チェスの玉手箱

フィッシャーのチェス(210)

第5部 着想(続き)

第20章 読むだけ(続き)

 手始めにフィッシャーの指し手の背後にある着想がどのように2手手筋と同じくらい具体的で明快かを明らかにしていきたい。彼がある局面の対処で特定のやり方を選ぶ理由は、変化の羅列よりも一つの文で言い表すことができる。例えば・・・

パルマ対フィッシャー
ザグレブ、1970年
 22.Bxc4

 フィッシャーは序盤で1ポーン得になった。しかしこの局面をざっと見渡すと白が引き分けかそれ以上の結果になるように思われる。白の両ルークとビショップは素通しの筋に利いている。ビショップは黒の弱い二つのポーンに当たっている。白と黒のビショップは異色ビショップになっていて、白陣には弱い黒枡がない。ほとんどの選手は黒側を持てばここで 22…d5 と突いてdポーンを「救い」白ビショップを当たりにするだろう。フィッシャーの受け取り方は「すべてを守ろうとしてもうまくいかない。試合を続けるためには反撃にかけなければならない。」

22…Re4! 23.Bxf7 Rf8!

 白ビショップに斜筋の選択を迫った。24.Bb3 はb列をふさいでしまう。そこで・・・

24.Bh5 Rxf4

 …Rh4 から …Be5 の危険な狙いによりh2のポーンが落ちるので、突然dポーンが守られている。黒のクイーン翼のポーンが滅亡する運命のように見えるけれども黒はキング翼での狙いによりこの試合に勝つことができた。

(この章続く)

2012年05月20日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(209)

第5部 着想

第20章 読むだけ

 着想のないチェスは無味乾燥でもっと悪いことに面白みがない。チェスに飽きた選手はたぶん能力が頭打ちになっているのだろう。彼に見える最初の手が通常彼の指す手になる。彼は手筋をすべて習得し布局定跡と収局常形を理解していると感じている。しかし大局観による指し方の巧妙さがもどかしくなっていて、すべての局面からもっと何かを引き出そうとする時間が割に合わないと感じている。そのような選手に突きつけることのできる最も辛辣な批判は「彼には何も着想がない」である。フィッシャーはよくこの描写をずばり用いていた。

 コンピュータにとって最も定義しにくいのはチェスの局面の背後にある着想である。戦術は着想ではなく、着想の実行である。この文脈における着想とはいろいろな戦術の可能性を考慮し評価することである。以降の章ではポーンの使用に対する駒の使用の評価、延びすぎとなる可能性に対する陣地の広さの価値、手損に対するポーンあさりの戦力得など、広範な分類を考えていく。

(この章続く)

2012年05月19日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(269)

「Chess」2012年2月号(1/4)

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レッジョエミーリア

しくじりの悲劇はアニシュ・ギリの初めての超一流大会優勝で終わる

 第54回レッジョエミーリア大会がクリスマスから新年にかけて開催され、17歳のGMアニシュ・ギリがオランダ選手として初優勝を飾った。意外だったのはギリが優勝したことよりも、ナカムラがずっと突っ走っていながら最後の3戦で悲劇的な3連敗をきっして優勝を逃したことだった。これさえも超一流GMの最悪のメルトダウンではなかった。ワシリー・イワンチュクは大会中盤で放心の4連敗をきっし、その中のあきれた1局では発狂したかと思わせるほどだった。

 「ロンドンチェスクラシック人」の一人はオリンピアからの仲間がクリスマスの晩餐を楽しんでいるに違いない間にまた大会に参加した。ヒカル・ナカムラは短期間に3回連続大きな大会に参加するために北イタリアの古都にはるばるやって来た。この大会にはロンドンの大会に参加した2800超の超一流はいなかったが、それでもイワンチュクとモロゼビッチは二人とも彼よりレイティングが上なので(この大会時点での11月の順位でも、翌2012年1月の順位でも)かなり厳しい顔ぶれだった。神童のファビアノ・カルアナとアニシュ・ギリもいたし、あまり知名度はないがそれでも高いレイティングの二キータ・ビチュゴフもいた。

 ナカムラはビチュゴフ戦の快勝で第1回戦でモロゼビッチと並んだ。

レッジョエミーリア、2011年12月
N.ビチュゴフ – H.ナカムラ

31.e4?!

 白はポーン損で苦境にいるが、それでもこの手は黒のうまい清算で勝利への道を容易にさせてしまった。

31…Nf4! 32.Rxd8

 32.Bxe6? は 32…Ne2+ で破滅する。

32…Rxc4! 33.Bxf4 Kxd8 34.exf5

 34.Bxh6 なら 34…fxe4

34…Bxf5

35.Be3

 35.Bxh6 c2 36.g4 Be4 でビショップでc1のルークに紐をつけておく方がましだったが、黒はa4のポーンを取ることができ、連結3パスポーンで白を圧倒するだろう。

35…c2 36.g4 Be4 37.Bb6+ Kd7 38.Bxa5? Rd4 0-1

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(この号続く)

2012年05月18日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(208)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 次の面白い局面でナイトはクイーン翼のポーンの守りで同じような楯の役割を果たしている。しかしそれ以上のことができたはずだった。

メキング対フィッシャー
ブエノスアイレス、1970年
 30.Qc1

 フィッシャーは彼にしては珍しい際どい捨て駒で一見膠着状態のこの局面に持ち込んでいた。白はa5のナイトのためにクイーン翼で進展を図ることができない。そしてフィッシャーは 30…Bc4 31.Qc2 Bb3 で千日手による引き分けを選んだ。その考えはルークの進入を許すような交換を黒が強いることができそうもないということだった。しかし手段はあるものである。

30…Nc4! 31.Qb1 Nd2! 32.Qc1 Bc4 33.Qa3

 33.Qc2 は実戦と似ているが 33…Bxe2 にキングで取り返さなければならず(ナイトがクイーンのe2への利きを遮断している)、34…Nc4 でルークのd2の地点への侵入が防げず黒の勝ちになる。

33…Bxe2 34.Kxe2 Nc4

 クイーンがぶらつき回ればルークを取られるのでそうできない。フィッシャーの「たら・れば」だった。

(この章・部終わり)

2012年05月18日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(207)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 フィッシャーがまだかなり優勢だったにもかかわらずケレスは決め手を与えず次の局面に達した。ここで彼は再び敵クイーンから身を守るやり方を披露した。

ケレス対フィッシャー
キュラソー、1962年
 56.Nf1

 ポール・モーフィーについてのどの本や記事も彼の「才気」、展開の重要性の理解、それに布局の鋭さを強調している。フィッシャーはモーフィーの同時代人に対する最大の強みが正確さであることを初めて指摘した。この局面でフィッシャーは正確な 56…Rxa3 を逃したことで自分自身を叱責した。この手の意味はあとで …Ra1 と指したとき黒がナイトを守らなければならないので重要な先手をかせぐことができるということである。フィッシャーはいみじくも「下手(へぼ)はチェックが見えるとチェックする」と言った。

56…Rh3+ 57.Kg1 Rxa3 58.d5 g3 59.Bd7!

 この受けの妙手は …Ra1 がもう先手にならずルークがf列に回れないので可能になった(白キングがh1にいたら …Ra1 に Kg2 が必然で、…Ra2+ から …Qf6 のあとルークがf2に行ける[訳注 56…Rxa3 57.d5 g3 58.Bd7 Ra1 59.Kg2 Ra2+ 60.Kg1 Qf6 61.Bf5 Rf2])。ビショップがここに行った意図は黒クイーンを Bf5 で遮断して黒クイーンにc5の地点でチェックさせないようにしてdポーンを突けるようにするためである。込み入っているが論理的でうまく働く。

59…Ra1 60.Bf5! Qf6

 結局引き分けに終わった(結末は第7章「がさつなクイーン」を参照)。

(この章続く)

2012年05月17日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(174)

「Chess Life」2012年2月号(7/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 ジェフリー・ションは7-2というみごとな成績で大会を終えた。12歳以下オープン部門で5位に入るには十分だった。それでも昨年の信じられないような9-2という成績と順位判定による2位(同点1位だった)のあとでは少し残念だったに違いない。私は彼の棋風が気に入っている。うまくてきびきびして攻撃的なチェスで研究が行き届いている。彼は年齢別を上がるにつれて毎年のように優勝争いに加わるだろう。次の試合ではジェフリーが決まり切った定跡を外して相手の意表を突いた。黒はたちまち苦境に陥って防御の機会がなかった。

ルイロペス [C77]
FMジェフリー・ション(FIDE2056、米国)
ジョシュア・ジョンソン(FIDE1862、トリニダードトバゴ)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第2回戦、2011年11月19日

 この試合でジェフリーは相手を戦術的に負かした。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.d4!?

 これは白の仕掛けることのできる多くの「はめ手」っぽい戦術の一つである。

5…b5

 この手からの黒の成績はひどい。5…exd4!? 6.e5 Ne4 7.O-O Be7 8.Nxd4 Nxd4 9.Qxd4 Nc5

なら実戦の進行よりも安全でずっと良かった。

6.Bb3 exd4 7.e5 Ng4 8.O-O Be7 9.Bf4

9…Bb7

 9…h5!? は 10.c3 g5 11.Bd2 Ngxe5 12.Nxe5 Nxe5 13.cxd4 Nc6 14.Qf3

となって、黒キングが安全でないので白に代償がある。

10.Bd5 Qb8 11.Bxc6 dxc6 12.Nxd4

 既に黒は大苦戦である。

12…Nh6 13.Bxh6 gxh6 14.e6 c5 15.exf7+ Kf8 16.Ne6+ Kxf7 17.Nxc5!

 黒キングを裸にしポーンを取り返した。

17…Rg8 18.Nxb7 Qxb7 19.g3

 この受けで黒は攻撃にも防御にも希望がなくなった。

19…Rg5 20.Nd2 Bf6 21.c3 Rd8 22.Qc2 Rg6 23.Rad1 Qc8 24.Ne4 Rdg8 25.a4 h5 26.axb5 h4 27.bxa6 h3 28.Qd3 Be7 29.a7 Kg7 30.Qd7 Qf8 31.a8=Q!

 このそらしの手筋でビショップが取れ勝ちが決まる。

31…Qf3 32.Qxe7+ Kh8 33.Ng5 黒投了

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(この号続く)

2012年05月16日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(206)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 有名な試合でフィッシャーは深遠な防御戦略を教えられた。この試合の教訓は本書の色々な章で取り上げられている。

ケレス対フィッシャー
キュラソー、1962年
 26.Qe6

26…Nd5?

 この手のために白は相手の手を制限する捌きの好手を指して中盤での破局を救うことができた。ケレスはビショップをc6の地点に置くことにより黒の大駒を働かなくさせることができる。フィッシャーは 26…Nf5 で決まりをつけることができた。そのとき白駒は …Ng3 の狙いのために動きが束縛される。例えば 27.Nh2 Be3+ 28.Kh1 Ng3# である。

27.Nh2! Ne3 28.Bc6!

(この章続く)

2012年05月16日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(205)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 両当たりに対する防御手段の一つは攻撃されている駒の一方で他方を守ることである。別の方法は相手の手筋に「乗って」それが単純化の単なる1手段にすぎないことを示すことである。

フィッシャー対ギテスク
ライプツィヒ、1960年
 27…e4

28.Rxe4!

 フィッシャーはポーンをひったくり、それが収局で勝つための最も容易な手段であることを証明する。28…Bc6 のあと一方のルークで他方を守り(29.Ree7)、ルーク収局は楽に勝ちになる。

(この章続く)

2012年05月15日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(25)

「Chess Life」2003年8月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

オランダ防御現代レニングラード戦法の 7…Qe8(続き)

戦型3 8.d5

 この手の意図は黒が …e7-e5 と突いてきたらアンパッサンで取ることである。

8…Na6

 他には 8…a5 と突く手も面白い。

9.Rb1

 9.Nd4 も当然考えられる手で(e2-e4 で中央から突っかける準備)、9…Bd7(9…Nc5 なら 10.b4)10.e4 fxe4 11.Nxe4 Nxe4 12.Bxe4 Nc5 13.Bg2 a5 14.Bg5 Qf7 15.Qd2 のあと 15…e5 16.dxe6e.p. Nxe6 17.Nxe6 Bxe6 なら互角のようである。

 数年前ニュージーランドで指した次の試合には個人的に楽しい思い出がある。9.Be3 Bd7 10.Qd2 Ng4 11.Bf4 Nc5 12.h3 Nf6 13.Nd4 c6 14.Rac1 Nce4 15.Nxe4 Nxe4 16.Bxe4 fxe4 17.Kg2 Qf7 18.dxc6 bxc6 19.Bh6 c5 20.Bxg7 Kxg7 21.Nb3 Qe6 22.Rh1

22…Rxf2+! 23.Kxf2 e3+ 24.Qxe3 Rf8+ 25.Qf3 Bc6 26.Qxf8+ Kxf8 27.Rhf1 Ke8 28.Rc3 Qf5+ 29.Ke1 Qb1+ 30.Kf2 Qf5+ 31.Ke1 Qxh3 32,Nd2 Bg2 33.Rf2 Qh1+ 34.Nf1 h5 35.e3 Bxf1 36.Rxf1 Qg2 37.Rb3 Qxg3+ 46手目で相手が投了した(カー対ポルガー、ウェリントン、1988年)。

9…Bd7 10.b4 c5 11.dxc6e.p.

 11.bxc5 と取るのは戦略的に間違っている。というのは 11…Nxc5 と取られて黒ナイトがc5の地点に絶好の拠点を得ると共に白の出遅れcポーンをうまく押さえることになるからである。

11…bxc6

 クラムニク対マラニウク戦(モスクワオリンピアード、1994年)では 11…Bxc6 12.Qb3!(一見当然の 12.b5?! は 12…Bxf3 13.Bxf3 Nc5 14.Be3 Rc8 で黒陣が堅固である)12…Ne4 13.Bb2 で白が優勢だった。

12.b5

 12.Nd4 なら黒は面白いけれどいくらか危険な捨て駒の 12…Nxb4 13.Rxb4 c5 を敢行することができる。しかしそれよりも 12…Rb8 または 12…Rc8 と指す方が安全である。白のもっとおとなしい 12.a3 には黒は 12…Nc7 13.Bb2 Ne6 14.Na4 c5 15.b5 f4 16.Nc3 g5 と指して攻撃の可能性に恵まれた(アンツネス対M.グレビッチ、1994年)。

12…cxb5

 取らずに 12…Nc5 と指すこともできる。

13.cxb5 Nc5 14.a4

 代わりに 14.Nd4 は 14…Nfe4 15.Nxe4 Nxe4 16.a4 Qf7 となってどちらも指せる分かれである。

14…Rc8 15.Bb2 a6 16.Nd4 axb5 17.axb5 Nfe4

 形勢は互角である(グリーンフェルド対マラニウク、1993年)。

戦型4 1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nh3

 この変わったナイトの展開方法は 4.Nf3 と比較した差異を黒が無視すると困難に見舞われることになる。ここでの白の着想は黒が通常どおり …Bg7、…O-O そして …d7-d6 と指した場合黒陣にできるe6の地点の弱点に(白のd5のポーンをさらに強化しながら)つけ込むことである。早く h2-h4 と突いて直接攻撃するもっと過激なやり方はこのあとの実戦例に出てくる。

4…Bg7

 意外なことに …e7-e5 で解放する作戦を急ぐためには、次のように黒の黒枡ビショップの展開を遅らせる方が良いようである。4…d6 5.Nf4 c6 6.h4 e5 7.dxe5 dxe5 8.Qxd8+ Kxd8 9.Nd3 Nbd7 10.Bg5 Be7!

ここに違いが出る。11.Nd2 e4 12.Nf4 Ne5(エインゴルン対ドルマトフ、1990年)

5.Nf4

5…O-O

 5…c6 なら 6.h4 d6 7.Nc3 e5 8.dxe5 dxe5 9.Qxd8+ Kxd8 10.Nd3 Nbd7 11.e4 Re8 12.Bg5 h6 13.Bd2 Nb6 14.O-O-O で白が収局で少しだが着実に優勢になる(スミスロフ対オル、1993年)。

6.h4 d6 7.c3 c6 8.Qb3+ d5 9.h5 g5 10.h6 Bh8 11.Nd3 g4 12.Bf4 Nbd7 13.Nd2 e6 14.f3 Qe7 15.Qb4 Qf7 16.Bd6 Rd8 17.O-O-O b6? 18.Ne5! Nxe5 19.dxe5 Ne8 20.Qf4 Ba6 21.Ba3 Qg6 22.fxg4 Bxe2 23.gxf5 exf5 24.Bh3 Bg4 25.Nf3 Bxf3 26.Bxf5 Bxe5 27.Be6+ 黒投了(サフチェンコ対マラニウク、1989年)

結論

 現代レニングラード戦法は攻撃的で戦術派の選手にとっては黒番に向いた布局である。黒は勝ちを求めて指すことができ、相手が予期していないときは特にそうである。得意戦法の一つにこの布局を取り入れるつもりならばもっと深く学び研究することをお勧めする。

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2012年05月14日 コメント(0)

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フィッシャーのチェス(204)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 フィッシャーは戦力得できるならばいつも自分のキングのかなりの危険も省みなかった。次の局面ではクイーンの代わりに3駒を得て相手の攻撃をはねつけた。

ペレス対フィッシャー
ライプツィヒ、1960年
 15.f3

15…hxg5! 16.hxg5 Bd6 17.Qe1 Ne8 18.Qh4 Kf8 19.Nf5 exf5! 20.Rde1 Qe6!

 そして収局で勝ちを収めた。

(この章続く)

2012年05月14日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(203)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 挿入手に対する応手はそれが来ることを見通し・・・それを避けることである。次の局面でフィッシャーは駒の取り返しが魅力的ではあったけれどもきちんと実践した。

フィッシャー対タリ
ライプツィヒ、1960年
 18…Rxg2+

 19.Kxf1 と単純に取る手はあまりにも見えすいているのでフィッシャーは再考しなければならなかった。その手はルークを当たりにしビショップを取り返し黒クイーンを当たりの状態においたままにする。しかしそのとき鮮やかな挿入手の 19…Rxh2! 20.Nxc7 Rxh7 が来て「白」の方が二重の狙いに直面することになる(…Kxc7 または …Rh1+)。だから・・・

19.Kh1! Qe5 20.Rxf1 Qxe6 21.Kxg2 Qg4+

でチェックの千日手になった。

 この試合はフィッシャーの「不滅の60局」に採用された11月1、2、3日の3局の1局目で、波乱に富んだ日々だった。

(この章続く)

2012年05月13日 コメント(0)

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フィッシャーのチェス(202)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 攻撃が吹き荒れそうなとき駒の迅速な中央集結が唯一の対抗手段となり得ることがよくある。フィッシャーはいくつかの試合でクイーンの転換で形勢を逆転させてきた。

フィッシャー対オウラフソン
ストックホルム、1962年
 19…e5

20.Qb5!

 ビショップを引くと黒にキング翼のポーンを突く余裕を与える。白クイーンはこれから盤中をかけめぐる。

20…a6

 20…Rfd8 でナイトを守るとさらに中央集結を許し 21.Qd5 Rf8 22.Rxf7! が生じる。

21.Qxd7 exd4 22.Qf5!

 これは守りも兼ねている最も基本的な勝ち方で、「優勢なときは単純化せよ」に沿っている。白は収局を簡単に勝った。

(この章続く)

2012年05月12日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(268)

「Chess」2012年1月号(7/7)

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第3回ロンドンチェスクラシック(続き)

 カールセンは第2回戦のルーク・マクシェーン戦でポーンの犠牲がほとんど効果がなく苦戦した。しかし次の第3回戦ではヒカル・ナカムラにまた勝った。カールセンとナカムラはこの1、2年ライバル意識が激しくなってきた。そしてどの試合も身震いのするような対局になっている。とはいうものの対戦成績は今のところかなり一方的になっている。2011年はこのロンドンでの対局の前でカールセンが正規試合で3勝をあげている。いつものようにカールセンの布局の方針はあまり定跡に深入りせずに、相手を突いたり叩いたりして自分の洗練された技量を発揮させることのできる局面に持ち込むことだった。

 ナカムラはルークをどこへ配置したらよいかまったく分かっていなかった。世界ナンバーワンに必要だったのはその励ましだけで、相手のどっちつかずの態度につけ入っていった。試合後ナカムラはどこで形勢を損じたのか分かりかねていた。一方気をよくしたカールセンはサッカーの試合の観戦に急いだ。

第3回戦
M.カールセン – H.ナカムラ
ジオッコピアニッシモ

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Nf6 4.d3 Bc5 5.c3 d6 6.Bb3 a6 7.Nbd2 Ba7 8.Nf1 h6 9.Ng3 O-O 10.O-O Be6 11.h3

11…Qd7

 もちろんカールセンはいつもの超おとなしい試合を指している(イタリア語の布局名の意味とちょうど一致している)。たぶんナカムラはここでちょっと激しく 11…d5 と突いて事を荒立てていった方が良かっただろう。実戦の進行に見られるようにカールセンはしだいに得意とする捌きを中心とした局面に持っていった。

12.Be3

 「Be3 が指せてほっとした。」(カールセン)

12…Ne7 13.Nh4

13…Ng6

 h3 と突くときは相手が 13…Bxh3 と切ってきても大丈夫か必ず確認しておかなければならない。ここでの場合白の読み筋は 14.Bxa7 Rxa7 15.gxh3 Qxh3 16.Ng2!(16.Nf3? は 16…Ng6! で負ける)16…Ng4 17.Re1 Qh2+ 18.Kf1 Qh3 のあと 19.f3!

で勝勢になるということである。両選手ともこの手順は読んでいた。しかし実戦の手も白にわずかな優位を与えるので少し疑問である。そしてわずかな優位が時にはカールセンの必要とするすべてであることがある。

14.Nhf5 Ne7 15.Nxe7+ Qxe7 16.Bxa7 Rxa7 17.f4 c5

 「白の方が指しやすいと思う。」(カールセン)ナカムラはあとで14手目と15手目のあたりで時間を使いすぎたと認めた。ナカムラが指しにくいと感じていた印だった。

18.Bc2!?

 カールセンは 18.a4 も考えていたと言った。一方クラムニクはビショップをb3から引くことに驚きを表わした。私の分析エンジンも少し驚いていた。おそらくカールセンと他の一流選手との間のこの微妙な違いが彼の独特な棋風を形成しているのだろう。

18…b5 19.Qd2 Rb7 20.a3 a5 21.Rf2

 「この局面は黒が良いと思う。どうしてこうなったのか少し戸惑っていた。」(ナカムラ)ついでながら、負けたあと検討室に来たナカムラは褒められてよい。このような率直な感想を述べる彼は誠実である。

21…b4 22.axb4 axb4 23.Raf1 bxc3 24.bxc3 exf4 25.Rxf4 Nh7 26.d4 cxd4 27.cxd4 Qg5 28.Kh2 Nf6 29.Bd1

29…Rfb8

 「この手で負けたと思う。ちょっと変な手だった」とナカムラは検討室で嘆いた。まだどうして負けたのか全然理解できていなかった。彼は白からの交換損の犠牲を読んでいたが対局中は心配していなかった。慰めにはならないがチェスエンジンもこの局面を理解していないようである。ナカムラは 29…Ra8 で 30.h4 に 30…Qa5 でクイーン交換を求めるようにするのはどうかとも言った。29…Ng4+!? も示唆した。

30.h4 Qg6 31.Rxf6!

 これは決め手とはとても言えないが局面を紛糾させ自分の好きな展開に持ち込んでいる。白は交換損の代わりに黒のポーンを弱体化させ、黒のキングとクイーンに対し駒を用いた戦いができる。一方黒のルークはどちらも報復の効く地点に到達するにはまだ遠い。

31…gxf6

32.Qf4

 32.d5 Bd7 33.Qc3 がディープリブカの推薦手順だが「ディープカールセン」の考えは異なる。

32…Rb2

 ナカムラの直感はルークを利かせることだったが、結果論から言えば 32…Rd8 のような手で防御態勢を固めた方が良かったかもしれない。

33.Bh5 Qg7 34.Bf3

34…Ra8?

 ヒカルは時間切迫と局面のプレッシャーで手がすくみ始めた。34…Rd8 35.Nh5 Qg6 36.d5 Bc8 37.Nxf6+ なら白が優勢でも黒もまだ戦えた。

35.d5 Bc8 36.Nh5 Qf8

 36…Qg6 37.Qxd6 も黒が大苦戦である。

37.Nxf6+ Kh8

 駒割を見れば黒はまだ大丈夫だが、黒キングは非常に弱く白キングは安泰である。

38.Rc1!

 ちょっと皮肉な感じがする。相手の2ルークに対し白のルークは1個だけだが、c1のルークの方がはるかに威力がある。このルークはc7に来て Rxf7 から Qxh6+ で詰みを狙うか、Rc6 から単に Rxd6 を狙っている。

38…Kg7

 例えばa8のルークが 38…Ra6 と浮くと 39.Rxc8! から 40.Qxh6# で詰まされる。

39.e5!

 この手は対角斜筋を開けるだけでなくビショップのためにe4の地点も空けている。黒駒は働きをなくしていて終局は近い。

39…dxe5 40.Nh5+

 40.Qxe5 でもほとんど同じように勝つ。

40…Kh7 41.Be4+ 1-0

 以下は 41…Kg8 42.Qg3+ Kh8 43.Qxe5+ f6 44.Qxb2 で決まる。本局はカールセンの傑作だった。

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(この号終わり)

2012年05月11日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(201)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 次の複雑な手筋は相手がバッテリーの覆いを取る同様の手段を読んでいたらフィッシャーにとって裏目に出るところだった。

ベンコー対フィッシャー
ニューヨーク、1966-67年
 23…Bh6

 ここでベンコーは 24.Re1 と指したが 24…Rec8! 25.Nxa8 Rc2! となって開き攻撃の狙いはルークの丸損の代償として十分だった。直接の狙いは …Bf3+ でg2のビショップを取ることである。白は 26.Rxe2 と取らなければならずフィッシャーは最終的に試合に勝った。しかし白は次の手順で勝てるはずだった。

24.Nxe8 Bxc1 25.Nc7 Bxb2 26.Rb1 Rc8 27.Nd5 Rc2 28.Ne3!

