世界のチェス雑誌から3の記事一覧

世界のチェス雑誌から(151)

「Chess」2011年7月号(5/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第1組
ゲルファンド 2733 6-4 カームスキー 2732(続き)

 「第3局でカームスキーは 8.h3 と指してきた。ずっと昔に2、3局あるだけでこれまで誰も指さなかった。しかし局面は白にとって非常に魅力的で、圧力もかけている。真剣になったとは言わないが、この戦型を指すのは楽しい。」

 「大きな問題は布局で時間を使いすぎたことで、こちらが 15…Nbxd5 と指し彼が 16.Bd2 と指したまさにその時に 16…Nb4 17.Kb1 Qc6 と指さなければならず受けの効く局面だ。それは読んでいた。白には代償があるが黒は悪くない。しかしもう時間が少なくなってきていたのですぐに 16…Nb6 と指した。彼は1ポーンの大きな代償を得ていて、さらに白の方がずっと指しやすい局面だった。白は駒を自然な地点に展開できて、黒はキングに長期的な問題を抱えている。このキングはどこへも行けない。」

 「それから彼は多くの勝つ可能性のあるところまで陣形を改善した。しかしためらい始め Qh1 のような手をいくつか指した。たぶん争点を維持して考えさせようとしたのだろう。こちらがもう時間不足になりかけていたから。挑決のすべての試合で時間の使い方が最もまずかった。時間不足の中で主導権をもぎ取った。38…Qh5 と指していれば勝勢だった。しかしその手は直感的に抵抗があった。詳細に読めれば指せるが、読んでいる時間がなかった。ルーク収局ではこちらがほんの少しだけ良かったが、実際は今でもどうしたら相手に問題を突きつけることができるか分からない。」

準決勝第1組、第3局
G・カームスキー - B・ゲルファンド
シチリア防御ナイドルフ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 e5 7.Nb3 Be7 8.h3 Be6 9.Qf3

 これは比較的新しいゆえに珍しい手で、ゲルファンドを深い研究からそらそうという意図である。

9…Nbd7 10.g4 h6 11.O-O-O Rc8

 この手には …Rxc3 の狙いがある。

12.Nd5 Bxd5 13.exd5 Nb6 14.h4!

 白は完全に代償を得ている。黒キングは決して安全にならない。

14…Qc7 15.c3 Nbxd5! 16.Bd2

 16.Rxd5 は 16…Qc6 17.Bg2 e4 で黒が少し良い。

16…Nb6?

 ゲルファンドが言ったようにここでは 16…Nb4 17.Kb1 Qc6 と指して「受けの効く」局面にしなければならなかった。

17.g5 Nfd7 18.gxh6

 18.g6 O-O は黒にとって明らかに安泰ではないが少なくともキングには住みかができる。

18…gxh6 19.Kb1 Qc6 20.Qh3

20…d5

 20…Nc4 21.Bc1 Nf6 22.Rg1 でもまだ白がでかしてないように見える。

21.Be2

 この手は中途半端でこれまでの迫力ある攻撃的な指し方からはずれている。自然な 21.f4! なら 21…e4 22.Rg1(もっと穏やかな 22.Nd4 Qf6 23.Be3 でも盤上を制している)22…Qf6 23.Be3 Qxh4 24.Bd4 Rf8 25.Qe3 Nc4 26.Bxc4 Rxc4 27.Bg7

で白が優勢になる。

21…Nc4 22.Bc1 Nf6 23.Rhe1 Qe6 24.Qh2

 黒の堂々としているように見える中原は非常にもろい。今はe5ポーンが攻撃を受けている。

24…Qf5+

 24…e4 は 25.Bxc4 Rxc4 26.f3 で問題がありそうである。

25.Ka1 Kf8

 キングを比較して欲しい。実利派のコンピュータでさえここでは白が有利と言うだろう。

26.f3 Bd6 27.Qg1 Bb8

 27…b5!? はaポーンを弱めるが少なくとも反撃にはなっていて、28.Qa7 Rc7 29.Qxa6 Qd7 となれば指せそうである。

28.Bd3

28…Qh5?

 この手は評判が悪かったが、推奨された 28…Qd7 でも 29.f4! Rg8 30.Qf1 e4 31.Bxe4 Nxe4 32.Rxe4 となって白の方がはるかに良い。代わりに 28…Qe6 でも 29.Nd4 Qb6 30.Nf5 Qxg1 31.Rxg1 で問題なく白が良い。

29.Qh1?

 白は好機を逃した。29.Bxc4! Rxc4(29…dxc4 も 30.Na5 が強手となる)30.Qb6 Qf5 31.Nc5 なら黒に適当な手がなかった。例えば 31.,,Kg7 なら 32.Rg1+ Kh7 33.Qxb7

で終わりである。

29…Ba7 30.Qh3 Re8 31.Bxc4 dxc4

32.Na5

 32.Nd2 b5 33.Ne4 なら黒はルーク損も同じだった。

32…e4! 33.Nxc4 Qxf3 34.Qh2 Ng4 35.Qc7 Bf2

36.Rf1?

 この手には読み間違いがあった。代わりに 36.Nd6 Bxe1 37.Rxe1 Re6 38.Rg1 h5 39.Qd8+ Kg7 40.Qg5+ Kf8 41.Qd8+

でも、36.Rg1 Bxg1 37.Rxg1 e3 38.Bxe3 Nxe3 39.Qd6+ Re7 40.Qd8+ Re8 41.Qd6+

でも引き分けになっていた。

36…e3 37.Bxe3?

 37.Qd6+ Kg8 38.Qd7 Re6 39.Qd8+ Kh7 30.Qd3+ Qe4 なら黒は勝ちを目指して指すことになる。

37…Nxe3 38.Ne5

38…Qf5

 持ち時間が残り少なくなってゲルファンドは直感に反する手による勝ちを逃した。38…Qh5!! と指せば 39.Rxf2(39.Rd7 は 39…Qxe5 40.Rxf7+ Kg8 で白の攻撃が頓挫する。また 39.Nd7+ なら 39…Kg7 40.Nf6 Qf5 41.Nxe8+ Rxe8 だし、39.Qd6+ なら 39…Kg7 40.Rg1+ Kh7 41.Nd7 Re6 42.Qxe6 Qxd1+! で黒の勝ちになる)39…Qxd1# までだった。

39.Qc5+ Kg7 40.Qxe3 Rxe5

41.Qxf2

 引き分けに向かっている。「New In Chess」誌でヤン・ティマンは 41.Qd2 で白が勝てたかもしれないと主張し他の色々な解説者たちもそう言っていた。しかしわたしにはそうは思えない。41…Kh7 42.Rxf2 Rd8! 43.Rxf5(43.Qxd8 なら 43…Qxf2 でルーク交換になる)43…Rxd2 44.Rxf7+ Kg6 45.Rdf1 Rb5(45…Kh5 は引き分けになるはずである)46.b3 Ra5 47.a4 Re5

なら形勢互角である。

41…Qxf2 42.Rxf2 Rhe8 43.Rg1+ Kf8 44.Kb1 Re2 45.Rf4 R8e4 46.Rgf1 Re1+ 47.Kc2 R4e2+ 48.Kb3 Rxf1 49.Rxf1 Kg7 50.Rf4 Re6 51.a4 Kg6 52.Kc4 f5 53.a5 Kf6 54.Kd3 Re7 ½-½

 第4局ではカームスキーが(第2局を間一髪で逃れたあと)グリューンフェルトの研究を修正し引き分けに持ち込んだ。これで2-2になり延長戦に入った。

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(この号続く)

2011年12月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(152)

「Chess」2011年7月号(6/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第1組
ゲルファンド – カームスキー 延長戦

質問 カームスキーとの延長戦の試合はレベルが低かったと言っていたようだが?彼は番勝負の勝ちを決定づけるのに快速戦の第4局の白番で引き分ければよいだけだったのに、堅実にいかずに開放シチリア防御をわざわざ指した。なぜ彼がそうしたと思うか?

答え 前の発言と同じだ。それは感情的になったせいではない。私の棋歴で一番ひどい延長戦だった。勝ち抜き戦はたくさん指したことがある。何が起こったかは分からない。あんな調子の悪い日があれば大会をおしまいにしてしまうのでよく分析しなければならない。

準決勝第1組、快速戦第2局
G・カームスキー - B・ゲルファンド

 互角の局面だが両対局者は簡単明瞭な戦術を見逃していた。19.exf5? Bxf5 19…Bxd5! で黒の勝ちだった。20.Rxd5 なら 20…Qxd5! 21.cxd5 Rxc1+ 22.Ne1 Ba5

で終わりだし 20.cxd5 でも 20…Qxc1 21.Rxc1 Rxc1+ 22.Ne1 Ba5 で同じことである。本譜の手のあと試合はだらだらと続いて31手で引き分けになった。

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(この号続く)

2011年12月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(153)

「Chess」2011年7月号(7/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第1組
ゲルファンド – カームスキー 延長戦(続き)


惜しかった。ガータ・カームスキーがゲルファンドとの快速戦第4局で 25.Bxf7+! と指していたら、ほとんど確実にグリシュクとの挑戦者決定決勝戦を戦うことになっていただろう。

質問 これはあなたにとって本競技会初めての延長戦だった。あなたが参加したことのある他の大会では早い回戦での延長戦ではたぶん格下の選手と対戦してかなり楽に勝つ可能性がある。この大会ではしょっぱなの延長戦ですごい相手と対戦していたが。

 「そう、それは確かで、それにグリューンフェルト防御に対し何も有力なものが見つけられなかったので、白で反グリューンフェルトの枝手順を指したがあまりぱっとしなかった。第3局では駒損をした。実際二人ともひどい日だった。だからコメントしにくい。だが第4局では緊張とうまくつきあえてうれしかった。ポカもいくつかあったが二人とも神経をすり減らす状況だった。」

準決勝第1組、快速戦第4局
G・カームスキー - B・ゲルファンド

 ここは勝負所である。番勝負の決着をブリッツ戦に持ち込むためには黒は勝たなければならなかった。この瞬間にゲルファンドの世界選手権戦の大望がかかっていた。

25.Qh5??

 カームスキーが 25.Bxf7+! Kxf7 26.Qc4+ Kf8 27.Qxc5+ Kg8 28.Qc4+ Kh8 29.Qe2

と指していたらポーン得は明らかで負けようがなかった。

25…Qc7

 これでe4のポーンが弱いので白の方が悪い。

26.Bd5 Bxd5 27.exd5 Ne4

28.Bg1?!

 これも緩手である。たぶん 28.Qe2 と指さなければならないところである。

28…Qc4 29.Raa1 Qxd5 30.Rad1 d3 31.Qf3 Rad8 32.Rfe1 Nf6 33.Qxd5 Rxd5

 今や心理的なプレッシャーは仕上げるべき黒に多くかかっている。しかし白が黒をあまり手こずらせることができないので実際は非常に能率的にやり遂げる。

34.c4 Rd7 35.Bb6 e4 36.c5 Rc8 37.h3 h5

38.Kg1

 白は激しく 38.g4 と突いていきたいのだが残念ながら黒に単純に 38…hxg4 39.hxg4 Nxg4 とこられてf2の地点で両取りがかかるのでe4のポーンには手が出せない。

38…h4 39.Bxa5

 39.b3 の方が少し良いかもしれないが、カームスキーはあきらめている感じである。

39…Rxc5 40.Bc3 Rc4 41.Bxf6 gxf6 42.b3 Rb4 43.Kf2 Rd5 44.Ke3 Rxf5 45.Rc1 Rg5 46.Rc4 Rxc4 47.bxc4 Rxg2 48.c5 Re2+ 49.Rxe2 dxe2 50.Kxe2 Kf8 0-1

質問 血の吹き出るようなチェスが指せて楽しかったか?

 「そう、それだけが希望だった。彼は非常に堅実に指すこともできたがもっと困難に見舞われていただろう。堅実すぎると激しくなったときその変化に合わせられなくなる。これは品格の問題だ。彼は正々堂々と指すことに決めそのとおりにやった。結果は幸いしなかったが長い目で見れば最善の姿勢だ。」

質問 フットボールと似ていて一方が他方を押しまくりゴールをあげると防御的になり勢いを失う・・・

 「そのとおり!」

質問 皮肉なこともあった。あなたは彼がロンドン・システム(1.d4、2.Nf3、3.Bf4)を指すこともできた快速戦第4局についてコメントしたが、もちろん彼はブリッツ戦でそれをやってきてあなたが勝ってしまった。

 「そう、それは本当だが違う。25分の試合では受ける方が楽だ。しかしブリッツ戦では布局ではあまり違いが出ない。」

質問 ということはブリッツ戦と快速戦では布局の戦略が異なるようにしている?

 「それは考慮に入れなければならない。戦略を変えなければならないとは言わないが、考慮はしなければならない。25分ではできることが5分のときにはできない。しかし彼は快速戦第4局から立ち直れなかったようにも感じられる。これともっと関連している。というのは彼がロンドン・システムを指し攻撃を仕掛けなければ彼は急にどうしたらよいか分からなくなるかもしれない。」

質問 ブリッツ戦第1局であなたはずっと局面を支配していたと思うが。非常にうまくいった試合に見えた。

 「私にもそう思える。ありがとう。検討する時間はなかったが対局中はすべてうまくいっていると感じていたし一番いい手が指せたと思う。そして第6局はもう・・・彼は困難な状況でどうしたらよいか分からなくなっていた。」

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(この号続く)

2011年12月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(154)

「Chess」2011年7月号(8/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第2組
グリシュク 2747 5½-4½ クラムニク 2785

 クラムニクはこの番勝負の始まりでは大本命だった。10年以上も前の輝かしい番勝負の記録があり、その中には史上最強選手と広く認められていた男に対する番勝負唯一の人間の勝利もある。だから勝利以外はほとんど考えられなかった。しかしそれにもかかわらず・・・。なぜだろう?クラムニクはここ何年か絶好調ではなかった。それに両GMの間には40点弱のレイティング差しかなかった。グリシュクに分がないとする別の理由は彼が時間の一部を使ってポーカーに情熱を注ぐのが好きな「半ば超然とした」スーパーGMという感覚があるからだろう。

 賭け率がどうであれ勝利したのはグリシュクだった。誰もがその達成方法にわくわくしたわけではなかった。戦略は白では引き分けに応じ黒では頑強に受けることによって延長戦に持ち込むことのように見えた。しかしそれは起こったことの単なる理屈づけかもしれない。グリシュクは番勝負が進むにつれて「正しいチェスを打倒する」ための「邪悪な」策略に着手するよりも実戦的なやり方を取ったのだろう。それに加えて彼が大会方式にのっとって指したことは非難するわけにいかない。クラムニクにもそれなりにチャンスがあったが単にそれらをものにできなかったということだ。

 正規試合の第4局が分岐点だった。クラムニクはグリシュクの時間切迫にかけて黒のcポーンに大きなリスクを冒した。それは報われるはずだったが 31.Nf4 を見つけることができなかった。

準決勝第2組、第4局
V・クラムニク - A・グリシュク
イギリス布局

1.Nf3 c5 2.c4 Nc6 3.Nc3 e5 4.e3 Nf6 5.Be2

 クラムニクはこの正規試合の第2局では 5.d4 と指した。

5…d5 6.d4 exd4 7.exd4 Be6 8.Be3 dxc4

9.O-O

 イワンチュクは2006年コーラス大会でのアーナンド戦で 9.Qa4 と指して負けた(両者はこの布局でこれまでに2度戦った)。本譜の手の方が本手だろう。

9…cxd4 10.Nxd4 Nxd4 11.Bxd4

11…Qa5

 11…Qd7 12.Bxf6 Qxd1 13.Rfxd1 gxf6 は2002年パンプローナでのボローガン対バリェホ戦で引き分けになったので指されなくなった。

12.Bxf6

 白は …Rd8 でビショップを釘付けにされるのを嫌った。

12…gxf6 13.Re1 Rd8 14.Qc2 Be7 15.Qe4

 クラムニクはきわめて速く手を決めていた。グリシュクは8手目と9手目で熟考したがここでは彼もかなり素早く応じた。

15…Qc5

 15…Qb6!? も考えられる。16.Bxc4 なら 16…Rd4 17.Bb5+ Kf8 18.Qf3 Rg8 で黒キングがf8の地点で安全かは見方の分かれるところである。そして黒駒も相応の働きをしている。

16.Qxb7 O-O

 黒はポーンを返して展開を完了した。黒の双ビショップと活動性が二重ポーンを補っている。

17.Ne4 Qb4 18.Qxa7 Rd7 19.Qe3 Qxb2 20.Rac1

20…Qd4

 20…Qxa2 は 21.Qh6 でもっと危険そうである。

21.Qf3

 シポフはここでは白が不利だと判定し 21.Qf4 f5 22.Rcd1 Qxe4 23.Qg3+ Kh8 24.Rxd7 Bxd7 25.Qc3+ Kg8 26.Qg3+ Kh8 27.Qc3+

と指した方がよいとした。要点は黒が 27…f6? で繰り返しを避けることができないことで、そう指すと 28.Bxc4! で白の勝つ可能性が高いということである。

21…Rc8

 グリシュクは安全策をとった。21…f5!? と指すこともできて 22.Ng3 Bg5 23.Rc2 のときに 23…Qe5!

