カロカン防御の指し方の記事一覧

カロカン防御の指し方(001)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン

 ホレーショウ・カロとマルクス・カンは似たり寄ったりの19世紀の二流マスターだった。個人としてはどちらも全然記憶に値しない。しかし二人ではカロカン防御の協同創始者として不滅の地位を獲得した。この戦法は次のように始まる。

1.e4 c6

 1…c6 は一見したところでは奇妙な手に思える。駒を展開していない。黒クイーンがd8-a5の斜筋に展開できるように筋を開けているけれども、一般的にクイーンを序盤早々に出すのは悪い考えでその点でも正当化できない。それなのになぜ黒は 1…c6 と突くのだろうか。

 その答えは 1…c6 は役に立つ準備の手だからである。この手に白がどう指そうと、黒は 2…d5 で中央に地歩を築く。これで地歩を固めることができれば、そのあと駒を展開する余裕が十分にできる。

 …d7-d5 突きが黒の良い着眼点なら、そもそもどうして1手目で指さないのかと聞きたい人がいるかもしれない。実のところ黒は 1.e4 に 1…d5 と指すことがある。しかし黒のこの手は 1…c6 から 2…d5 によって避けることのできる不利をこうむってしまう。1.e4 d5 2.exd5 のあと黒は完全に嬉しいわけではない選択をしなければならない。2…Qxd5 によってすぐにポーンを取り返すのは、クイーン出が時期尚早になる。白は 3.Nc3 でクイーンを当たりにし先手でナイトを展開することができる。代わりに 2…Nf6 と指すのは 3…Nxd5 と取る意図だが、白の 3.c4 で黒がポーンを取り返すのが難しくなる。

 もともとカロカンは最良でも少し風変わりで、最悪は話にならないほど悪いと見なされていた。しかし1921年から1927年まで世界チャンピオンだった有名なカパブランカによって採用されて評価を勝ち得た。それ以来世界の代表的な選手のほとんどによってときどき用いられるようになり、今では 1.e4 に対する黒の最も堅実な応手の一つとして位置づけられている。

(この章続く)

2013年12月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(002)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 カロカン防御における白の基本戦略は 1…c6 のいくらか控え目な性質につけ込んで、序盤でわずかな優勢を得てそれをあとの段階でうまく利用することに努めることである。これを達成するためには以下の一般的な指針に従うのがよい。

 1)ポーンで中央に地歩を築くこと。白は(1.e4 c6 のあと)ほとんど必ず 2.d4 と突く。だから中原の4地点のうちe4とd4を早くもポーンで占めることになる。時には e4-e5 と突き越すこともあり、自分のeポーンと黒のdポーンとの交換に応じることもある。白が序盤でほかのポーンを突くのは通常は適切でない(ただしcポーンは例外となることがある)。というのはそのようなポーン突きは手の浪費になることが多く、有効に駒の展開に使うべきであるからである。

 2)できるだけ迅速に駒を展開すること。つまりこれからの戦いに備えてすべての駒をよく働く地点に配置するように努めることである。通常は最もよく働く地点は盤の中央に最も近い枡である。すべての駒を迅速に展開するためには、一般にほかのすべてのまたはほとんどの駒が一度動くまでどの駒も二度動かさないのが良い。しかし時には例えば交換されたり取られるのを防ぐために二度動かすことが必要になるときもある。

 3)駒を展開し中央で地歩を築いたら、具体的な長期的作戦を立てるようにすること。適切な作戦はもちろん黒の指し手による。しかし二つの最も普通の作戦は次のとおりである。

 a)キング翼攻撃。黒がキング翼にキャッスリングすれば(そうするのが普通である)、白はしだいに駒をその方面に集中し黒キングを詰めようとすることができる。しかし白は黒が中央で強力に反撃する可能性にいつも警戒しなければならない。この反撃は側面攻撃に対する通常の強力な反応である。

 b)中央での活動。これには多くのやり方があり得る。二つのよくある着想は c2-c4 から d4-d5 と突くことにより、または f2-f4 から f4-f5 と突くことにより、黒の防御を打ち破るようにすることである。

(この章続く)

2013年12月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(003)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 カロカン防御における黒の基本戦略は白よりも積極性で及ばない。チェスにおける先手番の優位は、テニスにおけるサーブの優位にいくらか近い。だから最初は黒は白のわずかな優勢を打ち消すことに満足することにして、あとで初めて攻勢に出ることを期するのが良い。一般的に当てはまる指針は以下のとおりである。

 1)黒はポーンで中央に地歩を築くこと。白が(1.e4 c6 のあと)2手目でどんな手を指そうと、黒の正着はいつも 2…d5 である。結局のところ 1…c6 はこの手のためにある。中原の4地点の一つを占めた黒ポーンは、d5の地点に留まるか白のeポーンと交換されることになる。白と違いこの布局では黒は中原の4地点の一つに2個目のポーンを置くことを願うことはできない。カロカン防御では黒のeポーンはe5よりもe6にいるのがふさわしい。なぜならe5のポーンは白のd4のポーンによって、それにたぶんf3のナイトによっても当たりにされるからである。一般に黒はc8のビショップを展開するまでは …e7-e6 と突くべきでないのは、そのビショップが閉じ込められるからである。布局の早い段階では黒は中央のc、dおよびeポーンだけを突くようにするのが普通である。

 2)駒をできるだけ迅速に展開すること。白の戦略全般に当てはまるのと同じ考慮がここでも当てはまる。異なるのは白の優位を無効にする目的に沿って、進んで駒を交換すべきであるという点である。

 3)そのあと黒は長期的戦略を立てること。黒は防御側なので(白が先に指すから)、作戦はほとんど常に白の作戦に対応したものになる。だから黒は白の意図を推量するように努めることが大切である。白の作戦が黒キングを攻撃することがはっきりすれば、黒はキングの近くに十分な駒を配置して攻撃を撃退できるようにすべきである。また中央で反撃を開始する機会を得るために注意しているべきである。同様に白が中央突破を目指せば、黒は中央での動きを無効にするように集中して取り組み自分で中央での支配を奪うように努めなければならない。だから白が中央で動こうとキング翼攻撃に出てこようと、黒は中央に神経を集中しなければならない。時には(特に白が手損をするか守勢で指せば)、黒は中央での動きの代わりか中央での動きに加えて贅沢にもクイーン翼で自ら動くことができる。カロカン防御で黒がキング翼で積極的な作戦に出ることはまれである。

(この章続く)

2013年12月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(004)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 両者の戦略を幅広く全体的な見地から概説したところで、今度はもう少し詳しく分析してみよう。以降の章ではカロカン防御の戦型を個別に取り上げるが、多くの戦型の特徴はほとんど同じで、一部が異なっていることが見てとれる。ここからは各戦型の特徴を説明していくことにする。違いを強調する際に駒の配置でなくポーンの配置によって戦型を分類する。これは駒は後戻りできるがポーンはできないので、ポーンの「骨格」の方が駒のそれよりも恒久的だからである。だからポーンはある局面に当てはまる長期的な考え方をよく物語ることになる。

(この章続く)

2013年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(005)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 突き越し戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形は突き越し戦法(第2章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 のあとで …e7-e6 突きで生じる。

 白は e4-e5 と突き越すことにより中原のポーンを固定した。これで白のeポーンと黒のdポーンとの交換は不可能になっている。これが白にとって有利か黒にとって有利かかは、棋風の問題である。どちら側にとっても利点と欠点がある。白はポーンが黒陣に食い込んでいるので、長期的に陣地の広さの点で有利である。これに対して黒にはすぐにポーンを白陣に食い込ませる見通しがない。しかしこのポーンの突き越しはかなり形を決めていて、白のdポーンは動けずそのため黒の標的になる可能性がある。

 一般にこの戦法における両者の最も適切な展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング 普通はキング翼にキャッスリングし、たまにだけクイーン翼にキャッスリングする。

 白のクイーン d3またはe2、たまにg4。

 白のルーク d1とe1、またはd1とf1。

 白のキング翼ビショップ d3、たまにe2。

 白のクイーン翼ビショップ d2、e3、f4またはg5。この駒はどの地点が最も適切かかなりはっきり分かるまで、展開を延期するのが最善であるのが普通である。

 白のキング翼ナイト f3またはe2。

 白のクイーン翼ナイト c3。

 白のポーン dポーンとeポーン以外のポーンは、あまりにも早い段階で突かない方が良い。fポーンはあとで突いていくことが多い。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン b6またはa5、時々そのあとa6。

 黒のルーク 一つのルークは通常c8に行く。時々 …Rc7 のあともう一つのルークがc8に行く。この捌きはルーク重ねと呼ばれる。

 黒のキング翼ビショップ e7。

 黒のクイーン翼ビショップ f5。

 黒のキング翼ナイト e7からf5またはg6。このナイトはe7が隘路(あいろ)となるのを避けるために、キング翼ビショップより先に展開するのが良い。

 黒のクイーン翼ナイト d7または(…c6-c5 のあと)c6。

 黒のポーン cポーンとdポーンを突いたあと、早い段階で考えるべき唯一のほかのポーンはeポーン(e6に!)とcポーン(c5に)である。…h7-h5 突きと …g7-g6 突きは、あとで白のキング翼ポーンの進攻を抑えるために良いかもしれない。

 突き越し戦法における白の一般的な戦略はキング翼を攻撃することで、通常は f2-f4-f5 突きがその先駆けとなる。黒の全般的な戦略は …c6-c5 突きによって白のポーン中原を突き崩し、そのあと自分のルークを置いた半素通しc列を利用することにより反撃を行なっていくことである。

(この章続く)

2013年12月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(006)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 交換戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形は交換戦法(第3章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.exc5 cxd5 4.Bd3 Nc6 5.c3 のあとで …e7-e6 突きで生じる。

 注意点は半素通し列が二つあることである。e列は白が利用でき、c列は黒が利用できる。この戦法における両者の最も適切な展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼にキャッスリングする。

 白のクイーン b3またはe2。

 白のルーク e1とd1、またはe1とf1。

 白のキング翼ビショップ d3。

 白のクイーン翼ビショップ f4またはg5。

 白のキング翼ナイト f3からe5。

 白のクイーン翼ナイト d2からf3で、e5に跳んだキング翼ナイトに置き換わる。

 白のポーン 最初の2手でeポーンとdポーンを突いたあとは、早い段階でほかのポーンを突くべきでない。あとで f2-f4 突き、そしてたぶん g2-g4 突きがキング翼攻撃の一部として役立つかもしれない。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン c7、b6、a5またはc8。一番あとの地点はb7ポーンを守る必要があるときに黒クイーンの適所になるかもしれない。

 黒のルーク b8、c8、e8それにf8はどれも好所である。実際の選択は白の展開と局面の進行による。

 黒のキング翼ビショップ d6またはe7。

 黒のクイーン翼ビショップ f5またはg4。

 黒のキング翼ナイト f6。

 黒のクイーン翼ナイト c6。

 黒のポーン c、dおよびeポーン以外は早い段階で突くべきでない。あとで …b7-b5-b4 突きが効果的になることが多い。

 白の一般的な戦略は普通はキング翼攻撃である。これには Re1-e3-g3、h2-h3、f2-f4、そして黒のナイトを防御の好所のf6からどかすために g2-g4-g5 さえかかわるかもしれない。黒の一般的な戦略は白のキング翼攻撃に備えながらクイーン翼で攻撃することである。

(この章続く)

2013年12月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(007)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 パノフ攻撃の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形はパノフ攻撃(第4章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 のあとで 白のcポーンと黒のdポーンの交換によって生じる。これはカロカン防御の範囲だけれども、同じポーン陣形はほかの布局からも生じることがある(もちろん違う手順で)。これにはクイーン翼ギャンビット(1.d4 d5 2.c4)やシチリア防御(1.e4 c5)のようないろいろな布局が含まれる。もちろんどの手順によるかにかかわらず、同じ戦略の考え方がこのポーン陣形に当てはまる。

 このポーン陣形の最も重要な特徴は白の孤立dポーンである。孤立ポーンは別のポーンによって守ることができず駒によって守ることが必要なので、よく弱点と見なされる。しかし代償として白は最も前進したポーンが4段目にあるのに黒の最も前進したポーンが3段目にすぎないので広さで少し優勢になっている。このようなポーンの局面は白の活動的な駒と広さの優位が、孤立ポーンに対する黒の反撃に優るかどうかの理論的な論争を引き起こす。この戦法における両者の通常の展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼にキャッスリングする。

 白のクイーン e2またはd3。ビショップが先にd3に出てそのあと交換されるかc2またはb1に下がるのでなければ、クイーンはd3に行くべきでない。理由はさもないとビショップの邪魔になるからである。

 白のルーク e1と、c1またはd1。

 白のキング翼ビショップ d3。

 白のクイーン翼ビショップ g5と(黒が …g7-g6 と突けば)h6。

 白のキング翼ナイト f3、そのあとe5。

 白のクイーン翼ナイト c3。

 白のポーン c、dおよびeポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。しかし a2-a3 突きは黒ナイトがb4に来るのを防いで役立つことがよくある。

 黒のキング キング翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン a5、b6またはd6。

 黒のルーク c8と、d8またはe8。

 黒のキング翼ビショップ e7。

 黒のクイーン翼ビショップ (…b7-b6 突きのあと)b7またはd7。

 黒のキング翼ナイト f6、通常はそのあとd5。黒がナイトをd5に据えるとポーンで追い払えないことが、白の孤立dポーンの不利の一つである。このせき止めが確立されれば、白のdポーンを攻撃する黒のc6のクイーン翼ナイトがいじめられずにとどまれる。

 黒のクイーン翼ナイト c6、そのあと時々b4。

 黒のポーン c、dおよびeポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。あとでの …b7-b6 突きはクイーン翼ビショップをa8-h1の対角斜筋に展開する(いわゆるフィアンケット展開)のに役立つかもしれない。

 パノフ攻撃における白の通常の戦略は黒キングを攻撃することである。よくある捌きは Bd3、Bc2(または Bb1)、Qd3 そして Bg5 で、黒のナイトを取って Qxh7 による詰みを狙うことである(もちろん黒がキング翼にキャッスリングしているという仮定で)。黒はこれを防ぐために …g7-g6 と突いて自陣を弱めることを強いられ、白がクイーン翼ビショップをh6に行かせて脅威を与えることができる。白は続いて Re1-e3-g3(または h3)と指すかもしれない。時には白はf7またはg6に捨て駒をして黒キングを露出させ黒の抵抗を粉砕できることがある。

 黒の一般的な戦略はできるだけ多くの駒を交換して白の攻撃力を減少させ収局を目指すことで、そうなれば白の孤立dポーンの弱さがずっと目立つようになる。

(この章続く)

2013年12月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(008)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 タルタコワ戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形はタルタコワ戦法(第5章)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 から生じる。

 この戦法では黒が自ら二重ポーンの少しの不利益を背負う。この乱れたポーン陣形と引き換えに、カロカン防御のほとんどの戦法よりもずっと自由に駒を展開することができる。欠点は(二重ポーン自体に加えて)クイーン翼で4対3の多数派ポーンを白に与えることである。白はこれを利用して収局でパスポーンを作ることができるかもしれない。

 この戦法における両者の通常の展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼とクイーン翼のどちらにもキャッスリングする。この戦法ではしばしばクイーン同士が早く交換になり、その場合白キングは中央に居残った方が収局で有利かもしれない。

 白のクイーン e2。

 白のルーク e1とd1。

 白のキング翼ビショップ d3またはc4。

 白のクイーン翼ビショップ f4またはe3。

 白のキング翼ナイト e2またはf3。

 白のクイーン翼ナイト 5手目で交換になる。

 白のポーン e2-e4 と d2-d4 のほかに唯一理にかなったポーン突きは c2-c4 である。

 黒のキング キング翼にキャッスリングするが、非常に早くクイーン同士が交換になれば中央にとどまるかもしれない。

 黒のクイーン e7、c7、b6またはa5。

 黒のルーク e8とd8。

 黒のキング翼ビショップ d6とe7。

 黒のクイーン翼ビショップ e6またはg4。

 黒のキング翼ナイト 5手目で交換になる。

 黒のクイーン翼ナイト d7。

 黒のポーン cおよびdポーンを除き、ほかのどのポーンも早く突くべきでない。

 タルタコワ戦法における白の全般的な戦略は、駒を交換してクイーン翼の多数派ポーンを生かしてパスポーンを作るようにすることである。黒はfポーンが二重なので、キング翼の多数派ポーンは阻害されパスポーンを作るのがはるかに難しくなっている。しかしこの戦法全体の要点としては駒を迅速に効率よく展開することにより、白がクイーン翼の優位を生かすのを防ぐことに黒の意図がある。

(この章続く)

2013年12月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(009)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 ブロンシュテイン=ラルセン戦法の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形はブロンシュテイン=ラルセン戦法(第6章)(ニムゾビッチ戦法としても知られる)の 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 から生じる。

 今度は黒はgポーンで取り返した。ここでの二重ポーンはタルタコワ戦法よりも弱く(キング翼のポーンが分かれているので)、孤立hポーンは白駒の標的になるかもしれない。黒は代償として(タルタコワ戦法のように)駒の働きが良いだけでなく、半素通しg列は白がキング翼にキャッスリングすれば攻撃に非常に役立つ通路になるかもしれない。白は通常キング翼にキャッスリングするが、それはクイーン翼で活動するつもりなのでそうしないと危険すぎるからである。

 この戦法における両者の通常の展開の仕方は次のとおりである。

 白のキング キング翼にキャッスリングする。

 白のクイーン e2、b3またはd3。

 白のルーク e1とd1。

 白のキング翼ビショップ e2またはd3。

 白のクイーン翼ビショップ f4またはe3。

 白のキング翼ナイト f3。

 白のクイーン翼ナイト 5手目で交換になる。

 白のポーン dポーンとeポーンのほかには、早い段階での理にかなったポーン突きはcポーンをc4に突くのと、…Bg4 に対してhポーンをh3突くことだけである。

 黒のキング クイーン翼にキャッスリングするが、時には中央にとどまることがある。素通しg列のためにキング翼キャッスリングは危険である。

 黒のクイーン c7。

 黒のルーク d8とg8。

 黒のキング翼ビショップ d6。

 黒のクイーン翼ビショップ f5またはg4。

 黒のキング翼ナイト 5手目で交換になる。

 黒のクイーン翼ナイト d7。

 黒のポーン 早い段階ではc、dおよびeポーンだけを突くべきである。黒が白のキング翼を攻撃しているときは、あとでhポーンを突いていくのが役立つかもしれない。

 白の一般的な戦略は d4-d5 突きによって中央突破を図ることで、その準備として c2-c4 と突くことが多い。黒のキング翼ポーンを攻撃しようとすることもある。

 黒はこの戦法では素通しg列を利用してキング翼を攻撃すべきである。通常の …e7-e5-e4 または …c6-c5 から始まる中央での何らかの動きとこれを絡めるかもしれない。

(この章続く)

2014年01月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(010)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 堅実戦型の典型的なポーン陣形

 このポーン陣形は 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 のとき、黒がfポーンを二重にされる 4…Nf6 をすぐには指さないことで生じる。だから堅実戦型(第7章と第8章)とクイーン翼ビショップ戦型(第9章)で現れる。

