2010年08月の記事一覧

ルイロペスの完全理解(54)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図75(再掲)

 ブレイェル戦法に代わる重要な手は前局(図72を参照)で検討したものに加えてすぐに …c7-c5 と突く準備の 9…Na5 のチゴーリン戦法がある。クイーン翼ナイトはいずれにしてもクイーン翼で影響力を行使するのでそっぽへ行くことは気にしない。10.Bc2 c5 11.d4 のあと黒にはいくつかの継続手がある。例えば
 (1)11…Nc6 12.d5 Na5 13.b3!?(…c4 を防ぐため)13…g6(…Nh5 の準備)14.a4 Bd7 15.axb5 axb5 16.Nxe5 dxe5 17.d6 交換中原への以降は白が少し有利である。
 (2)11…Nd7(ケレスの手。e5の地点を守り、…Bf6 でd4のポーンに圧力をかける準備をし多分あとで …Nc6 の支援を受け、閉鎖中原になった場合は …f7-f5 突きを容易にする。その反面この手の欠陥としてはキング翼から防御を取り去り、e4とd5の地点の支配を失って Nd2-f1-e3-d5 のような捌きを容易にさせるということがある)12.Nbd2(12.d5 もある手だが黒の …f7-f5 突きを容易にさせるので時期尚早のように思われる)12…cxd4 13.cxd4 Nc6 14.d5(14.Nb3 や 14.Nf1 の方が普通だが一般には動的中原が形成される)14…Nb4 15.Bb1 a5 16.a3 Na6 17.b4 Nb6 18.Qb3 Na4 19.Nf1 複雑な局面でありどんな結果になってもおかしくない。
 (3)11…Qc7(これは最も普通に指される手である。以下にいくつかの手順をあげるが我々にとって関心のある閉鎖中原が生じる局面に限る)12.Nbd2 cxd4(12…Nc6 13.d5 Nd8 14.a4 Rb8 15.axb5 axb5 16.Nf1 Ne8 17.b4 g6!? は …Ng7 から …f5 と突く考えで、どちらも指せる)13.cxd4 Bb7(13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.d5 Nb4 17.Bb1 a5 18.a3 Na6 19.b4 g6 は難解な戦いである。13…Nc6 は第5局の黒の9手目の解説の手順2fを参照)14.d5 Rac8 15.Bd3 Nd7 16.Nf1 f5 17.exf5 Nc5 18.Bb1 Nc4 局面は複雑でどちらにとっても見込みがある。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8

 すぐに 12…c5 と突くこともでき、その意図は b2-b4 突きを防ぐことである。想定手順は例えば 13.d5 Ne8 14.Nf1 g6 15.Bh6 Ng7 16.Ne3 Nf6 17.a4 Kh8(…Ng8 で Bh6 を追い払えるようにするため)18.b3 で、白が有利である。

13.Nf1

 別の作戦は 13.b4 Bf8 14.a4(14.Bb2 の後 a2-a3、Rc1 そして c3-c4 と指すのも面白い手段である)14…Nb6 15.a5 で、黒の最終手から生じるクイーン翼の封鎖の局面は互角の展望である。

13…Bf8 14.Ng3 g6 15.a4 c5 16.d5(図76)

 図76

(この章続く)

2010年08月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[27]

eポーン布局

初めに

 1.e4 は中原に地歩を占め白枡ビショップとクイーンの筋を開けるので白の初手として最も自然な選択の一つである。1.e4 に対する応手は一般的に二つのグループに分けることができる。一つは白が 2.d4 で完全なポーン中原を形成するのを黒が阻止するもので、もう一つはそのような中原を許し後でそれを反撃の目標として利用することに期待するものである。初めの種類には 1…e5 から始まるすべての対称形防御とシチリア防御(1…c5)とが含まれる。二番目の種類はここではフランス防御(1…e6)、カロカン防御(1…c6)および現代防御(1…g6)を代表的なものとする。

 まず考えるべき最も明らかな応手は 1…e5 である。というのは少なくともこの手を指すことによって黒が自分の可能性を低めることがないと思われるからである。白が 1.e4 と指す理由はすべて同じ正当性で黒にも当てはまる。もちろん局面が対称なので白にはまだ先着の利がある。しかしそもそも白はその有利さを持って試合を始めたのである。さて、白はどのように次の手を指すべきだろうか。可能ならば狙いを持って展開すべきという一般原則に従えば白の論理的な進路は自分の展開に寄与し同時に守られていない黒のeポーンを攻撃する手を探すことである。

 白がこれらの課題に取り掛かる方法は自分の棋風に大きく依存している。攻撃的な選手は例えばキング翼ギャンビットのように早い段階で局面が複雑化する布局をよく採用する。大局観で指し進める選手は争点をいくらか長く維持するのを選ぶのが普通で、2.Nf3 から始まる布局の一つを好みやすい。これはナイトを戦闘に投入する利点があり、いつかは起こる主眼の d4 突きに道を開く。これに対して黒はeポーンを守りながら展開する手を探すべきで、通常は 2…Nc6 を選ぶ。

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ルイロペスの完全理解(53)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

第3局
カバレク対スパスキー
トリノ、1982年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5

 閉鎖中原の局面は黒が …b7-b5 と突かない戦法でも見られる。既に見たようにそのような状況では白のクイーン翼での戦略は c2-c4-c5 の可能性を踏まえてかなり変わってくる。試合がどのように展開するかは遅延シュタイニッツ戦法の一、二の戦型を調べることによってより良く理解することができる。この戦法はかなり守勢のシステムだが非常に理にかないかつ堅固で、人気が復活してきている。4…d6(4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 d6 については第6局の黒の6手目の解説を参照)5.c3(他の手は第1局の黒の4手目の解説に出てきているし第8局の白の5手目でも解説される)5…Bd7(5…f5 は第9章の主題である)6.d4 ここから
 (1)6…g6(この局面からどのように展開していくかは第4局の黒の4手目でも解説される)7.O-O Bg7 8.Re1 Nge7 9.d5 Nb8 10.c4 O-O 11.Nc3 h6(この手は …f7-f5 と突く準備である。同じ意図で 11…Bg4 も面白い手である)12.b4 いずれ白は c5 と突くことができ一定の優位を確保する。
 (2)6…Nge7 7.O-O Ng6 8.d5 Nb8 9.c4 Be7 10.Nc3 h6 11.Be3 Bg5 両者とも指せる。
 (3)6…Nf6 7.O-O Qe7 8.Re1 g6 9.d5 Nb8 10.c4 Bg7 11.Nc3 O-O 12.b4 両者とも指せる。

7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Nb8(図75)

 図75

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(52)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図74(再掲)

 白はe5ポーンに圧力をかけて …d6-d5 突きを防ぐことにより相手の反撃の裏をかくもくろみに成功した。これで白はキング翼での敵の弱点につけ込むことに専念することができる。

25…Nc7 26.Nf5

 この相手の出鼻をくじく単純な戦術で白はナイトを黒枡ビショップと交換することに成功し敵の黒枡をますます弱めた。

26…Ne6 27.Nxe7+ Qxe7 28.Ng5 Nc5 29.b4

 d5の地点をめぐる戦いは白の勝利に帰した。

29…Na4 30.Bb3 Be8 31.Rd2

 …Nb2-c4 の狙いを消した。

31…Rc8 32.Rc2 Nd7 33.Nf3 Ndb6?!

 黒は楽観しすぎて戦力のほとんどをクイーン翼に移動し反対翼の弱点をなおざりにした。黒は …f7-f6 と突けるように 33…Kh8!? と指した方が良かっただろう。

34.Bg5 Qc7 35.Nd2 Kg7

 35…Nc4 なら 36.Bxc4 bxc4 37.Bf6 で白の勝ちになる。

36.c4 h5

 黒は 36…bxc4 では受からない。以下は 37.Nxc4 Nxc4 38.Rxc4 Qb7 39.Bh6+ から Qg5-f6 である。

37.cxb5 Qd7 38.Qf3

 38.Bh6+ Kh7 39.Bf8 ならずっと早く白が勝っていた。

38…Rxc2 39.Bxc2 Kg8 40.Bb3 Qxb5

 これでもう黒の望みはない。

41.Qf6 1-0

 黒は詰みが避けられない。例えば 41…Kh7 42.Bxf7 Bxf7 43.Qxf7+ Kh8 44.Bf6# である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(51)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図73(再掲)

 e4ポーンに対する圧力で白が中原の閉鎖を余儀なくされた。この決断は一方では黒に対して譲歩したとみなされるが、他方では白は自陣を広げ相手駒の動きを制限したことも明らかである。

15…Nb8

 この手はナイトをa6経由でc5に持ってくる考えである。図73の局面はルイロペスのこの型の戦法でクイーン翼ナイトに多種多様の捌きの可能性があることを鮮明に示している。実際ナイトのすべての他の動きがそっぽへ行く 15…Na7 を除いて本譜に代わる手として試されてきた。以下はその2、3の例である。15…Nd8 16.Nf1 h6 17.N3h2 Nb7 18.Bc2 Nc5 19.b4 Na6 20.Ng4 は白がキング翼で有望な態勢である。15…Ne7 16.Nf1 h6 17.N3h2 c6 は均衡のとれた局面である。最後に 15…Na5 16.Ba2 c6 17.b4 Nb7 18.c4 Rc8 は難解な局面である。

16.Nf1

 両者の作戦はかなりはっきりしている。白は Nf1-g3 の移動から Bg5 を狙うことにより、または実際に実行することにより相手のキャッスリングした囲いを弱体化させたい。黒の方は …c7-c6 突きに続いて中原での反撃をもくろんでいる。

 a4-e8の斜筋の Qd7 と Re8 の配置を 16.c4 で利用しようとするのは(16…bxc4?! 17.Ba4)16…c6 または 16…Rc8 であまり進展が図れない。

16…Na6?!

 黒は黒の前の手で解説した作戦を推し進めている。しかし中原での反撃を先延ばしすることはあまり有望な局面をもたらさない。予防の 16…h6 の後すぐに …c7-c6 と突くのが考慮に値した。

17.Bg5

 この手は …c7-c6 突きとの兼ね合いでd5の地点の支配を間接的に強めるのにも役立っている。

17…Be7 18.Ng3 g6 19.Qd2

 この手は …Kg7 から …Ng8 とする手を防ぎ Re1 という手を作っている。

19…Bb7

 黒はまたしても中原での反撃開始を延期しなければならない。なぜなら 19…c6 20.dxc6 Bxc6 21.Bxf6 Bxf6 22.Rd1 Rd8(22…Nc5? 23.Qxd6)で白が非常に有望だからである。例えば 23.Ng5 Bxg5 24.Qxg5 Nc5 25.Bd5 Bxd5 26.Rxd5 で白の勝つ可能性が大きい。

20.Ra1 Ra8 21.Bc2 c6 22.dxc6 Bxc6 23.Rd1 Rd8 24.Qe3 Qb7 25.Bh6(図74)

 図74

(この章続く)

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「ヒカルのチェス」(182)

「Chess Life」2010年4月号(1/4)

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カールセンがベイクアーンゼーで優勝

ナカムラがグランドスラム初参加で活躍

GMイアン・ロジャーズ
写真 キャシー・ロジャーズ

 2010年にはベイクアーンゼーの主催者は世界ナンバーワンのGMマグヌス・カールセンや世界チャンピオンのビスワーナターン・アーナンドのような魅力的なスーパースターだけでなく米国チャンピオンのヒカル・ナカムラもグランドスラム大会に初めて招待した。

 22歳のナカムラは戦うチェスを指すことで定評があり、12月のロンドンでのスーパー大会では彼の砲火の洗礼は既に世界のエリートに入らんとする1選手を鍛えるのに役立った。

 19歳のノルウェーの天才カールセンは優勝の大本命で激闘の13回戦のあと1万5千ドルの優勝賞金を獲得したが、大会のほとんどは4選手が優勝争いをしていた。その一人がナカムラだった。

・・・・・

 しかしナカムラとカールセンはシロフの後にぴったりとついていた。米国のナカムラは第2回戦でこの大会中最も華々しい勝利をあげた。

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B96]
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708、米国)
GMローク・ファン・ベリ(FIDE2641、オランダ)
ベイクアーンゼー(第2回戦)、2010年

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Nbd7 8.Qf3 Qc7 9.Bxf6!? Nxf6 10.g4

 ナカムラは「この戦型は今ではあまり見られない。通常は白はキャッスリングしてから2、3手後に g4 と突く」と説明した。「これはちょっと変わった戦型である。」

10…b5 11.g5 Nd7

 「黒が 11…b4 とやってくれば 12.Ncb5! で黒陣が非常にまずくなる。」

12.O-O-O

 これは一般的な局面の変形である。ここでの黒の主流手順は 12…Bb7(13.Bh3 と応じられる)と 12…b4(眼目の 13.Nd5 の捨て駒を誘発する)である。

12…Nc5 13.a3 Rb8

 これは黒のビショップがb7へ上がるより前に …b5-b4 と仕掛けようという典型的な作戦である。しかし断固とした非定型的な反発を食らった。13…Be7 と指す方が安全だった。

14.b4!

