王印防御の完全理解の記事一覧

王印防御の完全理解(1)

はしがき

 本書で我々は非常に明確な目標を掲げた。それは戦法をカタログのように紹介するのではなく、それぞれの側の構想や作戦を簡潔かつ分かり易く説明することによって「読んで試す」方式で布局を理解することを教えることである。さらにそのようなやり方で読者は本書の大部分を盤駒を用いずに理解することができる。

 この意欲的な目標を達成するために、中原のポーンが安定した構造になれば、異なったポーン構造になる同じ戦法の異なる戦型同士よりも同じポーン構造になる色々な戦法同士の方が戦略的および戦術的な相似性が強いという原理に従った。この単純なやり方でどんな局面でもその基本的な構想をすぐに理解することができる。これは布局定跡の通常の本の場合と際立った対照を成している。それらの本では体系化が必要なために理解の過程が非常に困難になっている。

 この出発点を定めれば以降は論理的に運ぶ。布局は戦法でなく「中原の型」に従って分類した(型の名前は通常は主要な戦法から取った)。これは同じ戦法の異なる戦型を、遅かれ早かれ決まってくる中原のポーンの形によってある中原の型または他の中原の型で調べられるようにするためである。そしてそれぞれの中原の型の考察は三つに分けて行なわれる。それらは戦略の着眼点の深い分析(最も現代的なものに特に注意を払う)、繰り返し現れる戦術の主題の概説、そして最後にいくつかの実戦例である。実戦例は特に布局を詳細に解説するので(読者はここでは盤駒を用いなければならない)、二つの理論的な節との実戦的な対応だけでなくいくつかの代表的な戦法をまのあたりにするだろう。実戦例を注意深く読むことは以前に詳述された戦略の着眼点を完全に理解するために欠かせない。

 もちろんすべての布局の戦法から生じる可能性のある中原の型を全部考えることは不可能である。考察する中原の構造は最も重要かつ普通に見かけるもので、考えられるもののうち少なくとも85%を含んでいる。考察の対象とならないもの(それらはすべて重要でない変化である)については従来の参考書を参照されたい。

 執筆に際してはどちらかの側に偏することなくできるだけ客観的な観点を維持するように努めた。それにより中原の型のそれぞれの構想を公平に解説できたものと期待している。中原の型の構想を知ることは白を持つにせよ黒を持つにせよ必要不可欠である。

 この「作品」は広範な棋力の選手が利用できる。初心者は布局の基礎を学ぶために利用できる。熟達者は戦法の幅を迅速に広げる必要性のために、またはまったく新たに布局のレパートリーに取り入れるために利用できる。もちろん強豪選手は戦法や最新の考え方のもっと深い知識が必須なので、本書を体系的な教科書と共に用いなければならない。

 我々の希望は読者が我々の解説を明快であると思い学び楽しみそして棋力を速やかに向上させることである。その時初めて「読んで試す」方法は成功したと言える。

2011年02月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(2)

序章

 キング翼インディアン防御は基本的なdポーン布局(1.d4 に続けて c2-c4 と突く)に対して …Nf6、…g6、…Bg7 および …d6 と指す手を特徴とするシステムである。黒の戦略はほとんどいつもキング翼にキャッスリングし …e5 または …c5 と突くことになる。大ざっぱに言って白の対応はキング翼ビショップを本来のf1-a6の斜筋に展開するかフィアンケットするかによって分類することができる。

 題材を従来のように戦法に分類しないで「中原の型」の概念を導入したことから、読者の便に供するために本書の10章の内容の要約を掲げる。

 最初の3章は黒が …e5 と指した時生じる色々な閉鎖的中原を取り上げる。

第1章
マルデルプラタ中原 - 白のキング翼ナイトがf3に展開し …Nc6 のあと中原が閉鎖される。黒のクイーン翼ナイトはe7に落ち着く。両者ともほとんど常にキング翼にキャッスリングする。
 図Ⅰ 

第2章
ペトロシアン中原 - 白のキング翼ナイトがf3に展開し、中原が閉鎖され、黒のクイーン翼ナイトがd7かa6に行く。両者ともキング翼にキャッスリングすることが多いが、白は第1章の時よりも融通性がある。
 図Ⅱ 

第3章
ゼーミッシュ中原 - 白のキング翼ナイトはf3に展開しない(fポーンの邪魔にならないようにするため)。中原は閉鎖される。白はキャッスリングについて最大限の融通性を持っている。
 図Ⅲ 

 第4章は黒が …c5 と突いた時に生じる閉鎖型中原を取り上げる。

第4章
アベルバッハ中原 - 黒が …c5 と突き中原が閉鎖される。
 図Ⅳ 

 第5章と第6章は黒が …e5 と突いたあとの中原ポーンの交換を取り上げる。

第5章
単純化中原 - dxe5 dxe5 によってd列が素通しになる。
 図Ⅴ 

第6章
オーソドックス中原 - 黒が …exd4 と取る。
 図Ⅵ 

 第7章は第3章で取り上げられなかったゼーミッシュに対する黒の他の選択肢である。

第7章
ゼーミッシュ戦法対現代中原 - 黒が中原での意図を表明する前にクイーン翼で行動を開始する。
 図Ⅶ 

 最後の3章は白が g2-g3 と突く場合の中原を取り上げる。

第8章
g2-g3 突きに対するオーソドックス中原 - 黒が …e5 突きから …exd4 と取る。
 図Ⅷ 

第9章
ユーゴスラビア中原 - 黒が …c5 と突き中原が閉鎖される。
 図Ⅸ 

第10章
パンノ中原 - 黒が中原での柔軟性を残したままクイーン翼での活動を追求する。
 図Ⅹ 
カバレク中原 - d4-d5 突きのあとc列が素通しになる。中原が固定される。
 図XI 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(3)

序章(続き)

どの戦法を指すべきか

 どの戦法が自分の棋風に最も合っているか決めるのに役立つように戦法一覧をまとめた(巻末を参照)。そこに戦法ごとの戦略と戦術の複雑さの度合いが示されている。さらに、水準7以上のFIDE大会で指された約2000局の調査を用いて、危険度の概観に役立つように各戦法の頻度と結果の割合の統計データを求めた。これにより必要に応じて最も適切な選択に役立つ情報がすべて得られる。

(この章終わり)

2011年02月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(4)

第1章 マルデルプラタ中原

主手順 - マルデルプラタ戦法
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7(図1)

 図1(白の手番) 

 同様の構造は他の戦型からも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 の後

 グリゴリッチシステム
 - 7.Be3 Ng4(または 7…Nc6 8.d5 Ne7)8.Bg5 f6 9.Bh4 Nc6 10.d5 Ne7
 - 7.O-O Nc6 8.Be3 Ng4 9.Bg5 f6 10.Bc1 Kh8 11.d5 Ne7

(この章続く)

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王印防御の完全理解(5)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点

 主要な戦略の構想はポーンの形とキングの位置とから導き出すことができる(図2)。

 図2 

 (1)同翼にキャッスリングした閉鎖型中原

 (2)クイーン翼での白陣の広さ

 (3)中央の連鎖ポーン

 (4)白のd4とf4の地点の弱点

(この章続く)

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王印防御の完全理解(6)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリングの閉鎖型中原

 中原が閉鎖されキングが同翼にキャッスリングしている時はそれぞれが側面攻撃を仕掛けやすくなることは明らかである。白はクイーン翼での陣地の広さの優位を利用し、黒はキング翼で自然な …f7-f5 突きで仕掛けていくことになる(図3)。

 図3 

 側面のポーンをお互い動員することは Ne7 と Nf3 の位置によっても示される。つまり黒のクイーン翼ナイトは …f7-f5 突きを助けるのに理想的な位置にいて、その後はg6かg8を経由して攻撃に参加する。逆に白は通常は黒の攻撃に呼応して f2-f3 突きによってe4の地点を支えようとし、そのためにこのナイトは Nf3-e1-d3 または Nf3-d2-c4 によってクイーン翼に移動するのが自然である。

 攻め合いの局面では黒は …f5、f3 と突き合った後、e4でのポーンの交換は白の防御の空間を広げるので避けるのが通常である。そして代わりに …f5-f4 と突いて相手のキングを締め付け、あとでgポーンの進攻に期待することになる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(7)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3-e1-d3 の捌き

 白はクイーン翼で広さで優位に立っているので、その方面で攻撃を画策しようとするのは明らかである。しかし黒のポーンの形は非常に堅固なので、進展を図るには列を開け弱点を生じさせることが必要である。これらの目標はどちらもc7-d6-e5の連鎖ポーンを c4-c5 突きで攻撃することにより達成することができる。そしてその準備に最適の捌きは攻守兼用の Nf3-e1-d3 である(図4)。

 図4 

 時には白はこの捌きをクイーン翼ビショップのe3への展開(…f5-f4 と突かれたらf2へ下がる)と関連させることにより、c5の地点の支配を強めようとする。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(8)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…Nf6-d7-f6 の捌き

 黒の方はfポーンの通り道を自由にしなければならない。だからナイトをd7に引き、それと同時に c5 突きを抑えるのは当然である(図5)。

 図5 

 しかし白が f3 と突くことによりキング翼の陣形を弱めキング翼での接触地点を作り出すことを嫌うならば、Nd7 は f6 の地点に戻ってe4の地点の守りのために f2-f3 と突かせなければならない。黒は …f5-f4 と突くことができるようにするためにも f2-f3 と突かせることが大切である。これは上図で白が Be2-g4 により不良ビショップを解消することができないようにする前提条件である。

 黒はナイトをf6の地点に戻す他に …f5xe4 と取る策もある。その意図はあとで出てくるが自分の駒のためにf5の地点を用いd4の地点を占拠することである。

 …Nf6、f3 のあと黒は …f5xe4 の交換からは何も得られないので、代わりに …f5-f4 と突いてキング翼での広さの優位を主張しgポーン突きに期待をかけることになる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(9)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通とd6ポーンの弱点

 c4-c5 突きの主要な目的は c5xd6 と取って …c7xd6 の取り返しのあとc列を制圧し、クイーン翼での作戦の基盤としてd6のポーンを弱めることである(図6)。

 図6 

 c列での圧力は大駒を重ねることにより強化することができ、d6ポーンに対しては Bb4 および/または Qb3-a3 によって強化できる。他の二つの着眼点は Nc7-e6 の突っ込みによるかく乱(Qb3 と連係しているのが普通で、…Bxe6 と取られるのは恐れない。なぜならd列の素通し、敵陣の白枡の弱体化、a2-g8の斜筋の活動性の向上がすべて白の有利に働くからである)と、Qc2 のあと Nxa7 とそらす手段で(…Rxa7 と取るとc8のビショップの守りが不足する)aポーンを取ることである。黒はaポーンを運命にまかせて捨てることを選び、Nxa7 のあと …Bc8-d7 とすることに甘んじ、白が手を費やしている間に自分の攻撃が進むことに期待するかもしれない。あるいは単に …a6 と突いてポーンを取られるのを防ぐかもしれない。

(この章続く)

2011年02月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(10)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

a2-a4 突き

 白が a2-a4 と突くのは(図6を参照)まさに前項の最後の理由のためである。この手により Nb5 の位置を確保し、…a7-a6 突きに対し Nb5-a3-c4 と捌き、あとで a4-a5 と突くことによりb6の弱点を固定できるようにするのである(図7)。

 図7 

 黒はクイーン翼の展開を …Bc8-d7-b5 の捌きによって解決を試みることができるけれども、白がb6の地点を占拠してしまえばc列を完全に制圧することになることは明らかである。

 この麻痺させる捌きは、白が a4-a5 突きでb6の地点を固定できる前に黒が …b7-b5 と突くことができれば、部分的に止めることができる(図8)。

 図8 

 このような局面では白の攻撃は十分に遅くなり、黒は戦いの重点を反対翼に移すことができるだろう。

(この章続く)

2011年02月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(11)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

受けの捌きの …Nf6-e8、…Rf8-f7、…Bg7-f8

 そうはいうものの黒は白の二つの主要な目的がd6の地点への圧力とc7の地点への侵入であることを考えれば、明らかにaポーンおよび/またはb6の地点にだけ没頭していることはできない。これらの二箇所の弱点を守るために黒は通常は Nf6 をe8に引き、ルークをf7に上げ、…Bf8 によってd6ポーンの守りを完了させる(図9)。

 図9 

 このようにしてc7とd6の地点が三重に守られ、同時にキング翼ルークがg7の地点を使うことができるようになる。この地点はルークがgポーンの進攻を支援する理想的な位置になる。

(この章続く)

2011年02月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(12)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…g4 の突っ掛け

 キング翼での黒の希望は …g4 の突っ掛けと密接に結びついている。g列の開通(…g4xf3)は明らかに白キングの安全を大きく脅かす。だから白が h2-h3 および Nd3-f2 のような手でできる限りg4の地点を支配しようとするのは理にかなっている。もちろんキング翼の敵陣突破の重要性を考えれば黒の方はためらわずhポーンを増援に繰り出す(図10)。

 図10 

 ここでは黒は …g5-g4 突きを成立させるのにg4の地点の支配がまだ十分でない。だから …Ne8-f6 と指すことができないならば、…Ne7-g8-h6 の捌きに頼ることがある。しかし通常は Ne7 はg6を通ってh4の地点に行き、…g4 の突っ掛けは特にd8-h4の斜筋の開通でクイーンが戦闘に参加できるのでポーン損の犠牲を払ってもとにかく実行される。…g5-g4 の防ぎに役立つように白が用いることがある一つの防御手段はクイーンをd1に引くことである。

 白が Be3-f2 と指せば …g4 突きを防ぐことがもっと難しくなることは容易に理解できる(図11)。

 図11 

 このような局面では黒は …g4-g3 とポーンを犠牲にする手段によって決定的な攻撃の筋の開通を達成することが非常によくある。

(この章続く)

2011年02月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(13)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

2段目と3段目に沿った大駒による防御

 g4の地点の支配をめぐる戦いを考えると(図10を参照)黒が …g5-g4 と指したとき一連の交換が行なわれ白の3段目が素通しになる。このような状況では白はこのことを利用して大駒を迅速にh列に転送することがよくある。黒キングは通常はh8の地点にいるので特にそうである(図12)。

 図12 

 Qh3 と指す白の目的はキング翼での立場を逆転させることである。…Rxg2+ と指しても Kh1 で二つの駒が当たりになったままなので駄目である。この3段目の開通はあらかじめc3またはa3に上がっていたルークによって利用されることもある。

 前図に示されるgポーンに対する攻撃を受ける別の手段は、先受けの Rc2(この手はルークをc列で重ねるのにも役立つ)を Bd2-e1 による2段目の開通と組み合わせることである(図13)。

 図13 

 Bd2-e1 によって白はg2の地点を守るだけでなくh4の危険なナイトを除去することも可能になる。

 この二つの防御手段は組み合わせることもあり、その場合白はキング翼で立場を逆転する目的を達成することも決して不可能ではなくなる。

(この章続く)

2011年02月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(14)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

d4の地点の弱点

 図5に示された状況で黒は …Nd7-f6 によって f3 と突かせる代わりに、…f5xe4 と取ることによってもっと単純化された展開を選択するかもしれない。Nc3xe4 の取り返しのあと次のようなポーンの形が出来上がる(図14)。

 図14 

 この形は …f7-f5 突きのあと白がf5のポーンを取り黒が駒で取り返した時にも生じる。しかしポーン交換をする方が手を損し敵駒の中央進出を助けるので白としては待った方が明らかに得策である。

 …f5xe4 の交換のあと戦いは本質的にd4とe4の地点をめぐって行なわれる。黒は弱点のd4の地点への道が開ける(例えば …Ne7-f5-d4)。一方白はe4の地点を強力な基地として使え、d4の地点は Bc1-d2-c3 の捌きによってある程度支配することができる(図15)。

 図15 

 黒は …Nh4、Nxf6+ Qxf6、Be4 Bf5、Qe2 Bxe4、Qxe4 でいくらか単純化することができ、さらに …Qf5 でクイーン交換を挑むかもしれない。しかし白はe4の地点の所有、中央に陣取った強力な Nd3、それに黒のかなり柔軟性のない構造に対するクイーン翼でのポーンによる襲撃の可能性により、収局で少しではあるが永続する優位を維持することになる。しかも白のキング翼が全然弱体化していないので、黒がキング翼で何か意味のある作戦を行うことは難しい。

 最近黒は主眼の …f5-f4 突きと c4-c5 突きのあと、…c7-c6 突きでd5のポーンを攻撃することによってd4への別の道を開こうとしてきた(図16)。

 図16 

 d5の地点の守りが不十分なので白は c5xd6 と d5xc6 の二重の交換をしなければならない。黒は …Ne7xc6 と取ったあとd4の地点の占拠に期待することができる(図17)。

 図17 

 しかし中央をずたずたにすることは攻撃的な …f5-f4 突きと調和せず黒クイーンも露出するので、このような戦略にはそれなりの欠点もある。

(この章続く)

2011年02月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(15)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

連鎖ポーンのc4-d5に対する攻撃

 黒が用いることのできる別の着想は …c7-c6 と …b7-b5 の二つのポーン突きで連鎖ポーンのc4-d5をばらばらにすることである(図18)。

 図18 

 この着想が成立するのはc4のポーンが守られていないことによる。黒はナイトの力を利用して d5xc6 には …b5xc4、c4xb5 には …c6xd5 と応じ、敵の中原を破壊する。このような反撃を実行するためにはa2-g8の斜筋に沿った問題を避けるためにほとんど常に先受けの …Kg8-h8 を指しておく必要がある。

 一般にこのような局面では白は Nd3-b4 または d5xc6 b5xc4、Nd3-f2 の後 Be2xc4 でd5の地点の所有権を争う(図19)。

 図19 

 白がd5の地点を支配できれば、d6の出遅れポーンとクイーン翼の多数派ポーンにより白陣の方が明らかに良い態勢になる。

(この章続く)

2011年02月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(16)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 図1の局面に戻って考えると、Nf3-e1-d3 の捌きの代わりに白は明らかに b2-b4 突きによって c5 突きを準備することもできる。この構想の基本的な目的は、c4の地点をキング翼ナイトのために用意し(Nf3-d2-c4)クイーン翼ビショップを(a2-a4 突きの後で)a3の地点に配置して、d6のポーンに協力して圧力をかけることである(図20)。

 図20 

 黒が通常の戦略どおり突き進めば、白は c5xd6 と交換するつもりはない。代わりに b4-b5 と突いてd6の地点への圧力を強め、さらに a4-a5 および/または b5-b6 と突いて黒のクイーン翼のポーン構造を破壊するつもりである。

(この章続く)

2011年02月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(17)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

f4の地点の弱点

 図1の局面で白はすぐに b2-b4 と突くこともできるし、まずナイトをd2の地点に移してから b2-b4 と突くこともできる。前準備のナイト引き(d2かe1へ)によりクイーンとビショップの利きがd1-h5の斜筋にとおり、黒が迅速に …Nf6-h5-f4 としてf4の弱点を利用するのを防ぐことができる。白はすぐに b2-b4 と突いてもこの捌きを実行することができる(図21)。

 図21 

 ここで白はキングの囲いを薄くしても g2-g3 と突いてf4の地点を守るか、c4-c5 と突いて …Nh5-f4 と来れば迷惑なナイトを Bc1xf4 と取ることにしてクイーン翼での作戦を続けるかを選択しなければならない。

