チェスの玉手箱

フィッシャーのチェス(123)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 次の試合では両当たりに基づいた3手の手筋でクイーンを除く白駒が盤上から消えた。

ビズガイアー対フィッシャー
ニューヨーク、1960-70年
 29.Rd1

24…Qxc3! 25.Bxc3 Nxd1 26.Qd4 Nxc3

 これで黒の勝ちに終わった。

2012年02月23日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(162)

「The British Chess Magazine」2011年1月号(2/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 ジョージ・スポールディング氏の質問。

 質問 出来事を起こった順序に正確に記すと次のとおりである。

 (1)両選手とも残り時間が5分を切っていて黒の方が少なかった。

 (2)この段階で最後のポーンが盤上から消えて、両選手ともキングとルークだけになった。

 (3)引き分けの申し立ては行なわれなかった。

 (4)そして黒の旗が落ちた。

 (5)それから白が黒の時間切れによる自分の勝ちを主張した。

 (6)黒はルーク対ルークは引き分けにしかならない(ルークは素抜きなどで取られる態勢にはなっていない)という理由で引き分けを主張し反論した。

 どうすべきか。

 回答 引き分けの申し立てが行なわれていないので白の勝ちを宣告すべきである。10.2項は引き分けが認められるためには残り時間が2分を切ったときに申し立てなければならないと規定している。引き分けの申し立てが行なわれていれば引き分けになる可能性が最も大きいが、自動的に引き分けになるわけではない。

 10.2項は引き分けが認められるためには残り時間が2分を切ったときに申し立てなければならないと規定している。

 審判はその選手が素抜きに会わないことを確認するために少し指させてみるのが良いかもしれない。

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2012年02月22日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(122)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 ナイトは意外にも縦横斜めの多くの地点に利いているのでその両当たりは特に魔法のようである。巧みなナイト使いはマスターの印である。次の試合はナイトの魔術の最も痛快な実例の一つである。

フィッシャー対ウンツィカー
ジーゲン、1970年
 40…Kg7

 白はどうしたらナイトとgポーンの両方を救えるだろうか。

41.Nd7! c4

 41…Bxg4 は 42.f6+ Kg8 43.f7+! Kxf7 44.Ne5+ でキングとビショップの両当たりになる。

42.Kg3 黒投了

(この章続く)

2012年02月22日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(121)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 ポーンは敵駒への当たりによってスピードがつき、1手の無駄なく両当たりのために前進することができる。次の局面で黒はこの可能性のために有利な交換をしむけることができた。

フィッシャー対ホルモフ
ハバナ、1965年
 19.b4

19…Nd4!

 このナイトは取るわけにいかない。というのは 20.cxd4 exd4 のあと …d3 の両当たりがあるのでナイトが逃げられずそうなると黒にc4の地点に保護パスポーンができるからである。面白いことにフィッシャーは相手の二重ポーンに何度も予期せぬ苦労を強いられている。実のところ攻撃にさらされている二重ポーンと、ここでのように隣に素通し列を作り出し味方を支援する二重ポーンとでは雲泥の差がある。

(この章続く)

2012年02月21日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(13)

「Chess Life」2003年3月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

シチリア防御/スヘーファニンゲン戦法

 今月は機動力に富むシチリア防御のスヘーファニンゲン戦法を取り上げる。

 一般的にシチリア防御は 1.e4 に対する最も機動性のある布局の一つである。世界の超一流選手の多く、例えばカスパロフ、アーナンド、トパロフ、イワンチュク、ポルティッシュらはこの戦法を黒番での常用戦法の一部にしている。シチリア防御は非常に詳細に研究されていて、その定跡は手数も長くなっている。従って今回紹介する戦型はいつもよりも手数が長い。

 黒の作戦はどういったものだろうか。それはキング翼での白の攻撃を受け切ること、bポーンとc列とを用いてクイーン翼で反撃すること、そして機会があればdポーンをd5に突いたりeポーンをe5に突いて白の中原を破壊することである。

 では白の作戦はどのようなものだろうか。それはキング翼で攻撃をかけること、強力な中原を維持すること、そしてクイーン翼での黒の反撃を食い止めることである。

 それでは評価はどうなっているだろうか。この戦法は最も活気があり手段に富み詳細に研究されている布局の一つで、白も黒も勝ちを目指すことができる。大会の最終戦で穏やかに引き分ける必要があるならばこれは正しい選択でない。一か八かにかける必要があるならばこの布局はちょうどそのために適切な機会を与えてくれる。

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Be2 a6 7.O-O Be7 8.f4 O-O 9.Be3 Nc6

 ここは白にとって黒に …b7-b5 と突かせるか、それとも 10.a4 でそれをやらせないかの分かれ道である。白には次の3戦型がある。

 a)10.Kh1
 b)10.a4
 c)10.Qe1

 順番に見ていこう。

 a)10.Kh1

 この手の意味はキングをg1-a7の斜筋からはずして嫌なチェックの可能性をなくすことである。

10…Qc7 11.Qe1 Nxd4 12.Bxd4

12…b5

 12…e5 なら 13.fxe5 dxe5 14.Qg3 でe5のポーンを釘付けにして白が良い。しかしここでもし白キングがg1の地点にいたら黒は …Be7-c5 と指せる。これはキングをg1-a7の斜筋からはずすのがなぜ役に立つのかの典型的な例である。

13.a3 Bb7 14.Qg3 Bc6

 この手はb5のポーンを守って …a6-a5 から …b5-b4 とポーンを突いていく用意をしている。

15.Rae1 Qb7 16.Bd3 b4

17.axb4

 他には 17.Nd1 があり(このナイトを Nd1-f2-g4 という経路でキング翼に移送する着想)2000年サラエボでのシロフ対モブセシアン戦では 17…bxa3 18.bxa3 Rac8 19.Nf2 Nh5 20.Qf3 g6 21.Ng4 f6 と進んで非常に難解な局面になった。

17…Qxb4 18.Ne2 Qb7 19.e5 Nh5 20.Qh3 g6 21.Ng3 dxe5 22.Bxe5 Nxg3+ 23.hxg3 Bb5

 主導権は白にあるが、1993年リナレスでのシロフ対イワンチュく戦のように黒が正確に受ければ守りきることができる。

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2012年02月20日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(120)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 次の局面で黒のポーンは堅固に見える。

フィッシャー対ラピケン
オクラホマシティー、1956年
 14…Rb8

15.Nxc6! Qxc6

 この捨て駒は取らなければならない。なぜなら 15…dxc4 は 16.Nxb8! と取る手が挿入手となって黒クイーンが「当たり」になるからである。

16.cxd5 Nc5 17.Qc3!

 命名の練習として最後の2手に関連する戦略を識別するのも面白いかもしれない。黒の 16…Nc5 は白クイーンを当たりにする挿入手である。17.Bxc5 Qxc5 となれば「帰還」である。つまり2駒が当たりになっていて一方が他方の取られを取り返す。ここで白の最後の挿入手で決着がつく。

17…Qd6 18.Bxc5 Qxc5 19.Qxf6

 黒クイーンは両方のナイトを守ろうとしていたが過負荷だった。

(この章続く)>

2012年02月20日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(34)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

53 黒魔術 241ページ
『12.Ba3
12.Bd3 f5 13.Qe2 Nc6 … では、白が劣勢になる。12.Ba3 は、まだ分別がある手だ。』

英文『12.Ba3
White gets the worst of it after 12.Bd3 f5 13.Qe2 Nc6, etc. Still, this was a prudent choice.』

Still は副詞だが、文頭で接続詞的に使われるときは「それでも」の意味になる。this は近い方を指す。遠い 12.Ba3 の方を指すなら that が使われる。

試訳『・・・それでも 12.Bd3 はまだ分別がある手だった。』

53 黒魔術 243ページ
『ささいな狙いがいくつかあるが、大きな狙いが見つからない。』

英文『He has some minor threats, and a major one which cannot be met.』

and の直後には He has が省略されている。それを補うとこういう文になる。He has a major one which cannot be met. この訳は直訳すると「彼は見つからない大きな狙いを持っている」と解釈していることになる。meet(met はその過去分詞)はここでは「応じる」という意味である。

試訳「黒にはささいな狙いがいくつかと受からない大きな狙いが一つある。」

54 ナイドルフを離れたナイドルフの闇 244ページ
『フィッシャーは抑圧の中でわずかな優位を求め続け、』

英文『Fischer proceeds to exploit his slight advantage with restraint,』

「抑圧の中で」なら under restraint となるはず。

試訳「フィッシャーは自制してわずかな優位を求め続け、」

2012年02月19日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(119)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 布局の段階での中央の要所をめぐる戦いはポーンによる両当たりに注意を払う典型的な時期である。

ミニッチ対フィッシャー
パルマ、1970年
 13.O-O

13…Nxc5

 このナイトを取ると 14…d4 でナイトとビショップの両当たりになる。戦力得になるわけではないが中原が清算され黒駒が捌ける。そこで白は複雑化を図った。

14.dxe5 d4!

 この両当たりは支援がないが白ビショップの利き筋を一時的にせき止め、そのことにより黒が二つのナイトを活用できる。

15.Nxd4 Nxe5

 これで黒の優勢な局面になった。

(この章続く)

2012年02月19日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(118)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ(続き)

 次の局面でも決着はつかなかったが、黒はc3の地点でのポーンによる両当たりに基づいた手筋で収局では優位に立った。

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦第16局、レイキャビク、1972年
 22.Kg2

22…Rxb2 23.Kf3!

 ここでも積極防御が壊滅を防いだ。23.Rxb2 は 23…c3 で黒駒がよく働く。

(この章続く)

2012年02月18日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(256)

「Chess Life」2011年11月号(2/2)

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2011年米国オープン
レンダーマンが決定戦を制して優勝
(続き)

ナカムラの真骨頂

 GMティムール・ガレエフが、最もわくわくさせる選手の一人による最もわくわくさせる試合の一つを解説する。

オランダ防御/レニングラードシステム (A87)
GMキダムビ・スンダララヤン(2530)
GMヒカル・ナカムラ (2848)
第112回米国オープン、第8回戦

 ナカムラが米国オープンで指した試合の中で特に精力的な1局である。

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nf3 Bg7 5.O-O O-O 6.b3 d6 7.Bb2 c6 8.c4 Qc7 9.Nbd2 Re8 10.Qc2 Na6

 これはレニングラードシステムでもかなり普通の局面である。両者とも調和のとれた展開をしている。黒は中央で …e7-e5 と突く用意ができている。

11.a3

 中央での仕掛けを防ぐ 11.c5 が機敏な先受けだが、白枡を弱めることにもなる。黒には次のように効果的な応手がある。11…Nb4! これでこのナイトが戦いに加われる。(11…Be6 は 12.a3 でこのナイトが身動きできない)12.Qc4+ Nbd5 13.Rac1 Kh8 この手の意味は白枡ビショップを展開したときに Nf3-g5 と来られてもg8の地点に引けるようにすることである。

11…e5 12.c5 e4!

 急に黒陣が広くなり駒が中央の最適な地点に着き始める

13.cxd6 Qxd6 14.Ne5 Be6 15.b4 Bd5 16.Ndc4 Qe6

 白がb2とg2に不良ビショップをかかえているので黒の優勢は確実である。白は防御においてはe5の地点に好形のナイトが陣取っている。黒はそれを見逃さずすぐに行動をおこす。

17.Bc1 Ng4! 18.Nxg4 Bxc4 19.Ne5 Bb3 20.Qc3 Ba4

 黒は白の中原を崩し、ここから自分のナイトを …Nc7-d5 で好所につかせる用意ができた。

21.g4?

 変化を考えるまでもなくこの手が良い手であるはずがないことは明らかである。白の駒はこの時点でまとまりがない。白は局面を開放に向かわせるがキング翼の防御をがたがたにする。白にとってもっと考えるべきことは世界最高の戦術派選手の一人と対戦しているということだった。ヒカルは現在の状況を気に入っていたはずだ。

21…fxg4 22.Bxe4 Nc7

 これは堅実で理にかなった着想である。攻撃を仕掛ける前に陣形を引き締めた。

23.f4?!

 白は見込みのない戦略を続けている。

23…gxf3e.p. 24.Qxf3 Nb5 25.Bb2 Nxd4

 黒は単純で理にかなった戦術でポーン得になった。

26.Bxd4 Bxe5 27.Bxe5 Qxe5 28.Qf7+ Kh8 29.Bd3 Re7 30.Qf6+ Qxf6 31.Rxf6 Rd8

 ヒカルは卓越した技量を見せつけ、少しある技術上の困難を克服して優勢を勝利に導く。

32.Raf1 Kg7 33.Bc4 Rdd7 34.Be6 Rd1 35.Bc4 Rxf1+ 36.Rxf1 a6!

 黒は …Bb5 を準備した。そうなれば白のe2とa3の弱点につけ込むのが容易になる。

37.Rf4 Bc2

 ヒカルはどういうわけか考えを変えた。

 38.Kf2 Be4 39.Ke3 Bd5+ 40.Kd3 g5 41.Rd4 Bxc4+ 42.Rxc4 Rd7+ 43.Ke3 h5 44.Kf3 Kf6 45.h3 Rd5 46.Rc3 Ke6 47.Re3+ Kd6

 両者のキングとルークが、攻撃または防御のためにどちらの翼に行けばもっと役に立つか決めるために見計らっている。黒は動きやすさのせいで狙いを作り出せるので明らかに局面を支配するようになる。

48.Re8 Rf5+ 49.Ke4 Rf4+ 50.Kd3 Rh4

 この巧妙な戦術で白がまた守勢になる。

51.Re3 a5!

 敵陣に二つ目の弱点を作った。

52.Kc3 axb4+ 53.axb4 b5 54.Rg3 Rc4+ 55.Kd2 Rxb4

 連結パスポーンで楽勝が約束される。

56.Rxg5 Rh4 57.Rg3 Kc5 58.Kd3 Rd4+ 59.Kc3 b4+ 60.Kb3 Kb5 61.Rg5+ c5 62.Rxh5 Re4 63.h4 Re3+ 64.Kc2 Rxe2+ 65.Kd3 Rh2 66.Rh8 c4+ 67.Kd4 c3 68.h5 c2 69.Rc8 b3 白投了

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(この号終わり)

2012年02月17日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(117)

第4部 手筋(続き)

第15章 フォークとナイフ

 「両当たり(フォーク)」とは二重狙いを具体化したものである。手番の防御側は自分の駒-あるいは「部下」と呼ぶべきか-のうち二つが敵駒の一つにより当たりにされている。両当たりは一般に手筋の最終手であり核心である。この定義によればどの駒でも「両当たり」にできる。ただしキングによる二重攻撃は「収局」で取り上げた。2駒が同じ筋で(ビショップ、ルークまたはクイーンにより)攻撃されているとき二重攻撃は「串刺し」と呼ばれるのが普通である。その筋上の2番目の駒がキングのときは「釘付け」と呼ばれる。本来これらはみな両当たりである。

 ポーンによる両当たりは布局でよく起こるがいつの時点でも狙いになり得る。次の局面でフィッシャーはポーン得を意図した。

バルツァ対フィッシャー
チューリヒ、1959年
 49.Nc3

49…Nxf4

 50.Kxf4 Rh4+ 51.Ke3 f4+ でポーンによる両当たりがあるのでこのナイトは取られない。しかし白は自分もナイトを捨ててこの狙いをほごにした。

50.Nxe4+!

 これで試合は引き分けに終わった。

(この章続く)

2012年02月17日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(116)

第4部 手筋(続き)

第14章 表裏一体(続き)

 最後は二重攻撃がどのようにして手筋の中で形作られるかの例である。

レーティ作(1928年)
 白先引き分け

 状況は絶望的に見える。白キングがc6の自分のポーンを進ませるのを助けそれでも反対翼の黒の3ポーン(hポーンだけでも大変である)を見張っていられるような斜めの経路がどこにあるのだろうか。それでも白キングは二重の狙いを利用して極度に効率よく手を進めることができる。

1.Kg6 h5

 万事休すか?hポーンを取ると黒に単純にcポーンを取られるので駄目である。

2.Kxg7

 これは何だ?白キングはクイーン翼に近寄ろうとさえしていない。

2…f5 3.Kf6

 かすかな望みがわいてきた。これで白キングは黒の2個のポーンを取ることを狙い、それによって一方を進ませる。

3…f4 4.Ke6 引き分け!

 白ポーンのクイーン昇格は止められない。これらはすべてキングが心理的に縦よりも横に動くほうがゆっくりしているように思えることを示している。これはチェス選手の誰もが枡の横幅が奥行きよりも広くなるような角度で盤を見るからだろうか。

(この章終わり)

2012年02月16日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(161)

「The British Chess Magazine」2011年1月号(1/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 アラン・オームズビー氏が棋譜づけの必要でない場合の毎手時間加算方式に関する興味深い質問をよこした。

 質問 マン島での地方大会は冬の間は平日の夕方に行なわれ、90分の持ち時間に毎手10秒が加算される。加算方式の採用は指し切り方式を避けられる利点があり、試合を監視する対局しない審判がいないときは特に重要である。わずか10秒の加算の採用で大多数の試合が3時間半で(午後11時までに)終わる。これに対し30秒の加算では真夜中を過ぎる試合が何局かでることがある。しかし30秒未満の加算の採用では、残り時間が5分未満になると棋譜をつける必要がなくなる(FIDE規約の第8.4項)選手によって問題が引き起こされる可能性がある。

 両対局者が棋譜をつけていなかったので、白は50手規則による引き分けを申し立てることができなかった。

 数年前マン島選手権戦で両対局者が互角の中盤戦になった。局面は非常に閉鎖的でポーン突きによる仕掛けは不可能だった。10秒加算のもとで両対局者は残り5分未満になった。白は唯一の素通し列を支配していたが、彼のルークは侵入口がなかった。局面は完全に引き分けだった。しかし対局の状況から黒はその試合に何としても勝たなければならず、白の引き分けの申し出を拒否して自分の駒を往復させて白の悪手を期待した。約50手後(何の進展もなくポーンの動きもなく駒の取りもなかった)黒はまた引き分けの申し出を拒否し駒の往復を続けた。両対局者は棋譜をつけていなかったので白はFIDE規約9.3項によって必要とされる50手規則での引き分けを申し立てられなかった。

 私の質問は次の2点である。

 1.上記の状況で両対局者が棋譜をつけるのをやめてから審判が手を記録し、ポーンの動きも駒の取りもなく50手以上が指されているのを確認したら、この審判は試合に介入して引き分けであることを宣言すべきだったか?

 2.黒の行為は試合を汚す(FIDE規約12.1項)ことにならないか?

 回答 審判はこのような状況に介入すべきでない。ポーンの動きや駒の取りがなく50手以上経過すれば自動的に引き分けになると考えている人が多い。これは正しくない。選手は引き分けを申し立てなければならない。選手が審判のところに行って、千日手か「50手規則」によって引き分けを申し立てたいので試合を見守るよう依頼することは許される。選手はこの行動のために時計を止めてもよい。そして審判は試合の記録に努めるべきである。

 もしこれができないならばそのときは片方の指し手を記録すべきである。これもできないならば最後の手段として指を折って手数を数えるべきである。スチュアート・ルーベンは審判が最後の二つの手段に頼らなければならないならば1手か2手多く指すべきだと提唱している。私なら白と黒の手が2、3度重複して数えられても確かに50手以上になるように、あえて55手まで数えるかもしれない。

 ポーンの動きや駒の取りがなく50手以上経過すれば試合は自動的に引き分けになると考えている人が多い。これは正しくない。

 黒は何も不正なことをしていない。引き分けの申し立てを受けるのがまともではあるけれども、黒のやったことは試合を汚したとまでは言えない。しかし審判に訴えが行なわれ審判が何もしなかったなら、審判が試合を汚したとみなされても仕方がない。私なら両対局者がそれ以上審判の介入がなくても結果に合意することを期待する。これが似たような状況での私の経験である。

 ところで、試合は白がまた引き分けの申し出を拒否されたあとそれ以上指すことを拒絶し口論になった。あげくは運営委員会で紛争を解決することになったが、それはまた別の話である。

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(この号続く)

2012年02月15日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(115)

第4部 手筋(続き)

第14章 表裏一体(続き)

 楽しい手筋の話題に進む前に-フィッシャーの手筋は鑑賞するのが楽しい-本章の最初に出てきたのと似た「レーティ」収局をもう2題取り上げることにより二重の狙いについてもう少し詳しく要点を説明することができる。

サリチェフ作(1928年)
 白先引き分け

 登場人物の配役は同じである。白にとって問題はほとんど同じである。つまり黒ポーンに追いつくか自分のポーンをクイーンに昇格させることを狙っているが次のように実現を阻まれている。(1)黒ポーンは動いて自らを危険にさらす必要がない。(2)ビショップが白ポーンの昇格枡を守っている。例えばすぐに 1.Ke6 Bc5 2.Kf5 と動くと黒は 2…Bf8 で黒キングが現場に戻って来れるまで砦を維持することができる。ここで手筋の新しい要素が登場する。それはポーンに追いつく仕方だけでなく(白キングはすぐにポーンの正方形に入れる)、ビショップをf8に置いて難攻不落の砦を築く「黒の」狙いのくつがえし方である。白ポーンがすぐにクイーンに昇格すればもちろん黒は 1.f8=Q Bc5+ 2.Kf7 Bxf8 で自分のポーンを進ませることができる。だから前出のフィッシャーの実戦例のように、準備の手によって望みの局面を生じさせ二重の狙いを作らなければならない。ここに限っては非常に逆説的である。

1.Kf8!