14…Nd7

 「対局の前にこの手を研究していた。黒が 14…Na4 とくれば 15.Ndxb5! axb5 16.Bxb5+ Rxb5 17.Nxb5 Qb6 18.Qd3 といくつもりだった。研究によれば次のように白がかなり良い。18…Bd7 19.Nxd6+ Bxd6 20.Rd2!」

15.Nd5!

 ここまでナカムラの時計は10分未満しか減っていなかったがファン・ベリは時間が少なくなり始めていた。

15…exd5 16.exd5 Be7 17.Re1

17…Ne5

 「ここで彼はすぐに駒を返すことにした。しかし 17…Nb6!? 18.Nc6 Nxd5! 19.Qxd5(19.Nxb8! Qxb8 20.Qxd5 Bb7 21.Bxb5+! の方がはるかに良い-ロジャーズ)19…Be6 20.Qg2 Rc8

と来られたら形勢に自信がなかった。例えば 21.Nxe7 Qc3 はわけが分からない。」

 17…Kf8!? も白の駒捨てに対する大きな関門だった。その主眼は 18.Nc6 に対して 18…Bb7! と応じられることで 19.Nxe7? には 20…Re8 があるので駒損を取り戻せない。

18.fxe5 Bxg5+ 19.Kb1 dxe5 20.Nc6

20…Bf6?!

 「ロークと私は 20…O-O の後 21.Rxe5! Bf6 22.Rh5 で黒が困っているという結論に達した。」

21.Bd3!

 この手にナカムラは20分以上を要した。しかし黒キングの安全な場所がなくなったのでそれだけの時間をかけた価値は十分あった。「当初は 21.Nxb8 Qxb8 22.Bd3 で交換得できると考えていた。しかし引き続いて黒がキャッスリングする必要がなく 22…Ke7! から …Qd6、…Bb7、…Rc8 と指せることに気がついた。黒がこの態勢になればこちらが非常に不利になる。 」

21…h5

 「これは小さなポカである。しかし 21…Rb6 でも 22.Nxe5 Bxe5 23.Qh5! で相手のキングが中央で立ち往生する。」たぶんファン・ベリは 21…O-O と指すつもりだったのだろうが 22.Rhg1! で白の攻撃が決まることに気づくのが遅すぎた。以下は例えば 22…Kh8 23.Bxh7!! Kxh7 24.Qxf6!! gxf6 25.Re4!

から 26.Rh4 で詰みになる。

22.Rxe5+! Bxe5 23.Re1

23…Bg4!

 これは勝負手である。e5のビショップを救うことはできない。なぜなら 23…f6 としても 24.Bg6+! Kd7(24…Kf8 25.Rxe5 Bd7 26.Re7)25.Rxe5! で白の術中にはまる。

24.Qf4!

24…O-O!

 「26…f6 の後 25.Bg6+ とチェックでき 25…Kf8 なら 26.Rxe5 からクイーンを取る狙いがある。また 25…Kd7 なら 26.Bf5+! Ke8 27.Nxe5 fxe5 28.Rxe5+ Kd8(28…Kf8 29.Bxg4+)29.Qg5+

で詰みになる。」

25.Rxe5!

25…g6?

 頑強な受けのあとファン・ベリは残り20分のうち15分をこの手に使ってナカムラをやり易くさせてしまった。「彼にとっては不運なことに自然な 25…Rbe8 は 26.Rxe8 Qxf4 27.Ne7+ Kh8 28.Rxf8# でうまくいかない。ロークは即負けにならない唯一の他の手を見つけ出した。」

 (実際には 25…f5! でまだ踏ん張れる。それに対して白はたぶんb8のルークを取るのをまだ我慢して 26.Qg5! で攻撃を続けるべきだろう-ロジャーズ)

26.Qf6!

 急に 27.Bxg6! という狙いができて黒はどうしようもない。

26…Rbe8 27.Ne7+ Rxe7 28.Rxe7 Qxh2 29.Bxg6! Qh1+ 30.Kb2 Qxd5

31.Bxf7+!

 「初めは 31.Be4 と指すつもりだったが 31…Qd2 32.Re5 Rd8 のあと決め手を見つけることができなかった。」

31…Qxf7

 31…Rxf7 は 32.Re8+ で詰みになる。

32.Rxf7 Rxf7 33.Qxa6 Kg7 34.Qxb5 Kg6 35.Qc4 Rd7 36.b5 Kg5 37.b6

37…Bf3

 「37…h4 には 38.Qb5+ Bf5 39.Qxd7! Bxd7 40.b7 で白が勝つ。」

38.Qb5+ Rd5 39.Qb3 黒投了

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(50)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図72(再掲)

 黒は現在流行しているザイツェフ戦法を選択した。この手は以降の …Re8 から …Bf8 の捌きと関連して中原での主眼の争点を目的としている。つまり(10.d4 の後)白が中原で決断を下すようにe4のポーンに圧力をかけることである。さらに黒は Nc6 の将来の動向についても決定を延期している。このナイトはこれから分かるようにいろいろな所に動くことができる。

 黒にはもちろん他にもいくつもの対抗策がある。

 (1)9…h6 が特徴のスミスロフ戦法。これも …Re8 から …Bf8 の捌きが目的だがまず最初に白の小駒がg5に来るのを防いでおく。注意を閉鎖中原が生じる場合に限定していくつかの手順を紹介する。9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 そしてここから

 (1a)12.Bc2 Bd7 13.Bd3 Qb8 14.b3 g6 15.Bb2 Bg7 16.d5 Nd8 17.c4 これはわずかに白が優勢である。

 (1b)12.a3(目的は Ba2 を可能にすること、あるいは Bc2 と引いて …exd4、cxd4 Nb4 の可能性を防ぐと同時に b2-b4 突きを準備すること)12…Bb7 13.Bc2(ここでは 13.Ba2 Nb8 14.d5 も可能だが白が互角以上にはならないようである)13…Nb8 14.b4(14.b3 Nbd7 15.d5 c6 16.c4 も同様に良い)14…Nbd7 15.Bb2 g6 16.Qb1(e4の地点を守って Nd2 を動けるようにした)16…Bg7 17.Nb3 Rb8 18.Na5 から d5 で白が有望である。

 (1c)12.Nf1 Bb7(12…Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.b3 Nc6 16.d5 のあと白がわずかに優勢を保っている)13.Ng3 Na5 14.Bc2 Nc4(14…c5 15.d5 Nc4 の局面はほとんど実戦に現われず形勢判断が成されていない)15.b3(15.a4 には強手の 15…d5! で互角)15…Nb6 16.Bd2(16.a4 bxa4 17.bxa4 a5 は均衡のとれた局面)16…c5 17.d5 g6 はどちらも指せる。

 (2)9…Nd7 のチゴーリン戦法(チゴーリン戦法には2種類ある。最もよく知られている 9…Na5 は第3局で解説する)。このナイト引きの意図はキング翼ナイトをd7からb6へ移動しクイーン翼の重要な白枡を支配し、…Na5 から …c5 でクイーン翼で主導権を発揮するように努めようとすることである。Nf6 の地点は代わりにキング翼ビショップが占め、このビショップがf6の地点からe5のポーンを強化しd4に圧力をかける。ちょっといくつか実戦例を見てみよう。9…Nd7 10.d4 このあと

 (2a)10…Nb6(11.a4 を防ぐため)11.Nbd2 Bf6 12.d5 Na5 13.Bc2 c6 14.dxc6 Qc7 15.Nf1 白がいつもの目的で先行しているので優勢である。

 (2b)10…Bf6 11.a4 Bb7 12.axb5(すぐに 12.d5 と突くこともできる)12…axb5 13.Rxa8 Bxa8(13…Qxa8 14.d5 Na5 15.Bc2 Nc4 16.b3 Ncb6 17.Na3 Ba6 18.Nh2 c6 はどちらも指せる)14.d5(14.Na3!?)14…Ne7 15.Na3 Nc5 16.Bc2 c6 17.b4 黒は dxc6、Bd3 から Qe2 の狙いに対処しなければならないので互角の形勢にするために頑張らなければならない。

 (3)9…Be6 はよく活躍する相手の白枡ビショップとすぐに交換してしまおうという着想である。しかしそうすることによって黒はd5とf5の地点をさらに弱め、相手にa列で自由に振る舞わせてしまう。次は一つの想定手順である。10.d4 Bxb3 11.axb3(11.Qxb3 もある)11…Re8 12.d5 Nb8 13.c4 から Nc3 の狙いで白がかなり良い。

 (4)9…Nb8 はブレイェル戦法で、既に第1章でお目にかかっていて第3章の主題である。

 (5)9…a5 は第7局の黒の9手目で解説する。

10.d4 Re8

 白に争点を解決させるためにe4のポーンに圧力を増し続けている。

11.Nbd2

 すぐに 11.a4 と突くこともできる。例えば 11…Bf8 12.d5 Nb8 13.axb5 axb5 14.Rxa8 Bxa8 15.Na3 c6 16.dxc6 Bxc6 17.Bg5 Nbd7 18.Nc2 から Nb4 で白の陣形の方がわずかに優っている。11.Ng5 については第1局の黒の9手目の解説を参照されたい。

11…Bf8 12.a4

 他に有望な手は 12.a3 g6 13.Ba2 Bg7 14.d5 と 12.Bc2 g6 13.d5 Nb8 14.b3 c6 15.c4 で、どちらの手も互角の形勢である。

12…Qd7

 12…h6 もよく指されていて以下は 13.d5(13.Bc2 exd4 14.cxd4 は第4章で論じる形になる)13…Nb8 と進む。

13.axb5 axb5 14.Rxa8 Bxa8

 14…Rxa8?! と取るのは誤りで、15.Ng5 Nd8 16.Ndf3 で白がはっきり優勢である。以下は例えば 16…h6 17.dxe5 dxe5 18.Nxf7 Nxf7 19.Nxe5 または 16…c5 17.dxc5 dxc5 18.Qxd7 Nxd7 19.Nxf7 Nxf7 20.Be6 となる。

15.d5(図73)

 図73

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(49)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例

第2局
カスパロフ対スメイカル
ドバイ・オリンピアード、1986年
ザイツェフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6

 黒はこの手でマーシャル・ギャンビットから生じる難解な戦法に行くつもりがないことを相手に告げている。その戦法の手順は 7…O-O 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 で、第7章で解説する中原の型が出来上がる。

 白は 7…O-O に対して 8.a4 と応じることによりすぐに注意を黒のクイーン翼の弱点に転じてマーシャル・ギャンビットを避けることができる。戦法によっては閉鎖中原の局面が生じる。例えば 8…b4 9.a5 d6(9…Rb8 10.d4 d6 11.d5 Na7 12.Be3-または 12.Nbd2 c6 13.dxc6 Nxc6 14.Nc4 で白がわずかに優勢-12…Nb5 13.Ra4 これでb4のポーンが苦労の種にしかならない)10.d3(10.d4 は 10…Bg4 と応じられる)10…Rb8 11.Nbd2 Kh8 12.c3 Nh5 13.d4(白はここで 13.Nxe5?! Nxe5 14.Qxh5 としても得にならず 14…Nxd3 で黒が良い)13…Bf6 14.d5 Ne7 で難解だが基本的には均衡のとれた局面になる。ここでも 15.Nxe5?! は 15…Bxe5 でうまくいかない。

8.c3 O-O 9.h3

 閉鎖中原は次の手順からもよく現れる。9.d4 Bg4 10.d5(10.Be3 d5 については第1局の白の9手目の解説を参照。ポーンを犠牲にする 10.h3 Bxf3 11.Qxf3-11.gxf3!?-11…exd4 12.Qd1 dxc3 13.Nxc3 はe列とf列に2個の可動中原ポーン、それにキング翼での攻撃の可能性を得ようとするもので面白いが本筋というわけでもない)10…Na5 11.Bc2 c6 12.h3 Bc8(ビショップが白に中原を閉鎖させて目的を果たし、これからa8-h1の斜筋に臨もうとしている。もっとも 12…Bxf3 13.Qxf3 cxd5 14.exd5 Nc4 15.Nd2 Nb6 16.Nf1 Nbxd5 も同じくらい良い手で、白の主導権は黒の戦力得によって相殺されている。12…Bd7 に対しては 13.Nxe5 dxe5 14.d6 が一つの選択肢で、白がわずかではあるが永続的な優勢を確保している。黒は前の手でこのビショップ引きを準備することができる。例えば 11…Qc8 12.h3 Bd7 13.Nbd2 c6 である)13.dxc6 Qc7 14.Nbd2 Qxc6 15.Nf1 これで形勢は釣り合っている。例えば 15…Nc4 16.Ng3 Re8 17.a4 Bb7 18.Bd3 Bf8 19.Qe2 d5 である。

9…Bb7(図72)

 図72

(この章続く)

2010年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(87)

「British Chess Magazine」2010年6月号(7/16)

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世界選手権戦(続き)

第4局 4月28日

 またしてもカタロニア布局で第2局と同じ結果になった。トパロフは2006年のクラムニクとの番勝負第1局で用いたのと同じ戦型を指した。しかしアーナンドのチームが辛辣なものを用意していたことがすぐに明らかになった。アーナンドは素晴らしい新構想を披露し(不利どころではないヘリのナイトがかかわっていた)、またしてもポーンを捨てて有意義な代償を得た。トパロフは守勢の局面で全然居心地が良さそうに見えなかった。世界チャンピオンは他のナイトも盤端で捨て苦もなく1点を得た。これでアーナンドが初めてリードを奪い状況は挑戦者にとって急に厳しそうになった。

ここまでの結果 アーナンド2½点 トパロフ1½点

第4局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

カタロニア布局 [E04]

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 d5 4.g3 dxc4 5.Bg2

5…Bb4+

 トパロフは第2局では 5…a6 と指したが本局では2006年エリスタでのクラムニクとの番勝負第1局で指した戦型に戻った。もちろんあの有名な試合に負けたのは布局のせいではなかった。あれは面白くない記憶だろうが、どちらかと言えば本局の方がもっと嫌な記憶だろう。

6.Bd2 a5

7.Qc2

 2010年コーラスでのカールセン対クラムニクでは 7.Nc3 O-O 8.a3 Be7 9.Qa4 と進み黒の勝ちに終わった。

7…Bxd2+

 7…Nc6 8.Qxc4 Qd5 が堅実との評判だがトパロフは2006年の「事件現場」を再訪することに決めた。

8.Qxd2

 2006年までは 8.Nbxd2 が標準的だった。そんな時ボイトキーウィッツが初めてこの手を指し、2、3ヵ月後にクラムニクがトパロフ戦で採用した。クイーンでの取り返しは同じ駒を二度動かすなという布局の「基本原則」に反しているように見える。しかし現代チェスは独断的であるよりも実戦的になってきている。

8…c6 9.a4 b5

10.Na3!!

