ルイロペスの完全理解の記事一覧

ルイロペスの完全理解(1)

はしがき

 本書は一つの大きな目標を念頭に書かれた。それは布局を理解することを教えることである。もちろんこれは変化を列挙することによっては成し遂げられない。代わりに我々はそれぞれの側の重要な着想と方針を説明するように努めた。そして読者が本文の大部分を盤駒なしで理解できるように独特の「読んで試す」方式で手早く簡単に説明することに努めた。

 この意欲的な目標を達成するための我々の指導原則は、中原ポーンがいったん安定すれば、異なったポーン形になる同じ戦法の異なった戦型同士よりも、同じ中原ポーン形の色々な戦法同士の間に戦略的および戦術的に似かよった所が多いという事実である。この単純なやり方ですぐにどんな局面でもその本質的な着想を理解することができる。このやり方は体系化の必要性により理解の過程が非常に困難になる通常の布局定跡の本と大きく異なっている。

 出発点が決まればあとは論理的に進む。布局は戦法でなく「中原の型」(通常は主要な戦法の名称をそのまま用いた)によって分類した。これにより同じ戦法の異なった戦型は生じるポーン形によってある型または他の型の中原で吟味されるかもしれない。それぞれの中原の型は三つに分かれて論じられる。戦略の着眼点の完全な解説(最も現代的なものに特に注意を払う)、繰り返し現れる戦術の狙いどころの概説、そして最後に布局を特に詳しく解説した実戦例という具合である。これらの試合の検討では(このためにはチェス盤の使用が必要である)読者は二つの理論的な解説部との実戦的な適合だけでなく付加的な実証の変化にも出くわすだろう。実戦例を詳細に読むことは前に解説された戦略の概念を完全に理解するのに必須である。

 現れる可能性のあるすべての中原の型を本書に含めることはできないけれども、少なくともすべての場合の85%を占める最も重要でありふれたポーン形はすべて取り上げた。取り上げられなかった少数のポーン形(それらはすべて重要でないわき道から生じる)は従来の単行本で参照できる。

 読者がどちら側を持って指すつもりでも本書が等しく役に立つように、著者らは題材への取り組みでできるだけ客観的であるように努め、中原のそれぞれの型における着眼点の解説で偏見のないことを目指した。

 本書は布局の基本を学ぼうとする初心者とクラブ選手から、いろいろな戦法に素早く習熟したり自分の布局の得意戦法にまったく新しいものを追加するために必須の下地を習得したいと考えている熟練者まで、広範な選手によってさまざまに用いることができる。もちろん勝敗を争う最上位の選手や、もっと戦法の詳細な細部や最新の流行すべてが必要な人たちまで、系統的な教科書と共に本書が使えるに違いない。

 著者らは読者が我々の解説をはっきりと理解し、しっかりと楽しく学び、とりわけ理解力を高めそれにより棋力を向上させることを期待している。その時に初めて「読んで試す」方式は成功したことになる。

 ダニエル・キング、ピエートロ・ポンツェット

2010年07月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(2)

序章

 ルイロペスは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から生じる陣形である。白の通常の構想は d2-d4 突きによってe5に対する圧力を増すことで、c2-c3 突きで支援することもよくある。おおまかに言うとこの圧力の目的は黒からの …e5xd4 取りを誘って中原での陣地の拡大を達成することである。黒の方は二通りのまったく異なった手段でこの作戦に対抗することができる。(1)白が d2-d4 と指すのを待つ。そのあと白に閉鎖(d4-d5)中原を望むか交換(d4xe5)中原を望むかをしむけるようにして中原の形(いわゆる「閉鎖」ルイロペス)を決めさせる。(2)e4ポーンへ速やかに反撃する(…Ng8-f6xe4 でのいわゆる「開放」ルイロペス、および …d7-d5 または …f7-f5 によるギャンビットの着想)。防御の可能性のすべてをうまく使うために黒は …a7-a6 から …b7-b5 と突いてb5のビショップを追い払うのが普通である。しかしこの選択肢は必然ではなく、まったく省略するか一部だけ用いることも可能である。

 題材は従来の戦法の細分化でなく「中原の型」に基づいて分類されているので、読者の便に供するためにこれから検討していく題材の一覧を掲げる。

 最初の5章は以下のようにルイロペスの「閉鎖的」概念に当てられている。

第1章
中原の争点 - 白が d2-d4 と突いたとき生じる中原の争点の状況について調べる(図Ⅰを参照)
 図Ⅰ

第2章
閉鎖中原 - d4-d5 のあと生じる状況について調べる(図Ⅱを参照)
 図Ⅱ

第3章
交換中原 - d4xe5 と …d6xe5 のあと生じる状況について調べる(図Ⅲを参照)
 図Ⅲ

 第4章と第5章は黒が …e5xd4 と取る場合を取り上げる。

第4章
可動中原 - 白がcポーンでd4を取り返す(図Ⅳを参照)
 図Ⅳ

第5章
小中原 - 白が駒でd4を取り返す(図Ⅴを参照)
 図Ⅴ

 第6章、第7章および第9章では黒の取りうる他の対処法、即ちe4ポーンに対する素早い反撃のいろいろな展開を見てみる。これらの3章はそれぞれルイロペスの「開放」の概念(…Ng8-f6xe4)と二つの主要なギャンビットの着想(…d7-d5 と …f7-f5)を扱う。

第6章
開放中原 - 黒が …Ng8-f6xe4 と指す(図Ⅵを参照)
 図Ⅵ

第7章
マーシャル中原 - 黒が …d7-d5 と指す(図Ⅶを参照)
 図Ⅶ

第9章
シュリーマン(イェーニッシュ)中原 - 黒が …f7-f5 と指す(図Ⅷを参照)
 図Ⅷ

 最後に第8章と第10章は残りの二つの特別な場合で、白が Bb5xc6 と交換する場合と黒がこれに先立ち …Nc6-d4 として Nf3xd4 を受け入れなければならない場合とを調べる。

第8章
フィッシャー中原 - 白が Bb5xc6 と指し黒が …d7xc6 と取り返す(図Ⅸを参照)
 図Ⅸ

第10章
バード中原 - 黒が …Nc6-d4 と指し白が Nf3xd4、…e5xd4 によってd4で交換する(図Ⅹを参照)
 図Ⅹ

(この章続く)

2010年07月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(3)

序章(続き)

どの戦法を指すべきか

 どの戦法が自分の棋風に最も合っているか決めるのに役立つように戦法一覧をまとめた(巻末を参照)。そこに戦法の戦略と戦術の複雑さの程度が示されている。さらに、水準7以上のFIDE大会で指された約2000局の調査を用いて、危険度の概観に役立つように各戦法の頻度と結果の割合の統計データを求めた。これにより必要度に応じて最も適切な選択に役立つ情報がすべて得られる。

(この章終わり)

2010年07月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(4)

第1章 中原の争点

主手順 - シュタイニッツ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.d4(図1)

 図1

 我々はこれを「主手順」に選んだ。理由は中原の争点から生じる最も重要な局面だからではなくて我々の目的に最も適しているからである。通常の …a7-a6、…b7-b5 突きと h2-h3 突きがないことは、両者が中原で争点を維持することができ、かつ/または相手に不利な状況下で争点を解消させるように争点を強めることのできるすべての手段を説明するのに都合がよい。この教えるのを意図した工夫は別にしても、中原の争点(次からの4章で検討する中原が生じる段階)はルイロペスの主流手順の多くで現れる。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 の後

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4

 …Nd7 のケレス戦法
 - 9…Nd7 10.d4

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 Bd7 6.d4

 タイマノフ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 b5 5.Bb3 Na5 6.O-O d6 7.d4

 アルハンゲリスク戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 Nf6 5.O-O O-O 6.d4

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.d4
 - 3…g6 4.c3 d6 5.d4

(この章続く)

2010年07月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(5)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点

 前述のすべての戦法における d2-d4 突きのあとd4とe5のポーンの間に争点の状態が発生する。それがこの章の見出しである。戦略の基本的な特徴は次の図に現れている(図2)。

 図2

 注意しておくが、通常の状況では白は …exd4 と取られた場合に中原のポーンの並びを復元できるように前もって c2-c3 と突いておいてdポーン突きを助ける。

 中原での争点の状態で何が起こるか理解するために布局の一般原則を思い出そう(もっとも、絶対的な原則というよりも大ざっぱな指針であるが)。それによると中原で争点を解消する者は相手に譲歩するということである。もちろんこの原則は非常に明確な戦略上の基礎で、つまり争点を解消する者は自分の意図を明らかにし一般的には中原の地点への影響力を放棄するということになる。

 だから現在の局面では相手が …exd4 と取ってくるのを待つのは白にとって有利である(d4がポーンで取り返されても駒で取り返されてもこの手は中原の陣地を事実上譲ることになる)。一方黒は当然ながら dxe5 と取ってくるのを待つことができるし(中原が完全に互角の状態になる)、d5 と突いてくるのを待つことさえできる(理由はこの場合も白が中原への影響力-e5に対する圧力とc5への圧力-をいくらか失いe4-d5の連鎖ポーンの態勢で相手に反撃の具体的な目標を与えるからである)。図2に関して述べたことと同様の条件で手数引き延ばしを行なうことも可能である(20手目以降まで引き延ばすことも可能である)。この間それぞれの側は相手に中原でのもくろみを明らかにさせるように努め、有利と見ればいつでも争点を緩和する用意をしている。

 中原の流動的な状態はいずれにせよ徐々に煮詰まる運命で、一般には以降の4章で取り上げられる中原の一つになる。それでも不安定な状態の期間は両者とも主眼の戦略上の捌きと活動の余地がある。それらは以降の4章の中原の型にも典型的に存在し、この章で十分に解説するのに値する。

(この章続く)

2010年07月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(6)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

e5ポーンに対する圧力

 e5ポーンに対する圧力は 3.Bb5 の主眼点でありルイロペス全体の存在理由となっている。だからもし黒が対抗策を取らなければ、このビショップの単刀直入の展開は守り駒の Nc6 を釘付けにするか取ってしまう含みでe5に対するしつこい圧力となることがある(図3)。

 図3

 例えばここでは Bb5 とかかられているために黒は …exd4 で中原の争点を解消せざるを得ない。なぜなら代わりに …Bd7 とするのはポーンを救うことにならないし(Bxc6 Bxc6、dxe5 dxe5、Nxe5 Bxe4、Ng4 はこの局面での想定手順である)、…Nd7 は明らかに劣ったポーンの形を受け入れることになるからである(Bxc6 bxc6、dxe5 Nxe5、Nxe5 dxe5)。

 ルイロペスの主流手順の多くで黒がこの問題を根本的に解決するためにe5ポーンに対する狙いがまだ戦術的手段ではねつけることのできる非常に早い段階でaポーンとbポーンで白のビショップを追い払うのはこのためである(図4)。

 図4

 …a6 の後このビショップは Nc6 に対する釘付けを緩めざるを得ない(Ba4 b5、Bb3)。なぜなら Bxc6 からe5のポーンを取るのはまったく幻だからである。即ち …dxc6!、Nxe5 Qd4 で白は Ne5 とe4のポーンを同時に守ることができない。

 しかし …a6 および …b5 突きには別の側面があることも確かである。というのは第2章の初めで見られるように、一般に黒のクイーン翼を弱め(例えばa5とc6の地点)aポーンとbポーン自体をもっと脆弱にするからである。

 局面がもっと進んだ段階で白はfポーンに働きかけることによってe5にもっと圧力をかけることができる。この作戦行動は …a6 と …b5 でa2-g8の斜筋に追われたキング翼ビショップの動きによって促進されることがある。ここで例を見てみよう(図5)。

 図5

 黒は …Re8 と指したところであるがこの後 …Bf8 で中原の防御を補強する用意をしている。しかし相手は先に Ng5 と指して先手を取ることができる。ルークはf7のポーンを守るためにあわててf8に戻らなければならない。これだけを見ればナイトのg5への急襲はf7への攻撃が全然成果をあげないので特に顕著な結果は得られない。しかし白はそれを利用して f2-f4 突きの手段でe5への圧力を増すことができる(図6)。

 図6

 これで白が相手に争点の解消をしむける論点を増やしたことは明らかである。もっとも黒がそのような方針を強制されるとまでは言えないが。しかし白にそのような機会を与えないように黒は Rf8 を動かすつもりならば先受けの …h7-h6 を指しておくことがよくある。

 白が h2-h3 を指してある時はキング翼ナイトをh2に引いて f2-f4 突きを準備できることを指摘しておく。以降の章で見られるようにこの捌きは複数の目的を持っていることがよくある。

 最後にe5のポーンへの圧力を増す別の方法はもっと手の込んだ捌きに存在する。白はキング翼ビショップをc2に引いてクイーン翼でのフィアンケットを準備することができる(b2-b3 - または a2-a3、b2-b4 - そして Bb2)。そして後でこの黒枡ビショップの筋を c3-c4 によって空ける(図7)。

 図7

 もし …bxc4、Nxc4 という交換が行なわれればクイーン翼ナイトがe5への圧力に貢献できる。黒の方もe5を守る手段がないということではない(図の場合 …f7-f6 があるし …c7-c5 と突いてあれば …Qc7 もある)。だから圧力により相手に …exd4 という譲歩を強制する効果を達成することはあまりない。それでも黒は表向きの動機がないことに非常に用心しなければならない。実際白の捌きの目的が閉鎖中原または交換中原に至る有利な条件を作り出すことを含んでいることはよくあることである。従って黒は時にはそのような事態に抵抗するために中原の争点を解消することを決断しなければならない。

(この章続く)

2010年07月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(6)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

d4ポーンに対する圧力

 黒の立場からすると、中原での争点を維持する目的は白にd4ポーンを動かすようにしむけることである。この目的のために、e5の地点に対する白の態度と同様のやり方で、黒はしだいにd4に圧迫を一層加えるように努める。

 白の白枡ビショップを(…a7-a6 と …b7-b5 とによって)撃退する捌きはe5とd4の地点を攻撃ないしは防御するそれぞれの役割において Nf3 と対抗する責務の Nc6 を楽にすることを指摘しておく。

 白が通常の h2-h3 突きを省略すると、…Bg4 による Nf3 への釘付けは前述の捌きとあいまって立場をまったく反転させることができる。つまり白がキング翼ビショップをb5に展開したとき敵に生じさせるつもりだったのと同じ問題を黒が白に突き付けることになる(図8)。

 図8

 同じような状況で白はd4ポーンに対する圧力のために中原の争点を解消するようにしむけられる。この理由で白は d2-d4 と突く前にほとんど常に先受けの h2-h3 を指して Nf3 に対する釘付けを防ぐようにするのが普通である。

 d4への圧力を強める別の直接的手段はキング翼ビショップをh8-a1の対角斜筋へ移動させることである。この目的のために黒は Nf6 を動かして(通常はd7に引いて)ビショップのためにf6の地点を空けることがことができる(図9)。

 図9

 この捌きはありふれていて当たり前と考えられるがe4のポーンに対する圧力を放棄する不利も持ち合わせている。いずれ分かるようにこの圧力は争点をめぐる黒の戦いの別の重要な武器となっている。

 さらにまた黒は後でキング翼のフィアンケットをする典型的な布局の捌きに訴えることができる。キャッスリングのあと黒は …Re8、…Bf8、…g7-g6 そして …Bg7 と指す(図10)。

 図10

 これが行なわれると、d4に対するビショップの動きは Nf6 がいることによってどんなに隠されていようと、時には直射攻撃の暗黙の戦術の可能性によって現実化することがありうることに気をつけなければならない。

 図8、図9および図10で例示されている捌きはすべて黒のe5のポーンを守る必要性にも呼応していることを指摘しておく。だからそれらの捌きが攻撃と防御の二重の役割を果たしているのは賞賛ものである。

 最後に、d4への圧力は Nc6 を移動させた後 …c7-c5 と指すことによっても増大させることができる(図11)。

 図11

 しかし黒のクイーン翼ナイトの移動はしばしば一時的にすぎないことを強調しておく。というのはほんの少し後で一般にこの駒は元の位置に戻って中原での戦いに積極的に加わるからである。…cxd4、cxd4 の交換によってcポーンがなくなったあと上記の捌きは白に中原での意図を表明させる上で決定的になるかもしれないことは明らかである。

 e5に対する白の作戦行動に関して既に述べたように、d4に対する黒の同等の着眼点は可動中原または動的中原に持って行くための有利な条件を作り出す目的もあるかもしれない。結論としてこれらの作戦行動は非常にしばしば成功で報われ白に中原で決断を迫ることになる。黒の利点のもう一つの要素は、白がd4のポーンの防御で黒枡ビショップを動員する際に遭遇するかなりの困難である。e3への自然な展開(この時 Re1 のe4ポーンの防御を妨害することになる)はd2のクイーン翼ナイトの存在により妨害されることがよくある。そして白がこのナイトをちょうど良い時に移動させるのはいつも簡単であるとは限らない。なぜならこのナイトがe4のポーンの守りに縛り付けられていることがあるからである。

(この章続く)

2010年07月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(8)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

e4ポーンに対する圧力

 d4への圧力の別策として(というより一緒に用いられることの方がはるかに多いが)黒は戦力の一部をe4ポーンに向けることができる。実際 d2-d4 突きのあとe4ポーン自身もかなりむき出しの状態になる。というのはもう d2-d3 でしっかりと守られなくなるし、代わりの f2-f3 は(Nf3 がいることによって邪魔されることがよくあるがそうでない時)キング翼における白の攻撃の展望を低めるので(白クイーンをキング翼への支援のために迅速に繰り出す非常に重要な斜筋のd1-h5をふさいでしまう)一般には考える価値がない。

 一般的に言うと、黒はe4ポーンに圧力をかける役目をキング翼ナイト、クイーン翼ビショップおよび以前に見た …Re8 から …Bf8 の捌きに任せる(図12)。

 図12

 白の方は必要な防御手段を構築するのに特に困難はない(Rf1-e1、Bb3-c2 および Nb2-d2 は標準的な方法で、クイーンを繰り出す非常手段もある)。それでもこの配置は非常に柔軟性に欠けることがある。特に Nd2 の存在が厄介で、Bc1 の展開を阻害しクイーンがd4ポーンを守るのにも邪魔になる。

 最後に、黒がe4ポーンに対して行なう作戦行動は明らかに …exd4 取りから生じる中原の型の一つに行く前触れと見ることができることを指摘しておく。

(この章続く)

2010年07月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(9)

第1章 中原の争点(続き)

1.1 戦略の着眼点(続き)

…d5 突き

 黒がe4に対して画策する捌きの別の目的は …d5 と突くことにより中原で反撃できるようにすることである(図13)。

 図13

 このような決断をするに当たってはしっかりと読んでおかなければならないことは言うまでもない。特におそらく中原の4ポーンが消えることになるのでその後の両者の駒中心の戦いのことを考えなければならない。しかしこのポーン突きが可能な時は、形勢を互角にし中原の覇権をめぐる戦いに終止符を打つための決定的な手段となりうる。

 例えば図13の状況では黒は exd5 exd4 と dxe5 Nxe4(…Rxe5、f4 から e4-e5 は白が良い)の結果を詳細に読むべきである。

(この章続く)

2010年07月17日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(10)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所

 この型の中原では盤の中央の状態が流動的なので、繰り返し出てくる戦術の狙い所を見つけるのは容易でない。しかし他の型の中原にもっとよく現れそうなのを一、二指摘することはできるが(適切な章節で言及される)、中原の「典型的な」争点とみなすこともできる。

(この章続く)

2010年07月18日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(11)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

e4ポーンの間接的守り

 aポーンとbポーンの前進によって引き起こされる黒のクイーン翼の弱体化によって白の中原の防御が楽になることがよくある(図14)。

 図14

 例えばここでは白は単に Be3 としてd4ポーンを守ることができる。なぜならこの手によって Re1 の利きが邪魔されても黒はe4のポーンを取るわけにいかないからである。…Nxe4? と取るととたんに Bd5 と応じられて(図15)

 図15

黒のナイトの一方が取られる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(12)

第1章 中原の争点(続き)

1.2 戦術の狙い所(続き)

白の白枡ビショップのむき出しの状態

 敵のクイーン翼との関連で白の白枡ビショップの挑発的な態度は(Bb5 a6、Ba4 b5、Bb3)このビショップ自身が危険がないというわけではないことは明らかである。そのような危険の一例はこのビショップが使命を完了してもクイーン翼のポーンの形が初期配置から動いていない序盤の早い段階で現れる。Bb3 は逃げ場がないので黒のクイーン翼ポーンの手にかかって終わりを迎えることがある(図16)。

 図16

 この図はこの戦術の成立のために必要な基本的な条件を示している。…Nxd4、Nxd4 exd4、Qxd4 c5 の後(図17)

 図17

白はビショップを捕まえる …c5-c4 突きを止めることができない。この狙い筋は「ノアの箱舟」のはめ手としてよく知られている。

 他の状況では、ビショップがまだa4-e8の斜筋にいるとき黒はこのビショップが浮いている状態あるいは守りが不十分な状態を、自分のクイーン翼ビショップをd7に上げて利用することができる(図18)。

 図18

 例えばこの場合なら黒は単純に …Nxd4 でポーン得になる。さらに指摘しておくと Ba4 が c2-c3 突きでクイーンによって守られている時でも狙いは残る。具体的には黒は …Qe8 と指すことによってまた狙いを作り出すことができる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(13)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例

第1局
スミリン対ベリヤフスキー
オデッサ、1989年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5

 この手は著名な16世紀の選手のスペインの僧侶ルイ・ロペスによって初めて系統的に研究された。このシステム全体に「スペイン試合」または「ルイロペス」という名前が付けられているのは彼の功績によるものである。

 その基本的な構想はe5の守備駒を弱めることで、2.Nf3 から始まる圧力をかけ続ける。しばしば黒はe5への脅威がまだ有効でないことを見越して(3…a6 4.Bxc6 dxc6 5.Nxe5?! Qd4 でe4のポーンが取れる)目障りなb5のビショップを …a6 から …b5 の手段で追い払う方針をとる。それでもaポーンとbポーンはこれで弱体化するので白は中原の以降の戦いで二次目標にすることができる。黒が時にクイーン翼の形を崩さずaポーンとbポーンを巻き込まないで状況に対処する方を好むのはこのためである。

 この考え方に合う戦型の中で最初に名をあげるべきは 3…d6 の堅固なシュタイニッツ戦法である。中原に争点を作り出す 4.d4 のあと白はe5への狙いを復活させ、相手に …exd4 で中原の争点を解消させ通常はこちらの有利になるように努める。例えば 4…Bd7 5.Nc3 Nf6 6.Bxc6(e5に対する圧力のためこの手は白の3手目の論理的な帰結である)6…Bxc6 7.Qd3 Nd7(8.d5 には 8…Nc5 の切り返しがある)8.Be3 exd4(唯一の理にかなった応手)となれば黒陣はわずかに不利ではあるが形に弱点はない。

 主眼がシュタイニッツ戦法と似ている戦型は 3…Nf6 4.O-O d6 5.d4 である。例えば 5…Bd7 6.Nc3 Be7 7.Re1 exd4(7…O-O? では中原の争点が維持できないので当然の手である。なぜなら 8.Bxc6 Bxc6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8 Raxd8 11.Nxe5 Bxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Nd3 f5 14.f3 Bc5+ 15.Nxc5-10手目で黒が 10…Rfxd8 と取っていたら白はここで 15.Kf1 と指して勝ちになる-15…Nxc5 16.Bg5 Rd5 17.Be7 Re8 18.c4 で白の勝ちになる)で前述の状況と同じ状況である。