 このまじないは強力である。黒の防御態勢を打ち砕くために白キングは自分のポーンの前をふさぐだけでなく黒ポーンの正方形から2手遠ざかる。

1…g5 2.Ke7 g4 3.Kd6

 白キングは黒ビショップの防御地点であるc5への当たりを追求している。しかし黒ポーンはそれにしてもずっと遠くまで進みすぎてしまったように見える。

3…Kb4 4.Kd5 Bc5

 黒ビショップは昇格枡を見張らなければならない。しかしここで白キングはビショップに対する攻撃で2手取り戻した。そして黒ポーンの正方形にまた入る!

5.Ke4 引き分け!

(この章続く)

2012年02月15日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(114)

第4部 手筋(続き)

第14章 表裏一体(続き)

 フィッシャーの棋風の特徴を言い表すことができるならば、それはたぶん現在のどんな他の選手よりも手に潜む多くの手筋を見つけそれらの機会をより多くとらえ正しい手順でより正確に追及することだろう。彼が一か八かで駒を切ることは(タリとは対照的に)非常に少ない。彼は手筋の余地が少なくなる閉鎖的な局面を慎重に避ける。特徴的なこととして短い一本道の手順の狙いや二重の狙いを用いてたとえ最小限でも優勢を確保する。特にクイーンの使い方が巧みでその能力を完全に発揮させる。実際棋歴の大部分において「数少ない」負けのいくつかはこれから出てくるがクイーンの回復力に依存したことに直接起因している。次の試合は彼の典型的なワンツーパンチである。

リベラ対フィッシャー
バルナ、1962年
 14.Rc1

14…Qc6 15.f3 Qb5

 初手の詰み狙いのあとクイーンが2個のビショップに二重当たりをかけることができ駒得することになった。この簡単な例は前述のレーティの局面と原則的に違いはない。どちらの場合も二重当たりの前に一本道の手順がある。以降の章では両当たり、素抜き、防御の破壊、釘付けなどの通常の種類に分けてフィッシャーの典型的な手筋を見ていく。これらの用語による類型化は何が起きているかを読者が思い描くのに役立つ。それでもフィッシャーの得意な「挿入手」は実際は一種の二重狙いにすぎない。長い目で見れば「何を狙っているかによって」手を分析することを続ければ、他の試合や他の機械的な現象(両当たり)の類推よりもずっと速くチェスの理解を向上させることになる。

(この章続く)

2012年02月14日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(12)

「Chess Life」2003年2月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法(続き)

c)8.Rc1

8…Bb7 9.Be2 dxc4 10.Bxc4 Nbd7 11.O-O c5

 11…Ne4 は良くなくて 12.Nxe4 Bxh4 13.d5 で白が優勢になる。

12.Qe2 a6 13.a4 cxd4 14.Nxd4

 14.exd4 は 14…Nh5 で黒に何も問題がなかった(1984年モスクワでのカスパロフ対カルポフの世界選手権戦戦第34局)。

14…Nc5 15.Rfd1 Qe8

 黒はこのあと 16…Nfe4 と指すことになれば申し分ない局面である。

d)8.Bd3

8…Bb7

 代わりに 8…dxc4 9.Bxc4 Bb7 10.O-O Nbd7 11.Qe2 Ne4 でもよい。

9.O-O Nbd7 10.Qe2 c5 11.Bg3

 これが主眼の手である。11.Rfd1 は 11…Ne4 で互角になる。この布局ではよくあることだが 12.Bg3 cxd4 13.exd4 Nxg3 14.hxg3 Nf6 15.Ne5 Rc8 16.Rac1 dxc4 17.Bxc4 Nd5 で黒に何の問題もない。

11…Ne4 12.cxd5 exd5 13.Rad1 Ndf6 14.dxc5 Nxc3 15.bxc3 Bxc5

 両者とも弱い孤立ポーンを抱えていて、これからの展望は釣り合いが取れている。

結論

 クイーン翼ギャンビット拒否のタルタコワ戦法は黒の堅実な布局である。多くの世界チャンピオンや他の一流選手たちによって用いられてきた。常用戦法の一部に加えることは有益である。

 しかし黒番で勝つ必要があるならばこの戦法を選ぶのは適切でないかもしれない。反対翼を攻め合う他の布局と違いこの布局は主に中央をめぐって展開する。大局観派で本筋の落ち着いた流れの試合を好むなら、これこそその戦法である。

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2012年02月13日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(113)

第4部 手筋(続き)

第14章 表裏一体(続き)

 盤上で最も単純な手筋はキングが斜めに動いてすぐに盤の両側で何らかの狙いをもつことである。盤の幾何によりキングはh列を直接かけ登るのと同じ速さでh1からe4を通ってh7へ行ける。これによりリカルド・レーティは驚くべきスタディをいくつか創作することができた。

レーティ作(1928年)
 白先引き分け

 局面を一見すれば白に二様の狙いがあることが分かる。それはポーンを突き進めることと黒のポーンを取ることである。どちらの狙いもそれぞれ黒が簡単に対処できる。1.e7 ならビショップが単純に 1…Bb5 により昇格枡を見張り、ポーンがクイーンに昇格すれば自らを犠牲にする。同様に 1.Kf7 で黒ポーンを当たりにするのも望みがなさそうである。このポーンは常に白キングより先に進む。それにもかかわらず白には「手筋」がある。たった1手で白は黒ポーンに対する当たりとビショップの守備位置のb5の地点に対する攻撃とを組み合わせることができる。

1.Ke7! g5

 白キングが黒ポーンの(ポーンから8段目まで延びる対角線で定義される)「正方形」に入ろうとしているのでこのポーンは進まなければならない。キングとポーンのそれぞれの手を読むよりも、ポーンの正方形を思い描き相手のキングがその中に入ることができるかどうかを見る方がはるかに速い。ここでそれほど明らかでないのは、ビショップの守備位置がキングの動きによって侵害されてしまうことであるが、手を追ってみよう。

2.Kd6 g4

 ポーンはまた進まなければならないが、今度はビショップがe8の地点を守るもう一つの地点、即ちh5への経路をふさいでしまっている。ここで二重の狙いを2手で遂行することができる。

3.e7

 ただし 3.Kc5 では駄目である。なぜなら 3…g3 でビショップの代替守備の経路が再び開くからである。差し迫った狙いのために次の手が必然である。

3…Bb5 4.Kc5!

 白キングは黒ポーンから遠ざかっているようにしか見えない。しかしビショップ取りと黒ポーンの正方形に入る手を見合っている。

4…Bd7 5.Kd4 引き分け

 白キングは黒ポーンに追いつき、自分のポーンを成り捨てることによりビショップを引き揚げさせる。レーティは正解手順をとおして少し詩的な控え目さでポーンを「ビショップの職に任命」した。この印象的な例は手筋の三つの特徴を強調している。(1)それぞれの手が必然ならば初手には本質的に二重の狙いが含まれている。(2)しばしば正確な手順が重要で、直接の狙い(3.e7)によって強要しなければならない。(3)最後の手は受けのない二重の狙いを突きつけている。手筋が「賭け」のときは、必然の手順は存在せず、第1の条件も当てはまらない。2番目の条件はほとんどの場合創作やスタディに必要不可欠だが、勝つための唯一の手段のときを除いて実戦の選手にはほとんど違いがない。

(この章続く)

2012年02月13日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(33)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

48 名局賞 219ページ
『・・・編集者K.F.カービーは、チェス界の特ダネや称賛記事を総括してこう書いている。』

小学館の「現代国語例解辞典」によると「特ダネ」は「新聞などの記事で、その社だけが入手した特別の情報。スクープ」という意味である。公開で行なわれるチェスの大会・試合の何が「特別の情報」だったのだろうか?

英文『K.F.Kirby summed up the astonishment and admiration of the chess world when he wrote:』

試訳『・・・編集者K.F.カービーは、チェス界の驚愕と称賛を総括してこう書いている。』

51 搾取 230ページ
『続くクイーン交換後には、白の勝勢を過小評価したらしく、』

クイーン交換は16手目で試合が終わったのは43手目である。「勝勢」とは大差の優勢なのでこんなに長くかかるはずがない。「26.b4!」に「しかし、白の勝ちは全然たやすくはないし、黒は後に防御を改善できたかもしれない」という解説があるように白が優勢だとしてもその差はほんのわずかである。他にもこのことを示唆する解説がいくつかある。

英文『After the subsequent exchange of Queens he apparently underestimates White’s winning chances』

winning chances は単に「勝つ可能性」という意味である。

試訳「続くクイーン交換後には、白の勝つ可能性を過小評価したらしく、」

52 いないいないばあ戦略 238ページ
『他の手は信頼できない!』

32.Rdd3 または 32.Rgd3 なら 32…Ne3+ からh4の白クイーンを素抜かれ、32.Kg2 なら 32…Ne3+ 33.Kh3 Qxh4+ 34.Kxh4 Nxf5+ 35.Kh4 Nxg3 で、「信頼できない」どころか脳天まっ逆さまの大逆転である。

英文『No credit for other moves!』

credit には「(大学の)単位(認定)」という意味があり、She needs ten more credits for graduate.(彼女は卒業するのにもう10単位必要だ)のように使われる(「卒業するのに信頼が必要だ」ではない)。これから転じて no credit は「無得点」というような意味で使われる。米国チェス連盟の機関紙「Chess Life」に Bruce Pandolfini の「Solitaire Chess」という棋力診断の連載があり、そこでよくこの credit が使われている。

試訳「他の手は不合格である!」

2012年02月12日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(112)

第4部 手筋

第14章 表裏一体

 チェスは一度に1手しか指せない競技なので、特定の手の価値は1手では「受けきれない」狙いを持っているかという単純な式により測ることができる。これはよくある状況である。ウィットとは普通の言葉に複数の意味を込めることと定義できるかもしれない。テニスの試合ではプレッシングショットに対するディフェンダーの選択は弱いリターンか一か八かの大振りになる。フットボールではディフェンスバックはパスパターンをカバーするかランに対して防御するかを選択しなければならない。チェスではもちろん状況は理想化される。狙いが二つあれば平均的な選手でも受けの効かない方を「実行」することが予想できる。

 これは基本的なことのように思えるけれどもチェス選手はめったに自分の指し方を改善しようとすることを一顧だにしない。彼らは惰性の犠牲者である。彼らは大ざっぱな「戦略」構想を踏襲し、有名な選手の試合をまねし、はめ手や罠を探し求める。彼らは手筋は出し抜けに生じると信じているようである。

 手筋は本当は結果として受けのない両狙いになる一連の手順として定義することができる。必ずしも捨て駒である必要もなければ、戦力得になる一連の手である必要もなければ、詰みに至る攻撃である必要もない。どんな手筋でも本質的な点は相手に解決不可能な問題を突きつける局面に「至る」ということである。

(この章続く)

2012年02月12日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(111)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段(続き)

 次の局面ではほとんどの選手(そしてコンピュータ)は 36…Qb1+ 37.Qf1 Qxa2 と指し 37…Rd1 38.Rc8 からの頓死の罠を避けるだろう。

ベルンシュテイン対カパブランカ
サンクトペテルブルク、1914年
 36.Rxc3

 ところが偉大なキューバ選手は次の手で投了に追い込んだ。

36…Qb2!

 これは私の知る限りクイーンが相手のルークとクイーンとを「両取り」にする唯一の例である。要するに両方の駒に当たりをかけ、相手はその一方しか守れない。37.Rc2 なら 37…Qb1+、また 37.Qd3 なら 37…Qa1+、そして 37.Qe1 なら 37…Qxc3 である。実戦の形としては純粋派の望めるほぼ完璧で無駄のないものだった。

(この章・部終わり)

2012年02月11日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(255)

「Chess Life」2011年11月号(1/2)

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2011年米国オープン
レンダーマンが決定戦を制して優勝

オランダ防御 (A85)
FMカジム・グラマーリ (2438)
GMヒカル・ナカムラ (2848)
第112回米国オープン、第5回戦

1.d4 f5 2.c4 Nf6 3.Nc3 g6 4.h4 d6 5.h5!?

 西半球で最高のレイティングを持つ選手に対してやる気満々の指し方である。この戦法は「いす取り遊び戦法」として知られていると聞かされたが、私が当初考えていたよりも危険なようである。

5…Nxh5 Rxh5

 この手は過去5年間で80%というとんでもない勝率をあげている。誰か知っていた?

6…gxh5 7.e4

7…c6

 ユディット・ポルガーは2010年メキシコ国立自治大学での4強快速戦でトパロフを相手に 7…Be6 と指した。その試合は彼女が勝ったけれども、布局のあとの局面はあまり威張れたものではなかった。8.Be2 Bf7 9.Bxh5 Bxh5 10.Qxh5+ Kd7 11.Nf3 Qe8

これは快速戦だったけれどもトパロフがなぜf5のポーンを取って Qb5 と指さずに 12.Qh3 と指したのかまったく理解に苦しむ。

8.Qxh5+ Kd7 9.Qxf5+ Kc7 10.Qa5+ b6 11.Qa3

 この手は新手である。それまでの白はクイーンを他の地点に動かしていた。白は戦力損だけれども交換損の代償は明々白々である。白は中央が好形でポーンが1個多く、黒はキングが万全でない。

11…e5 12.Be3

 12.d5 で …c6-c5 突きを誘うのも一つの手段で、12…c5 13.Be3 Kb7 14.O-O-O のあと黒がクイーン翼の駒をどのように配置するのかは判然としない。

12…exd4 13.Bxd4 Rg8 14.O-O-O Kb7 15.g3 h5 16.Be3 Qf6 17.Qb3 Be6 18.Nge2

 黒はなんとか駒の一部を出すことができた。しかし困難はまだ残っている。白は駒を調和よく展開しd列に強い圧力をかけていて、まもなくヒカルのキングに襲いかかる用意ができている。

18…Nd7 19.Nd4 Bh6 20.Bxh6 Qxh6+ 21.Kb1 Ne5?!

 この試合はしょせん快速戦である。ヒカルが何を見損じたかかいもく分からないが、白の当然の応手のあとナイトが退却を余儀なくされる。

22.f4 Nd7 23.Nxc6!?

 ジョージアのFMは大胆にもナイトを切ってきた。ジョージアはアトランタのある州の方で(いつもと違って)国名の方ではない。23.Qa4 は 23…Rac8 24.f5(もうちょっと思い切った手は 24.Ndb5 cxb5 25.Nxb5 a5 26.Nxd6+ Kc7)24…Nc5(24…Bf7? は 25.Ndb5 で試合終了)25.Qa3 Bd7 26.b4

で大乱戦だがともかくも白が有利のはずである。

23…Nc5!

 これは実戦的な好判断である。黒はナイトには触らないで代わりに自分の駒を戦線に出して白の戦力を自分のキングから追い払うことに専念している。23…Kxc6(白に手段が豊富にあるときには切ってきた駒は取りにくい)24.f5(24.Nb5!? Nc5 25.Rxd6+ Kb7 26.Qd1 という攻撃も成立するようである)24…Nc5(24…Rxg3 25.Qa4+ Kb7 26.Rxd6 Rc8 27.fxe6 Nc5 28.Qd1

も可能で、白は駒割は互角になったが自陣が少し散漫になっている)25.Qc2!(コンピュータの好手)25…Bf7 26.b4

白の猛攻が続く。

24.Na5+ Kc8

 24…Kb8 25.Nc6+ はたぶんヒカルの読み筋ではない。

25.Qb5 Bd7

 そしてカジムはここで妙手を見逃した。

26.Nc6

 その妙手とは 26.Bh3!! である。26…Bxh3 27.Qc6+ Kb8 28.Rxd6 Qg7 29.Qd5!

黒はほとんどが Nc6 から生じる無数の狙いに対してまったく防ぎようがない。白にとって楽しい局面である。29…Rc8 30.Nc6+ Rxc6 31.Qxc6 Bd7 32.Qd5 Qxg3 33.Qe5 Kb7 34.b4

これで白が優勢のはずである。どの程度の優勢かは別の問題である。

26…Rxg3 27.Nd5 Qe6 28.b4 Qxe4+

29.Kc1??

 これは時間に追われての悪手ではないかと思う。カジムは手に汗を握るようなチェスを指してきた。しかしヒカルは手段を尽くして受け、相手の悪手を咎めるのに容赦しない。正着を見つけるのは非常に困難だった。29.Kb2 Kb7(29…Qe8! は闇試合に突入する。コンピュータは引き分けになると言うが両対局者ともおそらく残り5分未満[または少なくともカジムはそうだった]と考えられる。30.Nf6 Qe3[30…Bxc6 は 31.Nxe8 Bxb5 32.Nxd6+ Kb8 33.Nxb5

となって、黒のa8のルークがひどいので白は悪いわけがない]31.Nxd7 Qf2+ 32.Kb1 Ra3 33.Nxa7+ R3xa7[33…R8xa7 は 34.Nxb6+ Kd8 35.Rxd6+ Ke7 36.Nd5+! Kf7{36…Kxd6 は 37.bxc5+ Qxc5 38.Qe8

となって、チェスソフトのハウディニによれば明らかに引き分けである。すごい。}37.Rf6+ Kg7 38.Rg6+!! Kh7 39.Rh6+ Kxh6 40.Qc6+ Kh7 41.Nf6+ Kg7 42.Nxh5+

となって、黒はこの奇妙な永久チェックから逃れられない]34.Nxb6+ Kd8 35.a3! Rxa3 36.Rxd6+ Ke7 37.Rd7+ Nxd7 38.Qxd7+ Kf6 39.Qd6+

となって永久チェックがかかる)30.Na5+ Kb8(最善手は 30…Kc8 31.Nc6 で引き分けになる)31.Nc6+ Bxc6 32.Qxc6

黒は有効なチェックがないので負けになる。

29…Kb7 30.bxc5 Bxc6 31,Qb2 dxc5 白投了

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(この号続く)

2012年02月10日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(110)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段(続き)

 レシェフスキーのようにフィッシャーは次の最下段の狙いの古典的実例2局をよく知っているのは確実だった。違いはどう見ても安全で穏やかな局面で危険を感じとることにある。

アダムズ対トーレ
ニューオーリンズ、1925年
 19…Qd7

 黒の成すべきことは最下段での詰みを防ぐことだけで、前途は非常に明るい。しかしそれは無理な注文というものだった。

20.Qc7!! Qb5

 白クイーンは見えない盾によって守られている。即ち黒のクイーンとクイーン側ルークはe8の地点の防御に必要だからである。

21.a4 Qxa4 22.Re4!

 新たな揺さぶりが来た。今度は黒のクイーンと「キング側」ルークが最下段を守らなければならない。だからこのルークを取ることはできない。

22…Qb5 23.Qxb7! 黒投了

 黒クイーンにはe8の地点を守り続けられる地点がなくなった。クイーンやルークのような強力な駒の繊細さ(第7章「がさつなクイーン」を参照)はチェスの不可解な皮肉の一つである。

(この章続く)

2012年02月10日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(109)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段(続き)

 弱い最下段のために「強者がどのように倒れたか」がインターゾーナル大会のこの試合に劇的に表れている。フィッシャーはこの大会から世界選手権戦まで駆け上がった。彼の宿敵のサミー・レシェフスキーはフィッシャーから番勝負を「勝ち取った」ただ一人の男としての栄誉を得ているが、1度ならず2度までも最下段の策略を見落とした。(彼のフィッシャーとの番勝負はやはり主にピアティゴルスキー夫妻の後援により実現できたが、フィッシャーが論争により棄権したとき建前としてはレシェフスキーの勝ちが宣告された。)

レシェフキー対フィッシャー
パルマ、1970年
 28.Qd7

28…Qf4!

 この手は二重の驚きである。というのはこの手は白の Qxf7+ からの詰みの狙いも防いでいるからである。以前に見たように受けの手が狙いも含んでいるときは、その狙いの威力を見逃す奇妙な心理的傾向がある。

29.Kg1?

 白は自分の攻撃が無駄手だったことを認めてクイーンをb5の地点に引くべきだった。

29…Qd4+ 30.Kh1 Qf2!

