2010年10月の記事一覧

ルイロペスの完全理解(115)

第5章 小中原(続き)

5.2 戦術の狙い所

 小中原で現れる戦術的手段の多くは既に他の型の中原で見てきた。そこでここでは読者に適切な章を紹介してからこの型の中原に特有な戦術の着想だけを見ていくことにする。

 既に登場した戦術の主題で小中原でも時おり現れることのあるのは「e4ポーンの間接的守り」と「白の白枡ビショップのむき出しの状態」(第1章)、「Qd7 の無防備の状態」(第2章)、「a2-g8の斜筋の弱点」(第3章)および「h8-a1の対角斜筋での圧力」(第4章)で、読者はこれらを参照されたい。

(この章続く)

2010年10月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(114)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

c4の拠点とb2ポーンへの圧力

 c列が素通しになると黒はc4の地点が利用できるようになることが多い。b5のポーンでこの地点に支えられたナイトは、…a5-a4 突きによって安全を確保されることもあり、b2ポーンに対して強い圧力をかけることができる(図191)。

 図191

 この作戦は、…c7-c5、d4-d5 から …c5-c4 によって出来上がる可動中原の形においてd3の地点の占拠に関する前章で出てきた構想とそっくりの考え方に基づいている。

(この章続く)

2010年10月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(191)

「Chess Life」2010年8月号(2/5)

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米国チェス選手権戦(続き)

フランス防御 [C18]
GMヒカル・ナカムラ(2812)
GMユーリ・シュールマン(2666)
米国選手権戦決勝第2回戦、セントルイス、2010年5月23日
解説 シュールマン

 4人による決勝総当たり第2回戦では全員が同点で並んでいた。本局はヒカルの最後の白番で、全力で勝ちにくることが分かっていた。考えたのは彼がどんな戦略を選ぶかということだったが、私の弱点を研究してくるだろうと確信していた。私の定跡の幅は広くなく、一本道の手順を用いてくるかもしれないという予感がしていた。しかし問題はそのどれかということだった。1.e4 か、1.d4 か、それ以外か?

1.e4

 よろしい、1.e4 だった。これで今大会4局目のフランス防御だ。

1…e6 2.d4 d5 3.Nc3

 本局でヒカルが意表をつくことをやりかねないことは分かっていた。彼はいつも盤上に何か新風を吹き込もうとする。私は本局を前にして多くの異なった戦型を用意していた。私の得意のフランス防御に対する 3.Nc3 もその中にあった。ヒカルが「毒入りポーン」戦法を完全に研究しているかもしれない感じがしたので、こちらから彼を少しびっくりさせてやりたかった。

3…Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3 6.bxc3

6…Qa5!?

 ヒカルが 6…Ne7 7.Qg4 cxd4 8.Qxg7 Rg8 9.Qxh7 Qc7 10.Ne2 Nbc6 11.f4 に全研究を注いだかもしれないと気づくのはあまり難しくない。6…Qa5 は既に2度ほど指していて優勢な局面になった。

7.Bd2 Qa4 8.Nf3

 私の研究のほとんどは 8.Qb1 と 8.Qg4 に注いでいた。それらの方がヒカルの棋風に合っていると思ったからだ。一つは完全に閉鎖的な局面になり、ヒカルがよくそれを目指す(特に黒番で)。もう一つは非常に戦術的で、それもヒカルの得意な点である。

 一方ヒカルは中間の何かを指すのを望んでいた。ここで私はガータと一緒にトパロフとの番勝負に研究した手順を思い出そうとして長考に入った。ガータはトパロフ戦の2局を含め少しフランス防御をやって有望な局面になったが最初の4局の成績は0-4という厳しいものだった。

 2009年ハーンティ・マンシースクでのGMボリス・サブチェンコとのブリッツ延長戦の変化は全部思い出すことができた。しかし90分と追加30秒の持ち時間はそもそも十分なものだった。ヒカルと観戦者のほとんどは私がこの局面に不案内だとたぶん感じていただろう。実際は 12…h6! の局面に到達するためにどれが最も正確な手順かを思い出そうとしていただけだった。

8…Nc6

9.h4

 白の有力な変化は 9.dxc5 f6 10.Nd4(10.Be3)10…Nxd4 11.cxd4 Qxd4 12.Bb5+ Kf7 13.O-O

である。この局面には毒がある。

9…cxd4 10.cxd4 Nge7 11.h5 Nxd4 12.Bd3

12…h6!

 ガータと検討の面々はこの手のあと白は形勢互角だけを念頭におくべきだと感じていた。ヒカルはたぶん最初はアーナンドがこの手を指さなかったのだから最善手ではないだろうと思っていただろう。しかし彼は深く読めば読むほどこの手の良さを理解した。

 黒は黒枡ビショップをなくしたのでg7の地点の弱体化を防ぐことが重要である。白が …Nxf3+ のために Rh4?? と指す余裕がないので、黒はd4のナイトの世話をもう1手遅らせることができる。黒には白のポーンがh6に来れる時にはできなかったキング翼キャッスリングの選択肢もある。黒がキャッスリングしナイトをf5に置き白枡ビショップを交換することができれば(豪華な夢である)、絶好の態勢になる。白はすぐに動かなければならない。

 長い間 12…Nec6 が主手順だった。13.Kf1 Nxf3(13…Nf5 14.h6 g6 15.Bg5 は白に犠牲にしたポーンの十分な代償がある)14.Qxf3 Qd4(ビスワーナターン・アーナンドは 14…b6 と指したが多くのフランス防御の指し手は次の手順と同じような目に会いたくないだろう。15.h6 Ba6 16.hxg7 Rg8 17.Bxa6 Qxa6+ 18.Kg1 Rxg7 19.Qf6 Rg8 20.Rxh7 Qb7 21.Bg5

これは1992年のカスパロフ対アーナンド戦で、白が圧倒的に優勢である)15.c3 Qxe5 16.Re1(16.h6 g6)16…Qf6(16…Qd6 17.h6 g6 18.Qf6 Rg8 19.Bg5

は白に楽しみが多い)17.Qxd5 e5

これでたぶん黒は問題がない。

13.Kf1 Nxf3 14.Qxf3 b6

15.Qg3

 ヒカルが今にも 15.Qe2 と指しそうに感じられたが 15…Bd7 16.Rh3 Nf5 でぱっとせず白は互角を目指して奮闘する必要がある。

15…Ba6 16.Qxg7

16…Bxd3+

 面白い引っ掛けの 16…Rg8 17.Qh7? Qxc2 もやってみることができたがヒカルがこのようなことを間違えるとは思えなかった。

17.cxd3 Rg8 18.Qxh6 Qd4

19.Re1

 この手は新手である。これまでに指されたのは 19.Rc1 だけで 19…Qxd3+ 20.Kg1 Qe4!(20…Nf5?! は 21.Qf4 でクイーンが縦横に利いている)と進んだが形勢はたぶん互角だろう。21.g3(21.Bg5 Qxe5[黒は 21…d4!? と指すこともできるがどのみち可能性は互角に近いだろう]22.Bf6 Qe4 23.g3 Nf5 24.Qh7 Rxg3+ 25.fxg3 Qe3+ 26.Kg2 Qxg3+ 27.Kf1 Qf3+ 28.Kg1

これはチェックの千日手)21…Qxe5 22.Qf4 Qxf4 23.Bxf4 f6

これでたぶん互角の収局である。

19…Qxd3+ 20.Kg1

20…Rc8

 別の手は 20…d4 だが …Rc8 で悪いわけがないと感じていた。なにしろ最後の駒を展開し何も問題がないはずである。逆に白はhポーンにあまり頼れない。なぜならキングがまだ安全でなく駒もうまく連係していないからである。20…Qf3 は 21.Rh2 で無駄骨だろう。

21.Bg5?

 これが初めての本当の悪手だった。もっともヒカルは後でフランス防御を選んだのがそもそもの間違いだったと言っていた。彼と私は 21.Qe3 を真剣に検討した。黒がクイーンを盤上に残せば白は少なくともクイーンの位置を良くすることができる。クイーンを交換すれば一方の優位は他方の優位によってほぼ補われる。例えば 21…Qxe3(21…Qh7 22.Qh6[22.Qb3 なら黒はたぶん 22…Qc2 でクイーン交換を求める必要がある。なぜなら 22…Rc4 23.Qb5+{23.h6}23…Nc6 24.h6 はお互いチャンスがあっても白の方が良さそうだからである{24.Qa6? は 24…Qd3! で …Rxg2+ から …Rg4+ の開きチェックがある}])22.Bxe3 Nf5 23.Rc1 で戦いはまだ続く。しかしたぶん平和的に終わるだろう。

21…Qf5 22.f4 Rc2

 これで黒は 23…Qxf4! 24.Bxf4 Rgxg2+ 25.Kf1 Rcf2# という詰みを狙っている。

23.Rh2??

 唯一の受けは 23.Qf6 だった。しかしそれでは 21.Bg5 と指した顔が立たない。グレゴリー・カイダノフは「『ごめんなさい』ということは非常に重要である」と言っていたことがある。その意味は間違えた時はそれを早く認めて場合によっては駒を元の位置に戻すことも非常に大切であるということである。2手損になるかもしれないが被害はまだましである。23…Qxf6 24.exf6 Nf5 となれば白にとって厄介な局面だがまだ受かる可能性があった。

23…Qd3

 ヒカルは23手目にあまり時間を使わなかったので残り時間は私の7分に対して50分ほどだった。だから彼はこの局面で何か手はないかと探し続けた。23.Rh2 がそれほど悪い手だったので私が白の「何でもよい」可能性を探したとき見つかった最善はクイーン損のポーン収局だった。

24.Qf6

24…Rxg5

 ヒカルはこの手を見落としていた。彼は 24…Qd4+ だけを読んでいて、それなら試合はまだ続く(24…Nc6 でも勝ちだが 24…Rxg5 を選んだのはこの方が派手そうだからでなく、簡明だからである。チェスでの単純さをいつも好んでいたカパブランカはたぶん同じ手を選ぶだろう)。24…Qd4+ 25.Kh1 Rxg5 26.fxg5 Nf5 27.Rh3 Qg4 28.Rg1 Rxg2 29.Rxg2 Qxh3+ 30.Kg1 Ne3

黒はチェックの千日手にすることもできるがまだ勝ちを目指すこともできる。

25.Qxg5

 25.fxg5 でクイーンの助けを得ようとしても受からない。25…Nf5! 26.h6 Qd4+ 27.Kh1 Ng3# で詰む。

25…Qd4+ 26.Kh1 Qe3! 白投了

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(この号続く)

2010年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(113)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

先受けの c2-c4 突き

 白は黒が …b7-b5 と突く前に c4 と突いて …d5 を防ぐ必要が出てくるかもしれない(図190)。

 図190

 このような状況では黒はいずれにしても …b7-b5 と突いて白のd5の支配を緩めようとするのが普通である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(112)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

中原の変容-…d5 と …f5 突きの捌き

 防御側の別の目標は本章の初めで述べたように、…exd4 で始めた白の中原の破壊作業を完結させるために …d5 または …f5 突きによる捌きによってe4のポーンも消去することである(図188)。

 図188

 どちらの捌きのポーン突きも陣形に危険を伴うので黒はこのような戦略を実行に移す際には慎重にも慎重を期さなければならない。

 …f5 突きはキングの安全性の問題に影響することがあるが、…d6-d5 突きはとりわけ二つの場合に間違った手段となるかもしれない。それはポーン交換後に白の動きがより活発になる時、または逆襲の e4-e5 突きで白が有利な態勢になる時である(図189)。

 図189

 それぞれの翼で多数派ポーンが形成されるので、ポーンの形はほとんど鏡像のようになる。だから個々の局面の評価はまったく両陣営の具体的な駒の配置にかかわってくる。

 黒軍が …f7-f6 突きの捌きの手段でe5のポーンを撃滅できるように配置されている時は黒が優勢になるのが普通である。e5のポーンが維持されるならば白がキング翼攻撃の先鋒としてそのポーンを用いることができるかもしれない。

(この章続く)

2010年10月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(96)

「British Chess Magazine」2010年6月号(16/16)

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世界選手権戦(続き)

総括

 軍隊の将軍については戦争で以前の戦いで通用したのと同じ戦術を用いる誤りを犯すことがあるということが時折言われる。ビシー・アーナンドは厳密にはそのようなことをしなかった。番勝負は2007年ボンでのクラムニクに対する勝利とは酷似していない。しかし時には2006年エリスタでの同じ相手に対するクラムニクの勝利を再現させようとしているかのようだった。「模倣は最も誠実なお世辞なり」と言われる。だからウラジーミル・クラムニクは敬意と受け取るのがよいだろう。しかし両者の間には重大な違いがありそうである。アーナンドの柔軟さとトパロフの予想し易さ。番勝負の勝負所でアーナンドはクラムニク式の手と手法を用い相手を翻弄し衝動的な応手を誘った。

 アーナンドはカスパロフ以後の時代の主敵二人に対して番勝負で勝利したので、過去および現在のチャンピオンの中の前列に加えられるかもしれない。彼のチェスは完全無欠とは言えないしとんでもない悪手も少し見られた。しかし重大な岐路では相手より優っていた。最後に付け加えると彼が5歳年長であることは助けにこそなっても障害にはならなかった。ついでながら、1961年にボトビニクがタリに勝って以来彼は世界選手権戦に勝った初めての40歳超の選手になった。

 トパロフは番勝負に負けて大いに失望しているに違いない。特に地元で開催されただけになおさらである。初戦で労せずしてあげた勝利のあと布局定跡の優位は激しくアーナンドの有利に揺れた。ブルガリア選手のデジタル腕力がインド選手の人間脳のネットワークにひどく見劣りした。以降の少しの試合でトパロフは黒番では不愉快な狭小陣形の局面に、白番ではわずかに優勢の(しかしいくらか無害の)局面になった。

 これからどうなるのか。次の世界選手権戦は2012年に、たぶんロンドンで、開催予定である。そして多くの人が世代の対決、アーナンド対カールセン戦、を待ち望んでいるだろう。もちろん再戦も十分あり得る。クラムニクとトパロフはアーナンドとの2度目の対決を狙う有力候補である。見逃してはならない重要なことは番勝負がチェスの王者を決める方式としてまた確立されたこと、そして皆の認める絶対者は誰であろうとただ一人であることである。

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(この号終わり)

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ルイロペスの完全理解(111)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

せき止め地点のe5とe4ポーンに対する圧力

 e4ポーンのエネルギーを削減するために黒の用いることのできる武器は一つしかない。それはe5の地点をしっかり押さえ込むことである。しかしこの戦略は純粋で単純な封じ込めと理解してはならない。なぜならその場合白は f2-f4 と突いて、陣地の広さを生かしながら落ち着いて兵力を中原での仕掛けのために展開することができるからである。

 だから黒はe5の地点の支配に集中するだけでなくe4の地点に圧力をかけて白の駒の一部をその守りに縛り付けさせなければならない(図186)。

 図186

 この例で黒はe4に3駒を集中し、e5の地点は(…Nd7 とした後)実質的に5駒で守っている。このような状況下では f2-f4 と突くのは白にとってかえって危険かもしれない。というのは f2-f3 突きでeポーンを支える選択肢をなくし、半素通し列でなかば出遅れポーンになって動けないe4ポーンを弱めることになるからである。