 これは単なる新手というだけでなく、トパロフが予想していなかった素晴らしい新構想の手である。8.Qxd2 と指す元々の理由は犠牲にしたポーンを Qg5 から Qxb5 で取り返すことだった。しかし 10.Na3 はその考え方を覆した。ポーンを取り返す代わりに白はこのナイトを使ってクイーン翼の黒ポーンを動けなくし、トパロフをほぼ押さえ込んだ。前述のクラムニク対トパロフ戦では 10.axb5 cxb5 11.Qg5 O-O 12.Qxb5 Ba6 と進み、以降の10局あまりのグランドマスターの試合でもそうだった。エリスタ以来白はこの戦型で2勝1敗(他は引き分け)の成績だった。しかし素晴らしい 10.Na3 は将来もう少し見られるだろう。

10…Bd7

 10…Ba6 と指すこともできるが 11.Ne5 Nd5 12.Nxc6! で白が優勢になる。

11.Ne5

11…Nd5

 これはカタロニアビショップを鈍らせるつもりのおなじみの手だが、d列から進攻する白の作戦を加速させるのにしか役立たなかった。ここでは 11…Ra6!? が見込みのある手で、12.Nxd7 Qxd7 13.Qg5 O-O 14.axb5 cxb5 15.Qxb5 Qxb5 16.Nxb5 Nc6!? 17.Bxc6 Rxc6 18.Rxa5

で白に犠牲にしたポーンを取り返させさらにポーンを取らせるが 18…Rb6 から 19…Rfb8 で十中八九しのげるだろう。

12.e4 Nb4 13.O-O O-O 14.Rfd1

14…Be8

 この手は悪そうに見える。しかし正直なところこの局面でどう指したらよいのかは非常に難しい。黒はナイトを追い払いたいのだが 14…f6 15.Nxd7 Qxd7 16.d5 はポーンの形が大きく崩れて白が有利になる。例えば 16…e5 17.Qe2! cxd5 18.exd5 bxa4 19.d6 N8c6 20.Qxc4+ Kh8 21.Rac1 Ra6 22.Qb5

で白がはっきり優勢である。

15.d5!

 恐るべき超一流グランドマスターを追い詰めてこれからどうするか。まずはこれ、d列から進攻し列を素通しにすることである。

15…Qd6

 15…exd5 は 16.exd5 cxd5 17.axb5 となって黒の堂々とした構えが揺らぎ中央列の2ポーンもたちまち落ちる。

16.Ng4

16…Qc5

 e4-e5 の狙いをかわしカタロニアビショップを封じ込めるために 16…e5 と指せば白は 17.Ne3 と指して圧力をかけ続け 18.Nf5 を準備する。

17.Ne3 N8a6?!

 アニシュ・ギリはこれは悪手ではないかと感じ、代わりに 17…Nd3!? を推奨していた。もっとも「非常に非常に危険」な手だと認めていた。たぶんこれはもっと積極的にいくべき時に慎重になってしまったトパロフらしからぬ失敗の例だろう。17…Nd3 を良しとする一つの望ましい点は黒が弱いキング翼を守るために駒を呼び戻す(e5を通って)機会が得られることである。

18.dxc6 bxa4 19.Naxc4 Bxc6 20.Rac1

20…h6?!

 20…Qe7 21.Nxa5 Bb5 が黒にとって非常に融通性のある指し方に思えるが形勢は白がわずかに優勢である。

21.Nd6! Qa7?

 これから起こることを予測すれば黒はクイーンをキング翼においたままにする方法を見つけることが必要だった。アーナンドは 21…Qg5! を推奨しそれに対して 22.f4 は黒が 22…Qe7 で陣容を再編成しキング翼攻撃の最悪の事態を避けることができる。しかしそれでも白がかなり優勢である。

22.Ng4!

22…Rad8?

 対照的にトパロフはレーダーがまったく働いていなかった。この手ではたちまち勝負がついてしまう。22…Rfd8 も良くない。22…h5 にはアーナンドは 23.Ne5 といくつもりだった(もっとも 23.Nf6+! gxf6 24.e5! の方が良さそうである)。22…f6!? が最善かもしれないが白は 23.Rc4! から e4-e5 と応じることができる。22…Nc5!? も 23.Rc4 から厳しいキング翼攻撃で応じられる。

23.Nxh6+!

 これも非常に素早く本能的に指された。

23…gxh6 24.Qxh6

24…f6

 24…Qe7 も 25.e5 Bxg2 26.Rc4! で終わりである。

25.e5!

25…Bxg2

 黒は 25…Qg7 26.Qxg7 Kxg7 27.Bxc6 fxe5 28.Bxa4 で駒を返すことができるがポーン損でこの収局は負けである。

26.exf6 Rxd6

 アーナンドの栄光の2ナイトの最後を消してトパロフは苦い満足感を味わったかもしれないが焼け石に水である。26…Qh7 27.Qg5+ Kh8 28.Rc4! Rg8 は 29.Nf7+! Qxf7 30.Rh4+ Qh7 31.Rxh7+ Kxh7 32.Qh5#

できれいに詰まされる。

27.Rxd6

27…Be4

 27…Qh7 は 28.Qg5+ Kh8 29.Rd4! で前の解説と同じように白が勝つ。

28.Rxe6 Nd3

 やっと黒の遊んでいた二つのナイトの一つが生き返ったが狙いが単純で簡単に受けられる。

29.Rc2 Qh7 30.f7+ Qxf7 31.Rxe4 Qf5 32.Re7 1-0

世界チャンピオンの堂々たる試合だった。10.Na3 のような素晴らしい新機軸を見つけることと(たぶんアーナンド自身でなく彼のチームの一人が見つけたのだろう)その後ずっと正着を続けることはまったく別物である。この点においてインド人チャンピオンはまさにそれをやってのけた。

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(この号続く)

2010年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(48)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

中原を破壊するための捨て駒

 白も黒も時には小駒を犠牲にしてdまたはeポーンを取るかもしれない。この捨て駒の特徴は戦術そのものでなく主要な目的は危険な可動中原ポーンの厚みを作ることである(図68)。

 図68

 図に示されたような状況では白は例えば Bxc5 dxc5、Nxe5 と駒を犠牲にすることがある(図69)。

 図69

 中原のポーンを完全に自由にする主眼はポーンを集団で進攻させ、その結果として白枡ビショップをb1-h7の斜筋でまた効果的に働く機会を作り出すことである。

 黒も同様にナイトを犠牲にしてe4とd5のポーンを取ることができる。最も有利な(必須というわけではない)状況は白が既に b2-b3 と突いている時である(図70)。

 図70

 この図で黒は …Nxe4、Bxe4 f5、Bc2 e4、Nd4 Nxd5 と指す(図71)。

 図71

 そして危険な可動中原ポーンの厚みを作る目的と不良ビショップを再び厳しく働かせる目的を達成する。

(この章続く)

2010年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

JCAの間違い捜し(10)

JCAのホームページにオリンピアードとアジア大会の選手名が掲載されている。

http://www.jca-chess.com/

しかし、「山田弘平」選手なら知っているが「山田孝平」選手は知らない。

2010年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(47)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

d5ポーンの進攻

 一般的に言うとこの主題は擬似捨て駒の Nxe5 に基づいている。この手はd5ポーンを自由にしd6に進めるようにする目的を持っている。

 例えば黒駒の配置がe7のビショップを動けなくしているとき白は黒のビショップの閉じ込めめられた状態につけ込むことにより局面の様相を自分の有利に変える機会に恵まれるかもしれない。(図67)。

 図67

 ここに示された状況で白は Nxe5 と取り …dxe5 の後 d6 と突く。黒枡ビショップを取ったあと第3章で解説する型のポーンの形ができ上がる。Be7 と Nf3 がないことは通常は白に有利に働く。つまり双ビショップを持っていることと敵の黒枡の全般的な弱体化は白に有利である。

 戦術の狙い所は両当たりの主題にも基づくことがある。実際例えば黒がクイーンをc7に配置しクイーン翼ナイトをe7に引いている時d5ポーンの進攻は両当たりになる。

(この章続く)

2010年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス布局の指し方[26]

第2章 ポーンの重要性(続き)

2.4 パスポーンの注意点

 パスポーンが本領を発揮するのは通常は収局に入ってからなので、その研究は本当は布局定跡の本でなく収局の手引書の方がふさわしい。しかし布局、中盤、収局という標準的な分割は恣意的な面もあり、パスポーンが非常に早い段階でできることもあり得る。パスポーンを作ることは普通は良い考えである。前に出てきたゲルファー対キーン戦は保護パスポーンがどのように強力になり得るかの好例である。別の参考になる例は1972年スパスキー対フィッシャーの世界選手権戦第6局におけるパスeポーンである。

 もちろんパスポーンが弱体化することもあり得る。特に孤立している時はそうである。だからパスポーンができたらそれを必ず支援できることを確認しなければならない。中盤ではパスポーンを性急に突き進めず、収局にたどり着くことができるようになるまで大切に扱うことが良い考え方となることが多い。ポーンが自陣から遠く離れると敵駒に飲み込まれてしまうかもしれない。

 図34(黒番)

 図34では黒のaポーンが脅威のように思われるかもしれない。しかし実際はすぐに取られることになる。というのは Rfc1、Rc2、Rcxa2 という狙いに対して黒が受けがないからである。自分の子を見捨てるのは罰当たりである。

(この章終わり)

2010年08月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(46)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Qd7 の無防備の状態

 思いのほか頻繁に出てくる主題はd7の黒のクイーンの浮いている状態につけ込むことのできることに基づいている。白の手順はf5の地点をうまく占拠できることにかかっている(図65)。

 図65

 この主題の要点がこの図に表わされている。白は Qg4 と指し、Qxg7# と Nh6+ の二つの狙いがあるために勝ちになる。

 もちろんこの主題は次図のようにもっと洗練された形でも現れる(図66)。

 図66

 白は Nexd6 と取るが、黒は …Bxd6 と取ると Qg4 で負けるので取り返せない。…g7-g6 と突いても無駄で、白は黙って Ne4 と引くことができる。Nf6+ があるので黒はf5のナイトを取ることができない。

(この章続く)

2010年08月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(45)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Na5 の捕獲

 白が b2-b3 と c3-c4 の手段でd5のポーンを守る用意をし(図56を参照)黒のクイーン翼ナイトがa5にいるとき黒はc4の地点への利きがいつでも c3-c4 突きを防ぐのに十分であると思い込んではいけない。実際には白は守りを必要とせずに c3-c4 と突けることがある。これは …bxc4 と取り返した時 b3-b4 という手があるからである(図64)。

 図64

 これで Na5 が捕まっている。白がこの狙いを実行に移すことができるためには黒がクイーン翼ビショップをb7に上げていてナイトがb7に逃げられないようになっていないといけない。

(この章続く)

2010年08月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(44)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Nh4(Nh5) の無防備の位置

 もし Nf3-h5-f5 または …Nf6-h5-f4 の捌きでf5またはf4の地点を占めようとするなら用心深く行なわなければならない。というのはナイトがh列に跳ねたとき相手がその無防備の隙を突いてくるかもしれないからである(図63)。

 図63

 この図で例えば黒が …Nh5? と指せば Nxe5 とされる。一方白の手番で Nh4? と指せば …Nxd5 と応じられる。ただし …Nxe4? は間違いで Rxe4 と取られて Nh4 にひもが付く。しかし黒のクイーンがd8にいる場合はこの手も成立する。

(この章続く)

2010年08月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(181)

「Chess Life」2010年3月号(7/7)

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2009年ロンドン(続き)

ナカムラ スーパーになる

イアン・ロジャーズ

 最終局の激闘の後クラムニクとナカムラは検討室に同席し読み筋を披露した。いつものようにクラムニクはすごい変化で観客をうならせた。

クイーン翼ギャンビット拒否/ラゴージン防御 [D38]
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2715、米国)
GMウラジーミル・クラムニク(FIDE2772、ロシア)

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Nf3 d5 5.Qa4+ Nc6 6.e3 O-O 7.Qc2 Re8

 (ク)「ナイトがc6にいるので黒の作戦は …e5 と仕掛けていくしかない。」

8.Bd2 Bf8 9.a3 e5

10.dxe5

 (ク)「戦術的に 9…e5 が成立するのは 10.cxd5 に対して 10…Nxd4!! 11.exd4 exd4+ 12.Ne2 Qxd5

で黒が猛攻できるからである。」

10…Nxe5 11.cxd5 Nxd5

12.O-O-O

 (ク)「12.Nxe5 Rxe5 13.O-O-O とやってくる手も読んでいたが 13…Bf5! 14.e4 Nxc3 15.Bxc3 Qg5+ 16.Qd2 Qxd2+ 17.Rxd2 Rxe4 18.Bd3 Rf4 19.Be5

で黒が大丈夫だと思っていた。ここでは交換損しなければならないが 19…Rxf2! 20.Rxf2 Bxd3 で黒が良いと思う。」

12…Nb6 13.Ne4

 (ナ)「これは最も攻撃的な手である。」

13…Nxf3 14.gxf3 Qh4 15.Bc3 Bf5 16.Bd3 Bg6 17.f4 Rad8

 (ク)「ここでは 18.Ng3 を予想していた。以下は 18…Bxd3 19.Rxd3 Rxd3 20.Qxd3 c6 となって私なら黒を持ちたい。」

18.f5! Rxd3!?

