后印防御の指し方の記事一覧

后印防御の指し方(001)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス

 后印防御は 1.d4 Nf6 で始まる布局定跡の軽視されたまま子である。その発展と歴史は、もっと刺激的で人気のある二印防御と密接に結びついている。つまり二印防御を学ぶなら后印防御にも熟知しなければならないのがほとんど当然のこととされている。しかし軽視は相変わらず続いている。后印防御を無視することはできないが、あまりその勉強に時間を割きたくないのが実情である。

 この軽視は過去40年の実戦経験の産物である。后印防御の初期の頃は世界大戦の間に当たり、后翼ギャンビット拒否への積極的で攻撃的と言ってもいい代替戦法だった。二印防御と緊密に結びついていたので、著名な解説者のサビエリ・タルタコーワは両者を「新印防御」という同じ布局の両側だとみなしていた。しかし二印防御が1930年代および1950年代と1960年代に攻撃の新着想と共に先鋭化していったのに対し、后印防御は第二次世界大戦前に元気をいくらか失っていった。白が正確に指せばa8-h1の斜筋を占拠する黒の戦略を無効にできることが分かった。しかしこの無効化は一つには交換をとおして達成されることがしばしばだった。この交換は白のわずかな優勢を保持するけれども試合が結局引き分けになる可能性が高かった。

 アーロン・ニムゾビッチの独創的な構想では、二印防御と后印防御は共にポーンで占拠することなく中央の地点、特にe4をめぐる戦いに基盤を置いていた。1.d4 Nf6 2.c4 e6 のあと黒は中央に向けて何も形を決めず、事の進展を待っている。

(この章続く)

2015年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(002)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 もし白が后翼ナイトをc3に出してd5に利かせ e2-e4 突きを準備すれば、黒は 3…Bb4 とかかって二印防御にする(もちろん 3…d5 で后翼ギャンビットにすることもできる)。このビショップは釘付けにより一時的に白のナイトを無力にし、白が中央ポーンをすぐに突くのを防いでいる(4.e4? Nxe4)。しかしもし白が后翼ナイトを展開しないか、キャッスリングするまで展開を延期して、3.Nf3 と指したらどうなるだろうか。ニムゾビッチの答えは …Bb7 を準備する 3…b6! だった。黒が2小駒でe4の地点をにらむようになれば、白は e2-e4 突きを図るために創造力と技術、それに相手を上回る駒が必要になってくる。

 一般的な指針は次のように簡単である。もし白が譲歩することなくポーンをe4に進めれば、布局の戦いに勝つことになる。両ビショップのために絶好の筋が素通しになり、一方はたぶんg5に他方はd3に配置されて黒駒の動きがきびしく制限される。e4-e5 と突くことにさえなれば、黒は最良の守備駒のf6のナイトを王翼から移動しなければならなくなるので、白はおあつらえの攻撃ができる。

 しかし白は譲歩することなくポーンをe4に突くことができない。例えば二印防御では白は …Bb4xc3 と取らせる代価を払って e2-e4 と突くことができる。これにより后翼ポーンが乱れ、c3に動けないポーンができて后翼ビショップの利きが制限されるかもしれない。しかし白はほかの手段でe4の地点を争うことができる。后印防御では最も単純な手段は e2-e3、Bd3、Nbd2 から Qe2 または Qc2 のような手でゆっくりと駒組みすることである。長い目で見れば白は黒よりも多くの火器をe4に向けることができる。これはe4が白駒の方に近いからである。しかしこの間に黒は注意をそらす活動を始めることができる。すなわち黒は白にeポーンを突く機会ができる前に中央で …c7-c5! と仕掛けることができる。またはナイトでe4の地点を占拠して …f7-f5 突きでそれを強化することができる。

 白の別の手段は黒駒を無力にしようとすることである。白はb7にフィアンケットされた黒ビショップの威力に、自分もビショップをg2にフィアンケットして立ち向かうことができる。これにより通常はd3で攻撃の機会をつかむのをやめることになる。そしてビショップがd3にもe2にもいなければc4のポーンは自然な守りがなくなるので黒の攻撃を誘うことにもなる。白はe4に挑む黒の別の小駒であるf6のナイトを無力にしようとすることもできる。しかし黒の …Bb4 と違い白の Bg5 の釘付けは、釘づけにされたナイトを本気で取る狙いにならない。黒は …Bb4 と指すときは、a2-a3 に …Bxc3+ と取って(ほとんどの戦型で)、白のポーンを二重にするつもりである。しかし白は Bg5 と指した時は …h7-h6 に Bh4 と引くつもりである。これは黒が Bxf6 に …Qxf6 と応じて二重ポーンを避けることができるからである。これは黒がナイトに対する釘付けを …h7-h6 から(Bh4 のあと)…g7-g5 ではずすことができることを意味している。だから黒は王翼を弱めるがe4の地点の支配を邪魔されることなく達成することができる。

 e2-e4 に加えて黒の気にする白の別のポーン突きがある。それは d4-d5 突きで、黒の后翼ナイトからc6の地点を取り上げることにより黒の小駒の邪魔をし、黒の后翼ビショップを閉じ込める。また、白ナイトが中央の強力な地点のd4に行けるようにもなる。白ナイトはここからe6、f5およびc6のような中盤戦でのいくつかの要所を見張ることができる。白の d4-d5 突きは黒の中央攻撃の …c7-c5 突きに対し特に強い応手となる。というのは黒のcポーンは既にc5に進んでいるのでc6に行ってd5の地点を攻撃することができず、白が d4-d5 と突いた時に明け渡す要所の一つのc5が単なる黒ポーンによって占拠されているからである。d4-d5 と突いた時に白はc5とe5の地点の支配を放棄している。白は通常なら小駒を用いて黒がe5の地点を支配するのを防ぐことができるけれども、c5の地点は黒ナイトにとって安全で絶好の拠点になる。それもこれも黒がポーンでc5の地点を占拠していないならばの話である。

 もし白が2手目で c2-c4 と突かなければ、后印防御は性格がはっきりしなくなる。例えば 1.d4 Nf6 2.Nf3 b6 には白の選択肢がいっぱいある。

(この章続く)

2015年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(003)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 白はcポーンを突いていないので …Bb4 には c2-c3 と応じることができるので恐れる必要がない。また、例えば …c7-c5 には c2-c3 と突いて中央を支えることもできる。c4にポーンが行っていないので白はたぶん中盤戦で強く d4-d5 と突くことができない。しかしたとえ黒が …c7-c5 のあと …cxd4 と取ってきても、cポーンで取り返すことができるので強力なポーンをd4に保持することができる。ポーンがc4にあれば白は駒で取り返すことを強いられ、白の素晴らしい中央のポーンは必要な支援が受けられなくなる。

 c2-c4 と突いていないことは何らかの点でも黒のためになる。黒としてはb7に展開される后翼ビショップの斜筋を恒久的にせき止めるどんな手も避けたい。もし白が c2-c4 と突いていれば、黒はいつでもc4のポーンと交換してビショップの斜筋を通すことができることが分かっていて …d7-d5 と突くことができる。しかしc4に白ポーンがなければ黒はもっと柔軟に中央に対処することができる。すなわちすぐに …d7-d5 と突く必要はなく、駒を効果的に中央に向かわせることができる。例えば王翼ナイトをd5に置き、もし白がポーンをc4またはe4に進めればそのナイトをf4またはb4に跳ばせることができる。この手は先手になることが多く、…c7-c5 突きで白の中央に重大な損害を与えることができる。

 それでは実戦の后印防御を見てみよう。ニムゾビッチが黒のシステムを大会の実戦に投入する前に、彼と彼以前の人たちはしばらくの間それの経験を詰んでいた。国際大会での初登場はとても成功とはいえなかったが、布局の原理はよく踏まえられていた。

(この章続く)

2015年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(004)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 O.ベルンシュテイン
黒 A.ニムゾビッチ
サンクトペテルブルク、1914年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.c4 b6!

 黒は布局の最初の数手の間はポーンを中央から遠ざける意図を表明した。中央をナイトとフィアンケットしたビショップとで遠くから支配する構想は1914年でさえ新しいとはとても言えない。半世紀以上もの間真剣な試合で用いられ時おり好結果を得ていた。ニムゾビッチの功績はこの不定形の布局構想をシステム化したことである。

4.Nc3 Bb7 5.e3 Bb4!

 この手がなければ、またはこの手の狙いがなければ、后印防御にはほとんどとげがない。この布局では黒の王翼ビショップにはe7とb4の二つしか良い地点がない。…Bb4 には白が Nc3 と指したならば、またはこの手がチェックになるならば、意味がある。どちらの場合もこのビショップ出には強制的に何かをする点がある。つまり敵ポーンを二重にする狙いか敵キングを「取る」狙いである。しかしもし白が既にキャッスリングしていれば、または后翼ナイトをd2に跳ねていれば、…Bb4 には単純に a2-a3! と応じられてしまう。そうなればこの優れたビショップは価値の劣るナイトと代償もなく交換しなければならないか、退却して手損しなければならなくなる。

(この章続く)

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后印防御の指し方(005)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白の4手目と5手目のおかげで中央を遠くから支配するという黒の戦略が全開になる。

6.Qb3 Qe7

 黒はお返しに何か得られるならばビショップをナイトと刺し違える用意ができている。黒の求める代償の最初の形は相手より優るポーン陣形で、それは白が …Bxc3+ に bxc3 と取らなければならない時に得られる。しかし白が最後の手で二重ポーンになるのを避けたので(…Bxc3+、Qxc3!)、黒は今度は代償の別の形である手得を目指す。つまりビショップを切る前に白が a2-a3 突きに1手かけるのを待っている。

7.a3 Bxc3+ 8.Qxc3

 世紀の変わり目のマスターたちはビショップをナイトと交換するのは一般につまらない考えであると信じていた。なぜならポーンがごちゃごちゃした局面を除きほとんどの局面では、長距離のビショップの方が前途が明るいからである。しかしニムゾビッチは中央に陣取ったナイトは容易にビショップと渡り合えると主張した。多くの局面ではナイトのためのそのような良い拠点はない。しかしここでは絶好のe4がある。

8…d6

 これでナイトがe4に跳べば …Nbd7-f6 により保護することができる。しかし黒はe4をもっと守りたいのにどうして …d7-d5 と突かないのだろうか。その答えは白の黒枡ビショップにある。黒は王翼ビショップを交換したことにより自分で黒枡を弱めた。だからその埋め合わせにポーンを黒枡に置いて敵の無二の黒枡ビショップを制限し黒枡で攻勢を発揮しようというわけである。また …d7-d5 は自分の残ったビショップの斜筋をふさぐことにもなりがちである。

9.b4

 白は黒が布局でいくらか劣っているとみなしているのでこの攻撃的な手を指しても当然と感じている。c4-c5 突きを用意し、后翼ビショップのためにb2の地点を空け、(黒がキャッスリングしたあと)d4-d5 から Qxg7# と指せる日が来ることを期待している。

(この章続く)

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后印防御の指し方(006)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

9…Nbd7 10.Bb2 a5!

 これがもっと控えめな 9.b3 の方が 9.b4 よりも良かったかもしれない理由である。黒は白ビショップを閉じ込めている中央のポーンが吹き飛べば、a列などの自分の素通し列で戦えるようにすることを確実にしたがっている。黒の望みはa列でルーク同士を交換し、白のbポーンを標的にできるようにすることである。白が 9.b3 よりも 9.b4 を選んだのは、いつか c4-c5 突きで中央を開放することを期待していたからだった。この理由のためにここでは b4-b5 と突くのを避ける。そう突くとc5へのポーンの利きが一部なくなるので c4-c5 と突くのが事実上不可能になる。

11.Be2 axb4

 黒は白がキャッスリングしてルークを連結できる前のここで取る。要点は白がビショップでa1で取り返さなければならず、あとでこのビショップを最下段から動かしてルークにa1とa列を譲るために手がかかるということである。

12.axb4 Rxa1+ 13.Bxa1 O-O 14.O-O Ne4!

 ここはニムゾビッチが后印防御の戦略を研究したときに夢見たに違いないたぐいの局面である。e4を完全に支配し、それにより王翼攻撃の可能性も高くなっている。適切な準備を行なえば后翼で活動することもできる。

 e4の支配を取り戻すために白はナイトをf3から動かして f2-f3 と突かなければならなくなるが、このポーン突きはe3の重要な保護者を取り去り敵が白キングを襲撃するのを助長することになる。白ナイトがf3にいなければ黒は …f7-f5 および …Rf6-h6 から …Qh4 で狙いを作り出すのが楽になるはずである。

15.Qc2 f5

 これらはすべて戦略の一部である。e4の支配が強化され、王翼攻撃の見込みがたってきた。

16.Nd2

 この手は黒の攻撃を助けるが、白は代わりに良い作戦がない。予定どおり d4-d5 と突けば、黒は単純に …e6-e5 と突き越しc8経由で后翼ビショップを戦いに引き戻す。白はまだ e4-e5 と突くのに十分な火力がないので、c5に利いている敵駒の一つである進攻した黒ナイトを消したかった。

16…Nxd2?

 16…Qg5 が強手で、17…Nxd2 でg2への攻撃を露出させる狙いがある。白が 17.Bf3 と指せば 17…Nxd2 18.Bxb7 Nxf1! で戦力損になる。

17.Qxd2 Ra8

(この章続く)

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后印防御の指し方(007)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ルークが場違いな動きをしている。a列は白の防備の薄い所だが、黒ルークにはそのどこにも侵入口がない。白は重要なa1とa2をおさえていて、もし必要ならばクイーンかどちらかのビショップで黒ルークを当たりにすることによりa3とa4から追い出すことができる。黒ルークは中央か王翼の列にいる方が良い。

 しかしとりわけこの手が悪いのは 17…e5! と突く機会を逃しているからである。このポーン突きは …f5-f4 で王翼をこじ開けるかあとで …exd4 で中央に切り込む用意をしている積極的な良い作戦である。ポーン交換はどれも白ビショップのためになるので、これは諸刃の剣の作戦であることは確かである。しかし少なくとも現実に即した作戦である。

18.Bc3 Qe8

 この手は仕掛けられた罠に想到するまでは説明が難しい。黒がしたいことはa列を支配し続けることである(たとえそれで大したことはできなくても)。支配を維持するために、白がビショップをc3に上げて可能にした 19.Ra1 に 19…Rxa1+ 20.Bxa1 Bxg2! 21.Kxg2 Qa8+ でキングとビショップを両当たりにする用意をしたのである。22.d5! で局面は形勢不明だが、18…Qe8 にはずっと大きな欠陥があった。

19.d5!

 この后印防御の最初の重要な実戦例では、両者の基本的な戦い方の作戦が数多く見られる。e4をめぐる争い、準閉鎖型の中央、そして今度は d4-d5 突きによる中央の閉鎖である。白の着想は二様だった。つまり自分のb2のビショップの利きを良くすることと、黒のb7のビショップの利きを制限することである。もし黒の配置がもう少し良かったら、すなわちルークが元のf8にありクイーンがe7にあったら、これから起こる王翼の列の素通しにつけ込むことができた。

19…e5

 この手は黒枡の対角斜筋を閉鎖しておくためである。19…exd5 と取るのは 20.cxd5 Qf7 21.Bf3 となって、黒は決して安全に突くことのできないc7の弱いポーン以外何も得られない。

20.f4!

 白はしつこく后翼ビショップの斜筋を開けようとしている。20…exf4? と取ると 21.exf4 のあと Bd3 から Re1 でやはり待ち望む素通し列が得られる。

20…Bc8

 黒は中央で押しつぶされないようにビショップをd7にルークをe8にというように、駒を的確に再配置しなければならない。白の最初の狙いは fxe5 から Rxf5 なのでf5をビショップで守った。

21.Qb2!

(この章続く)

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后印防御の指し方(008)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 白はa1-g7の斜筋での強さを最大にし、e5の地点を c4-c5 で切り崩すか Ra1 でa列に挑む用意をした。黒は白の手中にあるその重要な斜筋で長く耐えることはできない。それは特に白がa列またはc列で侵入する可能性もあるからである。

21…Qe7

 明らかに 18…Qe8 が誤りだったことを認めた手である。

22.fxe5 Nxe5 23.Bd4!

 この手も好手である。e3に対する攻撃を予期し、c4-c5 と突く用意にもなっている。

23…Bd7 24.Ra1 Re8

 ルークを交換すれば黒は Qa7 の狙いに恒久的に直面する。その狙いに対し黒のクイーンはc8にもa8にも自由に行けなければならないが、白がe5で2回交換することにより戦力得する可能性を維持している間はe列を離れることができない。同様にルーク同士の交換は c4-c5 突きから cxd6 または c5-c6! のあと Qa7 が白の勝ちへの作戦となる。良くても悪くても黒は反撃するためにいくらか戦力を保存しなければならない。だからa列を白に譲った。

25.Ra7 Qd8

 これは気の利かないcポーンの守り方だが、黒としては最善の手段である。ここで 26.c5! と突けば白は遅ればせながら中盤戦の攻撃を始めることができ、たぶん勝っていただろう。

26.Qa1?

 これは実際よりも良さそうに見える。この着意はおそらく Qa6-b7 と指すか、黒がクイーンを動かせば Ra8 と指すことである。しかしこれにより黒がしばらくぶりに初めての攻撃的な手を指すことができた。

26…f4!

 敵が最大の大駒2個を王翼から移動させた途端に黒は王翼の2列を素通しにする。白はこのあとの交換を避けたければ 27.e4? と突き違えなければならないが、自分の良好な白枡ビショップの邪魔になり、といって 27.Bxe5? と取れば優秀な小駒をなくすことになる。しかし実戦の黒の手には大きな危険が伴っている。

27.exf4 Ng6 28.Bf3 Nxf4 29.Bxg7

(この章続く)

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后印防御の指し方(009)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これで白は黒枡の対角斜筋の8枡を事実上独占した。狙いは 30.Bf6 で王翼から黒クイーンを追い払い、そのあと 31.Bh8! で Qg7# で詰ますことである。これは一方が重要な斜筋を絶対的に支配しているときに、何が起こり得るかを顕著に表している。

29…Qg5!

 しかし黒はg7の守りとg2に対する自分の狙いとを組み合わせることができて元気いっぱいである。g7のビショップを取ることはもちろん狙いに入っているが、30…Re2! から 31…Rxg2+ や 30…Nh3+ から 31…Qe3 のような狙いもある。

30.Bh8!

 白は急に受ける必要がでてきて、そのためにこの手が不可欠である。そして黒クイーンがg7の地点から目を離せないようにさせている。奇妙なことに白のビショップはほかのどの地点にいるのと同じくh8で安全で、h8にいると白クイーンが王翼に行く経路をふさがない。この手は 30…Nh3+ 31.Kh1 Qe3?? を 32…Qg7# ゆえにやめさせていて、30…Re2 には落ち着いて 31.g3 と応じることができる。

30…Nd3

 このナイト跳ねには新たに二つの狙いができている。白の1段目でルークでチェックして白クイーンを取る手と、31…Qe3+ 32.Kh1 Qe1+ から詰める手である。

31.h4!

 これは受けの好手である。黒クイーンはg7から目を離せないので前に進む。どうしてg6でないのか。理由は2手後に分かる。選ばれた手にはこれまでの狙いのほかに 31…Qf2+ も加わっている。

31…Qg3 32.Ra8 Bc8

(この章続く)

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后印防御の指し方(010)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒は盤上にルークを残さなければならない。さもないと黒の主要な狙いが消滅し、白が7段目と8段目で自分の狙いを行使し主導権を強奪するからである。

33.Be4!!

 この目の覚めるような手は実際はまったく単純である。黒は攻撃にe列が必要なので、白はその列をふさいだということである。これで黒の …Re1+ という狙いの代わりに、d3のナイトに対する白の狙いができている。

 もちろんそれだけではないが、白が主導権以上のものを持っていることは 33…Rxe4 34.Rxc8+ Kf7 35.Qf6# から見やすい。2手前に(31…Qg3 の代わりに)31…Qg6 と指していたら負けるかもしれないことも分かる。34.Be4 がナイトとクイーンに当たり、クイーンがナイトを守ると同時にg7での詰みを受けることができないからである(31…Qg6 32.Ra8 Bc8 33.Be4!! Qg3 34.Bxd3[訳注 34…Re1+ があります])。

33…Qf2+ 34.Kh1 Qxh4+ 35.Kg1

 黒は最後の2手を繰り返すことにより引き分けにできる。それ以上を求めるのは自分の狙いの方が白の狙いより危険だからである。もっとも何かを達成するためにはまず Qg7# という狙いを取り除かなければならない。

35…Ne5! 36.Bxe5 Qxe4 37.Bh8!

 舞い戻った。詰みの狙いが復活して黒には建設的な作戦がない。g7の守りに縛りつけられているクイーンはチェック以外動けない。ビショップはチェックするかルーク同士を交換する以外動けない。ルークはビショップを取られるので最下段を離れられない。

37…Qe3+ 38.Kh2 Qf4+ 39.Kg1 Qg3 40.Bc3

 この手は一時的に黒の王翼に対する圧力をゆるめるが、黒のルークとビショップを動けなくしている。

40…Qe3+ 41.Kh1 Qf4 42.Qd1!

(この章続く)

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后印防御の指し方(011)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒がクイーンの連続チェックで浮いているビショップを取ることができるので(42…Qh6+ 43.Kg1 Qe3+)、この手はポカのように見える。しかし 43.Qd4 で黒の攻撃の着想をすべてつぶすことを狙っている白はそれを見抜いていたしほかにも見通していた。注意しておくと 42…Qxc4 は 43.Qh5! を招き、ルークが当たりになり Qg5+ も狙われる。

42…Qh6+ 43.Kg1 Qe3+ 44.Kh1 Qh6+ 45.Kg1 Qe3+ 46.Kh1 Qxc3

 黒は明らかに何が起こるか分かっていたが、勝つ手段を見つけることができなかった。ないものはない。

47.Rxc8! Rxc8 48.Qg4+

 これが眼目だった。白はルークを取り返し、チェックの千日手の可能性が豊富なのでクイーンとポーンの收局で引き分ける可能性が確実である。

48…Kf7 49.Qxc8 Qxc4 50.Qf5+ 引き分け

 c8、g8それにe6でチェックすることにより必ず黒キングの逃走を防げるので、チェックの千日手になる。

(この章続く)

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后印防御の指し方(012)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 E.コーレ
黒 J.R.カパブランカ
カールスバート、1929年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.e3

(この章続く)

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后印防御の指し方(013)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 本局で起こることを完全に理解するためには今世紀の初期、すなわち后印防御と 1.d4 に対するほかのほとんどの応手の揺籃期に立ち返ってみるのが良い。

 第一次大戦後にチェスは布局の指し方の新構想に見舞われた。中には革命的なものがあった。その主眼点は中央のポーンを突くのは十分用意が整うまで控えるべきであるということだった。超現代派と呼ばれた革命家たちは古典派たちによって支持された理論に挑戦した。古典派は白は迅速に中央を占拠し黒は中央で直接対決することを主張していた。

 しかしこのイデオロギー論争において穏健派と呼んでもよい集団もあった。彼らは古典派のしたように中央のすべてを占有したいとは思わなかったが、早い段階においては自駒のために足がかりを作っておかなければならないと考えていた。穏健派は通常は中央ポーンの一つだけを2枡突いて直接かつ単純に展開することに基づいた独自の布局システムを作り上げた。

 コーレは仲間のメキシコ人カルロス・トーレのように自分の名前で記憶されている自前のシステムを持っていた。それは d2-d4、Nf3、e2-e3、c2-c3、Bd3、Nbd2、Qe2(または Qc2)、O-O そして最後に e3-e4-e5! という完全無欠の布局手順から成っていた。これらの手は黒の手と干渉せず、重要な地点をめぐってほとんど黒に挑むことがなかった。白はいわば相手なしで指したのである。

 コーレは1920年代に洗練された相手に多くの好局をものにした。しかし彼の対処法は単なるマスター相手と同じように元世界チャンピオンのホセ・カパブランカにも通じるのだろうか。

3…b6!