 黒がe4ポーンに対して十分圧力をかけた後は、e5の地点に駒を進めて白の f2-f4 突きを誘うこともよくある。(図187)。

 図187

 e5の占拠の任務はナイトが一番適している。ナイトはそこからキング翼での攻撃に加わることもできる(例えば「5.2戦術の狙い所 Ne5 の手筋の能力」を参照)。ナイトはどちらも容易にe5に行ける。キング翼ナイトはd7の地点を経由するが、そこからc5に行ってe4に対する圧力を継続する方がもっと良いかもしれない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(110)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

e4のポーンの機動性と Bxc6 の交換

 可動中原の場合のようにe5ポーンがいなくなるとe4ポーンを突いて仕掛けることができるようになる。e4-e5 の仕掛けで白が追求できる目的はさまざまで、実際は前の章で指摘してきたこととあまり変わりない(図182)。

 図182

 b1-h7の斜筋、e4の地点および中央列が空くことは、黒のキャッスリングした囲いの重要な守り手の排除および/またはf6の地点の固定化(…g7-g6 突きが指された時)と組み合わされることもあるが、可動中原で既に見てきた要素すべてである。ここで中原の仕掛けは目的自体に関してはあまり変わりなく、それを達成する手法が異なっている。

 実際可動中原では e5 突きはd4ポーンによって構造的に支援されるが、ここでは白が f2-f4 突きで支援しさえすれば同様の状況を作り出すことができる。

 しかし白は f2-f4 突きで支援せず、戦術的手段を用いて e4-e5 突きを行なう場合の方が多い。最も一般的な主題は次の例にまとめて示してある(図183)。

 図183

 ここでは相手がe5の地点を二重に守っているので白はすぐにeポーンを突く態勢にない。中原での仕掛けを達成するために白はためらわずに Bxc6 と指して双ビショップを放棄する。それは …Bxc6、Nxc6 bxc6、e5 となった場合にd列でdポーンが釘付けになるようにするため(図184)、

 図184

または単純に …bxc6、e5 で黒のポーンを分裂させるためである(図185)。

 図185

 注意すべきは Bf4 の存在は図184ではなくてもかまわないが、図185では必要不可欠であるということである。

 黒はc6に二重ポーンができることはあまり気にする必要がない。実際短期的にはこの戦略に関する変化は、d5の地点を支配しd6の地点を弱めずに …c6-c5 と突いてd4の地点を監視することができるので黒にとって有利になることがある。また、図181のようにお互いのキングが逆翼にキャッスリングすることになればクイーン翼での反撃に都合がよい。

(この章続く)

2010年10月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[35]

eポーン布局

第4章 イタリア試合(続き)

エバンズ・ギャンビット

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4!?(図46)

 図46(黒番)

 純正ジュオコ・ピアノのところで見たように 4.d3 や 4.c3 の後で白が大きく優位を勝ち取れそうにはない。本譜の手はこの駒組に息吹を吹き込もうとする重要な試みである。白はポーンを犠牲にして本当に強力で圧倒的なポーン中原を築くのに必要な手数を得ることを期待している。そしてクイーン翼ビショップをb2かa3に展開させる可能性も作っている。

4…Bxb4

 「ギャンビットを打ち破るには受諾することである」-シュタイニッツ。黒はこのポーンを取るべきである。さもないと明らかな代償もなしに白に広さと手得を与えることになる。

5.c3

 ギャンビットの要点は黒のビショップが当たりになっているので白がこの手を先手で指すことができることにある。白はポーンをd4とe4に並べて中原を支配することを期待している。

5…Ba5

  6.d4 なら 6…exd4 で白のcポーンが釘付けになるのでここがビショップの最も理にかなった引き場所のようである。しかし白がこの釘付けを恐れる理由はない。

6.d4 exd4

 もっと堅実な受けは 6…d6 7.Qb3 Qd7 8.dxe5 Bb6 9.O-O Na5 である。しかし実戦では黒はこの2個目のポーンを取ることが多い。

7.O-O!

 白は喜んで2個目のポーンを取らせる。

7…d6

 7…dxc3?! で3個目のポーンを頂くのは少し欲張りである。本譜の手は受けに役立つ手で、弱いf8-a3の斜筋を止め、クイーン翼ビショップの筋を開け、黒のe5の地点に利かせて白のポーン中原を抑えるのを助けている。

8.cxd4

 白はd4とe4にポーンを進めるという第1の目標を達成した。そして d5 突きでナイトをどかせて Qa4+ でビショップを取る手を狙っている。

8…Bb6

 黒は白の狙いに備えた。これでエバンズ・ギャンビットのいわゆる「基本局面」になった。この局面は150年以上に渡って戦われ研究されてきた。

9.Nc3

 白はいろいろなやり方で攻撃を続けることができるが、この単純な展開の手が最善手とみなされている。

9…Na5

 この手は白のキング翼ビショップと交換するかそれを引き下がらせて黒の弱点のf7に利かせないようにする意図である。この手は黒の展開を無視しているように見えるが、実際はこの局面で黒が普通に展開することは非常に難しくなっている。例えば 9…Nf6 ならポーンを犠牲に 10.e5! dxe5 11.Ba3! で斜筋を通して白の攻撃が非常に強くなる(黒のキングが中央列でむき出しになっているので白の勝勢かもしれない)。

 黒は実際には白のキング翼ビショップをただ取りにすることを狙ってはいない。なぜなら …Nxc4 のあと白はいつでも Qa4+ で駒を取り返すことができるからである。

10.Bg5

 展開して黒のクイーンを当たりにした。

10…f6

 黒は白のキング翼ビショップと交換するためにキング翼の弱体化を受け入れた。

11.Bf4 Nxc4 12.Qa4+ Qd7

 黒が 12…Bd7 でなくこの手を指したのはクイーンでg8-a2の弱い斜筋をカバーできるようにしたいからである。

13.Qxc4 Qf7

 働きのよい白のクイーンに対抗した。

14.Nd5(図47)

 図47(黒番)

 もちろん白はクイーン交換に応じるべきでない。この局面では白が優勢である。白の強力な中原と動きの非常に活発な駒は攻撃の可能性を生み出し犠牲にしたポーンの代償を十分に取っている。

(この章続く)

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カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(109)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

f5の拠点とキング翼攻撃の作戦

 本章の初めで触れたように黒キングがいつもg8にいることはf5の地点の戦略的な弱点を際立たせる。さらにこのことはこれまで見てきた中原の型の一定の主題を成している。いつものように白はナイトをこの地点に進駐させようとする。このナイトはそこから敵のキャッスリングした囲いに対するあらゆる種類の攻撃を指揮する上で極めて重要な役割を果たす(図179)。

 図179

 クイーンのg列への移動(第2章と第3章を参照)または対角斜筋の占拠と連動してキング翼への駒による猛攻を見てとるのは容易である。忘れてならないのはf5のナイトはcポーンの前進によりd6のポーンが弱体化するとそれにも圧力をかけることになるということである(図172を参照)。この型の中原では白のナイトは古典的なスペイン経路の Nb1-d2-f1-e3(-g3)-f5 だけでなく中原でのポーン交換のあと-d4を通って-直接f5に行けることも覚えておかなければならない。

 このことを考慮に入れれば小中原で黒がよく …g7-g6 突きの手段によりf5の地点を守ることにするのは理にかなっている。このポーン突きは布局がある程度進行した段階で行なわれるかもしれないが、いずれにせよ展開の先触れ、または黒枡ビショップのg7への典型的な再配置への先触れとなる(図180)。

 図180

 黒はこの捌きによって同時に四つの異なった目標を達成する。即ちf5の地点を守り、h8-a1の対角斜筋を支配し、ルークをe4のポーンに利かし、…g7-g6 突きによって生じたf6とh6の弱点を補う。

 この種の戦略には二つの主要な欠点がある。

 (1)c7ポーンを突きが必要になれば(または既に突いてあれば)d6のポーンを守ることが非常に難しくなる。図174を参照。

 (2)白は逆キャッスリングとhポーンの突進とに基づいた攻撃に着手する気になるかもしれない。特に黒が布局の早い段階で …Bg7 と展開する方を選択した場合はそうなる(図181)。

 図181

 この場合黒はビショップ交換を避けるために …Bh8 と引けるようにキング翼ルークを適時に移動しておかなければいけない。ビショップを残しておくことはその大きな攻撃能力だけでなくキングの回りの弱体化した地点に利きを維持しておくために極めて重要である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(108)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

中央拠点のd4と対角斜筋のa1-h8

 白はd5の地点を拠点として用いるだけでなく、d4の地点を用いて効果的に駒を中央に配置することもできる(図176)。

 図176

 実際d5の地点の場合のように黒はc7のポーンを突くことによってのみd4の地点を支配することができる。しかしこの決断は図172の場合よりもはるかに否定的な効果をもたらす。即ち …c5 突きのあとd6のポーンは出遅れポーンとして固定され、d5の地点はひどく弱体化する。d4の拠点はd5の拠点ほど前進してはいないけれど、白の駒が常にそこにいることは黒にとって同じくらい目障りである(図177)。

 図177

 例えばナイトを具体例に取ると、白はそれを用いてb5のポーンに圧力をかけたり(a2-a4 突きと連動して)、強力な Nd4-f5 でキング翼攻撃に協力することができる。

 一方中央の位置にいるのがクイーンの時は(d4で一組のナイトが交換された結果の時もあれば中原のポーンが直接交換された結果の時もある)、その攻撃の影響力は特に対角斜筋のa1-h8において顕著である(図178)。

 図178

 g7の地点に対する圧力は黒が既にキャッスリングしている時でもキング翼でまだ兵力を動員しなければならない時でもことさら油断がならない。最初の場合クイーンの動きは例えばf5のナイトとの協力でキャッスリングした囲いを攻撃する目的に決定的な役割を果たすかもしれない。あとの場合白は Bf8 の動員を防ぐことによって相手の展開をかなり邪魔することができる。

 最後に、白はクイーン翼ビショップをd4の拠点に進めることにより、またはもっと多くの場合 b2 から Bb2 でフィアンケットすることにより、対角斜筋を占拠することもできる。

 黒は中原から駒を追い払うためにまたは圧力を軽減するために …c5 や …f6 のような形を崩す手を指す前に慎重に考えなければならない。それらよりももっと良い解決策が二つある。

 1)中原で駒を交換する。

 2)自分で対角斜筋を支配するために、すぐにキング翼フィアンケットをする、または既に …Be7 から …O-O と展開しているならば典型的な捌きの …Re8、…Bf8、…g6 および …Bg7 を指す。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(107)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点(続き)

d5の拠点とd列

 前述したようにe5とd4のポーンがなくなったすぐの結果はd5の地点の著しい弱体化に現れる。この地点の占拠は白にとって最重要の戦略目標となる。大体においてこの役目はクイーン翼ナイトによって直接的には Nb1-c3-d5 で、またはこれが不可能な時は古典的な「スペイン」経路の Nb1-d2-f1-e3-d5 を追求することによって行なわれる(図171)。

 図171

 Nd5 の地点を維持するために白は注意深くd列に圧力をかけて、相手が …c7-c6 で招かれざる客を追い払おうとする場合に備えて擬似出遅れポーンとなったd6のポーンにすぐに圧力を加えることができるようにしなければならない(図172)。

 図172

 言うまでもないことだがd6の地点に対する攻撃はナイトの再配置によって(Nd5-e3-f5 または Nd5-e3-c4)、またはd列に大駒を重ね黒枡ビショップをh2-b8の斜筋に配置することによって強化できる。

 d5の地点とd6のポーンの弱点は黒が …c5 と突かされたり中原の争点が続くさなかにそれを選択した時にたちまち明白になる。後者の場合小中原の形成はc列のいつもの開通のあとにだけ現れる(図173)。

 図173

 明らかに黒がこのような劣った形を受け入れることができるのはクイーン翼、c列およびe列で展開する反撃が動的に十分な代償を保証する場合だけである。

 最後に言っておくべきことは、d6のポーンは一見した感じよりもはるかに難しい標的になることがあるということである。実際黒はこのポーンをキング翼ビショップとキング翼ルークで直接守れるし、ナイトをe5に運ぶことによってh2-b8の斜筋を遮断しc4の地点に対する監視を増強することができる(図174)。

 図174

 このような方策はd6のポーンに対する第一波の襲撃をかわすのにちょうど十分である。だから白は自陣の形の優位に信頼を置き過ぎないようにすべきである。というのは例えばc列における黒の反撃の可能性よりも成果をあげるのが難しいことがあり得るからである。

 d5の地点のことに戻ると、通常の事態の進展で敵のナイトがそこに陣取れば黒は被害なしに長く持ちこたえることはできない。なぜならこの事態は黒の駒をさらに押し込め、白のキング翼攻撃を有利にさせることができるからである。もし黒が …c7-c6 と突けない、あるいはそうしたくないならばキング翼ナイトを使って交換することによりこの侵入者を物理的に除去することを決める(図175)。

 図175

 白は状況によりd5をe4のポーンででも駒ででも取り返すことができる。白がb1-h7の斜筋を使って敵のキャッスリングした囲いに攻撃をかけることができるならば、または中原からクイーン翼の方面にかけて得られる陣形の広さの優位から得することがある時は、ポーンで取り返す方が有利かもしれない。

 逆に駒で取り返すのはd5の地点の弱点につけ込む方針を追求することになる。この点について付記すると、このような拠点を占拠するのに最も適した駒はナイトであるが、ビショップまたはルークでも厄介な圧力をかけることができる。

 最後に、白が黒枡ビショップを相手のキング翼ナイトと交換することにより(Bc1-g5xf6)-交換中原ではある程度の頻度で起こるが-単純化を防ごうとするのはきわめてまれなことである。なぜならこの場合黒枡全般、特に(…Be7xf6 と取ることに続いて)h8-a1の斜筋、を完全に譲ることは大きな不利益になることがあるからである。

(この章続く)

2010年10月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(190)

「Chess Life」2010年8月号(1/5)

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米国チェス選手権戦

FMマイク・クライン
写真 ベツィー・ダイナコ


セントルイス・チェスクラブの快適な対局室で最後の戦いを繰り広げる決勝の4人

 カームスキーとシュールマンは第9回戦の勝局のおかげで決勝に残った他の二人のナカムラとオニシュクに差をつけた。これらの試合で決着がついたのは大会方式の「存在理由」に正当性を与えることになった。この方式はクリス・バード、IMグレッグ・シャヘードそれに女流GMジェニファー・シャヘードによって考案された(ジェニファーは大会委員長を務めるとともにGMモーリス・アシュリーと一緒に実況解説者を務めた)。大会の終わり近くで上位選手と下半分選手との対戦の代わりに最上位の4選手が最終4日間のために組み合わされた。

 第9回戦でナカムラは最上位席で白番だった。前局のあと連覇を狙うチャンピオンの発言があったので観戦者は他のなによりもこの試合を待望していた。ナカムラは一つの例外を除いて慎重に指すのが自分の戦略だと言った。

 彼は「4人の中で1局勝てる者がいれば(チャンピオンになる)」と語った。「アレックス(・オニシュク)と指す時は堅実に指す。みんなユーリ(・シュールマン)戦では勝とうとする。」