 最初の場合黒の典型的な …f7-f5 突きの応手に対して、白は b2-b4 と突きその後ナイトを Nf3-d2-c4 と転送することができる。しかし白のキング翼の弱体化により黒のキング翼での反撃はもっと迅速に進むことになる。黒のクイーン翼ビショップが当然h3の地点に来れば特にそうである(図22)。

 図22 

 黒は …h7-h5 突きのあと …Nf6-g4 によってf列での圧迫を増し、もう一つのナイトをd6の地点の守りに回すことができる(…Ne7-c8)。

 また、白は …f7-f5 突きによって生じたe6の地点の弱点に Nf3-g5(-e6) の捌きでつけ入ることもできる(図23)。

 図23 

 このような局面ではe6の地点への侵入は …Bc8xe6、d5xe6 の後ポーンを犠牲にすることがよくある。しかし白は敵陣の白枡全般の弱さに戦略的そしてとりわけ戦術的な代償を求めることができる。例えばd5の地点は明らかに占拠できるし、d列が素通しであることを利用して c4-c5 突きと Nc3-b5 でc7とd6の地点に強い圧力をかけることができる。

 白が g2-g3 突きでキングの囲いを弱めることを嫌い、c4-c5 突きでクイーン翼での作戦を続け …Nh5-f4 には Bc1xf4 で応じれば、次のような戦略の概要が生じる(図24)。

 図24 

 …e5xf4 と取り返したあと黒は不良ビショップを解放することができ、キング翼での通常のポーンによる攻撃(…h7-h6 から …g6-g5-g4)に加えて半素通しのe列で敵のむき出しのeポーンを攻撃することができる。Ne7 は e4-e5 突きの殺到を防ぐためにg6の地点に行く必要がある。白の方はc列とd6の地点にいつもの圧力をかけ(Nc3-b5)、新たに獲得したd4の基地も利用する。d4の地点の占拠は黒が …g6-g5 と突けばナイトがf5の地点に跳ねるのに利用できることもある。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(18)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 黒がしばしばとことん激しく指すことを強いられる事情の一つは、不良ビショップのために気軽に収局に入れないことである。だから不良ビショップを交換することは戦略要素の一つを成していて、白の指し方に応じて色々な実現手段がある。

 白が Nf3-d2 と引いて b2-b4、c4-c5 から Nd2-c4 を目指す時は、黒は …Bg7-h6 と覗いて不良ビショップを始末することができる(図25)。

 図25 

 その際黒はいつも自分の不良ビショップを相手の優良ビショップと交換することを目指す。それは …Bh6xd2、Bc1xd2 のあと f2-f4 突きで局面を開放的にして黒枡の弱点につけ込む隙を白に与えないようにするためである。

 白が Nf3-e1-d3 と捌く時には、不良ビショップの消去にはもっと複雑な捌きが必要である(図26)。

 図26 

 黒は …f5-f4 で局面を閉鎖する前に …Kg8-h8 と準備することができる。この手にはc4-d5の連鎖ポーンへの攻撃を助けること(「連鎖ポーンのc4-d5に対する攻撃」の項を参照)ができるようにすることに加えて、…Ne7-g8 から …Bg7-h6 で不良ビショップを消去する着想もある。

 さらにまた別の手段は主眼の …Rf8-f7 であらかじめf8の地点をクイーンのために空けておくことである(図27)。

 図27 

 まれにではあるがこのようにしても黒は不良ビショップの交換を達成することができる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(19)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

先受けの …c7-c5 突き

 白の攻撃がほとんど例外なく c4-c5 突きに基づいていることを考えれば、黒は自分から …c7-c5 と突くことによって先受けの戦略を実行することができる(図28)。

 図28 

 一般的に言うとこの作戦は白が Nf3-d2 と指した時に用いるのが普通である。というのはそのナイトから重要なc4の拠点を奪うからなのだが、黒は時には白が普通に Nf3-e1-d3 と捌いてきた時にもこの先受けの構想を用いることがある。

 いったん黒が …c7-c5 と突いてしまえば、白はアンパッサンでそのポーンを取るか、クイーン翼の開放の方針を貫いて Ra1-b1 から b2-b4 と突くかを選択しなければならない。最初の場合 dxc6e.p. b7xc6 のあと局面の戦略的な構図はかなり変化する(図29)。

 図29 

 中原の支配を弱めた白はクイーン翼で展開を図り、その方面で素早く b2-b4-b5 と突いて多数派ポーンを活用しようとする。一方黒は …d6-d5 突きの手段で中原での反撃を行なおうとする。

 二番目の場合白のクイーン翼での活動はb列の開通に基づくことになる(図30)。

 図30 

 Rb1 から b4 突き(黒が …a7-a5 突きで邪魔する場合は a2-a3 突きで準備する)のあと黒の最良の戦略は、…b7-b6 と突いてbポーンでc5の白ポーンを取り返すことができるようにすることである。dポーンで取り返すと白に保護パスポーンができ、…b7-b6 突きのあと(黒はc5のポーンを守るためにいずれこの手を指さなければならない)a2-a4-a5 突きによって側面の攻撃にさらされる。黒が …c5xb4 とbポーンを取っても、c5の地点に利かせるために …b7-b6 と突かなければならないのですぐに同様の攻撃に見舞われることになる。

 b列の開通のあと黒がキング翼で典型的な反撃を行なっている間に、白は Nd2-b3-a5-c6 の捌きによってc6の地点を占拠し素通し列でルークを重ねて敵陣に侵入することを目指す。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(20)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

先受けの g2-g4 突き

 白の方も黒のキング翼での作戦に対して先受けの手段を取ることができる。この手段の動機は …f5-f4 と突かれたあと白のキング翼での防御陣地が慢性的に狭いことにある。そこで白は防御を容易にするために、黒が …f5-f4 突きで圧迫してくる前に f2-f3 突きの支援の下に g2-g4 と突く(図31)。

 図31 

 この戦略をとることにより白はキング翼で十分な防御の広さが得られる。もし黒がすぐに …f5-f4 突きで局面を閉鎖してくれば(…g6-g5 と突き、あとで …h7-h5 突きで敵陣突破を図るもくろみ)、白は h2-h4 と突くことによりどの列の開通も防ぐことができる。この場合h4のポーンは Ne1-g2 または Kg1-g2 の後の Rf1-h1 で守ることができる。また、黒が …f5xg4 と取ってくれば、f3xg4 と取り返して明らかに白のキング翼が少しも狭くなっていない。

 この先受けの戦略には別の着想もある。図26で見たように黒が不良ビショップを消去しようとしてくれば、白は g4-g5 とさらに突いてビショップの交換を防ぐ。

 図31のような局面では通常黒はキング翼での攻撃のもくろみをいくらかくじかれた後、攻撃の鉾先を図18で見たように再びc4-d5の連鎖ポーンに向けてくる。しかし白は Nd3-b4 の効果でd5の地点の支配が現実化する(図32)。

 図32 

 この局面で白の関心は自分の作戦を推し進めることよりも、両翼で相手の作戦を封じ込めることにある。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(21)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所

 これまで検討してきた戦型に一般的な特徴は閉鎖中原が存在することだが、それは少なくとも布局の段階では頻出する戦術の着想を減らす作用がある。もちろんお互いの攻撃が最高潮に達しその結果それぞれの防御がいくらか限界を迎える中盤では戦術の着想が豊富になる。しかしそれは多様すぎて分類できない。白が g2-g3 突きでキングの囲いを弱めた戦型でも頻出する戦術の着想の主題は多くない。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(22)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

aポーン取りと …Rc7 の逆襲

 次の局面はよく知られた定跡手順の一つの19手目で生じる(図33)。

 図33 白の手番 

 ここで白は Bc8 に対する圧力を利用して Nxa7 と取ることができる。もっとも黒は …Rc7 と逆襲することができる(黒はポーン損を無視して単に …Bd7 と応じることもできる)。そしておそらく Ba5 Rxc2、Bxd8 Rxe2、Nxc8 Rxa4 で互角になる単純化が行なわれる(図34)。

 図34 白の手番 

 今日ではこの局面はほぼ互角と考えられている。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(23)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

2ポーンと引き換えのナイト捨て

 …Rc7 の逆襲の有効性は白が b2-b4 と突いてあってa7のポーンを取ることができるならば非常に問題視される(図35)。

 図35 白の手番 

 白は Nxa7 と取り …Rc7 の逆襲に対して Nc6 という捨て駒で応じることができる。なぜなら …bxc6、dxc6 のあと連結3ポーンになるからである(図36)。

 図36 黒の手番 

 b4ポーンが進めばc6のポーンは取られる恐れがまったくなくなり、白の脅威がより間近なものになる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(24)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

黒のキング翼ナイトに対する直射攻撃とg4の擬似両当たり

 白が相手に …Nh5 と跳ねさせf4の地点を g2-g3 突きで守ると次のような局面ができあがる(図37)。

 図37 白の手番 

 ここで白は exf5 と取り黒に駒で取り返させることができる(…gxf5 は Nxe5 による直射攻撃で白が優勢になるから)。それでも …Nxf5 のあと白は擬似両取りの落とし穴にはまらないようにしなければならない。g4? と突くと …Nd4! と跳ねられて、Nxd4 exd4 でも gxh5 Nxe2+、Qxe2 Bg4(図38)でも黒の方が良くなる。

 図38 白の手番 

 黒は駒を取り返して明らかに優勢である。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(25)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例

第1局
マイルズ対サクス
ロンドン、1980年
マルデルプラタ戦法

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4

 この手順はグリューンフェルト防御を避けるためである。

4…d6 5.d4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O

 白はキングの位置を明らかにし黒の …Nb8-c6 の展開を許した。主要な変化は 7.d5(第2章のペトロシアン・システムを参照)と 7.Be3(グリゴリッチ・システム)である。7.Be3 はここの中原の型に移行しない時は2章、5章または6章で考察する中原になる。

7…Nc6 8.d5 Ne7 9.Ne1

 これはもっともよく指される手で、白はナイトのd3への典型的な移送によって c5 突きを支援する。他の手は第2局の白および黒の9手目で解説する。

9…Nd7

 この手はfポーンの進路を空けc5の地点に利かせるだけでなく、e5の地点の支配の維持にも役立っている。これは黒が通常の …Nf6-d7、…f7-f5 から …Nd7-f6-e8 の捌きの代わりに 9…Ne8 によって2手得しようとする時に明らかになる。この場合白はすぐに作戦を変更して f2-f4 突きでe5の地点に挑んでくる。例えば 10.Nd3 f5 11.f4 exf4 12.Nxf4 でe6の地点に跳ねる狙いで白がやや優勢になる。

10.Nd3 f5 11.Bd2

 白は c4-c5 突きが容易になるように、f2-f3 と突く前に相手のナイトがf6の地点に戻るのを待っている。旧来の 11.exf5 は 11…Nxf5 で黒が急所のd4の地点を使うのを助けるので指されなくなった。

11…Nf6

 黒は白に f3 と突かせる前に …f4 と突いてはいけない。なぜなら白に 12.Bg4 で不良ビショップを始末させてしまうからである。さらに、キング翼で攻撃の筋を開くことができるようにするために黒は白のポーン構造に突破点を作る必要がある。このことからも …f5-f4 突きのあと …g6-g5-g4 突きで側面での進展が図れるようにするために白に f3 と突かせる必要がある。別策は 11…f5xe4 で単純化することで、その意図はあとで …Ne7-f5-d4 の捌きでd4の地点の弱点を利用することである。しかしこの場合白は前述の旧戦型と比較して2手得する(Bd2 と Nxe4)のが大きく、少しだが永続する優勢が保証される。例えば 11…fxe4 12.Nxe4 Nf5 13.Bc3 Nf6 14.Bf3 Nh4 15.Nxf6+ Qxf6 16.Be4 Bf5 17.Qe2 Bxe4 18.Qxe4 である(図15の解説を参照)。

12.f3(図39)

 図39 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(26)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図39(再掲) 黒の手番 

 ここで黒は作戦を選択しなければならない。基本的に三とおりの可能性がある。(1)本局のように …f5-f4 突きでキング翼での反撃を続ける。これは古典的でもっとも指されている手順である。(2)今すぐか …Kg8-h8 と寄った後で …c7-c5 と突いてクイーン翼での先受けの手段を講ずる。例えば 12…c5 13.Rb1 f4 14.b4 b6 または 12…Kh8 13.Rc1 c5 という具合で、第2局で見られる。(3)…f5-f4 突きで中原を閉鎖しないで(…Kg8-h8 と寄ってから)c4-c5の連鎖ポーンを攻撃する。例えば 12…Kh8 13.Rc1 c6 14.b4 b5 という具合である(図18と19の解説を参照)。

12…f4 13.c5 g5

 ここは 13…c6 突きでd4の地点への経路を切り開こうとすることにより「先着競争」から外れる黒の最後の機会である。以下は例えば 14.cxd6 Qxd6 15.dxc6 Nxc6 16.Nb5 Qe7 17.Nb4 でねじり合いの局面になる。

14.Rc1

 本局は実際は 10.Bd2 f5 11.Rc1 Nf6 12.f3 f4 13.Nd3 g5 14.c5 という手順でこの局面になった。このような手順の違いはこの戦法では非常によく起こる。しかし本譜の手順は最も論理的で実戦で最も普通に指されるものである。本譜の手はc列での主眼の圧力を開始する白の最も直接的な手段である。もっともいくらかひねった別策は次のようにキング翼ルークをc1に持ってくることである。14.cxd6 cxd6 15.Nf2(…g5-g4 突きを防ぐため)のあと Qd1-c2 から Rf1-c1

14…Ng6

 …Kg8-h8 と b2-b4 が指されてこの局面になる時があるが、そのとき黒はこのナイトと(g8-h6 を経由する)…h7-h5 突きとを組み合わせて …g5-g4 突きの仕掛けを支援することができる。本譜の手も同様に …Rf8-f7、…Bg7-f8、…Rf7-g7 の攻防両用の捌きのために7段目を空け、ナイトをg6からh4に送って Rg7 と協力してg2の地点に圧力をかけるのに役立つ。

15.cxd6

 15.Nb5 a6 16.cxd6 axb5 17.dxc7 Qd7 18.Qb3 の捨て駒戦術はこれまで解説にしか現れたことがない。

15…cxd6 16.Nb5

 Nc7 の侵入を狙っている。

16…Rf7 17.Qc2

 白は Nc7 の狙いを新たにすることによりb5のナイトを支えた。さもないと黒のクイーン翼のポーンにより追い払われるかもしれない。例えば 17.Nf2 a6 18.Na3 b5 という具合である。本譜の手で Nb5xa7 は …Qd8-b6+ があるためにまだ狙いになっていない。

17…Ne8

 黒はナイトをc7とe6へ侵入させることもできた。例えば 17…g4 18.Nc7 gxf3 19.gxh3 Bh3 20.Ne6 となる。しかし堅実な本譜の手が今日では最もよく指されている。

18.a4

 この手は …a7-a6 から …b7-b5 を防ぐために必要である。

18…h5 19.Nf2(図40)

 図40 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(27)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図40(再掲) 黒の手番 

 この手にはg4の地点に利かせることとg1-a7の斜筋をふさいで Nxa7 の狙いを復活させることの二つの目的がある。

 この古典的な局面は詳細に研究されてきた。黒には基本的に Nxa7 の「狙い」に対処する三とおりの手段がある。(1)白に Nxa7 と取らせても …Rc7 の反撃による単純化を信頼する。例えば 19…Bf8 20.Nxa7 Rc7 21.Ba5 Rxc2 22.Bxd8 Rxe2 23.Nxc8 Rxa4 24.Nd3 g4 で現在互角と考えられている局面になる。(2)本局に見られるようにキング翼攻撃のための手数をかせぐためにポーンを犠牲にする。(3)…Bc8-d7 と指してaポーンが取られるのを防ぎ、…a7-a6 から …b7-b5 と突くことによりクイーン翼で自由を得ることを期待する。例えば 19…Bd7 20.Qb3 Bf8 21.Rc2 a6 22.Na3 Rg7 23.h3 Nh4 24.Rfc1 Rb8 25.Nc4 g4 26.fxg4 b5 で複雑きわまりない局面になる。

19…Bf8

 今度は岐路に立っているのは白である。a7と取るべきか取らざるべきか?

20.h3 Rg7

 この主眼の2手は白の決断を延期しているにすぎない。

21.Nxa7

 …Rc7 と逆襲されるのを別にすると、この手にはナイトを戦いに引き戻す手数がかかる危険性が伴っている。代わりに 21.a5 または 21.Qb3 も指されてきた。

21…Bd7

 黒は 21…Rc7 からの単純化をしないことにした。20手目で h3 突きを入れたので 21…Bxh3!? 22.gxh3 Rxa7 の可能性もあるが、まだ実戦で指されたことはない。

22.Nb5 Nh4 23.Qb3

 白は3段目で守る用意をした。

23…Kh8

 …g4 突きを助けるためにいずれ Ne8 をf6の地点に据える必要性を考えれば、このキング寄りは白ナイトの Nb5-c7-e6 の侵入から起こるかもしれないa2-g8の斜筋の危険性をなくすのに役立つ。例えば 23…Nf6 24.Nc7 g4 25.fxg4 hxg4 26.Ne6 Bxe6 27.dxe6 d5 28.hxg4 となれば白が優勢になる。本局以後の試合では 23…g4 24.fxg4 hxg4 25.hxg4 Nf6 も指され、どちらとも言えない結果になっている。

24.a5

 いずれ …Nf6、Nc7 という手が入るのでaポーンを黒駒の利き筋からはずした。

24…g4!

 これは当時の新手で、マイルズを驚かせた。黒は一時的にポーンを犠牲にして主眼の敵陣突破を図ろうとしている。

25.fxg4 hxg4 26.hxg4

 黒の23手目の巧妙さはここで明らかになる。26.Nxg4 に 26…Nf6! と応じf6で取られてもチェックにならないので …Rxg2+ と指すことができる。

26…Nf6 27.Nc7

 白は論理的に指している。gポーンを 27.Qh3?! で守るのは非常に危険である。なぜなら黒には 27…Nh7 と引き …Ng5 から …Rh7 と指すこともできるし、27…Rh7 から …Nh5 と指すこともできるからである。

27…Nxg4!

 黒は巧妙な着想の戦術でgポーンを取り除き、ルークの縦筋を開いた。これに対して 28.Nxa8? は 28…Ne3 29.Bxe3 Rxg2+ 30.Kh1 Qg5 で黒の攻撃が決まり勝ちになる。

28.Bxg4 Bxg4 29.Nxg4

 29.Nxa8? は 29…Nf3+ で黒が勝つ。

29…Rxg4(図41)

 図41 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(28)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図41(再掲) 白の手番 

 ここは本局の勝負どころで、この複雑で激しい変化の得失を明快に表わしている。g4での複数の駒交換にもかかわらず、黒のキング翼での圧力は非常に強いままである。逆に黒のクイーン翼は風前の灯火で、不良ビショップがあるせいで(ポーン損は全然別にしても)ほとんどどんな種類の収局に行くこともできない。

30.Rf2?