 白は4段目に中原ポーンがあるのに黒ポーンが3段目にとどまっているので広さで優勢である。しかし黒は特に弱点のない堅固な陣形(これが戦型の由来)になっている。

 これらの戦型における駒の最良の地点は通常は次のとおりである。

 白のキング キング翼かクイーン翼にキャッスリングする。

 白のクイーン e2またはd3。

 白のルーク d1とe1。

 白のキング翼ビショップ d3。

 白のクイーン翼ビショップ d2またはg5。

 白のキング翼ナイト f3、あとでしばしばe5。

 白のクイーン翼ナイト c3、そのあとe4からg5(第7章)またはg3(第8章)。

 白のポーン クイーン翼ビショップ戦型では白のhポーンはよくh5に進む。堅実戦型とクイーン翼ビショップ戦型では、c2-c4 突きは役に立つことが多い。そうでなければ早く突くのはdポーンとeポーンだけにすべきである。

 黒のキング 堅実戦型ではキング翼に、クイーン翼ビショップ戦型ではクイーン翼にキャッスリングする。

 黒のクイーン c7。

 黒のルーク d8、時にはe8。

 黒のクイーン翼ビショップ 堅実戦型では(…b7-b6 突きのあと)b7、クイーン翼ビショップ戦型ではf5。

 黒のキング翼ナイト f6。

 黒のクイーン翼ナイト d7。

 黒のポーン 堅実戦型では …b7-b6 突きがクイーン翼ビショップのフィアンケット展開を可能にして良い着想になることが多い。クイーン翼ビショップ戦型では …h7-h6 突きが、白の h2-h4 突きにh7の逃げ場所を用意するために必要である。そうでなければc、dおよびeポーンだけを早く突くべきである。

(この章続く)

2014年01月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(011)

第1章 カロカン防御の着想 レイモンド・キーン(続き)

 ここまででカロカン防御で生じるような局面の大体の着想がのみこめたことと思う。このような局面が気に入っただろうか。カロカン防御を黒で指してみたいだろうか。白で立ち向かってみたいだろうか、それとも 1.e4 以外の手を指したいだろうか。

 以下のどれかが当てはまればカロカン防御はあなたに向いている。

 1)どちらも大きな危険をおかす必要のない堅固な局面を好むこと。カロカン防御は確かにシチリア防御(1.e4 c5)のような激しくて攻撃的な布局よりもはるかに安全である。カロカン防御を指せば快勝することは多くないだろうが、逆にさっさと負かされることもないだろう。

 2)引き分けにしかならないかも知れないことがあまり気にならないこと。カロカン防御の堅実な特徴は、シチリア防御のような動的な防御よりも引き分けの比率が大きくなることを意味する。だから格上の相手に対して引き分けで満足できるときは黒で最適の布局となる。

 3)多くの詳細な変化を覚える時間もなければその気もないこと。布局の中にはこちらの知らない細かい変化を相手が知っていたためにつぶされるということがある。カロカン防御ではこういうことはめったに起こらない。この布局では変化を覚えることよりも背景となる着想を理解することの方が重要である。着想を理解していれば相手がこちらの知らない手を指してきても妥当な作戦をその場で立てることが難しくない。

(この章終わり)

2014年01月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(012)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン

1.e4 c6 2.d4 d5

 3…dxe4 と取る手が黒の狙いである。これに対処する白の単純な方法は、当たりのポーンを突き進めることである。

3.e5

(この章続く)

2014年01月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(013)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

 白にとって 3.e5 の主要な利点は、キング翼の陣地が広くなることである。すなわち駒を動かす余地が広がることである。白陣が広いということはとりもなおさず黒陣が狭いということになる。e5のポーンは黒陣を押さえつける効果があり、黒のキング翼ナイトが最良の地点のf6に行くのを防いでいる。

 逆に 3.e5 の不利益は手を決めすぎているということである。黒はもう白がどのように中央にポーンを配置するのかを考えめぐらす必要がない。中央のポーンの形が固定されたので、黒はこれからの指し方の大体の様相が分かりそれに応じた自分の駒の配置を決めることができる。

 突き越し戦法における白の基本戦略はできるだけ迅速かつ調和よく駒の展開を完了し、キング翼の広さの優位を実際に生かすことに努めることである。もし黒がキング翼にキャッスリングすれば(一般にそうするが)、白はキング翼攻撃に出るのが普通である。これにはいろいろなやり方がある。(1)(黒が …e7-e6 と突いたあとで)Qg4 と指しg7の黒ポーンを攻撃する。(2)キング翼ルークをf1、e1そしてe3を経由してg3かh3に捌く。これはg3またはh3がg7またはh7を攻撃するのに絶好の位置だからである。(3)fポーンをf4、f5、そして可能ならf6まで突き進める。これらの攻撃作戦はどれも黒にとって非常に危険になることがあり、注意深い受け方が必要になる。

 黒の方の基本戦略は展開を完了しそのあとで白のポーン中原を …c6-c5 または(ずっとまれだが)…f7-f6 突きで突き崩すことである。…c6-c5 突きのあと黒はc列を有効に利用すべきである。この好例は本章の最後の実戦例が参考になる。

 要約すると突き越し戦法における白の主たる展望はキング翼にあり、黒はクイーン翼にある。しかし両者とも柔軟であるべきである。もし何かが作戦どおりにいかなければ、急いで攻撃から防御にまたはその逆に転換する必要がでてくるかもしれない。

 突き越し戦法は多くの強豪(元世界チャンピオンのタリも含まれる)によって指されてきたけれども、今日ではカロカン防御に対するかなり無害な指し方と見なされている。黒は分別よく指せば、つまり本章の主手順に従えば、いい勝負の中盤戦にほとんど苦労なく到達するはずである。

3…Bf5!

 黒はビショップを好所に展開し、…e7-e6 と突いてキング翼の駒を展開する用意をした。ほかの手は明らかに劣る。

 1)すぐに 3…e6? と突くのは自分のクイーン翼ビショップを不必要に閉じ込めてしまう。それによってフランス防御の突き越し戦法(1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5)に似た陣形になるが、無意味な …c7-c6 突きが加わっているのが重要である。

 2)白のポーン中原を 3…f6? で切り崩そうとするのは、原則的には悪い着想でないが、時機を誤っている。4.Bd3 fxe5?(一貫した手だが悪手)5.Qh5+ で黒が応手に困る。5…g6 は 6.Bxg6+! と切られ 6…hxg6 と取ると 7.Qxh8 で交換損になる。黒にとって比較的最善手と言えるのは 5…Kd7 だが、キングが露出して大変危険である。

 3)3…c5? は 4.dxc5! と取られて、黒がポーンを取り返すのが難しくなる。例えば 4…Qxa5+ は 5.Nc3 Qxc5 6.Qxd5 で白がポーン得のままである。

4.Bd3

 これは自然な展開の手である。白はほかにも面白い手がいくつかある。

 1)4.g4? 黒ビショップをいじめようというこのぶしつけな手は、4…Be4! 5.f3 Bg6 6.h4 h5!(6…e6? は 7.h5! で黒ビショップが捕まる)で黒を利する。このあと例えば 7.Bd3 なら 7…Bxd3 8.Qxd3 e6 9.g5 Ne7 となって、白のキング翼のポーンが伸びすぎとなり黒が優勢である。この局面は章末の実戦例に似ていて、白のポーン突きの負の側面が露呈している。

 2)4.h4? この狡猾(こうかつ)な手は前の解説のように 4…e6? 5.g4! Be4 6.f3 Bg6 7.h5 で黒ビショップを捕まえることを期待している。しかし黒は 4…h6! でh7にビショップの逃げ場所を作ってこれを避けることができる。白は 4.h4 が不発に終わり、あとで弱点になるかもしれない。

 3)4.c4 これは悪手ではないが、黒にとっては危険でない。黒は 4…e6 と突くのが良い(4…Bxb1 5.Rxb1 Qa5+ 6.Bd2 Qxa2 とポーン得するのは、黒クイーンが遊び白が展開で先行するので大変危険である)。例えば 5.Nc3 dxc4 6.Bxc4 Nd7 のあといずれ …Nb6、…Ne7 から …Ned5 とされる。d5の好所の黒ナイトはもう白ポーンによっていじめられることがなく、黒に良い展望が保証される。

 4)4.Ne2 e6 5.Ng3 Bg6 6.h4 これも黒ビショップをいじめようとする無害な手である。やはり正しい解毒剤は 6…h6 で、そのあと黒は満足な局面になる。

4…Bxd3

 黒はビショップ同士の交換を避ける満足な方法はないが、交換を避ける理由もない。

5.Qxd3

 5.cxd3 は二重ポーンはたいてい不利であるという知識からすれば悪そうである。しかし完全に見当違いというわけでもない。白の理屈はこの戦型では一般に黒が …c6-c5 と突いてくるので、白が二重ポーンを解消できるということである。これを念頭に黒は 5.cxd3 のあと …c6-c5 突きを急ぐべきでない。まずは …Ne7、…Nf5、…Be7、…O-O そして …Nd7 のように展開するのが良い。そのあと初めて(その間に白が何をしていたかを考慮して)…c6-c5 と突くか、それとも …f7-f6 のような別の作戦の方がもっと適切かを決めるべきである。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(014)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

5…e6

 黒はキング翼を展開する用意をした。これは大局観によるポーン捨ての 6.e6! の防ぎにもなっている。この手は例えば 5…Qb6 への強力な応手となる。6.e6 の着意はもし黒が提供されたポーンを 6…fxe6 で受諾すれば(実際ほかに良い手もないが)、ビショップを展開するのが困難になり、その間に白は Nf3、O-O、Re1 から Ng5 のような手ですばやく攻撃態勢を整えすぐにポーンを取り返して優勢になるということである。

6.Nc3

 代わりに 6.Nf3 なら黒にとって不満のない一つの応手は 6…Qa5+ から 7…Qa6 で、本譜と同様の局面になる。

6…Qb6!

 クイーンをこんなに早く出すのは相手の小駒によって攻撃目標とされることがあるので賢明でないことが多い。しかしこの局面では黒にはクイーンをこんなに早く出す具体的な理由がある。黒の次の手ですべてが明かされる。

7.Nge2

 7.Nf3 ならやはり 7…Qa6! が良い応手となる。本譜の手で白は 8.O-O のあと Ng3、f2-f4 から f4-f5 突きのような手でキング翼攻撃に取り掛かることを期待している。しかし黒は白の作戦に横槍を入れることができる。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(015)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

7…Qa6!

 ここで黒クイーンの早出の意味が分かる。白は布局からの何の優勢もほとんど望めなくなるクイーン同士の交換を許すか、黒クイーンに大切なa6-f1の斜筋の揺るぎない支配を与えなければならない。

 7…Qa6 が唯一の好手ではない。7…c5 も黒にとって大いに満足できる手で、本章末の実戦例に詳細な解説がある。

8.Nf4

 8.Qxa6? Nxa6 は黒のクイーン翼ナイトの展開を手助けするだけである。例えば 8.Qh3 でクイーン同士の交換を避けるのは、黒の方が …Ne7 のあと …Nf5、…Be7、…O-O そして …c6-c5 で少し有望になる。

8…Qxd3 9.Nxd3

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(016)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

 クイーン同士の交換で引き分けの可能性が少し増したが、局面は戦う余地がまだまだいっぱいある。

 ここで黒は …Ne7、…Nf5、…Be7、…O-O、…Nd7 そして …Rac8 のような手で展開を完了してから …c6-c5 突きでクイーン翼で行動を開始するのが良い。

 白は Bd2 から O-O のような手で展開を完了し、それから f2-f4-f5 と突いていってキング翼で活発な作戦を開始すべきである。可能性は互角である。言えることは実戦ではうまく指した方が勝つだろうということだけである。

(この章続く)

2014年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(017)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例
白 A.ニムゾビッチ
黒 J.カパブランカ
ニューヨーク、1927年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Bd3 Bxd3 5.Qxd3 e6 6.Nc3 Qb6 7.Nge2 c5

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(018)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

 ここまで既出の主手順を追ってきた。ここでカパブランカは 7…Qa6 の代わりに 7…c5 という別の手を指した。この二つの手は同じくらい良い手だが、7…c5 の方がクイーンの交換を申し出ない分意欲的である。黒の意図は自分のcポーンを白のdポーンと交換することで、白はこれを防げない。ポーン同士の交換は二つの点で黒の助けになる。(1)e5まで進んだ白ポーンの支えを突き崩す。このポーンはもうd4のポーンによって守られなくなるので、白はたぶん代わりにfポーンで守らなければならなくなる。しかし f2-f4 突きには白にとってキング翼にキャッスリングしたあと少しキングが薄くなるという欠点がある。(2)黒は半素通しc列が使えるようになる(c2に白ポーンがあるのでc列は黒にとってだけ素通しである)。これは黒のルークが戦闘に参加するのに役立つ通り道になる。

 ポーン同士の交換は白にとっても二つの点で役に立つ。(1)強力なd4の地点が白駒のために手に入る。この地点が強力である理由は、どの黒ポーンによってももう攻撃されることがないからである。(2)白も半素通しd列が使えるようになる。ただし黒が5枡(c8-c4)なのに対し白は4枡(d1-d4)しか使えないので、c列ほど有効ではない。

 得失はほぼ相半ばするので 7…c5 のあとはいい勝負である。しかし本局では黒の方が可能性を生かし勝利を収めた。

8.dxc5 Bxc5 9.O-O

 この手は 9…Bxf2+ の狙いに対処した。9.Qg3? は 9…Ne7! が 10…Nf5 で白クイーンをいじめる狙いを持つので劣った手である。9.Qg3 Ne7 のあと 10.Qxg7? は黒ルークに 10…Rg8 11.Qxh7 Rxg2 で強引に暴れられる。

 もし白がfポーンを突くことによって(9.f4?)守ると、黒のクイーンとビショップがg1に利いているのでキャッスリングが困難になり、クイーン翼にキャッスリングするのは黒ルークが直射しているc列にキングが置かれることになる。

9…Ne7 10.Na4?

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(019)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

 11.b4 で黒ビショップの捕獲を狙う 10.a3! の方が良い手だった。黒がこの狙いを 10…a5 で迎え撃てば、白駒が強力なb5の地点を利用できる。

10…Qc6 11.Nxc5 Qxc5 12.Be3 Qc7 13.f4

 7…c5 での解説で触れたようにこの手はe5のポーンを守るために必要である。もし白が 13.Bd4 でこのポーンを守ろうとすると、黒は …Nc6 と …Ng6 でさらに攻撃することができる。

13…Nf5 14.c3?

 ここは 14.Rac1 で次に 15.c4 と突きこのcポーンを黒のdポーンと交換する意図の方が良かった。二つの半素通し列(c列とd列)は完全に素通し列になり、いい勝負になる。

14…Nc6 15.Rad1 g6!

 この手は巧妙な手待ちなっている。明らかな 15…O-O の代わりに黒は戦略的な罠を仕掛けた。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(020)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

16.g4?

 そして白はその罠にはまった。白は黒ナイトをf5の強力な拠点からどかしたいという誘惑に屈した。しかしその代価は払えないほど高かった。キングの前のポーンを突くのはいつも危険である。相手がまだキャッスリングしていないときは特にそうである。というのは相手は必要ならば逆翼にキャッスリングすることによって自分のキングの危険を避けることができるからである。

16…Nxe3 17.Qxe3 h5! 18.g5

 白は困った。18.gxh5 と取れば 18…Rxh5 のあと 19…O-O-O! から …Rdh8 とされ、18.h3 なら 18…hxg4 19.hxg4 O-O-O! のあと …Rh5 から …Rdh8 とされ、どちらも黒が白キングに対してh列で危険な攻撃を仕掛けることができ、自分のキングはクイーン翼に引っ込んで安全である。

 白はキング翼のポーンをせき止めるというましな選択をした。しかしここで黒はまったく安全なキング翼へのキャッスリングをすることができる。これに対して白キングは判断誤りのポーン突きのせいでかなり風通しのよい城にいる。

18…O-O 19.Nd4 Qb6 20.Rf2 Rfc8 21.a3 Rc7 22.Rd3 Na5 23.Re2 Re8!

 この手は白の狙いの 24.f5 exf5(24…gxf5 なら 25.Qh3 から 26.Qxh5)25.e6 という危険な攻撃に備えたものである。本譜の手に対しても 24.f5 exf5 25.e6 とくるなら 25…fxe6 と取ることができ、26.Nxe6? には 26…Rxe6! で白の駒損になる。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(021)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

24.Kg2 Nc6 25.Red2 Rec8 26.Re2 Ne7 27.Red2 Rc4!

 自陣を改善できない白が足踏みを余儀なくされている間に、黒は半素通しc列をうまく利用することにより戦略的な優位を着々と固めてきた。

28.Qh3 Kg7 29.Rf2 a5 30.Re2 Nf5!

 白のd4のナイトは防御の要になっている。そこで黒は自分のナイトと交換することによりそれをなくすつもりである。

31.Nxf5+ gxf5 32.Qf3

 32.Qxh5 と取ると 32…Rh8 33.Qf3 Rh4 で白の重要なf4のポーンが落ちる。そのポーンがなくなるとe5とg5の白ポーンが致命的にむき出しになる。

32…Kg6 33.Red2 Re4!

 白のd4の防御のナイトがなくなったので、黒はさらに白陣深く侵入することができる。

34.Rd4 Rcc4 35.Qf2 Qb5 36.Kg3 Rcxd4 37.cxd4 Qc4

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(022)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

 黒クイーンが襲撃に加わった。

38.Kg2 b5 39.Kg1 b4 40.axb4 axb4 41.Kg2 Qc1 42.Kg3 Qh1 43.Rd3 Re1 44.Rf3 Rd1 45.b3 Rc1!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(023)

第2章 突き越し戦法 レイモンド・キーン(続き)

実戦例(続き)

 黒には直接の狙いが何もないけれども、白の指す手はどれも自分の陣形を致命的に悪くする。しかしそれでも白は指さなければならない!この不快な必要性を表わす通常のチェス用語はドイツ語のツークツバングである。

46.Re3

 ほかに適当な手はない。例えば 46.Kh3 なら 46…Rc2! 47.Qxc2 Qxf3+ 48.Kh4 Qg4# までである。

46…Rf1 白投了

 以下の変化から投了の理由が分かる。

 1)47.Qg2 は 47…Rg1 でクイーンが取られる。

 2)47.Qe2(またはd2、c2、b2それにa2でも)は 47…Qg1+ 48.Qg2(48.Kh3 でも 48.Kh4 でも 48…Qg4#[訳注 e2に白クイーンがいるので 48…Qg4+ では詰みになりませんが、 48.Kh3 には 48…Rf2、48.Kh4 には 48…Rxf4+ で黒の勝ちです])48…Qxe3+ でルークが取られる。

 3)ほかの手は単に 47…Rxf2 でクイーンが取られる。

(この章終わり)

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カロカン防御の指し方(024)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(025)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 中央での交換は黒がカロカン防御で目指す対等な中原を実現させるように見える。実際のところ純粋な数学的原理からすると、白の非常に重要なeポーンと黒の価値の劣るcポーンが交換になるのでこの交換は黒が有利であると言うことができる。

 それなら白はこの交換をすることによって試合に負けようとしているのだろうか。もちろんそんなことはあり得ない。チェスでは局面の動的な特質が純粋に静的な特質よりも重要なことがよくある。一つには半素通しe列での白の可能性の方が半素通しc列での黒の可能性より価値があるということがある。別の要因は-こちらの方が重要なのだが-手番は白が握っている。すなわち白は手で先行するので、通常の白の先着の優位を保持することができる。中央の一時的な安定は白の作戦の見通しの妨げにならない。

4.Bd3!