 本局は白の控えめなシステムに対する后印防御の威力の最も初期の実証例の一つである。白の e4-e5 からの王翼攻撃への反撃としてぴったり合っている。

4.Nbd2

 この陣形は第7章で詳しく論じる。しかし白の基本的な考え方はもう理解することができる。白はちょうど c2-c4 から Nc3 の場合のようにe4を支配している。しかし黒が …Bb4 でその地点を争う着想は拒んだ。黒が …d7-d5 と突かないなら白はeポーンを4段目、続いて5段目へ突いていくことができる。これにより黒の王翼ナイトがf6から追い払われ、王翼から最良の守り駒が奪われることになる。そして黒は王翼にキャッスリングしたあとは、敵駒の集結、特にd3のビショップそしてナイトがf3からg5へ、またはe4からg5へというようにすべてh7をにらむことを心配しなければならない。

 全般的に見てこれは理にかなった布局の指し方である。そして白は最初の7、8手がつねに同じなのでほとんど考える必要がない。

4…Bb7 5.Bd3

(この章続く)

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后印防御の指し方(014)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

5…c5!

 黒は敵の計画の大きな欠陥を的確についた。すなわち白はほかの多くの后印防御でのように …c7-c5 に d4-d5 と応じることができない。

 これは中盤戦で白が e3-e4 と突きたければ(こう突けなければ有望な作戦がない)、中央または后翼でいくらか地点を譲らなければならないということを意味している。しかし白が最終的にeポーンを突くと、黒はd4のポーンを取って白に取り返し方を迫る。白が cxd4 と取れば(白はその時までには c2-c3 と突いている)黒駒のためにc列を素通しにしてやることになり、Nxd4 と取れば白のdポーンによって行けなくされていたe5とc5の2地点を黒が支配することになる。

 カパブランカの布局の対処法はきわめて論理的だった。「白の布局システムの何が本質的に間違っているのか」と彼は自問する。彼の解答は短い手数ででより明らかになる。

6.O-O Nc6

 黒が布局の段階で中央ポーンのどちらも使うことを控えていることに注意して欲しい。なかでも …d7-d5 突きを避けているのは、d5を自分の駒のために空けておきたいからである。e3-e4-e5 に対して黒は …Nd5! と応じたいのである。それに …d7-d6 と突いて良い理由もまだない。

7.c3

 后翼ビショップを早く展開するのはコーレの処方箋に反するだろうが、7.b3 にも言い分はある。このあと Bb2 から最終的に c2-c4 と突くことができ、第5章で論じるのと似たような展開になる。しかし黒の目ざといナイトは白が早く c2-c4 と突かなかったことにつけ込むことができる。例えば 7.b3 cxd4 8.exd4 Nb4 のあと黒は 9…Nxd3 を狙う。もし白が 9.Be2 でビショップを保持すれば、黒は 9…Nbd5 と指して 10…Nc3! か 10…Nf4! を意図しどちらの場合も優位に立つ。

7…Be7

 黒は展開を完了しキャッスリングすれば満足である。白はc3とe3のポーンで自分の后翼ビショップを閉じ込めてしまっている。だからそれを自由にするためにここで e3-e4 と突かなければならない。

 白のシステムは指す手が予測できることが欠点である。このため黒が反撃作戦を立てることが非常に容易になっている。

(この章続く)

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后印防御の指し方(015)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

8.e4 cxd4!

 この手は正確に時機を見計らって指さなければならない。8…O-O は 9.e5! Nd5 10.Ne4 または 10.dxc5 から 11.Qc2 となって、黒には少なくとも当面は白が詰みを念頭の攻撃を始めるのをそらす狙いを作り出す見通しがない。黒は詰みを避けるために相手の注意を引かなければならない。

9.Nxd4?!

 この手は駒を中央に据え、9.cxd4 Nb4! 10.Bb1(10.Be2? Nxe4)10…Ba6 11.Re1 Nd3! から起こるささいな煩わしさをすべて避けている。しかし e4-e5 突きをより難しくさせてもいて、ここからの短手数で黒駒の働きをすごく良くさせる。白は王翼攻撃の希望を持ち続けるために 9.cxd4 の手順で 12.Re3 と指す方が良いかもしれない。

9…O-O 10.Qe2

 この手も批判の対象になり得る。たぶん白は展開が気になっていたのだろう。そしてこの手はe5のポーン突きの支援を念頭にクイーンを展開している。この攻撃の戦略がなければ白には有望な作戦がない。例えばナイトをd2から動かせば 10…Nxd4 から 11…Nxe4 と取られる。たぶん 10.Re1 が最善だろう。

10…Ne5!

 この手は次の手と関連付けて考えなければならない。というのは白ビショップを当たりにすることにより黒が得する手は白が f2-f4 と突いたとき失われるからである。

11.Bc2

 白は 11.Ba6 でビショップ同士の交換を求めることができる。しかしそれは自分の攻撃が消滅し、黒が白の弱体化した白枡の占拠を準備できることを認めることになる。白枡を守るビショップがないと、白はたちまち …Nd3 や …Nc4 とやってくるのを心配しなければならなくなる。

11…Qc8!

 この手には后印防御ビショップの融通性と 10.Qe2 の欠点が表れている。このビショップはb7での務めを終えて、白の大駒の並びが具合悪いa6-f1の斜筋を窺う用意をしている。白はその斜筋を 12.c4 でふさぐわけにはいかない。というのは …Bxd2 でcポーン取りを狙う 12…Bb4 や 12…Bc5! で新たな弱点ができるからである。白枡を守るために白は黒枡で自ら状況をより悪くしなければならなくなる。

12.f4

 これがたぶん実戦的に最も望みがある。これから分かるように黒は戦力を得することができない。

12…Ba6 13.Qd1

(この章続く)

2015年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(016)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 ここで 13…Bxf1 と取るのは 14.fxe5! とこちらを取られて、f1のビショップとf6のナイトが当たりになっているので良くない。この好手で白がルークを動かす手を稼ぐことができる。

13…Nc6!

 黒はもうけながら退却した。10…Ne5 から始まった捌きで白駒が少し混乱し、黒が盤上随一の斜筋(a6-f1)の支配を得た。

14.Rf3

 このルークはここが攻撃的な位置で、g3やh3に行って王翼攻撃に加われる。例えば 14…Nxd4 15.cxd4 Qc6 となれば白は 16.e5 と突いて、チェスの最も古い手筋の一つのh7でのビショップ切りを策すことができ、16…Nd5 17.Bxh7+ Kxh7 18.Rh3+ から 19.Qh5 を狙う。しかしこの場合は 18…Kg8 から 19…f6 で黒が受かっている。もっと良い手順は 16.Rc3 Qb7 17.Rh3! から e4-e5! 突きで、白の攻撃が厳しい。

14…g6

 前述の分析でこの手の説明がつく。確かにこの手は黒キングの周りの黒枡、特にf6とh6を弱めている。しかし白はこれからの数手の間はこれらの弱点につけ込むことができない。なぜなら自分の黒枡ビショップがまだ元の位置にあり、自身の2駒によってふさがれているからである。一方黒のこの手は敵の唯一の理にかなった作戦であるh7でのビショップ切りをやらせない。

15.N2b3 Nxd4 16.Nxd4 Bb7!

 黒は再びこのビショップの利き筋を変えた。e4のポーンが恒常的に弱いので、白の展開を妨害できることを見通している。

17.Qe2 Bc5

(この章続く)

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后印防御の指し方(017)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 ここで白はどうすべきだろうか。18.Be3 と指すのはeポーンへのクイーンの利きがさえぎられるので駄目である(18…Nxe4)。18.Bd2 もc2のビショップへのクイーンの利きがさえぎられるので駄目である(18…Bxd4+ 19.cxd4 Qxc2)。eポーンをすぐに突くのも 18…Bxf3 があるので駄目である。最後に、ナイトを動かすのは不正な手である。残された手はあまりない。

18.Rh3

 良くも悪くも白は詰みに望みをつないでいる。これで交換損することなく e4-e5 と突けるし、クイーンがh6に行けるようなことにでもなればh3のルークが攻撃の務めを果たせる。

18…Qc6!

 うまく好機をとらえた。黒は白が中央でまた決断をするのを待たない。eポーンを攻撃することにより事実上それを進ませる。

19.e5 Nd5

 白の后翼ビショップはまだ閉じ込められたままである。黒は后翼と中央での優位を生かして …Bxd4 から …Rac8 のあとc列に侵入する用意をしている。白は黒駒をそこの地点すべて(c2、c4、c1)から排除することができない。

20.Qf2

 この手はナイトの釘付けをはずし動けるようにしている(21.Nxc6!)。もっと重要なことは Qh4 から Qxh7+ を狙っていることである。もし黒がここで …h7-h5 と突いて守らなければならないなら、黒陣はひどく損傷する。

20…Bxd4!

 黒のビショップはこの局面では白のナイトほど良い駒にはなっていなかった。それに黒は遅かれ早かれビショップを切ってc列を素通しにしていた。注意すべきはg2の唯一の守り駒がいなくなるのでクイーンでd4のビショップを取り返せないことである。黒は 21…Nxf4 または 21…Nxc3 でg2に通じる必殺の斜筋を通すことができ、白は 23…Qxg2# を止めるためにてんやわんやになる。

21.cxd4 Rac8

(この章続く)

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后印防御の指し方(018)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 この手は最初の見かけよりも強力である。唯一の素通し列と急所の斜筋の支配が黒の大きな二つの有利になっているが、それらが協調し合っている。もし白が 22.Qh4 によりh7で詰ませる作戦を追求すれば、黒は二つの優勢な筋を利用して 22…Nf6 と指すことができる。この手はh7を守り、g2での詰みを狙い、c2のビショップ取りを狙っている。

 しかし白がもう1手クイーンをf2に置いたままにし、先に 22.Be4 と指すと、明らかに后印防御ビショップの対角斜筋が無力になり、Qh4 の狙いが復活する。しかしこの手は負けに直結する。咎める手は 23…Qxc1+! で、23.Rxc1 Rxc1+ で白が大きな戦力損をこうむる。

22.Bd1

 情けない手だが、上述の黒クイーン切りがあるのでほぼ必然である。この手に対して 22…Qxc1 はチェックにならない。

22…f6!

 白の王翼での圧力を終わらせ、黒自身の詰み含みの攻撃のために王翼に素通し列を作るのに、今ほど良い時機はなかった。これで黒は Qh4 に …Rf7 と応じてh7を守ることができる。また、f8またはf7のルークは …fxe5 と指せば攻撃に参加することができるようになる。

23.Qh4 Rf7 24.Bf3 Qc4

 白枡の大部分を押さえたあとは黒はそれらを有効活用する。白はdポーンをうまく守ることができない。25.Qf2 はやはりc1でクイーンを切られる(チェックで)。

25.Be3

 このような怪しげな手は白にまだ戦術の可能性が残っていることを示している。しかし陣形がしっかりしていることよりも想像力でひねり出すことに依存していることの表れでもある。黒は有利に単純化する手段を見つけなければならない。

25…Nxe3 26.Bxb7 Nf5!

 黒の素晴らしい后印防御ビショップは白の病的な后翼ビショップとの交換になった。しかしこの交換はdポーンが取れるので黒が有利である。

27.Qe1 Rc7

(この章続く)

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后印防御の指し方(019)

第1章 后印防御の着想 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

28.Be4 Qxd4+ 29.Kh1 fxe5

 白の読みはビショップをe4に引き戻して黒のナイトと交換することにより損を切り詰めることだった。しかしそれに続く收局では黒の大駒が優勢なままで、もっとポーン得をする。技術的にはもう勝負はついている。

30.Bxf5 exf5!

 30…Rxf5 31.Qh4 で紛糾させることはない。本譜の手で十分である。

31.fxe5 Re7 32.Re3 Qxb2

 黒は望むときにいつでも …Rc2 で3ポーン得になれる。

33.e6 dxe6 34.Rxe6 Kf7! 白投了

 35.Rxe7+ Rxe7 で黒が2ポーン得を楽に勝ちに結び付けられる。

(この章終わり)

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后印防御の指し方(020)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス

 后印防御の控えめという評判は主としてこの最もよく指される戦型からきている。マスター、グランドマスターそして楽しみで指すクラブ選手などあらゆる棋力の選手たちの間で人気があるが、たぶんより強いほどそうである。この単純化システムには多くの若い選手たちを引きつける戦いがあるようには思われない。しかしこの単純化こそがマスターたちに受ける戦法となっている。これは白で少しの優勢を求めて指す危険性のない手段である。そして少しの優勢は格上の相手には正当に期待できる最大のものである。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3

(この章続く)

2015年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(021)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 フィアンケット戦型の主手順は事実上后印防御全体の主手順でもあるが、それに到達するためには両者が指し手を険しくする機会を回避しなければならない。白の最初の機会は3手目にやって来て、后翼ナイトでなく王翼ナイトを出す。白はこのようにして、二重ポーンや …Bxc3+ のあとの優良白ビショップ対黒ナイトの戦いのような複雑な陣形の着眼点を持つ抜き差しならない二印防御(3.Nc3 Bb4)を避ける。二印防御は「固い」防御で、巧妙な手がよく出てくる。典型的な后印防御の局面よりも典型的な二印防御の局面の方が良くも悪くも手広い。白は 3.Nf3 と指すことによりいくらか楽な試合を求めていると相手に合図している。

 しかし白はそれに対して代価を払う。3手目に后翼ナイトでなく王翼ナイトを展開することにより黒のe4の地点の支配を一時的に放任する。これはしばらくの間白が中央をポーンで支配する e2-e4 突きを指せなくなることを意味する。白は既に突いたcポーンとdポーンの2ポーンで中央を強力に支配し続けるが、eポーンが4段目に存在すればさらにものすごい影響を与えることになる。このポーンはb7の黒ビショップの斜筋をふさぎ、e4-e5 で黒の小駒を右往左往させることを狙う。そして黒駒、主として王翼ナイトにe4の地点を使わせないことにもなる。

3…b6

 これで白の e2-e4 突きは布局の段階ではほとんど実行不可能である。黒はe4の支配をb7のビショップで強化し、王翼ナイトと后翼ビショップのコンビは白がe4を支配しようとするどんな試みも思いとどまらせるのに十分である。f3の白ナイトは少なくとも一時的に白がポーンでe4を支配するのを妨げている。それは f2-f3 と突けないからである。

4.g3

 この手はフィアンケットシステムの布局を特徴づけている。1920年代後半までは人気が出なかったが、第二次世界大戦までには主流手順になった。最近白のもっと攻撃的な手が復活した(第4章と第6章を参照)。しかし黒のフィアンケットに対するに白の逆フィアンケットよりも良い手段があるのかは決して明らかでない。すぐれたビショップがすぐれたビショップと対峙している。

 4.g3 の着意を分析しよう。この手はこれまで争う余地のなかった黒のe4の支配を争う用意をしている。また、白がポーンで支配しながら駒で支配していなかったd5の地点に目を向けている。そしてg2に来るビショップはc6、b7そしてa8までも対角斜筋に影響を与えている。もし何らかの理由で黒が后翼ビショップをほかの斜筋(例えばa6-f1)に配置すれば、または白のナイトと交換すれば、白ビショップはh1からずっとa8までの白枡を貫く途方もない無敵の斜筋を支配することになるかもしれない。

 今度は欠点の番である。駒やポーンのどの動く手もほかの地点を犠牲にある地点をさらに保護する。4.g3 で白はビショップをg2に置くことを宣言している。黒側の王翼に対する攻撃で大きな働きをする絶好のb1-h7の斜筋でこのビショップを使うことはできなくなるし、c4のポーンは最も自然な守り駒がいなくなる。そしてポーンを g2-g3 と突くと自分の王翼を少し弱める。もし白があとで e2-e3 と突いて中央を支える必要が出てくれば、または e2-e4 と突いて中央を形成する必要が出てくれば、f3の地点に利くポーンが全然なくなる。この地点はb7のビショップのような敵駒にとって格好の標的になることがある。

4…Bb7

(この章続く)

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后印防御の指し方(022)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 この手は見かけほど自明ではない。黒はこのビショップをa6に出して白のcポーンを当たりにすることができる(第3章を参照)。そして黒は …Bb7 と指したということは中盤戦での要求が控えめであることを自認するべきである。なぜか?それは白がこれからの十数手のいくつかの時点で Nh4 と指すことにより、またはキャッスリングのあとナイトをどこかへ動かしてフィアンケットビショップの斜筋を通すことにより、白枡ビショップ同士を交換することができるからである。g2の白ビショップが守られている限り、黒は …Bxg2 でビショップ同士を交換するか、ビショップをa6かc8に動かすことによりh1-a8の斜筋の支配を譲り渡すか、ビショップ同士の間の枡の一つに駒またはポーンを置いて交換を防ぐかを決めなければならない。しかし黒にとって白枡ビショップ同士の交換を避けるのが良い方針となることはまれである。この斜筋はどちらにとってもひとえに重要なので、相手にまったく明け渡すわけにはいかない。黒は白にこの斜筋を独占されるよりも両者のビショップが消える方が良い。この斜筋をふさいで(…d7-d5 のように)交換を避けることは、ふさいでいる駒やポーンが敵の重砲火を浴びることがあるので黒にとって不快になることがある。

 気をつけることは両者のビショップの重大な差異である。g2のビショップは守るのが容易である。b7のビショップは危ないときにはルークにより(…Rb8)、またはもっと都合よくクイーンにより(…Qc8)守ることができる。しかし大駒のどちらもこのような純粋な守りに用いることは黒にとって不経済である。黒クイーンはc8で子守を務めるよりも通常はもっとふさわしいやるべきことがある。だから当座はb7の黒ビショップはg2の白ビショップよりもはるかに長く利いているけれども、黒はその優位を長く保つことはできないしb7が守られていなことに基づいた多くのはめ手を避けるようにに注意しなければならない。このあとの数ページでそれらのはめ手のいくつかを見ることになる。

 最後に言っておくべきことは 4…Bb7 およびこの防御全般についてである。黒は必ず中央のどのポーンを突くかを決めなければならなくなる。しかし少なくとも数手の間はその決定を先延ばしすることができ、チェスでは遅らせることが美徳になることがよくある。…d7-d5、…c7-c5 およびほかの中央でのポーン突きの選択を遅らせることにより、黒はいつかは盤の中央で起こるに違いない危機に備えて駒の展開を続ける。そして黒の備えには白の駒とポーンがどのように配置されるかという知識が役に立つ。黒はどうせビショップをb7に上げることになるのが確かなので、ここでその手を指すことにより最も形を決めていない。

5.Bg2

(この章続く)

2015年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(023)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 そしてこれは白の方の最も形を決めない手である。白は 4.g3 と突いたとき明らかにビショップの行き場所としてg2だけを考えていた。だからすぐにその考えを完了させるのが良いだろう。それにもし白が Bg2 を延期すれば、黒に …Bxf3 で敵の作戦を台なしにさせる好機が訪れるかもしれない。この手は白のfポーンを二重にさせ、g2-a8の斜筋をふさがせる。黒が優れたビショップをf3の白ナイトと交換することにより白に二重ポーンを作らせるのは良い考えかもしれないしそうでないかもしれないが、白は 5.Bg2 で相手にそれを考える可能性さえ与えない。

 白のほかの5手目はどれも不利な点がある。最も自然な手は 5.Nc3 である。しかし黒には 5…Bb4! という効果的な手があり、二印防御と后印防御の有利な混合形になる。そして白の后翼は …Ne4 の圧力が加わろうと加わるまいと …Bxc3+ で陣形を悪くする狙いに直面する。もちろん白はナイトをより攻撃的なc3でなくd2に出すことができる。しかしこのナイトはd2ではまだ攻撃されていないc4を守る以外何もしていない。白は3手目で Nc3 を延期することにしたのだからその作戦を続けるのが良い。

5…Be7

 白が Nc3 を延期しているのでここが黒の王翼ビショップの最良の地点である。しかし最善の5手目はこれだけではない。理にかなった手が少なくとも3手ある。それらのいずれも落ち着いた …Be7 より形を決める手で、局面の表面下に隠れた争点をより早く解消することになる。そして代わりの手はそれぞれ黒の中央ポーンをどうするかについて異なった考えを持っている。それらについて少し詳しく分析しよう。

 A 5…c5

 最も激しい5手目は 5…c5!? である。この手は主としてマスターの1局でうまくいったことにより二つの大戦の間に大きな注目を集めた。その試合とは1927年のニューヨークの大会でのアリョーヒン対カパブランカ戦である。この大会はアリョーヒンと世界チャンピオンのカパブランカがタイトルをかけて番勝負を戦うことになっていた数ヵ月前に開催された。そして后印防御の黒側を持ったカパブランカの圧勝で、世界選手権へのアリョーヒンの挑戦が失敗するという予想が支持を得たように思われた。

 しかし番勝負に勝ったのはアリョーヒンだった。5…c5 にうまく対処していたらニューヨークでの試合もアリョーヒンが勝っていたかもしれない。白のdポーンに対する鋭い攻撃が疑問なのは、現代の定跡によればこの局面に特有の特徴のためである。その特徴に行く前に基本的なポーン陣形を考えてみよう。

 5…c5 のポーン陣形

(この章続く)

2015年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(024)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…c5 のポーン陣形

 黒は白の守られていないdポーンを当たりにし、自分のcポーンをそれと交換することを望んでいる。もし白が e2-e3 と突いてdポーンを支えれば、前に述べたようにf3の地点を弱体化させることになる。また黒は e2-e3 に …cxd4 と応じ exd4 のあと …d7-d5 と突くなどすることができる。このポーン突きの結果として白の中央の強みである強力なポーンのほとんどが清算され、d4に白の孤立ポーンができることになる。黒がcポーンを白のeポーンと交換しdポーンを白のcポーンと交換したあと中央に残っている唯一のポーンは白のdポーンになる。このポーンはほかのポーンで支えることができなくなっていて、d列で黒ルークにより容易に攻撃の標的になる。だから恐らく白は …c7-c5 に e2-e3 と応じないだろう。

 しかし白は黒にd4で取らせて良いのだろうか。それによりf8の黒ビショップの斜筋が再び通り、白が駒で取り返すものとすれば黒が d4-d5 と突かれる恐れなく后翼ナイトをc6に展開することができる。中央に進出できるなら黒にとって有利な交換である。それでも黒がcポーンを白のdポーンと交換するのは、白が迅速に素通しd列を支配することができるので長年の間黒にとって非常に危険が大きいと考えられてきた。実際には黒はd列のように白のcポーンの前まで素通しになっているので、c列で相当の代償が得られる。d4でのポーン交換のあと黒のc4に対する圧力はd7に対する白の圧力と釣り合っているはずである。