 これが敗着になった。白は 30.Be1! と指さなければならず、30…f3!(30…Rxg2+ は 31.Kh1 f3 32.Rxf3 Nxf3 33.Qxf3 Rxb2 34.Nxa8 Qxa8 35.Qh3+ Kg8 36.Rc8 で白の勝ちになる)31.Rxf3(31.Nxa8? は 31…Rxg2+ 32.Kh1 Qg5 33.Rc2 Qf4 で黒が勝つ)31…Qg5 で複雑きわまりない局面になる。

30…Qg5 31.Qh3

 白はポーンを守らなければならない。31.Nxa8 は 31…Rxg2+ 32.Kf1(32.Kh1 なら 32…Rxf2 33.Rg1 Nf3! で黒の勝ちになる)32…Rxf2+ 33.Kxf2 Qg2+ 34.Ke1 Nf3+ と応じられる。

31…Rg3 32.Qh1

 32.Ne6 には 32…Qh5 33.Qh1 Bh6 から …Rag8 がある。

32…Rc8 33.Be1

 33.Ne6 は 33…Rxc1+ 34.Bxc1 Qg4 35.Nxf8 Rxg2+! 36.Rxg2 Qd1+ 37.Kh2 Nf3+ で黒の勝ちになるのでまだ成立しない。本譜の手はその狙いを可能にした。例えば 34.Ne6 Rxc1 35.Nxg5 Rxe1+ 36.Rf1 Rxg2+ 37.Qxg2 Nxg2 38.Kxg2 という具合である。

33…Bh6 34.a6

 ここでも 34.Ne6 は 34…Rxc1 35.Nxg5 Rxe1+ 36.Rf1 Rxf1+(36…Rxg2+ は 37.Qxg2 Nxg2 38.Rxe1 Nxe1 39.Nf7+ で、駒損でも白の反撃が危険である)37.Kxf1 Bxg5 で黒の勝勢である。

34…bxa6 35.Rc6 Rg8

 クイーン翼ルークがキング翼に回ってたちまち決着がついた。

36.Rxd6 f3 37.Rxa6 Rxg2+ 38.Rxg2 Qe3+! 39.Bf2 Rxg2+ 40.Qxg2 fxg2 0-1

(この章続く)

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王印防御の完全理解(29)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

第2局
フタチュニク対ナン
ウィーン、1986年
マルデルプラタ戦法

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.d4 O-O 5.e4 d6 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.Ne1

 白は 9.Nd2、9.b4 または 9.Bd2 と指すこともできるので、ここはどの戦法を選ぶかの最初の重要な岐路である。このナイト引きの主要な目的はf4の地点の占拠を目指す …Nf6-h5 を防ぐことである。それが実現すれば白は g2-g3 と突いてキング翼を弱めるか、ナイトがf4に来たらすぐ Bc1xf4 と交換に応じなければならない。例えば 9.b4 Nh5 10.c5 Nf4 11.Bxf4 exf4 12.Rc1 h6 あるいは 9.Bd2 Nh5 10.g3 f5 11.exf5 Nxf5 12.Ne4 Nf6 という具合である。それに対して 9.Nd2 と指したとき白は …Nh5 を防ぎながら、b2-b4 突きと c4-c5 突きでクイーン翼の開放を目指しc4の地点を Nd2 のために取っておく。この作戦に対抗する黒の最も直接的な手段は …c7-c5 と突いて先に受けておくことである。例えば 9.Nd2 c5 10.Rb1(または 10.dxc6e.p. bxc6 11.b4 d5 12.b5)10…Ne8 11.b4 b6 となる。

9…Nd7(図42)

 図42 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(30)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図42(再掲) 白の手番 

 この典型的な局面で白には黒の意図するキング翼攻撃に対処するのに基本的に二通りの手段がある。それはお互いにポーンの暴風を用いてそれぞれの翼に攻撃をかけることと、相手の攻撃を凍結させるためにキング翼で予防手段を講ずることである。

 一つ目の場合 c5 突きは二通りの手段で準備できる。(1)Bc1-e3 と指し、黒からのfポーン突きには f2-f3 から Be3-f2 と応じる。b2-b4 突きと Ne1-d3 でc5の地点への利きをさらに増やすことができる。今日ではこの戦型はかなり珍しくなっている。理由は 10.Be3 f5 11.f3 f4 12.Bf2 g5 となると Bf2 の位置が中盤で …g4-g3 の侵攻にさらされるからである。そうなればたぶんポーンの犠牲を伴うけれども白キングに対する攻撃の筋が開いて危険になる。(2)前局で見たように Ne1-d3 と指す。

 もう一つの手段では白は 10.f3 f5 11.g4 と指すことによりキング翼での先受けを講ずることができる。ここで黒は 11…fxg4 12.fxg4 と指しても攻撃が続かず白は問題がない。11…f4 と突くのも(…g5 からあとで …h5 突きで侵攻する意図)12.h4 突きでキング翼の筋の開通を防がれるので攻撃が続かない。だから黒はクイーン翼でc4-d5の連鎖ポーンに対する攻撃に転じるのが普通である。例えば 11…Nf6 12.Nd3 Kh8 13.Be3 c6 で …b7-b5 突きをもくろむ。

10.Nd3 f5 11.Bd2 Nf6 12.f3 Kh8

 この手は前局で見た旧来の 12…f4 に代わる現代的な手である。黒は本譜の手を三通りに解釈することができる。(1)c4-d5の連鎖ポーンを …c7-c6 から …b7-b5 突きの手段で攻撃する場合、このキング寄りはa2-g8の斜筋の問題を避けるのに役立つ。(2)不良ビショップを …Ne7-g8 から …Bg7-h6 で始末する。(3)まず白のルークをb1の自然な地点からc1に誘い出してから先受けの …c7-c5 突きを指す。

13.Rc1

 ここで 13.c5 と突いてくるなら、13…c6 による反撃が 12…Kh8 でなく 12…f4 と突いていた場合よりも効果的になる。その意味は黒キングが駒筋の通るa2-g8の斜筋から既によけていて、黒のfポーンがeポーンにかける面倒な圧力がc3のナイトを縛り付けるということである。

13…c5

 黒は前述の三番目を選択した。代わりの手は 13…c6 14.b4 b5 と 13…Neg8 14.c5(14.g4 は 14…fxg4 15.fxg4 h6 16.h4 Nxg4! 17.Bxg4 Qxh4 で永久チェックによる引き分けになりそうなので白はなかなかそう指せない)14…Bh6 である。

14.g4(図43)

 図43 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(31)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図43(再掲) 黒の手番 

 黒が …c7-c5 と突いた時は白は Ra1-b1 から b2-b4 突きでb列を素通しにするのが普通である。しかしこの局面に限っては既に Rc1 と指してしまっているのでそうするのは手損になる。これで本譜の手が説明できる。この手は黒の不良ビショップの交換を防ぐためでもある。

 攻撃と反撃の自然な作戦の代わりに、先受けと逆先受けによる非常に巧妙な戦略の戦いになっている。

14…Neg8

 黒は …Nf6-e8 から …Bg7h6 と指すつもりであることを明らかにした。キング翼で無理やり進展を図るのは無益である。例えば 14…f4 15.h4! または 14…h6 15.h4 fxg4 16.fxg4 g5 17.h5! ですべて押さえ込まれる。

15.Kg2!

 白はhポーンを(h4に進んだ時)Rf1-h1 で守る準備をした。それと同時に巧妙に大駒をキング翼に移送する用意をしている。

15…Ne8

 黒は相変わらず自分の作戦を続けている。それは …Bg7-h6 でビショップの交換をできると確信しているからでなく、相手に g4-g5 と突かせてキング翼を開く(…h7-h6)可能性を得るためである。代わりに 15…f4 16.h4 Nxg4?! と乱暴にいくのは次のように駒の代償が十分に得られない。17.fxg4 Qxh4 18.Be1 Qg5 19.Nf2 h5(19…Nh6 は 20.Nh3 Qf6? 21.g5! Bxh3+ 22.Kxh3 Qxg5 23.Bh4 で白の勝ちになる)20.Nh3 Qf6 21.gxh5 g5 22.Nf2

16.g5 f4

 白がキング翼を開放することができないという黒の過信は誤っていることが次の手順で簡単に示される。16…Rf7 17.h4 Bf8 18.exf5 Bxf5 19.f4 これで主導権は白にある。

17.h4 Rf7

 17…h6 なら 18.Rh1 である。

18.Rh1 Bf8 19.Qg1

 白は15手目の効果を最大限に利用した。

19…Ng7

 黒は駒の位置を改善し、…h7-h6 と突く前にg3の地点を目指している。

20.Bd1!

 これは局面を開放的にしようとする黒の作戦をくじくための非常に的確な捌きの始まりである。そのもっとも鮮明な要点は、クイーン翼ナイトのためにe2の地点を空けてg3の地点の占拠を防ぐことである。同じようでも 20.Bf1 は白のキングが危険な黒枡に引き出されるので良くない。例えば 20…Nh5 21.Ne2 Be7 22.Kf2 h6 で黒の攻撃が強力になる。

20…Nh5 21.Ne2 h6?!

 今から考えれば黒はキング翼攻撃の構想を放棄して反対翼の陣形を固めた方が良かった。例えば 21…Bg7 22.Ba4 Ne7 23.b4 b6 なら黒が優勢である。

22.Kf1

 白キングが白枡に引っ込んだ。

22…Be7 23.Ba4

 23.gxh6 なら 23…Kh7 である。

23…hxg5

 ここでもあとから考えれば黒は 23…Kh7 と指した方が良かった。例えば 24.b4 b6 25.Bc6 Rb8 26.Rb1 Ba6 27.b5 Bb7 28.Bc3 hxg5 29.hxg5 Bxg5 30.Be8 Rg7 31.Nxe5 dxe5 32.Bxe5 で白の攻撃が強力だがそれでも本譜よりはましだった。

24.hxg5 Bxg5 25.Be8!!(図44)

 図44 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(32)

第1章 マルデルプラタ中原(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図44(再掲) 黒の手番 

 これが白の捌きの核心で、明らかに黒は軽視していた。

25…Rg7

 25…Rc7 は 26.Bxg6 でつぶされるのでこれは仕方がない。同様に 25…Qxe8 も 26.Qxg5 Rh7 27.Bc3 で決め手の Nxe5 の狙いが残る。

26.Bxg6 Rxg6

 26…Bh4 は 27.Be1! Ng3+ 28.Bxg3 Rxg6 29.Rxh4+ で白の勝ちになる。キングが白枡に逃れている重要性に注目してほしい。

27.Rxh5+ Kg7

 27…Nh6 なら 28.Nexf4! exf4 29.Bxf4 Bxf4 30.Qxg6 で白が勝つ。

28.Bc3

 これが白のすべての駒を働かせるための急所の手である。ここから終局まで黒は Rc1 がc2の地点を通って戦いに参加する可能性だけでなく、f4とe5の地点での捨て駒の悪夢と絶えず付き合っていかなければならない。

28…Qe7

 28…Bd7 なら 29.Bxe5+! dxe5 30.Nxe5 で圧倒的な結果になる。また 28…Bf6 なら 29.Qh2 Nh6 30.Nexf4 exf4 31.Nxf4 Bxc3 32.Nxg6 で白の勝勢になる。比較的最善の手はたぶん 28…Bh6 だがそれでも 29.Qh1 Nf6 30.Rh2 となって、Rc1-c2 のあと Ne2xf4 の強攻の意図を黒が防ぐのは容易でない。

29.Rc2

 これはf4での決め手の捨て駒を準備している。

29…Bh6

 またしても黒にはクイーン翼の駒を戦いに投入する余裕がない。例えば 29…Bd7 なら 30.Nexf4! Bxf4 31.Rg2 Rxg2 32.Qxg2+ Kf8 33.Nxf4 exf4 34.Rh8 Qf7 35.Qg5(e4-e5 突きの狙い)35…Re8 36.Rxg8+ Qxg8 37.Qh6+ で次の手で詰む。

30.Qh2 Kh7

 黒はf4での捨て駒を防ごうとしているが・・・

31.Nexf4! exf4 32.Nxf4

 捨て駒で2個のポーンを取り決定的な筋が開通した。これで白の駒がすべて活発に攻撃に加わっている。

32…Qf7

 黒の最後の望みはf3の地点への攻撃にあり、特に 33.Nxg6 の変化にある。33…Bg4 または 33…Qxf3+ 34.Rf2 Qd3+! 35.Kg1 Qd1+ となれば局面はさらに混迷の度を増す。本譜の手の代わりに 32…Rg5 なら 33.Rxh6+ Nxh6 34.Qxh6+! で鮮やかな白の勝ちとなる。

33.Rf2! Rf6

 33…Bd7 は 34.Nxg6 Qxg6 35.Rg2 Qf7 36.Rg7+ Qxg7 37.Bxg7 Kxg7 38.Qxd6 で白が圧倒的に優勢になる。

34.Bxf6 Qxf6 35.Rg2 Qd4

 35…Bd7 なら 36.Rg6 Qxg6 37.Nxg6 Kxg6 38.Rxh6+ Nxh6 39.Qxd6+ で白の勝ちになる。

36.Qg3 Qd1+ 37.Kf2 Qd4+ 38.Ke1 Bf5

 38…Qe3+ 39.Ne2 Qd2+ 40.Kf1 Qd1+ 41.Kf2 のあとはもうチェックがかからないのでこの手は観念した手である。

39.Rxf5 Qe3+ 40.Re2 1-0 

(この章終わり)

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王印防御の完全理解(33)

第2章 ペトロシアン中原

主手順 - ペトロシアンシステム
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.d5(図45)

 図45(黒の手番) 

 同様の構造は他の戦型からも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O の後

 ペトロシアンシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O Nbd7 8.d5

 グリゴリッチシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O(または 7.Be3 Qe7 8.d5)7…Nbd7 8.Be3 c6 9.d5

 オーソドックスシステム
 - 6.Be2 e5 7.O-O Nbd7 8.Re1(または 8.Qc2 c6 9.Rd1[あるいは 9.d5]9…Qe7 10.d5)8…c6 9.Bf1(または 9.d5)9…a5 10.Rb1 Re8 11.d5

 h3 突きのシステム
 - 6.h3 e5(6…c5 7.d5 e5)7.d5

 その他の戦型
 - 6.Be2 Bg4 7.Be3 Nfd7 8.Rc1 e5 9.d5

(この章続く)

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王印防御の完全理解(34)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点

 前章と対比してこれらの戦法に共通する最も重要な特徴は黒のクイーン翼ナイトの位置である。この一見大したことがないような細部が実際は両者の戦略に深い影響を及ぼしている。さらに通常はキング翼にキャッスリングするけれども戦法によっては白がまだキャッスリングしていないことが、あとで指摘されるように重要な違いをもたらすことがある。

 だから一般にこれから検討する中原の型は次のような特色を持っている(図46)。

 図46 

 一見したところではここでの戦略の要素は以前に図2の観察で列挙したものに非常に似かよっている。実際試合は同じ翼にキャッスリングして攻撃と反撃が行なわれるのが普通である。その際それぞれ c4-c5 突きと …f7-f5 突きによる攻勢が主要な役割を果たす。しかし黒はまだ …c7-c5 突きで先受けをするかもしれないが、クイーン翼ナイトの位置のおかげでこのナイトがe7にいた前章で検討した局面よりもはるかに容易にc5の地点を支配することができる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(35)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

c5の要所

 黒はc5の地点を強く支配しているだけでなく、…a7-a5 突きでそこを確保することによりクイーン翼ナイトのための強力な拠点にすることができる(図47)。

 図47 

 この種の中原では明らかに前章で見られたような通常の手段で c4-c5 突きを準備することはできない。特に黒のクイーン翼ナイトがc5の地点に向けられれば、その仲間によって簡単に補強することができる(…Nf6-d7)ことからも分かる。

 白は c4-c5 突きを準備するためにクイーン翼ポーンを活用する必要がある。しかし単純に a2-a3 から b2-b4 と突くことはほとんどできない。なぜならすぐに a2-a3 と突くと黒は …a5-a4 と突いて白のbポーンを固定しc5の地点を永久に支配するからである。だからc5の地点をめぐる戦いはまず b2-b3 と突き、そのあとで a2-a3 から b3-b4 と突いていかなければならない(図48)。

 図48 

 若干の手数を費やすことによってのみ(その中にはほとんど常に Ra1-b1 と寄って b4 突きを助ける手も含まれる)、白はポーンをb4に進ませることができ、それはc5の地点での仕掛けの重要な前提になる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(36)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

閉鎖中原

 ペトロシアン型中原では黒のc5の支配が強まっているために白の攻撃が当然遅くなることを考えれば、黒は …c7-c5 の先受けで白のクイーン翼の動きを迎え撃つ必要はさらさらない。しかし同時に黒がc5の地点を余分に支配するだけなら相手の攻撃を抑えるだけであるが、もっと根本的な …c7-c5 突きは白に別の攻撃法を強いることも確かである。だから図46のような状況では黒は …c7-c5 と突こうと突くまいと閉鎖中原の生成を選ぶかもしれない。

 閉鎖陣形の対峙(c5-d6-e5対c4-d5-e4)は次のような状況から最もよく生じる。(1)手順の逆転から、つまり黒がまず …c7-c5 と突き d4-d5 突きのあと …e7-e5 突きで中原の閉鎖を決める。(2)白が何手かの間中原の争点を維持し、黒の …c7-c6 突きのあと中原を固定した時(図49)。

 図49 

 このような局面で黒がよく行なう論理的な作戦は、…e5xd4 の交換(この手の前か後に …Rf8-e8 と寄る)と …Nd7-c5 跳ねによって白のeポーンに圧力をかけることである。必要があれば …d6-d5 突きで捌きに出る可能性もある(第6章を参照)。

 白はこれらの構想に d4-d5 突きで中原を閉鎖することにより対抗でき、dポーンを取ることがよく狙いになる。この戦略方針はすぐに採用されるかもしれないし中原の争点を維持している間いつでも採用されるかもしれない。時には白は中原を閉鎖する前に …Rf8-e8 でルークがfポーンの自然な支援からそれるのを待つこともある。

 d4-d5 突きのあと黒はc列の開通(…c6xd5 でそうなる)が白の有利になるのが普通なので …c6-c5 突きによって中原を固定することがよくある。c列の開通は c4-c5 突きの仕掛けの目的の一つなのでこのようなことは意外ではない。しかしこれから出てくるように、黒はクイーン翼で白に挑戦する意図でc列を素通しにすることがある。

 どの段階でポーンがc5に進もうと、白はクイーン翼での攻撃のやり方の変更を迫られる(図50)。

 図50 

 両者ともキング翼にキャッスリングして、白はb列を素通しにすることによりクイーン翼で敵陣突破を図り、黒は反対翼で通常の反撃を追い求める。しかし黒は …a7-a6 突きから … b7-b5 突きで敵と正面対決することがある。この場合白は a2-a4-a5 突きと Nc3-a4 から b2-b4 突きの押さえ込みの捌きで応じるかもしれない。

 黒が本当にクイーン翼で主導権を握れる唯一の状況は、白がクイーン翼にキャッスリングすることにより通常の道筋からはずれる時である(図51)。

 図51 

このような場合反対翼にキャッスリングしているせいで通常の戦略はまったく逆になる。

(この章続く)

2011年04月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(37)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の釘付け

 同翼キャッスリングのとき明らかに白は単純に純粋な攻撃/反撃のやり方をとることはできない。というのは黒が駒でc5の地点を支配しようとcポーンでせき止めようと、どちらの場合も白はこのあとの見通しで劣ることが容易に分かるからである。だから今度は白が黒のキング翼での動きを遅らせる手段を求めるのは理にかなっているし、特に黒のfポーン突きを防ぐ、遅らせる、または弱めるようにする。この戦略を決めるにあたり黒のクイーン翼ナイトの位置の影響がまた見られる。前章で検討した変化とは対照的に、黒のナイトは …f7-f5 突きを助ける位置にはいない。それにd7にいるために Bc8 の動きを邪魔している。

 fポーン突きを妨害する最も直接的な手段は Bc1-g5 でナイトを釘付けにすることである(図52)。

 図52 

 この釘付けの主要な目的は …h7-h6 から …g6-g5 突きにより釘付けを解消することを誘い、f5の地点の支配を弱めさせてfポーン突きの威力を削ぐことである。そうすれば e4xf5 のあと黒のポーンが比較的無害な二つの集団に分かれることになる。

