[復刻版]実戦に役立つエンディングの記事一覧

[復刻版]実戦に役立つエンディング(1)

 序文

 チェスのオープニング定跡、中盤戦、大会そして実戦集については無数ともいえる数の本が世界中で出版されてきた。しかしエンディングについては試合の最も重要な部分の一つにもかかわらず比較的少ない数の本しか書かれてこなかった。

 実際のところ終盤戦の良い指し方や勉強にかけた時間の報酬の重要性は強調してもし過ぎることはない。本書の目的は読者に終盤戦における実戦的な知識を伝えることにある。

 多くのチェス愛好家は終盤戦が退屈だと考えているために勉強することを毛嫌いしている。ある程度はそれも正しい。というのはエンディングの定石は内容が比較的無味乾燥で、正確な読みを必要とし個人の想像力を発揮する余地がほとんどないからである。それでもこの分野には面白さが多くあり、全てのチェス愛好家は必要な技術をマスターすることにより自らの技量を向上させるように努めるべきである。

 本書では基本原則に的を絞るために例題の数を減らし通常よりも説明を詳しくするようにした。これにより終盤の理論がいくらかでも楽しく感じられることを期待した。必然的に多くの理論的に片寄った分析を排し、実戦に最も役立つような教材に制限することになった。

 本書を上梓するにあたりエンディングに対する興味を喚起すると共に、一般的なチェス選手の終盤の平均的な技術レベルの向上につながれば幸いである。

パウル・ケレス(Pau Keres)
1972年7月 タリン(Tallinn)にて

 はじめに

 チェスの試合は普通はオープニング、中盤およびエンディングの三つの段階からなっている。オープニングでは対局者は最も効果的に自分の駒を展開し有利な中盤戦の可能性が得られるように努める。中盤は最も内容豊かで明らかに最も難しい部分である。そこでは対局者は決定的な有利あるいは少なくとも優勢な終盤を目指す。そして最後のエンディングはオープニング又は中盤で得た有利を勝ちにつなげなければならない段階である。

 結果的にエンディングは試合の最も重要な段階の一つであることは明らかである。オープニングや中盤では不正確な手あるいははっきりした悪手を指しても必ずしも敗勢の局面に陥らない冗長さがある。これはこの二つの段階では複雑さのために相手の誤りに気付き咎めることが実戦では困難なことがあるという事実により説明できる。これに反して終盤では悪手は決定的な局面になり易く、またチャンスが巡ってくることはまれである。

 終盤技術を完璧にする必要性は証明するまでもなく明らかである。世界の一流のチェス選手達はこの分野に格段の注意を払い、現代の見事な終盤の試合を数多く見ることができる。

 確かに純粋に技術的な観点からは終盤の勉強は例えばオープニングの定跡や中盤の戦略よりもはるかに面白さに欠けると認めざるを得ない。しかしこの勉強は必須であり、少なくともほとんどのエンディングは勝ちや引き分けの可能性の正確な分析に役立つという有利な面がある。

 以降の本文では実戦的な種々のエンディングの正確な手順のための最も重要な原則を読者に説明するように努めた。現在の終盤理論は全体では分厚い何冊もの本になるということは誰にも分かる。それは少し覗き見しただけでもしり込みしてしまうような分量である。それゆえに本書の目的は膨大な資料から最も実戦に役立つエンディングを厳選することにより幾分なりとも読者の負担を軽くすることにある。例えばチェス用語の必須のイロハを用いながらすべての基本的な終盤の局面を分析する。そのようなやり方を軽んじてはいけない。偉大な選手の中には終盤に弱点があった選手も知られている。

第1章 初歩のエンディング

 本章ではすべての選手にとって基本中の基本に属しことさら詳しい説明を必要としない局面について考察する。ここでわざわざ採り上げるのは完璧を期すためである。まず、単独のキングを詰めるのに必要な駒の組み合わせを調べる。

1.1 キング+クイーン対キング

 これは常に勝ちである。唯一の危険性はステールメイトの可能性である。

 図1

 この局面からの勝ち方の一例は次のとおりである。

1.Qc3 Ke4 2.Kb7 Kd5

 明らかに黒キングはできるだけ長く中央にとどまろうとする。

3.Kc7 Ke4 4.Kd6 Kf4 5.Qd3 Kg5 6.Ke5 Kg4 7.Qe3 Kh5 8.Kf5 Kh4 9.Qd3 Kh5 10.Qh3#

 この手順は多分最短の勝ち方ではなく 1.Kb7 の方がもっと早く詰むだろう。しかし上にあげた手順はこのような駒配置で黒キングがいかに簡単に詰まされるかを示したものである。

2013年04月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (2)

第1章 初歩のエンディング

1.2 キング+ルーク対キング

 これも常に勝ちがある。1.1と同様に詰みの前に盤端に敵キングを追い込まなければならない。ただしその手順は少し手間がかかるようになる。クイーンの場合は自分のキングの助けを借りずに敵キングを盤端に追い込むことができるが、ルークの場合は自分のキングと協力してこれを達成しなければならない。

 図2

 図2で白の手順は特に難しくはない。黒キングを盤端に追い込むにはまずルークを 1.Ra4 又は 1.Re1 で横または縦に利かして黒キングを遮断するのが一番簡単である。しかしその後白キングの助けなしには何も進展しないので最も簡明な策は

1.Kb7 Ke4 2.Kc6 Kd4 3.Re1

 で敵キングをa筋に移動させることである。

3…Kc4 4.Re4+ Kd3 5.Kd5

 これで黒キングはe筋にも4段目にも行けなくなった。

5…Kc3 6.Rd4 Kc2 7.Kc4 Kb2 8.Rd2+ Kc1

 既に黒キングは一番下の段に追い詰められた。

9.Kc3 Kb1 10.Kb3 Kc1 11.Rd3 Kb1 12.Rd1#

 特に注意を要する点はルークが待機するところである。

2013年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (3)

第1章 初歩のエンディング

1.3 キング+2ビショップ対キング

 キングと1ビショップでは単独のキングを詰められないことは明らかである。しかし2ビショプになると図3で示すように簡単に詰ますことができる。

 図3

 詰みに至る手順はこれまでの例と同様である。2ビショップが協力して逃げ道をふさいでいくことにより黒キングはしだいに盤端に追い詰められていく。以下の手順は容易に理解できるであろう。

1.Kb2 Ke4 2.Kc3 Kd5 3.Bf3+ Ke5 4.Bg3+ Ke6 5.Kd4

 黒キングは2ビショップにより完全に遮断された。この後黒キングを隅に追い詰めるのは簡単である。

5…Kf5 6.Kd5 Kf6 7.Bg4 Kg5 8.Bd7 Kf6 9.Bh4+ Kg6

 黒キングの行動範囲はさらに狭められた。これを詰ませるには隅に追い込まなければならない。

10.Ke5 Kf7 11.Kf5 Kg7 12.Be8 Kf8 13.Bg6 Kg7 14.Be7 Kg8 15.Kf6 Kh8 16.Bf5 Kg8 17.Kg6 Kh8 18.Bd6 Kg8 19.Be6+ Kh8 20.Be5#

 もちろんもっと早く詰ませることができるかもしれないが、要領はすべて同じである。

2013年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (4)

第1章 初歩のエンディング

1.4 キング+2ナイト対キング

 キングと1ナイトでは単独のキングを詰ませることができないことは明らかであるが、2ナイトの場合は強制的に詰ませることができないことはそれほど明白ではない。2ナイトの場合理論上は詰み形があるが、正しく受けられれば白はその形に持って行くことができない。次の図4でそれが分かる。黒キングが隅にいるにもかかわらず白はこれ以上進展させることができない。

 図4

 黒キングの動きを制限する 1.Ne7 や 1.Nh6 はステイルメイトになってしまう。以下のようにいろいろ試してみても

1.Nf8 Kg8 2.Nd7 Kh8 3.Nd6 Kg8 4.Nf6+

 もしここで 4…Kh8? と間違えてくれれば 5.Nf7# で詰みになるのだが黒は

4…Kf8

 と逃げて白はまた最初からやり直しとなる。つまり白がどんなに頑張っても2ナイトでは黒キングを強制的に詰ませることはできないのである。

2013年05月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (5)

第1章 初歩のエンディング

1.5 キング+ビショップ+ナイト対キング

 この駒割だと白は確実に詰めることができ、その手法は習得するに値する。当然ながらここでも黒キングは隅に追い込まなければならない。そして詰み形はどの四隅でも可能である。しかし強制的に詰むのはビショップのいる枡と同じ色の2隅でのみ可能である。他の2隅では2ナイトの場合と同様にキングが逃げ方を間違えた場合のみ詰めることができる。

 ということは詰ませる方はかなりややこしくなる。まず敵キングを盤端に追い詰め、次に隅に、そしてもしその隅の色がビショップの枡の色と異なる場合はさらに別の隅に追い込まなければならない。クイーン、ルーク又は2ビショップの場合はキングを縦や横や斜めの筋に沿って遮断することは容易であったが、ビショップ+ナイトの場合は難しい作業になる。この2駒は絶えず味方のキングの助けを必要とする。つまりキングとナイトでビショップの利かない枡を押さえることができるようにしなければならない。それでは図5からどのような手順でやっていくのかを見てみることにしよう。

 図5

 白はもちろん敵キングの方に近づいていかなければならないし、一方黒キングはできるだけ中央に留まろうとしなければならない。黒キングは中央から追われたら「誤った」隅、即ちa8又はh1を目指す。そこなら正しく受ければ詰まされることはない。以下は具体的な手順の例である。

1.Kb2 Kd3 2.Nc7 Kc4

 黒キングは敵キングの進路を抑えるようにする。

3.Ne6 Kd5 4.Nd4 Kc4 5.Kc2 Kb4

 5…Kd5 は 6.Kd3 で良くない。

6.Kd3 Kc5 7.Bh2

 局面を見れば分かるように白の2駒はキングの協力の下に黒キングから多くの枡を奪っている。

7…Kd5 8.Nb3 Kc6

 黒キングは後退しなければならない。それでa8を目指す。8…Ke6 は 9.Ke4 でh8の方に追われてしまう。

9.Kc4 Kb6

 9…Kd7 10.Kd5 となるよりもこちらの方が良い。

10.Nc5 Kc6 11.Na4

 白の8手目の局面と似ている。ビショップとナイトで敵キングを後退させる典型的な手法が見られる。

11…Kb7 12.Kb5 Kc8

 12…Ka7 13.Kc6 は本譜の後の局面と同じになる。

13.Kc6 Kd8 14.Kd6 Kc8

 もし黒キングが 14…Ke8 と逃げると 15.Ke6 Kf8 16.Be5 又は 15…Kd8 16.Nb6 でa8に遁走する暇なくh8に追い詰められる。

15.Nb6+ Kb7 16.Kc5 Ka6 17.Kc6 Ka5 18.Bd6 Ka6 19.Bb8

 黒キングをa8に逃げ込めなくし、a1に追い込む作戦を開始する。

19…Ka5 20.Nd5! 21.Ka4

 20…Ka6 と戻るのは 21.Nb4+ Ka5 22.Kc5 Ka4 23.Kc4 Ka5 24.Bc7+ で白の作業がもっと簡単になる。

21.Kc5 Kb3 22.Nb4!

 ナイトのこの動きは非常に重要で、ある隅から隣接する別の隅に敵キングを追い込む典型的な手法である。

22…Kc3 23.Bf4

 ナイトがいかに絶好の位置で敵キングの逃走を防いでいるかが分かる。

23…Kb3 24.Be5 Ka4 25.Kc4 Ka5 26.Bc7+ Ka4 27.Nd3 Ka3 28.Bb6

 ビショップは手待ちをする。黒キングはa1に向かわざるを得ない。

28…Ka4 29.Nb2+ Ka3 30.Kc3 Ka2 31.Kc2 Ka3 32.Bc5+ Ka2 33.Nd3 Ka1

 ようやくa1に追い込んだ。黒キングはあと3手で詰まされる。

34.Bb4 Ka2 35.Nc1+ Ka1 36.Bc3#

 読者はこのエンディングが決して易しくないことを実感されるであろう。白の8手目、19手目及び22手目の典型的な局面は特に注意が必要である。初心者は白の3駒の協力の手法に習熟するために、盤上のいろいろな枡に駒を配置して黒キングを隅に追い込む練習をしてみるのが良い。忘れてならないのは敵キングを50手以内で詰めなければならないことである。さもないと規定により引き分けになってしまう。そのためには敵キングを追い込む際に貴重な手数を無駄にしないように勝ち方の手法に完全に精通することが肝要である。

2013年05月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (6)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング

 このエンディングは次章のポーン・エンディングで採り上げても良かったのだが、本章では最も簡単なエンディングを採り上げているのでこの章に入れるのが適当だと判断した。この種のエンディングでは一般的な原則を挙げるのが難しい。それはすべてが駒の配置によって変わってくるからである。勝ちはポーンが昇格できる場合にのみ可能であることは言うまでもない。そこで要件は昇格が可能かそうでないかをはっきりさせることにある。

 もちろん敵キングが遠く離れていてポーンのクイーン昇格を阻止できない場合は白の勝ちは明白である。同様に白キングが自分のポーンが取られてしまうのを防げない時も引き分けになることは明らかである。それでここでは黒キングがポーンの前方に待ち構えている場合に議論を絞ることにする。まず図6のようにポーンが6段目にいて黒キングがその前方の最下段にいる基本的な局面を調べよう。

 図6

 左半分はこのエンディングの典型的な局面である。もともとポーンがもっと後ろの位置にいたとしても、黒がこのポーンの6段目への前進を防ぐことはできないので必ずこの局面に到達できる。勝ちかどうかはどちらの手番かによって決まる。白の手番ならば

1.c7+ Kc8 2.Kc6

ステイルメイトになるので引き分けである。それに白は同じ局面で黒に手番を渡すこともできない。例えば

1.Kd5 Kc7 2.Kc5

の後黒は正着の

2…Kc8!

を指せば以下 3.Kd6 Kd8 でも 3.Kb6 Kb8 でも図6左側と同じ状況になる。黒の受け方は易しい。つまり自分のキングをできるだけ長くc7とc8に留め、白キングが6段目に来たらすぐにそれと相対するように指せば良い。

 このようなエンディングに関連して二つのキングの位置に関する非常に重要な関係を紹介しておきたい。すべてのポーン・エンディングにおいて図6のようにキング同士が向かい合っている時(即ち同じ列または段で1枡だけ離れた位置にいる時)「見合い」、もっと正確には「近接見合い」の位置にあると言う。3又は5枡離れている場合は「遠方見合い」と言う。1、3又は5枡離れた斜めの見合いの場合もある。

 このような状況で相手に手番が渡っている時「見合いを取る」と言う。そのような場合相手は見合いを失っている。以上により図6の左半分を次のように定義することができる。「この局面で勝ちがあるかどうかはどちらが見合いを取っているかによる。白が取っているならば白の勝ちである。黒ならば引き分けである。」

 この規則はルーク・ポーン以外の全ての類似の局面に当てはまる。例えば図6の右半分では白が見合いを取っていても勝てない。

1…Kh8 2.h7

ステイルメイトになってしまう。

(この節続く)

2013年05月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (7)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 ポーンが6段目でなくもっと後ろにある場合は黒の引き分けの可能性はもっと大きくなる。図7の下半分を考えてみよう。

 図7

 この局面や類似の局面はどちらの手番でも引き分けである。黒は前にあげた原則に従って指せば良い。手順は次のようになる。

1.c3+ Kc4 2.Kc2 Kc5 3.Kd3 Kd5 4.c4+ Kc5 5.Kc3 Kc6 6.Kd4 Kd6 7.c5+ Kc6 8.Kc4 Kc7 9.Kd5 Kd7 10.c6+ Kc7 11.Kc5 Kc8! 12.Kd6 Kd8!

これで黒が見合いを取っている既知の引き分けの局面に到達した。

 これでキング+ポーンのエンディングが済んだと思われるかもしれないが実際はそうではない。例えば白キングが自分のポーンの前の地点を占めていたらどうなるだろうか。この場合にも勝ちかどうかの一般的な原則はない。しかし白の勝ちの可能性ははるかに高くなる。特に図7の上半分のようにポーンが前進している場合は特にそうなる。

 白キングは自分のポーンの直前の要所に到達することができた。そしてどちらの手番であろうとポーンがどれほど後ろにいようと白の勝ちは動かない。黒の手番ならば 1…Ka8 2.Kc7 又は 1…Kc8 2.Ka7 の後ポーンが進んで白が簡単に勝つ。白の手番でも特に問題はない。1.Ka6 Ka8 2.b6 で白が見合いを取っているので前に説明したとおり白が勝つ。類似の局面はすべて勝ちであるが例外はやはりルーク・ポーンの場合である。

 しかしナイト・ポーンの場合はちょっとした注意点を指摘しておきたい。図7の上半分で白の手番の場合ちょっと見には 1.Kc6 1…Kc8 2.b6 で白の勝ちのように思われるかもしれない。しかし正着は 1.Ka6! である。もっとも白は 1.Kc6 の後でもやり直して 1.Ka6 の局面に戻すことができる。1.Kc6 に対して黒は 1…Ka7! と応じる。ここで白が不注意に 2.b6+? と指すと黒は 2…Ka8! と応じ以下 3.Kc7 でも 3.b7+ Kb8 4.Kb6 でもステイルメイトで引き分けになる。従って白は恥を忍んで 2.Kc7 Ka8 3.Kb6! Kb8 4.Ka6! と勝ちの局面に戻らなければならない。

(この節続く)

2013年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (8)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 図8

 白キングが自分のポーンの前にいるけれどそのポーンがあまり進んでいない場合は図8の左半分のようになる。この典型的な局面で勝ちがあるかどうかはどちらの手番かによる。もし白が見合いを取っていれば次のような手順で白が勝つ。1…Kb7 2.Kd6 Kc8 (2…Kb8 3.Kd7) 3.c5 Kd8 4.c6 Kc8 5.c7 しかし白の手番ならば次のような手順で周知の引き分けの局面になる。1.Kd5 Kd7 2.c5 Kc7 3.c6 Kc8! 4.Kd6 Kd8

 この例から白のポーンがもっと後ろにあれば白が簡単に勝つことが分かる。それはポーンを動かすことにより常に見合いが取れるからである。そこでこの種のエンディングに対処する際に有用な原則は次のようになる。「まず白キングをできるだけポーンより先に進め(もちろんポーンを取られないように)、それからポーンを進める。」

 図8の右半分はこの原則の応用例である。もし黒の手番ならば 1…Kg4 又は 1…Kf4 で簡単に引き分けである。しかし白の手番ならば次のような巧妙な手順で白の勝ちになる。1.Kg3! これで見合いを取る。1.Kf3? は 1…Kf5! で黒が見合いを取り引き分ける。1…Kf5 2.Kf3! 見合いを保つ。2.f4? は 2…Kf6 で引き分けになってしまう。2…Ke5 3.Kg4 Kf6 4.Kf4! ポーンを動かさずに先にキングを動かすという原則を応用してここでも白が見合いを取る。4.f3? は間違いで 4…Kg6 5.Kf4 Kf6! で引き分けになる。4…Ke6 5.Kg5! Kf7 6.Kf5 ここは 6.f3 でも良いが 6.f4? はだめで 6…Kg7! で引き分けになる。6…Kd7 7.Kg6 Ke8 8.f4 キングが6段目に達したので今度はポーンを動かす番である。8.Kg7 は意味がなく 8…Ke7 9.f4 Ke6 に 10.Kg6 とするしかない。8…Ke7 9.f5 Kf8 10.Kf6! ここでも見合いを取らなければならない。10.f6? は 10…Kg8 で引き分けである。10…Ke8 11.Kg7 Ke7 12.f6+ これでポーンがクイーンに昇格できる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (9)

第1章 初歩のエンディング

1.6 キング+ポーン対キング(続き)

 最後にルーク・ポーンに関する二つの例外的な場合について触れておきたい。この種のエンディングではポーンが他の筋にいる場合は絶望的な局面でも防御側が引き分けにできる可能性が大きい。例えば図9の左半分では白の手番でも勝てない。

 図9

 1.Ka7 Kc7 2.a6 Kc8 3.Ka8 (3.Kb6 Kb8) Kc7 4.a7 Kc8

で白自身がステイルメイトになる。原則的には黒キングが急所のc8(盤の反対側の場合ならf8)の地点に到達できれば引き分けにできると言える。この原則の明らかな例外は白キングが既にc6又はb6の地点を占めていて 1.a7 とポーンを突ける場合である。

 図9の右半分はポーンがルーク筋以外の場合だったら負けなのに引き分けにできる例である。ここでも白は手番でも勝てない。

1.h5 Kf6 2.Kh7 Kf7 3.h6 Kf8

 これで直前に見た引き分けの局面と同じになる。だから一般的にはルーク・ポーンに対しては黒は引き分けにできる。

 これで初歩的なエンディングを終えることにする。次章からはポーン、クイーン、ルーク、ビショップ及びナイト・エンディングの順にもっと複雑なエンディングについて採り上げる。そして色々なエンディングに応用できるような一般原則を含むような局面だけを解説する。前に述べたように終盤の参考書を編集するつもりはなく、全てのチェス愛好家が知っておかなければならない重要で基本的な局面だけを採り上げるつもりである。

(この節・章終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (10)

第2章 ポーン・エンディング

 ポーン・エンディングから始めるのは奇異に感じる人がいるかもしれないが、これにはそれなりの理由がある。まず、ポーン・エンディングは駒数が少なくて形が比較的単純であり(内容は必ずしもそうとは限らないが)、エンディングの概観と対処の仕方を学ぶのに最も適している。次にポーン・エンディングは通常は他のエンディングから移って来て、エンディングの理論全般の基礎となっているからである。

 これまで見てきた初歩のポーン・エンディングは全てのポーン・エンディングの基礎となるものであった。もし読者がポーン・エンディングは最も易しいという印象をもたれたら残念ながらそれは当たっていない。いずれ分かるが一部のポーン・エンディングは非常に複雑で、慣れていない人にはどう指したらよいか難しい。

2.1 キング+ポーン対キング

 初歩のエンディングで見て来たこのエンディングをまた採り上げる。図10は以前紹介した原則をそのまま適用できない例である。この機会に「遠方見合い」についてもっと詳しく説明する。

 図10

 もし黒の手番ならばキングが何の妨げもなくf4の地点に到達でき、これまで見てきたように引き分けになる。白の手番だと状況はもっと複雑である。この局面をもう少し詳しく調べなければ結果については答えられない。これまでの例で見てきたように、白キングがf6の地点に到達した時に黒の手番になっていれば白の勝ちである。白の初手は当然 1.Ke2 (1.Kg2 でも同様) で、黒は最善の受けが要求される。明らかに 1…Kf5? は 1.Kf3! で白の目的を達成させるし、1…Ke5 2.Ke3 Kf5 3.Kf3 も同様である。唯一の正しい受けは 1…Ke6 である。 2.Ke3 には 2…Ke52.Kf3 には 2…Kf5 で見合いを取って引き分けにできる。1…Ke6! により黒は遠方見合いを取り、両方のキングが近づくにつれて近接見合いになった。この例は遠方見合いの基本的な構図である。後に遠方見合いの応用のもっと複雑な例を紹介する。

 見合いの理論は重要だが適度に簡明である。しかし「対応枡」の理論を理解していれば見合いを用いなくても済む。この理論は時には見合いの応用よりも幅広く理解し易い。そこで図10をもう一度見てみよう。

 「対応枡」とは何だろうか。白キングがf3にいて黒キングがf5にいる局面を考える。これはすでに知っているように黒の手番ならば白が勝つ。この2枡のことを「対応枡」と呼ぶことができる。つまり黒キングがf5にいる時、白キングは勝つためにはf3にいる必要がある。逆に黒が引き分けるためには白キングがf3に来た時に自分のキングを対応枡のf5に置かなければならない。

 受け手の立場からもっと他の対応枡の組を見つけてみよう。白キングがf4に到達するとどう変化しても白の勝ちになるので黒はそれを許してはいけないことが分かっている。だから白キングがe3にいて次にf4に行こうとしている場合、黒キングはe5,f5又はg5に行ける状態でなければならない。しかしg5は白キングがe3からe4に行くとf4の地点を確保されてしまうので良くない。f5も白キングがe3からf3に行った場合このf5の地点を占めなければならないのでだめである。そうすると残るはe5だけである。これがe3に対する対応枡となる。それでは白のe2の枡に対応する黒の枡はどこだろうか。白はe2からe3とf3の両方に行けるので、黒の対応枡はe5とf5とに行ける枡、即ちe6又はf6ということになる。

 このように考えていくと黒の正しい受けを再び見つけることができる。1.Ke2 の後 1…Ke6 だけが引き分けにできる。これまでの考察から他の手ではすべて黒が負けることが分かる。

 以上はもちろん対応枡の簡単な例である。後にこの考え方の非常に役に立つ例を紹介する。

(この節終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (11)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

 この型のエンディングでもやはり全てが駒の配置によるので勝ちか引き分けかの一般的な原則を述べることはできない。しかし普通は引き分けになるので、ここでは主に白が強制的に勝てる局面に話を限る。以下では局面を2種類に分けて考えることにする。

A ポーンが同じ列にある場合

 この場合は図11を基本的な局面として考えることができる。

 図11

 このような局面はどちらの手番であろうと駒の配置がいくら後ろにあろうと引き分けである。白の手番ならば黒は見合いを取っているので 1.Kg4 Kg6 2.Kf4 Kf6 で簡単に引き分けにできる。黒の手番ならば次のようにポーンを取られる。

1…Ke6 2.Kg5 Ke7 3.Kf5 Kd6 4.Kf6 Kd7 5.Ke5

 ここで 5…Kc6 でも 6.Ke6 でポーンは助からない。しかし黒は次のように初歩のエンディングで示した原則を応用して引き分けにできる。

5…Ke7! 6.Kxd5 Kd7!

