2010年09月の記事一覧

53年「人民日報」日本領と認める

53年「人民日報」日本領と認める

 事態がここまで紛糾した段階で、少なくとも71年まで中国も日本の領有権を公式に認めていたという事実を確認しておくべきではないか。少し長い引用になるが、53年1月8日の人民日報「資料」欄は冒頭で次のように記している。

 「琉球群島はわが国の台湾東北部と日本の九州島西南部の間の海上にあり、尖閣諸島、先島諸島、大東諸島、沖縄諸島、大島諸島、トカラ諸島、大隅諸島、など七つの島嶼(とうしょ)で、それぞれに多くの小島があり、総計五十以上の名のある島と四百余りの無名の小島があり、(中略)その内側はわが国の東海、外側は太平洋の公海である」と地理的説明を行い、さらに「自由、解放、平和を求める琉球人民の(反米・基地)闘争は孤立したものではなく、日本人民の闘争と切り離せないものである」と述べている。

 ◇53年「人民日報」日本領と認める
 つまり問題の尖閣諸島を中国呼称の「釣魚島」ではなく日本呼称で呼び、「内側はわが国(中国)の東海(東シナ海)、外側は太平洋」と日本領であることを事実上、認めている。しかも日本のいわゆる「新聞報道」とは異なり党中央機関紙の記事であり、しかも一般記事以上に正確を期すべき「資料」欄に掲載され、それだけに中国の公式見解ととらえるべきである。

2010年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(84)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

d4-d5 突き

 中原の閉鎖は最も意欲的な決断であることは確かである。なぜなら白は(可能な間)広さの優位を維持し、同時に中原での仕掛けの意図を放棄しないでもし必要ならばfポーンも動員する用意をしながら先延ばしにしているだけだからである(図133)。

 図133

 黒の方も何らかの代償は得ている。白の中原の可動性が減少しそれと共にクイーン翼で黒ポーンがもっと動き易くなったので状況ははるかに均衡がとれたものとなっている。これらのポーンは進攻に際して図127の状況では考えられなかった反撃の目標をすぐに作り出すことができる。…c5-c4 突きはd3の地点を弱点として固定し、c5の地点とa7-g1の斜筋を空ける。それのみかパスポーンの生成に向けた後の密集ポーンの前進(…b5-b4 から …c4-c3)の前提も作り出す。したがって中原が閉鎖されたあと局面は攻撃(中原とキング翼での白)と反撃(クイーン翼での黒)の性格を帯びてくるのは当然である。それでは両者の捌きの顕著な要点を取り上げていくことにしよう。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(92)

「British Chess Magazine」2010年6月号(12/16)

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世界選手権戦(続き)

第9局 5月6日

 アーナンドはカタロニアを放棄しかなり平凡でよく知られたニムゾインディアンの戦型を採用した。またしてもクラムニク直伝の戦法があるのかと思われたが突然方向を変えてレフ・プサーヒスが初めて指した手を採用した。その後クイーンを切ってルーク2個を取ったが戦力の不均衡にもかかわらずしばらくは穏やかな道筋に落ち着きそうに見えた。しかしトパロフはしだいに形勢を損じキングがアーナンドの一方のルークによって最下段に閉じ込められた。これでインド選手の勝ちになるかと思われたが彼は妙なことにキングを自由にさせた。

 それで物語の終わりでは全然なかった。アーナンドがまたも黒キングを取り囲んだ。しかし今度は勝利はかなり怪しくトパロフはついにチェックの千日手による受けを見つけた。

 紆余曲折に富む試合だったがアーナンドにとっては勝てる機会を逃がしたわけで白番は残りあと1局だけとなった。

ここまでの結果 アーナンド4½点 トパロフ4½点

第9局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

ニムゾインディアン防御 [E54]

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3

 今日はカタロニアでなかった。たぶん第8局の精神的衝撃のあとアーナンドはポーンの犠牲の代わりのつかみ所のない駒と再び対面したくなかったし新機軸も持ち合わせていなかったのだろう。

3…Bb4 4.e3 O-O 5.Bd3 c5 6.Nf3 d5 7.O-O cxd4 8.exd4 dxc4 9.Bxc4 b6 10.Bg5 Bb7 11.Re1 Nbd7 12.Rc1 Rc8

13.Bd3

 この時点までアーナンドはまたしてもクラムニクの模倣路線に入っているように見えた。ここでチャンピオンとしての前任者は 13.Qb3 と指し、2000年ロンドンでの世界選手権戦第10局でカスパロフを破った。カスパロフは 13…Be7 と指したが以降の定跡の進展によると 13…Bxc3 が改良手となっているようである。

13…Re8 14.Qe2 Bxc3 15.bxc3 Qc7 16.Bh4 Nh5 17.Ng5

 これがプサーヒスの指した手で、白のいくらか不確かな戦型に生気を与えた。

17…g6 18.Nh3

 これは新機軸の手である。2000年トルシャブンでのプサーヒス対ヒラルプ・ぺルソン戦では 18.Qd2 Bd5 19.f3 と進み引き分けに終わった。

18…e5 19.f3

19…Qd6

 黒は1手早くここで 19…exd4 と指して同じ手順でポーン得することができた。例えば 20.Qxe8+ Rxe8 21.Rxe8+ Kg7 22.Bf2 dxc3 23.Bd4+ Nhf6 24.Bxc3 Qc5+

となれば形勢は不明である。

20.Bf2 exd4 21.Qxe8+ Rxe8 22.Rxe8+ Nf8 23.cxd4 Nf6 24.Ree1 Ne6 25.Bc4 Bd5 26.Bg3 Qb4 27.Be5!?

27…Nd7!

 27…Bxc4 は 28.Bxf6 で黒枡ビショップをf6にねじ込ませて白のチャンスをいくらか高めてしまうだろう。

28.a3 Qa4 29.Bxd5 Nxe5

30.Bxe6

 30.dxe5 Qd4+ 31.Nf2 Qxd5 は互角である。

30…Qxd4+?!

 30…Nd3!? が互角を維持するもっと良い手かもしれない。

31.Kh1 fxe6 32.Ng5 Qd6

33.Ne4

 33.Nxe6!? は 33…Qxa3 で、コンピュータはここから 34.f4! Nd7 35.Rc8+ Kf7 36.Ng5+ Kf6 37.Rc7 という手順を見つけていて白が優勢である。しかし本譜も非常に有望である。

33…Qxa3 34.Rc3 Qb2 35.h4

35…b5?!

 ここは 35…a5 の方が良かったようである。トパロフはこの仕損じのあと窮地に陥った。

36.Rc8+ Kg7 37.Rc7+ Kf8 38.Ng5 Ke8 39.Rxh7 Qc3

40.Rh8+?

 観戦者たちはアーナンドが規定手数前にトパロフのキングを最下段から逃がしてやったことを信じられなかった。代わりに 40.Re4 b4 41.Rxa7 b3 42.Rb7 b2 43.Kh2 Qc1

としてここで 44.Ra4 なら勝ちが確実だった。

40…Kd7 41.Rh7+ Kc6 42.Re4 b4 43.Nxe6 Kb6 44.Nf4

 白の少し前の比較的容易な勝ちの可能性は消え去ったがそれでもアーナンドは戦いを続ける巧みな手段を見い出した。

44…Qa1+ 45.Kh2 a5 46.h5!

 ルークの筋を通すのがそれである。

46…gxh5 47.Rxh5 Nc6 48.Nd5+ Kb7 49.Rh7+ Ka6 50.Re6 Kb5 51.Rh5

 アーナンドが勝ちの局面をまた作り出すために難解な手順をひねり出したので観戦者たちのコンピュータがまた色めきたった。しかしトパロフが断固として抵抗したのでこのあとどう指し進めるのかはまったく不明である。

51…Nd4 52.Nb6+ Ka6 53.Rd6 Kb7

54.Nc4?

 悲しいかな、またやり損じて白の勝つ可能性を非常に難しくさせた。54.Nd5! が詰みの網を絞りすぐに勝ちになるはずである。これに対して 54…Nxf3+ なら 55.gxf3 Qb2+ 56.Kh3 Qb1 57.Re5 Qh1+ 58.Kg4 Qg2+ 59.Kf4 Qh2+ 60.Kf5 Qh7+ 61.Kg4

で白がすぐにチェックから逃げ切る。

54…Nxf3+! 55.gxf3 Qa2+ 56.Nd2 Kc7

57.Rhd5?!

 57.Rhh6 の方が動き回れる。

57…b3 58.Rd7+ Kc8 59.Rd8+ Kc7 60.R8d7+ Kc8 61.Rg7 a4 62.Rc5+ Kb8 63.Rd5 Kc8

64.Kg3?

 これで白の勝つ最後の機会がついに消えた。64.Rdd7! が正着だった(もちろん62手目でも指せた)。以下は 64…a3 65.Kg3 Qa1(65…Qxd2 66.Rxd2 b2 は 67.Rh2 で次の手で詰みになり負ける)66.Rc7+ Kb8 67.Rb7+ Ka8 68.Nxb3

で勝ちになる。

64…Qa1!

65.Rg4

 65.Rdd7!? は 65…Qe1+! 66.Kf4 b2! 67.Rc7+ Kd8! 68.Rgd7+ Ke8 69.Re7+(他に良い手がない)69…Qxe7 70.Rxe7+ Kxe7 71.Nb1! Kd6!

で引き分けになる。

65…b2 66.Rc4+ Kb7 67.Kf2 b1=Q 68.Nxb1 Qxb1 69.Rdd4

 黒の次の2手は絶対だが見つけるのは特に難しくない。

69…Qa2+ 70.Kg3 a3 71.Rc3 Qa1 72.Rb4+ Ka6 73.Ra4+ Kb5

74.Rcxa3 Qg1+ 75.Kf4 Qc1+ 76.Kf5 Qc5+ 77.Ke4 Qc2+ 78.Ke3 Qc1+

79.Kf2 Qd2+ 80.Kg3 Qe1+ 81.Kf4 Qc1+ 82.Kg3 Qg1+ 83.Kf4 ½-½

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(83)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒が …c7-c5 突きで中原を変える

 図127で示される状況が長引くと白に有利になるので、黒が中原の状態を変える処置を取ることは理にかなっている。前述したように黒はそれを …c7-c5 突きによって達成できる(図132)。

 図132

 d4ポーンを切り崩す黒の意図は、…cxd4 または dxc5 の交換により相手の中原を弱体化させるか、または d4-d5 突きで中原が閉鎖されることにより中原ポーンを動きにくくさせることにある。

 …cxd4 は第5章で取り上げるので、他の二つの可能性、即ち d4-d5 による閉鎖((84)を参照)と dxc5 による単純化((88)を参照)をここで解説する。

(この章続く)

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カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(82)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

e4-e5 の仕掛けを念頭においた駒配置

 図127に示される状況が持続するとき(例えば可動中原の形成が黒の決断によるものでなく、白が中原での争点の戦いに勝った結果によるものである場合)、白は中原の並列ポーンの内側に駒を寄せ集め適当な時機に e4-e5 と中原で仕掛けて敵のキャッスリングした囲いに猛攻撃を加えることができる。中原での仕掛けをより効果的にする最も普通の手段はb1-h7の斜筋でバッテリーを組むことである(図128)。

 図128

 この図は理想的な組み合わせを示していて、最下段が空いてルークが結合できるようになっている。しかし Bb1 と Qc2 とによってバッテリーが組まれることも珍しくない。b1-h7の斜筋の圧力は Bc2 と Qb1 の配置によってもかけられる。

 中原での仕掛けは Nf6 にh7の守りを放棄させる破滅的な効果をもたらすので、黒がそのような襲撃を考慮して一般には …g7-g6 突きによって状況に対処する策を講じるのは理にかなっている。しかしこれは白の猛攻をまったく無効にすることにはならない。白の猛攻は敵のキャッスリングした囲いの弱体化とe4の地点が空くことで新たに活気づく(図129)。

 図129

 このような状況では白は …g7-g6 突きによって引き起こされるf6とh6の弱体化につけ込むことを目指すことができる。しかし白はeポーンをさらに突いたり(e5-e6)hポーンも投入したり(h3-h4-h5)することによってb1-h7の斜筋に沿った攻撃をよみがえらせることもできる。

 それでも白は攻撃を準備する際に早まって e4-e5 と突かないように注意しなければならない。

 実際のところ図127に示された状況で白の中原の強みはその可動性にある。d4とe4に並んだポーンはc5-d5-e5-f5の地点を支配し、主要な斜筋を封鎖して黒の小駒が活動的な地点を占拠するのを防いでいる(図130)。

 図130

 従って黒は窮屈な中原の領域で捌くことを余儀なくされ、白の可能なポーン突き(e4-e5 と d4-d5)との関連で不本意な地点に駒を配置させられる恐れがある。

 逆にもし白が駒を集結させる周到な準備なしに中原で仕掛ければ-e5 dxe5、dxe5 のあと-黒は役に立つd5とf5の地点が使えるようになるだけでなく、a7-g1とa8-h1の斜筋が開通しe5のポーンが弱体化することも黒にとって有利となる(図131)。

 図131

 容易に気づくように黒は自陣の4段目に3個所もの拠点が使えるようになった。一方e5のポーンはナイトによってだけでなく黒の残りの戦力のほとんどによる協同(かつ主眼の)作戦(…Re8、…g6 および …Bf8-g7)によって攻撃目標にされる。

 それゆえに白は、ばねに圧力かけることにより得られる過程と同じことで、中原の仕掛けを実行に移す前に駒を集結させなければならない。ばねは縮めば縮むほどたまる潜在力は大きくなる。

(この章続く)

2010年09月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[31]

eポーン布局

第3章 キング翼ギャンビット(続き)

ファルクベーア逆ギャンビット

1.e4 e5 2.f4 d5(図39)

 図39(白番)

 黒は白のポーン捨てを無視し、展開を速めるために自分の方からポーンを(一時的に)捨てにきた。2手目のあと黒のビショップは両方とも動きが自由で、展開の問題には直面しそうにない。

3.exd5

 もちろん 3.fxe5?? は 3…Qh4+ で負けてしまう。

3…e4

 これが逆ギャンビットの二の矢である。黒は自身の展開を(…d5 によって)容易にしただけでなくすぐの Nf3 を防ぐことにより白の身動きを不自由にさせた。黒はすぐに 3…c6 と指すこともできそのあと素早い展開を目指すか 3…exf4 と取る。

4.d3

 白はクイーン翼ビショップが動けるようにし黒のeポーンを当たりにした。キング翼ギャンビット受諾の現代防御の同じような局面のように、白が早く c4 と突くのは前の方のdポーンにしがみつこうということではなく、d5の地点を支配しようという作戦の始まりである。しかし 4…c6 5.c4 Nf6 6.d4 cxd5 のあとe4のポーンが強力なので黒が指し易い。例えば 7.Qb3 Be7 8.cxd5 O-O 9.Ne2 Nbd7 10.Ng3 Nb6 となれば黒が優勢である。