 以降の展開は黒がクイーン翼ナイトをa6またはd7に置くか(図47を参照)、あるいは …c7-c5 と突くかによって決まってくる。

(この章続く)

2011年04月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(38)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h6 から …g6-g5 による釘付けはずし

 黒のクイーン翼ナイトがd7に跳ねると次のような局面になる(図53)。

 図53 

 このような局面では白は Qd1-d2 と指して …h7-h6 突きを防ごうとしない。なぜなら …Nd7-c5 のあとどちらにしても面白くない Be2-d3 か Qd2-e3 の選択をしなければならないからである。いずれにしてもどちらも黒の …h7-h6 突きを防ぐことはできない。従ってこの着想(Qd1-d2)は黒が …c7-c5 突きの陣形を採用した時だけ成立する。

 実際にはここでの白の意図はキング翼ナイトをd2に引いてd1-h5の斜筋を支配し、それにより …h7-h6 から …g6-g5 突きで釘付けをはずしたあとの …Nf6-h5xg3 による単純化を避けることである。従って …Qd8-e8 による釘付けはずしが Nc3-b5 と強く応じられることを考えれば、黒がすぐにポーンを突いて …Nf6-h5 と跳ねるのが最善であることが容易に分かる(図54)。

 図54 

 このような局面では白が既にキャッスリングしている場合にだけf4の地点の占拠(…Nh5-f4)が効果的であることが簡単に理解できる。…Nf6-h5 のあと白がキャッスリングしていなければ、白は h2-h4 と突くことにより敵の弱体化したキング翼につけ込もうとすることができる。そのような変化はしばしば戦術的に非常に複雑になり、通常は …g5-g4 突きから …Nh5-g3 の交換のあと次のようなポーン構造に至る(図55)。

 図55 

 ここでは戦いは主としてf5の地点の支配をめぐって行なわれる。白が支配すれば戦略的に優位に立つことにもなる。だから黒としては …f7-f5 突きが本来の反撃の意義を失い、ゆっくり締め上げられる危険を避けるための必要な解放策となったとしても、このポーン突きをやり遂げなければならない。しかし黒がこのポーン突きを達成できれば、e4とf5のポーンの交換のあと実際上1ポーン得の収局を期待することができる。もっとも黒キングは中盤戦で攻撃にさらされることにはなる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(39)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4の要所

 …h7-h6 突きから …g6-g5 突きのあと …f7-f5 突きが攻撃の威力のほとんどを失う大きな理由は、e4xf5 のあとせき止めのための強力なe4の地点が白のものになるからである(図56)。

 図56 

 白はe4の地点を占拠して、キング翼の白枡全般の弱点につけ込むことができる。この戦略的な劣勢と戦うための黒の唯一の可能性は …e5-e4 と突きそのポーンをしっかり守ることができることにかかっている。黒が …f7-f5 と突きg6ポーンの支援があっても何らかの戦術的理由で駒でf5の地点で取り返さなければならない時にも似たような状況になる。

(この章続く)

2011年04月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(40)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-e8 による釘付けはずし

 クイーン翼ナイトがd7に展開していないとき、黒には釘付けをはずすためのもう少し妥協しない手段がある(図57)。

 図57 

 …a7-a5 と突いたあと黒は単に …Qd8-e8 と寄るだけで釘付けをはずすことができる。Nc3-b5 には主眼の …Nb8-a6 跳ねで応じることができる。この場合 …h7-h6 突きは …g6-g5 と突く意図でなくキング翼ナイトのためにh7の地点を空けるために指される。…Qd8-e8 のあと …f7-f5 と突けるようにキング翼ナイトを動かすのは自然で、d7の地点は次の図のようにクイーン翼ビショップの展開のために空けておくのが最良である。(図58)。

 図58 

 釘付けをはずしたあと黒は …f7-f5 と突く前に、しばしば …h6-h5 と突いて不良ビショップをh6の地点に覗かせて戦いに加えようとする。…h6-h5 突きは白のクイーン翼ビショップを捕獲する狙いもあり、白は f2-f3 と突かされる(図59)。

 図59 

 このような状況では白はキング翼にキャッスリングしたとき、ビショップをf2に引く手に注意しなければならない。そう引くと黒に …Qe8-e7、…h5-h4 から …Qe7-Qg5 によってあまりにも速くキング翼に圧力をかけられてしまう。

(この章続く)

2011年04月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(41)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

a4の要所

 既に見たように黒は最終的にはキング翼での反撃を組織することに成功するかもしれないけれでも、釘付けが速度を遅らせることは確かである。従って黒がクイーン翼で予防手段を強化して壊滅させられるのを防ごうとするのは理にかなっている。

 …Qd8-e8 による釘付けはずしを …Bc8-d7 の展開と組み合わせれば、黒には白が b4 と突くことができたとたん …Nc5-a4 の捌きで単純化する選択肢が増える(図60)。

 図60 

 黒はナイトをa6に引いて戦闘から身を引かせることに応じる代わりに、b4でポーンを交換してもしなくても …Nc5-a4 によってクイーン翼ナイトの交換を持ちかけることができる。

(この章続く)

2011年04月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(42)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-c7 による釘付けはずし

 既に述べた手段だけでなく黒には …c7-c5 と突いた時にd8-a5の斜筋からクイーンを移動させて釘付けをはずすこともできる(図61)。

 図61 

 黒のクイーンの最良の位置は一般にc7の地点である。他の地点(…Qb6 や …Qa5)はb列を素通しにする白の自然な作戦(Ra1-b1 から b2-b4)によって容易に邪魔される。この場合でも …h7-h6 突きは …Nf6-h7 と引くのに役立っている。なぜならe8に引くのは Bh4-e7 で交換得する手があるためにクイーン翼ナイトがd7の地点に自然に展開するのに障害となるからである。

(この章続く)

2011年04月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(43)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f2-f4 突き

 …f7-f5 突き(特にその後の …f5-f4 突き)に対抗する別の手段は e4xf5、g6xf5 の交換の前か後に f2-f4 と突くことである。この種の作戦の基本的な考え方は、中原を開放することによりキング翼での黒の攻撃を弱め、それと同時に黒キングのやや露出した状態につけ込む機会を得ることである。そのような戦略はクイーン翼ビショップのe3の地点への展開に先行するのがほとんど常で、黒がcポーンをc5に突いたかどうかにより微妙な違いが出てくる(図62)。

 図62 

 黒がc5の地点を駒で占拠している時には、白は中原を開放しおよび/または e4xf5 g6xf5、f2-f4 突きによってd4の地点の支配を目指すことができる(図63)。

 図63 

 一般に …e5-e4 突きによる局面の閉鎖は、Be3 が既にポーンをせき止める位置にあり、d4の地点は(例えば Nd2-b3 または Nc3-b5 により)すぐに白の手中に落ち、e4-f5の連鎖ポーンはのちに g2-g4 突きによっていつでも破壊できるので、白を困らせることにはなりそうもない。

 黒の最善の対処法はf4の地点で交換し、駒を中央に集結させてポーン形の劣勢の適切な代償を求めることである。

 一方黒が …c5 と突いている時には、白は前図のように Nf3-d2 と捌かずに、キング翼ナイトをe1からd3に捌くのが普通である(b2-b4 突きと f2-f4 突きを支援するため)。しかしナイトがd3にいる場合は、白が e4xf5 と取りその後 f2-f4 と突くと、黒は先手で …e5-e4 と突くことができるようになる(図64)。

 図64 

 このような局面では黒は …e5-e4 と突き Nd3-f2 のあと …Bg7xc3 と交換し、白のポーンを動けなくすることができる。そのあとの g2-g4 突きは …Nd7-f6 で防ぎ、必要ならば …h7-h5 と突く。このように黒は双ビショップでなくなったにもかかわらず(特にフィアンケットされたキング翼ビショップ)、局面の閉鎖性と白のポーンの仕掛けのないことのおかげで、均衡した局面になる。

 結果として黒が …c5 と突いた時には白は e4xf5 の交換を延期して、すぐに f2-f4 と突きいくらかの優勢を維持しようとすることがよくある(図65)。

 図65 

 このポーン突きの主要な目的は変わらない。即ち中原を開放し黒キングの露出した状態につけ込もうとすることである。この局面で黒は …g5 と突くことによりキング翼での攻撃を再開しようとしてきた。しかし fxe5 Nxe5(…f4、e6 fxe3、exd7 Bxd7、e5 dxe5、Ne4 は戦略的に白が優勢である)Nxe5 Bxe5、exf5 Bxf5、g4 のあと、gポーンに対する速攻(Qd2 h6、h4)のおかげで白が主導権を保持している。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(44)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

h2-h3 突きに関連した着想

 時には白は布局の適当な時点で h2-h3 と突くことがある。このささやかな手には Bc1-g5 の釘付けと組み合わされているかどうかに従って色々な着想が含まれている。黒が釘付けに全然かまわない時は、h2-h3 突きは Nf3-h2-g4 の準備に役立つ(図66)。

 図66 

 白の狙いは Nh2-g4 によって圧力を強めることである。黒が …h7-h6 と突くことにすればビショップはe3に下がり、白はあとで h3-h4-h5 と突いてf5の地点とそれによる …f7-f5 突きの弱体化を生じさせることができる。

 しかし h2-h3 と突く手はあとで(特に布局の初期で指された時) g2-g4 と突くことを意図して指されることの方がずっと多い(図67)。

 図67 

 これは実戦でかなりよく指される別のシステムで、…f7-f5 突きの厳しさを和らげるのが目的である。g2-g4 突きは時にはhポーンの支援がなくてもキング翼ナイトをd2に引きクイーンとキング翼ビショップの支援で指すこともできる。明らかにこの作戦はほとんど常に白がキャッスリングの意図を明らかにする前に実行される。なぜならこのような場合にだけ、…f7-f5 突きのあとg列が素通しになる可能性から利益を得ることが期待できるからである。白はクイーン翼キャッスリングの選択肢を残すことによって、逆翼キャッスリングで局面を激化させる可能性を維持する。

 黒の観点からは正しい作戦を選択するのはいつも簡単なわけではない。三通りの可能性の是非を概説する。(1)相手がクイーン翼にキャッスリングするかもしれないことからすれば、黒は …c7-c6xd5 でc列を素通しにして対処する。しかしこれは白がg4にポーンを突いている場合にだけ奉公することである。そうでなければ白はキング翼にキャッスリングし、邪魔されることなくc列の開通から利益を得ることになる。(2)黒は …a5 突きから …Nc5 によってc5の地点を確保し占拠するか、…c5 突きでポーンを固定することにより対処する。この作戦は実際には白がクイーン翼にキャッスリングしている時だけ効果がある。なぜなら白キングは閉鎖中原によって守られているので中央にい続けることができ、g4 突きと h4 突きによりキング翼で主導権を得るか a3 突きから b4 突きでクイーン翼で主導権を得、相手には明確な反撃の目標を与えないからである。(3)黒は迅速な …Nf6-h5-f4 で弱いf4の地点(h2-h3 突きにより目立っている)につけ込むことにより対処する。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(45)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f4の要所

 一般的に言うとf4の地点の占拠が黒の最も重要な目的の一つとなる主要な状況は二つある。それは白が h2-h3 と突いている時、または白が既にキャッスリングしている時である。

 最初の場合次の図はf4の占拠が白のキング翼キャッスリングには依存しないことを強く裏付けている(図68)。

 図68 

 白は g2-g3 突きによってキング翼のポーンをさらに弱くするわけにはいかない。というのはまず第一に h2-h3 突きの攻撃的な目的(次に g2-g4 と突く)が無効になり、第二に黒が …f7-f5 突きのあと …f5-f4 と突撃する危険な可能性が出てくるからである。従ってf4の地点を守るために、白は不自然に見える捌きの Nh2 Nf4、Bf3 f5 に頼らなければならない。そしてここでhポーンをただ取りされないようにまず h4 と突いてから g3 と突かなければならない。図から容易に分かることは、Bc1xf4 と交換するのは不良ビショップが解放されるのと黒枡で強く指せるので黒の戦略的成功となることである。

 二番目の場合の例(図54の解説で既に一見している)は …h7-h6 突きのあと白がビショップをe3に引いたとき生じる(図69)。

 図69 

 このような状況では黒は …Nf6-h7(または -d7)と引いて …f7-f5 と突くかまたはf4の地点を占拠するかを選択して反撃の基盤とすることができる。後の方の作戦は白がキング翼にキャッスリングすると重要性を増し、黒は三通りの手段で進展を図ることができる。(1)白のキング翼ナイトがまだf3の地点にいればすぐに …Nf6-h5 と跳ねる。(2)白のキング翼ナイトがd2の地点にいれば …Bc8-g4 と出て、f2-f3 Bg4-d7 のあとh5の地点の支配を狙う。(3)白のキング翼ナイトがf3の地点から移動していてもすぐに …Nf6-h5 と跳ね、双ビショップを放棄して黒のhポーンを二重ポーンにするよう相手に迫る。

 f4の地点を占拠する着想は …f7-f5 突きの作戦とはまったく別個の別策と見るべきでないことは明らかである。この二つの手段はよく組み合わされる。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(46)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

g2-g3 突きから Nf3-h4 跳ねの捌き

 白は時には黒がf4の地点を占拠するのを防ぐためと、Nf3-h4 と跳ねる可能性で …f5 突きを遅らせるか防ぐために、g2-g3 と突くこともある(図70)。

 図70 

 この捌きを実行するための理想的な(しかし必須ではない)条件は黒が …h7-h6 と突き …Nf6-h5 と跳ねている時である。この場合 Nf3-h4 と跳ねるとd1-h5の斜筋が通り Be2xh5 の狙いが生じ、さらに …f5 突きはgポーンを取られるだけとなる。白は必要ならば Be2-d3 によってf5に対する圧力を増すこともできる。

 白は中原の争点を維持しながらこの着想を用いることもできる(図49を参照)。その際白はビショップをf1の地点に配置して g2-g3 突きによって生じる弱点がほとんど問題なくなるようにし、たとえ黒が …f7-f5 と突くことができてもビショップがh3で働ける。Nh4 はほとんど常にg2の地点に戻って活動し、その好所から前述した黒の …f7-f5 突きに呼応して f2-f4 突きを助ける。

(この章続く)

2011年04月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(47)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の誘い出し(Be3 Ng4)

 白が黒の定例的なキング翼攻撃を邪魔しようとする別の方法は、何の準備もなしに Bc1-e3 と出て …Nf6-g4 と跳ねるように誘うことである(図71)。

 図71 

 Be3-g5 の当たりに対する当然の …f7-f6 突きのあと、白の主要な構想は Bg5-h4 によってf6の地点への釘付けを維持すること、および/または黒のキング翼ナイトの露出した状態につけ込むことである。

 ビショップのe3の地点への展開はグリゴリッチシステムの特徴で、中原の争点を解消する前に指されるのが一般的である。そして黒がc列を素通しにするかどうかと白がどちらにキャッスリングするかによって多様な作戦が生まれる。

(この章続く)

2011年04月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(48)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Bg5-h4 引き

 黒のキング翼ナイトを誘い出す着想の最も純粋な形は、c列がまだ閉じていて白が …f7-f6 突きを誘ってビショップをh4に引いた時に見られる(図72)。

 図72 

 白はキング翼で黒が常套の反撃を展開させるのを防ぎ、まだキャッスリングしていないことを利用して h2-h3 突きから g2-g4 突きでキング翼で主導権を握り、自分のキングはクイーン翼の安全地帯に避難させることを狙っている。この型の局面では黒は三通りの異なった作戦を選べる。

 (1)g2-g4 突きを …h7-h5 と突くことによって(この手には白のクイーン翼ビショップをからめ取る狙いがある)防ごうとする。この場合白は Nf3-d2 引きから f2-f3 突きによってビショップの逃げ道を作ることができるが、ただし(黒がまだ自発的にナイトを引いていなければ)まず h2-h3 と突いてナイトを追い払ってからで、さもないと f2-f3 と突いた時にe3に跳び込まれる。結果としてできる局面は白にとって融通性があり、キング翼で作戦を続けることもできれば再び注意をクイーン翼に転じて c4-c5 と突いていくこともできる。

 (2)反対翼で攻撃することに同意し、…c7-c6xd5 でc列を開ける。

 (3)…g6-g5 突きでfポーンの釘付けをはずし、ナイトをh6に引いて …f6-f5 突きを準備する。このようにして黒は e4xf5 Nh6xf5 のポーン交換のあとe4の地点を白に支配させることになるが、代わりにd4の地点を用いる可能性ができてくる。

(この章続く)

2011年04月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(49)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Bg5-d2(または -c1)引き

 黒がすでに …c7-c6 と突いているとき、白がクイーン翼にキャッスリングすることにより反対翼の攻撃を選ぶのは、c列がすぐに素通しになるので明らかに危険である。だからこの場合白は …Ng4、Bg5 f6 のあとビショップをd2に引くのが普通である(図73)。

 図73 

 ここで黒が …f5 と突けば、白の着想は exf5 gxf5、Ng5 でe4の地点を支配し、そのあと Bxg4 と取って黒のfポーンの利きをそらすことである。また、白は dxc6 bxc6 と交換してクイーン翼での危険な多数派ポーンを得ることもできる。白はこの多数派ポーンをすぐに b2-b4-b5 と進攻させることができ、同時にd5の地点の支配も目指すことができる。さらに、この図に示された状況では黒は軽々しくd5のポーンを取ることができない。なぜなら …cxd5、Nxd5 となると白がd5の地点を支配するからである。

 これらの着想を無効にするための黒の最良の方策は二つの異なる段階を経る。(1)Nf6 を動かす前にc列を素通しにしd5の地点の支配を失わないようにする。(2)(…Ng4、Bg5 f6、Bd2 と指したあと)…f5 と突く前にナイトをh6に引き、g5の地点を支配する必要性があればさらにf7に引く。…f5 と突かない黒の別のやり方は、ナイトをf7に引き …Bg7-h6 から …Nf7-g5 と指して不良ビショップを処分しキング翼での反撃をまた活性化させることである。

 この間に白は前項で見たように素通しのc列を利用しようとする。

(この章続く)

2011年04月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(50)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通

 一般にc列の開通は白が有利である(一つの具体的な例外は例えば白がクイーン翼にキャッスリングして逆翼攻撃をしている時である)。これは特に黒のクイーン翼がさらに弱体化し(d6の地点)、白のキング翼ナイトがc4の地点に行ける(Nf3-d2-c4)からである。しかし黒が作戦を根本的に変えてc列を素通しにしクイーン翼で白と正面対決することもあり得る。このやり方で黒は …a7-a5 突きと特に …b7-b5 突きによりクイーン翼で自陣を広げることに成功すれば、ほぼ均衡のとれた展望が得られることになる(図74)。

 図74 

 黒はeポーンにかけている圧力のおかげで …b7-b5 と突いて自陣を広げ白がc4の地点を占拠するのを防ぐことができる。それでも白は b4 axb4、Rxb4 と指すことにより黒のbポーンに対する圧力を増すことができる。

 この種の条件は白が長い間中原の争点を維持し(図49を参照)、中原を解放する可能性を見ながら相手が …f7-f5 と突くのをくじく時に生じる。

(この章続く)

