開放試合の指し方の記事一覧

開放試合の指し方(001)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス

 1.e4 e5 で始まる布局はすべて開放試合と呼ばれる。

 開放試合では駒の展開が迅速で、中央でのポーンの交換のために占拠されていない盤上の枡が多くなることがよくあり、クイーンとビショップは「本拠」の斜筋に沿ってすぐに動ける。上図から両者のクイーンとキング翼ビショップが最初からよく働くことが分かる。さらに迅速に展開を図るために白が早く d2-d4 と突くと、黒の …exd4 により中央がさっぱりしもっと開けた局面になってくる。

 開けた局面では黒は自分のキングの守りを弱めないように慎重を期さなければならない。例えば黒がfポーンを突くと、白クイーンにh5でチェックをかけられて破滅するかもしれない。一般に黒はキング翼の駒の展開を迅速に完了してキングをキング翼にキャッスリングすることにより安全を確保することを望む。白の方も戦力を迅速に動員することを望み、黒のどんな失策にもつけ込んで黒キングに猛攻を仕掛ける用意をする。しかしこれらの布局から生じる局面の開放的な性質のために、どんな早まった攻撃もたいていやぶ蛇になり、キングの囲いのどんな弱体化も危険になることがある。黒クイーンはd8-h4の斜筋で動けるので、容易にg5またはh4の地点に来て白キングを攻撃することができる。

 マスターのチェスで最もよく指される開放試合は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から出現するルイロペス(スペイン試合とも呼ばれる)である。一見これは非常に激しい攻撃作戦のように見えるかもしれないが、実際には黒のe5のポーンを叩きそれにより黒の中央の地歩を弱めようとするゆっくりした秩序だった戦略である。この独特で重要な布局は別の叢書で扱う。

 1.e4 e5 の他の布局はすべて直接的で迅速な行動により特徴づけられる。この直接的な行動をとるのはたいてい白だが、場合によっては黒が希望し誘導することがある。

 本書で取り上げる開放試合は主要な特徴により以下の4種類に分類される。

(この章続く)

2013年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(002)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開

 以下の布局は白の迅速で直接的で理にかなった展開に特徴がある。4ナイト試合(第4章)、スコットランド試合(第5章)、ウィーン試合(第9章)、ビショップ布局(第10章)

 一般に黒の正しい対処法はまねをして、自分も迅速に展開しキング翼にキャッスリングしてキングを安全にすることである。そうすれば自信を持って中盤戦のこれから起こることに備えることができる。

 4ナイト試合の基本的な局面は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 で生じる。

 両者とも両方のナイトを中央をにらむ最適の地点に迅速に展開している。白はここで 4.Bb5 と指して、キング翼キャッスリングのために1段目を空けながら黒のeポーンに対しても圧力をかける。黒が対称形に 4…Bb4 と応じてやがてほぼ互角の達成を期待できるのは確かである。しかしもっと激しい 4…Nd4! の方が効果的である。その意図は白が迷惑なナイトを 5.Nxd4 と取ると、黒が 5…exd4 と取り返し白のクイーン翼ナイトが当たりになるので先手が取れるということである。白は 6.e5 と突くしかなく 6…dxc3 7.exf6 となって二組のナイトが盤上から消える。一般に布局で早く駒が交換されると、白の攻撃力が減少するので黒の防御がより容易になる。第4章では迅速な展開が続いてさらに避けられない交換が進み完全に互角の局面になるのを見ることになる。

(この章続く)

2013年07月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(003)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 スコットランド試合は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 で生じる。

 白のdポーンと黒のeポーンの交換で中央が少し清算された。これの直接的な結果として白は小駒を楽に展開でき、4段目のeポーンにより中央で少し優位に立っている。黒の方は中原ポーンの交換によりもうeポーンを守る心配がいらなくなり、中央の清算によりやはりキング翼の展開をすみやかに完了できる。完全に互角になるためには黒は適時の …d7-d5 突きにより白のeポーンの影響力を無効にする必要がある。第5章の主手順にはこれらの原則がよく表れている。4…Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Nxc6 bxc6 7.Bd3 d5 8.exd5 cxd5 9.O-O O-O 両者とも布局の目標をすぐに達成し、面白い中盤戦の準備ができていい勝負になる。

(この章続く)

2013年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(004)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 ウィーン試合では白はクイーン翼ナイトの展開をまず優先する。 1.e4 e5 2.Nc3

 eポーンを守り黒が中原で …d7-d5 と反攻する可能性をより難しくすることにより、白は黒による干渉を最小限にして展開を続ける可能性を得る。黒の最も開放的な応手は 2…Nf6 と展開する手である。白は 2.Nc3 の結果として少なくともいくらかの中原への影響力を保証されているので、ここで激しく 3.f4 と突っかけることができる。しかしウィーン試合の精神にもっと沿っているのは第9章で取り上げるように 3.Bc4 Nc6 4.d3 Bb4 5.Nf3 d6 6.O-O Bxc3 7.bxc3 Na5 8.Bb3 Nxb3 9.axb3 O-O である。両者ともキングは安全で展開はほぼ完了し、捌き合いの中盤戦が予想される。

(この章続く)

2013年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(005)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 A)白の迅速で直接的な展開(続き)

 単純で直接的な展開はやはりビショップ布局の主題である。 1.e4 e5 2.Bc4

 白は見通しのよい活動できそうな斜筋にビショップを出した。しかし黒はまだ …Nc6 と指す必要がないので、素早く …c7-c6 から …d7-d5 と突いて白のビショップに挑んでいける。2…Nf6 3.d3(3.Nc3 はウィーン試合に移行する)3…c6 4.Nf3 d5 5.Bb3 Bd6 のあと、黒はキャッスリングの用意ができていて少なくとも一時的に白のキング翼ビショップの斜筋を閉鎖している。

(この章続く)

2013年07月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(006)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開

 以下の布局では白はいくらか展開したあとすぐに直接行動を起こす用意ができている。ジオッコピアノ(第2章)、2ナイト防御(第3章)、中央試合/デンマークギャンビット(第10章)、ポンツィアーニ布局(第10章)

 ジオッコピアノは理にかなった展開手順の 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 で生じる。

 白はキング翼のビショップとナイトを展開し、ビショップは黒の潜在的な弱点のf7をにらみ、ナイトもそこでの活動に参加できる。黒もキング翼の展開を迅速に完了し、白の攻撃の可能性を最小限にすることを望んでいる。例えば 4.O-O Nf6 のあと 5.Ng5? と攻撃するのは黒が単に 5…O-O とキャッスリングするので明らかに時期尚早である。6.Bxf7+?! Rxf7 7.Nxf7 Kxf7 と交換しても黒が戦力得になり陣形にも不安な所がない。

 図の局面で白はポーンを犠牲にして手を稼ぎ展開を速めるために 4.b4 でエバンズギャンビットにすることができる。または 4.d3 から 5.Nc3 で単純で直接的な展開を目指すこともできる。しかし展開を攻撃の可能性と組み合わせる最善の手段は 4.c3 で 5.d4 を狙うことである。黒はこれを防ぐ適当な手段がないので、最善の策は 4…Nf6! でキング翼の展開を完了することである。予定の 5.d4 exd4 6.cxd4 のあと、黒は 6…Bb4+ と白キングをチェックすることにより手損することなくビショップを動かすことができる。7.Nc3 は単純に 7…Nxe4 と取られるので(この変化手順については第2章を参照)、白は 7.Bd2 と指す方がよい。そして 7…Bxd2+ 8.Nbxd2 d5! 9.exd5 Nxd5 10.Qb3! Nce7! 11.O-O O-O となったあと両者ともキング翼の展開が完了している。中盤戦に向けてより活動的な陣形になっているので白が少し優勢である。

(この章続く)

2013年07月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(007)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 2ナイト防御は 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 のあと黒が 3…Nf6 と応じて生じる。

 黒はキング翼ビショップより先にキング翼ナイトを展開することにより白のeポーンに圧力をかけるが、自分のf7の地点を攻撃にさらされやすくしている。ここで白には理にかなった作戦が二つある。それは 4.d4 で中央から仕掛けていくのと、 4.Ng5 により黒のキング翼に対してすぐに攻撃を仕掛けることである。ほとんど必然の 4…d5 5.exd5 のあと黒はポーンを犠牲にすることにより 5…Na5! 6.Bb5+ c6! 7.dxc6 bxc6! で白の攻撃にブレーキをかけるのがよい。8.Be2 h6 のあと黒は展開で優位に立ち、犠牲にしたポーンのほぼ代償となる。黒が活発に指せる可能性は2ナイト防御の方がジオッコピアノよりもはるかに大きいことは強調しておく。しかしその代価は1ポーンの丸損である。

(この章続く)

2013年07月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(008)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 中央試合に属するデンマークギャンビットでは白は5手のうちに2ポーンを犠牲にして展開を速める。1.e4 e5 2.d4 exd4 3.c3 dxc3 4.Bc4 cxb2 5.Bxb2

 局面が非常に開けているので白の展開の優位は容易に決定的になることがある。だから黒は欲張らずに 5…d5! でポーンを1個返すのがよい。第10章で見られるように黒はもう1個のポーンを保持し、それにより優勢を確実にする。

(この章続く)

2013年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(009)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 B)速攻を念頭においた白の迅速な展開(続き)

 中央ですぐに行動を起こすのがポンツィアーニ布局の構想で、1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.c3 から生じる。

 白は 4.d4 で強力な中原を作るつもりである。黒はそれを防ぐことはできないので、やはりキング翼を迅速に展開するのが最善である。3…Nf6! 4.d4 Nxe4 5.d5 Ne7 6.Nxe5 Ng6 7.Bd3 Nxe5 8.Bxe4 Bc5 両者とも文句のない形でいい勝負である。

(この章続く)

2013年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(010)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 C)白が攻撃する

 白の最速攻撃布局はキング翼ギャンビットである。1.e4 e5 2.f4 黒が 2…exf4 とポーンを取ればキング翼ギャンビット受諾になる。

 この局面はこの上なく激しくて不均衡である。白は大切なfポーンを捨てた上にキング翼も非常に弱めている。それは何のためか?白は二つのことを期待している。それはf列での攻撃の可能性と、早い d2-d4 突きによる強力な中原である。白はこれらの目標を二つとも達成できれば、非常に有利になる。黒にはいくつかの明確な作戦がある。基本的な戦略は二通りである。一つは 3.Nf3 に 3…g5 で前方のfポーンを守ることである。もう一つは中央での動きで防御と攻撃とを兼ねることである。第7章で取り上げる主手順は 3…d5 から始まる後者の手法を用いている。キング翼ギャンビットの局面はすべて非常に激しい戦いになるので、具体的な手順の豊富な知識と理解なしにはうまく指していくことができない。第7章での重要な局面は 4.exd5 Nf6 5.Bb5+ c6 6.dxc6 Nxc6 7.d4 Bd6 8.Qe2+ Be6 で生じる。黒は展開の迅速な完了に努め、9.Ng5 には 9…O-O! でポーンを犠牲にする構えである。中盤戦は非常に難解になり、知識の量と勇敢な心に優る方が勝つだろう。

(この章続く)

2013年07月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(011)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する

 数は少ないが黒が布局を選択でき、攻撃的か防御的かの傾向を選ぶことさえできる。

 1)防御的布局

 黒の選択できる二つの防御的布局はフィリドール防御(第10章)とペトロフ防御(第6章)である。

 1.e4 e5 2.Nf3 のあと黒がeポーンを 2…Nc6 でなく 2…d6 で守ればフィリドール防御になる。

 黒の手法はもちろん棋理に合っているが、それでも実戦での問題は 3.d4 Nf6 4.Nc3 Nbd7 5.Bc4! Be7 6.O-O O-O のあと黒陣が狭苦しいということである。結果として実戦では白が中盤戦ではるかに楽にのぞめる。

(この章続く)

2013年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(012)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 1)防御的布局(続き)

 ペトロフ防御は黒が 1.e4 e5 2.Nf32.Nf6 と応じて白のeポーンを当たりにすることにより生じる。

 黒が攻撃しているようだが、いつも白より1手遅れていていずれ自分の展開よりも白の狙いをかわすことに甘んじなければならなくなるので、実際には非常に防御的な布局である。典型的な局面は 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 で生じる。局面はほとんど対称形だが、白が1手先行しているので少しだが楽に優勢である。ペトロフは本質的に互角にするまたは引き分けにする防御で、黒で勝ちを目指すには適さない。

(この章続く)

2013年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(013)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 2)攻撃的布局

 黒がどうしても攻撃側に立ちたければ、ラトビアギャンビット(第10章)、あるいはキング翼ギャンビットに対してファルクビア逆ギャンビット(第8章)を採用することができる。

 1.e4 e5 に対する白の断然最もよく指される2手目は 2.Nf3 である。黒がこんなに早い段階でも凶暴な攻撃をしたければ、2…f5 でラトビアギャンビットを指すことができる。

 実戦では黒がこのギャンビットに精通しているのに(そもそも自分から選択したので)、白はそうでないので(たぶん予期していないので)、黒が健闘することが多い。しかし黒の2手目はキング翼を弱め、展開に何も寄与せず、eポーンの守りをほったらかしにしている。白にはこれらにつけ込む手段がいくつかある。第10章で取り上げる手順では 3.Nxe5 Qf6 4.Nc4! fxe4 5.Nc3 Qg6 6.d3! で白の方が攻撃側に回る。

(この章続く)

2013年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(014)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 D)黒が布局を選択する(続き)

 2)攻撃的布局(続き)

 1.e4 e5 2.f4 のあとキング翼ギャンビットを受諾するのが守勢的過ぎるか複雑さが不十分だと思えれば黒は 2…d5 でファルクビア逆ギャンビットにすることができる。

 白が注意深く指さなければいけないことはもちろんだが、第8章に示す手段で有利な収局に持ち込むことができ、それにより黒の作戦と期待から毒気を抜くことができる。 3.exd5 e4 4.d3 Nf6 5.dxe4 Nxe4 6.Nf3 Bc5 7.Qe2 Bf5 8.Nc3 Qe7 9.Be3 Bxe3 10.Qxe3

(この章続く)

2013年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(015)

第1章 開放試合の概要 エドマー・メドニス(続き)

 全般的な結論として黒は 1.e4 e5 で始まる布局で速攻をかけるのは棋理に合っていない。しかしこれはそのような手法が実戦で成功しないということや、白が気楽にやっていけることを意味していない。この指針の要点は布局の指し方の原則を理解すればチェスをもっと楽しく指すことができ、もっと得点をあげるのにも役立つようになるということである。

(この章終わり)

2013年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(016)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4

 3.Bc4 には二つの具体的な着想と一つの一般的な着想がある。このビショップはc4の地点から、キャッスリングしていないキングの近くの最ももろい地点のf7に直接狙いをつけている。中央の要所のd5にも利いているので、黒が中央で …d7-d5 と突いて自陣を解放するどんな作戦も実行がより難しくなる。最後に、小駒を最下段から取り除くことにより、白はキング翼キャッスリングの用意ができる。早いキャッスリングは開放試合では望ましいのが普通である。それは一般にキングは中央よりも隅の方が安全で、キング翼ルークは迅速にe列またはf列で戦いに参加できるからである。

3…Bc5

 この対称形の応手でジオッコピアノになる。黒の手の着想は白の手とまったく同じである。もちろん黒は白より1手遅れているので当面は攻撃よりも防御に精を出さなければならないと予期すべきである。

 c5が黒ビショップにとって最も働きのある地点であることを見てとるのはかなり容易である。時には黒はもっと守勢の 3…Be7 を選ぶことがある。これはハンガリー防御と呼ばれている。しかし直接比較すると白のキング翼ビショップの方が活動的なので、中央ですぐに 4.d4! と突くのが白にとってより活動的な局面になるので良い。

 まずキング翼ナイトを中央の好所に 3…Nf6 と展開するのも良い手である。これは2ナイト防御になり、第3章の主題である。

4.c3!

 黒の3手目のあと白は三つの基本的なやり方を選べる。

 1)極度に激しいエバンズギャンビットの 4.b4。白は1ポーンを犠牲にしてちょうど1手を得する。第1章で述べたように手得は手数が単位であり、望みの目標を達成するために用いられる余分の手を意味する。4…Bxb4 のあと白は 5.c3 と突く。白はビショップを当たりにすることにより、望みの 6.d4 突きのための手得を得る。しかし黒はビショップをc5に戻す必要はなく、5…Ba5! と引くことにより活動的な位置に据えることができる。このビショップは白の 6.d4 で当たりにされるc5よりも安全で、e7よりも活動的である。6.d4 のあと黒が欲張って 6…exd4?! と取るのは、7.O-O! で白の展開の優位が非常に危険なものになることがあるので非常に危険を伴う。代わりに黒は堅実に 6…d6! と指し、7.Qb3 にfポーンを 7…Qd7 で守るべきである。ここで白が 8.dxe5 で局面を開放しようとすれば、黒が取り返すのは危険が多いが 8…Bb6! で有望な反撃を策することができる。ここで黒は白が 9.O-O と指すか 9.exd6 と指すかにかかわりなく、9…Na5 によりナイトを白の強力なキング翼ビショップと交換するつもりである。白のキング翼ビショップが盤上から消えれば、黒にはもう心配がなく、完全に互角の中盤戦を期待することができる。

 2)落ち着いた本筋の展開の 4.d3 Nf6 5.Nc3 d6 6.Bg5。この戦型は布局名を一番よく表現している。ジオッコピアノとはイタリア語で「落ち着いた試合」である。黒の展開は本筋で迅速なので、何もおそれずに 6…h6! で釘付けをはずすことができる。7.Bh4 には対称的に 7…Bg4 とかかるのが良く、7.Bxf6 Qxf6 8.Nd5 Qd8 9.c3 a6 10.b4 Ba7 で黒陣は堅固で無理がない。

 3)両者をあわせ持つ最善手は 4.c3! である。白は他の戦型に見られた不利が何もなく中央で d2-d4 と積極的に突く用意をする。

4…Nf6!

(この章続く)

2013年07月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(017)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 黒は 5.d4 を防ぐ満足な手段がないので、キング翼ナイトを展開するとともにeポーンを当たりにするのが、先手をとり断然最善で最も理にかなった手である。

 4…Qe7?! と 4…d6?! はどちらも劣った手である。4…Qe7 の問題点は白がいずれにしても 5.d4! と突くということである。5…exd4!? とポーン得するのは 6.O-O! dxc3 7.Nxc3 となって黒が危険すぎる。というのは黒は既に展開が遅れていて、白の 8.Nd5 がくると黒クイーンがまた動かなければならないのでさらに遅れるからである。4…d6 の問題点は消極的すぎて白が 5.d4 exd4 6.cxd4 で非常に強力な中原を築くということである。このあと 6…Bb4+ なら白は 7.Nc3 と指すことができ、本譜でのeポーンの犠牲に関連した危険を伴わない。また 6…Bb6 なら7.Nc3 Nf6 8.Be3! Bg4 9.Bb3! O-O 10.Qd3! でよく、10…Bxf3 11.gxf3 は白の中央をさらに強化するのに役立つだけなので恐れる必要がない。

5.d4

 これが 4.c3 の継続手のうち唯一理にかなった手である。もちろん堅実な 5.d3 でも指せるが、それなら白の4手目はどういう趣旨だったのだろうということになる。ある布局の局面で良い作戦が複数存在するということはよくある。それでも具体的な作戦を選択したならば一貫してそれを実行しなければならない。色々な針路をあちこち跳ね回るのは消化不良に陥るだけである。

5…exd4 6.cxd4

 これが当然の応手である。6.e5!? で黒のキング翼ナイトをどかせようとするのは油断ならない手である。実際黒がナイトを動かすと困ったことになる。6…Ng4? なら 7.Bxf7+! Kxf7 8.Ng5+ から 9.Qxg4 だし、6…Ne4? なら 7.Bd5! である。しかし黒は白のキング翼ビショップの位置につけ込んで、6…d5! と突くことにより反撃することができる。白が 7.exf6 dxc4 8.fxg7 Rg8 と指そうと 7.Bb5 Ne4 8.cxd4 Bb6 と指そうと、ねじり合いの中盤戦は黒も指せる。

 白の本譜の手(6.cxd4)のあと黒のビショップは当たりになっている。例えば黒が 6…Bb6? と引くと白のポーンが 7.d5 Ne7 8.e5 Ng4 9.d6! と突進してきて脅威をもたらし、ここで 9…Nxf2 10.Qb3 Nxh1 ならば白には 11.Bxf7+ Kf8 12.Bg5! という必殺の手がある。しかし黒は白キングにチェックをかけることによりビショップを安全にすることができる。

6…Bb4+

(この章続く)

2013年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(018)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 白はここで黒からのチェックをどのくらい真剣に受け止めるかを決めなければならない。選択肢は次の3手である。

 1)危険な 7.Kf1 には罠が仕掛けてあって、欲張りな 7…Nxe4? は黒が痛い目にあう。8.d5! Ne7 9.Qd4 Nf6 10.Bg5 となれば白に非常に強力な攻撃態勢ができあがる。一つの典型的な例は 10…Ng6 11.Nbd2 Be7 12.Re1 O-O 13.h4! で、白のすべての駒が攻撃の用意ができていて黒が生き延びる可能性は非常に小さい。白が自発的にキャッスリングの権利を放棄した決断につけ込む正しい手段は、中央で積極的に主眼の 7…d5! 突きを行なうことである。8.exd5 Nxd5 9.Bg5 Qd6 10.Nc3 Bxc3 11.bxc3 O-O! のあと白はキングの不都合な位置の代償がない。

 2)攻撃的な 7.Nc3 は布局定跡によって最も探究されている手である。白は貴重なeポーンを犠牲にして、ポーン損の代償に十分な攻撃力を得ることを期待している。黒はこの守られていないポーンを取ることができるし、取るべきである。白の成算は以前は少なくとも十分互角になると考えられていたが、現在の知識では黒が白の襲撃をすべてうまくしのぐことができるということが示されている。この戦型を指す最善の手段は次のとおりである。7…Nxe4 8.O-O(唯一のまともな方法は攻撃を目指すことである)8…Bxc3!(ナイトで取るのは 8…Nxc3?! 9.bxc3 でビショップが当たりになって先手を取られるので劣る。布局での不面目を一つにとどめるためには黒は 9…d5! と突いて展開/攻撃しなければならない。というのは欲張って 9…Bxc3? と取るのは 10.Ba3! で罰せられるからである。例えば 10…d5 11.Bb5! Bxa1 12.Re1+ Be6 13.Qa4! Rb8 14.Ne5! となれば、黒はキャッスリングできずキングは元位置で受けなしである。一つの典型的な例は 14…Qc8 15.Bxc6+ bxc6 16.Qxc6+ Kd8 17.Nxf7+ Bxf7 18.Be7!# である)9.d5!?(またもや白の最も積極的でまごつかせる作戦。9.bxc3?! は 9…d5! からキャッスリングで黒は何も怖いものがない)9…Bf6!(他の手では白が有利な態勢で駒を取り返す。黒が 9…Ne5 10.bxc3 Nxc4 11.Qd4 Ncd6? で駒得にしがみつこうとするのは 12.Qxg7 Qf6 13.Qxf6 Nxf6 14.Re1+! Kf8 15.Bh6+ Kg8 16.Re5! Nfe4 17.Rae1! f5 18.Re7! b6 19.Ne5! で破滅する。黒は「名目上」駒得にすぎない。実際は両方のルークとクイーン翼ビショップ抜きで戦っているようなものである。それにひきかえ白はすべての駒が攻撃に参加している)10.Re1 Ne7 11.Rxe4 d6

(この章続く)

2013年07月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(019)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 これが 7.Nc3 の戦型の重要な局面である。黒はポーンを得していて、余裕があればキング翼にキャッスリングしてあまり苦労なく自陣を固める。だから白は攻撃を続けるべきで、それには二通り考えられる。

 a)12.g4 O-O! 13.g5 Be5 14.Nxe5 dxe5 15.Rxe5 Ng6 16.Re1 Qd7[訳注 16…Qd6 の誤植かもしれません]白はポーンを取り返したがキングの守りを著しく弱めた。黒が有望といえる。

 b)12.Bg5 Bxg5 13.Nxg5 h6! 14.Bb5+(14.Qh5 なら黒は単にキャッスリングする)14…Bd7 15.Qe2 Bxb5 16.Qxb5+ Qd7 ここで 17.Qe2 なら 17…Kf8! で黒は白がナイトを引いたあと 18…Nxd5 でまたポーンを取る。代わりに 17.Qxb7 なら黒は 17…O-O とキャッスリングし 18.Rae1 Ng6 19.Nf3 Rfb8 のあとbポーンを取り 7…Nxe4 と取ったときからのポーン得を維持する。

 これらの難解な変化はどれもジオッコピアノの中で断然最も難しい手順である。非常に難解なので実際に 7.Nc3 を指す選手はあまり多くない。だからここではこういう変化もあるということにとどめる。

 3)安全で本筋の 7.Bd2 が白の最善手で、ここでの主手順である。白はチェックに展開で応じ、戦力を放棄しない。

7.Bd2 Bxd2+

 白のビショップが黒のビショップに当たりになっているので、ここでの 7…Nxe4 は 8.Bxb4 Nxb4 9.Bxf7+! Kxf7 10.Qb3+ d5 11.Ne5+! という連続手筋を誘発する。黒キングがどこに行こうと不安定なので、白が駒を取り返した後は優勢である。

8.Nbxd2

 eポーンを守りながら展開するのが唯一の正しい手段である。

8…d5!

