2010年07月の記事一覧

ルイロペスの完全理解(23)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 黒のこの反発を防ぐために白はたぶん a2-a3 と準備して b2-b4 と突くことにより黒の弱点のa5の地点を固定する(図33)。

 図33

 このbポーンの前進は自分のナイトがa5に跳ねた際にそれを支えるだけでなく、他にも効用がある。即ちb5のポーンを動けなくしてそれを包囲攻撃しやすくし、…b5-b4 のポーン捨てを防ぐ。また、a5とc5の地点に黒のナイトが来れなくする。それにより黒は戦いから隔離されたb7の地点にナイトを置くようにしむけられるか余儀なくされるかもしれない(図34)。

 図34

 ここに図示したような態勢の場合黒はおとなしくナイトをb7に引くよりも …Nc4、Nxc4 bxc4 の方を選択することがあるかもしれない。もっとも、c4に残ったポーンは十中八九は敵の捕食者の餌食となる。このように指すことにより黒は …c7-c6 と指すつもりで、白がc4のポーンを取るのに手数をかけなければならないことにつけ込んで中原で十分な反撃が得られることを期待している(図35)。

 図35

 ここに示されている具体的な状況とはまったく別に、b2-b4 突きには …b7-b5 突きによって生じるのと同じ欠陥があることを指摘しておくべきだろう。つまりこのポーン突きはc4とa4の地点を弱め、敵の侵入を許す可能性(例えば …Nd7-b6-c4 または …Nd7-b6-a4)を残す。また、c3のポーンを弱め、黒が …c7-c6 突きでc列を素通しにした時重要性を帯びる要因となることがある。

(この章続く)

2010年07月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(178)

「Chess Life」2010年3月号(4/7)

******************************

2009年ロンドン

ナカムラ スーパーになる

イアン・ロジャーズ


『あれは鳥か?飛行機か?いや、あれは米国のスーパーGMだ』

 12月に米国チャンピオンのGMヒカル・ナカムラは現代の達人中の二人、クラムニクとカールセンを擁する招待8選手総当たりのロンドンクラシックで競技した時、頂点の世界を初めて味わった。

 ナカムラは初めてレイティング2700の壁を破るなど2009年はずっと好調だった。しかしロンドンクラシックは一段上でニューヨーク出身の22歳はそれを知っていた。「これは人生で最強の大会です」とナカムラはクラシックの始まる前日に認めた。「二人ほど明らかに弱い選手[地元のルーク・マクシェーンとデイビド・ハウエル]のいる異例の[スーパー大会]です。マグヌスとウラジーミルとは堅実に指して、それでどうなるか見てみたいです。」

 一番最初の記者会見からナカムラは「単なる」2700選手と世界のエリートとの差にも気づいたに違いない。記者団からのほとんどすべての質問はクラムニクかカールセン、それも後者、に向けられていた。

 クラムニクがGMガリー・カスパロフを王座から引きずりおろした所から歩ける距離のオリンピアにある500席の劇場で対局して、ナカムラはクラムニクでもその他の一人にすぎないと理解し始めることができた。

 それでもロンドン大会では評判とレイティングが示すほど自分が最強者から離れていないこともナカムラは分かっただろう。

2009年ロンドン・チェスクラシック一覧
日付 2009年12月7-15日
場所 ロンドン・ケンシントン、オリンピア会議センター
順位
優勝 マグヌス・カールセン(ノルウェー)13点
2位 ウラジーミル・クラムニク(ロシア)12点
3-4位 デイビド・ハウエル(イングランド)、マイケル・アダムズ(イングランド)9点
5位 ルーク・マクシェーン(イングランド)7点
6-7位 フワ・ニー(中国)、ヒカル・ナカムラ(米国)6点
8位 ナイジェル・ショート(イングランド)5点
勝ち=3点、負け=0点、引き分け=1点

******************************

(この号続く)

2010年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(22)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nd2-b3-a5 の捌き

 …b7-b5 突きによって生じた弱点に付け込むために白が用いる別の手段はナイトをa5の地点に据えようとすることである(図30)。

 図30

 a5の地点はナイトにとってそれほど通い慣れた道ではないが多くの場合きわめて重要になる。実際ここから黒のクイーン翼の駒の動きに支障を与え、…c7-c6 突きを困難にし(これが重要であることはあとで明らかになる)中央より先の弱体化したc6の地点への侵入を狙い、それにより敵にはるかに重大な問題を突き付ける。白はナイトによってかけている圧力を、b2-b4 突きでb5のポーンをせき止めてからc列を素通しにし占拠することにより強めることができる(図31)。

 図31

 c3-c4 の後b5のポーンに対する攻撃は c4-c5 に加え cxd6 という別策の可能性もあり黒に …bxc4 と取ることをほとんど強制し、白がc列で大きな可能性を得る。

 このナイトの捌きから生じる危険性を考えれば黒は Nb3 に …a6-a5 で応じることによってそれを避けるのが可能性として最善である(図32)。

 図32

 黒はb5のポーンをさらに弱体化する代償としてクイーン翼でポーンを突いて(…a5-a4 および/または …b5-b4)チャンスを見い出すことを期待している。そのためにクイーン翼で相手を悩ませ、同時に中原での攻勢を準備する。

(この章続く)

2010年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(21)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

a2-a4 突き

 このポーン突きで白は二重の目的を追求している。それはb5のポーンに強い圧力をかけることと、自分でa列を素通しにできる態勢にすることである。一般的には axb5 axb5 でb5のポーンを孤立させた後クイーンとf1-a6の斜筋上のビショップ、時にはa3からクイーン翼ナイトの介入によってb5に対する圧力が増大する(図25)。

 図25

 黒はクイーン翼ビショップをよくb7に展開するのでb5のポーンを守るために …c6 と突かなければならないことがある。しかし dxc6 Bxc6 のあと色々な攻撃の可能性によりこのポーンの守りは骨の折れるものとなる。だから黒は白のクイーン翼を乱す意図で …b5-b4 によりこのポーンを犠牲にすることを決断することがある(図26)。

 図26

 しかしこのポーン捨てを行なうにあたり黒は、b4のポーンが二重ポーンではあってもパスポーンであり、白が突き進めることができれば非常に危険な存在になることがあることに注意を払わなければならない。

 一方、黒の戦略が成功を収める状況もあり、白は場合によってはクイーン翼ナイトをc2に置いてこのポーン捨てを防ぐようにすることができる。このナイトは次にb4に行って重要なc6とd5の地点を支配する。

 他の場合では黒はとにかく自発的にb5のポーンを見捨てて、他の場所で反撃の機会を得ることに期待することがある。しかしこの場合でも黒は相手にb列でパスポーンを与えることになり、しかも二重ポーンになっていない。

 前に言ったように a2-a4 突きの別の目的はa列の素通しの準備である。白はその列を、たぶん黒枡ビショップの助けを少し借りつつルークを重ねて支配する(図27)。

 図27

 ここで白はまず Ra3 とし次に Rea1 としてルークを重ねる機会があるだけでなく、axb5 axb5、Ba7 という捌きでa列を支配することもできる。この捌きは Ra8 の働きを抑えながらこの列に大駒を重ねることができる。

 a4 突きのあと黒は通常はクイーン翼での相手の主導権に耐えなければならず、中原および/またはあとで出てくるようにキング翼の列で積極的な反撃を模索することになる。たいていの場合思い切った策は a4 に …bxa4 と応じることである(図28)。

 図28

 これは治療は病気より悪い例である。なぜならこの手はa6のポーンをひどく弱めc4の地点の支配を放棄して白のクイーン翼ナイトが容易にそこに来れるようにするからである。

 白がまだ c2-c4 と突いていなかった時は一つの非常に現実的な代替策の可能性が黒にある。それは a2-a4 に対してa列を閉鎖のままにする明白な目的で …b5-b4 と応じることである(図29)。

 図29

 …b4 の効果はクイーン翼の完全な固定化かもしれない(盤の他の方面で最良の展望が得られる側に有利となる)。そして黒はc4の拠点が敵の手に落ちるかもしれないということも心に留めておかなければならない。

 さらに a4-a5 突きでb4のポーンが孤立しa6のポーンが動けなくなり、両方とも攻撃目標となる可能性がある。ただしa5のポーンの安全性は犠牲になるが。

(この章続く)

2010年07月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(83)

「British Chess Magazine」2010年6月号(3/16)

******************************

世界選手権戦(続き)

番勝負の規定

 番勝負は中央軍人クラブで行なわれた。これはブルガリア人の称する「解放」(即ちオスマントルコから解放された時)の後の1895年に建設された壮麗なビルであらゆる文化的催しに使われている。主催委員会の会長はブルガリア首相のボイコ・ボリソフ、主審はパナキオティス・ニコロポウロス(ギリシャ)、そして副審はベルナー・シュトゥーベンフォル(オーストリア)が務めた。2日の対局日ごとに休日が設けられ、決定戦になった場合は最終局の後に2日間予定されていた。色は開会式の時にくじで決められ6局が終わったあと逆になった(つまり第6局で白だった者が第7局でも白になる)。持ち時間は40手2時間、30手1時間、以降は15分で61手目からは1手につき30秒が加算された。

試合前の予想

 試合前の予想は見事に拮抗していたようだった。トパロフが有利だと考える物知りもいれば(レイティングがわずかに高い、地元の有利さ、5歳年少)、アーナンドが有利だと考える者もいた(経験に優る、番勝負で堅実な実績、リスクを犯すことが少ない)。実のところ誰も本当に何を予想すべきか知らなかった。2選手はこれ以上ないくらいほぼ力量が均衡していた。一つ確かだと思われることは退屈な試合にはならないということだった。トパロフがいることだけでそれは確実だった。彼は(もう)世界最強の選手ではないかもしれないが世界で最も楽しませてくれる選手といううたい文句がある。

噴火による混乱

 番勝負の前にして多くの者が抱いていたに違いない一つの小さな心配は2006年エリスタでのトイレ事件のような盤外でのごたごただった。これは実際には起こらなかったが、アイスランドの火山噴火の影響でビシー・アーナンドのソフィアへの到着が遅れた時はそうなりそうだった。地質学上の出来事によって巻き上げられた火山灰の雲によってアーナンドはフランクフルト(マドリードからソフィアへ向かう彼の飛行機がここで足止めを食った)からブルガリアへ飛行機で来れず陸路を移動することを余儀なくされた。ハンス=バルター・シュミットとアルーナ・アーナンドによって率いられたアーナンド一行はオーストリアからハンガリーまではスムーズに旅行できたが、ルーマニア領内の移動はもっと困難を極めた(ビザのいざこざと道路事情の悪さのため)。

 旅は40時間を要した。この著者はジブラルタルからロンドンまで同時期に道路でなく鉄道とフェリーによってだが47時間のへとへとになる旅を経験したので同情できる。彼らは開会式の7日前に着くつもりだったがその予定よりも3日遅れてようやく4月20日に到着した。それでアーナンド一行は当然番勝負の3日の延期を申し入れた。大会役員はこの要請にはいくらかの同情を寄せたが3日の延期は長すぎると感じ1日の延期しか認めなかった。そして両陣営の不満にもかかわらずこれが最終的な取り決めになった。

権威者の支援

 アーナンドの分析チームはクラムニク戦で編成したのと同じだった。グランドマスターのペーテル・ハイネ・ニールセン、ルスタム・カシムジャーノフ、スーリヤ・ガングリー、それにラドスラフ・ボイタシェフだった。これは少なくとも番勝負の前と最中にアーナンドが認めたものだった。番勝負が始まってから少したってきらめくような超一流グランドマスターの三強から研究の助力と番勝負中の連絡を受けているとのニュースが飛び込んできた。その三人とはマグヌス・カールセン、ガリー・カスパロフ、それにウラジーミル・クラムニクである。マグヌス・カールセンはメロディーアンバー大会の後2、3日アーナンドの練習相手を務め、カスパロフは番勝負の前と間にインターネット電話で布局定跡についての質問に答え、クラムニクも遠方からアーナンドの序盤作戦(特に自分のカタロニア定跡)について専門家としての助言を行なった。現世界チャンピオンは文句のつけようのない世界チャンピオンとして二人の前保持者から支援を受けられたことに恵まれたことを考えなければならないのは確かだろう。もっとも、自分の地位を継ぐことになると広くみなされている若者から同様の支援を受けた日を悔やむことになるかもしれない。

 トパロフも人間の支援を受けていた。イワン・チェパリノフ、ヤン・スメーツ、エルウィン・ラーミ、それにリブカの専門家のイリ・ドゥフェクである。しかしコンピュータの能力のことになればトパロフがアーナンドに明らかな差をつけていたことが明らかになった。ブルガリア政府は彼に最高性能の8192プロセッサのIBM「ブルージーン/P」スーパーコンピュータを使わせた。トパロフチームは既存のチェス分析プログラムをこの途方もないハードウェア構成で動作するように適合させるソフトウェアチームの助けも確保した。

 両チームの成否を単に最終結果に基づいて軽々と断言することは差し控えたい。だんだん分かるように、トパロフは白番でかなりの優位を得たがタイトル奪取に必要な得点に変えることができなかった。

******************************

(この号続く)

2010年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(20)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

黒のクイーン翼の弱点

 黒のクイーン翼の弱点は …b7-b5 によってもたらされるa5とc6の地点の弱体化にだけあるのではなく、d5の白ポーンの存在がc6の地点を固定し、c7のポーンがa6とb5のポーンの助けに加わるのを防ぐことによってそれらのポーンを孤立させることにもある。

 実際クイーン翼の2ポーンのどちらかが盤上から消えれば残されたポーンはすぐに孤立ポーンとなる立場にある。

 だからクイーン翼で白は複数の攻撃目標を持つことができ、目的達成のため複数の手段を用いるのは理にかなっていることは明らかである。

 白の手段を見ていく前に黒が …b7-b5 と突かなかった局面や …c7-c5 も突いた局面にはこのような特徴がなく別個に検討することにしたのは前に述べたとおりである。