 これが交換戦法の断然正確な指し方で、優勢を保つ唯一の手段である。ビショップは中央の活動的な地点に展開され、黒のキング翼をにらむと同時に、黒のクイーン翼ビショップからf5の地点を奪って黒がこのビショップを役に立つ地点に展開するのを面倒にさせる。ありきたりの手は無害である。

 1)4.Nc3 Bf5! 5.Nf3 Nc6 6.Bb5 e6 7.Ne5 Qc7 白には圧力を増す手段がないので見通しは互角である。

 2)4.c3 Bf5! 5.Bf4 Nf6 6.Nf3 Nc6 7.Qb3 Qc8 8.Nbd2 e6 9.Be2 Be7 お互いのビショップが対称に展開されていて、互角の展望である。

 本譜の手に代わる良い手は、黒の中央にすぐ攻撃を仕掛ける 4.c4! である。これはパノフ攻撃で、第4章で詳しく取り上げる。

4…Nc6

 このナイトを中央の好所に展開しながら白のdポーンを当たりにするのは、黒の最も理にかなった作戦である。しかし実戦ではこのナイトが展開される手順はたいして問題でない。4…Nf6 も同等に良い手である。

5.c3!

 この手が最も正確である。5.Nf3 は黒に先手でクイーン翼ビショップを 5…Bg4 と展開される。

5…Nf6

 このナイトをすぐに最良の地点に展開するのは欠点がなく、延期すべきでない。ほかの手も考えられるが本筋でない。

 1)5…e6?! は不必要にクイーン翼ビショップを閉じ込め、見返りは何もない。白は 6.Bf4 と応じ、黒が 6…Bd6 と指すかどうかにかかわらずビショップの働きで優位に立つ。

 2)5…e5?! は 6.dxe5 Nxe5 7.Qe2 Qe7 8.Bb5+! で黒に孤立dポーンが残るがその代償は何もない。

 3)5…g6 は通常は 6…g6 の局面に移行するので、独立して扱う意味はない。黒の6手目を参照すること。

 4)5…Qc7 は白の 6.Bf4 を妨げる目的だが、1手遅らせるだけである。6.Ne2 e6 7.Bf4 Bd6 8.Bxd6 Qxd6 9.Nd2! Nf6 10.Nf3 O-O 11.O-O となって、白は明らかにビショップがより活動的で展望に優る。

6.Bf4!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(026)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 この戦型における白の最初の目標は自分のビショップを最も働きのある地点に展開し、黒が同じことをするのを妨げることである。だからこの手が最善である。f4のビショップは活動的で、重要なe5の地点に利き、黒のキング翼ビショップが好所のd6の地点に来るのを思いとどまらせる。

 積極的に見える 6.Bg5 はそれほど良くない。黒のd5の地点が安泰なので黒のキング翼ナイトに対する攻撃は的外れで、このビショップの長期的な見通しも不確かである。黒は 6…Bg4 7.Qb3 Qd7 8.Ne2 e6 9.Ng3 Nh5! でほぼ互角の形勢にできる。

6…Bg4

 黒は棋理に合った二つの作戦を選択できる。すなわちクイーン翼ビショップを先に展開することができるし(本譜の手)、6…g6 から 7…Bg7 でキング翼ビショップを先に展開することもできる。ほかの二つの良さそうな手は戦略的に劣る。

 1)6…e6?! はやはりクイーン翼ビショップを不必要に閉じ込め、普通に 7.Nf3 Bd6 8.Bxd6 Qxd6 9.O-O で白が楽に良くなる。

 2)一見活動的な 6…Qb6?! は 7.Qb3! Qxb3 8.axb3 となって、白が活動的なビショップとa列での圧力により収局で明白に有利である。

 6…g6 は本筋の手だが 7.Nd2 Bg7 8.Ngf3 O-O 9.O-O となって、白がe5の地点を支配しビショップの働きに優るので(主手順のように)少し優勢である。

7.Qb3!

 良い手はこの手しかない。白は黒の6手目によって生じたb7の弱点にすぐにつけ込むようにしなければならない。というのはそうしないと主導権を維持する望みがはかなく消えるからである。7.Nf3 Qb6! でも 7.Ne2 e6 でも黒には障害が何もない。

7…Qc8

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(027)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 黒はbポーンを守らなければならないがこの手が本手である。7…Qd7 の方が本筋のように思われるが、欠点があって白がいずれ Ne5 と指すと黒クイーンにも当たりとなって先手になる。例えば 7…Qd7 8.Nd2! e6 9.Ngf3 となったとき、黒が 9…Bxf3 10.Nxf3 Nh5 と指しても 9…a6 10.O-O Bh5 と指しても 11.Ne5! で白が指しやすい局勢のために楽に優勢になる。

 黒が本譜の手のあとよりももっと難解な局面にしたければ、7…Na5 で白クイーンをいじめることを考えてみてもよいかもしれない。もっともこれは 7…Qc8 よりも危なっかしい手である。7…Na5 のあとは次のように面白い戦いになる。8.Qa4+! これは実質的に黒ビショップを 8…Bd7 で「反展開」させることになる。なぜなら 8…Nc6?! は自ら不快な釘付けにかかり、白クイーンが働きの良いa4の地点に留まることができるからである。8…Bd7 のあと白は 9.Qc2! と指し、白クイーンの捌きがもたらしたものを評価することはたやすい。つまり白クイーンはc2の好所にいるのに、黒のクイーン翼ビショップとクイーン翼ナイトは共にさえない地点に取り残されている。もちろん黒はキング翼ビショップをどうにかして展開しなければならないが、どんな手段を用いようと白の方が有望であることが保証される。

 7…Na5 8.Qa4+ Bd7 9.Qc2 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(028)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 7…Na5 8.Qa4+ Bd7 9.Qc2 の局面

 1)9…e6 10.Nf3 Qb6 11.a4! Rc8 12.Nbd2 Nc6 13.Qb1 この手順は参考棋譜1でもっと詳しく分析する。

 2)9…a6 10.Nf3 b5 11.Nbd2 g6 12.O-O Bg7 13.Rfe1 O-O この局面は白がビショップの働きに優り、e5の地点を支配し、e列で展望があり、クイーン翼で黒ポーンが早く突かれているのでたぶんその方面でさえ可能性がある。

8.Nd2

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(029)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 白はキング翼ナイトを通常のf3の地点に展開したいのだが、すぐに 8.Nf3? と指すと 8…Bxf3 でキング翼のポーンの形を破壊される。本譜の手は Ngf3 を無理なく準備している。

8…e6

 クイーン翼ビショップが世に出たのでこの手がそれを閉じ込めることがなく、黒はキング翼ビショップを正常に展開することができる。

9.Ngf3

 白はhポーンがh2よりもh3にある方が役に立つように思われる。つまりキング翼ビショップが黒の …Nh5 に対し退避個所(h2)を得ることになるし、h3ポーンがg4の地点に利く。白の陣形だけを考えれば 9.h3 は良い手である。しかし黒のビショップはg4よりもh5にいる方がずっと良い。h5なら白がいつか Ne5 と指しても当たりにならないし、h5からg6に行って白の良く利いているd3のビショップを無力にすることができる。だから 9.h3 Bh5 という手を入れるのは白にとって得にならない。9.h3 は白陣を改善するけれども、9…Bh5 は黒陣をはるかに改善するのである。

9…Be7

 キング翼の駒の展開はこれで完了である。

10.O-O

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(030)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

 あわてる必要はない!展開が完了するまで自制するのはたいてい賢明な策である。だから私にはキャッスリングが最も本筋の手のように思える。しかし我慢できない人たちにはすぐに 10.Ne5 Nxe5 11.Bxe5 という指し方もある。白の方が駒の働きが良いので少し優勢である。

10…O-O

 やはり一般原則としては私はこのキャッスリングが好きである。もっとも …Bg6 の準備の 10…Bh5 も良い手である。そのあと白はまた 11.Rae1 と展開することもできるし 11.Ne5 と指すこともでき、どちらも少し有望である。

11.Ne5

 白は 11.Qc2 または 11.Rae1 と準備してからこの手を指すことができる。しかしすぐに積極的な手を指さないまともな理由はない。

 これから先は白は一般にキング翼での攻撃を策することにより、少し活動しやすい陣形の活用に努めていく。黒はキング翼で適切な防御策を立てながら、クイーン翼での反撃策を見つけなければならないが、そのためには半素通しc列が特に役に立つ。具体的な可能性については参考になる実戦例2でもっと詳しく解説する。

(この章続く)

2014年01月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(031)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1
白 ボビー・フィッシャー
黒 ティグラン・ペトロシアン
ベオグラード、1970年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.Bd3! Nc6 5.c3 Nf6 6.Bf4 Bg4 7.Qb3 Na5 8.Qa4+ Bd7 9.Qc2 e6 10.Nf3 Qb6

(この章続く)

2014年01月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(032)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

 黒の狙いは白枡ビショップ同士を交換することで、この着想は少なくとも1926年ホパトコング湖でのマローツィ対カパブランカ戦以来知られていて、11.Nbd2 Bb5! で互角の形勢になった[訳注 実際は 11.O-O Bb5 12.Nbd2 Bxd3 となっている棋譜が多いです]。この戦型における黒の主要な問題は、白枡ビショップが自分の白枡にあるポーンによって動きを邪魔されていることである。だから白のはるかに活動的な白枡ビショップと交換することは黒の得になる。フィッシャーが正しい戦略を案出したのは驚くに当たらない。

11.a4!!

 黒の不活発なクイーン翼ビショップと白の活動的なキング翼ビショップとの交換を防ぐことは、決定的に重要である。b3の地点の弱体化は根本的に重要ではなく、見栄えの程度である。11…Qb3 12.Qe2 Bxa4?? は 13.Rxa4! Qxa4 14.Bb5+ があるので成立しない。11…Nb3 も 12.Ra2 で白に何の問題もない。だからペトロシアンは展開を続けた。

11…Rc8 12.Nbd2 Nc6 13.Qb1!

 黒は 13…Nb4 を狙っていた。本譜の手はそれを防ぎ、クイーンをh7の地点への攻撃に向けたままにしている。

13…Nh5?!

 これはナイトを遊ばせるだけである。13…g6 のあと 14…Bg7 から 15…O-O と指す方が堅実な作戦だった。

14.Be3 h6

 白のd3のビショップを鈍らせようという 14…f5? は、15.g4! fxg4 16.Ng5 で白が黒のキング翼をぐちゃぐちゃにしてその攻撃が止まらない。

15.Ne5! Nf6 16.h3 Bd6 17.O-O

 白は展開が完了し活動的な攻撃態勢になっている。注目すべきはe5のナイトの目立つ拠点で、黒は戦力損になるのでこのナイトを取ることができない。

(この章続く)

2014年01月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(033)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

17…Kf8?

 黒は 17…O-O 18.f4 の局面が気に入らなかった。しかしいつものことながらキングを中央に置くのははるかに強い攻撃にさらすことになる。

18.f4! Be8

 18…Nxe5? 19.fxe5 Bxe5 で白の釘付けのdポーンにつけ込むのは、中間手の 20.a5! で咎められる。

19.Bf2! Qc7 20.Bh4! Ng8 21.f5!

 ペトロシアンの退却に呼応してフィッシャーは進撃する。ここからの黒の防御は完璧だったが、既に手遅れだった。フィッシャーに対してこのような局面は絶望である。

21…Nxe5 22.dxe5 Bxe5 23.fxe6 Bf6 24.exf7 Bxf7 25.Nf3!

 白はナイトを活動的な位置につけた。これに対して 25…g5 なら 26.Bf2 Kg7 27.Bd4 で、黒のキング翼の空所が破滅の元になる。そこでペトロシアンは素晴らしい想像力でキングを反対側に送ることにした。

25…Bxh4 26.Nxh4 Nf6 27.Ng6+ Bxg6 28.Bxg6 Ke7!?

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(034)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

 キングをf8に置いておくのはキング翼ルークなしで指すことを意味するので気が進まなかった。しかし本譜の手のあと白軍が中央一帯に集結する。

29.Qf5 Kd8 30.Rae1 Qc5+ 31.Kh1 Rf8 32.Qe5! Rc7

 黒はこれからの決定的な筋の開放に対してなすすべがない。しかし 32…Qc7 でも白は 33.Qxd5+! Nxd5 34.Rxf8+ Kd7 35.Rf7+ で勝ちの収局に持っていくこともできるし、33.Rxf6! gxf6 34.Qxd5+ で必殺の攻撃にでることもできる。

33.b4! Qc6 34.c4! dxc4 35.Bf5! Rff7 36.Rd1+

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(035)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例1(続き)

 36…Nd7 は 37.Rfe1! で終わりが近いので、黒の戦力損はやむを得ない。

36…Rfd7 37.Bxd7 Rxd7 38.Qb8+ Ke7 39.Rde1+! 黒投了

 39…Kf7 は 40.Qe8# で詰んでいる。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(036)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2
白 W.ブラウン
黒 B.ラルセン
サンアントニオ、1972年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.Bd3! Nc6 5.c3 Nf6 6,Bf4 Bg4 7.Qb3 Qc8 8.Nd2 e6 9.Ngf3 Be7 10.O-O O-O 11.Ne5

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(037)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

 このナイトは黒陣にうるさい圧力をかけている。これに対するまともな手は二つしかなく、(実戦のように)ビショップをh5に引くか、11…Nxe5 と取ってから積極的な 12.dxe5! に 12…Nd7 と引くかである。しかしあとの場合 13.Qc2 とh7を当たりにされその対処が難しい。13…h6 と突くとg4のビショップが取り残されて安全な逃げ場所がなくなる。代わりに 13…g6 は 14.h3 Bf5 15.Bxf5 gxf5 16.Bh6 Rd8 17.Nf3 となって、白が黒の弱体化したキング翼に攻撃する見通しができ、黒には何もない。

11…Bh5

 この手は 11…Nxe5 よりもずっと堅実だが、それでも白は少し主導権を保持している。

12.Qc2! Bg6

 ほとんどこの1手である。ほかの手では黒は圧力をかわしきれない。

13.Nxg6! hxg6 14.Nf3!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(038)

第3章 交換戦法 エドマー・メドニス(続き)

実戦例2(続き)

 黒は最初の雨をしのいだ。しかしはるかかなたの地平線には黒雲が見える。それは二重ポーンで、可能な限り整った形ではあるけれども、白がキング翼で、特にf列とh列で素通し列を作るのが容易になっている。素通し列ができれば白の双ビショップが非常に危険な存在になってくる。黒の方はクイーン翼で手を作らなければならないが、これはそちらの白陣が非常にきれいな形なので言うは易く行なうは難しである。全体的には白の優勢は理論上少しにすぎないが、実戦では白陣は非常に有利である。キング翼で攻撃が非常に有望で、クイーン翼ではすぐの危険性は何もない。

14…Nh5 15.Be3 Qc7 16.g3!

 ナイトを自由にする 16…Nf4 は防がなければならない。

16…Rac8?!

 この手は 17…Nb4 を狙うことにより、白クイーンをそれの本来行きたかったキング翼に行かせるだけである。ブラウンはもっと理にかなった 16…Rab8! で、それの示唆する …b7-b5、…a7-a5 から …b5-b4 の反撃の用意をすることを推奨している。

17.Qe2! a6 18.Rae1 Rfe8 19.Bc1!

 この手はクイーン翼を守るとともにe列を空けてすぐに仕掛ける手を見ている。その狙いは 20.Ne5! で、20…Nxe5? なら 21.dxe5! で黒のキング翼ナイトがh5で立ち往生する。だから黒はこのナイトをすぐに引き戻す。

19…Nf6 20.Ng5

 20.Ne5 も良い手である。

20…Bd6 21.f4! Nd7?!

 黒のキング翼はこれから先も同じくらい堅固である。だから 21…b5 と突いてクイーン翼で動き始める時機だった。

22.Nf3

 ナイトをe5に移すのは確かに悪い考えではないが、局面の精神にもっと沿っているのは 22.h4! から強力な 23.h5 を狙うことだった。もし 23…Nf6 なら 24.Kg2! Ne7 25.g4! で、Qf3、Rh1 そして h4-h5 でh列で攻撃する用意ができる。

22…Nf8 23.Ne5 Ne7?!

 ここでは 23…b5 で反撃することが必要だった。

24.Kg2 f6?

 黒のキング翼はそもそもあまり堅くなかった。やってはいけないことはこの新たに陣形を弱めることだった。最善手は 24…b5 である。

25.Nf3 Rb8 26.h4!

 主眼の決定的な攻撃が始まる。

26…b5 27.a3 Nc6 28.Qc2 Ne7 29.Qe2 Qc6 30.Rh1! a5 31.h5! b4 32.cxb4 axb4 33.a4!

 この犠牲は必要でないかもしれないが、役に立つ投資である。クイーン翼での黒の進攻を遅らせ、キング翼で白が好きなように動ける。

33…Qxa4 34.Nh4! gxh5 35.Qxh5 Rfc8 36.f5! Qb3

 36…Qe8 には 37.Ng6 と来られる。

37.fxe6 Nxe6 38.Qh7+

 白は時間に追われて 38.Rxe6 からの明快な勝ちを見つけることができなかった[訳注 実際は 38…Qxd3 で形勢逆転です]。

38…Kf7 39.Qh5+

 この手に対して 39…Kg8 なら黒の37手目の局面になるが、白はやはり 40.Rxe6 Qxd3 41.Rxd6 Rc2+ 42.Kh3 という平凡な手で勝つ[訳注 途中 41…Rxc1 42.Rxc1 Qd2+ 43.Kh3 Qxc1 で黒が優勢です]。

39…Kf8 40.Ng6+ Ke8 41.Rxe6 Kd7 42.Rxe7+! Bxe7 43.Qf5+ 黒投了

(この章終わり)

2014年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(039)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(040)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 パノフ攻撃(4.c4)の当面の戦略の着想は黒の中央を攻撃することである。4段目に白ポーンが2個あるのに対し黒は1個なので、中央での影響力は白の方が少し優っている。白はこれを利用して少しずつ黒のキング翼に対して攻撃を強化していくことができるし、早く c4-c5 と突くことによりクイーン翼で3対2のポーンの多数派をこしらえることもできる。後の場合白の最初の目標は、クイーン翼で大きな広さの優位を得ることである。それはいずれ健全なパスポーンの生成につながる。

 黒の正確な作戦はもちろん白の選ぶやり方によって決まってくる。早い c4-c5 突きのあと黒は …b7-b6 と …a7-a5 で白の橋頭堡に挑みたいところである。そして中央で反撃も試みることになる。もし白が中央のポーンをそのままにしておくかd5で交換すれば、黒は白の孤立ポーンに対して反撃しようとする。この場合d5の地点の支配は非常に重要になる。

4…Nf6

 ナイトを展開しながらd5のポーンを守るのは戦略的に申し分なく、これから少しの間黒のすべての選択肢を保ち続ける。4…e6 や 4…dxc4 のようなほかの理にかなった4手目は長い目で見ればうまくいくかもしれないが、この時点では本譜の手よりも少し正確さで劣っている。

5.Nc3

 新たに駒を展開しながらd5に圧力をかけるのは、明らかに白の最も理にかなった手法である。他の手は本筋とは言えない。5.cxd5 は 5…Nxd5! で黒が既に白の孤立dポーンの前に良いせき止め駒を据えることになる。5.Nf3 は本譜の手より特に良いところがなく、d5の地点に圧力がかかっていないので黒に都合の良い状況で 5…g6 と指す選択肢を与える。

5…e6!

