の良否を一緒にまとめて示してある。

 黒には局面を開放的にするもっともな理由がある。それはe4に黒ナイトがいることによって展開の遅れている白よりも通常は黒の展開の方が優っているからである。このことは図230から …d4、cxd4 Nxd4 と進めば明らかになる(図231)。

 図231

 黒の駒は白の駒よりも攻撃的な配置になっている。しかしさらに …d4-d3 と進ませるのを白が許すのはずっとまれである(図232)。

 図232

 なぜならこのポーンによって白軍の連係がすぐに乱されることになるからである。しかし白がこの困難な時期を何の被害もなく乗り越えることができれば、d3のポーンは白軍の格好の長期的な攻撃目標になるかもしれないことも指摘しておく。

 しかし …d5-d4 突きにもやはり欠点があり、白はそれにつけ込んで局面を白の有利に変えることができる。

 黒はまずe4の地点の支配を失う。図230から始まるこの要因は …d4、Ne4 Ne6、Qd3 という進行で特に明らかである(図233)。

 図233

 クイーン翼ナイトの中央配置によって、キング翼における白の見通しがすぐにより具体的になっていることが容易に分かる(例えば Nf6+ の狙いを考えただけでも分かる)。二つ目に、…d5-d4 突きによってa8-h1の斜筋が開き、白がこのことから利益を得ることができるかもしれないことは考えられないことではない。特にこの斜筋上に潜在的な標的がある時はそうである。再び図230から始まる例では、この主題は …d4、Ne4 Nxe4、Bxe4 によって説明される(図234)。

 図234

 黒は Bxc6 から cxd4 の狙いを受けることができない。時にはクイーンも通常はf3に配置されている時にこの弱体化した対角斜筋の利用に寄与することがある。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(216)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

c5とd4の地点の支配をめぐる戦い

 本章の初めで述べたようにクイーン翼の戦いは …c5 および/または …d4 突きを目指す/防ぐ作戦をめぐって行なわれる。黒はこのポーン突きでクイーン翼の多数派ポーンを活動させることができる。ポーンがb5とd5に進むとc5の地点が弱点になりc7のポーンが攻撃に弱くなる。だから …c5 と突いて捌くことが黒の戦略となる。

 白がこのポーン突きを防ぐことができればd4の地点を自分の駒の絶好の拠点として用いて、クイーン翼における相手の活動を麻痺させることができるだけでなく、キング翼における自分の活動をやり易くさせることができる(例えばd4のナイトはe6の地点を見張るだけでなく必要ならばf5に跳んで活躍する)。白はこの目的のためにクイーン翼ビショップ、ナイト、そして時にはb4ポーンも用いるのが普通である(図227)。

 図227

 cポーンもこの目的のために役立つことがある。即ち黒がd4の地点で単純化を図った結果白がそこを占拠しc5の地点がまさにのど輪になってしまう時である(図228)。

 図228

 このような態勢の場合陣形の観点からいえばcポーンで取り返す方が他の場合よりも望ましい。なぜならその方がほとんど絶対的にクイーン翼の黒の多数派ポーンを無効にするし白に収局で勝つ可能性を保証するからである。

 対照的に黒が …c5 と突くことができればc5とd4の地点は自動的に黒の支配下に入る。この点については黒がe6に回すことのできたせき止めのナイトの支援機能のことを既に述べた(図210を参照)。しかし他の戦力も戦いに加わらなければならないことは明らかである(図229)。

 図229

 Ne4 とキング翼ビショップは …c7-c5 突きを支援するのに適切な位置にいることがすぐに分かるが、このような支援ができないか不十分な時は、黒はためらわずにクイーン翼ナイトを戦闘に投入し、もし必要ならば …Nc6-d8-b7 という手の込んだ捌きまで行なう(もちろんナイトをe6に行かせられない場合の話である)。

(この章続く)

2010年11月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(215)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

…f7-f6 の進攻とf列の圧力

 黒は Ne4 を排除しようという敵の試みを、通常はf2の地点に対する典型的な圧力に関連した意外なf列の開通で出し抜くことがある(図224)。

 図224

 このような状況では黒はキング翼ビショップの攻撃的な配置を利用して、単刀直入に …Nxd2、Qxd2 f6、exf6 Rxf6 またはもっと複雑な …Nxf2、Rxf2 f6、exf6 Bxf2+、Kxf2 Qxf6 と指すことがある(図225)。

 図225

 これは激しい戦いになる。白はキング翼の圧力がさらに強まることに対処しなければならず(例えば …Ne5 または …Bg4)、しかも駒を交換しても収局が有利になる保証はない。クイーン翼における黒の多数派ポーンは非常に有力な戦力になることがある。

 f列での圧力は白枡ビショップの攻撃的な活動と関連することもある。この場合攻撃目標は主として Nf3 になる(図226)。

 図226

 この図なら例えば …f6、exf6 Qxf6 のあと …Bg4 または …Bh3 の狙いは軽視できない。また、Ne4 を除去することは圧力をやわらげる十分な手段とはほとんど考えられない。

(この章続く)

2010年11月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(194)

「Chess Life」2010年8月号(5/5)

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米国チェス選手権戦(続き)

 今回の選手権戦ではいくつかのこれまで休眠中の定跡も復興した。ベノニは在庫から飛ぶように捌けた。シュリーマン防御もあったし、ナカムラはオニシュク戦でウィーンギャンビットを指した。その試合では10手目で彼のキングがd1にクイーンがe1にいた。遅れてやって来た観戦者は中継のデジタル盤が誤動作かとけげんに思ったかもしれない。

 「こんな定跡があるのかどうかは知らない」とナカムラは語った。「バンクーバー[冬季オリンピック]の試合を見ていて思いついた。・・・初心者はこの試合を見ない方が良いと思う。グランドマスターが言うことに全部背いている。」

 オニシュクはナカムラ戦のための研究はGMワシリー・イワンチュク戦のための研究と似ていると言っていた。彼は10の異なる定跡を研究し「それらのどれかになると予想した」。ナカムラとシュールマンは選手権戦のスイス式の部門でも対戦した。その試合の中盤戦ではクイーンが3個になり、なんと1個のクイーンのシュールマンの方が攻撃側だった。

 10回戦が終わったあと賞金総額1万ドルのブリッツ大会が多数のGMの気を引いた。強豪が集まったのでいく人かのGMは最後まで戦っても勝ち越すことができなかった。優勝をさらったのはナカムラだった。9戦して8½点をあげ2千ドルを獲得し、本大会に優勝できなかった埋め合わせに役立った。

セントルイス

 第7回戦の後の休日にナカムラとセントルイス在住で仲間のGMベン・ファインゴールドは監視員の椅子の上に登ってクラブの外の人間チェスを指揮した。チェスクラブの後援者のレックス・シンクフィールドは白キングの衣装を着てナカムラの指示に従い、彼の軍勢が勝利した。もっともチェスに通じた見物人は指し手が過去に指された試合と似ているという疑いを抱いた。

 ナカムラは最近高級住宅街になってきた下町の近くのアパートに引っ越した。セントルイスの市議会議長のルーイス・リードは「ワシントン通りにチェスのグランドマスターが住み着くなんて思ってもみなかった」と語った。ナカムラは「このあたりで先月の大部分を過ごした」と語った。「すごく気に入った。」

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(この号終わり)

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ルイロペスの完全理解(214)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

Ne4 の支援

 黒がナイトの位置を支援することを決めたとしてその方法には大きく分けて二通りある。一つはクイーン翼ビショップを …Bf5 で再配置することで、もう一つは …f7-f5 と突くことである。

 前の方法の場合白がこのナイトをどかそうとすると、a7-g1とh7-b1の斜筋上の黒ビショップの働きによって少なくとも一時的に邪魔されるかもしれない(図219)。

 図219

 例えばこの図のような配置ならf2の地点が狙われているために白は Re1 と指せない。また、Ne4 に対する圧力を Qe2? によって継続することもできない。なぜなら黒が Bc2 の浮いている状態を利用して …Nxc3、bxc3 Bxc2 という簡単な戦術でポーン得することができるからである。これはもし白が Ne4 を追い出そうとするならばもっと手の込んだ手段に頼らなければならないということである。例えば Nb3 の後 Nfd4 から f3 と突くかまたは …Bg6、Nxc5 Nxc5 と交換を図るなどである(図220)。

 図220

 この場合黒は双ビショップではなくなったが防御の主要な目的(h7-b1の斜筋上での対抗と …Ne6 によるせき止め)をもう少しで達成するところまできている。

 対照的に黒が …f5 突きで Ne4 を支えることができる時には白に二つの可能性がある(図221)。

 図221

 例えばこのような局面では白は …f5 の後 exf6 Nxf6 と取ることができる(図222)。

 図222

 この場合白は駒の配置が良くてキング翼で主導権を握れると考えている。または f2-f3 突きで Ne4 を追い出そうとすることもできる。図221に当てはめれば …f5、Nb3 Bb6、Nfd4 となる(図223)。

 図223

 しかしこの場合キング翼での戦いは非常に激化するかもしれないことに注意が必要である。というのは黒は-状況が有利なときに-キング翼でのポーンによる大進攻を企むことができるからである。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(213)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

キング翼での黒の主眼の攻撃

 これまでは Ne4 をどかせた後の展開を見てきた。しかし白がこのナイトに対して必然的に努力を傾けようとするのか、あるいはたとえその場合でも唯一の目標なのかは絶対確かだとは言い切れない。このような場合本章の初めで述べたように黒自身がe4のナイトの強力な拠点を利用してキング翼で攻撃をかける構想を抱いているかもしれない。このような状況ではc5のキング翼ビショップとg4のクイーン翼ビショップは理想的な配置になり、キング翼ルークとクイーンは …f7-f6 突きでf列が開通したあと戦いに関与することになるかもしれない(図218)。