 (ナ)「実は 18…Bh5 と指されたらどう指したら良いか分からなかった。」

19.Nf6+! gxf6 20.Qxd3

20…Qxf2!

 (ナ)「20…Bh5 なら 21.Rdg1+ Kh8 22.Rg3 と指すつもりだった。そして 22…Bd6 とくれば 23.f4 で 24.Be1 でクイーンを捕まえる狙いがある。」

21.fxg6 hxg6

22.Bd4!

 (ク)「ほとんど 22.Rhf1 Qxe3+ 23.Qxe3 Rxe3 24.Rd8

を読んでいた。それなら 24…Rxc3+! 25.bxc3 f5 26.Rb8 Nc4 27.Re1 Kg7 28.Rxb7 Bxa3+ 29.Kc2 Bd6

と指す予定だった。変わった局面だが黒にも勝つチャンスがあると思う。」

22…Nd5 23.Kb1

 (ク)「白は 24.e4 を狙っていてこちらが 23…Qh4 と指せば白は 24.Bxa7 と取ることができる。」

23…c5

 (ク)「23…Qf3 24.Bxa7 c6 25.Bd4 Qe4 26.Qxe4 Rxe4 27.Rd3 f5

はどうだろうと思っていた。しかし白は引き分けにできると思う。」

24.Rhf1 Qxh2

25.Bxf6!

 (ク)「この手が可能だとは信じられなかった。読んでいたのは 25.Bxc5 Bxc5 26.Qxd5 Qe5 27.Qxe5 Rxe5 28.Rxf6 Rxe3 29.Rd7 Re7 30.Rxe7 Bxe7 31.Rf1 f5

だったが白が 32.Rd1! で引き分けにできると思う。例えば 32…f4(32…Kf7 33.Rd7 g5 34.Kc2 g4 35.Kd3)33.Kc2 で白キングがかけつけるのに間に合う。」

25…Nxf6 26.Rxf6 Bg7

 (ク)「勝勢だと感じていたが勝ち筋を見つけられなかった。」

27.Qb5! Bxf6 28.Qxe8+ Kg7 29.Qb5

29…Qg2

 (ク)「gポーンを突いていきたかったが 29…b6 30.Rd7 g5 31.Rxa7 g4 のあと白に 32.Ra4!

がある。30…c4 31.Rxa7 Qe2 でも 32.Ka2!

があるので勝てない。32…c3 は 33.Qb3! があるので狙いにならない。」

30.Rd7 Qe4+ 31.Ka2 Qe6+ 32.Kb1 Qe4+ 33.Ka2 Qe6+ 34.Kb1 Qe4+ 引き分け

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(この号終わり)

2010年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(43)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所

 閉鎖中原は通常は頻発する戦術の狙い所を広めるのに役立たないけれども(少なくとも布局に関しては)、この種の中原では複数の戦法に共通するいくつかの戦術の狙い所を正確に指摘することができる。ここではより一般性のある戦術の狙い所について触れ、e4-d5連鎖ポーンの根元や先頭に対する攻撃のあと中原が一部壊れた局面には戦術的手段がもっと増えるかもしれない(分類はできなくなるけれども)ことを読者に知ってもらう。

(この章続く)

2010年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(42)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…b7-b5 不突き

 黒が …b7-b5 突きを省略することによってクイーン翼でもっと堅固な陣形を保った時でも白は閉鎖中原にすることを決断することがあるかもしれない。その際生じる戦略的な構造は次のようになるだろう(図62)。

 図62

 …b7-b5 突きが指されていなければ明らかに白にはこの章の初めで述べたクイーン翼での攻撃目標がないことになる。しかし白は最も古典的な方法で c7-d6-e5 の連鎖ポーンに対する攻撃を用意することができる。つまりcポーンで突き破るのである(c3-c4-c5xd6)。白の目的は陣地の広さに優る方面で素通し列を作り、閉鎖列であっても敵陣に弱いポーン(d6)を作ることである。一方黒の方から …dxc5 と取ってくれば白はc7のポーンを弱めd5のポーンの可動性を回復する目的を達成する。

 これらの場合黒の反撃も中原の連鎖ポーンの示す攻撃の方向ともっとよく調和して行なわれる。だから黒は連鎖ポーンの先頭への攻撃から得られるかもしれないことにつけ込むよりも、e4-d5の連鎖ポーンの根元への攻撃から生じるキング翼での反撃の効果を高めようとする。

(この章続く)

2010年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(86)

「British Chess Magazine」2010年6月号(6/16)

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世界選手権戦(続き)

第3局 4月27日

 アーナンドはグリューンフェルトをお蔵入りにし、超一流グランドマスターたちが愛用するdポーン防御のスラブを取り出した。トパロフは例によって急戦の戦型に行こうとしたがアーナンドは穏やかな傍型に持って行った。これは最近亡くなった元世界チャンピオンのワシリー・スミスロフによって晩年に最初に提唱されたものだった。後には2006年カルミキアでのトパロフとの番勝負でクラムニクによって採用された。そのためこの戦型に「エリスタ局面」という新しい名前が付けられた。

 実際は「穏やか」というのはこの傍型を描写するのに正しい言葉ではない。「怠惰」というほうが近い。というのは黒がまったく受け一方の陣形を受け入れ白がやってくることを何でも受け流そうとするからである。結局トパロフがほとんど進展を図れず面白みのないルーク+ポーンの収局で同形三復に同意した。

ここまでの結果 アーナンド1½点 トパロフ1½点

第3局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

スラブ防御 [D17]

1.d4 d5 2.c4 c6

 出グリューンフェルト、入スラブ。スラブは今や超一流グランドマスターの 1.d4 に対する主力防御盾になった。

3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4 5.a4 Bf5 6.Ne5 e6 7.f3

7…c5

 これはトパロフにとって意外、あるいは失望でさえあったかもしれない。アーナンドは以前はかなり急戦の 7…Bb4 の戦型を選んでいた(もっとも公正さのために言えば10年間負けていなかった)。

8.e4 Bg6

 これはワシリー・スミスロフによって晩年の最後の方の1990年代に提唱された手である。もっと最近では彼の精神的後継者のウラジーミル・クラムニクによって新しい形をまとい採用された。

9.Be3 cxd4 10.Qxd4

 第2局のようにクイーンが早くも退場した。10.Bxd4 では白が大したことができないが、実戦の手は小駒の戦いの観点からはもう少しましである。

10…Qxd4 11.Bxd4 Nfd7 12.Nxd7 Nxd7 13.Bxc4

13…a6

 1999年マルベラのP・クラムリング対スミスロフ戦では 13…Rc8 14.Ba2 a6 15.Ke2 Nb8 と進み引き分けに終わった。

14.Rc1

 トパロフは2006年のクラムニク戦の第6局でこの局面になった。その試合は 14.Ke2 Rg8 15.Rhd1 Rc8 16.b3 Bc5 と進み引き分けに終わった。

14…Rg8!?

 アーナンドはクラムニクのエリスタの手と(前述の説明を参照。「チーム・アーナンド」はこの手を「エリスタ局面」と称した)クラムニクがよく引き分けを得ていたかなり守勢の作戦に忠実なままだった。クラムニクは黒での「超低姿勢」と呼べるかもしれない権威だが(彼の「ベルリン防御」は良く知られた例である)、この棋風が現世界チャンピオンにぴったり合うかどうかは不明である。Rg8 の骨子は単にgポーンを守ってf8のビショップが動けるようにすることである。g8のルークとg6のビショップは共に遊んでいて、この危なっかしい戦略が完全に正しいかどうかはこれからにかかっている。

15.h4 h6 16.Ke2 Bd6 17.h5 Bh7 18.a5!?

18…Ke7

 白の手に「面白い」という印がつけられている理由は、もっと明らかな応手の 18…Bb4!? に対してトパロフが 19.Na4 Bxa5 20.Nc5 を考えていたかもしれないからだった。そうなれば黒キングがいくらか圧迫を受け白にはポーン損の代償がある。代わりにアーナンドは明らかにもっと堅固なことを好んでいた。

19.Na4 f6 20.b4

20…Rgc8

 またしてもアーナンドは誘惑に乗らない。20…Bxb4?! は白の有利に局面が開放される。例えば 21.Rb1 Bxa5 22.Rxb7 Rgb8 23.Bc5+ Kd8 24.Rxb8+ Rxb8 25.Bd6

から 26.Bxe6 で白が優勢になる。

21.Bc5

 21.Nc5!? も可能だが 21…Bxc5 22.bxc5 Nxc5 23.Ba2 Nd7 24.Bb2 Bg8 25.Ba3+ Ke8

となって白の有利を生かす具体的な手段がないようである。

21…Bxc5 22.bxc5 Rc7 23.Nb6 Rd8

24.Nxd7

 アニシュ・ギリはトパロフが黒の取れない 24.Bd5!? のような何か紛らわしいことを考え出すのではないかと予想していたと述べた。問題はその手が何も狙いを持たず黒が 24…Ne5 または 24…Nb8 という手でも自陣を引き締めることができることである。

24…Rdxd7 25.Bd3

25…Bg8

 ノルウェーのホテルの部屋から playchess.com を通して観戦しコメントしていたガリー・カスパロフは黒の守勢気味の手よりも 25…f5!? を支持していた。

26.c6

26…Rd6!

 黒は 26…bxc6 27.Rc5 Rb7 と指すよりも実戦の手で局面をわずかによく支配し続けている。

27.cxb7 Rxb7 28.Rc3 Bf7

29.Ke3

 29.Rhc1!? は大胆である。以下 29…Bxh5(たぶん 29…Be8 の方が良い)30.Rc7+ Rxc7 31.Rxc7+ Rd7 となりここで 32.Rc8 で難解な戦いが続く。

29…Be8 30.g4 e5 31.Rhc1 Bd7 32.Rc5 Bb5

 この後のゆるんだポーンの形につけ込む手段はないことが明らかになってくる。だからこれが引き分けを確定した手と言えるだろう。

33.Bxb5 axb5 34.Rb1 b4

35.Rb3

 35.Rc4 は 35…Ra6 36.Rbxb4 Rxb4 37.Rxb4 Rxa5 で実戦と似た局面になる。

35…Ra6 36.Kd3 Rba7 37.Rxb4 Rxa5 38.Rxa5 Rxa5 39.Rb7+ Kf8 40.Ke2 Ra2+ 41.Ke3

 トパロフは番勝負の前に引き分けの提案はしないと宣言していたので両対局者は千日手に持ち込まなければならない。

41…Ra3+ 42.Kf2 Ra2+ 43.Ke3 Ra3+ 44.Kf2 Ra2+ 45.Ke3 Ra3+ 46.Kf2 ½-½

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(41)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…c7-c5 突き

 ルイロペスの重要な戦法のほとんどにおいてd5による中原の閉鎖が起こるのは …c7-c5 と突いた後である。(図60)。

 図60

 中原を閉鎖するためにこの瞬間を待っていた白にとって、このようにして中原の連鎖ポーンの先頭への攻撃の可能性を避け敵キングに対する邪魔されない攻撃への道を開くのは理にかなっている。この種の局面においてこれまで見てきた局面と比べると、両者の戦略的な行動はキング翼での捌きに関してはとくに変わりがないがクイーン翼では新しい状況が見られる。

 もう …c7-c6 突きの手段で中原で反撃できないので黒は敵のポーンと接触するまで自分のポーンを突き進めることによって(…c5-c4、…a6-a5、…b5-b4)列を素通しにすることに努め、せき止めの手段の可能性を避けながらc5の地点をナイトの拠点として用いる(図61)。