 これで見合いが取れて引き分けになる。

 しかし駒の配置を一段ないしは二段上に上げれば状況はがらりと変わる。もちろん白の手番ならば勝ちのないことは変わりない。しかし黒の手番ならば今度は負けになる。上で見たように黒はポーンを取られる。そしてその時白キングは6段目に達する。ポーンがルーク筋以外ならばすべて白の勝ちである。例外は黒ポーンがg7又はb7にいる場合である。この場合黒キングは隅に逃げ込めば良い。白キングが近づいてくればステイルメイトになる。ポーンがルーク筋にある場合はこれまでと同じように引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (12)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 次に両方のキングにもっと動く余地がある場合を少し考えてみよう。まず図12から。

 図12

 このような局面は実戦でよくできるので正しい結果を知っておくことは大切である。白が黒のポーンを取ることができればたとえその時手番でも黒が見合いを取ることができないので白が簡単に勝つことは既に学んだ。手順は次のようになる。

1.Kc4

 勝つための唯一の手である。1.Kd4 は 1…Kd8 で黒が見合いを取り引き分けになる。

1…Kd7 2.Kb5!

 再び斜めの見合いを取る。2.Kc5? は 2…Kc7! で引き分けになってしまう。

2…Kc7 3.Kc5 Kd7 4.Kb6 Kd8 5.Kc6 Ke7 6.Kc7 Ke8 7.Kd6 Kf7 8.Kd7

 後は白が簡単に勝つ。

 これは一つの想定手順である。黒は 1…Kf7 で次のように白ポーンに対する逆襲を企てることもできる。

1.Kc4! Kf7 2.Kc5 Kg6

 このように両方のキングがそれぞれ反対側からポーンに近づいて来る局面も良く現れる。ここでのよくある間違いは 3.Kd6? でそれは 3…Kf5! で黒の勝ちに変わる。このような局面で覚えておくと役に立つ原則は1枡下(ここなら d7)からポーンを攻撃することである。そうすれば次の手 (Kd6) で自分のポーンを守りながら相手のポーンを攻撃することができる。したがって白の正着はつぎのようになる。

3.Kc6!

白キングは d7 の地点を目指し黒キングは f5 の地点を目指す。ここでは白の方が先に到着する。

3…Kg5

 3…Kf5 ならば 4.Kd6 で白の勝ちであることはすぐ分かる。

4.Kd7! Kf5 5.Kd6

 これで白の勝ちである。

(この項続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (13)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

A ポーンが同じ列にある場合(続き)

 ポーンがルーク筋にある場合は当然勝つ可能性は少なくなる。しかし図13の局面は巧妙で思いがけない手順が存在する。

 図13 白の手番
シュラーゲ対アフーエス、ベルリン、1921年

 この局面は1921年ベルリンでの大会でのシュラーゲ対アフーエス戦に現れた。白の手番で黒は当然ポーンを取られる。しかし白が5手かけて黒ポーンを取る間に黒キングは引き分けにできるc7の地点に到達するので問題ないように見える。本当にこの局面は引き分けの局面なのだろうか。実戦の進行は 1.Ke6 Kc3 2.Kd6? Kd4 3.Kc6 Ke5 4.Kb7 Kd6 5.Kxa7 Kc7 で以下引き分けになった。

 しかし実際には白キングが正しい道筋を選んでいれば勝つことができた。ポーン・エンディングではキングが斜めの道筋を通っても同じ手数で同じ地点に到達し、しかも敵のキングの進路を制限できることがある。白は次のように指すべきであった。

1.Ke6 Kc3 2.Kd5!

 こう指しても白は5手で黒ポーンが取れる。しかも黒キングのd4-e5-d6の道筋を妨げている。従って黒はc7の地点に間に合わずに負けてしまう。

2…Kb4

 2…Kd3 なら 3.Kc6 Ke4 4.Kb7 Kd5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8 でやはり白が勝つ。

3.Kc6 Ka5 4.Kb7 Kb5 5.Kxa7 Kc6 6.Kb8

 これでポーンがクイーンに昇格できる。

 単純だが非常に参考になる例だった。面白いことに図13で黒キングがb2でなくもっと条件の悪そうなh2にいたならば、白は黒キングの進路をじゃまして無駄な手を指させることができないので引き分けになるところであった。

(この項続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (14)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 この場合もしポーンが相手のキングによって止められてしまうと、白が敵ポーンを有利な条件の下で取れない限り結果は通常は引き分けである。この例として図14を考えてみよう。

 図14 白の手番
デドルレ 1921年

 白が黒ポーンを取るのは簡単である。例えば 1.Kc3 Ke5 2.Kb4 Kd5 3.Kxa4 で何も問題ないように見える。しかし黒にも策があり 1…a3 で引き分けにできる。以下 2.bxa3 なら 2…Ke6 3.Kc4 Kd6、2.b4 なら 2…Ke6 3.Kb3 Kd6 4.Kxa3 Kc6 5.Ka4 Kb6 である。白が勝つためにはこの黒の手を考慮に入れなければならない。そして自分のポーンをできるだけ後ろに置いたままの状態でキングで黒ポーンを取らなければならない。その手順は次のとおりである。

1.Kb1 a3

 最善の受けである。1…Ke5 は 2.Ka2 Kd4 3.Ka3 Kc5 4.Kxa4 Kb6 5.Kb4! で白が簡単に勝つ。

2.b3!

 後で分かるように 2.b4 は引き分けにしかならない。

2…Ke5 3.Ka2 Kd5 4.Kxa3 Kc5 5.Ka4 Kb6 6.Kb4!

 これで白の勝ちである。

 明らかに白ポーンがb4にあったらこの最後の手は指せないところであった。本譜ではおなじみの勝ちの局面になった。

(この項続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (15)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 お互いに相手のポーンを止められない時には非常に面白い状況になる。その場合直前の例で見たようにチェスでは2地点間の最短の道筋は必ずしも直線とは限らないという事実を利用したキングの動きで勝てることが良くある。そこでGMドゥラスのエンディングを見てみよう。

 図15

 ちょっと見たところでは両方のポーンともまだ原位置にあり白キングの位置がわずかに勝っているだけなので互角の局面に思われる。しかし驚くべきことに、白の手番であることとこの最小限の有利が最終的には白に必ず勝ちをもたらす。しかし勝つためには白は極度の正確さが要求される。特にキングの位置には注意が必要である。

1.Kc5!

 明らかに白キングは自分のポーンの前進を助けなければならない。さもないと黒キングによって止められてしまう。しかしどうして白キングはわざわざ黒ポーンが将来クイーンに昇格した時チェックになるような地点に行くのであろうか。以下の手順でその理由が分かる。

a)1…Kg6

 黒はキングで白ポーンを止めようとする。1…g5 と競争するのは次のb)で述べる。

2.b4 Kf7 3.b5 Ke7 4.Kc6!

ここで 1.Kc5! でなければならなかった理由が分かる。4.b6 Kd7 と 4.Kb6 g5 5.Kc7 g4 は引き分けである。

4…Kd8

 要点は黒キングが最下段の不利な位置に置かれたということである。このため後に白クイーンによってチェックされる。

5.Kb7! g5 6.b6 g4 7.Ka7 g3 8.b7 g2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

b)1…g5

 今度は敵ポーンの前進を止める代わりに黒が自分のポーンを突き進めてみる。チェックでクイーンに昇格できるかもしれない期待が持てる。しかし白キングの適応能力は次のような巧妙な手順で勝利する。

2.b4 g4 3.Kd4!

 黒ポーンは味方のキングの助けが必要である。これにより白はクイーンができた時にチェックになる地点に黒キングを追いやることができる。3.b5? は 3…g3 で逆に黒の勝ちとなる。

3…Kg5

 3…g3 は 4.Ke3 Kg5 5.b5! で本譜と同じになる。ただし 5.Kf3? は間違いで 5…Kf5 で引き分けになる。

4.b5 g3

 黒が 4…Kf4 で白キングを押さえようとすると白ポーンが先にチェックでクイーンに昇格する。

5.Ke3 Kg4 6.b6 Kh3 7.b7 g2 8.Kf2 Kh2 9.b8=Q+ で白の勝ち。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (16)

第2章 ポーン・エンディング

2.2 キング+ポーン対キング+ポーン

B ポーンが異なる列にある場合

 前回はほんの少数の駒数のポーン・エンディングの中にも単純にはいかないものがあることを示した素晴らしいスタディであった。比較的単純な局面から驚くほど深い着想を秘めた例はまだ数限りなくある。ここではもう一つだけスタディを採り上げる。それはキング+ポーン同士のチェスの局面の中で恐らく最も有名なものである。

 図16
レティ 1922年

 白の手番であるが、クイーンに昇格しようとしている黒ポーンを止めるには少なくとも2手足りないので負けは避けられないように見える。白のポーンは黒キングによって簡単に止められるのでほとんど助けにならないように見える。しかしここでもチェス盤における幾何の原則を用いることにより白キングは奇跡を呼び起こすことができる。

1.Kg7 h4 2.Kf6 Kb6

 黒キングに一手かけさせることにより白は一手稼いだ。2…h3 は 3.Ke7 h2 4.c7 で両方のポーンが同時にクイーンに昇格するので引き分けになる。黒の最初の2手は逆でも良い。1…Kb6 でも 2.Kf6 で次に 3.Kg5 があるので 2…h4 としなければならない。

3.Ke5!

 手順全体の核心の手である。白には次に 4.Kf4 で黒ポーンを捕まえる手があるので黒は以下のように進めるしかない。

3…h3 4.Kd6 h2 5.c7 h1=Q 6.c8=Q

 これで明らかな引き分けである。

 最初の局面で誰がこのような可能性を予想したであろうか。もちろんこれまでの例ですべてが尽くされたわけではない。しかし最も単純なポーン・エンディングにさえ色々な可能性が含まれているということはお分かりになったと思う。後にもっと複雑な局面が単純化されて行く過程に出会うことになる。

(この節終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (17)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 キング+2ポーン対キング+ポーンの局面はポーン・エンディングの中でも非常に複雑な部類に入る。局面の可能性は多種多様である。全体の理解を得ようとするならば体系的に学ばなければならない。一つの原則はポーンの数の優勢な側は自分のパスポーンが他のポーンから離れていて敵のキングをおびき寄せることができるならば勝つことができるということである。

 もちろん簡単には勝てない局面も多い。我々にとって関心があり以降で採り上げるのはそういう局面である。

 孤立ポーンがパスポーンの場合

 2ポーン対1ポーンのエンディングを白ポーンの配置によって分類する。まず白ポーンが孤立していてその内の一つがパスポーンとなっている場合を調べる。前に述べたように白ポーンがある程度離れていると白が比較的簡単に勝つ。そこでここではポーンが1列だけ離れている場合だけを考える。この場合パスポーンは黒キングを主戦場からあまり遠くへ誘い出すことができない。図17は典型的な局面である。

 図17

 この局面はどちらの手番であろうと白の勝ちである。ここでは白の手番として考える。

1.d5 Kd7

 1…Kc5 は 2.Ke5 Kxb5 3.d6 Kc6 4.Ke6 で白の簡単な勝ちである。

2.Ke5 Ke7 3.d6+ Kd8!

 最も巧妙な受けで、白にはちょっとした問題がある。3…Kd7 だったら 4.Kd5 で勝てるが、本譜の手に対しては 4.Kd5 Kd7 又は 4.Ke6 Ke8 5.d7+ Kd8 でうまくいかない。しかし白はここで初歩のエンディングの一つに誘導することができる。

4.d7!

 これが勝つための最も簡単な手で、ポーンを捨てて見合いを取りその後黒ポーンを取って標準の勝ち方に持ち込むことができる。4.Kd4 Ke8 5.Ke4 Kd8 6.Ke5! というもっと手の込んだ勝ち方もありこれについては後にまた触れる。

4…Kxd7

 4…Ke7 ならば 5.d8=Q+ Kxd8 6.Kd6 で勝てる。

5.Kd5 Kc7 6.Ke6 で白の勝ち

(この節続く)

2013年05月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (18)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 今度は全体の配置を1段下に下げたらどうなるかを見てみよう。

 図18

 この局面もやはり白の勝ちである。しかし今度は自分のポーンに対する黒の逆襲にもっと注意しなければならない。具体的には次のようになる。

1.d4 Kc4

 何の望みもないのは 1…Kd6 2.Ke4 Ke6 3.d5+ Kd7 4.Ke5 Ke7 5.d6+ Kd7 6.Kd5 から 7.Kc5 で白の勝ちである。

2.Ke4 Kxb4 3.d5 Kc5

 黒は白ポーンが先にクイーンに昇格するのを防ぐためにこの不利な地点にキングを置かなければならない。

4.Ke5 b4 5.d6 b3

 5…Kc6 でも 6.Ke6 で同じことである。

6.d7 b2 7.d8=Q b1=Q

 両者同時にクイーンができたが黒クイーンは次の手順で取られてしまう。

8.Qc8+ Kb4 9.Qb7+ で白の勝ち

(この節続く)

2013年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(19)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 図18のような局面はすべて白の勝ちと思われるかもしれない。しかし驚くべき例外がある。それは図19のように黒と白のポーンがビショップ列にある場合である。

 図19

 ちょっとみただけでは何も変わりないように思われる。例えば 1.e4 Ke6 2.Kf4 Kf6 3.e5+ Ke7 4.Kf5 Kf7 5.e6+ 又は 1…Kd4 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kd5 4.Kf5 c4 5.e6 c3 6.e7 c2 7.e8=Q 8.c1=Q 8.Qd8+ の後 9.Qc7+ でこれまで見てきたように白が勝つ。しかし実際には以下のようにわずかな違いがある。

1.e4 Kd4! 2.Kf4 Kxc4 3.e5 Kb3!!

 この手で黒は白キングが遠く離れている時そのクイーンはビショップ列の7段目のポーンに勝つことができないという特異な事実を利用している。ただし 3…Kd3 はだめで 4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2 7.Qe3+ で白が勝つ。

4.e6 c4 5.e7 c3 6.e8=Q c2

 これで白は黒キングがb2の地点に行くことを阻止できないので引き分けである。この局面については後のクイーン・エンディングの章でもっと詳しく述べる。それでも一応ここで言及しておく価値はあるだろう。

 図18の局面の駒配置が1段下だったら黒はいつでも白ポーンを攻撃できるので引き分けであることは明らかである。しかし驚くべきことに、2段上に上げて黒ポーンが原位置にいるようにすると白の勝つ可能性はやはり制限を受けてしまう。黒キングは白ポーンの前に立ちはだかり通常はステイルメイトで終わる。しかしここでは指摘するに留めておく。

 最後に図17から図19の局面で黒の手番ならば白が簡単に勝つことを述べておく。この場合白ポーンは攻撃を受けることがないので白は自分のパスポーンを進めるだけで良い。ただし唯一の例外はやはり黒ポーンが原位置にある場合である。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング (20)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 ルーク・ポーンの場合は白の勝つ可能性は大幅に減ってしまう。しかし意外なことに今回の駒配置の場合はそれが当てはまらない。図20を見てみよう。

 図20
ファールニ対アラピン

 この局面は図17の駒配置を1列左へ移動し白がパスポーンを進めた局面と考えることができる。この局面で黒番なら白の勝ちは容易だが、白の手番ならばどう指したら良いだろうか。図17の時と同じ手順ではうまく行かない。つまり 1.Kd5 Kc8 2.c7? Kxc7 3.Kc5 Kb7 も 2.Kd6 Kd8 3.c7+ Kc8 も黒が引き分けにできる。だから単純な手段では勝てず、もっと深く考察しなければならない。黒の手番ならば白が勝つのだから、手を渡して同じ局面に持って行けないだろうか。

 ここでちょっと対応枡の理論を用いて考えてみよう。黒は白の Kc5 には …Kc7、Kd6 には …Kd8 と応じなければならないからこの二組が対応枡である。白のd5に対応する黒の枡はどこだろうか。この枡から白キングはc5とd6に行けるので黒キングは対応枡のc7とd8に行けなければならない。c8が唯一の枡でありこれがまた対応枡になる。

 これを続けて行くと白のc4(d5とc5に行ける)は黒のb8とd8(c8とc7に行ける)に対応していることが分かる。このように二つの枡がたった一つの枡に対応していることもあり得る。それでは白のd4の枡の場合はどうなるだろうか。この枡からはd5とc5に行けるので黒の対応枡はb8とd8である。

 このような事前の考察を行なって我々の課題はもう解決したも同然である。白が Kc4 と指し黒が対応枡のうちb8を選んだとしよう。そこで白キングはd4へ行き、黒に対応枡のb8かd8に行かなければならないようにする。しかし黒キングは既にb8にいる。b8からd8へ二枡行くことは当然できない。だから黒は対応していない枡へ行かなければならず負けてしまう。いよいよ具体的な手順を見てみよう。

1.Kd5 Kc8 2.Kc4

 ここはc4でもd4でも関係ない。どちらでも同じ結果になる。

2…Kd8

 2…Kb8 でも同じである。

3.Kd4! Kc8

 3…Kc7 なら 4.Kc5 でもっと早く白が勝つ。

4.Kd5! Kc7 5.Kc5

 これで図20の局面で黒の手番になった。5…Kd8 6.Kd6 Kc8 7.c7 Kb7 8.Kd7 Ka7 9.Kc6(9.c8=Q はステイルメイトになってしまうので要注意)で白はあと2手で詰みにできる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(21)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンの場合(続き)

 本項の最後に同種のエンディングをもう一つ見てみる。

 図21

 パスポーンがルーク筋にあることとこのポーンの左側でキングが活動する余地がないために白の課題はことのほか難しくなっている。白の唯一の希望は右側から攻撃することだが黒キングの逆襲には絶えず気を配らなければならない。例えば単刀直入に 1.Kc3 Ka4 2.Kd3 と指すと黒は 2…Kb4(2…Ka3 は誤りで 3.Ke4 Kxa2 4.Kd5 で白が簡単に勝つ)で白の片方のポーンを取って明らかな引き分けになる。ここでも深い分析が必要である。

 白が勝つためには自分のキングがd5の地点に行く間に、黒にaポーンを取らせずに、そして …Kb4 でポーンを保護する態勢にさせないようにしなければならない。黒が …Kb4 と指した時白は Kd3 と指せる態勢になければならない。そうなった時黒はツークツワンクの状態で、白の Ke4-d5 を防ぐことができない。だから最初の対応枡の組は白のd3と黒のb4である。

 この作業を続けてみる。黒キングがa3にいてa2のポーンを取ろうとしている時白は Kd5 で応えなければならない。だから白のe4と黒のa3が対応枡となる。従って黒のa4(a3とb4に行ける)と白のe3(e4とd3に行ける)が対応枡、黒のa5(a4とb4に行ける)と白のd2(d3とe3に行ける)が対応枡となる。

 ここまでが最も難しい部分であった。残っている作業は白キングが注意深くd2に行くことで、そうなれば黒は白キングがd5に到達することを防げない。念のために言うと黒キングがa6又はb6にいる時白キングはc1、c2又はc3のどこにいても良い。その位置ならば …Ka5 に対して Kd2 と応じることができる。

 直前に述べたことから黒の手番ならば早く負けになることは明らかである。すなわち 1…Kb6(又は a6)に対して白はすぐに 2.Kc3(又は c2)Ka5 3.Kd2! と指せる。白の手番ならばことはもっと複雑であるが次のように強制的に勝つ手順がある。

1.Ka3!

 勝つにはこの手に限る。他の手だと黒は 1…Ka4 と指す。白キングは関連枡のe3から遠過ぎて間に合わない。白は本譜の手で1手かせぐことができる。

1…Kb6 2.Kb2 Ka5

 最善の手である。他の手では白は 3.Kc3 で簡単に勝つ。黒キングが中央方面に行っても何もならないことは言うまでもない。

3.Kb3!

 また手をかせぐことができる。

3…Kb6 4.Kc3(又は c2)Ka5

 4…Ka6 ならば白は Kc2(c3)-d3-e4-d5 で勝つ。

5.Kd2!

 勝ちを決定付ける手。クリングによって初めて発見された。しかし対応枡の理論を用いれば簡単に分かる。

5…Ka4 6.Ke3! Kb4 7.Kd3

 白は目的を達成した。以下は 7…Ka3 8.Ke4 Kxa2 9.Kd5 又は 8…Ka4 9.Kd5 Kb4 10.a3+ で簡単である。

 このように一見複雑そうな局面でも対応枡を用いると楽に理解できる例は数多くある。これから先の局面でも対応枡の重要性にまだまだ出会える。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(22)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

B 孤立ポーンがパスポーンでない場合

 この型の局面は防御側が引き分けにできる可能性が非常に大きくなる。攻撃側のポーンに手待ちの余裕がない場合は特にそうである。勝敗を分けるのはキングの配置と見合いが取れるかどうかである。図22で考えてみよう。

 図22

 これは一つの典型的な局面である。ちょっと見ただけでは白に勝ちがあるのかどうか判断するのは難しくて、十分な分析が必要である。一般原則としては防御側は白ポーンの自由をできるだけ制限して手待ちの余裕をなくさせるようにしなければならない。一方攻撃側はこの自由を保ったままできるだけ前に自分のキングを進めるようにしなければならない。これらの要点を頭に入れておけば以下の手順は容易に理解できるであろう。まず最も簡単な場合として黒の手番から始める。

1…e5! 2.f4

 キングが動いても 2.Ke4 Ke6 又は 2.Kd2 Ke6 3.Kc3 Kd5 のようにうまくいかない。本譜の手は唯一の勝つ可能性のある手である。

2…Kf5

 黒が引き分けるにはこの手しかない。2…exf4+ 3.Kxf4 Ke6 4.Ke4 Kd6 5.Kd4! は白の勝ちである。本譜の手の後は 3.fxe5 Kxe5 で明らかな引き分けである。

 この簡単な手順のほかに黒には次のように別の引き分けの手がある。ただし正確な手順が要求される。

1…Ke5

 ただし 1…Kf5 はだめで 2.d4 Kg6 3.Kf4 Kf6 4.Ke4 の後 5.Ke5 で白が勝つ。この局面は後で出てくる。

2.Ke2

 2.d4+ Kd5 又は 2.f4+ Kf5 の後黒は 3…e5 を狙う。もし白が 3.f4(又は d4)と指せば黒が最初に 1…e5 と指した場合の対称的な形になる。

2…Kf4

 キングが他の地点に動いても引き分けであるがこの手が一番参考になる。

3.d4 Kg5!

 今度は絶対の手である。3…Kf5? はこれまで見たように 4.Ke3 で白の勝ちである。黒は白が Ke3 と指した時 …Kf5 と指せる状態でなければならない。白はこれ以上どうすることもできないので引き分けになる。

 図22に戻って白の手番ならば次のような手順で勝てる。

1.Ke4!

 キングをできるだけ前に進ませるという先ほどの原則に従った手である。この手しか勝ちはない。1.Kf4? は 1…e5+ 2.Kg4 Kg6、1.f4 は 1…Kf5 2.Kf3 e5、さらに 1.d4 は 1…Kf5 2.Kd3 Kf4 3.Ke2 Kg5! でいずれも引き分けになる。

1…Kf7

 最も可能性のある手。1…e5 には 2.f4!、1…Ke7 には 2.Ke5 Kd7 3.d4 Ke7 4.f4 Kd7 5.d5(又は 4…Kf7 5.f5)で白が楽に勝つ。

2.Ke5 Ke7 3.f4 Kd7

 3…Kf7 は 4.f5 ですぐ負ける。

4.Kf6!

 4.d4? は 4…Ke7! で引き分けになることは読者自身で確かめられたい。

4…Kd6 5.d4

 見合いを取り勝ちも確定する。5.Kf7 も可能で 5…e5 6.f5 で勝つ。

5…Kd7 6.Kf7 Kd6 7.Ke8! Kc6 8.Ke7 Kd5 9.Kd7 Kxd4 10.Kxe6 で白の勝ち

 注意を要するのは白が勝てたのは 5.d4 と指す余裕があったからである。その証拠に白の6手目の局面で白の手番だとすると最善を尽くしても引き分けにしかならない。このことをもっと詳しく調べてみる。

 白が勝つためには黒キングがd7にいる時に本譜のように白キングはf7に行って見合いを取らなければならない。他の対応枡は白のf6とf8に対して黒のd6とd8である。白キングがg筋にいる場合g8とg7に対応する黒の枡はe8とe7である。g6はどうであろうか。黒のe6の枡は自分のポーンがいるので遠方見合いのc6の枡だけが対応する。白キングがg6に行くとすぐに黒キングはこのc6に行かなければならない。

 以上のことから手順は次のようになる。

1.Kf6 Kd6 2.Kg7 Kc7!