 しかしほかの考え方もある。もし白がd4をポーンで支えたくないしd4でポーン交換もしたくなければ、d4-d5! と突くこともできる。これは 4.g3 フィアンケットのすべての基本戦型の中で、白の最も危険なポーン突きである。その最も重大な効果は黒のフィアンケット后翼ビショップの利きを縮めたことで、黒の后翼ナイトに自然な展開地点(c6)に来させなくしてもいる。d5の白ポーンはg2のビショップとc3のナイトで支えることができる(黒はc5にポーンがあるので …Bb4 と指せないことに注意)。

 それでは具体的に局面を見てみよう。

 5…c5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(025)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…c5 の局面

 次に 6…cxd4 と取られると王翼ナイトでd4のポーンを取り返したとき …Bxg2 があるので白が少し具合が悪いことが分かる。6.O-O cxd4 7.Nxd4 Bxg2 8.Kxg2 でも、白が展開で少し優っているにもかかわらず黒は何も問題がない。黒は単に 8…Qc8! と指してcポーンを当たりにし 9…Qb7+ の準備をする。黒はクイーンがビショップの代わりにb7に来れば互角にするのに何の困難もないはずである。黒の残りの小駒にはすべて役に立つ地点があり、黒は …d7-d5! と突いて弱点となっている最後のポーンを解消できる。

 もちろん白はクイーンでd4のポーンを取り返すことができる。しかし 6.O-O cxd4 7.Qxd4 には 7…Nc6! と調子のよい展開で応じられる。ここでの白の陣形はマローツィ縛りと呼ばれ一般に有利とされるポーン陣形に似ている。その陣形では白のc4とe4のポーンが黒のd7またはd6のポーンを抑えつけている。しかしここでは白はまだ e2-e4 と突いていない。そしてそう突くことができたとしても、陣地の広さの優位を生かすのに問題がある。黒の …Nc6 での手得とそうでなくても働きの良い駒が、陣形の問題を打ち消すことになる。

 5…c5 の真の問題は 6.d5! にある。これは対角斜筋に生じることのある多くの策略の一つに基づいている。6.d5 と突く前は白ナイトが釘付けにされていた。すなわち動けば(h4を除く)g2のビショップが取られてしまう。それにいずれにしても白はビショップ同士の交換を望んでいないかもしれない。しかし 6.d5 のあと白は 6…exd5 7.Nh4 または 7.Ng5 で立場を逆転させる。これで釘付けにされているのは黒の方である(7…dxc4?? 8.Bxb7)。

 これが 6.d5 の戦術的裏付けである。d5のポーンは三重に当たりにされ二重にしか守られていないが、取られることはない。陣形上の裏付けは前述のとおりである。すなわちd5のポーンは黒の小駒をごちゃごちゃにさせる効果がある。例えば 6.d5 exd5 7.Nh4 のあと 7…g6 なら黒は白がナイトをf5に跳ねる狙いを止めているが、白に例えば 8.Nc3 Bg7 9.cxd5 で中央を手順に支配される。

 9.cxd5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(026)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9.cxd5 の局面

 この局面はアリョーヒン対カパブランカ戦の局面に似ている。そのあと白は中央ポーンの処理を誤り e2-e4 と突かないで負けた。白の正しい手法は O-O のあと e2-e4 から f2-f4 と突いてゆっくり中央を強化し、そのあとクイーンをc2に后翼ビショップをc3かb2にルークをd1とe1かe1とf1に展開することだった。そして中央を駒で支援しながら e4-e5! 突きで局面を一気に開放することを狙っていく。黒は駒を白ほど活動的な地点に配置できない。だから e4-e5 突きを効果的に迎え撃つ態勢にない。この一般的な型のほかの局面、例えば現代ベノニ防御では、黒は …Rb8 から …b7-b5 で反撃することができる。しかしここではビショップがb7にいるのでそのように反撃するのははるかに困難である。

 5…c5 は 5…Be7 よりも面白い中盤戦の戦いになる機会が多い。しかしよりそのような機会に恵まれるのは白の方である。

 B 5…d5

 この手から生じる具体的な局面を分析する前にまたこのポーン突きの一般的な問題を考察するのが良い。次図が基本的なポーン陣形である。

 5…d5 のポーン陣形

(この章続く)

2015年01月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(027)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…d5 のポーン陣形

 dポーン突きは黒に中央での不動産をたっぷり確保してくれる。黒はもう e2-e4 突きを心配する必要がなくなり、近い将来にe4の地点が自分のナイトのために使えると考えても大丈夫である。また …d7-d5 突きはd7の地点を空け、黒駒のためにd列を部分的に開通させている。すなわち后翼ナイトをd7に展開させることでき、d8がルークの好所になるかもしれない。言い換えるとdポーン突きを決めると黒は自駒の好所を見つけることができる。

 このポーン突きは最初の争点も作り出す。白はd5で取ることができるし、黒はc4で取ることができる。いつかはこれらの取りのどちらかが指されることになる。

 黒は機会があれば …dxc4 と取るのを躊躇しない。この交換でフィアンケットビショップの斜筋が通り、d列にそって敵のdポーンへの攻撃が準備できるか、または …c7-c5 で中央を完全に清算することになりそうである。この最後の着想を念頭に置けば、黒は …d7-d5 と突いたとき続けて …c7-c5 と突くのが普通だし、…c7-c5 と突いたときは …d7-d5 の準備となっていることが多い。中央の両ポーンを突くと、白が 1.d4 と 2.c4 以来保持してきた中央での支配を何もかも一掃する一連の交換につながりやすい。黒駒は白駒とちょうど同じくd5、c5およびd4などの地点をしっかり支配することができる。

 しかし認識しなければならない相違点がある。もし黒が …dxc4 と取れば、または白が先に取り(cxd5)黒が …Bxd5 か …Nxd5 と応じれば、黒は中央に固定されたポーンが何もなくなる。しかしもし白が cxd5 と取り黒がeポーンで取り返せば、黒は中央に永続的に橋頭保を保持することになる。新たにd5に来たポーンは標的になることもあり、強さの源になることもある。すべてはほかの駒とポーンの配置にかかっている。

 それでは具体的な局面を考察しよう。

 5…d5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(028)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 5…d5 の局面

 この手は后印防御を最初に広めたアーロン・ニムゾビッチによって指されていて、アレクサンドル・アリョーヒンによって単なる悪手と非難された。しかし 5…d5 は退治されたことはない。退治しようとするなら手始めに 6.Ne5 で対角斜筋で釘付けにするのが最善である。以前は釘づけにされていたのはf3の白ナイトだった。すなわち …Bxg2 と取られたくないのでこのナイトは動けなかった。しかし 6.Ne5 で釘付けの立場は逆転した。今度は 6…dxc4?? と取ると黒がビショップを取られる。

 ニムゾビッチは 6.Ne5 への応手に 6…c6 のような手堅い受けの手を推奨していた。しかしそれはいくらか消極的である。黒はいつかは …c7-c5 と突きたいので、6手目をもっと有効な手に費やすべきである。例えば 6…Nbd7 は新たにe5にやって来たナイトに狙いを定めていて、交換になれば黒が楽になる。7.Nc3 なら 7…Bd6 でe5のナイトを取ることを狙う。中央が解体された時に何が起こるかの分かりやすい例は 5…d5 6.Ne5 Nbd7 で、白は 7.Qa4 と指す。黒は一時的にa4-e8の斜筋で釘付けにされているが、7…c5! 8.cxd5 Nxd5! で互角になるはずである。白は中央でもっと交換することを余儀なくされ、白の圧力がゆるみ局面が単純化する。例えば 9.dxc5 Bxc5 10.O-O a6! で 11…b5! により釘付けをはずして戦力得する狙いができる。白がもうキャッスリングを済ませ相手が済ませていないにもかかわらず、黒は展開がうまくいっている。

 ここでの分析のもっと後のところで …d7-d5 の着想に戻ることにする。しかし5手目でもある程度安全にその手を指すことができる。

 C 5…Bb4+

 5手目での最後の重要な変化はチェックする最も強硬な手である。5…Bb4+ で黒は王翼ビショップをどうするかという問題を解決する。黒はこうチェックしたいなら、もうこれ以上待つことはできない。白は次の手でキャッスリングするかもしれない。そうなれば白は …Bb4 を無視することができ、a2-a3 でこのビショップを追い払うまでである。

 5…Bb4+ の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(029)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

 5…Bb4+ の局面(再掲) 5…Bb4+ の局面

 このチェックは50年以上前にホセ・カパブランカによって初めて広められた。キューバ人の世界チャンピオンは危険を予期する名人で、このように駒を早く交換することに努めることがよくあった。白は自分のキングとこのビショップの間に何かをさしはさまなければならず、さもないと Kf1 とよろめかなければならない。しかし白には多くの選択肢があり、6.Nc3、6.Nbd2 それに 6.Bd2 と指せる。

 まず 6.Nc3 は局面をb4のビショップとc3のナイトが特徴の一種の二印防御の局面に変える。黒はすぐに 6…Bc3+ と取って不均衡な局面に変え白にポーンの弱点を生じさせることができる。そして 7.bxc3 O-O 8.O-O のあと白は自分のビショップが黒のナイトより劣る閉鎖的な中盤戦になることを心配しなければならない。しかし黒は白に d4-d5! と突く狙いがあるために局面を閉鎖的に保てないかもしれない。この手は黒駒を麻痺させることがよくある。例えば 8…d6 は 9.d5 exd5 10.Nh4! から cxd5 と応じられ白が好調になる。もし黒が(9…exd5 の代わりに)9…e5 で閉鎖的な局面にこだわれば、白は 10.Nh4 のあと e2-e4 から f2-f4! で相手よりもはるかに手段が多くなる。

 もし白が二印防御に特徴的な状況(Bb4/Nc3)にさせたかったのならば、3手目にもう 3.Nf3 の代わりに 3.Nc3 と指すことによりそうなるようにしそうなものである。白はd5とe4をナイトで支配したいのだが、…Bb4 の毒がなくなってから初めてそうしたかったのである。これがなぜ 6.Nbd2 がチェックに対処する手段として不興を買うのかの説明になる。白ナイトは単にd2で場違いになっているだけである。6.Nbd2 のあと黒はいつもは強力な d4-d5 突きを恐れずに 6…c5! と指すことができる。あるいは 6…O-O から 7…d5 と指すことができ、もし白がいつか a2-a3 と突いてくれば黒ビショップはe7に退却してまんまと白に劣った Nbd2 を指させた使命を完了する。

 消去法によりビショップによるチェックに応じる最善の手段として残ったのは 6.Bd2 である。黒がd2で取ったあと白はクイーンで取り返して次に Nc3! と指せるようにする。また、黒はビショップを引くことにより手損をしたくなければ、いつかはd2で取らなければならない。そうしないと白がその可能性をなくしてしまう。例えば 6.Bd2 Qe7 7.O-O O-O? 8.Bf4! で、黒は通常は自分の助けとなる交換による単純化が何もできず、a2-a3 のあと手損を強いられることになる。

 だから 6…Bxd2+ 7.Qxd2 O-O の局面が想定される。これなら白が安心して后翼ナイトをc3に出してe4の支配をめぐる中盤戦の戦いを始めることができる。例えば 8.Nc3 d6 9.Qc2! となればしてやったりである。

 9.Qc2! の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(030)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9.Qc2! の局面

 白は安全に e2-e4 と突くことができれば好形になれ、黒の中央での進攻を恐れる必要はない。9…c5 にはやはり 10.d5! と応じることができる(10…exd5 11.Nh4!)。さらにこの種の局面では黒は …d7-d5 と突きたいと思わない(特に1手かけて …d7-d6 と突いたあとでは)。黒は黒枡ビショップが交換されると、残りのビショップが自分のd5のポーンによって動きを制限される中盤戦に入ることを避けなければならない。代わりに中央で黒枡でポーン陣形を築くように努めるべきである。それを達成するための手段は 9…Qe7! から e6-e5! 突きである。それに対して白が通常は自分のためになる d4-d5 突きを指せば、自分のg2のビショップの効果を低めてしまうことになる。言い換えるとこの種の局面ではどちら側がd5の地点をポーンで占拠しようと自分のフィアンケットビショップの利きを制限することになる。

 カパブランカの 5…Bb4+ を終える前に、面白い落とし穴を一つ指摘しておく。それは黒の理にかなった指し方から生じる。6.Bd2 Bxd2+ 7.Qxd2 O-O 8.Nc3 のあと黒は 8…Ne4 でもう一組の小駒を交換したいと考えるかもしれない。これはあとで考察する主手順のある着想と酷似している。しかしここでの 8…Ne4 は 8.Qc2! という手があるために疑問である。その要点は 9…Nxc3(唯一の一貫性のある手。9…f5 は陣形を弱める)のあと白が 10.Ng5! でh7での詰みと Bxb7 とを狙って戦力得することができるということである。黒の最善手は 10…Ne4 と引き戻す手だが、白は 11.Bxe4 Bxe4 12.Qxe4 Qxg5 13.Qxa8 というようにe4で2回取ることにより戦力得になる。このささやかな罠を覚えておくとよい。

 それでは主手順の 5…Be7 に戻ろう。

(この章続く)

2015年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(031)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 このビショップの展開は理想的な手待ちで、手の内を何も明らかにしない。黒はまだ中央でのポーンの動きを明らかにすることも后翼ナイトを展開することも急がない。ここ数手のうちに …c7-c5、…Nc6、…Qc8 またはそのほかの手を指す好機が訪れるかもしれない。しかし黒は白が何か手を決めるまでは自分は決めないようにするのが良い。

6.O-O

 この手も当たり障りのない手である。后印防御で白がクイーン翼にキャッスリングするのは非常にまれである。だからここで O-O することにより多くの選択肢を放棄することにはならない。もし 6.b3 や 6.Nbd2 のような手を指せばさすがに選択肢を減らすことになるだろう。そのあと黒は完全に 6…c5! と突く正当性が得られる。この手は5手目よりもここでの方がずっと強力である。戦術上の要点は 6.b3 c5! に自然な手の 7.d5 が咎める手にならないことである。なぜなら 7…exd5 8.Nh4 に 8…Ne4 で 9…Bf6! や 9…Bxh4 が狙いとなるからである。

 しかしほかの手として 6.Nc3 も考えられる。白はこれまで …Bb4 があるのでこの自然な展開の手を避けてきた。しかしここでは黒は 5…Be7 に1手使ったので 6.Nc3 に 6…Bb4 と応じるのは意味がない。さらに白は布局の6手目や7手目あるいはもっと後でも Nc3 と指すといつでも陣形的に大きく優位を目指すことになる。その局面には中央で d4-d5 と突くか Qc2 から e2-e4 と突く狙いが現実にある。

 しかし白が理想の中央を築くには2手かかる(Qc2 とeポーン突き)。6…O-O 7.Qc2 のあと黒は中央でちょっかいを出す機会がある。白が Qc2 と指した時dポーンへの支援が減ったので …c7-c5 突きに弱くなっているのが普通である。だからここで 7…c5! と突くのが適切である。8.d5! exd5 9.Ng5 のあと白はh7で詰ませる可能性があり新たな陣形上の狙いもある。

 9.Ng5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(032)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9.Ng5 の局面

 白の陣形上の狙いは 10.Nxd5 である。黒はd5で2度取ることができないので(10…Bxd5 11.Bxd5 Nxd5?? 12.Qxh7#)、白にその地点をで占拠させなければならない。そのあと黒の残りのdポーンはd7にとどまろうとd6に進もうと、半素通し列で露出し白ルークの射程に入る。狙いが陣形上のものである理由はこれである。それに対処する 9…g6 は Qxh7 の可能性をなくし白にポーンでd5で取らせる。これはのdポーンが標的になるので中央の状況をかなり変えることになる。例えば黒は …d7-d6 のあと …Na6-c7 および …Nd7 と指すことができる。白のdポーンは絶えず攻撃にさらされ、黒の王翼ビショップは …Bf6 のあと斜筋がきれいに通るのに対し、白のg2のビショップはd5のポーンによって邪魔される。

 だから白が Qc2 から e2-e4 と突く陣形上の作戦はもう少し待った方が良い。キャッスリングしてからの方が強力で、中央での作戦はe1かd1の王翼ルークにより支援することができる。

 黒はそれを狙われた時のために備えなければならない。e4とd5の支配をめぐる戦いで …Bb4 の可能性を放棄したので(既にビショップを動かしているので、また動かすのは貴重な手を損することになる)、別の構想を探さなければならない。そうして見つけることができるのは 6…Ne4! で、要所を占拠し …Nxc3 で白のポーンを二重にすることを狙う。そのような二重ポーンは黒が …d7-d6、…Nc6-a5 から …c7-c5 と指せば予備に …Rc8 と …Ba6 もあるので中盤戦で取られるのは必至である。そうなれば白には二印防御の短所だけがあり長所は何もない。

 6.Nc3 Ne4! のあとの白の選択肢は 7.Nxe4、7.Qc2 それに 7.Bd2!? の3手になる。両者がキャッスリングしたあとそれぞれをある程度詳しく分析してみる。O-O と …O-O を加えてもそれぞれの手の選択に大きな影響は与えない。

6…O-O

(この章続く)

2015年04月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(033)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 これは両者が避けようとしていた局面である!白にはこれ以上「パス」、すなわち形を決めない手がなく、黒もそうである。ここでは h2-h3 や a2-a3 のようなあまり意味のないつまらない手を指すか、作戦を明らかにしなければならない。

7.Nc3

 ようやくナイトが出て来て、それと共に 8.Qc2! から e2-e4 という陣形上の狙いも出てきた。白は最初に 7.Qc2 と指しそれから Nc3 と指すこともできる。この可能性については実戦例1で解説する。ここでは7手目での最も極端な変化について考察しよう。それらは超攻撃的な 7.d5 と超慎重な 7.Re1 である。

 もちろん最初の手の方が危険な手で、変わったギャンビットになる。ほとんどのギャンビットは相手に手損させるか弱点を受け入れさせるために戦力をくれてやる。ここでは黒は実際には白より多くの駒を展開していて、特に目立った問題もない。だから 7.d5 のギャンビットには別の目的がある。その主要な着想は中央を大きく支配していることを活用すること、特にd4の地点を使うこと、そして黒の后翼ビショップの斜筋を遮断することによりe4の地点への黒の影響力を減らすことである。

 7.d5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(034)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 7.d5 の局面

 7…exd5 8.Nd4 で白ナイトはg2-b7の斜筋を開けると共にf5の地点を目指す。黒は 8…Nc6 でギャンビットを拒否することができ、白は 9.cxd5 でポーンを取り返すことができる。そして 9…Nxd4 10.Qxd4 c5! で、白はクイーンを引こうと 11.dxc6e.p. と取ろうと中央での優位がほとんど消える。しかし白は 11.Qd2 から Nc3 そして b2-b3 から Bb2 で后翼ビショップをフィアンケットしていくらか優勢を保持する。

 いつものようにギャンビットへの最大の挑戦は受諾することである。7…exd5 8.Nd4 のあと黒はc4のポーンを取るわけにいかないが、后翼の展開を完了したいならば何とかして駒を再編成しなければならない。このための最良の手段は 8…Bc6! である。もし白がナイトでこのビショップを取ってくれば、中央の強力な駒を守勢の駒と交換したことになる。もっと良い手は 9.cxd5 Bxd5! 10.Bxd5 から 11.Nf5 や 11.e4 で、そのあと黒の王翼、特にg7の地点への攻撃が見込める。f5とd5の白ナイト、g7の地点をにらむb2またはc3のビショップ、そして例えばd4のクイーンを想像するのはたやすい。白の攻撃の可能性がポーン損に値するかどうかは指す人の技量にかかっている。

 白は 8.Nh4 の方がもっと良いかもしれない。このナイトはやはりf5を目指すが、8…Bc6 は 9.cxd5 で追い返せる。より自然な 8.Nd4 に対する 8.Nh4 の主要な利点は、白クイーンによるd5への直接的でさえぎるもののない圧力である。もし黒がポーン得を保つために 8…c6 と突けば、9.cxd5 Nxd5 10.Nf5 となって、后翼の展開に克服できないことはないけれども深刻な問題を抱えることになり、白は可能性が大きく広がる。しかしこのギャンビット戦型は比較的新しいので両者には改良の余地がいっぱいある。8.Nh4 は1980年にレフ・ポルガエフスキーが挑戦者決定大会番勝負でビクトル・コルチノイ相手に指して成功して注目を集めたばかりである。

 中央での戦略のまったく反対側に位置するのは 7.Re1 である。この手は手待ち方針をほとんどの選手がやろうとするよりもさらに一歩進めている。このおとなしい手の大きな利点はいつか e2-e4 と突く準備をし、その間ずっと黒の攻撃的な動きを待ち受けることである。例えば 7…Ne4 は 7.Nc3 に対してなら意味があるが、白のルーク寄りのあとではc3で取る手がないので意味がない。黒は魅力的な 8.Nfd2 で不快な釘付けに陥るかもしれないし、陣地を広げ同じくらい魅力的な 8.d5!(今度はギャンビットでない)で劣勢の局面に陥るかもしれない。

 戦術の要点もある。7.Re1 のあと黒はいくつもの穏やかな手で「パス」できる。その中でも 7…d6 はたぶん最も役に立つ手である。しかしこのポーン突きは白に何の代価を払う必要もなく 8.Nc3 と指させる不利益がある。そして黒は何事もなかったかのように指せば 7.Re1 の真価が現れる。8…Ne4(e2-e4 を止めるため)9.Qc2 Nxc3 のあと突然 10.Ng5! という手が飛び出す。この手はこの種の局面では危険になってくることがよくあり、h7での詰みとb7のビショップ取りを狙っている。白は一時的に駒損になっているけれども 10…Bxg5 11.Bxb7 で戦力得になる。そして 7.Re1 のいい所は黒が 10…Nxe2+ と取るわけにいかないことで、ルークを寄ってなければ白が困ったことになっていた(11.Qxe2 Bxg2!)。

 しかしさりげない 7.Re1 に対する良い手段が二つある。黒は「ただ」の手を使って 7…Qc8 とビショップを守ることができるし、中央で 7…d5 で事を決することもできる。どちらの手もまったく理にかなっている。7…d5 8.cxd5 exd5 9.Nc3 のあと黒には幸いにも 9…c6 のあと …Nbd7、…Qc7 そして …Rfe8 と指す堅実な防御と、危険な 9…c5!? との二つの選択肢がある。あとの手はどちらかが有利に乱戦に対処できるほど展開する前に、局面を開放することによりいつもいくらかの活気を注ぎ込むことになる。9…c5 10.dxc5 bxc5 のあとポーン陣形の主要な特徴はかの有名な「浮きポーン」で、これについてはあとで取り上げる。

 本譜の 7.Nc3 のあと白は中央で仕事に取り掛かる用意ができている。

(この章続く)

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后印防御の指し方(035)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 白は(7…d6 のような)無頓着な手には 8.Qc2! と応じることができ、もし許されるなら 9.e4 と突いていく。そして黒が不注意に展開すればすぐに達成することができる(例えば 7…Nc6 8.e4!)。最後に、ここで黒が …c7-c5 突きの着想を復活させれば、白がちょうど前述のように迎え撃つ態勢になっていることを見ることになる。すなわち 7…c5 8.d5! exd5 9.Nh4 から cxd5 であの素晴らしいポーン中原になる。