 バッテリーの「発射」駒に対する当たりですべての毒牙が抜かれる。

(この章続く)

2012年05月11日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(200)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 挿入手はすべて攻撃に反撃で応えるという意味で防御の手法である。以下にいくつかの着想をあげる。

ヨハンネッセン対フィッシャー
ハバナ、1966年
 25…Rxf7

26.Nf4

 この手は 27.Ng6+ を狙っているのはもちろん、明らかに相手の対角斜筋上の狙いも「帰還」で防いでいる(26…Qxg2+ 27.Nxg2)。

26…Rxf4! 白投了

 27.Bxc6 なら 27…Rxh4 28.Bxb7 Rxh3! で 29…Rxg3+ からg5のビショップを取る狙いが残っていて黒が交換得か複数ポーンの得になる。これはバッテリーを隠している駒を取ることによりバッテリーを無害にする「反開き」捌きと呼べるかもしれない。

(この章続く)

2012年05月10日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(173)

「Chess Life」2012年2月号(6/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 マリヤは次の試合で得意の反シチリアの武器(側面ギャンビット)を用いてうまくいった。白の展開と圧力がひどいポカを引き出した。

シチリア防御 [B20]
マリヤ・オレシュコ(FIDE1694、米国)
カラムチェティ・プリヤムバーダ(FIDE1782、インド)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

 マリヤはアガタ・ビコフツェフと共に6½点で我々の12歳以下女子での最多得点者の一人だった。

1.e4 c5 2.b4!?

 側面ギャンビットは今日ではあまり見られないややこしい布局である。その意図は黒のcポーンをどかせて中原を支配することである。

2…cxb4 3.a3 bxa3?!

 白はこの手のあと望外の態勢になる。3…d5 でギャンビットを拒否するのが最善で、4.exd5 Qxd5 5.Nf3(5.axb4?? Qe5+ 0-1 は1984年バークレーでの全米選手権戦でのシラジ対ピーターズ戦の不運な試合だった)5…e6 6.Bb2 Nf6 7.c4 bxc3e.p. 8.Nxc3 Qd8

は昨年ギリシャで開催されたこの大会でコーチのアルメンが用意した素晴しい研究手順だった。そのベトシュコ対トロフ戦では白はポーン損に加えて孤立ポーンを抱えて全然攻撃の機会がなかった。

4.d4

4…g6

 2回戦前で白のマリヤに対しノミネルデネは次のように指してきた。4…d6 5.Nf3 Nf6 6.Bd3 e6 7.O-O(7.c3 Be7 8.Qe2 O-O 9.e5 dxe5 10.dxe5 Nd5 11.h4

なら白がキャッスリングせずにキング翼で狙いを作り出すのが少し容易かもしれない。Rh1 が Bxh7 から Ng5 の狙いに役立つかもしれない)7…Be7 8.Bxa3 O-O 9.e5 Ne8 10.Nc3

フランス防御型の局面で白は攻勢に出られる。

5.Nf3 Bg7 6.Bc4 d6 7.O-O Nf6 8.e5!?

 白は攻撃的に指さなければならない。さもないと代償が消えていく。

8…dxe5 9.Nxe5 O-O 10.Bxa3

 白の2ビショップが黒のキング翼に大きな圧力をかけていて黒の展開を難しくさせている。

10…Nc6 11.Nxc6 bxc6 12.Re1 Re8 13.Bc5 a5 14.Qf3

14…Bb7??

 黒は圧力の中でつぶれた。14…Ba6 なら受けきる可能性があった。

15.Qb3!

 この露骨な両当たりで大きな戦力得になる。

15…Ba6 16.Bxf7+ Kh8 17.Bxe8 Nxe8 18.c3 Bf6 19.Qa3 Bd3 20.Bxe7 Bxe7 21.Qxe7 Qxe7 22.Rxe7 a4 23.Na3 Nd6 24.Re6 Rd8 25.f3 Kg7 26.Re7+ Kh6 27.Rc7 Bb5

28.h4

 28.Rc1! はどうだろう。

28…Re8 29.g4 g5 30.hxg5+

 30.Nxb5!? cxb5 31.Rc6 なら黒の残存戦力が身動きできなくなる。

30…Kxg5 31.Kf2 Kf4 32.Nxb5 cxb5 33.Rd7 Re6 34.Rb1 Rh6 35.Rxd6!

 この単純化の手筋で黒のわずかな希望をつぶした。

35…Rxd6 36.Rxb5

 詰みの狙いで白ルークが黒のパスポーンの背後に回ることができる。

36…Rf6 37.Ra5 h5 38.Rxh5 a3 39.Ra5 a2 40.Rxa2 Rh6 41.Kg2 黒投了

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(この号続く)

2012年05月09日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(199)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 2駒が同時に当たりになっているとき、そのうちの一つが自分の狙いを持って動くという受けの手段もある。次の局面ではソ連のグランドマスターで世界選手権挑戦者候補が1手の手筋を見落とした。

コルチノイ対フィッシャー
キュラソー、1962年
 31…Nxc6

32.Rc1

 当然の 32.dxc6 の代わりに白は進攻したポーンを失わずに駒を取り返そうとした。この釘付けは黒のナイトとクイーンに対する二重当たりになっている。

32…Qa7!

 黒クイーンが攻撃の筋から逃れて敵のクイーンを当たりにした。このクイーンは「帰還」によって守られている。

33.Qxa7 Nxa7

 そして黒が駒得になった。「帰還」は第16章「開き攻撃」の終わりでもっと詳しく説明した。

(この章続く)

2012年05月09日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(198)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために(続き)

 同じ相手はフィッシャー戦で次の局面まで優勢を保ってきたあとはるかに基本的な幻覚をおかした。

グリゴリッチ対フィッシャー
モナコ、1967年
 41…g5

42.Bxe5 dxe5 43.Nxe5

 黒のクイーンとaポーンが当たりになっているが応手は単純至極だった。

43…Qd6

 これで両方守れている。

(この章続く)

2012年05月08日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(24)

「Chess Life」2003年8月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

オランダ防御現代レニングラード戦法の 7…Qe8

 1980年代にIMウラジーミル・マラニウクがオランダ防御現代レニングラード戦法と呼ばれる 7…Qe8 を採用し広めた。今月はこれを集中的に取り上げる。7…Qe8 の着眼点は単純で、…e7-e5 と突くためにeポーンを補強することである。

白の基本的な作戦は何か

 白の作戦は適当なときに e2-e4 と突くことによりe列の素通しを図ることである。白がこれに成功すれば黒のe6の地点だけでなくe7のポーンが弱点となってつけ込む標的になり大きな優位に立つ。

黒の基本的な作戦は何か

 この布局における黒の着想は次のとおりである。キング翼インディアン防御において黒はしばしば …Nf6-e8 または …Nf6-h5 のあと …f7-f5 と突きナイトをf6の地点に戻さなければならない。だから2手余計にかかる。これに対して現代レニングラードでは黒が …e7-e5 と突くことができればキング翼インディアン防御に似た陣形を2手少ない手数で構築できる。黒の最終的な目標は …f5-f4 と突いてキング翼を攻撃することである。白が d4-d5 と突くことにより黒の …e7-e5 突きを防げる戦型では黒はクイーン翼に反撃を求めることが多い。

それで評決はどうなっているか

 現代レニングラードは黒の非常に意欲的な布局で激しい戦いになる可能性がある。白は主導権を維持しながら黒の動きと反撃を抑えるために正確さを要求される。この布局は他の布局ほどはよく知られていない。だから相手を驚かす効果があるかもしれない。

 世界の多くの強豪グランドマスター、例えばウラジーミル・クラムニク(初期の頃)、アルツール・ユスポフ、ミハイル・グレビッチ、エブゲニー・バレエフ、ウラジーミル・アコピアン、ウラジーミル・マラニウク、セルゲイ・ドルマトフ、それに加えて私がこの布局を黒での常用戦法の一部にしている。黒にとって活気のある布局で、反撃力もある。

 最も普通の出だしの手順は次のとおりである。

1.d4 f5 2.g3 Nf6 3.Bg2 g6 4.Nf3 Bg7 5.O-O O-O 6.c4 d6 7.Nc3

 この局面でよく指されてきた手は 7…c6 と 7…Nc6 でどちらも黒が十分指せる。しかし今日の定跡では白が少し有望とされている。

7…Qe8

 白の応手は多岐に渡る。戦型1ではあまり人気のない指し方を取り上げる。一方戦型2と戦型3では主流手順を分析する。戦型4ではそもそも黒の作戦を避けるための白の面白くて複雑な手を紹介する。

戦型1 8.Re1

 この手は e2-e4 突きの準備で、理にかなっている。

 8.e4 fxe4 9.Ng5 で一時的にポーンを犠牲にするのは次のように黒に何も問題を生じさせない。9…Nc6 10.Be3(白はd4のポーンが落ちるのですぐにe4のポーンを取ることはできない)10…Bg4 11.Qd2 Qd7 12.Ngxe4 Nxe4 13.Bxe4 Bf3 14.Bxf3 Rxf3 15.Ne4 d5(アフィフィ対ユスポフ、1985年)

 他には 8.Qb3 もやってみる価値がある。しかし次のように正確に受ければ黒が大丈夫である。8…c6 9.d5 Na6 10.Be3 Ng4 11.Bd4 e5 12.dxe6e.p. Ne5!(白に有利な黒枡ビショップ同士の交換を避けた)13.Rad1 Qxe6(カルポフ対M.グレビッチ、1989年)また 8.Nd5 も白にとって面白い着想である。

8…Qf7

 このあまり見かけない手で黒はc4のポーンを当たりにすることにより重要な1手を稼いでいる。

9.b3 Ne4 10.Bb2

 10.Nxe4 は 10…fxe4 でf3のナイトが逃げなければならずf2のポーンをチェックで取られるので白はまだe4の駒を取ることができない。

10…Nc6 11.e3 e5 12.Rc1 Nxc3 13.Bxc3 e4 14.Nd2 a5 15.a3 Bd7 16.b4 axb4 17.axb4 b5!

 この軽妙なポーンの犠牲で黒はd5などの重要な白枡を支配できる。黒の面白い局勢である(フラク対バレエフ、1990年)。

戦型2 8.b3

8…Na6

 すぐに 8…e5 と突くのも多くの試合で試されたが 9.dxe5 dxe5 10.e4 Nc6(10…fxe4 なら 11.Ng5)11.Nd5 で白が有利のようである。

9.Ba3

 カルポフのこの手(相手の作戦を未然につぶす彼特有の手)の意味は黒の主要な作戦の …e7-e5 突きによる自陣解放を防ぐことである。この手のあと黒はd6のポーンが釘付けにされているので作戦の遂行に長期的な問題を抱えることになる。9…e5 10.dxe5 のあとa3のビショップよりもf8のルークの方が大切なので黒は 10…dxe5 と取り返せない。

 9.Bb2 は自然な手でよく指されてきた。1例はカスパロフ対マラニウク戦(全ソ連選手権戦、1988年)である。いくらか手順の相違はあるが 9…c6 10.d5 Bd7 で次の局面になった。

 11.Rc1 h6(黒は …Qe8-f7 でd5のポーンを攻撃する予定なので Nf3-g5 を防ぐ必要がある)12.e3(マラニウクによればおそらく 12.Nd4 の方が良い)12…Rc8 13.Nd4 Qf7 14.Ba3 cxd5 15.Nxd5(15.cxd5 なら 15…Nc7)15…Ne4! 16.f3 Nec5 17.Nb5 Bxb5 18.cxb5 Nc7 19.Nxc7 Rxc7 20.Bxc5 dxc5 21.f4 ここで合意の引き分けになった。

9…c6 10.Qd3

 白は中原を支配し潜在的な弱点のe6の地点とe7のポーンを攻撃するためにe列を素通しにするために e2-e4 突きを準備している。

10…Rb8

 カルポフ対マラニウク戦(全ソ連選手権戦、1988年)では黒は指し手が少しおとなしすぎて白が次のようにわずかな優勢をきれいに勝利に結びつけることができた。10…Bd7 11.Rfe1 Rd8 12.Rad1 Kh8 13.e4 fxe4 14.Nxe4 Bf5 15.Nxf6 Bxf6 16.Qe3 Qf7 17.h3!(…Bg4 による釘付けの防ぎ)17…Nc7 18.Re2 Bc8 19.Ng5 Qg8 20.Qd2 Ne6 21.Nxe6 Bxe6 22.Rde1 Bd7

23.Rxe7!(e列の支配に成功したあとカルポフは大局観に基づいたこの果断な交換損で黒枡の支配による圧倒的な優勢に立った)23…Bxe7 24.Rxe7 Rf6 25.d5! Qf8 26.Re3 Kg8 27.Bb2 Rf5 28.Qd4 Re5 29.Rxe5 dxe5 30.Qxe5 Kf7 31.d6 Bf5 32.c5 h5 33.g4 hxg4 34.hxg4 Bd3 35.Bd5+ 黒投了

11.e4

 他の 11.Rfe1 のようなもっと穏やかな手なら黒は 11…b5 と指す。

11…fxe4 12.Nxe4 Bf5 13.Nxf6+ Bxf6 14.Qe3 b5 15.Rac1 Nc7 16.Rfe1 Qd7 17.Rcd1

 マイルズ対クラムニク戦(モスクワ、1989年)では黒は 17…Bg4 と悪手を指し41手で負けた。しかし 17…Qc8! と指せば混戦に持ち込めるところだった。この手には 18…Qa6 でa3とc4の二箇所をすぐに攻撃する狙いがある。

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2012年05月07日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(197)

第4部 手筋(続き)

第19章 防御のために

 英語で出版された最初の2冊の本のうち1冊は表向きはチェスに関するものであった。1475年カクストンの「チェスの試合と指し方」がそれで、それから500年後には他のどんな表題よりもこの競技の王様に関する本が出版されている。しかしこれらのすべての書籍でも手筋や攻撃に対する防御について書かれたものは非常に少ない。グランドマスターは大抵の場合不完全な手筋の見落としを見つけることにより、ポーンを取りそれから生じる攻撃を撃退することにより、そして指しすぎの攻撃から陣形上の優位を得ることにより、弱い相手に勝つ。フィッシャーは常習的にそのような戦術で「グランドマスター」に勝ってきた。

 どんな手筋でも最終結果は二重攻撃なので、防御の成功は二重防御とでも呼べるものにある。これを明らかにするために二、三の例をあげる。

グリゴリッチ対フィッシャー
パルマ、1970年
 19…Nh5

20.Nb5

 白はこの手で気づきにくい手筋を開始した。その要点は 20…axb5 (c7とd6の地点での両当たりがあるのでほとんど必然である)21.Bxb5 のあと白に 22.Bxe8 という手と黒クイーンを捕まえる 22.Bc3 という手との二重の狙いがあることである。しかしこれには読み抜けがあった。

20…axb5 21.Bxb5 Qe5!

 攻撃されている駒の一方が他方を守った。これが二重防御の中心となる着想である。白は Bxe8 と取るしかないのでフィッシャーはルークの代わりに2駒を得る。

(この章続く)

2012年05月07日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(196)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 最後にZZがクイーン捨てと同じくらい劇的なものになり得る(実際そうなのだから)例を一つ。

フィッシャー対シュベーバー
ブエノスアイレス、1970年
 22…e4

23.Rxe4! Qxg3 24.Rxd4!!

 これが妙手たるゆえんは黒クイーンに安全な地点が存在しないので(24…Qc7 25.Bf4)白がこの手をさしはさむ余裕があることである。黒クイーンはルークと交換できる唯一の地点で自らを犠牲にするが、白の双ビショップと進攻したポーンは交換損を補って余りあるものとなった。この妙技は 22…e4 が黒からの狙いとなったときよりもずっと前に見通しておかなければならなかったのでよりいっそう驚嘆となった。その着想全体が、その控え目さ、限定された目的、それに地味な狙いを伴って、私の考えではフィッシャーがこれまで創造してきたすべてのものと同じくらい痛快なものである。

24…Qg4 25.Rxg4 Bxg4 26.Bxg6 以下白勝ち

(この章終わり)

2012年05月06日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(195)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 フィッシャーの試合にはこのような機略があふれている。1970年インターゾーナルの重要な対戦の局面で彼は「手拍子」の 13…bxc5 を避ける最初の機会をつかみ、代わりに8手連続でこのポーンを放置しその間についには白キングの敗走につながる狙いを作り上げた。

スミスロフ対フィッシャー
パルマ、1970年
 13.dxc5

13…Qf6! 14.Nc4 Nc3!

 勢いは止まらない。白クイーンが当たりになっているが逃げるのは 15.Qc1 Nxe2 16.Kxe2 Rac8! でc列に狙いを持たれてよくない。

15.Nxc3 Qxc3+ 16.Kf1 Rfd8

 一連のZZが続いている。

17.Qc1 Bxc4+ 18.bxc4 Qd3+ 19.Kg1 Rac8 20.cxb6 axb6

 黒はポーン損ながら素通し列を支配して勝勢になった。

(この章続く)

2012年05月05日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(267)

「Chess」2012年1月号(6/7)

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第3回ロンドンチェスクラシック(続き)

 「こちらにツキが回りそうだと相手が思うなら相手はあまりうまくプレーできなくなる。順調なときは金を思い切って使うべきだ。」スチュアート・ルーベンは本号の別の所でポーカーについてこう書いている。ヒカル・ナカムラも最終戦の対ミッキー・アダムズ戦でほぼ同様のことがチェスに当てはまることを示した。イギリスのナンバーワンは悲惨な大会になっていて、最終戦のために席に着いたときたぶん唯一の楽しみはクリスマス休日だった。

 そしてナカムラはキング翼ギャンビットを指した。この時代遅れの布局が大会で前に現れたとき(ショート対マクシェーン戦)のように、最初の元気よさはヒカルがキングをh1にしまい反撃のc4突きを許したときにはすぐに慎重さに変わった。海賊のように派手な戦いが続き白はクイーン翼でポーンによる襲撃をかけアダムズは白のキング翼に両ビショップのにらみを利かせた。

 試合を終えたスーパーGMたちにガリー・カスパロフや昔の達人たちも加わってVIPルームでの観戦は素晴しい体験となった。GMのジュリアン・ホッジソンとスチュアート・コンケストがそこでの解説者だったが一度だけ観戦者にまんまとしてやられた。黒はほとんどの間試合を支配していたようだが最後には振り子が大きく白の方に傾いた。風向きが変わったことに最初に気づいたのはガリー・カスパロフだった。「38.Rfe1 で白の方が良さそうだ。」ポカが出て白が順当に勝利を収め、ナカムラが単独2位になり不運なアダムズが最下位に沈んだ。それでも最終戦の観戦者にチェスの醍醐味を与えてくれた両対局者には感謝したい。

第9回戦
H.ナカムラ – M.アダムズ
キング翼ギャンビット

1.e4 e5 2.f4

 意外な手だが、ヒカルが快速戦や米国内の小さな大会で指すことは知られている。「ナイジェル・ショートに啓示を受けた。そしてチャンスにかけてみたくなった。」(ナカムラ)ここでGMクリス・ウォードが言葉をさしはさんだ。「教えてもらえますか。他のコーチたちの勧める布局の中にあまり面白くないものが一つ、二つあるのでこれからはショートの布局のように指すんですか?」クリスが「他のコーチたち」と「ショート」という言葉をわざと強調したのは、ナカムラがガリー・カスパロフの指導を受けていることを冗談ぽく揶揄(やゆ)したからだった。事情通の観戦者たちはこの言い方に気づいて笑い、ナカムラも苦笑いした。「昨日はマグヌスに、今日はショートにならった。」

2…exf4 3.Nf3 d5 4.exd5 Nf6 5.Bc4

 これはGMジョー・ギャラガー(正真正銘のイギリス人だが今はスイス在住である)の得意とする手である。

5…Nxd5 6.O-O Be6 7.Bb3 c5

 この手が最善手で 7.Bb3 を悪手にさせようとする。(ナカムラ)

8.Kh1

 「8.Kh1 は悪手に違いないが乱戦に持ち込もうとした。8.d4 cxd4 9.Qxd4 Nc6 10.Ba4 Rc8 はどう指したらよいのかわからなかった。」(ナカムラ)

8…Nc6 9.d4 c4

10.Ba4

 10.Bxc4 は 10…Ne3 11.Bxe3 Bxc4 12.Bxf4 Bxf1 13.Qxf1 Bd6 で1ポーンを得ての交換損になる。

10…Bd6 11.b3 c3

 11…cxb3 12.axb3 は白がすぐに c4 と突いてf4ポーンの主要な守り手を脅かすことができるのであまり良くない。f4ポーンを守りとおすのがこの段階における黒の作戦の骨子である。

12.Qd3 O-O 13.Bxc6 bxc6 14.Nxc3 Re8 15.Nxd5 Bxd5 16.c4 Be4 17.Qc3

17…a5

 ナカムラはここでは黒がかなり良いがミッキーは圧力を維持できていなかったと感じていた。

18.a3 f6 19.Bb2 Ra7 20.Rad1

20…Rae7

 ナカムラはこの手を良い手と思わなかったがコンピュータはそうでもない。代わりに 20…Rb7 ならbポーンを押さえ込めるが 21.Rfe1 でe列に少し圧力がかかってくる。

21.b4 axb4 22.axb4 Kh8 23.Qb3 Rb7

 ナカムラはルークがこのように舞い戻って来れることを見落としていた。

24.Bc3 Qb8 25.b5 cxb5 26.c5 b4 27.Bd2 Bf8

 黒はポーン得だが陣形は申し分ないとはとても言えないのでポーンの活用は難しい。

28.Rde1 g5 29.Qc4!

 この手を指すのには勇気がいる。白の心配は黒が …Bd5 と指せるようにすることで、「それでほぼ勝負がつく。」しかしbポーンが進んでくるのも同じくらい怖そうである。

29…g4

 もっと分かりきった 29…b3 の方が有望そうだと結果論で言うのはたやすい。そのとき白は 30.c6 Ra7 31.Bc3 b2 32.Nd2 と活発に動かなければならない。コンピュータは派手な 32…Bxc6 33.Qxc6 Rc8 34.Qxf6+ Bg7 35.Qxg5 Rxc3

という手順を示すが、人間はかなり読まなければならないだろう。しかし実戦の手の問題は黒のキング翼のポーンの形が非常に崩れることである。

30.Nh4

 ナカムラは 30.Ne5!? と指すのが良いかもしれないと考えていた。30…Bxg2+ 31.Kxg2 fxe5 32.dxe5 f3+ となるなら引き分けになるかもしれない。

30…f3

 ここでも 30…b3 はまだ有力だった。チェスソフトのリブカはそのあと 31.c6 Ra7 32.Bc3 Qd6 33.Qxb3 Qxc6 で勝勢と判断している。

31.d5

 ナカムラはこの手を「ポカ」と断定したがおおげさすぎるかもしれない。

31…fxg2+ 32.Nxg2 Bf3

 これがナカムラの読んでいなかった手だった。そして自分自身を責めることになった。「ここでは負けて当然である。」

33.Kg1 Rc8 34.c6 Rb5

 34…Bd6 が解説者たちの指摘した手だが 35.Bf4!? で対抗できる。

35.Nf4

 ナカムラは 35.Rxf3 gxf3 36.Nf4 では黒に 36…Bd6 という手があり負けると考えていた。

35…Bc5+ 36.Be3

36…Bxe3+?

 黒が間違え始めた。両選手とも 36…Qb6 で黒が勝つと検討で一致した。例えば 37.Bxc5 Rxc5 38.Qd4 のとき 38…R5xc6! がアダムズの見逃した決め手で、黒のかなり簡単な勝ちになる。

37.Rxe3 Qb6 38.Rfe1

 急に白陣の方が堅固になり攻勢を考えられるようになった。ここでは白の方が優勢だろう。

38…b3??

 このポカは手筋の4手にしてやられる。38…Rc5?? も同様にひどくて 39.Re8+ Rxe8 40.Rxe8+ Kg7 41.Ne6+ Kf7 42.Nxc5 Kxe8 のあと 43.d6! で白の狙いが受けきれない。コンピュータの見つけられる最善手は 38…Ra5 だが黒が守勢である。

39.Qc3!

 急に黒がf6のポーンの守りに問題を抱えるようになった。

39…Rf8 40.Ne6! b2 41.c7! 1-0

  41…b1=Q なら 42.Qxf6+! Rxf6 43.c8=Q+ のあと2手詰みである。

******************************

(この号続く)

2012年05月04日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(194)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 布局ではこのささやかなひねりが主導権を保持するだけの時間の1目盛りを余分に得ることを意味する(「主導権」は無視できない狙いの能力にすぎないことを思い起こして欲しい)。

フィッシャー対マロビッチ
ザグレブ、1970年
 12…e5

 局面は黒がちょうど中央で突っ掛けたところである。しかし黒は1手遅れていて中央が攻撃にさらされる。

13.Ne3! Nb6

 ZZの 14.Nxd5 があるので 13…e4 とは突けない。だから黒はもっと受けに手をさかなければならない。白はこのあと 14.dxe5 Nxe5 15.Bf4 で陣形的に優位に立った。

(この章続く)

2012年05月04日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(193)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 次の局面で黒ビショップの運命は酷いと論外の間にあるように見える。15…Be4 は 16.f3 で取られ、15…Be6 はc7の地点での両当たりでポーンの形を乱される。

ペトロシアン対フィッシャー
ベオグラード、1970年
 15.g4

15…a6!