 図61

 白の方はこの反応を a2-a4 突きの手段によって封じ込めるように努める。a列を素通しにするよう準備するとともに白は …c5-c4 より前に ,,,b5-b4 と突くように仕向ける。そのあと白には二つの選択肢がある。それはc列を素通しにしてクイーン翼で戦いを起こしていくのと、c3-c4 でクイーン翼を完全に封鎖してキング翼に集中することである。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(40)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 閉鎖中原がもたらすことの一つは黒の黒枡ビショップの動きがd6とe5のポーンの存在によってひどく制限されほとんど守勢の役割に追いやられることである。だから黒がこのビショップを白の黒枡ビショップと交換する、あるいは適切な捌きによって戦いの真っ只中に投入しようとすることを考えるのは理にかなっている。

 不良ビショップの問題を解決する最も直接的な方法はc1-h6の斜筋に利かせることにより交換を目指すことである。黒は例えば既に述べた …h7-h6、…Nh7 そして …Bg5 の捌きにより達成することもできるし(図52の解説を参照)、相手の黒枡ビショップがd2またはe3にいるナイトによってふさがれている時に何の助けも必要とせずに達成することもできる(図58)。

 図58

 しかし黒がこのビショップを白のナイトと交換するのはほとんどの場合不利となることに注意しなければならない。というのはこの交換によってキング翼の黒枡がひどく弱体化するからである。白はこの弱点を f2-f4 突きで際立たせることができる。

 最後に、黒が …c7-c6 と指した局面では、とりわけc列が素通しになっている場合には、このビショップがd8を経由して a7-g1 の斜筋でまた働くようになるかもしれないことを注意しておく。(図59)。

 図59

 時にはa7に置かれたクイーンの支援を受けたこのビショップが a7-g1 の斜筋上で真の脅威に変身して成功を収めることがあるかもしれない。

(この章続く)

2010年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[25]

第2章 ポーンの重要性(続き)

2.3 ポーンと広さの支配

 一般に、可能ならばいつでも自陣を広げるのはそれによって自陣に弱点を作らないかぎり良い考えである。陣地を確保する最も重要な方法はポーンの前進である。狭小な陣形に伴う困難さの顕著な例を既に見てきた(図28)。読者は本書の以降でも他の例を見つけるのに事欠かないだろう。

 しかし一言注意しておくと、側面の一撃に気をつけよ。図33を考えてみよう。

 図33(黒番)

 この局面は白がdポーンをd5まで突き進めて中原で陣地をよけいに取ったところである。このために中原は閉鎖状態になった。側面攻撃に対処する適切な方法は中原で反撃するのが通例である。ここでは白は中原で何もできないのでそれは不可能である。そして黒はキング翼でポーン雪崩を開始することができ、それに対して白は無力である。局面は次のように進んだ。1…f5 2.Bh6 f4 3.Bxg7 Kxg7 4.Qd3 g5

(勝ちはほとんど自動的である)5.Nh2 Nf6 6.f3 h5 7.Kf2 g4 8.hxg4 hxg4 9.Ke2

(被災地から避難しようとしたがすぐに負けになる)9…g3 10.Ng4 Nxg4 11.fxg4 Bxg4+

そして黒が勝った。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(39)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b3、c3-c4 突きとc列の開通

 最後に、白は …c7-c6 突きに対して b3 から c4 と突いてできるだけ長く中原の橋頭堡を維持するようにしてd5の地点の防御を間に合わせることができる。(図56)。

 図56

 このような戦略の効果はほとんど必然的に c4 cxd5、cxd5 の手順に引き続いてc列の開通を引き起こす。しかし黒が …c7-c5 と突き …cxd4 と交換して中原で争点が続いている間に、閉鎖型中原ができるよりも以前にこの状況がもっと多く見られる。

 新たにできた戦略状況において黒は一般にaポーンとbポーンを突いてクイーン翼の拡張を図る。このポーン突きは …Ba6、…Nd7-c5 のような捌きで支援され当然c列は大駒で占拠する。要するに黒は b2-b3 突きによって引き起こされたクイーン翼のわずかな弱体化につけこもうとする(図57)。

 図57

 一方白は急所の侵入口のc3とc2の地点の支配を維持し、素通し列で大駒を交換し収局に近づくのと、いつものようにキング翼での敵陣突破に懸けるのとどちらが自分に有利かを必要があれば判断することができる。b2-b3 突きの一つの肯定的な面は、黒がcポーンを交換したあとしばしばもくろむことができるc4への黒ナイトの侵入を防いでいるということである。

(この章続く)

2010年08月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(38)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…cxd5 取りと b1-h7 斜筋の開通

 白は図53に示されるような中原の連鎖ポーンの先端に対する攻撃に対して、ほとんど前述のやり方に似ているがもっと攻撃的な手段で応じることができる。即ち相手に …cxd5 と取らせて exd5 と取り返した後 b1-h7 の斜筋が開くようにすることができる。d5のポーンが相手の容易な標的になることは気にしない(図55)。

 図55

 黒がd5のポーンの包囲攻撃に成功し戦力の優位と中原に強力な可動2ポーンを得ることは非常によくある。しかし白の陣形は b1-h7 の開通のおかげで黒のキャッスリングした囲いに対する攻撃の可能性が生まれるので急に新たな活動性が得られる。

(この章続く)

2010年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(37)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

dxc6 取りと a2-g8 斜筋の開通

 白が dxc6 と取ることにすれば黒はナイトでなくビショップかクイーンで取り返すのが普通である。なぜならクイーン翼ナイトはb8にいるものとすればd7を経由してb6(d5の地点に利かせるため)あるいはc5(e4に圧力をかけるため)に行くことにより戦いにもっと適切に貢献できるからである。もしa5にいたならばc4がよりよい橋頭堡になる。そしてe7にいる場合は …d6-d5 突きを支援する絶好の地点にいることになる。

 d5の地点が必争の要点であることは容易に見てとれるだろう。両陣営の目的はそれぞれ …d6-d5 突きの捌きを実現することと防ぐことである(図54)。

 図54

 黒はd5とe4の地点に全力を傾け、白は直接的または間接的手段で …d6-d5 突きを封じようとする。d5とc6のポーンの交換を踏まえて白は例えば a2-a3 または a2-a4 の後 …Na5 の当たりに対してa2に下がることができるようにして a2-g8 斜筋上に白枡ビショップを保持することができる(しかし注意すべきは Na5 はc4に行くか …Nc4-b6 と捌いてまだd5の地点をめぐる戦いに参加できるということである)。あるいは白は例えば Bc1-g5xf6 の単純化によってd5の地点の相手の支配を弱めることができる。最後に、白はe5のポーンに圧力をかけておいて …d6-d5 と突いてきたらe5のポーン取りを狙うこともできる。

 迎え撃つ戦略の成功不成功にかかわらず a2-g8 斜筋の開通はf7に対する戦術の着想の実行に有利となることは明らかである。それはとりもなおさず白陣が広さと堅固さを失う一方で推進力を獲得することになる。

(この章続く)

2010年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(180)

「Chess Life」2010年3月号(6/7)

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2009年ロンドン(続き)

ナカムラ スーパーになる

イアン・ロジャーズ

 しかし本当の衝撃は対局後の記者会見で起こった。その解説室で両対局者が立見席だけの観衆に自分の読みを説明していた。

衝撃
GMマグヌス・カールセン(FIDE2801、ノルウェー)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2715、米国)

32.Qe2

 記者会見でカールセンは 32.Re2! と指さなかったことを悔やんでいる、なぜなら 32…Qf3+ 33.Kg1 Rf4 という攻撃は 34.gxf4 Nxf4 35.Qe4 で成立しないから、と言った。ナカムラはあっさりした分析で 32.Re2 の後は白が良いかもしれないと認めた。

 実際はカールセンは 32.Re2?? と指さなくて非常に幸運だった。というのはナカムラは間髪をいれず 32…Ne3+!! を見つけて即勝ちになっていたに違いないからである。次の日カールセンは記者会見の冒頭で見落としについて陳謝し「非常に当惑している」と認めた。

 翌日カールセンはニーに勝って、盛り返してきたクラムニクに先行したままだった。しかしナカムラは超一流大会での「格下選手」が非常に危険な存在になり得ることを身をもって味わっていた。マクシェーン戦でナカムラは強烈な序盤の新手をぶつけられその後ずっと踏ん張り続けたが実を結ばなかった。追い討ちをかけるように、マクシェーンにはあとで-かなり意外だが-この勝利に対して1500ドルの名局賞が与えられた。

 ここまでにはもうナカムラは超一流大会での別の真実に気づいていた。対戦が熾烈なので1勝は非常に貴重で一方たった1敗でも順位表の最下部に押しやられる可能性がある。

 最後の2戦でナカムラは50%に戻そうと懸命に努力したがハウエルもクラムニクも勝つ可能性を与えてくれずさらに2引き分けが積み重なった。

 「結果に満足してはいないが予想したほどがっかりしてもいない」とナカムラは認めた。「最強の二人には屈しなかった。それはこれから先の大会(世界チーム選手権戦とベイクアーンゼー)に良いきざしである。1局と二つのポカを除いてはよく指した。」

 ナカムラの多くのファンは1990年ティルブルグでの超一流大会でガータ・カームスキーが衝撃的なデビューを飾ったことを再現することを期待していただろうが現米国選手権者が落胆しなかったのは適切だった。ナカムラは強豪の集まった大会で指したことはあったが自分の明らかな才能に付け加えるべき堅実さをまだ身に着けていなかった。

 さらに彼はカールセンが順位で世界最高にもかかわらず負けそうになるのをじかに見ることができた。実際最終2回戦ではカールセンの楽隊車から車輪がほとんど外れそうになった。ノルウェー選手はイングランドの長年にわたる2強のアダムズとナイジェルにもう少しで負けるところで、なんとか両方の試合を引き分けに持ち込んだ。(どちらかの試合でカールセンが負けたらGMべセリン・トパロフが世界の最高レイティング選手のままだった。)

 虎口を脱したカールセンはクラムニクをなんとかかわし世界ランキングの首位を奪うことができた。しかし彼はやはり人間で、平凡な大会になってしまうこともあり得ることも示した。そこで再びナカムラが自問するかもしれないが、首尾一貫しないカールセンがロンドンクラシックのような大会に優勝することができるならば、カールセンが最高の調子の時に自身と他の最上位グランドマスターたちにどのような希望が残っているだろうか。

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(この号続く)

2010年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(36)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4-d5連鎖ポーンの先端の攻撃

 防御的な反撃の別の通常の主題は白の中原の連鎖ポーンを …c7-c6 突きの手段で突き崩すことである(図53)。

 図53

 このポーン突きは明らかに中央のせき止めで構築された中原での万力のような締め付けから黒を解放することに向けられたものである。中央でのせき止めは前に述べたように白が両翼で攻撃に乗り出すのを可能にする。

 この中央での攻勢に対して白は本質的に異なる三通りの対応をとることができる。それは dxc6 によってもたらされる中原の部分的な破壊を容認するか、相手に …cxd5 とさせるか、それとも b2-b3 から c3-c4 で現状を維持するように努めるかにかかっている。戦いはどの手段が用いられるかによってまったく異なった様相を帯びる。

(この章続く)

2010年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(35)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

白の作戦の曖昧さ

 相手が …Nf6-h5-f4 の捌きまたは …f7-f5 突きでキング翼で反撃を始めるのを防ぐために白は g2-g4 突きによって先受けの手段をとることができる。このポーン突きはf5とh5の両方の地点を支配することができる(図52)。

 図52

 別の面はこのポーン突きによって引き起こされるキング翼の黒枡の全体的な弱体化である。黒は …h7-h6、…Nh7 から …Bg5 のような捌きでこの状況につけ込むことができる。

 黒のキング翼での動きに対する抑止力として働くことに加えて g2-g4 突きは図46で既に見たようにf5での大局的なナイト捨てへの前触れとなるかもしれない。白は時には作戦をわざとこの曖昧さに基づかせるかもしれない。白はキング翼での大規模な攻撃をほのめかして相手に戦力のほとんどを狙われている戦線の防御にさかせることができる。そして突然動きの大きな自由さを利用してクイーン翼で戦線突破を図ったり、逆にキング翼に攻撃の矛先を向ける前にクイーン翼で手の込んだ捌きに携わることができる。

 この戦略は必ずしも g2-g4 突きの成否に依存しているわけではないことに触れておく。実際白は将来の作戦行動について相手に見当がつかないようにさせておく目的で盤の反対側で行動する時にこの戦略に訴えるのが普通である。これは両者が注意深く踏み歩くことが要求される典型的な作戦である。

(この章続く)

2010年08月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(85)

「British Chess Magazine」2010年6月号(5/16)

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世界選手権戦(続き)

第2局 4月25日

 驚くほどのことでもないがアーナンドは第1局の破局の後で衝撃を受けているようだと書きたてられた。しかし第2局ではその片鱗も見せずアーナンドが勝った。スポーツ界の二つの決まり文句が心に浮かんだ。テニスでは「自分のサーブがブレークされたらすぐにブレークバックせよ。」そしてサッカーでは(決まり文句というよりは症候群だが)「得点を入れたばかりのチームはすぐにゴールを割られやすい。」