 これが黒の断然本筋の指し方である。急所のd5の地点はこれで十分に守られているので、黒は …Be7 から …O-O で容易にキング翼の展開を完了することができる。

 これがおとなしすぎるならば、ほかの二つの重要な変化を考えてもよい。しかしほかの変化は主手順よりもはるかに多量の技術的そして戦術的習熟を必要とし、黒も突然不利な局面に陥る危険をおかすということを知っておいた方が良い。

 1)黒が 5…g6 でキング翼ビショップをフィアンケットする。

 5…g6 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(041)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 5…g6 の局面

 フィアンケットによる展開でキング翼ビショップが絶好の斜筋をにらみ、中央に影響力を発揮することができ、キング翼を攻撃にもっと抵抗力があるようにする。それでも明らかで大きな欠点もある。それはこの手が重要なd5の地点(そしてポーン!)を無視していることで、白は次のように理にかなった手段で優勢になることができる。6.cxd5 Bg7(黒は一般にキャッスリングするまではdポーンを取り返すのを控えるように努める。6…Nxd5 と取ると 7.Qb3! が強手で、7…Nxc3 8.Bc4! のあと黒は 8…e6 と突かされ自分のクイーン翼ビショップを閉じ込め黒枡を弱めることになる。黒が 7…Nxc3 の代わりに 7…Nb6 と引けば、8.d5! 突きで白が中央を広げ明らかに優勢になる。典型的な手順は 8…Bg7 9.Be3 O-O 10.Rd1 である)7.Bc4! O-O 8.Nge2!(d5の白ポーンが黒の円滑な展開を妨げているので、白はこのポーンにしがみつくようにするべきである)8…Nbd7 9.Bb3 Nb6 10.Nf4 Bf5 11.a4! a5 12.O-O 布局の理論家たちはここで白の優勢はわずかであると言うのが普通である。たぶん彼らの言うことは、理論上は正しい。実戦では状況が異なる。白はdポーンが二重になっているけれどもポーン得はポーン得である。さらには(d5の)得しているポーンが黒陣に非常に不快な圧力をかけている。白にはポーン得と広い陣地という二つの有利さがあるのに、黒には代償が全然ない。

 2)黒が 5…Nc6 で白の中央を攻撃する。

 5…Nc6 の局面

(この章続く)

2014年02月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(042)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 5…Nc6 の局面

 ここで白が型にはまった 6.Nf3 を指せば、黒の手法は正当化される。黒は白ナイトを 6…Bg4! で釘付けにしてから 7…e6 で完全に互角の戦いにする。最も重要な手は次の非常に激しい手順である。7.cxd5 Nxd5 8.Qb3!? Bxf3 9.gxf3 e6!(9…Nxd4?? は 10.Bb5+ で駒損になる)10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ Nxb5 12.Qc6+!(黒キングを動かせる)12…Ke7 13.Qxb5 Qd7! 14.Nxd5+ Qxd5 白キングも黒キングとちょうど同じくらい不安定なので、白は 15.Qxd5 exd5 とクイーンを交換するしかない。数限りない実戦経験からこの収局はいい勝負であることが示されている。

 優勢を目指すには白は 6.Bg5! と攻撃しなければならない。その要点は 6…e6 7.cxd5 のあと黒が 7…exd5 と取って自分も白に匹敵する孤立ポーンを作らなければならないということである。それでも 6…e6 は黒の最も本筋の作戦である。白は少し活動的な局勢によりほんのわずか優勢にすぎない。

 5…Nc6 6.Bg5 のあと反撃を目指すほかの手はどれも白にもっと優勢をもたらす。

 a)6…Bg4?! 7.Be2 Bxe2 8.Ngxe2 dxc4 9.d5! Ne5 10.O-O 白の展開の優位は非常に大きい。

 b)6…dxc4?! 7.Bxc4 Qxd4 8.Qxd4! Nxd4 9.O-O-O e5 10.f4! クイーン交換にもかかわらず白は展開で大差をつけていて強力な攻撃ができる。

 c)6…Qb6?! 7.cxd5 Nxd4 8.Be3! e5 9.dxe6e.p. Bc5 10.exf7+ Ke7 11.Bc4 黒にはポーン損の代償が何もない。

 d)6…Qa5 7.Bxf6 exf6 8.cxd5 Bb4 9.Qd2 Bxc3 10.bxc3 Qxd5 白は 11.Nf3 または 11.Ne2 O-O 12.Nf4 でポーンの形に優るため優勢である。

6.Nf3!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(043)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 これが最も融通性があり最善手である。洗練された戦略的な罠さえ仕掛けている。

 もちろんすぐに 6.Bg5 と指すこともできるが白の選択肢を減らし、実際には黒が最善手の 6…Be7 を見つけるのを手助けしている。

6…Be7!

 黒は早くキャッスリングする用意をしなければならないので、このビショップを展開する必要がある。そしてここが最良の地点である。

 この局面から生じる戦型のほとんどで黒のクイーン翼ナイトは明らかにc6が最善だけれども、ここでの最も正確な作戦はまずキング翼の展開を完了することである。すぐに 6…Nc6?! と指すのはちょっと時期尚早である。というのは白が c4-c5 突きの陣形を選択しクイーン翼でのポーンの進攻をもくろむと、白の b2-b4-b5 突きで黒のクイーン翼ナイトがまた動くことを余儀なくされて手損するかもしれないからである。6…Nc6?! のあとの主眼の指し方は 7.c5! Be7 8.Bb5 O-O 9.O-O Bd7 10.a3! である。これで白は b2-b4 と突く用意ができていて、そのあとはビショップをd3に戻して適時に b4-b5 と突く作戦をとるか、c6で取って黒がビショップで取り返せば b4-b5 と突くことになる。これらの戦型で白は少しだがしっかりした主導権を得る。

7.Bg5

 白には7手目で三通りの指し方があり、客観的にはどれも同等である。本譜の手は中央の争点を維持し、d5に対する白の圧力を間接的に増している。ほかの二つの良い変化は次のとおりである。

 1)7.c5 と突いてクイーン翼で進攻する。

 7.c5 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(044)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.c5 の局面

 黒は白の来たるべきクイーン翼の進攻を迎え撃つために迅速に動かなければならない。しかしまず自分のキングを安全にし邪魔にならないようにしなければならない。7…O-O ここでの本手は 8.Bd3 である(白は展開を続けなければならない。8.b4?! は 8…Ne4! 9.Qc2 Nc6! 10.a3 e5! で黒の中央での主導権が強いので時期尚早である)。8…b6!(最初の挑戦)9.b4 a5!(2番目の挑戦!10.a3? と指すわけにはいかないので、白は反撃に出るかさもなくば自分のクイーン翼を壊滅される)10.Na4! Nfd7!(b6の地点は守らなければならない。クイーン翼ナイトをb8に置いておけば白の c5-c6 突きを防げる)この殴り合いの局面は両者が最善を尽くせば(言うは易く行なうは難し!)いい勝負である。一つの想定手順は 11.Qc2 Nc6! 12.b5 Nb4 13.Bxh7+ Kh8 14.Qb1 bxc5 で、ねじり合いが続く。

 2)7.cxd5 で中央をすっきりさせる。

 7.cxd5 の局面

(この章続く)

2014年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(045)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.cxd5 の局面

 白はいつ …dxc4 と取られるかもしれないことを気にする必要がないように自分から交換した。これで駒の展開を完了してから黒のキング翼方面に目を向けることができる。黒にはポーンの取り返し方が二通りある。

 a)7…exd5 は孤立dポーンも含めて中央での互角を確立する。白は 8.Bb5+ Bd7 9.Bxd7+(9.Qb3 も良い手である)9…Nbxd7 10.O-O O-O 11.Qb3 Nb6 12.Bg5 Re8 13.Rfe1 で、少し主導権があり優勢である。

 b)7…Nxd5 の方が普通の取り返し方である。黒は中央で少し劣勢になることを受け入れるが(黒のe6のポーンと白のd4のポーンを比較すると白陣の方が少し広い)、ポーンの形に傷がなくて白の孤立dポーンに対して策をめぐらすことができる。

 7…Nxd5 の局面はチェスの定跡にとって非常に重要である。カロカン防御だけでなく、非常に人気のある布局システムのクイーン翼ギャンビット拒否準タラシュ防御でもよく生じることがある。その戦法の通常の手順は 1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 cxd4 7.exd4 Be7 で、ぴったり同じ局面である!

 布局定跡のほとんどの本はこの局面を準タラシュ防御として分析している。本書ではここで分析する。

 7.cxd5 Nxd5 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(046)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 7.cxd5 Nxd5 の局面

 白の次の段取りはキング翼ビショップのために適切な場所を見つけることにするのが良い。理にかなった可能性は次の二つである。

 ⅰ)8.Bc4 が活動的に見えるが、キング翼に対する作戦には実際には良い位置ではなく黒は普通の手順でかなり容易に互角にできる。一つの良い指し方の例は 8…Nc6 9.O-O O-O 10.Re1 Bf6! でビショップを積極的にdポーンへの攻撃に加えることである。11.Ne4 のあと黒は 11…b6! 12.a3 Bb7 でもう一つのビショップを展開し、例えば 13.Qd3 Rc8 14.Nfg5 Bxg5!(15.Nxg5 なら 15…Nf6、15.Bxg5 なら 15…f6)で完全に満足のいく局面になる。

 ⅱ)8.Bd3 はビショップをすぐに黒のキング翼に向け、白の最も有望な作戦である。そのあと両者の最善の指し手は次のように進むだろう。8…Nc6 9.O-O O-O 10.Re1(半素通しe列のいろいろな地点を支配し、好機が来ればキング翼攻撃に加わる用意をしている)10…Bf6!(効果的な二重の目的の手で、dポーンを当たりにしこのビショップを用いて …g7-g6 から …Bg7 でキング翼を守る用意をしている)11.Be4!(ビショップをもっと働きの良い地点につけて適時にd5のナイトを取る狙い)11…Nce7! 黒陣の要はd5の強力な支配で、そのためこの地点を強化するのは重要である。一般原則として孤立ポーンに対する最も効果的な手法は、すぐにその直前の地点(この場合ならd5)を駒で支配することである。そのようにして孤立ポーンが動きを著しく制限され、固定した標的になる。

 ここで黒が完全に互角になる見通しは非常に明るい。この局面は章末の実戦例でもっと詳細に分析する。

 3)7.Bg5 で展開を続ける。これを主手順にする。

7…O-O!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(047)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 やはりまた最も効率的な作戦は必要性が出てくるまでクイーン翼ナイトを元位置に置いておくことである。7…Nc6?! は 8.Rc1! O-O で前の …Nc6 の変化のように白が 9.c5! で有利になれる。例えば 9…Ne4 なら 10.Bxe7 Qxe7 11.Be2 Nxc3 12.Rxc3 e5 13.Nxe5 Nxe5 14.Re3! となる。

 注意すべきは黒はすぐでも 7…Nc6?! 8.Rc1 と指してからでも …dxc4 と取りたくないということである。そう指すと白のビショップが手損せずにポーンを取り返しながらc4に展開することになる。白に「不要な」手を費やさせるためには、黒は白がキング翼ビショップを動かすまで …dxc4 を遅らせる。

8.Bd3

 白はキング翼の展開を完了するよりない。手待ちの 8.Rc1(8…dxc4 を期待し手得の 9.Bxc4 を指す)には、黒は 8…Ne4! で期待の交換を実現して互角の局面を手に入れる。

 白が 8.c5 と突き越してクイーン翼で何かをしようとすれば、黒はすぐに 8…b6! 9.b4 a5! 10.a3 Ne4! と反撃を開始していい勝負になる。例えば 11.Bxe7 Qxe7 12.Nxe4 dxe4 13.Ne5 Nd7! となれば、この複雑な局面で黒の見通しは白と同じである。つまり展開に優っていて、白のクイーン翼を清算できる見込みがかなりある。

8…dxc4!

 白のビショップはポーンを取り返すためにまた動かなければならないのでこの手はごく当然である。この交換により黒は白が c4-c5 突きでクイーン翼に圧力をかけようとするかもしれない可能性を除去し、さらには白のdポーンを孤立させた。

9.Bxc4

 ポーンの形は 7.cxd5 Nxd5 の変化と同じで、戦略の基準も似ている。白は中央での少しの優位を活用しながら黒のキング翼に圧力をかけようとし、半素通しe列を有効に利用することに努める。黒はdポーンに対し反撃を目指し、重要なd5の地点をしっかり支配すべきである。もし黒がいずれかの戦略領域への警戒をゆるめれば、たやすく困難に陥る。好例には1969年レザンでのウンツィカー対ポマール戦がある。9…b6 10.O-O Ba6?!(d5の地点を見張る 10…Bb7 が正着)11.Bxa6 Nxa6 12.Ne5! Nb4(本来の地点に行こうとし白の Nc6 を防いでいるが、白の活動的な駒がこれをくじく)13.a3! Nbd5 14.Nc6! Qd7 15.Nxe7+ Qxe7 16.Nxd5! exd5 17.Re1 Qd6 18.Bxf6! Qxf6 19.Re5! 白が完全に素通しになったe列を支配しそのため本当の弱点は白のdポーンでなく黒のdポーンなので明らかに優勢である。

9…Nc6!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(048)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 黒はナイトを最もよく働く地点に展開することによりd4に圧力をかけ、白のキング翼ナイトが活動的なe5の地点に進出するのを防いだ。白は再びキング翼での可能性を探し求め、黒はdポーンを押さえd5の地点を支配し続けなければならない。このあとの考えられる手順は次のとおりである。10.O-O a6 11.a4 Bd7(積極策に乗り出す前にすべての小駒を展開することが大切である)12.Re1(キング翼ルークが最もよく働く所は半素通しe列である)12…h6!?(ビショップにどうするつもりか決めさせることにより黒は何も危険をおかさずにキング翼で陣地をわずかに広げる)13.Bf4(重要なe5の地点を見張り続ける)13…Nb4!(クイーン翼ビショップをc6を介して働かせる用意をし、d5の地点に利かせた)14.Qe2(クイーン翼ルークをd1に展開できるようにした)14…Bc6 15.Rad1 Rc8(16…Bxf3 で白ポーンの形を崩す狙いで、17.Qxf3?? なら 17…Rxc4)16.Ne5!(白は黒の絶対的なd5の支配の代償に好所のe5を得ている)

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(049)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

 局面は動的な均衡を保ったままである。黒にはすぐに 16…Nbd5 でせき止めを行なうか 16…Qa5 でクイーンを展開するかの選択肢がある。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(050)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例
白 B.スパスキー
黒 T.ペトロシアン
世界選手権戦、モスクワ、1966年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Be7 7.cxd5

 7.Bd3 なら黒は前述の解説と同様に指し進めるのが良い。すなわち 7…dxc4! 8.Bxc4 O-O 9.O-O Nc6 でいい勝負になる。

7…Nxd5 8.Bd3 Nc6 9.O-O O-O 10.Re1

 ほかの手なら黒は楽である。10.a3 には 10…Bf6! と応じるのが最善で、10.Qe2 には 10…Ncb4 または 10…Ndb4 と応じるのが良い。

10…Bf6!

 この手にはdポーンを攻撃することと …g7-g6 から …Bg7 でキング翼を守る用意をすることの二重の目的があり、互角にする唯一の確かな手段である。ほかの手なら白は少し優勢で確実に攻撃の可能性を期待することができる。一例は 10…Bd7?! 11.a3! Rc8 12.Bc2 Nxc3 13.bxc3 Na5 14.Qd3 g6 15.Bh6 Re8 16.Ne5 Bc6 17.Qg3! である。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(051)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

11.Be4

 しかしここでの 11.a3 は 11…Nxc3! 12.bxc3 b6 で黒がよどみなく展開して互角にできる。本譜の手はビショップをb1-h7の斜筋に保ちながらd5への圧力を増している。

11…Nce7!

 黒の主眼はd5の支配であることを忘れてはいけない!だから 11…Nde7?! は正確さを欠いている。というのは 12.Qd3 Ng6 13.Be3 Qd6 14.Rac1 Rd8 15.Red1! Bd7 と進んだとき 16.d5! で白が局面を開放し優勢になるからである。

12.Qc2

 12.Qd3 や 12.Ne5 でも黒は同じく 12…g6! と指す。

12…g6! 13.Bh6 Bg7

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(052)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

 この手は白に根本的な質問をぶつけている。「ビショップを交換すべきか、それとも引くべきか」

14.Bg5

 白は盤上に駒が多く残っているほど圧力が維持できることを期待した。代わりに 14.Bxg7 Kxg7 は黒キングの囲いがわずかに弱くなる。しかしビショップ同士の交換は白の攻撃力も弱める。続いて 15.Ne5 なら黒は 15…b6 から 16…Bb7 でビショップを展開するし、15.Qb3 なら 15…Nf6! でやはり互角になる。

14…f6!

 世界選手権防衛戦のこの番勝負でペトロシアンは見かけの弱体化と真の弱体化との違いに特に優れた感覚を持っていた。本譜の手は弱体化に見えるけれども、白には実際には黒のeポーンを攻撃する効果的な手段も何もなかった。

15.Bd2 Bd7 16.Qb3 Bc6!

 d5の地点の支配は黒にとってまたも正しい指し手の鍵である。白は黒の「弱い」eポーンに迫る手段が何もないので、黒キングに対する釘付けを利用して自分のクイーン翼ナイトを働かせることにした。

17.Bxd5!? exd5 18.Ne4

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(053)

第4章 パノフ攻撃 エドマー・メドニス(続き)

実戦例(続き)

 白がうまく事を運んでいるように見えるかもしれない。しかし黒の応手で黒陣はすべて問題なく大丈夫であることが明らかになる。

18…Rf7! 19.Nc5 Nf5 20.h3

 白は無理できないことを認めた。ここで黒はキング翼ビショップをもっと働きのある斜筋につけ、白はそれと交換するよりほかにないことを理解し完全に互角の収局に向かう。

20…Bf8! 21.Ne6 Qd7 22.Nxf8 Rfxf8 23.Bb4 Rfe8 24.Rxe8+ Rxe8 25.Re1 Rxe1+ 26.Bxe1 引き分け

 すべてにおいて均衡が保たれ、どちら側にも有利な点がない。

(この章終わり)

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カロカン防御の指し方(054)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3

 時々白は 3.Nd2 と指すことがある。3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 となれば 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 の局面と同じになる。しかし 3.Nd2 とひねった手は現代防御の戦型になる 3.Nc3 g6(本書では取り上げない)を恐れる選手たちに気に入られている。3.Nd2 なら黒は 3…g6 と指す気にならない。というのは 4.Bd3 Bg7 5.c3! と進むとa1-h8の斜筋にポーンの障壁ができ、黒のフィアンケットされたキング翼ビショップが封じ込められることになるからである。

3…dxe4

 これはカロカン熱愛者にとって自動的に指す手である。もっとも代わりに 3…g6 も立派な手で、現代防御に転移する。

 3…dxe4 で黒は重要な中央のe4ポーンを消すことにより白枡で白に挑む目標を達成した。自分のクイーン翼ビショップの斜筋は開けたままなので、f5またはg4の活動的な地点に展開できる。その一方で展開した駒が白より1個少なく、c6のポーンは白の中央のd4ポーンとは比べものにならない。

4.Nxe4

 ナイトがポーンを取り返し、中央のe4の地点から盤全体ににらみを利かせている。

4…Nf6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(055)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 長年最も普通の手は 4,,,Bf5 (第9章)で、4…Nd7(第7、8章)も非常に人気があった。ほとんどのマスターは 4…Nf6 は白に 5.Nxf6+ でfポーンを二重にされるのでうそ手と見なしていた。しかし最近新しい構想が見つけられた。それは黒陣を強固にするもので、今では受け入れられ流行の防御にさえなっている。