 図218

 この図はキング翼における黒の反撃の可能性の要点を示している。f2および/またはf3に対するビショップの攻撃的な配置は状況によってf列の開通または中央の拠点の支持と組み合わされるかもしれない。

 キング翼における黒の一般的な攻撃目標の概要を完全にするために、読者は前述の(「Nf3 の釘付けと白のeポーンに対する圧力」を参照)eポーンに対する黒の圧力の可能性にも注意するのがよい。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(99)

「Schach Magazin 64」2010年9月号(3/4)

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ロシアとスロベニアが金メダル(続き)

 アンドレイキンは圧倒的に優勢のまま押し切って勝った。しかしほんのわずかの差で銀メダルに甘んじたサナン・シュギロフが3歳年下であることを考慮に入れれば、仲間のロシア選手たちがシュギロフの方が才能があると言っていることに納得するだろう。彼の棋風はアンドレイキンとまったく反対で非常に派手である。

ルイロペス [C78]
S・シュギロフ(ロシア、2610)
A・ドゥロルム(フランス、2455)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7

7.c3 Nxe4 8.d4 Na5 9.Bc2 exd4 10.b4 Nc4 11.Bxe4 Bxe4 12.Re1 d5 13.Qxd4

 ここでは長い間 13.Nxd4 が指されてきた(どちらにせよ危険を伴う)。シュギロフは最新の手を選んだ。

13…Bd6?

 2002年に創造性豊かなスウェーデンのGMヨニー・へクトルが 13…Be7 14.Qxg7 Kd7 と指して皆を驚かせた。黒キングはクイーン翼に逃れ、…Rg8 で素通し列を利用して白キングを攻撃した。この変化に対する最終的な結論はまだ出ていない。しかし改良しようとした実戦の手はすぐに明らかになるように何も改良になっていなかった。

14.Qxg7 Kd7 15.Rxe4! dxe4 16.Qg4+

16…Kc6

 ここで違いが分かる。ビショップがe7にいれば黒は 16…Ke8 と指せた。なぜなら 17.Qxe4 には 17…Qd1+ があるからである。しかし本局では 17.Qxe4+ がチェックになる。だから黒キングはクイーン翼に行くことにした。

17.Qxe4+ Kb6 18.Na3 Nxa3

19.Be3+!

 19.Bxa3 は 19…Qe8 で黒に何の問題もない。しかしシュギロフにはこの決め手があった。

19…c5 20.Rd1

 狙いは Rxd6+ から bxc5+ である。

20…Rc8 21.bxc5+

21…Bxc5

 21…Rxc5 は 22.Bxc5+ Kxc5 23.Ne5 で Qc6 と Qe3 の両方の詰みの狙いがあり黒の負けになる。

22.Rxd8 Rhxd8 23.g3

 駒割が回復して白の優勢が明らかになった。

23…Bxe3 24.Qxe3+ Rc5 24.Nd4 Nc4 25.Qh6+ Rd6 26.Qxh7 Rd7 27.Qh6+ Rd6 28.Qh7

29…Ne5

 また 29…Rd7 と指せば白は実戦のように Qh8 と指すだろう。

30.Qh8 Nc6 31.Qf8 Rd7 32.Nxc6

32…Kxc6?

 32…Rxc6 の方がまだましだがそれでも 33.Qe8 Rdd6 34.Qe3+ から h4 で白が大優勢である。

33.Qc8+ Rc7 34.Qxa6+ 1-0

 黒はやる気を消って投了した。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(212)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3 の釘付けに対する戦いとb1-h7の斜筋の争奪

 状況が許せば白は駒の動きの回復を単にクイーンを移動し-通常はd3かb1に-h7に対する主眼の狙いを利用するだけで達成することができる(図214)。

 図214

 黒から …Bxf3 によってポーンの形を崩されることをd2のクイーン翼ナイトで防いでいる時には Qb1 によって釘付けをはずすことができる。白はd2のクイーン翼ナイトを使って、h3 Bh5 のあと Nf1-g3 の捌きによって釘付けをはずすこともできる(図215)。

 図215

 両図で示されるどちらの解決策も h3 Bh5、g4 Bg6 によるもっと徹底的な直接策よりも労力が少ない(図216)。

 図216

 このような状況では白は Bxg6 の交換から何も得られそうにない。なぜなら …fxg6! でf列が開通すると通常は中盤戦で黒に有利な要因が生まれることになるからである。h2-h3 と g2-g4 のポーン突きで白のキャッスリングした囲いが弱体化した時はなおさらそうである。実際キャッスリングした囲いが弱体化すれば黒がf列で攻勢をかける可能性の前提条件が要らなくなる。

 図216の局面に戻ると、白が h および g ポーン突きで行なう作戦を追求するならば通常はf5の地点に注意を集中することになる。白はこの地点をナイト(Nd4-f5)またはビショップで占拠することができる(図217)。

 図217

 f5の地点を占拠すれば-この捌きは図212で示されるようなe6のせき止め駒の弱体化を目指す手と一致するかもしれない-hポーン突きに基づいたキング翼での大攻勢を仕掛けることにもつながる。もちろんそのような作戦には危険もつきまとう。というのは白のキャッスリングした囲いがさらに弱体化するようなことになれば黒がそれにつけ込んできた時に非常に危険な状態になるからである。だからこの種の戦略は黒が状況を逆手に取る可能性があるかよく吟味してから行なわなければならない。

(この章続く)

2010年11月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(211)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3 の釘付けと白のeポーンに対する圧力

 前述のように Nf3 の釘付けは黒にとって白枡ビショップを重要なh7-b1の斜筋に移す作戦を実行する上で必要な途中の段階となることがよくある。この移送は最終的な目標であるが、g4のビショップはe5へのポーンの前進にずっと目を光らせて Nf3 を動けなくし(従ってf2のポーンも)、e5のポーンが孤立気味であることを際立たせるのに助けとなることもあるので、白にとって厄介な存在である(図213)。

 図213

 例えばこの局面では白が Ne4 をどかせb1-h7の斜筋を占有できている。それにもかかわらず Nf3 に対する釘付けは迷惑である。なぜならこの釘付けは黒がeポーンにかけている圧力を強めているからで、…Nd7 によってさらに増すこともできる。一般に白はeポーンを適切に守る手段に不足しているわけではない。しかしこの図のような状況は白の駒の連係を乱すかもしれないことは明らかである。だから Nf3 が釘付けにされている時は白は駒の動きの自由を取り戻すための方策を講じるのが理にかなっている。

(この章続く)

2010年11月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[38]

eポーン布局

第5章 ルイロペス(スペイン布局)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5(図52)

 図52(黒番)

 この手は白の3手目の中で最強の手である。世界チャンピオンのガリー・カスパロフ、元世界チャンピオンのボビー・フィッシャーそれにナイジェル・ショートが得意にしていた。白はキング翼を迅速に展開し、2手目で始めた黒のeポーンに対する攻撃を続けた。今度はその守り駒を突き崩そうとしている。この基本的な構想は論理的で簡明でありかつ意外にも対処が難しい。通常白は少なくとも中盤まで続くわずかな主導権を得る。

 ルイロペスは最古の定跡の一つである。ルイ・ロペス自身はスペインの聖職者で、1561年に「チェスの本」という定跡書を書いている。この本は布局定跡を研究する最初の科学的な試みと通常みなされている。それ以来ほとんどすべての著名な選手がこの定跡を極めることに手を染めてきた。

 ルイロペスには多種多様の戦法があり、それぞれ特色のある内容を持っている。白が中原を閉鎖してキング翼攻撃のために駒を捌き穏やかに大局観で指し、黒がクイーン翼で活動するものもある。激しくて難解な戦法もある。

 布局の初期の戦いは通常は両者のeポーンの強さと弱さをめぐって行なわれる。白は早くから黒のeポーンに圧力をかけ d4 突きを目指す。黒は白が d4 と突いてきた時に対処できるように駒の展開に注意を注ぐ。ルイロペスの題材のいくつかは初心者が理解するにはやや難しいかもしれない。しかし基本的な特色を理解すればこの最も信頼できる布局をさらに学ぶことが容易になる。

 この章ではルイロペス木の4本の枝を見ることにする。閉鎖戦法は黒がe5のeポーンを中原の拠点として維持しようと努める。開放戦法は黒が5手目で中原を開放する(白がそうする機会を与えてくれる時)。交換戦法は白が双ビショップを放棄するのと引き換えにポーンの形で優位に立つ。シュリーマン防御は黒の華々しい逆襲ギャンビットである。

(この章続く)

2010年11月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(210)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

せき止めのナイトの支援機能とそれをどけようとする戦い

 e6の地点をナイトが占めることはe5のポーンの前進の可能性をなくしキング翼の防御に寄与するだけでなく、クイーン翼の多数派ポーンの動員にも役立つ(図210)。

 図210

 既に述べたように実際 …c7-c5 突きおよび/または …d5-d4 突きはクイーン翼における黒の反撃の要となっている。そしてそのうちのどちらか一つでも指されなければ黒が動的に均衡のとれた局面を達成できることはおぼつかない。黒がe6の地点で効果的なせき止めを行なうことがすべて利益になるのと同様に、白がこのせき止めの駒を取り除こうとするまたは弱体化させようとすることは理にかなっている。