4…Nf6

 黒はすぐに 4…Qxd5 でポーンを取り返している余裕はない。なぜなら 5.Qe2 f5 6.Nc3 Bb4 7.Bd2 Bxc3(ポーンを守る唯一の方法)8.Bxc3 Nf6 9.O-O-O! Qxa2 10.dxe4 Nxe4(10…Qa1+? 11.Kd2 Ne4+?? は 12.Qxe4+ で黒の駒損になる)11.b3 O-O 12.Qc4+ Kh8 13.Bb2 で黒のクイーンが働かず白の攻撃が強力になるからである。

5.dxe4 Nxe4

 黒は 6…Qh4+ 7.g3 Nxg3! を狙っている。

6.Nf3 Bc5

 ここはビショップにとって白の弱点のf2をにらむうってつけの地点である。

7.Qe2

 白はこの手でe列に圧力を加えて優勢を確実なものにした。

7…Bf5

 ナイトを支える手段は他にもあるがどれも黒にとって満足な結果にならない。(a)7…Qe7 8.Be3!(b)7…f5 8.Be3 Qxd5 9.Bxc5 Qxc5 10.Nc3(c)7…Qxd5 8.Nfd2 f5 9.Nc3(d)7…Bf2+ 8.Kd1 Qxd5+ 9.Nfd2! f5 10.Nc3 いずれの場合も白が優勢である。

8.Nc3

 白はe列での圧力を増大させた。一見 8.g4 で駒得になりそうだが黒はビショップを取らせることができる。8…O-O! 9.gxf5 Re8 これで黒がe列を乗っ取って白が負ける。

8…Qe7

 8…Bb4? には 9.Qb5+ がある。

9.Be3 Bxe3

 黒は 9…Nxc3 10.Bxc5 Nxe2 11.Bxe7 Nxf4 12.Bg5 Nxd5 と指せばポーン得することができる。しかし 13.O-O-O のあと白は代償として有益な主導権を得る。

10.Qxe3 Nxc3 11.Qxe7+ Kxe7 12.bxc3 Bxc2 13.Kd2(図40)

 図40(黒番)

 白は主導権を握っている。例えば 13…Ba4 なら 14.Re1+ Kd8 15.Re4 である。また 13…Bf5 なら 14.Re1+ Kf6 15.Nd4 Bd7 16.h3 で g4 突きを狙う。これはキング翼ギャンビットを得意戦法とするGMジョー・ギャラガーの分析によると白がかなり優勢である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(81)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点

 陣形の観点から見ると可動中原の形成は第1章で概説したように白が中原での争点が続いている間追求していた目的を達成することができるので白にとって成功である。実際ポーンの形だけに注目するとこの結果は明らかである(図127)。

 図127

 中原のe4とd4に並んだポーンのために白はかなり広さで優位に立ち、駒がより自由に動ける。そしてe5のポーンがなくなったことにより e4-e5 突きで仕掛けるのに必要な可動性が白の中原にもたらされる。このポーン突きは敵のキャッスリングした囲いに対する猛攻の自然な前兆である。

 したがって黒は自ら作り出した可動中原を作戦の到着点と考えるべきではなく、もっと広い地平線上の途中の段階(一時的で短命)と見るべきであることは理にかなっている。この途中の段階は中原での以前の譲歩の影響を実際に一掃しないまでも減少させるように中原の変容をさらにもたらす意図である。

 だから黒は …c7-c5 または …d6-c5 突きの手段によって局面の戦略的形態を変える用意をする。この黒の作戦の第二段階に続く試合の展開が本章の中核である。

 しかしまず図127で白に優位をもたらす要因をもっと分かりやすく説明する方が有益だろう。

(この章続く)

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ためになる話

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100926/plc1009260307003-n1.htm

【産経抄】9月26日
2010.9.26 03:06

このニュースのトピックス:産経抄
 平成生まれのみなさんへ。長かったいくさが終わって、中国がぼくたちの「ともだち」だった時期がほんのひとときあったんです。つきあい始めたころには、白黒の珍獣を友情の印に贈ってくれ、上野動物園には長蛇の列ができました。

 ▼こんな愛くるしい動物のいる国はきっと、やさしい人たちが住んでいるんだろうな、とぼくたちは信じました。もちろん、いくさで死んだ兵隊さんを祭った神社に偉い人が参っても文句ひとついいませんでした。

 ▼しばらくして、「ともだち」は、神社へのお参りに難癖をつけ、ぼくたちが持っている島を「オレのものだ」と言い出しました。びっくりしましたが、トウ小平というおじさんが「次の世代は我々よりもっと知恵があるだろう」と言ってくれました。

 ▼でも小平おじさんは、本当は怖い人だったんです。「自由が欲しい」と広場に座り込んでいた若者たちが目障りになり、兵隊さんに鉄砲を撃たせ、多くの人を殺してしまいました。みんなはびっくりして「こんな野蛮人とはつきあえない」と村八分にしました。

 ▼それでもぼくたちは、みんなに「こいつは本当はいい奴(やつ)なんだよ」と口をきいてあげ、貧しかった彼には、いっぱいお金をあげたり、貸してあげたりしました。おかげで「ともだち」は、みるみるお金持ちになりました。

 ▼そのお金で「ともだち」は軍艦や戦闘機をいっぱい買い、今度はもっと大きな声で「この島はオレのものだ」と叫びました。「次の世代の知恵」とは、腕ずくで島を奪うことだったんです。パンダにだまされたぼくたちは浅はかでした。「次の世代」のみなさんは、もっともっと力をつけて真の友人をつくってください。お願いします。

ルイロペスの完全理解(80)

第4章 可動型中原

主手順 - ザイツェフ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.a4 h6 12.Nbd2 Bf8 13.Bc2 exd4 14.cxd4(図126)

 図126

 この型の中原の特徴は黒が …exd4 と取り白がcポーンでd4のポーンを取り返すことである。このような状況は中原で争点がしばらく保たれたあと他の多くの戦法でも現れる。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O の後

 ザイツェフ戦法
 - 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.a4 h6 12.Nbd2 exd4 13.cxd4

 …Nd7 のチゴーリン戦法
 - 9.h3 Nd7 10.d4 Nb6 11.Nbd2 exd4 12.cxd4

 その他の戦法
 - 9.h3 a5 10.d4 a4 11.Bc2 Bd7 12.Be3 exd4 13.cxd4
 - 9.d4 Bg4 10.Be3 exd4 11.cxd4

 あるいは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 d6 7.c3 Bd7 8.d4 O-O 9.Nbd2 exd4 10.cxd4

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 Nge7 5.O-O Bb6 6.d4 exd4 7.cxd4

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(79)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図125(再掲)

 たぶん一目瞭然の 17.Nf5+ に幻惑された黒は相手の主要な目的がまだd5の地点であることに気づかなかった。実戦の手は白ナイトがd5に入って来たあと …Bxd5、exd5 と交換するとb1-h7の斜筋が決定的な弱点になるので重大な間違いだった。

 30…Bf8 の方が良かったが 30…Nf4? は 31.Bxf4! exf4(31…gxf4 は 32.Qg4+ で勝勢)32.Nf5+ Kh7 33.e5! で白の勝ちになる。

31.Nd5! Bxd5?

 形は悪いが 31…Qd7 ならこの交換後のまずい結果を避けられた。

32.exd5 Nf8

 b1-h7の斜筋に向けられる大砲のことを考えればこのナイトをg6とh7の地点に利かせるのはやむを得ない。

33.c4!

 黒のキング翼をひどく弱体化させたので今度は戦いを逆の方面に移してb5の地点に狙いを定めた。

33…Qb7

 33…bxc4 はクイーン翼のポーンが弱くなる。…b5-b4 突きなら本譜の2手が続いたとしてもっと頑強に抵抗できただろう。

34.Bd3 Rb8 35.f3 Bd6 36.cxb5!

 白はついにこのポーン取りを決めた。これでc5ポーンに強い圧力をかけることができる。

36…axb5 37.b3 Qf7?!

 黒はbポーンを与えてh5のポーンを取ることにした。しかしそうすることによって相手にパスaポーンを作らせることを過小評価していた。37…b4 ならもっと頑強に抵抗できた。37…Qxd5 は 38.Bxb5 で実戦と同様の運命をたどる。

38.Bxb5 Qxh5 39.a4 Qf7 40.Qe4

 白は相手の弱点を忘れていない。

40…Qc7 41.Rc2 Qe7 42.Bf2 h5 43.Rc3

 b3のポーンをルークで守って白枡ビショップがまた動けるようにした。

43…h4 44.Be3 Ng6 45.Bd3 Nf8 46.a5 Rb4 47.Bc4 Qd7 48.a6 Ng6

 48…f5 は 49.Qb1 Kf6 50.Qa1 Qa7 51.Qa5(Qxb4 の狙い)51…Rb6 52.b4 で白が勝つ。

49.Qg4 Qc7

 49…Qxg4 は 50.fxg4 Rb8 51.Bf1 で早く負ける。

50.Rc1 Rb8 51.Ra1 Nf8 52.Bd3

 狙いは 53.a7 Ra8 54.Qa4 から Bd3-b5-c6 である。

52…Qa7 53.b4 Qf7 54.bxc5 Qa7 55.Rc1 Nd7 56.Qe4 Bxc5 57.Qh7+ 1-0

(この章終わり)

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「ヒカルのチェス」(186)

「Chess Life」2010年5月号(1/3)

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チェスライフの2010年米国選手権予想

IMグレッグ・シャヘード

優勝候補たち

GMヒカル・ナカムラ
ヒカルは連覇を目指す選手権保持者であり世界ランキングも急上昇したので当然優勝候補の一人である。しかしガータ・カームスキーは容易ならぬ競争相手であり、ヒカルの成績はいつも不安定なのが泣きどころである。それでもヒカルを優勝候補の筆頭にあげたい。
決勝進出の可能性 70%、優勝の可能性 31%

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(この号続く)

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カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(78)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図124(再掲)

 中原の状態に決まりがつき明らかに白が少し優勢である。実際 Nf6 に対する圧力は黒が機械的に自然な作戦(…Qc7、…Rad8、…c4 から …Nc5)を実行するのを防いでいる。逆に白はクイーンを最良の手段で動かす余裕がある。白はd列をルークで制圧してd5の地点の占拠を狙うこともできる。基本的に白は相手よりもずっと容易に主眼の目的を追求することができる。

17.N3h2

 絶好のf3の地点をクイーンのために空け同時に主眼の Ng4 跳ねの用意をした。白は駒の配置の調和がよいので中原とキング翼の両方で行動できることに注意してほしい。

17…Qc7 18.Qf3 Be7

 黒は Nf6 を守っておいて Nd7 を動かしd列でルークを対峙させたい。本筋というわけではないが一つの面白い手は 18…Re6 で6段目でd列を争うことである。

19.Ne3 g6

 白のキング翼攻撃の可能性を考慮すれば黒はf5の地点を守っておくのが賢明である。

20.Rad1 Rad8 21.Re2 Kg7

 Nf6 を守って Nd7 をその役目から解放した。

22.Red2 Nf8

 黒はついにd列で対抗することができた。もっと積極的に見える 22…c4(…Nc5 と指す考え)は 23.Nhg4 で挫折する。例えば 23…Nxg4(23…Nxe4 は 24.Nxh6 Bxh4-24…Nef6 25.Nhf5+-25.Qxf7+ Kxh6 26.Rxd7 で白の勝ち)24.Bxe7 Rxe7 25.Qxg4 Nf6 26.Nf5+ Kh7 27.Qh4 ! で白の勝勢である。以下は例えば 27…gxf5 28.Rxd8 Nxe4 29.Bxe4 fxe4 30.Qf6 である。

23.Nhg4 N8h7

 たぶん次のように局面の単純化を図った方が良かっただろう。23…Nxg4 24.Qxg4 Rxd2(24…Bxh4? は良くなく 25.Nf5+ Kh7 26.Qxh4 で白が勝つ)25.Rxd2 Bxh4 26.Qxh4

24.Bg3

 e5ポーンの弱さにつけ込んで白はキャッスリングした囲いの弱体化をさらに誘いたい。

24…Ng5

 ここでもやはり 24…Nxg4 25.Nxg4 f6 で単純化する方が良かっただろう。というのは 26.Qe3 Ng5 27.h4(27.Nxh6?! Bxe4!)27…Nf7 のあと白は 28.h5? が 28…gxh5 29.Nh2 f5 のために指せないからである。

25.Qe2 Rxd2 26.Rxd2 Nxg4

 黒はe4のポーンを取ることができない。

 (1)26…Bxe4? 27.Bxe5 Qb7(27…Qc6 なら 28.Nxf6 Bxf6 29.Rd6、27…Qc8 なら 28.h4 Bxc2 29.hxg5 でどちらも白が勝つ)28.h4 Ngh7 29.Bxe4 Qxe4 30.Nd5 で白の勝ちになる。

 (2)26…Ngxe4? 27.Bxe5 Qc6 28.Bxe4 Qxe4 29.f3 Qb1+(29…Qc6 なら 30.Nd5)30.Rd1 Qxa2 31.Nxf6 Bxf6 32.Bxf6+ Kxf6 33.Ng4+ で白が勝つ。

27.Nxg4 f6 28.h4

 白はナイトの存在を利用して敵のキャッスリングした囲いをさらに弱体化させようとしている。

24…Ne6 25.h5 g5 26.Ne3 Rd8?(図125)

 図125

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(77)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図123(再掲)

 (1)11…Nd7(ケレス防御)12.dxc5 dxc5 13.Nbd2 f6(この思い切ったeポーンの防御はここではほとんど必須である。なぜなら主眼の 13…Qc7 はd5の地点と黒のキャッスリングした囲いが …Nd7 引きによって守備駒を取り去られたちょうどその時に Nd2-f1-e3-d5 の捌きにクイーンをさらすことになるからである。これにより白は有利な状況で典型的な中原ポーンの交換を成し遂げるために捌きを追求することができる。例えば 14.Nf1 Nb6 15.Ne3 Rd8 16.Qe2 Be6 17.Nd5! Nxd5 18.exd5 Bxd5 19.Nxe5 で明らかにキャッスリングした囲いに対する攻撃の展望が開ける)14.Nh4(白はd8-h4の斜筋をfポーンが邪魔していることにつけ込んですぐにf5の地点を占拠しキング翼での攻撃の可能性を得ようとしている)14…Nb6 15.Nf5 Rf7(たぶん 15…Kh8 で白クイーンがg4に出てくるのを防ぎ …Nac4 と指すのを目指す方が良かった。代わりに 15…Bxf5 と取るのは 16.exf5 で黒陣の白枡の弱点がかなりひどくなる)16.Qg4 Kh8 17.h4!(h4-h5 から Nd2-f3-h4-g6+ といく作戦である)17…g6 18.Nh6 Rg7 19.Qf3 形勢は白が優勢である。