 4…Nf6 は黒の可能な4手目のうち最も直接的である。ナイトを好所に展開し、白のナイトを当たりにし、白に黒のポーンを二重にするようにけしかけている。ホレーショウ・カロは19世紀後半に初めて 1…c6 による防御を提唱したとき 4…Nf6 を推奨していた。

5.Nxf6+

 これが断然理にかなった応手である。白は黒がどう取り返そうと黒ポーンが弱体化するということが明らかになってくることに期待をかけている。

 4…Nf6 の評判が全般的に良くなったときに復活してきたのが控え目な 5.Ng3 である。中央に陣取っていたナイトが働きの劣る地点に行くが、黒がクイーン翼ビショップを展開するのをより難しくさせている(…Bf5 と指すわけにはいかないので)。黒の応手は 5…e5?!、5…c5 そして 5…g6!? の三つである。

 5…e5?! は 6.dxe5 Qa5+ 7.c3 Qxe5+ という戦術のひっかけがあるので一見魅力的である。 白のdポーンをなくしほぼ対称のポーン陣形になるので確かに道理がある。しかし白は 6.Nf3! exd4 7.Nxd4 で活動性に優る駒を保持できる。多くの戦型で白ナイトはf5を本拠地にし、それにより白が少しの優勢を保証される。

 もっと本筋の手は 5…c5 である。黒はやはり白のdポーンと交換するが、自分のeポーンを保持して …e7-e6 突きで白ナイトを寄せつけないようにできる。6.Nf3 Nc6 7.Be3(7.dxc5 Qxd1+ 8.Kxd1 は、8…e6 9.Be3 Ng4 で黒がポーンを取り返し白キングが中央で露出しすぎているので白にとって魅力がない)7…cxd4 となれば黒には何も問題がない。

 5.Ng3 c5 6.Nf3 のあと黒にとって楽な別の指し方は 6…e6 7.Bd3 Nc6 8.dxc5 Bxc5 で、両者とも迅速な展開になる。予想手順は 9.O-O O-O 10.a3 b6 11.b4 Be7 12.Bb2 Bb7 で、どの小駒も良い位置につけている。ほぼいい勝負である。

 5…g6!? はまだ試験段階である。5…c5 や 5…e5?! と異なり黒は白のdポーンと交換しようと努めない。代わりに …c6-c5 と …e7-e5 のどちらが適切か決める前に駒を展開する気である。このgポーンは白のクイーン翼ナイトをf5とh5に来させないことにより動きを制限するのに役立っている。時には白はこのナイトをまた働かせるためにe4に戻さなければならないと感じることがある。私は白が次のように単刀直入に指すことにより少し優勢になるかもしれないと考えている。5…g6!? 6.Nf3 Bg7 7.Bc4 O-O 8.O-O(h3 の方が黒のクイーン翼ビショップの利きを制限するので良いかもしれない)8…Bg4 9.c3 しかし黒陣は堅固なので指せることは確かである。

5…exf6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(056)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 この手でタルタコワ戦法になる。5…gxf6 は第6章を参照。

 5…exf6 がカロカン防御の当初の指し方だったけれども、その欠陥がすぐに明らかになって人気がなくなった。1970年代にスウェーデンの若いグランドマスターのウルフ・アンデルソンが復活させ古い手順に新風を吹き込んで好成績をあげた。これがほかの者の研究を刺激し(アンデルソンはついには放棄した)、新しい着想がもっと見つけられた。コルチノイが1978年カルポフとの世界選手権戦でタルタコワ戦法を採用したことにより、かつて毛嫌いされたこの戦法に最高の尊敬が与えられた。

 それではそもそもなぜこの防御が見捨てられたのかの議論から始めよう。5…exf6 のあとは教科書に載っているように異なった力関係のポーンの多数派ができる。クイーン翼では4対3の多数派のため白にパスポーンの可能性がある。慎重にcポーンとdポーンを突き進めることにより白はdポーンをパスポーンにできる。これがまさに多数派ポーンを効果的に使う方法である。収局では多数派ポーンをパスポーンにすることが、新たにクイーンを作る第一段階である。

 しかしタダで何かを得ることはできない!黒もキング翼に自分の多数派ポーンがあるではないか。文字どおりにはそのとおりである。しかし黒の4対3の多数派は白の多数派を危険なものにしているのと同じ働きをしていない。つまりパスポーンを作れないのである。図Aが問題の所在を示している。

 図A 黒はパスポーンが作れない

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(057)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 図A 黒はパスポーンが作れない

 …f6-f5-f4 と突いてきても白は f2-f3 でせき止める。さらに …f7-f5、…g7-g5-g4 そして …h7-h5-h4 と突いてくれば白は h2-h3! で …h4-h3 による突破を防ぐ。白がg4で取るのを拒む限り、黒のf5のポーンは無用の静物である。

 白のdポーンと両者のキングを付け加えれば図Bになる。

 図B 白から指し始めて勝ち

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(058)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 図B 白から指し始めて勝ち

 この局面は白がクイーン翼の多数派ポーンを突き進めて、一連の交換によりクイーン翼の1ポーンだけが残ることにより生じる。このキングとポーンの収局は白のdポーンが「外側パスポーン」になっているので白が勝つ。図Bの局面を盤に並べて、以下の二つの手順の可能性を追ってみれば勉強になるだろう。

 黒がキング翼のポーンを活用しようとすれば次のようになる。1.Kc4 f5 2.Kd4(黒のポーン突きの手が尽きるのをただ待っていれば、黒はキングを動かさなければならなくなる)2…g5 3.Kc4 f4 4.f3 f5 5.Kd4 h5 6.Kc4 g4 7.Kd4 h4 8.h3!(8.Kc4?? は 8…h3 9.gxh3 g3! で黒が勝ってしまう)8…g3 9.Kc4 黒はポーンを突く手が尽きたのでキングを後退させなければならず、白キングが黒ポーンのご馳走にありつくことができて勝ちになる。9…Kd7 10.Kc5 Kc7 11.d6+ Kd7 12.Kd5 Kd8 13.Ke6 Ke8 14.Kxf5 Kd7 15.Kxf4 Kxd6 16.Kg4

 また、危険を減らせるかもしれないとして黒がポーンを元の位置に置いたままにしておけば、白は次のようにして勝つ。1.Kc4 Kd7 2.Kc5 Kc7 3.d6+ Kd7 4.Kd5 Kd8 5.Kc6 Kc8 6.d7+ Kd8 7.Kd6(黒キングを動けなくして黒ポーンを進ませる)7…h5 8.Kc6 h4 9.h3 g6 10.Kd6 g5 11.Kc6 f5 12.Kd6 f4 13.f3! g4(13…f5 でも 14.Ke6 g4 15.Kxf5 で駄目である)14.fxg4 f5 15.g5!(15.gxf5?? f3! 16.gxf3 で手止まりになる罠を避けた)15…f3 16.gxf3 f4 17.Ke6

 どちらの場合も外側パスポーンが黒キングをキング翼ポーンの守りから離れさせるおとりになっていて、手詰まり(不利な手の強制)が黒陣を崩壊させる。

 この戦法の5手目から黒は、交換によりキングとポーンの収局に近づけば近づくほど負けになるのが普通なので交換に慎重にならなければならない。交換するたびに破滅へいやいやながら近づくことを絶えず恐れることになるので、多くの選手が 5…exf6 の戦法を放棄した。

 しかしウルフ・アンデルソンは黒が 5…exf6 からキングとポーンの収局になることを恐れるに足らないことを証明した。1個か2個駒が残っている収局は持ちこたえられるので、黒が難局に陥るまでには多くの交換が必要である。それに黒は 5…exf6 で中盤戦のために確かな優位を得る。まず、5…exf6 は黒のキング翼ビショップの展開に役立つ。つまり展開を完了するためにまたポーンを突くのに1手かける必要がない。次に、5…exf6 で黒ルークのためにe列が素通しになる。また、f6にもポーンがあるので黒キングがキング翼にキャッスリングした際さらに保護されている。最後に、黒はf6とg7のポーンを適時に突いて自陣を広げ役に立つ地点を支配することができ、それでもf7とh7のポーンは守りに残しておける。自分のキングの前の2ポーンを突けば、自分のキングを攻撃にさらすことになるのが普通だが、タルタコワ戦法ではこの危険は大幅に減少する。

 タルタコワ戦法の現代の解釈はギャンビット戦法に似ている。黒はキングとポーンの収局の可能性を「犠牲」にして中盤戦を指しやすくしている。この観点から見ると 5…exf6 は大いに意味がある。黒の中盤戦の可能性は確かにちょっとした価値があり、そのための犠牲はほんの少しである。

 黒は 5…gxf6 の戦法よりもタルタコワ戦法の方が駒の展開の自由度が大きい。キング翼ビショップは通常はd6に行くが、e7にも行ける。クイーン翼ナイトはd7に行くのが普通だが、局面によってはa6とc6も重要な手段になる。クイーン翼ビショップは通常e6に行くが、f5とg4に行くことも可能である。どちらにキャッスリングすべきかはほとんど問題にならない。というのはキング翼ポーンの方がクイーン翼ポーンの方よりはるかに安全な避難先を与えてくれるからである。

 時には黒の作戦は …c6-c5 と突いて白のdポーンを交換で消して中央を開放し、黒駒の利きを増すことがある。ほかにも黒の戦略はd5とc4を支配して白が簡単にdポーンをパスポーンにできなくし、そのあとキング翼で活発に動く(…f6-f5-f4、…g7-g5)ことになるかもしれない。もし白がクイーン翼にキャッスリングすれば、黒はそちらでポーンの暴風さえ考えるかもしれない。

 白の戦略はキング翼での直接攻撃と中央での作戦(d4-d5 突きか有利な収局への移行の意図)とに限られる。c4の地点はキング翼ビショップのa2-g8の斜筋での好所となるが、クイーン翼ビショップには問題がある。その唯一働ける地点のf4はしばしば黒に支配される(..Bd6 と …Qc7 によって)。白のナイトはf3に行けるかもしれないが、そこではほとんど狙いがない。e2ではdポーンを支え、クイーン翼ビショップがf4に出るのに役立つ。ルークにはd列とe列がふさわしい。白キングはどちらにもキャッスリングするかもしれない。白の大きな障害は黒の活動的な駒と自分の活動性の劣る駒によりもたらされる中盤戦での一定の守勢を克服することである。さらに白は収局での優位の可能性をそこなうことを恐れてポーンを攻撃的に用いることをためらうかもしれない。

 具体的には・・・

6.Bc4

 これが主手順とみなされている。白は最良の展開の手を指した。しかし考慮に値するほかの手が一つある。それは 6.c3 で白は黒のキャッスリングしたキングを攻撃する意図を表明する。もし黒が普通に展開すれば、白の作戦が明らかになる。例えば 6…Bd6 7.Bd3 O-O 8.Ne2 Re8 9.Qc2! という具合である。これが白のシステムの要点である。白はhポーンを当たりにすることにより手得を図る。しかしもっと重要なことは黒に …g7-g6 または …h7-h6 と突かせることにより黒陣を弱めさせることである。

 9.Qc2 の局面(参考図)

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(059)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 9.Qc2 の局面(参考図)

 これまでのところ 9…h6 と指したマスターの試合は少ない。アーロン・ニムゾビッチが1931年に一度指して勝ったことがあるが、ほとんどの選手にはお気に召していない。9…g6 で白のキング翼ビショップの斜筋を止める方がはるかに自然で、f5の地点も固守することになる。しかし 9…g6 の局面が白にずっと有利であることがいつか明らかになれば、黒は 9…h6 をもっと詳細に調べることになるだろう。9…h6 には白が攻撃の筋を開通させるのをずっと難しくさせる長所がある。

 9…g6 のあと白は 10.h4! と突いてキング翼ルークを攻撃に投入するのが良い。黒は 10…h5? と突くと 11.Bxg6! fxg6 12.Qxg6+ で白の狙いが多すぎるのでそう突けない。また 10…f5?! は 11.h5 のあと白に g2-g4 でb1-h7の斜筋を再び開ける狙いがあるので、白の攻撃を遅くできない。だから黒は 10…Nd7 11.h5 Nf8 と指さなければならず、6.c3 の評価のために重要な局面になる。実戦例1のカバレク対アンデルソン戦では白の攻撃が勝ちを収めたが、黒は改良が可能である。

 もし黒が強力な攻撃を浴びるのを好まないならば、9…h6 か早期の …c6-c5 を真剣に考えるべきである。6手目か7手目で …c6-c5 と突いてそのあと …Nc6 と指す着想は、完全に新たな複雑さをもたらす。白は d4-d5 と応じればe5の地点を黒のナイトに明け渡すことになる。dxc5 と交換すれば中央があまりに早く開放されて、黒に有効な反撃を与えずにキング翼攻撃を行なう作戦が追求できなくなる。

 定跡はまだ 6.c3 についての相反するデータを消化しきれていない。6.c3 は攻撃の戦型として単刀直入すぎてすべての防御に対応していないので、私の予想では白は主手順の 6.Bc4 に戻ってくるだろう。

6…Bd6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(060)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 このような自然な展開の手を疑うことはほとんどないだろうが、黒はこの手の成績が悪いときがあった。しかしアンデルソン(6…Qe7+!)とコルチノイ(6…Nd7!?)によって広められた新構想が、6…Bd6 は欠点があるのではという疑いを信用させている。しかし新手順にはその優秀性を合理的に確実に判断できる経験があまりに少ないので、ここでは 6…Bd6 を主手順としておく。

 アンデルソンの得意手の 6…Qe7+! は1930年代にチェコのマスターのオポチェンスキーによって初めて指された。1970年代にいく人かの選手がそれを復活させたが、普及させたのはアンデルセンの功績である。皮肉にも黒は白の望むキングとポーンの収局に近づくクイーン同士の交換を誘っているように見える!

 6…Qe7+ の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(061)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Qe7+ の局面

 6…Qe7+! の着想は何と言っても 7.Qe2 がほとんど必然であるということである。白は 7.Be2 と引くこともできるが、すると 7…Qc7 8.Nf3 Bd6 で黒の展開がよどみなく進むのに対し白のキング翼ビショップはe2であまり働いていない。決定的に悪いのは 7.Be3?? と 7.Ne2?? で、7…Qb4+ で駒損になる。

 7.Qe2 に対して黒はクイーンを交換しないで 7…Be6! と指す。もし白が 8.Bxe6 と取ってくれば、8…Qxe6 でクイーン交換の可能性がまた出てくるが、この過程で白は黒の二重ポーンを解消してやることになる。白は 9.Bf4 と指しても 9…Na6! 10.O-O-O O-O-O のあと 11…Qxa2 または 11…Nb4 から 12…Qf5 の狙いがあるので、ほとんど選択の余地がない。11.Qxe6+ fxe6 のあとの進行は黒が互角(またはそれ以上!)になるが、実戦例2のピーターズ対アンデルソン戦を参照されたい。

 上記の手順は白の気のない指し方である。8.Bxe6 の代わりに白は 8.Bb3!? と指すべきである。そうすれば黒のクイーンが自分のキング翼ビショップの展開を邪魔していることになる。たぶん 8…Na6 9.Bf4 O-O-O 10.O-O-O Nb4 が黒の最善の指し方である。代わりに 8…Bxb3 は 9.axb3 Qxe2+ 10.Nxe2 Bd6 11.Bf4! となって、まだdポーンがパスポーンになる可能性のある多数派ポーンが健在なので白が少し優勢である。

 6…Qe7+ 7.Qe2 Be6 のあと 8.Bd3 は、黒が 8…c5! 9.Nf3 Nc6 で中央を開放することができるので厳しさの点で劣る。そのあと 10.dxc5 Qxc5 11.O-O Bd6 となれば黒はキング翼にキャッスリングして好形になる。

 これらの 6…Qe7+ のあとのどの変化でも白は、理想のキングとポーンの収局に至る望みがあまりない。中盤戦では黒の働きのよい駒が白から一つや二つの譲歩(二重fポーンの解消など)を引き出しそうである。もし黒が攻撃的に指せば、6…Bd6 からよく起こる不利な型の収局に次第に陥るのを避けることができるはずである。

 コルチノイは 6…Nd7!? の方を好んでいた。

 6…Nd7 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(062)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Nd7 の局面

 これは主手順の 6…Bd6 7.Qe2+! で難局に陥るのを避けようという手である。なぜなら 6…Nd7!? 7.Qe2+ なら Be7 で黒は不満がないからである。しかしこのナイトはクイーン翼ビショップを解放するためにまた動かなければならない。だから黒の展開はアンデルソンの 6…Qe7+! ほど楽ではない。

 本筋の手順は 6…Nd7!? 7.Ne2 Bd6 8.O-O O-O(Bf4 を防ぐ 8…Qc7 もある。白はビショップをf4に配置するのにこだわるならば 8.O-O でなく 8.Bf4 と指すべきである)9.Bf4 Nb6 で、コルチノイがカルポフ戦で指した。その試合では白が 10.Bd3 と引いたので、黒は 10…Be6 でc4とd5の地点を支配でき互角になった。コルチノイの好所の駒(中央の2列のルーク、d6のクイーン)が白のもくろむcポーンとdポーンの前進を止めたが、悪手を出してカルポフにキング翼ビショップをf3に来させた。このビショップはa8-h1の斜筋に強い圧力をかけ、黒とd5の支配を争った。試合は引き分けに終わったけれども、白が勝つはずだった。

 白のビショップが10手目で(d3でなく)b3に下がれば、黒は 10…c5! と突いて白の中央を破壊することができる。11.d5?? は 11…c4 で白のビショップが取られる。黒のcポーンと白のdポーンとの交換のあと、黒は Bxe6 を恐れずに …Be6 と指すことができる。なぜなら …fxe6 で二重ポーンが解消し、…e6-e5 と突くことができ黒のキング翼の多数派ポーンが強力になるからである。

 白が Bf4 と指すまでコルチノイが …Nb6 を遅らせたのは注目する価値がある。もし 6…Nd7!? 7.Ne2 Nb6?! と指すなら、黒は 8.Bb3 に 8…Bd6? を避けなければならないのは 9.c4! で白が先手で c4-c5 と突く狙いができるからである。そのあと 9…Bc7 10.Bf4 O-O 11.Bxc7 Qxc7 12.c5! となると、黒は …c6-c5 で中央に打って出る(「出遅れ」dポーンの犠牲を払うけれども)のを妨げられる。そして 12…Nd5 13.Bxd5! cxd5(これで白のdポーンが黒のdポーンによって隠される)14.O-O でも 12…Nd7 13.O-O b6 14.cxb6 axb6 15.Re1 でも黒が劣勢になる。黒は中盤戦でほとんど活発に動けず、例のキングとポーンの敗北収局の亡霊が黒陣に訪れる。黒はこの手順中 8…Bd6? の代わりに 8…c5! と突くべきである。

 コルチノイの新手の 6…Nd7!? は 7.Ne2 と 7.Qe2+ に対して特に効果的である。しかし白は問題を引き起こすほかの手段を絶対探すだろう。最も有望な手段の一つは 7.Qh5!? である。黒は詰みの狙いを 7…Qe7+ 8.Ne2 でかわすことができるが[訳注 8…Qb4+ でビショップが取られます]、キング翼ビショップが元の位置のままである。7…g6 8.Qh4 Nb6 9.Bb3 c5 10.dxc5 Bxc5 は理想形のようだが、11.Bh6! に見舞われる。黒はもうキング翼にキャッスリングできず、12.Bg7 を狙われている。たぶん黒は次のようにクイーン翼にキャッスリングすればこの問題を回避できる。6…Nd7!? 7.Qh5!? Qe7+ 8.Ne2 Nb6 9.Bb3 Be6 10.O-O g6 11.Qf3(ほかの手では 11…Bxb3 でe2のナイトが当たりになる)11…O-O-O お互いのキングが逆翼にいるので、両者とも全面的なポーンの暴風を考えることができる。未開の地を冒険してみたいならば 6…Nd7!? こそふさわしい!