 せき止めの駒をe6の地点から取り除こうとする最も直接的な手段はfポーンを突き進めることで、このためには Nf3 をどけることが前提となる(図211)。

 図211

 しかしこのポーン突きはいつもその局面で必要とされることに合っているとは限らない。なぜなら黒はe4の地点を完全に支配することができ、この地点は追い出されたせき止めの駒の絶好の獲物となり得るからである。従ってこの種の戦略を用いることは諸刃の剣の武器となるので、このような作戦は具体的な状況に照らして可否を十分に検討すべきである。

 白はd7にいることが多いクイーンに対してナイトを釘付けにすることによってこのせき止めの駒を動きにくくさせることがある(図212)。

 図212

 h3-c8斜筋上の Bf5 による釘付けは Nc5、Nd4 または Ng5 のような手を生んで黒を困らせることがある。そして黒が …g7-g6 と突いても白は単にビショップをh3に引いて釘付けを維持するかもしれない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(209)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

白のeポーンのせき止めとb1-h7の斜筋の重要性

 キング翼における白の一般的な主眼の攻撃についての簡単な検討から黒が防御で主にしなければならないことが明らかになる。それはe5ポーンを厳重にせき止めることとb1-h7の斜筋に沿った白の捌きに対して効果的に反撃することである。

 eポーンのせき止めに関連して、せき止めに最も適した駒は通常はナイトであることが知られている。b3に退いた「スペイン」ビショップからの直接攻撃からd5のポーンを守るために黒が早い段階でクイーン翼ビショップをe6に置く必要がないならば、この原則はここでも当てはまる(図207)。

 図207

 上述した二つの防御の責務を果たすために、理想的で最も迅速な黒駒の配置は …Bf5 から …Nc5-e6 である。しかしこの手順はd5のポーンが当たりになっているため妨げられている。

 白がナイトを中央からどけることに成功したあと(例えば Nbd2、c3 から Bc2)黒がナイトの引き場所を作るためにビショップを移動させなければならない状況が生じる。しかし単純にビショップをf5に動かすことはできない。なぜならこの間に白がb1-h7の斜筋を押さえているからである。従って黒は …Bg4 でナイトの引き場所を作る(図208)。

 図208

 この時点で黒はe5ポーンのせき止めを …Ne6 で終了しb1-h7の斜筋を …Bh5-g6 の捌きによって対抗することによって防御態勢の構築を完了する。

 付け加えれば黒はクイーン翼ナイトを用いてe5ポーンをせき止めることもできるし、図207に示されるようにクイーン翼ビショップでせき止めを続けることさえできる。さらには、素早く …Be6-f5 と移動してb1-h7の斜筋上の急襲の防止に Ne4 を用いることもできる(図209)。

 図209

(この章続く)

2010年11月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(208)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

キング翼における白の主眼の攻撃

 いったん Ne4 を追い出せば白の駒がキング翼で攻撃をかけることができるようになる。これはe5にポーンがいることによる。このポーンはキング翼における黒駒の活動範囲を制限し、キャッスリングした囲いの自然な守りを妨げる。特にb1-h7の斜筋が開くことにより白が古典的なバッテリーを組んで敵キングに深刻な脅威をもたらすことができる(図205)。

 図205

 この目的は明らかに黒に …g7-g6 と突かせて形を乱させることである。これによりキング翼の黒枡が大きく弱体化する。

 必要ならば次図に見られるように Qb1 と指してb1-h7の斜筋で圧力をかけることもある。

 白駒の機動力はeポーンの突き捨てで強さが増し、敵のキャッスリングした囲いの防御を破壊することもある(図206)。

 図206

 この例はナイトがe4から追い出された時に生じる効果をまとめたものである。eポーンが動けることと白駒の機動力の可能性をフルに活用して白は次のように詰み狙いの攻撃をかける。Bh6 Re8、e6! Nxe6、Bxg6! hxg6(…fxg6 なら Rxe6 で Rxg6+ と Rxc6 の狙いが受からない)Rxe6 fxe6、Qxg6+ これで次の手で詰みになる。

 しかし白がこのような有利な状況を達成することは非常に難しい。それでも黒は e5-e6 突きの可能性に常に注意していなければならない。このポーン突きは、通常は Nf3 が攻勢に出る道を開くためにe5の地点を空けることだけが目的の時があるからである。

(この章続く)

2010年11月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(193)

「Chess Life」2010年8月号(4/5)

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米国チェス選手権戦(続き)

 豪快な棋風で知られるクリスチャンセン(4½点)はナカムラ(5点)との白番に際して「これならやれる」と言った。彼は自分の棋風に忠実に有望な攻撃態勢を整えた。彼の大会序盤からの自ら公言した呪文は「分からない時は攻撃せよ、時間を無駄にするな」だった。勝たなければならなかったが勝負所で間違えた。しかしGMアシュリーは実況中継で「(スイス式の)最終戦で勝たなければならない状況になってはだめだ」と言っていた。

豪快
GMラリー・クリスチャンセン(2657)
GMヒカル・ナカムラ(2812)
米国選手権戦第7回戦、2010年

 33…Bd1

34.Ng3

 34.Rxd5! Bxe2(34…exd5 35.Rxg6+ Kh7 36.Qf6 ははるかに悪い)35.Rd7 Qc4-黒は白が Rbb7 と侵入する前に盤上からクイーンを消すようにしなければならない。この位置はc5より優る-Be2 がクイーンに紐をつけているので Rd8+ による悪だくみは成立しない。36.Qe5!!(36.Qd6 には 36…Qf4 で Rb8 の狙いを消す。以下 37.Rd8+ Rxd8 38.Qxd8+ Kh7 で大丈夫である)36…Qf4 37.Qxe2

これで白がキング翼での圧力で中盤戦で勝てるかcポーンを使って収局で勝てるはずである。

34…Qxc3 35.Rxd5 Qxd4 36.Rxd4 Bc2 37.Rd7 Rf6 38.Nh5 Rf7

39.Rxf7 Kxf7 40.Rb7+ Kf8 41.Nf6 Bg6 42.Nd7+ Kg8 43.Ne5 Bh5

44.Re7 Re8 45.Rc7 Rb8 46.Nd7 Rb1+ 47.Kh2 Bf7 48.Nf6+ Kg7

49.Ng4 Rb5 50.Nxh6 Kxh6 51.Rxf7 Kg6 52.Rf8 Rb4 53.Kg3 Ra4

54.Rf3 Rb4 55.Re3 Kf5 56.Kf3 Rf4+ 57.Ke2 Ra4 58.g4+ Kf6

59.Kf3 e5 60.Rb3 Kg6 61.Rb6+ Kf7 62.Rh6 Rf4+ 63.Kg3 Ra4

64.f3 Rb4 65.Rh5 Kf6 66.Rh6+ Kf7 67.h4 gxh4+ 68.Rxh4 Ra4

69.Rh6 Rb4 70.g5 Rf4 71.Ra6 Rf5 72.g6+ Kg7 引き分け合意

 カスパロフと同様にアーナンドもナカムラのチェスに対する考察を語った。「彼は自分の試合を研究しなければならない。ある分野では、特に攻撃的な布局を見つけることにかけては、もう大家になっている。番勝負を指すならそれを少し控えなければならない。しかし彼は自信には事欠かない。それは確かだ。」クリスチャンセンとの試合については「ナカムラが(引き分けにする)手順を知っているのかは分からない」と言った。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(207)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点(続き)

e4からナイトを追い出す方法

 この目的を達成するために白には大きく分けて二通りの方法がある。一方は遅くて手が込んでいるので、もう一つの方が優っている。この最も直接的な方法は駒の利きを Ne4 に集中させて交換か退却を迫ることである(図203)。

 図203

 白は展開や他の自然な手で Ne4 をいくつかの駒で攻撃することができる。e4に利きを集中した結果として黒はナイトを相手のクイーン翼ナイトと交換するか(…Nxd2)引くか(…Nc5)さらに他の駒で守るかすることになる。

 二つ目の方法は Nf3 を移動して(通常はd4に)思い切った f2-f3 突きを用意することである(図204)。

 図204

 例えばこの場合なら白はeポーンの間接的守りを利用して(…Nxe5?、Re1 から f2-f3 でナイトが落ちる)f2-f3 と突いてナイトを追い払うことができる。

 しかし f2-f3 突きには陣形の欠陥が生じることに注意しなければならない。つまりキャッスリングした囲い、具体的にはa7-g1の斜筋を弱めるからである。これに加えてfポーンをさらに突こうとすると(キング翼での白の攻撃にもっとはずみをつけるため、またはeポーンを守るため)e4の地点を取り返しのつかないほど弱めることになる。

 これらの理由から初めの手法の方が少なくとも手始めに断然多く採用されている。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(206)

第6章 開放型中原(続き)

6.1 戦略の着眼点

 開放中原の大きな特徴は上記の戦型に見られるポーンの形の分析から導き出されるだろう。その際e4に陣取った黒のナイトの存在を忘れないことである(図202)。

 図202

 戦略の戦いには要点が三つある。

 (1)中央に陣取った黒の強力なナイト

 (2)e5をポーンが占めていることによる中央とキング翼における白の陣地の広さの優位

 (3)中央で縦に分割すれば容易に分かるようにお互い逆の方面におけるポーンの数の優位

 e4にいる黒のナイトの存在は白にとって非常に厄介である。白が中央とキング翼における広さの優位を生かそうとするならば、まずこのナイトをどけなければならない。そうしないと白の駒が自由に動くことができない。もちろん黒は白の作戦を邪魔するためにナイトをそこに維持しようとし、そうすることにより自分がキング翼で主導権を握ることに役立つかもしれない。

 クイーン翼の戦いは基本的には黒が …c7-c5 および/または …d5-d4 で多数派ポーンを動員しようとすることをめぐって行なわれる。白がこの進攻を防ぐことができればその方面で優位が得られる。