 シュールマンはあからさまな言い返しには誘い込まれなかった。彼は自虐を装うことによって受けた侮辱をそらした。にこりとして「私には分からないがそれは良い戦略かもしれない。私も同じように指す。彼にはその戦略を楽しませてやる」とだけ言った。

 第6回戦の後のナカムラの前述の発言はいくぶん予言じみていた。「首位でみんなと対戦した昨年と似た状況になった。4人による破局を待っている。最悪をかなり期待している。これまで不釣合いな相手に対して不釣合いな色だった。」それでも彼はシュールマンに対して白で、ほとんどの者が激闘を期待した。

 chess.com がスポンサーになっている1千ドルの名局賞がもらえる可能性もあり、ナカムラとシュールマンは戦術で火花を散らした。一閃の 24…Rxg5! のあと仲間の選手たちが一人また一人と自動車事故を見に来る野次馬みたいにやって来た。ナカムラはそのたびに首を横に振った。一方シュールマンは盤面から顔を上げずに興奮を隠すことに努めていた。彼は歓喜の足踏みよりもほとんど動かぬまま読みを確認していたのだ。後で彼は自分の感情を隠すことができないのでポーカーは決してするべきでないと友人たちから言われていると語った。この場合彼の対戦相手も隠すことができなかった。ナカムラは頬をぷっと膨らませ、クイズ番組の答えに窮した出場者みたいに口を片方にゆがめていた。

 「ヒカルにとってそれは戦争のようなもの、人生の最後の戦いのようなものだ」とGMアレックス・ストリプンスキーが言った。「それが彼の戦い方なのさ。」

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(106)

第5章 小中原(続き)

5.1 戦略の着眼点

 純粋に戦略上の観点から見ると …exd4 と取ることは黒にとって少し譲歩したことを意味する(相手がポーンでなく駒でしかd4を取り返せない時でもそうである)。つまり黒は第1章で概説したように中原の争点によって作られた戦いに負けてしまったのである。形だけを調べればこの中原ポーンの交換は白に有利であることがはっきり分かる(図170)。

 図170

 白の残りの中原ポーンは相手より先の方に進んでいて、その結果陣地の広さの優位と大きな捌きの自由とをもたらしている。e4ポーンの動きは特にd5とf5の地点に顕著で、戦略上の理由から共に黒の弱点となっている。理由の一つは …c7-c6 と突くとd6のポーンが擬似出遅れポーンになり、理由のもう一つは黒キングがg8の地点に落ち着くことになると …g7-g6 突きが黒の黒枡ビショップがh8-a1の対角斜筋に居を構える用意がある時だけ安全だからである。

 逆に動的な観点から見ると …exd4 と取ることは白の中原を完全に壊滅させる目的の作戦の第一段階と理解することができる。それは …d5 または …f5 と突っ掛ける捌きで強力なe4ポーンを消し去ることにつながっていく。d4ポーンを取ることはe列とh8-a1の斜筋で大きなエネルギーを解放する。しかし黒のe5ポーンがなくなることは白のeポーンにニムゾビッチが言うところの「伸びたい欲望」を与えることも事実である。

 実際この種のポーンの形についてのニムゾビッチの考え方は特筆する価値がある。彼が論じる正確な局面はスコットランド試合(1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4)から生じる。しかし基本的な形は同じである。「我がシステム」でニムゾビッチは次のように言っている。「[eポーンのような]このようなポーンは処刑するか拘束しなければいけない。従って罪人は極刑または終身刑に処する。あるいは二つを合わせてもよい・・・。」可動中原の場合のように見た目は立派な白の形にもかかわらず戦いは非常に不透明である。

(この章続く)

2010年10月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(105)

第5章 小中原

主手順 - シュタイニッツ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.d4 Bd7 5.Nc3 exd4 6.Nxd4(図169)

 図169

 この型の中原は exd4 取りに対し白がd4を駒で取り返すのが特徴で、「小」中原として広く知られている。これは黒がa4-e8の斜筋の圧力を緩和するために通常の …a6 から …b5 突きという処置を取った時、および c3 c5、d4 cxd4、cxd4 という手順でc列が素通しになった時のいろいろな戦型で生じる。時にははるかにまれではあるが dxe5 取りのあと黒が駒でe5を取り返し中原の形がそれ以上変わらなかった時にもこれと同じ形が生じることがある。

 それでは最も頻繁に小中原になる戦法の例を少し見てみよう。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 の後

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3 Bb7 13.Bc2 Nb8 14.b4(または 14.b3 Nbd7 15.Bb2 c6 16.c4 exd4 17.Bxd4)14…Nbd7 15.Bb2 g6 16.c4 exd4 17.cxb5(または 17.Nxd4)17…axb5 18.Nxd4

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Nd7 12.Nbd2 cxd4 13.cxd4 Nc6 14.Nf1(または 14.Nb3 a5 15.Be3 a4 16.Nbd2 exd4 17.Nxd4)14…exd4 15.Nxd4
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 cxd4 13.cxd4 Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6(または 15…Rfe8 16.b3 exd4 17.Nxd4)16.a3(または 16.dxe5 Nxe5 17.Nd4)16…Nxd4 17.Nxd4 exd4 18.Qxd4

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 シュタイニッツ戦法
 - 3…d6 4.d4 Bd7(または 4…exd4 5.Qxd4)5.Nc3 Nf6 6.Bxc6 Bxc6 7.Qd3 exd4 8.Nxd4
 - 3…Nf6 4.O-O d6 5.d4 Bd7 6.Nc3 Be7(または 6…exd4 7.Nxd4)7.Bxc6 Bxc6 8.Re1 exd4 9.Nxd4

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.Bxc6+(または 5.c4 Bd7 6.d4 exd4 7.Nxd4)5…bxc6 6.d4 exd4 7.Qxd4

 タイマノフ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 b5 5.Bb3 Na5 6.O-O d6 7.d4 exd4 8.Nxd4

 その他の戦法
 - 3…Nge7 4.d4 exd4 5.Nxd4

(この章続く)

2010年10月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(95)

「British Chess Magazine」2010年6月号(15/16)

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世界選手権戦(続き)

第12局 5月11日

 クイーン翼ギャンビットのラスカー防御は堅実だが一般的にはあまり面白くない。中盤戦の初めを見て本局の引き分けを予想しても責められないだろう。トパロフは同じ手を繰り返す機会があったが頑固なまでに「どんなことがあっても戦い抜く」という自分の試合方針にこだわった。あとから考えればこの方針を愚か又はバカ正直と批判するのはたやすいがこれが彼に多くの優勝をもたらしてきたのは疑いない。しかし番勝負においてはもっと柔軟である必要があるだろう。

 千日手をはねつけたトパロフはナイトの捌きに走った。それは無駄手に終わりアーナンドが手得を生かしてトパロフのポーン中原を攻撃した。ここで運命が訪れた。さまよえるナイトをポーンを守る地点に引き戻す代わりにトパロフは軽率にポーンを交換した。これでアーナンドのクイーンとビショップがa8-h1の斜筋を押さえることができた。動機が何であってもこれは世界選手権戦の歴史においてほとんど類を見ないトパロフの愚行だった。こんな手はほとんどのアマチュア選手でも指す気にならないだろう。

 アーナンドは相手が発狂したのではないかと思ったとあとで語った。勝利への手順は間違え易いところがないわけでもなかったが、アーナンドの実力の選手にとっては簡単な道のりだった。トパロフのキングは当然ながら野外に引きずり出され破滅するまで追い回された。これは番勝負の意外な結末で、地元のファンにとっては非常に残念な結果だったに違いない。

ここまでの結果 アーナンド6½点 トパロフ5½点

 これでアーナンドがタイトル防衛に成功し引き続き世界チェス選手権者の座を維持した。彼には大いに祝福を送りたい。そして敬服すべき面白い戦いを見せてくれた雄々しい挑戦者には健闘をたたえたい。

第12局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

クイーン翼ギャンビット拒否/ラスカー防御 [D56]

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 Be7 5.Bg5 h6 6.Bh4 O-O 7.e3 Ne4 8.Bxe7 Qxe7 9.Rc1 c6

10.Be2

 トパロフは2、3年前の取るに足らない早指し大会でレイティング2300台の選手相手に 10.a3 と指したことがあった。しかしアーナンドは恐らく世界選手権戦でその手をまた指すことを期待してはいなかっただろう。ここでは 10.Bd3 が圧倒的によく指されているがトパロフはアーナンドがグリシュク相手に黒で指しているのを知っていただろう。グリシュクが 10.Be2 と指していたのでその手順をたどりたかったのかもしれない。

10…Nxc3 11.Rxc3 dxc4 12.Bxc4 Nd7 13.O-O

13…b6

 13…e5 14.Bb3 Re8 が2009年モスクワ・ブリッツ大会のグリシュク対アーナンド戦だった。2009年MTelマスターズでのトパロフ対カールセン戦は 14…Rd8 だった。どちらの試合も引き分けに終わった。

14.Bd3 c5 15.Be4 Rb8 16.Qc2

16…Nf6

 16…Bb7 17.Bxb7 Rxb7 18.Rc1 は白が文句なく勝っている。

17.dxc5 Nxe4 18.Qxe4 bxc5 19.Qc2

 19.b3 Bb7 は2008年にグランドマスターの試合で2局指されどちらも引き分けに終わった。

19…Bb7

20.Nd2

 黒をもって指す多くの選手はcポーンが取られそうなほど弱いので形勢を悲観するだろう。しかしアーナンドはその埋め合わせに活動的に指し回すことに自信をもっていた。20.Rxc5?! は 20…Bxf3 21.gxf3 Rxb2! で黒が少なくとも互角の形勢である。

20…Rfd8 21.f3 Ba6

22.Rf2

 22.Rc1 の方が正着かもしれない。しかし 22…Rd5 から …Rbd8 で黒も十分に指せるだろう。

22…Rd7 23.g3 Rbd8 24.Kg2 Bd3 25.Qc1 Ba6

26.Ra3

 ここは重大な岐路である。トパロフは 26.Qc2 で手を繰り返すことができた。なぜそうしなかったのか?つまるところこの局面はほとんどの基準に照らしても互角である。一つの一般的な見方は彼が短時間の方の試合に秀でているとみなされている相手との早指しの延長戦を恐れたということである。別の見方は彼が本来非妥協主義者で、引き分け提案は行なわずどの試合も自然な帰結まで戦い抜くということを選手権戦前に明言していたからだということである。三つめの見方はもちろん、アーナンドが 26…e5!? と手を変えるかもしれないので必ずしも試合が千日手で終わらないということである。

26…Bb7

27.Nb3

 c4に腰を下ろす目的のこのナイトの捌きはかなり手数がかかる。デイリー・テレグラフ紙に執筆しているマイケル・アダムズはすぐに 27.e4 と突いて黒のビショップの利きを止める方が良いと考えていた。それでも黒は 27…f5 と指すことができ、28.Qe1!?(28.Rxa7 fxe4 29.Nxe4 Bxe4 30.Rxd7 Bxf3+ 31.Rxf3 は互角になる)28…fxe4 29.Nxe4 c4 となれば両者とも不満のない分かれのように見える。

27…Rc7 28.Na5 Ba8 29.Nc4 e5

30.e4

 30.Rd2 e4 31.f4 Rd3 なら非常に手堅い。ここで 32.Ne5 なら黒は 32…f6!? と応じるかもしれず、以下 33.Nxd3 exd3+ 34.Kf2 Qe4

となればチェックの千日手による引き分けになる。

30…f5!

 黒のビショップのために対角斜筋をこじ開けようとするこの手は当然で良い手である。しかしこの手を指す時アーナンドはまさかそのとおりになるとは期待できるはずもなかった。

31.exf5??

 このおぞましい決断は規定手数までまだ40分も残っている時に3分の考慮で成された。マイケル・アダムズは重大なときにトパロフが危機感を喪失したという意見を述べた。たぶんトパロフの自負心も責任の一端にあるだろう。なぜなら正着の 31.Nd2 は27手目で去った地点にナイトを戻すことを意味するからで、ここまでの手が無駄手であったことを認めることになるからである。31.Nd2 のあと白陣は受かっている。例えば 31…fxe4 32.Nxe4 Bxe4 33.fxe4 Rd4 34.Qe3 Qd6 35.Qf3 Rd2 36.Rc3

で白には黒のd列支配を恐れる理由が特にない。なぜなら黒陣にも弱点がいくつかあり代償として標的にできるからである。

31…e4

 観戦者たちがトパロフの 31.exf5? に驚かされたとしたら彼の次の手には本当にあっけにとられたことだろう。

32.fxe4??

 これはたちまち負けになる。31.exf5 は確かにトパロフ陣に大きな打撃を与えたけれども、白が正気に戻るのに間に合っていたら 32.Re3 exf3+ 33.Kg1 Qf7 のような手を指しよろめきながらも頑張っていただろう。もっともf3のポーンは大きな悩みの種のままであるが。

32…Qxe4+ 33.Kh3

 これは戦力を損せず明白な詰み筋を与えない唯一の手である。しかし黒には一手詰みとナイト取りを狙う明白な手があった。

33…Rd4 34.Ne3

 観戦中の大家たちはここで逆向き分析のやり方を用いて、トパロフの31手目と32手目のポカ2連発は黒の次の強力だが明白というわけでもない手を見落としたからではないかと推測した。この理論はあとでトパロフ自身によって確認されたが、それでも黒の指すかもしれない色々な手を詳細に読まずにキングがそんな身の毛もよだつ野ざらしの場所にいる局面をどのように評価していたのか見当がつかない。しかしこれが実際に起こったことである。この強豪選手の比類のない分析能力がどういうわけかプレッシャーで壊れていた。

34…Qe8!

 これこそ最善手だが勝つための唯一の手ではないようだ。34…g5!? でも勝てそうである。

35.g4 h5

 勝つための絶対手だがほとんどのクラブ選手でもこのような主眼の切り崩しの手を見つけることができるので感嘆符は付けないでおく。

36.Kh4

 36.g5 は明らかなクイーンの舞い戻りの 36…Qe4 があるので駄目である。そうなっては詰み狙いの攻撃に対しもう防ぎようがない。

36…g5+

 実戦の手はたぶん人間にとっては一番明快な勝利への道である。しかしコンピュータの推奨する 36…Qd8+ の方が優るかもしれない。アーナンドは恐らく色々な受けの手があるのでこの手を避けたのだろう。

37.fxg6e.p,

 37.Kxg5 は 37…Rg7+ 38.Kh4 hxg4 で早くお仕舞いになる。

37…Qxg6

38.Qf1

 トパロフは最善手を見つけた。この手はf列でのチェックに多くの期待がもてる。代わりに 38.h3 は単純に 38…hxg4 39.Nxg4(39.hxg4 は 39…Rh7+ 40.Kg3 Qd6+ で次の手で詰む)39…Rh7+ 40.Kg3 Rxh3+! からあと2手で詰む。

38…Rxg4+ 39.Kh3

39…Re7

 他にもいくつも良い手があるが全部が勝ちになるというわけではない。例えば 39…Rg7? と重ねる手は …Rg3+ からの詰みがあって魅力的だが、40.Rf8+ Kh7 41.Qf5! という手があって黒の勝つ可能性が消えてしまう。

40.Rf8+

40…Kg7

 チェスにおける最も典型的なジレンマの一つは規定手数の最終手に選択肢があるがどちらを指すべきか分からない場合である。しかしアーナンドはここではキングをどちらに逃げても勝つので気楽である。40…Kh7 は 41.Rh8+(39…Re7! と 39…Rg7? との違いは 41.Qf5 の後で分かる。本譜の場合 41…Rxe3+! 42.Rxe3 Bg2# で黒が勝てる)41…Kxh8 42.Qf8+ Qg8 43.Qxe7 Bg2+ 44.Nxg2 Qc8!