 今度は最下段を守る手段がない。31.Qg5 でも 31.Rg1 でも 31…Re1 で壊滅する。白は投了した。

(この章続く)

2012年02月09日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(160)

「The British Chess Magazine」2010年11月号(2/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

団体戦における監督の役割(続き)

 要点をいくつかの図を用いて説明しよう。

 この局面はちょうどルーク同士を交換したところである。手番の白が引き分けを申し立てた。自分が大会監督だとして承認するだろうかというのが問題である。

 この局面は理論的に引き分けだけれども、白はどのようにして引き分けにするのかをやってみせなければならない。もし白が申し立てたとき数秒以上時間が残っていれば、引き分けの申し立ては却下され黒の勝ちが宣告されるべきである。

 1、2秒しか残っていなければ、キングがh1の地点に向かってできるだけそこに近くとどまるということを「すぐに」白が説明することを許してもかまわない。

 白はビショップ得で、局面が閉鎖的なので引き分けを申し立てた。何手か駒の往復がかわされていれば、引き分けが認められるべきである。しかしこの局面が現れた直後ならば、黒に勝ちが宣告されるべきである。1…Na7 2.Bf3 Nb5 3.Be2 Nxa3 なら 4.bxa3 b2 で黒が勝つ可能性がある。白がきちんと守れるかもしれないけれでも、それを証明する機会を自ら放棄した。

 同じことで、黒の引き分けの申し立ても白がh5で駒を切って2ポーンを取る可能性があるので却下されるべきである。

 ここで黒が引き分けを申し立てた。ここでは棋譜が非常に重要である。この局面は理論的に引き分けである。しかしきちんと指すことは決して容易でない。

 [編集部注 確かに容易でない。GMキース・アーケルは実戦で17回この収局になって17回勝ったと私に言っている]

 理想的には黒は50手指してから引き分けを申し立てるべきである。しかし残り時間によってはそうできないかもしれない。こういう状況のときには誰かに棋譜をとってもらうのが望ましい。しかし棋譜をとる者は指した手数を黒に知らせてはならない。そして黒は時計の旗が落ちる寸前で引き分けを申し立てる。50手以上指しているなら引き分けにするのが正しい判定であることは明らかである。もし50手に達していなくて50手までに詰めることができないことが明らかならば、引き分けにするのが正しい。10手や15手くらいしか指されていないならば、黒は相手に勝つ機会を与えていないので負けにしなければならない。同じ局面が何度も現れていることが棋譜から分かるならば、やはり引き分けにすべきである。

 この局面で白が引き分けを申し立てれば自動的に引き分けを認めるべきである。しかし白はどうやっても負けにならないので、時計の旗が落ちるまで指し続けそれから引き分けを申し立てる方がはるかに賢明である。

 白が指し続けるときはもちろん次の局面のように必ずすべての可能性を完全に熟知していなければならない。

 白はいつでも引き分けを申し立てることができ、認められるべきである。しかし白が時計の旗が落ちるまで指し続けそれから引き分けを申し立てたら、黒が白キングを詰める可能性があるので却下されるべきである。これはいかに非現実的かは関係ない。合法的な手の連続によって詰めることができるということだけが重要なのである。

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訳注 毎手時間加算方式でない場合の話のようです。

(この号終わり)

2012年02月08日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(108)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段(続き)

 時には最下段の弱点によりクイーンが釘付けにされる恐れのために動きが不自由になることがある。次の局面でフィッシャーの相手は単に単純化を図るだけで不利の局面を救うことができた。

フィッシャー対ドナー
サンタモニカ、1966年
 29…Qf5

 有名なピアティゴルスキー杯大会の前半で精彩を欠いたフィッシャーはいくつかの試合で優勢の局面から勝ちきることができなかった。この試合では弱い最下段のためにクイーンの交換になる相手の手筋を見落としただけでなく、「相手の」引きこもったキングにつけ込んだ手段を見つけることもできなかった。

30.Bd3? Rxc2! 31.Bxf5 Rc1

 異色ビショップの収局になるので両対局者は引き分けに合意した。30.Qb1 と指していればフィッシャーは勝つ可能性が残っていた。30…Rxc4 は黒の最下段の守りが不十分なために 31.Qb8+ と指せる。

 ところでこれはジャクリーン/グレゴール夫妻が主催した2回目の国際大会だった。二人はフィッシャー効果で大会や番勝負の開催資金が広く集まるようになる前のチェスの伝統を支えた。

(この章続く)

2012年02月08日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(107)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段(続き)

 驚異の全勝優勝を成し遂げた全米選手権戦の初戦でフィッシャーは自分の閉じ込められた危険な状態のキングにつけ込んだ鮮やかな手筋を許すところだった。

メドニス対フィッシャー
ニューヨーク、1963-64年
 23…Rd7

 幸いなことに相手はその手に気づかず、多くの解説者もそうだった。前述の局面のようにルークが最下段を離れたことにより次の手が生じていた。

24.Nc5!

 Qe8# があるのでこのナイトは取られない。クイーンも 24…Rxe7 25.dxe7 Re8 26.Rd8 で黒がルークを守る手段がなくなるのでやはり取られない、メドニスは次のように指して長い収局を負かされた。

24.Qg5? Qxg5 25.Nxg5 f6

 これで最下段の危険は永久になくなった。フィッシャーは11戦全勝で優勝した。

(この章続く)

2012年02月07日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(11)

「Chess Life」2003年2月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法(続き)

b)8.Be2

 (1987年セビリアでのカスパロフ対カルポフの世界選手権戦第18局より)

8…Bb7 9.Bxf6 Bxf6 10.cxd5 exd5 11.b4

 白はクイーン翼で少数派攻撃を始めた。

11…c5

 もっと激しい局面を望むなら 11…c6 がお薦めである。1997年ベオグラードでのローチェ対クラムニク戦では 12.O-O a5 13.bxa5 Rxa5 14.a4 c5 と進んだ。

12.bxc5 bxc5 13.Rb1

13…Bc6 14.O-O Nd7 15.Bb5 Qc7

 この局面はカスパロフとカルポフの3度の世界選手権戦でお互い色を違えて何度も現れた。

16.Qd3

 1985年モスクワでの両者の第42局では 16.Qc2 Rfc8 17.Rfc1 Bxb5 18.Nxb5 Qc6 19.dxc5 Nxc5 20.Qf5 Qe6 21.Nfd4 Qxf5 22.Nxf5 Ne6 と進んだ。白の方が指しやすいが黒は引き分けに持ち込んだ。

16…Rfc8 17.Rfc1 Rab8 18.h3 g6?!

 この手では 18…c4 19.Qc2 Bxb5 20.Nxb5 Qa5 と指す方がよく互角の形勢である。

19.Bxc6 Rxb1

 19…Qxc6? は悪手で、20.Rxb8 Rxb8 21.dxc5 Bxc3 22.Rxc3 Nxc5 23.Qc2 Rc8 24.Nd4 のあと 25.Nb3 で黒のナイトが取られる。

20.Qxb1! Qxc6 21.dxc5 Qxc5 22.Ne2

 d5の孤立ポーンが弱いので白がいくらか優勢である。

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2012年02月06日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(106)

第3部 競技の名前(続き)

第13章 必殺の最下段

 私の推測では他のどんな形よりも最下段での詰みが狙われ実際に起こっている。この単純な計略の苦い経験にもかかわらずマスターやグランドマスターはそのせいで困難に陥り続け現実に詰まされている。初心者は早い段階でキングの「逃げ道」を作っておくように言われる。しかしそんな時にはいつも他にもっと火急のことがあるように見える。フィッシャー自身も弱い最下段で何度か苦杯をなめたことがある。しかし他者の誤りにつけ込むことの方が格段にうまかった。

 本書には最下段の問題が他の手筋の「オードブル」になっている例がたくさんある。次の局面ではメインディッシュになっている。

アーロン対フィッシャー
ストックホルム、1962年
 29.Rd2

29…Rxc3! 白投了

 30.bxc3 Qb1+ のあと白はルークとクイーンをさしはさむことはできるが詰みは避けられない。

(この章続く)

2012年02月06日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(32)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

45 過去の亡霊 205ページ
『5…Nxd5 は実戦から姿を消した。』

英文『5…Nxd5 is practically extinct.』

大修館書店の「ジーニアス英和大辞典」によると
1.[動詞より後で]実際的に Try to view your situation practically. 実際的観点から自分の立場を見るようにしなさい。
2.[文修飾]実際には Practically, the task is more difficult than you think. 実際問題として、その仕事は君の考える以上に困難だ。
3.[修飾する語の前で]ほとんど He was practically self-educated. 彼はほとんど独学だった。
「実戦から」なら 5…Nxd5 is extinct in practice. となるはず。

試訳『5…Nxd5 はほぼ姿を消した。』

46 楽勝 211ページ
『あと十数手で白が勝った。』

ちょうど10手後の32手目で白の勝ちになっている。

英文『White won in ten more moves.』

例えば I need two more years. という英文なら「もう2年必要だ」という訳になる。

試訳「あと10手で白が勝った。」

47 ジンクス? 216ページ
『手損ゆえに良くない。』

英文『time-consuming and hence weaker.』

試訳「手数がかかるので緩手である。」

2012年02月05日 コメント(0)

カテゴリ: 未分類

フィッシャーのチェス(105)

第3部 競技の名前(続き)

第12章 連結(続き)

 敵陣のh7/h2の地点におけるクイーン切りはルークが「連結態勢」にあるときはいつでも狙い筋となる。攻撃側は防御側にどんな割って入る手があるかを読んでおかなければならない。この主題の有名な実例が映画の都での「交霊会」とうまく命名された目隠しチェスに現れた。

アリョーヒン対ボロチョフ
ハリウッド、1932年
 23…e5

24.Ne6! 黒投了

 アリョーヒンは達人級の選手たちの間で流行したそっけない口調で次のように解説した。「プロブレム作家でないのでこれがまさしく『プロブレムの手』なのかは分からない。しかし効果的であることは確かである。」このナイト跳びはプロブレム愛好家たちによく分かる用語では、筋を通す(g8に利かせる)と同時に(白ルークに当たっている黒ビショップの)筋を閉じて 25.Qxh7+ から 26.Rh3# を狙っている。筋の開通と筋の閉鎖という用語は読みの助けになるだろうか。このような単純な手筋ではたぶんならない。しかし私は大会の試合の緊迫した場面では読んでいる手の理由づけがそれぞれはっきりと言葉にできれば、変化の迷路をもっと効率的に解決できることがよくあることに気づいている。選手は次のように嘆くことが多すぎる。「最初に読んだ手を指した。そして敗着だと却下した。しかしそのあとなぜ却下したのか忘れてしまった。」

(この章終わり)

2012年02月05日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(104)

第3部 競技の名前(続き)

第12章 連結(続き)

 フィッシャーが棋歴の初期にやはり犠牲になったキング翼攻撃でも連結の威力がよく表われている。

ウンツィカー対フィッシャー
ブエノスアイレス、1960年
 19.Qg5

 20.Qxh5+ の狙いには受けがない。なぜなら黒はh7の地点に利いている白の2駒を消しても白ルークの参戦を防ぐことはできないからである。

19…Nxd3+ 20.Rxd3 gxf6 21.Qxh5+ Kg7 22.Qg4+! 黒投了

 22…Kh7 23.Rg3 のあと二つの列での詰みの狙いのために黒はクイーンを切らなければならない。

(この章続く)

2012年02月04日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(254)

「Chess Life」2011年9月号(6/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 米国選手権戦が翌月オクラホマ市で開催された。名局賞が9回戦の各回戦ごとに与えられ、シャバロフは第4回戦のナカムラ戦の勝利でそれを得た。これはシャバロフにとって制覇へのはずみとなり、(5-0の出だしから)7-2の成績で単独優勝した。次の局面はその対戦からで、白番のナカムラが33手目を指すところである。

 白の手番

 黒がこの試合で名局賞をもらったことは上述のとおりだが、実際このあと6手しか続かなかった。しかし私が最初にこの局面を見たとき、黒が本当にここでそんなに優勢なのかといぶかった。1972年のフィッシャー対スパスキー戦以来私は局面を分析し解説を並べてみるということを行なってきた。それで分かってきたことは解説で指摘されるべき手が指摘されていない、または指摘があっても不十分であることが実に多いということである。時には逃した機会が言及されていないので挙げられている主要な変化に論争の余地があると感じられることがある。例えばこの試合についてはオンラインで二通りの解説を見たことがある。そしてどちらもこれから私が示す変化を解説していなかった。そうするのはあら捜しをするためでなく、手段に富んだ受けの手を見て欲しいからである。GMロバート・バーンの言葉を引用すれば「ラスカーやシュタイニッツのみごとな受けは私を奮い立たせた。」

 試合は次のように続いた。

33.Rxf7 exd3 34.Rf1

 34.Rf2 の方が実戦に現われた戦術を阻止するのでもっと頑強な受けである。もっともそれでも黒が優勢である。34.Rxd7 は 34…d2 で黒の勝ちになる。

34…Rc4 35.Nc6

 35.Nf3 の方が強硬な受けだった。

35…d2 36.Ne7+ Kg7 37.Rd1 Kf7!

 ナイトが逃げれば …Bf5+ がある。

38.b3 Rc1+ 白投了

 これで黒の駒得になる。

 最初の図の局面に戻って白の最善手の 33.Rdd1 を検討してみよう。この手はどちらの解説でも取り上げられていたが私の考えでは不十分である。次の(A)と(B)はそれぞれの解説である。

 (A)33.Rdd1 Rxf1 34.Rxf1 Rc4 35.Nc6

35…Bxc6(35…e3 なら黒が優勢だが 36.b3 で白にもまだ引き分けの可能性がある)36.b3 Rc5 37.bxc6 Rxc6 38.Rf6! Kg7 39.Re6


これで白がポーンを取り戻す。

 (B)33.Rdd1 Rxf1 34.Rxf1 d5 35.Rc1

これは形勢互角である。白のナイトは理想的な地点にいて動くつもりはない。

 両者の最善の手順を見つけて局面の正しい評価に至ることは、私にとってチェスの一番の楽しみである。なぜならそれによって両対局者と解説者の読みと見落としの両方の評価が増すからである。

 宿敵関係はこれでシャバロフが2ヶ月で黒でナカムラを2回負かし2点リードした。しかしそのあとナカムラは2007年9月のマイアミオープンと2009年米国選手権戦でシチリア防御の戦型の2局を勝った。

 その2局は前述の中盤戦と収局の局面というより、難解な布局の戦法の分析になるのでこの記事の範囲を越えている。関心のある読者は http://www.chessgames.com で(他のサイトでもかまわないが)その2局を見つけるとよい。

「私が指したあと局面がもっと複雑化すればそれは試合が良い方向に向かっているということである。」-アレグザンダー・シャバロフ

対戦結果のまとめ 2004年から2009年まで8局対戦し両者とも3勝ずつあげ2局引き分けている。色別の結果も同じである。ナカムラは8局中5回白番だった。しかしナカムラは2010年の対戦で勝ち1点リードした。

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(この号終わり)

2012年02月03日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(103)

第3部 競技の名前(続き)

第12章 連結(続き)

 連結「線」駒(ルーク)の威力はこの簡素な局面に顕著に現れている。

G.J.バウマ作(1966年)
 3手詰み

 このスタディの作者は布局での新手の発見と同じくらい基本的な発見をした。どちらの創造的な作品にも共通しているのは、流行が決して乗り越えられないある真実を表わしているということである。中盤戦の手筋は繰り返し現れるがこのような局面はただ一つである。

 このようなスタディにおける驚異は、少ない駒数によって大戦略が表現されることが多いということである。戦略の絶対的な不足によりその場限りの戦術でなく基本的な構想が要求される。この局面で白が最善の防御に対して唯一の手段で3手で詰めるためには、次のような構想を実行していかなければならない。

 1.初手で黒キングを「盤端」にへばりつかせなければならない。従って 1.Rf7、1.Re7、1.Rb3 または 1.Rb4 のいずれかが初手でなければならない。このうちのどれだろうか。

 2.黒の防御手段はルークが来て詰みになる地点にビショップを利かせるか、キングに隣接する黒枡の一つにビショップを割って入らせるかに限られる。

 3.上記の防御により以下がすぐに除外される。
 3a.1.Re7 Bh6!(詰みになる地点を守った)
 3b.1.Rf7 Bf4!(b8の地点に割って入る)白ルークが「二重に」利いている地点にビショップが行かなければならないのは論理の皮肉というものである。これは「手数の干渉」ということになる。e4のルークでこのビショップを取るとe8で詰ませられなくなる。f7のルークで取ると手数を損するばかりである(プロブレムでは不正解になる)。
 3c.1.Rb3 Be3! 論理は上と同じで、実際 1…Be3 の局面は二つのキングを通る斜筋で盤面を2分すれば 1…Bf4 の局面の鏡像になる。主題のこのような繰り返しはたとえ正確ではなくても「共鳴」と呼ばれる。

 4.それではなぜ 1.Rb4 はうまくいくのか。ビショップは変化3aに似て既に詰ませる地点のa3を守っているではないか。そう、しかし黒は手詰まりに陥っていて、防御に破綻をきたさなければならない。1…Bb2 は 2.Rxb2 と取られる。このスタディの核心は 1…Ka7 2.Rb3! で表面化する。ルークの連結により白はビショップの位置により詰みを選べる。3.Ra4# が狙いになっていて、2…Bd2 には 3.Ra3# 「だけ」が詰ませることができる。キングの移動によりa7の防御地点が奪われていて、2…Be3 がa列の守りにならない。

 これらの変化はこのスタディが行なっている別の「陳述」も裏打ちしている。即ちビショップは列の防御において(どんな目的にせよ)3地点でしか割って入ることができない。チェス盤が本当はいかに小さな世界であるかを見せつけているかのような作品は数多い。

(この章続く)

2012年02月03日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(102)

第3部 競技の名前(続き)

第12章 連結

 キングに対する攻撃は盤上の幾何により促進されることがある。利き筋が通るとルークとクイーンの直線の威力により多くの詰み筋が作り出される。そしてこの2駒の明白な特色は、詰み筋を見つけるのが容易で防ぐのは難しいということである。

 例えばクイーンとルークがbまたはg列で縦に連結すると詰みの狙いがその列だけでなくa(またはh)列でも生じる(他のポーンと駒はすべて考慮しない)。フィッシャーはそのことを身を持って「学んだ」。

フィッシャー対タリ
ブレッド、1959年
 29.Qxe2

29…Bxg2 30.Nxa6 Qa7+

 黒は白キングにビショップを取らせてg列を素通しにする。

31.Kxg2 Rg8+ 32.Kh3 Qg7 33.Bd1 Re6! 白投了

 3個目の駒の攻撃には耐えられない。

(この章続く)

2012年02月02日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(159)

「The British Chess Magazine」2010年11月号(1/2)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

団体戦における監督の役割

 最近団体戦におけるチーム監督の役割に関する質疑があった。ほとんどのクラブでチーム監督を選ぶのは車を持ってるから、あるいは脅して必要な人数を集める能力があるからである。このことでクラブを責めることはできない。しかし審判のいない試合でもめごとが起きたときはどうなるだろうか。それは明らかにその団体独自の規則による。しかし多くの者はチーム監督たちが連係して審判を務めるべきだと提唱している。私には管理を行なう大会幹事と残りを行なうチーム監督の両方をクラブが任命するのが妥当だと思える。経験を積んだ地元の審判を主催者が招いてチーム監督の「べしべからず集」の講習会を夕方に開催することも推奨したい。

 大会ごとに違うが一般にチーム監督の仕事をあげると次のようになる。

 ● チームを編成する。

 ● チームのメンバー表を相手チームと交換する。

 ● 結果を指定時間内に主催者に報告する。

 ● 持ち時間、ケータイに関する規則など大会独自の規則をチームメンバーに周知する。

 ● チームの結果の状況をチーム内に助言する。

 最後の項目を補足すると、監督は通常はチームのメンバーに引き分けの提案をするか受諾するか、または投了することを勧告する資格がある。これは対戦に関する状況にだけ基づいて、簡潔な情報だけを与えなければならない。対局中に口を出したりしてはならず、局面に関する情報も選手に与えてならないことはもちろんである。選手に伝えてよいのは「引き分けを提案しろ」、「引き分けを受諾しろ」または「投了しろ」である。例えばある選手から引き分け提案を受諾すべきかどうか聞かれた場合、監督は「そうしろ」、「そうするな」またはその選手にまかせると答えるべきである。大会規則は監督から会話を始めることを禁じているかもしれない。もっともチームの現在の成績を選手に伝えてその選手がヒントにするのを期待するのは許されているかもしれない。

 大会規則で当該選手の承諾なしに監督が結果に合意するのを許すのは考えられない。監督同士が対戦の終わり頃に結果のやり取りをするのはいかにやりたくて仕方のないことかもしれないけれども、通常は当該選手たちの同意がなければひんしゅくを買う。

 『監督は通常はチームのメンバーに引き分けの提案をするか受諾することを勧告する資格がある。』

 大会に指しかけまたは判定がある場合、選手は監督が交渉する機会を得るまで結果に同意しないのが賢明である。

 以前に私のクラブが障害者を多く抱えるクラブと対戦したことがあった。このチームは全試合を自分たちの地元で対戦していた。1日目の終わりで指しかけが3局あった。相手側は指し継ぐべきだとうるさかった。しかし正式にはこちらの地元でやるべき対戦でありその3人の選手は全員健常者だから我々の所に来るべきだとこちらの監督に指摘したとき、すぐに結果が合意された!!

