世界のチェス雑誌から2の記事一覧

世界のチェス雑誌から(101)

「Chess」2010年10月号(1/1)

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勝つ手を見つけろ

(16)中村尚広-G・レーン
2010年マレーシア・オープン
黒の手番 難易度 5段階中易しい方から2番目

解答 1…Rxg2! 2.bxc6 2.Kxg2 なら 2…Rg6+ 3.Kf1 Qxf3 4.Qc2 Rg3 で黒の勝ち 2…Qxf3 3.cxb7 3.Qe2 なら 3…Qxh3 で黒の勝ち 3…Rh2 0-1

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(この号終わり)

2010年12月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(102)

「Chess」2010年11月号(1/21)

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ハンティ・マンシースク

ウクライナがシベリアでのオリンピアードで優勝

マイケル・アダムズ、ルーク・マクシェーン、ガーウェインが解説


優勝したウクライナチーム (左から)ザハル・エフィメンコ、ワシリー・イワンチュク、アレクサンドル・モイセエンコ、ルスラン・ポノマリョフ、ウラジーミル・トゥクマコフ(監督)、パベル・エリャーノフ

 かつては時計をほとんど世界選手権戦の周期に合わせることができた。3年目ごとに何事があろうとも選手権者と挑戦者の番勝負があり、勝負がつき、チェス界は一人の真のチェス王者を歓迎したものだった。

 1990年代に入って車はきしむようになり、つまづき、衝突し、車輪はそれぞれ勝手な方角にはずれていった。20年後の今日になってようやく当初の原動力が復活してきたようだ。しかしかつての揺るぎない信頼はまだ取り戻せていない。

 それ以来チェスオリンピアードはもっと信頼でき確かな乗り物として取って代わった。この周りでそれ以外のチェスが回転している。これも油の不足とちょっとした賢明な修繕のために時々少しきしむことがあるのは確かだが、奇跡的に車輪はしっかりはまっていて1950年から2年目ごとの開催が中断することなく31回続いてきた。

 しかしいつもオリンピアードの開催が近づくと気がかりなことが出てくる。会場はふさわしいものだろうか、それよりもそもそも存在するのだろうか。膨大な数の参加者のための宿泊施設と料理は大丈夫だろうか。現地に安全にきちんとたどり着けるのだろうか。このような疑問は今年はいつもにまして恐怖と震えで問いかけられた。なにしろオリンピアードが開かれるのは高い教育を受けた地理学者でもなかなか地図で見つけられない場所で、見つけてもたぶんつづることができない。ハンティマンシースクはシベリアにある。そこは西欧人にとって良くも悪くも雪、寒さ、それにスターリンの強制収容所と結びつけてしまう所である。何でも見え何でも知ることのできるグーグルの地図でもモスクワからの行き方をたずねられると諦めてできないと認めてしまう。

 だからそこへ旅するように選ばれた人々にとってはオリンピアードへの集結は不安の時間というべきものである。いろいろな困難に加えて、ビザ取得やヨーロッパの中から予想される雪原への直行チャーター便との接続をどうするかという兵站上の問題もある。しかしこれらは明るいニュースに変わった。オリンピアード人たちが目的地に着くやいなやフェースブック上に(他のソーシャルネットワーキングのウェブサイトも利用できた)、無事に着いた、宿泊所は大体快適で、雪どころか(めっそうもない)寒くないという幸せなメッセージが出始めた。メッセージが宛先に届いたということはインターネット接続が完全に機能しているあかしでもあった。

 嬉しいことに大会の運営面については何も言うべきことがなかった。一般的に言えば物事は順調でそれもかなり快調だった。10回も参加したある非常にオリンピアードの経験豊富なチームマネージャーは3本の指に入る立派なオリンピアードだと言った。もっとレジャーの楽しめるどこか大都市で開催されていたら紛れもなく1位だとも言った(シベリアにはない問題は観戦者で、ここにはほとんどいなかった)。このチームマネージャーは賞賛の大部分は誰に聞いてもとてももてなしがよくててきばきとした地元シベリアの主催者に帰すると感じていた。遠くから追っていた我々も初めの方の回戦のトラブルが解消された後は順調なサービスが受けられ、棋譜や結果がタイムリーに正確に届き始めた。ということでシベリアの主催者へのあいさつには「よくやった」と言おう。

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(この号続く)

2010年12月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(103)

「Chess」2010年11月号(2/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

優勝候補の国々

 ロシアはいつもどおり競技開始時点でレイティングの最も高いチームだった。しかしロシアはもちろん旧ソ連と同義語ではなく、チェス界はソ連帝国の旧構成国が元専制国から優勝杯をかっさらうようになった。ロシアが最後に優勝してから8年がたった(ブレッドでの時でカスパロフがチームにいた)。そしてウクライナが2004年に金メダルをとり、アルメニアが2006年、2008年と連覇した。ロシアは強力なチームを編成してきた。どういうわけか本命と目されるチームにモロゼビッチを欠いていたが、2004年にウクライナチームで金メダルを獲得したセルゲイ・カリャーキンが加わっていた。このチームはクラムニク、グリシュク、スビドレル、カリャーキン、それにマラホフから成っていた。

 ロシアは開催国としてもう一つのチームを出す権利があった。このチームは開始順位4位で、ネポムニアシチ、アレクセーエフ、ビチュゴフ、トマシェフスキー、それにティモフェーエフがメンバーだった。しかしロシアはこれに留まらず、オープン部門に全部で5チームを繰り出した。その中で地域を代表していると目されるチームも強くて、開始順位14位だった。残りの2チームは将来有望な選手たちが主だった。ロシア軍団の数の多さには眉をひそめる者もいたが、不当に全体の結果をゆがめなかったのは幸いだった。

 カリャーキンの「亡命」にもかかわらずウクライナはイワンチュク、ポノマリョフ、エリャーノフ、エフィメンコ、それにモイセエンコを擁し開始順位2位だった。イワンチュクは他の超一流選手たちよりもオリンピアードで傍若無人ぶりを発揮するようだし、ポノマリョフはFIDEの勝ち抜き方式世界選手権を獲得したときの調子に戻っているようだったので、期待は高かった。

 中国は第3本命で、ワン・ユエ、ワン・ハオ、プー・シャンチー、チョウ・チャンチャオ、それにリー・チャオから成り、団体チェスでは評価が高まっていた。ハンガリーは開始順位5位で、第3席にユディット・ポルガーを置く贅沢さだった(レコとアルマーシより下位席)。3連覇を狙うアルメニアは開始順位6位で、アロニアン、アコピアン、それにサルギシアンが先鋒だった。アゼルバイジャンは開始順位7位だったが、内輪もめでガシモフをチームに欠いていなければもっと上だったろう。開始順位8位はブルガリアで、世界選手権挑戦敗退のトパロフが主将だった。

イギリスの期待

 イングランドがオリンピアードでメダルを獲得(1990年)して以来長い年月が過ぎ、あの時以来国家的野心は少し減退しているようだ。それでも国の代表として最強と目される布陣-マイケル・アダムズ、ナイジェル・ショート、ルーク・マクシェーン、デイビド・ハウエル、それにガーウェイン・ジョーンズ-を編成するのは嬉しいものである。開始順位は12位につけていて、優勝候補と互角に渡り合いメダル争いにからむことができるのではないかという希望があった。スコットランドはジョナサン・ラウソンとポール・モトワーニを欠いていて開始順位62位、アイルランドは75位、ウェールズは91位だった。

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(この号続く)

2010年12月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(104)

「Chess」2010年11月号(3/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第1回戦 9月21日

 試合に入る。第1回戦は雑魚(ざこ)がサメと一緒に泳ぐ機会となっている。その楽しみはどの雑魚がサメの口から逃れることができるか、あるいは逆に噛み付くことができるかを見ることである。アイルランドはロシア1と対戦したが、結果表示板に0-4と張り出されずに済みほっとしたことだろう。サム・コリンズは最近GM基準を2度達成しているが、アレクサンドル・グリシュクを引き分けに抑えて零封を回避した。イングランドもマレーシアを全滅させることができなかった。ミッキー・アダムズは猛攻に対して「分別は勇気の大切な部分である」ことを決断した。

 ルーク・マクシェーンは初手にラルセンの専売特許の 1.b3 を指して故人に敬意を表した。31手目で f4 で投了させたが、この手も惜しまれる故人の象徴だった。ラルセンもチェスの殿堂で微笑んでいたことだろう。


「ルーク・マクシェーンは故ベント・ラルセンへの賛辞として 1.b3! を見舞った。」

解説 ルーク・マクシェーン

第1回戦 イングランド対マレーシア
L・マクシェーン - モク・ツェ・メン
ラルセン布局

1.b3 e5 2.Bb2 d6 3.e3 Nf6 4.g3 Be7 5.Bg2 O-O 6.c4 Nc6 7.Nc3

7…d5

 7…Be6 8.Nf3(8.e4!? Nd4 9.Nge2 Bg4 10.h3 もある)8…d5 9.cxd5 Nxd5 10.Nxd5 Bxd5 11.O-O は互角である。

8.Nxd5 Nxd5 9.cxd5 Nb4 10.Qb1 Nxd5

11.Nf3

 11.Bxe5 Nb4 という指し方もあるだろうが、安全で快適な 11.Nf3 という手に比べればあまりにも危なっかしい。そのあと 12.d4 は 12…f6 と応じられるが代わりに 12.Bc3! が良い手である。

11…f6 12.O-O c5 13.d4 exd4 14.exd4 Be6

15.Qe4

 15.dxc5!? Bxc5 16.Nd4 が客観的に見て最善かもしれないが、黒がナイトを取ってくれば白が勝つのは困難になるだろう。

15…Qb6

 15…Bf7 16.dxc5 Bxc5 17.Rad1 は白が少し良い。17.Ne5 fxe5 18.Qxe5 Qf6 19.Bxd5 Qxe5 20.Bxf7+ Rxf7 21.Bxe5 Re8 もそうである。

16.Rae1

 もう一つのルークがf2を守り …Rxe1 が決してチェックにならないのでこれが正しいルークの位置だと思った。

16…Bf7 17.Nh4 Rfe8 18.Nf5 Bf8 19.Qg4

19…g6

 19…Kh8 20.dxc5 Qxc5 21.Nh6

が私の読み筋だった。しかしコンピュータは次のような受けを見つけた。21…Bg6(21…gxh6?? は 22.Bxd5 Qxd5 23.Bxf6+ で白の勝ち)22.Rxe8(すぐに 22.Qd7 は 22…Nb6! 23.Nf7+ Kg8 で Qxe8 と指せないので白がうまくいかない)22…Rxe8 23.Qd7

23…Ne7!(23…Nb6 24.Nf7+ Bxf7 25.Qxf7 は白が良い。23…Re2 24.Nf7+ Bxf7 25.Qxf7 も白が少し良い)ここで 24.Qe6?(明らかに 24.Rc1!? の方が有望である)と指すつもりだった。これは黒がナイトを取れば非常に危険そうだが、24…Qh5! が気づきにくい手である(24…gxh6? 25.Qxf6+ Kg8 26.Rd1!? が対局中の読み筋の一つだった。対局後の簡単な検討では確かな結論は出なかった)。

20.dxc5 Qxc5

21.Rc1

 21.Qh4 が2、3手前からの当初の読み筋だったが 21…gxf5 22.Bxd5 Qxd5 23.Qxf6 Bg6 で白は千日手にするしかない。

21…Qa5?

 21…Qb6! ならf6を守り互角になるようである。不思議なことに対局中はこの手が可能だと思っていなかった。以下は 22.Rfd1 Rad8 でも 22.Bd4 Qa6 23.Ne3 Rad8 でも形勢互角である。

22.Qh4!

22…gxf5

 22…Re2 をきちんと読んでいなかったのはちょっと軽率だった。23.Bxd5 Qxd5 24.Qxf6 Rxb2 25.Ne3 Bg7 26.Nxd5 Bxf6 27.Nxf6+ Kg7 28.Ne4

となれば白はルークをc7に侵入させて優勢になる。

23.Bxd5

23…Bxd5

 23…Qxd5 は 24.Qxf6 Bg6 25.Rc7 で幕となる。これが 21.Rc1 の意味だった。

24.Qxf6

 彼は最初この局面は受かると思ったと言っていたようだった。しかし白の攻撃は厳しすぎた。

24…Re6

 24…Re7 もあったが白は基本的に実戦と同じようにやっていける。

25.Qh8+ Kf7

26.Qxh7+

 26.Rc7+ も魅力的だが次のように完全に明白というわけでもない。26…Ke8 27.Qxh7 Re7 28.Rxe7+ Bxe7 29.Qh8+

29…Bf8(29…Kf7 30.Qxa8 Qb4 このような着想があるのではないかと漠然と思っていたが実際に信じていたわけではない。しかし私は神経質になるほど愚かではない。なにしろ白が勝つには絶対手を見つけなければならない。それが次の非常に奇妙な手順である。31.Qc8!

31…Qe4 32.f3 Qe3+ 33.Rf2 Qe1+ 34.Kg2 Bxf3+ 35.Rxf3 Qe2+ 36.Rf2 Qe4+

37.Kf1 Qh1+ 38.Ke2 Qe4+ 39.Kd1 Qd3+ 40.Rd2 Qf3+ 41.Kc1 Qh1+ 42.Rd1 Bg5+

43.Kc2 Qe4+ 44.Rd3 Qe2+ 45.Kc3 Bf6+ 46.Kc4 b5+ 47.Kb4 Qxd3 48.Bxf6

これで白が勝つはずである。しかしそれほど簡単ではない)30.Qe5+ Kd7 31.Rd1 Kc6

ここまで読んで決め手が分からなかった。この変化には確信が持てなかった。本譜の Qxh7+ から Qxf5 で黒陣は相当ひどい。だからあとは相手に問題をまかせることにした。

26…Ke8

27.Qxf5

 これで十分だと思っていた。27.Qh5+ Ke7(27…Kd7 は 28.Rfd1 で白がd列にルークを重ねてビショップを取る)28.Qxf5 なら黒の連係が実戦(キングがe8にいる)より少し悪いので黒が破綻する。

27…Rd8 28.Qh5+

28…Ke7

 28…Kd7 29.Rfd1 Rd6 は考えるだけでも身の毛がよだつ。白がどうやっても勝つと思う。

29.Qh7+

 29.Rc7+ は 27…Kd6! でそれほどはっきりしない。

29…Kd6?

 次のように 29…Ke8! の方がはるかに頑強な受けだった(残り時間が約10分だったので 31.Be5 を指す前に手を繰り返すつもりだった)。30.Qh5+(30.Rc7 Rh6! 私には見えていたが彼はこの意表の受けを見落としていた。これで 31.Qc2 が余儀なく攻撃はそれほどはかどらない)30…Ke7 31.Be5!?

狙いは Bc7 で、Be5-f6+ があるので黒は Bd5 を動かせない(私のチェスエンジンは 31.Bc3 が好みである)。31…Rc6! この手が見えていたかは定かでない。白が勝勢だがまだすべて終わったわけではない。32.Bc3! この手は気づきにくい。32…Rxc3 33.Qe5+ Kf7 34.Rxc3 黒は …Kg6 で戦い続けられるが見通しは暗い。34…Kg6 35.h4

30.Ba3+ Ke5

 30…Qxa3 は 31.Qc7# で1手詰みである。

31.f4+ 1-0

 31…Kd4 は 32.Rfd1+ Ke3 33.Qd3# で詰む。31…Kf6 は 32.Bb2+ で白が勝つ。

 上位対局のほとんどは 4-0 か 3½-½ で終わった。だから優勝候補は勝ち点2を確実に得た。しかし1、2の弱小国はもう少しで番狂わせを起こすところだった。ジャマイカはノルウェー相手に 1½-2½ と健闘した。もっとも世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンは初戦で対局しなかった。

 ウェールズ対インド戦ではティム・ケットがはるかにレイティングが上のペンタラ・ハリクリシュナを一蹴したようになっていて外の世界で誤った興奮が起きていた。これは真実としては話がうますぎた。そして悲しいかなそのとおりだった。何時間か後に試合の放送システムに配線の誤りがあったことが判明した。手順が全然別物で、ウェールズが予期しないわけではない 0-4 の負けを喫していたことが分かった。世界チャンピオンのビシー・アーナンドは自国のチームに加わっていなかった。ヨロ・ジョーンズは12年間の中断の後ウェールズのために15回目のオリンピアードに復帰した。しかし彼の伝説的な受けの根性をもってしても半点をもぎ取ることはできなかった。スコットランドはブルンジとの試合では巨人みたいなもので、おなじ成績で勝った。

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(この号続く)

2010年12月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(105)

「Chess」2010年11月号(4/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第2回戦 9月22日

 スコットランドは第1回戦でアフリカのそこそこの国を相手に気晴らしを楽しんだあと第1卓で強力なウクライナと対戦した。結果はかなり納得の0-4による完敗だった。コリン・マクナブはまともな局面になったがその後すぐ駄目にしてしまった。

第2回戦 ウクライナ対スコットランド
V・イワンチュク - C・マクナブ
キング翼インディアン防御

1.d4 d6 2.Nf3 g6 3.c4 Bg7 4.Nc3 Nd7 5.e4 e5 6.Be2 Ngf6 7.Be3 O-O 8.O-O b6

9.Re1

 別の指し方は 9.Qc2 exd4 10.Nxd4 Bb7 11.Rad1 Re8 12.f3 c6 13.Bg5 Qe7 14.Kh1 Nc5

で、2007年クールスドンでのラドバノビッチ対マクナブ戦ではここで白(結局負けた)はたぶん本局の似たような局面でイワンチュクが指したように 15.b4 と指すべきだった。

9…exd4 10.Nxd4 Bb7 11.f3 Re8 12.Qd2 c6

 白枡ビショップを封じ込めd6のポーンを弱めるのは少し奇妙な感じがする。しかし黒の指し方を批判するのは早すぎる。

13.Rad1 Qc7 14.b4 Rad8 15.Bf1 Ne5 16.Bg5 a6

 コリン・マクナブは頑強な受けに定評があり、その本領を発揮して白が何をぶつけてこようと持ちこたえる強力なポーンの壁をこしらえた。

17.b5

 他に考えられるポーン突きは 17.f4!? だが、黒は必ずしも当たりのナイトをどうにかする必要はない。例えば 17…b5!? と指すことができ、18.fxe5 と取られても 18…dxe5 で駒を取り返すことができる。

17…axb5 18.cxb5 c5 19.Nc2 c4!

 黒は広さをいくらか取り戻し …h6!? をちらつかせている。この手はポーンを犠牲にして黒枡ビショップを消去し、その後たぶん …d5 突きの反撃で主導権を握る。

20.Kh1

20…Nd3?

 あいにくこのちょっとした戦術には見落としがあった。代わりに 20…Rd7!? ならf6のナイトの釘付けをはずし一触即発を維持した。たとえば 21.Nb4 には 21…Qc5 と応じる。もっとも実際にはb4のナイトを取ることはない。白は 22.h4!? と指すことができ、22…Qxb4? と取ると 23.Bxf6 Bxf6? 24.Nd5! で黒が 24…Qxd2 と取ったあとf6で両取りがかかり黒が壊滅的な被害をこうむる。

21.Bxd3 cxd3

22.Nb4!

 22.Qxd3? は 22…Rc8 で、黒がc列を席巻する。

22…Qc5 23.Bxf6

23…Bxf6

 23…Qxb4 の方が少し優る。しかし 24.Bxg7 Kxg7 25.Qxd3 となって白がやはり完全なポーン得である。

24.Ncd5 Bg7 25.Qxd3 Rc8 26.a4 h5 27.Na6!

 一見二重ポーンができるのは望ましくないように思われるが、白ははっきり優勢になるために具体的な変化に沿って指している。

27…Bxa6 28.bxa6 Qa5 29.Qb5 Be5

30.f4

 白が単純に 30.Nxb6 Qxb5 31.axb5 Rb8 32.Nd5 と指してもどうしても止めることができず、パスポーンの勝ちになる。

30…Bc3 31.Re2 Kg7 32.g3 h4 33.gxh4 Rh8

34.Rc2 Be1 35.Qb2+ Kh6 36.Rxc8 Rxc8 37.Qg2 Bxh4 38.Qh3 1-0

 面白くないことにイングランドは足をすくわれた。すべての席でレイティングが上回っていたにもかかわらずボスニアに負けを喫した。マイケル・アダムズはイワン・ソコロフを相手にニムゾでポーンの相応な代償を得ているようだったが、相手は戦力得を守りきり最後には勝ちを収めた。チームの残りは堅実なボスニア選手に対してつけ入ることができず、勝ち点2を献上した。スイス式大会では早い段階での番狂わせは最終順位の観点からはあまり損害にはならないが(最後の追い込みの方がはるかに重要である)、上位争いの相手とぶつかる可能性を奪われることがある。


スコットランド対優勝したウクライナ戦で対局中のジョン・ショー(左)とケテバン・アラハミア=グラント。試合は0-4で負けた。ジョン・ショーはエフィメンコと、ケテバンはエリャーノフとそれぞれ対戦した。スコットランドは83位に終わった。

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(この号続く)

2010年12月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(106)

「Chess」2010年11月号(5/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第3回戦 9月23日

 バルカン諸国との対戦で苦戦したのはイングランドだけではなかった。ウクライナは第3回戦で開始順位28位のクロアチアに勝ち点を半分もぎ取られた。主将のイワンチュクは抜け番だったが、ポノマリョフとエリャーノフはレイティング2600台を相手に覇気のない引き分けにしかできなかった。そしてアレクサンドル・モイセエンコは39歳のムラーデン・パラツにへまで負けた。残されたエフィメンコは勝ち点を分けるために黒で勝たなければならなかった。それでもかなりの苦労の末になんとか勝った。これで第3回戦が終わったところでロシア1がウクライナに1点差をつけることができた。もっともそのロシア1もこの時点ではロシア2に頭はねされていた。イタリアは手ひどくあしらわれた。カリャーキンは自分とずっと先を行くノルウェーの同期とのレイティング差を詰めるのに役立つような格調高い指し回しを見せた。

第3回戦 ロシア1対イタリア
S・カリャーキン - D・ロンバルドーニ
シチリア防御リヒター攻撃

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 e6 7.Qd2 a6 8.O-O-O Nxd4 9.Qxd4 Be7 10.f4 b5 11.Bxf6 gxf6

12.f5

 カスパロフは1996年エレバン・オリンピアードのフラーチェク戦で 12.e5!? と突いていった。12…d5 13.Kb1 となった時フラーチェクは 13…b4 と指したが、後にイワンチュクは 13…Bb7 と改良を試みた。それに対してカスパロフは 14.f5!? と応じた。白はこれで高い勝率を誇ったが、黒はそれ以来 13…Rg8 と改良していくらか良い結果を得ている。

12…Bd7

 実戦では 12…Qc7 でも 12…Qa5 でも黒が好成績を収めている。

13.Kb1 Qc7

 このあとの2、3手の白駒の配置は非常に参考になる。

14.Qd2

 この手はc2を見張っているが、c1-h6の斜筋に沿った進出も暗示している。

14…Qc5 15.fxe6

 これは黒の二重ポーンを解消させるが、黒のキング翼の囲いを薄くしてもいる。

15…fxe6 16.Ne2!

 白はこの駒をf4に配置転換させる作戦である。そこからはh3-c8の斜筋上のビショップの助けと相まってe6のポーンに手をつけることができる。

16…Rc8 17.Nf4

17…O-O

 あとからあれこれ言うのはたやすいが、キング翼でキングの安全の幻想を追い求めようとするよりも、17…a5 でクイーン翼での逆襲を続ける方が賢明だったのかもしれない。例えば 18.Be2 b4 19.Bh5+ Kd8 となれば黒キングは中住まいで相応に安全である。

18.Be2 a5 19.Rhf1 b4 20.Bh5

20…Kh8

 黒は何か受けておかなければならない。20…a4? は 21.Rf3 で黒キングに向けられた駒の臨界質量で大変なことになる。代わりに 20…f5!? は 21.exf5 Rxf5 22.Bg4 Rf6 23.Rde1! で受け切ることはできそうにない。

21.Rf3

 白は次に 22.Ng6+! で相手をつぶすことを狙っている。だから黒はまた受けの手を指さなければならない。

21…Rg8

 21…Ba4 は単純に 22.Rc1 と応じられやはり本譜と同じ問題に対処しなければならない。

22.Bf7

 これでe6のポーンが落ちる。

22…Rg4 23.Bxe6 Rxf4 24.Bxd7 Rxf3 25.gxf3 Rg8 26.Bg4

26…Qg5?

 黒クイーンはg5で不遇をかこつことになる。黒は見込みはなくても 26…a4 と指しクイーン翼で活動する作戦を維持した方が良かった。

27.Qf2 h5

 ここは恥を忍んで前手の誤りを認め 27…Qc5 と指すのが最善の局面の一つである。

28.Rd5 Qf4 29.Rf5 1-0

 29…Qh6 30.Rxh5 でクイーンが取られる。

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(この号続く)

2011年01月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(107)

「Chess」2010年11月号(6/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第3回戦 9月23日(続き)

 イングランドはIM二人とFM一人を擁する南アフリカと組み合わされた。総合的な勝利は疑いなかったが、精彩を欠いたルーク・マクシェーンがレイティング2300台のFMヘンリー・スティールに屈した。ミッキー・アダムズはケニー・ソロモンを相手に横綱相撲を見せた。

第3回戦 イングランド対南アフリカ
M・アダムズ - K・ソロモン
シチリア防御モスクワ戦法

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 e6 4.O-O Nge7 5.c3 d5 6.exd5 Qxd5 7.Re1

7…a6

 1992年パリでのカスパロフ対クラムニクの快速戦では 7…g6 8.b4!? Bg7 9.Bb2 と進み、白がかなり早めに勝利を収めた。

8.Ba4 b5 9.Bc2 Bb7 10.a4

10…b4

 以前はここで 10…Ng6 が指されていた。これに対して白は 11.axb5 axb5 12.Rxa8+ Bxa8 13.Na3 で主導権を握る。実戦の手のあと白は積極的な指し回しで展開でかなり優位に立った。

11.d4 Rd8 12.c4!

12…Qh5

 12…Qxc4?? は 13.Bb3 でクイーン(または少なくとも多くの戦力)を失う。

13.d5 exd5

 黒はしょせんアダムズのポーン捨てを受け入れなければならない。そして素通しのe列が弱くなり、e7のナイトもf8のビショップもほとんど動ける見通しが立たなくなった。

14.Nbd2 dxc4

 フリッツは 14…f6!? を推奨するが、15.cxd5 Nd4 16.Nxd4 Qxd1 17.Bxd1 cxd4 18.d6 Rxd6 19.Nc4 Rd5 20.f4

となって形勢はまだ黒が難しそうである。それにe列の問題もまだ解決していない。

15.Qe2 Na5

16.Ne4!

 Nxc4 でも良さそうである。

16…Nb3

17.Bxb3

 すぐに 17.Bg5! と出るのも非常に強い手である。17…Nxa1 なら 18.Bxe7 Bxe7 19.Nf6+! で次の手で詰みになる。

17…cxb3 18.Bg5!