 クイーン翼での戦略の状況は黒が …a7-a6 と …b7-b5 を指していない場合、またはcポーンが交換されている場合では、かなり様相が異なることに注意しなければならない。

(この章続く)

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えっへん

 河北新報2010年11月10日づけ朝刊の「声の交差点」欄に投稿が掲載されました。

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世界のチェス雑誌から(98)

「Schach Magazin 64」2010年9月号(2/4)

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ロシアとスロベニアが金メダル(続き)

クイーン翼ギャンビット [D37]
D・アンドレイキン(ロシア、2650)
P・ネギ(インド、2615)

1.c4 e6 2.d4 d5 3.Nf3 Nf6 4.e3 Be7 5.Nc3 O-O 6.a3 b6

7.cxd5 exd5 8.b4 c5 9.bxc5 bxc5 10.dxc5 Bxc5 11.Be2 Nc6 12.O-O

12…Bf5

 12…d4 は 13.Na4 と応じられるので時期尚早である。

13.Bb2 Rb8 14.Na4 Be7 15.Rc1

15…Na5

 15…Qd7 の方が堅実に思われる。

16.Be5 Rc8 17.Rxc8 Bxc8 18.Nc3 Be6 19.Nd4

 陣形は白の方が優っているが黒は 19…Nd7 20.Bf4 Nb6 でc4の地点を目標にしていれば白の優位を最小限に抑えることができていたであろう。しかし実戦は

19…Qc8?

だったのでこのような均衡した局面では思いがけない手筋を誘発した。

20.Bxf6 Bxf6 21.Nxe6

21…Qxe6

 21…fxe6 と取るのは 22.Nxd5 exd5(22…Rd8 23.Nxf6+)23.Qxd5+ Kh8 24.Qxa5 で2ポーン損になる。

22.Nxd5 Be5 23.Qd3 Nc6 24.Rd1 Ne7

25.g3 Nxd5 26.Qxd5 Qe7 27.a4 Bc7 28.Qc6 Rd8 29.Rb1

29…Rb8?!

 ネギはどんどん交換して異色ビショップによる引き分けの可能性に期待をかけた。しかし彼はそこでの妙手筋を見落としていた。ここは 29…Rd6 30.Qb7 Rb6 31.Rxb6 axb6 と指す方が良かった。この場合でも引き分けが確実というわけではないがその可能性は大きいだろう。

30.Rxb8+ Bxb8 31.Qc8+ Qf8 32.Qb7

 この手は Bc4 から Bxf7+ を狙っている。

32…a5

 32…Kh8 33.a5 h6 34.Bc4 f6 の収局ならまだ楽しみがあるが実戦は黒がはっきりと敗勢になった。

33.Qb6

33…g6

 33…Qb4 でも 34.Qd8+ Qf8 35.Qxa5 でaポーンが取られる。

34.Qxa5 Qe7 35.Qd5 Qd6 36.Qxd6 Bxd6 37.a5 f6 38.f4 Kf7

39.a6 Bc5 40.Kf2 Ke7 41.Kf3 Ba7 42.e4 Kd6 43.Bc4 1:0

 ここまで来たら白の勝ちはもう明白である。43…Bb8 44.Bg8 h6 45.Bf7 g5 46.Kg4 gxf4 47.gxf4 Ke7 48.Bd5 Ba7 49.Kf5 Bb8 50.Kg6

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(205)

第6章 開放型中原

主手順 - 開放戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 6.d4 b5 7.Bb3 d5 8.dxe5(図201)

 図201

 開放中原はこの手順から生じる場合がもっとも多いが、他の戦法でも戦略的に似た状況から出現することがある。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 の後

 ブレイェル戦法
 - 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 d5 14.Nxe5(または 14.dxe5 Nxe4)14…Nxe5 15.dxe5 Nxe4

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Bb7 12.Nbd2 cxd4 13.cxd4 Rc8 14.Nf1 d5 15.dxe5 Nxe4

 その他の戦法
 - 5.d4 exd4 6.O-O Be7(または 5.O-O Be7 6.d4 exd4)7.e5 Ne4 8.Nxd4 O-O 9.Nf5 d5

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 ベルリン戦法
 - 3…Nf6 4.O-O Nxe4 5.d4 Be7 6.dxe5 d5

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.e5 Ne4 7.O-O d5 8.Nxd4

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(204)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図200(再掲)

 可動中原ポーンの堂々たる勝利である。この進撃により4段目から Rd4 を攻撃に参加させることができるようになり、破滅的な 29.e6 fxe6 30.Bxe6+ からの詰みも狙っている。

28…Nc4 29.Bxd8?

 逸機!白は次のような鮮やかな手筋で試合を決める機会を逃がした。29.Nf6+ Kh8 30.Rh4 h6 31.Bxh6 Bxh6 32.Rxg6!! fxg6 33.Rxh6+ Kg7 34.Rh7+ Kf8 35.e6 これで詰みが避けられない(36.e7# でも 36.Rf7# でも好きな方が選べる)。

 本譜の手のあと客観的に白の勝ちの収局になる。しかし黒には双ビショップがあるので技術的にかなり難しい部分もある。

29…Rxd8 30.Bxc4 bxc4 31.exd6 Rxd6 32.Rxd6 Bxd6 33.Nf6+ Kf8

 33…Kg7? は 34.Ne8+ でだめである。

34.Rc3 Ke7 35.Ng4 Bd5 36.Ne3 Be6 37.Nxc4

 この収局に勝つには最高の技術力がいる。

37…Bb4 38.Rc2 h5 39.Ne5 Bd6 40.Nc6+ Kd7 41.Nd4 Bd5 42.Nb3 Bb4 43.Nc5+!

 白は沈着冷静にポーンを犠牲にして相手の黒枡ビショップを奪い黒枡を弱くさせた。

43…Bxc5 44.Rxc5 Bxa2 45.f3 Kd6 46.Rc8

 46.Rc1? は …Kd5、…Bc4 から …Kc5 で黒のキングをパスポーンに近づけさせてしまう。

46…Bd5

 黒の狙いはaポーンを突き進めることである。

47.Rc1

 d5の地点がビショップによって止められたので白はこの手を指す余裕がある。それでも 47…a5? なら 48.Ra1 でよい。

47…Bc6 48.Ra1 Bb5 49.Kf2

 白キングがようやく出動し、弱った黒枡を利用して敵陣に侵入しようとしている。

49…Ke5 50.Ke3 Kf5 51.g3 Ke5 52.h4 Kd5

 52…Kf5 は 53.Rc1 とされて黒が敵キングのf4への到達をもう防ぐことができなくなる。

53.Kf4 Kc5 54.g4

 55.gxh5 の交換のあとh5のポーンを弱めるか、54…hxg4 55.fxg4 のあとh列にパスポーンを作る可能性を与えるかの不愉快な選択を黒に迫った。

54…Kb4 55.gxh5 gxh5 56.Kg5 Be2 57.f4 a5 58.Re1 Bg4 59.f5 a4 60.Re7 1-0

(この章終わり)

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チェス布局の指し方[37]

eポーン布局

第4章 イタリア試合(続き)

ウィルクス・バリー戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 Bc5(図50)

 図50(白番)

 黒は自陣のf7の地点が狙われているのに目もくれず、駒を展開しすぐに白のf2の地点ににらみを利かせた。読者はこの戦型を初めて見るならば以下の戦術のめまぐるしさに目を見張るかもしれない。しかしこの華々しい戦いはどうやっても引き分けにしかならないようである。

5.Nxf7

 これはポーン得し、黒のクイーンとルークを両当たりにし、やれるものならやってみろと黒をけしかける当然の応手である。しかし1991年リナレスでのアーナンド対ベリヤフスキー戦のように 5.Bxf7+ Ke7 6.Bd5 の方が強手だっただろう。以下 6…Rf8 には 7.Nf3、6…Qe8 には 7.d3 と応じる。

5…Bxf2+!

 この手が成立するということが 4…Bc5 の根拠である。この大乱戦の戦法がf2とf7の相対的な弱点について本章の初めで述べたことを説得力のあるものにしている。

6.Kxf2

  6.Kf1 は 6…Qe7 7.Nxh8 d5! が効果的な反撃になるので役に立たない。

6…Nxe4+ 7.Kg1!