 しかしどの監督でもいつか直面することが一つある。それはFIDEのチェス規約の10.2項と付則Dによる残り2分での引き分けの申し立てである。もしこれらを大会主催者に送らなければならないと通常は手数料が課される。ほとんどのクラブの会計では時たまの「もめごとの結果」を超えるようなことを歓迎しない。だから結果に合意したりあとくされのないように解決するのはチーム監督の手腕にかかってくる。

 大会の選手のために言えばできるだけ早い段階で申し立てするのが賢明かもしれない。それによって(長い)手順によって自分のやっていることが分かっていることを示す豊富な機会が得られる。しかし審判のいない団体戦では試合は申し立てが成されるとすぐに終わる。だから申し立てはできるだけ遅くすべきである。

 持ち時間の最後の2分で申し立てをするのは良い慣習である。このようにして引き分けを申し立てる前にまず相手に引き分けを提案するならば時間を大いに節約しみんなの(監督も含めて)手間を省くことになるかもしれない。

 『審判のいない団体戦では試合は10.2項による申し立てが成されるとすぐに終わる。』

 引き分けを申し立てる選手はその根拠を明らかにすべきである。規約による「唯一の」正当な根拠は(a)相手が通常の手段によって勝てないこと、かつ/または(b)相手が通常の手段によって勝つための努力を何もしていないこと、である。局面が最善の手順でも引き分けになること、または局面が理論的に引き分けであることという根拠だけで申し立てをするのは認められないしすべきでない。

 かつてある選手が交換得で持ち時間が13分残っていて引き分けを申し立てるのを目撃した。残り2分になるまで申し立てできないと言われて彼は両隣の選手たちから指し続けるように促されたにもかかわらず何もしないで座っていた。彼の言い分は勝勢なので引き分けを与えられるべきだというものだった。相手は反撃策があるので引き分けにしたくないと主張した。もちろん相手の勝ちが宣告された。おそらく勝ちの局面だったにもかかわらず、その選手はその局面でどう指したらよいか分かっているということを示さなかった。実際彼の(不)作為は彼がどう指したらよいか分かっていないことを示していた。この選手がどういう動機でこういう行為をとったのかはちょっとした謎のままである。

 『局面が最善の手順でも引き分けになること、または局面が理論的に引き分けであることという根拠だけで申し立てをするのは認められない。』

 相手が通常の手段により勝つことができないからという申し立てに対し引き分けが認められる理由は次のとおりである。

 (i) 申し立てをした選手の方が明らかに優勢で、相手は勝てるかもしれない反撃を行なう実際的な手段がないこと。

 (ii) 局面が引き分けになることが確かであること。

 (iii) 互角か戦力の劣る局面で引き分けを申し立てた選手がどのように引き分けにするかを完全に理解していることをはっきりと説明したこと。

 相手が通常の手段により勝とうとしてこなかったという根拠に基づく申し立てに対し引き分けを認める妥当な理由は次のとおりである。

 (i) 相手が勝とうとする姿勢を見せず、時間で勝とうとして単に駒を往復させるだけで何の進展も図らなかったこと。

 (ii) 持ち時間が2分未満の選手からの引き分けの申し出を断ってから、その相手が明らかに不利な局面にもかかわらず反撃を図ろうとしてこなかったこと。

 「2分規則」のもとでなされた引き分けの申し出を重要と考える理由のこの実例一覧を吟味すると、上記(b)の申し出の理由のすべてを含め上述のうちのいくつかは清書した棋譜またはそれに替わり得る証拠によって実証しなければならないことは明らかである。

 これらの申し立ての多くが認められるかは棋譜にかかっているので、最新の棋譜をできるだけ長く保存しておくことが肝要である。8.4項では残り5分を切った選手が棋譜を取ることを止めることを認めている(例外あり)。団体戦では5分未満になっても棋譜をつけ続けるのが賢明である。

 たぶん少し賢明でないが相手の棋譜に頼ることはできる。チーム監督または指名された他の誰かがその選手のために棋譜を取ることはかまわない。助言の嫌疑を避けるために試合が終わるまで指し手も手数もその選手に見えないようにすべきである。

 合意で結果を得ようとする際に監督たちは引き分けを申し立てた選手の棋力をいくらか考慮してもよい。これは選手たちが監督より強い場合にはさらに複雑なことになるかもしれない。大まかに言うと申し立てた選手が弱いほど上記(a)の申し立てに必要な証明の基準は高くなる。監督たちは相手の筋の通った反駁と共に、申し立て者がそれを支援する口頭での弁明も考慮に入れてよい。

 チーム監督たちだけでなく当該選手たちも結果に合意できなければ、FIDE規約の付則Dに記載された手続きに従うべきである。(両選手によって確認された)申し立ての詳細、それと元々の根拠の簡潔な説明、そして棋譜や目撃者がいればその話のような(両者からの)関係資料を大会運営者に提出すべきである。両対局者が正確だと認めれば書き直した棋譜を用いてもよい。合意がなくても部分的な棋譜(例えば白の手だけの棋譜)でも判定の過程の助けとなるかもしれない。

 『団体戦では5分未満になっても棋譜をつけ続けるのが賢明である。』

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訳注 毎手時間加算方式でない場合の話のようです。

原題『Ask the Arbiter』

(この号続く)

2012年02月01日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(101)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーは次の局面で急に愕然とさせられた。白は黒クイーンをg5のポーンの守りからはずさせるだけで良くそれで勝ちになった。しかしどのようにするのか。

オラウフソン対フィッシャー
ブレッド、1959年
 36…Kh7

37.Ra1! Qf4+

 黒はクイーン同士を交換して負けの収局に入らなければならなかった。37…Qxa1 と取ると 38.Qxg5 で1手詰みが受からない。37…Qd2 とかわしても 38.Rd1! で同じ狙いがもう1手しつこく続く。

 カパブランカは危険な局面を「嗅ぎとる」ことができ、相手がその危険性に気づく前に自分のキングの安全を図ることができると言われていた。しかしそれは直感または「嗅覚」の問題というよりも戦力の均衡の問題である。これまでの実戦例が示しているように、キングのいる陣地に強行侵入することは駒またはポーンを1個多く戦闘に投入する問題であることが普通である。

(この章終わり)

2012年02月01日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

謎のチェス指し人形「ターク」 

朝日新聞電子版2012年1月31日づけ
名士も熱狂、18世紀の自動機械

2012年01月31日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(100)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーが進んで自分のキングに背負い込む危険性を考えれば、そしてこれが彼の弱点であることがおいおい出てくるが、相手を1手違いで詰ませる差でしか滅多に自分のキングに対する攻撃に屈しないということは注目に値する。しかし年少の頃には自分のキングに自衛させる危険性を学ぶ機会が若干あった。

オッテソン対フィッシャー
ミルウォーキー、1957年
 32…Rf8

33.Rxe6! fxe6 34.Qxe6+ Kg7 35.Qe5+ Kf7 36.f4!

 この手は黒クイーンを自分のキングの守りから締め出した。白はすべてを見通している。

36…Rc8 37.Nh6+ Kf8 38.Qh8+ Ke7 39.Qxh7+ Kd6 40.Qxg6+

 このあと49手目で白が勝った。

(この章続く)

2012年01月31日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(10)

「Chess Life」2003年2月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット拒否/タルタコワ戦法

 今月はクイーン翼ギャンビット拒否のタルタコワ戦法を取り上げる。スパスキー、ペトロシアン、カルポフ、それにカスパロフのような世界チャンピオンを含む一流選手の多くがこの布局を常用定跡の重要な一部に含めている。現在最も頻繁に用いている中で最強はGMナイジェル・ショートである。この戦法は最も攻撃的な選択肢ではないかもしれないが、非常に堅固な定跡で、白が無理やりやっつけようとすると痛い目にあうことがある。7…b6 と突く意図は何だろうか。クイーン翼ギャンビットの他の戦型のようにc8の黒ビショップは展開に苦労するときがある。しかし 7…b6 なら自由にb7の地点に展開できる。さらにb6のポーンはいつかは突くことになる …c7(c6)-c5 の狙いを強固なものにすることができる。

 白の作戦は何だろうか。それはc列に圧力をかけてc7のポーンの潜在的な弱点を攻撃することである。そして黒がc7のポーンをc5に突けば、白は中央に孤立ポーンまたは浮きポーンを作らせることができる。しかし基本的に白の作戦は中央を中心に展開し有利なポーン陣形を作ろうとすることである。

 それでは判決はどうなるだろうか。この布局では双方とも十分落ち着いて大局的に指し進めることができる。黒としては優秀で堅実な布局である。考えてみる価値がある。

1.d4 d5 2.c4 e6

 これがクイーン翼ギャンビット拒否である。

2.Nc3 Nf6

 ここでは白に主要な選択肢が三つある。 1) 4.cxd5 これは交換戦法で、ポーン構造をすぐに変える。2) 4.Nf3 Be7 3.Bf4 これは1980年代から非常に流行した。そして最後に 3) 4.Bg5 これは従来から最も指されている手で、今月の主題である。

4.Bg5

 これで白はナイトを釘付けにした。

4…Be7

 これが最も理にかなった手だが 9…Nbd7 でもまったくかまわない。この手は一見 5.cxd5 exd5 のあと 6.Nxd5(ナイトの釘付けを利用)で白のポーン得になりそうだが、実際は白のはまりで、6…Nxd5 7.Bxd8 Bb4+ で黒の勝勢になる。

5.e3 O-O 6.Nf3 h6 7.Bh4 b6

 これが著名なGMにちなんで名づけられたタルタコワ戦法である。ここで白にはいろいろな手がある。そのうちのいくつかを見ていこう(7…Ne4 は終了したばかりのフリッツ対クラムニク戦で指されたが別の機会にゆずる)。

 白の8手目として次の四つを考察する。

 a)8.cxd5
 b)8.Be2
 c)8.Rc1
 d)8.Bd3

a)8.cxd5

 (1972年レイキャビクでのフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦第6局より)

8…Nxd5

 代わりに 8…exd5 も当然の手で 9.Bd3 Bb7 10.Rc1 Nbd7 11.O-O Ne4 となる。ここで白は 12.Bxe7 Qxe7 13.Nxe4 dxe4 14.Rxc7 でポーン得することはできない。14…Bc8 15.Bb5 Qd8 で黒の優勢になる。

9.Bxe7 Qxe7 10.Nxd5 exd5 11.Rc1 Be6

12.Qa4

 たぶん 12.Bd3 c5 13.dxc5 bxc5 14.O-O Nd7 15.e4 と指す方が良い。以下は 15…dxe4 16.Bxe4 Rad8 17.Bb1 Ne5 18.Qe2 となればポーン陣形の優位のために白がほんのわずか優勢である。

12…c5 13.Qa3 Rc8 14.Bb5 a6

 これは悪手だった。今の定跡では 14…Qb7 15.dxc5 bxc5 16.Rxc5 Rxc5 17.Qxc5 Na6 でポーンの犠牲の代わりに反撃が有望で黒が良い。

15.dxc5 bxc5 16.O-O Ra7 17.Be2 Nd7 18.Nd4!

 白は二重釘付けを利用して黒のe6のビショップの交換を強要する。

18…Qf8 19.Nxe6 fxe6 20.e4! d4 21.f4

 局面は明らかに白が優勢である。このあとフィッシャーはキング翼の白枡の斜筋の弱点を利用して勝利を収めた。

 これはたぶんこの戦法の最も有名な試合である。主たる理由はフィッシャーが初手にいつもの 1.e4 でなく 1.c4 を指した衝撃の影響のせいである(このあと 1…e6 2.Nf3 d5 3.d4 Nf6 4.Nc3 Be7 5.Bg5 O-O 6.e3 でクイーン翼ギャンビット拒否に移行した)。

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2012年01月30日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(099)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーが(あるいは攻撃にたけた選手なら誰でも)どこからともなく詰みの狙いをひねり出す素早さは初心者だけでなくマスターにとってもチェスの不思議の一つである。1972年のフィッシャー対スパスキーの世界選手権戦では目をみはる例がいくつも生まれた。その中でも次の試合は2年間の局後検討をものともしなかった。

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦24番勝負第10局、レイキャビク、1972年
 25…Qxa5

 コルチノイもボトビニクも黒の(c3から)クイーンを引いた手を酷評した。たぶん二人とも 25…c4 なら負けをまぬがれたとまだ信じているだろう。しかし 26.e5! と突けば Bxh7+ からクイーンを素抜く狙いのためにやはり 26…Qxa5 と取らされただろう(26…g6 でも 27.Re3 で)。そのあとは 27.Ng5 h6 28.Nxf7 Kxf7 29.e6+ で実戦よりも白が優勢である。

26.Bb3!

 また白枡ビショップが適所を得た。白の駒はキング翼のお決まりの弱点であるf7の地点に集中していく。

26…axb5 27.Qf4 Rd7 28.Ne5 Qc7

 黒は攻撃の駒が新たに投入されるたびにしっかり受けてきたように見える。しかしここで詰みの狙いで白が交換得になる。

29.Rbd1! Re7

 この水準の戦いでは詰みは解説の中でだけ起こる。黒のルークは過負荷になっていた。なぜなら 29…Rxd1 と取ると 30.Bxf7+ Kh8 31.Nxg6+ hxg6 32.Qh4# で型どおりの詰みになるからである。フィッシャーはここから長い収局を勝つことを余儀なくされたが黒の手助けもあって成し遂げた。それにしても図の局面から6手で白に詰ませる可能性が出てくるとはなかなか信じられない。

(この章続く)

2012年01月30日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

危なかった

産経新聞電子版2012年1月29日付け
「日本海」「東海」併記 米州法案1票差で否決

2012年01月29日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

名著の残念訳(31)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 183ページ
『しかし、この不毛の荒野では、黒が回り道で勝利をもぎ取れるとするのが適切だ。』

「回り道」があるなら「本道」があるはずだが、その文章や手順はどこに書いてあるのだろうか?

英文『However, it is precisely here, in this barren wilderness, that Black can wend his way to a win.』

wend one’s way to … は「・・・へ向かう」という意味。ちなみに The American Heritage Dictionary によると wend の意味は To proceed on or along (one’s way) と出ている。proceed は「(特に停止した状態から)進みだす」という意味。

試訳『しかし黒が勝利に向かって踏み出せるのはまさに不毛の荒野のここである。』

40 ザ・ナイドルフ変化 186ページ
『序盤戦術の遅れを取りもどすにはおそすぎた。』

英文『it is too late to compensate for his earlier dilatory tactics.』

dilatory tactics は「引き延ばし戦術」という意味。7.Nd5 に対してすぐに 7…Nxe4! と取らずに3手後に不都合な状況になってから 10…Bxe4 と取ったことを言っている。

試訳「以前の引き延ばし戦術を埋め合わせるには遅すぎた。」

44 ショック療法 202ページ
『エバンズ大佐』

エバンズギャンビットの創始者のエバンズは14歳で船乗りになりのちに船長になった。

英文『Captain Evans』

試訳「エバンズ船長」

2012年01月29日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(098)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 キングに対する戦力の集中は簡単に戦力得をもたらすことがある。詰みである必要はない。次の局面はちょっと見るだけで白の大駒がまた働いていないことが分かる。b1のルークは実は標的以外の何物でもない(28.g3 がうまくいかないのはそのためで、28…fxg3 29.fxg3 Nf3+ から …Nd2 でルークとナイトの両当たりになる)。

ラルセン対フィッシャー
10番勝負第4局、デンバー、1971年
 27…Nh4

28.Qd3 Bf5

 白は自軍を引き戻そうとし黒はそれらをそぎ落としていく。

29.Kh1 f3!

 ルークの筋を通し、防御の連係を乱し、空所(f3とh3の地点)を作り出すこの手はチェス選手の理想とするところである。

30.Ng3 fxg2+ 31.Kg1 Bxe4 32.Qxe4 Nf3+ 33.Kxg2 Nd2 白投了

 やはり両当たりになった。黒はf2のポーンも取れる。

(この章続く)

2012年01月29日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(097)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の局面で白のビショップが黒ポーンの城壁の眼前に飛んでいき4手ほどでそれらを瓦礫の山にしてしまうとはほとんど想像できないだろう。

フィッシャー対パンノ
ブエノスアイレス、1970年
 26…Qd8

27.Ng5 Nf8 28.Be4!

 Nxh7 のあと hxg6 から Bxg6 を止めることはできない。このビショップを取ることはできない。なぜならナイトにf6へ行く道筋を与えるからである。ジークベルト・タラシュ博士はこのような離れ業をほめちぎったことだろう。このような局面に言及しているのかどうかは分からないが冗談半分に次のように言っていた。「ルソーが脇に猫がいなければ創作できなかったのとちょうど同じように、私はキング翼ビショップがなければうまくチェスを指すことができない。キング翼ビショップがなければチェスは無味乾燥に近く、攻撃の作戦を全然考えることができない。」

(この章続く)

2012年01月28日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(253)

「Chess Life」2011年9月号(5/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 2005年以降の対戦成績は2-2でまったく互角である。2007年には3回対戦し3回とも黒が勝った。そのうちの2勝はシャバロフである。その2局をちょっと見てみよう。

 最初の対戦は4月のフォックスウッズ・オープンだった。この大会の優勝者はGMガータ・カームスキーだった。彼は9戦して7点をあげた4人のうちの一人で、GMズビアド・イゾリアとのブリッツによる優勝決定戦を制した。この大会で印象深いのは米国のジェシー・クラーイがナカムラとシャバロフに勝ち最後のグランドマスター基準を達成したことである。

 シャバロフが黒番の第4回戦で26手目でクイーンなしの面白い中盤戦になった。白の手番である。2007年7月号でシャバロフが全局を解説している。ここでは引用した彼の解説の部分を(シャ)で示してある。

 白の手番

 黒は双ビショップを持っているがすぐにはキャッスリングできない。白は次の手で正しく黒のビショップをg4の地点に来させないようにした。

27.f5!

 黒は白にe列を素通しにさせるf5でのポーン交換はしないで次のように指した。

27…Bd7

 ここでナカムラは単刀直入に 28.fxg6 fxg6 29.Rd6 でgポーンを当たりにしてポーン得することができた。29…Rg8 なら参考になる戦術があり 30.Nf4 Bc7 31.Rxg6 Rxg6 32.Nxg6 Kf7(ナイトを捕まえたようだが)に 33.Nf4! Bxf4 34.Rf1

でビショップを釘付けにしてポーン得のままになる。しかし黒は単に 29…Bg4 30.Rxg6 Rd8 で強い圧力をかけることができた。だから白が誘惑をこらえたのは賢明だった。そして次のように進んだ。

28.Nf4

 ここでは 28.Na4 という強手があった。28…Bf2 なら 29.Rh1 gxf5 30.Rdf1 で問題ないし 28…Bc7 でも 29.Nc5 でよい。

28…Bc7 29.Nce2

 ここは 29.Rf1 の方が優った。実戦のナイトの配置変えは黒に余裕を与えた。

29…Rg8 30.Nd3 b6

 この手はナイトをc5の地点に来させないようにしている。形勢は黒が優勢である。

31.Nef4 O-O-O 32.b4 Kb7 33.a3

 g6の地点でポーン同士を交換する方が一貫性がある。

33…Bc8 34.Kc2 gxf5 35.e5 Rd4!

 (シャ)『今や主導権は完全に黒の方にある。』

36.Re3 Rgd8 37.Rh1 a5!?

 (シャ)『白がポカも出さずあっさり負けもしないことにいらだって黒は少しポーンを与えて自分のビショップの動きを良くすることにした。』これはGMシャバロフによる洞察力の鋭い解説で、たぶん白の時間切迫によって影響された決断である。代わりに危険性の少ない強手は 37…Rc4+ から …Re4 である。

38.bxa5 b5

 38…c5 の方が強制力がある。

39.Nxh5 f4

 39…Bxa5 の方が簡明だった。

40.Ndxf4?

 (シャ)『どちらのナイトでポーンを取るかを決める時にヒカルは40秒ほど残っていた。そして今回は直感が誤っていた。正しい受けは直感とは相容れない 40.Nhxf4! だった。』シャバロフはさらにフリッツの分析によると 40…Bf5 41.Rf1 c5 42.Kc1! Bxd3 43.Rxd3 Rxd3 44.Nxd3 Rxd3 45.Rxf7

で互角であると言っている。そしてこうも付け加えている。(シャ)『対局中は Kc1 に気がつかなかった。これは典型的なコンピュータの手である。』しかし 42.Kc1 のあと黒はd3のナイトを取る必要はない。42…Rc4+ 43.Kb2 Bxa5 と指すことができまだ黒が優勢である。実戦は次のようにして終わった。

40…Bf5+ 41.Kb3 c5 42.Rc1 c4+ 43.Kb2 Bxa5 44.Ne2 Rd2+ 白投了

 (シャ)『45.Ka1 Bb6 の後白は大きな駒損をきっする。』

「近年はチェスだけに集中している。ずっと真剣になり始めたのは2007年で、それから成績の上昇傾向が始まった。」-ヒカル・ナカムラ

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(この号続く)

2012年01月27日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(096)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 フィッシャーはまだ棋歴の浅い頃じっくりと攻撃態勢を構築するのを特に好んでいた。それはポーンをe5の地点に進ませ(f6にいる防御の黒ナイトをどかすため)、キング翼ビショップをフィアンケットしてあとで攻撃に加わらせ、クイーンをh5またはh6に置くものだった。次の2局にはフィッシャーがこのぎこちなさそうな方法で敵キングに立ち向かいどのように成功を収めたかがよく表われている。これらの局面はフランス防御またはシチリア防御で白が「キング翼インディアン」を指すときに生じるのが普通である。

フィッシャー対イフコフ
サンタモニカ、1966年
 16…Ne7

17.g4!

 アリョーヒンはかつて自分の似たようなポーン突きについて次のように言ったことがある。「このささやかなポーンはさらに進むことにより敵キングの住居に火をつけることを狙っている。そしてその邪悪なたくらみは止めようがない。」

17…Bxe4 18.Bxe4 g6 19.Qh6 Nd5 20.f5!

 ついに来た。黒は 20…Re8 と指したが fxg6 から Nxg6 で受からなかった。

(この章続く)

2012年01月27日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(095)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の均衡のとれた局面も参考になることでは劣らず、両者が詰みを見据えている。フィッシャーはたとえポーンであっても非常に重要な戦力の優位を得る。

フィッシャー対カルドーソ
番勝負、ニューヨーク、1957年
 22…b4

23.Bxg7+

 23.Qh5 で g6 を狙う方が良いという指摘もあった。23…f6 24.g6 h6 25.Be3 となれば紛れる余地がない。

23…Kxg7 24.Qh6+ Kh8 25.g6 fxg6 26.fxg6 Qc5+

 26…Rf7! でも 27.gxf7 Rf8 28.Qe6 で白の攻撃は途切れないが、攻撃力を削ごうとする面白い着想ではある。

27.R1f2 Qg5+ 28.Qxg5 Bxg5 29.Rxf8+ Rxf8 30.Rxf8+ Kg7 31.gxh7! 黒投了

 これは手荒な襲撃の最後の小節(こぶし)で、ナイトが当たりから逃げられるように必要でもある。

(この章続く)

2012年01月26日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(158)

「Chess」2011年11月号(1/1)

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欧州クラブ杯

解説 サム・コリンズ

2011年欧州クラブ杯
A.ギリ – B.トールフィンソン
対称イギリス布局

1.Nf3 Nf6 2.c4 c5 3.g3 b6 4.Bg2 Bb7 5.O-O e6 6.Nc3 Be7 7.d4 cxd4 8.Qxd4 d6 9.Bg5 a6 10.Bxf6 Bxf6 11.Qf4

 これはちょっと苦い思い出のある戦型である。2009年日本での「新潟親善大会」で小島慎也選手にこの手を指されて意表をつかれたことがあった。なんとか序盤をうまく切り抜けて勝ちを収めた。優勝賞品は自転車だった。トールフィンソンの防御陣形はかなり危なっかしい。

11…Qc7 12.Rfd1 Ke7

 キングがこの位置で落ち着いていられるほど局面は単純化していない。

13.Ng5 Bxg2 14.Kxg2 Nc6 15.Nce4 Rad8 16.Nxf6 gxf6 17.Ne4 f5 18.Qh4+ Ke8 19.Nf6+ Kf8 20.e4!