 黒は中央における白の現在の優位に挑戦しなければならない。そして今がちょうどその時機である。

 8…Nxe4 9.Nxe4 d5 と擬似的に駒を捨てるのは面白い着想である。しかし 10.Bxd5 Qxd5 11.O-O! でも 10.Qe2 O-O 11.O-O-O! でも白が中央への大きな影響力を保持し、それにより少し優勢である。

9.exd5 Nxd5 10.Qb3!

(この章続く)

2013年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(020)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 これは白の飛び抜けて積極的な手で、黒の二通りの悪手を誘うので実戦の観点からもすぐれている。

 1)10…Qe7+? はなるほど白のキャッスリングを妨げるが、11.Kf1 のあと黒は駒損をしなければならない。当たりのd5のナイトが逃げなければならず、例えば 11…Nf4 なら 12.Re1! Be6 13.d5 で釘付けのビショップが死ぬ。

 2)10…Na5?! は白にビショップを手放させるが、ナイトが盤端で遊ぶという損失はあまりに大きい。11.Qa4+ c6 12.Bxd5! Qxd5 13.O-O O-O 14.Rfc1! この手には 15.Rc5 でナイトを取る狙いがある。14…b6 15.b4 Nb7 16.Qxc6 白が重要なc6のポーンをもうけた。

10…Nce7!

 黒のキング翼ナイトはd5で攻防によく利いている。もう一つのナイトがe7に行きたぶんこのあと …c7-c6 と突くことにより、d5のナイトが地歩を保てることが保証される。

11.O-O

 白はキングを安全にし、キング翼ルークがこれからの作戦に参加できるようにした。

11…O-O

(この章続く)

2013年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(021)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

 黒ももちろんキングの安全を確保しなければならない。

 両者とも初期の展開を完了し終えて、局面とそれぞれの展望を評価する時機である。

 白はキング翼ルークでe列を占拠し、ルークを重ねることによりいつかはこの列への圧力を増すかもしれない。キング翼ナイトのためにe5の地点を使いクイーン翼ナイトのためにe4またはc5の地点を使って黒陣にさらに圧力をかけるように努める。

 黒は白の実効性のある攻撃を防ぐようにし、機会をとらえて白陣の根本的な弱点である孤立dポーンに対して反撃を開始する。

 当面は白の方が活動的な局面で展開が進んでいるので、理論的に少し優勢である。しかし黒は自陣に根本的な弱点がないので、白の圧力を完全に無効にするのはしごく当然かもしれない。白が不注意をおかせば、黒は白の孤立dポーンを叩く絶好の機会にめぐまれるだろう。

(この章続く)

2013年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(022)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1
白 E.メドニス
黒 B.スパスキー
世界学生チーム選手権戦、バルナ、1958年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2 d5 9.exd5 Nxd5 10.Qb3 Nce7

 気が狂ったように思われるがソ連のグランドマスターのダビド・ブロンシュテインの示唆するように、当たりのナイトを放置してキャッスリングしてしまうことは可能かもしれない。10…O-O!? 11.Bxd5 Na5 のあと黒は駒を取り返せる。白は 12.Bxf7+ Rxf7 13.Qc3 Re7+ 14.Kd1 でポーン得を維持できるけれども、白キングの位置が不安定なので黒は反撃に希望が持てる。

11.O-O O-O 12.Rfe1

(この章続く)

2013年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(023)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白が陣地の広さのわずかな優位を活用しようとするには、唯一の素通し列を支配するのが最善の手段である。

12…Nb6

 白にビショップを引かせようとするのは、ナイトが中央の拠点を離れるのでよしあしである。もっと堅実な 12…c6 については参考棋譜2を参照されたい。

13.Bd3 h6

 この手は白の Ng5 からのいかなる手筋もなくした。13…Be6? は交換損の犠牲の 14.Rxe6! が強烈なのでやぶ蛇である。14…fxe6 のあと白は 15.Qxe6+ または 15.Ng5 のどちらででも非常に危険な攻撃に出られる。

14.a4

 黒のナイトはa4に留まることになるこのポーンを攻撃する「配置に」既についているし、ビショップもd7から攻撃するので、白のこのポーン突きは余計だった。14.Rac1! から 15.Bb1 を予定しb1-h7の斜筋で詰みの狙いに期待する方が有望だった。

14…a5! 15.Rac1 Bd7 16.Qc2 Ned5! 17.b3 Nb4 18.Qb1 Nxd3 19.Qxd3 Be6 20.Re5!

(この章続く)

2013年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(024)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白は当然素通しe列を活用しようとし、黒はe列での圧力を無効にしようとしながら白のb3とd4のポーンの弱さにつけ込めることを期待する。全体的にはいい勝負である。

20…Re8 21.Rce1 Nd5! 22.Qe4 Qd7 23.h3 c6 24.g4

 白はキング翼での広さの優位を拡大した。黒に白の弱いポーンへの攻撃を始める余裕を与えるわけにはいかない。

24…Re7 25.Nh4 Rae8 26.Qf3 Nb4! 27.Nf5

 互角にするために一連の駒交換をさせるのが白のできる最善の策である。

27…Bxf5 28.Rxe7 Rxe7 29.Rxe7 Qxe7 30.Qxf5

(この章続く)

2013年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(025)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 クイーン+ナイトの収局は互角の勝負になる。そして互角を保つ最も簡明な手段は堅実な 30…Nd5 である。代わりにスパスキーは複雑化しようとした。

30…g6!? 31.Qxa5!

 取らないわけはないだろう。

31…Nd3 32.Nf1 Nf4 33.Qe5! Nxh3+ 34.Kg2 Qxe5 35.dxe5 Nf4+ 36.Kg3 Nd3 37.f4 g5?!

 黒はキング翼でどう見ても不要なポーンを取ることによりクイーン翼で試合に負ける危険をおかした。この局面では 37…Nc5 38.Nd2 Kf8! から 39…Ke7 と指す必要があり、黒は引き分けるのにさして苦労がいらないはずである。

38.fxg5 hxg5 39.Nd2! Nxe5?! 40.Ne4! Nd7 41.a5!

(この章続く)

2013年07月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(026)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜1(続き)

 試合はここで指しかけになり白の41目が封じ手だった。白が黒のbポーンを取ることになるので収局は白が断然有利である。しかしソ連チームの徹夜の完璧な分析により黒がまさに間一髪のところで引き分けにすることができた。

41…Kf8! 42.Nd6 Nc5! 43.Nxb7! Na6!

 aポーンをせき止めることは絶対の要件である。もちろん 43…Nxb7?? と 43…Nxb3?? はaポーンに 44.a6 と突っ走られてしまう。

44.Kf3 Ke7 45.Ke4 c5!! 46.Kd5 f5!!

 黒はgポーンを突き進ませることで反撃して引き分けにできる。

47.Nxc5! fxg4 48.Ne4 Kd8! 49.Kc6 g3 50.Nxg3 Kc8 51.Ne4 g4 52.Kb6 Nb4 53.Kb5 Nc2 54.Kc5?!

 これは黒にせき止めを作らせて簡単に引き分けになってしまう。54.b4! なら黒の手はかなり難しかったが、それでも 54…Kb7 55.Ka4 Nd4 でちょうどしのげる。

54…Kb7 55.b4 Ka6! 56.Ng3 Na3 57.Ne2 Nc2 引き分け

(この章続く)

2013年07月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(027)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2
白 J.メステル
黒 V.ホルト
ヘースティングズ、1977/78年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.c3 Nf6 5.d4 exd4 6.cxd4 Bb4+ 7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2 d5 9.exd5 Nxd5 10.Qb3 Nce7 11.O-O O-O 12.Rfe1 c6

(この章続く)

2013年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(028)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 これは諸刃の剣の 12…Nb6 に代わる堅実な手である。黒はd5のナイトがしっかり守られクイーンがc7とb6に行けるようにした。

13.a4!

 今回のaポーン突きはクイーン翼を広げるためのまったく正しい手法である。なぜなら黒が …c7-c6 と突いてd7-a4の斜筋を閉じたのでこのポーンが危なくないからである。

13…a5!

 白のaポーンによってさらに侵食されるのは防ぐべきである。他の手は劣っている。(a)13…Qb6?! 14.a5! クイーン交換後の収局は白陣の方が広いので白が有利である。(b)13…Ng6?! 14.Bxd5! 黒は孤立dポーンの防御が煩わしい。

14.Ne4 Qb6!

 黒はクイーン交換に出るのが最も安全である。14…Bf5 とビショップを展開するのは 15.Ng3 Bg6 16.Ne5 で白が圧力をかけ続けることができる。

15.Nc3 Qxb3 16.Bxb3 h6

(この章続く)

2013年07月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(029)

第2章 ジオッコピアノ(イタリア試合) エドマー・メドニス(続き)

参考棋譜2(続き)

 この手は最下段での頓死の可能性を防ぎ、白からの Ng5 に煩わされずに 17…Be6 と出る手も予定している。そこで白はd5の地点で2回駒を交換して黒に孤立dポーンを受け入れさせることにした。

17.Nxd5 Nxd5 18.Bxd5 cxd5 19.Re7!

 7段目に活動的なルークを侵入させた白が収局で優勢になったように見える。しかし・・・

19…Ra6!! 引き分け

 黒ルークは絶好のb6の地点に行き、白のbポーンを当たりにしながら自分のbポーンを守る。それにより黒のビショップが展開でき、完全に可能性が互角になる。

 この合意の引き分けは少し早すぎるように思われるかもしれない。しかし理論的には正当である。両選手は可能性が互角であることを分かっていて、お互いの技量を信用している。

(この章終わり)

2013年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(030)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス

 1.e4 e5 で始まる布局の中で2ナイト防御は比較的単純な戦略構想を持っている。しかしその戦術の様相は白にとっても黒にとっても指すのが最も複雑なものの一つになっている。この戦法は攻撃的でかつ激しくて、たった1手の間に勢いが一方から他方へ劇的に移ることがよくある。8手あるいは10手後の局面の評価は、一方が戦力得だが他方が全面的に駒の働きに優るということがよくあるので難しい。主手順ではポーンを犠牲にするのは黒だが、白が攻撃の可能性を作り出すために戦力を犠牲にする手順もいくつかある。

 2ナイト防御は実際は反撃の布局なので誤称かもしれない。(事実ソ連では19世紀の偉大なロシア人名人にちなんで「チゴーリン反撃」と呼ぶことがある。)黒の構想はジオッコピアノのそれとは大変違っている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6!?

(この章続く)

2013年07月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(031)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 黒は敵からのf7の地点への攻撃に先んじて自分の方から当たりをかけた。黒は白が駒をもっと利かせて(Ng5 または c2-c3 から Qb3 によって)f7への襲撃を強めることができる前に、キャッスリングして安全を図ることを望んでいる。中央が危険な状況になってキャッスリングができなくなれば、…d7-d5 突きか …Nxe4 から …d7-d5 突きでf7への攻撃の鉾先を鈍らせるつもりである。白はすぐにf7の地点を攻撃しなければeポーンを守らされることになり、黒がナイトをc6とf6、ビショップをc5(またはe7)とg4(またはe6)に配置して堅固な防御態勢を築ける。

4.Ng5

 世界選手権に挑戦したことがありチェス史上最も偉大な選手の一人のジークベルト・タラシュはこの手を初心者のへぼ手と呼んだ。それでもこれはf7を攻撃する白の戦略における理にかなった継続手であり、タラシュの全盛期からほぼ1世紀たった今日では優勢を狙う白の最善の方策と考えられている。黒はf7への狙いに対処するために局面を開放するか自分の方から白キングに攻撃を仕掛けるかを迫られる。

 このあと見られるように 4.Ng5 からの主手順で黒はポーンと引き換えに展開の優位と自分の駒に役立つ素通し列が得られる。しかし多くの選手は白番ではたとえ局面が理論的に白に有利でも防御側に回ることを好まず、狙いを受けるよりも実行したがるものである。そのような選手には代わりに 4.d4 がある。

 それなら中央を開放しているのは黒ではなく白ということになる。そして例えば 4…Nxd4? 5.Bxf7+! Kxf7 6.Nxe5+ Kg8 7.Qxd4、または 4…d6 5.Ng5(これは白が既に攻撃の助けに d2-d4! と突いているので 4.Ng5 の戦型の改良版になる)で利益を得るのは白である。黒は 4…Nxe4 5.dxe5 Bc5 6.O-O でも中央が劣った形になる。なぜなら黒駒が中央にしっかり固定されていなくて、7.Qd5 で戦力得する白の狙いに何かしなければならないからである。

 4.d4 に対し黒は 4…exd4 と取って、局面を開放した責任を白に押しつけるのがよい。白は穏やかにd4で取り返すわけにはいかない。というのは黒が3手目で予定したようにeポーンを取るからである。この布局の本質は 4…exd4 5.Nxd4? Nxe4! 6.Bxf7+ Kxf7! 7.Qh5+ g6 8.Qd5+ Kg7(安全な手)9.Nxc6 bxc6 10.Qxe4 で明らかで、ここで 10…Qe8! 11.Qxe8 Bb4+ から 12…Rxe8 で黒がキングの安全を確保し好所に展開した駒で状況を切り開く。途中 6.Qe2 Nxd4 7.Qxe4+ Qe7 または 6.Qh5 Nd6 でも同じことである。

 4…exd4 のあと白の一貫した着手は2手ある。つまり白はキャッスリングして素通しe列のために黒の …Nxe4 を危険にさせることができるし、または 5.e5 で中央で押しまくることができる。二つのうちキャッスリングの方が危険で、白にとってさえそうである。理由は黒がd4の得しているポーンを守り維持するか、または少しあとに出てくるように二つ目のポーンを取ることができるからである。2番目の着想の 5.e5 は次の局面になる。

(この章続く)

2013年08月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(032)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.e5 の局面

 黒はここで中央をどうするかという重要な決定をしなければならない。もし 5…Ne4 と指せば白は 6.Bd5 または 6.Qe2(このあとは O-O から Rd1)と指して黒にナイトをc5に引かせそこからe6に引かせることができる。黒は早晩dポーンを1枡か2枡突かなければならず、白はそれを予期してd5とd6の地点をにらむように、例えばd5の地点を占拠するかルークを用いてd列を支配することにより、自分の駒を繰り出すことになる。黒は理論上は互角を達成するかもしれないが、その陣形はいくらか窮屈で指し進めるのが難しくなることがあり、一方白駒はd列をにらむことになる。

 5…Ng4 ならナイトが退却することにはならない。白はまた 6.Qe2! でeポーンを守り中央の変化を待ち受けることができる。この手には h2-h3 と突いて黒ナイトを押し返す狙いがあり、それをビショップで取れば黒のキング翼のポーンがひどく乱れてしまう。黒は 6.Qe2 には 6…Qe7 と応じるべきだが、7.Bf4 d6 8.exd6 Qxe2+ 9.Bxe2 Bxd6 10.Bxd6 cxd6 11.Na3 から Nb5xd4 または Nc4 で中央が開放されて白駒がいくらか利益を得る。

 従ってf6のナイトは動くべきでない。黒の反撃の布局の主題に最も沿っていて、あとでdポーンを突くことから生じる問題も避けるのは、すぐに 5…d5 と突く手である。6.exf6 dxc4 は白にポーンの代償と黒のビショップ対ナイトの優位の代償がほとんどないので白はこれを避けるべきである。そのあと 7.fxg7 Bxg7 8.O-O O-O となっても白には展開の優位さえなく黒キングはまったく安全である。

 だから白は 5.e5 の顔を立てて 6.Bb5! とかかって黒のクイーン翼ナイトを釘付けにし、Nxd4 で釘付けを強めることにする。この方針の利点は 6…Ne4 7.Nxd4 Bd7 8.Bxc6! bxc6 9.O-O で白が黒のクイーン翼のポーンを乱し強力なナイトを中央の要所のd4に維持することができることである。黒はまた短射程のナイトを交換して長射程のビショップを保有した理論上の有利さはあるが、白ナイトは絶好の地点にいて黒ビショップは動きが大きく制約されているのでこの場合は白が非常に有利である。白は f2-f3 と突いて黒ナイトを追い払い、そのあと f3-f4-f5 からたぶん -f6! と突いて黒のキング翼を弱めることができる。黒は …c6-c5 で自分もポーンを動員することができるし、白のポーン進攻を予期して …f7-f6 と突いて、白のeポーンが黒のfポーンと交換されればキング翼の素通し列をめぐって争うことができる。

 この手順を改良しようとする白の試みの重要な策略は(5.e5 の代わりに)5.O-O と指し 5…Bc56.e5 と突く手である。

(この章続く)

2013年08月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(033)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 6.e5

 ここで 6…d5 と突くと白は 7.exf6 dxc4 と指し、このあと黒が既にビショップを動かしてしまったためにすぐにg7で取り返すことのできないので fxg7 と取ることができる。(黒が 5…Bc5 でなく 5…Be7 と指すのは 5.e5! d5? 6.exf6 dxc4 7.fxe7! で白の駒得になるのでなおさら悪い。)

 しかしこの 5.O-O と 5.e5 との違いは形勢をはっきり白の有利にするには十分でない。確かに 8.fxg7 に対し黒は 8…Rg8 と指さなければならない。しかし黒はそのあと …Be6 と指しクイーンを動かしクイーン翼にキャッスリングする。そしていずれg7の白ポーンを取ることができ、g1の黒キングに対しておあつらえの素通し列を利用することができる。

 19世紀のドイツのマスターのマックス・ランゲにちなんで名づけられたこの戦法は評価の最も難しい戦法の一つである。代表的な手順は 9.Bg5 Be7 10.Bxe7 Kxe7!(クイーンをd4に利かせておくため)11.Re1+ Be6 で、黒はキングが比較的安全で(f8に行くことになればもっと安全になる)…Rxg7 のあとは戦力で優位に立つ。

 白は(8.fxg7 の代わりに)8.Re1+ Be6 9.Ng5! で攻撃と反撃の複雑な戦いに持ち込むことができ、9…Qd7? 10.Nxe6 fxe6 11.Qh5+ から 12.Qxc5 で駒得するという罠も仕掛けている。黒は 9…Qd5! と指すのが良く、そのあと 10.Nc3! Qf5 11.Nce4 O-O-O! で難局を切り抜けることに努める。

 この重要な局面にはそれぞれの側に利害得失がある。黒はキング翼が fxg7 から Nxe6 でがたがたになるが、中央の強力なポーン群は …d4-d3-d2! と進攻して白駒をけちらすかもしれない。白は g2-g4 突きで黒クイーンをいじめることができるが、g列が素通しになれば大きな危険に直面することになる。黒は展開でも優位に立っていて、白が単純化を図れば大きく物を言うことになり、例えば 12.fxg7 Rhg8 13.Nxc5? Qxc5 14.Rxe6!? fxe6 15.Nxe6 Qd5 16.Nxd8 Rxg7! で詰みの狙いができる。6.e5 のあとはいい勝負のようである。

 さらに黒には途中で変化する余地がある。最も好戦的なのは 5.O-O に 5…Nxe4 と取る手である。

(この章続く)

2013年08月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(034)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4

 これで白には e4-e5 突きで黒駒をけちらす手がない。代わりに白は 6.Re1 で素通し列の活用に努めなければならないが 6…d5! が来る。白は2ポーン損なので攻撃する一手である。そして奇跡のチェス戦術により 7.Bxd5! Qxd5 8.Nc3 により先手でポーンの1個を取り戻す。このナイトは二通りの取り方があるように見えるが、一方(8…Nxc3)は不正な手で、もう一方はひどいことになる(8…dxc3?? 9.Qxd5)。だから黒はクイーンが逃げなければならない。しかしキャッスリングできれば優位に立ち、通常はクイーン翼にキャッスリングすることになる。例えば 8…Qa5 9.Rxe4+ Be6 10.Nxd4 O-O-O! となれば、展開に優りd列での釘付けが強力な黒が優勢である。白はすべてを含みに 9.Nxe4 と取り、d4での取り返しを後回しにし必殺の開きチェック(Nf6+)を狙うのが良い。しかしそれでも黒は 9…Be6 10.Neg5 O-O-O! 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6 でいい勝負になる。黒駒はすべて好所にありdポーンを保持することができる(13.Nxd4?? Nxd4 14.Qxd4 Bxh2+ から 15…Rxd4)。

 これらの手順は 1.e4 e5 の布局でお目にかかる多くの手順とはいくらか違っている。それはここでは両者の強みと弱みが明らかに明示されているという点にある。4.d4 から生じる局面は、スコットランド試合や4ナイト試合の10手目のあとに見られるような中盤戦よりも引き分けに終わりにくい。経験の少ない選手が典型的な局面に慣れ親しむことができるように、これらの激しい布局の白側と黒側を試してみるのは非常に有益である。

 それでは 4.Ng5 に戻る。

(この章続く)

2013年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(035)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 1世紀以上も前の昔の選手の中には、1…e5 はこのような局面になりf7の地点が速攻にさらされるので悪手(!)であると唱える者もいた。例えばフランス防御の 1…e6 なら黒は、キングのすぐそばの守りの弱い地点に対するビショップとナイトの協同攻撃を心配する必要が全然ない。

4…d5

 信じがたいが黒はf7に対する当たりを無視して生き抜くことができる。そうするためには自身が強力な狙いを持ち、白の注意をf7とその周辺からそらし、白に自分の方の心配をさせなければならない。そのような猛烈な逆襲を作り出す唯一の手段は 4…Bc5 である。これはヨーロッパではチェコの分析家にちなんでトラクスレル反撃として知られ、ほかでは研究し洗練させたペンシルベニア・チェスクラブにちなんでウィルクスバリー戦法として知られている。

 4…Bc5 のあとクイーンとルークの両当たりの 5.Nxf7 には黒は 5…Bxf2+! で応じる。白がこのビショップを取れば黒はチェックと狙いで自分の駒を働かせることができる。例えば 6.Kxf2 Nxe4+ 7.Ke3 Qh4! 8.Nxh8 Qf4+、または 7.Kg1 Qh4 8.Qf3 Nd4 となる。白は 7.Kg1 Qh4 8.g3 Nxg3! 9.Nxh8! Nd4 の方が良いが、黒の攻撃が強力なので白は 10.hxg3 Qxg3+ 11.Kf1 Qf4+ 12.Kg2 Qg5+ で永久チェックを受けざるを得ない。(6.Kxf2 の代わりに)ひねった 6.Kf1 は 6…Qe7 7.Nxh8 で同じことで、7…d5! 8.exd5 Nd4(9…Bg4 の狙い)のあと白が受けに少し時間をさいてさえ猛攻にさらされる。

 ウィルクスバリー戦法を咎める白の最善の策は欲張りな 5.Nxf7 よりも 5.Bxf7+ である。黒はキングをe7に上げて …Rf8 のあとf列で攻撃できるようにする。しかし白は得したポーンを適時に返して黒の危なっかしいキングにつけ込むことができる。例えば 5…Ke7 6.Bd5 Rf8 7,Nf3 d6 8.c3 Bg4 9.Bxc6 から 10.d4! と指す。そうなれば中盤戦の進路を決めるのは黒の攻撃や白の戦力得ではなく白の攻撃ということになる。

5.exd5

 他の手はどれも意味がない。白のしたいことはd5の地点とc4からf7に通じるすべての地点とを素通しにすることである。

5…Na5

 この手は最初の印象は良くない。ナイトを盤端に跳ねる手がどうして良いのだろうか。手順を追うとこのナイトはこのあと少なくとも数手の間動かないことが分かる。あなたは論理的な 5…Nxd5 のような何かもっと良い手があるに違いないと考えるかもしれない。

 そしてこの基本的な疑問には答えが二つある。一つは 5…Na5 はf7への当たりをどうするかという黒の布局の重大な戦略上の問題を解決しているということである。他のどんな5手目も解決することはできない。他のどんな手も白のビショップをb3-f7の斜筋からすぐにどかせることはできない。

 二つ目の答えはもっと複雑である。このナイト跳ねは他の手がもっと悪いので最善である。そしてこれはもっと詳しく見てみる必要がある。

 1)5…Nxd5

(この章続く)

2013年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(036)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 5…Nxd5

 これがこの局面における最古の手であることは驚くに当たらない。この手は約5世紀前に現代のチェスの規則が受け入れられた時にイタリアの商人たちによって好まれた。それらの草創期の選手たちはすぐに 5…Nxd5 を疑問手する理由を見つけた。その理由とは 6.Nxf7!? という手があるからで、彼らは 6…Kxf7 7.Qf3+ という手順に名前をつけた。その名前は「フェガテッロ」すなわち「揚げレバー」攻撃で、黒が 7…Ke8 8.Bxd5 と指そうと 7…Ke6 で戦力得にしがみつこうとしようと、当時流行した慣用句で「揚げレバーのように完全に死んでいる」からである。

 黒の受けは15世紀から進歩してきたが、それでも白は圧倒的な攻撃を誇っていて 7…Ke6 8.Nc3 Ncb4! 9.Qe4! c6 10.a3 Na6 11.d4 Nac7 12.Bf4! Kf7 13.Bxe5 となれば犠牲にした戦力は比較的わずかである(白はナイトと引き換えに2ポーンを得ている)。これに納得できなければ白は 6.Nxf7 の代わりに 6.d4 と突くことができる。例えば 6…exd4 7.O-O Be7? 8.Nxf7! となれば、6手目での Nxf7 切りと比べて白の d2-d4 と O-O の方が黒の …exd4 と …Be7 より役立っていて「フェガテッロ」の改良版になるからである。