 チャンピオンが「すぐにブレークバック」を達成したやり方は興味深かった。彼はクラムニクの十八番(おはこ)のカタロニア布局を用いポーンを犠牲にする戦型で早期にクイーン交換にもっていった。客観的には観戦のチェス好きや彼らのコンピュータを納得させる戦型ではなかったが、判明した重要な要素は守勢の局面をトパロフが明らかに不快と感じていることだった。ついに彼はしびれを切らして暴れてきた。しかし自陣を大きく乱すことになりアーナンドがしかるべく勝ちを収めた。

ここまでの結果 アーナンド1点 トパロフ1点

第2局
□ ビスワーナターン・アーナンド
■ べセリン・トパロフ

カタロニア布局 [E04]

1.d4

 アーナンドは2008年にクラムニクと番勝負を戦うまではたまにしか 1.d4 を用いなかった。しかしそれ以来採用することがずっと多くなった。「ここぞという時のために保持している」と言えるかもしれない。

1…Nf6 2.c4 e6

 トパロフは2009年は 2…g6(とキング翼インディアンの陣立て)をかなり頻繁に指していたがリナレス以降はこれに転向している。

3.Nf3 d5

 トパロフはリナレスでのアロニアン戦では 3…c5 と指したが不満足な局面になった。

4.g3

 この記事の初めの方を読んでいればアーナンドが秘密の顧問団の中にカタロニア布局の世界最高峰の権威であるウラジーミル・クラムニクを擁していたことを知っているだろう。しかしもちろんこの時点ではアーナンドのチーム以外の誰もこのことを知らなかった。

4…dxc4 5.Bg2 a6

 トパロフは2006年のクラムニクとの番勝負の第3局(引き分け)で 5…Nc6 と指していた。その番勝負の第1局(トパロフの負け)では 5…Bb4+ と指していた。たぶん彼はかつてのライバルの助力を感じ取ってこの番勝負では違う手を指すことにしたのだろう。

6.Ne5

 アーナンドは2007年のゲルファンドとのブリッツ戦で 6.O-O と指していた。

6…c5 7.Na3 cxd4

 8…b5 を含みとする 7…Ra7!? は1970年代にベリヤフスキーが初めて指して以来数局指されているが非常に良い成績をあげている。しかしトパロフはポーンの犠牲を受けることにした。

8.Naxc4 Bc5

 2局続けて黒がギャンビットの戦型を指し黒の得したポーンがd4にいる。

9.O-O O-O 10.Bd2 Nd5

 黒はg2のビショップのにらみを鈍らせるように指していてたぶん …b5 と突くつもりである(あるいは Ba5 の狙いに …b6 と応じられるようにしたのだろう)。

11.Rc1 Nd7 12.Nd3

 この局面は強豪のチェスに8局現れ黒の4勝4引き分けという結果が残っている。だから白にとってあまり有望に思われない。しかしたぶんビッシー(と彼の「電話友人」のウラジ)は異なる見方をしていたのだろう。

12…Ba7 13.Ba5

 いく人かの解説者(チェスベースのために書いていたアニシュ・ギリも含めて)はこの手は疑問で 13.Qb3 の方が良いと考えていた。

13…Qe7 14.Qb3 Rb8

15.Qa3!?

 ほとんどの解説者はこの新手は疑問手だろうと考えた。客観的には彼らはたぶん正しい。しかしトパロフのような「主導権選手」に対して用いるべき主観的な心理作戦としては大いに意味がある。

 この局面になった唯一の前例は2008年米国選手権戦のグリコ対シュールマン戦で、次のように進んだ。15.Nce5 Nxe5 16.Nxe5 Qf6 17.Nd3 b6 18.Bb4 Rd8 19.Bxd5 Rxd5 20.Rc7 Bb7 21.Be7 Qf5

ここで白は 22.Rxb7! Rxb7 23.Qc4 と指す機会を見逃した。23…Rc5 が余儀なく 24.Bxc5 bxc5 25.b4 となって白が非常に有望に見える。実際には白は悪手を指して負けてしまった。15.Rfd1 が理にかなった手のように見える。アニシュ・ギリはこれが最善手だと考えていた。

15…Qxa3 16.bxa3 N7f6

 16…Nc5 が交換により黒の問題を楽にし白の15手目をこけおどしにする良い手段だった。

17.Nce5

17…Re8

 この手は …b6 から …Bb7 としてc6の地点を守る準備である。すぐに 17…b6 と指すのは 18.Bb4 Re8(18…Nxb4 は 19.Nxb4 でd4のポーンが簡単に落ちる)19.Nc6 Rb7 20.Bd6 で白が優勢になる。

18.Rc2

 アニシュ・ギリはもっと攻撃的な 18.g4!? はどうかと考えていた。18…g5 を誘えれば黒のキング翼が弱体化するかもしれない。

18…b6

 アニシュ・ギリは 18…Bd7!? を推奨していた。もっとも短期的には黒のポーンの形を乱すことになる。以下は 19.Nxd7 Nxd7 20.Bxd5 exd5 21.Rb1

となって黒はどのみちbポーンを突かざるを得ない。しかし白がそれにつけ込む手段が少なくなっているとは主張できるかもしれない。

19.Bd2 Bb7 20.Rfc1

20…Rbd8

 黒は理想的にはc列でルークを対峙させたいのだがまだ無理である。20…Rec8?? 21.Rxc8+ Rxc8 22.Rxc8+ Bxc8 23.Nc6 でa7のビショップが取られる。

21.f4 Bb8 22.a4

22…a5

 ほとんどの評者は黒のポーンを攻撃にもろくするこの手を非難した。代わりに一つの融通性のある手は 22…Bd6!? で、別の手は 22…Rc8 23.Rxc8 Rxc8 24.Rxc8+ Bxc8 25.Nc6 Bc7 26.Nxd4

で、ポーン得を放棄するが黒を楽にし 26…Bd7 で黒がわずかに優勢になる。トパロフは多くの他の攻撃好きな選手のようにおとなしく守ることに不安を感じるようで最善の手を選ぶことができなかった。

23.Nc6 Bxc6 24.Rxc6 h5

 黒は Bf3 から g4-g5 とやってくる手に対して用心した。そうなれば白がd5を取ってb6も取る良い態勢になる。アニシュ・ギリは 24…h6 の方がもっと慎重な手だと考えていた。

25.R1c4

25…Ne3?

 この手は頭に血が上ったか辛抱が足りないように見える。受身の防御に信頼をおくのを嫌がるトパロフの気質はここでは高くついた。コンピュータエンジンは 25…Ba7!? 26.Bf3 Ng4!? のようなことを勧めている。黒は弱そうな地点がいくつかあっても持ちこたえることができる。すぐに 25…Ng4 と指すこともできる。

26.Bxe3 dxe3 27.Bf3!

 客観的にはすぐに 27.Rxb6 といくのも同様に良い手である。しかし老練なアーナンドはbポーンを取る前に相手からもっと陣形上の譲歩を期待した。それがこの抑制された(そして抑制した)手で、21手目と22手目に呼応している。彼の期待は正当にかなえられた。

27…g6?!

 黒はたぶんこの機会にhポーンを見限って代わりに 27…Nd7 28.Bxh5 と指すべきだった。しかしトパロフは一時的な判断力の喪失から回復していなかった。

28.Rxb6

 トパロフはここで長考に沈んだ。その間に彼はやっと非常にまずい事態になっていることに気づいたに違いない。

28…Ba7 29.Rb3 Rd4 30.Rc7 Bb8 31.Rc5

31…Bd6

 31…Rxa4?? は 32.Bc6 でルークの丸損になる。

32.Rxa5 Rc8 33.Kg2

 自陣を引き締めるこのようなちょっとした手がこの番勝負の特徴になった。そんなことは当たり前かもしれない。しかしアーナンドは明らかに優勢な局面で攻撃にはやる相手から衝動的な手を引き出すためにこういう手を指すようである。

33…Rc2 34.a3

34…Ra2?

 またしてもトパロフの直感は相手に戦いを思い起こさせるが、この局面ではもっと慎重さが本当に必要だった。例えば 34…Nd5!? が良い受けのようである。

35.Nb4! Bxb4

 35…Ra1 は 36.Nc2 とされるし 35…Rxa3 は 36.Rxa3 Bxb4 37.Ra8+ で戦力損をするだけである。

36.axb4 Nd5 37.b5!

 アーナンドは勝ちを決める単純な強制手順を読んでいるのでポーンを取り返させた。

37…Raxa4 38.Rxa4 Rxa4 39.Bxd5 exd5 40.b6 Ra8 41.b7 Rb8 42.Kf3 d4 43.Ke4 1-0

 一見したところでは名局ではないが、相手を快適な状況から守勢の局面に誘い出すアーナンドの才能と、ニムゾビッチ式原則のクラムニク式適用とは、非常に印象的だった。

******************************

(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(34)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4-d5連鎖ポーンの切り崩し

 黒の反撃の目標はf4の地点の占拠で、白の中原の連鎖ポーンを破壊することと大いに関係がある。c7-d6-e5の連鎖ポーンによって示唆される攻撃の方向と相まって黒はe4-d5連鎖ポーンの基盤を …f7-f5 突きの手段で切り崩すことができる(図49)。

 図49

 黒は通常はこのポーン突きを …g7-g6 の助けを借りて達成する。それは exf5 に …gxf5 と応じられるようにし、相手が小駒をe4にしっかりと据えることによって突然空いたe4の拠点から優位を得るのを防ぐことができるようにするためである。

 この反撃は基本的に二つの目的に向けることができる。それは黒がd5のポーンを弱体化させる意図なのか、それとも大規模なポーンの攻勢に道を開くようにキング翼で陣地を広げる意図なのかによる。

 前者の場合 exf5 と取るだけで黒の意図を助けるので黒は …g7-g6 と支援する手を省くこともできる(図50)。

 図50

 d5のポーンに対する攻撃は色々な手段で行なわれる。最も一般的なのは図に示されているとおりである。このような場合白の展望は明らかにd5のポーンを守りとおす可能性とe4の地点を利用する可能性とに密接に関連している。

 後者の場合 …f5-f4 のあと黒が得る陣形の広さの優位はキング翼の大規模な突進の機会を生む(図51)。

 図51

 例外的ではあるが同様の状況で白は敵の前進を食い止め反対の方面で迅速に攻撃を図るように努めなければならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(33)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

hポーンの動員

 図46に示されたような状況の場合白はhポーンに働きかけることによって攻撃を追求することもできる。しかしこの場合白は h3-h4 のあと黒が …h7-h5 と指すのに備えて多大の注意を払わなければならない。(図47)。

 図47

 この防御手段は白のhポーン突きの準備が適切でなかった時に効果的となる。なぜならg4の地点の弱体化が防御にとって非常に重要になることがあるからである。

 白がhポーンを動員できる別の状況は黒が …g7-g6 と突いて Ng3 の捌く余地を制限しようとした時である。ここで白は Kh2 と Rh1 の後hポーン突きの手段によってh列を素通しにしようとすることができる(図48)。

 図48

 この着想はキングをg1に戻すことによってルークを自由にしようということである。しかしこの捌きは白が …h7-h5 の応手を前もって考えに入れなければならないので例外的な状況でのみ実行される。

(この章続く)

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チェス布局の指し方[24]

第2章 ポーンの重要性(続き)

2.2 ポーンの形(続き)

 不均衡な局面の非常によくある型は両者の反対翼に多数派ポーンがある場合である。両者がキング翼にキャッスリングすればたいていクイーン翼に多数派ポーンを持つ方が優勢である。これは二つの理由による。中盤ではクイーン翼のポーンは自由に進めるのが普通である。これに対してキング翼のポーンは前進したポーンのせいでキャッスリングしたキングの前に弱点ができる可能性があるので細心の注意を払わなければ進めることができない。同様に収局では両者がパスポーンを作り出そうとしている時、相手のキングによってせき止められないクイーン翼のパスポーンの方が役に立つ。

 クイーン翼多数派ポーンの潜在的な優位性に対抗するために企てられる重要な戦略計画は「少数派攻撃」である。これは同じ翼の相手の多数派ポーンに対して少数派ポーンをぶつけることである。少数派攻撃を行なう方は硝煙が晴れたあと敵の多数派ポーンの「余分な」ポーンが弱体化しむき出しになることを期待している。このような戦略の例として1963年のキーン対パターソン戦を取り上げる。これは少数派攻撃の大成功の例である。1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Nf3 Bg7 5.Bg5! Ne4

6.cxd5 Nxg5 7.Nxg5 e6 8.Qd2 h6 9.Nh3 exd5

10.Nf4 c6 11.e3 Bf5 12.Bd3 Qf6 13.O-O O-O

(これで少数派攻撃の舞台が整った。白はbポーンとaポーンを進めていきこれらが交換されたあと黒の残ったクイーン翼ポーンは弱体化している)14.b4 Nd7 15.b5 Bxd3 16.Qxd3 Nb6 17.a4 Rac8

18.a5 Nc4 19.a6 Qe7 20.axb7 Qxb7 21.bxc6 Rxc6

(白の戦略が成功しdポーンは助からない)22.Rfb1 Qd7 23.Nfxd5 Rfc8 24.Nb4 Ne5 25.Qe4 f5?