2011年04月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(51)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 前章のようにここでも黒は不良ビショップを抱えているために収局に持ち込めないことがある。既に不良ビショップの問題については折にふれて取り上げてきた(図58、68、73の解説を参照)。黒は一般にh6-c1の斜筋でこのビショップを交換することによりこの問題を解決しようとする。もちろん白が f2-f4 と突いて中原を開放する時はこの問題は存在しない(「f2-f4 突き」の項を参照)。

 例えば白がc4の地点を占拠するつもりでキング翼ナイトをクイーン翼に移送する時には典型的な場合が生じる(図75)。

 図75 

 もちろん黒は自分のビショップを白の黒枡ビショップと交換することに努める。さもないと白が黒枡の弱点につけ込むことができるかもしれない。

(この章続く)

2011年04月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(52)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e6の要所

 …f5 突きのあとできるe6の地点の弱点は、通常は Bc8 によって守られていてc5のナイトによって守られていることもよくあり、白がつけ込むことはできない。しかし数は少ないが場合によってはたとえポーンを損することになっても Nf3-g5-e6 の捌きでいくらかの成果を得ようとすることができる。この着想がうまくいく最も有利な状況は、黒が …c5 突きで中原を封鎖しクイーン翼ナイトでクイーン翼ビショップの利きをふさいでいる時である(図76)。

 図76 

 これは例外的な場合で、白がe6の弱点につけ込むことができる。即ち黒は Ng5 に …Nc7 と応じることができない。なぜなら Ne6 Nxe6、dxe6 Nb8、exf5 gxf5、Be3 e4、Nxe4 となって、黒のクイーン翼ルークの位置が悪いために白が戦力得になるからである。だから黒は Ng5 に …Ndf6 と応じるしかないが、Ne6 Bxe6、dxe6 となって、白の駒がf5のポーンへの攻撃によって、黒の白枡の全般的な弱さとも相まって、非常に危険な機動性を得てくる。

(この章続く)

2011年04月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(53)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

単純化の捌きの …Bc8-g4xf3

 この型の中原は黒が …Bg4 とかかってから …Nfd7 と …e5 と指した時にも現れることがある。このような場合白は必要ならば h3 と突いて双ビショップ態勢になるのが普通である。…Bg4xf3 と交換したあと次のような戦略的な特徴が現れる(図77)。

 図77 

 黒の構想は二つのナイトでc5の地点をせき止め、その間に …f7-f5 突きをできるだけ速く準備することである。

 陣形に関する考え方は大部分が同じままであるが、黒の白枡ビショップの交換のあと白は全般的には白枡で、…f5-f4 と突いてくるならば特にh3-c8の斜筋で、有利さを得ることに努めることができる。

 白がまだキャッスリングしていない時には、hポーンを突いていくことにより(h3-h4-h5xg6)黒の白枡の弱点を拡大しキング翼で主導権の確保に努めることができる。

(この章続く)

2011年04月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(54)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所

 著しく戦術に偏った少数の特別な戦法を別にすると、ペトロシアン中原には布局の時期に頻出する戦術の着想は多くない。そこで最も重要で最もありふれたものについて触れることにする。

(この章続く)

2011年04月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(55)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

h5-e8の斜筋の弱点

 黒がクイーン翼ナイトのd7への展開と …Qd8-e8 による釘付けはずしとを組み合わせた時、駒の混雑の結果として罠にはまることがある(図78)。

 図78 

 もし黒が …f5? と突くと exf5 gxf5(…Rxf5 なら戦力損にならないが陣形的に希望の持てない局面になる)、Bh5(図79)

 図79 

となって、クイーンを助けるために交換損を受け入れなければならない。黒はh5の地点(…g6xf5 の取り返しのあとかなり弱くなる)にも十分注意を払う必要がある。というのは例えばh5の地点をポーンまたはナイトが占めている時、f3のナイトが移動して背後の駒の利きが直射するという非常に似た主題が発生するからである。

(この章続く)

2011年04月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(56)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の …Nxe4

 逆に白はe4でのナイトの擬似捨て駒に基づいた手筋にいつも気をつけなければならない(図80)。

 図80 

 例えばここでは黒は …Nfxe4 と取ることができる。なぜなら Nxe4 Nxe4、Qxe4 Bf5(図81)

 図81 

のあと、犠牲にした戦力を利子付きで取り戻すことになるからである。

 今度はh8-a1の斜筋の開通に基づいたこの種の捨て駒は、白のクイーン翼ルークがまだa1にいる時にも成立する。e4での捨て駒のあと黒は …f7-f5 から …e5-e4 と突いて Nf3 と Ra1 を両当たりにして駒を取り戻す。

 しかしこの種の手筋は逆効果になることもある(図82)

 図82 

 例えばここでは黒は擬似捨て駒の …Nxe4 を決行することができる。なぜなら Nxe4 f5 で駒を取り返すことができるからである。しかし白は Nc3 g5、Bg3 f4、Ne4 fxg3、hxg3 でビショップを犠牲にすることができ(図83)

 図83 

e4の地点の支配と黒の不良ビショップのひどさのために戦略的に優位に立つ。

(この章続く)

2011年04月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(57)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例

第3局
ベインゴルト対カスパロフ
ソ連、1979年
ペトロシアンシステム

1.d4 Nf6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 d6 5.e4 O-O 6.Be2

 こんなに早い段階でも白が …e7-e5 突きに対して中原を閉鎖してしまうつもりならば、将来の …f7-f5 突きに対して 6.h3 と突いて g2-g4 突きを用意することによってすぐに反撃を始めることができる。黒が …e7-e5 と突かなければならないというわけではないけれども、6…e5 7.d5 の後どのように展開していくのかを少し見ておこう。(1)7…Nbd7 8.Be3 Nc5 9.Nd2 a5 10.g4 Ne8 11.h4 白がクイーン翼キャッスリングの可能性を当然残しながらキング翼で主導権をつかみ始めている。(2)7…c6 8.Be3 cxd5 9.cxd5 Nbd7 10.Be2 Nc5 11.Nd2 a5 12.a3 この場合白はいつものクイーン翼での優位を生かしていくつもりである。(3)7…Na6 8.Be3 Nh5 9.Nh2 Qe8(…f7-f5 突きの狙いに役立つ手)10.Be2 Nf4 11.Bf3 f5 邪魔なナイトを追い払うために白は h3-h4 突きから g2-g3 と突かなければならない。

6…e5

 黒は早く …f5 と突くために 6…Bg4 7.Be3 Nfd7 と指すことができる。例えば 8.Rc1(この手はルークをa1-h8の斜筋からそらし、状況により b2-b3 と突いてcポーンを守れるようにしている。このポーン突きは例えば 8.h3 Bxf3 9.Bxf3 Nc6 10.d5 Na5 となってからでは指せない)8…e5 9.d5 a5 10.h3 Bxf3 11.Bxf3 Na6 12.h4 f5 13.h5 この手は黒のクイーン翼ビショップの交換によって生じた白枡の弱点を際立たせるためである。

7.d5

 白はこの手によってのみペトロシアン中原を形成することができる。中原の争点を維持したままだと黒にオーソドックス中原(第6章を参照)を作る可能性を与える。ほかに白は 7.O-O により中原の争点を維持することもできるし(この手のあとの成り行きについては第4局を参照)、7.Be3 で黒のキング翼ナイトをg4に誘い出すこともできる。7.Be3 が第1章(例えば 7…Nc6 8.d5 Ne7)にも第6章(例えば 7…exd4)にも移行しない時は、この型の中原になる。例えば 7…Qe7 8,d5 Ng4 9.Bg5 f6 10.Bh4 のあと(1)10…h5 11.Nd2 a5 12.h3 Nh6 13.f3 Na6 14.a3 白の陣形はまだある程度融通性を保持している。(2)10…Qe8 11.h3 Nh6 12.g4 a5 13.g5 fxg5 14.Bxg5 Na6 15.Qd2 白はクイーン翼にキャッスリングして逆翼攻撃を始めるつもりである。

 Be3 がキング翼キャッスリングと連動して指された場合については第4局の白の8手目の解説を参照されたい。

7….a5

 これは最も融通性のある手で、今日では最も普通である。黒はc5の地点を確保し、…Na6 と指して b4 突きを遅らせ …Qd8-e8 によって釘付けをはずす用意をする意図である。他にも色々な手があるが(7…c5、7…Nh5、7…h6、7…Na6 など)、最も重要な手は 7…Nbd7 である。この手のあとの可能な展開を示すと 8.Bg5 h6 9.Bh4 g5 10.Bg3 Nh5 11.h4 のあと(1)11…Nxg3 12.fxg3 gxh4 13.Nxh4 Qg5 14.Bg4 キャッスリングできなくなりgポーンを取られても白が優勢である。例えば 14…Qe3+ 15.Qe2 Qxg3+ 16.Kd1(2)11…Nf4 12,hxg5 hxg5 13.Qc2 f5(13…Nxg2+ は 14.Kd2 で、クイーン翼ルークをキング翼に回すことができるので白がかなり優勢である)14.exf5 Nc5 難解な局面である。(3)11…g4 12.Nd2(12.Nh2 は 12…Nxg3 13.fxg3 h5 14.O-O で、f5の地点の支配が物をいう)12…f5 13.exf5 Ndf6 14.Bxg4 Nxg3 15.fxg3 Nxg4 16.Qxg4 Bxf5 双ビショップが犠牲にしたポーンに見合った代償になっているかは定かでない。

8.Bg5

 白はキングの位置についての選択肢を保持しながら黒のキング翼ナイトを釘付けにした。別の面白い着想は 8.Be3 と指すことにより黒のキング翼ナイトにこのビショップを攻撃させるよう誘うことである。例えば 8…Ng4 9.Bg5 f6 10.Bh4 で、白の7手目の解説中の手順と似た展開になる。

8…h6

 この手はキング翼ナイトのためにh7の地点を空けるために必要である。

9.Bh4 Na6 10.Nd2 Qe8(図84)

 図84 白の手番 

(この章続く)

2011年04月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(58)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図84(再掲) 白の手番 

 黒が釘付けはずしの作戦を完了したのに対し、白はまだ意図を明確にしていない。この時点で白はまったく正反対の二通りの作戦を選択することができる。それはキング翼にキャッスリングしてクイーン翼での敵陣突破に努めることと(標準的な作戦)、クイーン翼キャッスリングの余地を残しながら 11.g4 でキング翼で主導権を握ろうとすることである。

11.O-O Nh7

 擬似捨て駒の 11…Nxe4? はここではうまくいかない。なぜなら 12.Ndxe4 f5 13.Nd2 g5 14.Bg3 f4 15.Bh5 Qd7 16.Nde4 となって、e4の地点の支配により白が明らかに優勢になるからである。

12.a3

 白はa4の地点を支配している時にだけこの手を指すことができる。もし黒が前の手で 11…Bd7 と指していたら、白は a3 と突く前に 12.b3 と突かなければならないところである。

12…f5?!

 黒はこの手がもたらすe4の地点の放棄の重大性を軽視していた。普通の進行は 12…Bd7 13.b3 h5(ここで 13…f5!? と突くことはできるが、14.exf5 gxf5 15.Bh5 Qb8 16.Be7 Rc8 となって、まったくわけの分からない局面になる)14.f3 Bh6 で、白はここで 15.Rb1 または 15.Kh1 と指すのが最善である。15.Bf2 では黒が 15…Qe7 と応じて、…h5-h4 突きから …Qe7-g5 でキング翼での圧力の強化をもくろむことができる。

13.exf5! Bxf5

 黒は 13…gxf5? と取り返すことができない。というのは 14.Bh5! Qd7 15.b4! となって展開で遅れたままで非常に窮屈な陣形になるからである。

14.g4!

 白は例えば 14.Nde4 Nf6[訳注 14…Bxe4 15.Nxe4 Rf4 という手があるようです]で起こる過度の単純化を避けながらe4の地点を支配することを望んでいる。

14…Bd7 15.Nde4 a4(図85)

 図85 白の手番 

(この章続く)

2011年04月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(59)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図85(再掲) 白の手番 

 黒は恐らくクイーン翼の封鎖はe4の地点を奪われても適切な代償となると期待したのであろう。しかしクイーン翼の封鎖にもかかわらず白陣はe4の地点の獲得とb1-h7の斜筋の開通によって好形になっている。この開通で白にはキング翼攻撃の可能性ができているのに対し、黒にはもういつもの反撃策がなくなっている。

16.f3 b6 17.Bd3 Bf6

 17…Nc5? は 18.Nxc5 bxc5 19.Qc2 と応じられるのですぐには指せない。

18.Nxf6+!

 フィアンケットビショップがいなくなると黒のキング翼の弱点が目立ってくる。

18…Nxf6 19.Qd2 Nc5 20.Bc2 Kg7

 この試合の解説でカスパロフはこのキングを動かした手は悪手だったとして、代わりに危なそうな 20…g5 21.Bf2 Kf7 22.h4 Rg8 23.hxg5 hxg5 24.Be3 Ke7 25.Bxg5 Qf7 という変化を推奨し、ポーンの犠牲に対して黒に十分な代償があると評価していた。しかし 26.f4! のあと黒陣は控え目に言っても防御が容易でないように見える。従って実戦の手は実際は仕方がないようである。

21.Rae1 Nb3

 21…Qf7 なら 22.f4 exf4 23.Qxf4 g5 24.Bxg5 hxg5 25.Qxg5+ Kh8 26.Rxf6 となって白の勝ちになる。

22.Qd3

 カスパロフはこの手を間違いだと考え、代わりに 22.Bxb3 axb3 23.f4! という手順を薦めた。確かにこの手は強手である。例えば 23…Nxg4 24.h3 g5 25.hxg4(25.fxg5?! は 25…Qh5! で混戦になる)25…gxh4 26.f5 となれば、ほとんど勝勢と言ってもよい形勢である。しかし実戦の手も明らかに優勢を保っているようである。

22…g5

 満足できる手を見つけられない黒は思い切った手段で白からの f4 突きを防ぐことにした。22…Nc5 で千日手を期待しても 23.Qe3 で g4-g5 突きを狙われてうまくいかない。

23.Bg3?!

 白は疑問の攻撃策を始めた。この手では 23.Bf2! と引き、h2-h4 突きから Bf2-e3 と出てg5の地点に不気味な圧力をかける方が良かった。そうなれば白は陣形的に明らかに優勢になるのに対し、実戦の手はこれまでの正確な指し回しの成果を手放す危険性を抱えている。

23…Nc5 24.Qd2 Qf7

 24…Nb3 なら 25.Qe3 で h2-h4 突きの狙いが残る。

25.h4 Nh7

 25…gxh4 は 26.Bxh4 で明らかに黒の陣形がどうしようもないほど崩れる。

26.Bxh7

 f3の地点に黒から圧力をかけられているために、白はもうクイーン翼ビショップの位置を修正することができず前からの作戦を続けるしかない。

26…gxh4 27.Bxe5+ dxe5

 27…Kxh7 なら 28.Bd4 で白が明らかに優勢である。

28.Bb1 Qf4(図86)

 図86 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(60)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図86(再掲) 白の手番 

 黒のクイーン交換強要は正解である。さもないとb1-h7の斜筋に沿った狙いが急速に手に負えなくなってくる。例えば 28…Qf6? なら 29.f4 exf4 30.Qc2 Rf7 31.Rxf4! で白が勝つ。

29.Qxf4 Rxf4

 29…exf4 と取ると黒はキング翼の陣形の弱さに対してわずかな活動性の代償さえも得られない。

30.Rxe5 Raf8

 30…Rxc4? と取ると黒キングは詰みの包囲網に陥る。例えば 31.Re7+ Kf6(31…Kf8 なら 32.Rh7 で白が優勢)32.Rh7 Kg5 33.Rg7+ Kf4(33…Kf6 なら 34.Rg6+)34.Rf7+ Ke3(他の手も悲惨な結果になる。例えば 34…Kg3 なら 35.Ne2+ Kh3 36.Rf2、34…Kg5 なら 35.f4+ Kxg4 36.Rg7+ Kh3 37.Rf3#、34…Ke5 でも 35.Re1+ Kd6 36.Rf6+)35.Re1+ Kd2(35…Kd4 なら 36.Rf4+)36.Re2+ Kc1 37.Rc2# である。

31.Re7+ R8f7?

 黒は時間に追われて間違えた。31…Kg8 でf3の地点への圧力を維持していればもっと望みがあっただろう。

32.Rxf7+ Kxf7 33.Ne4?!

 白も時間切迫で、33.Be4 でナイトを残した方がずっと良いことが分からなかった。黒キングは黒枡に進めないので白が圧倒的に有利になる。例えば 33…Kf6? なら 34.Ne2 で白の勝ちになる。

33…Nb3?

