フランス防御の完全理解の記事一覧

フランス防御の完全理解(1)

はしがき

 チェスの布局を習得するためには根底を成す戦略と戦術の着想を理解することが必要不可欠である。戦略の本質にかかわる問題は一般的な「どちら側にキャッスリングすべきか」や「どこを攻撃すべきか」から、「ここで黒枡ビショップ同士を交換すべきか」や「キング翼への狙いに g3 突きと h3 突きのどちらで対処すべきか」のようなもっと具体的な問題にまで及ぶ。

 我々の考えでは戦術の着想は戦略の全般的な作戦の状況の中で最もよく理解できる。だから上記の最後の戦略の問題で g3 突きと h3 突きのどちらが正しい判断かはそれによって生じる戦術の着想によって決まってくる。チェス選手の最高の資質は盤全体での「直感」である。局面を瞬間的に判断するマスターは戦術と戦略の主眼点を精密に調べることはしない。したがって我々もそのようにすることは追求しなかった。

 布局の具体的な手順の詳細な知識を持つこともきわめて重要である。少なからぬ天賦の才能を持った選手でも詳細な布局の研究で完全に武装した相手に負かされることがよくある。定跡の洪水が試合開始時にランダムに駒を配置するというフィッシャーの提案によってせき止められなければ、戦略と戦術の主題の知識を布局の手順を暗記することと組み合わせることは真剣な選手にとって必須である。

 本書の特色の許す限り最新の定跡の判定を与えるように努めた。しかし本書の出版でフランス防御の定跡が急に終わりを迎えるとは考えていない。フランス防御は実戦で使われ続ける。新手が生み出され、当座は有望そうな手が「本筋でない」として放棄され、古い捨てられた変化が復活するかもしれない。

 定跡がどのように発展するか予想できる者はいない。我々の希望はフランス防御の基本的な原則を明らかにし執筆時点での定跡の現状を述べることである。しかし我々に予知の能力があるわけではない。だから読者には『チェス新報』のような書籍で明らかにされる定跡について行くことを勧める。しかし予期しない手に出会ったときは、それが定跡の新手にせよ単なる自分の知らない手にせよ、本書の勉強が良い応手を考え出す助けになることを願ってやまない。

ニール・マクドナルド
アンドルー・ハーリー

2012年11月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(2)

序章

 本書の題材は従来のような細分化された戦法に従って分類されているのではなく、盤央のポーンの形に基づいて分類されている。フランス防御の出だしの 1.e4 e6 が決まったあとは、通常の指し手は 2.d4 d5 と続く(他の手については第10章で簡単に考察する)。

 

 中原の主要な3型がここから生じる。まず、白は e4-e5 と突き越すことができ、そのとき黒は …c7-c5 と突くのが普通である。この型の中原は最初の6章で考察する。一方黒が …c7-c5 突きを遅らせる戦型は第10章で考察する。次に、白は争点を維持して黒に …d5xe4 と取らせることができる。このポーン交換によって生じる中原の型は第7章で考察する。最後に、白はd5の地点でポーンを交換することができる。この型の中原は第8章と第9章で考察する。各章の内容をもう少し詳しく説明すると以下のようになる。

第1章

 白が e4-e5 と突き越す。黒が …c7-c5 突きで応じ、白が c2-c3 と突いてdポーンを支える。これを「突き越し中原」と名づける。

 

第2章

 これは第1章の進行版で、黒がd4の地点でポーンを交換してから …f6 突きで白の連鎖ポーンを攻撃し exf6 のあと駒でf6のポーンを取り返した局面を詳しく考察する。その局面は白がd4の地点に弱点を抱え、黒がe6の地点に弱点を抱えている。

 

第3章

 これも第1章の進行版で、白が早く f2-f4 と突いて中央の連鎖ポーンを安定させた局面を詳しく考察する。

 

第4章

 e4-e5 突きと …c7-c5 突きの交換のあと白がd4のポーンを c2-c3 突きで支えないかもしれず(または突けないかもしれず)、c5の地点でポーンを交換するかd4の地点でポーンを交換させる。生じるポーン形を「古典中原」と名づける。

 

第5章

 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 のあと独特の「ビナベル中原」ができあがる。白の二重cポーンに特徴がある。

 

第6章

 第5章に続いて黒の黒枡ビショップの交換でキング翼が弱体化し、白が Qg4、Qxg7 そして(…Rh8-g8 のあと)Qxh7 と指せる。黒の方は …c5xd4 から …d4xc3 と指すのが普通で、次のような典型的なポーン形になる。これを「毒入りポーン中原」と名づける。

 

第7章

 白が黒に …d5xe4 と交換させる(あるいは白が e4xd5 と取り黒が駒で取り返す)。これを「ルビーンシュタイン中原」と名づける。

 

第8章

 白が e4xd5 と取り黒が …e6xd5 で応じる。これを「交換中原」と名づける。

 

第9章

 これは第8章の進行版で、黒が …c5 と突いてc5のポーンとd4のポーンを交換しd5に孤立ポーンが残る局面を詳しく考察する。これを「孤立dポーン中原」と名づける。

 

第10章

 ほかに適合しない中原をまとめて扱う。特に黒が e4-e5 突きにすぐに …c7-c5 と突かない手順と、白が早く d2-d4 と突かない手順を扱う。

(この章終わり)

2012年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(3)

第1章 突き越し中原

 

概説

 1.e4 e6 2.d4 d5 のあと白は 3.e5 ですぐに連鎖ポーンで締め付けることができる。これが突き越し戦法である。d4とe5のポーンで白は陣地の広さでかなり優位に立つ。これは基本的には白の駒の方が黒の駒より動きが自由であることを意味する。従ってもし白が駒を好所に展開できれば、来るべき中盤戦で機動力を存分に発揮できることになる。例えばキング翼で周到に準備したポーンの進攻で黒に攻撃を始められる。

 そこで黒は白の中原に最大限の圧力をかけるように努め、まず側面から打撃を与えて解体しようとする(この章では黒が …c5 突きで「一撃」を加え白が c3 と突いて応じた局面を分析する)。黒がそれに成功し白の中原が解体されれば、黒の駒は活動的になり威力を発揮する。しかし上手な選手に対しては黒は自分の作戦がこのように完全に成功することを期待することは実際上できない。代わりに黒はもし白がポーン中原を維持するためにクイーン翼の駒を不自然に動かしキャッスリングの放棄さえ余儀なくさせれば満足する。白のクイーン翼の駒がかなり苦労して展開すれば広さの優位は吹き飛んでしまう。あるいは黒はそのように期待している。実戦では普通どのようなことが起こるのかを見ていこう。以下は典型的な攻防の要約である。

(この章続く)

2012年11月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(4)

第1章 突き越し中原(続き)

d4の地点をめぐる戦い

 

 黒はナイトをc6とf5に置きクイーンをb6に出すことによりd4の地点を直接攻撃することができる。白はいくつかの方法でd4の地点を直接守ることができる。d1のクイーンとf3のキング翼ナイトはいつも防御に登場する。そして白は Na3-c2 と指せるし、および/またはクイーン翼ビショップを Be3、 Bd2-c3 または(b3 または a3 から b4 のあと)Bb2 によって防御につけることができる。

 Be3 については少し説明が必要である。この手はもちろん黒が …Qb6xb2 と指せない場合にのみ可能で、先に a3 から b4 と突くか続けてすぐに Qd2 と守らなければならない。b3 と突いて Be3 と出るのはa5-e1とa3-c1の斜筋が弱くなるので一貫性がない。特に白は …Nxe3 を恐れない。なぜなら fxe3 のあとd4のポーンが安全になりf列が素通しになるからである。

 Nc3-e2 と引くのは(他の章の)似た局面では一理あるが、突き越し戦法では黒が非常に迅速にd4の地点を攻撃してくるので白にそのような捌きの余裕はめったにない。白はビショップを展開するためにまず Bd3 と指さなければならない。このためクイーンによってd4の地点が守られなくなる。

 白は戦術的手段によってd4の地点を守ることができる。例えば・・・

 

 ここで白は …Nfxd4 を恐れない。なぜなら Nfxd4 Nxd4、Nxd4 Qxd4、Bb5+ によってクイーンが落ちるからである。これは初心者用のよくあるはめ手である。しかしその戦術に備えた …Bd7 のあとでも白はもっと巧妙な O-O(または Kf1!?)を試みることができる。それでも …Nfxd4 なら Nfxd4 Nxd4、Be3 Bc5、b4! で白の駒得になる。

 

 白は攻撃駒を取ることにより、あるいはそうなりそうな駒、特にf5の(に来る)ナイトを取ることにより、間接的にd4の地点を守ることもできる。

(この章続く)

フランス防御の完全理解(5)

第1章 突き越し中原(続き)

白が Bxh6 と取る

 ビショップでh6の黒ナイトを取ることにより白は自分の「不良」ビショップを犠牲にするだけで黒のキング翼を弱める。これの何がいけないのだろうか?まず白は黒が中間手の …Qxb2 をやってのけられないことを確認しておかなければならない。変化によっては白はビショップを引き黒クイーンをa1の地点で捕獲することができる。しかしそれ以外では白は交換損と1ポーン損をこうむるだけである。

 

 次に、黒のキング翼はそれほど弱くない。…gxh6 と取ったあとg7の地点がビショップのために空き、あとで …f6 と突けばd4の地点にさらに圧力がかかる。黒が強気ならば …Rg8-g4 と捌くこともできる。

(この章続く)

2012年11月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(6)

第1章 突き越し中原(続き)

白が Bxf5 と取る

 白はf5のナイトを普通はd3のビショップで取ることもできる。Bxf5 exf5、Nc3 Be6 となったあと局面は閉鎖的になる。黒のe6のビショップがほんの巨大ポーン程度としてしか働いていないので、恐らく白がやや優勢である。

 

 しかし白は黒からの …f4 と突いてポーンを犠牲に自陣を解放する手や、キング翼の多数派ポーンを生かして …Be7 から …g5 と突如攻撃してくる手に注意しなければならない。

(この章続く)

2012年11月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(7)

第1章 突き越し中原(続き)

白が g4 と突く

 

 どのような時に g4 のようなポーン突きが陣地を広げ攻撃することになり、どのような時に自陣を弱めることになるのだろうか。それは選手の判断による。白はすぐに(Ne1 または Nh4 のあとで)f4 と突いていくことができるとき最も満足できる。黒は g4 突きに対して …Nfe7(白陣に弱点が生じたことに満足し、たぶんあとで …h5!? と突いていく)、…Nh4(d4の守り駒と交換する)または …Nh6(すぐにごろつきポーンと対決する)で応じることができる。

(この章続く)

2012年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(8)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …Bxa3 と取る

 同様に黒は例えば …Bxa3 と取ってd4の守り駒またはその可能性のある駒を消去することによりd4の地点を間接的に攻撃することができる。

 

 黒は白のポーン陣形を弱めるが(白が既に Be3 と指していれば …Qa5+ ですぐにポーンが取れるが)、自分の良く働いている黒枡ビショップを犠牲にすることになる。

(この章続く)

2012年11月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(9)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …Nb4 と指す

 

 黒は …Nb4 のあと …Nxc2 と取って白のd4の重要な守り駒を2個減らすことを狙っている。白は Ne3 Nxe3、fxe3 と指すことはできるが Bxe3 と取り返すことはできない。なぜなら黒が …Nc6(…Qxb2 の狙い)から …Bb4(+) と応じることができるからである。最初に戻って白が Nxb4 と取ると …Bxb4+ と取り返されて、Bd2 ではdポーンを取られるので Kf1 と指さなければならない。しかし白は g3(または g4)から Kg2 で手動でキャッスリングできるのであまり気にする必要はない。白は相手のd4のナイトでチェックをかけられない地点にキングがいる戦術上の利点も得られる(「d4の地点をめぐる戦い」に現れた)。しかしf列での電撃攻撃には注意しなければならない。

(この章続く)

2012年11月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(10)

第1章 突き越し中原(続き)

黒が …f6 と突く

 読者に注意を喚起すると、黒はほとんどすべての戦法で …f6 と突く価値がある。

 

 …f6 と突いたあと黒はクイーン翼ビショップで(…Bd7-e8-h5)、または exf6 Rxf6 から …Rxf3 の交換損の犠牲で、f3のナイトを取り除くことができる。

 白が …f6 突きに exf6 で応じれば、黒は白の広さの優位を減らすことに成功したことになる。通常黒は駒で取り返し、f列(例えば exf6 Rxf6)や白のdポーン(例えば exf6 Bxf6)にさらに圧力を加える手段ができる。この型のポーン陣形は(d4でポーン同士を交換したあと)次の章で詳細に考察する。

 しかし収局では(または中原が閉鎖されているとき、特にc列が閉鎖されていて黒が安全にクイーン翼にキャッスリングできる中盤戦では)、黒は …gxf6 と取り返すことができるかもしれない。そして好機に …e5 と突いていって中原をポーンで征服できるかもしれない。

 

 最後に、白は exf6 と取る代わりに黒に …fxe5 と取らせることもできる。ポーンが既にd4の地点で交換されていれば、白は dxe5 と取って弱いdポーンを解消しd4の要所を確保する(例えば b4-b5 から Nf3-d4)。これに対して黒はそれほど弱くないe5のポーンに圧力を集中し、半素通しf列とパスd5ポーンの活用に期待することができる。

(この章続く)

2012年11月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(11)

第1章 突き越し中原(続き)

白が a3 と突く

 白はあとで b4 と突く意図で a3 と突くことがある。これでb2の地点が空き Bb2 が可能になってd4への守りが増える。さらに黒からの …Bb4+ と …Na5 もなくなる。従って黒はクイーン翼での陣地を奪われる。

 

 最後に、白は exf6 と取る代わりに黒に …fxe5 と取らせることもできる。ポーンが既にd4の地点で交換されていれば、白は dxe5 と取って弱いdポーンを解消しd4の要所を確保する(例えば b4-b5 から Nf3-d4)。これに対して黒はそれほど弱くないe5のポーンに圧力を集中し、半素通しf列とパスd5ポーンの活用に期待することができる。

 白は a3 と b4 突きを Nb1-c3-a4-c5 の捌き(途中でd4の地点を攻撃しているb6の黒クイーンを追い払うことがよくある)と絡めるのが普通である。c5の白ナイトは黒にとって非常に脅威になりうる。特に黒が …a6 と突いていて(例えば b4-b5 突きを止めるため)…b6 と突けなくなる時、または …f6 と突いていてe6のポーンが弱体化している時はそうである。

 

 だからd4でポーン同士がまだ交換されていなければ、黒が a3 突きに …c4 と応じることがよくある。これでd4の地点に対する圧力がまったくなくなるが、反面白の b4 突きを止めることになる。黒の作戦は局面を閉鎖的に保つことである。特に白のクイーン翼でのどんな侵攻も防ぐか効果的でなくすることを望んでいる。例えばクイーン翼ナイトをa5に、キング翼ナイトをg8からc8を経由してb6に配置してから …Ba4 と指す。

 

 また、黒クイーンはc6の地点からa4の地点へ、またはa4のビショップと協力するためにg8の地点を経由してh7の地点へ行くことさえできる。この手順では黒がクイーン翼にキャッスリングすることがよくある。白の作戦は b3 突きを果たすこと、または黒駒がこの手を防ぐことに没頭している間にキング翼で敵陣突破を図ることである。

(この章続く)

2012年11月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(12)

第1章 突き越し中原(続き)

黒のクイーン翼での指し方

 

 黒はクイーン翼の方に駒が多いのが普通で、白にb2と特にd4の地点を守らせる。そしてしばしばその圧力を利用して、…Na5 からもちろんb6のクイーンの助けで …Bb5 と指すことにより自分の「不良」白枡ビショップを白の「優良」白枡ビショップと交換することに努める。a5のナイトもc8のルークの支援でc4の地点に飛び込める。

 

 白はもちろんたやすく事を運ばせないが、たとえ a3 から b4 と突いて自陣を広げることに成功しても、それでも黒は手の込んだ …a5、b5 Na7、a4 Nc8 という捌きのあと …Nb6 から …Nc4 によってc4の地点を目指すことができる。この捌きを有効にするためには黒はc8とb6の地点を空けておかなければならないことに注意がいる。白が a4 と突いた場合も黒のビショップがb4の地点に行ける。

 …a5 突きは白がクイーン翼のポーンを全然突いていなくても役に立つことがある。というのは黒が駒をb4に進めてaポーンで取り返しa2ポーンに通じるa列を素通しにする策を講じることができるからである。もし白が a3 または b3 と応じれば …a4 突きが良い手になる。

(この章続く)

2012年11月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(13)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例

第1局
シエイロ=ゴンサレス対M・グレビッチ
ハバナ、1986年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3

 クプレイチクの指す 5.Be3!? には黒はあまり悩まされる必要がない。例えば1996年米国でのシャケド対J・ワトソン戦では 5…Nh6! 6.Bd3 Qb6 7.Qd2 Ng4 8.Nf3 Nxe3 9.fxe3 Be7 10.O-O c4 11.Be2 O-O 12.Kh1 f6 13.exf6 Bxf6 と進んだ。

5…Nge7

 これが最も流行している手順である。「主手順」の 5…Bd7 と古典の 5…Qb6 は後の試合で考察する。注意を要するのはすぐに 5…f6 と突く手で、6.Bb5! が良い応手になりe5の地点を支配される。最後に、白に 6.Na3 でなく 6.Bd3 と指させる目的の 5…Nh6!? は 6.dxc5 が良い応手となることがスベシュニコフによって示された。

6.Na3

 黒の手順に対して白は 6.Bd3 cxd4 7.cxd4 Nf5 8.Bxf5 exf5 と指すこともできる。この閉鎖的な局面はさして黒が指しやすいことはない。このあとの手順の例を二つ挙げると、1986年ソチでのスベシュニコフ対チェルニン戦では 9.Nc3 Bb4!? 10.Bd2 Bxc3 11.Bxc3 Be6 12.Qd2 a5! = と進み、1992年マニラ・オリンピアードでのティプセイ対グダンスキー戦では 9.O-O Be7 10.Nc3 Be6 11.Ne1(11.Ne2 g5!)11…Qb6 12.Ne2 O-O 13.Kh1 Kh8 14.Nd3 +/= と進んだ。

6…cxd4 7.cxd4 Nf5 8.Nc2 Bd7 9.Be2 Nb4

 9…Qb6 と 9…Qa5+ はそれぞれ第2局と第3局で分析する。

10.Nxb4

 1993年サンクトペテルブルグでのスベシュニコフ対ドレエフ戦では白は 10.O-O と指し、次のように黒の風変わりな指し方のあと白が圧倒的に優勢になった。10…Nxc2 11.Qxc2 h5?!(g4 と突かせないようにしてf5のナイトを堅固にする意図だが、フランス防御の突き越し戦法では滅多に良い手とならない。なぜならキング翼、特にg5の地点をひどく弱め、黒キングが安息の地を得られなくなるからである。1995年ビールでのカンポーラ戦ではドレエフは 11…Qb6 12.Qd3 Rc8 13.Rd1 h6!? 14.h4 a6 15.a4 Bb4 と改良し勝った)12.Bd2 Be7(12…Qb6 13.Bc3 Bb5 なら +/= にしかならない)13.Bd3! Qb6?!(13…Rc8 の方が良い。とっぴな 13…g5!? は 14.Bxf5 exf5 15.Rfc1 でスベシュニコフによると±だそうである。しかし奔放な 15…f4!? 16.h4 gxh4 17.Bxf4 h3 ではっきりしない)14.Bxf5 exf5 15.Bg5!(有利な黒枡ビショップ同士の交換を行なう)15…Bxg5 16.Nxg5 Qxd4 17.Rfd1 Qh4 18.Qd2! Qc4(18…Be6? は 19.f4! で黒クイーンが閉じ込められる)19.Rac1 Qb5 20.a4! Qb3 21.Rc3 Qb6 22.Qxd5 O-O 23.a5!(23.Qxd7?? Rad8)23…Qxb2 24.Qf3!(h5の弱点のせいでついに黒が滅ぶ。25.Qxh5 のためにビショップを救う暇がない)24…g6 25.Rxd7 白の楽勝に終った。

10…Bxb4+ 11.Bd2 Qa5 12.Bxb4 Qxb4+ 13.Qd2 Qxd2+ 14.Kxd2 Ne7

 白の手番 

(この章続く)

2012年11月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(14)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

15.Rhc1

 15.Rac1 の方がキング翼ルークを中央で役に立たせることができるので自然だった。

15…f6!

 黒は白の中原に対して眼目の攻撃を始めた。

16.Rc5

 これは当てずっぽうの手である。もちろん 16.Rc7? は 16…Bc6 でルークが捕まる。しかしクイーン翼のポーンを使って黒を締めつける方が良かった。16.b4! と突けばあとで …Nc6 と来たときに b5 と突くことができる。このあと分かるようにこれは非常に重要である。

16…Kd8!

 この手はc7の地点をおさえ、d7のビショップをe8からh5へ転送する準備になっている。

17.Bd3

 これは好手でh7のポーンを当たりにしてルークをh8に縛り付けている。そして 17…Nf5 には 18.Bxf5 exf5 19.Rxd5 と応じることができる。

17…Rc8 18.Rac1

 ここは 18.Rxc8+ と取る方が良かった。というのは実戦では当てのない白ルークがc5の地点に取り残されたからである。そのあと 18…Kxc8 には 19.b4! と突き 19…Be8 には 20.Re1! と応じることができる。黒は 21.exf6 の狙いに対処が難しい(もちろん黒が 20…Bd7 で19手目を取り消さなければの話である)。例えば 20…Kd7 なら 21.Bb5+ Nc6 22.Bxc6+ bxc6(この一手)23.Re3! Bh5 24.Ra3 で白の有利な収局になる。また 19…Nc6 なら 20.b5! Na5 21.Kc3 から 22.Kb4 となって、黒のナイトがa5の地点で遊び駒になる。

18…Rxc5 19.Rxc5

 19.dxc5 と取ると 19…Nc6 20.Re1(白は 20.exf6 と取りたくない。そう取ると 20…gxf6 と取り返され黒にあとで …e5 と突かれて強力な中原を作られる)20…Ke7 のあと …Be8-h5 からf3のナイトを当たりにされ白がe5の支配を放棄しなければならなくなる。

19…Be8!(図029)

 白の手番 

(この章続く)

2012年11月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(15)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

20.Ne1

 これでは黒に中原の締め付けを破らせてしまう。しかし 20.b4 突きは次のようにもう手遅れだった。20…Bh5 21.Ke3 Bxf3 22.Kxf3 fxe5 23.dxe5 Nc6 これで白ポーンが落ちる。この変化は白ルークがc5の地点で遊んでいる(e5の地点を守れない)ことを示している。これはまた白が適時に b4 と突くのがいかに大切だったかも明らかにしている。そう突いておけば黒ナイトがc6の地点から白の中原に圧力をかけるのを止めるためにb5の地点に突く選択肢があった。

20…Nc6 21.exf6 gxf6

 黒は望みのポーン中原を獲得した。まだそれほど優勢にはなっていないが、危険がすべて去ったことは確かである。

22.Ke3 Ke7 23.f4

 …e5 突きを防ぐのは良い方針である。

23…Kd6 24.Rc1 Rg8 25.Bxh7?

 この悪手で黒ルークを白陣に侵入させてしまう。25.g3! 突きのあとチェス新報第41巻の自戦解説によればグレビッチの意図は 25…Rg7 26.Nf3 Re7 27.Nh4 Bd7 だった。黒が …e5 と突く機会をうかがうのに対し白はただ待っているしかないので黒がわずかに有利だが、引き分けが順当な結果だろう。

25…Rh8 26.Bc2 Rxh2

 これで黒はポーン陣形の優位に加えて非常に強力なルークを持つに至った。まもなく黒ビショップがe4の圧倒的な地点を占め、白が持ちこたえられなくなる。

27.Ba4 Bg6 28.Bxc6 bxc6 29.Kf2 Rh4 30.Ke3 Be4 31.Rc3 Rg4 32.Ra3 Rg3+ 33.Nf3 Rxg2 34.Nd2 Rg3+ 35.Ke2 Rxa3 36.bxa3 c5 0-1

(この章続く)

2012年11月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(16)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

 突き越し中原は実際には多くの布局から生じる。次の例は実は 3.Bb5+ のシチリア防御から始まったが、前局のように白が収局でどのように …f6 突きを封じ込めることができるかをよく表わしている。

 白の手番 
ショート対マイルズ
マスター試合、1981年

 手番は白で、黒は 24…f6! 突きを狙っている。その時白が exf6 と取るしかなければ(しかし exf6 には …gxf6 でなく …Bxf6 と応じなければならないことに注意がいる。…gxf6 の方が陣形的には望ましいが残念ながら Ng4! でポーンが落ちる)黒は前局で見たように締めつけられた状態から脱することになる。そこで16歳のショートは普通はあり得ない退却の手を指した。

24.Ng1!

 これで黒が …f6 と突いてくれば f4 突きで中原を支えることができる。従って黒は締めつけられたままとなる。ここからの白の作戦概要はキング翼のポーンを突いていき、状況により f5 または g5 と突いて敵陣突破を図ることである。g1のナイトは中原の守りに役立てるためにe2に再配置されることになる。

24…Na8

 黒も珍しいナイト引きで可能性を良くしたがっている。しかしクイーン翼には白の目標がない。

25.Ne2 Nb6 26.f4 Ke8 27.g4 Kd7 28.Rg1 Na4 29.Nd1 Rh8

 30.g5 と突かれると 30…hxg5 31.fxg5 のあと白にパスhポーンの可能性ができるか、31.gxh6 gxh6 32.Rg7 によってルークに侵入されるので、それを牽制した。しかし白には別のポーン突きがあった。

30.f5!

