ポルガーの定跡指南の記事一覧

ポルガーの定跡指南(1)

「Chess Life」2002年10月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ジオッコピアノ

 初回はジオッコピアノ(「静かな試合」という意味)を取り上げる。これはイタリア布局としても知られ、アマチュアやクラブ選手に人気のある布局の一つとなっている。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4

 これがこの布局の重要な出発点である。ここまでの手は理にかなった展開の手で、「駒を展開し中原を支配すること」という布局の基本原則に従っている。この分岐点で黒には 3…Nf6 と 3…Bc5 という二つの主要な選択肢がある(3…Nf6 は次号で取り上げる)。

 黒には他の選択肢もあるが、それらは消極的であまり人気がなく本筋の手ではない。3…g6、3…Be7 それに 3…d6 に対しては白は 4.d4 と応じて中原を占拠する。

3…Bc5

白の4手目では異なった対処の仕方がいくつかある。四つの選択肢は・・・

A)4.b4

 これはエバンズギャンビットになる。完全に異なる布局なので今回は取り上げない。

B)4.d3

 堅実で用心深い戦法である。

C)4.O-O

 これも堅実な戦法である。

D)4.c3

 これは四つの選択肢のうちもっとも意欲的で機動力のある戦法である。この手の意図は次の手で 5.d4 と突いて中原を占拠しようということである。

 それでは堅実な二つの選択肢から先に見ていこう。

B)4.d3 Nf6 5.Nc3 d6

 自然な 5…O-O は 6.Bg5 とかかられるので時期尚早である。この釘付けは 6…h6 に 7.h4 とされるので不快である。次の鮮やかな例が示すように黒はビショップの犠牲を受け入れることができない。7…hxg5 8.hxg5 Ng4 9.g6 Nxf2 10.Nxe5 Nxd1 11.gxf7+ Rxf7 12.Bxf7+ Kf8 13.Rh8+ Ke7 14.Nd5+ Kd6 15.Nc4#[訳注 9…Bxf2+ で黒が優勢のようです]

6.Bg5

 6.O-O なら黒は 6…h6 で 7.Bg5 を避ける。

6…h6 7.Bxf6 Qxf6

 白は中央で動けるようにするために双ビショップを放棄した。

8.Nd5 Qd8 9.c3

 この手は d3-d4 突きと b2-b4 突きの両方の準備である。

9…Ne7

 黒が単に 9…O-O と指すと白は 10.b4 Bb6 11.a4 a5 12.Nxb6 で黒のクイーン翼のポーンの形を乱す。

10.d4 Nxd5

11.dxc5 Nf4 12.g3 Nh3 13.Bb5+ Kf8

 これはイワノビッチ対ゲオルギエフ戦(1987年)である。このあまりみかけない局面は互角の形勢である。

 13…Kf8 の代わりに 13…Bd7 は 14.Bxd7+ Qxd7 15.cxd6 Qxd6 16.Qxd6 cxd6 17.Rd1 Ke7 18.Ke2 となって、黒のd6の出遅れポーンのために白がわずかだが確実に優勢である。

C)4.O-O Nf6

 5.Nc3 d6 なら 6.d3 で 4.d3 に移行する。

5.d3 d6

 6.Nc3 ならB)に移行し 6.c3 ならD2)に移行する。

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原題『Opening Secrets』

2011年11月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(2)

「Chess Life」2002年10月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ジオッコピアノ(続き)

D)4.c3 Nf6

D1)5.d4

 これが主流手順である。他の手から先に見ていくと・・・

D2)5.d3

 この戦型は1980年代に非常に流行した。今日の定跡では黒は楽に互角にできると結論づけられている。

5…d6 6.O-O

 白が 6.b4 Bb6 7.a4 で黒のビショップを捕まえようとしてきても黒には全然危険がない。7…a5 または 7…a6 でビショップの退路が開けて問題が解決する。

6…O-O

7.Bb3

 こう引く理由は 7…Na5 でビショップと黒のナイトとの交換になるのを避けるためである。本譜の手のあと黒が 7…Na5 と指せば白は 8.Bc2 と引いて交換を避けることができる。

7…a6

 黒はビショップのためにa7の地点を空けた。

8.Nbd2 Ba7 9.h3

 9.Re1 なら黒は主導権を握るためにすぐに攻撃的に指す必要がある。9…Ng4 10.Re2 Kh8 11.h3 Nh6 12.Nf1 f5 で攻勢に立つ。

9…h6 10.Re1 Nh5 11.Nf1 Qf6

 互角の形勢である。

D3)5.O-O

 これも黒にとってあまり危険でない。黒はe4のポーンを取ってもよい。

5…Nxe4

 これで互角の局面になる。黒がe4のポーンを取りたくなければ 5…d6 6.d4 exd4 7.cxd4 Bb6 8.Nc3 O-O と指せばよくやはり不満のない局面になる。

6.d4 exd4 7.cxd4 d5 8.dxc5 dxc4

 どちらも指せる分かれである。

D1)5.d4 exd4 6.cxd4

 6.e5 なら黒は 6.d5 と突き返さなければならない。

6…Bb4+

 このチェックをさしはさめるので黒はこの戦法で互角を求めて戦うことができる。主流手順は
D1a)7.Bd2 である。他の手は・・・

D1b)7.Nc3 しかしこれはポーンを犠牲にすることになり非常に激しい戦いになる。

7…Nxe4

8.O-O Bxc3!

 白の着想は迅速な展開のために戦力を犠牲にすることである。黒は次の変化のようにキングが中央列で立ち往生しないように注意しなければならない。8…Nxc3? 9.bxc3 Bxc3 10.Ba3 これで白のビショップが黒キングのキャッスリングを防ぎ、黒キングが素通しe列で完全に露出する。黒にはいろいろな受け方があるがどれも互角にならない。

 10…Bxa1 は 11.Re1+ でたちまち負けになる。

 10…d5 の方が良いが、11.Bb5 Bxa1 12.Re1+ Be6 13.Qa4 で白の方が優勢である。

 10…d6 はa3-f8の白ビショップの利きをふさぎキャッスリングできるようにする最も理にかなった手段のように見える。しかし白にはそれでも次のように戦力得する方法がある。11.Rc1 Ba5(11…Bb4 は 12.Bxb4 Nxb4 13.Qe1+ で両当たりになり駒損する)12.Qa4 a6(12…Bg4 ならほぼ互角になる)13.Bd5 これで白の駒得になる。

この局面でコンピュータソフトのフリッツの助けを借りて好奇心をそそる面白い変化を分析してみた。13…Bb6 14.Rxc6 Bd7 15.Re1+ Kf8 16.Rxd6 cxd6 17.Bxd6+ Kg8 18.Bxf7+ Kxf7 19.Ne5+ Kf6 20.Nxd7+ Kg6 21.Qc2+ Kh6 22.Bf4+ g5 23.Re6+ Kg7 24.Be5+ Kf7 25.Qf5+ Kg8 26.Rg6+ hxg6 27.Qxg6#

9.d5

 白が 9.bxc3 とビショップを取れば黒は 9…d5 と白ビショップを当たりにして手を稼げる。ビショップが逃げたあと黒はついにキャッスリングができポーン得で優勢になる。

9…Bf6!

 9…Ne5 は 10.bxc3 Nxc4 11.Qd4 O-O 12.Qxe4 Nd6 13.Qd3 となって白にポーンの代償がある。

10.Re1 Ne7 11.Rxe4 d6 12.Bg5 Bxg5 13.Nxg5

13…h6!

 13…O-O もあるが 14.Nxh7 からの犠牲を許し 14…Kxh7 15.Qh5+ Kg8 16.Rh4 で非常に複雑な局面になる。正確に指せば引き分けに終わるだろう。

14.Qe2

 14.Qh5 なら 14…O-O で黒がすべての問題から解放される。

14…hxg5 15.Re1 Be6 16.dxe6 f6 17.Re3 c6 18.Rh3 Rxh3 19.gxh3 g6

 白はポーンの代償が十分でない。

D1a)7.Bd2 Bxd2+ 8.Nbxd2

8…d5

 これは非常に大切な手である。さもないと白が中原を全面的に支配する。

9.exd5 Nxd5

 このあと白がキャッスリングをすれば自然だが黒はd5の黒ナイトで効果的にせき止めている白の孤立d4ポーンを標的にして楽な試合運びができる。

10.Qb3

 この意欲的な手で白は千日手による引き分けを誘うことができる。

10…Na5!

 代わりに 10…Nce7 と指すと白は 11.O-O O-O 12.Rfe1 c6 13.Ne4 で駒の働きが良くなり少し優勢になる。

11.Qa4+ Nc6 12.Bb5

 12.Qb3 なら白の10手目とまた同じ局面になる。

12…Bd7 13.O-O O-O

 両者とも無事に展開を完了しここから互角の中盤戦が始まる。

最終結論

 これは白が最初から大きな優勢を達成できる布局ではない。黒が陥り易い落とし穴がいくつかある。しかし正確に指せば黒は楽に互角を達成できる。

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2011年12月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(3)

「Chess Life」2002年10月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ジオッコピアノ(続き)

ジオッコピアノの短手数局 [C55]
白 ビクトル・クノーレ
黒 ミハイル・チゴーリン
1874年(*)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.O-O Nf6 5.d3 d6 6.Bg5

 この手は黒が既にキャッスリングしている場合にだけ効果的である。ここではまだキャッスリングしていないので黒は本局のように 6…h6 から 7…g5 でビショップを追い払うことができる。

6…h6 7.Bh4

 白は 7.Be3 と引いた方が良かった。

7…g5 8.Bg3 h5

 黒は好機をとらえてキング翼攻撃に着手した。

9.Nxg5

9…h4!

 黒は白を詰みに討ち取るために一連の捨て駒の妙手を繰り出し始めた。

10.Nxf7 hxg3!!

 黒は喜んでクイーンを捨てて攻撃を続ける。

11.Nxd8

 白は意を決してクイーンを取った。

11…Bg4

 白クイーンを当たりにした。

12.Qd2 Nd4!

 キング翼攻撃に別の駒を投入した。

13.Nc3

13…Nf3+!!

 これは白のキング翼への致命的な一発だった。14.Kh1 は 14…Rxh2# で詰む。

14.gxf3 Bxf3 白投了

 黒の狙いは 15…gxh2# だが白には受けがない。15.h3 は 15…Rxh3 から 16…Rh1#、15.Re1 は 15…gxh2+ 16.Kf1 h1=Q# である。

(*)本局にはいくらか疑義がある。ある資料ではデュボワ対シュタイニッツ戦(ロンドン、1862年)とあり、別の資料には研究手順とある。さらに別の資料にはチゴーリン対クノーレ戦(1874年、対局地不明)とある。

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2011年12月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(4)

「Chess Life」2002年11月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御

 今月は先月の続きでジオッコピアノに代わり 3…Nf6 と指す2ナイト防御を取り上げる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.Ng5

4…d5

 4…Bc5 はトラクスレル戦法、時にはペンシルベニアのチェスクラブにちなんでウィルクスバリー戦法と呼ばれる。この戦法は大乱戦になるが白がよく研究しておけば優勢になるはずである。

5.exd5

5…Na5

 これが黒の最善の応手と考えられている。しかし長期に及ぶポーンの犠牲を伴う。5…Nxd5 は 6.d4!(フライドレバー攻撃と呼ばれる 6.Nxf7 Kxf7 7.Qf3+ Ke6 8.Nc3 Ncb4 は面白いが、6.d4 の方が正確である)6…exd4(6…Be7 7.Nxf7 Kxf7 8.Qf3+ Ke6 9.Nc3 Ncb4 10.Qe4)7.O-O Be6 8.Re1 Qd7 9.Nxf7 Kxf7 10.Qf3+ Kg8 11.Rxe6 Rd8 12.Bg5 Qxe6 13.Bxd8 となって白が優勢である(エーべの研究)。フリッツの好む 5…Nd4 は 6.c3 でやはり白が優勢である。

6.Bb5+ c6 7.dxc6 bxc6 8.Be2

 白は 8.Qf3 Rb8 9.Bxc6+ Nxc6 10.Qxc6+ Nd7 11.d3 Be7 で2個目のポーンを取ることができるが黒にも多くの代償がある。

8…h6 9.Nf3

 シュタイニッツ/フィッシャー戦法の 9.Nh3 もあるが 9…Bc5 で黒もポーン損の代わりに駒の働きが良い。

9…e4 10.Ne5 Bd6

 10…Qd4 11.f4 Bc5 12.Rf1 Bd6 13.c3 Qb6 も黒にポーンの代償がある。10…Qc7 も良い手である。

11.d4

 11.f4 exf3e.p. 12.Nxf3 は黒が …O-O のあと …c6-c5 から …Bb7 と指し活発に動ける。

11…exd3e.p. 12.Nxd3 Qc7

 これで白がキャッスリングに困難を抱える。

13.b3

 白はビショップのためにb2の地点を空け黒のナイトがc4の地点に来ないようにした。

13…O-O 14.Bb2 Ne4 15.Nd2

 白は局面の単純化を念頭にナイトを展開した。

15…f5

 形勢はどちらとも言えない。白はポーン得だが黒には代償がある(モロゼビッチ対ネナシェフ戦、1994年)。

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2011年12月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(5)

「Chess Life」2002年11月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御(続き)

マックス・ランゲ攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4

5.O-O

 代わりの重要な手は 5.e5 d5 6.Bb5 Ne4 7.Nxd4 Bd7、あるいは 5.Ng5 Ne5 6.Qxd4(6.Bb3 は 6…h6 7.f4 hxg5 8.fxe5 Nxe4 9.Qxd4 Nc5 となって黒が少し優勢である)6…Nxc4 7.Qxc4 d5 8.exd5 Qxd5 で互角の局面である。

5…Bc5 6.e5 d5

 6…Ng4 7.Bf4 O-O 8.h3 は白の方が良い。

7.exf6 dxc4 8.Re1+

 8.fxg7 と取るのは 8…Rg8 9.Bg5 Be7 10.Bxe7 Kxe7!(10…Qxe7 は 11.Nxd4 で良くない)11.Re1+ Be6 で黒が優勢になるので時期尚早である。

8…Be6 9.Ng5 Qd5

 9…Qxf6?? は 10.Nxe6 fxe6 11.Qh5+ でc5のビショップが落ちる。

10.Nc3 Qf5

 10…dxc3? は 11.Qxd5 でただ取りされる。

11.Nce4

 11.g4 は 11…Qg6 12.Nxe6 fxe6 13.Rxe6+ Kd7 14.Nd5 Rhe8 で黒の方が良い(もちろん 14…Kxe6 は 15.Nf4+ があるので駄目である)。

11…O-O-O

 黒は 11…Bb6? を避けた。以下は 12.fxg7 Rg8 13.g4 Qg6 14.Nxe6 fxe6 15.Bg5 Rxg7(15…h6 なら 16.Qf3 hxg5 17.Nf6+ Kf7 18.Rxe6 Kxe6 19.Re1+ Ne5 20.Qd5+ Kxf6 21.Qxe5+ Kf7 22.Qe7#)16.Qf3 Rf7(16…e5 17.Nf6+ Kf7 18.h4 h6 19.Ne4+ Ke6 20.h5 Qh7 21.Bf6 のあと白勝ちは1899年ロンドンでのチゴーリン対タイヒマン戦)17.Nf6+ Kf8 18.Rxe6 Kg7 19.Qh3 で白勝勢(1901年ハンガリーでのマローツィ対フォルガーチュ戦)。

 11…Bf8 としてg7のポーンを守る手もある。以下は 12.Nxf7 Kxf7(12…Bxf7 は 13.Nd6+)13.Ng5+ Kg8

14.g4(14.Nxe6? は 14…Re8 15.fxg7 Bxg7 16.Nxc7 Rxe1+ 17.Qxe1 Be5 18.Nd5 Kf7 で白が猛攻にさらされる)となりここで

 a)14…Qg6 は 15.Rxe6 gxf6 16.Qf3 で白の攻撃が順調になる。

 b)14…Qxf6? は有名なフィン対ニュージェント戦(米国、1898年)のように 15.Rxe6 Qd8 16.Qf3 Qd7 17.Re7!! で負ける。

 c)14…Qd5 は 15.Nxe6 Ne5? 16.f7+!(16.Nxc7 は 16…Nf3+)16…Kxf7(16…Nxf7 なら 17.Nxc7)17.Ng5+ Kg8 18.Rxe5! Qxe5 19.Qf3 となりデンカー対アダムズ戦では黒投了(ニューヨーク、1940年)。

12.g4

 12.fxg7 は 12…Rhg8 13.Nxe6 fxe6 14.Bh6 Bb6 で混戦になる。

12…Qe5

 12…Qd5? は 13.fxg7 Rhg8 14.Nf6 で良くない。

13.Nxe6

 13.Nf3 は 13…Qd5 14.fxg7 Rhg8 15.Nf6 Qd6 で形勢不明である。

13…fxe6 14.fxg7 Rhg8 15.Bh6 d3 16.c3

 16.cxd3 Rxd3 は黒が優勢である。

16…d2 17.Re2 Rd3

 いい勝負である。しかし白はキングの囲いのポーンが弱体化しているので注意が必要である。

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2011年12月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(6)

「Chess Life」2002年11月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御(続き)

カナル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4

6.Re1

 ぎょっとさせる 6.Nc3 は非常に面食らうが、単純に 6…Nxc3 と取れば(ただし 6…dxc3? と取るのは 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qd5+ Ke8 9.Re1 Be7 10.Rxe4 d6 11.Bg5 cxb2 12.Rae1 となって白の猛攻が続く)7.bxc3 d5 8.Bb5 Be7 9.Nxd4 Bd7 で黒の確実な1ポーン得になる。

6…d5 7.Bxd5

 7.Nc3 は 7…dxc4(7…dxc3 なら 8.Bxd5)8.Rxe4+ Be6 9.Nxd4 Nxd4 10.Rxd4 Qf6 11.Nb5 Rc8 12.Nxa7 Bc5 13.Rf4 Rd8 となって黒が優勢である。

7…Qxd5 8.Nc3

8…Qa5

 他に良い手は 8…Qh5 9.Nxe4 Be6 10.Bg5(10.Neg5 なら 10…O-O-O 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6)10…Bd6 11.Nxd6+ cxd6 12.Bf4 Qd5 13.c3 Rc8 で互角の局面になる。

9.Nxe4

 9.Rxe4+ Be6 10.Nxd4 O-O-O は黒が良い。

9…Be6 10.Bd2

 10.Neg5 には(10.Bg5 なら 10…h6 11.Bh4 Bb4 12.Re2 g5 13.Bg3 O-O-O)ポーンを返す 10…O-O-O が黒の最善の応手で、11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6 となって黒に何の問題もない。

10…Bb4

 代わりに黒がクイーンを動かせば白は 11.Bg5 で黒にクイーン翼キャッスリングをさせない。例えば 10…Qd5 なら 11.Bg5 h6 12.Bf6!、10…Qh5 なら 11.Bg5 で 8…Qh5 からの変化に移行する。

11.Nxd4 Nxd4 12.c3

 この両当たりで白が駒を取り返す。

12…O-O-O 13.cxb4

 13.cxd4 なら 13…Bxd2 14.Qxd2 Qxd2 15.Nxd2 Rxd4 で黒が1ポーン得になりかなり
優勢である。

13…Qf5

 駒の配置とポーンの形とが良いので形勢は黒が優勢である。

最終結論

 白の観点からは 4.Ng5 が最善の選択である。しかし局面は複雑で主手順でも黒にポーンの代償が十分ある。

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2012年01月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(7)

「Chess Life」2003年1月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

 今月はカロカン防御を取り上げる。カルポフ、コルチノイ、カスパロフ、アーナンド、イワンチュク、レーコー、ハリフマン、セイラワンのような世界の一流選手たちの多くがこの定跡を黒番での得意戦法に選んでいる。これは黒の堅実な布局で、相当の反撃力があるがシチリア防御ほど強烈ではない。

 本稿ではパノフ=ボトビニク攻撃を調べることにする。この定跡に特有なことは初めの手順は違っても多くの異なった布局から生じることである。ちょっと名前を挙げただけでもニムゾインディアン、クイーン翼ギャンビット受諾、あるいは準タラシュがある。白と黒の主要な構想は何だろうか。それは単純である。

 ●白の作戦は中央を攻撃し黒がキャッスリングしたあとはキング翼を攻撃することである。

 ●黒の作戦は白のキング翼攻撃を撃退しながら白の孤立dポーンにつけ込んでいくことである。

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4

 これがパノフ=ボトビニク攻撃の陣形である。

4…Nf6 5.Nc3 e6

 黒が 5…g6 と応じれば 6.Qb3

6…Bg7 7.cxd5 で白がわずかな優勢を維持する。

 また黒が 5…Nc6 と指せば 6.Nf3 Bg4

7.cxd5 Nxd5 8.Qb3 Bxf3 9.gxf3 e6 10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ で収局になる。そして 11…Nxb5 12.Qc6+ Ke7 13.Qxb5 Qd7 14.Nxd5+ Qxd5 15.Qxd5 exd5 16.O-O Ke6 17.Re1+ Kf5 18.Rd1 Rd8 19.Be3 Rd7 20.Rac1 Be7 21.Rd4 となれば白がわずかに有利である。

6.Nf3

 ここで黒の6手目には主要な手が二つある。

Ⅰ)6…Bb4

 この手の意図はナイトを釘付けにして白の駒の連係を乱すことである。

7.cxd5

 白は 7.Bd3 dxc4 8.Bxc4 O-O 9.O-O と指すこともできる。

 この局面は通常は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Nf3 d5 6.Bd3 c5 7.O-O dxc4 8.Bxc4 cxd4 9.exd4 という手順から生じ 9…Nc6(9…b6 は 10.Qe2 Bb7 11.Bg5 Nbd7 12.Ne5 となって白に主導権がある)10.a3 Be7 で複雑な展開になる。

7…Nxd5 8.Bd2

 白は 8.Qc2 と指すこともでき 8…Nc6 9.Bd3 Be7 10.a3 Nf6 と進む。

8…Nc6 9.Bd3 Be7

 黒はビショップをb4に出してからe7に引いて1手損をしているように見える。しかしこの場合はそれに当たらない。黒の着想は白に Bd2 とさせることで、そうなれば白はd4のポーンを守るのがもっと難しくなる。

10.O-O O-O 11.Qe2 Nf6 12.Ne4 Qb6 13.a3 Bd7

 これはカームスキー対カルポフ戦(世界選手権戦第4局、1996年、エリスタ)である。黒は陣形に何の問題もない。

Ⅱ)6…Be7 7.cxd5 Nxd5 8.Bd3 Nc6 9.O-O O-O

 驚くべきことにこの局面はいくつかの異なった手順から生じる。一例をあげると 1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 Nc6 7.Bd3 Be7 8.O-O cxd4 9.exd4 O-O である。

10.Re1

 10.a3 もよく指される手で黒が 10…Nb4 と指すのを防いでいる。

10…Bf6

 ここでは黒は 10…Nf6 や 10…Qd6 と指すこともできる。しかし 10…b6? は悪手で 11.Nxd5 で白が優勢になる。

11.Be4 Nce7 12.Ne5

 白にいくらか主導権がある。

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2012年01月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(8)

「Chess Life」2003年1月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

 実戦例を2局紹介する。1局目は白がカロカン防御に対する正しい対処の仕方を見せつけた。2局目は白の攻撃に対する黒の受けが成功し、反撃して勝ちを収めた。

カロカン防御 [B14]
白 GMアルトゥール・ユスーポフ
黒 GMエーリク・ロブロン
ヌスロッホ、1996年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Bd3 d5 6.Nf3 c5 7.O-O cxd4 8.exd4 dxc4 9.Bxc4

9…b6 10.Re1 Bb7 11.Bd3 Nc6 12.a3 Be7

 これでカロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃に移行した。

13.Bc2 Re8 14.Qd3

14…g6

 黒はb1-h7の斜筋でのいかなる攻撃の可能性も止めた。黒が斜筋の攻撃を無視して 14…Rc8? とのん気に指せば、15.d5 exd5 16.Bg5 Ne4 17.Nxe4 dxe4 18.Qxe4 g6 19.Qh4 で白が優勢になる。

15.h4 Qd6

 おそらく黒は 15…Rc8 と指した方が良く 16.Bg5 Nd5 17.Rad1 Bxg5 18.Nxg5 Nxc3 19.bxc3 Ne7 20.c4 Nf5 となればいい勝負である。

16.Bg5 Rad8 17.Rad1 Qb8

 17…Qc7 とここへ引くのは 18.Bb3 Nd5 19.Nxd5 で白が良い。

18.Bb3

18…a6?

 この手のせいで白は d4-d5 と突くことができ優勢になり勝つ可能性もある。ここは 18…Kg7 と指す方が良かった。以下 19.d5 h6(19…Nxd5 なら 20.Nxd5 exd5 21.Qc3+ で白が勝勢、19…exd5 も 20.Nxd5 Nxd5 21.Bxd5 で白の攻撃態勢が非常に強力である)20.Be3 で白が少し良い。

19.d5!

 この好手により局面が開放的になり、中央と黒のキング翼への白の攻撃が強力になる。
19…Na5

 代わりに 19…exd5 は 20.Rxe7! で白の勝勢になる。

20.dxe6!!

 これは非常に鮮やかな手筋である。

20…Nxb3

 黒が 20…Rxd3 とクイーンを取ると 21.exf7+ Kg7 22.fxe8=N+ Qxe8 23.Rxd3 Nxb3 24.Rde3 Kf7 25.Bxf6 Kxf6 26.Re6+ Kf7 27.Ng5+ Kf8 28.Nxh7+ Kf7 26.Ng5+ となって白が勝ちの収局になる。

21.exf7+

 21.Qc4! の方がずっと正確だった。そのあとは 21…fxe6 22.Qxe6+ Kg7 23.Ne5 となって白が攻めて勝つ。

21…Kxf7 22.Qc4+ Kg7 23.Ne5 Ng8?

 23…Nd5 でも 24.Bh6+ Kxh6 25.Nf7+ Kg7 26.Nxd8 で白が優勢である。

24.Rxd8

 24.Qf7+! の方がはるかに良い手で、24…Kh8 25.Rd7! Rxd7 26.Nxd7 Qd8 27.Nf6 となれば白が完全に勝勢である。

24…Qxd8 25.Qf7+

25…Kh8 26.Qxb3 Qd4 27.Re3 Rf8 28.Bxe7 黒投了

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2012年01月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(9)

「Chess Life」2003年1月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

カロカン防御 [B14]
白 IMブラッド・トメスク
黒 GMイゴール・ヘンキン
パドバ、1998年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Bb4 7.cxd5 Nxd5 8.Bd2 Nc6 9.Bd3 Be7 10.O-O O-O

 白駒の方が動きが自在である。黒はまだ白枡ビショップを展開しなければならない。しかし白には孤立d4ポーンがある。
 評価 白は主導権を維持するために攻撃的に指す必要がある。さもないとこの試合に見られるように黒が陣形の優位のせいで優勢になる。

11.a3 Nf6 12.Be3 b6

 黒はやっと白枡ビショップを展開しようとする。

13.Rc1 Bb7 14.h3 Rc8

 この局面で形勢が互角になった。

15.Bb1 Na5 16.Ne5 Nc4 17.Nxc4 Rxc4 18.Qd3

 ビショップとクイーンをb1-h7とc1-h6の斜筋に据えて黒のキング翼を攻撃するのが白の作戦である。

18…Rc8 19.Rfd1 Qd7 20.Bg5

 この手は 21.Bxf6 から 22.Qxh7# を狙っている。

20…g6

 黒はその狙いを止めた。

21.Qg3 Rfd8

 黒はキング翼がいくらか安全になったのを機会に自分の作戦に沿って孤立d4ポーンに圧力をかけた。

22.Qh4 Nd5 23.Ne4 Bxg5 24.Nxg5

24…Nf6 25.Ba2

 代わりに 25.Rxc8 Rxc8 26.Ne4 Nxe4 27.Bxe4 Bxe4 28.Qxe4 と指せば、たとえ白の孤立d4ポーンのせいで黒の収局の態勢が優っていても白が引き分けにできる可能性が高かっただろう。

25…Kg7

 白は攻撃の具体策を立てることができない。一方黒はクイーン翼で反撃を策する余裕がある。白の孤立d4ポーンは弱点のままである。この局面は明らかに黒が優勢である。

26.Rxc8 Rxc8 27.Qf4 Rc2

28.Qe5

 ここは 28.Re1 とした方がe6のポーンに直接圧力がかかり少なくとも反撃の可能性がいくらかあるので少し優った。28.Rd2 と指すのは 28…Rxd2 29.Qxd2 h6 30.Nf3 Bxf3 31.gxf3 e5 32.d5 Qxh3 で黒が勝勢の局面になる。

28…h6 29.h4

 29.Nh7 は 29…Qd8 30.Nxf6 Qxf6 で黒がずっと有利な収局になる。

29…Bd5

 29…Rxb2 も非常に良い手である。黒は単にポーンを取ることができ白はそれでも全然反撃ができない。黒が圧倒的に優勢な局面である。

30.Bb1 Rxb2

 黒が勝つのはもう時間の問題である。

31.Rc1?

 31.Bd3 でも助からないが本譜の手よりはましである。黒は 31…Ra2 と応じてaポーンを取る。

31…Qb5! 32.Bc2??

 白はどう指しても負けだがこれはビショップをただであげてしまう。

32…Rxc2! 白投了

 33.Rxc2 なら 33…Qb1+ でルークが落ちる。

最終結論

 カロカンは黒の非常に堅固な防御法である。パノフ=ボトビニク攻撃では弱い孤立d4ポーンを補うために白はa2-g8、b1-h7それにc1-h6の斜筋を利用してキング翼への積極的な攻撃を維持しなければならない。

 e5の地点は白にとって重要で、白は好機をとらえてd4のポーンをd5へ突かなければならない。黒の作戦はキング翼を注意深く守りながら白のd4ポーンに圧力をかけることである。ポーンの形に優る黒は機会があれば駒を交換して自分に有利な収局に持って行くのが普通である。

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2012年01月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(10)

「Chess Life」2003年2月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法

 今月はクイーン翼ギャンビット拒否のタルタコワ戦法を取り上げる。スパスキー、ペトロシアン、カルポフ、それにカスパロフのような世界チャンピオンを含む一流選手の多くがこの布局を常用定跡の重要な一部に含めている。現在最も頻繁に用いている中で最強はGMナイジェル・ショートである。この戦法は最も攻撃的な選択肢ではないかもしれないが、非常に堅固な定跡で、白が無理やりやっつけようとすると痛い目にあうことがある。7…b6 と突く意図は何だろうか。クイーン翼ギャンビットの他の戦型のようにc8の黒ビショップは展開に苦労するときがある。しかし 7…b6 なら自由にb7の地点に展開できる。さらにb6のポーンはいつかは突くことになる …c7(c6)-c5 の狙いを強固なものにすることができる。

 白の作戦は何だろうか。それはc列に圧力をかけてc7のポーンの潜在的な弱点を攻撃することである。そして黒がc7のポーンをc5に突けば、白は中央に孤立ポーンまたは浮きポーンを作らせることができる。しかし基本的に白の作戦は中央を中心に展開し有利なポーン陣形を作ろうとすることである。

 それでは判決はどうなるだろうか。この布局では双方とも十分落ち着いて大局的に指し進めることができる。黒としては優秀で堅実な布局である。考えてみる価値がある。

1.d4 d5 2.c4 e6

 これがクイーン翼ギャンビット拒否である。

2.Nc3 Nf6

 ここでは白に主要な選択肢が三つある。 1) 4.cxd5 これは交換戦法で、ポーン構造をすぐに変える。2) 4.Nf3 Be7 3.Bf4 これは1980年代から非常に流行した。そして最後に 3) 4.Bg5 これは従来から最も指されている手で、今月の主題である。

4.Bg5

 これで白はナイトを釘付けにした。

4…Be7

 これが最も理にかなった手だが 9…Nbd7 でもまったくかまわない。この手は一見 5.cxd5 exd5 のあと 6.Nxd5(ナイトの釘付けを利用)で白のポーン得になりそうだが、実際は白のはまりで、6…Nxd5 7.Bxd8 Bb4+ で黒の勝勢になる。

5.e3 O-O 6.Nf3 h6 7.Bh4 b6

 これが著名なGMにちなんで名づけられたタルタコワ戦法である。ここで白にはいろいろな手がある。そのうちのいくつかを見ていこう(7…Ne4 は終了したばかりのフリッツ対クラムニク戦で指されたが別の機会にゆずる)。

 白の8手目として次の四つを考察する。

 a)8.cxd5
 b)8.Be2
 c)8.Rc1
 d)8.Bd3

a)8.cxd5

 (1972年レイキャビクでのフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦第6局より)

8…Nxd5

 代わりに 8…exd5 も当然の手で 9.Bd3 Bb7 10.Rc1 Nbd7 11.O-O Ne4 となる。ここで白は 12.Bxe7 Qxe7 13.Nxe4 dxe4 14.Rxc7 でポーン得することはできない。14…Bc8 15.Bb5 Qd8 で黒の優勢になる。

9.Bxe7 Qxe7 10.Nxd5 exd5 11.Rc1 Be6

12.Qa4

 たぶん 12.Bd3 c5 13.dxc5 bxc5 14.O-O Nd7 15.e4 と指す方が良い。以下は 15…dxe4 16.Bxe4 Rad8 17.Bb1 Ne5 18.Qe2 となればポーン陣形の優位のために白がほんのわずか優勢である。

12…c5 13.Qa3 Rc8 14.Bb5 a6

 これは悪手だった。今の定跡では 14…Qb7 15.dxc5 bxc5 16.Rxc5 Rxc5 17.Qxc5 Na6 でポーンの犠牲の代わりに反撃が有望で黒が良い。

15.dxc5 bxc5 16.O-O Ra7 17.Be2 Nd7 18.Nd4!

 白は二重釘付けを利用して黒のe6のビショップの交換を強要する。

18…Qf8 19.Nxe6 fxe6 20.e4! d4 21.f4

 局面は明らかに白が優勢である。このあとフィッシャーはキング翼の白枡の斜筋の弱点を利用して勝利を収めた。

 これはたぶんこの戦法の最も有名な試合である。主たる理由はフィッシャーが初手にいつもの 1.e4 でなく 1.c4 を指した衝撃の影響のせいである(このあと 1…e6 2.Nf3 d5 3.d4 Nf6 4.Nc3 Be7 5.Bg5 O-O 6.e3 でクイーン翼ギャンビット拒否に移行した)。

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2012年01月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(11)

「Chess Life」2003年2月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法(続き)

b)8.Be2

 (1987年セビリアでのカスパロフ対カルポフの世界選手権戦第18局より)

8…Bb7 9.Bxf6 Bxf6 10.cxd5 exd5 11.b4

 白はクイーン翼で少数派攻撃を始めた。

11…c5

 もっと激しい局面を望むなら 11…c6 がお薦めである。1997年ベオグラードでのローチェ対クラムニク戦では 12.O-O a5 13.bxa5 Rxa5 14.a4 c5 と進んだ。

12.bxc5 bxc5 13.Rb1

13…Bc6 14.O-O Nd7 15.Bb5 Qc7

 この局面はカスパロフとカルポフの3度の世界選手権戦でお互い色を違えて何度も現れた。

16.Qd3

 1985年モスクワでの両者の第42局では 16.Qc2 Rfc8 17.Rfc1 Bxb5 18.Nxb5 Qc6 19.dxc5 Nxc5 20.Qf5 Qe6 21.Nfd4 Qxf5 22.Nxf5 Ne6 と進んだ。白の方が指しやすいが黒は引き分けに持ち込んだ。

16…Rfc8 17.Rfc1 Rab8 18.h3 g6?!

 この手では 18…c4 19.Qc2 Bxb5 20.Nxb5 Qa5 と指す方がよく互角の形勢である。

19.Bxc6 Rxb1

 19…Qxc6? は悪手で、20.Rxb8 Rxb8 21.dxc5 Bxc3 22.Rxc3 Nxc5 23.Qc2 Rc8 24.Nd4 のあと 25.Nb3 で黒のナイトが取られる。

20.Qxb1! Qxc6 21.dxc5 Qxc5 22.Ne2

 d5の孤立ポーンが弱いので白がいくらか優勢である。

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2012年02月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(12)

「Chess Life」2003年2月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法(続き)

c)8.Rc1

8…Bb7 9.Be2 dxc4 10.Bxc4 Nbd7 11.O-O c5

 11…Ne4 は良くなくて 12.Nxe4 Bxh4 13.d5 で白が優勢になる。

12.Qe2 a6 13.a4 cxd4 14.Nxd4

 14.exd4 は 14…Nh5 で黒に何も問題がなかった(1984年モスクワでのカスパロフ対カルポフの世界選手権戦戦第34局)。

14…Nc5 15.Rfd1 Qe8

 黒はこのあと 16…Nfe4 と指すことになれば申し分ない局面である。

d)8.Bd3

8…Bb7

 代わりに 8…dxc4 9.Bxc4 Bb7 10.O-O Nbd7 11.Qe2 Ne4 でもよい。

9.O-O Nbd7 10.Qe2 c5 11.Bg3

 これが主眼の手である。11.Rfd1 は 11…Ne4 で互角になる。この布局ではよくあることだが 12.Bg3 cxd4 13.exd4 Nxg3 14.hxg3 Nf6 15.Ne5 Rc8 16.Rac1 dxc4 17.Bxc4 Nd5 で黒に何の問題もない。

11…Ne4 12.cxd5 exd5 13.Rad1 Ndf6 14.dxc5 Nxc3 15.bxc3 Bxc5

 両者とも弱い孤立ポーンを抱えていて、これからの展望は釣り合いが取れている。

結論

 クイーン翼ギャンビット拒否のタルタコワ戦法は黒の堅実な布局である。多くの世界チャンピオンや他の一流選手たちによって用いられてきた。常用戦法の一部に加えることは有益である。

 しかし黒番で勝つ必要があるならばこの戦法を選ぶのは適切でないかもしれない。反対翼を攻め合う他の布局と違いこの布局は主に中央をめぐって展開する。大局観派で本筋の落ち着いた流れの試合を好むなら、これこそその戦法である。

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2012年02月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(13)

「Chess Life」2003年3月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御/スヘーファニンゲン戦法

 今月は機動力に富むシチリア防御のスヘーファニンゲン戦法を取り上げる。

 一般的にシチリア防御は 1.e4 に対する最も機動性のある布局の一つである。世界の超一流選手の多く、例えばカスパロフ、アーナンド、トパロフ、イワンチュク、ポルティッシュらはこの戦法を黒番での常用戦法の一部にしている。シチリア防御は非常に詳細に研究されていて、その定跡は手数も長くなっている。従って今回紹介する戦型はいつもよりも手数が長い。

 黒の作戦はどういったものだろうか。それはキング翼での白の攻撃を受け切ること、bポーンとc列とを用いてクイーン翼で反撃すること、そして機会があればdポーンをd5に突いたりeポーンをe5に突いて白の中原を破壊することである。

 では白の作戦はどのようなものだろうか。それはキング翼で攻撃をかけること、強力な中原を維持すること、そしてクイーン翼での黒の反撃を食い止めることである。

 それでは評価はどうなっているだろうか。この戦法は最も活気があり手段に富み詳細に研究されている布局の一つで、白も黒も勝ちを目指すことができる。大会の最終戦で穏やかに引き分ける必要があるならばこれは正しい選択でない。一か八かにかける必要があるならばこの布局はちょうどそのために適切な機会を与えてくれる。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Be2 a6 7.O-O Be7 8.f4 O-O 9.Be3 Nc6

 ここは白にとって黒に …b7-b5 と突かせるか、それとも 10.a4 でそれをやらせないかの分かれ道である。白には次の3戦型がある。

 a)10.Kh1
 b)10.a4
 c)10.Qe1

 順番に見ていこう。

 a)10.Kh1

 この手の意味はキングをg1-a7の斜筋からはずして嫌なチェックの可能性をなくすことである。

10…Qc7 11.Qe1 Nxd4 12.Bxd4

12…b5

 12…e5 なら 13.fxe5 dxe5 14.Qg3 でe5のポーンを釘付けにして白が良い。しかしここでもし白キングがg1の地点にいたら黒は …Be7-c5 と指せる。これはキングをg1-a7の斜筋からはずすのがなぜ役に立つのかの典型的な例である。

13.a3 Bb7 14.Qg3 Bc6

 この手はb5のポーンを守って …a6-a5 から …b5-b4 とポーンを突いていく用意をしている。

15.Rae1 Qb7 16.Bd3 b4

17.axb4

 他には 17.Nd1 があり(このナイトを Nd1-f2-g4 という経路でキング翼に移送する着想)2000年サラエボでのシロフ対モブセシアン戦では 17…bxa3 18.bxa3 Rac8 19.Nf2 Nh5 20.Qf3 g6 21.Ng4 f6 と進んで非常に難解な局面になった。

17…Qxb4 18.Ne2 Qb7 19.e5 Nh5 20.Qh3 g6 21.Ng3 dxe5 22.Bxe5 Nxg3+ 23.hxg3 Bb5

 主導権は白にあるが、1993年リナレスでのシロフ対イワンチュく戦のように黒が正確に受ければ守りきることができる。

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2012年02月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(14)

「Chess Life」2003年3月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御/スヘーファニンゲン戦法(続き)

 b)10.a4 Qc7 11.Kh1 Re8

 ここでも白はビショップをd3とf3のどちらに上げるかを決める必要がある。f3の地点からはビショップの利きが対角斜筋(a8-h1)をにらむ。これは白が g2-g4 と突きたいのなら必須である。また、黒が …b7-b6 から …Bc8-b7 によってビショップを展開するのをより難しくさせる。

12.Bf3

 12.Bd3 ならビショップが黒キングの方を直接にらむが、黒も反撃の機会が得られる。12…Nb4 13.a5 Bd7 14.Qe1 Nxd3 15.cxd3 Bc6 16.Qg3 Nd7 となれば均衡のとれた局面である。

12…Bd7

13.Nb3

 これはd4でのナイト交換を避けるためである。

13…b6

 黒は白の a4-a5 突きを妨げた。

14.g4

 狙いは 15.g5 で、f6のナイトの逃げ場がない。

14…Bc8 15.g5 Nd7

 局面は混戦模様である。この局面になった試合は数多いが、最も有名なのは2000年のフランクフルト(快速)大会でのアーナンド対カスパロフ戦で、30手で引き分けに終わった。

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2012年02月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(15)

「Chess Life」2003年3月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御/スヘーファニンゲン戦法(続き)

シチリア防御 [B85]
白 GMユディット・ポルガー
黒 GMクルノスラフ・フラク
アムステルダム、1989年

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nc6 5.Nc3 Qc7 6.Be2 a6 7.O-O Nf6 8.Be3 Be7 9.f4 d6

 c)10.Qe1 Bd7 11.Qg3 O-O

 手順は異なるが戦型a)と似た局面になった。違いはユディットが Kh1 と指していないことである。

12.Rae1 b5 13.a3 Nxd4 14.Bxd4 Bc6 15.Bd3 Rab8

 この手の意図はb5のポーンの守りを増やして …a6-a5 と突けるようにすることである。しかし最善手ではなかったかもしれない。5年後に私の妹と対局したGMポルティッシュはこの手を改良して 15…Rae8 16.Qh3 e5 と指した。

16.e5 Ne8 17.f5 exf5 18.Rxf5 dxe5 19.Qh3!

19…h6

 19…exd4 なら白に 20.Rxf7! という手がある。また 19…g6 なら 20.Bxe5 Qb6+ 21.Kh1 Rd8 となったとき白はどう指したら良いだろうか。3手詰みが見えただろうか。22.Qxh7+! Kxh7 23.Rh5+ Kg8 24.Rh8# さらに 19…Bd7 はd5の地点への利きをなくす欠点がある。20.Nd5 Qd8 21.Nxe7+ Qxe7 22.Qxh7+ Kxh7 23.Rfxe5+ Kg8 24.Rxe7 となって白が1ポーン得になり収局で勝てる。

20.Bxe5 Qa7+?

 黒は狡猾に 20…Qb6+ 21.Kh1 Bd6 と守らなければならなかった。それでも 22.Rg5 Bxe5 23.Qxh6? と来れば 23…Bxg2+! でクイーンを素抜くことができる。

21.Kh1 Bd6

22.Rg5!