 もちろん白は缶切りを持ち出して黒陣を切り崩す。

20…Ne5 21.exf5 Qxc4??

 このポカはh6でのチェックでもっとひどくとっちめることができた(ギリのやり方でも十分であるが)。しかし黒はいずれにしても局面に満足なところはほとんどなかった。

22.Rd4 Qe2 23.Nxh7+ Ke8 24.Nf6+ Ke7 25.Nd5+ 1-0

 25…Kd7 26.Qe7+ Kc6 27.Qc7+ Kb5 28.Qxb6#

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(この号終わり)

2012年01月25日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(094)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 ここでもやはり白駒は自分のキングの守りに戻れない。

ビズガイアー対フィッシャー
西部オープン、1963年
 34.Qxc7

34…Nxh2! 35.Kxh2

 この手のあと黒のクイーンとビショップが白キングの頭上に殺到する。ねばり強い選手なら 35.Qf4 Qxf4 36.gxf4 Nxf1 37.Rxf1 Ba6 38.Rfb1 と指すだろう。アリョーヒンが言っていたように「詰まされるの本当に好きでない」。

35…Qxf2+ 36.Kh1 Bg4 白投了

(この章続く)

2012年01月25日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(093)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 次の局面でも黒キングが勝手気ままなことをしている。黒の大駒はすべてありもしない攻撃のために結集している。一方白は裏戸口から押し入る。

フィッシャー対メドニス
ニューヨーク、1957-58年
 31…fxe6

32.Rxe6! Bxa3

 黒は白ルークがチェックで参戦しないように(32…Kxe6 33.Qg4+ Kf7 34.Rf2+)e7の地点を空けた。

33.Nxa3 Kxe6 34.Qg4+ Ke7 35.Rf2 Re8

 黒はルークを盾にしようとしている。しかし7段目での白のクイーンとルークの整列は致命的だった(第12章「連結」を参照)。

36.Qg5+ Kd7 37.Rf7+ Kc8 38.Qf5+ Kb8 39.Qd7 黒投了

(この章続く)

2012年01月24日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(9)

「Chess Life」2003年1月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

カロカン防御 [B14]
白 IMブラッド・トメスク
黒 GMイゴール・ヘンキン
パドバ、1998年

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Bb4 7.cxd5 Nxd5 8.Bd2 Nc6 9.Bd3 Be7 10.O-O O-O

 白駒の方が動きが自在である。黒はまだ白枡ビショップを展開しなければならない。しかし白には孤立d4ポーンがある。
 評価 白は主導権を維持するために攻撃的に指す必要がある。さもないとこの試合に見られるように黒が陣形の優位のせいで優勢になる。

11.a3 Nf6 12.Be3 b6

 黒はやっと白枡ビショップを展開しようとする。

13.Rc1 Bb7 14.h3 Rc8

 この局面で形勢が互角になった。

15.Bb1 Na5 16.Ne5 Nc4 17.Nxc4 Rxc4 18.Qd3

 ビショップとクイーンをb1-h7とc1-h6の斜筋に据えて黒のキング翼を攻撃するのが白の作戦である。

18…Rc8 19.Rfd1 Qd7 20.Bg5

 この手は 21.Bxf6 から 22.Qxh7# を狙っている。

20…g6

 黒はその狙いを止めた。

21.Qg3 Rfd8

 黒はキング翼がいくらか安全になったのを機会に自分の作戦に沿って孤立d4ポーンに圧力をかけた。

22.Qh4 Nd5 23.Ne4 Bxg5 24.Nxg5

24…Nf6 25.Ba2

 代わりに 25.Rxc8 Rxc8 26.Ne4 Nxe4 27.Bxe4 Bxe4 28.Qxe4 と指せば、たとえ白の孤立d4ポーンのせいで黒の収局の態勢が優っていても白が引き分けにできる可能性が高かっただろう。

25…Kg7

 白は攻撃の具体策を立てることができない。一方黒はクイーン翼で反撃を策する余裕がある。白の孤立d4ポーンは弱点のままである。この局面は明らかに黒が優勢である。

26.Rxc8 Rxc8 27.Qf4 Rc2

28.Qe5

 ここは 28.Re1 とした方がe6のポーンに直接圧力がかかり少なくとも反撃の可能性がいくらかあるので少し優った。28.Rd2 と指すのは 28…Rxd2 29.Qxd2 h6 30.Nf3 Bxf3 31.gxf3 e5 32.d5 Qxh3 で黒が勝勢の局面になる。

28…h6 29.h4

 29.Nh7 は 29…Qd8 30.Nxf6 Qxf6 で黒がずっと有利な収局になる。

29…Bd5

 29…Rxb2 も非常に良い手である。黒は単にポーンを取ることができ白はそれでも全然反撃ができない。黒が圧倒的に優勢な局面である。

30.Bb1 Rxb2

 黒が勝つのはもう時間の問題である。

31.Rc1?

 31.Bd3 でも助からないが本譜の手よりはましである。黒は 31…Ra2 と応じてaポーンを取る。

31…Qb5! 32.Bc2??

 白はどう指しても負けだがこれはビショップをただであげてしまう。

32…Rxc2! 白投了

 33.Rxc2 なら 33…Qb1+ でルークが落ちる。

最終結論

 カロカンは黒の非常に堅固な防御法である。パノフ=ボトビニク攻撃では弱い孤立d4ポーンを補うために白はa2-g8、b1-h7それにc1-h6の斜筋を利用してキング翼への積極的な攻撃を維持しなければならない。

 e5の地点は白にとって重要で、白は好機をとらえてd4のポーンをd5へ突かなければならない。黒の作戦はキング翼を注意深く守りながら白のd4ポーンに圧力をかけることである。ポーンの形に優る黒は機会があれば駒を交換して自分に有利な収局に持って行くのが普通である。

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2012年01月23日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(092)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 戦力をひたすら集中させた効果は次の普通の局面によく現れている。白の優位はキング翼ルークを敵キングをにらむ位置に持ってくることができたことのみにある。

フィッシャー対クッパー
チューリヒ、1959年
 19…Bf6

20.Bxh6! gxh6 21.Qe3 Bg7 22.f6 Rh8 23.Rf1!

 白はビショップを取る手を急がない。なぜならここで …Bf8 と逃げるとキングの逃げ道をふさぎ Qe4+ とされるからである。まもなく黒は詰みが避けられなくなった。

(この章続く)

2012年01月23日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(30)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 183ページ
『その後も、ボトビニクは以下のように分析を修正し続けたが、不十分だ。』

英文『Botvinnik then went on to give a corrected analysis which, as we shall see, also falls short.』

go on to do は「続いて次に(・・・)する」という意味である。例えば He started as a clerk and went on to be a movie star. は「彼は事務員から始めて映画スターにまで登りつめた」という意味になる(「映画スターを続けた」のではない)。念のため書くと go on doing なら「・・・し続ける」という意味である。例えば He went on working till late at night. は「彼は夜遅くまで仕事を続けた」という意味である(He went on to work … だと「他のことをしていたが、次に仕事に取りかかった」の意味)。give a corrected analysis は動詞に give を使った英語特有の表現で、「修正された分析を示す」という意味である。
51…b5? の解説の文章は1ページ半にわたる長さであるがきちんと読めばストーリーがあることが分かる。まず、2番目の段落でボトビニクは「黒の最善の変化 51…Kd4! に対してもドローにできると最終的には結論した。」と言っておいて長い変化の終わりでその結論に反して「黒勝ち」と言っている。次の短い段落で「私は間違っていたのか?」と嘆いてみせている。そして次の段落で本命の修正された分析を示してやはりドローになると言っている。

試訳『ボトビニクは続いて修正版の分析を示したが、このあと分かるようにやはり不十分である。』

39 対決 183ページ
『ここでボトビニクと先を急いでも、次の局面図に至るだけだ。』

先を急いでも急がなくても次の局面図に至るが、何を言っているのだろうか?

英文『Here I break camp with Botvinnik, only to meet at the next diagram.』

break camp は「キャンプをたたむ」、with Botvinnik が加わって「ボトビニクと(一緒)のキャンプ(共同の分析)をたたむ」、そしてそれぞれの道(分析)を行っても、同じ所(次の局面図)で落ち合うことになるだけである。
ここまではボトビニクの解説にフィッシャー自身の解説をさしはさむときは[]でくくって示していたが、このあとはフィッシャーの解説だけなので必要なくなる。

試訳「ここでボトビニクの分析とは別れる。それでも次の局面図でまた出会うことになるだけである。」

39 対決 183ページ
『彼は 56…Kb4 が白にすぐドローにされることを示した。』

ボトビニクの分析とは別れたのだからドローにされる手順はフィッシャーの分析のはずである。

英文『He gives 56…Kb4 overlooking that White can obtain an immediate draw with 57.Rg7! ・・・』

overlooking の主語は He すなわちボトビニクである。だからボトビニクはドローにされる手順を示していない。

試訳「ボトビニクは 56…Kb4 を示したが白が 57.Rg7! ・・・ですぐにドローにできることを見落としていた。」

2012年01月22日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(091)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 相手の受けを予想して筋の開通を準備するときは、その結果はたいてい意想外の手となる。次の局面では e5 突きが攻撃の鍵となることは明らかである。受けも …f5 突きの一手なのでこれまた明らかである。これらを考え合わせてフィッシャーは高等な「防御予知」の手を指した。専門用語を持ち出すまでもなくフィッシャーなら単に「一発」と呼んだだろうし、それで十分だった。

フィッシャー対ベンコー
ニューヨーク、1963-64年
 18…exd4

19.Rf6! Kg8 20.e5 h6 21.Ne2!

 白は黒のナイトを当たりにしたままキング攻撃の途中で一呼吸おいた。その眼目はナイトが逃げれば Qf5 で次に詰みになるということである。黒はここで投了した。フィッシャーが11-0で完全勝利した全米選手権戦の最終戦の前の回でこれは起こった。この痛快な試合は特に甘美な思い出だったに違いない。

(この章続く)

2012年01月22日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(090)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 攻撃の筋を開(あ)けるにはしばしばX線透視が必要となる。即ち邪魔しているナイトとポーンを透かして見ることができなければならないし、邪魔物を強制的に取り除くことができればどうなるかを見通すことができなければならない。次の局面での缶切りはビショップとf8のルークの焦点にいるナイトが務めることになった。それでもたった4手でこのビショップとルークが白キングを脅かすようになるとはありえないことのように思われた。

タリ対フィッシャー
キュラソー、1962年
 21.g4

21…Ng3!

 どの「捨て駒」の場合でも差し出された駒を取らなければ「ならない」のか確認することが常に大切である。ここでは疑問の余地はない。ルークが当たりになっているしe2の地点での「家族チェック」の狙いもある。

22.fxg3 Qxg3+ 23.Kf1 f5

 これはルークのためにf列を開けようとしている。

24.g5 f4!

 これでビショップの斜筋が開いた。この捌きでフィッシャーは難局を引き分けにすることができた。

(この章続く)

2012年01月21日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(252)

「Chess Life」2011年9月号(4/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 次の試合はシャバロフ戦でのナカムラの最もみごとな勝利である。舞台は2005年フォックスウッズオープンで、ナカムラが9戦し7½点で優勝した。

 白番のナカムラが21手目を指すところである。

 20…g5

 ナカムラは驚愕の 21.f4! を指した。黒にg列の開通をけしかけて白クイーンがキング翼に転回できるようにし、e1-h4の斜筋にビショップの引き場所も用意している。21…gxh4 と取ってくれば 22.Rxg8+ Nxg8 23.Qg2 Ng6 24.Bxf7

で決まる。シャバロフは 21…Ng6 と指し白は 22.Be1 と引いて黒クイーンへの直射攻撃と単に 23.fxg5 と取る手を狙った。試合は次のように進んで終わった。

22…Nxf4 23.Nd5! Qxe1+ 24.Rxe1 cxd5 25.exd5 Bb4 26.Rf1 Rge8 27.a3 Bd6 28.Qf5 N6h5 29.Rgg1 Kg7 30.h4 黒投了

「ヒカルはコンピュータのようだ・・・彼の読みには誤りがほとんどない。」-アレグザンダー・シャバロフ

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(この号続く)

2012年01月20日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(089)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入(続き)

 実戦で最も人気のある攻撃の手は Qh5 である。「マスターたち」がその威力を過小評価することの多さは信じられないほどである。

フィッシャー対ウンツィカー
ライプツィヒ、1960年
 46…Qb8

47.Qh5

 黒のhポーンが受からないので、白が読まなければならないのは(Qxh7+、Qh8+、Qxg7 のあと)g6 突きがビショップを見捨てるのに値するかということだけだった。そしてその価値があった。

(この章続く)

2012年01月20日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(088)

第3部 競技の名前(続き)

第11章 突破と侵入

 優勢な戦力を集中させることにより大抵のことにけりがつくというのはチェスの棋理である。だから攻撃側の「やり方」は防御側の戦力を減少させるか攻撃のためにもっと駒を結集させることになる。多くの場合単にあるたけの開(あ)き筋を利用して敵キングを追いかける問題になる。

フィッシャー対フォリントス
モナコ、1967年
 28…Rd4

29.Re3!

 Rg3+ から Bxf6+ で詰みに討ち取る狙いのちょっとした可能性のために黒はビショップでe4のポーンを取ってg6の地点に割って入るようにすることを強いられた。黒の大きな譲歩というほどではないが白が勝つには十分である。もし黒が 29…Rxe4 と取れるなら異色ビショップの収局になって引き分けが約束されるところだった。

(この章続く)

2012年01月19日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(157)

「Chess」2011年7月号(11/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747(続き)

 それでは決着のついた第6局に専念しよう。

決勝戦第6局
B・ゲルファンド - A・グリシュク
グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.g3 d5 5.cxd5 Nxd5 6.Bg2 Nb6 7.Nc3 Nc6 8.e3 O-O 9.O-O

9…Re8

 9…e5 は流行らなくなった。そして本譜の手の方が白の建設的な応手が尽きることがあるということで優ると考えられている。9…e5 10.d5 Na5 11.e4 c6 12.Bg5 f6 は白が少し優勢と考えられていて、カスパロフは先に 9…Re8 と指すことにしていた。

10.Re1 a5

 流行しているのは 10…e5 11.d5 Na5 12.e4 c6 13.Bg5 f6 で、1988年オプティブールスでのカルポフ対カスパロフ戦でも指された。

11.Qe2 Bg4

 どういうわけかグリシュクは次の最も楽と思われる手順を避けた。11…e5 12.dxe5 Nxe5 13.Nxe5 Bxe5 14.f4(14.e4 Be6 15.f4 Bd4+ 16.Be3 Nc4 17.Bf2 c6 18.Red1 Bxf2+ 19.Qxf2 Qb6

は白がわずかしか優勢でない)14…Bxc3 15.bxc3 Bf5

は黒が指せる。実戦は白がどのみち h2-h3 と突くようになるので黒がそれを誘うのに1手費やすのは奇異に思われる。

12.h3 Be6

13.b3!

 この新手はうまい手だった。ゲルファンドは明らかに局面をより深く研究していた。13.Rd1 は 13…Bc4 14.Qe1 a4 で黒に反撃される。

13…a4 14.Rb1! axb3 15.axb3 Qc8

 黒は理想的にはd5とe4の地点を支配して白のポーンを押さえこみたいところである。この試合は黒がそうできるかどうかをめぐってずっと進んでいく。グリシュクは戦術的な狙いを持ち続けようとするがゲルファンドの断固たる方針は揺るがず、狙いが尽きたときに戦略的な勝利を収めた。

16.Kh2 Ra5 17.Rd1 Rh5 18.Nh4 Bf6 19.f4!!

 グリシュクは黒の作戦をくつがえすこの妙手を見落としていたと認めた。

19…Rd8

 黒は e3-e4 突きを邪魔するためにd4の地点に圧力をかけた。19…Bxh4 は 20.gxh4 Rxh4 21.Kg3 Rxh3+ 22.Bxh3 Bxh3 23.d5 Nb4 24.Ba3 c5 25.Bxb4 cxb4 26.Ne4

で白が優勢になる。

20.Qf2 Bxh4?

 これは長い目で見れば陣形的に負けになる。黒には他にもっとましな手があったが、20…Nb4 21.Bd2(21.e4 は 21…c5! で互角になる)21…c5 22.Ne4 Bxh4 23.Nxc5! Bf5 24.Bxb4 Bxb1 25.Rxb1 Bf6 26.Nxb7

は白がどのように駒配置の優位を生かして優勢を勝ち取れるかを示すほんの見本手順である。

21.gxh4 Nd5 22.Nxd5

22…Rhxd5!

 最善手。22…Bxd5? は 23.e4 で白が戦力得になる。

23.Bb2!

 この手は e4 突きを狙っている。23.Bxd5?! は 23…Bxd5 から …Qf5 で黒が豊富な代償を得る。白はキングが弱く不良ビショップを抱えポーンは進む所がない。

23…Rb5?

 この手は負けになるが白は既に戦略的な戦いに勝っている。23…f5!? は 24.h5 Rb5(24…Bf7 は 25.hxg6 hxg6 26.Rg1

となって白が攻勢に立ちここで交換得することもできる)25.Qe2 Rxb3?(25…Rbd5 の方が良いがそれなら白は前述の作戦を追求することができる)26.d5

で白の勝ちになる。

24.Qe2

 24.e4 Bxb3 25.Rdc1 Ba2 26.Ra1 でも良いが実戦の手の方がもっと良い。

24…Rh5 25.e4! Bxb3 26.Rdc1

 白のポーンがころがり進む。一方黒は離れ駒があり黒枡の対角斜筋が大きな弱点になっている。もう受けがない。

26…Na5

 26…e6 27.Ba1! Na5 28.Qe1 Ba2 29.Rb2 Nb3 30.Rxa2 Nxc1 31.Qxc1

も黒の形勢がもっと悪くなり白のビショップがますます強くなる変化である。

27.d5 b6 28.Be5 c5

 28…Rd7 は 29.Qb5 で黒ビショップが包囲され、ルークと2小駒の白に有利な交換になる。

29.dxc6e.p.

 29.Qb5 でも白の勝勢だった。

29…f6

 29…Rxe5!? ならしばらく持ちこたえるが 30.fxe5 Qe6 31.c7 Rc8 32.Qd3 Qxe5+ 33.Kg1 Kg7 34.Qc3

で白が楽に勝つはずである。

30.Ba1

 30.c7 は 30…Rd7 31.Rxb3 Nxb3 32.Qc4+ Kg7 33.Qxb3 fxe5 34.Qxb6 exf4 35.Qb8 Rxc7 36.Qxc7 Qxc7 37.Rxc7 Kf6 38.Rc6+

で勝つはずではあっても技術的に難しいところがあるが、本譜の手はその困難を避けた。

30…Rc5

 30…Bf7 は 31.e5 Qc7 32.Qb5 Rd2 33.Kg1(33.Qxb6? は 33…Bd5!!

で黒が引き分けにできる)33…fxe5 34.Bxe5 Qc8 35.Qxb6

で白の勝ちになる。30…b5!? はやってみる価値があったかもしれないが、31.e5 Bc4 32.Rxc4! bxc4(32…Nxc4 は 33.Rxb5 で白の勝ち)33.Bc3!

で勝勢になることを白が読めないことを期待するしかない。ここで例えば 33…Nxc6 なら(33…Qc7 は 34.Bxa5 Qxa5 35.Qxc4+ Kg7 36.exf6+ Kxf6 37.c7 Rc8 38.Rb8

で白の勝ち)34.Qxc4+ Kf8 35.exf6! で黒キングが四方八方から攻撃にさらされる。

31.Rxc5 bxc5

32.Qb5

 次のようにもっと速く勝つ手段があったがゲルファンドはここでとても速く指していても何もだめにしたわけではなかった。32.e5 Bd5 33.Bxd5+ Rxd5 34.exf6! Nxc6(34…exf6 は 派手な35.Rb8!! から 35…Qxb8 36.Qe6+ Kg7 37.Qxf6+ Kh6 38.Qg7+ Kh5 39.Qxh7#

で詰みになる)35.fxe7 Kf7 36.Re1 Ke8 37.Qa2

で黒は何かを差し出さなければならない。

32…Qc7

 唯一のチャンスはまず 32…Ba2! と指すことで、33.Rb2 なら 33…Qc7 で狙いが本物になる。その意図は 34.Rxa2?? なら 34…Qxf4+ 35.Kg1 Rd1+ 36.Bf1 Qg3+ 37.Rg2 Qe3+ 38.Rf2 Rxa1

で黒の勝ちになってしまう。しかし 34.e5! Be6 35.Qb6 Qxb6 36.Rxb6 Kf7 37.exf6 exf6 38.Bc3 Nc4 39.Rb7+ Kf8 40.f5 gxf5 41.Bxf6

なら白の勝ちになる。

33.Rxb3 Nxc6

 33…Qxf4+ は 34.Rg3 で簡単な勝ちになる。

34.e5

 eポーン突きは本局を通しての基調だった。

34…Nd4 35.Qc4+ 1-0

 正規チェスの名局だった。深遠な戦略とゆるみのない戦術が合体していた。


カザンで最後まで立っていた男(もちろん着席しているが)。2012年ビシー・アーナンドとの世界選手権戦を心待ちにしている。命がけの彼はあなどれない・・・

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(この号終わり)

2012年01月18日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(087)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 年を経るにつれてフィッシャーはますますカパブランカ流に危険な「におい」を嗅ぎ取るようになってきたようである。近年で彼が最もキングの敗走に近くなったのは、元世界チャンピオンのペトロシアンとの世界選手権戦の試合だった。

ペトロシアン対フィッシャー
12番勝負第2局、ブエノスアイレス、1971年
 17…Qa5

 フィッシャーはしばらくの間キングの落ち着き先を先延ばしにしてきた。f5のポーンは消える運命なので今ではキングが落ち着くことは絶望的になっている。それでも白軍が得点をあげるのには精力的な指し回しを要する。

18.Qc2 f4 19.c4 fxe3 20.c5!