 (2)11…Qc7 12.Nbd2(すぐに 12.dxc5 と取るのは白の手を見せるのが早すぎ黒が典型的な戦略の目的のとおりに駒を編成することができるので効果がない。例えば 12…dxc5 13.Nbd2 Rd8 14.Qe2 c4 のあと …Na5-b7-c5-d3 と捌いてくる)ここで黒はあらゆるたぐいの手を試した。

 (2a)12…Bb7 13.dxe5(白は …Bb7 と展開したあと初めて交換中原の形にした。これにより前述の …Na5-b7-c5-d3 の捌きが難しくなっている)13…dxe5 14.Nh2 Rad8 15.Qf3 白のキング翼での攻勢の方が相手の反撃よりもはるかに容易に進行する。

 (2b)12…Be6(黒は閉鎖中原を誘い、そうならなければ …d6-d5 突きで中原での清算に備えている。もっとも白はこの考えの出鼻をくじき Be6 の位置を叩くことができる)13.dxe5(13.d5 も良い手である)13…dxe5 14.Ng5 Bd7 15.Nf1 白陣の方が好ましい。

 (2c)12…Rd8(この手も …d5 で中原を清算する目的だが現在の場合はあまり効果的でないことが分かってくる)13.Nf1 d5 14.dxe5 dxe4 15.N1d2! exf3 16.exf6 Bxf6 17.Qxf3 Be6 18.Ne4 Be7 19.Qh5 攻撃に非常に期待がもてる。

 (2d)12…Bd7(このユーゴスラビア・システムは白が中原での意図を明らかにするまで …Re8 と …Bf8 とによって時間を稼ごうという考えである。しかし白にあまりに多くの方針の自由を与えるという欠点もある)13.Nf1 Rfe8 ここで白は 14.Ne3 g6 15.dxe5 dxe5 によってすぐに交換中原にすることができる。例えば 16.Nh2 Rad8 17.Qf3 Be6 18.Nhg4 Nxg4 19.hxg4 Nc4(危険な Ne3 を交換させるため)20.Nd5 Bxd5 21.exd5 Nb6 この局面は受け切れることを黒が実戦で示した。あるいは白はもっと効果的に中原でどんな方針が取られてもそれに対する先受けの手段を取ることができる。例えば 14.b3(…Nc4 の侵入をふせぐため)14…g6 15.Bg5(…Bf8 を防ぎ Bxf6 と交換することによってd5の地点を弱体化させる用意)15…Bc6 16.Ng3 白が優位を保っている。

 (2e)12…Nc6(非常に理にかなった手。黒はd4の地点に対する圧力を強めて白に方針を決めさせる)13.dxc5(13.d5 は閉鎖中原になる。一方 13.Nf1? ではd4のポーンが守られなくなる。なぜなら 13…cxd4 14.cxd4 exd4 15.Nxd4?? Nxd4 の後 Bc2 が浮いているからである)13…dxc5 14.Nf1 Be6(14…Rd8 15.Qe2 Nh5 ですぐにf4とd3の地点に反撃を試みるのは白が邪魔できるので的確でない。16.a4 Rb8 17.axb5 axb5 18.g3! g6-18…Bxh3?! は 19.Ng5 Bxg5 20.Bxg5 Nf6 21.Bxf6 gxf6 となって白にはっきりとポーンの代償がある-19.h4! Be6 20.Ne3 c4 21.Ng5 白が明らかに優勢である)15.Ne3 Rad8 16.Qe2 c4 17.Nf5 Rfe8 18.Bg5 Nd7 互角の形勢である。

 (2f)12…cxd4(c列を開けd4の地点を弱体化させる目的である)13.cxd4 Nc6(または 13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.dxe5-16.d5 と 16.a3 Nxd4 17.Nxd4 exd4 18.Qxd4 という中原の決め方もあり得る-16…dxe5 17.Nd5 Nxd5 18.exd5 Nb4 19.Bb3 両者とも指せる。13…Bb7 については第3局の黒の9手目の解説を参照)14.Nb3 a5 15.Be3 a4 16.Nbd2 この局面は白が長々と続く戦略の小ぜり合いの末に dxe5 と取って交換中原にすることが珍しくない。その一例をあげる。16…Nb4 17.Bb1 Bb7 18.a3 Nc6 19.Bd3 Na5 20.Rc1 Qb8 21.Qe2 Re8 22.dxe5 dxe5 難解な局面でどちらにも可能性がある[訳注 b5のポーンがただで取られるので著者がどこかで間違えているかもしれません]。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 Bf8 14.Bg5

 もっと普通の 14.Ng3 については第1局と第3局を参照されたい。Ng3 の省略により白は …h7-h6 のあとビショップをh4に引いて釘付けを維持することができる。

14…h6 15.Bh4 c5

 15…g6 から …Bg7 と指すのも面白い。一方 15…exd4 16.cxd4 g5 でe4のポーンを取るのは 17.Nxg5! hxg5 18.Bxg5 という駒捨てから Nf1-g3-f5 が非常に魅力的である。

16.dxe5

 これが最善手で、白の駒は交換中原に最も適した配置になっていることを考えに入れている。16.d5 で閉鎖中原にする方針はこの場合 Bh4 の位置がキング翼での白の可能性を非常に減らしているので不適切である。

16…dxe5(図124)。

 図124

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(91)

「British Chess Magazine」2010年6月号(11/16)

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世界選手権戦(続き)

第8局 5月4日

 第3局と第5局に続き13手目までに本局もクイーンなしスラブになった。狭小な陣形でアーナンドは明らかな中間手を見逃しトパロフが番勝負を互角に戻しそうに見えた。しかし彼は最も厳しい手に気づかず試合は異色ビショップの収局にもつれ込んだ。岡目八目のほとんどはアーナンドが引き分けに持ち込めるはずと思っていた。54手目までは彼がそうしそうに見えた。その時彼はビショップを行ける地点のうちほとんど唯一悪手になる所に指した。トパロフはすかさずこの好機をとらえたちまち番勝負が互角になった。チャンピオンはこの試合で疲労の兆候を示し始めたと想像する者がいた。たぶん40歳という年齢が彼にのしかかり始めたのだろう。

ここまでの結果 アーナンド4点 トパロフ4点

第8局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

スラブ防御 [D17]

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 Bf5 6.Ne5 e6 7.f3 c5 8.e4 Bg6 9.Be3 cxd4 10.Qxd4 Qxd4 11.Bxd4 Nfd7 12.Nxd7 Nxd7 13.Bxc4

13…Rc8

 アーナンドの方から手を変えた。第3局と第5局では 13…a6 と指していた。

14.Bb5 a6 15.Bxd7+ Kxd7

16.Ke2

 2008年英国選手権戦でのゴードン対A・レジャー戦は 16.O-O-O Ke8 17.Bb6 Be7 と進み互角だった。

16…f6 17.Rhd1 Ke8

18.a5

 これは新手である。2007年ボロネジでのボチャロフ対アモナトフ戦は 18.Bb6 Bc5 19.Bxc5 Rxc5 20.Rd6 Ke7 21.Rad1 Be8 と進みほぼ互角だった。また、2008年ロシアでのマレティン対アモナトフ戦は 18.Rc1 Rc6?! 19.Na2 Rxc1 20.Nxc1 Be7 21.Bb6 e5 22.Nd3 Bf7? 23.Rc1! と進み白が勝った。

18…Be7 19.Bb6 Rf8 20.Rac1

20…f5?!

 これは作戦負けとなる最初の疑問手だった。黒はたぶん 20…Rf7!? で陣形をほぐし 21…Bb4 から 22…Rd7 を目指すべきだった。

21.e5 Bg5 22.Be3

22…f4?

 これはひどい見損じだった。22…Bxe3 23.Kxe3 Ke7 24.Nd2 でも白が優勢だが本譜はもっと黒が悪い。

23.Ne4! Rxc1 24.Nd6+ Kd7 25.Bxc1

 白はどさくさに紛れてナイトの絶好の地点を確保した。この水準のチェスではこのような陣形上の優位は勝ちに結びつけることができるしそうなるはずである。

25…Kc6 26.Bd2 Be7 27.Rc1+ Kd7

28.Bc3?!

 これはかなり働きの劣る手である。少なくとも一人の解説者はモニター画面にこの手が映し出されたのを見たとき中継エラーだと思った。最善手は 28.Bb4 で、主眼は 28…Bxd6 に 29.Rd1 と応じることができ明らかに優勢になることである。実戦でも同じ小手筋が出るが白ビショップは働きの劣る地点にいる。

28…Bxd6 29.Rd1 Bf5 30.h4 g6

 チャンピオンからまた疑問手が飛び出した。たぶん …h6 から …g5 を想定していたのだろうが試合は新しい方向に進む。

31.Rxd6+ Kc8 32.Bd2 Rd8 33.Bxf4 Rxd6 34.exd6

 異色ビショップの収局になったが白はポーン得に加えて陣形的にかなり有利である。

34…Kd7 35.Ke3 Bc2 36.Kd4 Ke8 37.Ke5 Kf7 38.Be3 Ba4 39.Kf4 Bb5 40.Bc5 Kf6 41.Bd4+

41…Kf7

 この手についてはオンライン上でだいぶ議論された。それは黒がここで 41…e5+!? 42.Bxe5+ Ke6 と指してdポーンを監視できるようにし防御の融通性をいくらか確保できるようにすべきかどうかということである。グランドマスターたちはそれで引き分けには十分かもしれないが確信はもてないということだった。

42.Kg5 Bc6 43.Kh6 Kg8 44.h5 Be8 45.Kg5 Kf7 46.Kh6 Kg8 47.Bc5 gxh5 48.Kg5 Kg7 49.Bd4+ Kf7 50.Be5 h4

 ここら辺ではアーナンドがかなり意外にも引き分けに持ち込むのではないかというのがもっぱらの評判だった。

51.Kxh4 Kg6 52.Kg4 Bb5 53.Kf4 Kf7 54.Kg5

54…Bc6??

 これは突拍子もないポカだった。このビショップはb1-h7の斜筋に行ける必要があるがアーナンドはそうできない地点にビショップを置いた。試合後アーナンドはしょせんどう指しても負けになると思っていたと語った。しかし 54…Ke8 55.f4 Kd7 56.g4 Bd3 57.f5 exf5 58.gxf5 h6+!

のあと白は何も進展が図れないようである。

55.Kh6!

 トパロフはこれを見逃さずチャンスをものにした。

55…Kg8 56.g4! 1-0

 早すぎる投了と考えた観戦者がいるかもしれないがそうではない。要点は黒ビショップが過負荷になっていることである。56…Bb5 57.g5 Be8 58.f4 Bd7 59.Bg7! Be8 60.b4 Bc6 61.g6 hxg6 62.Kxg6

これで白キングは敵キングを押さえながらe7の地点に行ける。

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(76)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

第5局
ティマン対ガルシア・パドロン
ラス・パルマス、1981年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Nb8

 この手がブレイェル戦法の特徴で、既に第1局と第3局で見てきた。しかし最も頻繁に交換中原が生じる戦法は …Na5 のチゴーリン戦法であることは間違いない。そこで 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 のあと2、3の例を検討する(図123)。

 図123

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(75)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図122(再掲)

 白は片翼にだけポーンがあるナイト対ビショップ収局(ナイトにとって最良の状況)の引き分けに希望を託している。実戦の進行からは白の読みは決して素直でなかったことが分かる。

 しかし 42.Qd5 によってクイーンを盤上に残しておくのも有力だった。

42…Qxc4 43.Nxc4 f5 44.Kf1 Kf7 45.Ke2 Ke6 46.f3 Bf8 47.Kd3 Bc5 48.Nd2 Kd5

 これからの黒の戦略は白ナイトの自由に制限を加えていきついにはビショップと交換しなければならないようにすることである。これは書くのはたやすいことだが実現に至るにはかなりの困難を伴う。

49.Nf1 Bb6 50.Nd2 Bd8 51.Nb3 Bg5 52.Na5 Kc5 53.Nb7+

 53.Nb3+ は 53…Kb4 54.Na1 e4+! 55.fxe4 fxe4+ 56.Kxe4 Kc3 でナイトが取られる。

53…Kd5?!

 黒は自分の方針を 53…Kb4! で達成することができた。例えば 54.Nd6 Bf6 55.Ne8 Be7 56.Nc7 Kc5 となればナイトの行き場がない。

54.Na5 Be7 55.Nb3 Bb4 56.Na1 e4+?

 この早すぎるポーン突きのあと黒はもはや正しい行路に戻って前述した方針を実行することができない。

57.fxe4+ fxe4+ 58.Ke2 Ke5 59.Nb3 Bc3 60.Ke3 Kd5 61.Nc1 Bg7 62.Nb3 Bf8 63.Ke2 Bb4 64.Na1 Ke5

 58手目の後の局面と同じである。

65.Nb3 Kf4 66.Nd4!

 自然な 66.Kf2? は収局スタディになるだろう。例えば 66…Bd2! 67.Ke2 Bc3 68.Nc5 Bb2! 69.Nb3 Kg3 70.Kf1 e3 71.Nc5 e2+ 72.Kxe2 Kxg2 73.Nd3 Kxh3! で黒が勝つ[訳注 74.Kf3 で引き分けかもしれません]。

66…Ba5

 ここでの 66…Bc3 は誤りで 67.Nb3 Kg3 68.Kf1 e3 のあと白に 69.Nc1 がある。

67.Nb3?