 黒が通常はクイーン翼でポーン突きを省略する別の戦型はe5の地点を守る問題に根本的に取り組む 3…g6 である。この場合中原で争点を作り出したあと白は交換中原に移行して、フィアンケットされたビショップの働きを最小限にし、このビショップが放棄したa3-f8の斜筋を弱体化させるのが普通である。例えば 4.c3 d6 5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5 8.Bg5 f6 9.Be3 で白が少し優勢である。

 最後に、黒がクイーン翼が乱れるのを避けようとする別の戦型は 3…Bc5 による古典戦法である。これはキング翼ビショップが「古典的」に展開されるのでそう呼ばれている。例えば 4.c3 Nf6 5.O-O O-O 6.d4 Bb6 7.Bg5(黒のキング翼ビショップがクイーン翼に行ったときは白はその不在につけ込んで Nf6 を釘付けにして優勢を目指すのが普通である)7…d6 8.Ba4(ここでは 8.Bxc6 は白の有利にならない。8…bxc6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8 Rxd8 11.Nxe5 Ba6 で黒が優勢である。例えば 12.Re1 Nxe4 である)8…a5 9.Re1 でe5に対する圧力が強い。白は Nb1-a3(-d2)-c4 という捌きでこの圧力をさらに強めることができる。

 後の章で読者はこれらの戦法や、以降の注で言及される戦法についてさらに情報が得られるであろう。

3…a6 4.Ba4 Nf6

 黒は 4…d6 で遅延シュタイニッツ戦法を選択して、…b5 突きに関して融通性を維持することもできる。これに関連してここでは前述のシュタイニッツ戦法と比較して 5.d4 ですぐに中原に争点を作り上げるのは 5…b5 で効果がないと指摘するにとどめておく。例えば 6.Bb3 Nxd4 7.Nxd4 exd4 8.Bd5(8.Qxd4? は典型的なハメ手が待っている。8…c5 9.Qd5 Be6 10.Bc6+ Bd7 11.Qd5 c4 でビショップが死ぬ)8…Rb8 9.Bc6+ Bd7 でどちらも指せる。

 代わりに 4…b5 5.Bb3 Na5 のタイマノフ戦法では黒は挑発的な敵ビショップを交換で消すことができるが、e5の地点を放棄したので中原で争点ができた時その争点を維持することはできない。例えば 6.O-O(6.Nxe5?! は 6…Nxb3 7.axb3 Qg5 でg2での代償の方が有利である)6…d6 7.d4 exd4(7…Bg4?! は 8.dxe5 Nxb3 9.axb3 Bxf3 10.Qxf3 dxe5 11.Nc3 で白が展開に優り黒のクイーン翼ポーンの弱さが明らかである)8.Nxd4 で白は展開の優位を維持する。もっとも …c5-c4 突きの可能性に少なからず注意を払わなければならない。ただし今のところは無理である(8…c5 9.Bd5)。

5.O-O Be7

 攻撃的な別策は 5…b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 のいわゆるアルハンゲリスク戦法である。これは黒枡ビショップをすぐに働かせる意図である。一例は 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 Qd7(別の攻撃形は 11…g5!? 12.Bg3-捨て駒の 12.Bxg5 hxg5 13.Nxg5 Rf8 は不十分である-12…O-O!? で …Nh5 から …Qf6 の継続手段がある。もっと穏やかな 11…O-O については第4局の黒の5手目の解説を参照)12.a4 O-O-O 13.axb5 axb5 14.Na3 g5 15.Bg3 Nh5 で非常に激しい局勢である。中原の争点の主題は敵のキャッスリングした陣形に対する相互の攻撃を補足している。

6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O

 黒が 8…Bg4 ですぐに争点を持つ中原を作り出そうというのは効果的でない。なぜなら白は単に 9.d3 と応じることができ、その後 h2-h3 と突き …Bh5 なら Nb1-d2-f1-g3 という捌きで釘付けを解消しキング翼で有利な態勢になるからである。

9.h3(図19)

 図19

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(14)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図19(再掲)

 しかしここで 9.d4 と突いてくれば 9…Bg4 は黒が中原の争いに勝つ絶好の態勢になる。例えば 10.Be3(もちろん 10.d5 で争点の維持をやめることも可能である)10…d5(中原の争点に対するこの典型的な武器の使用が Nf3 の釘付けによって容易になっていることは疑いない。しかし本章の範囲外であるが 10…exd4 もまた可能である)11.exd5 exd4 12.Bxd4 Nxd4 13.cxd4 Bb4 となれば黒の布局のすべての課題が解決されている。

 中原の争点の状態の形成を考慮すれば白は …Bg4 を防ぎたい。そして中原の争点の争いで優位に立ちたければ先受けの 9.h3 は必要不可欠である。

 図の局面から生じる戦法全体は「閉鎖」ルイロペスの題名で一括りにされることがよくある。これに対して「開放」ルイロペスは一般に 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Nxe4 から生じる戦型の指定に用いられる。

9…Nb8

 このブレイェル戦法はナイトをc6からd7へ仕切り直しする。この捌きは純粋に超現代的な印象があるがe5を守り、a8-h1の斜筋を空けてそこへクイーン翼ビショップを据える可能性を残し、…Re8、…Bf8 の組み換えを容易にする目的のために Nf6 を保護し(Bg5 の展開を考慮)、最後に …c5 突きを可能にするために役立つ。これらはすべて敵の中原に最大限の圧力をかけるために焦点を合わせている。

 この時点で黒には多くの代わりの手がある。9…Na5(…Na5 のチゴーリン戦法)、9…Nd7(…Nd7 のチゴーリン戦法)、9…Bb7(ザイツェフ戦法)、9…h6(スミスロフ戦法)あるいは 9…Be6 や 9…a5 もある。これらの戦型はすべて中原の争点の主題に異なった方法で対処していて、以降の4章の実戦例のところで具体的に解説する。

 ここでは通常は上記の戦型に移行する小さな可能性に特別の注意を払う。しかし時にはその可能性が中原の争点の状況に特有と考えられる条件を作り出すことがある。もし黒が 9…Re8 と指せばf7の地点の監視が弱まり白がe5のポーンをひどく汚す機会に恵まれるかもしれない。もっともこの機会で優勢になるかは実証が必要である。例えば 10.d4 Bb7(ここでザイツェフ戦法に移行する)11.Ng5 Rf8 12.f4(12.Nf3 Re8 13.Ng5 は早い引き分けで店じまいするためのかなり頻繁に用いられる手段である)12…exf4 13.Bxf4 Na5 で 14.Nd2!? でも 14.Bc2 Nd5! 15.exd5 Bxg5 16.Qh5 h6 17.Nd2! でもお互い指せる分かれである。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8(図20)

 図20

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(15)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図20(再掲)

 争点をめぐる戦いは佳境に入っている。黒は相手に中原を清算させることを期待してe4ポーンに対してしだいに圧力を強めている。白の方は中原での態度を明らかにする必要なしに展開をどんどん進めることができることを望んでいる。

13.Nf1 Bf8 14.Ng3

 この捌きは Bc1 の展開を邪魔することなくe4ポーンを守ることのできる位置にナイトをつけるのに役立つだけでなく、f5の地点の占拠も目指している。その地点は中原の変容とは無関係に白の激しいキング翼攻撃の基礎となる要素である。代わりに 14.Bg5 は第5局で指される。

14…g6

 この手にはf5の地点の監視とキング翼ビショップをg7の地点につけてd4のポーンにも圧力を増す両様の目的がある。

15.Bg5!?

 この手は h4-h5 突きで攻撃する前に黒が …h6 でキャッスリングした陣形を弱めるのを誘う魂胆である。これは面白い作戦であるが、中原の安定にいささかか自信を持ちすぎているかもしれない。もっと普通の 15.a4 は第3局の手である。

15…h6 16.Bd2

 16.Be3 は 16…exd4 と取られてe4のポーンを救うためには白は 17.Bxd4 c5 18.Bxf6 という具合にビショップを切ることを余儀なくされる。

16…Bg7

 16…c5 で争点を強めることもできた。

17.Qc1 Kh7 18.h4(図21)

 図21

(この章続く)

2010年07月23日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(16)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図21(再掲)

 ここは重要な局面である。白は中原の安定性を信頼していた。なぜなら相手の方から交換してくるならb1-h7の斜筋上の黒キングが危険にさらされると読んでいたからだった。

18…d5!

 代わりに争点をめぐる戦いに典型的な武器を持ち出すのを黒が恐れなかったのはまったく正しかった。ここでのこの手段は側面での攻撃には中原での仕掛けで応ずべしという、戦略の古典的な原則に完全に合致している。

19.exd5

 19.h5 は 19…dxe4 20.hxg6+ fxg6 21.Nxe4 exd4 22.Nxf6+ Qxf6 23.Nxd4 Ne5 となって黒が強力な主導権を握る。

19…exd4 20.Nxd4?

 この手はe5の地点への利きを放棄してしまう。この地点は黒のクイーン翼ナイトにとって最上の拠点となる。

 白は 20.cxd4 と指すべきだった。それならもっと動的な可能性が残っていた。例えば 20…Bxd5 21.h5 Bxf3 22.hxg6+ fxg6 23.gxf3 Nf8 となればお互いにチャンスがある。また、ポーンを犠牲に 20.h5!? と突く手も考えられた。

20…Ne5! 21.Ne6

 この戦術的手段でも白の状況を改善するには至らない。

21…Qxd5

 白枡の対角斜筋上の圧力の脅威は黒の18手目の決断が正しかったことの証明である。

22.Nf4 Qc6 23.h5 Rad8?

 黒は絶好の機会を逃がした。23…Kg8! の後 …g5 突きを狙えば白のしのげる可能性はほとんどなかっただろう。例えば 24.hxg6 fxg6 25.Ne4(25.f3 g5 26.Nfe2 Nxf3+ 27.gxf3 Qxf3)25…g5 26.Nh3 Nc4 で壊滅的状態である。

24.hxg6+ fxg6 25.Qb1!

 この妙手で勝負がまだ続く。

25…Rxd2 26.Bxg6+ Kg8[訳注 26…Kh8 が正しい実戦の手順のようです]

 26…Nxg6? は 27.Qxg6+ Kh8 28.Nf5 Qd7(28…Rg8 29.Re6)29.Ne6 で黒が負ける。26…Kh8 なら大丈夫で 27.Bxe8 Qc5!(27…Nxe8? はだめで 28.Rxe5! Bxe5 29.Ng6+ Kg7 30.Nh5+ Kh7 31.Nxe5+ Qe4 32.Qxe4+ で白の1ポーン得の収局になる)で黒がまだ戦える。

27.Bxe8 Nxe8 28.Qc1?(図22)

 図22

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(17)

第1章 中原の争点(続き)

1.3 実戦例(続き)

 図22(再掲)

 この手が敗着になった。黒は勝ちを決める決定打を放つことができる。白は 28.Qf5 と指さなければいけなかった。これならまだ勝負は分からなかった。

28…Rxf2! 29.Kxf2 Nd3+ 30.Nxd3 Qxg2+ 31.Ke3 Nd6!

 この落ち着いた手は白の駒割の優位が無意味であることを如実に示している。

32.Rf1

 32.Qd1 も 32…Bf6 で白は絶望である。

32…Nc3+ 33.Kf4 Qd5 34.Kg4

 34.Nf5 には 34…Qe4+ がある。

34…Bc8+ 35.Kh4 Qd8+ 36.Kh5 Qe8+ 37.Kh4 Qe7+ 38.Qh5 Ne3 0-1

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(18)

第2章 閉鎖型中原

主手順 - ザイツェフ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.d5(図23)

 図23

 白は非常に多くの戦型やそれぞれ非常に異なる場面で中原の閉鎖に踏み切ることができる。以下にあげる戦型に見られるように詳細ではあってもほんの一部の例で、決してすべてを尽くしているわけではない。

 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 の後

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2(または 11.a4 Bf8 12.d5)11…Bf8 12.a4 Qd7(または 12…h6 13.d5)13.axb5(または 13.d5)13…axb5 14.Rxa8 Bxa8 15.d5

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Nd7(または 11…Nc6 12.d5)12.Nbd2(または 12.d5)12…cxd4 13.cxd4 Nc6 14.Nb3(または 14.d5)14…a5 15.Bd3 Ba6 16.d5
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2(または 12.d5)12…cxd4(または 12…Nc6 13.d5)13.cxd4 Bb7(または 13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.d5)14.d5

 …Nd7 のケレス戦法
 - 9…Nd7 10.d4 Nb6(または 10…Bf6 11.a4 Bb7 12.d5)11.Nbd2 Bf6 12.d5

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8(または 12…c5 13.d5)13.Nf1(または 13.b3 Bf8 14.d5)13…Bf8 14.Ng3 g6 15.a4 c5 16.d5

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Bc2(または 12.a3 Bb7 13.Bc2 Nb8 14.b4 Nbd7 15.Bb2 c5 16.d5)12…Bd7(または 12…Bb7 13.d5)13.a3 a5 14.d5

 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bb7(または 12…Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.b3 Nc6 16.d5)13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.d5

 または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 4…d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6(時には 4…g6 5.c3 d6 6.d4 Bd7 となる手順もある)7.O-O Bg7 8.Re1(または 8.d5)8…Nge7 9.d5

 反マーシャルシステム
 - 4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 b4 9.a5 Rb8 10.d4 d6 11.d5

 アルハンゲリスク戦法
 - 4…Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O 12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.d5

 その他の戦法
 - 4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.d4 Bg4 10.d5

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(19)

第2章 閉鎖型中原

2.1 戦略の着眼点

 前回あげた戦型はすべて戦略的に似た状況を生み出す。例外はいくつかの個別の派生型であり、それらについては別個に取り上げる。

 前回紹介した戦法の戦略上の主要な特徴は、双方のキングの位置に注意を払いつつ、最もよく現れるポーンの形の手短な分析から推量することができる(図24)。

 図24

 この局面では以下のことを容易に指摘することができる。

 (1)a5とc6の地点の弱点

 (2)キングの位置のせいでf5とf4の地点が比較的弱体化

 (3)中央部の連鎖ポーンとせき止められた中原

 黒が …b7-b5 と指さなかったり、逆に …c7-c5 突きも指した戦型には独自の特徴があり、別個に検討する。

(この章続く)

2010年07月27日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(20)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

黒のクイーン翼の弱点

 黒のクイーン翼の弱点は …b7-b5 によってもたらされるa5とc6の地点の弱体化にだけあるのではなく、d5の白ポーンの存在がc6の地点を固定し、c7のポーンがa6とb5のポーンの助けに加わるのを防ぐことによってそれらのポーンを孤立させることにもある。

 実際クイーン翼の2ポーンのどちらかが盤上から消えれば残されたポーンはすぐに孤立ポーンとなる立場にある。

 だからクイーン翼で白は複数の攻撃目標を持つことができ、目的達成のため複数の手段を用いるのは理にかなっていることは明らかである。

 白の手段を見ていく前に黒が …b7-b5 と突かなかった局面や …c7-c5 も突いた局面にはこのような特徴がなく別個に検討することにしたのは前に述べたとおりである。

(この章続く)

2010年07月28日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(21)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

a2-a4 突き

 このポーン突きで白は二重の目的を追求している。それはb5のポーンに強い圧力をかけることと、自分でa列を素通しにできる態勢にすることである。一般的には axb5 axb5 でb5のポーンを孤立させた後クイーンとf1-a6の斜筋上のビショップ、時にはa3からクイーン翼ナイトの介入によってb5に対する圧力が増大する(図25)。

 図25

 黒はクイーン翼ビショップをよくb7に展開するのでb5のポーンを守るために …c6 と突かなければならないことがある。しかし dxc6 Bxc6 のあと色々な攻撃の可能性によりこのポーンの守りは骨の折れるものとなる。だから黒は白のクイーン翼を乱す意図で …b5-b4 によりこのポーンを犠牲にすることを決断することがある(図26)。

 図26

 しかしこのポーン捨てを行なうにあたり黒は、b4のポーンが二重ポーンではあってもパスポーンであり、白が突き進めることができれば非常に危険な存在になることがあることに注意を払わなければならない。

 一方、黒の戦略が成功を収める状況もあり、白は場合によってはクイーン翼ナイトをc2に置いてこのポーン捨てを防ぐようにすることができる。このナイトは次にb4に行って重要なc6とd5の地点を支配する。

 他の場合では黒はとにかく自発的にb5のポーンを見捨てて、他の場所で反撃の機会を得ることに期待することがある。しかしこの場合でも黒は相手にb列でパスポーンを与えることになり、しかも二重ポーンになっていない。

 前に言ったように a2-a4 突きの別の目的はa列の素通しの準備である。白はその列を、たぶん黒枡ビショップの助けを少し借りつつルークを重ねて支配する(図27)。

 図27

 ここで白はまず Ra3 とし次に Rea1 としてルークを重ねる機会があるだけでなく、axb5 axb5、Ba7 という捌きでa列を支配することもできる。この捌きは Ra8 の働きを抑えながらこの列に大駒を重ねることができる。

 a4 突きのあと黒は通常はクイーン翼での相手の主導権に耐えなければならず、中原および/またはあとで出てくるようにキング翼の列で積極的な反撃を模索することになる。たいていの場合思い切った策は a4 に …bxa4 と応じることである(図28)。

 図28

 これは治療は病気より悪い例である。なぜならこの手はa6のポーンをひどく弱めc4の地点の支配を放棄して白のクイーン翼ナイトが容易にそこに来れるようにするからである。

 白がまだ c2-c4 と突いていなかった時は一つの非常に現実的な代替策の可能性が黒にある。それは a2-a4 に対してa列を閉鎖のままにする明白な目的で …b5-b4 と応じることである(図29)。

 図29

 …b4 の効果はクイーン翼の完全な固定化かもしれない(盤の他の方面で最良の展望が得られる側に有利となる)。そして黒はc4の拠点が敵の手に落ちるかもしれないということも心に留めておかなければならない。

 さらに a4-a5 突きでb4のポーンが孤立しa6のポーンが動けなくなり、両方とも攻撃目標となる可能性がある。ただしa5のポーンの安全性は犠牲になるが。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(22)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nd2-b3-a5 の捌き

 …b7-b5 突きによって生じた弱点に付け込むために白が用いる別の手段はナイトをa5の地点に据えようとすることである(図30)。

 図30

 a5の地点はナイトにとってそれほど通い慣れた道ではないが多くの場合きわめて重要になる。実際ここから黒のクイーン翼の駒の動きに支障を与え、…c7-c6 突きを困難にし(これが重要であることはあとで明らかになる)中央より先の弱体化したc6の地点への侵入を狙い、それにより敵にはるかに重大な問題を突き付ける。白はナイトによってかけている圧力を、b2-b4 突きでb5のポーンをせき止めてからc列を素通しにし占拠することにより強めることができる(図31)。

 図31

 c3-c4 の後b5のポーンに対する攻撃は c4-c5 に加え cxd6 という別策の可能性もあり黒に …bxc4 と取ることをほとんど強制し、白がc列で大きな可能性を得る。

 このナイトの捌きから生じる危険性を考えれば黒は Nb3 に …a6-a5 で応じることによってそれを避けるのが可能性として最善である(図32)。

 図32

 黒はb5のポーンをさらに弱体化する代償としてクイーン翼でポーンを突いて(…a5-a4 および/または …b5-b4)チャンスを見い出すことを期待している。そのためにクイーン翼で相手を悩ませ、同時に中原での攻勢を準備する。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(23)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b4 突き

 黒のこの反発を防ぐために白はたぶん a2-a3 と準備して b2-b4 と突くことにより黒の弱点のa5の地点を固定する(図33)。

 図33

 このbポーンの前進は自分のナイトがa5に跳ねた際にそれを支えるだけでなく、他にも効用がある。即ちb5のポーンを動けなくしてそれを包囲攻撃しやすくし、…b5-b4 のポーン捨てを防ぐ。また、a5とc5の地点に黒のナイトが来れなくする。それにより黒は戦いから隔離されたb7の地点にナイトを置くようにしむけられるか余儀なくされるかもしれない(図34)。

 図34

 ここに図示したような態勢の場合黒はおとなしくナイトをb7に引くよりも …Nc4、Nxc4 bxc4 の方を選択することがあるかもしれない。もっとも、c4に残ったポーンは十中八九は敵の捕食者の餌食となる。このように指すことにより黒は …c7-c6 と指すつもりで、白がc4のポーンを取るのに手数をかけなければならないことにつけ込んで中原で十分な反撃が得られることを期待している(図35)。

 図35

 ここに示されている具体的な状況とはまったく別に、b2-b4 突きには …b7-b5 突きによって生じるのと同じ欠陥があることを指摘しておくべきだろう。つまりこのポーン突きはc4とa4の地点を弱め、敵の侵入を許す可能性(例えば …Nd7-b6-c4 または …Nd7-b6-a4)を残す。また、c3のポーンを弱め、黒が …c7-c6 突きでc列を素通しにした時重要性を帯びる要因となることがある。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(24)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f5とf4の地点の弱点

 さて、キング翼の状況に目を向けていくとポーンの形とキングの囲いが共に対称形なので白も黒もそれぞれf5とf4の弱点の利用に努めることができる(図36)。

 図36

 これらの地点の弱さは実際両方のキングがこの型の中原でキング翼にキャッスリングしたことに関係している。f5を …g6 突きで守るのもf4を g3 突きで守るのもキャッスリングした陣形を弱める。そして白の場合は中原での争点がある間に h2-h3 突きが指されていれば一層弱くなる。

 f5とf4の地点はナイトにとって理想的な拠点である。このようなナイトは相手のキャッスリングした陣形に(他の駒と協力して)具体的な狙いを見舞うのに寄与することができるし、あるいは既に述べたようにgポーンの前進を促して陣形を弱体化させるのに寄与することができる。

(この章続く)

2010年08月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(25)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nb1-d2-f1-g3(-e3) の捌き

 f5の地点の占拠狙いで白はほとんど常に Nb1-d2-f1 の捌きに訴える。なぜならそこからナイトがg3に行くかe3に行くかを選べるからである(図37)。

 図37

 g3に跳ねる方が普通だがどちらの手にも良い点と悪い点がある。g3からはh5の地点に利いていて黒のもくろむ …Nf6-h5-f4 の捌きからの策略を妨げる。しかしこのナイトの活動範囲はキング翼に限られるので黒は …g7-g6 突きによってその攻撃の影響力を削ぐこともできる。一方e3からは要所のd5とc4の地点を監視していて(これらの地点の支配がとても重要になるのは a2-a4 の後と-図28と29を参照-および/または …c7-c6 の後-後で出てくる図54を参照-である)、キング翼での影響力は …g7-g6 突きによって制限されない。というのはその場合g4に行ってh6とf6の地点の弱点につけ込む用意があるからである。しかしe4ポーンの守りと Bc1 の動きを邪魔するのは確かである。

 f5の地点の占拠の問題を …Bxf5 によって過激に解決するのはいつも黒の利益になるとは限らないことを指摘しておく。なぜなら exf5 のあと白はポーンで(g2-g4-g5)押しまくる用意があるからである。これによりb1-h7の危険な斜筋で Bc2 を蘇らせることにもなる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(26)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf3-h2-g4 の捌き