18…f6?

 黒は自刃した。18…Bxe4 19.Qxe4 Qg6 20.Qc4 の方が良い受けだったが、アダムズは2ポーン損の代わりに十分すぎる陣形上の代償を得ているのでほぼ彼の典型的な押しつぶしの展開になっていたことだろう。

19.Bxf6 Kf7 20.Ne5+ 1-0

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(108)

「Chess」2010年11月号(7/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第4回戦 9月24日

 ロシア2の若いピストルはインドを3-1で破って、順位判定でグルジアとベトナム(そして同じ最大勝ち点の他の4チームも)を抑えて首位を保った。一方ロシア1は同じ結果で米国を破って追撃の手を緩めなかった。ナカムラはキング翼インディアン防御でクラムニクの得意な戦型を相手に非凡な戦術で引き分けをもぎ取った。ロシア3はロシア成功物語のハットトリックを達成できず、現行のチャンピオンのアルメニアに惜敗した。ウクライナはスロベニアを2½-1½でかわした。いつも頼りになるイワンチュクはベリヤフスキーから決定的な勝ちを得た。

 イングランドはトルコに楽勝した。デイビド・ハウエルが早々と勝ったので、試合の早い段階で仲間からプレッシャーを解放した。さらにルーク・マクシェーンも勝って3-1という結果になった。この日の衝撃的な話題はマグヌス・カールセンがグルジアのバードゥル・ジョババに負けたことだった。


マグヌス・カールセンにとってはつらい公務の日で、グルジアのバードゥル・ジョババにもうすぐ負けるところである。これは1月以来重要な試合で初めての敗戦になった。

第4回戦 グルジア対ノルウェー
B・ジョババ - M・カールセン
ニムゾインディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.a3 Bxc3+ 5.bxc3 Nc6 6.e4!?

 超一流の試合では意表の新手である(一握りのアマチュア選手によってしか指されていなかった)。

6…Nxe4 7.Qg4

7…f5

 2000年のウクライナのジュニアの試合では 7…d5!? 8.Qxg7 Qf6 9.Qxf6 Nxf6 10.Bf4 と進んで白が勝った。7…Nf6 がフリッツの選択で、8.Qxg7 Rg8 9.Qh6 d6 10.Nf3 e5 となり、黒がわずかに良いと判断している。

8.Qxg7 Qf6 9.Qxf6 Nxf6 10.Nf3 b6 11.d5!?

 ジョババは断固としてカールセンに息をつかせない。

11…Na5

 11…exd5 12.cxd5 Nxd5 13.Bc4 はポーンを犠牲に双ビショップの活躍に期待する。

12.Nd4 Kf7 13.dxe6+ dxe6 14.Bf4 Ba6 15.Nf3 Ne4 16.Ne5+ Kf6 17.f3 Nd6 18.O-O-O

18…Rhd8?

 黒の苦戦はここから始まった。18…Naxc4 19.Bxc4 Nxc4 20.Rhe1 Nd6 21.Nc6 はポーンの犠牲の代わりに白が主導権を握る。しかし 18…Rhg8 なら黒が堅実そうである。

19.h4 Nf7 20.Nd7+

20…Kg7

 20…Ke7 は 21.Bg5+! Nxg5 22.hxg5 で黒が指しように困る。

21.Rh3!?

21…Kh8

 21…Bxc4 は次のように長い一本道の変化になる。22.Rg3+ Kh8 23.Ne5 Rxd1+ 24.Kxd1 Nd6 25.Bg5 Rf8 26.Nd7

ここで黒は次の手順を見つけなければならない。26…f4!? 27.Rg4 h5 28.Nxf8 hxg4 29.Bxc4 Naxc4 30.Nxe6

それでも最悪の事態になるかもしれない。

22.Bg5 Nxg5 23.hxg5 Kg7 24.Rh6 Bxc4 25.Bxc4 Nxc4 26.Rdh1 Rh8

27.f4?!

 単純に 27.Rxe6 と取る方が良かった。

27…c5?

 27…Rad8! 28.Nf6 c5 29.Rxh7+ Rxh7 30.Rxh7+ Kg6 なら黒がしのげそうである。

28.Rxe6 Rae8

 これでは白が戦術でポーン得することができる。そうは言っても黒はfポーンが守れないので他に良い手がない。

29.Rxh7+ Rxh7

 29…Kxh7 は 30.Nf6+! Kg7 31.Nxe8+ Kf7 32.Nc7 で実戦と似た進行になりやはり白が非常に良い。

30.Rxe8 Kf7 31.Ra8 Rh1+ 32.Kc2

32…a5

 32…Rg1 は次の手順で負ける。33.Rxa7 Ke6 34.Kd3 Nb2+ 35.Ke3 Rxg2 36.Nxb6 Rg3+ 37.Ke2 Rxc3 38.Re7+! Kxe7 39.Nd5+

このナイト収局は白が楽に勝てる。

33.Ra7 Nxa3+ 34.Kd2

34…Rh2

 34…Nb5!? は 35.Rb7 Nd6 36.Ne5+ Kf8 37.Rxb6 Ne4+ 38.Kd3

となって、たぶん白がまだ大いに優勢だろうがはっきりした勝ち手順を見つけるのはより難しくなっている。

35.Nxb6+ Kg6 36.Rxa5 Rxg2+ 37.Kd1 Nb1 38.Rxc5 Nd2 39.Nd5 Ne4 40.Rc6+ Kf7 41.Ne3 Rg3 42.Ke2

 実際のところこれ以上指す余地はない。しかしオリンピアードで採用されているせかせかした持ち時間のせいで、通常よりももう少し長く指すことにも一理ある。

42…Ke8 43.Re6+ Kf7 44.Re5 Nxc3+ 45.Kf2 Rh3 46.Rxf5+ Kg6 47.Rf6+ Kg7 48.Nf5+ Kg8 49.Kg2 Rd3 50.Rd6 Ne2!

 うまそうなはめ手だが大したことはない。

51.Rg6+

 もちろん 51.Rxd3? は 51…Nxf4+ 52.Kf3 Nxd3 で引き分けになる。

51…Kh8 52.Rh6+ Kg8 53.Ne7+ Kf7 54.Ng6 Kg7 55.Kf2

 「絶対手」の連続のあと駒の配置は少しぎこちないが白がまだ勝勢である。

55…Nc3 56.Ne7 Ne4+ 57.Ke2 Ra3 58.Nf5+ Kg8 59.Re6 Nc3+ 60.Kf3 Nd5+ 61.Kg4 Ra1 62.Re5 Rg1+ 63.Kf3 Rf1+ 64.Kg2 1-0

 64…Rd1 65.Rxd5! で一巻の終わりである。1月以来大きな長い(長引いた)試合でカールセンの初めての負けとなった。

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(109)

「Chess」2010年11月号(8/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第5回戦 9月25日

 首位のロシア2は現チャンピオンのアルメニアと対戦し、結果は後者が1勝をあげて勝った。パシキアンがティモフェーエフをベルリン防御の黒番で破った。開催国にとっては憂鬱な日で、ロシア1もハンガリーに負けた。第1席でレーコーがグリシュクに勝った(クラムニクは休み)。もっともロシア3はイスラエルに首尾よく勝った。ベトナムに3½-½で勝ったグルジアが新たに首位に立った。ウクライナは3-1でボスニアに勝った。イワンチュクがソコロフを屈辱的な目に会わせた。


左からアルメニアのグリゴリヤン、パシキアン、サルギシアン、アコピアン。2006年と2008年は金メダルだったが2010年は7位に終わった。写真にいないのは主将のレボン・アロニアンで、チームの中で最高成績だった。

第5回戦 ボスニア対ウクライナ
I・ソコロフ - V・イワンチュク
ベンコーギャンビット

1.d4 Nf6 2.c4 c5 3.d5 b5 4.Qc2

 マイルズ、そしてさらに最近はマメジャロフがこの手を得意にしていた。

4…bxc4 5.e4 d6 6.Bxc4 g6 7.b3?!

 ウクライナの若手のドロズドフスキーがこの手で仲間のGMに2局勝っている。しかし意表手としての賞味期限は切れているかもしれない・・・

7…Nxe4!

 この戦型でのこれまでの試合はすべてもっと控えめに 7…Bg7 8.Bb2 O-O と進み、今まで誰もどうして黒はeポーンを取るべきでないのかという疑問を発しなかった。しかしイワンチュクはそれほど簡単に引き下がらない。

8.Bb2

 8.Qxe4? は 8…Bg7 でa1のルークが落ちる。

8…Qa5+

 フリッツはチェックの代わりに 8…Nf6 と指す方を好んでいる。その方が本手のように思われる。

9.Kf1 Nf6

10.Nc3

 10.Bxf6 exf6 でe列を素通しにしてから 11.Nc3 と指すこともできる。

10…Bg7 11.Re1

11…Qd8

 黒は 11…O-O!? 12.Rxe7 Bf5 と指しても良さそうである。しかしイワンチュクは無敵の受けの技術に物を言わせてあからさまな実利主義に打って出た。

12.Qe2 Nbd7 13.h4 Ne5 14.Bb5+ Bd7

15.f4?

 白はキング翼の陣形に物騒な空所を作っても構わないと考えたに違いない。しかしそれは無理なことが後で判明し深手を負った。指すなら 15.Rh3 だが、15…Nh5 16.Bc1 O-O で黒がだいぶ良さそうである。

15…Nh5! 16.Bxd7+ Qxd7 17.Qe3 Qf5

 白はここらが投げ時だろう。しかしハンティ・マンシースクでは暇になってもそれほど魅力的な出かける場所がない。

18.Nh3 Qd3+ 19.Kg1 Qxe3+ 20.Rxe3 Ng4 21.Rf3 Bd4+ 22.Kf1 Ne3+ 23.Ke2 Nxg2 24.Ng5 h6 25.Nge4 Ngxf4+ 0-1

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(この号続く)

2011年01月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(110)

「Chess」2010年11月号(9/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第5回戦 9月25日(続き)

 イングランドはフランスと引き分けた。これは両チームにとって満足すべき結果である。デイビド・ハウエルは指し方がかなり消極的で、相手のきれいな手筋にしてやられた。しかしフレシネと対戦したナイジェル・ショートは絶好調だった。フレシネは 1.e4 に 1…e5 と応じたがたぶんこれが間違いの元で、19世紀のロマン主義への門戸を開いた。

第5回戦 イングランド対フランス
N・ショート - L・フレシネ
2ナイト防御マックス・ランゲ攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6

 これは元世界選手権挑戦者に好みの「ロマン主義」布局をやってこいという招待状である。ショートは舌なめずりして受けた。

3.Bc4 Bc5 4.O-O

 ショートは最強の相手にも 4.b4 と指すことを恐れたためしがなく、しばしば目を見張らせるような勝ちを収めてきた。しかし最後に指した2009年フィリッポフ戦では負けている。

4…Nf6 5.d4

5…exd4

 黒はマックス・ランゲ攻撃への移行の誘いを受け入れた。これは 3…Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Bc5 という手順から生じる方が普通である(扇動者の名字と名前が付けられているのも普通ではないかもしれない)。代わりに 5…Bxd4 6.Nxd4 Nxd4 という手順もあり、2009年コーラス大会でのモブセシアン対アダムズ戦ではここから 7.f4 d6 8.fxe5 dxe5 9.Bg5 Qe7 10.c3 Be6 11.Na3 と進み、結局白がこの意表の古風な布局に勝ちを収めた。

6.e5 d5 7.exf6 dxc4

8.fxg7

 ここでは 8.Re1+ の方がよく指されている。タルタコワは本譜の手を「時期尚早」として退けた。残念ながら彼の時代は布局データベースなどなかった。それによると本譜の手の方が 8.Re1+ よりもかなり良い成績を収めている。

8…Rg8 9.Bg5

 これは「新手」だが、本当に骨董的な他の手と比較しての話である。この手は96歳にしかすぎない。初めて用いたのは1914年にバーデンバーデンでタルタコワと対戦したファールニである。

9…f6

 1909年サンクトペテルブルクでのミーゼス対タイヒマン戦では 9…Be7 10.Re1 Be6 11.Bxe7 Kxe7(他の取り方なら白がd4のポーンを取れる)12.Nbd2 と進んだ。結果はミーゼスの負けだったが、この戦型の最近の結果は白が非常に良い。

10.Re1+ Kf7 11.Bh6

11…Kg6

 これまで三種類の手が指されてきたがどれもぱっとしない。11…Bf5 12.Nh4 Bg6 13.Qf3 は白が良さそうである。11…Ne7?! 12.Nh4 Ng6 13.Qh5 は白がもっと良い。11…Qd5 12.Nc3! Qf5 13.Ne4 Qh5 14.Qd2 は白がはっきり良い。フリッツの推す手は本譜の手と 11…Rxg7!? である。たぶん 11…Re8!? がもっともまともな手かもしれない。

12.Qc1 Qd5 13.Nh4+

13…Kf7

 13…Kh5 をあからさまに咎める手はない。しかし盤上にこんなに駒が残っているのにキングがのこのこ出てくるのは身の毛もよだつ。14.Qd2!? Kxh4 15.Nc3 Qd8 16.Qe2 となれば 16…Bg4 17.Qxc4 Kh5

と指すしかなく、ここから 18.Bd2 Kg6 19.Qxc5 dxc3 20.Bxc3 となって白に駒損の代償が豊富にある。

14.Nd2 Qh5 15.Ne4 Qxh4 16.Nxc5

16…Kg6

 16…Bf5 の方が良いかもしれない。

17.Bf4 Rxg7 18.c3 d3 19.b3

 フリッツはここで黒の手として 19…Na5 や 19…Qh5 を推している。しかし実のところ局面は黒にとって悲観的である。

19…b6?

 これはナイトの宿舎のc6を弱め、白が主導権を握った。

20.Ne6 Bxe6 21.Rxe6

21…Ne7?

 21…Nd8 は 22.Re8 で、白の攻勢に黒が受け一方になるが、実戦はもっと悪そうである。

22.Qe3 Re8

 22…Nf5 は 23.Qe4 で白クイーンが盤上を席巻する。

23.Qe4+ Kf7 24.g3 d2

25.Qxc4

 25.Bxd2? は 25…Qxe4 26.Rxe4 cxb3 27.axb3 となって白の優位はほんのわずかしかない。白はクイーンを残すことが勝利への手がかりである。

25…Kf8

 25…b5 で白クイーンをそらすのは 26.Rxf6+! Kxf6 27.Be5+! Kxe5 28.Qxh4 となって白の楽勝になる。

26.Rd1 b5 27.Qe4 Rd8

 黒はどうやっても負けなので破れかぶれでかなり見え見えのはったりをかけた。

28.Rxe7! Qh5

 28…Rxe7 29.Qxe7+ Kxe7 30.gxh4 は簡単に読めるが、実戦の手は正確な応手が必要である。しかしこれも見つけるのは難しくない。

29.Qe2 1-0

 29…Rxe7 30.Qxh5 Re1+ 31.Kg2 で何事も起こらない。

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(この号続く)

2011年02月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(111)

「Chess」2010年11月号(10/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日

 休日のあとの回戦は出来事が多かった。グルジアとアルメニアの首位決戦は2-2の引き分けだった。ガブリエル・サルギシアンがアルメニアの前回のオリンピアード優勝の立役者だったが、グルジアの24歳のGMレバン・パンツライアに小駒収局でいいところなく負かされた。これでこのアルメニア選手のオリンピアード28戦連続負けなし記録が途絶えた。前回負けたのは2004年カルビアでの早い回戦にさかのぼる。アルマン・パシキアンがガグナシビリに勝ってまたチームの危機を救った。この対戦の引き分けでウクライナが漁夫の利を得て首位を奪うことができ、ハンガリーの善戦も押しのけた。雑誌としてはハンティ・マンシースクでのイワンチュクのほぼ全局を掲載したいところである。しかし次の1局だけは絶対欠かせない。なにしろ盤の両翼で緩急自在に指し回して超一流の相手を負かしたのである。

第6回戦 ウクライナ対ハンガリー
V・イワンチュク - P・レーコー
準スラブ防御

1.Nf3 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 d5 4.d4 c6 5.e3 Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.Bd3 O-O 8.O-O dxc4 9.Bxc4 a6 10.Rd1 b5 11.Bd3

 この手は少し変わっている。このビショップは普通はe2に下がる。

11…Qc7 12.Bd2 c5 13.dxc5 Qxc5

14.a4

 2008年アムステルダムNHでのユスーポフ対ステルワヘン戦では 14.Ne4 Qxc2 15.Bxc2 と進んだところで引き分けが合意された。本局は未知の領域に入った。

14…bxa4

 代わりに 14…b4 15.Ne4 Qxc2 16.Bxc2 Be7 も理にかなった手だろう。

15.Rxa4 Bb7 16.Rc4!?

16…Qa7?!

 この手のあと白が優位に立った。フリッツの好みは 16…Bxf3!? 17.Rxc5(17.gxf3? Qh5 は白が非常にまずそうである)17…Bxd1 18.Nxd1 Nxc5 で、黒がクイーンの代わりに2ルークとしっかりした陣形を得ている。実戦はイワンチュクのはったりが通ったようである。

17.Ne4 Nxe4 18.Bxe4 Bxe4 19.Qxe4

19…Rac8

 この手は不正確かもしれない。代わりに 19…Rfc8 ならクイーンがa8のルークで守られているので黒は 20.Qd4 に 20…Rxc4 と応じることができる。

20.Qd4! Bc5

 20…Qxd4?? は 21.Rxd4 でd列の黒駒の一つが落ちるのでたちまち負けになる。

21.Qc3

21…Rcd8

 22.b4 の狙いを許すとすぐに試合が終わってしまうが、21…Rc7 の方が頑強な受けだったかもしれない。

22.Qc2!

 このクイーンの動きも絶妙である。キング翼で詰ますぞの Ng5 とd列を脅かす Ba5 の狙いがある。

22…Rfe8

 ナイトをg5に来させない 22…h6 が同じキング翼の弱体化でもまだましのようである。もっとも白にはまだ主導権がある。

23.Ng5

23…g6

 d7のナイトはc5のビショップを守っていなければならないので、キング翼の守りに駆けつけることはできない。他の手は 23…f5 しかないが、白は 24.Ba5 Bb6 25.Bxb6 Nxb6 26.Rc6 と指すことができ、e6のポーンが浮き草になる。

24.Ba5 Bb6

 ルークが逃げれば Rxd7 から Rxc5 で白が戦力得になるのでこう指す必要がある。しかしビショップがb6にいることによる障害はこれがもうキング翼の助けに行けないことである。

25.Bc3!

 黒のビショップがいないので白はキング翼の黒枡を支配することができる。

25…e5

 25…Bxe3 は期待薄だが(25.fxe3? Qxe3+ から 26…Qxg5 が望み)、白には仕返しのはるかに強力な妙技がある。26.Nxh7! で決まっている。黒は Rh4+ から Rh8# があるので取れないし、Rxd7 から Nf6+ の狙いにも対処のしようがない。

26.Ne4 Re6

 この手は 27.Rxd7+ から 28.Nf6+ の狙いに備えた。

27.Bb4 Kg7 28.Rc6 Nf6 29.Rxe6

29…fxe6

 29…Rxd1+? はよけいな手で、30.Qxd1 fxe6 31.Qd6 で白に狙いがありすぎる。

30.Nxf6 Kxf6

31.Ra1?!

 31.Rxd8 Bxd8 32.Qe4 の方が適切のようである。

31…Qb7

 31…Qd7 の方が積極的な指し方のようである。

32.Bc3 a5 33.Qa4

33…g5?

 これで白がキング翼を開放的にすることができる。コンピュータの絶妙な受けは 33…Qd5 34.Qf4+ Ke7 35.Qh4+ Kf8 36.Qf6+ Kg8 37.h4 Bc7 で、驚くほどつぶれにくい。

34.h4 h6 35.Qg4 Qh7 36.Qh5

36…Qg6

 これはポカだが、36…Rd7 37.Bxa5 Bxa5 38.Rxa5 Qb1+ 39.Kh2 Qg6 40.Qxg6+ Kxg6 41.hxg5 hxg5 42.Rxe5 Kf6 43.Rb5

で、しょせん終わりである。

37.Bxe5+ Kf7 38.Qf3+ Kg8 39.Qc6 1-0

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(この号続く)

2011年02月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(112)

「Chess」2010年11月号(11/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日(続き)

第6回戦 ウクライナ対ハンガリー
P・エリャーノフ - J・ポルガー

 ユディット・ポルガーはパーベル・エリャーノフ戦で長い戦いの末に不利なルーク+ポーンの収局を持ちこたえているように見える。

64…f6??

 64…Ke6 で黒がほとんど安全だろう。白キングは動くと黒ルークにチェックされるので進展が図れない。

65.Kc7 Rc2+ 66.Kb6

66…fxe5

 ポルガーはここらあたりで 66…Rb2+ 67.Kc6 Rc2+ 68.Kd5! Rb2 に 69.Rxh2!!

と応じられることに気づいて背筋が寒くなったのではないかと思う。…f7-f6 突きで7段目が素通しになっているので 69…Rxb7 に 70.Rh7+ でルークを取られてしまう。

67.Rb1

 67.b8=Q Rb2+ 68.Kc7 Rxb8 69.Kxb8 exf4 70.Rxh2

でも勝ちである。即ち 70…Ke6 に 71.Rh5! で黒キングを遮断し白キングがゆっくり回って黒ポーンを取ることができる。

67…h1=Q

 67…Rb2+ 68.Rxb2 h1=Q 69.b8=Q Qg1+ は非常に多くのチェックがかかるが永久チェックにはならない。

68.Rxh1 Rb2+ 69.Kc6 exf4 70.Rh8 Kf6 71.b8=Q Rxb8 72.Rxb8 Ke5

 すべてうまくいかず負けに直面している時は相手に「絶対手」のパズルを解かせるのが良い。ここでユディット・ポルガーは3手連続の問題をこしらえた。

73.Kc5!

 あまり強くない選手は 73.Re8+? にひかれて 73…Kd4! で引き分けにしてしまう。

73…Ke4 74.Kc4!

 この手が見つけられなかったら半点減点である。

74…Ke3 75.Re8+ Kd2

76.Rf8!

 疲れている時にはキングをd4に寄せて「敵キングを遮断」することを考えやすい。しかし 76.Kd4? f3 で引き分けになる。

76…Ke3 77.Kc3 1-0

 もう「絶対手」のまやかしは残っていないのであきらめる時である。正直なところレイティング2761の相手をはめるなどほとんどあり得ない話である。

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(113)

「Chess」2010年11月号(12/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第6回戦 9月27日(続き)

 首位争いについてはこのくらいにしておこう。英国の観点からはこの回戦の、実際には大会を通じての、最大の出来事は、ミッキー・アダムズが世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンを破ったことだった。この英国選手はこれまでに数多くの頂上付近の首を取ってきたが、血に飢えた若きバイキングには何度も苦杯を喫してきた。だからこれはちょうどよく士気を高める契機になった。

 試合の結果については実に皮肉だった。他の3人の英国選手は楽に相手のレイティングを上回っていた。しかし皆引き分けに終わり、二つの取れる勝ち点のうち2番目を確保するのは英国の「負け犬」主将に委ねられた。カールセンの布局(「北海防御」としても知られる)は明らかに異様で、元々はオランダ選手のへーラルト・ウェリングによって考案されトーニー・マイルズによって短い期間採用された。マルコム・ペインは「デイリー・テレグラフ」紙に次のように書いていた。「マイルズは主に相手を挑発するためにこれを指したと私に言っていた。カールセンの指し方は少し違っていたが、ミッキーをミッキーマウスのように少しからかおうとしているようだった。結局は若いノルウェー選手の方がからかわれることになった。12月の第2回ロンドン・チェスクラシックでの対決に向けミッキーに有利な材料になるだろう。」

 「北海防御」について - 2010年は英国の北海沿岸での追い詰められた防衛の70周年である。だからカールセンが眠れるライオンの尻尾をつまんで引っ張ったのはたぶん賢明でなかった。本当にこれは英国の最高の時間だった。失礼。夢中になってしまった。チェスに戻ろう。


ミッキー・アダムズが世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンに勝ったことは、ちょうど50年前のライプチヒ・オリンピアードでジョナサン・ペンローズが当時世界チャンピオンのミハイル・タリに勝ったことを思い起こさせる。

解説 ミッキー・アダムズ

第6回戦 イングランド対ノルウェー
M・アダムズ - M・カールセン
現代(北海)防御

 ノルウェーは最近英国チームの常連の対戦相手になっているようである。もっとも昨年のヨーロッパ・チーム戦ではマグヌスが不参加だったので私の相手はヨン=ルドビッヒ・ハマーだった。

1.e4 g6 2.d4 Nf6

 この手はまったく予想していなかった。

3.e5

 この局面は全然研究したことがなかったが、強豪選手の中には研究したことがある人がいるみたいである。3.Nc3 d6 のあと普通のピルツ防御になるので、何人もの人がマグヌスの手順は何のためか分からないと私に言った。リブカは 3.Nc3 には 3…d5 が最善手だと考えているようだが、私には意外である。

3…Nh5 4.Be2

4…d6

 モロゼビッチやマイルズたちはここで 4…Ng7 と指したが、中原に挑むほうが的を射ている。

5.Nf3

 重要な変化はもちろん 5.Bxh5 gxh5 6.Qxh5 dxe5 7.dxe5 Qd5 または 7…Rg8 だが、なんの研究もしていないのに相手の注文にはまる気がした。

5…Nc6

 変種のアリョーヒン防御になったがここで布局の優位があまり大きくないようだと気づいた。たぶんh5のナイトを取るつもりがないならば 4.Be2 があまりたいした手でなかったということなのだろう。

6.exd6

 黒のナイトめがけて 6.h3 と指すことも考えたが、ゆっくりしすぎていて黒は 6…dxe5 7.dxe5 Qxd1+ 8.Bxd1 Ng7 という具合にこのナイトを再生することができる。

6…exd6 7.d5

 局面が完全に互角になってしまう前に陣地を広げた。

7…Ne7 8.c4 Bg7 9.Nc3 O-O

10.O-O

 黒の次の手を防ぐために 10.h3 も考えられた。

10…Bg4

 両者とも展開を続けている。黒が白枡ビショップを交換するのは他の駒の活動の余地を作るためである。

11.Re1 Re8 12.h3 Bxf3 13.Bxf3 Nf6 14.Bf4 Nd7 15.Rc1 Ne5 16.b3

 この手は理にかなっている。黒のナイトが再編成で中央の拠点に進出してきたので、こちらは神経を使う黒枡の対角斜筋から駒を避難させて陣容を固めた。

16…a6

 16…Nxf3+ 17.Qxf3 Nf5 18.Ne4 は黒が少し不満かもしれない。

17.g3

 私のこの手と次の手はあまり正確でなかった。ここでまたは次の手で 17.Be4 と指して双ビショップを維持すべきだった。

17…Nf5 18.Bg2 g5

 これは良い決断だった。マグヌスは好機をとらえて私に黒枡ビショップを手放させた。19.Bd2 には 19…Nd3 がある。

19.Bxe5 Bxe5

 どういうわけか 19…Rxe5 はまともに考えなかったが賢明な選択肢だったかもしれない。

20.Ne4 Ng7

 ナイトを「フィアンケットする」とは奇妙な後退である。しかしg5のポーンが浮いているので黒駒の形を整えるのは簡単でない。

21.Qd2 h6 22.f4

 黒が陣容を立て直す前に局面の開放を図った。

22…gxf4 23.gxf4 Bf6 24.Kh2

24…Nh5?