(この章続く)

2010年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(19)

第2章 閉鎖型中原

2.1 戦略の着眼点

 前回あげた戦型はすべて戦略的に似た状況を生み出す。例外はいくつかの個別の派生型であり、それらについては別個に取り上げる。

 前回紹介した戦法の戦略上の主要な特徴は、双方のキングの位置に注意を払いつつ、最もよく現れるポーンの形の手短な分析から推量することができる(図24)。

 図24

 この局面では以下のことを容易に指摘することができる。

 (1)a5とc6の地点の弱点

 (2)キングの位置のせいでf5とf4の地点が比較的弱体化

 (3)中央部の連鎖ポーンとせき止められた中原

 黒が …b7-b5 と指さなかったり、逆に …c7-c5 突きも指した戦型には独自の特徴があり、別個に検討する。

(この章続く)

2010年07月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス布局の指し方[22]

第2章 ポーンの重要性

2.2 ポーンの形

 均衡のとれたまたは対称的なポーンの形は引き分けっぽい局面になりやすいことがよく知られている。最も激しい布局定跡は不均衡なポーンの局面を作り出そうと努め勝つ可能性を高めている。不均衡な局面では二種類の多数派ポーンを区別すべきである。それは中原での多数派ポーンと側面での多数派ポーンである。

 図31(黒番)

 図31で白は双ビショップによってしっかり支援された立派な可動多数派ポーンを中原に持っている。ビショップは閉鎖的な局面が好きでない。しかしこの図のような開放的局面では双ビショップを持っていることは優勢の重要な要因である。白ポーンの迅速な前進により黒は自軍の協調が困難になる。1…Kd7 2.Rfe1 e6 3.Rad1 Nd8 4.Bf4 Rc8 5.c4 Re8

6.c5 Ke7 7.Bd6+ Kd7 8.b4 a6 9.Bg3 Re7 10.Bh4 f6

11.d5 exd5 12.Bg4+ Ne6 13.Rxd5+ Kc6 14.Rd6+ Kb5 15.Rb6+ 黒投了

(この章続く)

2010年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(18)

第2章 閉鎖型中原

主手順 - ザイツェフ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.d5(図23)

 図23

 白は非常に多くの戦型やそれぞれ非常に異なる場面で中原の閉鎖に踏み切ることができる。以下にあげる戦型に見られるように詳細ではあってもほんの一部の例で、決してすべてを尽くしているわけではない。

 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 の後

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2(または 11.a4 Bf8 12.d5)11…Bf8 12.a4 Qd7(または 12…h6 13.d5)13.axb5(または 13.d5)13…axb5 14.Rxa8 Bxa8 15.d5

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Nd7(または 11…Nc6 12.d5)12.Nbd2(または 12.d5)12…cxd4 13.cxd4 Nc6 14.Nb3(または 14.d5)14…a5 15.Bd3 Ba6 16.d5
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2(または 12.d5)12…cxd4(または 12…Nc6 13.d5)13.cxd4 Bb7(または 13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.d5)14.d5

 …Nd7 のケレス戦法
 - 9…Nd7 10.d4 Nb6(または 10…Bf6 11.a4 Bb7 12.d5)11.Nbd2 Bf6 12.d5

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8(または 12…c5 13.d5)13.Nf1(または 13.b3 Bf8 14.d5)13…Bf8 14.Ng3 g6 15.a4 c5 16.d5

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Bc2(または 12.a3 Bb7 13.Bc2 Nb8 14.b4 Nbd7 15.Bb2 c5 16.d5)12…Bd7(または 12…Bb7 13.d5)13.a3 a5 14.d5

 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bb7(または 12…Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.b3 Nc6 16.d5)13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.d5

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 4…d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6(時には 4…g6 5.c3 d6 6.d4 Bd7 となる手順もある)7.O-O Bg7 8.Re1(または 8.d5)8…Nge7 9.d5

 反マーシャルシステム
 - 4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 b4 9.a5 Rb8 10.d4 d6 11.d5

 アルハンゲリスク戦法
 - 4…Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O 12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.d5

 その他の戦法
 - 4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.d4 Bg4 10.d5

(この章続く)

2010年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(17)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図22(再掲)

 この手が敗着になった。黒は勝ちを決める決定打を放つことができる。白は 28.Qf5 と指さなければいけなかった。これならまだ勝負は分からなかった。

28…Rxf2! 29.Kxf2 Nd3+ 30.Nxd3 Qxg2+ 31.Ke3 Nd6!

 この落ち着いた手は白の駒割の優位が無意味であることを如実に示している。

32.Rf1

 32.Qd1 も 32…Bf6 で白は絶望である。

32…Nc3+ 33.Kf4 Qd5 34.Kg4

 34.Nf5 には 34…Qe4+ がある。

34…Bc8+ 35.Kh4 Qd8+ 36.Kh5 Qe8+ 37.Kh4 Qe7+ 38.Qh5 Ne3 0-1

(この章終わり)

2010年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(16)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図21(再掲)

 ここは重要な局面である。白は中原の安定性を信頼していた。なぜなら相手の方から交換してくるならb1-h7の斜筋上の黒キングが危険にさらされると読んでいたからだった。

18…d5!

 代わりに争点をめぐる戦いに典型的な武器を持ち出すのを黒が恐れなかったのはまったく正しかった。ここでのこの手段は側面での攻撃には中原での仕掛けで応ずべしという、戦略の古典的な原則に完全に合致している。

19.exd5

 19.h5 は 19…dxe4 20.hxg6+ fxg6 21.Nxe4 exd4 22.Nxf6+ Qxf6 23.Nxd4 Ne5 となって黒が強力な主導権を握る。

19…exd4 20.Nxd4?

 この手はe5の地点への利きを放棄してしまう。この地点は黒のクイーン翼ナイトにとって最上の拠点となる。

 白は 20.cxd4 と指すべきだった。それならもっと動的な可能性が残っていた。例えば 20…Bxd5 21.h5 Bxf3 22.hxg6+ fxg6 23.gxf3 Nf8 となればお互いにチャンスがある。また、ポーンを犠牲に 20.h5!? と突く手も考えられた。

20…Ne5! 21.Ne6

 この戦術的手段でも白の状況を改善するには至らない。

21…Qxd5

 白枡の対角斜筋上の圧力の脅威は黒の18手目の決断が正しかったことの証明である。

22.Nf4 Qc6 23.h5 Rad8?

 黒は絶好の機会を逃がした。23…Kg8! の後 …g5 突きを狙えば白のしのげる可能性はほとんどなかっただろう。例えば 24.hxg6 fxg6 25.Ne4(25.f3 g5 26.Nfe2 Nxf3+ 27.gxf3 Qxf3)25…g5 26.Nh3 Nc4 で壊滅的状態である。

24.hxg6+ fxg6 25.Qb1!

 この妙手で勝負がまだ続く。

25…Rxd2 26.Bxg6+ Kg8[訳注 26…Kh8 が正しい実戦の手順のようです]

 26…Nxg6? は 27.Qxg6+ Kh8 28.Nf5 Qd7(28…Rg8 29.Re6)29.Ne6 で黒が負ける。26…Kh8 なら大丈夫で 27.Bxe8 Qc5!(27…Nxe8? はだめで 28.Rxe5! Bxe5 29.Ng6+ Kg7 30.Nh5+ Kh7 31.Nxe5+ Qe4 32.Qxe4+ で白の1ポーン得の収局になる)で黒がまだ戦える。

27.Bxe8 Nxe8 28.Qc1?(図22)

 図22

(この章続く)

2010年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(177)

「Chess Life」2010年3月号(3/7)

******************************

取る取るトルコ(続き)

IMジョン・ドナルドソン

第6回戦
米国(2658) 3-1 ブラジル(2584)
GMヒカル・ナカムラ(2708) 1-0 GMラファエル・レイタオ(2620)

 ヒカル・ナカムラはブラジルの副将のGMラファエル・レイタオを見事に下し彼に今大会唯一の負けを与えた。

第7回戦
ギリシャ(2600) 1½-2½ 米国(2658)
GMバシリオス・コトロニアス(2599) 0-1 GMヒカル・ナカムラ(2708)

 試合開始から数時間が経過し第2席から第4席が引き分けに終わってすべてはヒカルの試合にかかっていた。しかし形勢は少し悪そうで勝つ可能性はなさそうだった。彼はラスカー流の危険を覚悟の勝負手に出て、相手に時間を大量に使う代価を払わせて攻めてこさせた。これが功を奏しコトロニアスは難解な局面で時間に追われてポカを出した。

第8回戦
アルメニア(2683) 2½-1½ 米国(2658)
GMレボン・アロニアン(2781) 1-0 GMヒカル・ナカムラ(2708)

 この回戦はくしくも前の回戦と似ていた。またしても何時間も経たないうちに第2席から第4席が引き分けかそれになりそうですべては頂上対決にかかっていた。今回は事態がヒカルにとってうまくいかず、世界第5位の選手レボン・アロニアンとの死闘で今大会唯一の負けを喫した。後にガリー・カスパロフがこの試合で見せた両者の独創力と闘志をほめたたえていた。

キング翼インディアン防御 /古典主流戦法 [E99]
□GMレボン・アロニアン(FIDE2781、アルメニア)
■GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708、米国)
世界チーム選手権戦第8回戦、2010年1月12日

解説 GMベン・ファインゴールド saintlouischessclub.org の好意による

1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 d6 5.e4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7

 ナカは前のゲルファント戦の大勝利のあとでまたキング翼インディアンを採用した。

9.Ne1

 ゲルファントは 9.Nd2 と指したのでアロニアンは別の主手順を選択した。

9…Nd7 10.Nd3 f5 11.Bd2 Nf6 12.f3 f4 13.c5 g5 14.cxd6 cxd6 15.Nf2 Ng6 16.Qc2 Rf7 17.Rfc1

17…Ne8

 両対局者はここまで 9.Ne1 戦法の主手順を指してきたがここでヒカルはそれほど知られていない手を指した。17…a6 または 17…h5 の方が普通である。考え方は基本的に同じである。白はクイーン翼に圧力をかけ黒がキング翼で攻勢を強めるのを止めようとする(前のゲルファント対ナカムラ戦を参照)。

18.a4 h5

19.Ncd1

 これはアロニアンの新手だった。19.h3 が主手順である。ここから両対局者は自分の力で指しヘビー級の大局観による捌きが始まる。

19…Bf8 20.Ra3 a6 21.Qc3 Bd7 22.Qa5

 白はこれらの長い主手順では詰みの脅威が減るように常にクイーンの交換をしたがる。ヒカルはそれに応じない。

22…b6 23.Qb4 Rg7 24.Rac3 Nh4 25.h3 Be7 26.Be1 Qb8 27.Kf1 Bd8 28.Rb3 Bc7 29.Qa3 Qd8 30.Rbc3 Bb8 31.b4 Ra7

 両者とも一歩も引かず、相手の作戦を妨げようと駒の再配置に努めている。ここでアロニアンは交換損の犠牲でクイーン翼を開けさせようとした。

32.Rc6!? b5

 ヒカルはクイーン翼を閉じたままにし白にパスcポーンとd5の地点を与えない方を選んだ。しかしアロニアンはまったくしつこい。

33.axb5 axb5 34.Ra6 Rb7 35.Rcc6! Bxc6

 ヒカルは白が深入りしすぎているので苦労はあっても戦力を得した方が良いと判断した。白はクイーン翼を突破したが黒のキング翼攻撃は頓挫している。

36.dxc6 Ra7 37.Nc3 d5!?

 ナカは Bb8 をd6ポーンの背後に埋葬したくなかった。それでこいつを放り捨てて後でd6の地点を使えるようにした。

38.Nxd5 Nf5 39.exf5 Qxd5 40.Ne4 Rgc7

 時間切迫が終わって白は非常に強固な陣形になっている。ここでは 41.Qa5! が最強の手だがアロニアンはポーンを取り、既に強大になっているナイトをさらに強化することにする。

41.Nxg5 Ng7?

 世界最強の選手の一人に対して堂々と受けてきたヒカルだったがここでつまづいた。派手な手筋を見落としていた。比較的良い手は 41…Nd6 で、黒がしのげるかもしれない。

42.Rb6!!

 これは驚愕の戦術手段で、戦闘の真っ最中には見のがし易い。ヒカルはこの強手に対して最善手で応じた。ここで黒が 42…Rxa3 と指せば 43.Rxb8+ Ne8 44.Rxe8+ Kg7 45.Ne6+ Kh7 46.Nxc7 で白が勝つ。

42…Nxf5 43.Rxb8+ Kg7 44.Qb2!

44…Ra2?

 ここは 44…Ne3+ 45.Kg1 Rxc6 の方が良かった。それでも黒が負けるかもしれないが白にとっては実戦よりもずっと難しい。難解な局面で両者とも持ち時間が20分を切っているのでどちらから悪手が出てもうなずける。

45.Qb1 Rc2 45.Rxb5!

 どちらも遠くのナイトを使ってルークを守っている。

46…Qd6 47.Rb7 Kh6 48.Kg1!