 2)5…Nd4

 これは 5…Na5 と同趣旨だがもっと理にかなっているように見える。このナイトは確かにa5よりもd4の方が重要な地点(f3、e2、c2、f5)に利いている。しかし 5…Nd4 には一つ欠点がある。それは白が悠々と c2-c3 と突けるのでこの拠点が安泰でないということである。白はすぐに 6.c3! と突くことができ、黒にはナイトの新しい安住の地を見つける問題ができる。f5に行けば安全だが白は c2-c3 突きで十分手をもうけたので 6…Nf5 に対して 7.d4 exd4 8.O-O! と指すことができる。8…dxc3 9.Nxc3 となれば白の展開はほとんど完了で、一方黒の方はずっと遅れている。

 5…Nd4 6.c3 の重要な試金石は 6…b5 である。駒の交換は黒を助けることになるし(例えば 7.cxd4 bxc4 8.dxe5 Qxd5!)、白のビショップには良い引き場所がなさそうに見える。しかし 7.Bf1! がこの一手で、黒にナイトの処遇を決めさせる。ナイトを引けばbポーンをみすみす取られるので、8…Qxg5 を狙いに 7…Nxd5 から暴れなければならない。白には積極的にこの黒の切り返しに立ち向かう手段もあるが、最善の応手はまた「おとなしい」8.Ne4! である。黒が失わなければならないポーンの代償は怪しい。例えば 8…Ne6 なら 9.Bxb5+ Bd7 10.Bxd7+ Qxd7 11.O-O から 12.d4、8…Qh4 なら 9.Ng3 Bg4(これも反撃の手)10.f3 e4!? 11.cxd4 Bd6 12.Bxb5+ から 13.O-O である。

 このような手順の意味するところは明らかである。つまりいつかは黒は反撃の手段が尽きて無理筋の代価を支払うことになるかもしれないということである。

 3)5…Bg4

 これもまた反撃志向で、6.f3 Na5! 7.Bb5+ Bd7 が根底にある。白の余分な f2-f3 突きは 5…Na5 からの同様の手順と比較すると自陣を弱めているだけで、黒の可能性を高めている。特に黒がキング翼ビショップをc5の地点に出せれば白のキャッスリングを防ぐことができる。

 しかし今回は白は黒の反撃に反反撃で応じることができる。それは 6.Nxf7! で、意表をつくクイーン同士の交換の間接的な誘いである。6…Bxd1 は 7.Nxd8 で2ポーン損のうえに2駒が当たりになっているので、黒はこの誘いを断わらなければならない。また、6…Kxf7 も 7.dxc6+ が開きチェックになるのでやはり避けなければならない。代わりに 6…Qe7 でクイーンを助け、白のナイトとクイーンを当たりの状態にする方が良い。しかし白は 7.d6! で黒の応手を聞くことができる。この手はビショップの斜筋を通してナイトに紐をつけ、黒クイーンをまた当たりにすることにより先手を取っている。そして 7…cxd6 8.f3 で戦術の対決は、白の駒がすべて守られているのに対し黒のビショップとキング翼ルークが当たりになっているので、白の有利に終わった。

 4)5…b5

(この章続く)

2013年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(037)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 この最後の反撃手段は 5…Nd4 の改良を策している。

 白がビショップをb3に引けば黒はナイトをd4に跳ねて必要なときにこのビショップを取る(5…Nd4 の戦型では 6.c3 b5 7.Bf1! と進むので黒は決してこのビショップを取る機会がない)。

 白は 5…b5 のような手に驚かされてはいけない。6.dxc6 bxc4 と駒を取り合いたいところだが、黒が白のc6のポーンを取る可能性は白が黒のc4のポーンを取る可能性とちょうど同じである(7.Qe2 Qd5)。このような開けた局面では長射程の駒の方が有利なので、白はビショップを黒のナイトと交換するのをがまんすべきである。

 また、6.Bxb5 も 6…Qxd5! が白のビショップとgポーンの両当たりになるので正しくない。白はポーン得を維持するためにはビショップを切る(7.Bxc6+ Qxc6)かf1に引かなければならない。これらの手にも取り柄はあるだろうが、6.Bf1! がいかに賢明かを考えた方がよい。黒がクイーンでd5のポーンを取り返せば、白は 7.Nc3! でクイーンを当たりにし次に 8.Bxb5 か 8.Nxb5 と取る余裕が得られる。黒がd5のポーンを取らずに 6…Nd4 と指せば、7.c3 で前に分析した 5…Nd4 6.c3 b5 7.Bf1! という黒の不十分な局面に転移する。

 もちろん黒はクイーンでなくナイトでd5のポーンを取り返すことができる。しかし 6…Nxd5 に白は 7.Bxb5! と取り、6.Bf1 の真価が分かってくる。白は(直接 Bb5 でなく Bc4-f1-b5 と指すことにより)1手損することができた。しかしまた、黒クイーンがビショップ(b5)とポーン(g2)の両当たりで中央のd5の地点に強力に進出するのを避けることができた。だから黒は 5…b5 6.Bf1! Nxd5 7.Bxb5 のあと 7…Bb7 8.d4 exd4 9.O-O Be7 とでも指さなければならない。そうなれば 10.Qh5! で白の狙いがもっと危険なものになることは明らかである。

 黒がナイトをa5で遊ばせない指し方をいくつか見てきた。それでもやはり白の駒を一番よく制限するのはこの変なナイト跳ねである。このあと出てくるように黒はポーンを犠牲にしなければならないかもしれない。しかし白がキャッスリングできる前に中央が開けた状態になるので、黒はこれまで分析した手順よりもはるかに多くの反撃に恵まれる。

(この章続く)

2013年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(038)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 5…Na5

6.Bb5+

 前世紀には白が 6.d3 でポーン得にしがみつき、同時に中央を閉鎖的にしておくのが一般的だった。黒はこの手に対して 6…Nxd5 で戦力の互角を回復できるが、7.Qf3! が厄介である。黒はf7の地点への新たな攻撃に対処しなければならないが、7…Be6 は悪く(8.Nxe6 のあと Qh5+ から Qxe5)7…Nf6 はもっと悪い(8.Nxf7)。

 6.d3 に対し黒はポーン損のままでいることに甘んじて 6…h6! 7.Nf3 e4! と指して白のナイトをいじめるべきである。黒が自分の狙いを実行に移し始めれば白のナイトは安住の地を見つけるのに苦労するので、このいじめは2ナイト防御における重要な主題になっている。d4の地点はあまり見込みがなく(8.Nd4 Bc5)、8.dxe4 はc4のビショップが浮き駒になるので、8.Qe2! で乱戦を策するのが最善である。

 この手は 8…exf3 を防ぎ、ビショップに紐をつけることにより 9.dxe4 を狙っている。黒は 8…Nxc4 9.dxc4 Bc5 で中央を割合閉鎖的にしておいて、できるだけ早くキャッスリングしなければならない。白はナイトを逃がす手に1手かけなければならないので、黒が展開で大きく優位に立つことになる。

 9…Bc5 の局面は黒がキャッスリングしてしまえば …b7-b5 または …c7-c6 さらには …e4-e3! で働きに優る小駒のために局面を開放できるので、白にとって危険と考えられている。白がすぐに h2-h3 と突かなければ黒には …Bg4! で白クイーンを攻撃する手もある。e4の黒ポーンは白のナイトをf3から追い払い、白が f2-f3 と突くのをことのほか危険にする大きな役目を果たしている。

 黒の陣形の強力さは二つの想定手順によって示される。一つ目は 10.Nfd2 O-O 11.Nb3 Bg4! で、白クイーンの適切な行き場所がない。12.Qf1 は 12…Bb4+! 13.c3 Be7 から …Nd7-e5-d3! で明らかに悪い。二つ目は 10.h3(…Bg4 を止め、ナイトにさらに引き場所を作っている)10…O-O 11.Nh2 c6! 12.dxc6 e3! 13.Bxe3 Bxe3 14.fxe3(13.Qxe3?? Re8)14…Ne4! で、15…Ng3 または 15…Qh4+ を狙い、素通しe列を支配することを狙い、…bxc6 のあとは半素通しb列を支配することを狙っている。

 しかし 6.d3 より 6.Bb5+ が優るとする最良の議論はこのチェックが受けにくいことである。

6…c6

 6…Bd7 の問題は 7.Qe2! である。これで黒はもう1個ポーンを取られる危険性がある。例えば 7…Bxb5 8.Qxb5+ c6(a5のナイトを守るため)9.dxc6 bxc6 10.Qxe5+ あるいは 9…Nxc6 10.Qxb7! である。黒は 7.Qe2 の局面で 7…Bd6 と指し 8.Nc3 に 8…O-O でいくらか代償を引き出すことに努めることができる。しかし駒で攻撃する明白な手順がなく、わずかな展開の優位だけでは-a5の黒ナイトはb8に反展開することになるかもしれない-互角を主張するのはおぼつかない。

 黒が 6…Bd7 と指したいのであれば 7.Qe2 Be7 8.Nc3 O-O で駒を相応に働かせることができ、白が 9.Qxe5 と取って黒が 9…Bd6 から 10…Re8+ で素通しe列を確保することを期待する。黒は 7…Be7 でd5のポーンを攻撃し続け(7…Bd6 ではd列をふさぐのでそうならない)、あとで …c7-c6 と突くことができる。これは主手順(6…c6)とは表面的には似ていてもかなり異なる局面になる。ここでは黒が 6…Bd7 に手を費やしたので白が少し展開に優るが、黒は …c7-c6 と突くことになれば dxc6 にナイトで取り返すことによりa5のナイトを戦いに引き戻すことができる。

 前述のように 6…Bd7 7.Qe2! には問題があるが、黒にとっては指せる変化である。6…c6 では黒は白に1手の息つく暇も与えない

7.dxc6 bxc6

(この章続く)

2013年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(039)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 ナイトで取り返すのは白にまた容易に展開させるだけでなく、より悪いことにあの以前の作戦、f7への攻撃を再開させる(7…Nxc6 8.Bc4!)。

8.Be2

 このビショップはa4に下がると働きがないだけでなく、黒が反撃を続ければ浮き駒にさえなってしまう(8.Ba4 h6! 9.Nf3 e4! 10.Ne5 Qd4!-両当たり-11.Bxc6+ Nxc6 12.Nxc6 Qc5 で黒の駒得)。

 白ははるかに奇妙なビショップ引きの 8.Bd3?! で黒の …h7-h6 から …e5-e4 の作戦に備えようとするかもしれない。この手は白のdポーン(ひいてはクイーン翼の駒)を閉じ込める明らかな欠点があるけれでも、ナイトを活動的なe4の地点に引ける。しかし 8.Bd3 に対して黒は …h7-h6 と突く必要はない。なぜなら 8…Nd5 で白のg5のナイトを当たりにでき、白はビショップがd3にいるので d2-d3 と突いてg5のナイトを守ることができないからである。黒はナイトがf4の地点に行けば駒が1ポーンの価値を上回る活動をすることができる。例えば 8.Bd3 Nd5 9.Ne4 f5 10.Ng3 Nf4! となれば、白は …Nxg2+ と取らせるか Bf1 でさらに手をかけなければならないので明らかに主手順(8.Be2)ほどでかしていない。

 しかし黒には白の …cxb5 と …h7-h6 の狙いにも対処する他の手段が一つある。それが 8.Qf3 で、黒のcポーンを釘付けにし(8…cxb5 9.Qxa8)、e4の地点も守ってナイト引きに備えている。黒はc6の地点を守るのに手をかければ、チェス選手が「主導権」と呼ぶところの攻撃のはずみを失うかもしれない。例えば 8…Qc7 9.Bd3 h6 10.Ne4 Nd5 11.O-O Nf4 12.Ng3 となれば、白がキャッスリングを済ませ Re1(Qxf4 の狙い)または Bf5 から d2-d3 突きで攻撃権を奪い取る用意があることが見てとれる。黒はさらに犠牲を増やして主導権の維持に努めることができる。例えば 8…cxb5 9.Qxa8 Qd7 のあと …Bc5、…O-O そして …Bb7 という要領である。しかしはるかに簡明な犠牲は 8…Rb8 で、9.Bxc6+ Nxc6 10.Qxc6+ Nd7 となれば黒には …Qxg5 と …Bb7 の狙いがある。黒は2ポーン損になっているけれども、例えば 11.d3 Be7 12.Nf3 O-O から …Bb7(13.Qe4 なら 13…Rb4! 14.Qe2 e4! 15.dxe4 Nc5 16.Nc3 Ba6)となれば黒の攻撃は強力すぎて無視できない。

 これらの変化では黒のクイーン翼ビショップとクイーン翼ルークが素早く攻撃に加わるので、白はc6のポーンを取るのを避けるべきだろう。しかし 8.Qf3 Rb8 のあとでも 9.Be2 Bc5 10.O-O O-O から …Bg4、または 9.Bd3 h6 10.Ne4 Nd5 11.Ng3 g6! から …Bg7 と …f7-f5 で、黒が十分指せる。黒のルークはb列で抑止的な役目を果たし、白は展開の完了に深刻な問題を抱えている。

8…h6 9.Nf3

 今世紀のボビー・フィッシャーと前世紀のビルヘルム・シュタイニッツの二人の世界チャンピオンは、この局面で 9.Nh3 が良い手であり、最善手かもしれないことを示そうとした。この奇妙な退却の意図は明らかで、それは黒が …e5-e4 と突いてもまた白のナイトを攻撃することにはならないということである。白はナイトがh3にいることから、キャッスリングのあと f2-f4 と突きキングをh1に寄せることができることにより利益を得るかもしれない。

 しかし 9.Nh3 は決して流行することがなかった。たぶん …Bxh3 を許すので完全にキングの安全を無視しているように思われるからだろう。そのあと黒はいつかはh3の虚弱者を取ることにより犠牲にしたポーンを取り返すかもしれない。しかしフィッシャーはこの取り返しには手数がかかり、黒の手数と展開の優位を大きく減らすことを示した。優良ビショップを交換することも、このビショップがないと白のh3とg2の弱点を攻撃するのがあまり容易でないので、黒の攻撃の可能性を減らすことになる。黒の最善の策は 9…Bc5 10.O-O O-O 11.d3 Nd5 でh3のビショップ取りからすぐに何らかの利益が得られるまで …Bxh3 を遅らせることのように思われる。白は Kh1 から Ng1 と指すことによってのみ …Bxh3 を避けることができるかもしれない。その間に黒は …Nb7、…Bb6 そして …Nc5 でクイーン翼の駒の陣容を整備する。

 9.Nh3 の局面は形勢判断が難しいが、白としては十分指せる。自分の常用布局の一部として 9.Nh3 を採用する前に、…Bxh3 と gxh3 のあとの防御の可能性に十分習熟すべきである。ほとんどの場合 Kh1 でキングの安全が十分確保されるが、時には Bf3-g2 が必要になることもある。

(この章続く)

2013年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(040)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 9.Nf3 の局面

9…e4

 黒は迅速に打って出なければならない。さもないと白は d2-d3 と突き、駒を乱されずに中央で堅固な陣形を築いてくる。黒のナイトはまだa5に取り残されていて、活動に復帰させるにはいくらか手数がかかることを忘れてはならない。今のところはこのナイト抜きで攻撃の準備をしなければならない。

10.Ne5

 他に現実的な行き場所はない。白がg1に引かなければならないなら、黒は …Bc5 から …Qd4 か …Qb6 であまりに大きな展開の差をつけてしまう。

10…Bd6

 e5のナイトは非常に危なっかしく見え、黒はそれにつけ込もうとしている。このビショップ出は d2-d4 突きまたは f2-f4 突きを予期し、アンパッサンで取ることにより黒のビショップと他の駒にもっと動く余地ができるようにする。

 黒がこの局面からそれくらいしか得られないのは惜しいように思われる。しかし黒が 10…Qd4 でもっと攻撃的なことをやれば、白には意表の手段がある。黒の手は確かに d2-d4 突きを防ぎ、白のナイトにも当たりをかけている。たぶんもっと重要なことは …Bc5 の用意があることである。しかし白は 11.f4 で安泰である。黒が予定どおりアンパッサンでこのポーンを取ると(11…exf3)、白は幸便にナイトで取り返して、同時に黒クイーンを当たりにする。黒がこのポーンを放っておいて恐ろしそうな 11…Bc5 を指すと、白は 12.Rf1 で安全であるだけでなく 13.c3 から 14.b4 で駒得をも狙う。白はそのようなポーン突きで戦力得するか自陣を楽に守ることができる。

 10…Qc7 の方がもっと理にかなっている。これに対して 11.f4 なら黒は 11…Bc5 と指せるし 11…exf3 とアンパッサンで取ることもできる(重要な違いはここでは 12.Nxf3 が黒のクイーン当たりにならないことである)。アンパッサンで取ると 10…Bd6 11.f4 exf3 12.Nxf3 という手順と同じになるはずである(後述)。そして 11…Bc5 はやはり 12.c3 から b2-b4 突きを招く。例えば 11…Bc5 12.c3 Nb7 13.b4 Bb6(白のキャッスリングを防ぐため)14.a4 a6 15.Na3 から Nc4 のあと Nxb6 か(黒がビショップをa7に引けば)Ne3 と進む。そのあと白はキャッスリングでき、Kh1 と寄りついには d2-d4! 突きで自分の駒を解きほぐすことができる。

(この章続く)

2013年08月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(041)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 10…Bd6 の局面

 黒のビショップがc5でなくd6にいると白の問題は増加する。白が f2-f4 と突こうと d2-d4 と突こうと黒がアンパッサンで取る可能性を仮定すると、そのあとの数手がどうなるかを考えなければならない。11.d4 exd3 12.Nxd3 のあと黒は 12…Qc7 でb8-h2の斜筋での攻撃を強め、続いて…c6-c5-c4 と突いていくか …Nd5 と跳ねるか単に …Ba6 から …Rd8 と指す。一方白が 11.f4 exf3 12.Nxf3 と指せば、キング翼が弱体化しクイーン翼の駒の展開に問題を抱える。(最後に触れておくと白はナイト当たりを単に逃げることにより対処することもできる。しかしg4に行こうとc4に行こうと-ナイトを動かすのはこれで5手目になるが-白はどちらのポーンを突くのかの問題を延期しただけである。)この点について詳しくは参考棋譜1を参照されたい。

 11.f4 か 11.d4 かの選択は何年かに渡って2ナイト防御の大論争になった。dポーンを突く方が白のもう一つのビショップの筋を開けキング翼のポーンを乱さないから自然である。しかし黒には強力な切り札があり、11.d4 exd3 でできる素通しd列の利用とcポーンの突き出しは特にそうである。白はどんな防御態勢を採用しようとも …c6-c5-c4 に対処する手段を含めておかなければならない。11.d4 exd3 12.Nxd3 のあとあわれな攻め立てられたd3のナイトはついには黒のcポーンによって当たりにされるかもしれず、行き場所も少ない。たとえ安息の地を見つけたとしても(例えばe1)、黒は …Bb7 から …Rad8 でd列と白のキング翼に通じる対角斜筋でとてつもない圧力をかけてくる。

 11.d4 exd3 12.Nxd3 Qc7! 13.h3 O-O 14.b3!? と進めばいい勝負になるようである。白は Bb2 から Nc3 または Na3 と指すことができる(どちらの手も黒が …c6-c5 と突けば Nb5xd6 の狙いができる)。白が相手の攻撃ビショップの一つを消し安全にキャッスリングできれば、勝つ可能性は大いに高まる。結局のところ白はポーン得なのだから。

 黒はもちろんノックアウトにはならない。ルークのためには中央の2列があるし、ビショップのためには2斜筋がある(b7-g2とd6-h2)。d5の地点もナイトの絶好の拠点になり、cポーンを突いていけば他方のナイトを …Nc6-d4! と配置することができる。

 これまで黒の展開について述べてきたことはすべて 11.f4 についても当てはまる。相手がポーンを犠牲にしてきたときはいつも、ポーンを返して別の形で価値の同じ有利を引き換えに得る機会に気をつけるべきである。11.f4 Qc7 のあと白は重大な弱点をこうむらずにポーン得を維持するのは難しい(ここで 12.d4 exd3 13.Nxd3 は f2-f4 突きが自陣の形を悪くしただけなので、11.d4 の手順よりも白が悪い)。しかし白は当たりのナイトを守る必要はない。11…Qc7 のあと白は 12.O-O! でポーン得を返すことができる。そして 12…Bxe5 13.fxe5 Qxe5 14.d4! で戦力得を返した代わりに展開でしっかり差をつける。白には働きのよい黒枡ビショップがあるが黒には黒枡ビショップがない。例えば 14…Qe7 15.Qe1!(a5のナイトに当たっている)15…Nb7 16.Qg3 となれば黒は受け身に立たされる(16…O-O 17.Bxh6)。黒陣は 14…exd3 と取っても 15.Bxd3 のあと Nc3 と Bf4 で白の駒が躍動しキング翼や黒の弱いcポーンを攻撃する機会があるので良くならない。

 だから黒は 11.f411…exf3 とアンパッサンで応じ、12.Nxf3 で次の局面になる。

(この章続く)

2013年08月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(042)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

 11.f4 exf3 12.Nxf3 の局面

 マスターたちにとって2ナイト防御が本当に始まるのはここからである。白は5手目で得たポーンを保持しているが、ここまでの間に譲歩もしてきた。キング翼は少し攻撃を受けやすく、もっと重要なことは相手が素通し列を占有できることである。

 黒の反撃の基礎は …c6-c5 突きから …Nc6-d4 と、クイーン翼のルークとビショップの展開とにある。…c6-c5 突きの効果は白のdポーンに依存する。白が d2-d4 と突き黒がcポーンを1枡突けば、局面が開放的になるのは確実である。そしてd1の白クイーンに通じる列だけでなく、キャッスリングしたg1の白キングに通じる斜筋も素通しになる。白はこれらの筋で具合の悪い釘付けにならないように気をつけなければならない。

 白が代わりに(参考棋譜2のように)d2-d3 と突けば、…c6-c5 突きから …Nc6-d4 を誘うことになる。これは白の陣形に制約をもたらすことになる。なぜなら自分のナイトでd4のナイトを取れば、キング翼の最良の守り駒を失うことになり、c2-c3 と突いて黒のナイトがd4に来ないようにすれば …Ba6 または …Bf5 と …Rad8 とで弱体化したdポーンへの攻撃を誘うことになるからである。

 次の2局の参考棋譜では白の異なった防御が見られる(両局とも黒は同じ選手である)。第1局では13手目での疑問手でさえ黒はまだ大丈夫だった。形勢が急激に悪化したのは無理な手(17…Nb4?)を指したからにすぎない。第2局では白が受け身になりすぎてすぐに守りきれなくなった。

(この章続く)

2013年08月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(043)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1
白 J.ティマン
黒 A.ビズガイアー
ソンボル、1974年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5

 4.d3 はジオッコ・ピアノの局面になっていく。白はこのようにeポーンを守ることにより黒の反撃から攻撃を取り去るが、布局の趣旨を弱めてもいる。d2-d4 と突かないと「ジオッコ」(試合)が「ピアノ」(静かな)になってしまう。

 他の4手目は疑問である。4.O-O なら黒はeポーンを取ってしまうことができる。例えば 4…Nxe4 5.d4 となりここで 5…exd4 6.Re1 d5 なら前述の局面になり(4.d4 exd4 5.O-O Nxe4)形勢は互角だった。また 5…d5! 6.Bb5 Bd7 7.Bxc6 bxc6 8.Nxe5 Bd6 はいつでも …c6-c5 突きでポーンの弱点を解消できるので黒が大満足の分かれである。このような変化では白は犠牲にしたポーンを取り戻すのにしばしば手数がかかるので、展開で後れをとってしまう。

 最後に、自然な手の 4.Nc3 は黒が 4…Bc5 に同意してくれるならばジオッコ・ピアノに転移するかもしれない。しかし黒は 4…Nxe4! と取ることにより局面からすべての危険を取り除くことができる。この手には 5.Nxe4 d5 という仕掛けがある。黒の 4…Nxe4 の意図は中央にポーンを集めて優位を得ることにある。この中央での優位は 5.Bxf7+? Kxf7 6.Nxe4 d5! 7.Neg5+ Ke8 から …e5-e4 または …h7-h6 で明らかである。そして 5.Nxe4 d5 6.Bd3 dxe4 7.Bxe4 でも少し劣るがやはり明らかである。白はこのように黒がe5のポーンにより中央に強力な地歩を占め自分はd3を越えてポーンを進められないような局面を避けなければならない。

4…d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6

 このナイトに対する当たりは厄介だが、c4やg4のようなもっと安全な地点に引くのは危険が多すぎる。それらの手の主要な欠点は、黒が白の唯一展開している駒を交換で消して狙いと取りで手を得し、白に(d2-d4 突きから白が得る展開のような)駒の働きをさらに与えずに済むことができるからである。

 具体的に言うと 11.Ng4 は 11…Nxg4! 12.Bxg4 Qh4! 13.Bxc8 Rxc8 14.Qe2 O-O と応じられて、黒が十分に展開しているのに対し白は展開していないのも同然で弱点を生じさせずにキャッスリングすることができない(15.O-O?? Qxh2#)。このような局面での黒の大きな切り札は、白のキング翼を崩す …f7-f5-f4-f3! 突きの狙いである。

 このナイトはc4の地点にも跳ぶことができるが、黒が何手かの間動かなかった自分のナイトと交換することができる。11.Nc4 Nxc4 12.Bxc4 Ng4! から …Qh4! の局面は、自分のキングの囲いを守る駒がなくなると何が起こるかを如実に示してくれる。白はいつかは d2-d3 と突かなければならず、より危険な時、つまり黒が駒の戦いで優位に立っている時に局面を開放することになる。

11.f4 exf3 12.Nxf3 O-O 13.d4

(この章続く)

2013年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(044)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

13…c5?!