で黒の勝ちになる。これはちょっと読むのにややこしそうなので、アーナンドは 40…Kg7 の方を選択したのだろう。

41.Nf5+ Kh7

42.Rg3

 42.Nxe7 は 42…Rh4+! 43.Kxh4 Qg4# の2手詰みになる。

42…Rxg3+ 43.hxg3 Qg4+ 44.Kh2 Re2+ 45.Kg1 Rg2+ 46.Qxg2 Bxg2

47.Kxg2

 47.Rf7+ は 47…Kg6! 48.Rg7+ Kxf5 49.Rxg4 hxg4 50.Kxg2 Ke4 51.Kf2 Kd3

で簡単な白勝ちのキング+ポーン収局になる。

47…Qe2+

 長い一本道の手順が終わったが、アーナンドは規定手数に達する所まで読むのが苦にならなかっただろう。手数はもう少し続くが、選手権防衛が目の前に迫っても世界チャンピオンには懸念するようなことが何もない。

48.Kh3 c4

 これは正確な手である。48…Qxb2 は正確さで少し劣っていて、49.Kh4 で白に一縷の望みを与える。

49.a4 a5 50.Rf6

50…Kg8

 黒は勝ちを逃がすことのないようにhポーンにこだわってさらに保険をかけた。50…Qxb2 は 51.Rh6+ Kg8 52.Rxh5 c3 53.Nd4 となってまた白に要塞の態勢を築く可能性が少し出てくる。

51.Nh6+ Kg7 52.Rb6 Qe4 53.Kh2 Kh7

 白はキングやナイトが動くと戦力損を招くので手詰まりの状態に近い。

54.Rd6 Qe5 55.Nf7

 55.Rb6 は 55…Qd4 でルークが過負荷になりb2のポーンがチェックで落ちる。

55…Qxb2+ 56.Kh3 Qg7 0-1

 このあとは 57.Nd8 Qg4+ 58.Kg2 c3 ですべて終わりである。チェス王者ビシー・アーナンドに栄えあれ!

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(104)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図168(再掲)

 29.Bxd3 cxd3 30.Bc1 Qa1 のあと Na3 の処刑が避けられそうもないことを考慮すると(主たる狙いは 31…Ne4)白は絶望的状況のように見える。しかしカスパロフはナイトを運命に委ねることによりしのぎを見つけた。

29.Qf3! Nd7!?

 黒は 29…Qxa3 30.Nf6+ Kh8 31.Qh5! Rxb1+ 32.Bc1+(32.Kh2? は 32…Rh1+! 33.Kxh1 Nxf2+ で黒が勝つ[訳注 34.Kg1 Qxg3 35.Bg7+ Kxg7 36.Ne8+ で千日手引き分けのようです])32…Kg7 33.Ne8+ でチェックの千日手になることに気づいた。そこで本譜の思い切った手で別のルートで勝ちにでた。

30.Bxf8 Kxf8 31.Kh2!!

 これが防御の核心である。白はチェックでb1のナイトを取られるのを防ぎ、同時に 32.Nh6(本譜の手がなければ 32…Qc1+ で取られる)と 32.Nxc4 Bxc4 33.Bxd3 の二通りの狙いを作った。

31…Rb3

 黒は両方の狙いを防ぎ、いずれ Na3 を破滅させることができると楽観し続けている。

32.Bxd3 cxd3

 32…Rxa3 33.Qf4 Rxd3 34.Qd6+ Kg7 35.Qxd7 Rxg3 36.fxg3 ならどちらの選手も勝てそうにない。カスパロフ自身はこのあと 36…Bb7! を推奨していて 37.h4! Ba8! 38.Qd8 Qd4 39.Qxa8 Qxg4 40.Qa1+ Kf8! となれば互角である。

 カルポフはまだ勝ちを期待していたが、おごれる者久しからず・・・

33.Qf4

 この手は急に黒キングの薄みをさらけ出させた。これでしのぎを見つけなければならないのは黒になった。

33…Qxa3??

 黒は時間に追われて27手目と29手目の決断に高価なツケを払うことになった。ここは 33…d2! と指さなければならなかった。例えば 34.Nh6 Nf6! 35.Qd6+(35.Qc7 は駄目で 35…Nd7! 36.Qxd7? Qf6! となればポーンが昇格する)35…Ke8(35…Kg7? 36.Nf5+ Kh7 37.Qf8 は白の勝ち)36.Qxa6 Qxa3(より安全な手の 36…d1=Q に対してカスパロフは次のようなハラハラする変化を示している。37.Qa8+ Kd7 38.Nc4 Qba1 39.Qc6+ Ke7 40.Qc7+ Nd7 41.Nf5+ Kf6-41…gxf5? 42.Qd6+ は白が勝つ-42.Qd8+ Kxf5 43.Qg5+ Ke4 44.Rxb3 Kd4 45.Qf4+ Kc5 46.Rf3 これで白が優勢と考えている[訳注 46.Qc7+ Kd4 47.Qf4+ で千日手のようです]。もっとも 46…Qxd5 で何もこの見解を裏付けるものがないようである)37.Qe2+ Kf8 38.Qxd2 Rxg3 39.fxg3 Qd6 40.Qf4 Qxf4 41.gxf4 Nxd5 これで …f5 で白のナイトを動けなくする狙いがあり互角である。

34.Nh6

 これで白の一本道の勝ちになる。

34…Qe7 35.Rxg6 Qe5 36.Rg8+ Ke7 37.d6+ Ke6 38.Re8+ Kd5 39.Rxe5+ Nxe5 40.d7 Rb8 41.Nxf7 1-0

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(103)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図167(再掲)

 23…g6? は大きな誤りである。24.Bd2! Qxb2? 25.Bc3 Qxa3 26.Qd4 で白の勝ちになる。一方 23…Nbd3 は成立するようである。例えば 24.Bxd3 Nxd3 25.Qa4 Ra8 26.Bd2 Qxb2 27.Nxc4 Qb1+ となって、白はポーン得を維持するがこの程度の優勢では勝ちに結び付けられそうにない。

 本譜の手のあと黒はポーン損にもかかわらず …c7-c5 突きから派生した中原のせき止めに関連する反撃の主要な目的を達成した。これで白は相手が主導権を取る間傍観したくなければ積極的に局面を動かさなければならないはめになった。

24.e5!

 カスパロフは黒の直前の手でe5の地点の支配が緩んだのにつけ込んで主眼の仕掛けを実行に移した。他の道はどれも白が守勢に追い込まれる。

24…dxe5 25.Nxe5 Nbd3?

 この手はb列でルークを使えるようにして自然であるが、正着は次の解説での変化が強調するようにc2の地点の支配を続ける 25…Ncd3! だった。その後の想定手順は 26.Ng4 Qd4(26…Qh4 もありそうである)27.Nc2 Nxc2 28.Bxc2 Bd6!(28…Qxd5? は 29.Nf6+! gxf6 30.Rg3+ で白が勝つ。28…Bc5? は 29.Qf3! で 30.Nxh6+ から 31.Qg3+ と 30.Re4 の両様の狙いがある)で、ポーンの代償が十分にある。

26.Ng4?

 白は黒の悪手を見抜けなかった。26.Qc2! なら白はf2のポーンを守りc4のポーンを当たりにしていた。以下は 26…Rb4 27.Nc6(27.Naxc4?? は明らかにだめで 27…Bxc4 28.Nxc4 Rxc4 29.Qxc4 Qxf2+ で黒の勝ち[訳注 30.Kh1 で互角のようです])27…Rb7 28.Re8 で、黒が守勢に立たされる。

26…Qb6

 26…Qd4? は駄目で 27.Nc2 Qxd5 28.Nf6+! で白が勝つ。

27.Rg3 g6!?

 黒は局面を支配していると感じ、冷静沈着にhポーンを捨ててbポーンの包囲攻撃を完了した。27…Ne4 ならもっと危険が少なかった。

28.Bxh6 Qxb2(図168)

 図168

(この章続く)

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チェス布局の指し方[34]

eポーン布局

第4章 イタリア試合(続き)

ジュオコ・ピアノ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5(図44)

 図44(白番)

 3手目でキング翼ナイトの代わりにキング翼ビショップを展開することにより黒は 3…Nf6 から生じる可能性のある戦術のいくつかを避けた。例えば 3…Bc5 への応手で白は黒のクイーンがg5の地点に利いているので Ng5 と指すことができない。キング翼ビショプを動かすのは妥当な作戦だと判断したとして、c5は正しい地点なのだろうか。その答えは明らかに「正しい」である。なぜなら他の地点はどれも黒にとって不利な点があるからである。ビショップをe7の地点に展開するのは不必要なほど消極的だし、d6は後でdポーンを突くのにさしつかえるし、b4は白が強力なポーン中原を構築するのを手助けするだけである(白は 3…Bb4? に対して 4.c3 と突いてビショップを当たりにして d4 突きを用意する)。さらに言えばc5のビショップは中原のd4の地点に利き白の弱点のf2をにらんでいるので好位置である。

4.d3

 この手からのあとの布局はしばしば「ジュオコ・ピアニッシモ」(最も静かな試合)と呼ばれる。今の時点では 4.d3 でクイーン翼ビショップの筋を開けc3の地点をナイトが自由に占めることができるとだけ言っておく。だからこの布局での白の取るべき戦略は兵力を素早く積極的に協調させて展開することにより優勢になるように努めることである。4.d3 の代わりに早い段階での d4 突きの達成を目指す 4.c3 もよく指される手である。しかし 4…Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ で黒は何の問題もない。

4…Nf6

 黒も迅速に駒を戦いに投入したがっている。黒はもうf7の地点への狙いを心配する必要がない。例えば 5.Ng5? O-O 6.Bxf7+? は 6…Rxf7 7.Nxf7 Kxf7 となって黒はルークとポーン1個と引き換えに駒を2個得る(これ自体黒が戦力的にわずかに有利である)。そして白の展開していた駒がすべて盤上から消えたので黒が大いに優勢である。

5.Nc3

 これも単純な展開の手である。このナイトは明らかにc3にいるべきで、黒がポーンを …d5 と突いて捌きに出てくるのを防ぎ、あとで効果的なd5の拠点を自分で占拠する狙いを持っている。

5…d6

 これで局面は対称形になった。白がまだ先着の効を保っているので形勢互角とはとても言えない。

6.Bg5

 これは最も攻撃的な手で、黒のナイトを釘付けにしている。この釘付けは黒にとって少し不快である。というのは白が Nd5 から Nxf6+ で黒のキング翼のポーンの形を乱す狙いを持っているからである。

6…h6

 黒はすぐに釘付けをはずそうとしている。ここで白が 7.Bh4 と引けば黒は 7…g5 で釘付けをはずすのを続けるだろう。普通はキング翼のポーンをこのように突くのはキングの前面に深刻な弱点を作り出すのだが、黒はまだキャッスリングしていないので大丈夫だろう。

7.Bxf6 Qxf6 8.Nd5

 白はナイトを圧倒的な地点に据えた。これで黒は 9.Nxf6 と 9.Nxc7+ によるキングとルークの両取りに対処しなければならない。

8…Qd8

 8…Qg6 は本譜の手よりも劣るだろうが戦術的に面白い手である。

9.c3

 白は主導権を用いて中原を強化しクイーン翼を広げるところである。この手は黒の駒をd4の地点に来られなくし、b4 突きを用意している。

9…Ne7

 もちろん黒は白の邪魔なナイトと交換したがっている。

10.b4

 黒のビショップを攻めた。

10…Bb6 11.Nxb6 axb6 12.d4!

 これは中原の主眼のポーン突きである。

12…exd4

 この手のあと白が中原で優勢になるが他に適当な手がなかった。黒のeポーンは二重に当たりになっていて、守ろうとしてもうまくいかない。例えば 12…Ng6? は 13.dxe5 Nxe5 14.Nxe5 dxe5 15.Qxd8+ Kxd8 16.Bxf7 だし、12…Bg4? も 13.dxe5 dxe5 14.Bxf7+ Kxf7 15.Nxe5+ でどちらも白が戦力得する。

13.Nxd4

 13.cxd4 なら黒が 13…d5 と突いて白の中原を攻撃できる。白の最良の作戦は楽に維持することのできないポーン中原を構築しようとすることでなく、駒の活動できる地点を確保することである。

13…O-O 14.O-O(図45)

 図45(黒番)

 白の駒が好所についているので形勢は白が少し優勢である。黒の最良の作戦は 14…Nc6 で駒を交換し引き分けの収局に持ち込むことである。14…d5 は 15.exd5 Nxd5 16.Qf3 で白の圧力が強いので少し疑問である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(102)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図166(再掲)

 代わりに 16.dxc5 dxc5 はそれほど有望でない。なぜなら黒が …g7-g6 突きでf6の地点を弱めていないからで、17.e5 Nd7 は時期尚早ではなくても大して危害を与えることにならない。本譜の手のあと局面は典型的な可動中原になっている。黒は部分的に敵の中原ポーンを凍結させることに成功した。そしてここからは敵ポーンの片割れの突き進もうという意志から注意をそらさずにe5の地点をしっかりと支配し、同時にクイーン翼でできるだけ迅速に自分の反撃を用意することに気を使わなければならない。白の方はキング翼で攻撃をかけなければならない。特に好機をとらえてe5突きの仕掛けを実現しなければならない。これができなければ白の攻撃は何の影響力もない。

16…Nd7

 この手はe5の地点を押さえ、…c5-c4 突きと共にd3の地点の占拠を狙っている。16…g6 も可能でその意図はb1-h7の斜筋をふさぎ後で …Bg7 でh8-a1の斜筋を占拠することである。

17.Ra3

 17.Nf1 なら黒は白ナイトののろい捌きにつけ込み、敵駒が比較的守勢になった一瞬をとらえて中原を粉砕することができる。17…f5! 18.exf5 Nf6!(似たような状況ではb1-h7の斜筋が急に開いて予期しない不愉快な事態になるのを防ぐためにf5のポーンを止めておいた方が良い)19.Ra3(19.Bd2?! は消極的で 19…Nbxd5 20.Ng3 Qd7 となって黒が良い)19…Nbxd5 これで混戦だがどちらも指せる局面である。しかしキング翼で黒のこうむる危険は白の中原の崩壊によって完全に正当であるように思われる。

17…c4

 ここでは 17…f5 も可能だが白の駒は前述の変化よりも活動的な地点にいるので、黒にとってはキャッスリングした囲いの弱体化の代償を見つけるのがより難しくなっている。例えば 18.exf5(ここでは面白い 18.Rae3 も指されたことがある)18…Nf6 19.Rxe8(19.Ne4 は 19…Bxd5 20.Nxf6+ Qxf6 となって混戦である)19…Qxe8 20.Nh4 これで白陣は前述の解説(17.Nf1 f5!)よりも威圧感がある。

18.Nd4

 18.axb5 axb5 19.Nd4 という手順もあり、それなら黒の次の手を防いでいた。

18…Qf6!