 白がf5の地点を占拠する意図がうまくいくならば、キング翼での圧力が Nf3-h2-h4 の捌きを主眼とする強力な駒攻撃に転化するのに時間はかからないと想像するのはたやすい。ナイトがh2にいればクイーンがd1-h5の斜筋で戦闘に参加できるし、ナイトがg4にいれば Nf6 を攻撃することにより黒キングの守りを崩すのに貢献する(図38)。

 図38

 このような攻撃法は滅多に潜在的な狙いの域を出ないが黒は決して忘れてしまうわけにはいかない。注意すべきは Nf3-h2-g4 の捌きは必ずしもf5の地点の占拠の前触れとは限らないということである。実際 …g7-g6 突きが指されれば白は一般にf6とh6の弱体化につけ込むためにこの捌きを頼りにする。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(27)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Re8、…g6、…Bf8(-g7) による防御の捌き

 一般的に前図に示されたのと似たような状況になるのを防ぐために黒はf5の地点を …g7-g6 突きで守ろうとする。そしてその結果起こるf6とh6の地点の弱体化を少なくとも部分的に補修するために黒は黒枡ビショップを …Re8 と …Bf8 で元の位置に戻す(図39)。

 図39

 実際にはこの態勢から必要ならばビショップをフィアンケットすることができる。その位置からだけ …g7-g6 突きによって弱体化した両方の地点に適正なにらみを利かせることができる。中原に争点のある状況ではこの捌きは白の中原に圧力を増すために他のどんなものよりも役に立つことを忘れないようにしよう(図10と12を参照)。

 この捌きの中核をなす3手は異なった手順で指すこともできる。黒は通常は …Re8、…Bf8 そして …g7-g6 と指すが、最後のポーン突きをもっと早く指すこともできる。

(この章続く)

2010年08月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(28)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…Nf6-h5-f4 の捌き

 …g7-g6 に含まれた一つの反撃策は図39の解説で見た戦術の主題の裏をかいてh5の地点を守ることである。それにより黒が攻撃的な捌きの …Nf6-h5-f4 ができるようになり、白は一方では敵のキャッスリングした囲いに弱点を誘発させたのを喜びつつ、他方では脅威となるf4のナイトに対処しなければならないならばその地点に来させない用意をしなければならない。(図40)。

図40挿入 図40

 色が逆の場合にf5の地点に起こるようにf4の地点の占拠は …f7-f5 突きの後のf列の素通しとあいまって(後述の「e4-d5連鎖ポーンの根元の切り崩し」を参照)キング翼での駒による激しい攻撃の始まりとなり得る。結果として白は自分のキングを守り侵入者をf4から追い出すために Bc2-d3-f1 から g2-g3 という捌きに訴え、h3を守る必要があるならば Kh2 で補強しなければならないことがある。

 f5の地点の占拠に関して既に述べたようにここでも侵入者を Bxf4 で除去するのは白の利益にならないことに注意しなければならない。なぜなら双ビショップを譲りh8-a1の対角斜筋を開け拠点のe5の地点を空けるのは明らかに黒の有利となるからである。

(この章続く)

2010年08月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(29)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

Nf6 の釘付け

 白の作戦に戻ると …g7-g6 突きによって引き起こされる弱体化は小駒をしっかりとh6の地点に据えることができる場合にのみ厄介な主導権が白に保証される(例えば Bc1-h6、Nf3-h2-g4-h6 あるいは Ne3-g4-h6)。しかしこのような事態になるのはまれである。だから一般に白が Nf6 を Bg5 で釘付けにしてさらに弱体化を誘うように努めるべきなのは理にかなっている(図41)。

 図41

 ついでながらクイーン翼ビショップのg5への展開は閉鎖中原の形成に先んじていたかもしれない。だからこの展開は閉鎖中原や …g7-g6 突きとは無関係に必要となるかもしれない。

 図に示された状況の下で黒はできるだけ早い機会に …h7-h6 と指してうるさい存在の Bg5 をなくそうとするのが普通である。さもないと Qd2 で釘付けが恒久化するかもしれないし釘付けの効果が Nf3-h2-g4 の捌きによって広がるかもしれない。…h7-h6 のあと白はビショップをe3に引くのが普通で、そのあと白は Qd2 で視線をh6に向ける(図42)。

 図42

 この時点で黒はh6のポーンを …Kh7 で守ることができる。また、単にポーンをh5に突き進めて当たりをかわすこともできる。この場合h7の地点を Nf6 のために取っておき、白ビショップがg5に戻ってくれば …Be7 から …Nh7 で迎え撃つ意図で(h7の地点は白ナイトがg5の地点を占めたときそれを迎え撃つ手段として Nf6 が利用することもできる)、…f7-f5 突きの準備にもなる(図43)。

 図43

 …f7-f5 と突くことができるようにするための黒の着想はさらに …h5-h4 と突いて Ng3 を追い払うことである。同様の戦略の適用はe4-d5の連鎖ポーンの根元を攻撃する目的と密接に関連している(後述)。だからキング翼の状況に実際的な効果をもたらすことがある。言い換えると黒はキャッスリングした囲いのかなりの弱体化を基本的にそのままにして肯定的な面を利用することにより逆手に取ろうとしている。

 注意すべきは場合により …h5 突きが 前に見たように時に白の作戦の一部となっている Nf3-h2-g4 の捌きを防ぐのに役立つことがあるということである。

(この章続く)

2010年08月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(30)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

黒のキャッスリングした囲いの弱点につけ込む攻撃法

 黒のキャッスリングした囲いの弱点につけ込むためには白はキング翼の列を開放するように努めなければならないことは明らかである。この結果をもたらすために白には大きく分けて二つのやり方がある。一つにはキング翼のポーンを動員して敵の前線とぶつかるまで前進させるのと、もう一つは駒を犠牲にすることである。

 最初の場合白はfポーンに敵陣突破の役目を託すことができるし、条件がよければhポーンに託すこともできる。二番目の場合白はほとんど決まってf5のナイトを大局的に捨て駒にする。

(この章続く)

2010年08月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(31)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

fポーンの動員

 fポーンを動員するためには白は Nf3 を動かさなければならない。既に見たようにこれはナイトがh2かh4に行くことを意味することになる。

 fポーンの道を空けたあと白の作戦は理想的には、必要ならばgポーンおよび/またはhポーン突きの助けで f2-f4-f5 とポーンを突いてキング翼での黒キングの動き回る余地を抑えることである(図44)。

 図44

 そのような大規模な進攻が実行に移されれば防御がとてつもない問題に直面することは明らかである。だから f2-f4 のあと黒はほとんど常にf列のうっとうしい侵入者を …exf4 で清算することを決断する。この場合e5とf4のポーンの消滅のあと戦略的状況はがらりと一変する(図45)。

 図45

 白はf列の素通しと、小駒の中央集結に役立つd4の拠点の支配に成功する。しかし戦いは主にe5の地点をめぐって起こり、e4-e5 による仕掛けは白の最も重要な戦略目標である。それにより中原の破壊を完了し、とりわけ白枡ビショップを戦いに参加させることができる。黒は明らかにe5の地点の支配を強化することにより(例えば …Bg7 と …Nd7)この進攻を防ごうとする。e5に強力な中原のナイトを据えてe4のポーンを麻痺させ、そのポーンを半素通し列上の構造的な弱点と化する。時には同様のせき止め戦略が大成功することもある。その結果白が多くの優位を失い、局面は場合により白に不利となってしまうこともあり得る。

(この章続く)

2010年08月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(32)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

f5でのナイトの大局的捨て駒

 キング翼のこのような敵陣突破は実際に捨て駒を行なう前に圧力をかける状況を作り出すように g4、Kh2 および Rg1 の準備(状況により最善と考えられる手順で指される)を行なった後に指されるのが普通である(図46)。

 図46

 黒はキングをh8に動かして紛争地帯から退避させることができるが、この防御手順でも捨て駒の有効性は無効にならない。この捨て駒の主眼は既に凝り形の黒のキング翼の陣形を窒息させることである。というのは捨て駒が受け入れられればいくらかの戦力損をこうむっても図44に示されたのと同様の局面を達成するからである。

 Nf5 のあと黒が …gxf5 で捨て駒を受諾することにすれば白は状況によりgポーンで取り返すかeポーンで取り返すかを選択することができる。どちらの場合でもf5にポーンがあるということは敵陣の障害になり防御を難しくさせる。

 前者の場合白はとりわけg列の素通しから生じる可能性を利用するように指し、後者の場合はキング翼のポーンで押しまくりb1-h7に沿って白枡ビショップの攻撃能力を生かすようにする。しかし後者の場合白は …e4 と応じられる可能性に気を配らなければならない。特に相手がナイトをe5に据えることができる時はそうである。というのはそのような強力な中央集結は時として攻撃を撃退するのに十分であるからである。

(この章続く)

2010年08月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(33)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

hポーンの動員

 図46に示されたような状況の場合白はhポーンに働きかけることによって攻撃を追求することもできる。しかしこの場合白は h3-h4 のあと黒が …h7-h5 と指すのに備えて多大の注意を払わなければならない。(図47)。

 図47

 この防御手段は白のhポーン突きの準備が適切でなかった時に効果的となる。なぜならg4の地点の弱体化が防御にとって非常に重要になることがあるからである。

 白がhポーンを動員できる別の状況は黒が …g7-g6 と突いて Ng3 の捌く余地を制限しようとした時である。ここで白は Kh2 と Rh1 の後hポーン突きの手段によってh列を素通しにしようとすることができる(図48)。

 図48

 この着想はキングをg1に戻すことによってルークを自由にしようということである。しかしこの捌きは白が …h7-h5 の応手を前もって考えに入れなければならないので例外的な状況でのみ実行される。

(この章続く)

2010年08月10日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(34)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4-d5連鎖ポーンの切り崩し

 黒の反撃の目標はf4の地点の占拠で、白の中原の連鎖ポーンを破壊することと大いに関係がある。c7-d6-e5の連鎖ポーンによって示唆される攻撃の方向と相まって黒はe4-d5連鎖ポーンの基盤を …f7-f5 突きの手段で切り崩すことができる(図49)。

 図49

 黒は通常はこのポーン突きを …g7-g6 の助けを借りて達成する。それは exf5 に …gxf5 と応じられるようにし、相手が小駒をe4にしっかりと据えることによって突然空いたe4の拠点から優位を得るのを防ぐことができるようにするためである。

 この反撃は基本的に二つの目的に向けることができる。それは黒がd5のポーンを弱体化させる意図なのか、それとも大規模なポーンの攻勢に道を開くようにキング翼で陣地を広げる意図なのかによる。

 前者の場合 exf5 と取るだけで黒の意図を助けるので黒は …g7-g6 と支援する手を省くこともできる(図50)。

 図50

 d5のポーンに対する攻撃は色々な手段で行なわれる。最も一般的なのは図に示されているとおりである。このような場合白の展望は明らかにd5のポーンを守りとおす可能性とe4の地点を利用する可能性とに密接に関連している。

 後者の場合 …f5-f4 のあと黒が得る陣形の広さの優位はキング翼の大規模な突進の機会を生む(図51)。

 図51

 例外的ではあるが同様の状況で白は敵の前進を食い止め反対の方面で迅速に攻撃を図るように努めなければならない。

(この章続く)

2010年08月11日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(35)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

白の作戦の曖昧さ

 相手が …Nf6-h5-f4 の捌きまたは …f7-f5 突きでキング翼で反撃を始めるのを防ぐために白は g2-g4 突きによって先受けの手段をとることができる。このポーン突きはf5とh5の両方の地点を支配することができる(図52)。

 図52

 別の面はこのポーン突きによって引き起こされるキング翼の黒枡の全体的な弱体化である。黒は …h7-h6、…Nh7 から …Bg5 のような捌きでこの状況につけ込むことができる。

 黒のキング翼での動きに対する抑止力として働くことに加えて g2-g4 突きは図46で既に見たようにf5での大局的なナイト捨てへの前触れとなるかもしれない。白は時には作戦をわざとこの曖昧さに基づかせるかもしれない。白はキング翼での大規模な攻撃をほのめかして相手に戦力のほとんどを狙われている戦線の防御にさかせることができる。そして突然動きの大きな自由さを利用してクイーン翼で戦線突破を図ったり、逆にキング翼に攻撃の矛先を向ける前にクイーン翼で手の込んだ捌きに携わることができる。

 この戦略は必ずしも g2-g4 突きの成否に依存しているわけではないことに触れておく。実際白は将来の作戦行動について相手に見当がつかないようにさせておく目的で盤の反対側で行動する時にこの戦略に訴えるのが普通である。これは両者が注意深く踏み歩くことが要求される典型的な作戦である。

(この章続く)

2010年08月12日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(36)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

e4-d5連鎖ポーンの先端の攻撃

 防御的な反撃の別の通常の主題は白の中原の連鎖ポーンを …c7-c6 突きの手段で突き崩すことである(図53)。

 図53

 このポーン突きは明らかに中央のせき止めで構築された中原での万力のような締め付けから黒を解放することに向けられたものである。中央でのせき止めは前に述べたように白が両翼で攻撃に乗り出すのを可能にする。

 この中央での攻勢に対して白は本質的に異なる三通りの対応をとることができる。それは dxc6 によってもたらされる中原の部分的な破壊を容認するか、相手に …cxd5 とさせるか、それとも b2-b3 から c3-c4 で現状を維持するように努めるかにかかっている。戦いはどの手段が用いられるかによってまったく異なった様相を帯びる。

(この章続く)

2010年08月13日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(37)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

dxc6 取りと a2-g8 斜筋の開通

 白が dxc6 と取ることにすれば黒はナイトでなくビショップかクイーンで取り返すのが普通である。なぜならクイーン翼ナイトはb8にいるものとすればd7を経由してb6(d5の地点に利かせるため)あるいはc5(e4に圧力をかけるため)に行くことにより戦いにもっと適切に貢献できるからである。もしa5にいたならばc4がよりよい橋頭堡になる。そしてe7にいる場合は …d6-d5 突きを支援する絶好の地点にいることになる。

 d5の地点が必争の要点であることは容易に見てとれるだろう。両陣営の目的はそれぞれ …d6-d5 突きの捌きを実現することと防ぐことである(図54)。

 図54

 黒はd5とe4の地点に全力を傾け、白は直接的または間接的手段で …d6-d5 突きを封じようとする。d5とc6のポーンの交換を踏まえて白は例えば a2-a3 または a2-a4 の後 …Na5 の当たりに対してa2に下がることができるようにして a2-g8 斜筋上に白枡ビショップを保持することができる(しかし注意すべきは Na5 はc4に行くか …Nc4-b6 と捌いてまだd5の地点をめぐる戦いに参加できるということである)。あるいは白は例えば Bc1-g5xf6 の単純化によってd5の地点の相手の支配を弱めることができる。最後に、白はe5のポーンに圧力をかけておいて …d6-d5 と突いてきたらe5のポーン取りを狙うこともできる。

 迎え撃つ戦略の成功不成功にかかわらず a2-g8 斜筋の開通はf7に対する戦術の着想の実行に有利となることは明らかである。それはとりもなおさず白陣が広さと堅固さを失う一方で推進力を獲得することになる。

(この章続く)

2010年08月14日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(38)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…cxd5 取りと b1-h7 斜筋の開通

 白は図53に示されるような中原の連鎖ポーンの先端に対する攻撃に対して、ほとんど前述のやり方に似ているがもっと攻撃的な手段で応じることができる。即ち相手に …cxd5 と取らせて exd5 と取り返した後 b1-h7 の斜筋が開くようにすることができる。d5のポーンが相手の容易な標的になることは気にしない(図55)。

 図55

 黒がd5のポーンの包囲攻撃に成功し戦力の優位と中原に強力な可動2ポーンを得ることは非常によくある。しかし白の陣形は b1-h7 の開通のおかげで黒のキャッスリングした囲いに対する攻撃の可能性が生まれるので急に新たな活動性が得られる。

(この章続く)

2010年08月15日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(39)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

b2-b3、c3-c4 突きとc列の開通

 最後に、白は …c7-c6 突きに対して b3 から c4 と突いてできるだけ長く中原の橋頭堡を維持するようにしてd5の地点の防御を間に合わせることができる。(図56)。

 図56

 このような戦略の効果はほとんど必然的に c4 cxd5、cxd5 の手順に引き続いてc列の開通を引き起こす。しかし黒が …c7-c5 と突き …cxd4 と交換して中原で争点が続いている間に、閉鎖型中原ができるよりも以前にこの状況がもっと多く見られる。

 新たにできた戦略状況において黒は一般にaポーンとbポーンを突いてクイーン翼の拡張を図る。このポーン突きは …Ba6、…Nd7-c5 のような捌きで支援され当然c列は大駒で占拠する。要するに黒は b2-b3 突きによって引き起こされたクイーン翼のわずかな弱体化につけこもうとする(図57)。

 図57

 一方白は急所の侵入口のc3とc2の地点の支配を維持し、素通し列で大駒を交換し収局に近づくのと、いつものようにキング翼での敵陣突破に懸けるのとどちらが自分に有利かを必要があれば判断することができる。b2-b3 突きの一つの肯定的な面は、黒がcポーンを交換したあとしばしばもくろむことができるc4への黒ナイトの侵入を防いでいるということである。

(この章続く)

2010年08月16日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(40)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

不良ビショップ

 閉鎖中原がもたらすことの一つは黒の黒枡ビショップの動きがd6とe5のポーンの存在によってひどく制限されほとんど守勢の役割に追いやられることである。だから黒がこのビショップを白の黒枡ビショップと交換する、あるいは適切な捌きによって戦いの真っ只中に投入しようとすることを考えるのは理にかなっている。

 不良ビショップの問題を解決する最も直接的な方法はc1-h6の斜筋に利かせることにより交換を目指すことである。黒は例えば既に述べた …h7-h6、…Nh7 そして …Bg5 の捌きにより達成することもできるし(図52の解説を参照)、相手の黒枡ビショップがd2またはe3にいるナイトによってふさがれている時に何の助けも必要とせずに達成することもできる(図58)。

 図58

 しかし黒がこのビショップを白のナイトと交換するのはほとんどの場合不利となることに注意しなければならない。というのはこの交換によってキング翼の黒枡がひどく弱体化するからである。白はこの弱点を f2-f4 突きで際立たせることができる。

 最後に、黒が …c7-c6 と指した局面では、とりわけc列が素通しになっている場合には、このビショップがd8を経由して a7-g1 の斜筋でまた働くようになるかもしれないことを注意しておく。(図59)。

 図59

 時にはa7に置かれたクイーンの支援を受けたこのビショップが a7-g1 の斜筋上で真の脅威に変身して成功を収めることがあるかもしれない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(41)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…c7-c5 突き

 ルイロペスの重要な戦法のほとんどにおいてd5による中原の閉鎖が起こるのは …c7-c5 と突いた後である。(図60)。

 図60

 中原を閉鎖するためにこの瞬間を待っていた白にとって、このようにして中原の連鎖ポーンの先頭への攻撃の可能性を避け敵キングに対する邪魔されない攻撃への道を開くのは理にかなっている。この種の局面においてこれまで見てきた局面と比べると、両者の戦略的な行動はキング翼での捌きに関してはとくに変わりがないがクイーン翼では新しい状況が見られる。

 もう …c7-c6 突きの手段で中原で反撃できないので黒は敵のポーンと接触するまで自分のポーンを突き進めることによって(…c5-c4、…a6-a5、…b5-b4)列を素通しにすることに努め、せき止めの手段の可能性を避けながらc5の地点をナイトの拠点として用いる(図61)。

 図61

 白の方はこの反応を a2-a4 突きの手段によって封じ込めるように努める。a列を素通しにするよう準備するとともに白は …c5-c4 より前に ,,,b5-b4 と突くように仕向ける。そのあと白には二つの選択肢がある。それはc列を素通しにしてクイーン翼で戦いを起こしていくのと、c3-c4 でクイーン翼を完全に封鎖してキング翼に集中することである。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(42)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.1 戦略の着眼点(続き)

…b7-b5 不突き

 黒が …b7-b5 突きを省略することによってクイーン翼でもっと堅固な陣形を保った時でも白は閉鎖中原にすることを決断することがあるかもしれない。その際生じる戦略的な構造は次のようになるだろう(図62)。

 図62

 …b7-b5 突きが指されていなければ明らかに白にはこの章の初めで述べたクイーン翼での攻撃目標がないことになる。しかし白は最も古典的な方法で c7-d6-e5 の連鎖ポーンに対する攻撃を用意することができる。つまりcポーンで突き破るのである(c3-c4-c5xd6)。白の目的は陣地の広さに優る方面で素通し列を作り、閉鎖列であっても敵陣に弱いポーン(d6)を作ることである。一方黒の方から …dxc5 と取ってくれば白はc7のポーンを弱めd5のポーンの可動性を回復する目的を達成する。

 これらの場合黒の反撃も中原の連鎖ポーンの示す攻撃の方向ともっとよく調和して行なわれる。だから黒は連鎖ポーンの先頭への攻撃から得られるかもしれないことにつけ込むよりも、e4-d5の連鎖ポーンの根元への攻撃から生じるキング翼での反撃の効果を高めようとする。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(43)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所

 閉鎖中原は通常は頻発する戦術の狙い所を広めるのに役立たないけれども(少なくとも布局に関しては)、この種の中原では複数の戦法に共通するいくつかの戦術の狙い所を正確に指摘することができる。ここではより一般性のある戦術の狙い所について触れ、e4-d5連鎖ポーンの根元や先頭に対する攻撃のあと中原が一部壊れた局面には戦術的手段がもっと増えるかもしれない(分類はできなくなるけれども)ことを読者に知ってもらう。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(44)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Nh4(Nh5) の無防備の位置

 もし Nf3-h5-f5 または …Nf6-h5-f4 の捌きでf5またはf4の地点を占めようとするなら用心深く行なわなければならない。というのはナイトがh列に跳ねたとき相手がその無防備の隙を突いてくるかもしれないからである(図63)。

 図63

 この図で例えば黒が …Nh5? と指せば Nxe5 とされる。一方白の手番で Nh4? と指せば …Nxd5 と応じられる。ただし …Nxe4? は間違いで Rxe4 と取られて Nh4 にひもが付く。しかし黒のクイーンがd8にいる場合はこの手も成立する。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(45)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Na5 の捕獲

 白が b2-b3 と c3-c4 の手段でd5のポーンを守る用意をし(図56を参照)黒のクイーン翼ナイトがa5にいるとき黒はc4の地点への利きがいつでも c3-c4 突きを防ぐのに十分であると思い込んではいけない。実際には白は守りを必要とせずに c3-c4 と突けることがある。これは …bxc4 と取り返した時 b3-b4 という手があるからである(図64)。

 図64

 これで Na5 が捕まっている。白がこの狙いを実行に移すことができるためには黒がクイーン翼ビショップをb7に上げていてナイトがb7に逃げられないようになっていないといけない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(46)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

Qd7 の無防備の状態

 思いのほか頻繁に出てくる主題はd7の黒のクイーンの浮いている状態につけ込むことのできることに基づいている。白の手順はf5の地点をうまく占拠できることにかかっている(図65)。

 図65

 この主題の要点がこの図に表わされている。白は Qg4 と指し、Qxg7# と Nh6+ の二つの狙いがあるために勝ちになる。

 もちろんこの主題は次図のようにもっと洗練された形でも現れる(図66)。

 図66

 白は Nexd6 と取るが、黒は …Bxd6 と取ると Qg4 で負けるので取り返せない。…g7-g6 と突いても無駄で、白は黙って Ne4 と引くことができる。Nf6+ があるので黒はf5のナイトを取ることができない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(47)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

d5ポーンの進攻

 一般的に言うとこの主題は擬似捨て駒の Nxe5 に基づいている。この手はd5ポーンを自由にしd6に進めるようにする目的を持っている。

 例えば黒駒の配置がe7のビショップを動けなくしているとき白は黒のビショップの閉じ込めめられた状態につけ込むことにより局面の様相を自分の有利に変える機会に恵まれるかもしれない。(図67)。