 ここが唯一の逃げ場所である。7.Ke3 は 7…Qh4 で黒の攻撃がきつい。例えば 8.Qf3(…Qf2+ の狙いを防ぐため)8…Nc5 9.Nxh8(白は詰みを狙っている。しかし黒の手番である)9…Qd4+ 10.Ke2 Qxc4+ 11.Ke1 Nd4(黒は …Nxf3+ と …Nxc2+ を狙っている)12.Qf7+ Qxf7 13.Nxf7 Nxc2+ 14.Kd1 Nxa1 15.Nxe5 d6 16.Nc4(Ne3 と指して黒のナイトを閉じ込めておく狙い)16…Nc2! 17.Kxc2 Bf5+ から …Bxb1 で黒がポーン得になる[訳注 12.Qh5+ で白の勝勢になるので 11…d6 が正着かもしれません]。

7…Qh4

 8…Qf2# の狙いがある。

8.g3

 これも最善手である。8.Qf3 には 8…Nd4 が強手で、8.Qf1 には 8…Rf8 と応じられる。以下は例えば 9.d3(危険なナイトを追い払う)9…Nd6(10…Nxf7 で駒を取り返す狙い)10.Nxd6+ cxd6 11.Qe2 Nd4 12.Qd2 Qg4 で 13…Nf3+ と 13…Ne2+ の両狙いで黒が勝つ。途中 12…Qg5!! の方がもっときれいに勝つ(13…Qd1 Qxc1!)。

8…Nxg3

 二度目の捨て駒で白キングの囲いを壊した。

9.Nxh8

 9.hxg3? は疑問手だが次のような見事な戦いになる。9…Qxg3+ 10.Kf1 Rf8! 11.Qh5! チェコの研究家のローリチェクがここから黒が勝てることを示した。11…d5!(白のビショップをf2のナイトの守りから断ち切るための手筋の始まり)12.Bxd5 Nb4 13.Bc4(13.Bb3 なら 13…Nxc2)13…b5 14.Bxb5+ c6 15.Bc4 Nd5 これで黒のキング翼ルークがすぐに戦いに加わり白に大打撃を与える。

9…Nxh1 10.Qf1

 10.Kxh1 は 10…Qxc4 で黒が白の捕まったナイトを取り2ポーン得になる。代わりに 10.Bf7+ Ke7 11.Kxh1 Qe4+ 12.Kg1 は 12…Nd4 で黒に新たな駒を戦闘に投入する余裕ができる[訳注 13.Nc3 でも 13.d3 でも白の勝勢のようです]。本譜の手はクイーン翼ビショップを守り詰みを狙っているが黒にはまだ引き分けにする手段がある。

10…Qg4+ 11.Kxh1 Qe4+ 12.Kg1 Qg4+ 13.Kf2 Qh4+ 14.Kg1(図51)

 図51(黒番)

 白はチェックの千日手を逃れるうまい手段がない。13.Qg2 のような手は役に立たない。例えば 13…Qd4+ 14.Kh1(14.Kf1? Qxc4+)14…Qxc4 15.Qxg7 Qf1+ 16.Qg1 Qf3+ 17.Qg2 Qd1+ という具合である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(203)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図199(再掲)

 黒はこの手ですべての課題を解決しようとしている。即ちc列に栓をし、d6のポーンをさらに守り、…Bf6 によって黒枡の対角斜筋の支配を勝ち取る用意をした。だが事態はそれほど簡単でなく、ティマンは次の手で、中央に陣取ったクイーンを維持することができる。

 しかし黒には他にもっと良い手がなさそうである。実際 20…Bf6?! なら 21.Qb6! とされる。以下は例えば 21…Qxb6(21…Rac8? なら 22.Qxc7 Rxc7 23.Bb6、21…Rd7 なら 22.Qxc7 Rxc7 23.Rxd6 Nc4 24.Bxc4 Rxc4 25.Rad1! Bxe4? 26.b3 でどちらも白が圧倒的に優勢である)22.Bxb6 Rd7(22…Rdc8 は 23.Rxd6 Nc4 24.Bxc4 Rxc4 25.Rad1! Bxe4? 26.b3)23.Bd4 で白がはっきり陣形で優る。たぶん 20…Rac8 の方が堅実だが 21.Rac1 Qb8 で黒が凝り形であることが明らかで白が主導権を握るのに何も問題がないはずである。

21.Nh5!

 白は …Bf6 を防ぎ敵のキャッスリングした囲いに圧力を加えた。

21…Bf8 22.Rac1 Rac8

 たぶん 22…d5 と指す方が良かっただろう。23.exd5 Rxd5 24.Qg4 Kh8(24…Rxd1+? は 25.Bxd1 Nxe3 26.Nf6+ Kh8 27.Qh4 で白の勝ち[訳注 25…Nxe3 が悪手で、25…Qe5 なら黒が悪くないようです])となれば明らかに白の方が良い。しかし実戦では駒の働きに優ってもそれを生かす具体的な手段を見つけるのは簡単でない。

23.Rc3! Qe7

 ここでの 23…d5? は 24.Bg5! のために手遅れである。例えば 24…f6 25.Bxf6 gxf6 26.Rg3+ Kf7 27.Qxf6+ Ke8 28.Qe6+ Qe7 29.Nf6# となる。実戦の手で黒は敵のクイーンの圧倒的な位置に …Qe5 で挑むつもりである。

24.Bh6!

 この手は単純だが妙手で白の攻撃が実際に勢いを得てきた。

24…Qe5

 24…Qxe4? は 25.Nf6+! があるので不可能である。他に 24…Qh4 には 25.Rg3 があり、24…Ne5 は 25.Bxg7! Rxc3 26.Bf6 で決まる。

25.Rg3 g6?

 この手は致命的な悪手だった。敢然と 25…Bxe4! と取ればまだ戦いが続いていた。例えば 26.Bxg7 Bxg7 27.Rxg7+ Kf8 で難解な戦いである。

 25…Qxd4? は 26.Rxd4 g6 27.Bg5! で本譜に戻る。

26.Bg5! Qxd4 27.Rxd4 Nxb2 28.e5!(図200)

 図299

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(202)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図198(再掲)

 中原の形がついに確定した。ここからは両者が小中原に典型的な戦略上の目標を達成するために戦いを交えなければならない。その目標とは白の場合はd5またはf5の地点の占拠、弱点のd6のポーンとe4のポーンの活動性の利用であり、黒の場合はe5とc4の地点の利用、e4ポーンに対する圧力および …d5 突きによる捌きの実現である。

15…Nxd4 16.Qxd4 Ne5

 この手はよくある手筋の 17…Bxh3 18.gxh3 Nf3+ を狙っている。

17.Rd1

 これは典型的な間接的受けである。17…Bxh3? とくれば 18.Qxe5 dxe5 19.Rxd8 Rfxd8 20.gxh3 となって、表面的には互角の駒割だが収局になれば2個の小駒を持つ白が勝勢になる。

 17.Qd1 と引くのは防御側をやり易くさせるだろう。例えば 17…Bf6 18.Ne3 Be6 19.a4 Rc8 となれば形の劣勢を補って余りある活動性の代償が黒にある。

17…Bb7

 黒は自分の運命が局面の活動性の優位をどのように生かせるかにかかっていることを知っている。だから黒はすぐに積極性のある反撃を保証する作戦を立てることに努めなければならない。本譜の手でロマニシンは自分の大駒のためにc列を空け、同時にe4のポーンとd5の地点を監視下において好機が来たらいつでも …d5 と突いて捌くことを見据えた。この作戦に欠陥があるとすればそれはまさしく手数がかかることである。というのは黒がすぐには反撃の目標を何も達成しないので相手は兵力の展開を良くするのに必要な余裕があるからである。

 積極性では劣るがもっと強制力のある手は 17…Bf6 だった。その意図は 18.Qxd6 Qxd6 19.Rxd6 Nc4 20.Rc6(20.Rxf6!? も面白いかもしれない)20…Bxb2 の局面で守りにつくことである。もっとも白が多少優勢である。

 一方自然な 17…Qc7 は 18.Ne3! Bxh3(18…Be6!? も十分考慮に値する)19.Nd5! Qd8(19…Qxc2? は 20.Rd2 で白の駒得になるからだめである。例えば 20…Qc5 21.Qxc5 dxc5 22.Nxe7+ Kh8 23.Rd5 である)20.Nxe7+ Qxe7 21.Qxd6 で白に双ビショップが残り活気のある陣形を与えてしまう。

18.Ng3

 この手はf5の地点を目標としているだけでなく、あとで明らかになるように …Bf6 に対して Nh5 で迎え撃つ可能性も持っている。

18…Qc7

 この手は 19.Nf5 の狙いと戦う目的である。即ち …Rfd8 でd6のポーンを守る用意をした。しかしやはり展開が遅いので白は陣形をさらに良くすることができる。

 最も積極的な手はたぶん 18…Bf6(18…g6? は 19.Bh6 Re8 20.f4 Bf6 21.fxe5 Bxe5 22.Qe3!-22.Qf2? Qh4-で白が圧倒的に優勢である)19.Qxd6 Qc8! で、黒が失ったポーンの代償に十分な機動力を得ているようである。例えば 20.Qd2 Rd8 21.Qe2 Qc4 で黒に主導権がある。

19.Bb3 Rfd8

 黒は作戦を続行し 20.Nf5 に 20…Bf8 または 20…Bf6 21.Qb4 Qc5 と応じる用意をした。どちらの場合も堅実な陣形で希望が持てる。

20.Be3

 白は餌に飛びつかずに自分の展開を完了しc列の支配を争う用意をした。

20…Nc4(図199)

図199挿入 図199

(この章続く)

2010年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(201)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

第9局
ティマン対ロマニシン
ベイクアーンゼー、1985年
…Na5 のチゴーリン戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Na5

 小中原はスミスロフ戦法からも生じることがある。例えば 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3(12.Bc2 と 12.Nf1 Bb7-12…Bd7 については第4局を参照-およびスミスロフ戦法全般の解説については第2局の黒の9手目の解説を参照)12…Bb7 13.Bc2 Nb8 14.b4(または 14.b3 Nbd7 15.Bb2 c6-d5 突きの防ぎ-16.c4 exd4 17.Bxd4 g6 18.Qb1!? で白がわずかに優勢を維持)14…Nbd7 15.Bb2 g6 16.c4(16.Qb1 の解説は第2局を参照)16…exd4(この時点で黒は相手が有利な状況下で閉鎖局面にするのを止めるために小中原にすることにした。実際白はcポーンを突いていくだけでなくc列の素通しおよびa5とc6の弱点を利用する態勢になる)17.cxb5(ポーンを捨てる 17.Nxd4 bxc4 18.Nxc4 Bxe4 19.Ba4 も指されたことがあるがこれは代償として機動性が十分得られないと思われる)17…axb5 18.Nxd4 c6 19.a4(19.Bd3 Bg7 20.Rc1 Qb6 21.Qb3 という指し方も非常に面白い。c6とb5に圧力をかけ続けることによって黒の中原ポーンが抑えられる)19…bxa4 20.Bxa4 Qb6 これはお互いに指せる分かれである。