 ここはポーン突きがクイーン昇格の目的のためでもなければキング翼での襲撃のためでもない極めてまれな局面の一つである。目的はただ局面をほぐし敵キングを揺さぶることである。

20…Qd2 21.Qa4+ Kf8 22.Rcd1 Qe2

 22…e2 23.Rxd2 Bxh2+ 24.Kxh2 exf1=Q としても望みがない。なぜなら 25.d6 から始まる白ポーンの進攻が速すぎるからである。

23.d6! Qh5

 これでフィッシャーは自分の名高い「クイーンの転回」を完了してクイーンをキングの守りにつけた。しかし今回は役に立たなかった。

24.f4 e2?

 ここで 24…Bf6 ならまだ戦えただろう。白は狙うは敵キングであることを見せつける。敵キングは命からがら逃げなければならない。

25.fxe5 exd1=Q 26.Rxd1 Qxe5 27.Rf1! f6 28.Qb3 Kg7 29.Qf7+ Kh6 30.dxe7 f5 31.Rxf5 Qd4+ 32.Kh1 黒投了

 この試合を見るとフィッシャーが闘牛士の役割を演じ、しぶる闘牛をつついて最後には角で突かれてしまった感じがする。

(この章終わり)

2012年01月18日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(086)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 世界選手権への最初の番勝負でフィッシャーはキング翼のポーンを進めたために難しい防御に立たされた。

タイマノフ対フィッシャー
10番勝負第3局、バンクーバー、1971年
 19…Kh8

 タイマノフはこの勝負所でひるみ、安全に 20.Nf3 と指した。それに対してフィッシャーは 20…Bb7 21.Rg6 Nf4 で敵の攻撃を追い払った。本当はソ連のコンサートピアニストは元気よく指すことができたはずだった。

20.Qh3

 Rxh6+ の狙いが受けにくい。20…Nf6 なら 21.Bb4 で白のすべての駒が攻撃態勢に入る[訳注 21…Qd4+ でこのビショップがただ取りされるので 21.Bc3 が正しいようです]。

(この章続く)

2012年01月17日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(8)

「Chess Life」2003年1月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃(続き)

 実戦例を2局紹介する。1局目は白がカロカン防御に対する正しい対処の仕方を見せつけた。2局目は白の攻撃に対する黒の受けが成功し、反撃して勝ちを収めた。

カロカン防御 [B14]
白 GMアルトゥール・ユスーポフ
黒 GMエーリク・ロブロン
ヌスロッホ、1996年

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Bd3 d5 6.Nf3 c5 7.O-O cxd4 8.exd4 dxc4 9.Bxc4

9…b6 10.Re1 Bb7 11.Bd3 Nc6 12.a3 Be7

 これでカロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃に移行した。

13.Bc2 Re8 14.Qd3

14…g6

 黒はb1-h7の斜筋でのいかなる攻撃の可能性も止めた。黒が斜筋の攻撃を無視して 14…Rc8? とのん気に指せば、15.d5 exd5 16.Bg5 Ne4 17.Nxe4 dxe4 18.Qxe4 g6 19.Qh4 で白が優勢になる。

15.h4 Qd6

 おそらく黒は 15…Rc8 と指した方が良く 16.Bg5 Nd5 17.Rad1 Bxg5 18.Nxg5 Nxc3 19.bxc3 Ne7 20.c4 Nf5 となればいい勝負である。

16.Bg5 Rad8 17.Rad1 Qb8

 17…Qc7 とここへ引くのは 18.Bb3 Nd5 19.Nxd5 で白が良い。

18.Bb3

18…a6?

 この手のせいで白は d4-d5 と突くことができ優勢になり勝つ可能性もある。ここは 18…Kg7 と指す方が良かった。以下 19.d5 h6(19…Nxd5 なら 20.Nxd5 exd5 21.Qc3+ で白が勝勢、19…exd5 も 20.Nxd5 Nxd5 21.Bxd5 で白の攻撃態勢が非常に強力である)20.Be3 で白が少し良い。

19.d5!

 この好手により局面が開放的になり、中央と黒のキング翼への白の攻撃が強力になる。
19…Na5

 代わりに 19…exd5 は 20.Rxe7! で白の勝勢になる。

20.dxe6!!

 これは非常に鮮やかな手筋である。

20…Nxb3

 黒が 20…Rxd3 とクイーンを取ると 21.exf7+ Kg7 22.fxe8=N+ Qxe8 23.Rxd3 Nxb3 24.Rde3 Kf7 25.Bxf6 Kxf6 26.Re6+ Kf7 27.Ng5+ Kf8 28.Nxh7+ Kf7 26.Ng5+ となって白が勝ちの収局になる。

21.exf7+

 21.Qc4! の方がずっと正確だった。そのあとは 21…fxe6 22.Qxe6+ Kg7 23.Ne5 となって白が攻めて勝つ。

21…Kxf7 22.Qc4+ Kg7 23.Ne5 Ng8?

 23…Nd5 でも 24.Bh6+ Kxh6 25.Nf7+ Kg7 26.Nxd8 で白が優勢である。

24.Rxd8

 24.Qf7+! の方がはるかに良い手で、24…Kh8 25.Rd7! Rxd7 26.Nxd7 Qd8 27.Nf6 となれば白が完全に勝勢である。

24…Qxd8 25.Qf7+

25…Kh8 26.Qxb3 Qd4 27.Re3 Rf8 28.Bxe7 黒投了

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2012年01月16日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(085)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーの世界選手権に至る前の大会における唯一の敗戦はキングが危ない位置にいたためだった。チェス界は無名選手によってあっけなく負けたニュースに驚愕した。

フィッシャー対コバチェビッチ
ザグレブ、1970年
 18.f3

 フィッシャーは危険をもてあそんでいる。黒の重火器はキング翼に結集しクイーンは策略で潮の流れを押さえ込もうとしている。

18…e3!

 これが策略の仕上げである。19…Nd5 が非常に速い手になるので白クイーンは 19.Qxe3 と取れない。そして代わりの手でも・・・

19.Bxe3 Nf8!

 これで白クイーンはキング翼をあとにして 19…Nd5 を許さなければならない。30手目でフィッシャーの投了となった。

(この章続く)

2012年01月16日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(29)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

39 対決 177ページ
『ここまでは、分析を覚えているだけでよかったが、』

英文『Up to here I had only had to remember my analysis,』

試訳『ここまでは分析を思い出すだけでよかったが、』

39 対決 182ページ
『この封じ手は読みを誤っている。』

英文『This is a mistake in analysis.』

試訳「この手は分析の誤りである。」

39 対決 182ページ
『59…Qe5! の方が狡猾。』

英文『59…Qe5! seems to do the trick:』

do the trick で「目的を達する、うまくいく」という意味。このあと「68.Ra5 seems to hold here」というフィッシャーの解説が現れるので、ここで 59…Qe5! という手が意味を持っている。

試訳「59…Qe5! が良い手のようである。」

2012年01月15日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(084)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 次の局面では両軍とも互角の展開なので黒陣には何も悪い所がないはずである。それでも黒キングの周りにはわずかな弱点がある。それはe7とh6の地点に敵駒の侵入する隙があるということである。

ベンコー対フィッシャー
ブエノスアイレス、1960年
 20…Nxc4

21.Nd5! Qf7

 このめざわりなナイトは取れない。取ると斜筋でキングとナイトの両当たりになる。

22.Bh6!

 このあと白は単純にg7で駒を交換し、c7の地点か …Rc8 ならe7の地点で両当たりをかける。

(この章続く)

2012年01月15日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(083)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 王印防御では黒はキング翼で攻撃をしかけて白の反対翼での活動とのバランスを取るのが普通である。しかし次の局面では白は吹きさらしの黒キングの状態を点検して機敏にキング翼に目を向け直した。

タリ対フィッシャー
ブレッド、1959年
 18…gxf5

19.f4

 戦術的に問題ないことが保証されるならばこれが連結ポーン横隊を無力にする手段である。ここでの戦術的な保証は 19…e4 なら黒に狙いが何もなくなりビショップが自軍のポーンによって閉じ込められるということである。

19…exf4 20.Qxf4!

 白は裸の黒キングを追っている。

20…dxc5 21.Bd3 cxb4 22.Rae1 Qf6 23.Re6!

 白は一見良さそうな 23.Bxf5+ に飛びつかなかった。それはc3のナイトがまだ当たりになっているので、黒は駒交換に応じてもよいからである。本譜は白がまたたくまに勝勢になった。

23…Qxc3 24.Bxf5+ Rxf5 25.Qxf5+ Kh8 26.Rf3!

 そして白が勝ち切った。

(この章続く)

2012年01月14日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(251)

「Chess Life」2011年9月号(3/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)(続き)

 次も2004年でワールドオープンでの面白い収局である。白番のナカムラが45手目を指すところである。

 44…b3

 二つの交換得にもかかわらず中央の黒駒が強力で黒ポーンも進攻しているので白が守勢である。まもなく白は陣形を改善する機会を逃し結局かろうじて引き分けに持ち込むことができた。

46.g4 hxg3e.p. 47.Kxg3

 46.h4! とパスポーンを突き進め黒に心配の種を与える方が強手だった。46…Nf5 なら 47.Kg4 で白の展望の方が少し良い。

46…Nd5 47.Kf3 Kb4 48.Ke4 c3! 49.bxc3+ Nxc3+ 50.Kd3 Nxa4 51.Rc4+ Ka3

52.Rxd4

 代わりに 52.Rxa4+ と取っても互角の局面である。

52…exd4 53.Kxd4 b2 54.Rxb2 合意の引き分け

 このあとの想定手順は 54…Nxb2 55.h4 Kb4 56.h5 Nc4 57.h6 Nd6 58.h7 Nf7 59.Ke3 Kb3 60.Kf4 a5 61.Kf5 a4 62.Kf6 Nh8 63.Kg7 a3 64.Kxh8 a2 65.Kg8

 2004年終わりの時点でシャバロフが3試合中唯一の勝ち星をあげ2点だった。それ以来引き分けはない!

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(この号続く)

2012年01月13日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(082)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーはいつもそんなに運のいい側にいるわけではなかった。「神童」を広く紹介するために設けられた特別試合で元世界チャンピオンのマックス・エーべ博士は敵を自陣に招き入れるのは危険な場合があることを実演した。

エーべ対フィッシャー
番勝負、ニューヨーク、1957年
 13.Nf4

13…Qb6 14.Bxf6 Bxf6 15.Qd3 Rfd8

 黒はキングを逃がさなければならない。15…g6 は 16.Nxg6 と切ってこられる。

16.Rae1! Nb4

 黒は白のわなにまんまとはまった。実際に現れるように白は注意深くe7の地点に逃げられないようにしていた。

17.Qh7+ Kf8

エーべ対フィッシャー
 17…Kf8

18.a3! Nxc2

 白は黒が 16…Nb4 と指した手をさかてにとった。

19.Ncxd5! Rxd5 20.Nxd5 黒投了

(この章続く)

2012年01月13日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(081)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング(続き)

 フィッシャーのキングは次の局面で住居をなくしていた。相手は時間に追われて、勝利を決定づけることができたかもしれない単純な狙いに気づかなかった。

ビレク対フィッシャー
ストックホルム、1962年
 24…Qxc2

25.Rg8?

 薄いキングに対する中心となる考え方は自分のチェックの可能性を増すことである。この理由だけでも 25.Qe7 が浮かび上がる。f7の地点での壊滅的なチェックを避けるために黒は 25…Qc4 と受けなければならない。それならば 26.Rf3! で次に致命的な Rg3+ を狙う[訳注 27…Kh7 28.Rg3 Qg8 で黒勝ちのようなので、26.h3 が良くまったくの互角のようです]。実戦では狙いがなくなった。

25…Qf2 26.Rf8 Qxa2 27.Rf3 Kh7 黒投了

(この章続く)

2012年01月12日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(156)

「Chess」2011年7月号(10/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

決勝戦
ゲルファンド 2733 3½-2½ グリシュク 2747

 ということで決勝戦に残ったのは意外な二人だった。レイティング上では競技会開始時の8選手中の第5位と第7位である。しかし最高と最低の選手のレイティング差がわずか76点では眉をしかめる者は多くないはずである。願わくばこの競技会での良いこととしてレイティング表への懐疑が大きくなることを望む。多くのチェス選手が絶対的なものと思っている。

 以下はインタビューでのボリス・ゲルファンドの試合の感想である。

質問 あとでサーシャ・グリシュクは「ボリスの素晴しい指し回しに翻弄された。6試合で彼の指した悪手はたった1手だった」と言ったとされる。あなたの発言では「我々の試合は激闘だった。3回負けの瀬戸際に立たされた」と言ったとされる。あなたとサーシャは友人でたぶんお互いに儀礼的すぎるか寛大すぎるようだ。この何週間かで試合内容を振り返ったことがあるか?もしそうならもっと別の結論に至ったか?

 「面白い。あなたの言うことはまったく正しい。しかしある意味で我々二人は正しい。第2局で私はとんでもない手、22.Bxh8を指した。そして苦戦に陥った。他の2回は布局でうまく対処しなかったために苦戦した。布局が過ぎてしまえば非常にうまく指せた。だから彼の言うことは合っている。」

 「しかし第1局と第5局の布局の指し方に満足しているわけではない。第1局では私の知識は古くなっていて嫌な局面になって受けに回らなければならなかった。しかしこの試合ではうまく守れたと思う。本当に不快な試合で、私が対処しなければならない多くの可能性が彼の方にはあった。第5局はかなり守勢の局面だった。彼には多くの作戦があったが正しいものを選んでこなかった。こちらが駒をうまく配置できたと思うし、22…e5 でほとんど互角にして局面がそれまでより苦しくなくなった。」

 「我々はお互い準備する時間が多くなかった。私は前の番勝負でグリューンフェルトに対処しなければならなかった。だからそれを繰り返した。そして私はクイーン翼ギャンビットに対処しなければならなかった。それで彼はそれを繰り返さなければならなかった。だから我々は同じ布局でやっていかなければならなかった。」

 試合は6番勝負で最初の5局は引き分けだった。それぞれ内容のある試合だった。例外は第4局で少し退屈だった。第3局は14手だったが非常に面白かった。ゲルファンドが9手目でかなり印象的な …b7-b5 突きの犠牲を繰り出し、相手の気力を削いで早々と引き分けにさせた。


グリシュク戦の開始を待ちながらぼんやり考えている様子のゲルファンド

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(この号続く)

2012年01月11日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(080)

第3部 競技の名前(続き)

第10章 薄いキング

 キングが死ぬのはどんな原因よりもまず薄さからのことの方が多い。薄さの基本的な意味の中には、キングが通常の居住地を離れ異国に避難先を求めなければならない状況がある。ボビー・フィッシャーはアリョーヒンのように詰まされるのが好きでない。しかし彼は純粋に局面を考慮して自分のキングを進んで危険にさらすことが他のどんな世界チャンピオンよりも多かった。

 最初はフィッシャーが勝つ側だった有名な実戦例である。

フィッシャー対ベンコー
ブレッド、1959年
 32…Rg8

 黒キングは裸に近い。白のやらなければならないことは黒キングに迫る方法を見つけることがすべてで、次のように行なっている。

33.a4! bxa4 34.Rb1 e5

 黒はハッチを締めようとしたがわずかに1手の差で手遅れだった。

35.Rb7+ Kd6 36.Rxg7 exf4 37.Rxg8

 黒はクイーンにひもが付いていない方が良かった。

37…f3+ 38.Kh1 Kc5 39.Rb8! 黒投了

 これは「ルークの間合い」と手詰まりの好例である。黒のキングかポーンのどちらかが他方を見捨てなければならない。[訳注 39…a3 40.Rb3 a2 41.Ra3]

(この章続く)

2012年01月11日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(079)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 局面がますます複雑になるにつれて狙いと受けをより正確に読みきることのできる選手の方がずっと有利になる。次の局面でフィッシャーは典型的なシチリア防御のポーンの嵐に見舞われているが、自分の駒による攻撃の方が先に行き着くことを正確に見通していた。

ミニッチ対フィッシャー
ザグレブ、1970年
 16…O-O

17.Nf5

 代わりに 17.Nxe6 は 17…fxe6 18.Bxe6+ Kh8 19.Nd5 Qc4 となって黒が優勢である。黒の防御の骨子は(1)白のeポーンを攻撃し取ってしまうこと、その際(2)白キングの守り駒の一つと交換すること、そして(3)両方のルークでクイーン翼で圧迫を加えることである。以下の手順は白が攻撃を緩めることができないのでこれらの観点からきわめて分かりやすい。

17…Nc5 18.Nxe7+ Qxe7 19.h5 Bb7 20.h6 Bxe4 21.Nxe4 Nxe4 22.hxg7 Rc8!

 そして黒の攻撃で白陣がすぐに粉砕された。

 フィッシャーの初期から最近までの試合の実例で、キングに対する攻撃は思慮深く直接的だった。どこからともなく生じるような攻撃、あるいは他の目的への呼びかけとしてやって来る攻撃ははるかに痛烈であることがよくある。世界中の偉大な攻撃型選手たちが異彩を放つのはともすれば穏やかな局面でキングのよろいにきずをかぎとるこの状況である。以降の章にはフィッシャーが試合の中心人物から決して目をそらさない選りすぐった実例がある。少なくともロシア語では「王手詰み」が競技の名前である

(この章終わり)

2012年01月10日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(7)

「Chess Life」2003年1月号(1/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

 今月はカロカン防御を取り上げる。カルポフ、コルチノイ、カスパロフ、アーナンド、イワンチュク、レーコー、ハリフマン、セイラワンのような世界の一流選手たちの多くがこの定跡を黒番での得意戦法に選んでいる。これは黒の堅実な布局で、相当の反撃力があるがシチリア防御ほど強烈ではない。

 本稿ではパノフ=ボトビニク攻撃を調べることにする。この定跡に特有なことは初めの手順は違っても多くの異なった布局から生じることである。ちょっと名前を挙げただけでもニムゾインディアン、クイーン翼ギャンビット受諾、あるいは準タラシュがある。白と黒の主要な構想は何だろうか。それは単純である。

 ●白の作戦は中央を攻撃し黒がキャッスリングしたあとはキング翼を攻撃することである。

 ●黒の作戦は白のキング翼攻撃を撃退しながら白の孤立dポーンにつけ込んでいくことである。

カロカン防御/パノフ=ボトビニク攻撃

1.e4 c6 2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4

 これがパノフ=ボトビニク攻撃の陣形である。

4…Nf6 5.Nc3 e6

 黒が 5…g6 と応じれば 6.Qb3

6…Bg7 7.cxd5 で白がわずかな優勢を維持する。

 また黒が 5…Nc6 と指せば 6.Nf3 Bg4

7.cxd5 Nxd5 8.Qb3 Bxf3 9.gxf3 e6 10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ で収局になる。そして 11…Nxb5 12.Qc6+ Ke7 13.Qxb5 Qd7 14.Nxd5+ Qxd5 15.Qxd5 exd5 16.O-O Ke6 17.Re1+ Kf5 18.Rd1 Rd8 19.Be3 Rd7 20.Rac1 Be7 21.Rd4 となれば白がわずかに有利である。

6.Nf3

 ここで黒の6手目には主要な手が二つある。

Ⅰ)6…Bb4

 この手の意図はナイトを釘付けにして白の駒の連係を乱すことである。

7.cxd5

 白は 7.Bd3 dxc4 8.Bxc4 O-O 9.O-O と指すこともできる。

 この局面は通常は 1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.e3 O-O 5.Nf3 d5 6.Bd3 c5 7.O-O dxc4 8.Bxc4 cxd4 9.exd4 という手順から生じ 9…Nc6(9…b6 は 10.Qe2 Bb7 11.Bg5 Nbd7 12.Ne5 となって白に主導権がある)10.a3 Be7 で複雑な展開になる。

7…Nxd5 8.Bd2

 白は 8.Qc2 と指すこともでき 8…Nc6 9.Bd3 Be7 10.a3 Nf6 と進む。

8…Nc6 9.Bd3 Be7

 黒はビショップをb4に出してからe7に引いて1手損をしているように見える。しかしこの場合はそれに当たらない。黒の着想は白に Bd2 とさせることで、そうなれば白はd4のポーンを守るのがもっと難しくなる。

10.O-O O-O 11.Qe2 Nf6 12.Ne4 Qb6 13.a3 Bd7

 これはカームスキー対カルポフ戦(世界選手権戦第4局、1996年、エリスタ)である。黒は陣形に何の問題もない。

Ⅱ)6…Be7 7.cxd5 Nxd5 8.Bd3 Nc6 9.O-O O-O

 驚くべきことにこの局面はいくつかの異なった手順から生じる。一例をあげると 1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 c5 5.cxd5 Nxd5 6.e3 Nc6 7.Bd3 Be7 8.O-O cxd4 9.exd4 O-O である。

10.Re1

 10.a3 もよく指される手で黒が 10…Nb4 と指すのを防いでいる。

10…Bf6

 ここでは黒は 10…Nf6 や 10…Qd6 と指すこともできる。しかし 10…b6? は悪手で 11.Nxd5 で白が優勢になる。

11.Be4 Nce7 12.Ne5

 白にいくらか主導権がある。

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2012年01月09日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(078)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 どちらが先に行き着くかという場合になることも多い。フィッシャーは時には自分の取り出した刃にかかって死ぬこともあった。ただし超一流の才能を持っている者に対してだけである。

フィッシャー対ゲレル
スコピエ、1967年
 19…Nxe4

20.a3?