 18…Ne5?! なら白は捨て駒の妙手で攻撃の目標をほとんどすべて達成することができる。19.axb5 Qb6 20.Nxc4!! Nxc4 21.Rg3(22.Nf5 の狙いで猛攻をかける)21…Bc8 22.b3! Ne5 23.Be3 ナイトの軽い犠牲で2ポーンを取って白は相手の反撃の目標をすべて奪い、ここからは f2-f4 突きで決定的な攻勢に出る用意をした。白のルークの転回が脅威となっている。

 18…Qb6?! なら白は別の攻撃を仕掛けることもできる。例えば 19.Nf5 Ne5 20.Rg3 Kh7 21.Nf3 Bc8 22.Nxg7! Bxg7 23.Qd2 Nbd3 24.Bxd3 Nxd3 25.Rxg7+! Kxg7 26.Qxh6+ Kg8 27.Be3 Qc7 28. Bd4 これで 28…f6 29.Qxf6 Ne5 30.Nxe5 dxe5 31.Qg6+ Kf8 32.Re3 でも 28…Ne5 29.Nxe5 dxe5 30.Bb6 でも白の勝ちになる。

 本譜の手はb5のポーンを犠牲にする奥の深い受けの手である(本局で初めて指された)。最も明らかな意図は Nd4 を守るために白に N2f3 と指させて、クイーン翼ルークを3段目でキング翼に移すのを防ぎ、中原での e4-e5 の仕掛けを助けるfポーン(f2-f4)を動けなくすることである。これらの防御の目的を追求することを除いても 18…Qf6 はb5のポーンを犠牲にして反撃を目指していて、手を稼ぎb2のポーンへの筋を開け白が中原で仕掛けを実行する前にクイーン翼で主導権を得ることを期待している。

19.N2f3

 白は駒の助けだけで攻撃を続けようとしても何も成果は上がらないだろう。なぜならクイーン介入により黒のキング翼は守り易くなっているからである。例えば 19.Nf5 Ne5 20.Rg3 Ned3 21.Bxd3 Nxd3 22.R1e3 Bxd5 で黒が優勢になる。

19…Nc5

 黒はb5のポーンを犠牲にしてd3の地点を確保し前述のようにクイーン翼の列を素通しにした。同じく考えられるのは 19…Nd3 20.Bxd3 b4 21.Bxc4(21.Ra1 は 21…cxd3 22.Qxd3 Nc5 で黒には犠牲にしたポーンの代償が十分にあり、例えば 23.Qc4 なら 23…a5! である)21…bxa3 でどちらも指せる分かれである。

20.axb5 axb5 21.Nxb5 Rxa3 22.Nxa3 Ba6 23.Re3

 このルークもキング翼への旅行に3段目を使うことができる。

23…Rb8(図167)

 図167

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(101)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

第7局
カスパロフ対カルポフ
レニングラード(世界選手権戦第16局)、1986年
ザイツェフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Bb7

 可動中原は …Nd7 のチゴーリン戦法でも現れることがある。例えば 9…Nd7 10.d4 Nb6(または 10…Bf6 11.a4 Bb7 12.Na3 exd4 13.cxd4)11.Nbd2 exd4 12.cxd4 d5 13.Bc2(ここで 13.e5 と突いても先手にならず 13…Bf5 14.Nf1 Nb4 となって黒が大いに有望である)13…Be6 となって白がわずかに優勢である。

 最近研究されているのは変わった 9…a5!? である。これは可動中原ではよく見かける手なので局面が進行するにつれて黒がよくこの型の中原を目指すのは理にかなっている。いくつかの考えられる手順を見てみよう。しかし黒の好成績は今までのところではこの戦法に意外性の要素が付きまとっていることに関連しているかもしれないことを指摘しておこう。

 (1)10.d4 a4 11.Bc2 Bd7 12.Be3 exd4 13.cxd4 Nb4 14.Nc3 Nxc2 15.Qxc2 b4 16.Ne2 ここからは 16…d5 17.e5 Ne4 も 16…c5 17.d5 Re8 18.Ng3 Bb5 もありそうで、どちらも指せる分かれである。

 (2)10.a4 b4 11.d4 bxc3 12.bxc3 exd4 13.cxd4 d5 14.e5 Ne4 黒は …Nb4 から …c5 を意図していて、強固な陣形である。

10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a4 h6 13.Bc2 exd4 14.cxd4 Nb4 15.Bb1 c5

 これは最も自然な手である。新しく生まれた中原にすぐに挑み、少なくともその可動性の一部を削ぐことを視野に入れている。他の手は前局で検討した。

16.d5(図166)

 図166

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(100)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図165(再掲)

 黒はすぐにもう一つの目標を達成した。今度は6段目のクイーン翼ルークの目立たない守りの働きのおかげである。

22.Nxe4 dxe4 23.dxc5

 23.Bxe4? Bxe4 24.Rxe4 f5! も 23.Nf6+? Rxf6! 24.exf6 cxd4 も黒がはっきり優勢になる。後者の変化の場合状況がまったく逆転するのは妙である。即ち最後に可動中原の優位を手中にするのは黒の方である。

23…Bxc5+ 24.Be3 Bf8

 この手はf6での両当たりに対抗して …Nd3 という応手の可能性を残している。

25.Nf6+ Rxf6 26.Qxd8

 26.exf6? は 26…Nd5!(26…Nd3? は 27.Bxd3 Bxa3 28.Bb5! で白が優勢になるし 26…Qxd1? も 27.Rxd1 Nd5 28.Rxd5! Bxa3 29.Rb5 で白の勝勢になる)27.Rb3 Bc6! となって白は …Ba4 と …Nxe3 から …Bc5 の両狙いを避けることができない。黒は交換損を回復し優勢を維持することができる。

26…Rxd8 27.exf6 Nd3

 ここで 27…Nd5? は 28.Rb3 Bc6 29.Bxe4 でうまくいかない。

28.Rd1 Bxa3 29.bxa3 Bd5 ½-½

 収局は互角である。30.Bxd3 なら 30…Bb3 31.Rb1 Rxd3 となる。また 30.Bb6 なら 30…Rb8 31.Bxa5 Rb2 となって以下は例えば 32.Bc3 Rb3 33.Bb4(33.Bxd3 exd3 34.Rxd3 Rxa3)33…Nxb4 34.axb4 Rxb4 である。本局は黒の可動中原の扱い方が非常に印象深かった。

(この章続く)

2010年10月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(189)

「British Chess Magazine」2010年7月号(1/1)

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カバレク・ファイル

GMルボス・カバレク

米国選手権戦

 ヒカル・ナカムラはユーリ・シュールマンのフランス防御ビナベル戦法対策がうまくいっていなかった。そして完全に圧倒されて優勝争いから脱落した。布局はビル・フックを彷彿とさせた。フックは素晴らしい芸術派で、5月10日に84歳で死去した。英領バージン諸島のチェスオリンピアードチーム主将として17回出場した。1970年のジーゲン・オリンピアードで彼はボビーフィッシャー相手に愛用のクイーンの捌きを用いて簡単に形勢を互角にした。

2010年米国選手権戦
ヒカル・ナカムラ
ユーリ・シュールマン

フランス防御ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 Qa5 7.Bd2 Qa4

 このクイーンの単騎出撃がビル・フックの得意戦法だった。黒は …b7-b6 から …Bc8-a6 でビショップを交換して白枡を支配することが望みである。

8.Nf3

 ナカムラはガリー・カスパロフ創案のポーン捨てを念頭に置いている。フィッシャーは 8.Qg4 Kf8 9.Qd1 と指したが 9…b6 10.h4 Ne7 11.h5 h6 12.Rh4 Ba6 13.Bxa6 Nxa6 14.Rf4 Qd7

となってフックの指せる局面になった。しかし彼はあとでへまをしてしまいフィッシャーが28手で勝った。

8…Nc6 9.h4 cxd4 10.cxd4 Nge7 11.h5!? Nxd4 12.Bd3

12…h6!

 白の突進は止めなければならない。1992年リナレスでのカスパロフ対アーナンド戦では次のように黒のキング翼が粉砕された。12…Nec6?! 13.Kf1 Nxf3 14.Qxf3 b6 15.h6! Ba6 16.hxg7 Rg8 17.Bxa6 Qxa6+ 18.Kg1 Rxg7 19.Qf6 Rg8 20.Rxh7 Qb7

ここで白は 21.Bg5 の代わりに 21.c4! と指すことができた。以下は 21…dxc4 22.Bg5 Qe7 23.Qf3! Qc7 24.Rd1

が想定され締め付けがきつすぎる。

13.Kf1 Nxf3 14.Qxf3 b6! 15.Qg3

 白の主導権は強大なように見える。消極的な受けの 15…Rg8 では 16.Rh4 d4 17.Rg4! と応じられここで 17…Kf8? では 18.Rxg7! Rxg7 19.Bxh6

で白の勝ちとなる。しかしシュールマンは意外な手を用意していた。

15…Ba6!

 シュールマンは2ポーンを犠牲にして白枡ビショップを消去し、戦いを意のままに動かし始める。

16.Qxg7 Bxd3+ 17.cxd3 Rg8

18.Qxh6

 18.Qh7 は 18…Qg4 19.g3 Rc8 で黒の駒が全部うまく働いている。

18…Qd4 19.Re1?!

 これは新手である。しかし前例のようにルークを素通しのc列に回す方が筋が良い。ヒカルがこの戦法をここまで研究していたとは信じ難い。もし研究手順なら決め手は黒にあるので判断を誤っていたといえる。

19…Qxd3+ 20.Kg1 Rc8

21.Bg5?!

 白の最善の可能性は 21.Qe3 でクイーン交換を誘うことだった。

21…Qf5

22.f4?

 この手はクイーンを遊び駒にして致命的だった。ナカムラは 22.Bxe7 Kxe7 23.Qe3 で陣容固めに努めなければいけなかった。

22…Rc2

23.Rh2?

 この手が敗着である。白は最下段が弱くなった。ここは 23.Qf6 Qxf6 24.exf6 Nf5 25.Rh3 が最後の望みだった。

23…Qd3!

24.Qf6

 これは証文の出し遅れである。24.Bxe7 でも 24…Qd2! で詰まされる。

24…Rxg5!

 白は最後の脅威を切り捨ててとどめを見舞う用意をした。

25.Qxg5

 25.fxg5 は 25…Nf5 で、26…Qd4+ 27.Kh1 Ng3# の詰みの狙いがあり黒の勝ちになる。

25…Qd4+ 26.Kh1 Qe3! 0-1

 これがとどめとなった。27.Rxe3 は 27…Rc1+ から詰むのでこのクイーンは取れない。27.Qh4 でも 27…Rc1 で黒の勝ちである。

******************************

(この号終わり)

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ルイロペスの完全理解(99)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図164(再掲)

 黒はついに13手目で始めた作戦の第2段階の実行に移った。この場合この中央でのポーン突きの結果は一時的なポーン損を伴うだけに精密に読んでおかなければならない。

20.e5 Ne4!

 この手がなければ黒陣はつぶれてしまうところである。

21.Ng4

 黒の防御の核心は 21.Nxe4 dxe4 22.Bxe4 Bxe4 23.Rxe4 c5! 24.Kh1 Qd5 でポーンを取り返して好形になることにある。

21…c5!(図165)

 図165

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(98)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図163(再掲)

 ここで黒はよくある戦略上のジレンマに直面している。それはもし守勢でいたくないならば、白が(黒の13手目の決断によりもたらされた)自陣の広さの優位を生かそうとしているので黒は中原のポーンの形を変えなければならないということである。そしてこれは …c5 突きまたは周到に …d5 突きを準備することにより行なうことができる。一つ目の可能性(15…c5)は最も一般的な手で、第7局で採り上げる。もう一つの方は本局で検討する。

15…bxa4

 白の駒の多くがe4ポーンの守りに縛り付けられているので(特に Nd2 は Bc1 の展開の邪魔になっている)、黒はこの現状を何も変えないような手を指し(15…c5 は 16.d5 で Nd2 を解放してしまう)同時に次のような目的を達成する。

 (1)a列を素通しにする白の選択肢を消し、その結果としてb5ポーンが攻撃目標となる可能性を避ける。

 (2)a6ポーンが弱体化することになってもb列を素通しにしてb2のポーンを大駒の活動の対象にさらす。

 (3)…a5 から …Ra6 の準備を行なって、中原の状況を …d5 突きで変えるための有効な準備となるようにする。

 明らかに待ちの方針は不適切である。例えば 15…g6 は 16.e5! dxe5 17.dxe5 と応じられ、白が黒枡の弱点につけ込んで Ne4 からeポーンをさらに突いて敵陣突破を図ることができる。

 15…Qd7 が本譜の手に優るかもしれない唯一の手である。ポーン取りを先延ばしにする考えは 16.Ra3 bxa4 17.Rxa4 で手得するためである。しかしこの手はまだ十分に実戦で試されていない。

16.Rxa4 a5 17.Ra3

 17.b3 から Bb2 と指すこともできるがクイーン翼ルークをクイーン翼に限定するという代価を払うことになる。本譜で白はルークを中央またはキング翼に転進させる用意をした。

17…Ra6

 黒も対称の転進の用意をした。それは …d5 突きの後で可能になるが、同時に黒はe4ポーンに対して …Qa8 でさらに圧力を強める選択肢も作った。

 本譜の手で 17…Qd7? と指すのは悪手である。というのはクイーンがd8-h4の斜筋からはずれるので 18.Nh4! が可能になるからである(本譜の局面では次の手の解説に出てくるように 18…Nxe4! という典型的な手筋で咎められる)。そのあと白はクイーン翼ルークの転進のおかげですぐに強力なキング翼攻撃に移れる。例えば 18…Qb5 19.Rf3(20.Rxf6 から 21.Nf5 で勝ちを目指す攻撃の狙い。すぐに 19.Rg3? は 19…Nh5 と応じられる)19…Nh7 20.Rg3 という具合である。

18.Nh2

 …d5 突きを防ぎ Ra6 をクイーン翼に限定させようとする 18.d5 は一時的にしかうまくいかない。なぜなら黒がすぐに 18…c6! で妨害を粉砕できるからで、そのあとは白の意図は失敗したものとみなされる。

 代わりに 18.Nh4? は 18…Nxe4! 19.Nxe4 Bxe4(19…Qxh4? 20.Nf6+)20.Bxe4 d5!(20…Qxh4 21.Bh7+)となって、白が戦力損をしたくなければ 21.Rae3(21.Bxd5? は 21…Rxe1+ 22.Qxe1 Nxd5 で Nh4 と Ra3 が当たりになっている)で駒を返さざるを得ないが 21…dxe4 22.Rxe4 Rxe4 23.Rxe4 Qd5 となって黒の態勢の方が良い。