 2…Ke7? は誤りで 3.Kg6! Kd6 4.Kf6 Kd7 5.Kf7 で白が勝つ。

3.Kg6 Kc6! 4.Kf7 Kd7 5.Kg8 Kc8!

 ここでも唯一の手である。5…Ke8 は 6.Kg7 Ke7 7.Kg6!、5…Kc6 は 6.Kf8 Kd6 7.Ke8 で黒が負ける。

6.d5

 他に適切な手がない。

6…Kd7!

 6…exd5? は誤りで 7.f5 で白がチェックでクイーンを作れる。

7.Kg7

 7.dxe6+ と取るのは 7…Kxe6 から 8…Kf5 で黒は問題ない。

7…exd5

 これで両者のポーンが共にクイーンに昇格する。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(23)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 孤立ポーンがパスポーンでない場合(続き)

 白の2ポーンが二重ポーンになっている場合は、後ろのポーンに動く余裕がある時だけ白に勝つ可能性がある。面白い図23を考えてみる。

 図23

 黒キングの方が白キングよりはるかに活動的なのでちょっと見たところでは白が勝てそうにないように見える。しかしf3のポーンが急所の場面で決定的な役割を果たす。巧妙な勝ちの手順は次のとおりである。

1.Kf5!

 後ろのポーンがf3でなくf2だったら白は何の問題もなく 1.Kg5 Ke5 2.f3 ですぐに勝てる。しかしこの局面では 1.Kg5 は 1…Ke5 2.f4+ Ke6 3.f5+ Ke5 で引き分けにしかならない。1.Kg4 も 1…Ke6 2.Kg5 Ke5 で手詰まりである。白はまずポーンをf4に進めて黒キングがe5の地点に来れないようにしなければならない。

1…Kd6

 白の狙いは 2.f4 で、その後キングがh5からh6へ侵入することであった。例えば 1…Kd4 ならば 2.f4 Kd5 3.Kg4!(3.Kg5 は 3…Ke6! で白が手詰まりになる)Kd6 4.Kh5 Ke6 5.Kg5 から 6.Kh6 で白が勝つ。それで黒キングはこの侵入を防ぐために後ろに下がる。

2.f4 Kd7 3.Kg4!

 ここでも 3.Kg5? は 3…Ke6! で引き分けになる。

3…Ke8 4.Kh5

 後で分かるが 4.Kg5 は 4…Kf8 で白が手詰まりになる。

4…Kf8 5.Kg5

 手詰まりに置かれたのは黒で、白にいずれの側からの進入を許すしかない。興味深いことに全体の配置が一段下だったら黒は 5…Kf8! で白キングがどちらへ行くかを見定めることができて引き分けにできた。しかし本譜の局面では黒キングにはこの余裕がない。

5…Kg8

 5…Ke8 6.Kh6 Kf8 7.Kh7 は白が楽に勝つ。

6.Kf5 Kh7

 6…Kf8 はもう間に合わず 7.Ke5 Ke8 8.Kd6 Kd8 9.f5!(勝利の手待ち)Ke8 10.Kc7 で白が勝つ、。

7.Ke4!

 白はまだ慎重に指さなければならない。7.Ke5 は 7…Kg6! で黒に引き分けにされてしまう。白は黒の手番でこの局面を迎えたいのである。

7…Kh6 8.Kd5 Kg6 9.Ke5 Kh5 10.Kd6 Kh6 11.Ke7 Kg6 12.f5+ で白の勝ち

 妙手と美の兼ね備わったスタディであった。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(24)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合

 白のポーンが連結していてその内の一つがパスポーンの場合は白の勝つ可能性は非常に大きい。黒の受けの可能性は限られ、引き分けが望めるのは白のポーンがあまり進んでいない場合か黒キングが異例の好位置にいる場合だけである。以降では局面を評価する要素について説明していく。

 まずポーンがa筋とb筋にある場合から考えてみる。それと同時にポーンがどのくらい進んでいるかも考慮する。これにより全ての型が尽くせる。

 図24

 図24はこの型のエンディングの基本である。どちらの手番でも結果は同じなのでここでは手順が少し難しくなるように黒の手番として考える。

1…Kc5 2.Kd3 Kd5 3.Ke3 Ke5 4.Kf3!

 ここで分かるように連結パスポーンの大きな利点は白キングが近くにいる必要がないことと敵キングの動きを厳しく制限することである。この例では黒キングは b5-b8-e8-e5 の正方形から出るわけにはいかない。もし出れば白のbポーンがクイーンに昇格してしまう。つまり黒は 4…Kf5 とは指せず見合いを放棄しなければならない。

4…Kd5 5.Kf4 Kd6 6.Ke4

 6.Kf5 は 6…Kd5 とされてまた4段目に戻らなければならないので何もならない。

6…Ke6 7.Kd4 Kd6 8.Kc4 Kc7

 このように黒は白に5段目を譲ることを余儀なくされた。しかし黒にはまだいろいろな抵抗手段がある。

9.Kc5

 9.Kd5 Kb6 10.Kd6 Kb7 11.Kc5 の方がもっと簡単な勝ち方である。しかし一、二の参考になる点を示すために長い手順の方を取る。

9…Kb7 10.Kd5!

 10.b6? は 10…Ka6! 11.Kc6 でステイルメイトになってしまう。10.Kd6 は 10…Kb6 11.Kd7 Kb7 で黒キングが見合いを保つ。

10…Kc7 11.Ke6 Kb6

 11…Kb7 は 12.Kd7 Kb6 12.Kc8 で白の勝ちである。

12.Kd6 Kb7 13.Kc5(d7) で白の簡単な勝ち

 もし図24の駒配置を1段上に上げれば(白のポーンがa5とb6など)もはや白の勝ちはない。白キングはc6に行けるが既に見たようにステイルメイトになるのでbポーンを突くことができない。同様にさらに1段上げても(白のポーンがa6とb7など)明らかに黒キングがb8とc7から追われないので引き分けである。

 図24の駒配置を1段下に下げても(白のポーンがa3とb4など)まだ白の勝ちであるが、2段下げると(白のポーンがa2とb3など)状況が変わってくる。白番ならば 1.Kc2 Kc5 2.Kd3! Kb4 3.Kd4 Kb5 4.Kc3! Kc5 5.b4+ で勝つ。しかし黒番ならば 1…Kc3 2.Kd1 Kb2! と白ポーンに逆襲して白がステイルメイトを選ばなければならないので引き分けになる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(25)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 今度は白ポーンがb列とc列にある場合を考えよう。図24の駒配置を1列右へ移動した局面(白ポーンがb4とc5など)は白がもっと楽に勝てる。1段下に下げた局面(白ポーンがb3とc4など)も同様である。これ以上説明を要しないだろう。

 2段下げた局面(白ポーンがb2とc3など)と2段上げた局面(白ポーンがb6とc7など)は白に勝ちがないことは明らかである(図24で同様の局面を既に調べた)。しかし図24から1列右に移動しさらに1段上に上げた局面は結果が異なってくる。それが図25である。

 図25

 この局面は以下のように白が勝つ。

1…Kd6 2.Ke4 Ke6 3.Kf4 Kd6

 白のパスポーンは黒キングの動きを厳しく制限しているので白はすぐにキングを進めることができる。

4.Kf5 Kc7 5.Ke6 Kc8

 ここで白には一つ問題がある。6.Kd6 は 6…Kd8 7.c7+ Kc8 8.Kc6? で黒キングがステイルメイトになってしまう。だからポーンを犠牲にする必要がある。

6.c7! Kxc7 7.Ke7! で白の勝ち

 黒ポーンはまもなく取られ白は図7の白勝ちの局面に到達する。

(この節続く)

2013年05月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(26)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 さらに図24の駒配置を2列右へ移動した局面を考える。この局面と1段上に上げた局面(白ポーンがc5とd6など)が白の勝ちであることは簡単に分かる。同様に2段上に上げた局面(白ポーンがc6とd7など)も白キングがa6を通ってクイーン翼から侵入することもできるので白の勝ちである。1段下にしてキングの位置を少し変えた局面が図26である。

 図26

 これまでの似たような局面と比べるとこの局面には面白い新たな手段がある。黒に最も有利な受けの可能性を与えるために黒キングをe4に置きさらに手番を与えた。しかしこれでも局面の基本的な性格は変わらない。まず黒が白の通常の勝ち手順にどのように対処するかを見てみよう。

1…Kf4 2.Kf2? Ke4 3.Ke2!

 白は前の手の誤りを認めなければならない。当然の 3.Kg3 はこの局面ではうまくいかない。それに対して黒は 3…Kd3! と応じ以下 4.d5 Kxc3 5.d6 Kb2 6.d7 c3 7.d8=Q c2 で引き分けとなる。これは図19の分析で既に触れた。これは白の通常の勝つ手段では十分でないということである。しかし白はクイーン翼から侵入することができる。

3…Kf4 4.Kd2 Ke4 5.Kc2 Kd5

 黒は Kd2 には …Ke4、Ka3 には …Kb5 と指せるようにしなければならない。そしてそれはうまくいっているように見える。例えば 6.Kb2 には 6…Kc6 7.Ka3 Kb5、6.Kd2 には 6…Ke4 で白はどうにもならない。しかし一つだけ手段がある。

6.Kc1!

 この手待ちにより黒は手詰まりにおちいる。6…Ke4 なら 7.Kb2 Kd5 8.Ka3 で白が勝つ。6…Kc6 なら 7.Kd2 から 8.Ke3 で黒の負けとなる。この勝ち手順を知ればもう1段下げた局面(白ポーンがc2とd3など)も正しく判断することができる。白番ならば 1.Kd1 Kf3(2.Ke2 を防ぐため)2.Kc1 Ke3 3.Kb1 で白が勝つ。しかし黒番ならば 1…Kf3! 2.Kd1 Ke3 3.Kc1 Kd4 で引き分けにすることができる。黒キングは既に最下段にいるので図26での 6.Kc1! のような手待ちの余地がない。以下は 4.Kb1 Kc5 5.Ka2 Kb4 又は 4.Kd1 Ke3 で引き分けである。

(この節続く)

2013年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(27)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 図26の駒配置を1列右に移し白の両ポーンが中央の列にいるようにすると白の勝つ可能性は高まる。最も複雑な局面は図27のように白のdポーンがd2にある場合である。

 図27

 白の手番ならば 1.Ke1 Kg3 2.Kd1 で楽に勝てる。しかし黒の手番でもa列を使ってクイーン翼から侵入できるので白が勝つ。

1…Kg3 2.Ke1 Kf3 3.Kd1 Ke4

 以前に検討した駒配置が1列左の局面では白に勝ちがなかった。しかしここでは状況が異なる。

4.Kc1 Kd5 5.Kb2 Kc4 6.Ka3! で白の勝ち

 この例の結果から(図27のように)両方のポーンが中央の列にあるとそれらのポーンがどのくらい前に進んでいるかにかかわらず常に白が勝つと言うことができる。白キングがa3又はf2から侵入して来るのを黒キングが止めることができないのでキングの位置は関係ない。中央から逆襲するのも同じくうまくいかない。例えば白のポーンがd2とe3、キングがc1、黒のポーンがd3、キングがc4の局面で黒が次のように指したとする。1…Kb3 2.Kd1 Kb4 3.Ke1 Kb3 4.Kf2 に対して 4…Kc2! を用意した。しかし白は次のような手順で勝つ。4.e4! Kc4 5.Kf2 Kd4 6.Kf3 Ke5 7.Ke3

(この節続く)

2013年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(28)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 さらに右に移した図28もまた少し複雑である。

 図28

 白の勝つ可能性が非常に少なくなっていることは言うまでもないだろう。白はh筋からは侵入が絶望的なのでクイーン翼からの侵入を試みるしかない。しかしクイーン翼で前進するためには見合いを取らなければならないが、遠方見合いがうまくいかない。図を見れば黒が遠方見合いを利用して正しく守れば白がうまくいかないことは簡単に分かる。

 白はもちろん黒キングがc4-c8-g8-g4の正方形から出られないことを利用してa筋から侵入を試みることはできる。しかしこれに対しても黒は見合いを利用してうまく守ることができる。それに白は自分のfポーンに対する逆襲も考慮に入れておかなければならない。具体的な手順を見てみよう。

1…Kd4

 これが最も簡単な手であるが 1…Ke6 又は 1…Kd6 でもよい。黒は Kd3 には …Kd5、Kc3 には …Kc5 と応じられるようにしなければならない。白キングがa筋に行くのを止めることはできないので今の時点では遠方見合いを取るのは意味がない。

2.Kd2

 2.Kf2 Ke5 3.Kg2 Kf6 4.Kh3 Kg5 は引き分けである。

2…Kc4 3.Kc2 Kd4 4.Kb3 Kd5!

 黒はすぐに斜め見合いを取らなければならない。4…Kd3 は 5.g5 でだめだし、4…Kc5? には 5.Kc3 で見合いを取られてしまう。しかし 4…Ke3 5.g5 Kxf3 6.g6 Ke2 7.g7 f3 8.g8=Q f2 と逆襲して図26の白の3手目の変化と同様のエンディングにするのはどうだろうか。実は駒の配置が違うために白は 9.Qg2 Ke1 10.Kc2! f1=Q 11.Qd2 ときれいに詰めてしまうことができる。

5.Kb4 Kd4

 白はこれ以上どうすることもできない。6.Kb5 なら黒は今度は 6…Ke3 が可能だし 6…Kd5 でもよい。6.Kb3 には 6…Kd5 7.Ka3 Kc5 でよい。最後に 6.g5 には 6…Ke5 7.Kc5 Kf5 8.Kd5 Kxg5 9.Ke5 Kg6 10.Kxf4 Kf6! で基本の引き分けの局面になる。

 今までのことから図28の局面を1段下に下げれば白の勝つ可能性はさらに少なくなることは明らかである。しかし逆に1段上に上げるとパスポーンにより黒キングの自由がさらに狭まるので白が勝てる。例えば白ポーンがf4とg5、キングがe3、黒ポーンがf5、キングがe6とすると黒キングはd5-h5-h8-d8の正方形の中にいなければならず白キングがc5の地点に来るのを妨げることができない。1…Kd5 2.Kd3 Ke6 2…Kc5 は 3.g6 で白の勝ち。3.Kd4 Kd6 4.Kc4 Ke6 5.Kc5 白はまもなく黒ポーンが取れる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(29)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 連結パスポーンの場合(続き)

 今度は図29のようにパスポーンがh筋にある場合を考える。

 図29

 図28の検討を元にするとこの局面は引き分けであると言える。しかし受け側に一、二の相違点があるので少し詳しく見てみることにする。

1.Ke3 Ke5 2.Kd3 Kd5

 前の例のように黒は白キングに急所のd4の地点を占拠されないように見合いを保たなければならない。

3.Kc3 Ke5!

 黒は図28の時よりも注意深く受けなければならない。白の後ろのポーンはfポーンでないのでこのポーンに逆襲するわけにはいかない。黒キングはd4-h4-h8-d8の正方形から出ることはできないし見合いを失うこともできない。例えば 3…Ke4? は 4.Kc4 Ke5 5.Kc5 で白キングにd4かd6に侵入されてしまう。

4.Kc4 Ke4 5.Kc5 Ke5 6.Kb6 Kd6 7.Ka7 Ke7!

 遠方見合いを取るところが要点である。

8.Kb8 Kd8

 これ以上白はどうしようもない。強いて指せば次のようになるだろう。

9.Kb7 Kd7 10.Ka6 Ke6 11.Kb6 Kd6!

ただし 11…Kf6 は間違いで 12.Kb5 Kf5 13.Kb4! Ke6 14.Kc4 Ke5 15.Kc5 で白キングがd4に到達する。

12.Ka5 Ke5 13.Ka4 Ke4 14.Ka3 Ke5! 15.Kb3 Kd5!

 これで白は以前の形に戻らなければならない。

 図29の局面を1段下げても白の可能性が減るだけである。しかし1段上に上げると白の勝ちになる。例えば白ポーンがg4とh5、キングがf3、黒ポーンがg5でキングがf6とする。黒キングが動きを制限されているので白キングの侵入を防ぐことができない。例えば 1…Ke5 2.Ke3 Kf6 3.Ke4 Ke6 4.Kd4 Kf6 5.Kd5
後は白の楽勝である。白ポーンがg5とh6にある場合も同じように白が勝つ。白ポーンがg6とh7にある場合も同じであるが例外は黒キングがh8にいる場合でステイルメイトで引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(30)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合

a)片方のポーンがせき止められている時

 図30がその例である。

 図30

 パスポーンがなければ白はキングを進めるしか勝つ方法がないので勝つ可能性が減るのは明らかである。白キングが前進するためには見合いを取らなければならない。だからほとんどの場合勝ちかどうかは見合いできまる。

 白ポーンが図30のように進んでいれば白は見合いとは関係なく勝てることが多い。黒キングはd5-a5-a8-d8の正方形の中に制限されているので白は以下の手順で勝てる。

1.Ke5!

 1.c6+ でも良さそうに見える。1…bxc6+ と取ってくれれば 2.Kc5 Kd8 3.Kd6! Kc8 3.Kxc6 で白が勝てる。しかし実際は見落とし易い間違いである。黒は 1…Kc8 2.Kd6 Kb8(次に 3…bxc6 と取る)3.c7+ Kc8 で引き分けにできる。

1…Kc6

 1…Ke7 には 2.c6 があるので黒は見合いを保てない。

2.Kd4 Kd7 3.Kd5

 図30と同じ局面だが黒の手番になっている。

3…Kc8 4.Ke6

 うっかり 4.c6? と指すと 4…Kb8! で引き分けになるので注意が必要である。ただし 4.Kd6 は可能で 4…Kd8 5.Ke6(5.c6? Kc8!)Kc8 7.Ke7 で勝つ。

4…Kd8 5.Kd6 Kc8 6.Ke7 Kb8 7.Kd7 Ka8

 ここでようやく白はポーンを進める。

8.c6! bxc6 9.Kc7

 これであと3手で詰みとなる。

 図30の局面を1段下げた局面は黒が見合いを取っていれば白が勝てない。例えば白ポーンがb5とc4、キングがd4、黒ポーンがb6、キングがd6とする。

1.Ke4

に対して黒は

1…Ke6

と応じることができる。2.c5 は恐れることはない。

2.Kf4 Kd6!

ただし 2…Kf6? は 3.c5 でだめである。3…Kc5 があるので白キングは戻らなければならない。

3.Ke3

ここで黒は 3…Ke5? 4.Kd3 Ke6 5.Ke4 も 3…Kc5? 4.Kd3 Kd6 5.Kd4 も良くない。しかし

3…Ke7!

で遠方見合いを取って引き分けにできる。もし黒の手番だったら

1…Ke6 2.c5

又は

1…Kc7 2.Ke5 Kd7 3.Kd5 Kc7 4.Ke6

で黒の負けとなる。

 図30の局面を右の方に移してもどちらの手番かにかかわらず常に白が勝つ。しかし白ポーンがf6とg5、キングがh5、黒ポーンがf7、キングがh7の局面は白キングが右側から侵入できないので別の手順が必要となる。

1…Kh8 2.g6 fxg6+ 3.Kh6! Kg8 4.Kxg6

で白が勝つ。白の手番では

1.g6+ fxg6+ 2.Kg5 Kh8 3.Kh6

で同じように白が勝つ。しかし白ポーンがg6とh5の時は黒キングがg8に入り込めば白はどうすることもできないので引き分けになる。

 ルーク列でポーンが接触している場合は白の勝つ可能性はない。例えば白ポーンがa5とb4、キングがc4、黒ポーンがa6、キングがc6の場合白が見合いを取っていても役に立たない。

1…Kd6 2.b5 axb5+ 3.Kxb5 Kc7

これでaポーンはクイーンに昇格できない。白キングがc5の地点に行けて且つ見合いも取れれば勝てるが、これは明らかに望めない。

(この節続く)

2013年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(31)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

a)片方のポーンがせき止められている時(続き)

 図30に類似した局面は全部調べたが最後に遠方見合いによる正しい受け方の例を見てみよう。

 図31

 前に言ったように黒の手番ならば 1…Kg6 2.e5 あるいは 1…Ke7 2.Kg5 Kf7 3.Kf5 Ke7 4.Kg6 ですぐに負ける。白の手番ならば引き分けであるが黒には正確さが要求される。

 黒にはどのような危険性があるかを考えてみよう。まず黒は白キングに6段目に来させてはいけない。これはつまり見合いを保ちながら白キングと同じ列にいなければいけないということである。例えば白キングがf1にいるとすると黒キングはg列に行くことはできない。そのため1.Ke2 Kf7 2.Kd3 Ke7(2…Kf6 3.Kd4)3.Kc4 Kd7 4.Kb5 Kc7 5.Ka6! で白が勝つ。次に黒は常にe5というポーン突きの可能性に注意していなければならないので黒キングはh列に行くことができない。

 さらに見合いに関して言えば黒はa、b、fおよびg列についてだけ注意していれば良い。これは白キングがc、dおよびe列から侵入することができないからであり、これらの列を離れたらすぐに見合いを取り戻す用意ができている限りc-e列では見合いを気にする必要はない。以上のことを踏まえておけば以下の手順は容易に理解できるであろう。

1.Kg4 Kg6

 1…Ke5? は 2.Kf3 Kf6 3.Kf4 で白に見合いを取られ負ける。

2.Kh4 Kf6

 前に述べたように 3.e5! があるので 2…Kh6 とはできない。しかし 2…Kf7 は可能で後でg列でまた見合いを取ることができる。

3.Kg3 Kg7!

 ここでも 3…Ke5? は負けてしまう。3…Kg5? も 4.Kf3! で黒キングはf5に行けず 4…Kf6 5.Kf4 で白が勝つ。

4.Kg2 Kg8

 遠方見合いを保つのが一番安全である。ただし 4…Kg6 も可能で 5.Kf2 Kf6 6.Ke2 となった時e列での見合いは心配する必要がない。だから 6…Ke7 7.Ke3 Ke8! 8.Kf4 Kf8! 9.Kf5 Kf7 で引き分けにできる。

5.Kg1 Kg7

 この手は絶対手である。5…Kf7 は 6.Kf1! Kf8 7.Kf2 Kf7 8.Kf3 Kf8 9.Kf4 Ke8 10.Kg5 Kf7 11.Kf5 で白が勝つ。途中 6…Ke7(6…Kg7 ならば白キングはa6に行く。黒キングはb7に間に合わない)ならば 7.Kg2 Kf8 8.Kf2! Ke7 9.Kg3 Kf7 10.Kf3 Ke7 11.Kg4 でやはり白が勝つ。

6.Kf1 Kf7

 この手も明らかに絶対手である。

7.Ke2 Ke7 8.Kd2 Kd7 9.Kc2 Kc7

 白が侵入できないので黒の7-9の3手は白キングと同じ列のどの枡でも良かった。しかし次からはまた正確を期さなければならない。

10.Kb2 Kb8

 10…Kb6 は可能だが 10…Kb7? はだめで 11.Kb3! ですぐ分かるように白が勝つ。

11.Kb3 Kb7 12.Ka3 Ka7

 黒が見合いを取っている限り白はどうしようもないので分析もここまでにしておく。白は他の枡も試すことができるが、これまでの指針に基づけば黒は容易に正しい受け方を見つけることができるであろう。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(32)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

a)片方のポーンがせき止められている時(続き)

 白のせき止められていない方のポーンがもっと後ろにあって手待ちできる場合がある。もちろんこれは白にとって大変有利で勝つ可能性が大いに高まる。これまで見合いに依存していた局面はすべて白が見合いを取ることができるということで白の勝ちになっていた。これ以上の説明は必要ないくらいである。

 しかし我々にとって興味があるのは、これまで見込みがなかった局面がそのようなポーンのために勝ちになることである。その例が図32である。

 図32
クリング、1848年

 白のhポーンがh3にあったならどちらの手番であろうと引き分けになることは疑いない。しかし本図でのポーンの手待ちはこの局面の評価が変わるほど重要なのだろうか。見合いが意味を持たないこの図でhポーンの遊び手がなぜ大切なのだろうか。

 上のことは普通のことなのかもしれないが、ポーンの遊び手を使う前にまず白がキングの位置を改善できるかどうかを考えてみなければならない。最初に思いつくのは白キングが4段目を占めることである。そうすれば遊び手を使って見合いを取り、黒はf5からの侵入を防げなくなる。即ち白がポーンをh3に進める前にキングがe4に行ければ白が勝つ。

 さらに黒キングが遠くへ行き過ぎると白にはh4と突く狙いも出てくる。黒はh5を許すことはできないのでこのポーンを取らなければならない。その場合白キングがh4のポーンを取り返せば黒キングはすぐにg6へ来られるようにしておかなければならない。つまりf6にいなければならず、さもないと負けてしまう。

 これまでのことをまとめると幾つかの対応枡を挙げることができる。白キングがg3にいてh4突きを狙っている時黒キングはf6にいなければならない。次にf3の白キングはe4とg3に行けるのでf6とe4に利いている黒キングの枡はe5だけである。最後にe3の白キングはe4とf3に行けるので対応する黒キングの枡はd5だけである。これで黒のf6、e5及びd5に対応する三つの枡が分かった。

 この作業を続けると、白が Kf2 と指したらどうなるのだろう。白キングはここからe3、f3及びg3へ行ける。従って黒キングはd5、e5及びf6へ行けなければならない。だからe6が黒の対応枡となる。g2の白キングはf3とg3に行けるから、e5とf6に利いている対応枡は同じくe6となる。これで我々の問題への解答が分かる。つまり黒キングがe6の地点に行ったら白は Kg2(又は Kf2)と指せば良い。そうすれば黒キングは対応枡のe6を去らなければならず負けてしまう。実際の手順を見てみよう。

1.Kf2!