 黒は自分のビショップのために素通しの筋が欲しいし、クイーン翼ナイトはc6の地点を通して復活させたいと考えている。その意味ではこれは自然な手である。しかしそのために白はクイーン同士を交換することにより(14.dxc5 から 15.Qxd8)詰みの最大の危険性を避けることができることになる。確かにそのあと盤上に残る駒はまだ黒の方が働きに優っている。しかしポーン損を埋め合わせるのには十分でないかもしれない。

 この理由から 13…Qc7 がすぐに考えられる。そして白がキャッスリングしたあと黒は …c5 から …Rd8 と指すことができる。しかし白はそれでもなお Nc3 と指して(…c6-c5 と突いてきたら)Nb5! から Nxd6 で危険な黒のビショップを消すことを狙うことにより手を稼ぐことができる。

14.dxc5 Bxc5 15.Qxd8 Rxd8 16.Bd2!

 この好手は黒のナイトを当たりにして手を稼ぎ、クイーン翼キャッスリングの用意ができる。クイーンが盤上に残っていればクイーン翼キャッスリングは白にとって非常に危険である。しかし今は詰みの可能性が減ったので、d列にクイーン翼ルークを迅速に動員できることは白にとって非常に有益である。

 b2-b4 突きで駒得する狙いの 16.c3 は 16…Re8! から 17…Ba6 の逆襲を狙われて危険である。例えば 17.Kf1 Rxe2! 18.Kxe2 Ba6+ 19.Kd1 Ng4 となって、黒は …Nf2+ と …Rd8+ の攻撃が楽しみになる。白が収局で詰まされる可能性さえある

16…Nc6 17.Nc3 Nb4?

 この手は魅力的だが 17…Ng4! の方が良かった。黒は 18…Bf2+ か 18…Ne3 だけでなく 18…Nb4(19.O-O-O Nf2!)を狙っている。

18.O-O-O Bf5 19.Ne1 Ng4

 白は弱点がいくつもあるので(c2、f2、e3)、今にもつぶされそうに見える。しかし黒駒が押し戻されるちょうど今こそが白の反攻が始まる時である。

20.a3!

(この章続く)

2013年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(045)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 ここで 20…Nf2 は 21.axb4 Nxd1 22.Nxd1 または 22.bxc5 で白がルークの代わりに2個の小駒を得る。

20…Nc6 21.Nd3 Bb6

 代わりに 21…Bxd3 は白が 22.Bxd3 と取ってくれるなら 22…Nf2 でうまいが、22.Bxg4! と取られると良くない。

22.h3! Ne3 23.Bxe3 Bxe3+ 24.Kb1 Nd4 25.Bg4 Bg6!

 白は危機を切り抜けポーン得を維持した。黒のビショップが白キングの周りを不気味ににらんでいるので、形勢はまだ難しい。白の課題はルーク同士および/または小駒同士を交換して、キングの助けでクイーン翼のポーンを前進させることができるようにすることである。黒が攻撃を誤って(17手目)からでさえ長いこと主導権を維持してきたことには注意がいる。

26.Rhe1 Bg5 27.Ne2! h5 28.Nxd4 Rxd4

 28…hxg4 の問題は 29.Ne5! で Nxg6 を狙って白のナイトが急に強力になることである。

29.Bf3 Rc8 30.Re5! f6?!

 30…Bf6 は白に 31.Ra5 でaポーンとhポーンを両当たりにされるが、黒は 31…Rdc4(32.c3 Rb8 から 33…Rxc3 の狙い)でルークとビショップを最大限に働かせてわけの分からない戦いにできる。

31.Rd5! Rxd5

 代わりに 31…Rdc4 は 32.Rxg5! から 33.Bd5+ と応じられて、さらに交換が進んで白のポーン得の重みが増す。

32.Bxd5+ Kh7 33.b4!

 ようやく白はキングの助けでポーンを突き進めても安全になった。白は c2-c4 突きから Kb2-b3 と指して、クイーン翼のポーンで圧殺する。

 試合は既に白の勝ちになっていて、次のように進んだ。33…Be3 34.c4 Kh6 35.Kb2 f5 36.Ne5 f4 37.c5 Bf5 38.Nf7+ Kg6 39.Nd6! Rc7 40.Nxf5 Kxf5 41.Bf3 g6 42.Rd5+ Kf6 43.Kc3 Re7 44.a4 黒投了(Kc4、b5、a5 から b6-b7 に対して何もできないので)

(この章続く)

2013年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(046)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2
白 E.パオリ
黒 A.ビズガイアー
ペンシルベニア州ノリスタウン、1973年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5 d5 5.exd5 Na5 6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2 h6 9.Nf3 e4 10.Ne5 Bd6 11.f4 exf3 12.Nxf3 O-O 13.O-O c5 14.Nc3

 白が d2-d4 と突くのを拒否するのも確かに一理ある。こう突くと黒のビショップの利きが大きく広がり、b6-g1の斜筋での危険がさらに増す。しかし白が局面を半閉鎖的に保とうとすることにはマイナス面もある。白は d2-d4 突きでは局面を開放することにより、少なくとも黒の駒に対抗し交換を誘うことに努める。代わりに d2-d3 突きの作戦では備えを固めて動き回る余地の少ないことを受け入れる。

14…Nc6

 ここで 15.d4 は 15…cxd4 16.Nxd4 Nxd4!(17.Qxd4?? Bxh2+)のため手遅れである。

15.a3?! Re8 16.d3 Rb8

 黒の手は理解しやすい。黒は白がどう応じようと駒を最も働く地点に配置している。白が b2-b3 突きから Bb2 でb2の地点を守れば、e3の地点の占拠を招いてしまう(例えば …Ng4-e3 によって)。

17.Qe1?

 これが 15.a3 と突いておいた理由で、この突きがないとここで黒が 17…Nb4! と指せる。白は Qh4 で最も価値ある駒のキングを守るために最も強力な駒のクイーンを使うことを考えているのかもしれない。

17…Nd4!

 しかしこの強手が白の部隊を混乱させてしまう。白は恥を忍んで 18.Qd1 と指すかポーンを返さない限り、c2のポーンとe2ビショップの両当たりに対処できない。チェスの選手はめったにこのような間違いの屈辱的な承認を進んで受け入れようとしない。

18.Nxd4 cxd4

(この章続く)

2013年08月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(047)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 ここでナイトが下がれば黒は白クイーンの身代わりに釘付けにされているe2のビショップに当たりを増やして戦力得になる。例えば 19.Nd1 Qe7 20.Rf2 Ng4 という具合である。これは …Nc6-d4 の効果を如実に示している。

19.Ne4 Nxe4 20.dxe4 Rxe4 21.Qf2

 白はなんとか釘付けにされたe2のビショップの破滅を回避できた。しかし今度はキング翼の守りからナイトがいなくなったことに対処しなければならない。Bd3! が黒のルークを押し返しそのあと Bf4! と指せるので、白の防御はあまり難しくなさそうに見える。黒の両ビショップが無力になれば白はルークで黒のdポーンを攻撃できるので優勢になるかもしれない。22.Qxf7+ は白の最初で最後の狙いである。

21…Qc7

 この簡単な手が白の希望を打ち砕く。黒はキング翼攻撃または …d4-d3 から …Bc5 の狙いで勝つことができる。

22.h3 Bg3!

 22…d3 は 23.Bxd3 Bc5 24.Bxe4 Bxf2+ 25.Rxf2 となって白がクイーンを失うが、戦力差はごくわずかである(ルーク、ビショップ、それにポーンはクイーンにほぼ等しい)。黒は攻撃が終わり試合に勝つのは難しい。実戦の手はこれよりはるかに良い。

23,.Qf3 Bb7 24.Qd3

 白クイーンには休む暇がない。代わりに 24.Bd3 は黒が間髪をいれずに 24…Re3 でビショップで白クイーンに対する当たりを炸裂させる。そして 25.Qf5 g6 で黒が勝つ。例えば 26.Qg4 なら 26…Bh2+ 27.Kh1 Rg3!、また 26.Qf6 なら 26…Bh2+ 27.Kh1 Rxh3!(28…Be5+ または 28…Bxg2+ 29.Kxg2 Qg3+ から詰みの狙い)である。これらの変化では黒のビショップは殺人器となっている。

24…Re6!

 今度は 25…Ba6! が狙いである。

25.Bg4 Rg6 26.Qd1

(この章続く)

2013年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(048)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 白は危険な変化をすべてふさぐことができたように見える。しかし展開を完了するにはまだ何手かかかり、必然的に黒は白の鎧(よろい)に弱点を見つけ出す。

26…Be4!

 皮肉にも最初に崩壊するのは白のポーンの方が多いクイーン翼だった。白が 27.Bf5 と指す暇がないのは、g列の栓を抜くと 27…Bh2+ 28.Kh1 Bxg2# となるからである。

27.Qxd4 Qxc2 28.Qd2

(この章続く)

2013年08月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(049)

第3章 2ナイト防御 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

28…Rxb2!

 これが決め手になった。白の展開していないビショップはクイーンとbポーンの両方を守ることができない(29.Bxb2 Qxd2)。そして 29.Qd8+ は 29…Kh7 でg2への狙いに対処する手段がない。

29.Qxc2 Rxc2 30.Bf3 Bxf3 31.Rxf3 Be5 白投了

 白が 32.Rb1 でルークを助けたあとは 32.Rgxg2+ 33.Kh1 Rh2+ 34.Kg1 Bd4+ 35.Kf1 Rh1# で詰まされるか 33.Kf1 Bd4 34.Ke1 Rg1+ 35.Rf1 Bf2+ または 35…Bc3+ で駒損になる。

(この章終わり)

2013年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(050)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス

 4ナイト試合には穏やかで均衡がとれていて引き分けになりやすいという評判がある。この評判はもっともだが、アマチュア選手は少し危険を冒すことによりわくわくさせる中盤の局面を作り出せることがよくある。4ナイト試合はグランドマスターの大会では地歩を失ったが、クラブや楽しみで指す選手たちの間では用心していない相手に対して危険な武器になることがまだある。

 この布局が引き分けになりやすいのはポーンと駒の配置の対称性にある。8手くらい進んだ典型的な局面では黒陣が白陣の鏡像のようになる。白は e2-e4 と突き d2-d3 突きで局面を比較的閉鎖的に保つようになりやすい。黒は 1…e7-e5 と突いたあと恐らく …d7-d6 突きでまねをする。両者ともナイトを白はc3とf3、黒はc6とf6という最も自然な地点に展開する。さらに白は Bb5 で黒のeポーンに対する攻撃態勢をしき、Bxc6 でこのポーンの支えを崩すことを狙う。そして黒がこの狙いに対処する最も確実な手段は自分のキング翼ビショップをb4に出し、…Bxc3 のあと白のeポーンを取れるようにすることである。残りのビショップも白のはg5に行き黒のはg4に行って鏡像の一部になるかもしれない。それに両者は必ずといってよいほどキング翼にキャッスリングする。

 もちろんこの対称性はいつかは破られることになる。黒がいつまでも白の手をまねれば、最後にはまねが不可能な局面(例えば白がチェックした時)になる。黒は途中で均衡を崩さなければならず危険を伴うが、実際にはポーンを犠牲にして対称から離れる「最も安全な」手段である。駒が当然お互い鏡像の地点にあるために基本的な布局の局面が非常に均等な配置になっているので、引き分け気味の退屈な局面を避けるのは白にとっても黒と同じくらい危険である。向こう見ずな攻撃を好む選手は他に目を向けた方が良い。

 布局には次のような特徴がある。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6

(この章続く)

2013年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(051)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 黒は3手目で少なくとも当分は白の手についていく意図を表明した。白は3手目で何も狙わなかったので、黒には対称形を避ける最初の機会がある。

 黒はこの機会をとらえて 3…Bb4 または 3…Bc5 でキング翼ビショップを展開するか、3…g6 で対角斜筋にこのビショップを展開する用意をすることができる。3…Bc5 は白がちょっとした戦術の策略で優勢なポーン中原を築くことができるので、これらのうち最も魅力が少ない。それは 4.Nxe5! で、4…Nxe5 には 5.d4 と応じる。そして黒が 5…Bxd4 と取ろうと 5…Bd6 6.dxe5 Bxe5 と指そうと、黒のeポーンがなくなり白の中原ポーンの方が強くなる。(この種の中原に関するもっと詳しい解説は次章の初めに出てくるが、ここでは白はe4にポーンがあるのでd5の地点を拠点として使えるが黒にはこれに匹敵する拠点がないことを指摘しておく。)

 3…Bb4 の問題はナイトをビショップと交換する狙いの 4.Nd5 と跳ねる手があることである。この交換は白があとで(例えば d2-d4 突きで)局面を開放できる時にはほとんど常に白にとって有利である。というのは開けた局面ではビショップの方がナイトより遠くまで利くからである。4.Nd5 のあと黒はビショップをa5またはe7に引くことができるが、どちらの手も黒が手を損して白にナイトを中央の好所に据えさせたことを認めたことになる。白はこの手得を利用して 4…Be7 4.d4! d6 5.Bb5 のように中央で威張ってくるかもしれない。そして黒はeポーンへの圧力のために 6…exd4 7.Nxd4 Bd7 といくらか守勢に立たされるかもしれない。

 あるいは黒は手損を避けるためにビショップ対ナイトのわずかな有利を許容することがある。しかし 4.Nd5 Nf6 は例えば 5.Nxb4 Nxb4 6.Nxe5 d6 7.Nf3 Nxe4 8.c3 から d2-d4 突きで比較的単純な局面になり、双ビショップのために白が少しだが明らかに優勢になる。

 黒の3手目の変化で最善の選択は 3…g6 で、そのあと可能ならば …Bg7、…Nge7 そして …O-O と指す。この駒組みは白が d2-d4 と突くのを止めさせ黒のeポーンを守っている。黒は中盤戦で …d7-d6、…Be6(または …Bg4)、そして …f7-f5 と指すことができ、キング翼の襲撃につながる可能性がある。

 白はすぐに 4.d4 exd4 5.Nd5! と指してちょっとした罠を含みに黒の作戦に揺さぶりをかけることができる。黒がありきたりに 5…Bg7 6.Bg5 Nge7 と指せば白は 7.Nxd4!(8.Nxc6 から 9.Bxe7 で駒得する狙い)7…Bxd4? 8.Qxd4!! Nxd4 9.Nf6+ から 10.Bh6# で詰みに討ち取れる。6…Nf6 でも 7.e5! で良くならない。

 しかし中央でのこの興奮も黒が 6…Nge7 や 6…Nf6 の代わりに 6…Nce7! と指せばすぐ冷めてしまう。e7でのナイト同士の交換はg7からd4やc3に通じる斜筋に沿ってにらみを利かせる作戦を続けることができるので黒は歓迎である。白が 7.Nxd4 c6! 8.Nc3(黒の狭い陣形を楽にさせる交換を避けるため)と指してくれば、黒は 8…h6 9.Bf4 d5! で中央における白のポーンの優位の主張をなくすことができる。この局面で黒が安全に …d7-d5 突きを達成すれば、白はe4の橋頭堡が消滅し中央の拠点に関して駒の優位がなくなることになる。1.e4 e5 の試合では …d7-d5 突きはしばしば『古くからの互角剤』と考えられている。

4.Bb5

 4.d4 は実戦例の解説で考えるが、次章で取り上げる布局に転移するかもしれない。これを除けば黒にとって危険な4手目は 4.Bb5 だけで、5.Bxc6 から 6.Nxe5 でポーン得する狙いがある。

 一見したところでは 4.Bc4 という手もありそうである。しかしこの手は 3…Bc5 4.Nxe5 で見たのと同じ戦術の策略を食らってしまう。今回は 4.Bc4 Nxe4! 5.Nxe4 d5 で中央をめちゃめちゃにすることができるのは黒の方で、黒には自分の駒を支援するのに都合のよいeポーンが残り白のは消滅する。

 4.Bc4 Nxe4 のあと初心者は 5.Bxf7+ に目がくらむことが多い。白はどうせ一時的なナイト得を1手で失うことになるのだから、それを捨てて黒キングを乱したら良いではないか。その答は白がビショップを切り 5.Bxf7+ Kxf7 6.Nxe4 d5 で中央でのポーンの支配を放棄すれば黒キングはまったく安全であるということである。黒キングがキャッスリングの権利を失ったことは、例えば 7.Neg5+ Kg8 から …8.h6! のあと …Kh7 と …Rf8 でまったく安全なので大したことではない。しかし黒の強力なポーン中原はなくなるようなものではない。4.Bc4 Nxe4! のあと黒は 5.Bxf7+? なら楽に優勢になり 5.Nxe4 なら簡単に互角になる。

(この章続く)

2013年08月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(052)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

4…Nd4!?

 これは昔好まれた 4…Bb4 に取って代わって現代の4ナイト試合に特徴的な手である。第一次世界大戦まではビショップを動かす手がよく指されたが、そのあと互角をもたらす強さの 4…Nd4 のためにマスターの試合からはすたれた。それでも黒は 4…Bb4 のあと対称戦法の 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5 を注意深く指せば相応の、そしてもっと元気のよい局面にすることができる。

(この章続く)

2013年08月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(053)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Bb4 5.O-O O-O 6.d3 d6 7.Bg5

 黒はいつかはまねの方針をやめなければならない。例えば 7…Bg4 8.Nd5! Nd4 9.Nxb4 Nxb5 10.Nd5 Nd4 11.Qd2! と進むと黒は白の 12.Bxf6 gxf6 13.Qh6 から 14.Nxf6+ の狙いを同じ手順を指すことにより対処することができないので罰せられる。ある時点で白はチェックをかけるが、黒はまねして自分もチェックして白のチェックを無視すること(例えば 11.Qd2 Qd7 12.Nxf6+ gxf6 13.Bxf6 から 14.Qg5+)は不正な手なのでできない。

 見てのとおり図の局面で白はキング翼攻撃を狙っている。Nd5 からf6のナイトを取れば黒キングの囲いを乱すことができる。Nd5 の狙いに対する最も簡単な応手は単に 7…Bxc3! と取ってこのナイトを消すことである。白が 8.bxc3 と取ったあとも黒はまだf6のナイトに対する釘付けの問題に直面している。黒は「メトガー釘抜き」でこの釘付けから脱することができる。これは世紀の変わり目に発見した分析家にちなんで名づけられた巧妙な着想である。

 黒は 8…Qe7 のあと …Nd8 から …Ne6 と指す。そのあと白がビショップをc1-g5の斜筋に沿って引けば、黒は …Nc5 と指し …Bg4 で自分が釘付けをかけることができる。…Ne6 に対し白がビショップをh4に引けば、黒は …Nf4 のあと …Ng6 と(必要ならば)…h6 によって最終的に釘付けをはずすことができる。そのあと白ビショップが釘付けを維持できる手段はない。具体的には 8…Qe7 9.Re1 Nd8 10.d4 Ne6 11.Bh4 Nf4 12.Qd2 Ng6 という手順である。

 このように指せば頑丈な陣形のために黒が優勢になる。ある時点で白が d3-d4 と突けば-これは双ビショップとルークのために局面を開放するための白の主要な手法である-黒は黒枡でポーンの陣形を築くことができる。つまりc5とd6にポーンを配置する。そうすれば白の黒枡ビショップは花崗岩のような黒ポーンのために石に頭をぶつけるようなもので、黒陣に大きな影響を与えることがない。

 そうこうしているうちに黒は …Bd7 から …Rac8 と指して、適時にポーンを交換してc列でルークを使えるようにすることができる。白は d4-d5 と突くことによってこれを防ぐことができるが、これは局面を閉鎖することになる。これは自分が射程の長いビショップを持っていて、黒に …Ne8 から …f5 で反撃の好機を与える時には、したくないことである。

 4…Bb4 のあとの閉鎖的な大局観の戦いとは対照的に、劣った 4…Bc5 のあとは開放的な(そして黒には気乗りのしない)中盤戦になる。白はまたポーンによる両当たりの策略(Nxe5 から d2-d4)を用いて中央で優位に立つことができる。このための最善の手順は 5.O-O で、5…O-O なら 6.Nxe5! Nxe5 7.d4 Bd6 8.f4! Nc6 9.e5 で白はいずれ小駒を取り返し中央でより多く支配しているので(例えば 9…Bb4 10.d5!)しっかり優勢になる。

 黒は 5.O-O のあと 5…d6 と突くことによりこの戦術の策略を避けることができるが、それなら白は 6.d4! と突いて中央に駒を進出させ黒の強力なeポーンを撲滅することができる。例えば 6…exd4 7.Nxd4 Bd7 8.Nf5 Bxf5 9.exf5 のあと Bg5 から Nd5 または Ne4 で強力なキング翼攻撃を行なえる。

(この章続く)

2013年08月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(054)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Nd4 の局面

 黒の 4…Nd4 の威力は白駒を乱す効果からきている。このナイトは白のビショップ(b5)を当たりにしているだけでなく、黒のeポーンを当たりにしている張本人のナイト(f3)にも当たっている。白が黒のナイトを取ると(5.Nxd4 exd4)b5のビショップへの当たりはなくなるが白のもう一つのナイトが当たりになる。

5.Nxd4

 これが最も安全な手法だが、どちら側にとっても負けになる間違いがいくつもあるような深刻な中盤戦になる。黒は 4…Nd4 でいくらか危険を冒しているので、白がこの局面から優勢を引き出すために危険を冒すことができるかどうかを聞くのが公平である。詰まるところ黒はどちらかのビショップを動かす前に既に展開した駒を再び動かした(…Nb8-c6-d4)。白は黒の2駒に対し3駒を展開していて、手番を握っている。白はこの手番をどう生かすことができるだろうか。

 4…Nd4 をとっちめる一番目につくやり方は、無防備になったポーンを 5.Nxe5 と取ることである。黒が 5…Nxb5 から 6…Nxe4 で戦力の互角を取り戻しにくれば、白は強く 7.Qe2! と応じる(7…Nf6? には 8.Nc6+ の開きチェック、7…d5 には 8.d3)。しかしこの変化で白がe列を利用するなら、黒も当然(5…Nxb5 の代わりに) 5…Qe7! で迎え撃つことができる。そして 6.Nf3 Nxb5 7.Nxb5 Qxe4+ 8.Qe2 Qxe2+ となれば、ナイトよりビショップの方が動きに優るので黒が収局で少し優勢になる。

 白が 5.Nxe5 と取ろうとするなら、5…Qe7 に 6.f4!? と応じる用意をしなければならない。これにより白は 6…Nxb5 7.Nxb5 d6 8.Nf3 Qxe4+ 9.Kf2 でクイーン交換を避けることができ、10.Re1 で黒のクイーンを取るか 10.Nxc7+ で黒のキングとルークを両当たりにする狙いで黒の勢いをはね返すことを狙う。そして 9…Ng4+ 10.Kg1 Qc6! 11.Qe2+ Be7 と進めば局面が非常に戦術的になり、途中 10.Kg3 なら 10…Qg6!(開きチェックの狙い)11.Nh4 Qh5 12.h3 Nf6 13.Qxh5 Nxh5+ で互角の局面になる。白は二つの罠を避けている。12.Nxc7+ Kd8 のあと 13.Nxa8 は 13…g5! 14.fxg5 Qxg5 から決定的な開きチェックがあり、13.h3 は 13…Nf6 14.Nxa8 Qxh4+!! 15.Kxh4 Ne4 から 16…Be7# で詰みになる。

 白は5手目で 5…Nxb5 を避けるためにビショップを引くこともできる。c4に引くのが最も自然に見えるが、黒にdポーンを突く手を与える。黒は堅実に 5.Bc4 Nxf3+ 6.Qxf3 d6 からビショップをe6とe7に展開して互角にできるかもしれない。あるいはもっと大胆に 5…Bc5 6.Nxe5 Qe7 7.Nf3(または 7.Nd3)7…d5! と指すこともできる。この後の方の手順で黒は犠牲にしたポーンの代わりによく働く攻撃的なビショップという形で申し分ない代償を得る(7.Nd3 d5 8.Bxd5 Nxd5 9.Nxd5 Qxe4+ 10.Ne3 Bd6 11.O-O Be6 のあと 12…O-O-O!)。

 白が試合を活気づけそれでも負ける危険性を最も低くできるのは 5.Ba4!? である。これは 5…Nxb5 と取られるのを防ぎ、黒のeポーンを取る狙いを復活させる。そしてこのビショップがまだa4-e8の斜筋上にいるので、黒は …d7-d6 と突いてeポーンを守ることもできないし、eポーンの犠牲の後続手として …d7-d5 と突くこともできない。

 黒がdポーンを突けないことは 5…Nxf3+ 6.Qxf3 となると重大になる。というのは 6…Be7? と指すと白が 7.Qg3! でeポーンとgポーンを両当たりにできるからである。黒はキング翼ビショップを展開する前に 6…c6 から 7…d6 と手をかけなければならないことになる。また、黒がeポーンを犠牲にすれば …d7-d5 と突けないことは黒の勢いを大分奪うことになる。例えば 5…Bc5 6.Nxe5 Qe7 7.Nd3 は白のビショップがc4にいる時よりも白にとってより効果的である。なぜなら …d5 突きは不正な手だし、7…Nxe4 は 8.O-O! で黒が展開で大きく遅れをとるからである(8…Nxc3 9.dxc3 Ne6 10.Nxc5 Qxc5 11.Be3)。

 この犠牲の手順における黒の最善の選択は、すぐにポーンを取り返すことを忘れることである。そして代わりに 5…Bc5 6.Nxe5 O-O と指すのが良い。

(この章続く)

2013年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(055)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Ba4 Bc5 6.Nxe5 O-O

 ここで黒は本当に …d5 突きを狙っている。この手は白の駒とキングがいじめに会いやすいちょうどその時に中央を開放する。例えば 7.d3 d5! で 8…Qe7 の狙いができ、そのあと 9.Bf4 は 9…Bd6 にはまり(ナイトが釘付けになっているので黒が戦力得になる)、9.f4 はd4の黒ナイトが動いての開きチェックの可能性のために白は数手の間キャッスリングが考えられなくなる。

(この章続く)

2013年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(056)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Nxd4 の局面

5…exd4 6.e5

 ここで白の指す手は限られている。他の手は 6.Ne2 や 6.Nb1 だが単に 6…Nxe4 と取られたあと黒が …c6、…d5 から …Bd6 または …Be7 と楽に展開できる。

6…dxc3

 黒の指す手も限られている。f6のナイトは良い逃げ場所がない。

7.exf6 Qxf6!