 主手順に代わる黒の三つ目の手は 6…Be7 である。

 6…Be7 の局面

(この章続く)

2014年02月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(063)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Be7 の局面

 黒の作戦は 6…Bd6 7.Qe2+! を避けながらよどみなく駒を展開することである。7.Qh5 にも楽に 7…O-O と応じることができる。しかし 6…Be7 はそれほど攻撃的な手でない。7.Ne2 O-O 8.O-O Nd7 9.Bf4 または 9.c3 のあと白の駒は望みの地点に到達している。黒が 8…Be6?(8…Nd7 の代わり)で反撃できないのは、9.Bxe6 fxe6 10.Nf4! で新たな弱点のe6を攻められるからである。たぶん最善手は 8…Bd6 から 9…Qc7 で、6…Be7 の不合理が露呈する。

7.Qe2+!

(この章続く)

2014年02月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(064)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒を悩ませるにはこの手しかない。7.Ne2 では 7…Qc7!(f4の地点を支配し、hポーンへの狙いにより 8.O-O を防いでいる)8.Ng3 O-O 9.O-O c5 10.dxc5(10.d5 は 10…Nd7 11.Be2 c4! で c2-c4 突きを防ぐことにより白のdポーンを無理やり孤立させることができる。黒はこのポーンを …Nb6 から …Rd8、または …b7-b5!?、…Bb7、…Nb6 そして …Rad8 で攻撃する)10…Bxc5 11.Bb3 Nc6 で黒の展開が滞りなく進む。そして中盤戦での十分な反撃により収局の懸念を減らすことができる。

 9…c5 のほかに黒には 9…Nd7 と 9…Be6 という手もあり、どちらも十分互角にできるはずである。

7…Qe7

 あいにく黒にはこのチェックに満足な応手がない。本譜の手はクイーン交換になり、勝ちのキングとポーンの収局に持ち込む白の期待を高めさせる。代わりに 7…Be7 なら白は 8.Nf3 O-O 9.O-O Bg4(9…Bd6 には 10.Re1! で …Rf8-e8 を防ぐ)10.c3 から h2-h3 で釘付けをはずす。黒は自陣に明白な標的がないけれども、形勢は不利である。陣地の広さで劣り、直接的な狙いを持たず、収局には不利なポーン陣形で、クイーン翼ビショップに適当な地点がない。白はしばしば h2-h3、g2-g4、Nh4 から f2-f4-f5 の狙いで黒のクイーン翼ビショップを追い詰める。黒がクイーン翼ビショップを白のナイトと交換すれば、白の残りの白枡ビショップが気ままに動ける。

8.Qxe7+ Kxe7!

 これは実際には 8…Bxe7、9…O-O そして 10…Re8 に比べて手得になる。黒は2手でなく1手でキング翼ルークをe8に展開し、それからキングをf8に引っ込める。盤上からクイーンが消えたので白には黒キングを詰める見通しがほとんどない。だから黒キングはより中央に近いf8に安全に居続けることができる。

9.Ne2

 白は 9.Nf3 よりも 9.Ne2 の方が手広い。このナイトはg3かc3を経由してe4に跳ぶかもしれないし、g3経由でf5に跳ぶかもしれない。また、Bf4 の支援にもなる。黒のキング翼ビショップが最も働いている小駒なので、白は黒枡ビショップ同士を交換したい。

9…Be6

 白のキング翼ビショップに挑むのが最善のようである。代わりに 9…Re8 なら 10.O-O Bf5 11.c3 Kf8 12.Bf4! となって、白は …b7-b5 の狙いをかわしつつ黒枡ビショップ同士の交換という大局観に基づいた作戦を実行する。

10.Bd3

(この章続く)

2014年02月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(065)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 同じく優勢になるのは 10.Bb3 Nd7 11.O-O Rhe8 12.Re1 Kf8 13.Bf4! Bxf4 14.Nxf4 で、14…Bxb3(14…Bf5 もあり、このビショップはe6にとどまれない)15.axb3 を強制する。白のクイーン翼の多数派ポーンはまだパスポーンを生み出せるが、黒はキング翼で生み出せない。本譜の 10.Bd3 で白はしだいに駒を交換し勝ちの収局に単純化していく狙いのために少しの優勢を保持している。

 棋譜は1970年のマツロビッチ対スミスロフ戦を追っている。元世界チャンピオンのスミスロフは収局の大家で、危険を覚悟でわざとこの劣勢の局面にしたのは、クイーンのない局面が不得手と知られている相手を圧倒できると信じているからである。しかし試合は次のように進んだ。10…Nd7 11.Bf4! Nb6 12.Bxd6+(手順1 白は黒の重要なキング翼ビショップを消す)12…Kxd6 13.b3!(手順2 白はクイーン翼の多数派ポーンを働かせるために c2-c4 と突く準備をする)13…Kc7 14.c4 Rad8 15.Kd2!(手順3 白はキングを中央に近いc3に配置する)15…Rhe8 16.Rae1 Nc8 17.Kc3 b6(白が Nf4、c4-c5、Bc4 から b3-b4、a2-a4 そして b4-b5 とやってくるかもしれないので、黒は受動の防御を放棄した)18.Nf4 g6(黒はいずれhポーンを守らなければならない。…g7-g6 と …f6-f5 はh7でビショップを捕獲するのにいつも信頼できるとは限らない)19.Re3!(手順4 ルークを中央に集めてビショップをe6から追い払う)19…Bd7 20.Rhe1 Rxe3 21.Rxe3 Kd6 22.b4 c5(白が 23.c5+ から 24.Bc4 を狙っていたのでほとんど必然である)23.dxc5+ bxc5 24.Be2 cxb4+ 25.Kxb4(手順5 クイーン翼の多数派ポーンをパスポーンにする)25…Bf5 26.g4! Bb1

(この章続く)

2014年02月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(066)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 白は大きな進展を遂げたが、ここで 27.c5+? というポカを出した。27…Kc7 28.Bc4 28…Bxa2! を見落としていた。29.Bxa2 なら 29…Rd4+ でf4のナイトを取られる。白は 29.Kc3 でなんとか引き分けにすることができた。

 正着は 27.Nd5! だった。黒は 27…Bxa2? が 28.Bd3! でビショップが捕獲され Ka3xa2 が受からないのでaポーンをかすめ取ることができない。代わりに 27…f5 は 28.Nc3! Bc2 29.Nb5+ Kc6(29…Kd7 なら 30.Nd4 Bb1 31.gxf5)30.Kc3! Bb1 31.gxf5 Bxf5 32.Nd4+ Kc7 33.Nxf5 で黒のキング翼のポーンが分断される。白はf5とh7のポーンを摘み取ることができ勝ちの収局になる。

 結論として 6…Bd6 は白が有利な収局に向かう 7.Qe2+! を見つけると黒の問題が解決されないことになる。だから 6…Qe7+! または 6…Nd7!? と指すべきである。

(この章終わり)

2014年02月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(067)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1
白 L.カバレク
黒 U.アンデルソン
ボルボ・グランドマスター大会番勝負、首都ワシントン、1978年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 6.c3!?

(この章続く)

2014年02月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(068)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 これは主手順の 6.Bc4 より人気は劣るが危険な手である。白はクイーン翼の多数派ポーンをすぐに活用するつもりはないが、黒がほとんど確実にキャッスリングするキング翼への直接攻撃を見据えている。

6…Bd6

 黒は理にかなった展開の作戦に従っている。

7.Bd3 O-O 8.Ne2 Re8!

 この手には両様の目的がある。黒は防御に好適のf8をナイトのために空けながらe列を占拠した。

9.Qc2!

 これは白の作戦に適合する唯一の手である。代わりに 9.O-O? は 9…Nd7 10.Qc2 Nf8! となって、黒がポーンを突いて弱体化する必要なしにh7を守るので白には攻撃目標がなくなる。

9…g6

 この手はb1-h7の斜筋を閉鎖し、場合によっては …f6-f5 突き(e4の地点を争う)の用意にさえなっている。しかし白に h2-h4-h5 突きによってh列を素通しにする機会を与えている。

 マスターの実戦でまだ十分に試されていないもっと安全な選択肢は 9…h6!? である。白が Be3、Qd2 から O-O-O でh6で駒を切る用意ができなければキング翼攻撃は終わりで、クイーン翼の多数派ポーンを突き進める作戦に戻るのが良い。白はナイトをf5かh5に捌くかもしれない。黒は …h7-h6 と突いたあとは、危険をおかしてまで …g7-g6 と突きそうにない。なぜなら白にg6で駒を犠牲にして黒キングを露出させる重大な可能性が生じるからである。

10.h4! Nd7 11.h5 Nf8

 黒は急いでナイトをキング翼に向かわせて、12.hxg6 hxg6 13.Bxg6! fxg6 14.Qxg6+ Kf8 15.Rh7! による詰みの狙いを止めるのにちょうど間に合った。代わりに 11…f5? は 12.hxg6 hxg6 13.g4! でg6での捨て駒の狙いが復活することに注意しなければならない。

(この章続く)

2014年03月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(069)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

12.Bh6

 カバレクは進展を求めて正しくキング翼に目を向けている。Bxf8 からおなじみのg6での捨て駒が脅威である。12.hxg6 fxg6!(h列を部分的に閉鎖のままにしておく)13.Qb3+ Be6 14.Qxb7 でポーンをかすめ取るのは 14…Bd5! のためにそれほど効果がない。白が 15.Kf1 か 15.O-O でgポーンを守っているると、黒は 15..a6!(白クイーンから逃げ道のa6を奪う)16.Bf4 Rb8 17.Qxa6 Ra8 18.Qb7 Rb8 19.Qa6 Ra8 で千日手で引き分けにすることができる。

12…Qc7

 アンデルソンは自陣の2段目で守ることを望んだ。12…Be6 13.O-O-O b5!(c3-c4 突きを防ぐ)も可能で、14.hxg6 fxg6 15.Bxf8 Bxf8 16.Bxg6? は無理筋である。このあとは 16…hxg6 17.Qxg6+ Bg7 18.Rh7(18.Qh7+ なら 18…Kf8 19.Nf4 Bf7 で受かる)18…Re7!(18…Qd7? 19.Rdh1 Kf8 20.Nf4 Bg8? は 21.Qxf6+!! Bxf6 22.Ng6# で詰まされる)19.Rdh1(20.Rh8# の狙い)19…Kf8 20.Rh8+ Bg8! で黒は安全である。このような変化は怖がり屋には向いていないが、黒陣の柔軟性をよく表わしていることは確かである。

 12…Qe7!? という手もあり、13.O-O-O に 13…Bf5! 14.Bxf5 Qxe2 と応じて単純化する準備である。たぶん白は 13.Kf1!? の方が良いが、それでもクイーン翼ルークを働かせるのに困難があるかもしれない。

13.O-O-O Be6?

(この章続く)

2014年03月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(070)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 黒はもろいキング翼を心配するあまり、白が中央での狙いで攻撃を強化できることを忘れていた。白の可能性を制限する正しい手段は 13…b5! で 14.c4 を思いとどまらせることだった。g6での捨て駒はまだ成立しない(14.hxg6 fxg6 15.Bxf8 Rxf8! 16.Bxg6? hxg6 17.Qxg6+ Qg7 で受かる)。だから白は 14.Rh4 で 15.Rdh1、16.hxg6、17.Bxf8 から 18.Rxh7 を狙うのが良い。白の強力な攻撃は持続するが、黒は持ちこたえる手段が十分あるかもしれない。

14.c4!

 これが勝着だった。白の着想は d4-d5 突きでなく、c4-c5 突きで黒のキング翼ビショップをe7に下がらせ黒クイーンのキング翼の防御に差し支えるようにすることである。

14…Rad8

 この手は見込みがないが、14…c5 15.d5 Bd7 16.hxg6 fxg6(16…hxg6 なら 17.Rh4! から 18.Rdh1)でも 17.Bxf8 Bxf8 18.Bxg6! hxg6 19.Qxg6+ Bg7 20.d6! Q逃げ 21.Rh7 でg7で詰まされる。14…f5 も 15.hxg6 fxg6 16.c5! Be7 17.Nf4! で、実戦のようにa2-g8の斜筋で壊滅する。

15.hxg6 fxg6

 15…hxg6 は強く 16.Rh4 から 17.Rdh1 と応じられるか、16.Qd2! で 17.Bg7! から 18.Qh6 を狙われる。

16.c5! Be7 17.Nf4! Bf7 18.Bc4!

 白は 19.Bxf7+ Kxf7 20.Qc4+ による破壊を狙っている。本譜の手に 18…Bxc4 と取ると 19.Qxc4+ Kh8 20.Qf7! Bd6 21.Bg7# で詰まされる。

(この章続く)

2014年03月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(071)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

18…Rd5

 アンデルソンは観念して交換損に打って出た。18…Bd5 も 19.Qb3!(おやまあ、あの斜筋!)19…Qd7 20.Nxd5 cxd5 21.Bb5 で別な交換損の仕方になるので良くない。

19.Rde1

 黒ルークがd5から退却できないことを分かっている白はe列を占拠した。

19…Red8 20.Bxd5 cxd5 21.Re3!

 白はまだまだ攻撃できる!カバレクは圧倒的な局面からどんなわずかな優勢でも引き出す。

21…Rd7 22.Rhe1 g5

 さもないと 23.Qe2 Bd8 24.Bxf8 Kxf8 25.Re8+! で白が侵入してくる。

23.Bxf8 Bxf8 24.Rh1!

 白はまたしてもb1-h7の斜筋を利用する。

24…h6 25.Ng6 Bxc5

 25…Bg7 なら白は 26.Rhe1 から 27.Qf5 と応じて 28.Re7 を狙う。

26.Rc3!

 もちろん 26.dxc5 Kg7 27.Nf8! Kxf8 28.Rxh6 でも十分勝てる。しかし白はもっとも危なげのない決め手を見つけた。

26…Bd6!

 この手は 27.Rxc7? Rxc7 でクイーンを取り返して引き分ける可能性に期待している。

27.Rxh6

 狙いは 28.Rh8+ Kg7 29.Nf8! から 30.Qh7# である。

27…Kg7 28.Nf8! Kxf8

 28…Bg8 なら単純に 29.Nxd7 で勝ちになる。

29.Rh8+ Ke7

 代わりに 29…Bg8 なら 30.Qg6! でc7、g8それにf6での取りが狙いになる。

30.Qe2+ Be6 31.Rh7+! 黒投了

(この章続く)

2014年03月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(072)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

 最後はきれいに決めた。31.Rxc7 は黒にクイーンの代わりに2ビショップが残るので白は満足しなかった。31.Rh7+! のあとは 31…Kd8 32.Qxe6! Rxh7 33.Qg8+! または 31…Kf8 32.Rxc7 Bxc7 33.Qxe6! Rxh7 34.Qc8+ で黒にはルークしか残らず、投了は止むを得ない。

(この章続く)

2014年03月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(073)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2
白 J.ピーターズ
黒 U.アンデルソン
全米チェスリーグ、1978年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 6.Bc4 Qe7+

 この手には驚かされた。以前に 6…Be7 と 6…Nd7 に対しては指したことがあったが、黒の劣ったポーン陣形にもかかわらずクイーン交換で収局に突き進みたがる相手は初めてだった。

7.Qe2

 7.Be2 なら黒は 7…Qc7 8.Nf3 Bd6 で普通に展開できる。

7…Be6!

 7…Qxe2+? は 8.Nxe2 で白の望むところである。黒は自分に有利な条件下でだけクイーン交換に応じる!最初の「要求」は白のキング翼ビショップを活動的なa2-g8の斜筋からどけることである。

8.Bxe6

 最も強硬な手は 8.Bb3!? である。8.Bd3 は 8…c5 9.Nf3 Nc6 10.dxc5 Qxc5 で黒が楽に展開を完了する。

8…Qxe6 9.Bf4 Na6!

 これにも意表を突かれた!黒の露骨な …Nb4 の狙いはいずれ Qxe6 を引き出すことで、黒のキング翼のポーンの形が整う。

10.O-O-O O-O-O

 全米チェスリーグの試合は電話を介して行なわれた。本局の場合は首都ワシントンとロサンゼルス間である。10手後に両選手は相手の正確な消費時間を知らされた。ここまで白の32分に対し黒は1分未満である!

(この章続く)

2014年03月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(074)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

11.Qxe6+ fxe6 12.h4!?

 黒が …c6-c5、…c5xd4 から …e6-e5 で「劣った」ポーン陣形を好形に変えようとするつもりであることは読めていた。12.h4!? はうまく指し回されたことを認めた手である。そしてこの手で黒のキング翼の多数派ポーンが円滑に進んで来るのを乱すことを期待した。

12…c5 13.Be3 cxd4 14.Bxd4 Bc5 15.Ne2 e5!

 アンデルソンは落ち着いて陣形を良くしている。黒のキング翼の多数派ポーンは白のクイーン翼の決して動き出すことのない多数派ポーンよりも進攻が脅威となっている。

16.Bxc5 Nxc5 17.h5 Rd7 18.Ng3!

 f5の好所を目指している。

18…Rhd8 19.Nf5 Ne6 20.g3 Kc7!

 黒は歩み続けている!私は形勢が互角になったと思っていたが、アンデルソンは進展を図る手段を見つけ続ける。

21.Rxd7+ Rxd7 22.Re1?!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(075)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 ここからの数手の間白はずっとルーク交換の機会を見送った。私がそうしたくなかったのは黒キングがd5やe6に来るとeポーンとfポーンを突くのを助けることになるからで、ルークによる狙いで黒キングの邪魔をすることができるかもしれないと考えていた。しかし黒はその狙いをやすやすとかわした。白の最善の受けは 22.Rd1 g6 23.Rxd7+ Kxd7 24.hxg6 hxg6 25.Nh4 g5 26.Nf5 から Kd2-e3 で、黒は優勢といってもわずかである。

22…g6

 これが黒の多数派ポーンからの最初の轟音だった。

23.hxg6 hxg6 24.Ne3 Nd4 25.Ng4 Rd6 26.c3 Nc6 27.f3 Kd7!

 黒キングがキング翼に渡るのに、白キングはc列に置き去りにされたままである。黒ルークが白キングを遮断していることに注意がいる。これがここで白が 28.Rd1 でルーク同士を交換すべき大きな理由である。

28.Rh1 Ke6 29.Nf2

 24…Rd3 を防いだ。

29…f5 30.Rh6?

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(076)

第5章 タルタコワ戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 この手はキングを活用できるようになる 30.Rd1 の最後の機会を逃した。黒はナイトをf6に捌き …e5-e4 と …Nh5xg3 を狙えば勝つ可能性がまだ高いだろう。白はたぶんクイーン翼の多数派ポーンを活用することによりけん制できるかもしれない。

30…Kf6 31.Rh7 Nd8! 32.Kc2?!

 白は 32.Rc7! でルークを7段目に維持できた。

32…Nf7!

 黒は白ルークの動きを制限し …g6-g5 から …Kg6 で追い払うつもりである。33…Ng5! 34.Rxb7 Nxf3 も狙っていて、パスeポーンで勝ちになる。

33.f4 e4

 黒の努力の成果が保護パスポーンになった。

34.Rh1 Rd8 35.b3 g5!