 ここでもしのぎの着想の「お先にどうぞ」である。

(この章続く)>

2012年05月03日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(172)

「Chess Life」2012年2月号(5/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 最も得点をあげた女子は女流準マスターのセアラ・チャン、マリヤ・オレシュコ、それにアガタ・ビコフツェフだった。ブラジル選手に対するセアラのペトロシアン戦法の戦いぶりを見てみよう。この試合は白に有利な陣形戦として始まったが早く c4-c5 と突いたために大乱戦になった。

キング翼インディアン防御古典戦法 [E92]
WCMセアラ・チャン(FIDE2056、米国)
ジュリア・アウボレド(FIDE1813、ブラジル)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第2回戦、2011年11月19日

1.d4 Nf6 2.c4 d6 3.Nc3 g6 4.e4 Bg7

 キング翼インディアン防御は人気のある複雑な戦法で、いくらか棋理に反するところのある布局である。

5.Be2 O-O 6.Nf3 e5 7.d5

 ペトロシアン戦法は偉大な元世界チャンピオンの故チグラン・ペトロシアンにちなんで名づけられた。

7…a5 8.Bg5 h6 9.Bh4

9…Bd7

 9…g5 10.Bg3 Nh5 11.Nd2 Nf4 12.O-O と進めば白は Bg4 で陣形の差を追求するかクイーン翼で動いていくことになる。

10.Nd2 Na6 11.a3 Qe8 12.b3 Nh7 13.f3

13…g5?!

 この手は黒キングの近くの白枡を決定的に弱める。13…h5!? の方が良く 14.Rb1 Nc5 15.O-O Bh6 16.Qc2 f5 17.b4 axb4 18.axb4 Na4 19.Nb5 となれば白がやや優勢である。

14.Bf2 f5 15.exf5 Bxf5

 黒は白に正当な理由もなくe4に強力な拠点を与えた。

16.Nde4 Nf6 17.Bd3 Bg6 18.O-O Nh5

19.c5!?

 黒の指し方は積極性に欠けていたので白は争点を保っておく方が良いのではないかと私は感じた。19.Rb1! と寄ってから b3-b4 と突いて Na6 を遊び駒にするのは辛抱強いやり方である。黒はまともな作戦を見つけるのが難しい。

19…Nxc5 20.Nxc5 dxc5 21.Bxc5 e4!?

 もちろんである。黒は乱戦を図った。

22.Bb5

 22.Nxe4!? Bxa1 23.Qxa1 の方が安全で、白がまだ少し優勢だった。

22…c6 23.dxc6 Bxc3 24.cxb7 Qxb5 25.Qd5+

25…Bf7??

 黒は乱戦の中でつぶれて、大きな駒損になった。対局後の検討で 25…Kh7! が我々の関心の的だった。次のように黒の勝ちになるようである。26.bxa8=Q Rxa8 27.Qxa8 Qxc5+ 28.Kh1 Bxa1(28…e3!?)29.Rxa1 e3

26.bxa8=Q Rxa8 27.Qxa8+

 突然セアラが二つ交換得になった。

27…Be8 28.Qd5+ Bf7 29.Qd8+ Kh7 30.Qe7 Qxb3 31.Qxe4+ Kg8 32.Rad1 Nf6 33.Rd8+ Kg7 34.Bf8+ Kg8 35.Bxh6+ Be8 36.Qg6+ 黒投了

 次に Qg7 で詰む。

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(この号続く)

2012年05月02日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(192)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 「お先にどうぞ」は次の局面でフィッシャーが白ビショップの退却のあとでナイトの落ち着き先を決めるために言うせりふである。

ラルセン対フィッシャー
モナコ、1967年
 33…f5

34.b4 b5!

 さっぱりした局面でもこのような突き合いは互角の局面とどうしようもない敗勢の局面とを分けることがよくある。

(この章続く)

2012年05月02日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(191)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 身分の低いポーンでもクイーンによるZZと同じくらい容易に状況をひっくり返すことがよくある。典型的には中央での要所をめぐる戦いの問題がそれである。次の局面でフィッシャーはビショップを引いて手損になることを避けただけでなく、局面を自分の有利に開放した。

フィッシャー対ポルティッシュ
ハバナ、1966年
 13…f4

14.e5!

 黒が 14…Bxe5 と取ろうと 14…fxe3 と取ろうと戦力に関する限りどっちもどっちである。

(この章続く)

2012年05月01日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(23)

「Chess Life」2003年7月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット受諾(続き)

 c)3.Nf3

3…Nf6

 他には 3…c5 があり白の最善の応手は 4.d5(4.e3 なら 4…cxd4 5.exd4 のあと黒は変わった手だが 5…Be6 で好形になる)である。また 3…a6 もあり、3.Nf3 Nf6 4.Nc3 のあと険しい局面になるのを避ける手順としてよく用いられる。

4.e3

 4.Qa4+ は 4…c6 5.Qxc4 Bf5 6.Nc3 e6 7.g3 Nbd7 8.Bg2 Be7 9.O-O O-O でカタロニア布局のような局面になりどちらも指せる。

 4.Nc3 は黒が次のようにやってくれば長期的なポーンの犠牲を伴う。4…a6(白は黒が 4…c6 と指す場合に備えてスラブ防御に移行してもよいように準備しておく必要がある)5.e4 b5(「受諾」の多くの他の局面と異なり黒はこの戦型では安全にポーンを守ることができる)6.e5 Nd5 7.a4 Nxc3 8.bxc3 Qd5(b5でポーン交換になる事態に備えてa8のルークに紐をつけた)9.g3 Bb7 10.Bg2 Qd7

 複雑な局面だが 11.Ba3 のあと白には犠牲にしたポーンの代償がある。

 4.Nc3 に対して黒が 4…c5 と応じれば 5.d5 e6 6.e4 exd5 7.e5 Nfd7 8.Bg5 Be7 9.Bxe7 Qxe7 10.Nxd5 Qd8 で非常に激しく面白い局面になる。しかしクイーン翼にキャッスリングするつもりで 11.Qc2 と指せば白に好機が訪れるかも知れない。

4…e6

 他に考えられる手は 4…Bg4 5.Bxc4 e6 6.h3 Bh5 7.Nc3 で、黒はここで手を選ぶ必要がある。7…a6 は 8…Nc6 のあと …Bd6 から …e6-e5 の予定だが 8.g4 Bg6 9.Ne5 で白に主導権を与える。また 7…Nbd7 も同じく …Bd6 から …e6-e5 の着想である。

5.Bxc4 c5 6.O-O

 6.Qe2 もありクイーン交換を避けながら次の手でc5の地点でポーンを交換する考えである。対称形の局面では白は先着の利でわずかに優勢になることが多い。

6…a6

 この手は …b7-b5 から …Bb7 の準備である。ここで白には三つの選択肢がある。

 c1)7.Qe2 b5 8.Bb3

 d3に引く方が黒にとって問題が少ないと考えられている。

8…Bb7 9.Rd1

 代わりに 9.a4 もよく指されている。黒がa4でポーンを交換すれば半素通しのa列にあるa6のポーンを守るのにいくらか苦労するかもしれない。…c5-c4 はほとんどの場合勧められない。というのは中原の争点を解消するのが早すぎて、白に好きなときに e3-e4 から d4-d5 と突かせるか時にはクイーン翼で b2-b3 と突かせてしまうからである。だからたぶん 9…b4 が最善の応手である。

9…Nbd7 10.Nc3

 この局面で黒は長年に渡っていろいろな手を試してきた。そして現在の結論はクイーンをd列でのX線の狙いからはずすべきであるとなっている。

10…Qb6

 10…Qb8 や 10…Qc7 もよさそうである。実際 11.d5 のあとd5の地点で総交換になって …Qb7 と指すことになれば主手順と一致することになる。そうなればクイーンがどこからb7の地点に来たかは問題でない。

11.d5 Nxd5 12.Nxd5 Bxd5 13.Bxd5 exd5 14.Rxd5 Qb7 15.e4 Be7 16.Bg5 Nb6

 黒陣は崩れていない。白の最善手は 17.Rad1 で、黒は犠牲(d5)を受諾するのは危険すぎるので 17…f6 のあと 18…O-O でできるだけ早くキングの安全を図る方が良い。

 c2)7.a4

 この手は黒の作戦を止めるが自分のb4の地点を弱める。

7…Nc6 8.Qe2 cxd4 9.Rd1 Be7

 黒はe列での釘付けのために 9…e5 でポーンを守る余裕はなく、展開の完了を急いでキングを安全にしなければならない。

10.exd4 O-O 11.Nc3

 この手により a2-a4 突きによる弱点を伴った典型的な孤立ポーンの中盤戦になる。どちらにとっても指せる局面である。

 c3)7.dxc5

 白は収局を目指している。去年のバーレーンでのクラムニク対ディープフリッツ戦ではうまくいった。

7…Qxd1 8.Rxd1 Bxc5

 しかし人間が正しく受け辛抱強く指せば互角を維持するのに何の問題もないはずである。

結論

 クイーン翼ギャンビット受諾は私の好きな布局の一つである。非常に棋理に合った堅実な原則に基づいていて戦略上の弱点を何も生じさせない。白の選択する応手によって非常に平和的で穏やかな局面になることもあるし非常に難解で拮抗した局面になることもある。ほとんどの場合黒の指せる局面にすることができる。うまく指しこなしたいならばもっと深く研究するようにしなければならない。さらに研究を積めばどんな相手にも通用する良い武器となる。

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2012年04月30日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(190)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 上の例のように自分のクイーンを当たりからはずすことはいわゆる「反ZZ」で、こちらが当たりをかけるときには特に効果的になる。

フィッシャー対レシェフスキー
サンタモニカ、1966年
 19…Bxc2

20.Qd2!

 これで白は完全に駒を取り返すことができ圧倒的な局面になった。ちなみにこれはピアティゴルスキー杯大会の後半戦でフィッシャーの劇的な巻き返しの始まりになった試合で、もう少しでスパスキーの優勝を阻止するところだった。

(この章続く)

2012年04月30日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(189)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ZZがいつ役に立つか予期する決まり切った方法があるわけではない。十中八九は「手拍子」の手を避ける心構えの問題なのであろう。例えば次の局面でフィッシャーと対戦した戦上手の相手は黒ルークが危うい状況にいるので斜筋をこじ開けて黒クイーンを攻撃できると見通していた。

ハウレギ対フィッシャー
サンティアゴ、1959年
 24.c5

24…d5

 24…dxc5 は 25.Bxc5 でクイーンが逃げても e5 と Ng5 で捕まるので当然それを避けた。しかし白にはビショップの当たりの狙いを復活させる手段があった。

25.c6! bxc6

 黒はクイーン交換に応じることができない。なぜなら 25…Qxb4 だと白は 26.cxd7 をさしはさんでくるからである。これはZZに潜む二重狙いの明快な実例で、クイーン取りとクイーン「昇格」とを狙っている。

26.Bc5 a5

 フィッシャーは自分の方もZZで危機を逃れようとした。しかし白は単に 27.Qb3 と応じて試合に勝った。代わりに 27.Qxa5 だとさらに 27…Nb7 というZZを呼び込むことになる。

(この章続く)

2012年04月29日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(188)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 クイーンを素早く奔放に動かすのは、捕まる以外にも色々と困難に陥ることがある。両者のクイーンが「当たり」になっているときは手番の方のクイーンが「特攻」を仕掛けてくる可能性、つまり自分をできるだけ高く売りつける可能性を考慮に入れなければならない。実際のところクイーンがごちゃごちゃした状態にあるときは世界チャンピオンでさえ1手の手筋を見落とすことがある。

ボトビニク対フィッシャー
バルナ、1962年
 17.e5

 この超弩級の対決の収局は「ルークの間合い」「がさつなクイーン」の章でも解説した。この試合の出だしはややユーモラスで、短手数で上図の局面に到達した。ボトビニクはワシリー・スミスロフとの世界選手権再戦に備えて研究していた変化を思い出しただけのようだった。そして彼は後悔を込めて「ついにすべてが予定どおりになった。盤上になじみの局面があった。そのとき突然私が研究で見逃したことをフィッシャーがいともやすやすと盤上で見つけたことが明らかになった」と書いている。フィッシャーは「私がこの手を指したとき彼が見落としていると確信した」と書いている。

17…Qxf4!

 黒クイーンはボトビニクがいじめることを期待していたf5やh4に逃げ場を求める代わりに特攻となった。

18.Bxf4

 どちらのクイーンも自分自身を高く売りつけることができた。しかし違いは黒クイーンがZZの標的を持っていることにあった。例えば 18.Qxb6 なら 18…Qe4 19.f3 Qh4+!(先に 19…Qb4+ と指すこともできた。要は白の黒枡ビショップをどちらかへ引き出すことである)20.Bf2 Qb4+ これで黒のクイーンは無事で次に白クイーンをポーンで取ることができる。フィッシャーはご丁寧に 21…axb6!「(中央に向かって)」と取るところまで書いている。

18…Nxc5

 そして黒がポーン得のままになった。チェスが指される限りこの応酬は両者によるクイーンのZZの古典となり続けるであろう。

(この章続く)

2012年04月28日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(266)

「Chess」2012年1月号(5/7)

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第3回ロンドンチェスクラシック(続き)

 次の回戦では元気を取り戻したナカムラがデイビド・ハウエルと対戦した。ハウエルはうまく防戦したが26手目で失着を出した。ナカムラが余裕しゃくしゃくで指しイギリスのグランドマスターにいつもの時間切迫で自滅させた感じだった。

第5回戦
H.ナカムラ – D.ハウエル
イギリス布局

1.c4 e5 2.Nc3 Nf6 3.g3 Bb4 4.Nf3 Bxc3 5.bxc3 Nc6 6.Bg2 O-O 7.O-O Re8 8.d3 e4 9.Nd4 exd3 10.exd3 Nxd4 11.cxd4 d5 12.Be3

12…h6

 定跡からはずれた。12…Be6 はイギリスのIMのマイク・バズマンが1966年にヘースティングズでミハイル・ボトビニク相手に指した。12…Bf5 はごく最近ウェズリー・ソーが指した。

13.h3 b6

 結果論だがこの手は最善でないかもしれない。

14.Rc1 Qd7 15.Bf4 Bb7 16.Be5 Nh7 17.c5

 この手の結果として黒のビショップが対角斜筋で使えなくなった。当面は白のビショップも同じだが米国選手はすぐに解決策を見つけた。

17…Rac8 18.h4 Nf8 19.Kh2 bxc5

 19…Ne6 は 20.Qg4 で白がキング翼に圧力をかけてくる。

20.Bh3 Ne6 21.Rxc5 f6 22.Bf4 Qd8 23.Ra5

23…c5

 黒が 23…Ra8 24.Be3 c6 25.Qa4 のように指さなかったのは黒の陣形が発展性に乏しく白が主導権を保持するからだと思われる。ハウエルはもっと大胆な方を好んだ。

24.Rxa7 Qb6 25.Ra4 Nxd4!? 26.Qh5!?

 26.Bxc8 Bxc8 は黒に有益な交換損で、白のキング翼の弱体化した白枡につけ込むことになる。両選手とも戦力のことよりも攻撃の機会をつかむことしか眼中になかった。

26…Qc6?

 26…f5! と突いて白枡ビショップの利きを止め弱いg6の地点への侵入を防ぐ方がずっと良さそうに見える。27.Rxd4!? cxd4 28.Bxf5 とやってくるかもしれないが 28…Ra8 と受けておけば白がどのように攻撃を遂行できるのかあまり判然としない。

27.Rb1 Ra8 28.Rxa8 Rxa8

29.Bg2

 コンピュータは両選手が見落としたのも無理もない 29.Re1!! という妙手を見つけ出した。要点はこのルークがe7の地点に来て詰みに一役買うのを止める有効な手段がないということである。変化は色々あるがどれも最後には黒が完全に負けになる。例えば 29…Kf8 は 30.Bxh6! Qd6 31.Bf4 Qd8 のあと驚愕の妙手の 32.Re6!! で終わりとなる。しかし人間がこの手順を見逃したからといって誰も責められないだろう。

29…Ne6?

 いずれにしても白が優勢だがこれは白に華麗な戦術で決められた。まだしも 29…Rd8 だった。

30.Rxb7 Qxb7 31.Bxd5 Qc8 32.Bxh6!

32…Ra6

 32…gxh6 なら 33.Qg6+ Kh8 34.Qxh6+ ですぐに白が勝つ。

33.Be3 Rd6

 33…Ra3 なら 34.Qf5 Kf7 35.Bxc5 Ra5 36.d4 で白の勝ちになる。

34.Bxc5!

34…Rxd5

 34…Qxc5 は 35.Bxe6+ でクイーンが取られる。

35.Qxd5 Kf7 36.Be3 Qa6 37.Qc4 Qa8 38.d4 1-0

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(この号続く)

2012年04月27日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(187)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 10年後フィッシャーはラルセンを相手にシチリア防御の黒側で同じく危険に見える …Qe5 を指した。そして再びこの手が成立するのは似たような追及とかわしの可能性に基づいていた。

ラルセン対フィッシャー
番勝負、デンバー、1971年
 17.b4

17…Qe5!

 黒クイーンは明らかにすぐに捕まる危険性はない。18.Bf4 には 18…Nxe4 があるからである。しかし白がeポーンを守ったらどうなるのだろうか。

18.Rae1 Bc6!

 黒は白の不気味な布陣にもかかわらずeポーンを取るつもりで手を進めている。ここでのようにZZでの重要な考えどころは、黒が …Nxe4 と取らされたあと白クイーンが安全な地点に動くことを気にする必要がないことである。なぜなら白のc3のナイトが黒のクイーンとナイトによって当たりになっているからである。

19.Bf4 Nxe4 20.Nxe4 Qxe4 21.Bd3

 そしてこれがせいぜい白のできる「開き攻撃の」の最強のものである。というのは自分の駒が邪魔になっているからである。黒クイーンをd4またはc4の地点に行かせるわけにはいかない。フィッシャーはあとで遅ればせのだまし手で勝ちきることができた(第35章「読め!」を参照)。

(この章続く)

2012年04月27日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(186)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 好んでクイーンを危地に赴かせ勇敢さに見合った反撃に頼るのが近年のフィッシャーのトレードマークになってきた。前述と同じオリンピアードの予選では「無名」選手に対して彼自身そのような捌きの犠牲者となった。シチリア防御の通常の展開でエクアドルの主将は盤のど真ん中にクイーンを「展開した」。そんなことをしたらほとんどのマスターはクイーンが短命に終わるだろうと思う。

フィッシャー対ムニョス
ライプツィヒ、1960年
 16…Qe5

 ここでのフィッシャーの読みは明白な 17.Bf4 は 17…Qe6 18.Nd4 Nxe4! が起死回生のZZとなり、もっと巧妙な 17.f4 は 17…Qe6(17…Nxe4! 18.fxe5 Nxd2+ 19.Bxd2 Bxg4 さえある)18.f5 Qe5 19.Bf4 Qxc3! 20.bxc3 Nxe4 で黒の攻撃が危険になるというものだった。そこでポーンの競争が始まりやはり典型的なZZが重要な役割を果たした。

17.h4 Rfc8 18.Bf4 Qe6 19.h5 b5 20.hxg6 fxg6 21.Bh6 Bh8 22.e5 b4!

 お互いのナイトが中央の枡を争っているとき(典型的にはc3のナイトとf6のナイト)はこの種のしっぺ返しをいつも考慮に入れておかなければならない。eポーン布局では似たような状況がよく起こる。例えば白がビショップをc4に展開し e5 とポーンを突いて黒のf6のナイトを当たりにするときである。白は黒が …d5 と突き返す手を常に考えておかなければならない。いずれにしてもこの試合では黒は 22.e5 に直接応じる必要はなく先に敵キングに迫ることができた。

(この章続く)

2012年04月26日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(171)

「Chess Life」2012年2月号(4/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 年長組の選手の一人は18歳以下オープンに出場したエリック・ローゼンだった。彼の開始順位は27位で、厳しい戦いと格上の相手が予想されたがそれに耐えた。エリックには国際マスター基準の獲得を祝福したい。9人の対戦相手のうち7人がレイティング上位者で、6-3の成績は立派の一言に尽きる。次の試合は彼の楽勝の一つである。

閉鎖型ルイロペス [C87]
FMエリック・ローゼン(FIDE2305、米国)
FMトムス・カンタンス(FIDE2338、ラトビア)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 d6 4.O-O a6 5.Ba4 Nf6 6.Re1

6…Be7

 シュタイニッツシステムでの黒の良い展開方法は 6…Bd7 7.c3 g6 8.d4 Bg7 である。黒は 6…b5 7.Bb3 Na5 で双ビショップを得ることもできたが、8.d4 Nxb3 9.axb3 で展開に後れをとる。

7.c3 O-O 8.h3 b5 9.Bc2 d5?!

 マーシャルギャンビットに似た奇異な手だが手損をしている。

10.d4!?

 10.exd5 Nxd5 11.Nxe5 Nxe5 12.Rxe5 c6 13.d4 の局面をマーシャルギャンビットの局面と比べるとこちらの方が白にとって良いと言わざるを得ない。

10…Nxe4 11.dxe5 f5

 11…Nc5!? は開放型ルイロペスの局面に移行することになる。

12.exf6e.p. Nxf6 13.Bg5 Bc5 14.Nbd2 Qd6 15.Nb3 Bb6 16.Nbd4 Nxd4 17.cxd4 Ne4 18.Bxe4 dxe4 19.Rxe4

19…Qg6?

 19…Bb7!? 20.Be7 Qd7 21.Bxf8 Bxe4 ならポーン損ながら黒にもまだ希望があった。

20.Qb3+ Kh8 21.Rae1 h6 22.Be7 Bf5 23.Ne5 黒投了

 黒クイーンの適当な逃げ場がない。

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(この号続く)

2012年04月25日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(185)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 心理的には優位はいつもこのような比較的単純な反撃を読んでいる選手の側にある。平均的な選手はクイーンを当たりにすると次のようなことを心の中で考える。「相手は何か他のことをする前にクイーンを動かさなければならない。そこでこちらは・・・。」表面的にはなんでもないような局面が、単純なZZが見落とされているとたちまちつぶれてしまうことがある。

マトフ対フィッシャー
ビンコブツィ、1968年
 15…Bxf6

16.Na4? Nc4!

 突然白の駒がどう指しても絶望的な「当たり」の状態になってしまう。(1)クイーンを取り合うと黒のナイトで白のルークが両当たりになる。(2)17.Bxc4 は 17…Qxc4 で白の両方のナイトとf1のルークが当たりになる。(3)白のクイーンが動くと 17…Qxd4 から駒交換が終わったとたん …b5 突きで白の2駒が両当たりになる。

(この章続く)

2012年04月25日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(184)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 次の局面でフィッシャーがポーンをくすねたのはもう少し巧妙だった。これは白クイーンに対する「しっぺ返し」により可能だった。

サボー対フィッシャー
ライプチヒ、1960年
 19…Qa5

20.Rc1? Qxa2 21.Rc2

 この手は先手をとって Ng3 から Nh5 でキング翼攻撃に向かうことを期待していた。しかしフィッシャーは次の手で黒クイーンを生かすか収局に入るかを迫った。

21…Re3!