 ここが勝負どころだった。このポカのあと黒は反撃の可能性のない惨めな防御に直面することになった。私の予想は 24…Bh4 25.Rg1 f5 でこの方が良い。この先は 26.Ng3 Bxg3+ 27.Kxg3 Nh5+ 28.Kh2 Qh4 29.Bf3+ Kh7 30.Bxh5 Qxh5 31.Rg2 Rg8 32.Rcg1

で引き分けになるようである。

25.Rg1!

 戦術の争いはこちらにとって有利なので大駒を戦闘地域に持っていった。

25…Kh7

 25…Nxf4 が彼の直前手の狙い筋だったが 26.Nxf6+ Qxf6 27.Rcf1 で簡単に咎めることができる。だがキングは 25…Kh8 と黒枡に行くものと考えていた。

26.Rcf1 Rg8 27.Qe2

 ナイトはもと来た所に追い返される。

27…Ng7

28.Qd3

 28.Nxf6+ Qxf6 29.Be4+ Kh8 30.Bb1 Qd4 31.Qg4 Qf6 32.Qf3

でクイーンとビショップのバッテリー作りを目指すのも良い手だった。

28…Kh8 29.Bf3 b5

 すぐに 29…Bh4 と来るものと予想していた。

30.Bd1

 ビショップを働かせればきしむキング翼のゆがみがひどくなる。

30…bxc4 31.bxc4 Bh4 32.Bc2 f5 33.Rg6 Kh7 34.Rfg1

 ルークが危険な地点に配備されたがすぐの狙いはない。

34…Qe7

35.Ng3?!

 強手を見逃した。主眼の 35.c5! で中央のポーン構造を崩すのが正着だった。ナイトは取られない。35…Qxe4 36.Qxe4 fxe4 37.Bxe4 で次の開きチェックがひどい。また 35…dxc5 36.d6 cxd6 37.Nxd6 Raf8 38.Qxa6 Rf6 39.Nxf5

は特にすごい。35…Rad8 と受けるのはもっともだが 36.cxd6 cxd6 37.Qe2 で何かがすぐに落ちる。

35…Bxg3+?

 この手が敗着になった。35…Raf8 36.Nxf5 Nxf5 37.Rxg8 Rxg8 38.Qxf5+ Kh8

なら異色ビショップなのでまだ希望が持てた。

36.Qxg3

36…Qf7

 もう逃れる術がない。36…Nh5 なら 37.Qf3 Rxg6 38.Bxf5 Nxf4 39.Qxf4 Rag8 40.Bd3

となって釘付けがはずせない。ここで 40…Qe5 なら単純に 41.Qxe5 dxe5 42.c5 で白が勝つ。

37.Bd1!

 決定打を見舞うためにビショップが元の位置に戻った。黒の戦力が守勢に位置しているため受けがない。

37…Rae8 38.Rxh6+ 1-0

 38…Kxh6 39.Qg5+ Kh7 40.Qh4+ Nh5 41.Bxh5 で致命的な開きチェックの態勢になるので黒は投了した。この時点で我々が楽に勝ち点をあげられそうだった。しかし結局他の試合は全部引き分けに終わったのでこの試合が決勝点になった。

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(この号続く)

2011年02月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(114)

「Chess」2010年11月号(13/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日

 「さて、これは終わりでもなければ終わりの始まりでさえもない。しかしおそらく始まりの終わりなのだろう」とはエル・アラメインの戦いに際してのチャーチルの言葉だが、同じことがスイス式大会についても言える。そこでは結果は出だしがどのようだったかよりも、どのように終わるかにはるかにかかっている。この回戦はいくつか激闘があり、政治的対決さえあった[訳注 イリュームジノフとカルポフのFIDE会長選]。しかしこの回戦が終了してもまだ4回戦が残っていて、首位争いはまだせっていた。

 しかしイングランドはノルウェーに勝って順位を上げたのに、ベラルーシに負けて急速に下げてしまった。ナイジェル・ショートの相手はビタリ・テテレフという無名の若いGMだったが、チームの勝ち点をすべてたたき出す意気込みのようだった。この27歳はこれまでチェスの棋歴にほとんど何も注目されるようなことがなかったが、ハンティ・マンシースクでは2853の実効レイティングを挙げ、エリャーノフ、ユディット・ポルガーらを軽く抑えて第3席の金メダルを獲得した。レイティング上位の選手にとってさえまったくもって迷惑な組み合わせだった。

第7回戦 イングランド対ベラルーシ
N・ショート - V・テテレフ
シチリア防御スヘーファニンゲン戦法

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 e6 4.d4 cxd4 5.Nxd4 Qc7 6.Be2 a6 7.O-O Nf6 8.Kh1 Be7 9.f4 d6 10.Nxc6 bxc6 11.Qd3 O-O

12.b3

 この局面ではほぼ誰でもこの手を指すが、不思議なことに故ベント・ラルセンは何年も前のケテバン・アラハミア=グラント戦で 12.Qg3 と指した(もっとも直後の手で b3 と突いた)。

12…a5 13.Qg3 d5 14.e5 Nd7 15.Bb2 Nc5

16.Rae1

 2002年欧州ジュニア選手権戦のヤクボウスキー対アロシゼ戦では 16.a4 Na6 17.Rae1 Nb4 と進行して白の勝ちに終わった。

16…a4

 黒は白が a2-a4 と突かなかったことにすぐにつけ込んできた。

17.Bg4

 フリッツは 17.b4 a3 18.Bc1 Na4 19.Nxa4 Rxa4 20.c3 という手順を示したが、たぶんそれでほぼ互角だろう。実戦の手は黒の白枡ビショップが好所に展開するのを助けた。

17…axb3 18.axb3 Ba6 19.Rf3 d4!

 黒の反撃で白は陣形と作戦を大きく乱されている。

20.Nd1

 20.Ne4 は 20…Nxe4 21.Rxe4 c5 となって、白駒が散乱しa8-h1の斜筋が危険にさらされる。

20…Qd8!

 狙いは 21…Bh4 と 21…d3 突きである。

21.Qf2 d3 22.Rh3 dxc2 23.Qxc2 Bd3

 白の計画にまた邪魔が入った。このビショップはうまくキングの守りに回れる。

24.Qc3 Bg6 25.Nf2 Rb8

26.Rd1

 26.Bd1 ならb3のポーンを守れるが、黒には意地の悪い 26…Na4! がある。27.bxa4? と取ると 27…Bb4 でe1のルークへの串刺しを食らう。

26…Qb6 27.Ba3 Nd3 28.Nxd3 Bxa3

29.Ra1

 白に問題が積み重なっていくので 29.b4!? Bxb4 30.Nxb4 Qxb4 31.Qxb4 Rxb4 32.Rc3 Be4 33.Bf3

を推奨したくなるところである。もっとも(ロシアだけでなく)ベラルーシの生徒なら皆この局面から勝てるだろう。

29…Be7 30.Nb2 Bb4 31.Qc1 Qd4 32.Nc4 Ra8

 この手はうまい圧迫である。白には選択肢が一つしかない。

33.Ra4 Rfb8

34.Qe3

 フリッツが推奨する最善手は 34.f5!? exf5 35.Be2 Rxa4 36.bxa4 Be7 37.Rd3

だが、それでも絶望的な形勢のようである。

34…c5 35.Be2 Bc3!

 黒はうまく白の最下段の弱みにつけ入っている。

36.Nb6

 ショートは黒自身の最下段の弱みを利用して機転を利かせてやり返した。代わりに 36.Qxc3 は 36…Rxa4 37.Qxd4 cxd4 38.bxa4 Rb1+ で詰みになる。

36…Rxa4 37.Nxa4 Rxb3! 38.Nxc3

 黒はきれいな決め手を見つけた。

38…Qxc3 39.Qg1

 もちろん 39.Qxc3 は 39…Rb1+ で頓死する。

39…Qxh3! 0-1

 40.gxh3 は 40…Be4+ で詰みになる。40.Qa1 でも 40…Be4 で黒が勝つ。

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(この号続く)

2011年03月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(115)

「Chess」2010年11月号(14/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日(続き)

 ウクライナはこの回グルジアに辛勝して勝ち点1の差で首位に立った。予測どおり勝ち点をもたらしたのはバードゥル・ジョババにファンタスティックな指し回しで勝ったワシリー・イワンチュクだった。この形容詞は意識的に選んだ。彼はグルジア選手のカロカン防御に対してファンタジー戦法を用い、その戦法名に見事にこたえた。

第7回戦 ウクライナ対グルジア
V・イワンチュク - B・ジョババ
カロカンア防御ファンタジー戦法

1.e4 c6 2.d4 d5 3.f3

 これがファンタジー戦法の印となる手である。この手が指されることは主手順よりはるかに少ないが実戦では非常に好成績で、用心深い典型的なカロカン選手を翻弄させることがよくある。

3…Qb6

 どういうわけかいく人かのグルジア選手に人気のある手である。

4.a3

 4手目で前例のない局面になった。白はこのあと 5.Nc3 から 6.Be3 と指すつもりで、その時 6…Qxb2?? と取ってくれば 7.Na4 でクイーンの逃げ場がない。

4…e5

 ジョババは明らかに研究をはずされ、最も精力的な手を見つけた。これはフリッツの推奨する手だが、もちろん必ずしも最善手とは限らない。

5.exd5 Nf6 6.dxe5 Bc5!?

 6…Nxd5 ならポーン損でも黒が指し易い。しかし黒はそれ以上を望むことにした。カールセン相手に殊勲の報酬をもたらした彼のやる気は賞賛しなければならないが、たぶんこれはやり過ぎだろう。

7.exf6 Bf2+ 8.Ke2

8…O-O

 8…Bxg1? は 9.Rxg1! Qxg1 10.fxg7 Rg8 11.Bh6 Qxh2 12.Qd2

で悪い。白には十分戦力の代償があり、二つの君主のうち黒キングの方が露出がひどい。

9.Qd2 Re8+

 ここでの 9…Bxg1!? ははるかにまともで、10.Kd1 Bd4 11.fxg7 Bxg7 12.Nc3 で形勢不明である。

10.Kd1 Re1+ 11.Qxe1 Bxe1 12.Kxe1

 白は失ったクイーンの代わりに多くの戦力を得ているが、中央のキングはまだ多くの苦難に耐えなければならない。他の多くのGMはこんな危なっかしい進路に怖じ気づくかもしれないが、イワンチュクはこの種のことにかけては並のGMでない。

12…Bf5 13.Be2 Nd7 14.dxc6 bxc6 15.Bd1!?

 白は陣形を整えられれば戦力得がものをいって勝勢になる。そしてイワンチュクはこれを独創的なやり方でやってのける。

15…Re8+ 16.Ne2 Nxf6 17.Nbc3 Bc8 18.a4! a5 19.Rf1! Ba6 20.Rf2 h5 21.Ra3!

 誰が指しているか知らずに少し前からの白の手を見た人は誰でも、二つのルークのぎこちない動きを見て初心者に近い者が指していると思うだろう。白はルークを自由に動かせるようにできれば勝勢になる。

21…h4 22.g3 h3 23.g4

23…Rd8

 黒は束縛をゆるめた。しかしここはじっと 23…Bc4 と指している方が良かった。もっとも白は 24.Ne4 Nxe4 25.fxe4 Bxe2 26.Kxe2 Qd4!? 27.Re3

と指すことができ、ほどなく拘束服から抜け出せそうである。

24.Nf4 Nd7 25.Rb3 Qd4 26.Nfe2 Re8 27.Ne4! Qxa4 28.Bd2

28…Qa1

 黒は自分から白のクモの巣におびき寄せられた。ここは 28…c5 の方が良かった。

29.Bc3!

29…Ne5

 これはポカだった。しかし 29…Qa2 30.Ra3 Qd5 31.Rxa5 でもしょせん見込みがなさそうである。

30.Ra3 Qb1 31.Nd2 Qc1

32.Rxa5

 32.Nxc1?? Nxf3# にはまるのはまったくの初心者だけである。

32…Ng6 33.Rxa6 Nf4 34.Ra8! 1-0

 相手がどんな手でも指すことができそれでも勝てるということを見せつける時が投げ時である。

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(この号続く)

2011年03月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(116)

「Chess」2010年11月号(15/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第7回戦 9月28日(続き)

 カールセンは今大会でひどい目にあっていたけれども、レイティング首位を争う主要な相手の一人が同様に不振だと考えることに少なくとも慰めを見い出すことができた。トパロフはハンティ・マンシースクでいつもの調子をはるかに下回っていて、マルク・ブルフシュテイン戦で彼らしくないとんでもない見損じをした。

第7回戦 カナダ対ブルガリア
M・ブルフシュテイン - V・トパロフ
キング翼インディアン防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.h3 Na6 7.Bg5 c6 8.Be2 e5 9.d5 h6 10.Be3

10…Nh5

 この手は少し変わっている。ほとんどの選手はこの手の前に 10…cxd5 と指す。

11.dxc6 bxc6 12.Qd2 Nf4

13.O-O

 13.Bxf4?! は 13…exf4 14.Qxf4 Rb8 で白のクイーン翼が攻撃に非常に弱くなる。

13…f5 14.Bxf4 exf4 15.exf5 Bxf5 16.Rad1 Rb8 17.Nd4 Bd7 18.Bf3 Qb6 19.Nb3 Be5 20.Ne4 Rbd8 21.Qe2 c5

 形を大きく乱される c4-c5 突きを狙われていた。

22.Rd2 Rfe8 23.Rfd1

 ここまですべて整然と進行して、どちらも優勢を主張することはできない。しかしここでトパロフは致命的な悪手を出した。

23…Bf5? 24.Nxd6!

 カナダの22歳のGM(ロシアで生まれ小学生までほとんどイスラエルで暮らした)は絶好の機会を逃がさなかった。

24…Bxd6 25.Rxd6

25…Rxe2

 25…Rxd6? は 26.Qxe8+ から 27.Qe7+ で浮いているルークを取られる。

26.Rxd8+ Kf7 27.Bxe2 Ke7

 クイーンの代わりに2ルークを取るべきか(またはその逆)決めるのは主観的な判断になりがちである。それは判断に関係する全ての駒の働きを考慮に入れなければならないからだが、ここでは2ルークが覇権を握っているのはかなり明らかである。

28.Bg4!? Bxg4 29.hxg4

29…Qxd8

 黒は実際のところクイーンを2ルークと交換するほか望みがない。それに白は例えば 29…Qe6 30.R1d7+ で強制的にそうすることができるだろう。

30.Rxd8 Kxd8 31.Kf1

31…Ke7

 黒はすぐにナイトを働かせることができない。例えば 31…Nb4? は 32.Nxc5 Nxa2 33.Ne6+ で2個目のポーンが落ちる。

32.Ke2 Kd6 33.a3 Nb8 34.Kf3

34…Ke5

 34…g5 は 35.Ke4 で白キングがf5からg6に侵入する。

35.Nxc5

35…g5

 35…Kd4 は 36.Ne6+ Kxc4 37.Kxf4 Kb3 38.g5! hxg5+ 39.Kxg5 Kxb2 40.Kxg6 Kxa3 41.g4 Kb4 42.g5 a5 43.Nd4!

で、白の明らかな勝ちである。もっとも時間切迫の時あるいはシリコンの助けがない時には読みきるのはそう簡単でない。

36.Nb3 Nd7 37.Ke2 Kd6 38.f3 Ne5 39.Na5 Kc5 40.b4+ Kd4 41.c5 Kd5 42.Kd2 1-0

 以下は 42…a6 43.a4 Ng6 44.Kd3 Nh4 45.Kc3 Nxg2 46.c6 Kd6 47.b5 axb5 48.axb5 Ne1 49.Nc4+ Kc7 50.Kd4 Nxf3+ 51.Kc5

で、2個のパスポーンですぐに勝ちが決まる。

 政治的に遺恨のあるアルメニアとアゼルバイジャンの対決は、アルマン・パシキアンのキングがガディル・グセイノフによって詰みの網に捕らえられてアゼルバイジャンが勝った。ロシア1は末席でカリャーキンがトマシェフスキーに勝って二軍チームを下した。第7回戦終了時の順位はウクライナが勝ち点13/14、ロシア1・ハンガリー・アゼルバイジャンが勝ち点12だった。イングランドとアイルランドは勝ち点9、スコットランドは勝ち点7、ウェールズは勝ち点6だった。

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(この号続く)

2011年04月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(117)

「Chess」2010年11月号(16/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第8回戦 9月29日

 最上位2シードの対決となったロシア1対ウクライナはこの回の重大な対戦だった。もっとも本誌の別のページで報じられているイリュームジノフ対カルポフのずっと重大な対決によっていくらか影が薄くなっていた。この対戦はセルゲイ・カリャーキンが元の母国を相手にするという辛辣な瞬間だった。試合はカリャーキンが難なく勝ったが、エフィメンコがマラーホフを下して勝ち点を分けた。

第8回戦 ロシア1対ウクライナ
S・カリャーキン - P・エリャーノフ
カロカン防御

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2 c5 6.Be3 Qb6 7.Nc3 Qxb2

 まるでカロカン防御がシチリア防御の派手な毒入りポーン戦法に嫉妬して同様の風変わりな独自の戦型をやりたがっているようである。しかしこれはナイドルフ戦法の生霊(いきりょう)よりもうさんくさい。もっともいく人かのGMがこれに息吹を吹き込もうとしてきた。

8.Qb1! Qxb1+

 たぶんこれが最善である。8…Qxc3+? は 9.Bd2 Qxc2 10.Qxb7 で黒が壊滅する。8…Qxc2? も 9.Qb5+! Nd7 10.Rc1 a6 11.Qxb7 Rb8 12.Qxa6 Qb2 13.Bb5 で黒が非常にまずそうである。2007年のヨーロッパチーム選手権戦のパラツ対バリェホ・ポンス戦では 8…Qb6!? 9.dxc5 Bxc5 で合意の引き分けになったが、このあと指し続ければ 10.Bb5+ Kd8 11.Na4 Qa5+ 12.Bd2 Qc7 13.Nxc5 Qxc5 14.O-O

となって白が布局から優勢になることができただろう。

9.Rxb1

9…c4

 9…b6 10.dxc5 bxc5 11.Rb7 は本譜と非常に似ていて、これまで2局指されどちらも白が勝っている。

10.Rxb7 Nc6 11.Nb5

11…Nd8

 11…Rb8 12.Rxb8+ Nxb8 13.Kd2 は2003年スカンデルボルクでのボローガン対パロ戦で、白が勝った。

12.Rc7

12…Rb8

 これは新手である。2008年ロシアでのラスティン対コロブコフ戦では 12…Bxc2 13.Nd6+ Bxd6 14.exd6 と進み白が短手数で勝った。

13.Nd6+ Bxd6 14.exd6 Rb1+ 15.Bd1 Bxc2 16.Kd2 Bxd1 17.Rxd1

17…Rb6

 17…Rb2+!? で白のaポーンを取る手もあるが 18.Kc3 Rxa2 19.Rb1 Ra6 20.Bf4 となって、駒が展開していない黒陣はまだかなり不安を抱えていて白の2ルークが威力を発揮する危険性もある。

18.Bf4 Nf6

 18…a6 19.Kc2 はつらすぎて考えられない。

19.Re7+

 これは黒をキャッスリングできなくしh8のルークを出させなくするだけの手である。

19…Kf8 20.Rxa7 Ne4+ 21.Kc2 f6 22.h4 Nxf2 23.Rb1 Rxb1 24.Kxb1 Ne4 25.a4

25…Rg8

 25…h6 26.h5 Kg8 27.Re7 Kh7 はルークを戦いに参加させるための死にもの狂いの手だが、白に 28.d7 Nc6 29.Re8 Nc3+ 30.Kc2 Nxa4 31.Bc7

と応じられると黒はポーンのクイーン昇格を防ぐために駒損が必至である。

26.a5 Nc6 27.Ra6 Nb8 28.Ra7 Nc6 29.d7!

 白は27手目でこの手を指すことができたが、持ち時間を増やすために手を繰り返していた。

29…Nd8 30.Kc2 Ke7 31.a6

31…e5

 黒の悔しいことに、キングを最下段から上げたのにまだナイトをどかせてルークを自由にすることができない。例えば 31…Nc6? なら 32.d8=Q+ Kxd8 33.Ra8+ でルークがおちる。

32.Bc1!?

 厳密にはこの手は必要ないが、白は相手が(32.dxe5 のあと)32…Nc5 と指すのを嫌った。そうなっても 33.Bd2 Nxd7 34.Ra8! fxe5 35.a7 で黒が良くなるわけではない。

32…Kd6

 32…Nd6 は 33.Ba3 Ke6 34.Bxd6 Kxd6 35.Ra8 で実戦と似た進行になる。

33.Ba3+ Kc6 34.Ra8 1-0

 34…Kxd7 35.a7 でこのポーンがすぐにクイーンに昇格する。

 他の重要な対戦はハンガリー対アゼルバイジャンで、同じく引き分けだった。その結果3回戦を残してウクライナが勝ち点1の差で首位を保った。

 イングランドの相手はドイツだった。オンラインチェス愛好家の中のサッカー好きたちは2-2で終わってドイツがペナルティーで勝つと冗談を言っていたが、スポーツの迷信は本当に同一視できなかった。より重大なことはドイツのいく人かの一流GMがオリンピアードでの対局報酬について連盟と争いになってチームに参加していないことだった。ナイジェル・ショートはFIDE会長選運動がらみで対局しなかったが、英国チームは経験に劣るドイツの陣容にとっては強すぎて3½-½で勝った。


アナトリー・カルポフのために選挙応援活動をするナイジェル・ショート。英国の花形選手は出だしは良かったが、オリンピアードの後半は残念な選挙結果が成績に影響したようだった。

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(この号続く)

2011年04月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(118)

「Chess」2010年11月号(17/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第9回戦 9月30日

 ウクライナには良い出来事と悪い出来事があった。悪い出来事はイワンチュクが負けたことだった。しかし良い出来事はそれでもアゼルバイジャンに勝ったので大したことがなかったことだった。シャフリヤル・マメジャロフがイワンチュクの 6½/7 の疾走を止めた男だが、この愛想のよいウクライナ選手のとてつもない実効レイティングを3000台のどこかからそれより少し下に落としただけだった。ザハル・エフィメンコのこれまた素晴らしい指し回しがチームに勝利をもたらした。ウクライナに続く上位5戦はすべて1勝で決着がついた。ロシア1、フランス、イスラエル、中国、米国がそれぞれアルメニア、グルジア、ハンガリー、キューバ、ブルガリアに勝った。
 イングランドの相手はロシア3だった。どちらも同じくらいの強さだから2-2の結果は意外でなかった。しかし戦いは激しかった。最上位2局が引き分けに終わり、デイビド・ハウエルが経験豊富なルブレフスキーに負けた。それでガーウェインが1点を取るために奮闘することになった。彼がそれを成し遂げたのは偉大だった。その試合は非常に長手数だが大変参考になる。

解説 ガーウェイン・ジョーンズ
第9回戦 イングランド対ロシア3
G・ジョーンズ - N・カバノフ
スコットランド試合

 ヤコベンコ(2726)、モティレフ(2694)、ルブレフスキー(2683)が最上位3席だったので、弱いつながりになっているたった2500のGMを破壊するのが自分の役目になった・・・

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.Nxd4 Bc5 5.Nxc6 Qf6 6.Qf3

 変な戦型だがここ6年ほど非常に流行するようになった。白の期待は二重fポーンが中原の支配とg列での活動に大きく役立つようになることである。一方二重cポーンは黒にとって大きな問題になり、弱いaポーンとc5の地点は特にそうである。

6…bxc6

 このごろは黒がクイーンを交換するのを遅らせるようになった。この戦型の前例は 6…Qxf3 7.gxf3 bxc6 8.Be3 Bxe3 9.fxe3 Ne7 10.Nc3 d6 11.Rg1 O-O 12.f4 f5 13.Bc4+ Kh8

14.e5!-この着想を実際に本局で使う場面が見られる-14…dxe5 15.O-O-O Ng6 16.Rd3

で、2006年サンセバスティアンでのバルマナ・カント(2284)対ハリクリシュナ(2682)ではここでレイティングがはるか上のインドのGM(黒)が 16…exf4?? とポカを指し 17.Rxg6! とただ取りされた。17…hxg6 と取ると 18.exf4 で Rd3-h3# の詰みが防げない。

7.Nd2 d6 8.Nb3 Bb6 9.Bd2

 定常的にこれを用いる有力選手はセルゲイ・ルブレフスキーで、その彼が私の対戦相手の隣に座って興味深そうに見ているのはかなり気持ちが悪かった。

9…Qxf3

 黒はキング翼の展開を図るためにはクイーンを交換しなければならない。9…Qxb2? は 10.Bc3 Qxc2 11.Bxg7 で良くない。

10.gxf3 Ne7 11.a4

 ビショップを捕獲する狙いで …a7-a5 突きを誘っている。そうなれば黒はa5の地点に恒久的な弱点を抱える。

11…a5 12.Be3

 この手は相手の研究範囲に入っていなかったが、状況は別にどうということもない。ビショップ同士を交換する方が黒枡を標的にしやすくなるので都合がよい。最近の実戦ではほとんど常に 12.Rg1 が指されているが、黒はしょせんキャッスリングしたいのでその方が良いとは思えない。12…O-O 13.Be3 の局面はルブレフスキーが今年非常に強い相手に3回指している。イナルキエフには勝ち、ナイディッチュとは長手数の末2局引き分けているが、どの試合でも相応に優勢だった。

12…Bxe3 13.fxe3 O-O 14.O-O-O

 これがこの戦型の典型的な局面で、私なら白の方を持ちたい。黒は駒を働かせるのに苦労し、a5のポーンをいつまでも守ることを強いられる。一方白はg列をルークで占拠し f3-f4 から e4-e5 と指すことができる。これはチーム戦としては良いやり方だと思う。白は負ける可能性がほとんどなく長い間黒を悩ませることができ、他の試合の進み具合を見ることができる。

14…f6

 この手はe6の地点を弱めるので私は好まない。もっとも他に良い応手を見つけるのはそう容易でない。14…f5 は 15.e5! dxe5 16.Bc4+ で実戦よりこちらが1手早くなる。

15.Nd4

 e6の地点を標的にしている。

15…f5 16.e5!