 36…gxf4、37…Rg8 そして 38…Rg2 を意図している。

36.fxg5+ Nxg5 37.Rh6+ Kg7 38.Rh1 Nf3! 39.Nd1

 39.Rd1 はもう手遅れである。39…e3! と突かれて 40.Rxd8 exf2 41.Rd1 Ne1+ 42.K 逃げ f1=Q または 40.Nd3 e2 41.Rh1 Rxd3! 42.Kxd3 e1=Q となる。白負けたり。

39…Rd2+ 40.Kb1 Kf6 41.c4 Ke5

 もちろん 41…Rg2 でもよい。

42.Ne3 Rd3 43.Nd5 Ng5 44.g4!?

 44.Rg1 なら 44…e3 と容赦なく進んでくる。

44…fxg4 45.Rh5 Kf5 46.Ne7+ Kf6

 46…Kf4 は 47.Ng6+ Kf5 48.Ne7+ で繰り返しになるだけである。

47.Nd5+ Rxd5!

 これで白の引き分けの望みを終わらせた。

48.cxd5 g3 49.Rh4

 49.Rh1 なら 49…Nf3 から …g3-g2 と進んでくる。

49…e3! 50.Kc2 e2

 51.Kd2 には 51…Nf3+ でよい。

51.Rh6+ Ke5 白投了

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カロカン防御の指し方(077)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(078)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 これがブロンシュテイン=ラルセン戦法(ニムゾビッチ戦法としても知られている)の特徴的な局面である。タルタコワ戦法(第5章)の 5…exf6 のように黒はキング翼ナイトを白のe4のナイトと交換して、fポーンが二重ポーンになるのを受け入れる。しかしeポーンでなくgポーンで取り返すことにより黒はまったく異なるポーンの形を作り、タルタコワ戦法から進行するのとはまったく異なる型の試合にする。

 カロカン防御の多くのほかの戦法のように黒の主要な目標は、白枡ビショップをポーン陣形の「外側」に展開することである。つまり …e7-e6 と突く前にこのビショップをf5かg4に出したがっている。もし黒がビショップを出す前に …e7-e6 と突くと、このビショップはb7、c6およびe6のポーンの内側に閉じ込められて決して活発に動けなくなるかもしれない。そうなれば黒陣は本当に劣った陣形になる。

 しかしブロンシュテイン=ラルセン戦法における黒のほかの目標はカロカンに特有のもではない。最も普通の作戦の一つはキング翼での攻撃である。ルークを半素通しg列に置くことにより黒はg2の地点に狙いをつける。もし白がキング翼にキャッスリングすれば、黒はルークをg列に重ねるかもしれない。あるいはhポーンとfポーンを突いていって(実戦例1のように)、h2またはf2への攻撃のためにもっと列を開けることができるかもしれない。

 …gxf6 と取り返しても反対翼で多数派ポーンができない。それは黒のeポーンがまだe列にあるからで、白にはタルタコワ戦法でよく起こるような単純化のあとdポーンがパスポーンにならない。中央側に …gxf6 と取り返すのは実際には中央における黒の地歩を強化している。c6とe6の黒ポーンはd5の地点に影響を及ぼし、f7のポーンはe6のポーンを守り、f6のポーンはe5の地点を守り白ナイトの侵入を防いでいる。時には黒はfポーンとeポーンを突いていくことがあるが、これらのポーンはe6、f7およびf6を守る大切な役目があるのでいつも良い着想になるわけではない。

 中央に近い黒の4ポーンは白のその方面の支配に挑む。白のd4のポーンは4段目にあるのでまだ最良の中央ポーンだが、黒の最も進んだポーンは自陣の3段目にすぎないので黒の支配する領域は少ない。それに白のcポーンはc4に進んで中央の戦いに加わることがよくある。

 白の半素通しe列は黒のe6のポーンがこの列をふさいでいるのでここではほとんど意味がない。しかし黒の半素通しd列は重要になることがある。黒のd8のルークは白のd4のポーンを当たりにする。もし白が c2-c4 と突いていけば、d4のポーンはもう守ってくれるポーンがなくなり、もっと大切な役割を果たすべき駒によって守る必要がでてくる。もし黒が c2-c3 突きでdポーンを守れば、c2-c4 突きがd4の支配をめぐる最強の武器なのにその戦いを放棄することになる。

 ほかのカロカン戦法と異なり黒はcまたはeポーンを白のdポーンと交換するのに熱心でない。まれにしかこの戦法で …c6-c5 突きが黒の成功とならないのは、中央で素通し列が増えると白だけを利するのが普通だからである。時には …e7-e5 突きが良い手になることがあるが、黒はそれに続けて …e5xd4 と取るべきでない。なぜなら黒に二重孤立fポーンが残され、白のルークのためにe列が素通しになるからである。代わりに黒はポーンをf6とe5に保持して d4xe5 を期待するのが良く、…f6xe5 でf列の二重ポーンが解消される。…e7-e5 突きの着想の欠点は黒のポーンがまったく動けなくなり、d5の支配を弱め(時には d4-d5 と突き越されることがある)、白にa2-g8の斜筋とf5の絶好のせき止め地点を与えることである。f5の白ナイトは黒のキング翼とクイーン翼の連絡通路を事実上切断してしまう。そして利用できる唯一の「補給ルート」はf8だけになる。

 黒はルークをg8に置きたいので、キング翼にキャッスリングするのは誤りである。通常のそして最善の戦略はクイーン翼にキャッスリングすることである。多くのマスターの試合で黒は一つの理にかなった手順で成功してきた。まずクイーン翼ビショップをf5またはg4に展開し、次に中央を …e7-e6 で補強し、最後にクイーン翼の駒を …Qc7、…Nd7 そして …O-O-O と展開するのである。これで黒に関する限り布局の段階は完了する。

 この間白は何をしているべきだろうか。白にはもっと広い可能性がある。キング翼ビショップは3地点(e2、d3、c4)のどこにでも展開でき、クイーン翼ビショップは2地点(e3またはf4)、ナイトはf3、e2またはg3(e2経由で)である。クイーンはほとんどどこにでも行ける。そしてクイーン翼でもキング翼でもキャッスリングできる。

 白の戦略は二つに分類することができる。一つは黒のクイーン翼ビショップをいじめて黒の普通の展開を邪魔しようとすることで、もう一つはほかの何かをすることである。

 黒のビショップがf5に、ポーンがe6にあると想像してみよう。もし白が Ng1-e2-g3 でこのビショップを当たりにすれば黒がビショップをg6に引くことは明らかである。そして f2-f4 または h2-h4 突きはこのビショップをまた脅かす。もし黒が f2-f4-f5 とさせて …e6xf5 と応じれば、黒ポーンの形が乱れf列は白ルークのために素通しになる。白の半素通しe列もたちまち完全な素通しになる。だから黒は f4-f5 の狙いに対処しなければならない。通常の手段は …f6-f5 突きである。

 黒は …f6-f5! と突くのが良い

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(079)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒は …f6-f5! と突くのが良い

 確かに …f6-f5 突きは白の狙いをかわす。しかし自分のビショップを永久に閉じ込めているようにも見える。このビショップは収局で「背の高いポーン」になる危険はないのだろうか。たとえ黒が …f7-f6 から …Be8 と指しても、自分のc6とe6のポーンがまだビショップの動きを制限している。それにもかかわらず黒はこの見かけによらない局面でいい戦いができる。

 白は f2-f4 と突いたとき、ちょうど黒が …f6-f5 と突いたときのように自分のクイーン翼ビショップを閉じ込めている。dポーンを5段目に突くことができなければ、このビショップがe3に展開したときd4のポーンがそのもう一つの斜筋をさえぎることになる。両者のfポーン突きは黒がe4の地点を支配することにもなる。黒がhポーンを …h7-h5-h4 と突いていくと、白のナイトをg3から追い払い、クイーン翼ビショップに新たな斜筋(h5-d1)が開け、…Nd7-f6-e4 という捌きが可能になる。もし白が …h5-h4 突きを h2-h4 突きで止めれば、黒ナイトにg4の地点を明け渡し、自分のg列を弱め、h4のポーンを黒が …Be7 で容易に攻撃できる目標にできる。以上のことにより f2-f4 突きは 黒の …f6-f5 突きよりも白の害になることが多い。白が f2-f4 突きを効果のあるものにするためには、黒枡ビショップを交換するか、d4-d5 と突くことによりこのビショップに新たな斜筋を作らなければならない。そしてキング翼での黒の別の狙い(…Nd7-f6-e4 から …Bh5 など)にも対処しなければならない。中盤戦で黒は難題を突きつけて白の理想とする収局(白のクイーン翼多数派ポーンがパスポーンを作ることができ、黒の障害のあるキング翼はできない)を防げることがよくある。

 ここまで f2-f4 突きの問題点を見てきた。白が代わりに h2-h4 突きで黒のクイーン翼ビショップを追うのはどうだろうか。

 黒は …h7-h5 と突くのが良い

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(080)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒は …h7-h5 と突くのが良い

 この場合 …h7-h5 突きで黒ビショップはまったく安全になるが、白は Be2 で黒のhポーンをつけ狙うかもしれない。黒は素通し列がもう一つ(h列)利用でき、標的(白のh4のポーン)ができ、白が2、3手使って黒のhポーンを取ってその駒を戦いに引き戻さなければならないのでかなり黒の手得になるので、私の考えではhポーンを失うのと引き換えに黒がいつも調子よく戦いを進めることができる。

 もし白が黒のクイーン翼ビショップをいじめる以外の作戦を選べば、黒の堅陣をぶち壊す作戦を考え出さなければならない。通常の方法は c2-c4 突きから d4-d5 突きである。

 d4-d5 と突いたポーン陣形

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(081)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 d4-d5 と突いたポーン陣形

 もし黒が(既に …e7-e6 と突いていたとして)d5のポーンをcポーンとeポーンで取ると、中央が大きく割れる。c列とe列が攻撃路になり、白ビショップに新しい斜筋が開け(f3-b7、b3-f7、c3-f6、e3-a7)、黒のキング翼のポーンが弱点をさらけ出す。つまり黒のfポーンは二重孤立ポーンになり、hポーンはもっと攻撃を受けやすくなる。黒キングが中央またはクイーン翼にいれば、活発な白駒の十字砲火をくらうことがある。

 黒はd5の地点を守ることにより d4-d5 突きを直接防いで、白が d4-d5 と突けば必ずポーン損になるようにしたい。これが無理ならば堅固な陣形を築いて d4-d5 突きに …c6-c5 と応じられるようにしたい。そうなれば局面を開放する白の唯一の手段は d5xe6 ということになり、黒は …f7xe6 で二重fポーンを解消できる。これが黒の最も現実的な手法である。

 実際には黒は序盤でタルタコワ戦法の場合よりも解決しなければならない問題が少ない。白は難しい決断を迫られる。不注意に指すとキング翼で黒の猛攻を受ける。しかしどういうわけかこの戦法はあまり人気が出なかった。サロ・フロールが1930年代と1940年代に定常的に用いていたが、慎重な指し回しのために引き分けが多すぎて誰も彼の例にならおうという気にならなかった。ソ連のグランドマスターで危険を恐れない華やかな棋風のダビド・ブロンシュテインが1950年代後半にこの戦法を採用した。しかし 5…gxf6 が理論家によって詳細に研究されるようになったのは、世界で主導的な変則布局の擁護者であるデンマークのグランドマスターのベント・ラルセンがカロカンを 1.e4 に対する主防御に採用してからだった。最近では米国のグランドマスターのラリー・クリスチャンセンやほかの数人の若い選手たちがカロカンに転向した。攻撃的な選手が研究されすぎたシチリア防御の戦法に飽きると、まだ未踏の領域の 5…gxf6 に目を向けるのかもしれない。この戦法は中盤戦が新鮮で、両者にとって攻撃の可能性があり、ポーンの指し方が複雑である。

 それでは白が d4-d5 突きを作戦として選ぶ主手順を分析しよう。

 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5,Nxf6+ gxf6

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(082)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6

6.Nf3

 これが白の最も自然な手だが、ほかにもいくつかある。よく指される手は 6.Bc4、6.Ne2、6.c3 それに 6.Bf4 である。

 6.Bc4 は実際よりも強い手のように見える。黒は 6…Bf5 と応じれば、続いて 7…e6 と突いて白ビショップのa2-g8の斜筋を閉じることができる。元世界チャンピオンのミハイル・タリは以前に 6…Qc7? という悪手を指して、7.Qh5! のあと 7…e6 で自分のクイーン翼ビショップを閉じ込める羽目に陥った。しかし 6…Bf5 ははるかに優る手で、6.Bc4 からすべての毒牙を取り去っている。たとえば 7.Ne2 e6 8.Ng3 Bg6 9.h4 h5! 10.Bf4 Bd6 となれば互角の形勢である。途中 8.O-O なら 8…Bd6(白キングに狙いをつけ …Qc7 と指すつもり)9.Ng3 Bg6 10.f4 f5! で黒が有望になる。あとの変化で黒には …h7-h5-h4 から …Nd7-f6-e4 または -g4 という狙いがあり攻撃が厳しい。黒のクイーン翼ビショップは白のクイーン翼ビショップより悪くなく、ほかの駒も効率よく働いている。白にとって最悪なのは積極的な作戦がないことである。d4-d5 突きは6手目のときよりも実現に近づいていない。それに黒陣に攻め入る明白な手段もない。

 6.Ne2 で白は黒がクイーン翼ビショップの居場所を見つけるのをより難しくさせようとしている。6…Bg4 7.Qd3!(ナイトに対する釘付けをはずし、黒ビショップからf5の地点を奪っている)のあと白はビショップを 8.Ng3 から 9.h3 で追い回すことを狙っている。黒はたぶん 7…Bxe2 でビショップを白のナイトと交換するのが良いだろう。もっとも白は 8.Bxe2 で展開で優っている。7…Bh5 でも白の狙いに対処していて、8.Nf4 Bg6 9.Nxg6 hxg6 で黒陣は非常に堅固である。しかし 7…Bh5 は変わった戦術の一撃をくう。すなわち 8.Qb3! Qb6(bポーンの最も明らかな守り方)9.Qh3! でh5とc8の両方に当たっている。9…Bxe2 10.Bxe2 Nd7 11.Bh5! のあと黒はfポーンが落ちるのでクイーン翼にキャッスリングできず、11…e6? は 12.Qxe6+ で負けるし 11…Qxd4 は 12.O-O で 13.Rd1 か 13.Qb3 を狙われる。白の方がはるかに優勢である。

 6…Bg4 より積極的なのは 6…Bf5!? である。もし白が 7.Ng3 Bg6 8.h4 で黒ビショップをいじめる作戦を実行するならば、黒はポーンを犠牲にする覚悟をしなければならない。8…h6?! は 9.h5 Bh7 でビショップは安全だが、それなら白は 10.Be3(または Bf4)から 11.Qd2 でhポーンに狙いをつける。…Bg8 はビショップが働かなくなるので黒にはポーンを守る適当な手段がない。現代のマスターは 8…h5! 9.Be2 Nd7 10.c3(10.Nxh5?? は 10…Bxh5 11.Bxh5 Qa5+ で黒の駒得になる)10…Qa5 の方を選ぶ。

 10…Qa5 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(083)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 10…Qa5 の局面

 この局面で黒の見通しが明るくなったことが、ブロンシュテイン=ラルセン戦法の人気が上昇した主な理由の一つである。白はh5のポーンを取りたければ、11.b4 Qc7 12.Nxh5 と指さなければならない。ここで 12…a5 または 12…O-O-O のあと 13…e5 で黒がポーンの代わりに攻撃に出る。白はキング翼にキャッスリングしようとクイーン翼にキャッスリングしようと、bポーンとhポーンを突いてしまっているのでキングの位置が不安定である。だからといってキングが中央にいると …O-O-O から …e7-e5 のあとd列の黒ルークの攻撃を受けやすくなる。黒の攻撃力が発揮される例については実戦例3が参考になる。

 6.c3 Bf5 7.Ne2 は 6.Ne2 に似ている。そして黒は再び 7…e6 8.Ng3 Bg6 9.h4 h5!? でポーンをくれてやる。実際 10.Be2 Qa5 となれば 6.Ne2 Bf5 の戦型で考えたのと同じ局面になる。だから 6.c3 は攻撃的に応じられると 6.Ne2 とちょうど同じ危険性を抱えることになる。

 6.c3 Bf5 に 7.Ne2 でなく 7.Nf3 と指せば独立した戦型になる。しかし 7…e6 8.Bf4(8.Nh4 は 8…Bg6 9.Nxg6 hxg6! となって黒のポーンを強化するだけである)8…Bd6! で黒が白の強力な地点にいるビショップに挑み展開を円滑に完了することができる。

 最後に 6.Bf4 は …Qc7 を防ぐことにより黒の常用の展開を妨げる。しかし 6…Bf5 のあと 7…e6 から 8…Bd6! で黒陣が楽になる。黒の「不良」クイーン翼ビショップがポーン陣形の外側に無事に展開される限り、黒は自分の「優良」キング翼ビショップの交換を恐れる必要がない。クイーン翼ビショップはまだ「不良」だけれども、白の残りの「優良」キング翼ビショップより働きが劣ることにはならない。

6…Bg4

 6…Bf5?!6.Bd3! があるので正確さで少し劣る。白枡ビショップ同士が交換されると黒が白枡で少し弱くなり、白が目標の d4-d5 突きを達成しやすくなる。これらの小さな考慮点は1973年のラドゥロフ対ラルセン戦のように劇的な効果をもたらすことがあり、布局におけるデンマークのグランドマスターの数少ない失敗の一つになった。

 6…Bf5 7.Bd3 の局面

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(084)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 6…Bf5 7.Bd3 の局面

 ラルセンは 7…Bg6(8.Bxg6 hxg6 でポーンがくっつくことを期待した)8.O-O Qc7 9.c4 Nd7 10.d5! O-O-O 11.Be3(11.dxc6? は 11…Nc5! でd3のビショップが釘付けで取られる)11…e5 12.Be2!(黒からの 12…e4 の狙いを軽くかわした)12…Kb8(12…c5 でクイーン翼を閉鎖するのは 12.Be2 の別の主眼点が明らかになる。すなわち白は 13.Nh4 と指して 14.Bg4 から 15.Bf5 で黒のキング翼での動きを封殺するか 14.f4! と突くことを意図する)13.Rc1 f5 14.c5! と指して白の攻撃に蹴散らされた。ここで 14…cxd5 と取れば白は 15.c6! bxc6 16.Bb5! で攻撃の筋をもっと開放する。

 (7…Bd6 の代わりに)7…Bxd3 なら報いはそれほどひどくないが、それでも黒は劣勢である。例えば 8.Qxd3 Nd7 9.O-O e6(9…Qc7 はすぐに 10.d5! と突かれる)10.c4(10.Bf4 も黒が容易に白ビショップに対抗できないので魅力的である)10…Qc7 11.d5! となる。黒キングは 11…O-O-O で砲列線を脱するが、12.dxe6 fxe6 13.Qe2 でまた黒のeポーンが白から Nd4 や Rfe1 で攻撃目標にされる。黒はクイーン翼ビショップがないのを嘆くことになる。もし黒が …e6-e5 と突けば、白ナイトが以前黒のクイーン翼ビショップによって占拠されていたf5の地点に居座ることになる。

 白は 13.Qe2 の代わりに 13.Qe3!? でa7とe6を両当たりにすることができる。しかし黒は攻撃的に 13…Bc5! 14.Qxe6 Rde8 15.Qf5 Re2 と応じることができ、白がどのようにポーン得を活かすのかは見当がつかない。黒が戦力を与える代わりに展開で大差をつけるこのような変化はついには 6…Bf5 7.Bd3! Bxd3 を復活させるかもしれないが、現在の定跡では白が優勢になるはずとしている。

 黒のクイーン翼ビショップは通常はf5の地点を目指す。6.Nf3 の主手順は黒ビショップがg4に行く方が役に立つ数少ない例外の一つである。

6.Be2

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(085)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 この自然な展開の手は白ナイトに対する釘付けをはずしキャッスリングの用意をしている。既に白は素早い展開と d4-d5 と突く早い仕掛けを策している。

7…Qc7

 7…e6 という手も当然ある。本譜の手は …e7-e5 突きを選択肢として残すところに利点があるが、黒は滅多に行使しない。7…e6 8.h3 Bh5 9.O-O のあと黒は 9…Qc7 10.c4 Nd7 で通い慣れた道を行くこともできるし、9…Bd6 で独自の道に踏み出すこともできる。

8.h3!