 アロニアンは時間に追いまくられていたが好手を連発している。

48…Qxc6 49.Nf7+ Rxf7 50.Rxf7

 黒は戦力損がひどい。両者とも派手に戦ってきたがヒカルは 42.Rb6! の素晴らしい手筋一発から回復できなかった。

50…Ne3 51.Ra7 Qd5 52.Qa1 Nxg2 53.Qa6+ 黒投了

(GMユーリ・シュールマン)検討が済んだとき我々の注目は全部残りの2局に移った。オニシュクは大丈夫そうだったがヒカルの形勢は好転していなかった。ついに彼に好機が来た。…Nd6 スポンサーでサポーターのトーニー・リッチを始め米国チーム全員は自由対局室で「祈って」いた。「ヒカル、…Nd6!、…Nd6!」ヒカルはe8のナイトをつかみそれをg7に進めた。我々はみな落胆のため息をもらした。ナカムラが負け我々の金メダルの望みも消えた。ついでに言えば我々が最後に残ったヒカルの試合を待っていたのはこれが初めてではなかった。前の日彼はギリシャとの厳しい試合を行なっていて我々はみな彼を応援していた。その日は彼が勝った。

第9回戦
米国(2658) 2-2 アゼルバイジャン(2651)
GMヒカル・ナカムラ(2708) ½-½ GMガディル・グセイノフ(2614)

 我々はアゼルバイジャンが上位4人をぶつけてくるのではないかとある程度予想していた。しかし既に3敗(前の回のコトロニアス戦では危うく4敗目を喫するところだった)していたガシモフについては分からなかった。ヒカルと黒番では当たりたくないかもしれない。翌朝彼の名前が出場選手になかった時も我々は驚かなかった。しかし本当に驚いたのはGMテイモウル・ラジャーボフの名前がなかったことだった。ブルサで衝撃的なほど好調のシャクリヤル・マメジャロフに次いでチームの得点源だったラジャーボフはこれまで7戦して5点をあげていた。

******************************

(この号続く)

2010年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(15)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図20(再掲)

 争点をめぐる戦いは佳境に入っている。黒は相手に中原を清算させることを期待してe4ポーンに対してしだいに圧力を強めている。白の方は中原での態度を明らかにする必要なしに展開をどんどん進めることができることを望んでいる。

13.Nf1 Bf8 14.Ng3

 この捌きは Bc1 の展開を邪魔することなくe4ポーンを守ることのできる位置にナイトをつけるのに役立つだけでなく、f5の地点の占拠も目指している。その地点は中原の変容とは無関係に白の激しいキング翼攻撃の基礎となる要素である。代わりに 14.Bg5 は第5局で指される。

14…g6

 この手にはf5の地点の監視とキング翼ビショップをg7の地点につけてd4のポーンにも圧力を増す両様の目的がある。

15.Bg5!?

 この手は h4-h5 突きで攻撃する前に黒が …h6 でキャッスリングした陣形を弱めるのを誘う魂胆である。これは面白い作戦であるが、中原の安定にいささかか自信を持ちすぎているかもしれない。もっと普通の 15.a4 は第3局の手である。

15…h6 16.Bd2

 16.Be3 は 16…exd4 と取られてe4のポーンを救うためには白は 17.Bxd4 c5 18.Bxf6 という具合にビショップを切ることを余儀なくされる。

16…Bg7

 16…c5 で争点を強めることもできた。

17.Qc1 Kh7 18.h4(図21)

 図21

(この章続く)

2010年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(14)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図19(再掲)

 しかしここで 9.d4 と突いてくれば 9…Bg4 は黒が中原の争いに勝つ絶好の態勢になる。例えば 10.Be3(もちろん 10.d5 で争点の維持をやめることも可能である)10…d5(中原の争点に対するこの典型的な武器の使用が Nf3 の釘付けによって容易になっていることは疑いない。しかし本章の範囲外であるが 10…exd4 もまた可能である)11.exd5 exd4 12.Bxd4 Nxd4 13.cxd4 Bb4 となれば黒の布局のすべての課題が解決されている。

 中原の争点の状態の形成を考慮すれば白は …Bg4 を防ぎたい。そして中原の争点の争いで優位に立ちたければ先受けの 9.h3 は必要不可欠である。

 図の局面から生じる戦法全体は「閉鎖」ルイロペスの題名で一括りにされることがよくある。これに対して「開放」ルイロペスは一般に 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 から生じる戦型の指定に用いられる。

9…Nb8

 このブレイェル戦法はナイトをc6からd7へ仕切り直しする。この捌きは純粋に超現代的な印象があるがe5を守り、a8-h1の斜筋を空けてそこへクイーン翼ビショップを据える可能性を残し、…Re8、…Bf8 の組み換えを容易にする目的のために Nf6 を保護し(Bg5 の展開を考慮)、最後に …c5 突きを可能にするために役立つ。これらはすべて敵の中原に最大限の圧力をかけるために焦点を合わせている。

 この時点で黒には多くの代わりの手がある。9…Na5(…Na5 のチゴーリン戦法)、9…Nd7(…Nd7 のチゴーリン戦法)、9…Bb7(ザイツェフ戦法)、9…h6(スミスロフ戦法)あるいは 9…Be6 や 9…a5 もある。これらの戦型はすべて中原の争点の主題に異なった方法で対処していて、以降の4章の実戦例のところで具体的に解説する。

 ここでは通常は上記の戦型に移行する小さな可能性に特別の注意を払う。しかし時にはその可能性が中原の争点の状況に特有と考えられる条件を作り出すことがある。もし黒が 9…Re8 と指せばf7の地点の監視が弱まり白がe5のポーンをひどく汚す機会に恵まれるかもしれない。もっともこの機会で優勢になるかは実証が必要である。例えば 10.d4 Bb7(ここでザイツェフ戦法に移行する)11.Ng5 Rf8 12.f4(12.Nf3 Re8 13.Ng5 は早い引き分けで店じまいするためのかなり頻繁に用いられる手段である)12…exf4 13.Bxf4 Na5 で 14.Nd2!? でも 14.Bc2 Nd5! 15.exd5 Bxg5 16.Qh5 h6 17.Nd2! でもお互い指せる分かれである。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8(図20)

 図20

(この章続く)

2010年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(82)

「British Chess Magazine」2010年6月号(2/16)

******************************

世界選手権戦

本誌編集長のジョン・ソーンダーズがソフィアでのアーナンド対トパロフ戦について報告する


政治の話-シルビオ・ダナイロフ(左)はヨーロッパチェス連合の会長に立候補しアナトリー・カルポフはFIDE会長に立候補している


ソフィアの記者室-ChessVibes.com のペーター・ドガース(左)とキャシー・ロジャーズ、後方はGMロバート・フォンテーヌ


誇らしげなインド代表団-左からS・S・ガングリー、ハンス=ワルター・シュミット、ビシー・アーナンド、アルーナ・アーナンド、ルスタム・カシムジャーノフ、ラドスラフ・ボイタジェク


ソフィアのオランダ人-ペーター・ドガース(右)がチーム・トパロフのヤン・スメーツ(左)とエルウィン・ラミと話している

      1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12  
ビスワーナターン・アーナンド インド 2787 0 1 ½ 1 ½ ½ ½ 0 ½ ½ ½ 1
べセリン・トパロフ ブルガリア 2805 1 0 ½ 0 ½ ½ ½ 1 ½ ½ ½ 0

 タイトル保持者のビスワーナターン・アーナンド(インド、40歳)と挑戦者のべセリン・トパロフ(ブルガリア、35歳)との2010年世界選手権戦はそもそもが異例だった。きちんとした挑戦者選出周期の最終結果として出てきたのではなかったのでその存在理由について何か話しておいた方が良いだろう。話は2006年トパロフとクラムニクとのいわゆる統一戦から始まった。2006年統一戦の規定の一つは勝者が2007年世界選手権競技会へ参加するということだった。しかし敗者にはこの8選手の大会への参加枠がなかった。

 だからべセリン・トパロフがメキシコ大会を傍観していなければならなかったのは不満やるかたなかった。そこではアーナンドがクラムニクをおさえて優勝し彼からタイトルをもぎ取った。その結果でもチェス界にはまだ少し不満が残っていた。それは王座が(ほぼ)あまねく好まれていた番勝負でなく大会方式で移動したことだった。

 二つの認知された欠陥(メキシコでのトパロフの不在と最適ではない方式によるアーナンドの戴冠)を埋め合わせるためにFIDEは最終的に二様の解決策を提示した。アーナンドは前任者のクラムニクとの番勝負で防衛戦を行なうことが必要とされた。一方トパロフに(彼の管理担当者によるFIDEへの働きかけの後で)前FIDEワールドカップ優勝者のガータ・カームスキーとの番勝負が与えられた。その勝者がアーナンド対クラムニク戦の勝者への挑戦権を獲得することになっていた。

 経過はそういうことだった。FIDEが計画を入念に作り上げたとは言えない。だから皆が感謝されてしかるべきである。これで4月24日からブルガリアのソフィアで始まる予定の番勝負が過去2、3年の選手権戦の締りのつかない部分を結び合わせることを意味していた。もちろん締りのつかない部分全部ということではない(それを望むのは過酷だろう)。既に名前の出た以外の超一流選手たちは不満を抱きおよび/あるいは現行の世界選手権戦周期に関して次に何が起こるのか当惑してるかもしれない。しかしそれについて語るのは別の機会にしなければならない。

******************************

(この号続く)

2010年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(13)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例

第1局
スミリン対ベリヤフスキー
オデッサ、1989年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5

 この手は著名な16世紀の選手のスペインの僧侶ルイ・ロペスによって初めて系統的に研究された。このシステム全体に「スペイン試合」または「ルイロペス」という名前が付けられているのは彼の功績によるものである。

 その基本的な構想はe5の守備駒を弱めることで、2.Nf3 から始まる圧力をかけ続ける。しばしば黒はe5への脅威がまだ有効でないことを見越して(3…a6 4.Bxc6 dxc6 5.Nxe5?! Qd4 でe4のポーンが取れる)目障りなb5のビショップを …a6 から …b5 の手段で追い払う方針をとる。それでもaポーンとbポーンはこれで弱体化するので白は中原の以降の戦いで二次目標にすることができる。黒が時にクイーン翼の形を崩さずaポーンとbポーンを巻き込まないで状況に対処する方を好むのはこのためである。

 この考え方に合う戦型の中で最初に名をあげるべきは 3…d6 の堅固なシュタイニッツ戦法である。中原に争点を作り出す 4.d4 のあと白はe5への狙いを復活させ、相手に …exd4 で中原の争点を解消させ通常はこちらの有利になるように努める。例えば 4…Bd7 5.Nc3 Nf6 6.Bxc6(e5に対する圧力のためこの手は白の3手目の論理的な帰結である)6…Bxc6 7.Qd3 Nd7(8.d5 には 8…Nc5 の切り返しがある)8.Be3 exd4(唯一の理にかなった応手)となれば黒陣はわずかに不利ではあるが形に弱点はない。

 主眼がシュタイニッツ戦法と似ている戦型は 3…Nf6 4.O-O d6 5.d4 である。例えば 5…Bd7 6.Nc3 Be7 7.Re1 exd4(7…O-O? では中原の争点が維持できないので当然の手である。なぜなら 8.Bxc6 Bxc6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8 Raxd8 11.Nxe5 Bxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Nd3 f5 14.f3 Bc5+ 15.Nxc5-10手目で黒が 10…Rfxd8 と取っていたら白はここで 15.Kf1 と指して勝ちになる-15…Nxc5 16.Bg5 Rd5 17.Be7 Re8 18.c4 で白の勝ちになる)で前述の状況と同じ状況である。

 黒が通常はクイーン翼でポーン突きを省略する別の戦型はe5の地点を守る問題に根本的に取り組む 3…g6 である。この場合中原で争点を作り出したあと白は交換中原に移行して、フィアンケットされたビショップの働きを最小限にし、このビショップが放棄したa3-f8の斜筋を弱体化させるのが普通である。例えば 4.c3 d6 5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5 8.Bg5 f6 9.Be3 で白が少し優勢である。

 最後に、黒がクイーン翼が乱れるのを避けようとする別の戦型は 3…Bc5 による古典戦法である。これはキング翼ビショップが「古典的」に展開されるのでそう呼ばれている。例えば 4.c3 Nf6 5.O-O O-O 6.d4 Bb6 7.Bg5(黒のキング翼ビショップがクイーン翼に行ったときは白はその不在につけ込んで Nf6 を釘付けにして優勢を目指すのが普通である)7…d6 8.Ba4(ここでは 8.Bxc6 は白の有利にならない。8…bxc6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8 Rxd8 11.Nxe5 Ba6 で黒が優勢である。例えば 12.Re1 Nxe4 である)8…a5 9.Re1 でe5に対する圧力が強い。白は Nb1-a3(-d2)-c4 という捌きでこの圧力をさらに強めることができる。

 後の章で読者はこれらの戦法や、以降の注で言及される戦法についてさらに情報が得られるであろう。

3…a6 4.Ba4 Nf6

 黒は 4…d6 で遅延シュタイニッツ戦法を選択して、…b5 突きに関して融通性を維持することもできる。これに関連してここでは前述のシュタイニッツ戦法と比較して 5.d4 ですぐに中原に争点を作り上げるのは 5…b5 で効果がないと指摘するにとどめておく。例えば 6.Bb3 Nxd4 7.Nxd4 exd4 8.Bd5(8.Qxd4? は典型的なハメ手が待っている。8…c5 9.Qd5 Be6 10.Bc6+ Bd7 11.Qd5 c4 でビショップが死ぬ)8…Rb8 9.Bc6+ Bd7 でどちらも指せる。

 代わりに 4…b5 5.Bb3 Na5 のタイマノフ戦法では黒は挑発的な敵ビショップを交換で消すことができるが、e5の地点を放棄したので中原で争点ができた時その争点を維持することはできない。例えば 6.O-O(6.Nxe5?! は 6…Nxb3 7.axb3 Qg5 でg2での代償の方が有利である)6…d6 7.d4 exd4(7…Bg4?! は 8.dxe5 Nxb3 9.axb3 Bxf3 10.Qxf3 dxe5 11.Nc3 で白が展開に優り黒のクイーン翼ポーンの弱さが明らかである)8.Nxd4 で白は展開の優位を維持する。もっとも …c5-c4 突きの可能性に少なからず注意を払わなければならない。ただし今のところは無理である(8…c5 9.Bd5)。