 これはこの戦型の重要な手段である。白は1ポーンの犠牲で非常に重要なc5の拠点と素通しのd列を得る。黒は白枡ビショップをどう展開させるのかという大きな問題も抱えている。

16…dxe5 17.Bc4+ Kh8 18.Nb3

 この局面は前述のハリクリシュナの試合に非常に似ている。こちらのナイトはb3の好所にいるが、黒は少し手得している。黒が何もしなければ、白は f3-f4 と突いてc8のビショップを閉じ込める。だから黒は次のように指さなければならない。

18…f4 19.exf4 exf4 20.Rhe1

 しかしポーンの犠牲の代償はここで明らかである。中央を完全に制圧し、ポーンの形に優り、たぶんa5のポーンを取り返せる。

20…Nf5

 20…Ng6 ならa5のポーンを守れるだろうが、21.Nd4 Bd7 22.Be6 Be8 23.Bg4 Rf7 24.Ne6

となって、白が局面を完全に制する。黒は駒の協調に本当に苦労することになる。

21.Re5 Nd6

 このナイトはe3が好所のように見えるが、21…Ne3 22.Rd4 となると空を切り、黒は最下段の詰みに用心しなければならない。

22.Bd3

 22.Rd4 も強そうな手である。

22…g6

23.Nxa5

 私のe5のルークの方がa8のルークより強力だと判断したが、23.Rxa5 Rxa5 24.Nxa5 c5 25.Re1 Bf5 26.Re5 と指す方が分かりやすかった。

23…Bh3 24.Kd2

 f3のポーンを守るためにキングの移動を始めた。

24…Rfe8 25.Rde1 Bg2 26.Rxe8+ Nxe8 27.Nxc6

27…Nd6

 27…Bxf3 は 28.Be4 Bxe4 29.Rxe4 g5 30.b3 となって、aポーンがなかなか止めにくいのと白駒の方がはるかに動きが良いので、白が勝つはずである。

28.Bb5?!

 時間が少なくなってきて、これがa4ポーンとナイトの両方を守りルークを働かせる余裕を得るうまい手段だと考えた。しかし 28.a5 の方がずっと簡単だった。28…Bxf3 なら 29.Nd4 Bd5 30.b4 で、白の駒の連係が完璧でパスaポーンを突いていく単純な狙いがあり白が勝つはずである。

28…Bxf3 29.Re7 Bg2 30.Ne5 Rf8 31.Ke1 f3

32.Ng4?!

 30手ほどの間積み重ねてきた優位のほとんどがこれで吹き飛んだ。代わりに 32.Kf2! が危険そうに見えても黒には進展を図る手段がない。例えば 32…Ne4+ 33.Kg1 Bh3 34.Nxf3 は白が明らかに優勢である。

32…c6!

 カバノフはa4のポーンを守っているビショップを押し返して反攻に出てきた。

33.Bd3 Rf4 34.Re6

 34.a5 Rxg4 35.a6 でも指せるだろうが、時間切迫の時に読むべき手ではないであろう。

34…Nf7

 34…Rxg4 35.Rxd6 Rxa4 36.Kf2 なら黒が1ポーン得になるが、g2のビショップが閉じ込められているような状態でキング翼のどこかに行くのには手数がかかるので、まだ白が有望である。その間にクイーン翼の白ポーンが駆け抜けるだろう。面白いことにここではコンピュータも白の方を良しとしている。

35.Nf2 Rxa4 36.Rxc6 Ne5 37.Rc5 Nxd3+ 38.Nxd3 Rh4 34.b4

39…Bh3

 カバノフは突然h2ポーンの毒に気づいた。39…Rxh2 なら 40.Nf2! Rh4 41.c4 となって黒はクイーン翼のポーンの突進を防ぐことができない。

40.b5 Bf5

 指定手数に達して明白な優勢も回復することができた。もっとも黒は引き分けをもぎ取ることができるはずである。周りの対局を見回すと上位2局は引き分けに終わっていて、デイビドはルブレフスキーに屈していた。だからチーム戦を引き分けるためには私が勝たなければならなかった。プレッシャーがかかっていた。

41.Nf2

 41.Rc3!? という手もあるが、41…Rxh2 42.b6 Re2+ 43.Kf1 Be4 44.Nf2 Bb7 45.Rc7 Ba6 46.Nd3 Re8 47.Kf2 Re6 48.b7 Bxb7 49.Rxb7 Re2+ 50.Kxf3 Rxc2

で引き分けに終わそうである。

41…Rb4 42.Kd2 Kg7 43.Ke3 Kf6 44.Kxf3

 一時的にまたポーン得になった。

44…Ke7 45.c3 Rb3 46.Kf4 Rb2

47.Nd1

 47.Ke3 は 47…Kd6 48.Rc6+ Ke5 49.c4 Rb3+ となって、黒の駒がよく働きh2ポーンをまた犠牲にしなければならないので、良い手だとは思えなかった。

47…Rxh2 48.b6

 たぶん 48.c4 の方が客観的に見て良かったのだろうが、黒が最善手を指していけばたぶん引き分けにできる感じがする。

48…Rh4+ 49.Kf3!?

 我々はまた時間切迫に陥った。40手目で追加された30分は長持ちしなかった。そしてここでf3がこちらのキングにとって最も紛らわしい地点だと判断した。そしてそれが図に当たった。

49…Kd6??

 これは私の次の手を見落とした。黒は 49…Rh3+ と指すべきで次のように引き分けに持ち込める。50.Kf2(50.Kf4 は 50…Rh4+ 51.Ke5 Re4+ 52.Kd5 Re6 53.Rc7+ Kd8 54.Rxh7 Rxb6

となって、白はまだしばらく指し続けることができるが黒はあまり苦労なく守れるはずである)50…Rh2+ 51.Kg1 Rd2 52.Ne3 Rb2 53.Nd5+ Kd6 54.Nb4 Be4

白キングが働いていない状態ということは勝つ可能性が事実上ないということである。

50.Nf2!!

 この手を見つけたときは、特に時間に追われていた時だっただけに、本当に嬉しかった。相手の顔が曇った。ビショップもルークもbポーンのクイーン昇格を止めるのに間に合わない。

50…Kxc5 51.b7 Rc4 52.b8=Q Rxc3+ 53.Kf4 h5

 というわけで局面は技術的な段階に至った。黒はクイーンの代わりにルークと2ポーンを得ているが駒割として十分ではない。しかし白はポーンがないので勝つのは大変である。

54.Ne4+

 黒は長い目で見ればキング翼のポーンを保つことができないだろうからこれが一番簡単に勝つ手段だと考えた。しかしコンピュータは 54.Qc7+ でナイトを盤上に残す方がずっと強い手だと指摘した。例えば 54…Kb4 55.Qb6+ Kc4 56.Nd1 Rb3 57.Qa6+ Kb4 58.Ne3 Bd3 59.Nd5+ Kc5 60.Qa7+ Kxd5 61.Qf7+

でルークが素抜きにあう。コンピュータなら見つけるのは簡単だが、時間が少なくて勝たなければならない時はこのような手順は見つけるのは難しい。

54…Bxe4 55.Kxe4 Rc4+ 56.Ke5 Rg4

 黒はルークとポーンがお互い守りあって要塞を作ろうとしている。そこでこちらの勝つための作戦は黒を手詰まりに陥れることで、そうなれば黒はキング翼の戦力の一つを守られていない状態にしなければならなくなる。第一段階は黒キングを盤端に追いやることである。唯一の心配は50手規則だった。

57.Qb2

 黒キングをルークとキング翼ポーンに合流させれば要塞が完成するのでそうさせるわけにはいかない。

57…Kc4 58.Qc2+ Kb4 59.Kd5 Rg5+ 60.Kc6 Rg4 61.Kb6 Ka3 62.Kc5 Rg5+ 63.Kc6 Rg4 64.Qb1

 目標1の完了。

64…Rc4+ 65.Kd5 Rg4

 キングがチェックされない地点を見つけなければならない。それで白キングはキング翼へ急ぐ。

66.Ke5 Rg5+ 67.Ke6 Rg4 68.Kf6

 黒の手詰まりである。黒は態勢を悪くしなければならない。

68…Rg3

 これでルークが守られていないことを利用してg6ポーンを取ることができる。68…Ka4 も筋が通っているが、このキングをa8の地点まで押し込めることができる。黒キングが盤の中央を越せば黒は4段目に沿ってチェックすることができないので詰みの狙いを作り出すことができる。見本の手順は 69.Qb2 Ka5 70.Qb3 Ka6 71.Ke5 Ka5 72.Kd5 Ka6 73.Kc6

で、黒は詰みが防げない。

69.Qa1+ Kb3 70.Qd1+ Kc4 71.Qe2+ Kb3 72.Qd1+ Kc4 73.Qe2+

 30秒でも非常に貴重な時間を増やすために手を繰り返した。

73…Kb3 74.Qb5+ Kc2 75.Qc6+ Kd2 76.Qd6+ Rd3 77.Qf4+ Kc3 78.Kxg6

 これでポーンが落ちた。23手で済んだ。

78…Rd5

 黒はh5のポーンも長く持たせられない。

79.Kf6 Kd3 80.Ke6 Rd4 81.Qf3+ Kc4 82,Qxh5

 ここからの黒の防御は最強ではなかったが、いずれにしてもこの収局をつい最近勉強していたのは幸いだった。

82…Kd3 83.Qc5 Ke4 84.Qf5+ Ke3 85.Ke5

 これで黒の駒は後退を強いられる。

85…Rd3 86.Qf4+ Ke2 87.Ke4 Rd2 88.Qf3+ Ke1

89.Qh5

 89.Ke3?? は言語道断で、89…Rd3+! とされるとこれまでの粒々辛苦が水の泡になってしまう。

89…Kf2 90.Qh1 Re2+ 91.Kf4 Rd2

 ここからの手順は非常に面白い。白は単に黒の駒をクイーン翼に追い立てていき、黒は枡がなくなる。

92.Qh2+ Ke1 93.Qg1+ Ke2 94.Ke4 Rc2 95.Qg2+ Kd1 96.Qf1+ Kd2 97.Kd4 Rb2 98.Qf2+ Kc1 99.Qe1+ Kc2 100.Kc4 Ra2 101.Qe2+ Kb1 102.Qd1+ Kb2 103.Kb4 Ra8 104.Qe2+ 1-0

 105.Qf1+ から 106.Qg2+ でルークが取られるのでカバノフは投了した。これでチームは引き分けになった。


イングランドチームで最も活躍したガーウェイン・ジョーンズは2回の持ち時間延長まで試合をした。彼は最高の試合だったと思っている。非常に長手数になったが布局、中盤、収局とも参考になる。

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(この号続く)

2011年04月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(119)

「Chess」2010年11月号(18/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第10回戦 10月1日

 ウクライナは最終戦を残すこの回の前にロシア1とフランスに勝ち点1差をつけていた。そしてフランスに 3½-½ と大勝して優勝に大きく近づいた。ロシア1は中国に辛勝したが、最終戦で勝ってもウクライナが引き分ければ逆転優勝できないと知った(数学に高等知識を持った人だけがオリンピアードで用いられる順位判定方式を本当に理解できるので、これは絶対確かというわけではない)。3位に上がったのは米国に 3-1 で勝ったイスラエルだった。

 イングランドの相手は同じくらいの平均レイティングのオランダだった。試合は熱戦になってイングランドチームの各選手が異なった時点で勝つ可能性が本当にありそうだった。しかし最後には4試合とも引き分けになった。

 世界ナンバーワンのマグヌス・カールセンは悲惨だった大会を終えた(最終戦には出なかった)。この第10回戦ではロシア4のサナン・シュギロフに負けて大会3敗目を喫した。レイティング順位でアーナンドより下に落ちただけでなく、この試合には別の意味もあった。それは大きな大会の試合で自分より年下の選手に初めて負けたということだった。シュギロフは1993年1月31日生まれで、カールセンより2歳以上若かった。ノルウェーのスターは絶不調のようで惨敗した。

 最終戦を前にした順位は次のようになった。1位 ウクライナ 勝ち点18、2位 ロシア1 勝ち点17、3位 イスラエル 勝ち点16、4-8位 ポーランド、ハンガリー、アルメニア、スペイン、フランス 勝ち点15、・・・21位 イングランド 勝ち点13、・・・76位 アイルランド 勝ち点10、・・・93位 スコットランド 勝ち点9、・・・113位 ウェールズ 勝ち点8

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(この号続く)

2011年04月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(120)

「Chess」2010年11月号(19/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

第11回戦 10月3日

 よくあることだが、オリンピアードの最終戦では慎重は勇気の大半を占める。確かにウクライナはイスラエルと対戦中にロシア1対スペイン戦を注視していた。そして2-2の引き分けでも金メダルが確実となったとき全局で平和条約を締結した。開催国チームは4オリンピアード連続で金メダルを逃がすことを受け入れなければならなかったが、少なくとも銀メダルは確保した(2006年と2008年はキルサン・イリュームジノフの記念のコーヒーマグを除いて輝くものは何も持ち帰らなかったはずだ)。


キルサンのコーヒーマグが気に入らなかったらカルポフのウォッカがある

 クラムニクはシロフに勝って最終戦を終えたが、スビドレルはイバン・サルガド・ロペスに負けてここまで無敗の大会に味噌を付けた。彼は試合の終わりには取り乱していたと報道されているが、本当のところは19歳のスペイン選手の出来があまりにも良かったのだろう。彼はいつの日か大きく才能を開花させる可能性がある。

第11回戦 ロシア1対スペイン
P・スビドレル - I・サルガド・ロペス
不規則eポーン布局

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 e5

 黒のこの戦型がモロゼビッチ、スビドレル自身、ラジャーボフ、エリャーノフそれにアズマイパラシビリらのいく人もの有名選手によって指されてきたことを考えると、まだ名前が付けられていないのは意外である。最も近い親戚はフィリドール防御だが、白が(本局のように)ナイトをf3に跳ねていない時はフィリドールにならない。

4.Nge2 Nbd7 5.g3 Be7 6.Bg2 c6 7.a4 b6

 カジガレエフとペルティエは共にこの手を指しているが、若いスペイン選手は偶然にも本局の隣に座っていた同国人のホルディ・マヘム・バダルスのレパートリーから採用したのかもしれない。

8.O-O a6 9.h3 h5

 これもラルセンへの敬意だろうか。黒は g3-g4 突きを警戒した。

10.Be3 Bb7

11.Nc1

 2008年スペインチーム選手権戦のネギ対マヘム・バダルス戦では 11.f4 O-O 12.dxe5 dxe5 13.f5?! b5 14.axb5 axb5 15.Rxa8 Qxa8 16.g4 hxg4 17.hxg4

と進んだ。ここで黒は 17…b4 と指したが、まず 17…Rd8! と指してg4のポーン取りを狙うのが本筋のように思える。勝勢とまではいかなくても黒が申し分のない態勢だろう。また2009年フランスでのアピセラ対ペルティエ戦では 11.Qd2 O-O 12.Rad1 b5 と進み引き分けに終わった。

11…O-O 12.Nd3 Qc7 13.f4 b5

14.Nf2

 14.axb5 axb5 15.Qf3 または 15.Qe2 が白の穏当な作戦に思える。g3-g4 突きの構想は諸刃の剣である。

14…Rfe8 15.g4 hxg4 16.hxg4 b4 17.Ne2 exd4

18.Qxd4

 18.Nxd4 なら 18…c5 19.Nf5 Bf8 20.Ng3 d5 21.e5 d4 という活気ある戦いになりいい勝負である。

18…c5 19.Qd3 d5!

20.e5

 20.exd5 は 20…c4 21.Qd2 Nb6 で黒が有望のようである。

20…Ne4!?

 黒は布局の重苦しいような態勢から抜け出して今度は白に多くの問題を突きつけている。

21.Nxe4

 たぶん白はここで 21.c4!? を考えてみるべきだろう。

21…dxe4

22.Qd1

 22.Bxe4?? は 22…c4 23.Bh7+ Kh8 24.Qf5 Qc6!

となって、白は詰みを逃れるために駒損しなければならない。

22…Rad8 23.Qc1

 フリッツの選択はスビドレルの手と同じである。しかしロシアの著名な解説者のセルゲイ・シポフはこの手は明らかに悪手で、23.Qe1 の方がキングを守るのに好位置なので良いと考えていた。しかしスビドレルは 23…Nb6 24.Ng3 Bh4 でナイトを釘付けにされるのを気にしたのかもしれない。

23…f6

24.e6

 24.Ng3 は 24…fxe5 25.Nxe4 c4 となって、駒の連係が良いのと攻撃の選択肢があるので黒の方が良い。

24…Nb6 25.f5

25…Nd5

 25…Nc4 が魅力的だが白は 26.Bf4 Bd6 27.b3 Ne5 28.Qe3!? Nxg4 29.Qh3

で、ポーンを犠牲に攻撃の機会が得られそうである。

26.Nf4

26…c4

 ここでe3のビショップに食いつくのは思慮のない選手だけである。26…Nxe3? 27.Qxe3 c4 28.Qh3 Bc5+ 29.Kh1 となれば白がキング翼での狙いで勝つだろう。

27.Nxd5

 27.Kh1 でも 27…c3 28.b3 Nxf4 29.Bxf4 Bd6 で恐らく黒が少し優勢だろう。

27…Rxd5 28.Bf4

 解説者の中には 28.Qe1 の方が良いと考える者もいたが、それでも黒には …c3 と突いて …Red8 から …Rd2 と指す強力な作戦がある。

28…Qb6+!

29.Kh2

 29.Be3 Bc5 30.Re1 の方が堅実なようだが、黒はここで 30…b3!? と指すことができ 31.cxb3(31.Kf1 は 31…c3! で白が多くの問題を抱える)31…Rd3! 32.Bxc5 Qxc5+ 33.Kf1 Qd6! 34.Qxc4 Bd5

となれば、黒には …Qg3 と侵入して白ポーンを斜めに掃除していくというのも一つの作戦になる。

29…g5!!

 この手の破壊力は凄まじい。

30.fxg6e.p.

 これはまったく不甲斐ない手だが、他の手はもっと悪い。30.Be3 は 30…Qc7+ 31.Kg1 Qg3! となって白はキング翼のポーンに別れを告げる。30.Bg3? は 30…Kg7!! で白はh8でのルークによるチェックと他の色々な狙いに無力である。

30…Qxe6

31.Kg3

 31.Bh3 なら 31…e3! 32.Qxe3 Qxe3 33.Bxe3 Bd6+ 34.Bf4

となり、ここで 34…Re3!! がきれいな決め手である。

31…Rg5! 32.Bxg5

 32.Qd1 なら 32…Rxg6 とポーンを取り、さらにg4のポーンを攻撃する態勢になる。

32…fxg5 33.Rf5 Bd6+

34.Kf2

 34.Kh3 なら 34…Kg7 で黒の楽勝である。

34…e3+ 35.Kg1 Bxg2 36.Kxg2 Qe4+ 0-1

 37.Kf1 Qh1+ 38.Ke2 Qg2+ ですぐに詰む。

 イングランドは3回連続引き分けになった、ショートは運悪くチェコ共和国のやはり好調なビクトル・ラズニツカと対戦した(そして負けた)。この選手は最近いくつかの大会で優勝している。しかしデイビド・ハウエルがフラーチェクに勝って埋め合わせをした。


三人の微笑むイギリス人。奥のミッキー・アダムズはリラックスした感じで駒の位置を直し、デイビド・ハウエルはナイジェル・ショートの大げさな手振りを面白がっているようである。

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(この号続く)

2011年05月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(121)

「Chess」2010年11月号(20/21)

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ハンティ・マンシースク(続き)

 総括するとウクライナにとってまた偉大な優勝となった大会だった。イワンチュクが主将としてチームを率い、下位席のザハル・エフィメンコが素晴らしい活躍で大きな手助けになった。もっともエフィメンコは元ウクライナのセルゲイ・カリャーキンに第4席の金メダルをさらわれた。奇妙なことにウクライナ軍団の他の3選手はレイティングをわずかに下回る成績だった。とはいってもチームの活躍に対する彼らの貴重な貢献を否定するものではない。ロシア1は「母なるロシア」の地でオリンピアードのタイトルを奪還できなかったことに失望したことだろう。新入りのカリャーキン少年は第4席で飛び抜けた成績を残し、クラムニクとグリシュクは堅実に戦った。スビドレルは最終戦で突然崩れるまでは好調だった。マラーホフは実力が出せず8回戦を過ぎてからは起用されなかった。ウクライナの最下位席のモイセエンコは不調でたった4回戦が終わったところで見捨てられた。イスラエルは銅メダルに滑り込んだ。彼らの上出来は第2席のエミル・ストフスキーの絶大な活躍(実効レイティング2895)によるところが大きい。彼は第2席の金メダルを獲得した。他の個人メダルの獲得者はベラルーシのビターリ・テタレフ(第3席)とフランスのセバスチャン・フェレル(第5席)だった。テタレフはショートに勝って勢いづいて、第8回戦と9回戦ではガグナシビリとマルコスを血祭りにあげ、最後の2回戦は抜け番に回った。実はフェレルはミハレフスキーとオーストリアのレイティング2376のIMに負けているが、ハウエル、ティモフェーエフ、ゲラシビリそれにマルクスが彼の犠牲者になった。

 イングランドは残念な結果の回戦が二つほとあったが、全体的には非常に立派な成績だった。ガーウェイン・ジョーンズは5人のうちで1番の成績をあげ席メダルにもう少しだった。他の面々は少しレイティングを失ったがそれほど多くではなかった。そして皆少なくとも1局は記憶に残したい見事な勝ちがあった。ガーウェイン・ジョーンズはこのオリンピアードについて次のような感想を語ってくれた。「予想していたより断然良かった。ホテルはほぼ完璧で、国際スタイルのビュッフェは良かったが個人的には大会の終わりまでには食事に飽きてしまった。もっとロシア料理があれば良かった。イングランドのために再び戦うのは本当に楽しかった。チームの仲はうまくいっていた。不運なことに流行していた風邪に我々のほとんどがかかってしまい、私はロシア製のレムシップを飲みながら4局対局した。もっともそれが私にとって幸運だったようでそれらの試合の結果は 3/4 だった。」

 他の英国のチームについて言えば、惜しくも称号基準獲得のチャンスを逃がした2選手に同情の気持ちを禁じ得ない。アイルランドのサム・コリンズは初戦でグリシュクと引き分けて絶好のスタートをきった。そのあと4連勝とGMとの引き分けが続いた。最終戦でシンガポールのGMチャン・チョンと引き分ければ3度目で最終のGM基準獲得となるところだった。しかし残念ながらそうならなかった。称号基準獲得を逃がした別の選手はウェールズのヨロ・ジョーンズで、FM称号を得るためには最終戦で勝つことが必要だったが引き分けに終わった。63歳のヨロは1998年からオリンピアードに出場していなかったが、その時まではウェールズの14回のオリンピアードすべてに参加していた。彼の実効レイティング2303はウェールズ選手の中で最高の成績で、平均手数-驚くなかれ71手-は大会をとおしての記録に違いない。

 というわけでまたオリンピアードが終了し強い思い出となった。これで報告の終わりではない。12月号では女子の部の報告を掲載する。

第39回チェスオリンピアードの結果
ハンティ・マンシースク、2010年

2010年チェスオリンピアードはロシアのハンティ・マンシースクで9月21日から10月3日にかけて開催された。試合は11回戦のスイス式チーム戦で、各チームは4人の選手と1人の補欠選手とから編成される。

持ち時間 90分/40手 + 30分 + 1手目から毎手30秒加算

順位 シード チーム 勝ち点
ウクライナ 19
ロシア1 18
11 イスラエル 17
ハンガリー 17
中国 16
ロシア2 16
アルメニア 16
16 スペイン 16
米国 16
10 10 フランス 16
11 15 ポーランド 15
12 アゼルバイジャン 15
13 14 ロシア3 15
14 35 ベラルーシ 15
15 13 オランダ 15
16 22 スロバキア 15
17 24 ブラジル 15
18 19 インド 15
19 44 デンマーク 15
20 17 チェコ共和国 14
21 30 イタリア 14
22 25 ギリシャ 14
23 18 キューバ 14
24 12 イングランド 14
25 26 アルゼンチン 14
26 48 エストニア 14
27 41 カザフスタン 14
28 31 モルドバ 14
29 38 イラン 14
30 20 グルジア 13
31 ブルガリア 13
32 28 クロアチア 13
33 21 セルビア 13
34 34 スウェーデン 13
35 39 リトアニア 13
36 29 スロベニア 13
37 53 カナダ 13
38 45 オーストリア 13
39 52 ロシア4 13
40 54 アイスランド 13
41 40 エジプト 13
42 56 モンテネグロ 13
43 55 カタール 13
44 46 ペルー 13
45 50 トルコ 13
46 74 ウルグアイ 13
47 121 ザンビア 13
48 72 ICSC 13
49 33 ウズベキスタン 12
50 37 フィリピン 12
51 23 ノルウェー 12
52 27 ベトナム 12
53 51 チリ 12
54 57 コロンビア 12
55 49 オーストラリア 12
56 43 マケドニア共和国 12
57 68 アルバニア 12
58 73 シンガポール 12
59 60 フィンランド 12
60 71 ベルギー 12
61 88 アラブ首長国連邦 12
62 123 パキスタン 12
63 70 IPCA 12
64 42 ドイツ 11
65 47 スイス 11
66 32 ボスニアヘルツェゴビナ 11
67 67 インドネシア 11
68 77 キルギスタン 11
69 58 ラトビア 11
70 61 ロシア5 11
71 66 モンゴル 11
72 36 メキシコ 11
73 82 バングラデシュ 11
74 81 南アフリカ 11
75 59 ポルトガル 11
76 69 トルクメニスタン 11
77 79 ヨルダン 11
78 105 リビア 11
79 84 パラグアイ 11
80 83 フェロー諸島 11
81 64 ベネズエラ 11
82 80 コスタリカ 11
83 63 スコットランド 11
84 85 イエメン 11
85 65 エクアドル 10
86 62 タジキスタン 10
87 89 アンドラ 10
88 75 アイルランド 10
89 91 アルジェリア 10
90 87 ドミニカ共和国 10
91 92 ニュージーランド 10
92 86 マレーシア 10
93 94 タイ 10
94 107 パナマ 10
95 96 バルバドス 10
96 101 日本 10
97 90 ルクセンブルク 10
98 109 キプロス 10
99 103 グアテマラ 10
100 106 マルタ 10
101 139 ナイジェリア 10
102 78 IBCA 10
103 76 イラク
104 115 スリランカ
105 97 ジャマイカ
106 127 ウガンダ
107 114 ネパール
108 100 プエルトリコ
109 99 レバノン
110 95 モナコ
111 125 ホンジュラス
112 134 パレスチナ
113 116 韓国
114 104 ボリビア
115 108 トリニダードトバゴ
116 102 ボツワナ
117 112 バーレーン
118 110 モーリシャス
119 131 中国台湾
120 133 ケニア
121 120 アルバ
122 93 ウェールズ
123 113 ジャージー
124 98 アンゴラ
125 145 マリ
126 129 ナミビア
127 141 マラウィ
128 132 エチオピア
129 124 香港
130 128 ガーンジー
131 146 モーリタニア
132 111 スリナム
133 122 マカオ
134 130 モザンビーク
135 140 マダガスカル
136 118 オランダ領アンティル諸島
137 144 カメルーン
138 138 サントメ=プリンシペ
139 135 ハイチ
140 137 ガーナ
141 126 バーミューダ
142 148 シエラレオネ
143 117 パプアニューギニア
144 119 サンマリノ
145 143 ブルンジ
146 142 ルワンダ
147 149 米領バージン諸島
148 136 セイシェル 10
149 147 セネガル