 この手はキャッスリングの準備に役立つ。8.O-O は 8…Rg8! で …Bh3 の可能性を考慮しなければならない。本譜の手はキング翼をひどく弱めることなくこの心配をなくしている。h2-h3 突きに伴う通常の欠点は、黒にgポーンをg4まで突くことにより列を素通しにする機会を与えるかもしれないということである。しかしここではそれは不可能である。

8…Bh5

 8…Bxf3 は 9.Bxf3 で白が d4-d5 で仕掛けるのを助けることになる。未踏の可能性は 8…Bf5?! だが、9.Nh4 Bg6 10.O-O のあと 11.f4 f5 12.g4!? の狙いに加えて 11.c4 から 12.d5 の狙いがあるので危険そうである。

9.O-O

 この判断も当を得ている。白は半素通しg列での黒の反撃を恐れない。というのは黒が攻撃を始める前に d4-d5 突きで中央で攻撃を仕掛けるつもりだからである。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(086)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

9…Nd7?!

 黒がこう指したということは白の危険な d4-d5 突きが避けられないことを認めたということで、自陣への被害を最小限にしようとしている。このいくらか守勢の手段はほんのわずか不利なだけの比較的堅固な陣形になるけれども、理にかなっていない。なぜなら黒は 6.Ne2 や 6.c3 の戦型のように、いい勝負になる激しい戦いに努めるべきだからである。

 この条件にかなう手はベント・ラルセンの着想による手である。彼の推奨した手は 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5!(一見この手は白が d5xe6 と指すこともできるので主手順の 9…Nd7?! 10.d5! よりもずっと強力に見える)11…O-O-O! である。

 黒はキングを中央からよけると同時に、クイーン翼ルークを素通しになりそうな列に置いている。…c6-c5 と突いてa7-e3の斜筋を閉じることもできるが、絶対必要というわけではない。黒キングが安全になれば、黒は白キングに通じる素通しg列のあるキング翼に注意を集中することができる。だから白はすぐに動かなければならない。

 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5! O-O-O!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(087)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 9…e6 10.c4 Nd7 11.d5! O-O-O!

 ここで 12.Nd4 が良さそうに見える。12…Bxe2? 13.Qxe2 のあと黒のe6のポーンが困った状態になっていて、13…cxd5 14.cxd5 exd5 は白の注文どおりである。白は 15.Be3! と攻撃態勢を整え、16.Rac1 と 16.Nb5 を狙う。

 しかしラルセンは 12…Bg6! でクイーン翼ビショップを保存する手段を見つけた。白が 13.dxe6? でポーン得できないのは、黒が 13…Ne5! で白のナイトを釘付けにし …c6-c5、…Bc5、…Qb6 またはこれらの手の組み合わせで白ナイトを取ってしまうからである。白は 13.Be3 またはほかの「穏やかな」手で妥協しなければならず、黒が 13…c5 で白の攻撃をかわすことができる。

 11.d5! O-O-O! の局面は両者にとって重要である。もし白が 12.Nd4 をやめて 12.dxc6 と指せば 12…bxc6 で局面は非常に複雑になる。黒の露出したキングは意外にも安全である。もし白が 13.Qa4 と指せば 13…Bc5! という応手で黒ビショップが重要な斜筋を占め新たな駒が戦闘配置につく。そのあと黒はd列を利用して白の狙いを無力化することができ、g列を使って 14…Rhg8 から 15…Qg3! のような狙いを作り出すことができる。白は自分のビショップの働ける地点を見つけるのに苦労することになる。全体的にはいい勝負である。

10.d5!

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(088)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 これが白の布局作戦の極致である。

 本譜は1964年アムステルダムでの元世界チャンピオン・ワシリー・スミスロフ(白)対GMルデク・パッハマン戦をたどる。

10…Rd8

 黒がキングを中央に置いておくのは危険そうに思われるが、パッハマンは 10…O-O-O と指したくなかった。理由は 11.Qd4! で 12.Qxa7 と 12.Bf4 とを狙われるからである。黒は 11…Qb6 あるいは 11…cxd5!? 12.Qxa7 Qb6! ででも切り抜けることができるけれども、キングはまだ標的のままである。

 10…Rd8 のあと実戦は 11.c4 Nb6! 12.Be3 Bxf3(12…cxd5? は悪手で、13.cxd5 Nxd5? 14.Bb5+!、途中 13…Rxd5? なら 14.Bxb6! Rxd1 15.Bxc7 で白の駒得になる)13.Bxb6!(13.Bxf3? は 13…Nxc4)13…axb6(13…Qxb6 でもよい)14.Bxf3 cxd5 15.cxd5 Bh6 16.Qa4+ Kf8 と進んで、白がわずかに優勢になった。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(089)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 黒はh8のルークが働いていないし、b6、b7、e7およびh7のポーンも弱い。しかし白にはすぐに進展を図る手段が何もない。異色ビショップについては黒が黒枡のほとんどを支配しているのに対し、白が白枡のほとんどを支配しているので黒の防御に役立っている。もし黒が …Rh8-g8-g5 または …Kg7 から …Rhd8 でルークを活用できれば困難を脱することになる。

 ブロンシュテイン=ラルセン戦法から生じる多くの戦型における黒の攻撃の可能性が好きな選手にとっては、このような守勢の局面には満足しないだろう。そのような人のためには9手目でラルセンの提示する激しい手順を推奨する。

 それではブロンシュテイン=ラルセン戦法の典型的な戦略が見られる試合を少し分析しよう。第1局では黒がキング翼攻撃を行なう。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(090)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1
白 N.バクーリン
黒 D.ブロンシュテイン
キエフ、1965年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Be3

 これは無害な手である。黒は定法どおりビショップを絶好の斜筋につけて応じる。

6…Bf5 7.Qd2

 白は早いキャッスリングを策しているように見える。

7…e6 8.Ne2 Nd7 9.Ng3 Bg6 10.Be2?!

 ここは 10.O-O-O Qc7 11.Bd3 で互角になるところだった。

10…Qc7

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(091)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

11.O-O?

 この手は重大な誤りだった。たぶん白はg6のビショップがg列で狙いを作り出そうという黒の試みの邪魔になると考えたのだろう。しかしブロンシュテインは白キングがキング翼で安全でないことをすぐに証明した。11.O-O? の代わりに白は 11.O-O-O h5 12.Bd3! と指すか、または 11.Nh5!? と指してでも …h7-h5 突きを止めるべきだった。

11…h5!

 手初めにブロンシュテインはhポーンをぶち壊し槌として使って白の防御を緩ませる。

12.Rfd1

 ルークがナイトのためにf1の地点を空けた。白は …h5-h4 突きを 12.h4? によって防げない。それは 12…Bd6 13.f4(13.Nh1?? Bh2#)13…f5! で、黒が …Qd8 のあと …Qxh4 から …Nf6-g4 または -e4 を狙ってくるからである。

12…h4 13.Nf1 h3! 14.g3

 これは嫌な手だが …hxg2 とさせるのはもっと悪くて黒はg列とh列の両方で攻撃できるようになる。

14…O-O-O 15.c4

 白はクイーン翼のルークのために d4-d5 または c4-c5 から b2-b4-b5 で素通し列を作りたがっている。

15…c5!

 黒はd列が素通しになるのは白クイーンが困ることになるので気にしない。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(092)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

16.d5?

 ここは 16.b4! cxb4 17.c5 と混戦に持ち込む絶好の機会だった。黒は Qxb4、a2-a3 それに c5-c6 に気をつけなければならなくなる。

16…e5!

 中央を閉鎖して白の攻撃を終わらせた。

17.Rac1

 17.d6? は 17…Qc6 18.f3 Nb8! 19.Qa5 Na6 でdポーンが落ちる。

17…f5

 襲撃の第2波。

18.b4 Bd6!

 この手は 19…f4 を狙っている。もちろん 18…cxb4? は 19.c5! で白の攻撃がよみがえる。

19.f3

 白は 19.bxc5 と取っても 19…Nxc5 で何も成果がないので、キング翼の防御に専念する。

19…f4 20.Bf2

 20.gxf4? は 20…exf4 で黒ルークがg列から侵入する。

20…Rde8!

 黒は …e5-e4 で圧力を増すつもりである。

21.Kh1 Rhg8 22.Re1 e4! 23.Bxc5

 ほかに良い手もない。白の負けである。

23…Nxc5 24.bxc5 Qxc5!

 黒はどの駒も攻撃に参加している。白の当面の心配は 25…Qf2 である。

25.Bd1 Bc7!

 黒は 26…Ba5 だけでなく 26…Bb6 から 27…Qg1# を狙っている。

26.gxf4

 こう取るしかない。26…Ba5 には 27.Qe3! と応じる。

26…e3!

 これは白のもろい陣形を打ち砕く驚くべき一連の打撃の最初である。

(この章続く)

2014年03月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(093)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例1(続き)

27.Qe2

 27.Rxe3 は 27…Rxe3 28.Qxe3 Qxe3 29.Nxe3 Bxf4 30.Rc3 Re8 で致命的だし、27.Nxe3 Bxf4 28.Rc3 Re5 から 29…Rge8 もそうである。

27…Bd3!! 28.Qxd3 Rg1+!!

 これは 28…e2 29.Ne3 よりもはるかに明快である。

29.Kxg1 e2+ 30.Ne3

 30.Kh1 は 30…Qf2! でg2かf1で詰まされる。

30…Rxe3 31.Qf5+ Re6+! 32.Kh1 Qf2! 白投了

 白はルーク得にもかかわらず成すすべがない。

(この章続く)

2014年03月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(094)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 次の試合には黒が反撃に失敗したときの白の攻撃のすさまじさが表れている。

実戦例2
白 I.A.ホロウィッツ
黒 S.フロール
米国対ソ連無線対局、1945年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Ne2 Bf5 7.Ng3 Bg6 8.h4 h6

 こう指しても悪くはないが、8…h5! で白の陣地拡張策を止めこのポーンを取りにこさせるのもあり得る。

9.h5 Bh7 10.c3

 10.Bf4 Nd7 11.Qd2 から O-O-O を予定するのも有力な作戦である。しかし 10.Bf4 に対して黒は 10…Qb6! と指すことができ、白にはうまくbポーンを守る手段がない。11.Bd3!? でポーンを見捨てるのは 11…Qxd4 12.Ne2 Qxb2 13.O-O で乱戦になる。

(この章続く)

2014年03月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(095)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

10…Qb6?

 この手はここではほとんど意味がない。10…Nd7! の方がはるかに強力で、11.Be3 Qa5(または 11…Qc7)12.Qd2 O-O-O! 13.Bxh6 Bxh6 14.Qxh6 e5! となればポーンの代償が豊富にある。

11.Bc4 Nd7 12.a4!

 この判断は機敏だった。白は黒がクイーン翼にキャッスリングしたいのを感知して、さっそくポーンの暴風を開始する。

12…a5

 この着想は理にかなっている。代わりに 12…e6 は 13.a5 Qc7 14.Qf3 となって、白陣が広がって優位に立ち、駒にも好所が得られる。しかしここで 12…O-O-O は白が自分の12手目のおかげで b2-b4! 突きで列を素通しにできるので魅力が減っている。

13.Qf3 e6 14.O-O Bc2

 黒が 14…O-O-O 15.b4! axb4 16.a5 Qc7 17.a6! を気に入らないのは当然だし、14…Bd6? も 15.Bxh6 で自陣を改善することなくポーンを損する。だから黒は白がe6で犠牲を払う用意ができる前に白のキング翼ビショップと交換できることを期待して奇妙な捌きをやろうとした。

15.Bf4!

 黒の10手目が白のクイーン翼ビショップをbポーンの守りに縛りつけていないことを証明した。15…Qxb2? は 16.Ra2! で黒の駒損になる。

15…Bb3 16.Bd3 e5?!

 フロールは Ne4-d6 を恐れていた。白は c3-c4 突きで黒のクイーン翼ビショップを捕獲することを狙ったかもしれない。黒はこれらの狙いに対処するために不本意ながら自分の白枡(特にe4とf5)を弱めた。しかしこれらの弱点は白のd列の支配とあいまって致命傷になった。代わりに 16…O-O-O 17.Ne4 Bd5! と指す方が少し良かった。

(この章続く)

2014年03月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(096)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

17.Be3 Bd5 18.Be4!

 白はビショップ同士を交換して、ナイトがe4かf5に居すわってもいじめられないようにしたがっている。

18…Qb3 19.dxe5 fxe5 20.Rad1!

 もちろん白は 20.Bxd5? cxd5 で中央での黒の地歩を強化するのを避けている[訳注 21.Rfd1 で白の勝勢になるので正着は 20…Qxd5 です]。本譜の手は黒にビショップ同士の交換を仕向けている。なぜなら 20…Bc4 と交換を避けるのは 21.Rfe1 Qxb2?(この手は望みがないがどのみち受けがない)21.Bxc6! bxc6 22.Qxc6 で、白駒を黒キングから隔てているポーンの防壁が崩壊するからである。

20…Bxe4 21.Qxe4 Qe6

 黒クイーンが防御のために戻った。21…Qxb2? とポーンをかすめ取るのは見込みがない。22.Rxd7! Kxd7 23.Rd1+ Kc8(23…Bd6 は 24.Qxe5 Qa3 25.Bc5!)24.Qf5+! で詰みになる。

22.Rd2!

 黒は(16…e5?! によって)寛大に白に素通しにさせたd列が破滅の元になる。

22…Nf6 23.Qf3 Rg8 24.Rfd1 Rg4

 Nf5-d6 を止めようとしても無駄である。

25.Nf5! e4

(この章続く)

2014年03月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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カロカン防御の指し方(097)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例2(続き)

 白クイーンがナイトを見捨てなければならないように見えるが、ホロウィッツの読みはそれを上回った。

26.Bb6!!

 d8での詰みの狙いがある!黒はどの変化でも戦力損になる。26…Nd5 27.Qxg4。26…Be7 27.Qxg4! Nxg4 28.Ng7+。26…Qc8 27.Nd6+ Bxd6 28.Qxf6 Be7(28…Rxg2+ は永久チェックにならない。白キングはe3に逃げてe4のポーンを取る)29.Qh8+ Bf8 30.Rd8+。フロールは最も可能性のある手を見つけた。

26…Rxg2+ 27.Qxg2 Qxf5 28.Rd8+ Rxd8 29.Rxd8+ Ke7 30.Qg3!

 白が黒キングに対する攻撃を続けられなかったら、交換得の有利を勝ちに転化するのは難しい問題になっていたかもしれない。

30…Nd7 31.Bc7! Qd5

 31…Qe6 なら 32.Ra8 から 33.Bd8+ を狙う。

32.c4! Qg5

 クイーン同士の交換は白をやりやすくさせるが、32…Qd4 は 33.Qh4+ f6 34.Qg4 で 35.Qg6 から 36.Qe8# を狙われて改善策にならない。

33.Qxg5+ hxg5 34.Ra8 Ke6

 34…b6 でも 35.Bd8+ Ke6 36.Bxg5 で白の勝ちになる。

35.Bxa5 f5 36.Bc3 f4 37.a5 g4 38.b4 f3 39.Bd2!

 黒のポーンを止めつつhポーンを突いていくつもりである。

39…Kf7 40.Ra7! g3 41.Rxb7 黒投了

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(098)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

 最後に黒がhポーンを犠牲にする「ギャンビット」の例をお目にかける。

実戦例3
白 M.ボスコビッチ
黒 M.ローデ
ニューヨーク、1979年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ gxf6 6.Ne2

 白は黒のクイーン翼ビショップをいじめる作戦を選んだ。

6…Bf5 7.Ng3 Bg6 8.h4 h5!

 この手は 8…h6 よりずっと攻撃的である。どちらにしても白のもっとも理にかなった作戦は黒のhポーンを攻撃することである。前局と比較してみるとよい。

9.Be2 Nd7 10.c3

 白は …Qa5 によるチェックを避けて黒のhポーンを取ることを狙っている。

10…Qa5!

 黒はhポーンを失うことは気にしない。しかしまず b2-b4 突きを誘って白のクイーン翼を弱めさせたいと考えている。

11.b4 Qc7

 hポーンを取らせまいとする 11…Qd5!? も可能である。

12.Nxh5 Bxh5

 ローデは 12…a5 に 13.Nf4 を恐れていた。しかし黒はそれでも立派なポーンの代償がある。

13.Bxh5 a5 14.Bg4

 12…Bxh5 のもっと厳しい試金石は 14.Be2 axb4 15.cxb4 e5 16.b5 である。

14…axb4 15.cxb4 f5!? 16.Be2

 16.Bxf5 は 16…e6 17.Be4 Bxb4+ となって黒のすべての駒が働いてくる。黒キングは中央でまったく安全だが白キングはそうでないことに注意がいる。しかし白はキング翼にキャッスリングすればhポーンを取られるし、クイーン翼にキャッスリングするのは素通しの筋が多すぎて問題外である。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(099)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例3(続き)

16…Qd6 17.Qb3

 串刺しの 18.Bb2 を用意して戦術的にdポーンを守った。

17…Nb6 18.Bb2 Na4! 19.Rd1

 この手のあと白のdポーンは落ちる運命である。たぶん白は 19.d5 に期待していたのだろうが、19…e5! でa1-h8の斜筋が閉ざされることを見落としていた。20.dxe6e.p.? と取ると 20…Qxb4+ 21.Kf1 Nxb2 で白の駒損になる[訳注 20.a3 で白が悪くないようです。だから黒はすぐに 20…Nxb2 と取るべきです]。

19…Nxb2 20.Qxb2 Bg7 21.a3 Rd8 22.Qc2 e6 23.Rh3 Bxd4

 ポーンが落ちた。戦力が互角になって黒の攻撃が続く。

24.h5 Qf4! 25.Bf3

 25.Bc4? Bxf2+! 26.Qxf2? は 26…Rxd1+ でクイーンが取られる。

25…e5! 26.Rd2 e4 27.Bd1 Rg8

 黒はすべての駒が攻撃に加わった!

28.g3 Qe5! 29.Re2

 …e4-e3 と …Bc3 の二つの狙いに適当な受けがない。

29…Bc3+ 30.Kf1 Qd4! 31.Re1 Bxe1 32.Kxe1 f4! 33.Rh4

 だめもとで 33…fxg3?? 34.Rxe4+ を期待した。

(この章続く)

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カロカン防御の指し方(100)

第6章 ブロンシュテイン=ラルセン戦法 ジャック・ピーターズ(続き)

実戦例3(続き)

33…Rxg3! 34.fxg3 Qg1+ 35.Ke2 f3#!

(この章終わり)

2014年04月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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