 駒の取り合いが続いている限り、どちらも取れる駒が不足するようにはなりたくない。それはいす取り遊びで音楽が止まったときのようなものである。白は 6…dxc3 で始まった取り合いで後から続いている。つまり白は黒がナイトを取ったあとでナイトを取ったし、黒がポーンを取ってからポーンを取ることになる。黒はチェックで 7…cxd2+ と取ることにより取り合いを乱すことができ、白がd2で取り返したあとf6で取って取り合いは黒のポーン得で終わる。

 しかし事はそう簡単でない。7…cxd2+ 8.Bxd2 Qxf6 のあと両ビショップの分だけ白が展開で先行していて、また手番を握っている。9.O-O で白は申し分ないビショップの斜筋とe列の使いやすさとでポーン損の十分以上の代償を得ている。例えば 9…Be7 10.Bc3 Qg5 11.Re1! と進んで 11…Qxb5 と取ってくれば 12.Qg4 のあと Qxg7 から Bf6 の狙いが強力すぎて黒はお手上げになる(12…Rg8 13.Bf6![訳注 13…d6 14.Rxe7+ Kf8 で黒の方が良くなるので正着は 13.Qh4 または 13.Rxe7+ です])。同様に 11…O-O も 12.Re5! のために危険すぎて、このあと黒クイーンは自分のビショップの守りから切り離されるかもしれない。

8.dxc3

 8.bxc3 は白ポーンが3群に分かれ、8.dxc3 よりも少し弱くなる。それでも 8…c6! 9.Ba4 Qe5+ のあと局面はまだ非常に拮抗している。しかし黒は 9…d5! と指せば勝てる可能性がある。

8…Qe5+

 黒がクイーン交換の誘惑に抵抗すれば、白は 8…Bc5 9.Qe2+ Qe6 10.Bc4! としつこく迫るかもしれない。または白は 9.O-O と指して、10.Re1+ Be7 11.Qe2 の狙いで黒のキャッスリングを止めることもできる。黒が 9…O-O と指せば、10.Bxd7! Rd8 11.Qh5 Bxd7 12.Qxc5 で白の方が悪いわけがない。

9.Qe2 Qxe2+ 10.Bxe2

(この章続く)

2013年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(057)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここに慎重さが実を結んだ。まったくの互角の局面がまたもや対称形に近づき、引き分けに向かっているのはほぼ確実である。クイーンがないことは両者とも敵キングの詰みを目指した攻撃を行なうことが非常に難しく勝敗は収局での優劣で決まることを意味している。しかしここではビショップ、ルーク、それにキングについても大した優劣はない。白のc列に二重ポーンがあることは確かだが、容易に攻撃の対象にはならない。さらに白のクイーン翼の4ポーンは黒の4ポーンと拮抗していて、両者とも非常手段を用いなければパスポーン(収局で有利)をつくることができない。

 実際この局面はマスターのチェスでほとんど常に引き分けへの序曲となっている。戦いが続いた数少ないグランドマスターの試合の1局では 10…d5 11.Be3 Bd6 12.O-O O-O 13.Rfe1 Bf5 14.Bd3! Bxd3 15.cxd3 Rfe8 16.Bd2 と進んだが、すぐにルークが全部交換になって引き分けが合意された。

 教訓 4ナイト試合は非常に拮抗しているので、優れた選手でさえこれを用いて定常的に勝つことを期待することはできない。ポーランドの偉大なグランドマスターのアキバ・ルビーンシュタインは 4…Nd4 を創始したとよく言われている(正しくないらしい)。しかし彼はついには 5.Nxd4 でどうしても引き分けの局面になるということで 4…Nd4 を放棄して 4…Bb4 に戻った。これがたぶん引き分けを避ける黒の最善の手段である。一方白は 4…Nd4 に 5.Nxd4 と応じないことにより局面を激しくできる。

(この章続く)

2013年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(058)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜
白 N.ガプリンダシビリ
黒 A.クシュニール
女流世界選手権戦16番勝負、リガ、1965年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5

 4ナイト試合の均衡のとれた性格とは相容れない重要な手は 4.d4 である。4…exd4 と取ってくれば白は別手順によりスコットランド試合に移行させることができる(次章で取り上げる)。

 また、白と黒のどちらにも 4.d4 のあと普通のスコットランド試合を避ける手段がある。

 黒の方法は 4.d4 Bb4!? である。これは 5…Nxe4 の狙いで白の中原にすぐに圧力をかけている。5.d5 Ne7 6.Nxe5 d6 のあと黒は …Nxe4 でポーンを取り返して順調である。すぐに 5.Nxe5 と取ると局面はもっと複雑になるがそれでも黒は 5…Nxe4 あるいはもっと意欲的な 5…O-O でeポーンを取るのを遅らせて …Re8 または …Qe7 を意図して互角にできるかもしれない。

 白がチャンスをひねり出す方法は 4.d4 exd45.Nd5 と指すことである。ベオグラード・ギャンビットと呼ばれるこの手は、黒が 5…Nxe4 6.Qe2 f5 7.Ng5 で2個目のポーンを受諾すれば大変な乱戦になる。黒は 5…Be7 からキャッスリングする方がはるかに安全である。例えば 6.Bf4(c7を取る狙い)6…d6 7.Nxd4 Nxd4 8.Qxd4 Nxd5 から …Bf6 となればほぼ互角である。そしてもし白がビショップ対ナイトの優位を得るために Nxe7 とわざわざ取ってくれば、…Qxe7 のあといつか白はeポーンを守るのが難しくなる。

4…Nd4 5.Ba4

(この章続く)

2013年08月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(059)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 これは最後にはほとんど対称になりそうな局面でわずかな有利を得るための白の最善の選択である。白は 6.Nxe5 の狙いに黒が 5…Nxf3+ とナイトを交換してくれることを期待している。そうなれば白はクイーンで取り返して手得になり、あとでクイーンが強力なg3の地点に移動してg7の地点をにらむことになるかもしれない。5…Nxf3+ とナイト同士を交換することにより黒は白をさらに展開させるが自分の展開を促進させることにはならない。

5…Bc5 6.O-O

 これは(6.Nxe5 と比べて)比較的穏健な手だが、5.Nxd4 から生じそうな一連の駒交換よりは冒険的である。白は中央を乱すことなく O-O、d2-d3 そして Bg5 と展開することを望んでいる。あとで中央でナイト同士の交換になればたぶん白の展開の方に役立つだろう。

6…O-O 7.d3 c6!?

 黒は白にだけ狙いがあるような劣った局面を受け入れる気はない。この手で黒は …d7-d5 突きを準備すると共に敵の駒をd5に寄せつけない。これは普通の手の 7…d6 と比較すればその重要性が分かる。7…d6 8.Nxd4 Bxd4 9.Bg5 でf6の地点に強い圧力をかける 10.Nd5 が狙いになる。(黒は 8…exd4 と取ることはできるが、9.Ne2 でビショップの働きが大きく落ちる。)

8.Nxd4

 黒のeポーンはもう4手もの間目に見える支援もなく浮いたままである。しかし隠れた手段により Nxe5 を止めていて、ここでは 8…d6! があり 9.Nc4 なら 9…b5 でビショップとナイトを両当たりにして黒の駒得になる。9.Nf3 なら白は駒損にならないが 9…Bg4! で白の危険な局面になり、クイーンがf3の地点を守っていなければならないのでキング翼のもつれを解消するのが難しくなる。例えば 10.Qe1? なら 10…Bxf3! で黒の戦力得になるし、10.Be3 Bxf3 11.gxf3 Nh5 なら 12…Qf6 または 12…Qh4 でg2、f3およびf4の地点に黒の強い圧力がかかる。

8…Bxd4

 続けて …d7-d5 と突くつもりならば 8…exd4 と取る手もあり得る。例えば 8…exd4 9.Ne2 d5 10.exd5 Nxd5 となれば黒のc5のビショップはあとでd6の地点で働き出す。

9.Ne2! Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 d6 12.Kh1!

(この章続く)

2013年08月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(060)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 白は穏やかに布局を指すことにより、キング翼で黒に問題を突きつけた。ナイトに対する攻撃から安全に抜け出せないのは黒の方である(12…Qc7 なら 13.Bxf6! のあと Ng3 から Qh5)。この黒の展開の障害は、白が f2-f4 と突いてf列を素通しにしてf6に対する圧力を強めることができればさらに重大になる。これが白が Kh1 と指して黒ビショップににらまれているb6-g1の斜筋を空けた理由である。

12…g5

 f2-f4 突きはこれでなくなった。しかしこの手は黒キングの囲いをさらに弱体化させた。白は f2-f3 から d2-d4 と突いてd列を素通しにできる。また、黒のこの手で生じた「空所」につけ込んで、ナイトをg3からh5またはf5に送り込むこともできる。(「空所」とはもうポーンによって守ることのできない地点のことである。)

13.Bg3 Nh5 14.d4! Nf4!

 14…Nxg3+ は黒のキング翼の受けに良く働いている駒をなくし白の攻撃力を減らすことにはならないので、実戦の手の方がはるかに良い。14…Nxg3+ に白はhポーンで取り返し(…Bg4 に f2-f3 と突けるようにするため)、キング翼を Bb3、c2-c3、 Qd2 そして f2-f4 で襲う用意をする。

15.c3 Qf6

 黒は 15…Nxe2+ 16.Qxe2 exd4 でポーン得することができる。しかしそれは白兵戦の用意ができていない方面の戦いを始めることになる。17.Rad1 dxc3 18.Bxd6 または 17…Qf6 18.e5! のあと白の展開に優る駒が中央で暴れまわる。

16.f3! Kh7 17.Bf2 Rg8

 黒は中央を開放された時の危険を最小限にする手はずを取りながら注意深く閉鎖的に保った。e5でのポーンの交換は白がまだd列をあまり活用できないので恐れていない。また、Nxf4 も …gxf4 のあとg列で戦いを進めることができるので恐れていない。

 しかし白も同様に注意深かった。dポーンを強化したし、数手前で指摘したh5とf5の空所につけ入る用意もしている。白は Ng3 と指した後 Qd2 から Rad1 でd列で何かすることを考えている。そしてe5でのポーン交換のあと Qd6! で自分の駒のために動く余地を作る。黒はキング翼で無理攻めを始める。

18.Ng3 g4? 19.Be3! Qh4 20.Qd2

(この章続く)

2013年08月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(061)

第4章 4ナイト試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜(続き)

 急に白の方がキング翼で自分の狙いによりはずみが出てきた(Bxf4 が最も重要な狙いである)。黒は退却すればキング翼が反撃にさらされるので攻撃にかけなければならない。例えば 20…Nh5 と引くと 21.Nxh5 Qxh5 22.fxg4! Bxg4 23.Rf6! となる。

20…Be6 21.Bxf4 exf4 22.Qxf4

 白はポーン得し、中央のe5にあった黒の拠点もなくした。白はポーン得がものをいう収局のことだけを考えているわけではない。中盤で e4-e5 突きから Bc2+ でさっさと詰ませることも考えている。このあとは殺戮戦になった。

22…Bd8 23.Bc2! Bg5 24.e5+ Kg7 25.Qe4 gxf3 26.Qxf3 Qg4? 27.Qxg4 Bxg4 28.Bf5! h5 29.Bxg4 hxg4 30.Nf5+ Kg6 31.Nxd6 Rh8? 32.Nxf7 黒投了

(この章終わり)

2013年08月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(062)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス

 1.e4 で始まる布局の中でスコットランド試合は中央を支配しようとする白の最も純粋な例である。白の戦略は黒のeポーンをすぐに直接攻撃して、黒に中央における重要な要のポーンを交換させることである。この布局の戦略は他の 1.e4 e5 の布局の戦略とは異なっている。例えばルイロペスと4ナイト試合では白は駒で黒のeポーンを取ろうとする。2ナイト防御とジオッコピアノでは白は 1…e5 突きによって弱体化した地点、特にd5、f5それにf7につけ込もうとする。しかしスコットランド試合では白は黒のeポーンを清算、すなわちそのポーンを白のdポーンと交換させて、白が自分の駒のために中央を開放し黒のもう中央に足場がないことから利益を得るかもしれないようにする。

 上図は最初の4手後のポーン陣形を表わしている。

 このポーン陣形は白が少し有利である。なぜかって?それでは両者が駒をどこに配置するかを考えてみよう。白には中原にポーンがあるが黒にはない。これにより白はeポーンによって守られたd5の地点を容易に占拠することができる。d5のナイトが理想的で、そこから黒のc7のポーンを攻撃し、キング翼のe7とf6の地点を監視し、一般に黒の悩みの種になる。d5の地点はビショップまたはルークにとっても非常に好所になる。f5の地点もまた白の駒にとって役に立つ拠点で、特にナイトにとってはeポーンによって支えられた強力な拠点からキング翼を監視することができる。

 そのうえこれらの拠点は黒が …c7-c6 または …g7-g6 と突いてくるまで安全に維持することができる。もしこれらの手のどちらかが指されれば、白は戦略を変更して黒の新たにできた弱点を利用し始める。例えば …c7-c6 突きはd6の地点を最後に守っていたポーンがその守りを放棄することになる。これは白が黒の中央をふさぎ黒のビショップの展開を邪魔しながら、その地点を占拠しようとすることができることを意味する。あるいはもし黒が …d7-d6 および …c7-c6 と突けば、dポーンが隣のポーンによって守ることができず白駒の自然な標的になる(Bf4、Rad1)。

 この白にとって有利な性質のポーン陣形は、黒が自陣を解放し、守勢で骨の折れる中盤戦になりやすいのを避ける課題を抱えていることを意味している。

(この章続く)

2013年09月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(063)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4

 白の3手目でスコットランド試合に決まる。この手は黒に中央に進出したばかりのポーンをほぼ清算させる。黒のe5のポーンは別のポーン、例えば …d6 突きで支えることによってのみ維持することができる。しかしこの手は 4.dxe5 dxe5 5.Qxd8+ Kxd8(5…Nxd8 6.Nxe5!)から 6.Bc4 または 6.Nc3 で白が形を決めることができるので好まれていない。白はいずれクイーン翼にキャッスリングし展開で大きな差をつける。

3…exd4 4.Nxd4

 白はナイトで取ることにより駒の一つを、いくつかの要所(b5、c6、e6そしてf5)を見張る中央の最も働ける地点に進めた。このナイトは黒のクイーン翼ビショップに最良の地点に来させないので既に黒に問題を突きつけている。そして黒はこの強力なナイトを取り除くことができても、4…Nxd4? 5.Qxd4 で中央にはるかに強力な白駒のクイーンを来させることになるだけである。

 しかし黒には中央での白の戦略に対処する策がある。それを調べる前に、白の4手目で別の激しい手を見てみることにする。自然で当然の 4.Nxd4 の代わりに白は 4.c3!? で試合をもっと戦術的な方向に持って行くことができる。

(この章続く)

2013年09月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(064)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ゲーリング・ギャンビット

 この手でスコットランド試合から派生したゲーリング・ギャンビットになる。白はポーンを犠牲にしてd列とc列を素通しにし、f3のナイトはそのままにしてe5かg5を経由してf7の地点の襲撃に用いることができるようにする。白は主要な注意をキング翼に向けるかもしれないが、中央とクイーン翼に注意をもっと注ぐことにより黒駒を守勢にさせたままにする戦略をとる用意もしている。例えばルークをc1とd1に、ナイトをd5に置けばc7の地点に対して定型の攻撃が整う。黒がcポーンを突けばdポーンが標的になる。黒駒にこれらの弱点を守らせることにより、白は黒の防御が持ちこたえられなくなることを期待している。

 4…dxc3 に対し白は 5.Nxc3 と取ったあと Bc4、Qb3 そして Bg5 で調子よく戦線を構築することができる。例えば 5…Bc5 6.Bc4 d6 7.Bg5! となれば黒にとって大きな問題になる。c5の黒ビショップはc7の地点が標的となるのを防いでいるが、…d7-d6 突きによってキング翼から締め出されているのでもうそちらでの防御には使えない。だから 7.Bg5 のあと黒は 7…f6 か 7…Nf6(この手は 8.Nd5 を招く)を選択してポーンを弱体化させることになる。黒は 7…Nge7 と指すことによりこれらの弱体化の手を避けることができるが、8.Nd5 で黒駒が守勢に立たされることになる。

 これらの局面や似たような局面で白のd5のナイトは絶好の手とされる。この理由で黒の最善の受けは(5…Bc5 の代わりに)5…Bb4 でc3のナイトがd5に跳べる前に釘付けにするかc3のナイトを取ってしまうことであると考えられている。通常なら黒は白のナイトをd5に来させないということだけで良いビショップを切りたくはない。しかし黒はポーン得しているので譲歩してもかまわない。それにビショップをナイトと交換することは、まったく理不尽というわけではない。

 黒の正確な受けの典型的な例は 5…Bb4 6.Bc4 d6 7.O-O Bxc3!(さもないと 8.Nd5!)8.bxc3 Be6 である。この手法は白の最も危険な小駒の白枡ビショップとクイーン翼ナイトとを無力にする。白のもう一つのビショップは確かに良い駒ではあるが、望むようなさえぎるものの無い斜筋に位置しているわけではない。また、白のルークはd列がd6の黒ポーン(隣のcポーンによって守られている)によってふさがれているので都合のよい標的がない。

 黒はキング翼にキャッスリングすることができれば、白がポーンを取り返したとしても好調な展開になる。例えば 8…Be6 のあと白が 9.Bxe6 fxe6 10.Qb3 と指せば、黒は 10…Qd7! 11.Qxb7 Rb8 12.Qa6 Nge7 13.Bg5 O-O で駒を最大限の効率で動員することができる。そのあとは …Rb6 から …Rfb8 で素通し列を支配するか …Ng6-f4 でキング翼を攻撃する。

 このような結果の見方は二とおりある。一つは白はもっと冒険的でなく、つまり 4.c3!? でポーンを犠牲にしないで指すべきであるということで、もう一つはもっと冒険的に指してポーンを犠牲にすべきであるということである。例えば 4…dxc3 のあと白は 5.Bc4?! と指すことができる。

(この章続く)

2013年09月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(065)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ゲーリング・ギャンビット 5.Bc4

 この手で白からのより直接的な狙いが特にf7の地点に対して生じる。例えば 5…Be7? は 6.Qd5! Nh6 7.Bxh6 に見舞われる。しかし黒は安全に2個目のポーンを取ることができ、注意深ければ中盤戦を楽しむことができ、収局はもっと楽しくなる。

 5…cxb2 6.Bxb2 のあと白のビショップはキング翼を機銃掃射しているように見える。しかし 6…d6! のあと白ビショップは威力をそがれ、黒が優勢になる。黒はf7の地点に対する一斉攻撃に …Qd7 から …Nd8 で迎え撃つことができる。例えば 7.Qb3 には 7…Qd7! で、白の攻撃ビショップを 8…Na5! で交換することを狙う。白のもう一つのビショップについては黒は、キング翼ビショップをg7の守りからはずす前に …Nf6 と指してb2-g7の斜筋をふさぐように注意しなければならない。しかし …Nf6 から …Be7 と指してしまえば、落ち着いてキング翼にキャッスリングし白の黒枡ビショップに …Nd7 から …Bf6 で対抗する用意をすることができる。

 6…d6! に対する白の最善の応手は 7.O-O で、黒駒にじっと圧力をかけ好機の e4-e5! 突きで素通し列を作ることに期待をかける。しかし黒はf7の地点に対する危険な攻撃をまたも 7…Be6! で無効にする。白が 8.Bb5 と手をかけていられないのは、2ポーンを損していて黒がキャッスリングし戦力得に物をいわせる前に何らかの意味のある攻撃をしなければならないからである。さらに白は 5.Nxc3 の戦型のように 8.Bxe6 fxe6 9.Qb3 Qd7! 10.Qxb7 でポーンの1個を取り戻していることさえできない。なぜなら 10…Rb8! で白クイーンが逃げた後b2のビショップが取られるからである。

 代わりに白は一時的により活動的な自分の駒のために 10.Ng5 Nd8! 11.f4 から f4-f5 突きまたは e4-e5 突きで局面の開放に努めなければならない。しかし黒は 11…Nf6 12.f5 e5! または 12.e5 dxe5 13.fxe5 Nd5 で局面を比較的閉鎖的に保ち、2ポーン得がいつかは物をいうことになるはずである。

 もちろん黒にはゲーリング・ギャンビットに対する他の手段がある(4…d3、4…d5 または 4…Nf6 のようにギャンビットを拒否するなど)。しかしこのギャンビット受諾手順には「ギャンビットを咎める最善の手段は受諾することである」という古くからのチェスの金言がよく表れている。

 それでは 4.Nxd4 に戻る。

(この章続く)

2013年09月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(066)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここで白には前述したポーン陣形の有利さがあり、その有利さを得るために戦力を犠牲にする必要がなかった。そしてキング翼ビショップをc4に展開し迅速にキャッスリングする用意ができている。eポーンが攻撃された時には Nc3 で守る予定である。そしてもう一つのビショップを g5、f4 または e3 に出したあとは Qd2 から Rad1 と指すことができ、中央に形良く駒を集めることができる。黒陣を揺さぶるためには f2-f4 突きから e4-e5 または Nd5 と指すことができる。

 黒にはこの作戦に対処する三とおりの手段がある。まず、自分の駒を迅速に展開することにより白駒に対抗することができる。次に、狙いをかませることにより白の展開に干渉しようとすることができる。最後に、白がeポーンを都合よく守ることができる前にその弱点につけ込もうとすることができる。

4…Nf6!