 13歳のユディットに妙手が出た。

22…Qf2

 22…Bxe5 23.Qxh6 g6 ならまたしても 24.Rh5! という妙手がある。

23.Rf1 Qxf1+

 黒はこう取るしかない。23…Qd2 は 24.Qf5 で見込みがない。

24.Bxf1 hxg5 25.Bd3

 黒はポーンを捨てて詰みを防ぐしかない。

25…f5 26.Bxf5 Bxe5 27.Qh7+ Kf7 28.Qg6+ Ke7 29.Qe6+ Kd8 30.Qxe5

 局面が一区切りついてみれば黒キングが中央列で露出していて白が攻め勝つ。

30…Rb7 31.Kg1 Rbf7 32.g4 g6 33.Qb8+ Ke7 34.Nd5+! Bxd5 35.Qe5+ Kd8 36.Qxd5+ Kc7 37.Qc5+ Kb8 38.Qb6+ Rb7 39.Qd8+ Ka7 40.Bxg6 黒投了

結論

 シチリア防御のスヘーファニンゲン戦法は活動的で面白く、黒に攻撃的で勝ちを目指す機会を与えてくれる布局である。しかしこの定跡は非常に深く研究されているので、これを自分の常用布局に加えたいのなら詳細に研究することを勧める。なぜならどちらにとっても一つのわずかな失着で負けにつながることがあるからである。

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2012年03月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(16)

「Chess Life」2003年4月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御

 今月はスラブ防御を取り上げる。

 世界の一流選手の多く、例えばクラムニク、ハリフマン、イワンチュク、モロゼビッチ、シロフ、ローチェ、本誌でおなじみのレフ・アルバートがこの布局を黒番での常用戦法の一部に採用している。反撃力に富むこの戦法は黒にとって楽しみな布局である。しかし時には多くの危険に直面することもある。

黒の基本的な作戦

 黒はc4のポーンを取ることにより白の自然な展開を邪魔することを期待する。黒のe6のポーンがc8のビショップの展開を妨げるクイーン翼ギャンビット拒否と比較すると、スラブ防御ではこのビショップがh3-c8の斜筋に展開できる。黒は場合によっては …b7-b5 と突いてからこのビショップをb7の地点に据えることもある。黒の二つのビショップはより積極的な働きをする。

白の基本的な作戦

 白はポーンを取り返さないで迅速に展開することもできるし、ポーンを取り返して中原に強力なポーンを維持することもできる。白が優勢を達成するための最善の策は 5.a4 と突くことにより黒が …b7-b5 と突いてc4のポーンを守るのを阻止することである。

 それでは評決はどうなるだろうか。この布局では黒は駒を活動的に用いることができる。しかし欠点は黒が中原で譲歩することである。黒はc4のポーンを取ることによって基本的にe4の地点を白に譲る。スラブ防御は黒にとってより攻撃的な防御の一つであるが、多くの研究と分析が必要でもある。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6

 ここは白にとって分かれ道である。d5で交換すれば(4.cxd5)たぶん退屈な引き分けに終わる対称形で安全な局面になり、4.e3 と突けば準スラブかメラン防御に移行する。しかし今回とりあげるのは 4.Nf3 だけである。

4.Nf3 dxc4

 白には次の3戦型があり、たまたまどれもポーンを突く手である。

 A)5.e3
 B)5.e4
 C)5.a4

 A)5.e3

 これは最も堅実な手である。しかし白はポーンを取り返す以外布局からなんの成果も得られないことが往々にしてある。

5…b5 6.a4 b4

 もちろん 6…a6 でポーンを長く保つことはできない。なぜなら 7.axb5 cxb5 8.Nxb5 で白がa列の釘付けのおかげでポーンを取り返し優勢になるからである(c4のポーンが弱点になる)。本譜での白の問題はナイトがあまり気の進まない地点にしか行けないということである。

7.Nb1

 レシェフスキー対スミスロフ戦(1945年のラジオによる米国対ソ連)では 7.Na2 e6 8.Bxc4 Bb7 9.O-O Be7 10.Qe2 O-O 11.Rd1 a5 12.Bd2(もっと最近では2003年シアトルでのサーパー対ドナルドソン戦で 12.b3 が指された)12…Nbd7 で黒が好調だった。黒の作戦は …c6-c5 と突いてb7のビショップを働かせることである。

7…Ba6 8.Be2 e6 9.O-O Be7 10.Nbd2

 ここで白はようやくポーンを取り返す態勢を取る。

10…c3 11.bxc3 bxc3 12.Nb1 Qa5 13.Ba3 c5

 形勢は互角である。

 B)5.e4

5…b5 6.e5 Nd5 7.a4 e6

 これが最もよく指される手だが、私は1992年に有名な元女流世界チャンピオンのノナ・ガプリンダシビリ戦で大胆な 7…Bf5 を指しあっさりと勝ったことがある。

8.axb5 Nxc3 9.bxc3 cxb5

 ここから白は攻撃的に指さなければならない。さもないとポーン損の代償が得られないし、黒はゆっくりと展開を完了しキングを安全地帯に移すことができる。

10.Ng5

 11.Qf3 で両当たりになる見え見えの狙いがある。

10…Bb7 11.Qh5

 これは黒陣を乱そうという手である。

11…g6

 11…Qd7 という手もある。

12.Qg4 Be7

 自然な 12…Bg7 は 13.Ba3 でキャッスリングが困難になるから良くない。

13.Be2 Nd7

 いい勝負である。

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2012年03月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(17)

「Chess Life」2003年4月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御(続き)

 C)5.a4

5…Bf5

 これが最もよく指される手である。ほかには 5…Bg4 と 5…Na6 が指されている。

6.e3

 最近では 6.Ne5 e6 7.f3 で中原の支配をすぐに争う手が指されている。この戦型はこの10年で広く研究された。主流手順は黒が駒を犠牲に3ポーンを得るものである。7…Bb4 8.e4 Bxe4 9.fxe4 Nxe4 10.Bd2 Qxd4 11.Nxe4 Qxe4+ 12.Qe2 Bxd2+ 13.Kxd2 Qd5+ 14.Kc2 Na6

これは大乱戦である。スラブ防御を将来の黒番の常用戦法に取り入れることに関心があるならばこの局面についてもっとよく知っておく必要がある。

6…e6 7.Bxc4 Bb4 8.O-O O-O

 8…Nbd7 もある。

9.Qe2

 他に有力な手は 9.Nh4 である。白は双ビショップの優位を得るが、そのためには何手か費やさなければならない。黒は 9…Nbd7 と指して白の意図を無視することができるし、9…Bg4 10.f3 Bh5 11.g4 Bg6 と指すこともでき面白い試合になる。

9…Nbd7

 9…Ne4 なら白はbポーンを犠牲に 10.Bd3 と指すことができる。この手は1937年のアリョーヒンとの世界選手権戦第17局でエーべが指した。白は直接ポーンを取り戻す手段はないけれども、中原だけでなく半素通しのb列でも非常に強い圧力をかけることができる。

10.e4

 10.Ne5 も面白い手で、カスパロフが1992年にアーナンド戦で指したことがある。

10…Bg6

11.Bd3

 この手はe4のポーンを守るためである。白がすぐに 11.e5 と突くのは1953年の名高いチューリヒでの挑戦者決定競技会におけるボレスラフスキー対スミスロフ戦のように 11…Nd5 で黒は何も恐れることがない。その試合は 12.Nxd5 cxd5 13.Bd3 a6 14.Bxg6 fxg6 と進んだ。このように取り返すのは一見奇妙に思えるが、実際はこの戦法ではきわめて普通で 14…hxg6 よりも優る。14…hxg6 は白にh列から攻撃する可能性を与える。

11…Bh5

 この釘付けの手のあと黒は …e6-e5 を狙っている。他には 11…h6 も面白い手である。またナイジェル・ショートがPCA世界選手権戦でカスパロフ相手に試した 11…Qa5 12.e5 Nd5 もあり黒が負けなかった。

12.Bf4

 12.e5 なら 12…Nd5 13.Nxd5 cxd5 14.Qe3 で白が釘付をはずし、このあと 14…h6 または 14…Be7 で本格的な中盤戦になる。

12…Re8

 また …e6-e5 突きを狙っている。

13.e5 Nd5 14.Nxd5 cxd5 15.h3

 この手はいずれ g2-g4 と突けるようにしている。

15…a6 16.Rfc1

 ここはこの戦法の重要な局面である。黒には面白い選択肢が数多くある。16…Bg6、16…Nf8、16…Bxf3、それに奇異な 16…Nb8 さえある。これまでの定跡では形勢不明ということになっている。だからこの布局を指したければ深く研究しておかなければならない。

 しかしすぐに 16…Rc8 と指すのは誤りで、17.Rxc8 Qxc8 18.Bxh7+! Kxh7 19.Ng5+ で白の勝勢になる。

結論

 スラブ防御は得意戦法に取り入れるには良い定跡である。黒は駒を駆使し戦う機会が得られる。しかしその余波と危険性もある。黒が駒を活動させるために払う究極の代価は中原の広さで譲歩するということである。

 局面を正しく理解できれば黒は開けた局面で活発な戦いができる。スラブ防御を常用布局に選ぶならきちんと研究しなければならない。なぜならこれは深く研究されている定跡の一つだからである。

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2012年03月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(18)

「Chess Life」2003年5月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御

 今月はスラブ防御メラン戦法の 7.g4 を取り上げる。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3 e6 5.Nf3 Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.g4

 この見慣れない攻撃の手の 7.g4 は非常に独創性に富むラトビアのスーパーGMアレクセイ・シロフによって10年くらい前に創始された。それ以来カスパロフ、ゲルファンド、クラセンコフらの多くの一流グランドマスターがこれを自分の武器に取り入れた。

黒の基本的な作戦は何か

 この戦法は非常に変わっている。白は自分の展開を完了する前に攻撃を始める。何が変わっているかというと黒がまだキング翼にキャッスリングしていなくて、特に弱点もないことである。それでも白はキング翼で攻撃を仕掛ける。

 この戦法には白のポーンの犠牲が伴っている。黒は恐れずにそれを受諾することができるし、拒否することもできる。ポーンの犠牲を受諾する危険な戦法では黒はしばらくの間受けにまわらなければならない。戦法によっては白がキング翼で総攻撃をしている間に黒は論理的に中央で開戦することができる。これは「相手が側面で攻撃するときは中央で反撃せよ」というチェスの一般原則に合致している。

白の基本的な作戦は何か

 7.g4 と突く理由は何か。g2-g4 突きは通常はキング翼での直接攻撃だが、その普通の考えと異なりここでは必ずしも黒キングへの直接攻撃を意味しない。それよりも黒ナイトをf6の地点からh5か元のg8のようなどこか働きのない地点へ追い払うだけの目的の方が多い。

 しかしもし黒がg4のポーンの犠牲を受諾することにすれば、白は素通しのg列でキング翼攻撃に移ることができる。

評決はどうなっているか

 この戦法は大乱戦になるのが普通である。白キングは通常の落ち着いたキング翼キャッスリングのあと安全を得ることができないので、7.g4 は針路をはっきり決めた危険な手である。この戦型は10年くらい前に登場して以来何百局も指されている。有名なカスパロフ対ディープジュニアの番勝負第1局のあと改良を要するのは黒のようである。

 もちろん 6…Bd6 は必然ではないが、最も自然でおそらく最善の手である。カスパロフ対ディープジュニアの第3局ではコンピュータプログラムは 6…b6 と指して話題の 7.g4 を避けた。このあとの実戦例から分かるように 7.g4 は必勝の手ではないので黒は避けるべきではなかった。この手はほとんどの 1.d4 d5 の布局の場合よりも複雑で激しい試合になるだけである。

 だからあなたが黒でスラブ/メランを指す選手なら新しい定跡を探す必要はない。この講座を元にもっと研究するだけでよい。

 上図から黒には複数の選択肢がある。

 a)挑戦を受けて立ち 7…Nxg4 とポーンを取る

 b)何も起こらなかったかのようにキャッスリングする(7…O-O)

 c)7…dxc4 とポーンを取ることによりすぐに中央で開戦し 8.Bxc4 のあと
 c1)8…b5
 c2)8…b6

 a)7…Nxg4

 この手は確かに最初に浮かぶ疑問である。黒が「景品」を受け取ったらどうなるのか。白の自然な応手で最善手は次の手である。

8.Rg1

 ここでも黒にはいろいろな選択肢がある。ナイトを当たりから逃がす、ナイトを守る、そして当たりにかまわず反撃するである。

8…Qf6

 ここでは他にも 8…Nh6 や 8…h5 など多くの手がある。その中から一つだけ見ておこう。8…Nxh2 9.Nxh2 Bxh2 10.Rxg7

 ここからの黒の手は多岐に渡る。

 a1)10…h6 と突いてポーンを助けようとするのはポカである。11.f4 のあと黒の黒枡ビショップは「捕虜」のままとなる。11…Qh4+ 12.Qf2 Qxf2+ 13.Kxf2 Nf6 14.Rg2 これは1992年のシャバロフ対メフィストRisc(コンピュータ)戦で、黒のビショップが捕らわれの身となった。

 a2)10…Nf8 でポーン得にこだわる方が良い。もっとも白は 11.Rg2 から e3-e4 で十分な代償がある。次の胸のすくような短手数局(1996年ポルトガルでの通信大会のソウサ対クラブチェンコ戦より)には黒が直面しなければならない危険性がよく現れている。11…Bd6 12.e4 dxc4 13.Bxc4 Bd7 14.e5 Be7 15.Bh6 Ng6 16.O-O-O Nh4 17.Rg7 Nf5 18.Qxf5 黒は 18…exf5 と取り返しても 19.Bxf7+ Kf8 20.Rxh7# で詰みになるので投了した。

 a3)10…Qh4 も 11.e4! Bf4 12.cxd5 Bxc1 13.Qxc1 exd5 14.Qe3! で白が優勢になる。

 a4)10…Qf6(白ルークを追い返す)11.Rg2(白は 11.Rxh7 でポーンを取り返す方より緊張を維持する方を望んだ)11…Bd6 12.Bd2 Nf8 13.O-O-O Bd7 14.Kb1 Ng6 15.f4 Nh4 16.Rf2 a6(16…O-O-O? は 17.cxd5 exd5 18.Nxd5 でポーンを取られる)17.e4 Qxd4 18.Re2 これは1995年ユーゴスラビアでのモゼティッチ対ヨビチェビッチ戦で、白の攻撃が強力だった。

9.Rxg4 Qxf3 10.Rxg7

10…Nf8 11.Rg1

 ルークは自陣に戻っておかなければならない。さもないと …Nf8-g6 とされて戻れなくなるかもしれない。

11…Ng6

 11…Bxh2 は 12.Be2(重要な挿入手)12…Qh3 13.Rf1 で白に十分な代償がある。

12.Be2 Qf6 13.Bd2

 このあと白はクイーン翼にキャッスリングしてそのあと e3-e4 突きにより中央から仕掛けていく。これはこの戦法の重要な局面で、深く研究する価値がある。

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2012年03月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(19)

「Chess Life」2003年5月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御(続き)

 b)7…O-O 8.g5

8…Nh5

 8…Ne4 でポーンを犠牲にするのは、白キングがまだ原位置に留まっていて困難な事態に陥るかもしれないという期待に基づいている。しかし白は正しく指せば次のように贈物を受け取っても安全である。9.Nxe4 dxe4 10.Qxe4 e5 11.Bd2 f5 12.Qh4 e4 13.g6 Qxh4(13…hxg6 は 14.Ng5 Nf6 15.c5 のあと 16.Bc4+ で致命傷になる)14.Nxh4

黒にはポーン損に値する反撃がない。

9.Bd2

 白は 9.Be2 と指すこともできる。

9…f5!?

 ここでは 9…a6 という手もあるが 10.c5 Bc7 11.Ne2! から Ne2-g3 で白がh列を素通しにしてくる。

10.gxf6e.p. Nhxf6 11.Ng5 Qe8 12.O-O-O

 12.f4!? なら黒は 12…e5! 13.fxe5 Nxe5 14.dxe5 Qxe5 15.Nf3 Qh5 で捨て駒により猛攻する面白い機会が得られる。

12…h6 13.h4

13…Bb4!

 13…hxg5 と捨て駒を取るのは良くない。14.hxg5 Ne4 15.Nxe4 dxe4 16.Qxe4 Rf5 17.c5 Bc7 18.Bc4 となって白が攻めて勝つ。

14.Bd3 Bxc3!

 14…b6 のような穏やかな展開の手ならシロフは 15.cxd5! exd5(15…cxd5 なら 16.Nb5)16.Bh7+ Kh8 17.Ne2! から Ne2-f4-g6+ と指すつもりだった。

15.Bxc3 hxg5 16.hxg5 Ne4 17.Bxe4 dxe4 18.Qxe4 Rf5 19.Qh4

 シロフ対トルハルソン戦(レイキャビク、1992年)では白が攻めて勝った。これはこの戦法の最初の試合だった。

 c)7…dxc4

8.Bxc4

 8.e4? は 8…e5 9.g5 exd4 10.Nxd4 Ng4 11.h3 Nge5 12.Be3 Nc5 で黒が良い(アダムズ対カスパロフ、1992年、ドルトムント)。

 c1)8…b5

 8…e5 なら 9.g5 Nd5 10.Bxd5(10.Bd2 exd4 11.Qe4+ Qe7 12.Qxd4 は白が少し優勢)は白が1ポーン得になるが強力なビショップを失う犠牲を伴う。

9.Be2 Bb7

 黒のこの陣形はメラン防御の「通常の」または主流の戦法を想起させる。違いは白のgポーンがg4の地点にあることである。マラニウク対セルペル戦(ルツェルン、1993年)では 9…b4 10.Na4 Bb7 11.g5 Nd5 12.Nc5 Bxc5 13.dxc5 Qa5 14.e4 Ne7 15.Be3 Ba6 16.Bxa6 Qxa6 17.Qe2 Qxe2+ 18.Kxe2 と進んで白の楽な収局になった。

10.e4

 代わりに危険性の少ない 10.g5 Nd5 11.Ne4 Be7 12.Bd2 でも良さそうである。

10…Nxg4 11.h3 Nh6

 ナイトは両当たりにされるのでf6へは戻れなかった。

12.Rg1

 白にしっかり主導権がある(アコピアン対ルゼレ、ベルリン、1996年)。

 c2)8…b6

 カスパロフ対ディープジュニア戦第1局(ニューヨーク、2003年)。

9.e4

 次に 10.e5 で両当たりにする狙いがある。

9…e5

 ケンピンスキー対グラダルスキー戦(1994年)では 9…c5 10.g5(10.e5 は 10…Bb7 11.Be2 cxd4 12.exf6 dxc3 13.fxg7 Rg8 14.Qxh7 Nf6 で黒にいくらか反撃を許す)10…Nh5 11.Be3 O-O 12.O-O-O cxd4 13.Nxd4 Bf4 14.Rhg1 g6 15.Ncb5 Bxe3+ 16.fxe3 Qe7 17.Nc7 で白が交換得になり楽に優勢になった。

10.g5 Nh5

 10…exd4? は 11.Nxd4(ただし 11.gxf6 には 11…Qxf6!)で黒の戦力損になる。

11.Be3 O-O 12.O-O-O Qc7 13.d5

 コンケスト対カチェイシビリ戦(カルカッタ、1995年)では 13.Kb1 g6(13…exd4 14.Nxd4 Nf4? は 15.Ndb5 のために黒がナイトを働かせることができなかった)14.d5!(カスパロフの試合と同様の手法)でやはり白が優勢だった。

13…b5

 13…c5 なら上述の解説中の試合のように黒が堅固だが受けに偏した態勢になる。

14.dxc6 bxc4 15.Nb5 Qxc6 16.Nxd6

 これで白が圧倒的に優勢になり27手で勝ちきった。

結論

 スラブ防御のメラン戦法は得意戦法に加えるのによい定跡である。黒は駒を積極的に動かして働かせる機会が得られる。しかしこの戦型では両者にとって指し方が非常に激しく危険になる。きちんと理解し研究しておけば黒は積極的な指し方のできる開放的な試合に恵まれる。スラブ防御を常用戦法に取り入れるならば、特に相手に 7.g4 を指させるならば、研究と準備を怠らないようにしなければならない。ディープジュニアは正しい指し方を見つけることができずたった9手で定跡からはずれ惨敗を喫した。もっと良い指し手を見つけることは可能である。

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2012年04月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(20)

「Chess Life」2003年6月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御クラシカルシュタイニッツ

 今月はフランス防御のクラシカルシュタイニッツ戦法を取り上げる。これは次の手順で始まる。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 白のもっと堅実な選択肢は主流手順の 4.Bg5 である。しかし本稿ではもっと積極的な 4.e5 だけを取り上げる。これはシュタイニッツの昔の得意戦法で、最近の試合のカスパロフ対ラジャーボフ戦でも指された(この試合はカスパロフの故郷と同じバクー出身の15歳のGMが憧れのチャンピオンを破ったのであちこちで大見出しになった)。

 世界の最も有名な選手たち、例えばアレクセイ・シロフ、ビクトル・コルチノイ、アレックス・モロゼビッチ、エブゲニー・バレエフ、ラファエル・バガニアン、ミハイル・グレビッチ、ボリス・グリコ、そして年少のテイムール・ラジャーボフらのGMが重要な常用定跡としてフランス防御を指している。

白の基本的な作戦は何か

 白は陣地の広さで優位に立ち、正しい手順を踏めば要所のd4の地点を支配することになる。白は黒の応手によってはクイーン翼にキャッスリングしてキング翼で攻撃を開始するかもしれないし、黒の白枡ビショップがポーンの壁(d5、e6)に埋もれているので収局でじわじわと締めつけるかもしれない。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は通常はd4の地点を攻撃することにより白の中原を切り崩そうとする。それにはaポーンとbポーンを突きさらにc列に圧力をかけることによりクイーン翼での反撃策を探すべきである。この典型的な「フランスポーン構造」によくあるように、…f7-f6 と突き、時には …g7-g5 とさえ突いて白の中原支配を弱める機会を常に探すべきである。

それで評決はどうなっているか

 フランス防御は 1.e4 に対する黒の人気の高い防御法である。黒には優れた反撃力がある。しかしc8の使いにくいビショップのように欠点もいくつかある。一つ心しておくべきことは、中盤で大乱戦になることがあること、あるいは非常に退屈な収局の戦いになることがあることである。だからどちらの事態も覚悟しておく必要がある。

 クラシカルシュタイニッツはフランス防御への対処でより積極的な手段の一つとみなされている。白は黒の反撃の可能性について注意していなければならない。特にd4とe5のポーン、それにクイーン翼ではc列に注意がいる。もし白がやりすぎて攻撃が成功しないと、多くのポーンを突いてしまっているので容易に裏目に出ることになる。

フランス防御 [C11]
白 GMガリー・カスパロフ
黒 GMテイムール・ラジャーボフ
リナレス、2003年

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 ここが今回の出発点である。5.f4 の代わりに白は 5.Nce2 と指して 5…c5 に 6.c3 を意図することもできる。

5…c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3

 ここで黒には主要な手が三つある。A)7…a6 これは本局である。B)7…Qb6 または C)7…cxd4

 A)7…a6

 この手は 7…Qb6 や 7…cxd4 と比べると少し直接性に欠ける。黒は …b7-b5 をもくろんでいる。

8.Qd2

 この自然そうな手の目的はd1の地点をルークのために時にはナイトのために空け、クイーン翼キャッスリングを可能にし、将来 Qd2-f2 と指すことである。

8…b5 9.a3

 これは珍しい手である。カスパロフの布局研究は有名なので「研究済み」の手に間違いない。これからこの手がたくさん見られると思う。この手の意味はたぶんc5でポーン交換をしてから b2-b4 と突いてクイーン翼の黒枡をしっかり支配することである。この試合以前は最もよく指される手は 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 だった。そのあと白の普通の手順は 12.Bd3(面白い 12.b4 も以前に指されている)12…b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6

で、どちらにとっても面白い試合になる。

9…Qb6

 これはこの戦法によく出てくる手で、d4ポーンにさらに圧力をかけている。

10.Ne2

 白はd4の地点での交換を誘っていて、10…cxd4 11.Nexd4 Nxd4 12.Nxd4 となればせき止めに最良の駒でそこを占拠することになる。

10…c4

 黒は作戦を変更し中央を閉鎖した。これで白はキング翼で黒はクイーン翼で好き勝手ができる。しかし中央では白が陣地の広さで優位に立っている。

11.g4 h5

 黒は白のポーン雪崩を妨害しようとしている。しかしこれから出てくるようにあまり助けになっていない。前進を遅らせるだけである。

12.gxh5 Rxh5 13.Ng3 Rh8 14.f5

 カスパロフは仕掛けに成功し、自陣の広いキング翼を開放状態にした。主導権は白にある。

14…exf5 15.Nxf5

 ここでは黒に主要な問題が二つある。a)キングが安全な状態からほど遠いこととb)d5のポーンが弱いことである。ということは白は布局の戦いに勝利したということである。試合は黒が勝ったけれどもそれは白がこのあと悪手を出したからである。黒は改良手を探すことが絶対必要である。

15…Nf6 16.Ng3 Ng4 17.Bf4 Be6 18.c3 Be7 19.Ng5 O-O-O 20.Nxe6 fxe6 21.Be2 Ngxe5 22.Qe3

 白はこの手で安全に優勢を維持した。しかし白が 22.Bxe5 Nxe5 23.dxe5 Bc5 で捨て駒を受け入れたら黒は十分な代償があるのか疑問に思う。

22…Nd7 23.Qxe6 Bh4 24.Qg4?

 カスパロフは若い相手を「苦境から」助け出した。代わりに 24.Qxd5 なら白が明らかに優勢のままだった。

24…g5 25.Bd2 Rde8 26.O-O-O Na5

27.Rdf1?

 このポカで黒の勝勢になった。27.Kb1 ならまだ白が良かった。

27…Nb3+ 28.Kd1 Bxg3

 黒は思いがけず …Qb6-g6-b1# の狙いができたおかげで勝勢になった。

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2012年04月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(21)

「Chess Life」2003年6月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御クラシカルシュタイニッツ(続き)

 B)7…Qb6

 黒はこの手でd4の地点に圧力をかけているだけでなく、b2のポーンを当たりにしている。欠点は白がすぐに攻撃を始めることができることである。

8.Na4

 ここで黒がポーン損を避ける手は一つしかない。

8…Qa5+ 9.c3

 白はチェックをさえぎりながらナイトも(クイーンで)守った。

9…cxd4

 9…c4 と突けばa4のナイトが遊び駒になるようなので黒が優勢になるように見える。しかし 10.b4 のあと白は好形になり黒はクイーン翼で反撃を行なうのが困難になる。

10.b4

 これが白の作戦の根幹である。10.Nxd4 では 10…Nxd4 11.Bxd4 b5 と応接されて黒の戦力得になる。

10…Nxb4

 この駒切りは何度も指されていて、長年の間多くの研究の主題となってきた。黒が穏やかに 10…Qc7 と引くと白は 11.Nxd4 Nxd4 12.Bxd4 で要所のd4の地点をしっかり支配したことにより優勢になる。

11.cxb4 Bxb4+ 12.Bd2 Bxd2+ 13.Nxd2

 最後の2手は必然である。ここで局面は少し決まりがついた。黒はナイトの代わりに3ポーンを得た。しかしそのうちの二つはd列で二重ポーンになっている。だからそれらは通常の価値はない。この時点で黒は攻勢的な 13…g5 と堅実な 13…b6 を選ぶことができる。

13…g5

 13…b6 なら 14.Bd3 Ba6 15.Nb2(この手は非常に大切で、15.Bxa6 だと 15…Qxa6 で白はキャッスリングが困難になる)15…Nc5 16.Bxa6 Qxa6 となる。数多くの試合で 17.Qe2 により白が優勢になっている。しかしGMギンダの推奨する 17.a4 の方がずっと良いかもしれない。

14.Rb1!

 14.fxg5 は 14…Nxe5 で中原の黒ポーンが威容を誇る。

14…gxf4

 黒はいくつかの試合で 14…a6 も試したが次のようにうまくいかなかった。15.Bd3 gxf4 16.O-O b5 17.Nb2 Nxe5 18.Rxf4 黒キングに安全な避難場所がないので白の攻撃が強力である。

15.Bb5

 白はこの釘付けでe5のポーンを守り、強力な主導権を握っている。ここで 15…Rb8 なら 16.Nc5 でショート対ティマン戦(1994年)になり、15…a6 なら 16.Bxd7+ Bxd7 17.Nb6 となる。最善は 15…Kf8 だろうが 16.Qe2 のあと私なら白の方を持つ。

 C)7…cxd4 8.Nxd4

8…Bc5

 8…Qb6 は 9.Qd2 Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.Bb5!(11.Ncb5 は 11…Qxa2 12.Rb3 Rb8 であまりはっきりしない)で 11…Ndb8 がほぼ絶対で、12.O-O のあと f4-f5 突きで白にポーンの代償が十分にあり攻撃も有望である。

9.Qd2

 この手はクイーン翼キャッスリングの用意である。ここで黒には主要な手が二つある。

9…O-O

 9…Nxd4 なら 10.Bxd4 Bxd4 11.Qxd4 Qb6 となる。過去20年でこの戦型は一流選手の対局で盛んに指された。黒番で引き分ければ小さな成功とみなされることがよくある。もちろんビショップの差で白が少し優勢である。

10.O-O-O

 両者が逆翼にキャッスリングするときは乱戦になることが多い。どちらの攻撃が先に成功するかを見る競争になる。

10…a6 11.Kb1

 すぐに 11.h4 と突いても 11…Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Rh3 b4 14.Na4 Bxd4 15.Qxd4 a5 で黒はあまり痛痒を感じない。

11…Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Qe3 Qc7 14.Bd3 b4

 ルターが2001年にオフリドでのヨーロッパ選手権戦で妹のユディット相手に指したように 14…Bxd4 15.Qxd4 Bb7 16.Rhe1 Nc5 が黒の改良手となるかもしれない。

15.Qh3

 白はこの手で黒キングの上部の弱体化を促している。

15…g6 16.Ne2 a5 17.Qe3 Ba6 18.h4 Rfc8 19.h5

 白はこのあとh列を素通しにし Qe3-h3 が良い手になってくる。もちろん上記の手順はすべて必然というわけではない。黒は14手目を改良することができ、たぶん他の手もそうである。

結論

 フランス防御クラシカルシュタイニッツは活気に満ちた非常に面白い布局定跡である。どの戦型を選ぶかにより逆翼キャッスリングの攻め合いになることもあれば、白がわずかに有利な長く複雑な収局になることもある。戦型Bで見たように異例の乱戦になることさえある。しかし両者とも非常に繊細な指し方が必要である。

 フランス防御のこの戦法は人気のある布局の一つとして考えるべきである。フランス防御を指すことにするなら時間を注いでもっと深く研究すべきである。そうすれば報われる。

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2012年04月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(22)

「Chess Life」2003年7月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット受諾

 今月はクイーン翼ギャンビット受諾を取り上げる。これは 1.d4 に対する非常に堅実な防御で、世界の一流選手の多くによって指されている。ちょっと名前を挙げただけでもビスワーナターン・アーナンド、ワシリー・イワンチュク、プレドラグ・ニコリッチ、ビクトル・コルチノイ、ジョエル・ローチェ、バレリー・サロフらがいる。ジョエル・ベンジャミン、ヤセル・セイラワンのような米国の一流グランドマスターたちの中にもこれを得意戦法の重要な一部としている者がいる。私も子どもの頃から指している(たいてい楽しい思い出になっている)。

 クイーン翼ギャンビットでは黒はちょうどキング翼ギャンビットのように2手目でギャンビットを受諾するか拒否するかを選択しなければならない。どちらにしても好みの問題である。受諾にも拒否にもそれぞれ支持派がいる。今月の題材はクイーン翼ギャンビット受諾の方で、1.d4 d5 2.c4 dxc4 から始まる。

 この布局では黒は2手目でポーンを得するが長く保持することはできない。それはほとんどの場合c4のポーンを守る良い方法がないからである。

黒の基本的な作戦は何か

 この布局では黒は早くも2手目で序盤の基調を決める。犠牲にされたポーンを受諾することにより黒がポーン得になるのは一時的でしかないのが普通である。白がc4のポーンを取り返す用意ができるときまでには、黒は …c7-c5 突きだけでなく …a7-a6 から …b7-b5 と突き中央で反撃する用意が整っていることが多い。

白の基本的な作戦は何か

 黒が犠牲のポーンを受諾することにより中原のe4の地点の支配を放棄するので、白は 3.e2-e4 突きですぐに中原を支配することにより攻勢に出ることを選択することができる。多くの他の戦法のように白の主要な戦闘地域は中央である。

それで評決はどうなっているか

 この布局の黒は堅実で、白が強引に攻め急ごうとすると黒に反撃の好機をもたらすことになる。どちらにとっても指せる布局である。黒としては常用戦法に加えるのに適した布局かもしれない。しかし効果をあげるためには詳細な研究が必要である。白は 2.Nf3 で c2-c4 突きを遅らせることによりこの戦法を避けただのdポーン布局を指すことができる。

 1.d4 d5 2.c4 dxc4 の始まりのあと白には主要な選択肢が三つある。それらはa)3.e3b)3.e4 そして c)3.Nf3 である。

 a)3.e3

 白はすぐにc4のポーンを当たりにした。黒はこのポーンを守る良い方法がない。3…b5 は 4.a4 で白がポーンを取り返す。例えば 4…a6 なら 5.axb5 でa6のポーンが釘付けになっているので黒は取り返せない。4…c6 でも駄目である。白は 5.axb5 cxb5? 6.Qf3! と応じることができa8のルークが守れない。4…bxa4 なら白は容易にc4とa4のポーンを取ることができ、黒のa列とc列の弱いポーンのために白の方が有利な陣形になる。

3…e5

 黒はもっと安全に 3…Nf6 のあと 4…e6 から 5…c5 と指すことができ、3.Nf3 の主手順に移行する。

4.Bxc4

 4.dxe5 Qxd1+ 5.Kxd1 Nc6 6.f4 Be6 は黒がうまくやっている。

4…exd4 5.exd4

 白には孤立dポーンがある。これは潜在的な弱点になり得る。しかし当分はこの先の中盤戦に向けて白が中原のd4とe5の地点をしっかり支配することになる。これは黒の反撃を制限するためには重要である。

5…Nf6

 5…Bb4+ 6.Nc3 Nf6 7.Nf3 O-O 8.O-O なら黒が 8…Bg4 と指すことができる。しかし1986年のマラニウク対ぺカレク戦のように 9.h3 Bh5 10.g4 Bg6 11.Ne5 Nfd7 12.f4 で事は簡単でない。9.h3 には 9…Bxf3 10.Qxf3 Nc6 と交換する方が良い。しかし 11.Be3 で白が少し優勢である。

6.Nc3

 6.Qb3 も面白い手で、黒に 6…Qe7+ 7.Ne2 Qb4+ 8.Nbc3 Qxb3 で収局に入らせる。この戦型では黒は展開で遅れたままだがポーンの形で優っている。

6…Be7 7.Nf3 O-O 8.h3

 これは …Bc8-g4 を防ぐ大切な手である。

8…Nbd7 9.O-O Nb6 10.Bb3 Nbd5 11.Re1 c6 12.Bg5 Be6 13.Ne5

 白陣は好形になっている。白の作戦は戦力得に向けた適切な戦術の機会を探しながら、中央でそしておそらくキング翼でも圧力を強めることである。黒は数多くの落とし穴にはまらないように細心の注意を払わなければならない。しかし黒がうまくやれば、そして局面を単純化して収局に持ち込むことができれば、白の孤立d4ポーンのせいで優勢は黒に転がり込む。

 b)3.e4

 これは「受諾」に対する最も直接的で野心的な手と考えられている。ここで黒には四つの選択肢がある。

 b1)3…e5

 定跡の最新の宣託によると4種類の手の中でこれが最善である。

4.Nf3 exd4

 まず 4…Bb4+ と指してから …e5xd4 と取ってもよい。

5.Bxc4

 d4のポーンを取るよりもこちらのポーンを取る方が良い。

5…Bb4+ 6.Nbd2 Nc6 7.O-O Nf6

 黒は 7…Qf6 8.e5 Qg6 でポーン得にしがみつくこともできた。しかし 9.a3 Be7 10.Re1 となって1988年のカルポフ対ティマン戦のように白にポーンの代償が十分にある。

8.e5 Nd5 9.Nb3 Nb6 10.Bb5 Qd5 11.Nfxd4 O-O

 いい勝負である(ポルティッシュ対ヒューブナー、ティルブルフ、1988年)。

 b2)3…c5

 これは私の「十八番(おはこ)の手」だった。楽しい思い出がたくさんある(3.Nf3 に対してもそうだったが1990年代に入ると相手はこの戦型の弱点を見つけ始めた)。

4.d5

 4.Nf3 は 4…Nf6 5.Nc3 cxd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 e5 8.Ndb5 Kd8! となったあと 9.Bxc4 a6 10.Na3 b5 でもマルコム・ペイン対スーザン・ポルガー戦(ニューヨーク、1986年)のように 9.Be3 Be6 10.Bxa7 Nbd7 11.Be3 Bb4 でも黒が指しやすい。

4…Nf6 5.Nc3 e6

 5…b5 はあまり指されないが面白い手である。

6.Bxc4 exd5 7.Nxd5 Nxd5 8.Bxd5 Be7

 ここで 9.Nf3(コルチノイが私に対して指した)でも 9.Ne2 でもd5のビショップが強力なので白が少し優勢である。

 b3)3…Nf6

 この手は白の次の手を誘っている。

4.e5

 この手はd5の地点を弱めd4のポーンを出遅れポーンにする。

4…Nd5 5.Bxc4 Nb6 6.Bb3

 6.Bd3 も面白い手である。

6…Nc6 7.Be3 Bf5 8.Nc3 e6 9.Nge2 Be7 10.a3 O-O 11.O-O

 初めは白の出遅れd4ポーンのせいで黒が優勢のように思える。しかし白は陣地が広く、そのためにカルポフが自分のいくつかの似たような局面で示したように少し優勢である。

 b4)3…Nc6

 これは最も人気のない手である。4.Nf3 Bg4 でd4のポーンにさらに圧力が加わるが 5.d5 Ne5 6.Bf4 Ng6 7.Bg3 e5 8.Bxc4 で白がポーンを取り返して少し優勢である。

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2012年04月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(23)

「Chess Life」2003年7月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット受諾(続き)

 c)3.Nf3

3…Nf6

 他には 3…c5 があり白の最善の応手は 4.d5(4.e3 なら 4…cxd4 5.exd4 のあと黒は変わった手だが 5…Be6 で好形になる)である。また 3…a6 もあり、3.Nf3 Nf6 4.Nc3 のあと険しい局面になるのを避ける手順としてよく用いられる。

4.e3

 4.Qa4+ は 4…c6 5.Qxc4 Bf5 6.Nc3 e6 7.g3 Nbd7 8.Bg2 Be7 9.O-O O-O でカタロニア布局のような局面になりどちらも指せる。

 4.Nc3 は黒が次のようにやってくれば長期的なポーンの犠牲を伴う。4…a6(白は黒が 4…c6 と指す場合に備えてスラブ防御に移行してもよいように準備しておく必要がある)5.e4 b5(「受諾」の多くの他の局面と異なり黒はこの戦型では安全にポーンを守ることができる)6.e5 Nd5 7.a4 Nxc3 8.bxc3 Qd5(b5でポーン交換になる事態に備えてa8のルークに紐をつけた)9.g3 Bb7 10.Bg2 Qd7

 複雑な局面だが 11.Ba3 のあと白には犠牲にしたポーンの代償がある。

 4.Nc3 に対して黒が 4…c5 と応じれば 5.d5 e6 6.e4 exd5 7.e5 Nfd7 8.Bg5 Be7 9.Bxe7 Qxe7 10.Nxd5 Qd8 で非常に激しく面白い局面になる。しかしクイーン翼にキャッスリングするつもりで 11.Qc2 と指せば白に好機が訪れるかも知れない。

4…e6

 他に考えられる手は 4…Bg4 5.Bxc4 e6 6.h3 Bh5 7.Nc3 で、黒はここで手を選ぶ必要がある。7…a6 は 8…Nc6 のあと …Bd6 から …e6-e5 の予定だが 8.g4 Bg6 9.Ne5 で白に主導権を与える。また 7…Nbd7 も同じく …Bd6 から …e6-e5 の着想である。

5.Bxc4 c5 6.O-O

 6.Qe2 もありクイーン交換を避けながら次の手でc5の地点でポーンを交換する考えである。対称形の局面では白は先着の利でわずかに優勢になることが多い。

6…a6

 この手は …b7-b5 から …Bb7 の準備である。ここで白には三つの選択肢がある。

 c1)7.Qe2 b5 8.Bb3

 d3に引く方が黒にとって問題が少ないと考えられている。

8…Bb7 9.Rd1

 代わりに 9.a4 もよく指されている。黒がa4でポーンを交換すれば半素通しのa列にあるa6のポーンを守るのにいくらか苦労するかもしれない。…c5-c4 はほとんどの場合勧められない。というのは中原の争点を解消するのが早すぎて、白に好きなときに e3-e4 から d4-d5 と突かせるか時にはクイーン翼で b2-b3 と突かせてしまうからである。だからたぶん 9…b4 が最善の応手である。

9…Nbd7 10.Nc3

 この局面で黒は長年に渡っていろいろな手を試してきた。そして現在の結論はクイーンをd列でのX線の狙いからはずすべきであるとなっている。

10…Qb6

 10…Qb8 や 10…Qc7 もよさそうである。実際 11.d5 のあとd5の地点で総交換になって …Qb7 と指すことになれば主手順と一致することになる。そうなればクイーンがどこからb7の地点に来たかは問題でない。

11.d5 Nxd5 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 exd5 14.Rxd5 Qb7 15.e4 Be7 16.Bg5 Nb6

 黒陣は崩れていない。白の最善手は 17.Rad1 で、黒は犠牲(d5)を受諾するのは危険すぎるので 17…f6 のあと 18…O-O でできるだけ早くキングの安全を図る方が良い。

 c2)7.a4

 この手は黒の作戦を止めるが自分のb4の地点を弱める。

7…Nc6 8.Qe2 cxd4 9.Rd1 Be7

 黒はe列での釘付けのために 9…e5 でポーンを守る余裕はなく、展開の完了を急いでキングを安全にしなければならない。

10.exd4 O-O 11.Nc3

 この手により a2-a4 突きによる弱点を伴った典型的な孤立ポーンの中盤戦になる。どちらにとっても指せる局面である。

 c3)7.dxc5

 白は収局を目指している。去年のバーレーンでのクラムニク対ディープフリッツ戦ではうまくいった。

7…Qxd1 8.Rxd1 Bxc5

 しかし人間が正しく受け辛抱強く指せば互角を維持するのに何の問題もないはずである。

結論

 クイーン翼ギャンビット受諾は私の好きな布局の一つである。非常に棋理に合った堅実な原則に基づいていて戦略上の弱点を何も生じさせない。白の選択する応手によって非常に平和的で穏やかな局面になることもあるし非常に難解で拮抗した局面になることもある。ほとんどの場合黒の指せる局面にすることができる。うまく指しこなしたいならばもっと深く研究するようにしなければならない。さらに研究を積めばどんな相手にも通用する良い武器となる。

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2012年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(24)

「Chess Life」2003年8月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

オランダ防御現代レニングラード戦法の 7…Qe8

 1980年代にIMウラジーミル・マラニウクがオランダ防御現代レニングラード戦法と呼ばれる 7…Qe8 を採用し広めた。今月はこれを集中的に取り上げる。7…Qe8 の着眼点は単純で、…e7-e5 と突くためにeポーンを補強することである。

白の基本的な作戦は何か

 白の作戦は適当なときに e2-e4 と突くことによりe列の素通しを図ることである。白がこれに成功すれば黒のe6の地点だけでなくe7のポーンが弱点となってつけ込む標的になり大きな優位に立つ。

黒の基本的な作戦は何か

 この布局における黒の着想は次のとおりである。キング翼インディアン防御において黒はしばしば …Nf6-e8 または …Nf6-h5 のあと …f7-f5 と突きナイトをf6の地点に戻さなければならない。だから2手余計にかかる。これに対して現代レニングラードでは黒が …e7-e5 と突くことができればキング翼インディアン防御に似た陣形を2手少ない手数で構築できる。黒の最終的な目標は …f5-f4 と突いてキング翼を攻撃することである。白が d4-d5 と突くことにより黒の …e7-e5 突きを防げる戦型では黒はクイーン翼に反撃を求めることが多い。

それで評決はどうなっているか

 現代レニングラードは黒の非常に意欲的な布局で激しい戦いになる可能性がある。白は主導権を維持しながら黒の動きと反撃を抑えるために正確さを要求される。この布局は他の布局ほどはよく知られていない。だから相手を驚かす効果があるかもしれない。

 世界の多くの強豪グランドマスター、例えばウラジーミル・クラムニク(初期の頃)、アルツール・ユスポフ、ミハイル・グレビッチ、エブゲニー・バレエフ、ウラジーミル・アコピアン、ウラジーミル・マラニウク、セルゲイ・ドルマトフ、それに加えて私がこの布局を黒での常用戦法の一部にしている。黒にとって活気のある布局で、反撃力もある。

 最も普通の出だしの手順は次のとおりである。

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nf3 Bg7 5.O-O O-O 6.c4 d6 7.Nc3

 この局面でよく指されてきた手は 7…c6 と 7…Nc6 でどちらも黒が十分指せる。しかし今日の定跡では白が少し有望とされている。

7…Qe8

 白の応手は多岐に渡る。戦型1ではあまり人気のない指し方を取り上げる。一方戦型2と戦型3では主流手順を分析する。戦型4ではそもそも黒の作戦を避けるための白の面白くて複雑な手を紹介する。

戦型1 8.Re1

 この手は e2-e4 突きの準備で、理にかなっている。

 8.e4 fxe4 9.Ng5 で一時的にポーンを犠牲にするのは次のように黒に何も問題を生じさせない。9…Nc6 10.Be3(白はd4のポーンが落ちるのですぐにe4のポーンを取ることはできない)10…Bg4 11.Qd2 Qd7 12.Ngxe4 Nxe4 13.Bxe4 Bf3 14.Bxf3 Rxf3 15.Ne4 d5(アフィフィ対ユスポフ、1985年)

 他には 8.Qb3 もやってみる価値がある。しかし次のように正確に受ければ黒が大丈夫である。8…c6 9.d5 Na6 10.Be3 Ng4 11.Bd4 e5 12.dxe6e.p. Ne5!(白に有利な黒枡ビショップ同士の交換を避けた)13.Rad1 Qxe6(カルポフ対M.グレビッチ、1989年)また 8.Nd5 も白にとって面白い着想である。

8…Qf7

 このあまり見かけない手で黒はc4のポーンを当たりにすることにより重要な1手を稼いでいる。

9.b3 Ne4 10.Bb2

 10.Nxe4 は 10…fxe4 でf3のナイトが逃げなければならずf2のポーンをチェックで取られるので白はまだe4の駒を取ることができない。

10…Nc6 11.e3 e5 12.Rc1 Nxc3 13.Bxc3 e4 14.Nd2 a5 15.a3 Bd7 16.b4 axb4 17.axb4 b5!