 これはこの戦法における主眼のポーン突きである。白はf列を素通しにし、働きに優る小駒(この優位はもちろん陣地が広いことによりもたらされる動きやすさによるものである)でルークがf列を支配するのを保証する。

30…Nb6 31.Nf4 Rf8 32.Ne3 Rc8 33.fxe6+ fxe6 34.Ng6 Ke8 35.Rf1 Nd7 36.Ng2

 これは次に 37.N2f4 と行くつもりで、そうなれば黒は完全に手一杯になる。

36…Bg5 37.N2f4 Bxf4 38.Rxf4 a5 39.Nh8!

 これもショートの見事な捌きである。このナイトはd6の地点を目指している。

39…b6 40.Nf7 Ke7 41.g5 hxg5 42.Rf1

 この手は 42.Bxg5+ Ke8 43.Nd6# を狙っている。しかしあとで分かるように 42.Rf2! の方が良かった。

42…Nb4+ 43.Ke2 Rc2 44.Kd1 Rxb2

 白が 42.Rf2 と指していたらこの反撃は 45.Bxg5+ でルークを素抜かれるので不可能だった。だから黒は完全に敗勢だった。

45.Bxg5+ Kf8 46.Nd8+ Kg8 47.Rf7 Nf8?

 黒は 48…Rg2! と指さなければならなかった。もっとも 48.Rxd7 Rxg5 49.Nxe6 となって白が勝てそうである。

48.h6!

 これで白の駒得になる。今度は失敗せずに白が勝ちきった。

48…gxh6 49.Bxh6 Rg2 50.Rxf8+ Kh7 51.Bd2 Nd3 52.Nxe6 Nxb2+ 53.Kc1 Nc4 54.Bc3 Rg1+ 55.Kc2 Rg2+ 56.Kb3 b5 57.Nf4 Rf2 58.e6 b4 59.e7 Nd6 60.Nxd5 Re2 61.e8=Q a4+ 62.Qxa4 1-0

(この章続く)

2012年11月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(17)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第2局
ギド対フォイソル
モンテカティーニ、1994年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Bd7 6.Be2

 白はdポーンに煩わされないように 6.dxc5 と取ることもできるし(第16局で考察する)、ミルナー=バリーの 6.Bd3 で 6…cxd4 7.cxd4 Qb6 8.O-O!? のあとdポーンをギャンビットすることもできる。白は展開で差をつけ攻撃の機会を得るために気楽にポーンをくれてやり、黒が展開できる前にたたきつぶすことを期待している。しかし局面が閉鎖的なせいで白が動的な互角より多くを達成するのは難しい。このような直接的なやり方はチェスの超一流の階層では決してはやることがなかった。しかし多くのクラブ選手と一部の国際マスターにはミルナー=バリーを愛用する者がいる。だから用心するにこしたことはない。

 8…Nxd4 9.Nxd4 Qxd4 のあと最善の手順は 10.Nc3(10.Qe2 f6! =/+ ケレス、10.Re1 Ne7 11.Nc3 a6 =/+ エストリン)10…Qxe5 11.Re1 Qb8 12.Nxd5 Bd6 13.Qg4 Kf8 14.Bd2 h5 15.Qh3 のようである。そして1990年オスロでのピハラ対マクドナルド戦では次のように黒が優勢になった。15…Nh6!? 16.Ne3 Kg8 17.Nc4 Bc7 18.Qxh5 Nf5 19.Qg5 Bxh2+ 20.Kf1 Bb5! 21.b3 Qd8 22.Bxf5 exf5 23.Qxd8+ Rxd8 24.Bc3 Ba6! 25.a4 Bc7 26.Ke2 Rh4 -+

6…Nge7

 この手では 6…f6 と突くこともできる。例えば1984年ソチでのスベシュニコフ対バイセル戦では 7.O-O fxe5 8.Nxe5 Nxe5 9.dxe5 Qc7 10.c4! O-O-O! 11.cxd5 Qxe5 12.Bf3 exd5! 13.Re1 Qd6 ∞ と進んだ。

7.Na3

 他に有力な手は1990年グレステッドでのバシューコフ対レビット戦での 7.O-O Nf5(7…cxd4 8.cxd4 Nf5 には 9.Nc3 がある)8.Bd3 Nh4! 9.Nxh4 Qxh4 10.Be3 Qd8! = がある。

7…cxd4 8.cxd4 Nf5

 これで第1局と同じになった。別の作戦は 8…Ng6 で、1990年パンプローナでのデ=ラ=ビジャ対コルチノイ戦では 9.h4 Be7 10.g3 O-O 11.h5 Nh8 12.Nc2 f6 13.exf6 Bxf6 14.b3 Nf7 = と進んだ。

9.Nc2 Qb6 10.O-O

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(18)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

10…Rc8

 この手の意味は …Be7 を遅らせて、もし白が g4 突きでf5のナイトを突っついてきてもh6の地点に追放されずに済むようにすることである。代わりにこのナイトはe7の地点に戻ることができそこからg6の地点に再配置されて中原に影響を維持することができる。黒は事実上白に「こちらは 10…Rc8 でルークを好所に展開させた。そちらはこちらが …Be7 と指す(その時は g4 突きがもっと効果的になることは分かっている)のを待っている間に同じくらい有効な手があるか?」と言っている。

 …Be7 を遅らせて得をしようとする別の手は1988年ソ連でのスベシュニコフ対ドルマトフ戦に現れた。その試合で黒は 10…Na5!? と指した。以下は 11.g4 Ne7 12.Nfe1 Bb5 13.Nd3 h5!(これは白のポーンをそらしf5の地点を支配する通例の着想である)14.gxh5 Nf5 15.Be3 Nc4 で激戦になった。この 10…Na5 には 11.Bd3 と指させない余得もある。というのはそれに対して 11…Bb5 で有利になるからである。

11.Bd3

 d4の地点に対する黒のあらゆる圧力にもかかわらずこの手は防げなかった。以前の試合では白が対策を見つけられなかったために黒が次のように楽勝していた。11.Qd3?! a6!(黒は …Nb4 から …Bb5 と指すつもりである)12.g4 Nfe7 13.a4 Na5! 14.b4 Nc4(黒駒は一手ずつ好所についている)15.Qb3 Nc6 16.Rb1 Be7 17.Rd1 O-O 18.Be3 Qd8!(駒の再編成でc4のナイトを補強する)19.h3 b5 20.axb5 axb5 21.Ra1 f6!(ここから白の中原の眼目の解体を始める)22.exf6 Rxf6 23.Nfe1 Nxe3 24.fxe3(24.Nxe3 または 24.Qxe3 ではb4のポーンが落ちる)24…Qc7 25.e4 Rf2!!(これが決め手の手筋になった)26.Kxf2 Qh2+ 27.Ke3 Bg5+ 28.Kd3 Nxb4+! これで 29.Qxb4 と取っても 29…dxe4+ 30.Kxe4 Qxe2+ から詰みになるので白が投了した(ヤノフスキー対キンダーマン戦、ビール、1991年)。

 もちろんここでの 11.g4 突きの可能性を無視することはできない。黒のナイトを閑所に追い払うことはできないけれども、それでも自陣を広げこの戦法での基本的な着想の一つであることには変わりない。このあとの想定手順は 11.g4 Nfe7 12.Nfe1(白はナイトをg2からe3に捌いて f4-f5 突きに加勢させるつもりである。fポーンの進路を空ける別の手段は 12.Nh4 で、それに対して黒は 12…Ng6 は避けた方がよい。なぜなら 13.Ng2!-眼目の手-13…f6 14.f4 Be7 15.Be3 となって白が陣地の広さを誇るからである。そのため1992年ロシアでのスベシュニコフ対ウリビン戦では黒は 12…Nb4 と指した。以下 13.Nxb4 Qxb4 14.f4 Nc6 15.Be3 Be7 16.Ng2 となった時スベシュニコフの考えでは黒は 16…f5 と突いてキング翼での白ポーンの伸張をせき止めるべきだった)12…h5(12…Na5!?)13.gxh5 Nf5 14.Be3 となって、ここで黒は(1983年アテネでのスベシュニコフ対スカルコタス戦での)14…Nb4 でなく 14…Na5 15.b3 Bb5 で乱戦に持ち込むか、いっそのこと 14…Qxb2!? と取るべきである。

11…a5!?

 11…Nfxd4? は 12.Nfxd4 Nxd4 13.Be3 Bc5 14.b4! で駒損になるので駄目である。ここでの 11…Be7 は黒の布局の趣旨と相容れない。なぜなら 12.g4! Nh6(もちろんdポーンは Be3 があるのでまだ手をつけられない。一方 12…Nh4 13.Nxh4 Bxh4 は 14.g5 でビショップの退路を断たれ 15.Qg4 または 15.Qh5 で駒得を狙われるので危険である)13.h3! でh6のナイトが困った事態になるからである。本譜の他には 11…Nb4 や 11…Na5 もある。

12.a3

 これで黒がdポーンを取ってくればやはり b4! 突きがある。

12…a4!

 これは相手の弱体化したクイーン翼の白枡、特にb3の地点につけ込む目的である。狙いは …Na5 のあと …Nb3 または …Bb5、…Bxd3 そして …Nc4 と指すことで、そうなればナイトが手のつけられない駒になる。

13.Bxf5

 このビショップ切りで白の白枡への影響力がかなり弱まる。従って黒が展開を完了できれば当然展望に優るようになるので、その前に果敢で激しい打撃を黒にくらわす必要がある。

13…exf5 14.Ne3 Qb5

 これは不自然な手だが、代わりに 14…Be6 では 15.Qxa4 と取られる。本譜で黒は余裕を与えられれば、…Be7、…Be6 そして …O-O で陣容を固められる。そうなれば …Na5 から …Nc4 と指す用意ができて有望になる。だから白は迅速に動かなければならない。

15.b3!

 この手は黒クイーンの不如意な位置を利用している。この手に対して黒が 15…Qxb3 と取るのは 16.Qxb3 axb3 17.Nxd5 となって黒の中原が粉砕されるので破滅を招く。

15…axb3 16.Rb1 Be6

 黒は次のようにポーン得にしがみつく(というよりはできるだけ長くポーン得にしがみついて展開を完了する手数を稼ぐ)ことができた。16…Na5 17.Nd2?! Be7 18.Nxb3 O-O しかし 17.Bd2! という強手がありそうである。例えば 17…Bxa3 18.Bxa5 Qxa5 19.Qxb3 でd5のポーンを狙う。

17.Rxb3 Qa6 18.Bd2

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(19)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

18…g5??

 これは破滅的な作戦である。黒は主眼のポーン捨てを考えるべきである。18…f4! 19.Nc2 となればe6のビショップの利きが飛躍的に延びる。そして 19…Be7 20.Bxf4 O-O と筋良く指して 21…Na5 から 22…Nc4 を意図することができる。もし 21.Ne3 と来れば 21…Bxa3 と取る。あるいはまた 19…Bf5!? 20.Bxf4? Na5 21.Rb2 Nc4 と積極的に指すこともできる。どちらの場合も白枡のしっかりした支配がポーン損の完全な代償になっている(もっともそれを超えることはないだろうが)。

 実戦の手は …g4 と突いての反撃をもくろんでいる。しかし中原が開放的になり黒の展開不足が致命的になる。

19.Nxg5 Nxd4

 ともかくも黒は本章の初めの方で解説された主要な目標の一つを達成した。つまりd4の地点を支配した。しかし展開の効用、キングの安全、そしてポーン陣形のようなもっと当たり前のことを忘れないことが重要である。ここでは黒は明らかにそれらを忘れていた。

20.Nxe6 fxe6

 ギドはチェス新報第61巻で黒が 20…Nxb3 と取ると次のように見事につぶされる変化を挙げていた。21.Nxd5!(22.Nc7+ でクイーンを取る狙い)21…Qxe6 22.Bg5! これで 23.Nc7+! からd8で詰める狙いがある。

21.Qh5+ Kd7 22.Qf7+ Be7 23.Nxd5! Ne2+ 24.Kh1 exd5

 24…Nxg3+ なら 25.hxg3 Qxf1+ 26.Kh2 exd5 27.Rxb7+ で殲滅できる。

25.Bg5 Rce8 26.Rfb1 1-0

 b7のポーンが落ちて一巻の終わりである。

(この章続く)

2012年11月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(20)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第3局
シフエンテス対I・ソコロフ
オランダ選手権戦、1994年
突き越し戦法

1.e4 c5 2.c3 e6 3.d4 d5 4.e5 Nc6 5.Nf3 Bd7 6.Be2 Nge7 7.Na3 cxd4 8.cxd4 Nf5 9.Nc2 Qa5+

 9…Qa5+ の目的は白のクイーン翼ビショップをc1-h6の斜筋から誘い出して少し具合の悪いc3の地点に来させることである。さらに、白が g4 と突いて黒のナイトをf5の地点から追い払ってくれば、このナイトは Bxh6 を恐れることなくh6の地点に下がることができる。

10.Bd2 Qb6 11.Bc3 Be7 12.Qd2

 1987年ユーゴスラビアでのマルコビッチ対I・ソコロフ戦では 12.O-O a5 13.g4 Nh6 14.Nfe1 と続いた。ここでソコロフは 14…f5 15.h3 O-O 16.f4 fxg4 17.hxg4 g5! でねじり合いにするのはどうかと言っている。これは黒がかなり良さそうである。

12…a5

 白の手番  

(この章続く)

2012年11月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(21)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 この手の着意は適当な時機に …Bb4 と指すことである。それに対して Bxb4 と応じてくれば …axb4 と取って白のa2のポーンが弱くなる。このような交換はc3の障害物が移動するのでc列での黒の反撃の可能性も高まる。

13.O-O O-O

 ソコロフはすぐの 13…Bb4 も示唆している。f5のナイトが g4 突きで攻撃されてもe7の地点が空いている。

19.Kh1 Kh8 20.g4! Nh6 21.Rg1 Ng8

 これは …f6 と突く準備である。もちろんすぐに 16…f6? は 17.exf6 と取られて駄目である。黒がどう取っても白の戦力得になる。

17.g5!

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(22)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 黒の手番 

 この手は事実上 …f6 突きを不可能にしている。なぜなら gxf6 でg列が素通しになるので白の攻撃の可能性が危険なほど高まるからである。この白の手は卓抜で、キング翼攻撃の作戦の重要な一端を成している。

17…Bb4!

 ついにこの手がきた。g8のナイトはいずれe7に行きそれからf5に行く。そこは白の弱点で、ポーンによって守ることのできない要所である。

18.Bd3

 このビショップ出はf5の地点の戦いに備えている。

18…Nge7 19.Rg4?

 激しい局面ではたった一手の失着が命取りになることがある。ここで白がなぜ 19.Rg3 と指すべきだったかはすぐに明らかになる。

19…Rac8 20.Rag1

 シフエンテスは駒の大量集結を続けている。狙いは h4 突きから h5 突き、または Rg1-g3-h3 である。

20…Nf5!

 黒ナイトは絶好点に到達した。白はこのナイトを取り除かなければならない。さもないと白の攻撃が頓挫してしまう。

21.Bxf5 exf5 22.Rh4

 ここでこのルークがg4でなくg3にいたら(即ち白が 19.Rg3 と指していたら)白は 22.Ne3! と指すことができた(22…f4? 23.Nxd5)。そして 22…Ne7 23.Ng2! Bxc3 24.bxc3 となって白は Nf4 のあと h4 から h5 と突き進めて総攻撃の態勢が整うはずだった。白の駒の配置はほぼ理想形で、例えば黒が 24…Rc6 25.Nf4 Rfc8? と指してくれば 26.e6! Bxe6 27.Ne5 が非常に強力になる(この分析はチェス新報第61号のソコロフの解説を基にしている)。だから黒はまず 25…Be6 と指してeポーンを止めておかなければならず、それから …Rfc8 と指さなければならない。白はいつでもc3の地点に対する圧力を Ne2 で迎え撃つことができる。

 結論として白のルークが19手目でg3の地点に行っていたら 22.Ne3 から非常に激しい試合になっていた。しかし実戦のようにルークがg4にいては 22.Ne3? はもちろん単純に 22…fxg4 でルークを取られてしまう。

22…Bxc3 23.bxc3 Ne7

 白のナイトがg2にいてf4の地点を目指す(上の解説のように)のでなくc2の地点にいるので試合の収支は天と地ほどの違いが生じる。白は重大な問題を抱えている。24…Qb2 が黒からの一つの狙いで、24…Ng6 から …f4 もそうでd7のビショップの斜筋が通りh列の白ルークが不安定な状態におかれる。

24.e6!?

 この捨てばちの手は黒の正確な受けの前に無益に終る。

24…Bxe6 25.Ne5 f4!

 黒は自陣を解放するために一時的にポーンを返した。

26.Qxf4 Ng6 27.Nxg6+ fxg6 28.Qe3 Bf5

 白の手番 

(この章続く)

2012年11月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(23)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 局面が一変してしまった。白のポーンは救いようのないほど弱く、駒はばらばらに散らばっている。一方黒の駒はビショップを含めすべて好所を占めている。このビショップはつい今しがたまで大して働いていなかった。けれども10手前は形勢は「不明」で、白は明らかに駒の連係が良く黒キングに有望な攻撃を始めるところだった。形勢逆転における正しい戦略-そして誤った戦略-の効果とはそのようなものである。

29.Ne1 Qb2 30.Ng2 Rxc3

 陣形がつぶれるのに続いてたちまち駒割も差がつく。黒は次のように勝ちを収めた。

31.Qe7 Rcc8 32.Rf4 Rce8 33.Qc7 Qd2 34.Qxb7 Be4 35.Rxf8+ Rxf8 36.Qe7 Qxf2 37.h3 Rg8 38.Qa3 Rc8 0-1

(この章続く)

2012年11月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(24)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第4局
スベシュニコフ対カスパー
モスクワ、1987年
突き越し戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Qb6 6.a3

 この黒の手順に対して 6.Be2 は比較的無害であることが分かってきた。6…cxd4 7.cxd4 Nh6!(7…Nge7 8.Na3! は前局と同じシステムに移行する)のあと白は 8.Bxh6 Qxb2! も 8.Na3 Bxa3! も指すわけにいかず以下の手もあまり芳しくなかった。

 a)8.b3 Nf5 9.Bb2 Be7!?(9…Bb4+ 10.Kf1 O-O はキングの位置のおかげで白は 11.Nc3 と指せる)10.O-O Bd7 11.g4 Nh4 12.Nxh4 Bxh4 13.Na3 O-O 14.f4 f6 15.Kg2 fxe5 16.dxe5 Rf7 17.Qd2 Raf8 18.Nc2? g5! これは1992年デブレツェンでのヨーロッパチーム選手権戦のクプレイチク対ヘルトネック戦で、黒がはっきり優勢になった。

 b)8.Nc3 Nf5 9.Na4 Qa5+ 10.Bd2 Bb4 11.Bc3 b5! 12.a3 Bxc3+ 13.Nxc3 b4 14.axb4 Qxb4 15.Bb5 Bd7 =

6…c4

 黒はこのように局面を閉鎖的にする必要はない。これに代わる重要な手は 6…Nh6 で、通常は 7.b4(7.Bd3!? はもっと注目されてもよい)7…cxd4 と続き、ここで白にはクイーン翼ビショップの使い方に三通りの選択肢がある。

 a)8.Bxh6 gxh6 9.cxd4 1996年カンヌでのフレシネ対コルチノイ戦ではこのあと 9…Bd7(9…Rg8!?)10.Be2 Rc8 11.O-O Bg7 12.Qd2 O-O 13.Nc3? Nxd4! 14.Nxd4 Bxe5 と進んで白の中原が粉砕された。しかし 13.Nc3? よりも前に黒陣は破砕されたポーン陣形にもかかわらず既に指しやすい局面になっていた。即ちキング翼は非常に安全で …f6 と突いて白の中原を破壊する用意ができていて、そうなればg7のビショップがd4の地点にかなりの圧力を及ぼすことになる。

 b)8.cxd4 Nf5 のあと

 b1)9.Bb2 Be7 10.Qd2(10.Bd3 a5! 11.Bxf5 exf5 12.Nc3 Be6 13.b5 a4! は1987年ノリリスクでのスベシュニコフ対モスカレンコ戦で、形勢不明だった)10…O-O 11.Bd3(11.Be2 f6!? 12.g4 Nh6 13.exf6 Rxf6 14.g5 Rxf3 15.Bxf3 Nf5 ∞)11…Nh4 12.Nxh4 Bxh4 13.Qf4 Be7 14.b5 Na5 15.Nc3(15.Nd2 Bd7 16.a4 a6 17.h4 f6! =/+)15…Nc4! 16.Bxc4 dxc4 17.d5 f6 18.Qxc4 fxe5 19.O-O Rf4! =/+

 b2)9.Be3 Be7 10.Bd3 Nxe3 11,fxe3 O-O(11…f5 12.exf6e.p. Bxf6 13.Ng5!)12.O-O f5 13.Nc3 ここでジョン・ワトソンは 13…Qd8! を挙げている。その着意は 14.Na4 b6 または 14.Ne2 a5 15.b5 Na7 16.a4 Bd7 のあと …Na7-c8-b6 と指すことである。

 …Qb6 は 6.a3 に対してとりわけ不適切であることは特筆しておく価値がある。なぜなら黒はしばしばクイーンをd8またはc7に引かなければならなくなるからである。これに対応して 6.a3 は他のシステムに対してはそれほど危険でない。例えば 5…Bd7 6.a3 のあと1992年テル・ アペルでのアダムズ対エピシン戦は 6…f6!?(6…Nge7 と指してもよい。例えば 7.b4 cxd4 8.cxd4 Nf5 9.Nc3?! Rc8 10.Bb2 Nh4! =/+ イレスカス対スピールマン、リナレス、1992年)7.Bd3 Qc7 8.O-O O-O-O 9.Bf4 c4 10.Bc2 h6 11.h4 Be8! 12.b3 cxb3 13.Bxb3 Bh5! 14.Nbd2 fxe5 15.dxe5 Bc5 16.Qb1 Nge7 17.c4 Rhf8 18.Bh2 Bxf3 19.Nxf3 Rxf3! 20.gxf3 Nd4 21.Kg2 Nef5 22.Bg3 Qf7 23.f4 g5! 24.cxd5 gxf4 25.dxe6 Qh5 26.e7 Nxh4+ 0-1 という結果になった。

7.Nbd2

 b3の地点をめぐる主眼の戦いが始まる。

7…Na5

 ウールマンのよく指す 7…f6 は 8.Be2! fxe5 9.Nxe5 Nxe5 10.dxe5 Bc5 11.O-O Ne7 12.b4! cxb3e.p. 13.Nxb3 O-O 14.Nxc5 Qxc5 15.Qc2 Nf5 16.Bd3 Bd7 17.a4 +/= と応じられる。

8.Be2

 g3 と突く別の作戦もあり、その意図は h4 突きから Bh3 と覗いてすぐにキング翼で自陣を広げることである。1996年サリーでのホッジソン対アーケル戦では 8.h4 Bd7 9.h5 O-O-O 10.g3 f5! 11.exf6e.p. gxf6 12.Bh3 Bd6 13.O-O e5 で黒に分のある局面になった。

8…Bd7 9.O-O Ne7 10.Re1

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(25)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これで白は適切な準備のあと Nf3-g5-h3-f4-h5 を予定している。この捌きの意図は黒が …g6 と突かなければf8の黒ビショップをg7ポーンの守りに縛り付けることである。もし突けばナイトがf6の地点に侵入する。ナイトのこのような再配置はかなりの準備のあとキング翼で g4、f4 から f5 とポーンを全面的に突いていく前触れとなる。

10…h6

 黒はこのもくろみをできなくした。しかし白のもう一つのナイトがf1からg3の地点を経由してh5の地点に向かうことができる。次局では代わりに非常に巧妙な 10…Qc6! が登場する。

11.Rb1!

 この手は …Nb3 によってルークが当たりになるのを事前にかわした。Nf1-g3-h5 と捌く前にこの用心が必要である。すぐに 11.Nf1 と指すと 11…Nb3 12.Rb1 Ba4 となって黒がb3の地点を押さえつけ、b3のナイトが急に動くと直射攻撃がかかるのでd1の白クイーンが危険な立場に立たされる。12…Nxc1 も黒に有利な交換になる。局面は閉鎖的だが白が勝ちたいならばいつかは筋を空けなければならず、そうなれば残したいのはナイトよりもクイーン翼ビショップ方である。

11…O-O-O 12.Qc2! Kb8 13.Bd1!

 ビショップがa4とb3の地点の支配を争うためにここに持ってこられ、クイーンが安全な所に移れるようにe2の地点が空けられた。このことは17手目でその重要性が分かる。

13…Rc8 14.Nf1 Nb3 15.Bf4 Ka8 16.Ng3 Ba4 17.Qe2 Qb5 18.Nh5

 黒の手番 

(この章続く)

2012年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(26)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白はキング翼攻撃の作戦の第1段階を完了した。ここで 18…g6 と突いてくれば 19.Nf6 と侵入してこのナイトが黒にとって悩みの種になる。

18…Na5 19.Nd2 Rc7 20.g4!