 これは致命的な悪手だった。白は 67.Ne6+! で引き分けにできた。例えば 67…Kg3 68.Nf8 g5 69.Ne6 g4 70.hxg4 Kxg2 71.Ke3 である[訳注 71…Bb6+ で黒の勝ちかもしれません]。

67…Bc3! 68.Nc5 Bb2! 69.Nd7 Kg3 70.Nf8 g5 71.Kf1

 71.Nh7 でも助からない。なぜなら 71…g4! 72.hxg4 Kxg2 73.Ng5(ここで 73.Ke3 は 73…Bc1+ で負ける)73…Bc1 でやはり黒の勝ちになるからである。

71…e3 72.Nh7 Bc1 73.Nf6 e2+ 74.Kxe2 Kxg2 75.Ng4 Kxh3 76.Kf3 Bf4 77.Nf2+ Kh2 78.Ng4+ Kg1 79.Nf2 Be3! 80.Kxe3 Kg2 81.Ng4 Kg3! 0-1

(この章続く)

チェス布局の指し方[30]

eポーン布局

第3章 キング翼ギャンビット(続き)

現代防御

1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5(図37)

 図37(白番)

 黒はすぐにポーンを返して展開のために筋を開けようとしている。これでクイーン翼ビショップが自由に動けるようになりクイーンの利きも広がった。このシステムはスパスキーやボトビニクをはじめ世界の最強の選手たちの多くがかつて得意にしていた防御だった。

4.exd5

 4.e5? は 4…g5 と強手で応じられるので白はこのポーンを取らざるを得ない。

4…Nf6

 この手は展開しながら白のdポーンの前の方を当たりにしている。4…Qxd5 は早まったクイーン出で、例えば 5.Nc3 Qe6+ 6.Kf2 で 7.Bb5+ から 8.Re1 を狙われる。

5.Bb5+

 このチェックは黒の …c6 を誘って白の当たっているdポーンを交換しようという意図である。もちろん黒は駒をd7に動かしてチェックから逃れることはできるが、あまり活発な試合にはならなくなる。

5…c6 6.dxc6 Nxc6

 この手はスパスキーが同時指導対局で何回か相手に指されてから彼自身が指すようになった。c6の地点はしょせん黒のクイーン翼ナイトにとって自然な場所であり、黒が Bxc6 の交換を恐れる理由はない。

7.d4

 7.O-O? は 7…Qb6+ でビショップを取られるので白はすぐにキャッスリングすることはできない。そこで白はg1-a7の斜筋をふさぎ、同時に黒のfポーンの前の方を当たりにした。

7…Bd6

 黒は当たりのポーンを守った。

8.Qe2+

 これは自然な 8.O-O に代わる思惑のある手である。白はe列で生じる釘付けをうまく利用することができるだろうか。

8…Be6 9.Ng5

 黒が困っているのは確実なように見える。ここで白の狙いはポーンを得することである。注意しなければならないのは 9.c4? O-O 10.d5 と指すと黒は白のクイーンとキングの位置にうまくつけ込んで 10…Bg4 と指してくることである(11.dxc6? Re8)。

9…O-O

 黒はポーンを犠牲にして展開の迅速化と反撃のための重要な筋(e列)の開通を優先した。

10.Nxe6 fxe6 11.Bxc6 bxc6 12.Qxe6+ Kh8

 黒は次に 12…Re8 でクイーンを取る手を狙っている。黒の小駒はよく働いているのに対して白のクイーン翼はまったく展開できていない。このような開けた局面では展開の優位とそれに伴う攻撃の可能性は捨てたポーンを十分に補ってくれる。

13.O-O Qc7(図38)

 図38(白番)

 1970年ルガノでのベント対メディナ戦は次のように進んだ。

14.Qh3 Qb6 15.Qd3 Rae8 16.Nc3 Qb8

 この手の狙いは 17…f3 18.Qxf3(18.g3? Bxg3! 19.hxg3 Qxg3+ 20.Kh1 Qg2#)18…Bxh2+ 19.Kh1 Nh5 で、黒の勝勢になる。

17.Qf3 c5 18.d5 g5! 19.h3 h5 20.Qd3 g4

 黒の攻撃は非常に厳しい。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(74)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図121(再掲)

 黒は …b5-b4 突きで白のd4の地点の支配を弱めクイーン翼ビショップをc6の地点に上げてeポーンへの圧力を強める用意をしている。これに加えて白のナイトはd5の地点から隔たっていて、キング翼での攻撃作戦を展開する手段もない。ここから白はやれることは何でもする。

23.Qc2 b4! 24.Nd2 bxc3 25.Bxc3 Nd4 26.Qd1 Bc6 27.Nc4 Qe7 28.Qa1

 この手は 28…Nxb3? に 29.Qa6! という戦術的手段を用意している。例えば 29…Bb7 30.Qb6 Nd4 31.Nd6 Rb8 32.Rb1 となれば黒が駒損になる[訳注 32…Nd7 で黒が優勢のようです]。白は最善手を見つけた。e5のポーンに自分の駒の動きを集中し強力な Nd4 を b3-b4 突きで追い出す用意をしている。

28…Nd7?!

 黒は本譜で起こるようにすぐに 28…h5 と突く方が良かった。

29.Rb1 Rb8 30.Na5 Ba8 31.Qa2?!

 白は 31.Nc4 で b3-b4 突きを狙う方がクイーンで Ba8 を攻撃することになるのでもっと大きな問題を相手に突きつけられた。

31…Nf6

 黒は逆戻りして正しい方針を取る。

32.Nc4 h5

 黒は …h5-h4 と突いてe4のポーンを取る手を狙っている。

33.b4

 白はおとなしく 33.f3 と守ると 33…h4 34.Nf1 Nh5 でキング翼をひどく弱めるのでそうしたくなかった。そのためポーンを犠牲に局面の単純化を図り圧力がいくらか緩和されるようにした。しかしましな方の選択をする時にはいくらか不具合がつきものである。

33…h4 34.bxc5 Rxb1+ 35.Bxb1 Bc6 36.Nf1 Qxc5

 これでe4のポーンが助からない。

37.Bxd4 Qxd4 38.Nfd2 Nxe4 39.Bxe4 Bxe4 40.Nxe4 Qxe4 41.Nd6 Qf4 42.Qc4(図122)

 図122

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(73)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図120(再掲)

 中原の争点から生じた戦いは治まる気配がない。この時点でクイーン翼ビショップをd4ポーンの支援に向けることのできた白はb5のポーンに対して典型的なさまざまな作戦行動を始める。

19…Rxa1 20.Qxa1

 白は 20.Bxa1 と取ることもできた。以下は例えば 20…Qb7 21.d5 Na5 22.c4 bxc4 23.bxc4 Qb3(23…Rb8 なら 24.Nxe5!、23…Nb3 なら 24.Qb1 Rb8 25.Nxe5!)24.Qe2 となって難解な局面である。

20…Qb7 21.Qd1?!

 正着は 21.d5 Ne7 22.c4 だった。白は 21…Na5(22.Qxa5? Ra8)と応じられるのを恐れていたのだろうがこれは次のようにうまく咎めることができた。22.b4 Nc4(22…cxb4? なら 23.Qxa5、22…Nb3?! なら 23.Qd1 c4 24.Bc2)23.Bxc4 bxc4 24.bxc5 dxc5 白は一時的にはb2のビショップが使いにくいが、黒は結局はe5、c5およびc4の弱点を持て余すことになるだろう。

21…Bg7 22.dxc5

 長引く中原での争点の戦いに不安を感じた白は交換中原の形にすることにした。しかしすぐ明らかになるように黒駒の配置はそのような結末に非常によく適合していた。白は 22.d5 Na5 23.Bc2(Bb2 が浮いているので 23.c4? とは指せない)と指すのが良くどちらも指せる形勢だったろう。

22…dxc5(図121)

 図121

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(72)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例

第4局
メステル対ベリヤフスキー
ルツェルン、1985年
スミスロフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 本局の解説で交換中原に至ることのできる戦型についても概説する。ただしブレイェル戦法と第5局で解説する …Na5 のチゴーリン戦法は除く。

 検討する中原の型は黒が早くも3手目で踏みならされた道からそれることにした時にも現れることがある。例えば 3…g6 4.c3 d6(4…a6 5.Ba4 d6 は遅延シュタイニッツに戻る。すぐの 4…Bg7 は誤りで 5.d4 Nge7-5…exd4 は 6.cxd4 で白が中原に圧倒的な態勢を築く-6.d5 Nb8 7.d6 で白が明らかに優勢である)5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5(7…Nxe5?! は 8.Nxe5 dxe5 9.Qb3! で白が優勢 )8.Be3 Nf6 9.Nbd2 O-O 10.Bc5(黒がキング翼ビショップをg7に展開した戦法に特有の目障りな手)10…Re8 11.Qe2 白がわずかに優勢だが黒陣も堅固で反撃策がないことはない(例えばf4の地点の弱点は白のクイーン翼ビショップの捌きによって目立っている)。

4.Ba4 Nf6

 遅延シュタイニッツでは交換中原はある程度の頻度で、特に前の解説にあるフィアンケット戦型に密接に関連したアリョーヒン戦型で、生じる。4…d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6 の後は次のように進むことになる。7.O-O(すぐに 7.dxe5 と取るのはそれほど一般的でなく、前の解説で見た戦型と異なり黒は 7…Nxe5 と応じることもできる。一方 7.Bg5 f6 8.Be3 の戦型は最近流行してきた。例えば 8…Nh6 9.O-O Bg7 10.h3 Nf7 11.Nbd2 O-O 12.Re1 Qe7 で白はa2-g8の斜筋を弱体化させたが黒陣は欠陥がなく将来の中原のどんな構成にも対処できる)7…Bg7 8.Re1(または 8.dxe5 dxe5-8…Nxe5!? は 9.Nxe5 dxe5 10.f4 Bxa4 11.Qxa4+ b5 となりねじり合いの戦いになる-9.Be3 Nf6 10.Nbd2 O-O 11.Bc5 Re8 でほぼどちらも指せる)8…b5(ここでの 8…Nf6?! は疑問手である。なぜなら 9.Bxc6 Bxc6 10.dxe5 Nxe4 11.exd6 Qxd6 12.Qxd6 cxd6 13.Ng5 O-O 14.Rxe4! Bxe4 15.Nxe4 Rfe8 16.Nbd2 d5 17.Ng3 Re1+ 18.Ngf1 となって次に Nb3 とくる。8…Nge7 9.dxe5 dxe5 は可能である)9.Bc2 Nf6 10.dxe5 Nxe5 11.Nxe5 dxe5 12.Bg5 h6 13.Bh4 Qe7 かなり均衡のとれた試合である。

5.O-O Be7

 交換中原はアルハンゲリスク戦法でもかなり頻繁に生じる。例えば 5…b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O(11…Qd7 と 11…g5 については第1局の黒の5手目の解説を参照)12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.dxe5(白は 15.d5 で閉鎖中原にすることもできる)15…dxe5 16.Qe2 Re6! となればどちらも指せる。

6.Re1

 白は 6.Qe2 でeポーンを守ることもできる(ワーラル戦法として知られている)。その主眼はキング翼ルークをd1に回して中原に向けての c2-c3 から d2-d4 突きを支援することである。交換中原を生じさせることのできるのはまさしくこのキング翼ルークのd列への迅速な配置である。例えば 6…b5 7.Bb3 O-O 8.c3 となった後
 (1)8…d6(落ち着いた本筋の手)9.Rd1 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Bg5 Bg4 13.dxe5 dxe5 14.Nbd2 Rfd8 は均衡のとれた局面である。
 (2)8…d5(最も攻撃的な応手でギャンビットの含みがある)9.d3(白がポーンを取れば黒が主導権を握る。例えば 9.exd5 Bg4 10.h3-または 10.dxc6 e4 11.d4 exf3 12.gxf3 Bh5 13.Bf4 Re8 で2ポーンの代わりに駒の活動力による十分な代償がある-10…Bxf3 11.Qxf3 e4 12.Qe2 Na5 で黒が優勢である)9…Re8(すぐに 9…dxe4 と取るのは 10.dxe4 Bg4 11.h3 Bh5 12.Bg5 となってd列の有望な見通しから白が少し優勢である)となれば黒が有利な状況の時にd列を素通しにすることができる。

6…b5 7.Bb3 d6

 すぐに 7…O-O とするのは白が反マーシャルシステムを採用することができ、交換中原の局面が生じることがある。例えば 8.a4 b4 9.d4 d6 10.dxe5 Nxe5 11.Nxe5 dxe5 12.Qf3 Bb7 13.Nd2 Kh8 となったあと白は …Nxe4 から …f5 の戦術の狙いに対処しなければならない。

8.c3 O-O 9.h3 h6

 スミスロフ戦法の特徴のこの手は白の駒がg5に来るのを防ぐのが主たる目的である。実際のところ自己満足の黒の態度は突然危険を招くことがある。ザイツェフ戦法にその一例がある。さらにはその戦法で交換中原が現れるのはかなりまれである。9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3 Nb8?!(この手はブレイェル戦法に入ろうとしている)13.dxe5! dxe5 14.Ng5(捨て駒の 14.Bxf7+!? Kxf7 15.Qb3+ も考慮に値する)14…Re7 15.Nxf7! Rxf7 16.Nf3 Qxd1 17.Rxd1 c5 18.Be6! Bxe4 19.Nxe5 白が有望である。

10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7

 e4のポーンは争点の状況で検討した戦術的手段に基づいて間接的に守られている。12…exd4?! 13.cxd4 Nxe4? 14.Bd5 本譜以外の手については第2局と第9局の黒の9手目の解説を参照されたい。

13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5

 14…Nc4 と指すこともできる。以下は例えば 15.b3 Nb6 16.Bb2 c5 17.dxc5 dxc5 18.c4 Qc7 19.Nd2 Rad8 20.Qe2 となってほぼ同等の展望である。

15.a4?!

 12…Bd7 の目的の一つがbポーンを守ることであることを覚えていればこのポーンに対して仕掛けていくことは今の時点ではあまり論理的ではない。しかしその不都合は実際にはこの局面が別のかなり見慣れない手順から生じることによって解き明かされる。9.a4 Bd7 10.d4 h6 11.Nbd2 Re8 12.Nf1 Bf8 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.h3!? もし手順が本譜のとおりだったならば(即ち通常の手順)白はこの時点で 15.b3 と指すことができた。例えば 15…cxd4(すぐに 15…Nc6 と指すと白はかなり有利な状況で 16.d5 と突いて閉鎖中原を築くことができる)16.cxd4 Nc6 17.Bb2 となれば黒枡ビショップが対角斜筋を占めもし白が交換中原を築くことになれば特に役に立つ。

15…g6

 この手は白に黒枡ビショップを対角斜筋に据える余裕を与える。黒は代わりに 15…cxd4 16.cxd4 Nc6 と指す方が良かった。そうなれば白は 17.dxe5 か 17.d5 で中原の争点の状況を解決するよう迫られる。どちらの場合も黒はb4の地点を支配しているおかげで十分に反撃することができる。

16.axb5 axb5 17.b3 Nc6 18.Bb2 Qc7 19.Bd3(図120)

 図120

(この章続く)

2010年09月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(185)

「Chess Life」2010年4月号(4/4)

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収局研究室

ブリッツ!

GMパル・ベンコー

オスロ2009年(続き)

弱いキング
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2715、米国)
GMマグヌス・カールセン(FIDE2801、ノルウェー)
BNバンク・ブリッツ決勝戦、ノルウェー、2009年

 黒の手番

 1ポーン損にもかかわらず駒の働きが良いので白がわずかに優勢である。

27…Qd3

 27…Qa7 の方が良かったかもしれない。

28.Qc1

 白は 28.Qxd3 cxd3 29.Rd6 でポーンを取り返すこともできたが黒のキング翼がスイスチーズのようなのでクイーンを交換したくなかった。本譜は 29.Rd6 が大きな狙いとなっている。

28…Rd8 29.Rxa6

29…Qd4?

 29…Rc7 の方が良かった。

30.Rc6 Qa7 31.Qxc4

 これで白が1ポーン得になりそのために駒の働きや陣形を損なうこともなかった。

31…Rd4 32.Qc2 Ra4 33.Re2 Qd4

34.h3

 34.g3 でも良かった。

34…Qa1+ 35.Kh2 Qe5+ 36.Ng3 Qf4 37.Rc8 Kg7 38.Qc3+ Kh6 39.f3 g5??