5.O-O Be7

 攻撃的な別策は 5…b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 のいわゆるアルハンゲリスク戦法である。これは黒枡ビショップをすぐに働かせる意図である。一例は 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 Qd7(別の攻撃形は 11…g5!? 12.Bg3-捨て駒の 12.Bxg5 hxg5 13.Nxg5 Rf8 は不十分である-12…O-O!? で …Nh5 から …Qf6 の継続手段がある。もっと穏やかな 11…O-O については第4局の黒の5手目の解説を参照)12.a4 O-O-O 13.axb5 axb5 14.Na3 g5 15.Bg3 Nh5 で非常に激しい局勢である。中原の争点の主題は敵のキャッスリングした陣形に対する相互の攻撃を補足している。

6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O

 黒が 8…Bg4 ですぐに争点を持つ中原を作り出そうというのは効果的でない。なぜなら白は単に 9.d3 と応じることができ、その後 h2-h3 と突き …Bh5 なら Nb1-d2-f1-g3 という捌きで釘付けを解消しキング翼で有利な態勢になるからである。

9.h3(図19)

 図19

(この章続く)

2010年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(12)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

白の白枡ビショップのむき出しの状態

 敵のクイーン翼との関連で白の白枡ビショップの挑発的な態度は(Bb5 a6、Ba4 b5、Bb3)このビショップ自身が危険がないというわけではないことは明らかである。そのような危険の一例はこのビショップが使命を完了してもクイーン翼のポーンの形が初期配置から動いていない序盤の早い段階で現れる。Bb3 は逃げ場がないので黒のクイーン翼ポーンの手にかかって終わりを迎えることがある(図16)。

 図16

 この図はこの戦術の成立のために必要な基本的な条件を示している。…Nxd4、Nxd4 exd4、Qxd4 c5 の後(図17)

 図17

白はビショップを捕まえる …c5-c4 突きを止めることができない。この狙い筋は「ノアの箱舟」のはめ手としてよく知られている。

 他の状況では、ビショップがまだa4-e8の斜筋にいるとき黒はこのビショップが浮いている状態あるいは守りが不十分な状態を、自分のクイーン翼ビショップをd7に上げて利用することができる(図18)。

 図18

 例えばこの場合なら黒は単純に …Nxd4 でポーン得になる。さらに指摘しておくと Ba4 が c2-c3 突きでクイーンによって守られている時でも狙いは残る。具体的には黒は …Qe8 と指すことによってまた狙いを作り出すことができる。

(この章続く)

2010年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス布局の指し方[21]

第2章 ポーンの重要性

2.2 ポーンの形

 図30(黒番)

 図30ではあまりに多くのポーンを同じ色の枡に置くことにより生じる別の種類の不利が見られる。ここではh7、g6およびf5の黒ポーンがみな白枡にありその結果キング翼の黒枡がひどく弱体化している。これらの地点の弱点は、通常は補ってくれるキング翼のビショップが交換されているために弱さが増している。黒のf6およびh6の空所は特に目立っている。白は次のように手早く勝ちを決めた。1…Qf7 2.exf5 gxf5 3.g6!

3…Qxg6(3…hxg6 は 4.Ng5 から詰みになる)4.Bxg7 Qxh6+(4…Qxg7 5.Rhg1)5.Bxh6

(この章続く)

2010年07月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(11)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

e4ポーンの間接的守り

 aポーンとbポーンの前進によって引き起こされる黒のクイーン翼の弱体化によって白の中原の防御が楽になることがよくある(図14)。

 図14

 例えばここでは白は単に Be3 としてd4ポーンを守ることができる。なぜならこの手によって Re1 の利きが邪魔されても黒はe4のポーンを取るわけにいかないからである。…Nxe4? と取るととたんに Bd5 と応じられて(図15)

 図15

黒のナイトの一方が取られる。

(この章続く)

2010年07月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(10)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所

 この型の中原では盤の中央の状態が流動的なので、繰り返し出てくる戦術の狙い所を見つけるのは容易でない。しかし他の型の中原にもっとよく現れそうなのを一、二指摘することはできるが(適切な章節で言及される)、中原の「典型的な」争点とみなすこともできる。

(この章続く)

2010年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(9)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…d5 突き

 黒がe4に対して画策する捌きの別の目的は …d5 と突くことにより中原で反撃できるようにすることである(図13)。

 図13

 このような決断をするに当たってはしっかりと読んでおかなければならないことは言うまでもない。特におそらく中原の4ポーンが消えることになるのでその後の両者の駒中心の戦いのことを考えなければならない。しかしこのポーン突きが可能な時は、形勢を互角にし中原の覇権をめぐる戦いに終止符を打つための決定的な手段となりうる。

 例えば図13の状況では黒は exd5 exd4 と dxe5 Nxe4(…Rxe5、f4 から e4-e5 は白が良い)の結果を詳細に読むべきである。

(この章続く)

2010年07月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(176)

「Chess Life」2010年3月号(2/7)

******************************

取る取るトルコ(続き)

IMジョン・ドナルドソン

第1回戦
トルコ(2483) 1-3 米国(2658)
GMキバンク・ハズネダログル(2498) 0-1 GMヒカル・ナカムラ(2708)

 大会の出だしは危険な若いトルコチームを危なげなく下して順調だった。トルコチームは後で2008年銀メダルのイスラエルを破った。第1席のヒカルは黒で早々と勝ってこの大会を通しての絶好調の前触れとなった。

第2回戦
米国(2658) 3-1 インド(2639)
GMヒカル・ナカムラ(2708) 1-0 GMクリシュナン・サシキラン(2653)

第3回戦
ロシア(2719) 3-1 米国(2658)
GMアレクサンドル・グリシュク(2736) ½-½ GMヒカル・ナカムラ(2708)

 ヒカルの試合はずっと互角で、一時はアレックスの方が良かったようだが終わり頃は気をつけなければならない状態で、引き分けは順当な結果だった。

第4回戦
米国(2610) 3-1 エジプト(2514)

第5回戦
イスラエル(2684) 1½-2½ 米国(2630)
GMボリス・ゲルファント(2761) 0-1 GMヒカル・ナカムラ(2708)

 ヒカルは次の断然話題となるド派手な勝利で絶好調であることを知らしめた。

キング翼インディアン防御 /古典主流戦法 [E97]
□GMボリス・ゲルファント(FIDE2761、イスラエル)
■GMヒカル・ナカムラ(FIDE2708、米国)
世界チーム選手権戦第5回戦、2010年1月9日

解説 ナカムラ

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.Nd2 Ne8!?

 定跡ではこの戦型は黒が不利とされている。この戦法が初めて私の注意を引いたのは2008年にモントリオール国際大会に参加した時だった。第1回戦で親友のGMパスカル・シャルボノがこの戦法を用いて短手数で勝った。後で別の友人のFMジャック・ユースもこの戦法を指したことがあるのが分かった。そんなこんなで二人とも私にこの戦法を採用する気にさせてくれた。この次は絶対飲み物をおごってあげよう。

10.b4 f5 11.c5 Nf6 12.f3 f4 13.Nc4 g5 14.a4 Ng6 15.Ba3 Rf7

16.b5

 次の実戦は最終的に勝つことは勝ったが今もってわけが分からない。16.a5 h5 17.b5 dxc5 18.b6!(18.Bxc5 g4 は本譜に戻る)18…g4 19.bxc7 Rxc7 20.Nb5 g3 21.Nxc7 Nxe4!

ベリヤフスキー対ナカムラ、新鋭対古豪戦、2009年

16…dxc5 17.Bxc5 h5 18.a5 g4 19.Kh1 g3 20.b6 Bf8

21.d6!

 これは新手だった。初めて私の注意を引いた試合で指された手は 21.Bg1 だった。21…Nh4 22.Re1 Nxg2! 23.Kxg2 Rg7 24.Nxe5 gxh2+ 25.Kh1 Nxe4! 0-1 ルーズモン対シャルボノ、モントリオール、2008年

あの大会の間モントリオールのシャルボノの家に泊まっていなかったらこの手順に全然気がつかなかったことだろう。幸いにして気がつき、キング翼インディアンへの愛にまた火がついた。この試合の後まもなくチェスのいろいろなウェブサイトで一部の人が 21.Bxf8?? なら白の勝ちと考えていることに気がついた。実際はたちどころに負けになってしまう。21…Nxe4! 22.Nxe4 Qh4 23.h3 Bxh3

h2での詰みの狙いが受からず黒の勝ちである。

21…axb6

22.Bg1

 22.axb6 は 22…Rxa1 23.Qxa1 cxd6 24.Rd1 Ng4! 25.fxg4 Qh4 26.Bg1 hxg4

のあとすぐに …f4-f3 から …g3-g2 がやって来て黒の勝ちになるはずである。また 22.dxc7 も良くなく 22…Qxd1 23.Rfxd1 Bxc5 24.Nxb6 Bxb6 25.axb6 Rxa1 26.Rxa1 Kg7

となって黒が駒のもつれをほどくのは簡単ではないがいずれは黒が勝つはずである。

22…Nh4 23.Re1 Nxg2

24.dxc7??

 大きなプレッシャーのもとでとんでもないポカが飛び出した。24.Kxg2 なら引き分けになるが「マトリックス」を言い換えると「我々はまだ人間にすぎない」である。24.Kxg2 Rg7 25.dxc7(25.hxg3 Qd7!?[25…Rxg3+ の方が少し安全で実戦ではそれを選択していただろう。26.Kh1 Rh3+ 27.Bh2 Ng4 28.Qd5+ Kh7 29.Qf7+ Bg7 30.fxg4 Rxh2+ 31.Kxh2 Qh4+ 32.Kg2 Qg3+ 33.Kh1 Qh3+ 34.Kg1 Qg3+ 35.Kf1 Qh3+ 36.Kf2 Qg3+

どうしようもない千日手になる]26.g4 hxg4 27.fxg4 Nxg4 28.Bxg4 Rxg4+

これは大乱闘で、何がどうなっているのか分からない)25…gxh2+ 26.Kh1 hxg1=Q+ 27.Rxg1 Qxc7

まだいろいろ指す余地が残っているが形勢はほぼ互角である。

24…Nxe1 25.Qxe1

 25.cxd8=Q g2#

25…g2+!

 25…Qxc7 でも黒がだいぶ優勢だがまだまだ頑張らないといけないだろう。

26.Kxg2 Rg7+ 27.Kh1 Bh3 28.Bf1 Qd3!!

 これには度肝を抜かれただろう。この時点でボリスは長考に沈み頭を振り始めた。嵐を乗り切ったと思ったとたんもっと不快な目に合うことほど嫌なことはない。

29.Nxe5 Bxf1 30.Qxf1 Qxc3 31.Rc1 Qxe5 32.c8=Q Rxc8 33.Rxc8 Qe6 白投了

******************************

(この号続く)

2010年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(8)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

e4ポーンに対する圧力

 d4への圧力の別策として(というより一緒に用いられることの方がはるかに多いが)黒は戦力の一部をe4ポーンに向けることができる。実際 d2-d4 突きのあとe4ポーン自身もかなりむき出しの状態になる。というのはもう d2-d3 でしっかりと守られなくなるし、代わりの f2-f3 は(Nf3 がいることによって邪魔されることがよくあるがそうでない時)キング翼における白の攻撃の展望を低めるので(白クイーンをキング翼への支援のために迅速に繰り出す非常に重要な斜筋のd1-h5をふさいでしまう)一般には考える価値がない。

 一般的に言うと、黒はe4ポーンに圧力をかける役目をキング翼ナイト、クイーン翼ビショップおよび以前に見た …Re8 から …Bf8 の捌きに任せる(図12)。

 図12

 白の方は必要な防御手段を構築するのに特に困難はない(Rf1-e1、Bb3-c2 および Nb2-d2 は標準的な方法で、クイーンを繰り出す非常手段もある)。それでもこの配置は非常に柔軟性に欠けることがある。特に Nd2 の存在が厄介で、Bc1 の展開を阻害しクイーンがd4ポーンを守るのにも邪魔になる。

 最後に、黒がe4ポーンに対して行なう作戦行動は明らかに …exd4 取りから生じる中原の型の一つに行く前触れと見ることができることを指摘しておく。

(この章続く)

2010年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(6)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

d4ポーンに対する圧力

 黒の立場からすると、中原での争点を維持する目的は白にd4ポーンを動かすようにしむけることである。この目的のために、e5の地点に対する白の態度と同様のやり方で、黒はしだいにd4に圧迫を一層加えるように努める。

 白の白枡ビショップを(…a7-a6 と …b7-b5 とによって)撃退する捌きはe5とd4の地点を攻撃ないしは防御するそれぞれの役割において Nf3 と対抗する責務の Nc6 を楽にすることを指摘しておく。

 白が通常の h2-h3 突きを省略すると、…Bg4 による Nf3 への釘付けは前述の捌きとあいまって立場をまったく反転させることができる。つまり白がキング翼ビショップをb5に展開したとき敵に生じさせるつもりだったのと同じ問題を黒が白に突き付けることになる(図8)。

 図8

 同じような状況で白はd4ポーンに対する圧力のために中原の争点を解消するようにしむけられる。この理由で白は d2-d4 と突く前にほとんど常に先受けの h2-h3 を指して Nf3 に対する釘付けを防ぐようにするのが普通である。

 d4への圧力を強める別の直接的手段はキング翼ビショップをh8-a1の対角斜筋へ移動させることである。この目的のために黒は Nf6 を動かして(通常はd7に引いて)ビショップのためにf6の地点を空けることがことができる(図9)。

 図9

 この捌きはありふれていて当たり前と考えられるがe4のポーンに対する圧力を放棄する不利も持ち合わせている。いずれ分かるようにこの圧力は争点をめぐる黒の戦いの別の重要な武器となっている。

 さらにまた黒は後でキング翼のフィアンケットをする典型的な布局の捌きに訴えることができる。キャッスリングのあと黒は …Re8、…Bf8、…g7-g6 そして …Bg7 と指す(図10)。