10.Bc2 c5 11.d4 Nc6

 本譜の手は完全に理にかなった手である。このナイトはe5のポーンを守りd4に対する圧力を増している。

 しかしチゴーリン戦法で最もよく指される手は 11…Qc7 である。この手からも小中原の形成に至ることがある。例えば 12.Nbd2 cxd4(この交換をさしはさんでおくと特にc列の開通により黒の反撃の可能性が増す)13.cxd4 Bd7(13…Bb7 については第3局の黒の9手目の解説を参照。13…Nc6 については第5局の黒の9手目の解説2fを参照)14.Nf1 Rac8 15.Ne3(15.Re2 も面白い手である。また 15.Bd3 は 15…Nc6 16.Be3 exd4 17.Nxd4 Ne5! 18.Bc2 d5! で黒が少なくとも楽に互角にできるようである)15…Nc6(15…Rfe8 は 16.b3 exd4 17.Nxd4 Bf8 18.Bb2 Qd8-18…Nxe4? は 19.Nd5 で白の勝ち-19.Ndf5 で白が優勢である。その理由はf5の地点の占拠、d6の弱いポーンに対する圧力、a1-h8の対角斜筋の支配およびe4ポーンの可動性というような小中原に典型的な目標の多くを達成したからである。だからこの手順で黒の16手目の決断は少なくとも時期尚早である)16.a3?!(…Nb4 を妨げ d4-d5 突きを狙う考えだがいずれ分かるように黒は有利な状況で小中原の形に行くことができる。16.dxe5 dxe5 については第5局の黒の9手目の解説2fを参照。ここで 16…Nxe5 と取るのは 17.Nd4 が面白い。すぐに 16.d5 と突くのは閉鎖中原になる)16…Nxd4!(ここでは小中原の形成は黒にとって有利である。なぜなら典型的な戦術の策略によりすぐに …d5 と突いて捌くことができるからである)17.Nxd4 exd4 18.Qxd4 d5! この手は Bc2 が浮いていることにつけ込んでいる(19.exd5? Bc5! のあと …Bxe3 から …Qxc2)。そして黒はd6のポーンの弱点とe4のポーンの存在をなくすという重要な目的を達成することができるようになる(19.e5?! と応じるのは 19…Bc5 20.Qf4 Rfe8 21.Nf5 Nh5 22.Qf3 Bxf2+ で白が少なくとも1ポーン損になる)。

12.Nbd2 cxd4 13.cxd4 Nd7 14.Nf1

 クイーン翼ナイトがd5またはf5への典型的な「スペイン旅行」に旅立った。他に考えられる手は 14.Nb3(Bd2 から d5 とする構想)14…a5 15.Be3 a4 16.Nbd2(16.Nc1 も面白い手で d5、a3 から Nd3-b4 と続く)16…exd4 17.Nxd4 Nxd4 18.Bxd4 Ne5 19.Nf1 だが白の優勢は最小限である。

14…exd4

 黒は駒の働きをもっと良くするために小中原を形成することにした。黒駒の動ける範囲はe5とd4ポーンの存在によって大きく制限されていた。この方針はもちろんいくらかの危険を伴っている。なぜなら中原での交換の結果黒駒の得る機動力を白が無効にできれば、d6に弱いポーンがあるので白が陣形的に優る態勢になるからである。

15.Nxd4(図198)

 図198

(この章続く)

2010年11月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(192)

「Chess Life」2010年8月号(3/5)

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米国チェス選手権戦(続き)

 シュールマンはさらに書いている。

 「ヒカルは 27.Rd1(27.Qh4 Rc1)27…Rc1 28.Qg4 Qe1+ できれいに詰むのを読んで投了した。大変な試合だった。黒の指し回しが冴えていたと考える者もいるだろうし、ヒカルがたった2手の悪手でキングが捕まったと言う者もいるかもしれない。チェスの初心者には二人の初心者の試合だと言う者もいるかもしれない。なにしろ黒は序盤で駒を展開する前にクイーンを二度動かしたし白はhポーンを二度突いた。それに両者ともキャッスリングしなかったし白は最下段の詰みを見逃した。

 もちろんこの試合は現代のチェスがどのように変貌したかの単なる実例である。今では強豪選手を単純な手段で負かすことはほとんど不可能である。だから初手からどちらも時には布局の「規則」を破ってまで相手の読みをはずそうとする。

 我々の試合が終わったあと私はガータ対アレックス戦の結果を待ち始めた。アレックスは引き分けの申し出を断り負けた。この結果の意味するところは次の私とガータとの試合ですべてが決まるということである。その試合は引き分けに終わり一発勝負を指さなければならなくなった。チェス選手の多くが私にそれは公正でないシステムだと言った。私に言わせればもうあの時点でコインを投げて優勝を決めてもよかった。

 ガータと私は強豪の大会を同じ成績で通過することができた。しかし「チャンピオン」と呼べるのは一人だけである。一発勝負を好調に指していながら単純な 39…Bf6 でポーンを取り返されるのを見落としていたのは私の責任であってシステムの責任ではない。わたしはそれでもさらに戦う可能性を見つけたことを誇りに思っている。しかし忘れてならないのはガータは不利な局面をしのぐのが絶対的に優れているということである。彼が19年振りにまたチャンピオンになったのは賞賛に値する。」

*****

 元世界チャンピオンのガリー・カスパロフは第9回戦で中継に電話で参加してきてインターネットと現地の観戦者を驚かせた。彼はポーンを犠牲にしたのは1992年のアーナンド戦だと指摘した。そしてナカムラの 13.Kf1 の妥当性を疑問視した。彼は「白が狙いを本当に作り出すのは非常に難しい」と言った。「白はポーン損で、実際何も展望が見られないようである。」

 IMレボン・アルトウニアンは「シュールマンを負かそうとするとこっちが負かされる」と言った。「彼はそういう選手なんだ。」

 GMジョシュ・フリーデルは「シュールマンの方が局面を少しよく理解しているように思えた」と言い、多くの一流選手たちの感想に共鳴した。あとでいく人かのグランドマスターはシュールマン相手にビナベル戦法は選ばないと言った。ナカムラは遅まきながら同意した。彼は「最初の失敗は定跡の選択だった」と言った。「研究は100%でなかった。カスパロフの試合をお手本にした。負けなければならないとしたらカスパロフの指した手で負けた方が良かった。」

 「(大会の1週間前に)セントルイスに引っ越したので自分の地元で試合をするのは不利なような気がする。気楽すぎた。本来の実力よりずっと弱く指していた。」

 カスパロフはナカムラが世界の5本の指に入る可能性があると指摘したが、この米国最強選手の暴力団を取り締まる警官のような指しっぷりは世界の超一流相手にはそれほど効果がないかもしれないと注意を促した。「彼らはナカムラの棋風にそれほど影響されない」と彼は言った。

 世界ナンバーワンGMのマグヌス・カールセンは電話でのインタビューでナカムラを主要なライバルの一員に含めなかった。しかし「今のところナカムラにはいくらか手こずっている」ことを認めた。

 オニシュクの悪手は世界にはひびかなかったが、自分の試合と不敗連続記録と二度目の米国選手権獲得の可能性にはひびいた。彼とナカムラが負けて共に5½点のままになり、シュールマンとカームスキーが6½点になって第10回戦で直接対決するので、数字的に排除された。ナカムラとオニシュクは盛り上がりのない引き分けで同点3位に終わった。

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(120)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図197(再掲)

 白が攻撃に手間取っているうちに黒の反撃は意外なほどすみやかに進展した。

19.Ka1 Reb8 20.Rb1 Nc6

 これで黒のすべての駒が白キングの攻略に加わることになった。

21.f4 Bd4

 21…Na5 は 22.f5 Qe5 23.Bf4 と応じられる[訳注 23…Nc4 で黒が優勢のようです]。

22.Qd3

 22.f5 は 22…Qe5 23.Bf4 Bxc3 で黒が勝つ。

22…a5 23.Qh3 f5 24,Rhe1 Nb4

 白陣をガリガリ砕いていく。

25.axb4 axb4 26.Na4 Ra7 27.Qb3 c4 28.Qa2 Rba8 29.exf5 Rxa4 0-1

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(119)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図196(再掲)

 これは正確さを必要とする果断な決断である。11.Qd2 O-O 12.Bh6 で黒の危険なビショップを交換する方が融通性があった。白は後でキングをどこへ置くのが最善かを決めることができる。

11…O-O

 黒は挑戦に応じなければならない。

12.Qd2

 すぐに 12.e5? と突くのは(陣形的に理にかなった手で、二重cポーンを孤立させようとする)このような局面における黒の反撃がいかに強力になり得るかを示すことになる。12…Bf5 13.Qd2 Nc6! 14.exd6 cxd6 ここで 15.Qxd6 Qa5! 16.Qxc6 Bxc3 17.bxc3 Rac8!(18.Qf6 Qa4 の狙い)も 15.Bxd6 Nd4 16.Bxc5(または 16.Bxf8 Qxf8 17.Nxd4 cxd4 18.Ne2 Rc8)16…Nxc2[訳注 17.g4 Bxg4 18.Qxc2 で白が優勢のようです]も戦力得にもかかわらず白が非常に難しい局面である。黒のビショップには要注意である。

12…Re8

 黒はフィアンケットビショップを交換させるわけにはいかない。

13.Bh6?