 これは大悪手だった。たぶん時間に追われていたのだろう。

40.Rxf8! 黒投了

若き米国チャンピオン

 幼いヒカルと知り合ったのはスペインのマヨルカ島で開催された世界少年少女選手権戦の時だった。彼と一緒に対局後の検討をしていて彼があまりにも速く変化を示すので、彼についていけるようにそして多くの隠れた手段を逃がさないようにペースを落とすよう頼まなければならなかった。

 今年の結果は他の選手も簡単に世界ブリッツ選手権戦の参加者に割って入ることができることを証明した。主催者がインターネットの試合を加味して来年の参加者の数を増やしたのはこれが理由かもしれない。

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(この号終わり)

2010年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(71)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

Bb7/Qf3 の対峙

 場合によっては逆にキング翼にいるクイーンのせいで防御戦術の策略が成功することがある。一般的にこれが起こるのは白枡の対角斜筋に Bb7/Qf3 が配置されている時である(図118)。

 図118

 この局面でe4のポーンは3個の駒で守られているにもかかわらず黒は …Nxe4 と取ることができる。Nxe4 f5 の後(図119)

 図119

 駒を取り返すことができ1ポーン得になる。

 この主題ははるかに複雑な形で現れることがある。しかしその本質をつかむ必要のためにこの極度に単純化した形で示した。

(この章続く)

2010年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(70)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

キャッスリングした囲いに対する捨て駒

 両者とも敵のキャッスリングした囲いを破壊する目的のいくつかの典型的な捨て駒を実行する機会がある。黒がキング翼のポーンの形を …h6 から …g5 で組み換える場合(図92と93を参照)が何度もあることは既に見てきたが、同様の主題は出し抜けに実現することもあり得る。

 f4(またはf5)の占拠とf6(またはf3)のクイーンはそのような戦術の打撃の前提となることがよくある(図116)。

 図116

 例えばこの図で黒は …Nxg2! と指し Kxg2 に …Bh3+ と指す(図117)。

 図117

 Kxh3 と取れば …Qxf3+、Kh4 Bf6# で詰みになる。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(90)

「British Chess Magazine」2010年6月号(10/16)

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世界選手権戦(続き)

第7局 5月3日

 番勝負の後半に入り色の並びが反転したのでアーナンドは2局連続の白番になった。トパロフはまた難関のカタロニアに対したが今回は中盤戦で主導権を得るために今年初めにイワンチュクによって初めて用いられた積極的な交換損に打って出た。試合は激戦になった。アーナンドは戦力の優位がものをいいそうだったが指し手を見失った。それからトパロフに難しい問題を突きつけられたが正しい応手を見い出した。後でコンピュータを好きなだけ使ったところチャンピオンが見逃した勝ち筋を見つけ出した。しかし実戦の観点からは本局は面白い試合で、両選手の戦いの才能をよく反映していた。

ここまでの結果 アーナンド4点 トパロフ3点

第7局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

カタロニア布局/ボゴインディアン防御 [E11]

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.g3 Bb4+

 トパロフは破局に終わった第4局の時よりも早くこの手を指すことにした。

5.Bd2 Be7 6.Bg2 O-O 7.O-O c6 8.Bf4

8…dxc4

 トパロフは2005年ドルトムントでのクラムニク戦では 8…b6 と指し、同じ相手との2006年世界選手権戦第10局では 8…Nbd7 と指していた。どちらも負けたので今度は傍系の戦型を指してきた。

9.Ne5 b5!?

 今年に入るまで傍流の 8…dxc4 が指された数少ない実戦ではおなじみの(そしていくらか決まり切った)9…Nd5 が主流だった。しかし本譜の手の方がはるかに面白い。

10.Nxc6 Nxc6 11.Bxc6

11…Bd7

 技術的な話だがこの手で初めて前例を離れた。イワンチュクは2010年ニースでのメロディー・アンバー大会目隠しチェス部門のゲルファント戦で 11…Ba6 と指していてその試合は引き分けに終わった。

12.Bxa8 Qxa8

 これが冒頭で言及した局面である。黒は交換損の代わりに展開の優位とポーンの形の良さを得た。

13.f3 Nd5 14.Bd2 e5

 トパロフはアーナンドに一服する暇を与えない。

15.e4 Bh3

16.exd5

 白はビショップをルークと交換した得を下取りに出して、ポーンを与えて駒得をすることにした。これはおそらく最善だろうが絶対明白というわけではない。コンピュータの一つの示唆は 16.Rf2 Nc7 17.dxe5!?(17.Be3 は問題で 17…exd4 18.Bxd4 Rd8 19.Rd2 Bg5!

となってたぶん形勢互角である)17…Bc5 18.Qe2 Rd8 19.Nc3

だが、19…Rd3 で楽に互角になるように思われる。

16…Bxf1 17.Qxf1 exd4 18.a4 Qxd5 19.axb5 Qxb5 20.Rxa7 Re8

21.Kh1

 この手の後トパロフが長考に沈んだので彼の研究の終わりに到達したことは明らかだった。聞いたところではカスパロフはアーナンドの21手目に賛成しなかったそうである。たぶん彼はコンピュータ推奨の 21.Kg2!? でちょっとした戦術に引っ掛けることを念頭に置いていたのであろう。21…Qc6(21…Qxb2?? 22.Qxc4 でここで 22…Qxb1 は 23.Rxe7 で負け)22.Qd1 Bf8 23.h4 で戦いはまだまだ続く。

21…Bf8!?

 この手は非常に意欲的だがたぶん賢明ではない。代わりに 21…Qxb2 のあと奇妙にも白はまだ 22.Qxc4 と指すことができた(もちろん 22.Qe1 の方が良いがそれでも 22…h6 23.Na3 c3! 24.Bf4 d3 25.Rxe7 Rxe7 26.Qxe7 d2

で黒は問題なく、白はチェックの千日手にしなければならない)。黒はチェックで 22…Qxb1+ と指せるけれども 23.Kg2 Qb2 24.Rxe7 Qxd2+ 25.Kh3 Rf8

で引き分けに終わる可能性が最も高い。

22.Rc7 d3 23.Bc3 Bd6 24.Ra7 h6

25.Nd2?

 カスパロフはこの手が気に入らなかった。そして白は 25.Qh3!? で勝ちにいくべきだと考えていた。もっともまだまだ色々な手が残っていることは明らかである。

25…Bb4!

 この巧妙な手はチャンピオンにいくつもの問題を突きつけている。

26.Ra1!

 アニシュ・ギリはこれが負けないための唯一の手と考えていて彼は正しかった。26.Bxb4? は 26…Qxb4 27.Ne4 で、ここで黒には長い一本道の手順がある。27…f5! 28.Nc3 Qxb2 29.Qa1 Qxa1+ 30.Rxa1 d2 31.Kg2 Re3 32.Nd1 Re2+ 33.Kf1 Re1+ 34.Kf2 Kh7

白は遅かれ早かれナイトを差し出さなければならない。

26…Bxc3 27.bxc3 Re2 28.Rd1

28…Qa4

 28…Qe5 は 29.Nxc4 Qxc3 30.Nd6 Qc2 31.Ne4 Rxh2+ 32.Kg1 Re2

で引き分けのようである。

29.Ne4 Qc2

30.Rc1!

 どうしてもh2のポーンを守りたくなるがそれはひどいポカである。30.Qg1?? f5! 31.Nd6 Rxh2+! 32.Qxh2 Qxd1+

黒はクイーンを交換してdポーンを昇格させる。

30…Rxh2+ 31.Kg1 Rg2+ 32.Qxg2 Qxc1+

33.Qf1

 33.Kh2? は非常に悪い手で 33…f5! とされると白はc3のポーンを取らせるか …d3-d2 を何とかしなければならない。

33…Qe3+ 34.Qf2 Qc1+ 35.Qf1 Qe3+ 36.Kg2

 白は勝ちを目指して指す余裕があると判断したがそれほど真剣ではない。

36…f5 37.Nf2 Kh7 38.Qb1 Qe6 39.Qb5 g5 40.g4 fxg4 41.fxg4 Kg6

42.Qb7

 強力なコンピュータがいったんこの局面を分析する十分な時間を与えられたらアーナンドが 42.Qa4! で(恐ろしく難しい)妙技を見逃していたことが分かった。例えば 42…Qc8 43.Qd1 Qe6 44.Kf1! Qf6 45.Qe1 Kf7 46.Kg2 Kg7 47.Nd1 Qc6+ 48.Kg1 Qb6+ 49.Nf2 Qd6 50.Qe4!

これで白は進展が図れる。

42…d2

 これは必須である。さもないと白はクイーンを交換して本当に勝ってしまう。

43.Qb1+ Kg7 44.Kf1 Qe7 45.Kg2 Qe6 46.Qd1 Qe3 47.Qf3 Qe6 48.Qb7+ Kg6 49.Qb1+ Kg7 50.Qd1 Qe3 51.Qc2 Qe2 52.Qa4 Kg8 53.Qd7 Kf8 54.Qd5 Kg7 55.Kg3 Qe3+ 56.Qf3 Qe5+ 57.Kg2 Qe6 58.Qd1 ½-½

 ようやく同形三復で試合が終わった。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(69)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

a2-g8の斜筋の弱点

 交換中原ではa2-g8の斜筋は素通しになっているかせいぜい1個のポーンによってさえぎられているに過ぎない。黒キングがほとんどいつもg8にいることを考えれば、白がそれにつけ込んでいくつかの襲撃の戦術を試みることができるのは容易に理解できる。しかしその襲撃を分類することは難しい。ここでは繰り返し現れる2、3の例を示すにとどめる。(図112)。

 図112

 この局面ではcポーンの障害物は黒の安全を保障するには十分でない。白は浮き駒の Nc6 と、…f7-f6 突きが最も単純な戦術の仕掛けを誘発していることにつけ込むことができる。Nxc4 bxc4、Qxc4+(図113)

 図113

 白は駒を取り返し2ポーンを得する。

 f7のポーン自体も黒キングの適切な防御を保障してはいない(図114)。

 図114

 例えばここでは白は Ng5 と指すことができる。その意図は …Re7(または …Rf8)のあと Nxf7 とナイトを切ることである。…Rxf7、Nf3 となった後(図115)

 図115

Nxe5 または Nxg5 の狙いがあり黒が危険な状態になる。

(この章続く)

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「チェス布局の指し方」について

 いつか少し余裕ができてくるかと思っていましたが、いつまでたってもそうなりそうにありません。誰か「チェス布局の指し方」を楽しみにしている人がいますか?もしいないのなら頑張っても仕方ないので、あと6回分のストック(そこまででこの本の1/3にあたります)を掲載して打ち切りにしたいと思いますが、いかがでしょうか(毎週月曜の定期連載がなくなるということです)?

ルイロペスの完全理解(68)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所

 交換中原の単純化された性質により戦略が支配的となる局面が生じるが、両陣営は作戦の実行が戦術的手段によって突然妨害されることのないよういつも確認しなければならない。それではこの型の中原で最も頻繁に現れる戦術的捌きを検討していくことにする。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[29]

eポーン布局

第3章 キング翼ギャンビット(続き)

キング翼ギャンビット受諾

1.e4 e5 2.f4 exf4(図35)

 図35(白番)

3.Nf3

 これは最も自然な手である。…Qh4+ のチェックを防ぎ、キング翼で迅速に展開するという白の戦略全般に合致している。

3…g5

 黒は白がそう遠くない将来に d4 と突いて、犠牲にしたポーンを Bxf4 によって取り返しにくることを予期している。

4.Bc4

 ここでも白はキング翼展開の方針を推し進め、同時に黒のf7の地点を虎視眈々と狙っている。

4…d6

 これは堅実な手で、白のナイトがe5の地点に来れないようにし、黒のクイーン翼ビショップの筋を開けている。4…g4 なら白は 5.O-O で面白いムツィオ・ギャンビットをやってくるかもしれない。それは白がナイトを犠牲にしてf列に強い圧力をかけることになる。

5.O-O

 犠牲にしたポーンの代わりに白は展開で3手優っている。白のこの手はルークをf列に回すことにより黒のf7の地点への圧力を強めている。

5…h6

 gポーンを支えるのは今か 5…Bg7 6.d4 の後で必須である。なぜなら白は 7.Nxg5 Qxg5 8.Bxf4 でf列を素通しにし非常に危険な攻撃を始めることを狙っているからである。

6.d4

 白は代償の別の側面を利用している。黒は …exf4 と取った時ポーンを中原からそらし中原の支配を放棄した。ここで白は威容を誇るポーン中原を構築し、それから初めてキング翼の攻撃に乗り出していく。

6…Bg7

 ここはビショップにとってe7よりも良い地点である。なぜなら白は最終的に e5 突きで仕掛けるかもしれず、そうなればその地点にできるだけ多くの利きがあった方が役に立つからである。これから先ビショップがd8-h4の斜筋に必要になれば黒は本譜で実際にそう指すように自由に …Bf6 と指すことができる。この段階でe7の地点を空けておく別の理由は、黒にとってキング翼ナイトをここに展開させるのが良い手となるかもしれないからである。

7.c3

 この手には二重の目的があり、一つはdポーンを支えることで、もう一つはf7の地点への攻撃支援を増やすことになる Qb3 を指せるようにすることである。

7…Nc6 8.g3!

 これで白は攻撃の準備ができた。この手ですぐにf列が素通しになる。

8…g4 Nh4 f3

 黒はうまくf列を閉じたままにした。本当にそうだろうか?

10.Nd2 Bf6

 ここでは黒が優勢になりつつあるように見える。黒はまだ1ポーン得だし、端で立ち往生しているように見える白のキング翼ナイトに対する攻撃も始めた。このナイトは退くことができないし、f5の地点に跳ぶこともできない。というのは 11.Nf5 Bxf5 12.exf5 Qd7 のあと白のfポーンが極度に弱いしf列に沿ってもはや攻撃が望めないからである。しかし別の可能性があった。

11.Ndxf3! gxf3 12.Qxf3

 白は邪魔なf3のポーンを消し去り、黒のf7の地点に対する圧力を最高度に高めた。

12…Rh7

 黒は自分のアキレス腱を守った。

13.Ng6(図36)

 図36(黒番)

 この手には驚かされる。なぜならg6のこのナイトは何も当たりになっていないからである。この手の主眼は Nf4 によって中原に近づくことである。この目的は 13.Ng2 によっては達成されない。なぜなら黒は 13…Bh3 によって白のルークに対してこのナイトを釘付けにし、そのあといくらか無用な存在のこのビショップをナイトと交換するからである。

 1922年テプリッツ・ショーナウでのシュピールマン対グリューンフェルト戦は以下のように進んだ。

13…Rg7

 13…fxg6 とは取れない。取れば 14.Bxg8 Rg7 15.Bb3 Be7(強制)16.Bxh6 Rh7 17.Bf7+ Kd7 18.Qg4# とたちまち負けてしまう。

14.Nf4 Bg4

 白は Nh5 を狙っていた。

15.Qg2 Bg5 16.h3 Bd7 17.Nh5 Rh7 18.e5!