 黒もお返しの悪手を指した。33…Nxe4 34.Bxe4 Kf6 と正しく応じていれば、白が黒枡での封鎖を打ち破ることは容易でなかっただろう。例えば 35.Kf2 なら 35…Bxg4 36.Ke3 Ke5 37.Rg1 Bh5! 38.Rg7 Rf7 である。実戦の手はたちまち終局を迎えた。

34.Kf2 Bxg4 35.Ke3 Rf5 36.Rf2 Bh5 37.Nd6+ cxd6 38.Bxf5 Kf6 39.Bc2 Nc5 40.Rh2 Kg5 41.Bd1 1-0

(この章続く)

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王印防御の完全理解(61)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

第4局
プラスケット対ナン
イギリス、1982年
ペトロシアンシステム

1.c4 g6 2.Nc3 Bg7 3.Nf3 Nf6 4.e4 d6 5.d4 O-O 6.Be2 e5 7.O-O

 白は中原の争点を維持して、黒が望めばクイーン翼ナイトをc6に展開できるようにした。

7…Nbd7

 黒は攻撃的な 7…Nc6 よりも陣形の観点から手を選んだ。

8.d5

 dポーンを突いてペトロシアン中原を作るより先にキャッスリングすることにより白陣はいくらか融通性を失っている。一方 …Nbd7 と指した黒は …Na6 の可能性がなくなり …Nc5 と指して展開を完了するしかないので、白に b2-b4 突きの明白な標的を与えることにもなっている。

 実戦の手の代わりに白は 8.Be3、8.Qc2 または 8.Re1 によって中原の争点を維持し続けることができる。キャッスリングしてから 8.Be3 と指すと白はまたしても、前の手でビショップを展開するのに比べてグリゴリッチシステムの典型的な融通性を少し失うことになる(第3局の白の7手目の解説を参照)。

 8.Be3 c6 9.d5 のあとの進行を少し見てみよう。(1)9…Ng4 10.Bg5 f6 11.Bd2(11.Bh4 は 11…Qe7 12.Qc2 Nh6 13.Rad1 g5 14.Bg3 f5 15.exf5 Nxf5 で混戦になる)11…Qe7 12.b4 f5 13.Ng5 Ndf6 14.f3 Nh6 15.dxc6 bxc6 16.b5 c5 17.Nd5 白が優勢である。(2)9…cxd5 10.cxd5 Ng4 11.Bg5 f6 12.Bd2 Nh6(12…Nc5 は 13.b4 Na6 14.a3 f5 15.Ng5 Nc7 16.exf5 gxf5 17.Bxg4 fxg4 18.f3 gxf3 19.Rxf3 となってe4の地点を支配している白が優勢である)13.Qc2 第1章で分析した局面と基本的に同じである。

 黒は 9…c5 と突くことにより中原を完全に閉鎖することを選択するかもしれない。例えば 10.Ne1 Ne8 11.Nd3 f5 12.f4 となったあと、色々な手があるが 12…g5 という手も指されてきた。

 8.Qc2 の簡単な例は 8…c6 9.d5 c5 10.a3 Ne8 11.b4 b6 12.Rb1 である。

 白は 8.Re1 c6 9.Bf1 によって中原の争点を少し長く維持することを選択することもできる。例えば(1)9…Re8 10.d5 c5 11.g3 Rf8 12.a3 Ne8 13.Rb1 f5 14.Ng5 Ndf6 15.exf5 gxf5 16.Ne6 Bxe6 17.dxe6 Nc7 18.Bh3 黒の白枡が弱いので白が優勢である。(2)9…a5 10.Rb1 Re8 11.d5 Nc5 12.b3 Bd7 13.Nd2 Bh6 14.a3 cxd5 15.cxd5 b5 16.b4 axb4 17.Rxb4 Rb8 18.Qc2 Qa5 白が少し優勢である。

8…Nc5

 eポーンが当たりになっているので黒はあらかじめ ,,.a7-a5 と突かずにこの手を指すことができる。

9.Qc2 a5 10.Bg5(図87)

 図87 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(62)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図87(再掲)黒の手番 

 釘付けがキャッスリングの前か後かによって白の作戦構想にかなりの違いが生じる。白がまだキャッスリングしていない時、釘付けの主要な目的は …h7-h6 突きから …g6-g5 突きの応手を誘って(ビショップをh4に引くのはこのためである)、結果として生じる弱点につけ込んで h2-h4 突きによりキング翼での攻撃を始めることである(第3局の黒の7手目の解説を参照)。同様の構想はキャッスリングの前に …Nf6-g4 を誘う際にも存在する。この場合にもビショップはh4に下がりキング翼で攻撃を始めることができる(第3局の白の7手目の解説を参照)。

 白がキャッスリングした後でこれらのいずれかの構想を実行する場合、もちろん側面で全面攻撃を仕掛けるのは不可能である。このような場合代わりに白はビショップをc1-h6の斜筋に沿って引き(…h7-h6 または …f7-f6 と突かれてから)、クイーン翼攻撃を助けることになる(本局の白の8手目の解説と、このあとの指し手を参照)。

 もちろんこの戦法の紆余曲折の過程では色々な構想や定跡の新手が登場し、必ずしもこれらの方針が尊重されたわけではなかった。しかしそれでもほとんどの状況を理解するための有効で価値ある指針となっている。

10…h6 11.Be3

 前に説明したようにビショップをh4に引くのは、白が既にキング翼にキャッスリングしていることから非常に効果が劣る。そして黒は危険を伴わずにf4の弱点につけ込むことができる。例えば 11.Bh4 g5 12.Bg3 Nh5 13.Nd2 Nf4 という具合である。白がキャッスリングする前に似たような捌きをしようとする時と比較して、その違いに注意して欲しい(第3局の黒の7手目の解説にある2番目の参考手順を参照)。本譜でこのビショップは正しい位置を占め、黒の …f5 突きの反撃には exf5 gxf5 と交換してから f2-f4 と突いて応じる。

11…Nfd7

 もし黒が 11…Ng4 に誘われてしまうと、白は次のような一本道の手順で優勢になる。12.Bxc5 dxc5 13.h3 Nf6 14.Nxe5 Nxd5 15.cxd5(15.Nxf7? は 15…Nb4 16.Nxd8 Nxc2 17.Rac1 Nd4 で白のナイトが逃げられない)15…Bxe5 16.f4 Bd4+ 17.Kh2(17.Kh1?! は黒に 17…Qh4 から反撃される)このあと白には 18.Nb5 から Rad1 で優勢になる狙いと、18.e5 と突いて黒の弱体化したキング翼につけ込む手段に道を開く狙いとがある。

 実戦の手は黒の展開に差し支えるけれでも、c5のナイトを強化し …f7-f5 突きの準備となる利点もある。黒は 11…Nh5 と指すこともできる。例えば 12.g3 b6 13.Nh4 Bh3 14.Rfe1 Qd7 となれば混戦である。または 11…b6(最も普通の手)12.Nd2 と指すこともでき、ここで黒は色々な手を試してきた。12…Ng4 13.Bxg4 Bxg4 14.a3 Na6 15.Rab1 Bd7、または 12…Nh5 13.Bxh5 gxh5、または 12…Bg4 13.f3 Bd7 14.b3 Nh5、または 12…Nh7 や 12…Nfd7 もある。

12.Nd2

 この手は f2-f4 突きの準備である。

12…f5 13.exf5

 これは黒のポーンを弱めるための必須の予防手段である。白はすぐに 13.f4?! と突いてはいけない。なぜなら 13…exf4 14.Bxf4 g5 15.Be3 f4 となって、黒がe5の地点を支配し、ポーンによる攻撃の可能性も保持するからである。

13…gxf5 14.f4(図88)

 図88 黒の手番 

(この章続く)

2011年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(63)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図88(再掲)黒の手番 

 この局面では黒の攻勢を迎え撃つ白の標準的な手法の一つ(他の戦法でも見られる)が実行されている。ここで黒が 14…e4 で中原を閉鎖すると、白陣の方が明らかに優っている。なぜなら白には g2-g4 突きで黒の中原を破壊する潜在的な狙いがあるし、例えば 15.Nb3 a4 16.Nd4 でd4の地点を支配し優勢になる可能性があるからである。

 実戦の手の意図は中原を開放して黒の不安定なキングの囲いにつけ込もうとすることである。

14…exf4

 黒の最善の方針は陣形の不利を受け入れて、駒の活動性と中央集結に適切な動的代償を得ることを期待することである。

15.Bxf4 Ne5 16.Nf3

 16.Nb3 という手もあった。

16…Bd7

 16…Ng6 は 17.Be3 Qe7 18.Qd2 f4 19.Bf2 Ne5 でいい勝負である。

17.Rae1 Qe7 18.Nxe5!

 この決断は熟慮の末だった。白は相手のポーンを再結合させても中原での機動力の可能性を向上させることにした。

18…dxe5 19.Be3

 両対局者は新しいポーン構造に適合するように、自分の駒の最良の位置を見つけようとしている。

19…b6 20.Kh1 Kh8 21.Qd2 Qd6 22.Bd1! Rf7!?

 黒はh6、f5およびd6の地点を安全に保護しながら、白の守られていないcポーンに反撃を加えるという、面白い作戦を始めた。

23.Bc2 Qf8 24.Ne2

 ここでの白の狙いは 25.Ng3(h5に跳ねる意図)で、それに対して 25…f4 と突いてくれば 26.Bxc5 Qxc5 27.Qd3 で攻撃が厳しくなる。

24…Nb7!

 これが黒の作戦の核心である。このナイトはせき止めのためにd6に来て、そこからf5の地点を守りc4のポーンを攻撃する。

25.b3 a4

 黒は 25…Nd6 で自陣の引き締めに満足することなしにあくまでも反撃に努め、白は挑戦を受けて立った。

26.b4 Nd6 27.c5 Nc4 28.Qc3 Nxe3 29.Qxe3 bxc5 30.bxc5 Ra5!? 31.c6 Bc8 32.Qd2! Rc5

 黒はルークを活動的な地点においておくためにaポーンを犠牲にした。

33.Bxa4 Qd6

 双ビショップの保持とd5とc6のポーンに対する圧力とが犠牲にしたポーンの代償になっているはずである。白はやみくもに戦力得にしがみつく代わりに、ここで非常に面白い複雑な戦術を始めた。

34.Bb3!? Rxc6 35.Nc3 Rb6 36.Ne4! Qf8 37.d6 Rd7 38.Qc2 cxd6 39.Rxf5! Qd8!

 39…Qxf5? は 40.Qxc8+ Kh7 41.Ng3 で白の勝ちになる。

40.Rc1

 40.Rh5 なら黒は 40…d5! を見つけなければならず 41.Ng5 Qg8 で形勢不明である。

40…Bb7 41.Qe2 Qh4!?

 両選手とも危険を顧みず勝ちを目指している。41…Bxe4 は 42.Qxe4 d5 で互角の勝負だろう。

42.Ng3 Rb4 43.Rh5 Qf6 44.Rf5 Qh4 45.Rcf1

 白は暗黙のうちに引き分けを拒否した。

45…Rd8 46.Rh5 Qg4 47.Rf6!?(図89)

 図89 黒の手番 

(この章続く)

2011年05月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(64)

第2章 ペトロシアン中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図89(再掲)黒の手番 

 この度肝を抜かれるルーク捨てを黒は受け入れるべきでなかった。白の狙いは 48.Qxg4 Rxg4 49.Rhxh6+ Bxh6 50.Rxh6+ Kg7 51.Nf5+ Kf8 52.Rh8 Rg8 53.Rxg8# である。

47…Bxf6?

 この手は負ければ敗着で、以下の手も同じである。47…Qe2? なら 48.Rhxh6+ Bxh6 49.Rxh6+ Kg7 50.Nf5+ Kf8 51.Rh8#、47…d5? は 48.Qxe5 で白の圧倒的優勢、47…Kh7? も 48.Nf5!! Rxb3 49.Rhxh6+! Kg8 50.Ne7#

 黒が相手の狙いをかわすには 47…Bc8! か 47…Rf8! でf5の地点を守るしかなく、それでどちらも互角の形勢である[訳注 47…Bc8 だと 48.Qc2 で白の勝ちのようです]。

48.Rxh6+ Kg7 49.Qxg4+ Rxg4 50.Nf5+ Kf8 51.Rxf6+ Ke8 52.Nxd6+?

 これはお返しの悪手だった。勝ちの手順は 52.h3!! Rxg2(52…Bxg2+ なら 53.Kh2 Rg5 54.Ba4+ Rd7 55.Rxd6 で白の勝ち)53.Ba4+ Rd7 54.Bxd7+ Kxd7 55.Rf7+ Ke6 56.Rxb7 Rxa2 57.Ng3 で、白勝ちの収局になる。

52…Rxd6 53.Rxd6 Bxg2+ 54.Kg1 Bd5+ 55.Kf2 Bxb3 56.axb3 Rb4 57.Rd3 Ke7 ½-½

 この大激闘にふさわしい終局だった。

(この章終わり)

2011年05月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(65)

第3章 ゼーミッシュ中原

主手順 - ゼーミッシュ戦法
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 O-O 6.Be3 e5 7.d5(図90)

 図90(黒の手番) 

 同様の戦略的条件は白が他の戦法で f2-f3 突きを遅らせたり省略しようとしたりする時にも生じることがある。例えば 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 の後

 アベルバッハ戦法
 - 5.Be2 O-O 6.Bg5 h6(または 6…Nbd7 7.Qd2 e5 8.d5)7.Be3 e5 8.d5

 h2-h3 突きシステム
 - 5.h3 O-O 6.Be3 e5 7.d5

 その他の戦法
 - 5.Nge2 O-O 6.Ng3 e5 7.d5

(この章続く)

2011年05月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(66)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点

 これらの戦法すべてを貫いている考え方は単純である。それは白が中原を閉鎖するがキング翼ナイトをf3の地点に展開せず、それによってhポーンおよび/またはgポーンを突いてキング翼で強力な攻撃を仕掛ける可能性を保持するということである。だからこの型の中原では次のような特徴が現れる(図91)。

 図91 

 白はまだキャッスリングしていないので非常に融通性のある陣形になっている。即ち黒の応手に応じてクイーン翼にキャッスリングしてキング翼で攻撃することもできるし、キング翼にキャッスリングしてクイーン翼での広さの優位を自然に生かすこともできる。

(この章続く)

2011年05月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(67)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

e2のナイトを用いたキング翼攻撃の作戦

 白は次のような非常に単純な作戦によって相手のキングに対して迅速に強力な攻撃の狙いを作り出すことができる。クイーン翼ビショップとクイーンをc1-h6の斜筋に重ね(例えば Be3、Qd2)、g2-g4 突きのあとg3に跳ねる意図でキング翼ナイトをe2に展開し、hポーンをh5まで突いてクイーンをh列に転回させる(図92)。

 図92 

 明らかにこのような攻撃作戦はクイーン翼にキャッスリングすることにより展開を完了することをもくろんでいる。逆翼キャッスリングから生じる局面の激しさを考慮すれば、黒ができるだけ速くクイーン翼での反撃を促進させ、キング翼でも白の攻撃作戦の進行を邪魔するために対抗策を取らなければならないことは明らかである。

(この章続く)

2011年05月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(68)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c列の開通と白の作戦の融通性

 クイーン翼での黒の最も理にかなった反攻は、できるだけ迅速にc列を素通しにする(…c7-c6 突きから …c6xd5 と取る)ことである(図93)。

 図93 

 しかしその場合白は当初の攻撃策にとらわれる必要はさらさらない。代わりに元々優勢な方面で列を素通しにさせたことに満足して、キング翼にキャッスリングしてクイーン翼で圧力をかけることに集中するかもしれない。黒が時としてc列を開けずにクイーン翼で反撃を図るのはこのような理由による。

 従って逆翼キャッスリングはc列が素通しの時もあればそうでない時もあり、同翼キャッスリングは素通しc列を伴う。

(この章続く)

2011年05月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(69)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

逆翼キャッスリングでの黒のキング翼の先受け

 白が逆翼キャッスリングをしようとするならば、特にc列が素通しの時は、技術的な問題に直面する(図94)。

 図94 

 白はどのくらい長くキングを中央にとどめるかということと、クイーン翼にキャッスリングしてから g2-g4 と突くかそれともキングがまだ中央にいる間に g2-g4 と突くかということとを決めなければならない。

 黒のキング翼の先受け(もちろん必須のクイーン翼の逆襲と並行して行なわれる)は白の用いる手順によってある程度影響されるかもしれない。一般的にいうと、白が g2-g4 と突く前にクイーン翼キャッスリングする時は、黒は …f7-f5 突きの反撃で白の攻撃作戦を邪魔するのが最善であることがよくある。逆に白がキングを中央に残したまま g2-g4 と突く時は、黒は …h7-h5 突きでキング翼で反撃するのが普通である。

 この手っ取り早い指針は実戦で厳格に従うべきものではないが、それでも理にかなった根拠を持ち(あとで解説する)、理解と方針の良い道しるべとなる。

(この章続く)

2011年05月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(70)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

中央での反撃の …f7-f5 突き

 白のキング翼攻撃に対して黒が採用する通常の反撃策は中央での …f7-f5 突きである。このポーン突きはキング翼ナイトをh5に跳ねて準備するのが普通である(図95)。

 図95 

 この戦略は一般に白がクイーン翼キャッスリングのあともくろむ g2-g4 突きを予期して計画される。

 そのあと黒は相手の攻撃の通常の進展を、…f4、Bf2 Bf6(図96)

 図96 

で局面を閉鎖することにより g4 Ng7、h4 Be7 のあと白が列を素通しにできないようにして防ぐか(特に黒が …h6 突きでせき止めの態勢を万全にする時間があるならば)、特に白がfポーンで取り返さなければならないならば中央で交換(…fxe4)することにより防ぐ(図97)。

 図97 

 ここで g2-g4 突きにはf3のポーンによる自然な支援がなくなっている。黒はこの戦略を実行する際に Nh5 が g2-g4 突きによっていじめられるのをほとんど恐れる必要がない。実際このナイトがf4に跳んでポーンを損することを少しも気にする必要がないのが普通である(図98)。

 図98 

 Bxf4 exf4、Qxf4 f5 のあと黒の得る動的代償は、ことに対角斜筋のビショップが解放されることからくる代償は、犠牲にしたポーンをしのぐのが普通である。同様のポーン捨ては白がナイトをe2に配置し双ビショップを譲る必要のない時でも考慮に値する。

 基本的に白には …f7-f5 突きの構想に対処する二つの手段がある。それは exf5 gxf5 と交換したあとキング翼攻撃の方針を継続することと、…f5-f4 と突いてせき止めてきた場合には戦場をクイーン翼に移すことである。

 最初の場合 exf5 gxf5 の交換のあと局面の戦略的様相はかなり変化する(図99)。

 図99 

 白が …f5-f4 と応じられるのを恐れない時は、h2-h3 と突いてすぐに g2-g4 突きを用意することができる。そうでない場合は最初に g2-g3 と突いてから h2-h3 と突くことができる。時には f3-f4 と突くことによりもっと中央での戦略を追求して、前章で検討したのとあまり違わない戦略を意図することもできる(第2章の「f2-f4 突き」を参照)。

 黒の方は …e5-e4 と突いて対角斜筋を開けe5の地点を使えるようにする可能性から、中央でかなりの機動性が得られる。

 二番目の場合黒の …f5-f4 突きにより生じるキング翼のせき止めは、一般に白に注意をクイーン翼に向けさせる。白はクイーン翼に自分のキングがいるにもかかわらず列を素通しにしようとする。結果としてこのせき止め戦略の実行はc列の開放とはほとんど組み合わされないことになる。なぜなら白が素通し列と、黒のaポーンおよびbポーン突きの結果として生じる可能性のある他の弱点につけ込むことができるからである(図100)。

 図100 

 ここではキング翼のせき止めとc列の素通しの二つの戦略はうまくかみ合っていない。黒は第1章で検討した種類の状況にいる。しかしクイーン翼のポーンの形はいっそう弱く、キング翼では反撃の適当な接点がない。

(この章続く)

2011年05月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(71)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h5 突き

 時には、それも黒がc列を早く素通しにする時には特に、白はクイーン翼にキャッスリングする前に g2-g4 と突くことによりすぐに攻撃を続けるかもしれない。この場合h4-e1の斜筋の弱点のために黒は強く …h7-h5 と突いてgポーンを脅かすことができる(図101)。

 図101 

 この手は白のキング翼ナイトがg3に来ないうちに指さなければならないが、(前記の …f7-f5 突きの場合のように)二つの異なる構想、即ちせき止めと交換がある。

 …h7-h5 突きのあと白は守り方を決めなければならない。基本的に三通りの応手が可能である。(1)gポーンを h2-h3 突きで守る。(2)g4-g5 と突く。(3)Bg5 で Nf6 を釘付けにすることにより間接的にgポーンを守る。

 最初の場合はせき止めに発展する。即ち h2-h3 突きのあと黒は …Nh7 と引き(すぐに …h4 と突くと Bg5 と釘付けにされる)、…h5-h4 と突いてから …Bg7-f6-g5 によって不良ビショップの交換を狙う(図102)

 図102 

 このせき止めの捌きは h2-h3 突きのあとh4-e1の斜筋がさらに弱まって白が gxh5 によってg列を素通しにできないことが基礎になっている。なぜなら …Qh4+ に対してナイトがg3に行けず、さらに Bf2 Qxh5 となれば黒が自分に有利なように白の作戦を邪魔したことになるからである。これによりなぜ白がクイーン翼にキャッスリングする前に g2-g4 と突いた時だけ …h7-h5 突きの戦略が効果があるのかということと、なぜ白が g2-g4 と突く前にキャッスリングした時に黒が …f7-f5 突きで応じるのが普通なのかということとがはっきりと示される。要は黒クイーンがh4に出た時にチェックにならなければならないということである。

 二番目の場合白が g4-g5 と突くと Nf6 はh7に下がる(図103)。

 図103 

 ここで黒はキング翼でせき止めを果たしたことに満足して全精力をクイーン翼での反撃に傾けるかもしれないし、…f7-f6 突きによって、例えば h4 f6、gxf6 Rxf6 で、キング翼の全戦力を活性化しようとするかもしれない。