で有望だった。しかし彼は時間が非常に少なくなっていたしこの手順は判断が難しい。

22.Ng3 Rdc7

 黒は自分の大きな資産を守った。

23.Nh5!? Kh8 24.Rcd1

24…Qb2?

 24…Qc5 ならクイーンがもっと戦場の近くにいる。要点は 25.Nxf6 c3! でcポーンがはるかに脅威になるということである。4番勝負のもう後がない最終局で時間切迫のときにそのような危険を冒すのはあまりたやすいことではない。しかし皮肉なことに黒は一つの危険を避けて二つ目のそれももっと気に入らない危険にさらされるようになる。

25.Qg3 Bf8

 白から1手詰めを狙われていた。c7のルークがただ取りになるので 25…Rg8?? と受けることはできない。25…f5 は 26.Rd2! f4! 27.Qxf4 Qc3

で黒は非常に危ない状態にあり時間不足の中で危険な手を読まなければならない。だから本譜の手でなければならない。

26.Bg4!?

 面白い。クラムニクは二つの手のうち危険の多いほうを選んだ。26.Bf3 ならもっと堅実である。もちろん彼は相手の時間不足に目をつけている。

26…c3! 27.Bxe6 fxe6 28.Nxf6

28…Bg7?

 クラブの選手の大部分はここで 28…Rg7 がひらめいたと思う。そしてこの場合はその判断の方がスーパーGMの判断より優っていた。29.Qe5 Qb7 詰みを狙われたのでこちらも詰みを狙い返す。そうだろう?時にはクラブ選手の単純な考え方の方に理の多いことがある。30.g3 c2 ポーンを突いていけ。31.Rc1 Ba3 せき止めている駒をやっつけろ。32.Nh5 Bxc1 駒を取れ。33.Rxc1 Rd8! そして最下段詰みを狙え。黒が勝勢だ。チェスは単純な競技だが、時にはこれらのスーパーGMが本来よりも難しく見せることがあるようだね。さて、まじめな話に戻って、サーシャ・グリシュクのために公正を期せば彼はあまり時間がなくて真剣に読む必要のあった手の中には101もの変化があった。すべて黒にとってうまくいくということだってある。

29.Nh5 Qb7 30.Qh4

 ここは2個目のポーンを取るのに都合が悪い。30.Rxe6?? なら 30…c2 31.Rc1 Bb2 で黒の勝ちになる。

30…Rg8

 パスポーンを突くのも都合が悪い。30…c2?? なら 31.Rd8+ でたちまち詰みになる。

31.Rd8?

 クラムニクはこの手を世界選手権の望みがついえた瞬間の一つとして回顧するだろう。このときクラムニクは40手まで約10分あった。グリシュクは2分弱だった。31.Nf4! が1手詰めとe6のポーンを狙いg2のポーンを守って、普通のクラブ選手がやはり選択したかもしれない手であり正着だった(もっとも 31.Rb1 も非常に有効である)。31.Nf4 h6 32.Rxe6 のあと黒はたぶん 32…Rgc8 とでも指さなければならない。というのは 32…c2? だと 33.Rxh6+ Bxh6 34.Qxh6+ Rh7 35.Qf6+ Rhg7 36.Ng6+ Kh7 37.Qh4+ Kxg6 38.Rd6+

ときれいに即詰みに討ち取られるからである。

31…Rc8 32.Rxg8+

 32.Nf6 の方が良いが 32…Bxf6 33.Qxf6+ Qg7 34.Rxg8+ Rxg8 35.Qxg7+ Kxg7 36.Rc1 Ra8 37.Rxc3 Rxa2 38.g3

となっておそらく勝つには至らないだろう。

32…Rxg8

 32…Kxg8 33.Qg4 c2! 34.Qxe6+ Kh8 35.Qe8+ Bf8!

は十分引き分けにできるだろうが、ここでの状況では少し危険である。

33.Nxg7 Qxg7 34.Qe4 c2

 黒は引き分けには十分できるが40手に達するまで1分未満しかなかった。

35.Rc1 Rc8 36.Qxe6 Rd8 37.Qb3 Rd2 38.Qb8+ Qg8 39.Qb2+ Qg7 40.Qb8+ Qg8 41.Qe5+ Qg7 42.Qe8+ Qg8 43.Qe5+ Qg7 44.Qe8+ ½-½


グリシュクとの正規試合最終局で 31.Nf4! を見逃したことはクラムニクにとって悪夢だった

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(この号続く)

2011年12月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(155)

「Chess」2011年7月号(9/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第2組
グリシュク 2747 5½-4½ クラムニク 2785(続き)

 快速戦になってもロシアの2選手には決着のついた試合がまだなかった。グリシュクが白の試合はいっそうおざなりの行事になっていた。クラムニクは白番ではかなり激しく押しまくっていたがグリシュクは頑強な受けの達人であることをみせつけた。だから残念ながらブリッツ戦にならざるをえなかった。

準決勝第2組、ブリッツ戦第1局
V・クラムニク - A・グリシュク
シチリア防御マローツィ縛り

1.Nf3 c5 2.c4 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 d6 6.e4 g6 7.Be2 Bg7 8.Be3 O-O 9.O-O Bd7 10.Qd2 Nxd4 11.Bxd4 Bc6 12.Bd3 a5 13.Rfe1 a4

14.Nd5

 14.Rad1 で堅実策を続ける方が良さそうである。駒の交換は黒陣をくつろげさせる。

14…Nd7 15.Bxg7 Kxg7 16.Re3 e5

 黒枡ビショップ同士が消えてしまえばこれがよくある一撃になる。この先を見れば分かるように出遅れd6ポーンは弱点にならない。

17.Rh3 h5 18.Ne3

 ここで初めて前例と別れたが、あまり感心しなかった。

18…Rh8

19.Rg3?

 どの程度の優勢だろうとこれで消えてしまった。ここでは 19.Nd1 と引いて遊んでいるルークをe3の地点でまた働かせる方が良かっただろう。

19…Nc5 20.Rd1

 白はe4のポーンが落ちるのを避けることができた。しかしたぶん 20.Nd5 Bxd5 21.cxd5 Qa5 22.Qxa5 Rxa5 で不良ビショップ対優良ナイトの収局で守勢になるのが面白くなかったのだろう。

20…h4 21.Rh3 Bxe4 22.Bf1 Bc6

23.Nd5

 恐らく白は 23.Qxd6 と取れることを当てにしていたのだろうが、23…Qxd6 24.Rxd6 Ne4 25.Rd1 Ng5 で交換損になることに気づいた。

23…Bxd5 24.Qxd5 Ra6 25.Re3 Qf6 26.b4 axb3e.p. 27.axb3 Rb6 28.h3 Rxb3 29.Rxb3 Nxb3

30.Qxd6

 たぶん 30.Qxb7 Nc5 31.Qc7 Rd8 32.Be2 の方が隙が少なくてしのげる希望があっただろう。

30…Qxd6 31.Rxd6 Rc8

32.Rd5?

 クラムニクはルークの無駄手を指し始めた。このブリッツ試合での手損が彼の世界選手権の可能性をつぶしたことはほぼ間違いない。代わりにすぐ 32.g3 と突けばまだ戦えた。例えば 32…Rc6 33.Rd5 hxg3 34.fxg3 Kf6 35.Kf2

となれば、片側だけにポーンのあるルーク+2ポーン対ルーク+3ポーンの収局が望めた。

32…Kf6 33.Rd6+ Ke7 34.Rb6 Nc5 35.g3 hxg3 36.fxg3 Rc6 37.Rb5 f5!

38.Kf2

 白は 38.Bg2 と指したいのだが黒は単純に 38…e4 でビショップを亡き者にする。

38…b6 39.Ke3 Rd6 40.h4 Kf6 41.Be2 g5 42.hxg5+ Kxg5 43.Kf3 Rh6 44.Rb1 Ne6 45.Kg2 Nd4 46.Bd1 Rc6

47.Rb5?

 これはポカだが、47.Rb4 でも 47…e4 48.Ba4 Rh6 49.Kf2 f4 50.gxf4+ Kxf4 で見込みがない。

47…Nxb5 0-1

 本当のところ偉大な選手がこんなつまらない試合で消えていくのを見るのは残念だった。しかしそれが番勝負による勝ち抜き戦のやり方である。第4局はもっと悪かった。黒で勝たなければならないクラムニクは危険を冒して現代防御の支線型を指し不利に陥った。グリシュクは圧倒的に勝勢の局面になったがわざと簡単な引き分けの収局にもっていった。決勝戦に進みさえすればよいので任務は完了した。

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(この号続く)>

2012年01月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(156)

「Chess」2011年7月号(10/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747

 ということで決勝戦に残ったのは意外な二人だった。レイティング上では競技会開始時の8選手中の第5位と第7位である。しかし最高と最低の選手のレイティング差がわずか76点では眉をしかめる者は多くないはずである。願わくばこの競技会での良いこととしてレイティング表への懐疑が大きくなることを望む。多くのチェス選手が絶対的なものと思っている。

 以下はインタビューでのボリス・ゲルファンドの試合の感想である。

質問 あとでサーシャ・グリシュクは「ボリスの素晴しい指し回しに翻弄された。6試合で彼の指した悪手はたった1手だった」と言ったとされる。あなたの発言では「我々の試合は激闘だった。3回負けの瀬戸際に立たされた」と言ったとされる。あなたとサーシャは友人でたぶんお互いに儀礼的すぎるか寛大すぎるようだ。この何週間かで試合内容を振り返ったことがあるか?もしそうならもっと別の結論に至ったか?

 「面白い。あなたの言うことはまったく正しい。しかしある意味で我々二人は正しい。第2局で私はとんでもない手、22.Bxh8を指した。そして苦戦に陥った。他の2回は布局でうまく対処しなかったために苦戦した。布局が過ぎてしまえば非常にうまく指せた。だから彼の言うことは合っている。」

 「しかし第1局と第5局の布局の指し方に満足しているわけではない。第1局では私の知識は古くなっていて嫌な局面になって受けに回らなければならなかった。しかしこの試合ではうまく守れたと思う。本当に不快な試合で、私が対処しなければならない多くの可能性が彼の方にはあった。第5局はかなり守勢の局面だった。彼には多くの作戦があったが正しいものを選んでこなかった。こちらが駒をうまく配置できたと思うし、22…e5 でほとんど互角にして局面がそれまでより苦しくなくなった。」

 「我々はお互い準備する時間が多くなかった。私は前の番勝負でグリューンフェルトに対処しなければならなかった。だからそれを繰り返した。そして私はクイーン翼ギャンビットに対処しなければならなかった。それで彼はそれを繰り返さなければならなかった。だから我々は同じ布局でやっていかなければならなかった。」

 試合は6番勝負で最初の5局は引き分けだった。それぞれ内容のある試合だった。例外は第4局で少し退屈だった。第3局は14手だったが非常に面白かった。ゲルファンドが9手目でかなり印象的な …b7-b5 突きの犠牲を繰り出し、相手の気力を削いで早々と引き分けにさせた。


グリシュク戦の開始を待ちながらぼんやり考えている様子のゲルファンド

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(157)

「Chess」2011年7月号(11/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747(続き)

 それでは決着のついた第6局に専念しよう。

決勝戦第6局
B・ゲルファンド - A・グリシュク
グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.g3 d5 5.cxd5 Nxd5 6.Bg2 Nb6 7.Nc3 Nc6 8.e3 O-O 9.O-O

9…Re8

 9…e5 は流行らなくなった。そして本譜の手の方が白の建設的な応手が尽きることがあるということで優ると考えられている。9…e5 10.d5 Na5 11.e4 c6 12.Bg5 f6 は白が少し優勢と考えられていて、カスパロフは先に 9…Re8 と指すことにしていた。

10.Re1 a5

 流行しているのは 10…e5 11.d5 Na5 12.e4 c6 13.Bg5 f6 で、1988年オプティブールスでのカルポフ対カスパロフ戦でも指された。

11.Qe2 Bg4

 どういうわけかグリシュクは次の最も楽と思われる手順を避けた。11…e5 12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 Bxe5 14.f4(14.e4 Be6 15.f4 Bd4+ 16.Be3 Nc4 17.Bf2 c6 18.Red1 Bxf2+ 19.Qxf2 Qb6

は白がわずかしか優勢でない)14…Bxc3 15.bxc3 Bf5

は黒が指せる。実戦は白がどのみち h2-h3 と突くようになるので黒がそれを誘うのに1手費やすのは奇異に思われる。

12.h3 Be6

13.b3!

 この新手はうまい手だった。ゲルファンドは明らかに局面をより深く研究していた。13.Rd1 は 13…Bc4 14.Qe1 a4 で黒に反撃される。

13…a4 14.Rb1! axb3 15.axb3 Qc8

 黒は理想的にはd5とe4の地点を支配して白のポーンを押さえこみたいところである。この試合は黒がそうできるかどうかをめぐってずっと進んでいく。グリシュクは戦術的な狙いを持ち続けようとするがゲルファンドの断固たる方針は揺るがず、狙いが尽きたときに戦略的な勝利を収めた。

16.Kh2 Ra5 17.Rd1 Rh5 18.Nh4 Bf6 19.f4!!

 グリシュクは黒の作戦をくつがえすこの妙手を見落としていたと認めた。

19…Rd8

 黒は e3-e4 突きを邪魔するためにd4の地点に圧力をかけた。19…Bxh4 は 20.gxh4 Rxh4 21.Kg3 Rxh3+ 22.Bxh3 Bxh3 23.d5 Nb4 24.Ba3 c5 25.Bxb4 cxb4 26.Ne4

で白が優勢になる。

20.Qf2 Bxh4?

 これは長い目で見れば陣形的に負けになる。黒には他にもっとましな手があったが、20…Nb4 21.Bd2(21.e4 は 21…c5! で互角になる)21…c5 22.Ne4 Bxh4 23.Nxc5! Bf5 24.Bxb4 Bxb1 25.Rxb1 Bf6 26.Nxb7

は白がどのように駒配置の優位を生かして優勢を勝ち取れるかを示すほんの見本手順である。

21.gxh4 Nd5 22.Nxd5

22…Rhxd5!

 最善手。22…Bxd5? は 23.e4 で白が戦力得になる。

23.Bb2!

 この手は e4 突きを狙っている。23.Bxd5?! は 23…Bxd5 から …Qf5 で黒が豊富な代償を得る。白はキングが弱く不良ビショップを抱えポーンは進む所がない。

23…Rb5?

 この手は負けになるが白は既に戦略的な戦いに勝っている。23…f5!? は 24.h5 Rb5(24…Bf7 は 25.hxg6 hxg6 26.Rg1

となって白が攻勢に立ちここで交換得することもできる)25.Qe2 Rxb3?(25…Rbd5 の方が良いがそれなら白は前述の作戦を追求することができる)26.d5

で白の勝ちになる。

24.Qe2

 24.e4 Bxb3 25.Rdc1 Ba2 26.Ra1 でも良いが実戦の手の方がもっと良い。

24…Rh5 25.e4! Bxb3 26.Rdc1

 白のポーンがころがり進む。一方黒は離れ駒があり黒枡の対角斜筋が大きな弱点になっている。もう受けがない。

26…Na5

 26…e6 27.Ba1! Na5 28.Qe1 Ba2 29.Rb2 Nb3 30.Rxa2 Nxc1 31.Qxc1

も黒の形勢がもっと悪くなり白のビショップがますます強くなる変化である。

27.d5 b6 28.Be5 c5

 28…Rd7 は 29.Qb5 で黒ビショップが包囲され、ルークと2小駒の白に有利な交換になる。

29.dxc6e.p.

 29.Qb5 でも白の勝勢だった。

29…f6

 29…Rxe5!? ならしばらく持ちこたえるが 30.fxe5 Qe6 31.c7 Rc8 32.Qd3 Qxe5+ 33.Kg1 Kg7 34.Qc3

で白が楽に勝つはずである。

30.Ba1

 30.c7 は 30…Rd7 31.Rxb3 Nxb3 32.Qc4+ Kg7 33.Qxb3 fxe5 34.Qxb6 exf4 35.Qb8 Rxc7 36.Qxc7 Qxc7 37.Rxc7 Kf6 38.Rc6+

で勝つはずではあっても技術的に難しいところがあるが、本譜の手はその困難を避けた。

30…Rc5

 30…Bf7 は 31.e5 Qc7 32.Qb5 Rd2 33.Kg1(33.Qxb6? は 33…Bd5!!

で黒が引き分けにできる)33…fxe5 34.Bxe5 Qc8 35.Qxb6

で白の勝ちになる。30…b5!? はやってみる価値があったかもしれないが、31.e5 Bc4 32.Rxc4! bxc4(32…Nxc4 は 33.Rxb5 で白の勝ち)33.Bc3!