 白はキング翼攻撃に向かった。しかし黒の反撃のすごさをみくびっていた。だから古典的な中原の仕掛けの 13.e5 を指すべきだった。黒はたぶんポーンを捨てなければならないだろうがビショップによる効果的な反撃に期待することができる。この手に対して 13…Nf5 は次のように疑問かもしれない。14.Bg5 f6(14…Qd7 には 15.Ne4! から 16.Nf6+[訳注 それでも黒が悪くないようです])15.exf6 Bxf6 16.Bxf6 Qxf6 17.Nd5 しかし 13…Bb7 または 13…Bg4 なら良さそうである。

13…Bh8 14.h4 Rb8 15.a3

 ここに至って白はようやく黒の反撃の意外な強さに気づいた。15.h5 は 15…c6 とされ(…Qb6 の狙い)キングの守りに追い込まれる。例えば 16.Na4 Rb4 17.b3 Rxa4! 18.bxa4 Qb6 となって黒の攻撃が非常にきつい。本譜の手の目的は …Rb4 を防ぐことだが、同時に白の13手目が過度に楽観的だったことが初めて浮き彫りになった。

15…Be6

 これで黒の展開が完了し …Qc8-b7 の捌きが可能になった。

16.Ng5 Qc8 17.Nxe6 Qxe6 18.Kb1 Rb7(図197)

 図197

(この章続く)

2010年11月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

酒井響くんの大活躍

 今年(2010年)10月下旬にギリシャで開催された世界少年少女チェス選手権戦の16歳以下の部門で酒井響(さかい・ひびき)くんが全員2100以上を相手に11戦して5.5点をあげるという大活躍を見せてくれました。「Behind the Scene」に全局の解説が掲載されています。

World Youth Chess Championship 2010 Games (R.1-3)

World Youth Chess Championship 2010 Games (R.4-6)

World Youth Chess Championship 2010 Games (R.7-9)

World Youth Chess Championship 2010 Games (R.10-11)

 かつてGMラリー・クリスチャンセン戦の目隠し対局で引き分けたことがあります。

http://www.youthchess.net/christiansen.htm

「当日のハイライトの一つは酒井響くんとの目隠し対局だった。響くんはまだ6年生だが、その学年では地元の最高レイティング保持者で、2007年6月現在で1844である。」


「響くんは50手以上を戦い抜いた。そのあと記念にクリスチャンセンのサイン入り著書をもらった。」


「チェス愛好者の大観衆が目隠し対局を見守った。大会には206名の選手が参加した。」

2010年11月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(97)

「Schach Magazin 64」2010年9月号(1/4)

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ロシアとスロベニアが金メダル

2010年世界ジュニア選手権優勝はディミトリー・アンドレイキンとアンナ・ムズィチュク

 世界ジュニア選手権戦(20歳以下)は1951年に始まり、それ以来若い選手にとって最高の大会になっている。

 この大会に出られた者はたいてい成人しても成功を収めてきた。ボリス・スパスキー(1955年優勝)、アナトリー・カルポフ(同1969年)、ガリー・カスパロフ(同1980年)およびビスワーナターン・アーナンド(同1987年)は世界チャンピオンになったし、ユスーポフ、セイラワン、アロニアンおよびマメジャロフ(最も知名度のある名前だけをあげた)のような強豪はジュニア選手権者から棋歴が始まった。去年優勝したマクシム・バシエ=ラグラーブは既に世界の一流に仲間入りしている。

 ドイツも2回優勝している(1995年ロマーン・スロボディアンと2005年エリーザベト・ペーツ)。しかしたいていはソ連または独立国家共同体からの代表が優勝してきた。ポーランドのホトバで開催された今年も何も変わっていない。確かに女子ジュニアチャンピオンのアンナ・ムズィチュクはスロベニアから出場したが生まれはウクライナである。男子は二人のロシア選手が同点1位になったがアンドレイキンが順位判定で上回り優勝者になった。

男子メダリスト
ディミトリー・アンドレイキン(ロシア、2650)10.0点
サナン・シュギロフ(ロシア、2610)10.0点
ダリュース・スビルツ(ポーランド、2492)9.0点

ジュニア選手権戦優勝のアンドレイキン(写真 キャシー・ロジャーズ)

女子メダリスト
アンナ・ムズィチュク(スロベニア、2527)11.0点
オルガ・ギリヤ(ロシア、2376)10.5点
ロウト・パドミニ(インド、2275)10.0点

ブンデスリーガ(ドイツ国内団体リーグ戦)でのアンナ・ムズィチュク(写真 O・ボリク)

 ドイツからのメダル獲得者はいなかった。一番順位が良かったのはファルコ・ビンドリッヒ(10位)とメラニー・オーメ(15位)だった。20歳で現ドイツ名人の二クラス・フッシェンベトには厳しい結果で61位に終わった。

 これから3局採り上げる。第1局は-根本の理解のために-布局に関する部分を詳しく説明する必要がある。

 大会優勝者とインド選手との試合でよくある布局定跡の 1.c4 e6 2.d4 d5 3.Nf3 Nf6 のあと 4.e3 という手が指された。この手は遠慮しているように見え、Bg5 の後でも Bf5 の後でも突けるのになぜ白はクイーン翼ビショップを閉じ込めるのかと問いただしたくなるところである。実際シュタイニッツ、ラスカー、カパブランカそれにアリョーヒンのような達人たちもこのように指したことがあるということはこの手の正当性を物語っている。結局のところビショップの一方(Bf1)の筋がすぐに通り、もう一方はあとでb2に展開することができる。

 とりわけこの手には利点も一つある。それは白が 4.Bg5 dxc4 5.Nc3 Bb4 6.e4 c5 という激しい変化を避けられるということである。これはすぐ戦いになるのでチェスプログラムが本領を発揮する。アンドレイキンは序盤にあまり時間をかけずにできるだけ早く大局観に基づいた指し方をしようとする選手に属する。これは非常に実戦的な立場であり、どうしても勝利を期するという態度でもある。しかし戦術的な戦いで出し抜くことは黒の場合よりも白の場合の方がはるかに容易なはずである。長く大局観に基づいた局面に経験豊富な年長世代の選手たちはそれゆえに、激しい戦術を阻止するのがより難しい 1.e4 から始まる開放的な試合よりも、閉鎖的な試合の方が白でも黒でもはるかに良い成績を収めている。

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(この号続く)

2010年11月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(118)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例(続き)

 図195(再掲)

 黒はc列に二重ポーンがあることの利点を用いてd6の地点を弱めることなくd4の地点を押さえることができる。さらにはb列が素通しになっていることも役に立つことを忘れてはならない。特に本局が示すように両者が逆翼にキャッスリングする時はそうである。

8.Qd3 g6

 8…Ne7 と指すことも可能でこのナイトをc6またはg6に動かしキング翼ビショップをe7に展開する考えである。

9.Nc3 Bg7 10.Bf4

 面白い別の手は黒駒の動きを邪魔しようという 10.Bg5 で、以下は 10…f6 11.Bf4(11.Bh4 Ne7 12.O-O-O Be6!-12…O-O? は 13.e5! fxe5 14.Nd5 で良くない-は黒が優勢である)となるが、実戦ではまだあまり十分に試されていない。

10…Ne7 11.O-O-O(図196)

 図196

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(117)

第5章 小中原(続き)

5.3 実戦例

第8局
ティマン対スパスキー
リナレス、1983年
遅延シュタイニッツ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 本譜で黒はクイーン翼のポーンを突いてビショップをa4-e8の筋から追い払う用意をした。…a7-a6 から …b7-b5 と突くと黒のクイーン翼を弱めることがあるため、3…d6(または 3…Nf6 4.O-O d6)-即ちシュタイニッツ戦法-は今日ではもうあまり指されないけれども非常に重要な定跡理論である。この戦型はかつて非常に流行し、かなり守勢ではあっても今日でも基本的に本手とみなされている。この歴史のある戦法の展開を少し見てみよう。

 (1)3…d6 4.d4 Bd7(こんなに早い段階で争点を解消するのはほとんど黒の利益にならない。例えばすぐに 4…exd4 と取ると白はクイーンを中央の非常に強力な位置につけることができる。5.Qxd4 Bd7 6.Bxc6 Bxc6 7.Nc3 Nf6 8.Bg5 Be7 9.O-O-O これで白の方が有望である)5.Nc3 exd4(5…Nf6 は次の(2)にある黒の5手目の解説を参照されたい)6.Nxd4 g6 7.O-O(もっと好戦的に 7.Be3 Bg7 8.Qd2 Nf6 9.Bxc6 bxc6 10.Bh6 と指すのも面白い)7…Bg7 8.Bxc6(この交換は中原で e4-e5 と仕掛ける用意をする目的である)8…bxc6 9.Re1 Ne7 10.Bf4(11.e5 と突く狙い)10…c5 11.Nf3 f6 12.Nd5 これで白が優勢だが黒も非常に堅固な態勢である。

 (2)3…Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7(この手順は 3…d6 4.d4 Bd7 5.Nc3 Nf6 よりも正確である。後の手順の場合白は次のようにクイーン翼にキャッスリングすることができる。6.Bxc6! Bxc6 7.Qd3 exd4-黒はあまりにも早く譲歩を余儀なくされる-8.Nxd4 Bd7 9.Bg5 Be7 10.O-O-O O-O 11.f4 これで白が圧倒的な態勢になる)6.Nc3 Be7(やはり中原放棄は時期尚早である 6…exd4 7.Nxd4 Be7 8.Bf4!? O-O 9.Bxc6 bxc6 10.e5 で白が主導権を握る)7.Bxc6 Bxc6 8.Re1 exd4 9.Nxd4 Bd7 10.b3 O-O 11.Bb2 これで白がわずかに優勢を保っている。