 第2段階が始まった。白はクイーン翼ナイトをe3に置き Bg3 と引き f4 と突いて f5 突きによる敵陣突破を図るつもりである。黒はこれを …g6 と突いて止めることができるが、それならば白の作戦は Bg3、Kg2、h4 から h5 と突き、…g5 突きには Rf1 から f4 突きで応じることになる。白はいつかはf7のポーンに圧力をかけ取ってしまうことを期待している。

20…Nc8 21.Bxa4 Qxa4 22.Nf1 Nb6 23.Bg3 Qb3 24.Ne3 Na4?

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(27)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 クイーン翼では敵陣突破が不可能なのでこの手はまったく無意味である。黒がクイーンと両ナイトをこんな無力な地点に配置したので、白は組織立った作戦を戦術による猛襲に切り替えることができる。

25.Nxd5! exd5 26.e6 Re7 27.Nf4! Nb6 28.Qf3

 28.exf7!? は華々しいが危なっかしい。例えば28…Rxe2 29.Rxe2 a6 30.Ng6 Nd7 31.Nxh8 Bxa3 32.Ree1! Bf8 33.Ng6 Nc6 34.Nxf8 Nxf8 35.Bd6 となれば明らかに白が優勢である。

28…Qb5

 28…fxe6 は 29.Ng6 で白が勝つ。

29.exf7 Rxf7

 これで白が一本道で勝ちになる。

30.Nxd5! Rxf3 31.Nc7+ Kb8 32.Nxb5+ Kc8 33.Nxa7+ Kd7 34.Re5 Nc6 35.Rb5 Nxa7 36.Rxb6 Kc8 37.Re1 Nc6 38.d5 1-0

 黒のh8のルークとf8のビショップは一度も動かなかった。本局でのスベシュニコフの指し回しは白の可能性をよく表わしている。それは主に相手が指針となる作戦もなくあてのない手を指し白にほとんど好きなようにさせたからである。次は相手の戦略に抵抗するために黒がどのように協力した指し方ができるかを見ることにする。

(この章続く)

2012年12月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(28)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

第5局
スベシュニコフ対エインゴルン
パルマ・デ・マヨルカ、1989年
突き越し戦法

1.e4 c5 2.c3 e6 3.d4 d5 4.e5 Qb6 5.Nf3 Nc6 6.a3 c4 7.Nbd2 Na5 8.Be2 Bd7 9.O-O Ne7 10.Re1

 この手に対してカスパーは 10…h6 と指したが、エインゴルンはもっと目的を持った手を指した。

10…Qc6!

 これはすぐに明らかになるように非常に巧妙な手である。

11.Qc2 Nc8!!

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(29)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 11…O-O-O は覇気のない無計画な手だが黒はそんな「本手」の「展開」よりも、ナイトをb6の地点にすぐに持ってくる深謀遠慮の戦略を続けた。

12.Ng5

 なぜ白は前局であれほどうまくいった作戦を避けなければならないのだろうか。それを確かめてみると、12.Bd1 Nb6 13.Rb1(13.Nf1 は 13…Nb3 14.Rb1 Nxc1! で良くない)なら白は 14.Nf1 の用意ができて 14…Nb3 には 15.Bf4 と応じることができる。しかし黒は 13…Qa4! という手を用意していて、白クイーンには行き場所がない。14.Nf1 Qxc2 15.Bxc2 Ba4! 16.Bxa4 Nxa4 でクイーンもビショップも交換になったあと黒陣は非常に楽になる。14.Qxa4 Bxa4 15.Be2? も 15…Bc2 でこの黒ビショップが非常に強力になるので白が良くならない。

12…h6 13.Nh3 Nb6 14.Nf4 O-O-O

 黒はここで初めてキャッスリングし、駒の配置がかなり改善された。

15.Nh5 Qc7 16.a4!

 このポーンはここで標的になり黒はそれを目標にすることができる。しかし白は他にどのように指せるだろうか。16.Nf1 なら 16…Nb3 だし 16.Rb1?? には 16…Ba4 と来られる。白の陣形が前局での成果と比べてなんと劣るかに注意して欲しい。前局ではビショップを無事にf4の地点に展開させることができた。

16…Bc6 17.Bd1 Kb8 18.Re3!

 黒の手番 

(この章続く)

2012年12月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(30)

第1章 突き越し中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白はナイトをf6の地点に侵入させる手段を見つけた・・・

18…Rc8 19.Rg3 g6 20.Nf6 Nd7!

 ・・・が、エインゴルンもこの可能性に備えていた。カスパーの試合では黒のナイトは盤端でたむろしていた。一方ここでは侵入者をf6の地点から追放するために待ち構えていた。

21.Nxd7+ Qxd7 22.Rf3 Rc7 23.Qb1 Qe8 24.h4 h5

 この手は h4-h5 と突かせないようにするためである。黒には十分反撃力があり、試合は引き分けに終わった。

25.Rg3 Bd7 26.Nf3 Nb3 27.Bxb3 cxb3 28.a5 Bb5 29.Bg5 Be2 30.Bf6 Rg8 31.Ng5 Bh6 32.Nh3 Bg4!(白のナイトを盤上から消す。この小駒はこの閉鎖的な局面で本領を発揮する駒である)33.Bg5 Bxh3 34.Rxh3 Bxg5 35.hxg5 Qd8 36.Rg3 Rc6 37.Qf1 Ra6 38.Qb5 Re8 39.c4 dxc4 40.Rc3 Rc6! 41.Rxc4 Rxc4 42.Qxc4 Qxg5 43.a6 Rc8 44.Qxb3 Rc1+ 45.Rxc1 Qxc1+ 46.Kh2 Qf4+ ½-½

(この章終わり)

2012年12月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(31)

第2章 e6の弱点対d4の弱点

 

概説

 第1章では白のポーン中原の締め付けの価値について論じた。白は e5 と突き越して陣地をかなり広げ、それによって相手の駒から動ける地点を奪いほぼd5とe6のポーンの背後に閉じ込める。白の勝つための作戦は具体的な状況にもよるが自分の駒の活動性の優位を生かして黒キングに総攻撃をかけるか、そのような直接法が適切でないならば相手に陣形的に強い圧力をかけることである。

 黒が白の作戦に断固として立ち向かわなければならないことはこれまで見てきた。…c5 と突いてd4ポーンを攻撃して白の中原支配と戦うことは当然であり、ほとんど必須でもある。別の重要なポーン突きは白の中原をさらに侵食する …f6 突きである。この章では黒が主眼の …c5 突きと …f6 突きの両方を実行した局面を分析する。白が …f6 突きに exf6 と応じ黒が駒で取り返し、…cxd4、cxd4 のポーン交換も行なわれたと仮定すると、この章で考察されるポーン陣形になる。

(この章続く)

2012年12月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(32)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

e6の弱点

 最初に気づくのはe6のポーンの弱点である。このポーンは別のポーンによって支えられないので実戦的には孤立ポーンである。もちろん黒が …e5 と突けないならばの話であるが、突けるようにはなりそうもない。素通し列上にあるので白のクイーンとルークによって正面から攻撃される。このポーンは弱いだけでなくc8のビショップも閉じ込めている。

(この章続く)

2012年12月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(33)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

e5の弱点

 孤立ポーン(前述のように出遅れe6ポーンも孤立ポーンとみなしてよい)の主要な欠点は通常は直前の地点にある。敵駒が相手のポーンによって攻撃される恐れなくその地点を占めることができる。ここでの具体的な状況ではe5の地点が白のナイトの絶好の拠点となる。

 

 黒はこのような収局にするには危険を覚悟しなければならない。e5の白ナイトは味方の中原ポーンによって閉じ込められている黒の「不良」ビショップを完全に押さえている。これらの中原ポーンはいつまでも白枡に置かれたままである。

 e5の難攻不落のナイトは中盤戦でも威力を発揮する。しかしポーン陣形を理解し駒を適切に配置する相手に対しては、白がd4の地点の安全を確保しながらe5の地点を完全に支配することは非常に難しい。

(この章続く)

2012年12月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(34)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

d4の弱点

 この議論から白のd4のポーンは孤立しているけれどもe6のポーンほど重大な障害ではないと結論づけることができる。d列はふさがっているので黒のクイーンやルークが正面から攻撃することができない。それにたぶんもっと重要なことはこのポーンの前に弱点となる地点が存在しないことである。黒は自分のポーンでd5の地点をふさいでいるのでそこにナイトを置くことができない。

(この章続く)

2012年12月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(35)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

e5の地点をめぐる戦い

 ニムゾビッチは著書の「My System」の中で「過剰防御」の利点をほめそやしていた。これは要所の安全を確保するためにそこを必要以上に(またはさらに多く)守ることである。彼の理論は重要な中原の地点に注目すると駒はどのような戦いになろうとその来るべき戦いに「ほとんど偶然に」適所に配置されていることになるというものである。

 同様のことはここでも起こる。もっともここでは過剰防御というわけではないが地点の支配をめぐる実際の争いが存在する。黒はすべての駒を用いて中原の要所、とりわけe5の地点、を強化しなければならない。それらの駒が …e5 突きによる解放であろうと白キングに対する攻撃であろうと、局面がのちに要求するどんな作戦にも応じられるようになるのはそれからである。
中原の重要な地点に弱点があることはほとんど功徳に値する。つまりこの場合なら黒が駒を適切な地点に配置するのに役立つからである!

 白はd4の地点を適切に守りながらe5の地点を支配しようとする。たとえ試合が終わりには黒キングに対する猛攻になろうと、例外的な場合を除いて白は第1段階として中原を征服することになる。中原での優位は攻撃成功のための前提であるというのはよく知られた一般原則である。

(この章続く)

2012年12月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(36)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

…Rxf3 の犠牲

 f3の白ナイトはこれから起こる戦いのために好所を占めている。即ちd4の地点を守りe5の地点に目を光らせ、好機には Ng5 または Ne5 と跳ねて突如攻撃に出るかもしれない。また、fファイルを遮断しhポーンを守るという重要な守りの役目も果たしている。

 

 従ってこの交換損の犠牲がよくある狙い筋となっていることは驚くに当たらない。そのあと …Nxd4 と取ることができれば黒は少しの戦力投資の見返りに白のポーン中原の破壊に成功したことになる。白が gxf3 と取り返すことを強いられればさらにキング翼のポーン陣形も破壊されたことになる。黒のクイーンがc7にビショップがd6にいれば、続けて …Bxh2+ と取れるかもしれない。一般に白キングの周りが薄くなれば黒は十分に反撃することができる。しかし実戦では反撃が不十分か、適切か、それとも勝勢になるかを自分の判断(または理論の知識)で決めなければならない。
 
(この章続く)

2012年12月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(37)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

黒が …Qg7 と指す

 黒は …Qc7 のあと …g6 突きから …Qg7 と転回するする作戦をよく用いる。

 

 クイーンはここが絶好の地点になる。即ちd4の地点に当たりをかけ、e5の地点をにらみ、キング翼を固める助けになっている。また、…g5 から …g4 と突いてf3のナイトをどかせるのにも役立つことがある。そのようなポーンの進攻が黒キングの囲いを弱めることはわざわざ指摘する必要もない。従って黒はそのようなポーン突きを画策できるようになる前には自陣がしっかりしていなければならない。有利な状況では …g4 突きが白の中原を壊滅させたりキング翼攻撃に着手したりする先駆となることがある。
 
(この章続く)

2012年12月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(38)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

黒が …Bh5 と指す

 

 黒は …Bd7-e8-h5 という捌きでビショップを働かせながら大事なナイトを攻撃する。その攻撃が釘付けになることもよくある。しかしこの捌きは手間がかかるうえにいつも実現可能というわけではない。また、e6のポーンが自然な守り手がいなくなったあと弱くなりすぎないように気をつけなければならない。
 
(この章続く)

2012年12月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(39)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

黒が …Qb6 と指す

 

 ここはフランス防御の他の戦型ではクイーンの理想の地点となっている。実際ここでこの手に反対する明らかな理由はない。黒はd4の地点を直接攻撃し、白はビショップをc1の地点から動かしたければ …Qxb2 を心配しなければならない。さらに、…e5 突きのあとf2の地点に対する直射攻撃に基づいた戦術の策略も時々ある。

 それでもどういうわけか …Qb6 は一流どころでは …Qc7 よりも人気がない。唯一分かる欠点はこのクイーンがキング翼と自陣の2段目を守るのに少し適切でないということである。しかしフランス防御の専門家でグランドマスターのファラゴはいつも …Qc7 より …Qb6 の方を好み、自分の試合では全然なんの問題も経験しないようである。
 
(この章続く)

2012年12月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(40)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

黒がナイトを捌く

 

 黒は非常に独創的なナイトの使い方ができる。一つの作戦の可能性は …Ng4 で、…e5 突きの助けになるかもしれないし、h2またはf2の地点の攻撃になるかもしれないし、…Nh6 から …Nf5 でd4の地点にもっと圧力を加える意図かもしれない。c6のナイトもe7を経由してf5の地点に行ける。それによりクイーン翼ビショップがあとで …Bb5 と出られるようになる。最後に、…Ne4 も可能なことが多く、時にはポーンを犠牲にして駒の働きを良くする。例えば Bxe4 dxe4、Qxe4 ならd7の黒ビショップが …Bc6 によって絶好の斜筋を占めることになる。
 
(この章続く)

2012年12月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(41)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

黒が …e5 と突く

 黒がすぐに戦術的に打撃をこうむることもd5の地点にできる孤立ポーン以外に陣形に弱点を抱えることもなく …e5 と突くことができれば、完全な互角かそれ以上を達成できるはずである。

 

 このポーン陣形はあとの第9章で考察する孤立dポーンの局面に似ているが、非常に重要な違いがある。白のcポーンがないのでdポーンがパスポーンになっていてせき止めるのがより難しく突き進めるのがより容易になっている。しかし黒だけでなく白もc列を活用する可能性がある。黒のfポーンがないので、黒にはf列で攻撃する可能性があり白には黒のより露出したキングに対して攻撃する機会がある。

 陣形に関してどちらにもあまり選択の余地がないので、局面の評価はまったく駒の活動性に依存する。…e5 突きのあと黒の駒は中央で強力になっていることがよくある。しかし白は素通し列で何の反撃も許さずにdポーンをしっかりせき止めることができれば、dポーンを標的に指し進めることができる。
 
(この章続く)

2012年12月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(42)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

白が黒枡ビショップ同士を交換する

 黒枡ビショップ同士を交換するのは一般に白が有利である。というのはe5の地点の支配を直接争えないc8の「不良」ビショップが黒に残され、ほとんどの収局で白が明らかに優位に立つからである。

 

 黒のビショップはd6の地点に展開されるのが普通である。その場合白にはビショップ同士の交換を図る方法が二通りある。まず白は Bg5、Bh4 そして Bg3 と指すことができる。そうなれば黒には交換をさせるかビショップをe7の地点に引いてe5の地点の支配を手放すかの苦渋の選択がある。黒は白が Bh4 と引いたとたんに …Nh5! と指してこの作戦を未然に防ぐのが最善である。それでも白が固執して Bg3 と指せば …Nxg3 と取って双ビショップ態勢になれる。

 本書の執筆時点では別の方法が非常にはやっている。白は早期に Bf4 と出すことにより黒にほぼ交換を強いることができる。しかしことはそう簡単ではない。なぜなら(…Bxf4、Nxf4 の結果)f4の地点にナイトが残るので黒はf列ですぐに戦術の機会に恵まれるかもしれないし、クイーンがビショップの代わりにd6の地点を占めて(またはf6の地点に行って)黒枡の弱さを補うかもしれないからである。

 白は g3 と突いてf4の地点のビショップまたはナイトを支えることがある。この手はb8-h2の斜筋での圧力に対してh2のポーンを安全にすることにもなる。g3 突きの欠点はf3の地点のナイトからポーンによる支えをなくして弱めてしまうことである。
 
(この章続く)

2012年12月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(43)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

c6のナイトに対する動き

 

 黒のc6のナイトはd4のポーンを当たりにしe5の地点に利いている。だから白の駒からよくありがたくない注目を浴びるのは意外なことではない。白はこのナイトを b4-b5 突きでそこからどかせようとするかもしれない。そうなれば白のナイトがたぶんキング翼攻撃の序曲としてe5の地点に跳ねることもできるようになる。黒クイーンがc7にいる時は Rc1 がこのナイトを釘付けにして厄介になる。

 白は Bb5xc6 と取ることもできるが、普通は自分の白枡ビショップを大事にしてナイトごときのために手放すことはしたくない。例外的な状況では戦術の手順の一部としてRc1xc6 と交換損の犠牲を払うことがある。黒が …e5 と突いていて dxe5 と取れるときは特にそうである。
 
(この章続く)

2012年12月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(44)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

白が Nc3 と指す

 

 白のナイトはc3の地点が好所になる。第一に(d5ポーンへの当たりにより) …e5 突きを抑える。第二に Nb5 が狙いになる(特に黒クイーンがc7にいる場合)。一番重要なのは白が Na4(b6の黒クイーンに当たりになるかもしれない)から Nc5 と指せることである。これが特に効果的なのは黒が Nb5 または b5 突きの狙いに備えて …a6 と突いている場合である(前項の「c6のナイトに対する動き」を参照)。ときには Na4-b6 も可能なことがある。注意すべきは白が喜んで Nxd7 または Nxc8 と指すことである。これは「不良」ビショップと交換することになるがe6の地点を非常に弱体化させ白が双ビショップを得ることになるからである。

 Nc3 の唯一の問題は別の効果的な作戦の Bf4 や Nf4 とまったく組み合わせられないことである。これは通常は「・・・かそれとも・・・」という問題である。
 
(この章続く)

2012年12月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(45)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

押さえ込みの他の手

 

 Re1 はe6に圧力をかけ黒が …e5 突きで陣形を解放しようとするのを抑える。しかし白はf2の地点を弱めることになり、黒が犠牲でこれを利用できないように注意しなければならない。

 Ng3 はh2ポーンへの斜筋攻撃をふさぎ、のちの …Bh5 による釘付けをなくし、キング翼を全般に強化する。一方このナイトはe4とf5の地点に行けないのでほとんど動けない。ときには Nh5 が可能になることもある。

 Bd2-c3(または b3 から Bc1-b2)はb2とd4の地点を強化しe5の地点に利きを加える。これにより白は確実に Ne5 と指すことができるようになるけれども、c3(またはb2)の「大ポーン」ビショップは悪形なのでその状況につけ入ることが難しい。
 
(この章続く)

2012年12月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(46)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

白が f4 と突く

 

 黒が …f6 と突く前に白が f4 と突いていると(次章のように)、exf6 と取って上図のポーン構造にするのはごくまれにしか考えられない。しかし白はe5の地点をしっかり支配していて、Ne5 のあと g4 から g5 と突いていくことによりキング翼のポーンで猛攻撃をかけることができる。もっともこの作戦は駒による攻撃と比べると遅い。だから黒は手得、それに弱体化したe4の地点とa7-g1の斜筋とを利用して素早く反撃すべきである。また白は黒枡ビショップの効果的な役割を見つけ出すのが難しい。黒が自陣の解放に成功することになれば(例えば …e5 突きによって)f4 突きによって生じた弱点は白にとって致命的になることがある。
 
(この章続く)

2012年12月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(47)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例

第6局
ベリヤフスキー対M・グレビッチ
全ソ連選手権戦、1986年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.Bd3

 5.f4 は次章で解説する。

5…c5 6.c3 Nc6

 黒は …f6 突きで中央から仕掛けることができるように駒を展開している。局面を閉鎖的なままにしておきたいならば、代わりに 6…b6 と突いてほぼ前章の最後の2局のように(または f2-f4 突きがあるならば次章の試合のように)指すことができる。

7.Ne2

 7.Ngf3!? は 7…Qb6 8.O-O cxd4 9.cxd4 Nxd4 10.Nxd4 Qxd4 11.Nf3 と進めばコルチノイギャンビットになる。白はdポーンを犠牲にすることにより大局的に永続する圧力が得られることを期待している。黒は詰まされるわけではないが、かといって白の締めつけから自分の駒を解放することも容易でない。特にクイーンを安全な地点に行かせるのに手数を費やさなければならない。白はミルナーバリーギャンビット(前章で出てきた)よりはるかに優っていて、e5の地点をしっかりと確保しd7のナイトが黒のクイーン翼の展開を邪魔している。

 黒はそんなに協力的である必要はないが、「普通の」7…f6 の方が良いというわけではない。1991年テムズバリーリーグ戦でのG.ムーア対ハーリー戦では 8.exf6 Nxf6 9.O-O cxd4(9…Bd6 10.dxc5! Bxc5 11.b4+/- エールベスト対アンデルソン、レイキャビク、1991年)10.cxd4 Bd6 11.Nb3 O-O 12.Bg5 Qe8 13.Bh4 Qh5(13…Nh5!?)14.Bg3 Bxg3 15.fxg3! と進んで白が楽に優勢になった。

 それよりも黒としては白のかなり込み入った展開につけ込むようにする方が良く、特にd2のナイトはこれといって役に立っていない。このナイトはe2のナイトがするようにはd4の地点を守っておらず、自分の黒枡ビショップを閉じ込めている。黒は …g5!? から …g4 と突いていく着想で直接戦術的に優勢を得ようとすることができる。また …g6 と突いてビショップをg7の地点に展開してもっと戦略的に指し進めることもできる。このビショップはe5とd4の地点に圧力をかけ、…g6 突きによりできる黒の黒枡の空所に白がつけ込む立場にないことを利用している。

 7…g6!? 8.O-O(8.h4!? Qb6)8…Bg7 9.Re1 O-O 10.Nf1 のあと黒は …f6 と突くことを考えることができる。しかし1993年バートベーリスホーフェンでのアグノス対ディットマール戦では最初にd4でポーン交換することを怠り次のように破滅的なキング翼攻撃を受けた。10…f6 11.exf6 Qxf6 12.Ne3! cxd4 13.Ng4 Qe7 14.cxd4 Nxd4 15.Nxd4 Bxd4 16.Bxg6! Qc5 17.Bxh7+ Kxh7 18.Qd3+ Kh8 19.Rxe6 Nf6 20.Be3! 実際は 10…cxd4 11.cxd4 f6 12.exf6 Qxf6 13.Bg5 Qf7 14.Be3 e5 15.Bc2!? e4 16.Ng5 Qe7(キラン対ハーリー、リバプール、1995年)17.Bb3! Nf6 18.f3 exf3 19.Nxf3 なら互角だった。

7…cxd4 8.cxd4 f6 9.exf6

 この手の代わりにdポーンをギャンビットして攻撃の機会をつかむ二つの手を紹介しておく。

 a)9.f4 fxe5 10.fxe5 Nxd4 11.O-O(11.Nxd4 は 11…Qh4+ で白が非常に悪い)11…Qb6 12.Kh1 Nxe5 黒は2ポーン得だがキングがまだ中央にいて展開にいくらか支障がある。クプレイチクの次の分析手順ははっきりしない。13.Nf4 g6 14.Nb3 Nxb3 15.axb3 Bd6 16.Nh5(白はやらなければやられる)16…gxh5 17.Qxh5+ Kd7 18.Bxh7

 b)9.Nf4!? は人気のある激しい手である。黒はほとんど交換損が必然でキングを中央に置いたままにしなければならない。その一方白の中原を破壊することができ反撃が有望になる。試合は通常次のように進む。9…Nxd4 10.Qh5+ Ke7 11.exf6+ Nxf6 12.Ng6+ hxg6 13.Qxh8 Kf7

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(48)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 ここで白には選択肢がある。14.Qh4 e5 15.Nf3 Nxf3+ 16.gxf3 Bf5 17.Bxf5 gxf5 18.Bg5 Qa5+ 19.Kf1 g6! 20.Bxf6 Qa6+ 21.Kg2 Qxf6 22.Qxf6+ Kxf6 は1986年ブリュッセルでのバン・デル・ビール対ティマン戦で、動的に均衡がとれていた。黒はルークの代わりにビショップとポーンを持ち、ポーンの形もはるかに良い。別の手は 14.O-O で、通常は 14…e5 15.Nf3 Nxf3+ 16.gxf3 と進む。ここで 16…e4!? が面白い手である。一方1990年ロンドンでのスタントン対マクドナルド戦では次のように進んだ。16…Nh5 17.Bxg6+! Kxg6 18.Kh1 Qh4(他の手では Rg1+ が受からない)19.Qxf8 Kh7 20.Qa3 Bh3?(魅力的な手だが 20…Bd7 のあと …d4 から …Bc6 と指す方が良く形勢不明だった)21.Rg1 Qxf2 22.Qd3+(白はここで 22.Qe3! でクイーン交換を強制するのが良かった)22…Kh8 23.Bd2(23.Qe3!)23…Rf8 24.Rg5 Rf5 25.Rag1 Rxg5 26.Bxg5 d4! 27.Qe4? Bg2+! 28.Rxg2 Qf1+ 29.Rg1 Ng3+! 30.hxg3 Qh3#

9…Nxf6

 キンズマンによると 9…Qxf6 10.O-O Bd6 11.Nf3 h6 12.Bb1 O-O 13.Qd3 Rd8 14.g3 e5! 15.dxe5 Ndxe5 16.Nxe5 Bxe5 17.Nf4 Ne7 が面白かった。白はいつでもh7の地点でチェックをかけられるが、どんなに運がよくても詰みになることはない。

10.Nf3

 1986年ロンドンでのアフェク対アグデスタイン戦では 10.O-O Bd6 11.f4!? O-O 12.Nf3 Qb6 13.Kh1 Bd7 14.a3 Rac8 15.Ne5 Be8 16.g4 Kh8 17.Be3 Ne7 18.Rc1 Rxc1 19.Bxc1 Bb5 と進んで黒が優勢だった。

10…Qc7

 黒は手順の妙で 10…Bd6 11.Bf4 となるのを避けた。ここで 11.Bf4 なら 11…Bb4+ と応じることができ面白い戦いになる。

11.O-O Bd6

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(49)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 グレビッチはさしあたり自分の黒枡ビショップが交換されるのを防いだ。しかしベリヤフスキーはしつこい。

12.Nc3

 このナイトはキング翼に行くこともできる。例えば 12.Bg5 O-O 13.Rc1(13.Bh4 も可能で、黒は白の手損につけ込んで 13…e5 と突き形勢不明の孤立dポーンの局面にすることができる)13…Ng4 となれば白は 14.Ng3 でキング翼を強化することができる。そのあとの典型的な手は 14…g6(…Qg7 の意図)で、1986年全ソ連選手権戦でのスマギン対ドルマトフ戦では 15.Nh4 e5 16.Be2 Nf6 17.dxe5 Bxe5 18.b4 Bf4 19.Bxf4 Qxf4 と進んだ。カルポフはこの局面を互角としているが、ゲレルは白が優勢と言っている。

12…a6

 この手は 13.Nb5 で白がナイトを黒の優良ビショップと交換する大局的な狙いを封じている。

13.Bg5 O-O 14.Bh4 Nh5!