 クリングの手順は 1.Kf3 Ke5 2.Kg3 Kf6 3.Kg2 Ke6 4.Kf2 だったがそれでも良い。本譜の手は一手だけ短い。
 
1…Ke6

 白には 2.Kg3 から 3.h4 の狙いがあるので黒キングはすぐにf6を目指さなければならない。1…Ke5 は 2.Kf3 で白が勝つ。

2.Kg2! Kf6

 2…Ke5 は 3.Kf3 Kd5(4.Ke4 を防ぐ)4.Kg3 Ke6 5.h4 gxh4+ 6.Kxh4 Kf6(手遅れ)7.Kh5 Kg7 8.Kg5! で白が勝つ。黒キングの他の手は Kf3-e4 又は Kg3 から h4 で黒が負ける。

3.Kg3!

 黒は手詰まりに陥った。

3…Kg6

 3…Ke6 なら 4.h4、他の手なら本譜の手に戻る。

4.Kf3 Kf6 5.Ke4 Ke6 6.h3!

 ようやく決め手となる遊び手が使えた。白はこれで見合いが取れて 6…Kf6 7.Kd5 で勝てる。非常に参考になる例であった。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(33)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時

 今度は白にパスポーンがないけれどもどちらのポーンも黒ポーンによってせき止められていない場合を考えよう。この場合には出遅れポーンが存在しない。このような局面は通常は白にとって有利である。

 図33

 この局面は白の手番ならば白の勝ちであるが、黒の手番ならば 1…f5+! という巧い手があって 2.exf5+ Kf6 で引き分けになる。白キングが他の位置、例えばh4ならば黒の手番でも白の勝ちとなるところであった。

 白はポーンを動かす前に自分のキングを最も良い位置に動かすというのが一般原則である。ここでも例えばポーンを先に動かす 1.e5 fxe5 や 1.f5+ Kg7 は引き分けになってしまう。そこで白は以下のようにまずキングを動かさなければならない。

1.Kf3 Kf7

 1…Kh5 は 2.Ke3 Kg4 3.f5 で白が勝つ。ただしこの手順中 2.e5 は誤りで 2…Kg6! 3.Ke4 Kf7 で引き分けになる。

3.Ke3 Ke6 4.Kd4 Kd6 4.f5!

 白キングは良い位置にいるので今度はポーンを動かす番である。この局面は既に知っている勝ちの局面で 4…Kc6 5.e5 も 4…Ke7 5.Kc5 Kd7 6.Kd5 も簡単である。覚えておくと役に立つ原則は白キングは対向ポーンのない側に回るのが良いということである。

 図33の局面を1段上または下にしても、あるいは1列または2列左に移動しても結果は変わらない。しかし3列左に移動して白ポーンがb4とc4に来ると白の手番でも引き分けになる。1.Ke4 1.Kc3 は 1…Kc7 2.Kb3 Kb6 3.Ka4 Ka6 4.c5 Kb7 となり白キングが左側から侵入できない。1…Ke6 2.Kf4 Kf6 3.c5 Ke6 4.Ke4 Kf6! 5.Kd4 Ke6 6.Kc4 Kd7 白はどうすることもできない。この移動した局面を下に下げても同じである。しかし逆に1段上に上げて白ポーンがb5とc5の枡に来るようにすると白は次のように勝てる。1.c6+ Ke7 2.Ke5 Ke8 3.Ke6 Kd8 4.Kf7

 図33の局面を4列左に移動するとやはり引き分けである。それは白のポーンがルーク列にある場合で調べる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(34)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 ここで例外的な局面について触れておかなければならない。それは図34のように黒ポーンがビショップ列にある場合である。

 図34

 これは図33の局面を1段下げ白キングをg3からh3に移した局面である。この普通なら問題にならないわずかな違いでどちらの手番であっても引き分けになる。それはビショップ列にあるポーンの特殊な性質による。それではこの局面を詳しく調べてみよう。まず白番から始める。

(1)

1.Kg2

 もちろん 1.Kg3 は 1…f4+! でたちまち引き分けの形になってしまう。1.Kh2 も 1…Kf6 で進展がない。

1…Kf6!

 他の手では白キングがクイーン翼に回って白が勝つ。例えば 1…Kg6 は 2.Kf2 Kf6 3.Ke2 Ke5(3…Ke6 は 4.Kd3 Ke5 5.Kc4 Kd6 6.Kd4 Ke6 7.e4! で白勝ち)4.Kd3 Kd5 5.f4! で図33の手順に出てくる形になる。1…f4 も 2.e4 Kf6 3.Kf2 Ke5 4.Kf1! で図26に出てきた形と同様になり白が勝つ。

2.Kg3

 2.Kf2 Ke5(e6) は本譜に戻る。

2…Kf7!

 ここでも絶対手である。g列は 3.Kf2 とされるので行けないし、e列も 3.Kh4 とされるので行けない。本譜の手の後 3.Kf4 Kf6 も 3.Kh4 Kg6 も白にとって望みがないのでクイーン翼に可能性を賭けるしかない。

3.Kf2 Ke6 4.Ke2 Kd5 5.Kd2 Kd6

 5…Ke5(又は c5)は 6.Kd3 Kd5 7.f4 で白が勝つ。黒は Kd3 に対して …Kc5 と応じられるようにしなければならない。

6.Kd3 Kc5! Kc3

 勝とうとするならこの手しかない。7.e4 なら 7…Kd6! 8.Kd4 fxe4 9.Kxe4 Ke6、また 7.f4 なら 7…Kd5 で引き分けになる。

7…Kd5 8.Kb4

 8.f4 なら 8…Kc5 で引き分けになる。ただし 8…Ke4? は誤りで 9.Kd2 Kd5 10.Kd3 で白が勝つ。

8…f4!

 この手が核心の手である。黒は図19の本譜と図26の白の3手目の解説に出てきたビショップ列ポーンの特殊な性質を利用する。

9.e4+ Kd4 10.Kb3 Ke3! 11.e5 Kxf3 12.e6 Kg2 13.e7 f3 14.e8=Q f2

 白キングが離れすぎていて勝てない。この形は後のクイーン・エンディングの章で出てくる。

 次は黒番の場合である。

(2)

1…Kf6!

 引き分けるために唯一の手である。もし黒キングがh列に行けば白は Kg3-f2-e2-d3 で勝てる。1…Kg6 ならば 2.Kh4 でこの手順に行き着く。本譜の手に対して 2.Kh4 なら 2…Kg6!、2.Kg3 なら 2…Kf7! で引き分けになる。

2.Kg2 Ke6

 2…Kf7 は 3.Kg3! で黒が手詰まりになる。例えば 3…Kf6 なら 4.Kf4、3…Kg6 なら 4.Kf2、そして 3…Ke6 なら 4.Kh4 である。しかし 2…Ke7 は可能である。

3.Kg3 Kf7!

 これで(1)の黒の2手目の局面と同じになった。

(この節続く)

2013年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(35)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 図34の局面を1段上に上げると白のビショップ列ポーンに対する逆襲が成功しないことは明らかである。しかし意外なことに1段下げた図35の局面は黒の手番だと黒が負ける。

 図35
ケレス、1932年

 白の手番では勝ちがない。1.Kg2 には 1…f3+、1.f3+ には 1…Kh4、1.Kh1 には 1…f3! 2.e3 Kg5、1.Kg1 には 1…f3! 2.e3 Kf5! で既に学んだ引き分けの局面になる。

 しかし図34の局面ではどちらの手番かは問題でなかったがこの局面はそうではない。驚いたことに黒の手番だと次の手順のように手詰まりに陥り負けてしまう。

1…Kf5

 1…Kg5 はこれまで同様 2.Kh3 Kh5 3.Kg2 Kg4 4.Kf1 Kf5 5.Ke1 Ke5 6.Kd2 Kd4 7.f3 で黒が負ける。また 1…f3 も 2.e3 Kh4 3.Kg1 Kg4 4.Kf1 Kf5 5.Ke1 Ke4 6.Kd2 で白の勝ちになる。

2.Kg2 Kf6! 3.Kf1 Ke5 4.Ke1 Kd4 5.Kd2 Kc4

 5…Ke4 は 6.Kc3 Kd5 7.Kd3 Ke5 8.e4! で白が勝つ。ここまでは図34の分析と同様である。しかしここで二つの局面の間には決定的な違いがある。それは白のeポーンが2枡進めるということである。

6.e4! Kd4

 6…fxe3e.p. は 7.Kxe3 Kd5 8.Kf4 で白が勝つ。

7.f3 Kc4

 白キングをd3に来させるわけにはいかない。

8.Ke2 Kd4 9.Kf2 Ke5 10.Kf1!

 図26で見た様子見の手である。手詰まりに陥った黒は白キングがd3あるいはh3から侵入して来るのを防ぐことができない。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(36)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 図33の局面に戻って、ポーンを1列右に移動しキングをポーンの左側に持ってくると図36になる。

 図36

 白キングはポーンの正しい側に位置し、対向ポーンのない自分のポーンの隣にいる。だから勝ちは易しい。白の手番ならば

1.g5 Kd6 2.f5

または

1.g5 Kf7 2.Kd5 Ke7 3.Ke5

で白が勝つ。黒の手番ならば

1…Kd6 2.Kd4!

 2.f5 は誤りで 2…Ke7! で引き分けになる。2.g5 も同じく 2…Ke6 で引き分けになる。

2…Ke6 3.Kc5 g5

 他の手では白キングが侵入してくる。

4.f5+ Ke5 5.Kc6

 これで白が勝つ。

 図36の局面を上または下に移動しても結果は変わらない。白ポーンがf2とg2の場合でもそうである。黒は次の手順ならもちろん引き分けにできる。

1…Kd4 2.Kd2? Ke4 3.Kc3 g3! 4.f3+ Ke3

 この手で白のgポーンに逆襲する。しかしこれは白が2手目を間違えたからであり、

2.f4!

 なら白が勝つ。この局面を1列右に移動した局面は引き分けになるがこれは後で検討する。

(この節続く)

2013年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(37)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 図33の局面で白ポーンがルーク列にある場合がまだ残っている。これは明らかに黒の引き分けの可能性が増す。しかし一般原則を挙げるのは難しいので個別に考えることが必要である。まず黒ポーンがナイト列にあり白キングが自分のポーンの前にまだ来れない局面を考える。図37を基本図とする。

 図37

 黒は簡単に引き分けにできる。黒番なら 1…g6+! でたちまち引き分けの形である。白番なら次のように進む。

1.Ke5 Ke7 2.Kd5 Kf7

 2…Kd7? は 3.h6 で白が勝つ。

3.Kd6 Kf8

 ここは 3…Ke8 4.Ke6 Kf8 5.Kd7 Kf7 でも良い。

4.Ke6 Ke8

 この手は絶対手である。4…Kg8 は 5.Ke7 Kh8 6.Kf7 Kh7 7.h6 gxh6 8.g6+ で白が勝つ。つまり黒は白がポーンを g6 に進める前に隅に追い込まれてはいけないということである。

5.Kf5 Kf7

 最初の局面に戻ってしまった。

6.g6+ Kg8

 黒はキングがg8とh8を往復するだけで簡単に引き分けにできる。

 図37の局面を1列下に下げても結果は変わらない。白はキングが自分のポーンの前に行けた場合にだけ勝ちの可能性が生まれる。例えば図37で黒キングをh7に移動した局面はどちらの手番でも白が勝つ。白の手番ならば 1.Ke6 Kg8 2.Ke7 Kh7 3.Kf7 Kh8 4.Kg6 ただし 4.h6? はだめで 4…Kh7! で引き分けになる。4…Kg8 5.h6 gxh6 6.Kxh6 で白が勝つ。黒の手番ならば 1…Kg8 1…Kh8 は 2.Kg6 Kg8 3.h6 で前の変化と同じ。1…g6+ は 2.Kf6 gxh6 3.Kf7 で白の勝ち。2.Kg6 Kh8 3.Kf7 3.h6? は誤りで 3…Kg8! で引き分け。3…Kh7 4.h6 gxh6 5.g6+ で白が勝つ。

(この節続く)a>

2013年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(38)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 白のポーンがもっと後ろにあり白キングが自分のポーンの前にいる余地がある時は黒のポーンがナイト列にあっても引き分けの可能性は非常に少なくなる。その例が図38である。

 図38

 どちらの手番であっても白が楽に勝つ。

1.Kf5

 黒の手番ならば 1…Kf8 2.Kg6 Kg8 3.h5 Kh8 4.h6 Kg8 5.g5 と進んで白が勝つ。

1…g6+

 他の手ではこれまで見てきたように白キングがg6の地点を占めて白が勝つ。

2.Ke5

 2.Kg5? は間違いで 2…Kg7 3.Kf4 Kf6 で引き分けになる。

2…Ke7 3.g5 Kf7 4.Kd6 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(39)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 黒のポーンがナイト列でなくルーク列にある場合は引き分けの可能性がはるかに大きくなる。図39がその基本図である。

 図39

 白は手番の場合だけ勝てる。黒の手番の場合は次のように引き分けになる。1…Kf4 2.Ke2 Ke4 3.Kd2 Kd4(この局面なら 3…h3 4.g3 Kf3 でも良いが、白のポーンがもっと上にある場合は駄目である)4.Ke2(4.Kc2 なら 4…Ke3)Ke4 5.h3 Kf4 6.Kf2 Ke4 で白はこれ以上どうしようもない。

1.Ke3 h3

 良くないのは 1…Kf5(1…Kg5 も 2.h3 Kf5 3.Kf3 で白の勝ち)で 2.Kf3 Kg5 3.Ke4! Kg4 4.h3+!(4.Ke5? は 4…h3 5.g3 Kf3 でだめである)Kg3 5.Kf5 Kxg2 6.Kg4 で白が勝つ。

2.g3 Kf5

 2…Kg5 なら 3.Kf3 Kf5 4.g4+ で白が勝つ。

3.Kd4!

 3.Kf3 は間違いで 3…Kg5 と応じられ 4.g4? なら 4…Kh4! で引き分けになる(5.Kf4 はステイルメイト)。本譜の手は見合いを取りに行く。

3…Kg5 4.Ke5 Kg4 5.Ke4 Kg5 6.Kf3!

 黒は手詰まりに陥っていて 6…Kf5 g4+ 又は 6…Kh5 7.Kf4 で負ける。

 図39の局面を1段または2段上に移動しても白先白勝ちと黒先引き分けは変わらない。しかし3段上に上げて白ポーンがg5とh5の枡に来るようにするとどちらの手番でも引き分けになる。黒の手番ならもちろん 1…Kf7 である。白の手番なら次のように黒をステイルメイトにしかできない。1.Ke6 h6 黒はキングを動かしても良い。2.g6 Kg8 3.Kf6 Kf8 4.g7+ Kg8 5.Kg6

(この節続く)

2013年06月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(40)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 ここまでで図39に類似した局面は黒の手番ならばすべて引き分けになることが分かった。それでは局面を少し変えた図40はどうなるのだろうか。

 図40

 白の手番ならばこれまで見てきたように引き分けにしかならない。しかし黒の手番ならば見合いのために白が勝つ。

1…Ke5

 1…Kg5 2.Ke4 は前に出てきた白勝ちの局面になる。1…h4 は 2.g4+ Ke5 3.Ke3 でもっと簡単に白が勝つ。

2.Ke3 Kf5 3.Kd4 h4

 これが黒の唯一の可能性である。他の手ではいずれ黒ポーンが落ちる。

4.g4+ Kf4 5.Kd5 Kg5

 5…Kg3 と逆襲するのは局面が1段下なら成立するのだがこの局面ではうまくいかない。だから図40の局面が1段下ならどちらの手番でも引き分けである。

6.Ke5 Kg6 7.Kf4 Kf6 g5+ で白が勝つ。

 図40の局面を1段上に上げても結果は変わらない。しかし2段上に上げると図39の局面を3段上に上げたのと同じようにどちらの手番でも引き分けになる。

(この節続く)

2013年06月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(41)

第2章 ポーン・エンディング

2.3 キング+2ポーン対キング+ポーン

 パスポーンのない連結ポーンの場合(続き)

b)せき止められたポーンがない時(続き)

 これまでの分析から黒は自分のポーンが原位置にある時最も引き分けの可能性が大きくなると結論付けることができる。この場合白キングが自分のポーンの前にいても黒は引き分けることができる。図41でそのことを説明する(図38で黒ポーンをナイト列からルーク列へ、そして黒キングをg7へ移した)。

 図41

(1)まず白の手番から始める。

1.Kf5

 1.h5 は 1…h6+ 2.Kf5 Kf7 で既知の引き分けになる。

1…Kf7 2.Ke5

 2.g5 は 2…Ke7(又は 2…Kg7)3.h5 Kf7 で引き分けになる。

2…Ke7 3.g5 Kf7

 この後白はどうすることもできない。図41の局面を1段下げても白の手番ならば引き分けである。

(2)次は黒の手番の場合である。

1…Kf7

 最も普通の受け方であるが 1…Kh8 や 1…Kf8 でもかまわない。黒は白ポーンの前進を気にする必要はないのである。キングの動きのうちで 1…Kg8? だけが誤りで 2.Kh6 Kh8 3.g5 Kg8 4.h5 Kh8 5.g6 hxg6 6.hxg6 で白が勝つ。すなわち黒は常に Kh6 に対して …Kg8 と応じられるようにしなければならない。1…h6+? も間違いで 2.Kf5 Kf7 3.h5 で白が勝つ。

2.Kh6

 2.Kf5 は 2…Ke7 3.Ke5 Kf7 4.Kd6 Kf6 で良くない。この手順中 4.h5 に対しては 4…Ke7 である。最初に黒が 1…Kh8 と指していたら白はここで 2.Kf6 と指すだろうがそれでも 2…Kg8 3.g5 Kf8!(3…Kh8? は 4.Kf7! でだめである)4.h5 Kg8 でやはり引き分けである。

2…Kg8 3.g5 Kh8 4.h5 Kg8 5.g6 hxg6 6.hxg6 Kh8 で引き分けである。

 図41の局面をもっと下に下げると黒の手番でも引き分けにできない。例えば白ポーンがg2とh2、キングがg3、黒ポーンがh5、キングがg5とする。1…Kf5 1…h4+ は 2.Kf3 Kf5 3.h3 で、この手順中 2…h3 なら 3.g3 Kf5 4.g4+ で白が勝つ。2.Kf3 Ke5 3.g3 Kf5 4.h3 で図40と同じになり黒が負ける。

 以上で2ポーン対1ポーンの最も重要な局面の体系的な分析を終わる。読者はこの種のエンディングの総合的な概要が理解できたものと思う。もちろん他にももっと多くの興味深く参考になる例がある。しかし本書の範囲を超えるので省略せざるを得なかった。興味を持たれた読者はエンディングの専門書を参照されたい。

(この節終わり)

2013年06月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(42)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 この種のエンディングは通常は簡単な白の勝ちなので少し注釈が必要である。それはぜひ知っておかなければならない例外が少しあるからである。例えば2個またはそれ以上のポーンがルーク列にある場合は勝ちがない。黒が有利な状態で1個のポーンを取ることができる場合も引き分けになる。

 これまでの分析から5段目と6段目に二重ポーンがある場合も白が勝てないことが分かる。例えば図42の場合黒の手番でも次のように引き分けである。

 図42

1…Kc8! 2.Kd6 Kd8 3.c7+ 他の手では黒キングがc7に戻る。3…Kc8 これで 4.c6 でも 4.Kc6 でもステイルメイトになる。

(この節続く)

2013年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

[復刻版]実戦に役立つエンディング(43)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 図43では面白い形の引き分けが見られる。

 図43

 一見絶望的な状況だが黒の手番ならば引き分けにできる。1…Kg7 2.Ke6 Kf8 ここで 3.h6 でも 3.Kf6 でもステイルメイトになる。fポーンを取らせてhポーンだけ残しても勝てない。

(この節続く)

2013年06月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

[復刻版]実戦に役立つエンディング(44)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング

 最後に図44は特別な引き分けの局面である。

 図44

 白番では 1.Kh8 Kf8 2.h7 Kf7 でステイルメイトになる。

(この節終わり)

2013年06月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: [復刻版]実戦に役立つエンディング

[復刻版]実戦に役立つエンディング(45)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 ポーンの数が同じ時は通常は引き分けになるのでこの種のエンディングに特定の原則を挙げることはできない。しかし駒の損得以外に駒の配置が結果に重大な影響を及ぼしている場合がある。それを陣形の優位と呼ぼう。最も重要で簡単な例のいくつかをこれから紹介していく。もちろんこのような局面の特徴はもっと複雑なエンディングにも見られるが、そのようなエンディングは本書の範囲を超えるので扱わない。

 パスポーンの生成

 これはポーンが相手の防御線を強行突破することによって成される。この強行突破は普通は両方のキングが盤の別の所にいてそのためパスポーンの阻止や支援ができない時に起こる。ポーンの強行突破は通常は一つのポーンを捨てることを伴う。そのため敵味方の両方にパスポーンができる。だから仕掛ける側は敵のポーンが自分のポーンよりも危険な存在にならないように正確に読んでおかなければならない。図45を考えてみよう。

 図45

 白キングを近づけるという通常の原則に従っても何もならない。1.Ke4 Ke6 で引き分けが避けられない。しかし白は一つのポーンを捨てることによって勝つことができる。

1.c5!

 このような突き捨てを決行する時には以下のことを読んでおかなければならない。一番目は 1…bxc5 2.a5 の後黒キングが白のパスポーンを止められないということである。二番目は新たにできた黒のパスポーンを白が止めることができることである。三番目はポーン捨てを拒否しても得にならないことである。

1…b5

 黒の手として三番目を選んだ。最初の二つは大丈夫である。1…bxc5 2.a5 でこのaポーンは黒に捕まらない。2…c4 3.a6 c3 4.Ke3 で白は黒のcポーンを止めることができる。もし黒がポーンを取らずに 1…Ke6 と指せば 2.cxb6 Kd7 3.a5 で白の勝ちは簡単である。

2.a5!