で勝勢になることを白が読めないことを期待するしかない。ここで例えば 33…Nxc6 なら(33…Qc7 は 34.Bxa5 Qxa5 35.Qxc4+ Kg7 36.exf6+ Kxf6 37.c7 Rc8 38.Rb8

で白の勝ち)34.Qxc4+ Kf8 35.exf6! で黒キングが四方八方から攻撃にさらされる。

31.Rxc5 bxc5

32.Qb5

 次のようにもっと速く勝つ手段があったがゲルファンドはここでとても速く指していても何もだめにしたわけではなかった。32.e5 Bd5 33.Bxd5+ Rxd5 34.exf6! Nxc6(34…exf6 は 派手な35.Rb8!! から 35…Qxb8 36.Qe6+ Kg7 37.Qxf6+ Kh6 38.Qg7+ Kh5 39.Qxh7#

で詰みになる)35.fxe7 Kf7 36.Re1 Ke8 37.Qa2

で黒は何かを差し出さなければならない。

32…Qc7

 唯一のチャンスはまず 32…Ba2! と指すことで、33.Rb2 なら 33…Qc7 で狙いが本物になる。その意図は 34.Rxa2?? なら 34…Qxf4+ 35.Kg1 Rd1+ 36.Bf1 Qg3+ 37.Rg2 Qe3+ 38.Rf2 Rxa1

で黒の勝ちになってしまう。しかし 34.e5! Be6 35.Qb6 Qxb6 36.Rxb6 Kf7 37.exf6 exf6 38.Bc3 Nc4 39.Rb7+ Kf8 40.f5 gxf5 41.Bxf6

なら白の勝ちになる。

33.Rxb3 Nxc6

 33…Qxf4+ は 34.Rg3 で簡単な勝ちになる。

34.e5

 eポーン突きは本局を通しての基調だった。

34…Nd4 35.Qc4+ 1-0

 正規チェスの名局だった。深遠な戦略とゆるみのない戦術が合体していた。


カザンで最後まで立っていた男(もちろん着席しているが)。2012年ビシー・アーナンドとの世界選手権戦を心待ちにしている。命がけの彼はあなどれない・・・

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(この号終わり)

2012年01月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(158)

「Chess」2011年11月号(1/1)

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欧州クラブ杯

解説 サム・コリンズ

2011年欧州クラブ杯
A.ギリ – B.トールフィンソン
対称イギリス布局

1.Nf3 Nf6 2.c4 c5 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.O-O e6 6.Nc3 Be7 7.d4 cxd4 8.Qxd4 d6 9.Bg5 a6 10.Bxf6 Bxf6 11.Qf4

 これはちょっと苦い思い出のある戦型である。2009年日本での「新潟親善大会」で小島慎也選手にこの手を指されて意表をつかれたことがあった。なんとか序盤をうまく切り抜けて勝ちを収めた。優勝賞品は自転車だった。トールフィンソンの防御陣形はかなり危なっかしい。

11…Qc7 12.Rfd1 Ke7

 キングがこの位置で落ち着いていられるほど局面は単純化していない。

13.Ng5 Bxg2 14.Kxg2 Nc6 15.Nce4 Rad8 16.Nxf6 gxf6 17.Ne4 f5 18.Qh4+ Ke8 19.Nf6+ Kf8 20.e4!

 もちろん白は缶切りを持ち出して黒陣を切り崩す。

20…Ne5 21.exf5 Qxc4??

 このポカはh6でのチェックでもっとひどくとっちめることができた(ギリのやり方でも十分であるが)。しかし黒はいずれにしても局面に満足なところはほとんどなかった。

22.Rd4 Qe2 23.Nxh7+ Ke8 24.Nf6+ Ke7 25.Nd5+ 1-0

 25…Kd7 26.Qe7+ Kc6 27.Qc7+ Kb5 28.Qxb6#

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(この号終わり)

2012年01月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(159)

「The British Chess Magazine」2010年11月号(1/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

団体戦における監督の役割

 最近団体戦におけるチーム監督の役割に関する質疑があった。ほとんどのクラブでチーム監督を選ぶのは車を持ってるから、あるいは脅して必要な人数を集める能力があるからである。このことでクラブを責めることはできない。しかし審判のいない試合でもめごとが起きたときはどうなるだろうか。それは明らかにその団体独自の規則による。しかし多くの者はチーム監督たちが連係して審判を務めるべきだと提唱している。私には管理を行なう大会幹事と残りを行なうチーム監督の両方をクラブが任命するのが妥当だと思える。経験を積んだ地元の審判を主催者が招いてチーム監督の「べしべからず集」の講習会を夕方に開催することも推奨したい。

 大会ごとに違うが一般にチーム監督の仕事をあげると次のようになる。

 ● チームを編成する。

 ● チームのメンバー表を相手チームと交換する。

 ● 結果を指定時間内に主催者に報告する。

 ● 持ち時間、ケータイに関する規則など大会独自の規則をチームメンバーに周知する。

 ● チームの結果の状況をチーム内に助言する。

 最後の項目を補足すると、監督は通常はチームのメンバーに引き分けの提案をするか受諾するか、または投了することを勧告する資格がある。これは対戦に関する状況にだけ基づいて、簡潔な情報だけを与えなければならない。対局中に口を出したりしてはならず、局面に関する情報も選手に与えてならないことはもちろんである。選手に伝えてよいのは「引き分けを提案しろ」、「引き分けを受諾しろ」または「投了しろ」である。例えばある選手から引き分け提案を受諾すべきかどうか聞かれた場合、監督は「そうしろ」、「そうするな」またはその選手にまかせると答えるべきである。大会規則は監督から会話を始めることを禁じているかもしれない。もっともチームの現在の成績を選手に伝えてその選手がヒントにするのを期待するのは許されているかもしれない。

 大会規則で当該選手の承諾なしに監督が結果に合意するのを許すのは考えられない。監督同士が対戦の終わり頃に結果のやり取りをするのはいかにやりたくて仕方のないことかもしれないけれども、通常は当該選手たちの同意がなければひんしゅくを買う。

 『監督は通常はチームのメンバーに引き分けの提案をするか受諾することを勧告する資格がある。』

 大会に指しかけまたは判定がある場合、選手は監督が交渉する機会を得るまで結果に同意しないのが賢明である。

 以前に私のクラブが障害者を多く抱えるクラブと対戦したことがあった。このチームは全試合を自分たちの地元で対戦していた。1日目の終わりで指しかけが3局あった。相手側は指し継ぐべきだとうるさかった。しかし正式にはこちらの地元でやるべき対戦でありその3人の選手は全員健常者だから我々の所に来るべきだとこちらの監督に指摘したとき、すぐに結果が合意された!!

 しかしどの監督でもいつか直面することが一つある。それはFIDEのチェス規約の10.2項と付則Dによる残り2分での引き分けの申し立てである。もしこれらを大会主催者に送らなければならないと通常は手数料が課される。ほとんどのクラブの会計では時たまの「もめごとの結果」を超えるようなことを歓迎しない。だから結果に合意したりあとくされのないように解決するのはチーム監督の手腕にかかってくる。

 大会の選手のために言えばできるだけ早い段階で申し立てするのが賢明かもしれない。それによって(長い)手順によって自分のやっていることが分かっていることを示す豊富な機会が得られる。しかし審判のいない団体戦では試合は申し立てが成されるとすぐに終わる。だから申し立てはできるだけ遅くすべきである。

 持ち時間の最後の2分で申し立てをするのは良い慣習である。このようにして引き分けを申し立てる前にまず相手に引き分けを提案するならば時間を大いに節約しみんなの(監督も含めて)手間を省くことになるかもしれない。

 『審判のいない団体戦では試合は10.2項による申し立てが成されるとすぐに終わる。』

 引き分けを申し立てる選手はその根拠を明らかにすべきである。規約による「唯一の」正当な根拠は(a)相手が通常の手段によって勝てないこと、かつ/または(b)相手が通常の手段によって勝つための努力を何もしていないこと、である。局面が最善の手順でも引き分けになること、または局面が理論的に引き分けであることという根拠だけで申し立てをするのは認められないしすべきでない。

 かつてある選手が交換得で持ち時間が13分残っていて引き分けを申し立てるのを目撃した。残り2分になるまで申し立てできないと言われて彼は両隣の選手たちから指し続けるように促されたにもかかわらず何もしないで座っていた。彼の言い分は勝勢なので引き分けを与えられるべきだというものだった。相手は反撃策があるので引き分けにしたくないと主張した。もちろん相手の勝ちが宣告された。おそらく勝ちの局面だったにもかかわらず、その選手はその局面でどう指したらよいか分かっているということを示さなかった。実際彼の(不)作為は彼がどう指したらよいか分かっていないことを示していた。この選手がどういう動機でこういう行為をとったのかはちょっとした謎のままである。

 『局面が最善の手順でも引き分けになること、または局面が理論的に引き分けであることという根拠だけで申し立てをするのは認められない。』

 相手が通常の手段により勝つことができないからという申し立てに対し引き分けが認められる理由は次のとおりである。

 (i) 申し立てをした選手の方が明らかに優勢で、相手は勝てるかもしれない反撃を行なう実際的な手段がないこと。

 (ii) 局面が引き分けになることが確かであること。

 (iii) 互角か戦力の劣る局面で引き分けを申し立てた選手がどのように引き分けにするかを完全に理解していることをはっきりと説明したこと。

 相手が通常の手段により勝とうとしてこなかったという根拠に基づく申し立てに対し引き分けを認める妥当な理由は次のとおりである。

 (i) 相手が勝とうとする姿勢を見せず、時間で勝とうとして単に駒を往復させるだけで何の進展も図らなかったこと。

 (ii) 持ち時間が2分未満の選手からの引き分けの申し出を断ってから、その相手が明らかに不利な局面にもかかわらず反撃を図ろうとしてこなかったこと。

 「2分規則」のもとでなされた引き分けの申し出を重要と考える理由のこの実例一覧を吟味すると、上記(b)の申し出の理由のすべてを含め上述のうちのいくつかは清書した棋譜またはそれに替わり得る証拠によって実証しなければならないことは明らかである。

 これらの申し立ての多くが認められるかは棋譜にかかっているので、最新の棋譜をできるだけ長く保存しておくことが肝要である。8.4項では残り5分を切った選手が棋譜を取ることを止めることを認めている(例外あり)。団体戦では5分未満になっても棋譜をつけ続けるのが賢明である。

 たぶん少し賢明でないが相手の棋譜に頼ることはできる。チーム監督または指名された他の誰かがその選手のために棋譜を取ることはかまわない。助言の嫌疑を避けるために試合が終わるまで指し手も手数もその選手に見えないようにすべきである。

 合意で結果を得ようとする際に監督たちは引き分けを申し立てた選手の棋力をいくらか考慮してもよい。これは選手たちが監督より強い場合にはさらに複雑なことになるかもしれない。大まかに言うと申し立てた選手が弱いほど上記(a)の申し立てに必要な証明の基準は高くなる。監督たちは相手の筋の通った反駁と共に、申し立て者がそれを支援する口頭での弁明も考慮に入れてよい。

 チーム監督たちだけでなく当該選手たちも結果に合意できなければ、FIDE規約の付則Dに記載された手続きに従うべきである。(両選手によって確認された)申し立ての詳細、それと元々の根拠の簡潔な説明、そして棋譜や目撃者がいればその話のような(両者からの)関係資料を大会運営者に提出すべきである。両対局者が正確だと認めれば書き直した棋譜を用いてもよい。合意がなくても部分的な棋譜(例えば白の手だけの棋譜)でも判定の過程の助けとなるかもしれない。

 『団体戦では5分未満になっても棋譜をつけ続けるのが賢明である。』

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訳注 毎手時間加算方式でない場合の話のようです。

原題『Ask the Arbiter』

(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(160)

「The British Chess Magazine」2010年11月号(2/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

団体戦における監督の役割(続き)

 要点をいくつかの図を用いて説明しよう。

 この局面はちょうどルーク同士を交換したところである。手番の白が引き分けを申し立てた。自分が大会監督だとして承認するだろうかというのが問題である。

 この局面は理論的に引き分けだけれども、白はどのようにして引き分けにするのかをやってみせなければならない。もし白が申し立てたとき数秒以上時間が残っていれば、引き分けの申し立ては却下され黒の勝ちが宣告されるべきである。

 1、2秒しか残っていなければ、キングがh1の地点に向かってできるだけそこに近くとどまるということを「すぐに」白が説明することを許してもかまわない。

 白はビショップ得で、局面が閉鎖的なので引き分けを申し立てた。何手か駒の往復がかわされていれば、引き分けが認められるべきである。しかしこの局面が現れた直後ならば、黒に勝ちが宣告されるべきである。1…Na7 2.Bf3 Nb5 3.Be2 Nxa3 なら 4.bxa3 b2 で黒が勝つ可能性がある。白がきちんと守れるかもしれないけれでも、それを証明する機会を自ら放棄した。

 同じことで、黒の引き分けの申し立ても白がh5で駒を切って2ポーンを取る可能性があるので却下されるべきである。

 ここで黒が引き分けを申し立てた。ここでは棋譜が非常に重要である。この局面は理論的に引き分けである。しかしきちんと指すことは決して容易でない。

 [編集部注 確かに容易でない。GMキース・アーケルは実戦で17回この収局になって17回勝ったと私に言っている]

 理想的には黒は50手指してから引き分けを申し立てるべきである。しかし残り時間によってはそうできないかもしれない。こういう状況のときには誰かに棋譜をとってもらうのが望ましい。しかし棋譜をとる者は指した手数を黒に知らせてはならない。そして黒は時計の旗が落ちる寸前で引き分けを申し立てる。50手以上指しているなら引き分けにするのが正しい判定であることは明らかである。もし50手に達していなくて50手までに詰めることができないことが明らかならば、引き分けにするのが正しい。10手や15手くらいしか指されていないならば、黒は相手に勝つ機会を与えていないので負けにしなければならない。同じ局面が何度も現れていることが棋譜から分かるならば、やはり引き分けにすべきである。

 この局面で白が引き分けを申し立てれば自動的に引き分けを認めるべきである。しかし白はどうやっても負けにならないので、時計の旗が落ちるまで指し続けそれから引き分けを申し立てる方がはるかに賢明である。

 白が指し続けるときはもちろん次の局面のように必ずすべての可能性を完全に熟知していなければならない。

 白はいつでも引き分けを申し立てることができ、認められるべきである。しかし白が時計の旗が落ちるまで指し続けそれから引き分けを申し立てたら、黒が白キングを詰める可能性があるので却下されるべきである。これはいかに非現実的かは関係ない。合法的な手の連続によって詰めることができるということだけが重要なのである。

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訳注 毎手時間加算方式でない場合の話のようです。

(この号終わり)

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世界のチェス雑誌から(161)

「The British Chess Magazine」2011年1月号(1/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 アラン・オームズビー氏が棋譜づけの必要でない場合の毎手時間加算方式に関する興味深い質問をよこした。

 質問 マン島での地方大会は冬の間は平日の夕方に行なわれ、90分の持ち時間に毎手10秒が加算される。加算方式の採用は指し切り方式を避けられる利点があり、試合を監視する対局しない審判がいないときは特に重要である。わずか10秒の加算の採用で大多数の試合が3時間半で(午後11時までに)終わる。これに対し30秒の加算では真夜中を過ぎる試合が何局かでることがある。しかし30秒未満の加算の採用では、残り時間が5分未満になると棋譜をつける必要がなくなる(FIDE規約の第8.4項)選手によって問題が引き起こされる可能性がある。

 両対局者が棋譜をつけていなかったので、白は50手規則による引き分けを申し立てることができなかった。

 数年前マン島選手権戦で両対局者が互角の中盤戦になった。局面は非常に閉鎖的でポーン突きによる仕掛けは不可能だった。10秒加算のもとで両対局者は残り5分未満になった。白は唯一の素通し列を支配していたが、彼のルークは侵入口がなかった。局面は完全に引き分けだった。しかし対局の状況から黒はその試合に何としても勝たなければならず、白の引き分けの申し出を拒否して自分の駒を往復させて白の悪手を期待した。約50手後(何の進展もなくポーンの動きもなく駒の取りもなかった)黒はまた引き分けの申し出を拒否し駒の往復を続けた。両対局者は棋譜をつけていなかったので白はFIDE規約9.3項によって必要とされる50手規則での引き分けを申し立てられなかった。

 私の質問は次の2点である。

 1.上記の状況で両対局者が棋譜をつけるのをやめてから審判が手を記録し、ポーンの動きも駒の取りもなく50手以上が指されているのを確認したら、この審判は試合に介入して引き分けであることを宣言すべきだったか?

 2.黒の行為は試合を汚す(FIDE規約12.1項)ことにならないか?