(これはポカだがどのみち黒の負けである)26.Qd5+ Qxd5 27.Ncxd5 黒投了

(この章続く)

2010年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(32)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f5でのナイトの大局的捨て駒

 キング翼のこのような敵陣突破は実際に捨て駒を行なう前に圧力をかける状況を作り出すように g4、Kh2 および Rg1 の準備(状況により最善と考えられる手順で指される)を行なった後に指されるのが普通である(図46)。

 図46

 黒はキングをh8に動かして紛争地帯から退避させることができるが、この防御手順でも捨て駒の有効性は無効にならない。この捨て駒の主眼は既に凝り形の黒のキング翼の陣形を窒息させることである。というのは捨て駒が受け入れられればいくらかの戦力損をこうむっても図44に示されたのと同様の局面を達成するからである。

 Nf5 のあと黒が …gxf5 で捨て駒を受諾することにすれば白は状況によりgポーンで取り返すかeポーンで取り返すかを選択することができる。どちらの場合でもf5にポーンがあるということは敵陣の障害になり防御を難しくさせる。

 前者の場合白はとりわけg列の素通しから生じる可能性を利用するように指し、後者の場合はキング翼のポーンで押しまくりb1-h7に沿って白枡ビショップの攻撃能力を生かすようにする。しかし後者の場合白は …e4 と応じられる可能性に気を配らなければならない。特に相手がナイトをe5に据えることができる時はそうである。というのはそのような強力な中央集結は時として攻撃を撃退するのに十分であるからである。

(この章続く)

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全米高校選手権戦

「Chess Life」2010年8月号(1/1)

 4月に開催された全米高校選手権戦で上杉晋作くんが最終戦でそれまで全勝の相手を破って単独優勝を阻むとともに、自身も10人の同点優勝者に名前を連ねました。

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全米高校選手権戦

FMアレックス・ベタネリ

 同点優勝者が輩出したのは上杉晋作(ウィンストン・チャーチル高校、メリーランド州)が難攻不落に見えたミーキンズを最終回で破ったおかげだった。

閉鎖カタロニア布局本定跡 [E09]
白 上杉晋作(2379)
黒 クリス・ミーキンズ(2207)
2010年全米高校選手権戦第7回戦
2010年4月18日

1.Nf3 Nf6 2.g3 d5 3.Bg2 e6 4.O-O Be7 5.d4 O-O 6.c4 c6 7.Nbd2 Nbd7 8.Qc2 b6

 手順は入れ替わっているがカタロニア布局の閉鎖型システムの良く知られた局面になった。このシステムは(布局全般も)微妙な差異が非常に複雑さに富んでいるのでグランドマスターでもいつも正着を見つけられるとは限らない。

9.e4 dxe4?!

 はるかによく指されているのは 10.e5 を恐れない 9…Bb7 である。このナイトは 10…Ne8 の後クイーン翼へ向かう。これは白にとって願ってもない攻撃態勢に見えるかもしれない。しかしこの判断は少し単純化しすぎている。この局面で白が黒キングを攻撃するためにはビショップがb1-h7の斜筋に行く必要があるがこれはd5でポーンを交換することによってのみ達成できる。そうなると黒はc列で活動できるようになる。面白いことにこの局面では 9…dxc4!? と取る手も悪い指し方でない(10.Nxc4 Bb7 11.Rd1 c5)。黒は解放の手が指せ、白が優勢になる明らかな手段もない。

10.Nxe4 Nxe4 11.Qxe4 Bb7

 黒陣は守勢に偏していて指し方が難しい。

12.Rd1 Qc8

 自然に見える 12…Nf6 13.Qc2 Qc8 は 14.c5 と突かれ、白陣の広さの優位がb7のビショップの不活発さと相まって黒のd5の拠点では代償にならない。

13.Bf4

13…Re8

 たぶん主眼の 13…c5 突きを指すべきだろうが 14.d5 Re8 15.Qc2 exd5 16.cxd5 Bf6 17.Rd2 Nf8 18.Rad1

となってdポーンが強すぎて黒はとても互角に戦えない。クイーン翼インディアン防御で白がポーンを捨ててこのようなdポーンを得る戦型があるがここでは「無償」で得ている。

14.Ne5 Nxe5 15.Bxe5

 4個のナイトを交換したにもかかわらず黒は互角とはほど遠い。b7のビショップは非常に不遇な状況にある。白はこの戦法ではほぼ理想的な局面になっている。

15…Rd8

 黒はこの形で1手遅れている。15…a5 は 16.Rac1 Ra7 17.c5! で、黒が …c5 で打って出ようとするちょうどその時に白が自分でその手を指してしまう。この陣形上の押さえ込みは終わりまで続くことになる。

16.h4

16…Bd6

 ここでも 16…Rd7 から …c6-c5 を用意すると白は 17.Qg4 Bf8 18.c5 で優勢になる。

17.h5 Bxe5 18.dxe5 h6 19.Rd6! Rxd6 20.exd6 Qe8 21.Rd1

21…Rd8 22.b4 f5 23.Qe5 Bc8 24.Bf3 Bd7 25.c5 bxc5 26.bxc5

 白はこの気持ちのよい局面を難なく勝ちに結びつけた。

26…Rb8 27.Rd4 Qf7 28.g4 Qf6 29.Qxf6 gxf6 30.gxf5 exf5

31.Ra4 Kf7 32.Ra6 Rc8 33.Rxa7 Ke6 34.a4 Rg8+ 35.Kf1 f4

36.Be2 Rg7 37.Bf3 Rg5 38.Ra5 Ke5 39.Ke2 Kd4 40.Ra7 Rg7

41.Bxc6 Bg4+ 42.f3 Rxa7 43.fxg4 Rh7 44.Be8 Kxc5 45.d7 Re7+ 46.Kf2 黒投了

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カテゴリ: チェス未来

ルイロペスの完全理解(31)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

fポーンの動員

 fポーンを動員するためには白は Nf3 を動かさなければならない。既に見たようにこれはナイトがh2かh4に行くことを意味することになる。

 fポーンの道を空けたあと白の作戦は理想的には、必要ならばgポーンおよび/またはhポーン突きの助けで f2-f4-f5 とポーンを突いてキング翼での黒キングの動き回る余地を抑えることである(図44)。

 図44

 そのような大規模な進攻が実行に移されれば防御がとてつもない問題に直面することは明らかである。だから f2-f4 のあと黒はほとんど常にf列のうっとうしい侵入者を …exf4 で清算することを決断する。この場合e5とf4のポーンの消滅のあと戦略的状況はがらりと一変する(図45)。

 図45

 白はf列の素通しと、小駒の中央集結に役立つd4の拠点の支配に成功する。しかし戦いは主にe5の地点をめぐって起こり、e4-e5 による仕掛けは白の最も重要な戦略目標である。それにより中原の破壊を完了し、とりわけ白枡ビショップを戦いに参加させることができる。黒は明らかにe5の地点の支配を強化することにより(例えば …Bg7 と …Nd7)この進攻を防ごうとする。e5に強力な中原のナイトを据えてe4のポーンを麻痺させ、そのポーンを半素通し列上の構造的な弱点と化する。時には同様のせき止め戦略が大成功することもある。その結果白が多くの優位を失い、局面は場合により白に不利となってしまうこともあり得る。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(30)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

黒のキャッスリングした囲いの弱点につけ込む攻撃法

 黒のキャッスリングした囲いの弱点につけ込むためには白はキング翼の列を開放するように努めなければならないことは明らかである。この結果をもたらすために白には大きく分けて二つのやり方がある。一つにはキング翼のポーンを動員して敵の前線とぶつかるまで前進させるのと、もう一つは駒を犠牲にすることである。

 最初の場合白はfポーンに敵陣突破の役目を託すことができるし、条件がよければhポーンに託すこともできる。二番目の場合白はほとんど決まってf5のナイトを大局的に捨て駒にする。

(この章続く)

2010年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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「ヒカルのチェス」(179)

「Chess Life」2010年3月号(5/7)

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2009年ロンドン(続き)

ナカムラ スーパーになる

イアン・ロジャーズ

 カールセンが首位に向けて突っ走っている間ナカムラは「並み」を相手に勝ちきることがどんなに大変なことかを味わっていた。

 第1回戦で中国のフワ・ニーを巧妙な手筋で翻弄した。

巧妙な手筋
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2715、米国)
GMフワ・ニー(FIDE2665、中国)

 フワ・ニーはナカムラが次の手を指すまで自陣がまったく安泰だと思っていたようだった。

19.Ba5!!

 これに対しフワは戦力損をしなければならないことに気づいて長考に沈んだ。指したのは結局次の手だった。

19…Qe8

 しかしそのあと

20.Bb4 Bxa4 21.Qa3

 となってf8のルークが助からなくなった。それでもフワ・ニーは収局を目指した。

21…Bxe5 22.dxe5 Bb5 23.Rfe1 d4 24.Bxf8 Qxf8 25.Qxf8+ Kxf8

 この後ナカムラに2、3の不正確な手が出て20手後に中国のグランドマスターが引き分けをもぎ取ることができた。

 翌日ナカムラは立場が逆転し、10年来のイングランドの最強選手のマイケル・アダムズ相手に必死の収局にしがみついていた。その次は元世界選手権戦挑戦者のナイジェル・ショートとの平穏な引き分けで一息ついたに違いない。

 3局で3引き分けは悪い報酬ではないが、今のチェスで最も厳しい挑戦が待っていた。カールセンとの黒番。

 試合自体はナカムラにとって刺激になった。ほとんどの間新世界最強者に圧力をかけ、その後カールセンがチェックの千日手でかろうじて逃れた。

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(この号続く)

2010年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(29)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の釘付け

 白の作戦に戻ると …g7-g6 突きによって引き起こされる弱体化は小駒をしっかりとh6の地点に据えることができる場合にのみ厄介な主導権が白に保証される(例えば Bc1-h6、Nf3-h2-g4-h6 あるいは Ne3-g4-h6)。しかしこのような事態になるのはまれである。だから一般に白が Nf6 を Bg5 で釘付けにしてさらに弱体化を誘うように努めるべきなのは理にかなっている(図41)。

 図41

 ついでながらクイーン翼ビショップのg5への展開は閉鎖中原の形成に先んじていたかもしれない。だからこの展開は閉鎖中原や …g7-g6 突きとは無関係に必要となるかもしれない。

 図に示された状況の下で黒はできるだけ早い機会に …h7-h6 と指してうるさい存在の Bg5 をなくそうとするのが普通である。さもないと Qd2 で釘付けが恒久化するかもしれないし釘付けの効果が Nf3-h2-g4 の捌きによって広がるかもしれない。…h7-h6 のあと白はビショップをe3に引くのが普通で、そのあと白は Qd2 で視線をh6に向ける(図42)。

 図42

 この時点で黒はh6のポーンを …Kh7 で守ることができる。また、単にポーンをh5に突き進めて当たりをかわすこともできる。この場合h7の地点を Nf6 のために取っておき、白ビショップがg5に戻ってくれば …Be7 から …Nh7 で迎え撃つ意図で(h7の地点は白ナイトがg5の地点を占めたときそれを迎え撃つ手段として Nf6 が利用することもできる)、…f7-f5 突きの準備にもなる(図43)。

 図43

 …f7-f5 と突くことができるようにするための黒の着想はさらに …h5-h4 と突いて Ng3 を追い払うことである。同様の戦略の適用はe4-d5の連鎖ポーンの根元を攻撃する目的と密接に関連している(後述)。だからキング翼の状況に実際的な効果をもたらすことがある。言い換えると黒はキャッスリングした囲いのかなりの弱体化を基本的にそのままにして肯定的な面を利用することにより逆手に取ろうとしている。

 注意すべきは場合により …h5 突きが 前に見たように時に白の作戦の一部となっている Nf3-h2-g4 の捌きを防ぐのに役立つことがあるということである。

(この章続く)

2010年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(28)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Nf6-h5-f4 の捌き

 …g7-g6 に含まれた一つの反撃策は図39の解説で見た戦術の主題の裏をかいてh5の地点を守ることである。それにより黒が攻撃的な捌きの …Nf6-h5-f4 ができるようになり、白は一方では敵のキャッスリングした囲いに弱点を誘発させたのを喜びつつ、他方では脅威となるf4のナイトに対処しなければならないならばその地点に来させない用意をしなければならない。(図40)。

図40挿入 図40

 色が逆の場合にf5の地点に起こるようにf4の地点の占拠は …f7-f5 突きの後のf列の素通しとあいまって(後述の「e4-d5連鎖ポーンの根元の切り崩し」を参照)キング翼での駒による激しい攻撃の始まりとなり得る。結果として白は自分のキングを守り侵入者をf4から追い出すために Bc2-d3-f1 から g2-g3 という捌きに訴え、h3を守る必要があるならば Kh2 で補強しなければならないことがある。

 f5の地点の占拠に関して既に述べたようにここでも侵入者を Bxf4 で除去するのは白の利益にならないことに注意しなければならない。なぜなら双ビショップを譲りh8-a1の対角斜筋を開け拠点のe5の地点を空けるのは明らかに黒の有利となるからである。

(この章続く)

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世界のチェス雑誌から(84)

「British Chess Magazine」2010年6月号(4/16)

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世界選手権戦(続き)

第1局 4月24日

 昔の24番勝負の時代には時々1、2局ほど探りを入れて相手の序盤作戦を調べたものだった。しかし今日のわずか12番勝負ではそんな余裕はない。トパロフの初手は 1.d4 だった。彼は定跡の「オールラウンドプレーヤー」なので別に驚くには当たらない。しかしアーナンドがグリューンフェルトを選んだのはたぶんちょっと顰蹙(ひんしゅく)ものだろう。彼は去年何局か重要な試合で指したのでまったく新しい試みというわけではなかった。しかし物知りはたぶんスラブかニムゾの方がもっと堅実かもしれないと思っただろう。

 選択された戦型は激しい展開になりトパロフがキング翼攻撃のために駒を結集させた。アーナンドはトパロフのナイトを盤端に追いやったが自分の方に何も悪さをすることができないと読んでいたに違いない。もしそうなら残念ながら彼は間違っていた。なぜならそのナイトはアーナンドンの陣形に穴をこじ開け白ルークが押し寄せて息の根を止めたからだった。

ここまでの結果 トパロフ1点 アーナンド0点

第1局
□ べセリン・トパロフ
■ ビスワーナターン・アーナンド

グリューンフェルト防御 [D87]

 お互いの初手は選手権の番勝負においてはことさら重要である。トパロフはリナレスでの対局をできるだけ参考にならないようにした。そこでは 1.e4 を2回、1.c4、1.Nf3、1.d4 をそれぞれ1回指した。

1.d4 Nf6 2.c4 g6

 最近何ヶ月かのアーナンドは 2…e6 と指しその後はニムゾかスラブに移行するようになっていた。しかし11月のタリ記念大会ではグリューンフェルトも指していた。

3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.Bc4 c5 8.Ne2 Nc6 9.Be3 O-O 10.O-O Na5 11.Bd3 b6

12.Qd2

 2006年モレリア/リナレスでのトパロフ対スビドレル戦は 12.Rc1 e5 13.dxc5 Be6 14.c4 bxc5 15.Bxc5 Re8 16.Be3 と進み白の勝ちに終わった。ブルガリアのトパロフが 12.Rc1 と指したらアーナンドはどう指すつもりだったのか知りたいものだ。

12…e5

13.Bh6!?