 2.axb5 は間違いで 2…cxb5 3.c6 Ke6 で引き分けになる。本譜の手の後黒はbポーンがパスポーンになるが白キングが十分近くにいる。

2…b4 3.Ke4 b3 4.Kd3 で白が勝つ。

 黒は白のaポーンのクイーン昇格を防ぐことができない。

(この節続く)

2013年06月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(46)

第2章 ポーン・エンディング

2.4 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 遠方パスポーン

 ポーン・エンディングにおいて遠方パスポーンは最もありふれていて重要な陣容上の優位の一つである。「遠方」とは主戦場からポーンが離れていることを意味している。そのようなポーンの主要な利点は敵キングをおびき寄せ、攻撃側のキングが他の場所で自由に活動できるところにある。遠方パスポーンは大変強いので相手のポーン得なども上回ることがよくある。

 図46

 パスポーンがなければ黒キングにc4又はe4から侵入されて白が負けるところであるが、パスポーンのおかげで結果が逆転する。

1.f5

 このポーンは取られてしまう運命であるが黒キングを主戦場(bポーン)から遠ざけ白が速やかに勝つ。

1…Ke5 2.f6 Kxf6 3.Kxd4 Ke6 4.Kc5 Kd7 5.Kxb5 Kc7 6.Ka6 で白が勝つ。

 この例からパスポーンは主戦場から遠い所にあるほど価値が高くなることが明らかである。例えば白のパスポーンがf4でなくh4にあればa6にも黒のポーンがあったとしても白が勝つ。読者はこれを自分で確かめられたい。

(この節続く)

2013年06月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(47)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン

 パスポーンが別のポーンによって守られている時非常に強い武器になり、敵の遠方パスポーンよりも強力である(もちろんこの遠方パスポーンがクイーンになれない場合)。保護パスポーンの強みは敵キングの動きを制限し、それと共に自分のキングが自由に動けることにある。図47がこれらの特長を良く表している。

 図47

 白のb5の保護パスポーンは黒のh筋のポーンよりも強力である。白は次の手順で勝つ。

1…h5 2.Kd3 Kd5

 黒は白キングに自分のhポーンを取られないようにしようとする。

3.Ke3 Ke5 4.Kf3 Kd5
 黒キングは白のbポーンがクイーンに昇格しないようにこれ以上遠くに行けない。

5.Kg3 で白が勝つ。

 白は黒のhポーンを取ってからクイーン翼に戻ってくる。この間黒キングはただ指をくわえて見ているしかない。

(この節続く)

2013年06月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(49)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン(続き)

 この種のエンディングの場合白は必ず保護しているポーンを黒が攻撃することによって引き分けにならないように確認しておかなければならない。このようなことを防ぐためには保護されているポーンは少なくとも4段目にいなければならない。例えば図48では保護されているポーンが3段目にいるので白は勝てない。

 図48

1.Ke3 Kc3 2.Kxf3 Kb2 3.b4 Kxa2 4.b5 Kb2 5.b6 a2 で引き分けである。

(この節続く)

2013年06月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(49)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン(続き)

 しかし4段目の保護パスポーンでも逆襲を防ぐのに必ずしも十分でないことがある。

 図49

 白は次のように進めても勝てない。1.Kf4 h5 2.Kg5 Ke4 3.Kxh5 3.b5 は Kd5 4.Kxh5 Kc5 で引き分け。3…Kd3! 4.b5 Kxc3 5.b6 Kd2 6.b7 c3 7.b8=Q c2

 やはりビショップ筋のポーンの特殊性により理論的引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(50)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 保護パスポーン(続き)

 最後に受け側は保護している敵のポーンを味方のポーンで攻撃することにより引き分けにできる場合があることを指摘しておく。例えば図50では次のようにして黒が引き分けにできる。

 図50

1.Ke4 f3 2.Kxf3 b5 3.axb5 Kxd5

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(51)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 敵ポーンのせき止め

 たった1個のポーンが2個または3個以上のポーンをせき止める(つまり動けなくする)ことができる局面も良く現れる。これも明らかに有利な点となる。次の例で見てみよう。

 図51

 白の遠方パスポーンは有利な点である。しかし白キングが黒のポーンから遠く離れ過ぎているのでこれだけでは勝つのに不十分である。黒の手番ならば次のように簡単に引き分けにできる。1…c5 2.Ke3 c4 3.Kd4 Kxf4 4.Kc5 Ke4 5.Kxb5 Kd3 しかし白はまず黒のポーンをせき止めることができる。これは余分のポーンがあるようなものである。

1.b4! c5

 これは唯一考えられる反撃である。1…Ke6 は 2.Ke4 Kd6 3.Kd4 の後白のfポーンが進んで来て黒は手の施しようがない。

2.bxc5 b4

 2…Ke6 は 3.Ke4 b4 4.f5+ で白が勝つ。

3.c6

 白は正確に指さなければならない。一見 3.Ke3 の方が簡単に見えるがこれは次のように勝ちを逃がしてしまう。3…b3 4.Kd3 b2 5.Kc2 Ke6! これで黒は白のどちらかのポーンを取って引き分けにできる。読者は自分で確かめられたい。

3…Ke6

 3…b3 は 4.c7 で白ポーンがチェックでクイーンに昇格する。

4.f5+!

 白のポーンは十分先まで進んでいるのでキングの助けなしに勝つことができる。

4…Kd6 6.f6 b3 7.f7 Ke7 7.c7 で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(52)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 その他

 これまでに挙げた優位の他にもポーン・エンディングで役立つ色々な要因がある。例えば好位置のキング、深く前進したポーン、二重ポーンに対する連結ポーン等である。これらの要因を個別に全部調べるのは大変である。そこでここでは二つの例を紹介するに留めておく。まず図52から始める。

 図52
ベーティング、1900年

 ちょっと見たところではそれぞれに連結パスポーンがあるが両方のキングがそれらを止めることができるので形勢は互角のように思われる。また相手のポーンをクイーンへ昇格させずに自分のポーンをさらに前進させることもできないように見える。

 しかしこれらの事実にもかかわらず白には決定的に有利な点がある。それは白のポーンの方がクイーンへの昇格枡に近いので黒キングの動きを完全に制限しているということである。これはつまり黒キングが手詰まりで動けなくなれば自分のポーンに不利な動きをさせなければならなくなるということである。図52の時点で白の手番でなかったら黒は既に手詰まりに陥っていてすぐに負けの形になることも明らかにしておく。

 まず図52で黒の手番としてどんな手があるかを少し考えてみる。1…Ke8 とキングが動くと 2.Ke5 と進まれ 3.Ke6 からの詰みを防げばdポーンが取られてしまうのでだめである。1…d3 は 2.Ke3 でたちまちこのdポーンを取られてしまうので、残るはcポーンを動かす手だけである。

 以降の正解手順の中で出てくるが 1…c5 なら 2.Ke4 で黒は既に手詰まりの状態である。1…c6 も 2.Kf3 Ke8(2…c5 なら 3.Ke4)4.Ke4 c5 5.Kd5 で、同様に正解手順に現れる勝ちの局面に達する。

 図52で黒が手詰まりに陥っていることを明らかにしたところで課題はどのようにして黒を負けの変化に導くかである。それは以下のとおりである。

1.Kf3! c6

 この手は最も込み入った受けである。1…c5 2.Ke4 と 1…Ke8 2.Ke4 c5 3.Kd5 は本譜の手順と同じになる。

2.Kf4

 2.Ke4? は誤りで 2…c5 で白の方が手詰まりに陥り引き分けになってしまう。

2…c5 3.Ke4!

 ここにおいて黒は手詰まりに陥り白キングの進出を許すしかない。黒の次の手は必然である。

3…Ke8 4.Kd5 Kd7

 この手も絶対手である。4…d3 は 5.Ke6 で次の手で詰みになる。4…Kf7 は 5.Kd6 d3 6.Kd7 で白ポーンがチェックでクイーンに昇格する。

5.Kc4 Ke8 6.Kxc5! d3 7.Kd6 Kf7

 7…d2 は 8.Ke6 d1=Q 9.f7# で詰まされる。

8.Kd7 で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(53)

第2章 ポーン・エンディング

2.5 キング+2ポーン対キング+2ポーン

 その他(続き)

 キングが好位置にいると通常なら引き分けの局面を勝ちに変えることができる場合がある。その例が図53である。

 図53
サルビオリ、1887年

 この局面は完全に対称で白に何か有利な所があるとはとても考えられない。しかし白に先手があることが白キングに有利な態勢をもたらし以下のように勝ちにつながる。

1.Kf3

 白キングはe4の地点を目指しているので 1.Ke3 でも良い。黒の手番なら同様の手順で勝つ。

1…Kf6

 1…Ke6 は本譜と同じになる。また 1…e5 は 2.Ke4 Ke6 3.e3 で白が勝つ。最後に 1…e6 は 2.Ke4 Kf6 3.e3 Kf7 4.Ke5 Ke7 5.e4 で同様に白の勝ちとなる。

2.Ke4 Ke6 3.e3

 黒を手詰まりに追い込んで白キングの侵入口を開けさせる。

3…Kf6 4.Kd5 Kf7

 4…e6+ 5.Kd6 Kf7 6.e4 も同じ形になる。

5.Ke5 e6 6.Kd6 Kf6 7.e4 で白の勝ち。

 黒はeポーンが取られるのを避けることができない。

(この節終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(54)

第2章 ポーン・エンディング

2.6 多数ポーンのエンディング

 一方に2個より多くのポーンがある場合はまだ調べていなかった。この型のエンディングは我々がこれまで扱ってきた純粋に理論的なエンディングには属しておらず、もっと実戦的な側面を持っている。だからここではごく少数の局面に的を絞りこれまで扱われて来なかった特徴的な局面を採り上げることにする。

 まず盤の片側で一方がより多くのポーンを持っていて実戦的に知っておく価値のある局面を考えよう。

 図54
ロッリ、1763年

 白の3対2のポーンの優位が以前に詳しく調べた2対1の優位よりもずっと簡単であることを示す。

(1)まず白の手番の場合から始める。

1.g6

 この手が最も簡明である。1.Kd5 でも白が勝つ。しかし 1.h6 gxh6 2.gxh6 Kf7 と 1.f6+? gxf6+ 2.gxf6+ Kf7 3.Kf5 Ke8(又は g8)4.Ke6 Kf8 は引き分けになる。

1…h6

 1…hxg6 は 2…hxg6 で簡単な白の勝ちとなる。

2.Kd5

 ここでも 2.f6+? は 2…gxf6+ 3.Kf5 Kf8 で引き分けになるので避けなければならない。

2…Kf6 3.Ke4

 ここは 3.Kd6 Kxf5 4.Ke7 から 5.Kf7 でも白の勝ちとなる。

3…Ke7 4.Ke5 Kf8 5.Ke6 Ke8 6.Kd6

 6.f6? は不注意で 6…Kf8 で引き分けになってしまう。

6…Kf8 7.Kd7 Kg8 8.Ke7 Kh8 9.f6 gxf6 10.Kf7 で白が勝つ。

(2)次は黒の手番の場合である。

1…Kf7

 ポーンを動かす手はもっと早く負けてしまう。例えば 1…h6 2.g6(又は 2.gxh6 gxh6 3.f6+ で白の勝ち。この手順中 2.f6+? は誤りで 2…Kf7 で引き分け)で(1)と同様になる。1…g6 も 2.hxg6 hxg6 3.fxg6 Ke8 4.Ke6 で白の勝ち。

2.g6+

 2.Kd6 でも白が勝つ。

2…Kg8 3.Ke6 Kh8

 3…hxg6 は(1)と同じになる。

4.Kf7 hxg6 5.h6 gxh6 6.fxg6 あと3手で詰む。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(55)

第2章 ポーン・エンディング

2.6 多数ポーンのエンディング

 図55では創作問題のような決め手が見られる。それは実戦でも現われ易いので誰もが完全に覚えておかなければならないものである。ここでのポーンの強行突破は図45よりも巧妙である。

 図55

 黒キングはクイーン翼に移動することを狙っている。そうなれば白は引き分けしか望めなくなる。一見すると何も手段がなさそうに見える。例えば 1.c6 ならば 1…bxc6 2.bxc6、1.b6 ならば 1…axb6 2.cxb6 cxb6 で何事もない。しかし見事な強行突破の手筋によりたちまち白の必勝形になる。

1.b6 cxb6

 1…axb6 ならば 2.c6 bxc6 3.a6 で白が勝つ。

2.a6 bxa6 3.c6 で白が勝つ。

 このような決定的な手筋を行使するときには当然全ての注意点を確認しておかなければならない。もし全てのポーンが1段下だったら黒は2ポーンの犠牲を受け入れてポーン得のまま自分のポーンをクイーンに昇格させることができるのでこの策戦そのものが無効になる。同様に黒キングがcポーンから十分遠くに離れていなければならない。そうでなければ黒キングが白ポーンの昇格を阻止することができる。例えば黒キングがg6でなくf6にいたとすると白の計略は 1.b6? cxb6 2.a6 bxa6 3.c6 Ke6 で失敗に終わる。要はこのような思い切った手筋を決行する時は全ての要因を確認しておかなければならないということである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(56)

第2章 ポーン・エンディング

2.6 多数ポーンのエンディング

 最後に読者のために図56のようなエンディングを採り上げて実戦に役立つアドバイスをしておこう。

 図56

 引き分けに終わることがすぐに想像される。白には遠方パスポーンがあるがこれはほとんど意味がない。それは白キングは黒のポーンから遠く離れているので黒は自分のポーンを進めて白のaポーンを盤上から消すことができるからである。黒は引き分けに持ち込むためにどちらのポーンを先に進めたら良いのだろうか。

 どちらのポーンを先に進めても構わないように思われる。しかしポーンのせき止めについて以前に述べたことを思い起こせばポーンの進め方の正しい順序の重要性に気が付くであろう。良い一般的な原則は敵の対向ポーンがないポーンを先に進めるということである。この局面ではそれはbポーンである。失敗例としてaポーンを先に進めるのが誤りで黒の負けにつながることも述べよう。

 まず正しい手順は 1…b5! である。2.g6+ 2.Ke5 は 2…Kg6 3.Kd5 Kxg5 4.Kc5 Kf5 5.Kxb5 Ke6 6.Ka6 Kd7 7.Kxa7 Kc7 で引き分けになる。2…Kg7 3.Kg5 a5 4.Kf5 b4 で、白は 5.Ke4 a4 6.Kd4 b3 7.axb3 axb3 8.Kc3 で引き分けにしなければならない。

 それでは黒が 1…b5!(又は手待ちの 1…Kg7)でなく誤った 1…a5? の方を選択したらどうなるかを見てみよう。

1…a5

 この手は敗着となる。それは白が黒の両方のポーンを止めることができて実質的にポーン得となるからである。黒はポーンが自陣の4段目にあることを利用してbポーンを捨てaポーンをクイーンに昇格させることができる。しかしこの局面ではそれもうまく行かない。

2.a4! b5

 黒は手待ちすることができない。2…b6 は 3.g6+ Kg7 4.Kg5 b5(4…Kg8 は 5.Kf6 Kf8 6.g7+ Kg8 7.Kg6 で白がもっと早く勝つ)5.axb5 a4 6.b5 a3 7.b7 a2 8.b8=Q の後 9.Qc7+ から2手で詰みになる。

3.axb5 a4 4.g6+! Kg7

 4…Ke7 は 5.g7 Kf7 6.g8=Q+ Kxg8 7.b6 でクイーンに昇格する手がチェックになる。この成り捨ての手筋は覚えておくと良い。

5.b6 a3 6.b7 a2 7.b8=Q a1=Q 8.Qc7+ であと2手で詰みになる。

(この節終わり)

2013年06月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(57)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例

 これまではポーン・エンディングの最も基本的なものを見てきた。これらは完全に習得しておかなければならないものである。本節ではこれまでの原則がどのようにもっと難しいエンディングに応用されるかを学んでいく。

 図57 黒の手番
シュトルツ対ニムゾビッチ、1928年

 この局面をちょっと見ただけでは白の方が有利なように思われる。クイーン翼には強力な連結パスポーンがある。白キングは黒のdポーンの前進を止めている。そしてgポーンは黒のキング翼ポーンを抑えている。何も問題はなさそうである。しかし詳しく見てみると黒の優位も明らかになってくる。黒はfポーンを突くことによってg列とd列にパスポーンを作り出すことができる。白キングはこれらを止めることができない。これに反し白のクイーン翼ポーンはまだ十分前進していないのでそれほど脅威とはなっていない。だから白黒双方に強みがある。そこで我々はどちらの方が勝っているのかを判断しなければならない。こういう場合に良くあることだが先手を握っている方に決定的な優位がある。ニムゾビッチはそれを以下のような素晴らしい手順で示してくれる。

1…f4!

 明らかに黒は一手も無駄にできない。白の手番ならば次の手順で勝つ。1.Kd3! 1.b6 は 1…Kd6 2.Kd3 f4 3.Kxd4 f3! で引き分けになる。1…f4 2.gxf4+ Kd5 2…Kxf4 は 3.b6 でクイーンに昇格する手がチェックになる。3.b6 g3 4.b7 g2 5.b8=Q g1=Q 6.Qe5+ で白はdポーンを取りこのクイーン+2ポーン・エンディングに勝つ。

2.gxf4+

 白が黒のポーン捨てを拒否して 2.b6 又は 2.a5 と指しても 2…Kd6! で本譜と同様の展開になる。

2…Kd6!

 黒はfポーンを取り返してはいけない。そうすると白のbポーンがクイーンに昇格した時にチェックになる。黒キングの大切な役割は白のクイーン翼ポーンを止めることである。ただし黒は 2…Kd5 でも良い。3.a5 Kc5 4.a6 Kb6、この手順中 4.b6 なら 4…Kc6 としておけば、白キングは黒のポーンを止めることができない。(訳注 2…Kd5 の変化は 5.f5 で同時にクイーンができ引き分けになるようです。)

3.a5 g3 4.a6 Kc7!

 ここまで来れば全てが明らかとなる。白のポーンは止められ、黒のポーンはどちらかがクイーンになる。

2.Ke2 d3+

 2…g2 6.Kf2 d3 でも良い。

6.Kxd3 g2 7.Ke4 g1=Q

 まもなくシュトルツは投了した。(訳注 8.Kf5 Qb6 9.Kg5 Kd7 61.f5 Ke7 で投了となりました。)

 この非常にためになる例はポーンの強行突破の複雑さと全ての変化を正確に読む大切さを教えてくれる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(58)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例(続き)

 次の例は世界最高峰のグランドマスター同士の試合からでやはり絶妙の手順が現れる。

 図58 黒の手番
フロール対カパブランカ、1935年

 二重ポーンのせいで黒のポーンの形がひどく悪いので、白が陣形的に非常に優位に立っていることはすぐに分かる。もし白キングがf4の地点に行ければ黒はいずれポーンを失いそれと共に負けになってしまう。f4の地点を占めるためには白キングは先ずf3の地点を占めなければならない。そうなればhポーンに遊び手があるので白キングが必ずf4に到達できる。黒はこの筋書きに対してどのような対応策があるだろうか。

 もし黒が手をこまぬいていれば白は上の手順を実行して楽に勝ってしまう。黒の唯一の対策は機を見てポーンを …h4 と突くことである。そして gxh4 に対して …f4 と突ければ盤上から白のeポーンを排除できる。しかしこれは白キングがe2、黒キングがe5にいる時には成功しない。それは白がhポーンを取り黒が …f4 と突いた時に 2.h5 Kf5 3.exf4 で全てのポーンが保持され白の必勝形になるからである。黒が引き分けるためには白のeポーンをチェックで取ることができなければならない。即ち白キングはd2又はf2の枡にいなければならない。言い換えると白キングがe2、黒キングがe4にいる時白の手番ならばキングをd2又はf2に動かさなければならず、…h4! で引き分けになる。逆に同じ局面で黒の手番ならば白の勝ちとなる。なぜなら …h4 が成立しないので白キングが必勝のf3の地点を占めるからである。

 黒は明らかに受けに細心の注意を要求されている。カパブランカがこの問題の局面でどのように対処したかおおいに興味をそそられる。

(1)

1…Ke5!

 局面の機微を完全に理解していることがうかがえる。1…Kd5? と明白に見合いを取るのは以下のような巧妙な手順で負ける。2.Kd2 Ke5 2…Ke4 は 3.Ke2 で黒が手詰まりに陥る。2…h4 は 3.gxh4 f4 4.exf4 Ke4 5.h5 で白の勝ちである。これが黒キングがe5にいなければならない理由である。3.Ke1! Kd5 4.Kf2 Ke4 白キングがf3に行くのを阻止するために絶対である。5.Ke2 Kd5 5…h4 は 6.gxh4 f4 7.h5 Kf5 8.exf4 で白の勝ちである。6.Kf3 Ke5 7.h3 Kd5 8.Kf4 Ke6 9.h4 これで黒の先頭のポーンが落ちて白が勝つ。

 意外なことに黒には別の受けの手段がある。それはキングをg5に持って行き同様にf4の地点を守りながら …h4 を狙うものである。この手については(2)で分析する。

2.Ke2

 先に触れたように 2.Kd2 は 2…h4! 3.gxh4 f4! 4.h5 fxe3+ 5.Kxe3 Kf5 で引き分けとなる。

2…Ke4!

 黒は目標を達成し白は手詰まりに陥っている。白キングが動けば …h4 が可能になるので、白はhポーンを動かして貴重な遊び手を使わなければならない。

3.h3 Kd5

 3…Ke5? は間違いで 4.Kf3 で白が勝つ。

4.Kf3 Ke5

 ここで両対局者は引き分けに合意した。5.h4 Kd5 6.Kf4 Ke6 の後白には重要なhポーンの遊び手がない。

(2)

1…Kf7!

 この手でも引き分けになるが(1)と比べるとかなり際どい。黒キングはちょうどg5の地点に間に合う。

2.Ke2

 キングが他の枡に動いても良くならない。例えば 2.Kd4 は 2…Ke6 3.Kc3 Kf7 4.Kd3 Kg6!(4…Ke6 はだめで 5.Ke2 から 6.Kf3 とされる)5.Kd4 Kg5 6.Kd5 Kg4 7.Ke6 Kh3 で引き分けになる。

2…Kg6 3.Kf2 Kh6!

 黒キングは白キングがf3の地点に来るまではg5の地点に来てはならない。例えば 3…Kg5? 4.Kf3 h4 5.gxh4+ Kxh4 6.Kf4 Kh3 で白の勝ちとなる。

4.Kf3 Kg5 h3

 5.h4+ は 5…Kh6 6.Kf4 kg6 7.e4 fxe4 8.Kxe4 Kf7 9.Kf5 Kg7 10.Ke6 Kg6 11.Ke7 Kg7 で引き分けになる。本譜の手は 5…Kh6 ならば 6.Kf4 kg6 7.h4! で白が勝つので黒が危うそうに見える。しかし黒には好手がある。

5…h4! Kg2

 6.gxh4+ なら 6…Kxh4 7.Kf4 Kxh3(ここが要点)8.Kxf5 Kg3 9.Kxf6 Kf3 で引き分けになる。

6…Kh5

 ここは 6…hxg3 7.Kxg3 f4+ 8.exf4+ Kh5 でも引き分けになる。

7.Kf2 hxg3+ 8.Kxg3 Kg5 9.h4+ Kh5 10.Kh3 f4 11.exf4 f5

 局面は明らかに引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(59)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例(続き)

 次の例は図13に現れたような巧みなキングの動きが見られる。

 図59 白の手番
ラスカー対タラシュ、1914年

 タラシュは白が投了してもおかしくないとの想定でこの局面に持ち込んだ。実際黒はキングの助けがなくてもクイーン翼で勝つことができる。その手順は 1…c4 2.bxc4 bxc4 の後 3…a4 から 4…c3 である。これに対して白キングは成すすべがなく、hポーンも容易に止められてしまうように見える。しかしタラシュの夢想だにしない手順で世界チャンピオンは引き分けを実現した。

1.h4 Kg4 2.Kg6!

 これが核心の手である。タラシュは 2.Kf6 しか読んでいなかった。それは 2…c4 3.bxc4 bxc4 4.Ke5 c3! 5.bxc3 a4 でこのポーンが止まらない。ラスカーの手は 3.h5 を見せて黒にこのポーンを取らせることによって貴重な一手を稼いでいる。これにより白キングは自分のポーンがじゃまになる黒枡の斜筋 (a1-h8) の代わりに白枡の斜筋 (b1-h7) をたどることができる。すぐに分かるようにこれは天と地ほどの違いがある。

2…Kxh4 3.Kf5 Kg3

 多分ここらあたりでタラシュは勝利の夢から目覚めたことだろう。もし彼が当初の予定どおりに手を進めたら以下のように負けてしまう。3…c4 4.bxc4 bxc4 5.Ke4 c3 6.bxc3 a4?(6…Kg5 7.Kd5 Kf6 ならまだ引き分けにできる)7.Kd3! 白キングはc3のポーンによって邪魔されずにb2に到達できる。

4.Ke4 Kf2 5.Kd5 Ke3

 黒の方が負けないように指さなければならなくなった。

6.Kxc5 Kd3 7.Kxb5 Kc2 8.Kxa5 Kxb3 1/2-1/2

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(60)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例(続き)

 これまで見合いとその重要性、特に遠方見合いと対応枡については何回も採り上げてきた。しかしそれらの概念は実戦とはかけ離れたスタディの分野に属するものと思い込んでいる読者がいるかもしれない。1937年ケメリ国際大会での次の非常に面白い例はそのような思い込みを一掃するのに役立つだろう。

 図60 黒の手番
ベルグ対ペトロフ、1937年

 ここでもやはり見かけだけでは分からない。駒割りは互角でお互いのキングが相手のポーンの進攻を抑えているが勝つ可能性があるのは黒である。これは黒がすぐに保護パスポーンを作れるのに対し白はそうできないことによる。

 保護パスポーンの有利性は敵キングの動きを厳しく制限し味方のキングは自由に動き回れることにある。本局の場合白キングは常に黒のbポーンを監視していなくてはならない。これに反し黒キングは自由に白ポーンを攻撃できる。

 しかし勝ちの手順は決して黒にとって易しいものではない。これは白キングはbポーンを監視しながらe4まで行けること、そしてh4とg4の白ポーンは障壁となって …g5 と突かれても h5 で白にも保護パスポーンができるので崩される恐れがないことによる。試合はここで指し掛けになり両対局者は十分に研究する時間があったので試合を再開せずに白が投了した。これからその理由を探ってみよう。

1…a5!