 この手には展開、いやがらせ、そしてeポーンの弱点へのつけ込みの各側面が一番良く組み合わされている。また、非常に激しい指し方になるので、選手によっては以下のような主要な代わりの手を考えたほうが良いかもしれない。

 (a)4…Bc5 この手は昔から最もよく指される手だった。駒をさらに展開しつつ、白ナイトを当たりにすることにより先手をとっている。このナイトがb3に下がれば、黒は1手かけて当たりにされたビショップを引かなければならないが、少なくとも中央の危険なナイトをd4の地点からどかせたことになる。白がナイトを引かずに 5.Nxc6 と取れば黒の意に沿ったことになり、5…bxc6 から …d7-d5 突きで黒に好形の中原を与える。

 5.Be3 の方が有望で、黒の展開の手に白も展開の手で対抗し、6.Nxc6! bxc6(6…Bxe3?? 7.Nxd8)7.Bxc5 という狙いもある。しかし 5.Be3 は黒に 5…Qf6! 6.c3 Nge7 と指す余裕を与える。そうなれば黒は白の2小駒の展開に対し3小駒が展開していて少し展開で優位に立ち、差を広げる態勢にある。白はd4に圧力を受けているので円滑に展開するのが難しい。例えばビショップをd3に展開するとクイーンの利きをふさぎ 7…Nxd4 でポーン損になるのでそう指せない。またd4のナイトも守勢のc2以外はポーンの形を乱されるので動かせない。例えば 7.Nb3 はまずい手で、7…Bxe3 8.fxe3 で黒がe5の地点に拠点を得て、黒のナイトにとって貴重な好所になり白キングの周りも弱体化する。最後に、白はビショップをe2または(例えば 7.g3 と突いてから)g2に展開すると、黒に 7…d5! と突かれて中盤戦で有利に事を運ぶことを期待していたポーン中原がなくなるので、これもできない。(それに白が 7…d5 と突かせないために 7.Bc4 と指せば、黒は 7…Ne5 で先手が取れる。)

 要するに 5.Be3 は理にかなっているが黒に余裕を与えすぎる。

 黒の 4…Bc5 を罰しようとする最善の手は比較的変わっていて、aポーンを突くことになる。それが 5.Nb3! Bb6 6.a4! である。白のaポーンはa5まで突き進む狙いで、黒のビショップを盤上から追い払う。

(この章続く)

2013年09月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(067)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 4…Bc5 5.Nb3 Bb6 6.a4

 一見aポーンによる無造作な攻撃はどうしようもなく素朴に思える。初心者の選手は a2-a4 から Ra3 や h2-h4 から Rh3 の手段でルークを戦いに投入することにより試合の非常に早い段階でルークを使おうとしがちである。しかし可愛そうなルークは3段目で捕まり敵駒の一斉攻撃にさらされるのが普通である。初心者は試合の早い段階ではルークを1段目に置いておくことを学ぶ。

 しかしここでは a2-a4 突きが意味を持つまれな例である。黒が自分のポーンをa5に進めて a4-a5 突きを防げば、b5の地点にちょっとした空所を作ることになる。もう …a7-a6 と突くことができないのでこの地点はポーンにより守ることができなくなっている。

 もっと安全な手段は 6…a6 突きである。そのあとは白の戦略を完全に見ることになる。白は 7.Nc3 と指し、黒がキング翼ナイトを展開した後 Nd5 から Bg5 と指す。白はd5でのナイト同士の交換は歓迎である。なぜならeポーンで取り返しそのあと-ここが要点だが-Ra3 または a4-a5 から Ra4 で陣地の広さで有利になるからである。

 広さの優位とは一方が他方よりもポーンを突き進めて途中の相手の駒を押しのけることである。白は例えば 6…a6 7.Nc3 Qf6(f2での詰みの狙いがある)8.Qe2 Nge7 9.Nd5! Nxd5 10.exd5+ Ne7 11.a5 Ba7 12.Ra4 から Re4 または Rf4 でもっと陣地が広くなる。

 これもまた布局での変わった戦略だが、Nb3 からの手得やaポーンの進攻などいくつかの利点がある。白の陣形の感覚をつかむためには気楽な試合でこの局面を試してみる価値がある。

 黒は次のように白の展開に自分のクイーンで対抗するかもしれない。

 b)4…Qf6 4…Bc5 5.Be3 から始まる手順で 5…Qf6 は堅実な手であることを見た。ここでは良い手だろうか。普通はクイーンを試合のこんなに早い段階で展開するのは勧められないが、ここでは利点がある。黒のクイーンはいつかはg6の地点に行き、そこで白のクイーン翼に圧力をかけ白のキング翼ビショップの展開を妨げる。例えば 4…Qf6 5.Nb3 Qg6 となれば、白のeポーンを当たりにしているだけでなく白のビショップをgポーンの守りから離れられなくしている。

 しかし白には 4.Nb3 よりも良い手がある。4…Qf6 で黒陣に弱点ができていないだろうか。c7の地点に着目すれば、きっと 5.Nb5! という強手を見つけることができるだろう。黒は屈辱的にクイーンを引いたりキングを寄せたりしてc7の地点を守りたくはないはずである。…Bc5 から(白がf2の地点を守ったあとで)…Bb6 と指すことによりc7の地点を守ることができる。しかし白が Be3 と指したあと黒のc7の地点の問題は残ったままである。例えば 5…Bc5 6.Qe2 Bb6 7.N1c3 Nge7 8.Be3 という具合である。

 c)4…Qh4 これがスコットランド試合を咎めるための最も大胆なやり方である。白のeポーンは即刻標的になっていて、駒で守ろうとすると 5.Nc3 Bb4! 6.Qd3 Nf6 というようにごちゃごちゃになる。しかし白が進んでeポーンを犠牲にすれば、強力な攻撃を行なうことができる。例えば 5.Nb5(また黒のc7の問題に照準を合わせている)5…Qxe4+ 6.Be2 となれば、黒は 6…Qe5 では 7.f4 でクイーンがc7に利かなくなるので 6…Kd8 でc7の地点を守らなければならない。6…Kd8 7.O-O a6 8.N1c3 Qe8 9.Nd4 の局面は、白が展開でかなりの差をつけ素通しe列を活用する見込みもあるので非常に有望である。

 4…Bc5、4…Qf6 および 4…Qh4 の着想はみな 4…Nf6 の強力さの要素を持っている。しかしこのナイト跳ねは他の手と違い欠点が何もない。すなわち要所をどこも弱めず重要な選択肢を何も放棄していない。攻撃的でかつ融通性がある。

5.Nc3

(この章続く)

2013年09月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(068)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 ここで黒は 5…Bb4 と指せるので、選択肢を保持することがいかに大切かがまもなく明らかになる。黒が既にビショップをc5に出していたら、もちろん貴重な1手をかけてまたビショップを動かす気にはならない。しかし 5.Nc3 Bb4 のあと黒は白のeポーンがまた当たりになっているので(白のc3のナイトがこのビショップによって釘付けになっているので)わずかな主導権を少しだけ長く楽しむことができる。

 この黒のわずかな主導権のために白が他の5手目を探すのは当然のことである。eポーンをおとなしく守る代わりに、攻撃的に守ることができるだろうか。

 明らかに 5.e5? は 5…Nxe5 のために駄目である。しかし白はまず 5.Nxc6 と取ってから 6.e5 と突くことができる。一方は駒取りでもう一方は当たりというようにどちらの手も強制なので、黒は従わなければならない。

 さらに、黒は 5…bxc6 と取れば(5…dxc6 のあとのクイーン交換を避けるため)、6.e5 のあとナイトをどこに逃がすかという面白くない選択にさらされる。e4に逃げれば守られていないので、白に展開の手で攻撃されて手得される。例えば 7.Qf3! Nc5 8.Bc4 または 7…Ng5 8.Qg3 という具合である。ナイトがd5に逃げてもさらに攻撃にさらされる。例えば 7.Bd3 d6 8.exd6 cxd6 9.O-O から 10.Be4! となる。

 6.e5 のあと黒が生き延びるためには 6…Qe7! と指さなければならない。これはなかなか指せない手で、黒がしぶしぶ指す類の手である。黒クイーンはe7でキング翼ビショップの展開を妨害し、それによりキング翼キャッスリングを何手かの間遅らせる。しかし 6…Qe7! のあと白のeポーンは大きな圧力を受けている(7.Bf4 d6 8.Qe2 Nd5 または 7.f4 d6)。白は思い切った6手目を 7.Qe2 によってのみ正当化できる。この手は 6…Qe7 が黒の展開にもたらすのと同じ不快な効果を白の展開にもたらす。また 7.Qe2 は黒に好調に 7…Nd5 と指させることになる。このナイトは白に重大な結果をもたらさずに簡単にどかせることはできない。例えば 8.c4 Ba6(cポーンを釘付けにした)9.f4? Qb4+ となれば 10.Nc3 には 10…Nxc3、10.Bd2 には 10…Qxb2、10.Nd2 には 10…Nxf4 で黒の戦力得になる。

(この章続く)

2013年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(069)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 5.Nxc6 bxc6 6.e5 Qe7 7.Qe2 Nd5 8.c4 Ba6

 白はこの戦型を改良することができる。しかし黒は …d7-d6 または …f7-f6 と突いて白の中原に挑み …Qb4+、…Nf4 それに …Nb4 のような手で白の展開を混乱させることができるので適切に対処できる。そして 1.e4 e5 の布局では異例だけれども、黒はこの戦型ではクイーン翼ビショップを防御の駒として持っている限り安全にクイーン翼にキャッスリングすることができる。

 5.Nxc6 から始まるこの変化が攻撃的という事実からすれば、諸刃の剣でもある。白のより安全で棋理に合った手段は黒の次の手にもかかわらず 5.Nc3 である。

5…Bb4!

(この章続く)

2013年09月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(070)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 この手は 6…Bxc3+ 7.bxc3 Nxe4 または単に 6…Nxe4 を狙っているので手抜きを許さない。黒は 5…Bc5!? で形を決めることもできる。この手は黒の4手目で検討した 4…Bc5 とは少し異なるところがある。その手には 5.Nb3 と応じることができたが(5…Bb4+ 6.c3!)、ここでの 6.Nb3 には 6…Bb4 でc3の白ナイトが釘付けにされる。だから 6.Nb3 は何にもならない。

 しかし 5…Bc5 には 6.Be3 が良い応手となる。なぜなら前述の 6…Qf6 がここでは不可能だからである。黒は 7.Nxc6 から 8.Bxc5 の狙いに 6…Bb6 のような他の手段で対処しなければならない。しかしキング翼ナイトをf6の地点に置いてしまったからには、このビショップはb6の地点が好所というわけにはいかない。というのはキング翼から黒枡ビショップがいなくなると白が適時に Bg5 で露骨に釘付けをかけてくるからである。例えば 7.Be2 O-O 8.O-O d6 と進んだとき 9.Nxc6 から 10.Bg5 で釘付けにされると、黒はキング翼の陣形をひどく弱めずにこの釘付けを振り払うことができない。例えば 10…Qd7 11.Bxf6 または 10…h6 11.Bh4 g5 という具合である。

 5…Bb4 に変わる最も有力な手は 5…Nxe4!? である。このポーン取りは 6.Nxe4 なら 6…Qe7 で駒を取り返せるので成立する(7.Bd3 なら 7…Nxd4、7.Qd3 なら 7…d5)。しかしこれもまた展開に劣る側からの不当なポーンのかすめ取りの例である。黒はこのような危険なポーン取りを正当化できるだけの駒が十分に活動していない。白は 6.Nxe4 Qe7 7.f3 d5 8.Bb5! と指せばよく、8…Bd7 9.O-O dxe4 10.Bxc6 bxc6 11.Re1 または 11.fxe4 で優勢になる。黒のクイーン翼のポーンはがたがたになっているけれども、キング翼にキャッスリングするのは手数がかかりすぎるのでたぶんクイーン翼にキャッスリングしなければならない。

6.Nxc6

 白はeポーンに対する圧力に耐えられなくなった。6.Bg5 で自分も釘付けにすることはできるが、6…h6 で釘付けをはずされる(7.Bxf6 Qxf6 は黒がよく働く双ビショップを持ちまだキャッスリングしていないので自分のキング翼ポーンの進攻がそれほど危険でないので黒が有利である)。6.Qd3 と 6.f3 はあまりに形が悪かったり陣形を弱めたりで良くない。クイーンはd3よりも良い地点があり、キング翼ビショップの斜筋を邪魔すべきでない。そして 6.f3 は 6…d5! で、主手順の 7…d5(後出)よりも白の中央が強い攻撃にさらされる。というのはここで 7.exd5 と取るとe3の地点にもうポーンで守ることのできない厄介な空所が残されるからである。

6…bxc6

(この章続く)

2013年09月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(071)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

7.Bd3

 6.f3 について言ったことはこの局面での 7.Qd4 と 7.Bd2 についても当てはまる。白のeポーンにかかわる問題は 7.Qd4 Qe7! のあとも続き、8.Bd3 c5! 9.Qc4 d5! となれば白クイーンの方がもっと問題が大きくなる。白はビショップで守る代わりに 8.f3 と指すことができるが、それなら 8…d5! でeポーンにとてつもない圧力が加わる。e3の地点が弱点になるのに加えて、f2-f3 突きもb6の地点から白のキャッスリングしたキングのために予約されるg1の地点への斜筋が素通しになるので危険である。黒はいずれ …Bc5 でその斜筋を確保することができ、白のクイーンがまだd4にいる間にそうすることができるかもしれない。

 同様に 7.Bd2 も白が 7…O-O 8.Bd3 d5 9.f3? でポーン中原を支えるつもりならば強力さに欠けている。白キングの周りの弱体化は 9…Bxc3 10.Bxc3 dxe4 11.fxe4 Nxe4! 12.Bxe4 Qh4+ から 13…Qxe4 という手筋の種をまいている。

 しかし 7.Bd3 はまともである。キング翼の最後の駒が展開したのでキャッスリングの用意ができている。そして中央で何が起ころうとこのビショップには絶好の斜筋(d3-h7)がある。これと比べるとc4のビショップは黒が …d5! と突いて追い払うかもしれない狙いにたえずさらされることになる。

7…d5

 黒がこの手を今突くか1、2手後に突くかは主に定跡というより好みの問題である。まず 7…O-O と指す方を好めば、8手目でdポーンを突くことができる(8.e5? は 8…Re8 9.Qe2 d6 で怖くない)。しかしすぐに 7…d5 と突く方が選択肢が多くなる。例えば 8.exd5 にクイーンがe7でチェックできる。

 さっそく 7…d5 の分析に取り掛かる。ここで黒がそもそも …d5 と突かなかったらどうなるかを考えることは重要である。

 それは結局のところ代わりに …d7-d6 と突くことを意味する。というのはまだ展開していないビショップを働かせる唯一の便利な手段はdポーンを1枡か2枡突くことによるからである。黒は …d7-d6 突きも …d7-d5 突きもしばらく見合わせることができるが、いつまでもというわけにはいかない。例えば 7…O-O 8.O-O のあと自分のナイトをf6の好所から追い払う 9.e5 突きの可能性に直面する。自然な継続手は 8…d6 か 8…Re8 だが、8.Bg5! とかかられると黒の動きが拘束されることになる。

 f6のナイトを釘付けにする Bg5 は黒がdポーンをどうしようと来るべき中盤戦での白の重要な切り札になる。黒はキング翼にキャッスリングしてしまっていると、苦痛なしに釘付けをはずすことはできない。例えば 8…Re8 9.Bg5 h6 10.Bh4 g5?! 11.Bg3 d6 12.e5! dxe5 13.Bxe5 となると、白は駒が中央の絶好の地点に陣取り Qf3 で黒の多くのポーンの弱点につけ込む態勢になる(13…Rxe5?? 14.Bh7+ から 15.Qxd8)。

 黒はたとえ …g5 と突いてキング翼を弱体化させるのを避けても、キング周辺の問題に直面する。8…Re8 9.Bg5 h6 10.Bh4 d6 11.f4! Bd7(または 11…Bb7)のあと、白は Qf3 から Rae1 と指して e4-e5 突きの強力な狙いが間近になる。この種の中盤戦における黒の問題にはクイーンの良い地点の不足がある。そしてクイーンが動くまでルークはお互い連結できず協力できない。

 本章の初めで悪いポーンの意味するところについて論じた。ここでは黒がある時点で …Bxc3 と取ることにより白のポーンを乱せばどうなるかを考えることが重要である。

 黒はここですぐに実行してから(7…Bxc3+)、…d7-d5 か …d7-d6 を選択することができる。しかし黒は弱体化した白のポーンを必要とするよりもこのビショップをもっと必要とする。もし黒が 7…Bxc3+ 8.bxc3 d5? と指せば、白はd5でポーン同士を交換し、黒がちょうど自分の黒枡ビショップを交換したために対抗ビショップのいなくなった黒枡ビショップをa3の地点に据えて黒がキャッスリングするのを妨げる。黒がたとえ …d7-d5 と突く前にキャッスリングしても、白は黒が収局で白の弱いcポーンから期待できる成果よりも、中盤戦で Ba3 からもっと多くを得ることになる。

 もし黒が …Bxc3 のあと(…d7-d5 の代わりに)優っている方の …d7-d6 を指せば、a3-f8の斜筋の白ビショップの利きを制限することになる。しかしそれでも白の Bg5! について心配しなければならない。黒がキング翼のポーンを弱体化させずに釘付けをはずすことはできないので、ここでもまたこの釘付けは白に有利をもたらす。キング翼ポーンは中盤戦では白のcポーンよりもずっと重要である。

(この章続く)

2013年09月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(072)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

8.exd5

 ここで 8.e5 と突く手は 3.d4 以来白の初めての攻撃的な手になるという理由だけでも魅力的である。黒はもっと前に e4-e5 と突かれたときしばしば …Qe7 と応じることができたようには、8.e5 に 効果的に 8…Qe7 と応じることができないのは 9.O-O! のためである(9…Qxe5?? 10.Re1 でクイーンが串刺しになる)。

 だから 8.e5 に対してf6のナイトは逃げなければならない。しかしどこに?d7は白のeポーンを再び当たりにするが、少し黒駒の動きの邪魔になる。e4は白のc3の地点に圧力を加えるが、小駒が清算されて引き分け気味の収局になる。例えば 8…Ne4 9.Bxe4 Bxc3+ 9.bxc3 dxe4 で対称な局面になる。両者ともビショップが残っているが、色違いなので収局で勝つ可能性が制限される。

 従って黒の最善の選択は 8…Ng4! である。白はeポーンをビショップ、ポーンまたは罠で守ることができる。罠はつかの間の受けにすぎず(9.O-O Nxe5?? 10.Re1 で 10…Qe7 なら 11.f4)、結局はビショップ(Bf4)かポーン(f2-f4)を動かさなければならない。

 9.f4 による防御の主要な欠点はb6からg1の斜筋に弱点を生じさせることである。例えば 9.f4 O-O 10.O-O? は 10…Bc5+ 11.Kh1 Qh4! 12.h3 Qg3 13.hxg4 Qh4# で詰まされてしまう。

 ビショップで守る方が優るが、9.Bf4 f6!(または 9…O-O から 10…f6)でf列での黒の攻撃の可能性が有望になる状況で白がeポーンを黒のfポーンと交換しなければならないので黒が優勢である。

8…cxd5

 7…d5 によって得られる(そして 7…O-O から 8…d5 によっては得られない)別の選択肢は、巧妙な挿入手の 8…Qe7+ である。このチェックはスコットランド試合の積極的な中盤戦で黒を詰みにしとめることを切に希望する選手にとって悩ましい。それは白の数種類の応手のうち唯一の良い応手がクイーン交換させる(9.Qe2)手だからで、白が詰み狙いの中盤戦でほとんどしたくないことだからである。

 8…Qe7+ に対して白はキングを動かしてキャッスリングの選択肢を放棄すべきでないし、9.Be3 Nxd5! で戦力得を狙うひどい釘付けにもはまりたくない。9.Qe2 に代わる別の手はビショップをe2にさしはさむ手だが、非常に守勢で 9…cxd5 10.O-O Bb7 となると白駒が黒駒よりも活動性に劣る[訳注 11.Re1 があるので正着は 9…Nxd5 です]。

 それほど遠くない昔は 8…Qe7+ 9.Qe2 Qxe2+ 10.Kxe2 はまったくの互角で引き分けになると思われていた。確かにクイーンが盤上から消え、通常のスコットランド試合で白のために生じるキング翼での狙いの重要性が低くなりがちである。(白が黒駒を締めつけるためによく用いる強力な Bg5 の釘付けもほとんどなくなる。)

 しかし黒の問題は展開を完了する前にcポーンとdポーンが攻撃されるので 10.Kxe2 のあとも問題が残っていることである。例えば 10…cxd5 は 11.Nb5! で Nxc7+ を狙われるのが煩わしいし、Bf4 から Rd1 で標的のポーンに圧力が加わる。黒はd5で取り返す前に 10…Bxc3 11.bxc3 を決めておくことができるが、白は 12.Ba3! でビショップが素晴らしい態勢になり c3-c4 突きでルークのために素通し列ができる見込みもある。黒は中盤戦だけでなくこのような収局でも詰まされることがある。

 黒は 9…Qxe2+ の代わりに 9…cxd5 と取ることによりこの手順をわずかに改良し白を 10.Qxe7+ でクイーン交換する側にさせることができる。しかし黒は例えば 10…Kxe7 11.O-O Rd8 12.Nb5! c6 13.Nd4 から 14.Bf4 というようにまだポーンに問題を抱えている。

9.O-O O-O 10.Bg5!

(この章続く)

2013年09月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(073)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

 この難しい局面には活発に戦われた布局につきものの得失が現れている。白駒の方が自由に動け、次の数手ほどは特に敵キングに対して具体的な狙いがより多く持てそうである。

 しかし得失の別の面は黒の中央である。本章の初めで白のe4ポーンによって支配された典型的なポーン中原がどのように先手に優位をもたらすかを解説した。ここでは中央のポーンが多いのは黒の方である(中央から遠ざかるように 6…dxc6 と取るのでなく中央に向かって 6…bxc6 と取った結果であることに注目)。黒のdポーンは白にc4とe4の地点を使わせないことに役立っている。しかし白の駒は好所に位置しているので、黒もそれらの地点を利用できそうにない。

 このあとはどうなるのだろうか。白は 11.Bxf6 Qxf6 12.Nxd5(12…Qxb2? は 13.Rb1 で白の駒得)または 11…gxf6 12.Nxd5!(12…Qxd5?? 13.Bxh7+ から 14.Qxd5)という狙いが手始めになる。これはg5のビショップ、ナイトそれにクイーンを用いて黒の中央のポーンを攻撃することが中盤戦での主要な主題であることを示している。黒が目下の狙いに対して守った後は、白はクイーンをf3に移してそこからdポーンに対する圧力を維持しf6に対する圧力を増しキング翼攻撃に参加する用意をさせることができる。そして2個のビショップとクイーンが敵キングをにらみナイトがすぐにそれに加わることになる。ナイトの最良の経路は Ne2-g3-f5(または -h5)と Nd1-e3-f5 である。f5のナイト、g5のビショップ、それにf3のクイーンによる連係攻撃は黒にとってほぼ致命的である。

 しかしこの中盤戦については黒にも言い分がある。黒は堅実に …c7-c6 と突いて中央を安定させることができ、…Qd6 でナイトに対する釘付けをはずすことができる。黒のビショップはどちらも図の地点よりは良い地点を見つけなければならない。クイーン翼ビショップはe6が好所で、もし行けるなら(…Bg4-h5-g6 という経路で)g6の方がはるかに良い。もう一つのビショップはe7に下がって釘付けの問題を解消できるか、c5でf2の地点をにらむことができる。黒は …Qd6 から …Ba5-c7 で …Qxh2# を狙って自分の方もキング翼攻撃をひねり出すことができる。

 黒は控え目でなく中央のポーンで攻撃的に指すことができる。まず 10…Be6 から …Be7 でdポーンを安全にし、2手でなく1手でcポーンをc5に突くことができる。そして白の駒を …c7-c5-c4 と …d5-d4 で押し戻す態勢にできる。中盤戦のあとの段階では …d4-d3 でパスdポーンを作り出すことさえできるかもしれない。

 結果は白と黒による創造性あふれる均衡のとれた戦いになる。図の局面は今日ではグランドマスターの試合にあまり現れない。しかしこれはスコットランド試合への不信ではない。他の布局では白の勝つ可能性がもっと高いかもしれない(または負ける可能性がもっと低いかもしれない)。だからスコットランド試合は最高峰の大会では世紀の変わり目ほど今日では見られない。

(この章続く)

2013年09月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(074)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1
白 宮坂幸雄[訳注 将棋棋士(引退)・九段]
黒 タラジ
チェスオリンピアード、ジーゲン、1970年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6

 前に強調したようにスコットランド試合の早い段階で黒が安全に …d7-d5 と突ければ、中央の白ポーンの基盤を崩すことができる。通常はこれで白の中央におけるわずかな優位を無効にし可能性を均等にするのに十分である。そこで当然の疑問は「なぜ最も早い機会の4手目で …d7-d5 と突かないのか」ということである。

 その答えは黒が戦術による切り返しを避けられるほど十分に駒を展開していないから、である。これは珍しいことではない。試合の早い段階ではある手が作戦上は棋理に合っているが、戦術的理由で全然間違っているということがよくある。ここでは 4…d5 は 5.Nxc6 bxc6 6.exd5 cxd5 7.Bb5+! で咎められる。チェックに対する黒の自然な応手(7…Bd7)がdポーンの守りを妨げてしまう(8.Qxd5)。もちろん黒は 6…cxd5? の代わりに 6…Qxd5 と指すことができるが、7.Qe2+ から Nc3 で白に展開で先行され、弱体化したcポーンを攻撃される可能性を与える。

5.Nc3 Bb4! 6.Nxc6 bxc6 7.Bd3 d5 8.exd5 cxd5 9.O-O O-O 10.Bg5!

 もし白がこの釘付けの機会を逃せば、布局での努力に見返りがほとんどなく、不利を避けるために苦労しなければならないかもしれない。例えば 10.Ne2 は理にかなっているが、直接の厳しさに欠けているので、黒は 10…Re8 11.c3 Bd6 から …Rb8 と指すことができる。そうなれば黒は素通しのe列と半素通し(すなわち黒側だけ素通し)のb列とを支配することになる。そしてe4の地点をナイトで占拠し …Qh4 から …Bg4 でキング翼を攻撃することができる。要するに黒が順風満帆である。

10…c6 11.Qf3! Be7

(この章続く)

2013年09月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(075)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 黒が収局に行くのをいとわなければこの最後の手は不必要である。例えば 11…Re8 と寄っておき 12.Bxf6 に 12…Qxf6 13.Qxf6 gxf6 と応じることができる。黒のキング翼のポーンはきれいでないが、代償として収局で駒が非常に活発に動ける。例えばルークをb8に回して …Bd6-e5! でb2に圧力をかけることができる。白がルークをe列に回したときはルーク交換になれば黒のポーンがきれいに直るので …Re6 または …Re5 と応じることができる。

 ここでの着眼点は収局である。11…Re8 12.Bxf6 に対して黒は 12…gxf6? と取るものではない。というのはキング翼が盤上のクイーンに非常にもろいからである(例えばすぐに 13.Qh5 で 14.Qxh7+ の狙いができる)。11…Be7 と指すことにより黒は(ビショップでf6を取り返すことにより)中盤戦を続ける選択肢を残し、b列を空けることによりルークをb8に寄せて圧力をかけるようにした。

12.Rae1

 今こそ白が素通し列を使うときである。そして唯一の問題はどちらのルークをe1に回すかである。白はクイーン翼ルークを選び、黒が …Be6 と指した場合にはもう一つのルークが f4-f5 突きを助けられるようにした。Rae1 と Rfe1 の違いは、どちらのルークが先に動くかにかかわらず白が Re2 から R1e1 と指すことになりそうなのでわずかである。

12…h6!

 これはもっと後では非常に悪い手になるかもしれないが、ここでは良い手である。この手を遅らせると白が Nd1-e3-f5 の手段でg7とh6の地点にすごい攻撃をもくろむことができ、黒のキング翼ポーンのわずかな弱体化さえ致命的になることがある。しかし黒はまだ具体的な反撃策にも手を染めていない。そしてこの手は白に決断を迫るので役に立つ。13.Bh4 は 13…Rb8(bポーンに当たっている)から 14…Rb4! とされる。このルークの展開はいくらか変則的だが、h4のビショップが働きの劣るg3の地点に追われるので非常に効果的である。

13.Bxh6!?