 この軽妙なポーンの犠牲で黒はd5などの重要な白枡を支配できる。黒の面白い局勢である(フラク対バレエフ、1990年)。

戦型2 8.b3

8…Na6

 すぐに 8…e5 と突くのも多くの試合で試されたが 9.dxe5 dxe5 10.e4 Nc6(10…fxe4 なら 11.Ng5)11.Nd5 で白が有利のようである。

9.Ba3

 カルポフのこの手(相手の作戦を未然につぶす彼特有の手)の意味は黒の主要な作戦の …e7-e5 突きによる自陣解放を防ぐことである。この手のあと黒はd6のポーンが釘付けにされているので作戦の遂行に長期的な問題を抱えることになる。9…e5 10.dxe5 のあとa3のビショップよりもf8のルークの方が大切なので黒は 10…dxe5 と取り返せない。

 9.Bb2 は自然な手でよく指されてきた。1例はカスパロフ対マラニウク戦(全ソ連選手権戦、1988年)である。いくらか手順の相違はあるが 9…c6 10.d5 Bd7 で次の局面になった。

 11.Rc1 h6(黒は …Qe8-f7 でd5のポーンを攻撃する予定なので Nf3-g5 を防ぐ必要がある)12.e3(マラニウクによればおそらく 12.Nd4 の方が良い)12…Rc8 13.Nd4 Qf7 14.Ba3 cxd5 15.Nxd5(15.cxd5 なら 15…Nc7)15…Ne4! 16.f3 Nec5 17.Nb5 Bxb5 18.cxb5 Nc7 19.Nxc7 Rxc7 20.Bxc5 dxc5 21.f4 ここで合意の引き分けになった。

9…c6 10.Qd3

 白は中原を支配し潜在的な弱点のe6の地点とe7のポーンを攻撃するためにe列を素通しにするために e2-e4 突きを準備している。

10…Rb8

 カルポフ対マラニウク戦(全ソ連選手権戦、1988年)では黒は指し手が少しおとなしすぎて白が次のようにわずかな優勢をきれいに勝利に結びつけることができた。10…Bd7 11.Rfe1 Rd8 12.Rad1 Kh8 13.e4 fxe4 14.Nxe4 Bf5 15.Nxf6 Bxf6 16.Qe3 Qf7 17.h3!(…Bg4 による釘付けの防ぎ)17…Nc7 18.Re2 Bc8 19.Ng5 Qg8 20.Qd2 Ne6 21.Nxe6 Bxe6 22.Rde1 Bd7

23.Rxe7!(e列の支配に成功したあとカルポフは大局観に基づいたこの果断な交換損で黒枡の支配による圧倒的な優勢に立った)23…Bxe7 24.Rxe7 Rf6 25.d5! Qf8 26.Re3 Kg8 27.Bb2 Rf5 28.Qd4 Re5 29.Rxe5 dxe5 30.Qxe5 Kf7 31.d6 Bf5 32.c5 h5 33.g4 hxg4 34.hxg4 Bd3 35.Bd5+ 黒投了

11.e4

 他の 11.Rfe1 のようなもっと穏やかな手なら黒は 11…b5 と指す。

11…fxe4 12.Nxe4 Bf5 13.Nxf6+ Bxf6 14.Qe3 b5 15.Rac1 Nc7 16.Rfe1 Qd7 17.Rcd1

 マイルズ対クラムニク戦(モスクワ、1989年)では黒は 17…Bg4 と悪手を指し41手で負けた。しかし 17…Qc8! と指せば混戦に持ち込めるところだった。この手には 18…Qa6 でa3とc4の二箇所をすぐに攻撃する狙いがある。

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2012年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(25)

「Chess Life」2003年8月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

オランダ防御現代レニングラード戦法の 7…Qe8(続き)

戦型3 8.d5

 この手の意図は黒が …e7-e5 と突いてきたらアンパッサンで取ることである。

8…Na6

 他には 8…a5 と突く手も面白い。

9.Rb1

 9.Nd4 も当然考えられる手で(e2-e4 で中央から突っかける準備)、9…Bd7(9…Nc5 なら 10.b4)10.e4 fxe4 11.Nxe4 Nxe4 12.Bxe4 Nc5 13.Bg2 a5 14.Bg5 Qf7 15.Qd2 のあと 15…e5 16.dxe6e.p. Nxe6 17.Nxe6 Bxe6 なら互角のようである。

 数年前ニュージーランドで指した次の試合には個人的に楽しい思い出がある。9.Be3 Bd7 10.Qd2 Ng4 11.Bf4 Nc5 12.h3 Nf6 13.Nd4 c6 14.Rac1 Nce4 15.Nxe4 Nxe4 16.Bxe4 fxe4 17.Kg2 Qf7 18.dxc6 bxc6 19.Bh6 c5 20.Bxg7 Kxg7 21.Nb3 Qe6 22.Rh1

22…Rxf2+! 23.Kxf2 e3+ 24.Qxe3 Rf8+ 25.Qf3 Bc6 26.Qxf8+ Kxf8 27.Rhf1 Ke8 28.Rc3 Qf5+ 29.Ke1 Qb1+ 30.Kf2 Qf5+ 31.Ke1 Qxh3 32,Nd2 Bg2 33.Rf2 Qh1+ 34.Nf1 h5 35.e3 Bxf1 36.Rxf1 Qg2 37.Rb3 Qxg3+ 46手目で相手が投了した(カー対ポルガー、ウェリントン、1988年)。

9…Bd7 10.b4 c5 11.dxc6e.p.

 11.bxc5 と取るのは戦略的に間違っている。というのは 11…Nxc5 と取られて黒ナイトがc5の地点に絶好の拠点を得ると共に白の出遅れcポーンをうまく押さえることになるからである。

11…bxc6

 クラムニク対マラニウク戦(モスクワオリンピアード、1994年)では 11…Bxc6 12.Qb3!(一見当然の 12.b5?! は 12…Bxf3 13.Bxf3 Nc5 14.Be3 Rc8 で黒陣が堅固である)12…Ne4 13.Bb2 で白が優勢だった。

12.b5

 12.Nd4 なら黒は面白いけれどいくらか危険な捨て駒の 12…Nxb4 13.Rxb4 c5 を敢行することができる。しかしそれよりも 12…Rb8 または 12…Rc8 と指す方が安全である。白のもっとおとなしい 12.a3 には黒は 12…Nc7 13.Bb2 Ne6 14.Na4 c5 15.b5 f4 16.Nc3 g5 と指して攻撃の可能性に恵まれた(アンツネス対M.グレビッチ、1994年)。

12…cxb5

 取らずに 12…Nc5 と指すこともできる。

13.cxb5 Nc5 14.a4

 代わりに 14.Nd4 は 14…Nfe4 15.Nxe4 Nxe4 16.a4 Qf7 となってどちらも指せる分かれである。

14…Rc8 15.Bb2 a6 16.Nd4 axb5 17.axb5 Nfe4

 形勢は互角である(グリーンフェルド対マラニウク、1993年)。

戦型4 1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nh3

 この変わったナイトの展開方法は 4.Nf3 と比較した差異を黒が無視すると困難に見舞われることになる。ここでの白の着想は黒が通常どおり …Bg7、…O-O そして …d7-d6 と指した場合黒陣にできるe6の地点の弱点に(白のd5のポーンをさらに強化しながら)つけ込むことである。早く h2-h4 と突いて直接攻撃するもっと過激なやり方はこのあとの実戦例に出てくる。

4…Bg7

 意外なことに …e7-e5 で解放する作戦を急ぐためには、次のように黒の黒枡ビショップの展開を遅らせる方が良いようである。4…d6 5.Nf4 c6 6.h4 e5 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8+ Kxd8 9.Nd3 Nbd7 10.Bg5 Be7!

ここに違いが出る。11.Nd2 e4 12.Nf4 Ne5(エインゴルン対ドルマトフ、1990年)

5.Nf4

5…O-O

 5…c6 なら 6.h4 d6 7.Nc3 e5 8.dxe5 dxe5 9.Qxd8+ Kxd8 10.Nd3 Nbd7 11.e4 Re8 12.Bg5 h6 13.Bd2 Nb6 14.O-O-O で白が収局で少しだが着実に優勢になる(スミスロフ対オル、1993年)。

6.h4 d6 7.c3 c6 8.Qb3+ d5 9.h5 g5 10.h6 Bh8 11.Nd3 g4 12.Bf4 Nbd7 13.Nd2 e6 14.f3 Qe7 15.Qb4 Qf7 16.Bd6 Rd8 17.O-O-O b6? 18.Ne5! Nxe5 19.dxe5 Ne8 20.Qf4 Ba6 21.Ba3 Qg6 22.fxg4 Bxe2 23.gxf5 exf5 24.Bh3 Bg4 25.Nf3 Bxf3 26.Bxf5 Bxe5 27.Be6+ 黒投了(サフチェンコ対マラニウク、1989年)

結論

 現代レニングラード戦法は攻撃的で戦術派の選手にとっては黒番に向いた布局である。黒は勝ちを求めて指すことができ、相手が予期していないときは特にそうである。得意戦法の一つにこの布局を取り入れるつもりならばもっと深く学び研究することをお勧めする。

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2012年05月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(26)

「Chess Life」2003年9月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御アラピン戦法

 今月はシチリア防御のアラピン戦法を取り上げる。この戦法が指されるのはシチリア防御の主流手順の習得に多くの時間を割きたくないと考える人が多いからである。2.c3 の主たる意図は通常の 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 のようにナイトでd4のポーンを取り返すよりも、3.d4 のあとcポーンでd4のポーンを取り返して中央を大きく占拠することにある。

 これは白の面白い布局選択である。選手たちの中にはナイドルフ、ドラゴン、スフェーファニンゲンやその他のよく知られた戦型の定跡に深く関わりたくないと考える人たちもいる。だから白でそれらを避けるのに好都合である。

 ボリス・スパスキー、ワシリー・スミスロフ、ビスワーナターン・アーナンド、ユディット・ポルガー、ルーク・ファン・ベリー、アレクセイ・シロフ、ルスラン・ポノマリョフ、セルゲイ・ティビアコフ、マイケル・アダムズそれにジョエル・ベンジャミンなどの世界の一流GMの多くがこの布局を用いたことがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒の主要な考え方は白に中央を独占させないことである。黒は白のeポーンを e4-e5 と前進するようにしむけるか、黒のdポーンを白のeポーンと交換して白に孤立dポーンを作らせることにより、e4/d4の並び(中央に並んだポーン)の影響を最小限にすることである。その孤立ポーンはあとで黒の攻撃目標になる。白のd4のポーンが孤立ポーンになれば陣形は黒の方が優ることになる。

白の基本的な作戦は何か

 白の希望は孤立ポーンを抱えても中原での占拠と優位を維持することである。この場合白としては盤上に駒を残してねじりあいの中盤戦になることを望んでいる。白は収局ではそれほど有利でない。一方場合によっては白がd4のポーンを別の駒で取り返すとクイーン翼で多数派ポーンを維持することになり収局で優位に立てることがある。

それで評決はどうなっているか

 これは難解で詳細に研究された定跡の主流手順を避ける白の良い選択肢である。白はあまり危険を冒さずに中盤戦を指しこなすことができる。おまけに白黒どちらにとっても他のほとんどの主流手順よりも派手な戦いがずっと少ないのが普通である。

1.e4 c5 2.c3

 この局面がアラピン戦法の出発点である。ここで黒には色々な手のうち主要な選択肢が二つある。本稿では最もよく指される 2…d5 と 2…Nf6 だけを取り上げる。もし白の観点から興味があるならば、相手に意表を突かれないように 2…e6、2…d6、2…e5 などそれほど指されない手も研究しておくのがよい。

戦型A …Bg4 とかかる 2…d5

2…d5

 この手は白が 2.Nf3 でなく 2.c3 と指しているので成立する。2.Nf3 のときに 2…d5 と突くのは 3.exd5 Qxd5 4.Nc3 でクイーンが当たりになり手損するので良くない。

3.exd5 Qxd5 4.d4 Nf6 5.Nf3 Bg4

 ナイトをすぐに釘付けにするのは攻撃的で理にかなった手である。欠点はキング翼の展開が遅れることである。

6.Be2

 これは釘付けの効果を最小限にさせる最も自然な応手である。他には 6.dxc5 Qxc5 7.Na3 もよく指される。

6…e6

 6…Nc6?! と指すのは勧められない。それは 7.h3 Bh5 8.c4 Qd6 9.d5 のように白がcポーンとdポーンを突いて少し優勢になれるからである。

7.h3

 1996年フィラデルフィアでのディープブルー対カスパロフ第1次番勝負の第3局ではコンピュータがこの 7.h3 Bh5 をさしはさまずに通常の手順を指した。そして 7.O-O Nc6 8.Be3 cxd4 9.cxd4 Bb4 10.a3 Ba5 11.Nc3 Qd6 12.Ne5 Bxe2 13.Qxe2 Bxc3 14.bxc3 Nxe5 15.Bf4 Nf3+ 16.Qxf3 Qd5 と進んで黒がわずかに有利になった。

7…Bh5 8.O-O Nc6 9.Be3

 白は 10.dxc5 でポーンを得を狙っている。10…Bxc5? はクイーン交換後駒損する。

9…cxd4 10.cxd4

 10.Nxd4 は 10…Bxe2 11.Qxe2 Nxd4 12.Bxd4 Be7 となって白は何も得られない(ティビアコフ対ローチェ、リナレス、1995年)。

10…Be7 11.Nc3 Qd6

 11…Qa5 も多くの試合で指されている。

12.Qb3

 他に面白い手としては 12.Nb5 があり 12…Qb8 13.Ne5 Bxe2 14.Qxe2 O-O 15.Nxc6 bxc6 16.Nc3 Nd5 17.Nxd5 cxd5 18.Rac1 Qb6 は黒が少し優勢だった(リュボエビッチ対カスパロフ、モスクワオリンピアード、1994年)。また 12.g4 もあり 12…Bg6 13.Ne5 O-O 14.Bf4 Qb4(14…Nd5! 15.Bg3 Qb4 の方が良い)15.a3 Qxb2 16.Na4 Qc2 17.Nxg6 Qxg6 18.Bd3 Ne4 19.f3 Qf6 20.fxe4 Qxd4+ 21.Kh2 Rad8 22.Bb5 Qxe4 23.Nc3 Qg6 24.Qb1 は白が少し優勢だった(ウェイツキン対ナン、サンフランシスコ、1995年)。

12…O-O 13.Rfd1 Rfd8 14.a3

 14.Qxb7 でポーン得するのは 14.Rab8 でb2のポーンが落ちるので一時的にすぎない。

14…a6

 難解な中盤戦の局面だが黒としては特に心配するような点はない。

戦型B …Bg4 とかからない 2…d5

1.e4 c5 2.c3 d5 3.exd5 Qxd5 4.d4 Nf6 5.Nf3 e6

6.Be2

 6.Na3 も油断のならない面白い手である。黒が平易に 6…Be7 と応じると(6…cxd4 なら 7.Nb5)、白は 7.Nb5 でわずかだが着実に優勢になるようである。7…Na6 がやむなく 8.c4 Qd8 9.Be2 となる。恐らく黒の最善手は 6…Qd8 で Na3-b5 の狙いを封じることである。白には他にも 6.Bd3 や 6.Be3 という選択肢がある。

6…Nc6 7.O-O cxd4

 今がポーン交換の時機である。7…Be7 だと 8.c4 で白がもう交換させなくする。そして 8…Qd8 9.dxc5 Qxd1 10.Rxd1 Bxc5 11.Nc3 O-O 12.a3 b6 13.b4 Be7 14.Bf4 Bb7 15.Nb5 Rad8 16.Bc7 で白にとって好都合な収局になる。白はd列を支配していて活動的な陣形になっている。

8.cxd4 Be7 9.Nc3 Qd6

 ここで白は黒がキャッスリングして一息つく前に「鉄は熱いうちに打て」を実践することができる。

10.Nb5 Qd8

11.Bf4

 ワシリー・スミスロフは1994年モナコでの女性対ベテラン大会で私の妹のユディットを相手に 11.Ne5 O-O 12.Nxc6 bxc6 13.Nc3 Qa5?!(13…Rb8 の方が良い)14.Qa4 Qb6 15.Qc4 Rd8 16.Rd1 Nd5 17.Na4 と指し優勢になった。

11…Nd5 12.Bg3

12…O-O

 ユディットはティビアコフ戦(1994年のマドリッド大会)で 12…a6 に対し 13.Nc3 O-O 14.Rc1 Nf6 15.h3 b6(15…b5! が改良手かもしれない。16.Nxb5 なら 16…axb5 17.Rxc6 Rxa2)16.a3 Bb7 17.Bd3 Rc8 18.Bb1 で Qd1-d3 を狙い快勝した。

13.Bc4 a6 14.Bxd5 axb5

 14…exd5 は 15.Nc7 Ra7 16.Qb3 Bd6 17.Bxd6 Qxd6 18.Qb6 f6 19.Rac1 で圧力が非常に強いので劣る(ローチェ対ユディット・ポルガー、リナレス、1994年)。

15.Be4

 面白い局面になっている。

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2012年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(27)

「Chess Life」2003年9月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御アラピン戦法(続き)

戦型C 主流手順の 2.c3 Nf6

1.e4 c5 2.c3 Nf6 3.e5 Nd5 4.d4

 最近は d2-d4 突きを遅らせてまず 4.Nf3 Nc6 5.Bc4 と指すのが流行している。

4…cxd4 5.Nf3 Nc6

6.Bc4

 白はこの手でポーンを犠牲にする(d4の地点で取り返さない)。堅実な 6.cxd4 は 6…d6 7.Bc4 e6 8.O-O Be7 9.Qe2 O-O 10.Qe4 となって白は 11.Bd3 の狙いで攻撃を行なうが黒が注意深く守れば互角になる。

6…Nb6 7.Bb3 d5

 展開が遅れたままc3のポーンを取るのは危険すぎる。

8.exd6e.p. Qxd6 9.O-O

 白は黒にc3のポーンを取るようずっとしむけている。9.Na3 a6 10.O-O e6 11.cxd4 Be7 もよく指される手順で、互角の局面である。

9…Be6

 ここでも 9…dxc3 と取るのは危険すぎる。それは 10.Nxc3 Qxd1 11.Rxd1 a6 12.Be3 Nd7 13.Nd5 となって白に十分過ぎる代償を与える。

10.Na3

 10.Bxe6 と取るのは 10…Qxe6 11.Nxd4 Nxd4 12.Qxd4 Rd8 13.Qh4 となって黒は変な形の 13…Qe2! を指さなければならないが、白にクイーン翼の展開を困難にさせ …Rd8-d1 の狙いもできる。

10…dxc3

 10…Bxb3 は 11.Qxb3 e6 12.Rd1 Be7 13.Nb5 Qb8 14.Nbxd4 で白が優勢になる。

11.Qe2

 白は 11.Nb5 Qxd1 12.Rxd1 Rc8 13.Bxe6 fxe6 14.Nxc3 g6 15.Re1 Bg7 16.Rxe6 でポーンを取り返すことができるが、黒は 16…O-O で収局に入ってごくわずかの問題しかない。

11…Bxb3 12.Nb5 Qb8

 黒クイーンは Nb5-c7+ による両当たりを避けるためにc7の地点を守っていなければならない。

13.axb3 e5

 黒はキング翼を展開してできるだけ早くキャッスリングする必要がある。

14.bxc3

 黒は 14.Re1 で直接攻撃も行なってきた(他には 14.Bf4 Bd6 15.Rad1 もある)。1994年モスクワオリンピアードでのトーレ対イジェスカス戦では 14…Nd7 15.Bf4 Be7 16.Rad1 exf4 17.Nd6+ Kf8 18.Nxf7! Nb6 19.Nxh8 Kg8 20.Nd4 Bf6 21.Nxc6 bxc6 22.Ng6 hxg6 23.Qe6+ Kf8 24.bxc3 と進み、黒はここで 24…Qc7! 25.Rd3 Qe7 と指すべきだった。

14…Be7 15.Bg5 f6 16.Be3 Nc8

 16…O-O は不注意な手で、17.Nxa7! Rxa7 18.Bxb6 Rxa1 19.Rxa1 とされる。白はa列を支配し、クイーン翼で多数派ポーンを形成し、すべての駒が黒よりも良い位置にいるので、はっきり優勢である。

17.Nh4

 白には十分な代償がある(ベンジャミン対イリンチッチ、エレバン、1996年)。白にはポーン損の代わりの主導権があり黒クイーンはへんぴなb8の地点に追いやられているが、それでも黒が正確に守れば白の攻撃をはね返せる。

戦型D 2.c3 Nf6 のあと 5…e6 と突く

1.e4 c5 2.c3 Nf6 3.e5 Nd5 4.d4 cxd4 5.Nf3 e6

 この局面は 1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.c3 Nf6 4.e5 Nd5 5.d4 cxd4 という手順からもよく生じることがある。

6.cxd4 d6

 6…b6 は人気では劣るがしっかりした手である。

a)7.Nc3 Nxc3 8.bxc3

 この戦型では白は中央をしっかりと支配しキング翼攻撃の展望もある。だから黒は正確に指して十分な反撃力を維持しなければならない。

b)7.Bc4

 7.a3 と突いて …Nb4 を防いで Bf1-d3 を準備することもある。

7…Nb6 8.Bd3

 8.Bb5+ は 8…Bd7 で黒を手助けするだけである。8.Bb3 は 8…dxe5 9.Nxe5 Nc6 10.Nxc6 bxc6 でどちらにも孤立ポーンができるので黒には何の問題もない。

8…Bd7 9.O-O Bc6 10.Nc3 N8d7 11.Bb5 Be7 12.Bxc6 bxc6 13.exd6 Bxd6 14.Ne4 Be7 15.Qc2 Qc7 16.Ne5 Nxe5 17.dxe5 Nd5 18.Bg5 Bxg5 19.Nxg5 Qxe5 20.Qxc6+ Ke7(スマギン対J.ポルガー、ドイツ・ブンデスリーガ、2002年)

結論

 アラピン戦法は白の優秀で指しやすい布局である。シチリア防御に対してたぶん意表を突く目的で選択されることが一番多い。研究や定跡の深みにはまることを避けることができる。最も大切なことは、孤立dポーンに対する指し方やクイーン翼の多数派ポーンの活用の仕方を知るためにもう少し深く研究する必要があるということである。

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ポルガーの定跡指南(28)

「Chess Life」2003年10月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御閉鎖戦法

 今月はシチリア防御の閉鎖戦法を取り上げる。先月は詳細に研究された戦法の迷路を避けるために開放型シチリアへの代わりとしてアラピン戦法を分析した。閉鎖型シチリアは同じ目的のためのもう一つの選択肢となり得る。この戦型では白は駒を最適な地点に配置することを目指しながらキング翼への将来の攻撃や中央での開戦をゆっくりと準備する。

 この戦法には有名な支持者がたくさんいる。元世界チャンピオンのワシリー・スミスロフとボリス・スパスキー、それにGMマイケル・アダムズとGMナイジェル・ショートらのイギリスの一流選手たちである。

 閉鎖型シチリアでは白は黒のフィアンケット(…g7-g6)に対して様々な作戦がある。今月は主に Qd2 から Bh6 と指す作戦について解説する。早期の f2-f4 や Ng1-h3 のような他の作戦は別の機会に譲る。

白の基本的な作戦は何か

 白はキング翼でフィアンケットしキング翼への攻撃を準備し、その間黒のキング翼での防御を弱めるために黒枡ビショップ同士の交換を目指すことがよくある。またキャッスリングを遅らせて h2-h4 と突きh列を素通しにすることもできる。あるいは展開を完了したあとf列を素通しにしてルークを重ねることもできる。

 白は f2-f4 と突いたあとさらに f4-f5 と突いてしばしばポーンを犠牲にして強力な主導権を得るかもしれない。

 時には白はクイーン翼での黒の動きを a2-a3、Rb1 そしてb2-b4 で鈍らせて(スパスキーが広めた)、そのあとでキング翼を攻撃することがある。局面が開放状態になり乱戦になることさえよくある開放型シチリアと違って、白はまず戦力を配置につけることにより攻撃態勢を整え、そのあとで初めて好機に攻撃しようとする。

黒の基本的な作戦は何か

 2手目または3手目のあと黒は …e7-e6 と突くか …g7-g6 と突くかという将来の展開の方針を決めなければならない。黒が1番目の選択肢で展開すると、その作戦は …d7-d5 と突いて中央をしっかりと支配することになる。黒がもっと一般的なフィアンケットによる展開を選ぶと白のキング翼での速攻に注意しなければならない。だから黒は(戦型B3のように)クイーン翼にキャッスリングすることもあれば、白が先にキング翼にキャッスリングして h2-h4 突きの威力がなくなるまでキャッスリングを遅らせることもある。黒は …b7-b5 と突いてクイーン翼で反撃することがよくある。

それで評決はどうなっているか

 閉鎖型シチリア戦法では白の攻撃作戦は明快である。もっとも時にはその作戦が大局的な優勢に転換するかもしれない。黒がこの戦型に対処する用意ができていないときはすぐに困った事態に陥るかもしれない。しかしこれは奇跡の戦法ではなく、黒は正確に指せば十分な反撃と均衡のとれた局面が得られる。白番で主流手順を避けたい選手にとってはこれはお薦めできる戦法である。黒のためにいうと本稿を読んだあと気に入った選択肢を選びその具体的な手順についてもっと研究するのがよい。

1.e4 c5 2.Nc3

 白の2手目のあと黒には非常に異なった二つの選択肢がある。それはビショップをフィアンケットするか普通にe7の地点に展開するかということである。ほとんどの試合では黒は 2…g6 から始まる陣形を選択する。

 A)2…e6

 この手の意味は …d7-d5 突きを用意して中央にもっと影響力を持つことである。注意しておくとドラゴンまたはナイドルフ戦法を指そうとする選手はこのあとの …g7-g6 突きの戦型を指した方がよい。というのは白にはまだ 3.Nf3 から 4.d4 で開放型シチリアに移行する選択肢があるからである。

3.g3

 白の最良の方針は普通のキング翼フィアンケットの展開を続けてd5の地点に圧力をかけることである。

3…d5 4.exd5 exd5

 ここで白には主要な選択肢が二つある。

5.d4

 この手はすぐに深刻な戦いになる。これとはまったく異なるが同じくらい面白い別の手は 5.Bg2 Nf6 6.d3 Be7 7.Nge2 d4 8.Ne4 O-O 9.O-O Nc6(恐らく 9…Nd5 の方が得策である)10.Nf4 Ne5 11.Nxf6+(この交換の目的はもう一つのナイトにd5の地点に行く道を空けることである)11…Bxf6 12.Nd5 で、チゴーリン対タラシュ戦(オステンド、1907年)では白に主導権があった。

5…cxd4

 黒が 5…c4 で中央を固定すれば白は 6.Bg2 Be6 7.Nge2 Nf6 8.Bg5 Be7 9.O-O から次に Nf4 の狙いで指しやすい局面になり、黒のd5のポーンを標的とするのが白の自然な作戦になる。

6.Qxd4 Nf6

 黒は 6…Be6 でf6のナイトの釘付けを避けることができる。7.Bg2 Nc6 8.Qa4 Bb4 9.Nge2 Nge7 10.a3 Ba5 11.O-O O-O 12.Bg5 で複雑な中盤戦になり、白には黒のd5の孤立ポーンに対する明確な作戦がある。

7.Bg5 Be7 8.Bb5+ Nc6 9.Bxf6 Bxf6 10.Qc5 Bxc3+ 11.bxc3

 11.Qxc3 なら黒は 11…O-O でキングを安全にすることができる。

11…Qe7+ 12.Qxe7+ Kxe7 13.O-O-O Be6 14.Ne2 Rhd8

 互角の収局になる。

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2012年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(29)

「Chess Life」2003年10月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御閉鎖戦法(続き)

 B)2…g7-g6 と突く戦型

1.e4 c5 2.Nc3 Nc6 3.g3 g6 4.Bg2 Bg7 5.d3

5…d6

 5…e6 6.Be3 Nd4?!(6…d6 なら戦型B3に移行する)は疑問手だが有名なスミスロフ対デンカー戦(ソ連対米国、ラジオ対局、1946年)で指された。そのあとは 7.Nce2!(白はc5の黒ポーンが浮いている間を利用してこの手を指した。黒が 5…d6 と突く戦型ではこの捌きはナイト同士の交換のあとb2のポーンが落ちるので使えない)7…d6 8.c3 Nc6 9.d4 cxd4 10.Nxd4 Nxd4 11.Bxd4 e5 12.Be3 Ne7 13.Ne2 O-O 14.O-O と進み、黒のd6の地点が弱いので白が優勢になった。

6.Be3

 ここでは白の有力な手が複数ある。最もよく指されるのは 6.f4 である。

 B1)6…Nf6

 これは閉鎖型シチリアに対してガリー・カスパロフの好む陣形である。ここで 7.Qd2 なら黒は 7…Ng4 と応じることができる。だから白は別の作戦を選ばなければならない。

7.Nge2 O-O 8.h3 e5

 ショート対マクシェーン戦(レイキャビク、2000年)では 8…Rb8 9.O-O b5 10.a3 Bd7 11.f4 a5 12.a4 b4 13.Nb5 Ne8 14.Rb1 Na7 15.c4!(ただし 15.Nxa7? は 15…Bxa4 でこのナイトが捕まる)と進んで白が戦略的に優勢な局面になった。

9.O-O

9…b5!

 このカスパロフらしい手で黒は序盤早々から主導権を得ようとしている。もっとゆっくりした 9…Nd4 に対して白は次のようにうまく主導権を得た。10.Kh2(10.Qd2? Bxh3! は知っておくべき重要な落とし穴である)10…Rb8 11.f4 b5 12.Qd2 b4 13.Nd1 Nh5 14.f5!(これも閉鎖型シチリアによく現れる手で、似たような局面でも非常に強力になることがある)14…gxf5 15.exf5 Nxf5 16.Rxf5 Bxf5 17.g4 Bxg4 18.hxg4 Qh4+ 19.Bh3 1954年のアムステルダム・オリンピアードでのGMダルガ戦で白番のケレスがうまく勝った。

10.Nxb5 Rb8 11.a4 a6 12.Na3 Rxb2 13.Nc4 Rb8 14.f4

 これはアダムズ対カスパロフ戦(リナレス、1999年)で、難解な中盤戦になった。

 B2)6…Rb8

 これもg8の黒ナイトの展開を遅らせて Be3-h6 でビショップ同士を交換されるのを防ぐ手段である。…b7-b5 と突いていく着想はボビー・フィッシャーの得意な手だった。

7.Qd2 b5 8.Nge2 Nd4

 d3-d4 と突かれる可能性を防いだ。

9.O-O b4 10.Nd1 Qc7

 これは疑問手かもしれない。しかしもっと自然な 10…e6 でも 11.Nc1 で本譜と似た進行になる。

11.Nc1

 これは閉鎖型シチリアで頻繁に用いられる作戦で、c2-c3 と突く前にナイト同士の交換を避けた。

11…Nf6 12.c3 bxc3 13.bxc3 Nc6 14.Bh6 O-O 15.Bxg7 Kxg7 16.Ne3

 次の実戦例は閉鎖型シチリアでの白の理想がよく表れている。16…e5?! 17.f4 Ne7 18.Ne2 Bb7 19.g4! h6 20.h4 exf4 21.Rxf4 Neg8 22.Raf1 Qe7 23.Ng3 Bc8 24.Qf2 Be6 25.g5 hxg5 26.hxg5 Nh7 27.Nef5+! gxf5 28.exf5 Qxg5 29.Ne4 Qd8 30.fxe6 fxe6 31.Qg3+ アダムズ対サクス戦(ドイツ団体選手権戦、1998年)ではここで黒が投了した。

 B3)6…e6 7.Qd2

7…Nge7 8.Bh6 Bxh6

 8…O-O?! は実際には困難を呼び込むことになる。この手は白の待ち望むところである。9.h4!(白の攻撃は非常に危険であり、その作戦は単純である。10.h4-h5 と突きg7のビショップを交換し、g6のポーンも交換してh列を素通しにして白クイーンがh6の地点に侵入できるようにすれば詰みを狙って攻撃することができる)9…Bxh6 10.Qxh6 f6!

(黒のこの手は油断がならない。白が 11.h5? で上記の作戦を遂行すると、11…g5 のあと …Kh8 から …Ng8 で白クイーンがとんでもない事態に陥る)11.Qd2(白の最も強力な攻撃駒が戦場から退却したけれども攻撃そのものは全然収まっていない。白はg7のビショップを消して既に大きな成功を達成している)11…e5 12.h5 g5 13.h6!(この手は黒が …h7-h6 によって連鎖ポーンを結合するのを防ぐ大切な手である)13…Be6 14.f4 gxf4 15.gxf4 Kh8 16.Nd5 アダムズ対ウォード(イングランド、2001年)では白の勝利に終わった。

9.Qxh6 Nd4 10.O-O-O

 10.Qd2 はもっとゆっくりした展開になる。

10…Qa5

 黒はすぐにクイーン翼で反撃策を見つけなければならない。

11.Kb1

 11.Qg7 Rf8 12.Qxh7 でポーンをかすめ取るのは 12…Nec6 で非常に危険そうである。

11…Bd7 12.Nge2 Nec6 13.h4 O-O-O 14.h5 b5 15.Nxd4 Nxd4 16.e5 d5

 16…dxe5 17.Qg7 b4 は 18.Ne4 で白の16手目の意図が明らかになり白が少し優勢である。

12.Qd2

 ショート対モブセシアン戦(サラエボ、2000年)ではいい勝負だった。

 B4)6…e5

7.Qd2

 もちろん白は 7.f4 と指して 6.f4 e5 から始まる戦型に移行することもできた。

7…Be6

 7…Nge7 と指すこともできる。

8.f4 exf4 9.Bxf4 Nd4 10.Nf3 Nxf3+ 11.Bxf3 Qd7 12.O-O-O Ne7 13.Bh6 Be5 14.Rde1 O-O-O

 互角の形勢である(ストゥルア対ロギノフ、ソ連、1984年)。

結論

 閉鎖型シチリアは白にとって意表を突く武器、または常用定跡の確かな一部になり得る。黒は十分に研究し準備を怠らなければ布局で互角の形勢にできるかもしれない。しかし予期せずに意表を突かれると、実戦で正しい手順や作戦を見つけることはそう簡単ではない。

 これは毎日のように論じられる主流定跡に関わりたくなくて、ただ布局から明快な中盤戦の作戦に行きたい選手にとっては特にお薦めの戦型である。黒については好きなシチリアを放棄する必要はなく、この比較的人気で劣る戦型の対処法を研究しておくだけでよい。

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2012年06月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(30)

「Chess Life」2003年12月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.Nxe5 型のペトロフ防御

 今月はペトロフ防御を取り上げる。これは黒にとって非常に堅固な防御である。退屈かもしれない戦型もあるが、手が広くて少し研究を要する戦型もある。

 ペトロフ防御は19世紀の有名なロシアのマスター、アレクサンドル・ペトロフにちなんで名づけられた。私は長年ロシア防御という名前で親しんできたし、東欧でもその名前で知られている。

 ペトロフ防御は多くのGMによって用いられてきた。しかし流行したのはアナトリー・カルポフが1980年代半ばにガリー・カスパロフとの世界選手権戦で常用戦法の一部として採用してからである。そのカスパロフでさえ両者の1984/85年の第1次番勝負の終わり頃に黒で指し始めた。それ以来この布局の定跡は深く研究されてきた。しかしさらなる改良や新構想の余地はまだまだある。カルポフとカスパロフに加えてこの布局を得意戦法として指すGMにはスミスロフ、アーナンド、クラムニク、ハリフマン、ユスーポフ、イワンチュク、レーコー、シロフ、そしてアダムズがいる。

白の基本的な作戦は何か

 3.Nxe5 の戦型では白は4手目と5手目でいくつかの傍流の戦型を選択することができる。白が主流戦型を指すときは c2-c4 と突いて黒のe4のナイトの土台を崩していく。戦型によっては非常に長くて激しい詳細な定跡になることがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は最初の2、3手は基本的に布局の一般原則に従いながら白と同じように展開していく。白は通常は7手目か8手目あたりで中央で対決的状況を作り出す。黒のやるべきことは中央で強い存在感を維持することである。これらの戦型の中には手順が決まりきっていて暗記を必要とするものがある。

それで評決はどうなっているか

 ペトロフ防御では黒は三つの戦型を選択することができる。最初の戦型は大乱戦になり定跡が膨大で非常に活気のある試合になる。2番目の戦型は1986年のカスパロフ対カルポフの番勝負の頃流行した。今日のグランドマスターの実戦では珍しくなったが指せない戦法になったわけではない。3番目の戦型は最も堅実と考えられ黒のために推奨できる。

1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5

 これに代わる主要な手は 3.d4 で、次号で取り上げる。白が 3.Nc3 と指して4ナイト防御に移行するかもしれないことは注意しておく必要がある。3.d3 と突いてeポーンを守ることもできるが、少し消極的で白の白枡ビショップの積極的な展開(c4や時にはb5の地点)にさしつかえる。

3…d6

 黒が「猿まね」を続けて同じく 3…Nxe4 で中央のポーンを取ったらどうなるだろうか。白は 4.Qe2 Nf6?? で明らかに優勢になる(もちろん 4…Qe7 5.Qxe4 d6 6.d4 なら黒の1ポーン損で済む)。ここで白はナイトによる開きチェックで黒のクイーンを取ることができる。そのやり方は?

 正解は 5.Nc6+ である。

4.Nf3

 驚くなかれ著名なリナレス大会(トパロフ対クラムニク)でさえ 4.Nxf7 が危険をものともせず指された。実際は当初の見た目ほど暴挙ではない。白はナイトの代わりに2ポーンを取り、黒キングはもうキャッスリングすることができなくなる。しかし黒がこの見慣れない捨て駒を見くびらなければ 4…Kxf7 5.d4 Be7 のあと何も恐れることはない。

4…Nxe4 5.d4

 ここでは 5.Qe2 Qe7 6.d3 Nf6 でまったくの対称形になり引き分けになりやすい「悪名高い」変化がある。しかし当然ながら物事は見かけほど単純ではない。もう1、2手のうちにクイーン同士が交換になるけれども、残りの駒はまだすべて盤上に残っていてどちら側も間違いを犯す機会は豊富にある。

 それほど指されないが白のまともな手は 5.c4 と 5.Nc3 である。

5…d5

 黒はこの手で自陣を広げビショップのためにd6の地点を空けることが大切である。

6.Bd3

 ここからは黒にとってまったく異なる三つの戦型がある。

 戦型1 6…Bd6

7.O-O

 この手は 7…Bb4+ とされるかもしれない 7.c4 よりも正確な手である。

7…O-O 8.c4 c6 9.cxd5 cxd5 10.Nc3 Nxc3 11.bxc3 Bg4 12.Rb1

 細かいことだが 12.h3 Bh5 としないことが重要である。なぜなら 13.Rb1 b6 14.Rb5 のあと黒は悠々と 14…Nc6 と指すことができるからである。15.Rxd5? には 15…Bh2+! があって黒が良い。

12…Nd7

 この手は間接的にbポーンを守っている。

13.h3 Bh5 14.Rb5

 14.Rxb7 は 14…Nb6 でルークが捕まる。

14…Nb6

 ここからの黒の理想は …Bh5-g6 で白枡ビショップ同士を消し、c3の出遅れポーンに圧力をかけていくことである。さらに黒のナイトにはc4に大きな拠点が待っている。

15.c4 Bxf3

 c4のポーンをすぐに取ると白が優勢になるので黒はこの交換をしておかなければならない。15…Nxc4 のあとは 16.Rxd5 Bh2+ 17.Nxh2 Qxd5 18.Bxc4 Qxc4 19.Qxh5 で白のキング翼での攻撃が有望になる。代わりに 15…dxc4 はもっと悪く 16.Rxh5 cxd3 17.Ng5 g6(17…h6 なら 18.Qxd3)18.Rxh7 Be7 19.Qg4 から 20.Nxf7 を狙って白の勝勢になる。

16.Qxf3 dxc4

 黒がポーン得になったが白の攻撃は脅威である。黒は多くの落とし穴にはまらないように細心の注意を払わなければならない。

17.Bc2 Qd7

 この非常に激しい局面で黒に何が起こり得るのかの鮮やかな例は 17…Rb8 18.a4 a6 19.Bg5 Qc7?! 20.Bxh7+! Kxh7 21.Qh5+ Kg8 22.Bf6!! Bh2+ 23.Kh1 Qd6 24.Bxg7! Kxg7 25.Rg5+ Kf6 26.Re1 Qe6 27.Rxe6+ fxe6 28.Rg6+ Ke7 29.Rg7+ で、黒が投了した(クドリン対マチャード、テッサロニキ・オリンピアード、1988年)。

18.a4 g6

 ここでも黒は用心深く指さなければならない。通信戦のガブリロフ対フロッグ戦(1989/90年)では 18…Rab8 19.Bg5 Bc7(19…Rfe8 の方が良い)20.Bf6! Qd6 21.Be5 Qe7(21…Qd7? は 22.Bxg7)22.a5 で白がはっきり優勢になった。

19.Be3

 19.Bd2 c3 20.Bxc3 Rac8 21.Be4 Rc4 22.Rbb1 Rxa4 23.Bxb7 Ra3 は形勢不明だったので(カスパロフ対シロフ、リナレス、2000年)本譜の手の方が良い。

19…Rac8 20.Rfb1 c3 21.a5 Nc4 22.Rxb7 Qe6?!

 たぶん 22…Rc7 の方が良い。

23.Ra1 Bb8 24.Bb3

 形勢は明らかに白が優勢である(アーナンド対シロフ、リナレス、2000年)。

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ポルガーの定跡指南(31)

「Chess Life」2003年12月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.Nxe5 型のペトロフ防御(続き)

 戦型2 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Nc6

 この戦型では黒はすぐにd4のポーンに圧力をかけようとする。

7.O-O Bg4 8.c4 Nf6

 すぐに 8…Nxd4 と取るのは駒損になる。どうしてか分かりますか?

 答えは 9.Bxe4 dxe4 10.Qxd4 exf3 11.Qxg4 。

9.Nc3

9…Bxf3

 ここでも 9…Nxd4 はまだ欲張りすぎである。10.cxd5 Nxf3+ 11.gxf3 Bd7 12.Re1+ Be7 13.Qe2 となって黒はキャッスリングが難しく(今キャッスリングするとe7のビショップが取られる)苦戦に陥る。

10.Qxf3 Nxd4 11.Qe3+ Ne6 12.cxd5 Nxd5

 いったん 12…Bc5 と展開しても白は 13.Qf3 でd5のポーンを守ることができる。

13.Nxd5 Qxd5 14.Be4 Qb5 15.a4 Qa6

 b7のポーンを守るにはここしかない。15…Qb4 は 16.Bd2 Qxb2 17.Rab1 となって黒キングが安全な所に避難できないので危険すぎる。

16.Rd1

 黒がキャッスリングするためにはビショップを展開させなければならないことは明らかだが、問題はどこへである。

16…Be7

 ほとんどの試合で選ばれてきたのはこの手である。16…Bc5 は 17.Qf3 c6 18.Rd7!! O-O で白がいくらか優勢になる。このルークを取るのは自殺行為である(18…Kxd7 19.Qxf7+ Kd6 20.Bf4+ Nxf4 21.Qxf4+ Ke7 22.Qe5+ Kf7 23.Qf5+ Ke8[または 23…Kg8 24.Bd3 から Bd3-c4+]24.Re1 で黒の絶望)。19.Bd3 Qb6 20.a5 Qb4 21.Bd2! Qh4 22.Rxb7 で、カスパロフがカルポフ戦の解説で指摘したように白が少し優勢である。16…Bd6!? が改善の可能性として将来指されるかもしれない。

17.b4!