 明らかに絶対の一手である。白に 2.a5 とされるとbポーンが孤立するのでその前に守らなければならない。この関係から先に 1…g5 と指す余裕はない。そう指せば 2.h5 と応じられ 3.a5 があるため 2…g4 と指す余裕がなく、白にも 3.g4 と保護パスポーンを作られてしまう。

2.g4

 黒の狙いは 2…g5 3.hxg5 Kg7、又はこの手順中 3.h5 g4 で、そうなれば図24で見たように簡単な勝ちになる。

2…Kg8 3.Kc2 Kf7 4.Kd3 Ke6

 容易に分かるように見合いが重要な役割を果たす。例えば白キングがd4、黒キングがd6にいて白の手番だとしたら黒キングはすぐにc5又はe5から侵入できる。後に示すように白のキング翼でのゆとり手は役に立たない。

 黒は直接見合いを取っても無駄である。それは黒キングがe6、d6、c6に行けば白キングはそれぞれe4、d4、c4に行けるからである。だから黒キングは遠方見合いを取らなければならない。黒キングがe7又はd7にいる時白キングの対応枡はそれぞれe3又はd3である。しかし黒キングがc7にいる時は白キングはc3に行けないので見合いを取れない。

 これで残るは白に不意の逆襲を許さずに構想を実行する手順を見つけることである。最も効率的な手順は 4…Ke7 5.Ke3 Kd7 6.Kd3 Kc7! であるが、この局面について色々な勘所を示すためにもっと長い手順を採用した。

(この項続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(61)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例(続き)

5.Ke4

 図61 黒の手番

 この局面は白と黒の双方に色々な手段の余地があるのでここを分析の出発点としよう。

 まず指摘しておきたいのは白が遠方見合いを取って 5.Ke2 と指して後の …Kc7 に対して Kc1 を可能にすると黒は 5…Kd5 6.Kd3 Kc5! でc5の地点に到達することができるということである。白キングはc3の地点に行けないので 7.Ke4(7.h5 Kd5)Kc4 8.Ke3 Kc3! で黒のbポーンがクイーンに昇格するので負けてしまう。

5…Kd6

 より早い勝ちは 5…Kd7 6.Kd3 6.h5 は 6…Ke7! 7.g5 Ke6! で手詰まりにより黒の勝ち。6…Kc7 であるが面白い落とし穴を紹介するために本譜の手を選んだ。

 重要な変化は 5…b3 6.Kd3 Ke5 7.Kc3 Kf4 だが 8.g5! が好手で 8…Kg4 9.Kxb3 Kxh4 10.Kc4 Kxg5 11.Kb5 Kf5 12.Kxa5 g5 13.Kb5 g4 で両方にクイーンができ引き分けになる。

6.Kd4 Kd7!

 黒は白キングが3段目に行くまではc7の地点に黒キングが行かないよう細心の注意を払わなければならない。これはもし白がポーンを動かせば自分のキングがe5の地点に駆けつけられるようにするためである。

 間違い易い誤りはすぐに 6…Kc7? で見合いを取る手である。しかし白は 7.h5! Kd6 8.g5 で引き分けにすることができる。白には h6 の狙いがあるので 8…Ke7 9.Ke3 Ke6 10.Ke4 と指さざるを得ず白は見合いを取り戻し黒の …Kf5 を防ぐことができる。

7.Kd3

 7.Ke4 Ke6 は黒に見合いを取らせてしまう。7.g5 Ke6 8.Ke4 g6 と 7.h5 Ke6 はすぐに負けになる。

7…Kc7!

 今こそ安全にこの手が指せる。例えば 8.h5 は 8…Kd6 9.g5 Ke5! で失敗に終わる。この手順中 9.Ke4 ならば 9…Ke7! 10.g5 Ke6! で良い。本譜の手の後白は見合いを譲らざるを得ない。

8.Ke4

 8.Kc4 Kc6 でも 8.Kd4 Kd6 でも状況は変わらない。また 8.h5 は 8…Kd6! 9.Ke4 Ke7! 10.g5 Ke6! で既に知っている手詰まりの局面になる。

 8.g58…Kd6! 8…Kd7? は誤りで 9.h5 で引き分けになる。9.Ke4 Ke7! ここでも 9…Ke6? は間違いで 10.h5 で引き分けになる。10.Ke3 Ke6! 10…Kf7 11.h5 と 10…g6 11.Kd3 は引き分けになる。11.Ke4 g6 でキングがf5の地点を占めることができるので黒が勝つ。

8…Kc6!

 斜めの見合いを得た。

9.Kd4

 9.g5 Kd6 10.Kd4 Ke6 11.Ke4 g6 でも 9.h5 Kd6 10.g5 Ke6 でも黒が勝つ。

 一般的な指針として白のポーンがg5とh5にある時に白が Ke4 と指したら黒は必ずキングをe6に置いて見合いを取らなければならない。

9…Kd6

 黒は目的を達成した。後は簡単である。

10.Ke4

 白がポーンを動かせば黒は 10…Ke6 で応える。

10…Kc5 11.h5

 このポーン突きを本譜の手として選んだ。白はもちろんもっと早くこの手を指すこともできた。11.Kd3 Kd5 12.Ke3 Ke5!(最も簡明)と 11.g5 Kd6 12.h5 Ke6 は本譜の手順に合流し、同様に形勢は絶望である。

11…Kd6

 11…Kc4 12.Ke3 Kd5 でも黒が勝つ。

12.g5 Ke6! 13.Kd4 Kf5 14.h6 gxh6 15.gxh6 Kg6

 黒はh6のポーンを取りその後は図24と同じ要領で勝ちになる。非常に面白く参考になる個所の多い例であった。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(62)

第2章 ポーン・エンディング

2.7 実戦例(続き)

 最後に見合いとポーンのゆとり手の重要性を示す局面を紹介する。

 図62 黒の手番
ランドビル対ケレス、1947年

 黒は1ポーンを得しているが白キングの好位置、白の中央の危険なパスポーン及び自身のh7ポーンの出遅れという困難を抱えている。しかしポーン得はポーン得であり、…h5 と突いて自分のgポーンを突き進めることに役立つかもしれない。このhポーンのもっと重要な利用は急所の局面でゆとり手(…h6)として用い見合いを得て勝ちにつなげることである。おいおい分かるが黒はこのゆとり手があることによりこのエンディングに勝てる。もしこのポーンがh6にあったら引き分けに終わっていたのである。

1…Kb5

 絶対手である。1…Kb6? は 2.Kc4 a5 3.a4 で 3…h6 と指すよりなく引き分けになる。

2.a4+

 このチェックは仕方がない。2.Kd3 は 2…c4+ 3.Kd4 c3! 4.Kxc3 Kc5 で黒が早く勝てる。本譜のポーン突きは取ると 3.d6 があるので黒は取ることができない。

2…Kb6 3.Kc4 a5!

 この手で黒は貴重なゆとり手の …h6 を使わずに以前みたことのある局面に到達した。

4.d6

 4.Kc3 は 4…Kc7 5.Kd3 Kd6 6.Kc4 h6 7.Kb5 Kxd5 8.Kxa5 Kc6! 9.Ka6 c4 で黒が勝つ。

4…Kc6 5.d7 Kxd7 6.Kxc5 Ke7

 白キングが幅を利かせているので黒は中央とクイーン翼では何もできない。しかし …h5 の後のh筋の白ポーンを止めることができるのでその強行突破を狙うことができる。例えば黒は 7.Kb5 を警戒する必要がない。それは 7…h5! 8.gxh5 g4 9.h6 Kf7 で黒が勝つ。これは即ち白キングは c1-c5-g5-g1 の正方形の区域から出られないということである。

7.Kd5 Kf7 8.Ke4

 黒の狙いの 8…h5 9.gxh5 Kg7 から 10…Kh6 を防ぐために白はキングをこの位置に持って来なければならない。それでもやってくれば 10.Kf3 Kh6 11.Kg4 で受かる。代わりに 8.Kd4 は 8…h5 9.gxh5 Kg7 10.Kd5 g4 11.Ke4 Kh6 12.Kf4 Kxh5 で黒が簡単に勝つ。

8…Kf8!

 この手が図26で見たのと同様の決め手である。白は手詰まりに陥っている。9.Kd4 は 9…h5! があるので白キングはe筋を離れられない。白キングが下がれば黒キングがd6に来るのでそれもできない。それでもどちらかを選ばなければならない。

9.Ke3 Ke7 10.Ke4 Kd6 11.Kd4 h6!

 黒キングがd筋で1段上に来たところで初めて黒はこの切札を行使する。黒は見合いを取ったのでキングがさらに前に進むことができる。明らかにこのゆとり手がなかったら1ポーン多くても黒は勝つことができなかった。

12.Ke4

 白はクイーン翼での逆襲が間に合わない。それは 12.Kc4 Ke5 13.Kb5 h5 14.gxh5 Kxf5 ですぐに黒の勝ちになる。

12…Kc5 13.Ke3 Kd5!

 13…Kb4 14.Kd4 Kxa4 15.Kd5 Kb3 16.Ke6 a4 でも黒の勝ちであるが本譜の手順の方が簡明である。

14.Kd3 Ke5 15.Ke3 h5! 16.gxh5 Kxf5 17.Kf3 Ke6

 この手も 17…g4+ 18.Kg3 Kg5 19.h6 より簡明である。

18.Kg4 Kf7 19.Kf5 Kg7 0-1

 この例を最後にポーン・エンディングの章を終わる。ポーン・エンディングの最も重要で基本的な局面の主要な原則を説明してきた。もちろんこの本では採り上げることのできなかった局面も数多くある。しかし既に述べたように本書の目的は全てを網羅することでなく役に立つ教材を提供することであった。読者が本書の内容を徹底的に理解すれば最も複雑なエンディングでも乗り越えられる知識を得ることができる。次はクイーン・エンディングの番である。

(この節・章終わり)

2013年06月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(63)

第3章 クイーン・エンディング

 本書でポーン・エンディングから始めたのはなんといってもそれが収局の基盤を成しているからであった。ここからは駒の力の強い方から順に個々のエンディングを調べて行く。まずはクイーンからである。

 クイーン・エンディングは配置が多様過ぎてポーン・エンディングのようには体系的に調べて行くのが難しい。例えばクイーンは通常は他の役駒1個または小駒2個には勝てるがルーク2個又はルーク1個と小駒1個とに対しては引き分けにしかならないことは周知のとおりである。そこでそのような局面を詳しく調べるのは省略することにする。

 我々にとって主に関心があるのはほとんど例外なく一般原則から勝ち又は引き分けが導けるような局面である。そしてそのようなエンディングの内最も実戦的な価値があるものをまず考えることにしよう。クイーン・エンディングの多岐に渡る局面を全て調べる紙幅もなければその必要性もない。

3.1 クイーン対ポーン

 これほどの兵力差があればクイーンが簡単に勝つのが当然なのだからわざわざこのエンディングを調べるのは無駄のように思われる。しかしポーンが7段目まで進むとことはそれほど簡単でなくなる。このような状況はこれまでの例でも発生したように実戦では良く起こるものである。だから読者はそのような局面での指し方をしっかり理解しておかなければならない。最初は図63からである。

 図63

 黒ポーンがいずれかの中央列の7段目にある時白は自分のキングがどんなに遠くにいても常に勝つ。例外は白駒が不都合な位置にいて黒ポーンのクイーン昇格を防ぐことができない場合である。(例えば白キングがe6、クイーンがd8、黒キングがe2、ポーンがd2にいる場合白キング自身がクイーンによるチェックの邪魔になって 1…d1=Q を止められない。)

 図63の局面から白は黒キングをポーンの前に追いやって白キングに近づく余裕を与えることによって勝つことができる。具体的な手順の例は次のとおりである。

1.Qb2 Ke1

 1…Ke3 なら 2.Qc2 である。

2.Qb4 Ke2 3.Qe4+ Kf2 4.Qd3 Ke1 5.Qe3+ Kd1

 白は目的を達成した。同様の手順を繰り返すことにより自分のキングをしだいに近づけることができる。

6.Kb7 Kc2 7.Qe2 Kc1 8.Qc4+ Kb2 9.Qd3 Kc1 10.Qc3+ Kd1

 黒キングはまた自分のポーンの前に立ちふさがらなければならず白は 11.Kc6 と指すことができる。以下は手順を示すまでもなく白が簡単に勝つことが確かめられるであろう。

(この節続く)

2013年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(64)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 ナイト列のポーンに対しても同様のやり方で良い。しかしルーク列のポーンとビショップ列のポーンの場合は状況が異なる。図64から考えてみよう。

 図64

 まず図63と同じやり方を試してみる。

1.Qg2+ Kb1 2.Qf1+ Kb2 3.Qb5+ Kc2 4.Qa4+ Kb2 5.Qb4+ Kc2 6.Qa3 Kb1 7.Qb3+ Ka1

 ここで決定的な違いが明らかになる。キングを動かすと黒がステイルメイトになるのでキングを近づける暇がない。詰み狙いの 8.Qc2 も同様にステイルメイトになってしまう。白は何も進展を図ることができないのでこの局面は引き分けである。

(この節続く)

2013年06月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(65)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 それでも白キングがある程度近くにいれば勝てる局面がある。もっと正確に言うと白キングは図64の赤線で示したa1-a5-d5-e4-e1の範囲内にいなければならない。例えば白キングがd5にいる場合を見てみよう(図65)。

 図65

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Qg2+ Kb1 1…Kb3 は 2.Qg7! Kc2 3.Qa1 ですぐに白の勝ちとなる。2.Kc4! a1=Q 3.Kb3! で戦力は同じだが黒は詰みからのがれられない。

(この節続く)

2013年07月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(66)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 今度は白キングがe4にいる場合を考えよう(図66)。

 図66

今度は次のように異なった手順で勝ちとなる。1.Qg2+ Kb1 2.Kd3! a1=Q 3.Qc2# で詰み。

(この節続く)

2013年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(67)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 黒のポーンがビショップ列にある場合も白キングの位置によって結果が変わってくる。さらに黒キングの位置にも左右される。図67は黒キングが中央の列にいる例である。

 図67

 この局面は白キングが離れ過ぎているので引き分けである。

1.Qa2 Kd1 2.Qa4 Kd2 3.Qd4+ Ke2 4.Qc3 Kd1 5.Qd3+ Kc1

 白は一度だけなら黒キングに自分のポーンの行く手をさえぎらせることができる。この間にすぐに自分のキングを近づけなければならない。

6.Kb7 Kb2 7.Qd2 Kb1 8.Qb4+ Ka2 9.Qc3 Kb1 10.Qb3+ Ka1!

 この手が要点である。黒はc1に戻る必要はない。白が 11.Qxc2 と取ってくればステイルメイトになってしまう。白はこれ以上追及することができないので引き分けである。

 図67でも白が勝つためにキングがいなければいけない範囲を線で示した。これを理解するために少し例を挙げよう。白キングがd5にいる場合の勝ち方は次のとおりである。1.Qg5+ Kd1 2.Qg1+ Kd2 3.Qd4+ Ke2 4.Qc3 Kd1 5.Qd3+ Kc1 6.Kc4 Kb2 7.Qd2 7.Qe2 Kb1 8.Kb3? c1=N+ は引き分けになる。ただしこの手順中 8.Kc3 c1=Q+ 9.Kb3 なら白の勝ちである。7…Kb1 8.Kb3 c1=Q 9.Qa2# で詰み。

(この節続く)

2013年07月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(68)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 白キングがg4にいる場合の勝ちに至る手順は次のとおりである。

 図68

1.Qa2 Kc3 1…Kd1 には 2.Kf3 2.Qa3+ Kd2 3.Qb2 Kd1 4.Kf3! c1=Q 5.Qe2# で詰み

 最後に白キングが詰みの範囲の外側のe5にいる場合を考えるが、次の手順で勝てそうに思える。

1.Qa2 Kd1 2.Ke4 c1=Q 3.Kd3! で詰む形になる。しかし黒には次のような受けの好手がある。1…Kc3! 2.Qa3+ Kd2 3.Qb2 Kd1 白はこれ以上手段の余地がない。

(この節続く)

2013年07月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(69)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 この分析から局面によっては黒キングが運悪くd1の枡にいたためにc1に行かされて1手無駄にするために白が勝てる場合があることが分かる。黒キングが最初からポーンの反対側のナイト列にいる場合は白キングはもっと近くにいなければ勝つことができない。その例が図69である。

 図69

 この局面はもちろん引き分けである。白が勝つためにはキングが線(a4-c4-d3-e3-e1)の内側にいなければならない。e3又はe1にいる場合はいずれ Kd2 と指すことにより容易に黒ポーンを止めることができる。a4にいる場合は 1.Qg2 Kb1 2.Kb3! c1=Q 3.Qa2# で詰みになるので同様に問題ない。

 白キングが勝ちの領域の外側にいるが黒が苦労する場合がある。例えば白キングがb5にいる場合である。

1.Qg2 Kb1 2.Qe4 Kb2 3.Qe2

 ここで 3…Kb1? は以前に出てきたように 4.Kb4! c1=Q 5.Kb3 で白の勝ちになる。黒は正確に 3…Ka1! と受けなければならない。そうすれば 4.Qxc2 はステイルメイトになる。また 4.Qd2 は 4…Kb1! 5.Kb4 c1=Q で白クイーンが当たりになっているので引き分けになる。

 これでクイーン対7段目に進んだポーンのエンディングを全て尽くした。これまで挙げた判断基準は白の駒が具合の悪い位置にあって黒ポーンの昇格を止められない場合を除き全てに当てはまる。

(この節続く)

2013年07月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(70)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 6段目のポーンに対しては図70のように7段目に到達するのを防げない場合を除きクイーンが常に勝つ。

 図70
「Chess World」、1865年

 白キングが不運な黒枡の斜筋にいなかったら白が簡単に勝てる。例えば白キングがb8にいたら 1.Qh1+ Kb2 2.Qh8! Kb3 3.Qd4 c2 4.Qa1 で白が勝つ。しかし実際は白が黒ポーンの前進を妨げることができないので次のような手順で引き分けになる。

1.Qh1+ Kb2 2.Qb7+ Kc1 3.Kf6

 面白いことにここでも白キングがh6にいたら 3.Kg5! c2 4.Kf4 で勝ちの区域に入るので白の勝ちになるところである(図67を参照)。

3…c2 4.Ke5 Kd2

 図67にあるとおりこの局面は引き分けであるが再度黒の正しい受け方を示しておく。

5.Qb2 Kd1 6.Qb3 Kd2 7.Qa2 Kc3

 7…Kd1? は間違いで 8.Kd4! c1=Q 9.Kd3 で白が勝つ。本譜は 8.Qa3+ Kd2 で白はこれ以上手段がない。

 白の勝てない例外的な局面がもう一、二ある。例えば白キングがc6、クイーンがd8、黒キングがe2、ポーンがf3の局面である。1.Qe8(e7)+ Kf1 で白が黒ポーンの前進を止められないので引き分けである(2.Kd5 f2 3.Ke4 Kg2 で図69と同様)。

(この節続く)

2013年07月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(71)

第3章 クイーン・エンディング

3.1 クイーン対ポーン(続き)

 黒に7段目のポーンの他にもポーンがあれば結果は一概に言えない。一般にはクイーン側が勝つことが多いが余分のポーンが負けを救うこともある。

 例えば黒に7段目のポーンが2個ある場合白はキングがポーンにかなり近い場合に限り勝てる。黒の二つ目のポーンが6段目にある場合も同様である。ここでは無数の可能性を調べることはしない。興味のある読者はエンディングの専門書を参照されたい。黒の受けの手段を示すために一つだけ例を採り上げる。

 図71

 黒のaポーンがなければこの局面は明らかに引き分けである。しかしこの局面ではステイルメイトの可能性がないにもかかわらず白が勝つことができない。もし白キングがa4にいたとしたら次の手順で白が勝つ。1.Qg7+ Kf2 2.Qh6 Kg2 3.Qg5+ Kf2 4.Qh4+ Kg2 5.Qg4+ Kf2 6.Qh3 Kg1 7.Qg3+ Kh1 8.Kb5! a4 9.Qf2 の後 10.Qf1# で詰み。しかし図71では黒のaポーンがせき止められていないので正しく受けられればこの手法が通用しない。

1.Qg8+ Kf2!

 黒は決してクイーンをg4の地点に来させてはならない。その理由は 1…Kf1 2.Qc4+ Kg2 3.Qg4+ Kf2 4.Qh3 Kg1 5.Qg3+ Kh1 6.Qf2 あるいは 1…Kf3 2.Qg5! a4 3.Qh4 Kg2 4.Qg4+ で負けてしまうからである。しかし黒は本譜の手以外に 1…Kh3 2.Qd5 Kg3! でも引き分けにできる。

2.Qh7 Kg3 3.Qd3+ Kg2 4.Qe4+ Kg3!

 引き分けにできる唯一の手である。白クイーンにg4の地点に来させては黒キングがh1の地点に追い込まれるのでそうさせてはならない。実際 4…Kg1 は 5.Qg4+ の後 6.Qh3 とされる。また 4…Kf2 は 5.Qh1 Kg3 6.Kb7 で本譜と比較して白が重要な手を稼げるので黒が負ける。

5.Kb7 a4 6.Kc6 a3 7.Kd5 a2 8.Qh1 a1=Q!

 黒の余分のポーンは自ら犠牲となって使命を全うし黒キングにg2の枡を与えた。

9.Qxa1 Kg2

 図64に示されてあるとおりこの局面は引き分けである。面白いことに図71で白キングがa8以外のどの地点にいても勝ちだった。

 最後にナイト列ポーンがルーク列ポーンに支えられている場合の意外な受けの手段を考えてみよう。白キングがa8、クイーンがb7、黒キングがh1、ポーンがg2とh4にいる時白は勝てない。考えられる手順は次のとおりである。1.Qf3 黒の狙いは 1…h3 から 2…Kh2 であった。1…Kh2 2.Qf4+ Kh3 3.Qf2 g1=Q! 4.Qxg1 ステイルメイト 白キングがf6まで近ければ白が勝つ。例えば 1.Qf3 Kh2 2.Qf2 h3 3.Kg5 Kh1 4.Qf3 Kh2 5.Kh4! g1=Q 6.Qxh3# で詰む。

(この節終わり)

2013年07月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(72)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)

 クイーン対ルーク

 クイーン対ルーク+ポーンのエンディングの分析は複雑さを伴う。そこに行く前にクイーンがルーク単独に対してどのように勝つかをざっと見てみよう。

 図72

 一般に少数の特別な場合を除いてクイーンはルーク単独に勝つ。しかし以下の分析が示すように勝つのは容易ではない。

1.Qf3+ Ke5 2.Qe4+ Kd6 3.Kd4

 白が勝つためにはキングとルークで黒キングを盤端に追い詰めなければならない。

3…Rc6

 この手が黒の最善の受けということではない。しかしルークがどこへ動いても白は自分のキングを進めて最終的には黒キングを盤端に追い込むことができる。例えば黒が 3…Ra5 で白キングの前進を拒んだとしよう。それに対して白は次のように指す。4.Qg6+ Kd7 4…Ke7 5.Qb6 Rh5 6.Ke4 は本譜の局面と対称形になる。5.Qf6 Rb5 5…Kc7 は 6.Qe6 Kb7 7.Kc4 Kc7 8.Kb4 でルークが下がらなければならない。6.Qf7+ Kd6 6…Kc6 は 7.Qe6+ Kc7 8.Kc4 で早い。7.Qf8+ Kd7 8.Qf6! Ra5 9.Kc4 Kc7 10.Ke7+ Kc6 11.Qe6+ Kc7 12.Kb4 でルークが下がらなければならない。

4.Qe5+ Kd7 5.Kd5 Rc7

 5…Ra6 は 6.Qg7+ Kd8(6…Ke8 は 7.Qc7)7.Qf8+ Kd7 8.Qf7+ Kd8 9.Kc5 で白が勝つ。また 5…Rc1 は 6.Qf5+ Ke8 7.Qh5+ Kd7 8.Qg4+ Ke8 9.Kd6 で白が勝つ。

6.Qe6+ Kd8 7.Qg8+

 7.Kd6 は 7…Rc6+! 8.Kxc6 でステイルメイトになるので注意しなければならない。

7…Ke7 8.Qg7+ Kd8 9.Qf8+ Kd7

(この節続く)

2013年07月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(73)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク

 図73

10.Qf4

 白の勝つ手順はいくつかあるがこれが多分最も簡明である。10.Qh8 でも良く以下 10…Ke7 11.Qg8! Rd7+(11…Kd7 なら 12.Qf8)12.Ke5 Rc7 13.Qg7+ Kd8 14.Qf8+ Kd7 15.Kd5! Rb7 16.Qf7+ Kc8 17.Qe8+ Kc7 18.Kc5! で白が簡単に勝つ。例えば 18…Ra7 19.Qe7+ Kb8 20.Qd8+ Kb7 21.Kb5 で黒はまもなくルークを取られる。白は 10.Qb8 でも勝てるが黒も 10…Rc2! で頑強に抵抗することができる。

10…Kc8

 10…Rb7 なら白は 11.Qf7+ Kc8 12.Qe8+ Kc7 13.Kc5 で前手の解説と同じになる。

11.Kd6 Kb8

 11…Ra7 は 12.Qf8+ Kb7 13.Qf7+ Kb8 14.Qe8+ Kb7 15.Qd7+ Kb8 16.Qd8+ Kb7 17.Qc7+ で黒の負けが早まる。11…Kb7 12.Qb4+ Kc8 13.Qa5 も同様である。

12.Qe5! Rb7

 他の手は本譜の手順から分かるように黒がずっと早く負ける。

13.Kc6+ Ka8 14.Qa1+ Kb8 15.Qa5!