 図10

 これが行なわれると、d4に対するビショップの動きは Nf6 がいることによってどんなに隠されていようと、時には直射攻撃の暗黙の戦術の可能性によって現実化することがありうることに気をつけなければならない。

 図8、図9および図10で例示されている捌きはすべて黒のe5のポーンを守る必要性にも呼応していることを指摘しておく。だからそれらの捌きが攻撃と防御の二重の役割を果たしているのは賞賛ものである。

 最後に、d4への圧力は Nc6 を移動させた後 …c7-c5 と指すことによっても増大させることができる(図11)。

 図11

 しかし黒のクイーン翼ナイトの移動はしばしば一時的にすぎないことを強調しておく。というのはほんの少し後で一般にこの駒は元の位置に戻って中原での戦いに積極的に加わるからである。…cxd4、cxd4 の交換によってcポーンがなくなったあと上記の捌きは白に中原での意図を表明させる上で決定的になるかもしれないことは明らかである。

 e5に対する白の作戦行動に関して既に述べたように、d4に対する黒の同等の着眼点は可動中原または動的中原に持って行くための有利な条件を作り出す目的もあるかもしれない。結論としてこれらの作戦行動は非常にしばしば成功で報われ白に中原で決断を迫ることになる。黒の利点のもう一つの要素は、白がd4のポーンの防御で黒枡ビショップを動員する際に遭遇するかなりの困難である。e3への自然な展開(この時 Re1 のe4ポーンの防御を妨害することになる)はd2のクイーン翼ナイトの存在により妨害されることがよくある。そして白がこのナイトをちょうど良い時に移動させるのはいつも簡単であるとは限らない。なぜならこのナイトがe4のポーンの守りに縛り付けられていることがあるからである。

(この章続く)

2010年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

世界のチェス雑誌から(81)

「British Chess Magazine」2010年6月号(1/16)

******************************


キルサン・イリュームジノフFIDE会長から祝福されるチェス世界チャンピオンのビスワーナターン・アーナンド

編集長の言葉

 今月号は主にソフィアでのタイトル保持者ビスワーナターン・アーナンドと挑戦者べセリン・トパロフとの世界選手権戦をお伝えする。この番勝負は多くの点でたいへん面白かった。幸いにもいったん試合が始まったあと盤外の問題はまったく何もなかった。だから無数の観戦者たちはひたすらチェスに集中することができた。べセリン・トパロフがいわゆる「ソフィア規則」(即ち対局者同士の合意の引き分けを認めない)にあくまで従うと言った時は少し波風が立った。しかし歴代チャンピオンの中でも最も温厚と目されるアーナンドが取り合わなかったので問題にならなかった。

 トパロフのために公平を期せば、必然の帰結に従ってチェスを指す彼の潔癖な手法は観客にとって理想的な選手となっていた。彼にとっては残念なことに、この原則に厳格な彼の姿勢は自分にだけ害をもたらした。例えば最終局の中盤の初めでは指し続けるよりも千日手にした方が良かったのは確かだった。しかしもちろん彼はその時は知るよしもなかった。それで番勝負が決まることになったのは不運だったが彼は自分の無念を潔く受け入れた。

 勝者にとっては精進が報われたわけで、タイトルの見事な防衛に対してビシー・アーナンドを祝福するばかりである。円熟した(21世紀のチェス選手にとって)40歳での防衛はそれ自体が偉業で、同等の年齢で自分より若い選手の殺到にあらがうことのできた他の例を探せばボトビニクまでさかのぼらなければならない。特筆すべきは彼の次の挑戦者候補は既にレイティングで自分を追い越していて頂上で待っている。他の誰でもないマグヌス・カールセンで、まだ2、3ヶ月は十代のままである。両者による番勝負は垂涎(すいぜん)の見もので、ロンドンで行なわれることに期待をかけている。

 しかし当分は唯一の真の王者のビスワーナターン・アーナンドにただ敬意を表することにしよう。世界選手権戦とチェス界一般の状況を当欄で長年の間嘆いてきたが、今や一人のそれも唯一のチャンピオンをいただくこと、チャンピオンが番勝負によって決められたこと、それにタイトル保持者がまことにそれにふさわしいことに夢ではないだろうかと自分の頬をつねってみなければならない。すべてが素晴らしいことばかりで、完璧にするためにもう一つだけ要望するのは少しばかり面映い。それは試合数を4局増やして16番勝負にすることである。欲張りすぎではないはずである。

******************************

(この号続く)

2010年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

ルイロペスの完全理解(6)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

e5ポーンに対する圧力

 e5ポーンに対する圧力は 3.Bb5 の主眼点でありルイロペス全体の存在理由となっている。だからもし黒が対抗策を取らなければ、このビショップの単刀直入の展開は守り駒の Nc6 を釘付けにするか取ってしまう含みでe5に対するしつこい圧力となることがある(図3)。

 図3

 例えばここでは Bb5 とかかられているために黒は …exd4 で中原の争点を解消せざるを得ない。なぜなら代わりに …Bd7 とするのはポーンを救うことにならないし(Bxc6 Bxc6、dxe5 dxe5、Nxe5 Bxe4、Ng4 はこの局面での想定手順である)、…Nd7 は明らかに劣ったポーンの形を受け入れることになるからである(Bxc6 bxc6、dxe5 Nxe5、Nxe5 dxe5)。

 ルイロペスの主流手順の多くで黒がこの問題を根本的に解決するためにe5ポーンに対する狙いがまだ戦術的手段ではねつけることのできる非常に早い段階でaポーンとbポーンで白のビショップを追い払うのはこのためである(図4)。

 図4

 …a6 の後このビショップは Nc6 に対する釘付けを緩めざるを得ない(Ba4 b5、Bb3)。なぜなら Bxc6 からe5のポーンを取るのはまったく幻だからである。即ち …dxc6!、Nxe5 Qd4 で白は Ne5 とe4のポーンを同時に守ることができない。

 しかし …a6 および …b5 突きには別の側面があることも確かである。というのは第2章の初めで見られるように、一般に黒のクイーン翼を弱め(例えばa5とc6の地点)aポーンとbポーン自体をもっと脆弱にするからである。

 局面がもっと進んだ段階で白はfポーンに働きかけることによってe5にもっと圧力をかけることができる。この作戦行動は …a6 と …b5 でa2-g8の斜筋に追われたキング翼ビショップの動きによって促進されることがある。ここで例を見てみよう(図5)。

 図5

 黒は …Re8 と指したところであるがこの後 …Bf8 で中原の防御を補強する用意をしている。しかし相手は先に Ng5 と指して先手を取ることができる。ルークはf7のポーンを守るためにあわててf8に戻らなければならない。これだけを見ればナイトのg5への急襲はf7への攻撃が全然成果をあげないので特に顕著な結果は得られない。しかし白はそれを利用して f2-f4 突きの手段でe5への圧力を増すことができる(図6)。

 図6

 これで白が相手に争点の解消をしむける論点を増やしたことは明らかである。もっとも黒がそのような方針を強制されるとまでは言えないが。しかし白にそのような機会を与えないように黒は Rf8 を動かすつもりならば先受けの …h7-h6 を指しておくことがよくある。

 白が h2-h3 を指してある時はキング翼ナイトをh2に引いて f2-f4 突きを準備できることを指摘しておく。以降の章で見られるようにこの捌きは複数の目的を持っていることがよくある。

 最後にe5のポーンへの圧力を増す別の方法はもっと手の込んだ捌きに存在する。白はキング翼ビショップをc2に引いてクイーン翼でのフィアンケットを準備することができる(b2-b3 - または a2-a3、b2-b4 - そして Bb2)。そして後でこの黒枡ビショップの筋を c3-c4 によって空ける(図7)。

 図7

 もし …bxc4、Nxc4 という交換が行なわれればクイーン翼ナイトがe5への圧力に貢献できる。黒の方もe5を守る手段がないということではない(図の場合 …f7-f6 があるし …c7-c5 と突いてあれば …Qc7 もある)。だから圧力により相手に …exd4 という譲歩を強制する効果を達成することはあまりない。それでも黒は表向きの動機がないことに非常に用心しなければならない。実際白の捌きの目的が閉鎖中原または交換中原に至る有利な条件を作り出すことを含んでいることはよくあることである。従って黒は時にはそのような事態に抵抗するために中原の争点を解消することを決断しなければならない。

(この章続く)

2010年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(5)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点

 前述のすべての戦法における d2-d4 突きのあとd4とe5のポーンの間に争点の状態が発生する。それがこの章の見出しである。戦略の基本的な特徴は次の図に現れている(図2)。

 図2

 注意しておくが、通常の状況では白は …exd4 と取られた場合に中原のポーンの並びを復元できるように前もって c2-c3 と突いておいてdポーン突きを助ける。

 中原での争点の状態で何が起こるか理解するために布局の一般原則を思い出そう(もっとも、絶対的な原則というよりも大ざっぱな指針であるが)。それによると中原で争点を解消する者は相手に譲歩するということである。もちろんこの原則は非常に明確な戦略上の基礎で、つまり争点を解消する者は自分の意図を明らかにし一般的には中原の地点への影響力を放棄するということになる。

 だから現在の局面では相手が …exd4 と取ってくるのを待つのは白にとって有利である(d4がポーンで取り返されても駒で取り返されてもこの手は中原の陣地を事実上譲ることになる)。一方黒は当然ながら dxe5 と取ってくるのを待つことができるし(中原が完全に互角の状態になる)、d5 と突いてくるのを待つことさえできる(理由はこの場合も白が中原への影響力-e5に対する圧力とc5への圧力-をいくらか失いe4-d5の連鎖ポーンの態勢で相手に反撃の具体的な目標を与えるからである)。図2に関して述べたことと同様の条件で手数引き延ばしを行なうことも可能である(20手目以降まで引き延ばすことも可能である)。この間それぞれの側は相手に中原でのもくろみを明らかにさせるように努め、有利と見ればいつでも争点を緩和する用意をしている。

 中原の流動的な状態はいずれにせよ徐々に煮詰まる運命で、一般には以降の4章で取り上げられる中原の一つになる。それでも不安定な状態の期間は両者とも主眼の戦略上の捌きと活動の余地がある。それらは以降の4章の中原の型にも典型的に存在し、この章で十分に解説するのに値する。

(この章続く)

2010年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス布局の指し方[20]

第2章 ポーンの重要性

2.2 ポーンの形

 不良ビショップはある定跡、特にフランス防御、につきものの災難である。ポーンの形が固定されるとビショップの不利が終局までずっと続くことがある。

 図29(白番)

 図29では収局における優良ナイトの不良ビショップに対する勝利が見られる。ビショップ対ナイトのすべての局面における一般原則は、ビショップを持っている側は自分のポーンをビショップのいる枡と同じ色の枡に置かないようにすべきであるということである。図の局面で黒のビショップは動く範囲が非常に制約を受けているので保護パスcポーンがあっても負けを免れない。試合は次のように進んで終わった。1.f5(見せかけのポーンの犠牲でナイトのためにf4の拠点を空けた)1…g5 2.h4 f6 3.hxg5 fxg5 4.Ng1 Bd7 5.f6+ Ke8

6.Nf3 g4 7.Nh4 Be6 8.Ng6 Bf7 9.Nf4 Kd7 10.Ke2 a5 11.Ke3

(黒はほぼ「手詰まり」である。キングは白の e6 突きを防ぐためにd7にいなければならずビショップはdポーンとhポーンを守るためにf7にいなければならないので黒が駒を動かせば戦力損になる)11…Bg8 12.Nxh5 Bf7 13.Nf4 Bg8 14.Ne2 Be6 15.Kf4 Ke8

16.Kg5 Kf7 17.Nc3 Kf8 18.Kg6 Kg8 19.f7+

19…Kf8(19…Bxf7+ は 20.Kf6 Kf8 で本譜に戻る)20.Kf6 Bxf7 21.e6 Bh5 22.Nxd5 Be8 23.Nc3 黒投了

dポーンが前進していってすぐに白の勝ちが決まる。

(この章続く)

2010年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

ルイロペスの完全理解(4)

第1章 中原の争点

主手順 - シュタイニッツ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.d4(図1)

 図1

 我々はこれを「主手順」に選んだ。理由は中原の争点から生じる最も重要な局面だからではなくて我々の目的に最も適しているからである。通常の …a7-a6、…b7-b5 突きと h2-h3 突きがないことは、両者が中原で争点を維持することができ、かつ/または相手に不利な状況下で争点を解消させるように争点を強めることのできるすべての手段を説明するのに都合がよい。この教えるのを意図した工夫は別にしても、中原の争点(次からの4章で検討する中原が生じる段階)はルイロペスの主流手順の多くで現れる。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 の後

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4

 …Nd7 のケレス戦法
 - 9…Nd7 10.d4

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 Bd7 6.d4

 タイマノフ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 b5 5.Bb3 Na5 6.O-O d6 7.d4

 アルハンゲリスク戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 Nf6 5.O-O O-O 6.d4

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.d4
 - 3…g6 4.c3 d6 5.d4

(この章続く)

2010年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(3)

序章(続き)

どの戦法を指すべきか

 どの戦法が自分の棋風に最も合っているか決めるのに役立つように戦法一覧をまとめた(巻末を参照)。そこに戦法の戦略と戦術の複雑さの程度が示されている。さらに、水準7以上のFIDE大会で指された約2000局の調査を用いて、危険度の概観に役立つように各戦法の頻度と結果の割合の統計データを求めた。これにより必要度に応じて最も適切な選択に役立つ情報がすべて得られる。

(この章終わり)

2010年07月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

ルイロペスの完全理解(2)