 回答 審判はこのような状況に介入すべきでない。ポーンの動きや駒の取りがなく50手以上経過すれば自動的に引き分けになると考えている人が多い。これは正しくない。選手は引き分けを申し立てなければならない。選手が審判のところに行って、千日手か「50手規則」によって引き分けを申し立てたいので試合を見守るよう依頼することは許される。選手はこの行動のために時計を止めてもよい。そして審判は試合の記録に努めるべきである。

 もしこれができないならばそのときは片方の指し手を記録すべきである。これもできないならば最後の手段として指を折って手数を数えるべきである。スチュアート・ルーベンは審判が最後の二つの手段に頼らなければならないならば1手か2手多く指すべきだと提唱している。私なら白と黒の手が2、3度重複して数えられても確かに50手以上になるように、あえて55手まで数えるかもしれない。

 ポーンの動きや駒の取りがなく50手以上経過すれば試合は自動的に引き分けになると考えている人が多い。これは正しくない。

 黒は何も不正なことをしていない。引き分けの申し立てを受けるのがまともではあるけれども、黒のやったことは試合を汚したとまでは言えない。しかし審判に訴えが行なわれ審判が何もしなかったなら、審判が試合を汚したとみなされても仕方がない。私なら両対局者がそれ以上審判の介入がなくても結果に合意することを期待する。これが似たような状況での私の経験である。

 ところで、試合は白がまた引き分けの申し出を拒否されたあとそれ以上指すことを拒絶し口論になった。あげくは運営委員会で紛争を解決することになったが、それはまた別の話である。

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(この号続く)

2012年02月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(162)

「The British Chess Magazine」2011年1月号(2/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 ジョージ・スポールディング氏の質問。

 質問 出来事を起こった順序に正確に記すと次のとおりである。

 (1)両選手とも残り時間が5分を切っていて黒の方が少なかった。

 (2)この段階で最後のポーンが盤上から消えて、両選手ともキングとルークだけになった。

 (3)引き分けの申し立ては行なわれなかった。

 (4)そして黒の旗が落ちた。

 (5)それから白が黒の時間切れによる自分の勝ちを主張した。

 (6)黒はルーク対ルークは引き分けにしかならない(ルークは素抜きなどで取られる態勢にはなっていない)という理由で引き分けを主張し反論した。

 どうすべきか。

 回答 引き分けの申し立てが行なわれていないので白の勝ちを宣告すべきである。10.2項は引き分けが認められるためには残り時間が2分を切ったときに申し立てなければならないと規定している。引き分けの申し立てが行なわれていれば引き分けになる可能性が最も大きいが、自動的に引き分けになるわけではない。

 10.2項は引き分けが認められるためには残り時間が2分を切ったときに申し立てなければならないと規定している。

 審判はその選手が素抜きに会わないことを確認するために少し指させてみるのが良いかもしれない。

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世界のチェス雑誌から(163)

「Europe Echecs」2012年1月号(1/2)

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世界少年少女チェス選手権戦

 大きな試合会場

 記 ロミュアル・ドラバカ(フランスチェス連盟コーチ)

 2011年はフランスにとって何のメダルも獲得できない年になる。欧州チェス選手権戦に次いでフランス代表の子どもたちがブラジルから目的を果たせずに帰国した。

 大きな大会の世界少年少女チェス選手権戦が11月18日から26日までカルダス・ノバスで開催された。この温泉リゾート地は首都ブラジリアの南230キロに位置している。当初はリオデジャネイロで開催の予定だったが、2014年の世界サッカー大会と2016年のオリンピック競技会に備えてブラジルの巨大都市で行なわれている重要な工事を理由に最終的に変更された。

 フランスのミニ選手団
 フランスチェス連盟はフランスでの称号保持者しか派遣しないと例外的に決めていた。少数の辞退者があって選手団は最終的に9人になった(少年4人と少女5人)。それに連盟から3人のコーチ(パベル・トレグボフ、ジャン=ノエル・リフ、それに私)が同行した。団長はジャン=パプティスト・ミュロンが務めた。飛行機をサンパウロで乗り換えて約30時間の長旅のあと、大平原でのバスの「小」故障もあったが少人数の一行は無事到着した。そして我々のホテルのちょうど目の前に巨大な水上公園をまのあたりにしたときはちょっとした驚きだった。

 期待の星のビレルとセシル
 我々のメダルへの期待は当然ビレル・ベラセーヌとセシル・オセルノにかかっていた。二人とも14歳未満である。それに8歳以下の「混合」部門にはアルベール・トマシがいた。残念ながらトマシは大会の初めでつまづき(0.5/2)、奮闘したにもかかわらずコルシカの期待の星は優勝争いに加わることができなかった。彼は先日の欧州選手権戦では好成績を残していた。すぐに潜在能力を発揮するのは間違いない。ビレルは大会半ばでは 4.5/5 で自分の部門の首位にいた。セシルは 4/5 の8位で首位とちょうど1点差だった。

 ゴリャーチキナが9戦9勝

 期待は高かった。しかしセシルは6回戦から8回戦で 0.5/3 で大失速した。それからは首位争いにからめなかった。彼女の部門は 9/9 でパーフェクトを達成したロシアのアレクサンドラ・ゴリャーチキナの独壇場だった。次の試合は彼女の才能の一例である。

解説 ロミュアル・ドラバカ(フランスチェス連盟コーチ)


アレクサンドラ・ゴリャーチキナ、欧州と2011年世界のチャンピオン

A.ゴリャーチキナ – S.ハデマルシャリー
后印防御 [E17]
14歳以下女子
カルダス・ノバス、2011年、第5回戦

 この試合は14歳以下の部門での首位のアレクサンドラ・ゴリャーチキナと2位のイランのサラサダト・ハデマルシャリーとの対決である。

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6 4.g3

 このロシアの少女は堅実で古くからある定跡を常用している。

4…Bb7 5.Bg2 Be7 6.Nc3 Ne4 7.Bd2

 この手の主要な目的は二重ポーンができるのを避けることである。

7…O-O

 7…Bf6 という手もあり、カルポフがよく指していた。

8.d5!

 これはこの戦型での主眼の手で、b7のビショップの利き筋を遮断し自陣を広げ中央の黒のナイトを不安定にすることを狙っている。

8…exd5

 ナイトを安定させる 8…f5 の方がよく指されている。

9.cxd5 Nxd2 10.Qxd2

 ナイトとビショップの交換になって白が陣地の広さで優位に立っている。b7のビショップが閉じ込められた。

10…Re8 11.O-O Bf6 12.Rac1

 ゴリャーチキナは落ち着いて展開を続け、駒を自然な地点に配置した。

12…c5

 ポーンの形はべノニ防御を思い起こさせる。白は中央で多数派ポーンで、黒はクイーン翼で多数派ポーンになっている。

13.Rfe1 d6 14.Rcd1

 ロシア少女は多数派ポーンの背後に両ルークを配置した。

14…a6 15.a4

 白は黒の多数派ポーンの前進を阻止した。

15…Nd7 16.Qc2!

 この陣形における白のナイトの理想の地点は多くの場合c4である。そこからはd6の弱点と、多数派ポーンの進攻地点のe5とをにらむことができる。そこでゴリャーチキナはf3のナイトのためにd2の地点を空けた。

16…g6 17.Nd2 Qc7 18.Nc4 Rab8

 黒は …b6-b5 と突く用意をした。

19.Bh3

 次に Bxd7 からb6のポーンを取る手がある。

19…Bc8 20.Ne4

 黒はd6の弱点をもう少し守る必要がでてきた。そのため黒枡ビショップは対角斜筋から去らなければならない。

20…Be7

21.Qc3?!

 一見当然のように見える。白は対角斜筋を支配した。しかし実際には黒が主導権を握ることができる。ここでは 21.Ra1!? と指して …b5 突きを防ぐのが面白かった。その手に対しては 22.axb5 から Na5! がある。

21…f5! 22.Ne3 Ne5

 22…fxe4?? は 23.Be6+ Kf8 24.Qh8# で頓死する。最善手は 22…b5! 23.axb5 axb5 24.Nd2 Bf6 で、急に黒駒が活気づく。

23.Nd2 Bf6 24.Qc2 f4?!

 この手は意味もなくe4の地点を放棄した。黒はまだ 24…b5! と突かなければならなかった。

25.Ne4!

25…Bg7 26.Bxc8 Rbxc8 27.gxf4

 白がはっきり優勢である。白がポーン得で黒のナイトがあまりぱっとしない地点に押し返される。

27…Nf7 28.f5 Qe7 29.Ng3 Qg5 30.fxg6 hxg6

31.Ng2

 31.h4! Qh6 32.Kg2 のあと Rh1 から h5 がチェスソフトの示す危なげのない手順である。

31…Qf6 32.b3 Ng5

 この手は …Nh3+ を狙っている。

33.f3 b5 34.axb5 axb5 35.h4!

 時間切迫の中で指されたこの手は黒の反撃の芽を摘み取る好手である。

35…Nh3+ 36.Kh2 Nf4

 代わりに 36…Nf2 は 37.Rb1! から Rf1 で無謀にも白陣に跳びこんだかわいそうなナイトが召し取られる。

37.Nxf4 Qxf4 38.Qxg6

 黒キングは今や非常に薄くなり、白のクイーンとナイトの協力体制にしてやられる恐れがある。

38…Re5

 38…Qxh4+ は 39.Kg2 のあと Nf5 から Rh1 で黒に適当な手がない。

39.Qg4

 39.Kh3! ならすぐに決まっていた。

39…Qf8?

 39…Rf8 の方が頑強な抵抗だった。それでも釘付けをはずす 40.Kh3 で白があまり苦労なく勝ちそうである。

40.Nh5

40…Kh8?? 1-0

 40手目でついにポカが出た。黒は 41.Nxg7 で駒損になるのを待たずに投了した。優勝候補の2選手の熱戦だった。ゴリャーチキナは時間切迫で生じた混戦の中で何事にも動じず優れた戦略の理解を見せつけた。要するにこれこそ世界チャンピオンの資質である。

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(この号続く)>

2012年02月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(164)

「Europe Echecs」2012年1月号(2/2)

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世界少年少女チェス選手権戦(続き)

中心となる新兵

 というしだいでビレルだけが入賞さらには優勝の可能性を維持していた。彼の実力は比較的高いほうだが参加部門の最上位者たちとは似たり寄ったりだった。しかしアルザス出身の少年は最後の2回戦で優勢な局面を得ながら崩れてしまった(0/2)。彼の世界チャンピオンになるという夢は消えてしまった。ビレルの潜在力は私の考えでは果てしない。勝負所で自分を制御できるようになればきっと表彰台の中央が彼に約束されるだろう。こういうわけで「小さな新兵たち」は獲物なしで帰ってくる。しかし皆それほど落ち込んでいなかった。アリエル・ル・バーユとロクサナ・ユグはレイティングをたくさんフランスに持ち帰った。

2011年の総決算はメダルゼロ

 フランスチェス連盟は今から既に具体的な準備と選抜選手の個人ごとの追跡を計画すると発表した。その目的は2012年のプラハでの次回ヨーロッパ選手権戦とマリボルでの次回世界選手権戦までに年少の代表選手たちが上達できるようにすることである。


14歳以下の部門で16位だったビレル・ベラセーヌ(左)


日本の国旗を掲げて


試合会場の小さなチャンピオンたち


ブラジルの国旗をつけて

名前              国         レイティング
S.アフラロ          フランス     2090
B.ベラセーヌ        フランス     2311
B.ド・タランス        フランス     2003
L.ディ・ニコラントニオ   フランス     2321
A.ゴリャチキナ       ロシア      2313
C.オセルノ          フランス     2100
R.ユグ            フランス     1510
S.ハデマルシャリエ    イラン      2215
A.ル・バーユ        フランス     1847
C.メニエ           フランス     1874
A.トマシ           フランス     1626
M.L.サリンベン      アルゼンチン  1732

解説 セシール・オセルノ(女流FIDEマスター)

C.オセルノ – M.L.サリンベン
フランス防御 [C11]
14歳以下女子
カルダス・ノバス、2011年、第1回戦

 これは第1回戦の試合である。相手は国際大会に出るのが初めてだった。だから彼女の試合の情報はほとんどなかった。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5

 戦型はシュタイニッツ防御になった。

4…Nfd7 5.f4 c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3 a6 8.Qd2 b5 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 12.Bd3

12…h6

 相手がごく最近指した1試合は知っていて、…h6 と突かずにキング翼にキャッスリングしていた。その対戦相手はビショップをh7で切ってすべての駒で黒キングを攻撃した。だからきっと同じ目に遭うことを恐れてこの無駄手を指したのだろう。定跡は 12…b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6 15.f5 である。

13.O-O O-O 14.Ne2 Bb7 15.Ned4 Nd7

 15…Ne4 16.Qe3 は形勢互角である。

16.Kh1

 この手は釘づけをはずしいずれ Nxc6 でナイト同士を交換する際に …Qxf2+ という手を与えないようにするためである。白はキングがh1にいるので …Qxf2 がチェックにならず Rxf2 でクイーンを取る前に Ne7+ と指すことができ駒得になる。すぐに 16.Nxc6 と取ってもよく 16…Bxc6 17.Qxb6 Nxb6 18.Nd4 となる。

16…Nxd4 17.Nxd4 Qc7 18.Rae1

 e5のポーンを守っておけば安心して f5 と突くことができる。

18…Rac8 19.Qg3 Qc5

 19…Qb6 の方が良かった。

20.c3

20…b4?!

 黒は白の f5 突きからの攻撃を緩和するためにクイーンをキング翼に転回させるべきだった。20…Qe7 21.f5 Qg5 22.Qh3 Nc5 23.fxe6 Nxd3 24.Qxd3 fxe6 25.Nxe6 Rxf1+ 26.Rxf1 Qe7 27.Qg6

で白が優勢だが仕方ない。

21.f5 Rfe8

 21…bxc3 なら白はポーンを取り返す必要はない。代わりに 22.fxe6 Qxd4 23.exd7 Rcd8 24.e6 fxe6 25.bxc3 Rxf1+ 26.Rxf1 Qb6(26…Qxc3 は 27.Bh7+ でクイーンを素抜かれる)27.Qg6

で Qh7# がある。

22.f6

 二人とも残り時間はほとんど同じくらいでそれぞれ1時間ほどだった。ここでは 22.fxe6 fxe6 23.Qg6 Nf8 24.Rxf8+ Qxf8 25.Qh7+ Kf7 26.Rf1+ Ke7 27.Rxf8

と指してもよかった。

22…Qf8

 22…g5 は 23.h4 Qf8 24.hxg5 で負ける。また 22…g6 は 23.Bxg6 fxg6 24.Qxg6+ Kh8 25.Qg7# で負ける。

23.Rf4 Kh8 24.fxg7+ Qxg7 25.Rg4 Qf8 26.cxb4

26…Re7

 26…Qxb4 なら 27.Rh4 Qd2 28.Nf3 で黒クイーンがもうh6のポーンを守れない。

27.Qf4 f6

 27…f5 は 28.Rg6 Rce8 29.Rxh6+ Rh7 30.Rxe6 Rxe6 31.Nxe6

で負ける。

28.Rg6 fxe5 29.Rxh6+ Kg8 30.Qg4+ Rg7

 30…Qg7 は 31.Rg6 Nf8 32.Nxe6 Nxe6 33.Rxg7+

で白が勝つ。

31.Bh7+ Kh8 32.Bf5+ 1-0

 これで即詰みになる。初戦を飾れて非常にうれしかった。

フランスの成績

 フランスの9選手は誰もそれぞれの部門で10位以内に入れなかった。セシール・オセルノは開始順位3位、アルベール・トマシは開始順位9位、そしてビレル・ベラセーヌは開始順位11位だった。18歳以下の部門で開始順位50位だったアリエル・ル・バーユは最後は27位だった。開始順位56位のロクサナ・ユグは55位に終わったにもかかわらずレイティングが約31点上がった。

8歳以下男子/女子
アルベール・トマシ      26位 5.5点/9回戦
ベレニス・ド・タランス     28位 4.5点
12歳以下男子/女子
クレマン・メニエ        39位 5.5点
ロクサナ・ユグ         55位 4点
14歳以下男子/女子
ビレル・ベラセーヌ      16位 6点
セシール・オセルノ      18位 5.5点
16歳以下女子
ソフィー・アフラロ       30位 5点
18歳以下男子/女子
リュカ・ディ・ニコラントニオ 31位 5.5点
アリエル・ル・バーユ     27位 5点

メダル一覧と入賞国

 国別順位の第1基準は優勝者すなわち金メダルの総数で、メダルの総数ではない。だからインドでなくカザフスタンが2位になる。9カ国が少なくとも1個の金メダルを獲得した。ロシア3個、カザフスタン2個、インド1個、ペルー1個、米国1個、中国1個、グルジア1個、アルメニア1個、ベラルーシ1個。フランスと同様に西欧のどの国も1個の金メダルも獲得できなかった。

1位 ロシア      金3個、銀4個
2位 カザフスタン  金2個、銅1個
3位 インド      金1個、銀1個、銅3個

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(この号終わり)

2012年03月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(165)

「New in Chess」2012年第8号(1/1)

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ホウ・イーファンがタイトル防衛

 ほとんど一方的ともいえる驚きの結果で女流世界チャンピオンのホウ・イーファンがインドの挑戦者ハンピー・コネルを相手にタイトルを防衛した。アルバニアの首都のティラナで中国の17歳の選手権者は少しだけレイティングの高い相手にまったく危なげなかった。第3、6、7局に勝って10番勝負の8局目で早々と決着させた。そのため両選手は来賓で元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフによる大統領宮殿での授賞式まで1週間も滞在を続けなければならなかった。ホウ・イーファンはティラナでの思いがけない自由時間の一部を快く割いて、気に入っている試合を我々のために解説してくれた。


女流世界選手権を連覇したホウ・イーファンがFIDE会長のキルサン・イリュームジノフ、来賓のミハイル・ゴルバチョフ、そして熱心に応援してくれる母と共に記者団の前でポーズをとっている


記録を破り続けているホウ・イーファン。これまでは女流世界チャンピオンが17歳でタイトル防衛を行なったことはなかった。

解説 ホウ・イーファン 

[D38]
ハンピー・コネル
ホウ・イーファン

ティラナ、2011年、第3局

 この試合は2局引き分けが続いたあとの第3局である。この番勝負の初勝利で、気に入っている試合である。

1.d4 e6 2.c4 Nf6 3.Nf3 d5 4.Nc3 Bb4 5.cxd5 exd5 6.Bg5 h6 7.Bh4 c5 8.e3 c4

9.Be2

 ここでの主流手順は 9.Nd2 で、アレクサンドラ・コステニウクが2011年ロストフでのグランプリで私相手に指してきた。

9…g5 10.Bg3 Ne4 11.Rc1 Qa5

12.Ne5!