ICSC = International Committee of Silent Chess(国際黙音チェス委員会)
IPCA = International Physically Disabled Chess Association(国際身障者チェス協会)
IBCA = International Braille Chess Association(国際点字チェス協会)

第1席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 ワシリー・イワンチュク 2754 ウクライナ 80.0 10 2650 8 2890
2 レボン・アロニアン 2783 アルメニア 75.0 10 2695 7.5 2888
3 ヤン・ネポムニャシチ 2706 ロシア2 72.2 9 2655 6.5 2821
4 イワン・ソコロフ 2641 ボスニアヘルツェゴビナ 75.0 8 2605 6 2798
5 ウラジーミル・クラムニク 2780 ロシア1 61.1 9 2714 5.5 2794
第2席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 エミル・ストフスキー 2665 イスラエル 81.3 8 2644 6.5 2895
2 ゾルタン・アルマーシ 2707 ハンガリー 70.0 10 2652 7 2801
3 ワン・ハオ 2724 中国 75.0 10 2590 7.5 2783
4 アレクサンドル・グリシュク 2760 ロシア1 66.7 9 2651 6 2776
5 ガータ・カームスキー 2705 米国 70.0 10 2607 7 2756
第3席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 ビターリ・テタレフ 2511 ベラルーシ 87.5 8 2517 7 2853
2 パベル・エリャーノフ 2761 ウクライナ 70.0 10 2588 7 2737
3 セルゲイ・ルブレフスキー 2683 ロシア3 72.7 11 2552 8 2727
4 ユディット・ポルガー 2682 ハンガリー 60.0 10 2631 6 2703
5 ニコライ・ビチュゴフ 2709 ロシア2 66.7 9 2575 6 2700
第4席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 セルゲイ・カリャーキン 2747 ロシア1 80.0 10 2619 8 2859
2 ザハル・エフィメンコ 2683 ウクライナ 77.3 11 2572 8.5 2783
3 アニッシュ・ギリ 2677 オランダ 72.7 11 2555 8 2730
4 カミル・ミトン 2629 ポーランド 75.0 10 2521 7.5 2714
5 フェレンツ・ベルケス 2678 ハンガリー 65.0 10 2576 6.5 2686
第5席
順位 名前 棋力 チーム 試合数 相手平均 得点 実効棋力
1 セバスチャン・フェレル 2649 フランス 66.7 9 2583 6 2708
2 マテウシュ・バルテル 2599 ポーランド 77.8 9 2486 7 2706
3 ブラスティミル・バブラ 2515 チェコ共和国 77.8 9 2448 7 2668
4 キリル・ストゥパク 2502 ベラルーシ 70.0 10 2511 7 2660
5 ガーウェイン・ジョーンズ 2576 イングランド 75.0 8 2454 6 2647
イングランド・オープンチーム 個人別成績
名前 棋力 得点 試合数 実効棋力 棋力変動
マイケル・アダムズ 2728 6.5 11 2690 -4.1
ナイジェル・ショート 2690 4.0 2587 -10.3
ルーク・マクシェーン 2657 5.0 2573 -9.2
デイビド・ハウエル 2616 4.5 2551 -4.6
ガーウェイン・ジョーンズ 2576 6.0 2647 +7.6

2011年05月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(122)

「Chess」2010年11月号(21/21)

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勝つ手を見つけろ

レイティング1500-1800 中級程度


第11題 南條亮介 – F・バンダ
日本対マラウイ、2010年
白の手番

解答
11.南條亮介 – F・バンダ
1.Rxa7+! Kxa7 2.Qc7+ Ka8 3.Qxa5+ Kb7 4.Qb6+ Kc8 4…Ka8 5.Qa6# 5.Qc7#

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(この号終わり)

2011年05月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(123)

「Schach」2011年4月号(1/1)

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アジアの神秘

チャンスを逃がす

XVII 馬場雅裕 – アル・サイェド、ドレスデン、2008年

XVII  おかしなことに日本はこれまでアジアチェス界の最近の2、30年の大躍進に加わっていなかった。日出ずる国では何よりも柔道と空手のような武道が愛好され、それと同時に野球とサッカーも好まれている。頭脳スポーツとしては千年以上前から囲碁が根を下ろしている。ドレスデンオリンピアードで日本のチェス選手たちを見かけた。今回のオリンピアードから参考になる収局をここでお目にかける。馬場雅裕選手は(恐らく団体戦という理由から)何度も引き分けを避けてきた。それは立派なことだったが、最後には報われなかった。彼は 1.Ra5+?! と指し、それによってますます正しい道からそれてしまった。代わりにどう指せば引き分けにできただろうか。

解答
Rd3 が無防備なので白は 1.h4+! と指すことができ、次のように永久チェックがかかる。1…Kg6(1…Kxh4? 2.Qe4+)2.Qe4+ Qf5 3.Qe8+ Kf6 4.Qf8+ 1.Ra5+!? b5 2.Qxf6+ 2.h4+ の方が良かった。2…gxf6 3.axb5 cxb5 4.Rxb5+ Kf4 5.Rb8 Rd1 6.b4 d3 7.b5 Rb1 8.b6 d2 0-1

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 この試合は「Behind the Scene」の「Dresden Dream(2)」で解説されています。

(この号終わり)

2011年05月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(124)

「Chess Life」2011年2月号(1/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権

ジールクが米国チームの牽引車

11月のデンカー記念大会勝利の記憶も覚めやらぬうちに、スティーブン・ジールクがギリシャでの2010年世界少年少女チェス選手権で金メダル(そして初のGM基準)を獲得し、米国チームの大活躍を牽引した

記 GMジョン・フェドロウィッツ

 世界少年少女チェス選手権戦は10月19日から31日までギリシャのハルキディキで開催された。コーチに選ばれたのはこれで7度目で、大変楽しみであり身の引き締まる思いである。これまでコーチした選手にはGMジョエル・ベンジャミン、GMガータ・カームスキー、GMウォルター・ブラウン、それにGMニック・ド・ファーミアンらがいる。経験は実戦の後に来るものでしかない。何人ものレイティング最上位の選手が参加できず、メダルを期待できる選手は不足していた。今年の一団は経験不足だったが期待は大きかった。

 代表団は米国の歴史の中で最大だった。選手が40名、コーチが6名、それに多数の付き添いの家族で、人員はゆうに100名を超えていた。この信じられないほどの(もちろんチェス以外の)参加人数の理由の一つは試合会場のせいかもしれない。アテネからテッサロニキまで飛行機で25分、それからハルキディキまでバスで1時間半かかった。私は幸運にもモスクワからのアエロフロート便と同時刻にテッサロニキに着いたおかげですぐにホテルへ向かえた。我々の一行の他の面々はそれほど幸運でなく、3時間近く待たなければならなかった。地中海リゾートの風光明媚なポルト・カラスにはビーチ、プール、あらゆるスポーツ、おいしい料理があって来るものみんなを楽しませてくれる。こんなリラックスできる環境でチェスを指すのはこたえられない。

 筆者以外のコーチはFMアルメン・アムバルツォミアン、FIDEシニアトレーナーのマイケル・コダルコフスキー、FMアビブ・フリードマン、GMサム・パラートニク、それにIMアンドラニク・マチコジャンだった。我々はレイティングと親交の度合いによって選手を分割し、バランスが保たれるようにした。6人か7人の選手ごとにコーチが1人つき、準備の時間は各選手あたり20分から30分割り当てられた。レイティング上位の選手たちは長めの準備時間の恩恵を受けた。相手の試合の棋譜が見られれば、定跡や棋風を予測することが容易だった。そうでなければ定跡を復習したり戦略を練ったり他の実戦の場面を補強したりした。子供たちの多くは初めての参加だったので、単に心を落ち着かせることが非常に重要だった。

 コーチとしての我々の最初の務めは対局場の近くのどこかに本部を構えることだった。これは対局後の分析にとって非常に大切である。そこはチェスに加えてチームUSAに暇をつぶしたり話をしたり仲間意識を作ったり情報を交換したりする所を与えてくれる。試合を分析しているのを見ることは本当の勉強の道具になり得る。試合のどの段階でも多くの議論がある。(私の気づいた中で可能な限りいつでも静かに見ていた選手はジョシュア・コラスだった。)「団長」はいつものようにコダルコフスキーだった。彼は常に父兄や選手からのどんな心配事もよく面倒をみ、技術的な打ち合わせに出席し、みんなに情報を知らせ、誰の旅行もつつがないように図ってくれる。

 FIDEの「ゼロ容認」の規則が撤回されたのを聞いた時はほっとした。その規則とは選手が対局開始の5分前に着席していなければならないというものだった。違反した選手は不戦敗になる(過去にワールドカップでこの規則に違反したいく人かのグランドマスターがその運命にあった)。もちろんまったくばかげた話である。私はこのような大会では持ち時間が非常に長いと思った。最初の40手につき100分で、そのあと30分追加され、1手目から毎手30秒加算される。1日2局の日には特にへとへとになることがある。どんな年齢の誰でも1日で10時間のチェスはこなせない。

 この大会は世界少年少女であげた我々の最高の成績の一つだった。ほとんど誰もスティーブン・ジールクに優勝の可能性があると考えていなかった。オープン18歳以下はいつも最強の部門である。5人のグランドマスターと13人の国際マスターのいるグループでFIDEレイティング2391は29番目にすぎず、スティーブンが金メダルはおろか入賞することさえ奇跡のように思われた。しかしスティーブンはあちこちで少し幸運に恵まれて信じられないようなチェスを指した。スティーブンの4-0の出だしはまさに特別だったと言えるだろう。5回戦から7回戦は競争相手のアルメニアのサムベル・テル=サハクヤン戦を含め3連続引き分けだった。そのあと4連勝で大会を締めくくったことは特筆に値する。


最前列左から レイヤン・タギザデー、エイワンダー・リャン、アラビンド・クマール、プラビーン・バラクリシュナン、アニー・ワン
2列目左から ビニェシュ・パンチャナタム、ジョナサン・チャン、カメロン・ホウィーラー、トミー・ヒー、ジェフリー・ション
3列目左から ジョシュ・コラス、デイチー・リン、カピル・チャンドラン、アラン・ベイリン、ケサブ・ビシュワナダー
4列目左から ジャスタス・ウィリアムズ、ケイデン・トロフ、アトゥリャ・シェティー、アンナ・マトリン
最後列左から FMアルメン・アムバルツォミアン、スティーブン・ジールク、ジェフリー・ハスケル、GMジョン・フェドロウィッツ


最前列左から ジョアンナ・リュー、エミリー・ニュイェン、ラメシュ・カーブヤ
2列目左から サムリサ・パラコル、デビナ・デバガラン、ニコール・ズロチェフスキー、レーバ・シン
3列目左から マーガレット・フワ、アプルバ・ビルクド、クリストファー・ウー、アリス・ドン、マリヤ・オレシュコ、シモーヌ・リャオ
4列目左から ジェシカ・リーガム、セアラ・チャン、クローディア・ムヌズ、デイビド・エイデルバーグ
最後列左から FIDEシニアトレーナーのマイケル・コダルコフスキー、FMアビブ・フリードマン、GMセミオン・パラートニク、IMアンドラニク・マチコジャン

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(この号続く)

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カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(125)

「Chess Life」2011年2月号(2/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

シチリア防御ベリミロビッチ攻撃 [B89]
白 IMスティーブン・C・ジールク(FIDE2391、米国)
黒 IMシュテファン・マズール(FIDE2403、スロバキア)
世界少年少女チェス選手権戦オープン18歳以下 第8回戦
ポルト・カラス、2010年10月27日

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bc4

 非常に難解な戦いになるソージン攻撃はフィッシャーの得意戦法だった。

6…e6

 ベンコーシステムの 6…Qb6!? も本筋の手である。私は恐ろしいベリミロビッチ攻撃を避けるためにそれを用いていた。

7.Be3 Be7 8.Qe2 a6

9.O-O

 9.O-O-O!? は上述のベリミロビッチ攻撃になる。それは最も激しい逆翼キャッスリングの局面の一つである。

9…O-O

 黒は 9…Na5!? で白の白枡ビショップを警戒しておいた方が賢明だっただろう。

10.Rad1 Qc7 11.a4!?

 この手でc4のビショップにa2の「退避地点」ができた。

11…Ne5?!

 この手はそもそも継続手がないので疑問だと思う。11…Nb4 が …d5 突きの狙いがあって堅実な手のようである。黒はc4のビショップに気をつけなければならない。

12.Bb3

12…Bd7?

 黒の予定は 12…Neg4 13.Bc1(13.f4 Nxe3 14.Qxe3)13…d5 ではなかったのだろうか。もしそうならやってみるべきだった。14.g3 dxe4 15.Nxe4 Nxe4 16.Qxe4 Nf6 となれば黒は問題ない。

13.f4 Nc6

 13…Neg4 なら 14.Bc1 で黒のg4のナイトが路頭に迷う。

14.f5!

 これでビショップの威力が増し、d5の地点も支配する。

14…e5 15.Nxc6 Bxc6?!

 典型的なソージンの局面になった。白はd5の地点を支配し、黒は積極的に動く手がない。

16.Bg5

16…Ne8

 16…h6 なら 17.Bxf6 Bxf6 18.Nd5 Bxd5 19.Rxd5 となって、この異色ビショップの中盤戦は白の方が断然良い。

17.Bc1 Qd8 18.Nd5 Bxd5 19.Bxd5 Rb8 20.Be3 Bg5 21.Ba7!

21…Ra8 22.Qf2 Nf6 23.Bb6 Qe7 24.Qf3

24…Rac8

 24…Nxd5 なら 25.Rxd5 で白がd6の出遅れポーンをもぎ取ることになる。それでもこれが黒にとって最も可能性があるようである。

25.Qb3 Nd7?!

 黒にとって一番可能性があったのは 25…Nxd5 26.Rxd5 Rc6 だった。

26.Bf2 Nc5 27.Qa3 Qd7 28.a5 Qb5 29.c4 Qd7 30.b4!

 このあとb7とa6のポーンが落ちる。

30…Qa4 31.Qc3 Qb3 32.Rd3 Qxc3 33.Rxc3 Nd7 34.Bxb7

 白のビショップがクイーン翼を清掃し、白のパスポーンが駆け抜ける。

34…Rc7 35.Bxa6 Bd2 36.Rb3 Rb8 37.Bb5 Nf6 38.Bb6 Rcc8 39.Ba6 Re8 40.Rfb1 Nxe4

 黒がポーンを取り返したが、あまりにもささやかで手遅れである。

41.Rd3 Bc3 42.Rb3 Ba1 43.Bb5 Rec8 44.Ra3 Bb2 45.Ra2 Bd4+ 46.Bxd4 Rxb5 47.Re3!

 スティーブンは簡明な勝利への道を見つけた。

47…Rxb4 48.Rxe4 Rbxc4 49.a6 exd4 50.a7 Ra8 51.Re8+!

51…Rxe8 52.a8=Q Rc1+ 53.Kf2 Rc2+ 54.Kg3 Rc3+ 55.Kh4 Rce3 56.Qb7 g6 57.Ra7 Rf8 58.fxg6 hxg6 59.Qd5 d3 60.Rd7 Re2 61.Rxd6 黒投了

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(この号続く)

2011年06月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(126)

「Chess Life」2011年2月号(3/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

 とてつもない重圧の下でスティーブンはただ勝ち続けた。これはもうマネーゲームである。スティーブンのアルメニア人競争相手も並走していた。二人ともほかの選手たちに信じられないような1.5点差をつけていて、一方が金メダルで他方が銀メダルが確定していた。

シチリア防御オーケリー戦法 [B28]
白 IMスティーブン・C・ジールク(FIDE2391、米国)
黒 GMバシフ・ドゥラルベイリ(FIDE2495、アゼルバイジャン)
世界少年少女チェス選手権戦オープン18歳以下 第11回戦
ポルト・カラス、2010年10月30日

1.e4 c5 2.Nf3 a6?!

 重大な対局で指すには最も信頼のおける戦法とは言い難い。

3.c3

 これは …a6 を不要不急の手のようにさせるやり方の一つである。…a6 という手はc3シチリア防御では見当はずれである。白は重要な手得をする。黒は 2…a6 で 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5! を期待していた。3.c3 に代わるほかの手は 3.c4!? である。白はマローツィ縛りの形にして陣地の広さで優位に立つ。

3…d5 4.exd5 Qxd5 5.d4 Nf6 6.Be3!

 黒にd4のポーンを取らせることにより、Nc3 と指すことができ展開で大差をつけることができる。

6…cxd4 7.cxd4 g6 8.Nc3 Qa5 9.Qb3

 白はb7に狙いをつけることにより黒の展開を遅らせる。

9…Bg7 10.Ne5 O-O

 10…e6 なら 11.Nc4 で黒が実戦と同じような状況になるだけである。11…Qc7 は 12.Nb6 Ra7 でやはりルークの位置がひどい。

11.Nc4 Qc7 12.Nb6 Ra7 13.d5!

 黒駒は連係が悪い。

13…Bf5 14.Rc1

 白は黒クイーンを追いかけ回してだいぶ手をかせいでいる。

14…Qd8 15.Be2 Ng4 16.Bxg4 Bxg4 17.Qc4!

17…f5

 黒は愚形の手を強いられた。しかしビショップを引くのは戦力損をする。17…Bd7 なら 18.Nxd7 で白の勝ちだし、17…Bf5 でも 18.g4! がある。

18.d6+ Kh8 19.Nbd5!

 黒の両方のルークが狙われている。

19…e6 20.Nf4 Qxd6 21.Bxa7 Nc6 22.Bc5 Qe5+ 23.Be3 g5 24.Nd3 Qf6 25.O-O f4 26.Bc5 Rc8 27.Ne4 Qg6 28.f3 Bf5 29.Qb3 Bxe4 30.fxe4 Rd8 31.Qxb7 Qxe4 32.Nf2 黒投了

 この楽勝でジールクの成績は9½-1½になった。アルメニア選手が負けたので彼が2005年のアレックス・レンダーマン以来の優勝者になった。スティーブンの偉業、国際マスター称号獲得それにグランドマスター基準達成を祝福したい。

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(この号続く)

2011年06月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(127)

「Chess Life」2011年2月号(4/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

 スティーブンが18歳以下の部門で快走している一方で、他の子どもたちもメダル争いを演じていた。オープン10歳以下の部門では6人(!)もの有望な選手がいた。サミュエル・セビアンは大会開始時にランキング1位だった。前半は期待にたがわず6試合で 5½ 点をあげ突っ走っていた。第7回戦で優勝者のカナダのジェイソン・カオに屈し、第8回戦ではインドのバスカル・グプタに負けた。この2敗でメダルの可能性がなくなった。これらの残念な結果にもかかわらずサミュエルは何局も印象的な試合を指した。次の試合は私が特に感服した1局である。

シチリア防御ナイドルフ戦法 [B92]
白 サミュエル・セビアン(FIDE2105、米国)
黒 マルティン・ペトロフ(FIDE1858、ブルガリア)
世界少年少女チェス選手権戦オープン10歳以下 第9回戦
ポルト・カラス、2010年10月28日

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be2

 この「穏やかな」やり方は白を繁雑なナイドルフ定跡から遠ざけてくれる。アナトリー・カルポフやエフィム・ゲレルのようなシチリア・キラーはこの手で多くの有名な試合に勝っている。

6…e5 7.Nb3 Be7 8.O-O O-O

 ここで白の手は多岐にわたる。

9.Kh1

9…Be6?!

 この手は正確さに欠ける。9…b6!? が 9.Kh1 への最善の応手と考えられている。1997年ルツェルンでのオニシュク対ド・ファーミアン戦では 10.Be3 Bb7 11.f3 b5 12.a4 b4 13.Nd5 Nxd5 14.exd5 Nd7 15.c4 bxc3e.p. 16.bxc3 Bg5 17.Bf2 Qc7 18.c4 Rab8

と進んで黒の方が良かった。9…b5? は 10.a4! b4 11.Nd5 Nxd5 12.Qxd5 Ra7 13.Be3 Be6 14.Qd2 Rb7 15.a5

となってaポーンとbポーンが黒の気がかりである。

10.f4 Qc7

 もっと安全な手順は 10…exf4 11.Bxf4 Nc6 である。

11.f5 Bc4 12.g4!

 この手は二つの目的を成し遂げる。一つ目はd5の地点を乗っ取って黒に大きな混乱を生じさせることである。二つ目はキング翼でポーンの暴風を起こして黒を受けに苦慮させることである。

12…h6 13.g5!

 この手は単純で強力である。g列が素通しになると白は圧倒的な主導権を握る。代わりに 13.h4!? は 13…Nh7 で黒に希望がわく。

13…hxg5 14.Bxg5 b5 15.Bxc4 Qxc4 16.Bxf6 Bxf6 17.Qg4 Qc8 18.Nd5 Qd8 19.Na5!

 このクイーン翼のナイト跳ねは黒にとって非常に厄介で、駒が縛り付けられる。

19…Ra7

 19…Qxa5?? は 20.Nxf6+ Kh8 21.Qh5# で終わりになる。

20.Rg1 g6

 白の大駒がすぐに黒キングの囲いを侵略する。

21.b4

 a5のナイトを固定して鉾先をキング翼に向け直す。

21…Bg7 22.Raf1 Qc8 23.Qh4 Re8 24.f6 Bf8 25.Rf3 黒投了

 h列での詰みが避けられない。サミュエルの会心の試合である。

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(この号続く)

2011年06月22日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(128)

「Chess Life」2011年2月号(5/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)


ジェフリー・ション、オープン10歳以下の部門で銀メダル

 強い選手が一つの部門にたくさんいる一つの問題は同士討ちしなければならないということである。ジェフリー・ションは米国選手と総当たりみたいになって米国の総得点を損ねた。彼はいくつかの試合で優れた戦術感覚を見せてくれた。11試合9点の順位判定で2位になったのは、得点方式に何か問題があるように思われる。次の試合は彼の指しっぷりの好例である。

ルイロペス [C78]
白 ジェフリー・ション(FIDE1824、米国)
黒 ザームエル・フィーベルク(FIDE無し、ドイツ)
世界少年少女チェス選手権戦オープン10歳以下 第9回戦
ポルト・カラス、2010年10月28日

 ジェフリーの相手が米国チェス連盟(2129)とFIDE(1824)とのレイティングの差異について知っていたら、指し方が違っていたかもしれない。この鮮やかな戦術の勝ちには感心させられた。ジェフリーは最初からメダル争いをしそうだった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.O-O a6 5.Ba4 b5 6.Bb3 Bc5

7.Nxe5

 7.d3 も良い手である。

7…Nxe5 8.d4

8…Bxd4

 8…Nxe4 は 9.Qe2 Qe7 10.Qxe4 Nc6 11.Qxe7+ Bxe7 12.c3 O-O 13.Bf4

となって白がやや優勢である。

9.Qxd4

9…Nc6

 この手は手損になる。9…d6 なら黒の方が成績が良い。10.c3(1995年リガでのイワンチュク対アーナンド戦は 10.f4 c5 11.Qd1 Ng6 12.Bd5 Nxd5 13.Qxd5 Rb8 14.Qh5 Bb7 15.Nc3 b4 16.f5 bxc3 17.fxg6 fxg6 18.Qh3 Qe7 19.e5 Rf8 20.Rxf8+ と進んで引き分けになった)10…c5 11.Qe3 Bb7 は1990年代に黒に非常に人気があった。

10.Qd3 O-O 11.Bg5!

 これは黒を気も狂わんばかりにさせる類の釘付けである。

11…h6 12.Bh4

12…Ne5

 12…g5 ならキングの安全を犠牲に釘付けをはずすことができる。以下は 13.Bg3 Nh5 14.e5!? で白が攻勢に立つ可能性がある。

13.Qe2 d6 14.Nc3

14…Be6?!

 どうして黒は 14…Ng6!? と指さなかったのだろう。15.Bg3 Bg4 16.f3 Be6 となれば黒陣は堅固である。

15.f4

15…Nc4??

 ここでも 15…Ng6!? が唯一のチャンスだった。16.Bxf6 Qxf6 黒はそれほど悪くない。17.e5(17.f5 Bxb3 18.axb3 Ne7 は白の方が少し良い。直接咎めようとしてもうまくいかない)17…dxe5 18.f5 Bxf5 19.g4 Qb6+

16.f5! Bc8

17.Nd5?!

 白ビショップはまず 17.Bxc4! で、受けに回る可能性のある駒を消し去るべきである。

17…Ne5 18.Nxf6+ gxf6 19.Qh5 Kh7 20.Bg3 Qe7 21.Bf4 Rh8 22.Bxh6 Kg8 23.Rf4 Rh7 24.Re1 Bb7 25.Re3 Kh8 26.Rh4 Rg8 27.Bf8! 黒投了

 ジェフリーは相手の疑問手のあとみごとに主導権を活用した。

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(この号続く)

2011年06月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(129)

「Chess Life」2011年2月号(6/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)


ケイデン・トロフ、オープン12歳以下の部門で銀メダル

 第9回戦でジェフリーは優勝したジェイソン・カオを負かした。これは何も考慮に値しないのか?このグループの将来のメダルの予想は危険を冒すことになるとは思わない。ジェフリー、サミュエル、カメロン・ホウィーラー、トミー・ヒーに加えてビニェシュ・パンチャナタムとジョナサン・チャンに大いに期待している。

 オープン12歳以下の部門ではケイデン・トロフが大活躍をして9点をあげた。次の1局はこの大会で私の気に入った試合でもある。コーチのアルメンの準備は傑出していて、たぶん側面ギャンビット退治の決定版だろう。黒の築いた局面はニムゾインディアン防御に似ていて、白の駒が働きの悪い位置にいる。

シチリア防御 [B20]
白 ボロディミル・ベトシュコ(FIDE2211、ウクライナ)
黒 ケイデン・W・トロフ(FIDE2216、米国)
世界少年少女チェス選手権戦オープン12歳以下 第10回戦
ポルト・カラス、2010年10月29日

1.e4 c5 2.b4

 このギャンビットにはどんな評価記号をつけたらよいのか分からない。重要な試合でどうして白はこんな手を指せるのだろうか。私の考えでは言語道断である。

2..cxb4

 2…b6 も落ち着いた良い手である。

3.a3 d5 4.exd5 Qxd5 5.Nf3

5…e6!?