 この手は華々しいが、黒が最善に指せば安全に引き分けになるので好手というには不十分である。実際この捨て駒のあと白には黒と同じくらい負ける可能性がある。白は捨て駒の代わりに2ポーンを得るが、黒は正確に受ければ永久チェックをさせることによって引き分けに終わらせることができる。この理由から白は 13.Bc1! から Nd1-e3-f5 と指す方が良い。

13…gxh6 14.Qe3

 これが白の読み筋である。e7のビショップを当たりにしh6のポーンも当たりにしている。このクイーンがh6に行けば、ルークをg列に持ってくるか、f6の黒ナイト(Qh7# を防いでいる)を消し去ることにより詰みを狙うことができる。ここからの指し手が非常に難しい。

14…Re8?

 この手は理にかなっている。ビショップを守りキング翼を別の駒でおおう用意をしている(…Bf8-g7)。しかしもっと強力な 14…d4! よりは劣っている。白は 15.Qxe7 Qxe7 16.Rxe7 dxc3 では駒損の収局になるので 15.Qxh6 と指さなければならないだろう。しかし 15.Qxh6 Qd6! となれば白はe5またはe3を経由してルークをg列に持ってくることができない。

 しかし白はh6とg5で繰り返しチェックして強制的に引き分けにできる。もし白が負けを免れる窮余の手段としてこの可能性をあとにとっておこうとして例えば 16.Qg5+ Kh8 17.Rxe7!? Qxe7 18.Ne4? と指すと、18…Ng8! で永久チェックがもうなくなるので黒の方が優勢になるかもしれない[訳注 19.Qh5+ Kg7 20.Nf6 Nxf6 21.Qg5+ Kh8 22.Qh6+ Kg8 22.Qg5+ による永久チェックの引き分けがあります]。

15.Qxh6

(この章続く)

2013年09月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(076)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜1(続き)

 白にルークをg列に持ってくる狙いがあるので、黒は非常に難しい局面に立たされている。黒はナイトを動かすことができない。15…Ng4? は 16.Qh7+ から 17.Qh8# だし、15…Ne4 は 16.Nxe4 dxe4 17.Bxe4 から次にh7での決定的なチェックがある。15…Bf8 と指したいところだが 16.Rxe8 に取り返したあとf6かh7の地点が守られていなくなる。最後に、15…Qd6 も間に合わないし(16.Re3! から 17.Rg3+)15…d4 もそうである(16.Re5!)。

15…Qc7 16.Re3 Bg4

 白が Rg3+ と指したときにクイーンを切る手を除けば、これがg列をふさぎ早い詰みを回避する唯一の手段である。

17.h3! d4 18.Rg3!

 黒は助かっていると考えていたのかもしれない。しかしここで白の真の狙いが 19.hxg4 でなく 19.Rxg4+! Nxg4 20.Qh7+ Kf8 21.Qh8# であることに気がついた。たとえ黒キングがf8の逃げ道からこの詰みを避けられたとしても、白には別の詰み筋がある。例えば黒が 18…Bd8 でe7の地点を空けると、19.Rxg4+ Nxg4 20.Qh7+ Kf8 21.Qh8+ Ke7 22.Re1+ Kd6 23.Qxd4# となる。実戦は黒がh8の地点を守るために大英断を下した。

18…Qe5 19.f4! Qe6 20.Rxg4+

 20…Nxg4 は前述のように 21.Qh7+ から 22.Qh8# で負けるので、黒はクイーンを切らなければならない。試合は次のように終わった。20…Qxg4 21.hxg4 dxc3 22.g5! Bc5+ 23.Kh1 Ng4 24.Qh7+ Kf8 25.Bc4! Ke7(25…Re7 は Qh8# を避けるために必要な逃走個所をふさいでしまう)26.Qxf7+ Kd6 27.Rd1+ Bd4 28.Rxd4+ Kc5 29.Be2! Kxd4 30.Qc4+ Ke3 31.Bxg4 Kf2 32.Qxc3 Rh8+ 33.Bh3(このビショップがなかったら黒がキングとルークだけで白キングを詰みに討ち取っていた!)33…Rae8 34.Kh2 Rh7 35.Qg3+ 黒投了(白の想定手順は 36.Qd3+ から 37.Qxh7)

(この章続く)

2013年09月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(077)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2

白 A.ニムゾビッチ
黒 A.ルビーンシュタイン
ビリニュス、1912年

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Bb4

 黒は 5…g6で(またはもう1手早く 4…g6 で)ビショップをg7に展開する用意をすることもできる。行き着く先の局面は黒にとって主手順ほど攻撃的ではない。なぜなら白のeポーンに対して圧力がすぐにかかるわけではなく、白がすぐに Nxc6 と指す必要がないからである。例えば 5…g6 6.Be3 Bg7 と進んだとき 7.Nxc6 bxc6 8.e5! が白の好手となる。8…Nd5 は 9.Nxd5 のあとポーンを取られるし、8…Qe7 は駒損になるだけである。代わりに黒は手損を認めてナイトをg8に引かなければならない(8…Nh5? は 9,g4 で逃げ場がない)。例えば 8…Ng8 9.Bd4 のあと Qd2 から O-O-O となる。

6.Nxc6 bxc6 7.Bd3

 上の解説とは対照的にここでの 7.e5 は 7…Qe7 または 7…Nd5 とされる。

7…O-O 8.O-O d5 9.exd5 cxd5 10.Bg5 c6 11.Ne2

 このナイトのd4への捌きは立派な考えである。しかしあまりにも遅すぎる。つまりすぐの狙いが何もなく、黒に対する圧力をいくらか緩めている。その間隙を利用して黒はナイトに対する釘付けをはずし、自分の方から狙いを作り出すことにより主導権をもぎ取ることができる。

11…Re8!

 黒は 11…c5 を急いで自分のポーンを弱めるべきではない。その手は白のナイトをd4に来させないけれども、10…c6 と突いたdポーンの守りもなくなる。白は 11…c5 に 12.c3! Ba5(ビショップがd6にもe7にも戻れなくなっていることに注意)13.Nf4 と応じることができ、14.Nh5 からf6のナイトを取って黒のキング翼ポーンを乱す狙いと、14.Bxf6 Qxf6 15.Nxd5 でポーン得する狙いがある。

12.Nd4 Qd6

 黒は釘付けをはずして次に …Ne4 と指せるようにした。e4のナイトはいくつかの重要な地点を監視しg5のビショップに当たっている。例えば 13.Qf3 Ne4 14.Be3 のあと黒は 14…Qg6 と指す余裕があり 15…Bg4 16.Qf4 Bd6 で白クイーンを取る狙いがある。これらのちょっとしたいじめの狙いにより黒はビショップのために好所を見つけ、白が態勢を立て直す前にルークでe列とb列を支配することになる。

13.Bh4? Ne4!

(この章続く)

2013年09月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(078)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 黒にとってこの上ない局面になっている。クイーンとルークの一つは展開が済み、小駒は白の小駒に比べて優っている。

 白がもっと前に指すべきだった Qf3 は、ここでは 14…Nd2! にはまって交換損になる。

14.c3 Bc5 15.f3

 白は強力な中原に支えられた黒のナイトのためにクイーンとビショップが最善の地点につけないので指しにくい展開になっている。白がビショップでナイトを取れば(15.Bxe4 または 15.Bg3)、黒は双ビショップが働いている上に …Re7 と …Rae8 でe列を支配して優勢を長い間保持することになる。

15…Qh6!

 ナイトをどこに引くよりもこの手の方がはるかに優る。ここで白は直前の手(15.f3)がキングの周りの黒枡、特にe3とf2を弱めたので、黒枡ビショップを盤上に保持しなければならない。

16.fxe4? Qxh4 17.exd5 cxd5

 黒はここで 17…Bxd4+ 18.cxd4 Qxd4+ 19.Kh1 Qxd5 でポーン得することさえできる。しかしそれは黒の不快なビショップがなくなり、白が 20.Qc2! で初めての狙いを持つことになるので(Bxh7+ または Bc4)、白を楽にさせてしまう。黒は正しくビショップを保持して、…Bd6 でキング翼を攻撃できるようにした。

18.Bf5 g6! 19.Bxc8 Raxc8 20.Rf2 Re4!

(この章続く)

2013年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(079)

第5章 スコットランド試合 アンディー・ソルティス(続き)

参考棋譜2(続き)

 4手前に交換になったナイトが同じくらい役に立つルークによって置き換わった。黒はd4の地点に対する圧力を保ち、盤上で唯一の素通し列を席巻する用意をしている。

21.g3 Qe7

 黒は優勢をどのように生かすのが最善かを決めなければならない。「鮮やかに」21…Rxd4! と切ることができ、22.gxh4 Rxd1+ 23.Rxd1 Bxf2+ または 22.cxd4 Qxd4 で優勢な収局になる。しかし中盤戦で勝つ可能性もあり、クイーンを温存することにした。

22.Qd2 f5 23.Rd1 Re3

 黒はe列の支配を利用して白駒からもっと枡を取り上げた。白はキングに通じる斜筋が危険なので(24.Nc2?? Re2! 25.Qxe2 Qxe2[訳注 25.Qxd5+ ならそれほど悪くありません])ナイトを動かせず、クイーンとルークを動かせる地点も非常に少ない。

24.Kg2 Qe4+ 25.Kg1

 これは白の無力さを明白に表わしている。白はキングを黒ビショップの斜筋からはずしておきたいのだが、25.Nf3 は 25…Rd8(26.Qxd5+ を止めるため)のあと …g6-g5-g4! で別の斜筋が危険になる。

25…Bb6 26.Rf4 Qe7 27.Kg2 Rc4!

 黒はdポーンのおかげでc4とe4の二箇所に拠点があり、両方を大いに利用しようとしている。ここでは 28…Rxd4 から 29…Re2+ を狙っている。白はナイトが …Re2+ のために動けずキングも良い場所がないので(28.Kf2 なら 28…Re4!)、手筋一閃で陣容の問題をすべて解決しようとした。

28.Nxf5?!

 これに対して 28…gxf5? なら 29.Qxd5+ Qe6 30.Qxe6+ から 31.Rxc4 で白の勝ちになる。

28…Re2+ 29.Kh3 Qe6!

 白はナイトを失う代わりに1、2個のポーンしか得られず、それでは十分でない。30.Qxd5 Qxd5 31.Rxd5 Rxf4 32.gxf4 gxf5 33.Rxf5 Rxb2 34.a4 Rb3 からの収局は望みがない。黒はこのあと短手数で勝った。

(この章終わり)

2013年09月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(080)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6

 これがペトロフ防御を特徴づける手である。白の2手目は黒のe5のポーンを当たりにしたが、黒は白のeポーンを当たりにしてやり返す。この防御の精神は最初から明らかで、それは反撃である!

3.Nxe5

 白は黒の守られていないポーンを取る招待に応じた。3.d4 で局面の開放を図り 3…exd4 に 4.e5 で黒のナイトを困らせることに期待することができる。しかし 4…Ne4 5.Qxd4 d5 6.exd6e.p. Nxd6 で黒は互角の形勢にすることができる。そして …Nc6 で白クイーンを攻撃することにより手損を取り戻す用意ができている。

 この戦型ではどのように中央の4ポーンが早々と交換になったかに注意が必要である。争点がたちまち減少することはペトロフ防御にきわめて特徴的である。白はこのような早い交換のあとは何らかの優位を示すのにとても苦労する。3.Bc4 は黒をジオッコピアノか 3…Nc6 での2ナイト防御に誘うが、白が優勢をつかむためのもっと危険の多い手である。その危険とは黒が招待を辞退して代わりに白の浮いているポーンを 3…Nxe4 と取る危険のことである。そのあと 4.Nxe5 d5 は白にとって手損でしかないので、攻撃の精神に完全に沿うことを余儀なくされる。4.Nc3 Nxc3 5.dxc3 でポーンを犠牲にして、素通し列で攻撃してポーンの代償が十分とれるかもしれない。

3…d6!

 黒はポーンを取り戻す前に注意しなければならない。すぐに 3…Nxe4? と取るのは 4.Qe2! があるのでひどい悪手になる。黒のナイトがe4からどこに動いても 5.Nc6+! で破滅的な開きチェックを食らい黒クイーンが取られる。4…d5 でナイトを守るのは災難を遅らせるにすぎない(5.d3)。これはペトロフ防御における黒の不注意な指し方の典型的な結果である。布局ではその性格からして両者のeポーンが早く消えることになりやすい。黒は生じる素通しe列での事故を避けるよう気をつけなければならない。

 実際は黒は 3…Nxe4? 4.Qe2 に 4…Qe7 5.Qxe4 d6 6.d4 dxe5 と応じることにより損害を抑えることができる。しかし「たった」1ポーン損はクイーン損ほどの災難ではないけれども、布局でポーンを放棄するのは避けなければならない。3…d6 と指すことにより黒は白ナイトを下がらせ、そのあとこれから見られるように安全にe4のポーンを取ることができる。

4.Nf3

 ここがナイトの最も自然な退却地点である。代わりに 4.Nc4 は 4…Nxe4 で白ナイトがいくらか危険な地点にあり、あとで黒のdポーン突きで攻撃にさらされる。

4…Nxe4

(この章続く)

2013年09月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(081)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

 黒はようやくこのポーンを安全に取ることができた。

5.d4

 白はもう 5.Qe2 でナイトを釘付けにすることにより得られるものが何もない。黒は単純に 5…Qe7 と応じ、6.d3 は 6…Nf6 で素通しe列でクイーン同士の交換になるだけである。ペトロフ防御は反撃の願望が動機づけだが、このような戦型の素通し列は簡単に交換を生じさせる。これが多くのペトロフ防御の手順で引き分けになりやすい理由である。白が布局の優位を本当に求めるときにだけ、真の白兵戦を期待することができる。

 白は 5.d4 と突くことによりクイーン翼ビショップの斜筋を開け、中原の所有権を主張している。代わりに 5.Nc3 で別の駒を出すのは、黒に 5…Nxc3 6.dxc3 Be7 で交換を促進させるだけである。そのあと黒はキング翼にキャッスリングして、弱点のない完全に満足できる態勢になる。

 もっと意欲的な着想は 5.c4 である。この奇妙なポーン突きは、続いて 6.d4 と突く発想に基づいている。そのあと白のc4とd4の2個のポーンは中盤戦に向けてより広い陣地を保証する。最初に c2-c4 と突くのは黒に …d7-d5 と突くのを思いとどまらせるためである。それにもかかわらず黒は 5.c4 Be7 6.d4 O-O 7.Bd3 Nf6 で無事に展開を完了し、…Bg4 と …Nc6 で中盤戦に何も心配なく好調に入っていくことができる。

5…d5

 黒はdポーンをまた突くことによりe4のナイトを支え、ビショップも活動的な地点のd6に展開できるようにした。代わりに 5…Be7 6.Bd3 Nf6 はもっと消極的だが、指せる手である。この局面の主要な問題はe4のナイトをめぐって起こる。黒がおとなしくこのナイトを引くと、少し展開に遅れ引き分けのためだけに戦うことになる。攻撃的な地点に維持しようとすることにより、2手目の動機となっている果敢な精神を引き継ぐことになる。注意すべきは 5…d5 のあとf3の白ナイトと比べて黒のナイトがe4にいるので黒が手得しているように見えることである。だから白は黒のナイトが挑戦的な地点を占めたのが時期尚早であることの証明に努めなければならない。

6.Bd3

 これはe4の黒ナイトを取り除こうとする白の作戦の第1段階である。その作戦とは Nbd2(または Nc3)、(キャッスリングしてから)Re1、そして(cポーンを突いてから)Qc2 のような手で黒ナイトそのものを攻撃し、これらの直接行動と組み合わせてこのナイトを支えているd5のポーンを切り崩すことである。e4のナイトがどこかへ退却したり交換になったりすることは、展開の優位が強調されることになりやすいので白の有利になる。

(この章続く)

2013年09月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(082)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

6…Bd6

 これが黒の攻撃的な姿勢と最も一致する手である。黒は …O-O、…Bg4 そして …f7-f5 と展開してキャッスリングした白キングの攻撃を目指す作戦をもくろんでいる。この手のささいな欠点はクイーンのd5のポーンの守りを遮断し、このポーンを白の切り崩し作戦にもろくさせることである。黒には 6…Bd6 の他にも多くの手がある。

 a)6…Bf5 はナイトをさらに守る意図だが、7.O-O Be7 8.Re1 O-O 9.c4 c6 10.Qb3 となってクイーン翼からビショップがいなくなった影響が出始める。白クイーンをb3に出してdポーンとbポーンを同時に攻撃する着想は、黒がクイーン翼ビショップを早く展開させた時によくある狙い筋である。

 b)6…Bg4 も攻撃的なビショップ出である。白の最も単純な応手は 7.Qe2 で、ナイトをさらに当たりにして 7…Qe7 と指させる。このあと黒はキング翼の展開が面倒なことになる。

 c)6…Nc6 はクイーン翼を迅速に展開しようという手である。7.O-O のあと白は早くも 8.Re1 で素通し列に不気味な圧力をかけることになる。だから黒は 7…Be7 で素通し列をふさいでおかなければならない(次の段落を参照)。

 d)6…Be7 7.O-O Nc6 は上述の 6…Nc6 の戦型と同じ局面になる。e7の黒ビショップはd6よりも働きが劣るが、素通しe列をふさぎクイーンがdポーンを守り続けられるようにし、この二つの要因により白が優勢になるのを難しくしている。それでも白の最善の作戦は Re1 から c2-c4 と突いてe4のナイトの支えを侵食していくことである。

 e)6…Nd6 もここで時おり指される。d6のナイトはc4の地点をにらんで、白が c2-c4 と突くのをもっと難しくしている。とは言ってもナイトを引くのは布局の精神に合致しているとは言いがたい。白は 7.O-O Be7 8.Ne5 と自分のナイトを進めることができ、そのあとQf3 から Re1 で駒が黒キングに攻撃をかける活動的な態勢になる。

 一般に黒はキング翼をできるだけ迅速に展開するのが最善である。素通しe列があるのでキングの安全のために迅速にキャッスリングするのが重要になる。この理由で最も自然で最もよく指される手はいつも 6…Be7 と 6…Bd6 になっている。

7.O-O

 白はキングを安全にし、8.Re1 でルークを素通し列に回す用意をした。代わりに 7.c4 で黒のdポーンをすぐに攻撃するのは魅力的だが、白がまだキャッスリングしていないことにつけ込んだ意表の 7…Bb4+! で応じられる。これは既に展開した駒による2度目の動きだけれども、白陣に引き起こす混乱は手を損しただけの価値がある。例えば 8.Nbd2 O-O 9.O-O Bxd2 10.Bxd2 Bg4 のあと黒は展開が楽で自由である。白はd5に対する圧力を何か意味あるものにするなら c2-c4 突きのあと Nc3 と指せる必要がある。ナイトをc3でなくd2に展開させることにより黒ビショップのチェックは白の作戦を骨抜きにすることになり完全に正当化される。

7…O-O

 黒キングはちょうど安全な所に駆け込むことができた。釘付けのナイトに圧力をかける Re1 の狙いを考えれば、黒には他に適当な手がない。

(この章続く)

2013年09月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(083)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

8.c4!

 この手には重要な着眼点が三つある。一つ目はdポーンを攻撃して黒のナイトの支えに挑むことである(8…dxc4?? は 9.Bxe4 で駒損になる)。二つ目は白クイーンのためにc2の地点を空けて、e4の地点の攻撃に加われるようにしたことである。三つ目はd1-a4の斜筋を開けて Qb3 と出られるようにし、d5の地点に圧力をかけb7の地点を攻撃することである。

 代わりに 8.Nc3 も面白い手である。e4のナイトとd5のポーンを当たりにすることにより、白は相手に決断をさせる。しかし 8…Nxc3 9.bxc3 Bg4 のあと黒は何も難しいことがない。白は 10.c4 と突いて二重ポーンを解消することができるが、優勢になる見込みはほとんどない。

8…Nf6

 黒はついにこれ以上前線のナイトを支えきれないと判断した。それでもこの退却は白のcポーン突きを誘ったので正当化されると考えてよいかもしれない。ここで白のcポーンと黒のdポーンとの交換は白のdポーンが孤立化する。これはそのポーンがもう他のポーンによって守ることができないのであとで黒の標的になることがあることを意味する。

 いろいろ手段がある中で 8…c6 が当たりのポーンを守る黒の最も自然な応手のようである。しかし 9.Qc2! のあと白の 10.Bxe4 dxe4 11.Qxe4 でポーン得する狙いが受けづらいので黒に問題が残っている。例えば 9…Bf5 は 10.Nc3 でe4の地点に対する白の当たりが増し、10…Nxc3 は 11.Bxf5! とこちらを取られる。このような変化はこの戦型ではよくあることで、黒がナイトをe4に維持する際にこうむる問題をよく表わしている。黒は「勇気の大切な部分は分別である」に従ってナイトを引いた。

9.Nc3

 白は 9.c5 と突いてビショップを当たりにし先手でe7に引かせる誘惑にかられやすい。しかしこれは白にとって明らかに有利であるわけではない。ポーンをc5に進めることは、黒の中原に対する圧力を取り去りd5ポーンに黒陣をしっかり支えさせることになる。さらにc5のポーンそのものもあとで …b7-b6 突きで切り崩されるかもしれない。注意すべきは 9.c5 Be7 のあと白はまだ相手より多く駒を展開しているわけではないことである。だからこのポーン突きによってクイーン翼で陣地が広がったことをうまく利用できることを期待すべきではない。

(この章続く)

2013年09月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(084)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

9…dxc4

 黒は中原の争点をポーン交換によって解決した。黒は中央のポーンをなくすけれども、白のdポーンを孤立させる。このポーンは守ってくれるポーンが両隣の列になく、そのため駒で始終守っていなければならない。白は少なくとも素通しe列と黒キングに通じる筋で攻撃の機会を得ることによりこれを埋め合わせることを期待している。このような局面では白のd4のポーンがe5のナイトを支えるのに対し、中原にポーンのない黒は自分の駒のために中央に良い拠点を作るのが難しい。

10.Bxc4 Bg4

 黒はf3のナイトがe5に来れるようになる前に釘付けにした。この釘付けと、それによるビショップとナイトとの交換の狙いは、白のdポーンを攻撃する黒の作戦の一部でもある。このナイトは防御のための駒の一つなので、この駒に対する狙いはdポーンの不安定性を増すことになる。

(この章続く)

2013年09月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(085)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

 この局面の形勢はほぼ互角である。黒は守勢に追い込まれないように気をつけなければならない。さもないと白が動きの自由さが大きいので強力な攻撃態勢を作れるかもしれないからである。白もdポーンをいつも適切に守りながら主導権を維持して、黒が白のdポーンへの攻撃を整える余裕を得ないように努めなければならない。

(この章続く)

2013年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(086)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1
白 A.カルポフ
黒 V.コルチノイ
挑戦者決定24番勝負第6局、モスクワ、1974年

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5,d4 d5 6.Bd3 Be7

 6…Bd6 の方がはるかに攻撃的な手だけれども、このもっと控え目な展開もあとで分かるように黒の攻撃の意図の一部となることがある。

7.O-O Nc6

 黒はこの手ですぐに活動を始める。その着想はこのナイトでd4のポーンを攻撃し、それを守るナイトを …Bg4 で釘付けにすることにより圧力を増すことである。キャッスリングを延期しているのは1手早い白が Re1 または c2-c4 突きで主導権を握れるからである。

8.Re1 Bg4

(この章続く)

2013年09月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(087)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

 この面白い局面には両者の構想がはっきりと表れている。白はe4の大胆なナイトへの攻撃を見据えながら組織的に駒を展開して、直前の手は Bxe4 でポーン得を狙っていた。黒は白のdポーンへの反撃で応じてきた。ここで白が 9.Bxe4 dxe4 10.Rxe4 と指しても何も得られないのは 10…Bxf3 があるからである。この手に対して白は 11.Qxf3 Nxd4 でポーンを返すか 11.gxf3 でポーンの形とキングの安全が損なわれることに甘んじなければならない。あとの場合f3、f2それにh2のポーンがもろくなり、半素通しg列が白の防御の問題に加わってくる。ポーン損にもかかわらず黒が明らかに優勢である。

9.c3!

 白はdポーンを守った。これでe4で2回取る狙いは本気で考えなければならない。この控え目なポーン突きで白クイーンが自由にb3に出てくることができることにも注意が必要である。

9…f5!

 黒は一貫性のある指し方をしなければならない。ナイトを引くことにより手損している余裕はない。このポーン突きはキング翼で攻撃的な姿勢をとる黒の意図をさらに宣伝している。

10.Qb3!

 白はここで 10…Bxf3 11.gxf3 とさせることができる。そしてe4のナイトが下がった時クイーンでdポーンかbポーンを取ることができる。黒はキングがまだ中央に留まったままなので、f3、f2およびh2の弱点につけ込むのに必要な主導権を育む可能性はほとんどない。

10…O-O!

 局面は非常に険しくなってきた。黒は 11.Qxb7 と取らせても 11…Rf6 と応じて 12…Bxf3 または 12…Rb8 を狙ってよいと読んでいる。一つの想定手順は 12.Ne5? Nxe5 13.dxe5 Rb6 で白のクイーンが取られる。

 白は 11.Bxe4 fxe4 12.Rxe4 に 12…Bxf3 があるのでポーン得できない[訳注 13.gxf3 Na5]。

11.Nbd2!