 これはべセリン・トパロフ創案の強手である。白がキャッスリングを先にすると次のように永久チェックになるかもしれない。12.O-O Bxc3 13.bxc3 Nxc3 14.Rxc3 Qxc3 15.Ne5 O-O 16.Bh5 Be6 17.Bg6 Nd7 18.Nxd7 Bxd7 19.Qh5 Rae8 20.Qxh6 fxg6 21.Qxg6+

12…Bxc3+ 13.bxc3 Nc6 14.O-O

14…O-O

 これは面白い新手である。対局中私は以前に 14…Nxc3?! が何回か指されたことがあることを思い出していた。しかし黒にとって危険そうである。例えば 15.Rxc3 Qxc3 16.Bh5 O-O 17.Qf3 Kg7 18.Qxd5 Be6 19.Qe4

黒は交換得だが白には代償が十分にある。黒キングは薄いし、白の小駒はすべてキング翼攻撃に加わっている。

15.Bf3!

 この手は研究の成果である。今回ハンピーの布局の準備は本当に素晴しかったし充実していた。そのため私は序盤に多くの時間を割くことを強いられた。

15…Nxg3 16.fxg3 Nxe5

 この手が急所である。他には e4 突きを防ぐ 16…f5 や 16…Be6 17.Bh5 Qxa2 18.Rf6 がある。

17.dxe5 Be6 18.Bh5

18…Qxa2

 黒にはこれより他に良い選択肢はない。キング翼はもう弱体化しているので反撃に出る時機である。安全策は次のように功を奏さない。18…b5 19.Rf6 Kg7 20.Qf3 Qc7 21.Rf1 Qxe5

22.h3!(22.Bxf7 は 22…g4! 23.Qf2 Bxf7 24.Rxf7+ Rxf7 25.Qxf7+ Kh8 で白は何もでかしていない)22…Qc7 これで黒は1ポーン得しているけれどもただ待っているしかなくその間白は陣形を強化する。

19.Rf6 Qb2!

 これは強情な手である。対局中私はこの局面に非常に不安を感じていた。そのためここでほぼ30分も時間を費やした。最初に考えたのは次のような作戦だった。h6のポーンを守り、クイーンをc7の地点に戻してe5のポーンを攻撃するとともに自陣の2段目を守る。しかし白に Qf3 から Rf1 を許してすべての駒でf7の地点を攻撃させると、次のように黒は苦戦に陥る。19…Qa5 20.Qf3 Qc7 21.Rf1 Qxe5 22.Bxf7+ Bxf7 23.Rxf7 Rxf7 24.Qxf7+ Kh8 25.h3

20.Rxh6?!

 これは最も自然な手である。ここでは両者とも次の強力な作戦を見落としていた。20.h4!(この手はg5のポーンを弱め、白キングに安全な所を作ってあとで適当なときにクイーンをキング翼に向かわせるためである)20…Kg7 21.Kh2 Rae8 22.Rc2

白の攻撃が強力である。

 20.Rc2 は 20…Qb6 21.Qd2 Qc7 22.Qd4 Qb6 で互角の形勢である。

20…Bf5

 これが 19…Qb2 の眼目の狙いだった。ビショップをh7-b1の斜筋に移し、ルークをe8に回して重要なe5のポーンを取る。白のルークとビショップがこの着想を防ぐのは容易でない。

21.Rf6

 21.Bf3 も面白い着想で 21…Bg6 22.h4!(他の手だとルークを取られるので絶対手である)22…Rae8 23.Kh2 Rxe5 24.Qd4 Rfe8 25.hxg5! Qxc1 26.Qh4 Kg7 27.Rxg6+

となれば永久チェックがかかる。

21…Be4

 たぶん次のようにビショップをすぐにd3まで進ませた方が良かっただろう。21…Bd3 22.e4!(22.Rf2 Qb6)22…dxe4 23.Rf2 Qb6 24.Qg4 Qe3 25.Rcf1! Bxf1 26.Qf5 Be2 27.Bxf7+ Rxf7 28.Qxf7+

22.Bf3?!

 正着は 22.Rf2 だった。例えば 22…Qb6 23.Qd2 Rae8 24.Rcf1 Rxe5 25.Rf6 Qc5 26.Qf2

となれば、黒はe5のポーンを取ったが次のように白駒の方が働きが良い。26…Bd3 27.Bxf7+ Rxf7 28.Rxf7 Bxf1 29.h3! Qxe3 30.Rf8+ これで引き分けになる。

22…Bd3

23.Qe1?!

 ハンピーはこの手に30分以上考えた。実際白のしのぎは容易でない。例えば 23.h4 なら 23…Rae8 24.Bxd5 Rxe5 25.e4 Kg7 26.Rf2 Qb6 となってd3のビショップが非常に強く重要なf1の地点を押さえていて黒が少し優勢な局面になる。

23…Rae8 24.Bxd5 Rxe5 25.e4

25…Kg7?!

 これは普通の手である。対局後の記者会見でコンピュータは私が対局中に見逃した強手を見つけた。25…Rd8! 26.Rf2 Qb6 27.Bxf7+ Kg7 28.h3 Rxe4 29.Qd2 Qc5 30.Kh2 Rf8

これで黒がビショップを取ってはっきり勝勢になる。

26.Rf2 Qb6 27.Qd2

 他の手ではすぐに負けになる。例えば 27.Kh1 なら 27…f5、27.g4 なら 27…Rd8 である。

27…Rd8 28.Qb2

 ここで相手は数分しか残っていないのにまだ12手も指さなければならなかった。彼女はひどい時間切迫にもかかわらず最善手を見つけてきた。代わりに 28.Kh1 なら 28…Bxe4 29.Rxf7+ Kh8 でビショップが取られる。

28…f5

 この手が最も簡明である。他には 28…Qe3もあり 29.h3(29.Kh1 なら 29…Rd7 30.Rf3 Qe2 31.Qxe2 Bxe2 32.Rf2 Bd3)29…Bxe4 30.Bxe4 Qxe4 となってやはり黒が優勢である。

29.Qxb6 axb6 30.Bxb7 fxe4 31.Rb2?

 これが最後の悪手でたちまち負けに直結した。ここでの最善は 31.Ra2 で、黒は 31…g4! で重要なf3の地点を支配し明らかに優勢である。

31…Re7!

 この手はビショップをa8-h1の斜筋から追い払い、黒がeポーンを突いたときにこのビショップがf3の地点に下がれないようにするためである。

32.Bc6 Rd6 33.Ba4 e3

 このパスポーンで勝ちが見えた。

34.Re1 e2 35.Bc2 Rf7 36.Bxd3 cxd3 37.Rd2 Rdf6 白投了

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(この号終わり)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(166)

「Chess」2012年2月号(1/1)

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次の一手

第8問 池田惇多 – L.マセソン
オーストラリア、2011年
白の手番

解答
1.Ng6+! hxg6 2.Qh6+ Rh7 3.Rf8+! 1-0 3…Rxf8 4.Qxf8#

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 これはレイティング1500-1800の問題です。制限時間は特に指定されていません。

(この号終わり)

世界のチェス雑誌から(167)

「The British Chess Magazine」2011年7月号(1/1)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 カザンでの挑戦者決定競技会におけるクラムニク対ラジャーボフのブリッツによる決定戦で起きた対局時計の故障に関連した質問をいくつか受けた。

時計が故障したらどうなるのか

 チェスの規則はきわめて明快で、審判が証拠となるものはすべて用いて可能な限り適切な時間に時計を設定し直して試合を続行することになっている。

 『6.10a 明らかな不具合がなければ時計に表示されているものはすべて正しいとみなされる。明らかに不具合のある対局時計は交換しなければならない。審判は時計を交換し、代わりの時計に設定する時間を決める際には最善の判断を行なう。』

 通常は対局者は問題が発生する前に時計の表示をほぼ覚えていて、認識に大きな違いがなければ適切に折り合いがつけられる。特別な状況では対局者同士で経過した時間を折半しなければならないかもしれない。上述の試合では、最初は試合を見守っていた審判によって記憶に基づいて時計が再設定された。しかしロシア語の大会規則を探している間にまた時間が経過した。この間にビデオおよび/または実況中継から正確な時間が判明し代わりの時計に設定された。面白いのはサッカーで判定に機器の使用が議論されているこの時代に、対局再開に手間取ったのでかろうじてビデオの証拠が用いられたことである。

 チェスではビデオの証拠を採用すべきだろうか。ブリッツ試合や時間がほとんどなくて多くの手数を指さなければならないときには、時計が試合の結果にかなりの役割を果たす。そのような状況では問題が起こったかどうかを決めるために時計を止めることは試合の流れを大きく乱してしまい、私の考えでは行なうべきではない。よくあるようにビデオの証拠はあまりはっきりしたものでない状況では特に間違ったやり方である(例えば1966年のFIFAワールドカップ決勝ではいまだに議論になっている)。大会では「タッチムーブ」や駒を動かす前に別の駒に触ったかについて争いになることがある。伸ばした手が審判の視界をさえぎることはよくあり、駒に本当に触れたか手がすぐそばまでいっただけかを判定するのは無理である。審判が確信がある場合だけ介入すべきである。そのような場合カメラがかなり異なった角度から撮影しているのでなければ、ビデオでも違反行為を確認することはできない可能性が高い。これは私の経験だが、相手選手が申し立てをしたら私がそれを支持しただろうが、私の方から介入するほどの確信はなかったことがある。同様に「タッチムーブ」の申し立てを自信を持って却下したことがあった。そのときは駒に触っていないことに確信があり、相手がそう思った理由についても分かっていた。私は申し立てがなされたらビデオを証拠として用いる可能性を排除しない。裁定委員会はすべての証拠を考慮する時間があるのが普通でそれに基づいて判断を下す。時計の問題に戻るとリバプールでの英国選手権戦で火災報知器が鳴ったとき愚かにも時計を止めて建物から非難するようにアナウンスした。2試合の選手たちがそれに従ったが時計の設定をし忘れて建物から離れた。もしもう一度火災報知器が鳴るか停電したら今度は時計を一時停止にするように言うだろう。

 この場合に該当する規則は6.13項である。不測の事態が起こっておよび/または駒を元の状態に戻さなければならない場合は、審判は最善の判断を尽くして時計の時間を決めなければならない。必要ならば時計の手数表示も調整しなければならない。

 時計が一時停止になっていなければ審判は中断時間を動いている時計から引かなければならない。問題のあった場合の一つでは一方の対局者が2、3手ごとに時間を記録していた。そこで審判はこれを使って時間の算定をした。他の停止された時計では両対局者がおよその時間に同意した。両対局者が合意できなかったら、両対局者とできれば隣の対局者の証言に基づいて時間を決める必要がある。幸いにもこの試合中断は対局の非常に早い段階だったので、時計の設定はもっと遅い段階で起こった場合よりも深刻でなかった。

 別の時計の問題はこうだった。規定手数に達しかどうかというちょっとした問題の生じた試合に呼ばれたことがある。両対局者は黒が必要な手数に達したことには同意していた。しかし白は先手がもう1手指さなければならないと主張していた。私はちょっといたずらっぽくどちらが初手を指したのかと聞いた。白はためらうことなく自分だと言った。それから私はどの時点で黒が2手連続して指したのかと聞いた。白は最初は当惑しそれからすぐに赤面して平謝りに謝った。

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(この号終わり)

2012年03月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(168)

「Chess Life」2012年2月号(1/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦

エイワンダーが金メダル、ルイフェン・リーが銀メダルを獲得

GMジョン・フェドロウィッツ

 初めて世界少年少女チェス選手権戦が南米で開催された。これまでの大会はスペイン、ギリシャ、トルコ、フランス、グルジア、それにベトナムで開催されていた。今年は11月17日から27日まで水上公園と温泉で有名なブラジルのカルダス・ノバスで行なわれた。私はアビブ・フリードマン、アルメン・アンバルツォウミアン、ゲンナジ・ザイチク、それにマイケル・コダルコフスキーと一緒に行った。

 我々は旅行でトラブルに巻き込まれないようにいつも2、3日早く出発する。JFK空港では離陸が2時間遅れて幸先の悪いスタートになった。サンパウロへ着くまでにはいくらか時間を取り戻したが接続便に間に合うのには不十分だった。サンパウロで7時間待ったあとようやくゴイアニアに到着した。そこで我々を待っていたのは小さな車だった。可哀相なアビブは後部座席に詰め込まれ我々は猛烈な土砂降りの中をカルダス・ノバスへ向けて出発した。陽気な若い運転手とはスペイン語で会話した。GMジョエル・ベンジャミンはブラジリアからカルダス・ノバスへの迎えが彼を見つけてくれずもっとひどい目にあった。疲労したグランドマスターは望まない冒険のあと本来より約10時間遅れて到着したが、ともかく無事だった。

 1年前のちょうどギリシャのハルキディキでのように過去最大の選手団となった。総勢60名以上で昨年より約20名多かった。やはり昨年のように一団は8歳以下と10歳以下(30名)とで大部分が占められ、これまでのように非常に経験の少ないチームになった。レイティングの最上位二人はエリック・ローゼン(FIDE2305)とマイケル・ビレンチュク(FIDE2219)だった。しかしそれでもメダル獲得の可能性はかなりあると思っていた。経験に富んだコーチ陣はもちろん大きな助けで、きわめて強力な一団だった。筆者と私の4人の同行者とに加えて、GMはジョエル・ベンジャミン、ニック・ド・ファーミアン、サム・パラートニク、ユーリ・シュールマン、それにIMアンドラニク・マティコジャンの支援があった。これほどのコーチ陣が来る国は想像もできない。さらにユーリ・シュールマンとショーン・スミスは「学校にチェスを」が後援したジャスタス・ウィリアムズ、ジェームズ・ブラック、ロシェル・バランタインを助けた。コーチたちは皆6名の選手を受け持ち、めいめいに20分から30分の準備時間を割り当てた。喫茶室を使わせてくれた主催者のGMダルシー・リマとテルマス・ディ・ロマ・ホテルには感謝している。コーチが10人なので大き目の部屋が必要でちょうど間に合った。我々はそこに集まって試合後の大切な分析を行なった。

 過去のチームUSAの編成のように有力なメダル争いは比較的無名の年少の子どもたちから現れた。今年も例外でなかった。ウィスコンシンのエイワンダー・リャンは8歳以下少年の部で圧勝した。出だしから7連勝をあげ1引き分けのあと最終戦でインドのラム・アラビンド.L.Nに負けた。順位判定の内容が圧倒的に良かったので最終戦を前に優勝が決まっていた。エイワンダーの試合は異なった指し方が見られる2局を選んだ。彼の第5局は大局観に基づいた指し方で、第7局は派手な戦術で勝った(相手の協力もあった)。

シチリア防御スヘーファニンゲン戦法 [B83]
エイワンダー・リャン(FIDE1872、米国)
CMマトベイ・パク(FIDE1860、ロシア)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

1.e4

 エイワンダーの快挙の中でこの試合が気に入っている。こんな年少の選手なのにカルポフのような大局観のセンスを発揮している。

1…c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Be3 Be7 7.Be2 Nc6 8.O-O O-O

9.Qd2

 ボレスラフスキー戦法の典型的な戦型は 9.f4 e5 10.Nb3 exf4 11.Bxf4 Be6 である。

9…e5?!

 このポーンは白のポーンがf4にあるなら突いてよい。それなら黒のナイトがe5の地点に来ることになる。

10.Nb3 Be6 11.Rad1

 スベシュニコフ戦法のように大局的考え方で 11.Bg5!? とかかってd5の地点を押さえる方が適切だった。

11…a5!?

 黒はこのポーンをa3まで突き進めるのがよい。

12.f3

 黒の主たる狙いは 12.a4 Nb4 で …d5 突きを加速させることである。12.a3!? なら黒のa5のポーンを減速させ局面を落ち着かせる。

12…Re8?!

 黒は建設的な作戦を見つけずに指し続けている。12…a4 13.Nc1 a3 14.b3 Nb4 なら黒の反撃が有望だった。

13.Kh1 h6?!

 黒の最善手はやはり 13…a4 14.Nc1 a3 15.b3 Nb4 だった。

14.a3!

 既に解説したように黒にポーンをa3まで突かせないようにすることが大切である。

14…a4?

 a4のポーンは容易に獲物になる。

15.Nc1 Qa5 16.Nb5

 白はクイーン交換になれば黒のa4とb6の2地点が攻撃目標になるとみている。

16…Qxd2 17.Rxd2 Red8 18.Rfd1 Ne8 19.Nc3! Bf6 20.Bb5 Nd4

21.Bxe8

 21.Bxa4!? とポーンをかすめ取ってもよさそうだが、エイワンダーは安全に指す方を選んだ。

21…Rxe8 22.N1e2 Nxe2 23.Rxe2 Bc4 24.Red2 Be7 25.Nd5 Bxd5 26.Rxd5

 ここでは明らかに白が優勢である。黒のクイーン翼は強い圧力にさらされる。

26…Rec8 27.c3 Rc6 28.Rb5 Rc7 29.Rdd5 Ra6 30.Ra5!