 黒はまたd6のビショップを盤上に残すを方策をとった。つまり白の Bg3 の意図をくじいている。

15.Re1

 1994年ニューヨークでのI.グレビッチ対クロフスキー戦では白が 15.Rc1 と指し、次のように難解な局面から優勢になった。15…g6 16.Na4 Qg7?! 17.Nb6 Rb8 18.Bxa6! Nxd4 19.Nxd4! bxa6 20.Nxc8 Rbxc8 21.Rxc8 Rxc8 22.Re1(22.Nxe6 は 22…Qe5 で良くない)22…Bb4 23.Qg4! マツロビッチはナイトをb6の地点に来させないために 16…Bd7 を推奨している。そのあとは 17.Nc5 Rae8 で黒が駒の展開を完了する。

 15.Bg3? は白の黒枡ビショップを黒のナイトと交換され、1986年ロンドンでのT.アプトン対マクドナルド戦では次のように進んで白があっけなく負けた。15…Nxg3 16.hxg3 g6 17.Qd2 Qg7 18.Qe3 Bd7 19.Rad1 Rae8 20.Bc2(20.Ne5? は 20…Bxe5 21.dxe5 d4)20…Kh8 21.Qd2 Bb8! 22.Rfe1 Ba7 23.Ba4 b5 24.Bb3 Rxf3! 25.gxf3 Nxd4 26.Qd3 Rf8 27.f4 g5!(黒の交換損の犠牲で白の中原が破壊され、ここから白キングに対する直接攻撃が始まる。a7のビショップのf2の地点に対する並外れた威力に注意されたい。28.fxg5 なら 28…Nf3+ で黒が勝つ)28.Ne2 Nxe2+ 29.Rxe2 gxf4 30.Qc3 Qxc3 31.bxc3 fxg3 0-1 黒がf2のポーンを取り白陣が壊滅する。

15…g6!

 予定どおりの作戦でクイーンの場所を空けた。クイーンにとって絶好の位置になる。

16.Bf1 Qg7 17.Na4

 15手目で引用したI.グレビッチ対クロフスキー戦のようにb6の弱点につけ込もうとしている。

17…Bd7 18.Nb6 Rae8 19.Bg3?

 これはひどい間違いだった。白は黒枡ビショップの交換のあとd4とf2のポーンが共に弱くなる。M.グレビッチは 19.Bg5 を推奨していて、19…Bc7 20.Nxd7 Qxd7 21.Bh6 Ng7 でいい勝負になる。

 読者は以降の両者の手順を15手目であげたT.アプトン対マクドナルド戦の終わりの方と比較してみるとよい。

19…Nxg3 20.hxg3

 黒の手番 

(この章続く)

2012年12月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(50)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

20…Bc7!

 この手はビショップをd4のポーンに利く地点に配置することを意図していて、それと同時にb6のナイトに進退を明らかにすることを迫っている。

21.Nxd7 Qxd7 22.Rc1 Bb6 23.Qb3 Ba7

 23…Bxd4 には 24.Rxc6 がある[訳注  24…Rxf3 25.gxf3 bxc6 で黒が優勢です。従って 23…Bxd4 は成立します]。

24.Red1 Qg7 25.Qa4

 25.Qd3 も 25…g5! 26.g4 Rf4 のために良くない。

 しかしここで黒はd4の地点を越えてf2の地点を攻撃し露出させる。

25…b5! 26.Qxa6 Nxd4 27.Bxb5 Re7 28.Rc3 Nf5!

 この退却の手は気がつきにくい強手だった。これに対して白は 29.g4 と応じなければならない。もっともM.グレビッチの分析によれば 29…Nh6 30.g5 Ng4 31.Rc2 e5 から …e4 で白がひどい。実戦の手は白がたちまち負けになる。

29.Rc8 Nxg3!

 黒の戦略が勝利した。白は 30…Qh6 から 31…Qh1# の狙いを駒損によってのみ避けることができる。

30.Bd7 Rxd7 31.Qxe6+ Qf7 32.Rxf8+ Kxf8 33.Qe5 Ne4 34.Rc1 Bxf2+ 35.Kh1 Qf6 36.Rc8+ Kg7 0-1

(この章続く)

2012年12月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(51)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

第7局
ティモシェンコ対グレイゼロフ
チェリャビンスク、1989年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.Bd3 c5 6.c3 Nc6 7.Ne2 cxd4 8.cxd4 f6 9.exf6 Nxf6 10.Nf3 Bd6 11.O-O O-O

 黒はまだ …Qc7(第6局)にも …Qb6(第8局)にも決めたくない。しかしこう指したことにより白は黒枡ビショップ同士を交換することができる。

12.Bf4 Bxf4 13.Nxf4 Ne4

 他の手は・・・

 a)13…Ng4 14.Qd2! Qd6 15.g3 e5 16.dxe5 Qh6!(べインガー対ヘルトネック、ミュンヘン、1987年)17.h4! 白優勢。

 b)13…Qd6 14.g3 e5 15.dxe5 Nxe5 16.Nxe5 Qxe5 +/=

 c)13…Qb6!? 14.Rb1(14.Qd2 は 14…g6 または 14…Kh8!? と応じられる)14…Nxd4?!(14…Bd7!)15.Nxd4 e5 16.Nxd5! これで 16…Nxd5 には 17.Qh5 Nf6 18.Qxe5 と応じることができるので白優勢。

14.Ne2

 白は他にも三通りの手がある。

 a)14.Nh5 g6 15.Ng3 Nxg3 16.hxg3 Qb6 黒はほとんど問題ない。

 b)14.Qc1 Ng5 15.Nxg5 Qxg5 16.Bxh7+!? Kxh7 17.Nxe6 Qf5 18.Nxf8+ Qxf8 黒は受け切れる。

 c)14.g3 Qf6 15.h4 h6 16.Bxe4 dxe4 17.Ne5 Rd8 18.Nxc6 bxc6 19.Qc2 g5 1992年ハルキディキでのコトロニアス対ウリビン戦では形勢不明だった。

14…Rxf3!

 この手が最も有望である。黒は白のキング翼ポーンの形をめちゃくちゃにし、交換損の代わりに十分な反撃の態勢を築く。

15.gxf3 Ng5

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(52)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

16.Kh1

 1993年ロースドルフでのハイケン対グレイゼロフ戦では 16.f4 Nh3+ 17.Kh1 Qh4 18.Qd2 Nxf2+ 19.Kg2 Nxd3 20.Qxd3 Bd7 と進み形勢不明だった。激しく 16…Nf3+!? とやっていく手もあり 17.Kg2 Nh4+ 18.Kh1 e5!(ソロジェンキン対S.イワノフ、レニングラード、1989年)から 19…Bg4 となる。

16…e5!

 黒はビショップのために斜筋を開けた。

17.dxe5 Nxf3 18.Bxh7+

 おとなしい 18.Ng1 は 18…Nfxe5 のあと動的に互角になる。1994年ウィーンでのポポビッチ対キンダーマン戦では 19.Bc2 d4 20.Re1(または 20.Be4 Be6 ルブレフスキー対グレイゼロフ、ソ連、1991年)20…Be6 21.Bb3 Bd5+ 22.f3 Qd6 23.Re4 Rd8 と進んだ。

18…Kh8

 18…Kxh7 は 19.Qd3+ から 20.Qxf3 で悪い。本譜の手のあとは 19…Qh4 ですぐ黒の勝ちになる狙いがある。

19.Ng1

 白は 19…Nxg1 に 20.Qh5! と応じるつもりである。他にはグレイゼロフとサマリアンの推奨する 19.Nf4!? しかあり得ない。

19…Ncd4!

 黒は攻撃の速度を上げてきた。代わりに 19…Ncxe5? は 20.Nxf3 Bg4 21.Nxe5! Bxd1 22.Nf7+ で白の勝ちになる。

20.Nxf3 Bg4 21.Nxd4

 21.Qxd4 は 21…Bxf3+ 22.Kg1 Qg5+ から詰みになるのでこの手しかない。

21…Bxd1 22.Raxd1 Kxh7

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(53)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 騒ぎが収まって棚卸をする頃合である。クイーンと引き換えに白はルーク、中原の好所のナイト、そして動けるパスポーンを得ている。全体として白が少し有望である。

23.Rd3

 図の局面は1991年全ソ連選手権戦のクラムニク対ウリビン戦にも現れた。白はすぐにポーンを活用しようとして険しい局面で引き分けになった。23.f4 Qb6 24.f5 Qxb2 25.Rd3 Rc8 26.f6 Rc1 27.Rh3+ Kg6 28.Rg3+ Kh5 ½-½

23…Qb6 24.b3 Rc8 25.f4 Qg6 26.Re3 Qb6 27.Rd1 Qh6 28.Rf3 Qg6 29.Re1 Qb6 30.Rd3 Qb4 31.Rdd1 Qc3 32.e6 Kg8?

 黒はクイーンを働かせることに成功していて、完全に互角になるためにはルークを戦いに参加させるだけで良かった。ここでは 32…Kg6! が正着で、グレイゼロフによれば 33.f5+ Kf6 34.Rg1 Rh8! で十分反撃が効いた。

33.Kg2 Re8 34.Re2 Kf8 35.Re5 Ke7 36.Rxd5 Rh8 37.Rd7+ Kf6 38.Rf7+ Kg6 39.Nf3?

 これにより黒は引き分けに逃げることができる。白は 39.f5+ Kg5 40.Rxg7+ と指していれば勝つ可能性を維持できた。

39…Rxh2+! 40.Kxh2

 40.Nxh2 は 40…Qc2+ でルークが取られる。実戦は白キングが完全に裸になり千日手による引き分けが避けられない。

40…Qxf3 41.Rg1+ Kh6 42.Rgxg7 Qe2+ 43.Kh3 Qe3+ 44.Kh4 Qe1+ 45.Rg3 Qxe6 46.Rxb7 Qf6+ 47.Kh3 Qe6+ 48.Kh2 Qe2+ ½-½

(この章続く)

2012年12月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(54)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

第8局
ツェイトリン対シュルツ
ベルリン、1992年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.c3 c5 6.Ndf3

 この手順変更は大して意味がない。たぶん白は Bd3 を遅らせることにより黒に …b6 突きを思いとどまらせたかったのだろう。というのは 6…b6 7.Be3 Ba6?!(7,,.cxd4 の方が良い)8.Bxa6 Nxa6 9.Ne2 となれば普通の手順と比べて「1手で」Bxa6 と指したことにより1手もうけたことになるからである。

6…Nc6 7.Bd3 Qb6

 8…cxd4 と取るつもりの 7…Qa5!? は白の手順の弱点を明るみに出させるかもしれない。8.Bd2 なら黒は単にクイーンをb6に引くし、8.Kf1 なら 8…b5 と突くこともできるし単に 8…b6 から 9…Ba6 と指すこともできる。

8.Ne2 cxd4 9.cxd4 f6 10.exf6

 ここでは 10.Nc3!? でポーンを犠牲にするのも面白い。10…fxe5 11.dxe5 Ndxe5 12.Nxe5 Nxe5 13.Qh5+ Nf7 14.Bb5+ Ke7 15.O-O となれば白の攻撃が強力である。しかし黒は 11…Be7 または 11…g6 で改良することができ、白のe5のポーンが少し不安になる。

10…Nxf6 11.O-O Bd6

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(55)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

12.Nc3

 白が前局のように 12.Bf4 Bxf4 13.Nxf4 によって黒枡ビショップ同士を交換しようとすれば、黒は千日手による早々の引き分けを気にしないなら単純かつ安全に 13…Qxb2 でbポーンを取ることができる。その引き分けとは 14.Rb1 Qxa2 15.Ng5 O-O 16.Ra1 Qb2 17.Rb1 のことで、17…Qa3 は18.Qc2! で危険である(ウールマン)。もっと冒険好きなむきには 13…O-O!? も可能で、第7局の解説に移行する。白が 12.Rb1 または 12.b3 で先にb2を守れば、黒は 12…O-O のあと 13.Bf4 に 13…Nxd4! 14.Nfxd4 e5 の計略で応じることができる。ただし 13…Bxf4 は駄目で、14.Nxf4 Nxd4 で前局の解説に移行し白は 15.Nxd4 e5 16.Nxd5! で優勢になれる。

 白は展開の優位を利用して弱いe6のポーンに圧力をかけようとすることができる。しかし 12.Re1 O-O 13.Nf4 のあと黒は単に白の狙いを無視することができる。なぜなら 13…Bd7 14.Nxe6(他の手はどれも 14…Rae8 とされて黒が好形になる)14…Rfe8 15.Bf5 となれば白が不安定な態勢になるからである。黒はナイトとビショップをどかせてクイーンをe6への攻撃に加えるだけで良い。

 本譜の手のほかに白は通常はまずクイーン翼のビショップをフィアンケットして、b2とd4のポーン、それにe5の地点を安全にしてからe2のナイトをキング翼に向かわせることを考えることもできた。12.b3(または 12.Bd2 から 13.Bc3)12…O-O 13.Bb2 Bd7 14.Ng3 のあと黒は 14…Rae8 に 15.Ne5! でゆっくりつぶされないよう注意しなければならない。セルペルはこの局面を +/- と判定している。この表決は黒にとっていくらか悲観的なように思われるが、いずれにせよ 14…Kh8! で 15.Ne5 に 15…Nxd4 を予定する方が優る。1953年ブルガリア対東ドイツのミネフ対ブリューヒナー戦では 15.Re1 Rae8 16.Bc2 Ng4! 17.Qd3(17.Bxh7 e5! ウールマン)17…g6 18.Qd2 Kg8! 19.Rad1 e5 となって黒が大いに優勢だった。

12…O-O

 12…Bd7 には巧妙な罠が仕掛けてあって 13.a3 Nxd4! 14.Nxd4 Qxd4 15.Bg6+?? hxg6 16.Qxd4 Bxh2+ で黒の勝勢になる。しかし1986年アムステルダムでのサパタ対カイフ戦のように白は 15.Nb5 で形勢不明のままにできる。

13.a3

 …Qxb2 とポーンを取られても Na4 でクイーンを捕まえることができるのでクイーン翼ビショップが自由になった。それに突き越し中原のところで既に出てきたように、より長期的には b4 突きから Na4-c5 と指す作戦もある。

 しかし白はこの手を指さずに済ませることもできる。1985年ビール・インターゾーナルでのバン・デル・ビール対ショート戦では 13.Re1 Bd7 14.Bg5(14.Be3)14…Ng4!?(14…Qxb2? は 15.Nb5! で駄目だが、単純な 14…Kh8 はよい。例えば 15.Na4 Qa5 16.a3 Nxd4!)15.Bh4(黒枡ビショップ同士を交換しようとし、16.Bxh7+ を狙う。黒の手は 15.h3? Nxf2! 16.Kxf2 Nxd4 を期待していた)15…Nh6?!(バン・デル・ビールは 15…Kh8! でdポーンを攻撃するのを推奨している。16.Bxh7 には 16…Nxh2! 17.Ng5 Qxd4 18.Qh5 Qg4、また 16.Na4 Qa5 17.Bxh7 には 17…Rxf3! 18.gxf3 Nxh2 と応じる)16.Bg3 Bxg3(16…Be7 17.Na4 Qa5 18.Bc2{18.a3 Rxf3!}18…Nf5 19.a3 Nxg3 20.hxg3 も1988年ディーレンでのネイブール対ファラゴ戦で白が明らかに優勢だった)17.hxg3 Rf6 18.Na4 Qc7 19.Rc1 Raf8 20.Nc5 +/-

13…Kh8

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(56)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒は白にすぐにdポーンを守らせるようにした。代わりに 13…Bd7 も可能で、そのあと白が 14.Be3 と指せば黒は 14…Be8 と指すことにより …Kh8 と寄らずに済むようにすることができる。この手は白がe列をせき止めて 15.Re1 がeポーン当たりにならなくなったことを利用したものである。1987年ポズナニでのベルナルド対シュミット戦では 15.Ng5!? Ne7! 16.h3 Bb8 17.Qc2 h6 18.Nf3 Nh5 = と進んだ。

14.Be3 a6

 白はd4とb2を(間接的に)守り、黒はクイーンを中央またはキング翼で働かせる用意をしている。第一弾として黒は大切な黒枡ビショップの交換を強いる Nb5 によっていじめられずにクイーンがc7の地点に行けるようにした。黒は …Qc7 と引くつもりなので …Qb6 によって成果を得る試みは失敗したように思われる。このクイーンは直接c7の地点に行って手損しないようにすべきだったのではないだろうか?いや、この場合はそうではない。b2のポーンは白が 13.a3 と1手かけなければならなかったからこそ無事なのである。また、のちの Bxh7+ をなくす 13…Kh8 と相まってb6のクイーンはd4での2回の交換を狙うことができたのである。この狙いのために白はビショップをよくある攻撃的な Bg5 でなく、やや守勢のe3の地点に展開させられた。だからここで黒がクイーンを再配置するのが最善であると考えても、…Qb6 は明らかに黒にとって有益な企てだった。

15.Rc1 Qc7

 15…Qxb2? は 16.Na4 Qxa3 17.Ra1 Qb4 18.Bd2 でまだうまくいかない。

16.h3

 この手は 16…Ng4 17.h3 Nxe3 で黒が双ビショップになるのをなくした。

16…Qf7 17.Ng5

 17.Na4 で 18.Nb6 から 19.Nxc8 を意図するのが良い作戦だった。黒が 17…Bc7 でb6の地点を守れば 18.Nc5 でナイトが好所につく。白は実際にこの捌きを実行するつもりのようだが、まずe5の地点を締めつけることにより黒が …e5 突きで解放にくるのを永久に不可能にしようとした。

17…Qe7 18.f4 Bd7

 すぐに 18…e5 と突いて捌こうとするのは 19.fxe5! Nxe5 20.Nxd5! Nxd5 21.Rxf8+ Qxf8 22.dxe5 Bxe5 23.Qh5 で失敗する。本譜の手のあとツェイトリンは 19.Qe1! で黒の次の手をなくすべきだと反省している。実戦の手は不注意だった。

19.Na4?! e5!!

 白の手番 

(この章続く)

2012年12月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(57)

第2章 e6の弱点対d4の弱点(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 爆弾が破裂した。黒は締め付けから解放され、今や足元に注意しなければならないのは白の方である。

20.Rxc6!

 これは絶対手である。20.fxe5 は悪手で、20…Nxe5 21.dxe5 Qxe5 22.Rf3(22.Bf4 なら 22…Qd4+)22…Qh2+ 23.Kf1 Ne4! 24.Nxe4 dxe4 25.Bxe4 Bb5+ で黒の勝勢になる(ツェイトリン)。

20…exf4?!

 「チェス新報第55巻」の自戦解説でツェイトリンはこの手に好手記号を付けた。というのは 20…exd4? は 21.Bxd4 Bxc6 22.Nxh7! Bxa4 23.Nxf8! Bxd1 24.Ng6+ で破滅を招くからである。しかし彼は強手の 20…e4! を見落としていた。これに対して

 a)21.Rxd6 は 21…exd3(d6とe3の地点を当たりにする)22.Nb6 Qxe3+ 23.Kh1 Rad8 で白駒の位置が良くない。例えば24.Rf3 Qe7 25.Nxd7 Qxd6 26.Nxf8 Rxf8 27.Rxd3 h6 28.Nf3 Ne4 。

 b)21.Bxe4 は 21…Bxc6! で白がe列で致命的な釘付けになる。

 c)21.Rc3 exd3 22.Rxd3 なら 22…Bb5 で交換損になる。

21.Rxd6!

 これで白は助かる。

21…Qxe3+ 22.Kh1 Bxa4 23.b3 Bb5

 ここでは 23…f3!? 24.Nxf3 Ne4 が積極策だったが、25.Bxe4 dxe4 26.bxa4 Qxa3 27.Rd7 exf3 28.Rxf3 Rxf3 29.Qxf3 となって引き分けの証明をしなければならないのは黒の方である。

24.Bxb5 axb5 25.Rf3

 25.Re6? は 25…Qg3 で、25.Qb1? も 25…Ne4 26.Nxe4 dxe4 27.Re1 Qg3 から 28…f3 で悪い(ツェイトリン)。

25…Qe7 26.Re6 Qxa3 27.Rxf4 h6

 黒のポーン得だが白駒はよく働いている。たぶん黒は 27…Qa1 でクイーン同士の交換を強制すべきだった。もっとも 28.Qxa1 Rxa1+ 29.Kh2 から 30.Rb6 となって収局では勝てそうにない。

28.Nf3

 28.Rexf6 は 28…Rxf6! 29.Rxf6 gxf6 30.Qh5 Qc1+ となってしっぺ返しを受ける。

28…Ne4 29.Rxf8+ Rxf8 30.Kh2 Qb2

 これで白駒の働きが非常に良くなるので 30…Rf6 31.Re8+ Rf8 32.Re6 で引き分けに持ち込むのが最善だった。

31.Ne5 Rf6 32.Qg4

 この手は引き分けになる。白は 32.Re7 で 33.Qg4 を意図して優勢を目指し指すことさえ可能だった。

32…Rxe6 33.Qxe6 Qf2 34.Qe8+ Kh7 35.Qg6+ Kg8 36.Qe6+ Kh7 37.Qg6+ ½-½

 面白い乱闘だった。

(この章終わり)

2013年01月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(58)

第3章 f4 による中原の締め付け

 

概説

 突き越し中原における白の基本的な長期作戦は f4-f5 とポーンを突くことにより戦線突破を達成することである。この進攻は黒キングに対する猛攻への前触れとなることがある(黒キングがキング翼にキャッスリングしている、または中央列に取り残されていると仮定する)。あるいは永続的に圧力をかける作戦の一部となることがある。この作戦は黒の駒が正当に活動できる十分な余地がなくなるまでそれらを締め付けることを目指す。

 黒は当然 f5 突きを防ぐために可能なあらゆることをする。それはf5の地点自体を要塞化することもあれば、白の目的をそらすための戦術を用いることもある。このそらしはd4に多大の圧力をかけたり、それほど頻繁ではないがクイーン翼で反撃を開始したりして行なう。

 f5 突きの前提はもちろん f4 突きである。この先行手は白が Nf3 と突いていると実現するのが難しいことがよくある。黒がうまく反撃すれば退却の Ne1 や中央離反の Nh4 は白に好ましくない結果をもたらす。最もありうるのはd4の地点(そしてそこにいるポーン)が黒の駒によって蹂躙されることである。

 しかし白が Nf3 より前に f4 と突こうとしたらどうなるだろうか。そうなれば白はあとでfポーンをどのようにしたら邪魔にならないようにできるか悩まずにすみ、苦もなく f5 突きの準備に取り掛かることができる。これは理論ではもっともそうに聞こえるが、問題は白が序盤でポーン突きに多くの手数をかけ、駒を展開する余裕を見つける前に圧倒されるかもしれないということである。例えば突き越し戦法で 1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 のあと白は戦略的に望ましい 5.f4 を指すこともできた。しかし 5…Qb6 6.Nf3 Nh6(5.f4 のために白は 7.Bxh6 と指せない)7.b3(7.Bd3 なら 7…Bd7!、また 7.Na3 なら 7…cxd4 8.cxd4 Bxa3 9.bxa3 Nf5 で黒のポーン得になる)7…cxd4 8.cxd4 Bb4+ 9.Kf2 f6 で黒が十分な態勢になる。

 実際には白が無傷で Nf3 の前に f4 と突ける例は数少ない。一例は 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2(または 3.Nc3)3…Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 である。本章では白がd4の地点にポーンを維持する手順を分析し、そのため 3.Nd2 の方に集中する。白駒がd4の地点に駒を置く(通常は 3.Nc3 のあとで)手順は次章の「古典中原」で分析する。この二つの手順で白が大胆に f4 突きで自陣を広げることのできる主要な要因はd7の黒ナイトがd4の地点の攻撃に用いられないためで、黒ナイトが容易にd4に到達できる似たような戦法よりも白の中原がはるかに安全であることを意味している。

 白の目的は有利な展開を達成することで、それと並行してすべての攻撃を撃退し自陣に弱点を作ることを避ける。これに成功すれば白は勝利が有望となる。広さの優位は自分の駒に自由と力をもたらし、それと同時に敵駒の動きを邪魔し制限する。さらには前述したように先に f4 突きを準備する必要なしに、重要な f5 突きを成し遂げる立場に立つことになる。