 これは意表を突く強手である。白は二つの重要な着想を組み合わせることができる。a)黒枡ビショップのためにb2の地点を空け、b)いつか b4-b5 と突いて黒クイーンをいじめる狙いがある。

17…O-O 18.Qh3

 これはたいしたことがないようだが重要な1手である。黒キングの前のポーンを突かせて弱体化させている。

18…g6

19.Qc3

 これは上述の試合の改良である。その試合では白は 19.Bb2 と指したので 19…Qc4 で黒が守りきることができた(カスパロフ対カルポフ、番勝負第6局、1986年)。本譜の手で白は対角斜筋(a1-h8)にクイーンとビショップを重ねる。アセーエフ対イワンチュク戦(ソ連、1986年)では 19…c5 20.Bb2 Nd4 21.Bd3 Qb6 22.a5 Qc7 23.bxc5 Bxc5 24.Bf1 と進んで白の優勢になった。

 戦型3 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.Nxe5 d6 4.Nf3 Nxe4 5.d4 d5 6.Bd3 Be7 7.O-O Nc6

 これは「旧主流手順」である。ここでは白には主要な選択肢が二つある。

 戦型3a 8.Re1 Bf5

 これは安全な方の手である。(8…Bg4 も良い手だが、乱戦になるかもしれず十分研究しておく必要がある。)

9.c4 O-O

 これは 9…Nb4 よりは人気がないがたぶん手段としては優る。妹のユディットは元ヨーロッパチャンピオンに対して布局からあまり有利さを引き出せなかった。10.Nc3 Nxc3 11.bxc3 Bxd3 12.Qxd3 dxc4 13.Qxc4 Bd6 14.Qb5 Qf6 15.Bg5 Qg6 16.c4 a6 17.Qb2 b6 18.a3 Qd3(J.ポルガー対マシエヤ、ブダペスト、2002年)

 戦型3b 8.c4 Nb4

 黒は白の白枡ビショップを追いかけている。8…Nf6 も立派な手である。9.h3 Nb4 10.Be2 dxc4 11.Bxc4 O-O 12.Nc3 c6 13.Re1 Nbd5 14.Qb3 Nb6 15.Bd3 Be6 16.Qc2 h6 となれば均衡のとれた収局である。白は孤立ポーンを抱えているが駒が活発に働いている(トパロフ対アーナンド、ベイクアーンゼー、2003年)。

9.Be2

 白は双ビショップを大切にして 9…Nxd3 と交換させない。9.cxd5 は 9…Nxd3 10.Qxd3 Qxd5 11.Re1 Bf5 となって黒の方が大変である。つまり黒は受けに回らなければならない。しかしうまく守れば問題ない。

9…O-O 10.Nc3

 ここで黒は展開していない最後の駒、c8のビショップをどこに配置するかを決めなければならない。

10…Bf5

 ここが最も活動的な位置で、10…Be6 も面白いがそれよりは少し優っていると考えられる。本譜の手は 11…Nxc3 12.bxc3 Nc2 13.Rb1 Nxd4 でb1のルークに対する開き攻撃を狙っている。10…b6 は次のようにあまり芳しくないようである。11.a3 Nxc3 12.bxc3 Nc6 13.cxd5 Qxd5 14.Re1 Bb7 15.Bd3 Rae8 16.c4 Qd8 17.d5 Nb8 18.Ne5! Bf6 19.Bb2 これは2000年コウパボグルでのカスパロフ対H.オウラフソン戦(快速)で、白が明らかに優勢だった。

11.a3 Nxc3 12.bxc3 Nc6 13.cxd5 Qxd5

14.Bf4

 白は先に 14.Re1 と指してから 14…Rfe8 に 15.Bf4 と指すこともよくある。以下は 15…Bd6(カスパロフ対カルポフの公開試合第2局ではカルポフが 15…Rac8 と指したが 16.c4 Qe4 17.Be3 Bf6 18.Rc1 b6 19.h3 Bg6 20.c5 Ne7 21.Ba6 Rcd8 22.Bg5 Qc6 23.cxb6 Qxb6 24.Bxf6 gxf6 25.Qa4 でカスパロフが断然優勢だった)16.c4 Qe4 17.Be3 Rad8 18.Ra2 Bg6 19.Qc1 Na5 20.c5 Be7 21.Bb5 Qd5 22.Rae2 c6 となり、2002年にニューヨークのタイムズスクエアで行なわれたカスパロフ対カルポフの同じX3D公開試合第4局では黒に何の問題もなかった。

14…Rac8

 c7のポーンを守るこの受け身の手の代わりに 14…Na5 15.Bxc7 Rac8 16.Bxa5 Qxa5 17.c4 Bf6 という激しい手もある。黒がこのようにポーンを犠牲にした試合は数多い。統計によれば黒は十分代償を得ている。もっとも誰もがポーン損で指すことを好むわけではない。

15.Re1 Rfd8 16.Bf1 Bf6

 この局面は両者にとり色々な指し方のできる中盤戦である。ここでの重要な問題は白の弱体化したポーン構造が困難を引き起こすか、あるいはc3とd4のポーンが c3-c4 と d4-d5 というように前進して白にとって「宝石」となり得るかということである(アーナンド対イワンチュク、モンテカルロ、1999年)。

結論

 ペトロフ防御は黒にとってまったく堅実で健全な布局である。近年は白にとって布局での優位を求める戦いにおいて大きな「頭痛」になってきた。だから 1.e4 に対して非常に人気のある応手になっている。本稿では 3.Nxe5 だけを分析した。この手は黒に6手目で三つの選択肢を与える。それぞれはっきり異なった種類の中盤戦になる。

 いくつかの他の布局と異なりここでの(特に)戦型1は非常に激しく戦術的になり正確な読みが必要である。そのような乱戦の局面では指し方の一般的な考え方を示すことは難しい。正確で多量の読みが必要とされる。

 次号ではさらに 3.d4 と指す戦型のペトロフ防御を分析する。

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2012年06月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(32)

「Chess Life」2004年1月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.d4 型のペトロフ防御

 ペトロフ防御は黒にとって非常に堅固な防御である。退屈かもしれない戦型もあるが、手が広くて少し研究を要する戦型もある。ヨーロッパでは定跡名はよく国や市にちなんで名づけられるが、米国ではロシアの最初の有名なマスターのペトロフのように選手にちなんで名づけられる。ヨーロッパではこの定跡はロシア防御と呼ばれている。

 ペトロフ防御はアナトリー・カルポフが1980年代半ばにガリー・カスパロフとの世界選手権戦で常用戦法の一部として採用してから流行した。そのカスパロフでさえ両者の1984/85年の第1次番勝負の終わり頃にカルポフ相手に(黒で)指し始めた。それ以来この布局の定跡は深く研究されてきた。しかしさらなる改良や新構想の余地はまだまだある。カルポフとカスパロフに加えてスミスロフ、アーナンド、クラムニク、ハリフマンらの世界チャンピオン、イワンチュク、レーコー、シロフ、アダムズ、ユスーポフらのスーパーGMやその他の選手が常用戦法の一部として用いている。

白の基本的な作戦は何か

 3.d4 の戦型では先月号で分析した 3.Nxe5 から始まる戦型と同様に、ほとんどの場合対称的なポーン形になり、中原のd4とd5にお互いのポーンがありeポーンはなくなっている。白はいずれ対称形を崩す適当な機会を求め、c2-c4 突きで戦端を開く。戦法Ⅲでは白は別の作戦をとり、Qh5 と出ることによりd5のポーンとh7のポーンに対する狙いを絡める。

黒の基本的な作戦は何か

 黒の成すべきことは白の c2-c4 突きに応じる良い手段を用意することである。戦法Ⅰでは黒は長い一本道の手順を選ぶ。しかし現在の定跡では改良が必要である。戦法Ⅱでは黒はクイーン翼にキャッスリングして非常に攻撃的で面白い作戦に努める。戦法Ⅲでは黒は素早い展開と活動のためにポーンを犠牲にする。戦法Ⅳでは長い研究された手順を避ける二つの選択肢がある。

それで評決はどうなっているか

 ペトロフ防御のこの戦型(3.d4)に対して黒にはいくつかの異なった対処法がある。戦法ⅠとⅡは非常に激しく活気のある試合になる。しかし非常に深く研究されていて場合によっては収局にまで達する。今日では白が優勢になるようである。戦法Ⅲでは黒はしばしばd5のポーンを捨てるが代わりに相当な代償を得る。戦法Ⅳでは長い主流定跡手順を避ける選択肢とあまり知られていない領域に入る選択肢がある。

3.d4 戦法Ⅰ 5…Bd6
1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.d4 Nxe4 4.Bd3 d5 5.Nxe5 Bd6

 1990年代初めまでこの手は 5…Nd7 より人気があった。しかしこの深く研究された戦法の最近の発展によると、白は勝ちかあまり危険のない引き分けの二つの結果しかないような局面に到達する。

6.O-O O-O

 ここまではすべて対称で周知のようにそれは白に有利である。

7.c4

 仕掛けを始める時機である。

7…Bxe5

 この一見穏やかで単純な局面がこの手で様相が変わり、非常に長くて面白い手順になる。もっと堅実な 7…c6 は 8.Nc3 Nxc3 9.bxc3 Nd7 10.f4 で白が有利な局面になる。

8.dxe5 Nc6 9.cxd5

 9.f4 は 9…Bf5 で黒が良い。

9…Qxd5 10.Qc2

 10.Qf3 は 10…Bf5! で悪い。

10…Nb4

 e4のナイトが動くとチェックでh7のポーンが取られるので(10…Nc5 11.Bxh7+)動けない。本譜の手の代わりに 10…Bf5?! は 11.Nc3 Nxc3 12.Bxf5 となるのでもうそれほど良い手ではない。このあとは必然の手順である。

11.Bxe4 Nxc2 12.Bxd5 Bf5!

 これが最善手である。すぐに 12…Nxa1 と取るのは 13.Be4 Re8 14.Na3 Rxe5 15.f3 のあと白の黒枡ビショップが展開してa1の黒ナイトが取られてしまう。

13.g4!

 白は正確さを期さなければばならない。さもないと黒ナイトがa1のルークを取ったあと逃げることができるかもしれないので不利になる。

13…Bxg4 14.Be4 Nxa1 15.Bf4

 この手はルークのためにc1の地点を空けた。15.Nc3 は 15…f5 16.exf6e.p. Bh3 17.Re1 Rae8 となってa1のナイトが逃げるので劣る。場合によっては黒は …Rxe4 で交換損の犠牲を払ってa1のナイトを自由にすることができる。

15…f5

 1991年パリでのカスパロフ対ティマン戦では 15…f6 16.Nc3 fxe5 17.Be3 と進んで白がわずかだが確実に優勢だった。

16.Bd5+!

 16.Bxb7 なら 16…Nc2 で互角になる。

16…Kh8 17.Rc1

 17.Na3 は 17…Rad8 18.Bxb7 Rd1 となる。

17…c6 18.Bg2 Rfd8 19.Nd2 Rxd2

 19…h6 なら 20.h4 で白が少しの優勢を維持する。

20.Bxd2 Rd8 21.Bc3 Rd1+ 22.Rxd1 Bxd1

 ここで 23.Bf1 と指せば、よく働いている双ビショップ、e5のパスポーン、そしてa1の黒ナイトの位置の悪さのために、白が明らかに優勢を確保できた。1991年リナレスでのカスパロフ対アーナンド戦では白が正確さに欠ける 23.f4? を指し黒が負けを免れることができた。

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2012年07月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(33)

「Chess Life」2004年1月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3.d4 型のペトロフ防御(続き)

3.d4 戦法Ⅱ 5…Nd7 – 7…Qh4
1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.d4 Nxe4 4.Bd3 d5 5.Nxe5 Nd7 6.Nxd7

 白はこの本手の代わりに 6.Qe2 と指すこともできる。それに対して黒はほとんどの場合ポーンを犠牲にして 6…Nxe5 7.Bxe4 dxe4 8.Qxe4 Be6 9.Qxe5 Qd7 10.Nc3 O-O-O 11.Be3 Bb4 と指し、双ビショップと展開でいくらか優っているので順当な代償を得ている。

6…Bxd7 7.O-O Qh4

 この見慣れない手は非常に意欲的な作戦の始まりである。即ち黒はクイーン翼にキャッスリングしそのあとキング翼で攻撃を仕掛けて白キングを直接標的にする。

8.c4

 白は迅速に対応して反撃を開始しなければならない。ここで局面の様相は逆翼キャッスリングにより決定づけられそれぞれのキングに対する激しい攻め合いになる。

8…O-O-O 9.c5

 ここで黒には主要な選択肢が二つある。

9…g5

 もう一つは 9…g6 である。どちらの手も黒枡ビショップをg7に展開してd4のポーンに圧力をかける準備である。10.Nc3 Bg7 11.g3 Qf6

 11…Qh3? からの乱戦は白に有利に働く。12.Nxd5 Bg4 13.Ne7+ Kb8(13…Kd7 には 14.Qa4+)14.Nc6+! これで白クイーンはチェックで当たりから逃れることができる。14…Kc8(14…bxc6 なら 15.Qb3+ Ka8 16.Bxe4)15.Nxa7+ Kb8 16.Nc6+ Kc8 17.f3 Rxd4(17…bxc6 は 18.Ba6+ Kd7 19.fxg4、17…Nxg3 なら 18.fxg4 Bxd4+ 19.Nxd4 Rxd4 20.Rf4! Rhd8 21.Rxd4 Rxd4 22.Qe1!! Rxd3 23.Bg5! で白の勝ち)18.Be3 Rxd3(18…Nxg3 なら 19.Bxd4 Bxd4+ 20.Nxd4)19.Qxd3 Nxg3 20.Bf4 そして1992年デブレツェンでのヨーロッパ団体選手権戦のイワンチュク対ローゼンタリス戦では 21.Ne7+ Kb8 22.Bxc7+ Kxc7 23.Qd6# という鮮やかな狙いのために黒が投了した。

 12.Be3

 この手は単純に展開しd4のポーンを守っている。

 12…Ng5!?(12…Bf5? は良くない。13.Nb5 a6 14.Nxc7! Kxc7[14…Qc6 15.Na8]15.Bf4+ Kd7 16.Be5 Qe6 17.Bxg7 Rhg8 18.Be5 Nxc5 19.Bxf5 Qxf5 20.g4 Qe6 21.Re1 Ne4 22.f3 Nd6 23.Qb3![23.Bg7?! Ne4 24.Bh6 g5!]23…Kc8 24.Rac1+ Kb8 25.Rc6! Ka8 26.Qb6 +- このあと短手数で白の勝ちに終わった[ハル=ズビ対レフ、イスラエル、1995年])

 13.f4 これで白の方が少し有望のようである。代わりに 13.Nxd5 なら 13…Nh3+ 14.Kg2 Bc6 15.Qg4+ Kb8 16.Qxh3 Rxd5 で黒の攻撃にはずみがつく。

10.Nc3

 10.f3 Nf6 11.Be3 もよく見かけられ、活気のある局面になる。

10…Bg7 11.g3

 いくつかの試合の結果からするとこの手の方が 11.Ne2 よりも優っている。

11…Qh3 12.Nxe4 dxe4 13.Bxe4

 これで白のポーン得になったが長く保つことはできそうもない。

13…Bb5 14.Bg2!

 14.Bxg5 も 14…Rxd4 15.Bg2 Qf5 でやはり交換損をより劣った状況でしなければならない。

14…Qf5 15.Be3! Bxf1 16.Bxf1

 白は犠牲にした交換損に対して1ポーン、双ビショップ、それに黒キングに対する猛攻という十分すぎる代償を得ている。目下の作戦は Qa4 のあと Ra1-d1-d3 で3段目でルークを活用することである。

 アーナンド対イワンチュク戦(リナレス、1993年)では白がきれいに勝った。

16…Rhe8 17.Qa4 Kb8 18.Rd1 c6 19.Rd3 Qe4 20.Ra3 a6 21.Bd3

 21.Bxa6 なら黒は捨て駒を受け付けずに 21…Rxd4! 22.Bxd4 Bxd4 で逆に捨て駒をする。

21…Qg4?

 21…Qd5! の方が良かった。

22.Rb3! Bxd4?

 これは一本道で負ける。

23.Rxb7+! Kxb7 24.Qxa6+ Kb8 25.Qb6+ Ka8 26.Qxc6+ Kb8 27.Qb6+ Ka8 28.Bb5 黒投了

3.d4 戦法Ⅲ 5…Nd7 – 7…Bd6
1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.d4 Nxe4 4.Bd3 d5 5.Nxe5 Nd7 6.Nxd7 Bxd7 7.O-O Bd6

 この手の方が流行している。

8.c4

 白は他にも二つの面白い手を試みてきた。8.Qh5 これに対する黒の最善の応手は 8…Nf6 9.Re1+ Kf8 10.Qh4 Ng4 である。黒はキャッスリングの権利を失ったのでクイーンを交換した方が得策である。もう一つは 8.Nc3 Nxc3 9.bxc3 O-O 10.Qh5 で両狙いで 10…f5 と突かせる。そうなればちょうどできたe5の地点の弱点のために白の二重cポーンは相殺される。

8…c6 9.cxd5 cxd5 10.Qh5

 10.Nxc3 Nxc3 11.bxc3 O-O 12.Qh5 f5 13.Qf3 は黒が駒を働かせるためにやはりd5のポーンを犠牲にすることができる。13…Kh8 14.Qxd5 Bc6 15.Qe6 Rf6 16.Qb3 Rg6 17.g3 Qh4 18.d5 Bxg3 19.hxg3 Rxg3+ 20.fxg3 Qxg3+ 21.Kh1 黒は永久チェックで引き分けにできる。

10…O-O

 ポーンの犠牲を払ってもキングの安全を図る方が優先度が高い。

11.Qxd5 Bc6

 明らかに黒の方が展開に優りすべての小駒が好所にいる。実戦によれば黒がポーンの代償を十分に得ている。しかし定跡の最終結論としてはまだ十分でないかもしれない。

12.Qh5 g6 13.Qh3 Ng5

 奇異な 13…Bb4 も何局か指されている。しかし白は 14.Be3 Re8 15.a3 Ba5 16.Rc1 で陣形をまとめて1ポーン得の優位を維持しているようである。

14.Qg4!

 14.Bxg5 Qxg5 15.Nc3 Rae8 も白クイーンが遊んでいるので黒に十分な反撃力がある。また 14.Qh6 は 14…Be7 15.Be3 Ne6 でd4のポーンが落ちる。

14…Ne6

 d4のポーンは守られているように見えるけれどもそうではない。黒は 15…Nxd4 を狙っていて 16.Qxd4? は 16…Bxh2+ の開きチェックで白クイーンが落ちる。

15.Bh6

 白は 15.Be3 でd4のポーンを守っても優勢になれなかった。なぜなら 15…h5 16.Qh3 Bd7 17.Qf3 Bc6 となって白は 18.Qh3 で手を繰り返さなければならないからである。1999年ラスベガスでのローチェ対ゲルファンド戦(番勝負第6局)では白は引き分けを避ける過ちを犯した。18.Qd1? Qh4 19.h3 Ng5 20.d5 Nxh3+! 21.gxh3 Qxh3 22.Re1 Bh2+ 23.Kh1 Bxd5+ 24.f3 Bf4+ 25.Kg1 Bxf3 白投了。

15…Re8 16.Nc3

16…Nxd4

 1999年のアーナンド対カルポフの番勝負では黒が2試合で 16…Bf4!? 17.Bxf4 Qxd4 18.Be4 f5 19.Qg3 Nxf4 20.Bxc6 bxc6 21.Qf3 と指した。どちらでもキングがより安全なこととポーンの形に優ることにより白がいくらか有利な局面になった。

17.Rad1 Be5

 激闘の中盤戦になった。

3.d4 戦法Ⅳ その他の戦型
1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 3.d4 Nxe4

 3…exd4 4.e5 Ne4 5.Qxd4 2003年ビールでのバクロ対モロゼビッチ戦で面白い新着想が試みられた。5…f5 6.Bc4 Bc5 7.Qxc5 Nxc5 8.Bg5 Qxg5 9.Nxg5 Nc6 10.O-O Ne6 11.Nf3 b6 12.Bd5 Bb7 13.c4 O-O-O 14.Nc3 h6 15.Rad1 g5

4.Bd3 Nc6

 これはぎょっとさせられる手である。白はe4のナイトを当たりにしている。黒はポカをしたのか。どうなるか見ていこう。

5.Bxe4

 5.d5 は 5…Nc5 6.dxc6 e4 で両取りになる。

5…d5 6.Bg5!

 6.Bd3 なら 6…e4 で駒を取り返せる。

6…Qd6 7.dxe5 Qb4+ 8.Nc3 dxe4 9.a3 Qa5

 9…Qxb2 は 10.Nd5 で白が良い。

10.Nd4 Nxe5 11.Nb3

 11.O-O Bd6 12.Nxe4 でもやはり白が展開で少し有利である。

11…Nd3+ 12.Qxd3 Qxg5 13.Nxe4

結論

 ペトロフ防御は黒にとってまったく堅実で健全な布局である。近年は白にとって布局での優位を求める戦いにおいて大きな「頭痛」になってきた。だから非常に人気のある応手になってきた。3.Nxe5 と 3.d4 の2大戦型でもペトロフ防御の可能性の豊かさが見られる。今回の黒の四つの選択肢はすべて完全に異なった種類の局面になる。黒での私の推薦は戦法のⅢとⅣにもっと集中することである。さらにペトロフ防御は非常にはやっている布局なので得意戦法に取り入れるときにはもっと研究して最近の実戦も追うようにすべきである。

 試合は非常に激しく高度に戦術的になりしばしば乱戦になる局面では正確な手順が必須なので、指し方の一般的な考え方だけを示すのは難しい。正確な読みをたくさん行なう必要がある。しかし要はこの布局では黒が対等に戦えるということである。

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2012年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(34)

「Chess Life」2004年3月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

チゴーリン防御

 クイーン翼ギャンビット拒否のチゴーリン防御 [D07] は白にとって意表をつかれることが多く、黒の利点になっている。というのはたとえ白が黒の布局選択を予期したとしても、白にはっきりした優勢をもたらす戦型はないからである。世界選手権戦でビルヘルム・シュタイニッツに2度挑戦した19世紀のロシアのマスターにちなんで名づけられたチゴーリン防御は一流大会ではきわめてまれな布局である。それでもその利点は分析されすぎた主要な布局を避けることにある。すでに2手目から黒は白に特定の戦型を強要する。白は適切に準備してなければ試合早々から不快な驚きに見舞われることになる。

 これを定常的に指す2大強豪選手はGMモロゼビッチとGMミラディノビッチである。この二人の若きグランドマスターのおかげでチゴーリン防御はこの10年ほどの間に復活を果たした。元世界チャンピオンのワシリー・スミスロフ、GMトニー・マイルズ、その他多くの選手もこれを意表を突く武器として試みた。

白の基本的な作戦は何か

 白は一番最初から攻撃的に中央の支配を争おうとするのが普通である。戦型AとBでは黒はビショップをf3の地点で交換し、白はgポーンで取り返す。白キングはもうキング翼に安全を求めることができないのでこの交換は白にとっていくらか危険でもある。これらの戦型で白キングは中央が比較的一番安全なのでチェスの基本原則の例外ではあるがそこに留まることが多い。代償としてに白には双ビショップの優位と強力な中原がある。白は主要な戦略として中原のポーンを突いていくようにすべきである。さらにg列が素通しになる色々な戦型では Rh1-g1 と寄って攻撃を図ることができる。もちろん黒がクイーン翼にキャッスリングすれば白はクイーン翼で(b列で)攻撃する必要がある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は2手目で白のd4ポーンに対しいささか異例の速攻を始める。次の2手は襲撃を続ける。黒は「序盤早くにクイーンを出すな」と「ビショップをナイトと交換するな」というようなチェスの基本原則を破ってまでも非常に積極的に動いていこうとする。多くの戦型で黒は2個のビショップを白のナイトと交換してしまう。白キングが中央に留まっているときはしばしば黒は戦術の機会をとらえて局面を開放状態にしなければならない。

それで評決はどうなっているか

 チゴーリン防御は非常に面白い戦いになる。2…Nc6 のあと白には主要な選択肢が三つある。そのどれもまったく異なった種類の中盤戦になる。しかしクイーン翼ギャンビットで通常起こるような、白がわずかな穏やかな優勢を得るはっきりした手段はないようである。白は布局で戦って優勢になりたければ危険をおかさなければならない。少しの危険とはf列で二重ポーンを甘受することとキングを中央に置いたままにすることである。

戦型A)3.Nc3
1.d4 d5 2.c4 Nc6 3.Nc3

 白はd5ポーンにもう一つ当たりをかける。

3…dxc4 4.Nf3

 4.d5 と突く手もあり 4…Ne5(4…Na5?! は 5.Qa4+ c6 6.b4 でそれほど良くない)5.f4 Nd7 6.e4 Nb6 7.a4 a5 8.Be3 e6 9.Bxb6 cxb6 10.Bxc4 Bb4 11.Nf3 Nf6 12.O-O O-O 13.dxe6 Bxe6 でいい勝負である(イワンチュク対モロゼビッチ、ニューヨーク、プロチェス協会快速戦、1995年)。

4…Nf6

 4…Bg4? は次のように白を利する。5.d5 Bxf3 6.exf3! Ne5 7.Bf4 Nd3+{7…Ng6 は 8.Bxc4 Nxf4(8…a6 は 9.Qa4+ Qd7[9…b5 は 10.Nxb5 axb5 11.Bxb5+ からすぐに詰みになる]10.Bb5 で釘付けの見事な成功例となる)9.Bb5+ c6 10.dxc6 で開きチェックのために黒が負ける}8.Bxd3 cxd3 9.Qb3 黒が著しく展開で遅れているので白がはるかに優勢である。

5.e4 Bg4 6.Be3

 ここで黒は二つの道を選ぶことができる。

6…Bxf3

 もう一つは 6…e6 7.Bxc4 Bb4 8.Qc2 O-O(8…Bxf3 は 9.gxf3 Nxd4? 10.Bxd4 Qxd4 11.Qa4+ で不可)9.Rd1 Qe7 と進む。

7.gxf3

 7.Qxf3 はd4のポーンが浮いて 7…Nxd4 と取られる。

7…e5 8.d5 Nb8!

 8…Ne7 は 9.Qa4+ Nd7 10.d6! cxd6 11.Bxc4 となって、白はポーン損ながら Qa4-b3 の狙いとd列とg列にルークを回す狙いで縦横に指せる。

9.Bxc4

 もっと直接的な 9.f4 なら黒は 9…Bd6(または 9…Nbd7!? もあるだろう)10.fxe5 Bxe5 11.Bg2 Qd6 12.Qa4+ Nbd7 13.Nb5 Qa6 と応じる。

9…Nbd7

10.Qb3 Bc5!

 黒枡ビショップ同士の交換は黒にとって助かる。

11.O-O-O

 11.Qxb7 は 11…Rb8 12.Qc6(12.Qa6 なら 12…Rxb2[訳注 13.Bxc5 Nxc5 14.Qa3 で両取りになるので正着は 12…Bxe3 13.fxe3 Rxb2])12…Rb6 13.Qa4 Rb4 14.Qa6 Bxe3 15.fxe3 Rxb2 16.Qxa7 O-O となって、黒にポーン損の代償が十二分にある。

11…Bxe3+ 12.fxe3 Rb8

 ポーンを守っておくべき頃合である。

13.d6

 さもないと黒がキャッスリングのあと …Nf6-e8-d6 によってポーンをせき止めることができ有利な態勢になる。

13…O-O

 どちらも指せる分かれである(アーナンド対モロゼビッチ、ベイクアーンゼー、2001年)。

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2012年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(35)

「Chess Life」2004年3月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

チゴーリン防御(続き)

戦型B)3.Nf3
1.d4 d5 2.c4 Nc6 3.Nf3 Bg4

4.cxd5

 この主眼の手は白にはっきりした優勢をもたらさない。最近は代わりに 4.Nc3 e6 5.Bg5 がよく指されている。その局面はdポーン布局に特有の半閉鎖的な特徴が維持される。

4…Bxf3

 すぐにポーンを取り返すのは良くない。なぜなら 4…Qxd5 のあと白は 5.Nc3 でクイーン当たりの先手で展開できるからである(あまり早くクイーンを出すなという金言を覚えておくとよい)。本譜で白にはc6のナイトを取る手とf3の黒ビショップを取る手の選択肢がある。

5.gxf3

 5.dxc6 は 5…Bxc6 6.Nc3 e6 7.e4 Bb4 となって白は 8.Bd3 のような自然な展開の手でe4のポーンを守るのが難しい(d4のポーンが浮くので)。だから最善の受けは 8.f3 で、そのとき 8…Qh4+ で白のキング翼の弱体化がさらに引き起こされる。9.g3 Qf6 10.Be3 O-O-O となれば黒の活動性に富む局面になる。

5…Qxd5 6.e3

 白には双ビショップの優位がある。しかし代償として黒はポーンの形が優っている。

6…e5

 展開に優る黒はすぐに仕掛けていくことができる。

7.Nc3 Bb4

 この釘付けの手により黒クイーンは中央に居続けられる。欠点は次の手でビショップを白のナイトと交換しなければならないことである。

8.Bd2

 釘付けをはずした。

8…Bxc3 9.bxc3

 最後の方の手はほぼ一本道だった。ここは重要な分かれ道である。このポーン形とそれを支える双ビショップで白の作戦は明白である。大きな問題はキングの安全な場所を見つけることである(b列とg列が素通しになっているので)。黒は二つの重要な問題に答えなければならない。

 a)g8のナイトをどこへ展開するか。
 b)どちらへキャッスリングするか。

 グランドマスターの実戦からいくつか例を見てみよう。

9…exd4

 他の選択肢は・・・

 9…Qd6 10.Rb1 b6 カスパロフ対スミスロフの有名な試合(1984年の番勝負から)で白はすぐに大乱戦の勝負所に突入したが両者に悪手が出た。11.f4!? この面白い一時的なポーンの犠牲により白は直接中央から進攻する。11…exf4 12.e4 Nge7 13.Qf3 O-O 14.Bxf4 Qa3 15.Be2! f5! これは非常に理にかなった手で白キングに通じる中央の列をこじ開ける。

 16.O-O fxe4? これは悪手だった(16…Ng6 17.Bxc7 Qe7 の方が良かった)。17.Qxe4 Qxc3 黒はポーン得になったがクイーンに手数をかけすぎて白の攻撃が強力になった。18.Be3!(直接 18.d5 と突くのは 18…Qd4 のために時期尚早である)18…Qa3 19.Bd3! 白の攻撃が非常に危険になってきた。19…Qd6(19…g6 は 20.Bc4+ Kg7 21.d5 から Bd4+ で白の勝ち。また 19…Rf5 は 20.Rb5! Rxb5 21.Bxb5 Qd6 22.Rc1 で黒のナイトが釘付けを逃れると駒損になる)20.Qxh7+ Kf7 21.Rb5! 攻撃に新戦力が加わった。21…Nxd4! そしてここで白は優勢を手放してしまう。22.Qe4?(白は 22.Bxd4 Qxd4 23.Rg5! なら強力な攻撃を維持できていた)22…Rad8!(22…Nxb5? は 23.Bc4+ Kf6 24.Qh4+ Kg6 25.Qg5+ Kh7 26.Qh5+ で良くない)23.Bxd4 Qxd4 白はチェックの千日手で引き分けにするしかなかった。24.Rf5+ Nxf5 25.Qxf5+ Kg8 26.Qh7+ Kf7 ½-½

 9…Nf6 この自然な展開の手はチゴーリン防御では黒のナイトにとって好所とならないことが多い。白の中央のポーンが進撃を開始すればナイト当たりの先手になるかもしれない(例えば e4-e5)。ナイトをe7に展開する別の利点は将来 …Ne7-g6(または -f5)-h4 と捌くことができるかもしれないことである。10.Bg2 O-O 11.O-O Qd6 12.Rb1 b6

 13.f4! この強手はこの防御につきものの着想である。13…e4(黒が 13…exf4 とポーンを取ってくれば 14.e4 で白が優勢になる)14.c4 白は中央を落ち着かせた。あとでg列だけでなく黒枡ビショップでa1-h8の斜筋も支配する。14…Rfe8 15.Kh1 Ne7 16.Rg1 Rad8 17.Bh3 Ng6 18.Bc3 Nh4 19.Rg3 Nf3 一見ナイトをf3にもぐり込ませて黒が成果をあげたようだが、このナイトがそこに長く留まることはできない。20.Qe2 Nh5 21.Rg2 Qh6? 22.Bg4 Qg6? 23.f5(ルシエージュ対シャルボノ、モントリオール、2001年)望みのない局面になって黒は投了した。

10.cxd4 Nge7 11.Be2

 ここで黒はどちらにキャッスリングするかを決めなければならない。どちらもありそうである。キング翼にキャッスリングする方が安全なようである。

11…O-O 12.Qb3 Qg5

 12…Qxb3?! 13.axb3 と交換するのは双ビショップと強い中原のおかげで白が収局で楽に優勢になる。

13.Qxb7 Qg2 14.Rf1 Qxh2 15.Qb5! Rab8 16.Qc5 Rfd8

 中盤の正念場になった。駒割は互角である。戦略的には白の方がはっきり良い。しかし白キングは盤の中央列で危険にさらされている。11.Be2 と 12.Qb3 の代わりに白は上述のルシエージュ対シャルボノ戦に似たもう少しおとなしい作戦を選ぶこともできる。

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2012年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(36)

「Chess Life」2004年3月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

チゴーリン防御(続き)

戦型C)3.cxd5
1.d4 d5 2.c4 Nc6 3.cxd5 Qxd5

4.e3

 d4ポーンを守る他の手段は 4.Nf3 で、4…e5 5.Nc3(または 5.dxe5 Qxd1+ 6.Kxd1 Bg4)5…Bb4 6.e3(または 6.dxe5 Bxc3+ 7.bxc3 Qa5)6…exd4 7.exd4 となって驚いたことにスコットランドギャンビットに移行する。1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.c3 d5 5.exd5 Qxd5 6.cxd4 Nf6 7.Nc3 Bb4 の局面と比べると黒が 7…Nf6 と指せばまったく同じ局面になる。

4…e5

 黒は直前の2手の顔を立てるために意欲的に指し続けなければならない。

5.Nc3 Bb4 6.Bd2 Bxc3

 この局面でc3での取り返し方が二つあるが悩ましい選択である。

7.bxc3

 こう取り返すと白の中央が強化される。7.Bxc3 は 7…exd4 8.Ne2 Nf6 9.Nxd4 O-O となって白はf1のビショップの展開が困難になる。10.Nb5(10.Nxc6 の方が穏やかでたぶん優る)10…Qg5! g2の地点をにらんでいる。11.h4(白が 11.Nxc7 とポーンを取ると黒は 11…Bg4 12.Qb3 Rad8 13.Qxb7 Rd6 で十分な代償を得る)11…Qh6! 12.Be2(12,Nxc7 と取る方が良いが 12…Bg4 13.Qb3 Rad8 14.Qxb7 Rd6 となって、白が展開を完了するのが非常に困難なので黒に2ポーンの代償がある)12…Rd8 13.Qc2 Nd5

14.Rd1 Be6 15.a3 Rd7! 16.Nd4 Nxc3 17.Qxc3 Nxd4 18.Rxd4 Rad8 黒の方が指しやすい(ロゴゼンコ対モロゼビッチ、イスタンブールオリンピアード、2000年)。

7…Nf6 8.f3 e4

 他の 8…Qd6、8…O-O および 8…exd4 のような手なら白は e3-e4 または単に Bf1-d3 と指すことによりe4の地点を支配する。例えば 8…Qd6 なら 9.Bd3 O-O 10.Ne2 Re8 11.O-O となって白陣が好形になる。白陣をさらに良くする作戦の一つはビショップをd2からe1を経由してg3またはh4の地点につけることである。自然な 8…O-O なら白は 9.e4 と応じることができる。(最近の試合で黒は 9.Bd3 に対し果敢に捨て駒をした。9…exd4 10.cxd4 Nxd4 11.exd4 Qxd4 しかし2003年ベルリンでのダウトフ対ハンセン戦で両GMは 12.Be2 Nd5 13.Rc1 で短手数の引き分けに合意した。黒はビショップの代わりに2ポーンしか得ていないが白も中央列に残されたキングについて心配する必要がある)9…Qd6 10.d5 Ne7 11.c4 Nd7 12.Ne2 b6 13.Nc3 a6 14.Be2 Nc5 15.O-O f5 16.Be3 Bd7 ねじり合いの局面である。

9.c4 Qd6 10.Qb1

 白が 10.Ne2 O-O 11.Ng3 Re8 12.f4 と展開すれば黒は 12…Nxd4! 13.exd4 Qxd4 と猛攻を仕掛けることができる。

10…Bf5 11.f4

 白が 11.Qxb7 とポーンを取ってくれば黒は 11…Rb8 12.Qa6 exf3 13.gxf3 Nxd4 14.Qxd6 Nc2+ でポーンを取り返すことができる。

11…O-O 12.Ne2

 これはいくらか変わった布局の局面である。黒は既に展開を完了したが白は2、3手遅れている。しかし白には双ビショップと強大な中央がある。黒は白の Ng3、Be2 そしてキャッスリングする作戦を邪魔する手段を探す必要がある。白がこれらすべてを問題なく行なうことができれば優勢な局面になる。お薦めは 12…a5!? で、d6のクイーンの安全を確保する意図で、13.d5 Ne7 となったとき Bd2-b4 を防いでいる。

 別の面白い手は 12…h5 13.d5! Ne7 14.Bb4 Qd7 15.Nd4 Bg6 16.Be2(アブルーフ対ミラディノビッチ、イスタンブールオリンピアード、2000年)である。

結論

 白ははっきり優勢になる手順がないので、自分の棋風に最もよく合う戦型を白の三つの選択肢から慎重に選ばなければならない。黒は開放的で激しい局面が好きならばチゴーリン防御は布局のよい選択になるかもしれない。意表を突く価値を持つ利点もあり、誰も他のもっと人気のある布局ほどには研究をしていないものである。

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2012年07月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(37)

「Chess Life」2004年4月号(1/1)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

イギリス布局

 多くの有名な選手がイギリス布局および/または …e5 戦型を指したことがある。世界チャンピオンではカスパロフ、タリ、スミスロフ、ペトロシアン、カルポフ、スパスキー、アーナンドがあげられ、世界レベルの選手ではラルセン、ポルティッシュ、コルチノイ、セイラワン、グリコ、ゲルファンド、バレエフ、レーコー、シロフ、それにトパロフらがあげられる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は中央を支配しキング翼を攻撃することを図り、クイーン翼は無事に収めようとする。

白の基本的な作戦は何か

 白はa列とb列でポーンを突き進めg2の強力なビショップを活用することによりクイーン翼を攻撃することを図っている。aポーンを交換することができればa列の支配が目標となる。

それで評決はどうなっているか

 イギリス布局は白にとって堅実な布局である。これは融通性もあり 1.e4 や 1.d4 ほど深くは研究されていない。黒の応手の 1…e5 は攻撃的な戦型で、黒に激しい戦いの機会を与えてくれる。

イギリス布局 1…e5
1.c4 e5

 この布局は白が1手先行していることを除けばシチリア防御(1.e4 c5)に似ている。

2.Nc3

 これが最も自然でよく指される手である。白は2手目で 2.g3 と指すこともできる。しかし 2.Nf3 と指すと黒は 2…e4 と応じることができ有利になる。

2…Nc6

 これで黒が「閉鎖戦法」を選んだ逆シチリア防御の形になっている。2…Nf6 3.g3 d5 という戦型を選ぶこともできる。この場合局面が開放的になるほど白の1手先行が重みを増すかもしれないことに留意されたい。

3.g3

 もっと攻撃的な別の作戦は 3.Nf3 で、d2-d4 突きを策する。

3…g6 4.Bg2 Bg7

 これで局面は色は逆だが本当に典型的な閉鎖シチリア防御になった。ちょうどシチリア防御のように白はここで二つの重要な決定をしなければならない。それはa)g1のナイトをf3とe2のどちらへ展開するか、そしてb)e2-e3 と突くかそれとも e2-e4 突くか、ということである。

5.d3 d6 6.Nf3

 今度は黒が重要な決定をする番である。黒はすぐに …f7-f5 と突けるし代わりに 6…Nf6 とも指せる。

 しかしもし白が 6.e3 と突けば黒は 6…Nge7 7.Nge2 O-O 8.O-O と応じることができる。そのあと黒は 8…Bg4 9.h3 Be6 から …Qd8-d7 で展開を完了するのが普通である。

6…f5

 これで黒は広い陣形になる。欠点はa2-g8の斜筋が露出することである。

 このより野心的なやり方は黒が陣地の広さと主導権を得るが、時には黒のa2-g8の斜筋をさらけ出しaポーンが交換されたあとは7段目の潜在的な弱点さえ露呈することがある。

 より安全な 6…Nf6 のあとの可能な手順は 7.O-O O-O 8.Rb1 である。白はg2のビショップの威力を増すために b2-b4-b5 突きでクイーン翼を攻撃する用意をしている。

 9.b4 突きの狙いを封じるために黒は 8…a5 と突いてくる。白は 9.a3 から b4 突きでクイーン翼の攻撃を続けなければならない。そのあと黒は Nf3-g5 を心配することなくビショップをc8からe6に楽に展開する準備のために 9…h6 と突くことができる。

 9…h6 の代わりの手は …e5-e4 突きの準備の 9…Re8 である。白は 10.Bg5 h6 11.Bxf6 Bxf6 12.b4 と指し進めることになる。白は b2-b4 と突く目的は達成したけれども、黒は双ビショップの優位を得た。そして 12…axb4 13.axb4 Bg7 14.b5 Ne7 15.Qb3 から Ra1 となればいい勝負である。

 9…h6 に戻って 10.b4 axb4 11.axb4 Be6 12.b5 Ne7 13.Bb2 Qd7 のあとは …Be6-h3 の狙いがある。14.Re1(白は白枡ビショップを残したい)14…Bh3 15.Bh1 で難解な中盤戦である。

7.O-O Nf6 8.Rb1

 これはよくある手順である。もっとも白がもっと早く、たとえ5手目で指してもおかしくない。

8…a5 9.a3 O-O 10.b4 axb4 11.axb4 h6 12.b5 Ne7

 この局面は 8…O-O 9.b4 a6 10.a4 h6 11.b5 axb5 12.axb5 Ne7 という手順からも生じる。

 白はここでどのような作戦でいくかを考える必要がある。一つの作戦はa列に着目することで、別の作戦は c4-c5 と突くことで、ときには b5-b6 と突くことさえある。

13.Nd2

 g2のビショップの利きをb7のポーンに当ててc8のビショップの展開を防いだ。代わりに 13.Bb2 で Ra1 の準備をすると黒は 13…Be6 14.Ra1 Qd7 と指すことになる。

13…g5

 これは大局観指法(白はクイーン翼の弱点を攻撃しようとしている)と白キングに対する直接攻撃との究極の戦いである。

14.Bb2 f4

 局面は中盤戦にさしかかっていい勝負である。

最終結論

 白として 1.e4 や 1.d4 の数多い布局の習得に気が進まないならばイギリス布局はその代わりとしてよいかもしれない。黒として …e7-e5 という応手は攻撃的な指し方ができる。勝ちを目指すなら良い選択となるかもしれない。しかしこの戦型を指すならば非常に難解になることがあるので自分で十分に研究をしておかなければならない。

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2012年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(38)

「Chess Life」2004年5月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法

 ルイロペス(ヨーロッパではスペイン布局と呼ばれている)の交換戦法は19世紀の終わり頃には既に知られていて、ラスカーがこれを指して好成績をあげた。それ以来双ビショップと二重ポーンのどちらが重要かという議論が続いている。1960年代にはボビー・フィッシャーが流行させて復活した。

 本稿の一部として彼の完勝局のいくつかも見ていく。

 ボビー・フィッシャーに加えて他の世界チャンピオンのラスカー、スミスロフ、カパブランカ、それにカルポフもこの戦法をしばしば用いた。他にもラルセン、ティマン、イワンチュク、シロフ、それにベンジャミンらの一流グランドマスターがよく用いた。

白の基本的な作戦は何か

 黒がdポーンで取り返したあと白の理想は自分のdポーンを黒のeポーンと交換することである。そのあとの作戦は駒をすべて交換してキングとポーンの収局に持ち込むことである。白はキング翼でポーンが多いので理論的にはこの収局は白が勝つ。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はできるだけ駒の交換を避けるように努めるべきである。そして双ビショップの優位を生かしながら迅速に展開するようにすべきである。

それで評決はどうなっているか

 この戦法はほとんどの場合穏やかな局面になり、長い収局になることがよくある。黒としてはあまり選択肢がないかもしれない。白としてはルイロペスの主手順の長い分析のほとんどを避けることに利点がある。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Bxc6

 これが交換戦法の発端の局面である。

4…dxc6

 黒はc列に二重ポーンを作るしかない。「可能ならば中央に向かって取れ」という基本原則に従う方が自然なように思われるけれども、この局面でbポーンで取り返すのはきわめてまれである。4…bxc6 のあと白は次のようにいくらか優勢になる。5.O-O(白が 5.Nxe5 とポーンを取れば黒は 5…Qe7 ですぐに取り返すことができる)5…d6 6.d4 exd4 7.Nxd4 Bd7 8.Re1 c5 9.Nf3 Be7 10.Nc3(黒は駒を展開するのに困難を抱えている)10…c6(自然な 10…Nf6 のあと白は 11.e5 で黒のポーンの形を乱す)11.Bf4 Be6 12.Qd3 Nf6 13.Rad1 d5 14.Ng5 d4 15.Nxe6 fxe6 16.Na4 Qa5 17.b3 Rd8 18.Nb2 Nh5 19.Be5 O-O 20.Nc4 Qb4 21.Qh3 白が勝勢である(カパブランカ対マーシャル、ニューヨーク、1909年)。

 dポーンで取り返すことの利点は黒の白枡ビショップの斜筋が開くことにある。

5.O-O

 白は 5.Nxe5 とポーンを取っても 5…Qd4 でナイトとポーンの両当たりになるのでやはり一時的である。白がすぐに 5.d4 と突いても黒陣は好形である。「双ビショップ」の優位はポーンの形の劣勢を補ってくれる。また 5.Nc3 なら黒は 5…f6 でe5のポーンを守る。

 この局面で黒には多くの可能性がある。ここでは次の三つの主要な手について検討する。

a)5…Bg4
b)5…Qd6
c)5…f6

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2012年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(39)

「Chess Life」2004年5月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

a)5…Bg4

 黒はe5のポーンを守るために何かする必要がある。それでf3のナイトを釘付けにすることにより間接的にe5のポーンを守った。代わりに 5…Bc5 6.Nxe5 Qd4 と指すと白に 7.Nf3 と応じられて 8.Re1 で串刺しにされるためにクイーンでe4のポーンを取ることができない。

6.h3

 これで黒はビショップをf3のナイトと交換して「双ビショップ」を放棄するか、形を決めて攻撃的な 6…h5 を指さなければならない。

6…h5

 6…Bh5 は 7.g4 Bg6 8.Nxe5 で白がポーン得する。8…Bxe4 と取ると 9.Re1 で黒がさらに損をする。

7.d3

 7.hxg4 と犠牲を受け入れるのは白にとって危険すぎる。7…hxg4 8.Nxe5? Qh4 9.f4 g3 となれば詰みを避けることができない。白は 8.Re1 でナイトを返す方が良いがそれでも黒が好形になる。