7…Ne4

 この手は初めて見たときは奇妙な印象を受ける。黒は既に展開された駒をまた動かすことにより2手かけて、最下段から離れて登場したばかりの駒(白の后翼ナイト)と交換する。この捌きはほとんど黒の展開を助けることにならない(黒の后翼ナイト、さらに言えば后翼ルークはどうしたのか)。また、このナイト跳ねは白枡の対角斜筋をふさぐことにより、白がある時点ですぐにビショップ同士の交換になる危険なしにナイトをf3から動かすことを可能にさせている。実際b7の黒ビショップが守られていないのでe4の黒ナイト自身が釘付けになるかもしれない。

 しかしこれらは実際の問題でなく理論的な難点である。このナイト跳ねは真に融通性がありこれまでの手と首尾一貫していて、このあと出てくるように黒にとって大きな利益がある。まず、形を決める 7…d5 から始めてほかの手を考察していこう。

 7…d5 はマスターのチェスでこの5年間によく指されるようになり、特に世界チャンピオンのアナトリー・カルポフによって採用されてからそうなった。この手は前述したもっと早い 5…d5 突きに似ていて、5…d5 のあとの局面が 7…d5 のあとの局面と同じになることもある。どちらの場合も黒は …c7-c5 で敵の中央を清算する用意をしている。(黒がこのような布局で …c7-c5 と突きたいときは、白がdポーンを突くのを防ぐために通常は先に …d7-d5 と突くべきであることを覚えておくとよい。)

 4ポーンがすべて突かれると(白は初手から d2-d4 と c2-c4 を指し、黒は …e7-e6 と …b7-b6 に支えられてあとで …d7-d5 と …c7-c5 と突く)、いろいろな型の中央ポーンの形ができ、最も難しいものにはあの有名な「浮きポーン」がある。中央ポーンがすべて駒で取り返されれば中央に完全にポーンがなくなり、取り返しの一つがポーンで行われれば中央にたった1個のポーンが残る。しかし浮きポーンができるためには白の cxd5 には …exd5、dxc5 には …bxc5 と取り返しが行われなければならない。するとポーンの形は次のようになる。

 浮きポーン

(この章続く)

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后印防御の指し方(036)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 浮きポーン

 d5とc5のポーンはほかのポーンによって支えられることができずにそこにとどまり、c1とd1のルークや色々な小駒によって中盤戦の大部分の間攻撃にさらされるので、浮いていると言われる。黒はいったんそのような浮きポーンを持つことになれば、有利な形で消去することは難しい。状況によってはそれらの一つを強力なパスポーンに変えることができるかもしれないが(…d5-d4 のあと …c5-c4 から …d4-d3)、そういうことはまれである。黒が一般に直面する絶え間ない危険はポーンが動けなくなりせき止められることである。例えば …d5-d4 と突くと白は駒、理想的にはナイトをc4にはめ込むことができる。そこの駒は見通しが素晴らしく、黒がポーンをもっと先に突くのを止める。黒が代わりにcポーンを突けば、白は早速小駒でd4を占める。(白はこのポーン陣形ではd4の地点を支配できるようにするためだけによく b2-b3 から Bb2 で后翼ビショップをフィアンケットする。)

 黒陣はポーンの弱点の存在する局面を指すことに慣れて嫌がらない選手の手にかかれば強力になることがあるけれども、通常は代償のない恒久的な標的を避けるのが賢明である。代償として戦力を始め多くの形をとることができるが、この種の局面では黒の代償はより大きい動きの自由度の形をとるのが普通である。もし黒の動きが制限されれば、それは通常はポーンの弱点(浮きポーン)の代償が十分でないことを暗示している。

 それでは 7…d5 に戻る。

 白は黒の動きを 8.Ne5! で制限しようとすることができる。もし 8…Nbd7 9.cxd5 exd5 と進めば黒は …c7-c5 でe5の白ナイトを揺さぶる手があって堅実そうに見える。しかしここで 10.Qa4! によって 11.Nc6 を狙われると黒の動きの自由は本当におかしくなる。黒はもし良好な后翼ビショップがそのナイトと刺し違えることを強いられれば、后翼ビショップがなくなって弱点になった后翼の白枡に敵に自由に出入りさせることになる。白はb7、c6、a6そしてb5を意のままに占拠できるようになる。黒は 11.Nc6 を止めることができるが、その選択肢は不快なものばかりである。10…Nb8 は愚形で手損の退却だし、10…Nxe5 11.dxe5 Ne8 は自分のポーンを 12.Rd1 から 13.e4 の攻撃にさらす。

 7…d5 8.Ne5 のあとの局面の正しい対処法は逆説的な 8…Na6! である。

 7…d5 8.Ne5 Na6 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(037)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 7…d5 8.Ne5 Na6 の局面

 これでd5でのポーン交換(9.cxd5 exd5)から 10.Qa4 のあと黒は 10…Qe8! と指すことができ好調である。クイーン同士の交換は弱点を守るのが容易になり展開で少し有利になるので恐れる必要がない。白はまだ后翼ビショップの本当に良い地点が見つかっていない。ポーン同士の交換の代わりに 9.Bg5 c5 または 9.b3 c5 と指せば黒が中盤戦で有利な立場になる。

 既に見たように黒は后印防御の色々な個所でこの種のポーン陣形を目指すことができる。しかしここでの7手目では黒がどの駒も不利な地点に早まって行かせることをなくそうとすることができる。この要点は 7…Ne4 に代わる 7…Qc8 を考える際に思い浮かぶ。もし白が 8.Qc2 で e2-e4 突きを意図すれば、黒は 8…c5 で中央の取り分を得ようとしなければならない。cポーンを突くのは白クイーンがd列にいないので d4-d5 突きを支援できないので、今が最も適切である。しかし黒はここで 8…d5 と突こうとすべきでない。なぜなら 9.cxd5 exd5 でc8のクイーンがいくらかおかしな位置になるからである。白は后翼ビショップを動かしたあと Rac1 でc列ににらみを利かせることができ、そうなれば黒クイーンが愚かに見える。同様の状況は 7…Qc8 8.b3 d5 9.cxd5! exd5 10.Bb2 Nbd7 11.Rc1 でも生じ白が好調になる。

 しかし 7…Qc8 には役に立つことがあり過小評価すべきでない。この手は白が対角斜筋でb7のビショップの守られていない状態につけ込むことのできる戦術のあやをすべてなくしている。例えば 8.d5 exd5 9.Nh4? は 9…dxc4 で単なるポーン損になる。そして上述のように 8.Qc2 には 8…c5! で黒が絶好の態勢になる。9.e4? は黒の捌きが防ごうとしていた手だが、9…cxd4! と応じられてcポーンを取られる。白は 9.b3 cxd4 10.Nxd4 と指す方が良いが、黒が 10…Bxg2 11.Kxg2 Nc6! から …d7-d5 で見通しが明るくなる。

 白が(7…Qc8 のあとの)…c7-c5 を待ち受けるなら、8.Qc2 でなく 8.b3 でクイーンを本拠のd1に置いておくのが最善である。それでも 8…c5 なら 9.d5! で白駒に素晴らしい視界が開け、黒駒の視界を厳しく制限することになる(黒は既に d5-d6 突きの狙いに直面している)。

 それでは本譜の 7…Ne4 の利点について考察しよう。

(この章続く)

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后印防御の指し方(038)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 白は小駒同士の交換を避けることができない。ナイトの良い引き場所がないのは無論だが、もしあったとしても黒ナイトをe4のこんな絶好の地点に置いたままにさせたくはない。このあとのナイト同士の交換は黒を楽にさせるだけだし、さらにそのあと可能な白枡ビショップ同士の交換もそうである。しかし黒は一組の小駒同士の交換だけからさえ利益を得る。というのは后翼ナイトをf6に捌いて、e4の地点をめぐる戦いに参加させることができるからである。ナイトをe4に捌きそのあとナイト同士を交換すれば、まずe4の地点を占拠し次に白駒をそこからそらすことにより白の e2-e4 突きを防ぐことになる。

8.Qc2

 この手は黒が何をしようとたとえナイトをe4に置いたままにしようと役に立つ手である。c2のクイーンはe4の地点に影響を与え、それと同時にc3の地点に利いて二重ポーンを避けている(…Nxc3 のあと)。

 7.Nc3 のように白は攻勢と堅実の間の中道を進んでいる。危険と隣り合わせで複雑な 8.Bd2!? は、ありきたりの本譜の手に代わり魅力のある指せる手と考えられている。しかし 8.Nxe4 Bxe4 は退屈すぎるとみなされている。その理由を考えてみよう。

 8.Nxe4 Bxe4

(この章続く)

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后印防御の指し方(039)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Nxe4 Bxe4

 ここで白は 9.Ne1 でe4での黒の封鎖を突破することができる。しかし黒は 9…Bxg2 から 10…d5 で何も怖くない。黒が中央のポーン、特にdポーンを突くことにより中央で分け前を得れば、このような単純化した局面でもまったく問題ないはずである。争点があるとしばしば白の有利に働くが、二組の小駒がないので中盤戦から争点のほとんどが消えている。

 9.Bf4 から Rc1 のような展開の手の方が見込みがある。そして黒は …d7-d5 と突くと白側から強く cxd5 と応じられてc列を素通しにさせるので突きにくくなる。黒が早まってdポーンを突くと、c列での白の圧力のためにいつかcポーンが落ちることになる。そしてこの時点(黒が …d7-d5 と突く前)での …c7-c5 突きは、またしても d4-d5 突きを招く。

 黒は 8.Nxe4 Bxe4 9.Bf4 のあと中央で守勢の態勢をとらされるかもしれないが、守勢の中央は堅固である限り不安の原因とはならず、どんなにかすかではあっても強力になる見込みがある。9…d6 のあと防御線を張る …Nd7 から …Qc8-b7! には将来性がある。クイーンがb7にいてもっと多くの駒が展開されれば黒は …c7-c5 と突く用意ができるかもしれない。d6のポーンは白駒をe5に寄せつけず、白のf4のビショップの斜筋を縮める。白は広さの優位にものを言わせるためにはポーンの突っかけが必要となる。すなわち素通し列を作るためのポーン突きである。e2-e4 はまだ指せず c4-c5 は支援できないので、白の中盤戦の展望は d4-d5 にかかっている。しかしこの手は …e6-e5! によって簡単に受けられる。そのあと中央のポーン陣形は閉鎖的になるけれども、e4の黒ビショップはまだb7にいるのと違い働いていないわけではない。しかしe7にいる黒のもう一つのビショップは d4-d5 と …e6-e5 の応接により影響を受ける。というのは黒の中央ポーンは黒枡にあり、このビショップのいる枡の色と同じだからである。しかし黒はいつか …f7-f5 から …Bf6 と指せる限り、不安になることはない。

 白が d4-d5 と突き黒が …e6-e5 と突くこの最後の状況はそう珍しいことではない(もっとも通常は黒が先に …e6-e5 と突き、それに対して白が d4-d5 と応じる)。これらの局面を前もって注意深く判断しておくことが大切である。なぜならどちらも不利を避けるためにこれらのポーン陣形の一つに向かわされるかもしれないからである。

 8.Bd2 のあと生じる局面ははるかに複雑である。

 8.Bd2 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(040)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Bd2 の局面

 このフィアンケット戦法の新機軸はマスターの実戦の最近10年で最もよく指される手になった。もし黒がここでまたは次の手でc3のナイトを取れば、白はビショップで取り返すことができ d4-d5 と突く用意が完全に整う。主手順における白の通常の作戦はこのビショップを対角斜筋上に展開する(b2-b3 から Bb2 の手段で)ことなので、Bd2 からこのビショップでc3で取り返すのは白の作戦に完全に適合している。

 しかしそれでも 8.Bd2 は奇異に見える。白がビショップをナイトと交換させ(8…Nxd2)、黒に双ビショップの優位を与えるのは良い手と言えるのだろうか。実際は黒はビショップを取るべきでない。というのは白の展開をずっと促進させ、クイーンを好位置に来させ、ルークを結合させて中央列に移動する準備をさせ、中央での強力なポーン突きがやって来るからである。それに黒は最も活動的な駒となっている中央のナイトを放棄することになるからである。

 8.Bd2 のあと黒はナイトで取るのをすべて延期するのが良い。d列が一時的にふさがっているので妥当な手は 8…c5 である。黒が …c7-c5 と突いたとき白が 9.Rc1(9…Bf6! 10.Nxe4 Bxe4 から 11…Nc6)や 9.Ne1(9…Nxc3 のあと 10…Bxg2 から 11…cxd4)のような穏やかな手からほとんど何も得られないのはいつものことである。急所の手は 9.d5! で、ほとんど取ることを強要する。しかし 9…Nxc3 10.Bxc3 も 9…Nxd2 10.Qxd2 も、白が急速に Rad1 と Rfe1 で中央列に駒を集積するので黒にとって有望そうに見えない。

 8.Bd2 に対して中央に対処する別の手段は 8…d5 である。ここでもまた白はわずかではあっても優勢になれる。ビショップがd2に展開しているので 9.cxd5 exd5 10.Rc1 で后翼ルークを迅速に働かせることができる。

 8.Bd2 d5 9.cxd5 exd5 10.Rc1

(この章続く)

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后印防御の指し方(041)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 8.Bd2 d5 9.cxd5 exd5 10.Rc1

 黒は中央が不安定に見え始め、正確に指さなければならない。すぐに 10…c5 と突くのは 11.dxc5 と取られてどのように取り返しても弱いポーンが残るので悪い。10…Nd7 は 11.Qb3 で黒のdポーンに対する白の圧力がいい感じである。白は 10…Nd7 に対してビショップがもうc3での取り返しに必要ないので 11.Bf4! と応じることもできる。11.Bf4 c5 のあと白は 12.Nxe4 dxe4 13.Nd2 Nf6 14.dxc5! から 15.Nb3 で陣形的にはっきり優勢になる。このあとe4と后翼の黒ポーンはもろくなっている。

 最後に、黒は 8.Bd2 のあとの動的なポーン突きに関連した問題を 8…Bf6 または 8…d6 と指すことにより避けることができる。しかし中央を広げる 9.d5! に何らかの手段で応じなければならない。例えば 8…Bf6 9.d5 Nxc3 10.Bxc3 Bxc3 11.bxc3 なら、白の強力なdポーンは二重cポーンの代償として余りある。黒は白の二重ポーンを …exd5 で解消させるか、白のd列とe列のルークにより支援された dxe6、d5-d6 から e2-e4-e5 を絶えず心配しなければならない。

 それでは 8.Qc2 のあとの主手順を続けよう。

8…Nxc3 9.Qxc3

(この章続く)

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后印防御の指し方(042)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

9…f5

 この戦法の主手順においてここほど黒の理にかなった手の選択肢が多い時点はない。ここでは主要な変化を考え、もっとまれな手は本章の終わりの実戦例の解説で取り上げる。

 このfポーン突きには確かに危険も伴っている。しかし最も論理的な手でもある。これで黒の王翼ビショップはfポーンをふさぐことなく安全なf6の地点に出ることができ、ビショップが邪魔にならなくなるのでクイーンとナイトが …e6-e5 突きを支援するために最良の地点を選ぶことができる。黒は …f7-f5 突きのおかげで …Rf6-h6、…g7-g5 そして …Qe8-h5 で危険な王翼攻撃に転じることができるかもしれない。進攻したfポーンは黒のために動き回る余地を確保するだけでなく、白の e2-e4 突きも防ぐ。しかし黒のfポーン突きにもかかわらずもし白が周到な準備のあと e2-e4 と突くことができれば、中央が大きく捌け白にとって大変有利になる。結局のところ白は展開に優っているので、黒が中央列でルークを使うことができるようになるよりずっと前にd列とe列で自分のルークを所定の位置につけることができるようになる。

 もし黒が自分の后翼ビショップを閉じ込めることになる白の e2-e4 から d4-d5 が気になるならば、安全志向の 9…Be4 が注目に値する。

 9…Be4 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(043)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…Be4 の局面

 このビショップを、守られていない地点から別の守られていない地点に動かすのは確かに奇妙に見える。実際b7よりもはるかに危なそうである。しかしこのビショップをe4に動かすことにより、黒はある意味ではその安全を図っている。ここで白には d4-d5 から(…exd5 のあと)Nh4 で釘付けにつけ込む機会がない。白はどうしても d4-d5 と突きたいのなら、釘付けのような戦術的手段でなく直接この突きを支援しなければならない。そしてたとえこのポーンがd5に進んだとしても、黒は無視することができるし、適切な準備のあと后翼ビショップが閉じ込められることを心配することなく自分の中央ポーンを突き越すことができる(…e6-e5!)。

 白は 9…Be4 にすぐかあとで白枡ビショップ同士の交換を持ちかけることができる。自分の王翼ナイトをいつまでも動かさずに中盤戦を効果的に戦うことはできそうもない。そして動かしたとたんに黒はビショップ同士を交換することができる。基本的には適切な時機の問題である。

 すぐ 10.Ne1 Bxg2 11.Nxg2 と指すのは確かに利点がある。白にはそのあと中央で強く 12.d5 と突く狙いがある。もし黒がそれを 11…d5 で未然に防げば、白は 12.cxd5 exd5 13.Bf4 で有利にポーンを交換することができる。13…c5 14.dxc5! から 15.Rad1 のあと黒は盤の中央に恒久的な標的を抱えるし、13…c6 なら黒の指し手は活気がなくなる。しかし黒は直接の挑戦の 10.Ne1 Bxg2 11.Nxg2 に 11…c6! と応じることができる。そのあと黒は 12.d5! にd5で2回取ることによりポーン得しようとすべきでない。なぜなら白が一時的に犠牲にした戦力を Rad1 から Nf4 で有利に取り返すからである。黒は自分の残りのdポーンを孤立させ白に中央で開放的な広さを与えることに成功しただけである。代わりに黒は 12…cxd5 13.cxd5 Bf6 または 13…Na6 から 14…Qc8 で駒の働きで追いつくようにすべきである。

 9…Be4 のあとの布局へのもっとゆっくりした対処法は 10.Bf4! で Ne1 を遅らせる着想である。ここで黒は気をつけなければならない。今のところ白が展開で先行しより多くの陣地を支配しているので、局面は黒に守勢を余儀なくさせている。だからといって黒は守勢的すぎるわけにはいかない。10…d6 11.Rfd1 Nd7 12.Qe3!(のちの …e6-e5 を抑止している)のあと黒はたちまち狭小な陣形に追い込まれることがある。白は h2-h3 から g3-g4 で王翼攻撃を始めることさえでき、もし黒の黒枡ビショップがf6に行けばその位置につけ込むことができるかもしれない(g4-g5!)。

 代わりに黒は 10…c6 から …d7-d5 で鉄壁の中央を構築することにより守ることができる。しかしこれは黒の融通性を特に中央でいくらか放棄することになり、白枡の一部、特にc6を弱点として残すことになる。

 9…Be4 に対する評決は、白があまりに速く活動的になるということである。

 もっと融通性のある作戦は 9…d6 で、黒がビショップをe7に置いたままナイトをd7を経由してf6に持ってくる可能性ができる。そしてナイトはd7にいる間 …e6-e5 と突く可能性に目を光らせることができる。しかし 9…d6 は白の e2-e4 と d4-d5 の双子の狙いによって引き起こされる陣形上の危険に何もしていない。黒は両方を防ぐことはできない。そして一方を防ぐ手段は他方をもっと危険にするかもしれない。

 例えば 10.Qc2!(9…Be4 が防いだ手)のあと白は待望の e2-e4 突きを狙う。黒はそれを予期して 10…f5 と突くことができ、たぶん 11…Be4 をもくろむ。しかし白が用心深くて 11.d5! と指せば、黒はビショップをそのように動かす機会が得られない。

 9…d6 10.Qc2 f5 11.d5

(この章続く)

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后印防御の指し方(044)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…d6 10.Qc2 f5 11.d5

 ここで 11…exd5 と取ってくれば白は 12.Nd4 と指し Ne6 と Nxf5 を狙い、cポーンでd5のポーンを取り返してc列で黒陣を圧力にさらすことも狙う。やはり白は対角斜筋での釘付けの戦術的手段を用いて陣形上の目的を達成する。例えば 11…exd5 12.Nd4 Qd7 13.cxd5 となると黒陣はひどすぎる。

 黒はこれらのほとんどを(11…exd5 の代わりに)11…e5 で白ナイトにd4に来させないことにより避けることができる。しかし白はそれでも 12.e4! で好調である。例えば 12…fxe4 13.Qxe4 Nd7 14.Be3 Nf6(または 14…Nc5)15.Qc2 と進むと黒のビショップは連鎖ポーンの内側で非活動的で(b7のビショップは白ポーンによって、e7のビショップは黒ポーンによってそれぞれ動きを制限されている)、白は敵のf5とe6の「空所」(ポーンで自然に守ることのできなくなった比較的攻撃を受けやすい地点なのでそう呼ばれる)につけ込むためにルークを使ってすぐに f2-f4! で列を素通しにする準備ができている。

 これらはすべて黒が …f7-f5 の手段によって e2-e4 突きを止めようとしたために起きた。白のeポーンを 9…d6 10.Qc2 Qc8 または 10…Nc6 のような手で進ませる方がいくらか理にかなっている。しかし白は 10…Qc8 への応手に 11.e4! 突きが強手となり、そのあと b2-b3 から Bb2 そしていずれ Ne1! から f2-f4 と突く。ナイトを 10…Nc6 と跳ねる手は 11.e4 で容易に対処でき、白が少し優勢になる。しかし 11.d5! の方がずっと優る。11…exd5 12.cxd5 Nb4 13.Qb3 Nxd5 と進んだ中盤戦は、再びあの素晴らしき 14.Nd4! で白が圧倒的な態勢である。

 おとなしすぎる 9…Be4 と陣形的に欠陥のある 9…d6 のほかに主要な変化は 9…c5! である。8.Bd2 がちょうどフィアンケット戦法で戦いを激化させる白の最良の手段であるように、9…c5 が互角以上を目指す黒の最も危険な手であることが知られるようになった。

 9…c5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(045)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 9…c5 の局面

 10年ほど前白の中央に対するこの攻撃は、もっと早い時点での …c7-c5 突きのために通常用意されている軽蔑という言葉と共に見られていた。白は単純な 10.Rd1 で圧倒的な局面にできるものとされていた。なぜなら黒はそのあとの 10…d5?! 11.dxc5! から 12.cxd5 という中央の流動化に無防備で、10…Nc6 11.d5 と追い立てられるわけにもいかなかったからである。そしてもし黒が穏やかに 10…d6 と指せば、白は 11.Qc2!(またも 12.Ng5 Bxg5 13.Bxb7! という策略を狙っている)から 12.e4 で中央のおいしい部分を占める。

 このバラ色の見方は近年覆されてきた。それは新手によるものではなく、黒が …d7-d6、…Bf6 から …Qe7 のあと …Nc6 または …Nd7 と指し、白が e2-e4 と突き后翼ビショップを b2-b3 から Bb2 または Bf4 によって展開した局面の再評価によるものであった。それらの局面はもうそれほどはっきり白が有利だとは考えられていない。(例えば 9…c5 10.Rd1 d6 11.Qc2 Nd7 12.Ng5 Bxg5 13.Bxb7 Rb8 は白が少し優勢だけれども特に危険というほどではない。)

 黒はビショップがf6、ポーンがc5、そしてナイトがc6にあればd4の地点に圧力をかけることができる。そのような局面でもし白がc5のポーンを取れば、黒はたぶんdポーンで取り返してポーン陣形を対称に保ち、d列で弱いポーンを守らなければならない事態を避ける。(黒は5手目または6手目でもっと早く …c7-c5 と突けば、dxc5 には喜んで …bxc5! と応じる。これはそのあとすぐに …d7-d5 と突いて中央を強化することができるからである。しかしここでは白がキャッスリングしていてルークがd1にいるので、黒は …d7-d5 と中央で仕掛ける立場にない。)

 白は 9…c5 のあとでは中央での大きな分け前を保持するが、9…f5 のあとではもうそういうことにはならない。ここでの違いは白が dxc5 かたぶん d4-d5 ですぐに列を素通しにして局面に動的な要素を追加することができるということである。しかし黒はf6のビショップでそのような手順に抵抗する。白は中央での優勢な戦力を用いることを望むなら、クイーンをc3にあまり長く維持することはできなくてd2かc2に下がらせることになる。黒はそのときまでには適切に展開して中央での危機に対処しているはずである。

 想定手順を見てみよう。9…c5 のあとは 10.Rd1 が最善のようである。代わりに 10.Be3 なら 10…Bf6 11.Rfd1 のあと黒は既に敵の不正確な手順を利用して、中央で 11…Bxf3! 12.Bxf3 Nc6! で互角の局面にできる。d4に対する黒の圧力が非常に強いので、白は 13.Bxc6 dxc6 14.Qd3 cxd4 というように圧力と中央を清算してまったくの互角にするのが良い。

 だから 10.Rd1 ですぐにd列に圧力をかける方が良い。例えば 10…Bf6 11.Qd3 で、d7を守ろうとする黒駒の連係を乱すことに期待する。しかしここでさえ黒には適切な応手がある。11…Nc6! 12.dxc5 bxc5 13.Qxd7 Qb6 14.Bf4(白クイーンがc7に逃げられるようにした)14…Rac8! のあと、黒陣は主に 15…Rfd8 とb2に対する狙いと共に非常に活動的で脅威なので、dポーンがないことは大したことではなくたぶんどのみち一時的なことである。

 9…c5 10.Rd1 のあと黒にとって最善の手順は 10…d6 11.b3 Bf6 12.Bb2 Qe7 かもしれない。

 12…Qe7 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(046)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 12…Qe7 の局面

 白は 13.Qc2 で敵ビショップの斜筋からクイーンをはずして中央の構築を続けることができるけれども、13…Nc6 14.e4 g6! で黒陣が堅固になる。黒ビショップはいつか e4-e5 と突かれた際にg7に下がれるので安全である。そのポーン突きはe5でのポーン交換のあとそこに非常に弱い白ポーンが残されることになる。白は d4-d5 と突く方が良いが、それも黒陣を正当化することになり、…g7-g6 を正当化することにさえなる。つまり 15.d5 Nb4 16.Bxf6 Qxf6 17.Qd2 のあと黒は 17…e5! と突き、そのあといつか …f7-f5 と突いて白の中央の最弱点であるe4を攻撃する。さらにこの手順で、一時的に閉じ込められているb7の黒ビショップがc8を経由してh3に通じる斜筋で生き返ることになる。注意すべきはこの局面でg2の白ビショップが自身のポーンによって動きを制限されていることで、「不良」ビショップの典型的な例になっている。

 それでは 9…f5 に戻る。

(この章続く)

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后印防御の指し方(047)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

10.b3

 黒に …Bf6 と指す手順が回れば、白は自分の都合のよいように d4-d5 と突くことができなくなる。実戦例1に見られるように、白にとって d4-d5 と突くのが危険になるときがある。しかしここでは本手順中初めて白が戦力損の危険なく d4-d5 と突くことができる(例えば 7.d5 と比較せよ)。

 10.d5 exd5 のあと白は、同様の局面でできたようには 11.Nd4 と指せない。理由は 11…c5! から 12…d4 で白クイーンが当たりにされ …Bxg2 と取られるからである。白は戦力の均衡を保持したいなら 11.Ne1 と指さなければならない。11…Bf6 には 12.Qd2! でまったく申し分なく、黒に 12.Bxd5+ Bxd5 13.Qxd5+ で勝つ狙いに備えさせる。

 10…exd5 の代わりに黒はまず 10…Bf6 で敵クイーンを当たりにすることにより自分のポーンの結合を保つのがよい。もし白が e2-e4 突きで中央を支援するためにクイーンをc2に戻せば、黒は 11…c6! で白の中央を効果的に清算することができる。例えば 12.dxe6 dxe6 13.Bf4 Qe7 のあと …e6-e5 で黒が好調になる。だから 11.Qd2 の方が良く、11…c6 には 12.Nd4! と応じて中央に戦力が集中して絶好の態勢になる(12…c5? 13.Nb5)。もし白が中央の争点、すなわち中央のポーンを交換するか突き越すかの自分の選択を維持することができれば優勢になる。

 10.d5 Bf6 11.Qd2 Qe8 のあとも白が少し優勢なのもこの理由による。白はまたナイトをd4の好所の拠点に据える。そして黒は 12…Bxd4 13.Qxd4 e5 で中央を閉鎖し、自分の展開を完了する手を稼ぐことができる。eポーンに続いてdポーンを黒枡に置くことにより黒は黒枡ビショップのない不利を最小限にする。しかし自分に双ビショップがあり相手にない一つの有利な点は、中盤戦後半か收局でポーンを交換することにより斜筋を素通しにすることができることである。なぜなら素通しの斜筋こそビショップの本領を発揮する所だからである。具体的に何を意味しているのかというと、13…e5 14.Qc3! d6 のあと白は 15.f4! でビショップの将来を改善することができるということである。その要点の一つはもし黒が 15…e4 により交換を避けようとすると、白は 16.b3 から Bb2 で黒キングに通じる対角斜筋を強力に支配する。だから黒は 15…Nd7 と指すのが良い。

 優勢を目指す別の試みは局面を単純化する 10.Ne1 である。

 10.Ne1 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(048)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲) 10.Ne1 の局面

 このビショップ同士の交換の誘いは、キャッスリングしたあとならば布局のいつの時点でもできる。黒の白枡の支配が強すぎるので、白はここで交換を申し出て中央での意図する動き(いずれ d4-d5 か e2-e4、またはその両方を突く)を容易にしようとする。しかし 10.Ne1 はナイトをちょっとの間中央から離れさせるので、白は 10…Bxg211.Nxg2 と取り返すことによりナイトを中央の近くに持ってくる。しかしこのナイトはf3にいたときにはdポーンを守っていたが今はもう守っていないので、黒はすぐに 11…Bf6 と襲いかかる。

 白の問題は d4-d5 または e2-e4 と突く意図の Qc2 が、単純にdポーンを取られてしまうために指せないことである。代わりに d4-d5 または e2-e4 と突くつもりで Qd3 と指すことができ、同時にdポーンも守っている。しかし黒がナイトでd4に加えられる圧力を考えればd3のクイーンはすわりが悪い。例えば 12.Qd3 Nc6 のあと 13.d5 と突くのは、13…Nb4 14.Qb3 Na6! から 15…Nc5 とやってこられるために時期尚早である。黒は二つの小駒が絶好の地点にいるので何も心配がない。これは d4-d5 突きがうまくいかない場合の一つである。

 白は 12.Qd3 の代わりに 12.Be3 と改良することができる。それに対して黒が 12…c5 と突くのは、白が 13.Qd2! のあと素早くd列を占拠するので危険すぎる。つまり黒は 13…cxd4 と交換するかcポーンを守るかしなければならないが、どちらも弱い手である。だから 12…c5 の代わりに …e6-e5 と捌いていくべきである。例えば 12…d6 または 12…Nc6 のあと 13…Qe8 が最も適切なようである。

 10.Nd5 や 10.Ne1 のあと白は少し優勢になる。クイーン翼ビショップをフィアンケットする本譜の手はもっと優勢になろうとする手である。

(この章続く)

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后印防御の指し方(049)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

10…Bf6 11.Bb2

 この局面はユーゴスラビアの初めての有名な選手のミラン・ビドマールによって奨励された。白は交換によって相手を楽にさせるようなことはしない。それに中央の形を決めて黒駒に適切な地点を見つけさせるようなこともしない。例えばここで黒は数手の間避けてきたナイトをどうすべきかという問題に対処しなければならない。そしてクイーンと后翼ルークはどうするのか。白のルークがe1とd1で(または白が c4-c5 と突けばd1とc1で)やることがいっぱいある間、黒の大駒は将来性が不透明である。

(この章続く)

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后印防御の指し方(050)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

(再掲)

 黒が …c7-c5 を考えるのは既にちょっと手遅れになっている。その着想の機会は以前にあったし(5、6それに9手目)、中盤戦にもまたあるかもしれない。しかし今のところは黒がそのような激しい手を指す用意ができていないだけのことである。11…c5 12.Qd2! のあと黒は指す手に窮する。例えば 12…cxd4 なら 13.Nxd4 から Nb5-d6!、12…Na6 なら 13.dxc5 Nxc5 14.Bxf6 から 15.Rfd1 となる。

 黒のナイトの問題に対する二つの最も自然な解決策の一つは、…d7-d6 によりd7の地点を与えることである。そしてもう一つはすぐにc6の地点に展開することである。どちらにも欠点があるが、黒駒を中央に向け続けるという利点は確かにある。

 以前から指されている 11…d6 の着想は …Qe7、…e6-e5 そして …Nd7 と指すことにある。数多くの着想でこの布局に貢献したニムゾビッチは、同様の局面で …Qe7 から …g7-g5!? と指すことも好んだ。どちらにしても黒はd列の開通に絡む危険性とe6に対する白の攻撃とにことに警戒しなければならない。f5、e6そしてd6の黒ポーンは非常にもろく、なじみの d4-d5 突きの着想を始めとするあらゆる種類の攻撃にさらされる。

 自然な手順は 11…d6 12.Rad1 Qe7 である。そしてついにここが 13.Ne1 で 13…Bxg2 Nxg2 と交換するいい機会のようである。白はビショップが空けたばかりの斜筋にクイーンを据えることができる。例えば 14…Nd7 15.Qf3! から e2-e4 または厄介な襲撃の Qb7 がある。この場合黒は 14…Nc6 と指す方が良い。

 しかしそもそもどうして(11…d6 の代わりに)ナイトをそこへ動かさないのだろうか。確かにそこはビショップの利きをふさぐし d4-d5 を誘うかもしれないのでナイトにとって最も効果的な地点でない。しかしc6の地点はダビド・ブロンシュテインが呼んでいたようにほかの地点への跳躍台にすぎない。このナイトはd8に下がってあとでf7に行くことができる。あるいはe7に行ってキング翼攻撃に加わることができる。さらには 11…d6 の代わりに 11…Nc6 で黒は大きな困難になるかもしれないe6の弱体化を避けることができる。白は Ne1 と引き Nxg2 と取り返しいずれこのナイトをf4に跳ねてe6に狙いをつける。この地点はe6を攻撃し d4-d5 突きを支援する好所である。

(この章続く)

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后印防御の指し方(051)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1
白 A.マイルズ
黒 V.コルチノイ
ベイクアーンゼー、1978年

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.c4 Be7

 ここでの変わった顧みられない手は 5…g6 である。この手で王翼防御のようになるが、黒は …d7-d6 の代わりに …e7-e6 と指している。この違いにより黒は黒枡が弱点になりそうだが(例えばf6)、重大な弱点であるとはまだ証明されていない。もし黒が自駒のために中央を十分確保することになれば、白は黒の弱い地点に十分つけ込めないかもしれない。例えば 6.O-O Bg7 7.Nc3 O-O 8.Qc2 d5 となればつばぜり合いの試合になる。たぶんこの局面につけ込む白の最善の策は 8.d5! から Nd4 である。

6.O-O O-O 7.Nc3

 この手で黒が有益な …Ne4 を指すことができ、ほかの状況では …Ne4 が白にとって問題になったので、白はe4の地点を補強する別の手を考えるもっともな理由がある。思いつくのは 7.Qc2 である。

 7.Qc2 の局面(参考図)

(この章続く)

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后印防御の指し方(052)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲) 7.Qc2 の局面(参考図)

 ここで黒が機械的に 7…Ne4 と指せば白は 8.Nfd2! で罠を仕掛ける。黒ナイトは非常に不安定な斜筋の中央で急に立ち往生し、取られるのを避けるためには軽やかにステップを踏まなければならない。例えば 8…Nxd2? と取ると 9.Bxb7 Nxf1 10.Bxa8 で黒の戦力損になる。8…Nd6 でb7のビショップを守って罠を避けることはできるが、9.e4! でひどいことになる。

 7.Qc2 のあと黒は 7…d6 のようなおとなしい手では 8.Nc3! から 9.e4 を招くので積極的に指さなければならない。幸い黒には 7.Qc2 につけ込む手段がある。この手は 7.Nc3 のような展開の手ではないので、黒は局面を開放するのに必要な余裕があり白クイーンは巻き添えにされるかもしれない地点にいる。

 例えばここで 7…d5 と突くのは 8.Ne5 c5! で中央が清算されて黒の展開に役立つので良い目のつけどころである。9.dxc5 Bxc5 10.Nc3 のあと黒は紛らわしい 10…Qc8! でb7のビショップを守りc4のポーン取りを狙うことができる。11.cxd5 なら 11…Nxd5 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 Bxf2+! でc2の浮いている白クイーンを取ることができる。

 白クイーンを困らせる手段はこれだけではない。黒は 7…Nc6 で 8…Nb4! の狙いで 8.e4 を止めることができる。さらに 8.Nc3 には 8…d5! 9.cxd5 Nb4! から后翼ナイトでd5のポーンを取り返すことができる。黒はそのあと …Qc8 から …c7-c5 と指して良い展望が開けるし、展開で先行できるかもしれない。

(この章続く)

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后印防御の指し方(053)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

7…Ne4

 しかしここでの 7…Nc6 は 8.e4! の待ち構えるところで、白が絶好の態勢になる。7…d6 も 8.Qc2! から 9.e4 で白が同様の局面になる。白はポーンをe4に進めることになれば、e4-e5 から Ne4 で黒駒を押し込めることを狙う。

 ほかの局面では指せた …c7-c5 突きだが、ここでは 8.d5! exd5 9.cxd5 とやってこられるために疑問である。この場合白は対角斜筋での釘付け(9.Nh4)を用いるまでもなく、既に e2-e4-e5 の狙いがある。

8.Qc2 Nxc3 9.Qxc3

 白はあとでクイーンをこの地点からどかすので、9.bxc3 の方が良くはないだろうか。このクイーンはc2にいたままならば e2-e4 突きを支援するし、戦力得になる 10.Ng5! も狙える(10…Bxg5 11.Bxb7)。それにc列の二重ポーンはd4の地点を余計に守っているので光明になり得る。

 この局面は例えば 9…f5 10.d5 Qc8! 11.Nd4 c5! 12.Nb3 d6 から可能ならば …e6-e5 で非常に激しくなることがある。c3の白ポーンはこの局面では大きな弱点でないが、c4のポーンはそうなり得る。

 9.bxc3 の潜在的な弱点につけ込む別の手段は 9…Nc6 である。これは 10.e4 を防ぐためには何もしていないが、その目的は 10.e4 Na5! 11.Nd2 Ba6 のあと白を攻撃からそらすことである。c4の白ポーンは非常に弱くて、以降の …Rc8 から …c7-c5xd4 のあとほとんど守れない。白はc4を攻撃できる駒の一つを(10.e4 の代わりに)10.Nd2! Na5 11.Bxb7 から 12.e4 という手段で交換した方が良い。それなら優勢な中央ポーンにものを言わせる可能性はかなり高くなる。

9…f5

 これは浮きポーンを甘受しても中央で攻勢を図る黒の最後の機会かもしれない。代わりに 9…d5 は 10.Bf4 か直接の 10.cxd5 exd5 11.Rd1 Nd7 12.Bf4 のあとd列とc列のルークにより攻撃にさらされる可能性がある。あとの場合 12…c5 で黒はこの布局での通常よりももっと自由になるが、13.dxc5 bxc5 14.Qc2 から 15.Rac1(e2-e4! のあと Ne5 かすぐに Ne5 の意図)で白の優勢は確実である。

10.b3 Bf6 11.Bb2 Nc6

(この章続く)

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后印防御の指し方(054)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ナイトはこの地点では具合が悪そうに思われる。クイーン翼布局には「ナイトでcポーンをふさぐな」という大まかな指針がある。ここではナイトが白の中央に対し実際には圧力を加えていないし、常に d4-d5! で追い払われる危険性があるので、この指針は当てはまっていそうである。本局で起こることを(11…Nc6 の代わりに)11…Qe7 12.Qd2! から 12…Nc6?! のあと起こるかもしれないことと比べてみるとよい。白は既に中央で進攻する用意ができていて、13.d5! から 14.Nd4! でe6とf5に大きな圧力をかけることができ、そのあと e2-e4 突きがたちまちやってくる。

12.Rad1

 これは良い手待ちである。黒は白がdポーンを突いて素通し列を作るのを防げない。しかし白はクイーンが対角斜筋を離れるまで d4-d5 と突くことができないので(12.d5??? Bxc3)、12.Qd2 は考える価値がある。12.Qc2 もそうで、Ne1 のあと e2-e4 突きを助ける意図である。

12…Qe7

 クイーンが動いて最下段が空き …Rae8 と指せるようになり、黒ナイトが下がらなければならない時d8に格好の地点ができた。

13.Qd2

 すべて作戦どおりである。白の希望は次の手で d4-d5 と突き、そのあと Nd4 から e2-e4 と指すことである。中央の列の素通しはほとんど確実に展開に優る側に有利になる。白の作戦は棋理に合っているが、この具体的な中盤戦ではあまり優勢にならない。

 白は直接 e2-e4 と突くのを目指す方が良い。例えば 13.Qc2! が優秀な変化のようである。もし黒が実戦のように 13…Nd8 と指せば、白は 14.Ne1 でe4にさらに圧力をかけることができる。そして白枡ビショップ同士の交換のあと、白は e2-e4 からe列を素通しにしてクイーンと王翼ルークが使えるようにする。だから白は d4-d5 を保留しあとで c4-c5 突きでc列を素通しにする選択肢も残している。

 注意してほしいのは 13.Ne5 にかかわる戦術の策略である。この手も白枡ビショップ同士の交換になるが、白にとって有利にならない。黒は 13…Nxd4! と取って、e2での敵キングとクイーンの両当たりを狙うことができる。14.Qxd4 Bxg2 15.Kxg2 d6 のあと黒は相手の圧力を無効にしている(16.Nc6 Qe8)。

(この章続く)

2015年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(055)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

13…Nd8!

 ここまで来れば黒の構想を理解することができる。黒のナイトはc6にとどまるつもりはなく、はるばるキング翼に、具体的にはf7の地点を目指していた。そこなら中央でのポーン突き(…e6-e5)や敵キングに対するポーンの侵攻(…g7-g5-g4 から …Ng5)を支援することができる。その一方でd8ならb7のビショップを守って、白にこのビショップに向けた戦術の計略を何もやらせない。

 白はここで白枡ビショップ同士を交換しなければならないことを受け入れるべきである。だから最善の選択は 14.Ne1 である。

14.d5?

 この手はほかの多くの局面では好手となるだけに、ここではさっぱり迫力がないのは意外である。もし黒が取ってくれば、白はポーンで取り返して素通しになったばかりのc列でc7に対して大きな圧力をかける。そのあとはナイトをd4に据えて最も重要な地点のいくつか、特にc6、f5そしてe6を監視する。

 しかし黒は正しく対応すればこのもくろみを覆すことができる。

14…Bxb2 15.Qxb2 d6!

(この章続く)

2015年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(056)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 この局面の判断材料は二つある。

 1)中央が閉鎖されたままならばb7の黒ビショップはどうなるのだろうか。中盤戦に向けて両者にはそれぞれ小駒が2個ずつしか残っていない。そして黒の小駒の一つはd5の敵ポーンよって窒息させられている。しかしもし …e6-e5 と突くことができれば、黒はすぐに …Bc8-d7 と …Nf7 で両方の小駒を働かせることができる。そのあとは …f5-f4 または …e5-e4 から …Ne5 で中央でポーンを進攻させる用意ができる。

 2)白がe6でポーン交換をすればどうなるのだろうか。黒にはもうポーンによって守られない地点、具体的にはe6とd6ができ、d5はeポーンによる大切な支えを失う。しかし 15…d6 で黒は駒中心の戦いに卓越する。c5にナイトを据えてまたe4の地点に集中できる。結局白はビショップ同士を交換しなければならず、王翼が弱体化する。最後に、dxe6 による中央のポーンの交換で黒は、少なくとも白が半素通しd列から得るのと同じくらい半素通しe列で活動性が得られる。

 だから黒は …e6-e5 と指すことになろうとなるまいとまったく安泰のように思われる。たぶんここでの白の最善手は 16.e3で(16…f4 を防ぐため)、16…e5 のあと融通性のある作戦は 17.Nd2 から 18.f4! である。

16.dxe6 Nxe6

 これでこのナイトはc5やg5に跳ぶことができるので、f7よりもe6の方がはるかに良い地点である。

17.b4?

 この手は少なくとも黒のナイトをc5に来させない。それにどうせ白が指すべきはずの手のように見える。d列だけでは何も攻撃するものがなくd6は頑丈なのでたいしたことがないので、白は自分の駒のためにもっと素通し列が必要である。もしかして白が c4-c5 と突くことができれば・・・

17…f4!

(この章続く)

2015年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(057)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒はここでは確固とした優勢を築いている。もっともマスターでさえ判断を誤ってもおかしくはないかもしれない。黒は中盤戦の主要な選択肢をすべて持っている。王翼では …Rf6-h6 から …Qh5 で攻撃することができ、中央では …Rae8 から …Ng5 で攻撃でき、后翼では …a7-a5 で攻撃できる(b4-b5? はc5の地点を黒ナイトに明け渡すので)。白は c4-c5 と突く準備ができていなくて、e2-e3 で中央を開放しようとするわけにもいかない。これは現状のポーン陣形またはの望むどんなポーン陣形の変更とも付き合っていかなければならないことを意味している。

 f4の黒ポーンが強力なのにはいくつか理由がある。もちろん黒は …fxg3 と取ることができるが、ある時点で …f4-f3! と突いて白が防御地点に来るのを防ぐこともできる(これについてはあとでもっと触れる)。また、このポーンは白が e2-e3 から Ne1-d3 で王翼を固めるのをやめさせている。

18.Rd2

 この手はほとんど何もしていない。白はナイトを動かすことにより小駒を交換する方が良いだろう。18.Ne1 Bxg2 から 19…Rf6 で黒はまだ優勢である。または白が 18.Nd4 で二組の小駒を交換しようとすれば、18…Bxg2 から 19…Ng5! でやはり優勢である。しかし交換により少なくとも圧力は緩和される。本譜の手は黒を少し自由にさせた。

18…Rf6 19.Qc3 Raf8 20.a3 Qe8!

 黒の作戦はきわめて明快である。それはルークをh6にクイーンをh5に持ってくることである。そしてそのあとの狙いは …Bxf3 から …Qxh2 の詰みである。白はhポーンを突くことによってしかh2の地点を守れないが、h3に突けば …Ng5 にもろくなり、h4に突けば …g7-g5 または同様の攻撃にはまる。

21.Qd3 Qh5 22.Rdd1

(この章続く)

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后印防御の指し方(058)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 これは 18.Rd2 が無意味だったことを認めた手である。

22…Kh8 23.Nh4

 この手は何手か前なら黒からのキング翼に対する圧力をいくらか弱めたのだが、ここではその攻撃を速めさせるだけである。白は黒が攻撃の決め手を見つけることができるかどうか見極めるためにもう少し様子を見た方が良かったかもしれない。23.Rd2 または何かほかの「パス」する手のあと黒は 23…Rh6 と指すことができるが、24.h3 のあとまだかなり手数がかかる。

 このあとのビショップ同士の交換は、h3の最後の守り駒が取り除かれるので黒にとって非常に役立つ。これは白が …Qxh2# に対する受けとして h2-h3 と突けなくなることを意味する。

23…Bxg2 24.Kxg2

 そのためキングがh3の地点を見張る。白がナイトを中央の戦いに復帰させるのに通常頼りにする 24.Nxg2 の捌きのあと、黒は前述の …f4-f3 突きを用いることができる。例えば 24.Nxg2 f3! 25.exf3 Qh3!! となれば 26…Rh6 から …Qxh2+ に受けがない。24…f3 の意味は 24…Qh3? 25.gxf4! で白クイーンが黒クイーンに当たりになるので、それを防ぐためである。

 これが前に黒が …fxg3 を指さなかった理由の説明である。その取りを無くすことのできる白の唯一の手段が gxf4 だが白自身のキング翼を乱すことになるのを黒は知っていて、できるだけ長く保留していた。

24…g5

 これで白ナイトが引き下がらなければならない。しかし少なくとも白キングは黒クイーンをh3から1手か2手の間遠ざけておくことができる。

25.Nf3 Rh6

(この章続く)

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后印防御の指し方(059)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 ここでの狙いは 26…Qh3+ 27.Kg1 g4 28.Nh4 Rxh4! から …f4-f3 である。黒の攻撃は複数の地点に狙いをつけているので成功している。ある場合は狙いはh2であり、別の場合はg2であり、手順によってはh3かf2で詰めることができf1の場合さえある。実際白がh列の弱点を 26.Rh1 で守れば、黒は 26…Qh3+ 27.Kg1 fxg3(27…g4 は 28.Ne1! fxg3 に 29.Qxg3! があるので良くない)28.fxg3 g4 でf列から侵入する(29.Nh4 Rhf6)。

26.h4

 この手はうまくいかない。黒は少し読んでみるだけでこのキング翼の明らかな弱体化にどのようにつけ込んだら良いかが分かってくる。

26…gxh4

 これに対し白がナイトで取り返せば、黒にはキング翼をふさぐ主題を用いた妙手筋がある。27.Nxh4 f3+! 28.exf3 Nf4+! 29.gxf4 Rg8+ から詰みになる。

27.Qc3+ Kg8 28.gxh4

 白クイーンがd3を離れたので、白は上記の手順を考えてみることができる。28.Nxh4 f3+ 29.exf3 Nf4+ のあと白のキングとクイーンが両当たりにならないので 30.Kh2 と指すことができそうである。しかし 30…Qf5!(白の27手目のためにこの手が可能になっている)で 31…Qh3+ を狙われるので見込みがない。

 ほかの受けは 28.Rh1 でh4のポーンを釘付けにする手しかない。しかし 28…h3+ で黒の勝ちになる。

28…Qg4+ 29.Kh2

(この章続く)

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后印防御の指し方(060)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例1(続き)

(再掲)

 黒はここで自分の攻撃部隊に立ちはだかっている最後の白ポーンを取り除く 29…Rxh4+ に誘われるかもしれない。しかし白のクイーンはまだ防御の役に立ち、29…Rxh4+ 30.Nxh4 Qxh4+ 31.Qh3! とキングを助けるためにすぐに駆けつける。黒は別の着想が必要である。

29…Ng5!

 もちろん読者は白が 30.Rg1 で勝つことを狙っていたことは分かっていただろう。この黒の手は 30…Qh3+ の狙いによってそれを止めつつg列をふさいでいる。29…Ng5 の主眼は2手後に明らかになる。

30.Nxg5 f3!

 これでナイトがfポーンを取れば、上図と同じでも黒のナイトとfポーンがない局面になる。この違いにより黒は 31.Nxf3 Rxf3! から 32…Rxh4+ と指すことができる。

31.Qxf3

 クイーンを捨てても白は助からないが、黒はもう2、3手先まで読んでおかなければならなかった。

31…Rxh4+ 32.Qh3

 32…Rxh3+ と取ってくれるなら白は 33.Nxh3 でまだ指す余地がある。黒の攻撃を乗り切り2ルークで抵抗することができる。しかしその機会は得られない。

32…Qxg5!

 これが最後の要点である。黒は白のクイーンおよびナイトを得る。白は 33.Rg1 でクイーンを取り返そうとしても 33…Rxf2+ があるのでできない。白には選択肢が一つしか残されていなかった。

白投了

(この章続く)

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后印防御の指し方(061)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2
白 T.ぺトロシアン
黒 M.ボトビニク
世界選手権戦24番勝負第19局、モスクワ、1963年

1.c4 Nf6 2.Nc3

 白は早く c2-c4 と突くのを避けあとで初めて正規の后印防御の陣形にすることがある。ここでは d2-d4 突きを避けている。このような出だしにはいくつか利点がある。…c7-c5 によってdポーンを早速攻撃される煩わしさを避けているし、もっと楽に e2-e4 と突ける。それに …Bb4 を気にする必要がないのは、dポーンを突いていないのでこのビショップがc3のナイトを釘付けにすることにならないからである。しかし実戦は7手目までには正規の后印防御に移行した。

2…e6 3.Nf3 b6 4.g3 Bb7 5.Bg2 Be7 6.O-O O-O 7.d4

 白の手順の一つの不利は后翼ナイトをc3に跳ねない選択肢を放棄していることである。以前に触れたように白は后翼ナイトを展開しないでおくことにより黒の解放の捌きの …Ne4xc3 を防ぐことができる。ほかの手段の一つは 7.b3 から始まる(正規の手順を仮定している)。

 (7.Nc3 の代わりに)7.b3 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(062)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲) (7.Nc3 の代わりに)7.b3 の局面

 白は Nc3 より前に Bb2 から Qc2 と指すことができれば、…Ne4xc3 の交換をさせて黒を助けることなく、いずれ到達する11手目の局面に似た局面を達成する。白にとっては残念ながら自分のやりたいことをすべてできるわけではない。黒はこの布局の非常に早い段階では普通は自分にとって危険すぎる中央で動く手の一つをここで指すことができる。

 例えば 7…c5! は、白が d4-d5 突きを十分に支援できず黒に好手も用意されているのでここでは良い手となる。その好手とは 8.d5? exd5 9.Nh4(ここまでは以前に見たことのあるほかのいくつかの局面のとおりである)9…Ne4 から …Bxh4 だけでなく …Bf6! の狙いのことで、白は b2-b3 と突いているせいで戦力損になる危険にさらされている。7…c5 と積極的に突くのは適切で、8.dxc5 bxc5! のあと …d7-d5 と …Nc6 で、または 8.Bb2 cxd4 9.Nxd4 Bxg2 から 10…d5 で、黒が好調になる。

 黒は 7…d5 でもc3に白ナイトがいないので白が中央での黒の手に効果的に反撃できなくて指しやすい。白は黒のdポーンに対して通常はできるような圧力をかけることができず、そのため黒は 8.cxd5 exd5 9.Bb2 Nbd7 のあと …Re8 から …Bf8 でも、8.Bb2 dxc4! 9.bxc4 c5! でも有望である。

(この章続く)

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后印防御の指し方(063)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

7…Ne4 8.Qc2 Nxc3 9.Qxc3

 白は 9.Ng5 と指したいところである。この手は1手でh7とb7とを当たりにして今ではもうおなじみの一撃だが(9…Bxg5 10.Bxb7)、ここでは 9…Nxe2+! のためにうまくいかない(10.Qxe2 Bxg2 または 10.Kh1 Bxg2+)。

9…f5

 この手に代わる面白い着想は 9…Qc8 で、避けられないビショップ同士の交換のあと …Qb7 と指す。c8のクイーンはe6の地点も見張っていて、黒は恐れることなく …d7-d6 と …f7-f5 を指すことができる。白は冷静に展開を続けて 10.Bf4 または 10.b3 と応じるのが良い。例えば 10.Bf4 d6 11.Rfe1! f5(さもないと e2-e4 と突かれる)12.Rad1 で中央に駒を集中させる。その意図は例えば 12…a5 13. a3 a4? 14.c5! で一気に黒を吹き飛ばすことができるようにすることである(14…dxc5 15.dxc5 Bxc5 16.Be5! Rf7 17.Ng5)。

 典型的な后印防御の手順は特にフィアンケット戦型では穏やかで控えめなように思われることがよくある。しかしその手順は非常に精密で、上の手順のように一つの失着で急に一方的な局面になってしまうことがよくある。

10.b3 Bf6 11.Bb2 d6

(この章続く)

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后印防御の指し方(064)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 こんな遅い時機でも 11…Qc8 については語ることはできる。そのあとクイーンを不安な斜筋からはずす 12.Qd2 なら、12…d6 13.Ne1 Bxg2 で本局に移行できる。しかし黒には白がg2で取り返したあと …Qb7 と指す選択肢もある。b7からg2への白枡の対角斜筋は争う価値がある。

12.Rad1 Nd7

 黒はクイーンがc8にいるなら白がここで 13.Ng5!? で始めることのできるのと同じようなちょっとした手筋にも大丈夫である。実際はこの戦術の策略は中盤戦を面白くさせるのに必要なほとんどすべてをすぐに交換することにつながり、局面は 13.Ng5 Bxg2! 14.Nxe6 Qe7 15.Nxf8 Bxf1 16.Nxd7 Bxe2 で引き分けになるだろう。

 もし黒が本譜のようにナイトを安全にd7に持ってくることができれば、それを遅らせる理由はない。そのナイトはf6を通ってe4に向かうか、…e6-e5 突きを支援する。…a7-a5 または …Na6 から最終的に …Nc5 のようなほかの着想もあるが、駒を中央またはその近くに展開させるのが間違っていることはほとんどない。

13.Ne1!

 このナイトは絶好のf4の地点に向かうが、遠回りの Ne1-g2-f4 という経路を通ってしか行けない。

13…Bxg2 14.Nxg2

 白には好形になるきざしがあるが、それを見抜くには宝石職人の目がいる。二組の小駒同士の交換は残りのビショップとナイトの働きが明らかに優るので実際には白の方に役立っている。例えばここで 14…Qe7 はルークを結合させ何とか展開を完了しているので黒の最も自然な手のように見える。しかし白は 15.Qc2! で e2-e4 を意図するので黒の問題は終わっていない。黒はそれに対し 15…d5 と突くと 16.cxd5 から 17.Qxc7 と取られるのでそう突けない。それにもし 15…Rae8 と指せば、16.e4 fxe4 17.Qxe4 で白の優勢は明らかとなる。この変化の 15.Qc2 よりもはるかに良い手は 15.Qf3! で、同じ e2-e4 の着想だけでなくb7で后翼を荒らしまわる考え方もある。

 戦いは e2-e4 をめぐって巻き起こりつつあるので、黒は直接それを防ぐようにするか白の注意をそこからそらすようにしなければならない。

 中央の全般的な弱さだけでなく、限られた小駒の数のせいで黒は反撃策を見つけるのに支障をきたしている。例えば 14…e5 は白を作戦からそらすのに十分積極的なように見える。しかし白には 15.Qf3! という手があり、例えば 15…g6 16.Qd5+ から dxe5 で白が確実に少し優勢になる。

 黒は 14…Qe8 15.Qc2 g5!? で e2-e4 を遅らせるようにすることができる。この手は 16.e4 f4! のあと王翼を攻撃する黒の意図を表している(この進攻したポーンは 17.gxf4 gxf4 18.Nxf4 Bxd4! のために安全である)。その主要な着想は e2-e4 突きから生じるe4またはf4での交換を避けることである。もし交換になれば中央列を白のルークが使えるようになって白を助けることになる。同時に黒は自分の駒のために王翼の列を素通しにしようとする。しかし 15…g5 に対して白は 16.f4! Qg6 17.Rfe1 と指すことができ、e2-e4 突きが妨げられないので白の優勢な局面である。黒はe列に問題を抱えることになる。

14…Bg5

(この章続く)

2015年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(065)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

 これはまた別の着想で、黒は Nf4 には …Bxf4、e2-e4 には …f5-f4 と応じるつもりである。しかし黒は中央で起こっていることを無視して大丈夫なのだろうか。相手にルークによって支援された広大なポーンの要塞を構築させても良いのだろうか。そうではないようだ。

15.Qc2

 白は 16.f4! から 17.e4 と突く用意をした。そこで黒の指した手は・・・

15…Bh6 16.e4!

 もし 16.f4 なら黒はナイトをf6に持ってくることによって e2-e4 をきっぱりと押さえ込む。そのあと黒はナイトをe4に据えて …g7-g5 で王翼を開放できるので、たぶん優位に立つ。一方白は急に働かなくなったビショップを何とかすることに努めることになる。

16…f4

 前局で見たようにこのポーンは適切な配役に支援されれば王翼を滅茶苦茶にすることができる。しかし両局の違いは黒はこのポーンを支援できないことにある。黒のクイーンと后翼ルークはつまるところ働いていないし、ナイトは白の中央ポーンによって役に立たなくされている。

17.Ne1

 これは …f4-f3 の厳しさを和らげ、白が王翼を無視しても大丈夫なようにしている。もし黒がg3のポーンを取ってくれば、白はhポーンで取り返してf列を半素通しのままにしておける。

 本譜の手で白は明らかに優位に立つ中央を開放する用意ができている。基本的な三通りの「仕掛け」、つまりポーン交換をさせる手段は c4-c5、d4-d5 および e4-e5 である。それぞれには異なる典型的な后印防御の異なる得失がある。例えばこの局面では d4-d5 は …e6-e5 と応じられ、中央は閉鎖されたままで …Qg5-Qh5-h3 から …Nf6-g4 でクイーンを活動させるのに必要な余裕を黒に与えることになる。また、c4-c5 はc5の地点が黒ナイトにより十分に守られているのでもっと支援が必要である。

 しかし適時の e4-e5 には黒は何もできない。もし黒が e4-e5 への応手としてdポーンを突けば、c列を素通しにされることになる。もしe5でポーン交換をすればd列が素通しになる。そしてもし e5xd6 と交換させれば、半素通し列にeポーンが残り、Qe4 によって襲われる対象になる。最後に、 e4-e5 を 17…e5 で止めることができないのは、18.dxe5 dxe5 19.Bxe5! があるからである(19…Nxe5?? 20.Rxd8)。

(この章続く)

2015年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(066)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

17…Qe7?

 黒は少なくとも 17…Qg5 とやってみるべきだった。そのあとは 18.e5 dxe5 19.dxe5 Nxe5 20.Qe4 Ng4 または 20…Nf7、あるいは d1のルークを狙う 20…Qh5 が最善で、かなり黒がしてやっている。

18.e5! dxe5 19.dxe5

 白は陣形的に Qe4-c6 という強力な狙いがあり、黒が露出させた地点に強引に侵入する。本譜の手に対し 19…Nc5 なら白は b3-b4 でこのナイトを追い払うことができるが、もっと黒を困らせるのは Ba3 で、黒がクイーンを釘付けからはずしたとたん Bxc5 と取る意図である。

19…Rad8

 対局後に指摘された防御態勢は 19…Rf7 のあと …Raf8 から …Nb8 または …Nf8-g6 だった。もしこれが黒の最善ならば形勢は悪いことになる。

20.Qe2

 これで白はナイトをc2に、そしてそこからd4に据えることができる。しかし白はそれよりも …fxg3 でf列で攻撃にさらされることを気にする必要なく Nf3 と指したがっている。参考までに、20.Qe4 は黒の 20…Nc5 で当たりのルークを守るためにe2に引かされる。

20…Qg5

 どうなろうとここがナイトを例えば 20…Nc5 と動かす時機だった。本譜は黒クイーンが場違いになる。

21.Kg2! a5 22.Nf3 Qh5

 白がキングを動かしたわけがここで分かる。f3のナイトを守りクイーンが自由に動けるようにするためだった。

23.Ba3 Rfe8

 黒は 23…Nc5 24.Bxc5 でポーンの形をがたがたにしたくなかった。23…Rf7 はd列で白からの釘付けにかかるし、23…c5 は 24.Rd6! で白にd列を占拠させてしまう。当たりを避ける4手のうちもっともましなのはf列での活動を完全にあきらめる本譜の手である。

(この章続く)

2015年05月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(067)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

24.Rd4!

 敵クイーンがへんぴなh5にいて白は自分のクイーンかルークがd列に侵入できることを見越している。ここではルークをd列で重ねることを狙っている。

24…Nb8 25.Rfd1 Rxd4

 d8で二組のルーク同士の交換を期待して 25…Nc6 なら白は 26.Rd7! と応じる。

26.Rxd4 fxg3

 白はいつかはf4のポーンを取っただろう。g3でのポーン交換は二、三の点で白の助けになる。すなわちh列が白のものになり(白の29手目の解説を参照)、マイルズ対コルチノイ戦(実戦例1)でのようにあとで …f4-f3 と突かれる危険性がなくなる。ゆっくりだが確実に白は前進している。

27.hxg3 Qf7 28.Qe4 g6?

 黒には良い手がない(28…Nd7 29.Qb7)。だからこの手で負けになるのは驚くに当たらない。このあと5手あるいは25手でなく40手で勝負がつくのは、白が雑に指したせいである。しかしそれはこの種の優勢を生かす方法が多くあることを示してもいる。

 さらには、本局でのように黒が中央での対処を間違えたときには、それは后印防御に共通するたぐいの優勢である。白は白枡ビショップ同士を交換して、ここでは一番最初から争ってきた地点を占拠している。中央ポーンでの優位は e4-e5 突きのおかげで盤上唯一の素通し列(d列)の支配に転化している。そして大駒の威力により小駒は黒の小駒よりも多くの陣地を支配している。

(この章続く)

2015年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(068)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

29.Qb7

 この手は非常に理にかなっていて一貫性があるので批判しにくい。しかし 29.Qh4! と指していればほとんどすぐに勝ちになっていただろう。Ng5 があるので黒のビショップは良い引き場所がない(29…Bf8 30.Ng5 Qg7 31.Bxf8)。29…Qg7 と受けるのは 30.Rd8! で黒の負けになる。白が 29.Qh4 と指さなかったのは 29…Kg7 に対する正しい応手を見落としていたためだった。白の見落とした強烈な手とは 30.Rd1! から 31.Rh1 で、白のもう一つ有利な半素通しh列を利用することだった。

29…Bg7 30.c5!

 ここでは黒のポーンがばらばらのせいでほとんどどんな型の收局も白が有利なので、陣形的に勝負がついている。白が 30.c5 と指す前に読まなければならなかった変化は 30…Bf8 31.cxb6! で、31…Bxa3 なら 32.bxc7 で簡単に勝ちになる。だから黒はb6で取り返さなければならないが、それに対して白はクイーンもビショップも交換し Rd6! で捕虜を集め始める。

30…bxc5 31.Bxc5 Nd7

 これで黒はクイーン同士を交換することによりしばらくの間戦い続けることができる。そうしないと白が攻撃するやいなやaポーンを、そしてたぶんcポーンも取られていただろう。

32.Qxc7 Nxe5 33.Qxf7+ Nxf7

 33…Kxf7 は 34.Nxe5+ Bxe5 35.Rd7+ から Ra7 ではるかに悪い收局になっていた。收局ではポーンを堅く引き締め、別れた集団の数を少なくすべきである。ここでは白にポーンの「島」が二つあり、黒には三つある。白が駒の働きで優ることもあり形勢は決定的である。

34.Ra4 Bc3 35.Rc4

 もっと速い手段は 35.Bd4 だった。黒はビショップ同士の交換を避けることができなくて(35…Bb4 36.a3)、このあとaポーンが守れない。

(この章続く)

2015年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(069)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

35…Bf6 36.Bb6 Ra8 37.Ra4 Bc3 38.Bd4! Bb4 39.a3 Bd6 40.b4! Bc7 41.Bc3 Kf8 42.b5

 白は 42.bxa5! と取っていればもっと速く勝っていただろう。しかしかかっているものが非常に大きかったので(この試合に勝てばぺトロシアンはほとんど番勝負をものにし世界選手権を獲得することになる)、黒のaポーンを標的にし自分のbポーンをパスポーンにする同じくらい魅力的な手を指すことにした。

42…Ke8 43.Rc4 Kd8

 黒は白がルークを后翼の7段目に持ってくるのを止め、bポーンを突いてくるのを予期して、キングを盤のこちら側に駆けつけさせなければならなかった。これで白は別の勝ちの作戦に転じることができる。すなわちナイトを中央に持ってきてからルークで王翼を襲撃する。

44.a4 Rc8 45.Nd2 Nd6 46.Rd4 Ke7 47.Rd3 Nb7 48.Ne4!

 これで白はビショップかナイトをf6に潜り込ませることを狙っている。白は非常に慎重に指しているが、黒はいずれはもっと弱点をさらけ出さなければならない。

48…e5

(この章続く)

2015年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(070)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例2(続き)

(再掲)

49.Bb2! Bb6 50.Ba3+ Ke6 51.Ng5+ Kf5 52.Nxh7 e4

 白はhポーンを取ることによりポーン得になっただけでなく黒のgポーンの土台をなくした。ここで 53.Rd5+ Ke6 54.Rg5 と指せば例えば 54…Kf7 55.Rg4 から Ng5+ となってすぐに試合を終わらせることができていた。

53.g4+? Kf4!

 黒は 53…Kxg4 54.Rg3+ で白ルークにぶらつく機会を与えずに、キングを安全で有効なf4に進めた。ここで白は自分のgポーンが非常に弱くてとても王翼で勝ちに出ることができないので、別の手段を取らなければならない。

54.Rd7 Rc7 55.Rxc7 Bxc7 56.Nf6 Bd8

 これでポーンを取り返せるが、お互いのルークがないので遅ればせながら白のbポーンが收局の鍵となる。

57.Nd7 Kxg4 58.b6 Bg5?

 黒の最後の可能性は 58…Kf5 にあった。59.Nc5 なら 59…Bxb6! 60.Nxb7 e3! 61.fxe3 Bxe3 から …Ke6 でポーンをすべてなくすことができる。

59.Nc5! Nxc5 60.Bxc5 Bf4 61.b7 Bb8 62.Be3 g5 63.Bd2 Kf5 64.Kh3 Bd6 65.Bxa5 g4+ 66.Kg2 黒投了

(この章続く)

2015年06月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(071)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3
白 W.ブラウン
黒 B.スパスキー
ティルブルフ、1978年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3

 ここで考慮に値する歴史的な数字について補足すると、后印防御は世界選手権戦の番勝負で8局指されている(加えて1974年に事実上の世界選手権戦番勝負となったアナトリー・カルポフ対ビクトル・コルチノイ戦ではさらに5局指されている)。これらの13局で白は正規のフィアンケット戦法を10回採用した。その結果は1勝1敗8引き分けである。

4…Bb7 5.Bg2 Be7 6.O-O O-O 7.Nc3 Na6!?