序章

 ルイロペスは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から生じる陣形である。白の通常の構想は d2-d4 突きによってe5に対する圧力を増すことで、c2-c3 突きで支援することもよくある。おおまかに言うとこの圧力の目的は黒からの …e5xd4 取りを誘って中原での陣地の拡大を達成することである。黒の方は二通りのまったく異なった手段でこの作戦に対抗することができる。(1)白が d2-d4 と指すのを待つ。そのあと白に閉鎖(d4-d5)中原を望むか交換(d4xe5)中原を望むかをしむけるようにして中原の形(いわゆる「閉鎖」ルイロペス)を決めさせる。(2)e4ポーンへ速やかに反撃する(…Ng8-f6xe4 でのいわゆる「開放」ルイロペス、および …d7-d5 または …f7-f5 によるギャンビットの着想)。防御の可能性のすべてをうまく使うために黒は …a7-a6 から …b7-b5 と突いてb5のビショップを追い払うのが普通である。しかしこの選択肢は必然ではなく、まったく省略するか一部だけ用いることも可能である。

 題材は従来の戦法の細分化でなく「中原の型」に基づいて分類されているので、読者の便に供するためにこれから検討していく題材の一覧を掲げる。

 最初の5章は以下のようにルイロペスの「閉鎖的」概念に当てられている。

第1章
中原の争点 - 白が d2-d4 と突いたとき生じる中原の争点の状況について調べる(図Ⅰを参照)
 図Ⅰ

第2章
閉鎖中原 - d4-d5 のあと生じる状況について調べる(図Ⅱを参照)
 図Ⅱ

第3章
交換中原 - d4xe5 と …d6xe5 のあと生じる状況について調べる(図Ⅲを参照)
 図Ⅲ

 第4章と第5章は黒が …e5xd4 と取る場合を取り上げる。

第4章
可動中原 - 白がcポーンでd4を取り返す(図Ⅳを参照)
 図Ⅳ

第5章
小中原 - 白が駒でd4を取り返す(図Ⅴを参照)
 図Ⅴ

 第6章、第7章および第9章では黒の取りうる他の対処法、即ちe4ポーンに対する素早い反撃のいろいろな展開を見てみる。これらの3章はそれぞれルイロペスの「開放」の概念(…Ng8-f6xe4)と二つの主要なギャンビットの着想(…d7-d5 と …f7-f5)を扱う。

第6章
開放中原 - 黒が …Ng8-f6xe4 と指す(図Ⅵを参照)
 図Ⅵ

第7章
マーシャル中原 - 黒が …d7-d5 と指す(図Ⅶを参照)
 図Ⅶ

第9章
シュリーマン(イェーニッシュ)中原 - 黒が …f7-f5 と指す(図Ⅷを参照)
 図Ⅷ

 最後に第8章と第10章は残りの二つの特別な場合で、白が Bb5xc6 と交換する場合と黒がこれに先立ち …Nc6-d4 として Nf3xd4 を受け入れなければならない場合とを調べる。

第8章
フィッシャー中原 - 白が Bb5xc6 と指し黒が …d7xc6 と取り返す(図Ⅸを参照)
 図Ⅸ

第10章
バード中原 - 黒が …Nc6-d4 と指し白が Nf3xd4、…e5xd4 によってd4で交換する(図Ⅹを参照)
 図Ⅹ

(この章続く)

2010年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

「ヒカルのチェス」(175)

「Chess Life」2010年3月号(1/7)


表紙について
ヒカル・ナカムラとアレグザンダー・オニシュクは個人別金メダルを獲得した。チームで最も若い方のグランドマスターのロバート・ヘスとレイ・ロブソンはチームの銀メダル獲得に奮闘した。チームの他のメンバーは元米国選手権者のユーリ・シュールマンとバルージャン・アコビアンである。IMジョン・ドナルドソンはキャプテンを務め18ページからの記事本文を書いた。

******************************

取る取るトルコ

IMジョン・ドナルドソン

トルコでの世界チーム選手権戦でヒカル・ナカムラとアレグザンダー・オニシュクが個人金メダルに輝き米国を銀メダルに導く

 ブルサ(トルコ)のメリノス会議センターで2010年1月4日から13日まで開催された世界チーム選手権戦で米国は準優勝し、FIDEチーム戦での好成績の伝統を守った。10チームによる総当たりで第5シードの米国は6勝2敗2分で勝ち点13をあげ銀メダルを獲得した。ヒカル・ナカムラ(8戦6点)とアレックス・オニシュク(9戦6½点)はチームに大きく貢献し、それぞれ第1席と第2席で個人金メダルを獲得した。

 米国は平均年齢25歳の自国最年少チームの一つを派遣した。第1席がヒカル(22歳)、第2席がアレックス(34歳)、第3席がユーリ・シュールマン(34歳)、第4席がバルージャン・アコビアン(26歳)、第1補欠が18歳のロバート・ヘスで、第2補欠が15歳のレイ・ロブソンだった。レイはFIDEのチーム戦に出場する米国最年少選手としてボビー・フィッシャーの持っていた記録(1960年ライプチヒでの17歳)を破った。


トロフィーを持っているのはキャプテンのIMジョン・ドナルドソン
国旗の後ろに左から右へアレグザンダー・オニシュク、ヒカル・ナカムラ、ロバート・ヘス、バルージャン・アコビアン、ユーリ・シュールマン、そしてレイ・ロブソン

米国チーム個人成績

名前 棋力 席順 得点 局数 勝ち 分け 負け 勝率 相手平均 実効棋力
GMナカムラ、ヒカル 2708 6 8 5 2 1 75.0 2658 2851
GMオニシュク、アレグザンダー 2670 9 4 5 0 72.2 2643 2809
GMシュールマン、ユーリ 2624 7 0 5 2 35.7 2618 2516
GMアコビアン、バルージャン 2628 8 2 5 1 56.3 2578 2621
GMヘス、ロバート 2572 補欠1 1 2 1 0 1 50.0 2564 2564
IMロブソン、レイ 2570 補欠2 1 2 0 2 0 50.0 2548 2548

最終順位表

順位 国名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 勝点 得点 + = -
1 ロシア 3 2 3 15 24 7 1 1
2 米国 1 3 2 3 3 3 13 21½ 6 1 2
3 インド 1 2 3 13 21 6 1 2
4 アゼルバイジャン 2 3 2 3 3 12 22 5 2 2
5 アルメニア 2 2 1 3 12 20½ 5 2 2
6 ギリシャ 1 3 3 8 18 4 0 5
7 イスラエル 1 2 3 7 17 3 1 5
8 ブラジル 1 ½ ½ 1 4 12½ 2 0 7
9 エジプト ½ 1 1 1 1 2 3 12 1 1 7
10 トルコ ½ 1 1 1 ½ 2 3 11½ 1 1 7

******************************

(この号続く)

2010年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

ルイロペスの完全理解(1)

はしがき

 本書は一つの大きな目標を念頭に書かれた。それは布局を理解することを教えることである。もちろんこれは変化を列挙することによっては成し遂げられない。代わりに我々はそれぞれの側の重要な着想と方針を説明するように努めた。そして読者が本文の大部分を盤駒なしで理解できるように独特の「読んで試す」方式で手早く簡単に説明することに努めた。

 この意欲的な目標を達成するための我々の指導原則は、中原ポーンがいったん安定すれば、異なったポーン形になる同じ戦法の異なった戦型同士よりも、同じ中原ポーン形の色々な戦法同士の間に戦略的および戦術的に似かよった所が多いという事実である。この単純なやり方ですぐにどんな局面でもその本質的な着想を理解することができる。このやり方は体系化の必要性により理解の過程が非常に困難になる通常の布局定跡の本と大きく異なっている。

 出発点が決まればあとは論理的に進む。布局は戦法でなく「中原の型」(通常は主要な戦法の名称をそのまま用いた)によって分類した。これにより同じ戦法の異なった戦型は生じるポーン形によってある型または他の型の中原で吟味されるかもしれない。それぞれの中原の型は三つに分かれて論じられる。戦略の着眼点の完全な解説(最も現代的なものに特に注意を払う)、繰り返し現れる戦術の狙いどころの概説、そして最後に布局を特に詳しく解説した実戦例という具合である。これらの試合の検討では(このためにはチェス盤の使用が必要である)読者は二つの理論的な解説部との実戦的な適合だけでなく付加的な実証の変化にも出くわすだろう。実戦例を詳細に読むことは前に解説された戦略の概念を完全に理解するのに必須である。

 現れる可能性のあるすべての中原の型を本書に含めることはできないけれども、少なくともすべての場合の85%を占める最も重要でありふれたポーン形はすべて取り上げた。取り上げられなかった少数のポーン形(それらはすべて重要でないわき道から生じる)は従来の単行本で参照できる。

 読者がどちら側を持って指すつもりでも本書が等しく役に立つように、著者らは題材への取り組みでできるだけ客観的であるように努め、中原のそれぞれの型における着眼点の解説で偏見のないことを目指した。

 本書は布局の基本を学ぼうとする初心者とクラブ選手から、いろいろな戦法に素早く習熟したり自分の布局の得意戦法にまったく新しいものを追加するために必須の下地を習得したいと考えている熟練者まで、広範な選手によってさまざまに用いることができる。もちろん勝敗を争う最上位の選手や、もっと戦法の詳細な細部や最新の流行すべてが必要な人たちまで、系統的な教科書と共に本書が使えるに違いない。

 著者らは読者が我々の解説をはっきりと理解し、しっかりと楽しく学び、とりわけ理解力を高めそれにより棋力を向上させることを期待している。その時に初めて「読んで試す」方式は成功したことになる。

 ダニエル・キング、ピエートロ・ポンツェット

2010年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ルイロペスの完全理解

チェス世界選手権争奪史(267)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 そして今は何が起こっているのか。フィッシャーはこれから30年間自分がチャンピオンのままであると言った。今のところは彼に反旗を翻す者は誰もいない。確かに彼は史上最強のチェス選手である。彼は布局をドイツの文献学者の根気強さで研究し、彼に対してどんな準備も困難になるように得意戦法を多様化することを学んだ。彼の収局の技量は並ぶ者がない。一部の者が主張したように中盤に弱点が見られるとしても、最強の選手たちでもそれにつけ込むことができなかったということである。

 それなら彼は他の多くのことと同じようにこの誇りを保持していくだろうか。おそらくそうするだろう。今日では世界のチェスは非常に急速に動いていて、絶えず新しい選手たちが登場している。いつか彼らのうちの誰かがフィッシャーへの手ごわい挑戦者になるかもしれない。これに対してもフィッシャーは応分の責任がある。

(完)

2010年07月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

世界のチェス雑誌から(80)

「Chess Life」2010年6月号(1/1)

******************************

青少年
2010年トロフィーズプラス オールアメリカチーム

毎年恒例の米国最強青少年選手たちの発表

 米国チェス連盟は晴れてトロフィーズプラス社後援の2010年オールアメリカチームを発表する。43名のチームメンバーは12月11日から13日にかけてテキサス州ダラスで開催された2009年全国12学年別選手権戦で紹介された。2010年オールアメリカチームのメンバー各位にはチームのジャケットとバッジが贈られた。

 オールアメリカチームは18歳以下の最優秀な選手たちを表彰するために1987年に創設された。このチームは若いチェス選手の獲得できる国内最高の名誉の一つで、その年度の年齢、レイティングおよび活躍度に基づいて選ばれる。いわば全体協議のスポーツチームの選出過程に似ている。今年の候補は2009年1月1日現在の年齢と2008年7月1日から2009年6月30日までの大会後の最高レイティングとに基づいて選ばれた。この賞は「シーズンオフ」の選考なので各年代の必要最低レイティングは米国チェス連盟スタッフと同連盟青少年委員会によって毎年見直される。

 オールアメリカチームはアイオワ州テンプルトンのトロフィーズプラス社の後援を受けていて今年で6年連続である。この賞の支援に加えてトロフィーズプラス社の社主のドイル・エンゲレン氏は大会終了後のトロフィーの発送だけでなく全国大会のトロフィーも提供してくれている。米国チェス連盟は今年のオールアメリカチームの後援により青少年チェスの一翼を担っているトロフィーズプラス社を誇りとしている。トロフィーズプラス社のウェブサイトの www.trophiesplus.com をぜひ訪れて欲しい。

 米国チェス連盟は今年のオールアメリカチームのメンバー全員に対してこの名誉ある賞の授与を祝福する。以下に13歳以上のチームメンバーの経歴を掲載する。13歳未満のチームメンバーの経歴は http://main.uschess.org/content/view/9789/319/ または「Chess Life for Kids」2010年4月号(米国チェス連盟会員限定で uschess.org でPDF形式で見られる)で見ることができる。


FMダニエル・ナローディツキー、13歳、2383
カリフォルニア州、フォスター市
コーチ GMレフ・プサーヒス、リション=レ=ザイオン(イスラエル)
チェス活動歴 2007年FIDEマスター、2007年世界少年少女12歳以下チャンピオン、カリフォルニア州青少年チャンピオン3期、全国青少年チャンピオン2期、著書「Mastering Positional Chess」が2010年3月に発売
趣味など 読書、地理、バスケットボール、著作


グレゴリー・ヤング、13歳、2249
カリフォルニア州サンフランシスコ
チェス活動歴 2007年全国第9学年同点優勝、2008年ジュニア選抜同点優勝
趣味など 数学、科学、バスケットボール、コーラス、ドラマ


GMレイ・ロブソン、14歳、2553
フロリダ州セミノール
チェス活動歴 史上最年少米国人グランドマスターで現在世界最年少グランドマスター、16歳以下世界ランキング第6位、2009年サムフォード奨学金授与、2009年米国ジュニア招待チャンピオン、2009年汎アメリカ20歳以下チャンピオン
趣味など スポーツ全般と読書


パーカー・チャオ、14歳、2342
ニューヨーク州ニューヨーク
コーチ GMアレックス・ストリプンスキー
チェス活動歴 2009年ニューイングランドマスターズで国際マスター基準を獲得、2005年第3回スーパー全国第9学年で同点優勝、2007年フォックスウッズ2200未満で1位
趣味など クロスカントリー、テニス、数学、科学