 ここで黒の15手目から開始された作戦の柔軟性を強調しておいた方が良いかもしれない。黒の直前の3手は …d5 突きの準備とみなされるかもしれないが黒は …c5 突きで中原の形を変える機会を締め出したわけではない。だから好機にはこの別策もやすやすと持ち出すことができる。例えば 18.Rae3 a4 19.Nh4!?(前の手を継承した手)19…c5! 20.dxc5(20.d5? は …Ra6 と …c5 の不一致を戦略的に正しく咎めているように見えるが 20…Nfxe5 で戦術的に失敗する)20…dxc5 となって、黒陣は6段目にクイーン翼ルークがいるおかげで完全に受けが可能である、

 本譜の手で白は3段目を空け、キング翼でキング翼ナイトの典型的な捌き(Nf3-h2-g4)やfポーン突きで主導権を握る用意をしている。

18…g6

 Ra6 がe6の地点に間接的に利いていることにより本譜の手が絶対安全になっている。というのは 19.e5 dxe5 30.dxe5 からさらにe6にポーンを進める白の狙いがくじかれるからである。

19.f4

 19.Ng4 もある。以下は例えば 19…Nxg4 20.Qxg4 c5!(ここでもこのポーン突きである)21.dxc5(ここで 21.d5? は別の戦術の主題でうまくいかない。それはe列にかかっている圧力で、21…Nxd5 で簡単に咎められる)21…dxc5 22.e5 Qd4 でどちらも指せる。

 しかし最も可能性のあるのは 19.f3! で、黒が実戦で指す作戦を防ぎ、中原を強化し、白の駒を自由にする。例えば 19…Qd7 20.Nc4 Qb5 21.Rc3 Bc8 22.Be3 Kh7 23.Qc1 となって、黒のポーンの形の弱点が明らかになる。

19…d5(図164)

 図164

(この章続く)

2010年10月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(94)

「British Chess Magazine」2010年6月号(14/16)

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世界選手権戦(続き)

第11局 5月9日

 やっと試合が 1.d4 以外で始まった。アーナンドはイギリス布局を選択し、かつてヤン・ティマン戦で故トーニー・マイルズに勝利をもたらした戦型を用いた。アーナンドは序盤から優勢になったがトパロフは応分に迎え撃った。形勢はゆっくりとブルガリア選手の方に傾き始めアーナンドはついにポーンを差し出さなければならなくなった。しかし世界チャンピオンはポーン損しても十分に指し回すことができ引き分けにはそれで十分だった。

 世界チャンピオンはうまく危機をしのいだが最後の白番はこれで終わった。彼は延長戦の快速試合に焦点を合わせ始めたかもしれない。

ここまでの結果 アーナンド5½点 トパロフ5½点

第11局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

イギリス布局 [A29]

1.c4

 本局は 1.d4 で始まらなかった唯一の試合である。

1…e5 2.Nc3 Nf6 3.Nf3 Nc6 4.g3 d5 5.cxd5 Nxd5 6.Bg2 Nb6 7.O-O Be7 8.a3 O-O 9.b4 Be6 10.d3 f6 11.Ne4

 11.Bb2 の方がもっとよく指されているが本譜の手は良い成績をあげている。

11…Qe8

 これは新機軸の手である。11…Qd7 が通常の手で1984年ティルブルグでのマイルズ対ティマン戦では 12.Bb2 a6 13.Qc2 Bh3 14.Nc5 と進み故イギリス人グランドマスターが完勝した。

12.Nc5 Bxc5 13.bxc5 Nd5 14.Bb2 Rd8 15.Qc2 Nde7

 黒は d3-d4 突きに目を光らせている。

16.Rab1 Ba2 17.Rbc1 Qf7 18.Bc3 Rd7 19.Qb2 Rb8 20.Rfd1 Be6 21.Rd2 h6 22.Qb1 Nd5 23.Rb2

23…b6

 23…Nxc3 24.Rxc3 はb7のポーンを守るのが非常に難しくなる。例えば 24…Nd8? には 25.c6! がある。

24.cxb6

 c列での白の圧力は何でもないことが明らかになってくる。だからたぶん 24.Bd2 の方が正確だっただろう。

24…cxb6 25.Bd2 Rd6 26.Rbc2 Qd7

27.h4

 27.Qb5 Nde7 28.Be3 Bd5 は黒が鉄壁である。

27…Rd8 28.Qb5 Nde7 29.Qb2 Bd5 30.Bb4 Nxb4 31.axb4 Rc6 32.b5 Rxc2 33.Rxc2 Be6

 白の序盤の主導権は雲散霧消したのでアーナンドは白番の最後の正規の試合で新しい方針を打ちたてようとした。しかし彼の陣形はどんどん悪化していった。

34.d4 e4

 34…exd4?! は 35.Rd2 Nf5 36.e4 で確実にポーンを取り返せて白が少し優勢なので実戦の手の方が良い。

35.Nd2 Qxd4 36.Nxe4 Qxb2 37.Rxb2 Kf7 38.e3 g5 39.hxg5 hxg5

30.f4 gxf4 31.exf4 Rd4 42.Kf2 Nf5 43.Bf3 Bd5 44.Nd2 Bxf3 45.Nxf3 Ra4

 黒は弱いb5のポーンに狙いをつけている。

46.g4 Nd6 47.Kg3 Ne4+ 48.Kh4 Nd6 49.Rd2!?

 これは勝負手である。b5のポーンは取られるが敵キングを最下段に追いやって十分に反撃が効くとみている。

49…Nxb5 50.f5

50…Re4

 50…a5 は 51.Rd7+ Ke8 52.Rb7 Rb4 53.Rxb6 Nd4!? 54.Rxf6 Nxf3+ 55.Kh5 a4 56.Ra6

で引き分けになりそうである。たぶん 50…Rf4!? 51.Kg3 Rb4 52.Rd7+ Ke8 53.Rh7 a5

が最善かもしれない。もっとも、白は 54.Rh8+ Kf7 55.Rh7+ Kg8 56.Rd7!

と指してまだキング翼で鋭い反撃を行なうことができる。

51.Kh5 Re3 52.Nh4

52…Nc3

 この手のあと白が主導権を得た。代わりに 52…Rg3!? は 53.Ng6 Rh3+ 54.Nh4 Rh1 55.g5 fxg5 56.Kxg5 Rg1+ 57.Kf4 Kf6

となってまだまだこれからだが、たぶん黒が勝つには至らないだろう。

53.Rd7+ Re7 54.Rd3 Ne4 55.Ng6

55…Nc5

 55…Rc7 は 56.Kh6 Nc5 57.Re3 となってすぐに Nh8+ からチェックの千日手で引き分けにされる。

56.Ra3

 56.Nxe7!? Nxd3 57.Nc8 Nf4+ 58.Kh6 でも白が大丈夫のようである。

56…Rd7 57.Re3 Kg7 58.g5 b5 59.Nf4 b4 60.g6 b3 61.Rc3

61…Rd4

 61…b2?? は 62.Rxc5 b1=Q 63.Ne6+ から詰みになる。

62.Rxc5

 62.Ne6+!? Nxe6 63.Rc7+! はきれいなステイルメイトの終局になる。

62…Rxf4 63.Rc7+ Kg8 64.Rb7 Rf3 65.Rb8+ Kg7 ½-½

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(97)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例

第6局
イワンチュク対カルポフ
リナレス、1989年
ザイツェフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 可動中原は古典戦法でも時たま現れることがある。具体的には次のような手順である。3…Bc5 4.c3 Nge7 5.O-O Bb6 6.d4 exd4 7.cxd4 ここで 7…d5 と突くと白が exd5 と取ることにより孤立dポーンの陣形を選ぶのが得策となる珍しい例の一つとなる。この例外はキング翼ナイトのe7への展開によって説明がつく。このナイトは通常なら白が e5 と突いた時 Nf6 に当たりとなるのを避けている。だからこの場合 8.e5 突きは適切でない。そう突くと 8…Bg4 とかかられてd4ポーンに煩わしい圧力がかかってくる。従って正しい応手は 8.exd5 と取る手で、8…Nxd5 9.Re1+ Be6 10.Bg5 Qd6 11.Nbd2 O-O 12.Nc4 Qb4 13.a4 と進んで白が良い。

 非常によく似た状況が 3…Nge7 の戦型でも起こる。ここでは黒はキング翼ビショップをフィアンケットして、ポーンをいったんd6に突く手間をかける必要なくすぐに …d7-d5 と突く意欲的なもくろみを隠しておく意図を持っている。例えば 4.O-O(すぐに 4.d4 と突けば小中原に持ち込めるが状況は黒にとって不利でない。4…exd4 5.Nxd4 g6 6.Nc3 Bg7 7.Be3 O-O でかなり均衡のとれた局面になる)4…g6 5.c3 Bg7 6.d4 exd4 7.cxd4 d5 8.exd5(この方針は前の場合と同じ理由による)8…Nxd5 9.Re1+ Be6 10.Bg5 白が優勢を保っている。

4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5

 6…d6 は 7.c3 Bd7 8.d4 O-O 9.Nbd2 exd4 10.cxd4 で可動中原が生じる遅延シュタイニッツ防御の戦型に移行する。しかしこのあと可動中原が受ける戦略上の変更に照らして黒駒の配置は特に適しているとも言えない。例えば 10…Nb4 11.Bxd7(11.Nf1 Bxa4 12.Qxa4 d5! のあと黒は中原での方針に関する目標を容易に達成する。例えば 13.e5 Ne4 14.Ng3 Nxg3 15.hxg3 c5 で黒が有望である。さらに言えば白は 11.Bb3 によっても白枡ビショップの交換を避けることができない。例えば 11…c5! 12.Nf1 Bb5 13.Ng3 c4 14.Bc2 Nxc2 で互角の形勢である)11…Qxd7 12.Nf1 ここで黒は完全に満足できる継続手がない。12…c5 13.a3 Nc6 14.d5 Ne5 15.Ng3 これでキング翼で白が有望である。または 12…d5 13.Ne5 Qe6 14.a3 Nc6 15.Nxc6 Qxc6 16.e5 黒は 16…Ne8 と引くしかない。16…Ne4? と跳び込むのは 17.Ne3 Qd7(17…f5 は 18.Qb3 Rad8 19.Nxf5! Rxf5 20.Rxe4 で白が圧倒的に良い)18.f3 Ng5 19.f4 Ne4 20.f5 白の攻撃が圧倒的である。

7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3

 可動中原は 9.d4 Bg4 10.Be3(10.d5 と 10.h3 については第2局の白の9手目の解説を参照)10…exd4 11.cxd4 からでも生じる。ここでも黒は …d5 または …c5 と突くことができる。例えば
 (1)11…d5 12.e5 Ne4 13.Nbd2 Nxd2 14.Qxd2 Bxf3 15.gxf3 Bb4 16.Qc2 Bxe1 17.Qxc6 Bb4 18.Bxd5 これは白が優勢である。
 (2)11…Na5 12.Bc2 このあと
 (2a)12…c5 13.dxc5 dxc5 14.Nbd2 Nd7 15.Qb1 Re8 16.e5 Nf8 黒陣は申し分ない。
 (2b)12…Nc4 13.Bc1 c5 14.b3 Nb6 15.Bb2 Rc8 16.Nbd2 c4 両者とも指せる。

9…Bb7

 可動中原が形成される他の手(9…Nd7 と 9…a5)は第7局の解説で指摘される。

10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a4 h6

 12…Qd7 は第2局での手だった。そこで白の11手目および12手目の他の手も検討されている。

13.Bc2

 この局面では数多くの手(13…Rb8、13…Qd7、13…Na5、13…Nb8 など)が試されたが本譜の手が最も積極的な方針で実戦で最もよく用いられている。

 黒の論理は自分の駒が可動中原に対するに理想的に配置されているということで、すぐに中原での交換に乗り出す。

13…exd4 14.cxd4 Nb4 15.Bb1(図163)

 図163

(この章続く)

2010年10月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(96)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

h8-a1の対角斜筋での圧力

 キング翼ビショップで黒枡の対角斜筋を押さえたあと黒は主眼の戦術を実行に移す機会に恵まれることがある。特にビショップの利きが d4-d5 突きや dxc5 取りによって延びてb2のポーンが守られていない状態になった時がそうである。

 基本的な形における最も一般的な着想は展開していない a2、b2、Ra1、Nb1 の弱い一団めがけて単刀直入に駒を犠牲にすることである(図161)。

 図161

 この図で黒が …Nxe4 と取ると白は戦力損をすることになる。単純には Rxe4 Rxe4、Bxe4 Bxb2 だし、もうちょっと複雑な場合は Bxe4 f5、Nd2 fxe4、Nxe4 Bxb2 である(図162)。

 図162

この一連の手順は半素通しe列における圧力を戦術的に利用した例でもある。

(この章続く)

2010年10月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[33]

eポーン布局

第4章 イタリア試合

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4(図43)

 図43(黒番)

 この章の布局はすべて白の 3.Bc4 から始まる。ルイロペスの章では 3.Bb5 が論理的な手で、白が黒のeポーンに対して大局的に圧力をかけていくと説明している。それではこのビショップの展開の仕方はなんと説明したら良いのだろうか。確かにc4のビショップは悪い位置ではない。なぜなら中原のd5の地点の支配に役立ち、黒のf7の弱点も脅かしている。しかし現代のマスターたちの一般的な感覚はそれだけでは十分でないということである。黒の防御手段はよく知られていて、c5のビショップの位置を利用したいくつかの戦術的手段(例えば両取りの策略や …Na5 でナイトをビショップと交換する可能性)で互角の形勢を達成できることは日常茶飯事である。本章で採り上げる布局は歴史的にも(19世紀には大流行していた)戦術的にも(黒のf7をにらむビショップは面白い手筋を生み出す)非常に面白い。しかし十分な経験を積んだ選手相手には白にあまり有利をもたらしそうにない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(95)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

e列での圧力

 黒は半素通しのe列に通常かけている圧力をある程度の頻度で利用することに恵まれることがある(図160)。

 図160

 例えばこの図で白はいきなり h3? 突きで Bg4 に進退を迫ることができない。なぜなら …Bxf3 と取られて gxf3 と取り返さなければならずキャッスリングした囲いを非常に弱めるからである。…Nxd5 があるので Qxf3 とは取り返せない。…Nxd5 は Re1 が離れ駒になっているのでe4ポーンが釘付けになっていることを利用している。

 もちろんこの主題は数多くの場面で現れることがある。その一つは次の例である。

(この章続く)

2010年10月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(94)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

Ne4 の不安定な立場

 …d6-d5 突きと逆襲の突き越しの e4-e5 の後で黒がキング翼ナイトをe4に進めたときは相手がこのナイトを捕獲する可能性にいつも注意しなければならない(図159)。

 図159

 例えばここでは白は Nh2 で f2-f3 を用意する。この手はナイトを取る狙いだけでなく、b1-h7の斜筋の圧力でも成果をあげる狙いがある。例えば …Be7、f3 Ng5、Bxg5 Bxg5、Bxh7+ という具合である。

(この章続く)

2010年10月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ドレスデンオリンピアードの公式記録本

 2008年ドレスデンオリンピアードの公式記録本が出版されています(2009年発行)。

 縦24.5cm、横17cm、200ページ、DVD-ROM付き
文章は全部ドイツ語です。内容はチェス強国、有名選手の話題が中心で、日本関係の文章はありません。次のサイトで注文できます。価格は24.90ユーロ、送料は12.50ユーロで、合計37.40ユーロです。

http://www.euroschach.de/onlineshop/start.php?d_B50488_Offizielles_Buch_zur_Schacholympiade_Dresden_2008.php

2010年10月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(93)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

e4ポーンの間接的守り

 この主題は既に中原の争点の議論で本質的なことを論じたけれども、ここでの中原の型ではもっと洗練された形で出現するかもしれないことを指摘しておく(図157)。

 図157

 この状況で黒はe4ポーンを取ることができない。なぜなら …Rxe4?、Bd5 Ree8、Rc1 のあと(図158)

 図158

白は白枡の対角斜筋の弱点につけ込んで利子付きで戦力を回復することができるからである。

(この章続く)

2010年10月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(188)

「Chess Life」2010年5月号(3/3)

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収局研究室

2010年ベイクアーンゼー(続き)

GMパル・ベンコー

2ナイト
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708)
GMマグヌス・カールセン(FIDE2810)

 白の手番

 白は2ポーンの代わりに1駒を得ている。まずは危険なbポーンを捕まえようとした。

42.Rc6 Bd5 43.Rb6 Rc8 44.Nb5 Rc2+ 45.Kg3 h5!