 13.dxc5 Be6 14.Rfd1(14.cxb6 Nc4 15.Bxc4 Qxd2 16.Bxd2 Bxc4 17.Rfe1 axb6 は2008年ドイツでのカインツ対フルムボルト戦で、ポーンを犠牲に黒が優勢になった)14…Qc7 15.cxb6 axb6 は最高峰での対局で少し実戦例があるが、駒の働きが良いという点で黒に犠牲にしたポーンの相応の代償があることが示されているようである。しかし予想されるようにトパロフはポーンをもらうより与える方が好きである。実戦の手は白の成績の方が良いという事実に基づいていてたぶん実戦的な判断だったろう。

13…cxd4

 2008年世界ジュニア選手権戦のリー・チャオ対ハウエル戦では 13…f6 14.Bxg7 Kxg7 15.f4 cxd4 16.cxd4 Bg4 17.dxe5 Bxe2 18.exf6+ Rxf6 19.Qxe2 と進み白が勝った。

14.Bxg7 Kxg7 15.cxd4 exd4

16.Rac1

 手順はあまり重要でなさそうに見える。しかしトパロフと助手のチェパリノフは共に以前カームスキー戦でここですぐに 16.f4 と指していた。チェパリノフは勝ったがトパロフは2009年2月の世界選手権予選で米国グランドマスターとあたり初戦で引き分けていた。2010年モスクワでのナイェル対サファルリ戦は 16…f6 17.f5 Bd7 18.Nf4 Nc6?! 19.Bb5 Ne5 20.Qxd4 g5 21.Ne6+! Bxe6 22.Qxd8 Rfxd8 23.fxe6 Ng6? 24.Rac1 Rac8 25.e5! と進み黒が急に窮地に陥った。

16…Qd6

 2008年フォロスでのカリャーキン対カールセン戦は 16…Bb7 17.f4 Rc8 18.Rxc8 Qxc8 19.f5 Nc6 20.Rf3 Ne5 21.Rh3 Rh8 22.f6+ Kg8 23.Qh6 Qf8 24.Qxf8+ Kxf8 25.Nxd4 と進み引き分けになった。アーナンドは新手を指した。

17.f4 f6 18.f5

18…Qe5

 ここまでの手はすべて2、3分でパッパッと指し進められた。だから誰にも二人が研究手順をたどっていることが明白だった。明らかに 16…Qd6 の骨子はクイーンをこの地点にとどめることで、そこにいればクイーンは白ポーンがさらに前進する危険を取り除きe4のポーンに圧力をかける見込みがある。黒は白ナイトがキング翼で脅威となるのを 18…g5!? で止めることができた。

19.Nf4

19…g5!?

 普通のチェスの試合なら 19…Bd7 の方が自然で局面の抑制が効いたままだっただろう。しかしもちろんこの試合は通常の試合ではない。両陣営のグランドマスターとコンピュータのチームが徹底的に分析している。実戦の手は危険が一杯だった。アーナンドはまだ自分の研究手順を追っているがこの局面はトパロフの定跡研究にはまっている。それはつまり彼はコンピュータエンジン群がこれらの局面で見通していたことを利用することができるということである。

20.Nh5+!

 ヘリのこのナイトはぼやけていないのは確かである。このナイトの展望はブルガリアのコンピュータの分析によって光り輝いているのが確信できる。

20…Kg8 21.h4

21…h6

 これは絶対手である。21…gxh4?? は 22.Qh6 Rf7 23.Rf4 で白が勝つ。

22.hxg5 hxg5 23.Rf3

23…Kf7??

 この手は誰からも非難され実際そのとおりだった。しかしここでは黒がどんな手を指そうと難しい局面に立たされる。例えば 23…Bd7 は 24.Nxf6+!? Qxf6 25.e5! Qxe5

26.Qxg5+(26.Be4!? は典型的なコンピュータの魔法の一端だが、たぶんぱっと見えるポーン取りよりも良くはないだろう)26…Kf7(26…Qg7 は 27.Qh4 で白が勝つ)27.Qg6+ Ke7 28.f6+ Kd8 29.Qg7! Qd6 30.Bf5

となって黒がまだしのぎのめどがたたない。分析エンジンのストックフィッシュはここでは白が捨てた駒に対して十分すぎる代償を得ていると判定している。

 しかし 23…Bd7 24.Nxf6+ の後 24…Rxf6!? 25.Qxg5+ Kf7 26.Qh5+ Ke7

がアーナンドのチームが予定していた手順かもしれない。アーナンドは後になってまだ研究範囲だったが手順を間違えて1手早く …Kf7 を指したことを認めた。もちろんこんな激しい局面での記憶間違いは即座に報いがくる。

24.Nxf6!

24…Kxf6

 24…Qxf6 は 25.Rh3 Kg8 26.e5 で白の楽勝である。

25.Rh3

 トパロフは即座にこの手を指して席をはずした。h列でこのルークに対抗できるものはない。白は単に定跡研究室で既に用意してある手順を思い出し吐き出すだけでよく、勝負がついている。

25…Rg8

 25…Qf4 は 26.e5+! Kxe5 27.Re1+ Kf6 28.Qe2 で負ける。

26.Rh6+ Kf7 27.Rh7+

27…Ke8

 27…Rg7 は 28.Rxg7+ Kxg7 29.Qxg5+ Kf8 30.Qd8+ Qe8 31.Qxd4

となって白が意のままに勝てる。

28.Rcc7 Kd8 29.Bb5!

 最終攻撃に向けてきれいに全部の駒を動員した。

29…Qxe4

 29…Qxb5 は 30.Qxd4+ Bd7 31.Rhxd7+ ですぐに詰みになる。

30.Rxc8+ 1-0

 30…Kxc8 31.Qc1+ Nc6 32.Bxc6 Qe3+ 33.Qxe3 dxe3 34.Bxa8 で白の勝ちである。チャンピオンにとってはひどい初戦だった。挑戦者にとってはただで1点をもらったようなものだった。

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(この号続く)

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ルイロペスの完全理解(27)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Re8、…g6、…Bf8(-g7) による防御の捌き

 一般的に前図に示されたのと似たような状況になるのを防ぐために黒はf5の地点を …g7-g6 突きで守ろうとする。そしてその結果起こるf6とh6の地点の弱体化を少なくとも部分的に補修するために黒は黒枡ビショップを …Re8 と …Bf8 で元の位置に戻す(図39)。

 図39

 実際にはこの態勢から必要ならばビショップをフィアンケットすることができる。その位置からだけ …g7-g6 突きによって弱体化した両方の地点に適正なにらみを利かせることができる。中原に争点のある状況ではこの捌きは白の中原に圧力を増すために他のどんなものよりも役に立つことを忘れないようにしよう(図10と12を参照)。

 この捌きの中核をなす3手は異なった手順で指すこともできる。黒は通常は …Re8、…Bf8 そして …g7-g6 と指すが、最後のポーン突きをもっと早く指すこともできる。

(この章続く)

2010年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(26)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3-h2-g4 の捌き

 白がf5の地点を占拠する意図がうまくいくならば、キング翼での圧力が Nf3-h2-h4 の捌きを主眼とする強力な駒攻撃に転化するのに時間はかからないと想像するのはたやすい。ナイトがh2にいればクイーンがd1-h5の斜筋で戦闘に参加できるし、ナイトがg4にいれば Nf6 を攻撃することにより黒キングの守りを崩すのに貢献する(図38)。

 図38

 このような攻撃法は滅多に潜在的な狙いの域を出ないが黒は決して忘れてしまうわけにはいかない。注意すべきは Nf3-h2-g4 の捌きは必ずしもf5の地点の占拠の前触れとは限らないということである。実際 …g7-g6 突きが指されれば白は一般にf6とh6の弱体化につけ込むためにこの捌きを頼りにする。

(この章続く)

2010年08月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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チェス布局の指し方[23]

第2章 ポーンの重要性(続き)

2.2 ポーンの形(続き)

 今度は中原の可動ポーン軍のもたらすことのできる破滅的な効果の例である。ゲルファー対キーン、学生オリンピアード、ドレスデン、1969年 1.c4 c5 2.Nc3 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 Nc6 5.Nf3 e6 6.d3 Nge7

7.Bf4 e5 8.Bg5 h6 9.Be3 d6 10.Qc1 a6 11.Rb1 Rb8

12.a3 b5 13.cxb5 axb5 14.b4 c4 15.dxc4 bxc4 16.O-O Nd4

17.Qd1 Nef5 18.Nd2 Be6 19.Bd5 Rc8 20.Rc1 O-O 21.Bxf6 exf6

(二重ポーンはここでは弱点とならない。黒の中原の強化に役立たせるだけである)22.Bxd4 exd4

(黒のポーンの強さ-特にパスcポーン-は圧倒的である。白のクイーン翼の連結2ポーンは相対的に価値がない。なぜならそれらの前進を支援する駒を効果的に配置できないからである)23.Nce4 c3 24.Nb3 Qb6 25.Qd3 e5

26.Rfd1 Rf7 27.Ra1 Rcf8 28.Rf1 d5

29.Nec5 e4 30.Qd1 Ne3! 31.Nd7 Qd6 白投了
 図32(白番)

(この章続く)

2010年08月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(25)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nb1-d2-f1-g3(-e3) の捌き

 f5の地点の占拠狙いで白はほとんど常に Nb1-d2-f1 の捌きに訴える。なぜならそこからナイトがg3に行くかe3に行くかを選べるからである(図37)。

 図37

 g3に跳ねる方が普通だがどちらの手にも良い点と悪い点がある。g3からはh5の地点に利いていて黒のもくろむ …Nf6-h5-f4 の捌きからの策略を妨げる。しかしこのナイトの活動範囲はキング翼に限られるので黒は …g7-g6 突きによってその攻撃の影響力を削ぐこともできる。一方e3からは要所のd5とc4の地点を監視していて(これらの地点の支配がとても重要になるのは a2-a4 の後と-図28と29を参照-および/または …c7-c6 の後-後で出てくる図54を参照-である)、キング翼での影響力は …g7-g6 突きによって制限されない。というのはその場合g4に行ってh6とf6の地点の弱点につけ込む用意があるからである。しかしe4ポーンの守りと Bc1 の動きを邪魔するのは確かである。

 f5の地点の占拠の問題を …Bxf5 によって過激に解決するのはいつも黒の利益になるとは限らないことを指摘しておく。なぜなら exf5 のあと白はポーンで(g2-g4-g5)押しまくる用意があるからである。これによりb1-h7の危険な斜筋で Bc2 を蘇らせることにもなる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(24)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f5とf4の地点の弱点

 さて、キング翼の状況に目を向けていくとポーンの形とキングの囲いが共に対称形なので白も黒もそれぞれf5とf4の弱点の利用に努めることができる(図36)。

 図36

 これらの地点の弱さは実際両方のキングがこの型の中原でキング翼にキャッスリングしたことに関係している。f5を …g6 突きで守るのもf4を g3 突きで守るのもキャッスリングした陣形を弱める。そして白の場合は中原での争点がある間に h2-h3 突きが指されていれば一層弱くなる。

 f5とf4の地点はナイトにとって理想的な拠点である。このようなナイトは相手のキャッスリングした陣形に(他の駒と協力して)具体的な狙いを見舞うのに寄与することができるし、あるいは既に述べたようにgポーンの前進を促して陣形を弱体化させるのに寄与することができる。

(この章続く)

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