 この局面はフィリドールが既に1777年に白の必勝形であることを明らかにしている。

15…Rb1

 15…Rh7 は16.Qe5+ Ka8 17.Qa1+ Kb8 18.Qb1+ で白の勝ちになる。15…Rb3 は 16.Qd8+ Ka7 17.Qd4+ Kb8 18.Qf4+ からルークが取られる。15…Rf7 も 16.Qe5+ Ka7 17.Qe3+ からルークが取られる。

16.Qd8+ Ka7 17.Qd4+ Ka8 18.Qh8+ Ka7 19.Qh7+

 これでルークが取られる。 

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(74)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク

 この例からクイーン対ルークの戦いがどのようなものか正確につかめたことと思う。ここで重要な例外の一つを挙げておく。

 図74

 黒先手で白キングは永久チェックから逃れられないので引き分けになる。1…Rh7+ 2.Kg2 Rg7+ 3.Kf3 Rf7+ 4.Kg4 Rg7+ 5.Kf5 Rf7+ 6.Kg6 Rg7+ 7.Kh6 Rh7+ ここで 8.Kxh7 はステイルメイトになる。もちろん白先手ならば白の勝ちになる。

(この節続く)

2013年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(75)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒にポーンが1個加わると状況ははるかに複雑になる。局面が非常に紆余曲折に富むために最終判断が長い年月の間にくつがえったこともある。この多種多様なエンディングの中からポーンがルークを守りそのポーンがキングに守られている局面だけを考えることにする。その他の局面はエンディングの専門書を参照されたい。

 まず図75のようにポーンが原位置にある配置から考えてみよう。

 図75
フィリドール、1803年

 フィリドールがはるか昔に示したようにこの局面で白に勝ちはない。黒はルークをc6とe6の間で往復させることができるので手詰まりに陥ることはない。これはつまり白キングが6段目を越えることができず、黒キングも自分のポーンの守りから追われることがないということである。

1.Qb8+ Ke7 2.Qg8 Rc6 3.Qg7+ Kd8 4.Qf8+ Kc7 5.Qa8 Re6

 白はこれ以上進展を図ることができないので引き分けである。

(この節続く)

2013年07月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(76)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図75の配置を右または左に移動しても同じく引き分けである。例外はポーンがルーク列にある場合で図76のように黒が負けになる。

 図76
ベルガー、1922年

 前図との主要な違いはルークがポーンに守られた地点が一つしかないということである。そのような地点が一つ(b6)しかないということは黒キングがステイルメイトに追い込まれるとルークが動かなければならず白キングの進入を許してしまうということである。

1…Kb7

 白先手ならば 1.Qc7! ですぐに勝ちになる。例えば 1…Rb1 2.Qc8+ Rb8 3.Qc6+ Rb7 4.Kd6 で黒のポーンが取られる。

2.Qe7+ Ka6

 2…Kb8 は 3.Qd7 で黒が手詰まりになる。例えば 3…Rh6(3…Rb1 は 4.Qe8+ Kc7 5.Qf7+ の後 6.Qg8+ から 7.Qh7+ で白の勝ち。3…Rb2 は 4.Qe8+ Kb7 5.Qe4+ Ka6 6.Qd3+ Kb7 7.Qf3+ Kb8 8.Qf8+ から 9.Qg7+ で同じく黒のルークが取られる)4.Qe8+ Kb7 5.Qe7+ Ka6 6.Qf7! Rb6 7.Qd7! で本譜と同じになる。3…Ra6 は 4.Kb5 Rb6+ 5.Ka5 で黒はポーンかルークを取られる。

3.Qd7!

 黒は手詰まりに陥っていてルークを取られてしまう。例えば 3…Rb2 3…Rb1 は 4.Qa4+ から 5.Qe4+ で白の勝ち。4.Qd3+ Kb7 5.Qf3+ Kc7 6.Qf7+ の後 7.Qf8+ から 8.Qg7+ で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(77)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 しかし黒ポーンが原位置を離れていると白の勝ち手順は通常は容易になる。黒ポーンが3段目にいる図77から始めよう。

 図77
フィリドール、1777年

 フィリドールはこの局面は多少の困難はあるが白の勝ちであることを示した。図75と比較すると白クイーンは黒キングを不利な地点に追い込むために使える段が一つ余分にある。白が勝つためには第一に黒キングをd5に追い込み第二に自分のキングに5段目を越させ第三に自分のキングをキング列に侵入させなければならない。そうなれば黒はポーンを失う。以上は全て手詰まり戦術を用いて成し遂げられる。

1.Qh7+ Kd8

 もちろん 1…Kf8 は 2.Qd7 でだめだし 1…Ke8 は 2.Qc7 で白の勝ちを容易にしてしまう。1…Ke6 は 2.Qc7 Rc5 3.Qd8 Re5 4.Qe8+ Kd5 5.Qc8 で本譜と同じになる。

2.Qf7! Kc8

 2…Rc5 3.Qe6 Kc7 4.Qe7+ Kc6 5.Qd8 も本譜の手順と同じになる。

3.Qa7 Kd8

 3…Rc5 には 4.Qe7 である。

4.Qb8+ Kd7 5.Qb7+ Kd8 6.Qc6 Ke7 7.Qc7+ Ke6 8.Qd8 Kd5

 8…Rf5+ 9.Kg4 Re5 10.Qe8+ Kd5 11.Qc8 は大同小異である。白は第一の目標を達成した。次は自分のキングに5段目を越させることである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(78)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

9.Qc8!

 図78 黒の手番
フィリドール、1777年

 ここがフィリドールの示した最初の重要な手詰まりの局面である。黒は白キングの前進を妨げることができないのである。

9…Re4+

 もし 9…Kd4 ならば 10.Qc6 Rd5 11.Kf3 Rf5+ 12.Kg4 Rd5 13.Kf4! で白が勝つ。この手順中 11…Ke5 ならば 12.Qc3+ Kf5 13.Qc4 である。他の地点にルークを動かす手は 9…Rh5 なら 10.Qa8+! Kd4 11.Qa4+、また 9…Re7 なら 10.Kf5 Rf7+ 11.Kg5!(11.Kg6 では 11…Rf4 とされる)でルークを取られないように黒はすぐに 11…Re7 と指さなければならず黒の負けとなる。

10.Kf5 Re5+

 10…Kd4 は 11.Qc6 d5 12.Qc2! Re5+ 13.Kf6 Re4 14.Kf7! で黒は白キングがe列を横切ることを許すしかない。

11.Kf6 Re4

 この手は絶対手である。他の手では 12.Qb7+ でポーンかルークが取られる。

12.Qc3

 フィリドールの 12.Qf5+ でも白の勝ちであるがグレツキー=コルニッツの推奨するこの手の方が簡明である。

12…Re6+

 12…Re5 なら 13.Kf7 である。

13.Kf7 Re5 14.Kf8!

(この節続く)

2013年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(79)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

14.Kf8!

 図79 黒の手番

 手詰まり戦術により第三の目標である白キングのe列越えが可能になる。

14…Re4

 14…Re6 は 15.Qb3+ Ke5 16.Kf7、また 14…Ke4 は 15.Qc4+ Kf5 16.Qd3+ Ke6 17.Ke8 で白キングが越境できる。

15.Qd3+ Rd4

 15…Ke5 は 16.Ke7 d5 17.Qg3+ から 18.Kd6 で容易な勝ちになる。

16.Qf5+ Kc4 17.Qc2+ Kd5 18.Ke7 Re4+

 18…Ke5 は 19.Qc3! d5 20.Qe3+ Re4 21.Qg5+ Kd4+ 22.Kd6 で白が勝つ。

19.Kd7

 以下は白の容易な勝ちである。例えば 19…Rd4 なら 20.Qc6+ Ke5 21.Qf3 で少なくともポーンが落ちる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(80)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒ポーンが4段目にいる場合も勝つ手法は同じである。しかし図80のように黒ポーンが5段目に達すると問題が出てくる。

 図80 黒の手番
グレツキー=コルニッツ、1864年

 ここに至る手順は省略して直接この局面から考える。ほぼ百年の間この局面は黒の手番の場合に限り以下のように白が勝つと考えられてきた。

1…Re8

 1…Re2 に対して白は 2.Qa3+ により図80から白の手番で生じる局面にすることができる。あるいは次のように指し進めることもできる。2.Qd1+ Rd2 2…Ke3 は 3.Ke5 d3 4.Qg1+ Kf3+ 5.Kd4 d2 6.Qd1 で白が勝つ。この手順中 4…Kd2+ ならば 5.Kd4 Kc2 6.Qg6 Rd2 7.Qc6+ でやはり白が勝つ。3.Qb3+ Ke2 4.Ke4 Ke1 4…d3 は 5.Qg8! で白が早く勝つ。5.Qf3! Rd1 6.Kd5 Rd2 7.Kc5! 手待ちをする。7…Rd1 8.Kc4 Rd2 9.Kb3 これで白が勝つ。例えば 9…Rd1 10.Qe4+ から 11.Kc2、あるいは 9…Re2 10.Qg3+ である。

 1…Ke2 も 2.Qc2+ Ke1 3.Kf4 で白が早く負ける。

2.Qa3+ Ke2

 2…Kd2 は 3.Qb4+ でポーンが落ちる。

3.Qa4 Rd8

 3…Rf8+ は 4.Ke4 d3 5.Qb5 Rd8 6.Qh5+ Kf1 7.Ke3 で白が勝つ。

4.Qa5

 4…Rf8+ 5.Ke4 d3 6.Qh5+ の後黒はポーンかルークを取られる(6…Kd2 7.Qh6+)。

 しかし図80で白の手番の場合は同じ局面で黒の手番とする手順が見つからなかったために長い間引き分けであると考えられていた。ようやく1949年にシェロンが次のような勝ちの手順を示すことに成功した。

1.Qc5 Re2

 1…Re1 は 2.Qb5+ でポーンかルークが落ちる。

2.Qa3+ Kd2

 2…Kc2 は 3.Qa2+ Kd3 4.Qb3+ Kd2 5.Kf4 である。

3.Kf4 Kc2

 3…d3 なら 4.Qb3 で本譜の手順と同じになる。また 3…Re1(e8)なら 4.Qb4+ で白が勝つ。さらに 3…Re3 なら 4.Qb2+ Kd3 5.Qb3+ Kd2(5…Ke2 は 6.Qc2+ Ke1 7.Qc4)6.Qc4 Rd3 7.Ke4 で白が勝つ。

4.Qa2+ Kd3 5.Qb3+ Kd2 6.Qc4 d3

(この節続く)

2013年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(81)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図81
グレツキー=コルニッツ、1864年

 長い間この局面はグレツキー=コルニッツの分析に基づいて引き分けであると考えられてきた。それは 7.Qc5 Kd1 8.Qc3 d2 9.Qf3 Kc1 10.Qc3+ Kb1 11.Qb3+ Kc1 12.Qc4+ Kd1 13.Kf3 Re7 14.Kf2 Re8 で白が勝てないというものである。しかし実際は幾つかの勝つ方法がありここではシェロンの手順を紹介する。

7.Qb3

アベルバッハとリシツィンは後に別な 7.Qd4 と 7.Qb4+ Kc2 8.Kf3 を提示した。これらは本譜の手順と同様の変化になる。

7…Re1

 もちろん 7…Rf2+ はだめで 8.Ke4 Re2+ 9.Kd4 で白の勝ちになる。しかし 7…Re8 も 8.Qb2+ で以下 8…Ke1 9.Qb5! Rd8 10.Ke3 Kf1 11.Qf5+ 又は 8…Kd1 9.Qb5 Rd8 10.Ke3 Kc1(c2)11.Qc5+ Kd1 12.Qb6 で白の勝ちとなる。

8.Qb2+ Kd1 9.Kf3 Re2

 9…Re7(e8)は 10.Qb1+ Kd2 11.Qb4+ で白が勝つ。

10…Qc3 Rd2 11.Qc4

 11.Ke3 Re2+ 12.Kxd3? は 12…Re3+! 13.Kxe3 でステイルメイトになってしまう。本譜の手の後黒はポーンを失う。

 この例から黒は中央列の6段目にポーンがあっても引き分けにできないことが分かる。だから黒は中央のポーンが原位置にある時だけ引き分けにできると言うことができる。

(この節続く)

2013年07月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(82)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 ポーンがビショップ列にあると黒が引き分けにできる可能性が高まる。実際ポーンがビショップ列にあればどの段にあっても黒が必ず引き分けにできると長い間考えられてきた。しかしハルバーシュタットとシェロンの現代の研究により少なくとも2段目または3段目のポーンについてはこの一般化は誤りであることが示された。色々な可能性を詳しく調べてみよう。

 図82
ハルバーシュタット、1931年

1.Qb6!

 ハルバーシュタットは1931年にこの局面で黒の手番ならば黒が手詰まりであることを示した。白は容易にその状態に持ち込むことができる。

1…Kd7

 1…Re5+ は 2.Kd4 Rd5+ 3.Kc4 で白の容易な勝ちとなる。

2.Qb7+ Kd6 3.Qa7!

 白は最初の目的を達成した。黒は白キングがd列を越えるのを許すしかない。

3…Re5+

 黒はルークをd列に留めることができない。例えば 3…Rd2 なら 4.Kf5 Rd5+ 5.Kf6、あるいは 3…Rd1 なら 4.Qa3+ Kd7 5.Qh3+! Kc7 6.Qg3+ Rd6 7.Qe5 Kd7 8.Qg7+ から 9.Ke5 でどちらも白キングが侵入できる。

4.Kd4 Rd5+ 5.Kc4 Rb5 6.Qf7 Rc5+

 6…Rd5 なら 7.Kb4 で、6…Rb6 なら 7.Qe8! で白が勝つ。

7.Kb4 Rd5 8.Ka4 Rb5 9.Qg7

 この局面こそ白が目指していた局面である。黒は白の Qb7-c8 を妨げることができない。

9…Rd5 10.Qb7 Rb5

 10…Rd1 は 11.Qb4+ Kc7 12.Qf4+ Kb6(12…Kb7 は 13.Qf7+ Kc8 14.Ka5)13.Qe3+ Kc7 14.Qg3+ Kd8 15.Ka5 で白が容易に勝つ。

11.Qc8 Kd5

 11…Rd5 は 12.Qd8+ Kc5 13.Qc7 Rd1(13…Rd3 は 14.Qa5+ Kc4 15.Qa6+)14.Qa5+ Kc4 15.Qb4+ で白が勝つ。

12.Qd7+ Kc5 13.Qd8!

 黒は再び手詰まりに陥った。

13…Kc4

 13…Rb4+ は 14.Ka5 Rb5+ 15.Ka6 Rb4 16.Qd3! で図78の説明に出てくるように白が勝つ。

14.Qd6 Rc5

 もしここで黒の手番ならばポーンを見捨てるしかない。しかし白がその局面にするのは難しい。

15.Qe6+ Kd3

 15…Kc3 は 16.Qe3+ Kc4 17.Qe4+ Kc3 18.Qb4+ で白が勝つ。15…Kd4 は 16.Qg4+ で本譜と同じになる。

16.Qh3+ Kd4

 16…Kc4 でも同じである。もし黒キングが7段目に進めば 17.Kb4 で白が勝つ。

17.Qg4+ Kd3

 17…Kd5 は 18.Qd7+ で黒キングがe列に行かされて 19.Kb4 で白が勝つか 18…Kc4 19.Qd6 で黒が手詰まりに陥る。17…Ke5 は 18.Qd7 で白が勝つ。

18.Qd1+ Kc3

 18…Kc4 は 19.Qd6、18…Ke4 は 19.Qd7 で白が勝つ。

19.Qc1+ Kd4 20.Qd2+ で白が勝つ。

 20…Kc4 なら 21.Qd6、20…Ke4(e5)なら 21.Qd7 でどちらも白の容易な勝ちになる。

 ビショップ列のポーンについてはもっと面白い局面がたくさんある。しかしそれらは本書の扱う範囲にはない。興味のある読者はエンディングの専門書を参照されたい。

(この節続く)

訳注 ハルバーシュタット (Vitaly Halberstadt, 1903-67) はウクライナのオデッサ生まれですが人生のほとんどをパリで過ごしました。実戦、解説、スタディ創作などで活躍しました。

2013年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(83)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒の引き分けの可能性が一番大きいのはポーンがナイト列にあり(段はどこでも良い)ルークが良い位置にある時である。その例として図83を考えてみよう。

 図83
グレツキー=コルニッツ、1864年

1.Qf7+ Kb8

 黒は 1…Kc8 で白クイーンにa7の地点を占めさせてはならない。1…Kc6 も同様で 2.Qa7 Ra5 3.Qb8 で最新の研究では黒が支えきれない。

2.Qe6 Kb7 3.Qd7+ Kb8 4.Ke4 Ka8 5.Qa4+ Kb7 6.Kd4 Rc7!

 白キングが5段目を越えてしまうがこの局面では問題とはならない。最新の研究によると 6…Kb8 は 7.Qa6 Kc7 8.Qa7+ Kc6 9.Qb8、6…Ra5 は 7.Qd7+ Kb8 8.Qc6 Ka7 9.Qc7+ Ka6 10.Qb8 で白が勝つ。

7.Kd5 Rc5+ 8.Kd6 Rc7 9.Qb5 Rc5 10.Qd7+ Kb8 11.Qg4 Rc7

 黒は Kd7-d8 を許してはならない。

12.Qe2 Kb7

 白はこれ以上態勢を良くすることができないので引き分けである。

(この節続く)

2013年07月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(84)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒のbポーンがもっと前進していても通常は引き分けになる。図84がその基本的な局面である。

 図84

1…Rc5+ 2.Kd6 Rc8! 3.Kd7 Rc4 4.Kd8 Rc5 5.Qb2+ Ka4! 6.Kd7 Rc4

 白は黒ルークをc列からどかせることができないので白キングがc列を越えることができない。

(この節続く)

2013年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(85)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 次はルーク列ポーンの場合を考えよう。図85は特にポーンが3段目にある場合である。

 図85
グレツキー=コルニッツ、1864年

 白キングがb列を越えられずc8の地点にも行けない場合は引き分けである。黒キングは隅の方にいなければならない。

1.Qe7+ Kb8 2.Qe8+ Kb7 3.Qd8 Ka7 4.Qc8

 白はいくらか成功を収め黒は白キングに5段目を越させなければならない。しかしこれは実際には大して重要でない。

4…Rb7!

 4…Kb6 は誤りで 5.Qb8+ Kc6(5…Ka5 は 6.Qd8+ Ka4 7.Qd2)6.Qa7 Rb6 7.Kd4 Kb5 8.Qd7+ Kb4 9.Qc7 Rh6 10.Qe7+ Ka4 11.Qe8+ Ka5 12.Kc5 で白が勝つ。

5.Qc5+

 5.Kc5 は 5…Rb5+ 6.Kc6 Rb6+ 7.Kc7 Rb5 で後ろから …Rc5+ でチェックを狙われるので有効でない。

5…Kb8 6.Qd6+ Ka7 7.Qd4+ Ka8 8.Kc5 Rb5+

 8…Ka7 9.Kc6+ Ka8 でも同じ局面になる。

9.Kc6 Rb7

(この節続く)

2013年07月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(86)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 図86 白の手番

 この型の基本的な局面である。白が勝つことはできない。

10.Qd8+

 10.Qf4 は白の巧妙な罠である。もし黒が不注意に 10…Rb5? と指すと次の手順で負けてしまう。11.Kc7! Ka7 11…Rb7+ は 12.Kc8 Rb5 13.Qc7 で白が勝つ。12.Qd6 Rb8 13.Qc5+ Ka8 14.Qc6+ Ka7 15.Qd6! Rb7+! 16.Kc8 Rb5 17.Qd7+ Ka8 18.Qc7 黒はすぐにルークを取られる。しかし黒は単に 10…Ka7! と指せば良く白は何もできない。

10…Rb8

 ここは 10…Ka7 11.Qc8 Rb6+ 12.Kc7 Rb5 でも良い。

11.Qd5

 11.Qa5 なら 11…Ka7 12.Qc7+ Ka8 13.Qf4 Rb7! で大丈夫である。

11…Rb7!

 もちろん 11…Ka7? は 12.Kc7 でだめである。本譜の手の後は黒はいつでもチェックで白キングをc8の地点から追い払える。白はこれ以上態勢を良くする手段がない。従って引き分けである。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(87)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 前例の分析から白キングがa列にいるとどうして白が勝ちになるのかがすぐ分かる。

 図87

 例えば白は次のような手順で勝てる。1.Qe7+ Kb8 2.Qd7 Ka8 3.Qc7 Rb1 3…Rb7 は 4.Qd8+ Ka7 5.Qd4+ の後 6.Ka5 である。4.Qd8+ Ka7 5.Qd4+ Ka8 6.Ka5 で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(88)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 黒ポーンがa5又はa4にいる場合もやはり白が勝つ。例えば図88では次のような手順で勝つ。

 図88

1.Qd5 Ka6 2.Qc6+ Ka7 2…Rb6 なら 3.Qa8+ Kb5 4.Kb3 である。3.Kd3! Rb6 黒は手詰まりに陥っていて白キングが4段目を越えるのを許さなければならない。3…a4 なら 4.Kc3 が一番簡単な勝ち方である。4.Qc7+ Ka6 5.Qc8+ Ka7 6.Kc4 Rb7 7.Qd8 Ka6 8.Kc5 Rb5+ 9.Kc6 で白が勝つ。

(この節続く)

2013年07月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(89)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 しかし黒ポーンが6段目に到達ししかも黒キングがそのポーンの前にいると黒が引き分けにできる。例えば図89では白は次のように何も進展が図れない。

 図89

1.Qf3 Rb4 2.Qd5+ Ka1 3.Qa5 Rb1+ 4.Kc2 Rb2+ 5.Kc3 Ka2 6.Qa4 Rb1 で黒が引き分けにできる。

(この節続く)

2013年07月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(90)

第3章 クイーン・エンディング

3.2 クイーン対ルーク(+ポーン)(続き)

 クイーン対ルーク+ポーン

 最後にルークがポーンを後ろから守っている局面を調べてみよう。全てはポーンがどのくらい進んでいるかにかかっている。一般にはポーンが4段目にいるならば白が勝つ。ポーンが5段目の場合は役駒の配置によって結果が決まる。しかしポーンが6段目まで進んでいると通常は黒が引き分けにできる。図90のような例外的な場合だけ白が勝つことができる。

 図90
クリングとホロウィッツ、1851年

 黒ポーンは白キングによってせき止められているが白が陣容をこれ以上良くするのは難しそうに見える。しかし白は次のような巧妙な手段よって勝ちを成し遂げる。

1.Qf5+

 作局者たちは 1.Qd5+ Kf6 2.Qc6+ から始まる難解な正解手順を示した。彼らは黒キングをg8に逃がしたくなかったようだった。しかしそれは恐れる必要はなく本譜の手が勝ちへの最短手順である。

1…Ke7

 1…Kg8 は 2.Qf6 Kh7 3.Qf8 で黒が手詰まりに陥る。そして 3…Rg6 4.Qf7+ Rg7 5.Qe8! Rg6 6.Kh4 g3 7.Kh5 で詰みの狙いで少なくとも黒ポーンが取られる。

 同じく 1…Ke8 は 2.Qf6 Rg8 3.Kh2! g3+ 4.Kg2 で黒ポーンが取られるので黒の負けである。

2.Qf2

 この巧妙な手待ちで白は黒の駒を退却させることができる。ここは 2.Qf1 でも良い。しかし 2.Qf4 は 2…Rg6! で白自身が手詰まりに陥るのでだめである。

2…Rg6

 2…Rg5 3.Qe3+ Kf6 4.Qf4+ Kg6 5.Kh4 も 2…Ke6 3.Qf8 Rg6 4.Kh4! g3 5.Kh5 も白が楽に勝つ。

 2…Rg8 は 3.Qc5+ Kf6 4.Qd6+ Kf7 5.Qd5+ Kf8 6.Qe6 で本譜に戻る。

3.Qf4! Rg7

 3…Ke6 4.Qf8 は既に現れた。3…Rg8 4.Qe5+ は正解手順より一手短くなる。

4.Qf5! Rg8 5.Qe5+ Kf7 6.Qd5+ Kf8 7.Qe6!