(この章続く)

2013年01月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(59)

第3章 f4 による中原の締め付け(続き)

黒の中原での攻撃

 

 たとえナイトがd7であまり働いていなくても黒は白の中原を強力に攻撃することができる。実のところ黒は 3…Nf6 で相手を挑発して広大な領域を所有させ(4.e5 と 5.f4)、黒駒の襲撃に対して白が適切にすべての陣地を守ることができないことを証明できると期待している。

 黒はd4の地点を攻撃することにより白が自然に展開することを難しくさせることができる。タラシュ戦法からのこの典型的な状況はこの戦型における白の困難をよく表わしている。白がd4のポーンを Ngf3 によって守ればd2のナイトに自然な住居がなくなる。b3の地点では遊び駒になり、…a5-a4 による攻撃に弱くなる。白が Nd2-b1-c3 という捌きさえ考えるかもしれないということは、白の状況の不合理さをよく表わしている。白はナイトをe2とf3に配置するのが理想だが、それでもなお白枡ビショップをd3の地点に配置したい。

 だから白の最初の「不自然な」手は Ndf3 で、他の駒を動かす前に序盤で同じ駒を2度動かすことになる。黒が …Qb6 と応じたあと白は驚いたことに黒のd7のナイトのせいで(あとの Bb5+ をなくしている)まだ Bd3 と指すことができない。実際白はビショップをd3の地点にナイトをe2の地点に配置する陣形にこだわりたければ、建設的な手を見つけることが困難になる。白が Kf2 と指せば(例えば …Bb4+ に対して)、黒はいくつかの戦術が思い浮かぶ。

 

 …g5 突きは白ナイトをd4の守りからおびき出す(例えば …g4 突きで)目的である。またfポーンにもe5の地点の守りからおびき出す(fxg5)目的もある。e5のポーンはdポーンの釘付けのせいで落ちることになる(もっとも実際にはポーンの形の変化は白に有利かもしれない)。同様に …f6 突きはe5のポーンを取ることを狙っている。黒はこの直接的な狙いに対処することができれば、キング翼にキャッスリングして白キングに向けてf列を素通しにすることを図る。そうなれば白がキングをどこへ動かそうと(g列でもe列でも)、黒はd4またはe5の地点でナイトを犠牲にしてもっと筋を開けることができる。そして黒のクイーンとルークのコンビが恐ろしい効果をもたらすことができる(例えばf2の地点での詰み)。

 もちろんすべてがこれほど単純なわけではない。駒はしょせん駒であり、…Nxe5 や …Nxd4 のような犠牲はいつも成立するわけではなく慎重な読みが必要である。白は代わりにキング翼のナイトをh3の地点に展開したり(たぶん h2-h4 突きのあと)、またはどのみち Ne2 と指し白枡ビショップを g2-g3 のあとh3の地点に展開することもあり得る。
 
(この章続く)

2013年01月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(60)

第3章 f4 による中原の締め付け(続き)

黒のクイーン翼での作戦

 また、黒は展開の優位を利用して広さの不利のないところ、すなわちクイーン翼で手を作ろうとすることができる。黒には二つの異なったやり方があり、一つ目は …cxd4 から …a5 である。

 

 黒の意図は …a3 と突いて自分のナイトのために重要なb4の地点を確保し、収局でa3のポーンを強力な資産にすることである。…a3 の前に …Nb6-c4 と指しておくことにより黒は …Nb2 でもっと速く戦術の機会を得ようとすることができる。もし白が a3 と突けばb3とc4の地点を利用することができる。一方白が a4 と突けば黒はそれでもb4の地点を利用することができる。たぶん白の最善の策はかなりゆっくりとしてはいるが b3 そして a3 と突いて …a4 に b4 と突くことである。その場合でも黒は、あまり動ける余地はないがc4の地点を自分のナイトのために使える。

 二つ目のやり方はd4の地点でポーン交換をしないで …b5 から …b4 と突いていくことである。その意図は …bxc3、bxc3 と交換してからd4の地点でなく連鎖ポーンの土台の弱いc3の地点を攻撃することである。

 

 明らかに白はどちらの作戦にもおとなしく座視することなく、キング翼での f5 突きの仕掛けを狙っていく(例えば g2-g4 突きから Ng1-e2-g3)。従って黒はクイーン翼での作戦をキング翼でのなんらかのせき止めと組み合わせなければならない。
 
(この章続く)

2013年01月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(61)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

黒が …f5 でせき止める

 

 …f5 のあとでも白はまだ g4 突きでキング翼を襲撃できる。考えられる一つの作戦は h3 突きから g4 と突き …fxg4 に hxg4 と取り返しh1のルークが素通しのh列で好位置になるようにすることである。しかし黒は …fxg4 と取る義務はさらさらない。白は h4 突きから h5 突きで攻撃を続けたいかもしれないが、h3 突きが無駄手になるかもしれない。だから …fxg4、Rxg4 のあと黒が迅速にf5の地点を自分の駒のために確保できないと仮定すれば白は Rg1 から g4 が最善手になるかもしれない。

 白が g4 と突いたと仮定すると、g7の地点に圧力をかけて黒に …g6 と突かせようとするかもしれない。そうなればhポーンを用いて h5 と突きg6のポーンを攻撃することができる。このようにして黒のキング翼を弱め攻撃の可能性を高めることができる。

 黒に …Bc8-d7-e8-g6 の捌きを採用するよう推奨するのはこの理由による。g6のビショップは敏感なg7のポーンを隠し、白の h5 突きをより難しくさせる。そして白が gxf5 と取れば、黒は通常は白のe5のポーンを保護パスポーンにさせても …exf5 と取り返すべきである。勝負は黒のクイーン翼での圧力と白のキング翼での圧力との白兵戦により決まるのが確実である。白が収局になれば有利であるというのはほとんど意味がない。
 
(この章続く)

2013年01月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(62)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

黒が …h5 でせき止める

 

 もっと以前のせき止めの手法は …h5 から …g6 と突くレニングラードシステムだった。これは最近ではあまりはやらなくなった。おそらくナイトが陣取れるg5の穴を含め、白が黒のキング翼に弱点を作らせたことに満足してクイーン翼の方に集中できるからであろう。それでも白は特に黒がキング翼にキャッスリングしているならば h3、g4 から f5 と入念に準備してやっていくこともできる。ポーンの形は最近流行しているグルゲニゼシステム(1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 c6 4.f4 d5 5.e5 h5)とほぼ同じである。しかし違いはグルゲニゼシステムでは黒が …Bg4 のあと白枡ビショップを交換できるのが普通なのに対し、レニングラードシステムではこのビショップが展開されず「不良」のままであるということである。
 
(この章続く)

2013年01月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(63)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例

第9局
プイダ対リカフスキー
チェコスロバキア、1991年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3 cxd4

 この交換をしない作戦には簡明な定跡手順がある。

 a)7…Qa5 8.Be3! cxd4(8…b5 も指されているが 9.dxc5 b4 10.a3! b3 11.Qxb3 Nxc5 12.Qb5 となって黒の反撃が十分でないようである)9.Nxd4 Nxd4 10.Bxd4 ここで …Nd7-b8-c6 という再配置が覚えておく価値のある捌きである。しかし 10…Nb8 11.Nf3 Nc6 12.Be3 となればかなり退屈な局面でも白が明らかに優勢のようである。

 b)7…c4 8.g4 b5 9.Ne2 Nb6(9…h5 は 10.gxh5 Rxh5 11.Ng3 Rh8 12.f5!)10.Ng3!(10.Be3 は 10…h5! 11.gxh5 Rxh5 12.Ng3 Rh8 となって黒が次に …g6 と突いて f5 と突けなくさせる)これで …h5 突きを止めて白が優勢である。

8.cxd4 Qb6

 せき止めの他の戦法については第11局を参照。

9.g3

 この変に見える手は Bh3 と指すつもりではなく(もっとも白は時々こう指すが)、キングを安全なg2の地点に「人力でキャッスリング」させる意図である。「自然な」9.Ne2 は全然問題ない手だが、ここでは滅多に指されない。この局面はシュタイニッツ戦法の 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 Qb6 8.Nf3 cxd4 9.cxd4 という手順から生じる方が普通である。そのあとは 9…f6 10.g3 Bb4+ 11.Nc3 O-O と続いて黒が好形である。

9…Bb4+

 他の激しい手段は 9…f6 である。現時点ではこの手は次の手順で定跡として陰りが出ている。10.Bh3(10.Bd3 は 10…Be7 11.Kf1 O-O 12.Kg2 Kh8 13.Bb1 Rf7 14.Qd3 Nf8 で黒は少し守勢でも十分堅固である)10…fxe5 11.fxe5 Bb4+ 12.Kf1 O-O

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(64)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 このような局面で白が黒のeポーンを取るのはほとんどいつも勧められない。例えばここで 13.Bxe6+ と取ると 13…Kh8(14…Nxd4 の狙いがある)14.Kg2 Ndxe5! 15.Bxc8 Nxf3 となって黒が良い。13.Bxe6+ Kh8 14.Bxd7 は 14…Bxd7 のあとd7の黒ビショップが白枡を支配することになるので大局的に白の破滅を招く。白は黒駒の動きを制限する作戦を取るべきで、1ポーンごときでは黒駒に自由を与える代償としては小さすぎる。結局のところ以降の主手順では黒は駒の働きを活発にするためにまるまる1駒を進んで捨てている。だから白は 13.Kg2! でキングを比較的安全な所に移す。

 ここでもし黒が何も積極的なことをしなければ、すぐに守勢に追い込まれてしまう。例えば 13…Kh8 は 14.Bg4 Nd8 15.h4 Nf7 16.Ne2 Nh6 17.Bh3 Nf5 18.Qc2 となって、以前のアダムズ対I.グレビッチ戦(世界16歳以下選手権戦、1987年)では黒のビショップがb4でなくe7にいたが黒が 18…Qc6 19.Qd3 Qc4 より他に何も良い手を見つけることができず 20.Qxc4 dxc4 21.Nf4 で不利な収局に入るしかなかった。黒がクイーン交換に来なかったらアダムズは Bxf5 のあと Ng5 または Bg5 で攻撃を強化する作戦を行なっただろう。

 黒はほとんど 13…Ndxe5 14.dxe5 Nxe5 で駒を犠牲に白のポーン中原を破壊し自分の駒を自由にすることを強いられている(もちろん 15.Nxe5?? はf2で1手詰みになる)。しかしそのあと 15.Qe2(15.Qb3 も面白い)15…Nxf3(15…Nc4 なら 16.b3 Bc3 17.Rb1 Bf6 18.Ng5!)16.Nxf3 e5 17.Bxc8 Raxc8 で白の有利な局面になるようである。黒駒の働きは最高度に発揮されているが、18.Nxe5 Qe6 19.Bf4 や(おそらくもっと強手の)18.Rd1 Qg6 19.Bd2 Rc2 20.Qxe5 のような手順が想定され白が優勢かもしかしたら勝勢である。黒でこの手順を指すことに興味のある読者はフランス防御のもっと詳細な定跡書の分析を参考にして自分で独自に研究してみるべきである。しかし著者としてはこの手順の評価は覆らないと思っている。

10.Kf2 g5!

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(65)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

11.Be3

 11.Nxg5 は 11…Qxd4+ で黒が困らない。

 他の主要な手は次のとおりである。

 a)11.fxg5 Ndxe5 12.Nxe5 Nxe5 13.Kg2(13.Be3 Nc4!)13…Nc6 14.Nf3 Bf8! 15.b3 Bg7 16.Bb2 Bd7 17.Rc1 1986年通信戦でのグルズマン対グレク戦では 17…h6! で白のキング翼での広さの優位が減少し黒の潜在的なhポーンの弱点がなくなった。

 b)11.h3 gxf4 12.Bxf4(12.gxf4 なら 12…f6 13.Be3 Be7! で …Nd7-f8-g6、…Bd7、…O-O-O を狙い白の中原に強い圧力をかける)12…f6! 13.Kg2 Bf8! 14.Rb1(14.Rh2!? に対し 14…Qxb2+ 15.Kh1 Qa3 16.Bb5 は混戦になり 14…Bg7 15.Kh1 O-O は黒がしっかりしている)14…Bg7 15.Bd3 O-O ここで 16.Qc2 は 16…fxe5 17.Bxh7+ Kh8 18.dxe5 Ndxe5 で良くない。白の中原の崩壊は黒キングのポーンの覆いがなくなったことより重大である。だから白は 16.exf6 と指さなければならず 16…Nxf6 で少なくとも黒にとって問題ないようである(ユダシン対モスカレンコ、ルボフ、1984年)。

11…f6

 1985年ソ連でのヤコビッチ対マチュルスキー戦では黒が 11…g4! と指し次のように明らかに優勢になった。12.Nd2(12.Nh4 は 12…Be7! 13.Rb1 Bxh4 14.gxh4 h5 15.h3 f5! で黒がキング翼での封鎖を維持し混戦になる – ヤコビッチ)12…f6! 13.Nb3(13.Qxg4? は 13…Bxd2 14.Bxd2 Qxd4+ で白が悪い)13…fxe5 14.dxe5 Bc5 15.Nxc5 Nxc5 16.Bg2(白は 16.Bxc5 Qxc5+ 17.Kg2 ∞ と指すべきである)16…d4! 17.Bc1(17.Bxd4 Nxd4 18.Qxd4 Nd3+ 19.Ke3 Qxd4+ 20.Kxd4 Nf2 -/+ ヤコビッチ)17…h5 -/+

12.Bh3 fxe5

 これは 12…O-O 13.Bxe6+ Kh8 14.Ne2 fxe5 15.Nxg5! という手順をなくしているので最も正確な手である。この変化は1988年チェコスロバキアでのドブロボルスキー対ティベンスキー戦で指され白が優勢だった。

13.fxe5 O-O 14.Rc1

 1985年全英選手権戦のエムズ対コステン戦では次の手順で黒が圧勝した。14.Bg4?! Bc5!! 15.Bxe6+ Kh8 16.dxc5 Qxb2+ 17.Bd2 g4! 18.Bxd5?(18.Bxg4 Qd4+ 19.Kg2 Qxg4 なら黒がわずかに優勢なだけである)18…Ndxe5 19.Bxc6 bxc6 20.Rb1 Qd4+ 21.Be3 Nd3+ 22.Ke2 gxf3+ 23.Nxf3 Qe4 このあと白が32手目で投了した。この不意の猛攻は黒駒が白の中原の締めつけから脱することができればその潜在力がすごいことを見せつけている。

14…Kh8?

 重要な改良手は 14…Be7!(14…h5 はウィリアム・ワトソンの推奨する 15.g4! h4 16.Bf1 で応じられる)15.Qb3 Qxb3 16.axb3 Nb6 のあと …a5 から …a4 である。

15.Bg4! Be7 16.h4! gxh4 17.Nh3!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(66)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これは白の単刀直入なやり方である。黒キングの覆いを取り払えば、重要な方面で火力の大きな優位がものをいうことに自信を持っている。

17…hxg3+ 18.Kxg3 Ndxe5

 これは側面攻撃には中央から反撃するという当然の反応である。しかしながら黒はクイーン翼のルークとビショップが戦いに参加していないので、ここでの見通しは圧倒的に黒に不利である。一方白の駒はどれも襲撃に加わる用意ができている。

19.Nhg5 Rxf3+

 黒はh7の地点が崩壊するのを防がなければならない。

20.Bxf3 Bxg5 21.Bxg5 Ng6 22.Bf6+ Kg8 23.Rxh7! Kxh7 24.Be4!

 クイーンのh5への道を空けた。

24…Qc7+ 25.Kg2 Kg8

 25…dxe4 なら 26.Qh5+ Kg8 27.Qxg6+ Kf8 28.Rh1 から詰みが待っている。

26.Qg4 Qf7

 26…dxe4 は上の解説のように 27.Qxg6+ から白の勝ちになる。実戦の進行もあまり大差ない。クイーン同士の交換にもかかわらず続く詰みの狙いをかわすために黒はすぐに駒を捨てなければならない。

27.Qxg6+ Qxg6+ 28.Bxg6 Kf8 29.Rh1 Ne7 30.Rh8+ Ng8 31.Be5 Bd7 32.Rh7 Be8 33.Bd6+ Ne7 34.Bxe7+ Kg8 35.Bb1 Rc8 36.Bg5 Rc4 37.Be3 e5 38.dxe5 d4 39.Bd2 d3 40.Re7 Bc6+ 41.Kf2 Rh4 42.Bxd3 1-0

(この章続く)

2013年01月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(67)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第10局
コンクエスト対M.グレビッチ
クリシー、1993年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3 Qb6 8.h4

 黒の手番 

 これは 8.g3 に代わる白の有力な手で、非常に理にかなっている。白の理屈は …g5 突きが否定されたので黒は …f6 突きでしか白の中原を攻撃できないだろうということである。しかし …f6 と突けばd4のポーンがタブーなので白はビショップを最も強力な地点のd3に展開できるようになる。例えば 8…f6 9.Bd3 cxd4 10.cxd4 Nxd4?? 11.Nxd4 Qxd4 12.Bg6+ で黒のクイーンが落ちる。この策略は黒ポーンがf7の地点にあっては成立しないことに注意されたい。だから白の論理は単に黒の …g5 突きの変化を防ぎ …f6? 突きを待つことにより Bd3 を達成できるときに、どうして Bh3 の準備に g3 と突くべきなのかということである。これの小さな欠点は g3 の変化よりも白キングがずっと大きな危険に陥るかもしれないということである。というのは黒が中央突破に成功すれば白キングがg2に隠れることができないからである。

8…cxd4 9.cxd4 f6

 上の解説を考慮すれば黒が …f6 突きをやめて白ビショップに強力な攻撃地点のd3を与えないことを考えるのも一理ある。これを念頭に置けば 9…Be7 が浮かんでくる。白は 10.h5!? が良くなければ …f6 突きを待つ有用な手段がない。10.g3 なら 10…f6 11.Bd3 fxe5 12.fxe5 O-O で反撃が見込めそうである。

 a)13.Bxh7+? Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qh5 Bb4+! これは攻守逆転である。

 b)13.Nh3 Bb4+ 14.Ke2 Rxf3!

 c)13.Bf4 Qxb2 14.Rh2 Qc3+ 15.Kf1 Nb4 16.Bb1 b6

 d)13.a3 Ndxe5! 14.dxe5 Nxe5

 10…f6 の代わりに1996年アバーガベニーでのファーガソン対ハーリー戦では 10…a5!? が指され次のように進んだ。11.a3 a4 12.Bh3 Qa7(ここでの 12…f6 は 13.Ne2 fxe5 14.fxe5 O-O 15.Bxe6+ Kh8 16.Bxd5 Ndxe5 17.dxe5 Nxe5 18.Bf4! で駄目である)13.Ne2 Nb6 13.Nc3?!(この手はd4の地点を弱める。単に 14.O-O が良かった。一方 14.g4 は最も積極的で、Ng3 から f5 を策する)14…Bd7 15.O-O Na5 16.f5!? exf5 17.Bg5 Bxg5 18.Nxg5 ここで 18…g6 19.g4 なら黒が少し良かっただろう。

 Bd3 を一時的に止める別の手段は 9…Bb4+ 10.Kf2 f6 で、d4ポーンの釘付けを利用してe5のポーン取りを狙う。そのあと 11.Be3 Be7 12.Qd2 O-O 13.Rd1 なら形勢不明である。1991年リナレスでのリュボエビッチ対M.グレビッチ戦では白は 11.Kg3?! と指し 11…O-O に対して待望の 12.Bd3? を指した(図73)。

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(68)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 しかし白はキングの安全のための配慮が足りず、黒は次のように駒を犠牲にして圧倒的な攻撃に出ることができた。12…Nxd4! 13.Nxd4 fxe5 14.fxe5 Nxe5 15.Bc2 Ng6! 16.Bxg6 hxg6 17.Nde2(…Bd6+ から …e5+ でこのナイトが攻撃にさらされないようにした)17…Qf2+ 18.Kh3 Bd6 19.Qb3 e5+ 20.Kh2 Qxh4+ 21.Nh3 Bxh3! 0-1 この惨敗はこの f4 による中原締めつけの戦型で白がいかに注意深く指さなければいけないかの警鐘である。たった1手の不注意が負けを意味することがある。しかしこれは一片の真実にすぎない。不注意な指し方の報いがより大きければ、良い指し方の報酬もそれに見合って大きい。この戦型には引き分けが非常に少ない!

10.Bd3 Bb4+ 11.Ke2

 グレビッチの手順のために白キングがf2でなくe2に行かされた。e2の方が安全に見えるけれども、キング翼の避難所からは一列遠く、たぶんもっと重要なことはg1のナイトから最良の展開の Ne2 という手を奪っていることである。

11…Be7

 この手は白の中原を支える 12.Be3 を妨害するために指された(そう指すと 12…Qxb2+ と取られる)。代わりに黒が消極的に指せば、猛攻に見舞われるかもしれない。例えば1988年ベルリンでのプサーヒス対フランケ戦では 11…O-O 12.Be3 a5 13.Qc2 f5 14.g4! Ndb8(14…fxg4 は 15.Bxh7+ Kh8 16.Qg6! gxf3+ 17.Nxf3 で 18.Qh5 による詰みの狙いに受けがないので白の短手数の勝ちになる[訳注 17…Rf5 で受かっているようです])15.a3 Be7 16.Kf2! Bd7 17.gxf5 exf5 18.Ne2 Na6 19.Rag1 と進んで黒が窮地に陥った。例えば 19…Kh8(19…Qd8 20.Ng3 Qc8 が悪いながらも最善のように見える)20.Ng3 g6(f5の地点を守る唯一の受け)21.h5 で決定的な猛攻を受ける。

12.h5 O-O 13.Qc2 f5 14.a3

 この手は 14.g4? Nb4 を避けたもので、14…Nxd4+ 15.Nxd4 Qxd4 16.Be3 でクイーンを召し取る罠がある。

14…a5 15.g4! Qd8!

 この手はb6の地点を空け、…Nb6 から …Bd7 と展開する準備をしている。そうなれば黒は …Rc8 からついには …Nc4 で反撃の準備が整う。

16.gxf5 exf5

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(69)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

17.Nh3

 17.Bxf5 とポーンを取るのはグレビッチの指摘するように 17…Rxf5! 18.Qxf5 Ndxe5 19.Qc2 Nxf3 20.Nxf3 Bg4 で黒に交換損の代わりに良い反撃手段ができるので良くない。白の意図は(非常に有利になれるのでなければ)戦力を得することでなく、広さの優位で黒駒を押し込めておくことである。白の期待は活動性の不足の結果として黒の防御がキング翼での白の攻撃をはね返すことができず、クイーン翼では反撃を遂行することができなくなることである。

17…Nb6 18.Be3 Be6 19.Nhg5 Qd7 20.Rag1 Nc4

 これは黒からの反撃の最初の兆候である。

21.Bf2 Rac8 22.Qb1

 クイーンがc列での開き攻撃にあわない用心のために退却した。

22…a4

 黒はキング翼での白の圧力に対抗するために、白のクイーン翼のポーンを固定しておいて …b5-b4 突きでクイーン翼の列を素通しにする用意をした。

23.Nh4?

 白は即決の勝ちを狙ったが、白陣はそれが正当化できるほど強力でなかった。ここは代わりに Rg3、Rhg1、R1g2、そのあともし適当なら Qg1 と攻撃の強化を続け、クイーン翼のポーンを犠牲にしてもg列で必殺の敵陣突破を成し遂げることを期待すべきだった。白がこの方針をとっていれば激闘が予想された。

23…Bxg5

 この手はさし迫った 24.Nxe6 から 25.Nxf5 の狙いに対処した。

24.Rxg5 Ne7!

 この手はキング翼の守りを強化し、それと同じくらい重要だが …Qb5 でb2の地点に圧力をかける道を開いた。

25.Rhg1 Rf7 26.R1g2 Qb5!

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(70)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 白が 27.Qg1 でg列に危険な圧力をかける前にちょうど間に合った。ここで 27.Qg1 なら 27…Qxb2+! と応じることができる。例えば 28.Kf3 なら 28…Qc3 29.Rxg7+ Kh8 30.Rxf7 Qxd3+ 31.Be3 Bxf7 で黒の駒得になる。だから白がg列で圧力を強めるべきだったときに 23.Nh4 で貴重な手を無駄にしたために黒が布局の戦いに勝ったと結論づけることができる。このようなのっぴきならない局面ではたった一つの無駄手でも有望な局面を負け戦にしてしまうことがある。

27.b4!?

 黒を混乱させようとするこの一撃がまんまと成功する。

27…Nxa3?

 これで白にチャンスが生まれた。グレビッチによれば 27…axb3e.p. 28.Qg1 b2! 29.Rxg7+ Kh8 と指すべきだった。そうなればb2のパスポーンの脅威が白のg列での可能性をはるかにしのぐ。

28.Rxg7+!

 これで黒クイーンを取ることができる。もっとも黒のパスポーンがまだ勝つ可能性を保証している。

28…Rxg7 29.Rxg7+ Kxg7 30.Qg1+ Kf8 31.Bxb5 Nxb5 32.Nf3!