 キングの防御における一般的な原則は、強いられない限りキングを保護しているポーンに決してふれるなということである。この手はb3の地点を弱めるが、先を見通すことは難しかった。

20…Qb7 21.Qf4

 フィッシャーの類まれな分析によれば、1手前にこの手を指せば勝っていたそうである。その手の狙いは Rh5 で、ありとあらゆる詰みの可能性がある(21…d5 なら 22.Qe5 で、黒はf6の地点に駒をさしはさんでも白に2回取られて詰みになるだけである)。

21…Ba4!

 違いは 22.Rh5 Bxb3 23.Bxg7+ Kxg7 24.Qh6+ Kxf7 というように、白の白枡ビショップを消すことにより黒キングがf7の地点に逃げることができ白の狙いを粉砕することができることである。それに白が白枡ビショップの支えを減らしたので 23.cxb3 には 23…Qxb3 が不吉の前兆になる。

22.Qg4 Bf6 23.Rxf6 Bxb3! 白投了

 黒の …Ba2+ からの詰みの狙いが受からない。

(この章続く)

2012年01月09日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(28)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

38 推理小説 171ページ
『初期の攻撃的だった頃から、ケレスは戦略的かつ受けの棋風に切り替えてきた。それにしても、この局面は度が過ぎるというものだ。』

ケレスはここまで特に受け過ぎの手を指してきたわけではない。

英文『…But this type of position is too much even for him.』

いくら彼でも(even for him)荷が重い、手に負えないと言っている。

試訳『・・・それにしても、この局面はいくら彼でも受け切るのは大変である。』

38 推理小説 172ページ
『このナイトを隊形へ参加させる試み。』

英文『An attempt to bring this Knight toward the embattled sector.』

embattled には「戦闘隊形をとった」という意味のほかに「要塞化した」という意味もある。

試訳「黒はこのナイトを要塞化した方面に参戦させようとした。」

39 対決 175ページ
『緊張のあまり、彼のいまだ屈強な陣形が衰退し始める。』

緊張すると陣形が衰退するものだろうか?ボトビニクのような百戦錬磨の世界チャンピオンでもフィッシャーのような若造相手にそんなことになるのだろうか?

英文『Nervously, he proceeds to run his still tenable position downhill.』

ここでの run は他動詞で「・・・を(ある状態に)追いやる」という意味である。position が「・・・を」、downhill が「ある状態に」に対応する。

試訳「いらいらした彼はまだ防御可能な局面を悪化させていく。」

2012年01月08日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(077)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 フィアンケットビショップはどかすのが難しいやつだが、手段はある。

フィッシャー対プレブジャフ
バルナ、1962年
 17…e5

18.Nf5!

 18…gxf5 には単純に Bxg7 から Qg3+ とされるので黒はビショップ交換を余儀なくされた。18…Bxf5 と取るのは白のポーンが攻撃に加わってくる。

(この章続く)

2012年01月08日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

国を背負う指導者の気概

毎日新聞電子版2012年1月7日
田中の野人外交

2012年01月07日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(076)

第3部 競技の名前(続き)

第9章 標的はキング(続き)

 白の白枡ビショップの利きが止められている場合はh列に殺到する単純な狙いが決め手になることが多い。

フィッシャー対グリゴリッチ
ブレッド、1959年
 25…Nh5

26.Rxh5! gxh5 27.Qxh5 Be8 28.Qh6!

 これはよくある策略である。Rh1 または g6 で攻撃を続ける前に黒キングが逃げられないようにした。ほどなく白が勝った。

(この章続く)

2012年01月07日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(250)

「Chess Life」2011年9月号(2/6)

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宿敵(続き)

見せ場と試合解説(マスターチェス7000を援用)

 重要な大会で戦いを繰り広げることは宿敵となることの基盤で、この二人の一流グランドマスター同士の勝負は確かにこれまで火花を散らしてきた。これらの抗争で特に目立つのは6勝のうちの5勝で勝った方が大会に優勝したことである。

 初めて勝負のついた試合は2004年シカゴオープンでの最終戦だった。27手目のあと白番シャバロフの手番で次の局面になった。

 27…Rxd5

 白は 28.Rc6 ですぐに黒のaポーンに対し包囲攻撃を始めることができる。しかし代わりにビショップを5手連続動かす方を選んだ。

28.Bc3 Rd8

 黒はこれに代わる手が 28…Rc5 29.Rxc5 Nxc5 30.Bd4 と 28…f5 の二つある。どちらも手段は異なるがポーンを取られる。28…f5 が一番てごわい抵抗だった。

29.Bf6 Re8 30.Bd4 Nb8 31.Bxa7 Nd7 32.Bd4 Ra8 33.Rc7 Nf8 34.Ra7

 白のよどみない技法が勝利を引き寄せる。

34…Rd8 35.Be3 Kg7 36.a4 Ne6 37.a5 Rd3 38.Kf2 Ra3 39.Bb6 Rb3 40.Ke2 Kf8 41.Kd2 Ke8 42.Kc2 Rb4 43.Kc3 Rb1 44.Be3 Ra1 45.Kb2 Ra4 46.a6 Kd8 47.Ra8+ Kd7 48.a7 h5 49.Rb8 Nc7 50.Kb3 Ra1 51.h4 Ra6 52.Bf2 Ra1 53.Bb6 Kc6 54.Bxc7 Rxa7

 黒はようやく白のaポーンを取ったが敗勢であることには変わりない。

55.Bf4 Kd7 56.Rb6 Ra1 57.Kc3 Rg1 58.Rb2 f6 59.Kd3 Rh1 60.g3 Ke6 61.Rb6+ Kf5 62.Bd2 Rd1 63.Ke2 黒投了

 シャバロフはこの勝利でGMヤーン・エールベストと共に優勝することができた。

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(この号続く)

2012年01月06日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス2

フィッシャーのチェス(075)

第3部 競技の名前

第9章 標的はキング

 キングに対する直接攻撃はおかしなことに並のチェス選手たちの間ではそうであるべきなのに一般的でない。わずかな優位の積み重ねが詰みの逃れられない現実感を鈍らせてしまう洗練されたレベルに達してしまう選手が多すぎる。レシェフスキーはかつて挑戦者決定競技会のある試合で2手連続して1手詰みを見逃したことがある。フィッシャーの場合は似たようなチェスの盲目の例がない。たぶんめったに時間に追われないためだろう。それよりもはるかに顕著なことは自分のキングの安全を犠牲にしてもフィッシャーがキングへの直接攻撃をたえず追求することである。この点で彼はスパスキーに似ていて、ボトビニク、アリョーヒンそれにカパブランカには似ていない。

 シチリア防御がはやっているのは現代のキング翼での攻撃的な指し方の原因ないしは効果かもしれない。フィッシャーはこの不均衡な布局のどちら側も好んでいるようなので、攻撃にたけているのは当然である。棋歴の初めの頃フィッシャーはドラゴン戦法に特有なフィアンケットされた黒キングの囲いを攻めつぶしたことにより「ドラゴン殺し」の評判をとった。

フィッシャー対ラルセン
ポルトロジュ、1958年
 21…Nh5

22.Rxh5!

 これは h4 -、h5 Nxh5 へのよくある追撃手段である。

22…gxh5 23.g6

 白枡ビショップの威力で白が攻め切った。

(この章続く)

2012年01月06日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(074)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 プロブレム作家がチェスの一部であるユーモアとへそ曲がりを再現できてこなかったとは思わない。サム・ロイドはたぶんもっとすごいトリックのなかでそれをやった。彼と同時代でコンサートピアニストのビルマースは、詰み筋の探求への締めくくりにふさわしい小品を作った。この作品の主眼は私にすれば正確さではなく、モデル詰みを例示することでもなく、経済的であることでもなく、解くのが難しいことでもない。非常に愉快な点は白が「友よ、好むと好まざるとにかかわらず君の回りに詰みの網をかけるぞ」と言っていることである。

R.ビルマース、1959年
 4手詰み

 初手はやはり見つけるのが難しく巧妙である。

1.Ra7! h2

 奇妙なことに黒が何をしようと-ポーンを突こうがキングをあれこれ動かそうが-白は以下の手順を指す。

2.Na5(+) – 3.Rb7(+) – 4.b4#

 詰みの網を張るかぎはルークを7段目にやって、黒キングが1手目にその方面へ逃げようとするのに備えてa7とc7の地点を守ることである。思うに実戦派の選手のための教訓は、一意専心こそが、特に敵キングを詰みの網に入れる目的のときに役立つということである。

(この章・部終わり)

2012年01月05日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(155)

「Chess」2011年7月号(9/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第2組
グリシュク 2747 5½-4½ クラムニク 2785(続き)

 快速戦になってもロシアの2選手には決着のついた試合がまだなかった。グリシュクが白の試合はいっそうおざなりの行事になっていた。クラムニクは白番ではかなり激しく押しまくっていたがグリシュクは頑強な受けの達人であることをみせつけた。だから残念ながらブリッツ戦にならざるをえなかった。

準決勝第2組、ブリッツ戦第1局
V・クラムニク - A・グリシュク
シチリア防御マローツィ縛り

1.Nf3 c5 2.c4 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 d6 6.e4 g6 7.Be2 Bg7 8.Be3 O-O 9.O-O Bd7 10.Qd2 Nxd4 11.Bxd4 Bc6 12.Bd3 a5 13.Rfe1 a4

14.Nd5

 14.Rad1 で堅実策を続ける方が良さそうである。駒の交換は黒陣をくつろげさせる。

14…Nd7 15.Bxg7 Kxg7 16.Re3 e5

 黒枡ビショップ同士が消えてしまえばこれがよくある一撃になる。この先を見れば分かるように出遅れd6ポーンは弱点にならない。

17.Rh3 h5 18.Ne3

 ここで初めて前例と別れたが、あまり感心しなかった。

18…Rh8

19.Rg3?

 どの程度の優勢だろうとこれで消えてしまった。ここでは 19.Nd1 と引いて遊んでいるルークをe3の地点でまた働かせる方が良かっただろう。

19…Nc5 20.Rd1

 白はe4のポーンが落ちるのを避けることができた。しかしたぶん 20.Nd5 Bxd5 21.cxd5 Qa5 22.Qxa5 Rxa5 で不良ビショップ対優良ナイトの収局で守勢になるのが面白くなかったのだろう。

20…h4 21.Rh3 Bxe4 22.Bf1 Bc6

23.Nd5

 恐らく白は 23.Qxd6 と取れることを当てにしていたのだろうが、23…Qxd6 24.Rxd6 Ne4 25.Rd1 Ng5 で交換損になることに気づいた。

23…Bxd5 24.Qxd5 Ra6 25.Re3 Qf6 26.b4 axb3e.p. 27.axb3 Rb6 28.h3 Rxb3 29.Rxb3 Nxb3

30.Qxd6

 たぶん 30.Qxb7 Nc5 31.Qc7 Rd8 32.Be2 の方が隙が少なくてしのげる希望があっただろう。

30…Qxd6 31.Rxd6 Rc8

32.Rd5?

 クラムニクはルークの無駄手を指し始めた。このブリッツ試合での手損が彼の世界選手権の可能性をつぶしたことはほぼ間違いない。代わりにすぐ 32.g3 と突けばまだ戦えた。例えば 32…Rc6 33.Rd5 hxg3 34.fxg3 Kf6 35.Kf2

となれば、片側だけにポーンのあるルーク+2ポーン対ルーク+3ポーンの収局が望めた。

32…Kf6 33.Rd6+ Ke7 34.Rb6 Nc5 35.g3 hxg3 36.fxg3 Rc6 37.Rb5 f5!

38.Kf2

 白は 38.Bg2 と指したいのだが黒は単純に 38…e4 でビショップを亡き者にする。

38…b6 39.Ke3 Rd6 40.h4 Kf6 41.Be2 g5 42.hxg5+ Kxg5 43.Kf3 Rh6 44.Rb1 Ne6 45.Kg2 Nd4 46.Bd1 Rc6

47.Rb5?

 これはポカだが、47.Rb4 でも 47…e4 48.Ba4 Rh6 49.Kf2 f4 50.gxf4+ Kxf4 で見込みがない。

47…Nxb5 0-1

 本当のところ偉大な選手がこんなつまらない試合で消えていくのを見るのは残念だった。しかしそれが番勝負による勝ち抜き戦のやり方である。第4局はもっと悪かった。黒で勝たなければならないクラムニクは危険を冒して現代防御の支線型を指し不利に陥った。グリシュクは圧倒的に勝勢の局面になったがわざと簡単な引き分けの収局にもっていった。決勝戦に進みさえすればよいので任務は完了した。

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(この号続く)>

2012年01月04日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(073)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 詰み筋は最も予想されず他の手筋の方がありそうなときにも見つかることがある。次の局面は1969年カリフォルニア州での南北対抗戦というちょっとありそうもない「催し」の一つで(も)現れた。この年はこの恒例行事の最後の年で、米国での他の伝統ある対抗戦同様にしだいに消えていった。これらの大会を特徴づけた友好と大学生の奮闘によるチェスはしばしば熱戦を生んだ。南北対抗戦での本大会への非公式予選は「侮辱」試合だった。その規則は「カリフォルニア・チェス・リポーター」誌からの引用によってもっともよく伝えられる。

リビセ、アルムグレン(南)対バーガー、グロース(北)
ピズモビーチ、1969年
 31.Rc1

 『ルークを床に落としてそれがg4の地点に停止するのをうまく防いだ北の選手は、今度は相手選手、観衆、そして自分の相棒さえこれ見よがしに笑う中で長考に入った。スリボビッツがまた供される間に、そして今度はルークを手に持ったまま、その北の選手はルークを動かして勝てるに「違いない」しそれを見つけるつもりだと宣言した。これは100%信じる者がいなかったし、それ以上にあざけりがあった。ところが彼が奇妙でまれな詰みを見つけると不信は確信に変わりあざけりは拍手に変わった。

31…Rg3!! 32.Rxc7+ Kd8 33.白投了

 なぜなら 33…Bg2+ 34.Nxg2 Rh3# という詰みが防げない。』

(この章続く)

2012年01月04日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(072)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 敵キングが自身の駒によりうまい具合に囲まれているという条件で、独力で詰めることのできる駒はクイーンだけでない。

タリ対アベルキン
全ソ連選手権戦、1973年
 69.Rxa4

 ここでの唯一の問題はどちらのキングが詰まされることになるのかということである。明らかにタリは指す手に窮していた。この試合は大会の最終戦で、引き分けは翌1974年の全ソ連選手権戦の「予選免除」の権利を失うことを意味していた。確かに元世界チャンピオンにとっては考えただけでも屈辱的である。しかしカイッサ(チェスの女神)は公正さの詩的感覚を持っていた。

69…Rc4?? 70.Nd5! 黒投了

 黒は Ne7# を避けるにはルークを捨てるしかない。タリは健在なり!

(この章続く)

2012年01月03日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

朝鮮学校を無償化対象にしてはならない

2012年01月02日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

ポルガーの定跡指南(6)

「Chess Life」2002年11月号(3/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御(続き)

カナル戦法

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4 5.O-O Nxe4

6.Re1

 ぎょっとさせる 6.Nc3 は非常に面食らうが、単純に 6…Nxc3 と取れば(ただし 6…dxc3? と取るのは 7.Bxf7+! Kxf7 8.Qd5+ Ke8 9.Re1 Be7 10.Rxe4 d6 11.Bg5 cxb2 12.Rae1 となって白の猛攻が続く)7.bxc3 d5 8.Bb5 Be7 9.Nxd4 Bd7 で黒の確実な1ポーン得になる。

6…d5 7.Bxd5

 7.Nc3 は 7…dxc4(7…dxc3 なら 8.Bxd5)8.Rxe4+ Be6 9.Nxd4 Nxd4 10.Rxd4 Qf6 11.Nb5 Rc8 12.Nxa7 Bc5 13.Rf4 Rd8 となって黒が優勢である。

7…Qxd5 8.Nc3

8…Qa5

 他に良い手は 8…Qh5 9.Nxe4 Be6 10.Bg5(10.Neg5 なら 10…O-O-O 11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6)10…Bd6 11.Nxd6+ cxd6 12.Bf4 Qd5 13.c3 Rc8 で互角の局面になる。

9.Nxe4

 9.Rxe4+ Be6 10.Nxd4 O-O-O は黒が良い。

9…Be6 10.Bd2

 10.Neg5 には(10.Bg5 なら 10…h6 11.Bh4 Bb4 12.Re2 g5 13.Bg3 O-O-O)ポーンを返す 10…O-O-O が黒の最善の応手で、11.Nxe6 fxe6 12.Rxe6 Bd6 となって黒に何の問題もない。

10…Bb4

 代わりに黒がクイーンを動かせば白は 11.Bg5 で黒にクイーン翼キャッスリングをさせない。例えば 10…Qd5 なら 11.Bg5 h6 12.Bf6!、10…Qh5 なら 11.Bg5 で 8…Qh5 からの変化に移行する。

11.Nxd4 Nxd4 12.c3

 この両当たりで白が駒を取り返す。

12…O-O-O 13.cxb4

 13.cxd4 なら 13…Bxd2 14.Qxd2 Qxd2 15.Nxd2 Rxd4 で黒が1ポーン得になりかなり
優勢である。

13…Qf5

 駒の配置とポーンの形とが良いので形勢は黒が優勢である。

最終結論

 白の観点からは 4.Ng5 が最善の選択である。しかし局面は複雑で主手順でも黒にポーンの代償が十分ある。

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2012年01月02日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(071)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 クイーンは1枡離れた距離からでも非常に手際のよいことができる。この局面はフィッシャーがちょうど 38…Qh1# を狙ったところである。

メドニス対フィッシャー
ニューヨーク、1958-59年
 37…Qg1

 この詰みの狙いがなければ白はそう悪くない。しかしここでは投了しなければならない。なぜなら・・・

38.g4 fxg4#

 プロブレムの用語ではこれは「モデル」詰みということになる。キングの利き枡への監視は最後の枡にまで能率的だった。

(この章続く)

2012年01月02日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(27)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

37 ドローにしか 163ページ
『5.O-O
 無難だ。5.c3 Nc6 6.d4 で強い中央を築くのが正しい。』

「無難」とは「特にすぐれてもいないが欠点もないこと。また、間違いのないこと」という意味で、例えば「無難な出来」、「無難にやり終えた」というように使われる。だから 5.O-O は問題のない手のはずだが、それに対してなぜ 5.c3 の方が正しいと言うのだろうか。

英文『5.O-O
Harmless. Correct is 5.c3 Nc6 6.d4 with a powerful center.』

試訳『5.O-O
 当たり障りのない手。正着は 5.c3 Nc6 6.d4 で、中央が強力になる。』

37 ドローにしか 163ページ
『白は、d4 マスへ対抗するには再編成しなければならなくなった。』

英文『Now White has to regroup in order to get in d4.』

get in は他動詞で、get in d4 で「d4 と突く」ことである。5.O-O のせいで 6.c3 と突くのが1手遅れたために黒に 6…e5! と突かれたのですぐに d4 と突くことができず、d3 のあと Be3 と出してから d4 と突かなければならなくなっている。そのことを regroup と言っている。

試訳「白は d4 と突くためには陣容を再編成しなければならなくなっている。」

37 ドローにしか 164ページ
『疑問手だが、白はすでに互角を目指さなければならない状況にある。』

「疑問手」を指して互角を目指せるのだろうか?