 黒に何の代償も与えずにポーン得になることが必至である。

30…Rcc6 31.Rxa6 Rxa6 32.Rb5 Bg5 33.Bxg5 hxg5 34.Rxb7

 あとは単なる掃討作戦である。

34…g6 35.Kg1 Kg7 36.Kf2 Kf6 37.Ke3 Ke6 38.Kd3 f5 39.c4 Ra8 40.h3 fxe4+ 41.fxe4 Rf8

42.Rg7 Kf6 43.Ra7 Rb8 44.Kc2 Rb3 45.Rxa4 Rg3 46.b4 Rxg2+ 47.Kd1 Rg3 48.b5 Rxh3 49.b6 Rh7 50.Rb4 Rb7 51.a4 g4 52.a5 Kg5 53.Ke2 Rf7 54.b7 黒投了

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(この号続く)

2012年04月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(169)

「Chess Life」2012年2月号(2/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

コーレシステム [D05]
エイワンダー・リャン(FIDE1872、米国)
チェンケル・エレン・タン(FIDE無し、トルコ)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第7回戦、2011年11月24日

 この試合はエイワンダーの7連勝目で、ほぼ優勝が確定した。

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.e3

 この局面では e2-e3 と突く前に 3.Bg5 または 3.Bf4 でビショップを出す方が良い。

3…d5 4.Bd3 c5 5.c3

 コーレシステムは人気があるが守勢の布局である。

5…Nc6 6.O-O Bd6 7.Nbd2 O-O 8.a3 b6

 黒は 8…e5!? で局面を開放するほうが少し有利である。

9.b3 Qc7 10.e4 cxd4 11.cxd4 dxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Bxe4 Bb7 14.Bb2 Ne7!

 ここまで黒は局面の要求する手を指している。d5の地点は素晴しい拠点になる。

15.Rc1 Qd7 16.Bb1!

 白がこの大切な攻撃用の駒を保存したのは正しかった。

16…Bd5 17.Qd3 f5 18.Rce1

18…Nc6

 18…Be4!? と指すと白にルークを切るかどうかという大きな決断を迫ることになる。しかし 19.Rxe4 fxe4 20.Qxe4 g6 21.Ng5 となればe6の地点が崩壊して白が大変良さそうである。

19.b4 a6 20.Bc2 Bxf3??

 これは「チェスの無知」による手筋の始まりで、駒を失い試合も失う。

21.Qxf3 Nxd4 22.Bxd4 Bxh2+ 23.Kxh2 Qxd4

 黒は「何でこうなったんだろう」と不思議に思っていたに違いない。

24.Rxe6 Rad8 25.Kg1 Rc8 26.Bb3 Kh8 27.Rfe1 h6 28.Qe3 Qb2 29.Rxh6+ gxh6 30.Qxh6#

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(この号続く)

2012年04月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(170)

「Chess Life」2012年2月号(3/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 メダルを獲得したもう一人の年少選手はルイフェン・リーだった。私は後半戦で彼と彼の父親の布局の研究を助けた。彼の体系的な勉強方法と彼のやってきたチェスベースでの研究には感心させられた。布局の体系化と勉強の意欲は彼の上達に大いに役立つことだろう。

ルイロペス/チゴーリン防御 [C96]
ルイフェン・リー(FIDE1919、米国)
エルデムダライ・ヨンドンジャムツ(FIDE無し、モンゴル)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第1回戦、2011年11月18日

 ルイフェンはこの初戦に勝ってメダル争いのスタートを切った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Be7 7.Re1 O-O

8.h3

 このいわゆる「反マーシャル」システムは黒を通常のルイロペス戦法に向けさせる良い手段である。8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 c6 12.d4 Bd6 13.Re1 Qh4 14.g3 Qh3 15.Be3 Bg4 16.Qd3 Rae8 がマーシャル攻撃の主流手順の一例である。1.e4 に対する堅実な防御を探すならこの戦法も考慮すべきである。

8…d6

 8…d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 Bb7 12.d3 は白のcポーンがc2にあって展開を妨げていないので白にとって改良形となる。

9.c3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Nc6 12.d5 Nb8

13.Nbd2

 13.a4!? ならb5を標的にできる可能性があり黒の怪しい手順につけ込むことになる。13…Bb7(13…Bd7 なら 14.axb5 Bxb5 15.Na3 Bd7 16.Nxe5! dxe5 17.d6

)14.axb5 axb5 15.Rxa8 Bxa8 16.b4 c4

が私の最も好きなルイロペスの試合の一つである1974年ニースでのカルポフ対ウンツィカー戦で、白が大局観で何もさせずに勝った。

13…Nbd7 14.Nf1 Nb6 15,b3 h6 16.Ng3 Kh7?!

 これは感覚的に引っかかる手である。黒は Bc2 からわざわざ災難を求めている。

17.Be3

 ナイトを 17.Nh2!? と引き素早く f2-f4 と突いていくのも良い手である。

17…Re8 18.Qd2 Bf8 19.Nh2 g6 20.f4!

 原則として白は黒が …Ne5 と居座らせることができないときにこのポーンを突くのが良い。

20…exf4 21.Bxf4 Bg7

 21…Nfd7 は 22.Rf1 Qe7 23.Ng4 で白の圧力が強烈である。

22.Rad1 Ng8 23.Nf3

 この手は好機の e4-e5 突きを狙っている。

23…Bb7 24.h4!

 白は黒のキング翼をばらばらにするつもりである。

24…Nf6 25.h5 Bc8 26.hxg6+ fxg6 27.Bb1 Bg4 28.Qc2

 白は e5 突きのために力をためている。

28…Nh5 29.Nxh5 Bxh5 30.Rf1 Rf8 31.Be3

31…Bxf3?

 …Bh5 が黒陣の守りの要だった。

32.gxf3 Qh4 33.Rd2 Nd7 34.Rh2 Qg3+ 35.Rg2 Qh3 36.Rh2 Qg3+ 37.Qg2

37…Qe5?

 37…Qxg2+ 38.Rxg2 のあと白はg6の地点で黒陣をばらす可能性があるが、少なくとも黒はまだ戦える。

38.Qh3!

 この単純な二重攻撃で目的を達する。

38…Nf6 39.Bxh6 Nh5 40.f4 Qf6 41.e5 黒投了

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(この号続く)

2012年04月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(171)

「Chess Life」2012年2月号(4/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 年長組の選手の一人は18歳以下オープンに出場したエリック・ローゼンだった。彼の開始順位は27位で、厳しい戦いと格上の相手が予想されたがそれに耐えた。エリックには国際マスター基準の獲得を祝福したい。9人の対戦相手のうち7人がレイティング上位者で、6-3の成績は立派の一言に尽きる。次の試合は彼の楽勝の一つである。

閉鎖型ルイロペス [C87]
FMエリック・ローゼン(FIDE2305、米国)
FMトムス・カンタンス(FIDE2338、ラトビア)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.O-O a6 5.Ba4 Nf6 6.Re1

6…Be7

 シュタイニッツシステムでの黒の良い展開方法は 6…Bd7 7.c3 g6 8.d4 Bg7 である。黒は 6…b5 7.Bb3 Na5 で双ビショップを得ることもできたが、8.d4 Nxb3 9.axb3 で展開に後れをとる。

7.c3 O-O 8.h3 b5 9.Bc2 d5?!

 マーシャルギャンビットに似た奇異な手だが手損をしている。

10.d4!?

 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 c6 13.d4 の局面をマーシャルギャンビットの局面と比べるとこちらの方が白にとって良いと言わざるを得ない。

10…Nxe4 11.dxe5 f5

 11…Nc5!? は開放型ルイロペスの局面に移行することになる。

12.exf6e.p. Nxf6 13.Bg5 Bc5 14.Nbd2 Qd6 15.Nb3 Bb6 16.Nbd4 Nxd4 17.cxd4 Ne4 18.Bxe4 dxe4 19.Rxe4

19…Qg6?

 19…Bb7!? 20.Be7 Qd7 21.Bxf8 Bxe4 ならポーン損ながら黒にもまだ希望があった。

20.Qb3+ Kh8 21.Rae1 h6 22.Be7 Bf5 23.Ne5 黒投了

 黒クイーンの適当な逃げ場がない。

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(この号続く)

2012年04月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(172)

「Chess Life」2012年2月号(5/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 最も得点をあげた女子は女流準マスターのセアラ・チャン、マリヤ・オレシュコ、それにアガタ・ビコフツェフだった。ブラジル選手に対するセアラのペトロシアン戦法の戦いぶりを見てみよう。この試合は白に有利な陣形戦として始まったが早く c4-c5 と突いたために大乱戦になった。

キング翼インディアン防御古典戦法 [E92]
WCMセアラ・チャン(FIDE2056、米国)
ジュリア・アウボレド(FIDE1813、ブラジル)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第2回戦、2011年11月19日

1.d4 Nf6 2.c4 d6 3.Nc3 g6 4.e4 Bg7

 キング翼インディアン防御は人気のある複雑な戦法で、いくらか棋理に反するところのある布局である。

5.Be2 O-O 6.Nf3 e5 7.d5

 ペトロシアン戦法は偉大な元世界チャンピオンの故チグラン・ペトロシアンにちなんで名づけられた。

7…a5 8.Bg5 h6 9.Bh4

9…Bd7

 9…g5 10.Bg3 Nh5 11.Nd2 Nf4 12.O-O と進めば白は Bg4 で陣形の差を追求するかクイーン翼で動いていくことになる。

10.Nd2 Na6 11.a3 Qe8 12.b3 Nh7 13.f3

13…g5?!

 この手は黒キングの近くの白枡を決定的に弱める。13…h5!? の方が良く 14.Rb1 Nc5 15.O-O Bh6 16.Qc2 f5 17.b4 axb4 18.axb4 Na4 19.Nb5 となれば白がやや優勢である。

14.Bf2 f5 15.exf5 Bxf5

 黒は白に正当な理由もなくe4に強力な拠点を与えた。

16.Nde4 Nf6 17.Bd3 Bg6 18.O-O Nh5

19.c5!?

 黒の指し方は積極性に欠けていたので白は争点を保っておく方が良いのではないかと私は感じた。19.Rb1! と寄ってから b3-b4 と突いて Na6 を遊び駒にするのは辛抱強いやり方である。黒はまともな作戦を見つけるのが難しい。

19…Nxc5 20.Nxc5 dxc5 21.Bxc5 e4!?

 もちろんである。黒は乱戦を図った。

22.Bb5

 22.Nxe4!? Bxa1 23.Qxa1 の方が安全で、白がまだ少し優勢だった。

22…c6 23.dxc6 Bxc3 24.cxb7 Qxb5 25.Qd5+

25…Bf7??

 黒は乱戦の中でつぶれて、大きな駒損になった。対局後の検討で 25…Kh7! が我々の関心の的だった。次のように黒の勝ちになるようである。26.bxa8=Q Rxa8 27.Qxa8 Qxc5+ 28.Kh1 Bxa1(28…e3!?)29.Rxa1 e3

26.bxa8=Q Rxa8 27.Qxa8+

 突然セアラが二つ交換得になった。

27…Be8 28.Qd5+ Bf7 29.Qd8+ Kh7 30.Qe7 Qxb3 31.Qxe4+ Kg8 32.Rad1 Nf6 33.Rd8+ Kg7 34.Bf8+ Kg8 35.Bxh6+ Be8 36.Qg6+ 黒投了

 次に Qg7 で詰む。

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(この号続く)

2012年05月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(173)

「Chess Life」2012年2月号(6/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 マリヤは次の試合で得意の反シチリアの武器(側面ギャンビット)を用いてうまくいった。白の展開と圧力がひどいポカを引き出した。

シチリア防御 [B20]
マリヤ・オレシュコ(FIDE1694、米国)
カラムチェティ・プリヤムバーダ(FIDE1782、インド)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

 マリヤはアガタ・ビコフツェフと共に6½点で我々の12歳以下女子での最多得点者の一人だった。

1.e4 c5 2.b4!?

 側面ギャンビットは今日ではあまり見られないややこしい布局である。その意図は黒のcポーンをどかせて中原を支配することである。

2…cxb4 3.a3 bxa3?!

 白はこの手のあと望外の態勢になる。3…d5 でギャンビットを拒否するのが最善で、4.exd5 Qxd5 5.Nf3(5.axb4?? Qe5+ 0-1 は1984年バークレーでの全米選手権戦でのシラジ対ピーターズ戦の不運な試合だった)5…e6 6.Bb2 Nf6 7.c4 bxc3e.p. 8.Nxc3 Qd8

は昨年ギリシャで開催されたこの大会でコーチのアルメンが用意した素晴しい研究手順だった。そのベトシュコ対トロフ戦では白はポーン損に加えて孤立ポーンを抱えて全然攻撃の機会がなかった。

4.d4

4…g6

 2回戦前で白のマリヤに対しノミネルデネは次のように指してきた。4…d6 5.Nf3 Nf6 6.Bd3 e6 7.O-O(7.c3 Be7 8.Qe2 O-O 9.e5 dxe5 10.dxe5 Nd5 11.h4

なら白がキャッスリングせずにキング翼で狙いを作り出すのが少し容易かもしれない。Rh1 が Bxh7 から Ng5 の狙いに役立つかもしれない)7…Be7 8.Bxa3 O-O 9.e5 Ne8 10.Nc3

フランス防御型の局面で白は攻勢に出られる。

5.Nf3 Bg7 6.Bc4 d6 7.O-O Nf6 8.e5!?

 白は攻撃的に指さなければならない。さもないと代償が消えていく。

8…dxe5 9.Nxe5 O-O 10.Bxa3

 白の2ビショップが黒のキング翼に大きな圧力をかけていて黒の展開を難しくさせている。

10…Nc6 11.Nxc6 bxc6 12.Re1 Re8 13.Bc5 a5 14.Qf3

14…Bb7??

 黒は圧力の中でつぶれた。14…Ba6 なら受けきる可能性があった。

15.Qb3!

 この露骨な両当たりで大きな戦力得になる。

15…Ba6 16.Bxf7+ Kh8 17.Bxe8 Nxe8 18.c3 Bf6 19.Qa3 Bd3 20.Bxe7 Bxe7 21.Qxe7 Qxe7 22.Rxe7 a4 23.Na3 Nd6 24.Re6 Rd8 25.f3 Kg7 26.Re7+ Kh6 27.Rc7 Bb5

28.h4

 28.Rc1! はどうだろう。

28…Re8 29.g4 g5 30.hxg5+

 30.Nxb5!? cxb5 31.Rc6 なら黒の残存戦力が身動きできなくなる。

30…Kxg5 31.Kf2 Kf4 32.Nxb5 cxb5 33.Rd7 Re6 34.Rb1 Rh6 35.Rxd6!

 この単純化の手筋で黒のわずかな希望をつぶした。

35…Rxd6 36.Rxb5

 詰みの狙いで白ルークが黒のパスポーンの背後に回ることができる。

36…Rf6 37.Ra5 h5 38.Rxh5 a3 39.Ra5 a2 40.Rxa2 Rh6 41.Kg2 黒投了

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(この号続く)

2012年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(174)

「Chess Life」2012年2月号(7/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 ジェフリー・ションは7-2というみごとな成績で大会を終えた。12歳以下オープン部門で5位に入るには十分だった。それでも昨年の信じられないような9-2という成績と順位判定による2位(同点1位だった)のあとでは少し残念だったに違いない。私は彼の棋風が気に入っている。うまくてきびきびして攻撃的なチェスで研究が行き届いている。彼は年齢別を上がるにつれて毎年のように優勝争いに加わるだろう。次の試合ではジェフリーが決まり切った定跡を外して相手の意表を突いた。黒はたちまち苦境に陥って防御の機会がなかった。

ルイロペス [C77]
FMジェフリー・ション(FIDE2056、米国)
ジョシュア・ジョンソン(FIDE1862、トリニダードトバゴ)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第2回戦、2011年11月19日

 この試合でジェフリーは相手を戦術的に負かした。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.d4!?

 これは白の仕掛けることのできる多くの「はめ手」っぽい戦術の一つである。

5…b5

 この手からの黒の成績はひどい。5…exd4!? 6.e5 Ne4 7.O-O Be7 8.Nxd4 Nxd4 9.Qxd4 Nc5

なら実戦の進行よりも安全でずっと良かった。

6.Bb3 exd4 7.e5 Ng4 8.O-O Be7 9.Bf4

9…Bb7

 9…h5!? は 10.c3 g5 11.Bd2 Ngxe5 12.Nxe5 Nxe5 13.cxd4 Nc6 14.Qf3

となって、黒キングが安全でないので白に代償がある。

10.Bd5 Qb8 11.Bxc6 dxc6 12.Nxd4

 既に黒は大苦戦である。

12…Nh6 13.Bxh6 gxh6 14.e6 c5 15.exf7+ Kf8 16.Ne6+ Kxf7 17.Nxc5!

 黒キングを裸にしポーンを取り返した。

17…Rg8 18.Nxb7 Qxb7 19.g3

 この受けで黒は攻撃にも防御にも希望がなくなった。

19…Rg5 20.Nd2 Bf6 21.c3 Rd8 22.Qc2 Rg6 23.Rad1 Qc8 24.Ne4 Rdg8 25.a4 h5 26.axb5 h4 27.bxa6 h3 28.Qd3 Be7 29.a7 Kg7 30.Qd7 Qf8 31.a8=Q!