 ここから白駒のみごとな再編成が始まる。代わりに 32.Qg5? は 32…Ke8! 33.Qf6 Kd7 でaポーンが突進する。

32…a3 33.Bh4! a2 34.Bf6 Rc2+ 35.Kd3 Rc3+ 36.Kd2 Nc6

 もちろん 36…Rxf3?? とは取れず 37.Qg7+ で詰まされる。本譜の手のあとは黒の勝ちのように見える。というのは 37.Qg7+ Ke8 のあと黒キングは必要ならばb6の地点まで逃走することができ、そうなればaポーンがクイーンに昇格できるからである。しかし白はまだ助かることができる。

37.Ng5 Ncxd4 38.Nxh7+ Ke8 39.Qg7 Nc6 40.Qh8+?

 白は時間に追われて敵キングを逃走させaポーンを止められなくなった。40.Bg5! と指せば 40…a1=Q 41.Nf6+ Kd8 42.Nxd5+ Kc8 43.Qf8+ Kd7 44.Qg7+ となって永久チェックで引き分けにできた(「チェス新報」第58巻のグレビッチの解説)。

40…Kd7 41.Nf8+ Kc7 42.Nxe6+ Kb6 43.Bd8+ Ka7 44.Nc7 Nxc7 0-1

(この章続く)

2013年01月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(71)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第11局
イェー・チャンチュワン対ショート
ルツェルン世界チーム選手権戦、1989年
タラシュ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4 c5 6.c3 Nc6 7.Ndf3

 黒の手番 

7…f5!?

 黒がこのようにして自陣を固めたければ今行なうべきである。7…Qb6 8.g3 f5?! はちょっと時期が悪く、9.Ne2 a5 10.Bh3 Be7?!(ここは 10…cxd4 と取る最後の機会で 11.Nexd4 と取ってくれば …Nc5 から …Ne4 で反撃できる。だから白はたぶん 11.cxd4 +/= と取る)11.g4! Ndb8(11…g6? は 12.gxf5 gxf5 13.Ng5 から Qh5+ の狙いが強烈である)12.gxf5 exf5 13.dxc5! Qd8 14.Be3 Na6 15.Qd3 O-O となって、1983年プロブディフでの欧州チーム選手権戦のショート対レーフシュレーガー戦で白が 16.Rd1 と指していれば明らかに優勢になっていただろう。7…Qb6 は白に「無駄手」を指させる。例えば 8.g3 だが、黒もクイーンがd7のナイトから好所のb6を奪う場違いの駒になっている。だからあとで …Qd8 と指せば無駄手を指したのは実は黒の方ということになる。

 本章の前半で述べたように黒は 7…h5!? と突いて封鎖を試みることもできる。しかし白は 8.Bd3 cxd4 9.cxd4 Nb6 10.Ne2(10.Nh3 Bd7 11.O-O g6 12.Nhg5!? – バレエフ)10…Bd7 11.O-O a5 12.a3 a4 13.Qe1 g6 で優勢を維持している。1968年スコピエでのウェード対ウールマン戦では 13…Na5? 14.f5! exf5 15.e6! fxe6 16.Qg3 Kf7 17.Nf4 のあと白が勝った。

8.Bd3

 もちろん白は明らかな不都合がなければいつも白枡ビショップをこの地点に展開する。

8…cxd4

 黒は例えば 8…Be7 9.Ne2 cxd4 10.Nexd4 で白が ナイトをd4の地点に据える選択肢を持つ前に交換した。白がこの機会を生かすかどうかは分からないが、わざわざ選択権を与えることはないだろう。

9.cxd4 Be7 10.Ne2 Nb6

 ここからの黒の着想には …a5-a4-a3 があり、そのとき b3 と応じてくれれば …Nb4 が絶好の地点に陣取ることになる。共通点のある作戦が1986年ベークアーンゼーでのリュボエビッチ対ヒューブナー戦で見られ 7…Qb6 8.g3 Be7 9.Ne2 O-O 10.Bh3 cxd4 11.cxd4 a5 12.O-O a4 と進んだ。リュボエビッチは 13.a3 Qa7 14.Qc2 と応じヒューブナーは 14…f5? という悪手を指した。これに対してはリュボエビッチの 15.exf6e.p. でも 15.g4 でも良さそうである。チェス新報第41巻でヒューブナーは黒が f5 突きの狙いを無視すべきだったとして詳細な分析を解説している。彼の主要な手順は 14…Nb6! 15.f5 Nc4 である。

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(72)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲) 白の手番 

 ここで16.f6? なら 16…gxf6 17.exf6 Bxf6 18.Bh6 Nxd4 19.Nexd4 Bxd4+ 20.Kh1 Bg7 21.Ng5 f5 22.Bxg7 Kxg7 23.g4 h6! 24.gxf5 hxg5 25.fxe6 Qe3! で黒の受けが成功し勝ちになるようである。だから白は安全に 16.Kg2 または 16.Kh1 と指すのが最善で、黒は必要になれば 16…exf5 17.Bxf5 Bxf5 18.Qxf5 Qb6 でクイーンを受けに使う用意をする。それならいい勝負のようである。

11.h3

 白はすぐに g4 と突く準備をした。1991年カペル・ラ・グランドでのタニョン対マクドナルド戦では白が代わりに 11.O-O と指し 11…O-O 12.Kh1 Bd7 13.Rg1 Be8 14.h3 Bg6 15.Ng5?! Bxg5(黒は 15…Qd7 で長い包囲攻撃の用意をすることもできた)16.fxg5 と続いた。ここで 16…Qe8! 17.Bb1(Nf4 の意図)17…Bh5 18.g4?! fxg4 19.Nf4(19.hxg4 Bxg4!)19…Rxf4! 20.Bxf4 gxh3 と指していれば黒が優勢だった。

11…O-O 12.g4

 すべて予定どおりである。イェーの考えでは控え目の 12.a3 の方が良く 12…a5 には 13.b3 a4 14.b4 と応じるそうである。しかしいずれにしても …Nc4 から …Rc8 の準備の 14…Bd7 で、白が g4 突きの作戦に戻らなければ黒にはほとんど恐れるものがない。

12…a5

 白の手番 

(この章続く)

2013年01月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(73)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 12…Bh4+ は 13.Kf1 のあと g5 突きでこのビショップが取られないように引かなければならないので悪手である。そのあと白キングは Kg2、Rg1、Kh1 と移動してe1にいるよりも安全である。重要なことを注意しておくと 12…g6 はあまりに消極的すぎる。白にg6の地点という攻撃目標を与え、黒があとでビショップをg6またはh5に出せなくなる。

13.a4

 1991年ダブリンでのクラーク対マクドナルド戦ではここから 13.Kf2? a4 14.gxf5 exf5 15.h4 Bd7 16.Be3 Nb4! 17.Ng3(17.Bb1 は 17…Nc4 18.Bc1 a3 19.b3 Nb2! で黒が優勢である)17…Nxd3+(この交換は黒が非常に有利である)18.Qxd3 Nc4 19.Rab1 a3 20.b3 Nb2 21.Qe2 Qb6 となって黒が(…Bb5 の狙いがあり)明らかに優勢だった。

 本譜の手は黒のaポーンがさらに前進するのを抑止している。しかしおそらく 13.O-O!? で自分のキングを安全にしそのあと Kh1 から Rg1 と指す方が良かった。それなら黒は …a4 か …Bd7 と指しただろう。

13…Nb4

 白の前手はこのナイトに絶好の拠点を与えた。a3 突きでこのナイトを追い払うことがもうできなくなっている。

14.Bb1 Bd7 15.Kf2?!

 15.O-O はルークがg1に行くのに2手かかるので、イェーは攻撃を遅らせたくなかった。それにもかかわらず白キングはf2で露出しているのでイェーは結局キングをh列に行かせることになり、望みの配置を達成するために3手でなく4手かかることになった。

15…Rc8 16.Rg1 Kh8 17.Kg2 Be8!

 本章の冒頭の概説で説明したように黒はg列での圧力を、ビショップをg6の地点に転回させることにより迎え撃つ。

18.Kh2?!

 18.Kh1 の方が良かった。

18…Bg6 19.Nc3 Qe8! 20.Ne1 Qf7

 黒クイーンの捌きでキング翼がさらに強化された。

21.Rg2

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(74)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白の攻撃が停止し、黒はここからキング翼で主導権を握ることができる。

21…fxg4 22.Bxg6 Qxg6 23.hxg4 Qh6+

 白キングがh1にいたら(18手目の解説を参照)このチェックに 24.Rh2 Qg6 25.Rg2 Qh6+ と応じて千日手による引き分けにできた。

24.Kg1 g5!

 これで白のキング翼のポーンが破壊され黒がはっきり優勢になる。

25.Rh2 Qg6 26.Ne2 Rf7! 27.Ra3!

 このルークがキング翼の完全な崩壊を防ぐのにちょうど間に合う。

27…Rcf8 28.Rah3 gxf4 29.Nxf4 Qb1!

 29…Rxf4?! は 30.Bxf4 Rxf4 31.Rxh7+ Qxh7 32.Rxh7+ Kxh7 33.Ng2 Rf8 34.g5(g2のナイトを押さえ込む …Bg5! を止める)34…Bxg5 35.Qg4 から 36.Qxe6 となって、黒キングが薄いので白が反撃で十分引き分けに持ち込めるはずである。本譜は次の 30…Rxf4 で受けがないのでショートが簡単に勝つはずである。30.Ne2 なら 30…Rf1+ 31.Kg2 Qe4+ で黒の楽勝になる。

30.Nc2 Kg8?

 30…Rxf4 31.Rxh7+ Kg8 32.Rh8+ Kf7 33.g5 Ke8! で黒が勝つ。

31.Na3!

 白が意表の引き分けの手段を見つけ出した。

31…Qa1 32.Nc2 Qxa4?

 そして勝つ可能性が出てきた。黒は千日手による引き分けの手段が選べて、一つは平凡な 32…Qb1 33.Na3 で、もう一つは派手な 32…Nxc2 33.Qxc2 Rc8(33…Rxf4 34.Qxh7#)34.Qg6+! Kf8(34…hxg6?? は2手詰めになる)35.Nxe6+ Ke8 36.Ng7+ である(イェー・チャンチュワン)。

33.b3! Qc6 34.Nxb4 axb4 35.g5!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(75)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 突然白が局面を支配した。ここで黒は 35…Rxf4 と取るべきで、それなら白に明白な勝ちはなかった。例えば 36.Bxf4 なら 36…Rxf4 37.Rxh7(37.Qh5? は 37…Qc1+ で白が先に詰まされる)37…Bxg5 38.Rh8+ Kg7 39.R2h7+ Kg6 40.Qh5+ Kf5 41.Rf7+ Ke4、途中 40.Rg8+ なら 40…Kxh7 41.Rxg5 Rh4 42.Qd3+ Kh8 43.Qg6 Qc1+ でよい。

35…Bxg5?

 黒はg列で致命的な釘付けにされる。

36.Rg2 h6 37.Rxh6 Rg7 38.Ng6 Bxh6

 実戦のようにクイーンを捨てる方がまだましだが見込みのないことには変わりない。

39.Ne7+ Kf7 40.Nxc6 Rxg2+ 41.Kxg2 Rg8+ 42.Kf2 Bxc1 43.Qh5+ Kg7 44.Ne7 Rf8+ 45.Ke2 Rf7 46.Qg4+ Kf8 47.Ng6+ 1-0

(この章続く)

2013年01月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(76)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

第12局
ショート対プサーヒス
モスクワ・オリンピアード、1994年
古典戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 Qb6 8.Nf3 なら前に第9局で解説した戦型に戻る。

5…c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3 Qb6

 これに代わる他の手は次章を参照されたい。

8.Na4 Qa5+ 9.c3

 ここで白は 10.dxc5 を狙っていて黒が駒で取り返すと b4 突きで両当たりになる。だから黒は防御一辺倒の手と攻撃一辺倒の手とから選択しなければならない。黒にとっては残念なことに攻撃的な手は次のように疑問のようである。9…cxd4 10.b4 Nxb4(クイーンを引くのは 11.Nxd4 で黒が締めつけられて面白くない。だからこのナイト切りはほぼ必然である)11.cxb4 Bxb4+ 12.Bd2 Bxd2+ 13.Nxd2 黒は駒の代わりに3ポーンと堅固な陣形を得ているが、本当に大丈夫なのだろうか。1994年アムステルダムでのショート対ティマン戦では黒が 13…g5 で白の中央を破壊しようとした。しかし 14.Rb1 gxf4 15.Bb5 Rb8 16.Nc5 Qc3 17.Nd3 ですぐに苦戦に陥った。

9…c4 10.b4!

 例えば 10.Be2 のようなありきたりの手に対しては黒は 10…b5 と指すつもりである。そして 11.Nc5 Nxc5 12.dxc5 b4 でc5を攻撃して明らかに黒が優勢になる。ショートはこうならないようにした。

10…Qc7 11.Be2 Be7

 11…b5 は 12.Nc5 と応じられて黒はナイトを拠点に居座らせるか 12…Nxc5 13.bxc5(または 13.dxc5 でd4が白駒の好所になる)で白のポーンの形を良くさせるかの面白くない選択をすることになる。

12.a3!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(77)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 これは巧妙な手である。キャッスリングするのが普通だがショートは自陣の広さの優位を生かす最良の方策はキングを中央に置いたまま黒のキング翼に対する側面攻撃を図ることであると見通していた。そのような攻撃は f5 突きによる仕掛けに至ることになる。このポーンを突くためには g4 突きの準備とキング側のルークをg1の地点に寄せて支援することが必要かもしれない。白キングがキング翼にいるとそのような攻撃作戦の邪魔になるだけである。

12…f5

 ここは重大な局面である。黒には完全に納得のいく手がないように思われる。可能な作戦をざっと見ればそのことが明らかになる。まず 12…b5 は前述の11手目の解説のようにまだ 13.Nc5 と応じられる。別の手は 12…b6 で 13…Bb7 から 14…O-O-O を意図する手である。しかし黒はキングがクイーン翼で非常に安全であっても、根本的な問題は白の大局的な狙いの f5 突きにどう対処するかということである。

 12…f6 もあまり助けにならない。というのは(例えば)13.Qd2 のあと 13…fxe5?! 14.fxe5 で黒陣がまだ窮屈で、14…Ndxe5? と駒を切って自由になろうとするのは白を混乱させることにならないので成功しそうにない。15.dxe5 Nxe5 16.O-O で黒は投了してもおかしくない。実際 12…f6 と突くのは白のキング翼で素通し列を作る望みに手を貸すようなものである。

 上図の状況を 5.f4 突きのタラシュ戦法で通常生じる局面と比較すれば、なぜ黒がここではあまり有望でないのかが容易に理解できる。ここでは黒が白のクイーン翼とd4ポーンに対して何も反撃ができていない。白のクイーン翼はまったく堅固で弱点がない。黒は動くことができず、堅固な防御要塞を構築して白の攻撃を待つ作戦しかできない。黒はそれを 12…f5 突きで開始して、直接的なやり方で白のfポーン突きを止めた。しかし今度はf5のポーンが突き崩しにあう。

 それでも白の優勢の度合いは誇張すべきでない。白はどう積極的に指してもかまわないかもしれないが、その一方黒は断固として防御すれば負ける理由はさらさらない。フランス防御の定跡の創成期には偉大な世界チャンピオンのボトビニクがしばしば黒が …c4 突きで閉鎖した局面(もちろん通常はこれほど守勢ではない)を守る側に立った。彼は傑出した技量で指し回し、時には白が指しすぎたときには勝ってしまうことさえあった。

13.Rg1

 ここも重大な局面である。白は g4 突きで仕掛けるやり方が二通りあった。一つは本局でショートがやって見せたやり方である。彼は 13.Rg1 から 14.g4 と指してルークでg列に強い圧力をかけることができた。しかしこの作戦には欠点がある。というのは 14…fxg4 のあとf5の地点を白ポーンがもう守っていないからである。そして白が敵陣突破を図る可能性のある地点というよりもいつか敵ナイトの橋頭堡になる。

 代替案はルークをh1において 13.h3!? と突く作戦である。これはf5の地点にポーンを利かせるのを放棄しないで g4 と突く目的で、白は 13…Nf8 14.g4 fxg4(今度は非常に悪い手となる)15.hxg4 という手順で f5 突きを強化できる。黒はこの手順中 14.g4 には 14…g6 と応じた方が良い。しかしそれなら 15.Qd2 や他の当たり障りのない手のあとf8のナイトがほとんど動きがとれない。白の作戦は Bf2 から Bh4 のような手で黒の優良ビショップと交換し、Nb2-d1-e3 でナイトを最良の地点に展開し、それから初めて gxf5 と取ることである。そのときには …exf5 にはすぐに h4 から h5 と突いてg6のポーンを攻撃できる。代わりに …gxf5 と取り返すとg列でルークにより侵略される。

 白が自陣を強化するあらゆる方策を行なってから gxf5 で争点を解消することには注目すべきである。一つの理由は当たり前の取り返しの …exf5 のあと黒がナイトをe6の地点に置けるようになるので、白はどうしても gxf5 が必要になるまで黒にこの贅沢を与えたくないからである。

 最後に、黒は 14…Ng6 と指すこともできたが 15.gxf5 exf5 16.h4!(黒が 16…Nh4 で窮屈さをやわらげようとするのを止める)で白の攻撃にはずみがつく。どちらの作戦が良かったにせよ(それもまったく明らかでないが)、キャッスリングを遅らせるショートの決断は白のキング側ルークの最適の地点はg1かh1になるので完全に正しかった。

13…Nf8 14.g4

 白はまだ代替案のように 14.h3 から 15.g4 と指すことができた。一つの想定手順は 14…Ng6 15.g4 Nh4 16.Nxh4 Bxh4+ 17.Kd2 Bd8!?(18.g5 で捕獲されるのを避けた)である。

14…fxg4 15.Rxg4 g6

 この手はgポーンを h4-h5 突きによる攻撃にさらす可能性があり、f8のナイトからg6の地点を奪う。それでもこのポーン突きを避けるのは難しく、少なくともf5の地点を要塞化する利点はある。

16.Bf2!

 この大局的な好手はa4のナイトのためにe3の地点を空け、黒の「優良」黒枡ビショップとの交換のために狙い筋の Bh4 を準備している。

16…b6 17.Nb2

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(78)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 ここでは 17…a5 が面白い手だった。白がこの手を無視して眼目の 18.Bh4 を指すと黒は 18…Bxh4+ 19.Nxh4 b5! と指してクイーン翼で主導権が握れる。黒の意図は 20…Qa7! と寄ってb4で2度取ることである。だからおそらく白は 18.b5 Na7 19.a4 で閉鎖を迫られるだろう。しかしキング翼での圧力だけで勝てるかどうかは疑わしい。白は両翼で黒に圧力をかける可能性を保持する必要がある。それが陣地の広さの優位により駒が動き回れることを活用する手段である。しかしプサーヒスは明らかにそのような局面で苦しめられたくなかった。

17…Bd7 18.a4 a6

 ここでもまだ 18…a5 と指すことができた。19.b5(19.bxa5? は明らかに 19…Nxa5 から …Nb3 で悪いのでこの手が必然である)のあと 19…Nd8 で十分受け切れるはずである。

19.Qb1 Qb7 20.Nd1 b5! 21.axb5

 ショートは閉鎖的な局面が気に入らないので 21.a5 と突くのを避けた。しかしここで黒には積極的に動くチャンスがある。

21…axb5?

 黒は型どおりに取り返した。代わりに 21…Qxb5! と取ってaポーンを残せば白に痛みを負わせる。ショートの指摘のように 22.Ne3 a5 23.bxa5 Rxa5 24.Bd1 となれば黒には何も問題がなさそうである。例えば 24…Qa6 25.Rxa5 Qxa5 となればc3への当たりがある。振り返って見れば黒は 18…a6 を指さないで1手早く …Qb7 から …b5! と指すことができたことが分かる。

 完全に守勢で生き延びられる局面はほとんどない。しかし少なくとも読者は大局観による指し方の貴重な教訓を得ることになる。というのは白はいわば「相手無しで指す」状況だからである。だから白の着想はすべて明白である。

22.Ne3 Rxa1

 素通し列を放棄するのは良くないように見えるが状況は既にそんなことを言っていられない。例えば 22…Rg8 なら 23.Rg1 Rg7 24.f5! が強烈そうである。

23.Qxa1 Bd8 24.Kd2

 白キングがg4のルークをクイーン翼に持ってくる捌きの邪魔にならないようにどけ、e3のナイトを守った。

24…Ne7 25.Bh4

 ようやく懸案のビショップ交換を果たすことになった。

25…Nf5 26.Bxd8 Kxd8 27.Rg1 Rg8 28.Bd1! Rg7 29.Bc2

 ビショップが盤上で最も開けた斜筋に再配置された。閉鎖的な局面ではビショップよりナイトの方が働きが良いので黒は 30.Bxf5 を考慮に入れておかなければならない。しかしこの手はe6の地点をf8の「死に体」のナイトに空けてやることになるので白としても躊躇する。プサーヒスはたぶん何も建設的な作戦を見つけることができなかったので次の手を指したのだろう。

29…Nxe3 30.Kxe3 Be8 31.Qe1

 白の作戦はhポーンを破城槌として用いてg6の地点を攻撃することである。そのためにまずクイーンをh6に行かせる。

31…Qe7 32.Qg3 Kc8 33.Ra1 Bc6 34.Qh3 Kb7 35.Qh6 Rg8 36.h4 Be8 37.Rg1 Qg7 38.Qg5

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(79)

第3章 f4 による中原の締めつけ(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

38…h5

 黒はこんなひどい手を指さなければならない。しかし他の手では 39.h5 でつぶされる。例えば 38…Kc7 は 39.h5 Kb7 40.Nh4 Kc8 41.f5! で滅茶苦茶にされる。しかし実戦はg6の弱点と多くの黒枡の空所が致命傷になる。

39.Qd8

 白キングはクイーン同士が交換になって初めて黒の弱い黒枡に沿って侵入できる。だから白は 40.Ra1 でa列から攻撃する狙いによって黒をおどしてクイーン同士の交換をさせる必要がある。黒がもっと前に機会をとらえてクイーン翼を封鎖していたら、白はこのような作戦を用いることができなかっただろう。しかし後悔先に立たずである。

39…Qd7 40.Qa5 Qc7 41.Qxc7+ Kxc7 42.f5

 この前線突破が決め手になる。

42…exf5 43.Bxf5 Bf7 44.Bh3 Be6 45.Ng5 Bxh3 46.Nxh3 Ne6 47.Rf1 Ra8 48.Rf7+(「Chess Monthly」誌でホッジソンがこの手を 48.Rf2 としてなぜ黒が 48…Ra3 と指さなかったのだろうといぶかっている!)48…Kc6 49.Rf6 Kd7 50.Nf4 Nxf4 51.Kxf4 Kc7?(ショートによれば 51…Ra3 ならまだ戦えたそうだがそれでも 52.Rxg6 Rxc3 53.Rd6+ で白の勝ちである)52.Rxg6 Rf8+ 53.Ke3 Rf1 54.Rd6 Rh1 55.Rxd5 Rxh4 56.Rxb5 Rh3+ 57.Ke4 1-0

(この章終わり)

2013年01月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(80)

第4章 古典中原

 

概説

 第1章では白がすぐに 3.e5 と突いた局面を調べた。そして白の作戦に不可欠の要素は、中原を攻撃してくる …c5 突きに c3 突きでd4のポーンを維持して応じることであることを見た。第2章と第3章では白はまた連鎖ポーンで締めつけたが、今度は(通常は)事前に 3.Nd2 Nf6 と指してから初めて 4.e5 と突いた。そのあとの …c5 突きに c3 突きで応じてポーン中原をもとのままに保てることは、やはり白の戦略の重要な一部だった。

 本章では白が 3.Nc3 と指したときにもっとも典型的に生じる局面を見てみる。この手は自然で立派な展開の手であるが、3…Nf6(3…Bb4 は次からの2章の主題である)4.e5 Nfd7(または 4.Bg5 Be7 5.e5 Nfd7)という応接のあと生じる通常の締めつけポーン中原では、白が少なくとも一時的に c3 と突いて中原を支えることができなくなっている。だからd4を占めている白ポーンは黒の素早い …c5 突きで消滅させられる。

 白が f4 突きで重要なe5ポーンを支えると仮定すると、古典およびシュタイニッツ戦法の別個のポーン構造になる。

 

 この図から白がe5ポーンを維持していてそれにより中央で広い陣地を確保していることが分かる。しかしd4ポーンがなくなったことは、白がd4にポーンを保持している戦型よりも黒駒がもっと自由に動き回れることを意味している。特に黒はc5の地点に駒を進めることができ、a7-g1の斜筋に沿った白のわずかな弱点につけ込めることもあり得る。さらにd4ポーンという「自然な」守り手を奪われたe5ポーンは …f6 突きによる解体にもろく白の広さの優位は消え去る。しかしこの局面にはd4の地点という大きな利点が白にある。

(この章続く)

2013年01月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(81)

第4章 古典中原(続き)

d4の地点をめぐる戦い

 d4の地点が白ナイトにとって絶好の地点であることは明らかである。そこは好所の中原に位置していて相手ポーンにより攻撃される心配がない。白がナイトを黒駒によっていじめられることのないこの地点に進めることができれば有望になる。だから黒は当然このナイトを交換によってなくそうとするか、d4に来ても楽をできなくさせようとする。この目的のために黒は …Nc6、…Bc5 そして …Qb6 のような手を指す。そして時にはすぐに …c5xd4 と取るのを避けて白ナイトがd4の地点に来るのを遅らせることもある。一方白は Be3、Qd2 および O-O-O(クイーン翼ルークをd1に持って来て防御に使う)のように展開してd4のナイトを支えようとする。