 最後に三番目の場合、Be3-g5 のあと(gxh5 によってg列を素通しにする狙いを持っている)黒は …h7-h5 突きの交換の着想を実現に移すかもしれない。そうなれば黒は白のeポーンとgポーンを弱めそれらを同時に攻撃できるようになる。…hxg4、fxg4 のあと(図104)

 図104 

黒は …Nc5 と指し、白はgポーンを犠牲にしなければならない。なぜなら h2-h3 と突いて守ると …Ncxe4!、Nxe4 Nxe4、Bxd8 Nxd2、Be7 Re8、Bxd6 Nc4 という単純化の手筋で黒が良くなるからである。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(72)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

キング翼ビショップをe2に置いてのキング翼攻撃の作戦

 白は図92での攻撃法を、Bc1-g5 で Nf6 を釘付けにし f2-f3 突きの代わりに Bf1-e2 でキング翼のポーン暴風を準備することにより、改良を追求した(図105)。

 図105 

 h4-h5 突きからh列が素通しになったあと白の攻撃がすぐに手がつけられなくなるなることは容易に分かる。さらに白駒の配置は主として …f7-f5 突きまたは …h7-h5 突きによるキング翼での黒の主眼の反撃を防ぐことに向けられている。従って黒はこれらの防御の可能性を早く再開させることによりこのような態勢を避けなければならないことは明らかである。本質的にこのためには二つのことを成し遂げることが必要である。それは釘付けをはずしてナイトが動けるようにし …f7-f5 と突けるようにすることと、白に f2-f3 と突かせてビショップの利きがh5の地点に及ばないようにすることである。黒が釘付けをはずすには二通りの手段がある。(1)クイーンをe8かa5に動かす(あとの手の場合常に役に立つ …c7-c6 突きを伴うことがある)。(2)白が Qd1-d2 と指す前に …h7-h6 と指す。後者の場合白がgポーンとhポーンを突いていく攻撃作戦を続けたいのならばビショップをe3に引かなければならない。ビショップをh4に引いてキング翼ナイトをf3に展開するのは前章で分析した中原の型に移行してしまう。

 f2-f3 と突かせるために黒は …Nb8-d7-c5 という捌きの手段を用いる。これは上記の釘付けはずしの方法とよく適合している。この捌きは白が f2-f3 突きを省いてキング翼を襲撃しようという戦法すべて(例えば白が h2-h3 と突いておいて g2-g4 と突こうとする時)においても役に立つ。

(この章続く)

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王印防御の完全理解(73)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…h7-h6 突きによる釘付けはずし

 黒が Qd1-d2 を予期して早く …h7-h6 と突いて釘付けから逃れ白がビショップをe3に引いた時は、黒は …Nb8-d7-c5 と捌いて白に f2-f3 と突かせようとするのが普通である(図106)。

 図106 

 その主要な目的はキング翼で白が単純明快なポーンの暴風の成果をすべて得るのを防ぐことである。例えばここでは g2-g4 突きから h2-h4 突きのあと g5 hxg5、hxg5 Nh7、Bg4 というようなことが起こり得る。

 eポーンを不自然な Be2-f3 で守ることは考えられないから、白は作戦を変更して別の作戦になる Qd1-c2 か f2-f3 と指すのが普通である。

 最初の場合d1-h5の斜筋が開いていることから白は h2-h4-h5 と銃剣攻撃を仕掛けて、通常の応手の …g6-g5 突きのあとキング翼でせき止めの態勢になる可能性を作り出す(図107)。

 図107 

 このような状況では黒がクイーン翼で反撃しようとするのが普通なのでc列が素通しになっているのが一般的であるが、白はキング翼のせき止めを(f2-f3 突きから g2-g4 突きによって)強固にし、キングを(キング翼にキャッスリングして)安全地帯に移し、自然なクイーン翼の広さの優位およびf5の地点と黒の不良キング翼ビショップの弱点とを利用しようとする。

 二番目の場合白は f2-f3 突きのあと Qd1-d2 と指すことを意図し、それで眼目の …h5 突きの応手を引き出す(図108)。

 図108 

 …h5 突きは当然の防御手段であるが、ここでの状況は白がhポーン突きにより圧力にさらされた既出の似たような局面(図101を参照)とはかなり異なっている。ここでの要点はg4で白ポーンが攻撃されていないということである。そのためまず h2-h4 突きで相手のhポーンを固定し、それから Ng1-h3-f2 と捌いて g2-g4 突きを準備する余裕があり、敵陣突破が図れる(図109)。

 図109 

 明らかに …h5 と突いた手はその防御の価値のほとんどを失っている。なぜなら g2-g4 突きから Be3-g5 のあと白に gxh5 で局面を開放する狙いがあるからである。クイーン翼でできるだけ速く反撃を図ることを別にしても、黒は好機の …f7-f5 突きで反撃することもできる。その意図は …f5-f4 突きで白の動きを封じ込めることか、キング翼で十分な広さを確保して(例えば gxf5 gxf5、exf5 Bxf5 の一連の交換のあと)直接の対決に耐えることである。

(この章続く)

2011年05月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(74)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

クイーンを釘付けからはずす

 黒がすぐに …h7-h6 と突いて釘付けをはずさない時、白は Qd1-d2 と指すことによりその手を防ぐことができる(図110)。

 図110 

 しかし …Nb8-d7-c5 の捌きによりeポーンが当たりになっているので普通は f2-f3 突きで守ることが必要である。そのあと黒は、単にクイーンを動かして釘付けをはずすまったく異なった作戦がとれるだけでなく、(戦術の狙い所に出てくるように …h7-h6 突きで釘付けをはずす戦術を用いることにより)前項で検討した局面に再び持ち込むこともできる。

(この章続く)

2011年05月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(75)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-e8 による釘付けはずし

 …Qd8-e8 による釘付けはずしでは黒は白が直接的なキング翼攻撃を続けた場合またしても …h7-h5 突きによる防御に頼るつもりである(図111)。

 図111 

 …h5 突きは白がまだキャッスリングしていないことに基づいた戦術の着想のおかげで Bxf6 から gxh5 を心配することなく指すことができる。即ち Bxf6 Bxf6、gxh5 Qe7! のあと黒はキング翼で一種の要塞を築くことができる。例えば hxg6 Bxh4+、Kd1 fxg6、Qh6 g5 という具合である。…h5 突きのあとの局面は図109に現れた局面と非常に似ているように思われる。しかしここでのhポーン突きは白のgポーンに当たっているのでより積極性がある。

(この章続く)

2011年05月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(76)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

…Qd8-a5 による釘付けはずし

 …Nb8-d7-c5 と指したあと黒はほとんど常に …a7-a5 突きでこのナイトの居場所を安全にしなければならない。このような状況で …Qd8-a5 でクイーンを釘付けからはずすには、クイーンを動かす前に …c7-c6 突きと …a5-a4 突きを指す必要があるのである程度の手数がかかる。この作戦の遂行で黒はキング翼での守りをどれも放棄することになり、従って白は最も基本的な態勢で攻撃を展開することができる(図112)。

 図112 

 ここで両者の主要な構想を概説すると次のようになるある。黒はc列を占拠しbポーンを突き進め、あるいはc3とd4の地点に対して …Nc5-a6-c7-b5 のような手の込んだ捌きまで行なうことにより、クイーン翼での反撃を強化しようとする。一方白は Nc3-d1 を指すことによりわずかに有利な収局(d6のポーンの弱点と黒の不良ビショップによる)に持ち込むか、攻撃を続行しその場合必要によっては Ke1-f1-g2 により自分のキングを安全な所に送るかを決めなければならない。

 黒が …Rf8-c8 でc列を占拠すれば、白は hxg6 fxg6、Bxf6 Bxf6、Qh6 によって一気に決めようとすることができる。しかし黒は冷静にhポーンを犠牲にすることができる。…Be8、Qxh7+ Kf8 のあと白は決め手がなく、激しい局面ですべてはこれからにかかっている。

(この章続く)

2011年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(77)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

黒のクイーン翼での反撃

 黒がクイーン翼での反撃を推し進める手段は様々で、それらは白の選ぶ攻撃システムやc列が素通しかどうかによって変わり、また黒のaポーンとbポーンの果たす攻撃の役割によっても変わってくる。

 ここからは最もありふれた反撃の方法を検討していくが、それらは既に検討してきた防御策とはほとんど切り離せないことを忘れてはいけない。

(この章続く)

2011年05月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(78)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c4の地点と Nc3 への脅かし

 c列が素通しのとき黒は一般に守りの Nc3 をbポーン突きでどかすことにより素通しc列の利用を図ろうとする。この作戦は往々にして …Nb8-d7-b6 の捌きと共に行なわれる。その意図は必要があればc4の地点の弱点につけ込もうということである(図113)。

 図113 

 黒が …b4 と突くと(だが …Nc4 はだめで、Bxc4 と取られて白がクイーン翼ビショップを保持しそのことによりキング翼攻撃の機会がすべて残される)相手は黒枡ビショップと黒のクイーン翼ナイトとの交換を避けることができない。Bxb6(Ne2 は …Nc4 と跳ねられるし Nb1 は白キングがc列で野ざらしになる)のあと黒は …bxc3、Qf2 cxb2+ と応じることもできるし、単に …Qxb6 と取り返しても白はクイーン翼をせき止めることができない(Na4 Qa5、b3 Bd7)。このような局面では白がc4の地点を b2-b3 突きで守るのは非常に危険である。その理由は …b5-b4 突きから …a6-a5-a4 突きのポーン暴風による敵陣突破があるからである。

 従ってこのような問題を避けるために白は適当な時にクイーン翼ナイトをd1の地点に引けるようにしなければならない。これは適当な時に Kc1-b1 および Rd1-c1 と指すことにより準備できることがある。これにより白キングが露出した状態から避難し白がc列を争うことができる。b2-b3 突きは実際問題としては白がまだクイーン翼にキャッスリングしていない時にだけ可能である。それはd1の地点がすぐに使え、キングがクイーン翼の弱体化によっても全然危険にさらされないからである。

(この章続く)

2011年05月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(79)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

bポーンの犠牲

 c列が素通しでないときは黒がもっと積極的にクイーン翼での反撃に努めなければならないことは明らかである。その中でも最も精力的なやり方はbポーンを犠牲にして列を素通しにすることである(図114)。

 図114 

 このよく見かけるポーン捨ては …b5、cxb5 a6、bxa6 Nxa6 でa列とb列を素通しにすることが目的である。もちろん …b7-b5 突きはその前に必要な支援(…a7-a6、…Qd8-e8)をして犠牲を避けることもできる。

(この章続く)

2011年05月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(80)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 黒がナイトをc5に置いてbポーンを突いていこうとする時には(図114の例を参照)白は b2-b4 と突く機会に恵まれる時がある。その意図は一般に一種のせき止めを構築することである(図115)。

 図115 

 ここの例では白が自分の戦力を結集して(Bf1-d3-c2、Ng1-e2-c1)、自分から b2-b4 と突くことにより相手の機先を制することができる。その結果として …Nb7、Bd3(…a5 突きを Nxb5 により防ぐ)から Nb3 または …Na4、Nxa4 bxa4、a3 でキングがa2に避難できるようにしたあと十分に堅固で満足できる態勢が得られる。

(この章続く)

2011年05月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(81)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

黒のaポーン突きによる銃剣攻撃

 従って上記のことを考慮すれば黒がナイトをc5の地点に据えたときその位置を …a7-a5 突きで安全にするのは理にかなっている。時にはこのポーン突きが銃剣攻撃になることがある(図116)。

 図116 

 黒の考えは明らかに敵キングの囲いをゆるめることである。…a3 突きのあと b3 と突くと …c6 から …Qa5 と …Rc8 とによりa5-e1の斜筋とc列につけ込まれ、b4 と突くと …Na4、Nxa4 Rxa4 と応じられ、キャッスリングした囲いが弱体化する。

(この章続く)

2011年05月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(82)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

単純化の …Nc5-a4

 黒は …Nc5-a4 によって Nc3 との交換を求めるときがある。それは単に局面を単純化するためのときもあれば色々な戦略の目的を追求するためのときもある(図117)。

 図117 

 この例では …Na4、Nxa4 Bxa4 のあと黒には単純な清算に加えて二つの戦略上のボーナスがある。即ちクイーン翼キャッスリングの防止と …f4 突きによるキング翼での封鎖の可能性である。すぐに …f4 と突くと Bxc5 dxc5、Ne4 となって白がe4の地点を支配するところだがここでの …f4 突きはその支配を許さない。

(この章続く)

2011年05月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(83)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリング時のクイーン翼での白の指し方

 黒が局面の早い段階でc列を素通しにすることにより反撃を始めるとき、白は既に見たように(図93を参照)作戦を根本的に変更してキング翼にキャッスリングし素通し列を利用してクイーン翼で侵入を図ることができる。クイーン翼での圧力を増すために白の用いる手法は、黒がaポーンとbポーンをどう扱うかと白キングが中央に居座る期間とにより変わってくる。

(この章続く)

2011年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(84)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

Nc5 の追放

 黒がナイトをc5に置き …a7-a5 突きで支援しているとき、白がクイーン翼で圧力を強める典型的な一つの方法は b2-b4 突きでこのナイトを追い立てることである(図118)。

 図118 

 このポーン突きはc列を空けるのに役立つだけでなく、a列の開通ももたらす。開通すれば白の小駒が黒のクイーン翼の弱点(例えばb6の地点)につけ込むのを助けることになる。

(この章続く)

2011年05月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(85)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b6の地点の占拠

 黒が既にc列を素通しにしていることを考慮すれば …a7-a6 と突いてくれるだけで白はaポーンをa5まで突き進めることにより(b2-b4 突きによって支援されることがよくある)弱くなったb6の地点を固定する立場になれる。ここを占拠する意図は Nc3-a4-b6 と捌くことである(図119)。

 図119 

 この捌きの目的は明らかにc8の地点を支配するためにb6の地点を占拠することで、それによって白に素通し列の鉄壁な支配が保証される。

(この章続く)

2011年05月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(86)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

b5ポーンに対する攻撃

 黒がポーンをa6とb5に進ませているとき白は a2-a4 突きでこのポーン構造に圧力をかけるのが有利となるのが普通である(図120)。

 図120 

 白は一般にこの攻撃の前に b2-b4 突きでb5のポーンを固定する。その目的は黒に …b5xa4 と取らせることで、Ra1xa4 のあと黒のaポーンは極度に弱くなる。

 aポーンを突く準備は b2-b3 突きでもかまわない。その場合の着想は …b5-b4 突きを誘うことで、白は Nc3-d1-b2-c4 の捌きで黒のクイーン翼に強力な圧力をかけることができるようになる。

(この章続く)

2011年05月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(87)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

同翼キャッスリング時のキング翼での黒の反撃

 両陣営がキング翼にキャッスリングした時は黒は白の自然なクイーン翼での主導権に対抗するためにキング翼で反撃を行なおうとするのが理にかなっている。普通は黒の反撃の核心は …f7-f5 突きである。このポーン突きは Nf6 をe8かh5に動かすことにより可能となる(図121)。

 図121 

 …f7-f5 突きのあと黒は …f5-f4 でキング翼でのポーン暴風を意図するか、必要ならばポーンを犠牲にしてもナイトでf4の地点を占拠する態勢になる。白はほとんど常に exf5 gxf5 で中央を開放することにより黒の側面での策動を無害にし、その結果次のようなポーン形が生まれる(図122)。

 図122 

 これで黒には動的な中原ポーン、片素通しのg列、それに白の弱体化したdポーンに圧力を加える可能性がある。代わりに白はもう …f5-f4 突きを恐れる必要がない。黒がそのようにポーンを突けば白はe4の要所を完全に支配することになる。そして戦略的にこう突けないことにより白はb1-h7の斜筋を占拠しナイトをg3に配置することによりキング翼の白枡(特にf5とh5)に圧力をかけることができる。また白は前章で検討したのと同様の構想(第2章の「f2-f4 突き」を参照)の f3-f4 突きを決行する時もある。

 黒がキング翼での反撃を行なう別の方法はhポーンを突いていくことである。この手段は白が早く Ng1-e2-g3 と指しているとき特に適している(図123)。

 図123 

 この図で示される作戦(図102で既に見たのと非常に似た捌きを用いる)は両キングが同翼にキャッスリングしたとき有効な攻撃になる。白が …h5 突き誘い(図108を参照)c列の開放のあとキング翼にキャッスリングしたとき、黒は Ng3 がいなくてもこの作戦を実行することができる。

(この章続く)

2011年05月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(88)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所

 この型の中原の試合の早い段階では戦術的に非常にもろいのは白陣の方である。戦術の主題は白が f2-f3 と突いたかどうかによって分類できる。

(この章続く)

2011年05月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(89)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の …Nxe4

 白が f2-f3 突きを省いている時、白が Nc5 を b2-b4 突きにより追い払おうとするときに生じる対角斜筋の弱点に基づいた戦術の主題(複数の戦法と複数の手法で)が現れることがある(図124)。

 図124 

 白が b4? と突くと …Ncxe4、Nxe4 Nxe4、Qxe4 Bf5、Qf3 e4(図125)

 図125 

となって、黒が利子付きで戦力を取り戻す。明らかにこの種の手筋が成立するためには、白駒がe2の地点にいて Qf3-d1 で駒を守りながら退却する手をなくしていなければならない。

(この章続く)

2011年05月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(90)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

黒の真のナイト捨て

 c列が素通しのとき、即ちdポーンがc4のポーンによって守られていないとき、目的は非常に異なるけれども前例と酷似した狙い筋が現れる。(図126)。

 図126 

 b4?! 突きに対して黒は …Ncxe4、Nxe4 Nxd5 というナイトの犠牲によって白の中原を破壊することができ、捨て駒の代わりに非常に有望な代償が得られる。

(この章続く)

2011年06月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(91)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

不良ビショップの交換

 前章でのようにこの型の中原でも不良ビショップは黒にとって陣形上の問題である。白が f2-f3 と突いているとき、不良ビショップを交換するか活動させる戦術上の機会が黒に訪れることがある(図127)。

 図127 

 ここでは …Bh6 と指すことができる。Bxh6 には …Qh4+ で駒を取り返すことができる。もちろん白はビショップをf2に引いて交換を拒否することができる。しかしこの場合黒が不良ビショップの活性化に成功していることは明らかである。

(この章続く)

2011年06月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(92)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

黒のキング翼ナイトの戦術による釘付けはずし

 黒はキング翼ナイトへの釘付けをはずすために前項と非常に似た着想を用いることができる(図128)。

 図128 

 黒は …h6 と突いて相手のビショップを下がらせることができる。白が Bxh6? と取るのは …Nxe4!、Nxe4 Qh4+ で黒の有利な単純化になる。

(この章続く)

2011年06月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(93)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

擬似捨て駒の Ng3xh5

 白の立場から見ると局面の早い段階では頻出する戦術の主題はほとんどない。しかしキング翼の典型的なせき止めの態勢で指摘するに値する着想が一つある(図129)。

 図129 

 黒が眼目の …f6? 突きを指すと白は擬似捨て駒の Nxh5! で局面を開放することができる。…gxh5 には g6 突きで戦力を回復し、白の優勢になる。

(この章続く)

2011年06月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(94)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例

第5局
スパスキー対A・ロドリゲス
トルカ、1982年
ゼーミッシュ戦法

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3

 ゼーミッシュ戦法の当初の構想はクイーン翼を迅速に展開すること(Bc1-e3、Qd1-d2、O-O-O)と、それと同時にキング翼でポーンの暴風を準備すること(g2-g4、h2-h4-h5)だった。同様の構想は 5.h3、5.Nge2 およびアベルバッハ戦法(この戦法については第6局を参照)の変化でも見られる。