 黒が …a7-a6 から …b7-b5 と突くのを省略しようとする別の戦法は 3…Nge7 である。これについては第6局の黒の3手目の解説を参照されたい。

4.Ba4 d6

 4…b5 5.Bb3 Na5 と進むタイマノフ戦法では黒は白の危険な白枡ビショップを確実に消去する。しかしe5の地点を放棄したことにより黒はたぶん早すぎる段階で小中原に移行することを迫られる。手順の一例は次のとおりである。6.O-O d6 7.d4 exd4 8.Nxd4 Bd7(…c5-c4 の狙い。8…Bb7 では 9.Bd2 c5 10.Bd5 Bxd5 11.exd5 cxd4 12.Qe1+ で白が駒を取り返して明らかに優勢になる)9.Bd2 Nxb3 10.axb3 g6 11.Re1 Bg7 12.Bc3(a1-h8の対角斜筋をめぐる戦いは小中原の典型的な主題である)ここで黒は 13.Ne6 の狙いを当然の 12…Nf6? で止めることができない。そう指すと 13.e5 で白につぶされる。

5.Bxc6+

 白は双ビショップを放棄して黒のポーンの形を崩した。

 5.c4 という手もある。この手は小中原の形にする前に中原を完全に押さえることを狙っている。しかし欠点はあまりに早い段階で単純化を許すことである。例えば 5…Bd7 6.d4 exd4 7.Nxd4 Nxd4 8.Bxd7+ Qxd7 9.Qxd4 Nf6 10.Nc3 Be7 11.O-O O-O 12.b3 Rfe8 13.Bb2 Bf8 となって互角の形勢である。交換で黒陣の窮屈さが緩和された。

 5.c3 については第3局と第6局の黒の6手目の解説と第4局の黒の4手目の解説を参照されたい。また、5.d4 については第1局の黒の4手目の解説を参照されたい。

5…bxc6 6.d4 exd4

 黒には不満足な選択肢しかない。e5の拠点を放棄すべきか、それともやや愚形の 6…f6 で中原を補強すべきか?実戦によれば 6…f6 は白が優勢になる。例えば 7.Be3 Ne7 8.Nc3 Ng6 9.Qe2 Bd7 10.h4 h5 11.dxe5 fxe5 12.Ng5! からクイーン翼キャッスリングという手順である。

7.Qxd4 c5(図195)

 図195

(この章続く)

2010年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[36]

eポーン布局

第4章 イタリア試合(続き)

2ナイト防御

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6(図48)

 図48(黒番)

 黒はこの手で繁雑で戦術優位の2ナイト防御に入った。白は当然 4.Ng5 と跳ねて黒のf7の弱点に非常に強い圧力をかける。その一方で白はキング翼ナイトを2度動かし展開で後れをとった。黒はそれにつけ込んで(通常はポーンを犠牲にして)反撃して白を守勢に追い込むことに期待をかける。

4.Ng5

 白は黒の挑戦を受けて立った。4.d4 exd4 5.O-O の後 5…Bc5 6.e5(マックス・ランゲ攻撃)と 5…Nxe4 6.Re1 d5 7.Bxd5 Qxd5 8.Nc3 も詳しく研究されていてどちらも非常に難解である。

4…d5

 黒はビショップの筋をさえぎってf7の地点を守った。4…Bc5 はウィルクス・バリー戦法と呼ばれる激しい着想で、次局で採り上げる。黒の他の4手目はあまり考慮に値しない。4…Nxe4? はたまに見かけるが 5.Bxf7+(ただし 5.Nxe4? は 5…d5! で駄目である)5…Ke7 6.d4!(展開しながら …Nxg5 を防いだ)ですぐに敗勢になる。

5.exd5

  白はもちろん 5.Bxd5? とは取れない。取れば 5…Nxd5 6.exd5 Qxg5 7.dxc6 Qxg2 で黒の勝ちになる。

5…Na5

 当たりを避けて逆に白の浮いているビショップを当たりにした。5…Nxd5?! は 6.Nxf7 Kxf7 7.Qf3+ Ke6 8.Nc3 で白の猛攻を浴びる。

6.Bb5+

 これは最も理にかなった手で、白のポーン得が保証される。6.Bb3? のように後退すると黒は 6…Nxb3 からポーンを取り返すことができる。

6…c6

 この手はほとんど絶対である。6…Bd7 は 7.Qe2(ビショップを守り黒のeポーンを当たりにしている)7…Bd6 8.O-O O-O 9.Nc3 で、白はポーン得で黒には反撃の可能性がほとんどない。途中 7…Bxb5?? は 8.Qxb5+ で黒が駒損になり、7…Nxd5 は 8.Bxd7+ Qxd7 9.d4 で釘付けにされたeポーンが落ちる。

7.dxc6 bxc6

 7…Nxc6? ならクイーン翼のポーンの形を崩さなくて済むが、布局の方針からどうしようもないほどはずれてしまう。というのはナイトが自分から釘付けを招き、白に次の手で好きな手を指させるからである。黒はしょせんポーン損なので、戦力損の正当化のために筋を開け展開の優位を利用して攻撃に努めなければならない。本譜の手のあと白はまたビショップを移動させるために手を費やさなければならない。

8.Be2

 このビショップ引きは 8.Ba4?! よりも安全である(8.Qf3 は 8…Rb8! で黒が喜んでもう一つのポーンを犠牲にし展開で大差をつける)。8.Ba4 は浮き駒になり、黒が …Qd4 と指す好機を見つけることができればさらに狙われるかもしれない。例えば 8.Ba4 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Qd4(ビショップとナイトの両当たり)11.Bxc6+ Nxc6 12.Nxc6 Qc5! で白のナイトが捕まる。

8…h6

 白の攻撃的なナイトを追い返す。

9.Nf3 e4

 白はまたナイトを動かさなければならない。10.Ng1?(駒を「反展開」する)は黒が展開で大きくリードすることになるので、ナイトは盤の中央に浮き駒として単騎飛び込まなければならない。

10.Ne5

 黒がポーンの代わりに展開の優位と攻撃の可能性という形で十分代償を得ているようなので、一見しただけではこの局面は黒が良さそうに見える。ところが驚くことに黒には互角より優る優位を確保する手段が見つかっていない。

10…Bd6

 これは展開しながら白のナイトを攻撃していて当然の手である。

11.f4

 白はナイトをe5にとどめておきたいところである。白はできるだけ早くキャッスリングしたいので本譜の手は 11.d4 より優る。安全にキャッスリングするためには白のナイトはe5にいるか(重要なh2-b8の斜筋をさえぎっている)f3にいる(弱点のh2に利いている)必要がある。だから 11.f4 exf3e.p. 12.Nxf3 Qc7 13.O-O はナイトがhポーンを守っているから良いが、11.d4 exd3 12.Nxd3 はナイトがキング翼を守るには不都合な位置にいる。

11…Qc7

 白の守られたe5のナイトは黒陣の中のとげである。黒としては犠牲にしたポーンを取り返す狙いでこのナイトをどかせたい。

12.O-O

 白は展開を続けた。白は得した戦力を返すことによって黒の攻撃を鈍らせることができるならば喜んでそうする。というのは黒はクイーン翼にポーンの弱点を多くかかえているからである。

12…O-O

 黒はキングを安全なところに移しルークを展開させて攻撃が続くことを期待している。

13.Nc3

 この展開の手も良い手である。

13…Bxe5

 この手で戦力の損得がなくなった。しかし黒のキング翼ビショップが交換になって黒の攻撃の可能性もほとんど消えた。はるかに有望な手は1977年バート・ラウターベルクでのティマン対グリゴリッチ戦で指された 13…Bf5 である。

14.fxe5 Qxe5 15.d4

 白の指し手は非常に積極的である。クイーン翼ビショップの筋を開けて戦いに参加させた。

15…exd3e.p. 16.Qxd3(図49)

 図49(黒番)

 16.Bxd3 は 16…Ng4 で黒が攻撃をかけることができるので少し正確さに欠ける。

 局面が一段落して形勢は白が有利である。1940年ニューヨークでのファイン対レシェフスキー戦では黒が 16…Ng4 で攻撃を続けた。この手の二つの狙いは明白な 17…Qxh2# ともっと巧妙な 17…Qc5+ 18.Kh1 Nf2+ である。しかし 16…Ng4 には 17.Rf4! がうまい応手で、17…Qc5+ なら 18.Qd4! で白の勝ちが確実な収局になる。なぜなら白には双ビショップがあり黒には弱い孤立ポーンがあるからである。

(この章続く)

2010年11月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(116)

第5章 小中原(続き)

5.2 戦術の狙い所(続き)

Ne5 の戦術能力

 ナイトが中原のe5の地点で強力な威力を発揮している時には手筋も自然に生じてくる(図174と図187を参照)。f3の地点での両当たりは注目に値する(図192)。

 図192

 黒は …Bxh3 でポーン得になる。…Nf3+ があるので白は gxh3 と取り返せない。途中 f4 と突いてもうまくいかない。…Nc6 と引く手がクイーン当たりの先手なので、黒は両方の駒が逃げられる。

 図192の局面で白の手番ならばよくある戦術の手段を用いてこの狙いをつぶすことができる。白は Rd1 と指せばよく、…Bxh3? にはd列での圧力を利用して Qxe5 と応じることができる。

 同様の主題はもっと洗練された手段でも現れることがある(図193)。

 図193

 例えばこの局面ならばやはり …Bxh3! が成立する。gxh3(f4 なら …g4)には …Qxd4!、Qxd4 Nf3+(図194)

 図194

となって、黒が駒を取り返してポーン得が残る。

(この章続く)

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