7…Qf6

 黒は 7…Bd6 と自然に展開すると白に 8.hxg4 とビショップを取られ 8…hxg4 のあと 9.Ng5 で黒クイーンのh4への道を閉ざされてしまうので注意しなければならない。

8.Be3

 ここで 8.hxg4 とビショップを取ると 8…hxg4 9.Ng5 Qh6 というように黒クイーンに急所のh列に回られる。8.Bg5 はポカで、8…Bxf3 で黒の駒得になる。8.Nbd2 なら黒が …Bxf3 で白のポーンの形を乱すのを防いでいるが、自分のc1のビショップを閉じ込めることになる。そして黒が 8…Ne7 9.Re1 Ng6 10.d4 Bd6 11.hxg4 hxg4 12.Nh2 Rxh2! 13.Qxg4(13.Kxh2 なら 13…Qxf2 で少なくとも引き分けになる)13…Rh4 14.Qf5 Rf4 で順調に攻撃できほぼ互角の形勢になる。

8…Bxf3

 ここが黒にとって白のポーンの形を崩す好機である。8…Ne7 9.Nbd2 Ng6 10.Re1 Bd6 と指すのは次の最近の試合が示すように黒が苦境に陥る。11.hxg4 hxg4 12.Nh2 Rxh2 13.Kxh2 Qh4+ 14.Kg1 O-O-O 15.Nf3 Qh5 16.Nh2 f5 17.exf5 Rh8 18.fxg6 Qxh2+ 19.Kf1 Qh5 20.Ke2 そして黒が投了した(ニシペアヌ対R.エルナンデス、メリダ、2003年)。

9.Qxf3 Qxf3 10.gxf3 Bd6 11.Nd2 Ne7

 この局面で白には二つの作戦がある。a)12.Kh1 のあと Rg1 でg列に狙いをつけるかb)12.Rfb1 から a2-a4、b2-b4 でクイーン翼で侵攻を図るかである。どちらの作戦も時々 Nc4 と組み合わせてd6での交換のあと f3-f4 と突いていく(二重fポーンを解消する)ことがある。白の優勢は大きくはないが、私なら白を持ってこの収局を指したい。その理由は1)白には二重fポーンを解消する現実的な可能性がより高い、2)黒のビショップは自分のe5のポーンによって動きが制限されているので白のビショップの方が良い、3)白はナイトをビショップと交換する機会があるかもしれないからである。しかし黒が正しく受ければ引き分けに持ち込めるはずである。

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2012年08月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(40)

「Chess Life」2004年5月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

b)5…Qd6

 これは変わったe5ポーンの守り方である。普通はこんなに早い段階でクイーンを出すのは勧められない。

6.Na3

 基本原則の「ナイトを盤端に置くな」または有名な金言の「へりにナイトを置くのはヘボ」にこの手は背いていると言われるかもしれない。しかし白は黒クイーンの普通でない展開につけ込もうとする直接的な狙いを持っているのでこの手は例外である。もっと普通の 6.d3 なら黒は 6…f6 7.Be3 c5 8.Nbd2 Be6 9.Qe2 Ne7 10.c3 Nc6 で中央のd4の地点をしっかり支配下に収めて楽な局面になる。

6…b5

 この手は相手の駒の動きを制限する好手である。目的は両当たりでポーン得を狙う 7.Nc4 を防ぐことである。同じ意図で 6…Be6 という手もある。そのあとの予想手順は次のとおりである。7.Qe2 f6 8.Rd1 白は展開に優り黒キングはまだ中央列にいる。だから白は d2-d4 突きで中央での開戦を準備する。8…c5(2002年カペルラグランドでのニシペアヌ対ソフロンレ戦では黒は 8…O-O-O で d2-d4 と突かせ白が優勢になった。9.d4 Bg4 10.Be3 Qe6 11.dxe5 Rxd1+ 12.Qxd1 Bxa3 13.bxa3 fxe5 14.Ng5! Bxd1 15.Nxe6 Bxc2 16.f3)9.c3 Bg4 10.h3 Bxf3 11.Qxf3 Ne7 12.d4 cxd4 13.cxd4 exd4 14.Bf4 Qd7 15.Rac1 ポーンの代償が十分ある。

7.c3 c5 8.Nc2

 やはり白の作戦は明らかである。白は d2-d4 突きで仕掛けたがっている。

8…Ne7

 8,,,Bb7 は 9.d4 で白が少し優勢になる。

9.a4

 白は中央での開戦の前にa列を素通しにする。もっとも 9.d4 でも面白い試合になる。

9…Rb8

 9…bxa4 10.Rxa4 は黒のクイーン翼のポーンの形がひどいことになる。

10.axb5 axb5 11.d4 cxd4

 11…Ng6 なら 12.Nxe5 cxd4 13.Nxg6 hxg6(…Qxh2# で頓死の狙いがある)14.e5(好手)14…Qb6 15.Qxd4 と進む。

12.cxd4 exd4 13.Ncxd4 c5

 いい勝負である。黒は急いでキング翼での展開を完了しキャッスリングする必要がある。

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2012年08月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(41)

「Chess Life」2004年5月号(4/4)

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GMスーザン・ポルガー

ルイロペス交換戦法(続き)

c)5…f6

 長年この手がe5のポーンを守る最もよく指される手段だった。ボビー・フィッシャーはこの戦法に対して参考になる素晴しい勝利を何局かあげている。しかしその時以来黒の方にも改良手段が用意されている。

6.d4

 ここで黒にはd4で交換に応じるか …Bg4 で釘付けにしてe5のポーンを間接的に守るかの選択がある。

6…exd4

 6…Bg4 7.dxe5 ここで黒は 7…Qxd1 でクイーンを交換しなければならない。そうしないで 7…fxe5 と取ると白にd8でクイーン交換されe5のポーンを取られる。8.Rxd1 fxe5(フィッシャーの勝局の一つは 8…Bxf3 9.gxf3 fxe5 10.Be3 Bd6 11.Nd2 Ne7 12.Nc4 O-O-O 13.Rd3 b5 14.Na5 Bb4 15.Nb3 Rxd3 16.cxd3 Ng6 17.Kf1 Rf8 18.Ke2 Nf4+ 19.Bxf4 Rxf4 20.Rg1 Rh4 21.Rxg7 Rxh2 22.a3 Bd6 23.f4 exf4 24.d4 Kd8 25.Na5 c5 26.e5 Bf8 27.Nc6+ Ke8 28.Rxc7 で黒が投了した[フィッシャー対ルビネッティ、ブエノスアイレス、1970年])9.Rd3 釘付けをはずしナイトを守った。9…Bd6 10.Nbd2 b5(11.Nc4 を防いだ)11.b3 Ne7 12.Bb2 Ng6 いい勝負である(ティマン対カスパロフ、ヒルフェルスム、1985年)6…Bd6? は悪手で、7.dxe5 fxe5 8.Nxe5! Bxe5 9.Qh5+ で白がポーン得する。

7.Nxd4 c5 8.Nb3 Qxd1 9.Rxd1

 ルイロペス交換戦法に非常に典型的なクイーンなし中盤戦になった。

9…Bg4

 9…Bd6 なら 10.Na5! b5(黒が 10…Bg4 11.f3 O-O-O? ではめようとすると白には「はめ手破り」の 12.e5! があり[しかし 12.fxg4 には 12…Bxh2+! がある]、1967年ハバナでのホルト対ジェリアンディノフ戦では黒が投了した)11.c4! Ne7 12.Be3 f5!? 13.Nc3 f4 14.e5! Bxe5?!(14…fxe3 15.exd6 exf2+ 16.Kxf2 O-O+ 17.Kg1 cxd6 18.Rxd6 Bf5 19.Re1 なら白は少し優勢なだけである)15.Bxc5 Bxc3 16.bxc3 Ng6 17.Nc6 Be6?!(17…Bd7 の方が良かった)18.cxb5 axb5 19.Na7 Rb8 20.Rdb1 Kf7 21.Nxb5 で、1966年ハバナでのフィッシャー対ポルティッシュ戦では34手で白の勝ちになった。

10.f3 Be6 11.Nc3

 11.Bf4 なら黒は 11…c4! 12.Nd4(12.Na5? は 12…Bc5+ 13.Kf1 Bb6 14.Nxb7 Rb8 でナイトが捕まる)12…O-O-O と応じる。

11…Bd6 12.Be3 b6 13.a4 Kf7

 13…O-O-O なら 14.a5 Kb7 15.e5! Be7 となる。代わりに 15…fxe5 なら 16.axb6 cxb6 17.Ne4 Be7(17…Bxb3 なら 18.Nxd6+ Kc6 19.cxb3 Rxd6 20.Rxd6+ Kxd6 21.Rxa6、また 17…Bc7 なら 18.Nbxc5+)18.Rxd8 Bxd8 19.Nbxc5+、また 15…Bxb3 なら 16.exd6 Bxc2 17.Rdc1 Bg6 18.dxc7 で白が優勢な戦いになる。(15…Be7 のあと)16.Rxd8 Bxd8 17.Ne4(18.Nbxc5+ bxc5 19.Nxc5+ の狙い)17…Kc6?(改良手は 17…Bd5!? 18.Rd1 Ne7 19.exf6 gxf6)18.axb6 cxb6 19.Nbxc5! これが勝着の手筋 19…Bc8 20.Nxa6 fxe5 21.Nb4+ 1992年ユーゴスラビアでのフィッシャー対スパスキー戦ではここで黒の投了となった。このあと続けるとすれば 21…Kb5 22.Nd6+ Kxb4 23.Ra3 Nf6 24.c3# で詰みになる。本譜の代わりに 13…a5 と突くこともできた。

14.a5 c4 15.Nd4 b5 16.f4

 16.Nf5? は 16…Bxf5 17.exf5 Ne7 18.g4 h5 となって1976年レーワルデンでのティマン対コルチノイ戦では黒が優勢だった。

16…Ne7

 いい勝負である。

結論

 白としては交換戦法は大局観で指す選手、特に収局の得意な選手には特に向いている。黒としては自分の棋風に基づいて前述の3戦法から一つを選びもっと深く研究する必要がある。両者が正しい手順を踏めば黒は互角の局面にすることができる。しかしこのような局面を誰もが好むわけではないく、「辛抱」の試合になることがよくある。だから白の観点からは心理的な理由からも好都合の戦法になるかもしれない。

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2012年09月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(42)

「Chess Life」2004年6月号(1/3)

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GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法

 トロンポウスキー戦法はブラジルのオクタビオ・トロンポウスキー選手によって1930年代に最初に広められた。1980年代中頃には英国のグランドマスターのアダムズ、ウェルズ、そして特にホッジソンのおかげで二度目の花が開いた。これを得意戦法の一部として用いるのが好きなグランドマスターにはイワン・ソコロフ、アコピアン、ミロフ、アレクサンドロフ、そしてラジャーボフがいる。

白の基本的な作戦は何か

 トロンポウスキー戦法では白は早くも2手目に急襲する。白の戦略的な狙いはビショップをf6のナイトと交換して黒に二重ポーンを作らせることである。黒がすぐに …Nf6-e4 と指す戦型ではビショップを当たりから逃したあと白はe4の黒ナイトを f2-f3 突きで追い返すのが普通である。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はf6での交換を許すか、それともナイトをe4に跳ねるかを決める必要がある。黒が早い Bg5 の唯一の潜在的な欠点を正確について、b2ポーンを …c7-c5 から …Qb6 で攻撃するのは理にかなった戦法である。黒は …d7-d5 と突いてdポーン布局のようなポーン構造をしたもっと堅固な作戦を用いることもできる。

それで評決はどうなっているか

 布局定跡の勉強に多くの時間をかけるのを避けたいならばトロンポウスキー戦法は白にとって素晴らしい選択肢となる。それにより非常に限られた知識でまともな局面に達することができる。黒はこの戦法にあまりなじみがなければ困難な局面になることがある。この布局では今回のほとんどの解説のように大局観により指すことができるし、もっと危険をいとわず指すこともできる。

 黒の観点からは …d7-d5 突きで堅固な方の陣形を選ぶか、…c7-c5 から …Qb6 のもっと野心的な陣形を選ぶべきである。

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2012年09月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(43)

「Chess Life」2004年6月号(2/3)

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GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法(続き)

1.d4 Nf6 2.Bg5

 黒はここで Bxf6 と取らせてもよいか、それとも 2…Ne4 と指してそれを防ぐかを決めなければならない。後者の方が激しい試合になる。

2…Ne4

 他によく指される手は・・・

 a)2…c5(白は喜んでf6のナイトを取る)3.Bxf6(もっともギャンビット戦法の 3.d5 Qb6 4.Nc3 Qxb2 5.Bd2 Qb6 6.e4 d6 7.f4 も面白い。黒はb2のポーンを狩るのに3手も費やした。どちら側を持って指したいかはまったく好みの問題である。白としては活動的な局面で主導権があるがb2のポーンが欠けている。黒としてはポーン得を手放さずしばらくの間守勢でいる必要がある。)

 3…gxf6 4.d5 Qb6(普通に展開する 4…Bg7 は 5.c3 d6 6.e3 f5 7.Ne2 Nd7 8.Nf4 で白がキング翼に明快な目標を得て有利な局面になる)5.Qc1

 5…f5(黒が気持ちよい 5…Bh6 で黒クイーンをb2のポーンからそらそうとしても単純な 6.e3 で何も達成できない)6.g3 Bg7 7.c3 d6 8.Nd2 Nd7 9.Nh3 Nf6 10.Bg2 O-O 11.O-O e6(黒が争点を作り始めないなら白の作戦は Qc2、Nf4 そして Rfe1 で e2-e4 突きを策することになる)12.Nf4 (代わりに 12.dxe6 なら黒のf列の二重ポーンが解消される) この先には難解な戦いが待っている。1995年のアダムズ対ローチェ戦は次のように続いた。12…Bh6 13.e3 Bd7 14.Rd1 e5 15.Ne2 Rae8 16.Qc2 Qd8 17.Nc4 Qe7 18.a4 b6 19.Re1 Kh8 20.Rad1 Rg8 21.Nc1 Rg6 22.Nd3 Reg8 23.b4 Nh5 24.bxc5 bxc5 25.Rb1 Bc8 26.Qd1 Rg4 27.Na5 f4 28.exf4 Nxf4 29.Nxf4 Bxf4 30.Nc6 Qf6 31.Rb8 Bf5 32.Rxg8+ Rxg8 33.Nxa7 Qg6 34.Nc6 Qg5 35.a5 h5 36.h4 Qf6 37.Qxh5+ Bh6 38.Ne7 黒投了

 b)2…d5 これは次のような局面になる。3.Bxf6 exf6 4.e3 Bd6 5.g3 c6 6.Bg2 f5 7.Ne2 戦略的に面白い戦いである。

 黒には双ビショップがあるが二重fポーンに対処しなければならない。白の作戦は c2-c4 突きを準備してクイーン翼で戦いを起こすのが普通である。

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2012年09月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(44)

「Chess Life」2004年6月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

トロンポウスキー戦法(続き)

(1.d4 Nf6 2.Bg5 Ne4) 3.Bf4

 この手のあと黒は 3…d5 と突くか 3…c5 と突くかを決めることができる。

3…c5

 もっと控え目な 3…d5 なら白は堅実に 4.e3 Bf5 5.f3(ナイトを押し返す)5…Nf6 6.c4 c6 7.Nc3 e6 8.Qb3 と指し、早い …Bc8-f5 出の欠点につけ込んでb7のポーンを狙う。8…Qb6

 (8…Qd7 のあとイギリスチェス界の伝説の故トニー・マイルズが次のように優勢を勝ち取る素晴らしい指し回しを見せてくれた。9.g4 Bg6 10.h4 h6 11.c5 Be7 12.Nb5! cxb5 13.Bxb8)9.c5 Qxb3 10.axb3 これは白の方が少し優勢だった。このあと白はポーンを b4-b5 と突いていく。これはa列の釘付けのために阻止するのが難しい。

4.f3 Qa5+

 4…Nf6 は 5.dxc5 Qa5+ 6.Qd2 Qxc5 7.e4 で白が良い。黒はポーンを取り返すためだけにクイーンに2手を浪費している。試合の早い段階ではクイーンはなるべくあとで動かす方が良い。

5.c3 Nf6 6.Nd2

 もっと攻撃的な 6.d5 なら黒は 6…Qb6 で十分反撃できる。白はしょせん 7.Bc1 と引くより仕方がない。7.Qd2 は 7…Nxd5! 8.Qxd5 Qxb2 という手筋でa1のルークが落ちる。

6…cxd4 7.Nb3

7…Qb6

 黒は 7…Qf5 でポーン得を維持することができなかった。そう指すと挿入手の 8.Bxb8 という手があって 8…Rxb8 9.Qxd4 b6 10.e4 Qf4 11.Nh3 Qc7 12.e5 Ng8 13.O-O-O で主導権が白に渡る。

 黒がクイーンを 7…Qd8 と引くなら白は 8.cxd4 d5 9.e3 e6 と指し進める。

 客観的には黒は互角の形勢にできる。しかし白は 10.g4 でキング翼で陣地を広げる異例の作戦で 10…Nc6 11.Rc1 Bb4+ 12.Kf2 O-O 13.Bb5 Bd7 14.Ne2 と進め黒を悩ませることができる。

8.Qxd4 Nc6

 これは意表の手で、b6の地点でのクイーン交換を誘い黒に二重bポーンができる。現在の定跡ではこれが最善手になっている。しかしこの局面の好みに基づいて自分で判断を下すべきである。

 もっと自然な 8…Qxd4 9.cxd4 はやはり白の方が少し有望である。9…d5 10.e3 e6 11.g4 となれば白が少し広さで有利でいくらか展開も良い。

9.Qxb6 axb6 10.Nd4 e5

 この手が最善と考えられている。10…Nxd4 は 11.cxd4 d5 12.e3 でポーンの形の差で白がやはりすこし優勢である。

11.Nxc6 exf4 12.Nd4

 この局面で解説者の中にはほとんど互角の形勢だと考える者もいる。しかし私の考えでは白のポーンの形の方が明らかに優っている。だから私なら白を持ちたい。

結論

 トロンポウスキーは主要な常用戦法の一部として用いることもできるし、たまに意表を突く武器としてだけ用いることもできる。黒としては 1.d4 に 1…Nf6 と応じれば選択の余地がない。白としては布局でこの戦法を押しつけることができる。絶対一見の価値はある。

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2012年09月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(45)

「Chess Life」2004年7月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スペイン4ナイト試合

 スペイン4ナイト試合は1世紀以上前から知られている。当時の最強選手たちの間で非常に流行した。現在はクラブなどでの大会でまだ非常にはやっている。スパスキー、カームスキー、ショート、ナン、シロフ、アダムズらの多くの強豪選手が意表を突く武器としてときたま用いている。

 この布局は駒を展開し中原を支配するという基本的な布局の原則に基づいている。1.e4 e5 のあと常識的な 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 に加えていろいろ異なった手順からも生じることがある。たとえばルイロペス(2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.Nc3)、ペトロフ防御(2.Nf3 Nf6 3.Nc3 Nc6 4.Bb5)、そしてウィーン試合(2.Nc3 Nf6 3.Nf3 Nc6 4.Bb5)から到達できる。

 主手順の最初の3手のあと白はまだ異なった指し方の選択肢があり、4.d4 でスコットランド4ナイト試合に移行する。しかし本稿では 4.Bb5 だけを解説する。

白の基本的な作戦は何か

 白は初めは中原に強い圧力をかける。黒がどの戦法に決めるかによって白はそれに応じて対応しなければならない。戦型Aでは黒は即衝突に誘ってくる。白は6手目でもう両当たりに基づいた手筋を始めることができる。

 戦型Bでは黒はポーンを犠牲にし、白は「ポーンの取り逃げ」方針に従ってポーン得を守りきろうとする。戦型Cはほとんどの場合長い大局観の戦いになるが、白が好機の f2-f4 の仕掛けで開戦する選択肢もよくできる。

黒の基本的な作戦は何か

 4.Bb5 のあと白はc6のナイトを取ってからe5のポーンを取ることを狙っている。黒はこの狙いに対処しなければならない。それはいくつかの間接的な方法で行なうことができる。戦型Bでは黒はe5のポーンを犠牲にして素早く駒を動員することができる。

それで評決はどうなっているか

 開始早々(4手目)黒は針路の選択をしなければならない。戦型Bでは黒は非常に活発に動く代わりにポーンを捨てなければならない。

 黒でもっと用心深い選手は戦型Cの方を好むだろう。私は戦型Aから生じる局面の白の方が好きである。

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2012年10月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(46)

「Chess Life」2004年7月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スペイン4ナイト試合(続き)

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5

 ここで黒には主要な選択肢が三つある。

戦型A)4…Bc5

 代わりに 4…a6 は 5.Bxc6 dxc6 6.Nxe5 Nxe4 7.Nxe4 Qd4 8.O-O Qxe5 9.d4 Qf5 10.Re1 で白が優勢になる。

 意外にも 4…Bd6 は見た目ほど悪くない。この手は黒のdポーンを進めなくし、そのためc8のビショップの展開が遅れる。しかし最近のいくつかの試合ではキャッスリング、…Re8、ビショップのf8への戻り、そしてdポーン突きで黒が問題のない局面になった。

5.O-O

 白は 5.Bxc6 dxc6 6.Nxe5 でポーン得することはできない。なぜなら 6…Bxf2+ 7.Kxf2 Qd4+ で黒が戦力を取り返し有利な局面になるからである。

5…O-O

 5…d6 はc6のナイトが釘付けになり 6.d4 突きを許すので良くない。

6.Nxe5

 白はこの面白い一時的な捨て駒で主導権を握ろうとしている。代わりに 6.Bxc6 dxc6 7.Nxe5 は 7…Re8 8.Nf3(8.Nd3 なら 8…Bg4 9.Qe1 Bd4 で白はe4のポーンを守りきれない)8…Nxe4 で黒がポーンを取り返す。

6…Nxe5 7.d4

 この両当たりで白は駒を取り返す。

7…Bd6

 黒は双ビショップを残そうとしている。

8.f4

 この手が白の手筋の核心である。8.dxe5 ですぐに駒を取り返すよりも意欲的である。

8…Nc6

 8…Neg4 も 9.e5 Bb4 10.exf6 Nxf6 11.f5 で白駒の動きが活発である。

9.e5

 またしても両当たり。

9…Be7 10.d5

 またf6のナイトを取り返すのを遅らせた。白は広さの優位を得るためにさらに進攻している。

10…Nb4 11.exf6 Bxf6 12.a3 Bxc3 13.bxc3 Nxd5 14.Qxd5 c6 15.Qd3 cxb5 16.f5 f6

 16…Re8 は 17.f6 g6 となって黒はキング翼の黒枡に多くの弱点を抱えることになる。

17.a4 bxa4 18.Rxa4

 白には十分な代償がある。もっとも1991年イングランドでのナン対ホッジソン戦ではこのあと白がいくつかの悪手を出して負けた。白は展開に優り駒がよく利いている。白のルークはキング翼に展開してクイーンの攻撃を助けることができ、ビショップは黒枡を支配している。

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2012年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(47)

「Chess Life」2004年7月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スペイン4ナイト試合(続き)

戦型B)1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Nd4

 この戦型はポーンの犠牲を伴うが黒は駒の働きが良くなる。

5.Ba4

 5.Nxd4 は白に有利をもたらさず 5…exd4 6.e5 dxc3 7.exf6 Qxf6 8.dxc3 Qe5+ 9.Qe2 で引き分けっぽい収局になる。

5…Bc5

 5…Nxf3+ は中央での戦いを放棄するのが早すぎる。6.Qxf3 c6(6…Be7 は 7.Qg3 が不快である)7.O-O d6 8.d3 となって白が好形である。このあと 8…Be7 に 9.Nd5 が釘付けのために可能である。黒がキャッスリングしたあとの白の基本作戦はc3のナイトをe2からg3を経てf5に移すことである。

6.Nxe5 O-O

 黒は 6…Qe7 7.Nd3 Nxe4 でポーンを取り返すことができるが、8.O-O Nxc3 9.dxc3 Ne6 10.Nxc5 Qxc5 11.Be3 となって双ビショップの優位のために白が優勢である。

7.Nd3

 自然な 7.d3 なら黒は 7…d6 8.Nf3 Bg4 で釘付けにして主導権を握る。

7…Bb6 8.e5

 意外なことに通常の 8.O-O は 8…d5! で黒が好調になる。9.e5 Bg4 10.Qe1(空きチェックがあるので白は 10.f3 で黒ビショップの利きを止められない)10…Ne4 11.Nxe4 Ne2+ 12.Kh1 dxe4 で黒が優勢である。途中 9.Nxd5 は 9…Nxd5 10.exd5 Qxd5 11.Nf4 Qg5 12.d3 Bg4 で黒の攻撃が強力で形勢有利である。

8…Ne8 9.Nd5

 9.O-O は 9…d6 10.exd6 Nf6 11.dxc7 Qd6 で黒の攻撃が強力になる。

9…d6

 もっと最近の試合でも 9…c6 10.Ne3 d5 11.c3 Ne6 12.Bc2 d4 で黒がポーンの十分な代償を得た(ポトキン対アクス、2002年)。

10.Ne3

 10.O-O は 10…dxe5 11.Nxb6 axb6 でa4のビショップが浮いていて黒が良い。

10…Qg5 11.exd6 Nxd6

 黒にはポーンの代償があり駒の働きも非常に良く、白は展開が遅れている。

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2012年10月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(48)

「Chess Life」2004年7月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スペイン4ナイト試合(続き)

戦型C)1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 Nf6 4.Bb5 Bb4

 これが最も堅実で古典手順となっている。

5.O-O

 5.Nd5 は 5…Nxd5 6.exd5 e4 7.dxc6 dxc6 8.Be2 exf3 9.Bxf3 O-O 10.O-O となってまったくの互角である。

5…O-O 6.d3 d6 7.Bg5 Bxc3

 黒はもう「猿まね」を止めた方がよい。7…Bg4 のあと1995年のポノマリョフ対アザロフ戦では 8.Nd5 Nd4 9.Nxb4 Nxb5 10.Nd5 Nd4

11.Bxf6 gxf6 12.Qd2 Nxf3+(12…Bxf3 なら 13.Qh6)13.gxf3 Bxf3 14.Qe3 Bh5?! 15.Qh6 Bg6 16.f4 c6 17.fxe5 fxe5 18.Nf6+ Kh8 19.h4 となって黒が戦力損を避けられなかった。

8.bxc3 Qe7 9.Re1 Nd8 10.d4 Ne6 11.Bc1

 11.dxe5 は 11…Nxg5 12.exf6 Qxf6 となって黒のポーンの形の方が良い。また 11.Bh4 も 11…Nf4 で黒が良い。

11…c6

 別の作戦は 11…c5 によってポーン構造を変えることである。元世界チャンピオンの故ペトロシアンの見事な戦略の試合では白の理想的な指し回しが見られる。11…c5 12.Bf1 Qc7?! 13.d5 Nd8(13…Nf4?! 14.Bxf4 exf4 15.e5 dxe5 16.Nxe5)14.Nh4 Ne8 15.g3 Qe7 16.Nf5 Bxf5 17.exf5 Qf6 18.Qg4 Qe7 19.Bg5 Qd7 20.a4 f6 21.Bd2 g6 22.Bh3 Qxf5 23.Qxf5 gxf5 24.Bxf5 Ng7 25.Bd3 f5 26.f4 e4 27.Be2 Rc8 28.c4 Ne8 29.h3 Nf6 30.g4 fxg4 31.hxg4 Rc7 32.Kf2 h6 33.Rh1 e3+ 34.Bxe3 Ne4+ 35.Kg2 Nf7 36.Bd3 Re7 37.Rae1 Rfe8 38.Bc1 Nc3 39.Rxe7 Rxe7 40.a5 b6 41.axb6 axb6 42.Bd2 Ne2 43.c3 b5 44.Kf1 1-0(ペトロシアン対リリエンタール、モスクワ、1949年)黒の改良手段は 12…Rd8 でナイトにf8に動く余地を作ることである。

12.Bf1

 攻撃で有名なルドルフ・シュピールマンと収局の達人のアキバ・ルビーンシュタインの昔の試合(カールスバート、1911年)は白の指し方の見本であり棋風の激突である。12…Rd8 13.g3 Qc7 14.Nh4 d5 15.f4 exf4 16.e5 Ne4 17.gxf4 f5 18.exf6e.p. Nxf6 19.f5 Nf8 20.Qf3 Qf7 21.Bd3 Bd7 22.Bf4 Re8 23.Be5 c5 24.Kh1 c4 25.Be2 Bc6 26.Qf4 N8d7 27.Bf3 Re7 28.Re2 Rf8 29.Rg1 Qe8 30.Reg2 Rff7 31.Qh6 Kf8 32.Ng6+ hxg6 33.Qh8+ Ng8 34.Bd6 Qd8 35.Rxg6 Ndf6 36.Rxf6 Rxf6 37.Rxg7 1-0

 もちろん黒はいろいろな個所で別の指し方ができるが、この試合は黒の直面する一般的な危険性を考えさせてくれる。

12…Qc7

 局面は互角に近い。ここで白は主手順のように攻撃的な手法の開始を選ぶこともできるし、もっと安全に 13.g3 から 14.Bg2 のあとで f2-f4 と突く作戦を選ぶこともできる。

13.Nh4

 この作戦は g2-g3 から f2-f4 と突いてすぐに中央を争いキング翼で進攻することである。

13…Re8 14.g3 h6 15.f4 Qa5

 ねじり合いの局面だがどちらもいい勝負である。

最終結論

 スペイン4ナイト試合は常用布局の一部として、または単に意表を突く武器として用いても、白にとって有力な布局である。4…Nd4 のあと白ならばどう受けるか考えておかなければならないが、ポーン得にはなる。他の戦型では白はルイロペスに似た指しやすい局面になるかもしれなくて、ルイロペスとは異なり多量の研究を避けることができる。

 黒にとっては好みの問題になる。駒の働きのためにポーンを捨てることをいとわないならば、戦型Bを採用すべきである。戦力の損失のない局面が好みならば戦型Cがよい。

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2012年10月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(49)

「Chess Life」2004年8月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット

 私が初めてこのギャンビットに出会ったのは子供の頃の1970年代後半で、好きになった。当時ヨーロッパでは有名な川にちなんでボルガギャンビットと呼ばれていた。ヨーロッパでは布局の名の多くがそうであるように地理にちなんで名付けられる。米国では選手名にちなんで名付けられることの方がずっと多い。GMパル・ベンコーは1960年代後半にこの面白いギャンビットを広め始めた。好成績を収めたのですぐに多くの選手が彼にならい始めた。

 ベンコーギャンビットでは黒が3手目に長期的な主導権のためにポーンを犠牲にする。現在ベンコーギャンビットを好んで用いている一流選手にはイワンチュク(2004年ヨーロッパ選手権者)、ファン・ベリー、トパロフ、バレエフらの名があげられる。米国では多くの一流GMが指している。たとえばレフ・アルバート、ディミトリー・グレビッチ、ジョン・フェドロウィッツ、ウォルター・ブラウンたちである。

白の基本的な作戦は何か

 白は4手目で犠牲を受諾するか拒否するかを決めなければならない。もしこのポーンを取れば黒には代償としてクイーン翼にルークに役立つ素通し列が二つでき(a列とb列)駒の働きが良くなる。しかし白はポーン得になる。

 白の主要な作戦は適切な準備のあとで e4-e5 突きで敵陣突破を図ることである。同時に白はクイーン翼で黒の狙いに対し守る必要がある。特に黒のナイトがd3の地点に来るのを防がなければならない。

 他の選択肢は差し出されたポーンを受諾しないことである。この場合黒は反撃のためにb列しか素通しにならないのが普通である。白の主要な作戦はやはり e4-e5 突きを図ることである。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は長期的な作戦のために喜んでポーンを捨てる。白がポーンを受諾する主流手順では黒の主要な構想は次のようになる。f8のルークをb8に回し、c5のポーンをc4に突いて …Nd7-c5 でナイトを急所のd3の地点に到達させる。…Nf6-g4(または d7)-e5 という捌きも同じ目的で、よく見られる。黒のクイーンはa5またはb6の地点に置かれるのが普通だが、時には白のd5とa2のポーンをにらんで(…Ra7 のあとで)a8の地点も好所になることがある。すべての駒を理想的な地点に配置したあと …e7-e5 による敵陣突破が良い手になるのが普通である。白のポーンがe4にいるならば時には …f7-f5 と突くことさえ考えられるだろう。

それで評決はどうなっているか

 ギャンビットが受諾されたときは主たる戦いはd3の地点になる。戦型ⅠとⅡに見られるように白が正確に指さないと黒の主導権が強くなる。しかし正しく受ければ白は持ちこたえることができる(推奨の改良手を参照)。もっとも多くの忍耐が要求される。

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2012年10月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(50)

「Chess Life」2004年8月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5

戦型Ⅰ
アスプラー対ベンコー

バンクーバー、1971年

 この試合では白はギャンビットを受諾した。b5のポーンを取りa6で2個目のポーンを取ったあと白は最も自然なやり方で展開した。

4.cxb5 a6 5.bxa6 Bxa6

 最近は 5…g6 の方が正確な手順だと考えられている。a)場合によっては黒はナイトでa6を取り返して迅速にb4の地点に行かせたくなるかもしれずb)6.Nc3 d6 7.Nf3 Bg7 8.g3 O-O 9.Bg2 Nbd7 10.O-O のあとでは 10…Nb6 と指すことができd5のポーンに圧力をかけることにより 11.Qc2 から 12.Rd1 という駒組みを妨げることができる。

6.Nc3 d6

 ここで白には種々の選択肢がある。次局に見られるように 7.e4 と突くこともできる。別の作戦では白は g3 と突いてフィアンケットしたあとナイトをh3からf4の地点に展開させることができる。

7.Nf3 g6 8.g3 Bg7 9.Bg2 O-O 10.O-O Nbd7

 ここでの白の最善の選択はたぶん 11.Qc2 でルークのためにd1の地点を空けることである。実戦のように白の少し積極性に欠ける手のあと黒はどのように「ベンコーの夢が実現する」かをまざまざと見せてくれた。

11.Re1

 この手は e2-e4 突きの準備である。

11…Qb6

 今日では 11…Qa5 の方がクイーンにとってずっと良い居場所と考えられている。

12.e4

 この手は少し時期尚早である。白は先に h2-h3 と突いて黒の …Nf6-g4-e5 の捌きを防ぐ必要がある。

12…Ng4!

 これはこの布局における典型的な狙い筋である。目標は弱体化したd3の地点である。

13.Qc2 Rfb8 14.h3

 これは黒の作戦を助長するだけである。GMベンコーの別の好局は次のように進んだ。14.Rb1 Nge5 15.Nxe5 Nxe5 16.Rd1 Qb4!(17…Bd3! の狙い)17.Bf1 Bxf1 18.Kxf1 Nc4 19.Rd3 Bxc3 20.Qxc3 Rxa2 21.Qxb4 Rxb4 22.b3 Na3 23.Bxa3 Rxa3 24.Re3 c4 黒はポーン得になり勝った(ゴードン対ベンコー、ナショナルオープン、1976年)。

 14.Rb1 にはベンコーは 14…c4 15.Bg5 h6! を推奨している。この最後の手が記憶すべき大切な手で、16.Bxe7 なら 16…Re8 で白ビショップが困難に陥る。

14…Nge5 15.Nxe5 Nxe5 16.b3

 これは悪手だった。16.Rd1 でd3の地点を守る方が良かった。

16…Nd3 17.Rd1

17…c4!

 これもこの布局の重要な狙い筋である。

18.Be3

 18.bxc4 と取ると 18…Qxf2+ 19.Qxf2 Nxf2 20.Kxf2 Bxc3 でa1のルークが取られる。

18…Qb4! 19.Bd2 Qc5 20.Rf1

 20.Be3 は 20…cxb3 で黒の駒得になる。

20…cxb3 21.axb3 Nb4 22.Qb2 Rc8

 黒はf1のルーク取りを急がない。

23.Qa3 Bxc3 24.Bxc3 Qxc3 25.Rfc1 Qd4 26.Bf1 Rc2 1-0

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2012年11月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(51)

「Chess Life」2004年8月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

戦型Ⅱ
フェレンツ・ポルティッシュ対スーザン・ポルガー

ハンガリー、1986年

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5 a6 5.bxa6 g6 6.Nc3 Bxa6 7.e4

 これは古い方の主流手順で、できるだけ早く e4-e5 と突こうという直接的な作戦である。ここで白はキャッスリングできなくなってもf1のビショップを交換させる。

7…Bxf1 8.Kxf1 d6 9.Nf3 Bg7 10.h3

 10.g3 から 11.Kg2 の方がもっと普通の作戦である。

10…O-O 11.Ke2

 これは非常に変わった手で、たぶん最善手ではない。白の考えはキング翼のどの枡も弱めることなく普通の手順(g3、Kg2 または Kg1-h2)のようにルークをh1から出してやることである。

11…Na6!

 このナイトはd3の地点を目指している。

12.Re1 Qb6 13.Kf1

 黒キングはなんとか安全な所に収まった。

13…Nb4 14.Re2

 14.e5 には 14…dxe5 15.Nxe5 Rfd8 を予定していて、d5のポーンがもたない。

14…Qa6 15.Ne1

 この手は …Nb4-d3 を防いだ。

15…Nd7

 これもよくある手で、…Nf6-d7-e5 という捌きでもう一つのナイトがd3の地点を得るのを助ける。

16.Bf4 c4! 17.Be3

 17.a3 なら黒は 17,,,Rfb8 と指すことができる(ただし 17…Nc5? は 18.axb4 と取られる)。釘付けのためにナイトは全然危なくない。

17…Nd3!

 17…Ne5 には 18.Bd4、17…Nc5 には 18.Bxc5 がある。

18.Qc2

 ここでは 18.Nxd3 を期待していた。18…cxd3 19.Rd2 Ne5! で 20…Nc4 の狙いがある。また 18.Nf3? には 18…Nxb2! がある。たぶん 18.Qd2!? と指すのが良かっただろう。

18…Rfb8 19.Rb1

 19.b3 は 19…cxb3! 20.Qxd3 Qxd3 21.Nxd3 Bxc3 で白の負けになる。

19…Rb7!

 黒はルークを重ねて白のbポーンにもっと圧力をかけることを意図している。黒には犠牲にしたポーンに対してクイーン翼で十分すぎる反撃がある。

20.Rd2

 20.b3 ならこちらには二つの選択肢があった。一つは 20…Nb4 21.Qd2 Bxc3 22.Qxc3 Nxa2 ですぐにポーンを取り返す手である。もう一つは 20…Nxe1 21.Rbxe1?(21.Kxe1 と取る方が良いが 21…cxb3 22.axb3 Rc8 23.Bd2 Bd4 でやはり黒の方が優勢である)21…cxb3 22.axb3 Rc7!(22…Rc8? なら 23.Qa2! で白のナイトが逃げられる)23.Bd2 Bxc3 24.Bxc3 Rac8 で、釘付けのために白がビショップを失う。

20…N7e5 21.Kg1 Rab8! 22.b3

 22.Nxd3 は 22…cxd3! 23.Qd1 Nc4 24.Rxd3 Nxb2 で白が困る。

22…cxb3 23.axb3 Nxe1 24.Rxe1 Rxb3

 黒はポーンを取り返し活発な局面を維持している。

25.Bd4 Nc4! 26.Rdd1

 26.Rd3 なら 26…Na3 27.Qd2 Rb2 28.Qe3 Bxd4 29.Qxd4 Nc2 で白の駒損になる。

26…Na3

 これで白の負けが確定した。

27…Qe2

 他の手でも良くならない。27.Qc1 なら 27…Rc8!、27.Qd2 なら 27…Bxd4 28.Qxd4 Nc2、27.Qd3 なら 27…Qxd3 28.Rxd3 Bxd4 29.Rxd4 Rxc3 である。

27…Qa5!!

 この最終手は非常に珍しい。落ち着いた手だが痛烈である。戦力損が避けられないので白は投了した。

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2012年11月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(52)

「Chess Life」2004年8月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ベンコーギャンビット(続き)

戦型Ⅲ 傍流手順
1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.cxb5

 4.Nf3 bxc4 5.Nc3 d6 6.e4 g6 7.Bxc4 Bg7 8.e5 dxe5 9.Nxe5 も白の悪くない手順である。白はこの手順ではポーン得にならないが非常に動きの激しい局面にすることができる。黒としては代わりに 4…b4 や 4…g6 も考えられる。

4…a6

 白はa6で取るほかに布局の優位を求めて戦ういろいろな手段がある。長年 5.e3 と 5.Nc3 の2手だけが 5.bxa6 に代わる有力な手だった。最近では 5.f3 と 5.b6 もそれに加わっている。

5.b6

5…d6

 5…Qxb6 なら次のように白が少し優勢になる。6.Nc3 d6 7.e4 g6 8.Nf3 Bg7 9.Be2 O-O 10.Nd2!(強硬な作戦)10…Nbd7 11.Nc4 Qd8 12.Bf4

6.Nc3 Nbd7 7.a4 a5 8.e4 g6 9.Nf3 Bg7 10.Bb5 O-O 11.O-O Bb7 12.h3 Nxb6 13.Bf4

 白は e4-e5 突きの準備をしているがd5ポーンが圧力を受けているので実際にやるのはそう簡単でない。黒には 13…Nh5 14.Bh2 Bh6! から …Nh5-f4 という面白い狙いがあって難解な局面になる。

最終結論

 活発な指し方が好きで長い間ポーン損でも気にならないならば、ベンコーギャンビットは黒でのよい選択肢になる。白としてはポーン得でしばらく受け身に立ってもかまわないか、それともポーンの犠牲を拒否して戦力の均衡を維持したいか(しかし戦型Ⅲのように主導権は握る)を決める必要がある。最近最も人気がある手段は 5.b6 である。1.d4 Nf6 2.Nf3 でベンコーギャンビットを避けることもできる。

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2012年11月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(53)

「Chess Life」2004年9月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御 4…a6

 スラブ防御 4…a6 はチェバネンコ戦法と呼ばれている(またはカメレオン戦法としても知られている)。近年は 1.d4 に対するガリー・カスパロフの常用戦法の重要な一部になっている。最近多くの他の一流選手たちも彼にならい始めた。ちょっと名前をあげただけでもシロフ、ハリフマン、モロゼビッチ、アコピアン、バクローらがいる。

白の基本的な作戦は何か

 白は5手目で黒の作戦にどう応じるかを決める必要がある。…b7-b5 突きを許すことを選択することもできるし防ぐことを選択することもできる。本稿では白が黒の狙いを無視しポーン突きを許す方に焦点を絞る。一般に白は黒の反撃の可能性を制限しながら陣地の広さの優位を維持しようとする。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は …b7-b5 と突いてクイーン翼で反撃することをもくろむ。そして局面の開放に努めて守勢と陣地の狭さの不利を避けなければならない。

それで評決はどうなっているか

 4…a6 スラブは特に一流大会の選手たちの間でことのほか流行している。本稿では白の観点から(特に戦型Ⅱ)対処法についての着想を示すようにする。最新の定跡の現在の状況によると白が少なくとも少し優勢である。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6

 普通のスラブの手は 4…dxc4 である。黒は 4…e6 でボトビニク戦法またはメラン防御に誘うこともできる。

5.e3

 白には他に選択肢が三つある。

 a)5.a4 黒は通常はビショップをb4の地点に出す意図で 5…e6 と突く。4…e6 との違いはこの時点で白はビショップを追い払えるポーンがもうないということである。

 b)5.c5 も …b7-b5 を予期した(通過捕獲で取れる)理にかなった手である。黒の応手は 5…Nbd7 か 5…Bf5 である。先のオリンピアードでカスパロフは次のように好局を勝った。5.c5 Nbd7 6.Bf4 Nh5 7.Bg5 h6 8.Bd2 Qc7 9.e4 dxe4 10.Nxe4 Ndf6 11.Nc3 Be6 12.Ne5 g6 13.Qf3 Rd8 14.Be3 Ng7 15.Bc4 Bxc4 16.Nxc4 Ne6 17.O-O Bg7 18.Rfd1 O-O 19.Rac1 Nd5 20.Nxd5 Rxd5 21.Nb6 Nxd4 22,Qg4 h5 23.Nxd5 cxd5 24.Qg5 Ne2+ 25.Kf1 Nxc1 26.Rxc1 e5 27.b3 Re8 28.Bd2 Qc6 29.Qe3 d4 30.Qe2 e4 31.Bf4 Qf6 32.Bd6 Bh6 33.Rd1 Re6 34.Kg1 d3 35.Qf1 e3 36.fxe3 Bxe3+ 37.Kf1 Qxf1+ 38.Rxf1 d2 0-1(サシキラン対カスパロフ、ブレッド、2002年)

 c)そしておそらく最も平和的な手段は 5.cxd5 で、交換スラブの一種に移行する。

5…b5 6.b3

 白はc4のポーンを守った。

6…Bg4

 ここで白は 7.h3 または 7.Be2 を選択することができる。

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2012年11月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(54)

「Chess Life」2004年9月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御 4…a6(続き)

戦型Ⅰ
1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6 5.e3 b5 6.b3 Bg4 7.h3 Bxf3

 ここはたぶん 7…Bh5 8.g4 Bg6 9.Ne5 e6 10.h4 と指す方が良いだろう。2003年サントドミンゴでのナカムラ対ド・ブルーフト戦では 10…Ne4 11.Nxe4 Bxe4 12.f3 f6 13.Nxc6 Nxc6 14.fxe4 dxe4 15.Qc2 Bb4+ 16.Ke2 f5 と進んで見かけない局面になった。

8.gxf3

 白は二重ポーンができたが双ビショップの優位がある。もっと普通の 9.Qxf3 なら黒は次のようにポーンを犠牲に積極的に戦う。8…e5 9.dxe5 Bb4 10.Bd2 Bxc3 11.Bxc3 Ne4 12.Bb4 bxc4 13.bxc4 Qb6 黒には代償がある。

8…Nbd7 9.f4

 黒の …e7-e5 突きによる反撃を防ぐのが肝要である。この戦型では c4-c5 突きで局面が閉鎖的になるのが普通である。白はクイーン翼では広さの優位があり、キング翼ではg列がすでに素通しになっているので攻撃の可能性がある。しかし局面は非常に閉鎖的になるので仕掛ける手段は見当たらない。

9…e6

 たぶんすぐに 9…g6 と突く方が良い。

10.c5 g6

 黒は他の手もいくつか試みてきた。

 10…Ng8 ナイトの位置を改善する面白い捌きである。11.Bb2 Ne7 12.a4 Nf5 13.axb5 axb5 バレエフ対シロフ(ミュンヘン、1993年)。このあと白はもっと思い切って 14.Nxb5 cxb5 15.Bxb5 と指すこともできた。

 10…Be7 11.Bd3 g6 12.Bb2 Qb8 13.Qc2 Nh5 14.Ne2 Bh4 15.Ng1 Bd8 16.Nf3 a5 17.a3 Ra7 18.Ne5 Nxe5 19.dxe5 f5 20.Be2 Ng7 21.h4 h5 22.O-O-O Be7 マラホフ対ソコロフ(ロシア、2004年)。仕掛けるのが不可能ではなくても困難で、非常に閉鎖的な局面である。

 10…Ne4 11.Nxe4 dxe4 12.Bg2 f5 13.f3 exf3 14.Bxf3 Rc8 15.a4 白に主導権がある。

11.Bd3 Bg7 12.Qc2 Ng8 13.Bb2 Ne7 14.O-O-O Nf5 15.Ne2

15…Qh4?!

 ここは 15…Qe7 か 15…Qc7 から …O-O-O の方が良かった。

16.Ng1

 黒のクイーンを追い払う良い手である。

16…Qe7 17.Nf3 Nh4 18.Qe2 O-O 19.Rdg1 Bf6 20.Ng5 h6 21.Nf3 Nxf3 22.Qxf3 Kh8 23.h4 Rg8 24.Kb1

 ニールセン対フリアー戦(ヘースティングズ、2002/03年)では白が明らかに優勢だった。

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2012年12月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(55)

「Chess Life」2004年9月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御 4…a6(続き)

戦型Ⅱ
1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6 5.e3 b5 6.b3 Bg4 7.Be2 e6 8.O-O Nbd7 9.h3 Bh5

 他の手は 9…Bf5 で、10.Bd3 Bb4 11.Bb2 Bxd3 12.Qxd3 O-O 13.Rfc1 となって白が少しだが長期的に広さのために優位に立つ。

10.Bb2 Bd6 11.Ne5 Bxe2 12.Nxe2 Qc7

 この手はナイトをe5から追い払う意図である。

13.cxd5 cxd5 14.Rc1 Qb8 15.Nxd7

 15.Nc6 は 15…Qb6 で黒は何も心配することがない。

15…Nxd7

 多くの試合で黒はナイトの代わりにキング(!)で取り返した。その手のあと黒は負けると決まったわけではないが、クイーンがまだ盤上に残っているので黒にとって健全な局面だとは信じがたい。

 本譜で黒はキャッスリングしさえすれば互角になるように思われる。それは正しいが手番は白なので白には主導権を握る非常に面白い好機がある。

16.e4!

 白がすぐにc列から侵入しようとした試合も何局かある。しかし 16.Rc6 O-O 17.Qc2 Rc8 となって黒は白の進攻を無効にする。

16…dxe4

 16…O-O なら白は 17.e5 で中央を固定し Ng3(または f4)-h5、Qg4 そして Rc3-g3 で非常に危険なキング翼攻撃を行なうことができる。

17.d5

 この手が狙い筋である。突然b2のビショップが目覚め生き生きとしだした。

17…O-O

 これは絶対である。17…e5 は 18.Ng3 でe4のポーンを取り返される。黒が頑強にそのポーンを 18…Nf6 で守ろうとすれば 19.Nf5 O-O 20.Rc6 Bb4 21.Rxf6! gxf6 22.Qg4+ Kh8 23.Qg7# で白の攻撃が決まる。本譜で黒が 17…exd5 と取れば 18.Bxg7 で黒キングの隠れる所がなくなる。

18.dxe6 Nc5

 代わりに 18…fxe6 なら白は 19.Ng3 ですぐにeポーンの一つを取り返す。戦力が同じになれば黒に弱いeポーンが残るので白が大局的にはっきり優勢になる。白は活動性でも優る。

 驚くのは本譜の局面が今年の重要な大会で少なくとも7回現れたことである。トリポリでの2004年世界選手権戦の最新の試合によると改良手を探さなければならないのは黒の方である(ここかもっと前で)。さもなければ黒は劣勢に立たされる。

19.Nf4! Ra7

 19…Bxf4 なら白は 20.Rxc5 fxe6 21.Qg4 Rf7 22.g3 Bd6 23.Rc6 でまたeポーンの一つを取り返して優勢になる。この手順の基になった試合で黒は 19…fxe6 と取り次の手順であっさり負けた。20.Qg4 e5 21.Ne6 Nxe6 22.Qxe6+ Kh8 23.Rc6 Bc7 24.Rfc1 Qa7 25.R1c2(25.R1c5! の方が正確である)25…Ba5?(黒は 25…Rxf2! 26.Rxf2 Rf8 27.Rcc2 Bb6 で負けを免れる好機を逃した)26.Qxe5 Rae8 27.Rxa6 1-0(サシキラン対サカエフ、コペンハーゲン、2003年)

 この試合の解説でサシキランは黒の改良手として 19…Ra7 を推奨した。彼はそのあとの 20.Qg4 と 20.Qd5 も分析し、彼の見解では終わりの局面は形勢不明とのことだった。

20.Nh5

 これはハンガリーのキッチンで「調理済み」だった。それと同時にロシアのシェフが作ったのは次の手順だった。20.Bd4 Bxf4 21.Bxc5 Bxc1 22.Bxa7 Qxa7 23.exf7+ Qxf7 24.Qxc1 h6 25.Qe3 Qd5 26.Re1 Rc8 27.Qf4 Rc2 28.Rxe4 Rxa2 29.Re5 Qd3 30.Re8+ Kh7 31.Qf8 Qd5 32.Qh8+ Kg6 33.Re3 Qd4 34.Rg3+ Kf7 35.Rf3+ Kg6 36.Qe8+ Kh7 37.Rf8 1-0(ハルロフ対レイタオ、トリポリ、2004年)この試合はアーチュ対モブセシアン戦の2試合で同じ手順が指された翌日の6月23日に指された。

20…Nxe6

 この手はモブセシアンが前日同じ相手に指した 20…fxe6 の改良を意味していた。21.Bd4 Rc7 22.Qg4 Rff7 23.b4 Nd3 24.Rxc7 Qxc7 25.Nxg7 Nxf2 26.Bxf2 Rxg7 27.Qxe6+ Rf7 28.Be3 Qc4 29.Qg4+ Rg7 30.Qf5 Bxb4 31.Rc1 Qf7 32.Qxe4 Bf8 33.Bd4 Qg6 34.Qd5+ Rf7 35.Rc8 Qh6 36.Qe5 Rg7 37.Rxf8+! Kxf8 38.Bc5+ Kf7 39.Qe7+ Kg6 40.Qe6+ Kh5 41.g4+ 1-0(アーチュ対モブセシアン、トリポリ、2004年)

21.Nf6+!

 コンピュータ技術が発達した今日ではプロ選手はみなコンピュータソフトウェアを布局の分析に役立てている。しかしあまりシリコンの友人に頼りすぎると逆効果になることがある。私はこの局面をコンピュータにチェックさせてみた。しかしコンピュータプログラムは局面を正しく評価することができなかった。コンピュータはあとで白が本当に良くなるいくつかの手しか認識できなかった。

21…gxf6 22.Qg4+ Ng5 23.Bxf6 h6 24.Rc6 Be5 25.h4 Bh2+ 26.Kh1 Qf4 27.Qh5 Nh7 28.Bd4 Rfa8 29.Rxh6 f6 30.Rg6+ Rg7 31.Qd5+ Kf8 32.Bc5+ Ke8 33.Qe6+ 1-0(アーチュ対モブセシアン、トリポリ、2004年)

結論

 戦型Ⅰでは黒は主手順を改良する数多くの手段があり対等に戦える。私の考えでは戦型Ⅱが現在のところ黒にとって重大な手順のようである。非常に最近の試合のいくつかでは白が明らかに優勢になった。私なら白のためには戦型Ⅱに目を向けることを勧める。黒はこの手順ではうまくいかないようで、改善策を模索する時機である。

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2012年12月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(56)

「Chess Life」2004年10月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御突き越し戦法

 前世紀にフランス防御は 1.e4 に対する最も人気のある応手の一つだった。黒の2手目の後白には主要な手が三つある。白は 1.e4 e6 2.d4 d5 のあと異なる四通りの手から選ぶことができる。

 e4ポーンを動かすのは
A)3.exd5 交換戦法、または
B)3.e5 突き越し戦法(今回はこれだけを取り上げる)
またはポーンを守るのは
C)3.Nc3 または
D)3.Nd2

 突き越し戦法で白は中央とキング翼ですぐに広さで優位に立つ。黒の反撃は通常はd4ポーンを標的にし、ときには …f7-f6 による局面の解放を目標にする。

 突き越し戦法はふたたび流行していて、世界の一流選手の多くが常用戦法に取り入れている。これを用いる有名選手にはアダムズ、アーナンド、グリシュク、シロフ、ショート、スビドレル、トパロフらがいる。この戦法はクラブ選手の間でも非常に人気がある。

白の基本的な作戦は何か

 白の白枡ビショップはd3の地点が最もよく働く。戦法によっては黒のキャッスリングが早すぎるとよくある Bxh7+ 切りの手筋が炸裂する。

 ここでもっと詳しく分析する戦法では白がd4のポーンを見捨てる。しかし黒はd4のポーンを取るために数多くの手をかけなければならない。そのあとも黒はクイーンを安全な所に退却させるためにもっと手をかけなければならない。黒キングはときにはキャッスリングのあとでさえ安全な所に行くことが難しいことが多いので通常は主要な攻撃目標になる。

黒の基本的な作戦は何か

 ここで取り上げる戦法では黒は早々と贈物のd4のポーンを得る。しかしこのポーンを取ると反動がある。黒はポーンを取ったあと陣形をまとめるのに手数をかける必要がある。黒が最優先ですべきことはキングの安全な場所を見つけることで、ときにはクイーン翼になることもある。一般に黒は駒交換をする手段をみつけるべきである。なぜなら駒交換は戦力得の黒を助けるからである。

 黒は白枡ビショップ同士を …Bd7-b5 で交換する意図で …Qb6 と指す別の作戦を採用することもできる。

それで評決はどうなっているか

 白としてはしばらくの間ポーン損でやっていく覚悟がいる。しかし活気のある試合が期待できる。黒としてはポーンの犠牲を受諾したいならば長期間受け身になる必要がある。

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2012年12月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(57)

「Chess Life」2004年10月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御突き越し戦法(続き)

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Qb6 6.Bd3

 これは最も活動的で単刀直入な展開方法である。しかし白はすぐにポーンを犠牲にすることを覚悟しなければならない。はるかに堅実で大局的な手は 6.Be2 や 6.a3 である。

6…cxd4

 証文の出し遅れになる前にここでd4での交換をするのが重要である。1911年に指された古い有名な試合では 6…Bd7 7.dxc5 Bxc5 8.O-O f6 9.b4 Be7 10.Bf4 で不利な局面になった。ニムゾビッチ対サルべのその試合(カールスバート、1911年)は 10…fxe5 11.Nxe5 Nxe5 12.Bxe5 Nf6 13.Nd2 O-O 14.Nf3 Bd6 15.Qe2 Rac8 16.Bd4 Qc7 17.Ne5 Be8 18.Rae1 Bxe5 19.Bxe5 Qc6 20.Bd4 Bd7 21.Qc2 Rf7 22.Re3 b6 23.Rg3 Kh8 24.Bxh7! と進んで白の勝勢になった。

7.cxd4 Bd7

 7…Nxd4? とすぐにd4のポーンを取るのはポカで、8.Nxd4 Qxd4 9.Bb5+ で開きチェックにより黒クイーンが落ちる。

8.O-O

 8.Nc3 と指してもよい。そのあとは 8…Nxd4 9.Nxd4 Qxd4 10.O-O で主手順に戻る。

8…Nxd4

 ここでポーンを取るなら安全である。

9.Nxd4 Qxd4 10.Nc3

 この局面が今月の本稿の焦点である。白はポーンを捨てて展開で差をつけた。黒はe5の2個目のポーンの犠牲を受諾することもできるし、それを拒否して急を要する展開に集中することもできる。10.Qe2 Ne7 11.Nc3 Nc6 は黒にとって何の問題もない。

戦型A)10…Qxe5

 黒は初手からの10手で3回もクイーンを動かした。布局の原則からすれば誤りである。この場合に限っては黒が負けることはない。しかし白がポーンの代わりに十分すぎる活動性と代償を得ているのは確かである。タリ対ストールべり戦(ストックホルム、1960年)では黒が 10…Qb6 と引いたあと 11.Qg4 h5 12.Qg5 g6 13.a4 Bh6 14.Qh4 a6? 15.Bxh6 Nxh6 16.Qf6! Rf8 17.Nxd5 で苦戦に陥った。

11.Re1

 白はルークを先手で半素通し列に置いた。

11…Qb8

 黒クイーンは攻撃から逃れてまた動くしかなかった。11…Qd6 は 12.Nb5 で5回目の動きをする必要がある。元世界チャンピオンでリガの魔術師と呼ばれた故ミハイル・タリはイボ・ネイ戦(ソ連、1958年)で短手数の好局をものにした。その試合は次のように進んだ。12…Qb8 13.Qf3 Bd6 14.Qxd5 Bxh2+ 15.Kh1 Bc6 16.Qg5 Nf6 17.f4 h6 18.Qxg7 Rg8 19.Rxe6+ fxe6 20.Bg6+ Kd8 21.Qxf6+ 1-0

12.Nxd5

 この手はeポーンの釘付けを利用している。

12…Bd6 13.Qg4

 この手は黒陣を弱めさせる。

13…Kf8

 これで黒キングは中央に足止めされた。13…g6 でも欠陥があり、キング翼の一群の黒枡を弱めることになる。

14.Bd2 h5 15.Qh3

 e6ポーンの釘付けを維持した。

15…Bc6 16.Ne3 Nf6 17.Bc3

 白はポーン損だが、黒には二つの障害がある。最も明白なのはキングとクイーンの悪形である。そして二つのルークの連係がない。

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2012年12月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(58)

「Chess Life」2004年10月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御突き越し戦法(続き)

戦型B)1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Qb6 6.Bd3 cxd4 7.cxd4 Bd7 8.O-O Nxd4 9.Nxd4 Qxd4 10.Nc3 a6

 この手の目的は重要なb5の地点を守ることである。

11.Qe2

 白の作戦は f2-f4-f5 と突いていくことである。

11…Ne7

 このナイトはc6の地点に行ってe5ポーンにさらに圧力をかける。

12.Kh1

 白はキングをa7-g1の釘付けからはずした。代わりに 12.Rd1 なら黒は 12…Nc6 と指して、開き攻撃の 13.Bxa6 を指させることができる。そして 13…Qxe5 14.Bxb7 Qxe2 15.Nxe2 Rb8 で有利な陣形になる。途中白は 14.Qxe5 Nxe5 15.Bxb7 Rb8 16.Bxd5 exd5 17.Re1 f6 18.f4 でポーン得することができなかった。それは 18…Bc5+ 19.Kh1 d4 20.Nb1 Kf7 21.fxe5 Rhe8 となるからである。

12…Nc6 13.f4

 ここが黒の分岐点である。

13…Nb4

 これが最も直接的なやり方である。代わりに 13…Bc5 と指すこともでき、14.a3 Ba7 15.Bd2 g6 で混戦になる。

14.Rd1

 白がビショップを助けようとして 14.Bb1 と引くのは 14…Qc4 のあと …d5-d4-d3 と突かれて良くない。

14…Nxd3

 黒は 14…Bc5 15.Bxa6 Qf2 16.Qxf2 Bxf2 17.Bb5 Bc6 でポーンを返せば非常に安全で楽な試合になる。しかし実戦の手はもっと意欲的である。

15.Rxd3 Qb6!

 白はビショップのためにc5の地点を空けながら 15…Qc4 で強力な攻撃を予定することができた。以下は黒が正確に指さないと困難に直面することになるという好例である。16.b3 Qc7 17.Bb2 Bc6 18.Rc1 Rd8 19.Qf2 Be7 20.Ne2 O-O 21.Nd4 Qd7 22.f5 exf5 23.Rg3 g6 24.Qf4 Rfe8 25.Nxf5 Bf8 26.Bd4 Re6 27.Nh6+ Bxh6 28.Qxh6 Rde8 29.Rf1 Qc7 30.Rh3 f5 31.exf6e.p. Qf7 32.Qxh7+ そして黒が投了した(スベシュニコフ対ラズバエフ、ベオグラード、1988年)。

16.Be3 Bc5

 黒のポーン得なので交換はどれも黒を助けることになる。

17.Bxc5 Qxc5

 黒が優勢である。…Bd7-c6 でc列を閉じたあと黒はクイーン翼キャッスリングさえ考えることができる。白の最善の選択は

18.f5

と指すことで、そのとき黒は

18…Bc6

と応じることができる。しかし 18…O-O-O は良くなくて白が 19.Ne4! dxe4? 20.Rc3 と応じることができる。

最終結論

 フランス防御の黒側を持って指すなら突き越し戦法への準備をする必要がある。本稿は必ずその役に立つ。フランス防御を指したいなら 6.a3 と 6.Be2 の戦型についても学んでおかなければならない。このギャンビット戦型を避けたいならば 4…Qb6 から 5…Bd7 の戦型を調べるのがよい。

 白側でギャンビット戦法が気に入っていてこの戦型だけを指すことを考えるならば、早々とポーン損になることが予想される。時おり用いるなら意表をつくよい武器となるのは確かである。しかし正確に指せば黒が良好な態勢になる。

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2012年12月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(59)

「Chess Life」2004年11月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃

 今回はフランス防御に対するキング翼インディアン攻撃の主要な着想を多くの重要な中盤の着眼点と共に紹介する。フランス防御は 1.e4 e6 で始まる。白の2手目で最もよく指されるのは 2.d4 である。しかしフランス防御に対する現代の定跡をすべて学ぶのにそれほど多くの時間を費やしたくなければ、最良の選択肢はキング翼インディアン攻撃の陣形を用いることである。これを選べば白はマイペースでやれる。

2.d3 d5 3.Nd2

 重要なのはこの手である。というのは白が 3.Nf3 と指すと黒は 3…dxe4 4.dxe4 から 4…Qxd1+ と指すことができて白はもうキャッスリングできなくなるからである。

3…c5 4.Ngf3 Nc6 5.g3

 この手が白の布局の骨子である。白はビショップをg2にフィアンケットすることを考えている。

5…Nf6 6,Bg2 Be7 7.O-O O-O

 これでこの布局の基本局面に到達した。駒の大部分は展開が済み、両者ともキャッスリングし終えている。作戦を立てる時機である。

白の作戦は何か

 白は中央を支配しキング翼で攻撃したい。攻撃を成功させるために白はしばしば中央を固定し黒に反撃させないようにしなければならない。

黒の作戦は何か

 黒は中央を支配しクイーン翼で反撃したい。もし可能なら中央を開放したい。

 付記するとこの局面はシチリア防御から 1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d3 Nc6 4.g3 d5 5.Nbd2 Nf6 6.Bg2 Be7 7.O-O O-O という手順でも生じるし、キング翼インディアン攻撃から 1.Nf3 d5 2.g3 c5 3.Bg2 Nc6 4.O-O e6 5.d3 Nf6 6.Nbd2 Be7 7.e4 O-O という手順でも生じ、上図とまったく同じ局面になる。

8.Re1

 この手はeポーンを守るために必要である。このあとはボビー・フィッシャーの指した参考になる2局を紹介することにする。

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2013年01月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(60)

「Chess Life」2004年11月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃(続き)

 A)フィッシャー対ミャグマルスレン戦(スース・インターゾーナル、1967年)では 8…b5 が指された。これはクイーン翼で反撃しようという黒の作戦の手始めである。

9.e5

 この手の目的は中央を閉鎖することである。そのあと白はキング翼での攻撃に専念することができる。

9…Nd7 10.Nf1 b4 11.h4 a5 12.Bf4 a4

 黒は 13…a3 と突くつもりである。黒がポーン突きに手数をかけた意図はルークのために素通し列を作ってクイーン翼で攻撃することである。しかしこの手は時期尚早である。12…Ba6 の方が中央に圧力をかけて良い手だった。

13.a3

 黒の 13…a3 突きを阻止した。

13…bxa3

 ここで 13…Ba6 と指すのは白に 14.axb4 から 15.Rxa4 でポーン得されるので手遅れである。

14.bxa3

 白がルークで取り返すと半素通しb列でbポーンが黒の標的にされる。

14…Na5

 ナイトは盤端では動きが制限されるのでこの手はあまり良い手ではない。「盤端のナイトはすかたん」と覚えておくとよい。黒はナイトをそのままにして 14…Ba6 で展開を完了すべきだった。

15.Ne3 Ba6 16.Bh3

 この手は将来黒が …f7-f6 と突くのを止めるためである。

16…d4 17.Nf1!

 この判断は素晴らしかった。ここですぐ目につく手は 17.Ng4 である。しかしチェスの天才のボビー・フィッシャーはg4の地点を空けたままにしてd1-h5の斜筋をクイーンのために通しておく方が大事だと理解していた。これで中央のe4の要所は白が完全に支配している。

17…Nb6 18.Ng5

 d1-h5の斜筋を空けてクイーンが攻撃に加われるようにした。

18…Nd5

 白の重要なf4のビショップを当たりにした。

19.Bd2

 白はキング翼での攻撃の助けにこのビショップが必要である。だからビショップを当たりからはずすのが最善である。

19…Bxg5 20.Bxg5 Qd7 21.Qh5

 これでクイーンがキング翼での攻撃に加わる用意ができた。

21…Rfc8 22.Nd2

 白は17手目でナイトをf1に引いた。そのナイトが中央の重要なe4の地点に行ってキング翼攻撃を助けようとするのは完全に理にかなっている。

22…Nc3

 黒はe4の地点を守ろうとした。

23.Bf6!

 そしてチャンバラが始まる。白は次に 24.Qg5 g6 25.Qh6 から 26.Qg7# で詰ます作戦である。黒が 23…gxf6 と取るなら白は 24.exf6 と応じ 25.Qg5+ Kf8 26.Qg7+ Ke8 27.Qg8# の狙いがある。黒が 24…Kh8 と指せば白は 25.Nf3! と指し 26.Ne5 と 26.Ng5 の二通りの狙いがある。

23…Qe8

 これで黒はg7のポーンを …Qf8 で守ることができる。

24.Ne4

 これで白はついにキング翼の攻撃に役立つ重要なe4の地点にナイトを行かせることができた。白は将来いつか Nf6+ と指すことを見据えている。

24…g6

 黒は白クイーンを当たりにした。代わりに 24…Nxe4 と取れば白は 25.Rxe4 のあと Rg4 と指し攻撃がきつくなる。

25.Qg5

 すぐに 25.Qh6 と指すのは 25…Qf8 で守られる。

25…Nxe4 26.Rxe4 c4

 黒はクイーン翼で反撃を開始したが少し遅すぎた。

27.h5

 白はe4のルークのためにh列を素通しにしたがっている。

27…cxd3 28.Rh4!

 この段階に至れば白は反対側は忘れて黒キングに対する決定的な攻撃に突き進むと宣言することができる。

28…Ra7

 黒は白が 29.hxg6 fxg6 と指したときに備えてhポーンを守った。黒が 28.Rh4 を無視して 28…dxc2 と取れば 29.hxg6 fxg6 30.Rxh7! Kxh7 31.Qh4+ Kg8 32.Qh8+ Kf7 33.Qg7# で白の勝ちになる。

29.Bg2

 この手はビショップがe4に行ってキング翼攻撃を助けることができるようにしている。

29…dxc2 30.Qh6 Qf8

 黒はcポーンを昇格させて勝負を長引かせることができたが勝敗はしょせん変わらない。

 この局面で白には3手詰みがある。分かりますか?

31.Qxh7+! 1-0

 31…Kxh7 32.hxg6+ Kxg6 33.Be4# または 32…Kg8 33.Rh8#。

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2013年01月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(61)

「Chess Life」2004年11月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御キング翼インディアン攻撃(続き)

 B)これまた有名なフィッシャー対ゲレル戦[訳注 このゲレルはフィッシャーに大きく勝ちこしていた旧ソ連のGM Efim Geller ではなくイスラエルのマスター(のちにIM)の Uzi Geller です](ネタニア、1968年)では黒は前局の 8…b5 の代わりに 8…Qc7 と指した。

9.e5

 白は中央を閉鎖しf6のナイトをキング翼の守りから追い払いたいので当たりをかけた。黒の守備駒が減って白がキング翼攻撃をやり易くなる。

9…Nd7 10.Qe2 b5

 黒はクイーン翼で反撃の糸口をつかもうとしている。ここで白は 11.h4 で典型的な作戦を開始した。この手はナイトが Nd2-f1-h2-g4 と捌けるようにしている。

11…a5 12.Nf1

 白は構想どおりに予定の攻撃を続けている。

12…Nd4

 これは面白い着想である。黒は二重dポーンの代価を払ってもナイト同士の交換とc列の開通を強制している。

13.Nxd4

 白はこう取らないとポーン損になる。例えば 13.Qd1 なら 13…Nxf3+ でeポーンが落ちる。

13…cxd4 14.Bf4

 黒のクイーンがc7にいるのでここが白ビショップの最高の地点になる。この手で白は展開を完了した。

14…Ra6

 これは少し異例だがルークをc列に回すうまい手段である。

15.Nh2

 このような局面でよくある捨て駒は 15.Bxd5 で、15…exd5 には 16.e6 がある。しかし黒はまず 15…Bb4! で 16.Reb1 とさせておく方が良い。他の逃げ方は 16.Rec1 なら 16…exd5 17.e6 Rxe6 18.Qxe6 Qxf4 19.Qxd7 Qxc1 20.Rxc1 Bxd7 で黒の駒得になり 16.Red1 なら 16…exd5 17.e6 Rxe6 18.Qxe6 Qxf4 19.Qxd7 Qxf3 20.Qc7(20.Nh2 は 20…Qxd1+)20…Bh3 で詰みになる。

15…Rc6

 黒はcポーンに圧力をかけている。このルークにはc列がふさわしい。

16.Rac1

 白はポーンを守るためにキング翼攻撃を1手遅らせなければならない。

16…Ba6?

 白がcポーンを守ったので黒はもう一つのルークをc列に持ってきて三重にする必要がある。この自然な手はf8のルークのためにc8の地点を空けている。しかしここでは悪手だった。黒はクイーンをX線攻撃からよけて(16…Qb6)そのあと自分の作戦を実行すべきだった。

17.Bxd5! exd5 18.e6 Qd8

 18…Rxe6 と取るのはe2のクイーンにひもが付いているので 19.Bxc7 と取られて意味がない。

19.exd7 Re6 20.Qg4! f5

 20…Qxd7 は 21.Be5 で不快な釘付けをかけられ白が少なくとも1ポーン得する。

21.Qh5 Qxd7 22.Nf3 g6 23.Qh6 Bf6 24.Rxe6 Qxe6 25.Be5!

 自然な 25.Re1? は 25…Qxe1+!! 26.Nxe1 Bg7 27.Qg5 Bf6 となって千日手の引き分けで黒を苦境から抜け出させてしまう。

25…Bxe5 26.Re1 f4 27.Rxe5 Qd7

 27…Qg4 は 28.Re7 Rf7 29.Rxf7 Kxf7 30.Ne5+ で両当たりになる[訳注 途中 29.Re8+ で詰み]。

28.h5 fxg3 29.hxg6! gxf2+

 29…Rxf3 なら 30.Re8+! Qxe8 31.Qxh7+ Kf8 32.g7+ Ke7 33.g8=Q+ で決まる。

30.Kxf2 hxg6 31.Qxg6+ Qg7 32.Rg5 1-0

 a6のビショップが落ちるので黒は投了した。

最終結論

 フランス防御に対するキング翼インディアン攻撃は白にとって非常に融通性のある陣形である。白は少しではあっても主導権を維持できる一方、フランス防御の主要な戦型すべての研究に膨大な時間をささげる必要はない。白は中央を支配または閉鎖しキング翼攻撃を仕掛けることができる限り作戦がうまくいく。

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2013年01月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(62)

「Chess Life」2004年12月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット

 キング翼ギャンビットは19世紀に流行した布局の一つだった。ロマンチックなチェスとポール・モーフィーとの時代から多くの年月がたった20世紀後半からは、多くの強豪選手がもっと安定した大局観によるチェスともっと安全な布局を指すようになった。

 この布局は非常に活気のある楽しい試合になる。よくあるのは長期に渡る戦力の犠牲とそれによるいくらかの危険である。ビショップギャンビットは 3.Nf3 による「通常の」キング翼ギャンビットの穏やか版である。

 私の二人の妹のソフィアとユディットはもっぱらこの布局を指しながら育った。世界チャンピオンの中ではボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーが時おりこれを意表をつく武器として用いていた。今日では時々これを指す最も有名な名前はモロゼビッチ、アダムズそれにイワンチュクである。

白の基本的な作戦は何か

 白は早々とポーンを犠牲にして黒を中原からいくらかそらし展開で優位に立つ。通常は犠牲にしたポーンを取り返すのをあまり急がない。

 白のやりたいことは中原を最大限に支配することと駒を素早く展開することである。黒が注意深くないと時々黒キングに対して早期の「暴風」が襲うことがあり得る。

黒の基本的な作戦は何か

 ポーンを取ったあと黒は二つの戦略を選べる。一つは戦力得にしがみついてしばらくの間不快な防御に回ることで、もう一つは有利な状況で贈物(f4ポーン)を返す良い機会を見つけることである。

それで評決はどうなっているか

 白でこの布局を用いるなら多くの場合相手を驚かすだろう。ほとんどの人はキング翼(ビショップ)ギャンビットについて知らないかあまり覚えていない。なぜなら今の時代ではめったに指されないからである。黒は互角にする指し方を知っておかなければならない。黒としては解説する3型のうちから自分の好みに合う一つを選択することを勧める。

キング翼ギャンビット受諾 [C33]
ビショップギャンビット

1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4

 これがビショップギャンビットの開始局面である。

 ここで黒には 3…Qh4+、3…d5 そして 3…Nf6 という主要な3戦型がある。

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2013年01月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(63)

「Chess Life」2004年12月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型A)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Qh4+

 これは最も自然な応手で、白にキャッスリングする権利を放棄させる。このチェックがクラブなどの選手が 3.Nf3 の方を好む理由である。しかし実際には見かけほど危なくない。

4.Kf1

 白はあとで Nf3 でクイーンを当たりにすることにより手得したいのでわざとチェックを許した。

4…c6

 4…Bc5 で …Qf2 の詰みを狙うのは 5.d4 があるので意味がない。

 白の観点から興味をそそるのは次のポール・モーフィーの(1856年ニューオーリンズで無名の相手との)魅力ある小品である。4…g5 5.Nc3 Bg7 6.d4 Nc6 7.Nf3 Qh5 8.Nd5 Kd8 9.c3 Nf6 10.Nxf6 Bxf6 11.e5 Bg7 12.h4 f6 13.Kg1 g4 14.Nh2 fxe5 15.Nxg4 exd4 16.Bxf4 Rf8 17.Bg5+ Ne7 18.Qe2 Re8 19.Ne5 Qxe2 20.Nf7#

 そして今度は「不滅の局」のアンデルセン対キーゼリツキー戦である(ロンドン、1851年)。4…b5 5.Bxb5 Nf6 6.Nf3 Qh6 7.d3(布局の観点からは 7.Nc3 の方が良い)7…Nh5(7…Bc5! 8.d4 Bb6)8.Nh4 Qg5 9.Nf5 c6 10,g4 Nf6 11.Rg1 cxb5 12.h4 Qg6 13.h5 Qg5 14.Qf3 Ng8 15.Bxf4 Qf6 16.Nc3 Bc5 17.Nd5 Qxb2 18.Bd6 Bxg1 19.e5 Qxa1+ 20.Ke2 Na6 21.Nxg7+ Kd8 22.Qf6+ Nxf6 23.Be7#

 もっと自然な展開の手の 4…Nf6 なら白は 5.Nf3 Qh5 6.Nc3 と指す。ベステリネン対イェンソン戦(1997年)では 6…d6 7.d4 Bg4 8.Bxf4 Nc6 9.Bb5 Nd7 10.Nd5 Rc8 11.Kf2 a6 12.Be2 f5 13.Re1 fxe4 14.Ng5 Bxe2 15.Rxe2 Be7 16.Rxe4 で白が優勢になった。

5.d4

 次の試合で私の妹が指した手も有力である。5.Nf3 Qh5 6.Nc3 d6 7.d4 g5 8.h4 f6 9.Be2 Bg4 10,Kf2 Qg6 11.b3 Nd7 これは1986年アデレードでのソフィア・ポルガー対S.ソロモン戦である。白の改良手は 11.hxg5 fxg5 12.Nh4 gxh4 13.Bxg4 である。

5…g5

 f4のポーンを安全にした。

6.Qf3 Nf6 7.g3 Qh5 8.Qxh5

 8.e5 は次のように黒を助けてしまう。8…d5 9.Qxh5 Nxh5 10.Be2 Ng7 11.gxf4 Ne6 12.fxg5 Nxd4 13.Bd3 Bf5

8…Nxh5 9.Be2 Nf6 10.e5 Nd5 11.c4 Ne3+ 12.Bxe3 fxe3

 いい勝負である。

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2013年02月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(64)

「Chess Life」2004年12月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型B)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 d5

4.Bxd5

 1980年代に私の二人の妹や他の人たちは 4.exd5 を好んでいた。白がビショップで取る手に改善策を探し始めたのは近年である。

 ポーンで取ったあとの黒の手は次のとおりである。

 a)4…Nf6 5.Nc3 Bd6 6.Nf3(6.Qe2+ も面白い)6…O-O 7.O-O Nbd7(ユディットは1990年ノビ=サド・オリンピアードでのM.ワーグナー戦で次のように短手数で勝った。7…c6 8.d4 b5 9.Bd3 b4 10.Ne4 Nxe4 11.Bxe4 f5 12.Bd3 cxd5 13.c4 bxc3e.p. 14.Qb3 Bc7 15.bxc3 Ba6 16.Bxa6 Nxa6 17.Ba3 Rf6 18.Be7! Qd7 19.Bxf6 1-0 黒の戦力損になる)8.d4 Nb6 9.Bb3 この手は Ne5 を狙っている。黒はf4ポーンにしがみつきたければほぼ …h7-h6 突きから …g7-g5 突きで守らされ、形を決めてしまって非常に危なっかしい戦略である。

 b)別の試合で黒は 4…Bd6 5.Nf3 Ne7 6.O-O O-O 7.Nc3 Bg4 を試みたが 8.d4 Nd7 9.Ne2 Nb6 10.Bb3 a5 11.c4 a4 12.Bc2 で白が優勢になった。12…Nxc4? と取ると 13.Qd3 で黒のナイトが取られる(ユディット・ポルガー対L.ユルタエフ、デブレツェン、1990年)。

 しかし黒は最近 4…Qh4+ 5.Kf1 Bd6 でうまくいっている。(開き攻撃の 5…f3 のあと白は挿入手の 6.Bb5+ c6 のあと 7.Nxf3 Qh5 と指しここで 8.Qe2+ がある。これは1987年サンバーナディーノでのソフィア・ポルガー対J.スタイナー戦である。)6.Nf3 Qh6!

 f4とd6の両方の地点を守っているので、より自然そうなh5の地点より良い。7.Nc3 Ne7 8.Ne4(8.d4 O-O 9.Kf2 Bg4 も黒が良い)8…Nd7 9.Nxd6+ Qxd6 10.d4 O-O 11.Kf2 Nb6 12.Bb3 Nbxd5 アダムズ対シロフ戦(ティルブルフ、1997年)では黒が優勢だった。

 それではビショップで取る 4.Bxd5 の戦型に戻ろう。黒は用心深い方の 4…Nf6 か乱暴な方の 4…Qh4+ を選ぶことができる。

4…Nf6

 現在の定跡の評価からすれば危険な 4…Qh4+ 5.Kf1 g5(5…Nf6 6.Nf3 Qh5 7.Nc3 c6 8.Bb3 Bg4 9.d4 g5 10.e5 Nfd7 11.Ne4 Be7 12.h4 は正確さで劣り白に主導権がある)6.Nf3 Qh5 7.h4 Bg7 8.Nc3 h6 9.d4 Ne7 10.Qd3 O-O 11.Ne2 Nbc6 の方が好ましい。

 この種の局面では両者とも想像力に富んだ指し方の可能性に富む中盤戦を期待するのが通例である。

5.Nc3

 5.Bc4 は 5…Nxe4 6.Nf3 Bd6 7.d3 Nc5 8.O-O O-O となって白には代償があるがそれだけのことである。

5…Bb4 6.Nf3

 白は 6.Nge2 でナイトをつなぐとポーンの形が崩れるのを避けられない。なぜなら 6…Bxc3 7.Nxc3 のあと 7…Bg4 で黒が優勢になるからである。

6…Bxc3

 6…O-O 7.O-O でも白の楽な収局になる。黒は 7…Bxc3 8.dxc3 c6 9.Bc4 Qxd1 10.Rxd1 Nxe4 11.Bxf4 でポーンを取り返すことができるが、c列の二重ポーンにもかかわらず白には双ビショップ、活動的な陣形、それに主導権がある。11…Nd7 12.Rd4 Ndf6 13.Re1 Bf5 14.Bd3 となれば黒の難局である。

7.dxc3 c6 8.Bc4 Qxd1+ 9.Kxd1 O-O

 黒はまずキングを安全にしてからポーンを取る方が良い。すぐに 9…Nxe4 と取ると 10.Re1 f5 11.Bxf4 となって黒キングはもうキング翼にキャッスリングできなくなる。

10.Bxf4

 10.e5 Nh5 も十分考えられる。

10…Nxe4 11.Re1

 ここで黒は問題をいくつか抱えている。11…Bf5(11…Nc5 なら 12.Re7 で白ルークが7段目に侵入する)のあと白キングは 12.Kc1 と寄って 13.b4 と突いてから 14.Kb2 で安全なb2の地点に入る。

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カテゴリ: ポルガーの定跡指南

ポルガーの定跡指南(65)

「Chess Life」2004年12月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

キング翼ビショップギャンビット(続き)

戦型C)1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Bc4 Nf6 4.Nc3

 4.d3 は 4…d5 5.exd5 Nxd5 6.Nf3 Be7 7.O-O O-O 8.Bxd5 Qxd5 9.Bxf4 Bg4 10.Nc3(10.Bxc7 Qc5+)10…Qd8 11.Qd2 Nc6 12.Rae1 Qd7 13.Ne5 Nxe5 14.Bxe5(ユディット・ポルガー対バルレ、レイキャビク、1988年)で互角だった。

4…c6

 黒は …d7-d5 と突いて白のc4ビショップの威力を無力にする用意をしている。

5.Bb3 d5 6.exd5 cxd5

 黒は次のように一組のナイトを交換して同様のポーン陣形にすることもできる。6…Nxd5 7.Nxd5 cxd5 8.d4 Bd6 9.Qf3 Nc6 10.Ne2 Be6 11.Bxf4 Bxf4 12.Qxf4 O-O 13.O-O Qb6 14.Rad1 Rad8 15.Rd3(ヒラルプ・ペルソン対ティマン、マルメー、2000年)

7.d4 Bd6

 黒はf4のポーンを守った。アーナンド対モロゼビッチ戦(モスクワ、1995年)ではc3のナイトを釘付けにしあとで取る 7…Bb4 が指され、次のように非常に面白い手順が続いた。8.Nf3 O-O 9.O-O Bxc3 10.bxc3 Qc7 11.Qe1 Nc6 12.Qh4 Ne7 13.Bxf4 Qxc3 14.Bd2 Qc7 15.Ne5 これで白にポーンの代償がある。

8.Nge2

 白はf4ポーンに当たりを追加した。代わりに 8.Nf3(Ne5 と跳ぶ狙い)も指されてきた。これに対して黒の最善の選択肢はできるだけ早くキャッスリングすることである。8…O-O 9.O-O Be6 10.Ne5 のあと 10…Bxe5 11.dxe5 Ng4 ならいい勝負である。

 黒が 8…Nc6 9.O-O Be6 でキングを安全にするのを遅らせれば白が優勢になる。白が攻撃的に 10.Ng5 Bg4?! 11.Qe1+ Kf8 12.Nxd5 Nxd5 13.Nxf7! Kxf7 14.Bxd5+ Kg6 と指すことができここで華麗な 15.Qg3!! がある。

 白は 10…O-O 11.Bxf4 Bxf4 12.Rxf4 Qb6 13.Qd3 でも 10…h6 11.Nxe6 fxe6 12.Bxf4 Bxf4 13.Rxf4(N.ショート対P.ニコリッチ、ベイクアーンゼー、1997年)でも陣形的に少し有利である。

8…O-O

 ティマンはレインデルマン戦(アムステルダム、1999年)で 8…f3 と指したが、白は 9.gxf3 O-O 10.Bg5 のあとクイーン翼にキャッスリングして有利な陣形になった。

9.O-O g5

 白がf4ポーンを取ることができれば、d5の孤立ポーンのために黒が長期的に苦労することになる。黒はキング翼を弱めてもポーン得にしがみつくことができる。

10.h4

 すぐに 10.Nxd5 Nxd5 11.Bxd5 と取るのも 11…Nc6 12.c3 Ne7 13.Be4 Ng6 14.Qc2 Re8 15.Bd2 Qe7 16.Bd3 Bg4 17.Rae1 Qc7 18.Kh1 Bh5 19.Ng1 g4!(A.ダビド対V.トカチョフ、カンヌ、2000年)で非常に激しい戦いになる。

10…h6 11.hxg5 hxg5 12.Nxd5 Nc6

 乱戦だがいい勝負である(ライナ対ハザイ、ハンガリー、1979年)。

結論

 白としてはねじり合いが好きで戦力の犠牲を恐れないならばこの布局が考えられる。受けに回るのが好きでない相手に対して良い選択となるかもしれない。

 黒としては取り上げた三つの選択肢から最も気に入ったのを選ぶとよい。三つのどの戦型でも正しく指せば均衡のとれた局面になる。違いは局面が穏やかか激しいかである。

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ポルガーの定跡指南(66)

「Chess Life」2005年1月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御反スベシュニコフ戦法[B30]

 シチリア防御のスベシュニコフ戦法(1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5)は最近では黒が選択する最も人気のある戦法の一つとなっている。この戦法はGMスベシュニコフが創始し1970年代中頃に普及した。今日では世界の一流選手の多くが 1.e4 に対する黒の常用布局の一部として用いている。対する多くの選手がこの戦法にどう立ち向かうかというジレンマに陥っている。

 本稿はスベシュニコフを相手にすることを避けるために、白番の選手に 3.Nc3 を用いる代替策を伝授することを意図している。そのあと黒は 3…e6 または 3…Nf6 と指すことができ、さらに白は 4.Bb5 と指せるし 4.d4 と突いて開放型の戦型に移行することもできる。今回は 3…e5 だけを考察する。この手は他のシチリア防御の戦型とは非常に異なっている。

白の基本的な作戦は何か

 黒のd5の地点が弱くなるので明らかな一つの作戦は大局観に基づいて指すことである。しかしもっと意欲的な作戦を選択することもでき、それはf列を早期に素通しにして攻勢に出ることである。主要な着眼点はナイトをh4を経由してf5に進ませることにある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は早い時期にポーン得または戦力得にさえなることがよくある。基本的に黒のやることは受けにまわりそして可能ならば戦力の優位を死守するか、都合のいい条件下で戦力を返すことである。

それで評決はどうなっているか

 今日の定跡の知識では白が順調に攻撃できるようである。レーコー対クラムニク戦(戦型A2を参照)では黒が引き分けに持ち込むことができたが、私の見るところではその収局は黒が好んで飛び込むようなものではない。

 もっと分析の必要な個所がいくつかある。

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2013年02月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(67)

「Chess Life」2005年1月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御反スベシュニコフ戦法[B30](続き)

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 e5

 黒はこの手で中央のポーン陣形を決定した。d4の地点はしっかり支配したが、明らかに白枡が弱体化しd5の地点が空所と化した。

 今月の主題はこの局面から始まる。

4.Bc4

 これが最も理にかなった応手で、弱体化した白枡の支配をさらに強めている。

4…Be7

 黒は奇妙に映る 4…d6 5.d3 h6 6.O-O g5 も数局試してきた。私はこの局面ははっきり白の方を持ちたい。次の試合は白の好局である。7.Nd5 Bg7 8.c3 Nge7 9.Ne1 Nxd5 10.Bxd5 O-O 11.Qh5 Be6 12.h4 gxh4 13.Bxh6 Bxh6 14.Qxh6(リュボエビッチ対キリル・ゲオルギエフ、ベイクアーンゼー、1988年)

5.d3 d6 6.O-O Nf6 7.Ng5

 この早い攻撃は異例に思われる。しかし主たる狙いは単に f2-f4 と突くことである。

7…O-O 8.f4

 このような局面でf7のポーンを取るのは(ビショップとナイトを切ってルークとポーンを取る)、ほとんどの場合黒が有利である。

8…exf4 9.Bxf4 h6

 ナイトを追い払う。

10.Nf3

10…Be6

 これはf7のポーンを(f1のルークと共に)にらんでいる白のc4のビショップの威力を削ぐための最も理にかなった手である。黒はいくつかの試合で 10…Bg4 を試したがあまりうまくいかなかった。11.Qd2 Kh7 12.Rae1 Nd7 13.Nd5 Nde5 14.Nxe5 Nxe5 15.Bxe5 dxe5 16.Ne3 Be6 17.Bxe6 fxe6 18.Rxf8 Bxf8 19.Kh1 Be7 20.Nc4 は白がはっきり優勢だった(マカーリチェフ対ビアンス、カペルラグランド、1993年)。

11.Nd5

 11.Bxe6 fxe6 は黒の布局の課題がすべて解決される。11.Qd2 は 11…d5 で黒が好調になる。

11…Bxd5

 これが最も普通の応手だが他の手も指されている。11…Na5 も面白そうである。

12.exd5

 最近まで 12.Bxd5 がここでの主手順だった。そのあと黒は 12…Nxd5 13.exd5 Ne5 14.Qd2 Ng6 15.Bg3 Bf6 16.Rae1 Qd7 17.c4 b5 で互角にできる。

 この局面で黒は 12…Na5 か 12…Nb4 を選べる。

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2013年03月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(68)

「Chess Life」2005年1月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御反スベシュニコフ戦法[B30](続き)

戦型A)1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 e5 4.Bc4 Be7 5.d3 d6 6.O-O Nf6 7.Ng5 O-O 8.f4 exf4 9.Bxf4 h6 10.Nf3 Be6 11.Nd5 Bxd5 12.exd5 Na5 13.Nh4

 このナイトの捌きが白の構想の核心である。白は全力でキング翼を攻撃する。

A1)13…b5(14.Bxb5 Nxd5 の意図)14.Nf5! もうあとには戻れない!

 14…bxc4 15.Bxh6! 2回目のビショップ捨て! 15…gxh6 16.Nxh6+ Kh7 17.Nf5 cxd3 18.Qxd3 Kh8 19.Rae1 Qb6 20.Qh3+ Nh7 21.Rxe7 c4+ 22.Kh1 Qxb2 23.Re4 Rg8

24.Qh7+! 会心の決め手(ストフスキー対スミリン、イスラエル選手権戦、2002年)。24…Kxh7 25.Rh4+ Kg6 26.Rh6+ Kg5 27.h4+ Kg4 28.Ne3+ Kg3 29.Rf3# で即詰みなので黒は投了した。15…Ne8 と受ける方が良かった。

A2)13…Nxc4 14.dxc4 Nxd5(14…Qd7?! なら 15.Bd2 でビショップを移動するのが強手になる。例えば 15…Ne4 16.Nf5 Nxd2? 17.Qg4 でg7で詰みになるか 18.Nxh6+ で黒クイーンが取られる。または 15…Nxd5 16.Nf5 Nf6 17.Qe1 のあと 18.Qg3 で攻撃が強烈になる。15…Qg4 16.Nf5 Rfe8 17.Rf3 Kh7 18.Qf1 でも白の危険な攻撃が続く(コバレフ対スベシュニコフ、ロビ、1999年)。

 欲張りな 14…g5? は 15.Nf5 gxf4 16.Rxf4 Re8 17.Nxh6+ Kf8 18.Qh5! できれいに咎められる)

 15.Qxd5 Bxh4 16.Rad1! 争点を維持するのが大切である。16.Bxd6 は 16…Be7 で互角になる 16…b6 17.Bxd6(17.Qh5 Bf6 18.Bxd6 なら黒は 18…Bd4+ 19.Rxd4 cxd4 20.Bxf8 Qxf8 21.Qd5 Rd8 22.Rxf7 Rxd5 23.Rxf8+ Kxf8 24.cxd5 でポーン収局に持ち込んで 24…Ke7 でしのぐことができる)17…Be7 18.Bf4 Bf6 19.c3 Qxd5 20.cxd5 収局で白が少し優勢である(クラムニク対レーコー、リナレス、2003年)。

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2013年03月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(69)

「Chess Life」2005年1月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御反スベシュニコフ戦法[B30](続き)

戦型B)1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 e5 4.Bc4 Be7 5.d3 d6 6.O-O Nf6 7.Ng5 O-O 8.f4 exf4 9.Bxf4 h6 10.Nf3 Be6 11.Nd5 Bxd5 12.exd5 Nb4 13.Bd2!

 細かいようだがこの手は重要である。クプレイチク対グレビオンキン戦(ロシア、1998年)ではすぐに 13.Nh4 とやっていったが次のようにうまくいかなかった。13…Nfxd5! 14.Bxh6 Bxh4 15.Qg4 Bf6 16.Rf3 Qc8 17.Qh5 Bd4+ 18.Kh1 Nf6 で白の攻撃が失敗し黒が優勢になった。

13…Nbxd5

 ここで 13…Nfxd5 と取るのは 14.a3 で悪手になる。

14.Nh4!

 例の作戦である。

14…Nb6

 この手は …d6-d5 突きを狙っている。14…Nc7 も同じ目的で指される。15.Nf5 d5(2000年クラクフでのゼズルキン対ゾズリア戦でも 15…Ne6 16.Bc3 Kh7 17.Qf3 Qd7 18.Nxe7 Qxe7 19.Rae1 Rae8 20.Re3 で白が楽に優勢になった)16.Bb3 白は捨てたポーンの代償を十分得ている。f5のナイトは非常に強力である。16…Kh7 17.c3 Ng8 18.Qf3 Bg5 19.Be1(白はポーン損だが攻撃で先行しているので交換を避けるのが大切である。同じことを達成する別の手段は 19.Qg3 である)マツィエヤ対ボブラス、ワルシャワ、2002年

15.Nf5

 15.Bb3 と引くのは 15…d5 16.Nf5 c4 でビショップが捕獲されるので意味がない。

15…Nxc4

 15…d5 と突くのは 16.Qe1! で黒が苦戦に陥る。例えば 16…dxc4 は 17.Nxe7+ Kh7 18.Rxf6! gxf6 19.Qe4+ Kh8 から 20.Bc3 となる。また 16…Bd6 なら 17.Qh4 Ne8(17…dxc4 18.Nxh6+! gxh6 19.Rxf6)18.Qg4 である。

16.dxc4 Nh7

 ビショップの利きを通した。代わりに 16…Ne8? なら白は 17.Bxh6 と切ることができる。

17.Bf4

 白はd6ポーンに圧力をかけた。17.Qg4 Bg5 18.Rad1 も白が良さそうである。

17…Bf6 18.Bxd6

 白が優勢である(スミリン対アブルーフ、イスラエル選手権戦、2002年)。終局までの手順は次のとおりである。18…Re8 19.Qg4 Bd4+ 20.Kh1 Qg5 21.Qf3 Bxb2 22.Rab1 Bf6 23.Rxb7 Rad8 24.Bxc5 Qd2 25.Be7! Ng5 26.Nxh6+! Kh7 27.Qf5+(27.Qh5! の方がずっと強かった)27…Kxh6 28.Bxf6 gxf6 29.Qxf6+ Kh5 30.Rb5 Rg8 31.Qxf7+ Rg6 32.Qh7+ Rh6 33.g4+ Kxg4 34.Qxh6 1-0

結論

 攻撃の好きな選手ならきっとこの戦法が気に入るだろう。白は1ポーンまたは駒を少し犠牲にする必要がよくある。白が f2-f4 と突く主手順では非常に明確な作戦がある。「敵キングをつかまえよ!」

 黒側ではどの戦型を選択するか慎重に検討するか、それとも 3…e5 と突くのをそもそも避けることを勧める。実戦で不意にこの戦法をぶつけられたら、まごつくこと請け合いである。

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2013年03月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(70)

「Chess Life」2005年2月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)

 アルビン逆ギャンビットはチェスクラブではよく指される布局である。しかしマスター以上のチェスでは疑いの目で見られている。

 約100年前は指定布局大会(布局があらかじめ指定されている)がよく行なわれていた。しかし今日では極めてまれである。私はこれまで1度だけ1986年にオランダでそのような特別大会に参加したことがある。オランダ(フローニンゲン)のスタントン・チェスクラブが2001年に「アルビン逆ギャンビット招待大会」を主催した。この種の大会は特定の布局定跡の進歩に大きく貢献する。本稿では有名な旧戦型と共にいくつかの新しい着想も紹介する。

白の基本的な作戦は何か

 白は早いポーンの犠牲を受諾するのが普通である。ほとんどの場合作戦は適当な時機にポーンを返して戦力の優位を陣形の優位に変えることである。黒がクイーン翼にキャッスリングする戦型では攻め合いになるので白は強力に指し進める必要がよくある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は2手目でポーンを犠牲にし、中央と戦法によってはキング翼で反撃しようとする。黒には二つのはっきり異なる手法がある。古い手法は素早くクイーン翼にキャッスリングし、…Qd7 と …Be6-h3 を …h7-h5-h4 と組み合わせて(シチリアドラゴンに対する白の典型的な攻撃と似ている)強襲を開始していた。別のもっと控え目な作戦は犠牲にしたポーンを …Ng8-e7-g6 で取り返そうとすることである。

それで評決はどうなっているか

 正確に指せば白にとって指しやすい。しかしいつどのようにしてポーンを返すというようなコツをいくらか知っておく必要がある。場合によっては戦力(ポーン)の優位を維持できることさえある。

 アルビン逆ギャンビットの手順は 1.d4 d5 2.c4 e5 から始まる。

3.dxe5

 白は差し出されたポーンを断わる理由は何もない。

3…d4

 3…dxc4 4.Qxd8+ Kxd8 は黒がキャッスリングする権利を失う。白は 5.Bg5+ Be7 6.Nf3 から Nc3 のあとキャッスリングして主導権を握ることができる。

4.Nf3 Nc6 5.g3

 白は次にビショップを対角斜筋に展開するためにこの手を選ぶのが普通である。しかし人気でははるかに及ばないが 5.Nbd2 または 5.a3 でさえ少数の試合で指され良い結果を収めている。5.g3 のあと黒には選択肢が三つある。

 この局面が 5.g3 の開始点である。

 古い主手順は 5…Bg4 で、早く …Qd7 から …Bh3 と指す意図である。同様の作戦の別の手は 5…Be6 である。新しい全然異なる手法は 5…Nge7 である。これらを一つ一つ見ていこう。

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2013年03月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(71)

「Chess Life」2005年2月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅰ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Bg4

 これが旧主流手順である。

6.Bg2 Qd7

 黒はこの手でクイーン翼へのキャッスリングを準備すると共に、将来 …Bg4-h3 と指して白枡ビショップ同士を交換することを見込んでいる。

7.O-O

 白は単に布局の基本原則に従って指し進めている。

7…O-O-O

 黒がすぐに 7…Bh3 と指すと白はこの布局に典型的な着想の 8.e6! を用いてポーンを返す。この手の意図は黒がビショップで取るしかないということである。8…Qxe6 なら 9.Ng5 で両当たりになってビショップが取られる。ポーンで取ればh3のビショップがただになる。

 だから黒は 8…Bxe6 と取るしかない。このポーンの犠牲で白は黒の反撃を遅らせて主導権を握る手数を得る。

 9.Qa4 ようやくクイーンが動いてルークのためにd1の地点が空きa7のポーンが標的になった。

 9…O-O-O 10.Rd1 a6(10…Bh3 なら黒が周知の 11.Ne5! Nxe5 12.Qxa7 にはまり白の勝勢になる。例えば 12…Nc6 なら 13.Qa8+ Nb8 14.Qxb7# だし 12…c6 なら 13.Qa8+ Kc7 14.Qa5+ でe5のナイトが落ちる)

 11.Nc3 Nf6 12.Bg5 Be7 ここで白は気持ちのよい単純化の捌きを始める。13.Bxf6 Bxf6 14.Nd5! Ne5(14…Bxd5 15.cxd5 Qxd5 16.Nxd4 Qa5 17.Nxc6! Qxa4 18.Bh3+ から詰み)15.Qxd7+ Rxd7 16.Nxd4 Nxc4 17.Nxf6 gxf6 18.e3 ポーンの形が良いので明らかに白の有利な収局である。

8.Qb3

 この手はポーン得を維持する意図である。

 代わりに 8.Nbd2 なら黒は次のように続ける。8…h5(8…Nge7 は 9.Qa4 Kb8 10.b4 Ng6 11.b5 Ncxe5 12.Bb2 Nxf3+ 13.exf3 Bf5 14.Nb3(コルチノイ対モシオンジク、ソ連、1966年)で黒が悪かった)

 9.b4 逆翼キャッスリングの局面では典型的なポーン捨てである。その着想は単に黒キングに対してb列を素通しにすることである。9…Bxb4 10.Qa4 h4? 11.Rb1 hxg3 12.Rxb4 Nxb4 13.Qxb4 Bh3 14.fxg3 Bxg2 15.Kxg2 Qh3+ 16.Kg1 Nh6 17.Ne4 明らかに白が優勢である。

 しかし途中 10…Bxd2 11.Bxd2 d3 なら黒が面白いかもしれない。

8…Nge7 9.Rd1 Bxf3 10.Qxf3

 白は引き続きb7での詰みの狙いでe5のポーンを間接的に守る。

10…Ng6 11.Bf4 Be7 12.Nc3

 白が優勢である。

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2013年04月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(72)

「Chess Life」2005年2月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅱ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Be6

 黒はc4のポーンを当たりにし 5…Bg4 の戦型と同様の作戦の準備をした。

6.Nbd2 Qd7 7.Bg2

 黒はここでもまだまったく異なる二つの作戦を選ぶことができる。1)…h7-h5 突きで攻撃する。2)…Ng8-e7-g6 でe5のポーンを取り返す。

7…Nge7

 7…O-O-O 8.O-O h5 9.Qa4(9.h4 もある。9.b4 Bxb4 10.Rb1 または 10.Qa4 には 10…h4 で黒もそれなりに反撃できるようである)9…Kb8(9…Bh3 なら白はいつもどおり 10.e6! Bxe6 11.Ng5 と指す)10.b4 Nxe5(黒が 10…Bxb4 とポーンを取ると 11.Rb1 で白の攻撃が非常に強力になる)黒はポーンを取り返したが 11.b5 Nxf3+ 12.Nxf3 となれば明らかに白の攻撃の可能性の方を持ちたい。

 7…Be7 この新手はティビアコフ対ブレンニンクメイヤ戦(フローニンゲン、2001年)で指された。8.Qa4 h5 9.Nb3 Rd8(d4ポーンを守った)これより良い手は他にない。例えば 9…O-O-O ならティビアコフの読み筋は 10.Ng5! Bb4+ 11.Bd2 Bxd2+ 12.Nxd2 Nge7 13.Nb3 で、白が満足できる。また 9…d3!? なら白の最善の応手は 10.Nfd4 Nxe5 11.Qxd7+ Bxd7 12.Bxb7 Rb8 13.Bd5 で、やはり白が優勢である。

 10.O-O! 白はキャッスリングを急ぐ必要がある。10.h4 または 10.Bf4 だと黒が 10…d3 でわけの分からない局面にしてくる。10…h4 11.Bf4(ここでは 11.Rd1 も可能だった)11…hxg3 12.fxg3! このあと Rd1 でd4ポーンが弱いので白が明らかに優勢になった。

8.O-O Ng6

9.Qa4

 スミスロフ対スメデレバク戦(ポラニツァ・ズドルイ、1966年)でも 9.Qb3 Rb8 10.Ng5 Ngxe5 11.Nxe6 でナイトをビショップと交換することにより白が少し優勢になった。

9…Be7 10.Nb3 O-O 11.Rd1 Rad8 12.Bg5 Ngxe5 13.Nxe5 Nxe5 14.Qxd7 Rxd7 15.Bxe7 Rxe7 16.Nxd4 Bxc4 17.Rac1

 白の方が動きやすい局面である(メドゥナ対M.ミハルチシン、プラハ、1980年)。

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2013年04月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(73)

「Chess Life」2005年2月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

アルビン逆ギャンビット(D09)(続き)

 戦型Ⅲ)1.d4 d5 2.c4 e5 3.dxe5 d4 4.Nf3 Nc6 5.g3 Nge7

6.Bg2

 白が 6.Bg5 でナイトを釘づけにすれば黒は 6…Be6 7.Nbd2 Qd7 と応じてナイトを自由にする。

 昔の試合(ヤノフスキー対マーシャル、シュレーヌ、1908年)では 6.Na3 Bg4 7.Nc2 Qd7 8.Bg2 O-O-O 9.h3 Bxf3 10.exf3 Nxe5 で黒が優勢になった。また 8.Ncxd4 O-O-O 9.e3 Ng6 も黒が良い。

6…Ng6

 黒はe5のポーンにさらに当たりを加えた。

7.Bg5

 白が単に 7.O-O と指してポーンを返した試合もいくつかある。しかし黒は 7…Ngxe5 8.Nxe5 Nxe5 9.Nd2 Be7 10.Nf3 Nxf3+ 11.Bxf3 O-O で互角にしている。

 もっと意欲的な手はポーンを守る 7.Bf4 である。この手の欠点は 7…Nxf4 8.gxf4 のあと白のポーンの形が乱れ、白キングもキング翼キャッスリングのあといくらか攻撃されやすいことである。前述の指定布局大会(フローニンゲン、2001年)でリフテリンクはティビアコフ相手に 8…f6?! と指した。しかし 9.Nbd2 fxe5 10.fxe5 Bf5 11.Qb3 で白が好形になった。改良できるとすれば …f6 突きを急がずに 8…Bf5 か 8…Be7 で展開を続けることかもしれない。

7…Qd7

 クイーンがビショップの前に立ちふさがるのは見られたものでない。しかしそれでも最善の選択である。

 7…Be7 は 8.Bxe7 のあとどの駒で取り返しても不都合があるので悪手である。クイーンで取り返せばd4のポーンを見捨てることになる。キングで取り返すとキャッスリングの権利がなくなる。最後にどちらのナイトで取ってもe5のポーンに対する圧力を弱めてしまう。

8.e6

 白はこの手でポーンを返して黒のfポーンをe列に来させる。

 現代の試合のゲルファント対モロゼビッチ戦(モンテカルロ、2004年)では白が 8.O-O h6 9.Bf4 Nxf4 10.gxf4 と指したが黒に 10…g5 11.Nbd2 gxf4 12.Ne4 Be7 13.Qd2 Qg4 14.Kh1 Bf5 15.Nxd4 Rd8 と応じられてうまくいかなかった。

8…fxe6 9.O-O e5

 黒は駒割を回復した。しかし白は陣形上の優位をいくらか保っている。白は展開に優り、お互いの白枡ビショップの働きの違いは特に明らかである。

 10年以上前にGMモロゼビッチはクラセンコフ相手に(ポドリスク、1993年)この局面の黒側を持ち 10.Nbd2 h6 11.Bh4 Be7 12.Bxe7 Qxe7 13.Qc2 Qf7 14.Ne1 O-O 15.Nd3 Kh8 16.b4 Bg4 で対等に戦えた。

 最近のファン・ベリー対モロゼビッチ戦(モンテカルロ、2004年)で白は改良手を出し 10.Qa4 Bd6 11.Nbd2 h6 12.c5 Bf8 13.Bh4 a5 14.a3 Ra6 15.Rfe1 Qf5 16.Rac1 Be7 17.Bxe7 Ngxe7 18.e3 で優勢になった。

結論

 アルビン逆ギャンビットは黒が定期的に指すには危険な布局であることは確かである。しかし意表を突く武器としてたまに用いるのは面白い。ロシアの若きスーパーGMのモロゼビッチは最近黒で 5…Nge7 を用いて好結果を残している。

 白は恐れることはあまりない。作戦は普通は明らかである。伸びすぎのd4ポーンを取れ!である。白はまたe5のポーンを返す好機を狙うことが多い。

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2013年04月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(74)

「Chess Life」2005年3月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)

 シチリア防御のナイドルフ戦法とドラゴン戦法は 1.e4 に対する最も激しい布局の中の二つである。どちらも定跡が深く研究されているので多くの選手が対処法に悩まされてきた。これらの難解な布局に直接ぶつかる代わりに、反ナイドルフ/ドラゴンを指すという別法がある。

 1960年代に伝説的なパウル・ケレスとベント・ラルセンは時々反ナイドルフ/ドラゴンを用いて相手を驚かせていた。今日ではアーナンドとズビャギンツェフが時おり指している。

白の基本的な作戦は何か

 白は4手目ですぐに主導権を発揮する。eポーンをdポーンと交換することにより白はポーンの形を決定する。白は黒枡ビショップを b2-b3 から Bb2 で対角斜筋に置くのが普通である。もう一つのビショップはd3の地点でキング翼攻撃を助けるか、f3の地点でa8-h1の斜筋をにらむことになる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒がすべて自然な手だけを指せば白は駒を理想的な地点に展開するかもしれない。だから黒は早くから白の理想の陣形を防ぐように見張らなければならない。白枡ビショップ同士の交換は黒が有利であることが多い。

それで評決はどうなっているか

 白は明快な作戦を用いて、極度に激しく難解な開放シチリア戦法を避けることを目指す。黒は白の作戦を真剣に考慮しなければすぐに苦戦に陥ることがある。その一方で正確に指せば互角にできる。

 反ナイドルフ/ドラゴンは次の手順で始まる。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5

 白は 4.d4 cxd4 5.Nxd4 で通常の開放シチリアに戻っても遅くはない。しかし 4.e5 の真意は黒を定跡からそらしてドラゴンとナイドルフを避けることにある。

4…dxe5 5.Nxe5

 この局面で黒はよく指される三通りの応手の 5…a6、5…e6 そして 5…Nbd7 から次の手を選ぶのが普通である。

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2013年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(75)

「Chess Life」2005年3月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型A)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 a6

 5…Nc6 は白に交換されポーンの形を乱されるので明らかな悪手である。

6.a4

 この手は将来の …b7-b5 突きを防ぐ自然な応手で、時にはさらに a4-a5 と突いてb6の地点を標的にすることもある。

6…Qc7

 この面白い手はカスパロフでさえ同時指導対局でにすぎないけれども指したことがある。

 6…g6 は悪手である。7.Bc4 で黒陣の黒枡が弱体化する。7…e6 こんなに早い時期にeポーンとgポーンを突くのは全然良い形でない。黒の黒枡ビショップは一方の斜筋にしか展開できず、もう一方の斜筋は弱体化したままである。

 8.O-O Bg7 9.d3 O-O そして白は 10.Bg5 Qd6 11.Ng4 Nxg4 12.Qxg4 Nd7 13.Qh4 Qc7 14.Ne4 Re8 15.Be7 h6 16.Nd6(ブラガ対クララ・メレンデス、サンパウロ、1977年)でも 10.Re1 Qc7 11.Qf3 Nbd7 12.Bf4(アーナンド対トパロフ、フランス、2003年)でも優勢だった。

 6…e6 アーナンドとズビャーギンツェフが g2-g3 突きに関連した作戦を試みたがあまりうまくいかなかった。その一方で次の試合では白が有望な陣形にすることができた。7.b3 Be7 8.Bb2 O-O 9.Bd3 Nbd7 10.Nc4 Nd5 11.O-O N7f6 12.Re1 Bd7 13.a5 Bc6 14.Ne5 Nb4 15.Nxc6 Nxc6 16.Ne4 Rc8 17.Qf3(クルニッチ対K.ゲオルギエフ、ニシュ)

7.Nc4 Nc6 8.b3 b6 9.Bd3 Bb7 10.O-O Nb4 11.Be2 g6 12.Bb2 Bg7 13.Bf3 O-O 14.Bxb7 Qxb7

 黒が互角の形勢にした(レジェス対カスパロフ、リマ、1993年)。

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2013年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(76)

「Chess Life」2005年3月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型B)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 e6

 ここで白には 5…Nbd7 と同様の作戦を踏襲するか、6.Bb5+ で独自の道を行くかの選択肢がある。

6.Be2

 白が局面を手早く開放しようとするなら 6.Bb5+ Nbd7 7.d4 と指す。

 しかし黒は 7…cxd4 と取っていて困らないようである。(黒は 7…a6 と指すと 8.Bxd7+ Nxd7 9.Qh5 Nxe5 10.dxe5 で困難を抱えることになるかもしれない。しかし黒は 7…Be7 でもかまわない。)8.Qxd4 a6 9.Bxd7+ Nxd7 10,Be3 Qf6 11.f4 Bc5 12.Qd2 Bxe3 13,Qxe3 Nxe5 14.fxe5 Qh4+ 15.g3 Qh5(リュボエビッチ対カスパロフ、ティルブルフ、1989年)

6…Be7 7.O-O O-O 8.Bf3 Nbd7 9.Nc4 Nb6 10.Ne3

 白陣はかなり堅固である。

 実戦例がある(ケレス対レー、ベイクアーンゼー、1969年)。

10…Nbd7 11.d4 cxd4 12.Qxd4 Nc5 13.Qf4 Bd7 14.b4 Na4 15.Nxa4 Bxa4 16.Bb2 Bc6 17.Rfd1 Qc8 18.Be2 b6 19.c4 Rd8 20.a3 a5 21.b5 Bb7 22.h4 Nd7 23.Ng4 f6 24.h5 Qc5 25.h6 g5 26.Qg3 Rac8 27.Rd3 Be4 28.Rd4 Bf5 29.Rad1 Qc7 30.Qxc7 Rxc7 31.Ne3 Bg6 32.Bf3 Be8 33.Bc6 Kf7 34.R4d3 f5 35.g3 Kg6 36.Re1 Kf7 37.Nxf5 exf5 38.Bd5+ 1-0

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2013年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(77)

「Chess Life」2005年3月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

反ナイドルフ/ドラゴン(B50)(続き)

戦型C)1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Nc3 Nf6 4.e5 dxe5 5.Nxe5 Nbd7

 私の棋譜データベースによるとこれが最もよく指されている応手である。

6.Nc4

 代わりにナイト同士の交換に応じるのは主導権を得るために戦う希望を捨てることになる。6.Nxd7 Bxd7 のあと黒のビショップがc6に来て好形になる。

 この局面でも黒は黒枡ビショップをどちらに展開させるかを選ぶことができる。

6…e6

 6…g6 は 7.Qe2 で異常に早くて面白い攻撃を許すことになる。狙いは言わずと知れた Nd6# の窒息詰めである。7…Nb6(7…Qc7 は 8.Nb5 から 9.Ncd6+ で黒が苦境に陥ってしまう。7…Nb8 なら白は 8.Qe5 でさらに揺さぶりをかけることができる)8.Qe3 これで黒が守勢に立たされる。

 6…Nb6 は黒が白のナイトを追いかけることになる。白はここで三つの異なる作戦を選択することができる。

 a)白の交換の誘いを無視して、7.b3 か 7.Be2 で展開を続ける。

 b)ティマンは次の試合で独創的な作戦を用いた。7.Qf3 e6 8.b3 Be7 9.Bb2 Nxc4 10.Bxc4 a6 11.a4(将来の …b7-b5 突きを防いだ)11…O-O 12.g4!?(この面白い手は先のオリンピアードでの私のチブルダニゼ戦を強く思い出させる)12…Qc7 13.g5 Ne8 14.Ne4 Bd7 15.a5 Bc6 16.Rg1 Nd6 17.Qc3 Nf5 18.Nf6+ Bxf6 19.gxf6 g6 20.O-O-O Bb5 21.h4 Bxc4 22.Qxc4 Qxa5 23.h5 Rfe8 24.Rh1 Qb4 25.hxg6 fxg6(25…hxg6 26.Rh3)26.f7+ Kxf7 27.Rxh7+ Kg8 28.Rdh1 白が攻め勝った(ティマン対クリストフ、ヘンゲロ、1970年)。もちろんこの手順がすべて必然というわけではない。黒は色々なところで手を改良することができる。しかしそれでも実戦的には白の方が有望である。

 c)交換の誘いを拒否し 7.Ne3 Bd7 8.a4 Bc6 9.Bb5 Rc8 でナイトを逃がす。代わりに黒がb5で駒を交換すれば白はaポーンで取り返してa7のポーンに圧力をかけ隅のルークをすぐに働かせる。10.O-O e6 11.Qe2 Be7 12.a5 Nbd7 13.a6 b6 14.Bxc6 Rxc6 15.Nb5 Qb8 16.b3 O-O 17.Bb2 白が優勢である(プリビル対コバチュ、ジェチーン、1976年)。

 6…a6 は典型的な 7.a4 で応じられて …b7-b5 突きを防がれる。

7.Be2

 最近アーナンドがツェバロ戦(フランス、2003年)で 7.g3 と指したが 7…Be7 8.Bg2 O-O 9.O-O Nb6 10.Ne3 Rb8 11.a4 Nbd5 12.d3 Nxc3 13.bxc3 b6 14.c4 Bb7 で優勢にはならなかった。

 7.b3 次の有名選手同士の試合では白が有利になった。7…Be7 8.Bb2 O-O 9.Qf3 Rb8 10.a4 b6 11.Bd3 Bb7 12.Qh3 a6 13.O-O

 13…Bc6 14.Rfe1 Re8 15.Ne5 Nxe5 16.Rxe5 そして白が果敢に攻めたてた。16…g6(16…Bd6 なら 17.Bxh7+! Nxh7 18.Rh5 Bxg2 19.Kxg2 Qf6 20.Kh1 Qg6 21.d3)17.Bxa6 Qxd2 18.Re2 Qf4 19.Bb5 Bxb5 20.Nxb5 Ng4 21.Rae1 Red8? 22.f3 Bf6 23.Qxg4 Qxg4 24.fxg4 Bxb2 25.c3(ラルセン対ゲレル、コペンハーゲン、1966年)

 本譜の 7.Be2 の局面に戻る。

7…Be7 8.O-O Nb6 9.b3 O-O 10.Bb2 Nbd5 11.Bf3 Nxc3 12.Bxc3 Nd5 13.Bb2 Bf6 14.Ne5 Qc7 15.Re1 Rd8

 この局面は2試合に現れた。前の試合(ケレス対ボボツォフ、タリン、1970年)では白が 16.Qc1 Bd7 17.d4 cxd4 18.Bxd4 Be8 19.c4 Ne7 20.Bc3 と指したが、最近の試合(ズビャーギンツェフ対ボイトキーウィッツ、トリポリ、世界選手権戦、2004年)では白が改良手を出した。

16.Be4 Nf4 17.Qf3 Ng6 18.Bxg6 hxg6 19.d3 Bd7 20.Re3 Rac8 21.Rae1 Be8 22.a4 b6 23.Qh3 Rd5 24.c4 Rd6 25.Rf3 Qd8 26.Re4 Bg5 27.Rg3 Bc6 28.Reg4 Bf6 29.Rf4 Be8 30.Nxg6! fxg6 31.Bxf6 gxf6 32.Rh4 Kf8 33.Rh7 Bf7 34.Qh6+ Ke8 35.Rxf7 Kxf7 36.Qxg6+ Ke7 37.Qh7+ 1-0

結論

 反ナイドルフ/ドラゴンが意表を突く素晴らしい武器であることは確かである。黒がただ何となく展開すると、白は好形に陣容を組んで有望な攻撃の機会を得る。だから黒のためには戦型Aの 5…a6 6.a4 Qc7 を推奨する。

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2013年05月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(78)

「Chess Life」2005年4月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)

 ブダペスト・ファヤロビッツはグランドマスターの間ではまれにしか用いられない布局だが、チェスクラブでは非常に人気のある布局になっている。驚いたことに最近このギャンビット戦法についての本が複数出版された。

 1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4 で始まるブダペスト・ギャンビットはハンガリーが発祥だが、3…Ne4 戦法はドイツ生まれである。この布局の創始者はライプツィヒのドイツ人S.ファヤロビッツである。昔はタルタコワとリヒターがかなりよく指していた。米国ではアーサー・ビズガイアーがときどきこれで相手を驚かせていた。最近ではGMのアルフォンソ・ロメロ、イアン・ロジャーズ、アロンソ・サパタ、レフ・グトマンらが時おり用いている。

白の基本的な作戦は何か

 白は3手目でもうポーン得になる。黒はポーンの取り返しを急がないことがよくある。白はポーンにしがみつくか、ポーンを返してわずかだが長期にわたる優勢で満足するかの、二つの作戦を選ぶことができる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は長期にわたることは承知で2手目にポーンを犠牲にする。黒は多くの戦型でe5のポーンを取り返そうとせず、…d7-d6 と突いてそのポーンと交換しようとする。黒の望みは迅速な展開と、中央で白に圧力をかけ、場合によってはどちらかの翼でも圧力をかけることである。

それで評決はどうなっているか

 白は用心深く指せばこのギャンビットについてあまり心配する必要はない。黒の希望は白がこのギャンビットの危険性をみくびってポーン得に頑固にしがみつくことである。

 ブダペスト・ファヤロビッツは次の手順で始まる。

1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4

 もともとブダペスト・ギャンビットは 3…Ng4 だけが指されていた。しかしこの10年ほどでファヤロビッツはブダペスト・ギャンビットの単なる傍流手順ではなくなった。3…Ne4 のあと白には数多くの指し方がある。それらを次の3種類に分類した。

 A)あまり指されない手順
 B)4.Nf3
 C)4.Nd2

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2013年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(79)

「Chess Life」2005年4月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)(続き)

 A)1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4

 A1)ナイトを 4.f3?? で追い払うのは 4…Qh4+ 5.g3 Nxg3 と応じられるのでポカである。

 しかし以下の手はすべて面白い戦いになる。

 A2)4.g3 Bc5 これは抜け目ない手である。白が白枡ビショップをg2の地点に展開することにしたあと、この手はeポーンも突くことを誘う。5.e3 Qe7 6.Nf3(6.Qd5 には 6…f5 がぴったりである)6…Nc6 7.Bg2

 7.Qd5 で頑固にポーンにしがみつくのは危険である。この場合も 7…f5 が黒の常形で(または 7…Bb4+ 8.Nbd2 Nxd2 9.Bxd2 Bxd2+ 10.Qxd2 Nxe5 でもよい)8.exf6e.p. Nxf6 9.Qd1 d6 10.Bg2 Ne4 11.a3 a5 12.O-O Bg4 13.Qc2 O-O となる。黒は見るからに展開で先行している。そして 14.Nd4(14.Nbd2 Nxf2 15.Rxf2 Bxe3)14…Ng5 15.Nxc6 bxc6 16.Bxc6 Nf3+ 17.Kg2 Qe5 で黒の攻撃が危険である。

 7…Nxe5 8.Nxe5 Qxe5 黒はポーンを取り返し安全な局面になった。そして 9.O-O O-O 10.Qc2 Re8 11.Nd2 Nf6 12.Nb3 Be7 13.Bd2 d6 でいい勝負である。

 A3)4.Nc34…Nxc3 5.bxc3 で白のポーンの形が恒久的に乱される。ここで黒は 5…Nc6 6.Nf3 d6 7.Bf4 Be6 で駒がよく働く。

 A4)4.Qd4 布局の原則の「クイーンをあまり早く出すな」はこの場合も当てはまる。4…Nc5 もっとよく指される 4…Bb4+ も良い手である。5.Nf3 Nc6 この手は白クイーンを追い返す。6.Qd1 6.Qd5 でも応手は 6…d6 である。6…d6 7.Bf4(7.Bg5 なら 7…Qd7、7.exd6 なら 7…Bxd6 8.Nc3 Bg4 9.e3 O-O 10.Be2 Qf6 で黒が展開に優り駒がよく働いている)7…Bg4 8.exd6

 黒は主導権を維持するために非常に正確に指さなければならない。8…Qf6! 9.Qd2 ビショップとb2のポーンを守った。9…Bxd6 10.Bxd6 O-O-O この手は黒の指し手の主眼点である。

 11.Qf4 Rxd6 12.Qxf6 gxf6 13.Na3(白は「普通」に 13.Nc3 と展開すると 13…Nb4 14.Rc1 Re8 で困ったことになる)13…Nb4 黒の主導権は捨てたポーンを補って余りある。

 A5)4.Qd5 Bb4+ 上述の 4.Qd4 Nc5 と同じくここでも 4…Nc5 で指せる。5.Nd2 Nxd2 6.Bxd2 Qe7 7.f4(7.Nf3 なら黒は 7…Bxd2+ 8.Qxd2 Nc6 9.Qc3 O-O 10.e3 Re8 で何の問題もなくポーンを取り返せる)7…Nc6 8.Nf3 O-O 9.O-O-O Rd8 そして次に 10…d6

 A6)4.Qc2 Bb4+ これは白に問題を突きつける正着である。5.Nd2(5.Bd2 なら 5…Nxd2 6.Nxd2 Nc6 7.Ngf3 Qe7 となって次のようにe5のポーンが落ちる。8.e3 Nxe5 9.Be2 O-O 10.O-O a5 11.Nxe5 Qxe5 12.Nf3 Qf6)5…d5 6.Ngf3(6.exd6e.p. は 6…Bf5 でギャンビットのような乱戦になる)6…Bf5

 7.Qb3 Nxd2 8.Bxd2 8.Qxb4 とビショップの方を取るのは薦められない。8…Nxf3+ 9.exf3 Nc6 10.Qxb7 Nd4 黒の攻撃が早すぎる。11.Bg5 Rb8 12.Bxd8(12.Qxa7 は 12…Nc2+ 13.Ke2 f6 14.exf6 Kf7! 15.Rd1 Rxb2 で黒が攻めて勝つ)12…Nc2+ 13.Kd2 Rxb7 14.Rc1 Kxd8

 8…Bxd2+ 9.Nxd2 dxc4 10.Nxc4 O-O 11.Qxb7 Nd7 黒は展開が完了しているのに、白はキャッスリングまでまだ3手必要である。

 A7)4.a3 d6 代わりに 4…b6 は面白い手である。5.Qd5 に 5…Bb7 6.Qxb7 Nc6 でクイーンを捕獲しようとする。7.Nc3(「のろい」7.Nf3? では 7…Rb8 8.Qa6 Nc5 9.Qb5 a6 で白クイーンがもう逃げられない)7…Nc5(7…Rb8 は 8.Qxb8 Qxb8 9.Nxe4 で良くない)もう終わりのように思われる。しかし白はまだ暴れられる。 8.Bg5 f6 9.exf6 gxf6(9…Nxb7? 10.fxg7)10.Bxf6! Qxf6 11.Qxa8+ Kf7

f8のビショップが動いて開き当たりのあと白はクイーンを救うことができない。

 5.Nf3(5.exd6 Bxd6 6.Nf3 Nxf2)5…Bf5 6.g3(6.Nd4 dxe5 7.Nxf5 Qxd1+ 8.Kxd1 Nxf2+)6…Nc6 7.exd6 Bxd6 8.Bg2 ここで黒は 8…h5、8…Qf6 それに 8…Bc5 の3手から選ぶことができる。

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2013年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(80)

「Chess Life」2005年4月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)(続き)

 B)1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4 4.Nf3 Bb4+ 5.Bd2(5.Nbd2 は次の 4.Nd2 の戦型を参照)

 5…Nxd2 6.Nbxd2 Nc6 7.a3 Bxd2+ 8.Qxd2 Qe7 9.Qc3 白はポーン得にしがみついている。

 9…O-O この方向は正しい!クイーン翼にキャッスリングするのは次のようにあまり薦められない。9…b6 10.g3 Bb7 11.Bh3! O-O-O(釘付けを利用して 11…Nxe5 12.Qxe5 Qxe5 13.Nxe5 Bxh1 と指すのは 14.f3 でビショップが隅で立ち往生するのであまり良くない)12.O-O-O Rhe8 13.Rd5 ここで 13…Nb8(13…Na5 14.b4 Bxd5 15.cxd5 Nb7 16.d6)なら 14.Rd3 Bxf3 15.Rxf3 Qc5(15…Qxe5 16.Qxe5 Rxe5 17.Rxf7 Rxe2 18.Rd1)16.Re3 となって明らかに白が優勢である。

 10.Rd1 ジョン・ナンはNCE(Nunn’s Chess Openings)で 10.O-O-O Re8 11.Rd5 の局面を白が優勢と判断している。しかしもっと最近の研究によると 11…d6(11…b6 でもよい)12.exd6 cxd6 13.e3 Be6 14.Rd1 Rac8 で黒が十分反撃できる。

 10…Re8 11.Rd5 さらにe5のポーンを守った。

 11…b6 12.e3 Bb7 13.Be2

 13…Nd8 これが最も正確な手段である!13…Rad8 は 14.O-O Nb8 15.Rd2 Bxf3 16.Bxf3 Qxe5 17.Qc2 となって黒がポーンを取り返す。その局面は白の方が少し好ましいと思う。もっとも 17…d6 と正しく応じられると白の優勢は最小限である。

 14.Rd2 Ne6 15.O-O a5 16.Rfd1 Nc5 17.Rd4 a4 GMグトマンによると「黒がきわめて快調」である。最後の数手で黒はクイーン翼の陣容を改善した。ルークをa8から動かしたあと黒はf3で取る用意ができいずれポーンを取り返すことになる。

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2013年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(81)

「Chess Life」2005年4月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ブダペスト・ファヤロビッツ(A51)(続き)

 C)1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ne4 4.Nd2 白はポーン得なので交換は歓迎である。

 4…Bb4 4…Nc5 は手をかけすぎていて次の手順を許す。5.b4 Ne6 6.a3 b6 7.Ngf3 Bb7 8.e3 a5 9.b5 d6 10.exd6 Bxd6 11.Bb2 O-O 12.Be2 Nd7 13.O-O Ndc5 14.Qc2 Qe7 15.Rfe1 Rad8 16.Rad1 黒はポーンの代償が十分でない。

 5.Ngf3 ここでは黒に二とおりの作戦がある。

 5…d6 これはギャンビット精神である。

 別の作戦は 5…Nc6 である。6.a3(強豪GM同士の数少ない試合の1局は1992年ラス・パルマスでのトパロフ対ロメロ戦で、6.e3 Qe7 7.Be2 Nxe5 8.O-O Nxf3+ 9.Nxf3 O-O 10.Nd4 Bc5 11.Qc2 c6 12.b3 d5 13.Bb2 Bd7 と進んだ)6…Nxd2 7.Nxd2(7.axb4 Nxf3+ 8.exf3 Qe7 9.f4 Qxb4+ 10.Qd2 O-O 11.Qxb4 Nxb4 12.Ra4 c5 13.Bd2 Nc6)7…Bxd2+ 8.Bxd2 Nxe5 9.Bc3 Qe7(9…d6?! なら白はe5の黒ナイトの一時的な不安定さを利用して 10.c5! f6 11.cxd6 と指すことができる)10.f4 Nc6(10…Nxc4 11.Qd3 Ne3 12.Bxg7 Rg8 13.Bd4 Nxg2+ 14.Bxg2 Rxg2 15.O-O-O Rxe2 16.Rhg1)11.Bxg7 Rg8 12.Bc3 Qh4+ 13.g3 Rxg3 14.hxg3 Qxh1 15.Qd3 d6 16.O-O-O Bd7 17.Qe3+ Kf8 18.Bf6 Re8 19.Qc3 Qe4 GMグトマンはこの局面を形勢不明とみなしているが、私は白が途中 18.c5 Re8 19.Qd3 と改良できて優勢だと思う。

 6.exd6 これは最善の応手である。6.Qc2 Bf5 や 6.Qa4+ Nc6 は白が何も得しない。

 6…Qxd6 7.a3 7.e3 なら次のようになる。7…Nc6 8.Be2(8.a3 Bxd2+ 9.Nxd2 Bf5 10.Nxe4 Qxd1+ 11.Kxd1 Bxe4 12.f3 O-O-O+ 13.Ke1 Bd3 14.Bd2 Ne5 15.b3 Bc2 16.b4 Bd3 17.c5 Rhe8)

 8…Bf5 9.O-O Bxd2 10.Nxd2 Qg6 11.Nxe4 Bxe4 12.Bf3 Bd3 13.Re1 O-O-O(ただし 13…Bxc4 は駄目で、14.Qa4 b5 15.Qa3 で黒キングが安全な所に行けない)

 7…Bxd2+ 8.Bxd2 8.Nxd2 は 8…Nc5 9.Qc2 a5 10.e3 Nc6 11.Be2 a4 12.O-O O-O 13.Nf3 Qf6 14.Bd2 Bf5 15.Qc3 Qe7 16.Rad1 Rad8 で黒が反撃できる。

 8…Qf6! 9.Qc1 9.Qc2 は 9…Bf5 と応じられる。

 9…Nc6 10.Bf4 Be6 11.g3 O-O 12.Bg2 Nc5

 黒が好調である。

結論

 ブダペスト・ファヤロビッツは冒険好き向きであることは疑いない。黒としては長い間ポーン損でも気にしないならばこのギャンビットを指すとよい。良い面としては通常は白にとって意表を突かれる要素があることである。この布局の本を読んでいたとしてもどの手段が最善かをはっきり結論づけることは難しい。多くの分析はあるが、これまでのところ強豪GM同士の実戦例はあまり多くない。

 白としてはポーン得に何としてもしがみつこうとするようなことはしないで、展開を急いでわずかな有利を求めることを勧める。これから何年かでこの比較的新しい布局がどのように発展するかを見るのが楽しみである。

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2013年06月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(82)

「Chess Life」2005年5月号(1/5)

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GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01]

 過去10年でこの中央反撃(スカンジナビアとも呼ばれる)の特別版はクラブ選手でもグランドマスターの間でもすっかり一般的な戦法になった。

白の基本的な作戦は何か

 黒が …b7-b5 突きの作戦を追求する戦型では白の対策は a2-a4 突きと関連していることが多い。黒があまりにもキャッスリングを遅らせている時には、白はポーンを犠牲にしてでも d4-d5 突きで中央の開放を狙うことができる。

 白は通常は中央で確かな広さの優位を得ていて、黒のやることに応じてキング翼またはクイーン翼で攻撃を進展させることができる。

黒の基本的な作戦は何か

 黒にはビショップの展開の問題を解決するための主要な作戦が四つある。

 a)…a7-a6、…b7-b5 とポーンを突いてからビショップをb7に展開する。

 b)…e7-e6 と突いて …c7-c5 突きを準備する。

 c)…Nc6 とクイーン翼キャッスリングで白のd4ポーンに圧力をかけるのと連動してビショップをg4に展開する。

 d)黒枡ビショップをg7に展開する。

それで評決はどうなっているか

 この布局には非常に戦術的になる戦型があり、どちら側も注意を払う必要がある。客観的に言えば白は何も恐れることがなく、正確に指せばわずかな優勢を維持できる。

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2013年06月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(83)

「Chess Life」2005年5月号(2/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 中央反撃は次の手順から始まる。

1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6

 この手はここ10年で流行しだしたばかりである。以前は 3…Qa5 か 3…Qd8 だけが「本手」とみなされていた。フランス防御で 1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 Qxd5 5.Ngf3 Nf6 6.Bc4 のあとクイーンがd6に下がることができるが、私の推測ではこの着想はそこから来たのかもしれない。

4.d4 Nf6

 ここまで白の手はすべて当たり前で非常に理にかなっている。ここからは白の残りの駒の展開法は多種多様である。もっともよく指されるのは次の手である。

5.Nf3

 ナイトをe2に展開する手もあり以前に指されたことがある。

 5.Bc4 a6 この手には二重の目的があり、不快な Nc3-b5 を防ぐだけでなく、…b7-b5 で黒の白枡ビショップを働かせる用意もしている。

 (5…Nc6 で …e7-e5 突きを狙う別の作戦も指されてきた。しかし 6.Nge2 のあと黒キングがまだ中央にいるので 6…e5 ですぐに中原を開放するのは疑問を感じる。私なら 7.O-O で白の方を持ちたい。例えば 7…Nxd4 8.Nxd4 Qxd4 9.Qxd4 exd4 10.Nb5 という具合である。7…a6 と突く方が良く、白は 8.dxe5 Nxe5 9.Bb3 と指し進める。)

 6.Nge2 ここから黒は普通に 6…b5 7.Bd3 Bb7 8.Bf4 Qd8 と指し進めることができる。もっとも黒が 6…Qc6 7.Bb3 Qxg2 で「ポーン狩り」の危険をおかした試合もある。8.Bg1 で白に犠牲にしたポーンの代償が絶対十分あると思う。黒はポーン得だが白は展開で大きくまさり、盤の中央で立ち往生している黒キングに対し猛攻ができる。

 別の展開方法は 5.Be2 a6 6.Bf3 だが、黒は 6…Nc6 で問題が無く、7.Nge2 Bf5 8.Bf4 Qd7 9.Qd2 O-O-O 10.Rd1 e6 11.a3 h6 12.h3 g5 13.Bg3 Bd6 となって黒が少し優勢である。

 5.g3?! は 5…Bg4! で黒が主導権を握り 6.f3(または 6.Qd3 Nc6 7.Nb5 Qd7)6…Bf5 7.Bd3 Bxd3 8.Qxd3 Nc6 9.Be3 Nb4 10.Qd2?! Qe6! で白が既に苦戦で 11.Kd1 O-O-O と続いた(コク対フレシネ、ブザンソン、1999年)。

5…a6

 これもこの戦法の典型的な手で、b5の地点を支配している。

 ここで白には2個のビショップを展開する数多くの手段がある。実戦ではほとんどすべてのビショップ展開の組み合わせが試されてきた!

 そのうちの重要な方の着想を見ていこう。

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2013年06月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(84)

「Chess Life」2005年5月号(3/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 A)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Bc4 b5 7.Bb3 のあと黒は次の手にはまらないように注意しなければならない。7…Nbd7 8.O-O Bb7 9.Ng5 e6 10.Re1 Be7

 (10…Nd5? も 11.Nge4 Qb6 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 exd5 14.Nd6+ のあと1手詰みなので悪い。)

 11.Nxe6!! 威力抜群のナイト切りである。ただし 11.Nxf7? は 11…Kxf7 12.Rxe6 Qxe6 13.Bxe6+ Kxe6 で決め手にならない。

 次の試合(ポノマリョフ対フレシネ、バトゥーミ、1999年)で白はこの捨て駒の正しさを証明した。11…fxe6 12.Rxe6 Qb4 13.a3 Qa5 14.Bd2 b4 15.axb4 Qf5 16.Qe2 Ng8 17.Ra5! Qf8 18.Nd5 Kd8 19.b5 Bd6 20.bxa6 Bc6 21.Nb4 Nb8 そして黒は 22.Nxc6+ Nxc6 23.Qe4 Nge7 24.Bg5 Kd7 25.Bxe7 Nxe7 26.Rxd6+ を見越して投了した。

 黒は 7…c5 と突く方が良い。これに対し 8.dxc5 と取るのは 8…Qxd1+ 9.Nxd1 e6 で黒がすぐにc5のポーンを取り返すので白は収局で優勢になれない。

 もっと意欲的な 8.a4 のあと私が最も好きなのは 8…c4 9.Ba2 Nd5 で、形勢は不明である。もっとも 8…b4 9.Ne2 e6 10.Bf4 Qd8 11.a5 Be7 でもより地味だが満足できる局面になる。

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2013年07月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(85)

「Chess Life」2005年5月号(4/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 B)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Be2 ここで黒はまだ白枡ビショップをキング翼に展開するかb7の地点に展開するかを選べる。

 6…Nc6 のあと注意を払うべき戦術の着想が次のように少しある。

 7.Be3 Bg4 8.Qd2 e6 9.O-O-O O-O-O 10.a3 Be7 11.Ng5! Rdf8 12.Nge4 Qd8 13.Nxf6 Bxe2 14.Qxe2 Bxf6 15.d5 exd5 16.Nxd5 Kb8 ここで 17.Qc4 で白が優勢になる。

 7.O-O Bg4(7…Bf5 8.Be3 g6 9.Qc1 Bg7 10.Bf4 Qd8 11.Rd1 O-O 12.d5 Nb4 13.Ne1 Qd7 14.a3 Nbxd5 15.Nxd5 Nxd5 16.Bf3 c6 17.c4 白が釘付けを利用する)8.h3 Bh5 9.Be3

 ここで 9…O-O-O は 悪手で、10.Ng5! Bg6 11.Bd3! がある。

 9…Rd8 10.Qd2 e6 11.Rad1 Be7 の方が良く 12.Bf4 なら 12…Qb4 13.Bxc7 Rd7 14.Bf4 Bxf3 15.Bxf3 Nxd4 となる。

 白は次の試合(ティビアコフ対カンパニレ、ブラット、1999年)では布局からあまり有利を引き出せなかった。6…e6 7.O-O Be7 8.Ne5 Nc6 9.Nxc6 Qxc6 10.Bf3 Qd6 11.Be3 O-O 12.Qe2 Rb8 13.Rad1 Bd7 14.Bc1 Rfe8 15.Qe5 Qb6 16.Rfe1 Rbd8 17.Qe2 Bc6 18.Bxc6 Qxc6 19.Rd3 b5 ここでの形勢はほぼ互角である。しかし黒はたった1手のとんでもないポカで突然負けた。20.a3 Qb7(20…a5)21.Bg5 Nd5 22.Bxe7 Rxe7 23.Qf3 c6?! 24.Ne4 Nb6? 25.Nf6+! Kh8 26.Qe4 gxf6 27.Rh3 f5 28.Qe5+ 1-0 黒の敗因はキングの周りの防御を怠ったことにあった。

 注意すべき別の着想は 6…Nbd7 7.O-O e6 8.Bg5 Be7 9.Qd2 b5 10.Bf4 Qb6 での(または同様の局面での)11.d5 である。ここでは 11…Nc5 12.Be3 b4 13.Na4 Qa5 14.Nxc5 Bxc5 15.dxe6 Bxe6 16.a3 で白が優勢である。

 黒はすぐに 8…b5 と突いた方が良いかもしれないし、8…c5 さえ考えられる。

  C)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Bd3 のあと黒はビショップをg7に展開する手も試みてきた(そしてこれまでのところ成功している)。6…g6 7.O-O Bg7 8.Bg5 Nc6 9.h3 O-O 10.Be3 Nb4 11.Ne4 Nxe4 12.Bxe4 f5! 13.Bd3 Nxd3 14.Qxd3 そしてここで黒は 14…f4 15.Bd2 b5 16.a4 Bb7 で好調である。

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2013年07月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(86)

「Chess Life」2005年5月号(5/5)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

3…Qd6 の中央反撃[B01](続き)

 D)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.g3 白はビショップをg2に展開させることもできる。この陣形は見かけほど無害ではない。

 通例の作戦の 6…b5 7.Bg2 Bb7 8.O-O e6 のあと白はいくらか優勢である。

 9.Bf4 Qb6 10.a4(10.Ne5 も 10…Bxg2 11.Kxg2 Qb7+ 12.Qf3 Qxf3+ 13.Kxf3 で白が収局で少し優勢だった)10…b4?! 11.a5 Qa7 12.Bxc7! Bxf3(12…bxc3 13.Bb6)13.Qxf3 Qxc7 14.Nb5! axb5 15.Qxa8 Bd6 16.a6 O-O 17.a7 Nbd7 18.Qxf8+ Nxf8 19.a8=Q 白が勝勢である。

 6…g6 も白が優勢だった。7.Bf4 Qd8 8.Ne5 Bg7 9.Bg2 O-O 10.O-O c6 11.Qd2 Be6 12.Rfe1 Nd5 13.Bh6 Bxh6 14.Qxh6 Nxc3 15.bxc3 Bd5 16.Bxd5 cxd5 17.Re3 e6 18.g4 Qf6 19.g5 Qg7 20.Qh4 サカエフ対クライカ、シリウリ、1988年

 6…Bg4 7.h3 Bxf3 8.Qxf3 c6 9.Be3 Nbd7 10.O-O-O は白が有利である。7…Bh5 で釘付けを維持する方が良かった。

 E)1.e4 d5 2.exd5 Qxd5 3.Nc3 Qd6 4.d4 Nf6 5.Nf3 a6 6.Be3 Encyclopedia of Chess Openings 第4版によるとこれが主手順となっているが、私には最も意欲的な手順だとは思われない。

 6…b5 7.Bd3 Bb7 白はここでどちらにキャッスリングするかを決めなければならない。どちらを選択しても理にかなっている。

 8.O-O 8.Qe2 g6 9.O-O-O なら 9…Bg7 10.Kb1 Nbd7 11.Rhe1 O-O 12.Ng5 Nd5 と進む(ドルマトフ対ハサンガティン、ロシア、2003年)。

 8…Nbd7 9.Qe2 e6

 この局面は2004年米国選手権戦(サンディエゴ)最終戦の重要なGMゴルディン対GMストリプンスキー戦に現れた。そして 10.Bg5 Be7 11.a4 b4 12.Ne4 Qd5 13.c4! bxc3e.p. 14.Nxc3 と進んで白が優勢になった。しかしゴルティンによると黒は次のように互角にすることができた。12…Nxe4 13.Bxe4 Bxe4 14.Qxe4 O-O 15.Bf4 Qd5(または 15…Qb6 16.a5 Qb5 17.Bxc7 Nf6 18.Qe5 Nd5 19.Bd6 Bxd6 20.Qxd6 Rac8 で黒に豊富な代償がある)16.Qxd5 exd5 17.Rfe1 Bf6 18.Bxc7(18.Ne5 Nxe5 19.Bxe5 Rfe8)18…Rfc8

結論

 3…Qd6 は中央反撃/スカンジナビア防御の新型である。クイーンをd6に置く利点は白ビショップがg5に来ても釘付けにならないことと、黒が迅速にクイーン翼にキャッスリングする用意ができることがあることである。本稿ではこの布局の最も重要な着想と落とし穴を紹介した。これはまだ発展途上で、GMの将来の試合を注視するとよい。

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2013年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(87)

「Chess Life」2005年6月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37]

 クイーン翼ギャンビットは最も堅実な布局の一つである。この布局は何世紀も時の試練に耐えてきた。一流選手だけでなくチェスクラブでも人気がある。

 唯一の欠点は「平和ボケ」の試合になって黒の勝つ可能性がほとんどないときがあることである。

 白にはクイーン翼ギャンビット拒否に対して主要な4通りの指し方がある。

 A)g3 と突くカタロニア布局
 B)早く c4xd5 と取る交換戦法
 C)Bc1-g5 とかかる通常の陣形
 D)5.Bf4 と出る通常のクイーン翼ギャンビット拒否

 今回はD)だけを取り上げる。

白の基本的な作戦は何か

 5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否では白に根本的に異なる二つの陣形がある。一つは孤立ポーンを相手に指す大局的な構想で、もう一つはクイーン翼にキャッスリングしてすぐにキング翼攻撃を行なう攻撃的な指し方である。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は主流定跡の 6…c5 を避けてより堅実な 6…Nbd7 を選択することができる。6…c5 と指すなら白のいくつかの異なった応手に備えておかなければならない。逆翼キャッスリングの戦型では黒はすぐに反撃に取りかかる必要がある。孤立ポーンの局面では黒の作戦は好条件のもとで …d5-d4 と突くことに努めるのが普通である。

それで評決はどうなっているか

 白には歩調を定め、大局的に指すか攻撃的に指すかを選ぶ有利さがある。黒は両方に備えておく必要がある。

 5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否は次の手順で始まる。

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3

 10年前は黒が 6…c5 と突くべきであることが「明らか」だった。近年は 6…Nbd7 もよく指されるようになった。

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2013年07月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(88)

「Chess Life」2005年6月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅰ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 c5 7.dxc5 Bxc5

 ここで白にはいくつかの異なった道から次の手を選択できる。8.a3、8.Qc2 および 8.Be2 が主要な手である。

8.cxd5

 この手のあと黒は孤立ポーンができるのを避けることができない。

8…Nxd5

 ポーンで取るよりもこう取る方が良いと考えられている。8…exd5 は 9.Be2 Nc6 10.O-O Be6 11.Rc1 Rc8 で白が好調で、孤立d5ポーンに対して自由に指せる。通常白はd4の地点を十分に支配して黒の …d5-d4 突きを止めることができる。ここで白の最もよく指される手は 12.a3 だが、12.Nb5、12.Qa4、12.Bg5 それに 12.Ne5 も面白い手である。

 12.a3 のあとは 12…Be7 13.Nb5(13.Ne5 でもよい)13…Ne4 14.Nfd4 Qb6 15.b4 で白の好ましい局面になる。

 8…exd5 と取った最も有名な試合は1972年レイキャビクでのフィッシャー対スパスキー戦である。その試合は 12…h6 13.Bg3 Bb6 14.Ne5 Ne7 15.Na4 Ne4 と進み40手で引き分けに終わった。

 しかしスパスキーは1年後 12…Bb6 13.Qa4 Qe7 で違う道を選んだ。もっとも大した改良とは思えない。

9.Nxd5 exd5 10.a3 Nc6 11.Bd3

 白は 12.Bxh7+ Kxh7 13.Qc2+ またはすぐに 12.Qc2 でポーン得を狙っている。

11…Bb6

 黒はその狙いに対処しなければならなかった。

12.O-O d4

 これが新しい流行である。一時は黒は 12…Bg4 を好んでいた。しかし 13.h3 Bh5 14.b4 で白が少し優勢になるようである。白の作戦はd5のポーンめがけて指していくことで、奇妙な Ra2-d2 という捌きさえ伴うことがある。黒の最善の選択は …d5-d4 と突いてd5のポーンを交換しにいくことだが、それに対する白の通常の応手は e3-e4 とかわして黒の孤立ポーンを盤上に残すことである。

13.e4

 13.Qc2 は 13…h6 14.e4 Bg4 で黒に何の問題もない。

13…Bg4 14.h3

14…Bh5

 現在の勝ち抜き方式世界チャンピオンのカシムジャーノフはカルビアでの一番最近のチェスオリンピアードで黒で2度この局面になった。どちらも比較的早く引き分けに終わった。14…Qf6 と指すのも良い手である。

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2013年07月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(89)

「Chess Life」2005年6月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅱ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 c5 7.dxc5 Bxc5

 ここで白ははるかに攻撃的な手順を選ぶこともできる。

8.a3 Nc6 9.Qc2 Qa5 10.O-O-O

 これは 8.cxd5 の戦型とははっきり異なった種類の試合になる。この戦型Ⅱでは逆翼キャッスリングが示唆するように非常に激しい戦いになる。

10…Be7

 黒はd5のポーンを守った。

11.g4 dxc4 12.Bxc4 e5

 12…Nxg4 とポーンを取るのは危険すぎる。13.Rhg1 Qh5(13…Nf6 は 14.Rg5 Qb6? 15.Na4 で急に黒クイーンが捕獲される)14.h3 Nf6 15.Be2 となって素通しのg列での攻撃が厳しい。

13.g5

 白はビショップ当たりを無視して攻撃を続行する。

13…exf4 14.gxf6 Bxf6 15.Nd5

 ここでは 15.Rd5 も面白い。

15…Ne7 16.Nxf6+ gxf6 17.Rhg1+ Kh8

 この局面はグランドマスターの実戦に何十回となく現れた。一見すると黒キングの方が白キングより危険で白の方が優勢のはずのように思われる。しかしこれまでのところ白はそれを実証するに至っていない。

 実戦例を二つあげる。一つは2002年レオンでのアーナンド対クラムニク戦で 18.e4 b5 19.Bd5 Nxd5(19…Rb8? なら 20.Qc5!、19…Be6 なら 20.Bxa8 Rc8 21.Qxc8+ Nxc8 22.Kb1 で白の方が良い)20.exd5 b4 と進み、もう一つは1992年レッジョ・エミーリアでのカスパロフ対ハリフマン戦で 18.Qe4 Ng6 19.Qd4 Qb6 20.Qxb6 axb6 と進んだ。

 どちらの試合も引き分けに終わった。

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2013年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(90)

「Chess Life」2005年6月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

5.Bf4 のクイーン翼ギャンビット拒否[D37](続き)

戦型Ⅲ
1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 Nbd7

 前述の長くて激しい戦型を避けようとしてこの手がよく指されるようになった。

 昨年お好み対局でアナトリー・カルポフと対戦したときは次のように進んだ。7.cxd5 exd5 8.Bd3 c5 9.dxc5 Nxc5 10.O-O a6 11.h3 Be6 12.Nd4 Qb6 13.Rb1 Rfd8 14.b4 Nxd3 15.Qxd3 Rac8 16.Na4 私は自陣が気に入っていたし、相手も黒が問題ないと感じていた。

 2004年パンプローナでのマメジャロフ対バガニアン戦でも白がもっと指しやすい局面になった。7.a3 c5 8.cxd5 Nxd5 9.Nxd5 exd5 10.dxc5 Nxc5 11.Be5 Bf6 12.Bxf6 Qxf6 13.Qd4

結論

 クイーン翼ギャンビットの 5.Bf4 の戦型は他の3戦法と同等である。白としては自分の棋風に応じて戦型Ⅰまたは戦型Ⅱを選ぶとよい。激しい方が好きならば戦型Ⅱがよいし、落ち着いた試合の方が好きならば戦型Ⅰがよい。黒としては戦型Ⅲを選ぶか、戦型Ⅰと戦型Ⅱの両方に対処する用意をすることができる。

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2013年08月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(91)

「Chess Life」2005年7月号(1/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形

 オランダ石垣防御は19世紀から指されてきた。しかしボトビニクやスミスロフのような選手が定常的に指し始めるまでは特に流行することもなかった。もっと最近ではバレエフ、ユスーポフ、ショート、ニコリッチ、ローチェをはじめ多くの選手が好んで黒で用いている。これは非常に複雑でどちら側にとっても指しこなすのが難しい布局である。1.d4 選手は事実上これを避けることができないので黒が布局の針路を決めることになる。一本道の手順は非常に少ない。中盤戦(と収局)の構想の理解がほとんど基礎になっている。今月は具体的な戦法よりも代表的な構想で実戦をいくつか見ていくのはそのためである。

 下図が石垣と呼ばれているポーンの形である。

白の基本的な作戦は何か

 白の最も明白な目標はe5の「空所」を手中に収めることである。それは通常は二つのナイトをd3とf3の地点に配置することにより行なえる。そのあとは二通りの作戦を選ぶことができる。一つはクイーン翼でのポーンによる侵略で、もう一つは f2-f3 突きから e3-e4 突きによる中央突破である。

 黒枡ビショップ同士の交換は白が有利である。d5の地点でのポーン交換は黒がe6のポーンで取り返せないときは(f5のポーンが浮くので)、白が喜んでするのが普通である。

黒の基本的な作戦は何か

 昔は黒は作戦が一つしかなかった。それは …Qe8-h5 から …Ne4 または …Ng4、…g7-g5、…Rf8-f6-h6 などと絡めたキング翼攻撃である。c8のビショップはc8かd7でじっとしているか、c8-d7-e8 経由でg6の地点に姿を現していた。もっと現代の試合になると黒は白枡ビショップをクイーン翼フィアンケット(…b7-b6)で展開して …c6-c5 突きと関連させるのも指せる変化であることを発見した。

それで評決はどうなっているか

 長く一本道の布局定跡を避けたいならば、これは黒にとって良い選択肢である。白にとっては 1.e4 で指し始める以外この石垣を避ける方法は多くない。この布局では例えばシチリアドラゴンでのように深い手順を記憶することよりも、両者のよくある作戦を理解することの方が大切である。

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2013年08月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(92)

「Chess Life」2005年7月号(2/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御石垣戦法 [A94]
白 ティグラン・ペトロシアン
黒 ビクトル・コルチノイ
レニングラード、1946年

1.d4 e6 2.Nf3 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.b3 O-O

 今日では(黒側の)経験豊かな選手は 7…Qe7 と指すことにより黒枡ビショップ同士の交換がもっと難しくなることを知っている。

8.Ba3

 黒はビショップ同士の交換を強いられるので、白は黒のe5の地点をさらに弱めるという作戦の第一段を達成した。

8…Bxa3 9.Nxa3

 a3のナイトは遊んでいるように見えるけれども、実際にはc2-e1-d3経由でe5の地点に行く途中である。

9…Qe8

 黒は定型のキング翼攻撃作戦を続けている。

10.Nc2 Qh5 11.Qc1

 この手は …g7-g5 突きを防いでいる。

11…Ne4

 この意欲的な手は …g7-g5 突きを助ける目的である。欠点は白が f2-f3、e3-e4 と突く用意ができると、黒がこのナイトを引かなければならないので手損することである。

12.Nce1 g5 13.Nd3 Nd7 14.Nfe5

 白は続けざまに目標を達成している。黒枡ビショップを交換し要所のe5の地点を完全に制圧することに成功して、これから中央でポーンを突き進める用意ができた。

14…Kh8

 e2のポーンは次の変化が証明するように取るわけにはいかない。14…Qxe2 15.f3 Nxe5(e4のナイトが下がると黒のクイーンが捕まる)16.Nxe5 Qd2 17.Qxd2 Nxd2 18.Rfd1 ナイトの逃げ場所がない。

15.f3 Nd6 16.e4

 石垣における白の夢(そして黒の悪夢)が完璧に実現した。

16…Nf7

 黒はポーンを得しようとすると次のように深刻な状況に陥る。16…fxe4 17.fxe4 dxe4(または 17…Nxe4 18.Bxe4 dxe4 19.Nxd7 Bxd7 20.Ne5)18.Rxf8+ Nxf8 19.Qa3 exd3 20.Qxd6 Qe8 21.Rf1

17.cxd5 Ndxe5

 17…cxd5 でも 18.Nxf7+ Rxf7 19.exd5 exd5 20.f4 で白陣の方がはるかに良い。

18.dxe5 cxd5 19.exd5 exd5 20.f4 Rd8 21.Qc7 b6 22.fxg5 Ba6 23.Nf4 1-0

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2013年08月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(93)

「Chess Life」2005年7月号(3/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMアルシャク・ペトロシアン
黒 GMライナー・クナーク
エレバン、1988年

1.d4 e6 2.c4 f5 3.Nf3 Nf6 4.g3 d5 5.Bg2 c6 6.O-O Bd6 7.Ne5

 これは次の手の解説で示す戦術に基づいた面白い着想である。

7…O-O 8.Bf4

 黒はここでd7の地点に駒を展開することができない。なぜなら 8…Nbd7 なら 9.Nxc6 で白のポーン得になり、8…Bd7 なら 9.Ng6 hxg6 10.Bxd6 で白が黒枡の席巻のため明らかに有利な局面になるからである。

8…Nh5

 黒の最善の応手は 8…Ng4 だった。

9.e3! Nxf4 10.exf4

 白は当然g列を閉鎖しておく。

10…Nd7 11.Nd2 Nf6

 ここでもよくある作戦のクイーン翼でのポーンの侵略が見られる。

12.c5 Bc7 13.b4 Bd7 14.Qe2 Be8 15.Nd3 Bd7 16.Nf3 h6 17.Nfe5 Be8 18.Qe3 Kh7 19.Rab1 Rg8 20.a4 a6

 白はこの局面で同時に三つのことをする必要がある。それらはクイーン翼で攻撃を続け、e6のポーンに圧力をかけ、キング翼での黒の攻撃を食い止めることである。

21.f3 Nd7 22.Rfe1 Nf8 23.Bf1 Qf6 24.Nf2 g5 25.Nh3 Bd8 26.b5 axb5 27.axb5 Rg7 28.Ra1 Rc8 29.Ra7 cxb5 30.Rb1 b6 31.cxb6 Bxb6 32.fxg5 hxg5 33.Nxg5+ Kg8 34.Rxg7+ Qxg7 35.f4 Qa7 36.Nef3 Qa2 37.Re1 Bd7 38.Qe5 Bd8 39.Qd6 Qa7 40.Nxe6 Bxe6 41.Rxe6 Qb8 42.Qxd5 1-0

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2013年09月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(94)

「Chess Life」2005年7月号(4/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 ハーマン・スタイナー
黒 ミハイル・ボトビニク
フローニンゲン、1946年

1.d4 e6 2.c4 f5 3.g3 Nf6 4.Bg2 Bb4+ 5.Bd2 Be7 6.Nc3 O-O 7.Qc2 d5 8.Nf3 c6

 異なった手順で石垣ポーン陣形になった。

9.O-O

 白は通常はカタロニア布局と同様にこの布局でもc4のポーンを犠牲にしても問題ない。ポーンをすぐに取り返さなくても非常に十分な代償を得ていて、通常は Nf3-e5、a2-a4 そして時には e2-e4 という手にさえ関連している。この場合ナイトがe5の拠点を占拠する準備の前にd4のポーンを守る必要がある。

9…Qe8 10.Bf4

 たぶん 10.Bg5 と指す方が良かった。

10…Qh5 11.Rae1

 白は組織的に e2-e4 と突く用意をしていて、次は 12.Nd2 と指す予定である。しかし白はf4の変な位置にいるビショップのことを忘れている。

11…Nbd7 12.Nd2?

 これは良い着想(f3 から e4 と突く準備)だが、位置と時機が悪かった。12.b3 の方が安全だった。

12…g5!

 白の黒枡ビショップの不運な位置を利用するのはうまい考えである。

13.Bc7

 13.Be3 は 13…Ng4 で改良にならない。

13…Ne8 14.Be5 Nxe5 15.dxe5

 ここで急所の手が来る。

15…f4!

 この手の狙いはキング翼を拡張し、白のe5ポーンを孤立させることである。それに黒駒のために重要な地点も空けている。すなわちナイトのためにf5、c8のビショップのためにh7-b1の斜筋である。黒がこの手を躊躇していたら、白は自分の方から f2-f4 と突くだろう。

16.gxf4

 実戦でどうなったかを知っているからg列を開けるのは悪手だろう。16.Nf3? も 16…g4 と突かれるので悪い。16.f3? はもっと悪くて、16…Bc5+ 17.Kh1 fxg3 で黒の勝ちになる。16.Qd3 が良かったかもしれない。

16…gxf4 17.Nf3

 白はe5ポーンを手放さなかった。

17…Kh8

 これはこのような局面での非常に典型的で理にかなった作戦である。g列でキングの上部が素通しの時は、キングをhポーンの陰に隠しルークで素通し列を占拠したくなるのが普通である。

18.Kh1

 18.e3? Rg8(19…Qh3 の狙い)19.Kh1 は 19…Rxg2 20.Kxg2 Qg4+ で黒の勝ちになる。

18…Ng7

 最も悪い地点にいる駒の位置を改善した。

19.Qc1

 クイーンをf4ポーンに利かせて …Ng7-f5 を防ごうとした。

19…Bd7

 他の駒も活動させる時機である。

20.a3 Rf7

 この好手はf4ポーンを守りながらもう一つのルークのために8段目を空けている。

21.b4 Rg8 22.Rg1 Nf5

 ついにその時が来た。23.Qxf4 は 23…Ng3+ で白クイーンが取られる。

23.Nd1 Rfg7!

 白は黒が1手ごとに自陣を良くしていくのをどうすることもできずに見ているだけである。

24.Qxf4 Rg4 25.Qd2 Nh4

 優れた戦略的指し方の極致の常として、正当な戦術で勝負が決まる。

26.Ne3

 26.Nxh4 Rxh4 27.h3 は 27…Rxh3+ 28.Bxh3 Qxh3# の2手詰めである。

26…Nxf3 27.exf3

 27.Bxf3 なら 27…Qxh2+! 28.Kxh2 Rh4# できれいに決まる。

27…Rh4 28.Nf1 Bg5 1-0

 これは単純だが有無を言わせない。29.Qb2 Bf4 のあと白はh2の地点をどうしても守れない。30.cxd5 Rxh2+ 31.Nxh2 Qxh2#

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2013年09月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(95)

「Chess Life」2005年7月号(5/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMゴラン・ディズダル
黒 GMフィーリップ・シュロッサー
オーストリア、1996年

1.d4 f5 2.Nf3 Nf6 3.g3 e6 4.Bg2 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.b3 Qe7 8.Ne5 O-O 9.Bb2 Ne4 10.f3

 白はあまりに野心的になるのが早すぎた。

10…Nf6 11.Nd2

 ここは 11.f4 と指す方が良かった。

11…c5 12.e3 cxd4 13.exd4 f4!

 ここは急所である。

14.Re1

 贈り物を受け取るのは黒を楽にさせるだけである。すなわち 14.gxf4 Nh5 のあと黒ナイトがf4の地点に来て威張りだす。

14…Nc6 15.Bh3 dxc4 16.bxc4 Nxe5 17.dxe5 Bc5+ 18.Kg2 Nd7 19.Ne4 b6 20.gxf4 Rxf4 21.Bc1

 ここで黒にうまい交換損の犠牲が出た。

21…Rxe4 22.Rxe4 Bb7 23.Qe2

 白は戦力得を返すのが最善の選択である。23.Re1 は 23…Rf8 とされる。

23…Bxe4 24.Qxe4 Rd8 25.Bf4 Nf8 26.Qe2 Ng6 27.Bg3 h5 28.Qe4 Qe8 29.Kh1 Rd4 30.Qc2 Qf7 31.Rf1 h4 32.Bf2 Rd8 33.Bxc5 bxc5 34.f4 Nxf4 35.Qf2 Rd4 36.Bg4 Qe7 37.Rb1 Qg5 38.h3 Qxe5 39.Re1 Nd3 40.Qe3 Re4 0-1

 しゃれた決め手だった。

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2013年09月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(96)

「Chess Life」2005年7月号(6/6)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

石垣陣形(続き)

オランダ防御古典システム [A90]
白 GMルーク・ファン・ベリー
黒 GMアナトリー・バイセル
イエール、1992年

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 e6 4.Nf3 d5 5.O-O Bd6 6.c4 c6 7.Nbd2 b6 8.Ne5 O-O 9.Nd3

 白は変わったナイトの捌きで一方をd3に他方をf3に据えようとしている。

9…Ba6! 10.Qc2 Ne4 11.b3 Nd7 12.Nf3 Rc8 13.Bf4 Qe7 14.a4

14…c5!

 これもこの布局における非常に重要でより現代的な作戦である。

15.a5 b5 16.Bxd6 Qxd6 17.b4 bxc4 18.Nxc5 Rb8 19.Rab1 Rb5 20.Rb2 Rfb8 21.Rfb1 Bc8 22.e3 Ndf6 23.Ne5 Nxc5 24.bxc5 Qa6 25.Qc3 Nd7 26.g4?

 白は指しすぎた。

26…Nxe5 27.dxe5 fxg4 28.e4 Rxb2 29.Rxb2 Rxb2 30.Qxb2 Qxa5 31.c6 Qb6 32.Qxb6 axb6 33.exd5 c3 34.Be4 exd5 35.Bxd5+ Kf8 36.Bb3 Ke7 37.Kf1 Bf5 38.Ke2 Be4 39.Ba4 Ke6 40.c7 Bb7 41.Kd3 c2 42.Bxc2 Kxe5 43.Kc4 Ba6+ 44.Kb4 Kd6 45.Bxh7 Kxc7 46.Kc3 Bc8 47.Kd4 Kd6 48.Bd3 Ke6 49.Ke4 Bd7 50.Kf4 Kf6 51.f3 gxf3 52.Kxf3 Ke5 53.h4 b5 0-1

結論

 布局早々の戦いを好まず閉鎖的な局面が好きならば、これは黒番での良い選択肢になるかもしれない。欠点はe5の地点の長期的な弱点である。作戦に融通性を持たせて、白の陣形によってキング翼攻撃を始めるかもっと慎重に …b7-b6 と突く展開を選ぶかを決めるのが良い考え方である。白としては黒の攻撃に怖気づく必要はないが、見くびってもいけない(第3局を参照)。この布局をもっと研究したい読者には Jacob Aagaard 著「Dutch Stonewall」を勧める。

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2013年09月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(97)

「Chess Life」2005年8月号(1/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット

 ウルソフ・ギャンビットはビショップ布局の1変化である。19世紀にロシアのセルゲイ・ウルソフによって創始された。白がポーンを犠牲に非常に強い主導権を得ようとするとても面白いギャンビットである。もちろん奇跡の武器ではない。黒がよく研究し白のやっていることを本当に知れば、白の攻撃を食い止めることができる。

 黒には 1.e4 e5 2.Bc4 Nc6 または 2…Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nc6 で他の戦法/布局に移行する選択肢もあるが、ここでは取り上げない。

白の基本的な作戦は何か

 白は迅速な展開に集中し、そのためにポーンを犠牲にすることがよくある。他のほとんどの布局とは違い、クイーンを早期にh4に出し速攻を始めることがある。

黒の基本的な作戦は何か

 黒はこのギャンビットを避けることができる。ポーンを受諾することにしたら黒は非常に慎重になる必要がある。黒はポーン得にしがみつくために長い間根気よく守らなければならないことがよくある。

それで評決はどうなっているか

 白でウルソフ・ギャンビットを指す確かな利点は、これに対してよく研究している者がほとんどいないということである。攻撃的な局面が好きならば、白でこれを指すのを勧める。

 ウルソフ・ギャンビットの出だしの手順は次のとおりである。

1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4

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2013年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(98)

「Chess Life」2005年8月号(2/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型1 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 Nxe4 4.dxe5

 ここで白は 5.Qd5 または 5.Bxf7+ から 6.Qd5+ を狙っている。

4…Nc5

 4…Bc5? には 5.Bxf7+!(5.Qd5 Qh4 6.Qxf7+ Kd8 の混戦より良い手)5…Kf8(5…Kxf7 は 6.Qd5+ で両当たり)6.Qf3! がある。

 また 4…Qh4 なら 5.Qf3 Ng5 6.Qf4 Qxf4 7.Bxf4 Ne6 8.Bg3 となって、ラルセンによると白が少し優勢である。

5.Nf3 Be7

 5…d6 6.Bf4 dxe5?? は 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qxd8 で黒の負けになる。

6.Bf4! Nc6

 ここでまたはもっとあとでの 6…d6 突きなら白は交換し(7.exd6)黒に弱い孤立dポーンが残される。別の試合で黒は 6…O-O 7.Nc3 Nc6 8.Qe2 a6 を試みたが、次のように本局と同様の結果になった。9.O-O-O b5 10.Bd5 Bb7 11.Ne4 Ne6 12.Bg3 Qc8 13.h4 Na5 14.Bxb7 Nxb7 15.Nfg5 白の攻撃が強力である。

7.Nc3 Ne6 8.Bg3 O-O 9.Qe2 f5

 黒が 9…d6 で狭小な陣形を解放しようとすれば白は 10.O-O-O と応じる。

10.O-O-O

 白は十分に展開し、中央をしっかり支配し陣形の広さで優位に立ち陣形に何も欠陥がない。従って白が優勢である。

10…Qe8

 さもないと白に釘付けを利用されてe6のナイトを取られる。

11.Nd5!

 12.Nxc7 を狙いつつ 11…f4 を防いでいる(12.Nxf4)。

11…Kh8

 釘付けをはずした。

12.Nf4 a6 13.h4! Na5 14.Bxe6! dxe6 15.Ng5 Bc5?

 この手は一本道で負けになるが、他の手でも白がはっきり優勢である。白の華麗な決め手が分かりますか?

16.Rd8! Qxd8 17.Qh5 h6 18.Qg6! hxg5 19.hxg5+ Kg8 20.Qh5

 20.Rh8+ Kxh8 21.Qh5+ Kg8 22.g6 Rf6 23.Qh7+ Kf8 24.Qh8+ Ke7 25.Qxg7+ Ke8 26.exf6 または 20.Rh7 Rf7 21.Qh5 でも白が勝つ。

20…Nc4 21.g6 Qd2+ 22.Kb1 Na3+ 23.bxa3 黒投了

ネイシュタット対ギプスリス、ソ連、1955年

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2013年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(99)

「Chess Life」2005年8月号(3/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型2 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nxe4 5.Qxd4

 この戦型では白は長期的なポーンの犠牲を払って、積極的な指し方と展開の優位を得る。

5…Nf6

 5…d5 は 6.Bxd5 Nd6 7.O-O で白が良い。6…Nf6 は 7.Bxf7+ Kxf7 8.Qxd8 Bb4+ にクイーンがちょうど 9.Qd2 でチェックを受けることができるので白がずっと良い。

6.Nc3

 この手は展開すると共に …d7-d5 突きを防いだ。ここは分岐点である。この局面で黒は …c7-c6 から …d7-d5 という陣形か …Nb8-c6 を選ぶことができる。

戦型2a 6…Nc6 から …d5

 これが主手順である。

6…Nc6 7.Qh4 Be7 8.Bg5 d5 9.O-O-O Be6 10.Rhe1

 ここで 10…h6 は 11.Bxf6 Bxf6 12.Qh5! で白が良い。

 黒の最善の手は 10…O-O 11.Bd3 h6 である。ここで白は 12.Kb1! でキングをもっと安全な所に移す余裕がある。

 12…hxg5 と取ってくれば 13.Nxg5 g6 14.Rxe6! fxe6 15.Qh6 で攻撃が決まる。

 黒は 12…Ne8! 13,Bxe7 Qxe7 14.Qxe7 Nxe7 で局面の単純化を図ることができる。そして白は 15.Nd4 Nc6 16.Nxe6 fxe6 17.Rxe6 Rxf2 18.Nxd5 Rxg2 と手を進める。これは黒がポーン得だが白が十分な代償を得ている面白い局面である。ここで 19.Bc4 と 19.Rf1 を調べたが、両者が正しく指せば引き分けに落ち着く。もっとも黒は少し注意を払わなければならない。

 黒が …d7-d5 でなく …d7-d6 と突く作戦もある。

戦型2b 6…Nc6 から …d6

6…Nc6 7.Qh4 Be7 8.Bg5 d6 9.O-O-O Be6

 9…O-O は 10.Bd3 で危険すぎる。

 ここからの古い主手順は 10.Bd3 Qd7 11.Bb5 である。しかし新しい発見によると白は別の指し方をすることができる(その方が良い)。10.Rhe1 も面白い。

10.Bxe6 fxe6 11.Rhe1 e5

 11…Qd7 なら 12.Qc4 で白に十分な代償がある。次は黒が不注意だとどんなことが起こりうるかの見本である。12…d5 13.Qe2 Nd8 14.Bxf6 gxf6 15.Nxd5! exd5 16.Rxd5!

12.Nxe5 Nxe5 13.Rxe5 dxe5 14.Rxd8+ Rxd8 15.Qa4+

 白がa7のポーンを取って優勢になる。

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2013年10月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ポルガーの定跡指南(100)

「Chess Life」2005年8月号(4/4)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

ウルソフ・ギャンビット(続き)

戦型2c 1.e4 e5 2.Bc4 Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nxe4 5.Qxd4 Nf6 6.Nc3 c6 7.Bg5 d5 8.O-O-O

 白は釘付けによりビショップを間接的に守った。

8…Be7 9.Qh4

 これが現代の手法である。以前は 9.Rhe1 が好まれていたが、手順によっては同じになることがある。黒は2001年リナレス・オープンでのアブルーフ対スクリプチェンコ戦でたちまち窮地に陥った。

9…Nbd7 10.Rhe1!

 白はビショップを犠牲にすることができる!

10…dxc4

 10…Kf8 は 11.Bxd5! cxd5 12.Rxe7! Qxe7 13.Nxd5 Qe4 14.Bf4 で白がはっきり優勢になった(クライマン対シラジ、ニューヨーク、1992年)。

11.Bxf6 gxf6 12.Ne4!

 白は駒を組み換えながらf5の地点をナイトで占拠することを狙っている。

12…O-O

 GMルカチュはこの手を批判し、代わりに 12…Kf8! で 12.Ng3! に 13…Qa5 でクイーン翼で反撃を策することを推奨した。

13.Ng3 Kh8 14.Nf5

 ここは勝負所である。

14…Bc5?

 この手で黒は勝負を失った。しのぎの手順は 14…Bb4! 15.c3(15.Re4 には 15…Qa5)15…Bxc3! 16.bxc3 Qa5 だった。

15.Qh5?!

 ここでは 15.Re4! Rg8 16.Nh6 Qf8(16…Rg7 なら 17.Ne5!)17.Nxg8 Qxg8 18.Rg4 の方が正確で、白の勝勢だった。

15…c3 16.Re4! Qb6 17.b3 Rg8

 17…Ne5 でも 18.Nxe5 fxe5 19.Rh4 Bxf5 20.Qxf5 Be3+ 21.Kb1 h6 22.Rd6! Rfd8 23.Rdxh6+ で黒の負けになる。

18.Qxf7 Qa5 19.Rxd7 Ba3+ 20.Kb1

 白はまだ 20.Kd1? で形勢を台なしにする可能性があり、20…Qxf5 21.Re8 Qxd7+ で黒の勝勢になる。

20…Qxf5 21.Re8 黒投了

 21…Qg6 22.Rxg8+ Qxg8 23.Qxf6+ で詰みになる。

 本局には省略した(紙面の制約のため)多数の面白くて激しい変化がある。しかし自分でもっと分析して既存の解説と比較してみることを強く推奨する。

 10…dxc4 の代わりに黒が 10…O-O と指せば、白は 11.Bd3 と応じる。そして 11…g6 12.Re2 Re8 13.Rde1 Ne4 14.Nxe4! dxe4 15.Rxe4 f6 16.Bc4+ Kg7 のあと白に妙手がある。

 17.Qxh7+!! Kxh7 18.Rh4+ Kg7 19.Bh6+ Kh7 20.Bf8#

 11…h6 なら白は 12.Bxh6 gxh6 13.Qxh6 と捨て駒に出なければならない。黒は正しく受ければ 13…Re8 14.Ng5 Nf8 15.Re3 Qd6 16.Rg3 Qf4+ 17.Kb1 Ng4 で生存できる。しかし 18.Bh7+ Kh8 19.Rxg4 Bxg4 20.Nxf7+ Qxf7 21.Bg6+ Qh7 22.Bxh7 Nxh7 23.f3 で私はまだ白を持ちたい。

 別の作戦では黒はキャッスリングを当面遅らせることができる。

9.Qh4 Be6 10.Bd3 Nbd7 11.Rhe1 Nc5

 1969年モスクワでのティモシェンコ対カルポフ戦では 11…c5 12.Ne5 Nxe5 13.Rxe5 d4 14.f4 Nd7 15.Bb5 Bxg5 16.fxg5 Qc7 17.Bxd7+ Kxd7 18.Qe4 で白の方が優勢だった。

12.Nd4

 黒は大きな圧力にさらされているが、その代わりにポーン得になっている。意外なことにここでの黒の最善手は 12…Ng8! である。それに対して白は 13.Bxe7 Qxe7 14.Qg3 で主導権を維持することができるし、13.f4 もある。

結論

 戦型1では白が明らかに優勢になる。だから黒は避けるべきである。戦型2a、2bおよび2cでは白がポーンを犠牲にしてその十分な代償を得る。そして両者にとって面白くて指せる局面になる。黒の最も安全な選択は 1.e4 e5 2.Bc4 Nc6 または 2…Nf6 3.d4 exd4 4.Nf3 Nc6 でそもそもギャンビットを避けることである。これは白に対する意表を突く良い武器になるかもしれない。

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