 図67

 ここに示された状況で白は Nxe5 と取り …dxe5 の後 d6 と突く。黒枡ビショップを取ったあと第3章で解説する型のポーンの形ができ上がる。Be7 と Nf3 がないことは通常は白に有利に働く。つまり双ビショップを持っていることと敵の黒枡の全般的な弱体化は白に有利である。

 戦術の狙い所は両当たりの主題にも基づくことがある。実際例えば黒がクイーンをc7に配置しクイーン翼ナイトをe7に引いている時d5ポーンの進攻は両当たりになる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(48)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.2 戦術の狙い所(続き)

中原を破壊するための捨て駒

 白も黒も時には小駒を犠牲にしてdまたはeポーンを取るかもしれない。この捨て駒の特徴は戦術そのものでなく主要な目的は危険な可動中原ポーンの厚みを作ることである(図68)。

 図68

 図に示されたような状況では白は例えば Bxc5 dxc5、Nxe5 と駒を犠牲にすることがある(図69)。

 図69

 中原のポーンを完全に自由にする主眼はポーンを集団で進攻させ、その結果として白枡ビショップをb1-h7の斜筋でまた効果的に働く機会を作り出すことである。

 黒も同様にナイトを犠牲にしてe4とd5のポーンを取ることができる。最も有利な(必須というわけではない)状況は白が既に b2-b3 と突いている時である(図70)。

 図70

 この図で黒は …Nxe4、Bxe4 f5、Bc2 e4、Nd4 Nxd5 と指す(図71)。

 図71

 そして危険な可動中原ポーンの厚みを作る目的と不良ビショップを再び厳しく働かせる目的を達成する。

(この章続く)

2010年08月25日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(49)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例

第2局
カスパロフ対スメイカル
ドバイ・オリンピアード、1986年
ザイツェフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6

 黒はこの手でマーシャル・ギャンビットから生じる難解な戦法に行くつもりがないことを相手に告げている。その戦法の手順は 7…O-O 8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 で、第7章で解説する中原の型が出来上がる。

 白は 7…O-O に対して 8.a4 と応じることによりすぐに注意を黒のクイーン翼の弱点に転じてマーシャル・ギャンビットを避けることができる。戦法によっては閉鎖中原の局面が生じる。例えば 8…b4 9.a5 d6(9…Rb8 10.d4 d6 11.d5 Na7 12.Be3-または 12.Nbd2 c6 13.dxc6 Nxc6 14.Nc4 で白がわずかに優勢-12…Nb5 13.Ra4 これでb4のポーンが苦労の種にしかならない)10.d3(10.d4 は 10…Bg4 と応じられる)10…Rb8 11.Nbd2 Kh8 12.c3 Nh5 13.d4(白はここで 13.Nxe5?! Nxe5 14.Qxh5 としても得にならず 14…Nxd3 で黒が良い)13…Bf6 14.d5 Ne7 で難解だが基本的には均衡のとれた局面になる。ここでも 15.Nxe5?! は 15…Bxe5 でうまくいかない。

8.c3 O-O 9.h3

 閉鎖中原は次の手順からもよく現れる。9.d4 Bg4 10.d5(10.Be3 d5 については第1局の白の9手目の解説を参照。ポーンを犠牲にする 10.h3 Bxf3 11.Qxf3-11.gxf3!?-11…exd4 12.Qd1 dxc3 13.Nxc3 はe列とf列に2個の可動中原ポーン、それにキング翼での攻撃の可能性を得ようとするもので面白いが本筋というわけでもない)10…Na5 11.Bc2 c6 12.h3 Bc8(ビショップが白に中原を閉鎖させて目的を果たし、これからa8-h1の斜筋に臨もうとしている。もっとも 12…Bxf3 13.Qxf3 cxd5 14.exd5 Nc4 15.Nd2 Nb6 16.Nf1 Nbxd5 も同じくらい良い手で、白の主導権は黒の戦力得によって相殺されている。12…Bd7 に対しては 13.Nxe5 dxe5 14.d6 が一つの選択肢で、白がわずかではあるが永続的な優勢を確保している。黒は前の手でこのビショップ引きを準備することができる。例えば 11…Qc8 12.h3 Bd7 13.Nbd2 c6 である)13.dxc6 Qc7 14.Nbd2 Qxc6 15.Nf1 これで形勢は釣り合っている。例えば 15…Nc4 16.Ng3 Re8 17.a4 Bb7 18.Bd3 Bf8 19.Qe2 d5 である。

9…Bb7(図72)

 図72

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(50)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図72(再掲)

 黒は現在流行しているザイツェフ戦法を選択した。この手は以降の …Re8 から …Bf8 の捌きと関連して中原での主眼の争点を目的としている。つまり(10.d4 の後)白が中原で決断を下すようにe4のポーンに圧力をかけることである。さらに黒は Nc6 の将来の動向についても決定を延期している。このナイトはこれから分かるようにいろいろな所に動くことができる。

 黒にはもちろん他にもいくつもの対抗策がある。

 (1)9…h6 が特徴のスミスロフ戦法。これも …Re8 から …Bf8 の捌きが目的だがまず最初に白の小駒がg5に来るのを防いでおく。注意を閉鎖中原が生じる場合に限定していくつかの手順を紹介する。9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 そしてここから

 (1a)12.Bc2 Bd7 13.Bd3 Qb8 14.b3 g6 15.Bb2 Bg7 16.d5 Nd8 17.c4 これはわずかに白が優勢である。

 (1b)12.a3(目的は Ba2 を可能にすること、あるいは Bc2 と引いて …exd4、cxd4 Nb4 の可能性を防ぐと同時に b2-b4 突きを準備すること)12…Bb7 13.Bc2(ここでは 13.Ba2 Nb8 14.d5 も可能だが白が互角以上にはならないようである)13…Nb8 14.b4(14.b3 Nbd7 15.d5 c6 16.c4 も同様に良い)14…Nbd7 15.Bb2 g6 16.Qb1(e4の地点を守って Nd2 を動けるようにした)16…Bg7 17.Nb3 Rb8 18.Na5 から d5 で白が有望である。

 (1c)12.Nf1 Bb7(12…Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.b3 Nc6 16.d5 のあと白がわずかに優勢を保っている)13.Ng3 Na5 14.Bc2 Nc4(14…c5 15.d5 Nc4 の局面はほとんど実戦に現われず形勢判断が成されていない)15.b3(15.a4 には強手の 15…d5! で互角)15…Nb6 16.Bd2(16.a4 bxa4 17.bxa4 a5 は均衡のとれた局面)16…c5 17.d5 g6 はどちらも指せる。

 (2)9…Nd7 のチゴーリン戦法(チゴーリン戦法には2種類ある。最もよく知られている 9…Na5 は第3局で解説する)。このナイト引きの意図はキング翼ナイトをd7からb6へ移動しクイーン翼の重要な白枡を支配し、…Na5 から …c5 でクイーン翼で主導権を発揮するように努めようとすることである。Nf6 の地点は代わりにキング翼ビショップが占め、このビショップがf6の地点からe5のポーンを強化しd4に圧力をかける。ちょっといくつか実戦例を見てみよう。9…Nd7 10.d4 このあと

 (2a)10…Nb6(11.a4 を防ぐため)11.Nbd2 Bf6 12.d5 Na5 13.Bc2 c6 14.dxc6 Qc7 15.Nf1 白がいつもの目的で先行しているので優勢である。

 (2b)10…Bf6 11.a4 Bb7 12.axb5(すぐに 12.d5 と突くこともできる)12…axb5 13.Rxa8 Bxa8(13…Qxa8 14.d5 Na5 15.Bc2 Nc4 16.b3 Ncb6 17.Na3 Ba6 18.Nh2 c6 はどちらも指せる)14.d5(14.Na3!?)14…Ne7 15.Na3 Nc5 16.Bc2 c6 17.b4 黒は dxc6、Bd3 から Qe2 の狙いに対処しなければならないので互角の形勢にするために頑張らなければならない。

 (3)9…Be6 はよく活躍する相手の白枡ビショップとすぐに交換してしまおうという着想である。しかしそうすることによって黒はd5とf5の地点をさらに弱め、相手にa列で自由に振る舞わせてしまう。次は一つの想定手順である。10.d4 Bxb3 11.axb3(11.Qxb3 もある)11…Re8 12.d5 Nb8 13.c4 から Nc3 の狙いで白がかなり良い。

 (4)9…Nb8 はブレイェル戦法で、既に第1章でお目にかかっていて第3章の主題である。

 (5)9…a5 は第7局の黒の9手目で解説する。

10.d4 Re8

 白に争点を解決させるためにe4のポーンに圧力を増し続けている。

11.Nbd2

 すぐに 11.a4 と突くこともできる。例えば 11…Bf8 12.d5 Nb8 13.axb5 axb5 14.Rxa8 Bxa8 15.Na3 c6 16.dxc6 Bxc6 17.Bg5 Nbd7 18.Nc2 から Nb4 で白の陣形の方がわずかに優っている。11.Ng5 については第1局の黒の9手目の解説を参照されたい。

11…Bf8 12.a4

 他に有望な手は 12.a3 g6 13.Ba2 Bg7 14.d5 と 12.Bc2 g6 13.d5 Nb8 14.b3 c6 15.c4 で、どちらの手も互角の形勢である。

12…Qd7

 12…h6 もよく指されていて以下は 13.d5(13.Bc2 exd4 14.cxd4 は第4章で論じる形になる)13…Nb8 と進む。

13.axb5 axb5 14.Rxa8 Bxa8

 14…Rxa8?! と取るのは誤りで、15.Ng5 Nd8 16.Ndf3 で白がはっきり優勢である。以下は例えば 16…h6 17.dxe5 dxe5 18.Nxf7 Nxf7 19.Nxe5 または 16…c5 17.dxc5 dxc5 18.Qxd7 Nxd7 19.Nxf7 Nxf7 20.Be6 となる。

15.d5(図73)

 図73

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(51)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図73(再掲)

 e4ポーンに対する圧力で白が中原の閉鎖を余儀なくされた。この決断は一方では黒に対して譲歩したとみなされるが、他方では白は自陣を広げ相手駒の動きを制限したことも明らかである。

15…Nb8

 この手はナイトをa6経由でc5に持ってくる考えである。図73の局面はルイロペスのこの型の戦法でクイーン翼ナイトに多種多様の捌きの可能性があることを鮮明に示している。実際ナイトのすべての他の動きがそっぽへ行く 15…Na7 を除いて本譜に代わる手として試されてきた。以下はその2、3の例である。15…Nd8 16.Nf1 h6 17.N3h2 Nb7 18.Bc2 Nc5 19.b4 Na6 20.Ng4 は白がキング翼で有望な態勢である。15…Ne7 16.Nf1 h6 17.N3h2 c6 は均衡のとれた局面である。最後に 15…Na5 16.Ba2 c6 17.b4 Nb7 18.c4 Rc8 は難解な局面である。

16.Nf1

 両者の作戦はかなりはっきりしている。白は Nf1-g3 の移動から Bg5 を狙うことにより、または実際に実行することにより相手のキャッスリングした囲いを弱体化させたい。黒の方は …c7-c6 突きに続いて中原での反撃をもくろんでいる。

 a4-e8の斜筋の Qd7 と Re8 の配置を 16.c4 で利用しようとするのは(16…bxc4?! 17.Ba4)16…c6 または 16…Rc8 であまり進展が図れない。

16…Na6?!

 黒は黒の前の手で解説した作戦を推し進めている。しかし中原での反撃を先延ばしすることはあまり有望な局面をもたらさない。予防の 16…h6 の後すぐに …c7-c6 と突くのが考慮に値した。

17.Bg5

 この手は …c7-c6 突きとの兼ね合いでd5の地点の支配を間接的に強めるのにも役立っている。

17…Be7 18.Ng3 g6 19.Qd2

 この手は …Kg7 から …Ng8 とする手を防ぎ Re1 という手を作っている。

19…Bb7

 黒はまたしても中原での反撃開始を延期しなければならない。なぜなら 19…c6 20.dxc6 Bxc6 21.Bxf6 Bxf6 22.Rd1 Rd8(22…Nc5? 23.Qxd6)で白が非常に有望だからである。例えば 23.Ng5 Bxg5 24.Qxg5 Nc5 25.Bd5 Bxd5 26.Rxd5 で白の勝つ可能性が大きい。

20.Ra1 Ra8 21.Bc2 c6 22.dxc6 Bxc6 23.Rd1 Rd8 24.Qe3 Qb7 25.Bh6(図74)

 図74

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(52)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図74(再掲)

 白はe5ポーンに圧力をかけて …d6-d5 突きを防ぐことにより相手の反撃の裏をかくもくろみに成功した。これで白はキング翼での敵の弱点につけ込むことに専念することができる。

25…Nc7 26.Nf5

 この相手の出鼻をくじく単純な戦術で白はナイトを黒枡ビショップと交換することに成功し敵の黒枡をますます弱めた。

26…Ne6 27.Nxe7+ Qxe7 28.Ng5 Nc5 29.b4

 d5の地点をめぐる戦いは白の勝利に帰した。

29…Na4 30.Bb3 Be8 31.Rd2

 …Nb2-c4 の狙いを消した。

31…Rc8 32.Rc2 Nd7 33.Nf3 Ndb6?!

 黒は楽観しすぎて戦力のほとんどをクイーン翼に移動し反対翼の弱点をなおざりにした。黒は …f7-f6 と突けるように 33…Kh8!? と指した方が良かっただろう。

34.Bg5 Qc7 35.Nd2 Kg7

 35…Nc4 なら 36.Bxc4 bxc4 37.Bf6 で白の勝ちになる。

36.c4 h5

 黒は 36…bxc4 では受からない。以下は 37.Nxc4 Nxc4 38.Rxc4 Qb7 39.Bh6+ から Qg5-f6 である。

37.cxb5 Qd7 38.Qf3

 38.Bh6+ Kh7 39.Bf8 ならずっと早く白が勝っていた。

38…Rxc2 39.Bxc2 Kg8 40.Bb3 Qxb5

 これでもう黒の望みはない。

41.Qf6 1-0

 黒は詰みが避けられない。例えば 41…Kh7 42.Bxf7 Bxf7 43.Qxf7+ Kh8 44.Bf6# である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(53)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

第3局
カバレク対スパスキー
トリノ、1982年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5

 閉鎖中原の局面は黒が …b7-b5 と突かない戦法でも見られる。既に見たようにそのような状況では白のクイーン翼での戦略は c2-c4-c5 の可能性を踏まえてかなり変わってくる。試合がどのように展開するかは遅延シュタイニッツ戦法の一、二の戦型を調べることによってより良く理解することができる。この戦法はかなり守勢のシステムだが非常に理にかないかつ堅固で、人気が復活してきている。4…d6(4…Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 d6 については第6局の黒の6手目の解説を参照)5.c3(他の手は第1局の黒の4手目の解説に出てきているし第8局の白の5手目でも解説される)5…Bd7(5…f5 は第9章の主題である)6.d4 ここから
 (1)6…g6(この局面からどのように展開していくかは第4局の黒の4手目でも解説される)7.O-O Bg7 8.Re1 Nge7 9.d5 Nb8 10.c4 O-O 11.Nc3 h6(この手は …f7-f5 と突く準備である。同じ意図で 11…Bg4 も面白い手である)12.b4 いずれ白は c5 と突くことができ一定の優位を確保する。
 (2)6…Nge7 7.O-O Ng6 8.d5 Nb8 9.c4 Be7 10.Nc3 h6 11.Be3 Bg5 両者とも指せる。
 (3)6…Nf6 7.O-O Qe7 8.Re1 g6 9.d5 Nb8 10.c4 Bg7 11.Nc3 O-O 12.b4 両者とも指せる。

7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Nb8(図75)

 図75

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(54)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図75(再掲)

 ブレイェル戦法に代わる重要な手は前局(図72を参照)で検討したものに加えてすぐに …c7-c5 と突く準備の 9…Na5 のチゴーリン戦法がある。クイーン翼ナイトはいずれにしてもクイーン翼で影響力を行使するのでそっぽへ行くことは気にしない。10.Bc2 c5 11.d4 のあと黒にはいくつかの継続手がある。例えば
 (1)11…Nc6 12.d5 Na5 13.b3!?(…c4 を防ぐため)13…g6(…Nh5 の準備)14.a4 Bd7 15.axb5 axb5 16.Nxe5 dxe5 17.d6 交換中原への以降は白が少し有利である。
 (2)11…Nd7(ケレスの手。e5の地点を守り、…Bf6 でd4のポーンに圧力をかける準備をし多分あとで …Nc6 の支援を受け、閉鎖中原になった場合は …f7-f5 突きを容易にする。その反面この手の欠陥としてはキング翼から防御を取り去り、e4とd5の地点の支配を失って Nd2-f1-e3-d5 のような捌きを容易にさせるということがある)12.Nbd2(12.d5 もある手だが黒の …f7-f5 突きを容易にさせるので時期尚早のように思われる)12…cxd4 13.cxd4 Nc6 14.d5(14.Nb3 や 14.Nf1 の方が普通だが一般には動的中原が形成される)14…Nb4 15.Bb1 a5 16.a3 Na6 17.b4 Nb6 18.Qb3 Na4 19.Nf1 複雑な局面でありどんな結果になってもおかしくない。
 (3)11…Qc7(これは最も普通に指される手である。以下にいくつかの手順をあげるが我々にとって関心のある閉鎖中原が生じる局面に限る)12.Nbd2 cxd4(12…Nc6 13.d5 Nd8 14.a4 Rb8 15.axb5 axb5 16.Nf1 Ne8 17.b4 g6!? は …Ng7 から …f5 と突く考えで、どちらも指せる)13.cxd4 Bb7(13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.d5 Nb4 17.Bb1 a5 18.a3 Na6 19.b4 g6 は難解な戦いである。13…Nc6 は第5局の黒の9手目の解説の手順2fを参照)14.d5 Rac8 15.Bd3 Nd7 16.Nf1 f5 17.exf5 Nc5 18.Bb1 Nc4 局面は複雑でどちらにとっても見込みがある。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8

 すぐに 12…c5 と突くこともでき、その意図は b2-b4 突きを防ぐことである。想定手順は例えば 13.d5 Ne8 14.Nf1 g6 15.Bh6 Ng7 16.Ne3 Nf6 17.a4 Kh8(…Ng8 で Bh6 を追い払えるようにするため)18.b3 で、白が有利である。

13.Nf1

 別の作戦は 13.b4 Bf8 14.a4(14.Bb2 の後 a2-a3、Rc1 そして c3-c4 と指すのも面白い手段である)14…Nb6 15.a5 で、黒の最終手から生じるクイーン翼の封鎖の局面は互角の展望である。

13…Bf8 14.Ng3 g6 15.a4 c5 16.d5(図76)

 図76

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(55)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図76(再掲)

 通常この型の局面(閉鎖中原が …c7-c5 突きの後でだけ生じる時)ではキング翼が白の作戦行動の舞台となる。黒の方はクイーン翼で反撃を画策する。しかしキング翼で黒のとる防御手段によりこの自然な攻撃戦線が突然逆転することが起こり得る。

16…c4 17.Bg5 h6 18.Be3 Nc5 19.Qd2 h5

 黒はキング翼の防御で積極策をとることにした。堅実な 19…Kh7 の方が形を乱さないが、f4 突きを意図する 20.Nh2 のあと白がわずかに優勢であることは否めない。

20.Bg5

 この手は最強水準の大会では本局で初めて現れた。これに代わる重要な手は 20.Ng5 だが、最近 20…Bh6 の有効性が顕著になってきた。例えば 21.f4 h4! 22.fxe5 Rxe5 23.Nf3 Bxe3+ 24.Qxe3 Nxd5 で複雑な局面だが黒に不利とは思われない。白はこの 20…Bh6 が嫌で 19.Qc1!? h5 20.Ng5 と工夫することもあった。それでも 20…Bh6 とやってくれば 21.Bxc5 dxc5(21…Bxg5 の方が良い)22.Nxf7 Bxc1 23.Nxd8 Bxb2 24.Nxb7 で白が優勢になる。

20…Be7 21.Ra3

 この手はa列を素通しにする準備である。後に本譜の手の改良手として 21.Bh6 が指された。その意図は Nh2 の後 f2-f4 突きを狙うことである(すぐに 21.Nh2 は 21…Nh7! という強手で応じられ 22.Bh6 には 22…Bg5 とされるので目的が達せられない)。21…Nh7 はこの狙いをかわすがナイトをそっぽへやる欠陥があり、この手の後で初めて 22.Ra3 でクイーン翼での戦いに転じる。しかし 21…Bf8 が良い応手のようである。

21…Rb8 22.Qe3

 この手は Nxe5 dxe5、Bxf6 から Qxc5 という隠れた狙いを作り出し、Nd2 を用意して f2-f4 と axb5 axb5 から b2-b3 の両様の狙いを含んでいる。

22…Nh7 23.Bxe7

 ここでも 23.Bh6 が考慮に値した。

23…Qxe7 24.Rea1 Bc8 25.axb5 axb5 26.Nd2 Rb7 27.Ra5?(図77)

 図77

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(56)

第2章 閉鎖型中原(続き)

2.3 実戦例(続き)

 図77(再掲)

 この手は無駄手だった。27.b3 cxb3 28.Nxb3 Nxb3 29.Rxb3 でクイーン翼に圧力をかける方が良かっただろう。もっとも黒陣は堅固であるが。

 キング翼で仕掛けの糸口を見つけることのできなかった白は攻撃の矛先をクイーン翼に向けることを余儀なくされた。一方黒は反対翼で動かなければならない。これは …c5 の局面で通常起こることとまったく逆である。

27…h4

 この手は Ng3 をどかせて …f7-f5 と突く反撃を可能にする。

28.Ngf1 f5 29.exf5 gxf5

 この手は …f4 から …e4 を狙っている。

30.f4

 この手のあと局面は非常に難解な状況になり両者ともたぶん改良の余地がある。

30…Nf6

 自然な 30…e4 は 31.b3 のあと非常に複雑な局面になり、相手がc4のポーンに圧力をかけることにより陣形を強化する前に黒が弱点のd5ポーンにつけ込むことができるかどうかはまったく不確かである。

31.fxe5 Nxd5 31.Qh6

 白は黒キングの薄みをつこうとしている。

32…Qxe5

 たぶん 32…dxe5 33.Qg6+ Kh8 34.Bxf5 と指す方が良く、両者とも気の抜けない局面になっていただろう。

33.Nf3 Qf4?!

 この手は指し過ぎである。33…Qf6 で交換を誘い 34.Qxf6 Nxf6 35.Nd4 となって白の方が少し優勢であっても相手の攻撃からクイーンの支援を奪ってしまう方が良かった。

34.Qg6+ Kf8 35.Ra7

 35.Nd4 は 35…Rg7 があるのでぬるすぎる。

35…Re2 36.Ra8 Ne7

 36…Re8 は 37.R1a7 で白がはっきり優勢である。

37.Qf6+ Kg8 38.Rxc8+ Nxc8 39.Ra8

 白は細心の注意を要する。例えば 39.Qd8+? Kh7 40.Qxc8 Rxc2 41.Ra8 と早まると 41…Rxg2+ 42.Kh1 Qxf3 43.Qh8+ Kg6 44.Rg8+ Kf7 45.Rxg2 Qxf1+ 46.Kh2 Qf4+ 47.Kh1 Qe4 で負けてしまう。

39…Re8 40.Bxf5 Rf7 41.Qg6+ Kf8 42.Rxc8 Rxc8

 42…Qxf5 は 43.Qxd6+ Rfe7 44.Rxc5 で負けになるのでだめである。

43.Bxc8 Nd3 44.Bg4?!