 このそらしの手筋でビショップが取れ勝ちが決まる。

31…Qf3 32.Qxe7+ Kh8 33.Ng5 黒投了

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(この号続く)

2012年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(175)

「Chess Life」2012年2月号(8/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 最後は米国チーム最年少の参加選手の一人、7歳のジェイソン・メトパリーの試合である。彼は戦術の才を発揮し将来に期待を抱かせた。

シチリア防御ドラゴン戦法 [B70]
ドミトリー・ミンコ(FIDE1375、ロシア)
ジェイソン・メトパリー(FIDE無し、米国)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

 歳のジェイソンは我々のチームの最年少選手だった。この試合で彼はロシア選手を手玉に取った。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6

 ドラゴン戦法は若い選手たちに非常に人気がある。

6.g3 Bg7 7.Bg2 O-O 8.O-O Nc6 9.Nce2 Bd7 10.h3 Rc8 11.Be3 b6 12.f4 Be6

13.Kh2

 13.Nxe6 fxe6 はほぼ互角である。

13…Na5 14.g4??

 この手はうまい戦術にはまってせっかくのポーンを取られる。

14…Bxg4!

15.f5

 15.hxg4 は 15…Nxg4+! で壊滅する。

15…Bxe2 16.Qxe2 Nc4 17.Bc1 Ne5 18.Nb5 Qd7 19.Nd4 Qc7 20.c3 Qc4 21.Qf2??

 白はg4の地点に戦術の問題を抱えていて、これで勝負がついた。

21…Neg4+! 22.hxg4 Nxg4+ 23.Kg1 Nxf2 24.Kxf2 Bxd4+ 25.cxd4 Qxd4+ 26.Ke1 Qb4+ 27.Kd1 Kg7 28.Rh1 Qd4+ 29.Ke1 Rxc1+!

 ジェイソンは正確な指し手を続けている。

30.Rxc1 Qxb2 31.Kd1 Qxg2 32.Re1 Qxa2 33.Re2 Qb3+ 34.Rec2 Qd3+ 35.Rd2 Qxe4 36.fxg6 Qxg6 37.Rcc2 Qg1+ 38.Ke2 Qg2+ 39.Kd3 Qf3+ 40.Kc4 Rc8+ 41.Kb4 Rxc2 42.Rxc2 Qe4+ 43.Kc3 h5 44.Rc1 h4 45.Rg1+ Kh7 46.Kd2 Qd4+ 47.Ke1 Qxg1+ 48.Kd2 Qg3 49.Ke2 h3 50.Kd2 h2 51.Ke2 h1=R 52.Kd2 Rh2+ 53.Kd1 Qg1#

 カルダス・ノバス市は「アーグワ・ケンテ」(ポルトガル語で「湯」)のためにブラジルの観光名所となっている。温泉浴槽は至る所にある。米国軍団のほとんどはテルマディローマ・ホテルに泊まった。安全上の理由から最良の宿泊施設はいつもすべて完備している所である(小さな子どもを地下鉄に乗せるのは良くない)。大会会場はホテルのロビーから歩いて100ヤード足らずの所だった。ホテルの通りの向こうは信じられないようなプールやウォータースライドのある広大な水上公園だった。雰囲気はいつもお祭り気分で陽気で、休養と真剣なチェスにぴったりだった。宿泊設備は素晴しくて、食事も種類に富んでいた。

 私の一つ気に入らなかったことはFIDEが11回戦を9回戦に変更したことだった。こんなに遠くまで旅行してきたのだから試合数が多いほうが良いと思う。ほとんどの部門では順位判定によって優勝が決まった。11回戦ならたいてい単独優勝になっていただろう。来年は11回戦に戻ることを期待する。

 米国チェス基金には惜しげもなく1万1千ドルを寄付してくれたことに特に感謝したい。多くのコーチと旅行費用に大いに役立った。チェスは真剣勝負だが、終われば友人や親との交流が楽しかった。私の担当の親たちは非常に真面目で協力的だった。チームでのメダルこそ取れなかったが、よく戦い好局もものにした。エミリー、ジョシュア、マイケル、アプルバ、カドヒア、ジョシア、それにベンのおかげで私の務めは楽だった。来年の大会はスロベニアのマリボルで開催される。我々の選手たちの幸運を祈り、実戦と研究に努めることを望む。皆とマリボルで会おう。

2011年世界少年少女チェス選手権戦 米国選手成績一覧

開催日 2011年11月17日-27日
開催地 ブラジル、カルダスノバス
米国選手成績
8歳以下女子 6点 カーブヤ・ラメシュ、ナオミ・バシュカンスキー、チェニ・チャオ
8歳以下オープン 7½点 エイワンダー・リャン(金メダル) 6½点 デイビド・ペン 6点 ブライアン・グー 5½点 ベン・ルード 5点 ジョシア・スティアマン、イーサン・ジュー、アイディン・トゥルグト 4½点 ジェイソン・メトパリー、アジャイ・クリシュナン 4点 アルマン・バラダラン・ホセイニ、ニュイェン・ダン・ミン
10歳以下女子 6点 アニー・ワン 5½点 エミリー・ニュイェン、キャサリン・デイビス、ディーバイナ・デバガラン 4点 セイディア・クレシ
10歳以下オープン 7点 ルイフェン・リー(銀メダル)、ティアンミン・シー 6½点 アルバート・ルー 6点 タヌイ・バスデバ、ジョン・バーク 5½点 マイケル・ワン、ボウビー・リュー、マルセル・サーボ、トーマス・クノフ 4½点 ニコラス・チェイカ 4点 グランドン・ナイディク
12歳以下女子 6½点 マリヤ・オレシュコ、アガタ・ビコフツェバ 6点 シモーヌ・リャオ 5½点 キンバリー・ディン 5点 マギー・フェン
12歳以下オープン 7点 ジェフリー・ション 6点 カメロン・ホィーラー 5½点 ケサブ・ビスワナダー、マイケル・チェン、アラン・ベイリン 5点 ジョナサン・チャン 4½点 アンドルー・タン 4点 カドヒア・ピライ
14歳以下女子 7点 セアラ・チャン 5½点 レイチェル・ゴロゴルスキー 4½点 リリア・ポティート、アプルバ・ビルクド
14歳以下オープン 6½点 ケビン・ワン、バルン・クリシュナン 6点 マイケル・ボデク 5½点 ジャスタス・ウィリアムズ、ジャロド・パマトマト、マイケル・ブラウン、トミー・ヒー 4½点 ジェイムズ・ブラック 4点 チャリン・ディン、ジョシュア・コラス
16歳以下女子 5点 ジェシカ・リーガム 4½点 ローチェル・バランタイン
16歳以下オープン 4½点 ジョン・ヒューズ
18歳以下女子 5点 エミリー・タロ
18歳以下オープン 6点 エリック・ローゼン 5点 マイケル・ビレンチュク
詳細な結果は http://www.wycc2011.com/ で見られる

コーチ陣 IMアルメン・アンバルツォウミアン、GMジョエル・ベンジャミン、GMニック・ド・ファーミアン、GMジョン・フェドロウィッツ、FMアビブ・フリードマン、FSTマイケル・コダルコフスキー、IMアンドラニク・マティコジャン、GMサム・パラトニク、GMユーリ・シュールマン、GMゲナディ・ザイチク

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(この号終わり)

2012年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(176)

「The British Chess Magazine」2011年8月号(1/1)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

迷惑な相手

 非常によくある質問「迷惑な相手にはどうしたらよいか」。何ができるかについては迷惑の種類とそれが故意かそうでないかとによって変わってくる。

 明白な最初の行動は「審判を呼べ」である。多くの選手は苦情を申し立てることをためらう。しかしこれは何も言わずに悩まされ続けるよりもずっと良いことである。選手が相手を叱責することは勧められない。これは必ずといっていいほど事態の悪化を招く。この種の苦情を扱うのに適したチェス規約は12.6項である。

 「どんな行為でも相手の気をそらしたり迷惑をかけたりすることは禁止される。これには筋の通らないい申し立て、過度の引き分け提案、対局場で騒音を立てることが含まれる。」

 以下に迷惑の元を分類した。

 咳と鼻すすり 咳は明らかに相手の気をそらすが罰するほどのものだろうか。その選手が手を口に添えて横を向いて咳をしていればそれは許容される振る舞いで、審判が何かするのは非常に難しい。咳がのどにからんでいる場合は審判はコップ一杯の水を与えるかもしれない。最近のことだが1束のティッシュをあるGMにあげたことがあった。彼は意味を理解してその中につかえた物を吐き出した。相手の考慮中のときにだけ咳をする選手、そして特に相手が指そうとするときに咳をする選手は罰を与えるべきである。

 もし相手が意図しない行為によって本当に被害を受けたならば代償に少し時間を追加してもらえるかもしれない。追加する時間は2分が一般的だろう。時間が追加されるのはごく限られた侵害行為に対してだけである。ほとんどの違反行為には追加される時間は裁量の範囲である。ハンカチをあてて声を出したり鼻をかんだりする人には盤から離れてそうするよう求めることができる。同様にしょっちゅう鼻水を重力に逆らってすすり上げる人には審判が言ってきかせるべきである。審判はここでも音が耳障りであることを指摘しつつティッシュを与えてもよい。

 貧乏揺すり これは体の色々な部位を振動させることである。普通は脚だが体のどの部分でもよい。上半身の動きが激しくて審判の介入が当然になることはまれである。しかし脚によって引き起こされる問題には通常は二つある。そのような動きではキーキー音がしたり机が「震動」するかもしれない。どちらの場合も普通はその選手が脚を動かしたら審判がすぐに指摘するのがよい。選手は自分の行為について全然気づいていないものである。

 ガチャガチャ/カチカチ/ムシャムシャ 相手がしょっちゅうペンの頭を押してカチカチ音をさせるのはいらいらさせられるものである。これはわざとでなく神経質になってやらかすことが多い。審判に言って止めさせてもらうのがよい。大抵の選手は対局しながら飲食をする。これは普通は問題とはならない。しかし中にはチェスとピクニックの区別ができていないと思われる者もいる。ポリポリ、ガサガサ、そしてかき混ぜ音をたてる者は注意を受けるべきである。ビスケットや缶は盤から離れて開けるべきであり、紅茶やコーヒーは喫茶コーナーでかき混ぜるべきである。突き止めにくくてそのため対処もしにくいのはポケットで硬貨や鍵をガチャガチャ鳴らす観戦者である。これは時間に追われているときには特にいらいらさせられる。

 身勝手な行為 酔っ払った相手はまれである。審判のすることは酩酊の程度による。特にひどい場合は没収試合にすることもあり得る。もっと微妙な問題は衛生状態の悪い選手である。不快な臭いは注意力を乱す原因になり得る。私の経験ではこの種の苦情は対局後に訴えられるので審判にとって極めて難しい。かつて私は当該選手の友人たちに話をし、彼らは穏やかに話していた。別の機会には誰も連続して特定の個人のすぐ近くに座ることのないよう配慮した。

 しつこい引き分け提案。「和平提案」の頻度に関しては実は規定がない。引き分け提案は棋譜用紙に(=)と記入するというのが規定である。そうしないと12.6項に基づいた申し立ては認められないかもしれない。大まかに言うと引き分け提案を断られたら、局面がかなり変わるまでにあるいはその後相手からの引き分け提案を断わるまでにまた提案をするのは通常は悪い作法だと考えられる。8手ほどのうちに3回引き分け提案をしたら警告を受けると思った方がよい。そのあとの提案はもっと厳しい処罰を招く可能性がある。

 引き分けにしかなりようのない局面で指し続ける相手には誰もが閉口したことがある。それはその選手の権利であり、こちらがしょっちゅう引き分け提案をすると審判の懲罰を受けるかもしれないのは残念ながらこちらである。

 迷惑行為は非常に主観的な要素が多い。ある選手に非常に迷惑なことが他の選手にはなんでもないことかもしれない。このため審判は何らかの行動をおこす前に問題の行為を実際に見て判断したいと考えるのが普通である。大抵の場合審判の最初の行動は警告を発することである(時には試合終了後に穏やかに行うこともある)。繰り返しの問題行為がわざとだと見なされるならさらに警告が与えられるかもしれない。重大だと考えられるなら罰として没収試合が宣告されるかもしれない。

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(この号終わり)

2012年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(177)

「The British Chess Magazine」2011年9月号(1/1)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

観戦者

 よくあるのは問題を起こすのが対局者でなく観戦者である場合である。対局の終わった選手は観戦者になる。規約違反は無知や無頓着によって引き起こされる。自分は規約とは関係ないと思っているような者もいる。今年の全英選手権戦にもいくつか該当例があるようである。

無頓着

 携帯電話の電源を切らない人間。「なぜ鳴る前にサイレントモードにしておかなかったんだ?」それでも明らかに規約違反だが、他の誰も気づかなければ知らぬが仏である。

無知

 文字通信はだめだと言わなければならなかった。ほとんどすべての場合「フライトモード」だから問題ないと言われた。たいていはフランスチームの団長式にチェスエンジンを作動させて子供のジミーやジェマイマと連絡をとる可能性を指摘すると単なる音が鳴るよりも大きな問題があることを理解してくれた。最近の小さな大会で検討室が対局場とつながっていた(まったく推奨できない)。ある選手を電話が脇に置いてあると指摘した。彼は電話として使うつもりはなく終わったばかりの試合の分析の助けにフリッツに相談するのだと言いはった。声を出していろいろ言ってやって彼の行為の誤りを教えてやることができた。

 通信機器はラップトップ、アイポッドなどを含めすべて試合会場から禁止すべきである。現代の技術をもってすれば審判が「通信機器」と単なる「機器」を区別することなど不可能である。だから審判が用心の側に間違いを犯すことを許容して欲しい。MP3プレーヤーでさえ布局定跡について共犯者と連絡をとることに用いることができるかもしれない。

反抗的態度

 残念ながら自分には規約が当てはまらないと信じ込んでいる観戦者が必ずいるものである。私は2011年にシェフィールドで信じられない光景を目撃した。以前に2回文字通信で警告を受けていたある母親がまたしたということで捕まった。彼女は子供の一人を対局させもう一人とイングランドチェス連盟の仕切り部屋で遊んでいた。私は親に外のコーヒー店あたりで座っているように頼んだ。彼女の最初の反応は彼女の過失によって彼女の子供を私が罰することはできないというものだった。私が意志を変えようとせず警備員たちが近づいて来るのを見ると彼女は軟化したが娘の面倒を私がみるように言い張った。私は子供の世話係でないと丁重に言ってやった。

その他の観戦者の状況

 ガチャガチャとガサガサ。硬貨をガチャガチャ鳴らしたりプラスチックのバッグを自分の脚にこすりつける人もいる。たいていの場合彼らはこのような騒音がどのくらい選手、特にちょっとしたことでも気になる非常に時間が切迫した選手たちに耳障りになるか信じない。

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(この号終わり)

2012年06月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(178)

「The British Chess Magazine」2011年10月号(1/1)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

タッチムーブ

 モイセエンコ対ナバラ戦の試合が私の興味を引いた。

 ここで黒はビショップを動かしたがキングを軽くかすったかもしれない。白は黒がキングに触っていると言ったがビショップを動かすことを許した。キングを動かしていたらビショップを取られ試合も負けになる。勝勢になったナバラは引き分けを提案した。スポーツマンらしい?必要ない?