46.Nbd4

 たぶん 46.h4!? の方が良かった。

46…Ra2

47.Ne6+

 白はポーンを交換してナイトだけが残るようなことは避けなければならない。その意味で 47.h4 または 47.Nf5 の方が賢明だった(47.Nxb3? は 47…h4+ 48.Nxh4 Ra3! となって黒が問題なく、互角の形勢である)。

47…Kf7 48.Nf4 Be4 49.Rb4 h4+ 50.Kg4 b2

51.Nd2 Ba8 52.Nc4 g5 53.Rxb2 Rxb2 54.Nxb2 gxf4

55.Kxf4 Bxg2 56.Kg4 f5+ 57.Kxf5 Bxh3+ 58.Kg5 Be6 59.Kxh4 引き分け

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(この号終わり)

2010年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(92)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所

 この型の中原の特性は敵のキャッスリングした囲いに対する(e4-e5 突きの仕掛けから始まる)白の猛攻に有利に働くけれども 、ここで採り上げるのは主に中盤戦で指すことのできる手筋である。だから布局に特有の頻出する主眼の戦術は(他の型の中原で出てきたのを除いて)あまり多くない。

 そこで読者は第1章の「e4ポーンの間接的守り」と第2章の「Nh4 の無防備の位置」および「Qd7 の無防備の状態」を参照されたい。これらの戦術の狙い所は可動中原でもある程度の頻度で起こり得る。

(この章続く)

2010年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(91)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白が先受けのために中原を閉鎖

 時には黒の …d6-d5 突きの狙いが非常に厄介なので白が d4-d5 と突いて中原を閉鎖することによってそれを封じるように追い込まれる(図156)。

 図156

 この場合白は図133とそれ以降に示される状況に関連して、d3の地点の固定化を恐れる理由もなければ、クイーン翼で黒のポーンが突進してくるのを恐れる理由もさらさらなくかえってd4の地点がすぐに使えるようになる。それにもかかわらず白の中原は融通性が減り、c5とe5の地点を譲ったので弱体化する。さらに、この解決策は側面からの …c7-c6 の揺さぶりに道を開くことになる。これは白に不利な状況で小中原に移行(dxc6 で)させることになる。だから …d6-d5 突きに対する先受けの手段としての中原閉鎖は諸刃の剣の武器となる。その正当性は将来の展開の完全で正確な評価に基づいてだけ判断できる。

(この章続く)

2010年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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JCAの間違い捜し(11)

第112回チェスネット競技会 10月号

 なんと「黒先白勝ち」という問題である。黒が先に指しても白勝ちなのである。プロブレムのヘルプメイトのような問題である。黒先で考えてみるとb5の黒クイーンがf1の白キングに当たりになっているので 1…Qxf1 で白キングを取ることができる。それでも白勝ちということはこの局面で白の時間が切れているということであろうか。

2010年10月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(93)

「British Chess Magazine」2010年6月号(13/16)

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世界選手権戦(続き)

第10局 5月7日

 アーナンドの研究チームは本局のためにグリューンフェルトの修復を間に合わせていた。そしてアーナンドは通常ポーン捨てを伴う流行っていない戦型を指した。しかしトパロフはこれに対する用意ができていなかったようで試合をゆるやかな流れに誘導した。アーナンドが楽に互角の形勢にしたとたんにちょっとした落とし穴にはまって相手に双ビショップによる優勢の収局に入らせた。しかしアーナンドは以降は間違えずついに難なく引き分けに持ち込んだ。

ここまでの結果 アーナンド5点 トパロフ5点

第10局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

グリューンフェルト防御 [D87]

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5

 アーナンドは第1局の災難にもかかわらずまたグリューンフェルトを試した。おそらく彼の定跡チームが彼の満足のいくようにまた修復したのだろう。

4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.Bc4 c5 8.Ne2 Nc6 9.Be3 O-O 10.O-O

10…b6!?

 アーナンドは第1局で 10…Na5 と指した。本譜の手は非常に挑発的な戦型になる可能性がある。

11.Qd2

 11.dxc5 Qc7!? が1980年代の短い期間にチェコのグランドマスターのヤンサ、スメイカルおよびフタツニクによって提唱されたポーン犠牲の戦型だった。しかし明らかにトパロフは改良または洗練を恐れてか自信をもって立ち向かう気にならなかった。

11…Bb7 12.Rac1 Rc8 13.Rfd1 cxd4 14.cxd4 Qd6

 これは新手である(データベースの低レイティング選手同士の不明瞭な1局を除く)。黒は 15.e5 Qd7 を誘おうとした。そうなればd5の地点を確保することができる。しかし白はその手に乗らない。

15.d5 Na5

 15…Ne5 という手もありそうである。

16.Bb5 Rxc1 17.Rxc1

17…Rc8

 すぐに 17…e6 と突く方が良いかもしれない。

18.h3?!

 18.Rxc8+ Bxc8 19.Nd4 がアーナンドの17手目の逸機を咎める良い手段だったかもしれない。

18…Rxc1+ 19.Qxc1 e6

 トパロフが彼らしくもなく最も激しい戦型を回避したのでアーナンドはきわめて順調に互角の形勢に進んできた。しかし戦いはまだまだこれからである。

20.Nf4 exd5 21.Nxd5 f5 22.f3 fxe4 23.fxe4 Qe5 24.Bd3

24…Nc6?!

 24…Bxd5 25.exd5 Qxd5 26.Qc8+ Bf8 27.Bf1

は白にポーンの十分な代償があるが黒もたぶん大丈夫だろう。黒は 24…Bc6 または 24…Qa1 と指してもよかった。実戦の手はちょっとした失着である。

25.Ba6!

25…Nd4?

 黒はいっそのこと 25…Bxa6 26.Qxc6 Qa1+ 27.Kf2 Qxa2+ 28.Kg3 Qa3!

で局面に決まりをつけるべきだった。以下は例えば 29.Qa8+ Qf8 30.Qxa7 Be5+ で引き分けに落ち着く。

26.Qc4! Bxd5 27.Qxd5+ Qxd5 28.exd5

 白には双ビショップがあるので順当ならば勝ちになる。

28…Be5 29.Kf2 Kf7 30.Bg5 Nf5 31.g4 Nd6 32.Kf3 Ne8 33.Bc1 Nc7 34.Bd3 Bd6

35.Ke4 b5 36.Kd4 a6 37.Be2 Ke7 38.Bg5+ Kd7 39.Bd2 Bg3 40.g5 Bf2+

41.Ke5

 この手は手損になるので 41.Ke4 の方が正確だった。それでも 41…Bc5 で受かる。

41…Bg3+ 42.Ke4 Ne8 43.Bg4+ Ke7

44.Be6?!

 この不正確な手で黒の受けが楽になった。44.Bc3 Nd6+ 45.Kf3 Bh4 46.Bf6+ Ke8

なら局面をしっかり支配していた。もっともそれでも黒は守り切ることができるだろう。

44…Nd6+ 45.Kf3 Nc4!

46.Bc1

 46.Kxg3 Nxd2 47.Kf4 Nc4 は楽に引き分けになる。48.Bg8 a5 で白がh7のポーンを取れば黒はビショップを取ることができる。もっともそれでも局面は次のように相変わらず引き分けである。49.Bxh7 Kf7 50.h4 Kg7 51.Bxg6 Kxg6 52.Ke4

46…Bd6 47.Ke4 a5 48.Bg4 Ba3 49.Bxa3+ Nxa3 50.Ke5 Nc4+ 51.Kd4 Kd6 52.Be2 Na3

53.h4

 53.Bd3!? ならナイトを押さえ込むが黒は正確を期せば危険はない。53…b4 54.h4 a4 55.h5!? gxh5 56.Bxh7 b3 57.axb3 axb3 58.g6

白のgポーンが止められないように見えるが一つだけそうできる手段がある。58…Nc2+ 59.Kc3(59.Ke4 なら 59…Nb4 でよい)59…Ne3

53…Nc2+ 54.Kc3 Nb4 55.Bxb5 Nxa2+ 56.Kb3 Nb4 57.Be2 Nxd5 58.h5 Nf4 59.hxg6 hxg6 60.Bc4 ½-½

 報道によるとアーナンドはスペイン語の1語(たぶん「tablas」だろう)で引き分けを申し入れトパロフは受諾を審判に伝えたそうである。これはトパロフが自ら課した「ソフィア規則」に合致している。それは相手と直接引き分けの提案や受諾をしないで審判を介して意思を伝えるということである。もちろんこれはアーナンドには当てはまらず、ソフィア規則はそもそも適用されていないのでアーナンドが直接トパロフに申し入れてはいけない理由もなかった。

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(90)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

クイーン翼ルークが3段目と6段目で参戦

 この型の中原で両者が遂行できる典型的な捌きはクイーン翼ルークを戦いに投入することである。

 中原で争点が続いている状況で白はしばしば a2-a4 突きでクイーン翼での主眼の作戦を始める。そして可動中原が形成されれば黒は …bxa4 と取ることにより自分のbポーンに対する圧力を緩和しようとするかもしれない(図154)。

 図154

 この状況で両者はa列と3段目(または6段目)を用いてそれぞれクイーン翼ルークを転回させることができる。白の捌きはほとんど自動的である(Ra1xa4-a3 または直接 Ra1-a3)。黒も特に …d6-d5 突きを予定している時は …a6-a5 と突いたあと対称の捌きを行なうことができる(図155)。

 図155

 ルークの中原(e3またはe6)やキング翼(g3またはg6)への転回は攻撃と防御の関連で明らかに重要である。場合によっては黒のルークが移動してa8の地点が空くと …Bb7 と …Qa8 とによってe4に対する圧力の増強につながるかもしれない。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(89)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒が …d6-d5 突きにより中原を変える

 図127の解説で既に言及したように可動中原を構築したあと黒は …c7-c5 突きの別策として …d6-d5 と突くことにより局面の戦略的様相を変える用意をすることができる(図150)。

 図150

 白はこの中原のポーン突きに対して自分のポーンをe5に突き進めるのが普通である。というのは白の駒はe4とd5のポーン交換の結果生じる孤立d4ポーンのために最適の配置になっていることはほとんどないからである。この応接には例外もあり、通常は黒がまだ展開を完了していない時、具体的にはまだキャッスリングしなければいけない時がそうである。しかし一般には …d6-d5 と e4-e5 のあと両者の目標がかなり明白で、黒によりもたらされた戦略の変更の成否が目標の実現可能性に大きくかかっているような状況が生じる。

 黒が対処しなければならない差し迫った問題は通常はキング翼ナイトの良い居場所を見つけることである。このナイトは逆襲の e4-e5 突きの結果としてほとんどいつも攻撃にさらされる。

 …Ne4 と指せる時にはそれが理想的な解決法となる。なぜならこの場合黒は危険なb1-h7の斜筋をふさぐという重要な成果を達成するからである。これがしばしば可能となるのは白枡の対角斜筋のクイーン翼ビショップの助け/およびまたはd4のポーンに対する間接的な圧力のおかげである(図151)。

 図151

 この図の場合ならば Bxe4? は …dxe4 のあと白がdポーンを失うことになる。図から黒は …f7-f5 突きで Ne4 を支えることができ、白は典型的な捌きの Nh2 から f3 でナイトにその位置を諦めさせようとする。この白の捌きは Ng4 と跳ねたりfポーンをさらに突いたりすることができることを念頭にしてキング翼攻撃の展望をよみがえらせることができる。

 時には黒は …Ne4 跳び込みを考える際に(Bxe4 dxe4 のあと)eポーンを犠牲にする用意をすることもできる。その代償は戦術的/機動的なこともあり(d4ポーンの弱体化、双ビショップの獲得、a8-h1斜筋の可能性)または純粋に戦略的なこともある(d5の拠点の活用。例えばd5の黒ナイトと白の黒枡ビショップとの特に収局における価値の差)。

 一方 …Ne4 が無理な時には Nf6 はd7かe8に下がらなければならない。このような場合は特に、相手がキング翼で攻撃しているあいだ黒は守勢に立たないように敵の中原を粉砕するよう全エネルギーを注ぎ込まなければならない。この目的を達成するために黒は …c7-c5 突きをなし遂げることが可能でなければならない。このポーン突きは …d6-d5 突きで始まった戦略の論理的な帰結である(図152)。

 図152

 d4のポーンが消えるとe5のポーンが見るからに弱体化する。このポーンは駒の協同作戦によって圧力にさらされたり、以降の …f7-f6 の攻撃によって盤上からなくなったりする。これによって黒は敵の中原の破壊作戦を完了することになる。

 白の方はキング翼での攻撃の自然な展望を利用することに加えて、敵の作戦の実現を防ぐことに努めることによりもっと大局的な戦いを起こすことができる。白はこれを、兵力をクイーン翼に展開しc5の地点が潜在的に素通し列上の弱点であることにつけ込むことによりなし遂げることができる(図153)。

 図153

 クイーン翼ナイトはd2を通ってb3に行け、クイーン翼ルークはc列を制圧でき、クイーン翼ビショップは a2-a3 の支援で d2-b4 経由で単純化を図ることができる。同様の封じ込め戦略の成功はとりもなおさず黒が …d6-d5 で始めた作戦の失敗を意味することは明らかである。

(この章続く)

2010年10月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[32]

eポーン布局

第3章 キング翼ギャンビット(続き)

古典防御

1.e4 e5 2.f4 Bc5(図41)

 図41(白番)

 この手で始まる古典防御はキング翼ギャンビットを拒否する一番人気のある手段だった。黒はさっそくg1-a7の斜筋に沿った白の弱みを利用している。その意図は白のキング翼キャッスリングをしばらくの間遅らせ、白が黒のf7の地点にかけることのできる圧力をそれにより制限することである。

3.Nf3

 この展開の手は黒のeポーンに二つ目の当たりをかけている。注意しなければならないのはすぐにこのポーンを取ると次のように白のルークが取られるということである。3.fxe5?? Qh4+ 4.g3 Qxe4+ から …Qxh1