(この章続く)

2012年04月24日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(22)

「Chess Life」2003年7月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

クイーン翼ギャンビット受諾

 今月はクイーン翼ギャンビット受諾を取り上げる。これは 1.d4 に対する非常に堅実な防御で、世界の一流選手の多くによって指されている。ちょっと名前を挙げただけでもビスワーナターン・アーナンド、ワシリー・イワンチュク、プレドラグ・ニコリッチ、ビクトル・コルチノイ、ジョエル・ローチェ、バレリー・サロフらがいる。ジョエル・ベンジャミン、ヤセル・セイラワンのような米国の一流グランドマスターたちの中にもこれを得意戦法の重要な一部としている者がいる。私も子どもの頃から指している(たいてい楽しい思い出になっている)。

 クイーン翼ギャンビットでは黒はちょうどキング翼ギャンビットのように2手目でギャンビットを受諾するか拒否するかを選択しなければならない。どちらにしても好みの問題である。受諾にも拒否にもそれぞれ支持派がいる。今月の題材はクイーン翼ギャンビット受諾の方で、1.d4 d5 2.c4 dxc4 から始まる。

 この布局では黒は2手目でポーンを得するが長く保持することはできない。それはほとんどの場合c4のポーンを守る良い方法がないからである。

黒の基本的な作戦は何か

 この布局では黒は早くも2手目で序盤の基調を決める。犠牲にされたポーンを受諾することにより黒がポーン得になるのは一時的でしかないのが普通である。白がc4のポーンを取り返す用意ができるときまでには、黒は …c7-c5 突きだけでなく …a7-a6 から …b7-b5 と突き中央で反撃する用意が整っていることが多い。

白の基本的な作戦は何か

 黒が犠牲のポーンを受諾することにより中原のe4の地点の支配を放棄するので、白は 3.e2-e4 突きですぐに中原を支配することにより攻勢に出ることを選択することができる。多くの他の戦法のように白の主要な戦闘地域は中央である。

それで評決はどうなっているか

 この布局の黒は堅実で、白が強引に攻め急ごうとすると黒に反撃の好機をもたらすことになる。どちらにとっても指せる布局である。黒としては常用戦法に加えるのに適した布局かもしれない。しかし効果をあげるためには詳細な研究が必要である。白は 2.Nf3 で c2-c4 突きを遅らせることによりこの戦法を避けただのdポーン布局を指すことができる。

 1.d4 d5 2.c4 dxc4 の始まりのあと白には主要な選択肢が三つある。それらはa)3.e3b)3.e4 そして c)3.Nf3 である。

 a)3.e3

 白はすぐにc4のポーンを当たりにした。黒はこのポーンを守る良い方法がない。3…b5 は 4.a4 で白がポーンを取り返す。例えば 4…a6 なら 5.axb5 でa6のポーンが釘付けになっているので黒は取り返せない。4…c6 でも駄目である。白は 5.axb5 cxb5? 6.Qf3! と応じることができa8のルークが守れない。4…bxa4 なら白は容易にc4とa4のポーンを取ることができ、黒のa列とc列の弱いポーンのために白の方が有利な陣形になる。

3…e5

 黒はもっと安全に 3…Nf6 のあと 4…e6 から 5…c5 と指すことができ、3.Nf3 の主手順に移行する。

4.Bxc4

 4.dxe5 Qxd1+ 5.Kxd1 Nc6 6.f4 Be6 は黒がうまくやっている。

4…exd4 5.exd4

 白には孤立dポーンがある。これは潜在的な弱点になり得る。しかし当分はこの先の中盤戦に向けて白が中原のd4とe5の地点をしっかり支配することになる。これは黒の反撃を制限するためには重要である。

5…Nf6

 5…Bb4+ 6.Nc3 Nf6 7.Nf3 O-O 8.O-O なら黒が 8…Bg4 と指すことができる。しかし1986年のマラニウク対ぺカレク戦のように 9.h3 Bh5 10.g4 Bg6 11.Ne5 Nfd7 12.f4 で事は簡単でない。9.h3 には 9…Bxf3 10.Qxf3 Nc6 と交換する方が良い。しかし 11.Be3 で白が少し優勢である。

6.Nc3

 6.Qb3 も面白い手で、黒に 6…Qe7+ 7.Ne2 Qb4+ 8.Nbc3 Qxb3 で収局に入らせる。この戦型では黒は展開で遅れたままだがポーンの形で優っている。

6…Be7 7.Nf3 O-O 8.h3

 これは …Bc8-g4 を防ぐ大切な手である。

8…Nbd7 9.O-O Nb6 10.Bb3 Nbd5 11.Re1 c6 12.Bg5 Be6 13.Ne5

 白陣は好形になっている。白の作戦は戦力得に向けた適切な戦術の機会を探しながら、中央でそしておそらくキング翼でも圧力を強めることである。黒は数多くの落とし穴にはまらないように細心の注意を払わなければならない。しかし黒がうまくやれば、そして局面を単純化して収局に持ち込むことができれば、白の孤立d4ポーンのせいで優勢は黒に転がり込む。

 b)3.e4

 これは「受諾」に対する最も直接的で野心的な手と考えられている。ここで黒には四つの選択肢がある。

 b1)3…e5

 定跡の最新の宣託によると4種類の手の中でこれが最善である。

4.Nf3 exd4

 まず 4…Bb4+ と指してから …e5xd4 と取ってもよい。

5.Bxc4

 d4のポーンを取るよりもこちらのポーンを取る方が良い。

5…Bb4+ 6.Nbd2 Nc6 7.O-O Nf6

 黒は 7…Qf6 8.e5 Qg6 でポーン得にしがみつくこともできた。しかし 9.a3 Be7 10.Re1 となって1988年のカルポフ対ティマン戦のように白にポーンの代償が十分にある。

8.e5 Nd5 9.Nb3 Nb6 10.Bb5 Qd5 11.Nfxd4 O-O

 いい勝負である(ポルティッシュ対ヒューブナー、ティルブルフ、1988年)。

 b2)3…c5

 これは私の「十八番(おはこ)の手」だった。楽しい思い出がたくさんある(3.Nf3 に対してもそうだったが1990年代に入ると相手はこの戦型の弱点を見つけ始めた)。

4.d5

 4.Nf3 は 4…Nf6 5.Nc3 cxd4 6.Qxd4 Qxd4 7.Nxd4 e5 8.Ndb5 Kd8! となったあと 9.Bxc4 a6 10.Na3 b5 でもマルコム・ペイン対スーザン・ポルガー戦(ニューヨーク、1986年)のように 9.Be3 Be6 10.Bxa7 Nbd7 11.Be3 Bb4 でも黒が指しやすい。

4…Nf6 5.Nc3 e6

 5…b5 はあまり指されないが面白い手である。

6.Bxc4 exd5 7.Nxd5 Nxd5 8.Bxd5 Be7

 ここで 9.Nf3(コルチノイが私に対して指した)でも 9.Ne2 でもd5のビショップが強力なので白が少し優勢である。

 b3)3…Nf6

 この手は白の次の手を誘っている。

4.e5

 この手はd5の地点を弱めd4のポーンを出遅れポーンにする。

4…Nd5 5.Bxc4 Nb6 6.Bb3

 6.Bd3 も面白い手である。

6…Nc6 7.Be3 Bf5 8.Nc3 e6 9.Nge2 Be7 10.a3 O-O 11.O-O

 初めは白の出遅れd4ポーンのせいで黒が優勢のように思える。しかし白は陣地が広く、そのためにカルポフが自分のいくつかの似たような局面で示したように少し優勢である。

 b4)3…Nc6

 これは最も人気のない手である。4.Nf3 Bg4 でd4のポーンにさらに圧力が加わるが 5.d5 Ne5 6.Bf4 Ng6 7.Bg3 e5 8.Bxc4 で白がポーンを取り返して少し優勢である。

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2012年04月23日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(183)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ルークはクイーンと組んでZZを行なうのに適している。チェスオリンピアードでフィッシャーはわずか1日おいただけでこの強力な捌きの犠牲者と受益者になった。自分のクイーンが当たりにされると選手はほとんど本能的にクイーンの逃げ場所を探すものである。しかし単純化の余裕があるときは、逆に相手のクイーンを当たりにすることにより逃げることに手をかけることなく自分のクイーンを助けることができる。次の局面でフィッシャーは劣勢なので当然ながら一か八かに賭けていた。そしてようやく攻撃らしい形になった。

グリゴリッチ対フィッシャー
ライプツィヒ、1960年
 31…Rg5

32.Re4!

 黒はクイーンが逃げると 33.Re8+ があるのでクイーンを交換しなければならない。試合はすぐに終わった。

(この章続く)

2012年04月23日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(182)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 第2回ピアティゴルスキー杯のフィッシャーとの第1戦目でスパスキーは同じ着想でフィッシャーのキング翼を粉砕することができた。

スパスキー対フィッシャー
サンタモニカ、1966年
 19…Qf7

20.d5! fxe4

 20…exd5 ならもちろん白はfポーンの方を取り筋が全部開通する。

21.dxe6!

 これが最初のZZである。こう取らないとdポーンが取られてしまう。

21…Qxe6 22.f5!

 ビショップが当たりになっている間に2番目の挿入手を見舞った。

22…Qf7

 黒は 22…gxf5 でg列を開けるわけにはいかない。23.Nxf5! と取られていて次に Qg3+ でクイーンを失うか詰まされるので白のビショップを取っている暇がない。白はビショップ対ナイトの収局をきれいに勝ちきった。

(この章続く)

2012年04月22日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

羽生二冠、チェスで引き分け

朝日新聞電子版2012年4月21日付け
羽生二冠、チェスで引き分け

2012年04月21日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(181)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ZZによる攻撃対象で(詰みの狙いまたはチェックに次いで)次にくる候補はクイーンである。次の局面でフィッシャーは凝り形から脱し、敵クイーンに対する当たりの挿入の狙いで自分の「不良」ビショップを交換することができた。

エバンズ対フィッシャー
ニューヨーク、1965-66年
 20.Qxc3

20…c5!

 この出遅れポーンは 21.Bxb7 cxd4 で自分自身を交換することができる。だから白は自分のキング翼のポーンの乱れを甘受しなければならない。

21.dxc5 Bxf3 22.gxf3

 これで黒はd5にナイトの絶好の拠点を得、白に「不良」ビショップを残させた。

(この章続く)

2012年04月21日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(265)

「Chess」2012年1月号(4/7)

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第3回ロンドンチェスクラシック(続き)


アーナンド(右)対ナカムラ戦はおそらく大会随一の面白い試合だった

第4回戦
V.アーナンド – H.ナカムラ
王印防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.b4 Ne8 10.c5 f5 11.Nd2 Nf6 12.a4

12…g5

 この手は手損になるので 12…f4 か 12…Rf7 の方が普通である。

13.Nc4 h6

 前手が誤りである理由は黒がここで 13…h6 と指さなければならないからで、…h7-h5 と1手で突きたいところを2手かけて突くことになる。

14.f3 f4 15.Ba3 Ng6 16.b5

16…dxc5

 王印防御のここでの通常の手は連鎖ポーンの土台を守る 16…Ne8 であり、c5のポーンをとるのは大きな譲歩である。16…Ne8 のあと1963年のスミスロフ対チョクルテア戦では 17.a5 Rf7 18.b6 axb6 19.axb6 cxb6 20.Nxb6 Rb8 21.Nb5 から引き分けに終わった。

17.Bxc5 Rf7 18.a5 h5 19.b6

 白の作戦はクイーン翼の黒枡をすべて軟弱にしてそこを侵入の乗降口にすることである。

19…g4 20.Nb5 cxb6 21.axb6 g3

22.Kh1

 「これらの戦型はすべて非常に似かよっている。あいにくこちらが1手損で大きな違いになっている。」(ナカムラ)22.h3 でキング翼が安全になるように見えるが、実際は黒がビショップをh3で切って白の防御を崩すことになりがちである。

22…Bf8 23.d6

 これで白はc7とd5の二つの重要な地点を確保した。

23…a6 24.Nc7 Rb8 25.Na5 Kh8 26.Bc4 Rg7

 ここでチェスエンジンは白が +1.50 くらいで優勢だと言ってくるだろう。ということはアーナンドが勝勢なのか?これは正しくもあり正しくもない。サッカーの試合で一方のチームがハーフタイムで1-0または2-0とリードしているようなものである。しかしサッカーを見ている者なら誰でもそのような不利から逆転勝ちになることが多いことを知っているだろう。開放的で攻撃的な試合なら特にそうである。ここでもサッカーの試合のようだとだけ言っておこう。

27.Ne6

 コンピュータはa1のルークをa2からd2へ捌きたがる。たぶんその方が良かった。

27…Bxe6 28.Bxe6 gxh2 29.Nc4?

 アーナンドの着手が乱れ始めて、ナカムラにわずかな希望が出てきた。

29…Qe8!

30.Bd5

 30.Bh3? は 30…Qb5! でc列の浮いている2駒が当たりになるので良くない。しかしd5の地点では黒ポーンが …h4-h3 と進んでくるのをビショップがもう見張っていない。

30…h4 31.Rf2 h3

 黒のキング翼攻撃が機能し始めた。

32.gxh3 Rc8 33.Ra5 Nh4

 まだ大したことはないが局面は王印防御派の理想形になり始めている。黒はg列を完全に支配している。

34.Kxh2 Nd7

 これは奇妙なナイト引きで、ナカムラも状況の理解に苦労していることを示している。

35.Bb4 Rg3 36.Qf1 Qh5 37.Ra3

37…a5

 黒はすぐに突っかけていったが、巧妙な 37…Nxb6! もあった。38.Nxb6 なら 38…Rc1!! が派手なそらしの手筋で 39.Qxc1 Nxf3+ のあと2手で詰む。しかし白はb6のナイトを取る必要はなく戦いはまだまだ続く。

38.Be1 Rxc4 39.Bxc4 Bxd6

40.Rxa5?

 よくあるように制限時間前の最後の手が形勢の転換点になった。人間が絶対の最善手を見つけることが難しい局面で、コンピュータは 40.Rd3! Bc5 41.Be6! を示した。白の反撃は強力である。例えば 41…Bxf2 なら 42.Bxf2 で 42…Nxf3+? でも 43.Kh1! で黒の負けになる。

40…Bc5 41.Be2

 白は徹底抗戦の構えである。

41…Bxb6 42.Rb5 Bd4

 ここらあたりでカールセンは白の駄目そうな局面だと言っていた。

43.Bd1

 43.Rxb7 は 43…Nc5 44.Rb8+ Kh7 45.Kh1 となってここでコンピュータの 45…Nd3! が強烈である。46.Bxd3 なら 46…Bxf2 で黒駒がf3の地点に侵入する。

43…Bxf2 44.Bxf2 Nxf3+ 45.Bxf3 Qxf3 46.Rb1 Rg6 47.Rxb7 Nf6 48.Rb8+ Kh7 49.Rb7+ Kh6 0-1

 独りぼっちのルークが白の動かせる最後の駒だがほとんど何もできない。50.Rb6 なら 50…Nxe4 51.Rxg6+ Kxg6 52.Qg1+ Kh5 53.Bb6 Ng5 54.Qg2 e4 となって白の連結パスポーンで勝負がつく。解説者も観戦者も十分に堪能した熱戦だった。

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(この号続く)

2012年04月20日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(180)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ルークによるチェックの挿入手はナイトによるチェックよりもいくらか珍しい。そのためもっと意表を突くことになることがよくある。

フィッシャー対ナイドルフ
ライプツィヒ、1960年
 18…Bxc6

19.b4 Na4 20.Rd6!

 a4の黒ナイトは浮いている。20…Nxc3 には 21.Rxc6+ というZZが用意されている。これで白はルークの代わりに2駒を取ることができ、交換損ながら3ポーン得という駒割になる。

20…Kc7 21.Rxc6+ Kxc6 22.Nxa4

 しかしフィッシャーはこの難しい収局を勝ちきることができなかった。

(この章続く)

2012年04月20日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

JCAの間違い捜し(15)

 2012.03.25付けの「CHESS」通信1765ページ「第22回チェス誌上競技会(Ⅰ)」の第2問。「2.黒先黒勝ち(2手まで)」となっている。

 黒がビショップ損では「黒の即投了」が正解だろう。

 h5が黒ビショップの局面なら見たことがある。

 ついでながら【競技会参加のルール】のところに『第21回チェス誌上競技会は機関誌「チェス通信」に6回にわたって、全部で18題出題されます。』と書いてある。今回から「第22回」なのにまだ「第21回」を使っている。表紙やページ上方欄外ではアルファベットで「CHESS通信」と書いているのにここでは片仮名で「チェス通信」と書いている。大したことではないと考えているのだろうけれど、一流の組織ほどつまらないミスはしない。一流のチェス選手ほどつまらないミスはしないのと同じことである。

2012年04月19日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(179)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 駒の配役はわずかに異なるがまったく同じ着想でフィッシャーは「兄弟分」のアーサー・ビズガイアーとの重大な最終局に勝つことができた。引き分けなら全米選手権戦で両者が優勝を分かち合うはずだった。フィッシャーはビズガイアーとの初対局で負けたがその後は1引き分けと13勝の成績だった。

フィッシャー対ビズガイアー
ニューヨーク、1962-63年
 23…Bd8

24.Nf5! Rxh1 25.Nd6+

 このZZチェックでナイトが要衝を占め収局で勝つのに十分な威力を発揮した。

(この章続く)

2012年04月19日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(170)

「Chess Life」2012年2月号(3/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

 メダルを獲得したもう一人の年少選手はルイフェン・リーだった。私は後半戦で彼と彼の父親の布局の研究を助けた。彼の体系的な勉強方法と彼のやってきたチェスベースでの研究には感心させられた。布局の体系化と勉強の意欲は彼の上達に大いに役立つことだろう。

ルイロペス/チゴーリン防御 [C96]
ルイフェン・リー(FIDE1919、米国)
エルデムダライ・ヨンドンジャムツ(FIDE無し、モンゴル)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第1回戦、2011年11月18日

 ルイフェンはこの初戦に勝ってメダル争いのスタートを切った。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.O-O b5 6.Bb3 Be7 7.Re1 O-O

8.h3

 このいわゆる「反マーシャル」システムは黒を通常のルイロペス戦法に向けさせる良い手段である。8.c3 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 c6 12.d4 Bd6 13.Re1 Qh4 14.g3 Qh3 15.Be3 Bg4 16.Qd3 Rae8 がマーシャル攻撃の主流手順の一例である。1.e4 に対する堅実な防御を探すならこの戦法も考慮すべきである。

8…d6

 8…d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxe5 Nxe5 11.Rxe5 Bb7 12.d3 は白のcポーンがc2にあって展開を妨げていないので白にとって改良形となる。

9.c3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Nc6 12.d5 Nb8

13.Nbd2

 13.a4!? ならb5を標的にできる可能性があり黒の怪しい手順につけ込むことになる。13…Bb7(13…Bd7 なら 14.axb5 Bxb5 15.Na3 Bd7 16.Nxe5! dxe5 17.d6

)14.axb5 axb5 15.Rxa8 Bxa8 16.b4 c4

が私の最も好きなルイロペスの試合の一つである1974年ニースでのカルポフ対ウンツィカー戦で、白が大局観で何もさせずに勝った。

13…Nbd7 14.Nf1 Nb6 15,b3 h6 16.Ng3 Kh7?!

 これは感覚的に引っかかる手である。黒は Bc2 からわざわざ災難を求めている。

17.Be3

 ナイトを 17.Nh2!? と引き素早く f2-f4 と突いていくのも良い手である。

17…Re8 18.Qd2 Bf8 19.Nh2 g6 20.f4!

 原則として白は黒が …Ne5 と居座らせることができないときにこのポーンを突くのが良い。

20…exf4 21.Bxf4 Bg7

 21…Nfd7 は 22.Rf1 Qe7 23.Ng4 で白の圧力が強烈である。

22.Rad1 Ng8 23.Nf3

 この手は好機の e4-e5 突きを狙っている。

23…Bb7 24.h4!

 白は黒のキング翼をばらばらにするつもりである。

24…Nf6 25.h5 Bc8 26.hxg6+ fxg6 27.Bb1 Bg4 28.Qc2

 白は e5 突きのために力をためている。

28…Nh5 29.Nxh5 Bxh5 30.Rf1 Rf8 31.Be3

31…Bxf3?

 …Bh5 が黒陣の守りの要だった。

32.gxf3 Qh4 33.Rd2 Nd7 34.Rh2 Qg3+ 35.Rg2 Qh3 36.Rh2 Qg3+ 37.Qg2

37…Qe5?

 37…Qxg2+ 38.Rxg2 のあと白はg6の地点で黒陣をばらす可能性があるが、少なくとも黒はまだ戦える。

38.Qh3!

 この単純な二重攻撃で目的を達する。

38…Nf6 39.Bxh6 Nh5 40.f4 Qf6 41.e5 黒投了

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(この号続く)

2012年04月18日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(178)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 挿入チェックは戦力得するためまたは自分の位置を改善するためにナイトがよく用いる計略である。スパスキーがフィッシャーとの世界選手権戦第8局でこのごく普通の策略の一つにはまったときチェス界はあっけにとられた。

フィッシャー対スパスキー
世界選手権戦、レイキャビク、1972年
 19.Rfd1

 白は直前の手で自分のクイーンにひもを付けることにより罠を仕掛けた。世界チャンピオンがまんまとはまったときのフィッシャーの驚きようが想像できる。

19…Nd7? 20.Nd5! Qxd2

 罠にはまらない通常の方法は …Qd8 と引いてe7のポーンを守る手である。しかし前のナイト引きでc4のビショップも当たりにさらしていた。

21.Nxe7+ Kf8 22.Rxd2 Kxe7 23.Rxc4

 そしてフィッシャーが楽勝した。

(この章続く)

2012年04月18日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(177)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ポーン1個を取るためだけであっても単なるチェックをさしはさむ可能性は詰みの狙いに次いで非常によくある。ポーンを損しないようにして一敗地にまみれた選手は数多い。

フィッシャー対デイ
スコピエ、1967年
 13…Qb4

14.fxe6 Bxe6

 黒はここでも次の手でもクイーン同士を交換することはできない。なぜならポーンによるチェックの挿入またはビショップによるチェックで前者の場合は2ポーン、後者の場合は1駒がそれぞれ失われるからである。

15.Bxe6 fxe6 16.Rxf8+!

 三つ目のZZで黒クイーンが当たりを止めさせられ、次の必殺のチェックが可能になった。

16…Qxf8 17.Qa4+ 黒投了

 17…b5 18.Qxe4+ のあとc6かe6の地点でのチェックで黒キングが中央に取り残される。

(この章続く)

2012年04月17日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(21)

「Chess Life」2003年6月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御クラシカルシュタイニッツ(続き)

 B)7…Qb6

 黒はこの手でd4の地点に圧力をかけているだけでなく、b2のポーンを当たりにしている。欠点は白がすぐに攻撃を始めることができることである。

8.Na4

 ここで黒がポーン損を避ける手は一つしかない。

8…Qa5+ 9.c3

 白はチェックをさえぎりながらナイトも(クイーンで)守った。

9…cxd4

 9…c4 と突けばa4のナイトが遊び駒になるようなので黒が優勢になるように見える。しかし 10.b4 のあと白は好形になり黒はクイーン翼で反撃を行なうのが困難になる。

10.b4

 これが白の作戦の根幹である。10.Nxd4 では 10…Nxd4 11.Bxd4 b5 と応接されて黒の戦力得になる。

10…Nxb4

 この駒切りは何度も指されていて、長年の間多くの研究の主題となってきた。黒が穏やかに 10…Qc7 と引くと白は 11.Nxd4 Nxd4 12.Bxd4 で要所のd4の地点をしっかり支配したことにより優勢になる。

11.cxb4 Bxb4+ 12.Bd2 Bxd2+ 13.Nxd2

 最後の2手は必然である。ここで局面は少し決まりがついた。黒はナイトの代わりに3ポーンを得た。しかしそのうちの二つはd列で二重ポーンになっている。だからそれらは通常の価値はない。この時点で黒は攻勢的な 13…g5 と堅実な 13…b6 を選ぶことができる。

13…g5

 13…b6 なら 14.Bd3 Ba6 15.Nb2(この手は非常に大切で、15.Bxa6 だと 15…Qxa6 で白はキャッスリングが困難になる)15…Nc5 16.Bxa6 Qxa6 となる。数多くの試合で 17.Qe2 により白が優勢になっている。しかしGMギンダの推奨する 17.a4 の方がずっと良いかもしれない。

14.Rb1!

 14.fxg5 は 14…Nxe5 で中原の黒ポーンが威容を誇る。

14…gxf4

 黒はいくつかの試合で 14…a6 も試したが次のようにうまくいかなかった。15.Bd3 gxf4 16.O-O b5 17.Nb2 Nxe5 18.Rxf4 黒キングに安全な避難場所がないので白の攻撃が強力である。

15.Bb5

 白はこの釘付けでe5のポーンを守り、強力な主導権を握っている。ここで 15…Rb8 なら 16.Nc5 でショート対ティマン戦(1994年)になり、15…a6 なら 16.Bxd7+ Bxd7 17.Nb6 となる。最善は 15…Kf8 だろうが 16.Qe2 のあと私なら白の方を持つ。

 C)7…cxd4 8.Nxd4

8…Bc5

 8…Qb6 は 9.Qd2 Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.Bb5!(11.Ncb5 は 11…Qxa2 12.Rb3 Rb8 であまりはっきりしない)で 11…Ndb8 がほぼ絶対で、12.O-O のあと f4-f5 突きで白にポーンの代償が十分にあり攻撃も有望である。

9.Qd2

 この手はクイーン翼キャッスリングの用意である。ここで黒には主要な手が二つある。

9…O-O

 9…Nxd4 なら 10.Bxd4 Bxd4 11.Qxd4 Qb6 となる。過去20年でこの戦型は一流選手の対局で盛んに指された。黒番で引き分ければ小さな成功とみなされることがよくある。もちろんビショップの差で白が少し優勢である。

10.O-O-O

 両者が逆翼にキャッスリングするときは乱戦になることが多い。どちらの攻撃が先に成功するかを見る競争になる。

10…a6 11.Kb1

 すぐに 11.h4 と突いても 11…Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Rh3 b4 14.Na4 Bxd4 15.Qxd4 a5 で黒はあまり痛痒を感じない。

11…Nxd4 12.Bxd4 b5 13.Qe3 Qc7 14.Bd3 b4

 ルターが2001年にオフリドでのヨーロッパ選手権戦で妹のユディット相手に指したように 14…Bxd4 15.Qxd4 Bb7 16.Rhe1 Nc5 が黒の改良手となるかもしれない。

15.Qh3

 白はこの手で黒キングの上部の弱体化を促している。

15…g6 16.Ne2 a5 17.Qe3 Ba6 18.h4 Rfc8 19.h5

 白はこのあとh列を素通しにし Qe3-h3 が良い手になってくる。もちろん上記の手順はすべて必然というわけではない。黒は14手目を改良することができ、たぶん他の手もそうである。

結論

 フランス防御クラシカルシュタイニッツは活気に満ちた非常に面白い布局定跡である。どの戦型を選ぶかにより逆翼キャッスリングの攻め合いになることもあれば、白がわずかに有利な長く複雑な収局になることもある。戦型Bで見たように異例の乱戦になることさえある。しかし両者とも非常に繊細な指し方が必要である。

 フランス防御のこの戦法は人気のある布局の一つとして考えるべきである。フランス防御を指すことにするなら時間を注いでもっと深く研究すべきである。そうすれば報われる。

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2012年04月16日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(176)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 時にはZZでの狙いが「串刺し」の可能性から駒をよけておくための手を稼ぐ手段にすぎないことがある。例えば次の局面である。

フィッシャー対ラルセン
番勝負、デンバー、1971年
 18…d5

19.Rg3!

 この手には Rxg7+ から Rxf7+(開きチェック)の狙いで黒の2個のビショップを取る狙いがあるので、白はルークの一方を白枡から外しポーンを取り返すことができる。

19…g6 20.Bxd5 Bd6?

 この10番勝負で4-0と一方的に追い込まれていたラルセンは異色ビショップに満足できず破れかぶれの勝負に出た。

21.Rxe6 Bxg3 22.Re7 Bd6 23.Rxb7

 そして白は優勢から勝ちきった。

(この章続く)

2012年04月16日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(175)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 次は本質的に同じ主題だがフィッシャーは「2手詰み」の狙いで目の覚めるような勝ちを得た。

フィッシャー対ベンコー
ブレッド、1959年
 17.Qh5

17…Nxb3? 18.Qh6!

 次に 19.Nh5 とされると黒は Nf6+ は許せないのでクイーンでしかg7の地点での詰みの狙いを防げない。

18…exf4 19.Nh5 f5 20.Rad1!

 これもちょっとしたZZである。フィッシャーはf6の地点での大金の小切手を現金に替える前にルークを安全な地点に持ってきた。

20…Qe5 21.Nef6+ Bxf6 22.Nxf6+ Qxf6 23.Qxf6

 あとは白が順当に勝った。

(この章続く)

2012年04月15日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(174)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 ZZの特徴の本質は自分の狙われているどんなものよりも相手のもっと重要なものを狙うことにある(「同等」の価値にすぎないものを狙うZZは見つけるのがもっと難しい。この点については後出)。即詰みの狙いはもちろん究極の狙いで、ZZのためには格好の好機となる。次の局面でフィッシャーはこの二重のZZに自らはまった。

フィッシャー対R.バーン
ニューヨーク、1965-66年
 11…Bg4

12.Nxc6?