(この章続く)

2015年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(072)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 この手は特筆すべき手段で、中央を占拠する用意をしている。ナイトはa6で一人ぼっちで孤立していて、c5で幸せになる見通しもほとんどなさそうである。しかし 7…Na6 は一種の手待ちである。

 黒の意図は …d7-d5 から …c7-c5 である(黒はまず白の d4-d5! という応手を止めてからでなければ …c7-c5 と突くのが困難であることが多いことを覚えておかなければならない)。しかし中央をポーンで占拠することは黒に容易に不利になるような動的な戦いになるので、まず白に手を決めさせたい!それならば黒は中央で何をいつすべきか決めるのがもっと容易になる。…d7-d5 より前にナイトを動かすことにより(手順によっては黒はどのみちそこにナイトを動かすが …d7-d5 のあとからである)、黒は自分の作戦を明らかにしない。黒が …d7-d5 と突くのは今だろうかあとだろうか。全然突かないのだろうか。…c7-c5 はどうだろう。突くとしたら …d7-d5 の前だろうかあとだろうか。そもそも本当に突くのだろうか。白には分からない。しかし何か指さなければならない。

 例えば 7…d5 なら白は后翼ビショップをg5に出して Bxf6 でd5の地点の切り崩しを狙うことにするかもしれない。白は Ne5、Bxf6 から cxd5 という手筋でポーン得を図ることさえするかもしれない。しかし黒が …d7-d5 を延期すれば、白のビショップはg5が好所にいることになるのだろうか。黒が手を決めるのを拒否するのならば、白はここで手を決めるのを少し控えて代わりに一般的に役に立つ 8.Ne5 を指すべきだろうか。

 多くの戦法のようにこの戦法における戦いは手の非常に微妙な損得をめぐる戦いである。…c7-c5 や …d7-d5 や d4-d5 のような中央での重大なポーン突きが強い手になるか弱い手になるかは、以前に見られたし面白い本局でも見られるように通常はわずかな相違にかかっている。

8.Bg5

 こんなものである。8.Ne5 はこの局面ではあまり意味がないことは分かる。黒は単純に 8…Bxg2 と取って 9…Qc8 から 10…Qb7+ で対角斜筋で優位に立つことができる。そのあとは …d7-d6 で白のナイトをe5から追い払うことができる。

 8.Bg5 の方が強制力のある手で、9.Bxf6 から 10.e4 で古典的なポーン中原を築く小さな狙いを持っている。このビショップ出は黒が …d7-d5 と突いたときに中央での来たるべき戦いにも十分備えている。

 しかし …d7-d5 を完全に止める手段はあるのだろうか。白が 8.d5!? で中央をごちゃごちゃにする気があれば、それはある。その得失を考えてみよう。

 8.d5 の局面(参考図)

(この章続く)

2015年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(073)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲) 8.d5 の局面(参考図)

 有利な点 …d7-d5 突きを止め、それにより黒がe4などの中央の地点に駒を据えるのを防いでいる。自分の駒でd4の地点を占拠できることも確実にし、e2-e4 と突いて(そしてたぶん e4-e5! も)中央の地所を広く確保できるかもしれない。黒がポーンで中央に挑みたいなら、駒の動く余地がひどく不足しているので注意深く作戦を立てなければならない(8…c6?? は 9.d6! で駒損になる)。

 不利な点 …c7-c5 に白が d4-d5 と応じる状況と違い、黒はc5の地点を占拠していない。だから …Nc5 と指してe4の地点をナイトで支配できる。c5のナイトは …a7-a5 で補強して白の b2-b4 突きを阻止できる。d5のポーンは白のg2-a8の斜筋をふさぎ、黒の王翼ビショップがf6に行けば絶好の斜筋につける。

 白が 8.Bg5 のような堅実な手を好むのはもっともである。黒の手をすぐに咎めようとしているのでなく、わずかな優勢だけを得ようとしている。

8…d5

 この手はもう少し進めば分かるように 7…Na6 と呼応している。しかし 8…Ne4 も魅力的な変化で、白に黒枡ビショップ同士と一対のナイトの計二組の小駒を交換させることになる。例えば 9.Bxe7 Qxe7 10.Nxe4 Bxe4 のあと黒は対角斜筋での周知の釘付けに陥ることなく 11…d5 と突く用意ができている。白は 11.Qa4 で黒の残りのナイトの遊び駒状態に乗じようとすることができるが、11…Nb4! から …c7-c5 または …Nc6(場合によっては …Nc2 さえある)で黒が問題ないはずである。

9.Ne5

(この章続く)

2015年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(074)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 この手は前述の釘付けを作っている(9…dxc4?? 10.Bxb7)。それに今は大したことがないかもしれないが少し手が進めが重大になってくるほかの役目も少し果たしている。

 まず、d5の地点に対する攻撃を強めている。白の小駒は黒がd5の守りを解除すればすぐにそこのポーンを取ってしまう態勢にある。例えば 9…Qc8 は后翼ビショップがこのクイーンによって守られているので 10…dxc4 で釘付けをはずすことができるが、10.Bxf6 Bxf6 11.cxd5 exd5 12.Nxd5! で軽率な悪手になってしまう。

 次に、e5のナイトは自然な守りの一部を失ったいくつかの要所に目をつけている。黒はナイトがa6に跳ねたのでb7のビショップだけでc6を見張っている。黒は白が Qa4 から Nc6 によってこの地点に侵入するのを防ぐように注意していなければならない。白がd7を占拠することにより(Qa4 のあとで、またはd5でポーンを交換してから Bh3! のあとで)、黒を混乱させるときさえ来るかもしれない。

9…c5

 やはり首尾一貫した手だが、この手を遅らせてナイトをe4に跳ねる手を優先することを考えても良いかもしれない。そうすれば局面が少し単純化する。例えば 9…Ne4 10.Bxe7 Qxe7 となる。黒のポーンがd5にいることにより前には考えられなかった新しい状況が生じている。もし白がe4のナイトを取れば、黒はポーンで取り返さなければならなくなる。そのポーンは頼みの綱となることもあれば、完全に包囲されて取られてしまうこともある。

 変化は多いが一つの典型的な手順は分析しておくのが良い。9…Ne4 10.Bxe7 Qxe7 のあと白は 11.Qa4 では何も得られない。11…c5 で 12…cxd4 や 12…Nxc3 から 13…dxc4 のような解放の手を狙われて(b7のビショップがクイーンによって守られている)、自分の中央が襲撃されるからである。黒はd4のポーン取りを白がルークか小駒で取り返さなければならないときに実行できれば、離れ駒のナイトを …Nc5! で戦いに引き戻すことができる。注意点は 9…Ne4 10.Bxe7 Qxe7 11.Qa4 c5 のあとでも黒は 12.Nc6 を恐れないということである。なぜならナイトを 12…Qd7 または 12…Qe8 で当たりにして追い払う必要があるだけで、そのあと望むならクイーン同士を交換することができる。

 この最後の変化はなぜ黒のナイトがa6が好所なのかをよく表している。このナイトが …d7-d5 のあとd7に行っていたら、黒駒は交通渋滞をきたしていただろう。そのあと白の Qa4 は Nc6 への小さな危険な狙いのために受けづらくなる。

10.e3!

 黒は …Ne4 を遅らせたので両者に4小駒がある間に早く中央に挑むことができた。…cxd4 で黒が后翼ナイトをc5に据えることができるかもしれないので、白はポーンをd4の地点の守りに加えて 10…cxd4 に 11.exd4 で黒のナイトをa6にとどまらせるようにした。

 白は本譜の手で中央にまたポーンを加える代わりに中央のポーンを交換する誘惑にかられるかもしれない。ルークをd1とc1に配置し、それから cxd5 と dxc5 により黒の弱体化した中央に立ち向かうことができる。しかし事はそれほど容易でない。例えば 10.Rc1 のあと黒はやっと 10…Ne4! と指し、11.Bxe7 Qxe7 12.dxc5 Naxc5 13.Nxe4 dxe4! で、白より先に 14…Rad8 でルークをd列に回すことができるので好調になる。一つの可能性は 14.b4 Rad8 15.Qc2 で、黒はナイトが動くとすぐにeポーンが取られる危機に直面する。しかし働きに優る大駒を用いて 15…Qg5! で 16…Qxe5 と、ルークでの白の2段目への侵入を狙いにする。

 このような変化は黒が1、2個の弱いポーンを受け入れればどれほど激しく動き回れるかを示している。

(この章続く)

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后印防御の指し方(075)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

10…Ne4!

 ナイトがちょうどいいときにここに来た。ここからは黒の小駒は白の小駒よりも悪くない。

11.Bxe7

 ここで白には選択の余地がほとんどない。しかししょせんこのビショップを残したい理由はない。d列からh列までの白ポーンはどれも黒枡にあるので、このビショップをなくすことはうれしいはずである。その一方で黒の黒枡ビショップの交換はあとで黒枡をひどく弱めることになるかもしれない。

11…Qxe7 12.cxd5

 白はこれまでd5での交換を延期してきた。そしてその理由は分かりやすい。この交換のあと黒は自分のクイーンとルークのためにe列の枡のいくつかが利用できる。e5の白ナイトは今黒クイーンによって当たりにされているのでdポーンによって守らなければならない。これは …Qxe5 という応手があるために白が dxc5 と取る暇がないということを意味している。それでも白が中央で単純化しなければ、黒はもっと良いときに自分の方から …Nxc3 と …dxc4 でそれをやる。

 もし白が 12.Nxe4 と取って 12…dxe4 のあと黒の弱いeポーンにつけ込むことに期待すれば、自分のナイトから退路のd3とf3を奪ったことに気づいて失望し、13.Qc2 f6! 14.Ng4 h5! で盤の中段でナイトが捕獲されたのを見て愕然とする。

12…exd5

(この章続く)

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后印防御の指し方(076)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 この交換で黒にクイーン翼で多数派ポーンができた。今は大した意味がないかもしれないが、…c5-c4 とのちの …b6-b5-b4! でこれらのポーンの威力が増す。例えば 13.Rc1 Nc7 14.Qa4 は 14…Nxc3 のあと …c5-c4 から …b6-b5 と応じて優勢になれる。その一方で白がc6をナイトで安全に占拠でき、そしてそこに踏みとどまることができれば、優位に立つ。実戦は微妙に均衡がとれている。

13.Qa4

 ここかあとでの好着想は Nd3 から Nf4! でd5への圧力を増すことである。ナイトをe5から動かすことは白のdポーンでc5のポーンを取る可能性にもつながる。

13…Nc7

 ここで黒には魅力的な応手がいくつかある。まず、白がクイーン翼でもくろんでいるどんな圧力も鈍らせるために 13…Qe8 でクイーン同士を交換しようとすることができる。しかし 13…Qe8 には 14.Bxe4! が煩わしい。それに対して 14…dxe4 は 15.Nd7! で黒の王翼ルークが捕獲される。また、14…Qxa4 15.Nxa4 dxe4 16.dxc5 はc5とe4に黒の弱いポーンができる。

 紛らわしい手は 13…Rfe8 で、ちょっとした罠が仕組まれている。13.Qa4 が何を狙っていたか見抜いていただろうか。それは 14.Nc6 ではなく、14.Nxd5! Bxd5 15.Qxa6 でポーン得することだった。しかしこれは白駒を主要な任務から遠ざけることになり、黒はたぶんポーンの代償が十分得られる。例えば 13…Rfe8 14.Nxd5 Bxd5 15.Qxa6 のあと黒には 15…cxd4 16.exd4 Qe6! で 17…f6 から 18…Bc4! または 17…Ng5 から 18…Nh3+ やビショップ同士の交換後の 18…Qd5+ などの危険な狙いができる。

 黒の選択した手はずっと安全で、ずっと有望でもある。そして后翼でのポーンによる進攻の準備を始める。

14.Rfd1 Rfe8 15.Rac1

(この章続く)

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后印防御の指し方(077)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 Nxe4 と取るのはまだ時期尚早である。というのは …dxe4 で白ナイトが危険にさらされ(…f7-f6!)、黒の小駒が自分のポーンにより空けられたd5の地点を占拠する態勢になるからである。d5にナイトが行けば黒にとって絶景になる。

 白は安全にc5のポーンを取る手段が見つかれば、駒が黒の浮きポーンを攻撃する絶好の態勢になる。(Nd3-f4 のための)手の余裕が少しでも得られれば好調になる。

15…Nxc3! bxc3

 白がルークで取り返せば黒は明らかに優勢になる。16…c4 から …b6-b5-b4 で、后翼のポーンの一つを昇格させる勝利への作戦が見えてくる。bポーンがb4まで行くと白ルークに当たりになるので先手で突けることになる。黒ポーンが虚弱者から巨人に変われるのが何と速いことか!

16…f6

 これは黒の白枡、特にe6とそれほではないがg6とを弱める。しかし白クイーンがa4に出かけていて白ルークも味方のポーンの内側で働いていないので、黒は気にならない。

17.Nd3 c4! 18.Nf4

 クイーンと小駒だけを考えれば白の方が優勢である。白ビショップは黒ビショップのようには味方のポーンによって制限されていないので利きが広く、ナイトはもっと見晴らしが良い。しかしルークの働きの違いによって形勢判断が変わってくる。黒の作戦はルークの支援の下に后翼ポーンを慎重に突き進めて最終的にそれらの一つをa1、b1またはc1で昇格させることである。白ルークは黒ルークよりも活動の可能性がはるかに劣るので、白が黒の作戦に対して何ができるかを見つけることは難しい。

 黒はただちに 18…a5! から 19…b5 と突き始めることができる。aポーンから突いていく必要があるのは、すぐに 18…b5? と突くと白に 19.Qa5! で后翼を封鎖されるからである。それなれば白が Rb1 から a2-a4! で反抗する前に白クイーンをどかし、后翼ポーンで押しまくるにはダイナマイトが必要になる。

18…Qd6

 用心深くdポーンをさらに守った。

19.Rb1 a5

(この章続く)

2015年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(078)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 黒の作戦を見抜くのは難しくないはずである。黒はbポーンをb5へ、そしてb4へ突き進め、続いて …Nb5! でc3を襲撃する。黒がポーンをb4まで進めたときに白がもっとひどくならないようにb4で取らされて …axb4 で黒のa列が素通しになれば、白はとても困ったことになる。黒はaポーンに対して自分の活動的なルークで圧力を増強することができるし、単にb8とc8のルークでパスcポーンを突き進めることもできる。白はこの作戦に対処する手段が必要で、それも早急に必要である。

20.e4!

 良くても悪くてもこのポーンは突かなければならない。この一時的なポーンの犠牲は黒の堅固なポーン集団に揺さぶりをかけ、黒のcポーンを危険にさらすためである。さらに白は Qc2 と Re1 で王翼攻撃を始めることができる。

20…b5 21.Qc2 dxe4

 e4のポーンは …f6-f5 で強化される。これで黒は小駒の一つでd5を占拠する用意ができた。…g7-g5 で白ナイトを追い払ったあとは、…Nd5! で圧倒的な態勢になる。

22.a4!

 白は反撃する必要があり、これが最善の手段である。明らかに 21…bxa4 は 22.Rxb7 があるので駄目である。しかし黒は自分の作戦全般に沿った強力な応手を見つけた。

22…g5!

 この手の威力は2手で明らかになる。

23.Nh5 b4! 24.cxb4 axb4

 白ナイトがまだf4にいたら、22.a4 でポーンを攻撃する白の戦略は 25.Qxc4+ で立派に実を結ぶところである。25…Nd5 なら 26.Nxd5 から 27.Qxb4 となる。しかしここではナイトがh5にいるので 25.Qxc4+ Nd5! で戦力は同じでも白の劣勢になる。黒がa4の取り残されたポーンを取れるのはほとんど確実である。しかし 26…Rac8 から …Ba6-d3 または …Nc3 で主導権が握れるときに、単なるポーン得では満足しないかもしれない。黒は …e4-e3 で王翼を攻撃し、逃げ場のないh5のナイトを取ろうとする可能性もある。

(この章続く)

2015年06月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(079)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

25.Rxb4!?

 ここは白の再度の危機だった(最初は20手目のところだった)。白は黒のb7のビショップと王翼のもろさとに基づいた巧妙な手筋で賭けに出た。当座は黒陣は狙われている地点をクイーンがすべて守っているので基本的に安泰である。白のルーク切りはクイーンをその働きからそらそうとしている。

 この手筋はたぶん失敗するはずだが、25.Qxc4+ Nd5! よりは見込みがありそうで、25…c3! や 25…Bd5 とされるどんな手よりも良いことは確かである。

25…Qxb4 26.Nxf6+ Kf7?

 これがなぜ悪手かは5手後に明らかになる。

27.Nxe8 Nxe8!

 黒は次の手でb7のビショップをe7のクイーンで守れるようにナイトで取り返した。27…Rxe8? は 28.Rb1 で白が勝つはずである。

28.Rb1 Qe7 29.Rxb7!

 やはり良い手はこれしかない。29.Qxc4+ は 29…Kf8 から 30…Nd6 ですべてが守られて黒陣が比較的安全になる。しかも駒得である。

 だから白は駒損のままでいることに応じた。しかし残りのポーンのほとんどを取って黒の勝つ可能性を無くすことに期待した。

29…Qxb7 30.Bxe4 Qb3!

 それでは前に戻り黒が26手目でキングをf7の代わりにg7に動かしていたらどうなっていたかを考えてみよう。黒キングの位置が違うだけでほかはすべて同じである。黒キングがどこにいようと白がクイーン同士を交換してルークを取り返す余裕がないのは、黒のbポーンが8段目に到達してクイーンに昇格するからである(具体的な手順は 31.Qxb3? cxb3 32.Bxa8 Nf6! から 33…b2)。しかし黒キングがg7だと白の手は実戦のようにすぐにチェックにならない(本譜での次の手を参照)。だから 31.Qd2 から Qxg5+ を狙わなければならず、31…Ra7! のあと大丈夫であることに期待することになる。

(この章続く)

2015年06月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(080)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

31.Bd5+!

 この手は妙手だった。黒キングがe7に寄ると白クイーンにe4かe2でチェックされたあと Bxa8 と取られる。f列も安息の地とはならない。31…Kf8 は 32.Qf5+ で白が実戦より1手もうけているし、31…Kf6 は 32.Qxh7! でf7にクイーンが来ての詰みを狙われる。

 つまり黒には1手しかない。

31…Kg7 32.Qf5!

 この手はチェックでなくても黒にとって危険である。白は 33.Qg5+ または 33.Qf7+ から始まるチェックの千日手による引き分けを狙っている。機会があればルークをかすめ取って勝ちを狙うかもしれない。両者にクイーンが残っていては黒は 31.Qxb3? のときほど迅速にポーンをクイーンに昇格できない。そして白は少なくともチェックの千日手の可能性が高い。

32…Ra6!

 これは受けの妙手である。黒はルーク得でありながら防御を考えなければならない。もしルークをa7に上げて 33.Qf7+ を防げば、白は 33.Qxg5+ Kf8(33…Kh8??? 34.Qg8#)34.Qg8+ のあと Qf7+ から Qxa7 とやってくる。また、ルークを紐付きのb8に寄せれば 33.Qf7+ がひどい手になる。33…Kh6 34.Qf8+ のあと黒はたちまち詰まされる(34…Ng7 35.Qf6+ または 34…Kh5 35.Bf7+ Kg4 36.Be6+)。

33.Qf7+ Kh6

 これで黒は白クイーンのf8からのチェックには Qf6+ がないのでナイトをさしはさんで受けることができる。

34.Qxe8

(この章続く)

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后印防御の指し方(081)

第2章 王翼ビショップのフィアンケット 本手順 アンディー・ソルティス(続き)

実戦例3(続き)

(再掲)

 白は戦力的に互角にし、キングの安全度についてはずっと良くなっている。黒は引き分けになればうれしい。

34…Qd1+ 35.Kg2 Qxd4

 黒はポーンのことを考えているわけではない。この地点は黒クイーンにとって絶好の地点である。というのはここにいて試合の最後の数手で重要な地点に対する白からのチェックを防いでいるからである。

36.Qf8+ Qg7 37.Qc8!

 これはの勝とうとする最後の試みである。ルークを狙っているだけでなく、h3でのチェックで勝つ可能性を残している。

37…Qa7! 38.Qf8+ Qg7 39.Qc8 Qa7 40.Qf8+ 引き分け

 試合のほとんどの間黒駒の方が白駒よりよく働いていた。しかしポーン突きによってもたらされた弱点のために白が互角にする機会を得た。言い換えるとこれはこの戦型で …d7-d5 と突いて中央を黒が占拠すると何が起こり得るかという例、つまり普通よりも波乱に富むという例になっている。

(この章続く)

2015年06月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(082)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン

 第2章ではフィアンケット戦法における黒の最も普通の4手目の 4…Bb7 を取り上げた。この章では黒のもっと攻撃的な手の 4…Bb4+ と 4…Ba6 とを分析する。主として注意を傾けるのはより独立的な意味を持つ 4…Ba6 である。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3

 主手順の 4…Ba6 を論じる前に 4…Bb4+ を簡単に見ておこう。

 4…Bb4+ の局面

(この章続く)

2015年06月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(083)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 4…Bb4+ の局面

 黒が 1…Nf6 から 2…e6 と指し始める戦型でb4は黒の王翼ビショップの最も適した地点になることがよくある。実際 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 のあと 3…Bb4 は明らかに黒の最善手である(これは二印防御の手順で、本書の範囲外である)。后印防御では白は Nf3 と展開し、黒が …Bb4+ と指してもこのビショップがc3の白ナイトを釘付けにすることのないようになっている。たとえそうであっても …Bb4+ は悪い手ではない。なぜなら黒の王翼ビショップは好所に展開し、チェックを受ける必要がないならば選択しないかもしれない地点に白の后翼ナイトまたは后翼ビショップを来させるからである。4…Bb4+ のあと白にはチェックを受ける手段が三通りあり、順番に分析していく。

 A:5.Nc3

 4…Bb4+ 5.Nc3

(この章続く)

2015年06月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(084)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 4…Bb4+ 5.Nc3

 この手は黒の注文どおりである。第一に白は自ら釘付けにかかり、少なくともしばらくは后翼ナイトが完全に動けなくなる。第二に白は …Bxc3+ に bxc3 と応じることにより二重cポーンが攻撃目標にされる危険を冒している。これらの不都合のどちらも破滅を招くほどではない。特に白は代償として双ビショップが得られるからであるが、黒は布局から指しやすい局面になるのに困難がないはずである。しかし黒は …Bxc3+ を急ぐべきでない。この釘付けは役に立ち、交換(またはビショップ引き)が有利な結果をもたらすまで維持すべきである。

 5.Nc3 のあと黒は 5…O-O、5…Bb7 または 5…Ba6 のような単純な展開の手で理にかなった局面にすることができる。しかし本書ではもっと積極的に 5…Ne4 で 6…Nxc3 から戦力得を狙うことを推奨する。もし白が 6.Bd2 と守れば、黒は 6…Nxd2 と取ってビショップとナイトに対する双ビショップのわずかな優位を手にすることができる。また、白が 6.Qc2 と守れば、6…Bb7 7.Bg2 f5 8.O-O Nxc3 9.bxc3 Be7 と進んで黒の有望な局面になるかもしれない。白の二重cポーンは弱体化するかもしれず、黒は要所のe4の地点(后印防御ではいつも重要な地点である)をしっかり支配している。

 B:5.Nbd2

 4…Bb4+ 5.Nbd2

(この章続く)

2015年06月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(085)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 4…Bb4+ 5.Nbd2

 5.Nc3 と同じようにこの手も白が自ら后翼ナイトを釘付けにするという小さな欠点を抱えている。5.Nc3 と異なるのは二重ポーンをかかえるという危険は冒していないことである。

 5.Nbd2 のあと黒には不満のない局面を得る手段がいくつもある。その中でも 5…O-O と 5…Ba6 は単純な展開の手であり、5…c5 はすぐに中央に打って出るもっと積極的な手である。5.Nbd2 に対する黒の最も信頼できる対抗手段として著者らが推奨する手は 5…Bb7 である。白は 6.Bg2 と応じるのが良く、第2章で分析した 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Bb7 5.Bg2 Bb4+ 6.Nbd2 の局面に移行する。

 黒は 5.Nbd2 に対する良い応手がいくつかあるけれども、何でも良いという誤った思い込みに陥ってはいけない。5…d5?? のあと賭けに出ているのは黒の方だけである!白は 6.Qa4+! と指し 6…Nc6 に 7.Ne5! で駒得になる(7.Qxc6+ は 7…Bd7 でクイーンを脱出させるのに苦労するのでもっと複雑になる)。

 C:5.Bd2!