 また攻撃の筋のe列を開け、同時にクイーンのためにe4の地点を空けた。

18…dxe5 19.Qe4 f5

 19…Rh8 では 20.Ng7+ から詰みになるのでこの手は仕方がない。

20.Rxf5! Bxf5 21.Qxf5

 白の態勢は圧倒的である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(67)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

f4とf5の地点の弱点

 c4とc5の地点の支配をめぐってクイーン翼で戦われる争いはもっと中心的な目的に比べれば一般に二次的だが、キング翼での作戦行動はどれも、敵のキャッスリングした囲いに対して猛攻をかける目的の非常に独自の重要性を帯びることがあり得る。閉鎖中原での場合のようにここでもキング翼での攻撃的な捌きに関連する個所はf4とf5の戦略的弱点である(図109)。

 図109

 特定の状況ではf5の地点はd5に行く途中にe3に来た白のクイーン翼ナイトにとって代わりの有用な地点になり得る。逆にf4の地点は図90と図96に図示されているように黒のキング翼ナイトが作戦とはまったく別個にやって来る地点になり得る。

 閉鎖中原での場合のように時には両者が相手の弱点を(直接的にまたは間接的に)支配しようとすることがある(図110)。

 図110

 黒は通常は …g7-g6 突き(キング翼ナイトがh5を通過するのを守るのにも役立つ)にたよるのに対し、白はキング翼ナイトをh2を経由してg4に捌くことにより、侵入者となる可能性のある敵ナイトを交換に誘おうとする。この捌きは …g7-g6 突きにより生じた弱点につけ込む着想が存在するとき有効になり得る。

 両者の捌きの目的は閉鎖中原のところで見た同様の状況に非常に似ていて、中原で争点がまだ継続している時でもこれらの活動を始めることができる。一つの典型的な状況は一般にキング翼での白クイーンの位置に関係していて(図80と81を参照)、前の図で示された攻撃の Ng4 に …Ng4 と取って応じることにした時に生じる。この場合白が hxg4 と取り返し g2-g3 から Kg2 としてルークがh1に行けるようにして圧力をかける野心的な作戦を企てることはあり得ないことではない。(図111)。

 図111

 後で g4-g5 と突けばg4の地点が空き、白の残りのナイトが敵キングに近づく際に利用できる。

 図110に示されるような状況では閉鎖中原で起こったこととは異なり、両者が f2-f4 突きまたは …f7-f5 突きに基づいた攻撃策を成功させるのは難しい(特殊な戦術の場合は除く。後述の「Bb7/Qf3 の対峙」を参照)。実際局面がさらに開放的になっていくと(必然の exf5 取りまたは …exf4 取りの結果)fポーンを突いた側のキングの状態は非常に微妙になる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(66)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c4とc5の地点をめぐる争い

 繰り返し説明したようにc4とc5の地点の支配は他のもっと中心的な戦略目標(例えばe5とe4の地点への圧力、d3の地点の占拠など)の途中の段階であることがよくある。だから両者がそれらの地点をめぐって戦うべきであることは当然のことである。

 c4の地点は構造的に黒の支配下にある。従って白はその地点を勝ち取ろうとするならばまずb5のポーンを取り除かなければならない。白はこれを大きく分けて三通りの方法で行なうことができる。

 (1)序盤早くに a2-a4 突きでこのポーンを攻撃して …b5-b4 と進ませるようにする(例えば図102を参照)(2)b2-b4 突きでこのポーンを固定してから a2-a4 突きおよび/または c3-c4 突きでこのポーンを攻撃する(例えば図100と104を参照)(3)このポーンを固定しないで a2-a4 突きで攻撃し駒の応援でこのポーンに対する圧力を増す(図106)。

 図106

 これら三つの手法は当然ながらお互い混ざり合った単一でない形で現れることがある。そしてこれらの手法は今取り上げている中原の型にだけ特有なわけではないので、中原での争点の状況にも根源があるかもしれない。

 最初はc5の地点も黒の影響下にあるので白はそこの支配を勝ち取るためには一般に b2-b4 突きに訴えなければならない(図107)。

 図107

 c5の地点はこのように固定されれば白のクイーン翼ナイトにとって別の目標となり得る。黒が …c7-c5 突きでd5の地点を恒久的に弱めていない戦法においては特にそうである。逆に黒がキング翼ビショップをフィアンケットする戦型では白は黒のa3-f8の斜筋の弱体化の結果として b2-b4 突きを行わなくても Bc1-e3-c5 の単純な捌きでc5の地点を乗っ取ることができる。

 中原の争点が継続している状況で …cxd4 による交換でc列が素通しになった時は大駒もc4とc5の地点の支配をめぐる争いに加わることができる(図108)。

 図108

 これは白がc5の地点をしっかり支配することに成功した状況の例である。しかし黒はc4の地点を支配できれば(…Be6 から …Nc4)白の努力を無効にすることができる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(65)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

e4とe5のポーンの弱さ

 交換中原では図79の説明で述べたようにe4とe5のポーンもお互いの攻撃目標になる。実のところf3とf6のナイトの存在はそれぞれのfポーンが前進して自然な形でeポーンを支える障害になっている。そうであってもこの前進は可能な時でさえ(例えばキング翼ナイトが早期に移動したり交換される戦法で)キングの囲いを弱めることになるので気が進まないことは確かである(図103)。

 図103

 f2-f3 突きと …f7-f6 突きによって生じるそれぞれの弱点はhポーンが既に動いている時にはずっと深刻になる。図の局面で白キングは黒キングよりも薄くなっている。しかし忘れてならないことは黒も例えば Bg5 に態度を決めさせたい時自分のhポーンを動かすことがよくあるということである。両陣営がクイーンのためにf3とf6の地点を時々使用するということも覚えておかなければならない(図80と82を参照)。このことも f2-f3 突きと …f7-f6 突きを魅力のないものにしている。

 そのため通常は両者とも自分のfポーンを突くことを躊躇する-またはナイトの存在によって物理的に妨げられている-。従ってeポーンはいくらか攻撃にさらされやすくなっている。これらのポーンは通常の成り行きでそれぞれナイトによって攻撃されているので、両者ともこの攻撃を強めようとするのは極めて普通である。

 白の捌きはクイーン翼ビショップを前もってb2に上げてからその筋を空けるために c3-c4 と突き黒に …bxc4 と交換させることにかかっている。その主眼はクイーン翼ナイトのためにc4の地点を獲得することである(図104)。

 図104

 このような戦略の目的は明らかである(既に一部は図100で見た)。それは相手をe5のポーンの守りに汲々とさせようとすることである。

 同様に黒はe4の地点めがけてクイーン翼ビショップを(時にはクイーンも)対角斜筋に捌きクイーン翼ナイトをc5の地点に行かせることができる(図105)。

 図105

 ちょうど見てきたような圧力の作戦やd5の地点の占拠に依存した状況(図86と87を参照)、黒の場合はd4の地点、はしばしばこれらの「弱点」の交換につながる。

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(184)

「Chess Life」2010年4月号(3/4)

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収局研究室

ブリッツ!

GMパル・ベンコー

オスロ2009年

 ノルウェーでも自国のブリッツ世界チャンピオンに敬意を表して10人の選手を招待してブリッツ大会が開催された。優勝決定の短い番勝負でナカムラがカールセンを 2½-1½ で破った。特筆すべきは最終局でナカムラが勝勢にもかかわらず寛大にも引き分けに同意したことである。

つまづき
GMマグヌス・カールセン(FIDE2801、ノルウェー)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2715、米国)
BNバンク・ブリッツ決勝戦、ノルウェー、2009年

 黒の手番

 1ポーン得は明解なポーン収局の中でも最も簡単に勝ちになるのが普通である。そのはずだったが?

61…Ka4 62.Kf6??

 驚いたことにこの自明の手が敗着である。白は 62.Kd6 Kxa3 63.Kc6 でも 62.f4 Kxa3(62…h5 63.Kf6 は1手得したので勝ちになる)63.g4 でも勝っていた。決定的な要因はどちらが先に昇格枡に行き着くかおよび/またはチェックで昇格するかということである。

62…Kxa3 63.Kxg6 b5 64.f4 b4 65.f5 b3 66.f6 b2 67.f7 b1=Q+

68.Kxh6 Qf5 69.Kg7 Qg5+ 70.Kh7 Qf6 71.Kg8 Qg6+

72.Kf8

 不運なことに白は自分のポーンがあるためにステイルメイト狙いの 72.Kh8 が指せない。

72…Kb4 73.h4 Kc5 74.h5 Qxh5 75.g4 Qxg4 76.Ke7 Qg7 白投了

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(64)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d4の地点の弱体化

 白が自分の方から c3-c4 と突くことによりd3の地点の固定化を妨げることにすればd4の地点の弱体化がすぐさま明らかになる。(図97)。

 図97

 黒は特にd4の地点をc6を経由してクイーン翼ナイトで占拠する計画を立てることができる。しかし時には以前d3の方向に送られていたキング翼ナイト(例えば …Nf6-h5-f4)を新しい目標に向けることができる(…Nf4-e6-d4)。

 逆に白が …c5-c4 突きに前述した意図でbポーンをb3またはb4に突いて応じた時でも黒は …cxb3 と取ってクイーン翼の状況を大きく変えることができる。axb3 の後は次のようなポーンの形になる(図98)。

 図98

 c3のポーンを支えるポーンがなくなったことにより黒は …b5-b4 突きに基づいてd4の地点を弱める作戦を立てることができる(図99)。

 図99

 前の例の場合のようにc6から事態を支配するのはほとんど常にクイーン翼ナイトである。もっともここでも以前にd3の方に送られたキング翼ナイト(例えば …Nf6-d7-c5)をd4の地点に再送することができる(…Nc5-e6-d4)。

 d4の地点の弱体化により白は …c5-c4 を防ぐ考えだけでなく積極的な目的で c3-c4 と突くとき必然的に代価を払うことがある。例えばこのポーン突きはクイーン翼ビショップがb2にいるとき自由に動けるようにしたり、黒にb5のポーンの処遇を迫ったり、d5の地点の支配を強めたりする時に行なわれるかもしれない(図100)。

 図100

 ここでは上述の状況をわざと一つの例にまとめた。白は c3-c4 と突くことにより Bb2 の利きを通し、Nd5 を守り、b5のポーンも攻撃している(例えば …bxc4、Nxc4 で強力なc4の地点を手に入れる目的)。

 最後に、d4の地点は黒が中原の争点が続いている状況で …cxd4 と取ってc列を素通しにした時でも弱いままであるし(図101)、

 図101

または(度合いが下がるが)布局の最中に黒が a2-a4 の挑発に …b5-b4 と応じた時もそうである(図102)。

 図102

 d4の地点は c2-c3 突きによって守ることができる。もっとも白は黒がb列の開通から利益を得られないように注意しなければならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(63)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d3の地点の弱点

 d5の地点に関する白の戦略と同様の手法で黒はd列で優位を得てd3の地点の占拠を通常はナイトまたはルークで成し遂げることができる(図96)。

 図96

 この目的は …c5-c4 と突いて弱点を固定化する組織的な捌きの手段により、または可能ならば駒だけの助けにより(例えば …Nh5-f4 から …Rd3)成し遂げることができる。白は単にd3の地点を適切に支配し続けることにより後の方の可能性を回避することができるが、この戦略は弱点の固定化と占拠を避けるのに十分であることは滅多にない。抑止がうまくいくためには白は …c5-c4 に b2-b4(c5の地点を使えなくさせるため)または b2-b3(c4ポーンを突き崩すため)と応じるか、または c3-c4 と突いて黒のcポーンの進攻を押さえることにより、クイーン翼のポーンの形を変えることを迫られる。しかしこれらの場合黒は目標をd3の地点からd4の地点へ切り替えることができる。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(89)

「British Chess Magazine」2010年6月号(9/16)

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世界選手権戦(続き)

第6局 5月1日

 アーナンドは3度目のカタロニア布局を指したが今回はトパロフが引き分けにすることができた。実際はアーナンドのナイトが安全な厩舎(きゅうしゃ)を求めて盤上のあちこちを飛び跳ねて一時はトパロフがもう少しで勝ちそうに見えた。しかし番勝負の前半は穏やかに終わった。

ここまでの結果 アーナンド3½点 トパロフ2½点

第6局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

カタロニア布局 [E04]

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.g3 dxc4 5.Bg2

5…a6

 トパロフは2敗目をもたらした 5…Bb4+ を避けることにした。

6.Ne5 c5 7.Na3 cxd4 8.Naxc4 Bc5 9.O-O O-O

10.Bg5

 アーナンドは第4局で指した 10.Bd2 とは違う手を指した。

10…h6 11.Bxf6

11…Qxf6

 トパロフは6回目で初めて新しい手を指す光栄に浴した。もっとも必ずしも研究していた手というわけではなかった。2004年ビールでのレーツキー対パンチャナターン戦は 11…gxf6 12.Nd3 Be7 13.Qd2 Kh7 14.Rac1 Ra7 15.Qf4 Nc6 16.Bxc6 bxc6 17.Qe4+ Kg7 18.Qg4+ Kh7 19.Qe4+ f5 20.Qxc6

と進みほぼ互角の形勢で引き分けに終わった。

12.Nd3 Ba7 13.Qa4

13…Nc6

 13…b5? は 14.Qc2 bxc4 15.Qxc4 でa8のルークが落ちる。15…Nc6? としても 16.Qxc6 Rb8 17.Qc7 で駒損がひどくなる。

14.Rac1 e5

 14…Bd7 15.Nd6 Ne5 16.Qa5 Nxd3 17.exd3 e5 は均衡のとれた局面になる。

15.Bxc6

 アーナンドはまたも布局を取り仕切っていてぱっぱっと自信たっぷりに手を指し進めていた。しかし今回は相手を受けに回らせることができずトパロフがこれまでよりもかなりうまくねじり合いを乗り切ることができた。

15…b5

 15…bxc6 16.Ncxe5 c5 17.Rc2 Bh3 18.Rfc1 は黒の弱いポーンに対して白がうまく立ち回っている。

16.Qc2 Qxc6 17.Ncxe5 Qe4 18.Qc6 Bb7 19.Qxe4 Bxe4

 第1局以来初めてトパロフが布局をまともに乗り切ったとみなすことができるかもしれない。

20.Rc2 Rfe8 21.Rfc1 f6 22.Nd7

 第4局であんなにもうまく白のナイトを使いこなしたアーナンドは今度は広範な運動で報いる。実に13手連続のナイト使いである。

22…Bf5 23.N7c5 Bb6 24.Nb7 Bd7 25.Nf4 Rab8 26.Nd6 Re5 27.Nc8 Ba5 28.Nd3 Re8 29.Na7

 アーナンドは危険な生き方をしているように見える。しかしまたもや馬術のコツを編み出した。

29…Bb6 30.Nc6

30…Rb7

 30…Bxc6 31.Rxc6 Rxe2 は何ももたらさない。一例は 32.Kf1 Rd2 33.Rc8+ Rxc8 34.Rxc8+ Kh7 36.Rc6

で 35…Rxd3?? は 36.Ke2 でルークが捕まるので指せない。

31.Ncb4 a5 32.Nd5 a4 33.Nxb6 Rxb6 34.Nc5 Bf5 35.Rd2 Rc6 36.b4 axb3 37.axb3 b4!?