 Nxe7+ は許せないので「反射的な」応手が必要な手に思える。しかし・・・

12…Bd6! 13.h3 Bxe2!

 これが2番目のZZである。白のナイトは逃げることができるが黒は交換得することができる。

(この章続く)

2012年04月14日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(264)

「Chess」2012年1月号(3/7)

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第3回ロンドンチェスクラシック

クラムニクが優勝、ナカムラとマクシェーンが活躍


大会前の記者会見で勢ぞろいした出場者。左から右へデイビド・ハウエル、ルーク・マクシェーン、ミッキー・アダムズ、レボン・アロニアン、ビシー・アーナンド、マルコム・ペイン(大会委員長)、マグヌス・カールセン、ウラジーミル・クラムニク、ヒカル・ナカムラ、ナイジェル・ショート

剣によって生きる

ヒカル・ナカムラ
成績 2位
国 米国
年齢 24歳
レイティング 2758
開始順位 5位


ナカムラの「剣によって生き剣によって死ぬ」戦略は功を奏した

 ヒカル・ナカムラはコーチのガリー・カスパロフと決別したようだといううわさが飛び交う中、大会にやって来た。この師弟関係は前回のこの大会での出会いの結果出来上がった。もっともタタ製鉄ベイクアーンゼー大会での初優勝のあと数ヶ月たつまで公表されなかった。

 性格および/または研究手法の不一致を疑うべきだろう。カスパロフは自分を政治的には反体制派、チェス界では反逆児とみなしているかもしれない。しかし自分のチェスの教育に関しては彼は本流たるソ連のチェス体制の申し子であり、厳格な監督に違いない。

 カスパロフの最も傑出した才能の一つは猛烈な研究をやってのける能力である。それ自体感受性の強い年齢のときにソ連チェスの創始者のミハイル・ボトビニクの薫陶を受けた結果である。彼が1年ほどマグヌス・カールセンのコーチを務めたがやはり解消になったのも何かを示唆しているのかもしれない。正確な理由は分からないし友好的な解消だったようだが、カスパロフの推奨する研究体制がカールセンには厳格すぎたのかもしれない。カールセンは研究を自室よりも実戦で行なう方が好きである。

 似たようなことがカスパロフとナカムラの師弟関係にも起こったようで、青年のナカムラはロンドン大会の解説室で内情をかなり漏らした。ダニエル・キングとの話でナカムラはカスパロフとの研究は布局の準備では有益だったが他の面ではそうでもなかったと語った。中盤と収局についてはナカムラは「彼よりもうまい選手が他にいることは確実だが、彼は布局から優勢を得ることができてそれが彼の主たる強みになっていた」と言った。

 しかしこれらの盤外の問題はいずれもナカムラの試合に影響しなかったようである。それどころか今大会でこれまでよりも良い成績をあげた。4勝のうち2勝は2800台の首で、そのうちの一つは世界チャンピオンのビシー・アーナンドだった。彼は何十年ぶりかで現世界チャンピオンを破った米国選手になった。唯一の玉にきずは今や常習化したマグヌス・カールセン戦の負けだった。しかしこの傾向もフィッシャーがついにはスパスキーとの相性の悪さを解決したようにいつか変わるかもしれない。米国は彼のことを誇りにしてよいし、大西洋の向こうの有力者たちは彼の世界選手権への道を容易にする方法について真剣に考え始めなければならない。一つの方法としては、挑戦者決定競技会の主催国は出場者を一人選ぶ権利があるので次のその大会を招致することである。

 ナカムラはレボン・アロニアンとの第2回戦で初勝利をあげた。試合は布局から難解な戦いになった。アロニアンは交換損をして2ポーンを得た。見方によっては優勢だが磐石とはほど遠かった。そしてまもなくアルメニアのGMは優勢を確実なものにしようとして時間をほとんど使い切り、それの方が重要な要因になった。

 ナカムラはまず余分のポーンをせき止めついにはポーン損を1個に減らした。そして制限時間になるまでのどたばたでアロニアンの残りのパスポーンも包囲した。

 ヒカルは第3回戦でカールセンに負けたあとは非常に落ち込んでいた。しかし巻き返しの第一弾は解説室に顔を出すことだった。それはスポーツマンらしい行為で観戦者に高く評価された。翌日黒番でビシー・アーナンドを破ったあとほのめかしたようにこの時点で試合の作戦を変えたことがうかがえる。状況を考えればこれは快挙と呼べるものである。対戦相手は4戦連続となる2800超だった(大会でこうなったのは二人目にすぎない。モスクワの大会でのイワンチュクが最初である)。そして今回の相手は世界チャンピオンだった。

 ヒカルの最初の勇気の見せ所は王印防御を持ち出すことだった。試合は主流手順のクラシカルの戦型になった。これはお互い反対翼で攻撃することになる。黒の観点からは問題は白がしばしば中央も支配することで、ここでもそうなった。黒はキング翼でポーンが強圧的になったにもかかわらず、白駒が空所を占拠するので黒駒は自陣の1、2段目にへばりつくことが多かった。ヒカルの対局後のツイートは巧みに要約していた。「剣によって生きる者は剣によって死ぬ。心臓麻痺で死ぬ前に王印防御のこのような試合を何局指せるのだろうか」王印防御を指す選手みんなにかかわることだ。

 ビシー・アーナンドはすぐに大優勢になった。しかし王印防御のこの戦型の局面は制御が難しいことで定評がある。白が指し手を1手誤ると黒を監獄から出してしまう。それだけでなくその結果の局面の要素には黒の有利となるものが多い。これはギャンブラーの布局だが実戦では勝ち目は悪くない。黒の観点から見てナカムラは次のように総括した。「攻撃してうまくいくものならばうまくいくし、うまくいかないものならばひどい負け方をして愚か者のように見える。正着を見つける負担はすべてビシーの方にある。」

 とうとうビシーは間違えて形勢は逆転した。黒が勝つのはまだ非常に困難だったがヒカルはやるべきことに専念し得点をもぎ取った。4人の2800超との4日間の頂上対戦はようやく終わり1点勝ち越した。彼は見るからに高揚していて、前日に逆境時の彼の勇気と誠実さにひかれた解説室の観戦者たちは彼を大歓迎した。「昨日マグヌスに負けたあとこんな気分になっていた。何かわくわくするようなのを指してみたい気がして、勝とうが負けようが全然気にしなかった。だから運にまかせてやってみた。」この感情の決断を打ち明けるヒカルはとても好感が持てた。彼は選手の中の選手だ。

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(この号続く)

2012年04月13日 コメント(1)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(173)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手(続き)

 次の局面は明快でささやかな例である。

フィッシャー対ファインゴールド
西部オープン、1963年
 47.Be8

 白の優位はキングの位置、広さ、そしてeポーンという具体的な攻撃目標があることによる。実際黒は手に詰まっていて、家を明け渡さない手を見つけるために白ビショップを脅かさなければならない。

47…Ke7 48.Ke5!

 しかし白キングはそれでも進入する。この手に内在する二重の狙いは(1)黒ビショップへの当たりと(2)進行が普通の手順に戻ればキングが侵入することである。

48…Bg4 49.Bg6!

 この手は見つけることは難しくないがやはりZZをよく象徴している。白ビショップがどこか安全な地点に動いて黒に …Bf3 でeポーンを守らせる「予期された」手の代わりに、白ビショップも当たりをかけた。hポーンとeポーンに対する二重の狙いで白が楽に勝つ。

(この章続く)

2012年04月13日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(172)

第4部 手筋(続き)

第18章 挿入手

 つづりも発音も変わっている(英語だけを話す人たちにとって)この用語は誤解されてもいる。平均的な選手は「挿入手」という意味であることを知っているが、それでも手筋の急所で起こるまれな策略として、または普通の手順中のひねりを効かせた変わった手として考えているようでもある。本当のところは略してZZと書くことにする「Zwischenzug」はチェスのまさに核心に位置している。そしてフィッシャーがそれを用いた数多くの試合はその重要性を十分に証明している。

 フィッシャーの意表を突いた手は一か八かの捨て駒、ナイトの長たらしい再配置、それに奇妙で神秘的なルークの動きのいずれであることもめったにない。彼は他の誰もが相手の狙いしか見ないときにその狙いを無視することに対して、あるいはマスターが取り返ししか念頭にないときにその取り返しを遅らせることに対して好手記号を与えられることがよくある。当たり前の「反射的な」応手を排斥することこそがZZの本質である。

 「反射的な」チェスでは相手がこちらのポーンを取れば取り返せるかをまず考える。クイーンが当たりにされればどこに逃げられるかをまず考える。3手だろうと4手だろうと詰まされそうになればその応手を考える。フィッシャーはこのたった一つの点において並の選手の何光年も先を行っている。彼の性向は刺激と反応の仕組みを自動的に問題視するようである。

 これを説明する一つの方法は、最良の防御はしばしば反撃であるということである。しかし「反撃」は通常は長期の作戦行動を意味する。ここでは突きとかわしについて語ることにする。ZZは一手だけで目的を果たす。学習者はみんな空間と力と動きについての、そして空間の優位を戦力の優位に転換することについての理論家の叱責をよく知っている。これはすべて道理にかなっている。しかしもっと基本的なのは二重狙いの着想である。ZZはそういうものである。なぜなら本質的に二重狙いを伴うからである。

(この章続く)

2012年04月12日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(169)

「Chess Life」2012年2月号(2/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦(続き)

コーレシステム [D05]
エイワンダー・リャン(FIDE1872、米国)
チェンケル・エレン・タン(FIDE無し、トルコ)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第7回戦、2011年11月24日

 この試合はエイワンダーの7連勝目で、ほぼ優勝が確定した。

1.d4 Nf6 2.Nf3 e6 3.e3

 この局面では e2-e3 と突く前に 3.Bg5 または 3.Bf4 でビショップを出す方が良い。

3…d5 4.Bd3 c5 5.c3

 コーレシステムは人気があるが守勢の布局である。

5…Nc6 6.O-O Bd6 7.Nbd2 O-O 8.a3 b6

 黒は 8…e5!? で局面を開放するほうが少し有利である。

9.b3 Qc7 10.e4 cxd4 11.cxd4 dxe4 12.Nxe4 Nxe4 13.Bxe4 Bb7 14.Bb2 Ne7!

 ここまで黒は局面の要求する手を指している。d5の地点は素晴しい拠点になる。

15.Rc1 Qd7 16.Bb1!

 白がこの大切な攻撃用の駒を保存したのは正しかった。

16…Bd5 17.Qd3 f5 18.Rce1

18…Nc6

 18…Be4!? と指すと白にルークを切るかどうかという大きな決断を迫ることになる。しかし 19.Rxe4 fxe4 20.Qxe4 g6 21.Ng5 となればe6の地点が崩壊して白が大変良さそうである。

19.b4 a6 20.Bc2 Bxf3??

 これは「チェスの無知」による手筋の始まりで、駒を失い試合も失う。

21.Qxf3 Nxd4 22.Bxd4 Bxh2+ 23.Kxh2 Qxd4

 黒は「何でこうなったんだろう」と不思議に思っていたに違いない。

24.Rxe6 Rad8 25.Kg1 Rc8 26.Bb3 Kh8 27.Rfe1 h6 28.Qe3 Qb2 29.Rxh6+ gxh6 30.Qxh6#

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(この号続く)

2012年04月11日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(171)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 防御の破壊が手筋の終点のときそれはグランドマスターにとってさえも非常に意外性のあるものになる。次の局面での出撃はコンピュータプログラムのノースウェスタン3.5によって「見られて」いた(第35章「計算」を参照)。しかしラルセンは軽視していた。

ラルセン対フィッシャー
番勝負、デンバー、1971年
 35.g4

35…Ra8

 この手の強さは一目瞭然のaポーン当たりによって隠されている。実際にはg5のルークを攻撃している!

36.gxf5 exf5 37.Bc4

 f7の黒ルークは動きに困っているわけではない。しかしフィッシャーには彼特有の鋭い着想があった。

37…Ra4! 38.Rc1?

 コンピュータでさえこの手が無駄手だと分かっていた。白のビショップはf7の黒ルークを取らされる。

38…Bxb5! 39.Bxf7 Rxh4+

 ついにg5のルークの土台が崩された。

40.Kg2 Kxg5

 そして黒の勝ちに終わった。

(この章終わり)

2012年04月11日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(170)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 防御の破壊と密接に関連した着眼点は「過負荷の駒」である。二つの役目を担わなければならない駒は、一つ目の役目を果たさなければならないときは二つ目の役目を放棄することになる。過剰に守られているように見える局面は結局のところすべてを守るにはちょうど1手足りないことがよくある。

アセベド対フィッシャー
ジーゲン、1970年
 47.Rb2

48…Nxc3! 49.Kxc3

 白のナイトはルークも守らなければならないのでナイトでは取り返せない。

50…Ra1!

 白キングはナイトを 51.Kc2 で守ろうとすると過負荷になる(51…Rxd1)。…Bxb4+ があるのでルークでナイトを守ることもできない。だから白は投了した。上図の局面でb2、b4およびc3の地点はいずれも二重に守られているが一つずつ崩壊した。

(この章続く)

2012年04月10日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(20)

「Chess Life」2003年6月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

フランス防御クラシカルシュタイニッツ

 今月はフランス防御のクラシカルシュタイニッツ戦法を取り上げる。これは次の手順で始まる。

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 白のもっと堅実な選択肢は主流手順の 4.Bg5 である。しかし本稿ではもっと積極的な 4.e5 だけを取り上げる。これはシュタイニッツの昔の得意戦法で、最近の試合のカスパロフ対ラジャーボフ戦でも指された(この試合はカスパロフの故郷と同じバクー出身の15歳のGMが憧れのチャンピオンを破ったのであちこちで大見出しになった)。

 世界の最も有名な選手たち、例えばアレクセイ・シロフ、ビクトル・コルチノイ、アレックス・モロゼビッチ、エブゲニー・バレエフ、ラファエル・バガニアン、ミハイル・グレビッチ、ボリス・グリコ、そして年少のテイムール・ラジャーボフらのGMが重要な常用定跡としてフランス防御を指している。

白の基本的な作戦は何か

 白は陣地の広さで優位に立ち、正しい手順を踏めば要所のd4の地点を支配することになる。白は黒の応手によってはクイーン翼にキャッスリングしてキング翼で攻撃を開始するかもしれないし、黒の白枡ビショップがポーンの壁(d5、e6)に埋もれているので収局でじわじわと締めつけるかもしれない。

黒の基本的な作戦は何か

 黒は通常はd4の地点を攻撃することにより白の中原を切り崩そうとする。それにはaポーンとbポーンを突きさらにc列に圧力をかけることによりクイーン翼での反撃策を探すべきである。この典型的な「フランスポーン構造」によくあるように、…f7-f6 と突き、時には …g7-g5 とさえ突いて白の中原支配を弱める機会を常に探すべきである。

それで評決はどうなっているか

 フランス防御は 1.e4 に対する黒の人気の高い防御法である。黒には優れた反撃力がある。しかしc8の使いにくいビショップのように欠点もいくつかある。一つ心しておくべきことは、中盤で大乱戦になることがあること、あるいは非常に退屈な収局の戦いになることがあることである。だからどちらの事態も覚悟しておく必要がある。

 クラシカルシュタイニッツはフランス防御への対処でより積極的な手段の一つとみなされている。白は黒の反撃の可能性について注意していなければならない。特にd4とe5のポーン、それにクイーン翼ではc列に注意がいる。もし白がやりすぎて攻撃が成功しないと、多くのポーンを突いてしまっているので容易に裏目に出ることになる。

フランス防御 [C11]
白 GMガリー・カスパロフ
黒 GMテイムール・ラジャーボフ
リナレス、2003年

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Nf6 4.e5 Nfd7 5.f4

 ここが今回の出発点である。5.f4 の代わりに白は 5.Nce2 と指して 5…c5 に 6.c3 を意図することもできる。

5…c5 6.Nf3 Nc6 7.Be3

 ここで黒には主要な手が三つある。A)7…a6 これは本局である。B)7…Qb6 または C)7…cxd4

 A)7…a6

 この手は 7…Qb6 や 7…cxd4 と比べると少し直接性に欠ける。黒は …b7-b5 をもくろんでいる。

8.Qd2

 この自然そうな手の目的はd1の地点をルークのために時にはナイトのために空け、クイーン翼キャッスリングを可能にし、将来 Qd2-f2 と指すことである。

8…b5 9.a3

 これは珍しい手である。カスパロフの布局研究は有名なので「研究済み」の手に間違いない。これからこの手がたくさん見られると思う。この手の意味はたぶんc5でポーン交換をしてから b2-b4 と突いてクイーン翼の黒枡をしっかり支配することである。この試合以前は最もよく指される手は 9.dxc5 Bxc5 10.Bxc5 Nxc5 11.Qf2 Qb6 だった。そのあと白の普通の手順は 12.Bd3(面白い 12.b4 も以前に指されている)12…b4 13.Ne2 a5 14.O-O Ba6

で、どちらにとっても面白い試合になる。

9…Qb6

 これはこの戦法によく出てくる手で、d4ポーンにさらに圧力をかけている。

10.Ne2

 白はd4の地点での交換を誘っていて、10…cxd4 11.Nexd4 Nxd4 12.Nxd4 となればせき止めに最良の駒でそこを占拠することになる。

10…c4

 黒は作戦を変更し中央を閉鎖した。これで白はキング翼で黒はクイーン翼で好き勝手ができる。しかし中央では白が陣地の広さで優位に立っている。

11.g4 h5

 黒は白のポーン雪崩を妨害しようとしている。しかしこれから出てくるようにあまり助けになっていない。前進を遅らせるだけである。

12.gxh5 Rxh5 13.Ng3 Rh8 14.f5

 カスパロフは仕掛けに成功し、自陣の広いキング翼を開放状態にした。主導権は白にある。

14…exf5 15.Nxf5

 ここでは黒に主要な問題が二つある。a)キングが安全な状態からほど遠いこととb)d5のポーンが弱いことである。ということは白は布局の戦いに勝利したということである。試合は黒が勝ったけれどもそれは白がこのあと悪手を出したからである。黒は改良手を探すことが絶対必要である。

15…Nf6 16.Ng3 Ng4 17.Bf4 Be6 18.c3 Be7 19.Ng5 O-O-O 20.Nxe6 fxe6 21.Be2 Ngxe5 22.Qe3

 白はこの手で安全に優勢を維持した。しかし白が 22.Bxe5 Nxe5 23.dxe5 Bc5 で捨て駒を受け入れたら黒は十分な代償があるのか疑問に思う。

22…Nd7 23.Qxe6 Bh4 24.Qg4?

 カスパロフは若い相手を「苦境から」助け出した。代わりに 24.Qxd5 なら白が明らかに優勢のままだった。

24…g5 25.Bd2 Rde8 26.O-O-O Na5

27.Rdf1?

 このポカで黒の勝勢になった。27.Kb1 ならまだ白が良かった。

27…Nb3+ 28.Kd1 Bxg3

 黒は思いがけず …Qb6-g6-b1# の狙いができたおかげで勝勢になった。

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2012年04月09日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(169)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 同じ大会でフィッシャーは防御を破壊する1手が見えなかったためにポーン得する機会を逃した。

フィッシャー対フィリップ
キュラソー、1962年
 27…Kf8

 フィッシャーはここで 28.Qa1 でクイーン翼に侵入しようとした。しかしちょうど反対方向に行けばすぐに勝てたかもしれなかった。

28.Qh5! Kg8

 他の手ではキング翼を食い破られる。

29.Qxg6!

 e7の守り駒が除去されて、29…hxg6 30.Ne7+ により白がクイーンを取り返して駒得になる。

(この章続く)

2012年04月09日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(168)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 防御を破壊する駒が当たりにならずにもっと他のことも狙っているときは、次の局面のように三重の狙いが生じる。

フィッシャー対コルチノイ
キュラソー、1962年
 13.g4

13…Bxg4!

 これはフィッシャーにはまったく思いもよらぬ手だった。彼はこれ以外のどんな防御に対しても f5 か g5 と突くつもりだった。

14.Bxg4 Nxg4 15.Qxg4 Nxc2!

 ナイトとルークの両当たりになっている。好手記号は 16.Qd1 Qxb3 17.Ra3 なら 17…Qc4! でf1のルークが当たりになっていることを見越していることによる。黒の楽勝に終わった。

(この章続く)

2012年04月08日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(167)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 全米選手権戦からの次の局面には雑多な手筋の主題が現れる。それはすべて連鎖ポーンの土台への攻撃によって始まった。(チェスの教科書では連鎖ポーンはその土台を攻撃すべき-防御の破壊の一手段-だと必ず教える。)

クレイマー対フィッシャー
ニューヨーク、1957-58年
 19.Qb2

19…Nxc3! 20.Qxc3 Nxd4! 21.Qb4 Ne2+ 22.Kh1 Rxc5 23.Qxc5 Bxa1

 そして黒が勝った。

 この手際のよい手順には釘付け、挿入手が登場し、最後には串刺しの狙いで 22.Kf2(22…Rxc5! 23.Qxc5 Bd4+)を防いだ。

(この章続く)

2012年04月07日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(263)

「Chess」2012年1月号(2/7)

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ミハイル・タリ記念大会(続き)

 ナカムラの最下位は彼の大望にとって大きな打撃だった。際立っていたのは3敗のどれも白番だったことだ。一流選手には予想できないことで、特にカスパロフと研究しているからにはなおさらだった。そもそも彼の布局の指し方は時に奇異に見えることがあった。

第7回戦
H.ナカムラ – V.イワンチュク
グリューンフェルト防御

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Bf4 Bg7 5.e3 O-O 6.Rc1 dxc4 7.Bxc4 Nbd7

8.Nb5

 ナカムラのこの着想は非常に異様である。イワンチュクの記憶によると2002年快速でのカルポフ対カスパロフ戦では 8.Nf3 が指されている。

8…c6 9.Bc7

 9.Nc7 は 9…Rb8 10.Bxf7+ Rxf7 11.Ne6 Qa5+ で黒の勝ちになる。

9…Qe8 10.Nc3 e5

11.dxe5

 白はおそらく 11.Bd6 と指すべきだった。それがビショップのc7出撃の顔を立てる唯一の手のようである。11…exd4 12.Bxf8 のあと 12…Kxf8 13.Qxd4 Ne4 14.Qd1 が対局後イワンチュクの示した手だった。11.Nf3 は 11…exd4 12.Nxd4 Ne5 13.Bb3 Qe7 で黒が非常に指しやすい。イワンチュクの 12…Kxf8 の代わりに 12…dxc3 と指すこともでき 13.Bxg7 cxb2 14.Rb1 Kxg7 15.Rxb2 となればほぼ互角である。また 12…Qxf8 なら 13.Qxd4 Nc5 14.Qh4 b5 15.Be2 b4 16.Nd1 Nce4(マルコム・ペイン説)で黒が有望そうに見える。

11…Nxe5 12.Be2 Bf5 13.Nf3 Nxf3+

 13…Ne4 と指すこともできる。

14.Bxf3 Rc8 15.Bg3 Ne4

16.Bxe4

 16.Nxe4 と取るのは 16…Bxe4 17.Bxe4 Qxe4 18.O-O Rfd8 となって黒のビショップの方が白のビショップより断然優っている。

16…Bxe4 17.O-O Rd8

 双ビショップとクイーン翼の多数派ポーンにより黒がはっきり優勢である。

18.Qa4 Bd3 19.Rfd1 b5!?

 この手は白を大きく圧迫することになり面白い。

20.Qa5

 黒の読み筋は 20.Qxa7 b4 21.Na4 Bc2 22.Rxd8 Qxd8 23.b3 Qd2 24.Rf1 Bd3 25.Qd7 Bc3

という変化にあり、黒の勝勢になる。

20…Rd7 21.Rd2 Qe7

 21…Qd8 でも 22.Qxd8 Rfxd8 23.Rcd1 Bf5 24.Rxd7 Rxd7 25.Rxd7 Bxd7 26.Bd6 a5

でやはり黒が明らかに優勢である。

22.Rcd1 Rfd8 23.a3 h5 24.h3 h4

25.Bh2

 25.Bc7 なら 25…Rxc7 26.Rxd3 Rxd3 27.Rxd3 Rd7 28.Rxd7 Qxd7 で実戦と似た局面になる。

25…Kh7

 このあたりではどちらも残り時間が数分程度になっていた。

26.Bc7

 26.e4 なら 26…Bh6 27.f4 g5 が面白い手で黒が優勢である。

26…Rxc7 27.Rxd3 Rxd3 28.Rxd3

28…Bf6

 イワンチュクは 28…Rd7 29.Rxd7 Qxd7 30.Qb4 が気に入らなかったが、30…Qd2 31.Qxh4+ Kg8 32.Ne4 Qd1+ 33.Kh2 Be5+ 34.g3 Bxb2 35.Qe7 Qd5

となれば黒がやはり優勢である。

29.Rd2?!

 ここは 29.Qb4 Qxb4 30.axb4 に賭けてみるしかなかったが時間切迫時には手を決めすぎるということもある(ハンガリーのGMの故ギデオン・バルツァは時間が少ないときには絶対駒を交換するなとつねづね言っていた)。29.Nd1 Rd7 30.Qd2 はここでの受け方を示唆したヤッサー・セイラワンの手だが、30…Rxd3 31.Qxd3 Kg7 で黒が優勢を保持する。

29…Rd7 30.Rc2

 この手は完全に悪手のように見えるが、ここではもう白陣はどうしようもなくなっていて、他の手も大同小異のようである。

30…Qe6 31.Qb4 a5!

32.Qf4

 32.Qxa5 なら 32…Qb3 33.Re2 Rd3 34.Ne4 Be5! で黒が勝つ。また 32.Qg4 なら 32…Qxg4 33.hxg4 でよい。

32…Kg7 33.Rc1 a4

 もう明らかに勝勢なのでイワンチュクは残りについては何も語らなかった。黒の自家薬篭中の物になっている。

34.Qb4 Rd3 35.Rc2 Qb3

 黒はもう終わりまで読みきっている。

36.Qxb3 axb3 37.Rc1 Bxc3 38.bxc3 c5

 黒は華麗な方の終局を目指した。38…b2 39.Rb1 Rd2 でも黒の勝ちである。

39.Kf1 c4 40.Ke2 Rxc3 0-1

******************************

(この号続く)

2012年04月06日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(166)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 次の局面ではb5のビショップに護衛が二つついている。取りが8回続いたあと黒がポーン得になる。

イェペス対フィッシャー
ハバナ、1966年
 21.Rxe1

21…Bxg4!