FMコンラッド・ホールト、15歳、2315
カンザス州ウィチタ
チェス活動歴 2008年米国候補生チャンピオン、2008年全国高校ブリッツチャンピオン、2008年ワールドオープン2200以下同点1位、2009年FM
趣味など ピアノ、コンピュータプログラミング


FMマイケル・リー、15歳、2385
ワシントン州ベルビュー
コーチ GMヒカル・ナカムラ
チェス活動歴 2009年ワールドオープンで国際マスター基準獲得、全国チャンピオン3度(2008年第9学年、2005年6年生、2003年4年生)、2005年からオールアメリカチームのメンバー
趣味など 数学、科学、読書、ピアノ、ベルビュー・フィルハーモニックオーケストラとサマミッシュオーケストラで演奏


FMビクター・シェン、15歳、2306
ニュージャージー州エジソン
コーチ GMジョエル・ベンジャミン
チェス活動歴 6度目のオールアメリカチームのメンバー、2009年汎アメリカ選手権16歳以下金メダル、国際マスター基準1回獲得
趣味など 数学、英語、トラック競技、ピアノ


FMスティーブン・ズィールク、15歳、2333
カリフォルニア州キャンベル
コーチ マイケル・エイグナー、GMメリクセット・カチヤン
チェス活動歴 2009年極西部オープンで2700実効レイティング、2008年ワールドオープン2200以下で3位、2007年ワールドオープン2000以下で2位、2001年ワールドオープン1400以下で優勝
趣味など テコンドーで黒帯二段、読書、プログラミング


IMマーク・アーノルド、16歳、2473
ニューヨーク州ニューヨーク
コーチ GMユーリ・シュールマン
チェス活動歴 2007年米国ジュニアチャンピオン
趣味など 野球、バスケットボール、スポーツエージェント志望


FMジョン・ダニエル・ブライアント、17歳、2449
テキサス州リチャードソン
チェス活動歴 2007年アメリカオープン2位、2009年西部州オープン2400以下優勝


GMロバート・ヘス、17歳、2605
ニューヨーク州、ニューヨーク
コーチ GMミロン・シェル
チェス活動歴 2009年米国選手権戦準優勝、2009年第4回スーパー全国大会第12学年優勝、2009年スパイス春季招待大会優勝、2008年フォックスウッヅオープン同点優勝
趣味など 数学、歴史、スポーツ競技/観戦、ガールフレンドや友人との付き合い


IMサム・シャンクランド、17歳、2482
カリフォルニア州オリンダ
チェス活動歴 2008年世界少年少女選手権戦銅メダル、2008年カリフォルニア州チャンピオン、2008年と2009年の米国選手権戦に進出
趣味など サッカー、ラクロス、テニス


FMダニエル・イェーガー、17歳、2400
テキサス州リチャードソン
チェス活動歴 2008年高校チャンピオンデンカー大会優勝、2008年全国高校生チャンピオン


IMダニエル・ルードウィグ、18歳、2543
フロリダ州オコイー
チェス活動歴 2008年米国マスターズチャンピオン、2004年米国候補生チャンピオン

******************************

(この号終わり)

2010年07月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から

チェス世界選手権争奪史(266)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 8月21日水曜日ついに長いドラマも終わりを迎えた。7局連続引き分けの後ボビーがタイトル獲得を決めようとしているように見え始めていた。しかしボリスは当然ながら最後の必死の抵抗(19.Nxd5!?)をしないで済ませるわけにはいかなかった。そして彼の最終手のポカがなかったら番勝負はまだ続いたかもしれなかった。

シチリア防御
白 スパスキー
黒 フィッシャー

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Nc3 Nc6

6.Be3 Nf6 7.Bd3 d5 8.exd5 exd5 9.O-O Bd6 10.Nxc6 bxc6

11.Bd4 O-O 12.Qf3 Be6 13.Rfe1 c5 14.Bxf6 Qxf6 15.Qxf6 gxf6 =

16.Rad1 Rfd8 17.Be2 Rab8 18.b3 c4 19.Nxd5 Bxd5 20.Rxd5 Bxh2+

21.Kxh2 Rxd5 22.Bxc4 Rd2 23.Bxa6 Rxc2 24.Re2 Rxe2 25.Bxe2 Rd8

26.a4 Rd2 27.Bc4 Ra2 28.Kg3 Kf8 29.Kf3 Ke7 30.g4? f5

31.gxf5 f6 32.Bg8 h6 33.Kg3 Kd6 34.Kf3 Ra1 35.Kg2 Ke5

36.Be6 Kf4 37.Bd7 Rb1 38.Be6 Rb2 39.Bc4 Ra2 40.Be6 h5

ここで試合が指しかけになった。もし白が 41.Kh3! を封じ手にしていたら勝負はまだ分からなかっただろう。しかし実際の封じ手の 41.Bd7? の後は 41…Kg4 からhポーンを突き進めていってすぐに黒の勝ちになる。だからスパスキーは試合を再開せずに投了した。これで対戦成績がフィッシャーの12½-8½となってフィッシャーが世界チャンピオンになった。

(この章続く)

2010年07月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

チェス世界選手権争奪史(265)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 この間にもチェスは進行し引き分けのたびにフィッシャーが長年抱いていた夢に近づいていた。第19局と同じ日にチェスター・フォックスの弁護士は有名な訴訟(それは賃金・物価ガイドラインに当てはまらず175万ドルと経費を要求していた)の訴状を提出したが、試合は典型的だった。

アリョーヒン防御
白 スパスキー
黒 フィッシャー

1.e4 Nf6 2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.Nf3 Bg4 5.Be2 e6

6.O-O Be7 7.h3 Bh5 8.c4 Nb6 9.Nc3 O-O 10.Be3 d5

11.c5 Bxf3 12.Bxf3 Nc4 13.b3 Nxe3 14.fxe3 b6 15.e4 c6

16.b4 bxc5 17.bxc5 Qa5 18.Nxd5 Bg5 19.Bh5 cxd5 20.Bxf7+ Rxf7

21.Rxf7 Qd2 22.Qxd2 Bxd2 23.Raf1 Nc6 24.exd5 exd5 25.Rd7 Be3+

26.Kh1 Bxd4 27.e6 Be5 28.Rxd5 Re8 29.Re1 Rxe6 30.Rd6 Kf7

31.Rxc6 Rxc6 32.Rxe5 Kf6 33.Rd5 Ke6 34.Rh5 h6 35.Kh2 Ra6

36.c6 Rxc6 37.Ra5 a6 38.Kg3 Kf6 39.Kf3 Rc3+ 40.Kf2 Rc2+ 引き分け

(この章続く)

2010年07月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

チェス布局の指し方[19]

第2章 ポーンの重要性

2.2 ポーンの形

 個々のポーンの弱点はさておき、ポーンの形の悪さに直接起因する陣形上の欠陥にはいくつかの種類がある。通常これらはあまりに多くのポーンが同一の色の枡に固定された時に起こってくる。最も顕著に現れたのが「不良」ビショップ(味方のポーンによって動きが阻害されているビショップ)である。際立った例を次に示す。

 図28(白番)

 図28で白は非常に優勢である。それはf5とh5の空所を自分の駒の拠点として利用できることと、黒のどうしようもないg7のビショップがこの局面でポーンよりましと言えそうもないことによる。黒の窮状は厳しい締め付けによって倍加している。白のポーンが広い陣地を占めているので黒は息が詰まりそうである。勝利への作戦は見つけるのが難しくない。白は単に駒を組み換えて Nxd6 の犠牲を成立させるようにすればよい。これに対して黒は駒の動きが不自由で行ったり来たりさせるしかないので絶望的である。試合は次のように進んだ。1.Qc1 Rd8 2.Qa3 Bc8 3.Be3 Rd7 4.Rac1 Rd8 5.Red1 Bd7

6.Nxd6! Nxd6 7.Bxc5 Bc8 8.Bg4! Bxg4 9.hxg4 Rd7 10.Nf5 Qd8

11.Bxd6 Nf8 12.c5 Ng6 13.c6 bxc6 14.dxc6 Rxd6 15.Qxd6 Qxd6 16.Rxd6 黒投了

(この章続く)

2010年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス布局の指し方

チェス世界選手権争奪史(264)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 次にこっけいな気晴らしを提供するのはソ連側の番だった。その思いつきがモスクワの体育スポーツ局のある天才によるものか、または実際に愚行に署名したスパスキーの助手のエフィム・ゲレルによるものか、はたまたスパスキー自身によるものかはまったく不明である。ともかく第17局の日にある声明が報道陣に流布された。それは多くの人にジェームズ・ボンド映画の『ロシアより愛をこめて』と世界チェス選手権戦の(大変奇抜な)見方を思い起こさせた。その声明はフィッシャーの「非紳士的」な行動に対するいつもの抗議から始まり、挑戦者のとっぴな振る舞いが「故意に相手にプレッシャーを与えることを狙いB・スパスキー選手を動揺させ戦意を削いでいる」と主張していた。以降は厳密には空想の世界の産物だった。

 『我々の受け取った手紙によれば対局場に入れられるような電子機器と化学物質がB・スパスキー選手に影響を与えるために使用されている。その手紙が特に指摘しているのはR・フィッシャー選手の椅子と米国側の要求で壇上の頭上に設置された特別の照明の影響である。

 これらはすべて奇想天外に思われるかもしれないが、これに関連したいくつかの客観的な要因についてそのような一見奇想天外な推測を考えざるを得ない。

 例えばR・フィッシャー選手はなぜ金銭上の損失をこうむるにもかかわらず映画撮影に強く異議を申し立てるのであろうか。理由の一つは彼が関係者の行動と身体状態をたえず客観的に管理されるのを排除したいからかもしれない。彼が対局を非公開で行ない観客を最前7列から立ち退かせるという彼の度重なる要求も考えてみれば同じ仮定が成り立つかもしれない。

 対局がない時に、それも夜に、アメリカ人たちが対局会場に見受けられるのは不思議である。両者の椅子が同じ米国の会社によって作られ同一のように見えるのに、R・フィッシャー選手に「彼」特注の椅子を与えるようにとのF・クレーマー氏の要求も不思議である。

 ずいぶん昔からB・スパスキー選手を知っているが、あのような尋常でない集中力のゆるみと対局時の衝動的な着手を見るのは初めてのことであることも指摘しておきたい。それはR・フィッシャー選手の極めて素晴らしい指し回しだけでは説明がつかない・・・』

 ロータル・シュミットはこれまでの週の狂気の沙汰によってもユーモアのセンスをまったく失ってはいなかったが、ソ連の抗議を「米国の抗議と同様に誠心誠意を持って」対処すると言明した。そして監視員が会場の周りに24時間配置された。

(この章続く)

2010年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

チェス世界選手権争奪史(263)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 これで対戦成績がフィッシャーの8-5となりスパスキーはまったく戦意を喪失してしまった。それでもまた対局を延期した後7局連続で引き分けだった。これは試合そのものが激戦でなかったということではない。実際戦いは激しかった。そうではなくてスパスキーを含めほとんど誰もがもう番勝負の行方は疑いないと感じていたにすぎなかった。

 もちろんこっけいなもエピソードあった。例えば第15局の日チェスター・フォックスは控えめであるが総額125万ドルを払うようボビーを告訴すると発表した。この番勝負がチェスにいかに大変革をもたらしているかを人々が気づき始めたのはおそらくこの時が初めてだった。番勝負の最後の手が指された後わずか2、3日後に出版された自著でグリゴリッチは次のように書いている。

『さて、チェスのグランドマスターたちのためにさらなる宇宙時代の幕が開けた・・・番勝負後わずか3週間で2、3回署名するだけでボビーは120万ドルを稼ぐことができるのだ。[さらなる宇宙時代だって?じゃあ最初はいつなんだ?]しかし彼は署名する気があるだろうか。ペトロシアンとの番勝負後のフィッシャーの個人的なエピソードが思い出される。ロバート・ジェームズ・フィッシャーは総額6桁でヘアーローションの宣伝に出ないかと誘われた。少しためらったあと彼は怒ったような調子でその申し出を断った「そんなことはできない。何しろ自分で全然使わないんだから」。』

(この章続く)

2010年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

チェス世界選手権争奪史(262)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 これでフィッシャーのリードが6½-4½と縮まりこのような圧勝で士気が鼓舞されてスパスキーが盛り返すのではないかと思われた。第12局はフィッシャーの白番でクイーン翼ギャンビットになり好局の引き分けだった。そして第13局ではこの番勝負全体で最も激烈な戦いになった。

アリョーヒン防御
白 スパスキー
黒 フィッシャー

1.e4 Nf6(フィッシャーは1970年にアリョーヒン防御を何回か指していた。パルマでのインターゾーナルでは3局指し2勝1引き分けだった。だからスパスキーが明らかに準備していなかったことは同様に驚きだった)2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.Nf3 g6

(4…Bg4 については(265)の第19局を参照)5.Bc4(これは凡庸な手である。5.Be2 が通常の手で1970年ザグレブでのブラウン対フィッシャー戦は 5…Bg7 6.c4 Nb6 7.exd6 cxd6 8.Nc3 O-O 9.O-O Nc6 10.Be3 Bg4 11.b3 d5

と進んだ。5.Ng5 という手もあり 5…c6! 6.Bc4 Bg7 7.Qe2 となって本譜より激しくなる。)

5…Nb6(代わりに 5…c6 はおとなしすぎる。1968年チェコスロバキアでのカバレク対クプカ戦では以下 6.O-O Bg7 7.exd6 Qxd6 8.h3 +/= と進んだ)6.Bb3 Bg7

7.Nbd2?!(7.O-O O-O 8.a4! a5 9.h3 Nc6 10.Qe2 d5? 11.Nc3 Be6 12.Bf4 +/=

ケレス対クプカ、カプフェンベルク、1970年)7…O-O 8.h3(?) a5! 9.a4?(9.c3)9…dxe5 10.dxe5 Na6!