 トパロフの勇気には敬服しなければならない。ほとんどの選手が引き分けに同意しそうな局面でポーン損して戦おうとしている。

38.Rxd4 Rxe2 39.Rxb4 Bh3 40.Rbc4 Rd6

41.Re4

 41.b4 Rdd2 42.Rh4 なら 42…Bf5 43.Rf4 のあと千日手に落ち着く。

41…Rb2 42.Ree1

 この手は必要というよりむしろ退嬰的だがそれでも引き分けにするには十分である。

42…Rdd2 43.Ne4 Rd4 44.Nc5 Rdd2 45.Ne4 Rd3 46.Rb1 Rdxb3 47.Nd2 Rb4 48.f3

 ナイトはまだ取られる心配がない。

48…g5 49.Rxb2 Rxb2 50.Rd1

 白は守勢の構えだが黒はそれにつけ込むことができない。

50…Kf7 51.Kf2 h5 52.Ke3 Rc2 53.Ra1 Kg6 54.Ra6 Bf5 55.Rd6 Rc3+ 56.Kf2 Rc2 57.Ke3 Rc3+ 58.Kf2 Rc2 ½-½

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(62)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

展開の手の Bg5 と …h6 と …g5 のポーン突き

 Bg5 で Nf6 を取るのはd5の地点を迅速に占拠できる時にだけ効果的なので(だから代償もないのに双ビショップを放棄してしまわないようにあわてて実行してはならない)、Bc1-g5 を指す際に白は他の目的も追求すべきであり特に黒が当然 …h7-h6 と突いてきた場合にどうするかを決めておくべきであることは理にかなっている。実際 Bc1-g5 の展開の手の一般的な意図(クイーン翼ルークを動けるようにし、時には Nf6 を釘付けにして黒駒の自由な動きを制限する)とはまったく別個に、黒が …h6 から …g5 と突いてくれば黒のキング翼に弱点を生じさせるのが白の意図であることはよくあることである。

 キング翼の黒ポーンのこの思い切った進攻は諸刃の剣の仕事である。だから両陣営は自分の決定のもたらすものを推し量ることができなければならない。もちろん状況の範囲は非常に多様で複雑なので一般的に有効な不変の原則をあげることはできない。しかし一方に有利となる特定の状況を心に留めるのに役立つ極端な例をいくつか指摘することはできる。

 原則として言えることは黒がf4の地点を …Nf6-h5-f4 の捌きによって占拠できる時および/またはキング翼にまだキャッスリングしていなくてキングをクイーン翼に移す可能性を残している時に黒は気楽に …g5 と突くことができるということである(図90)。

 図90

 このような場合キング翼での黒のとる行動はf4の地点の占拠とgおよびhポーンのさらなる進撃のおかげで急速に圧倒的な攻撃となることがある。

 黒に有利となる別の極端な状況は …g5 突きで白のクイーン翼ビショップが有効に働かなくなる時に見られる。極度に顕著な状況は単純化のための …Bc8-g4xf3 の捌きで白のf列に二重ポーンがあらかじめできている時である(図91)。

 図91

 ここでは …g5、Bg3 Nd7 のあと黒は h2-h4 に …f7-f6 と応じてポーンで押さえ込み Nd7 を自由にする用意ができている。手数をかけ戦力を損しなければこのビショップが再び働くようにならないことは明らかである。

 逆に白は …g5 突きによって生じた弱点(キャッスリングした囲いの弱体化と特にf5とh5の地点の弱体化)につけ込むことができる時がある。これが可能なのは例えば駒をg5で切って見返りに敵キングに対して攻撃の展望が開ける時である(図92)。

 図92

 この図では例えば Nxg5 hxg5、Bxg5 のあと白にとって非常に有望な局面ができあがる(図92)。

 図93

 Bg5 は Nf6 に厄介な釘付けをかけ続け、他の駒は迅速に駆けつけて攻撃に効果的に加勢することができる。

 通常白にとって有利な別の状況は Bg3 引きがe5のポーンに圧力をかけるのに貢献する時および/または Bg3 が適度に早く戦いに復帰する見通しがある時に見られる(図94)。

 図94

 ここで Bg3 引きのあと黒は例えば …Bf8 でe5のポーンを守らなければならない。そこで白には h3-h4 と突くことによってキング翼で作戦を始める時間が得られる(図95)。

 図95

 このポーン突きで黒の黒枡での押さえ込みにゆるみが生じるので Bg3 の解放に寄与する。この場合重要なことは黒がf4の地点を占拠しようとしてもできないことである。なぜなら …Nh5 は Bxe5 と取られるし、…Nh7 から …f7-f6 で押さえ込みを維持しようとするのは黒のナイトが閉じ込められてあまり魅力がないからである。それで …g4、Nh2 h5 となったあと白は f2-f3 突きでキング翼の封鎖を粉砕し容易にクイーン翼ビショップを戦いに復帰させることができる。

(この章続く)

2010年09月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(61)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d5の支配をめぐる戦い

 前述の考察からすれば両者ともd5の地点をめぐって争うのは理にかなっている。d列におけるルークの活動とはまったく異なり、黒はキング翼ナイト、クイーン翼ビショップ、それにクイーン翼ナイトのb6への配置(…Nb7-d7-b6 だけでなく …Nb8-c6-a5-c4-b6 もある)によりこの弱点を監視することができる。白の方はd5の防御を弱体化させるためにaポーンを用いて黒ナイトをb6からどかせるか(黒ナイトがそこにいればの話)、クイーン翼ビショップを招集することができる(図89)。

 図89

 このビショップのかかりは Nf6 を除去する思い切った根本的な目的を持っている。しかしこの点についてはクイーン翼ビショップのg5への展開は次項で分かるように必ずしも Nf6 の除去に向けられたものではないことを指摘しておく。

(この章続く)

2010年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[28]

eポーン布局

第3章 キング翼ギャンビット

1.e4 e5 2.f4

 19世紀においてキング翼ギャンビットはどの棋力の試合でも断トツの人気を誇る布局だった。白は2手目でポーンをただ取りに差し出すが、その意図は展開を速め黒キングに速攻をかけるために列を空けることである。絶頂期には白がキング翼ギャンビットの布局から猛攻を仕掛けて鮮やかな勝利をあげることがよくあった。しかし布局定跡が進歩するにつれて黒が賢明なやり方で戦力を展開することによって完全に満足のいく局面を得られることが発見された。

 白は2手目でfポーンを与えてf列を利用して黒のf7のもろい地点を攻撃する作戦である。第1章でf7の地点がc4のビショップとe5またはg5のナイトからしばしばどのように圧力を加えられるかを見てきた。ここでは白はキング翼キャッスリングによって攻撃の三つ目の戦線を開くことを期待している。hルークはf1に回りそこからf列に影響力を及ぼすことができる。

 ギャンビットの別の側面はもし黒がポーンを受諾(2…exf4)すれば中原の唯一の兵員が横にそれ、白が後で d4 と突いて中原の支配を増強し易くなるということである。それでも黒の最善の防御システムはギャンビットを受諾し、そのポーンを返して展開を容易にすることである。

 キング翼ギャンビットから生じる動的な局面のそもそもの特性によりこの布局は通常生じる切ったはったの戦術が好きな初心者とクラブ選手に最も人気がある。対照的にギャンビットが非常にしばしばかつ長い間指されてきたのでマスターのレベルでは研究により怖さがほとんど失われている。

(この章続く)

2010年09月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(60)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d5の地点の弱点

 一般にナイトは中央に位置すると非常に強力な駒なので白はd5の地点をナイトで占めようとする。ナイトはd5に到達するためにe3に立ち寄らなければならない(図83)。

 図83

 白はまったく異なる経路でナイトを目的地に着けたのかもしれない。通常の経路は Nb1-d2-f1-e3 だが時には Nb1-a3-c2-e3 や Nb1-d2-c4-e3 のこともある。さらに指摘すればキング翼ナイトが Ng1-f3-h2-g4(または -f1)-e3 または Ng1-f3-d2-c4(または -f1)-e3 のような捌きでe3に来たのかもしれない。

 明らかに白の追い求める理想の目標はナイトをd5に据えそこに居座らせることである。その根拠は通常この駒が敵陣の中央の弱点を占拠するのに最も適しているということである。

 しかし黒の方は相手のナイトがd5の地点に腰を落ち着けるのを座視することはできない。それで黒は通常は交換することに決める。白はd5の弱点を利用し続けるために駒で取り返すようにするのが一般的である。試合が収局に近づいている時はd5の地点はルークにとって理想的な場所になるかもしれないので特にそうである(図84)。

 図84

 このルークは5段目の黒ポーンに対して圧力をかけることができ、相手の防御に分け入る前触れとしてd列にルークを重ねることもできる。

 eポーンで取り返すのはe列とb1-h7の斜筋で潜在的なエネルギーを解放するもっと動的な選択肢で、二つの状況で起こり得る。

 (1)白が b2-b3 の準備のあと c3-c4 突きでd5のポーンを支援できる時(図85)。

 図85

 この場合もし黒のcポーンがc5にあれば白はd5のポーンをしっかり守るという目的を達成する。これに対して図の局面のような場合には白には c4-c5 から d5-d6 と突くという決定的な進攻の可能性がある。

 (2)中原ポーンの間接的交換ができる時、または exd5 取りから派生する筋の開通(b1-h7の斜筋とe列の素通し)で白が相手のキャッスリングした囲いに対して攻撃の展望が開ける時(図86)。

 図86

 例えばこの局面でd5は黒によって守られているように見える。実際は白が邪魔されずに Nd5 と指すことができる。なぜなら …Nxd5、exd5 Bxd5 のあと白は Nxe5 でe5のポーンを取ることができるからである(図87)。

 図87

 この例からはb1-h7の斜筋が開いた際の攻撃の展望もはっきりと分かる。即ちここでは単刀直入の Qh5 や擬似捨て駒の Bxh7+ Kxh7、Qd3+ のような狙いを放つことができる。

 最後に、状況によっては白がd5の地点をビショップで占拠するのも効果的な手になることがあることを指摘しておこう。この状況は通常は序盤において見られ、特にクイーン翼における黒駒の展開と協力をより骨の折れるものにする意図を持っている(図88)。

 図88

 ここで白は Bd5 と指すことにより相手は困った立場におかれる。なぜなら …Bb7 も …Qd6 も Nxe5 のせいで指せないので、黒はナイトを形悪く …Bd7 によって守らざるを得ないからである。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(59)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d列とクイーンの位置

 交換中原において真っ先に浮かぶ戦略上の主題は素通しのd列である。中央列としてのその兵站(へいたん)上の重要性は自明である。両者は素通しのこの列をルークで占拠するならクイーンをまずよそへ動かさなければならない。クイーンが元の位置にいては邪魔になる。

 時には早々とクイーンを交換するという思い切った課題解決策が取られることはもちろんあるかもしれないが、両者は相手が素通し列をルークで占拠するのを助けないように単純化の手法を避ける傾向がある(図80)。

 図80

 黒はほとんどの戦法でキング翼ビショップをe7に展開しクイーンはしばしば自然なc7の地点に配置するのに対し、白は二つの選択肢から選ぶことができる。一つはクイーンをすぐにe2に動かすことで(これはb5のポーンに圧力を加えるために a2-a4 と突く手と組み合わせて効果的なことがある)、もう一つはより攻撃的なf3への進出である。しかし後者の手はより多くの準備を必要とする。というのは Nf3 の移動がからむからである(普通はh2へ下がりそこからg4へ跳ぶことによりキング翼での攻撃に参加することができる)。

 f3の地点はより活動的であることは確かであり、白クイーンはそこから敵陣の最も弱い2地点(d5とf5)を見張ることに貢献しキング翼での攻撃の可能性を高める(図81)。

 図81

 クイーンと小駒の共同作戦で白は黒キングに対する重大な狙いを画策したり(例えば Qg3 に続いて Ne3-f5 または Bh6)、Nf6 を交換でなくすことにより黒キングの防御を弱体化させたりできる(例えば Ng4 または Bg5)。

 図のように駒を配置するために白はd列の占拠を見据えて2段階の捌きでd1の地点を空けることがよくある。それはキング翼ナイトがまだf3にいる時クイーンをe2に置きナイトがどいた時を見計らってこのクイーンをf3に上げるのである。

 しかしクイーンをf3に置くことには危険が潜んでいることがある。黒は時には Bb7/Qf3 の対峙を利用して適当な時機と適切な助力(例えば図118と119でよく分かる策略)によって …f7-f5 と突くことができる。黒について述べれば図80に示される駒配置に加えて、キング翼ビショップの別の展開、例えばフィアンケットを選択することもできる(図82)。

 図82

 この場合黒クイーンは白クイーンと鏡像の地点が用意され、キング翼のその位置は時にはf4の地点の占拠とからんで(…Nf6-h5-f4)この方面での攻撃の可能性が出てくる。

 黒がキング翼ビショップをc5に展開することにした時、または中原の争点の進行状態によりこのビショップがe7の地点からいなくなった時にも、e7の地点は黒クイーンが使えるかもしれないことを指摘しておく。

 クイーンの配置の議論を終えるにあたり、d列の占拠に関連した真の戦略上の目的は最高度の正確さで分類しなければならない。実際まだ多くの駒が戦っている最中は一方がこの列の利用に成功し7段目や8段目をしっかり確保するということは実戦的には考えにくい。だから真の目的はこの列の敵の弱い地点に駒を据え易くさせるということになる。そこで白はd5の拠点の獲得のために戦い、黒はd3、または場合により後に見られるようにd4の地点の占拠を目指す。

(この章続く)

2010年09月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(58)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点

 以上のすべての戦法において、e4とe5のポーンが互いにつの突き合いd列が素通しなので中原の形はかなり柔軟性がない。

 交換中原の顕著な特徴は次の図79に凝縮され示される。もっとも差異は存在し、それは黒が …c7-c5 と突いたかどうか、c列を素通しにする …cxd4 の交換をしたかどうか、そして時には黒が黒枡ビショップをf8-a3の斜筋に置いたかそれとも対角斜筋に置いたかということにも依存する。これらの差異が重要な結果を生むことについては後で述べる。それほど重要ではないがいくつかの小さな差異は、e5で一組のナイトが交換されたあと図79に示されるポーンの形が生じる戦形にも見られる(図79)。

 図79

 ここで指摘できることは共に素通しのd列にあるd5とd3の弱点、そして(閉鎖中原でのように)それぞれキャッスリングした囲いの近辺にあるf5とf4の戦略的理由による弱点である。中原の構造が固定されていくにつれて敵陣の弱点を支配する-そして特に占拠する-重要性はもっと重要になってくる。ある駒(特にナイト)がこれらの局面の一つで堅固な地点を確保できれば後の展開に大きな影響力を及ぼすことができると想像することはたやすい。これに関連してこれらの弱点はすべて固定されるか固定することができることを付記しておく。というのはd3の地点も …c5-c4 突きの手段によって容易に黒の支配下に置くことができるからである。これらの要素は図79で容易に識別でき、これらに対してキング翼ナイトの存在から生じる別の要素も付け加えることができる。これらのナイトのf3とf6への通常の展開は別の考察も呼び起こす。それはe4とe5のポーンはすぐにポーンで守ることはできないということである。だからこれらのポーンはかなり攻撃を受けやすい状況にあり、しばしば攻撃目標にされるかもしれない。そのような場合白と黒のどちらにせよ攻撃する側は敵戦力を少なくとも一時的に弱いポーンの守りに縛り付ける明白な目的を追い求める。