 第4.3項 手番の選手が盤上の駒に意識的に触ると、
 (a)自分の複数の駒に触った場合、動かせる最初の駒を動かさなければならない。または
 (b)相手の複数の駒に障った場合、取れる最初の駒を取らなければならない。または
 (c)それぞれの色の駒を1個ずつ触った場合、相手の駒を取るか、これが不正な手ならば触った駒のうち動かすか取れる最初の駒を動かすか取らなければならない。最初に触ったのが自分の駒か相手の駒か不明なら、相手の駒より自分の駒を最初に触ったとみなすべきである。

 キングを意識的に触ったとは考えにくくビショップを動かしたのは正しかった。タッチムーブの規約に関するもめごとはめったに起こらない。両対局者が事実関係に異存なければ審判はすべきことを決めることができる。事実関係を確定することが困難なことがあり得る。証拠不十分の場合には嫌疑をかけられた者の有利に解釈しなければならない。審判が何もしないならば関係者を困らせることになる。私は指し手をやり直したことを疑いながらも何もできないことがよくある。

 上述に似た「タッチムーブ」は解決が容易である。触った駒のみならずキャッスリングも問題を引き起こすことがある。例えば

 第4.4項 (a)意識的にキングとルークに触った選手はその翼へのキャッスリングが合法ならばそうしなければならない。
 (b)意識してルークに次いでキングに触った選手はその翼にキャッスリングできず、第4.3(a)項が適用される。
 (c)キャッスリングするつもりの選手がキングまたは同時にキングとルークに触ったがその翼へのキャッスリングが不正ならば、キングで別の合法手を指さなければならず、それには別翼へのキャッスリングも含まれる。キングを動かす手に合法手がなければどんな合法手を指してもよい。

 キャッスリングの問題、例えばチェックされながらのキャッスリングや最初にルークを触ってのキャッスリング。最初の場合キングを動かすことが可能ならばそうしなければならない。二番目の場合キャッスリングは許されずルークを動かさなければならない。次の図の場合白がキャッスリングしようとしたが最初にルークに触れたなら唯一の可能な手は Rxh4 である。

 キングを最初に触ったなら Kf1 と指さなければならない。

 指そうとした手が悪手であることに気づいたとする。駒を桝目に置いただけではそう指さなければならないということにはならない。手を離して初めて着手が確定する。選手がひっきりなしに駒をあちこちの枡に置いてから別の枡に置けば、何らかの処置をとっても良いかもしれない。今度は駒を取る問題。ある選手が自分の駒を持ち上げてそれを用いて交換したとする。相手の駒に接触したときに相手の駒に触ったことになる。規約ではタッチムーブが適用される接触とは手によってなされなければならないとは言っていない。

 ここで Be2-g5 は不正な手だった。その選手は Bd2-g5 と指すつもりだった。e2のビショップに触ったのは意識的だったのだろうか。これは手拍子でその選手は Bd2-g5 と指すことができ相手は持ち時間が追加されるというのが万人の認めるところであると希望する。何が意図だったのかは明らかである。

 ここでの Bd2-g4 は不正な手である。この場合白は Bd2-g5 と指すつもりだったのだろうか、それとも Be2-g4 と指すつもりだったのだろうか。審判には分からないかもしれない。不明ならばd2のビショップを動かさなければならない。

 ここで 1…Nxd3 2.Qxd3 は開きチェックを見落としている。審判は局面を1手戻し白の応手を待つ。Kh1 が指される。審判は白に「タッチムーブ」を念押しする。よくある返事は「チェックをよけなければならない」である。経験豊富な選手が言ったなら私はうなづく。経験の少ない選手ならクイーンを動かさなければならないと言う。審判は合法手を示してはいけないが 2.Qf2 か 2.Qe3 が指されるようにしなければならない。「0-1」でもよい。

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(この号終わり)

世界のチェス雑誌から(179)

「The British Chess Magazine」2014年1月号(1/1)

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サムの眼光紙背

IMサム・フランクリン

 小島慎也はすでに3回IM基準を達成し、日本最初の国際マスターへの道をしっかり歩んでいる。日本のチェスは比較的歴史が浅く、国内でも近隣の東アジア地域でもレイティングの高いFIDE大会が少ないので、才能ある選手が強くなるのには困難がある。小島はブダペストを中心にヨーロッパに長く滞在しIM称号を持ち帰ろうとしていた。彼のレイティングは現在2351である。だから凱旋帰国はそんなに遠いことではないように思われる。

白 W.シーン
黒 小島慎也

第1土曜大会、ブダペスト、2013年
カロカン防御古典戦法 [B19]

1.e4 c6

 カロカン防御は 1.e4 に対する小島の主要な防御となっている。実は3年くらい前に東京で彼と対戦したことがあり、パノフ攻撃の白側を持って負かされている。

2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7,Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bd2 Ngf6 12.O-O-O Be7

13.Kb1

 ここではまだ 13.Ne4 が主手順で、何百局という一流どころの試合が指されている。白は最も働いていない駒を交換し、gポーンの針路を空ける。本譜の手ももちろんとても理にかなっていて、2番目によく指されている。

13…Qb6

 13…O-O の方がずっとよく指されているが、小島は布局を非常に詳しく研究しているのが通例である。日本語に翻訳されているチェス本はほとんどなく、彼のチェスの上達は言語能力にかかっていた面もある。

14.Rhe1

 この手から非常に直接的な作戦が始まる。もちろん白にはほかの手もある。14.Ne4 はその一つだし、14.c4 はルスタム・カシムジャーノフによってバードゥル・ジョババ戦で指された。

14…O-O 15.Nf5

15…Bb4

 15…exf5 はもっと諸刃の剣である。17.Rxe7 Qd8 18.Re2 Ne4 となっていい勝負である。もっともf5の長期的な弱点のために白の方がたぶん少し良い。

 15…Rfe8 16.Nxe7+ Rxe7 17.Ne5 なら白が単刀直入に優勢になっていただろう。16.Nxe7+ の代わりに 16.Rxe6? はレイティング2400が2100に対して指した手である。16…fxe6 17.Nxg7 これはこのような形で定型の捨て駒で、ここでは黒の受けがまずかったためにうまくいった。黒が 17…Ba3! を発見していたら白はちょっと困っていたかもしれない。(17…Kxg7?? 18.Bxh6+! Kh8 19.Ng5 +- U.アンウェシュ対N.ナバルグンド、ムンバイ、2011年)18.Qxa3 Kxg7 19.Qe3 Kg8 20.Qxh6 Re7 これなら黒が少し優勢である。

16.Nxh6+?!

 布局の珍しさからするとこのナイト切りは盤上でひらめいたのは確実だろう。「?!」は客観的な評価だが、実戦では十分成立するだろう。

  16.Ne3 の方が普通だろう。白はg3のナイトを配置替えしgポーン突きをもくろむことができる。16…Bxd2 17.Rxd2 Rad8 18.g4 e5 中央での一貫した反撃。19.Qf5 exd4 20.Rxd4 Nc5 21.Nc4 Qb5 22.Nd6 Qb6 これは2011年カレタでのD.セングプタ対L.ニシペアヌ戦だが、白はここで強手を見舞う機会を逃した。23.Re7?(23.g5! hxg5 24.h6 +-)23…Na4 24.b3 Rxd6! 25.Rxd6 Qb4 26.Qe5 Nc3+ 27.Kb2 Na4+ 28.Kb1 Nc3+ 29.Kb2 Na4+ 30.Kb1 ½-½ このようなカロカン陣形で逆翼キャッスリングから生じることのある動的局面の好例だった。

16…gxh6 17.c3

 17.Bxh6? は 17…Bxe1 18.Qe3 Kh7 19.Bxf8 Rxf8 20.Rxe1 で黒がかなり優勢になる。

17…Ba3 18.Bc1

18…Kh8?

 この悪手を指した気持ちはよく分かる。黒はキングをg列からよけて …Rg8 から …Bf8 と指したかった。しかし局面は極度に具体的で、黒はh6のポーンを守る手段を施さなければならなかった。18…Rfd8 が一つの理にかなった受けで、…Bf8 を「狙っている」。だから白はもたもたしていられない。19.Rxe6!(19.Ka1? Bf8 が黒の注文で、白がナイト損を正当化するのに苦労する)19…Qb5!(19…fxe6 は大乱戦に突入する。以下はとことん追求したい人向けである。20.Qg6+ Kh8 21.Ne5! Nxe5(21…Rf8 22.Nxd7 Nxd7 23.Qxh6+ Kg8 24.Qg6+ =)22.Qxf6+ Kg8 23.Qxe5 Bf8(明らかにすべて一本道というわけではない)24.Bxh6! Rd7(24…Bxh6? 25.Qxe6+ Kh7 26.Qg6+ Kh8 27.Qxh6+ Kg8 28.Rd3 +-)25.Qxe6+ Rf7 26.Qg6+ Bg7 27.Bxg7 Rxg7 28.Qe6+ Rf7 29.Rd3 白はルークの代わりに4ポーンを得ているが、最も重要なことは黒キングが裸だということである。これで引き分けには十分である。29…Qb5 30.Rg3+ Kf8 31.Qh6+ Ke7 32.Re3+ Kd8 33.Qd6+ Rd7 34.Qf8+ Kc7 35.Qxa8 Qf1+ 36.Kc2 Qxf2+ 37.Kd3 Qf1+ 明らかに千日手)20.Qxb5 cxb5 21.Rxf6 Nxf6 22.bxa3 交換得で黒が優勢のはずである。

 あとから考えれば 18…Rfe8 がもっとも賢明のようである。19.g4 Bf8 20.Rg1 Nh7 21.g5 黒がいつかは嵐を乗り切れるかもしれないとしても、白には駒の代わりに意外なほど多くの代償がある。

19.Ka1 Be7 20.Bxh6

20…Nd5?

 本当は 20…Rg8 と指す必要があったが、それでも 21.Ng5 Rxg5 22.Bxg5 で2小駒が白駒の働きと攻撃の可能性を埋め合わせられないので白の方が良い。

21.g4

 21.Bxf8 Rxf8 22.Qd2 Kh7 23.g4 で白が良い。なぜ白が優勢へのこんな簡明な道を拒絶したのか理解しにくい。たぶん2駒の方が重要だと考えて局面の判断を誤ったのだろう。実際は黒はまだ反撃を始めてもいないし、互角の戦力の局面で g5-g6 突きはまだ非常に危険な狙いである。

21…Rg8 22.g5

 白が Bxf8 を拒否したのは疑問だったとしても、ナイトの代わりに非常に圧倒的な攻撃体勢にあることは認めなければならない。

22…Bf8?!

 黒の防御の多くは非常に理にかなっていたが、実際の形勢は白が優勢のままである。受けるときにはいかに具体的でなければならないかということをいみじくも示している。論理的に推測することは防御側の大きな指針にしかならない。

 ここはg6に利いているd3からクイーンをどかせる 22…Qa6 の方が少し良かった。23.Qd2(23.Qxa6? bxa6 24.g6 fxg6 25.Rxe6 Nf8 26.Rxc6 gxh5 は白にまだ十分な代償があるかもしれないが、もちろんクイーンが盤上にあった方が代償はもっと活気がある。)23…c5 黒陣はまだ防御が非常に困難だが、以下の手順は白がキング翼にいかに多くの力をため込んでいるかを如実に示している。24.g6! fxg6 25.hxg6 Rxg6 26.Rh1 Kg8 27.Rdg1 Rxg1+ 28.Rxg1+ Kf7 29.Qc2! Ke8 30.Qg6+ Kd8 31.Qg8+ Nf8 32.Bxf8 Kd7(32…Kc7 33.Qg3+)33.Ne5+ Kc7 34.Ng6 +-

23.Bxf8 Raxf8

24.Qd2?

 この手は軽率だった。白は g6 突きの狙いを作ったが、小島の受けの妙手段を見落としていた。評価が急に変わることがあるので、このような局面で正確さの重要性がまた明らかになる。

 24.c4 が攻撃を行なう非常に自然な手段で、黒をさらに後退させながらクイーンを強力なa1-h8の斜筋に配置する。24…Nf4 25.Qc3 ここで 25…f6 がたぶん必要で、26.g6 突きで黒陣がますますみすぼらしく見える。一つの狙いは単に Re4 から Qe3 である。

24…Qc7!

 Nd5 が …Qf4 を可能にしているので突然黒駒の連係がまた良くなった。

25.c4?

 これが本局の転換点だった。ナイト切り以来白の読みは不正確で、ここで事を決しようとしたのはイライラから来たようである。ここは 25.Re4! が強力な攻めの手で、…Qf4 を防いでいる。攻撃側も防御側の読み筋を迎え撃たなければならない!そのあと 25…Rg7 26.Rh4 Kg8 となってまだまだ大変な乱戦である。

25…Qf4 26.cxd5 Qxf3 27.g6

 27.dxe6 と取るのは 27…fxe6 28.Rxe6 Rg7 となって白にはまだ十分な代償があるが、それを超えることはない。

27…Rg7

 Qh6 の狙いに対して絶対手である。

28.dxe6 fxe6

29.Rg1?

 29.Rxe6 なら戦力が互角になり前に解説した手順になっただろう。実戦の手はおそらくh6のポーンを突くのを助けるつもりで指したのだろうが、黒に陣容をまとめポーン得にものを言わせる始める余裕を与えた。

29…Rf6!

 h6 突きを防いでいる。

30.Qa5 a6

 これが必ずしも唯一の手というわけではないが、ここからは小島の冷静さが見て取れる。

31.Rdf!?

 明らかに受けただけの手である。もっとも狙いを作り出すのはもう容易でなくなっている。

31…Kg8 32.Qd8+ Nf8 33.Rh1 Rf5

 黒ははずみがついてきて、白の弱点を攻撃し始める。

34.Qh4 Rf4 35.Qd8 Rd7 36.Qe8 Rfxd4 37.a3 Rd8 38.Qe7 R8d7 39.Qe8 Rd8 40.Qe7

 規定手数に達するために手を繰り返していた。

40…R4d7 41.Qh4 Rd3!

 これが絶対の手ではないが、ここで黒が盤上を支配していることを如実に示していて気に入った。黒は守りに縛りつけられていて、…Rxa3 の狙いに対して成すすべがない。

42.Qe7

 42.Rfg1 でも 42…Rxa3+ 43.bxa3 Qxa3+ 44.Kb1 Rd2 または 42.Kb1 Rb3! 43.Qxd8 Qc3 で黒の勝ちになる。

42…R8d7 43.Qe8 Qf6 0-1

 実は当初この試合を解説しようと決めたとき、小島の鮮やかな防御の腕前を披露することになると思っていた。彼がIMの水準に上達したのはどう見ても優れた読みとしっかりした研究に裏打ちされていたからだ。しかしこの試合では両者ともある時点で局面を完全に支配しておきながら、勝負が決まったのは「最後に間違えた方が負ける」という例にすぎなかった。

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(この号終わり)

訳注 小島くんのブログに本局の自戦解説があります。

2014年02月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(180)

「The British Chess Magazine」2014年6月号(1/1)

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チェスの質疑応答

IMゲーリー・レーン

白 チャオ・ツォン
黒 池田惇多

O2Cドーバール・カップ、キャンベラ、2014年
シチリア防御カン戦法 [B42]

1.e4 c5 2.Nf3 e6

 この陣形に対する関心の高まりの理由について最近二、三のプロ選手に聞いてみた。すると 3.Bb5+ の人気のせいでドラゴンやナイドルフを目指す 2…d6 を指す気になれないからと打ち明けてくれた。

3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Bc5

6.Be3!?

 ビショップがこのようにナイトを支えるのは少し特異で、攻撃的な態勢への前触れである。代わりに 6.Nb3 が長年普通の手だった。

 (a)2014年ハンティ・マンシースクでのT.コシンツェワ対M.ムジチュク戦では 6…Ba7 7.Qe2 Nc6 8.f4(すぐに 8.Be3 がよく指される変化で、c4 から Nc3 で中央の支配を強めるのが一つの指し方である)8…d6 9.Be3 Nf6 10.Nc3 b5 11.Bxa7 Rxa7 12.g4 と進んで白に主導権があった。

 (b)2008年メリダでのM.アダムズ対F.カルアナ戦では 6…Be7 7.O-O d6 8.Qg4(このクイーン出はキング翼のポーンの形に弱点を引き起こさせるためにこの戦型に周知の着想で、7手目でもよく指される)8…g6 9.Qg3 Qc7 10.a4 b6 11.Na3 Bb7 12.Nc4 で白が優勢だった。

6…d6 7.O-O

 早くキャッスリングするかどうかは好みの問題だが、2014年ハンティ・マンシースクでのA.コステニウク対P.クラムリング戦では白が 7.Nd2 と指した。そして 7…Nf6 8.c3 e5 9.Nc2 Bxe3 10.Nxe3 Be6 11.c4 と進んで白が出遅れdポーンをd6にいるようにさせたが、それにつけ込むのにはまだまだ大変である。11…O-O 12.O-O Nc6 13.Rc1 Nd4 14.Nb3 でほぼいい勝負である。

7…Nf6 8.c3

 クイーン翼ナイトをc3に展開しないのは奇異に思われるかもしれない。しかしこの戦型では中央での争点を維持するためにcポーンを突いてから Nb1-d2 と指すのが普通である。

8…Nbd7 9.Nd2 d5?!

 黒は性急に中央で打って出た。しかしチャオ・ツォンの方が展開に優っているので戦術を仕掛ける機会が得られる。

10.Qe2

 白はルークを連結させ、中央でポーンを交換して形を決める前に好機を待った。

10…Qc7 11.Bg5 dxe4

 10…O-O のあと私なら 12.Rae1 で e4-e5 突きを意図し、本譜のように黒にe4でポーン交換をさせるだろう。

12.Nxe4 Nxe4 13.Qxe4 Nf6 14.Qh4 Be7 15.Rfe1

 白はだんだんと自陣を良くしていけるうらやましい状況である。一方黒は Bxf6 でh7のポーンの守りをなくす単純な戦術のせいでキング翼に安全にキャッスリングできない悪夢に対処しなければならない。

15…Qb6 16.Re2 Bd7 17.Rae1 Nd5

 17…O-O-O なら 18.Nf5 が絶妙の応手となる。そして 18…exf5 に 19.Rxe7 で黒の戦力損が必至なので白の勝勢に近い。

18.Nf5!

 e列でルークを重ねた意味が明らかになり、黒は破れかぶれに出る。

18…Bxg5 19.Qxg5 g6 20.c4

 e7に利いているナイトをどかす当然の策で、黒の陣形をがたがたにさせる。

20…f6 21.Qh4 O-O-O 22.cxd5 exf5 23.Qg3 Bb5 24.Rc1+ Kd7 25.Bxf5+! 1-0

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(この号終わり)

2014年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

世界のチェス雑誌から(181)

「New in Chess」2014年第7号(1/1)

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長蛇を逸す

IMヨハナーン・アフェク

第6問 白の手番
難易度 5段階中4

 この10手の間完全に勝勢の局面だった白はパニックになり 37.Qc1+ Kb6 38.Rc8 Qd7 39.Qc4 Qh3+ 40.Ke2 Qg2+ と指して負けにしてしまった。実際は第1回戦でセンセーションを巻き起こす最後のチャンスを逃していた。あなたならどう指す?

解答

小島慎也対セルゲイ・モブセシアン
 正確に読めれば白の勝ちになる。37.Qe7+ Rd7 38.Qb4! a5 39.Qc4+ Kb7 ここで白にはいくつも勝ち方があるが最も単刀直入な勝ちはたぶん次である。40.Qc8+ Kb6 41.Rxe5! Qc7 42.Rb5+ Ka7 43.Rxa5+! Qxa5 44.Qxd7+

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2014年11月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3