 黒は再び手詰まりに追い込まれてルークをg8とg7の間で往復させるしかなくなった。ここから白は同様の手待ちを2回用いて勝ちを収める。

7…Rg7 8.Kh2

 白は初手の解説中の手順と同様に 8.Qf6+ Kg8 9.Qf5 Kh8 10.Qf8+ Kh7 11.Qe8! で勝つこともできる。

8…g3+ 9.Kg2 Rg8

 9…Rf7 なら 10.Qc8+ から 11.Kxg3 で良い。しかし 10.Kxg3? ははまりで 10…Rg7+ 11.Kh4 Rh7+ 12.Kg5 Rg7+ 13.Kh6 Rh7+! で 14.Kxh7 はステイルメイトになる。[訳注 図74参照]

10.Qf6+ Ke8 11.Kh1! g2+ 12.Kg1 で白が勝つ。

 黒は 12…Rf8 で自分のポーンを見捨てるしかない。これでクイーン対ルーク+ポーンの分析を終える。

 分析できたのは可能な全ての局面のほんの一部でポーンが2個以上の場合は全然採り上げなかった。しかし読者はそのようなエンディングでも対処できるような基本的な知識を十分身に付けたことと思う。

(この節終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(91)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)

 両者にクイーンとポーンがあるエンディングはチェスの最も難しい分野に属している。単独のクイーンに対してクイーンと7段目のポーンという最も分かり易い局面の例でも一般原則を見出すのは決して容易なことではない。本節ではクイーン・エンディングの概要を今日の理論で得られている結論を踏まえて読者に提供したい。

 クイーン対クイーン

 相手のクイーンをすぐ取れるのでなければ勝ちがないのは明らかなのでこのようなエンディングを採り上げるのは少しおかしいと思われるかもしれない。しかし局面によっては勝つ手段があり完全に理解しておかなければならない。

 図91

 白は次のように典型的な手法で黒キングを見事に詰みに追い込んだ。

1.Qg2+

 1.Qh8+? は 1…Kb1 2.Qh1+ Ka2 3.Qd5+ Kb1! で白クイーンがこれ以上黒キングに近づくことができないので白に勝ちはない。同様に 1.Qh2+? も 1…Ka3! 2.Qd6+ Ka2 3.Qe6+ Kb1! 4.Qe1+ Ka2 で白の失敗である。このような局面の場合白は常にa列及びb列でチェックすることによって黒キングにa2とb1にしがみつく余地を与えないようにしなければならない。

1…Ka3 2.Qa8+ Kb2 3.Qb7+ Kc1

 白がb列でチェックする理由がここで分かる。黒キングはa2の地点へ行くことができない。もし行けば 4.Kc2! でたちまち白の勝ちとなる。しかし本譜の手でも黒は助からない。

4.Qc6+ Kb2 5.Qb5+ Ka3 6.Qa5+ Kb2 7.Qb4+ Ka2

 7…Kc1 は 8.Qd2+ Kb1 9.Qc2# で即詰みとなる。

8.Kc2! で黒キングは詰みを避けられない。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(92)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン

 白クイーンが十分近くにいれば例え黒キングがa2の地点を占めても白が勝てることがある。その例が図92である。

 図92

 白の勝つ手順は次のとおりである。1.Qc5+ Ka2 2.Qc4+! 2.Qa5+? は 2…Kb1! で引き分けに終わる。2…Ka3 2…Kb1 は 3…Qc2# で詰みである。3.Qa6+ 後は前と同じ要領である。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(93)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン

 しかし図91で白キングの位置をもっと有利なd2の地点に代えれば白は自分のクイーンの位置にかかわらずほとんどすべて勝つようになる。

 他にも白が勝つことのできる局面が一、二ある。例えば連続チェックの後で相手のクイーンを取れることがたまにあるし、珍しい詰みの形が存在することもある。次のカントロビッチのスタディは非常に意外な例である。

 図93

 黒は手番であるが負けを免れることができない。白は Kf2(g3)+ から詰みを狙っている。1…Qh42.Qa1+ から詰まされる。1…Kg12.Qa7+ Kh1 3.Qh7+ Kg1 4.Qg7+1…Qf1+2.Kg3+ Kg1 3.Qa7+ Kh1 4.Qh7+ で同様である。何というクイーンの威力であろう。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(94)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 このエンディングは実戦的に難しいばかりでなく分析するのにも複雑過ぎる。通常は相手のクイーンによって両方のキングがチェックされる局面に至るので全ての変化を完全に分析するのは実際上不可能になる。従ってここでは一、二の具体的な例で説明できるような指針となる原則を示すに留める。

 考えられる局面の可能性はあまりに多いので7段目にポーンがある局面だけを採り上げることにする。このように局面を絞っても本書程度の内容では完全に解明することが期待できないような複雑な局面も数多く存在する。

 ポーンを持っている側はまれにしかその昇格に成功しなかったので長い間この種のエンディングは引き分けに終わるのが普通であると考えられてきた。それでもポーンがビショップ列にある場合だけ勝つ可能性があると考えられていた。しかし最近になって非常に多くの正確な分析により7段目にポーンのある局面のすべてで非常に勝つ可能性が高いことが示されてきた。ルーク列のポーンは例外に当たるがそれでも勝てる例のあることが発見されている。

 このような局面で防御側と攻撃側の両者が直面する困難を示すために一、二の局面を特に掘り下げて説明することにする。これにより似たような局面で一般に適用できる勝つための幾つかの方策を特定できるであろう。

 図94

 この局面は1942年のアリョーヒン対シュトルツ戦で現れる可能性があった。攻撃側の中央列にポーンがある場合このような局面に到達する可能性は高いだろう。白キングはチェックを受けた時ポーンのどちら側へも逃げることができるので白の勝つ可能性は大きい。

 白の手番ならば 1.Qc2+ Ka3(a5)2.Qc3+ の後 3.Kf8 ですぐに勝てるので、黒の手番で黒がどのように守るのかを調べてみよう。黒にはあまり多くの選択の余地がないので明らかな白の勝ちの局面になるまで分析することができる。

(A)
1…Qb3+

 1…Qa7 は 2.Kf8 ですぐに黒の負けが確定する。1…Ka3 と 1…Qc7 はそれぞれ(B)と(C)で調べる。

2.Kf8

 この手が最も簡明である。他に 2.Qe6 Qf3+ 3.Qf6 Qh5+(3…Qd5+ は 4.Kg7 Qg2+ 5.Kf8 で白の勝ち)4.Kg7 Qg4+ 5.Kf8 Qb4 6.Qa6+ Kb3 7.Qe6+ から 8.Kg8 でも白が勝つ。

2…Qb4

 2…Qa3 は 3.Qd7+ から白にクイーンを交換される。

3.Qe5!

 このような局面ではやたらにチェックを繰り返すよりも全てを含みに残した落ち着いた手の方がはるかに有効であることが多いことを覚えておくと良い。黒は手詰まりに陥っている。

3…Kb3

 3…Qa3 は 4.Kg7 で白が勝つ。3…Ka3 は 4.Qa1+ から白にクイーンを交換される。

4.Qe6+ で白が勝つ。

 5.Kg8 の後ポーンがクイーンに昇格する。

(B)

1…Ka3

 この手の意味は白クイーンが中央の重要なd4又はe4の地点を先手で占めることのないようにしようというものである。

2.Qf4!

 もちろん勝つ手段は他にもある。本譜の手は 3.Kf8 を狙っているので黒はクイーンを動かさなければならない。

2…Qa7

 2…Qb3+ と 2…Qd7 はどちらも 3.Kf8 で黒が負ける。2…Qd5+ は 3.Kg7 Qg2+(3…Qb7 と 3…Qd7 も同じ)4.Kf8 で白が勝つ。

3.Ke6 Qa8

 この手は絶対手である。3…Qb6(a6)+ には 4.Qd6+ がある。

4.Qd6+ Kb2

 4…Ka4 には 5.Qd7+、4…Ka2(b3)には 5.Qd5+ がある。

5.Qe5+ Kc2(c1)

 5…Ka2(b3)には 6.Qd5+ があり 5…Kb1 には 6.Qb5+ から 7.e8=Q がある。

6.Qc5+ で白が勝つ。

 白はd5の地点でクイーンを交換できるか 7.Qb5+ からポーンをクイーンに昇格させることができる。

(C)

1…Qc7 2.Qe4+

 白の狙いはクイーンをd4に置くことである。そうなれば Kf8 ですぐに勝てる。黒の手はこの白の狙いを防ぐものでなければならない。

2…Kb3

 この手は絶対手である。2…Ka3 は 3.Qd4 でたちまち白の必勝形になる。4.Kf8 の狙いに対して 3…Qb7 と指しても 4.Qa1+ がある。2…Ka5(b5)は 3.Kf6 Qb6(d6)+ 4.Qe6! で黒はこれ以上チェックをかけるわけにいかない。

3.Qe3+

 もちろん勝つ手段は他にもある。しかし本譜の手はこのようなエンディングで良く現れる重要な構想を含んでいるので学んでおく価値がある。

3…Kc2

 3…Ka2 は 4.Kf6 で白が勝つ。3…Kc4 は 4.Qc1+ で黒クイーンが素抜かれる。黒キングのほかの動きは白クイーンがチェックでd4の地点に行ける。

4.Kg6

 白キングは1段目へのはるかな帰還を開始する。黒はいくらチェックをかけてもこれを阻止できない。

4…Qc6+

 4…Qd6+ は 5.Kg5 Qd5+ 6.Kh4! Qc4+(6…Qh1+ は 7.Kg3)7.Kg3 Qg8+ 8.Kf2 Qf7+ 9.Ke1 で本譜と同じになる。

5.Kg5 Qg2+ 6.Kf4 Qh2+

 6…Qf1+ は 7.Kg3 でチェックが途切れる。

7.Kf3 Qh5+

 7…Qh3(h1)+ は 8.Kf2 Qh2+ 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で本譜と同じになる。

8.Kg2 Qg6+

 8…Qg4+ は 9.Kf1 Qd1+ 10.Qe1!、8…Qd5+ は 9.Kf1 Qh1+ 10.Qg1! で黒はこれ以上チェックをかけるとクイーンの交換を招いてしまう。10…Qh5 としても 11.Qf2+ Kd3 12.Qg3+ で白クイーンは結局はe8の地点への利きを得る。これこそが眼目の構想である。黒キングが2段目にいる時白キングは1段目まで後退する。黒からのチェックにはクイーンでさえぎって逆にチェックするのが白の狙いで黒のチェックは非常に制約を受けることになる。黒キングがb列にいる場合同じ手法は例えばa列でも明らかに成立する(白キングがa8、クイーンがa7、黒キングがb2)。

9.Kf1 Qe8

 チェックはクイーンの交換につながる。

10.Ke1! で白が勝つ。

 この後黒がどう指そうと 11.Qe6 から 12.Qd6 と 13.Qd8 を妨げることができない。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(95)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 前の例から分かるように中央列のポーンは勝てる可能性がかなり高くなる。それでは他の列のポーンはどうであろうか。図95はビショップ列のポーンの例である。

 図95

 黒クイーンのチェックによって発生する無数の複雑な変化を避けるために白に比較的有利な局面を選んだ。練習の目的はどのようにしたら勝ちが得られるかを示すことにあるからである。

1.Qg3!

 白の作戦は単純だが非常に効果的である。その基盤は既に見たとおりである。白は自分のクイーンをf2に置き後は黒キングの位置によって指し進める。黒キングが6段目を占めれば白キングはg2の地点を目指す。黒キングが8段目に行けば白クイーンはf1からチェックして白キングはg1の地点に行く。どちらの場合も黒はチェックをかけることができなくなりポーンのクイーン昇格を止めることができなくなる。黒にはこの作戦に対する対策はない。

1…Ka1

 黒クイーンが動いても白は本譜と同様に勝てる。

2.Kg7

 白は自分の作戦を開始する前に少し準備をしなければならない。すぐに 2.Qg1+ Kb2 3.Qf2+ Ka3 4.Kg7 と指すのは 4…Qg5+ 5.Kh7 Qh5+ で黒が白キングの帰還を阻止することができるのでだめである。

2…Qd4+ 3.Kh7 Qe4+ 4.Kh6 Qc6+

 4…Qe6+ は 5.Kg7 Qe7(d7)6.Qg1+ から 7.Qf2+ で本譜のように白が勝つ。

5.Kg7 Qb7(d7)6.Qg1+ Kb2 7.Qf2+ Ka1

 7…Ka3(b3、c3)なら 8.Kh6 で白キングがg2へ戻る。

8.Qf1+ Kb2 9.Kh6 で白が勝つ。

 以下の想定手順は 9…Qc6+ 10.Kg5 Qd5+ 11.Kg4 Qe4+ 12.Kg3 Qg6+ 13.Kh2 Qh6+ 14.Kg1 Qf8 もう有効なチェックがない。15.Qf6+ Ka2 16.Kf1! この後は Qe6-e8 である。図95では勝ちに至る他の手順もある。しかしここで挙げた手順が最も参考になる。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(96)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 詳しい分析によりビショップ列のポーンの場合は白の勝ちの可能性が非常に大きいことが示されている。しかし中央列のポーンの場合よりは克服すべき困難が多い。今度はナイト列のポーンを調べてみよう。黒の受けの可能性は広がるがそれでもほとんどの場合白が勝つ。一例として図96を挙げれば十分であろう。

 図96

 ここでも適度に白に有利な局面を選んだ。白キングがd2に到達するために必要な長たらしい手順は省略してある。白の手番ならば 1.Qf2 ですぐに勝ちとなる。そこで黒の手番として考えよう。

1…Qf7

 1…Qe6 は 2.Qa7+ Kb2 3.Qb8+ Ka1 4.Qa7+(4.g8=Q? は 4…Qe3+! でステイルメイトになるのでだめである)から 5.g8=Q で黒が負ける。1…Qg8 も 2.Qg4 の後黒は2…Qd5+ で本譜の手順に戻らなければならない。1…Qg8 に対して白は 2.Qd7 でも勝てる。

2.Qg4!

 最も明快な勝ちへの手順である。白の狙いは自分のキングをg1に置くことである。黒はチェックに活路を見出さなければならない。

2…Qd5+

 2…Qf2+ は 3.Kd3 で黒はこれ以上チェックをかけられない。2…Qg8 は 3.Ke1 で白が勝つ。

3.Ke1!

 白は数多くのチェックから逃れるために正確に指さなければならない。例えば 3.Ke2 だと 3…Qb5+ 4.Kf2 Qb6+ 5.Kg2 Qc6+ 6.Kh2 Qh6+ で永久チェックから逃れられない。

 白キングは黒からの有効な斜めチェックが無くなるようにg列に行かなければならない。

3…Qh1+

 3…Qe5+ なら 4.Qe2+、3…Qa5+ なら 4.Kf1 さらに 3…Qg8 なら 4.Kf2(5.Kg1 の狙い)Qf7+ 5.Kg1 Qa7+ 6.Kh1 である。

4.Kf2 Qh2+ 5.Qg2 で白が勝つ。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(97)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン対クイーン+ポーン

 ルーク列ポーンは勝つ見込みが非常に薄いので調べない。理由はキングがチェックから逃れることが難しいからである。本項で採り上げた例は比較的少ない。それでも幾つかの重要な結論を引き出すことができる。第一にどちらのクイーンも盤上の任意の地点に速やかに移動できるように中央部の要所を占めるように努めなければならない。第二に白は自分のキングも公然と活用しなければほとんど局面の進展を図ることができない。第三に黒は最も効果的にチェックをかけるために自分のキングをポーンからできるだけ遠い所に置かなければならない。このためには自分のキングを盤端または隅に置くのが通常は最善である。読者は攻めと受けの手段に慣れるために似たような局面で色々試してみるのが良い。

 本項を終わる前にナイト列ポーンで起こる可能性のある局面について指摘しておかなければならない。

 図97

 遠い昔にロッリが示したように黒はすぐに強制的に引き分けにすることができる。1…Qh4+ 2.Qh7 2.Kg8 なら 2…Qd8+ 3.Kf7 Qd7+ 4.Kf6 Qd4+! 5.Kg6 Qg4+ である。2…Qd8+ 3.g8=Q 3.Qg8 なら 3…Qh4+ である。3…Qf6+ 4.Qgg7 Qd8+ 5.Qhg8 Qh4+ 6.Q7h7 Qf6+ 白は二つのクイーンがあるにもかかわらず永久チェックから逃れることができない。

 白に2個以上のポーンがある場合は通常は白が簡単に勝てる。そこで次は両方にポーンがある局面を考えることにする。

(この節続く)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(98)

第3章 クイーン・エンディング

3.3 クイーン対クイーン(+ポーン)(続き)

 クイーン+ポーン対クイーン+ポーン

 この場合も可能な局面があまりに多くてほとんど体系化できない。さらに実戦では両方にポーンが残っているのが普通なのでこのような局面はほとんど実戦の分野に属している。そこでここでは2ポーン対1ポーンの興味深い局面だけを分析してみよう。

 図98 白の手番
フリードマン対ギルク、1936年

 白は強力なパスポーンを持っているが黒クイーンが利いているので前に進めない。キング翼のそれぞれのポーンはチェックからの防ぎとなっている。しかし白は以下ような巧妙な手順で勝つことができる。

1.Qe3

 この手は 2.Qe7+ Kg6 3.Qe8+ から 4.a8=Q を狙っている。また白キングが安全にg3の地点に下がれるようにもしている。

1…Qa2

 機知に富んだ受けである。白の狙いの手順の最後で黒クイーンがh2に行って詰みになるのでその防ぎになっている。1…Kf8 では 2.Qh6+ でf6のポーンがチェックで取られる。1…Kf7 は 2.Qb3+ でaポーンがすぐにクイーンに昇格できる。しかし 1…Qa4(e8に利いている)なら白の勝ちはそれほど簡単でない。2.Qe7+ Kg6 3.Qb7 Qa2 でも 2.Qb6 Qe4! でも黒の反撃が功を奏する。白の勝つ手順は次のとおりである。2.Kh5! Kf7 2…Qa5+ なら 3.g5 3.Qd3! Ke7 3…Qa5+ なら 4.Qf5 Qd2 5.Qh7+ Ke6 6.Qg8+ から 7.a8=Q 4.Qh7+ Kd6 5.Qb7 Qa5+ 6.Kg6 Qg5+ 7.Kf7 で白が勝つ。

2.Kg3 Kf7

 3.Qe7+ から 4.Qe8+ を防いだ。

3.Qd3!

 次の手順でも勝てる。3.Qe4! Qa3+ 4.Kh4 Qb2 4…Qa2 なら 5.Qh7+ Kf8 6.a8=Q+!、4…Qd6 なら 5.Qh7+ Ke6 6.Qc2 である。5.Qc4+ Kg6 5…Kg7 なら 6.Qc7+ から 7.a8=Q 6.Qd3+ から 7.a8=Q で白が勝つ。

3…Kg7 4.Qd7+ Kh6

 一見受かっているように見える。

5.g5+! Kxg5

 5…fxg5 なら 6.Qc6+、5.Kg6 なら 6.Qe8+ でどちらもその後 7.a8=Q である。

6.Qg7+ Kf5

 6…Kh5 は 7.Qh8+ である。

7.Qg4+ で白が勝つ。

 7…Ke5 8.Qf4+ の後白クイーンがf3又はe4でチェックをかけaポーンがクイーンに昇格する。

 前に述べたように両方にポーンがあるその他のエンディングは実戦例の節で採り上げる。

(この節終わり)

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(99)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 これまでクイーン対ルーク、対ポーン、対ルーク+ポーンを採り上げてきた。クイーン+小駒1個は一般に例外を除き単独のクイーンに勝てない。同様にクイーン対1ルーク+1小駒は通常は引き分けである。一方クイーンは小駒1個に対して容易に勝てる。しかし小駒1個と敵陣深く進攻した1ポーンは引き分けることがある。

 単独のクイーンに対して2ルーク、2ビショップ、2ナイト、1ビショップ+1ナイトは駒の配置による。これら四つの場合を順に考えてみよう。

 クイーン対2ルーク

 このエンディングは通常は引き分けである。そこで黒キングの不利な位置のせいで2ルーク側が勝つ例外的な局面を分析してみよう。

 図99
リンク、1916年

1.Rh7+ Kg8 2.Rhe7

 白の初手は黒クイーンからg8の地点を奪うためである。それから黒クイーンの脱出も防いだ(1.Rf7 Qd6!)。白は黒のこの手を常に警戒しなければならない。もし許せば黒に永久チェックの機会を与えてしまう。以下のルークの動きはこの関係から理解することができる。

2…Kh8

 黒クイーンは横に動くと 3.Rg7+ Kh8 4.Rh7+ Kg8 5.Rbg7+ Kf8 6.Rh8+ で取られてしまうので横に動けない。

3.Rbc7!

 なぜこの枡なのか。その意味は 3…Qg8 に対して 4.Kf1! で応えることにある。この時黒クイーンはc4の地点に来ることができない。そして 4…Qf8+ 5.Rf7 Qg8 の後 6.Kf2! で黒は手詰まりに追い込まれクイーンを取られるか詰まされる。従って黒は待機を続けなければならない。

3…Kg8 4.Ra7

 4.Rcd7 でも本譜と同様に勝てる。しかし 4.Ke1 Kh8 5.Rf7 は 5…Qb4+ があってだめである。4.Rb7 Kh8 は黒の2手目の局面に戻ってしまう。

4…Kh8 5.Rf7 Qe8+

 5…Qg8 なら白キングがf列のどの地点に行っても白の勝ちになる。

6.Kf2!

 6.Kf3? は 6…Qc6+、6.Kf1? は 6…Qb5+ があって良くない。先に触れた 4.Rcd7 なら白キングはこの二つの地点でも良かった。

6…Kg8 7.Rg7+ Kf8

 h8に行ったら前に述べた手順でクイーンが取られる。

8.Rh7! Kg8

 黒には有効なチェックがない。しかも黒クイーンはa8とh8での詰みを同時に防ぐことができない。

9.Rag7+ Kf8 10.Rh8+ で黒クイーンが取られる。

 クイーンが2ルークに勝つことも可能だが2ルークが離れ駒になっている場合に限られる。つまりルークがもう一つのルークと連結していないかキングによって守られていない場合である。どちらかに小駒1個が加われば通常は加わった方に十分な勝ち目がある。クイーン対1ルーク+2小駒もクイーン側が分が悪いが通常は引き分けに終わる。

(この節続く)

2013年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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[復刻版]実戦に役立つエンディング(100)

第3章 クイーン・エンディング

3.4 クイーン対他の役駒

 クイーン対2ビショップ

 クイーン対複数の小駒のエンディングの勝敗は通常は駒の優劣による。小駒4個は通常勝つ。小駒3個はせいぜい引き分けである。小駒2個は不利である。まず2ビショップが持ちこたえることのできる図100から始めよう。

 図100
ロッリ、1763年

 図100は黒が目指さなければならない体勢を示している。2ビショップは並ぶのが最良で敵キングの前進を防ぐ。黒キングは隅の近くの2段目でビショップに接しているのが最善である。これにより駒の動く十分な余地があり両翼からの攻撃からも保護されている。受けの手段は次のようになる。

1.Qd7+ Kg8!

 1…Bf7? は誤りで 2.Kf5! で白キングが近づくのを許し負けてしまう。
a)2…Bc3 3.Qa7 Bb2 ビショップが他の枡に行くことはできないし 3…Kg8 は 4.Qb8+ で負ける。4.Qb6 Ba3 4…Bc3 は 5.Qg1+ Kh7 6.Qh2+ Kg8 7.Qb8+ Kh7 8.Qc7 でビショップを取られる。5.Qd4+ Kf8 5…Kg8 は 6.Kf6 Kf8 7.Qd8+ Be8 8.Ke6 で白が勝つ。6.Qa1 作局者の正解手順は 6.Qh8+ Ke7 7.Qe5+ Kf8 8.Kf6 である。6…Bb4 6…Be7 なら 7.Qh8+ Bg8 8.Kg6、6…Bd6 なら 7.Qh8+ Ke7 8.Qf6+ で白が勝つ。7.Qh8+ Ke7 7…Bg8 なら 8.Kg6 である。8.Qe5+ これで黒のb4のビショップが取られる。
b)2…Bb2 2…Ba1 は 3.Qa7 Bb2 4.Qb6 でa)と同じになる。3.Qa7 Bc3 4.Qg1+ Kh7 5.Qh2+ Kg8 6.Qb8+ Kh7 7.Qc7 でどちらかのビショップが取られる。

2.Qe6+ Kg7 3.Kf4 Bh7

 黒はもちろんビショップを自分のキングの近くに置いておかなければならない。しかし同時に Kf5 も防がなければならない。3…Bf7 は 4.Qd7 Kg6 5.Qg4+ から 6.Kf5 で白が勝つ。

4.Qd7+ Kg6

 4…Kg8 の方が安全だが本譜の手でも引き分けになる。

5.Kg4 Bg8 6.Qe8+ Kg7

 6…Bf7 7.Qd7 Bg8 でも良い。

7.Kf5 Bh7+ 8.Ke6 Bg8+ 9.Kd7 Bf7

 盤を90度回転させれば図100とほぼ同じような局面になった。白は何も進展がなかった。他に何かする余地もない。10.Qe4 Bg8 11.Qg4+ Kf7 12.Qh5+ Kg7 13.Ke8 の後最も簡明な手順は 13…Be6 14.Qf3 Bf7+ 15.Kd7 Bg8 である。この局面は引き分けである。

 盤の中央部でも2ビショップはクイーン相手にしばしば引き分けにすることができる。しかしその手順ははるかに複雑でほとんど我々の実戦的な興味を引かない。

(この節続く)

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