 これがアルメンの準備の核心である。よくある手は 5…e5 だが、6.Bb2 Nc6 7.c4 となると混戦になってくる。

6.Bb2 Nf6 7.c4 bxc3e.p. 8.Nxc3 Qd8

 ここは白にとって重大な局面である。事態の進み方がゆっくりすぎると白の代償は干上がっていく。

9.Ne5

 代わりに 9.d4 は 9…Be7 10.Bd3 O-O 11.O-O Nbd7

となる。孤立dポーンの局面では白は攻撃の可能性がなければならない。この場合はそれが何もない。

9…Be7 10.Bb5+ Nbd7 11.O-O O-O

 黒キングが安全な所を見つけたあとは白の負けである。

12.d4 Nb6 13.Re1 Nbd5

 白は何か手段を見つけようとしているが徒労に終わった。

14.Bd3

14…Bd7

 私の好みは 14…b6!? で、15.Nc6 Qd6 16.Nxe7+ Qxe7

となればずっとよい。黒はd5の拠点を強固にし、ポーン得を確かなものにしている。

15.Ne4 Nxe4 16.Bxe4 Bc6 17.Qc2 g6 18.Nxc6 bxc6 19.Qxc6

 形勢はまだ黒が良いが、白はポーンを取り返した。

19…Rb8 20.Qc2 Bf6 21.Rab1 Qa5 22.g3 Rfc8 23.Qe2 Rb3! 24.h4 Rcb8 25.Rec1 Qb6

 黒はクイーンを一群の駒と交換する。

26.Ba1 Rxb1 27.Rxb1 Qxb1+ 28.Bxb1 Rxb1+ 29.Kg2 Rxa1 30.Qb2

 白クイーンは黒の戦力に太刀打ちできない。

30…Rd1 31.Qb8+ Kg7 32.Qxa7 Bxd4 33.Qa5 Bb6 34.Qb5 Rd2 35.a4 Rxf2+ 36.Kh3 h5 37.a5 Bc7 38.a6 Nf6 39.Qc5 Ng4 40.Qd4+ e5 白投了

 重要な状況で非常に小気味よい試合だった。

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(この号続く)

世界のチェス雑誌から(130)

「Chess Life」2011年2月号(7/11)

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2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

 FIDEレイティング2216のケイデンは(サミュエル・エビアンと共に)メダル候補の一人だった。最終戦で中国のワン・イー・イェーと引き分けた結果同じ中国のウェイ・イーが1位の座を守りきった。セアラ・チャンと彼女の弟のジョナサンはこの大会の常連であるが、4回目の出場にもかかわらず成績が安定しなかった。二人とも実力の片鱗はかいま見せてくれたので将来はメダルに手が届くと思う。

 向こう何年かは汎アメリカ選手権戦だけでなく次の世界少年少女チェス選手権戦でも大いに期待できそうである。スティーブン・ジールクの優勝はもっと年少の選手たちに希望を抱かせた。米国の選手たちは大きな期待と自信を持って大会に臨むことができる。これは我々が世界の最強たちと肩を並べる途上であることを示す確かな兆候である。多くの強い子どもたちに加えてコーチ陣も強力である。我々コーチは経験豊富で布局定跡と収局の指し方にも精通している。自分の得意分野でない問題はいつでもお互い気楽に相談し合っていて、私も協力してくれた仲間に感謝している。

 主催者は円滑な大会運営に大きく貢献した。当初のいくつかの移動問題を除いてすべて及第点だった。組み合わせはいつも定刻どおりで、私の知る限り論争は1回だけだった(アビブ・フリードマンが裁定委員会に申し出たが、やり直しに4時間もかかった)。

 来年はもっと大人数でメダル有望者がもっと増えることを望む。大会は初めて南アメリカ大陸で開催される予定である。その時まで参加の見込みのあるすべての者に実戦の訓練と猛勉強をして欲しい。

年齢別の全成績と10位までの順位

オープン8歳以下
エイワンダー・リャン(8点)-9位
アラビンド・クマール、プラビーン・バラクリシュナン、レイヤン・タギザデー(7点)

オープン10歳以下
ジェフリー・ション(9点)-2位
カメロン・ホウィーラー(8点)-5位
サミュエル・セビアン(8点)-6位
ビニェシュ・パンチャナタム(8点)-9位
トミー・ヒー(7点)
ジョナサン・チャン(6½点)

オープン12歳以下
ケイデン・トロフ(9点)-2位
カピル・チャンドラン、ジャスタス・ウィリアムズ(7½点)
ジョシュア・コラス(6½点)
デイチー・リン(5½点)
クリストファー・ウー(5点)
アラン・ベイリン(5点)
ケサブ・ビシュワナダー(4½点)

オープン14歳以下
デイビド・エイデルバーグ(5½点)
アトゥリャ・シェティ(5点)

オープン18歳以下
スティーブン・ジールク(9½点)-1位
ジェフリー・ハスケル(4½点)

女子8歳以下
アニー・ワン(7½点)-6位
エミリー・ニュイェン(7½点)-9位
ジョアンナ・リュー、ラメシュ・カーブヤ(6½点)

女子10歳以下
ニコール・ズロチェフスキー(6½点)
レーバ・シン、サムリサ・パラコル(5½点)
デビナ・デバガラン(5点)

女子12歳以下
マーガレット・フワ(7½点)-10位
マリヤ・オレシュコ(6½点)
シモーヌ・リャオ、アリス・ドン、アプルバ・ビルクド(5½点)

女子14歳以下
セアラ・チャン(6½点)
クローディア・ムノズ(5点)
ジェシカ・リーガム(4½点)

女子16歳以下
アンナ・マトリン(6点)

女子18歳以下
アンジャリ・ダッタ(5点)

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(この号続く)

2011年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(131)

「Chess Life」2011年2月号(8/11)

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収局研究室

2010年世界少年少女チェス選手権

GMパル・ベンコー

 金メダリストと数人の10位以内入賞者を輩出した我が国の世界少年少女チームは収局で深い読みを必要とした試合も多かった

 ギリシャのハルキディキで開催された世界少年少女チェス選手権は記録的な数の選手が参加した。80ヶ国を超える約1400人の少年少女が11回戦を戦った。我が国の入賞した選手たちの指した興味深い収局のいくつかを紹介する。

運の変転

 金メダル獲得のスティーブン・ジールクは大会開始時の順位が26位だったので大きな番狂わせだった。彼の実効レイティングは2723だった。

白 IMスティーブン・C・ジールク(FIDE2391、米国)
黒 GMニルス・グランデリウス(FIDE2500、スウェーデン)
世界少年少女チェス選手権戦オープン18歳以下、2010年

 白の手番

 戦力が不均衡な局面の形勢判断は難しいことがある。ここでは白の2個の小駒が明らかに協力していないので相手のルークと2ポーンより見劣りする。

25.h3

 25.g3 か 25.Re1 の方が先見の明があっただろう。

25…Ra5 26.Re1

26…Qxa4

 ここは 26…Rxa4 27.Qxb6 Rc8 28.Bb1 Qc6 と指した方が良かった。黒はクイーン交換を強制できて有望だっただろう。

27.Qxb6

27…Rf8

 黒はたぶん 27…Rc8 28.Ng6 Re8 29.Bxe6 で乱戦になるのを恐れていたのだろう。

28.Bb3 Qb5 29.Qe3 Qb4 30.Nf3 Rb5 31.Bc2 Qxb2 32.Qd3

32…Rfb8?

 ここは 32…g6 突きが必須だった。

33.Nd4!

33…g6

 もうこれより他にいい手がなかった。33…Re5 は 34.Qh7+ Kf8 35.Rb1 だし 33…R5b6 は 34.Qh7+ Kf8 35.Nf5 でやはり白の攻撃が圧倒的である。

34.Nxb5 Rxb5 35.Rb1 Qe5 36.Rxb5 axb5

 形勢は互角である。黒がポーンを突くのも難しいし、白のビショップも標的がない。

37.Kf1 Kg7 38.Qb3 Qc5 39.Ke2 b4 40.Qb2+ e5?

 これでビショップの利きが強力になって黒は坂道を転がり落ちた。

41.Bb3 Qb5+ 42.Ke1 Qc6 43.Kf1 Qa6+ 44.Ke1 Qc6 45.Kf1 Qa6+ 46.Kg1 Qd3 47.Qa2 Qc3

48.Kh2

 48.Bxf7? は 48…Qc1+ 49.Kh2 Qf4+ で良くない。

48…Qd4?

 48…Qc7 の方が良かった。

49.g3!

 思いがけない転換点だった。f7のポーンが動かなければならず黒キングの障壁が取り除かれる。黒の死は近い。

49…f5 50.Bg8! Kf6 51.Qf7+ Kg5 52.f4+ Kh5 53.Qxf5+ 黒投了

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(この号続く)

2011年07月20日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(132)

「Chess Life」2011年2月号(9/11)

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収局研究室

2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

逃がしたチャンス

 ジェフリー・ションは健闘した。最終的に9得点をあげ同点1位/2位になった。しかし順位判定システムにより2位になった。1位になっていたはずのもう0.5点はこの収局の盤上にころがっていた。

白 カメロン・ホウィーラー(FIDE1921、米国)
黒 ジェフリー・ション(FIDE1824、米国)
世界少年少女チェス選手権戦オープン10歳以下、2010年

 黒の手番

40…Rc7

 黒は交換損に対して2ポーンのほかにあり余るほどの代償がある。問題はナイトが釘付けにされていることだが、お勧めは釘付けをはずすために 40…Rc5 と浮く手である。それでも規定手数に達するために 40…Qc4 または 40…h6 と指しておいても態勢を悪くしないので無難だった。

41.g5 Qe7

 2駒を与えてルークとポーンを取るのは最善の作戦でなかった。41…h6 の方が良かった。

42.h4 h6 43.Rxc3 Rxc3 44.Rxc3 Bxc3 45.Qxc3 hxg5 46.hxg5 Qxg5

 通常は単独のビショップで3個のポーンから引き分けをもぎ取れる。クイーンが加わってもポーンが進むにつれて永久チェックの可能性ができてくるので状況は変わらない。

47.Kh2 Qh4+ 48.Bh3 Qd4 49.Qxd4 exd4

 黒のポーンはばらばらで容易にせき止めることができる。黒はわずかな勝つ可能性さえ失った。

50.Kg3 g5 51.Kf3 Kg6 52.Ke4 Kh5 53.Kf5 d3 54.Bg4+ Kh4 55.Bd1 d2 56.Be2 f6 57.Bg4 Kg3 58.Bd1 Kh3 59.Be2 Kg3 60.Bg4 合意の引き分け

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(133)

「Chess Life」2011年2月号(10/11)

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収局研究室

2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

進攻ポーン

白 ジェフリー・ション(FIDE1824、米国)
黒 ビクトル・ハリング(FIDE1893、スロバキア)
世界少年少女チェス選手権戦オープン10歳以下、2010年

 黒の手番

 e7のポーンが勝負を決める。

36…Nc6

 36…Nd7 37.Qh5 Nf6 の方が手数がかかるが 38.Qxa5 でしょせん負けである。

37.Qe6

 37.Ng6+ でもよい。

37…Nxe7

 他に適当な手がない。37…d3 は 38.Ng6+ Kh7 39.Nf8+ Kh8 40.Qg6!

で白の勝ちになる。

38.Qxe7! Qxe7 39.Ng6+ Kg8 40.Nxe7+

 白の駒得になって、黒のポーンを取りきるのはほとんど心配ない。

40…Kf7 41.Nc6 a4 42.Nxd4 a3 43.Kf1 a2 44.Nb3 Ke6 45.Ke2 g5 46.f4 Kf5 47.Kf3 h5 48.h3 Ke6 49.fxg5 Kd5 50.g6 Ke6 51.Kf4 黒投了

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(この号続く)

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世界のチェス雑誌から(134)

「Chess Life」2011年2月号(11/11)

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収局研究室

2010年世界少年少女チェス選手権(続き)

優良ナイト

 ケイデン・トロフも9点を獲得したが、受賞したのは銀メダル「だけ」だった。この収局には彼の熟練の技が見られる。

白 CMバハップ・サナル(FIDE2170、トルコ)
黒 ケイデン・W・トロフ(FIDE2216、米国)
世界少年少女チェス選手権戦オープン12歳以下、2010年

 黒の手番

44…Nd6!

 このナイトは攻防に効くので将来大きく役立つ。駒割は互角だが形勢はそうでない。白のd5のポーンが弱みになっている。

45.Re2

 ビショップを動かすとポーンを突かれ …Re5 が強手となるのでこう指すしかない。

45…Kc7

 補強としての黒キングの進出に対して白からの治療法はない。

46.Kc2 Kb6 47.b3 cxb3+ 48.Kxb3 Kc5 49.Kc2 Kc4 50.Re1 a5

 黒は性急にポーンを取って優秀なナイトをなくすようなことはしない。代わりに徐々に陣形を強化している。

51.Bg2 e4 52.Rd1 Nf5 53.Bf1+ Kc5 54.Rb1

54…Nd6

 これでも白の反撃の可能性を防ぐには十分である。しかし 54…Kxd5 55.Rb5+ Kc6

も …Ne3+ の狙いが残っていてよかった。

55.c4 Re5 56.Rb8 Rxg5 57.Ra8 Rg1 58.Be2 Rg2 59.Kd1 Kd4 60.Rxa5 Ke3 61.c5

 白は一息ついた。しかし問題は今度は詰みの包囲網に入っていることである。

61…Nf5 62.Bc4 Nd4 63.Ke1 Rd2 64.Be2 Rxe2+ 65.Kf1 Nf3 白投了

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(この号終わり)

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世界のチェス雑誌から(135)

「JAQUE」2010年10-11月号(1/1)

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オリンピアードのチク・タク・ティクス

白 ディエゴ・バレルガ(FIDE2508)
黒 中村龍二(FIDE2187)
ハンティマンシースク(第1回戦)、2010年9月21日

 白の手番

解答

詰み手順は一本道である 1.Bxh6! Bxh3 1…gxh6 2.Qxh6# 2.Be3+ Kg6 3.Qg5+ Kh7 4.Qh5# 1-0

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(この号終わり)

2011年08月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(136)

「Chess」2011年6月号(1/9)


左上から時計回りにべセリン・トパロフ(ブルガリア、2775)、ウラジーミル・クラムニク(ロシア、2785)、レボン・アロニアン(アルメニア、2808)、シャフリヤル・マメジャロフ(アゼルバイジャン、2772)、ガータ・カームスキー(米国、2732)、テイムル・ラジャーボフ(アゼルバイジャン、2744)、アレクサンドル・グリシュク(ロシア、2747)、ボリス・ゲルファンド(イスラエル、2733)

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挑戦者決定競技会

カザン流!しかしこれまでのところあまり魔法はなし

記 ジョン・ソーンダーズ

 タタールスタン共和国の首都カザンで5月3日から27日まで開催されたFIDE世界選手権挑戦者決定番勝負は始まる前からマグヌス・カールセンの不参加のために「プリンスなきハムレット」となることが約束されていた。本誌の原稿締め切り時点の第2「幕」(準決勝)の終わりまでには主要な登場人物が全然いないハムレットのようなものになった。脇役のローゼンクランツとギルデンスターンが意外にもまだ健在で、中央の舞台に踊り出て決勝戦を争うことになった。

 シェークスピアのおぞましい悲劇のような殺戮戦が多発したということでないことはもちろんである。4番勝負の準々決勝(それが四つ)、そして4番勝負の準決勝が二つなのに、正規持ち時間の24局中勝負がついたのはたった2局だった。6番勝負の決勝戦はしょっぱなから3試合連続引き分けだった。だから本号の印刷時点で27局中勝負がついたのは2局ということになる。

 何が良くないのか-方式かそれともグランドマスターたちか?たぶん両方少しずつなのだろう。1960年代からの10/12番勝負の挑戦者決定戦を覚えている我々はもう何年もがっかりさせられていて、こんな情けないほど不十分なミニ番勝負に幻滅して首を横に振らざるを得ない。始まるやいなや終わってしまい、「ドタバタ試合」で勝敗が決まったり、非美的なブリッツのくじで決まったりする。こんな時代に権力者たちが世界チャンピオンを決めるのに12番勝負で十分と考えているわけで、それすらも適切だとは思えない。

 嘆きはこのくらいにして現実を見ていこう。


挑決準々決勝第2回戦の試合開始を待つ選手たち

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(この号続く)

2011年08月24日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(137)

「Chess」2011年6月号(2/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第1組
トパロフ 2775 1½-2½ カームスキー 2732

 競技会開始時の本命の一人はブルガリアのスターで元FIDEチャンピオンのべセリン・トパロフだった。対戦相手のガータ・カームスキーに対しては2009年に 4½-2½ で破ってビシー・アーナンドとのタイトルマッチに進んでいたので、準々決勝を通過するのは確実と見られていた。懸念材料は成績とレイティングが昨年あたりから少し下り坂ということで、一方ガータ・カームスキーの方はほぼ安定した調子だった。第1局は激闘だった。トパロフが交換損の代わりに1ポーンを得たが、最終的に引き分けに落ち着いた。第2局はトパロフの白で、勝ちを目指すものと見られていた。しかしいつもと違って彼の研究手順には大きな穴があることが判明して、カームスキーの痛烈な指し回しにたじたじとなった。トパロフは盛り返すことができず、米国に帰化したカームスキーが早くも番勝負で思いがけないリードを奪うことができた。


カームスキーとの第2局で追い詰められたトパロフ(左)

解説 IMリチャード・パリサー

準々決勝第1組、第1局
V・トパロフ - G・カームスキー
グリューンフェルト防御

1.Nf3 Nf6 2.c4

 トパロフはこの面白い手順を選んだ。かつて2009年の番勝負では 1.d4 と指していた。しかしカームスキーのグリューンフェルトを打ち破ることができずあとで 1.e4 に変えていた。明らかにブルガリア人選手は今日までの間グリューンフェルトの主手順に突破口を見い出せなかった。しかしカームスキーがグリューンフェルトの陣形にこだわるならば、巧妙なよくある手順によって-もしもだが-白の選択肢が増えることを期待している。

2…g6 3.Nc3 d5

 カームスキーは米国ナンバーワンとしてはナカムラに取って代わられたかもしれない。しかし彼の経験はトパロフにとって常に油断のならない相手になってきた。今回もグリューンフェルトの主手順の定跡の戦いから手を引くことを拒否した。忘れてならないのはカームスキーの協力者のエミル・ストフスキーは長い間この布局の主要な信奉者であるということである。

4.cxd5 Nxd5

5.Qb3!?

 詳しく研究されている定跡手順の 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.d4 c5 8.Rb1 は近年黒にとって問題ないとされていて、トパロフの好むところではない。代わりに中央のポーンを突く前に黒ナイトを追い返す方を選んだ。勝たなければならない状況に立たされた第4局ではもっと珍しい手の 5.Qc2!? を選んだ。この手は一見なんでもないように見えるが、黒がどのように駒を展開したら良いかはそれほど明快でない。5…Bg7(5…c5?! は 6.Nxd5 Qxd5 7.e4! で早くも白がしっかりと主導権を握る。しかしたぶん黒は 5…Nc6!? とした方が良いかもしれない。6.d4 なら 6…Ndb4 である)6.e4 Nb6 7.d4 となれば白は中原に2ポーンを並べるという目的を達成している。そして 7…O-O 8.Be3 Bg4 9.Ne5! Bxe5 10.dxe5 Nc6 11.h3 Be6 12.Rd1 Qc8 13.f4

で白が楽に優勢になった。もっとも勝負はいくらか劇的な乱闘のあと引き分けに終わった。

5…Nb6 6.d4 Bg7

7.Bf4

 この手が悪いとはとても言えないが、7.e4!? もあると思う。7…Bxd4?!(眼目の 7…Bg4 は 8.d5 c6 で根拠をぐらつかせることを期待しているが、それでも 8.Ng5! O-O 9.h3 で互角には十分でないかもしれない)8.Nxd4 Qxd4 9.Be3 Qd8 10.Rd1 Bd7 11.Be2

はポーン損でも十分やれるだろう。黒はキング翼が弱く、展開が制約を受け、頃合を見計らった Nd5 も狙われている。

7…Be6 8.Qa3 Nc6!?

 カームスキーはトパロフの選択した初手に少しはめられたのかもしれないが、賢明にも以前に指したことがあり少し研究したに違いない指し手を堅持することにした。代わりに2010年ハンティマンシースク・オリンピアードでの強豪同士のイワンチュク対バシエ=ラグラーブ戦では別の 8…O-O が指された。そして 9.e3 N8d7 10.Rd1 a5 11.Ng5! Bd5 12.e4 Bc4 13.h4 Bxf1 14.Kxf1

となって白が早くもはっきり有利になった。

9.O-O-O?!

 この手は紛れもなくチーム・トパロフの研究の所産で、評価記号は少し辛いかもしれないが私はとにかくこの手が気にいらないのである。急に黒の小駒の利きが目立つようになり、aポーンを活用することによりカームスキーが迅速にかなりの反撃を図ることができるようになった。以前にイワンチュクはカームスキー戦でもっと自重した 9.e3 の方を選んだ。その試合(2009年イェルムク)は 9…a5 10.Be2(のちにカームスキーは2009年オフリートでのヨーロッパ・クラブカップ大会のエリャーノフ戦で 10.Bb5 と指され、10…O-O 11.Bxc6 bxc6 12.Qc5 Nd5 13.Be5 Nxc3 14.Qxc3 Bd5! 15.Bxg7 Kxg7 16.O-O Bxf3 17.gxf3 Qd5

と進んで黒は十分に反撃ができ、実際まもなく引き分けになった)10…Nb4! 11.O-O!? c6(これはまともな手だが、11…Nc2 12.Qc5 Nxa1 のあと例えば 13.Nb5 Nd5 14.Nxc7+ Nxc7 15.Bxc7 Qd5 16.Bb5+ Kf8

は本当に白が交換損の代わりに十分な代償を得ているのだろうか)12.Ng5 Bd5 13.Rfc1 h6 14.Nge4 Nc4 15.Nxd5?

(いかにイワンチュクでもこの手は無茶である)15…Nxa3 16.Nc7+ Kf8 17.bxa3 Nd5 18.Nxd5 cxd5 19.Nc5 b6 20.Bc7 Qe8 21.Bxb6 Kg8

と進み、白はクイーンの代償が十分でなかった。だから 9.e3 を改良したいというトパロフの願望はよく分かる。しかし残念ながら彼の選択は私でも分かるようにうまくいかなかった。

9…Nd5!

 カームスキーは最も働いていない小駒を迅速に改善した。ここからの彼の2、3手は強く印象に残る。以前のカームスキーとの対局からトパロフは相手を熟知していると思われたが、この試合から見る限りそうではないようである。勝負の世界に戻って以来カームスキーの「ファーストサーブ」は特に強いということはなかった。得意の捌きと大局観の技量に物を言わせるために、不均衡でかなり未踏の局面に分け入っていくことがよくあった。もちろんこの番勝負のためにストフスキーと何日も研究したことだろう。しかし私の考えではトパロフはこんな早い段階で未知の戦いに踏み込むよりも定跡の差し手争いに突き進んだ方がずっと良かっただろう。

10.Bg3 Bh6+

11.e3

 白としては 11.Kb1?! と寄ってeポーンを2枡突く選択肢を残したいのだが、11…Bf5+! 12.Ka1?!(1ポーンを捨てて 12.e4 Nxc3+ 13.Qxc3 Bxe4+ 14.Ka1 と指す方が良い)12…Ndb4 のあとc2の地点の弱点が目立つ。このあと 13.Ne1 は 13…Bc2! で白駒いじめが続く。

11…a5!

 b4の地点に便利な拠点が確保された。これでちょうど前述のイワンチュク対カームスキー戦のように白クイーンがa3の地点で少しのけ者になり始めた。トパロフは研究で何を見逃した、あるいは過小評価したのだろうか、それともまだ研究手順の中なのだろうか?

12.h4!?

 これは非常に積極的な手である。しかしトパロフのような攻撃的な選手が 12.Kb1 Nxc3+ 13.Qxc3(13.bxc3!? は 13…Bf5+ 14.Bd3 Bxd3+ 15.Rxd3 e6 で黒陣が十分な態勢になり、白のクイーン翼の弱点がいつかまた悩みの種となるかもしれない)13…Nb4 14.a3(14.Bc4 Bf5+ 15.Kc1 なら千日手にならないが、15…O-O 16.a3 Nd5 17.Qb3 Nb6 18.Bd3

のあと黒に 18…a4 19.Qc2 Qd5!? と白枡で締め付けられたら白は本当に優勢を云々できるのだろうか?)14…Bf5+ 15.Ka1 Nc2+ 16.Ka2 Nb4+!

で黒に早々と引き分けにされるのに満足するとは思われない。

12…Ncb4

13.h5?!

 この手が指し過ぎであることは確かで、形勢は白が完全に悪い。ここでは 13.Ng5! で黒駒を乱す方が良い方針だった。13…Bg4(13…Qd7 はもっと堅実で、14.Nxe6 Qxe6 15.Bc4 c6 でほぼ互角である)14.f3!? Nxe3 15.fxg4 Nxd1 16.Qa4+! c6 17.Qxd1 f6 18.Kb1

で乱戦になる。しかしビショップがc4とe5に来れば白は交換損でも十分戦えるはずである。

13…c6

 これは色々な目的を持った好手である。黒は白枡での締め付けを強め好機の …b5 突きの可能性を作りながら、白が次に何をするのかを見ている。もちろんaポーンはタブーである。13…Nxc3?! 14.bxc3 Nxa2+? 15.Kd2 でナイトが Ra1 で捕まる。

14.hxg6 hxg6

15.Rd2

 これはかなり指し難い手である。しかしあえて言うとトパロフはまともな作戦に詰まって、c2の地点での危険な可能性を避けたかっただけである。たぶんここでも 15.Ng5!? と指すのが良かっただろう。もっとも今度は 15…Bf5 16.Bc4 f6! 17.Nge4 Kf7 となって、…b5 突きの狙いのある分私なら黒を持つ。

15…f6!

 黒は冷静に有用な地点を支配し、…Kf7 の余地を作りつつ白のキング翼ナイトの動きを制限した。

16.Ne4

 このナイトはc5の地点を目指してはいない。もっとも白はこのようにして少なくとも当面は …b5 突きをなくしている。代わりに 16.Be2 Kf7 17.Rh4 は白のキング翼の駒の働きを良くする適切な手段に見える。しかし 17…b5! 18.Ne4 g5! 19.Rh2 g4 で黒がすばやく主導権をしっかり握ってしまう。なぜなら 20.Ne1 Nxa2+ 21.Qxa2 Nxe3 22.Qb1 Nc4 23.Rxh6 Rxh6

は、キングがはるかに安全でルークがh1の地点に侵入する態勢なので黒の方がいくらか優勢に違いないからである。

16…b6 17.Be2

17…Qc8!

 これは先受けであるとともに、相手の手を消すのに役立っている。カームスキーは 17…Kf7 と指したかっただろうが、そうすると 18.Rxh6! Rxh6 19.Neg5+! fxg5 20.Nxg5+ で白が望外の暴れ方ができる。20…Kf6? 21.Be5+! Kxg5

は明らかに黒の好むところではないだろう。

18.Rh4 Kf7

 もうキングが安全にf7の地点に行ける。トパロフは駒の連係がかなり良くないので、全面的に撤退を行なう。

19.Rd1

19…g5!