 図086 

 この図から黒はd4の地点で3回駒を交換すれば楽になる。それでもd4の地点を保持し続けることは白にとってまだ切り札となる。どんな白駒でも妨害を受けなければこの中原の地点でのさばることができる。キングでさえ収局ではここが好所になる。しかし繰り返すがすべての駒の中でナイトをd4に置くのが最良である。

 黒はクイーン翼ビショップが自分の陣形の中で問題の駒となっている。特にd4の地点をめぐる戦いに加われない唯一の小駒である。とりわけ黒はあまりにも早く駒を交換によってなくすことにより不良ビショップが残ってしまうことを避けなければならない。最悪のシナリオは次の図のような状況である。

 図087 

 黒はビショップが何も攻撃できず黒枡が非常に弱いので、このような収局は見込みがない。図ではひたすら辛抱すること以外何をしても手遅れである。しかしこのあとの議論では状況がこれほど悪くなる前にこのビショップをどのように活用することができるか解説する。

(この章続く)

2013年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(82)

第4章 古典中原(続き)

白のキング翼攻撃

 白はクイーン翼にキャッスリングして中原の支配を強化することがよくあり、黒がキング翼にキャッスリングしているなら黒キングに対して直接攻撃を開始することになる。この攻撃には異なる三つのやり方がある。一つ目はキング翼のポーンをすべて用いてポーンによる総攻撃を行なうことができる。

 図088 

 二つ目は f5! と突き f6 から Qg5 で早詰みを策することができる。黒が …exf5 と取れば N(c3)xd5 で黒の中原が破壊される。また白はキング翼ルークを(h3を経由して)g3に回し …exf5 のあと Qh6 で攻撃するのも良い。

 ここで指摘しておくと白のキング翼ルークは3段目が好位置となることがよくある。そこならキング翼、クイーン翼それに中央での作戦の用意ができている。だから h4 突きから Rh3 という捌きにはよく注意しておく価値がある。

 図089 

 白の三つ目の攻撃法は有名な「ギリシャの贈り物」の捨て駒である。白は Bxh7+ とビショップを切り、…Kxh7、Ng5+ Kg8、Qd3(クイーンがd1にいるなら Qh5)から Qh7+ で黒キングを追い回す。これが成立するかどうかは具体的な戦術上の状況による。

(この章続く)

2013年01月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(83)

第4章 古典中原(続き)

黒が …f6 と突く

 この万能にも似た手はe5のポーンを清算し白のギリシャの贈り物の狙いを無効にする。

 

 しかし黒は exf6 Qxf6(または他の駒での取り返し)のあと中央の黒枡のd4とe5の支配のために駒が十分活動できることを確かめなければならない。さもないと白が中央の黒枡で強く締めつけるかもしれず、そうなるとd5とe6のポーンが動けず攻撃にもろくなる。

(この章続く)

2013年01月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(84)

第4章 古典中原(続き)

黒のクイーン翼攻撃

 

 白がクイーン翼にキャッスリングすれば(キング翼攻撃の準備として)、黒は半素通しc列、クイーン翼のポーンおよび/または要所のc5とc4とに配置したナイト対とを利用して、白キングに対して攻め合いを仕掛けることができる。それには黒が …b4 突きと …a5 突きを達成すればc8の問題ビショップがa6の地点を経由して働けるようになるという長所も加わる。このような戦術の競争には非常に正確な読みが必要で、開放シチリア防御のある戦型の特徴がいくらか表れている。

 キングを中央に置いたままにすることにより(封鎖ポーンの陰でかなり安全である)、黒はギリシャの贈り物を排除し白の f5 のようなポーン突きの価値を減少させる。クイーン翼のポーンのすぐの活用は白のクイーン翼キャッスリングを思いとどまらせるか(その場合白からのポーン攻撃の恐れなくキング翼にキャッスリングできる)、または白がクイーン翼キャッスリングに固執すれば白キングを迅速に攻撃することになる。黒はときにはクイーン翼にキャッスリングすることさえある。これは …O-O を予期して黒のキング翼を攻撃する態勢を組んだ白の陣形に肩透かしを食わせることになる。本書の執筆時点で定跡ではこれを古典中原に対する黒の最も有望な手法の一つと考えている。

(この章続く)

2013年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(85)

第4章 古典中原(続き)

白がキング翼にキャッスリングする

 これは O-O-O よりも控え目な手法である。白は直接的なポーン攻撃で相手を詰まそうという企てを放棄する。代わりに単純に展開して黒が …f6 と突くのを待つ。このポーン突きは黒が白の中原での押さえ込みを打ち破ろうとするならいずれ必要となるものである。それから白は e5xf6 のあとe5の地点をナイトの拠点として使えることを期待する。もっとも順風満帆というわけではない。f4ポーンは白キングの周りの黒枡を少し弱め、さらには g3 突きによって守られなければならないならば白枡もかなり弱めることになる。

(この章続く)

2013年01月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(86)

第4章 古典中原(続き)

白が f4 突きを避ける

 これまでは白がe5のポーンを f4 突きで支える局面を分析してきた。しかし時にはこのポーン突きを避けて代わりにe5のポーンを Bf4 で強化することがある。この手法の利点は f4 突きのあと生じるa7-g1の斜筋の弱点を避けられることである。また、c1のビショップは f4 突きのあとのように味方のポーンによって閉じ込められるということがない。

 アーロン・ニムゾビッチは特にこの陣形を愛好し、既に第2章で触れた過剰防御の原則をそれを用いて説明した。「My System」の中で彼はまさしく次のように書いている。「せき止めを行なっている枡には一般にそれ自体があらゆる点で好所となる不思議な状況がある。そして退屈な封鎖の義務のために派遣された駒には、ほうびとして突然せき止めている部署から高度な活動への可能性が開けることがある。それはちょうどおとぎ話で良い行いが必ず報われるようなものである。過剰防御の着想は・・・拡張した方式ではあるけれども・・・他の何ものでもない。」すなわち選ばれた拠点(ここではe5)を守る各駒は以降の戦いのために好所にいる公算が非常に大きい。

 

 ここでの戦略上の欠点は中原における白の広さの優位が適時の …f6 突きにより容易に消されることである。戦術上の不利もある。つまり黒は …Ne7-g6 でf4のビショップを当たりにすることにより先手が取れるし、…Qb6 でb2の地点を当たりにして白陣を乱すこともできるかもしれない。また …f6 突きでf列が素通しになったあとf4のビショップがf8のルークの攻撃目標になるかもしれない。

(この章続く)

2013年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(87)

第4章 古典中原(続き)

実戦例

第13局
カスパロフ対ティマン
ホルゲン、1995年
シュタイニッツ戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 これが普通の手で、「ポーンをe5に進めたときはそれを f4 突きで支えよ」という、初代世界チャンピオンのビルヘルム・シュタイニッツの助言にも従っている。白は代わりに次のようにビショップでこのポーンを支えることもできる。5.Nf3(5.Nce2 c5 6.c3 Nc6 7.f4 は前章で分析した)5…c5 6.dxc5 Nc6 7.Bf4 このあと1966年モスクワでの世界選手権戦第19局のスパスキー対ペトロシアン戦は次のように進んだ。7…Bxc5 8.Bd3 f6 9.exf6 Nxf6 10.O-O O-O 11.Ne5 Bd7 12.Nxc6 Bxc6 13.Qe2 Qe7(13…Ne4!?)14.Rae1 Rae8 15.Bg3 a6 16.a3 Qf7 17.b4 Bd4 18.Be5 Bxe5 19.Qxe5 Nd7 20.Qg3 e5 21.f3 そしてここで黒は 21…Qf6!? または 21…Re7 と指していたら有望だった。

5…c5 6.Nf3 Nc6

 この手はほとんど自動的に指されるが、1993年ティルブルフでコルチノイはベリヤフスキーを 6…Qb6!? で煙に巻こうとした。一時はクイーン翼ナイトの遅い展開がまんまと成功を収めた。7.Na4(7.Be3 は 7…Nc6 で通常の戦型に移行するので、黒を直接罰しようとするならこれしかない。もっとも黒は 7.Be3 に 7…a6 8.Na4 Qc6 または 7…Qxb2!? と応じることにより定跡の主流手順を避けようとすることもできた)7…Qc6! 8.Nxc5 Nxc5 9.dxc5 Bxc5 10.Bd3 Qb6 11.c3 a5 12.Qb3 ここでコルチノイはようやく 12…Nc6 とナイトを展開すべきでいい勝負だった。代わりに彼は勝手なことをやりすぎて 12…Qa7? と指し、クイーン同士の交換を避けた。おそらく白がキング翼にキャッスリングできそうもないことにつけ込めると期待したのだろう。白はクイーン翼にキャッスリングしなければならないなら激しい攻撃に見舞われる。しかしベリヤフスキーはd4の地点を支配しキングをキング翼に行かせるうまい手段を見つけた。13.Qc2!(h7に当たっている)13…h6 14.Nd4! Nc6(d4で2回取ると Qxc8+ と取られる)15.Be3(d4の地点を要塞化した。15…Nxd4 16.cxd4 Bxd4? と取ってくれば 17.Qa4+ で勝ちになる)15…Bxd4(15…O-O なら 16.Nb5 Qb6 17.Bxc5 Qxc5 18.Qf2 Qxf2+ 19.Kxf2 で白の有利な収局になる)16.cxd4 Nb4(16…Nxd4 は 17.Qa4+ で駄目である。しかし黒は何か速いことをしなければならない。さもないと白が 17.Qf2 から 18.O-O と陣容を固めて、陣地の広さの優位と双ビショップを得る)17.Bb5+ Bd7 18.Bxd7+ Kxd7 19.Qa4+ Ke7 20.O-O(黒の戦略が敗北を喫した)20…Rhc8 21.f5! そして 21…Nc2 が 22.Rac1 Nxe3 23.Qa3+ から 24.Qxe3 で何も成果をあげられないので、白が黒キングの危険な状態につけ込んで勝ち切った。

7.Be3

 黒の手番 

(この章続く)

2013年01月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(88)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 知ってのとおり白は古典中原ではd4の地点をしっかり支配することを目指している。だからこの手は自然で立派な手である。同じ考えで 7.Ne2 も指されてきた。この手は 7…cxd4?! に 8.Nexd4 でd4の地点にナイトを据えることを期待している。黒が 7…cxd4 を控えるならば白は 8.c3 と突いて「f4 による中原の締めつけ」の陣形を選ぶかもしれない。しかし1994年ティルブルフでのユダシン対グレク戦では黒が厳しく 7…b5! と応じた。8.c3 に黒が 8…b4 突きのあと …Ba6 と …Qa5 と応じる構えを見せているので白には効果的な作戦が何もない。そこでユダシンは 8.a3 突きを選んだが 8…Rb8 9.Be3 b4 10.axb4 Rxb4 となって黒がクイーン翼で十分活発に動き回れるようになった。

7…cxd4

 7…Qb6 8.Na4 Qa5+ 9.c3 は前章の第12局に出てきた。本譜に代わる黒の重要な手は 7…a6 である。この手の意図はクイーン翼のポーンを利用して白にクイーン翼にキャッスリングして攻撃的な態勢をとるのを思いとどまらせることである。白がこの作戦を貫けばキングがすぐに危険にさらされることになる。例えば1988年ハーニンゲでのチャンドラー対アンデルソン戦は次のように進んだ。8.Qd2 b5 9.dxc5(9.O-O-O なら 9…c4 で次の 10…b4 が強そうである)9…Bxc5 10.O-O-O?! Qb6 11.Bxc5 Nxc5 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 14.Ned4 Nxd4 15.Nxd4 O-O 16.Kb1 a4 黒ポーンが早くも白キングを脅かしている。

 だから白はキング翼にキャッスリングした方が良い。しかし本書の執筆時点で黒は白枡ビショップ同士を交換させることにより楽に互角の形勢を達成しているように見える。例えば1995年レクリングハウゼンでのマインカ対グレク戦は次のように進んだ。8.Qd2 b5 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6 15.Kh1 Ne7 16.Rfd1(1995年ドイツでのルッツ対グレク戦では 16.Ng3 で 17.Nh5 を意図したが 16…g6 17.Ne2 Rb8 18.Bxa6 Nxa6 19.Ned4 Nc5 となって形勢不明だった)16…h6 17.Ned4 O-O 18.Qh4(これは誤った作戦の始まりだった。グレクは 18.Nb3 を推奨し互角の形勢としている)18…Ra7 19.g4?(おなじみの g4 突きだが、ここでは白駒によって適切に支援されていないので白のキング翼の崩壊につながるだけである)19…Ng6! 20.Bxg6 fxg6 21.f5 Raf7! そして黒駒がキング翼の素通し列に乗ずる態勢になった。

8.Nxd4 Bc5

 8…Qb6 はずっと激しい手である。1995年サンフランシスコでのヒューブナー対コルチノイ戦では 9.Ncb5 で一気にふっ飛ばしてやろうという白の試みが次のようにしっぺ返しを食った。9…a6! 10.Nf5 Bc5 11.Bxc5[編集部注 ナンの研究では 11.Nbd6+ Kf8 12.Qh5 Nd8 13.Nxg7 Bxe3 14.Nxe6+ fxe6 15.Qh6+ Ke7 16.Qg5+ で引き分けになるとしている]11…Nxc5 12.Nbd6+(13.Nxg7+ Kf8)12…Kf8 13.Qh5?(13.Nxc8 と取るしかないが黒が優勢である)13…Nd8 14.Nxg7(引けば 14…Qxb2 と取られるので白は一か八かやるしかない)14…Qb4+!(14…Kxg7 は 15.Qg5+ Kf8 16.Qh6+ Ke7{16…Kg8? 17.Ne8}17.Qf6+ で負ける)15.c3 Qxb2 16.Rd1 Qxc3+ 17.Rd2 h6! 18.Nge8 Ne4! そして 19.Nxe4 dxe4 のあと白は 20…e3 と 20…Kxe8 の両方を防ぐことができないので投了した。

 だから白は 8…Qb6 に 9.Qd2 と応じるべきである。ここで白は 10.Nxe6 を狙っているので黒はほぼbポーンを取るしかない。問題はどのくらい毒が含まれているかである。1995年ポラニツァ=ズドルイでのド・ファーミアン対ヒューブナー戦では次のように致死量だった。9…Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.Bb5 Nxd4 12.Bxd4 Bb4 13.Rb3 Qa5 14.a3 Be7 15.f5!? exf5 16.Nxd5 Bh4+ 17.Kd1 Qd8?(ド・ファーミアンによれば 17…Qxd2+ 18.Kxd2 Bd8! で受け切れる)18.Nf6+!!(この度肝を抜く手で黒が受けなしになる)18…gxf6 19.exf6 O-O(20.Qe3+ Kf8 21.Qh6+ Ke8 22.Re3+ から詰みの狙いを防ぐ手段がなかった。ド・ファーミアンは 19…h6 には 20.Qb4! から 21.Re3+ と応じる予定だった)20.Rg3+ Kh8(このビショップを取ると2手詰み)21.Qh6 Rg8 22.Rg7 Nf8 そして白が 23.Rxg8+ と指せる前に黒が投了した。

 8…Qb6 からの2試合の全手順を見てきた。一方は白の圧勝で、他方はもっとすごい黒の圧勝だった。読者の中には傍流手順になぜそんなに注目するのかと疑問に思う人がいるかもしれない。どちらも犠牲者になったヒューブナーに恨みがあるわけではない。それどころか最も重要な手順を試しそれによって定跡を進歩させたことに対して彼は賞賛されるべきだと思っている。代わりに読者には生半可な知識で激しい戦型を指す危険性について警告したい。ヒューブナーのようなスーパーグランドマスターがこんなにも早く負かされることがあるならば、当然用心が必要である。

9.Qd2 Bxd4

 これで局面が単純化されて白が少し優勢である。代わりに 9…O-O なら争点が維持される。1994年アムステルダムでのカスパロフ対ショート戦は 10.O-O-O a6 11.h4 Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Rh3 b4 14.Na4 Bxd4 14.Qxd4 と進んだ。ここでショートは理にかなった 15…f6 突きを指した。この手は白の中原を破壊する作戦だが、彼にとっては不運なことに戦術上の欠陥があった。16.Qxb4 fxe5 17.Qd6! Qf6(一見黒にとってすべて順調そうである)18.f5!! のあとショートはカスパロフの典型的な攻撃にさらされることになった。18…exf5? は 19.Qxd5+ で、18…Qxf5 も 19.Rf3 Qg4 20.Rxf8+ Nxf8 21.Nb6 で白の勝ちになる。そこでショートは 18…Qh6+ と指したが 19.Kb1 Rxf5 20.Rf3 Rxf3 21.gxf3 Qf6 22.Bh3 Kf7 23.c4! が厳しすぎた。黒が …Nf8 と指せばa4のナイトが場違いどころかいつでもb6に急襲してくるので、黒は駒を展開することができなかった。

 作戦に着手する前に局面の具体的な戦術上の特徴をいつも調べておくべきである。以前に黒が …b4 と突いて白のナイトを「オフサイド」のa4の地点に追い払う利点を指摘した。また白の中原を攻撃するための …f6 突きもほめてきた。本局の場合ショートはこれらの着想をどちらも実行しまさしく粉砕された!しかしa4のナイトは 15…f6? のせいでモンスターになったことにすぎないことは言っておくべきである。黒は 15…Qa5 と指し 16.b3 に 16…Bb7 から 17…Bc6 と応じていたら、相応に指せていただろう。だから唯一の「犯人」は黒の15手目であり、そしてもちろんカスパロフのすばらしい指し回しである。

10.Bxd4 Nxd4 11.Qxd4 Qb6

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(89)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

12.Qd2!?

 これは世界チャンピオンの面白い着想である。以前の試合で1995年ノブゴロドでのショート対ティマン戦では白が 12.Qxb6 と取った。しかし黒の積極的な受けの前に何も勝ち取れなかった。12…Nxb6 13.a4 Ke7!(キングは中央に必要である)14.a5 Nd7 15.g3 g5!(白の中原の切り崩しの始まり)16.Kd2 gxf4 17.gxf4 f6! 18.exf6+ Nxf6 19.Bd3 Bd7 20.Ne2 Rhg8 21.Rhg1 Kd6 22.c3 ここで引き分けが合意された。f4ポーンは白陣の中でどこよりも弱い。

 別の着想は 12.Nb5 で、1993年ブルノでのゴフシュテイン対チェルニン戦で指された。12…Qxd4 13.Nxd4 のあと黒は急速に締めつけられた。13…Ke7 14.h4 h5 15.Rh3!(周知の手だが新趣向がある)15…a6 16.Rc3! そして黒は 16…Nb8 と指すと 17.Rc7+ Bd7 のあとb7のポーンを取られるので自陣を解放することができなかった。そこで 16…Ra7 で次に 17…Nb8 と指せることを期待した。しかし白は 17.b4! と突いて圧力を維持した。この手は 17…Nb8 に 18.b5 axb5 19.Nxb5 から 20.Rc7+ という手を用意している。黒は 17…f6 18.Rc7 fxe5 19.fxe5 Ra8(さもないと 20.Nc6+ が続く)20.c4 Re8 21.cxd5 exd5 22.Rac1 で押し込められたが、何とか引き分けに逃れた。試合後のゴフシュテインの感想によると、黒は 13…a6(Nb5 の狙いをなくす)から …Nb8、…Bd7 そして …Nc6 によってできるだけ早くd4のナイトに挑戦すべきだった。

 カスパロフは盤上にクイーンを残す方を選んだ。

12…Nc5

 黒は 12…Qxb2 13.Rb1 Qa3 14.Nb5(さもないと黒が 14…Qc5 で自陣を固める)14…Qxa2で2ポーン得することができた。そのあと 15.Nd6+ Kf8 16.Rb3(16.Qb4 a5! 17.Qb5 Qxc2)16…Nc5 となって白は明らかに圧力をかけているにもかかわらずはっきりした手順がない。しかしカスパロフに対してポーンをかすめ取るのは危険な仕事なので、ティマンが光栄な機会を辞退したのは驚くに当たらない。

13.O-O-O Bd7 14.Qd4!!

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(90)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 中央の元の地点に戻るのは道理に合わない手である。しかしカスパロフは 14.Be2 と普通に展開すると 14…Na4! と来られることに気づいていた。このあとは 15.Nxa4 Bxa4 となってナイト同士の交換により黒の陣形が楽になり、c2の地点を …Rc8 で攻撃する用意ができる。

14…a6

 ここは興味深い瞬間である。チェス新報第65巻での自戦解説によるとティマンはこの手は安直かもしれないと考えていた。試合中彼は明らかに 14…O-O-O 15.b4 Na4 16.Nxa4 を恐れていた。このあと 16…Qxd4? は 17.Rxd4 Bxa4 18.b5 で黒の駒損になる。しかし冷静に研究してみると彼は 16…Bxa4 17.Qxb6 axb6 18.Bd3 で実際には白がわずかに優勢にすぎないと結論づけた。しかし 18.Bd3 の代わりに 18.b5 d4(18…Kc7 は 19.Rd4 Ra8 20.h4 Ra5 21.Rb4 から Rh3-a3 で +/-。[編集部注 黒はこれでもしのげるかもしれない。18…Kd7 もあり考慮に値する])19.Bc4!(19…Rd5 を防いだ)19…Kc7 20.Rd3 から Ra3 なら +/- である。これはたぶん強豪選手の直感はなぜその手を指したかの局後の理由づけよりも信頼できることが多いことの説明になるだろう。

15.h4

 ここで 15.b4 と突いても的外れで 15…Na4 16.Nxa4 Qxd4 17.Rxd4 Bxa4 となってしまう。

15…O-O-O!

 15…O-O とキャッスリングすると白には 16.h5 という黒キングに対するお決まりの攻撃法がある。または 16.f5!? で 17.f6 を意図する方が良いかもしれない。そこで黒はキングの住居として比較的安全なクイーン翼を選んだ。もちろんそちら側のポーンの形はゆるんでいるが、その一方でキングの世話をする黒駒がたくさん近くにいて、白ポーンの暴風にさらされる恐れもない。

16.Rh3!

 これはキング翼ルークを働かせる常套の捌きである。ここで黒は 17.Nxd5 exd5 18.Rc3 を考えに入れておかなければならない。

16…Bc6

 黒は余裕があれば 17…Kc7 から 18…Ne4 と指して好形になる。白のここからの捌きはこれを防ぐため、または少なくともその効果をそぐためである。ナイトを要所のd4に進めることは白の作戦の重要な一部である。

17.Ne2! Kb8

 17…Kc7 は 18.Rc3 Ne4 19.Qxb6+ Kxb6 20.Rb3+ Kc7 21.Nd4 で白が少し優勢になる。

18.Rc3 Na4 19.Qxb6 Nxb6 20.Nd4 Bd7 21.b3?!

 カスパロフは駒を使ってやれることは全部達成したと了解し、ここからはポーンで自陣を強化しようとした。しかしここでティマンによれば白は 21.h5 でキング翼の広さの優位を拡大すべきだった。実戦の手は重要な手損で、そのため黒はナイトをもっと効果的な地点に再展開できた。

21…Nc8 22.h5

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(91)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 このポーン突きは陣形的に異筋となる …g6 突きを止めるためではなく、22.g4? に対して強手となる …h5 突きを止めるためである。

22…Ne7

 このナイトはここから白のナイトに …Nc6 で挑むことができる。しかし主な役割は白の f5 突きの仕掛け(g4 と突いて準備してから)を思いとどまらせることである。

23.g4

 白が 21.b3 で1手無駄にしていなかったら、ここでは自分の手番のため Bh3 と指すことができ …Rdf8 に f5 と突けて良い態勢になっていただろう。

23…Rdf8 24.g5!?

 白は 24.Bh3 f6 25.exf6(または 25.Re3)25…Rxf6 26.Re1 でも優勢を保っている。

24…h6

 黒は 24…f6? 25.h6! にはまらなかった。25…fxe5 は 26.hxg7 で負けるので 25…gxh6 26.gxf6 で陣形的に負けの収局に入らなければならなくなる。

25.Rh3 g6

 25…f6 は 26.exf6 gxf6 27.g6 e5 28.Re3!(または 28.g7)で悪い。黒は狭小な陣形から脱したいなら、白のポーン横隊を粉砕することが絶対必要である。

26.hxg6 Nxg6 27.Rxh6

 27.gxh6 は 27…Nxf4 28.Rh2 f6! のあと 29.exf6 Rxf6 でh6のポーンが守れないので明らかに黒が良い。

27…Nxf4?

 ティマンは 27…Rxh6 28.gxh6 Rh8 ならh6のポーンが落ちるので互角の形勢であると指摘している。実戦の手はg5のポーンが弱いことを証明することにより黒が優勢を勝ち取ろうとしているようである。

28.Bd3 Rhg8 29.Rg1 Rg7 30.Kd2 Rfg8 31.Bh7!

 この意表の当てで黒の作戦が咎められた。31…Rxg5 なら 32.Rf1! で黒の戦力損になる[訳注 チェックで 32…Rg2+ とできるので 32.Bxg8 が正しいようです]。

31…Rh8 32.Ke3?