 この状況概要のあとは個々の要素をもっと詳細に見ていくことにする。

(この章続く)

2010年09月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(183)

「Chess Life」2010年4月号(2/4)

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カールセンがベイクアーンゼーで優勝

ナカムラがグランドスラム初参加で活躍(続き)

 第7回戦はファン待望の対戦があった。第6回戦でナイジェル・ショートに開幕からの連勝を阻止され引き分けに持ち込まれたシロフにナカムラが挑戦した。

消火
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708、米国)
GMアレクセイ・シロフ(FIDE2723、スペイン)

 37…Rd8 の局面

 ナカムラはずっと圧力をかけ続けてきた。そしてシロフの残り時間が1分未満になってナカムラのパンチが炸裂した。

38.c5! dxc5 39.Bxe4! Rd6 40.Rxd6 Qxd6 41.Qxa5+ 黒投了

 ナカムラは「41.Qxa5+ Kb8 の後 43.Rd3! と指すつもりだった。黒からチェックがかからない」と解説してくれた。

 この大きな1勝でナカムラとカールセンがシロフにわずか半点差に迫った。しかし3人とも次の2、3回戦でつまずくことになる。

 元世界選手権者のGMウラジーミル・クラムニクはナカムラとカールセンを相次いで破った。

 クラムニク戦での負けはナカムラの運命の転換点になった。たぶんどの相手も危険な存在となる超一流大会における彼の経験不足がひびいたのだろう。翌日のセルゲイ・カリャーキン戦で容易に引き分けにできるところを無理なことを始めて2連敗を喫し米国人のコーラス優勝の希望に終止符を打つことになった。

 ナカムラはシロフ、クラムニクそれにカールセンが優勝争いをするのを眺めているしかなかった。

 ナカムラはGMセルゲイ・ティビアコフとの厳しい最終戦に勝ちアーナンドと同点4位になった。それでも米国の最強者はグランドスラムへの初参加に全然満足していなかった。

 「とても満足してはいません」とナカムラは大会の閉会式で述べた。「大会の前に+2[7½/13]を提示されたらもちろん受け入れたでしょう。しかし今は違います。カールセンが2点差で優勝してくれたら良かったのにと思います。優勝からたった1点差ではとても気分が悪いです。一番出来の良かったのは断然シロフ戦ですがクラムニク戦は全然ひどかったです。」

 それでもナカムラはベイクアーンゼーで大いに大活躍した。最も重要なことは彼がこのような超一流の仲間といるのがふさわしいということを証明したことだった。ナカムラはコーラス2010に優勝することを期待しないでやって来たことを認めた。将来のグランドスラム大会では招待されたら、または招待された時は-そうあるべきだが-彼の視線はもう少し上を向いているかもしれない。

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(この号続く)

2010年09月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(57)

第3章 交換型中原

主手順 - …Na5 のチゴーリン戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 Nc6 13.dxc5 dxc5(図78)

 図78

 戦略的に似た条件が他の多くの戦法でも起こるかもしれないし、決定を下すのがいつも白だとは限らない。時には検討する中原の構成が d3 d5 の手順から生じ …dxe4、dxe4 と続く。

 いうまでもないがこの型の中原は中原の争点が長い期間維持された後の序盤や中盤から生じることがある。

 以下にあげるのは図の局面から派生する戦法で、場面をあまり手数の進んでいない段階で起こる中原での形に限っている。

 例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 この後

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7(または 11…Nd7 12.dxc5 dxc5)12.Nbd2 cxd4(または 12…Bd7 13.dxe5 dxe5)13.cxd4 Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.dxe5 dxe5

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 Bf8 14.Bg5 h6 15.Bh4 c5 16.dxe5 dxe5

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 Nc4 15.b3 Nb6 16.Bb2 c5 17.dxc5 dxc5

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3 Nb8 13.dxe5 dxe5

または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6 7.O-O(または 7.dxe5 Nxe5 8.Nxe5 dxe5)7…Bg7 8.Re1(または 8.dxe5 dxe5)8…Nge7 9.dxe5 dxe5

 ワーラル戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Qe2 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d6(または 8…d5 9.d3 dxe4 10.dxe4)9.h3 h6 10.d4 Re8 11.dxe5 Nxe5 12.Nxe5 dxe5

 反マーシャル・システム
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 b4 9.d4 d6 10.dxe5 Nxe5(または 10…dxe5)11.Nxe5 dxe5

 アルハンゲリスク戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O 12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.dxe5 dxe5

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.d3 Bb7 9.c3 d5 10.Nbd2 dxe4 11.dxe4
 - 3…g6 4.c3 d6 5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(56)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図77(再掲)

 この手は無駄手だった。27.b3 cxb3 28.Nxb3 Nxb3 29.Rxb3 でクイーン翼に圧力をかける方が良かっただろう。もっとも黒陣は堅固であるが。

 キング翼で仕掛けの糸口を見つけることのできなかった白は攻撃の矛先をクイーン翼に向けることを余儀なくされた。一方黒は反対翼で動かなければならない。これは …c5 の局面で通常起こることとまったく逆である。

27…h4

 この手は Ng3 をどかせて …f7-f5 と突く反撃を可能にする。

28.Ngf1 f5 29.exf5 gxf5

 この手は …f4 から …e4 を狙っている。

30.f4

 この手のあと局面は非常に難解な状況になり両者ともたぶん改良の余地がある。

30…Nf6

 自然な 30…e4 は 31.b3 のあと非常に複雑な局面になり、相手がc4のポーンに圧力をかけることにより陣形を強化する前に黒が弱点のd5ポーンにつけ込むことができるかどうかはまったく不確かである。

31.fxe5 Nxd5 31.Qh6

 白は黒キングの薄みをつこうとしている。

32…Qxe5

 たぶん 32…dxe5 33.Qg6+ Kh8 34.Bxf5 と指す方が良く、両者とも気の抜けない局面になっていただろう。

33.Nf3 Qf4?!

 この手は指し過ぎである。33…Qf6 で交換を誘い 34.Qxf6 Nxf6 35.Nd4 となって白の方が少し優勢であっても相手の攻撃からクイーンの支援を奪ってしまう方が良かった。

34.Qg6+ Kf8 35.Ra7

 35.Nd4 は 35…Rg7 があるのでぬるすぎる。

35…Re2 36.Ra8 Ne7

 36…Re8 は 37.R1a7 で白がはっきり優勢である。

37.Qf6+ Kg8 38.Rxc8+ Nxc8 39.Ra8

 白は細心の注意を要する。例えば 39.Qd8+? Kh7 40.Qxc8 Rxc2 41.Ra8 と早まると 41…Rxg2+ 42.Kh1 Qxf3 43.Qh8+ Kg6 44.Rg8+ Kf7 45.Rxg2 Qxf1+ 46.Kh2 Qf4+ 47.Kh1 Qe4 で負けてしまう。

39…Re8 40.Bxf5 Rf7 41.Qg6+ Kf8 42.Rxc8 Rxc8

 42…Qxf5 は 43.Qxd6+ Rfe7 44.Rxc5 で負けになるのでだめである。

43.Bxc8 Nd3 44.Bg4?!

 カバレクは 44.Be6 Rg7 45.Qh5 Qf6 46.Bg4 と指せば相手にもっと多くの問題を突きつけることができた。しかし実戦の黒の45手目を見抜くことは至難の業だろう。

44…Nxb2! 45.Bh5 Na4!!

 これは大局観に裏打ちされた見事な捨て駒だった。これで収局に切り替わりクイーン翼の黒のパスポーンの脅威が捨て駒の十分な代償になっている。

46.Qxf7+ Qxf7 47.Bxf7 Kxf7 48.Kf2 Nxc3 49.Ke3 Ke6 50.Kd2 b4 51.Nxh4 Nb5 52.Ne3

 52.Kc2 Ke5 53.Ne3 d5 でも結果は変わらない。

52…d5 53.Nf3 b3 54.Nd1 d4 55.Nxd4 Nxd4 56.Kc3 Ne2+ ½-½

 このあと 57.Kxc4 なら 57…Nf4 で完全に互角である。激闘の末の正当な結末だった。

(この章終わり)

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世界のチェス雑誌から(88)

「British Chess Magazine」2010年6月号(8/16)

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世界選手権戦(続き)

第5局 4月30日

 アーナンドは第3局と同じくクラムニクから啓示を受けた戦型を用い、前回よりも危なげなく再び引き分けに押さえた。本局での大きな出来事は約30分の停電だった。この停電は現地全体に及んでいて、世界を何が起こったのか分からない(いわば)闇に陥れた。それから機転の利くジャーナリストが携帯電話を使うことを思いつき本部にニュースを流した。

ここまでの結果 アーナンド3点 トパロフ2点

第5局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

スラブ防御 [D17]

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 Bf5 6.Ne5 e6 7.f3 c5 8.e4 Bg6

 アーナンドは無責任な編集長が名づけてみたかった「スミスロフ/クラムニクひれ伏し」戦型、またはチーム・アーナンドが名づけたエリスタ局面にまた行くことにした。後で分かったことだがチームが全員一致で選択したことではなくカシムジャーノフが異議を唱えていた。

9.Be3 cxd4 10.Qxd4 Qxd4 11.Bxd4 Nfd7 12.Nxd7 Nxd7 13.Bxc4 a6 14.Rc1 Rg8 15.h4 h5

 またしても盤上で最初に手を変えるのがチャンピオンの特権のようである。アーナンドは第3局では 15…h6 と指した。

16.Ne2

 トパロフはh5のポーンに目をつけている。このポーンはナイトがf4に来ると攻撃にさらされる。

16…Bd6 17.Be3

 ここで現地の停電が発生し照明と通信が完全に途絶えた。対局者は闇の中で席に着いたままだった。15分ほどして電気が復旧して試合が再開された。

17…Ne5 18.Nf4

18…Rc8

 18…Nxc4 19.Rxc4 は黒にとって少し危険である。もちろんこのナイトの方が白の白枡ビショップより働きが少し良いし黒が白駒の攻撃にさらされるからである。

19.Bb3 Rxc1+ 20.Bxc1 Ke7 21.Ke2 Rc8 22.Bd2 f6!

23.Nxg6+

 黒はうまく窮屈な状態から抜け出しつつある。23.Bxe6 は 23…Rc2 から黒に反撃される。

23…Nxg6 24.g3

24…Ne5

 24…Bxg3?? は 25.Rg1 Nf4+ 26.Kd1 で白の勝ちになる。

25.f4 Nc6

26.Bc3

 26.Be3 は 26…Na5 で黒が互角以上の形勢になる。

26…Bb4 27.Bxb4+ Nxb4 28.Rd1 Nc6 29.Rd2 g5 30.Kf2 g4

 これはh5のポーンが攻撃にもろくなり観戦のグランドマスターたちをちぢみあがらせた(手を決めすぎているので)。しかしアーナンドは具体的な変化を読んでいて安心していた。

31.Rc2 Rd8 32.Ke3 Rd6 33.Rc5

 ここは重大な岐路で、黒は白からのh5のポーン取りに対する狙いに対処する断固たる処置が必要である。

33…Nb4 34.Rc7+

 34.Bc4 は 34…Nc2+ 35.Ke2 Nd4+ 36.Kf2 Rc6 で受かる。

34…Kd8 35.Rc3 Ke7 36.e5

36…Rd7

 36…fxe5 は 37.fxe5 で白キングにg5への道が開ける。

37.exf6+

 37.a5 は 37…f5 38.Ke2 Nc6 39.Ba4 Rd5 40.Bxc6 bxc6 41.Rxc6 Rxa5 で互角の形勢である。

37…Kxf6 38.Ke2 Nc6

39.Ke1

 この手が指された時まゆをひそめる者がいた。ほとんどの岡目八目は 39.Bc2 の方が良いと思ったが大差ないようである。

39…Nd4 40.Bd1

 ここではどちらかといえば黒の方が良いが優勢を拡大する具体的な手段はない。

40…a5 41.Rc5 Nf5 42.Rc3 Nd4 43.Rc5 Nf5 44.Rc3 ½-½

 トパロフにとっては非常に不甲斐ない試合で、白番で奮起する必要がある。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(55)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図76(再掲)

 通常この型の局面(閉鎖中原が …c7-c5 突きの後でだけ生じる時)ではキング翼が白の作戦行動の舞台となる。黒の方はクイーン翼で反撃を画策する。しかしキング翼で黒のとる防御手段によりこの自然な攻撃戦線が突然逆転することが起こり得る。

16…c4 17.Bg5 h6 18.Be3 Nc5 19.Qd2 h5

 黒はキング翼の防御で積極策をとることにした。堅実な 19…Kh7 の方が形を乱さないが、f4 突きを意図する 20.Nh2 のあと白がわずかに優勢であることは否めない。

20.Bg5

 この手は最強水準の大会では本局で初めて現れた。これに代わる重要な手は 20.Ng5 だが、最近 20…Bh6 の有効性が顕著になってきた。例えば 21.f4 h4! 22.fxe5 Rxe5 23.Nf3 Bxe3+ 24.Qxe3 Nxd5 で複雑な局面だが黒に不利とは思われない。白はこの 20…Bh6 が嫌で 19.Qc1!? h5 20.Ng5 と工夫することもあった。それでも 20…Bh6 とやってくれば 21.Bxc5 dxc5(21…Bxg5 の方が良い)22.Nxf7 Bxc1 23.Nxd8 Bxb2 24.Nxb7 で白が優勢になる。

20…Be7 21.Ra3

 この手はa列を素通しにする準備である。後に本譜の手の改良手として 21.Bh6 が指された。その意図は Nh2 の後 f2-f4 突きを狙うことである(すぐに 21.Nh2 は 21…Nh7! という強手で応じられ 22.Bh6 には 22…Bg5 とされるので目的が達せられない)。21…Nh7 はこの狙いをかわすがナイトをそっぽへやる欠陥があり、この手の後で初めて 22.Ra3 でクイーン翼での戦いに転じる。しかし 21…Bf8 が良い応手のようである。

21…Rb8 22.Qe3

 この手は Nxe5 dxe5、Bxf6 から Qxc5 という隠れた狙いを作り出し、Nd2 を用意して f2-f4 と axb5 axb5 から b2-b3 の両様の狙いを含んでいる。

22…Nh7 23.Bxe7

 ここでも 23.Bh6 が考慮に値した。

23…Qxe7 24.Rea1 Bc8 25.axb5 axb5 26.Nd2 Rb7 27.Ra5?(図77)

 図77

(この章続く)

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