 全面的にトパロフを圧倒したカームスキーは今が打って出る頃合だと判断した。もっとも冷静な 19…Bf5!? 20.Nc3(20.Nfd2 Qe6 21.Rdh1 Kg7 は白の改良になっていない。20.Ned2 c5! も同様である)20…Qe6 にもひかれたに違いない。実際実戦の手よりも劣るとは思われない。急にe3の地点に露骨な一撃が出現し、21.Nd2 Nc2! 22.Qb3 a4 のあと白の危険な状態が続く。23.Qc4 b5 24.Qc5 Ncb4 25.e4 Nxc3 26.bxc3 Bxd2+ 27.Kxd2 Rxh4 28.Bxh4 Na6

でついに何かが(a2かe4の地点で)落ちる。

20.Rh2 g4

 黒は白駒を押し返し、20…Nxa2+ 21.Qxa2 Nc3 の筋もうまく避けた。22.Qxe6+! Qxe6 23.Nxc3 となると白がクイーンを犠牲に3駒を得てわけの分からない局面になる。

21.Nfd2 c5!

 中央自体だけでなく両翼でも非常に効果的に駒を動員することにより中央を制圧したカームスキーは、局面を解放することによりグリューンフェルトの本来の威力を存分に見せつける。

22.dxc5

 これはトパロフが好き好んで指すような手ではないが、22.Nc4 cxd4 23.Kb1 Kg7!(d6の地点からのチェックをかわした)24.Rxd4 b5 では白の余命がいくばくもない。

22…f5 23.Rxh6

 白はこう指すよりなかった。しかしこの決死の交換損でも白は助からない。白は陣形が非常に悪いのでナイトの安全な逃げ場所は 23.Nc3 しかないが、そうすると 23…Qxc5 24.Kb1 Bg7 で機銃掃射のようなビショップを単純だが非常に効果的に用いることにより、白陣が破壊される。

23…Rxh6 24.Ng5+ Kf8 25.Nxe6+ Qxe6 26.Bc4

 トパロフはc列をふさぎようやくビショップを働かせることにより自分の狙いを作り出すことに期待をかけている。しかしカームスキーは慌てふためくような人間ではなく、落ち着いて試合を締めくくった。

26…Rc8 27.Bf4 Rf6 28.e4

 これは一発逆転を期待した最後のあがきである。代わりに 28.Kb1 は 28…Rxc5 でc4のビショップを狙われ、29.Qb3 Qc6 30.a3(または 30.Be2 Nxf4 31.exf4 Qxg2)30…a4 31.Bxd5 Nxd5 で白の絶望の局面になる。

28…Rxc5! 29.exd5 Qxd5

 白はこのような活発な軍勢を前にして戦力得を長く保つことができないのですぐに勝負がつく。実際トパロフがこれ以上苦難を続けないようにここで投了しても誰も驚かないだろう。

30.b3

 これで黒がクイーン翼に侵入することになるが、30.Qb3 b5 31.Kb1 bxc4 32.Qc3 Qd3+ でも明らかにまったく絶望である。

30…Qd4 31.Be3 Qc3+ 0-1

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(この号続く)

2011年08月31日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(138)

「Chess」2011年6月号(3/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第1組
トパロフ 2775 1½-2½ カームスキー 2732(続き)

 通常の持ち時間の試合は残り2局しかなく、トパロフはずっとショックから立ち直れなかった。第3局ではまたナイドルフのあまりはやっていない戦型になった。カームスキーはちょっとまずそうな局面もあったが、引き分けにするには十分だった。それでトパロフは第4局で勝たなければならない状況になった。今度はかつての絶好調の状態に戻っていて、カームスキーをあわやというところまで追い詰めたがポカが出てしまった。快速の決定戦に持ち込むのは確実に思われたが、ブルガリア選手の彼らしくないためらいで好機をつぶした。


トパロフ対カームスキー戦の第4局。カームスキーが 38…N7c6?(下図参照)と指したところで、彼の残り時間が7秒しかないところが映っている。挑決競技会のビデオストリーミングは最高の品質で、観戦者は対局の模様をはっきり見ることができた。

準々決勝第1組、第4局
V・トパロフ - G・カームスキー

38…N7c6?

 制限時間の直前の難しい局面でカームスキーは間違えた。38…Bb3 で 39.Qd8 のような手に 39…Qc8 を用意するのが正しかった。

39.Qd6!

 これで黒キングが非常に危うくなってきた。

39…Ke8 40.Nc7+ Kf7 41.Nd5 Qe2

 黒は自分のキングを守れないので敵キングを攻撃するようにした方がよい。

42.Qxf6+ Ke8 43.Qe6+ Kf8

44.Kg1?

 トパロフは攻撃的で決断力があることで定評がある。しかしここでは迷って好機をつぶした。それはともかく手順の中には難しいものがある。例えば 44.Qh6+ Kf7 45.Qh7+ Kf8 46.Qh8+ Kf7 47.Bg1!

このあと 47…Nf3+ 48.Kh1 Nxg1 49.Qf6+ からすぐに詰みになる。

44…Qd1+ 45.Bf1?

 まだ 45.Kh2 Qe2 46.Qh6+ とやり直して勝ちになる余地があった。

45…Bxd5!

46.exd5

 46.Qxd5 は 46…Qxd5 47.exd5 Ne7 48.Be2 Nxf5 49.Bxh5 Ke7

で黒が受かる。

46…Nd4!

 黒が …Nf3+ の狙いでe5のナイトを守ってたちまち自分の問題を解決した。

47.Qf6+ Kg8 48.Qxg5+ Kf7 49.Qd8 Qc2!

 巧妙にc7の地点に利かした。d4のナイトは …Nf3+ から …Qh2# があるので取られない。

50.Bg2 Qc1+ 51.Kh2 Qc2 52.Bg1 Ndf3+ 53.Kh1 Ne1

 ここでは戦術の策略でしのぎを図るのは白の番である。

54.Bf2! Qxf2 55.Qc7+ Kf6 56.Qd6+ Kf7!

 当然ながら絶対手である。

57.Qc7+ Kf6 58.Qd6+ Kf7 ½-½

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(この号続く)

2011年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(139)

「Chess」2011年6月号(4/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第2組
マメジャロフ 2772 1½-2½ ゲルファンド 2733

 他に正規持ち時間の試合で決着したのはシャフリヤル・マメジャロフの試合だった。彼は「主催者推薦」枠で大会に出られたのであまり文句を言えなかった。つまり自国のチェス連盟が彼を出場させる特権のためにお金を払っていたのだ。初戦は白で有利な局面になったが、結局百戦錬磨のイスラエル選手の巧みな防御を打ち破ることができなかった。第2局では立場が逆転したが、ゲルファンドが中盤で優勢になったときはマメジャロフも受けに回った。マメジャロフの運命を決した試合は第3局だった。この試合は諸刃の剣の局面の守り方とそのあとのけりのつけ方の絶好の例だった。これまでのところこの競技会随一の試合である。


第3局。ボリス・ゲルファンド(右上)戦で敗北の瀬戸際に立たされているシャフリヤル・マメジャロフ(左上)。ビデオストリームが解説者の変化図も映している。

解説 IMリチャード・パリサー

準々決勝第2組、第3局
S・マメジャロフ - B・ゲルファンド
シチリア防御ナイドルフ戦法

1.e4

 マメジャロフは 1.e4 を堅持した。彼が第1局でこれを用いたときはちょっと驚きだった。

1…c5

 そして観戦者にとって嬉しかったことは、ゲルファンドが最近しばしば愛用しているペトロフ防御を避けて昔から得意にしていたナイドルフ戦法を堅持したことである。

2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6

6.Bc4

 これはフィッシャーの得意とする手だった。第1局ではかなりはやりの 6.Be3 e5 7.Nf3 から白が有利になった。しかしゲルファンドは完全に互角になる最も正確な道筋を示す用意をしているに違いなかった。

6…e6 7.Bb3 b5 8.O-O Be7 9.Qf3 Qc7 10.Qg3

10…O-O!?

 黒は最も激しい手を選択した。この経験豊富なグランドマスターは明らかに相手の研究の深さを試したかった。代わりに 10…Nc6 は 11.Nxc6 Qxc6 12.Re1 Bb7 13.a3(13.Qxg7 とポーンを取る方がきつい手だがかなり危険でもある)13…Rd8 14.f3 O-O 15.Bh6 Ne8 16.Rad1

となって白が少し有利だが、黒はある程度正確に指している限りたいして問題はない。

11.Bh6 Ne8 12.Rad1

12…Bd7!

 これは役に立つ準備の手である。代わりに 12…Nc6 は 13.Nxc6 Qxc6 14.Nd5! で黒は 14…Bd8 と退却させられる。

13.f4!?

 今度はアゼルバイジャン選手が最も激しい手を選ぶ番である。白が単なる駒の戦いで満足ならば通常は 13.Nf3 か 13.a3 と指す。

13…Nc6

14.f5

 これは一貫性のある手だがたぶん最も厳しい手ではない。セルゲイ・ルーブレフスキーがこの得意の 6.Bc4 戦法で鋭い着想の手を指すときはいつでも起きて注目しなければならない。2010年寧波でのルーブレフスキー対プー・シャンチーの快速戦では 14.Nxc6!? Bxc6 15.f5 Kh8 16.f6! gxh6 17.fxe7 Qxe7 18.Qf2 Ng7 19.Qd4 Rac8 20.a3

と進んで白が大局を支配しポーン損ながらも有利に戦えた。プーは 20…Qg5! で積極的な防御に努め 21.Qxd6?(ここは 21.Rf2! が良く、21…a5 なら ChessPublishing のウェブサイトで指摘したように 22.Qxd6 Rfd8 23.Qf4 で白が優勢を保持しただろう。黒の15手目ではもっと良い手を見つけるのが困難なので、ゲルファンドは考えを異にしていたか、少なくとも収局になれば守りきれるはずだと思っていたとしか想像できない)21…Nf5! 22.Qe5+ f6 23.Qxe6 Ne3 ですぐに戦力得になった。

14…Nxd4!

 このスヘーフェニンゲン態勢での常套手段により簡単に互角になる。

15.Rxd4

15…Kh8!?

 これは新手である。もっともこのナイドルフ専門家がずっと前から研究していた構想だったのかそれとも対局中にひらめいたのかは残念ながら分からない。前例では2001年アスタナでの重要度で引けを取らないモロゼビッチ対カスパロフ戦で表向きはもっと攻撃的な 15…Bf6 が指され、16.Rd3 Be5 17.Qg4 b4! 18.f6 g6 19.Ne2 a5 20.Bxf8 Kxf8

となって …a4 突きの狙いで黒の反撃が有望になった。

16.Be3

 ビショップがおとなしく引き下がったが、恐らくマメジャロフは本筋の 16.f6!? に確信が持てなかっただけなのだろう。ゲルファンドの読みは 16…Bxf6 17.Rxf6 Qc5! に違いなく、白は両方のルークを助けることができないので 18.Bxg7+(18.Ne2!? e5 19.Rfxd6 exd4 20.Rxd7 gxh6 21.Rd5

と指すものかもしれない。ここでは白の方が良いとは明らかに言えないが、白には交換損に対する適正で長期的な代償があるのは確かで、たぶん結果として生じる開放的な局面は実戦よりもマメジャロフにもっと適していただろう)18…Nxg7 19.Qf2 Qe5

と行くしかなく、クイーンが絶好点にいてクイーン翼で進攻する用意ができているので黒が良さそうである。

16…Nf6 17.Qh3?!

 これでは黒に中原を爆破させてしまう。しかしたぶんこのような局面でのマメジャロフの経験不足が影響し始めたのだろう。よくある先受けの策略は 17.a3!? 突きである。もっとも黒は 17…a5 と突いて何か問題があるとは思われない。

17…d5!

 急に黒の駒が活気づき、白のクイーンが黒の白枡ビショップと同じ斜筋に移動したことを後悔することになった。

18.e5!?

 恐らく白の前手はこの攻撃的な着想の準備のために指されたのだろう。それは絶対確実ではないかもしれないが、18.exd5 では 18…exf5 19.Rd3 Rae8! から …Bc5 で黒が有利な要素を得て局面を支配しただろう。

18…Qxe5 19.Rh4 Rfc8

20.Kh1?!

 この手は遅く感じられる。白の白枡ビショップが働いていず白がちょうど中原のポーンを犠牲にしたことを考えれば特にそうである。重大な試練は 20.Bg5 に違いなかったが、20…Kg8(20…h6 は 21.Rxh6+! gxh6 22.Qxh6+ Kg8 23.fxe6 fxe6 24.Bxf6 Bxf6 25.Rxf6

となって黒が 25…Rf8 と指すしかなく白は強制的に引き分けにできる)21.Bxf6 Qxf6!(21…Bxf6? は 22.Rxh7 Kf8 23.fxe6 Bxe6 24.Nxd5!

で白の休眠中のビショップが息を吹き返して威力を発揮する)22.Rxh7 g6
で黒が受かっているようである。それはそうとして、23.Kh1(ここで初めて白はキングを動かして …Bc5+ から …Bd4 の着想を消す)23…Rxc3 24.bxc3 Bc6 25.Qd3 gxf5 26.Rh3

のあと状況はまだまったく不明である。

20…Rxc3!

 この一撃にマメジャロフは驚いた様子がなかったが、たぶんそのあと何かをするのがどれほど大変かを過小評価していたのであろう。

21.bxc3 Qxc3

22.Rd4?

 黒は交換損の代わりに2個の良形のポーンを得ているだけでなく、白の白枡ビショップをいくらか働かなくさせて局面をある程度支配している。それは面白いことではなかっただろうがしかし白はひれ伏して 22.Bd4! Qxh3 23.Rxh3 と指してみてもよかった。そのあと 23…a5 24.c3 Ne4 25.fxe6 Bxe6 26.Rd3

となれば黒は交換損の代わりに有望な戦いに持ち込めるが、ここで白が少しどころでなくもっと悪ければ驚くところである。

22…a5!

 痛たた。突然あのビショップが急に危機に陥った。

23.Rd3

 この手はビショップをc2に引く準備だが、中原を黒に席巻させる犠牲を払っている。代わりに 23.a4 と突く手は 23…bxa4 24.Bxa4 Bxa4 25.Rxa4 Bb4 から …Ne4 となって黒が盤上を支配しただろう。白のルークは長期的にはaポーンを止めるのにまったく適していない。

23…Qc6 24.c3 a4! 25.Bc2 e5

 Hiarcsの最新版を動作させると黒が「+1.50」だけ優勢だと言うが驚くには当たらない。白のクイーン翼は弱く、白駒はまったく連係が悪く、遅かれ早かれ黒は中原および/またはクイーン翼で突破を図ってくる。

26.Bg5 b4 27.Qh4!?

 マメジャロフはすてばちになった。しかし誰が彼を責められようか。クイーン翼は長持ちしない。

27…bxc3 28.Rh3 Kg8

29.Re1

 白にとっては残念なことに 29.Bxf6 Bxf6 30.Qxh7+ Kf8 と追及しても黒キングはe7の地点で完全に安全なのでなんにもならない。

29…e4!

 ゲルファンドはこれらのポーンを突き進め主導権を取り戻す機会だと判断した。

30.g4 Kf8!

 良い手はこの手に限らないが、チェックでh7のポーンを取られるのを防ぐのは悪い考えであるはずがない。それにゲルファンドにはこれから出てくる魅力的な後続手段が既に見えていたのではないかと思う。

31.Be3 Qc4 32.g5 Bxf5! 33.gxf6 Bxf6 34.Qh5 Bg6!

 これで万事良しである。局面を完全に支配し、ルークの代わりにa2で6個目(!)のポーンを取ることができるのだから、h3で交換損を取り戻すことなどない。

35.Qg4 Qxa2 36.Bb1 Qc4 37.Qg2 a3

 これはゲルファンドの高度に美的な指し回しの論理的な継続手である。白はaポーンを止めることはできるが、津波のように押し寄せる黒の中央のポーンを長く防ぐことはできない。

38.Ba2 Qc6 39.Rg3 Rb8 0-1

 40.Bc1 Rb2 41.Bxb2 axb2 のあと白はルーク得と交換得になっているかもしれないが、黒の得しているポーンはあまりにも多すぎる。「デイリーテレグラフ」紙の自分のコラムでマルコム・ペインは 42.Bb1 Be5 43.Rge3 f5

というこぎれいな手順を指摘した。これは「すばらしいとしかいいようがない。」実際これらのポーンを止めるすべはない。

 これでマメジャロフには最終局で超堅実なゲルファンドに黒番で勝たねばならないという非常に難しい課題が残された。彼はかなり露骨なキング翼の進攻をやってみたが、全然うまくいきそうになく、ポーンを損し引き分けにすることに成功しただけだった。それもゲルファンドが準決勝に進むには引き分けで済むからだった。

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(この号続く)

2011年09月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(140)

「Chess」2011年6月号(5/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第3組
アロニアン 2808 3½-4½ グリシュク 2747

 レボン・アロニアンは参加者中唯一の2800超選手として、それに全般的に絶好調で、競技会開始時点では本命とみなされていた。グリシュクがチェスとポーカーに時間を分けて二足のわらじを履くスーパーGMという評判なのでなおさらだった。第1局の大部分は予想通りに推移していた。アロニアンはポーン得し、腰を落として勝ちにいった。しかしトパロフの最終局のように勝ちが確実に思われたちょうどその時に着手が乱れた。

準々決勝第3組、第1局
L・アロニアン - A・グリシュク

47.Kb3?

 ファビアノ・カルアナは ChessBase のウェブサイトでの解説で 47.Nc2! のことを次のように言った。「即勝ちである。実際読むべき変化はない。白は Kb3 でa3のポーンを取りに行き、黒は何もすることがない!」

47…Nc5+ 48.Kxa3 Nxe4 49.Rd4 Nd6 50.Ka4 Ke6 51.Ka5 Rc5+

51.Ka6

 51.Kb6 なら1手得していた。

52…g5 53.a4 Ke5

54.Rd2?!

 このルークはもう1段下に下がったほうが良かった(黒キングにいじめられるかもしれないので)。54.Rd1 Rc4 55.Rb1 から Kb6 でaポーンを突き進めていけばよい。

54…Rc4 55.Ka5

 代わりに 55.Rb2 は 55…Kd4! で …Kb3 や(局面によっては)…Kb5 を狙われる。

55…f5 56.Rc2 Kd4 57.Rd2+ Ke5 58.Nd3+ Kf6 59.Kb6 Nc8+ 60.Kb7 Nd6+ 61.Kc7 Ne4 62.Ra2 Nc3 63.Rb2 Nxa4 64.Rb4 Rxb4 65.Nxb4 Nc5 66.Kb6 Ne6 67.Nd3 h4

68.h3

 ここで 68.c7 と突いて駒得をしない理由はなかった。

68…Ke7

69.Nc5?

 白はここで間違えた。もっとも読者の分析エンジンもこの手を指したがるかもしれない。勝つには 69.Ne5! と指さなければならなかった。黒はうまく c7 突きを止めることができない。69…Kd8 なら 70.Nf7+ Kc8(70….Ke7 なら 71.Nxg5! が強烈なおびき寄せの手筋になる)71.Nd6+ から 72.Nxf5 で白の勝ちになる。

69…Nxc5 70.Kxc5 Kd8 ½-½

 もう何もすることがない。黒は …g4 と突きポーンを交換し、引き分けの端ポーン収局になるだろう。アロニアンは再三勝つ機会があったのに勝てず、がっかりしたに違いない。

 アロニアンは第2局の黒番では引き分けに満足し、第3局の白番のためにエネルギーを温存した。その第3局では第1局のようにポーン得になったがまたも物にすることができなかった。最終第4局では黒で引き分けに甘んじた。これで決着のために快速の4局を指さなければならなくなった。


アロニアン(左)対グリシュク戦の第1局の終局間際。アルメニアのスーパーGMは勝ちを逃がしたことに気づき始める。

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(この号続く)

2011年09月21日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(141)

「Chess」2011年6月号(6/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第3組
アロニアン 2808 3½-4½ グリシュク 2747(続き)

 快速4番勝負とブリッツ戦は正規の試合が終ったあと日をあらためて行なわれた。快速戦の持ち時間は25分と10秒の毎手加算で、必要ならば1回戦が2試合から成るブリッツ(5分と毎手3秒加算)が5回戦まで行なわれる。それでも差がつかなければ1局の一発勝負ですべてが決まる。持ち時間は白が5分で黒が4分(60手を過ぎると毎手3秒加算)、盤上引き分けは黒の勝ちになる。

 規則では選手たちは試合の間に一定の休憩時間が与えられていた。しかしこの取り決めは二組の決定戦が並行して行なわれているときに思わぬ障害に出くわすことになった。これが起こったのはクラムニク対ラジャーボフの快速戦がアロニアン対グリシュクの快速戦ほど時間がかからなかったためだった。その結果アロニアンとグリシュクがやっと4局の快速戦の中頃のとき、クラムニクとラジャーボフがブリッツ戦のために席に着いた。

 グリシュクはこの問題を記者会見の時に持ち出した。「特に審判にこの問題に対処していただきたい。一方で快速戦を対局している間に他方でバンバンバンとやるようなことはなくしてもらいたい。最終局では集中できなかったし、レボンも同じだ。レボンはしかめ面をしていたし、彼も私のしかめ面を見ることができた。もちろん10分の試合時間の選手が別の組のために30分待つ必要はないのは当然の考え方だが、このやり方には耐えられなかった。」

 両選手には同情せざるを得ない。グリシュクとアロニアンは他組の対局時計の故障による騒ぎも我慢しなければならなかったのだからなおさらである。この件についてはもっと後で話すことにする。しかし大会役員たちは選手の不満に耳を傾け、準決勝の延長戦のやり方は変更されて異なる組のブリッツによる決定戦は同時に始められることになった。

 快速戦第1局はアロニアンの白だったが、メロディーアンバーでの調子を失っていたことがすぐに明らかになった。戦型は対称形イギリス布局だったが、白はすぐに狭小で嫌な陣形に陥り、黒が両翼で白を苦しめることができた。もがいたけれどもグリシュクの締め付けをほどくことができず負けた。第2局では黒番で準スラブの少し無理気味の戦型をやってみたが、思いがけず効果的だった。正規試合の2局のようにポーン得になったが、迷ったりためらったりするための時間が少なかったのでグリシュクを押しまくり対戦成績を互角に戻した。第3局はついにアロニアンが対戦成績を有利にするように思われたが絶好の機会を逃した。

準々決勝第3組、快速戦第3局
L・アロニアン - A・グリシュク

31.Be5?

 試合終了後ピョートル・スビドレルがアロニアンの見落としを指摘した。31.Qc3! Nxd6(31…Qxa4 は 32.Nxf7! Kxf7 33.Re4 Qd7 34.c6 Qc7 35.Qc4+

ですぐに詰みになる)32.c6 Qc7 33.Re7!

から 34.c7 で2ルークの両当たりになる。しかしグリシュクがあとで言ったように、特に快速の持ち時間では「このような手を見落としたからといって誰をも批判することはできない。」

31…Nxd6 32.cxd6 Qxa4 33.Bf4 h6 34.h4 Qb5 35.Qd1 Rb7 36.Rc2 Rbd7 37.Rc7?!

 これはポーン損になるが収局は負けではない。

37…Bxd6 38.Rxd7 Qxd7 39.Qxd6 Qxd6 40.Bxd6 Rxd6 41.Re8+ Kh7 42.Re7 Kg6 43.Ra7

 さらに18手指して引き分けになった。


開始直前のアロニアン対グリシュクの延長快速戦の審判を務めるスコットランドのアレックス・マクファーレン。後で審判と選手たちの間で「騒音禁止」がちょっと問題になった。

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(この号続く)

2011年09月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(142)

「Chess」2011年6月号(7/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第3組
アロニアン 2808 3½-4½ グリシュク 2747(続き)

 アロニアンは初戦とほとんど同じようにかなり乱調で快速戦を終えた。しかしほめるべきは模範的な指し方をいくつか見せてくれたグリシュクだった。ビシー・アーナンドは家で観戦していたはずだが、レイティング上位者が前挑戦者のあとを追って大会から姿を消すのを見ることになった。カールセン、トパロフそれにアロニアンがいなくなって彼の選手権防衛の可能性はずっと高まった。アロニアンの落胆は大きかったに違いないが、敗北にも悪びれなかった。「延長戦は面白かった。もちろん最終局はひどかったし初戦もそうだった。しかし第2局と第3局の内容にはおおむね満足している。たぶんプレッシャーにまったく対処できなかったということだろう。正規戦でも快速戦でもサーシャ(アレクサンドルの愛称)の防御は素晴しかった。非常に苦しい局面も少しあったが彼はうまく負けをまぬがれた。」

準々決勝第3組、快速戦第8局
A・グリシュク - L・アロニアン
クイーン翼ギャンビット拒否

1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 e6 4.Nc3 Be7 5.Bf4 O-O 6.e3 Nbd7 7.c5 c6 8.h3 b6 9.b4 a5 10.a3 Ba6 11.Bxa6 Rxa6 12.O-O Qa8 13.Rb1 axb4 14.axb4 Qb7 15.Qc2 Rfa8 16.Ne1

16…Bd8

 2003年レオンでのポノマリョフ対バレホ・ポンスの快速戦では 16…b5 が指され白が勝った。グリシュクはアロニアンの新手を良い手だとは思わなかった。

17.Nd3 Ra3 18.b5!

 ギャンブラーのグリシュクは仕掛けに踏み切った。

18…bxc5

 18…cxb5 は 19.Nxb5 Ra2 20.c6! で応手に窮する。

19.dxc5 Be7 20.Rfc1

 グリシュクは後にコンピュータ選択の 20.Nb4 の方が良かったと思った。もっともロシアの著名な解説者のセルゲイ・シポフはこの考えに同調しなかった。

20…g5!

 アロニアンは快速戦第1局のようにつぶされる危険性を感じたので反撃に出ることにした。

21.Bg3

 21.Bxg5? は 21…Rxc3 22.Qxc3 Ne4 で黒の思うつぼのようである。もっとも奇妙なことにコンピュータは 23.Bxe7!? Nxc3 24.Rxc3 で白がまだ有利だと考えている。

21…R8a5 22.Qd1 Bf8

 22…Nxc5 は 23.Nxc5 Bxc5 24.bxc6 Qxc6 25.Rb8+ Ne8 26.Qh5

で黒の非常に嫌な形である。

23.bxc6 Qxc6 24.Nb4

24…Qxc5

 アロニアンはクイーンを捨てる重大な決断をした。24…Qc8 では 25.c6 Nc5 26.c7 で黒陣が持ちそうもないのでこの手は仕方がない。

25.Ncxd5 Nxd5 26.Rxc5 Rxc5 27.Nxd5 Rxd5 28.Qc2 Rc5 29.Qb2 Rd3 30.Ra1 Bg7 31.Ra8+

31…Nf8

 31…Bf8 の方が良かったかもしれない。

32.Qb8

32…Rcd5

 鵜の目鷹の目のコンピュータは 32…Rd1+!? 33.Kh2 h5 34.Qb4 Rcc1 35.Bd6 h4 36.g3 Rb1

を見つけ出した。f8のナイトに白の3駒が当たっているにもかかわらず黒は生き延びるかもしれない。例えば 37.Qc5 Rbc1 38.Rxf8+ Bxf8 39.Qxg5+ Bg7 40.Qd8+ Kh7 41.Qxh4+ Kg8 42.Bb4 Rc2

なら黒はまだ生きている。

33.Qe8 h6 34.Kh2 Rd2 35.Qe7 Rd7 36.Qe8 Kh7 37.Qb8 Rb2 38.Qc8 Kg6 39.Qc1 Rdb7 40.Rd8 Nh7 41.Qd1

41…R2b3?