 カバレクは 44.Be6 Rg7 45.Qh5 Qf6 46.Bg4 と指せば相手にもっと多くの問題を突きつけることができた。しかし実戦の黒の45手目を見抜くことは至難の業だろう。

44…Nxb2! 45.Bh5 Na4!!

 これは大局観に裏打ちされた見事な捨て駒だった。これで収局に切り替わりクイーン翼の黒のパスポーンの脅威が捨て駒の十分な代償になっている。

46.Qxf7+ Qxf7 47.Bxf7 Kxf7 48.Kf2 Nxc3 49.Ke3 Ke6 50.Kd2 b4 51.Nxh4 Nb5 52.Ne3

 52.Kc2 Ke5 53.Ne3 d5 でも結果は変わらない。

52…d5 53.Nf3 b3 54.Nd1 d4 55.Nxd4 Nxd4 56.Kc3 Ne2+ ½-½

 このあと 57.Kxc4 なら 57…Nf4 で完全に互角である。激闘の末の正当な結末だった。

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(57)

第3章 交換型中原

主手順 - …Na5 のチゴーリン戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 Nc6 13.dxc5 dxc5(図78)

 図78

 戦略的に似た条件が他の多くの戦法でも起こるかもしれないし、決定を下すのがいつも白だとは限らない。時には検討する中原の構成が d3 d5 の手順から生じ …dxe4、dxe4 と続く。

 いうまでもないがこの型の中原は中原の争点が長い期間維持された後の序盤や中盤から生じることがある。

 以下にあげるのは図の局面から派生する戦法で、場面をあまり手数の進んでいない段階で起こる中原での形に限っている。

 例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 この後

 …Na5 のチゴーリン戦法
 - 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7(または 11…Nd7 12.dxc5 dxc5)12.Nbd2 cxd4(または 12…Bd7 13.dxe5 dxe5)13.cxd4 Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.dxe5 dxe5

 ブレイェル戦法
 - 9…Nb8 10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 Bf8 14.Bg5 h6 15.Bh4 c5 16.dxe5 dxe5

 スミスロフ戦法
 - 9…h6 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7 13.Ng3 Na5 14.Bc2 Nc4 15.b3 Nb6 16.Bb2 c5 17.dxc5 dxc5

 ザイツェフ戦法
 - 9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3 Nb8 13.dxe5 dxe5

または 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 から

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6 7.O-O(または 7.dxe5 Nxe5 8.Nxe5 dxe5)7…Bg7 8.Re1(または 8.dxe5 dxe5)8…Nge7 9.dxe5 dxe5

 ワーラル戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Qe2 b5 7.Bb3 O-O 8.c3 d6(または 8…d5 9.d3 dxe4 10.dxe4)9.h3 h6 10.d4 Re8 11.dxe5 Nxe5 12.Nxe5 dxe5

 反マーシャル・システム
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.a4 b4 9.d4 d6 10.dxe5 Nxe5(または 10…dxe5)11.Nxe5 dxe5

 アルハンゲリスク戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O 12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.dxe5 dxe5

 その他の戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 O-O 8.d3 Bb7 9.c3 d5 10.Nbd2 dxe4 11.dxe4
 - 3…g6 4.c3 d6 5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(58)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点

 以上のすべての戦法において、e4とe5のポーンが互いにつの突き合いd列が素通しなので中原の形はかなり柔軟性がない。

 交換中原の顕著な特徴は次の図79に凝縮され示される。もっとも差異は存在し、それは黒が …c7-c5 と突いたかどうか、c列を素通しにする …cxd4 の交換をしたかどうか、そして時には黒が黒枡ビショップをf8-a3の斜筋に置いたかそれとも対角斜筋に置いたかということにも依存する。これらの差異が重要な結果を生むことについては後で述べる。それほど重要ではないがいくつかの小さな差異は、e5で一組のナイトが交換されたあと図79に示されるポーンの形が生じる戦形にも見られる(図79)。

 図79

 ここで指摘できることは共に素通しのd列にあるd5とd3の弱点、そして(閉鎖中原でのように)それぞれキャッスリングした囲いの近辺にあるf5とf4の戦略的理由による弱点である。中原の構造が固定されていくにつれて敵陣の弱点を支配する-そして特に占拠する-重要性はもっと重要になってくる。ある駒(特にナイト)がこれらの局面の一つで堅固な地点を確保できれば後の展開に大きな影響力を及ぼすことができると想像することはたやすい。これに関連してこれらの弱点はすべて固定されるか固定することができることを付記しておく。というのはd3の地点も …c5-c4 突きの手段によって容易に黒の支配下に置くことができるからである。これらの要素は図79で容易に識別でき、これらに対してキング翼ナイトの存在から生じる別の要素も付け加えることができる。これらのナイトのf3とf6への通常の展開は別の考察も呼び起こす。それはe4とe5のポーンはすぐにポーンで守ることはできないということである。だからこれらのポーンはかなり攻撃を受けやすい状況にあり、しばしば攻撃目標にされるかもしれない。そのような場合白と黒のどちらにせよ攻撃する側は敵戦力を少なくとも一時的に弱いポーンの守りに縛り付ける明白な目的を追い求める。

 この状況概要のあとは個々の要素をもっと詳細に見ていくことにする。

(この章続く)

2010年09月04日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(59)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d列とクイーンの位置

 交換中原において真っ先に浮かぶ戦略上の主題は素通しのd列である。中央列としてのその兵站(へいたん)上の重要性は自明である。両者は素通しのこの列をルークで占拠するならクイーンをまずよそへ動かさなければならない。クイーンが元の位置にいては邪魔になる。

 時には早々とクイーンを交換するという思い切った課題解決策が取られることはもちろんあるかもしれないが、両者は相手が素通し列をルークで占拠するのを助けないように単純化の手法を避ける傾向がある(図80)。

 図80

 黒はほとんどの戦法でキング翼ビショップをe7に展開しクイーンはしばしば自然なc7の地点に配置するのに対し、白は二つの選択肢から選ぶことができる。一つはクイーンをすぐにe2に動かすことで(これはb5のポーンに圧力を加えるために a2-a4 と突く手と組み合わせて効果的なことがある)、もう一つはより攻撃的なf3への進出である。しかし後者の手はより多くの準備を必要とする。というのは Nf3 の移動がからむからである(普通はh2へ下がりそこからg4へ跳ぶことによりキング翼での攻撃に参加することができる)。

 f3の地点はより活動的であることは確かであり、白クイーンはそこから敵陣の最も弱い2地点(d5とf5)を見張ることに貢献しキング翼での攻撃の可能性を高める(図81)。

 図81

 クイーンと小駒の共同作戦で白は黒キングに対する重大な狙いを画策したり(例えば Qg3 に続いて Ne3-f5 または Bh6)、Nf6 を交換でなくすことにより黒キングの防御を弱体化させたりできる(例えば Ng4 または Bg5)。

 図のように駒を配置するために白はd列の占拠を見据えて2段階の捌きでd1の地点を空けることがよくある。それはキング翼ナイトがまだf3にいる時クイーンをe2に置きナイトがどいた時を見計らってこのクイーンをf3に上げるのである。

 しかしクイーンをf3に置くことには危険が潜んでいることがある。黒は時には Bb7/Qf3 の対峙を利用して適当な時機と適切な助力(例えば図118と119でよく分かる策略)によって …f7-f5 と突くことができる。黒について述べれば図80に示される駒配置に加えて、キング翼ビショップの別の展開、例えばフィアンケットを選択することもできる(図82)。

 図82

 この場合黒クイーンは白クイーンと鏡像の地点が用意され、キング翼のその位置は時にはf4の地点の占拠とからんで(…Nf6-h5-f4)この方面での攻撃の可能性が出てくる。

 黒がキング翼ビショップをc5に展開することにした時、または中原の争点の進行状態によりこのビショップがe7の地点からいなくなった時にも、e7の地点は黒クイーンが使えるかもしれないことを指摘しておく。

 クイーンの配置の議論を終えるにあたり、d列の占拠に関連した真の戦略上の目的は最高度の正確さで分類しなければならない。実際まだ多くの駒が戦っている最中は一方がこの列の利用に成功し7段目や8段目をしっかり確保するということは実戦的には考えにくい。だから真の目的はこの列の敵の弱い地点に駒を据え易くさせるということになる。そこで白はd5の拠点の獲得のために戦い、黒はd3、または場合により後に見られるようにd4の地点の占拠を目指す。

(この章続く)

2010年09月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(60)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d5の地点の弱点

 一般にナイトは中央に位置すると非常に強力な駒なので白はd5の地点をナイトで占めようとする。ナイトはd5に到達するためにe3に立ち寄らなければならない(図83)。

 図83

 白はまったく異なる経路でナイトを目的地に着けたのかもしれない。通常の経路は Nb1-d2-f1-e3 だが時には Nb1-a3-c2-e3 や Nb1-d2-c4-e3 のこともある。さらに指摘すればキング翼ナイトが Ng1-f3-h2-g4(または -f1)-e3 または Ng1-f3-d2-c4(または -f1)-e3 のような捌きでe3に来たのかもしれない。

 明らかに白の追い求める理想の目標はナイトをd5に据えそこに居座らせることである。その根拠は通常この駒が敵陣の中央の弱点を占拠するのに最も適しているということである。

 しかし黒の方は相手のナイトがd5の地点に腰を落ち着けるのを座視することはできない。それで黒は通常は交換することに決める。白はd5の弱点を利用し続けるために駒で取り返すようにするのが一般的である。試合が収局に近づいている時はd5の地点はルークにとって理想的な場所になるかもしれないので特にそうである(図84)。

 図84

 このルークは5段目の黒ポーンに対して圧力をかけることができ、相手の防御に分け入る前触れとしてd列にルークを重ねることもできる。

 eポーンで取り返すのはe列とb1-h7の斜筋で潜在的なエネルギーを解放するもっと動的な選択肢で、二つの状況で起こり得る。

 (1)白が b2-b3 の準備のあと c3-c4 突きでd5のポーンを支援できる時(図85)。

 図85

 この場合もし黒のcポーンがc5にあれば白はd5のポーンをしっかり守るという目的を達成する。これに対して図の局面のような場合には白には c4-c5 から d5-d6 と突くという決定的な進攻の可能性がある。

 (2)中原ポーンの間接的交換ができる時、または exd5 取りから派生する筋の開通(b1-h7の斜筋とe列の素通し)で白が相手のキャッスリングした囲いに対して攻撃の展望が開ける時(図86)。

 図86

 例えばこの局面でd5は黒によって守られているように見える。実際は白が邪魔されずに Nd5 と指すことができる。なぜなら …Nxd5、exd5 Bxd5 のあと白は Nxe5 でe5のポーンを取ることができるからである(図87)。

 図87

 この例からはb1-h7の斜筋が開いた際の攻撃の展望もはっきりと分かる。即ちここでは単刀直入の Qh5 や擬似捨て駒の Bxh7+ Kxh7、Qd3+ のような狙いを放つことができる。

 最後に、状況によっては白がd5の地点をビショップで占拠するのも効果的な手になることがあることを指摘しておこう。この状況は通常は序盤において見られ、特にクイーン翼における黒駒の展開と協力をより骨の折れるものにする意図を持っている(図88)。

 図88

 ここで白は Bd5 と指すことにより相手は困った立場におかれる。なぜなら …Bb7 も …Qd6 も Nxe5 のせいで指せないので、黒はナイトを形悪く …Bd7 によって守らざるを得ないからである。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(61)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d5の支配をめぐる戦い

 前述の考察からすれば両者ともd5の地点をめぐって争うのは理にかなっている。d列におけるルークの活動とはまったく異なり、黒はキング翼ナイト、クイーン翼ビショップ、それにクイーン翼ナイトのb6への配置(…Nb7-d7-b6 だけでなく …Nb8-c6-a5-c4-b6 もある)によりこの弱点を監視することができる。白の方はd5の防御を弱体化させるためにaポーンを用いて黒ナイトをb6からどかせるか(黒ナイトがそこにいればの話)、クイーン翼ビショップを招集することができる(図89)。

 図89

 このビショップのかかりは Nf6 を除去する思い切った根本的な目的を持っている。しかしこの点についてはクイーン翼ビショップのg5への展開は次項で分かるように必ずしも Nf6 の除去に向けられたものではないことを指摘しておく。

(この章続く)

2010年09月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(62)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

展開の手の Bg5 と …h6 と …g5 のポーン突き

 Bg5 で Nf6 を取るのはd5の地点を迅速に占拠できる時にだけ効果的なので(だから代償もないのに双ビショップを放棄してしまわないようにあわてて実行してはならない)、Bc1-g5 を指す際に白は他の目的も追求すべきであり特に黒が当然 …h7-h6 と突いてきた場合にどうするかを決めておくべきであることは理にかなっている。実際 Bc1-g5 の展開の手の一般的な意図(クイーン翼ルークを動けるようにし、時には Nf6 を釘付けにして黒駒の自由な動きを制限する)とはまったく別個に、黒が …h6 から …g5 と突いてくれば黒のキング翼に弱点を生じさせるのが白の意図であることはよくあることである。

 キング翼の黒ポーンのこの思い切った進攻は諸刃の剣の仕事である。だから両陣営は自分の決定のもたらすものを推し量ることができなければならない。もちろん状況の範囲は非常に多様で複雑なので一般的に有効な不変の原則をあげることはできない。しかし一方に有利となる特定の状況を心に留めるのに役立つ極端な例をいくつか指摘することはできる。

 原則として言えることは黒がf4の地点を …Nf6-h5-f4 の捌きによって占拠できる時および/またはキング翼にまだキャッスリングしていなくてキングをクイーン翼に移す可能性を残している時に黒は気楽に …g5 と突くことができるということである(図90)。

 図90

 このような場合キング翼での黒のとる行動はf4の地点の占拠とgおよびhポーンのさらなる進撃のおかげで急速に圧倒的な攻撃となることがある。

 黒に有利となる別の極端な状況は …g5 突きで白のクイーン翼ビショップが有効に働かなくなる時に見られる。極度に顕著な状況は単純化のための …Bc8-g4xf3 の捌きで白のf列に二重ポーンがあらかじめできている時である(図91)。

 図91

 ここでは …g5、Bg3 Nd7 のあと黒は h2-h4 に …f7-f6 と応じてポーンで押さえ込み Nd7 を自由にする用意ができている。手数をかけ戦力を損しなければこのビショップが再び働くようにならないことは明らかである。

 逆に白は …g5 突きによって生じた弱点(キャッスリングした囲いの弱体化と特にf5とh5の地点の弱体化)につけ込むことができる時がある。これが可能なのは例えば駒をg5で切って見返りに敵キングに対して攻撃の展望が開ける時である(図92)。

 図92

 この図では例えば Nxg5 hxg5、Bxg5 のあと白にとって非常に有望な局面ができあがる(図92)。

 図93

 Bg5 は Nf6 に厄介な釘付けをかけ続け、他の駒は迅速に駆けつけて攻撃に効果的に加勢することができる。

 通常白にとって有利な別の状況は Bg3 引きがe5のポーンに圧力をかけるのに貢献する時および/または Bg3 が適度に早く戦いに復帰する見通しがある時に見られる(図94)。

 図94

 ここで Bg3 引きのあと黒は例えば …Bf8 でe5のポーンを守らなければならない。そこで白には h3-h4 と突くことによってキング翼で作戦を始める時間が得られる(図95)。

 図95

 このポーン突きで黒の黒枡での押さえ込みにゆるみが生じるので Bg3 の解放に寄与する。この場合重要なことは黒がf4の地点を占拠しようとしてもできないことである。なぜなら …Nh5 は Bxe5 と取られるし、…Nh7 から …f7-f6 で押さえ込みを維持しようとするのは黒のナイトが閉じ込められてあまり魅力がないからである。それで …g4、Nh2 h5 となったあと白は f2-f3 突きでキング翼の封鎖を粉砕し容易にクイーン翼ビショップを戦いに復帰させることができる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(63)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d3の地点の弱点

 d5の地点に関する白の戦略と同様の手法で黒はd列で優位を得てd3の地点の占拠を通常はナイトまたはルークで成し遂げることができる(図96)。

 図96

 この目的は …c5-c4 と突いて弱点を固定化する組織的な捌きの手段により、または可能ならば駒だけの助けにより(例えば …Nh5-f4 から …Rd3)成し遂げることができる。白は単にd3の地点を適切に支配し続けることにより後の方の可能性を回避することができるが、この戦略は弱点の固定化と占拠を避けるのに十分であることは滅多にない。抑止がうまくいくためには白は …c5-c4 に b2-b4(c5の地点を使えなくさせるため)または b2-b3(c4ポーンを突き崩すため)と応じるか、または c3-c4 と突いて黒のcポーンの進攻を押さえることにより、クイーン翼のポーンの形を変えることを迫られる。しかしこれらの場合黒は目標をd3の地点からd4の地点へ切り替えることができる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(64)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

d4の地点の弱体化

 白が自分の方から c3-c4 と突くことによりd3の地点の固定化を妨げることにすればd4の地点の弱体化がすぐさま明らかになる。(図97)。

 図97

 黒は特にd4の地点をc6を経由してクイーン翼ナイトで占拠する計画を立てることができる。しかし時には以前d3の方向に送られていたキング翼ナイト(例えば …Nf6-h5-f4)を新しい目標に向けることができる(…Nf4-e6-d4)。

 逆に白が …c5-c4 突きに前述した意図でbポーンをb3またはb4に突いて応じた時でも黒は …cxb3 と取ってクイーン翼の状況を大きく変えることができる。axb3 の後は次のようなポーンの形になる(図98)。

 図98

 c3のポーンを支えるポーンがなくなったことにより黒は …b5-b4 突きに基づいてd4の地点を弱める作戦を立てることができる(図99)。

 図99

 前の例の場合のようにc6から事態を支配するのはほとんど常にクイーン翼ナイトである。もっともここでも以前にd3の方に送られたキング翼ナイト(例えば …Nf6-d7-c5)をd4の地点に再送することができる(…Nc5-e6-d4)。

 d4の地点の弱体化により白は …c5-c4 を防ぐ考えだけでなく積極的な目的で c3-c4 と突くとき必然的に代価を払うことがある。例えばこのポーン突きはクイーン翼ビショップがb2にいるとき自由に動けるようにしたり、黒にb5のポーンの処遇を迫ったり、d5の地点の支配を強めたりする時に行なわれるかもしれない(図100)。

 図100

 ここでは上述の状況をわざと一つの例にまとめた。白は c3-c4 と突くことにより Bb2 の利きを通し、Nd5 を守り、b5のポーンも攻撃している(例えば …bxc4、Nxc4 で強力なc4の地点を手に入れる目的)。

 最後に、d4の地点は黒が中原の争点が続いている状況で …cxd4 と取ってc列を素通しにした時でも弱いままであるし(図101)、

 図101

または(度合いが下がるが)布局の最中に黒が a2-a4 の挑発に …b5-b4 と応じた時もそうである(図102)。

 図102

 d4の地点は c2-c3 突きによって守ることができる。もっとも白は黒がb列の開通から利益を得られないように注意しなければならない。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(65)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

e4とe5のポーンの弱さ

 交換中原では図79の説明で述べたようにe4とe5のポーンもお互いの攻撃目標になる。実のところf3とf6のナイトの存在はそれぞれのfポーンが前進して自然な形でeポーンを支える障害になっている。そうであってもこの前進は可能な時でさえ(例えばキング翼ナイトが早期に移動したり交換される戦法で)キングの囲いを弱めることになるので気が進まないことは確かである(図103)。

 図103

 f2-f3 突きと …f7-f6 突きによって生じるそれぞれの弱点はhポーンが既に動いている時にはずっと深刻になる。図の局面で白キングは黒キングよりも薄くなっている。しかし忘れてならないことは黒も例えば Bg5 に態度を決めさせたい時自分のhポーンを動かすことがよくあるということである。両陣営がクイーンのためにf3とf6の地点を時々使用するということも覚えておかなければならない(図80と82を参照)。このことも f2-f3 突きと …f7-f6 突きを魅力のないものにしている。

 そのため通常は両者とも自分のfポーンを突くことを躊躇する-またはナイトの存在によって物理的に妨げられている-。従ってeポーンはいくらか攻撃にさらされやすくなっている。これらのポーンは通常の成り行きでそれぞれナイトによって攻撃されているので、両者ともこの攻撃を強めようとするのは極めて普通である。

 白の捌きはクイーン翼ビショップを前もってb2に上げてからその筋を空けるために c3-c4 と突き黒に …bxc4 と交換させることにかかっている。その主眼はクイーン翼ナイトのためにc4の地点を獲得することである(図104)。

 図104

 このような戦略の目的は明らかである(既に一部は図100で見た)。それは相手をe5のポーンの守りに汲々とさせようとすることである。

 同様に黒はe4の地点めがけてクイーン翼ビショップを(時にはクイーンも)対角斜筋に捌きクイーン翼ナイトをc5の地点に行かせることができる(図105)。

 図105

 ちょうど見てきたような圧力の作戦やd5の地点の占拠に依存した状況(図86と87を参照)、黒の場合はd4の地点、はしばしばこれらの「弱点」の交換につながる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(66)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

c4とc5の地点をめぐる争い

 繰り返し説明したようにc4とc5の地点の支配は他のもっと中心的な戦略目標(例えばe5とe4の地点への圧力、d3の地点の占拠など)の途中の段階であることがよくある。だから両者がそれらの地点をめぐって戦うべきであることは当然のことである。

 c4の地点は構造的に黒の支配下にある。従って白はその地点を勝ち取ろうとするならばまずb5のポーンを取り除かなければならない。白はこれを大きく分けて三通りの方法で行なうことができる。

 (1)序盤早くに a2-a4 突きでこのポーンを攻撃して …b5-b4 と進ませるようにする(例えば図102を参照)(2)b2-b4 突きでこのポーンを固定してから a2-a4 突きおよび/または c3-c4 突きでこのポーンを攻撃する(例えば図100と104を参照)(3)このポーンを固定しないで a2-a4 突きで攻撃し駒の応援でこのポーンに対する圧力を増す(図106)。

 図106

 これら三つの手法は当然ながらお互い混ざり合った単一でない形で現れることがある。そしてこれらの手法は今取り上げている中原の型にだけ特有なわけではないので、中原での争点の状況にも根源があるかもしれない。

 最初はc5の地点も黒の影響下にあるので白はそこの支配を勝ち取るためには一般に b2-b4 突きに訴えなければならない(図107)。

 図107

 c5の地点はこのように固定されれば白のクイーン翼ナイトにとって別の目標となり得る。黒が …c7-c5 突きでd5の地点を恒久的に弱めていない戦法においては特にそうである。逆に黒がキング翼ビショップをフィアンケットする戦型では白は黒のa3-f8の斜筋の弱体化の結果として b2-b4 突きを行わなくても Bc1-e3-c5 の単純な捌きでc5の地点を乗っ取ることができる。

 中原の争点が継続している状況で …cxd4 による交換でc列が素通しになった時は大駒もc4とc5の地点の支配をめぐる争いに加わることができる(図108)。

 図108

 これは白がc5の地点をしっかり支配することに成功した状況の例である。しかし黒はc4の地点を支配できれば(…Be6 から …Nc4)白の努力を無効にすることができる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(67)

第3章 交換型中原(続き)

3.1 戦略の着眼点(続き)

f4とf5の地点の弱点

 c4とc5の地点の支配をめぐってクイーン翼で戦われる争いはもっと中心的な目的に比べれば一般に二次的だが、キング翼での作戦行動はどれも、敵のキャッスリングした囲いに対して猛攻をかける目的の非常に独自の重要性を帯びることがあり得る。閉鎖中原での場合のようにここでもキング翼での攻撃的な捌きに関連する個所はf4とf5の戦略的弱点である(図109)。

 図109

 特定の状況ではf5の地点はd5に行く途中にe3に来た白のクイーン翼ナイトにとって代わりの有用な地点になり得る。逆にf4の地点は図90と図96に図示されているように黒のキング翼ナイトが作戦とはまったく別個にやって来る地点になり得る。

 閉鎖中原での場合のように時には両者が相手の弱点を(直接的にまたは間接的に)支配しようとすることがある(図110)。

 図110

 黒は通常は …g7-g6 突き(キング翼ナイトがh5を通過するのを守るのにも役立つ)にたよるのに対し、白はキング翼ナイトをh2を経由してg4に捌くことにより、侵入者となる可能性のある敵ナイトを交換に誘おうとする。この捌きは …g7-g6 突きにより生じた弱点につけ込む着想が存在するとき有効になり得る。

 両者の捌きの目的は閉鎖中原のところで見た同様の状況に非常に似ていて、中原で争点がまだ継続している時でもこれらの活動を始めることができる。一つの典型的な状況は一般にキング翼での白クイーンの位置に関係していて(図80と81を参照)、前の図で示された攻撃の Ng4 に …Ng4 と取って応じることにした時に生じる。この場合白が hxg4 と取り返し g2-g3 から Kg2 としてルークがh1に行けるようにして圧力をかける野心的な作戦を企てることはあり得ないことではない。(図111)。

 図111

 後で g4-g5 と突けばg4の地点が空き、白の残りのナイトが敵キングに近づく際に利用できる。

 図110に示されるような状況では閉鎖中原で起こったこととは異なり、両者が f2-f4 突きまたは …f7-f5 突きに基づいた攻撃策を成功させるのは難しい(特殊な戦術の場合は除く。後述の「Bb7/Qf3 の対峙」を参照)。実際局面がさらに開放的になっていくと(必然の exf5 取りまたは …exf4 取りの結果)fポーンを突いた側のキングの状態は非常に微妙になる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(68)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所

 交換中原の単純化された性質により戦略が支配的となる局面が生じるが、両陣営は作戦の実行が戦術的手段によって突然妨害されることのないよういつも確認しなければならない。それではこの型の中原で最も頻繁に現れる戦術的捌きを検討していくことにする。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(69)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

a2-g8の斜筋の弱点

 交換中原ではa2-g8の斜筋は素通しになっているかせいぜい1個のポーンによってさえぎられているに過ぎない。黒キングがほとんどいつもg8にいることを考えれば、白がそれにつけ込んでいくつかの襲撃の戦術を試みることができるのは容易に理解できる。しかしその襲撃を分類することは難しい。ここでは繰り返し現れる2、3の例を示すにとどめる。(図112)。

 図112

 この局面ではcポーンの障害物は黒の安全を保障するには十分でない。白は浮き駒の Nc6 と、…f7-f6 突きが最も単純な戦術の仕掛けを誘発していることにつけ込むことができる。Nxc4 bxc4、Qxc4+(図113)

 図113

 白は駒を取り返し2ポーンを得する。

 f7のポーン自体も黒キングの適切な防御を保障してはいない(図114)。

 図114

 例えばここでは白は Ng5 と指すことができる。その意図は …Re7(または …Rf8)のあと Nxf7 とナイトを切ることである。…Rxf7、Nf3 となった後(図115)

 図115

Nxe5 または Nxg5 の狙いがあり黒が危険な状態になる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(70)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

キャッスリングした囲いに対する捨て駒

 両者とも敵のキャッスリングした囲いを破壊する目的のいくつかの典型的な捨て駒を実行する機会がある。黒がキング翼のポーンの形を …h6 から …g5 で組み換える場合(図92と93を参照)が何度もあることは既に見てきたが、同様の主題は出し抜けに実現することもあり得る。

 f4(またはf5)の占拠とf6(またはf3)のクイーンはそのような戦術の打撃の前提となることがよくある(図116)。

 図116

 例えばこの図で黒は …Nxg2! と指し Kxg2 に …Bh3+ と指す(図117)。

 図117

 Kxh3 と取れば …Qxf3+、Kh4 Bf6# で詰みになる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(71)

第3章 交換型中原(続き)

3.2 戦術の狙い所(続き)

Bb7/Qf3 の対峙

 場合によっては逆にキング翼にいるクイーンのせいで防御戦術の策略が成功することがある。一般的にこれが起こるのは白枡の対角斜筋に Bb7/Qf3 が配置されている時である(図118)。

 図118

 この局面でe4のポーンは3個の駒で守られているにもかかわらず黒は …Nxe4 と取ることができる。Nxe4 f5 の後(図119)

 図119

 駒を取り返すことができ1ポーン得になる。

 この主題ははるかに複雑な形で現れることがある。しかしその本質をつかむ必要のためにこの極度に単純化した形で示した。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(72)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例

第4局
メステル対ベリヤフスキー
ルツェルン、1985年
スミスロフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 本局の解説で交換中原に至ることのできる戦型についても概説する。ただしブレイェル戦法と第5局で解説する …Na5 のチゴーリン戦法は除く。

 検討する中原の型は黒が早くも3手目で踏みならされた道からそれることにした時にも現れることがある。例えば 3…g6 4.c3 d6(4…a6 5.Ba4 d6 は遅延シュタイニッツに戻る。すぐの 4…Bg7 は誤りで 5.d4 Nge7-5…exd4 は 6.cxd4 で白が中原に圧倒的な態勢を築く-6.d5 Nb8 7.d6 で白が明らかに優勢である)5.d4 Bd7 6.O-O Bg7 7.dxe5 dxe5(7…Nxe5?! は 8.Nxe5 dxe5 9.Qb3! で白が優勢 )8.Be3 Nf6 9.Nbd2 O-O 10.Bc5(黒がキング翼ビショップをg7に展開した戦法に特有の目障りな手)10…Re8 11.Qe2 白がわずかに優勢だが黒陣も堅固で反撃策がないことはない(例えばf4の地点の弱点は白のクイーン翼ビショップの捌きによって目立っている)。

4.Ba4 Nf6

 遅延シュタイニッツでは交換中原はある程度の頻度で、特に前の解説にあるフィアンケット戦型に密接に関連したアリョーヒン戦型で、生じる。4…d6 5.c3 Bd7 6.d4 g6 の後は次のように進むことになる。7.O-O(すぐに 7.dxe5 と取るのはそれほど一般的でなく、前の解説で見た戦型と異なり黒は 7…Nxe5 と応じることもできる。一方 7.Bg5 f6 8.Be3 の戦型は最近流行してきた。例えば 8…Nh6 9.O-O Bg7 10.h3 Nf7 11.Nbd2 O-O 12.Re1 Qe7 で白はa2-g8の斜筋を弱体化させたが黒陣は欠陥がなく将来の中原のどんな構成にも対処できる)7…Bg7 8.Re1(または 8.dxe5 dxe5-8…Nxe5!? は 9.Nxe5 dxe5 10.f4 Bxa4 11.Qxa4+ b5 となりねじり合いの戦いになる-9.Be3 Nf6 10.Nbd2 O-O 11.Bc5 Re8 でほぼどちらも指せる)8…b5(ここでの 8…Nf6?! は疑問手である。なぜなら 9.Bxc6 Bxc6 10.dxe5 Nxe4 11.exd6 Qxd6 12.Qxd6 cxd6 13.Ng5 O-O 14.Rxe4! Bxe4 15.Nxe4 Rfe8 16.Nbd2 d5 17.Ng3 Re1+ 18.Ngf1 となって次に Nb3 とくる。8…Nge7 9.dxe5 dxe5 は可能である)9.Bc2 Nf6 10.dxe5 Nxe5 11.Nxe5 dxe5 12.Bg5 h6 13.Bh4 Qe7 かなり均衡のとれた試合である。

5.O-O Be7

 交換中原はアルハンゲリスク戦法でもかなり頻繁に生じる。例えば 5…b5 6.Bb3 Bb7 7.Re1 Bc5 8.c3 d6 9.d4 Bb6 10.Bg5 h6 11.Bh4 O-O(11…Qd7 と 11…g5 については第1局の黒の5手目の解説を参照)12.Qd3 Re8 13.Nbd2 Na5 14.Bc2 c5 15.dxe5(白は 15.d5 で閉鎖中原にすることもできる)15…dxe5 16.Qe2 Re6! となればどちらも指せる。

6.Re1

 白は 6.Qe2 でeポーンを守ることもできる(ワーラル戦法として知られている)。その主眼はキング翼ルークをd1に回して中原に向けての c2-c3 から d2-d4 突きを支援することである。交換中原を生じさせることのできるのはまさしくこのキング翼ルークのd列への迅速な配置である。例えば 6…b5 7.Bb3 O-O 8.c3 となった後
 (1)8…d6(落ち着いた本筋の手)9.Rd1 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Bg5 Bg4 13.dxe5 dxe5 14.Nbd2 Rfd8 は均衡のとれた局面である。
 (2)8…d5(最も攻撃的な応手でギャンビットの含みがある)9.d3(白がポーンを取れば黒が主導権を握る。例えば 9.exd5 Bg4 10.h3-または 10.dxc6 e4 11.d4 exf3 12.gxf3 Bh5 13.Bf4 Re8 で2ポーンの代わりに駒の活動力による十分な代償がある-10…Bxf3 11.Qxf3 e4 12.Qe2 Na5 で黒が優勢である)9…Re8(すぐに 9…dxe4 と取るのは 10.dxe4 Bg4 11.h3 Bh5 12.Bg5 となってd列の有望な見通しから白が少し優勢である)となれば黒が有利な状況の時にd列を素通しにすることができる。

6…b5 7.Bb3 d6

 すぐに 7…O-O とするのは白が反マーシャルシステムを採用することができ、交換中原の局面が生じることがある。例えば 8.a4 b4 9.d4 d6 10.dxe5 Nxe5 11.Nxe5 dxe5 12.Qf3 Bb7 13.Nd2 Kh8 となったあと白は …Nxe4 から …f5 の戦術の狙いに対処しなければならない。

8.c3 O-O 9.h3 h6

 スミスロフ戦法の特徴のこの手は白の駒がg5に来るのを防ぐのが主たる目的である。実際のところ自己満足の黒の態度は突然危険を招くことがある。ザイツェフ戦法にその一例がある。さらにはその戦法で交換中原が現れるのはかなりまれである。9…Bb7 10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a3 Nb8?!(この手はブレイェル戦法に入ろうとしている)13.dxe5! dxe5 14.Ng5(捨て駒の 14.Bxf7+!? Kxf7 15.Qb3+ も考慮に値する)14…Re7 15.Nxf7! Rxf7 16.Nf3 Qxd1 17.Rxd1 c5 18.Be6! Bxe4 19.Nxe5 白が有望である。

10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.Nf1 Bd7

 e4のポーンは争点の状況で検討した戦術的手段に基づいて間接的に守られている。12…exd4?! 13.cxd4 Nxe4? 14.Bd5 本譜以外の手については第2局と第9局の黒の9手目の解説を参照されたい。

13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5

 14…Nc4 と指すこともできる。以下は例えば 15.b3 Nb6 16.Bb2 c5 17.dxc5 dxc5 18.c4 Qc7 19.Nd2 Rad8 20.Qe2 となってほぼ同等の展望である。

15.a4?!

 12…Bd7 の目的の一つがbポーンを守ることであることを覚えていればこのポーンに対して仕掛けていくことは今の時点ではあまり論理的ではない。しかしその不都合は実際にはこの局面が別のかなり見慣れない手順から生じることによって解き明かされる。9.a4 Bd7 10.d4 h6 11.Nbd2 Re8 12.Nf1 Bf8 13.Ng3 Na5 14.Bc2 c5 15.h3!? もし手順が本譜のとおりだったならば(即ち通常の手順)白はこの時点で 15.b3 と指すことができた。例えば 15…cxd4(すぐに 15…Nc6 と指すと白はかなり有利な状況で 16.d5 と突いて閉鎖中原を築くことができる)16.cxd4 Nc6 17.Bb2 となれば黒枡ビショップが対角斜筋を占めもし白が交換中原を築くことになれば特に役に立つ。

15…g6

 この手は白に黒枡ビショップを対角斜筋に据える余裕を与える。黒は代わりに 15…cxd4 16.cxd4 Nc6 と指す方が良かった。そうなれば白は 17.dxe5 か 17.d5 で中原の争点の状況を解決するよう迫られる。どちらの場合も黒はb4の地点を支配しているおかげで十分に反撃することができる。

16.axb5 axb5 17.b3 Nc6 18.Bb2 Qc7 19.Bd3(図120)

 図120

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(73)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図120(再掲)

 中原の争点から生じた戦いは治まる気配がない。この時点でクイーン翼ビショップをd4ポーンの支援に向けることのできた白はb5のポーンに対して典型的なさまざまな作戦行動を始める。

19…Rxa1 20.Qxa1

 白は 20.Bxa1 と取ることもできた。以下は例えば 20…Qb7 21.d5 Na5 22.c4 bxc4 23.bxc4 Qb3(23…Rb8 なら 24.Nxe5!、23…Nb3 なら 24.Qb1 Rb8 25.Nxe5!)24.Qe2 となって難解な局面である。

20…Qb7 21.Qd1?!

 正着は 21.d5 Ne7 22.c4 だった。白は 21…Na5(22.Qxa5? Ra8)と応じられるのを恐れていたのだろうがこれは次のようにうまく咎めることができた。22.b4 Nc4(22…cxb4? なら 23.Qxa5、22…Nb3?! なら 23.Qd1 c4 24.Bc2)23.Bxc4 bxc4 24.bxc5 dxc5 白は一時的にはb2のビショップが使いにくいが、黒は結局はe5、c5およびc4の弱点を持て余すことになるだろう。

21…Bg7 22.dxc5

 長引く中原での争点の戦いに不安を感じた白は交換中原の形にすることにした。しかしすぐ明らかになるように黒駒の配置はそのような結末に非常によく適合していた。白は 22.d5 Na5 23.Bc2(Bb2 が浮いているので 23.c4? とは指せない)と指すのが良くどちらも指せる形勢だったろう。

22…dxc5(図121)

 図121

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(74)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図121(再掲)

 黒は …b5-b4 突きで白のd4の地点の支配を弱めクイーン翼ビショップをc6の地点に上げてeポーンへの圧力を強める用意をしている。これに加えて白のナイトはd5の地点から隔たっていて、キング翼での攻撃作戦を展開する手段もない。ここから白はやれることは何でもする。

23.Qc2 b4! 24.Nd2 bxc3 25.Bxc3 Nd4 26.Qd1 Bc6 27.Nc4 Qe7 28.Qa1

 この手は 28…Nxb3? に 29.Qa6! という戦術的手段を用意している。例えば 29…Bb7 30.Qb6 Nd4 31.Nd6 Rb8 32.Rb1 となれば黒が駒損になる[訳注 32…Nd7 で黒が優勢のようです]。白は最善手を見つけた。e5のポーンに自分の駒の動きを集中し強力な Nd4 を b3-b4 突きで追い出す用意をしている。

28…Nd7?!

 黒は本譜で起こるようにすぐに 28…h5 と突く方が良かった。

29.Rb1 Rb8 30.Na5 Ba8 31.Qa2?!

 白は 31.Nc4 で b3-b4 突きを狙う方がクイーンで Ba8 を攻撃することになるのでもっと大きな問題を相手に突きつけられた。

31…Nf6

 黒は逆戻りして正しい方針を取る。

32.Nc4 h5

 黒は …h5-h4 と突いてe4のポーンを取る手を狙っている。

33.b4

 白はおとなしく 33.f3 と守ると 33…h4 34.Nf1 Nh5 でキング翼をひどく弱めるのでそうしたくなかった。そのためポーンを犠牲に局面の単純化を図り圧力がいくらか緩和されるようにした。しかしましな方の選択をする時にはいくらか不具合がつきものである。

33…h4 34.bxc5 Rxb1+ 35.Bxb1 Bc6 36.Nf1 Qxc5

 これでe4のポーンが助からない。

37.Bxd4 Qxd4 38.Nfd2 Nxe4 39.Bxe4 Bxe4 40.Nxe4 Qxe4 41.Nd6 Qf4 42.Qc4(図122)

 図122

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(75)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図122(再掲)

 白は片翼にだけポーンがあるナイト対ビショップ収局(ナイトにとって最良の状況)の引き分けに希望を託している。実戦の進行からは白の読みは決して素直でなかったことが分かる。

 しかし 42.Qd5 によってクイーンを盤上に残しておくのも有力だった。

42…Qxc4 43.Nxc4 f5 44.Kf1 Kf7 45.Ke2 Ke6 46.f3 Bf8 47.Kd3 Bc5 48.Nd2 Kd5

 これからの黒の戦略は白ナイトの自由に制限を加えていきついにはビショップと交換しなければならないようにすることである。これは書くのはたやすいことだが実現に至るにはかなりの困難を伴う。

49.Nf1 Bb6 50.Nd2 Bd8 51.Nb3 Bg5 52.Na5 Kc5 53.Nb7+

 53.Nb3+ は 53…Kb4 54.Na1 e4+! 55.fxe4 fxe4+ 56.Kxe4 Kc3 でナイトが取られる。

53…Kd5?!

 黒は自分の方針を 53…Kb4! で達成することができた。例えば 54.Nd6 Bf6 55.Ne8 Be7 56.Nc7 Kc5 となればナイトの行き場がない。

54.Na5 Be7 55.Nb3 Bb4 56.Na1 e4+?

 この早すぎるポーン突きのあと黒はもはや正しい行路に戻って前述した方針を実行することができない。

57.fxe4+ fxe4+ 58.Ke2 Ke5 59.Nb3 Bc3 60.Ke3 Kd5 61.Nc1 Bg7 62.Nb3 Bf8 63.Ke2 Bb4 64.Na1 Ke5

 58手目の後の局面と同じである。

65.Nb3 Kf4 66.Nd4!

 自然な 66.Kf2? は収局スタディになるだろう。例えば 66…Bd2! 67.Ke2 Bc3 68.Nc5 Bb2! 69.Nb3 Kg3 70.Kf1 e3 71.Nc5 e2+ 72.Kxe2 Kxg2 73.Nd3 Kxh3! で黒が勝つ[訳注 74.Kf3 で引き分けかもしれません]。

66…Ba5

 ここでの 66…Bc3 は誤りで 67.Nb3 Kg3 68.Kf1 e3 のあと白に 69.Nc1 がある。

67.Nb3?

 これは致命的な悪手だった。白は 67.Ne6+! で引き分けにできた。例えば 67…Kg3 68.Nf8 g5 69.Ne6 g4 70.hxg4 Kxg2 71.Ke3 である[訳注 71…Bb6+ で黒の勝ちかもしれません]。

67…Bc3! 68.Nc5 Bb2! 69.Nd7 Kg3 70.Nf8 g5 71.Kf1

 71.Nh7 でも助からない。なぜなら 71…g4! 72.hxg4 Kxg2 73.Ng5(ここで 73.Ke3 は 73…Bc1+ で負ける)73…Bc1 でやはり黒の勝ちになるからである。

71…e3 72.Nh7 Bc1 73.Nf6 e2+ 74.Kxe2 Kxg2 75.Ng4 Kxh3 76.Kf3 Bf4 77.Nf2+ Kh2 78.Ng4+ Kg1 79.Nf2 Be3! 80.Kxe3 Kg2 81.Ng4 Kg3! 0-1

(この章続く)

ルイロペスの完全理解(76)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

第5局
ティマン対ガルシア・パドロン
ラス・パルマス、1981年
ブレイェル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Nb8

 この手がブレイェル戦法の特徴で、既に第1局と第3局で見てきた。しかし最も頻繁に交換中原が生じる戦法は …Na5 のチゴーリン戦法であることは間違いない。そこで 9…Na5 10.Bc2 c5 11.d4 のあと2、3の例を検討する(図123)。

 図123

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(77)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図123(再掲)

 (1)11…Nd7(ケレス防御)12.dxc5 dxc5 13.Nbd2 f6(この思い切ったeポーンの防御はここではほとんど必須である。なぜなら主眼の 13…Qc7 はd5の地点と黒のキャッスリングした囲いが …Nd7 引きによって守備駒を取り去られたちょうどその時に Nd2-f1-e3-d5 の捌きにクイーンをさらすことになるからである。これにより白は有利な状況で典型的な中原ポーンの交換を成し遂げるために捌きを追求することができる。例えば 14.Nf1 Nb6 15.Ne3 Rd8 16.Qe2 Be6 17.Nd5! Nxd5 18.exd5 Bxd5 19.Nxe5 で明らかにキャッスリングした囲いに対する攻撃の展望が開ける)14.Nh4(白はd8-h4の斜筋をfポーンが邪魔していることにつけ込んですぐにf5の地点を占拠しキング翼での攻撃の可能性を得ようとしている)14…Nb6 15.Nf5 Rf7(たぶん 15…Kh8 で白クイーンがg4に出てくるのを防ぎ …Nac4 と指すのを目指す方が良かった。代わりに 15…Bxf5 と取るのは 16.exf5 で黒陣の白枡の弱点がかなりひどくなる)16.Qg4 Kh8 17.h4!(h4-h5 から Nd2-f3-h4-g6+ といく作戦である)17…g6 18.Nh6 Rg7 19.Qf3 形勢は白が優勢である。

 (2)11…Qc7 12.Nbd2(すぐに 12.dxc5 と取るのは白の手を見せるのが早すぎ黒が典型的な戦略の目的のとおりに駒を編成することができるので効果がない。例えば 12…dxc5 13.Nbd2 Rd8 14.Qe2 c4 のあと …Na5-b7-c5-d3 と捌いてくる)ここで黒はあらゆるたぐいの手を試した。

 (2a)12…Bb7 13.dxe5(白は …Bb7 と展開したあと初めて交換中原の形にした。これにより前述の …Na5-b7-c5-d3 の捌きが難しくなっている)13…dxe5 14.Nh2 Rad8 15.Qf3 白のキング翼での攻勢の方が相手の反撃よりもはるかに容易に進行する。

 (2b)12…Be6(黒は閉鎖中原を誘い、そうならなければ …d6-d5 突きで中原での清算に備えている。もっとも白はこの考えの出鼻をくじき Be6 の位置を叩くことができる)13.dxe5(13.d5 も良い手である)13…dxe5 14.Ng5 Bd7 15.Nf1 白陣の方が好ましい。

 (2c)12…Rd8(この手も …d5 で中原を清算する目的だが現在の場合はあまり効果的でないことが分かってくる)13.Nf1 d5 14.dxe5 dxe4 15.N1d2! exf3 16.exf6 Bxf6 17.Qxf3 Be6 18.Ne4 Be7 19.Qh5 攻撃に非常に期待がもてる。

 (2d)12…Bd7(このユーゴスラビア・システムは白が中原での意図を明らかにするまで …Re8 と …Bf8 とによって時間を稼ごうという考えである。しかし白にあまりに多くの方針の自由を与えるという欠点もある)13.Nf1 Rfe8 ここで白は 14.Ne3 g6 15.dxe5 dxe5 によってすぐに交換中原にすることができる。例えば 16.Nh2 Rad8 17.Qf3 Be6 18.Nhg4 Nxg4 19.hxg4 Nc4(危険な Ne3 を交換させるため)20.Nd5 Bxd5 21.exd5 Nb6 この局面は受け切れることを黒が実戦で示した。あるいは白はもっと効果的に中原でどんな方針が取られてもそれに対する先受けの手段を取ることができる。例えば 14.b3(…Nc4 の侵入をふせぐため)14…g6 15.Bg5(…Bf8 を防ぎ Bxf6 と交換することによってd5の地点を弱体化させる用意)15…Bc6 16.Ng3 白が優位を保っている。

 (2e)12…Nc6(非常に理にかなった手。黒はd4の地点に対する圧力を強めて白に方針を決めさせる)13.dxc5(13.d5 は閉鎖中原になる。一方 13.Nf1? ではd4のポーンが守られなくなる。なぜなら 13…cxd4 14.cxd4 exd4 15.Nxd4?? Nxd4 の後 Bc2 が浮いているからである)13…dxc5 14.Nf1 Be6(14…Rd8 15.Qe2 Nh5 ですぐにf4とd3の地点に反撃を試みるのは白が邪魔できるので的確でない。16.a4 Rb8 17.axb5 axb5 18.g3! g6-18…Bxh3?! は 19.Ng5 Bxg5 20.Bxg5 Nf6 21.Bxf6 gxf6 となって白にはっきりとポーンの代償がある-19.h4! Be6 20.Ne3 c4 21.Ng5 白が明らかに優勢である)15.Ne3 Rad8 16.Qe2 c4 17.Nf5 Rfe8 18.Bg5 Nd7 互角の形勢である。

 (2f)12…cxd4(c列を開けd4の地点を弱体化させる目的である)13.cxd4 Nc6(または 13…Bd7 14.Nf1 Rac8 15.Ne3 Nc6 16.dxe5-16.d5 と 16.a3 Nxd4 17.Nxd4 exd4 18.Qxd4 という中原の決め方もあり得る-16…dxe5 17.Nd5 Nxd5 18.exd5 Nb4 19.Bb3 両者とも指せる。13…Bb7 については第3局の黒の9手目の解説を参照)14.Nb3 a5 15.Be3 a4 16.Nbd2 この局面は白が長々と続く戦略の小ぜり合いの末に dxe5 と取って交換中原にすることが珍しくない。その一例をあげる。16…Nb4 17.Bb1 Bb7 18.a3 Nc6 19.Bd3 Na5 20.Rc1 Qb8 21.Qe2 Re8 22.dxe5 dxe5 難解な局面でどちらにも可能性がある[訳注 b5のポーンがただで取られるので著者がどこかで間違えているかもしれません]。

10.d4 Nbd7 11.Nbd2 Bb7 12.Bc2 Re8 13.Nf1 Bf8 14.Bg5

 もっと普通の 14.Ng3 については第1局と第3局を参照されたい。Ng3 の省略により白は …h7-h6 のあとビショップをh4に引いて釘付けを維持することができる。

14…h6 15.Bh4 c5

 15…g6 から …Bg7 と指すのも面白い。一方 15…exd4 16.cxd4 g5 でe4のポーンを取るのは 17.Nxg5! hxg5 18.Bxg5 という駒捨てから Nf1-g3-f5 が非常に魅力的である。

16.dxe5

 これが最善手で、白の駒は交換中原に最も適した配置になっていることを考えに入れている。16.d5 で閉鎖中原にする方針はこの場合 Bh4 の位置がキング翼での白の可能性を非常に減らしているので不適切である。

16…dxe5(図124)。

 図124

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(78)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図124(再掲)

 中原の状態に決まりがつき明らかに白が少し優勢である。実際 Nf6 に対する圧力は黒が機械的に自然な作戦(…Qc7、…Rad8、…c4 から …Nc5)を実行するのを防いでいる。逆に白はクイーンを最良の手段で動かす余裕がある。白はd列をルークで制圧してd5の地点の占拠を狙うこともできる。基本的に白は相手よりもずっと容易に主眼の目的を追求することができる。

17.N3h2

 絶好のf3の地点をクイーンのために空け同時に主眼の Ng4 跳ねの用意をした。白は駒の配置の調和がよいので中原とキング翼の両方で行動できることに注意してほしい。

17…Qc7 18.Qf3 Be7

 黒は Nf6 を守っておいて Nd7 を動かしd列でルークを対峙させたい。本筋というわけではないが一つの面白い手は 18…Re6 で6段目でd列を争うことである。

19.Ne3 g6

 白のキング翼攻撃の可能性を考慮すれば黒はf5の地点を守っておくのが賢明である。

20.Rad1 Rad8 21.Re2 Kg7

 Nf6 を守って Nd7 をその役目から解放した。

22.Red2 Nf8

 黒はついにd列で対抗することができた。もっと積極的に見える 22…c4(…Nc5 と指す考え)は 23.Nhg4 で挫折する。例えば 23…Nxg4(23…Nxe4 は 24.Nxh6 Bxh4-24…Nef6 25.Nhf5+-25.Qxf7+ Kxh6 26.Rxd7 で白の勝ち)24.Bxe7 Rxe7 25.Qxg4 Nf6 26.Nf5+ Kh7 27.Qh4 ! で白の勝勢である。以下は例えば 27…gxf5 28.Rxd8 Nxe4 29.Bxe4 fxe4 30.Qf6 である。

23.Nhg4 N8h7

 たぶん次のように局面の単純化を図った方が良かっただろう。23…Nxg4 24.Qxg4 Rxd2(24…Bxh4? は良くなく 25.Nf5+ Kh7 26.Qxh4 で白が勝つ)25.Rxd2 Bxh4 26.Qxh4

24.Bg3

 e5ポーンの弱さにつけ込んで白はキャッスリングした囲いの弱体化をさらに誘いたい。

24…Ng5

 ここでもやはり 24…Nxg4 25.Nxg4 f6 で単純化する方が良かっただろう。というのは 26.Qe3 Ng5 27.h4(27.Nxh6?! Bxe4!)27…Nf7 のあと白は 28.h5? が 28…gxh5 29.Nh2 f5 のために指せないからである。

25.Qe2 Rxd2 26.Rxd2 Nxg4

 黒はe4のポーンを取ることができない。

 (1)26…Bxe4? 27.Bxe5 Qb7(27…Qc6 なら 28.Nxf6 Bxf6 29.Rd6、27…Qc8 なら 28.h4 Bxc2 29.hxg5 でどちらも白が勝つ)28.h4 Ngh7 29.Bxe4 Qxe4 30.Nd5 で白の勝ちになる。

 (2)26…Ngxe4? 27.Bxe5 Qc6 28.Bxe4 Qxe4 29.f3 Qb1+(29…Qc6 なら 30.Nd5)30.Rd1 Qxa2 31.Nxf6 Bxf6 32.Bxf6+ Kxf6 33.Ng4+ で白が勝つ。

27.Nxg4 f6 28.h4

 白はナイトの存在を利用して敵のキャッスリングした囲いをさらに弱体化させようとしている。

24…Ne6 25.h5 g5 26.Ne3 Rd8?(図125)

 図125

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(79)

第3章 交換型中原(続き)

3.3 実戦例(続き)

 図125(再掲)

 たぶん一目瞭然の 17.Nf5+ に幻惑された黒は相手の主要な目的がまだd5の地点であることに気づかなかった。実戦の手は白ナイトがd5に入って来たあと …Bxd5、exd5 と交換するとb1-h7の斜筋が決定的な弱点になるので重大な間違いだった。

 30…Bf8 の方が良かったが 30…Nf4? は 31.Bxf4! exf4(31…gxf4 は 32.Qg4+ で勝勢)32.Nf5+ Kh7 33.e5! で白の勝ちになる。

31.Nd5! Bxd5?

 形は悪いが 31…Qd7 ならこの交換後のまずい結果を避けられた。

32.exd5 Nf8

 b1-h7の斜筋に向けられる大砲のことを考えればこのナイトをg6とh7の地点に利かせるのはやむを得ない。

33.c4!

 黒のキング翼をひどく弱体化させたので今度は戦いを逆の方面に移してb5の地点に狙いを定めた。

33…Qb7

 33…bxc4 はクイーン翼のポーンが弱くなる。…b5-b4 突きなら本譜の2手が続いたとしてもっと頑強に抵抗できただろう。

34.Bd3 Rb8 35.f3 Bd6 36.cxb5!

 白はついにこのポーン取りを決めた。これでc5ポーンに強い圧力をかけることができる。

36…axb5 37.b3 Qf7?!

 黒はbポーンを与えてh5のポーンを取ることにした。しかしそうすることによって相手にパスaポーンを作らせることを過小評価していた。37…b4 ならもっと頑強に抵抗できた。37…Qxd5 は 38.Bxb5 で実戦と同様の運命をたどる。

38.Bxb5 Qxh5 39.a4 Qf7 40.Qe4

 白は相手の弱点を忘れていない。

40…Qc7 41.Rc2 Qe7 42.Bf2 h5 43.Rc3

 b3のポーンをルークで守って白枡ビショップがまた動けるようにした。

43…h4 44.Be3 Ng6 45.Bd3 Nf8 46.a5 Rb4 47.Bc4 Qd7 48.a6 Ng6

 48…f5 は 49.Qb1 Kf6 50.Qa1 Qa7 51.Qa5(Qxb4 の狙い)51…Rb6 52.b4 で白が勝つ。

49.Qg4 Qc7

 49…Qxg4 は 50.fxg4 Rb8 51.Bf1 で早く負ける。

50.Rc1 Rb8 51.Ra1 Nf8 52.Bd3

 狙いは 53.a7 Ra8 54.Qa4 から Bd3-b5-c6 である。

52…Qa7 53.b4 Qf7 54.bxc5 Qa7 55.Rc1 Nd7 56.Qe4 Bxc5 57.Qh7+ 1-0

(この章終わり)

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ルイロペスの完全理解(80)

第4章 可動型中原

主手順 - ザイツェフ戦法
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.a4 h6 12.Nbd2 Bf8 13.Bc2 exd4 14.cxd4(図126)

 図126

 この型の中原の特徴は黒が …exd4 と取り白がcポーンでd4のポーンを取り返すことである。このような状況は中原で争点がしばらく保たれたあと他の多くの戦法でも現れる。例えば 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 O-O の後

 ザイツェフ戦法
 - 9.h3 Bb7 10.d4 Re8 11.a4 h6 12.Nbd2 exd4 13.cxd4

 …Nd7 のチゴーリン戦法
 - 9.h3 Nd7 10.d4 Nb6 11.Nbd2 exd4 12.cxd4

 その他の戦法
 - 9.h3 a5 10.d4 a4 11.Bc2 Bd7 12.Be3 exd4 13.cxd4
 - 9.d4 Bg4 10.Be3 exd4 11.cxd4

 あるいは 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の後

 遅延シュタイニッツ戦法
 - 3…a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 d6 7.c3 Bd7 8.d4 O-O 9.Nbd2 exd4 10.cxd4

 古典戦法
 - 3…Bc5 4.c3 Nge7 5.O-O Bb6 6.d4 exd4 7.cxd4

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(81)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点

 陣形の観点から見ると可動中原の形成は第1章で概説したように白が中原での争点が続いている間追求していた目的を達成することができるので白にとって成功である。実際ポーンの形だけに注目するとこの結果は明らかである(図127)。

 図127

 中原のe4とd4に並んだポーンのために白はかなり広さで優位に立ち、駒がより自由に動ける。そしてe5のポーンがなくなったことにより e4-e5 突きで仕掛けるのに必要な可動性が白の中原にもたらされる。このポーン突きは敵のキャッスリングした囲いに対する猛攻の自然な前兆である。

 したがって黒は自ら作り出した可動中原を作戦の到着点と考えるべきではなく、もっと広い地平線上の途中の段階(一時的で短命)と見るべきであることは理にかなっている。この途中の段階は中原での以前の譲歩の影響を実際に一掃しないまでも減少させるように中原の変容をさらにもたらす意図である。

 だから黒は …c7-c5 または …d6-c5 突きの手段によって局面の戦略的形態を変える用意をする。この黒の作戦の第二段階に続く試合の展開が本章の中核である。

 しかしまず図127で白に優位をもたらす要因をもっと分かりやすく説明する方が有益だろう。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(82)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

e4-e5 の仕掛けを念頭においた駒配置

 図127に示される状況が持続するとき(例えば可動中原の形成が黒の決断によるものでなく、白が中原での争点の戦いに勝った結果によるものである場合)、白は中原の並列ポーンの内側に駒を寄せ集め適当な時機に e4-e5 と中原で仕掛けて敵のキャッスリングした囲いに猛攻撃を加えることができる。中原での仕掛けをより効果的にする最も普通の手段はb1-h7の斜筋でバッテリーを組むことである(図128)。

 図128

 この図は理想的な組み合わせを示していて、最下段が空いてルークが結合できるようになっている。しかし Bb1 と Qc2 とによってバッテリーが組まれることも珍しくない。b1-h7の斜筋の圧力は Bc2 と Qb1 の配置によってもかけられる。

 中原での仕掛けは Nf6 にh7の守りを放棄させる破滅的な効果をもたらすので、黒がそのような襲撃を考慮して一般には …g7-g6 突きによって状況に対処する策を講じるのは理にかなっている。しかしこれは白の猛攻をまったく無効にすることにはならない。白の猛攻は敵のキャッスリングした囲いの弱体化とe4の地点が空くことで新たに活気づく(図129)。

 図129

 このような状況では白は …g7-g6 突きによって引き起こされるf6とh6の弱体化につけ込むことを目指すことができる。しかし白はeポーンをさらに突いたり(e5-e6)hポーンも投入したり(h3-h4-h5)することによってb1-h7の斜筋に沿った攻撃をよみがえらせることもできる。

 それでも白は攻撃を準備する際に早まって e4-e5 と突かないように注意しなければならない。

 実際のところ図127に示された状況で白の中原の強みはその可動性にある。d4とe4に並んだポーンはc5-d5-e5-f5の地点を支配し、主要な斜筋を封鎖して黒の小駒が活動的な地点を占拠するのを防いでいる(図130)。

 図130

 従って黒は窮屈な中原の領域で捌くことを余儀なくされ、白の可能なポーン突き(e4-e5 と d4-d5)との関連で不本意な地点に駒を配置させられる恐れがある。

 逆にもし白が駒を集結させる周到な準備なしに中原で仕掛ければ-e5 dxe5、dxe5 のあと-黒は役に立つd5とf5の地点が使えるようになるだけでなく、a7-g1とa8-h1の斜筋が開通しe5のポーンが弱体化することも黒にとって有利となる(図131)。

 図131

 容易に気づくように黒は自陣の4段目に3個所もの拠点が使えるようになった。一方e5のポーンはナイトによってだけでなく黒の残りの戦力のほとんどによる協同(かつ主眼の)作戦(…Re8、…g6 および …Bf8-g7)によって攻撃目標にされる。

 それゆえに白は、ばねに圧力かけることにより得られる過程と同じことで、中原の仕掛けを実行に移す前に駒を集結させなければならない。ばねは縮めば縮むほどたまる潜在力は大きくなる。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(83)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒が …c7-c5 突きで中原を変える

 図127で示される状況が長引くと白に有利になるので、黒が中原の状態を変える処置を取ることは理にかなっている。前述したように黒はそれを …c7-c5 突きによって達成できる(図132)。

 図132

 d4ポーンを切り崩す黒の意図は、…cxd4 または dxc5 の交換により相手の中原を弱体化させるか、または d4-d5 突きで中原が閉鎖されることにより中原ポーンを動きにくくさせることにある。

 …cxd4 は第5章で取り上げるので、他の二つの可能性、即ち d4-d5 による閉鎖((84)を参照)と dxc5 による単純化((88)を参照)をここで解説する。

(この章続く)

2010年09月29日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(84)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

d4-d5 突き

 中原の閉鎖は最も意欲的な決断であることは確かである。なぜなら白は(可能な間)広さの優位を維持し、同時に中原での仕掛けの意図を放棄しないでもし必要ならばfポーンも動員する用意をしながら先延ばしにしているだけだからである(図133)。

 図133

 黒の方も何らかの代償は得ている。白の中原の可動性が減少しそれと共にクイーン翼で黒ポーンがもっと動き易くなったので状況ははるかに均衡がとれたものとなっている。これらのポーンは進攻に際して図127の状況では考えられなかった反撃の目標をすぐに作り出すことができる。…c5-c4 突きはd3の地点を弱点として固定し、c5の地点とa7-g1の斜筋を空ける。それのみかパスポーンの生成に向けた後の密集ポーンの前進(…b5-b4 から …c4-c3)の前提も作り出す。したがって中原が閉鎖されたあと局面は攻撃(中原とキング翼での白)と反撃(クイーン翼での黒)の性格を帯びてくるのは当然である。それでは両者の捌きの顕著な要点を取り上げていくことにしよう。

(この章続く)

2010年09月30日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(85)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白の目標のf5地点、d6ポーンおよび e4-e5 突き

 前述のように、中原を閉鎖したあとでも白は e4-e5 突きで仕掛ける考えを放棄していないが、それと同時に第2章および第3章で解説したのと同様の攻撃目標を追求する。例えばナイトによるf5の地点の占拠がそうであり、ここでは一般にキング翼ナイトがd4の地点を経由してf5に行けることにより容易になっている(図134)。

 図134

 ナイトがf5に来ると敵のキャッスリングした囲いへの攻撃に役立つことができるし、d6のポーンを脅かして(例えばf4の地点に展開したビショップと協力して)黒にその防御に戦力の一部を張り付けさせることにもなる。

 明らかに白の作戦の重要な部分は e4-e5 突きの準備によって占められている。このポーン突きはb1-h7の斜筋を通すことによって、f2-f4 突きの用意があろうとなかろうと、または駒だけの助けでなされようとなされまいと、破壊的な効果をもたらすことができる。

(この章続く)

2010年10月01日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(86)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒の標的のb2ポーンとd3地点

 クイーン翼における黒の反撃の要点は …c5-c4 突きである。この手は主要な戦略の重要性の目的をはっきり示してくれる(図135)。

 図135

 実際このポーン突きは弱いd3の地点を固定しc5の地点とa7-g1の斜筋を空けることに加えて、b2ポーンを固定し黒駒がそれに集中攻撃できるようにする。これにはh8-a1の対角斜筋をキング翼ビショップで占拠することと(図に示した手段や主眼の …Nf6-d7 から …Be7-f6 の捌きによって)、大駒のためにb列を素通しにすること(…Rb8 の他にも …Qd8-b6 や …Qd7-b5)が加わることもある(図136)。

 図136

 これに関連して、黒は通常 a2-a4 突き(この手は中原での争点が継続している状況でよく指される)に伴ってb列を開けることができる。一方別の状況でも a2-a3 突きに対しては …b5-b4 と突くことによりb列を開けることができる。いずれにしても …c5-c4 によるb2ポーンの固定は通常は白がaポーンを突いていない時でも同様に効果的である。この場合白が b2-b3 と突いてポーンを交換しようとすると黒は …c4-c3 と突き越して危険なパスポーンを作ることができる(図137)。

 図137

 要するにクイーン翼の白ポーンの配置が元々どうなっていようとそれらが黒の多数派ポーンの進攻を効果的に迎え撃つことは難しい。だから白は反対翼でチャンスを作り出さなければならない。

 d3の地点の占拠が重要な理由は二つある。即ちそこに来たナイトはb2の地点に対する圧力に貢献するだけでなく、b1-h7の危険な斜筋をさえぎる。この斜筋をさえぎることは予定の e4-e5 突きのあと全力を発揮する機会を辛抱強く待っていた白の白枡ビショップの動きを妨げることになる。

 だから局面の必要性により黒は両ナイトでd3の地点を押さえてそこをしっかり占拠したり、または敵の白枡ビショップを無力化し白が侵入者を Bxd3 で取り除こうとすれば …cxd3 と取り返すことに満足したりする作戦を実行に移すことができる。

 前者の場合d3の地点の占拠は可動中原にすることにした時から注意深く準備しなければならない(図138)。

 図138

 例えばこの状況で黒は長期的な捌きの …Nb4、Bb1 c5 を実行し白が d5 突きで中原を閉鎖すれば …c4 と突くことができる(図139)。

 図139

 黒はもう一つのナイトでd7-c5(時にはd7-e5)の経路で介入しd3の地点を安定的に占拠するかもしれない。

 他にもd3の地点の支援はクイーン翼ビショップも行うことができる。この場合黒は例えば …bxa4 でb列を素通しにしてからaポーンをa5まで進め …Ba6 と覗けるようにする(図140)。

 図140

 ここにおいてd3を占拠する捌きはb2のポーンを攻撃するだけにとどまらず、b1-h7の斜筋上の白枡ビショップの動きを止める役割も果たす。

 最後に、黒は時には戦術的手段を用いてd3の占拠計画を立てることもできる(図141)。

 図141

 この図で白の手番ならば a3?! と突いてd3の占拠を防げるように見える。しかし黒はかまわず …Nd3!、Bxd3 cxd3、Qxd3 Nc5 と指すことができる(図142)。

 図142

 これで黒は白の攻撃の鋭鋒を取り除いてe4のポーンを取ることができる。

 場合によっては黒はd3でポーンを犠牲にすることもできる。特に白がそれを取るのに手数がかかる時がそうである(例えばd2にナイトがいてすぐに Qxd3 と取るのを邪魔している時)。そしてその間に主導権を思いのままにできることを期待する。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(87)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白の中原の押さえ込みとその解体

 防御の観点からいうと黒の直面する最大の危険は e4-e5 突きによる仕掛けの効果である。そこで黒はできるだけ長くe5の地点を支配するようにキング翼に兵力を配備する。この状況で典型的なのは …Rf8-e8、…Nf6-d7 および …Be7-f6 の捌きである(図143)。

 図143

 見れば分かるように …g7-g6 突きがある場合は …Be7-f8-g7 とするのが自然である。

 時には敵の中原に対するこのような締め付けは敵の中原に対する反撃の先触れとなることがある。もっともそれは有利な状況下に限られ、通常は中原で争点が永続している状態で黒がe4のポーンに対して主眼の圧力をかけている時である。(図144)。

 図144

 例えばここでは黒がe4に対する圧力を強める目的で通常の一連の捌きを行なって可動中原の態勢にしたところである。そしてここから …c5、d5 Nd7 と指すことができる(図145)。

 図145

 黒の意図は状況が許せば敵の中原を …f7-f5 突きで解体しようということである。この場合目的はf5のポーンをd5のポーンと交換して(必要ならば …Nb6 によってこのポーンを襲撃することもできる)クイーン翼ビショップの地平を広げ、中原で止めることのできないポーン集団を形作ることである(図146)。

 図146

 しかし黒キングの囲いは非常に弱体化するのでこのような戦略に危険がないわけではないことは明らかである。したがってそのような戦略を実行に移すことの当否は、白がf5のポーンの存在を頼りにキング翼で仕掛ける猛攻を黒があまり損害を出すことなく持ちこたえる可能性が実際どのくらいあるかにかかっている。

 逆に黒が同様の戦略を実行する際にf5のポーンを取り返す態勢にある時には、弱体化したd5のポーンに攻撃を集中できるので有利が不利を上回ることがよくあるのは当然である。

(この章続く)

2010年10月03日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(88)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白が dxc5 と取る

 図132で白は中原閉鎖の別策として dxc5 と取って単純化を図ることができる。この決断は通常 …dxc5 の後d列の開通をもたらす。

 その後は両者がそれぞれ e4-e5 突きの実現と阻止に努めるので戦いはe5の地点をめぐって行なわれる。(図147)。

 図147

 そこで白はキング翼のルークとナイトに加えてクイーン翼ビショップとクイーンの働きに期待することができ、黒は戦力のほとんどをこの戦いに投入することができる。

 黒の主要な目標はナイトをe5に据えてeポーンの前進を阻止するようにすることである。実際には現在のところそのようなポーン突きは仕掛けにはたとえられないけれども、b1-h7の斜筋を開けるだけでなく(従ってキング翼での攻撃の可能性が出てくる)駒を捌かせる余地を広げd6の弱点を固定するので白にとって戦略的に有利である。(図148)。

 図148

 ポーンがこの地点に進むとナイトにとって絶好の目標が生まれる(例えば Ng3-e4-d6)。ここに来たナイトが交換されると(例えば …Bxd6)白の大駒を素通し列で重ねる捌きに役立つかもしれないし(Rxd6)非常に進んだパスポーンの生成につながるかもしれない(exd6)。しかし図131の場合のように e4-e5 突きは諸刃の剣の武器になることもあり得る。なぜなら黒は有利な状況では駒の働きを白の前進したポーンに集中することができるからで、そうなればこのポーンの守りは必ずしも容易でない(図149)。

 図149

 この図から分かることは潜在的に黒が白よりも駒1個分多くe5のポーンを攻撃する態勢にあるということである。しかし状況によっては白はポーンを捨てる意図で e4-e5 と突くことができる。それにより白は駒の働きが増すことにより生まれる一連の戦術的および機動的な有利さを得るようにする。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(89)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

黒が …d6-d5 突きにより中原を変える

 図127の解説で既に言及したように可動中原を構築したあと黒は …c7-c5 突きの別策として …d6-d5 と突くことにより局面の戦略的様相を変える用意をすることができる(図150)。

 図150

 白はこの中原のポーン突きに対して自分のポーンをe5に突き進めるのが普通である。というのは白の駒はe4とd5のポーン交換の結果生じる孤立d4ポーンのために最適の配置になっていることはほとんどないからである。この応接には例外もあり、通常は黒がまだ展開を完了していない時、具体的にはまだキャッスリングしなければいけない時がそうである。しかし一般には …d6-d5 と e4-e5 のあと両者の目標がかなり明白で、黒によりもたらされた戦略の変更の成否が目標の実現可能性に大きくかかっているような状況が生じる。

 黒が対処しなければならない差し迫った問題は通常はキング翼ナイトの良い居場所を見つけることである。このナイトは逆襲の e4-e5 突きの結果としてほとんどいつも攻撃にさらされる。

 …Ne4 と指せる時にはそれが理想的な解決法となる。なぜならこの場合黒は危険なb1-h7の斜筋をふさぐという重要な成果を達成するからである。これがしばしば可能となるのは白枡の対角斜筋のクイーン翼ビショップの助け/およびまたはd4のポーンに対する間接的な圧力のおかげである(図151)。

 図151

 この図の場合ならば Bxe4? は …dxe4 のあと白がdポーンを失うことになる。図から黒は …f7-f5 突きで Ne4 を支えることができ、白は典型的な捌きの Nh2 から f3 でナイトにその位置を諦めさせようとする。この白の捌きは Ng4 と跳ねたりfポーンをさらに突いたりすることができることを念頭にしてキング翼攻撃の展望をよみがえらせることができる。

 時には黒は …Ne4 跳び込みを考える際に(Bxe4 dxe4 のあと)eポーンを犠牲にする用意をすることもできる。その代償は戦術的/機動的なこともあり(d4ポーンの弱体化、双ビショップの獲得、a8-h1斜筋の可能性)または純粋に戦略的なこともある(d5の拠点の活用。例えばd5の黒ナイトと白の黒枡ビショップとの特に収局における価値の差)。

 一方 …Ne4 が無理な時には Nf6 はd7かe8に下がらなければならない。このような場合は特に、相手がキング翼で攻撃しているあいだ黒は守勢に立たないように敵の中原を粉砕するよう全エネルギーを注ぎ込まなければならない。この目的を達成するために黒は …c7-c5 突きをなし遂げることが可能でなければならない。このポーン突きは …d6-d5 突きで始まった戦略の論理的な帰結である(図152)。

 図152

 d4のポーンが消えるとe5のポーンが見るからに弱体化する。このポーンは駒の協同作戦によって圧力にさらされたり、以降の …f7-f6 の攻撃によって盤上からなくなったりする。これによって黒は敵の中原の破壊作戦を完了することになる。

 白の方はキング翼での攻撃の自然な展望を利用することに加えて、敵の作戦の実現を防ぐことに努めることによりもっと大局的な戦いを起こすことができる。白はこれを、兵力をクイーン翼に展開しc5の地点が潜在的に素通し列上の弱点であることにつけ込むことによりなし遂げることができる(図153)。

 図153

 クイーン翼ナイトはd2を通ってb3に行け、クイーン翼ルークはc列を制圧でき、クイーン翼ビショップは a2-a3 の支援で d2-b4 経由で単純化を図ることができる。同様の封じ込め戦略の成功はとりもなおさず黒が …d6-d5 で始めた作戦の失敗を意味することは明らかである。

(この章続く)

2010年10月05日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(90)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

クイーン翼ルークが3段目と6段目で参戦

 この型の中原で両者が遂行できる典型的な捌きはクイーン翼ルークを戦いに投入することである。

 中原で争点が続いている状況で白はしばしば a2-a4 突きでクイーン翼での主眼の作戦を始める。そして可動中原が形成されれば黒は …bxa4 と取ることにより自分のbポーンに対する圧力を緩和しようとするかもしれない(図154)。

 図154

 この状況で両者はa列と3段目(または6段目)を用いてそれぞれクイーン翼ルークを転回させることができる。白の捌きはほとんど自動的である(Ra1xa4-a3 または直接 Ra1-a3)。黒も特に …d6-d5 突きを予定している時は …a6-a5 と突いたあと対称の捌きを行なうことができる(図155)。

 図155

 ルークの中原(e3またはe6)やキング翼(g3またはg6)への転回は攻撃と防御の関連で明らかに重要である。場合によっては黒のルークが移動してa8の地点が空くと …Bb7 と …Qa8 とによってe4に対する圧力の増強につながるかもしれない。

(この章続く)

2010年10月06日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(91)

第4章 可動型中原(続き)

4.1 戦略の着眼点(続き)

白が先受けのために中原を閉鎖

 時には黒の …d6-d5 突きの狙いが非常に厄介なので白が d4-d5 と突いて中原を閉鎖することによってそれを封じるように追い込まれる(図156)。

 図156

 この場合白は図133とそれ以降に示される状況に関連して、d3の地点の固定化を恐れる理由もなければ、クイーン翼で黒のポーンが突進してくるのを恐れる理由もさらさらなくかえってd4の地点がすぐに使えるようになる。それにもかかわらず白の中原は融通性が減り、c5とe5の地点を譲ったので弱体化する。さらに、この解決策は側面からの …c7-c6 の揺さぶりに道を開くことになる。これは白に不利な状況で小中原に移行(dxc6 で)させることになる。だから …d6-d5 突きに対する先受けの手段としての中原閉鎖は諸刃の剣の武器となる。その正当性は将来の展開の完全で正確な評価に基づいてだけ判断できる。

(この章続く)

2010年10月07日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(92)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所

 この型の中原の特性は敵のキャッスリングした囲いに対する(e4-e5 突きの仕掛けから始まる)白の猛攻に有利に働くけれども 、ここで採り上げるのは主に中盤戦で指すことのできる手筋である。だから布局に特有の頻出する主眼の戦術は(他の型の中原で出てきたのを除いて)あまり多くない。

 そこで読者は第1章の「e4ポーンの間接的守り」と第2章の「Nh4 の無防備の位置」および「Qd7 の無防備の状態」を参照されたい。これらの戦術の狙い所は可動中原でもある程度の頻度で起こり得る。

(この章続く)

2010年10月08日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(93)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

e4ポーンの間接的守り

 この主題は既に中原の争点の議論で本質的なことを論じたけれども、ここでの中原の型ではもっと洗練された形で出現するかもしれないことを指摘しておく(図157)。

 図157

 この状況で黒はe4ポーンを取ることができない。なぜなら …Rxe4?、Bd5 Ree8、Rc1 のあと(図158)

 図158

白は白枡の対角斜筋の弱点につけ込んで利子付きで戦力を回復することができるからである。

(この章続く)

2010年10月09日 | コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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ルイロペスの完全理解(94)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

Ne4 の不安定な立場

 …d6-d5 突きと逆襲の突き越しの e4-e5 の後で黒がキング翼ナイトをe4に進めたときは相手がこのナイトを捕獲する可能性にいつも注意しなければならない(図159)。

 図159

 例えばここでは白は Nh2 で f2-f3 を用意する。この手はナイトを取る狙いだけでなく、b1-h7の斜筋の圧力でも成果をあげる狙いがある。例えば …Be7、f3 Ng5、Bxg5 Bxg5、Bxh7+ という具合である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(95)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

e列での圧力

 黒は半素通しのe列に通常かけている圧力をある程度の頻度で利用することに恵まれることがある(図160)。

 図160

 例えばこの図で白はいきなり h3? 突きで Bg4 に進退を迫ることができない。なぜなら …Bxf3 と取られて gxf3 と取り返さなければならずキャッスリングした囲いを非常に弱めるからである。…Nxd5 があるので Qxf3 とは取り返せない。…Nxd5 は Re1 が離れ駒になっているのでe4ポーンが釘付けになっていることを利用している。

 もちろんこの主題は数多くの場面で現れることがある。その一つは次の例である。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(96)

第4章 可動型中原(続き)

4.2 戦術の狙い所(続き)

h8-a1の対角斜筋での圧力

 キング翼ビショップで黒枡の対角斜筋を押さえたあと黒は主眼の戦術を実行に移す機会に恵まれることがある。特にビショップの利きが d4-d5 突きや dxc5 取りによって延びてb2のポーンが守られていない状態になった時がそうである。

 基本的な形における最も一般的な着想は展開していない a2、b2、Ra1、Nb1 の弱い一団めがけて単刀直入に駒を犠牲にすることである(図161)。

 図161

 この図で黒が …Nxe4 と取ると白は戦力損をすることになる。単純には Rxe4 Rxe4、Bxe4 Bxb2 だし、もうちょっと複雑な場合は Bxe4 f5、Nd2 fxe4、Nxe4 Bxb2 である(図162)。

 図162

この一連の手順は半素通しe列における圧力を戦術的に利用した例でもある。

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(97)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例

第6局
イワンチュク対カルポフ
リナレス、1989年
ザイツェフ戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6

 可動中原は古典戦法でも時たま現れることがある。具体的には次のような手順である。3…Bc5 4.c3 Nge7 5.O-O Bb6 6.d4 exd4 7.cxd4 ここで 7…d5 と突くと白が exd5 と取ることにより孤立dポーンの陣形を選ぶのが得策となる珍しい例の一つとなる。この例外はキング翼ナイトのe7への展開によって説明がつく。このナイトは通常なら白が e5 と突いた時 Nf6 に当たりとなるのを避けている。だからこの場合 8.e5 突きは適切でない。そう突くと 8…Bg4 とかかられてd4ポーンに煩わしい圧力がかかってくる。従って正しい応手は 8.exd5 と取る手で、8…Nxd5 9.Re1+ Be6 10.Bg5 Qd6 11.Nbd2 O-O 12.Nc4 Qb4 13.a4 と進んで白が良い。

 非常によく似た状況が 3…Nge7 の戦型でも起こる。ここでは黒はキング翼ビショップをフィアンケットして、ポーンをいったんd6に突く手間をかける必要なくすぐに …d7-d5 と突く意欲的なもくろみを隠しておく意図を持っている。例えば 4.O-O(すぐに 4.d4 と突けば小中原に持ち込めるが状況は黒にとって不利でない。4…exd4 5.Nxd4 g6 6.Nc3 Bg7 7.Be3 O-O でかなり均衡のとれた局面になる)4…g6 5.c3 Bg7 6.d4 exd4 7.cxd4 d5 8.exd5(この方針は前の場合と同じ理由による)8…Nxd5 9.Re1+ Be6 10.Bg5 白が優勢を保っている。

4.Ba4 Nf6 5.O-O Be7 6.Re1 b5

 6…d6 は 7.c3 Bd7 8.d4 O-O 9.Nbd2 exd4 10.cxd4 で可動中原が生じる遅延シュタイニッツ防御の戦型に移行する。しかしこのあと可動中原が受ける戦略上の変更に照らして黒駒の配置は特に適しているとも言えない。例えば 10…Nb4 11.Bxd7(11.Nf1 Bxa4 12.Qxa4 d5! のあと黒は中原での方針に関する目標を容易に達成する。例えば 13.e5 Ne4 14.Ng3 Nxg3 15.hxg3 c5 で黒が有望である。さらに言えば白は 11.Bb3 によっても白枡ビショップの交換を避けることができない。例えば 11…c5! 12.Nf1 Bb5 13.Ng3 c4 14.Bc2 Nxc2 で互角の形勢である)11…Qxd7 12.Nf1 ここで黒は完全に満足できる継続手がない。12…c5 13.a3 Nc6 14.d5 Ne5 15.Ng3 これでキング翼で白が有望である。または 12…d5 13.Ne5 Qe6 14.a3 Nc6 15.Nxc6 Qxc6 16.e5 黒は 16…Ne8 と引くしかない。16…Ne4? と跳び込むのは 17.Ne3 Qd7(17…f5 は 18.Qb3 Rad8 19.Nxf5! Rxf5 20.Rxe4 で白が圧倒的に良い)18.f3 Ng5 19.f4 Ne4 20.f5 白の攻撃が圧倒的である。

7.Bb3 d6 8.c3 O-O 9.h3

 可動中原は 9.d4 Bg4 10.Be3(10.d5 と 10.h3 については第2局の白の9手目の解説を参照)10…exd4 11.cxd4 からでも生じる。ここでも黒は …d5 または …c5 と突くことができる。例えば
 (1)11…d5 12.e5 Ne4 13.Nbd2 Nxd2 14.Qxd2 Bxf3 15.gxf3 Bb4 16.Qc2 Bxe1 17.Qxc6 Bb4 18.Bxd5 これは白が優勢である。
 (2)11…Na5 12.Bc2 このあと
 (2a)12…c5 13.dxc5 dxc5 14.Nbd2 Nd7 15.Qb1 Re8 16.e5 Nf8 黒陣は申し分ない。
 (2b)12…Nc4 13.Bc1 c5 14.b3 Nb6 15.Bb2 Rc8 16.Nbd2 c4 両者とも指せる。

9…Bb7

 可動中原が形成される他の手(9…Nd7 と 9…a5)は第7局の解説で指摘される。

10.d4 Re8 11.Nbd2 Bf8 12.a4 h6

 12…Qd7 は第2局での手だった。そこで白の11手目および12手目の他の手も検討されている。

13.Bc2

 この局面では数多くの手(13…Rb8、13…Qd7、13…Na5、13…Nb8 など)が試されたが本譜の手が最も積極的な方針で実戦で最もよく用いられている。

 黒の論理は自分の駒が可動中原に対するに理想的に配置されているということで、すぐに中原での交換に乗り出す。

13…exd4 14.cxd4 Nb4 15.Bb1(図163)

 図163

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(98)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図163(再掲)

 ここで黒はよくある戦略上のジレンマに直面している。それはもし守勢でいたくないならば、白が(黒の13手目の決断によりもたらされた)自陣の広さの優位を生かそうとしているので黒は中原のポーンの形を変えなければならないということである。そしてこれは …c5 突きまたは周到に …d5 突きを準備することにより行なうことができる。一つ目の可能性(15…c5)は最も一般的な手で、第7局で採り上げる。もう一つの方は本局で検討する。

15…bxa4

 白の駒の多くがe4ポーンの守りに縛り付けられているので(特に Nd2 は Bc1 の展開の邪魔になっている)、黒はこの現状を何も変えないような手を指し(15…c5 は 16.d5 で Nd2 を解放してしまう)同時に次のような目的を達成する。

 (1)a列を素通しにする白の選択肢を消し、その結果としてb5ポーンが攻撃目標となる可能性を避ける。

 (2)a6ポーンが弱体化することになってもb列を素通しにしてb2のポーンを大駒の活動の対象にさらす。

 (3)…a5 から …Ra6 の準備を行なって、中原の状況を …d5 突きで変えるための有効な準備となるようにする。

 明らかに待ちの方針は不適切である。例えば 15…g6 は 16.e5! dxe5 17.dxe5 と応じられ、白が黒枡の弱点につけ込んで Ne4 からeポーンをさらに突いて敵陣突破を図ることができる。

 15…Qd7 が本譜の手に優るかもしれない唯一の手である。ポーン取りを先延ばしにする考えは 16.Ra3 bxa4 17.Rxa4 で手得するためである。しかしこの手はまだ十分に実戦で試されていない。

16.Rxa4 a5 17.Ra3

 17.b3 から Bb2 と指すこともできるがクイーン翼ルークをクイーン翼に限定するという代価を払うことになる。本譜で白はルークを中央またはキング翼に転進させる用意をした。

17…Ra6

 黒も対称の転進の用意をした。それは …d5 突きの後で可能になるが、同時に黒はe4ポーンに対して …Qa8 でさらに圧力を強める選択肢も作った。

 本譜の手で 17…Qd7? と指すのは悪手である。というのはクイーンがd8-h4の斜筋からはずれるので 18.Nh4! が可能になるからである(本譜の局面では次の手の解説に出てくるように 18…Nxe4! という典型的な手筋で咎められる)。そのあと白はクイーン翼ルークの転進のおかげですぐに強力なキング翼攻撃に移れる。例えば 18…Qb5 19.Rf3(20.Rxf6 から 21.Nf5 で勝ちを目指す攻撃の狙い。すぐに 19.Rg3? は 19…Nh5 と応じられる)19…Nh7 20.Rg3 という具合である。

18.Nh2

 …d5 突きを防ぎ Ra6 をクイーン翼に限定させようとする 18.d5 は一時的にしかうまくいかない。なぜなら黒がすぐに 18…c6! で妨害を粉砕できるからで、そのあとは白の意図は失敗したものとみなされる。

 代わりに 18.Nh4? は 18…Nxe4! 19.Nxe4 Bxe4(19…Qxh4? 20.Nf6+)20.Bxe4 d5!(20…Qxh4 21.Bh7+)となって、白が戦力損をしたくなければ 21.Rae3(21.Bxd5? は 21…Rxe1+ 22.Qxe1 Nxd5 で Nh4 と Ra3 が当たりになっている)で駒を返さざるを得ないが 21…dxe4 22.Rxe4 Rxe4 23.Rxe4 Qd5 となって黒の態勢の方が良い。

 ここで黒の15手目から開始された作戦の柔軟性を強調しておいた方が良いかもしれない。黒の直前の3手は …d5 突きの準備とみなされるかもしれないが黒は …c5 突きで中原の形を変える機会を締め出したわけではない。だから好機にはこの別策もやすやすと持ち出すことができる。例えば 18.Rae3 a4 19.Nh4!?(前の手を継承した手)19…c5! 20.dxc5(20.d5? は …Ra6 と …c5 の不一致を戦略的に正しく咎めているように見えるが 20…Nfxe5 で戦術的に失敗する)20…dxc5 となって、黒陣は6段目にクイーン翼ルークがいるおかげで完全に受けが可能である、

 本譜の手で白は3段目を空け、キング翼でキング翼ナイトの典型的な捌き(Nf3-h2-g4)やfポーン突きで主導権を握る用意をしている。

18…g6

 Ra6 がe6の地点に間接的に利いていることにより本譜の手が絶対安全になっている。というのは 19.e5 dxe5 30.dxe5 からさらにe6にポーンを進める白の狙いがくじかれるからである。

19.f4

 19.Ng4 もある。以下は例えば 19…Nxg4 20.Qxg4 c5!(ここでもこのポーン突きである)21.dxc5(ここで 21.d5? は別の戦術の主題でうまくいかない。それはe列にかかっている圧力で、21…Nxd5 で簡単に咎められる)21…dxc5 22.e5 Qd4 でどちらも指せる。

 しかし最も可能性のあるのは 19.f3! で、黒が実戦で指す作戦を防ぎ、中原を強化し、白の駒を自由にする。例えば 19…Qd7 20.Nc4 Qb5 21.Rc3 Bc8 22.Be3 Kh7 23.Qc1 となって、黒のポーンの形の弱点が明らかになる。

19…d5(図164)

 図164

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(99)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図164(再掲)

 黒はついに13手目で始めた作戦の第2段階の実行に移った。この場合この中央でのポーン突きの結果は一時的なポーン損を伴うだけに精密に読んでおかなければならない。

20.e5 Ne4!

 この手がなければ黒陣はつぶれてしまうところである。

21.Ng4

 黒の防御の核心は 21.Nxe4 dxe4 22.Bxe4 Bxe4 23.Rxe4 c5! 24.Kh1 Qd5 でポーンを取り返して好形になることにある。

21…c5!(図165)

 図165

(この章続く)

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ルイロペスの完全理解(100)

第4章 可動型中原(続き)

4.3 実戦例(続き)

 図165(再掲)

 黒はすぐにもう一つの目標を達成した。今度は6段目のクイーン翼ルークの目立たない守りの働きのおかげである。

22.Nxe4 dxe4 23.dxc5

 23.Bxe4? Bxe4 24.Rxe4 f5! も 23.Nf6+? Rxf6! 24.exf6 cxd4 も黒がはっきり優勢になる。後者の変化の場合状況がまったく逆転するのは妙である。即ち最後に可動中原の優位を手中にするのは黒の方である。

23…Bxc5+ 24.Be3 Bf8

 この手はf6での両当たりに対抗して …Nd3 という応手の可能性を残している。

25.Nf6+ Rxf6 26.Qxd8

 26.exf6? は 26…Nd5!(26…Nd3? は 27.Bxd3 Bxa3 28.Bb5! で白が優勢になるし 26…Qxd1? も 27.Rxd1 Nd5 28.Rxd5! Bxa3 29.Rb5 で白の勝勢になる)27.Rb3 Bc6! となって白は …Ba4 と …Nxe3 から …Bc5 の両狙いを避けることができない。黒は交換損を回復し優勢を維持することができる。

26…Rxd8 27.exf6 Nd3

 ここで 27…Nd5? は 28.Rb3 Bc6 29.Bxe4 でうまくいかない。

28.Rd1 Bxa3 29.bxa3 Bd5 ½-½

 収局は互角である。30.Bxd3 なら 30…Bb3 31.Rb1 Rxd3 となる。また 30.Bb6 なら 30…Rb8 31.Bxa5 Rb2 となって以下は例えば 32.Bc3 Rb3 33.Bb4(33.Bxd3 exd3 34.Rxd3 Rxa3)33…Nxb4 34.axb4 Rxb4 である。本局は黒の可動中原の扱い方が非常に印象深かった。

(この章続く)

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