 この準備は以下の駒の取り合いの最中に白からe8で必殺のチェックをかけられないようにするために必要である。

22.fxg4 Bxd4 23.gxh5 Bxc3 24.Qxc3 Qxb5

(この章続く)

2012年04月06日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(165)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊(続き)

 今度はちょっとひねった手である。白は釘付けで戦力得することができる。それはまたたった1ポーンだがそれでも手筋である。

フィッシャー対メキング
パルマ、1970年
 18…Rxf6

19.Qxg7+! Qxg7 20.Rxf6

 これで白の勝勢である。

(この章続く)

2012年04月05日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(168)

「Chess Life」2012年2月号(1/8)

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2011年世界少年少女チェス選手権戦

エイワンダーが金メダル、ルイフェン・リーが銀メダルを獲得

GMジョン・フェドロウィッツ

 初めて世界少年少女チェス選手権戦が南米で開催された。これまでの大会はスペイン、ギリシャ、トルコ、フランス、グルジア、それにベトナムで開催されていた。今年は11月17日から27日まで水上公園と温泉で有名なブラジルのカルダス・ノバスで行なわれた。私はアビブ・フリードマン、アルメン・アンバルツォウミアン、ゲンナジ・ザイチク、それにマイケル・コダルコフスキーと一緒に行った。

 我々は旅行でトラブルに巻き込まれないようにいつも2、3日早く出発する。JFK空港では離陸が2時間遅れて幸先の悪いスタートになった。サンパウロへ着くまでにはいくらか時間を取り戻したが接続便に間に合うのには不十分だった。サンパウロで7時間待ったあとようやくゴイアニアに到着した。そこで我々を待っていたのは小さな車だった。可哀相なアビブは後部座席に詰め込まれ我々は猛烈な土砂降りの中をカルダス・ノバスへ向けて出発した。陽気な若い運転手とはスペイン語で会話した。GMジョエル・ベンジャミンはブラジリアからカルダス・ノバスへの迎えが彼を見つけてくれずもっとひどい目にあった。疲労したグランドマスターは望まない冒険のあと本来より約10時間遅れて到着したが、ともかく無事だった。

 1年前のちょうどギリシャのハルキディキでのように過去最大の選手団となった。総勢60名以上で昨年より約20名多かった。やはり昨年のように一団は8歳以下と10歳以下(30名)とで大部分が占められ、これまでのように非常に経験の少ないチームになった。レイティングの最上位二人はエリック・ローゼン(FIDE2305)とマイケル・ビレンチュク(FIDE2219)だった。しかしそれでもメダル獲得の可能性はかなりあると思っていた。経験に富んだコーチ陣はもちろん大きな助けで、きわめて強力な一団だった。筆者と私の4人の同行者とに加えて、GMはジョエル・ベンジャミン、ニック・ド・ファーミアン、サム・パラートニク、ユーリ・シュールマン、それにIMアンドラニク・マティコジャンの支援があった。これほどのコーチ陣が来る国は想像もできない。さらにユーリ・シュールマンとショーン・スミスは「学校にチェスを」が後援したジャスタス・ウィリアムズ、ジェームズ・ブラック、ロシェル・バランタインを助けた。コーチたちは皆6名の選手を受け持ち、めいめいに20分から30分の準備時間を割り当てた。喫茶室を使わせてくれた主催者のGMダルシー・リマとテルマス・ディ・ロマ・ホテルには感謝している。コーチが10人なので大き目の部屋が必要でちょうど間に合った。我々はそこに集まって試合後の大切な分析を行なった。

 過去のチームUSAの編成のように有力なメダル争いは比較的無名の年少の子どもたちから現れた。今年も例外でなかった。ウィスコンシンのエイワンダー・リャンは8歳以下少年の部で圧勝した。出だしから7連勝をあげ1引き分けのあと最終戦でインドのラム・アラビンド.L.Nに負けた。順位判定の内容が圧倒的に良かったので最終戦を前に優勝が決まっていた。エイワンダーの試合は異なった指し方が見られる2局を選んだ。彼の第5局は大局観に基づいた指し方で、第7局は派手な戦術で勝った(相手の協力もあった)。

シチリア防御スヘーファニンゲン戦法 [B83]
エイワンダー・リャン(FIDE1872、米国)
CMマトベイ・パク(FIDE1860、ロシア)
2011年世界少年少女チェス選手権戦第5回戦、2011年11月22日

1.e4

 エイワンダーの快挙の中でこの試合が気に入っている。こんな年少の選手なのにカルポフのような大局観のセンスを発揮している。

1…c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Be3 Be7 7.Be2 Nc6 8.O-O O-O

9.Qd2

 ボレスラフスキー戦法の典型的な戦型は 9.f4 e5 10.Nb3 exf4 11.Bxf4 Be6 である。

9…e5?!

 このポーンは白のポーンがf4にあるなら突いてよい。それなら黒のナイトがe5の地点に来ることになる。

10.Nb3 Be6 11.Rad1

 スベシュニコフ戦法のように大局的考え方で 11.Bg5!? とかかってd5の地点を押さえる方が適切だった。

11…a5!?

 黒はこのポーンをa3まで突き進めるのがよい。

12.f3

 黒の主たる狙いは 12.a4 Nb4 で …d5 突きを加速させることである。12.a3!? なら黒のa5のポーンを減速させ局面を落ち着かせる。

12…Re8?!

 黒は建設的な作戦を見つけずに指し続けている。12…a4 13.Nc1 a3 14.b3 Nb4 なら黒の反撃が有望だった。

13.Kh1 h6?!

 黒の最善手はやはり 13…a4 14.Nc1 a3 15.b3 Nb4 だった。

14.a3!

 既に解説したように黒にポーンをa3まで突かせないようにすることが大切である。

14…a4?

 a4のポーンは容易に獲物になる。

15.Nc1 Qa5 16.Nb5

 白はクイーン交換になれば黒のa4とb6の2地点が攻撃目標になるとみている。

16…Qxd2 17.Rxd2 Red8 18.Rfd1 Ne8 19.Nc3! Bf6 20.Bb5 Nd4

21.Bxe8

 21.Bxa4!? とポーンをかすめ取ってもよさそうだが、エイワンダーは安全に指す方を選んだ。

21…Rxe8 22.N1e2 Nxe2 23.Rxe2 Bc4 24.Red2 Be7 25.Nd5 Bxd5 26.Rxd5

 ここでは明らかに白が優勢である。黒のクイーン翼は強い圧力にさらされる。

26…Rec8 27.c3 Rc6 28.Rb5 Rc7 29.Rdd5 Ra6 30.Ra5!

 黒に何の代償も与えずにポーン得になることが必至である。

30…Rcc6 31.Rxa6 Rxa6 32.Rb5 Bg5 33.Bxg5 hxg5 34.Rxb7

 あとは単なる掃討作戦である。

34…g6 35.Kg1 Kg7 36.Kf2 Kf6 37.Ke3 Ke6 38.Kd3 f5 39.c4 Ra8 40.h3 fxe4+ 41.fxe4 Rf8

42.Rg7 Kf6 43.Ra7 Rb8 44.Kc2 Rb3 45.Rxa4 Rg3 46.b4 Rxg2+ 47.Kd1 Rg3 48.b5 Rxh3 49.b6 Rh7 50.Rb4 Rb7 51.a4 g4 52.a5 Kg5 53.Ke2 Rf7 54.b7 黒投了

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(この号続く)

2012年04月04日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(164)

第4部 手筋(続き)

第17章 防御の破壊

 ある駒を守っている駒を取ることは二重攻撃と定義される。これはたぶん最も直接的で最も理解しやすい手筋の形だろう。その主眼はいくつも言い表すことができるだろうが、「防御の破壊」が明快である。

 これにおけるフィッシャーのやり方には特段変わったところはない。しかし彼は主要な主題について惚れ惚れするような手順を見せつけてきた。次の局面にはそれが最も簡潔な形で現れている。

ベルリーナー対フィッシャー
西部オープン、1963年
 24.Kh1

24…Ba6!

 白のf3の守り駒を破壊する「狙い」は1個のポーンを取るだけで十分である。

35.Qf2 Bxe2 36.Qxe2 Qxe5

(この章続く)

2012年04月04日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(163)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 バッテリーを隠している駒は動いてももっと価値ある駒を攻撃しているならば一般に取られることがないことは見てきたとおりである。この単純な事実は次の局面での手筋の基礎となっている。これはフィッシャー(そして他のほとんどすべての者)が見逃した。

ペトロシアン対フィッシャー
番勝負、ブエノスアイレス、1971年
 34.Ra2

34…Rc8?

 この手にはほとんど誰も好手記号を付けた。しかし正しく受けられると勝つことができない。黒は試合の前半で明らかにずっと優勢を保っていた。そしてここでは(34…Rc8 の代わりに)バッテリーを用いることによりdポーンを前進させることができた。

34…Rb1+ 35.Kg2 Rc1

 この手の意味は白ルークがc7の地点にいる限りdポーンをd2の地点に進ませることができるということである[訳注 この手では実際には黒が優勢にならず、やはりフィッシャーの指した手が正着のようです]。そのとき Nxd2 と取られても …Bxd2 で大丈夫である。そして …d3 のあと白ルークがc列から去れば …Rc2 が決め手になる。というわけで白は紛糾を図らなければならない。

36.Rc6+ Ke7 37.Rc7+ Ke8

 黒は慎重にd列を避けた。そこに行くとd2に進んだ黒ポーンが取られたときにチェックになる。

38.Rxh7 Ra5

 今度はdポーンが止まらない。ついでに言うとここでのように多くの効果的なバッテリーに付随するのは「帰還」と呼ばれる小さな仕組みである。上記の手順を続けると

39.Rc7 d3 40.h4 d2 41.Nxd2 Bxd2 42.Rxc1 Bxc1

黒の最後の手で「当たり」の状態から取り返しにより駒が生還して駒得になる。既出のソーベル対フィッシャー戦の最終局面では白のクイーンとナイトが両方とも「当たり」になっていたにもかかわらず同様に守られていた。このよくある手筋は1手か2手の長さだが、初学者にはなかなか気づくのが難しいようである。以降のページでもこれが出てくることを注意しておく。

(この章終わり)

2012年04月03日 コメント(1)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(19)

「Chess Life」2003年5月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御(続き)

 b)7…O-O 8.g5

8…Nh5

 8…Ne4 でポーンを犠牲にするのは、白キングがまだ原位置に留まっていて困難な事態に陥るかもしれないという期待に基づいている。しかし白は正しく指せば次のように贈物を受け取っても安全である。9.Nxe4 dxe4 10.Qxe4 e5 11.Bd2 f5 12.Qh4 e4 13.g6 Qxh4(13…hxg6 は 14.Ng5 Nf6 15.c5 のあと 16.Bc4+ で致命傷になる)14.Nxh4

黒にはポーン損に値する反撃がない。

9.Bd2

 白は 9.Be2 と指すこともできる。

9…f5!?

 ここでは 9…a6 という手もあるが 10.c5 Bc7 11.Ne2! から Ne2-g3 で白がh列を素通しにしてくる。

10.gxf6e.p. Nhxf6 11.Ng5 Qe8 12.O-O-O

 12.f4!? なら黒は 12…e5! 13.fxe5 Nxe5 14.dxe5 Qxe5 15.Nf3 Qh5 で捨て駒により猛攻する面白い機会が得られる。

12…h6 13.h4

13…Bb4!

 13…hxg5 と捨て駒を取るのは良くない。14.hxg5 Ne4 15.Nxe4 dxe4 16.Qxe4 Rf5 17.c5 Bc7 18.Bc4 となって白が攻めて勝つ。

14.Bd3 Bxc3!

 14…b6 のような穏やかな展開の手ならシロフは 15.cxd5! exd5(15…cxd5 なら 16.Nb5)16.Bh7+ Kh8 17.Ne2! から Ne2-f4-g6+ と指すつもりだった。

15.Bxc3 hxg5 16.hxg5 Ne4 17.Bxe4 dxe4 18.Qxe4 Rf5 19.Qh4

 シロフ対トルハルソン戦(レイキャビク、1992年)では白が攻めて勝った。これはこの戦法の最初の試合だった。

 c)7…dxc4

8.Bxc4

 8.e4? は 8…e5 9.g5 exd4 10.Nxd4 Ng4 11.h3 Nge5 12.Be3 Nc5 で黒が良い(アダムズ対カスパロフ、1992年、ドルトムント)。

 c1)8…b5

 8…e5 なら 9.g5 Nd5 10.Bxd5(10.Bd2 exd4 11.Qe4+ Qe7 12.Qxd4 は白が少し優勢)は白が1ポーン得になるが強力なビショップを失う犠牲を伴う。

9.Be2 Bb7

 黒のこの陣形はメラン防御の「通常の」または主流の戦法を想起させる。違いは白のgポーンがg4の地点にあることである。マラニウク対セルペル戦(ルツェルン、1993年)では 9…b4 10.Na4 Bb7 11.g5 Nd5 12.Nc5 Bxc5 13.dxc5 Qa5 14.e4 Ne7 15.Be3 Ba6 16.Bxa6 Qxa6 17.Qe2 Qxe2+ 18.Kxe2 と進んで白の楽な収局になった。

10.e4

 代わりに危険性の少ない 10.g5 Nd5 11.Ne4 Be7 12.Bd2 でも良さそうである。

10…Nxg4 11.h3 Nh6

 ナイトは両当たりにされるのでf6へは戻れなかった。

12.Rg1

 白にしっかり主導権がある(アコピアン対ルゼレ、ベルリン、1996年)。

 c2)8…b6

 カスパロフ対ディープジュニア戦第1局(ニューヨーク、2003年)。

9.e4

 次に 10.e5 で両当たりにする狙いがある。

9…e5

 ケンピンスキー対グラダルスキー戦(1994年)では 9…c5 10.g5(10.e5 は 10…Bb7 11.Be2 cxd4 12.exf6 dxc3 13.fxg7 Rg8 14.Qxh7 Nf6 で黒にいくらか反撃を許す)10…Nh5 11.Be3 O-O 12.O-O-O cxd4 13.Nxd4 Bf4 14.Rhg1 g6 15.Ncb5 Bxe3+ 16.fxe3 Qe7 17.Nc7 で白が交換得になり楽に優勢になった。

10.g5 Nh5

 10…exd4? は 11.Nxd4(ただし 11.gxf6 には 11…Qxf6!)で黒の戦力損になる。

11.Be3 O-O 12.O-O-O Qc7 13.d5

 コンケスト対カチェイシビリ戦(カルカッタ、1995年)では 13.Kb1 g6(13…exd4 14.Nxd4 Nf4? は 15.Ndb5 のために黒がナイトを働かせることができなかった)14.d5!(カスパロフの試合と同様の手法)でやはり白が優勢だった。

13…b5

 13…c5 なら上述の解説中の試合のように黒が堅固だが受けに偏した態勢になる。

14.dxc6 bxc4 15.Nb5 Qxc6 16.Nxd6

 これで白が圧倒的に優勢になり27手で勝ちきった。

結論

 スラブ防御のメラン戦法は得意戦法に加えるのによい定跡である。黒は駒を積極的に動かして働かせる機会が得られる。しかしこの戦型では両者にとって指し方が非常に激しく危険になる。きちんと理解し研究しておけば黒は積極的な指し方のできる開放的な試合に恵まれる。スラブ防御を常用戦法に取り入れるならば、特に相手に 7.g4 を指させるならば、研究と準備を怠らないようにしなければならない。ディープジュニアは正しい指し方を見つけることができずたった9手で定跡からはずれ惨敗を喫した。もっと良い指し手を見つけることは可能である。

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2012年04月02日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(162)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 筋が開くことによる影響を見極めることはグランドマスターにとってさえいつも簡単であるとは限らない。その理由はたぶん我々が開き攻撃を攻撃の武器としてのみとらえることに慣れているからだろう。しかし筋の開通が非常に予期しがたい影響を与えることはまれではない。以下はフィッシャーが読み違いをおかした二つの典型的な例である。

フィッシャー対ラルセン
サンタモニカ、1966年
 28…b4

 戦いの最中にフィッシャーは幻影を見ていた。ルークとビショップのバッテリーは黒クイーンを攻撃することができない。というより攻撃されているのはむしろルークである(29.cxb4 d4 で黒の駒得)。唯一の適切な受けは 29.f3 bxc3 30.Qxd2 cxd2 31.Rd1 だった。代わりに・・・

29.Qh3? bxc3 30.Qh6 Ne6 白投了

 ここで初めてフィッシャーは読み筋の 31.Bf6 d4 32.Qxh7+ Kxh7 33.Rh3+ が、ルークが動いたことによりクイーンの受けの筋が通って 33…Qh6 が可能になって詰みにならないことに気づいた。

(この章続く)

2012年04月02日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(161)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 次の局面の開き攻撃は同じくらい単純な着想に基づいている。それは「単純化」である。

ペトロシアン対フィッシャー
番勝負、ブエノスアイレス、1971年
 21…Bxb4

22.d5 Bc3! 23.Bxc3 Rxc3 24.Bc2

 白駒は攻撃的な位置から追われた。代わりに 24.Ba2 なら 24…exd5 25.exd5 Ra3 と応じられる[訳注 26.Rfb1 で黒が良くないので正着は 25…a5 か 25…Rfc8 のようです]。

(この章続く)

2012年04月01日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(160)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 小駒に対する単純な開き攻撃は戦力得よりも有利な収局を目指すためであることがよくある。

フィッシャー対シャーウィン
ニューヨーク、1957-58年
 15…Qb8

16.Nd5! exd5 17.Rxc6 dxe4 18.fxe4 Qb5

 黒は 18…Nxe4 と取れない。取れば 19.Rb6 から 20.Bd5 で両当たりがかかる。だから収局での白の優位は動かない。

(この章続く)

2012年03月31日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(262)

「Chess」2012年1月号(1/7)

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ミハイル・タリ記念大会

記 スティーブ・ギディンズ

 最終戦に入るときアロニアンは単独首位だった。カールセンに半点差をつけていて、二人とも最終局は黒番だった。アロニアンは「無名の男」こと「ネポ」と順当に引き分けた。一方カールセンが黒でナカムラを負かすことはほとんど予想されていなかった。しかしノルウェー選手はこの1年は米国選手にとって「天敵」のようになっていて、順当に予想を覆した。


終局が間近で(大会も)、ボデーランゲージからどういうことなのかが容易に想像がつく。カールセンは非常にリラックスしてナカムラは投了も考えている。

第9回戦
H.ナカムラ – M.カールセン
后印防御

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nf3 b6

 「勝ちを目指して指す必要があった。クイーン翼インディアンは勝つために指すのには変な方法だが、少なくともクイーン翼ギャンビットよりは少し引き分けになりにくい。」(カールセン)

4.g3 Ba6 5.Qc2 Bb4+ 6.Bd2 Be7 7.Bg2

 「二人とも布局で何をやっているのかあまり分かっていなかったのではないか思う。」(カールセン)

7…c6 8.O-O d5 9.Ne5 Nfd7 10.cxd5 cxd5 11.Bf4 Nxe5 12.dxe5

 「これはある定跡手順に非常によく似ている。それは白が優勢とされているが対局中はとてもそう思えなかった。」(カールセン)

12…O-O 13.Rd1

 「ここでのまやかしの一つはもし 13.Nc3 なら 13…Nc6 14.Nxd5 Nd4 15.Nxe7+ Qxe7 でほぼ互角になることである。」(カールセン)16.Qa4 Nxe2+ 17.Kh1 Nxf4 18.Bxa8 Bxf1 19.Qxf4

「黒の方が少し良いかもしれない。」(カールセン)

13…Bb7

 これが最善手のようである。カールセンは 13…Nd7 を避けた。「とんでもない読み間違をしていなければ 13…Nd7 は 14.e4 Rc8 15.Nc3 d4 16.Rxd4 となって明らかに白が少し優勢な定跡手順のようになる。」(カールセン)

14.Nd2

 14.e4 は 14…d4 15.Nd2 d3 16.Qc3 Na6 となって「黒がうまくやっているように見える。」(カールセン)

14…Nc6

15.Nf3?

 「15.Nf3 が単なるポカなのかわざとポーンを見捨てたのか確信はなかったが、どちらにしても白は単に 15.h4 と指した方が良かったと思う。もっとも黒が比較的楽だと思う。」(カールセン)

15…g5!

 「自分が何か見落としているのかまたあまり確信がなかった。それでも 15…g5 と指さなければ自分のチェスが指せないと考えていた。だからそうやるしかなかった。実際白がどのように確かな代償を得ることができるのか分からない。」(カールセン)

16.Be3 g4 17.Nd4 Nxe5 18.Bh6 Re8 19.e4 Bc5

 「19…Bc5 が必要だったかは分からないが非常に魅力的な手だった。ここでは白は互角にしようとだけしている。」(カールセン)

20.Nb3

 20.exd5 は 20…Qf6 21.Bf4 Bxd5 22.Bxd5 exd5 で黒が良い。

20…Rc8

 20…Qf6 には 21.Nxc5 bxc5 22.Bf4 dxe4 23.Bxe4 Nf3+ 24.Kg2 Bxe4 25.Qxe4

「で白がほぼ問題ないと思う。」(カールセン)フリッツはそれでも 25…Qxb2 で黒の方が良いとしている。

21.Nxc5

 「この手は悪い。白はd5の方を取るべきだった。」(カールセン)しかし 21.exd5 のあとフリッツは 21…Bd6! 22.Qd2 exd5 23.Bxd5 Nf3+ 24.Bxf3 Bxf3

という返し技で黒が優勢になると指摘した。25.Qxd6?? には 25…Re1+! が要点である。

21…Rxc5 22.Qa4 Bc6 23.Qd4 Qf6 24.Bf4 dxe4 25.Bxe4

 「もちろんここではもう黒がほとんど勝勢である。」(カールセン)

25…Nf3+

 25…Bxe4 なら 26.Qxe4 Nf3+ 27.Kg2 Qf5 となる。「しかしf3の地点にナイトよりもビショップを残す方が良いと思った。」(カールセン)

26.Bxf3 Qxd4

 26…e5 は「白が間違えてくれれば面白いことになる。」(カールセン)しかし 26.Bxc6 exd4 27.Bxe8 で白が優勢である。「これがなければ 26…e5 は非常に良い手になるところだった。」(カールセン)

27.Rxd4 Bxf3 28.Rd7

 「黒はもう技術的に勝ちである。」(カールセン)

28…Rd5

 「この手はそれほど自信がなかった。」(カールセン)しかしあとで彼は「28…Rd5 でほぼ一本道で勝ちだと思った」と言った。28…e5 は 29.Be3 Rd5 30.Rxd5 Bxd5 となり「黒が勝勢だと思う」(カールセン)

29.Rxd5 exd5

 異色ビショップはどうなのか?「こちらがポーン得で主導権もある。もちろん異色ビショップは問題だが白は持ちこたえられないと思った。」(カールセン)

30.Be3 Re4 31.Re1 d4 32.Bd2 Rxe1+ 33.Bxe1 Be2

 ルーク同士の交換は少し怖そうだ。つまりパスポーンが1個しかなくもう1個も作れそうにないので、純粋の異色ビショップ収局のように引き分けになりそうだからである。しかしカールセンが指摘したように「白キングは閉じ込められている」ので白の困難に輪をかけている。

34.f4

 「これしかチャンスはない。」

34…gxf3e.p. 35.Bf2 d3 36.Be1 Kg7 37.Kf2 Kf6 38.Ke3 Kf5

39.h3

 カールセンによるとこう指す必要がある。39.h4 は 39…Kg4 40.Kf2 Bd1 41.Bd2 Bc2 42.Bf4 Bb1 43.a3 b5 44.Bd2 Bc2 45.Be3 a6 46.Bd2 Bb3 47.Bf4 Bd5 48.Bd2 Be4 49.Be3 Kf5

となって黒キングがクイーン翼に侵入する。「それで勝勢だと思った。」(カールセン)

39…h5 40.Bd2 Bf1 41.Be1

 41.h4 は黒キングをg4の地点に侵入させる。また 41.Kxf3 は 41…Bxh3 42.Ke3 Bf1 43.Kf2 Be2

となって「黒にとってまったく自明である。」(カールセン)44.Ke3 Kg4 45.Kf2「白の助かる可能性は全然ない。」(カールセン)

41…Bxh3 42.Kxd3

 42.Kxf3 は 42…Bf1 43.Bd2 Be2+ 44.Kf2 Kg4 となって前の変化と同様である。

42…Bf1+ 43.Ke3 Kg4 44.Kf2 Bb5

 「クイーン翼のポーンはどれも交換させたくなかった。」(カールセン)

45.Bc3 Bc6 46.Be5 b5 47.Bb8 a6 48.Bc7 f5 49.b3?!

 「黒にとっては完全に自明になった。」(カールセン)しかしいずれにしてもここでは白にしのぎはない。49.a3 は 49…Bd7 50.Bd6 f4! 51.gxf4 Bf5!

となってhポーンで勝負がつく。例えば 52.Bc5 Kxf4 53.Kg1 h4 54.Bf2 h3 55.Kh2 Ke4 56.Kg3 Bg4

で白の負けになる。

49…Bd5 50.Bd6 f4!

 これは前と同じ狙い筋である。hポーンをパスポーンにするのは堤を崩す蟻の穴である。

51.gxf4 h4 52.f5 Kxf5 53.Ke3

 53.a4 は 53…Bxb3 54.axb5 axb5 55.Kxf3 Bd5+ となって2ポーンの間隔が広すぎる。

53…Kg4 54.Kf2 h3 55.Ke3 Be4 56.Kf2 Bb1 57.a3

 57.a4 なら 57…b4 58.a5 Be4 59.Kg1 Bd5 で黒の勝ちになる。

57…Ba2 58.b4 Bf7 0-1

 黒キングはクイーン翼に進軍してa3のポーンを取ることができる。

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(この号続く)

2012年03月30日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(159)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 別の空き攻撃に通じる開き攻撃(例えば前出のセイディー対フィッシャー戦)は駒を標的とするだけでなくキングを褒美(ほうび)としても起こることがある。

フィッシャー対ベルリーナー
ニューヨーク、1962-63年
 29…f4

30.c6! Qxd6 31.Nxf4

 クイーンに対する空き攻撃であると共に二つ目のバッテリーが形成された。

31…Qxc6 32.Nh5+

 ルークに対するこの空き攻撃で交換得になる。

32…Kh8 33.Qxc6

 こう取らないと詰まされる。

33…Qxc6 34.Rxf7

(この章続く)

2012年03月30日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(158)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 次の局面ではクイーンに対するもっと複雑な空き攻撃に同じ戦術が用いられたがうまくいかなかった。

ロンバーディー対フィッシャー
ニューヨーク、1960-61年
 14.Rc1

14…Nb4! 15.Nxb4 Qxc1+ 16.Bxc1 Bxb5 17.Nd5 Bh4+!

 この挿入手で 18.g3 Bxf1 のあと黒が交換得を維持する。

(この章続く)

2012年03月29日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(167)

「The British Chess Magazine」2011年7月号(1/1)

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チェスの作法

国際審判 アレックス・マクファーレイン

 カザンでの挑戦者決定競技会におけるクラムニク対ラジャーボフのブリッツによる決定戦で起きた対局時計の故障に関連した質問をいくつか受けた。

時計が故障したらどうなるのか

 チェスの規則はきわめて明快で、審判が証拠となるものはすべて用いて可能な限り適切な時間に時計を設定し直して試合を続行することになっている。

 『6.10a 明らかな不具合がなければ時計に表示されているものはすべて正しいとみなされる。明らかに不具合のある対局時計は交換しなければならない。審判は時計を交換し、代わりの時計に設定する時間を決める際には最善の判断を行なう。』

 通常は対局者は問題が発生する前に時計の表示をほぼ覚えていて、認識に大きな違いがなければ適切に折り合いがつけられる。特別な状況では対局者同士で経過した時間を折半しなければならないかもしれない。上述の試合では、最初は試合を見守っていた審判によって記憶に基づいて時計が再設定された。しかしロシア語の大会規則を探している間にまた時間が経過した。この間にビデオおよび/または実況中継から正確な時間が判明し代わりの時計に設定された。面白いのはサッカーで判定に機器の使用が議論されているこの時代に、対局再開に手間取ったのでかろうじてビデオの証拠が用いられたことである。

 チェスではビデオの証拠を採用すべきだろうか。ブリッツ試合や時間がほとんどなくて多くの手数を指さなければならないときには、時計が試合の結果にかなりの役割を果たす。そのような状況では問題が起こったかどうかを決めるために時計を止めることは試合の流れを大きく乱してしまい、私の考えでは行なうべきではない。よくあるようにビデオの証拠はあまりはっきりしたものでない状況では特に間違ったやり方である(例えば1966年のFIFAワールドカップ決勝ではいまだに議論になっている)。大会では「タッチムーブ」や駒を動かす前に別の駒に触ったかについて争いになることがある。伸ばした手が審判の視界をさえぎることはよくあり、駒に本当に触れたか手がすぐそばまでいっただけかを判定するのは無理である。審判が確信がある場合だけ介入すべきである。そのような場合カメラがかなり異なった角度から撮影しているのでなければ、ビデオでも違反行為を確認することはできない可能性が高い。これは私の経験だが、相手選手が申し立てをしたら私がそれを支持しただろうが、私の方から介入するほどの確信はなかったことがある。同様に「タッチムーブ」の申し立てを自信を持って却下したことがあった。そのときは駒に触っていないことに確信があり、相手がそう思った理由についても分かっていた。私は申し立てがなされたらビデオを証拠として用いる可能性を排除しない。裁定委員会はすべての証拠を考慮する時間があるのが普通でそれに基づいて判断を下す。時計の問題に戻るとリバプールでの英国選手権戦で火災報知器が鳴ったとき愚かにも時計を止めて建物から非難するようにアナウンスした。2試合の選手たちがそれに従ったが時計の設定をし忘れて建物から離れた。もしもう一度火災報知器が鳴るか停電したら今度は時計を一時停止にするように言うだろう。

 この場合に該当する規則は6.13項である。不測の事態が起こっておよび/または駒を元の状態に戻さなければならない場合は、審判は最善の判断を尽くして時計の時間を決めなければならない。必要ならば時計の手数表示も調整しなければならない。

 時計が一時停止になっていなければ審判は中断時間を動いている時計から引かなければならない。問題のあった場合の一つでは一方の対局者が2、3手ごとに時間を記録していた。そこで審判はこれを使って時間の算定をした。他の停止された時計では両対局者がおよその時間に同意した。両対局者が合意できなかったら、両対局者とできれば隣の対局者の証言に基づいて時間を決める必要がある。幸いにもこの試合中断は対局の非常に早い段階だったので、時計の設定はもっと遅い段階で起こった場合よりも深刻でなかった。

 別の時計の問題はこうだった。規定手数に達しかどうかというちょっとした問題の生じた試合に呼ばれたことがある。両対局者は黒が必要な手数に達したことには同意していた。しかし白は先手がもう1手指さなければならないと主張していた。私はちょっといたずらっぽくどちらが初手を指したのかと聞いた。白はためらうことなく自分だと言った。それから私はどの時点で黒が2手連続して指したのかと聞いた。白は最初は当惑しそれからすぐに赤面して平謝りに謝った。

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(この号終わり)

2012年03月28日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(157)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 別の全米選手権戦での同じ相手に対してフィッシャーは再びバッテリー爆弾を不発にさせた。

フィッシャー対バーンスタイン
ニューヨーク、1959-60年
 15…Bxh2+

16.Kxh2 Ng4+

 バッテリーを隠していた駒がチェックをかけ白クイーンを開き攻撃により当たりにしてきた。しかし白キングはクイーンを守ることができる。

17.Kg3 Qxh4+

 黒は 17…Rxe1 18.Qxd8+ Rxd8 19.Bd2! のあと 19…Rxb1 20.Rxb1 Bxb1 21.fxg4 がほぼ一本道で Bf4 の狙いで白が優勢になることを読まなければならなかった[訳注 21…Bxe4 のあとc6のポーンを払えば黒が優勢のようで、白は単に 19.fxg4 と取って優勢のようです]。この狙いがなければ実戦の手よりも 17…Rxe1 が貴重な先手になっていた。

18.Kxh4 Rxe1 19.fxg4 Rxc1 20.gxf5 Rd8

 互角の形勢だが黒の負けに終わった。

(この章続く)

2012年03月28日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(156)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 フィッシャーはキングに安全な逃げ場所がある限りキングが自分に向けられたバッテリーをどのように無視することができるかの例を数多く残してくれた。

バーンスタイン対フィッシャー
ニューヨーク、1957-58年
 20.g5

20…Bf5!

 白のfポーンを止めることができる限り黒キングはh6の地点に避難できる。次に …Nb3+ から詰みの狙いがあるので大駒の清算を強制できる。

21.gxf6+ Kh6 22.Qc4 Nd7 23.Qxc7 Bxc7 24.Bf3 Bd8!

 次のバッテリーの動きは何も怖くないので自分の方からとげを抜くことができる。

25.Bg5+ Kg6 26.Rg1 Bxf6!

(この章続く)

2012年03月27日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(18)

「Chess Life」2003年5月号(1/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御

 今月はスラブ防御メラン戦法の 7.g4 を取り上げる。

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3 e6 5.Nf3 Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.g4

 この見慣れない攻撃の手の 7.g4 は非常に独創性に富むラトビアのスーパーGMアレクセイ・シロフによって10年くらい前に創始された。それ以来カスパロフ、ゲルファンド、クラセンコフらの多くの一流グランドマスターがこれを自分の武器に取り入れた。

黒の基本的な作戦は何か

 この戦法は非常に変わっている。白は自分の展開を完了する前に攻撃を始める。何が変わっているかというと黒がまだキング翼にキャッスリングしていなくて、特に弱点もないことである。それでも白はキング翼で攻撃を仕掛ける。

 この戦法には白のポーンの犠牲が伴っている。黒は恐れずにそれを受諾することができるし、拒否することもできる。ポーンの犠牲を受諾する危険な戦法では黒はしばらくの間受けにまわらなければならない。戦法によっては白がキング翼で総攻撃をしている間に黒は論理的に中央で開戦することができる。これは「相手が側面で攻撃するときは中央で反撃せよ」というチェスの一般原則に合致している。

白の基本的な作戦は何か

 7.g4 と突く理由は何か。g2-g4 突きは通常はキング翼での直接攻撃だが、その普通の考えと異なりここでは必ずしも黒キングへの直接攻撃を意味しない。それよりも黒ナイトをf6の地点からh5か元のg8のようなどこか働きのない地点へ追い払うだけの目的の方が多い。

 しかしもし黒がg4のポーンの犠牲を受諾することにすれば、白は素通しのg列でキング翼攻撃に移ることができる。

評決はどうなっているか

 この戦法は大乱戦になるのが普通である。白キングは通常の落ち着いたキング翼キャッスリングのあと安全を得ることができないので、7.g4 は針路をはっきり決めた危険な手である。この戦型は10年くらい前に登場して以来何百局も指されている。有名なカスパロフ対ディープジュニアの番勝負第1局のあと改良を要するのは黒のようである。

 もちろん 6…Bd6 は必然ではないが、最も自然でおそらく最善の手である。カスパロフ対ディープジュニアの第3局ではコンピュータプログラムは 6…b6 と指して話題の 7.g4 を避けた。このあとの実戦例から分かるように 7.g4 は必勝の手ではないので黒は避けるべきではなかった。この手はほとんどの 1.d4 d5 の布局の場合よりも複雑で激しい試合になるだけである。

 だからあなたが黒でスラブ/メランを指す選手なら新しい定跡を探す必要はない。この講座を元にもっと研究するだけでよい。

 上図から黒には複数の選択肢がある。

 a)挑戦を受けて立ち 7…Nxg4 とポーンを取る

 b)何も起こらなかったかのようにキャッスリングする(7…O-O)

 c)7…dxc4 とポーンを取ることによりすぐに中央で開戦し 8.Bxc4 のあと
 c1)8…b5
 c2)8…b6

 a)7…Nxg4

 この手は確かに最初に浮かぶ疑問である。黒が「景品」を受け取ったらどうなるのか。白の自然な応手で最善手は次の手である。

8.Rg1

 ここでも黒にはいろいろな選択肢がある。ナイトを当たりから逃がす、ナイトを守る、そして当たりにかまわず反撃するである。

8…Qf6

 ここでは他にも 8…Nh6 や 8…h5 など多くの手がある。その中から一つだけ見ておこう。8…Nxh2 9.Nxh2 Bxh2 10.Rxg7

 ここからの黒の手は多岐に渡る。

 a1)10…h6 と突いてポーンを助けようとするのはポカである。11.f4 のあと黒の黒枡ビショップは「捕虜」のままとなる。11…Qh4+ 12.Qf2 Qxf2+ 13.Kxf2 Nf6 14.Rg2 これは1992年のシャバロフ対メフィストRisc(コンピュータ)戦で、黒のビショップが捕らわれの身となった。

 a2)10…Nf8 でポーン得にこだわる方が良い。もっとも白は 11.Rg2 から e3-e4 で十分な代償がある。次の胸のすくような短手数局(1996年ポルトガルでの通信大会のソウサ対クラブチェンコ戦より)には黒が直面しなければならない危険性がよく現れている。11…Bd6 12.e4 dxc4 13.Bxc4 Bd7 14.e5 Be7 15.Bh6 Ng6 16.O-O-O Nh4 17.Rg7 Nf5 18.Qxf5 黒は 18…exf5 と取り返しても 19.Bxf7+ Kf8 20.Rxh7# で詰みになるので投了した。

 a3)10…Qh4 も 11.e4! Bf4 12.cxd5 Bxc1 13.Qxc1 exd5 14.Qe3! で白が優勢になる。

 a4)10…Qf6(白ルークを追い返す)11.Rg2(白は 11.Rxh7 でポーンを取り返す方より緊張を維持する方を望んだ)11…Bd6 12.Bd2 Nf8 13.O-O-O Bd7 14.Kb1 Ng6 15.f4 Nh4 16.Rf2 a6(16…O-O-O? は 17.cxd5 exd5 18.Nxd5 でポーンを取られる)17.e4 Qxd4 18.Re2 これは1995年ユーゴスラビアでのモゼティッチ対ヨビチェビッチ戦で、白の攻撃が強力だった。

9.Rxg4 Qxf3 10.Rxg7

10…Nf8 11.Rg1

 ルークは自陣に戻っておかなければならない。さもないと …Nf8-g6 とされて戻れなくなるかもしれない。

11…Ng6

 11…Bxh2 は 12.Be2(重要な挿入手)12…Qh3 13.Rf1 で白に十分な代償がある。

12.Be2 Qf6 13.Bd2

 このあと白はクイーン翼にキャッスリングしてそのあと e3-e4 突きにより中央から仕掛けていく。これはこの戦法の重要な局面で、深く研究する価値がある。

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2012年03月26日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(155)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 黒ルークを白のルーク、ビショップおよびキングの焦点に割り込ませる前題の防御の着想は攻撃の武器にもなり得る。

フィッシャー対ジェフマン
ストックホルム、1962年
 20…Na4

21.Bb5!

 ここが黒のクイーンとルークの焦点である。実際には黒クイーンに対して「逆開き攻撃」または干渉(普通のプロブレム用語)を仕掛ける地点に駒を動かした。

21…Rxb5 22.Nxa4 Rb4 23.Nc3

 このささやかな手筋で白は何を達成したのだろうか。白は相手の攻撃駒の一つを消し去り、手順に最下段を空けた。そしてポーンによるローラー攻撃に向かうことができる。この小さな手筋は捨て駒と同じくらい小気味よい。

(この章続く)

2012年03月26日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(39)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

59 誤ったビショップ 271ページ
『ここで、黒にはルークを捨てて2つのマイナーピースを取る狙いがある。結局はポーン1つしか取れないが(それが黒の致命傷となる)。』

このあとの 14…Qxb4 で確かにポーンを1個取っている。それが何で勝った黒(フィッシャー)の致命傷なのだろうか。

英文『Black now has a shot which wins two pieces for a Rook; or, as it turns out, a lowly Pawn (which proves fatal).』

黒の「ルークを捨てて2つのマイナーピースを取る狙い」は 13.b4 の解説にあるように 12…Re6! 13.Ng5 Rxd6 14.Qxd6 Qxc3 という変化のことである。「ポーン1つしか取れない」のは本譜(実戦)の 12…Re6! 13.b4 Qa3! 14.Bc7 Qxb4 という手順である。この手順で黒が勝っている。だから黒の1ポーン得でも白にとって致命傷だったということである。

試訳『ここで、黒にはルークを捨てて2つのマイナーピースを取る狙いがある。結局はポーン1つしか取れないが(それが白の致命傷となる)。』

59 誤ったビショップ 272ページ
『私は、彼が再び見に来ても無視した。』

英文『I never noticed him looking at the game again.』

「無視した」とはどこにも書かれていない。

試訳「彼が再び見に来た気配はなかった。」

59 誤ったビショップ 272ページ
『ここからも退屈しない。』

英文『No rest for the weary.』

大修館書店「ジーニアス英和大辞典」の rest に次のような例文がある。There’s no rest of the weary. 疲れ果てていても働かなければならない。

試訳「このビショップは休めない。」

60 チャンピオンが相まみえて 280ページ
『56.f6 1-0
56…Rf4 には 57.Nd5 で決まり。不屈の闘志!』

「不屈の闘志」とは不利な側の頑張りに対する言葉であろう。

英文『56.f6 Black resings
On 56…Rf4 57.Nd5 wins the house. A stubborn fight!』

試訳「56.f6 1-0
56…Rf4 には 57.Nd5 で決まり。激闘だった!」

2012年03月25日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(154)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 バッテリーの射撃駒に対する攻撃は射撃駒がもう攻撃されなくなるまで動くことにより対処するのが普通である。プロブレム作家たちはバッテリー駒が逃げ続けるとどんなに愉快かを発表してきた。

J.ブロイアー(1955年)
 4手詰み

1.Bf3!

 1.Ba8 で解決すると簡単に考えてしまうところである。しかし黒が 1…Ra2 と狡猾に守ると(1…f5 は 2.Rg3+ から3手で詰むので駄目である)、2.Rg3+ Rg2 3.Rxg2 f5 4.Rg3+ Rc6 5.Bxc6# で1手余分にかかってしまう。

1…Rf5 2.Ba8! Rf2

 黒ルークはfポーンを動けなくしていたので、g2の地点に割り込むためにはこの受けしかない。しかしこの手は(前に出てきたビアンケッティのスタディのように)黒キングの動きを止めることにもなり次の手順が可能になった。

3.Rh2+ Kxg1 4.Rh1#

(この章続く)

2012年03月25日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(153)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 時には隠している駒の標的がないためにキングが白昼堂々と開き攻撃から逃げることができるときがある。次の局面では白キングがどんなチェックをかけられてもe2からf1へ逃げるので黒のクイーン翼の戦闘部隊は無力だった。

フィッシャー対ベンコー
キュラソー、1962年
 30…Kh8

 対照的に白の攻撃はg列を強制的に素通しにする援助がある。

31.Qxh6+! 黒投了

 白の次の手で詰みになる。

(この章続く)

2012年03月24日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(261)

「Chess Life」2011年12月号(4/4)

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グランドスラム大会(続き)

 ナカムラは世界チャンピオンをあと一歩のところまで追い詰めた。

グランドスラム最終戦、サンパウロ 第2回戦
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2753、米国)
GMビスワーナターン・アーナンド(FIDE2817、インド)

 24…Bxe5

25.Bxe5?

 ナカムラは手拍子でこの手を指しすぐに後悔した。彼は「5手前に 25.Bc6! は 25…Bd4 のためにうまくいかないと読んでいた。しかし 26.Bc7! を見落としていた」と認めた。「25…Bxg3 なら 26.hxg3 で完全に勝ちだった。」アーナンドはそれほど納得はしていなかった。もっとも 26…b4 27.Rxd7+ Rxd7 28.Qxd7+ Kf6 29.Ba4!

なら難しい受けが長く続いただろうと認めた。

 コンピュータの分析は人間では考えもつかない 25.Bc6 Kf6 26.Rxd7 Rxd7 27.Bxd7 Bxb2!!?

で黒がしのげるかもしれないと指摘した。28.Be8 には 28…Qe7 29.Qxb5 Bd4 と応じることができ 30.Qxc4 には 30…Bxf2+ が用意の手で、駒得だがポーンが片側だけにある収局なので白がおそらく勝てないだろう。

25…Qxe5 26.Bc6 Kf6 27.Bxd7 Qxb2

28.Rf1

 白はこの巧妙な手でまだ勝とうとしている。最下段の狙いとd列での釘付けのために白は得している駒をすぐには活用できない。28.h4 は 28…Qe5 で黒を安心させる。

28…c3 29.Qc7 Ra8

 アーナンドは 29…Rxd7 30.Qxd7 c2 31.Qd2 b4 32.f4

を掘り下げることに興味がなかった。「そのとき 32…g4 は 33.f5 でh6のポーンが浮いているので黒が危険そうである」とナカムラは言っていた。彼は「しかし 32…Kg6! で黒が大丈夫かもしれないと思った」と付け加えたがそれで正しいようである。

30.Bxe6!

 ナカムラがこの手を指したときアーナンドの顔にかすかな恐怖の色が浮かんだ。しかしすぐに落ち着きを取り戻した。

30…fxe6 31.f4

31…Ra1!

 このときまでにアーナンドはポーカーフェースに戻っていた。この手に費やした5分のほとんどは虚空を見つめていた。アーナンドは「31…g4!? と指すこともできると思った」とあとで説明した。「32.Qe5+ Ke7 33.f5 には 33…Ra1 がありそのあとキングをクイーン翼に逃がす。この方が安全だったようだ。完全に安全ではないが十分安全だ。勝つ手は分からなかった。単独のクイーンでは詰ませる手段がないと思った。もっともちょっと不安だった。」

32.fxg5+ Kxg5 33.Qg7+ Kh5

 今度は時間が刻々と減っていく間に感情を露わにするのはナカムラの番だった。絶好のチャンスをだめにした自分に対する失望と憤慨の混ぜ合わさったものだった。

34.Qf7+ Kg5

35.Qf6+

 アーナンドは「h4+ と突いてクイーンをg6に引ける手順は読んだ」と言った。「しかしそれでも Kh2 のとき …Rxf1 と取っておいて g3 はgポーンが釘付けになっているので突けない。」

35…Kh5 36.Qf7+ Kg5 37.Qg7+ Kh5 38.Qf7+ 引き分け

 そしてナカムラの残り時間がゼロになる6秒前に両対局者が引き分けの握手をした。「優勢な局面になるのはいいが、結局のところ問題はその結果だ」と落胆したナカムラは終局後言った。「もっとうまく指せる。」

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(この号終わり)

2012年03月23日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(152)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 時間に追われているときは開き攻撃、遮断、逆チェックなどは可能ではあっても読むのが困難なことが多い。次の局面はそのような場面である。

D.バーン対フィッシャー
クリーブランド、1957年
 34.Kh1

 白のこの手は時間切迫時の典型的な「一撃」を招いた。

34…f3 35.gxf3 Nxf3 36.Rd1?

 白は射撃駒を当たりにしたが黒には遮断がある。36.Bxg7+ Kxg7 の方が良いがそれでも白は逆チェックの可能性に警戒しなければならない。37.Qc3+ Nd4+ 38.Kg1 Kh6 39.Bc4 Nf3+ 40.Kh1 は比較的安全だが[訳注 38…Qe5 で黒勝勢、40.Rxf3 で白勝勢]、37.Bxf3 Rxf3 38.Qb2+ Rc3+ 39.Kg1 Qd4+ はそうでもない。

36…Nd4+ 37.Rf3 Rxf3 38.Rxd4 Rxh3+

 3手後に白が投了した。

(この章続く)

2012年03月23日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(151)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 これまでの例から明らかにバッテリーに対する防御は隠している駒を釘付けにするかバッテリーの「発射」駒を当たりにするかで、それも隠している駒が当たりにした駒を「遮断」したり取ってしまったりできない場合に限られる。次の局面でフィッシャーは反バッテリーの手で完全に立場をひっくり返した。

フィッシャー対ファウバー
ミルウォーキー、1957年
 26…Nf2

27.Nf4! Rd2

 射撃駒が当たりになっているときは二重チェックしか安全に用いることができない。ここでは 27…Ng4+ は 28.Kh3 で2駒が当たりの状態になる。

28.Kg1

 黒に白ルークを「開く」ようにさせた。

28…Ng4 29.Ne6+ Kh8 30.Rfxf7 黒投了

(この章続く)

2012年03月22日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(166)

「Chess」2012年2月号(1/1)

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次の一手

第8問 池田惇多 – L.マセソン
オーストラリア、2011年
白の手番

解答
1.Ng6+! hxg6 2.Qh6+ Rh7 3.Rf8+! 1-0 3…Rxf8 4.Qxf8#

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 これはレイティング1500-1800の問題です。制限時間は特に指定されていません。

(この号終わり)

2012年03月21日 コメント(0)

カテゴリ: 世界のチェス雑誌から3

フィッシャーのチェス(150)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 実戦でも非常に役に立つプロブレムの別の主題は次に示すように逆チェックである。これは敵キングにチェックをかけると同時に自分のキングへのチェックを止める開きチェックである。プロブレムの伝承の何千もの例のうち次はおそらく最も鮮明なものである。

G.F.アンダーソン作(1915年)
 2手詰み

1.Kd6!

 開きチェックがいっぱいある。白キングはクイーンの利きを開け 2.Qb7# を狙っている。黒ルークがg6またはd3の地点からチェックしてくれば、バッテリー駒のビショップでさえぎってそれぞれ 2.Be6 または 2.Bd5 で詰みに討ち取る。

(この章続く)

2012年03月21日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(149)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 バッテリーは短い手数に多くの動きを詰め込んでいるのでプロブレム創作において人気のある趣向になっているのは当然である。筋の閉鎖も考慮に入れなければならないとき、バッテリーの効果は非常に驚くべきものになる。次の局面はこれまで創作されたものの中で最も洗練された2手詰めの一つである。

エヘルマン作(1925年)
 2手詰み

1.Rd7!

 ルークを動かしてクイーンをd3の地点の見張りから解放し 2.Qf4# を狙うのは意外でない。しかしこの地点でなければならないことは変化により明らかになる。

1…Qf2 2.Nd8#

 黒クイーンが釘付けを解消すればナイトが動ける。c5とd6の地点はそれぞれ黒キングがe5とd4の地点に逃れるので駄目である。ナイトがこれらの地点へ跳んで詰みになるのは黒クイーンがe5とd4の地点に行って「自己閉鎖」するときである。

(この章続く)

2012年03月20日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

ポルガーの定跡指南(17)

「Chess Life」2003年4月号(2/2)

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ポルガーの定跡指南

GMスーザン・ポルガー

スラブ防御(続き)

 C)5.a4

5…Bf5

 これが最もよく指される手である。ほかには 5…Bg4 と 5…Na6 が指されている。

6.e3

 最近では 6.Ne5 e6 7.f3 で中原の支配をすぐに争う手が指されている。この戦型はこの10年で広く研究された。主流手順は黒が駒を犠牲に3ポーンを得るものである。7…Bb4 8.e4 Bxe4 9.fxe4 Nxe4 10.Bd2 Qxd4 11.Nxe4 Qxe4+ 12.Qe2 Bxd2+ 13.Kxd2 Qd5+ 14.Kc2 Na6

これは大乱戦である。スラブ防御を将来の黒番の常用戦法に取り入れることに関心があるならばこの局面についてもっとよく知っておく必要がある。

6…e6 7.Bxc4 Bb4 8.O-O O-O

 8…Nbd7 もある。

9.Qe2

 他に有力な手は 9.Nh4 である。白は双ビショップの優位を得るが、そのためには何手か費やさなければならない。黒は 9…Nbd7 と指して白の意図を無視することができるし、9…Bg4 10.f3 Bh5 11.g4 Bg6 と指すこともでき面白い試合になる。

9…Nbd7

 9…Ne4 なら白はbポーンを犠牲に 10.Bd3 と指すことができる。この手は1937年のアリョーヒンとの世界選手権戦第17局でエーべが指した。白は直接ポーンを取り戻す手段はないけれども、中原だけでなく半素通しのb列でも非常に強い圧力をかけることができる。

10.e4

 10.Ne5 も面白い手で、カスパロフが1992年にアーナンド戦で指したことがある。

10…Bg6

11.Bd3

 この手はe4のポーンを守るためである。白がすぐに 11.e5 と突くのは1953年の名高いチューリヒでの挑戦者決定競技会におけるボレスラフスキー対スミスロフ戦のように 11…Nd5 で黒は何も恐れることがない。その試合は 12.Nxd5 cxd5 13.Bd3 a6 14.Bxg6 fxg6 と進んだ。このように取り返すのは一見奇妙に思えるが、実際はこの戦法ではきわめて普通で 14…hxg6 よりも優る。14…hxg6 は白にh列から攻撃する可能性を与える。

11…Bh5

 この釘付けの手のあと黒は …e6-e5 を狙っている。他には 11…h6 も面白い手である。またナイジェル・ショートがPCA世界選手権戦でカスパロフ相手に試した 11…Qa5 12.e5 Nd5 もあり黒が負けなかった。

12.Bf4

 12.e5 なら 12…Nd5 13.Nxd5 cxd5 14.Qe3 で白が釘付をはずし、このあと 14…h6 または 14…Be7 で本格的な中盤戦になる。

12…Re8

 また …e6-e5 突きを狙っている。

13.e5 Nd5 14.Nxd5 cxd5 15.h3

 この手はいずれ g2-g4 と突けるようにしている。

15…a6 16.Rfc1

 ここはこの戦法の重要な局面である。黒には面白い選択肢が数多くある。16…Bg6、16…Nf8、16…Bxf3、それに奇異な 16…Nb8 さえある。これまでの定跡では形勢不明ということになっている。だからこの布局を指したければ深く研究しておかなければならない。

 しかしすぐに 16…Rc8 と指すのは誤りで、17.Rxc8 Qxc8 18.Bxh7+! Kxh7 19.Ng5+ で白の勝勢になる。

結論

 スラブ防御は得意戦法に取り入れるには良い定跡である。黒は駒を駆使し戦う機会が得られる。しかしその余波と危険性もある。黒が駒を活動させるために払う究極の代価は中原の広さで譲歩するということである。

 局面を正しく理解できれば黒は開けた局面で活発な戦いができる。スラブ防御を常用布局に選ぶならきちんと研究しなければならない。なぜならこれは深く研究されている定跡の一つだからである。

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2012年03月19日 コメント(0)

カテゴリ: ポルガーの定跡指南

フィッシャーのチェス(148)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 チェックで取るかチェックを避けてバッテリーを作るかの選択が生じることがよくある。これはキャッスリングしたキングに対してf7/f2の地点でルークでもビショップでも取れるときによく起こる。通常は開き攻撃の方がもっと破壊力がある。この複雑な例が次の局面でフィッシャーの相手によって見落とされた。

パルマ対フィッシャー
ブレッド、1961年
 26…exd4

 ここでパルマはチェックを行使して 27.Qxf7+ と指した。しかし 27…Kd8 28.Rxg8+ Kc7 とフィッシャーのキングが逃げ越し試合は引き分けに終わった。バッテリーを作れば詰みの可能性もあった。

27.Bxf7! Rh8

 27…Rxg3 なら 28.Be6+ のあと Qxd7 または Qf7 で詰みになる。このルーク寄りはバッテリーに対してバッテリー駒を攻撃するよくある受けの手段である。

28.Qg7! Kd8

 バッテリー駒はもう攻撃されない。チェックを隠している駒で取ってしまうまでである。

29.Qxh8+ Kc7 30.Qxf6

 これなら白駒が働いている。

(この章続く)

2012年03月19日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

名著の残念訳(38)

「ボビー・フィッシャー 魂の60局」

57 気分転換 263ページ
『39.g4?
あり得ないポカ。』

何があり得ないのだろうか。

英文『39.g4?
The last blunder.』

辞書によると last には「最も・・・しそうにない」という意味がある(He is the last person to betray others. とても人を裏切るような人物ではない)。しかしここでは当てはまらない。

試訳『39.g4?
最後のポカ。』

58 不完全な名局 265ページ
『フィッシャーはうまく指して優勢な局面にしたが、実戦で正着を見つけるのはひじょうに難しい。・・・ミスが出た。・・・彼は序盤早々から勝ちを求めずに、手堅い戦略合戦に持ち込むべきだった。』

英文『Fischer played better and attained a superior position, but it was very difficult to find the right solution over-the-board… There was his mistake… He has to impose a hard positional game, playing without pretensions for a win in the very opening.』

最後の文を playing without a win in the very opening と解釈したようである。without pretensions で「もったいぶらないで」という意味である。この部分をはずすと playing for a win in the very opening「序盤早々から勝ちを求めて指す」という構文になる。There was his mistake は There is/are XX「XX がある/いる」という構文ではない。この構文の XX には定冠詞や所有代名詞のついた名詞は置けない。His mistake was there が強調のために倒置形になっているだけである。

試訳「フィッシャーはうまく指して優勢な局面にしたが、実戦で正着を見つけるのはひじょうに難しい。・・・そこに彼の誤りがあった。・・・もったいぶらずに序盤早々から勝ちを求めて指しながら、手堅い戦略合戦に持ち込むべきだった。」

58 不完全な名局 269ページ
『24.cxb3 には 24…Nxf6! がとどめとなる。強豪はそれだけでは不十分だと、タラッシュ博士は言った。戦うのも強くなければ。』

「それだけでは」とは具体的に何を指しているのだろうか。「24…Nxf6! がとどめとなる」だけでは不十分だというのだろうか。

英文『After 24.cxb3 Nxf6! is the quietus. It is not enough to be a good player, observed Dr Tarrasch; you must also play well.』

It は仮主語だから「それ」と訳すのは間違いである。真の主語は to be a good player である。

試訳「24.cxb3 には 24…Nxf6! がとどめとなる。うまい選手であるだけでは不十分だと、タラッシュ博士は言った。指すのもうまくなければならない。」

2012年03月18日 コメント(0)

カテゴリ: 我楽多

フィッシャーのチェス(147)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 ナイトによる開きチェックは非常に強力なことが多いので大きな犠牲も払えることがある。

ソーベル対フィッシャー
モントリオール、1956年
 23…Qg5

 ここではフィッシャーは銃弾の出る側にいた。

24.h4! Qxh4 25.Rh1 Qg5 26.Rxh7+! Kf8

 このルークを取ると 27.Nxf6+ から Ne4+ でクイーンを取られる。フィッシャーは 27.Nxf6 に期待した。それなら 27…Rd2+ で白のクイーンが取れる。しかし白は今度は安全に駒得した。

27.Qxf6 黒投了

(この章続く)

2012年03月18日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(146)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 フィッシャーが逃さなかった有名なクイーン捨て(何回か言及してきた)はよくあるビショップとナイトとのバッテリーしだいだった。普通はキングが自陣のナイト列の最下段にいる場合に起こるが、その際立つ特徴はここでも同じだった。つまりナイトは無限にチェックできて先手を取り続けるか戦力をかすめ取りながら動き、時には詰ませることもあるということである。

D.バーン対フィッシャー
ニューヨーク、1956年
 17.Kf1

17…Be6!

 多くの妙手のようにこの手もほぼ必然である。なぜならクイーンとナイトが当たりになっていて、17…Nb5 は 18.Bxf7+ Kxf7 19.Qb3+ Be6 20.Ng5+ となるのであまり気が進まないからである。だから好手の記号は本当のところはこの可能性を読んでおかなければならなかった数手前の手に対するものである。クイーン捨ての別の特徴についてもここで触れておかなければならない。黒はクイーンが取られれば好きなだけ何回でも永久チェックをかけることができるので、引き分けを「担保」にとっている。そして取れる戦力は全部取ったあと勝ちにいけるかどうかを決めることができる。多くの目の覚めるような妙手はほんのわずかな危険性で試みられるし、うまくいくならあらゆる賞賛を浴びることになる。

18.Bxb6

 このビショップが動くことによる愉快な点は 18.Bxe6 なら 18…Qb5+ で次のように有名な「窒息詰め」になることである。19.Kg1 Ne2+ 20.Kf1 Ng3+ 21.Kg1 Qf1+! 22.Rxf1 Ne2#

18…Bxc4+ 19.Kg1 Ne2+ 20.Kf1 Nxd4+

 これでポーンが取れたが、もっと重要なことは対角斜筋が通ってナイトがc3の地点に基地を持つことである。

21.Kg1 Ne2+ 22.Kf1 Nc3+ 23.Kg1 axb6

 フィッシャーは勝ちにいくことにし41手目で勝った。ついでに言えばビショップの取り返しで白クイーンに対する開き攻撃になっていることが重要で、ルークを取る先手が得られた。

(この章続く)

2012年03月17日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

「ヒカルのチェス」(260)

「Chess Life」2011年12月号(3/4)

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グランドスラム大会(続き)

 イワンチュクの第6回戦でのナカムラ戦勝利は盤上と盤外の両方の意味で大会での驚嘆の出来事だった。

 不振に陥っても仕方がないのはイワンチュクだった。彼と妻はブラジルで空港行きのタクシーに乗りこんだときに銃を持った二人組みに金品を強奪されるという災難にあって遅れてビルバオに到着していた。

 イワンチュクは愛用の木製のチェス盤駒を取られたことを残念がったがそれ以外は動じていないようで「考えてみれば特に貴重なものは何もなかった」と言った(パスポートの入ったハンドバッグを取られた妻のオクサナはそうでもなかったようだった)。

 イワンチュクのナカムラとの試合はゆっくり進んで-きっと時差ぼけの影響だろう-すぐに二人とも時間に追われだした。ナカムラは弾丸チェス(持ち時間1分のチェス)で世界の第一人者と目されているのでこれは彼の思うつぼと思われたが、どたばたの中でイワンチュクに完全に圧倒された。イワンチュクは最後の10手を30秒で指しどの手も正確だった。ナカムラは「ああいうふうに終わったのは非常に残念だった」と言った。「二人ともポカを出さないようにしていたところで時間に追いまくられた。」

グランドスラム最終戦、ビルバオ 第6回戦
シチリア防御/カン戦法 [B43]
GMワシリー・イワンチュク(FIDE2765、ウクライナ)
GMヒカル・ナカムラ(FIDE2753、米国)

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Nc3 Qc7 6.Bd3 Nf6 7.f4!?

 白の最後の3手は個々には自然だが変わった構えで、ナカムラはすぐにつけ込もうとする。7.O-O なら普通である。

7…Bb4

8.Nb3!?

 イワンチュクが即興で指しているのは時間の使い方から明らかで、既に30分も使っていた(ナカムラもすぐに追いつくことになる)。本譜の手が普通でないのは(例えば 8.Bd2 なら普通)ポーンの犠牲を伴っているからではなく、白が普通はシチリア防御の 4…Qb6 5.Nb3 Qc7 という手順を経由してこの局面に至るからで、白が1手遅れている。

8…Bxc3+ 9.bxc3 d6 10.Ba3!

10…O-O

 10…Qxc3+ は危険すぎる。11.Qd2! Qc7(11…Qxd2+ は 12.Nxd2 d5 13.exd5 exd5 14.O-O で、a3のビショップが大威張りになる)12.O-O となって、ポーンの代償がいっぱいある。

11.Qd2

 なぜイワンチュクがここでcポーンを助けたかはまったく見当がつかない。というのは 11.O-O のあと白はすぐに Rf3 で間接的にこのポーンを守れるからである。しかしイワンチュクは満足していた。彼はあとで「布局はうまくいって攻撃の見通しが立った」と説明した。

11…Rd8 12.O-O Nc6 13.Rf3 b5 14.Rg3 Kh8 15.Rf1 Bb7 16.f5 Rg8 17.Qg5

17…e5?!

 イワンチュクはこの手に疑問を呈した。この手で自分の攻撃に歯止めがかからなくなったと考えている。彼の考えでは 17…exf5 18.Rxf5 で黒が指せるが、一番気にしていたのは 17…Ne5! だった。例えば 18.fxe6 なら 18…Nxe4! 19.Bxe4 Bxe4 となって彼は白がどう指したらよいか分からなかった。

18.Qh4 Ne7

 18…Nb8!? から …Nbd7 を目指すのは 19.Rh3 Nbd7 20.g4 で致命的に遅いように見える。しかしここで黒には 20…g5!!

という驚くべき(コンピュータの)手段がある。21.fxg6e.p. Rxg6 となれば 22.g5 には 22…Rxg5+ 23.Qxg5 Rg8 と応じることができる。

19.Rh3 d5

20.Nc5

 イワンチュクは中央で持ちこたえることができれば攻めきることができると確信していた。もっともはめ手含みの 20.Rff3!? で 20…dxe4 21.Qxh7+!! Nxh7 22.Rxh7+ Kxh7 23.Rh3# を期待するのはもっと直接的で、20…Rgc8 には実戦のように 21.Bxe7 Qxe7 22.g4 と応じる意図である。

 ケビン・スプラゲット推奨の 20.Bc1!? もかなり有望そうである。例えば 20…dxe4(20…Rgc8 には 21.g4! が強手で …h7-h6 という受けはc1のビショップために不可能になる)21.Bg5 Ned5 22.Bxe4 となれば黒はあっさりやられる。

20…dxe4 21.Bxe4 Bd5 22.g4!

22…h6

 ナカムラはこの手に残り時間の半分ほどを費やした。この手は1ポーンを犠牲にして白の攻撃を食い止める。22…Qb6 で 23.g5? Bxe4 24.gxf6 gxf6+ を期待するのは 23.Rf2 がぴったりした受けになる。

23.g5 Nh7 24.f6 Ng6 25.fxg7+ Rxg7 26.Qxh6 Rd8

 ここまででナカムラはブリッツ指しが始まっていたが、攻撃の第1波をしのぎ相応の反撃の機会があると当然ながら満足していた。しかしイワンチュクは最後の熟考をし、ナカムラを減速させる独創的な作戦を考え出した。

27.Bxg6 fxg6 28.Rf6! Qc8 29.Rh4! Bf7 30.Nd3

30…Kg8?

 ナカムラ「30…Rxd3! と取るつもりだったが 31.cxd3 Qxc3 32.Bb4 Qc1+ のあと白が 33.Kf2!(33.Rf1 は 33…Qe3+ で引き分けにしかならない)と指せると考えた。しかしもちろんこう指すべきだった。」

31.Bd6! e4

 31…Re8 の方がまだ見込みがあった。32.Bxe5? なら 32…Rxe5! 33.Nxe5 Qc5+ で良いが、32.Nxe5! なら白が優勢である。例えば 32…Qxc3 Qxg7+! でクイーンの代わりに望外に多くの駒が取れる。

32.Be5! Rd5 33.Rc6 Qf8

34.Bxg7

 早く詰ませる 34.Rc8! のような華麗な手を気にかける時間はなかった。

34…Qxg7 35.Rxe4 Rxg5+!

 いちかばちかの手でイワンチュクにはショックだったかもしれない。もっとも彼がクイーンを「捨てて」もまだ勝っていると読む間に時間切れになるほど長くはなかった。

36.Qxg5! Nxg5 37.Rc8+ Be8 38.Rcxe8+ Kh7 39.Rh4+ 黒時間切れ負け

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(この号続く)

2012年03月16日 コメント(0)

カテゴリ: ヒカルのチェス3

フィッシャーのチェス(145)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 価値の低いポーンでさえ危険なバッテリーを隠し持つことができる。特に開き攻撃のあとはクイーンに昇格する狙いがあるだけになおさら危険である。フィッシャーはジーゲンオリンピアードの直後の次の友好対局でこの可能性を見逃した。

フィッシャー対アンデルソン
ジーゲン、1970年
 33…Ne6

 ここでフィッシャーは 34.Be5 と指し十分楽に勝ちきった。しかし気の利いた手があった。

34.Rxf5! gxf5 35.Rg7 Qf8 36.Qxe6!! Rxe6 37.f7

 g8の地点での二重チェックは致命的だし 37…Qxg7 なら 38.f8=Q# で終わる。

(この章続く)

2012年03月16日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

フィッシャーのチェス(144)

第4部 手筋(続き)

第16章 開き攻撃(続き)

 盤上からポーンや駒が消えていくにつれてキングに対する開きチェックは、散在し浮いている戦力を拾い集めるのに最高の可能性となる。ビショップとルークによるバッテリーの手本は次の明快なスタディである。

ビアンケッティ作(1925年)
 白先白勝ち

1.Bb2

 この手は直感で浮かぶがそれでも黒ルークが取られることになることは自明でない。黒ルークはキングの近くにいなければならない。さもないとバッテリーによってかっさらわれてしまう(例えば 1…Rf1+ 2.Rd1+)。しかしf7にもg6にもキングの逃げ道をふさぐので行けない(1…Rf7 2.Rh4+ Kg8 3.Rh8#)。だからf8かh6に行かなければならない。

1…Rf8 2.Rd7+ Kg8 3.Rg7+ Kh8

 ここでどう指すかである。黒ルークは必ずキングによって守られる。

4.Ka2!

 4.Kb1 には 4…Rf1+ があるのでこの手が絶対である。黒ルークは安住の地を去らなければならずバッテリーによって取られてしまう。

(この章続く)

2012年03月15日 コメント(0)

カテゴリ: フィッシャーのチェス

世界のチェス雑誌から(165)

「New in Chess」2012年第8号(1/1)

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ホウ・イーファンがタイトル防衛

 ほとんど一方的ともいえる驚きの結果で女流世界チャンピオンのホウ・イーファンがインドの挑戦者ハンピー・コネルを相手にタイトルを防衛した。アルバニアの首都のティラナで中国の17歳の選手権者は少しだけレイティングの高い相手にまったく危なげなかった。第3、6、7局に勝って10番勝負の8局目で早々と決着させた。そのため両選手は来賓で元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフによる大統領宮殿での授賞式まで1週間も滞在を続けなければならなかった。ホウ・イーファンはティラナでの思いがけない自由時間の一部を快く割いて、気に入っている試合を我々のために解説してくれた。


女流世界選手権を連覇したホウ・イーファンがFIDE会長のキルサン・イリュームジノフ、来賓のミハイル・ゴルバチョフ、そして熱心に応援してくれる母と共に記者団の前でポーズをとっている


記録を破り続けているホウ・イーファン。これまでは女流世界チャンピオンが17歳でタイトル防衛を行なったことはなかった。

解説 ホウ・イーファン 

[D38]
ハンピー・コネル
ホウ・イーファン

ティラナ、2011年、第3局

 この試合は2局引き分けが続いたあとの第3局である。この番勝負の初勝利で、気に入っている試合である。

1.d4 e6 2.c4 Nf6 3.Nf3 d5 4.Nc3 Bb4 5.cxd5 exd5 6.Bg5 h6 7.Bh4 c5 8.e3 c4

9.Be2

 ここでの主流手順は 9.Nd2 で、アレクサンドラ・コステニウクが2011年ロストフでのグランプリで私相手に指してきた。

9…g5 10.Bg3 Ne4 11.Rc1 Qa5

12.Ne5!

 これはべセリン・トパロフ創案の強手である。白がキャッスリングを先にすると次のように永久チェックになるかもしれない。12.O-O Bxc3 13.bxc3 Nxc3 14.Rxc3 Qxc3 15.Ne5 O-O 16.Bh5 Be6 17.Bg6 Nd7 18.Nxd7 Bxd7 19.Qh5 Rae8 20.Qxh6 fxg6 21.Qxg6+

12…Bxc3+ 13.bxc3 Nc6 14.O-O

14…O-O

 これは面白い新手である。対局中私は以前に 14…Nxc3?! が何回か指されたことがあることを思い出していた。しかし黒にとって危険そうである。例えば 15.Rxc3 Qxc3 16.Bh5 O-O 17.Qf3 Kg7 18.Qxd5 Be6 19.Qe4

黒は交換得だが白には代償が十分にある。黒キングは薄いし、白の小駒はすべてキング翼攻撃に加わっている。

15.Bf3!

 この手は研究の成果である。今回ハンピーの布局の準備は本当に素晴しかったし充実していた。そのため私は序盤に多くの時間を割くことを強いられた。

15…Nxg3 16.fxg3 Nxe5

 この手が急所である。他には e4 突きを防ぐ 16…f5 や 16…Be6 17.Bh5 Qxa2 18.Rf6 がある。

17.dxe5 Be6 18.Bh5

18…Qxa2

 黒にはこれより他に良い選択肢はない。キング翼はもう弱体化しているので反撃に出る時機である。安全策は次のように功を奏さない。18…b5 19.Rf6 Kg7 20.Qf3 Qc7 21.Rf1 Qxe5

22.h3!(22.Bxf7 は 22…g4! 23.Qf2 Bxf7 24.Rxf7+ Rxf7 25.Qxf7+ Kh8 で白は何もでかしていない)22…Qc7 これで黒は1ポーン得しているけれどもただ待っているしかなくその間白は陣形を強化する。

19.Rf6 Qb2!

 これは強情な手である。対局中私はこの局面に非常に不安を感じていた。そのためここでほぼ30分も時間を費やした。最初に考えたのは次のような作戦だった。h6のポーンを守り、クイーンをc7の地点に戻してe5のポーンを攻撃するとともに自陣の2段目を守る。しかし白に Qf3 から Rf1 を許してすべての駒でf7の地点を攻撃させると、次のように黒は苦戦に陥る。19…Qa5 20.Qf3 Qc7 21.Rf1 Qxe5 22.Bxf7+ Bxf7 23.Rxf7 Rxf7 24.Qxf7+ Kh8 25.h3

20.Rxh6?!

 これは最も自然な手である。ここでは両者とも次の強力な作戦を見落としていた。20.h4!(この手はg5のポーンを弱め、白キングに安全な所を作ってあとで適当なときにクイーンをキング翼に向かわせるためである)20…Kg7 21.Kh2 Rae8 22.Rc2

白の攻撃が強力である。

 20.Rc2 は 20…Qb6 21.Qd2 Qc7 22.Qd4 Qb6 で互角の形勢である。

20…Bf5

 これが 19…Qb2 の眼目の狙いだった。ビショップをh7-b1の斜筋に移し、ルークをe8に回して重要なe5のポーンを取る。白のルークとビショップがこの着想を防ぐのは容易でない。

21.Rf6

 21.Bf3 も面白い着想で 21…Bg6 22.h4!(他の手だとルークを取られるので絶対手である)22…Rae8 23.Kh2 Rxe5 24.Qd4 Rfe8 25.hxg5! Qxc1 26.Qh4 Kg7 27.Rxg6+

となれば永久チェックがかかる。

21…Be4

 たぶん次のようにビショップをすぐにd3まで進ませた方が良かっただろう。21…Bd3 22.e4!(22.Rf2 Qb6)22…dxe4 23.Rf2 Qb6 24.Qg4 Qe3 25.Rcf1! Bxf1 26.Qf5 Be2 27.Bxf7+ Rxf7 28.Qxf7+

22.Bf3?!

 正着は 22.Rf2 だった。例えば 22…Qb6 23.Qd2 Rae8 24.Rcf1 Rxe5 25.Rf6 Qc5 26.Qf2

となれば、黒はe5のポーンを取ったが次のように白駒の方が働きが良い。26…Bd3 27.Bxf7+ Rxf7 28.Rxf7 Bxf1 29.h3! Qxe3 30.Rf8+ これで引き分けになる。

22…Bd3

23.Qe1?!

 ハンピーはこの手に30分以上考えた。実際白のしのぎは容易でない。例えば 23.h4 なら 23…Rae8 24.Bxd5 Rxe5 25.e4 Kg7 26.Rf2 Qb6 となってd3のビショップが非常に強く重要なf1の地点を押さえていて黒が少し優勢な局面になる。

23…Rae8 24.Bxd5 Rxe5 25.e4

25…Kg7?!

 これは普通の手である。対局後の記者会見でコンピュータは私が対局中に見逃した強手を見つけた。25…Rd8! 26.Rf2 Qb6 27.Bxf7+ Kg7 28.h3 Rxe4 29.Qd2 Qc5 30.Kh2 Rf8

これで黒がビショップを取ってはっきり勝勢になる。

26.Rf2 Qb6 27.Qd2

 他の手ではすぐに負けになる。例えば 27.Kh1 なら 27…f5、27.g4 なら 27…Rd8 である。

27…Rd8 28.Qb2

 ここで相手は数分しか残っていないのにまだ12手も指さなければならなかった。彼女はひどい時間切迫にもかかわらず最善手を見つけてきた。代わりに 28.Kh1 なら 28…Bxe4 29.Rxf7+ Kh8 でビショップが取られる。

28…f5

 この手が最も簡明である。他には 28…Qe3もあり 29.h3(29.Kh1 なら 29…Rd7 30.Rf3 Qe2 31.Qxe2 Bxe2 32.Rf2 Bd3)29…Bxe4 30.Bxe4 Qxe4 となってやはり黒が優勢である。

29.Qxb6 axb6 30.Bxb7 fxe4 31.Rb2?

 これが最後の悪手でたちまち負けに直結した。ここでの最善は 31.Ra2 で、黒は 31…g4! で重要なf3の地点を支配し明らかに優勢である。

31…Re7!

 この手はビショップをa8-h1の斜筋から追い払い、黒がeポーンを突いたときにこのビショップがf3の地点に下がれないようにするためである。

32.Bc6 Rd6 33.Ba4 e3

 このパスポーンで勝ちが見えた。

34.Re1 e2 35.Bc2 Rf7 36.Bxd3 cxd3 37.Rd2 Rdf6 白投了

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(この号終わり)

2012年03月14日 コメント(0)

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