 これも正確な手である。白はb7のポーン取りの狙いを維持したが、もっと重要なことはここでクイーンによる黒のdポーンの釘付けを利用しているということである。白は 12.Nxe4 fxe4 13.Bxe4 でポーン得を狙っていて、f3のナイトが他方のナイトで守られているので黒は …Bxf3 でポーンを取り返すことができない。

 代わりに 11.Nfd2? も f2-f3 突きで敵駒を引き下がらせる狙いがあるので魅力的だが、実はこの手は意表の捨て駒の 11…Nxf2! 12.Kxf2 Bh4+ 13.g3 f4! を招き、黒が全軍で白キングを攻撃してくる。これはこの戦型で白がちょっと不注意になると黒の攻撃にどんな可能性が潜んでいるかの典型的な例である。

11…Kh8

 黒はdポーンの釘付けのもたらす結果を避けるためにキングを動かさなければならない。

12.h3

(この章続く)

2013年09月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(088)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

 12.Qxb7 は 12…Rf6 で黒がまた有望な攻撃態勢になる。狙いは 13…Rb8 で白クイーンを唯一の逃げ場所のa6に追いやることで、そのあとは 14…Nxd4! でf6のルークによる白クイーンへの開き当たりを炸裂させる。12.Qxb7 Rf6 13.Qb3! のあと黒は 13…Rg6 でルークを白キングと同じ列に回す。キング翼でこんなに多くの駒が攻撃に加わっているので、黒はポーンの投資の代わりに十分な見返りが得られる。

12…Bh5?

 黒はどのくらい長くbポーンの守りを放置しても安全かの判断を誤った。12…Bxf3 13.Nxf3 Rb8 なら安全だった。

12.Qxb7! Rf6 13.Qb3 Rg6

 h2-h3 突きがなく黒のビショップがまだg4にいる状況ならば、この手は …Bh3 のような攻撃態勢を狙うことになる。この変化した状況では黒の攻撃はかなり迫力がなくなっている。これをふまえれば正着は 14…g5! で、さらにgポーンを突き進めて列を素通しにすることに期待すべきだった。

15.Be2!

 これは受けの好手で、f3のナイトを支えると共にこのナイトを動かしてh5のビショップを当たりにする可能性も作っている。

15…Bh4 16.Rf1

 この手は 16…Bxf2+ の狙いに対して守った。黒は攻撃的な姿勢にもかかわらず攻撃の焦点が定まらず、白の防御は完璧である。例えば 16…Ng5 は冷静に 17.Nxh4 Nxh3+ 18.Kh2 Qxh4 19.g3 と応じられて、h3、h4そしてh5の黒駒が当たりになっているので白の駒得になる。

16…Bxf3 17.Nxf3 Bxf2+

 黒はビショップとナイトの代わりにルークとポーンを得るけれども、局面は白が圧倒的なままである。中盤戦では小駒2個はルークよりはるかに活躍できるのが普通で、ここでも例外でない。

18.Rxf2 Nxf2 19.Kxf2 Qd6

 黒は 20…Qg3+ からの猛攻に期待をかけているが、カルポフは白にまだぴったりした受けがあることを見せつけた。

20.Ng5!

 この手は黒の狙いのチェックを防ぎ、21.Nf7+ でキングとクイーンの両当たりを狙っている。

20…Rf8 21.Qa3! Qd8 22.Bf4

 これで勝負が決した。黒の攻撃は終わり、白は決定的な戦力得になっている。

22…h6 23.Nf3 Re8 24.Bd3 Re4!?

 黒は 25.Bxe4 fxe4 26.Ne5 Rf6 で紛れることを期待している。しかし白はルークを無視して混乱を避けることができる。

25.g3! Rf6 26.Qc5 g5

(この章続く)

2013年09月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(089)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜1(続き)

27.Nxg5!

 これは抵抗を終わらせる力強い手段である。これから生じるような開放的な局面では、双ビショップが盤面全体に威力を及ぼす。

27…hxg5 28.Bxg5 Ree6 29.Re1 Qg8 30.h4 Rg6 31.Rxe6

 この局面で黒の時間が切れた。31…Rxe6 32.Bxf5 で白の強力な双ビショップと3ポーン得が容易に黒のルークとナイトを圧倒する。

(この章続く)

2013年09月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(090)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜2
白 ノルマン=ハンセン
黒 アンデルセン
コペンハーゲン、1934年

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Bd6 7.O-O O-O 8.c4 Bg4!?

 黒は大胆にも自分のdポーンに対する当たりを無視して迅速な展開の方を選んだ。この着想はまったく正しいというわけではないが、白は来るべき攻撃に対して首尾よく受けるには正確な指し方が要求される。

9.cxd5 f5!

 これが黒の着想の主眼である。このポーンはdポーンが取られた後ナイトの守りを引き受けることになっていた。しかしビショップを先に展開してf5のポーンによって閉じ込められないようにしておかなければならなかった。

10.Nc3

 10.Re1? はためになる間違いで、相手に次のような絶好の捨て駒の機会を与える。10…Bxh2+! 11.Kxh2(11.Nxh2 はクイーンを取られる)11…Nxf2 12.Qe2(白クイーンはd3のビショップを守らなければならない)12…Nxd3 13.Qxd3 Bxf3 そして白がf3で取り返せば黒は 14…Qh4+! でe1のルークを取って交換得になり、白が取り返さなければ黒は1または2ポーン得になる。

10…Nd7!

 1ポーンを捨てた黒は主導権を維持するためにはもっと投資する準備をしなければならない。

11.h3!

 あとで分かるようにこの手は受けに役立つ。

11…Bh5 12.Nxe4 fxe4 13.Bxe4 Nf6 14.Bf5!

 黒ビショップがまだg4の地点にいたらこの手は指せないところである。ここで黒は 14…Nxd5? は 15.Be6+ があるので指せない。

14…Kh8

 現在黒は2ポーン損だが、…Nxd5 で1ポーン取り戻すことを狙っている。黒はまだf列での攻撃の可能性に期待している。白はf3のナイトが釘付けにされているので、理にかなった選択肢が二つしかない。つまり断固として圧力に耐えようとするか、諸刃の剣の g2-g4 突きで自分のキングを非常に薄くしても釘付けをはずすかである。

15.Be6?

 白はd5ポーンにこだわった。しかしこのビショップは位置が悪く、防御に戻れない。15.g4! が正着で、そのあと黒は犠牲にしたポーンの代わりに十分な攻撃が得られないはずである。

15…Ne4!

 黒は 16…Bxf3 で白キングの囲いのポーンを乱す狙いである。本譜で白は受けようがないので g2-g4 と突かなければならない。

16.g4 Bg6 17.Kg2 Qf6 18.Be3 Rae8

 黒駒はすべて攻撃に積極的にかかわっている。e6で離れ駒となっているビショップはf3の可愛そうなナイトに十分な支援を与えることが困難である。

19.h4

(この章続く)

2013年09月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(091)

第6章 ペトロフ防御 ウィリアム・ハートストン(続き)

参考棋譜2(続き)

 白は h4-h5 と突いてめざわりなビショップを追い払いたいのだが、黒はその暇を与えるつもりはない。

19…Rxe6!

 このルーク切りは事前準備にすぎない。次に何が来るかを見よ。

20.dxe6 Nc3!

 ただ捨ての好手!ビショップのためにe4の地点を空けるのが唯一の目的である。

21.bxc3

 白は他に指しようがない。クイーンは当たっているし、21.g5 は幸便に 21…Qxe6 と取られて次にクイーンがg4に来ると白は壊滅する。これで黒がナイトを捨てる前にルークをe6で切る必要があった理由が分かる。

21…Be4!

 f3のナイトは少し前はd1-h5の斜筋で釘付けにされていた。今度はこの同じビショップは別の方角からずっと良い働きをしている。…Bxf3+(白クイーンがよそへ行けば …Qxf3+)の狙いには満足な受けがない。白は当面はルークと2ポーン得だが、完全に敗勢になっている。

22.Kh3 Qxf3+!

 これで6手詰めになる。

23.Qxf3 Rxf3+ 24.Kg2 Rg3+

 二重チェック!白キングは逃げなければならない。

25.Kh2 Rg2+ 26.Kh1

 26.Kh3 なら 26…Rh2# で即詰みである。

26…Rh2+ 27.Kg1 Rh1#

 きれいな詰み形だった。白キングははしごを1段ずつ降ろされて死滅した。

(この章終わり)

2013年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(092)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス

1.e4 e5 2.f4

 白は2手目でキング翼ギャンビットを申し出た。ギャンビットとは布局で1個以上のポーンを犠牲にすることで、白がここでしていることはキング翼のポーン、具体的にはfポーンを犠牲にすることである。

 白は何を達成することを期待しているのだろうか。黒のeポーンをf4に誘うことにより白は中央における黒の影響力を減少させ d2-d4 と突くことにより自分が明らかに優位に立つことを期待している。また、白はfポーンがなくなるので、黒のfポーンを取ればキング翼ルークがf列で有望な働きをすることを期待している。だから白の二つの主要な展望は中央とf列とにある。もし白が両方の目標を達成することに成功すれば、白の陣形ははるかに優るものとなる。

 白の作戦に何か問題があるだろうか。最も明らかなことがある。白は貴重なポーンを犠牲にし、それと同時に自分のキングの周りを弱めている。

2…exf4!

 一般に、真のギャンビットに対処する最善の手段は受諾することである。「真のギャンビット」とは通常のやり方では与えた戦力を取り返すことが期待できないことを意味する。そのような状況では攻撃側は進んでいくらかの危険を背負い、防御側もひるむべきでない。ここでは黒はポーンを得し白のキング翼を弱めている。黒はたった2手でこれらのことを達成して満足でないのか?

 ポーンを取ることに付随する危険を受け入れたくない人のために、本書の第8章で他の可能性を論じている。

3.Nf3

 これがキング翼ギャンビット受諾の中で白の断然人気のある手法である。このナイトは中央の望みの地点に展開され、黒クイーンのh4からのチェックを防いでいる。

 とは言っても先にキング翼ビショップを 3.Bc4 と展開するのも同様に良い手である(ビショップギャンビット)。このビショップは最もよく働く斜筋にすぐに出て、f7の地点をにらみ黒が …d7-d5 突きで中央で反撃するのをもっと難しくしている。白はすぐに 3…Qh4+ とされるのを心配する必要はない。なぜならこのクイーンはあとで白から先手で追い立てられるからである。これは次の面白いボビー・フィッシャー対ラリー・エバンズ戦(米国選手権戦、1963/64年)によく表れている。3…Qh4+ 4.Kf1 d6 5.Nc3 Be6 6.Qe2 c6 7.Nf3 Qe7 8.d4 Bxc4 9.Qxc4 g5 そしてここで10.h4! で黒のキング翼を切り崩すことにより白は優勢になれる。例えば 10…g4 なら 11.Ne1 Bh6 12.Nd3 である。

 3…Qh4+ のような無駄手を指す代わりに黒は 3…Nf6! と展開の手を指すのが最善である。この手は白のeポーンを当たりにし、通常の 4.Nc3 c6 のあと …d7-d5 突きを準備している。

(この章続く)

2013年10月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(093)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3.Bc4 Nf6 4.Nc3 c6

 これがビショップギャンビット戦法で最も重要な局面である。白が何をしようと、黒は …d7-d5 と突くことができて見通しはきわめて明るい。3通りの可能性がある。

 1)5.Bb3 d5 6.exd5 cxd5 7.d4 Bd6 8.Nge2 O-O 9.O-O g5! 10.Nxd5 Nc6 黒のキング翼の多数派ポーンは締めつけ効果でクイーン翼における白の多数派ポーンと同じ価値がある。

 2)5.d4 Bb4 6.Bd3 d5 7.e5 Bg4 8.Nf3 Ne4 いい勝負である。

 3)5.Qf3?! d5! 6.exd5 Bd6! 7.d3 Bg4 8.Qf2 O-O 9.Bxf4 Re8+ 黒はポーンを取り返しまだ攻撃の可能性を保っている。例えば 10.Kf1 b5 11.Bb3 b4 12.Nce2 Nxd5 となる。

3…d5

 この時点で黒は根本的な決定をしなければならない。基本的な選択肢は(1)何としてもポーン得にしがみつこうとすること、(2)堅実にキング翼の展開を完了すること、(3)キング翼を迅速に展開して反撃の機会を得ることを優先しこのためには1、2個のポーンを損するかもしれないことは気にしないこと、である。本譜の手は後の方のやり方に従っていて、このことについてはもっと後述する。まずは他の理にかなった手法について分析する。

 1)3…g5 は黒がポーン得にしがみつくつもりであることをすぐに表明する。このやり方は白が Nf3 と指していれば理論上うなずける。なぜなら黒は …g5-g4 と突いて白のナイトをどかすことにより手得する可能性があるからである。しかし白はキング翼ナイトを犠牲にすることがよくあり、戦いが激烈になることがある。実は 3…g5 のあとの手順はキング翼ギャンビット受諾の中で最も複雑で、これまでの膨大な研究にもかかわらずまだほとんどが不明のままである。この戦型は特に黒側にきわめて多量の定跡の知識が要求されるので、現代の大会ではめったに指されることがない。

 3…g5 のあとの理にかなった展開は 4.Bc4 で、ビショップを出して黒の脆弱なf7の地点をにらみ、黒の応手は 4…Bg7 で中央を臨む地点にビショップを展開する。すぐに 4…g4!? と突くのは両者にとってきわめて危険である。膨大な量の定跡の示すところでは白は 5.O-O! でナイトを犠牲にしなければならない(ムッツィオギャビット)。そして 5…gxf3 6.Qxf3 で白は攻撃が有望だが黒は駒得である。勝敗の見通しはほぼ互角だが、「実戦的」には引き分けに終わることは少ない。

 4.Bc4 Bg7 のあと通常の手順はキングを比較的安全な所に移しf列での作戦行動を準備する 5.O-O である。

(この章続く)

2013年10月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(094)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…g5 4.Bc4 Bg7 5.O-O の局面

 ここからの通常の手順は 5…h6(gポーンとg5の地点はしっかり守る必要がある)6.d4(中央を支配しながら展開する)6…Ne7(キング翼の小駒の展開を完了しいつでもキャッスリングする用意ができた)7.g3! で、すぐにf列で行動をおこす。白の最後の手には罠があり、当然の 7…fxg3? は捨て駒の 8.Nxg5! で咎められる。8…hxg5 9.Bxf7+ Kf8 のあとは必殺の攻撃があり、例えば 10.e5、10.Bxg5 それに 10.Bh5+ Kg8 11.Qf3 のどれでも良い。

 黒がこの罠にはまらない手順は 7…d5!(展開と同時に反撃にもなっている)8.exd5 fxg3 9.Ne5!(白はぐずぐずしていられない。9.hxg3 は 9…Nf5! で弱体化したキング翼の代償が何もない)9…gxh2+ 10.Kh1!(黒のhポーンをキングの盾として利用する。実利主義の 10.Kxh2? は白キングがむきだしになりすぎるので悪い)10…O-O! である。

 黒は第一波の攻撃をしのいで2ポーン得になり、白キングの状態はとても安泰とは言えない。それでも白は 11.Nxf7!? でさらに乱戦に引きずり込むことができ、勝負の行方は予想しがたい。

 2)3…Nf6 は当を得たナイトの展開の仕方に見える。しかし 4.e5! のあとこのナイトは逃げなければならず、十分に満足できる行き場所がない。4…Ne4 なら 5.d3! Ng5 6.Bxf4 で白はギャンビットしたポーンを取り戻し、中央の態勢が有利である。4…Nh5 なら 5.Be2! でナイトが盤端で非常に不安定になる。例えば 5…d6 6.O-O dxe5 7.Nxe5 Qd4+ 8.Kh1 Nf6(8…Qxe5?! はもっと悪い。9.Bxh5 のあと黒のキャッスリングしていないキングが窮地に陥り、白には 10.Re1 ですぐに黒クイーンを取る狙いがある)9.Nd3 Bd6 10.c3 Qb6 11.Nxf4 O-O 12.d4 という具合である。

(この章続く)

2013年10月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(095)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 12.d4 の局面

 白はポーンを取り戻し中央でも優位に立っている。そしてキング翼ギャンビットでまさに白が望むf列での攻撃の可能性が有望である。

 3)3…Be7 は 3…Nf6 よりも控え目で好結果をもたらすキング翼の展開である。黒は適時にh4でのビショップによるチェックを狙うことにより、…Nf6 の戦型での不利をこうむらずにキング翼ナイトを展開することができる。

 白の主眼の次の手はビショップを最も働きのある地点に展開する 4.Bc4 である。おとなしい 4.Nc3 には黒は魅力的な 4…Bh4+?! を避けた方が良い。というのは 5.Ke2! で白キングは十分安全で、黒はキング翼ビショップを働きのある地点につけるのにもっと手をかけなければならないからである。4.Nc3 に対する黒の最善の作戦は 4…Nf6! と展開する手で、4.Bc4 の戦型と似てくる。

 4.Bc4 に対する最善の手順は 4…Nf6!(ここでも 4…Qh4+ は 5.Kf1! で黒が何か得するかは疑問である)5.e5(5.Nc3 には中央のきまりをつける 5…Nxe4! が効果的で、6.Nxe4 には 6…d5 で駒を取り返す)5…Ng4! である。

(この章続く)

2013年10月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(096)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…Be7 4.Bc4 Nf6 5.e5 Ng4 の局面

 前の戦型と対照的にナイトはここでは活動的な地点に行ける。6.h3? で追い払おうとしても 6…Bh4+ でうまくいかない。7.Kf1 Nf2 8.Qe1 Nxh1 9.Qxh4 Ng3+ となってナイトが戦利品を得て脱出する。

 図の局面での最善手は 6.O-O Nc6 で、eポーンを攻撃するとともに罠が仕掛けてある。白がルークでポーンを守ると、次のように驚きの手が待っている。7.Re1? Bc5+! 8.d4 Nxd4! 9.Nxd4 Qh4 白は 10…Bxd4+ 11.Qxd4 Qxe1+ と 10…Qxh2+ の両狙いに受けがない。

 7.d4 d5! のあと白がビショップを引こうと 8.exd6e.p. Bxd6 9.Re1+ Ne7 と指そうと黒は少なくとも完全に互角である。

 3)3…d6 は 1960年代にボビー・フィッシャーによって初めて推奨された融通性のある手である。黒は中央にいくらか影響力を確立し、あとで …g7-g5 と突いてfポーンにしがみつこうとしている。典型的な手順は 4.Bc4 h6(g5の地点を守り …g7-g5 と突く用意をした。黒は白からの妨害の 5.h4?! を心配する必要はない。その手は白のキング翼をひどく弱め、黒は単純に 5…Nf6 と指していられる)5.d4 g5 6.O-O Bg7 である。

(この章続く)

2013年10月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(097)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 3…d6 4.Bc4 h6 5.d4 g5 6.O-O Bg7

 これも難解で極度に不均衡な局面である。ここで白が安全に 7.c3 と突けば、黒はクイーン翼ナイトを 7…Nc6 と展開するのがよい。また、白が 7.g3!? ですぐに素通し列を作ろうとすれば、黒は中央で 7…Nc6 8.gxf4 g4! と反撃を目指すべきである。どちらの場合も客観的な評価は難しい。キング翼ギャンビット受諾は強い精神力を持ち布局理論家の意見をほとんど気にしない人たちにとって面白い布局である!

 それではここでの主手順の 3…d5 に戻る。

(この章続く)

2013年10月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(098)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5

 3…d5 は相手の手に乗ってクイーン翼ビショップの斜筋を開いている。明らかに白はeポーンへの当たりを無視できないが、4.e5?! と突き越すのは黒にただで強力な中央での圧力を作り上げられる。4…g5! 5.h3?! Nh6! 6.d4 Nf5 となって黒はポーン得で有望である(1903年ウィーンでのガンズバーグ対ピルズベリー戦以来知られている)。従って白の唯一のまともな手は取る手である。

4.exd5 Nf6!

 この戦型における黒の主要な目的は、たとえ戦力を少し損してもキング翼の迅速で棋理に合った展開を達成することであることを忘れてはいけない。4…Qxd5? は完全にこの精神に反していて、その証明として白は次のように展開と可能性で上回る。5.Nc3 Qe6+ 6.Be2 Bd6 7.O-O Ne7 8.d4 O-O 9.Ng5

 本譜の手を別にすれば 4…Bd6 だけがこの戦型の精神に沿っていて、実際 5.Bb5+ c6! で主手順に移行する公算が大きい。

5.Bb5+

 白の選択肢は基本的にこのチェックと新たに得たdポーンを守ることである。後の手を達成する手段は三とおりあり、そのどれも注目するに値する。

 1)5.c4 は最も断固とした手段である。黒が積極的に動かなければ、白は中央のおかげで優勢になる。従って 5…c6! が求められる手で、6.dxc6?! Nxc6 7.d4 Bg4 となれば黒は強力な攻撃態勢になる。dポーンにしがみつくためには白は 8.d5 Bxf3 9.Qxf3 Ne5 10.Qxf4 と指さなければならないが、黒は 10…Bd6! からキャッスリングで白のキャッスリングしていないキングに対して攻撃の見通しがきわめて明るくなる。6.dxc6?! の代わりにもっと安全な手は 6.d4 だが、それでも黒は単純な 6…cxd5 か 6…Bb4+ で優勢になる可能性が高い。概して言えば白には実利主義の 5.c4?! の余裕はないと結論を下さざるをえない。

 2)5.Bc4 は駒を展開しながらdポーンをいくらか守りキャッスリングできるようにしている。黒はdポーンを取り返すしかなく、5…Nxd5 6.O-O Be6 7.Bb3! のあと黒が本手の展開の 7…Be7! を指せばほぼいい勝負である。欲張りすぎの 7…Bd6?! は白が先手で 8.c4! Ne7 9.d4 Ng6 10.c5! と指すことができ、1969年ソ連でのブロンシュテイン対I.ザイツェフ戦では白が優勢になった。黒はすぐにわなにはまり短手数で負けた。10…Be7 11.Bxe6 fxe6 12.Re1 O-O 13.Rxe6 Bxc5? 14.Qb3!! Bxd4+ 15.Nxd4 Qxd4+ 16.Be3! で黒が投了した。黒がどう指しても次の手で白ルークが開きチェックで黒クイーンを取ってしまう。

(この章続く)

2013年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(099)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 16.Be3! の局面

 3)5.Nc3 は一応dポーンを守りながらクイーン翼の展開を始める。ここで黒が気どってポーンの取り返しを見送って 5…Bd6?! と指すと、白は 6.Bc4 O-O 7.O-O Nbd7 8.d4! でポーンを容易に守り通す。白はキングが安全で中央が優位なので楽に優勢になる。だから黒は単純に 5…Nxd5 6,.Nxd5 Qxd5 7.d4 Be7! と指すべきである。そのあと 8.Bxf4?? は 8…Qe4+ でビショップが落ちる。また 8.c4 Qe4+ 9.Be2 Nc6 10.O-O Bf5 11.Re1 O-O-O! は黒がd列で反撃が十分に見込める。

 白は理にかなった互角の局面で満足するならば、5.Bc4 と 5.Nc3 が最善の選択肢である。もちろん白がキング翼ギャンビットを指す時はしばしばもっと多くを望んでいる。そのような冒険主義の精神には本譜の 5.Bb5+ が向いている。。

(この章続く)

2013年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方

開放試合の指し方(100)

第7章 キング翼ギャンビット受諾 エドマー・メドニス(続き)

 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d5 4.exd5 Nf6 5.Bb5+

 白は先手でキング翼の展開を完了した。チェックしたのはこのためである。黒があまりにゆっくりしたことをしていると白の思いどおりになる。例えば 5…Nbd7?! は 6.c4! a6 7.Bxd7+ Bxd7 8.O-O! で白がただで中央を支配することになる。また 5…Bd7?! は 6.Bc4! で黒ビショップがdポーンに対する黒クイーンの利きをさえぎっているので、黒がポーンを取り返したければ 6…Qe7+ でクイーンを変な地点に行かせなければならない。そして白は 7.Be2! Nxd5 8.O-O! のあと 9.c4! から 10.d4 でそのことにつけ込む格好の機会を得る。

5…c6!

 この手は手損を避け円滑で迅速な展開を確実にしてくれる。もちろん白の次の手は必然である。

6.dxc6 Nxc6!

 この取り方は自明というわけではないが、この戦型における黒の布局戦略の全般的な目的の円滑で迅速な展開を念頭におくと最善手であることは明らかになる。だから 6…bxc6?! が効果で劣るのは、7.Bc4 Bd6 に厄介な 8.Qe2+! という応手があるからである。黒には気の進まない 8…Be7(手損になる)、8…Qe7(望ましくないクイーン交換になる)それに 8…Kf8(キャッスリングの権利がなくなる)という選択肢しかない。7…Nd5 でキング翼ナイトを中央に持って来て、白の d2-d4 突きにこのナイトがe3の地点に行けるようにするのはいくらかましである。しかし単刀直入で効果的な展開の 8.Nc3!(8…Bd6 を防ぐ)8…Be7 9.O-O O-O 10.d4 で白が優勢になる。10…Ne3?! は 11.Bxe3 fxe3 12.Qd3 で黒の新品のeポーンに死刑執行令状が発行される。

7.d4

(この章続く)

2013年10月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 開放試合の指し方