 もちろん快速戦でこんな局面を守りとおすことはほとんど不可能であり、黒は避けられない誤りを犯した。41…R7b3 ならもう少し長く持ちこたえたかもしれないが、それでも非常に難しそうである。

42.Qc2+!

 これでe6の地点に弱いポーンをこしらえさせた。

42…f5 43.Qc6

43…Nf8

 43…Re7 でも 44.Bd6 Rc3 45.Qa6 Rf7 46.Bb4 で見込みがない。

44.Bd6 R3b6 45.Qe8+ Rf7 46.Bxf8 Be5+ 47.g3 f4 48.Rd7 fxg3+ 49.Kg2 1-0

 本局に関する珍しい統計を一つ。これまでのところ一連の挑戦者決定戦(決勝戦への中間点)で、本局は白番の選手が勝った唯一の非ブリッツ試合である。

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(この号続く)

2011年10月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(143)

「Chess」2011年6月号(8/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第4組
ラジャーボフ 2744 5½-6½ クラムニク 2772

 テイムール・ラジャーボフはマグヌス・カールセンの辞退のおかげで挑戦者決定競技会に出られた。クラムニクは最初から本命だったが、11年前にカスパロフから王座を奪い取った時と同じくらいの強さか、そして再びオリュンポス山をよじ登る動機づけがあるのかは疑わしい。第1局はラジャーボフの白でとんだ失敗、つまりクイーン翼ギャンビット拒否のつまらない指しつくされた戦型だった。第2局ではクラムニクがカタロニア布局で相手を押しつぶそうとしたが、名ばかりの優勢を得ただけだった。第3局はお互い意欲的な手を披露するもっと面白い戦いになったが、それでも尻すぼみになって引き分けた。第4局はちょっと火花が散ったがすぐにまた静まった。

 快速の第1局はクラムニクの典型的な長い押さえ込みだったが、またしてもラジャーボフが頑強に守りきった。両者の残りの快速戦は二人とも2局単位でのブリッツ戦で決着をつけようと決めたかのように次第に早く終わるようになった。ブリッツ第1回戦の第1局はラジャーボフがうまく指し回し意表のリードを奪った。

準々決勝第4組、ブリッツ戦第1局
T・ラジャーボフ - V・クラムニク

32…exd4 33.Qg3!

 この用心は必要である。33.Nfd6 には 33…Ne5 がある。

33…Rf8 34.Ned6 dxc3 35.bxc3 Rd7 36.h4 Rf6 37.h5

37…Ne7??

 ブリッツ試合の状況では黒陣の受けはまことに困難であるが、この手は大悪手である。37…Ngf4! なら白にはこれといった手がなかった。例えば 38.Rxf4 は 38…Nxf4 39.Rxf4 Rdxd6 40.Nxd6 Rxd6

でほぼ互角である。

38.Nh6!!

38…gxh6

 38…Rxh6 は 39.Nf7+ で白の勝ちになる。

39.Qe5!

39…Nd5

 黒は処刑室へ向かう死刑囚である。代わりに 39…Rxd6 と取っても 40.Rxf6! Rd5 41.Qxe6 でやはり見込みがない。

40.Rxf6 Nxf6 41.Qxf6+ Rg7 42.Nf5 Qf8 43.Nxg7 Qc5+ 44.Kh1 Nxg7 45.Qf8+ 1-0


テイムール・ラジャーボフは不安げな様子に見えるが、実際はブリッツによる決定戦の第1局でもうすぐクラムニクに勝つところである。クラムニクは巻き返せるか?

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(この号続く)

2011年10月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(144)

「Chess」2011年6月号(9/9)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝第4組
ラジャーボフ 2744 5½-6½ クラムニク 2772(続き)

 これでクラムニクはブリッツ試合の第2局に勝たなければならなくなった。さもないと挑戦者決定戦から脱落する。25手目で彼はなんとかポーン得した。しかし引き分けになりやすい非常に見込みのない局面だった。40手ほどの間ラジャーボフをなんとしてでも苦しめようとしたが望みがないように思われた。クラムニクは確実に消え、本命たちが全滅するところだった。しかしそのとき時計の故障のせいで運命が変わった・・・

 スコットランドの審判のアレックス・マクファーレンはそばの別の試合で審判員を務めていた。しかしもちろん隣の盤での事件を目撃していた。以下は彼の語った内容である。「アロニアン対グリシュクの延長戦第1局はもう一方の延長戦より時間がかかった。だから第2局はクラムニク対ラジャーボフ戦より10分遅れて開始された。しかしアロニアン対グリシュク戦がまだ第3局を指している間にあちらは第2局、第3局、そして第4局を終えてしまった。アロニアン対グリシュクの第4局はもう片方の対局者たちのブリッツ戦と同時に始めることに決められた。その試合を見守っているときに、リセットされた時のようなブザー音が他の時計から聞こえた。見渡すとあちらの両対局者が00を表示している時計を指さし、他の二人の審判員がすぐに現場にかけつけた。すぐに代わりの時計でビデオの表示か試合の画面から時間を設定して試合を続行すべきだと決まった。いくらか混乱はあったがこの状況としては極端ではなかった。もちろん私の方の対局を中断することを考えてもよかったのだが、実際にはそうするまでもなかった。騒ぎの間私がクラムニクに静かにするよう要請したと見られた。そのような印象を与えたのだろうか。チェスベースで発表された写真には『当事者たちが状況を協議している間審判のアレックス・マクファーレンは彼らに静かにするようにと警告している』という説明が付いていた。」


2本の手(左がクラムニク、右がラジャーボフ)が両者の画面に00を表示している時計を指し示している。審判を呼ばなければ・・・


そしてこちらは審判のアレックス・マクファーレン(右端)から別の手の合図。別の試合のために静粛にするよう要請。

準々決勝第4組、ブリッツ戦第2局
V・クラムニク - T・ラジャーボフ

60.Rc7+

 そしてクラムニクが時計を押しラジャーボフがほとんど即座に次の手で応じ、

60…Kf6

時計を押した。そのとき時計が新しく試合を始めるためのように突然00を表示した。両対局者はびっくりし、審判に助言を求めた。試合は13分ほど中断された。その間に代わりの時計がビデオの表示の正確な時間に設定され(白が21秒、黒が12秒)、両対局者には少し気持ちを落ち着ける機会になった。しかしどちらの対局者も試合を再開するのは容易ではなかっただろう。

61.Bc2 Rd4 62.Bb3 Be7

 ラジャーボフはあとでここではどう指したらよいか分からなかったと言った。しかしこの手は正着だった。

63.Bc4 Rd6 64.Kg2 Rd2+ 65.Kf3 Rd6 66.Ke4 Rd8 67.Bd5 Rd6?

 13分の中断は言うまでもなく、40手以上の強固な受けのあとラジャーボフは破滅した。

68.Rb7!

 これで手詰まりである。黒ルークはbポーンの守りを放棄しなければならない。

68…Rd8 69.Rxb6+ Rd6 70.Rb5

70…Bd8

 70…Ra6 でも 71.Rb7 でまた手詰まりが生じ、黒ルークは横に動いて Ra7 と指させなければならない。

71.Rb7 Be7 72.Ra7

 白は2ポーン目を取り勝勢になった。

72…Rb6 73.Rxa5 Rb4+ 74.Kf3 Rd4 75.Ra6+ Kg7 76.Be4 Rd6 77.Rxd6!

 ここでは異色ビショップの収局を恐れることはない。

77…Bxd6 78.a5 Bc5 79.a6 Kf6 80.Ke2 1-0

 白キングはクイーン翼に出かけて行ってaポーンを昇格枡まで護衛することができるが、黒キングはキング翼の2ポーンの守りに縛り付けられている。

 これで両対局者はさらに一組のブリッツ戦を指さなければならなくなった。しかしクラムニクは恐らく第2局での幸運な勝利によって心理的に奮起し、本来の調子に戻って収局での完璧な指し回しで第1局に勝ち、ラジャーボフの懸命の抵抗をものともせず第2局を引き分けた。これでクラムニクは準決勝に進出した唯一の優勝候補になった。

 準決勝と決勝の報告は次号に掲載する。準決勝の試合の結果を手短に知らせておく。正規試合はすべて引き分けだった。クラムニクとグリシュクは快速戦の4局もすべて引き分けた。一方カームスキーとゲルファンドはそれぞれ1局ずつ勝ち2局を引き分けた。それで準決勝はどちらもブリッツの運命に委ねられた。ゲルファンドはカームスキーに2-0で勝った。一方グリシュクはクラムニクを相手に第1局を勝ち第2局を引き分けた。ゲルファンドとグリシュクの決勝戦は途中までで1½-1½となっている(3局全部引き分け!)。詳細は次号で。

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(この号終わり)

2011年10月19日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(145)

「The British Chess Magazine」2011年4月号(1/1)

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次の一手

第9問 グロース対小島慎也 黒の手番
(カペルラグランド、2011年)

解答

36…Bxf2+ 37.Kh1(37.Qxf2 Rd1+)37…Be3 以下黒勝ち

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(この号終わり)

2011年10月26日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から2

世界のチェス雑誌から(146)

「SCHACH-MAGAZIN 64」2011年8月号(1/1)

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アマチュア選手権戦

5千人以上のチェス愛好家がすでに参加

 ドイツアマチュア選手権戦(ラマダ・カップ)は6予選のシリーズで、予選は期間が1年にも及ぶ。いくつかの評価グループでグループの最優秀者がそのつど決勝戦に進出する。決勝戦は今年は6月23日から25日までマクデブルクで開催された。そしてAグループの優勝者はこの階級別のドイツ・アマチュア選手権者になるだけでなく、ドイツ選手権戦にも進出する。しかし他の参加者たちも賞品が並べられたテーブルの上の豪華さには目を見張る。それぞれのグループでは順位に応じてたくさんの賞品を獲得する。それらの賞品の中には常にラマダ・ホテル(中心スポンサーで大会名の由来)の週末宿泊券や書籍がある。詳しい結果とシリーズの詳しい情報はインターネットサイトの www.ramada-cup.de/ で見られる。

 チェス愛好家のマティーアス・ベルント(昔ドイツチェス連盟の成績担当者として貴重な奉仕を果たした)は骨の折れる手作業で素晴しいエクセル用データを作成した。その中にはすべてが詳細に掲載されている。それはとにかくもう10年間のシリーズのほぼ数十回分のすべての大会の完全な数値データである。

 数字を調べると例えばこの10年で合計5444人の新規参加者があったことが分かる。だから「ドイツ最大の大会」という主催者の自己評価はまったく当を得ている。かなりのチェス愛好者がこのシリーズを気に入っているので再び参加し(2872人が複数回参加した)、初回からの総数が全部で17153人になっている。

 これからこの大会シリーズがもっと注目を集めることは十分根拠がある。チェス愛好家のラルフ・ムルデの解説した試合の一つでこの報告を締めくくる。この試合はシリーズの今年の(ブリュールでの)Bグループ予選大会の一つで指された。

dポーン布局 A47
□ G・オルバチュ(SKギーセン、2069)
■ 建内瑛貴[たけうち・えいき](VfSデュス、1973)

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.Bf4 b6 4.Nbd2 Bb7 5.e3 d6 6.h3 Nbd7 7.Bd3 c5 8.O-O

 ここまでの局面は少しは知られた2002年米国選手権戦クリスチャンセン対ド・ファーミアンのブリッツ戦に現れている。

8…Qc7 9.c3 Be7

10.Qe2

 1990年のアルベルツェン博士対バステル戦(1:0、33手)では 10.Rc1 が指された。今では一様に「ロンドンシステム」と呼ばれるらしいこの Bf4 のdポーン布局では全般に手順の異同が非常に起こりやすい。コーレ陣形の感覚で 10.e4 と論理的に突いていくのも少なくとも考えられるだろう。

10…O-O 11.a4 Rfe8 12.e4 e5 13.dxe5 dxe5 14.Bh2 Bf8 15.Nc4 g6 16.Qc2 Rad8

 黒はd列を占拠した。しかしそこから直接利益を得ることはできない。白は当然それに対抗する。

17.Rfd1 Bc6 18.Nfd2 a6

 黒は …b5 と突いてべノニの陣形に持っていき、それによりクイーン翼で主導権を握ることにした。白陣はあいにくそれに比べて現在のところあまり目標が定まっていないように見える。c4 と突くために Ne3 と引く捌きもあるが、黒が …a5 と突けば局面は完全に互角である。

19.Bf1 Bh6 20.f3 b5 21.axb5 axb5 22.Na5 c4

 面白い局面になった。「キング斜筋」のg1-a7は黒のビショップのものであるし黒クイーンにも開かれている。おまけに Nd2 はよい目標になるに違いない。そのうえ黒は状況が許せばまだ …Nd7-c5-d3 と指すことができるし、状況しだいでは …Nf6-h5-f4/g3 と指すこともできる。これに対して白は黒の外壁を b2-b3 突きによって破壊する用意ができている。そうなればたぶん邪魔な Bc6 を交換してa列だけでなくb列も大駒で支配する。全体的には白の方がいくらか有利な状況だろうが、形勢としてはまったくの互角だろう。

23.b3 Ra8 24.Nxc6 Rxa1 25.Rxa1

25…Qxc6

 25…cxb3! =

26.bxc4 Qc5+?!

 26…Bxd2 27.Qxd2 bxc4 +/=

27.Kh1 Qf2 28.Rd1

 白は成行きまかせで指してきたにもかかわらずここまでは万事順調だった。Bg1 でヌミディア(今日のアルジェリアにあった古代王国)のクイーンを追い払う嫌味な可能性ともちろん cxb5 と取る可能性とで明らかに優勢だった。黒はg3でナイトでチェックをかける狙いで Bg1 をあまり気がすすまないようにした。

28…Nh5 29.Qd3??

 正着は 29.cxb5 Ra8 30.Bc4 だった。そうなれば白が非常に快調で、たぶんもう勝勢だろう。

29…Be3 -+ 30.Be2 Nc5 31.Bg1

 これはしょせん駄目だが、もう仕方がなくなっていた。

31…Nxd3 32.Bxd3 Qxg1+

 黒もユーモアのあるところを見せている。

33.Rxg1 Bxg1 34.Kxg1 Rd8 0-1

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(この号終わり)

2011年11月02日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(147)

「Chess」2011年7月号(1/11)

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挑戦者決定競技会


挑決優勝者のイスラエルのボリス・ゲルファンド(トロフィーを持っている)は決勝戦で敗退したロシアのアレクサンドル・グリシュクよりも当然ながら少し嬉しそうである

カザンでボリス・ゲルファンドが優勝、彼のコメントとジョン・ソーンダーズの報告

 先月はロシアのカザンで開催された挑戦者決定競技会の準々決勝を取り上げた。残るは準決勝と決勝戦である。大会後私は優勝者のボリス・ゲルファンドとの広範な独占インタビューを行なう恩恵に浴した。インタビューそのものの前半は本号の別の記事に掲載されている。しかし特に試合に関する部分を自由に抜き出してここの記事に散りばめた。試合の解説は本誌の編集部員によるものである。

 ボリスへの私の質問のいくつかは先月取り上げたシャフリヤル・マメジャロフとの準々決勝戦に関するものだった。その試合について彼がインタビューで語ったことから始める。以下では私の質問の部分は太字にしてある。ボリスの発言は鍵括弧で囲ってある。

準々決勝についてのゲルファンドの感想

 「最初の番勝負はあとのより楽だった。たぶん準備する時間があったからだろう。約6ヵ月前から誰が相手かが分かっていた。だけど彼も用意周到に準備していた。たぶんこの番勝負を前にしてこれまでになくチェスを研究したのだろう。しかし彼は実戦派の棋風の選手だと思うし6ヵ月間試合をしなかった。すぐに指すはずの局面で多くの時間を費やしていたように感じた。少し腕前が錆びついていた。本当にそう感じた。第1局では初手で私を驚かした。もちろん彼が 1.e4 を指すことはあり得るとは考えていた。実際彼は序盤をうまく指し優勢になった。実を言えばそんなに優勢だとは考えていなかった。彼の方が有利だが少し優勢と±との間ぐらいにすぎなかったのだろう。試合後彼の応援者たちが主張していたような勝勢ではなかった。もちろんコンピュータ相手なら負かされる。コンピュータはこちらが見つけられないような手を指し、優勢を生かすことができることを立証するだろう。しかし実戦の場ではこちらがそんなにひどかったとは思わない。」

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(この号続く)

2011年11月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(148)

「Chess」2011年7月号(2/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝についてのゲルファンドの感想(続き)

 「第2局で彼はメランで驚かしてきた。彼は以前にそれを指したことがなかったし、私が黒でずっと指してきた布局でもある。だからちょっと意外だった。私が選んだのは近頃最もよく指されている流行の戦型で、こちらがいくらか優勢になったあと彼がポカで1ポーンを失った。本当にあれはポカだった。なんというかポカに近かった。というのは私がポーンを取り彼が考え始めたとき、たぶんこちらが全然優勢といえないと気づいたからだ。本当に驚いた。」

準々決勝、第2局
ゲルファンド - マメジャロフ

 33.Rc3

 「そして彼はすぐに引き分けにできる 33…g4 の代わりに 33…f4 と突いてきた。エンジンが使えれば 34.Nd2 と指せて有利な収局になる。本譜で 34.h3 は白が名ばかりの優勢にすぎない。実戦ではこちらが収局で優勢だと思っていたが

 39.Bd4

39…Nb4 のあと 40…Nc6 から 41…e5 とこられるのを見落としていた。それもやはり白が名ばかりの優勢にすぎない。残念ながらこちらが1手遅れている。なぜなら彼にこの捌きがなくてこちらのキングが中央に行けば、こちらの勝つ可能性がかなり高いからだ。しかし彼は時間に追われていたしこちらも時間があまりなかった。たぶん10分かそこらだった。だからこの手順に行ったのだが残念なことにこれを見逃していた。このあとはまったくの引き分けだ。」

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(この号続く)

2011年11月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(149)

「Chess」2011年7月号(3/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準々決勝についてのゲルファンドの感想(続き)

 「第3局は思いがけず好局になった・・・これまでで最もうまく指せた試合の一つだ。布局では彼がこの激しい戦型を選んだために難しい場面もあった。その戦型はモロゼビッチが2001年アスタナでカスパロフを相手に指していて、私はその試合を思い出していくらか確認した。しかしはっきりとは思い出せなかった・・・1手でもミスすれば形勢を損じるので詳細に分析しなければいけない。だから手を変えた。筋にかなっていそうな手が見えたのでそれを採用した。それが 15…Kh8 だ。実際カスパロフが 15…Bf6 でその名局を勝ったのは覚えている。私もアスタナのその大会で指していて非常に感嘆したものだ。[編集部注 2001年8月号の7ページでGMバブーリンとIMバースキーがこの試合を解説している。ゲルファンドはこの大会でカスパロフとクラムニクに次いで3位だった。]しかしこの 15…Kh8 のあとマメジャロフは自分で考え始めなければならなくなった。彼が局面を分析できることは明らかだが、開放型シチリア防御の白番での経験がほとんどなかった。」

 「だから少しうれしかった。局面はすぐにとても険しくなった。もちろん 20.Kh1 は本当にポカだった。これで黒が優勢になるのは明らかだからまったくのポカだ。技術的に勝てるか、あるいは白が持ちこたえられるかはまた別の問題だ。もちろん 20.Bg5 が眼目の手で、この手だけを読んでいた。20.Kh1 には 20…Rxc3 21.bxc3 までしか読んでいなかった。しかし今 20.Bg5 を考えると黒は何も心配することがなさそうだ。20…h6 で一本道の引き分けだ。それは試合中に読んでいた。実は躊躇していた・・・相手に多くのチェックをさせるのは良くないし、相手はいつでも引き分けに持ち込める。しかし客観的には何も心配することがないと読んだ。」

 「しかし 20…Kg8 も難解だったが局面はまずまず均衡がとれている。だから 20.Bg5 が最善で最も自然な手だった。20.Kh1 のあと 20…Rxc3 と指して明らかに優勢になった。ただはっきりさせておかなければならない・・・こちらには大優勢を目指す多くの可能性があった。しかし間違った手を指したとは思っていない。」

 「34…Bg6 も非常に気に入っている。なぜなら交換損を取り戻し駒割を回復するのは魅力的だが、g6のビショップは攻めにも受けにも参加していないh3のルークよりも良い駒だからだ。」

準々決勝、第3局
マメジャロフ - ゲルファンド

 39…Rb8

 「そして突然、これらのポーン全部が・・・実際はまったく面白いことに彼の時間が切れた。そのことが報道されたのかは知らない。彼は時間で負けたんだ。彼は40手目を指すのに9秒残っていた。どう指したら良いか考えているうちに時間が切れた。しかし 40.Bc1 と指してもこちらは 40…Qc5 のような手を指して規定手数に達していたと思う。それで局面は勝勢だ。40…Rb2! 41.Bxb2 axb2 ならきれいに決まっていた。連鎖ポーンができて単純に …Be5 と指す。信じられないほどきれいだ。2、3分の残り時間でそれを見つけられたとは思わない。試合後レボン・アロニアンに会ったが、彼は私に「40…Rb2 と指せたのに」と言った。」

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(この号続く)

2011年11月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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世界のチェス雑誌から(150)

「Chess」2011年7月号(4/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第1組
ゲルファンド 2733 6-4 カームスキー 2732

 ありがたいことに鍵括弧で括られたところにまたボリス・ゲルファンド自身の感想がある。カームスキーの側から試合を見ると二度目の雪辱の機会だった。以前に世界選手権予選で自分を負かしたトパロフを下したあと、ゲルファンドとの対戦は惨敗した2007年の挑戦者決定競技会の結果の雪辱を期す機会となった。以下は試合内容についてのゲルファンドの見方である。

 「2007年の我々の対戦はかなり楽な試合だった。カームスキーは長年のチェスの実戦の中断からちょうど復帰したばかりだった。彼は支援してくれるチームもなかったし布局はどうしようもなかった。決然と戦ったが布局では何年も後れをとっていた。その対戦のあと彼は卓越した理論家のエミル・ストフスキーそれにアンドレイ・ボロキティンと立派なチームを組んだ。実際布局の研究では私を圧倒した。それは確かだ。黒番のためにストフスキーと非常によくグリューンフェルトを研究してきた。我々のチームはその戦型を詳しく研究していたが、彼の研究の方が深かったことは分かるだろう。そして白番では絶えず課題を投げかけてきた。」

 「第1局についてはカームスキーは近頃押され気味のペトロフを避けて、代わりに20年も大家だったナイドルフ・シチリアを指したことは言っておく価値がある。その試合はずっと均衡していて引き分けに終わった。」

 「第2局はカームスキーが手順を間違えこちらに勝つチャンスが訪れた。勝勢の局面だったが一本道の勝ち手順を読もうとして何かを見落とした。それからの彼の防御は素晴しくて試合は引き分けに終わった。布局で 11.Rb1 と指したとき彼は第4局のように 11…cxd4 と指さなければならなかった。しかし 11…Bd5 12.Qc2 cxd4 と指してきてそこでこちらは 13.cxd4 とポーンで取ることができた。実戦は 11.Rb1 と指したあと彼が大長考をした。彼がなかなか思い出せないでいるのは明らかだった。研究済みなのだが分析したことがなかなか思い出せずにいた。」

準決勝第1組、第2局
B・ゲルファンド - G・カームスキー
グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5

 カームスキーの協力者のエミル・ストフスキーはグリューンフェルト防御の権威である。

4.Bg5 Ne4 5.Bh4 Nxc3 6.bxc3 dxc4 7.e3 Be6

 黒はポーンにしがみついている。

8.Nf3 Bg7 9.Be2 c5 10.O-O O-O 11.Rb1

11…Bd5

 この手についてはゲルファンドの前述の言及がある。11…cxd4 の方が良い手だが 11…b6 と 11…Nd7 も指されている。

12.Qc2

 ゲルファンドは即座にこの手を指した。e3-e4 突きが狙いなので黒は選択肢がかなり限られる。

12…cxd4

13.cxd4

 黒が先に 11…cxd4 と取っていたら 12.cxd4 は覇気のない応手になっていただろう。しかしここでははるかに理にかなった手になっている。

13…b6 14.Bxc4 Nc6 15.Rfc1 Bxc4 16.Qxc4 Na5 17.Qc7 f6 18.Qxd8 Rfxd8 19.Rc7 Kf7 20.Rbc1 Ke8 21.Bg3 Bh6 22.Kf1 Rd7 23.Rxd7 Kxd7 24.Rc7+ Ke8 25.Nd2 b5 26.Ne4 a6 27.Nc3 Bf8 28.Nd5 Rd8

 ここでは白の優勢はかなり明らかのようである。しかし白は次の手で間違えた。

29.e4?!

 選択肢は他にもあるが解説者のGMセルゲイ・シポフはここで白が支配を維持するには 29.Nf4 が正しい手段だと考えていた。カームスキーは持ち時間が少なくなっているにもかかわらずここで非常に効果的な反撃を開始した。

29…f5!

 黒の作戦はルークをd7の地点にさしはさみ、それからビショップをg7の地点に据え(d4のポーンを攻撃するため)、そして最後に …e7-e6 突きでd5のナイトをこづいてd4の地点にもう一つ利きを当てることである。白はこのゆっくりだが効果的な作戦を迎え撃つのに特別何もないので落胆したに違いない。

30.f3 fxe4 31.fxe4 Rd7 32.Ke2 Bg7 33.Bf2 e6 34.Rc8+ Kf7 35.Nb6 Rb7 36.d5 exd5 37.exd5

 このdポーンは怖そうだが黒には対策がある。

37…Be5 38.Ra8 Nc4 39.Rxa6 Nxb6 40.Bxb6 Bxh2

 規定手数に達し局面は互角である。もちろんまだいくらか指す余地はあり、白は正当にそれを行使するがたぶんうまくいくとは考えていなかっただろう。

41.Kf3 Rd7 42.Ke4 Re7+ 43.Kd3 Rd7 44.Kd4 Bg1+ 45.Ke4 Re7+ 46.Kf4 Bxb6 47.Rxb6 Re2 48.g4 h5 49.Rb7+ Kf8 50.g5 h4 51.Rh7 b4 52.Rxh4 Ke7 53.Rh6 Rxa2 54.Rxg6 Rd2 55.Re6+ Kf7 56.Ke5 b3 57.Rf6+ Kg7 58.Rb6 b2 59.d6 Kg6 60.Ke6 Re2+ 61.Kd5 Rd2+ 62.Kc6 Kxg5 63.d7 Rc2+ 64.Kd6 Rd2+ 65.Ke6 Re2+ 66.Kf7 Rf2+ ½-½

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(この号続く)

2011年11月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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