3…d6

 この手はeポーンを守りクイーン翼ビショップの展開のために筋を開けている。3…Nc6 は 4.Nxe5 Nxe5 5.d4! という両取りの計略に会う。

4.Nc3

 これは自然な展開の手で、Na4 で目ざわりなビショップと交換する可能性を用意している。4.c3 も有力な手で、中原を 5.d4 で占拠する意図である。

4…Nf6

 これは最も自然な展開の手である。

5.Bc4

 これも自然な手で、f7に圧力をかける白の戦略に沿っている。5.fxe5 dxe5 6.Nxe5 と取るのは 6…Qd4 7.Nd3 Bb6 で黒が白を押し込めることができる。

5…Nc6

 5…Be6 と対抗するのは 6.Bxe6 fxe6 7.fxe5 dxe5 8.Nxe5 Qd4 9.Nd3 Nxe4 10.Nxe4 Qxe4+ 11.Qe2 Qxe2+ 12.Kxe2 となって黒のeポーンが孤立しているので白の有利な収局になる。しかし 5…c6 6.d3 b5 7.Bb3 Qe7 は1991年ロンドンでの挑戦者決定大会番勝負のショート対スピールマン戦のように完全に指せる手である。

6.d3 Bg4

 これは最も普通の手だが最善手ではない。黒の着想は …Nd4 からf3で交換してf列に二重ポーンを作らせ白のキング翼を弱体化させることである。黒は 6…O-O または 6…a6 と指す方が良かった。

7.Na4 Nd4

 この手は前の手と連動している。

8.Nxc5 dxc5 9.c3

 9.fxe5 と取るのは危険で、9…Nd7(10…Nxe5 と取る狙いで、釘付けの効果で圧倒的な態勢になる)10.Bf4 Qe7 11.O-O O-O-O で黒駒の働きが非常に良い。

9…Nxf3+ 10.gxf3 Bh5(図42)

 10…Nxe4 は面白い手だが、11.O-O! で黒の二つの駒が当たりになるので成立しない。

 図42(白番)

 双ビショップと白ポーンの中原に対する大きな影響力とで白が優勢である。

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(88)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白が dxc5 と取る

 図132で白は中原閉鎖の別策として dxc5 と取って単純化を図ることができる。この決断は通常 …dxc5 の後d列の開通をもたらす。

 その後は両者がそれぞれ e4-e5 突きの実現と阻止に努めるので戦いはe5の地点をめぐって行なわれる。(図147)。

 図147

 そこで白はキング翼のルークとナイトに加えてクイーン翼ビショップとクイーンの働きに期待することができ、黒は戦力のほとんどをこの戦いに投入することができる。

 黒の主要な目標はナイトをe5に据えてeポーンの前進を阻止するようにすることである。実際には現在のところそのようなポーン突きは仕掛けにはたとえられないけれども、b1-h7の斜筋を開けるだけでなく(従ってキング翼での攻撃の可能性が出てくる)駒を捌かせる余地を広げd6の弱点を固定するので白にとって戦略的に有利である。(図148)。

 図148

 ポーンがこの地点に進むとナイトにとって絶好の目標が生まれる(例えば Ng3-e4-d6)。ここに来たナイトが交換されると(例えば …Bxd6)白の大駒を素通し列で重ねる捌きに役立つかもしれないし(Rxd6)非常に進んだパスポーンの生成につながるかもしれない(exd6)。しかし図131の場合のように e4-e5 突きは諸刃の剣の武器になることもあり得る。なぜなら黒は有利な状況では駒の働きを白の前進したポーンに集中することができるからで、そうなればこのポーンの守りは必ずしも容易でない(図149)。

 図149

 この図から分かることは潜在的に黒が白よりも駒1個分多くe5のポーンを攻撃する態勢にあるということである。しかし状況によっては白はポーンを捨てる意図で e4-e5 と突くことができる。それにより白は駒の働きが増すことにより生まれる一連の戦術的および機動的な有利さを得るようにする。

(この章続く)

2010年10月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(87)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白の中原の押さえ込みとその解体

 防御の観点からいうと黒の直面する最大の危険は e4-e5 突きによる仕掛けの効果である。そこで黒はできるだけ長くe5の地点を支配するようにキング翼に兵力を配備する。この状況で典型的なのは …Rf8-e8、…Nf6-d7 および …Be7-f6 の捌きである(図143)。

 図143

 見れば分かるように …g7-g6 突きがある場合は …Be7-f8-g7 とするのが自然である。

 時には敵の中原に対するこのような締め付けは敵の中原に対する反撃の先触れとなることがある。もっともそれは有利な状況下に限られ、通常は中原で争点が永続している状態で黒がe4のポーンに対して主眼の圧力をかけている時である。(図144)。

 図144

 例えばここでは黒がe4に対する圧力を強める目的で通常の一連の捌きを行なって可動中原の態勢にしたところである。そしてここから …c5、d5 Nd7 と指すことができる(図145)。

 図145

 黒の意図は状況が許せば敵の中原を …f7-f5 突きで解体しようということである。この場合目的はf5のポーンをd5のポーンと交換して(必要ならば …Nb6 によってこのポーンを襲撃することもできる)クイーン翼ビショップの地平を広げ、中原で止めることのできないポーン集団を形作ることである(図146)。

 図146

 しかし黒キングの囲いは非常に弱体化するのでこのような戦略に危険がないわけではないことは明らかである。したがってそのような戦略を実行に移すことの当否は、白がf5のポーンの存在を頼りにキング翼で仕掛ける猛攻を黒があまり損害を出すことなく持ちこたえる可能性が実際どのくらいあるかにかかっている。

 逆に黒が同様の戦略を実行する際にf5のポーンを取り返す態勢にある時には、弱体化したd5のポーンに攻撃を集中できるので有利が不利を上回ることがよくあるのは当然である。

(この章続く)

2010年10月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ある冷静な見方

産経新聞電子版より

【尖閣敗北 私はこう見る】露極東研究所のアレクサンドル・ラリン氏
2010.10.1 20:13

このニュースのトピックス:領土問題
 日本も中国も別々の歴史的観点から、尖閣諸島の領有権が確認できると述べてきているが、世界史の経験からいって、どちらか一方の主張に基づいて解決することはできないと思う。

 ただ、尖閣諸島周辺に地下資源が存在する可能性が指摘されてから、この問題は起きた。それまで領有権の問題はなかったと思う。日露間の領土問題は軍事や地政学にからむものだが、尖閣は地下資源と経済の問題が多くを占めている。そこが双方の違いだ。

 (40年以上続いた)露中の国境画定交渉は2004年に合意に達したが、旧ソ連は「中国との間にそうした問題は存在しない」といい、私は中国専門家として「『係争中だ』という中国の主張には根拠がない」と国内各地で講義した。

 しかし、これはプロパガンダであり、問題は厳然として存在していた。露中は結局、妥協により領土を分け合うことを決めた。尖閣も同様で、(領有権の問題は)急いでも解決できるものではない。

 日中の隣人という立場でいえば、対話によって平和的に解決する以上に重要なことはない。日中どちらに帰属しようが、ロシアにとって大きな違いはない。(軍事)衝突が起きないことが重要だ。

 解決への道筋はたくさんある。たとえば、地下資源の埋蔵量調査を済ませて日中で油田やガス田を分け合い、その後で領有権を協議する。採掘権が一方に偏らぬよう、日中合同の委員会を設置する必要があろう。

 また、結局は中断されたが、私たちと中国の間では合同で国境警備も行った。麻薬の密輸入や犯罪者の密航に関する情報交換を行えば、相互協力も深まる。

 私たちはいま、(独ソ戦を戦った)ドイツと素晴らしい関係にある。過去にこだわる時代は終わった。過去を忘れ、未来を見つめたのだ。歴史に重きをおくべきではない。

 露中間の国境画定のときには、両国それぞれで自らの政府に対する不満が高まった。領有権のような困難な問題を解決するとき、政権は自国民の批判に耐える必要がある。(談)

     

 アレクサンドル・ラリン氏 ロシア科学アカデミー極東研究所(モスクワ)上級研究員。1954年モスクワ東洋学大卒。北京大などに留学後、60年から中国・台湾研究に従事。77歳。

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カテゴリ: 我楽多

ルイロペスの完全理解(86)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒の標的のb2ポーンとd3地点

 クイーン翼における黒の反撃の要点は …c5-c4 突きである。この手は主要な戦略の重要性の目的をはっきり示してくれる(図135)。

 図135

 実際このポーン突きは弱いd3の地点を固定しc5の地点とa7-g1の斜筋を空けることに加えて、b2ポーンを固定し黒駒がそれに集中攻撃できるようにする。これにはh8-a1の対角斜筋をキング翼ビショップで占拠することと(図に示した手段や主眼の …Nf6-d7 から …Be7-f6 の捌きによって)、大駒のためにb列を素通しにすること(…Rb8 の他にも …Qd8-b6 や …Qd7-b5)が加わることもある(図136)。

 図136

 これに関連して、黒は通常 a2-a4 突き(この手は中原での争点が継続している状況でよく指される)に伴ってb列を開けることができる。一方別の状況でも a2-a3 突きに対しては …b5-b4 と突くことによりb列を開けることができる。いずれにしても …c5-c4 によるb2ポーンの固定は通常は白がaポーンを突いていない時でも同様に効果的である。この場合白が b2-b3 と突いてポーンを交換しようとすると黒は …c4-c3 と突き越して危険なパスポーンを作ることができる(図137)。

 図137

 要するにクイーン翼の白ポーンの配置が元々どうなっていようとそれらが黒の多数派ポーンの進攻を効果的に迎え撃つことは難しい。だから白は反対翼でチャンスを作り出さなければならない。

 d3の地点の占拠が重要な理由は二つある。即ちそこに来たナイトはb2の地点に対する圧力に貢献するだけでなく、b1-h7の危険な斜筋をさえぎる。この斜筋をさえぎることは予定の e4-e5 突きのあと全力を発揮する機会を辛抱強く待っていた白の白枡ビショップの動きを妨げることになる。

 だから局面の必要性により黒は両ナイトでd3の地点を押さえてそこをしっかり占拠したり、または敵の白枡ビショップを無力化し白が侵入者を Bxd3 で取り除こうとすれば …cxd3 と取り返すことに満足したりする作戦を実行に移すことができる。

 前者の場合d3の地点の占拠は可動中原にすることにした時から注意深く準備しなければならない(図138)。

 図138

 例えばこの状況で黒は長期的な捌きの …Nb4、Bb1 c5 を実行し白が d5 突きで中原を閉鎖すれば …c4 と突くことができる(図139)。

 図139

 黒はもう一つのナイトでd7-c5(時にはd7-e5)の経路で介入しd3の地点を安定的に占拠するかもしれない。

 他にもd3の地点の支援はクイーン翼ビショップも行うことができる。この場合黒は例えば …bxa4 でb列を素通しにしてからaポーンをa5まで進め …Ba6 と覗けるようにする(図140)。

 図140

 ここにおいてd3を占拠する捌きはb2のポーンを攻撃するだけにとどまらず、b1-h7の斜筋上の白枡ビショップの動きを止める役割も果たす。

 最後に、黒は時には戦術的手段を用いてd3の占拠計画を立てることもできる(図141)。

 図141

 この図で白の手番ならば a3?! と突いてd3の占拠を防げるように見える。しかし黒はかまわず …Nd3!、Bxd3 cxd3、Qxd3 Nc5 と指すことができる(図142)。

 図142

 これで黒は白の攻撃の鋭鋒を取り除いてe4のポーンを取ることができる。

 場合によっては黒はd3でポーンを犠牲にすることもできる。特に白がそれを取るのに手数がかかる時がそうである(例えばd2にナイトがいてすぐに Qxd3 と取るのを邪魔している時)。そしてその間に主導権を思いのままにできることを期待する。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(187)

「Chess Life」2010年5月号(2/3)

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収局研究室

2010年ベイクアーンゼー

GMパル・ベンコー

 伝統のコーラス大会はオランダで72年間開催されてきた。今年の参加選手14人のうち最終結果の上位には次の選手が入った。1位 GMマグヌス・カールセン 8½点、2-3位 GMウラジーミル・クラムニクとGMアレクセイ・シロフ 8点、4-5位 GMビスワーナターン・アーナンドとGMヒカル・ナカムラ 7½点。世界チャンピオンと同順位だったのはヒカルにとって良い結果だったがもっと上位に食い込むこともできたはずだった。若い選手たちが収局の研究にもっと注意を払うべきである理由もここにある。

双ビショップ
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708)
GMセルゲイ・ティビアコフ(FIDE2662)

 黒の手番

 盤上は動的に均衡がとれているが黒は局面を楽観してポーン得に走った。その結果斜筋が開いてビショップに有利になりルークの働きが増した。

45…e4? 46.d4 Rd5 47.Rb1! cxd4 48.cxd4

48…Rxd4

 48…Bxd4 には 49.Be7 がある。

49.Ba6!

 黒キングの退路を断った。

49…Rb8 50.Rec1+ Kd7 51.Bc5 Rd5

52.Bxb6

 52.Rxb6 Rxc5 53.Rd1+ Kc7 54.Rxf6 の方がはるかに良かった。

52…Nc6

 52…Ke6 の方が良い受けだった。

53.Bc4

 53.a5 も強い手である。

53…Rd2 54.Rd1 Bc3 55.Be3 Rxb1 56.Rxb1 Rc2

57.Bb3 Re2 58.Kf1 Rb2 59.Rxb2 Bxb2 60.gxf5 gxf5 61.Bxg5 Nd4

62.Bd1

 局面が一段落した。白は両端の列にパスポーンがあるので 62.Bf6 でも良かっただろう。

62…Bc3 63.h4 Ke6 64.h5 Kf7 65.Be3 Nc6

 白は 66.a5 を狙っていた。しかしポーンを止めるのは幻想にすぎない。なぜなら盤の両側面で頑張ることはできないからである。

66.Bb3+ Kf6 67.Bd5 Ne5 68.Bb6 Kg5 69.a5 Nd7 70.Bc7

70…Nc5

 70…Bxa5 71.Bxa5 Kxh5 ならもっと長引かせることができただろう。しかし黒がポーンを交換することができたとしても双ビショップは原理的に1個のナイトに勝つはずである。

71.Bf7 Na6 72.Bd8+ Kh6 73.Bg6 Nc5 74.Bb6 Bb4

75.Bxf5 Kxh5 76.Bxe4! Nxe4 77.a6 Nd2+ 78.Kg2 Nc4 79.Bd4 黒投了

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(85)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白の目標のf5地点、d6ポーンおよび e4-e5 突き

 前述のように、中原を閉鎖したあとでも白は e4-e5 突きで仕掛ける考えを放棄していないが、それと同時に第2章および第3章で解説したのと同様の攻撃目標を追求する。例えばナイトによるf5の地点の占拠がそうであり、ここでは一般にキング翼ナイトがd4の地点を経由してf5に行けることにより容易になっている(図134)。

 図134

 ナイトがf5に来ると敵のキャッスリングした囲いへの攻撃に役立つことができるし、d6のポーンを脅かして(例えばf4の地点に展開したビショップと協力して)黒にその防御に戦力の一部を張り付けさせることにもなる。

 明らかに白の作戦の重要な部分は e4-e5 突きの準備によって占められている。このポーン突きはb1-h7の斜筋を通すことによって、f2-f4 突きの用意があろうとなかろうと、または駒だけの助けでなされようとなされまいと、破壊的な効果をもたらすことができる。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解