 これらのどの変化でも白の主要な構想の一つは、相手の …e7-e5 突きに呼応して d4-d5 突きで中原を閉鎖したあとキング翼での攻撃の可能性を残すことである。例えば(1)5.h3 Nbd7 6.Be3 e5 7.d5 Nc5 8.Qc2 a5 9.Nge2 Bd7 10.O-O-O a4 11.g4(2)5.Nge2 O-O 6.Ng3 e5 7.d5 c6 8.Be2 Na6 9.h4 Nc5 10.h5 cxd5 11.cxd5 a5 12.Bg5 Bd7 13.Qd2

 白はクイーン翼にキャッスリングした時はキング翼攻撃の戦略にだけ専心している。そして特に黒がc列を素通しにしている時はしばしば自陣の融通性を利用してキング翼にキャッスリングする。

5…O-O

 黒は最初に例えば 5…c6 と突くかすぐに 5…e5 と突っ掛けることによりキャッスリングを遅らせることもできる。5…e5 は 6.dxe5 dxe5 7.Qxd8+ Kxd8 となっても白に何も有利さをもたらさないことを利用している。このように横道にそれても通常は主手順に戻るだけである。

6.Be3

 これが通常の手順である。白は 6.Nge2 や 6.Bg5 のように駒の配置だけでなく手順も少し変えることもできる。

6…e5

 これが主手順で歴史的にも最も重要である。もっとも今日では 6…Nc6 の方がよく指されるようになった(この手については第7章を参照)。

 本譜の手をさしおいて 6…Nbd7 と指すと白にやや変則的な 7.Nh3 を指される可能性がある。

7.d5

 白は 7.Nge2 でもっと融通のきく中原戦略を選ぶこともできる。もっともキング翼の展開が遅れるのでキャッスリングの柔軟性は犠牲になる。白は 7.Bd3 ですべての選択肢を明らかにしないでおくことはできない。なぜなら白が中原の形を決めない時には典型的な戦術の反撃の 7…Ng4! で非常に困った事態になるからである。

7…c6

 この手はc列の開通を予定している。それはクイーン翼での反撃を追い求める黒の最も直接的な方法であるが、白にキャッスリングの意図に関する融通性の維持を助長させることにもなる。だから本譜の手は、素早い …f7-f5 を目指すことによる黒の攻撃を待ち受ける意図でc列を閉鎖しておく白の戦略に直接的に対抗する黒の重要な戦略上の選択となる。黒の自由になる色々な可能性の中で …f7-f5 突きを準備する最も普通で直接的な方法は 7…Nh5 と指すことである。そして 8.Qd2 f5 のあと色々な指し方が可能である。(1)9.O-O-O f4 10.Bf2 Bf6 黒はキング翼でうまくせき止めることができたけれでも、白は戦略の重点をクイーン翼に移すことができ、黒の不良ビショップのせいで収局はいつも白の有利になる可能性がある。(2)9.O-O-O Nd7 10.Bd3 Ndf6 11.Nge2 fxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Bxe4 Bf5 14.Nc3 Nf6 15.Bg5 Bxe4 16.Bxf6 Bxf6 17.Nxe4 白はポーンでe4の地点を取り返させられる事態を避けた。(3)9.exf5 gxf5 10.O-O-O Nd7 11.Bd3 Nc5 12.Bc2 Bd7 13.Nge2 Qe8 14.h3 白は 14…f4 を少しも心配する必要がない。なぜなら 15.Bxc5 dxc5 16.Ne4 となって白の申し分のない局面になるからである。

8.Nge2(図130)

 図130 黒の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(95)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図130(再掲)黒の手番 

 白の指した手は二つの重要な戦略上の決断をしたことを示唆している。キング翼ビショップより先にキング翼ナイトを展開したことで白はキング翼でなくクイーン翼にキャッスリングする準備を明らかにした。もっともクイーンより先にキング翼ナイトを展開したことにより白はキャッスリングを急がず一時的に自分のキングを中央におきながら攻撃の用意をすることも示している。

 白は 8.Bd3 と指すことによりキング翼キャッスリングをすることもできた。その意図はc列を利用してクイーン翼で侵攻することである。例えば(1)8…cxd5 9.cxd5 Nh5 10.Nge2 f5 11.exf5 gxf5 12.O-O Nd7 13.Qd2 Nc5 14.Bc2 a5 15.a3 Bd7 16.b4 これは混戦である。(2)8…b5(9.cxb5 を誘って 9…cxd5 の応手を効果的にする。しかしこのギャンビットは 8.Nge2 や 8.Qd2 の時にはd5の地点にクイーンの利きがあるので成立しないことに注意が必要である)9.Nge2 bxc4 10.Bxc4 c5 このあと白の最も堅実な手は 11.O-O で、激戦が続く。

 最後に 8.Qd2 は g2-g4 突きの前にクイーン翼にキャッスリングすることを示唆しているが、キング翼キャッスリングの可能性もまだ残っている。次の例は白陣の融通性を強調してきた理由を明らかにしている。8.Qd2 cxd5 9.cxd5 Na6 ここから(1)10.O-O-O Bd7 11.Kb1 Nc5 12.g4 Qb8 13.Nge2 b5(2)10.Bb5 Nh5 11.Nge2 f5 12.exf5 gxf5 13.O-O

 当然のことながら上記のことがらはどれも白が 8.Bd3 または 8.Qd2 と指したときあれやこれやの公式に厳格に従うことを意味してはいない。そのような絶対的な原則は実戦には存在しない。我々の見るところそれらは論理的な基礎にはなっても広範な一般的原則にしかすぎない。

8…cxd5 9.cxd5 Nbd7

 もちろんここでは他にもいくつか代わりの手がある。その中のいくつかは(例えば 9…Ne8 や 9…Nh5)具体的に単刀直入の …f7-f5 突きを準備するもので、本局で見られる反撃とはまったく異なった反撃手段である。

10.Qd2

 ここで白が Ne2-c1 からキング翼ビショップを展開してキング翼へのキャッスリングを用意するのはまれではあるが不可能なことではない。

10…a6

 黒は …b7-b5 突きを予定することにより、白キングを中央にとどめながら白になんとかキング翼での活動をやらせようとしている。実際ここで白が 11.O-O-O?! とキャッスリングすると 11…b5 がやってきて …b5-b4 突きに対処する時間的余裕がない。例えば 12.Kb1(12.g4?! は 12…Nb6 13.Ng3 b4 で黒が優勢)12…Nb6 13.Nc1(13.Rc1 なら 13…Nc4)13…Bd7 14.Nb3 b4 15.Bxb6 Qxb6 16.Ne2 a5 で黒が優勢である。

11.g4 h5(図131)

 図131 白の手番 

(この章続く)

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王印防御の完全理解(96)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図131(再掲)白の手番 

 正確さを期すると実際の手順は 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.f3 e5 6.Nge2 c6 7.d5 O-O 8.Bg5 h6 9.Be3 cxd5 10.cxd5 a6 11.Qd2 Nbd7 12.g4 h5 だった。

 本譜の手は白がキングを中央に置いたままキング翼攻撃を始めた時に黒が通常行なう防御策である。

12.g5

 他の手は次のとおりである。(1)12.h3 Nh7 13.O-O-O(13.gxh5 なら 13…Qh4+ がある)13…h4 14.Kb1 Bf6 次に …Bg5 を意図している。(2)12.Bg5 hxg4 13.fxg4 Nc5 そして 14.h3 なら 14…Ncxe4! 15.Nxe4 Nxe4 16.Bxd8 Nxd2 17.Be7 Re8 18.Bxd6 Nc4 となる。

12…Nh7 13.h4 f6

 黒はキング翼の駒を迅速に再び働かせなければならない。というのは白に Ne2-g3 と指す余裕を与えると、擬似捨て駒の Ng3xh5 が生じるためにfポーンを突けなくなるからである。

14.gxf6 Rxf6 15.Bg2

 白はfポーンが弱いために駒の展開に問題が生じている。

15…b5 16.Nd1

 このナイトはf2の地点を目指している。そこからはキング翼にも(Nf2-h3-g5)クイーン翼にも(Nf2-d3-b4-c6)行ける。

16…Nc5 17.Nf2 Rf7!

 黒は直前の2手で白ナイトの捌きを封じ、…Bg7-f6 でhポーンを取ることを狙っている。

18.Nd3 Nxd3+ 19.Qxd3 Bf6 20.Bf2 Nf8

 fポーンとhポーンの弱さが白駒の活動性と効果を制限し、このことで黒がもう一つのナイトを戦闘に投入する余裕を得ている。

21.O-O-O Nd7 22.Kb1 Nc5 23.Qe3?

 この手は局面の微妙なバランスを崩した。白は 23.Qd2 と指して、…Bf6-g7 から …Qd8-f8 の捌きに Bf2-e3 と応じる可能性を保持しておくべきだった。

23…Bg7! 24.Ng1

 ここで 24.Qd2? は 24…Nxe4 と取られる。白は本譜の手で黒の予定の捌きに Ng1-h3-g5 と迎え撃つつもりである。

24…Qf8 25.Ka1

 白は予定の 25.Nh3? が 25…Nxe4! 26.fxe4 Bxh3 27.Rxh3 Rxf2 28.Bf3 Qc8! でポーンを損することに気づいた。

25…a5 26.Nh3 Bxh3!

 白の予定をつぶした。

27.Rxh3 Rc7 28.Rhh1 a4

 …Nb3+ を狙っている。

29.Kb1 Bh6

 黒は局面の締め付けを強めている。

30.Qe1 b4 31.Qxb4!

 非常に苦しい局面でこれが最もしのぎの可能性がある。

31…Rb8?!

 黒は 31…a3! 32.b3 Rac8 と指していれば …Nd3 の狙いで猛攻することができただろう。本譜の手は強手のように見えるが白にクイーンの犠牲で混戦に持ち込まれた。

32.Bxc5! Rxb4 33.Bxb4(図132)

 図132 黒の手番 

(この章続く)

2011年06月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(97)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図132(再掲)黒の手番 

 難解な局面ほどスパスキーが最大限の防御の可能性を引き出せる。

33…Kf7?!

 この手はキングをdポーンの守りに向かわせるためだが、先に …Qf6 として白がキング翼ビショップの位置を改善するのを妨げるべきだった。

34.Bf1! Ke7 35.Be2 Be3 36.a3 Qf4 37.Rd3 Bd4 38.Bd2 Qg3 39.Bg5+ Kf7 40.Rhd1 Qf2

 またもや白キングに対する締め付けがきつくなった。

41.R1d2 Rb7?

 勝つ可能性を残すためには黒は 41…Qe1+! 42.Bd1 Bf2 43.Re2 Qf1 として …Bg3 からhポーンをからめ取ることをまた考えるべきだった。

42.Rxd4!! exd4 43.Bd1 Qf1

 43…Qg1?! でdポーンを死守しようとするのは単に 44.Ka2 で Bxa4 から e5 突きを狙われてトラブルを招く。

44.Rxd4 Rc7 45.Ka2 Rc4 46.Rxc4 Qxc4+ 47.Kb1 Qf1 ½-½

 引き分けに終わった。黒に勝つ手段はない。例えば 48.Kc2 Qe1 49.Kc1 Ke8 50.Kc2 Kd7 51.Kc1 Kc7 52.Kc2 Kb6 53.Bd8+ Kb5 54.Be7 Kc4 55.Bg5 Qf2+ 56.Kb1! Kd3 57.Bxa4 Qxf3 58.Bb3 Kxe4 59.Ka2 となれば白キングは難攻不落の要塞に納まって安泰である。

(この章続く)

2011年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(98)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

第6局
アグザモフ対クプレイチク
全ソ連選手権戦、1981年
アベルバッハ戦法

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Be2

 この融通性のある手はfポーンとキング翼ナイトの将来の役割を決めないでおく。単に他の主手順に移行するかもしれないけれども、ゼーミッシュ戦法に構想的によく似た別個の戦法に至ることもあり得る。

5…O-O 6.Bg5

 Nf6 を前もって釘付けにしておくこの手は最もよく指される手で、アベルバッハ戦法を特色づけている。白駒の配置は明らかにゼーミッシュ戦法での配置とはかなり異なっているけれども、それでも両戦法の根本的な近似性は 6.Be3 e5 7.d5 Nbd7 8.g4 Nc5 9.f3 h5 のような戦法では明らかである。

 本譜の手は両戦法の違いの一つを例示している。即ちここでは 6…e5? は 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8 Rxd8 9.Bxf6 Bxf6 10.Nd5 で成立しない。

6…Nbd7

 一般に黒がこの手を指して …e7-e5 と突く時はクイーンを動かして釘付けをはずすつもりである。代わりにすぐにビショップに進退を聞いて 6…h6 7.Be3 e5 8.d5 と指すことができる。そのあと白の攻撃はeポーンを Qd1-c2 と f2-f3 突きのどちらで守るかによって、黒の標準的な …Nb8-d7-c5 の捌きのあと二通りに分かれる。例えば(1)8…Nbd7 9.h4 Nc5 10.Qc2 c6 11.h5 cxd5 12.cxd5 g5 13.f3(13.b4?! は 13…Ncxe4 14.Nxe4 Nxd5 15.Qd2 Be6 16.g4 a5! で黒が機動力に優って優勢)13…a5 14.g4 Bd7 黒が守勢に立たされ、白がキングをキング翼の安全な所に退避させ、黒のf5の地点の弱点と不良ビショップ、それにクイーン翼における自陣の広さの優位を生かすことになる。(2)8…Nbd7 9.Qd2 Nc5 10.f3 a5 11.h4(11.Bxh6? は 11…Nfxe4! 12.fxe4 Qh4+ で黒が優勢)11…h5 白は Ng1-h3-f2、g2-g4、Be3-g5、g4xh5 の手段で局面を開放しに行けるので典型的なゼーミッシュ型局面の有望版になっている。だから黒が 8…Nbd7 9.Qd2 h5 10.f3 Nh7 のような変化で …f7-f5 突きで白の作戦を邪魔することを期待し、キング翼ナイトが釘付けにされていないことの有利さを探し求めてきたのは驚くに当たらない。

 もちろん黒は 6…c5 突きでアベルバッハ戦法を迎え撃つこともできる。これは自然な 7.d5 突きのあと次の章で取り上げる中原の型になる。

7.Qd2

 この手は …h7-h6 突きを防ぎクイーン翼キャッスリングを準備している。

7…e5 8.d5

 これでアベルバッハ戦法の基本的な構想が明らかになった。白は g2-g4 突きから h2-h4-h5 突きでポーンの暴風を計画し、黒はg5のビショップのせいでゼーミッシュ中原に典型的なキング翼の防御手段を何も実行できない。黒がこの状況を変えるには白に f2-f3 と突かせ(h5の地点の支配を取り戻すため)、キング翼ナイトに対する釘付けをはずさせることが必須である。

8…Nc5

 これは f2-f3 突きを誘う眼目の手である。

9.f3

 形の悪い受けの 9.Bf3 はg4の地点を支配し続けられない。例えば 9…a5 10.O-O-O Bd7 11.h4 h5 がそうだし、9.b4 Ncxe4 10.Nxe4 Nxe4 11.Bxd8 Nxd2 12.Bxc7 Ne4 13.f3 Nf6 14.Bxd6 という乱戦の変化はまだ実戦に現われたことがない。

9…Bd7

 この手は b2-b4 突きの狙いを防いでいる。その意味ではもっと直接的な 9…a5 突きも同じである。

 黒はまだ 9…h6 突きによってキング翼ナイトの釘付けをはずすこともできた。なぜなら 10.Bxh6? Nfxe4! 11.fxe4 Qh4+ で駒を取り返すことができ優勢になるからである。

 白に f2-f3 と突かせることに成功したあと黒の最も緊急の課題はキング翼ナイトに対する釘付けをはずすことである。通常はクイーンをe8(本局で見られる)かa5に動かしてはずす。例えば 9…a5 なら 10.h4 c6 11.g4 a4 12.h5 Qa5 13.Nh3 cxd5 14.cxd5 Bd7 15.Nf2 でねじり合いの局面になる。しかしアベルバッハ戦法では白がキングを中央に置いたまま、相手がキング翼で防御のための反撃を実行するのを防ぐ小さな成功を積み重ねてきた。

10.h4

 10.b4 Na4 11.Nxa4 Bxa4 はナイト同士の交換と白のクイーン翼へのキャッスリングの阻止が黒のはっきりした利益となる。12.b5?! でビショップを捕獲しようとしても 12…a6! と応じられる。

10…Qe8

 これは主眼の釘付けはずしだが、b5の地点の支配と白がクイーン翼にキャッスリングすることにした場合のクイーン翼での反撃にも役立つ。

11.g4

 hポーンを犠牲にするのは成立しない。例えば 11.h5? Nxh5 12.g4 Ng3 13.Rh3 Nxe2 14.Ngxe2 f5 となれは黒がはっきり優勢である。

11…h5(図133)

 図133 白の手番 

(この章続く)

2011年06月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(99)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図133(再掲)白の手番 

 この手が成立する一番の理由は白がまだキャッスリングしていないことによる。白が 12.Bxf6 Bxf6 13.gxh5 で局面を開放しようとしても 13…Qe7! という応手があって頓挫する。この手はh4-e1の斜筋の弱さにつけ込んだもので、黒は 14.hxg6 Bxh4+ 15.Kd1 fxg6 16.Qh6 g5 17.Nh3 Qg7 でキング翼で一種のせき止めを構築することができる。

 必要に迫られた 11…h5 という防御の手は積極的な面も持っていることを強調しておく。というのはgポーンに当たりになっていて、白が Ng1-h3-f2 によってgポーンを守るのは間に合わないからである(前に出てきた黒の6手目の解説にある2番目の手順では白が間に合う)。

12.O-O-O

 これは必要な手だが、黒にクイーン翼での明確な反撃の目標を与えることにもなる。

12…hxg4 13.Bxf6

 こう指さないとポーン損になるので取るより仕方がない。

13…Bxf6 14.fxg4 Qd8

 黒は白に g4-g5 と突かせようとしている。そうなれば白のクイーンがh6に来れなくなる。

15.Qe1?

 白は 15.g5 から Ng1-f3 または h4-h5 と指した方が良かった。

15…Bg7 16.Nh3 f5

 黒はキング翼で守ることができるようにするために陣形をくつろげるこの手が必要である。

17.exf5 gxf5 18.g5

 18.gxf5 は 18…Bxf5 で黒の受けが楽になる。

18…b5!(図134)

 図134 白の手番 

(この章続く)

2011年06月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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王印防御の完全理解(100)

第3章 ゼーミッシュ中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図134(再掲)白の手番 

 黒の眠ったような反撃はここに来て蛇に噛まれて飛び起きたかのように元気づいた。自分が攻撃者だと思っていた白は突然無視することのできない大きな防御の問題に直面した。例えば 19.h5 なら 19…b4 20.Nb1 e4 21.h6 Be5 22.g6 Qf6 23.Rd2 e3! 24.Rc2 b3 である。

19.cxb5 a6 20.b4

 白はこの手で黒の18手目に事実上含まれていた捨て駒を受諾する用意があることを明らかにした。いずれにしても 20.b6 には 20…Rb8! があるのでクイーン翼の列を閉鎖状態にしておくことは不可能である。同様に 20.bxa6 Nxa6 も黒の素通しのa列とb列が白の危険なgポーンとhポーンに拮抗する。

20…axb5! 21.bxc5 b4 22.Nb1 Rxa2(図135)

 図135 白の手番 

(この章続く)

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