 32.Rg4 Rgxh7 33.Rxf4 なら白のわずかな優勢が続いていた(ティマン)。

32…Rhxh7 33.Rxh7 Rxh7 34.Kxf4 Rh4+ 35.Rg4 Rh1

 もちろん黒は 35…Rxg4+? 36.Kxg4 で不良ビショップ対優良ナイトの収局になるのを避けた。代わりにルークを活動的にしてできるだけ早く白のクイーン翼のポーンを攻撃できるようにした。

36.Nf3 Rc1 37.Rg2 Kc7 38.a4 Kd8

 黒キングは急いでキング翼に駆けつけて、白にg6の地点で突破されないようにした。

39.Rh2 Be8 40.Ke3 ½-½

 ルークが好位置にいたのは黒にとって幸運だった。さもなければ役立たずの白枡ビショップのせいで深刻な状況になるところだった。しかしすべてうまくいっていて、ここでカスパロフは進展が図れないので引き分けにした。

(この章続く)

2013年02月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(92)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

第14局
ベドべリ対コルチノイ
ハーニンゲ、1988年
古典戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.Bg5

 白は e5 と突く前に黒枡ビショップ同士を交換することを目指している。しかしこれは黒に余分の選択肢を与える。黒は 4…dxe4 と指すことができ(しばしば指し)、本章の内容から離れ第7章(「ルビーンシュタイン中原」)で考察される局面に至る。だから白が 4.Bg5 と指すときは二つの完全に異なるポーン陣形に対処する用意ができていなければならない。さらに黒にはもっと頻度の低い 4…Bb4 という選択肢もある。これは第5章(「ビナベル中原」)で考察される。対照的に 4.e5 のあとは本章の範囲内にとどまる。

4…Be7 5.e5 Nfd7

 ときにはここで 5…Ne4 も指されてきた。しかし 6.Nxe4 dxe4(6…Bxg5 7.Nxg5 Qxg5 8.Nf3 は黒がかなり守勢である)7.Bxe7 Qxe7 8.Qe2 b6 9.O-O-O(9.Qxe4 には 9…Qb4+ から …Qxb2)9…Bb7 10.g3! となって 11.Bg2 のあとe4ポーンが負担になり 10…e3 には 11.f3 なので黒が不十分のようである。

6.Bxe7

 白は 6.h4!? Bxg5(6…c5!? は難解だがたぶん互角)7.hxg5 Qxg5 でギャンビットすることもできる。1991年レイキャビクでのハリフマン対グリコ戦ではそのあと 8.Nh3 Qe7 9.Nf4 Nc6 10.Qg4 Nxd4 11.O-O-O Nf5 12.Nfxd5! exd5 13.Nxd5 Qxe5 と進み形勢不明だった。

6…Qxe7 7.f4

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(93)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 白は前局と同様のポーン陣形になったが、黒枡のビショップ同士が既に交換されている。これには有利な点がいくつかある。まず、f4 と突いたときに自分のポーン陣形の内側に黒枡ビショップが閉じ込められて少なくとも理論上は黒枡ビショップが「不良」ビショップになるが、それが避けられた。さらに、ビショップ同士の交換によりd4のような要所をめぐって戦うことができる黒の「優良」ビショップが盤上から消えた。そして黒のクイーンが少し場違いになっている。このクイーンは(…c5 突きのあと)b6の地点に行ってd4とb2を攻撃したいのだがe7の地点にそれてしまっている。

 しかし不利な点もある。まず既に指摘したように、この局面に到達するのに必要な手順が実戦では難しく、黒には変化する余地があり特に人気のある 4…dxe4 がそうである。第二に大帝国には多くの防御者が必要で、逆に小王国は人口過剰で苦労することがある。だから中央に大模様を構える白にとってビショップ同士の交換により黒陣の混雑を緩和したことは完全に理にかなっているわけではない。どうして重要なd4の地点を守るのに役立てるためにこのビショップを残しておかないのか。白がビショップ同士を交換しておくべきかどうかについて定跡ではまだ結論が出ていない。たぶん 4.Bg5 と 4.e5 の両方とも同じくらい良い(そして悪い)手なのだろう。

7…O-O

 ここは重要な岐路である。黒の戦略にとって理想的な手は 7…c5 と突いてすぐに白の中原に挑むことである。黒にとっては残念なことに 8.Nb5! と跳ねられ、9.Nc7+ と 9.Nd6+ の両様の狙いのために困難な状況に陥る。

 そこで黒はキャッスリングして Nb5 を気にせずに …c5 と突く方を選んだ。しかし黒はキングの位置を早くも決めたことにより白に作戦を立てるのを容易にさせている。もし黒キングがまだ中央にいれば、そして特にまだクイーン翼にキャッスリングする選択肢があれば、白がキング翼でポーンの暴風を仕掛けることはとても効果が期待できない。また、早い Bd3 から Bxh7+ と切るギリシャの贈り物の犠牲も存在しない。

 黒はこれらのことを勘案して 7…a6 と突いてキャッスリングを後回しにするようにしてきた。7…a6 は …c5 と突いたあとの Nb5 を防いでいるだけでなく、白が通常のようにクイーン翼にキャッスリングすると仮定してクイーン翼の示威行動の一貫として …b5 突きを準備しているということがその論拠である。中央にいる黒キングにとって事態が危険になってくれば …O-O-O も選択肢となる(もっとも …b5 と組み合わされることは考えられない)。黒は通常は 7…a6 のあといずれキング翼にキャッスリングすることになる。しかしキングがどこに住むかをあまり早く明らかにしないことによって相手の攻撃作戦の可能性を減らすことになることを期待している。

 1991年レイキャビクで米国のグランドマスターのヤセル・セイラワンは 7…a6 を3度試した。そして全試合とも 8.Nf3 c5 9.Qd2 Nc6 10.dxc5 Nxc5 と進んだ。

 ここでチャンドラーは 11.O-O-O と指したが、7…O-O でなく 7…a6 と指した価値が明らかになった。11…b5! 12.Bd3 b4 13.Ne2 a5 黒のクイーン翼のポーンの進攻が脅威になってきたので白は 14.f5 突きで反撃を策した。しかし 14…Nxd3+ 15.Qxd3 Ba6 16.Qe3 Bxe2!(不良ビショップを始末できることは黒にとって良い兆候である)17.Qxe2 O-O! で不利な局面になった。黒はついにキャッスリングし、e5のポーンが弱いので優勢である。白はなんとか引き分けに持ち込めたが愉快なものではなかった。

 他の2局は 11.Bd3 O-O と続いた。そのあとヤルタルソンは 12.O-O と指したが 12…f5! と好手で応じられた。ここで 13…Ne4 の狙いは許せないので白は 13.exf6e.p. で広さの優位を放棄させられた。13…Qxf6 14.g3 Bd7 15.Rae1 Rac8 16.a3 と進みセイラワンは 16…h6(Ng5 を指させない)のあと …Be8 から …Bh5 または …Nxd3 と …Bg6 を指すことにより完全に互角になると主張している。リュボエビッチはキャッスリングを遅らせて最善を尽くし 12.Qe3 f5 13.exf6e.p. Nxd3+ 14.Qxd3 Qxf6 15.g3 Bd7 16.Ng5! Qf5 17.Qxf5 Rxf5 のあと初めて 18.O-O-O +/= と指した。

8.Nf3 c5 9.Qd2

 9.dxc5 と取れば通常は白がキング翼にキャッスリングする予定であることを示唆している。一つの想定手順は 9…Nxc5 10.Bd3 f6 11.exf6 Qxf6 12.g3 Nc6 13.O-O Bd7 14.Qd2 である。白としては黒の中原の弱い黒枡をたぶん Rae1 から Ne5 で支配したい。しかし黒は駒が十分に動員されていて、積極的に指す限り何も恐れることはないはずである。1988年ソチでのアルナソン対バレエフ戦では黒が次のようにポーンを犠牲にして素晴らしい指し回しを見せた。14…Nxd3 15.cxd3 e5!? 16.Rae1 exf4 17.Nxd5 Qd6 18.Nxf4 Bg4 19.Qe3 Rad8 ねじり合いである。

 この手順では白キングはキング翼でまったく満足できない。必要な g3 突き(f4のポーンを支えるため)のあと白のキング翼のポーン陣形はかなりもろくなっている。

9…Nc6 10.dxc5

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(94)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

 10.O-O-O も可能で、1992年ドゥエーでのマクドナルド対クラウチ戦では黒が 10…c4!? という思い切った手を指した。これで中央がしっかり固定化されたので、戦いが普通の進路から完全にはずれた。実戦では白の攻撃が次のように威力を増した。11.Nb5(d6の地点を目指し、…b5 突きを機械的に止めている)11…Rb8 12.h4 Nb6 13.Rh3 Bd7 14.Nc3!(矛盾したナイト引きだが、このナイトは黒のb5の地点での役目を果たし-黒のbポーン突きを押さえていた-14.Nd6 と跳び込んでも 14…Nc8! 15.Nxc8 Rfxc8 から …b5 で黒を助けてしまう)14…Na8?! 15.f5! 黒は 16.f6! 突きの狙いを防ぐために 15…f6 と突かなければならなかったが、16.Re1 fxe5 17.Nxe5 Nxe5 18.Rxe5 Rxf5 19.Rxf5 exf5 20.Nxd5 となって中央が壊滅した。それでも dxc5 を省略した白を「罰しよう」とする黒の構想は面白く、この試合の黒の手順は改良可能であることはほとんど確実である。

 1990/1年ヘースティングズでのラルセン対バレエフ戦では次のようにもっと普通の手順で進んだ。10.O-O-O cxd4 11.Nxd4 Nb6 12.Qe3 Bd7 13.Kb1 Qc5 14.h4 Rac8 15.Rh3 Na5?! 16.Nb3! Qxe3 17.Rxe3 Nac4 18.Rf3 f6 19.exf6 Rxf6 20.Nd4 そして白の有利な収局になった。互角にするには 15…Nxd4 16.Qxd4(16.Rxd4 Na4!?)16…Na4!? の方が良くて、c2の地点の弱点につけ込んで黒に有利な交換をさせる。

10…Qxc5

 10…Nxc5 と取り返す方の支持者もいるが、11.O-O-O a6 12.Kb1(またはすぐに 12.Bd3)12…Bd7 13.Qe3! で白が優勢を維持するようである。この最後の手が戦術の着眼点を多く含んだ急所の手である。まず、白は 14.Bd3 のあとギリシャの贈り物の捨て駒の 15.Bxh7+ をもくろんでいる。次に、白は 13…Rac8 に 14.f5! と応じる用意をしている。この手はc5のナイトを守らなければならない黒クイーンを過負荷にさせあとで f6 突きを狙っている。最後に、13…b5 には白に 14.Rxd5!? exd5 15.Nxd5 から 16.Qxc5 で主導権を得る面白い捨て駒がある。それでもこの最後の変化は黒がおそらく選択すべきものである。代わりに1988年ソチでのドルマトフ対ドラシュコ戦では黒が 13…Rfd8 と指して次のようにもっと不利な収局になった。14.Bd3 Nxd3 15.cxd3(15.Rxd3 も良い手である)15…f6 16.Ne2 fxe5 17.Nxe5 Nxe5 18.Qxe5 Qf6 19.Nd4 Qxe5 20.fxe5 Rf8 21.Rhf1 黒には不良ビショップがあり、白のナイトは中央の最適の地点にいて攻撃を受けない。黒がゆっくりとつぶされたのもむべなるかなである。

 読者はここまでの手順を黒の7手目の解説と比較してみるとよい。黒が …O-O を先延ばしにしていれば 10…Nxc5 がはるかに局面に適合していることは明らかである。なぜならギリシャの贈り物のビショップ切りがなく、黒が浮いた1手を白キングに対するクイーン翼ポーンによる攻撃に使えるからである。これは7手目でのチャンドラー対スピールマン戦の部分棋譜によく表れている。しかし同じく7手目で見たように白は O-O-O を遅らせ黒がキャッスリングするのを待つことができる。そのときには Qe3 と Bd3 の作戦がまた …Nxc5 への良い応手となる。

11.O-O-O

 黒の手番 

(この章続く)

2013年02月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(95)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)黒の手番 

11…Nb6

 1989年ロンドンで開催されたロイズ銀行オープン大会でのチャンドラー対アナグノストポウロス戦でギリシャの贈り物のビショップ切りは次のように黒にとって致命傷になった。11…a6 12.Bd3 b5?(黒は 12…Nb4 または 12…Re8 のようなことをやってみなければいけなかった)13.Bxh7+! Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qd3 Re8 16.Qh7+ Kf8

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(96)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 17.Qh5! Nd8 18.Nh7+ Kg8 19.Rd3 Qe7 20.Rh3 f6 21.Nxf6+! Nxf6(21…gxf6 は 22.Qh8+ で早く詰む[訳注 22…Kf7 で詰まず互角なので、正着は 22.Rg3+ +- です])22.exf6 黒は 22…Qxf6 なら 23.Qxe8+、22…Qf7 なら 23.Qh8# なので投了した。

12.Nd4

 これは白の最も危険な手というわけではない。ギリシャの贈り物の筋はまだ重要である。白は先受けとして 12.Kb1 と指すことができるし、すぐに 12.Bd3 Bd7 13.Bxh7+ Kxh7 14.Ng5+ Kg8 15.Qd3 Rfe8 16.Qh7+ Kf8 に飛びつくこともできる。

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(97)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 黒には …Qe3+ から …Qxf4 という白にとって厄介な狙いがある。例えば 17.Qh8+ Ke7 18.Qxg7 Qe3+ 19.Kb1 Qxf4 20.Rhf1 Rg8! という具合である。そこで1991年アムステルダムでのファン・デル・ビール対コルチノイ戦では白が 17.Rhe1 と指したが、17…Qb4 18.Qh8+ Ke7 19.Qh4 Kd8 20.Nxe6+ Kc8 となって黒キングが比較的安全なクイーン翼に逃亡した。白にはまだ攻撃の可能性があるが最終的には黒が陣形をまとめて勝ちきった。

 だから白がh7でビショップを切る前に Kb1 と指すのは理にかなっている。上図で Kb1 と …Rac8 とが加わった局面は1989年ロッテルダムでのサクス対ティマン戦に現れた。黒の11手目の解説中のチャンドラー対アナグノストポウロス戦でのようにサクスは 18.Qh5 と指した。ティマンは 18…Ke7! と応じたが、この受けはアナグノストポウロスの試合ではビショップがまだd7の地点にいたので Qxf7+ Kd8、Nxe6+ とされるので指すわけにいかなかった。そして 19.Nxf7 Na5! 20.Nd6 となったところで期待はずれの早い引き分けが合意された。このあとのティマンの想定手順は 20…Kd8 21.f5 exf5 22.Nxe8 Bxe8 23.Qxf5 で混戦になる。

 Qh8+ とチェックする手も考えられる。また上図に戻って今度は Kb1 と …a6 とを加えれば1989年キューバでのシエイロ・ゴンサレス対パネケ戦となり、18.Qh4!? Rec8 から 19.Qh8+ Ke7 20.Qxg7 と続いた。20…Qe3+ というチェックがないのでパネケは 20…Kd8 21.Qxf7 Qe7 と応じた。パネケによればここで白が 22.h4 と突いていれば形勢不明だった。代わりに実戦では白が 22.Qg6 と指したので黒は 22…Kc7 23.h4 Rg8 24.Qd3 Rac8 で陣容を固めて勝った。

 ということで黒がギリシャの贈り物のビショップ切りの前に …Bd7 と指していると仮定すれば黒にとって少なくともいい勝負のように思われる。だからわずかな優勢を維持するために白がもっと自制した手法に努めてきたのは驚くに当たらない。本譜の 12.Nd4 の他に白はd6の地点への跳び込みを期待して Nc3-b5 という捌きを試みてきた。1995年ブックフルドーでのZ.アルマーシ対セルメク戦では 12.Bd3 Bd7 13.Kb1 Rac8 14.Nb5!? f6!?(14…a6? は 15.Nd6 Rc7 16.c3! から 17.b4 となって黒クイーンが動きに窮することになるかもしれない)15.exf6 Rxf6 16.Nbd4 Nxd4 17.Nxd4 Na4(d4のナイトはもちろん御法度である)18.Nb3 Qb6 19.Rhe1 となってd4とe5の地点を支配することにより白が優勢になった。14…f6 の代わりに 14…Na4 が 14.Nb5 に対する面白い応手である。そのあとではギリシャの贈り物は次のように自滅する。15.Bxh7+ Kxh7 16.Ng5+ Kg8 17.Qd3 Rfd8 18.Qh7+ Kf8 19.Qh8+ Ke7 20.Qxg7 Nxe5!(…Qxc2+ から …Qb2# で詰ます狙い)21.Qxe5 Qxb5 これで黒の勝ちになる。だから白はおそらく 15.Nd6 と指すべきだろうが、15…Qb6 16.c3(16.c4!?)16…Rc7 で黒も反撃できる。

12…Bd7 13.Kb1 Rac8 14.Be2 Nxd4 15.Qxd4 Qa5?

 コルチノイは勝ちを目指しクイーン交換を避けた。しかしその結果中盤戦では黒キングに対する白の攻撃が黒のクイーン翼でのどんな反撃よりも強力になった。だから黒は 15…Qxd4 16.Rxd4 f6! で白の中原を切り崩し互角を達成することに満足すべきだった。

16.Rhf1 Nc4 17.Rf3!

 ルークがc3のナイトの補強にちょうど間に合い …Na3+ の変化をなくしている。

17…b5 18.Bxc4 Rxc4

 18…bxc4 なら 19.f5(20.f6 の狙い)19…exf5 20.Nxd5 が非常に強力である。

19.Qd2

 この手には 20.Nxd5! Qxd2 21.Ne7+ Kh8 22.Rxd2 という狙いがある。

19…b4 20.Ne2 Rfc8 21.Nd4 Qc7

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(98)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

22.Rd3

 黒には 22…Rxd4! という狙いがあった。ここまで黒は攻撃的な手を指し、白は正確に守らなければならなかった。しかし大駒を使っての攻撃はここで息が切れた。c2の地点はしっかりと守られ、白陣に突破の可能性のある地点は他に見当たらない。だから黒はここからクイーン翼のポーンを突き進めてなんとか素通し列を作ろうとする。しかし白も黒キングに対してポーンの襲撃を始めることができ、キング翼に黒の守り駒がないので白の成功の可能性の方がはるかに高い。それに白のナイトの方が黒のビショップよりはるかに優っていることは明らかである。このナイトはd4の地点から攻守の捌きに力を発揮することができ、一方d7のビショップは自分のキングの助けにも白キングへの攻撃にもほとんど成すすべがない。

22…a5 23.Re1 a4 24.g4

 ついに白は準備万端整ったと判断して攻撃にとりかかった。

24…h6

 このポーン突きは白のポーン進攻の標的になる。しかし黒が何もしなければ白は(…Rxd4 で交換損の犠牲をさせたあと)f5 から f6 とポーンを突いたあと Qg5 で簡単に詰みにきってとる。

25.h4 Qa7 26.h5 Ra8 27.g5 hxg5 28.f5! exf5 29.Qxg5!

 白クイーンは結局g5の地点に行った。ルークはただ捨てになるが白の攻撃は止められない。

29…Rxd4 30.Rg3 g6 31.hxg6 Rg4 32.Rxg4 fxg4 33.gxf7+ Kf8 34.Qh6+ Kxf7 35.Qf6+ 1-0

  35…Ke8 のあと 36.Rh1 ですぐに詰みになる。

(この章続く)

2013年02月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(99)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

第15局
へブデン対マクドナルド
英国選手権戦、1989年
ビナベル戦法

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.Bd2

 白は …Bxc3 にビショップで取り返すつもりである。そうすることによって通常なら 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 でクイーン翼のポーンの形が乱れるのを防ごうとしている。しかしこの手の欠点は白が一時的にせよd4の地点をめぐる戦いを無視することにある。このことにより黒がたやすく互角の形勢にすることができるはずである。古典中原の他の型は次のようにして生じる。

 a)5.a3 Ba5 6.b4!?(6.Bd2 Nc6 7.Nb5 Nxd4! =)6…cxd4 7.Nb5(7.Qg4 については第6章を参照)7…Bc7 8.f4! Nh6 9.Nf3 Bd7 10.Nxc7+ Qxc7 11.Bd3 a6 12.a4! +/= アトラス対キンダーマン、プトゥイ、1995年)

 b)5.dxc5 Nc6 6.Nf3 Nge7 7.Bd3 d4! 8.a3 Ba5 9.b4 Nxb4 10.axb4 Bxb4 11.O-O Bxc3 12.Rb1 h6! 13.Nd2 Bxd2 14.Bxd2 Bd7! 15.Rxb7 Bc6 16.Rb4 Qd5 ∞ ホッジソン対S.アーケル、ロンドン、1988年

 c)5.Qg4 Ne7 6.Nf3(6.dxc5 Nbc6 7.Bd2 はこのあとの6手目の解説に移行する)6…cxd4 7.Nxd4 Ng6! =/+

5…Ne7

 これは最も自然な手である。5…cxd4 は 6.Nb5 Bxd2+?(6…Be7 が正着)7.Qxd2 から 8.Nd6+ の狙いで黒が厄介なことになる。

6.f4!?

 これはきわめてまれな手である。他には次の三つの手がある。

 a)6.a3 は一貫性のある手である。というのは 6…Bxc3 7.Bxc3 となればクイーン翼のポーンの形を乱すことなく双ビショップになるからである。しかし中央を安定させてこの陣形の優位を固めるのが間に合わない。例えば1987年ベイクアーンゼーでのリュボエビッチ対ノゲイラス戦で黒は次のように鮮やかに勝った。7…Nbc6 8.Nf3 cxd4 9.Nxd4!? Nxe5 10.Nxe6 Bxe6 11.Bxe5 O-O 12.Bd3 Nc6 13.Bc3 d4 14.Bd2 Ne5! 15.Bxh7+? Kxh7 16.Qh5+ Kg8 17.Qxe5 Re8 18.Qg3 Bc4+

 b)6.Nb5 Bxd2+ 7.Qxd2 O-O 8.c3(8.dxc5 は 8…Nd7 で黒がポーンを取り返し互角になる)8…Nbc6 9.Nf3 a6 そして 10.Nd6 cxd4 11.cxd4 f6! 12.Nxc8(最善)12…Rxc8 は黒が有利なので白は 10.Na3 と指さなければならず 10…cxd4 11.cxd4 Nf5 または 11…f6 で互角の形勢になる。

 c)6.dxc5 Nbc6 7.Qg4 O-O 8.O-O-O(8.Bd3 Ng6 9.Nf3 Bxc5 10.O-O +/= の方が良い)8…Ng6!(8…f5 9.exf6e.p. Rxf6 10.Bd3 e5 11.Qh4 h6 12.Ne4!? ∞)9.Nf3 Bxc5(9…d4! の方がずっと良いかもしれない)10.Qh5! Bd7 11.Bd3 Nb4 12.Bxg6 fxg6 13.Qg4 Rf5 14.h4 Be7! =/+ ハーリー対B.マーティン、チェルテナム、1995年

6…Nbc6

 これで白はポーンによるd4の地点の占拠をあきらめなければならない。

7.dxc5

 7.Nb5 は 7…Bxd2+ 8.Qxd2 Nxd4 9.Nd6+? Kf8 で良くない。

7…Nf5 8.Nf3 Bxc5!

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解

フランス防御の完全理解(100)

第4章 古典中原(続き)

実戦例(続き)

(再掲)白の手番 

 このビショップはもうc3の地点の攻撃には関心がない。黒は重要な中原のd4の地点に三つの駒が利いている。ニムゾビッチの金言に「中央の要所の過剰防御に関わる駒は、戦いの過程で生じる他の重要な責務にも『偶然』といっていいほど適所に位置している」というのがあるが、この局面でこれの証明が期待されるのは黒の方である。

9.Bd3 Nh4!

 この手は 10.Bxf5 と指させないためである。そしてf3でナイト同士を交換したあと黒はd4の地点をしっかり支配し続ける。

10.Qe2

 1994年英国選手権戦でのW.ワトソン対ハーリー戦では白が 10.Nxh4 Qxh4+ 11.g3 Qd8(11…Qh3!? W.ワトソン)12.a3! と改良し …Nb4 を妨げた。そのあと試合は 12…f5?! 13.exf6e.p. Qxf6 14.Qe2 O-O 15.O-O-O Bd7 16.Qh5!?(16.g4! の方が良い)16…g6 17.Qe2 Nd4 18.Qg2 Rac8 19.h4 Qe7 20.Kb1 Bxa3! 21.Nxd5! +/= と進んだ。相手の攻撃が待ち構えているキング翼にキャッスリングするよりも、黒は前局の解説で述べた原則に従って 12…a6!? から …b5 と指すことを考えるべきで、それならいい勝負だった。13.Qg4 には 13…Bf8! でよい。

10…Nxf3+ 11.Qxf3 Nb4!

 11…O-O? は 12.a3!(…Nb4 を防ぐ)で白に黒キングに対するおあつらえの攻撃法が用意される。そこで黒はキャッスリングを遅らせて、代わりに白の強力な白枡ビショップを除こうとした。しかしこのビショップは引っ込むと白に他の問題が生じるので、黒は …Nxd3+ の狙いの実行を急がない。

12.O-O-O Bd7 13.Kb1 Qb6 14.Rhe1 O-O-O

 14…O-O でも白はたぶんすぐに 15.f5!? でまだ攻撃できる。黒キングは周囲に守備駒のいるクイーン翼の方がはるかに安全である。

15.Ne2

 15.Bf1 は 15…Bc6 から 16…d4 の狙いで白がやりにくそうである。

15…Nxd3 16.cxd3 Kb8

 白の手番 

(この章続く)

2013年02月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: フランス防御の完全理解