11.O-O(11.Ne4 Qxd1+ 12.Kxd1 Bf5 13.Ng3 Bd7 =/+)11…Nc5 12.Qe2 Qe8! 13.Ne4 Nbxa4 14.Bxa4 Nxa4 15.Re1 Nb6 16.Bd2 a4

17.Bg5(17.Bb4 Nd5!)17…h6 18.Bh4 Bf5(? 18…Bd7!)19.g4 Be6(19…Bd7!)20.Nd4!

20…Bc4 21.Qd2 Qd7 22.Rad1 Rfe8 23.f4! Bd5 24.Nc5 Qc8

25.Qc3(25.e6!)25…e6! 26.Kh2 Nd7 27.Nd3?(27.Nb5!)27…c5! 28.Nb5 Qc6 29.Nd6 Qxd6 30.exd6 Bxc3 31.bxc3 f6

32.g5! hxg5 33.fxg5 f5 34.Bg3 Kf7 35.Ne5+ Nxe5 36.Bxe5 b5

37.Rf1 Rh8! 38.Bf6! a3 39.Rf4 a2 40.c4 Bxc4 41.d7 Bd5

(ここで指し掛けになった)42.Kg3! Ra3+

43.c3(43.Kf2? Raxh3 44.d8=Q Rxd8 45.Bxd8 e5!)43…Rha8! 44.Rh4 e5! 45.Rh7+ Ke6 46.Re7+ Kd6 47.Rxe5 Rxc3+ 48.Kf2 Rc2+

49.Ke1 Kxd7 50.Rexd5+ Kc6 51.Rd6+ Kb7 52.Rd7+ Ka6 53.R7d2 Rxd2 54.Kxd2 b4

55.h4(55.Kc2? Kb5 56.Kb2 c4 57.Ka1 c3 -+)55…Kb5 56.h5 c4! 57.Ra1 gxh5 58.g6 h4 59.g7 h3 60.Be7 Rg8

61.Bf8(61.Bf6 も十分引き分けだった)61…h2 62.Kc2 Kc6 63.Rd1 b3+ 64.Kc3?

(64.Kb2 の方が正確だった)64…h1=Q!(64…f4 65.Rd6+! Kc7 66.Rd1!=)65.Rxh1 Kd5 66.Kb2 f4 67.Rd1+ Ke4 68.Rc1 Kd3

69.Rd1+??(69.Rc3+ Kd4 70.Rf3 c3+ 71.Ka1 c2 72.Rxf4+ Kc3 73.Rf3+ Kd2 74.Ba3!

これで簡単な引き分け)
69…Ke2! 70.Rc1 f3 71.Bc5 Rxg7 72.Rxc4 Rd7! 73.Re4+ Kf1 74.Bd4 f2 白投了

(この章続く)

2010年07月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

「ヒカルのチェス」(174)

「British Chess Magazine」2010年4月号(1/1)

******************************

世界チーム選手権戦

    平均 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 得点 勝ち点
1 ロシア 2728 3 2 3 24 15
2 米国 2629 1 3 2 3 3 3 21½ 13
3 インド 2606 1 2 3 21 13
4 アゼルバイジャン 2683 2 3 2 3 3 22 12
5 アルメニア 2662 2 2 1 3 20½ 12
6 ギリシャ 2583 1 3 3 18 8
7 イスラエル 2670 1 2 3 17 7
8 ブラジル 2587 1 ½ ½ 1 12½ 4
9 エジプト 2488 ½ 1 1 1 1 2 12 3
10 トルコ 2464 ½ 1 1 1 ½ 2 11½ 3

第7回世界チーム選手権戦、ブルサ(トルコ)、2010年1月5-13日
6人編成、4人対局番勝負、90分/40手+30分/残り、30秒加算/毎手

第5回戦
□ボリス・ゲルファンド(イスラエル)
■ヒカル・ナカムラ(米国)
キング翼インディアン防御 [E97]

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7

9.Nd2 Ne8 10.b4 f5 11.c5 Nf6 12.f3 f4 13.Nc4 g5 14.a4 Ng6

15.Ba3 Rf7 16.b5 dxc5 17.Bxc5 h5 18.a5 g4 19.b6 g3

 キッドのこの周知の戦型には驚くべき対称性がある。両選手は反対翼で攻撃し、その間相手のしていることは横目で見ながら無視する。ほとんど衝立(ついたて)チェスである。

20.Kh1 Bf8 21.d6!?

 21.Bg1 が2、3のグランドマスターの試合で指されている。

21…axb6

22.Bg1

 ミハイル・ゴルベフは「Chess Today」で 22.axb6 Rxa1 23.Qxa1 cxd6 24.Rd1 Ng4!? という過激な攻め手順を推奨していて黒が良さそうである。

22…Nh4! 23.Re1

 23.hxg3!? が魅力的な手だがキングの前のポーンを取るのは非常に危険である。

23…Nxg2!?

 以降の手順はこの地点で起こることをめぐって進行する。

24.dxc7?

 このかなり形勢を悲観した手の後ナカムラは華々しい指し回しでやっつけた。白は 24.Kxg2 と取るべきで 24…Rg7 25.dxc7 Qe7 26.Nxb6 Nxe4!? 27.Qd8 Bh3+ 28.Kxh3 Rxd8 29.Bc4+ Kh8 30.Nxe4 Qxc7

という度肝を抜くような大立ち回りがある。

24…Nxe1! 25.Qxe1 g2+! 26.Kxg2 Rg7+ 27.Kh1 Bh3! 28.Bf1 Qd3!!

 序盤では衝立チェスが見られた。しかしここでは別の変種の「あげちゃうチェス」に酷似している。そこでは相手に自分の駒を取らせるように指し進める。

29.Nxe5 Bxf1! 30.Qxf1

 ヒカルがまた自分のクイーン当たりをほったらかしたまま絵に描いたように勝つ手を探している様子が想像できる。しかし残念ながら彼は現実に戻りもっと平凡なやり方で試合を決めることに満足しなければならない。

30…Qxc3 31.Rc1 Qxe5 32.c8=Q Rxc8 33.Rxc8 Qe6 0-1

 黒は駒の丸得で白には代償がない。

******************************

(この号終わり)

2010年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ヒカルのチェス

チェス世界選手権争奪史(261)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 この大失態の後スパスキーは当然ながら体調不良を理由に対局を延期して休息を取った。第9局は穏やかな引き分けで、第10局は激闘の末にフィッシャーがまた勝った。対戦成績を6½-3½とリードしてボビーは閉会式と訴訟以外すべてが終わったと感じたに違いなかった。しかし「世紀の対決」には実際にはもうひとやまもふたやまも驚きが残っていた。例えば第11局がそうだった。

シチリア防御
白 スパスキー
黒 フィッシャー

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6

 ナイドルフ・シチリア防御はもちろんフィッシャーの古くからの得意戦法で、既に第7局で用いて(少なくとも序盤に関する限りでは)うまくいっていた。

6.Bg5 e6 7.f4 Qb6

 この手はいわゆる「毒入りポーン」戦法である。この戦型は詳細に研究されているので、ほんの少数のスペシャリスト以外は皆伝染病のように避けている。しかしボビーはスペシャリストの一人であるばかりでなく、たぶん他の者たちすべてを合わせたよりも知っている。彼でも時には指し手を見失うことがあるということはチェスの奥深さの何よりの証明である。

8.Qd2 Qxb2

9.Nb3

 9.Rb1 Qa3

が断然普通の手でそのあと白には3通りの手がある。1)10.e5(1950年代から指されている最も古い手)10…dxe5 11.fxe5 Nfd7 12.Bc4

2)10.Bxf6(最も堅実)10…gxf6 11.Be2

3)10.f5(最新の手)10…Nc6 11.fxe6 fxe6 12.Nxc6 bxc6 13.e5

どの手順も白黒双方にとってこれぞと思われる確かな道筋を見つけるのは悩ましい。

9…Qa3

 白は 10.a3 から 11.Ra2 でクイーンの捕獲を狙っていた。ボビーの手は次の手順の改良である。9…Nc6 10.Rb1(ここでの 10.a3 には 10…Na5 と応じられる)10…Qa3

この局面は明らかに白が優勢である。例えば 11.Bxf6 gxf6 12.Bd3 Bg7 13.O-O O-O 14.Rf3 Kh8 15.Rh3 Ne7 16.f5 exf5 17.exf5 Bxf5 18.Bxf5 Nxf5 19.Nd5

で白の攻撃が厳しい(マツロビッチ対カバレク、スース・インターゾーナル、1967年)。

10.Bxf6!

 第7局でスパスキーは 10.Bd3 と指したが 10…Be7 11.O-O h6! 12.Bh4 Nxe4 13.Nxe4 Bxh4 14.f5 exf5 15.Bb5+!?

(一番見込みがある)15…axb5! 16.Nxd6+ Kf8 17.Nxc8 Nc6!

と進んで白の攻撃が途絶えた。

10…gxf6 11.Be2

 ここまでは実は前例があった。もっともほとんど知られていない試合だったので隅から隅まで布局を研究している者(グリゴリッチがそうで、この解説は彼のこの番勝負の本のおかげである)しか知っているはずがなかった。この手に対して 11…Nc6 は 12.O-O で、12…Bd7 でも(13.Kh1 Be7 14.Bh5 Rf8 15.Qe3 Na5 16.f5 Nxb3 17.cxb3!

アンガンティソン対オガールド、デンマーク、1968年)、そして 12…Bg7 でも(13.Rf3 Bd7 14.f5 Rc8 15.Rg3! Rg8 16.Rf1

ミニッチ対ブルヨブチッチ、ユーゴスラビア、1966年)白が明らかに優勢だった。

11…h5

 12.Bh5 を防いで当然である。

12.O-O Nc6

13.Kh1

 この手は今の段階では必要ない。果たしてスパスキーは Nb1 の着想にまだ思い当たっていなかったのだろうか???

13.Bd7?

 黒は 13…Na5 と指さなければならなかった。

14.Nb1!!

 スパスキーは対局中にこの手を見つけたと主張しているが、もちろん誰も彼の言うことを信じていない。もっともチェスの歴史において前例に事欠くわけではない。古き良き時代には強豪はいつでもここぞという時には布局で新しい手を見つけたものだった。そして今日でもそれに反対する規則はない。しかしその手がモスクワから電話で来たのか、または第7局の後のいつかの時点でレイキャビクのソ連軍団の一人が思いついたのか、はたまたスパスキーの妖精の代母がこの対局中に彼に示唆したのかは大したことではなく、要はこの手がまさしく必殺の手だったということである。

14…Qb4

 黒は深刻な苦境に陥っている。14…Qb2? は 15.a4 から 16.Na3 の後 17.Nc4 または 17.Rfb1 でクイーンを取られる。そして 14…Qa4 は 15.c4! で、白の中原支配が鉄壁で優勢である。

15.Qe3

15…d5(?)

 1ポーンを献上してもうまくいきそうにない。しかし 15…Ne7 でも 16.Nbd2 でぱっとしない。もう黒が敗勢のようである。

16.exd5 Ne7

17.c4!

 17.dxe6 は 17…fxe6 で黒を捌かせるだけなので実戦の手の方がはるかに良い。

17…Nf5 18.Qd3!

18…h4

 この手は無益だが 18…exd5 は 19.cxd5 Bb5 20.Qxf5 Bxe2 21.N1d2 Bxf1 22.Rxf1

でもっと悪い。実戦の手は少なくとも 19…Ng3+ 20.hxg3 hxg3+ 21.Kg1 Bc5+ の狙いがある。

19.Bg4

 この手は黒の狙いをかわすとともに(今度は 19…Ng3+ 20.hxg3 hxg3+ の後 21.Bh3 がある)逆に黒の唯一好所にいる駒との交換を狙っている。

19…Nd6 20.N1d2 f5 21.a3!

 悪い位置にいる黒クイーンを捕らえるたくらみを新たにした。今度はうまい逃げ場所がない。

21…Qb6

 この手は絶対である。21…Qa4 には 22.Nc5 がある。

22.c5 Qb5 23.Qc3!

 次の 24.a4 に対処する手段がない。

23…fxg4 24.a4 h3

 24…Qe2 なら 25.Rae1 である。黒はここで投了するのが無難だった。

25.axb5 hxg2+ 26.Kxg2 Rh3 27.Qf6!

27…Nf5 28.c6! Bc8 29.dxe6 fxe6 30.Rfe1 Be7 31.Rxe6 黒投了

(この章続く)

2010年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史

チェス世界選手権争奪史(260)

第10章 スパスキーとフィッシャーの世紀の対決(続き)

 この災難はスパスキーの悪夢の本当の始まりになった。もっとも最悪は第8局でやって来た。第7局で黒番のフィッシャーは序盤から優勢になった。しかし中盤で性急に指して相手に収局でプロブレムのような手で引き分けに逃げられてしまった。しかしこの幸運な敗北回避にスパスキーの支持者たちが元気づけられたとしても、それは第8局の15手目から始まったチャンピオンの大ポカの連発によってたちまち消し飛んでしまった。次の局面で

15…Rc7 16.Rfe1 Rbc8 なら互角の形勢だった。それなのにスパスキーは 15…b5? と指し 16.Ba7 bxc4?(16…Ra8 17.Bxa8 Rxa8 18.Bd4 bxc4 ならまだ戦えたかもしれない)17.Bxb8 Rxb8 18.bxc4 Bxc4 19.Rfd1

19…Nd7??(19…Kf8)20.Nd5 Qxd2 21.Nxe7+ Kf8 22.Rxd2

でほんのわずかな代償もない交換損になった。

(この章続く)

2010年07月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: チェス世界選手権争奪史