 4…Bb4+ 5.Bd2

(この章続く)

2015年06月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(086)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 4…Bb4+ 5.Bd2

 これが 4…Bb4+ に対する白の最善の応手である。黒には可能な応手が四つあるが、そのどれでも白がほんのわずか優勢になる。

 5…a5 この手は白が 6.Bxb4? で黒に二重bポーンを作らせることに誘惑されればうまくいく。6…axb4 のあと黒のb4のポーンは …c7-c5、…Nc6 それに …Qe7 によって支えられるので本当は弱くない。実際のところこのポーンは白の后翼を押さえ込む効果を発揮していて、特に白の后翼ナイトが最適の地点のc3に行くのを防いでいる。さらに半素通しa列も黒の役に立つかもしれない。

 5…a5 の問題は白がこのaポーンを完全に無視して 6.Nc3! から 7.Bg2 そして 8.O-O と指すことができることにある。この手順中 6.Nc3! が 5.Nc3 に当てはまった不利益をこうむらないのは、ここでは后翼ナイトが釘付けになっていなくて黒が …Ne4 と指せないからである。5…a5 6.Nc3! のあとは后翼防御の多くのほかの局面に似た局面になる。しかし重要な相違点は …a7-a5 突きがほとんど無駄な見当違いの手になっていることである。だから白の見通しの方が少し良い。

 5…Qe7 この手も 5…a5 と同様に白が義理堅く 6.Bxb4 と取ってくれる場合のみうまくいく。6…Qxb4+ のあと白は気に入らない2手から選択しなければならない。7.Nbd2 なら 7…Qxb2 と取られて白には犠牲にしたポーンの具体的な代償がない。7.Qd2 なら 7…Qxd2+ 8.Nbxd2 となってクイーン同士の早い交換のために白には布局で優勢になる見通しがほとんどない。黒は 7…Qxc4 と取ることもでき、白が損したポーンの代わりに得たものを見つけることは難しい。

 6.Bxb4 の代わりに白は 6.Nc3 と指してe7の黒クイーンがあまり役に立たないようにさせるのが良い。6.Bg2 でキャッスリングの用意をするのも良い手である。黒はクイーンがビショップの引き場所のe7をふさいでいるので、いつか …Bxc3 と取らされてビショップとナイトとに対する双ビショップの少しの有利を白に譲ることになりそうである。

 5…Be7 この手損(ビショップが1手で行けた所に2手かけて行った)は白が 6.b3? と指してくれるなら、黒が 6…Ba6 で本譜に移行できるので正しいことになる。代わりに白は 6.Nc3! と指すのが良く、6…Ba6 に 7.e4! と突いてf1のビショップでcポーンを守ることができる。7.e4 のあと白は強力な中央ポーンにより優勢が保障される。后印防御ではいつものことだが白は無事に e2-e4 と突ければ好調である。

 5…Be7 6.Nc3 のあとの黒の最善手は 7.e4 を防ぐ 6…Bb7 である。7.Bg2 のあと局面は第2章で分析した戦型に移行するが、白が「ただで」Bd2 と指した点だけは違っている。この手はいくつかの点で役に立っていて、白がルークを迅速にc1に置くためにc2の地点を空けている。白がいくらか優勢である。

 5…Bxd2+ これが黒の最善手である。6.Qxd2 のあと(6.Nbxd2 は黒が 6…Ba6? と指してくれるなら 7.e4! と突けてよいが、黒は 6…Bb7 で e2-e4 突きを防ぐことにより満足できる局面にすることができる)、想定手順は 6…Ba6 7.b3 d5 8.Bg2! c6 (8…dxc4 は 9.Ne5! で 10.Bxa8 の狙いが非常に受けづらい)9.Ne5 O-O 10.O-O である。

 10.O-O の局面

(この章続く)

2015年06月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(087)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 10.O-O の局面

 この局面はいい勝負である。白は自陣の4段目のポーンが黒の1個に対し2個ありe5に攻撃的なナイトがいるので広さで少し優勢である。しかし黒は陣形が堅固なので、…Nfd7 のような手で白の前進したナイトの交換を図り …c7-c5 で中央で打って出ることにより白の一時的な優勢を無効にできるはずである。

 全体的な結論としては 4…Bb4+ は悪手ではないが、白の最善手(5.Bd2!)に対しては互角の見込みを維持するのにいくらか苦労する。だから 4…Bb7 または 4…Ba6 の方が良いと考えられる。4…Bb7 は前章で取り上げた。ここでは 4…Ba6 を取り上げる。

4…Ba6

(この章続く)

2015年06月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(088)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲)

 后印防御の初期の頃には 4…Ba6 は奇異で、断じてまともに受け取ってはいけない手と見なされていた。この手を無視させた論拠はおおよそ次のようなものだった。

 1.完全に良好でもっと長いa8-h1の斜筋があるのに、どうして后翼ビショップをa6-f1の斜筋に展開するのだろうか。

 2.さらにb7のビショップは后印防御で常に急所となるd5とe4の地点を支配している。a6ではそうならない。

 3.4…Ba6 が白のcポーンを当たりにしているのは確かだが、簡単に守れるポーンを攻撃することにどんな意味があるのか。

 次に反論を見てみよう。

 1.もちろんa8-h1の斜筋は重要である。しかしそれが唯一の斜筋というわけではない。a6のビショップはc4のポーンを当たりにしているだけでなく、e2の白ポーンも攻撃目標になるかもしれない。ビショップは多くの布局で最長斜筋に展開することができる。しかしそのような展開ができるからといってそれが最善ということにはならない。多くのことがほかの駒がどのように展開されているか、そして相手が自陣側で何をしているかということにかかっている。

 2.黒はd5とe4の地点を厳重に見張っていなければならない。それは本当である。しかし当面白はこれらのどの地点もポーンで占拠することを狙っていない。5.d5 は 5…Bxc4 でポーンを取られるし、5.e4 は 5…Nxe4 と取られる。事が順調に運べば黒は后翼ビショップの支援なしに(…d7-d5 のような手によって)これらの急所の地点を十分支配していけるかもしれない。

 3.白にはcポーンの妥当な守り方が4手もあるけれども、これから見るようにそのどれも少し欠点がある。だから 4…Ba6 には少なくともいくらか嫌がらせの価値がある。

 以上の反論には次のように付け加えることができる。黒のビショップは最終的にa6の地点にいるものと決まっているわけでは決してない。いつでもb7に戻ることができる。たとえそれにより(最悪の場合)1手損しても、その間に白陣に決定的な混乱を引き起こしたかもしれない。

 現在のところこれらの反論は少なくとも成り立っている。4…Ba6 は 4…Bb7 に代わる完全に満足な手と一般にみなされている。

 4…Ba6 の戦型における白の全般的な戦略は、黒のビショップがa6でそっぽにいることを示そうとすることである。白は安全に d4-d5 または e2-e4 と突くことができれば、通常はこの目的を達成することになる。これらの手はそれほど重要なので、機会があればたとえその時点で駒の展開が完了していなくても突くべきである。

 もちろん黒の戦略には白が有利な状況で d4-d5 または e2-e4 と突くのを防ぐことも含まれている。しかしこの作戦は決して完全に後ろ向きのものではない。a6のビショップが威力の源であることを示すことも希望している。もし状況が黒の有利に進めば、それは白のg2のビショップが場違いであるということかもしれない。もしそのビショップが黒のa6のビショップを無効にするためにf1に戻らされれば、黒は実際に心理的に勝ったことになり、たぶん非常に大きなものとなるだろう。

 4…Ba6 のあと白はcポーンを守らなければならない。5.Bg2 は 5…Bxc4 6.Ne5(ビショップとルークの両当たり)6…d5? 7.Nxc4 を期待した罠だが、黒に単に 6…Bd5 と指されると完全なポーン得となって白の裏目に出る。

 主手順で解説する 5.b3 に加えて、白のcポーンの守り方には妥当な手段が三通りある。

 A:5.Qa4

 5.Qa4 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(089)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 5.Qa4 の局面

 この手には目的がいっぱいある。cポーンを守るほかにも、…Bb4+ を防ぎ、さしあたって …d7-d5 突きを抑止し(d7のポーンが釘付けになっている)、黒の后翼ナイトをa6のビショップの守りに縛りつけている。この手の欠点はa4の白クイーンの役割が主として後ろ向きということである。このクイーンは端的に言ってこの地点にふさわしくない。中央のもっと影響力を発揮できる地点がふさわしい。d1なら d4-d5 突きを支援できるし、c2なら e2-e4 突きを支援できる。黒には 5.Qa4 に対し良い応手が二つある。

 5…c5 后印防御の特質の一つはその融通性である。試合の早期に中央ポーンを突くのを控えることにより、黒はあとで色々なポーンの突き方の選択肢を保留している。4…Ba6 の戦型では通常は …d7-d5 が最も適切なポーン突きだが、この局面では不可能なので黒は予備の作戦の …c7-c5 に頼る。

 そして 6.d5? は中央の支配を奪い取ろうという賢い手だが、6…exd5 7.cxd5 Bb7(7…Nxd5 は 8.Qe4+ で白の駒得になる)でいまくいかず白は進攻したポーンを支援することができない。8.Nc3 Nxd5 9.Qe4+ は 9…Qe7 という手段があって失敗するし、8.e4 は 8…Qe7 9.Bd3 Nxd5 または 9…Bxd5 と応じられる。

 だから想定される手順は次のようになるだろう。6.Bg2 Bb7!(これも后印防御の融通性の表れである。白は対角斜筋を支配しようとしていた。例えば 6…Be7? なら 7.Ne5! である)7.O-O cxd4 8.Nxd4(7…cxd4 の局面は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3 Bb7 5.Bg2 c5 6.O-O cxd4 の局面と同じである(第2章を参照)。ただし白クイーンがd1でなくa4にいて、黒がビショップをb7に行かせるのに2手かけている。しかし白クイーンのa4への「展開」は実際は欠点となっている。というのは白はここで Qxd4 と指せないので、一般に黒を楽にさせる白枡ビショップ同士の交換を避けられないからである)8…Bxg2 9.Kxg2

 9.Kxg2 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(090)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 9.Kxg2 の局面

 局面はほぼいい勝負である。両者とも相手から過度の干渉を受けることなく展開を完了することができる。白はc4のポーンにより少し陣地が広いが、黒は十分反撃できるはずである。典型的な試合(ファン・スヘルティンハ対ケレス、ベーバベイク、1964年)は次のように進んだ。9…Bc5 10.Nf3 O-O 11.Nc3 Nc6 12.Bg5 h6 13.Bxf6 Qxf6 14.Rad1 Rfd8 15.Qc2 Nb4 16.Qb1 Nc6 ここで両対局者は引き分けに合意した!もちろん敵対行為の放棄は時機尚早だった。しかし二人の強豪選手が最終局面を十分均衡がとれていて引き分けが順当な結果と考えていたわけではない。

 5…c6 これは 5…c5 よりも意欲的な手である。黒の希望は …b6-b5 と突いてそこでのポーン交換のあと …b5-b4 と突いて、自分の后翼ビショップのためにa6-f1の斜筋を恒久的に素通しにすることである。このあとは 6.Nc3(…b6-b5 を思いとどまらせるため)6…b5!(たとえポーンを犠牲にしても断固作戦をやり遂げる)7.cxb5 cxb5 8.Nxb5 Qb6 と進みそうである。

 8…Qb6 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(091)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 8…Qb6 の局面

 ポーンと引き換えに黒は駒の働きが非常に良くなった。…Nc6、…Bb4、…O-O、…Rfc8 そして …Rab8 のような手で后翼に戦力を集中させることができる。そのあとは適当な攻撃目標を選ぶことができるが、それは白がどう防御態勢を布くかによって白のb、dまたはeポーンのどれになるかが決まってくるかもしれない。上図の局面で白のポーン得が黒の攻撃的な陣形と釣り合っているので、客観的にはほぼいい勝負だろう。しかし実戦ではこの局面から指し続けると黒の方が非常に成績が良い傾向がある。たぶんこれはほとんどの選手が受けるよりも攻める方が容易であることによるものだろう。実戦例1のトゥクマコフ対グリコ戦は白の受けが正確さを欠けば黒が何を達成することができるかの一例となっている。

 B:5.Qc2

 5.Qc2 の局面

(この章続く)

后印防御の指し方(092)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 5.Qc2 の局面

 この手が 5.Qa4 に優るのは、白クイーンがより中央に近く位置しすぐに 6.e4 と突く狙いがある点である。5.Qc2 の欠点は …d7-d5 を防いでいないということである。だから黒は 5…d5! と突く。この手は e2-e4 突きを防ぎc4に圧力をかけている。黒はこのdポーンを白のcポーンと交換してa6のビショップの利きが延びることを期待している。だから 6.cxd5? は黒の注文どおりである。6…exd5 のあとa6のビショップは白のeポーンを脅かし、黒はあとでルークをe8に回して白が親切にも半素通しにしてくれた列に圧力をかける機会にも恵まれる。5…d5! のあとは 6.Nbd2 Be7 7.Bg2 O-O 8.O-O c5 と進むだろう。

 8…c5 の局面

(この章続く)

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后印防御の指し方(093)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 8…c5 の局面

 この戦型の多くの局面のように黒の后翼ビショップはa6-f1の斜筋に展望があり、白の王翼ビショップはh1-a8の斜筋に展望がある。中央でのポーン交換はいつか必ずおこり、両者は適切な時機を判断しなければならない。局面は緊迫していていい勝負である。いつものようにうまく指した方に勝利がほほ笑む。

 C:5.Nbd2

 5.Nbd2 の局面

(この章続く)

后印防御の指し方(094)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 5.Nbd2 の局面

 白はcポーンを守ると同時に再び e2-e4 突きを狙っている。いつものように 5…d5 は黒の本手だが、5…Bb4 と 5…c5 も非常に良い手である。5…d5 に対する白の最も安全な応手は 6.Qc2 で、戦型Bに移行する。しかし代わりに一時的なポーンの犠牲の 6.Bg2 で挑戦することもできる。黒は 6…dxc4 で挑戦を受けて立つ(安全に 6…Be7 と指して、戦型Bと似ているがまったく同じというわけではない局面にすることもできる)。そして 7.Ne5 で黒の后翼ルークが当たりになり、7…Nd5 が唯一の受けで、8.Nexc4 で白がポーンを取り戻す(しかし 8.Ndxc4 では駄目で、8…f6! でどちらかのナイトが取られる)。生じる局面は諸刃の剣である。白は e2-e4 突きで圧倒的なポーン中原を築くことができるかもしれないが、その際dポーンが弱体化しすぎないように注意しなければならない。そのあとは 8…Be7 9.O-O(9.e4 は 9…Nb4 で白のdポーンが落ちる)9…O-O 10.Qc2 c5 11.dxc5 Bxc5 と進むだろう。

 11…Bxc5 の局面

(この章続く)

2015年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(095)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 11…Bxc5 の局面

 この局面はいい勝負である。両者とも展開を完了しc列とd列を活用するように努めるのがよい。

 それでは主手順に戻る。

5.b3

 これが白の最も形を決めないcポーンの守り方である。后翼ナイトとクイーンをどこに展開するかは保留にしている。

5…Bb4+

 これまで考察してきたいろいろな戦型のように、ここでも 5…d5 は良い手である。通常は 6.Bg2 Bb4+ 7.Bd2 Be7 で主手順に戻る。しかし両者とも変化することができる。白は 6.Nbd2 と指すことができ、前述の戦型BとCで生じたのと似た局面になる。しかし 6.Qc2 はここでは緩い手となる。なぜなら 6…dxc4 7.bxc4 c5! で黒のcポーンと白のdポーンの交換により白のcポーンが孤立し攻撃にさらされるからである。

 5…d5 6.Bg2 のあと黒が冒険してみたいなら 6…dxc4 と指すことができ、7.Ne5 Bb4+! 8.Bd2 Qxd4 9.Bxb4 Qxa1 10.Bc3 Qxa2 11.Bxa8 cxb3 で大乱戦に突入する。

 11…cxb3 の局面

(この章続く)

2015年06月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(096)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 11…cxb3 の局面

 黒はビショップと引き換えに4ポーンを得ている。どちらが優勢かは誰にも分からない。この手順はロシアンルーレットの心酔者にしか推奨できない!

 ウールマン対スミスロフ戦では 5…d5 6.Bg2 Bb4+ に不自然な 7.Nfd2? が指された。実戦例2では白がどのように罰せられたかが見られる。

6.Bd2

 これがチェックに対する最善の手段である。本章で前述した 4…Bb4+ の解説と比べてみるとよい。

6…Be7!

 これはこの布局で柔軟な着想を必要とする別の例である。黒はビショップをe7に配置するのに2手かけたことにより1手「浪費」している。しかし白は后翼ビショップを一時的に劣った地点に行かされたのでこれは正当化される。白が b2-b3 と突けばa1-h8の斜筋はこのビショップの最も効果的な居場所である。白はまだその斜筋に行かせることができるが(例えば Bc3)、自分も1手費やす手損をしなければならず黒の手損を打ち消しにしてやることになる。

 本譜の手の代わりに 6…Bxd2+ と取っても悪くはないが、白をもう少し自由にしてやる。次のように進みそうである。7.Nbxd2 d5 8.Bg2 O-O 9.O-O Nbd7 10.Re1 c5 11.e4! dxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Rxe4 Bb7! 14.Re2

 14.Re2 の局面

(この章続く)

后印防御の指し方(097)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 14.Re2 の局面

 黒はdポーンを白のeポーンと交換したあとは、后翼ビショップが白のcポーンを攻撃するのにもうそのdポーンの助けに頼ることができない。だからこのビショップはもっと役に立つ斜筋に再展開された。

 それにもかかわらず形勢は白が少し優勢である。このあとのポーン同士の交換のあと后翼でポーンが3対2の多数派になる。キングがいるのとは反対の翼でパスポーンができる(要するに「外側」パスポーン)可能性が生じたので、長期的に有利である。相手のキングは外側パスポーンが8段目に到達するのを防ぐのに十分近くないことがよくあるので、このようなポーンは特に危険である。もちろん上図の局面からポーンを昇格させる見通しはずっと先のことなので、黒はそれを防ぐのに必要な手段を講じるのは間に合うはずである。それでも白が外側パスポーンを得るかもしれない可能性があるので、少なくとも黒は警戒を要するはずである。

(この章続く)

2015年06月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(098)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲)

7.Bg2

 代わりに 7.Nc3 なら(狙い筋の 8.d5 突きの狙い)、黒は 7…c6 と突くのがよく、後述する主手順の 8.Bg2 d5 に移行する。

 7.Nc3 c6 のあと別の狙い筋の 8.e4 突きは黒にとって危険でない。なぜならすぐに中央で 8…d5 と突き返すことができるからで、9.e5 なら 9…Ne4! 10.Nxe4?(10.Bd3 または 10.Qc2 の方が良い)10…dxe4 11.Ng1(ほかに行きようがない)11…Qxd4 で黒は少なくともポーン得になる。この変化は白は可能なら e2-e4 と突くべしという一般原則に対する例外である。その理由は白のビショップが場違いのd2にいることによる。上図で白の后翼ビショップがd2でなくb2にいる局面を想像すると、7.Nc3 c6 8.e4 d5 9.e5 Ne4 10.Nxe4 dxe4 と同じ手順をたどったとき 11.Nd2! で白がbポーンを失うのではなく黒がeポーンを失うことになる。

 7.Nc3 に対し 7…Bb7 は白の d4-d5 突きを防ぐ手段として少し不十分である。ポポフ対オーンシュテイン戦では 8.Bg2 c5?(8…O-O 9.O-O Ne4 と指す方が良い)9.d5 exd5 10.Nh4! と進んで白がポーンを取り返し優勢になった。このあとの手順については実戦例3を参照されたい。

7…c6

 黒は …d7-d5 突きの用意をしていて、cxd5 には …cxd5 と取れるようにしている。

 すぐに 7…d5 と突いてもまったくかまわない。8.Ne5 と来るなら 8…c6 9.O-O と応じて、本譜の 9.Bc3 の解説中の1変化と同じになる。白は黒が …c6 を省略したことにつけ込みたいならば 8.cxd5 exd5 9.O-O O-O 10.Ne5 と指すことができる。

 10.Ne5 の局面

(この章続く)

后印防御の指し方(099)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 10.Ne5 の局面

 この局面で白は半素通しc列を利用することにより黒のcポーンを攻撃できるようになることを期待している。もしそのポーンがc5に進めば白は適時に dxc5 と取り半素通しになったd列を利用して黒のdポーンを攻撃することを考えている。しかし黒は …Re8 から …Bd6 のような手で半素通しe列で反撃することができるので、大きな不安を抱えてそのような将来に立ち向かう必要はない。

8.O-O d5 9.Bc3

 このビショップはいつかは再配置しなければならなかった。今こそその時である。変化は次のとおりである。

 9.cxd5? は 9…cxd5! で、d5の黒ポーンがしっかり守られていて白のg2のビショップが中盤戦に向けて特に好位置というわけではなくなるので、黒がわずかに優勢である。それと同時にa6の黒ビショップに絶好の素通し斜筋ができる。

 9.Nc3? は 9…dxc4 でポーン損になる。これに対する白の最善手は 10.Ne5 である。この手は 10…Qxd4 を期待していて 11.Nxc6! でかなりの戦力得になる。しかし 10…Bb7 11.bxc4 のあと黒は何の咎めもなく 11…Qxd4 と取ることができる。

 9.Ne5 は 9.Bc3 と同じくらい良い手である。予想手順は 9…O-O(9…dxc4 は 10.Nxc6! で戦力損になるので不可)10.Bc3(ここでは 10…dxc4 が本当の狙いになっていた)10…Nfd7 11.Nxd7 Nxd7 12.Nd2 Rc8 である。

 12…Rc8 の局面

(この章続く)

2015年06月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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后印防御の指し方(100)

第3章 王翼ビショップのフィアンケット 黒の攻勢 レイモンド・キーン(続き)

(再掲) 12…Rc8 の局面

 ほぼ互角のいい勝負である。1971年世界選手権挑戦者決定番勝負のコルチノイ対ぺトロシアン戦では両選手はこのあとたった4手指しただけで引き分けに合意した。二人の達人は不倶戴天の敵同士になっていたので、たぶん必要以上に長く相手と向き合っていることに耐えられなかったのがその理由であろう。

9…O-O

(この章続く)

2015年07月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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