英文『A lemon, but already White must fight for equality.』

ここでの A lemon は「欠陥品」というような意味である。本当は 7.d3 の意志をついで 8.Be3 から 9.d4 と指したいのだが変化に書かれているようにうまくいかないので泣く泣く 8.a3 と指したということである。

試訳「不本意だが、白はすでに互角を目指さなければならない状況にある。」

2012年01月01日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(070)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 作局家でも次のフィッシャー戦の局面より基本的なものを作るのはほとんど不可能だろう。この試合は世界選手権への道における初めての大会で前途を明るくした。

ケレス対フィッシャー
ブレッド、1959年
 52…g4

53.Rc4

 ケレスのために言うとこれに代わる良い手もない。チェス選手の楽天主義には限りがない。

53…Qe5#

 クイーンが横から接触させてチェックするとキングには「逃げ」場所が2箇所しかない。ここではその2箇所が自分自身の残りの駒でふさがれている。キング対クイーンの図形配置は実戦派の選手が精通しておくべき速記文字の一つである。

(この章続く)

2012年01月01日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(069)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 局面によっては限られた戦力が、創作された配置のようになっている。

フィッシャー対ペトロシアン
ブレッド、1961年
 35…Kc6

36.Kc4! 黒投了

 37.Ra7# が受からない。古きよき時代には白は36手目を指したあと黒には無意味な …Rh4+ しかないので2手詰みを「宣言」したものだった。現代の選手たちは詰みの宣言などしない。喜んで詰ませるだけである。ここに現れたルークとビショップのチームは典型的なものだが、この局面が創作問題なら多くの選手はビショップがa8の地点に行けるはずがないとけちをつけるだろう。

(この章続く)

2011年12月31日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(249)

「Chess Life」2011年9月号(1/6)

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宿敵

 チェスの一流有名選手は他のどんなプロの大会よりも賞金と栄誉を懸けて直接対決で決着をつけることがしょっちゅうある。通信チェス国際マスターのバート・ギボンズが二人の選手の棋歴をとおして記憶に残る試合を振り返る。

GMヒカル・ナカムラ
1987年生まれ、日本・大阪府出身、FIDEレイティング(2010年11月)2741(15位)

 ヒカル・ナカムラは10歳で国内マスター、13歳で国際マスター、そして15歳でグランドマスターになった。米国選手権を2度獲得し、ヨーロッパではいくつかの国際大会で優勝した。2010年にトルコで開催された世界チーム選手権戦では世界第6位の選手のボリス・ゲルファンドを撃破して第1席の金メダルに輝いた。最も輝かしい優勝は2011年のタタ製鉄大会で、アーナンド、カールセン、その他のスーパースターたちを抑えた。ブリッツ・チェスでの成績も傑出していて、オスロでの2009年BNバンク大会では当時の世界ブリッツチャンピオンのカールセンを3-1で破って優勝した。

GMアレグザンダー・シャバロフ
1967年生まれ、ラトビア・リガ出身、FIDEレイティング(2010年11月)2591(29位)

 アレグザンダー・シャバロフは元世界チャンピオンのミハイル・タリと同じ市(リガ)で生まれた。「シャバ」はタリと共に研究し、難解な局面を求めることでも知られている。GMニック・ド・ファーミアンはある局面をひどい泥仕合でシャバロフかフリッツしか指しこなせないとして、同僚GMがシャバロフに抱く敬意を表わした。シャバロフは米国選手権を2003年と2007年の2回単独獲得し、1993年と2000年は同点優勝した。そしてシカゴオープン、北米オープン、ワールドオープン及び米国オープンにも単独または同点優勝している。

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(この号続く)

2011年12月30日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス2

フィッシャーのチェス(068)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 局面の複雑さはナイト・ルーク詰みの単純版を見えにくくすることがよくある。最も単純なのは隅で起こり、タイマノフでさえフィッシャーとの番勝負第1局で重大さを軽視していた。

タイマノフ対フィッシャー
12番勝負第1局、バンクーバー、1971年
 35…Qd7

36.Nd4

 ラルセンが指摘したように白は 36.Qg5 と指して中盤戦に留まるべきだった。白は双ビショップともうすぐ1ポーンを取れることで有望な収局になると誤った考え方をしていた。黒のナイトを考慮に入れていなかった。

36…Qd6+ 37.g3

 誤算の最初のかぎ、それはf3の地点に空所ができたことだった。

37…Qb4 38.Nc6 Qb6

 この退却には大きな心理的作用があった。39.Qxa7+ からの詰みの狙いがあるので白は黒の狙いの …Qe1 をはねつけたと信じ込んだ。また次の「透視」の手筋も自慢だった。しかし白は重大なことを見落としていた。それは白のキングが詰み筋に入るということだった。

39.Nxa7 Qxe3 40.Bxe3 Re1!

 すべて取り立てていうこともなさそうに見える。しかしビショップはf3の地点を守る地点を見つけられない。実際に白が封じた手は・・・

41.Bg4 白投了

 黒は 41…Ne5 のあと白枡ビショップを消して …Nf3 と入りdポーンを突き進める。白が白枡ビショップを別の斜筋に行かせれば典型的な隅での詰み形ができる。…Ne5 から …Nf3 による詰みに対しては受けがなく、h4 と突けば別のナイトがg4の地点に侵入する。

(この章続く)

2011年12月30日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(067)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み(続き)

 この同じルークとナイトのチームは他の並びでも協力し、敵キングをあっさり惨殺することになる。

フィッシャー対ドゥランオ
ハバナ、1966年
 31…Rd8

32.Rh3! Bf8

 このどうということもなさそうなh6ポーンの守りは必要ではあってもf6の地点を無防備にした。

Nxa5!

 ここで黒は危険に気づきルークをc7の地点に引いた。さもないと次のように詰まされる。

33…bxa5 34.Nf6+ Ke7 35.Rb7+

 二つのルークは死をもってしても自分たちのキングを救うことはできない。

(この章続く)

2011年12月29日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(154)

「Chess」2011年7月号(8/11)

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挑戦者決定競技会(続き)

準決勝第2組
グリシュク 2747 5½-4½ クラムニク 2785

 クラムニクはこの番勝負の始まりでは大本命だった。10年以上も前の輝かしい番勝負の記録があり、その中には史上最強選手と広く認められていた男に対する番勝負唯一の人間の勝利もある。だから勝利以外はほとんど考えられなかった。しかしそれにもかかわらず・・・。なぜだろう?クラムニクはここ何年か絶好調ではなかった。それに両GMの間には40点弱のレイティング差しかなかった。グリシュクに分がないとする別の理由は彼が時間の一部を使ってポーカーに情熱を注ぐのが好きな「半ば超然とした」スーパーGMという感覚があるからだろう。

 賭け率がどうであれ勝利したのはグリシュクだった。誰もがその達成方法にわくわくしたわけではなかった。戦略は白では引き分けに応じ黒では頑強に受けることによって延長戦に持ち込むことのように見えた。しかしそれは起こったことの単なる理屈づけかもしれない。グリシュクは番勝負が進むにつれて「正しいチェスを打倒する」ための「邪悪な」策略に着手するよりも実戦的なやり方を取ったのだろう。それに加えて彼が大会方式にのっとって指したことは非難するわけにいかない。クラムニクにもそれなりにチャンスがあったが単にそれらをものにできなかったということだ。

 正規試合の第4局が分岐点だった。クラムニクはグリシュクの時間切迫にかけて黒のcポーンに大きなリスクを冒した。それは報われるはずだったが 31.Nf4 を見つけることができなかった。

準決勝第2組、第4局
V・クラムニク - A・グリシュク
イギリス布局

1.Nf3 c5 2.c4 Nc6 3.Nc3 e5 4.e3 Nf6 5.Be2

 クラムニクはこの正規試合の第2局では 5.d4 と指した。

5…d5 6.d4 exd4 7.exd4 Be6 8.Be3 dxc4

9.O-O

 イワンチュクは2006年コーラス大会でのアーナンド戦で 9.Qa4 と指して負けた(両者はこの布局でこれまでに2度戦った)。本譜の手の方が本手だろう。

9…cxd4 10.Nxd4 Nxd4 11.Bxd4

11…Qa5

 11…Qd7 12.Bxf6 Qxd1 13.Rfxd1 gxf6 は2002年パンプローナでのボローガン対バリェホ戦で引き分けになったので指されなくなった。

12.Bxf6

 白は …Rd8 でビショップを釘付けにされるのを嫌った。

12…gxf6 13.Re1 Rd8 14.Qc2 Be7 15.Qe4

 クラムニクはきわめて速く手を決めていた。グリシュクは8手目と9手目で熟考したがここでは彼もかなり素早く応じた。

15…Qc5

 15…Qb6!? も考えられる。16.Bxc4 なら 16…Rd4 17.Bb5+ Kf8 18.Qf3 Rg8 で黒キングがf8の地点で安全かは見方の分かれるところである。そして黒駒も相応の働きをしている。

16.Qxb7 O-O

 黒はポーンを返して展開を完了した。黒の双ビショップと活動性が二重ポーンを補っている。

17.Ne4 Qb4 18.Qxa7 Rd7 19.Qe3 Qxb2 20.Rac1

20…Qd4

 20…Qxa2 は 21.Qh6 でもっと危険そうである。

21.Qf3

 シポフはここでは白が不利だと判定し 21.Qf4 f5 22.Rcd1 Qxe4 23.Qg3+ Kh8 24.Rxd7 Bxd7 25.Qc3+ Kg8 26.Qg3+ Kh8 27.Qc3+

と指した方がよいとした。要点は黒が 27…f6? で繰り返しを避けることができないことで、そう指すと 28.Bxc4! で白の勝つ可能性が高いということである。

21…Rc8

 グリシュクは安全策をとった。21…f5!? と指すこともできて 22.Ng3 Bg5 23.Rc2 のときに 23…Qe5!

で有望だった。しかし彼は時間が非常に少なくなっていたしこの手順は判断が難しい。

22.Ng3 Rdc7

 黒は自分の大きな資産を守った。

23.Nh5!? Kh8 24.Rcd1

24…Qb2?

 24…Qc5 ならクイーンがもっと戦場の近くにいる。要点は 25.Nxf6 c3! でcポーンがはるかに脅威になるということである。4番勝負のもう後がない最終局で時間切迫のときにそのような危険を冒すのはあまりたやすいことではない。しかし皮肉なことに黒は一つの危険を避けて二つ目のそれももっと気に入らない危険にさらされるようになる。

25.Qg3 Bf8

 白から1手詰めを狙われていた。c7のルークがただ取りになるので 25…Rg8?? と受けることはできない。25…f5 は 26.Rd2! f4! 27.Qxf4 Qc3

で黒は非常に危ない状態にあり時間不足の中で危険な手を読まなければならない。だから本譜の手でなければならない。

26.Bg4!?

 面白い。クラムニクは二つの手のうち危険の多いほうを選んだ。26.Bf3 ならもっと堅実である。もちろん彼は相手の時間不足に目をつけている。

26…c3! 27.Bxe6 fxe6 28.Nxf6

28…Bg7?

 クラブの選手の大部分はここで 28…Rg7 がひらめいたと思う。そしてこの場合はその判断の方がスーパーGMの判断より優っていた。29.Qe5 Qb7 詰みを狙われたのでこちらも詰みを狙い返す。そうだろう?時にはクラブ選手の単純な考え方の方に理の多いことがある。30.g3 c2 ポーンを突いていけ。31.Rc1 Ba3 せき止めている駒をやっつけろ。32.Nh5 Bxc1 駒を取れ。33.Rxc1 Rd8! そして最下段詰みを狙え。黒が勝勢だ。チェスは単純な競技だが、時にはこれらのスーパーGMが本来よりも難しく見せることがあるようだね。さて、まじめな話に戻って、サーシャ・グリシュクのために公正を期せば彼はあまり時間がなくて真剣に読む必要のあった手の中には101もの変化があった。すべて黒にとってうまくいくということだってある。

29.Nh5 Qb7 30.Qh4

 ここは2個目のポーンを取るのに都合が悪い。30.Rxe6?? なら 30…c2 31.Rc1 Bb2 で黒の勝ちになる。

30…Rg8

 パスポーンを突くのも都合が悪い。30…c2?? なら 31.Rd8+ でたちまち詰みになる。

31.Rd8?

 クラムニクはこの手を世界選手権の望みがついえた瞬間の一つとして回顧するだろう。このときクラムニクは40手まで約10分あった。グリシュクは2分弱だった。31.Nf4! が1手詰めとe6のポーンを狙いg2のポーンを守って、普通のクラブ選手がやはり選択したかもしれない手であり正着だった(もっとも 31.Rb1 も非常に有効である)。31.Nf4 h6 32.Rxe6 のあと黒はたぶん 32…Rgc8 とでも指さなければならない。というのは 32…c2? だと 33.Rxh6+ Bxh6 34.Qxh6+ Rh7 35.Qf6+ Rhg7 36.Ng6+ Kh7 37.Qh4+ Kxg6 38.Rd6+

ときれいに即詰みに討ち取られるからである。

31…Rc8 32.Rxg8+

 32.Nf6 の方が良いが 32…Bxf6 33.Qxf6+ Qg7 34.Rxg8+ Rxg8 35.Qxg7+ Kxg7 36.Rc1 Ra8 37.Rxc3 Rxa2 38.g3

となっておそらく勝つには至らないだろう。

32…Rxg8

 32…Kxg8 33.Qg4 c2! 34.Qxe6+ Kh8 35.Qe8+ Bf8!

は十分引き分けにできるだろうが、ここでの状況では少し危険である。

33.Nxg7 Qxg7 34.Qe4 c2

 黒は引き分けには十分できるが40手に達するまで1分未満しかなかった。

35.Rc1 Rc8 36.Qxe6 Rd8 37.Qb3 Rd2 38.Qb8+ Qg8 39.Qb2+ Qg7 40.Qb8+ Qg8 41.Qe5+ Qg7 42.Qe8+ Qg8 43.Qe5+ Qg7 44.Qe8+ ½-½


グリシュクとの正規試合最終局で 31.Nf4! を見逃したことはクラムニクにとって悪夢だった

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(この号続く)

2011年12月28日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(066)

第2部 収局(続き)

第8章 昼下がりの詰み

 チェスのちょっとした予期しない楽しみの一つは、午後遅い頃の盤上に残った少しばかりの駒で詰んでしまうことがあることである。その結末は喜劇的または悲喜劇的なこともあれば息を飲むまたは腹立たしいこともある。この章で読者の参考になることは詰みの網を仕掛ける技法よりもむしろ詰みにはまるたやすさを実感することである。

 収局では進攻ポーンや他の戦力上の考慮に注意が向けられるのが普通である。次の局面でフィッシャーは7段目にポーンを確立しhポーンにも狙いをつけていた。

フィッシャー対サンチェス
サンティアゴ、1959年
 52…Bxb4

 しかし黒は直前の手で自分の苦悶を終わらせる機会を得た。

53.Bd2! 黒投了

 53…Bxd2 と取れば 54.Re7# で詰む。

(この章続く)

2011年12月28日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(065)

第2部 収局(続き)

第7章 がさつなクイーン(続き)

 クイーンが能力をフルに発揮するには開けた場がなければならないことは明らかである。次の実戦形のスタディでは驚きの初手がそれを物語る。

B.コズドン作、1959年
 4手詰め

 黒の弱みは最下段の弱点で、クイーンで守っていなければならない。それと同時に斜筋とh列での「階段のぼり」の連続チェックも恐れるに足る。しかしどこに白の狙いがあるのだろうか。その答えは・・・黒が手詰まりに陥っているということである。

1.Re1!

 黒がe列の他の地点を避けなければならない理由は以下にあげる諸変化により明らかである。

1…h2 2.Qa2+! Kh8 3.Qxh2+ Kg8 (3…Qxh2 4.Re8#) 4.Qxb8#

 または

1…Qc8 2.Qb3+! Kh8 3.Qxh3+

 または

1…Qd8 2.Qc4+!

 黒クイーンは平凡な理由で最下段の他の列に行くわけにはいかない。

 このようなクイーンの偉業からより大きな喜びを感じるのは誰だろうか。スタディの作者か、それともフィッシャーのような選手か?本章にあげた例のうち「実戦」からのクイーンの捌きは実際には一つも起こらなかった。別の意味ではスタディと局後の検討は棋譜に書かれた手と同じくらい多く「起こる」。そして何百万もの選手の味わう究極の楽しみは、このような小さな名作を並べたり、チェスの最も強力な駒が最も敏感で繊細であることがよくあることを再発見するかもしれない幸運である。

(この章終わり)

2011年12月27日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(5)

「Chess Life」2002年11月号(2/3)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

2ナイト防御(続き)

マックス・ランゲ攻撃

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d4 exd4

5.O-O

 代わりの重要な手は 5.e5 d5 6.Bb5 Ne4 7.Nxd4 Bd7、あるいは 5.Ng5 Ne5 6.Qxd4(6.Bb3 は 6…h6 7.f4 hxg5 8.fxe5 Nxe4 9.Qxd4 Nc5 となって黒が少し優勢である)6…Nxc4 7.Qxc4 d5 8.exd5 Qxd5 で互角の局面である。

5…Bc5 6.e5 d5

 6…Ng4 7.Bf4 O-O 8.h3 は白の方が良い。

7.exf6 dxc4 8.Re1+

 8.fxg7 と取るのは 8…Rg8 9.Bg5 Be7 10.Bxe7 Kxe7!(10…Qxe7 は 11.Nxd4 で良くない)11.Re1+ Be6 で黒が優勢になるので時期尚早である。

8…Be6 9.Ng5 Qd5

 9…Qxf6?? は 10.Nxe6 fxe6 11.Qh5+ でc5のビショップが落ちる。

10.Nc3 Qf5

 10…dxc3? は 11.Qxd5 でただ取りされる。

11.Nce4

 11.g4 は 11…Qg6 12.Nxe6 fxe6 13.Rxe6+ Kd7 14.Nd5 Rhe8 で黒の方が良い(もちろん 14…Kxe6 は 15.Nf4+ があるので駄目である)。

11…O-O-O

 黒は 11…Bb6? を避けた。以下は 12.fxg7 Rg8 13.g4 Qg6 14.Nxe6 fxe6 15.Bg5 Rxg7(15…h6 なら 16.Qf3 hxg5 17.Nf6+ Kf7 18.Rxe6 Kxe6 19.Re1+ Ne5 20.Qd5+ Kxf6 21.Qxe5+ Kf7 22.Qe7#)16.Qf3 Rf7(16…e5 17.Nf6+ Kf7 18.h4 h6 19.Ne4+ Ke6 20.h5 Qh7 21.Bf6 のあと白勝ちは1899年ロンドンでのチゴーリン対タイヒマン戦)17.Nf6+ Kf8 18.Rxe6 Kg7 19.Qh3 で白勝勢(1901年ハンガリーでのマローツィ対フォルガーチュ戦)。

 11…Bf8 としてg7のポーンを守る手もある。以下は 12.Nxf7 Kxf7(12…Bxf7 は 13.Nd6+)13.Ng5+ Kg8

14.g4(14.Nxe6? は 14…Re8 15.fxg7 Bxg7 16.Nxc7 Rxe1+ 17.Qxe1 Be5 18.Nd5 Kf7 で白が猛攻にさらされる)となりここで

 a)14…Qg6 は 15.Rxe6 gxf6 16.Qf3 で白の攻撃が順調になる。

 b)14…Qxf6? は有名なフィン対ニュージェント戦(米国、1898年)のように 15.Rxe6 Qd8 16.Qf3 Qd7 17.Re7!! で負ける。

 c)14…Qd5 は 15.Nxe6 Ne5? 16.f7+!(16.Nxc7 は 16…Nf3+)16…Kxf7(16…Nxf7 なら 17.Nxc7)17.Ng5+ Kg8 18.Rxe5! Qxe5 19.Qf3 となりデンカー対アダムズ戦では黒投了(ニューヨーク、1940年)。

12.g4

 12.fxg7 は 12…Rhg8 13.Nxe6 fxe6 14.Bh6 Bb6 で混戦になる。

12…Qe5

 12…Qd5? は 13.fxg7 Rhg8 14.Nf6 で良くない。

13.Nxe6

 13.Nf3 は 13…Qd5 14.fxg7 Rhg8 15.Nf6 Qd6 で形勢不明である。

13…fxe6 14.fxg7 Rhg8 15.Bh6 d3 16.c3

 16.cxd3 Rxd3 は黒が優勢である。

16…d2 17.Re2 Rd3

 いい勝負である。しかし白はキングの囲いのポーンが弱体化しているので注意が必要である。

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2011年12月26日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(064)

第2部 収局(続き)

第7章 がさつなクイーン(続き)

 派手な「階段のぼり」は多くの古典収局で見られる。次の局面は純然たる簡潔さが意外である。

R.バーガー作、1969年
 白先白勝ち

 白クイーンがe4からh4のチェックで「接近」できれば勝てるのは明らかだろう。しかし問題はどうやって手を渡さずに(即ちチェックの連続で)e4の地点に行くかである。

1.Qd5+ Kh2

 キングの行ける所は次の三つの理由のいずれかによりh2かg2に限られる。チェックをかけられたとき Qxh1 によってクイーンを取られるのを避けるため、Ng3+ による両当たりを避けるため、そして Qg3# を避けるため。

2.Qd6+ Kg2 3.Qc6+!

 白クイーンはb7の地点に向かっている。黒は 3.Qg3+ には 3…Kf1 で大丈夫だし、最初の局面で白が空きチェックをかけても空を切るだけである。

3…Kh2 4.Qc7+ Kg2 5.Qb7+ Kh2 6.Qh7+

 これがチェックをかけてe4の地点に至る唯一の経路である。

6…Kg2 7.Qe4+ Kh2 8.Qh4+ Kg2 9.Nf4+ Kg1 10.Qe1+ Kh2 11.Qf2+

 これで次の手で詰みになる。

(この章続く)

2011年12月26日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(26)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

33 ドロー・マスター 146ページ
『戦略的には白の勝ちだが、細々とした問題がかなり残っている。』

英文『White has a strategically won game, but the technical problems are considerable.』

technical は「細々とした」という意味にはなりそうもない。

試訳『戦略的には白の勝ちだが、技術的な問題がかなり残っている。』

36 譲り合い 162ページ
『43.Rxe5! Ne4+(黒にこれ以上の手が見つからないのが興味深い。43…Ng4+』

英文『43.Rxe5! Ne4+(it’s fascinating that Black has no better discovery; if 43…Ng4+』

discovery は discovered check のことである。

試訳「43.Rxe5! Ne4+(黒にこれより良い開きチェックがないのは白にとって幸いである。43…Ng4+」

37 ドローにしか 163ページ
『控えめな 6…e5』

英文『The sober 6…e5』

試訳「冷静な 6…e5」

2011年12月25日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(063)

第2部 収局(続き)

第7章 がさつなクイーン(続き)

 クイーンは斜筋と横列の「焦点」から正確にチェックすることによって永久チェックを保ち続けることがよくある。同じ大会で上記の対戦の11日前にフィッシャーはパル・ベンコー相手にポーンをひったくり見るからに圧倒的な局面になった。

フィッシャー対ベンコー
キュラソー、1962年
 19.Nxe6

 ベンコーは 19…Bxe6 と取って結局負けた。千日手を望んでいれば(またはそれが見えていれば)次の手順でそれができていた。

19…Bxb2+ 20.Kxb2 Qb4+ 21.Kc1 Qa3+ 22.Kd2

 ここまで白は逃れているように見える。22…Qb4+ とチェックをかけると 23.c3 Qb2+ 24.Bc2 Re8 となって黒は十分乱戦に持ち込める。しかし次の手ならば証明終わりと言える。

22…Qa5+

 なぜなら 23.c3 だとa2の地点からチェックがかかって(23…Qxa2+)、とたんにナイトが落ちるからである。

(この章続く)

2011年12月25日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス